衆議院

メインへスキップ



第14号 平成14年5月17日(金曜日)

会議録本文へ
平成十四年五月十七日(金曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 園田 博之君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 棚橋 泰文君 理事 山本 有二君
   理事 加藤 公一君 理事 平岡 秀夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君
      荒井 広幸君    太田 誠一君
      後藤田正純君    近藤 基彦君
      左藤  章君    笹川  堯君
      下村 博文君    鈴木 恒夫君
      竹本 直一君    中川 昭一君
      西田  司君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    松島みどり君
      柳本 卓治君    吉野 正芳君
      岡田 克也君    鎌田さゆり君
      佐々木秀典君    日野 市朗君
      水島 広子君    山花 郁夫君
      石井 啓一君    藤井 裕久君
      木島日出夫君    中林よし子君
      植田 至紀君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        横内 正明君
   法務大臣政務官      下村 博文君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君
   政府参考人
   (法務省保護局長)    横田 尤孝君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十七日
 辞任         補欠選任
  後藤田正純君     近藤 基彦君
  平沢 勝栄君     竹本 直一君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  近藤 基彦君     後藤田正純君
  竹本 直一君     平沢 勝栄君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
五月十六日
 国際受刑者移送法案(内閣提出第六七号)(参議院送付)
同月十三日
 民法改正における選択的夫婦別氏制度の導入に関する請願(赤松広隆君紹介)(第二六九〇号)
 同(土井たか子君紹介)(第二六九一号)
 同(水島広子君紹介)(第二六九二号)
 夫婦別姓制度の導入を図る民法改正反対に関する請願(岩崎忠夫君紹介)(第二六九三号)
同月十七日
 治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第二七九四号)
 同(伊藤英成君紹介)(第二七九五号)
 同(池田元久君紹介)(第二七九六号)
 同(小泉俊明君紹介)(第二七九七号)
 同(古賀一成君紹介)(第二七九八号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第二七九九号)
 同(佐藤敬夫君紹介)(第二八〇〇号)
 同(島聡君紹介)(第二八〇一号)
 同(津川祥吾君紹介)(第二八〇二号)
 同(中川智子君紹介)(第二八〇三号)
 同(楢崎欣弥君紹介)(第二八〇四号)
 同(原口一博君紹介)(第二八〇五号)
 同(肥田美代子君紹介)(第二八〇六号)
 同(細川律夫君紹介)(第二八〇七号)
 同(牧野聖修君紹介)(第二八〇八号)
 同(山口わか子君紹介)(第二八〇九号)
 同(伊藤忠治君紹介)(第二八七三号)
 同(大出彰君紹介)(第二八七四号)
 同(大島令子君紹介)(第二八七五号)
 同(大谷信盛君紹介)(第二八七六号)
 同(海江田万里君紹介)(第二八七七号)
 同(川田悦子君紹介)(第二八七八号)
 同(北橋健治君紹介)(第二八七九号)
 同(釘宮磐君紹介)(第二八八〇号)
 同(小林守君紹介)(第二八八一号)
 同(五島正規君紹介)(第二八八二号)
 同(後藤斎君紹介)(第二八八三号)
 同(今田保典君紹介)(第二八八四号)
 同(今野東君紹介)(第二八八五号)
 同(葉山峻君紹介)(第二八八六号)
 同(原陽子君紹介)(第二八八七号)
 同(藤村修君紹介)(第二八八八号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第二九四四号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第二九四五号)
 同(中川智子君紹介)(第二九四六号)
 同(中川正春君紹介)(第二九四七号)
 同(細野豪志君紹介)(第二九四八号)
 民法改正における選択的夫婦別氏制度の導入に関する請願(土井たか子君紹介)(第二八一〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 更生保護事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)(参議院送付)
 国際受刑者移送法案(内閣提出第六七号)(参議院送付)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
園田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、更生保護事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長黒澤正和君、法務省刑事局長古田佑紀君、矯正局長鶴田六郎君、保護局長横田尤孝君、入国管理局長中尾巧君及び海上保安庁長官縄野克彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどり君。
松島委員 更生保護事業法等の一部改正について質問させていただきます。
 質問に入る前に、一たびいろいろな形で罪を犯した人が社会にスムーズに復帰するために、今回のテーマは更生保護事業施設でございますけれども、例えば保護司の方々が、御自分の仕事を持ちながら、本当にいろいろな形で尽くしていただいている。そのボランティア精神というのを、常に感動というか感謝しながら、持っている。そういう民間の方の協力があって初めてこの仕事ができるんだなという思いを強くしている次第でございます。
 そしてまた、今回の更生保護事業、この施設についても、決してもうかるとかそんな格好いい仕事でもないし、家族ぐるみで、それを基盤として事業を営んでおられる方々について、本当に大変なお仕事だなと思う。まず、その気持ちを述べさせていただきたいなと思っております。
 質問に入らせていただきます。
 今回の改正におきまして、一つ目でございますけれども、保護期間について、特に必要な者はさらに六カ月延長という改正がございます。もちろん、これまでは、六カ月間の保護期間を超して仕事なり住むところを見つけて外に出るということがまだできない方については任意の保護で、施設側の経済的負担が重くなっているのが実情でございました。したがって、この六カ月延長というのは、確かに助かることではあるんですが、現場の方々の声を聞きますと、よしあしだなというような声も伺う次第でございます。
 どういう意味でよしあしなのかとお尋ねいたしますと、その中で大きく言われるのが、例えば入っている高齢の人について言いますと、住むところと就職先を確保して自立するのがなかなか難しくて、更生保護施設から、生活保護の受給あるいは生活保護法に定められた福祉施設への入所を求められる方が結構いる。そのときに、今までですと、もう六カ月でここを出なきゃいけない、追い出されるから何とかという交渉があったわけです。それでも、生活保護の方も今求める方が多いものですから、ちょっと待ってくれ、まだしばらくそっちでと言われていたのが、さらに六カ月置いてもらえるということになると、そちらで面倒を見ておいてこっちには来ないでくれ、まだちょっと満員で難しいとか、生活保護の適用の人もふえているからということで断られるケースがふえるだろうという危惧を出される方々がいらっしゃいます。そのあたりについてどういうふうにお考えになるんだろうかということ。
 そしてまた、これは悪いケースですけれども、今の更生保護事業の施設に入っている人の中で、まじめな方がたくさんいらっしゃるわけだけれども、それでもやはり怠惰でなかなか自分での自立を探れない人たちがいる。そういう人たちにとって、まだいられるんだ、一年間はいられるんだと、居座るというか、そういう怠慢な心が芽生えるんじゃないか、そう指摘される方も関係者の中にいらっしゃるんですけれども、そのあたり、この二つの意味でどういうふうにお考えになるか、伺いたいと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 更生緊急保護といいますのは、これまでの現行の法律によりますと、刑事手続上の拘束が解かれましてから六カ月間ということになっております。しかし、最近の雇用情勢の悪化でありますとか、被保護者の高齢化、あるいは処遇困難な者がふえているといったような状況から、六カ月でそのまま更生保護施設から出てもらうということでは、その本人の更生が必ずしも達し得ないというケースがふえつつあるような状況が客観的にございます。
 そこで、予防更生法の四十八条の二の改正をいたしまして、今回、本人の更生を保護するため特に必要があると認めるときは六カ月間の延長をするというふうに決めたわけです。ただ、ただいま委員御指摘のような懸念がないかといいますと、それは、現実論としてやはり考えるところであります。しかし、それは法改正の意図とするところではございません。
 したがいまして、この運用の問題にかかってまいりますけれども、この法改正も、例外的な規定として、特に必要があると認めるときはというふうに規定しておるわけでございまして、現実には、ただずっと何もしないでいれば一年また延びるだろうというようなことは、もとより到底対象になるわけではございませんでして、本人に更生の意欲が顕著である、そして、その自立、独立のために、一生懸命更生のための努力をしているというような状況があって、しかし、なおかついろいろな状況で、例えば、たまたま六カ月近くになって病気になって出るに出られないとか、いろいろなやむを得ない事情がある場合には新たに六カ月間の延長を認めましょうというようにして、この運用は厳格にして、仮にも、その上に寝てしまうといいますか、そういうことのないようにしたいと思っています。
松島委員 今おっしゃっていただいたのは、つまり、入っている人がそれを盾にとって、怠慢にぐずぐずすることがないようにということだと思います。それはそのとおりでございます。
 もう一つ私前半に申しました、厚生労働省所管の生活保護との関係、その施設との関係、これについてもぜひ、もちろん今それを求める声が強くて、満杯なところですけれども、特に高齢で出てきた人については、そうなかなか仕事を求められないので、そっちの方へ移行できないかということも求めていっていただきたいと思っております。
 今申したことと相反するようでございますが、私も、確かに十二カ月までの延長が必要だと思うケースも、こういう声を伺いました。こういう場合に適用していただきたいなと思う事例として申し上げるんですが、数少ない成人女子の保護施設専門の一つが、私の地元の荒川区にございます。静修会というところなんですが、そちらの責任者、主幹さんのお話を聞きますと、家賃三万円前後のアパート、こういうところへ移りたいと思っても、高齢な女性の人が社会復帰するために、その保護施設の静修会の寮の方から理解のある雇用先にパートに出る。今、協力雇用主という方も、ありがたいことでやっていただいていますけれども、理解があるところでも、一日に何時間も働いてもらうと、つまり、年金だとか保険なんかつけなきゃいけなくなるから、会社の方がそれを嫌がって数時間しか働けない。時給七百円か八百円で一日三、四時間働いていますと、手元に本当になかなか残らない。
 さらに、たしか三カ月が過ぎますと食費の方が自前になる。そうするとまたそちらの方も引かれるので、なかなかお金がたまらないで、まじめにやっていく気があっても、最初の礼金、敷金だとか、引っ越し代だとか、最低限の、自分で自活するんだったら、ちょっとした家具は置かなきゃいけない。そのために三十万円とかためようと思っても、本当に、半年でなかなかたまらないというケースを伺いました。そういう場合に、一生懸命やっているけれども、本当に厳しい状況。特に高齢者の場合は、こういう場合に当てはまるように何とかしていただきたいと思っております。
 それとさらに、その場合に食費が九十日たつと自分持ちになることがいいのかどうか。本人の責任という意味では確かに必要なことですけれども、これだと、なかなか手元に残らないで自立がおくれるんじゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 おっしゃるとおり、現在の経済情勢その他で、特に女性あるいは高齢者の就職が大変困難であることは事実でございます。
 国といたしましては、委託費の増額に努めてまいりまして、十四年度の予算におきましても、十三年度に比しましてそれなりの増額が認められたと思いますけれども、さらにその増額に努めてまいりますし、また、先ほどの御質問とも関連いたしますけれども、やはり福祉機関等との連携もさらに密にいたしまして、女性であるとかそれから高齢者の自立、更生がこれまで以上に円滑にできますように、引き続き努力を重ねてまいりたいと考えております。
 それから、食費の問題でございますけれども、確かに、更生保護施設に入りまして初めの期間は食事つき宿泊でございますけれども、ある程度の期間が過ぎますと、めどがつきますと宿泊だけになる、そういうシステムをとっております。これによってだんだんその本人の自覚を促して、そしてひとり立ちできるようにしようという、一つはそういう側面がございますけれども、しかし、本当に食事代もままならないというようなことがあれば、それはそれでまた具体的な措置として、払えない者から食事代を取るということではございませんので、それはまたきめ細かな運用を図っていきたいと考えております。
松島委員 この入っている人、そして自立を目指すということも、もう人によって、頑張り方、あるいはどういう姿勢で臨むかというのも本当にケース・バイ・ケースだと思いますので、よろしくお願いします。
 それから、この更生保護施設の運営ですが、篤志家が家族経営に近い形で運営しているケースが多くて、金銭的に、若い職員、働き盛りの職員を雇うことが非常に難しいと伺います。ですから、職員を雇うときにどうしても、年金ももらっている例えば公務員OBとか学校の先生のOBとかそういう方、年金をもらっているからちょっとだけ払えばいいという、そういうケースが出ているようで、そうするとやはりどうしても職員にも年代的な偏りが出てしまう。
 それを考えますと、今回の改正で、社会適応を促すための専門的な処遇、そういうこともやっていこうということになったんですけれども、これが加わりますと、総支給額、つまり、今一日五千数百円の支給ですね、補導費と宿泊費と委託事務費合わせて。これが、その社会適応を促すための専門的な処遇というのを加えると、保護事業施設に払われるお金というのはカウントされてふえるんでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 今回の法改正によりまして、社会生活に適応するために必要な生活指導というものを新たに委託の内容とするということでございますけれども、それ自体ということでしょうか。
 処遇そのものに対する予算措置ということではございませんけれども、やはりそのような新たな高度の処遇が業務に加わるということから、各施設に職員を一名増員という形で予算措置をしてございます。
 以上でございます。
松島委員 ありがとうございます。
 今、全国に百一施設ございまして、定員が二千二百七十一人です。しかし、受刑者の数そのものが平成六年以来ずっとふえ続けています。また、六十歳以上の受刑者の割合もここ十年伸び続けて、平成十二年の末には九・三%、一割近くにまで達しております。
 ずっと出ておりますように、高齢者ほど就職は難しいわけですし、身寄りがなくて更生保護施設を必要としているというケースがたくさんあると思います。
 今後更生保護施設というのは新しくつくることは困難だと思いまして、全国の更生保護施設で保護した人員というのが、平成十年度一万百四十人だったのをピークにしまして、十一年度は九千九百八十六人、十二年度は九千九百五十三人と減っております。
 これは、余り需要が減っているとは思えないんですけれども、入れないというのか、どういったことなのか。特に、これから長くいられる、十二カ月いられるようになりましたら、いよいよ新しい人で入れない人が出てくるのか。そちらのあたり、どうお考えでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のように、この更生保護施設におけます収容保護実績といいますか、それは、平成十年をピークにして少し減ってきております。これは、今委員がおっしゃいましたのは、この更生保護施設に入っております人数、いわゆる頭数の問題だと思います。
 一方、年間の延べ人員といいますか、つまり頭数に実際に収容された日数を掛けた延べ人数でございますけれども、それを見ますと、平成十年は五十四万五千七百九十でございましたけれども、翌年は五十五万三千七百七十五、そして平成十二年度は五十七万三千七百六十九というふうに、延べ人数としてはふえているんですね。これは何を示すかといいますと、一人当たりの収容期間といいますか、更生保護施設に在所している期間が延びているということです。
 その背景は、先ほど来申し上げておりますように、やはり雇用情勢の悪化でありますとか、高齢化が進んでいるとか、処遇困難者がふえているとか、そういった状況から、どうしても自立が少しずつおくれていって、施設に結局その分とどまらざるを得ないという状況だと思われますね。
 そういうことで、今回の法改正によりまして処遇内容の充実強化あるいは人的な体制整備を図るといったようなことをいたしまして、できるだけ早く自立、更生ができるように進めていって、そしてより多くの者をこの保護施設に収容できるような体制をつくっていきたい、かように考えております。
松島委員 どうもありがとうございました。
園田委員長 漆原良夫君。
漆原委員 おはようございます。公明党の漆原でございます。
 平成十二年に少年法の大変大きな改正がなされたわけでございます。少年審判における事実認定手続のあり方とかあるいは検察官送致のあり方、保護観察期間の延長などについての大変大きな改正がなされました。その審議の中で、保護主義なのかあるいは厳罰主義なのかということで、当委員会でも大変激しい議論がされたことを本当に私よく覚えております。
 我が党は、法改正は必要だという観点で意見を述べさせてもらいましたが、ただ法改正すればいいというものじゃなくて、そのほかに、少年の健全育成、これについて全力で取り組むべきだということを強く訴えさせていただきながら、その際に、「少年法改正にあたって実施すべき施策」として、「少年の更生・社会復帰への支援拡充に関する緊急提言」というものを行わせていただきました。八項目ぐらいありまして、「中間施設「グループホーム」制度の創設」とかあるいは「更生保護施設への支援強化」、あるいは「被害者・少年等協議プログラムの導入」、それから四番目に「「社会奉仕命令」制度やいのちを育む作業の導入」とか、「「少年サポートセンター」の拡充」、あるいは「更生・社会復帰支援施設の整備と働く機会の確保」、七番目が「職員体制等の拡充」、八番目は「心理学や精神医学の専門家の養成体制・配置の拡充」というふうなものを総合的にやるべきだということを提言させていただいたわけでございます。
 そんな思いを込めて附帯決議にさせていただいたというふうに私は認識しておるわけでございますが、今回の法改正は少年法改正の際の附帯決議を踏まえたものだというふうに言われておりますが、その趣旨は一体どういうことなのか、それから法改正の趣旨と背景を大臣にお尋ねしたい、こう思います。
森山国務大臣 先生御指摘のとおり、少年の非行あるいは犯罪というようなものは、社会の鏡とでも申しましょうか、社会全体のいろいろな問題を反映したものというふうに私も感じておりまして、法律を改正したからといって片づくというような単純なものではないというふうに思っております。
 平成十二年の十一月の少年法改正のときに附帯決議をいただきまして、今先生からおっしゃいましたように、幾つかの項目、五項目のようでございますが、その最後の五番目に、「少年の健全育成及び非行防止のための施策並びに非行少年の更生保護など社会復帰のための施策を充実・強化すること。」ということが特に記されておりまして、これらの問題について政府は格段の努力をするべきであるというふうに決議していただいたわけでございます。
 少年非行の問題につきましては、親の監護能力が低下しているとか、また、社会性が欠如して対人関係をうまく築けないなどの問題を抱える少年がふえるというような深刻な状況になっておりまして、この附帯決議にもございましたように、非行少年の社会復帰のための施策を充実強化することは極めて重要なことだというふうに思います。
 そこで、今回の法改正におきましては、更生保護施設における処遇を充実強化することによりまして、犯罪者や非行少年に対しその問題性に応じた適切な処遇が実施されまして、今日の悪化した犯罪情勢に対処するということとともに、少年の更生保護のための施策を一層推進することというふうに考えて改正を御提案しているものでございます。よろしくお願いします。
漆原委員 今回の法改正によって、少年の更生保護がどのようにして図られるようになるのか、具体的に御説明をいただきたいと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 三点ほどございます。
 第一点は、更生保護施設における処遇の内容の問題がございます。少年を含めまして、成人もそうなんですが、少年、成人につきましては、これまで更生保護施設におきましては、宿所の提供とそれから食事の提供、寝るところと食べる部分ということが主体でございましたけれども、改正案におきましては、社会生活に適応させるために必要な生活指導というものを新たに加えるということになります。
 それから第二点でございますけれども、これは委託対象者の拡大の点でございまして、少年につきましては、これまでは少年院の満期退院者につきましては更生緊急保護の対象になっておりませんでしたので、更生保護施設への委託を認めておりませんでしたけれども、今回の法改正によりまして、このような少年院の満期退院者につきましても、更生保護施設における処遇ができるように、国の委託ができるようにするという点でございます。
 それから第三点は、委託期間の延長の問題であります。先ほど、松島委員の御質問の中にもございましたけれども、更生緊急保護による委託の期間につきましては、例外的に、これまでの六カ月からさらに六カ月間延長して最長一年までは更生保護施設における処遇ができるようにいたします。
 そういうようなことをいたしまして、ただいまの大臣の答弁にございましたように、少年法の附帯決議にも示されましたような非行少年の更生保護及び社会復帰が一層促進できるもの、このように考えております。
 以上です。
漆原委員 今回の改正で、更生保護施設における処遇内容が充実され、強化されたりする結果、具体的にどのような処遇がなされることとなるのか、その辺を御説明願いたいと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 今回の法改正におきまして、更生保護施設におきましては、対象者それぞれが抱える問題性に応じまして、個別に生活指導あるいはカウンセリングを行うということをさらに充実させますけれども、さらにそれにつけ加えまして、SSTというもの、あるいは薬害教育、酒害教育その他の専門的な処遇プログラムというものを実施する考えでございます。
 この中のSSTと申しますのは、ソーシャル・スキルズ・トレーニングの頭文字をとったものでSSTと呼んでおりますけれども、これは、最近の犯罪者の大きな特徴として、犯罪が貧困その他の経済的な理由から生ずるものだけではなくて、社会適応がうまくいかない、対人関係がうまくできない、それによってある意味では落ちこぼれるといいますか、あるいは自己統御ができなくて犯罪に陥るといったようなケースがふえているように見られるわけですね。そこで、そのような社会適応がなかなかうまくできないという人のために、それを改善していこうという一つの手法として取り上げられているものです。
 例えば、就職の面接のときにどうしたらいいのかとか、あるいは急にぐあいが悪くなって会社を休みたいんだけれどもなかなかうまく言い出せなくて無断欠勤をしてしまうとか、あるいは同僚とのトラブルがあってそれにどう対処したらいいかわからないとか、いろいろな問題が起きたときに、それにうまく適切に対処できるように、その施設の中でその具体的な場面場面というものを設定しまして、そのようなストレスが生じやすいとか、トラブルが起きるような場面場面を設定して、参加者がそれぞれの役割を担ってロールプレーをしていく中でその問題を発見し、それに対処する仕方をだんだん身につけていくというような手法がございます。これがSSTでございます。
 それから、酒害教育、薬害教育ですけれども、これは、処遇困難者と言われる中には、アルコールの嗜癖が直らない、あるいは薬物の嗜好が消えないといったような人がございますので、そのような薬やアルコールの害についての教育をして、そしてまた、そういったものから遠ざかるようないろいろな教育を、これは部外の専門家等も含めまして教育をしようということであります。
 その他、例えば少年施設におきましては親子関係の改善のためのプログラムを組むとか、それぞれ施設施設によっていろいろなことがございますけれども、いずれにしましても、これまでになかった新たな手法を取り入れて処遇内容を変えていって、被収容者の改善更生の促進をしていきたい、このように考えております。
漆原委員 法務省はこれまで、更生保護施設の処遇を強化充実するためにどのような施策に取り組んでこられたのか、その辺を説明願いたいと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 先ほどの御質問とも関連するんですけれども、法務省におきましては、平成十二年の一月に、これは更生保護法人の一つでございます全国更生保護法人連盟と共同いたしまして、更生保護施設の処遇機能強化のための基本計画というものを策定いたしました。それに基づきまして、私どもステップアッププロジェクトというふうに呼んでいるわけですけれども、そういうものを推進しております。
 このステップアッププロジェクトと申しますのは、全国にある更生保護施設が、その実情に応じて、それぞれができる処遇、新たな処遇目標を立てて、そしてそれを計画し実行していきましょう、そういうシステムでございます。
 したがいまして、施設によりましては、先ほど申し上げたSSTということを実行したところもありますし、また、施設によっては酒害教育、薬害教育に力を入れているところもありますし、先ほど申し上げた親子改善のプログラムをするとか、あるいはいろいろなミーティングをするとか、さまざまな試みがされているわけで、法務省におきましてもそのような施策を後援しておりますし、また、そのような新しい処遇プログラムにつきまして、保護施設相互の情報交換あるいは研修ができるようにバックアップしているところでございます。
漆原委員 予算についてですが、更生保護施設の処遇機能を充実させるために、十四年度予算においてどのような財政措置が講じられているのかお尋ねしたいと思います。
横内副大臣 今回の法改正に関連した予算の増額は二点ございます。
 一点は、更生保護施設の処遇の改善を図っていきますためには、やはりそこで働く職員さんの数の充実をしていかなければいけないというふうに思います。従来、更生保護施設では、収容能力が二十人以下の保護施設の場合には、基準の職員さんの定員が三人、二十人以上の場合には四人というふうになっておりましたが、これは一人ずつプラスをいたしまして、二十人以下の収容能力の更生保護施設の場合にはこれを四人にし、それから二十人以上の更生保護施設の場合にはこれは五人にするというふうに、職員を一人ずつ増員をしております。これに必要な予算が約三千六百万円の増額でございます。
 二点目といたしまして、更生緊急保護という事業がございます。これは刑務所の満期退所者を対象にした事業でございますが、これに加えて今回から少年院の満期の退院者もこの更生緊急保護事業の対象にするということで、これに関連して委託費の七千八百万円の増加を図っております。
 合わせまして、約一億六百万円の増額をしているということでございます。
漆原委員 最後に大臣にお尋ねします。
 更生保護施設の処遇機能を充実強化するためには、今回の法改正だけではその目的は達成できないと思います。法施行後の取り組みも重要であると思われますが、この点について大臣のお考えをお尋ねして、最後の質問とします。
森山国務大臣 この法改正によりまして、更生保護施設が処遇施設として明確に位置づけられるということになりますと、全国の更生保護施設において質の高い専門的な処遇が行われるということが期待されると思います。
 法務省といたしましても、更生保護施設職員に対する研修の充実、効果の高い処遇プログラムの開発など、犯罪者や非行少年に対する更生保護など、社会復帰のための施策の推進に引き続き努めてまいりたいと考えております。
漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
園田委員長 西村眞悟君。
西村委員 審議されている本案を中心にして、周辺事情も含め質問させていただきます。
 現在はまだ牧歌的な感じがいたしますけれども、確実に犯罪数は増加しておりますし、凶悪犯罪数が増加しておる、それに対応して検挙率が維持されているかといえば検挙率が維持されていない。こういうふうな、ある意味じゃもうあと一つの段階を超えれば治安の崩壊かと思われるような、例えば新宿の歌舞伎町のあの状況が全東京の範囲に広がるというふうな感じがいたさぬでもないのです。
 こういうふうな問題意識を持って、前提として数字をお聞きしたいと思いますが、現在、少年院や刑務所、そこに収容されている人の数、男女別や年齢別、それからそれがここ数年にわたって増加傾向にあるのか、どういう傾向にあるのかということについて、概略を御答弁いただきます。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 まず、少年院の被収容者総数は、平成十三年度末現在で五千三十四人、収容率で九〇・八%でありまして、うち、男子が四千四百八十五人、女子が五百四十九人でございます。
 年齢構成につきましては、これを平成十三年の新被収容者、新しく少年院に入ってきた少年ですけれども、これが六千八人おりますけれども、これで見ますと、十四歳、十五歳といった年少少年が八百六十五人で、構成比でいきますと一四・四%。十六歳、十七歳の中間少年が二千五百八十三人で、構成比でいきますと四三・〇%。十八、十九といった年長少年につきましては、二千五百六十人で、構成比で四二・六%であります。
 これらの数字を五年前と比較いたしますと、年末の被収容者数では男子、女子ともふえておりまして、総数で千七百二十三人、五二%の増加ということになっております。
 ちなみに、年齢構成別で見ますと、過去五年間で各年齢層で増加しておりますが、構成比では、年少の占める割合が一・一%上回っておるのに対し、年長少年が一・五%下回っております。
 それでは次に、刑務所等の行刑施設でございますけれども、被収容者数は平成十三年度末現在で六万五千五百八人、収容率約一〇一%でありまして、うち、受刑者が五万三千二百八十三人、収容率でいきますと約一一〇%でございます。このうち、男子受刑者は五万五百五十七人、女子が二千七百二十六人でございます。
 受刑者の年齢構成ということで説明いたしますと、二十歳未満が三十三人で、構成比で〇・一%。二十歳代が一万一千三百二十一人で、構成比で二一・二%。三十歳代が一万五千百三十三人で、構成比で二八・四%。四十歳代が一万九百十二人で、構成比で二〇・五%。五十歳代が一万六百六十八人で、構成比で二〇%。六十歳代が四千三百四十人で、構成比で八・一%。七十歳代以上が八百七十六人で、構成比一・六%となっております。
 これを五年前の数字で比較いたしますと、受刑者総数で一万二千八百九十四人、約三二%増加しておりまして、女子、男子とも、いずれも増加しておりますが、特に女子受刑者の増加が顕著でありまして、約一・五倍となっております。
 なお、年齢構成で見ますと、過去五年間の傾向といたしまして、各年代とも数字は増加しておりますが、構成比といった観点から見ますと、二十歳代と四十歳代の比率が下がっているのに対しまして、三十歳代、五十歳代、六十歳代の比率が上がっている、こういうことでございます。
西村委員 ありがとうございました。
 以前にお聞きしたのは、やはり犯罪検挙率が減少してきている。この中で、この五年間を見ても、受刑者の数は増加傾向にあるということは、検挙を逃れた犯罪も含めて増加傾向にあり、それが今とまっていないということですから、増加傾向がこのまま歯どめなく続くならば、いずれ治安の崩壊という事態は来るわけでございます。
 それで次に、同じ人間がまた同種また異種の犯罪をどれだけ犯しているのかということについて、ちょっとお教えいただけますでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 当局におきましては、不起訴とかあるいは起訴猶予になったものも含めたいわゆる再犯率につきましては統計を把握しておりませんが、行刑施設、刑務所を出所した者がその後五年間を経過するまでの間に再び入所してくる、いわゆる再入率は統計をとっております。これは、出所者のおおむね四五%前後であります。
 なお、再入者のうち、満期釈放者の再入率はおおむね五五ないし五八%ですが、仮釈放者の再入率はおおむね三五ないし三七%となっております。
西村委員 今の数字でももう既に明らかでございますが、結局、一遍刑務所に入って、半分前後また入ってくる。したがって、矯正事業また更生保護事業はここで効果を発しているのか発していないのかということについての判断は非常に難しいことでございます。頑張っているから半分でとどまっているんだということも言えますし。
 そういうことでありますが、この更生保護事業の段階が非常に重要だということで、今回の法改正で今審議がされておるわけでございますが、大臣としては、今御答弁いただいたいろいろな統計は御承知の上で、本件事業の改正により、今後受刑者数及び再犯率に関していかなる影響があらわれると期待されているのかどうかということについて御答弁をいただきますように。
森山国務大臣 今までお話がございましたように、近年、犯罪情勢の悪化等に伴いまして、行刑施設収容者は増加傾向を示しております。また、出所後に更生保護施設における保護を必要とする者もふえておりまして、中でも高齢者、薬物依存者等更生のために特別の処遇を要する者の増加が著しいという状況でございます。
 今回の法改正は、これらの情勢に的確に対応いたしまして、その改善更生を実現するために更生保護施設の処遇機能を充実させるということなどを骨子とするものでございますが、これによりまして、刑務所出所者のうち保護を必要とする者を更生保護施設において積極的に受け入れまして、その社会復帰の機会を広く提供できるようになるものと考えております。また同時に、社会適応訓練等のより専門的な処遇を実施することによりまして、その改善更生を促進することも可能であろうというふうに思われますし、その結果、将来的に再犯率の低下、ひいては受刑者数の減少に結びつくということを期待しております。
西村委員 大臣の期待どおり推移するには、現場、更生事業に当たられる方、刑務所で日々受刑者に接しておられる方、この方々の努力一点にかかっておるわけでございますから、大臣におかれては、今希望を表明された以上、それらの方々に対して特段の御配慮をよろしくお願いいたします。
 次に、今、日本人を中心にして、一億二千七百万の人口を前提にして申しておるわけですが、昨今、外国人犯罪が非常にふえてきておるというのは、もうマスコミ報道もなされない一般的なことになってきております。したがって、我が国に、当局が察知できないけれども勝手に入ってきて、勝手に住んでおるというふうな不法滞在の外国人は幾らぐらいと推定されているのかということについて、お伺いをいたします。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、在留期限を徒過して不法に残留する者の数についてでございますが、平成十四年の一月一日現在、二十二万四千六十七人おります。これに加えまして、我が国に潜在しております不法入国者につきましては、私どもの検挙実績に照らしまして約三万人と推定しておりますが、この数字につきましてはそれ以上だという見方もございます。
 したがいまして、これを加えますと、約二十六万人ぐらいの不法滞在者が我が国におるものと考えておるところでございます。
西村委員 我々が今携わっている治安維持に関していかにするかということについては、我が国の出入国管理をさらに徹底するというふうな観点からの働きかけも必要だろう。今御答弁なさったように、この人数で、まあびっくりするような、今まで日本人の犯罪パターンではないような犯罪が起こっているということでございますから、犯罪を減少させる効果的な攻撃対象は不法滞在であるというふうに思いますので、どうか当局におかれては特段の御努力をお願い申し上げます。
 次に、難民認定についてお聞きするんですが、瀋陽の事件以来、我が国の難民認定について話題に上ることがあります。したがって、この点について概略をお聞きしますが、我が国の一年間の認定数はおおよそ幾らか。これは、認定率にしておおよそ幾らか、認定率にして諸外国とどのような差があるのかということをお聞きいたします。御答弁いただきますように。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国の場合、難民認定制度が発足いたしましたのが昭和五十七年でございます。昭和五十七年以降平成十三年までの難民認定者数は、合計二百九十一名でございます。年に平均いたしますと約十五名ということになりますが、最近は数もふえてまいりまして、平成十二年は二十二名、平成十三年は二十六名となっております。
 難民認定率、つまり、認定者数を認定者と不認定者の総和で割る難民認定率でございますが、平成十二年の認定率は約一四%、平成十三年の認定率は約八%と若干下がっておりますけれども、諸外国の難民認定率の比較で申し上げますと、統計として平成十二年で比較させていただきますと、イギリスの場合は一二%、ドイツの場合は一五%、オランダの場合が七%、スウェーデンの場合二%となっておりまして、我が国の平成十二年の約一四%というのは諸外国のそれと比較いたしましても遜色がない数字であると考えておるところでございます。
西村委員 人権の観点から我が国は大いに難民に門戸を開いて云々という議論がひとり歩きしまして、我が国は非常に難民を入れないんだということを前提にしてなされておって、それに歯どめがきかなければ我が国の将来の治安に責任を持てるかどうかということが非常に危うくなってくると私は思いますのでお聞きしているんでございますけれども、北朝鮮の工作員の証言によれば、我が国に入るのは食事しておってトイレに行くよりまだ簡単だということからするのならば、我が国に面倒な難民認定の手続をせずに勝手に入ればいいわけでございますから、その意味で、難民認定率が低いんだ、もっと受け入れろという論者に対しては、もう勝手に入っているんだというふうに言ってもあながち不当ではないと思われるほど我が国は入りやすい国であります。
 そのことは抜きにして、今回、瀋陽の日本領事館で、仮に、あの五名が入ったまま領事館内に保護されて、日本に亡命したいんだというふうに主張を続けておれば、我々はそれに対応する手続を持っておるのか。つまり、難民として認定するか認定しないかは当局が決めるわけですが、その手続に乗せることができるのかどうかということについてお伺いいたします。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御質問の関係につきましては、一応一般論という形でお答えさせていただきたいと存じます。特に、日本への亡命を希望したということになっておりますけれども、この亡命という定義につきましては、難民のような確立した一義的な定義がないわけでありますが、一応我が国に亡命を希望した場合ということでお答えさせていただきます。
 当該在外公館で我が国に亡命を希望した者がおるとした場合につきましては、その者が当該在外公館で渡航証明書を得て我が国に入国をするということになろうかと思います。このような場合には、短期滞在等で上陸を許可した上、その者が難民認定を申請した場合には、個別に審査の上、その者が人種、宗教、政治的意見等を理由に迫害を受けるおそれがあるときは、私どもの場合は難民として認定いたします。また、それ以外の場合でも、人道的観点から適宜の在留資格を付与すべき者と認められるときには本邦での在留を許可する、こういう手続の流れになろうかと思います。
西村委員 次に、再犯防止が非常に困難な犯罪の一つの典型として覚せい剤を取り上げます。
 と申しますのは、私は数年前に覚せい剤押収量が年間一トンを超えたという状況に非常に驚いておるわけでございまして、押収量が一トンを超えているんだから、これは押収されずに出回っている量はどれほどかということ、これがある意味では、前も申し上げたかわかりませんが、アヘン戦争をしかけられているような、我が国に対する社会崩壊のドラッグを絶え間なく流し込まれているというふうに思わざるを得ない。ある意味じゃ、これは一つの国家緊急事態だと言ってもいいわけです。国家緊急事態は、何も鉄砲を掲げて敵が上がってくるのが緊急事態ではなくて、こういうことでも社会は崩壊するわけですから。
 それで、時間を余して終わりたいと思っていますので、概略こちらから申し上げて、一回の御答弁で済ませていただきたいと思うんですが、日本の現在までの押収量は年間どれぐらいで推移しておるか。それから、今日本国内で出回っている覚せい剤の重量はどれぐらいか。そして、その覚せい剤を売買することによって売却益は幾らと推定されているか。次に、この覚せい剤はどこから持ち込まれているのか。これに関与する組織は何かということまで一括して御答弁いただけますか。
黒澤政府参考人 薬物問題、とりわけ日本におきましては覚せい剤がその問題の中心でございますが、委員御指摘のとおり一トン押収したというのは平成十二年でございまして、実は、平成十一年には二トン押収をいたしておるところでございます。十三年は約四百キロ。いずれにいたしましても、大量の覚せい剤が現実に押収されておるわけでございます。
 一体どのぐらい覚せい剤が入っているのか、その辺の推定はなかなか難しいわけでございます。いろいろな推定がございますが、警察庁として推定いたしたことはございませんが、例えばでございますが、社会安全研究財団というところがございまして、最近実施をいたしました覚せい剤乱用者総数把握のための調査研究によりますと、平成十三年度の推定乱用者数として約百六十万人との結果が出たと承知をいたしております。これに覚せい剤の年間使用量、これは実態から割り出した数字、この使用量を掛けて推計をいたしますと、約十三トンから十八トンの結果が算出されておるということを承知いたしておるところでございます。
 また、この薬物を売却した場合の利益がどのぐらいになるかということでございますが、これも、卸とかいろいろな価格が各段階でございますけれども、末端乱用価格を乗じますと、約七千八百億円から一兆八百億円、このように推算がされるということを承知いたしておるところでございます。
 それから、覚せい剤は海外から入ってくるわけでございますけれども、過去三カ年間の覚せい剤一キログラム以上押収をいたしました事例につきまして、その比率を見てみますと、中国が四割弱、香港が一六%、それから北朝鮮が三四%ぐらい、それぞれ全体に占める比率はそのようなパーセンテージになっておるところでございます。
西村委員 今御答弁いただいた数字、実態を軽く見てはいけないのでありまして、海外から持ち込まれる、中国、香港、北朝鮮、これは一人の例えば北朝鮮人個人が持ってこようと思ってやっているんじゃない、組織なんです。日本でも密売の組織があって、そこで一兆円近い、またそれ以上のものが日本人が覚せい剤中毒になることによって吸い上げられている、これを商売にしておる。この問題にいかに対処するかということについての問題意識を大臣にお聞きします。
 前も、取引という捜査方法も導入が必要ではないかとたびたび質問させていただきました。本日はそれについてはお聞きしません。ただ、現在ある捜査に関して、政治家もマスコミも、いわゆる世間も、余りにも無理解である。この無理解さが覚せい剤の組織の頂点に捜査の手が及ぶことを妨げているということを申し上げて、あと大臣の御感想なり御見解を答えていただくんですが、こういうことなんですよ。
 今、この一兆何千億を日本で覚せい剤中毒に日本人の青少年をしながら稼いでいるやつの組織を捕まえようと思えば、チンピラを捕まえていたらだめなんですよ。しかし、そのチンピラの尿から出た、しかしこれを今捕まえれば頂点を捕まえられない、そのときにチンピラを泳がす、それがなぜ犯人隠匿罪になるのか。そういうことで犯人隠匿罪になるんなら、町で、たばこを、シンナーを吸っている少年を見ても、見て見ぬふりをするか、それとも片っ端から捕まえるか、二つに一つ、警察としてはどちらかを選べということになるんですよね。
 本当に組織の頂点を捕まえる警察であってほしい、捜査機関であってほしいと思っておりますので、僕は慨嘆するんですが、富山の方ですか、犯人隠匿罪で何か警察幹部が刑事責任を問われるとか、こういうことを放置しておったら、だれも犯罪組織の頂点をきわめようとはしませんわ。チンピラだけ捕まえて、十八トン入っている覚せい剤の〇・〇三グラム、耳かき一杯使うたやつ、そしてそれを持っておるやつを捕まえて、あとはもうおしまいやと。
 おまえはどこからやったんだ、名前は知らぬけれどもあしたあそこの角で会うことになっています、そうか、それならあした会え、こういうことをやったら犯人隠匿罪になるんですな。こういう捜査に対する無理解、つまり大臣とか政治家の無理解があれば、今の捜査機関は動けない、こういうふうなことなんです。
 現下の風潮、非常に慨嘆すべきものがありまして、それは、〇・〇三グラム使うたやつがここにおりまして、これを見逃した、見逃さぬで、悪い、犯人隠匿罪と言われたら、抗弁できませんわな。しかし、大きな固まりをそれで見逃し、そして十八トンからいずれは五十トンになるかもわからぬというこの事態を放置させておるんですよね。取引というふうな捜査方法を提案させていただく以前に、今、犯罪捜査に対して余りにも無理解だ、こういうふうに私は思っております。
 大臣の御見解もいただきますが、私どもの国は、覚せい剤とかドラッグに対して非常に寛大である。しかし、アジアで飛行機に乗ればおわかりのとおり、シンガポールに近くなればちょっと警告というのがあって、私たちのシンガポールではこれを持っていたら死刑になる可能性がありますから注意してくださいと。フィリピンもそうですわな。周りが厳しい、それで私どもだけは楽園だ。それなら何が起こるか。これが格好の市場になるわけです。金もうけの場所のターゲットになるわけでしょう。だから法体制を変えねばならない。ドラッグに関しては、ドラッグに関するどころか、組織犯罪に対する捜査に対しては、もっと認識を改めるような政府の広報がなければならないと思うんですね。そのためには、もう広報だけではだめだ、取引だということで、一兆円稼いでいるドラッグの親分連中を一網打尽にするんだというふうな決断を、非常事態ですから、やらなあかんと。
 まず第一に大臣にお聞きするのは、今の犯罪捜査に対する無理解に対する感想と、それから、周りの国が死刑を含む法体系を持っていてこっちが楽園なら、いつまでもやられますよということですね。どうお考えになっておられますか。
森山国務大臣 覚せい剤の問題は、我が国にとっては非常に深刻な、重大な問題だというふうに私も認識しておりますが、先生御指摘のようなことがもしあるとすれば、非常にそれは問題だと思います。
 しかし、警察も、また法務当局も、その重大性、深刻性をよく認識しておりまして、それに対応するべく最大の努力をしているというふうに私は考えておりますし、また、量刑について、よその国が死刑を含む重大な刑罰を科しているということも聞いておりますが、日本の場合、だんだんと重くしてまいってはおりますけれども、まだ死刑というところまではいっておりません。これは、やはりほかの犯罪とのバランス、また、社会全体の意識の御理解といいましょうか浸透といいましょうか、そういうことも必要であり、今後の問題として考えるべきことではないかというふうに思っております。
西村委員 質問時間が終わったと書いてある。質問時間前に終わらそうと思っていたのに来ました。
 犯罪捜査で不審船を引き揚げるの引き揚げへんの調査をやっていると聞きますが、犯罪捜査なら何で引き揚げへんのですか。富山の方の警察幹部が犯人隠匿罪とかそんなのでやられている。それなら東シナ海の不審船は早く引き揚げるべきだ。これは、政治的な思惑を介入して犯罪捜査が行われるならば、日本は法治国家ではないのですよ。これは犯罪捜査ではないというのなら、いろいろ政治があって何やわけのわからぬこともあり得る。しかし、犯罪捜査でやっとるなら早く引き揚げろよ。なぜ引き揚げないのか、犯罪捜査以外のことでうろうろさせられておるのかどうか、こういうことについて最後にお聞きします。
縄野政府参考人 私どもは、犯罪捜査の一環として、殺人未遂罪の犯罪の証拠物を押収する手続として、この不審船の引き揚げが物理的に可能かどうかを先日行いました潜水調査で調べまして、今その詳細な分析をしているところでございます。
西村委員 可能に決まっておるんですよね。可能なんです。これからここは台風シーズンですから、早く引き揚げないかぬ。引き揚げへんかったら犯人隠匿罪で告訴する。
 終わります。
園田委員長 日野市朗君。
日野委員 本題に入ります前に、加藤紘一君のことについて伺います。
 加藤紘一君、これはもっと特定をいたしますと、最近まで衆議院議員であり、衆議院に議員辞職を申請して我々がそれを許可したという経緯がありますが、加藤紘一君について、いろいろな罪名に当たるだろうなと私が考える事柄について随分マスコミで喧伝をされましたし、世間の耳目もそこに集中しておったと言ってよかろうかと私は思うんですが、何かきのうの読売新聞の朝刊トップ記事は、加藤紘一氏に対する立件は見送りであるという大きな見出しが躍りました。そして、私は、読売がああやって一面トップで書いたということは、これはほかの報道機関にも深甚なる影響を与えるなと推測をいたしました。
 なぜ私がそう思ったかということは言いませんが、大体、マスコミ界の人脈をある程度知っている人だったらははあとお思いになるだろうと思う。そしてその日の朝日の夕刊なんかには、これもまた一面トップで、加藤氏の立件見送り、こう書いてある。それからNHKの昨夜のテレビのニュース番組でも、加藤紘一氏についてはもう見送りだ、こういうニュースがずっと出たわけであります。
 さて、これはゆゆしき大事であるなと私は思いました。現在、加藤氏について法務省としてはどのような段階で取り扱いをしておられるのか。その加藤氏をめぐる一連の事件があります。加藤氏もその中に入っていると思われる一連の事件があります。その事件の取り扱いが現在どうなっているのかまず御説明ください。
古田政府参考人 お尋ねの加藤紘一前衆議院議員に何らかの関連という意味で申し上げますと、御案内のとおり、同氏の元事務所代表でございます佐藤三郎につきまして、所得税法違反によりまして平成十四年三月二十九日に公判請求した上、四月三十日所得税法違反で再び逮捕し、現在捜査中でございます。
 検察当局におきましては、その事件に関しまして必要な捜査を遂げて適正に対処するということと承知しております。それ以上のことになりますと、個別のことにかかわります具体的な捜査機関の活動内容ということでもございますが、一般的に申し上げれば、検察当局におきましては、いろいろな事件の捜査の過程で刑事事件として取り上げるべきものがあれば所要の捜査を遂げて適正に対処することとなると考えている次第でございます。
日野委員 私、実は今まで委員会の質問で一つのテーマがあると、それ以外のことは余りやったことないのですよ。しかし、これは私、ちょっとやらなくちゃいかぬと思っている。これだけ世間の耳目を集めて、そしてみんな世間が注目しているわけですね。特に、法務省の政治家に対する取り扱い、これが甘いのではないかというようなことを言ったり、場合によっては、立件もしくは起訴、そういったものが議員辞職と司法取引みたいになって、議員辞職をすれば刑事事件の方は免れるとか、そういうふうな話もずっと乱れ飛んでいるわけですね。
 そういう状況の中で、法務省は法務省として、捜査のある段階を迎えたならば、そして何か新聞で大きく報ぜられるとかそういったことがあったならば、これは捜査の秘密ということはあるにしても、かなりの程度情報を公開する必要がある、それが刑事司法に対する国民の信頼をつなぎとめるよすがである、私はこう思っているんです。そして、そういう仕事をやる場所はどこかといえば、この委員会だと思います。特に法務委員会。でありますから、私は、自分の主義に反してというか、主義に若干余裕を持たせて、きょうはこの質問をするんです。本当は、一時間半、更生保護の問題についていろいろ大臣なんかとも私はもっと議論したかったのですよ。しかし、その時間を割いて、きょうは加藤さんの問題について伺うわけですが、どうですか、もっと情報を公開すべきだ、こう思いませんか。
 それはプライバシーの問題があると言う。しかし、やはり政治家についてはプライバシーというのはもっと侵してもいいというのが、これは原則的にこう言われておりますし、人権の問題というのも出てくるでしょう。しかし、それはプライバシーと密接に関係がある問題だと思うのと、それから、人権の問題というものも、情報公開ということとの比較考量をしてみれば、むしろ政治家の場合は軽いだろう、私はこう思います。
 どうですか、もっと情報を公開すべきだと思いませんか。かなり詳細ですよ、新聞記事はかなり詳細であります。
古田政府参考人 一つ前提として御理解いただきたいのは、捜査は捜査当局において行っているものでございまして、法務省が行っているものではないわけでございます。
 そこで、どういう事件、事柄についてどういうふうな捜査をしているかということについては、これについて一般的に申し上げまして、検察当局あるいはその他の捜査当局において、それに関する、例えば刑事事件として捜査をしたものについて、その処分につきまして適切と考えられる範囲でこれまでも捜査当局において発表してきたものでございまして、私どもとしてもそれを受けて対応しているということでございます。
 そういうことで、ただいま委員御指摘のお話と申しますのは、法務省のお話というよりは、むしろ捜査当局においてどういうふうな対応をするか、こういうお話になろうかと思うわけでございますが、先ほどから申し上げましたとおり、一般的に申し上げまして、刑事事件として捜査をしたものがある場合に、捜査当局においてはその処分等について適切と認められる範囲で情報の公開と申しますか御説明をしているというふうに私どもとしては考えていることでございます。
日野委員 捜査当局と法務省と使い分けているけれども、この間、私がここであなたに質問したり警察庁に質問したとき、捜査については、ちゃんと立件し、さらに公判にたえられるかどうか、そういうこともありますので密接に連絡していますと、あなたこの間言ったばかりじゃない。私に言わせれば、舌の根も乾かないうちにということになっちゃいますよ。
 これは新聞記事にも出ているわ。国税当局とそれから検察庁とちゃんと相談をしてこういうふうにしている、こんなことを書いてありますけれども、これはあなた、捜査しているのは、今はそれは第一次的に国税かも知らぬよ、国税庁かもしれません、しかし、その問題について相談がないなんということは私は信じない。あなたは恐らくうそを言っているんだと思うよ。ちゃんと相談してきちんとやっている。
 それから、最近非常に、これは検察庁にとっても不名誉なことだと思うから私は言っておくけれども、故意にリークをして捜査の方向についての世論の誘導をしたりなんかしている、そんなことがずっと巷間語られているわけですね。私もこの記事を見ると、こんなに詳細に書くというからには、これはやはりちゃんとしたリリースがあった、リークがあったといいますか、それとも正式の記者会見であったかもしれない。そういうものがあったんじゃないか、こう思いますよ。しかも大新聞。読売と朝日というのは仲がよくないんだわ。だから、読売が書いたのをそのまま朝日が書くなんということはまず考えられない。しかし同じようなことを書いているんですよ。NHKも同じようなことをニュースでしゃべっています。何かこれはちゃんと検察庁の方から、または国税の方かな、流しているんですよ、情報を。どうですか。
古田政府参考人 ただいまのお尋ねでございますけれども、検察当局におきましてはこれまでも、捜査情報の秘密の保持、これについては格別の配慮を払ってきたものと承知しております。マスコミその他も、さまざまな情報源、その他いろいろあるということは事実でございまして、いろいろなところからの情報を総合するとおのずとある一つの判断ができるというふうなケースも非常に多いのではないかというふうに私どもとして考えているわけでございまして、検察当局におきまして故意にいろいろな捜査情報あるいは方針等を漏らす、こういうふうなことは、これは逆にいろいろな意味で関係者の協力とか捜査の妨げになるということがございますので、慎んでいると考えております。
日野委員 立件見送りというのは嫌なところなんですよね。立件見送りというのは、捜査に手をつけるかどうか、その段階のことを言っているわけですから。これが捜査を遂げてその裁定をする、起訴するか。起訴すればこれは起訴状が公表されますから。不起訴にする不起訴裁定、主文がついて理由がつきます。この辺のところはもう主文ぐらいがこのごろやっと情報公開されるようになってきたということなんでしょうが、立件、手をつけるかどうかということ、これについての段階でというのは一番嫌なところなんですよ。捜査、さっぱりしないね、どうなったの、あれ。しばらく時間がたってから、あれどうなったの。ああ、あれは立件しなかったんですよ、それで終わっちゃう。そういうことは国会議員である私にとっても非常に困ったことだなと思います。
 例えば、私が何かで疑いをかけられて、マスコミに書かれた。そして、どうなったのといったら、あれは全然何も問題にならなかったよと言っても、まさかあんなに新聞で書いたのに、こう言われる。やはりそういうところは、こうこうこういう理由で、嫌疑がなかなか認められないということで立件はいたしません、現在の段階では立件いたしませんと。それから、捜査も、これからも続けていきますということか、それとももう立件の見込みなしで、これは捜査もしないんですと。そういうことはやはりきちんと言わないと、世間が納得しないだろうと思う。国会と法務省、またうまくやったんだろうなんという疑いを持たれる。これは非常に困ったことだ、迷惑なことだと私は思います。どうですか、御感想は。
 こういった点、どういうふうに考えておられるか。大臣も国会議員としてもうかなり長い経歴をお持ちですから、どう思われるか、ちょっと大臣の意見も聞かせてください。
古田政府参考人 一般論としてお答えいたしますと、確かに、刑事事件として取り上げるべきものがあるかどうかということについて、これは内偵等、あるいはいろいろな角度からの、いわば準備段階的な捜査というのは現に行われるわけでございます。それにつきまして、立件に結局至る程度の証拠、その他犯罪の嫌疑、刑事事件として取り上げるべきものかどうかということについて、消極の判断に至るということもしばしばあるわけでございまして、こういう場合にどう対応すべきかということは、いずれにいたしましても、その内偵あるいは事前の犯罪の嫌疑の有無あるいは刑事事件として取り上げるべきかどうかというさまざまな問題についての捜査の内容でございますので、刑事事件として取り上げて処理をすべきもの、こういうことになりますと、もちろんその処理の理由等について適切に、可能な限りでお答え、お知らせをするということもあるわけですが、その以前の段階のことにつきまして、これをいろいろ申し上げるということは捜査上非常に大きな問題を生ずるという面もあるわけでございますので、その辺をひとつ御理解をぜひいただきたいと存じます。
 なお、先ほど委員のお言葉の中に、法務省と密接な関係を持ってやっているのではないか、それで私がかつてそういう答弁をしたというお話もございましたけれども、ちょっと、私、心当たりはないんですが、もちろん、法律問題とかそういうものについて、いろいろな問題があるときなどにはいろいろな相談等もございますけれども、一般的に申し上げますと、検察当局において捜査をしていることについては、捜査の観点の必要からの判断で、捜査当局がさまざまの観点から判断をしているということが事実でございますので、どうぞ誤解のないようにお願いいたします。
森山国務大臣 お話の件は、東京地方検察庁におきまして、現在、加藤紘一前衆議院議員の元事務所代表である佐藤三郎に係る所得税法違反事件の捜査中でございまして、その解明に必要な捜査を行っております。そして、適正に対処するものと考えております。
 なお、お尋ねの具体的なことにつきましては、捜査機関の活動内容にかかわることでございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
日野委員 従来から、特に情状なんかを考える際に、公共の危険であるとか世間の耳目を聳動しているとか、そういうことについては、情状の面から非常に重く考えるわけですね。しかし、情状の面から非常に重く考えていくということは、とりもなおさず、その事案が世間からどういうふうに受けとめられているかということに対する裏返しでもあるわけですよ。
 加藤紘一さんのことについては、やはり世間がこれだけ騒いでいるわけですから、刑事責任を追及するのなら追及するで、きちんとしたことはやらなくちゃいかぬだろうし、それから、これだけ騒いだ事件ですよ、捜査しないとか不起訴の裁定をするとかそういうことは、やはり世間がそれだけ騒いだ、世間の注目を集めた、それにふさわしいやり方というものはあるだろう。これは、刑事事件の処理について、私は、法務省に厳重にそこのところは私の意見を主張しておきたい、こういうふうに思います。
 では、本来のテーマにこれから移らせていただきます。刑事局長さん、まだありますからね、あなたの出番は。
 まず、大臣に伺います。更生保護というのは何ですか。
森山国務大臣 更生保護制度と申しますのは、犯罪や非行を犯した者に通常の社会生活の中で必要な指導や援助を行いまして、健全な社会の一員として立ち直ることを助けるということによりまして、犯罪などから社会を保護するとともに、個人及び公共の福祉を増進することを目的とする制度でございまして、保護観察や更生緊急保護、犯罪予防活動などを主な内容といたしております。
 これらの活動を所管する機関といたしまして保護観察所等がございますが、実際の地域社会における諸活動の大半は保護司とか更生保護施設を初めとする数多くの民間篤志家の御努力によるものでございまして、この官民一体による活動が更生保護制度の特徴でございます。
 犯罪や非行を犯した者の立ち直りのためには、国の努力だけでは十分ではございませんで、保護司や更生保護施設等がこれらの者を温かく見守り、必要な援助の手を差し伸べていくということが必要不可欠でございます。
 このように、更生保護制度におきましては、官と民がそれぞれの立場でその力を十分に発揮できるような共同体制を図るということが何よりも重要であると考えておりまして、また、これらの活動を支える地域社会の御理解と御協力をより一層求めていきたいと考えているところでございます。
日野委員 私は定義を聞こうと思ったんですが、これから私がずっとしゃべる内容を先制的に、先制パンチを食ったような感じがいたしますが、では、まず今の大臣お答えになったところを少し込み入って伺っていきますが、更生保護というのはいろいろな意味、内容で使われている言葉なんですね、実は。更生保護制度とはというふうに今大臣お答えになったんですが、更生保護、更生保護と言っていて、ふだんの用語例としては、言葉の使い方としてはそういうふうな使い方をしている。
 法務省設置法を見ても、「更生保護事業の助長及び監督に関すること。」それから第四条の十八なんかでは、「更生保護に関すること。」こういう言葉遣いがしてあるわけですね。
 それで、犯罪白書を見てみますと、「更生保護とは、犯罪や非行に陥った者が通常の社会の中で健全な社会人として更生するように指導・援助すること及びその制度をいう。」こう書いてあるんですよ。
 大臣は、今、それをやはり一緒にずっとお述べになって、私もそれをずっと伺っていたんですが、この更生保護そのものと更生保護制度と、こういう使い分けをちゃんとしないといかぬのかなというふうに思います。犯罪白書でも、更生保護というものを定義していて、「指導・援助すること」で切ればこれはわかるんですが、「及びその制度をいう。」こういうふうに書いてあるんです。
 実は、ここらの書き方が私はちょっとした問題があるのかなというふうに思いまして、これからちょっと、あえて、議論のための議論みたいになる節もありますが、更生保護制度のこれからの方向性を見ていく上でここいらは非常に大事なところだというふうに思いますので、更生保護という言葉がこんなふうに使われる、こういう使われ方をしてきたというのはやはり理由があるんだと思うんですね。主として沿革的な理由だというふうに私は思います。
 そこで、更生保護の沿革について若干さかのぼってみる必要があるだろうというふうに思うんですね。私の理解を語るよりも、一応これは、法務省側からこの更生保護についての沿革、現在まで来ている沿革について、まず、前は司法保護事業法というのがありまして、そこからいろいろ発生しているわけですね。それから、あとは基本的な法律としては現行法の前にどんな法律があってどんな役割を果たしてきたのかということを、ちょっと法務省の方から説明していただけますか。――では、いい、おれの方から言っちゃう。
 司法保護事業法というのがありました。そこでは、更生保護というのは篤志家の慈善事業、こう理解されていて、そして、保護対象というものを限らないで、かなり広範な事業をやってきたわけですね。かなり広範にやってきた。そして、国は奨励金を出すという形でこれに対処してきたわけですね。
 ところが、その次の段階になって、これを刑事政策として、国がまず保護の必要、不必要、これを判断する、そしてそれに対して費用も支弁するということで、国の責任を明確化したのだ、こういうふうに説明がされているわけです。
 そういう流れだったこと、これは間違いありませんか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 おっしゃるとおり、この更生保護の沿革、濫觴は、明治二十年代の初めに、刑余者の救済保護を目的として、民間の篤志家が出獄人会社というものを始めたのが最初だというふうに言われています。そのように、もともとが民間の篤志家によって事業が始まりまして、そしてそれに、ただいま委員御指摘のように、民間に対して国が徐々に援助していって、現在のように、刑事司法の一分野というか、刑事政策として国の責任というものが明確に位置づけられてきて、現在の官民共同という体制ができ上がっている。
 司法事業法というのは戦前ですけれども、戦後におきましては、まず犯罪者予防更生法という基本法ができ上がりまして、その後に、更生緊急保護法でありますとか、あるいは執行猶予者保護観察法とか、そのような法律が順次でき上がっていって現在の更生保護制度を形づくっている、このように理解しております。
 戦前のことにつきまして、私、今手元に資料ございませんので、先ほどの質問についてはちょっとお答えできませんで申しわけございませんでした。
日野委員 沿革に対する理解というものは大体同じなんですが、その中で私が気になるのは、この更生保護というのは、国は何をやろうとしていたのかということですね。一つ問題があると思うんですね。
 私の前の質問者も、治安の問題としてこれをとらえるという傾向。彼の質問の傾向は、この人も治安の問題としてこれをとらえているなと、今いなくなっちゃっていますけれども、私はそういうふうに理解したんですが、そういう理解ではだめなんだろうと思うんですね。あくまで更生保護というのは、犯罪を犯した者等に対する更生、その者の更生保護、これを中心にして見ていくべきものであって、治安に対する効果というものは副次的なものである、こういうふうに理解すべきではなかろうか、こんなふうに思うんですね。いかがでしょう。
横田政府参考人 お答えいたします。
 先ほど申し上げました犯罪者予防更生法の第一条は、「この法律は、犯罪をした者の改善及び更生を助け、」中略をいたしまして、「もつて、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを、目的とする。」このように定めておりまして、結局、この法律の目的としますところは、犯罪者あるいは非行少年の改善及び更生、個々の、そういう一人一人の改善更生を図っていくということでございます。それの積み重ねといいますか、集積、総体といったものが、それが結局は社会を犯罪から守る、改善更生して再犯を防止することが社会をそういった犯罪から守ることになるんだ、それが個人のみならず、社会、公共全体の福祉にかなうことなんだというのが目的でございます。
 したがいまして、どちらを従、どちらを主ということはございませんで、両者がいわば一つの両面と考えまして、一つの面は一面、また一面は一つの面という形ということではないか、このように理解しております。
日野委員 ところが、やはり、ややもすると治安の面からこの制度について考えがちな人たちはいるわけですね。
 この際ですから、ちょっと我が国の治安状況について伺っておきましょう。
 何度も聞いていることですけれども、まず、犯罪の認知件数、それから犯罪の態様の変化、それから犯罪を犯す者の年齢の傾向、それから国際化がどのように進んでいるか、そして検挙率、こういうところを一応なぞってみていただけませんか。そして、結論的に、現在の治安状況はどうなっているということをコメントしてください。
古田政府参考人 ただいまお尋ねの点、非常に網羅的でございますが、警察庁の統計によりますと、平成七年以降、刑法犯は、これは交通関係の業過事件を除くものでございますけれども、増加を続けている状況でございまして、平成十三年には二百七十三万五千六百十二件と戦後最高の数値を記録しております。その一方で、犯罪の検挙率が低下する傾向にあると承知しております。
 事件の内容、これもさまざまでございますが、最近の傾向といたしまして、いろいろな組織的な背景がうかがわれる外国人による犯罪でありますとか、あるいは強盗事件、こういうものが非常に全体としては増加が著しい傾向にあるように思われます。
 外国人の犯罪につきまして若干申し上げますと、これは、近年では、平成五年の五千三十五人から平成十二年の八千八百四十八人まで、入管法違反、外登法違反を除いた数字で、かなりの勢いで増加しているわけでございます。この罪名の中では、強盗とか傷害、窃盗及び文書偽造、こういうものが非常に増加が著しい。さらに、薬物事犯というのも少なくない割合を占めているほか、銃刀法違反が増加傾向にある、こういうことが言えようかと思います。
 それから、年齢といいますか、少年ということで申し上げますと、少年につきましては、平成十二年中の刑法犯少年の検挙人員が十三万二千三百三十六人となっており、全体数としては二年連続して減少しております。ただ、殺人とか強盗とか放火、これは、特に数字の上で増加しているというほどではございませんけれども、やはりかなりの数がなお発生していて、憂慮すべき状況であろうと考えております。こういうものに至らないいわゆる粗暴犯、これは、暴行とか傷害とか脅迫、恐喝、こういうものでございますが、これにつきましては、実は検挙人員がかなりふえてきております。
 こういうことからいたしまして、少年につきましても、全体としてはそういう減少の数字にはなっておりますものの、非常に問題のある状況が続いているというふうに考えております。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
日野委員 特に私が注目をしておきたいのは再犯率なんですね。この再犯率、どうも余りいい数字がないように私も聞いているんですが、説明できるところで、傾向的なものだけでも、一般犯罪者と再犯を犯す者との人数的な推移のようなものだけでもつかめないかと思うのですが、いかがでしょう。
横田政府参考人 お答えいたします。
 再犯につきまして、幾つかの統計資料というものがございますけれども、今手元にございますが、比率で申し上げさせていただきます。
 受刑者についての再犯率を調べたものがございますが、それによりますと、刑務所の満期釈放者のケースでいいますと、満期釈放者が出所した年に再入所した者がどのくらいいるかという比率でございますが、幾つかかいつまんで申しますと、平成三年が一〇%、つまり、出た人が、その年のうちに、その一割の者がまた戻ってくるということですね。それから、途中でいきますと、平成八年が九・八%という数字が出ております。それから、平成十二年で一一・五%というふうになっております。
 それから、今度、仮釈放者、仮出獄ですね、刑期の途中で社会に出た者ですが、これを同じように考えますと、平成三年が二・四%で、満期釈放者に比べてかなり低い数字になっております。それから平成八年、同様にとらえますと二・八%で、やはり相当に低い数字になっております。それから、平成十二年でいいますと二・三%。やはり仮出獄者の再犯率というのは随分低いということになります。
 それから、あわせて保護観察について、では保護観察中の者はいかがかということについて申し上げますと、今、数字として持っておりますのが平成十二年の数字でございますので、それで御勘弁いただきたいのですが、保護観察の対象者の全体の再犯率、これは当年とは限りませんで、その後とにかく再犯したかどうかということですが、一五・六%になっております。
 一方、それでは、今般、法改正でお願いしておりますこの更生保護施設の在所者の再犯率はいかがかといいますと、これは同期間ですけれども、一・七%という数字が出ておりまして、やはり更生保護施設に入っている人たちの再犯率というのは相当に低いんだということがおわかりいただけるかなと思っております。
日野委員 この更生保護施設、更生保護ということですね、これは、私、非常に大事な仕事だと思うのですよ。日本人と生まれて、そしてきちんと社会生活を営んでいく権利というのは、これは国民に本当に保障されているはずなんです。しかし、人によっては、犯罪的な体質というか、何かそういうものを持っている人までいる。これは残念ながら事実なんです。
 特に、アメリカの研究で、カリカック一族の系譜という、遺伝的な、きちっとした調査をやった研究の成果があります。これはすばらしい成果であると同時に、それを勉強していて恐ろしくなるような研究成果ですね。ああいうのを見ると、一人一人の人間をきちんと更生させ、保護していくということがいかに骨の折れる仕事であるか、大変な仕事であるかということがよくわかるのであります。
 さっきも言ったように、社会を防衛するというのは副次的なものであって、第一義的には、一人一人の国民個人を守っていく、それがこの更生保護の仕事であろうと私は思います。
 それは盾の両面という意見もあります。確かにある。しかし、一人一人の人間を守っていくということがいかに大事か。その割には、我が国の更生保護に対する取り組みというのはちょっと弱いんじゃないの、こういう思いがするのですね。
 私は、さっき、法制度の歴史というものについてもお話を伺いましたし、私の考え方も述べました。しかし、それと同時に、これは行刑との関係、矯正の関係ですな、行政との関係もきちんと見ていかなくちゃいかぬと思うのですよ。私は、現在の行刑の基本的な思想というもの、これはどういうものなのか、ちょっと正式に法務省の考え方というのを聞いておきたいというふうに思います。
 御承知のとおり、刑法を考え、刑事政策を考えるときは、教育刑主義とそれから応報刑主義という二つの伝統的な対立といいますか、抜き差しならない対立があること、これは我が国の刑事問題を考えるについていいことなのか悪いことなのか、私はわかりませんが、行刑については応報刑主義がとられているというふうに考えていいのだろうと思いますが、いかがでしょう。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
森山国務大臣 我が国の行刑施設では、受刑者の確実な収容確保を図る一方におきまして、その処遇に当たりましては、個々の受刑者の特性に応じて、懲役刑の内容としての刑務作業を科するほか、職業訓練、教科教育、処遇類型別指導、釈放前の指導などを実施いたしまして、受刑者の社会復帰に向けての改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図るということを旨として行っておりまして、教育的配慮ということも十分加えてやっております。
日野委員 私、この質問をするに当たって、若干の勉強をさせていただきました。そして、私、実に意外だったのは、あるアメリカの研究者が、日本の行刑制度というのは非常にすぐれている、こう言うんですな。これは、家族主義的な処遇、刑を受ける者に対して家族的に処遇している、それから刑期が短い、こういうことは非常にすぐれた制度だ、こう言うんですね。私もちょっとへえと思ったのですが、特に、刑期が短いなんということは、それは外国人の犯罪についていえば、これは非常にゆゆしき事態を招いているというふうに私は思うのですが、そのアメリカ人の研究者はそう言っているわけです。
 私は、確かに、今の行刑というのは、応報刑でごりごりに固まっているとは思いません。確かに、教育刑的な配慮が非常にいろいろなところにつけ加えられているというふうには思いますが、やはり基本は応報刑だと思うのですね。
 そして、日本の行刑制度が比較的うまくいっているというのは、私の勉強したところによれば、まず一つは、江戸時代の司法官に対する信用の高さであった。お奉行さんというのはやはり信用されていて、それから伝馬町の牢なんかも信用されていたのかなというふうに一つは思いますね。それから、やはり家族法的な物の考え方というのが日本には非常に強いということ。それからもう一つ、その研究者が挙げているのは、応報刑を建前にしながらも教育刑のいいところをどんどん取り入れていった、それが行刑としては日本は非常によかったんだ、こういうふうに言っているわけですね。
 しかし、私、応報刑ということを基調にしながら、矯正についての問題点というのは、矯正についての基本法、これが監獄法であるということですわな。監獄法を基本法にして、その監獄法の上に立って、訓令であるとか省令であるとか、法律による行刑では対応できないところ、そこについてはいろいろな裁量権を持ち込んでいるというところに問題があるんじゃないか。そして結局は特別権力関係のようなものをそこにつくり上げているわけですね。
 今、特別権力関係論なんというと余りはやらない議論になっていますが、やはり行刑については特別権力関係がちゃんとでき上がって、そこでうまくいっているんだというような、恐らく法務省側はそういう主張をされるだろうと思うのですが、いかがですか、これは。矯正局としてはどのようにお考えでしょうか。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 基本的な考え方につきましては、先ほど大臣の方から答弁がございましたけれども、やはり刑の執行機関でございますので、その執行がしかるべくなされるように、収容の確保とともに、懲役刑につきましては刑務作業を科すことが刑罰の内容になっておりますので、そういった一つの刑の執行の場であるという論議があるという前提のもとに、先ほども、教育的な配慮をいろいろ工夫して、できる限り受刑者の個々の特性に応じた処遇を行っていくというのを基本的にしておるわけです。
 ただ、何分にも刑務所は人数が非常に多い。そういうところで集団で所内生活をしていくということが必然的に伴うわけで、その中でいろいろ、暴力ざたが起きたりあるいは弱い者いじめ、ひいては暴動というようなことが起きないように、ある程度所内の安全を図るという意味合いで、先ほど出てまいりましたけれども、規律の保持と所内の安全ということは当然一方で考えなきゃなりませんし、そういったいろいろな制約の中で受刑者の改善を図っていく。しかも、一人一人の現場で処遇に当たる者が、規律と処遇とを引き受けながらそれを行っている。一言で言うと工場担当制という一つの制度でございます。それが恐らく外国の方から見れば家族的な雰囲気というような評価なりを受けているのではないかというふうに思っておりますが、その基本的な考えは、先ほど大臣が申し上げたことを旨として行っておるということでお答えにさせていただきます。
日野委員 せっかく褒めている研究を紹介しているんですから、もっと喜んでいただいて結構だと思うんです。
 いや、今、局長さん言われるように、刑務官の人たちも随分苦労しながらやっている、そういう実例も知っています。ですから、そのあり方をもっと改善するのは、また別の場でこれはやることにいたしましょう。
 ただ問題は、これを更生保護と関連させて見ますと、本来は更生保護というのは教育的な観点、これが主流でなくてはいかぬと思うんですが、やはり応報刑を中心とした特別権力関係論のようなところに更生保護を巻き込んでしまってはいかぬだろうというふうに私は思うんですね。
 それで、更生保護というのは、行刑的な発想からずっと考えていっているところに、現在の更生保護に対する軽い見方といいますか、そういったものがあるのではなかろうかというふうに私は思うんです。更生保護については、沿革から見て、篤志家に対するおんぶにだっこというような状況、これはずっと続いてきたということは否めないと思うんですね。これには気の毒な事情もいろいろあることを私も知っています。戦後、更生保護についての事業が始まって、その予算をつけるというようなときには、これは極度に予算のないところからつけ始まったという経緯なんかもありまして、非常に予算的にも弱体だということは私もよく存じているところです。
 しかし、存じているからそれでいいんだというつもりは全くありませんね。この更生保護というのは、これからももっと重視していかなくてはいかぬ。
 そのためには、更生保護に携わっている人たち、特に民間の人たち、保護司であるとか更生保護施設そのもの、それから施設で働いている人たち、こういった人たちをもっと尊重する。それから、更生保護婦人会なんというのは、何か役に立つことがあったら言ってくれ、お役に立ちましょう、こう言ってくれているわけでしょう。その人たちをもっと尊重しなくちゃいかぬ。このことはBBSについても同じですね。それから協力事業主という人たちなんかも当然ですが、こういう人たちをもっと尊重しなくちゃいかぬのじゃないでしょうか。
 局長さん、どう思う。見ていて、本当に涙ぐましい努力をやってくれているわけです。どう思いますか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 まことに委員おっしゃるとおりで、更生保護につきまして、とりわけ民間の協力者の方々につきまして、以前から大変な御理解をいただきましてありがたいと思っております。
 私も、更生保護の現場というものを知るにつれ、ますますこの更生保護といいますものが民間の方々の力によって支えられているということがよくわかりまして、本当に頭の下がる思いというのはまさにこのことでございまして、委員ただいまおっしゃられたことにつきましてはもう全面的に同意いたします。
日野委員 保護司さんなんといったって、何のことか皆さん恐らくわからないと思うのね、非常に地味な存在だし。
 しかし、彼らが、よく研修をやり、それから個々のケースに当たって報告書を出すでしょう。あの報告書を書くなんというのは、これは容易じゃないです。それから、面会に行ってもなかなか会えない。おいでと言ったって来ないですしね。そういう苦労を重ねながらやっているんですし、BBSの諸君だって、ほかにもっといろいろやりたいことがあるだろうと思う。しかし、毎週一回ぐらいきちんと集まって、いろいろな企画を立て、いろいろなケースについて話し合いをし、そういうことをやっているわけで、これにかなりの時間を注いでいる。時間を注いで、それから自分たちからお金を出し合って、どうすれば非行少年を立ち直らせることができるのか、どうすればこの人たちに希望を持って生きることができるようにさせられるのか、そういうことを一生懸命努力しているわけなんで、一度こういう人たちの活動の実態みたいなのを世の中にもわかるようにひとつPRをしてほしいものだなというふうに私思います。これは注文をしておきたい。
 今度は更生保護施設のことについてちょっと話をいたしましょう。
 これもやはり沿革的にずっと善意の上に築かれてきた施設であろうというふうに思います。かなりもうどこもかしこも老朽化してきているんじゃありませんか。いかがでしょう。
 それからもう一つ、青森だったですよね、不快施設並みに扱われてえらい苦労した、そんなことなんかありましたね。そういうことについての御感想、そしてこういうものをどういうふうにしていきたいか、ちょっとお話聞きたいですね。
横田政府参考人 お答えいたします。
 まず、施設の老朽化の問題でございますけれども、現在、全国に更生保護施設は百一ございます。その中で、この現代の社会におきまして、木造の建物が四施設ございます。それから、建築後二十一年以上経過した建物が、なお現在六割を占めております。
 これにつきましては、平成六年に更生保護施設の整備補助という制度ができまして、それから国から、この更生保護施設の増改築といいますか、新築をしたりあるいは大規模修繕をしたりすることについてお金が出るようになっております。
 そのようなことで順次進めているところでございますけれども、なお今申し上げたような状況で、引き続き、この施設の整備につきましては、国としてもできるだけ手厚い援助といいますか補助をしてまいりたいというふうに考えております。現に、平成十四年度の予算におきましては二億三千万円ほど、そのような施設整備のための予算措置を講じているところであります。
 それから、もう一つは、これも今委員御指摘ございましたけれども、確かに更生保護施設の役割というのは社会的には大変大きなものがございまして、その意義というのも大きいわけですけれども、やはりその一面、その地域の住民にとりましては、いろいろな考えがあるんですけれども、中には一種の迷惑施設と同じように考える方がいらっしゃいまして、委員御指摘の青森におきましては、約二十年間にわたって施設ができなかったというケースがございます。そのほかにも同様に、長い期間、これは別のところでございますけれども、やはりなかなかこの施設が開けなかった、つくれなかったというケースがあります。
 古い建物を建て直したい、あるいは大規模修繕をしてきれいにしたいというふうに考えましても、一つはお金の問題もありますけれども、もう一つは、やはり地域住民、特に近隣の理解がなかなか得にくいということが現にあるわけでありまして、これはいわゆる理屈の問題ではなくて感情の問題でございますので、なかなかそこのあたりは一刀両断というわけにいきませんけれども、私どもといたしましては、先ほどの委員の御指摘のように、保護司さんとか更生保護婦人会とか、そういった民間協力組織の方々の御努力、御尽力について、広く世間の方々に知っていただくためのいろいろな諸活動をするということは当然ですけれども、やはり更生保護施設の必要性、重要性、そしてまた、古くなったものは建てかえなきゃいけない、中を改善しなきゃいけないといったものにつきましても、いろいろな機会をとらえて手段、方法を講じまして、近隣の方々の御理解をいただくようにこれからも努めてまいらなければいけないというふうに思っております。
日野委員 これは、今までも地味にやってきた、そして、どちらかといえば日の当たらないところでやってきた、それの惰性を断ち切らなくちゃいかぬです。
 私は、それを断ち切るためには、国民というのはみんなひとしく健全な社会の一員として生きる権利があるんだよ、それを実現していくために我々はこう頑張りますという積極的な姿勢が必要だと思う。今までのように、国の治安を維持するためにやるんだなんという、それもまず考えたって悪くはない、しかし、それより、やはり個人個人がちゃんと生きていく権利、それを保障していくんだよということをやるために、ここで発想の転換、それから事業の展開、それを積極的に進めること、これを私は希望いたしたいという思いがありますね。
 それで、保護施設に入る人たちは、希望しても入れないという現実がありますな、どういうふうな手続で入所するようになるのか、それをちょっと説明してください。
横田政府参考人 お答えいたします。
 更生保護施設に入るための手続としては、二種類ございます。一つは、保護観察所長が更生保護施設に委託をする場合であります。それからもう一つは、保護観察あるいは更生緊急保護の対象者たり得る者が更生保護施設にみずから申し出る場合がございます。
 まず最初の、保護観察所長が更生保護施設に委託をする場合は、これは委員はよく御存じだと思いますけれども、受刑者、刑務所に入ったりあるいは少年院に入りますと、そこからすぐに環境調整ということが行われまして、いずれ刑務所を出た場合あるいは少年院を出たような場合に、帰るべきところ、行くべきところの場を整える、場づくりをしてやるというか、そういったことが保護観察所あるいは保護司さんによって行われているわけですけれども、そういった中で、一つの帰住先として更生保護施設が適当であるというふうな場合に、保護観察所長が更生保護施設に委託をするということになります。
 これにつきましては、やはり更生保護施設の収容状況というか、あきの状況、わかりやすく言えばそういうことになりますけれども、そういうものでありますとか、あるいは、これはあくまでもやはり予算の問題、予算の範囲内という制約が法律上もございますけれども、そういったいろいろなことを考えながら選択をしてまいります。
 それから、本人の申し出による場合は、これは更生保護施設そのものが、受け入れられるかどうか、これもまた、今申し上げたような諸般の事情を考慮しながら、受け入れる、受け入れないといったことを決めているということでございます。
日野委員 結局は予算の問題に尽きてくるんだろうというふうに思いますので、金がなくて入れないなんという人のことに思いをいたすと、憮然とせざるを得ないわけですな。これは司法全体で頑張ってもらうしかない。
 人的な問題についてもいろいろ聞いていきたいと思いますけれども、もうきょうは時間がなくなっちゃって、人的な問題については、ほかの委員もいろいろな人が話題にしているだろうから、これからもされるであろうから、余り多くを語りません。
 それで、大臣、私、今までいろいろなことをおしゃべりしてきましたが、やはり基本的な政策を樹立するための基本法、これが必要だと思うのですね。特に、更生保護という分野については、国民、それから政治家、それから官僚の人たち、全部認識がやはり浅いところはある。これをきちんとしていくために、更生保護基本法のようなものを私はつくる必要があると思うのですね。今までも、いろいろな決議の中でも更生保護基本法について言及はされています。
 現在の取り組みがどうなっているのか、そして、こういうものをつくろうとする意思があるのかどうか、そこのところをひとつお話しください。
森山国務大臣 更生保護事業あるいは更生保護体制につきまして大変御理解のある御質問をいただきまして、感謝いたします。
 確かに、おっしゃいますとおり、我が国の更生保護に関する法制度は、基本となる法律だけでも五つほどございまして、国民にとってやや複雑で、わかりにくいと申しましょうか、すっきりしていないというところがよく指摘されております。
 これらの法体系を整備、統合することにつきましては、これまでも国会でもたびたび決議をいただいているところでございまして、さらに、平成十二年十一月には、矯正保護審議会におきましても同様の提言がなされているところでございます。
 法務省におきましても、社会経済情勢の変化に対応できる、国民にわかりやすい法制度の整備に向けまして、更生保護基本法の制定も視野に入れながら、鋭意検討してまいりたいというふうに考えております。
日野委員 一時間半たっぷりやろうと思ったんですが、三十分ほど別のことに使ったものだから時間がなくなりました。
 少し改正点について、今度の法案の内容に立ち入った点について伺っていきたいと思うんですが、今度の改正で、広く社会適応を促すための積極的な処遇をやる、こういうふうに言っています。職業補導、社会生活に適応させるための必要な生活指導、そういったものについて内面にまで立ち入っての指導をするというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。その場合、内面にまで立ち入っての指導ということになると、どういうものを基本に据えていくのか。私は、希望を持たせること、希望を持たせていくこと、これが何よりも大事だというふうに思っているんですが、局長さん、いかがでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 まさにそのとおりでございまして、内面に立ち入ってという表現、これはとりようによっては誤解を招きかねない表現かなというふうに、今御質問されますと感じないわけでもございませんけれども、これはまさに先生おっしゃるとおり、希望を持たせるといいますか、本当に本人に更生の意欲を持たせるといいますか、更生の意欲を生じさせるような、そのような取り組み方をしていきましょうということでございます。
 新しい処遇とは一体何かということにちょっと戻りますけれども、これは初めに漆原委員の御質問にもお答えしたんですが、SSTという一つの処遇ということがありますし、あるいは薬害・酒害教育、そしてまたコラージュ療法、これは精神医学の分野で発達をして、これがこういう矯正あるいは更生保護の分野にもだんだん使われるようになった、そういう新しい処遇プログラムというものがございますけれども、いずれもこれは、これまでの更生保護施設における処遇が、繰り返しになりますけれども、寝るところと食べる物を提供するという、言ってみれば外形的といいますか、困窮者対策、福祉政策といったようなものにとどまっておりましたものを、今申し上げましたような新しいいろいろな教育処遇プログラムを設けることによりまして、やはり本人に希望を持たせる、これで自分は社会に戻ってちゃんと、きちんと対人関係もやっていけるんだ、困難な問題が起きた場合でも自分はこういう対応をして切り抜けられるんだといったような気持ちを生じさせて、そして更生をしていくということ、そのような働きかけをしていこうというのが、まさに被保護者の内面まで立ち入った援助という趣旨でございますので、御理解のほどをお願いしたいと思います。
日野委員 それでまた、更生保護施設を設置しない更生保護事業を届け出制にする、こういうこともございますね。大体どんなところが届け出をして、どんなところがどんな仕事をするというような見通しを持っておられるのか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 今回の法改正によりまして認可制から届け出制にすると申しますのは、更生保護事業のうちのいわゆる一時保護事業とそれから連絡助成事業と呼んでいるものであります。
 更生保護事業を、いろいろな分類の仕方がありますけれども、大きく分けて継続保護事業とそれから一時保護事業と連絡助成事業という分け方をします。継続保護事業といいますのが、これまでお話ししております更生保護施設という施設に収容して、そこでいろいろな処遇をする、宿所提供、食事のほかにいろいろな処遇をする、これが継続保護事業で、一時保護事業とそれから連絡助成事業といいますのは、更生保護施設に入れないというところでまず大きく区別されます。
 一時保護事業といいますのは、刑務所を出た、あるいは執行猶予がついて出たといったような場合に、出たけれども、お金がなくて国に帰れない、親元に戻れない、あるいは、仕事が見つかったんだけれども、当面ちょっと、作業服もないんだといったような場合に金品を給与したりあるいは貸与したりといったような、一時的に保護する仕事、これが一時保護事業。
 そして、もう一つの連絡助成事業といいますのは、保護施設を含む更生保護事業に対して補助金を出したりあるいは顕彰してやったり、いろいろな形での助成をする、あるいは御関係者の連絡を密にするためのいろいろな活動をする、あるいは更生保護事業についてのいわゆるPRというか啓発活動というか、そういったものがあります。
 今回、届け出制にしようといいますのは、そのうちの今申し上げた一時保護事業と連絡助成事業だけでありまして、継続保護につきましては従前どおり認可制にする。
 どうして届け出制にするかといいますと、これは一つは、やはり国の方針であります規制緩和という一つの方針があるわけで、これにつきましてできるだけ手続を緩和しようということを考えているわけです。こうして、更生保護事業に協力してくださる民間の方々を、いささかでも煩瑣な手続から解放をしたい。それから、でき得るならば、そのように手続を簡略化することによってこうした一時保護事業あるいは連絡助成事業に民間の方々がさらに参入していただけるならば、大変うれしいといいますか、ありがたいといいますか、そういう期待も込めての法改正であるということでございます。
日野委員 私が見ているところでは、そんなに手を挙げるところが出てくるのかいなと。これは規制緩和の員数合わせみたいなにおいもちょっとするなと思うんですが、そこのところを問い詰めることはしないでおきたいというふうに思います。何しろ時間もなくなってきましたので。
 第五条の二関係について、ちょっとその改正点について伺いますが、これは「自主的に、被保護者に対する処遇等その事業内容を向上させる」、こう書いてありますね。一方で、省の方では、二十一世紀の新しい更生保護施設を目指すトータルプランというものをつくっておられるようですね。そのトータルプランというのは、一体どんなもので、何を目指しているのか、ちょっと、ほんのかいつまんで内容を、一言二言で結構です。
横田政府参考人 トータルプランといいますのは、それぞれの更生保護施設がそれぞれ処遇の内容の充実に向けてその施設に見合ったいろいろな具体的な計画を立てて、それを実行していきましょう、更生保護施設における処遇内容の充実強化を図るためにさまざまな試みをしていって、そしてそれを推進しましょうということです。その中に、いろいろ取り上げられた中に、先ほど来申し上げておりますSSTでありますとかコラージュ療法であるとか、その他もろもろの試みが入っているということであります。これを、官民、力を合わせて推進していきましょうというのがトータルプランでございます。
日野委員 それはよくわかるんですね。例えば、SSTですか、ソーシャル・スキルズ・トレーニングなんというのは、これは非常に大事なことだろうし、コラージュ療法なんというのは、私はこれは専門家じゃないからよくわかりませんけれども、そういうものをやっていくというのは非常に有意義なことだということはわかるんです。ただし、今までの沿革から見て、ずっと施設におんぶにだっこと言っては失礼かもしらぬが、そういう形でやってきて、現在どういうふうになっているかというと、施設の財政の八〇%ぐらいは結局委託料が占めているというような状態になっているわけで、施設の方としては、これは役所の言うことを聞かざるを得ないような立場に今なっているわけですね。そういうところでこういうトータルプランとして提示されると、第五条の二では、自主的な処遇、こう書いてあるけれども、では役所に従っておこうか、こうなっちゃうんじゃないですかな、どうでしょう。
 そういうものをやらなくちゃいけませんよと言われると、SSTにしたってお金のかかる話ですし、これは役所に従わなくちゃいかぬことなのかいなと思うと、施設の方としては大変な重圧だと思うんです。施設の方にも、いや、そういうことじゃないんだ、一応のガイドラインみたいなものを示しているんですよ、どうぞ御心配なく、自主的にやってもらっていいんですよということであれば、その旨言ってもらうと施設の方も肩から荷が少しおりるような感じになるんじゃないかと私も思うのでちょっと伺うんですが、どうでしょうか。
横田政府参考人 トータルプランというのは、決して、国が更生保護施設に対しましてその処遇を強制するというものではございませんで、施設そのものが、それぞれの実情に応じて、あるいは力量に応じて、あるいは被収容者のもろもろの条件等を見ながら、その中で処遇内容の充実を図ろうということでやっているものです。
 もともとは、数ある保護施設の中で、そういったものにいろいろ関心を寄せて研究をしてやっていたいわば先進的な施設がありまして、それがだんだん広まってまいりまして、一定の効果というものが考えられるようになったことから、ではそういったものを自分のところもやりたい、あれもやりたい、こういうことを取り入れていきたいというような声も上がってまいりましたので、それにつきまして国の方が、必要ならば財政的な援助あるいは研修、資料提供その他の援助をしましょうということでやっているわけでありまして、あくまでも更生保護施設の自主的なプランを国が側面から援助する、応援するといったようなシステムでございます。
日野委員 もっとここはいろいろ聞きたいこともあるんですが、時間がありませんので、今度は経営基盤の問題について聞きましょう。
 経営基盤を強化する、そして透明性の確保をするということになっておりますが、これは何が期待されるのかというのは、実はちょっとよくわからないんですね。というのは、施設の経営基盤というのは非常に弱体なものでありますよね。先ほどもちょっと出したけれども、委託費が八〇%を占めているというその経営基盤というのは、非常にこれはもろいものというか、弱いものだというふうに私は考えざるを得ないんです。
 民間の施設ですから、やはりこれは民間の資金というものがもっと入って自由に活動しなくちゃいかぬと私は思うんだが、現実に八〇%ぐらいが委託金であるということになりますと、民間の側からの資金というのは、施設内の作業収入みたいなものが本当は期待されるわけですが、そういった収入というのは今どのくらいになっていますか。
 それから、寄附金、それから任意保護費収納金というようなもの、こうありますね。それぞれの比率をちょっとかいつまんで述べてみてください。
横田政府参考人 お答えいたします。
 更生保護事業におきまして、その更生保護施設におきましては収益事業というものが一部認められているわけですけれども、現在そのような収益事業を行っているところが幾つかございまして、例えば施設内に何らかの作業所を設けるような形での収益事業としては、製パン業、パンをつくっているところがあります。それから、自動車の整備を行っているところがございます。それから、清掃業を行っているところがございます。そのほかに、施設の運営主体である更生保護法人が持っている財産収入といいますか、それは建物とか土地を貸すとか、あるいは、今はもう金利が下がっていますけれども、いわゆる金利の収入といったものがございます。その個々具体的な金額について、現在つまびらかにする資料がございませんので、その点は御勘弁いただきたいと思います。
 もう一点の御質問の点ですが、おっしゃるとおり、現在、更生保護施設の収入の八割近くは国からの委託費で賄っておりますが、そのほかに、寄附金あるいは会費、それから地方公共団体からの補助金といったものがございます。
 寄附金収入といいますのが、平成十二年度の統計数字でございますが、六・五%であります。それから、会費というのが、これは会員からの会費ですが、一・五%。それから、地方公共団体からいろいろな運営関係等の補助をいただいているケースがございまして、それにつきましては五・六%ということです。
 委員おっしゃいますように、それは民営であるからなるべく民間資金をもっともっとということも一つの考え方ではございますけれども、国と民間がこのような運営費をどの程度負担するのが相当かというのは、いろいろな議論をまたこれからも積み重ねるべきだと思いますけれども、いずれにしましても、もう一つの民間のお金というのが、御承知のような景気低迷等の影響がございまして、寄附金がなかなか入らない、比率も下がっておりますし、金額もどんどん下がっているというのが実情で、運営は大変苦しい状況にあるということは事実でございます。
日野委員 今、寄附の話が出まして、景気、こういう世並だとなかなか寄附金というのは集まらないだろうというふうに思うんですが、比較的安定した寄附者といいますか、ちょっと言い方はおかしいが、かつては、共同募金の配分金、それから篤志者の寄附、それから更生保護婦人会あたりが寄附をしたり、それから保護司会が寄附をしたり、私に言わせれば、やったり取ったりみたいな話だなという感じもしますが、そういうところからの寄附があったわけですね。
 現在もそういうところからの寄附は続いているんでしょうか、どうでしょう。イエスかノーで、簡単で結構です。
横田政府参考人 金額は別としまして、総じて言えばそういうことでございます。
日野委員 それから、一般の人はわかりにくいと思うので説明だけ聞かせてください。
 任意保護費収納金というのがありますな。これについてちょっと説明してもらえますか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 任意保護費の問題。その前に、任意保護という言葉がございまして、これは委託保護に対する言葉でありまして、更生保護施設は、多くの場合は、先ほど申し上げましたように、保護観察所長の委託によって保護がされるわけですけれども、必ずしもそればかりではありませんで、更生保護施設そのものが独自の判断で保護をするというケースがあります。また、委託保護の期間が切れた、その後しかしまだ更生保護施設において保護が必要だというようなケースの場合には、これは委託保護が切れますので、その後は更生保護施設が引き続きその保護をする。それもまた任意保護になっています。
 これにつきましては、法律の規定はございますけれども、費用を後から徴収できるという規定がありまして、食事、宿泊、そういったものを徴収することができるという規定に基づきまして、更生保護施設が任意保護をした被保護者からそういった実費を徴収するということであります。
 平成十二年度の統計でございますけれども、任意保護被保護者の負担金と呼んでおりますけれども、その収入額は、これは平均ですけれども、全体で三・一%となっております。
 以上です。
日野委員 今ずらっと伺っただけで、かなり施設の財政状況というのは硬直化をしてきているわけですね。
 それで、今度の改正で公益事業や収益事業について係る省令の問題が今問題になっていますね。余りきつくここを考えちゃいかぬのだと私は思うんですね。公益に関するものでなくちゃいかぬというような決め方をしてしまって、そしてそれをきつく考えていきますと余り仕事ができないということになるわけで、いろいろなアイデアを生かして、やはり収益を上げながらこういう事業を営んでいくということが必要なのではないかなというふうに私は思いますので、ここのところは、かなり広範に仕事ができるように緩く考えていくということも必要な観点ではないかと思いますが、ここはどう考えておられますか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 現在、収益事業につきましては、法務省令におきまして、更生保護事業の内容に照らして、その種類及び規模が適正でなければならないということを定めておりまして、これは、収益事業によって、それがいささかでも更生保護施設の財政に寄与するものであるならば広く認めてもいいんじゃないかというふうな考え方もあろうかと思いますけれども、しかし、その収益事業によって更生保護事業が圧迫される、あるいは更生保護事業を行う者の社会的な信用が損なわれるといったような内容であってはやはりならないのであります。
 いずれにしましても、更生保護事業、そして、今回改正を考えていますけれども、収益事業といっても、更生保護に関する事業に使われるためというような、限定といいますか、枠をはめながら、この収益事業のあり方というものについて考えてまいりたいと思っております。
日野委員 もっとほかにいろいろ聞きたいこともありますが、時間が終了したようでありますから、終わります。
園田委員長 中林よし子君。
中林委員 日本共産党の中林よし子でございます。
 法務委員会では初めての質問に立たせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 今回の審議に先立ちまして、私は、やはり更生保護施設の視察をしておかなければわからないということで、急遽ではありましたけれども、東京の荒川区にあります静修会、女子のみを収容している施設に行ってまいりました。急な視察ではありましたけれども、大変快く迎えていただきまして、職員の方々の率直な御意見も聞かせていただくことができました。本当に、民間の善意の上に成り立っているものだなということを改めて痛感をいたしました。
 先ほどいろいろ数字も明らかになりましたし、資料も見せていただきましたら、やはり刑を受ける方々がずっと年々ふえ続けている、それから更生保護施設で収容されている人員もずっとふえ続けているということでは、更生保護施設の果たしている役割というものが非常に大きいものがあるというふうに思います。それは、帰るところがなくなっている方々の問題も当然ありますし、再犯を防ぐという社会的なそういう大きな役割を持っているというふうにも思います。
 そこで、明治以来、篤志家の方々のそういう善意の上に成り立ってはいるものの、今この時期にやはり第一義的な任務を財政的な問題も含めて果たさなければならないのは、やはり国の責務、これが非常に大きいのではないかというふうに思いました。
 そこで法務大臣に、基本的な認識の問題ですけれども、この更生保護施設の、第一義的にはやはり国の責務、この認識はおありだとは思うんですけれども、改めて確認をしておきたいというふうに思います。
森山国務大臣 警察庁の統計によりますと、平成七年以降、交通関係業務上過失致死傷事件を除く刑法犯認知件数は増加を続けておりまして、それに伴って、矯正施設の収容者等も軒並み増加しております。このような状況の中で、より多くの犯罪者の社会復帰を促す、そしてその再犯の防止を図るということが更生保護事業の果たすべき大きな役割だと認識しております。そのような意味で、国の責任も大変大きいというふうに考えております。
 今回の法改正によりまして、更生保護施設における被保護者受け入れの積極化が進むとともに、より一層専門的な処遇が展開されることになりまして、犯罪者の社会復帰に重要な役割を果たすことになるものと考えております。
中林委員 だからこそ国も今回法改正も行うんだというお話なんですけれども、先ほどの方への答弁で、官と民が一体となってというような、やはり民のところも重視をされているというふうにお見受けをいたしました。
 そこで、具体的な中身についてお伺いしたいというふうに思います。実態の問題です。
 まず、経営基盤の問題ですけれども、先ほども数字的に明らかにされましたが、国からの委託費が七七%ということですね。あとは寄附金。これも先ほどお答えになりました六・五%くらいだということで、その他、会費だとか、あるいは地方公共団体からの補助というようなことで大体成り立っているということなんですけれども、七七%、八割近く国の委託費に頼っているわけで、寄附金というのは経済情勢にも影響されるというお話もありました。同時に、社会福祉施設ならば、国民的コンセンサスというか寄附のお願いも非常にしやすい状況にあると思うんですけれども、やはり犯罪者であったというようなことなどから、なかなか寄附を集めにくい、そういう側面も一方あるというふうに思うんですね。そうなると、やはり委託費のところを充実するということが非常に大切になってきているんじゃないかというふうに思います。
 更生保護法人の方から、例えば、こういう計画を立てていたんだけれども思うように寄附が集まらない、財政的に大変逼迫した、こういうときには、少なくとも国が何らかの保障でそこは補っていくという体制が必要なのではないか、そういうことはぜひ前向きに、大臣、御検討いただけないでしょうか。
森山国務大臣 御指摘のように、更生保護施設におきましては、経済的、財政的な問題に大変苦労をいたしておりまして、関係者が大変懸命に努力をしております。
 そういう中で、国もその責任の重大さを考えまして、おっしゃるように七七%、七八%に及ぶ経費の負担をさせていただいているわけでございまして、もちろんこれからも、いろいろな新しい事業をする、必要なことがほかにもいろいろあるということで、さらに努力をいたしていきたいとは思いますが、私の個人的な感じから申しますと、やはり民間の方々の非常に貴重な善意というものもあわせて、それがいろいろな大きな意味があるというふうに思いますので、やはり官民両方の努力によって続けていくべきであるというふうに思っております。
中林委員 私は、これは今まであったのかないのかはお聞きしませんけれども、財政的に大変逼迫した、そういうような具体的な法人からの要望などあったら、やはりこたえるべきではないかというふうに思います。現に、施設が今全国で百一カ所ということなんですけれども、一九五〇年代には百七十カ所あったわけですよね。そういうことでは、やはり非常に財政的な、経営的なそういう理由でどんどんこれがやめていったという状況があります。だから、大臣もおっしゃったように、非常に大きな役割を担っているそういう施設だけに、そこに対する委託費の充実というものは求められているし、いざ困ったというときの対処はぜひ検討していただきたいというふうに思います。
 そこで、民間も非常に大切な役割を担っているしという今大臣の御答弁があったわけです。まあ迷惑施設というようなお話も先ほどの議員から出たいきさつもございます。地域住民の皆さんへ、あるいは国民に広く啓発活動が必要なのではないかというふうに私は思うんですね。確かにこういうパンフレット、私も見せていただきました。こういうパンフレットだけではなかなかわかりにくいんじゃないか。今後、どういう広報活動を繰り広げていかれるのか、もっと充実する必要があるのではないかというふうに思うんですけれども、その点についてお答えいただきたいと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 更生保護あるいは更生保護制度についてのいわゆる啓発活動につきましては、第一義的には、保護司さんであるとか更生保護婦人会の方々あるいはBBSといった民間の協力組織の方々が日常の活動を通じて行っていくということがありますけれども、そのほかに、全国的規模で行われておりますものに社会を明るくする運動というものがございます。これは、毎年七月を強調月間といたしまして、民間協力組織だけではなくて、国の中央省庁、地方公共団体、各種の民間団体、そしてその他いろいろな組織とかに御参加いただきまして、全国的に各種の活動を広げているわけであります。
 そういった中で、いろいろな集会をする、あるいは講演会をする、あるいはビデオ、映画等の上映会をするといったようなことによって、先ほどのパンフレットとかそういうものももちろん配布いたしますけれども、そういうようなさまざまな活動をすることによって、犯罪予防活動が主たる目的でありますけれども、あわせて、この更生保護というものを国民の方々に広く知っていただくという活動をしております。
 何といいましても、更生保護は国民あるいは地域の理解と協力がなければ成り立たないものでありますし、そのためには、やはりこれからもいろいろな方法を考えましてこの啓発に努めてまいりたいというふうに思っております。
中林委員 私は、その活動が結局、一番身近な地方自治体、そこにも大きな影響を及ぼしているのではないかというふうに考えます。
 更生保護事業法の四十八条で、地方公共団体が更生保護事業を行うことを認めているわけですが、当該事業を行っている地方公共団体はありますか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 地方公共団体で更生保護事業を行っているところはございません。
中林委員 国も施設は持っていないし、なかなか、まあさまざま財政的なものだとかはあるんですけれども、地方公共団体自体も事業をやらないということでは、このせっかくの法律が泣いているんじゃないかというふうに思うんですね。
 さらに、これはもう参議院の審議で明らかになっているわけですけれども、更生保護事業に対する地方公共団体の補助金交付の状況、これは大変お寒い状況ですね。百一ある更生保護法人の中で四十三法人、約四割の施設しか地方公共団体からの補助金交付を受けていない、こういう現状です。二〇〇〇年度の補助額が三千八百四十一万円ということが明らかになっております。
 横田局長も御答弁に立たれて、一番身近なのは地方公共団体なんだということをおっしゃって、自治体に対して更生保護の理念、実情といったものをいろいろ訴えかけまして御理解を求めて、それを運営経費あるいは設備整備の補助金という形で具体的に御協力を得るように努めていきたい、こういう答弁を、これからこういうふうにしていきたいというふうにおっしゃっているんですが、余り具体的なイメージがその御答弁ではうかがい知ることができません。
 ですから、そういう意味では、国や地方公共団体がこの事業を積極的に関与し、補助していく、これがやはり求められているのではないかというふうに思うんですね。これはぜひ、大臣、地方公共団体に対する啓蒙活動というか、年一回、社会を明るくする運動に一緒に参画させるというのも一つの方法ではありますけれども、少なくとも通達ぐらいお出しになる必要があるのではないかというふうに思います。
 同時に、この事業がなかなか地方公共団体で取り組めないというのは、例えば更生保護施設を建設するともし地方公共団体が計画した場合、何らの国の助成措置というか補助対象などというのは法律事項にはないわけですよね。そういうときに、今後、例えば地方公共団体がそういう施設を建設したいというときは、法律事項として明記をしていくのかどうか、ここも含めてですけれども、地方公共団体への働きかけ、そして制度面でも充実をさせる、この検討についてお答えいただきたいと思います。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
森山国務大臣 地方公共団体は、今おっしゃいましたように更生保護事業を営むことができることになっております。更生保護事業法第四十八条に書いてございますが、現実に更生保護事業を営んでいる地方公共団体は現在まで全くございません。しかし、地方公共団体が更生保護施設の改築等の際に補助金を支出したり運営費を補助している例は多くございます。
 地方公共団体が更生保護事業に対して役割をさらに担っていただけますように、毎年、全国知事会等に対しまして法務省からもお願いいたしているところでございますが、今後もこうした働きかけを通じまして、地方公共団体の一層の御理解、御協力を求めていきたいと考えております。
中林委員 具体的に少なくとも通達ぐらいお出しになる必要があるのではないか。要するに、四割の施設しか地方自治体から補助を受けていないわけですよ。だから、そういう意味では六割の施設は何らの補助も受けていないということなんですね。一番身近なところ、自治体がかかわらなければならない。しかも、総額三千何がし万円ということを言いましたけれども、少ないところは本当に少ないんですよ。微々たるものしか補助を出していないということを考えれば、六割の施設については地方自治体から何らの補助もないということを、これまで何年かたちましたから、残しておくことはいかがなものかというふうに思いますので、その点、もう一度お答えいただきたいと思います。
森山国務大臣 おっしゃいますように、地方自治体の方も財政が非常に厳しい状況でございますので、なかなか思うようにいかないのだとは思いますが、こういう施設に対する、あるいは事業に対する補助をしていただいている地方公共団体がまだ半分にも達しないということであるのは、まことに残念だと思っております。
 先ほど申し上げましたように、知事会等を通じて、たびたび御依頼は申し上げておりますので、さらに努力をいたしまして、御理解を得るように、具体的な援助をいただけるようにお願いしたいと思っております。
中林委員 今、通達だとかそれから建設費の補助の問題、具体的に提起をしましたので、今後検討をいただくようお願いいたします。
 そこで、私は、この荒川寮の職員の方々の労働実態、非常に過酷だなということを思いました。ここは二十人の定員なんで、調理師を含めて四人の職員の方がいらっしゃいます。だれかが二十四時間勤務しなきゃならないということで、どのようにされているのですかと言うと、すぐ隣が自宅でございますので、そこにいてということなんですね。三百六十五日、二十四時間、本当に心休まるときがないというふうに思います。救急車の手配だとかいろいろなことが夜も起きていくわけですね。
 そういう意味では、この職員の配置の問題、もっとふやしてほしいというのは全国の多くの施設の要望だというふうに思うんですけれども、その配置基準、どのようになっていますでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 平成十三年度までの基準は、収容定員が二十人以下の施設は三人でございます。それから、二十一人以上、二十人を超える施設の場合には四人でございますが、平成十四年度予算におきましては、各施設それぞれ一名ずつ増員をするということで予算措置を講じてございますので、定員二十人以下の施設におきましては四名、それから定員二十一名以上の施設におきましては五人にするということでございます。
中林委員 荒川寮の人が、ふえるということを御存じなかったんですね。この質問をする前に法務省の方にお聞きしたら、この法律が成立した後でないとというお話だったものですから、その場合、四月にさかのぼって算定されるのかどうか、この点。そして、周知徹底はいつどのようにされるのか、お聞かせいただきたいと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 四月一日にさかのぼってこれは実施されます。
 周知徹底につきましては、これまでも、十四年度予算の概況という形では、全般的な周知、これは更生保護法条含めてしているわけでありますけれども、この法律成立後にも、また改めてこの法律の内容及びこれに伴う予算措置につきましては周知徹底を図るよう努めます。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
中林委員 それで、私は本当に、ふやすということは難しい今の状況の中で、いろいろ切望されている皆さんの願いを聞き入れていただいて、ふえたということを喜んでいたわけですよ。ところが、これにかかわる予算書を見たら、余り喜べないのかなという状況なんですね。やはりスクラップされているところがあるということで、これまでの日宿手当、日直や宿直の手当、そこのところは全部落とされて職員の数を一名ふやすということですから、安定はするというふうには思うんですけれども、これでは余り威張れた状況ではないなと。日宿直の手当もありながら職員もふえていくというのが、本来ならば一番いい方法なんだというふうに思います。
 だから本当に、明治以来、あるいは、この荒川の施設では昭和の初め以来三代にわたってやっていらっしゃる方々の思いは、やはりふやしてほしいというのが切望されているわけですので、大臣、ここは、職員の皆さんに対する、増員もですけれども、やはり予算獲得のためにぜひ頑張っていただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。
 そこで、この予算の問題で、やはり一つは、職員の給料といいましょうか報酬といいましょうか、それがどういうぐあいに図られているのかというと、セット予算だということなんですね。福祉職の俸給、これが一つの基準にはなっているんだけれども、収容率、これがそこに勘案されるものですから、約七割ぐらいが掛けられるということなんですね。
 それで、私も資料を見て驚きましたけれども、二十一人以上の施設の福祉職の四の二という俸給月額。この方は、福祉職ならば二十七万四千九百円なんですけれども、これが、更生保護施設に行くと、〇・七〇六を掛けられて十九万四千七十九円ということになるんですね。なぜこういうことになるのか。収容の日数もあるし収容人数もある、委託費も日数に掛けて出されてくるということが基準になっているからこうなるんだとおっしゃるんでしょうけれども、しかし、人をそこに配置したら、人が少なくなったから減らすというわけにもいかないわけですよ。
 やはり更生保護施設は人だと思うんですね。人がいかにちゃんとしっかりとそこで収容者の皆さんに対処していくかということが求められているときに、この計算の仕方、セット率などということではなくして、全国更生保護法人連盟が定員定額制というものを要望されているわけですから、もうそこへ踏み切るべきではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 おっしゃるとおり、福祉施設におきましてはいわゆる定員定額制というものが設けられておりますが、更生保護施設ではそれは採用されておりませんで、セット率が設けられています。これは、国の財政全般の問題ともかかわって、それから更生保護施設の運営といいますか、性格といった、いろいろな事情から現在このような措置がとられているということでございます。
 ただ、更生保護施設の人材確保ということはこれからますます重要となりますし、それから、何といいましても、やはり更生保護施設そのものの運営の健全化ということ、財政の健全化ということは当然必要なことでありますので、今後とも、この更生保護委託費のあり方につきましては、いろいろな観点から検討を重ねてまいりたいと思っております。
中林委員 大臣には最後にまとめて御答弁いただきたいと思いますので、個別にはもうこれ以上追いません。
 そこで、協力雇用主の問題、これが非常に大切だなというふうに私は思いました。
 ここへ「更生保護制度施行五十周年記念 支えあう心これからも」という冊子がありまして、そこで讃岐修斉会の方がこういうことをおっしゃっているわけですね。「仕事を始めると、寮生の顔つきが変わってくるんです。実にいきいきとしたいい顔になる。お金を貯めて自立をめざす彼らにとって、仕事がいかに大事かということが分かります。」ということをおっしゃっているんですね。
 この荒川の寮も、下町にあるために、非常にパートだとかそういうことでは恵まれた地域だ。しかし、実際にそういう地域でも、現在、協力雇用主というのは二社しかないという状況なんですよ。そこの職員の皆さんは、本当に頭を下げて歩くんだとおっしゃるんですけれども、この協力雇用主に対してはお金の面でもう微々たるものしか支援策がありません。私は、せめて障害者雇用促進法ぐらいのものがなければ、なかなか今の不景気の中で、状況的には難しいんじゃないかというふうに思うんですね。法務省にお聞きしたら、職業指導講師謝金、謝礼ですね、それが六百四万円だとか、あるいは協力雇用主育成研修費がわずか三百六十四万円だとか、もう聞いて恥ずかしくなるような、そういう状況ですね。
 だから、これは本当に、自立していく、社会に復帰する、それから再犯を防止するという意味では、極めて重要なものだというふうに思うんですけれども、これは大臣の答弁を願いたいと思います。
森山国務大臣 残念ながら、今、雇用情勢全体が大変厳しい中でございまして、更生保護施設の被保護者の就職についても非常に困難をきわめているということは御指摘のとおりでございます。就労の援助あるいは被保護者に対する処遇の基本でございますし、特に、犯罪歴のある人を差別することなく積極的に雇用していただいて、その更生に協力いただいている協力雇用主を確保していくということは、非常に重要な課題であると考えております。
 現在、法務省といたしましても、被保護者の処遇に協力をいただいている協力雇用主に対して、大変わずかではございますけれども謝金を出させていただいておりまして、その気持ちをあらわしているわけでございますが、協力雇用主の活動の支援のために、これからも予算を確保していきたいというふうに考えております。
中林委員 それで、本当に恥ずかしいほどの謝金。お金お金と私は随分言って、もう何か大臣にお金の増額だけを要求しているように印象づけられると困ったなと思っているんですが、しかし、もう非常に大切な事業だけに、やはりそこにはお金がつきまとわないと今の時代できない。
 荒川のここの寮でも、もう三代目のお嬢さんがやっていらっしゃるんですね、実際は。それで、今回いろいろと新しい事業として枠が広がる、そういう積極的なプログラムを組んでいらっしゃるので、もうすばらしいなというふうに思ったんです。女性のための健康講座だとか、あるいは薬物から守ることだとか、あるいはコラージュ教室の開催だとか、あるいは区の農園を活用して農作業までやるというようなことで、もう大変積極的。しかし、何をするにも金がつきまとうと。これには金がないという状況なんですね。
 この法律の中に、大臣は人材を確保するという新しい条項が設けられております。専門職だとかそういうことを確保しなければならないということになっているので、せっかく事業を拡大される、しかも大臣にその人材確保の条項までつくということですから、その点は、財政的な裏づけも持って、どうされるのか、最後に大臣にお聞きして質問を終わりたいと思います。
森山国務大臣 更生保護施設が犯罪者処遇の専門施設といたしまして十分にその役割を果たすことができますためには、被保護者の指導に当たる職員に専門的知識及び経験を有する有能な人材を確保するということが大変重要ですし、職員研修を充実させるということ、そしてその能力の向上を図るということも大変必要であると思っております。これらの予算の確保にも今後とも努めてまいりたいと思っております。
中林委員 ぜひ強力に進めていただきたいという旨を重ねて要望いたしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
園田委員長 植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 既に参議院でも幾つか審議もされていますし、きょうの質疑でもいろいろな論点出されたと思いますので、できるだけダブりは避けたいのですが、重なるところはお許しいただきたいと思います。
 まず、更生事業の成果にかかわって、更生施設によるサポートを受けた者、そしてそうでない者の相違というものがある程度明らかになるのかどうか。例えば、再犯率がやはりサポートを受けた者の方が低いとか、そうしたものが明らかにできるのかどうかというところをお伺いします。
横田政府参考人 お答えいたします。
 結論的なことを申し上げさせていただきますが、更生保護施設に在所していた者の退所後五年以内の再犯率というものを調べたものがございまして、それによりますと、刑務所を出所して更生保護施設に入所した者としない者とを比べますと、再犯率において約一〇%低いという結果が一つ出ております。
 これが更生保護施設のあるいは数字にあらわれた一つの成果というか、成果の一つということでございますけれども、そういうことになろうかと思います。
植田委員 そこで、やはり入所をされてサポートを受けた方々の再犯率が一〇%ばかり低いということは、これは数値的なデータとして評価はできると思いますけれども、今度、例えば、再犯した人の動機づけというか理由といいますか、その辺のところは掌握されていますでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 御承知のように、個々の犯罪の捜査におきましては、犯行の動機といったものは、当然その捜査の対象としていろいろあるわけでございますけれども、こういう再犯を犯した者あるいは再犯を犯して更生保護施設にまた戻ってきたといった者につきまして、更生保護施設における処遇が効果があったかなかったかという観点からの再犯の動機づけの調査といったものは特段してございませんので、お答えできません。
植田委員 特に、更生に当たって、施設におけるいわば社会復帰に向けてのサポートのあり方に原因があって再び犯罪に及んでしまった、更生施設の中でおられた方々の再犯率は確かに低いけれども、実際そのサポートのあり方に何らかの原因が認められる、そういう例というのは恐らくデータとしてとっておられないでしょう。今の話がとっておられないわけですから、そこは込み入ったところをとっておられないでしょうけれども、そうした例は承知されていますか。
横田政府参考人 先ほど申し述べましたとおり、データとしてはございません。また、現実論というか事実論といたしまして、そのように、更生保護施設における処遇に問題があったがゆえに事件を犯したというような事実があったということは全く聞いておりません。
 仮にそういうことがもしあれば、それはいわば特異な動機でございますので、恐らくその捜査段階でそのようなものは表に出てくるだろうと思いますが、そのような事実はございません。
植田委員 私自身、更生事業が社会復帰にプラスになっておりますし、特に民間のこの間のずっとした取り組みの中で再犯防止効果も上げているという理解に立ちたいわけですけれども、それぞれの努力に敬意を表しつつも、ただ幾つか、恐らくこの種の議論もあったかと思いますが、まず、現状において、更生事業の財政的な問題ももちろんだろうと思うわけですが、特にスキルの開発の面において課題はないのかという点、とりわけケアの面で、これからやはりそうしたスキルを開発していかなければならないなと考えておられるようなテーマがあれば御教示いただけますか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 この処遇スキルのことですが、これはこれまで何度かお話し申し上げているところでありますけれども、現在の状況におきましては、繰り返しになりますけれども、いわゆるSSTとかコラージュ療法とか、あるいは酒害・薬害教育、そういったものが考えられております。
 今のSSTやコラージュ療法というのは、精神医学の分野でもともと生じたものが、だんだんこういう更生保護の分野でも適用されてきているわけでありまして、これからも、こういういろいろなスキルといいますか、これは開発されていくでありましょうし、そういったものについてもできるだけいろいろ情報を集めまして、そして、いいものは取り入れていくという方向でまいりたいと思っております。
植田委員 そこで、特に諸外国の先進的な事例があろうかと思いますので、その辺についての、保護局さん、どんなふうに把握されているのか、また、そうしたものを参考にされているかという点、幾つかお伺いしたいわけですが、特に、ヨーロッパ諸国であるとか、欧米、アメリカ等で、特に更生事業の展開状況で、今後の日本にとっても参考になると思われているような例があれば指摘してほしいわけですが、例えばどんなプログラムで、どの程度の期間受けられるのかとか、また、出所者等のそれを通じた結果の再就職の状況等々で、やはり日本と比べて先を行っているなというふうに思われるような例があれば、大ざっぱな話でいいです、教えていただけますか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 諸外国の更生保護制度について十分に徹底した調査、あるいは比較検討をしているとまでは申しませんけれども、幾つかの資料の中から申し上げさせていただきますと、いずれにしましても、更生保護というのはその国その国の一つのいわば制度でありますので、その国の社会あるいは政治経済、いろいろなもののありようによって動いてくるわけですけれども、その中で参考になるものは参考にするということで考えてまいるのは当然です。
 そういった観点から見ますと、例えばお隣の韓国の話なんですけれども、ここでは更生保護施設が職業訓練を専門学校などに委託しているというケースがございます。それから、施設内にコンピューター教室を設置しまして、そこでボランティアの講師にお願いしましてコンピューターの教育をしているというケースがあるそうです。それから、イギリスでは、保護観察所が民間の職業訓練団体などとパートナーの契約を結びまして、そして、雇用に関する指導助言であるとか、あるいはカウンセリング、あるいは基礎的な職業訓練などを実施しているということでございますし、また、カナダにおきましては、生活技能等の乏しい少年に対しまして、集中的に各種の生活技能訓練や職業訓練を実施するプログラムを民間団体がやっているというようなこともあります。
 いずれにしましても、こういった制度をさらにいろいろ研究いたしまして、取り入れるべきものがあればまた取り入れる方向で検討してまいりたいと思っております。
植田委員 私、韓国の例は今初めてお伺いいたしましたけれども、非常に、先進的事例をよくお調べになっているようだと思います。後でまた詳しい資料等もいただければありがたいんですが、私がちょっと教えていただいたところでは、アメリカのミネソタでやっている、これは恐らくよく御存じやと思いますので余り繰り返しませんけれども、あそこでも保護観察プログラムで修復的司法を取り入れている、その結果、再犯の低下に効果を上げている、そういうことも聞いておるわけです。
 恐らく、これからのいわゆる更生施設での取り組みというのは、もちろん刑務所の中でもいろいろなそうしたものはあるでしょうけれども、新たな技能を身につけ、きちっとまた社会に出ていく、働く、就職できるということと、もう一つは、再犯を低下させて、かかる行為が再び起こることがないように教育をしていくというところがあるだろうと思いますが、このミネソタの保護観察プログラムでは、特に被害者の心情をいやす効果もある、そういうことも指摘されておられるようです。
 これは保護局でも数年前に保護観察官を招いて学習会を開かれておる、その辺のところの研究もされたということも聞き及んでおるわけですが、今まさにいみじくもイギリスやカナダ、韓国の例、韓国の例なんか、今お伺いしていますと、非常にこれから我々日本としても取り入れていくべきところだと思いますし、また、再犯の低下、防止という点においてミネソタでの実例というものも先進的事例だろうと思うわけですけれども、今後、こうした保護観察・更生プログラムに、具体的にではどんな形でこうした先進的事例を取り入れていくのかというところをお答えいただければと思うのです。恐らく、いろいろなことを摂取して生かしていきたい、そういうお気持ちだろうと思うんですが、その点、いかがですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 委員の御指摘にございますミネソタ州のいわゆる修復的司法プログラムといいますか、回復的司法プログラムというものにつきましては、確かに二年ほど前に向こうの保護観察官とそれから民間のファシリテーター、これは被害者と加害者との間に立っていろいろ動いてくださる方ですが、そういう方が日本に参りましてそのお話も伺っているところであります。
 確かに、刑罰を加えるだけではない、やはり被害者、あるいはそれを取り巻く犯罪によって生じたいろいろな被害を回復させることが刑事司法の目的だという考え方で、このミネソタの修復的司法というプログラムはやはり先進的なものであると理解しております。
 日本におきましても、ここ数年来、やはり被害者保護、被害者の目で見る、被害者の観点から刑事司法を考えるということが重視されてまいったことは委員の御案内のとおりでございまして、これは保護観察の場面でもそういった考え方を既に取り入れているところでありまして、保護観察の対象者につきまして、例えば被害弁償の指導をする、あるいは慰謝の措置を指導するといったようなことは取り上げておりますし、それから、一部の保護観察所におきましては被害者と加害者との関係を修復する和解プログラムといったものも試みられているところでありまして、今後とも、被害者保護といった観点を踏まえながら更生保護を進めていきたいと考えております。
植田委員 ありがとうございます。
 ここで、ややちょっと話もそれるわけですけれども、時間が後で終わってしまうとあれなんで、先に刑事局長さんに、簡単なことだけお伺いします。後でちょっと児童虐待とのかかわりで具体的な更生施設におけるさまざまな取り組みを聞く前段として、特に少年犯罪にかかわるところで、改正少年法の施行後の経過と展望といいますか、その点を二点ばかりお伺いしたいわけですけれども、参議院でも、改正後の経過が見えてくるのはこれからだというふうな答弁があったように思いますけれども、そもそも改正する前から、少年法が、特に保護育成によって運用されておる少年法というものが、少なくとも世界的に比較すれば、ずっと数十年間世界的に比較すれば再犯は群を抜いて低いですし、犯罪発生率も諸外国がうらやむほど低かった、そういう意味では改正する前から少年法というのは立派に機能していたんですよねということをまず一点確認させてください。
古田政府参考人 諸外国との比較におきます機能がどうであったか、こういうことにつきましては、それぞれの国の犯罪情勢などいろいろなことが絡むわけで、これを一概に比較することは大変難しいことであろうと考えております。
 しかしながら、もちろん少年法改正前におきましても、関係機関でさまざまな努力を重ねてその枠内において適切に運用されていたということは事実であろうと思っております。
 ただ、少年法の改正につきましては、これは国会におきまして、当時の犯罪情勢等を踏まえた議論がなされた上で、少年事件の処分のあり方や事実認定手続のあり方、被害者への配慮、こういう点についてなお一層の適正化が必要と判断されたものと私どもとしては理解しているところでございます。
植田委員 これから恐らく少年法が改正された結果というものが検証されていくべきなんでしょうけれども、例えばアメリカでは、大人、成人犯罪者の七割八割が少年時代に犯罪に手を染めている、そういうレポートもあるわけです。
 それぞれの国でそれぞれの犯罪情勢があるわけですから一概には言えないかもしれませんが、ただ、これは最近の例ですか、アメリカにおける厳罰少年法の結果でもこうなっているということなんですが、仮に、改正された少年法の経過を、それがプラスかマイナスか評価する一つの要素として、やはり少年犯が再び犯罪に手を染めることがない、そうしたあり方がいいんだろうと思うわけですけれども、少年犯の言ってみればその後の経過、もちろん後を追跡調査せいというわけじゃないけれども、例えば成人の過去の犯歴を見たときに、少年時代に犯罪を犯している、そうしたことが実際データとしてあれば、今後のそうした少年犯罪に対する対応方等々についての素材にもなるでしょうし、現行法のあり方について検証する一つの素材にもなるんじゃないかなと思うんですが、その点は、刑事局長、いかがですか。
古田政府参考人 もちろん、一般的な話として申し上げまして、少年時代の非行歴の有無とか、そういうものがどういうふうに影響するか、あるいは改善更生の効果がどういうふうに上がっているか、こういうような点について、そういうデータは大変重要なことでありまして、これは非行歴についてもデータというのももちろんあるわけでございます。実際に、その後に、成人になってから犯罪を再び犯したような場合に、そういう非行歴の有無等というのも参考にされている、そういう実情でございます。
植田委員 さて、この少年法改正とほぼ並行して議論していた問題に、児童虐待防止法の問題があるかと思います。ここでは、非行少年の六、七割が虐待を受けていた、そういうふうに虐待を受けていた子供たちが非行に走って少年犯罪を犯す、そして、そういう人たちが大人になってからもやはり立ち直れないでいるという実態は、日本でも当然深刻な問題としてあろうかと思います。
 その意味で、民間施設では、少年院の退院者に対していろいろなプログラムを用意しているところもあるわけですけれども、結局、虐待の被害者である子供たちには、専門職が足らないわけなので、見よう見まねでロールプレーとか心理療法的なカリキュラムを実践しているというような話も聞くわけです。
 そこで、こうした現在のカウンセラー、また臨床心理士の施設での取り組み状況と、児童福祉施設にはこうした配置が定められていると思うんですけれども、ある程度の人的支援を整えた上で、更生施設でもやはり心理職等の専門家の配置というものを義務づけるべきではないのかな。そして当然、義務づけても、これは民間の施設は大変ですから、その義務づけと同時に、配置に当たっての政府の支援措置というものもあわせて検討するということがこれから必要になってくるんじゃないかと思うんですが、その点は、保護局長、いかがですか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 確かに、心理的な問題を抱えたそういう少年に対しまして、更生保護施設で専門家によるプログラムを実施するということの有用性といいますか、それは極めて重要であるということはよく理解できるところであります。
 現在、一部の施設におきましては、これは部外の心理療法士ですが、そんな方に加わっていただいて、先ほど来申し上げております、心理療法といいますか、SSTその他のプログラムを行っているところもございます。
 ただ、義務づけまでは、これはまたいろいろな検討が必要であろうというふうには思っておりますが、いずれにしましても、そのように部外の専門家をいろいろな面で更生保護施設、あるいは更生保護に御協力いただきながら進めていくということの必要性は感じておりますので、今後ともそういった方向は進めてまいりたいと思いますし、また、更生保護職員の資質の向上ということもあわせて、そのような観点からも考えていきたいと思っております。
植田委員 義務づけるべきやといったらいろいろな議論もあるところでしょうけれども、今言ったような専門家が更生施設にもいらっしゃった方がいいというふうにお考えですよね。いらっしゃった方がいいし、それが適切に配置されるようなあり方は、これから検討課題として当然我々としても念頭にありますよという趣旨で受けとめていいですか。
横田政府参考人 そういうことで検討を重ねてまいりたいということでございます。
植田委員 何につけてもお金のかかる話というのはなかなか大変やとは思うんですが、あと、更生事業の場合、NGOとの協力といったら、ほとんどみんな民間ですから言わずもがなの話なんですけれども、特に薬物依存や酒害、アルコール依存なんでしょうか、そういうものについては、更生保護施設でもダルクや地域の断酒会などとの協力が進められている、そういう答弁も参議院の議事録を取り寄せますとありました。
 ただ、もっとも、この種の薬物や酒害といったら、ある種、私もそういうところは素人ですけれども、要するに、抜けているときと入っているときといったら一目瞭然なので、例えば、よう酒が入って暴れるというふうな人がいらっしゃればそれは見ていてわかるような感じもするんですが、ただ、私は、薬物やアルコール依存が軽いと言っているわけじゃないんですけれども、特に、虐待を受けたりとか、そういう心理的な深いレベルでの暴力依存というのは、なかなかこれはわかりにくいんじゃないのかなと。ある臨界点まで達しちゃうと暴力に走っちゃうというか。
 そこで、これもちょっとにわか勉強で教えてもらったんですが、アメリカのアリゾナ州で、アミティプログラムというのがあるそうです。アミティというのは友愛という意味らしいですが、暴力からの脱出を目指して、集団療法等々を組み合わせて効果を上げている。恐らく御承知だろうと思うんですけれども、その結果、この終了者の再犯率が二六%ですか、そして、そういうアミティプログラムを受けていない出所者の再犯率が六八パーということですから、その数値だけ見るとかなり効果を上げているし、また、再犯の内容も軽くなっている。軽かったらいいという話でもないでしょうが、犯罪からやはりどんどん離れていく傾向にあるらしいですが、こうした一つのプログラムも日本の中で広まってほしいと思うわけです。
 こういうアミティプログラム等についても、日本で、アメリカからコーディネーターを招いたりした民間での取り組みがあるやに聞いていますけれども、更生事業だけでなくて、もちろん、更生事業に対する今の支援が十分かどうかということはともかくとしても、更生事業だけでなく、まずその更生をしていくためのさまざまなフォロー、ケアのやはり専門家の育成、スキルの開発という点で、例えばこうした暴力依存からの脱却プログラムを研究しているグループ等々に支援をしていく。もちろん保護局さんとしてもいろいろな検討をされるでしょうけれども、民間のNGO、NPOがそうしたいわゆるスキルの開発なり、また研究をなさっている、そういうことに対する支援なんかも、これから考えていく検討課題になってくるんじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のアリゾナ州におけるアミティという実例のあることも承知しておりますし、諸外国でその他いろいろなプログラムが行われていることも承知しております。
 今回の法改正、成立いたしました上は、更生保護施設が処遇の専門施設として重要な役割を果たしていくということになるわけでございますので、これからは、犯罪者の改善更生のために、更生保護施設における処遇のプログラムの開発と、そしてそれのスキルの向上ということは当然必要になりますので、私どもといたしましては、諸外国のこうした具体的な例をも参考にしながら、今後とも研究を重ねて、そしてよりよいプログラムをつくって実行していくようにしてまいりたいと思っております。
植田委員 最後に予算の面で幾つかお伺いして終わりたいんですが、恐らく一番効率的な犯罪防止というのは、やはりまず、犯罪を犯された方の、出所者、退院者の更生というのは大事だろう、これが一番効率的だろうと思うんですね、やはり再犯率も高いわけですし。
 ちなみに、こうした更生に係る予算、先ほどもやりとりがあったと思いますけれども、大体全体で幾らなんでしょうか。それともう一つ、先ほども申し上げましたけれども、そうした実際の技能の開発、スキルの開発のための研究予算、こういうものもやはり必要だろうと思うんですが、その中で特にそうした研究費というのはどれくらい計上されているんでしょうか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 いわゆる社会内処遇の予算ということは、結局保護関係予算というふうに理解いたしますと、平成十四年度の予算の総額で百九十一億八千万円でございます。これは、人件費、物件費一切を含めた金額でございます。そして、社会内処遇に関する研究費ですか、これは特に研究費という形での予算計上はされておりません。ただ、実際問題といたしましては、それぞれの保護官署あるいは更生保護法人等におきまして、いろいろなプログラムの研究開発等は行っているわけでございます。それは、特に研究費という措置ではなくて、その予算の中でやっているということでございます。
 それから、直接的ではございませんけれども、もう御承知と思いますが、法務省には法務総合研究所という機関がございまして、そこでもやはり更生保護にかかわる部分も含めまして研究を行っているところでございます。
植田委員 今の金額というのは、当然これは人件費込み込みの金額ですので、恐らく研究費ということで、要するに一切合財の中の予算ですからそれだけ引き抜いて出せないということなんだろうと思いますが、先ほど来、また事前の法案説明を聞いていましても、いわゆる更生施設の施設整備にかかわる予算ですら非常にかわいらしい金額が計上されているようでございます。ましてスキルの開発ということになると、恐らく予算ということではっきり出せないというのは、それに特化した研究という形というよりは、全体の枠組みの中でそういうこともやっていますよという話なんだろうと思うわけですよ。ただ、私は、治安を守るなんという言い方は余りしたくはないわけですが、仮にそういうふうな問題意識を持つんであれば、刑事局や民事局なんというのもありますけれども、本来保護局がかなめなんと違うかと思うわけでございます。
 その意味で、最後、大臣にお伺いして終わりますが、今の話を聞いていても、保護局長さん、いろいろな海外の事例をお調べになって、やる気満々なんだけれども、先立つものがないというところで、例えば義務づけなさいと言ったら、いやそこまで行くと何とかと。ただしやる気は満々だということで、いろいろな各国の資料も渉猟されて、先進的な事例をお調べになっている。では、それを具体的に実現していくためには、これからのかなめとしての保護局にもっと頑張っていただく、刑事局長さんがいるところで言うのもあれですけれども、保護局も優遇してやったらいいのと違うかいなとも思うわけですが、その辺、今後の更生事業の展開について、より委員会でも保護局長がすっきりと決意のほどを言えるようにお取り組みいただきたいと思っておりますが、最後、御決意をお伺いして終わります。
森山国務大臣 今のような犯罪社会情勢の中で、更生保護におきましては、保護司初め民間ボランティアの御協力を得ながら保護観察対象者を社会の中で指導いたしまして、その改善更生を促して再犯防止に努めているほか、地域における犯罪・非行予防活動を一生懸命やっております。先生にも今評価していただきましたとおり、やる気満々でございまして、積極的に展開していきたいという決意は非常に強いものがございます。
 この保護関係の予算につきましては、平成十年からの五年間で総額百八十三億七千万円から百九十一億八千万円へと約四%の増加となっておりますが、更生保護行政の一層の充実を図りますために、さらに一層必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えます。
植田委員 さらに一層頑張ってください。
 以上で終わります。
園田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
園田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、参議院送付、更生保護事業法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
園田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、佐藤剛男君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。加藤公一君。
加藤委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    更生保護事業法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 更生保護に係る法体系については、今後の社会情勢及び犯罪情勢の変化に対応し、国民に分かりやすい制度となるよう、更生保護基本法の検討を含め、関係法律の整備・統合に努めること。
 二 更生保護法人の経営基盤を強化するため、委託費及び施設整備費等国の財政措置の在り方について検討を加え、更生保護施設のなお一層の改善・充実を図ること。
 三 更生保護施設における処遇を充実強化するため、更生保護施設職員の配置の確保に努めるとともに、犯罪者の改善更生という高度に専門的な業務を担うにふさわしい職員を養成するため、職員に対する研修の一層の充実に努めること。
 四 犯罪者の社会内処遇には、地域社会の理解と協力が不可欠であることにかんがみ、更生保護に関する広報・啓発活動を積極的に行うとともに、地方公共団体・その他の関係機関との連携に必要な施策の推進に努めること。
 五 公益事業及び収益事業に係る省令を定めるに当たり、更生保護法人が行うことができる収益事業の収益を充てることができる公益事業の範囲を可能な限り広範囲になるよう配慮すること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
園田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 佐藤剛男君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
園田委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森山法務大臣。
森山国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいります。
    ―――――――――――――
園田委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
園田委員長 次に、内閣提出、参議院送付、国際受刑者移送法案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。
    ―――――――――――――
 国際受刑者移送法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
森山国務大臣 国際受刑者移送法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 外国人受刑者を処遇する行刑施設におきましては、言語、風俗慣習、宗教、生活様式の相違に配慮しつつ、その改善更生及び円滑な社会復帰に向けて努力しているところでありますが、近時の急速な国際化の進展に伴い、外国人受刑者も急増し、その国籍も多様化していることから、その改善更生及び円滑な社会復帰をさらに促進するため、新たな施策を実施すべきことが重要な課題となっております。このような改善更生及び円滑な社会復帰を促進するための新たな施策を実施する必要性は、海外で服役する日本人受刑者についても同様であると考えられるところであります。
 そこで、この法案は、このような状況を踏まえまして、外国において拘禁刑により服役している日本国民等及び我が国において懲役または禁錮の刑により服役している外国人について、国際的な協力のもとに、その本国において刑の執行の共助をすることにより、その改善更生及び円滑な社会復帰を促進するため、及び欧州評議会の刑を言い渡された者の移送に関する条約を実施するため、これらの刑の執行の共助等について必要な要件、手続を定めようとするものであります。
 この法律案の要点を申し上げます。
 第一は、外国において拘禁刑により服役している日本国民等の受刑者を我が国に移送し、その刑の執行の共助を行うこととする受入移送についてであります。受入移送は、受刑者が移送に同意していること、受刑者が十四歳以上であること、受刑者の犯罪行為が我が国でも禁錮以上の刑が定められている罪に当たること、受刑者の犯罪行為に係る事件が我が国の裁判所に係属していないこと等をその実施要件とし、東京地方裁判所がこれらの要件を満たしていると判断して受入移送をすることができる旨の決定をした場合において、法務大臣が受刑者の改善更生等の観点から移送を相当と認め、かつ、相手国との合意に達したときに行うものとしております。我が国に移送した後の受刑者については、外国で言い渡された刑が懲役に相当するときは懲役に処せられた者とみなし、禁錮に相当するときは禁錮に処せられた者とみなして、我が国の刑罰執行法令を適用することとしております。
 第二は、我が国において懲役または禁錮の刑により服役している外国人受刑者をその本国に移送し、その刑の執行の共助の嘱託を行うこととする送出移送についてであります。送出移送は、受刑者が移送に同意していること、受刑者の犯罪行為がその本国でも罪に当たること、我が国の裁判所に再審や別件刑事事件が係属していないこと等をその実施要件とし、法務大臣が、これらの要件を満たしており、受刑者の改善更生の観点等から移送を相当と認め、かつ、相手国との合意に達したときに行うものとしております。受刑者を本国に移送した後の刑の執行の共助は、その国の法令に従って行われ、その国において刑の執行の共助が終了したときは、我が国の刑の執行も終了することとしております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。
園田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.