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第2号 平成15年3月19日(水曜日)

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平成十五年三月十九日(水曜日)
    午後一時一分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 樋高  剛君
      太田 誠一君    小西  理君
      後藤田正純君    左藤  章君
      阪上 善秀君    下村 博文君
      中野  清君    馳   浩君
      保利 耕輔君    星野 行男君
      水野 賢一君    保岡 興治君
      山本 明彦君    吉川 貴盛君
      齋藤  淳君    手塚 仁雄君
      中村 哲治君    日野 市朗君
      水島 広子君    山内  功君
      上田  勇君    高橋 嘉信君
      木島日出夫君    中林よし子君
      保坂 展人君    徳田 虎雄君
      山村  健君
    …………………………………
   議員           杉浦 正健君
   議員           山本 幸三君
   議員           漆原 良夫君
   議員           江崎洋一郎君
   法務大臣政務官      中野  清君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局参事官
   )            西原 政雄君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十九日
 辞任         補欠選任
  下村 博文君     馳   浩君
  中川 昭一君     水野 賢一君
  平沢 勝栄君     阪上 善秀君
  吉野 正芳君     山本 明彦君
  鎌田さゆり君     手塚 仁雄君
  中村 哲治君     齋藤  淳君
  石原健太郎君     高橋 嘉信君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  阪上 善秀君     平沢 勝栄君
  馳   浩君     下村 博文君
  水野 賢一君     中川 昭一君
  山本 明彦君     吉野 正芳君
  齋藤  淳君     中村 哲治君
  手塚 仁雄君     鎌田さゆり君
  高橋 嘉信君     石原健太郎君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案(杉浦正健君外四名提出、衆法第五号)


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 杉浦正健君外四名提出、金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局参事官西原政雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花郁夫君。
山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。
 大変長い名称の法律でありますけれども、債権譲渡円滑化法というふうに略させていただきたいと思います。この債権譲渡円滑化法でありますが、もともとは平成十年でしょうか、与党の金融再生トータルプランというものでしょうか、ここで最初に議論されまして、当時は四本の法律があったようですね。債権管理回収業に関する特別措置法案。これが今回延長されるというものでしょうか、金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律案。ほか二法あります。競売手続の円滑化等を図るための関係法律の整備に関する法律案、特定競売手続における現況調査及び評価等の特例に関する臨時措置法案。これは四本あったんですけれども、ほかの三本については今まで何らかの形で消えてなくなってきておりまして、この今回議論になります債権譲渡円滑化法、これだけが延長、延長で来ているわけですけれども、これだけが延長され続けているということにつきまして、過去この法律に基づいてどういう利用実績があるのかということと、その必要性について、衆法提出者にお伺いしたいと思います。
杉浦議員 お答えいたします。
 金融再生トータルプランのときには実は五本議員立法を出したんですが、当時成立したのは四本でございました。それは先生御指摘のとおりでございます。もう一本はここにおられる山本さんが執念深く追いかけまして、特定調停法なるものを一年ぐらいかけて成立にこぎつけたんですけれども、今大変役に立っていますが。金融再生トータルプランの中で金融再生法とメーンの周辺の部分を急いで措置しなきゃいかぬということでやったわけでございます。
 御指摘でございますが、あとのは消えてなくなったわけじゃございませんで、サービサー法はこれは恒久立法で、サービサーがもう七十社もできて、もう十兆円ぐらい債権処理していますが、非常に実績を上げております。それから、競売手続の円滑化法もこれも恒久立法でございまして、現に生きて債権回収に役に立っております。それから、特定競売手続における現況調査評価特例法というのは、十年後に失効することとなっておりまして、これは文字どおり臨時の措置でいいだろうということで十年間というふうになったわけでございます。
 この円滑化法、長いですから円滑化法とだけ言わせていただきますが、これが二年になったのは、これは民法本体の特例として設けるわけでございまして、当時私どもは、もう民法の本体を変えたらどうだということを言ったわけなんですが、法務省は、民法、刑法の基本法については改正手続は法制審議会に諮らなきゃいかぬと。そうすると長くかかるわけですね。長くかかるわけでございまして、現実にこの法律で措置したのと同じ内容が法制審議会でこの二月に答申の中に入りまして、今度内閣法で担保・執行法の大改正、民法本体の改正が提出されてまいると漏れ聞いておりますけれども、その中にはこの臨時措置法と同じ内容が盛り込まれるというふうに聞いております。法務省ここに来ていますが、法制審議会が四年で上げたというのは早い方でして、長いのになると十年たっても結論が出ないというのもあるんですね。当時、とてもじゃないけれども、金融危機の状況でしたから急がなきゃいかぬ、民法本体にかかわるけれども臨時措置法でやろうということでこの法律をつくったわけです。
 二年とした理由は別に特にございませんでしたが、要するに、二年間の間で法制審、何とかしてくれ、もう二度と延長しないように。そっちを急いでもらうという趣旨も若干ございまして、五年でもよかったんですけれども、二年として成立させたわけでございます。一回二年前に延長していただきました。今度はその再延長二年ということなんですけれども、もしこれが閣法で出てまいります内容、まだ承知しておりませんが、これが盛り込まれると聞いておりますので、もしそれが国会を通ればこの法律は廃止になるというふうに私は理解いたしております。
 この法律、非常によく活用されてまいりまして、金融機関の破綻処理では、RCCから伺いましたところ、根抵当権を設定されている約三万一千債務者のうち約三五%について本法が利用されたというふうに伺っております。また、健全金融機関からRCCとかサービサーへ債権が譲渡された場合の利用状況を主要行、全銀協を通じましてヒアリングをいたしましたところ、十三年度及び十四年度、十四年度は十二月までですが、において千四百五十六債務者のうち約七一%、千三十五債務者について本法が利用されたというふうに聞いておるわけでございます。
 先生御案内のとおり、不良債権の処理は今なお大きな課題でございますし、政府、内閣においても、不良債権処理の加速ということを打ち出しておりまして、小泉構造改革の集中調整期間終了後の平成十六年度には不良債権問題は終局させるという方針で政府は臨んでおりまして、この法律によって不良債権の処理の加速に取り組むことが必要だろうというふうに考えておるところでございます。
山花委員 この法律で言いますところの特定債権回収機関、RCCとかこういったものですけれども、現在議論されている産業再生機構というのは、これは含まれるんでしょうか、含まれないんでしょうか。
山本(幸)議員 お答え申し上げます。
 債権の売却先として特定債権回収機関というのを規定しているわけでありますけれども、それは本法の第二条第二項各号に列挙されておりまして、御指摘のようにサービサーとかRCCとかがあるわけでありますが、RCCが入っております第四号に「金融機関等から回収が困難となった債権を買い取ることを業として行う株式会社であって法務大臣が指定したもの」、これはRCCがそうなっているわけですが、これに今度の産業再生機構が当てはまるかということになるわけでございます。
 現在のところは、私どもは、恐らく産業再生機構はそういうものが処理された後の事業をやるものだろうというふうに思っておりまして、現状では必要ないのではないかと思っておりますが、ちょっとこれは実態が、動いてみてやはり必要だったということがあるかもしれません。そういう事態になれば法務大臣が指定するという可能性は残しておりますが、現状では、なくて済むんではないかという感じでございます。
山花委員 ごめんなさい。ちょっと今の御答弁、よく理解できなかったんですが、産業再生法についての賛否については留保させていただきたいんですけれども、ただ、先ほど杉浦先生からお答えいただいたように、この債権譲渡円滑化法というのが大変よく利用されていて、それだけ活用されているのであれば、もっと言えば産業再生機構は要らないんじゃないかぐらいの感じも受けないでもないんですけれども、今の御説明、ちょっとわからなかったのは、この特定債権回収機関に、まだ成立はしていないんでしょうけれども、その産業再生機構というのが含まれる余地があるという、そういう御答弁だったんでしょうか。
山本(幸)議員 法律的には余地はございます。ただ現状では、そういう処理をする必要が実態としてないんではないかという印象は持っておりますが、法律的には、必要と認められれば余地はあるということでございます。
山花委員 杉浦先生にお伺いしたいんですが、これは通告していないんですけれども、先ほどの質問の御答弁の中で、当時、民法本体の方を変えたらどうか、そういうことをおっしゃっておられたということなんですが、何か御自身の経験でそういう思いがあるようなんですけれども、せっかくですから、そのことをお話しいただけないでしょうか。
杉浦議員 金融再生トータルプランは、あそこにおられる保岡先生が本部長で旗を振られまして、我々、保岡先生のもとで一生懸命やったわけなんです。
 民法、ちょっと条文は忘れましたが、要するに、根抵当権がついている債権は、根抵当権を確定しないと、債権を買い取った人は根抵当権を行使できないという、本法に条文があるんです。だから、確定しないで根抵当権つきの債権を譲渡できないわけなんですね。
 私は、弁護士やって、何回か経験があるんですが、そういう場合は債務者に、話し合って、合意、同意して確定させたりするんですが、例えば夜逃げしちゃっていないというような場合には裁判やらないとだめだ。いても、判こをつかない場合は、裁判を起こす、確定裁判ですね。それから、登記も、共同申請ですから、嫌だと言ったら移転登記の裁判をやらなきゃならぬ。大体半年ぐらいかかるんですよ、半年ぐらい。債権回収するのをスピーディーにやらなきゃいけませんものですから、障害になるんですね。
 前々から、この規定は改正すべきじゃないかという意見はあったようです。実務上もしようじゃないかと言っておったんですが、民法ができたころは、こんなに大量の債権をスピーディーに処理する必要はなかったんでしょうね。だから、こういう事態になってどうしても変えなきゃいかぬということがスタートだったんですね。だから、法務省に本体を直せ、大至急にというのが最初の議論であったように私は記憶しているんですが、保岡先生、そうだったですよね。法務省に、だからこれは臨時でやるけれども、法制審にかけて早く本体を直せということは言った覚えがあります。
山花委員 時間が来ましたので、最後、一問だけ、一点だけお伺いしたいんですけれども、現在検討されている閣法の民法改正、その担保・執行法制が、改正がもし、まだ先の話ですけれども、それが成立したときには、今回のこの法律はもう重要でなくなると言うと何か失礼な言い方かもしれませんけれども、本体が変われば、必ずしも必要な法律ではなくなるという認識でよろしいでしょうか。
杉浦議員 そのとおりでございます。
 この法律の内容がそのまま本体に入ります。しかも、金融機関だけではなくて一般債権者にも適用される法制審の答申内容になっておりますので、そのとおりに閣法ができ、国会を通過すればこの法律は間違いなく要らなくなります、と私は認識しております。
山本(幸)議員 今回閣法で提出される法案の中に、これが成立するとこの法案は廃止されるという規定が入っております。そして経過規定で、従前のものは、従前でやったものは効力を有するという規定がちゃんと入っております。
山花委員 時間が来たので終わります。その閣法が出てきた折には、また別途議論をしたいと思います。終わります。
山本委員長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。きょうも質疑の時間をいただきましてありがとうございました。
 まず、今回の法律は、平成十年八月でしょうか、いわゆる金融国会のときに出されたということでありまして、今回延長なさるということでありますけれども、やはりきちんと検証すべきであるということで、きょうはちょっと端的にお伺いをしてまいりたいと思います。
 まず、この法律案の社会的に果たしてきた役割というのは今どういうふうに考えていらっしゃいますでしょうか。
西原政府参考人 お答えさせていただきます。
 この法律によりまして、先ほど利用実績、御答弁の中にありましたが、その利用実績からいいますと、この法律が施行して以来現在に至るまで、金融機関の破綻処理において、破綻金融機関からRCCへ不良債権が譲渡される、そういう際にどれだけ利用されたかというのを可能な限り調べてみましたところ、根抵当権が設定されている約三万一千件、これの債務者のうち約三五%、それについてこれが利用されているという実態、それから、健全金融機関、これからRCCですとかサービサーですとか、そういうようなところに債権譲渡されるという際に利用されたものを主要行からヒアリングしたものですけれども、十三年度、十四年度、これを通じて、千四百五十六債務者のうち約七一%がこれを利用していたということで、非常に利用度の高いものというふうに我々考えております。
 そのような形で、この不良債権処理が円滑に進められるためには、非常に利用し勝手のいいものというふうに我々理解いたしております。
樋高委員 そして、この法律施行以降の不良債権の進みぐあいについてどう考えているかということなんでありますけれども、どういった機関でどのように利用されてどのぐらいの効果を上げたのか、また、先ほども議論に出ておりましたけれども、民法の原則を修正する、大変大きなことだと思うんですけれども、それによってどれだけの不良債権の回収などに役に立ったかということを、どういうふうな所見をお持ちでしょうか。
西原政府参考人 不良債権の処理にどれだけ役に立ったのかということでございます。
 先ほど利用実態をお示ししましたが、現在の不良債権の処理、これは今着実に進めているところですが、数字をちょっと若干申し上げますと、特にこの不良債権の譲渡、すなわちオフバランス化というような形で対象となるものは、不良債権のうち、破綻懸念先以下の債権、これが中心になります。それで、この破綻懸念先以下の債権の残高をずっと見てまいりますと、平成十一年の三月期には二十七・七兆円でございました。それが平成十二年の三月期には二十四兆円、それから平成十三年の三月期には二十二・七兆円と、そのような形で着実にオフバランス化が進められてきた、不良債権処理が進んだということが言えようかと思います。
 しかしながら、平成十四年の三月期になりますと、これが逆にふえて、二十六・七兆円になってございます。これはなぜかと申しますと、この年に、特別検査と称する、非常にいわゆる徹底的な洗い直しといいますか、それをやった関係で、その特別検査の要因で、五・三兆円ふえてございます。
 そんなことで、この十四年三月期には増加したわけですが、これについても、さらに不良債権処理を加速していくということで、平成十四年の九月期、昨年の秋の中間決算ですが、この段階で見ますと、二十三・三兆円に減っております。すなわち、半期でもって三・四兆円減っているというようなことで、非常に不良債権処理が加速化されているということが言えようかと思います。
 こうした中で、この債権譲渡円滑化法、その効用といいますか役割というのは非常に高いものというふうに考えております。
樋高委員 不良債権の処理をする、これは大切なことでありますけれども、一方で今、不良債権がどんどん発生をしているということでありますから、こちらの方もしっかり手当てをしなくちゃいけないというふうにも思うんでありますが、きょうはその議論はおいておきたいと思います。
 まずこの法律、時限立法ということでありますけれども、その理由はどういったところにあったのか。
 時限立法でつくられたということは、その期間内に一定のきちんとした成果を上げて、ある意味で、期間を限定することによって、期間という意味での目標を設定をしていたのではないかと私は思うのでありますけれども、そういったことを考えたときに、今回、また二年延長ということでありますが、時限立法でつくられた理由は何かということがまず一点と、それと同時に、期間を限定するということは、それは一つの目標だというふうに私は解釈はしているのですけれども、いかがお考えでしょうか。
杉浦議員 先生のおっしゃるとおりに、その期間の間に目標を達成できればしたいという思いもございましたが、先ほど山花先生の御質問にお答えしましたが、そもそも民法の、条文を忘れましたが、要するに、根抵当権で担保される債権の譲渡を受けた者は、確定前に譲渡を受けた債権者は権利を行使することができないという条文が民法にございまして、この条文そのものに問題があるというのは前から指摘されておったところなんです。
 要するに、民法制定時、これはもう明治か大正のころ、改正はされておりますが、あのときほど、現代もそうです、今もそうですが、大量の不良債権をスピーディーに処理しなきゃならないという事態を予測していない時代の産物ではないだろうか。多少時間をかけて裁判をやっても、確定させて実行すればいいじゃないかという考えだったと思うのですね。だから、その本体の、民法の条文、法律そのものに問題があるわけなので、これを臨時的に手当てする必要があったわけでございます。
 ですから、一方において法務省にはぜひ本体を、ちゃんと手続をとって、民法本体の改正ですから法制審にかけなきゃいかぬとおっしゃいますから、早急にかけて十分に検討して、債務者保護とかいろいろ問題点がございますから、やってほしいということは言ったのですが。
 その双方の理由から二年としたわけなんですが、経済の実態の面においては、御案内のとおり、不良債権の処理が進まなかった、今なお必要だという実態は一方でございましたものですから、また法制審の方も四年目にやっと答申がこの二月に出てまいりまして、今度閣法が出てまいりますが、そういう状況でございますので、その双方から二年の延長はどうしても必要だというふうに考えているわけでございます。
樋高委員 その延長の必要性、なぜ必要なのかということをもう少しちょっと詳しくお話をいただきたいのと、これが延長されない場合の、ではマイナスの影響というのは一体どういうところにあるのかということも、この場でちょっと御説明いただきたいと思います。
杉浦議員 さっき金融庁の方から御説明申し上げたように、この四年間、実際の不良債権処理においてこの法律が果たした役割は大変大きいと思うのです。
 経済の実情はまだ、先生さっきおっしゃったように、新たな不良債権も、デフレの進行とともに発生している面もございます。まだ、バブルのときの不良債権で処理されてないものもかなり残っておるという状況でございますので、そういう、スピーディーに多量の債権を処理していく必要性はまだ存在しているということがございます。
 もう一つ、何でございましたか……(樋高委員「もう一つは、マイナスの影響は」と呼ぶ)マイナスの影響。
 もしこれが日切れで終わりましたら、先ほどあったようなケースがあるわけですから、何千件と年間ございますけれども、債務者の同意が得られなければ、RCCとかサービサーは確定及び移転について裁判をやらなきゃいかぬ、スピーディーな処理が困難に陥る。多くのケースにおいてそういうことが予測されるわけでございます。
樋高委員 それで、この法律の今後の運用面での課題というのは、どういうふうに考えていらっしゃいますでしょうか。
西原政府参考人 お答え申し上げます。
 この点についての運用面の課題ということでございますが、やはり指摘されますのは、これを承諾なしにどんどん進めることによってトラブルが生じるんじゃないかというような御指摘が恐らくあろうかと思います。
 この点につきましては、そういうことの起こらないように、当然のことながら、金融機関といたしましては債務者の理解を得るように努力するのが当然のことだろうと思っております。
 もちろん、債権譲渡そのものは、民法上は譲渡人から債務者に通知をする、その行為だけで譲渡は可能なんですけれども、しかしながら、やはり、こういうことを進める以上はやはりきちっとした説明をしていく。ただし、相手がどこにいるかわからないというようなケースとか、それから相手が反社会的勢力とか、いろいろなケースがあって、その場合にはそういうことをせずにやらざるを得ないケースもございますが、そういうようなことでない限りは、とにかく誠意を尽くして話をして説得をしていくということがやはり第一義だと思っております。
 そういうようなことで、トラブルについてはなるべく運用上そういうことが起こらないようにしていただくということは当然のことだと思っております。
樋高委員 法律がきちんとトラブルなく、そして最大の効果を上げられるように、今後、金融庁さんは責任を持ってきちっとこの法の運用を行っていただきたいということを要望させていただきまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 根抵当権の元本確定手続を簡素化し、不動産登記の手続を簡素化してしまう、金融機関にとって大変使い勝手をよくする法案であります。円滑化法と提案者は述べているようなので、そういう言葉を私も使わせていただきます。
 本法案は、五年前の金融国会で、破綻銀行の抱える不良債権を債権回収機関に譲渡して金融危機を回避する、そういう目的で、民法の根抵当権の元本確定に関する根本原則、後からこれは触れますが、根抵当権の元本確定の基本は、銀行側が勝手にできない、根抵当権設定者、要するに担保提供者の請求によるというのが大原則だ、この大原則を変えた。それから、不動産登記の原則は、登記請求権者と登記義務者の共同申請。債権債務両当事者の共同申請が日本の不動産登記の根本原則。このいずれも、日本の民事法の根本原則を変えて、私に言わせればねじ曲げまして、元本確定と登記手続を簡素化してしまった、そういう法律であります。
 二年前に延長されていたものであります。今回さらに二年延長するというのですが、まず提案者に聞きますが、目的は何でしょうか。延長しなきゃならぬような金融情勢に今あるんでしょうか。
杉浦議員 山花先生、樋高先生、お二方にも御答弁申し上げたことでございますけれども、あの金融国会の平成十年から、あの時点での金融の危機的状況からは脱しましたけれども、不良債権の処理という点から見ますと、まだ処理すべき不良債権が相当残っておる。そういう、言ってみますと日本経済の負の部分を取り除いていくことは経済の活性化の基本的な要素だということで、政府、内閣も取り組んでいることは御説明申し上げたとおりでございます。そういう金融機関の抱えている問題、それが経済に与えている影響、そういう点は平成十年の当時と基本的に変わっていないという認識でございます。
 この法律が果たしてまいりました役割については、先ほど金融庁の方から、非常に大きな役割を果たしてきたということもございまして、二年ごとに延長するということで、大変申しわけない次第なんですが、あと二年間、延長をお願いしたいと思っておるところでございます。
 ただ、先ほど山花先生に御説明申し上げたように、閣法で、担保・執行法の部分、民法の本体の改正が近々提案されると聞いております。これは、この円滑化法に定めている内容をそのまま民法本体に持ち込んだものだというふうに法制審の答申内容を見ますと理解されまして、もちろん金融機関等だけじゃなくて債権者一般、全部に適用されるふうに改正されるわけでございますが、今国会中に出されると聞いておりますけれども、もし国会でその法律が通りますと、この臨時措置法はなくていいわけでございますので廃止になるというふうに漏れ聞いておりまして、そうなりますと、今度一回御延長願えれば、民法本体の改正に伴いまして、この法律も御用済みになるのかなというふうに思ったりしております。
木島委員 五年前、この法案が議員立法という形で提案されたのは、当時、金融機関自体が破綻する、日本の戦後の金融で考えられなかったようなことが勃発し始めた。それまでは、銀行、貸し出し側、抵当権者ですね、根抵当権者の方が破綻するなんていうのは予定もしていなかった。大体つぶれるのは銀行から融資を受けた中小企業なり融資を受けた債務者であるという状況だったのが、拓銀などを初めとして貸し出し側、抵当権者側がつぶれ始めた。その最大の原因は、たくさんの不良債権をバブル時代以来抱え込んだからだと。
 さあ金融危機だと大騒ぎをいたしまして、金融機関が破綻する、それを処理しないと日本の金融がぶっつぶれてしまう、血液である金が回らなくなってしまうということで、それを食いとめるために金融機関の破綻処理としてこういう法案を出して、そして、かなり厳格な民法上の根抵当権の元本確定手続やら不動産登記の共同申請という根本原則を変えて、簡単に、金融機関の方の一存で、債務者の方の一存じゃなくて貸し出し側の一存で勝手に元本を確定してしまう、そして、銀行だけの単独申請で根抵当権の譲渡という非常に大事な不動産の登記、これを認めるということをやってやったのは、金融機関がまさに破綻せんとしているのを、それに対して日本の金融を守らなきゃいかぬという理屈だったんじゃないでしょうか。
 今、提案者である杉浦さんが今回継続する理由として持ち出しているのは、そうじゃないでしょう。不良債権の処理をやらなきゃいかぬということを理屈にしているわけですね。だから私は、法の根本目的が変えられているんじゃないかということで質問をしているわけであります。
 実は二年前、平成十三年三月二十三日に、ちょうどこの場所です、当法務委員会で、前回、二年継続のときに同じ問題を私は質問いたしました。そして、こういう安易なやり方で抵当権者側、金融機関側に便法を認めると、債務者がまだつぶれていないのに銀行機関の一存で、まだ健全に生きているのに、債務者が生きているのに取引が停止され、根抵当権の元本が勝手に確定され、譲渡され、そういうことによってつぶされてしまうという懸念を、私は福岡高裁の判決とか幾つかの、東京地裁の判決なども引き合いに出して、余り簡便に、安易にそういう制度をつくるのはいかがなものかという質問をしたんです。それに対して、提案者である杉浦議員から答弁がありました。ちょっと読んでみますよ。
  その前にちょっと簡単に。
  木島委員のおっしゃっておることで、誤解されている面があると思うので、一言だけ申させていただきます。
  先ほど挙げられた判例、私は今初めて聞いたのですけれども、恐らく金融機関が健全な場合の判例じゃないかと思うのですね。今我が国で起こっていることは、恐ろしいことは、金融機関がばたばたと破綻している。RCCもそうなんですが、その破綻した金融機関から不良債権を譲り受けて処理しておるわけで、大量に処理しなければいかぬわけであります。
そういう理屈を述べまして、この法律を賛成してくれという答弁をしているんですよ。
 だから、金融機関が破綻してしまう、これをほっておいたら大変だ、手続を円滑にしなきゃいかぬというのでこの法律を出しているので、延長もお願いしているんだと。
 しかし、今状況は変わっているんですよ。その後、法律が変えられまして、破綻金融機関からの債権譲渡だけじゃなくて、健全金融機関からもRCCは債権を譲り受けることができる。根本のところで法体系をあなた方は変えたわけですよ。これは議員立法じゃありません、閣法でありますけれども。そしてまた、さらにそれを強化、継続するための法案が、まさに今この通常国会のさなかに、産業再生機構法、整備法という法律でそれが盛り込まれているんでしょう。
 根本的に変わったんじゃないですか。破綻する金融機関に対して、処理円滑で金融システムの破綻を救ってやろうという、そんな状況は今ないでしょう。健全銀行の不良債権の処理の加速化、そのためにこの法律延長が必要だと。
 杉浦提案者にお聞きしますが、目的がもう根本的に変わったと理解していいですか。
杉浦議員 いや、目的は最初から変わっていないと思うんです。ただ、RCCがどういう債権を取り扱うようになったかというのは、立法で変わったようでありますけれども、私、そのことは詳しく存じ上げておりませんが、この法律そのものは、当初から不良債権の処理を加速する、加速といいますか、円滑にするという目的で、議員立法としてつくったわけでございます。
木島委員 それは違うんですよ。五年前は違うんですよ。金融機関が破綻し始めた、さあ大変だというので、その破綻した金融機関の持っている不良債権を一日も早く処理しないと破綻処理がうまく進まない、一つの金融機関の破綻処理が進まないと波及する、連鎖する、金融ですから。それは大変だというので、こういう法律をつくらせてくれというので、五年前、議員立法で提出してきたんじゃないですか。
 形は、それは違いますよ。つくられた法律は、健全銀行からの不良債権の譲渡にも適用されてしまいますよ。しかし、健全銀行からの不良債権をRCCが受け取れるという法律は、その後つくられたんだから。ですから、私は言っているわけなんです。それはもういいです。
 今、現実にRCCが、破綻銀行だけじゃなくて、健全銀行が持っておる不良債権も譲り受けて処理することができるような仕組みがつくられ、それが強化されております。そこで、改めて私は、RCC、整理回収機構を所管している金融庁からお聞きしたいんです。
 先ほど同僚委員からもちょっと数字を聞かれておりますが、一体最近、RCCが健全金融機関からどのくらい債権譲り受けを受けているのか、破綻金融機関からどのくらい債権譲り受けを受けているのか、全体の見取り図をまずは示していただきたいと思います。
西原政府参考人 お答えさせていただきます。
 RCC、整理回収機構がいわゆる健全金融機関から資産買い取りをした額、これは、平成十一年の四月から、手元には平成十四年の十二月末までの合計の元本額がございますが、その累計で二兆二千七百十二億円でございます。一方、破綻金融機関からの全体状況といいますか、RCCがこれを資産買い取りした元本総額と申しますのは、平成八年度から以降の累計でございますが、合計で約二十四・一兆円でございます。
木島委員 余り長期間を全部累計されるとよく見えませんから、ここ一、二年に絞るとどんな状況ですか。
西原政府参考人 ここ一、二年ということで、平成十三年度を見てまいりますと、譲り受けた額が四兆……(木島委員「どっちですか、健全か破綻か」と呼ぶ)失礼いたしました。健全ではなくて破綻金融機関からの受け入れということですが、約三千四百億円。それから、十四年度で、十四年十二月末までですが、その現在で買い取り価格ベースで約六千三百億円でございます。(木島委員「健全金融機関からの受け入れ、同じ期間で」と呼ぶ)失礼いたしました。健全金融機関ですが、平成十三年度で合計が三千三百億円。それから、平成十四年度、十二月末までですが、約九千七百億円、そういう額になります。
木島委員 ここ一、二年、とりわけ平成十四年度を見ますと、健全銀行からのRCCの債権の受け取り、買い取りは急増しているんですね。今答弁されましたが、平成十三年は三千三百億が平成十四年十二月までで九千七百億と、三倍になって、健全銀行からのRCCへの債権買い取りが急増しておるということなんです。
 それで、ではお聞きします。RCCが健全金融機関から資産を買い取った場合の、平成十三年度及び、十四年度は十二月までの統計しかないようでありますが、譲渡されてしまった債務者の方、その分類状況、正常先か破綻懸念先とか、実質破綻先とか、破綻先とか、四分類とか、いろいろ分類されますね。債務者の分類ごとの数字、金額を答弁願えますか。
西原政府参考人 RCCに債権が譲渡されたケースにおいて、いわゆる買い取りしたケースで債務者分類がどうなっているかということでございます。それを平成十三年度と十四年度十二月までについて、これは健全金融機関からの買い取りというケースでないとちょっとなかなかわからないものですから、それを見てまいりますと、破綻懸念先、これが債権元本で約二千六百三十四億円でございます。それから、実質破綻先というものが債権元本で七千十一億円。それから、破綻先に該当するものが債権元本で三千三百三十五億円となっております。
 なお、健全金融機関からの買い取りに際して、要注意先以上といいますか、よりもいい債権については買い取っていないという状況でございます。
木島委員 ありがとうございました。
 ついでに、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先の元本総額は今答弁されましたが、債務者の企業数、債務者数、わかったらちょっと答弁いただけますか。健全銀行からRCCへ売却された、債務者側の破綻懸念先、実質破綻先、破綻先の企業数。
西原政府参考人 それでは、お答えいたします。
 債務者数ですが、破綻懸念先の債務者数が五百五十二、それから実質破綻先が二千八百二十、それから破綻先が千六百二十六でございます。
木島委員 ありがとうございました。
 提案者、こういうことなんですよ。実質破綻とかならもうしようがないんです、実質もう倒産状態。破綻先は、これは裁判所へ破産の申請がされた、会社更生の開始決定がされた、そういう問題ですから、これももう法的処理に入っています。
 しかし、問題は破綻懸念先なんですね。まだつぶれちゃいないんですよ。つぶれちゃいない、命がけで営業を守って頑張り抜いている、これはほとんど中小零細企業でしょう。その五百五十二社が、平成十三年と平成十四年の十二月の間に、しかも抵当権の元本総額二千六百三十四億円分が、本当なら、金融機関は健全なんですから、三菱東京とかその他でしょう、健全銀行は、まだつぶれていないそういう中小企業に貸し出しているのが、今お聞きしていただいたように、五百五十二社、二千六百三十四億円もの貸出金がRCCに送り込まれてしまっているという状況なんです。
 そして、先ほど答弁ありましたが、大体その中の平均ですか、七一%がこの法律を適用されている、民法の根本原則を変えて。金融機関が勝手に、もう元本確定だ、取引中断だということですよ。それと、不動産の登記も、債務者が嫌がっていても金融機関が勝手にできる、そういう状況にこの法律が使われている。そういう懸念を私は前の質問のときにしていたんですが、案の定、今の数字を見て浮き彫りになったんじゃないですか。
 本当に、生き残ってもがいている中小企業を、要するに死刑執行するような、そういう、今、不良債権の早期処理の、加速化の名によって、それが現実に小泉さんと竹中さんのラインで進んでいる、この法律はそれに手をかすことになる。そういう懸念を提案者は感じておりませんか。
山本(幸)議員 破綻懸念先をどういうふうに判断するかですけれども、そこはちょっと、私どもは、破綻懸念先以下というのは、いわゆるもう見込みが厳しいということで、不良債権そのものだというように一応考えております。それから上、要管理先、要注意先ということになると、これはおっしゃるように生き残る可能性が十分にある。そこを苦しめるようなことになってはいかぬとは思いますけれども、破綻懸念先というのは従来から不良債権そのものだという定義の中に入れておりまして、そこのところは、確かに苦しい、頑張っておるというのは、気持ちはよくわかりますけれども、一応私どもは、可能性があるところと可能性が非常に薄いところの分け方は、破綻懸念先以下ということで考えているものですから。
 したがいまして、先生恐らく御心配のように、一生懸命生き残ろうというところまでこういうものの対象になっちゃいかぬじゃないかということがお考えじゃないかと思うんですが、そこは告示で、健全銀行からのRCCに対するものの基準というのを書いておりまして、そこに、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先というところで整理しているわけでございます。それ以上についてはやっちゃいかぬよ、しかし、破綻懸念先からはその対象になり得る、そういう基準で歯どめをかけているつもりでございます。
木島委員 この委員会は法務委員会でありまして、財務金融委員会じゃないから、分類についてきょうは詰めません。
 しかし、現実に、竹中さんのやり方が、小泉さんのやり方がどういう状況になっているかというと、要注意先と破綻懸念先の線引きですよ、物すごいきつくなっているんですよ。一昔前なら要注意先で、そういう分類先だったものを、もうこれは徹底的に不良債権扱いにしろということで、破綻懸念先にくらがえさせまして、そして、どんどんとRCCに送っているんじゃないですか。そして、そういう都市銀行のマニュアルを、地方の地銀、第二地銀、信金、信組にまで押しつけてきているのが、一昨年来、全国の地方の金融機関が破綻し、そこから金融を受けていた中小零細企業が物すごい苦しい状況に追い込まれている根源じゃないですか。
 ですから、今、提案者である山本さんが、そういうきれいなことをおっしゃいましたが、現実は、その基準のつくり方をちょっとさじかげんを変えたことによって、生き残れる中小企業までが破綻懸念先と烙印を押されて、今答弁があったように、二千六百三十四億円という巨額の、まだ死んでいない債務者ですよ、中小企業がRCCに送られている。そして、この法律はそれに手をかす法律になっているということを私は厳しく指摘して、次の質問に移ります。
 民法の根本原則について聞きます。
 根抵当権の確定についての民法の根本原則は何だったか。この特別立法ができる前は何だったか。民法三百九十八条ノ十九というのが根抵当権の確定請求の根本原則であります。法律には、こう書かれています。根抵当権設定者にのみ確定請求ができると。根抵当権設定者というのはだれですか。不動産所有者ですよ。銀行じゃないですよ。不動産所有者、物上保証人。連帯保証をして、自分の親戚が会社をやっている、おれは土地を持っている、じゃ、おれの土地を担保に出しましょう、そういう人が根抵当権設定者です。その根抵当権設定者のみが確定請求ができるんだ。確定請求したときは、二週間で確定するんだ。根抵当権設定者、要するに担保提供者、連帯保証人でしょうね、その利益のためにこの条文はあるんです。
 そして、じゃ、確定するときはどういったことかというので、民法三百九十八条ノ二十という条文がありまして、根抵当権の確定事由は、一、取引の終了等、まさにこの取引の終了はどういう場合かというので、物すごい争いが金融機関と債務者の中小企業との間で行われ続けているんです、今も。それから二つ目、競売、差し押さえ申し立てがあったとき。三つ目、滞納処分差し押さえ等があったとき。四つ目、競売手続を知りたるときより二週間。五つ目、破産宣告。
 そういう、だれが考えても、これは、貸し出しはもう無理だ、根抵当権はもう確定させて、銀行取引をとめなきゃいかぬという客観的な状況でしょう。競売、差し押さえ、滞納処分差し押さえ、それから破産宣告、そうでしょう。それはいいですよ。それはちゃんと法律に書かれているんですよ、三百九十八条ノ二十で。
 だから、もうこんな法律要らないじゃないですか。片や健全銀行ですよ。隆々たる健全銀行ですよ。片や債務者の方は、まだ破綻しているわけじゃないですよ。命がけで、厳しいけれども頑張っている。そして、民法の原則は、その担保提供者の同意、承諾が元本確定の基本だ。なぜかといったら、元本確定ということは、もう銀行取引を断ち切られるということを意味するからなんですね。それを、この法律は、銀行が勝手に、銀行の一存で取引停止して、元本確定、抵当権の移転の登記も銀行だけでできてしまう。余りにもひどいんじゃないですか、これは。
 民法の根本原則はそうですね、杉浦提案者。この根本原則の、大事な債務者保護という根本のところをねじ曲げようとしているという法律だ、それは認識ありますか。
漆原議員 今委員がおっしゃいました元本の確定に係る三百九十八条ノ二十第一項第一号、これは、担保すべき債権の範囲の変更、それから、取引の終了その他の事由によって担保すべき元本が生じないこととなった場合には、根抵当権の担保すべき元本は確定するというふうに規定しておりますが、このように規定した理由は、取引の終了等の事由によって担保すべき元本が生じないことになったときは、もはや、継続して発生する不特定の債権を担保するという根抵当権の特性を保持せしめる必要がなくなったと考えられるものでありますから、これを根抵当権の担保すべき元本の確定事由としたというふうに考えております。
 どのような場合に取引の終了その他の事由によって担保すべき元本が生じないことになったかという、この条文に当たるかどうかという点については、これは個々の事例における事実認定の問題だろうというふうに考えております。
 今おっしゃった、債権者が取引の終了を主張して、債務者がこれに同意する場合、これは、取引の終了その他の事由によって担保すべき元本が生じないこととなったと言うことができるために、根抵当権者の元本が確定するものというふうに認識しております。
木島委員 いろいろ説明がありましたが、まさに今、民法学界等では、法制審議会もそうですが、民法三百九十八条ノ二十の元本確定事由の第一号、取引の終了とはいかなるものかというところで問題が提起されているんです。
 それで、まさに今、世上でも、金融機関が、まじめに頑張って利息も返しているような中小企業にまで、金利が安い、もっと金利を上げろ、金利を上げるのに同意しないような中小企業にはもう貸し出しを禁止だというようなことで切り捨ててしまうような、そういう血も涙もないような金融行政が現に行われているから、なおさらのこと、この民法三百九十八条ノ二十の第一号というのは大問題になっているんです。
 それで、先ほど杉浦提案者の方から、法制審で、民法そのものが変えられる、そういう状況があるとおっしゃられました。そのとおりです。今、そういう状況が生まれておりますが、私は、民事法の雑誌であるNBLの二〇〇一年七月十五日の、「抵当権制度の現状と将来像(11)」、その座談会が行われている中で、商工中金法務室長の中村廉平さんというんですか、この方の発言をちょっと引用して、皆さんによく聞いてほしいんです。
  債務者の大宗を占める中小企業の視点から考えると、みずからの所有物件に相応の担保価値があるものと自認していて、それで極度額を設定されている、かつ当該取引銀行とこれからもつき合いたい、それで被担保債権残高と極度額を比べると空き枠もある
まだおれの担保権あるじゃないか、こんなに借金できるはずじゃないかという意味です。
 空き枠もあるのにもかかわらず、それが勝手に確定させられて、ましてほかの金融機関あるいは会社に根抵当権も債権も移転してしまうということは、それがよしんば寝耳に水の状態で出てきたとするならば、資金調達の面からいっても、あるいは感情的な面からいっても耐えられないというようなケースは、あるいはあるかもしれないですね。
こういう懸念をちゃんとしているんですね、商工中金の幹部が。
 これに対する歯どめは、この皆さんの提案している法案にありますか。歯どめが必要なんじゃないでしょうか。そういう歯どめがないとすれば、こういう荒っぽい、民法の根本原則をねじ曲げて金融機関の利益だけを図るような法案はおやめになった方がいいんじゃないか、そういう要望だけして、時間ですから質問を終わりますが、答弁があったらしてください。
杉浦議員 民法本体の改正については、また閣法が出てまいるので、そこで十分に御議論をいただきたいと思います。
 ただ、この臨時措置法をつくった経緯については、先ほど山花先生のときに申し上げましたが、民法何条でしたか、要するに、根抵当権のついている債権を譲り受けた者は、確定後でなければ行使できないという条文があるために、確定させないと債権譲渡を受けられない。そうすると、例えば債務者が夜逃げをした場合には同意も得られない、裁判をやるにも公示催告をしなきゃならない、三月、半年すぐたっちゃうわけでして、そういう条文そのものの問題点は前から指摘があったところでございますので、これだけ大量の処理が必要な状態になったんだから、臨時に、そこのところは特例として、迅速に、円滑に処理できるようにしようということで、この措置法をお願いしたわけでございます。
 本体を変えることになりますと、今度は、一般債権者がすべて、金融機関等だけではなく全部ができることになりますから、これは重要な問題を含む面もあるかと思いますが、それはそれで、担保・執行法の全面的改正案の中で御議論を賜ればと思います。
木島委員 終わりますが、今、答弁者は夜逃げのことを言いましたが、夜逃げするような債務者については、民法三百九十八条ノ二十の元本確定事由の競売の申し立てとか滞納処分とか差し押さえとか破産宣告だ、幾らでもやれるという条文はもう民法の中にきちっとあるんですよ。ですから、全然答弁になっていないということを指摘いたしまして、時間ですから質問を終わります。
山本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子君。
中林委員 私は、日本共産党を代表して、債権譲渡円滑化法改正案への反対討論を行います。
 反対理由の第一は、本改正による債権譲渡円滑化法の延長が、正常な借り手の一方的なRCC送りの促進、円滑化を図り、中小企業の整理、淘汰を推進することになるからです。
 特に今回の改正は、RCCによる健全銀行からの買い取り期間の延長に合わせて、債権譲渡円滑化法の期限を延長するものです。既に、東京三菱銀行等で、返済の滞りがないのに、将来の経営が不安定、不確定であるということを理由に、中小業者がRCCに送られるという実例が出始めています。今回の債権譲渡円滑化法の延長は、健全銀行による中小企業の切り捨てを一層促進するものとなることは明らかです。
 第二には、銀行の優越的地位を利用した、中小企業に対する貸し渋り、貸しはがしが引き続き深刻です。本来なら、この銀行の優越的地位を一定制限を加えて、対等な取引環境をつくり出すことこそ求められていますが、本法案は、金融機関の優越的地位を強めるものであり、金融機関の中小業者との対等な取引環境づくりに逆行するものとなっているからです。
 第三は、本法案は、不動産登記法の共同申請主義に例外を設け、債権譲渡円滑化法を利用した根抵当権の元本確定請求による元本確定の登記は単独申請としました。これによって登記の真正さを担保できなくなるからです。不動産登記法が共同申請主義をとったのは、実体関係を反映した真正な登記のためであり、債権譲渡の円滑化のために登記の真正さを犠牲にすることは許されません。
 以上、反対の理由を述べ、討論を終わります。(拍手)
山本委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより採決に入ります。
 杉浦正健君外四名提出、金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時三分散会


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