衆議院

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第16号 平成14年6月5日(水曜日)

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平成十四年六月五日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 園田 博之君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 棚橋 泰文君 理事 山本 有二君
   理事 加藤 公一君 理事 平岡 秀夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君
      荒井 広幸君    小此木八郎君
      太田 誠一君    後藤田正純君
      左藤  章君    笹川  堯君
      下村 博文君    鈴木 恒夫君
      西田  司君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    松島みどり君
      柳本 卓治君    吉野 正芳君
      岡田 克也君    佐々木秀典君
      日野 市朗君    水島 広子君
      山花 郁夫君    石井 啓一君
      藤井 裕久君    木島日出夫君
      瀬古由起子君    藤木 洋子君
      植田 至紀君    徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        横内 正明君
   法務大臣政務官      下村 博文君
   政府参考人
   (警察庁長官官房長)   石川 重明君
   政府参考人
   (警察庁刑事局暴力団対策
   部長)          中村 正則君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鈴木 直和君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月五日
 辞任         補欠選任
  鈴木 恒夫君     小此木八郎君
  木島日出夫君     瀬古由起子君
  不破 哲三君     藤木 洋子君
同日
 辞任         補欠選任
  小此木八郎君     鈴木 恒夫君
  瀬古由起子君     木島日出夫君
  藤木 洋子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
六月四日
 治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願(佐藤観樹君紹介)(第三六七一号)
 同(山花郁夫君紹介)(第三六七二号)
 同(菅直人君紹介)(第三七〇八号)
 同(土井たか子君紹介)(第三七〇九号)
 同(土井たか子君紹介)(第三七八一号)
 法務局、更生保護官署、入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(植田至紀君紹介)(第三六七三号)
 民法改正における選択的夫婦別氏制度の導入に関する請願(土井たか子君紹介)(第三七〇七号)
 同(河村たかし君紹介)(第三七八〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案(内閣提出第七九号)
 裁判所法の一部を改正する法律案(平岡秀夫君外五名提出、衆法第一八号)
 検察庁法の一部を改正する法律案(平岡秀夫君外五名提出、衆法第一九号)
 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(水島広子君外五名提出、衆法第二〇号)
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件

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     ――――◇―――――
園田委員長 これより会議を開きます。
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房長石川重明君、刑事局暴力団対策部長中村正則君、警備局長漆間巌君、法務省大臣官房長大林宏君、民事局長房村精一君、刑事局長古田佑紀君、矯正局長鶴田六郎君、入国管理局長中尾巧君、外務省大臣官房領事移住部長小野正昭君、総合外交政策局国際社会協力部長高橋恒一君、厚生労働省大臣官房審議官鈴木直和君及び海上保安庁長官縄野克彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木秀典君。
佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。
 私、前回もお尋ねをしておるんですけれども、例の大阪高検の元公安部長、三井環元検事ですね。さきに犯罪事実について起訴があった。その後、余罪について、私が前に質問中は捜査中であった、それについて追起訴の決定がなされたということでございます。恐らくこれでこの関連の事件の処理としては終局を迎えたのかなとも思うんですけれども、そうであるのか。そして、三井環、今は被告人ですけれども、被告人に対する、今は被疑事実ではありません、起訴事実ですね、犯罪事実、その件数。
 起訴状が、残念ながら本物が私のところになく、見ていないものですから、ここで確認をさせていただきたいと思います。本人の起訴された事案の件数、それから罪名ですね。いわば起訴事実と言ってもいいと思いますけれども、それを明らかにしてください。
古田政府参考人 ただいまお尋ねの件につきましては、大阪地方検察庁におきまして、去る五月の十日、電磁的公正証書原本不実記録、同供用罪、詐欺罪及び二件の公務員職権乱用罪により公判請求いたしまして、さらに、同月三十日、収賄罪及び二件の公務員職権乱用罪により追起訴をしたものと承知しております。これをもちまして、検察当局におきましては、刑事事件として取り上げるべきものについてはその捜査処理を終えたと聞いております。
 事案の公訴事実の要旨、これを御説明申し上げた方がよろしゅうございましょうか。(佐々木(秀)委員「はい、簡単に」と呼ぶ)はい。
 まず第一回目の起訴の件でございますが、公務員職権乱用のまず第一点が、自分が買い受けの申し込みをした競売物件に関しまして、その実質的所有者である暴力団組長の素性を知るために、職権を乱用してその組長の所属する暴力団組織の活動状況等に関する捜査資料を不正入手したというのが一つでございます。
 同じく職権乱用について先に申し上げますと、第二の職権乱用は、ただいま申し上げました物件の買い戻し交渉の相手方である暴力団関係者の素性等を知るため、自己の職権を乱用してその前科調書を不正に入手したというものでございます。
 それから、電磁的公正証書原本不実記録、同供用、詐欺につきましては、ただいま申し上げました物件を競落後暴力団組長が親族名義で買い戻すという契約を締結した上、その舎弟である暴力団関係者らと共謀の上、競落に要する登録免許税を不正に免れるため、みずから上記物件に虚偽の住民登録を行い、これを利用して区役所から登録免許税率の軽減を受けるための証明書をだまし取ったというものでございます。
 次に、五月三十日の起訴に係る分について申し上げますと、収賄につきましては、自己の検察官としての職務に関し、暴力団関係者から六回にわたり酒食等の接待や女性との情交の機会の提供を受けるなどのわいろを収受したというものでございます。
 それから、公務員職権乱用につきましては、一つは、贈賄者である暴力団関係者の依頼に応じ、自己の職権を乱用して他の暴力団組員の前科調書を不正に取得したというものです。公務員職権乱用の二つ目は、自分が取得しようとしていた競売物件に関し、これを占有していた暴力団組長らの素性を知るため、自己の職権を乱用してその暴力団組織の活動状況等に関する捜査資料を不正に入手したというものでございます。
佐々木(秀)委員 もう一点確かめておきたいんですけれども、収賄の関係については、高級なクラブなどでの接待が複数回に及んでいるということなんですけれども、金員の授受、現金などの授受ということはなかったんですか。
古田政府参考人 ただいま申し上げたように、酒食の接待、それから女性との情交の機会の提供を受ける、その情交代金等の提供、これを暴力団側が負担してそういう機会の提供を受けているわけでございますが、ただいま申し上げた以外の直接の現金の収受というような行為は認められなかったと承知しております。
佐々木(秀)委員 最初の起訴が五月の十日ですか、何件か起訴されたわけですけれども、その時点で、この三井被告人、それからその弁護団、弁護人も、本来こんな事件は事件の重さからいうと大したことはないんだと。それにもかかわらず検察が三井氏を逮捕し、身柄を拘束したというのは、かねて彼が摘発しようとしていた、いわゆる内部告発的な、検察庁のいわゆる調査活動費の不正使用などをめぐる内部告発を彼がやろうとしていた。この調査活動費についてはまた後でお聞きするわけですけれども、彼はマスコミなどに頻繁に情報を提供したり、あるいは自民党のあの野中元幹事長とも会ったり、それから私ども民主党の現在幹事長である菅直人議員にも接触を求めてきて、実は人を介してその種の資料を送ってきているわけですね。それで会いたいということも言っていたということだそうであります。
 これについてはまた後ほど申し上げますけれども、菅直人議員は会ってはいません、慎重な対応をしていたんですが、そういうこともあって、三井元検事が逮捕された日というのは、実は、マスコミとの打ち合わせのもとに三井氏がテレビ出演をするということが決まっていた日であったということもあり、いわば検察の三井の口封じのための逮捕であったということを言って、弁護団はこの逮捕あるいは立件について批判をしているわけですね。三井氏もなかなか強気な発言を依然としてしているようなわけですけれども、しかし、加えて今度の追起訴に及んで、やはり現職の検事、しかも相当な役職にある者が暴力団の関係者としげく会ったり、そこと話し合いの上で一定の自分の利益を得ようとしたり、あるいは接待を受けていた、これはゆゆしい問題だろうと私は思います。
 それからまた、登録免許税率の軽減を受けるという問題も、あるマスコミなどの評価では、いや、たかだか金額的には四十数万で大したことはないじゃないか、こう言っているようですけれども、これもまたゆゆしい問題。一般の民間人ならともかく、こういう役職にある者が不正な手段を用いてこういう不正な利得をすることなんというのは、これはとんでもないことで、私は、この部分でも本人たちの言い分は、これが事実であるとすれば通らないだろう、これは起訴されるのは当然のことだろう、こう思っているわけです。
 調査費の問題はちょっと後に置いておきますけれども、このような、言ってみれば世間の常識から考えられないような行動をする、こういう検察官が随分長い間それぞれ検察の実務についており、しかもここまでの要職にあったなどということについては、やはり検察庁はたるんでいるという批判を免れないだろうと思うんですね。
 それで、法務大臣もこれに対してそれぞれの責任を問う処分をなすっているわけですけれども、特に、検事総長に対して戒告処分をした、これは今まで例のなかった初めてのことだとも言われているわけですね。大阪高検の検事長、次席検事については減給処分などもなされているということでありますけれども、まず、減給処分の方は、要は給与を削減するということですからわかるんですけれども、検事総長に対して大臣がなされたという戒告処分というのは、その内容はどんなものだったんですか。ただ、あなた戒告にしますよということだけなんでしょうか。ちょっとわかりにくいものですから、その具体的な内容と、懲戒の処分としては戒告というのはどのぐらいの処分、位置づけになるのか、含めてお答えをいただきたいと思います。
森山国務大臣 検事総長というのは内閣の任命なものですから、私からこのような措置が必要であろうということを上申いたしまして、最終的には閣議で決定していただいたわけでございますが、おっしゃるように、検事総長に対しては戒告ということでございます。
 戒告と申しますのは、国家公務員法第八十二条において定められました懲戒処分の一つでございまして、人事院規則におきまして、「その責任を確認し、及びその将来を戒めるもの」とされております。今回の検事総長に対する戒告も、その責任を確認してその将来を戒めるという趣旨でございまして、これは、先生も御指摘のように、今までなかった、前例のない厳しい措置であるというふうに、私はもちろん、検事総長、さらに検察一同がみんな厳しく受けとめているという状況でございます。
佐々木(秀)委員 大臣としては、その戒告の申し渡しをするときに、どういう表現を用いてそれをお伝えしているんでしょうか。それを具体的にお聞きできませんか。
森山国務大臣 閣議によって戒告処分ということが決定いたしましたということで、先ごろの三井元検事の事件は大変遺憾でありまして、本人の資質が非常に特異なものであったということはわかるけれども、検察全体として身を引き締めて、姿勢を正し、国民の信頼を回復できるようにぜひ努力してもらいたいというようなことを申しまして、戒告ということを申し渡したわけでございます。
佐々木(秀)委員 いずれにしても、今までも検察官の不祥事というのはたくさんあるわけだけれども、その中でも非常に際立って特異な、しかも好ましくない事案だと思うんですね。こういう人が長年検察実務にあり、要職にあったということ自体がやはり問題で、そこに監督責任ということが問われることになるんだろうと思うんですけれども、少なくとも、検察の信頼が非常に低下したことは間違いないと思います。これを何とか信頼を回復するために、こういうような再発はもちろんあってはならないことですけれども、再発防止の措置、それから検察の信頼回復の措置、これについて、先日の法務委員会で大臣は一応のそれに対する大綱といいますか、それをお示しいただいたわけですけれども、もう少しその点具体的にどうするつもりなのかということをお示しいただきたいと思います。
森山国務大臣 この件に関しまして再発防止策といたしまして、先日私から検事総長に対しまして、検察庁職員の綱紀の保持を徹底すること、検察官の人事評価のより一層の適正化を図ること、検察組織の再点検を行うことなどを具体的に指示いたしました。
 さらに、本日の午後、臨時の検事長会同を開催いたしまして、私から直接各検事長に対しまして、検察庁職員の綱紀の保持を徹底するよう改めて厳しく指示したいというふうに考えております。
 今後とも、再発防止に万全を期することによって国民の信頼を回復するべく最大の努力をしたいと思っております。
佐々木(秀)委員 これは本当に、相当具体的に考えてもらわないと困るんですよね。
 そういう法務大臣の指示を受けて、検事総長も、綱紀の粛正を初めとして検察の刷新といいますか、人事の評価の問題などについてもいろいろな具体的な措置を講ずるということを記者会見などでしているようですけれども、検事総長はきょうはお見えでありませんから、かわって法務省の幹部にお伺いするしかないんだけれども、例えば、これは最高検が中心になってやるということになるのかもしれないけれども、検察庁としては具体的にどういうようにしようとしているのか、この辺についてはどうでしょうか。
古田政府参考人 お尋ねの点につきましては、検察庁におきましても大変深刻に受けとめて、大臣の御指示に基づきいろいろな観点から再発防止についての措置を検討するとしている状況でございます。
 まず第一点として、とにかく検察庁職員が、暴力団関係者や刑事被告人、こういうふうな国民の疑惑を招くおそれの強い者との交際は厳に慎む、こういう気持ちを徹底させるということがまず第一点でございます。
 さらに申し上げますと、今回の事件の背景として、三井元検事が、競売物件を中心とした不動産取引を繰り返して、蓄財というか財テクに走る中で、検察官としての使命感を喪失していったというふうなことがあるように考えられるわけでございます。
 そこで、検察当局におきましては、最高検に次長検事を長とする検討会議を設けまして、個人の自由な経済活動に属する分野ではあるものの、不動産や株等の取引についても、検察庁職員はやはり一般人よりも厳しく考えるべきではないか、そういうような点も含めまして、どのような措置をとるかということを、おおむね二カ月以内に綱紀保持の方策を策定して、これを公表して実施するということで現在検討中でございます。
 第二点として、検察官の人事につきまして、三井元検事についての問題点を早期に把握できなかったということの反省を踏まえまして、より多角的な観点から人事情報を収集し、これを統一的に把握するなど、人事評価の一層の適正化を図って、その評価に基づいて適切妥当な人事配置を行う必要がある、これが痛感されるわけでございまして、こういう点も、最高検に設置される検討会議におきまして、特に人事評価を含めた人事のあり方についての改善策を検討することとしております。
 それから三番目の点といたしまして、これは検察庁と申しますよりも法務省が直接ということになりますけれども、検察庁の保持する前科情報がございますが、これについて、これまでもそれが不正に利用されないように専門の担当者に取り扱わせるというようなことをやってきたわけですが、今回の事件を機会といたしまして、前科照会の事実を事後的に確実に把握できるよう、関係する大臣訓令等を改めるとともに、前科照会の記録がコンピューターの記録としても残るようなシステムの改修も行うことを考えているということでございます。
 次に、検察庁の庁舎管理に関しまして、これは、暴力団員等関係者が私的なことで面会に来ているというふうな実情もあったことも踏まえまして、庁舎管理を徹底するということでございまして、検察当局におきましては、面会簿等による検察庁の庁舎に出入りする人物のチェックをさらに徹底することとしております。
 最後に、これはいろいろな点で網羅的なことになると思いますけれども、検察組織、今回はそのあり方がいわば問われるというふうな事態になったわけでございまして、これを再点検する必要がある。そういうことで、「検察庁の運営について、国民の声を聴取し反映させることが可能となるような仕組みを導入すべきである。」これは司法制度改革審議会の意見でございますが、そういうふうな意見の趣旨も踏まえまして、最高検におきまして、各界の有識者からの意見を拝聴できるような場を設けまして、いただいた意見等を検察活動の基本的なあり方全般に生かしていく、そういう検討のための措置をとるということを現在検討していると承知しております。
佐々木(秀)委員 今局長からも御指摘がありましたように、さきの司法改革審議会でも、司法の閉鎖性、特に裁判所あるいは検察庁の閉鎖性ということはつとに指摘をされていて、その透明性を拡大しなさい、あるいは国民の参加を求める方法を考えなさいということを指摘されているわけですね。検察部内以外の人たちが検察の仕事に関与できるというのは検察審査会ぐらいしかない、あるいは検察官適格審査会ぐらいですかね。これではやはり足りないと私は思うんですね。
 お話があったように、検察改革の一環としては、もっと広く外部からの意見を聞くような機会、これを制度的につくる必要があるだろうと私は思う。恐らく検察でも、今度のこの法務大臣からの指摘も受けて、そういうことに努力をするものだと私は思いますけれども、具体的にそれをどうするか。今のお話だと、検討を二カ月ぐらいでやるということですから、その成果がどういうようになっているのかということはまたお聞きしたいと思いますけれども、とにもかくにも、閉鎖的であっては私はいかぬと思うんですよ。
 これからお聞きする調査費の問題もそうだけれども、内部だけで処理をしようというようなことでは私はいかぬと思うんです。そういう閉鎖性が逆に、この三井元検事のようなおかしな検事の出来も招くということにもつながってきているんじゃないか、そんなふうに私は思われてなりませんので、ひとつ心して、検察の刷新のために関係者は努力をしていただきたいということを特に要望しておきます。
 そこで、本件に絡んでのもう一つの問題である、検察の調査活動費、調活費ですけれども、三井元検事は、これもまた非常に特異だと思うんですけれども、盛んにマスコミにリークしたり、あるいは自分が告発状まで起案をして、四国のある新聞社の社長から特定の検察官を告発したり、これを調活費の不正流用などということでやっているんですね。自分がマスコミに登場してもいいし、あるいは国会に参考人として出てもいいということまで言ってきたというんですから、ちょっといささか常識を疑うようなところはあるんだけれども、先ほど申し上げましたように、私どもの幹事長の菅さんのところにも資料などを送ってきて、接触を求めてきている。
 そして、ある週刊誌によると、菅さんが彼とも会った上で、衆議院の法務委員会で質問をするというようなことまで段取りができているんだということを言って、それを真に受けて書いている週刊誌などもあるわけですね。実は、私なども菅さんからそういう相談を全く受けておりませんし、私どもの民主党の理事も全くそのような相談を受けていないので、その点は三井元検事の全くの思い込み、あるいは週刊誌もきちんと取材をしないで書いたんだろう、こう思っております。
 しかし、そのことが書かれていたものですから、私も菅さんに確かめましてお話を聞きましたら、確かに送られてきて接触も求められてきたけれども、その資料についても信憑性に疑わしいところがあったり、あるいは客観的だとは思われないようなものもあるので、それに関して、法務省に関連する資料の提出を求めて、取り寄せて検討もしてきた、直接に自分が会ってというようなことは避けてきたというお話でございました。その資料を私もちょうだいしたんですけれども、菅さんはそういう点では大変慎重だったと思うんですね。自民党の野中さんは一時間ばかりお会いになっているそうですけれども、ちょっといささか配慮に欠けたんじゃないかな、そんなふうにも思います。
 しかし、それにしても、この調査活動費をめぐる問題というのは、かつての他の省庁の諸謝費だとか食糧費などということも、不正に使用ということで、オンブズマンなどから大分問題にされたこともありました。そういう一環で、例えば仙台の市民オンブズマンも、この検察の調査活動費については、情報公開法に基づいてその内容請求をしているというようなこともあるようですね。
 これが、実際にこういう費目のお金があって使われていることは公然のことだろうと思うんですけれども、時間がありませんけれども、この三年間ぐらいの調査活動費の予算の額、これは予算に計上されているわけですけれども、この推移がどうなっているか、これをお知らせください。
古田政府参考人 過去三年間というお尋ねでございますが、平成十一年度からの三年間を申し上げますと、平成十一年度は約三億二千二百万円、平成十二年度は約二億二千六百万円、平成十三年度は約一億五千九百万円、こういう数字になっております。
佐々木(秀)委員 ちょっと前になりますけれども、平成十年は五億円を超える予算額が計上されていたとも聞いているんですけれども、その点はどうですか。
古田政府参考人 御指摘のとおり、平成十年は約五億五千万でございました。
佐々木(秀)委員 非常に減額されてきているんですね、それに比べると。それだけ使い道が違ってきたということになるのかと思うんだけれども。
 この調査活動費というのは、今全体の予算額をお示しいただいたのだろうと思うんだけれども、これが最高検察庁を初め、八つの高等検察庁、それから全国に地方検察庁が五十あるのかな、それに全部それぞれの調査活動費というのが各検察庁ごとにあるということになるんだろうと思うんだけれども、その配分はどこで決めるんですか。
古田政府参考人 最高検を含む各検察庁に対する配分は、これは法務省で決めております。
佐々木(秀)委員 法務省で決めているわけね。法務省の刑事局ですか。
古田政府参考人 これは、予算の執行に関することでございますので、官房会計課の方で決めております。
佐々木(秀)委員 それで、菅さんが法務省の方からいただいた資料などで、かなりのものが、各検察庁のが一覧が出ているんですけれども、この中身を見ても、アバウト過ぎるようなところが確かにあるんだね。例えば弁当代という費目があって、この弁当代に検察庁によっては相当使っているところもあるし、あるいはゼロというようなところもあるんですね。そして、支出額を見ると予算額が全部使われているような記載になっているというような、まことにこの辺はわかりにくいようなことにもなっているんです、確かに。何に使われたかこれだけでは全くわからない。そういうところからいろいろな三井元検事が指摘をするような疑惑がやはり生み出されてくるところがあるんじゃなかろうか。非常に秘密性に富んでいるというようにも思われるわけですね。
 この調活費について、森山法務大臣は、参議院の五月二十三日の質疑のときにこのようにお答えになっていますね。「これまで調査活動費につきましては、各検察庁におきまして、それぞれ責任者である検事正等が管理するようにするなど、適切な執行を確保するための方策が取られてきたところではございますが、」と言って、その後で、「個々の支払において、検察庁の長である検事正等のほかに必ず次席検事を実質的に関与させ、検事正等と次席検事による相互チェックが図られるようにしておりまして、」こういう御答弁があるんですね。ということは、各検察庁で検事正それから次席などがその使途などについては相当知っているということのようですね。
 問題の三井元検事ですけれども、この人は、昭和六十三年に高知地検の次席検事をやっている。それから、平成五年には高松地検の次席検事をやっている。そして、その後平成十年に名古屋高検の総務部長で、平成十一年の七月からは大阪高検の公安部長、こういう要職についている。次席もやっているわけですね、地方検察庁で。だから、おれは何でも知っているんだぞというのは、確かにそうかなとも思うわけですね、その大臣の御答弁とあわせて。
 そこで、彼が盛んにいろいろなことを言っている内部告発の問題というのがマスコミなどの非常に興味を引き、関心を引く、こういうことになっているんだろうと思うんです。刑事局長のお話だと、その調査活動費がだんだん金額が減ってきている。これは、コンピューターの関係だとか、いろいろ理由を言っているようだけれども、それだけでは私はないと思うんで、そういうことから、こうした点での疑惑をどうやって晴らしていくか、国民の皆さんの疑惑だとか疑念にきちんとお答えをするアカウンタビリティーということが私は必要になってくると思うんですね。臭い物にふたをするということではだめだと思うんです。
 そこで、最高検の中にですか、監察担当検事というポストを置くんだ、そしてこの調査活動費使用の実情などについて調べ、今後も適正に使われるかどうかを点検するというような構想をお話しになっておられるようですけれども、これは具体的にもう少し、どうするのか、どういうようなスタッフでどういうようにしようとしているのか、これをひとつお答えいただきたいと思うんです。
古田政府参考人 ただいまお尋ねの件につきましては、そのような方法を採用するということで、そのこと自体は決めたわけですが、それを具体的にどうすれば最も実効性が上がるものになるかというような点などにつきましては、現在検討中でございます。
 ただ、大まかに申し上げますと、やはり経験豊富な検事をそういう役目に充てて、そして検察官だけでは当然足りないところもございますので、そのほかの職員にもこれを補佐させる、そういう体制を考えております。
 さらに、監察の方法としては、調査活動費の執行を含む予算執行などにつきまして随時各検察庁に報告を求め、あるいは現地に赴いて調査を行う、その結果を検事総長に報告する、そういうふうな役割を果たさせるということが考えられているものと承知しております。
佐々木(秀)委員 いずれにしても、さまざまな疑念が国民から出されるとすれば、それに対してきちんと答えていただく必要があるだろうと私は思います。
 菅議員のところに三井元検事から、ことしの春だそうですけれども送られてきた文書の中に、「内部告発文書」というものがあります。これは、署名は三井氏の署名ではなくて、「正義を求める法務・検察組織の一員から」というようなことになっていて、これは平成十一年四月二十五日の日付になっているんですけれども、これに調査活動費の使い方などをめぐって具体的に検察官の名前なども挙げて、こういう不正な使い方をしているとかとあげつらっているわけですね。
 いずれにしても、三井元検事、これから裁判になるわけですけれども、場合によると保釈請求が出てくるかもしれない。これはいつまでも閉じ込めておくというわけにはいかないわけですね。その口もガムテープであかないようにしておくというわけにはいかないわけで、必ずしゃべる機会は出てくるだろうと思う。そうすると、彼のこういうような今までのやり方からして、必ずまた、どこでかはわからないけれども、いろいろ言い立てるだろうと私は思うんです。その場合に、それをすべて事実無根だと言って一概に否定するというだけでは済む問題ではない。やはり、それぞれのことについて、彼がもしもあげつらうとすれば、それに対してきちんと対応していくということが法務当局としては必要になってくるだろうと私は思うんですよ。もしも指摘が事実だとすれば、事実として認めて、その責任もとるというところまで覚悟しないと私はいかぬだろうと思うし、もちろん事実無根だというので否定できるものは否定しなければならないけれども、それには相当なやはり根拠を持った説得性がなければいけないと思うんですね。だから、そういうことも考えながら、そのことについて国民の皆さんが非常に注目しておりますから、十分に心して対処してもらいたいと思うんです。
 まだお聞きしたいこともございますけれども、そろそろ時間なんですね。その辺について最後に法務大臣の御決意といいますか、それをお伺いして、質問を終わりにしたいと思います。
森山国務大臣 今佐々木委員から御指摘ございました件につきましては、告発がなされまして、捜査当局におきまして所要の捜査を遂げまして、不正流用の事実が認められなかったということで不起訴処分といたしたものでありまして、検察審査会におきましてもその結論が是認されております。
 この事件の不起訴の理由につきましては、個別のケースでございますので今まで詳しいお話は申し上げなかったんでございますけれども、検事正らが告発されたという事案の特殊性にかんがみましてあえて御説明申し上げますと、告発状では、元検事正らが、年間数百万円の調査活動費のほとんどすべてを、高級料亭等における一晩十万円から三十万円の私的な飲食、遊興代に消費していたとされておりましたが、所要の捜査の結果、そのような事実は全く認められないということがわかったわけでございます。
 それで先ほど申し上げたような結論となり、検察審査会におきましてもその結論が妥当であるということを認めていただいたものでございまして、これからこの問題はまたどのように蒸し返されるかわかりませんが、いかなる場合でも、この件に関しては胸を張って、絶対そういうことはなかったと言うことができるというふうに私は考えております。
 調査活動費についての今後のことにつきましては、先ほど刑事局長が申し上げましたようなさまざまな注意をさらに加えまして、厳正に、適正に行うよう注意をしていきたいというふうに思っております。
佐々木(秀)委員 さきには則定さんの問題などもあって、確かに検察幹部の行動あるいはお金の使い方などについても不信を招いているということは私はなきにしもあらずだと思うので、それに対してきちんと説明ができるような対応をやっていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
園田委員長 水島広子君。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 本日も、まず大臣に選択的夫婦別姓の問題についての質問から始めさせていただきたいと思います。
 昨日の記者会見で、大臣が政府としてのこの法案提出を断念したと述べられたというふうに伺っておりますけれども、まずそれが本当であるかどうかも含めまして現状を教えていただければと思います。
森山国務大臣 選択的夫婦別姓については、水島先生初め多くの議員の方、また世論の中でも、大変支持していただく、積極的に進めろよというお話もたくさんいただいてまいりまして、世論調査もそのような傾向を示していたわけでございます。
 したがいまして、法務省といたしましても、そのような方向でぜひ政府提案をしたいという考えを持ってまいりましたが、政府提案をいたしますのにつきまして、まず与党の御了解を得なければなりませんが、この問題については、自民党初めほかの党の中にも、いろいろ議論がなお十分に詰まっていないというところがございまして、特に自民党におきましては大変熱心な御議論を重ねてきていただきました。部会長その他、関係の議員の皆さんには大変御苦労をいただいたわけでございますが、まだ今の段階では一つの立場に意見を集約することができないというようなお話をお聞きいたしましたので、これは政府提案をするということは困難かなというふうに思ったところでございます。
 そのような状況であるということは私としては大変残念でございますけれども、政府提案という形でこれをお願いするというのは難しいかなということをきのうちょっと申し上げたわけでございます。
水島委員 例えば先日提出されました郵政関連法案のように、議論が一定の結論を得られないままに提出に踏み切られたという法案もこの内閣にはあるわけでございますけれども、なぜ郵政関連法案にはそれができてこの選択的別姓にはできないのかというあたりはいかがなんでしょうか。
森山国務大臣 郵政の法案とこれは全く質の違うものでございますので、同じようにというのはちょっと無理かなと思いますし、特にこの選択的別姓の問題は、家族のあり方とか、そのことに対する国民の意識とか、そのような問題に深くかかわっていることでございますので、ちょっと郵政と同じには論じられないというのが基本にあるかと思います。
水島委員 ただ、本当に構造改革ということで申しますと、私は、ある意味では最も重い法案なのではないかとも思っておりますし、郵政とは違う問題では当然ございますけれども、この点に関してもしっかりとリーダーシップを発揮されて、多少の反対論はあっても、正しい方向性であると信じられて、毅然と政府として提出されることを本当に心から期待申し上げていた立場でございます。
 今回、与党の了解が得られなかった、意見を一つにまとめることができなかったということでございますけれども、反対される方たちの御意見というのはいろいろなところで今までも伺ってきておりますけれども、今回主に反対されていた方たちの御意見はどのような論拠であったのか、そして、それらに対して法務省としてどのような説明や説得をされてきたのかということを教えていただきたいと思います。
房村政府参考人 夫婦別氏制度に反対する根拠といたしましては、種々ございますが、やはり一番大きいのは、家族のきずな、一体性が損なわれるのではないかという点、それからもう一つ、親子が氏が違うことによって子の福祉に悪影響を及ぼすのではないかということ、それから、やはり夫婦が同じ氏を称するのは我が国の伝統である、軽々に変えるべきではない、大きく言いますと大体その三つが主要な反対論かと思います。
 私どもとしては、これらにつきまして、まず、家族のきずなを弱めるという点につきましては、家族のきずなあるいは一体性というものは法律で氏の統一を強制するということによって成立するようなものではない、やはり家族を構成する人々相互の愛情あるいは思いやりというものによって一体性というのは保たれるはずだということを御理解いただきたいという説明をしてきたところでございます。
 それから、子の福祉の点でございますが、これにつきましても、同氏にすることが非常に困難で、やむなく事実婚のままいらっしゃる方々もいるわけですが、そういう場合には子供の法律的地位についても非常に悪影響を及ぼすわけでありまして、そういったことと比べれば、別氏にして安定的な法律婚を達成するということにした方が子の福祉にとっても積極的な意味があるわけでございます。
 また、親と氏が違うということによっていじめに遭うのではないかというような御懸念も示されたところでございます。そういう懸念も全くないとは思えないわけでありますが、ある意味では、まさにそういうような差別意識をなくしていくということこそが求められているのではないか。やはりそういう多様な生き方が世の中にあるんだということを社会が受け入れて、そういう社会にすることによって子の福祉に悪影響を及ぼすようなことを防いでいくということこそが求められているのではないか、こういうような御説明もさせていただいているところでございます。
 また、伝統という点につきましては、確かに明治以来この同氏制度がとられてきたことは事実でございますが、さらに昔をさかのぼれば、明治に夫婦同氏制度がとられるまでは日本においては別氏の制度が長く続いていたわけでございますし、これについては、必ずしも日本において同氏だけがとられていたわけではない、こういうような御説明もしてきたところでございます。
水島委員 本当によい御説明だと思います。
 ところが、今議場からもやじが飛んでおりますように、このようなすばらしい御説明を伺ってもなかなか説得されない方が今多いというのがこの結果を招いたのではないかと思いますけれども、大臣の率直な御感想として、反対議員という方は説得可能だと思われますでしょうか。そもそも説得が可能なのか、あるいは、そのような議員が国会からいなくならない限りこの法案というのは成立しないんだろうか。このあたり、市民運動をされている方たちも運動論の焦点をどこに置くべきかということでずっと悩んでいらっしゃるわけですけれども、率直に大臣はどうお考えになりますでしょうか。
森山国務大臣 今、民事局長から御説明申し上げたような議論で反対していらっしゃる方は、もう最初からそうなんですね。
 それで、この話が表に出てきてから、平成八年の法制審議会の答申から考えますと六年近くたっているわけでございますが、その間にそのような議論をずうっと続けてきまして、最近では、選択的というのを例外的というふうに表現して、内容もそのようなやり方にしてはどうかというような案もお示しいたしまして、御理解いただく方が次第にふえてはいらっしゃるんですけれども、どうしても、どんなやり方でも絶対反対とおっしゃる方がまだかなりの数残っておられまして、その衝に当たっていただく党内の関係の議員の皆さん方には大変御苦労いただいております。説得というのは大変難しいのではないかというふうに思っております。
水島委員 そのような現状分析を踏まえまして、大臣としてこの事態をこれからどういうふうにされていくおつもりかということをお伺いしたいと思います。
 きのうの記者会見では、議員立法に期待したいというような趣旨のことをおっしゃったと伺っておりますけれども、議員立法といえば、私たちも既に継続審議中の法案を提出している立場でございますけれども、具体的にどの法案をどういう形に成立させていくということを念頭に置かれて、議員立法に期待したいというふうにおっしゃったんでしょうか。
森山国務大臣 先生方が御提案いただいている法案があるということは承知しておりますが、私といたしましては、現在、政府提案をいたしたいと考えていた内容が最も現実的で、一番ふさわしいといいましょうか、ベストの案だというふうに思っておりますので、そして、それを支持していただく与党の先生方、またあるいはほかの党の先生方もかなりの数いらっしゃるというふうに聞いておりますものですから、そのような形になっていただければ大変私としてもありがたいなというふうな感じでございます。
水島委員 本当にこの成立を長年待っている方たちからすれば、当然政府提出が最も望ましいですけれども、議員立法でも何でもいいからとにかく成立させてくれというのが本音の意見であると思いますので、引き続き大臣には、ぜひしっかりとこの運動の先頭に立って御尽力いただけますようにお願い申し上げます。
 さて、本日は、もう一つの民法改正の積み残した方の要素でございます非嫡出子の差別の問題についてもお伺いしたいと思います。
 二〇〇一年三月二日、予算委員会の第三分科会で私が質問をしました折の高村大臣の答弁でございますけれども、
  また、平成八年二月に、法務大臣の諮問機関である法制審議会から、嫡出である子と嫡出でない子の相続分の同等化を図る旨の答申が出されておりますが、この問題につきましては、家族制度のあり方や国民生活にかかわる重要な問題として国民の意見が大きく分かれていることから、今後の議論の動向を見守りながら適切に対処していく必要があると考えております。
  それなりに合理的な理由がある区別であるのかな、こう思っておりますが、これは、世論調査なんかしますと、直すことについて反対の方が多いんですね。特に女性の方に多いという結果が出ておりまして、この問題について、余り政治的主導というよりも、やはり国民の世論の動向を見つつ決めていく問題なのかな、こういう感じを持っております。
このように答弁されているわけでございます。
 ところが、実際に私が直接お会いした方にこの非嫡出子の問題を子供の視点から説明をし直しますと、大体の方は、女性であろうと男性であろうと、それは確かにおかしな法律の構造だというふうにおっしゃるわけです。
 このような現状と世論調査の結果との乖離を踏まえまして、大臣は、まず、世論調査ではなぜ反対意見が多いというふうに分析されていらっしゃいますでしょうか。
森山国務大臣 御指摘のとおり、嫡出でない子の法定相続分の問題は国民の意見が分かれているというふうに思います。
 現行の制度は、被相続人が相続分の指定などをしなかった場合におきまして、法律上の配偶者との間に出生した嫡出である子の立場を尊重するとともに、他方、嫡出でない子の立場をも配慮して、法律婚の尊重と嫡出でない子の保護の調整を図ったものというふうに考えております。
 法改正に対して反対する立場は、このような現行制度を支持する立場であろうかと認識しているわけでございまして、世論調査の話をされましたが、これも平成八年の世論調査の結果でございますので、それからまた数年たっておりますからあるいは多少の変化があったかもしれませんが、この問題については、先ほどの選択的夫婦別姓とはまた違った内容のものでありますので、これを一度に論ずるのはむしろかえって議論が紛糾するもとになろうというふうに考えまして、今のところは、これはこの次というふうに考えているところでございます。
水島委員 今大臣がおっしゃいましたように、この問題は複雑な構造となっておりまして、私も、その世論調査の結果と、また実際に自分自身が人を説得するときの状態を踏まえて考えますと、世論調査の結果では法律婚を守るという大人のレベルの問題と子供の人権の問題が混同されているのではないかと思っておりまして、これらを切り離す努力をする必要があると思っております。
 今の民法は、当事者である親は何も法律上の差別を受けずに子供のみにその影響が及ぶという、本当に奇妙な構造になっているわけでございます。
 先日、五月八日から十日にかけまして、ニューヨークで国連子ども特別総会が開かれまして、そこでの採択文書「子どもにふさわしい世界」の宣言の一番目に、子供最優先ということが掲げられております。子供に関する政策では子供の利益を最優先に考えるということがそこに書かれているわけでございますけれども、法律婚を守るという大人側の事情に合わせて子供の問題を放置するということは、まさにこの宣言に反すると私は思うのでございます。
 また、この点については子どもの権利委員会からも既に勧告も出されていることでございますけれども、今このまま放置するというのはある意味では行政不作為ではないかというくらいに私は子供の立場から思っておりますが、何とかその大人の問題と子供の問題を切り離して国民が考えられる、そのような啓発活動をした上で世論調査をまたしていく必要があるのではないかと思いますが、この啓発活動についてはどのようにお考えになられて、また何をしていかれる予定でいらっしゃるか教えていただきたいと思います。
森山国務大臣 先ほど申し上げましたように、この問題も確かに重要であるということは私も理解しておりますが、最初にお話が出た選択的夫婦別姓の問題とこれを一緒にすると非常に事が紛糾してしまうと思いましたので、分けて別々に考えるということを先生おっしゃいましたが、そのためにも一つ一つ別々にやっていった方がいいというふうに思っているわけでございます。
水島委員 今、具体的な御答弁はいただけなかったのですけれども、法律婚は何らかの形で守られる仕組み、夫が婚外交渉をしてもうけた子供に対する、婚外交渉そのものについての問題というのはまた別のレベルの話だと思いますので、この問題は本当に子供の権利、あらゆる子供が生まれながらにして差別を受けないという当たり前な子供の権利に立って冷静に考えられるような、そんな啓発活動をぜひお願いしたいと思います。
 また、この点については折に触れて伺ってまいりたいと思いますけれども、今回、この国連子ども特別総会に出席をしたのは外務省と文部科学省だけだったと聞いておりまして、法務省も子供の権利に関する施策に大きくかかわっている立場として、今後はぜひこのような会議に法務省からも御出席をいただきたいと思います。そして、本当に国際レベルの子供の人権感覚というものをまた法務省の中でも議論していただければと思っております。
 子供の立場からということで、最後に、養育費の問題について一言お伺いしたいと思います。
 厚生労働委員会で母子寡婦福祉法の改正案が今後審議されようとしているわけでございまして、この中では、児童扶養手当の削減が大きな論点となっております。経済的な問題ということでいいますと、離婚家庭については、やはりかねてから言われておりますように、養育費の問題も極めて重要でございます。本来扶養義務がありながら離婚したからその義務を果たさないということでは、親子の関係というのは離婚したことで消えるものではございませんので、この養育費の問題は非常に重要だと思っておりますけれども、養育費の取り決めがされてもなかなか支払いが行われていないという現状を踏まえまして、法務省としてこの問題にどのように取り組んでいくおつもりか教えていただきたいと思います。
森山国務大臣 養育費の取り立てにつきましては、法務省の所管しております強制執行制度に関しましても、養育費の支払い日が到来するたびに強制執行の申し立てを繰り返さなければならないという問題点が指摘されているわけでございます。
 法務省では、現在、権利実現の実効性を高める等の観点からの担保・執行法制の見直しの作業を行っておりますが、その一環といたしまして、養育費の履行確保のための強制執行制度の見直しについても検討を行っております。その具体的なやり方としては、支払い日がまだ到来していない将来分の養育費なども含めて、一括して債務者の将来の収入に対して差し押さえをすることができる制度が検討の対象となっております。この点につきましては、担保・執行法制の見直し作業の中で、引き続き鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。
水島委員 ぜひ前向きに御検討いただきたいと思いますし、その際に、離婚をして子供を抱えている母子家庭のお母さんというのは、ただでさえ子供を抱えて働いて忙しいという立場でございますので、手続のために仕事を休んだりですとか、そういった負担をかけないような仕組みをぜひ考えていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
園田委員長 西村眞悟君。
西村委員 自由党の西村でございます。
 夫婦別姓に関してですが、この場は、やはり法務大臣としての考えを述べる場だ、党内の部会での御意見を述べていただく場ではないのだろうと思いますね。それから、大臣がよく夫婦別姓について、世論調査等の結果を踏まえて、理解が深まってきたと。しかし先ほどの答弁では、説得は困難だろうとおっしゃいましたですね。理解が深まってきたというのは、理解していない人間は、知性があれば当然そうなるのに知性が足らないのでいまだ理解できない、こういう前提で申されているんです。私は、夫婦別姓は日本ではすべきではないという考えを持っておりますが、夫婦別姓を推進するという方の考えは理解しております。しかし、私は政治家としてそれは不可であるという判断をしておるんです。まあそういうことですよね。
 それで、政府として提出してない問題に関して、市民運動の先頭に立つとかいうことで、ここでうなずかれることはないのです。ここは私的な意見を闘わせる場ではないのです。議院内閣制を機能さすために、政府と国会が、ここで公的な見解を我々がただす場なんです。
 さて、公的な見解をお聞きしますが、東シナ海に沈んだあの不審船ですね。あれは、殺人等の犯罪捜査のために捜査しなければならない証拠物件である。しかも、あの中にはロケット砲があったことは事実であり、機関砲があったことは事実であり、よく訓練された工作員が乗ってきたことも事実であり、大量の覚せい剤を日本に持ち込んだ後の船らしき逃げ方をしたということも事実であります。
 つまり、我が国の治安に重大な影響を与え、その治安を維持するために解明しなければならない証拠の宝の山であります。法務を担当する責任者である大臣として、この船は引き揚げねばならないのか、それとも引き揚げなくてもいいのか、御判断、御見解をいただきたいと思います。――副大臣ですか。大臣は退席されるから、退席されるまでは大臣がお答えください。退席されることはいいですよ。それから副大臣にお願いします。
森山国務大臣 昨年の十二月に発生いたしました御指摘の東シナ海不審船事件につきましては、この不審船は、海上保安庁巡視船を銃撃するなどした後、中国の排他的経済水域内におきまして海底に沈没したものと承知しております。
 現在、海上保安庁におきまして同事件に関して捜査を継続しているものと承知しておりまして、その捜査の一環として、中国側との調整を図りながら、沈没した不審船の船体の引き揚げに全力を傾注しているということでありますので、その作業を見守ってまいりたいと考えております。
 なお、検察庁におきましては、海上保安庁から同事件の送致がなされた場合には、法と証拠に基づきまして適切に対処するものと考えます。
西村委員 法務をつかさどる責任者として、この船は引き揚げねばならない、そうではない、いずれなのかとお聞きしておるんです。
森山国務大臣 先ほど申し上げましたように、海上保安庁におきましてその引き揚げに努力をしているということでありますので、その作業を見守っているというところでございます。
西村委員 引き揚げねばならないと法務大臣として判断しているのかどうか、お聞きしておるんです。
森山国務大臣 捜査をいたしますためには引き揚げなければならないというふうに感じておりますが、今、海上保安庁がそのために努力をしているということでありますので、引き揚げられることを期待しているというのが状況でございます。
西村委員 先ほどは、説得は困難であるとか、夫婦別姓に関して随分歯切れのいい答弁をされておるんですから、国家の法務に携わる責任者として、捜査するためには引き揚げねばならないのであるというのではなくて、捜査するためには引き揚げねばならないと思っておられるのかどうかということをお聞きしておる。簡単な質問だと思いますがね。なぜ明確にお答えいただけないのですか。時間が限られていますから、よろしくお願いします。
森山国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、捜査をするためには引き揚げてもらわなければできませんということで、海上保安庁が努力していただいておりますので、その結果を見守っているというところでございます。
西村委員 それなら、海上保安庁、なぜ今まで引き揚げないのか。引き揚げる技術的な可能性というか、私は可能であると判断しておりますが、仮に、あれは不可能であるというなら不可能だという答弁をいただきたいのですが、可能であって、しかも引き揚げない。犯罪捜査である、これは速やかに公務員として職務の義務を果たすために引き揚げねばならないのだ。これを引き揚げずに潮流にさらされるまま放置するということは、不作為による罪証隠滅もしくは犯人隠匿である。陸の上では事実そのような嫌疑を受けて県警本部長が裁判にかけられたこともあるということで、なぜ引き揚げないのかということを御答弁いただきたい。
縄野政府参考人 現在、五月の上旬に潜水調査を行いまして、その結果、船体がどのような状況であるか、引き揚げるとすればどのような工法、引き揚げ方で引き揚げるべきかということを検討し、その一方で、中国のEEZとして扱っている海域でございますので、中国の関心事項に私どもとして所要の説明をしているところでございます。
西村委員 いつまで所要の説明をしておるんだ。排他的経済水域において、あの不審船の引き揚げは海洋法条約において何ら障害にならない。そういうこともわからずに交渉しておるのか。国民の命がかかり、治安がかかり、宝の山である。何をやっておるんだ、税金泥棒かと言われても仕方がない。今の答弁はなっていないんだよ。調査をやると、ばかなことを。六カ月以上何を調査しておるんだ。
 引き揚げられるけれども引き揚げていないという事実を前提にして、何が障害になっておるんだ。公務員として明確に答える義務がある。そうでなければ、国会をごまかし、不作為による罪証隠滅だ。不作為による罪証隠滅だ。なぜ引き揚げない。もう一度。
縄野政府参考人 政府の方針として、中国の理解を得て、適切に調整をして引き揚げたいということで行っておるものでございます。
西村委員 法務大臣は引き揚げるのが当然だと。これは政府の方針じゃないか。中国がはいと言えば引き揚げる、はいと言わなければ引き揚げない、大臣、これは政府の方針ですか。
森山国務大臣 海上保安庁において、引き揚げるべく中国と調整をしていただいているということでありますので、その努力に期待したいと思います。
西村委員 いやいや、中国と調整しているからいまだ引き揚げられないということでしょう、論理的には。だったら、中国がはいと言えば引き揚げられる、中国がノーと言えば引き揚げられないという前提なんですか、政府は。――いや、あなたはええやないか。大臣、どうですか。
森山国務大臣 交渉の具体的な内容について私も詳しく承知しておりませんので、どのような話し合いになっておりますのか、現段階のことはよくわかりませんが、一生懸命努力していただいているんだと思います。
西村委員 人ごとのように言うてもろうたら困る。これは法務の重大な関心事項である。だれが交渉しておるのかわかりませんがでは、法務大臣の務めは果たされない。夫婦別姓を推進する市民運動の先頭に立つのが法務大臣の使命じゃないんだ。(発言する者あり)まあそれも必要やけれどもな。そうやけれども、考えが反対の人間を、理解が足りないとか説得不可能だという答弁をこの場でされたら困るんだ。僕は理解して、政治家としてそれは不可という判断をしておるんだからなというわけです。本人がもう退席されるからこれ以上言ってもしゃあない。
 それで、御本人、法務大臣が退席されたので質問通告の順番どおり行きますが、その前に、先ほど手を挙げられたけれども、政府の見解に従ってという。今明確に答弁はされない、政府の見解とは何なのか。中国の同意がなければ引き揚げられないという政府の見解に縛られて引き揚げられないのかどうか。
縄野政府参考人 先ほど説明申し上げましたけれども、まず、技術的に、船体がどのような状況でどのような工法を使えば引き揚げられるのかどうかという点がございます。それから、作業として、波の高さでありますとか潮流の速さでありますとか、そういう障害になるものがございます。もちろん、台風の襲来ということも障害になります。一方で、先ほど申し上げましたように、私どもとしましても、国際法上、中国の明確な同意というものが規定されているというふうには思っておりませんけれども、EEZの沿岸国である中国に適切に理解を求めて、調整をした上で引き揚げに全力を挙げるというのが政府の方針であるというふうに承知をしております。
西村委員 もっと言いたいけれども、ほんまに仕事せえへんやつを相手にやっていてもしゃあないわ。引き揚げろよ。お国の、国民の治安がかかっておるんだ。もうやめておけ、引き揚げないんなら。もうじき台風シーズンですよ。本土は九月に来よる。あの海域は六月ぐらいから。またこの問題については質問しますからな。
 次に、このごろ犯罪捜査に関する報道を見て唖然とすることがあった。その一番の問題は、大阪の巡査部長が暴力団組員の捜査に関して、おまえはピストルを出せるだろう、持っておるだろう、出せと言って、彼が出した、それが訓戒処分を受けた。そして、検察官に銃刀法違反教唆で書類送検されて、不起訴になった。こんなことをやっておれば、銃を出せと言ったら所持の教唆になる、治安が維持できるのか。そして、社会に不法に蔓延している銃を回収できるのか。まさにみずからの捜査を萎縮さす処分を警察が得々としてやって、あたかも世間の非難をこれで免れたような顔をしておる。これこそ、みずからの職務を萎縮させ、ひいては治安を維持するという警察の国民から与えられた任務を放棄するものだ、こう思うんですが、なぜ、暴力団組員にピストルを出せと言ってそいつが出した、それを出させた巡査部長が訓戒処分を受けねばならないのか。この点について御答弁をいただきたい。
中村政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねの事案は、平成十二年十一月、大阪府警において窃盗事件で逮捕した被疑者が拳銃を隠匿しているとの情報があったことから、取り調べを担当した巡査部長が被疑者に拳銃の提出を厳しく促した結果、被疑者が暴力団仲間等に依頼して拳銃一丁を購入し、コインロッカーに放置させた上で警察に通報させ、これを押収した事案でございます。
 本事案については、厳正な捜査を遂げた結果、巡査部長は被疑者の取り調べにおいて被疑者との取引はなく、また拳銃の譲り受けを教唆した事実は認められなかったため、銃刀法違反は成立しないと判断しましたが、巡査部長の不注意な言動が結果的に暴力団組員等の拳銃の譲り受けにつながったことは否めず、事件を検察庁に送致して事件処理の公正さを担保するのが妥当であると考えることから、巡査部長を検察庁に書類送致したものでございます。
 また、捜査官としての適切を欠いたことから、今後の職務執行上の改善、向上を図るため、警察本部長訓戒の措置を行ったものであると承知しております。
西村委員 組員相手に、恐れ入りますがピストルを出していただけませんか、これで出るはずがない。こら、出せと言って震え上がらせて出すのが、それこそ職務に忠実な現場の警察官の姿である。しかも、先ほど、結果的に譲り受けをさせたと言いますが、そのプロセスを経て結果的にマカロフという非常に殺傷力の強いピストルが出てきたわけでございまして、これは捜査の目的を達したんじゃないか。
 今後、社会が、マスコミも、どういうふうな内部チクりがあるのかわかりませんが、いろいろな警察の揚げ足取りをするための報道、萎縮させるための報道があろうかと思いますけれども、そのときは捜査の本質に従って、毅然と反論すべきときは毅然と反論し、現場の士気を維持させていただきたい。そうしなければ、本当に、検挙率二割を割った我が国の治安維持は崩壊する、そう思うわけでございます。したがって、その点について何か御答弁がありましたらお伺いします。
中村政府参考人 事案の概要とこれに対する措置は先ほど御答弁申し上げたとおりでございますが、先生御指摘のとおり、私ども警察第一線の職員が士気に燃えて仕事をするということが大前提でございまして、私どももそのために適正捜査の推進に配意しつつ、必要な手当てをしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
西村委員 現場においては、丁寧な言葉、恐れ入りますがこれを教えていただけますかとか、そんなことが通用する相手ではない場合もあるわけでございますから、少々のことで角を矯めて牛を殺すようなことはなさらぬようにお願い申し上げます。
 さて、先ほど大臣が出ていかれましたが、私は二十分まで大臣がおるということで、大臣は委員長の許可なく出ていった。ああいうときは直ちに注意してここにおらせるようにしてください。
 それで、次の質問、時間が大分残り少なくなって、治安悪化に対し国民はいかに自衛策を講じればいいのか。犯罪検挙率は急速に悪化して二割を切った。凶悪犯罪は多い。そして、警察官も苦労されているように、昔は、応対が乱暴であれ何であれ、職務質問をして、振り向きざまに、致命傷になる傷害を与えるべく刃物を突き出すとか、そういうふうな外国人はいなかったんです。しかし、今はいるんです。それで、どうすればいいのか。
 これは副大臣とちょっとフリートーキングしたいんですが、アメリカ合衆国修正第二条は、規律ある民兵は自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保持し、また携帯する権利は、これを侵してはならないとある。そこで、我が国憲法上も、国民がみずからを守ることは国民の基本権である、こう思いますが、副大臣、どうですか。
横内副大臣 国民が自分を守ることについて、それは基本権かどうかということでありますが、正当防衛は、人間である以上これは当然保有している自然権的な権利であるというふうに思っております。
西村委員 そうです。そのとおり。そして憲法十二条には、この基本権を不断の努力によって保持しなければならないと書いてあるわけです。
 さて、ここから始まるわけです。したがって、極道が、また犯罪者が武器を携行するのが常態となってきた現代日本において、今副大臣が言った、国民はみずからを守るという基本権を憲法十二条の趣旨に基づいて実効あらしめるために武器を保持することも、アメリカ修正第二条の理念のとおり、基本権ではないか、こう思いますが、いかがですか。
横内副大臣 委員も御案内、当然のことでありますけれども、我が国では、特定の除外事由がある場合を除いて、国民が武器を保有することは、銃砲刀剣類等取締法で禁止をされているということであります。
 しかし、委員の御指摘がありましたように、最近、凶悪犯罪が大変に増加をしているという状況の中で、アメリカのように一般人の武器の所持を認めたらどうかという意見は当然あろうかというふうに思うわけでありますけれども、そこのところは、これは政策判断の問題ではないかというふうに私は思います。仮に、一般人に危険な武器の所持を認めたという場合には、逆に治安が悪化をする危険性も当然あるわけでありますし、また、我が国の犯罪の発生率というのも、国際的に見れば、例えばアメリカ等と比較しても、かなり低いという状況にあります。
 したがって、我々としては、今の段階では、一般人に武器、銃砲等の所持を認めるというのではなしに、警察等の取り締まり機関がその機能をもっと充実させて、そして一般人がそういうことまでしなくても済むような、そういった治安を実現していく努力をするということが大事ではないかというふうに考えております。
西村委員 我が国の政策判断は、国民がみずからを守るという基本権を持っておる、その基本権を行使する方法はアメリカと少々違うぞと。しかし、我が国のかたぎは持っていないけれども極道は持っていることは確かなんですよ。犯罪者が持っていることは確かだ。高校生のアルバイトの女の子がみけんをぽんぽんと撃ち抜かれて、だれがやったかわからないという事件はもう既に起きているわけですね。
 さて、それで、警察官が武器を携行する権限は、国民がみずからを守るのは基本権というふうな前提からすれば、国民の基本権を警察官に対する委譲によってそれが正当化されるのではないかというのが私の考えですが、副大臣はどうですか。国民とは全く関係なく、警察官が国民は持っていないという前提でピストルを持てるのかということなんです。僕は、国民がみずからを守り、アメリカ憲法に言う社会の平和を守り治安を維持する国民の基本権を警察に委譲して、警察をしてそれをなさしめているということになると思うんですが、いかがですか。
横内副大臣 国民のそういう基本権を警察に委譲しているというふうに考えるかどうかはともかくとしまして、国家が国民の生命財産を守る責務は当然あるわけでありまして、そういった国家の責務を達成するために、具体的な機関として警察とかあるいは海上保安庁とかが、あるいは防衛庁も含むんでしょうけれども、あると思います。したがって、警察である場合には、警察は国民の生命、身体の安全を確保する責務があるわけですから、その責務に基づいて武器を携行する、そういう権限を持っているというふうに我々は考えております。
西村委員 今の副大臣の御答弁はよくわかるんですが、有事法制の議論なんか見ていたら、前提、出発点を変えれば非常に明快になることを、今までどおりの出発点ですから、野党側の批判として、国民の権利をいたずらに国家権力が制限するという立論、反論が出てくるんですね。
 アメリカのFEMAの発想などはみんな、国民がみずからの社会の安全と平和を守る基本的権利を持っておるんだ、そのために開拓時代の以前は武器を携行する基本権を持っておる、今はそれを警察に委譲してやらしておるんだ、軍隊に委譲してやらすんだと。だからこの国民の基本権を実効あらしめるためにこういう緊急事態になればこういうことが必要になってくるんだ、これは国民の権利を実効あらしめるためにあるんだと。だから、警察のピストルは国民の基本権の委譲に淵源すると私は思うわけでございます。
 それから、我が国も戦前はピストルは各家に一定の要件で保持することができたと思いますね。アメリカはFBIの要員を飛行機に乗せておりました。イスラエルは常に飛行機にモサドを乗せております。それで、乗せなくなって、なぜ乗せなくなったかというと、アメリカで一日発着便数は数万を超えていますから、到底それだけの要員はできない。我が国は、平成十二年ですが、一日二千五百四十便が我が国の空を飛んで外国へ行ったり国内で行ったりしている。それから、船は、我が国は海外からの物資に頼って国を成り立たせているわけでございますが、この不可欠な物資の九八%は船で海を経て我が国に入ってくる。この二つの飛行機と船、この船長、幹部船員、機長、スチュワーデス等の乗務員に職務中武器を携行させるというふうな政策決断がぼつぼつあらねばならないなと私は考えておるんです。
 密室の機内で先っぽがフルメタルのこれを撃てば機体を貫きますが、貫かない弾頭もあるわけですから、こういう貫かない弾頭でハイジャック犯の行動能力を即座に奪うというピストルを携行しなければ、海外路線で、日本の飛行機は同じ料金を払っても安全ではない、なぜなら機長、スチュワーデス等は武器を携行していない、だから、我が国の航空産業は壊滅するんではないか、こういう観点からも考えねばならないのではないか。
 また、パナマ船籍の便宜置籍船も、前回、前々回質問した、中で日本人船員が殺されても、パナマ船籍であるから手出しもできない、ただ船長の警察下にあって、日本の港に入っても放置されたままだ、こういう状態ですから。
 やはり、船長、機長、そして乗務員等にはピストルを携行させ、機内、船内の治安は責任を持って守ってもらう。そして、もって運輸、交通の国家的な機能を維持してもらう。そのすべてに警察官を乗せるというのは無理でございます、財政上。これは国民がみずからを守るという趣旨からもかなったものだと思いますが、大臣、いかがですか。
横内副大臣 委員が御指摘がありましたように、航空機や船の中で不法事案が発生したときには、その秩序維持が重要な問題でありまして、航空法だとか、あるいは船員法なんかに基づいて、その機長は一定の抑止するための措置をとることができることになっておりますから、機長とか船長は一定の警察権を持っているわけであります。
 そういう船長の権限あるいは責務を達成するために一定の武器を保持することがどうかということでありますけれども、現行法でも、危険でない、例えばこん棒だとか、そういうような武器を持つことは多分できるんだろうというふうに思います。しかし、ピストル、銃砲類を持つということになりますと、これは銃砲刀剣類取締法違反になりますから現行法ではできないわけでありますが、そういったピストル類を機長だとか船長に所持をさせるかどうかというのは政策判断の問題でありまして、基本的には、やはり国土交通省あるいは警察庁といったところが十分協議をして検討する必要があるというふうに考えております。
 やり方として、委員が今、一々の船舶なり飛行機に警察官が同乗するというのは不可能だということをおっしゃいましたけれども、しかし、例えば今回のワールドカップでは、日韓を航行する船あるいは飛行機に警察官をそれぞれ両国で協議をして乗っけておりますし、そういうことは不可能ではないというふうに思います。
 そういうことも含めて、具体的に、船舶なり飛行機の安全確保のためにそういったピストル等を所持させるかどうかということについては、国土交通省、警察庁といった関係当局において十分に検討する必要があるというふうに考えております。
西村委員 これだけ銃砲がやみで出回る社会になってしまいましたな。警察官が持っているピストルというのはよく当たるのかどうかわからぬ。それから、適切に的に向かって当てるような訓練をされているのかどうかもよくわからぬ。それから、一発撃ったら百科事典みたいな書類を書かねばならないということになれば、警察官はピストルは持っているけれども使わない、余計危険だと。
 我々法務委員会においてピストルを試射させていただいて、委員長、それで、これやったら国民の税金で警察官に持たせてもいいだろうとか、そういうことができる自由な社会だったらいいんだけれども、それはできない。
 だから、当局にお聞きするが、本当に今のニューナンブは使いやすいのか。警察官、現場の方には使いやすいけん銃を所持させて、とっさのときに使いこなせるように訓練していただかないかぬ。これは十分今できておりますか。
 それから、とっさの場合に撃たねばならないことがある。そのとっさのことを、何枚も何枚も、何十センチもの書類をつくらねばならないというのは、これは苦痛そのもので、むしろそんなんだったら持たさない方がいい、警察官自身が殺傷されないと思うんですが、この点について、万全か、また努力中か、当局の状況をお知らせください。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、警察官が所持するけん銃につきましては、ねらったところに確実に着弾をして、故障も少なくていつでも使用できるような、そういうけん銃が必要であるわけでございまして、そういう意味で、職務執行に必要かつ十分な精度を備えたものを今整備しているところでございます。ニューナンブにつきましても、実験の結果、一定の精度を持っているというふうに考えております。
 そこで、訓練が大事なことも御指摘なとおりでございまして、大変緊急を要する、緊迫した状況のもとでけん銃の使用というものは行われるわけでございますから、けん銃の適正かつ的確な使用、取り扱いといったものを一人一人の警察官に十分習得をさせるということは大変大事なことでございまして、これにつきましては、警察学校の入校中、これは各級警察学校ございますが、あるいは警察署等の所属におきまして必要な訓練を計画的に実施をいたしております。
 具体的には、新たに採用された警察官に対しまして、根拠法令あるいは安全規則あるいは使用判断のあり方、正確な射撃技術等につきまして集中的な教育訓練をやっておりますし、第一線の警察官につきましても、地域警察官、制服警察官でございますが、こういうけん銃を使用する可能性の高い警察官に重点を置きまして、射撃場におきまして、実砲による訓練のほか、模擬訓練弾、あるいは訓練ビデオでいろいろな状況を設定いたしまして、実戦的な教育訓練を計画的に実施しているところでございます。
 また、けん銃使用がこれまで過度に抑制的だったのではないかと。ところが、今の犯罪情勢がこういう状況でございますので、やはり警察官として国民の生命、身体、財産を守る、あるいは自己の安全のためにも、けん銃を撃つべきときには撃つ、そういう観点から、いわゆるけん銃規範を改正いたしました。そして、この規範の改正に伴いましてけん銃訓練の指導体制の強化あるいは使用判断訓練の拡充を図っているところでございまして、今後も、とっさの判断ということもございますので、適正かつ的確に現場でけん銃が使用できるように訓練の強化に努めてまいりたい。
 また、実際に発砲した場合の報告書等の話も今ございましたけれども、こういうものにつきましても、本当に必要な書類だけに限るようにしてまいりたいということで今進めておるところでございます。
西村委員 質問を終わります。ありがとうございました。
園田委員長 石井啓一君。
石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。
 中国・瀋陽の領事館事件を契機に、難民問題に対する関心が高まっているわけであります。本日は、難民認定手続及び難民等の処遇といった問題を中心に質問をさせていただきます。
 まず、量的な問題でございますけれども、我が国の難民認定率自体は他の先進国と比べて遜色ないということのようでありますが、難民申請数自体は極めて少ないわけであります。
 例えば、UNHCRの二〇〇〇年世界難民白書を見ますと、一九九〇年代、すなわち一九九〇年から九九年の十年間の難民申請の数を見ますと、我が国の、これは数字は丸めてありますが、一千百名に比べまして、他の先進国の申請数はおおむね数万から数十万というレベルでございまして、けたが一けたから二けた違っているわけでございます。
 日本は、この通常の難民のほかにインドシナ難民を受け入れておりますけれども、この間のインドシナ難民の受け入れ数は、法務省の資料によりますと、私、計算いたしましたら、四千百名強でございますから、合わせても五千二百名強ということで、インドシナ難民を含めても、極めてこの難民の申請の数が少ないわけであります。
 これについて、これまでの国会答弁等では、我が国の地理的な状況、島国であって、海あるいは空からしか日本には来れない、そういった地理的な状況とか、難民発生国から我が国が非常に遠い、あるいは、歴史的、文化的にかかわりが少ない、こういったことから難民の申請数が少ないんだ、こういう分析をされておりますけれども、私は、果たしてそれだけなのだろうかという疑問を持っております。
 例えば、世界難民白書では、「人口移動と出入国を厳しく管理して民族的・文化的な同質性を維持してきた。」、こういうふうに指摘をされておりますし、また、UNHCRの日本・韓国事務所代表は、我が国は「UNHCRへの世界第二位の資金拠出国なのに、難民には閉ざされた国に見える」、こういう発言もされておるわけであります。我が国が難民受け入れに消極的だ、難民に対して冷たい国だ、こういう印象が、この難民申請数が少ない大きな理由の一つではないかというふうに私は考えているわけでありますが、この点についての御見解をまず伺いたいと思います。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
横内副大臣 御指摘のように、我が国の場合には難民の認定数が大変に少ないわけでありますけれども、それはやはり、難民認定の申請自体が少ないために認定数も少ないということだろうと思います。
 認定の申請が少ない理由としては、委員が幾つか御指摘になったとおりでございまして、欧米のように植民地等がなかったというようなことがあって難民の出身国とのかかわりが歴史的に乏しいだとか、言葉の問題だとか、難民が出ている地域とは非常に遠距離にあるということとか、あるいは、周囲を海に囲まれて海路か空路に限られているというような事情があって難民の申請自体が少ないために認定の数も少ないということになっていると思います。
 しかし、委員から御指摘ありましたように、難民認定率というものでいきますと、平成十二年においては約一四%ということでありまして、国際機関であるUNHCRでは、満足のいくレベルに達している、そういうふうに評価をされておりますので、国際機関がそういう評価をしている以上、難民認定に我が国の場合は消極的だというような、そういう国際的な印象が強いということでは決してないというふうに我々としては思っております。
 しかしながら、これは大変に重要な問題で、政府全体としても検討していかなければならない問題であると思いますので、法務大臣の私的な諮問機関である出入国管理政策懇談会に専門部会を設けまして、議論をしていくことにしております。
石井(啓)委員 難民認定率がほかの国と同じ程度だから消極的ではないということをおっしゃいましたけれども、私は、そこは少しよく考えてみなければいけない点じゃないかと思うんですね。
 確かに認定率自体は同程度なんですけれども、例えば十数%としましょう。百万人の申請者が来て十数%ということは、これは十数万人受け入れるということですね。我が国の場合、千人オーダーで十数%じゃ、百数十人、十年間でいえば。受け入れの申請者数がもう全然違うわけですから、認定率が同じだからといって、おのずから性質が違ってきていると思うんです。ある意味で、我が国に対して申請してくるというのは、いろいろな地理的な条件あるいは言葉の条件等ありながら、なおかつ日本にやってきた。そういう極めて少数な申請者に対しても他の国と同程度の認定率でよいのだろうか。ここは私は考えなければいけない点じゃないかと思うんですね。その点、どうでしょうか。
横内副大臣 委員の御指摘のような批判もあろうかと思います。したがいまして、先ほども申しましたように、法務大臣の私的諮問機関としてのこの懇談会の中に専門部会を設けて、従来の我が国のそういう難民政策の評価も含めて議論をしていただきたいというふうに思っております。
石井(啓)委員 もう一つ、認定率で指摘しておきたいのは、法務省の資料をいただいて、昭和五十七年から始まりまして、平成十三年までの二十年間、難民受け入れをやっているわけでありますけれども、その合計でいいますと、難民認定率、認定者と不認定者の合計に対して認定した人の割合、これは確かに一四%なんです。ところが、私、ちょっと気になって自分で試算をしてみたんですけれども、昭和五十七年から平成三年までの前半の十年間と、平成四年から平成十三年までの十年間、ちょっと比較をしてみたんですね、この二十年間。そうしますと、五十七年から平成三年までは、認定数百九十七名に対して、認定、不認定の合計数が七百二十五名で、認定率二七・二%なんですよ。ところが、後半というか最近の、平成四年から平成十三年を見ますと、認定者は九十四名に対して、認定者と不認定者の合計数が千二百八十七名で、七・三%なんですよ。ですから、一四%で他の国と同程度だというふうにおっしゃるんだけれども、実は、最近、直近十年間を見ますと、半分程度なんですよ。七%台なんです。ですから、我が国も認定を受け入れた当初は比較的頑張っていたようなんですけれども、最近はどうもこの認定率自体も下がっている。このことは、私は、答弁を求めませんけれども、指摘をしておきたいと思います。一四%だから他の国と同程度だ、こういうふうに自慢をして言える状況では最近はないよということは指摘をしておきたいと思います。後ろから、答弁を求めないのという声がありますから、せっかくの機会ですから、この点についていかがですか。
横内副大臣 今、私手元に五十七年からの、ずっと各年別のこの認定、不認定の数字を持っているのでございますが、確かに、前半十年間と後半十年間で比較をしますと御指摘のような数字になるわけでありますが、これを見ていると、認定についての姿勢といいましょうか、考え方がかなり違ってきているような感じがいたします。
 最初の、例えば五十七年、五十八年、五十九年なんかはかなり認定をしているんですね。その後ずっと、例えば平成六年、七年、八年あたりは認定者が一名というようなことになったりしている。しかし、最近、平成十年ぐらいからは認定の数もかなりふえてきているというようなことがありまして、これは社会情勢も当然反映をしていると思うんですけれども、認定についてのその姿勢というものが時代によって変化があるのではないかという感じはいたします。
 しかし、先ほど申しましたように、最近時点では、認定率がここ数年の間は非常に高くなってきているということは言えると思いますので、最近そういった認定率が落ちているというのも、ごく最近時の平成十一年、十二年、十三年という時点ではかなり高くなってきているということを御理解いただきたいと思います。
石井(啓)委員 いや、そんな高くないですよ、十一年、十二年、十三年を見ても。十一年は認定者、不認定者合計百九十三名に対して十六名ですからね。一〇%を切っているんですよ、やはり。細かいことはさておいて、余り自慢できる状況じゃないということはよく認識をしていただきたいと思います。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
 それで、決して難民の受け入れは消極的ではないというあれですけれども、先ほどのUNHCRの日本・韓国事務所代表の方の発言を御紹介しましたように、やはり、海外から見てそういう認識があるということは事実なんですね。それはやはり受けとめなければいけない。その原因は、一つは、難民認定手続が非常に難しい手続になっているんではないかということと、二つ目には、難民等に対する処遇が非常に冷淡だ、この二つが要因にあるんではないかと私は思うんですね。
 一つ、難民認定手続の方で申し上げますと、まず我が国の、いわゆる六十日以内に申請しなさいという、この申請期間が短過ぎるという批判がございます。また、難民性について、要するに迫害を受けるおそれがあるという、難民性についての並外れて高水準の立証が求められる、こういう批判がございます。これは先ほど紹介しました世界難民白書で指摘をされております。この点については、私は改善すべきではないかというふうに考えます。
 また、具体的な認定手続について申し上げますと、まず、難民調査官、これは今、現状では入国審査官から指名をされているようでありますけれども、長くて三、四年の人事だというふうに聞いておりますけれども、私は、この難民調査官というのは、やはり通常の入国審査とは相当業務の質が違ってきているというふうに思いますので、難民調査官の専門化をやはり図るべき必要があるというふうに思います。
 もう一つは、難民認定手続の透明化を図るということがやはり信頼性を高めるということで重要だと思うんですね。
 結局、難民認定というのは、迫害を受けるおそれがあるかどうかを認定するということですから、これは非常に難しい認定になるわけでありますけれども、その手続が信頼性を高めるためには、やはり手続の透明さを保証しなければいけない。そういった意味で、難民認定諮問委員会というのがかつては機能していたようでありますから、それを再活性化しまして、そういったものの活用によってこの認定手続の透明化を図るべきではないか、こういうふうに考えるわけであります。
 この点について御答弁をいただきたいと思います。
横内副大臣 幾つか御質問があったわけでありますけれども、第一点目として、申請期間が六十日というのが短いんではないかという御指摘がございました。
 しかし、迫害から逃れて他国に庇護を求める者は速やかにその旨を申し出るというのが通常でありますので、六十日という申請期間、二カ月でありますから、必ずしも短いというふうに言えるかどうか。しかも、法律上は、やむを得ない事情がある場合には六十日を経過しても難民認定の申請をすることができるということになっておりまして、現実にそういうものも認定申請を受理しておりますので、六十日というのにはそれなりの合理性があるというふうに思っております。
 それから、難民性について大変に高水準の立証が求められるという御批判もあるわけでございますけれども、難民であることの立証責任というのは申請人にある、これはUNHCRの難民認定基準ハンドブックでもそうされておりまして、これは国際的に、世界一般に、難民認定を申請する者がその立証責任を持つんだということになっております。そんなに高度な立証責任を課しているということではないというふうに私どもとしては思っております。
 それから、難民調査官についてさらに専門化を図るべきだという御意見でございますけれども、現在でもこの研修の実施というものはかなり強化をしております。難民申請の認定に当たってはかなり高度な、国際情勢だとか、そういった専門的知識が必要でありますので、研修の実施はかなり強化をしておりますけれども、さらに充実をしていく必要がある、こういうふうに思っております。
 それから、認定申請過程を透明化すべきではないかという御意見がございました。
 御指摘のように、難民認定諮問委員会というのはあるんですけれども、現在はこれは機能はしておりません。そういったものの拡充といいましょうか、そういうこともあるいは考えられるというふうに思いますけれども、いずれにしましても、御指摘のあった点は、一般的にいろいろな方面から御指摘を受けている問題でありますので、このたび設置をすることとした出入国管理政策懇談会の専門部会で十分、委員の御指摘の点を含めて議論をしていただきたいというふうに考えております。
石井(啓)委員 六十日ルール、例外事由があるというふうに御説明でありますけれども、これが極めて厳格に運用されているというふうに評価をされております。したがって、私は、六十日の申請期間はなるべく延長をすべきだと思いますけれども、まずは例外事由も柔軟に運用すべきだというふうに思います。
 それから、難民調査官についても、先ほど申し上げましたように、通常の人事で二、三年あるいは三、四年で交代するということでなくて、本来は高度な専門性を持っていると思いますので、そこでキャリアを積んでいくということが必要だと思いますけれども、人事上なかなか難しいということであれば、先ほど研修の充実とおっしゃいましたが、さらにしっかりとした研修を行っていただきたいというふうに思います。
 それから、先ほども言いましたように、難民認定手続の過程の透明化というのが非常に重要でございますので、なるべく、当局の判断だけでなく、第三者の意見を反映させるということが透明化の重要なポイントだというふうに思います。この点についてぜひ御検討をいただきたいと思います。
 続きまして、外務省の方にお尋ねをいたしますけれども、在外公館における亡命希望者の扱いでありますが、これが明確でないことが瀋陽での事件の原因の一つであるというふうに指摘をされております。
 緒方貞子前国連難民高等弁務官は、政治的迫害を受けた者は本国に送り返さないけれども経済難民と判断された者は送り返す、こういう姿勢を明確にすべきでないか、明確にすればかえって経済難民なんかは来ない、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、やはり在外公館における亡命希望者の扱い、今は何かケース・バイ・ケースというふうにお聞きしましたが、ケース・バイ・ケースだから、何か姿勢がはっきりしないところにああいうあやふやな対応になってしまったのではないか。この反省を踏まえて、私は、この姿勢は明確にすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 御質問ございました在外公館に亡命希望者等が参った場合の取り扱いでございますけれども、こういった場合の取り扱いにつきましては、在外公館に対して一応の対応ぶりということは周知しております。
 ただし、ただいま御指摘ございましたように、このケースというのは、本当にいろいろな場合によって、具体的な事案ごとに状況が異なっておるわけでございまして、やはり基本的には個別の事案に応じましてケース・バイ・ケースで対応せざるを得ない、そういうのが実態ではないかと思います。
 その上で、あえて一般論として御説明をさせていただきますと、我が国としましては、庇護を求めてこられた外国人の方の人定事項等の事実関係の確認ということは、もちろんまず第一にしなければいけないことでございますけれども、そして、その方の希望等を聴取する、そして、その後は、その方の生命または身体の安全が適切に確保されるかどうかという人道上の観点、それからさらには関係国等との関係など、総合的に検討しなくちゃいけない点がございますので、そういったことを考慮いたしながら具体的な対応について検討するということになるわけでございます。
 御指摘ございましたいわゆる経済難民でございますけれども、経済難民という言葉は比較的よく使われておるのでございますけれども、この概念につきまして、一般的には、貧しさから逃れて、より経済的に豊かな環境なり状況を求めようとする、そういう外国人のことを指すというふうに理解されていると思いますが、法律的にはこれは正確な定義というものは現在存在していないわけでございます。
 いずれにいたしましても、我が国に難民として来たい、そういう希望を持っている外国人につきましては、我が国におきまして、法務省の所管によりまして、難民条約及び出入国管理及び難民認定法によりまして、適正な取り扱い、対応というものが行われているわけでございます。
 以上でございます。
石井(啓)委員 我が国で難民申請をする人のことを聞いているのじゃなくて、在外公館で亡命希望の方の扱いを聞いたのですけれども、今ちょっと答弁ありましたけれども、在外公館に亡命を求めてきた方のまず身柄をきちんと保護した上で、事情をお聞きする、そのことが徹底されていなかったから、あの瀋陽の事件が起きたんじゃないでしょうか。
 まず、少なくともその点をきちんと徹底するということは、私は、あの瀋陽事件の反省で直ちに行わなければいけないことだと思いますけれども、その点、ちゃんとされているのでしょうか。
高橋政府参考人 従来からも、我が国の公館の保護下に入ったそういう外国人につきましては、先ほど申し上げましたような手続ということをするように徹底しております。
 今回、結果的にはああいう形で適切な対応ができなかったという側面があるということは事実でございまして、今回のあれを踏まえまして、新たに、きちっとした対応ができるように周知をしているというところでございます。
石井(啓)委員 その点については、大いに反省をしていただきたいと思います。
 続きまして、難民等に対する処遇でありますけれども、まず、難民認定申請者、申請をされている方の処遇について指摘を申し上げたいと思いますけれども、UNHCRの二〇〇一年の第三号のニュース、ここでこういう指摘がございます。
  難民認定の申請からその判断が出るまで平均二年以上かかるが、その間、申請者のほとんどが自前の乏しい資金に頼らざるを得ない。また受け入れセンターがないため、自分で住む場所を探さなければならない。日本の高い家賃は彼らが直面する最も深刻な問題のひとつであり、なかには公園などで野宿する申請者さえいる。日本語ができなければ職を得るのは非常に難しく、また難民申請者の多くは就労許可を持っていない。保険などに入れないので、病気になっても医者に行かずに症状をひどく悪化させてしまうケースも少なくない。日本語ができず、周囲とのコミュニケーションがとれずに孤立感を募らせている人もいる。
ということを指摘した後、「難民や難民申請者の多くが、「日本は難民に冷たい」という。」こういうことが紹介をされているわけであります。
 この申請者の処遇というのが今非常に不十分である。まず、特に在留資格のない状態で難民申請をされた方については、法的立場が安定化していませんので、いつ送還されるかわからないというような心理的な不安感がありますし、在留資格がないわけですから、当然のことながら、職を探すこともできない、職につくこともできないということで、経済的にも大変逼迫をしている。医療等の問題でも大変大きな問題を抱えている。
 ということでありますので、まず、UNHCRのニュースでは平均二年以上というふうに指摘をされていますが、一年から二年という分析もございます、こういった長期の審査期間をできるだけ短縮化していくということと同時に、在留資格のない状態で難民申請をされている方についても、これは全員に与えるかどうかというのはもう少し検討しなきゃいけない部分がありますが、一定の条件下で在留、就労許可を与えてはどうか、こういうふうに思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
横内副大臣 御質問の、難民認定を申請した者で我が国への在留資格がないということになりますと、当然法的地位が非常に不安定だということになるわけであります。そこで、そういった難民認定申請中の不法滞在者に在留資格を付与することにしたらどうかという議論はあるわけであります。ただ、一律に、難民認定を申請したからといって直ちに在留資格を付与するというようなことになりますと、難民認定の申請手続が乱用される、難民認定申請だけやっておけばその間は在留資格があるということになりますと、乱用されるという危険性もありまして、適正な出入国管理行政が阻害されるおそれもございます。
 そこで、どういう条件のもとに御指摘のような法的な安定性というものを図っていくかは、今後幅広く検討する課題だというふうに考えておりまして、先ほど来申し上げておりますような大臣の私的懇談会の専門部会において、重要な課題の一つとして議論をしていただきたいというふうに考えております。
 それから、審査期間が長いという点の御指摘があるわけでありますけれども、なるべく一年以内に決定を行うように努力をしてきております。ただ、個々の事情が異なっているということがありますし、また、申請者から出された証拠を検討したり、あるいは難民調査官が独自に証拠収集などの所要の調査を行ったりして、慎重な調査を行っているものですから時間がかかる事例もありますけれども、できるだけこの審査期間の短縮についても今後努力をしていきたいというふうに考えております。
石井(啓)委員 難民認定手続を乱用する者が出てくるのではないかと。これは確かにそういう可能性があるんですけれども、だからこそ、その審査期間を短縮化するということは、その乱用の可能性を少なくするということにもつながりますので、一年以内ということでありますけれども、半年以内ぐらいにできるような体制をぜひ整えていただきたいと思います。
 難民調査官というのは全国で四十名程度ということでありますけれども、今後、我が国に対する難民申請者も、最近の傾向からしましてもふえる傾向にございますし、そういった人員の体制の強化とあわせてこの審査期間の短縮化ということをお願いしたいと思いますし、また、現在、真に難民としての資格を持っている方、この難民申請者が不利益をこうむっている事態はやはり放置すべきではないというふうに私は考えますので、その点についての検討をよろしくお願いしたいと思います。
 最後でございますけれども、今度は、難民として認定された方、条約上の難民というふうに言われておりますけれども、この方の処遇がやはり不十分であります。
 インドシナ難民に対しては、日本定住を促進するために、政府全体として支援体制がとられています。内閣官房にインドシナ難民対策連絡調整会議が設置されておりまして、一定期間、国際救援センターという定住促進施設に滞在をしながら、日本語教育とか職業訓練、職業の紹介を受けたり、あるいは施設を退所後も、アフターケアとしていろいろな相談員が相談に応じる、こういう総合的な援助が行われている一方、条約上の難民という方々には全くこういう対応は行われておりません。昨年の三月には、このインドシナ難民と条約上の難民との異なる取り扱いに対して、国連の人種差別撤廃委員会からその違いが指摘をされて、改善が勧告をされております。
 私は、条約上の難民に対しても、インドシナ難民と同様の日本語教育とか就労あっせんとか情報提供等、総合的な生活支援体制をやはり早急につくるべきではないかというふうに考えます。外務省、お答えをいただきたいと思います。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、我が国が定住受け入れをいたしておりますインドシナ難民に対しましては、昭和五十四年七月の閣議了解に基づきまして、関係省庁の協力のもとに、定住促進施設、国際救援センターにおきまして、日本語教育、職業あっせんなどの定住支援策を実施してきております。一方におきまして、難民条約上の難民として認定されましたいわゆる条約難民につきましては、インドシナ難民のような定住支援策は現在までのところ講じられておりません。最近実施されました難民等の生活実態調査によりましては、こういう方が、情報の不足、コミュニケーション能力の制限などによってさまざまな生活上の困難に直面しているという状況が明らかになってきているところでございます。
 これまでも、いわゆる条約難民の方につきましても、国際救援センターへの入所の希望が出されまして、そして我々の方で調査した結果、日本語が不十分、かつ生活基盤が非常に容易でない、そういうふうに判断されるような場合につきましては、人道的配慮から例外的に入所を認めた、そういうケースはございます。しかしながら、昨年の人種差別撤廃委員会からの指摘もございますし、今後、この条約難民にいかなる総合的な支援を行う必要があるか、また可能かということにつきましては、政府全体で幅広い視点から検討を行っていく必要があるというふうに考えております。
石井(啓)委員 条約上の難民も国際救援センターに入所させたケースがあるということですが、これは極めてレアケースですね。だから、極めてレアケースなことを、事例があるということで、それで十分だということには全くならないわけです。
 実は、今私が指摘したことは、もう既に二十一年前に指摘をされているんです。昭和五十六年五月二十八日、我が党の草川昭三委員が衆議院の外務委員会において、現在、内閣にインドシナ難民対策連絡調整会議が存在するが、単なるインドシナ難民のみではなく、広く難民全体の問題にこのような恒常的な機構が必要ではないか、こういう質問をしておりまして、当時の外務省の国際連合局長はどういうふうに答弁しているかというと、日夜考えなくてはならない問題と自覚している、今後ともその点については関係各省庁の考え方、外務省の考え方、そういうものをあわせて検討していくべきと考えていると。
 日夜考え続けて二十一年間、いまだ何にも手当てがなされておりません。今はこの難民問題に焦点が当てられているから今御検討されているという答弁ですが、ほとぼりが冷めて、これからまた放置されるということはまさかないと思いますけれども、その点について最後に確認いたします。
高橋政府参考人 今回の事件におきまして、我が国の亡命、難民受け入れの政策というものが改めて問われている状況でございますので、この難民の認定の方の我が国における処遇、取り扱いにつきましては、政府の中で幅広く本格的な検討をしていきたいというふうに考えております。
石井(啓)委員 先送りをしないようによろしくお願いいたします。
 以上で終わります。
園田委員長 瀬古由起子君。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 このたび、瀋陽の総領事館における事件で日本政府の人権感覚が問われました。また、従来から、入管業務については官僚的であるとか排他的であるといった批判が聞かれることがございます。改めて、出入国管理の基本的な任務について確認したいと思います。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 出入国管理行政につきましては、国際協調と国際交流の増進に寄与するとともに日本社会の健全な発展に資することを目的として、日本社会にとって有益である外国人につきましてはこれを受け入れまして、その一方で、好ましくない外国人を入国、在留させないことを一つの重要な任務とする行政であると考えております。これが委員御質問の出入国管理の基本任務の一つだろうというふうに思っております。
 入管法にも、本邦に入国し、または本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図ることと定めておりますので、これはまさにこの任務の一端を示したものと理解しております。
瀬古委員 公正な管理が行われているかどうか。
 実は私、ここで、愛知県下で起きたいわゆるインドヤの問題について、入管行政の問題についてお尋ねしたいと思います。
 インドヤの問題というのは、バクシーというカースト名を持つ一族と日本人とで成るグループが経営するインドヤという料理店で働いていたインド人コックが、厳しい労働にもかかわらず長期に給料を払ってもらえないために、昨年五月、店から逃げ出し、労働組合やボランティアグループの援助を受けてその賃金を請求しました。すると、逆に暴行を受けて、一人は暴力的に拉致され、六十時間にわたって完全に身柄を拘束された末、インドへ帰そうと相談し合った経営者らに仙台まで連れていかれ、強制的にインドへ帰らされてしまいました。帰国させられたNさんは今も、賃金問題の解決をして、引き続き日本で働くことを望んでおられます。ところが、事件後間もない昨年八月、短期ビザ申請を拒否されて、もとどおり日本で働くことはおろか、過去の未払い金の解決もできない状態になっているわけでございます。
 昨年五月の事件で、間もなく実行犯三人が逮捕されて、既に裁判で判決が確定しております。どんな判決が出たんでしょうか。
古田政府参考人 お尋ねの三名につきましては傷害罪で起訴をされておりまして、昨年の七月十七日、名古屋地方裁判所におきまして、三名に対しいずれも有罪判決が言い渡されており、確定しております。
 その判決での犯罪事実の概要を申し上げますと、被告人三名が、ほか一名と共謀の上、平成十三年の五月十五日、愛知県半田市内の飲食店及びその付近におきまして、被害者に対し、顔面等を殴打するなどの暴行を加え、約一週間の加療を要する傷害を負わせたということでございまして、被告人一名について懲役十月、三年間執行猶予、他の被告人二名につきまして懲役六月、三年間執行猶予の判決が言い渡されたものと承知しております。
瀬古委員 つまり、この事件は、この裁判は、Nさんに対する暴力ではなくて、Nさんが拉致されるのを阻止しようとした友人の労働者Tさんに対する傷害だけを立件したものなんですね。しかし、この事件の裁判記録を見ますと、検察の論告求刑では、労働条件が劣悪であったことからそこに勤務していた被害者が逃亡し、その奪還を図ろうと本件犯行に及んだものであり、その動機に酌量すべき点はないと述べております。また、被告側の弁論も、本件の焦点がNさんの連行だったとしております。
 そして、帰国後すぐ、Nさんが知人に手紙を出した。無理やりに白い紙に、仕事をやめ、会社をかわる等の内容を書かされて、無理やりサインさせられた、こういう手紙が来ているわけですね。
 一緒に襲撃されて傷害を負ったTさん、襲撃された店の経営者のBさんらの警察における供述調書でも、Nさんがどこかへ連れていかれたと言っています。そして、何よりも犯人のインデル自身が、襲撃する現場を前日に下見するなど、周到な計画、準備の上で、暴力的に連れ出したNさんを仙台まで連れていったことを供述調書で認めているんです。また、一連の行動を指揮していたのがバクシーと組んだ経営者グループの中野という人物ですけれども、その中野が、Nさんをインドに帰したことを報告してきたインデルに、警察が動いているから帰すと捕まると、拉致事件になることを恐れていた様子も明らかになっているんですね。
 こうして見ますと、これは刑法二百二十条の逮捕監禁に当たる、いや、実際には二百二十六条の国外移送目的略取に近いとも言えるんじゃないかと思うんです。それなのに、Nさんを拉致する際に起きたTさんへの暴行事件だけしか何で立件しなかったのか、警察はこれらの事件をもう決着済みと見ているんだろうか、このような素朴な疑問が生まれてまいります。
 そこで伺いますけれども、仮にこの事件が刑法二百二十六条、国外移送目的略取等に当たった場合は、その罰則はどのようになるでしょうか。
古田政府参考人 国外移送目的略取の罪の構成要件及び法定刑について申し上げますと、日本国外に移送する目的で人を略取し、または誘拐するということが国外移送目的略取の構成要件になるものでございます。その法定刑は二年以上の有期懲役でございます。
瀬古委員 もし二百二十条が加わり、またあるいは二百二十六条に該当すれば、インデルは即刻強制退去の対象になり得る重罪なんですね。そこで何とか逃れたかったということが考えられます。
 実は、バクシー一族の問題というのはこの件にとどまらないんです。一連の問題では、バクシーの一族と日本人の経営者のグループが一体で事に当たっているんです。それで、インドヤなど、労働者を雇用しているのは全国数十カ所とも言われるわけです。経営母体をさまざまに変えてバクシー系であることをカムフラージュして、開店と閉鎖を繰り返している。まずくなれば閉鎖して、またどこかへ行って開店する、こういう大変悪質なやり方をしているわけです。そして、先ほどの裁判記録を見ますと、バクシー関係者みずからも、不払いの実態や、それに耐えかねた労働者の逃亡が頻発していることを認めているんですね。
 そして、例えば富山では、救済に当たった若木さんという日本人がバクシーの脅迫を受けて警察に対処を求めたところ、初めはなかなか警察は本気にしなかった。ところが、その若木さんの携帯電話に脅迫電話がかかってきて、警察官がその電話を受け取って一部始終を聞いて、これは大変だということになって警備体制がとられた、こういう事態になっています。
 Nさんは、無理やり帰国させられた後も、バクシー兄弟の一人からパスポートをよこせと要求されて、インドの親族が誘拐されています。以前に豊橋で賃金支払いを要求したMさんに対しては、インドで本人やその家族がピストルを使っておどかされた、そういうことも日本のボランティアグループに今訴えられているんですね。
 もちろんインドの問題では日本の捜査が及ばない、もちろん日本ではかかわりができないという問題もございます。しかし、少なくともこういう重要情報は幾つか寄せられている。こういうものは関係当局にも届いているはずなんですね。そういう意味では、若木さん父子などは、入管事務所、警察、労働基準監督局などへ再三にわたって情報を寄せられて、適切な対応を何とかしてほしいともう何度も要請されているんです。関係当局はこれまでそれをどのように認識されて取り扱ってこられたのでしょうか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 個別案件に係ることでございますので、基本的にお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、私ども入管局といたしましても、適正かつ的確なあらゆる審査を実施するために、入管法に定められておりますところの各種申請が行われた場合とか、あるいは委員御指摘の、関係機関等からの具体的な情報があったときには適宜実態調査を行うなど、これまでも適正に対応してきたところでございます。
鈴木政府参考人 今御指摘のありました各種の案件でございますが、そういった問題については、監督署等に申告という形で具体的にお話が来ております。そういう問題について、労働基準法違反等の問題があれば、これは重要な問題でございますので、監督指導し、調査をして、具体的問題があればその是正を指導しております。
 まだ完全に是正が済んでいるというわけではございませんが、そういった問題については適切に対応したいと考えております。
瀬古委員 法務省は、今まで情報があった場合にはきちっと適切に対応していたと言うけれども、一方では厚生労働省は問題ありで、そういう意味では、それなりの対応をこれからも多分されるだろうと思うんですけれども、同じ役所だけれども若干対応が違うということがこれでもおわかりいただけると思うんですね。
 しかし、これらの事実は同じように情報として法務省にも上げられているわけですね。何でこんなひどい犯罪的なことがいつまでも放置されているのか。実はここにもいろいろ問題がございます。
 インデルの弟でインドヤ経営者のラリット・バクシー氏は、料理店の経営だけじゃなくて、IT関係にも大きくかかわりながら、日本商工会議所の日印経済委員を務める。経済、企業経営、文化、町づくり、宗教などの諸方面に旺盛に活動して、最近では愛知万博の名古屋における懇談会メンバーにも参加されています。いわゆる名士となっているわけですね。その中で幅広い人脈も築いておられます。片やインドでは、長男がインドで州警察の非常に高い地位にあります。
 それで、私はびっくりしたんですが、インデルらの事件でインド人やネパール人の労働者たちはどう言っているか。警察や検察に対する陳述書では異口同音にバクシー一族の怖さを語っている。ニューデリーあたりでまずみんな知っている有名人が今回の事件の犯人、バクシー・クマール・インデルやバクシーの一族だ、こういうふうに言っている。私が確かめたら、当時の担当領事はバクシーなんて知らないなんて言っていらっしゃったみたいなんですが、実際にはそこでは大変有名な方なんだそうです。バクシーの兄弟はインドの州警察のトップなので、もめるとインドの家族に対して殺したりすることができる権力者だ、実際に家族が殺されてしまった人がいる、陳述書でこのように書かれているわけですね。
 バクシー一族のゆゆしき労働者支配などにこうした威光や名声が利用されて、それによってやみの部分が隠ぺいされたんだとやはり指摘されているわけです。このようなことから、事件に対する日本の関係当局の対応までどうも鈍いなというように思われている。まさかそんなことがあってはならないと思うんですけれども、あえてお伺いします。どうですか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、ある人の威光や名声、そういうものがあるからといって不公平な取り扱いをしたり、あるいは有利な取り扱いをするというようなことは絶対あってはならないことだと思っております。
 私たちといたしましては、委員御指摘のような不公正、不公平な取り扱いということはやっておりませんし、今後ともやるつもりはございません。
瀬古委員 しかし、これだけいろいろ問題があったのに、なぜ法務省がきちっとそこに対処できないのかというのは大変不思議だと私は思うんです。
 そして、いよいよNさんが何とか日本に戻ってこようとします。そして、短期ビザを申請して、観光と書いた。ところが、本人は日本で働きたいと。戻って賃金問題を解決して日本で働きたいと言ったら、これが、観光と書いたということで目的と違うということで、日本に戻ってくること、入国を拒否されたわけです。Nさんは明らかに本人の意思に反して日本を出国させられたわけですから、その直後から再入国を強く希望されているんですね。そして、日本で働いていた当時の原状に復帰したいと。復帰させられるのが当然だと思うんです。だから日本で働きたいと言っている、それをぱっととらえて、そんなことはできないといって拒否をする。
 そして、もう一つの状況で私は大変不思議だと思ったのは、匿名情報が入って、この人はどうも今まで入国したときに経歴に問題があった、コック歴に問題があったというかなり詳しい情報が入った。何でそんな詳しい情報が入るのかというのは、それを知っているバクシーしか入らないわけです。そういう情報が入ったために、それも判断の材料にされて入国を拒否された、こういう状況があるわけですね。
 私は、こういう扱い方というのはやはりきちっと対処すべきだというふうに思うんですけれども、その点、このNさんがまず日本に帰って、そして賃金未払いを解決し就労が可能になった場合には所要の手続を経て働けるように、こういうふうに彼が考えて要請したんだったらきちっとそれに対応すべきだったと思うんですが、いかがでしょうか。
小野政府参考人 先生の御説明によりますと、ネタール氏を取り巻く状況には気の毒なものがあった模様でございますけれども、先生御指摘の原状復帰ということであれば、料理人としての就労ビザを申請されるということでしょうか、仮にネタール氏から申請があれば、内容を精査した上で、関係当局とも協議の上対処したいというふうに考えております。
 なお、委員御指摘の、短期滞在査証によってまず入国して、その後就労の在留資格に変更するという手続、これは法務省の所管事項でありますけれども、この点につきましては必ずしも容易なことではないというふうに承知しております。
瀬古委員 しかし、本人をめぐる大変不幸な状況を思えば、もっとよく本人から話を聞いてきちっとやはり対応すべきだというふうに私は思います。
 そのときに、どうしても事情がやはり複雑だということで、わざわざ日本人のボランティアグループ、神父さんなどがインドに行って、事情を説明したい、そしてNさんの身元を保証したいということでニューデリーまで行かれて、大使館に何度も面会を要求されたんですね。四回にわたって要求したんだけれども、それも拒否して会わない。何かあるんじゃないかということで、こういう不公正な扱い方というのは大変問題があったというふうに私は思うんですけれども、正確な審査というためには、少なくとも本人から事情を聞きながら、こういう面会を求めてちゃんと事情を説明したいんだという人についても会って丁寧に応じるべきだったと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
小野政府参考人 この点につきまして、我が方のインド大使館にも調査、報告をさせたわけでございますが、我が方インド大使館としましてはもちろん、来訪者、特に邦人の方が来訪された場合には、領事がお会いし、話を伺うということでございます。本件関係者の方が大使館に来られたときには、恐らく他の邦人援護業務のために、たまたま領事がお会いできなかったのではないかということ、それから、何度も来館されたにもかかわらず結果としてお会いできなかったとすれば、大使館としては遺憾なことであったという報告が接到しているわけでございます。なお、御指摘のバクシー一族関係者からこの査証発給等に関して大使館に働きかけはなかったという報告を受けてきているところでございます。
 なお、外務省としても、在外公館における領事業務において、来訪者等への丁寧な対応ということについては遺漏なきを期すよう引き続き指導してまいりたいというふうに考えております。
瀬古委員 バクシー一族からの働きかけがなかったのかどうかというのは、Nさんの経歴などで匿名の電話があったということをはっきり向こうの大使館が認めていらっしゃいますので、その事実もしっかりつかむ必要があります。じゃ、だれなのかということはよく考えればわかることで、そういう点でもやはり誠実な報告を私は求めたいと思います。
 そこで、大臣にお聞きしたいと思うんですが、Nさんは日本の労働行政や治安行政にかかわる事件で被害者になった人なんですね。日本がみずからの行政を振り返って、外国人が安心して滞在して、我が国の人々と共生して働くことができる国になる、こういう入管業務や外交上の基本的課題からしても、この際、ぜひ早急にNさんの入国を実現して、その訴えに関係当局も真摯に耳を傾ける、こういう姿勢が必要だと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
森山国務大臣 個別の案件についてお答え申し上げるのは差し控えさせていただきたいとは思いますが、一般的には、外国人が我が国に入国するに当たりましては、我が国の在外公館において入国目的に合った査証を取得するという必要がございます。査証発給は外務省のお仕事でございますが、査証が発給されてその者から上陸申請がありましたら、審査の上、適正に対応したいと思います。
瀬古委員 今のやりとりをお聞きいただいたと思うので、本当に適正に対応していただきたいというふうに思います。
 そこで、伺いますけれども、今、外国人労働者の弱い立場につけ込んだ経営者の雇用態度というか、同じ日本に滞在されている外国人でもそういう問題もございます。特に、バクシー系の企業の場合はどうなっているかというと、労働者側に違法性がないのに経営者の違法行為で労働者が仕事を逃げ出す。そして、そういう人たちは放浪生活になっちゃうわけですね。それで、ひそかに新たな職を探そうと思ってもなかなかできない、こういう状態の人たちがかなりいらっしゃいます。
 こういう雇う側の問題点などもきちんと視野に入れた必要な体制というのは必要だと思うんですけれども、政府の考えはいかがでしょうか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のような事案ということになりますれば、私どもといたしましても、適切、的確に実態調査を行わなきゃならないというふうに思っていますし、その実態を解明した上で適切に在留審査を行う必要は当然あろうかと思います。そのための必要な体制づくりというものはあわせて必要なことと思っておりますので、そういったことも含めましてこれからも努力してまいりたいというふうに思います。
瀬古委員 ここで私が今取り上げましたバクシー関係の問題では、被害者や救援者から何度も何度も繰り返し訴えがある、要請がある、そして労働基準法違反で入らざるを得ない、こういう状況になっているわけです。各地で、警察や労基署、入管などがそれにかかわって仕事をされているわけですね。その都度、バクシーの関与というのが出てくるわけですよね。そういう問題点は、率直な反省の上に新たな決意をきちっとして、この問題に取り組んでいただきたいと私は思うんです。
 そこで、法務大臣に伺いたいと思うんですが、こういう事件を通してみて、第二次基本計画で言う人権上の配慮とか排除と管理の論理に対して、日本人と外国人の共生が大事だ、このように今指摘されているわけですよ。その観点に照らして、こうした問題をどう考え、対応しなきゃならないというふうに思っていらっしゃいますでしょうか。
森山国務大臣 出入国管理行政の一つの重要な役割は、外国人の適正な入国、在留を確保するということによりまして、我が国の社会の安全と秩序を維持するということでございます。平成十二年三月に策定されました第二次基本計画におきましても、外国人労働者の円滑な受け入れを図り、不法滞在者に対しては早急に排除するよう強力に取り組むことといたしております。
 他方、個別の事案におきましては、日本人、永住者または特別永住者との身分関係を有するなど、我が国社会とのつながりの深い不法滞在者に対しては、人道的な観点を十分に考慮して適切に対応しているところでございます。
瀬古委員 とりわけ、働いている人たちの労働実態が本当に深刻だということについて、もっときちっと対処してもらいたいと私は思うんです。
 先ほど、裁判の記録の問題で、うちの事務所で調べてみてびっくりしたのは、公訴事実は傷害だけなのに、警察の調書の中ではバクシー系の企業の労働者管理の問題が大変な分量になっているんですね。どんなにひどいかということが、それを見ただけですさまじい内容になっている。
 賃金を払わなかった事実、帰国するときにも未払い分を払うことはなかった、金額などは空欄のままサインをさせた、それから、悪いことと知りつつ労働者のパスポートや外国人登録証を取り上げて管理していたこと、雇用契約書を偽造していたこと、次から次へと書いてあるわけですね。これは、雇用側の責任者である人が供述しているんですね。こういう状態になっています。
 ですから、傷害事件の周りにある労働基準法違反や入管法違反などの容疑は濃厚だと私は思うんですね、この企業の場合に。それをお互いに、ここまではうちだとか、ここまではうちでない、こういうようなやりとりが間々見られるわけです。
 入管の第二次基本計画では、必要に応じて相互の情報提供を密接に各省庁がやる、そして必要に応じて共同行動をとると。そういう点ではぜひ効果的な対策が必要だと私は思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。
中尾政府参考人 委員御指摘のとおり、第二次基本計画にはそのような記載がございます。不法滞在外国人については着実な減少を図ることを基本方針といたしまして、各種の施策を講じているところでございますが、私どもといたしましては、従来から、警察庁、関係機関と合同摘発を実施するなどの取り締まりを強化しているところでございます。不法就労外国人対策等関係局長連絡会議等の各種会議を通じて、密接な情報交換等も行ってきたところでございます。
 さらに、平成十三年、昨年の七月には、閣議決定により設置された国際組織犯罪等対策推進本部のもとで、関係機関との協力体制を一層強化いたしまして、今後とも効果的な対策を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
瀬古委員 最後になりましたけれども、そういう体制をやらなきゃならぬとなっているけれども、現場ではちぐはぐになっていて、これだけ情報がいっぱい寄せられているのに何ら手を打たないで、そしてネタールさんはもう外国へ、実際には拉致状態のまま何の手も打てなかった、こういう実態があると思うんです。ぜひ効果的な対策を進めていただきたいと思います。
 外国人が安心して滞在し、我が国の人たちと共生していくことができる町づくり、そして、平和で安全な社会秩序の維持のために、私は、ぜひ法務省や外務省や、また厚生労働省など、関係機関が本当に協力し合ってやってもらいたいと思うんですが、実際に現場に行ってみますと、人がいない、人が足りないという問題が率直にございます。
 そこで、最後に法務大臣にぜひ決意を伺いたいと思うんですけれども、とりわけ、今外国人の労働者や外国人の滞在者がたくさんふえているという段階で、新たなそういうための人の配置というのは大変大事だと私は思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
森山国務大臣 我が国の国際化に伴いまして、おっしゃるような問題がいろいろ出てきております。不法滞在者数だけ言いましても、平成十四年一月一日現在では約二十五万人と推定されております。これに対しまして、出入国審査や外国人の在留審査等に従事しております入国審査官は千二百六十八人でございますし、不法滞在者の摘発、収容、送還等に従事する入国警備官は千七十人でございます。
 法務省といたしましては、かねて入国管理体制の強化に努めてきたところでございますが、平成十四年度予算におきましては計百二十人の増員が認められておりまして、今の御時世では思い切った増員を認めたというふうに財政当局にもおっしゃっていただいておりますが、対象が増加するのになかなか追いついていかないというのが現状でございまして、今後とも、安全な社会を確保する等の観点から、出入国管理体制の整備に向けて最大の努力をいたしたいと思います。
瀬古委員 今大臣が言われましたように、不法滞在の問題も一概じゃないんですね。意図的に不法滞在しているというんじゃなくて、そうさせられている人たちの問題もあるので、摘発や収容や国外追放というか、こういう形ではなくて、やはりもっともっとそういう人たちのそこにいらっしゃる条件などもよく相談に乗りながら、そして日本の国民と一緒に共生できるような、そういう温かい対応と体制をぜひお願いしたいと思います。
 以上、終わります。ありがとうございました。
園田委員長 植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょうは、与えられた時間の中で、入管行政にかかわって何点かお伺いをしたいわけでございますが、まず最初に、これは、実はことしの二月の二十七日に質問させていただきました、東日本入管センターにおける処遇の問題にかかわって、幾つか中尾局長とのやりとりの中で積み残したものがあったと思いますので、それについての回答をまず求めていきたいと思います。
 この二月の質疑で、私は、この東日本の入管センターに収容されている方々がさまざまな病気等で症状を訴えているというのに触診や聴診をしない、病状の説明をやってもらえないというような訴えがある、そして、コミュニケーションがとれていないという指摘があるがいかがかということをお伺いしたところ、コミュニケーションが十分されていないというところまでは私の方では承知しておりませんので、私の方でその実情を確認させていただきまして、またの機会に、許していただければお答え申し上げたいという局長の御答弁がありましたけれども、ありていに言えば、恐らくこのコミュニケーションがとれていないという指摘については当事者それぞれの主観が入りまじることもあろうかとは思いますけれども、まず局長、この実情はどう確認なされましたでしょうか。
中尾政府参考人 先般の答弁を踏まえまして事情を聞きましたけれども、委員御指摘のような事実はないということでございます。
植田委員 要するに、症状を訴えれば触診も聴診もし、病状の説明もやっておった、かかる指摘はないということでいいんですね。
中尾政府参考人 そのように承知しております。
植田委員 次に、私が受けた指摘は、他人の心電図を患者に渡していたんではないかという問題も指摘されておるがということでこの二月のときにお伺いしたところ、心電図自体は本人の心電図であった、ただ、名前を書き間違えておったという、そんな話だったわけです。とは申せ、こんなの、世の中、普通の病院でなかなか通用する話じゃございませんよねということで、これについては、具体的なミスの担当あるいはその責任者は何かという点は鋭意調査して、しかるべき対応をさせていただきたいという局長の御答弁でしたので、まず、鋭意調査した結果はどうかということと、しかるべきどんな対応をなされたかということを確認いたします。
中尾政府参考人 お答えを申し上げます。
 委員御指摘の点は、要するに、検査対象者の身分事項の入力を忘れてしまったために、検査機器が記憶していた直前の検査対象者の身分事項をプリントアウトした、こういう関係のミス。これは、こういうことがあってはならないということで、前回、こういうことがあったことは申し上げたとおりでございます。
 この点は、よくよく調べてみたところ、東日本入国管理センターでは当該検査機器に検査対象者の身分事項を入力する作業はだれが行っているかということをまず確定しなきゃならぬということで、これを確定させたところ、これは通常は看護婦が行うことになっております。ところが、人が足らないということで、看護婦が通常行うわけですが、医師もこれを行うこともあるというのが実情でございました。
 しからば本件の場合はどうであったかということになるわけでありますが、本件の場合につきましては、医師または看護婦のいずれがミスをしたのか、過誤をしたのかということがはっきりしないということになりました。しかし、いずれかのミスで発生したことは間違いないという結論に達しました。
 したがいまして、本年の二月十五日に、センターの次長から、看護婦と医師に対しまして口頭で、今後そういうことがないようにやってもらいたいということで注意を喚起いたしました。
 それから、再発防止策です。
 そういうことで、本来どれだけの身分事項、入力事項が必要なのかということで再検討させました。その結果、個人を特定できる程度でいいのではないかということで、個人を特定できる氏名、性別、生年月日、入力項目をこの三つにして、その作業を簡便化させるのがいいだろうということになり、その旨実行させるようにいたしました。
 それから、検査を実施する際に、検査対象者本人であることの呼名確認、あなたはだれだれですかということの確認を行って、入力漏れがないように徹底する防止策をとらせることにいたしました。
 そういうようなことで、今後とも、こういうことが起こらないように努力してまいりたいというふうに思っております。
植田委員 要するに、だれがミスをしたかは最終的にはわからなかった。医者か看護婦か二人しかいないわけで、私は、その責任を追及して何か懲罰を加えろということじゃなしに、今おっしゃったことで、今後そういうことがまた起これば問題ですので、そのことだけ言っておきます。
 それともう一つ、一番大事なことだったんですが、保護室にかかわって私はお伺いしたと思うんです。これは、私ども社民党で東日本の入管へ行ったときつぶさに見せていただいたわけですが、要するに入管側は、いつ、どういうケースで、どういう場合で保護室に入れたのか、何時間入れたか、それは、入管の職員は十分か十五分ぐらい落ちつくまで入れるだけですよなんて口では言っているわけですけれども、過去、どういうケース、どんな事例があったのか統計をとっていませんからわかりませんと言うので、それだったら、保護室の形状から見て、そういうところに入れられるということ自体、人権侵害の疑いもあるだろう、しかし、何もなかったら、要するにそうしたバックデータがなかったら、人権侵害があったかどうかの検証もできぬではないかということでお伺いをしたわけです。そのときに局長は、統計はないけれども、統計と記録は違うので、記録関係がどのようになっているか調査をするということでしたが、いかがでしょうか。
中尾政府参考人 この点につきましては、東日本入国管理センターにおける保護室の使用に関しましては、日誌で把握できることがわかりました。その日誌によって調べますと、使用状況は、平成十二年が七件、平成十三年が十三件、平成十四年二月末現在までは使用実績なし、こういうことでございます。
 基本的には、東日本入国管理センターにおきましては、逃走、暴行、器物損壊その他刑罰法令に違反する行為や自損を行う等、被収容者処遇規則十八条の隔離事由に該当し隔離する必要が認められる者が、自損行為や収容所の施設等を損壊するなどの行為をし、またはおそれがあると認められる場合には保護室を使用しておった、こういうことでございます。
植田委員 それ以上はわからへんのですか。
 というのは、今のその規則十八条でいけば、それにのっとったら、いきなり保護室になるわけですか。隔離室は使わないんですか。隔離室のことも当然お調べになったと思いますので。隔離室に入れてなお大変だというときに、ごくわずかな時間だけ保護室に入れるんですよというのが東日本入管での説明なんですよね。それで、ほとんどありませんと言うわけですよ。
 平成十二年で七件、十三年で十三件というのは、これは保護室ですか。それだったら、現地に行って聞いてきた説明とややそごを来すんですが。
中尾政府参考人 今申し上げました件数は、保護室の使用実績でございます。
植田委員 では、今言ったのは、その規則の十八条にのっとって保護室に入れましたと言いますけれども、個々、要するにそれぞれ収容者は個人なんですから、その個別について、どういう事情でどれぐらいの時間そこに入れていたのかということは、何の記録もないわけですか。
中尾政府参考人 その点については、先ほども申し上げました七件と十三件は、個別具体的に、保護室の使用者の名前等については、先ほども申し上げました日誌等に記載され、私どもの方で正確に把握しておるところでございます。
植田委員 収容された時間も日誌には書かれているわけですか。
中尾政府参考人 もちろんその点も記載しております。
植田委員 それだったら、入管の職員が、我々が行ったときに、ここは十分か十五分程度入れているだけなんですよ、ちょっと落ちついたら戻すんですよとおっしゃっていましたけれども、この平成十二年の七件、平成十三年の十三件、これはもう十分か十五分しか入れてへんというケースがほとんどやったんですか。
中尾政府参考人 そのような短期間のものはないと承知しております。一番短いので二十六分、長いものでは、一件、四日間というものがあります。
植田委員 ということは、今そうした事実を明らかにしていただいたわけですが、私どもが説明を受けた内容とは当然違うわけですね。少なくとも、ほとんどそういう例はないんですと。統計はないのでわからへんけれどもほとんどそういう例は記憶にありませんと、これは所長の発言ですよ。
 それと、十分か十五分ぐらいなんですよと言うけれども、一番短いので二十六分やということは、要するに、入管で説明を受けたこととは違う事実が明らかになったという理解でいいんですね。
中尾政府参考人 お答えを申し上げます。
 委員御指摘の、私どものセンターでどのような説明を受けたかということで私自身は承知しておりませんが、少なくともその辺について、また私どもの方がどのような説明を委員にしたのかどうかも含めまして調査はしたいというふうに思いますが、先ほども申し上げたとおり、保護室の使用はそういう状況であったということは、日誌上、客観的な記録上明らかだということは申し上げられます。
植田委員 少なくとも、私がここで質問で聞いて、そして調査をしていただいて初めてこれは明らかになったわけですが、これをしなかったら私は間違った事実を伺ってきたということになるわけでございますので、今、私は、そのことがけしからぬ、けしからなくない以前に、少なくとも事実がどうであるかということをまず明らかにするために、その評価以前のところでまず事実を共有するために質問してきたわけです。
 ですから、少なくとも、二月十何日でしたか、私が東日本入管に行ったときのセンター側の説明とは、これは、所長、職員を含めて、保護室にかかわる使用についての説明は今の局長の御答弁とは全く違いますので、これも可及的速やかに事実関係を明らかにしてください。どっちかがうそを言うたということになってしまうわけですので、お願いいたします。これはまた別途の機会にやりたいと思います。
 時間がありませんので次に進みますが、ちょっと、個別事例なので恐らくは一般論としてのお答えしかできないんでしょうが、京都大学、京都工芸繊維大学でずっと研究者として活動されてきて、一九七四年にJICAの招待で来られたアフガニスタン人のサルダール・カーン・バハァドルさんという方が、昨年逮捕されて以降、逮捕は別件だったんですが、勾留をされて今京都の拘置所にいらっしゃるわけですが、この方の問題について、まず、一応こちらの方で事実関係だけ、おさらいだけしておきます。
 このバハァドルさんというのは、JICAの研修員で、日本の招待で一九七四年に来日をされ、そして、京都大学工学研究科とか京都工芸繊維大の繊維学科等々の修士課程と、また博士課程を行かれて、八七年まで研究生だったわけですが、八七年の四月以降、京都大学の研究生としての学籍を失われた。そして、以降、当初は留学生ビザ、そして八七年から九〇年までは特別在留許可ということで、そして九〇年の八月十七日から定住ビザに切りかえられましたが、この定住ビザがおりた九〇年の八月十七日から半年余りの九一年の二月十六日でこの定住ビザも剥奪をされているわけです。
 実際に、定住ビザが半年後に剥奪されるというようなことは、もちろん入管行政の中で当然裁量の範囲内だとおっしゃるんでしょうけれども、余りといえば余りじゃないのかということなんですよね。しかも、剥奪をして、そして九一年の二月の十七日以降、この方は今まで約十年以上在留資格がないまま研究活動をなさってこられたわけですが、剥奪をしておきながら、入管の方も、当局の方も、約一年半ほったらかしにしておった。そして、それ以降、一年半過ぎて以降、約十年間、年に一回から多いときで四回ぐらい、このバハァドルさんと入管の間で、バハァドルさんの主観でいけば交渉、恐らく入管の側からすると違法調査ということなんでしょうが、約十年間そういうやりとりが続けられてきたという経過があります。
 そして、去年の暮れでしたか、万引きをやったというようなことで逮捕をされ、そしてその後、いわゆる不法滞在ということで今勾留されているわけですけれども、まず、定住ビザを与えておきながら半年後に剥奪するというのは、これは一体どういう理由によるものなのかということ。これは十年前の話ですが、それと、それ以降約一年半ほったらかしにしておった、それはどういうことなのか。
 そして、それ以降、一年半たって以降はそれなりに交渉があったようですが、その交渉というものが、それぞれの主観の違いはともかくとしても、違法調査であったとしても、このバハァドルさんというのがどういう研究者であり、日本に生活基盤を持ってどういう生活を、生活実態というものは十年も調べていれば十分わかるわけですよ。それが今度全く別件で、しかも今裁判にかかっていますけれども、その万引きの容疑で裁判をやられているのじゃなくて不法滞在でやられているわけですが、少なくともこのバハァドルさんは逃亡の心配も全くないわけですし、ごくごくまじめな研究者であるわけですから、こういう方をかかるような対応でこの間やってこられたということについての理由を御説明いただけますか。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 個別の案件の処理の内容、あるいはその処理の具体的経緯についてはこの場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論で申し上げれば、委員御指摘のケースも含めまして、個々のケースにつきまして、私ども、それなりの、その場、そのときそのときの状況に応じて、法令に基づき適正に対応し、またしかるべく処理をしてきたものと思っております。
植田委員 それ以上の答弁は別に期待はしていませんので、結構なんですけれども、大づかみな話をすれば個々の話やと言い、個々の話をすれば一般論でお答えするということです。
 あともう一つ、これは矯正局長にお伺いしますが、今拘置所に入っておられるこのバハァドルさん、いろいろと厄介な持病をお持ちだそうでございます。これは本人がみずから明らかにして社会に対して訴えているわけですので、この点はプライバシーにかかわって当然我々も配慮しなければならないわけですが、本人がこういうことで外に向かって訴えておられるので、具体的に言いますが、勾留される前は脳外科、整形外科、耳鼻科、皮膚科に通っていた。何か皮膚も病気らしいんですが、一番厄介なのが脳梗塞だそうです。ただ、拘置所の診断では薬がもらえない、特に脳梗塞を抑える薬がもらえないというわけですね。
 そしてまた、当然、アフガニスタンの方ですから、イスラム法では他人に裸を見せることは死に値するのだけれども、大勢でふろに入らされる、これは私にとっては拷問だとバハァドルさんはおっしゃるわけです。
 そして、そうした待遇の改善を求めて所長に面会を申し込んだんだけれども、代理の人と面会できただけで、しかも状況は全然変わっていない。
 これは、水虫の薬をくれと言うて、そんなもの要らぬわという話と違いますよ、脳梗塞ですよ。これはやはり薬を飲みもって、言ってみれば病気とつき合っていかないかぬわけですよ、抑えながら。それが十分対処されていないという実態を把握されているのかどうなのか。矯正局長の御見解をお伺いします。
鶴田政府参考人 お答えいたします。
 特定の被収容者の病状あるいは医療措置等につきましては、やはり本人のプライバシーの保護等の観点から、公の場で具体的に明らかにするのは差し控えさせていただきます。
 一般論として申し上げますと、拘置所におきましては、常勤の医者がおります。その医者によりまして、被収容者に対しまして病状に応じた診察、診断等が実施されておりまして、その場合におきまして、被収容者から入所前に罹患している疾患に関して申し出があるときには、特別な医療情報を必要とすると認めた場合には、関係する医療機関に病状、経過等を照会、確認し、そういったものを参考にしながら、経過観察も含めて治療の要否あるいは具体的な治療の内容といったようなものについて、その都度病状に応じた対応をしているというふうに承知しております。
 なお、入浴の件についてもお話がありましたけれども、これも一般論で大変恐縮ですが、特定の宗教を信仰する外国人被収容者の中には、パンツをはいたまま入浴するというような人もいるわけですけれども、やはり衛生上の観点とか規律保持の観点からそういうのは施設としてはちょっと認めがたいというふうに承知しております。
 所長面接等においても、面接があった場合には、それを受けていろいろ説明して、必要があれば改善の措置をとっているというふうに承知しております。
植田委員 時間がありませんので一般論の話は別にそんな長々言っていただかなくても、こういう問題というのは個々、個別具体的な事例の積み重ねでしょう。一つ一つの、個別の問題にどんな問題があるかということ、だから私は固有名詞を出しましたけれども、じゃ、これがXさんやAさんだったら答えられるのか。匿名で出せば答えられるのですか。
 少なくとも、事実としてこういう訴えがあって、実際に御本人がそう訴えておられる。それは事実であるかないかということもお話しされないままに、一般論としてはかようになっております、だからこの場合においてもちゃんとされているんじゃないでしょうか、そういうお話ではちょっと私としては納得しがたいですよ、そこは。具体的にどないすれば実際個別この事例について明らかにしていただけるんですか。
鶴田政府参考人 御指摘の被収容者の病状等については、必要に応じて施設を通じて我々も調査しております。その調査結果を踏まえまして、一般論という形ではございますが、先ほどのようにお答えさせていただいておるということで、御理解いただきたいと思います。
植田委員 もう時間がありませんから、先やります。
 ちなみに、このバハァドルさんにかかわっては、二月の二十五日付で、古巣の京都大学の副学長から法務大臣あてに申し入れということで、国外退去強制の執行を停止してください、そういうものが申し入れられているわけですが、まず、これは、法務大臣、御存じかどうか。
 そして、実際、今学籍は京都大学にないわけですから、別に京都大学の副学長の方がそのことについてわざわざ法務大臣に陳情せないかぬ義理はないのかもしれないけれども、にもかかわらず、こういうことをやられている。しかも、今申し上げたように、少なくとも脳梗塞なんて、これは国外退去で、アフガニスタンで日本と同様の治療を受けられますか、薬がありますかというような、本当に基本的な話もあるわけです。
 しかも、二十数年日本で滞在し、もともとは日本の招待で来られた方なんですよ。何か不法に潜入をしてきて悪いことをやってきたわけではない、まじめな研究者としてやってこられたわけで、既に六月末から七月頭までの海外である学会にも招待もされておるそうですし、論文もたくさん物されている方です。
 そうした事情を勘案したとき、やはりお慈悲をいただきたいという思いを持つのは私一人だけではないと思いますけれども、申し入れをそもそもいただいておられるのかどうなのか、そしてこうした事例について法務大臣としてはどんなお気持ちか、それだけお伺いします。
森山国務大臣 確かに、平成十四年二月二十五日付で、京都大学副学長の尾池和夫さんという方から、嘆願書というのが私あて参っております。
 この嘆願書の内容は、今るる先生が御説明なさいましたほど詳しいものではございませんが、最初国際協力事業団の招聘によって来日したこの方が研究生活を続けてきた、これからも研究が続けられるようによろしくお願いしたいというような趣旨でございます。
植田委員 それは、副学長さんの嘆願書の趣旨ですね。それを受けとめて、しかも、今私が幾つかおさらいしましたけれども、このバハァドルさんがそもそも日本の招待で研究者としてこちらに来られ、そしてさまざまな経緯の中で今に至っている、そして今置かれているバハァドルさんの状況、脳梗塞という持病を持ちながら研究活動に従事している、そうしたさまざまな背景を勘案してどんなお気持ちでしょうかということをお伺いしたいんですよ。
森山国務大臣 今、大変詳しく先生からいろいろ御説明ございましたですが、初めて私も伺いましたので、さらによく調査をする必要があるんではないかと思います。十分調査をいたしました上で適切な対処をしたいというふうに思います。
植田委員 その適切な対処という中に、私はもうあえて申し上げませんけれども、やはり日本にも生活基盤があるわけですから、そして、別に悪いことをしてきたわけじゃないわけですし、逃げ隠れもしないわけですから、当然、日本がわざわざ招待をしたその研究者がやはり研究者として大成するように、日本としてもそうした観点から考えていくというのも今法務大臣がおっしゃられた適切な配慮の範疇に入るんでしょうか。
 法務大臣、どうでしょうか。
森山国務大臣 さらに調査をいたしまして判断させていただきます。
植田委員 それ以上景気のいい答弁は求めません。
 申しわけないですが、質問やり残したんですが、あと一点だけ。まとめて聞きます。
 昨年の五月の十八日に、私、法務委員会で人権教育の推進にかかわってお伺いしました。そこで、これからの課題はどうだということで、入管局長が研修教材の充実、OA機器を取り入れた工夫を凝らした方法を今後ともやっていきたいとおっしゃっていましたが、それ以降、実際その辺はどうなっていますかということ。
 それと、昨年取り上げた人権教育のための国連十年に関する国内行動計画関連施策の調査票なんですが、入管のところで、いろいろと書いてあるわけですが、これが平成十一年度の実績に基づく調査票なんですよね。そして、十二年度の施策の実施状況も、文言が一言一句まるっきり一緒なんですよ、去年もことしも。要するにこれは何もしてへんということと違いますかと。本当にこれは芸ないですよね。まあ明朝体からゴチック体に字体は変わっていますけれども、一言一句変わらへんのですよね。これはどういうことかということ。
 あと、最後、法務大臣に。これは法務省関係の人権教育。検察官、検察事務官、矯正施設、更生保護職員、地方公務員、そしてこの入管、全部、人権教育十年の国内行動計画策定後の研修の実施状況というのは、去年もことしも一言一句、何一つ文言、変わっていません。要するにこれは何もしてへんということと違いますかと。随分これはいただけないと思いますけれども、これはまあ、ちょっときょうは時間ないんで、そこでとどめておいて、また別途やらせてもらいますけれども、それについて、やはり人権擁護行政をつかさどる法務大臣としての見解も最後に伺います。
 まず、入管局長から。
中尾政府参考人 まず第一点目からお答え申し上げます。
 研修教材の充実という観点で、昨年の五月十八日、研修教材の充実やOA機器等を活用して一層の工夫を凝らしていくということを申し上げたのは、そのとおりでございます。
 まず、研修教材の充実につきましては、人権教育に関する研修の講師に新しい方をお迎えするなどしておりますし、幅広い観点から教育が行われるような配慮もしておるところでございますが、講義の中では各種ビデオ等を活用することを始めたということで承知しているところでございます。今後とも一層の工夫を凝らしてまいりたいと思っております。
 それから、第二点目でございますが、これはひとつの考え方の違いに帰するかもしれませんので、御容赦願いたいんですが、外国人の人権に配慮した入管行政を遂行するためには、職員の研修の場を通じて人権教育を充実させ、人権意識を涵養していくことが極めて重要であります。こうした教育というのは、あくまでも一貫して継続的に実施していく必要があるということでございますので、そういった点で、議員御指摘のようなことがあったとしても、それはそういうことで御理解を賜りたいと思っております。
 もっとも、研修における講義につきましては、毎年最新の話題等も交えまして実施していただいているものと承知しております。
横内副大臣 もう一点、委員の御質問で、人権教育のための国連十年に関する国内行動計画に基づいて検察とか矯正とか入国管理関係の職員の研修を行っているわけでありますけれども、それを報告している状況のその中身が毎年変わらないんじゃないかという御指摘でございます。
 確かに、国内行動計画に基づいて実施している研修でございますから、その研修の科目とか項目、事項等については、基本的に変化するものではないわけでございますけれども、しかしながら、毎年のカリキュラムだとか、それから教える具体的な内容なんかにつきましては、人権問題に関する社会的な情勢の変化とか進展に応じて充実強化をするように努めております。
植田委員 もう時間が来たから終わりますけれども、お二人の答弁で私としては御理解賜るわけにはいきませんので、それはまた別の機会にこれ一本でお伺いするので、その機会までまたいろいろと準備しておいてください。
 以上で終わります。
     ――――◇―――――
園田委員長 内閣提出、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、平岡秀夫君外五名提出、裁判所法の一部を改正する法律案及び検察庁法の一部を改正する法律案並びに水島広子君外五名提出、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま議題となっております各案に対し、厚生労働委員会から連合審査会開会の申し入れがありました場合には、これを受諾するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 また、連合審査会において、政府参考人から説明を聴取する必要が生じました場合には、出席を求めることとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間で協議の上、公報をもってお知らせしますので、御了承願います。
 次回は、来る七日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十六分散会

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