衆議院

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第7号 平成14年11月13日(水曜日)

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平成十四年十一月十三日(水曜日)
    午後一時一分開議
 出席委員
   委員長代理理事 佐藤 剛男君
   理事 塩崎 恭久君 理事 園田 博之君
   理事 棚橋 泰文君 理事 加藤 公一君
   理事 山花 郁夫君 理事 漆原 良夫君
   理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      中野  清君    林 省之介君
      増原 義剛君    松下 忠洋君
      松島みどり君    保岡 興治君
      山本 明彦君    吉川 貴盛君
      吉野 正芳君    渡辺 博道君
      鎌田さゆり君    仙谷 由人君
      日野 市朗君    平岡 秀夫君
      水島 広子君    山内  功君
      石井 啓一君    藤島 正之君
      木島日出夫君    中林よし子君
      植田 至紀君    原  陽子君
      徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   最高裁判所事務総長    竹崎 博允君
   最高裁判所事務総局総務局
   長            中山 隆夫君
   最高裁判所事務総局人事局
   長            山崎 敏充君
   政府参考人
    (内閣審議官
    兼司法制度改革推進本
    部事務局長)      山崎  潮君
   政府参考人
   (内閣法制局第二部長)  山本 庸幸君
   政府参考人
   (人事官)        小澤 治文君
   政府参考人
   (人事院事務総局勤務条件
   局長)          大村 厚至君
   政府参考人
   (総務省人事・恩給局長) 久山 慎一君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    中井 憲治君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           金森 越哉君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         鈴木 直和君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十三日
 辞任         補欠選任
  中川 昭一君     林 省之介君
  平沢 勝栄君     渡辺 博道君
  保利 耕輔君     山本 明彦君
  柳本 卓治君     増原 義剛君
  横内 正明君     松下 忠洋君
  藤井 裕久君     藤島 正之君
  不破 哲三君     中林よし子君
  植田 至紀君     原  陽子君
同日
 辞任         補欠選任
  林 省之介君     中川 昭一君
  増原 義剛君     柳本 卓治君
  松下 忠洋君     横内 正明君
  山本 明彦君     保利 耕輔君
  渡辺 博道君     平沢 勝栄君
  中林よし子君     不破 哲三君
  原  陽子君     植田 至紀君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会申入れに関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)
 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)


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     ――――◇―――――
佐藤(剛)委員長代理 これより会議を開きます。
 委員長の指名により、私が委員長の職務を引き続き行います。
 この際、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所竹崎事務総長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐藤(剛)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 竹崎事務総長から発言を求められておりますので、これを許します。竹崎事務総長。
竹崎最高裁判所長官代理者 十一月七日付で前任の堀籠事務総長が大阪高等裁判所長官に転出いたしました。私はその後任として最高裁判所事務総長を命ぜられました竹崎博允でございます。どうかよろしくお願いいたします。
 法務委員会の委員長を初め委員の皆様方には、平素から司法行政に対する深い御理解のもとに御指導、御支援をいただいておりまして、まことにありがとうございます。おかげをもちまして、裁判所の体制あるいは裁判に関する諸制度につきまして、近年かなり整備が進んできておるところでございます。しかし、この間、社会経済状況を初めとして、司法を取り巻く環境は著しく変化をし、裁判所の果たさなければならない役割というものも極めて大きなものになってきております。
 このような中で、昨年十一月には、当委員会の御審議を経て、司法制度改革推進法が成立し、現在、これに従って、内閣のもとで司法制度改革の推進本部が設置され、司法制度の全般にわたって精力的に改革の作業が進められております。
 裁判所は、司法の運営に当たる国の機関といたしまして、これらの改革に積極的に協力をし、また、裁判所みずからが実施すべき施策につきましては誠実に検討を進め、真に国民のためになる司法制度の確立に向けて努力をしていきたいと考えております。
 法務委員会の委員長を初め委員の皆様方には、今後とも司法制度の改革と裁判所の運営の充実強化のために一層の御指導を賜りますようお願い申し上げます。
 簡単ではございますが、就任のごあいさつとさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
佐藤(剛)委員長代理 次に、内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第二部長山本庸幸君、司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、人事官小澤治文君、人事院事務総局勤務条件局長大村厚至君、総務省人事・恩給局長久山慎一君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、矯正局長中井憲治君、文部科学省大臣官房審議官金森越哉君及び厚生労働省大臣官房総括審議官鈴木直和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐藤(剛)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐藤(剛)委員長代理 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局中山総務局長及び山崎人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐藤(剛)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐藤(剛)委員長代理 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょうは、次の質問もあるので、いつもは最後なんですが、冒頭、トップバッターで質問させていただくんですが、先に対応方だけ言うておきますと、別に最高裁さん、法務省さんに何の恨みもないんですが、この二法案、我々としては反対でございます。
 理由は大きく二つ。一つは、憲法違反の法案には賛成できないということと、そもそも給料が下がるのはけしからぬやないか。これはここで言うよりは人事院の総裁に文句を言う話ですから、この案件について御両者に別に何か含むところがあって反対するわけではございません。
 この案件についてはそういう立場を表明させていただきまして、幾つか基本的なことをお伺いするので、その辺のことを教えていただきたいという簡単な質問を幾つかしたいと思います。
 一つは、新聞を読めば大体の概要はわかるわけですが、二年以内に一審の判決を終えるように努力義務を課す、またそのことについて進みぐあい等々を最高裁は検証するということで、裁判迅速化法案の大体の骨格がまとまってきたようでございますので、その点について大体の概略を御説明いただければと思います。
山崎政府参考人 去る十一日に開催されました私どもの顧問会議におきまして、我々事務当局の方から裁判の迅速化を促進するための方策の全体構造のイメージにつきまして御説明を申し上げました。
 その内容につきましてでございますが、まず一つ目は、民事、刑事の訴訟手続について二年以内に第一審における手続を終局させること等を目標として掲げております。これに向けまして、国に対し、裁判所における手続の迅速化の促進に関する施策を策定、実施し、必要な法制上、財政上の措置を講じる責務を課すということが二番目でございます。
 それと、裁判所及び当事者等に対しできる限り二年以内に第一審手続を終局させるように努力する責務を課すということが第三番目の内容でございます。
 これにあわせまして、その目標の達成をより確実なものとするために、最高裁判所におきまして一定期間ごとに手続の迅速化に関する状況を検証しまして、その結果を国民に公表して、これをさらに国の施策等に反映させる仕組み、これを設けるということを考えておるわけでございます。
植田委員 それにかかわってもう一つだけですが、この大きな柱の二点目の、最高裁が迅速化の進みぐあい等々を検証するとありますけれども、これ、新聞記事等を見ているといろいろなことが挙がっているのです。例えば最高裁が直接それをやるのか、何か別途第三者機関がそうしたものを検証するなんというような話も検討課題にあるようなことが、これは新聞報道ですけれども、あるんですが、そうしたことも含めて、実際に最終的にどうなるかは別にして、そうしたことも検討課題として挙がっているというふうに理解しておいていいでしょうか。
山崎政府参考人 ただいまの御指摘の点につきましては、検証は最高裁判所でやっていただくということでございます。
 今マスコミでは第三者機関云々とかそういう話が出ているかもしれませんけれども、これはやはり司法権との関係を考えますとそう軽々に考えられる問題ではないということで、私どもは今そこは念頭には置いておりません。
植田委員 それで、いずれにしてもこの法案がいずれ出てくるんでしょうけれども、昨年だったと思うんですが、最高裁の方が改革案ということで、実際裁判官が四百五十人ぐらいふえれば一年で終結できるよというふうなことが案として出されていたと思うんですが、その辺のところの概略を、ではちょっと教えていただけますか。
中山最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、当委員会でも既に御説明しているところでありますけれども、昨年四月二十四日の司法制度改革審議会で、裁判官については今後十年間で五百人プラスアルファの増員が必要であるというふうに申し上げました。
 さらに、その五百人のうちの四百五十人につきましては、昨年時点における事件数を前提に、もちろん手続の整備や当事者の活動の充実ということが図られるということが条件でありますけれども、例えば民事訴訟事件を例にとりますと、人証を調べて判決に至る、いささか骨のある事件、実のある事件と申しましょうか、そういったものがその当時二十・三カ月かかったところでございます。これを平均で一年以内に処理するためにはどうすればいいかということを考え、まず裁判官の手持ち件数を減らすということ、さらには、複雑困難化する事件に対応するために合議事件をふやしていきたい、こういったところも考えまして、さまざまな角度からシミュレーションを行い、打ち出した数が四百五十人というところでございます。
 ただ、これはあくまでも現在の事件数が動かないという前提のもとでのものでございますし、また、平均で一年というところを目指しているものでございます。
植田委員 それで、きょうはそのことで四の五の聞くわけじゃないんですが、参考までに、現状での判検交流の実情、これは頭数を含めて教えてもらえますか。
中山最高裁判所長官代理者 裁判所から法務省へ出向しているというところでは、平成十四年七月現在の数は百二人であります。その他、法務省以外に、例えば公正取引委員会とか公害等調整委員会、証券取引等監視委員会等にも検事としての身分で出ております。
植田委員 きょうはこの問題について聞くつもりではないんですが、百プラスアルファ出しておるわけです。私は、別に裁判官をふやすなとは言いませんが、それは四百五十人でも五百人でも結構だと思いますが、その前に、実際おる人らを引き揚げてくればいいんじゃないのかなと思うんですね。何もそんな判検交流なんかせんかて、実際裁判に対応するだけの要員を確保するんであれば、それを引き揚げてきてちゃんと配置すれば、それで済むとは言いませんよ、それでも足らぬだろうと思いますけれども、まずそういう措置をした方がいいんじゃないですか。すぐやろうと思ったらできるじゃないですか。
中山最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 判検交流制度の意義、特に裁判所側の裁判官の研修としての位置づけとか、あるいは社会からの必要性については、これまでも種々お答えしているところでございます。
 また、特に最近、民事あるいは商事関係の立法として、立法のスピードは往時とは比較にならないものがございますが、そのような立法にかかわることについての外部からの要請というものも非常に高まってきていると思っております。
 ただ、今植田委員からもお話しでございますが、率直に申し上げまして、増員の問題と充員の問題がございまして、要するに、裁判官の数をふやして、それをどう埋めるかという問題とが、ちょっと混同されている部分があるかなというふうには思っております。
 もっと簡単に申し上げますと、例えば十人の裁判官の定員がありましたときに、今十人埋まっております、しかし、二人は出向しているわけでございますと、これを十二にふやさないともとには戻れないということになりますので、増員は増員として、事件の繁閑に応じてあるいは裁判の迅速化に向けて進めていかなければならない問題だろうというふうにも思っております。
植田委員 だから、定員をふやして、そして、要は向こうから戻してくればそれでいいわけでしょう。今の定員の中で欠員もあるんでしょうが、定員をふやさないかぬのやったらふやして、その人らを戻してくれば済む話でしょう。そんな難しい話じゃないじゃないですか。
中山最高裁判所長官代理者 いささか余計なお答えをしたために時間を費やしてしまったかもしれませんけれども、結局、定員もふやすということがいわゆる増員でございます。したがって、増員をする前にそういった者を戻せばいいではないかというお尋ねになりますと、先ほどのような回答にならざるを得ないというわけでございます。
植田委員 要は、どっちが先とか後とかいうことやなしに、私はそもそも質問の冒頭でも、別にふやすことがいいの悪いのと言っていなくて、ふやしたらいいでしょうと。実際にいるにもかかわらずほかに行っている人も戻したらいいでしょうという話をしているだけなんですよ。
 しかも、これから、しつこいようですけれども法科大学院の議論、審議を先日までやっていましたけれども、各方面にそうした能力を持った人が配置されるわけですな。そうなれば、別にわざわざ裁判所から人を出さぬでもええぐらいに有能な人材がちゃんと配置されているんだから、ますます判検交流する必要なんというのはなくなってくるように思いますけれども、それもちょっと、ついでですから、しつこいようですけれども、いかがなんですか。
中山最高裁判所長官代理者 判検交流の意義につきましてはこれまでも何度もお答えしているとおりでございますし、特に、例えば審議会の意見では、判事補が外部でさまざまなものを見聞きする、こういうことがこれからの裁判官に必須である、こういうふうにも言われております。そういった場面で、立法の場面等に関与するというのは非常に有意義なことではないかというふうに考えております。
植田委員 現状でそういうふうに有意義やと考えておられるというのは承知しておりますが、要するに、これから新たな法曹人がどんどんできてくれば、そうした意義がむしろ薄れてくるんじゃないのかなということを私は言っているだけなんです。もう時間がありませんから先に進みますけれども、そういうことなんですよ、将来的に。
 だから、現状における意義の説明を聞いているんやのうて、そうした優秀な法曹人がたくさん生まれれば、当然裁判官も、そんなわざわざ出向せんかて、そういうことを身につけておられるような方々が裁判官として任官なされるんだろうなと。私は、そういう意味で法科大学院の例の法案の意義というものを高く評価しておるがゆえにそういうことをしつこう聞いたわけです。もういいです。
 次に、厚生労働省さんに来ていただいたのは、ADRの実情について幾つか伺いたいなと思ったんです。
 去年から紛争調整委員会ができておりますので、これも広い意味でADRになるんだろうと思うんですが、実際の紛争調整委員会の調停等の活動実績というか実勢を教えていただけますか。
鈴木政府参考人 今御指摘がありましたように、昨年十月から個別紛争の処理のシステムが動いております。ちょうど一年たった段階でのデータでございますが、昨年十月からことしの九月までの一年間におきまして紛争調整委員会にかかったあっせんの件数、ここは調停はやっておりませんで、あっせんでございます、あっせんの件数は二千百十五件ございまして、そのうち手続が終了したものが千七百九十一件でございます。この内訳として、あっせんの結果として合意が成立したものが七百十四件で約四割、それから、自主的解決等により申請が取り下げられたものが二百五十四件、それから、紛争当事者の一方が手続に参加しない等の要因からあっせんを打ち切ったものが八百四件で約四五%というふうになっております。
植田委員 これができるに当たっては、セクハラとか、そういうことがクローズアップされていたと思うんですけれども、今度は、ある程度分類はされていると思うんですけれども、案件で見るとどういう実勢になっているでしょうか。
鈴木政府参考人 あっせんの内訳でございますが、一番多いのが解雇で、約四割。そのほか、労働条件の引き下げ、出向、配置転換等が多いものでございます。
 なお、セクハラというお話がございましたが、セクハラについても七十四件ほどあっせんの申請がございます。
植田委員 今のあっせんの中で、これは一番最初に聞いたところで、どこの件数に入るのかわからないんですが、教えてほしいんですが、実際、ここでの調整が不調に終わって、結局は裁判に行っちゃったというような例もあるんでしょうか。その辺は把握されていますでしょうか。
鈴木政府参考人 あっせんが不調で裁判に移行した件数というものは、そういったことがあるということは承知しておりますが、具体的に何件あるかということまでは把握しておりません。
植田委員 その件を把握していらっしゃらないのがけしからぬと言うつもりはないんですが、不調に終わる場合がありますよね。裁判に行った以降は、調整委員会としてはもう、言い方は悪いけれども、あずかり知らぬ話だ、それはまたそれぞれ当事者がやられるんだということで、何もそこまで調べることはないやろうということなのかもしれませんが、不調に終わった原因というものを分析はされていますでしょうか。
鈴木政府参考人 不調に終わった原因というものは、これはあくまでもあっせんでございますから、双方がテーブルにのらないとできないものでございます。そういう意味で、一方があっせんの手続に参加しないということで不調に終わるということがその原因でございます。
 これにつきましては、私どもも、この制度が簡便に問題を解決する方法であって、こういった仕組みがうまく動くことが企業活動等にとっても好ましい影響を与えるということで、できるだけそういったことがないように、いろいろ周知等はしているわけでございます。
植田委員 動き出したばかりの委員会ですけれども、相手方が、片一方が知らぬ顔をしているから、不調も何も、そもそも処理のしようがない、あっせんのしようがないということみたいですけれども、その辺のところをさきに、裁判に移行した例があるかということで、あると承知はしているが実際どういうことでそうなったのかまではそもそも調べていませんとありましたけれども、この委員会に本当に実効性を持たせるためには、そうした背景のデータをやはり皆さん方の責任において調査する。その上で、それを踏まえた総括を受けて、この委員会での取り組み方について、やはり実効性をより強化していくという点で、今後調査されるなり、またその都度検証されるおつもりはありますか。
鈴木政府参考人 あっせんが不調に終わる原因、これは、当事者の一方が手続に参加しないということは大体わかっておりますが、そこのところはなぜというところがあると思いますので、そこについては、関係の当事者にこの制度の趣旨をよく説明し、そこで何か要望等があれば、そこら辺を聞きながら、できるだけ当事者がこの手続にのってくるように努力したいと考えております。
植田委員 悪い制度と違いますので、ぜひ実効性を上げるという意味で質問させていただいたんです。
 実はきょう、法案の審議に当たって質問のネタにも困って、ADRを一回ちょっと聞いてみようかということで、革手錠の話をしようかなとも思ったんですが、それはまた別途やらせていただくとして、きょうはちょっと。
 それで、私もちょっとこれはよくわからないので、文科省さんに聞きたいんですけれども、海外で、とりわけアメリカなんかは、学校内でのさまざまな生徒間の暴力なんというのも、日本に比べるとなかなか段違いなところがあろうかと思うんですが、何か向こうでは、物の本というか、インターネットで検索した資料を見ていると、ウィン・ウィン・リゾルーション、そういうのがあるらしいんですよ。勝敗というよりは、双方の理解を深めて、傷ついた人間関係を修復するということに主眼を置いた調停、これもADRの一つだろう。
 そうした調停をするのは学校ということだけではないんで、そうした調停者のトレーニングというのは弁護士の方が多いらしいですけれども、学校の先生も受けているらしいんですよ。それで、そうしたトレーニングを受けた学校の先生が学校でみずから調停をするというよりは、戻って、学校の中で生徒に対して今度はそうした調停方法を教えて、学校内紛争を生徒に解決させる。それは例えばいじめであり、暴力であり、アメリカの場合、どういう事象があるのか、私も子細には知りませんが、こうしたことを日本の教育現場でも有効に活用できないだろうかなというふうに思っております。
 というのは、これは先日からの議論で、私なりに学校教育等々における法教育の意義について何度か御質問して、幸い、文科大臣、そして法務大臣にも前向きな答弁もいただいておるところでございますので、例えば模擬裁判なんかを公民の授業で導入するなんていうことは、僕らの中学校時分でも、私も被告人の役をやらされましたけれども、そういうことはありますけれども、こうした調停方法というものを実際に導入しようというふうな、そういう研究会は日本でもあるらしいんですが、そんな実践例を承知されているのか、また、そうした実践について、これからこうした教育の中に組み込んでいこうというふうな考え方は持っておられるのかどうか、その点、教えていただけますか。
金森政府参考人 お答え申し上げます。
 学校教育におきましては、児童生徒が、学級や学校における生活上の諸問題について、教師の適切な指導のもと、話し合いなど自発的、自治的な活動を効果的に展開し、協力してその解決を図ることは、集団や社会の一員としてよりよい生活を築こうとする態度を育てる上で大変重要であると考えております。
 これらの教育活動は、特別活動としての学級活動や生徒会活動などで行われておりまして、実際にどのような手法によって問題の解決を図るかにつきましては、児童生徒の発達段階や問題の性質等に応じて、各学校においてそれぞれ工夫されているところでございます。
 具体的な事例といたしましては、例えば悪口やいじめなど、児童生徒間の問題につきまして、調査役となった生徒による事実確認の後、班長会と関係生徒による話し合いを行い、問題解決につなげたといった事例もあると承知をいたしております。
 今後とも、各学校において、生活上の諸問題について話し合い、協力してその解決を図るための実践的な活動が充実されるよう努めてまいりたいと考えております。
植田委員 今までも、それはそれとしてやっておられるということなんですが、これからの学校教育における法教育の意義にかんがみたときに、それをどう充実させていくのか、またそのスキルをどう開発していくのか。その辺のところは前向きにこれから何かやろうかとか、例えばそうしたさまざまな海外の事例を研究する、そういう研究会を組織するだけでもいいかと思います。じゃ、そこでの実践例を今度、日本の学校現場の状況なり、今おっしゃったような子供の発達段階に合致させながら新たな枠組みをこしらえていく、そういう前向きなことは考えていらっしゃるんですか。
金森政府参考人 お答え申し上げます。
 例えばいじめの問題などにつきましては、学級活動や生徒会活動などの場を活用して、児童生徒自身がいじめ問題の解決に向けてどうかかわったらいいのかを考え、主体的に取り組むことは大変大きな意義があると考えております。実際にも、そうした観点に立った実践的な活動が多くの学校で工夫して行われているものと承知をいたしております。
 御指摘のありましたADRの手法や実社会の仕組み、制度などにつきましても、それぞれの発達段階や教育活動の特質に応じて、参考にできるところは参考にしながら、体験的な学習、問題解決的な学習の充実、こういったことに今後とも努めてまいりたいと考えております。
植田委員 時間もなくなったので、ちょっと駆け足で行きますが、ADRの持っている意義というのは当然私も共有しているつもりですが、こうした調停者の養成と人材の確保という点で、まず伺いますが、今後、事務局さんとしてトータルにどんな構想を持っておられるか、御説明いただけますか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘のADRの担い手の確保等教育の問題、大変重要な問題でございます。
 それと、私ども、各情報提供、この面も必要だということで、その関係で今総合的な検討を進めているところでございますが、そのために、まず、六月十三日に、関係省庁等から成りますADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議、これを設置したところでございます。この連絡会議におきまして、各種ADR機関あるいは弁護士会、消費者団体等からヒアリングを行っているところでございます。この関係省庁等として横断的、重点的に取り組むべき連携促進策について検討を進めますとともに、各種ADR機関を含む関係機関等の連絡協議の場として関係諸機関連絡協議会という体制を早期に整備を図るということを今検討しております。
 こういう中で、人材の交流等含めまして、人材を育てていきたいというふうに考えております。もう少し時間がかかろうかと思います。
植田委員 いずれにしても、新しい枠組みができたら、その枠組みを十分に実効あるように活用する人材の育成、養成というものが常につきまとってくるというふうに思うわけで、もうちょっとかかるということですから、またそれは別の機会に伺いたいと思います。
 最後に、厚生労働省さんに二点聞きたいのですけれども、アメリカですと、労使の言ってみれば紛争というものは社内ADRで済まそうという話がよくあるらしいですね。実際雇われるときに、会社と対立した場合は提訴せぬと社内のADRで解決しなさいといって念書を書かせる、契約させるということもあるらしいのですが、日本の場合そういう契約があったとしたらどうなんだろう、無効ですかね。どうなんでしょうか。それをちょっとまず説明してほしいのです。
 その上で、今後、日本でそうした社内ADRが進むことになるだろうと考えているんですけれども、その辺の展望を含めてちょっと御教示いただけますか。
鈴木政府参考人 社内ADRというお話ですが、アメリカではそういったものが普及しているということは聞いております。
 この社内ADRと裁判との関係というお話でございますが、アメリカの社内ADRの細かな、具体的な実態までは承知しておりませんが、その効果というものについては若干の裁判例があるような話は聞いたことがございます。
 日本の場合ですが、日本の場合裁判を受ける権利というものがありますので、それを阻害するようなことを事前に協約等でどうこうするということは問題があるのであろうと考えております。
 それから、社内ADRがこれからどうかというお話でございますが、現時点で見れば、企業内で苦情処理機関を設けているところは、三十人以上の事業所で約四分の一でございます。ただ、ふえてくる傾向はございます。
 ただ、中小零細まで含めてということで考えますと、なかなか難しい面もございますので、やはり企業内で解決できるようにするためには、法制度なり裁判例なりを具体的に周知して、そういったものについて企業の労使等が十分知っているという環境が大事だと思いますので、そういった周知にこれから努力していきたいと考えております。
植田委員 四分の一。ただ、これから社内ADRというものが普及してくる可能性は否定されないわけですので、もう時間がありませんから言いおくだけにとどめておきますけれども、くれぐれも乱用がなされるような実態が起こらないように、やはりどこかの段階でADRに枠組みをこしらえる、そうした整備が必要だろうということを蛇足ながらつけ加えさせていただきまして、またその話は別途聞くことになると思いますが、時間が来ましたので終わります。
佐藤(剛)委員長代理 次に、山花郁夫君。
山花委員 民主党の山花郁夫でございます。
 今回の、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の中身についてお伺いをしたいと思います。
 まず、法務大臣、昨日趣旨の御説明はいただきましたので、私自身は、検察官というのも行政にかかわる方々ですので、検察官が人事院勧告に従って俸給が引き下げられるというのは、これはある話だろうと思います。
 ただ、今植田委員からも、本法案は憲法違反だから反対だという意見の表明がございましたけれども、確かに、憲法の七十九条、八十条を見ますと、裁判官の報酬は下げてはならない、「報酬は、在任中、これを減額することができない。」と明確に規定しているわけであります。
 権力分立という考え方は、申し上げるまでもありませんけれども、モンテスキューの法の精神以来、各国が立憲主義の精神にのっとって、国のあり方として広く普遍化してきておりますけれども、その権力分立の中の一つとして、司法権の独立ということが強く言われております。
 司法権の独立というのは、もちろん裁判所の独立ということと個々の裁判官の独立という二つのことを内容としているわけでありますが、今回の法案は、個々の裁判官の独立にかかわることではなかろうかと思っております。
 かつて、日本でも、大審院の児島惟謙という方が有名でありますけれども、その時代に、あれは恐らく裁判所の独立を行政から守ったという事件なんだと思いますけれども、裁判所が本当に独立しているためには、個々の裁判官が本当に職務に専念できるようでなければいけない。そのことの一つを担保するために、経済的な面から、お金がなくて家のことで困っているのでアルバイトしてなんという心配をしないでしっかりと裁判に打ち込めるというために、この憲法上の保障となっているわけであります。
 こうした保障の趣旨からしますと、ほかの公務員について年俸を引き下げるからという理由だけで引き下げることが適切だろうかという疑問を私自身は若干持っているわけであります。
 指摘というよりも、疑問を持っているので御説明をいただきたいという立場で質問させていただきますが、形式的には憲法の条項に触れるように見えるということ、実質的には、今申し上げましたように、司法権の独立という観点からすると、検察官についてはともかく、裁判官もあわせて下げるということについては、趣旨説明で説明された以上にもう少し踏み込んで御説明をいただかなければいけないのかなと思いますので、その点についての御説明をお願いいたします。
森山国務大臣 憲法第七十九条第六項及び第八十条第二項は、「在任中、これを減額することができない。」と規定しております。確かにおっしゃるとおりでございます。
 ただ、法務省は憲法の解釈一般について政府を代表して見解を述べるという立場ではございませんが、当省なりの考え方を申し上げますと、これらの憲法の規定は、裁判官の職権行使の独立性を経済的側面から担保するため、相当額の報酬を保障することによって裁判官が安んじて職務に専念することができるようにするためであるとともに、裁判官の報酬の減額については、個々の裁判官または司法全体に何らかの圧力をかける意図でされるおそれがないとは言えないことから、このようなおそれのある報酬の減額を禁止した趣旨の規定であるというふうに解されます。
 今回の国家公務員の給与の引き下げは、民間企業の給与水準等に関する客観的な調査結果に基づく人事院勧告を受けて行われるものでございます。このような国家公務員全体の給与水準の民間との均衡等の観点から、人事院勧告に基づく行政府の国家公務員の給与引き下げに伴いまして、法律によって一律に全裁判官の報酬について、これと同程度の引き下げを行うということは、裁判官の職権行使の独立性や三権の均衡を害して司法府の活動に影響を及ぼすということではないと思います。したがいまして、今回の措置は憲法の趣旨に反するものではなくて、また同条に違反するものではないというふうに考えるわけでございます。
 そして、このように憲法の規定が解されることに加えまして、委員御指摘のとおり、今般の人事院勧告を受け、同勧告どおりの給与の改定を行う旨閣議が決定をしたこと、また、従来裁判官の給与については、国家公務員全体の給与体系の中で、その職務の特殊性を考慮しながらバランスのとれたものとするという考え方に基づいて改定を行ってきたことなどを踏まえまして、政府としては、裁判官についても、一般の政府職員の給与改定に伴いまして、報酬月額を、その額においておおむね対応する一般の政府職員の俸給の減額に準じて改正する必要があると考えまして、今般の措置を講ずることにいたしたものでございます。
山花委員 ちょっと事実関係についてお尋ねをしたいと思います。
 日本国憲法になってから初めてのことでありましょうから、少しこの点についてお話を聞いてみたいと思うのですが、大日本帝国憲法のもとで、裁判官の報酬の保障というのは、憲法上の規定はなかったと思いますが、その憲法下での裁判官の身分保障の一つとしての報酬の保障、これはどういう形でなされておりましたでしょうか。
森山国務大臣 大日本帝国憲法下、つまり戦前でございますが、当時の大日本帝国憲法には裁判官の報酬を保障する規定はございませんでしたが、裁判所構成法という法律がありまして、その第七十三条の第一項に、判事は原則としてその意に反して減俸をされることがないという趣旨の規定がございました。
山花委員 減俸とともに、裁判所構成法第七十三条というのは、「転官転所停職免職又ハ減俸」という形ですから、いわゆる裁判官の身分保障というのを、憲法原則ではなかったにしても法律上定めていたということなわけであります。
 ところで、その時代に裁判官の報酬の引き下げを行おうとしたことがあるようでありますが、そのときの事情について、もし資料等ございましたら御説明をいただければと思うのです。
森山国務大臣 御指摘のとおり、昭和六年という、大分前でございますが、若槻内閣のときに裁判官の減俸がされたことがあったという話でございます。資料は必ずしも十分ではございませんけれども、法令や文献等によりますと、おおむね次のような経緯であったようでございます。
 昭和六年に若槻内閣は、経済不況が続く中で、国家財政緊縮の一環として、俸給等の具体的額を定めた勅令の改正によりまして、判事を含むすべての官吏を減俸しようといたしましたが、これに対しては、判事を含めて官吏による反対運動が起こったそうでございます。ここで判事による反対の理由は、判事を減俸する勅令の改正は先ほど申した裁判所構成法第七十三条に違反するというものでございました。
 当時の政府の解釈は、すべての判事をその意にかかわらず減俸する勅令の改正は裁判所構成法に反しないというものでありましたけれども、このような反対運動を受けまして、政府は、改正勅令の附則に、判事については、その意に反して現に受ける額を減額されないとの規定を設けて、他方で、減俸に同意しない判事に対しては、次回帝国議会提出の法律案によって減俸するという方針を閣議決定いたしました。
 もっとも、その後、大審院長が乗り出しまして、全国の判事に対しまして減俸に同意するように訓示をいたしましたことから、結局、判事全員が減俸もしくは寄附に同意したということでございまして、以上、当省において把握しておりますこの経緯はこんなところでございますけれども、当時の政府の裁判所構成法第七十三条の解釈の内容自体、必ずしもはっきりいたしませんし、そもそも当時の裁判所構成法及び改正勅令の解釈は、その内容及び法規範としての性質の相違等に照らしまして、そのまま現在の憲法及び裁判官報酬法に当てはまるとは考えられません。
 既に申しました事情から今回の改正を行うものでございまして、当時の勅令改正における措置と同様の措置をとるということは、現在、相当ではないというふうに考えます。
山花委員 もちろん新憲法になっておりますので、そのまま当てはめるのは適切でないというのはおっしゃるとおりだと思いますが、ただ、旧憲法下と現行憲法のもとでの憲法実例と申しますか、運用の仕方ですけれども、人権の部分に関しては明らかに変わっておりますが、この国会、例えば衆議院、参議院両方そうなんですけれども、旧憲法下の憲法実例を割と尊重して運用しているケースが多くございます。
 例えば、恐らくふだん皆さん生活されているときには、一週間後と言ったときには初日を算入していないですよね。初日不算入の原則というのは民法で規定されていてなんですけれども、普通の感覚からいえばちょっとずれているのは、この国会なんかで初日は算入されて運用されていますが、それは旧憲法以来の実例を尊重してやっているという話を伺ったことがございます。ですので、そのまま当てはめたらどうかという議論をするつもりはないんですが、過去にそういうケースがありましたよねということは指摘をさせていただきたいと思います。
 若槻内閣のころに、つまりは今回とかなり似たような話があったということですね。俸給令、つまり行政官すべて下げるというのに伴って判事も下げようとしたんですけれども、反対運動などがあって、後でどうなったかはおいておいて、その時点では個々の同意を得た人に限って下げたということであります。
 この第二次若槻内閣の時代と申しますのは、今昭和六年という話がございましたけれども、浜口内閣の後に第二次若槻内閣となりました。そのころの時代背景を見てみますと、浜口雄幸内閣から若槻内閣にかけて、井上準之助という人が大蔵大臣を務めておりましたね。そのときは非常に緊縮財政と金解禁を柱とする構造改革路線を進めたと、どこかで聞いたような話ですが、井上大蔵大臣は、不況期にあえてデフレ政策を採用して日本経済の構造改革を進めようとした。
 この浜口内閣のころですけれども、一九三〇年に総選挙を行いまして、浜口首相が率いる民政党が圧勝して議席を伸ばした。いわばこのときの世論というのは井上財政の構造改革路線というのを支持していたのではないかというような評価があるわけですけれども、しかし、井上財政の構造改革路線は失敗に終わったそうであります。一九三〇年のGDPの伸び率は八%減、大幅に落ち込んだとか、鉱工業生産は、一九二六年を一〇〇とすると、一九三一年には七五に落ち込んで、失業者は五十万人近くに達し、帰農者を含めると三百万人以上とも言われるということのようであります。
 そんな時代背景があって、非常に似ているような気がいたしますので、法務大臣たる森山先生というよりも、国務大臣たる森山議員にこのことは御認識をいただければと思います。
 ちょっと余計なことを申しましたけれども、先ほどの若槻内閣の時代の例では、今森山法務大臣から御説明がありましたけれども、今回の報酬の引き下げについては、これは最高裁にお伺いしたいんですけれども、当時の若槻内閣のころとは違って大反対運動が起こったということもなく、どうも九月四日の最高裁判所の会議で合憲じゃないかという話になったようなんですが、この最高裁判所会議というものの性質はどういうものでしょうか。これは司法行政作用のものであるということでよろしいんでしょうか。
山崎最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおりかと存じます。
 最高裁判所は、裁判所組織の頂点にある機関といたしまして司法行政全般を統括、運営しておりまして、最高の責任を負うべき地位にございまして、最高裁判所の裁判官会議がこのような司法行政事務に関する最高意思決定機関ということが言えようかと思います。裁判官会議の結論はあくまで司法行政事務に関する最終意思決定であろうと思います。
山花委員 最高裁にもう少しお聞きしたいんですけれども、その最高裁判所の裁判官会議の中で、報道等によれば、国家財政上の理由などでやむを得ず立法、行政の公務員も減額される場合、裁判官報酬の減額は身分保障などの侵害には当たらず許されるという見解で一致したということのようでありますが、こういった結論が出てくるまでの議論の経緯であるとか、あるいは、先ほどの若槻内閣のころは一生懸命大審院の院長が下級裁判所の判事に同意しなさいという指示をしたということのようですけれども、今回は特に、そういうやり方もちょっと私は疑問があるんですが、どういう意見集約のされ方がなされたかということについて御報告いただければと思います。
山崎最高裁判所長官代理者 この問題につきまして最高裁判所の裁判官会議で議論がございまして、憲法上、裁判官の報酬について特に保障規定が設けられております趣旨及びその重みを十分に踏まえて検討いたしました。人事院勧告の完全実施に伴い国家公務員の給与全体が引き下げられるような場合、その場合に裁判官の報酬を同様に引き下げても司法の独立を侵すものではないということで、会議におきましては憲法に違反しない旨確認されております。
 その議論の参考に資するという趣旨で、下級裁判所の裁判官から、可能な限りでございますけれども意見を聴取いたしました。若干時期的な問題もございまして、これは全員からというわけにはいかなかったわけでございますけれども、相当数の判事あるいは判事補から意見を聞いて、これを参考にして、ただいま申し上げました結論に達したということでございます。
山花委員 確認をしたいと思いますけれども、裁判官会議が司法行政上のものであるということが一つ。あとは、法務省として、憲法違反の法律だと思ってつくりましたなんという話は当然あり得ないわけですから、これは法務省の見解がこうであるということと、最高裁判所の裁判官会議とはいえどもこれはあくまで司法行政上のものですから、個々の裁判官がひょっとすると憲法違反だという見解を持っていて、それが訴え出たときに、地裁なり何なりの審理の結果、いや、憲法違反だという結論になる可能性だってないわけではないわけであります。つまり、このような形で個々の裁判官が違憲説を主張して、まだ成立しておりませんので、現行の報酬規定に従って報酬を、まあ恐らく訴え出るときには差額ということになるんでしょうけれども、差額を支払えという訴えというのはシャットアウトされるわけではないんですね。確認です。
山崎最高裁判所長官代理者 今回の措置の結果としての報酬の減額、これに不満を持つ裁判官が何らかの形で訴訟を提起するということがございました場合には、当然それを審理する裁判体がございますけれども、その訴訟を審理する裁判体が今申し上げました今回の最高裁判所の裁判官会議の内容に拘束されるということはあり得ないことでございます。
山花委員 法務省にお聞きしたいんですけれども、国を相手とする訴訟であるとすると法務省が被告となるのかな。ただ、実際の訴え方はどうなるのかわからないですけれども、仮定の話になってしまいますのでお答えしづらいのかもしれませんけれども、仮にそういう訴えがなされるとすると、どういう形の訴訟類型と申しますか、訴訟のやり方になるんでしょうか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、そのようなたぐいの訴訟をするということは可能でございます。ですから、そういうことが行われたときにどうなるかということで、大変いろいろな条件を仮に置いてという話ですので難しいのでございますけれども、国家財政上の理由などに基づく措置として一般的に法律を改正して全裁判官の報酬の減額を定めることが許されるかどうかということについて、学説の中には、違憲説に立った上で、例えば法改正後に任命される裁判官にのみ適用するべきであるとか、そういうこととして法改正を行う方向ならば許されるのではないかとか、いろいろな議論はあるようでございます。しかし、今回の裁判官の報酬の引き下げは、先ほども申し上げましたとおり、人事院勧告に基づく行政府の国家公務員全員の給与引き下げに伴って行われるものでありますことを考えますと、今御審議いただいている内容が最も適切であるというふうに思っております。
山花委員 私はそれも伺おうかなと思っていたことなんですけれども、恐らく学説上違憲だという説があるのはもう御案内のとおりだと思います。過去の、例えば日本国憲法が制定された直後に法学協会というところから出されました「注解日本国憲法」というのが恐らく当時一番権威があった注釈書ではないかと思いますけれども、その注釈書を見ても、合憲説、違憲説、その研究会でも合致しなかったというようなことが紹介をされております。その編集委員なんかを見ると、宮沢俊義であるとか団藤重光先生であるとか、私から見ると何か神々の時代の方々が著作されているんです。宮沢先生のコンメンタールにも、今御紹介があったように、法改正をしたとしても、その後に任命された裁判官にのみ適用されるということは御検討されなかったのかなと思ったんですけれども、今御説明いただきましたので、その点についてはそれで結構なんですけれども、改めて、仮にということなんですけれども、先ほどの質問です、仮に差額について訴えを提起するとすると、可能性の問題ですけれども、どういう訴訟の形態になるのでしょうか。
寺田政府参考人 訴訟の類型といたしましては給付訴訟に当たりますが、要するに、今度の改正法が違憲である、したがいましてその引き上げ額については根拠を失うということで、その差額についての金銭の給付を求める、こういう形の訴訟になろうかと考えております。
山花委員 そういった形になるのかなということですね。
 ところで、今法務大臣からは、今回の改正についてはこれで大丈夫だという御認識をいただきましたけれども、ただ、今回のについては少し縛りをかけておかなければいけないのかなという思いもございます。と申しますのは、今回はいわば一斉にほかの公務員も引き下げられる中でのものだということですので、これは確認をしておきたいんですけれども、例えば立法府であるとか行政府の公務員については全く減額をしないでおいて裁判官の報酬のみを裁判官全部について減額するというようなことは、これはやはりまずいのではないかと思いますので、私個人としては、今回の措置が、ほかの行政の引き下げということが行われないで司法権だけ引き下げられたとすると、それこそ憲法違反の可能性があると思うのですけれども、今回は特殊なケースであるということだと私は思いますが、その点について一言、御所見をいただければと思います。
森山国務大臣 今、委員御指摘のような場合は、基本的に三権の均衡を害するということになりますし、全体としての司法権に影響を及ぼす場合に該当するおそれが強いものとは思われますが、そのような場合に該当するかどうかは具体的なケースに応じて検討するべきものと考えられますので、具体的なケースを離れて一般的にそのような場合に該当するものかどうかということを論ずるというのは余り意味がございませんし、ここでは差し控えたいと思います。
山花委員 確かに答えづらい設問だったかもしれませんけれども、ただ、何度も御説明いただいている今回の話というのは、あくまでも、ほかの行政職員などが引き下げられたということとリンクして引き下げたということであるということで理解をしたいと思います。
 そして、冒頭質問させていただきましたけれども、一つは、憲法の条文を素直に読むとちょっと問題があるように読めるのですが、法務大臣のお答えは、憲法上保障されているのは個々の裁判官に対する身分保障の問題であって、今回のケースというのは全体について引き下げを行うものであるから憲法の条項の趣旨には反しないのだ、したがってお答えする立場ではないというお話でしたけれども、形式的なことを言えば、憲法上の、七十九条とか八十条との関係でいえば、それは縮小解釈に当たるのだという、恐らく形式的な論理なんだろうなというふうに理解をさせていただきたいと思います。
 法案の審議も非常に重要なのでありますけれども、ここのところ、これをやらないと、国会の方は何をしているんだという話になりかねない法務関係に関するお話がありますので、聞きたいと思いますが、名古屋刑務所の問題であります。
 先般、私も、森山法務大臣の大臣所信などの中の一部分を取り上げまして、刑務所の問題などについて議論させていただきましたし、私個人としては、現場で働いている刑務官の方には本当に頑張ってほしいという思いもあり、私なりには刑務所の問題については理解をしてきたつもりでありますが、そういった立場からいっても今回のことは大変残念なことだと思います。
 ところで、名古屋刑務所で革手錠をされていることに起因して、革手錠からダイレクトにということじゃないですが、それが原因となって命を落とされた方まで出てきたということでありますし、また、これは私も報道でしかよく承知していないのですけれども、革手錠が原因ではありませんが、岡山の刑務所の方で特別公務員暴行陵虐というような報道もされております。大変残念なことだと思いますけれども、今回はこの革手錠の問題について幾つか質問させていただきたいと思います。
 今回の事件があってから、テレビなどでも随分と映像で映し出されておりますけれども、これは矯正局長にお願いしたいのですが、一九九八年に国連の規約人権委員会から勧告が出ております。「保護房での革手錠併用は、自由人権規約第七条(拷問または残虐な非人道的刑罰の禁止)、第十条一項(人間固有の尊厳の尊重)、被拘禁者処遇最低基準規則第二十七(規律及び懲戒は必要な限度を超えてはならない)に反する」という勧告であります。
 また、千葉の、これは地方裁判所の事案ですけれども、保護房に入れておけば十分なのであって、革手錠をしたということについては違法だという判決も出されております。比較的最近の事案であります。
 この革手錠なんですけれども、私自身は別にしてみたことはありませんが、ただ、聞くところによると、拘束をされた側からすると大変不便な状態ということが、恐らくこの本を見せるとまた何か嫌な顔をされるかもしれませんけれども、最近岩波から「日本の刑務所」という、菊田先生が出された本に、その状況などもいろいろ細かく説明されております。私も聞いた話ですけれども、例えば、革手錠をされて用便も困ると。大きい方の用を足すときに、例えば紙でぬぐうこともかなわないで、無理してやろうとするとけがをしてしまうというようなケースもあったりというふうに聞いております。
 千葉地裁のケースについては、きょうは裁判官の報酬の話をしていますけれども、およそ訴えが提起されて、それは個別の事案の解決に必要な限りで法解釈を行うものですから、革手錠全部がいけないといったケースではないのは十分承知はした上でですけれども、ただ、規約人権委員会からの勧告もありますし、また今回こういうケースもあったわけですから、本来的には革手錠というものは必用とすべきでないと私自身は思っております。
 また、どうしても拘束具が必要であるということであれば、本来はすべきでないという前提で聞いてほしいのですけれども、代替品なども検討すべきであると思いますけれども、この点について現在どのような御認識であるかということを伺いたいと思います。
中井政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねの革手錠でございますけれども、これは昭和の初めに実は制式が定められているものでございまして、これまでに七十年以上使用されてきている、こういうものでございます。
 委員御指摘のとおり、この革手錠をめぐりましてはさまざまな意見がございます。これは私どもも十分承知しておりますし、また、今回の事件の重大性ということにもかんがみまして、今後それらの御意見については十分拝聴していかなければいけない、まず、かように考えていることを前提として申し上げておきたいと思います。
 ただ、現場実務の点から見ますと、限られた場面ではありますけれども、革手錠のような、これは法律上、戒具と申しますけれども、これが必要とされる場合があるというのは、これは我が国だけではなくて他国も同様でございまして、矯正局におきましても、十年以上前になりましょうか、そんな観点からいろいろと、この革手錠のことを検討いたしましたり、各種の協議会等で議論する、あるいは使用に関する関係通達を出すということをしつつ今日に至ったというのが現状でございます。
 したがいまして、なおいろいろ慎重に検討する必要はあるかと思いますけれども、現時点でという前提で申し上げますならば、革手錠を使用する際の要件というのがありますけれども、これを厳格に遵守させるということがもとより大前提でありますけれども、次に、これを使用するに当たりましても、その適正な運用が図られるよう徹底していくべきものではないか、かように考えている次第であります。
山花委員 今、いろいろと検討されているという前提でという御答弁でありますが、ただ、その前提のところは、本当にぜひ早い段階で、こういった戒具、なくすというのが一番いいんだと思うのですけれども、代替品というものができるのであれば、それは研究をしていただきたいということは申し上げておきたいと思います。
 ところで、できるだけそういった戒具の使用というものを抑制しようという御努力をされていること自体は、これは全くしていない、けしからぬというところまでは言うつもりはありません。平成十一年十一月一日、「戒具の使用及び保護房への収容について」という通達も矯正局長通達という形で出されております。できるだけ最小限のものにしなさいというものであります。
 ただ、その中で、両腕を前に拘束する方法と後ろ手にする方法と、どう表現したらいいんでしょう、革ベルトを両腕に巻き、服の周りに巻いたベルトに金具を通すことにより前後に腕の位置を固定するやり方。腰にベルトを巻いて、そのベルトに固定する形で前後に腕を固定するというやり方もあるようであります。ただ、後ろ手はもちろんのこと、前後に腕を拘束されているような形ですと、例えば夜寝るときにはとても寝られるような状態でもありませんし、また、くどいようですが革手錠がいいという前提ではないということでお話をしますけれども、前の方で拘束をしておれば、必ずしもこういった前後に腕を拘束するようなやり方をとらなくても目的は十分に達せられるのではないか。もっと言えば、保護房に入れれば革手錠はなくてもいいじゃないか、このように思うんですが、現在、そういうやり方を行っているのか行っていないのか。
 事前に少しお聞きしたところによると、いや、基本的には行っていないんですがということで、ちょっとあるように聞いているんですけれども、この点、いかがでしょうか。実態についての御報告をお願いします。
中井政府参考人 実態についてのお尋ねでございます。
 私ども、全行刑施設における革手錠の使用方法につきましては、毎年監査等を行いまして、おおむね過去一年分ということになりますけれども、それを調査しているという実情にございます。その結果から申し上げますと、革手錠というものは、腰部でございますけれども、そこに革製のベルトを装着いたしまして、そのベルトに取りつけられた腕輪に両手首を固定して使用するというやり方になっております。
 委員お尋ねの腕を前後に固定するという方法は、手首の位置を片手が前、片手が後ろという形でやるという方法であろうと思いますけれども、現在でも、例えば激しく暴れ続けるような被収容者の暴行を抑止する必要がある場合などには、これは行われていると認識しております。
 なお、全般的にいいますと、その手首の位置というのは、委員が先ほど御指摘になりましたように、両手を前に置くか、あるいは片手前、片手後ろとする例が多い。なぜ両手前だけでないのかというお尋ねなんですが、これは、例えば、要するに足げりする場合とかひじ打ちする場合をちょっと想定していただければよろしいと思いますけれども、両手を前後にいたしますとバランスがとれないものですから、仮に被収容者がけってきたり、それからひじ打ちをした場合には力が余り入らないという意味合いがございます。
山花委員 ただ、本来的にはそのやり方については望ましくないと思うんです。
 今の御説明ですと、例えばすごく暴れているケースだとか、言葉では恐らくそう説明されるんだと思うんですけれども、ただ、刑務所という極めて密室の中、そういう表現をとると余り愉快ではないかもしれませんけれども、密室の中で行われていることですよね。つまり、この戒具の使用について、今言われたとおりだという担保はどこにあるんでしょうか。どういう点検の仕方をされているのか、お答えいただけますでしょうか。
中井政府参考人 先ほどは毎年監査をしておりますということを申し上げましたが、当然のことながら、この監査の際には使用状況についていろいろ調査いたします。それ以外に、前回たしか委員の過剰収容に関するお尋ねの際にも答弁申し上げたと思いますけれども、実は私ども、いろいろな不服申し立てのシステムを持っておりまして、その不服申し立ての過程で、革手錠の使用の問題についていろいろと被収容者側から不服申し立てが出てくることもございます。また、それ以外に、いわゆる訴訟が提起される場合もございますし、人権関係部局に対する申し立てが行われる、そういった事柄等々が相まちまして、全般的に革手錠の使用状況についてのチェックがなされる、かように認識しております。
山花委員 チェックがなされるということですが、ただ、今回の名古屋の刑務所の件というのは、もしそれが徹底して行われていたんだったら起きなかったのではないかと思います。ただ、その点についてはまた後で話をさせていただきたいと思います。
 今回のこの名古屋の件を契機といたしまして、十一月八日ですか、法務省矯正局保安課長の名前で「革手錠の使用等に関する適正な運用について」という通知がなされておりますね。法務省矯保第三三二九号に基づき、事態に応じ、その目的を達成するために必要と判断される限度を超えてはならないことということを初めといたしまして、いろいろ書いてあります。ただ、これは通知でありますし、また、もともと出ていた平成十一年の通達の中身どおりしっかりやってくださいよという、それ以上のものではない。つまりは確認的に出されたものであって、新たに何か新しい指示が出たということではないと思います。繰り返し申し上げますけれども、かつて出されているこの通達のとおりに行われていれば、今回のようなケースは起きなかったのではないかという思いもあります。
 今回、こういった通知がなされているわけですけれども、今後の話です、今後、この通知なり、さらにもっと言えば十一年に出された通達なりというものがしっかり徹底されるかどうかについての点検ということについては、いかがお考えでしょうか。
 つまりは、今までもやっていますというのが今の御答弁だったと思うんですけれども、今までやっていたけれども今回事件が起きてしまったわけですよね。したがって、まだ今検討中なのかもしれませんけれども、あるいはこれから検討しますという御答弁なのかもしれないですけれども、そういった点検方法について何か新たにお考えにはなっていないでしょうか。
中井政府参考人 お尋ねのとおり、今回の場合には私どもの現職職員が逮捕されるという重大な事態を迎えているわけでありまして、従前とは状況が全く異なっております。私どもといたしましては、検察が行われている捜査について、当然のことながら全面的に協力しておりますし、また、当局といたしましても、捜査とは別個に独自に調査を継続している、こういう状況でございます。
 今後の問題については、現時点で捜査が継続中でございますので、その捜査の結果の推移を見なければなりませんけれども、いずれにいたしましても、しかるべき時期に、私どもの調査結果、それと捜査結果とあわせまして、改めるべきものは改める、それから処分すべき者は処分する、こういった運びになろうかと思います。
 それから、再発防止策については、確かにいろいろな観点から、現在内部でもチームなどを組みましていろいろ検討しておりますが、それも捜査の推移を見ながらでありますけれども、そう遠くない時期に、関係方面の御意見などを伺いながら取りまとめながらこれを発表する、こういう経緯になろうかと思っております。
山花委員 本当にそれはぜひ徹底してやっていただきたいと思います。
 また、少し革手錠のことで具体的な話になりますけれども、もちろん保護房に入れられてしまっている状態になる原因をつくったのはその本人ということなんでしょうけれども、ただ、保護房に入れられてからも、もちろん私自身のスタンスとしては保護房に入れれば革手錠は要らないのじゃないかというスタンスだという前提で、くどいようですけれどもお話をしますが、入れてしまえば、例えば食事についても小さな窓口があってそこから入れればいいわけであって、そうじゃないというお考えなんでしょうけれども、入れれば済むことですし、その他のことについても、たしか二十四時間カメラで監視しているか何かのことがされていたと思いますので、そうだとすると自傷あるいは自殺の気配なども観察がされているはずでありますから、何も革手錠で拘束した状態でいる必要はないのではないかなということを申し上げた上で、革手錠をした状態ですと、例えば食事の際にも、これも新聞、テレビなどでいろいろ報じられたり実演されたりしていますけれども、食事はいわゆる犬食いという状態で、顔を食器につけて食べたり、みそ汁も配ぜんされるようでありますけれども、とても飲めるような状態でなかったり、中には、それを経験された方なんかは、どうもその手の経験をするという人は何度か経験することがあるようですけれども、一度そういう経験をしたことがあってああまたかという人なんかは、用便なんかも非常に不便なので、わざと水分とか食事を摂取しない。要するに出るときに不便ですから、出さないようにするには、食べなければ、飲まなければいいということで、そういった経験者もいるようであります。
 また、先ほども申し上げましたけれども、夜寝るのも不便だというような話を聞いております。
 ところで、革手錠のこともそうなんですけれども、私は、今の日本の刑務所のことで、今までも何度も申し上げてきたことですけれども、設備が古くなっているものもありましょうし、必ずしも十分ではないでしょうし、何をもって国際標準というかというのはいろいろ御議論あろうかと思いますが、少なくとも世界に誇れるようなレベルではないのではないかというふうに思っているんですけれども、一九九三年ということになりますから、随分前のことでありますが、当時の総務庁行政監察局から「矯正施設に関する調査結果報告書」というものが出されております。
 「附属機関等総合実態調査」という副題がついておりますけれども、その中でも、どうも刑務所の環境が非常によくないという指摘が当時からなされておりますね。
 例えば、保護房についてのことですので、その点についてだけ申し上げますと、当時の報告書の六十ページですけれども、「その他の処遇等の改善」ということで勧告がなされております。3ということで、「居住環境に関して、室内温度が摂氏四十度に達する居房(保護房)や、老朽化している上、通風、採光が不良のままで使用している病舎がある。したがって、法務省は、受刑者の処遇等の改善を図るため、各刑務所等における処遇の実態を把握するとともに、次の措置を講ずる必要がある。」ということで、保護房という形では書いていませんけれども、「収容施設構造等の在り方について、特定施設への集中収容を含め検討すること。」とか「居住環境の悪い施設について、早急にその改善を図ること。」こういった勧告がなされているわけでありますが、この調査報告書が出た以降、こういった点について具体的にどういう進展があったのかということがまず一点。
 もう一つは、さきの委員会で質問させていただきました折に、新規に刑務所をつくるということが検討されているというようなお話でしたけれども、その新しくつくる刑務所についてはいろいろと工夫が必要になってくるんだと思いますけれども、この点についてどのようなお考えをお持ちかということについて、御答弁いただきたいと思います。
中井政府参考人 委員から三点続けてお尋ねがありましたように、順次お答えしたいと思います。
 最初が、保護房に収容した場合には革手錠等の併用は不必要ではないか、こういう趣旨のお尋ねがあったかと理解しております。
 これは、先ほどの説明、抽象的に申し上げましたが、若干敷衍して申しますと、一つは、実は保護房に収容した後も職員が入りますし医師が入るわけでございますけれども、その中に入った段階で被収容者の方から暴行がある場合がございますので、先ほど申しましたように、けったり、ひじ打ちというような事情を申したのは、そういう点で申し上げたということを補足したいと思います。
 それからもう一つは、こういう席で生々しい話をするのは恐縮でございますけれども、大変、通常では想像できないような状況がいろいろ生じてまいります。
 例えば、自分で自分の頭を保護房の壁に向かってぶつけるというような状態も出てくるわけでございます。これは、確かに私ども見ておりますけれども、直ちにはとめられないわけでございますね。そういう場合ですと、頭を保護する防具、ヘルメットみたいなものを例えば装着するわけでありますけれども、装着したものを外してしまうわけでございますね。そうなりますと、どうしても手をさらに固定しておかなければいけないということもございますし、それから、これは私が現実に報告を受けて承知している事例で、ちょっと抽象的に申し上げますけれども、革手錠を外した後に、みずからがみずからの内部器官に対して攻撃を加えまして、内臓に腹膜炎を起こしまして死亡したという事例等もあるわけなんでございますね。
 そういったもろもろのことを考えまして、先ほどは、こういう席でございますので、現場実務のサイドからすると、限定的ではあるけれども革手錠のような戒具が依然として必要であるということを、洋の東西を問わずそういう必要があるということを申し上げたということが第一点でございます。
 それから第二点が、総務庁行政監察局からの御指摘についてのその後の対応状況についてのお尋ねというぐあいに認識しておりますけれども、お尋ねの件につきましては、私どものある施設、拘置所でございますけれども、それについて御指摘を受けました。
 その拘置所の状況というのが、要するに、建物の屋上に突出するような形で保護房が設置されているという状況にございまして、屋根面や壁の面が日中常時直射日光を受けるような状態となっている、そういうことがそもそもの前提としてございました。
 これにつきましては、この勧告を受けまして、空調機器を当該拘置所におきましては設置するなどいたしまして、保護房内が高温になることのないよう所要の改善措置を講じております。
 その他の施設の保護房について申しますと、今申し上げた特定の保護房のような、常時直射日光を受けるような位置関係に設置されているものではございません。したがって、御指摘のような、夏季において室内温度が高温になるというような状態にはなっていないと承知しているわけでございますけれども、特段の指摘は受けなかったものの、全般的な問題といたしまして、換気でありますとかあるいは床暖房といったことにつきましても配意いたしまして、一年じゅうを通じまして適切な室温調整ができるよう努めているところでございます。
 最後の第三点目が、今後の新たな保護房新設、施設新設に当たっての保護房についてのお尋ねでございますけれども、委員御指摘の総務庁行政監察局の勧告に従いまして、夏の時期に室内温度が高温にならないように配慮することはもちろんでございますし、四季を通じまして適切な室温調整が可能となるようなものにしてまいりたい、かように考えております。
 以上でございます。
山花委員 今の御答弁の中でも、少なくとも現在においては直ちに革手錠の廃止はできないというようなお話がございました。
 そして、先ほど来、使用した際には件数なども把握するようにしているということでしたけれども、府中、大阪、名古屋などを比べると、やはり名古屋は突出しているような印象を持ちますね。
 十一年に先ほどの通達が出て以来、府中などでは、保護房の収容件数が三百二十一に対して革手錠使用件数は三件、十二年は四百八に対して五件、十三年は三百八十二に対して八件、十四年も、まだ終わっていないですけれども、二百六十八に対して七件。
 大阪が、やや増加傾向にあるのがちょっと気になりますが、百八十八に対して十一件、三百に対して十八件、三百十一に対して二十四件、三百七に対して二十八件。
 ところが、名古屋については、百二十二に対して二十六、百五十七に対して三十二、もともとやや多かったような気がしますが、百七十七に対して五十三。そして十四年に至って百九十九に対して百四十八ということです。これは保護房収容時の革手錠併用ですから、百九十九に対して百四十八ということは、保護房に入れるというのはイコール革手錠をしろというような形で見えるわけです。また、十三年が五十三に対して十四年百四十八ですから突出して多いのですけれども、まず、御認識を伺いたいのですが、名古屋刑務所については異常に多いという御認識をお持ちでしょうか。
中井政府参考人 名古屋刑務所における革手錠使用件数は、委員御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、本年に入って非常に急増しているというぐあいに認識しております。
山花委員 ともかく、先ほど来申し上げておりますが、今までだってこうやって点検をしてきても急にふえて、そして、今回の事件があってわかったことも出てきているわけでありますので、その点検の仕方なども、例えば革手錠を廃止してしまえば一つは再発防止の方法なのかなと私は思いますけれども、例えば、使ったときに毎回毎回直ちに、例えば三日以内なり一週間以内なりに本省に報告させる。ちょっと事務作業は大変かもしれませんけれども、ただ、今回のケースなんかを見るとそれぐらいやらないと大変なことだと思います。
 また、名古屋刑務所というのはF級の受刑者も入っていますね。今回の件が日本人だったからよかったとは申しません、間違っても言いませんけれども、例えばF級の人が今回のケースでもし亡くなっていたりということだったら大変なことですよ。外交問題にもなりかねない、ましてや、もしヨーロッパの人がそういうことであったとすると。大変深刻に受けとめていただきたいと思います。
 ほかにも何点か通告をしておりましたけれども、時間が参りましたので、法務大臣、最後に、今回のこういったことは大変残念に思っております。私は、かねてから何度かお話をさせていただいていますけれども、矯正の理念というのは、刑務所に入れて懲らしめてやろうなんということじゃなくて、そこで、二度とこういうところに来るなといって送り出していく、そしてまた日常の生活が送れるようにするということであると思っております。ついでに言えば、だから死刑はだめですよという話もあるんですけれども、それはきょうは議論いたしません。
 そういった、本当にちゃんと日本が世界に誇れるような矯正をやっていこう、やっていってほしいという願いもあるんですけれども、今回のこの件を受けまして、きのう記者会見でも何か言われたようでありますけれども、再発防止に向けた所信なりをいただければと思います。
 あわせましてもう一つ、今捜査中ということでしょうから、今すぐにということは恐らく支障があることは十分承知しておりますけれども、これは委員長にも申し上げたいんですが、改めて、あるどこかの時期が来ました段階では、今回の件についての報告というものをしていただきたいということを申し上げたいと思います。
森山国務大臣 先ほど来かなり詳しく議論していただきましたような事件が名古屋で起こりまして、私も非常に驚きましたし、とんでもないことというふうに思っております。
 矯正の理念というのは、二度とこういうところへ来ないように、ここで立ち直ってまともな社会人として生活をしてもらうようにということが目的であるというのは先生のおっしゃったとおりでございまして、私も、そういう方向に向かってしっかり矯正の仕事をしてもらいたい。非常に難しい相手でありますので、苦労も多いでしょうけれども、そこをしっかりやってほしいというのが私の日ごろの願いでございます。
 このたびのようなことは、まことに深刻な事態だと考えまして重く受けとめておりまして、多くの刑務官がまじめに一生懸命仕事をしている中でこんなことが起こりましたことは、本当に残念であり、痛恨のきわみだというふうに思っております。
 矯正当局といたしましても、先ほど来局長がいろいろ申し上げましたように、しっかりと襟を正してもらいまして、今後の再発防止のために一生懸命に努力してもらいたいと思います。
 この八日に名古屋矯正管区長が刑事告発をしておりまして、今捜査中でございますので、先生もお触れになりましたように、今進行中でございますが、ある時点で我が方自身の調査も含めて御報告申し上げる時期が来るのではないかというふうに考えております。
佐藤(剛)委員長代理 山花委員、いいですね、私に対する要請は。今大臣がお答えになりましたから。
山花委員 やっていただけるということであれば、結構です。
 ありがとうございました。
佐藤(剛)委員長代理 石原健太郎君。
石原(健)委員 最近の日本では少子高齢化ということが進んでおります。
 この問題は日本の社会が当面する大きな問題の一つだと思うのでありますけれども、そして、こういうことが続いていきますと、七、八百年過ぎますと日本の国民はゼロになっちゃうということで、どこかではこれを転換しなくちゃいけないということだと思うのですけれども、なぜこう急激に少子高齢化が進んでいくのかなと自分なりに考えますと、やはり子供が何人かいますと教育費にかかるとか食事代がたくさんかかるとか、そういう経済的な問題があって余り子供を持ちたくないんじゃないか、そういうことも一つの理由じゃないかな、こう考えるわけです。
 ある程度歯どめをかけるとすれば、やはり子供というものは親だけのものじゃなくて社会全体のものでもあるんじゃないかな、こう感じるものですから、そういう子供のある家庭に対する手当てというのは普通の報酬を取る人よりは手厚くした方がいいと思う。
 そういうことから質問するのですけれども、扶養手当の子供の手当が六千円というふうに決められている根拠はどこにあるんでしょうか。
大村政府参考人 お答えします。
 一般職の国家公務員の扶養手当額につきましては、従来から、民間の調査をしまして民間の支給状況等を参考に改定しているところでございます。
 この扶養手当額について見た場合、民間では第一子を幾らぐらい支給しているかと申しますと、平均的には五千七百十七円という数字が出ております。こういうことから六千円にしている。第二子についても同額の六千円というふうに決めさせていただいております。
石原(健)委員 しかし、今私申し上げたように、やはり子供がいる家庭にはそれなりにたくさんの手当てをした方がいいんじゃないかなと思うんですよ。六千円では、一日に直すと二百円ということですよね。二百円というのは食事代だけで消えてしまって、あと学校の費用とか被服とか、習い事をすればそれにもお金がかかるということで、今お答えいただいたことは、私の質問した趣旨に対する面ではお答えいただいていないと思うんですよ。
 民間を参考にする、それは人事院のあり方からすれば仕方ないのかもしれないんですけれども、例えば、ハイブリッドカーなんというのができれば、民間に先んじて、まず国の機関から導入しようとか、車のアイドリングをやめようなんというときも、まず国からスタートしたわけですよね。必要があることであれば、何も民間のまねをしていることはなくて、民間より先に取り組んでもいいんじゃないかというふうにも思うわけなんです。
 次に、第三子以降は千円安いんですね。五千円ですか。この差をつけている理由について御説明いただきたいと思います。
大村政府参考人 先ほど申しましたように、一般職の国家公務員の扶養手当というのは民間の支給状況を参考に改定してきているところでございます。特に、公務員の世帯を見たときに、大体配偶者と子供二人がいらっしゃる世帯、四人世帯というのが標準的なところでございますので、従来から民間の調査をしまして、配偶者以外の扶養手当、扶養親族について二人目までの手当額について重点的に改定してきたところでございます。したがいまして、その結果として、一人目と二人目と、三人目以降の手当額は若干差が出てきたというところでございます。
 ただ、世帯全体で見ていただきますと、二人目までを上げれば、当然子供が三人以上いる世帯もそれなりの上がり方をするわけでございます。本年の勧告におきまして、配偶者の手当額を二千円引き下げたところでございますが、これで影響を受ける世帯のうち子供がたくさんいらっしゃる世帯につきましては、三人目以降を二千円引き上げております。その結果として、今千円の差が残っているということでございます。
石原(健)委員 世帯で見て、配偶者二千円減らして子供二千円ふやしたといったら、収入はふえないですよね、もとと同じだということで。それで、民間が第二子と第三子で千円差をつけているということが、民間がそうやっていると言うけれども、それが正しいかどうかはまた別な判断があるんじゃないかと思うんですよ。民間がこうだから公務員もこうだと、すぐ横並びに考えるのはおかしいんじゃないかと思うんですよね。
 特に、三人も四人も子供がいると、部屋だってそれだけ余計になってくるでしょうし、布団だって何組か余計になってくると思うんですよ。それで、千円安いぞということを子供が自覚した場合、お兄さんやお姉さんより自分は千円安いんだというとき、何で国はおれたちのことを低く見ているんだとか、ひがみ根性だって出てくるんじゃないかと思うんですよ。ですから、こういう点については今後見直しの検討課題の一つにしていただいていいんじゃないかと思うんですけれども、いかがなんでしょうか。
佐藤(剛)委員長代理 小澤人事官、石原君が納得するように答弁してください。
小澤政府参考人 一般もそうでありますけれども、公務員の家庭におきましても、家計負担というのは、教育費の増加ということがありまして、養育費というのは大きな割合を占めているわけですが、こういった点を考慮しまして、本年の人事院勧告の際の報告書で、子供等にかかわる支給月額を重視する方向で改定を行うというふうに表明しているわけであります。したがいまして、この方針に沿いまして、今後さらに改善していきたいというふうに考えております。
 ただ、検討に当たりましては、当然ながら、民間の支給状況、それから公務員における扶養の実態、最近共働きという家庭が相当ふえておりますので、こういった実態等も考慮しながら検討していきたいというふうに考えております。
石原(健)委員 共働きも、仕事が好きで、うちにいるよりはぜひ仕事をやりたいという方もおいでかと思うんですよ。でも、そうじゃなくて、生活できないから、本当は自分がうちにいて、一生懸命子供やばあちゃんの世話でもしたいなんて思いながらも、それじゃ生活できないということで共働きしている人も大勢いるということを念頭に入れていただいて、それでいろいろお考えいただければと思います。
佐藤(剛)委員長代理 石原君のおっしゃっていることをよく念頭に置いて考えてください。
石原(健)委員 どうも、委員長ありがとうございます。
 次にお伺いしたいんですけれども、判事補とか検事の方が初めて任官されたときの月給はお幾らになるでしょうか。
森山国務大臣 一年六カ月間の司法修習が終わりまして検察官に任官した者の俸給月額は、二十三万九千三百円でございまして、任官後一年六カ月を経過した一般職のキャリア職員の俸給月額はおおむね十九万六千三百円ということでございます。
石原(健)委員 二十三万九千三百円ですね。この任官されたときの年齢は大体二十六、七歳が平均だというふうにお伺いしているんですけれども、二十六、七歳のキャリアの方の報酬、二十六、七歳のキャリアの一般職の方の報酬はどのくらいになるんでしょうか。
森山国務大臣 今申し上げましたように、任官後一年六カ月を経過した一般職のキャリア職員の俸給月額はおおむね十九万六千三百円でございます。
石原(健)委員 事務当局の方にお伺いしますけれども、二十六、七歳の方のキャリアの平均給与というのは幾らぐらいになるんですか。
大村政府参考人 二十六、七歳でございますが、ことしの勧告が通りましたときに、二十二歳で卒業して入ってくるということになりますと、二十六歳で、俸給月額と調整手当でございますか、こういうものを加えたもの、諸手当を込みにしたものとしていいますと、二十七万円程度でございます。
石原(健)委員 そうすると、同じ二十六、七歳で検事や判事の人と一般の方を比べると、三万ぐらい判検事の方が少ないということになってきますよね。そう理解してよろしいんでしょうか。
森山国務大臣 今私が申し上げたのは、司法修習生が終わって検察官に任官した者、つまり、もし途中何も支障なくストレートに来た人のことを考えますと、年が二十四歳ぐらいのような人でございますが、検察官の場合は特に、ほかの公務員とは違った職務の特殊性がございますし、二十四時間いつでも態勢を整えていなければいけないというようなこともございましたりしまして、超過勤務手当等の一部の手当が支給されないということもございまして、直接比較するのは非常に難しいと思います。しかし、検察官に優秀な人材を確保しなければいけないという意味で、それにふさわしい処遇を確保しなければいけないということは私も痛感しております。
石原(健)委員 裁判官や検察官になるまでにはやはり予備校に何年も行ったり、普通の一般職に就職される方よりはちょっと経費もかかっているんじゃないかと思うんですよ。とりわけ、今度法科大学院というような制度が実施されていくようになりますと、余計そういう経済的負担はかかってくる。
 また、さっき申し上げたように、二十六、七歳で初めて任官されているのが今の現状のようですけれども、一般の方は二十二、三歳から月給をもらうわけですよね。そこに三、四年の、月給を初めてもらう――初めてではないんですけれども、司法修習生のときにもらえるようですけれども、そうすると、最低一年半ぐらいおくれて検事や判事は収入を得る、こういう状況。
 それからまた、先ほど人事院の方が申されたように、超過勤務手当もつかないとか、日曜祝日の出勤に対しては手当がつかないとか、必ずしも世間一般で裁判官や検事は月給高いんだぞと言われているような実態でもないように私は感じたんですよね、今度の給与表なんかを拝見していて。
 それで、裁判官、検察官の俸給がわざわざ一般と別に決められている、この趣旨とかなんとか考えますと、この趣旨はどういうところにあるんでしょうか。人事院の方にお尋ねしたいんです。
大村政府参考人 国家公務員の中にはいわゆる特別職と一般職というのがございます。特に裁判官の方は、司法関係でございますので一般職とは別建てになっております。多分、私も詳しくは存じませんが、検察官の方につきましては裁判官との横並びで決められているのではないだろうかというふうに思っております。
石原(健)委員 裁判官と検察官が横並び的になっているということはわかったんですけれども、何で一般職と別建てでこういう法律になっているのかという趣旨をお聞きしているんです。
佐藤(剛)委員長代理 何で別建てになっているのかという質問に対して、きちんとわかりやすく説明しなさい。
寺田政府参考人 現在の給与額はキャリアシステムを前提としてできておりますが、そもそも別建てにしている理由は、これは当然のことながら判検事ともでございますが、判事の場合はとりわけ司法権の独立ということに深くかかわっているわけでございます。また検察官も、司法手続の主たる当事者といたしまして、国家を代表して正義を実現するという立場にございまして、一定の独立性を認められております。そういう職務の特殊性にかんがみまして、このような別建ての給与体系にされているということでございます。
石原(健)委員 そういう職務の特殊性というようなお話で、お聞きするんですけれども、今回の改定というのは、説明をいただく限り、人事院勧告に従って一般職と横並びで改定するんだというような説明も聞いているわけなんです。今おっしゃったように、そういう趣旨でこの法律ができているとお考えなら、必ずしも横並びですべて考えていく必要もないというふうに私は感じるんですよ。
 今、聖域なき構造改革というようなことも言われておりますし、こういう改正についてお考えになるとき、ある程度自主的にお考えになってもいいんじゃないかと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
寺田政府参考人 これは、司法制度だからどうだということになりますと、おっしゃるとおり、いろいろな考え方があろうかと思います。しかしながら、現在どのような任用制度にあるかといいますと、基本的には、裁判官の場合も検察官の場合もいずれも、大学を卒業して、司法研修所を出て、任官をいたしまして、長く勤務するという勤務形態にございます。これは一種キャリアシステムと言われているわけでございますが、そのようなキャリアシステムを前提とする限りは、今のような国家公務員の一般の給与体系に準じた、あるいはそれに従ったような給与体系のあり方でも特に不合理ではないというふうに考えております。
石原(健)委員 不合理でないといえばないんですけれども、考えればもっといい方法だってあるかもしれないんですよね、何も横並びで考えるとかなんとかじゃなくても。あなたがおっしゃるように、本当に正義を貫くためにとか、その職責の重さとかということを考えれば、あと、年齢のこととかも考えれば、もう少しやり方も工夫もあるんじゃないかなということを私は感じているということをお伝えして、次の質問に移りたいと思います。
 人事院の「給与勧告についての説明」、八月八日を見ますと、「年次・年功的な運用に陥ることがないよう、職員の職務・職責を基本とし、その能力・業績等が十分反映される給与制度を構築していく必要がある」こういうふうに書かれておるんですけれども、一般の行政職について、能力とか業績などが十分反映される給与というのはどんなふうに検討されているんでしょうか。
小澤政府参考人 能力、業績等でございますが、民間の場合、最近の経済情勢、もはやベアが望めないというようなことで、これまでの職能給制度というのが、どうもこの評価制度が十分機能していなかったんじゃないか、年功的になっている、そういう反省から、職務、成果それから実績を重視した賃金体系というものに急速に変わりつつあるわけであります。
 公務員の場合、公務員給与につきましては、かねてから年次・年功的だというような指摘がなされているわけで、そういう意味で、活力ある組織にする、そのためにはやはり年次・年功的というようなことは是正していく必要があるんだろうというふうに考えております。
 ただ、是正する場合、能力に基づいた給与体系ということになりますと、能力というのは客観的になかなかはかれないという点で極めて問題点も多い。さらに、公務員の場合、在職期間が長期化するというような変化がございます。したがいまして、こういった点を考えまして、給与と業績を明確にリンクさせた、職務それから業績を反映するシステムが必要なんではないかというふうに思っております。
 そのためにはもちろん、明確な基準それから実効性ある評価ということが何よりも必要でありまして、こういう制度にするために当然労使双方の理解というのが必要でありますので、労使双方でよく理解し合った上で検討していきたいというふうに考えております。
石原(健)委員 ただいまの御答弁では、能力が十分反映される給与制度ということについての具体的な部分は余りなかったと思うんですよ。
 それで、法務省にお聞きしますけれども、検察官の場合なんかにも、この能力、業績というのが反映されるような給与制度というのは考えられるのかどうか。それから、最高裁判所の方からもお答えいただければと思います。
 私は、民間が能力・業績主義といっても、それは工場なんかで何か組み立てるときに、一斉にみんなでやれば差がついて、こっちの方が能力があるというのははっきりすると思うんですよ。公務員の場合には、こういう能力反映なんというのはなかなか難しいんじゃないか、こう私は感じております。そういう趣旨に立って質問しているんですけれども、法務省と裁判所の方にお願いします。
佐藤(剛)委員長代理 それでは、法務省、最高裁、ただいまの石原委員の質問に対して明快に答弁してください。
森山国務大臣 検察官の昇給につきましては、勤務成績、責任の度合い、経験あるいは能力などを勘案して昇給させることになっておりますが、任官後の経験年数が浅いうちはほぼ同じように昇給しているのが実情でございます。
 御指摘のように、先般、職務、職責を基本とした能力・実績主義を重視した給与制度について、人事院から国会及び内閣に対して報告がなされましたところでございますが、また公務員制度改革の場でも、いわゆる能力等級制度を基礎とした給与制度の導入について検討がなされているものと承知しております。
 今後の検察官の人事・給与制度としてどのようなものがふさわしいかにつきましては、これらの議論を見守りながら、検察官の職務の特殊性や身分保障のあり方、裁判官の人事制度との整合性などを踏まえて、十分に検討すべき課題であると思っております。
山崎最高裁判所長官代理者 裁判官の報酬の関係でございますが、現在、判事補で十二、判事で八つの刻みがございまして、いわゆる昇給ということがあるわけでございますが、裁判官の場合で申しますと、独立して職権を行使するという職務の特殊性というものがございまして、そういうものを私どもは非常に重要なものとして考えていかなければならないというぐあいに考えておるわけでございます。
 そういうことで、裁判官の昇給ということにつきましては、今申し上げました裁判官の独立に影響してはならないということをやはり最大限配慮して、任官後、判事四号までの部分というのは、長期病休等の特別な事情がない限り昇給ペースに差をつけない、こういう運営をいたしております。
 ただ、判事三号から上ということになりますと、これは相当上の号俸になりますので、その場合には、ポスト、評価、勤務状態等を考慮いたしまして、各高等裁判所の意見なども聞いた上で、最高裁判所の裁判官会議において決定されているのが実情でございます。
 裁判所といたしましても、先ほど委員御指摘の人事院勧告の内容というのは承知しておりますけれども、裁判官の報酬制度一般につきまして、これは司法制度改革審議会の意見にも触れられているところがございまして、裁判官の職権行使の独立性への影響あるいはその職務の特質等を踏まえつつ、一般の公務員の給与体系のあり方に関する今後の検討状況もにらみながら検討していきたいというぐあいに考えておるわけでございます。
石原(健)委員 人事院に要望しておきますが、それは能力主義とか実績主義も結構だと思うんですけれども、生活の実態、具体的に言えば、子供の多い家庭とか、その年代、高校に行っているとか大学に行っているというとやはりお金もかかるというのがこの世の中だと思うので、そういう面も配慮した今後の給与体系というのも一つの例としてお考えいただければありがたいと思います。
 それから、最後に法務大臣にお尋ねいたしますけれども、このたび法科大学院法案ができた、あるいは司法制度改革というその目的の一つも、優秀な判事さんや検事さんを何とか確保したいという根本の考え方もあってのことじゃないかと思うんですけれども、今後そうした人材を確保していくのにどのようなお取り組みで進んでいかれるのか、お答えいただければと思います。
森山国務大臣 昨日まで御議論いただきました法科大学院関係の構想も、優秀な法曹を数多く出していただきたい、そのような体制をつくりたいということからの願いでございまして、新しいそういう体制ができましたときには、それらをフルに活用いたしまして、よい法曹が多数輩出できますように、いろいろな面で努力をしていきたいと思います。
 今までも当然たくさんの立派な検察官初め法曹の方が出ていただいて、活躍していただいておりましたが、新しい時代に即応するために、そのような要請が大変大きなものになったというふうに私も痛感しておりまして、そのような社会の要請にこたえるべく最大の努力をしていきたいと思います。
石原(健)委員 どうもありがとうございました。
 質問を終わります。
佐藤(剛)委員長代理 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 裁判官報酬法と検察官俸給法についてでありますが、本改正法案で、現行憲法史上初めて裁判官の報酬並びに検察官の俸給が引き下げられます。個人別に見ますと、最大で二・二%の減、最小でも一・八%の減であります。
 法務省と最高裁にお聞きしますが、これが成立をいたしますと、年間ベースで総額として裁判官全体でどのくらいか、検察官全体でどのくらいの額が減額になるのか、それぞれお答えいただきたい。
森山国務大臣 今回の給与改定に伴いまして、今年度の歳出は、検察官につきましては、本俸減額分のみで概算約三億八千万円の減額となります。
山崎最高裁判所長官代理者 裁判官に関してでございますが、本俸減額分のみで概算年間約五億七千万円の減額と承知しております。
木島委員 今回の裁判官、検察官のそれぞれの報酬、俸給の減額は、ことしの人事院勧告の国家公務員一般職、特別職の給与引き下げに準じて行われるものだと承知をしておりますが、総務省にお聞きしますが、それでは、公務員全体での年間ベースでの引き下げは総額どのぐらいになるんでしょうか。
久山政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の給与改定に伴います実施所要額は、財務省の試算によりますと、一般会計でマイナス二千三百億円程度になるものと承知いたしておるところでございます。
木島委員 人事院にお聞きをいたします。
 これは総務委員会でもしっかり論じられたかと思いますので、さわりの部分だけで結構でありますが、今回の減額勧告の基本的理由を簡潔に述べてください。
小澤政府参考人 御承知のように、ことしは民間企業において、厳しい経営環境のもとで、ベースアップの中止、それから定期昇給の停止、賃金カット等の給与抑制というようなところが大変多かったわけで、その結果、民間給与水準を公務員給与の方が上回ったということになったわけでありますが、人事院としては、このような場合におきましても公務員の給与水準を民間の給与水準と均衡させることが必要というふうに判断して、給与引き下げの勧告を行ったものでございます。
 国家公務員の給与について社会一般の情勢に適応したものにするということは、代償機関として人事院に求められている役割であるというふうに考えております。
木島委員 答弁がありました。民間準拠だ、そして民間の労働者の給与がベアとか賃金カットとかリストラで減った、公務員の方が上になった、だから民間準拠だという理屈です。国家財政の問題じゃないわけですね。
 それで、森山法務大臣に一大臣としての所見をお聞きしたいと思うんです。
 森山法務大臣は、ことしの八月八日に人事院が人事院制度発足後初めて月給の引き下げを勧告したその直後に、わざわざでしょうか、記者会見をして、聞かれたんでしょうか、こう言っております。最高裁判所の検討を待たなくてはならないが、公務員全体の給与が下がる一部として減額を受け入れなければならないという趣旨と理解したい、こういう発言をしたとマスコミは報じております。事実かどうか、確認します。
 それで、これは一閣僚としての意見を聞きたいと思うんです。現在、我が国の経済は深刻なデフレが進行しております。国民所得の落ち込みが家計消費の落ち込みとなり、それが国内での需要を引き下げ、消費が冷え込んでいることが生産の減少となり、生産の減少がリストラとなって、今人事院からお話のあったような民間労働者の賃下げになってはね返っている。まさに経済の悪循環じゃないかと私は思うんです。
 今大事なことは、政治として取り組まなきゃならぬことは、国内消費を喚起することじゃないか、ここが根本にあるんだと、国民の所得を引き上げることではないかと思うんですね。そうしますと、今政府のとるべき態度、政策というのは、ことし既に行われた健保の改悪、来年、年金の切り下げ、介護保険料の値上げ、雇用保険の改悪など、社会保障の連続改悪をストップさせる。そして民間で行っているようなリストラにもストップをかけて、全体としての、国内経済の六割を占めている個人消費が伸びるような、国民の所得をふやすような政策こそすべきではないんでしょうか。
 ところが、今回、人事院勧告がなされたもの、唯々諾々として政府がこれを受け取って、全体の公務員の給与を二千三百億円、年間ベースで引き下げてしまう。裁判官、検察官の報酬、俸給も引き下げてしまう。デフレの促進策じゃないですか。日本経済を立て直す、この不況を打開する最大の責務を負っているのは内閣です。閣僚の一員たる森山法相の所見をお聞きしたい。
森山国務大臣 今先生が最初におっしゃられました新聞の記事ですが、確かに、そのようなことを突然出張先で聞かれまして、そのように答えたという記憶はございます。
 今まで、人事院勧告が引き下げということをはっきりとうたったのは初めてでもございまして、私もちょっとびっくりはしたんですけれども、しかし、人事院というものの役目から申しまして、民間と公務員の給与のバランスをとる、特に民間よりも公務員が上になるというのは、ほかのことを考えますとやはり問題ではないかというふうに感じられますので、民間の方よりも公務員が上になってしまうのは好ましくないという気持ちは私も同感でございますので、そのような意味で、そのような内容のことを申したというふうに思います。
 またさらに、経済の全体から見て、もっと国民一般の収入を上げて消費に向かわせるようにするべきではないかというお話でございますが、私は経済の専門家でもございませんんし、その担当でもありませんので、不用意に申し上げるのはどうかと思いますので差し控えたいとは存じますが、経済にはいろいろな要素がありまして、それを刺激するためにもさまざまなことが考えられますし、また、いろいろな段階を踏んで最終的によりよい経済に持っていくという方法もあるんではないかというふうに思いますので、この給与の改定あるいは引き下げをもってして、これが大変大きな問題であるというふうには思わないところでございます。
木島委員 どうも法務大臣の根本的認識がおかしいのではないかと私は思うんですね。
 今、民間の給与ベースが下がっている。根本的には大企業の無法な、脱法的なリストラですよ。NTTをごらんください。五十歳を超えたら全NTT職員を対象にして子会社に身分を移させる。そして、同じ仕事ですよ、四割賃金カットですよ。こんな恐らく労働法上も許されないようなことが平然と起きているわけでしょう。ほかの電機関係の大企業の中でも同じようなことがまかり通っているんです。
 ですから、大臣は今、民間より公務員の賃金が高くなっているのはよろしくないという認識だとおっしゃいましたが、それは表面的に見ちゃいかぬわけですよ。余りにも公務員の賃金が高過ぎて民間が低過ぎるというんじゃないんです。今、ことし起きている、民公逆転したのは、そういう本当に無法なリストラの結果なんですね。
 ですから、ここで人勧が公務員給与を引き下げる、そうしますと、これに準じて、逆に民間の中小企業が倣ってくるんですよ。ではおれたち中小企業も、これまで雇用を守るために何とか賃金を守ってきたのを、公務員だって削ったんだから我々中小企業も削るというので、これがまた再び民間の労働賃金を切り下げるてこに使われる。今度の人勧と公務員の給与の引き下げ、裁判官、検察官の報酬、俸給の引き下げが、また民間が給与を下げることにはね返ってくるわけです。悪循環ですよ、そういう面では。
 だから、こういう面で、大きな面で、私は、デフレ克服の責務を放棄するものだと指摘をしておきたいと思うんです。経済専門家でないというので、この辺で打ち切ります。
 次に、今回の戦後初めての裁判官の報酬引き下げの憲法問題についてお聞きします。
 もう既に同僚委員からもお話がありました。憲法七十九条の六項、八十条二項は、裁判官の定期の報酬について、この報酬は在任中これを保障すると明文の規定が置かれているわけですね。
 それで、きょうは法制局と最高裁をお呼びしております。今回の報酬の引き下げは憲法に反するのではないかと私は考えておりますが、反しないというのであれば、厳密な法解釈を法制局と最高裁から述べていただきたい。後世の法律家にたえられるようなしっかりした答弁をしていただきたい。
山本政府参考人 それでは、少し詳し目に御説明させていただきます。
 裁判官の報酬につきましては、憲法七十九条の六項、それから八十条の二項に書いてありまして、その規定の趣旨はといいますと、裁判官の職権行使の独立性を経済的側面から担保するために裁判官に相当額の報酬を保障するとともに、報酬の減額については、個々の裁判官または司法全体に何らかの圧力をかける意図でされるおそれがありますことから、このようなおそれのある報酬の減額を禁止した規定だというふうに解しております。
 今回の国家公務員の給与の引き下げは、先ほど人事院から御説明にあったとおりでございますが、要は官民の給与水準の均衡等の観点から、今回、行政府の国家公務員の給与引き下げを行うわけでございます。
 それに伴いまして、裁判官についても、法律によって一律に全裁判官の報酬についてこれと同程度の引き下げをするということは、別に裁判官の職権行使の独立性あるいは三権の均衡を害して司法府の活動に影響を及ぼすというおそれもありませんし、また、ましてや個々の裁判官及び司法全体に何らかの圧力をかけるということを意図したわけでもございません。
 そういうことを考えますと、報酬の減額を内容とする今回の改正法案といいますものは、先ほど申しました憲法の条文の趣旨に反するものではありませんし、ましてやこのような規定に違反するものでもないというふうに考えていいと思います。
山崎最高裁判所長官代理者 ただいま委員御指摘の問題につきまして、最高裁判所の裁判官会議で議論がなされましたので、私の方からはその結果について御説明したいと思います。
 会議におきましては、憲法上、裁判官の報酬について特に保障規定が設けられております趣旨及びその重みを十分に踏まえて検討いたしました。人事院勧告の完全実施に伴い国家公務員の給与全体が引き下げられるような場合に、裁判官の報酬を同様に引き下げても司法の独立を侵すものではないということで、会議におきましては、憲法に違反しない旨、確認されたというところでございます。
木島委員 憲法解釈の最高権威であるはずの内閣法制局と最高裁からの答弁でありますが、私は、この答弁を聞いたら、日本の憲法学者のうち半分は賛同するかもしらぬが半分の憲法学者はこんなものはだめだという批判をされるのではないかと思います。
 先ほど同僚委員からも指摘をされました。戦後何しろ始めてのことですから、この憲法の明文の規定にもろに反するわけですから、この規定の解釈についての「注解日本国憲法」のその文章を読んでみましょうか。「この規定は報酬面から裁判官の身分の保障を図り、報酬の減額により間接的に裁判活動に影響を及ぼすことを防止するのを目的とする。従つて、個々の裁判官につき個別的に保障しているものと解すべきである。」ここまでいいですね。
 二つの説に分かれるんですよ。第一説ですが、「従つて、個々の裁判官の報酬を減額するのではなく一般的に、即ち裁判官たるの職一般につき報酬を減額することは、個々の裁判活動に影響を及ぼすものではないから、かかることまでも禁止しているものではないとの見解がある。この見解によれば、全裁判官につき、国家財政上の必要に基き、他の一般官吏と同率でその報酬を減額することは妨げぬことになる。」これが今の答弁でしょう。これは一つの説ですよ。
 「これに対し、反対の見解は、裁判官は当初定められた報酬を在任中受けるという保障を受けているのであつて、たとえ全裁判官一律に減額される場合であつても、その裁判官からみれば報酬を減額されたことになることには変りないのであるから、かかる一般的減額も亦許されぬと解すべきであり、かく解することが却つて個別的にその報酬を保障されるという趣旨に合すると説く。この説によれば、報酬の減額は妨げぬが、その減額の適用を受けるのは将来その職に就く者に限られ、現に在職するものには及ぼしてはならぬことになる。」
 これは、新しい憲法ができたその直後、憲法の解釈をめぐって日本有数の法学者たちがけんけんがくがく論議をした結果、こういう二つの説に割れた。まさに今日の状況を予見しているわけですね。
 ですから、そういう状況にもかかわらず、内閣法制局が先ほどのような答弁を平気でされる、最高裁は、みっちり論議したというのですが、全会一致だったというのです、十五人の最高裁裁判官が。せめて八対七ぐらいに分かれてほしかったな。残念でなりません。余りにも甘いのじゃないか、法制局も最高裁も憲法の解釈が甘いのじゃないか、法律家らしくもっと厳格な解釈が求められるんじゃないかと思えてなりません。
 一つだけ披露しておきますと、私、きのうテレビを見ておりましたら、衆議院憲法調査会の中山会長が、平気で憲法違反が行われている、今回の裁判官の報酬の減額がそうだと言っていますよ。こんなことを日本の子供たちが見たらどう思うか。テレビでやっていましたよ、皆さん。そういうことだけは披露しておきたいと思うんです。
 森山法務大臣にもう一度尋ねます。
 最高裁裁判官会議が十五人全会一致で、やむなし、合憲説に立ったのは、恐らくことしの九月四日の裁判官会議じゃないでしょうか。ところが、森山法務大臣は先ほども答弁で自白しましたが、出張中、八月八日ですよ、人事院がこの給与引き下げを勧告した直後に、驚いたと言いながら、これ、受け入れなきゃならぬなんということを平然としゃべってしまう。裁判官の報酬の減額問題ですよ。憲法問題ですよ。軽率じゃないですか。
佐藤(剛)委員長代理 自白という言葉は適当じゃないかもしれませんが、森山法務大臣。
森山国務大臣 最高裁の御判断を待つことではあるがということを申し上げたのをお忘れいただかないようにお願いいたします。最終的には最高裁の御判断によるということを忘れていたわけではございませんが、個人的な考え方として申し上げたのでございました。
木島委員 そういう前提をつけても、そういうことを法務大臣たる者がしゃべることが軽率なんですよ。
 次に移ります。
 人事院にお聞きをいたしますが、今回の人事院勧告の完全実施によりますと、国家公務員の給与は、基本給で行政職で平均二%減額、期末・勤勉手当で年間〇・〇五%の減額、扶養手当で行政職で平均四・八%の減額、国家公務員一人平均で年十五万円の減額になるわけであります。
 国家公務員にも、御案内のように、憲法は労働基本権、団結権、団体交渉権、団体行動権を付与しているわけでありますが、人事院は、そもそもこのような公務員に憲法上保障された労働基本権を剥奪する代償機関として設置されたものであります。その人事院が、公務員の給与についてさきのような減額勧告をすることは、私は、人事院の存在理由、レーゾンデートルをみずから失わしめるものにほかならない、憲法の労働基本権保障規定からも問題ではないかと思うんですが、少なくとも、先ほどのような状況で民間給与が下がっているという状況でしょう、それは常識ですよ。それであるならば、少なくとも公務員について減額勧告はしない。労働基本権を剥奪した代償機関としてあなた方は存在しているんですからね。
 ですから、せめてこういう場合には据え置きというのを勧告するのが当然じゃないでしょうかな。そういう根本問題。労働基本権剥奪の代償機関たるあなた方の勧告が、減額は許されないのじゃないか。これに対してどう答えますか。
佐藤(剛)委員長代理 存在理由が問われていますから、しっかりと答えてください。
小澤政府参考人 御指摘のように、公務員につきましては労働基本権が制約されるわけでありまして、人事院は、したがって、公務員に対し、人事院勧告制度というもので給与の水準を勧告しているということであります。
 一般社会の情勢に適応した、適正な給与を確保するため、民間企業従業員の給与を調査しまして、その水準に均衡させる、いわゆる民間準拠というのを基本に勧告を行っているということであります。
 なお、国家公務員法上も、俸給表のマイナス改定があり得ることは想定されているところであります。
佐藤(剛)委員長代理 ちょっと大きい声で言ってください。
小澤政府参考人 はい。国家公務員法第二十八条、それから第六十七条でございます。
木島委員 ようわからぬですね。全然これは説得力ないですね。
 公務員に対する労働基本権は憲法上保障されている。しかし、歴代自民党政権がこれを剥奪した、憲法違反の論議がある、国際社会でも大問題になっている、ILOでも大問題になっている。剥奪するぎりぎりの代償機関として人事院を置く。団結権はありますが、団体交渉権、ストライキ権を剥奪するかわりに、あなた方の給与は人事院がしっかり見て、保障しますよ、そういうことじゃないですか。
 その国家公務員のかわりたる人事院が公務員の賃金を下げてしまう。これは存在理由がなくなるということじゃないですか。このような人事院の存在理由を失わせるような、今回の民間準拠の論は根拠薄弱ですよ、こういう勧告を唯々諾々と追従している政府や最高裁の憲法の受けとめ方。
 私は、さっき裁判官の問題言いましたが、労働基本権の代償たる人事院のやるべき仕事じゃない、その面からも問題だということを指摘しておきたいと思います。最高裁、何か言いたいことありますか。総務省、言いたいことありますか。
佐藤(剛)委員長代理 どなたかありますか。ある方は挙手してください。
木島委員 答弁に立てないということは、もう私の言うべきことを認めたということになるんですよ。
 次に移ります。不利益処分不遡及の原則問題であります。
 今回の法案が可決、成立をいたしますと、裁判官の報酬と検察官の俸給が減額されるのはいつからですか。法律が成立、施行された、その翌月分からですか。
寺田政府参考人 この法案によりますと、改定は公布の日の属する日の翌月の初日、公布の日が月の初日であるときはその日ということになっております。
木島委員 仮にこれが万々が一、十一月に成立いたしますと、そうすると、四月から十一月まで既に裁判官や検察官は、国家公務員もそうですが、給与、俸給、報酬、支払われておりますね。これは減額できないですね。確認しておきます。
寺田政府参考人 既に支払われた俸給あるいは報酬についての返還を求めるという手続はとらないということにいたしております。
木島委員 とらないし、とれないんです。そんなことは当たり前ですよ、不利益不遡及の大原則が確固としてあるわけですから。
 ところが、今回の政府のやろうとしている措置は、既に支払われた四月から十一月までの分について、今回引き下がりますね、引き下がった分を、掛ける何カ月ですか、八カ月か九カ月、これを掛け算して、年末調整の手当で調整するというんです。調整ということは、要するにその分だけ差っ引くというんです。実質遡及しているということなんです。そうじゃないですか。実質ですよ、実質遡及じゃないですか。不利益の実質遡及じゃないですか。
久山政府参考人 お答え申し上げます。
 国家公務員の給与の改定方式につきましては、国家公務員法に定める情勢適応の原則に基づきまして、四月の給与から改定する方式が長年にわたり定着してきておりまして、このことによりまして、四月からの年間給与において官民の均衡が図られてきているところでございます。
 本年につきましては、俸給について引き下げが必要となるところでございますが、今回の給与改定におきましては、既に支給された給与をさかのぼって不利益に変更する措置はとらないとの考え方のもとに、法施行日以降に支給される期末手当の額の調整を行うことによりまして、従来どおり、四月からの官民の年間給与の均衡を図ることとしており、このことは、情勢適応の原則に照らしましても十分合理性があるというふうに考えておるところでございます。
木島委員 だから、今の答弁を私は実質不利益遡及ではないかと言っているんですよ。
 では、改めて聞きますよ。年末手当で調整される金額は、四月から十一月までに既に支払われた裁判官の報酬、検察官の俸給について、今回一・八%から二・二%減額ですが、その減額された分掛ける月数と同額、その同額を十二月の年末の給与で調整するんでしょう。イエスかノーか。
佐藤(剛)委員長代理 久山君、イエスかノーかと言っているから、明快に答えてください。自信持って。
久山政府参考人 お答えいたします。
 今回の俸給引き下げに伴います十二月期の期末手当による調整措置につきましては、本年四月から十一月までの期間について支給される給与の額と、同期間について改正後の給与法の規定によりまして算定した場合の給与の額との差額により調整することとしているところでございます。
木島委員 要するにイエスなんですよ。だからこそ、いろいろへ理屈は言っているけれども、実質不利益処分の遡及ではないか、こんなことは労働法上も憲法上も許されないじゃないか。
 森山法務大臣、法務大臣は法律をつかさどるんですから、どうですか。ああいうへ理屈を言って実質不利益遡及をしておる、こんなこと許されないんじゃないですか。最後、所見を求めて、時間ですから終わります。
森山国務大臣 国全体の、あるいは国民全体の経済的な状況を考えますと、今先生もいろいろと疑問があるというお言葉ではございましたけれども、大局的に見て、これが国民に理解してもらえる線ではないかと思います。
木島委員 もうほとんどまともな理屈も言えないで、憲法上の幾つかの原則をこんなに安易に曲げてしまうというのは、いかに現内閣が憲法に不忠実であるかということを私は指摘したいと思うんです。
 終わります。
佐藤(剛)委員長代理 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
佐藤(剛)委員長代理 これより両案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子君。
中林委員 私は、日本共産党を代表して、裁判官報酬法、検察官俸給法の両法案に対する反対討論を行います。
 反対の理由の第一は、両法案は、本年度の人事院勧告に伴い国家公務員給与の引き下げを行うことに準じて、裁判官報酬、検察官俸給を最大二・二%引き下げるものです。これは、国家公務員に犠牲を強いるだけでなく、民間給与の水準引き下げにもつながり、一層の消費悪化を招き、景気に悪影響を与えるものだからです。
 第二には、四月にさかのぼって改定差額を給与から減額するものだからです。これは民間では違法として許されない不利益不遡及の原則を侵す脱法行為だからです。
 第三は、人事院勧告が憲法の保障する労働基本権剥奪の代償措置として機能していないからであります。今回の人事院勧告で国家公務員給与は四年連続減額となります。人事院勧告は長期間にわたって公務員の利益を害するものとなっています。また、今回の人事院勧告では脱法的な不利益の遡及を行っており、これでは代償措置と認められません。
 第四は、今回の措置が憲法七十九条、八十条で明文で禁止している裁判官報酬を減額するものだからです。この点で、裁判官報酬法改正案は極めて違憲の疑いが強いものであります。
 以上、反対の理由を述べて、討論を終わります。(拍手)
佐藤(剛)委員長代理 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
佐藤(剛)委員長代理 これより採決に入ります。
 まず、内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
佐藤(剛)委員長代理 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
佐藤(剛)委員長代理 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐藤(剛)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
佐藤(剛)委員長代理 この際、連合審査会開会申入れに関する件につきましてお諮りいたします。
 国土交通委員会において審査中の内閣提出、建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案について、国土交通委員会に対し連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐藤(剛)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、国土交通委員長と協議の上決定いたしますが、来る十五日金曜日午前九時三十分から開会する予定でありますので、御了承願います。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十一分散会


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