衆議院

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第12号 平成15年5月13日(火曜日)

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平成十五年五月十三日(火曜日)
    午後二時十二分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      小此木八郎君    太田 誠一君
      左藤  章君    下村 博文君
      中川 昭一君    中野  清君
      中本 太衛君    菱田 嘉明君
      平沢 勝栄君    保利 耕輔君
      星野 行男君    保岡 興治君
      吉川 貴盛君    吉野 正芳君
      井上 和雄君    鎌田さゆり君
      中村 哲治君    水島 広子君
      山内  功君    上田  勇君
      山田 正彦君    木島日出夫君
      藤木 洋子君    保坂 展人君
      徳田 虎雄君    山村  健君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   最高裁判所事務総局人事局
   長            山崎 敏充君
   政府参考人
   (司法制度改革推進本部事
   務局長)         山崎  潮君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 齋木 昭隆君
   政府参考人
   (国土交通省海事局長)  徳留 健二君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十三日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     中本 太衛君
  後藤田正純君     菱田 嘉明君
  笹川  堯君     小此木八郎君
  日野 市朗君     井上 和雄君
  不破 哲三君     藤木 洋子君
同日
 辞任         補欠選任
  小此木八郎君     笹川  堯君
  中本 太衛君     小西  理君
  菱田 嘉明君     後藤田正純君
  井上 和雄君     日野 市朗君
  藤木 洋子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
五月十三日
 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九九号)
 仲裁法案(内閣提出第一〇〇号)
 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)
 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九九号)


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、警察庁刑事局長栗本英雄君、法務省大臣官房長大林宏君、刑事局長樋渡利秋君、入国管理局長増田暢也君、外務省大臣官房参事官齋木昭隆君及び国土交通省海事局長徳留健二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局山崎人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村哲治君。
中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。
 本日、刑法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきまして、もし時間が少し余りましたら難民調査官の資質について順次質問をさせていただきたいと考えております。
 さて、この刑法の一部を改正する法律案ですが、この法律案というもののポイントは、今まで我が国の刑法が適用されてこなかった事例、つまり日本人が海外で被害者となったときに、殺人等の重大な犯罪については日本の刑法を適用しようという点が今回の法案の改正のポイントであります。
 最初に、考え方の整理をするために、刑法についての基本的な部分を確認いたします。
 刑法一条一項の定めるとおり、我が国日本の刑法では、日本で発生した犯罪に対しては日本の刑法を適用するという、いわゆる属地主義を採用しています。これは、世界的にもほとんどの国が採用しており、それは領土主権に基づく考え方だと理解してよろしいでしょうか。
増田副大臣 中村委員さんの御質疑にお答えを申し上げます。
 まず、御指摘のとおりであります。属地主義は、国家主権の及ぶ領域内で犯された犯罪につきましては、その国は主権に基づきまして刑罰権を行使し、それによって法秩序の維持を図るという考えに基づいております。また、一般的に、犯罪地国では証拠の収集が容易であるという利点があることなどから、属地主義は多くの国で基本原則として採用されているものと承知をいたしております。
中村(哲)委員 ありがとうございます。
 さらに、我が国の刑法では、刑法三条において、日本人が海外において幾つかの比較的重い犯罪を犯した場合についても日本の刑法を適用すると規定しております。これは積極的属人主義と呼ばれるものです。
 今回の改正案というものは、比較的重い犯罪の被害者に日本人がなった場合に、その犯罪者に対して我が国の刑法を適用できるといういわゆる消極的属人主義を採用することを提案しているわけですけれども、このような消極的属人主義を刑法に盛り込んでいる国というものはどういう国があるのでしょうか。
増田副大臣 主要諸外国のうち、ドイツ、フランス、イタリア、韓国などは、国外において自国民が一定の犯罪の被害者となった場合に、自国の刑罰法規を適用する旨の規定を有しているもの、このように承知いたしております。
中村(哲)委員 非常に多くの国ではないかもしれないけれども、かなりの部分の国においてそのような例があるということで、国際的に見てもこういった法律はおかしな法律ではない、そういう御趣旨だと考えさせていただきます。
 さて、ここで出てきております、現行法の三条にも出てきておりますけれども、「日本国民」という言葉が出てきます。この「日本国民」という言葉の定義を確認させていただきたいと思います。
増田副大臣 刑法第三条の二に言う「日本国民」とは、国民の国外犯を規定する刑法第三条に言う「日本国民」と同じく、日本国籍を有する者を言いまして、日本国籍を有するか否かは国籍法の規定によって決められております。
 以上であります。
中村(哲)委員 さて、具体的に本法案の内容について議論を、確認をさせていただきたいと思います。
 この法案が提出されたきっかけとなったのはどういう事件があったからなのか、そのあたりについて背景を説明していただければと考えております。
増田副大臣 いわゆるTAJIMA号事件という事件がございました。平成十四年四月、台湾沖の公海上で、日本の海運会社が運航するパナマ船籍のタンカーに乗船していた日本人航海士がフィリピン人乗組員二名に殺害された事件であります。
 この事件は、我が国の刑法の適用範囲外であったため、我が国は、裁判所轄権を有するパナマ共和国政府からの捜査共助要請を受けまして、捜査共助を行い、さらに事件から三十七日後になって、同国からの仮拘禁請求を受けて、翌日、当該フィリピン人乗組員の身柄を拘束しました。その後、同国政府からは犯罪人引き渡し請求を受けまして、同年九月六日、同国政府に両名を引き渡しております。これが経過でございます。
中村(哲)委員 今御答弁の中に、TAJIMA号という船の所有者についてお聞きしたかったんですが、その中で、御答弁の中では日本の海運会社とお答えになっておりましたけれども、日本国の法人であるというふうに理解してよろしいですか。国土交通省に。
徳留政府参考人 お答え申し上げます。
 TAJIMA号の船舶所有者は、ウェルマウス・プロプリエタリィというパナマの会社でございますが、運航の管理は、当時、共栄タンカーという日本の船会社が行っておりました。船の国籍といいますか、船籍と言っておりますが、これは、したがいましてパナマ共和国でございます。
 以上でございます。
中村(哲)委員 国土交通省にもう少し詳しく聞かせていただきたいんですけれども、つまり、この船の運航管理者は日本の会社であった、しかし所有していたのはパナマの会社であり、船籍もパナマであった。そこで少し疑問になってくるのは、その日本の運航会社、運航管理会社とそのパナマの所有者の、パナマで持っている船会社、その資本関係はどのようになっていたでしょうか。
徳留政府参考人 便宜置籍船のことでちょっと御説明申し上げたいと思います。
 いわゆる便宜置籍船という船があるわけでございますが、これは必ずしも厳密に定義されているわけではございませんが、一般的に、船舶の登録をするについて、簡便な要件等を許容する国に登録されている船舶がそのように言われているわけでございまして、こういった国として、例えばパナマだとかリベリアとかバハマ、キプロス、こういった国がありまして、海運の場合には、こういう国に籍を置いて、そしてそれを用船して運航する、こういう実態が広く行われているところでございます。
 我が国の外航海運企業、御承知のとおり、外航海運サービスという非常にグローバルな市場において、諸外国の海運企業と非常に厳しい国際競争を展開しておるわけでございまして、そのために、その競争に打ちかっていくために、例えば、人件費の安い途上国の船員を雇い入れることができるようなそういう制度を持っている国、あるいはまた、税制面でも比較的有利な税制を持っている、そういった国に籍を置きまして、その船を日本の海運会社が用船をして運航する、こういうことで可能な限りコスト低減に努力をしている、こういうことでございまして、これは何も日本の海運会社だけではなくて、世界各国の海運界で今そういうふうな、広く見られる現象でございます。
中村(哲)委員 私がお聞きしたかったのは、その説明もお聞きしたかったのでありますけれども、資本関係がどのようになっているかということをお聞きしたかったわけでございます。もう一度御確認をよろしくお願いいたします。
徳留政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたパナマのウェルマウス・プロプリエタリィという会社は、日本郵船が一〇〇%出資してつくった会社でございまして、そこが船をオーニングしまして、それを用船しているということでございます。
中村(哲)委員 増田副大臣、つまり、この便宜置籍船の問題というものは、確かに船を持っている会社はパナマの会社かもしれない、しかし、そこの船を持っている会社の株式は日本の運送会社が持っていて、そしてそこが運航管理をしている、そういったところに問題の背景があるというふうに理解してよろしいんですね。もうこれは確認なんですけれども。
増田副大臣 お答えを申し上げます前に、前の発言で私が、発言が違ったところが一カ所ありまして、謹んで訂正をさせていただきます。
 それは、我が国は裁判所轄権と申し上げましたが、我が国は裁判管轄権を有するということでして、訂正をさせていただきます。
 それから、確認の話はそのとおりでございます。
中村(哲)委員 便宜置籍船の話は後で時間があれば少しさせていただきたいんですけれども、次に進みます。
 本法案が施行されれば、海外で犯罪が起こった場合に、論理的には、同一犯罪者に対し複数の国の刑法が適用されることになります。そのとき、実際の捜査はどのようになるんでしょうか。例えばアメリカで日本人が殺されたような場合、そういったことを念頭に置いていただいていればいいかと思うのですが、そういった場合にどこが捜査するのか、どの国が捜査するのかについて、優先順位等の国際的な定めが、約束があるのでしょうか。
増田副大臣 お答えを申し上げていきますが、本改正によりまして、国外における外国人による犯罪に我が国の刑法が適用されることとなっても、直ちに我が国が捜査、処罰を行うことになるわけではありません。
 この点につきましては、必ずしも国際的な約束等があるわけではありませんが、一般的には、犯罪地国に犯人と証拠が存することから、当該犯罪地国にまずその捜査、処罰をゆだねるのが適当な場合が多いであろう、このように考えられます。
 しかし、犯人が我が国で発見されたり、関係者等が我が国に存するなど、我が国が捜査、処罰をすることが適切かつ合理的である場合もあり得ますから、このような場合には、我が国が犯人を逮捕し、あるいは犯罪人引き渡し請求等を行って捜査を進め、当該犯人を処罰することになると思われます。
 以上です。
中村(哲)委員 今増田副大臣がおっしゃったような基準で、どちらの国で捜査がなされるのかということが決まるんだと思います。
 さてそこで、増田副大臣にその点についてさらに聞きたいんですけれども、その答弁をお聞きして、それでは、その基準に当てはまっているということはどこが判断するのか。例えば、日本の捜査機関である警察庁がどのような形で、アメリカで起こった日本人が被害者となっている犯罪に対して、私たちが捜査させてほしい、そういったことを言いに行くのか、逆なケースもありますけれども、そういう具体的な手続の問題についてお聞きしたいと思います。今増田副大臣がおっしゃったその基準に適応するための手続面についての御説明をお願いしたいと思います。
増田副大臣 どういう事案が発生するかわかりませんけれども、発生した事案、発生した場所等、こういうようなことを考えまして、外交ルートを通じ、協議をしながら解決に当たっていく、こういうふうに運ばれると理解しています。
中村(哲)委員 つまり、日本の捜査機関である警察庁なり、検察庁もあるのかもしれませんけれども、日本の捜査機関が外務省を通じて当該地の外務省と交渉に当たる、そういったイメージでよろしいんでしょうか。今、外交ルートでとおっしゃいましたので、具体的にはそういうことでよろしいでしょうか。
増田副大臣 スタートの基本はそうなると思います。その後、進展の段階で直接、省がかわることも当然考えられますが、そういう理解に立っております。
中村(哲)委員 それでは、次の質問に移ります。
 政府の提案するこれらの重い犯罪が、万一、当該発生国では犯罪として規定されていなかった場合はどうなるんでしょうか。
増田副大臣 本法案におきまして、仮に今、対象犯罪が犯罪地国で犯罪として規定されていなかった場合、このように御質問がありましたが、いなかったとしても、我が国の刑法が適用される、このようになってまいります。
 これらの対象犯罪は、いずれも生命、身体に侵害を生じさせ、あるいは生じさせ得るような犯罪ですので、他国においても一般的に犯罪とされているものと言えますし、国民保護の見地からも、犯罪地国における犯罪の成否に拘束されるべきものではないと考えております。
中村(哲)委員 増田副大臣、そうしますと、これは万一の話なんですけれども、向こうに今回定められているような重大な犯罪についての規定が刑法になかった場合、そこの国の捜査官としては、これは仮の話ですけれども、こんな重大な犯罪が本当に定められている国がないのかといったら、ほとんどないとは思うんですけれども、仮にそういったことを仮定した場合の話です。その国では、その犯罪行為については罪にならない、刑法に触れないというふうに考えられているわけですよね。そうすると、万が一、日本がそういうふうなことを言っても、うちのところではそれは犯罪になっていないから犯人の引き渡しも拒みますよというようなことが言われる可能性があると思うんです。
 そのあたりのところはどのようにお考えになっているのか。やはり、重要な犯罪しか決めていないので、頼みますよというふうに外国に言っていくのか。今後の捜査のあり方とも関係してくると思うんですけれども、仮にそういった、仮定ですよ、こういったことはほとんどないと思いますけれども、そういった場合があったときに、日本はやはりその国に対して外交ルートを通じて犯人の引き渡し等を求めていくのかどうか。
 そのあたり、この法案が通った後の捜査姿勢ともかかわってくるとは思うんですけれども、どのような形で運用されるおつもりなんでしょうか。
増田副大臣 中村委員さんがいろいろの事態を想定して御質問いただいているのは、よくわかります。
 そして、一番最後におっしゃったそういうような場合にも、もちろんあらゆる外交手段を通じて、そのことを相手国に話しながら、日本の法律によって、今度、次のこの刑法によって罰するという前提に立って取り組みが行われるというのが筋でありまして、そういう歩みになると思います。
 私も、今御質疑を聞きながら、世界にそういう国があっちゃ困るなと一瞬考えたんですが、私たちの国で凶悪犯罪の対象だというようなことは、他の国でもそうではないのかな、このように実は思っていますが、足らざるところはちょっと勉強してみたいと思いますが、お答えはとりあえず以上になります。
中村(哲)委員 答弁を伺ってみて、恐らくこういうことなんじゃないかなと思うんですけれども、だから、もし犯罪地国で犯罪になっていないケースであったとしても、今回の法律が通れば私たちの刑法によって犯罪者の引き渡しを求めるわけですから、逆に国際的に見てもそのことが通用できるような重大な犯罪、身体とか生命とかそういったものにかかわる犯罪にのみ今回は絞って規定をした、そういった立法趣旨も裏にあるというふうに解釈してよろしいんでしょうか。
増田副大臣 大きくは六つに分けて規定をいたしましたが、先生の御発言の趣旨がないというふうには私は考えておりません。したがって、恐らく世界の国に通用し、また何か事があったときには世界世論の中ででも進むだろう、こういう理解を実はとっております。どうぞ御理解賜りたいと思います。
中村(哲)委員 ありがとうございます。
 それでは、次の質問に移ります。
 今回の法案が通ったときには、こういうケースもあり得ます。最終的に他国で裁判を受け、そしてその他国の刑に服した者に対して、さらに我が国の刑法を適用し、裁判をすることはあり得るのか。
 それはもう刑法に五条で書かれておりますので、これはあるということだと思います。そのとき、五条ただし書きのところにはこのように書かれております。「ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。」と規定されております。ということは、他国の刑に服した者に対して、刑は二重に執行されるというふうに理解してよろしいんでしょうか。
増田副大臣 お答えしていきますが、二重ということにこだわらず、まずお聞きをいただきたいと思います。
 犯罪地国におきまして確定裁判を受けた場合であっても、我が国において同一の行為についてさらに裁判を行って処罰することは可能であります。ただし、同一行為につき犯罪地国で刑の執行を受けたときは、御発言がございました、我が国における刑の執行が必要的に減軽または免除されます。これは御発言のただし書きであります。
 外国において確定裁判を受けた者について、我が国においてどのような場合にさらに処罰を求めて起訴するかにつきましては、検察において事案の内容、被害者等の処罰感情、当該外国での処罰の内容等を考慮して、個別の事案ごとに判断することになる、このように承知をいたしております。
中村(哲)委員 つまり、ケース・バイ・ケースで考えていくしかないということであるのだろうと思います。
 例えば、もう犯罪地国で裁判まで受けて、懲役何年ということを経験して、そして帰ってきたときに、時効は中断といいますか、時効はとまっておりますから、そこで十分刑事責任は問えるんでしょうけれども、余りにも長い時間であったり、もう十分民事的な賠償とかも済んでいる場合などに関しては、被害者の応報感情、感情も安らいでいく、そういういろいろな要件とか状況を勘案しながら個別に対応していくという理解でよろしいわけでございますよね。
 それでは、次の質問に参ります。
 被害者が日本人である消極的属人主義の対象犯罪として新設された三条二項に挙げられている犯罪、これらの犯罪を選定した理由、先ほども少し趣旨を述べられておりましたけれども、改めて述べていただけますでしょうか。三条二項に挙げられている犯罪、なぜこの犯罪を選定したのか、その理由をお答えください。
森山国務大臣 この改正の趣旨でございます国民保護という見地から、個人的な法益に対する罪に限るということにした上で、殺人及び傷害の罪を初めといたしまして、人の生命や身体に侵害を生じさせる、あるいは生じさせ得るような犯罪でありまして、保護の必要性が特に強いものを選択したわけでございます。
中村(哲)委員 人間の尊厳というところに深くかかわっている犯罪を選んだということだと理解をさせていただきます。
 それでは次に、関連してなんですけれども、本法案ではいわゆる重たい犯罪を対象としておりますけれども、我が国には死刑が存在しております。死刑制度を廃止した欧米各国は、そういったときに犯罪者の引き渡しに応じない可能性があると思うのですが、その点についていかがお考えでしょうか。
森山国務大臣 確かに、我が国が外国に引き渡しを請求いたしましても、条約がない限り、引き渡すか否かは、相手国が国際令状に基づいて、その引き渡しに係る法制度等に基づいて判断するわけでございます。
 したがいまして、我が国といたしましては、相手国を説得することに努めることは当然でございますが、相手国が引き渡しに応じないということもあり得ると思います。その場合においては、当該犯罪が起きた国などにおいて適切な処罰が行われるように、我が国として働きかけをしていくということになるかと思います。
中村(哲)委員 質問通告ではそこまで詰めた話はしていなかったんですけれども、適切な要請といいますか、そういうものをしていくという御趣旨だったんですけれども、我が国には死刑がありますよね。それを理由にして、やはり我が国、日本に渡すのは困るというふうに犯罪地国である先進国で言われた場合に、どういった理屈で返してもらうというか、引き渡してもらうのかなということは非常に難しいのかなということを御答弁を聞きながら考えていたんですけれども、どのような形で、またどのような理由で引き渡してくださいというふうに法務省としては当事者である相手国に伝えるつもりでしょうか。
森山国務大臣 この法律が成立いたしましたときには、この法律の考え方をよく説明いたしまして、また、日本の国ではこういう法律制度があり、処罰の体系もあるということを詳しく説明いたしまして、その日本の立場、日本の考え方をよく理解してもらう、努力を重ねるほかないと思います。
中村(哲)委員 死刑制度については、哲学的な考え方の違いというものがあると思うんですね、死刑制度を廃止している国とそうでない国と。そうであった場合に、我が国の刑法が、死刑制度があって、殺人罪というのは死刑が適用されるので、この法案というものは、人に対して直接向けられた犯罪行為であって、生命、身体に大きな損害を与えている犯罪については日本の刑法が適用されるようになったんですよ、そういった趣旨を伝えたとしても、死刑というものの考え方が全く違う中で、その死刑制度があるからという理由で引き渡しを拒まれた場合に、果たして、引き渡してくださいと言えるのかなというのは、根本的な疑問としてあるわけですよ。そして、そこの説明は今されていなかったと思うんですね。
 ここは本当にあり得るな、可能性としては高いなと思うんですけれども……(発言する者あり)スウェーデンから過去にあったという話もありますけれども、そのあたりについて、死刑制度を、今後日本でこれを存置しておくのかということとも絡んでくるんでしょうけれども、説得するのは非常に難しいと思うんですが、その点については具体的な、実質的な理由をいかに伝えていくのか、そこについて何かお知恵を持っていらっしゃらないでしょうか。
森山国務大臣 日本の場合も、死刑というものが存在はしておりますけれども、殺人がすべて死刑ではないわけでございまして、むしろ非常に例外的な、凶悪なものに限られると言ってもいいかと思います。そういうわけで、日本でも死刑というものについては非常に慎重に検討し、最終的にだれもがああそうかと考えるようなものに限られるという実態を説明し、かつ、日本の場合は、日本国としては、今のところ、国民世論等から見ても死刑を存続せざるを得ないという事情であるということを説明するほかないと思いますが、最終的に、スウェーデンその他の国でありましたように、どうしても引き渡せないということもあり得るかもわかりません。その場合はやむを得ないかと思います。
中村(哲)委員 相手が拒まれたら仕方ないという話なんですけれども。結局、だから、日本に死刑制度があるから、それを理由にして拒まれるということはあり得るし、説得しても、向こうがそういう死刑制度を理由にしていたら、引き渡すことというのはなかなかできないと思うんですよね、哲学的に。それは最終的にはもうやむを得ないという話を今おっしゃった。ということなので、今後この法案ができた上で、さらに、日本で本当に引き連れて邦人保護をしたいのであれば、死刑制度の存置、これからも死刑制度を続けていくのかということの議論にもこういった観点を加味していかないといけないのではないか、そのように考えました。
 さて、次の質問に移ります。
 この法案が成立すればこういったこともあるんじゃないかというふうに想像を膨らませました。
 北朝鮮のいわゆる拉致事件が今マスコミでも取り上げられております。日本で起こった拉致事件についてはもちろん日本の刑法が適用されるんですけれども、欧州で起こったような拉致事件については、今まで日本の刑法では適用はない。罪刑法定主義で不遡及ですから、今回の法律が成立したとしても今までの欧州で起きた拉致事件には適用されることはありませんけれども、今後同様の事件が仮に起こった場合には、我が国としても積極的に対応できるようになるというふうに考えてよろしいですか。
森山国務大臣 この法律案は、日本国外において日本国民が犯罪の被害に遭う機会がふえて、殺人等の重大な犯罪の被害に遭うことも少なくないということから、国民保護の見地から、日本国民が殺人等の生命、身体に対する一定の重大な犯罪の被害を受けた場合に我が国の刑法の適用を認めることとするという趣旨でございまして、今後、北朝鮮による拉致事件と同様の事件が発生した場合についてということでお話しでございますけれども、確かに、この法律の趣旨から申しまして、日本国民が海外で外国人による拉致被害に遭った場合には、事案に応じて我が国の刑法が適用されることとなるわけでございます。
 しかし、いずれにいたしましても、刑事事件として取り上げるものがあれば、検察においても、警察等の関係機関と協議の上で、法と証拠に基づいて適切に対処するものと考えております。
中村(哲)委員 つまり、邦人保護の選択肢がふえるということの理解でよろしいですよね。
 国際化になってきて、日本人がどんどん海外へ行っていて、誘拐とかもされることもふえてきた。しかし、今までだったら何とかしてくださいと外交ルートを通じて言うだけだったけれども、この法案が通れば、我が国の刑法に抵触する行為ですから、犯人の引き渡しも含めて、私たちは私たちの国として捜査させていただきたいということで、強くその犯罪地国に訴えることができる、要請することができる、このように理解してよろしいですね。
森山国務大臣 そのとおりでございます。
中村(哲)委員 では、国土交通省に、便宜置籍船の問題について、少し確認のお話をさせていただきたいと思います。
 いただいた資料によりますと、日本籍船とパナマ籍船の違いについて、一枚紙の表をいただいております。これは一つのケースなんだと思うんですけれども、船価が九十億円のものの場合、初年度でかかるお金が日本の場合は二千二百万円、パナマの場合は三百万円、十三年間という耐用年数で考えた場合、全体で見ても、日本の船というのは七千八百万円、パナマの場合は二千百万円、その差五千七百万円の負担が違う。
 しかし、きのう国土交通省ともお話をさせていただいていて意外に思ったのは、これぐらいの違いだったら、逆に日本の方の負担をもっと下げてもいいんじゃないかなと。
 お話を聞くと、日本の会社が持っている船というか、それは子会社を使って持っている船と言ってもいいんでしょうけれども、日本が管理、運航している船の中で、日本の船籍の船というのは数%というふうに聞いておりますので、もしこの便宜置籍船をなくすような、そういった法制度にしても、トータルとしての収入は、もしそれで数%が一〇〇%に近くなれば、負担は大体四分の一程度ですから、今のパーセンテージの四倍ぐらいになれば、まあ素人考えですけれども、財政的にも問題はないので、なぜその国際標準に合わすような形というか、便宜置籍船が国際標準なのかというのはまた議論があると思うんですけれども、そのあたりのところは国土交通省としてはどのようにお考えになるんでしょうか。
徳留政府参考人 お答え申し上げます。
 今先生、税金の比較の方をお話しいただいたわけですが、税金につきましては、一つの試算として、十三年間で約六千万円ぐらいの差ですよということでございますが、他方で、先ほど私、便宜置籍船の、なぜ便宜置籍船がされるかということの理由の中で一つ申し上げましたのは、船員の問題、船員コストの問題がございまして、船員コストを考えた場合には、例えば、ある試算でございますが、日本人の船長というか艦長を日本籍船の場合には最低乗せなきゃいけないということがございます。パナマ籍船であれば、それはすべて外国人でも構わないということがございます。これで、人件費ベースで考えますと、総人件費で大体五、六千万円の差が出てくるということでございまして、船は耐用年数十四、五年ありますので、その間考えますと、もっと大きな差が出てくるというようなこともございまして、現状では、そういう便宜置籍を選んでいるというのが船会社の実態ではないかと思っております。
 税金につきましてもいろいろ私ども努力をしておるところでございますが、実態はそういうことであるということでございます。御理解いただきたいと思います。
中村(哲)委員 お話を伺っていてもよくわからないのが、税金については確かにそうなんだけれども、船長の国籍とかを考えると、やはり日本人の給料は高いから差が出てくるんですという、まとめるとそういうお話なんです。
 だったら、なぜ日本の船籍の船において船長が外国人でもいいように制度を変えないのか、国際競争というのであれば、そういうふうにしてもいいんじゃないかという疑問が生じてくると思うんですけれども、そこはもうステータスの問題として、日本船籍の船はやはり日本人じゃないとだめなんだ、それはもう国是なんだというお考えならば、それはそれでわかるんですけれども、そこの確認をさせていただきたいと思います。
徳留政府参考人 お答え申し上げます。
 日本人の乗組員の数につきましては、随時いろいろ見直しをしてまいってきておりますが、ただ、最終的に、やはり日本の海運といいますか、日本の物資はほとんど船で運ばれて、貿易として運ばれておるわけでございまして、日本海運だけではございませんが、しかし、大宗は日本の海運が担っておるわけでございます。
 今後のそういう海運を運営していくためには、ある程度の、そういう船員の教育といいますか、そういう場というものがやはり必要であろうということで、すべて外国人でというふうには、我々としては、やはり政策としてはとっていないということでございまして、ある程度の船員を養成していく。そのために、その中で海運業を運営していくというためには、船を動かす、そういう人材の養成というものも必要であるというふうに考えておるところでございます。
中村(哲)委員 少しわからないのは、それだったら、なぜ、日本の会社が運航管理しているような船で外国人を雇ってもいいような、そういう法制にしているのか。だから、パナマ船籍の船を日本の会社が実質上、一〇〇%子会社を使って持っているわけですよね。それが許されるということになると、おっしゃった趣旨が脱法的にされているというふうに理解してもいいのではないかと思うんですが、そのあたりの理解をどういうふうにしたらいいんですか、国民としては。
徳留政府参考人 ちょっと説明がうまくなくて申しわけないんですが、外国に籍を置いた船については、日本のそういう船員の適用はないわけでございまして、私どもとしては、そういうことで外国へ便宜置籍することをできるだけ防ぎたいという努力をしているわけでございまして、まだ日本籍船は、先ほど先生おっしゃいました、百十杯ぐらいございますが、日本籍船はどんどん減少してきているということはあるわけでございます。そういうことで、外国の船についてはそういうメリットがあるということで、一定の船を外部便宜置籍しているということでございますが、そういうことでございます。
中村(哲)委員 余り答えにはなっていないと思うんですけれども、この便宜置籍船の話をずっとやっていても仕方ないので、これはまたほかの委員会でやるべき話だと思います。
 つまり、かなり特殊な状況で、ある事件においてこの法案が提出されるきっかけとなった、それは理解していいんだと思います。ただ、今大臣おっしゃったように、国際的にこれだけ日本人が外に出ていくようになった。そして邦人保護の要請もある。そういった中で、今回の法案が出てきたという背景というのは私は十分理解できるというふうに感想を述べさせていただきます。
 さて、この法案についての私が思いつく論点はすべて聞かせていただきましたので、少し時間も余ったことですので、私が日ごろ気になっている難民調査官の資質の問題について次に質問させていただきたいと思います。
 まず、前提となる質問を少しさせていただきたいと思います。
 二〇〇二年に政府が難民として認定した方たちというのは十四名と聞いております。一昨年の二十六名と比較しても、かなり少ないと言えると思います。各国と比較しても、この認定数は圧倒的に少ないと思います。我が国の難民認定というのは厳し過ぎるのではないでしょうか。
 例えば、データを申しますと、二〇〇二年、申請数は二百五十名、認定数は十四名、六%です。人道的配慮も四十名、一六%にすぎません。二〇〇一年でも、申請数三百五十三名中、認定数は二十六名、七%です。人道的配慮も六十七名、一九%にしかすぎません。我が国の難民認定が厳し過ぎるのではないか、これについて局長の答弁をお願いいたします。
増田政府参考人 外国と比べて我が国は難民認定に厳しいのではないかというお尋ねでございますが、難民認定申請につきましては、従来から、国際的な取り決めである難民条約等にのっとりまして、個別に審査した上で、難民として認定すべき者は認定しており、それ以外の場合でも、人道的観点から必要と認められるときには、本邦での在留を特別に許可することとしております。
 委員御指摘のとおり、平成十四年に難民認定した者の数は十四名でして、平成十三年が二十六名でございますから、減少しておりますが、これは平成十四年の難民認定申請が前年、平成十三年に比べて百名以上減少していることによるところが大きいのではないかと考えておりまして、日本の難民認定が厳し過ぎるという批判は必ずしも当を得ていないものと思います。
 なお、難民認定しなかった者につきましても、ただいま委員が御指摘になりましたとおり、平成十四年に人道的配慮から四十名の在留を認めておりまして、難民として認定した者と実質的に庇護した者、その合計が五十四名で、庇護率は約二四%となります。この数字から見て、我が国が難民の受け入れに消極的態度をとっているとは考えてはおりません。
中村(哲)委員 その御答弁に関しては少しまた議論をさせていただきたいんですけれども、その前に、国土交通省の皆さん、もう結構ですので御退席ください。
 今増田局長の御答弁の中に、申請数が減ったから、百名以上減ったからというお話もありました。しかし、これ、逆に考えると、日本はもう行っても認められないぞ、だからもう日本に行って申請するのはやめようというふうに外国人が考えることだってあり得るわけですよ。日本という国は、先進国の中で地勢的に見てアジアにある数少ない国ですから、アジアの地域の人たちが難民申請したい、また、日本という国が好きだからやはり日本に行って難民申請しようという人はたくさんいたんですけれども、そういったことで減ってきているというお話もあるんですね。
 ここについては、単純に数が減っているから、また、認定のパーセンテージが、人道的配慮での保護も含めると、合わせたら二五%に達しているから、それは十分だとは必ずしも言えないと思うんです。というのは、国連難民高等弁務官、UNHCRの日本・韓国地域事務所の資料によりますと、日本政府に対し難民申請を行った方々のうち、日本国政府が、UNHCRの日本・韓国地域事務所が難民性が高いと考えている方々の二六%程度しか難民として認めていないという試算が出ているんです。ここに資料があるんですけれども、百五十五名程度難民性が高いんじゃないかというふうにお考えになっているうち、日本政府は四十人しか認めていない。
 つまり、こういうふうに計算すると二六%程度ということになるんですけれども、この差についてもどのようにお考えになっているのか。やはり国際的に見て厳しいと言えるのではないかと考えるのですが、局長、いかがでしょうか。
増田政府参考人 UNHCRが行う難民の認定は、UNHCRによる自主帰還あるいは第三国定住、種々の物的援助等の各種保護を必要とする者をUNHCR事務所規程に定めるUNHCRの権限が及ぶ対象者として認定するものであり、その点で、難民条約所定の保護を与えることを目的とする難民条約締約国による難民の認定とは目的及び対象を異にするものでございますから、単純に数字を比較することはできないと考えております。
 なお、UNHCRが難民性が高いと考えている者のうち、我が国は二六%しか難民認定していないという御指摘があるところでございますが、その余につきましても、人道配慮によって我が国で在留を認めているとか、あるいは日本を出国して第三国へ再定住した者が大部分を占めておりまして、この点につきましてはUNHCR自身が、UNHCRと法務省との連携の結果、近年は難民の地位に対する申し立ての大部分でUNHCRと法務省の意見は一致している、こういう評価を公表していると承知しておりまして、おっしゃられるほどに保護の点で大きな差があるとまでは考えてはおりません。
中村(哲)委員 UNHCRと日本政府では難民審査の目的も対象も違うので審査結果が異なるのは当然だという御答弁だと思うのですが、それに対して、今まで再三同様の答弁をいただいているところでございます。しかし、本当にそれでいいのかどうかということが非常に疑問として残っています。私は、難民を審査する能力、日本の難民審査能力の低さがあるのではないかというふうに考えております。
 私の質問主意書に対する昨年八月二十七日の回答、またことし一月二十八日の回答において、政府、法務省は繰り返し、難民審査の専門官を私たちは擁しておって、ノウハウも蓄積しているといった趣旨の回答をされております。
 確認しますけれども、難民調査官というのはどういう人たちがついているのでしょうか。また、彼らの専門性を高める工夫としてはどのようなことを行っているのでしょうか。
増田政府参考人 難民調査官は、入国審査官の中で専門的な知識を必要とする難民認定事務を行うのにふさわしい知識経験等の資質を備えた者の中から法務大臣が指定しております。
 まず、入国管理局職員に対しては、経験の浅い職員を対象とした初等科研修、それから中堅職員を対象とした中等科等の研修におきまして、難民認定関係の科目を設けて難民に関する基本的な研修を実施しております。
 また、難民の認定のために必要な事実の調査を行う難民調査官は、申請者の出身国をめぐり刻々と変化する国際情勢に関する専門的な情報や知識を習得する必要がございますので、新任の難民調査官を含めまして、全国に配置している難民調査官等に対し、これらをめぐる情報とか知識などを習得させることを目的として、毎年、外務省、UNHCR等外部から講師を招くなどして研修を実施しております。ちなみに、昨年の研修期間は二週間で、毎日九十分の講義を四こま実施しております。
 その研修内容につきましても、毎年よりよい研修となるよう改善に努めておりまして、例えば昨年は、心的トラウマを受けた難民申請者へのインタビュー技術を習得するための心理学者による講義、あるいはインタビュー技術の向上を図るための実践的講義や研修などを取り入れました。
 これらに加えまして、昨年は、主に東京入管に配置されている難民調査官ですが、これらを対象として、難民関係の研修を一週間に一回ずつ、約一カ月間の日程で実施しました。
 今後とも、難民調査官の能力や専門性の向上を図るため、これまでの研修期間あるいは研修内容を随時見直しまして、研修体制の充実強化に努めてまいりたいと考えております。
中村(哲)委員 お話を聞いていると、十分な研修を行って調査官はしっかり育てているというふうな御答弁だと理解をさせていただくわけですが、現場の弁護士さんたちはそのように感じていらっしゃいません。
 ここに、全国難民弁護団連絡会議がお調べになった「難民調査官の資質、技能、知識や態度が問題となった事例 二〇〇三年二月」というものがあります。ここに載っていることを聞いたら、驚くべきことがいろいろ書いてあるわけです。
 難民調査官に任命されるに際して何ら特別な研修を受けることなくそのまま業務についていた事例。入省三十二年目にして突然難民調査官に任命されて二年間のみ難民調査官として勤務した者であった事例。最低限の知識さえないということが認められる事例として、この難民認定基準ハンドブック、これもごらんになっていなかった事例。「灰色の利益」という言葉自体をお知りにならなかったという事例。難民の定義として記載されている「特定の社会的集団」という用語すら頭に入っていなかった事例。
 もっともっといろいろあるんですけれども、一番ひどいのでは、カルザイ大統領の名前を知らなかった調査官。タリバンのことについて新聞報道されるまで知らなかった調査官。また、バングラデシュの状況をよく把握していない調査官に、UNHCRはよく知っていたと指摘したところ、それはあちらは専門家だからと答えた調査官。いろいろありますね。さっきのカルザイさんの件では、カルザイと言っているのに「カイザイ」と書いたり、また読み聞かせのときにはカイザルと読んだり、そういったことがある。
 このときに、立ち会いの弁護士さんの感想は、このように述べられているんです。実は、私は難民異議のインタビューに立ち会うのは初めてでしたが、本当に腰が抜けるほど驚きました。ほかの弁護士がさんざん問題点を指摘していることが全く大げさではなかったことを身をもって知ってしまった次第です。人のよい不器用なおじさんタイプと言えなくはないのですが、難民認定手続は、ある意味人の命にもかかわる手続なのですから、到底このような人に関与させてはならないと思いました。このように立ち会い弁護士の方が感想を述べられているんですね。
 実は、こういったことが現場で起きている。今、局長がおっしゃったように、近年まれに見るハイスピードで研修体制は整っているんだと恐らく思うんです。しかし、今までこういった事例が脈々としてあって、現場の弁護士さんは、難民調査官の資質がどうなっているんだという気持ちを感じていらっしゃる。そういった実情に対して、大臣は御存じでしょうか。
森山国務大臣 個々のケースにつきまして、今御指摘のあったようなことにつきましては、必ずしも詳しく存じていたわけではございませんし、事実確認ができていない部分が多いものですから、個人的な難民調査官の資質について私が判断をするということは差し控えさせていただきたいと存じます。
 いずれにいたしましても、私といたしましては、これまで難民調査官全体の能力を向上させるために鋭意努力をしているものでございまして、また入国管理局でも精いっぱいやっていると思いますので、激動する国際情勢のもとにおいて的確に難民認定業務が行われますように、今後とも一層資質を高める必要があると考えております。
中村(哲)委員 私、これは矯正局の今行われている問題と相通ずるところがあると思うんですよ。
 つまり、入管局においても、難民調査官がどのような仕事をしているのかということについては、現場でどういうふうなことをしているのかということについてチェックする仕組みが今ないのじゃないか。
 確かに、今、研修は一生懸命していますというふうに局長おっしゃっていましたけれども、その研修の結果、どのような人材が育っていて、その適切な配置はどのようになっていて、もう本当にびっくりするような事例では、きょうは応援に来ただけですというようなことをおっしゃる方もいらっしゃるし、供述内容にしたってパソコンできちんと打ち込めない、そして供述のやりとりがとまってしまうというような事例もたくさんある。それは、現場の方が一番よく知っておられるんです。
 こういうことに対して、一個一個またこの委員会で問題にさせていただいてもいいんですけれども、より前向きな話としては、これは矯正局とも同じような話だと思うんですけれども、現場にいらっしゃる方たちがどのような仕事をされているのか、その能力の開発のシステムを含めて、そこにきちんとした手当てをする必要があるのではないか、私はそのように考えます。
 もう時間も参りましたので、これで私の質問を終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、石原健太郎君。
石原(健)委員 今回の刑法改正によって、何らかの問題が生じたり、また不都合が生じるようなおそれはないのかどうかをまずお聞きしたいと思います。
樋渡政府参考人 どういう御意味での不都合か、ちょっとよくわからなかったのでありますが、この法改正で不都合が生じるところはないだろうというふうに思います。
石原(健)委員 私、何でこういうことをお聞きしたかといいますと、かつてはこういう規定があってそれを取りやめたり、また、今までこういうことを規定することにためらっていたということは、何らかの障害があるからかなと思ってお聞きしたんですけれども、特別、何の障害もないというふうに理解してよろしいんでしょうか。
樋渡政府参考人 それで、少し経緯を詳しく申し上げさせていただきますと、刑法の第三条は、国民の国外犯といたしまして、日本国外において同条に掲げる一定の罪を犯した日本国民に刑法を適用する旨規定しておりますが、明治四十年に現行刑法が制定された当時には、同条に第二項があり、国民の国外犯を規定する同条第一項に定められた罪につき、日本国外で日本国民に対してこれらの罪を犯した外国人についても刑法の適用を認める旨定めておりました。
 この規定は、昭和二十二年の刑法改正におきまして削除されましたが、その理由につきましては、国会における提案理由説明等においては、諸外国の立法例や国際信義の原則にかんがみたものと説明されておりますところ、そこで言う国際信義の原則にかんがみとは国際協調の精神を指すものと思われますが、いずれにせよ、当時の我が国の社会情勢及び我が国を取り巻く国際的な状況を背景に、刑法第三条第二項は削除されるに至ったものであると思われます。
 しかしながら、現在は、国際的な人の移動が日常化し、自国民が自国外において犯罪の被害に遭う機会がふえており、一定の場合に国民に対する犯罪にかかわる国外犯処罰規定を設けることは、諸外国の立法例におきましても多く認められるところとなっております。
 このような国際的な情勢の変化を踏まえ、国民保護のための国外犯処罰規定を設けることに問題はないというふうに考えております。
石原(健)委員 今回、法に規定されている六項目のいずれかの犯罪に日本人が外国で遭って未解決の場合、従来、日本の捜査機関はどのような対応をしてきたのか、お聞きしたいと思います。
樋渡政府参考人 現在は、日本国外で日本国民が外国人により殺人等の重大な犯罪の被害を受けた場合でございましても、犯人に我が国の刑法は適用されず、犯罪地国等において刑罰権の行使がなされなくても、我が国としましては、その適切な行使を期待して見守るほかはないということでございます。
石原(健)委員 殺人、強盗殺人の被害に遭ったなんというとき、その被害者の家族とか友人等から、外務省なんかにもいろいろ要請はあるのかとは思いますけれども、そういう被害に遭った家族や友人なんかから、日本の捜査機関に何とかしてくれなんという、そういう要請というのは全くないんですか。
樋渡政府参考人 恐らく、そういう要請をするといたしましては、警察の方に行かれるのだろうと思いまして、そういうことがあったかどうかということは、私ども、少し把握しておりませんけれども、しかし、たとえそのような要請をなされましても、我が国の刑法を適用できない以上、我が国の捜査当局がその犯罪を捜査することはできないということでございます。
石原(健)委員 次に、外国人が日本で、今回の適用対象になっている六項目のいずれかの犯罪に遭って未解決の場合、外国の捜査機関が日本に何らかの働きかけをしてくるというようなことはあるんでしょうか。
樋渡政府参考人 例えば、大韓民国国籍を有する者が日本国内におきまして大韓民国国籍を有する者を被害者とする犯罪を犯した件につきまして、同国から我が国に対し捜査共助要請がなされた事例がございます。
 なお、被害者の国籍国からの要請といたしましては、公海上を航行するリベリア船籍内で、ドイツ国籍を有する船員がフィリピン国籍を有する船員に殺害された件につき、ドイツから寄港地たる我が国に対し捜査共助要請がなされた事例がございます。
石原(健)委員 そうしますと、今までのをお聞きして、私の理解なんですけれども、一般に、こういう刑法犯のようなものはそれぞれの国の捜査に任せておくというのが、もう世界じゅうの大体の一般的な傾向なんだというふうに理解してよろしいですね。
樋渡政府参考人 基本的には、犯罪発生地国の捜査機関が、その犯罪を摘発して処罰していただけるものというふうに思っておりまして、各国とも、その有する捜査機関がそういうふうに活躍してくれているものと思いますが、そういうことが期待できない場合に、被害者の国籍国が何らその加害者を処罰できないというのにも何か不自然のものがあるだろうということで、本法案を提出させていただいている次第でございます。
石原(健)委員 今回の法案提出の趣旨は、先ほど民主党の議員が詳しくお聞きなさったこともありますので、私としては大体わかったと思います。
 それで、なお時間もありますので、法案と直接関係ないんですけれども、二月ごろ、そこの参議院会館のあたりでチラシをもらったり、また、つい最近もチラシをもらったので、お聞きしてみたいと思うんですけれども、金子容子さんという人が中国に抑留されて、日本に帰国できないでいると。法輪功の信者というのか、メンバーらしいんですけれども。このことに関して、外務省はどのような状況把握をなさっているのか、御説明いただけたらと思います。
齋木政府参考人 金子容子さんでございますけれども、去年の五月に北京で、日本人の女性とともに法輪功の関係のビラの配布を行いまして、中国の公安当局に拘束されたわけでございます。
 このうち、日本人の女性につきましては国外退去処分となったわけでございますけれども、金子さんにつきましては、中国籍を持っておられるために、引き続き中国側に拘束されております。その後、一年六カ月間の労働矯正処分を受けたものだというふうに私ども承知しております。
 なお、申しましたように、金子さんは中国籍を持っておられますために、本来は、邦人保護、日本人保護の対象にはなりませんけれども、外務省といたしましては、金子さんが日本人の男性と結婚し、日本で基本的な生活を営んでおられるということにかんがみまして、事件の発生当初から、日本人に準じた扱いをするようにということを中国側の関係当局に対して累次申し入れを行ってきております。
 この結果、去年の八月でございますけれども、金子さんと夫の面会が実現したわけでございますけれども、中国側からは、緊密に連絡をとることで、この問題については協力していくことが可能であるという反応も実は得ております。
 したがって、私どもといたしましては、引き続き、粘り強く金子さんの身柄の早期釈放を中国側に働きかけていく、そういう考えでございます。
石原(健)委員 外務省の対応もわかりました。
 時間はちょっと余っていますが、私の質問はこれで終わります。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 今回の刑法改正では、日本人が被害者である殺人等六種の重大犯罪について、国外犯に日本刑法を適用できることとするものでありますが、最初にお聞きしますが、どのような法的効果が発生するんでしょうか。
樋渡政府参考人 現在は、日本国外で日本国民が外国人により殺人等の重大な犯罪の被害を受けた場合でございましても、犯人に我が国の刑法は適用されず、犯罪地国等において刑罰権の行使がなされなくても、我が国としては、その適切な行使を期待して見守るほかはございません。
 しかし、今回の改正により、このような事例にも我が国の刑法が適用されるようになりますことから、我が国が、事案に応じ、捜査共助や犯人の身柄引き渡し等の手続を経て、刑罰権を行使することが可能となるということでございます。
木島委員 答弁では、我が国の刑罰権の行使ができるようになるとおっしゃいました。我が国の権限がこの分野で生ずるということであります。
 権限の内容についてはまた後で聞きますが、私がもう一つ聞きたいのは、今回、刑法改正によってこのような属地主義から一部属人主義が適用されることによって、日本国の捜査当局の責務、外国で日本人が殺害された、しかし主権はその国にある、捜査権は及ばない、そういうときに、日本の捜査当局の責務ですね、これも生ずるんだと伺っていいんでしょうか。
樋渡政府参考人 責務といいますよりも、そういう刑罰権を行使することができる権限を与えられるということでございます。
木島委員 大変国にとって都合のいい解釈ですね。日本の刑罰権が拡大するだけであって、私は、捜査権が発生するとは断じて言いませんよ、捜査権なんて発生しないわけです、相手国の領土内ですからね。しかし、責務が、外国で日本人が殺害された、日本の刑法を適用する、それなら、日本の警察、検察当局は、捜査共助とおっしゃいましたが、捜査共助とか、身柄をよこしてほしいということを相手国と折衝するとか、そういう責務が当然発生して当たり前だと思うんです。そんなの、おれたち、知らぬよ、権限だけが拡大されたなんという態度では困るんですね。そういう意味なんです、責務という言葉を私が使ったのは。
 副大臣、首を縦に振っていますから、当然そういう責務は発生していると考えていいでしょう。一生懸命頑張るということですよ。頑張る責任が生じるということです。どうですか、これは大臣の方がいいかな。
増田副大臣 特別に御指名をいただきまして、光栄です。
 私も、そうだというふうに考えられました。
木島委員 次に、先ほど、刑罰権が拡大できるようになったとおっしゃいました、そのとおりだと思うんです。
 そこで次に、我が国の刑法が適用になるということと、外国で殺人を犯した犯人に対して、我が国捜査当局がその犯人に対して捜査権を持つ、逮捕権を持つ、また、身柄引き取り権を持つ、裁判権を持つということとは別だ。日本の刑法適用がこの法律によって拡大されるからといって、相手国の主権を侵して、日本の捜査当局が、そういう捜査権とか身柄引き取り権とか、そういう権限は発生しない。まず、そう確認していいですね。
樋渡政府参考人 御指摘のとおりでございまして、この法律案は、日本国外で日本国民が殺人等の生命、身体等に対する一定の重大な犯罪の被害を受けた場合に、我が国の刑法の適用を認めるものでありまして、外国での犯罪捜査の権限に何ら変更を加えるものではございません。
 したがいまして、外国での強制捜査等を可能とするものではなく、従来どおり、外国に対し、捜査共助等を要請して、証拠収集や犯罪人の引き渡しを求めることで対処するということになります。
木島委員 そこは明確だと思うんです。しかし、これは誤解されちゃいかぬところだと思うんですね。相手国の国家主権は何ら侵害するものでないということだと思うんです。
 そこで、次の質問なんですが、日本人が外国に旅行して、そこで殺害された、犯人は外国人だった。今度は、法律改正で、日本の刑法は適用になる、しかし捜査権は発生してない、身柄を引き取る権利も発生してない、裁判権も発生してない。そのままじゃ、何にも進展しないわけですね。
 そこで聞きます。そういう犯人に対して、我が国の逮捕権、身柄引き取り権、身柄を引き取らないと日本の裁判にかけられないわけですから裁判権と言ってもいいかもしれません、それが全体としての、刑事局長が当初答弁した刑罰権の行使になると思うんですが、どういう場合に権限が発動できるのかについてお聞かせ願います。もちろん、何らかの理由で、その犯人が日本に入国したときには、これで我が国の捜査権、逮捕権、裁判にかける権利、発生しますね。
樋渡政府参考人 我が国に入国した場合には、御指摘のとおりでございます。
木島委員 それでは、次に質問します。
 何らかの理由で、その犯人が日本船籍以外の外国船籍に乗船した、パナマ船籍でもいいです、リベリア船籍でもいいです、日本の船籍ではない、日本の国家主権が及ばない外国の船に乗船したときはどうか。
 三つに分けます。その船が外国領域内にあるとき、その犯罪を犯した国の領域内にあるときはどうか、その船が公海の上に出てきたときにはどうか、その船が日本領域内に、領海内に入ってきたときはどうか。逮捕権、身柄引き取り権、それがいつの時点で発生するのか。ちょっと区別して、明快な答弁を願います。
樋渡政府参考人 日本の捜査機関が犯人逮捕をすることができるかどうかにつきましては、個別の事案ごとに判断する必要がありますが、一般的に言えば、次のように言えると思います。
 まず、御指摘の順番で申しますと、犯人が外国籍の船舶に乗り込み、これが外国の領域内にいる場合、外国の領土におけるのと同様に、我が国は原則として捜査権限を行使することはできないと考えられます。
 次に、犯人が外国籍の船舶に乗り込み、これが公海上にある場合、旗国の同意がない限り、我が国は捜査権限を行使することができないと考えられます。
 三つ目に、犯人が外国籍の船舶に乗り込み、これが我が国の領海内にある場合、領海を通航中の当該外国船舶の船長が沿岸国である我が国の当局に対して援助を要請するときなどには捜査権を行使することができ、また、当該外国船舶が停止しているとき、当該船舶が我が国の港に入港するなど我が国の内水を経由したときには、我が国が捜査権限を行使することができ、さらに、当該船舶が我が国の内水にあるときは我が国が捜査権限を行使することができるものと考えられます。
木島委員 今、船について聞きましたが、航空機も、これは時間的なゆとりが短いですから難しいんでしょうが、法律の理屈は同様だと聞いてよろしいですか。
樋渡政府参考人 船舶の場合には、海洋条約等がございまして明確になるところはありますが、航空機の場合に、基本的には考え方は同様だと思いますけれども、まず、飛行機が飛び立ってしまえば、あとおりるまで人の移動はないわけでございますので、その最初に飛び立つときに日本の官憲が乗り込むという場合には、相手国との折衝が、交渉が要るだろうと思います。今度、飛び立って、その中で何か新しいことが起こるわけではございませんので、おり立ったところが日本の空港でありましたら、当然に日本の捜査権が及ぶということでございます。
木島委員 我が国の捜査当局がいつ、その犯人、当然これは外国人が前提ですし、犯罪を行ったのは外国の地で犯罪を行ったということが大前提になるわけですが、今回、刑法が適用拡大になるということで、そういう法的関係になるということは大体わかりました。
 それで、次の質問なんですが、残念ながら、まだ犯人が外国にいる、外国船籍の船の中にいてまだ日本の領海内に入ってきていない、そんな局面だと思うんですが、そういうときにも、先ほど質問したんですが、我が日本捜査当局は全力を尽くして頑張らなきゃいかぬ責務が発生している、権限はないけどね。そうすると、どういう捜査を他国に対してするのか。
 お聞きしますが、先ほど捜査共助のお願いをするということ、答弁の中にありました。捜査共助ができる、捜査共助というのと、私は余り勉強しておりませんが、ICPO、国際刑事警察機構への捜査の願いという仕組みがあるんですが、これとは同じなんですか、違う概念なんですか。それぞれどういう場合に、権限というよりも捜査依頼だと思うんですが、それができるのか。その違い、異同を教えてください。
樋渡政府参考人 捜査共助の場合には、通常は外交ルートを通じて証拠を要求する、証拠を要求といいますか、そういう提出を求めるということでございまして、インターポールを通じる場合には、これは警察庁の関係でございますから私の方でなかなか正確には答えられないかもしれませんけれども、加盟警察組織からの情報の提供を受けることもできるんだろうというふうに思うわけでありまして、これが、インターポールを通じての情報、インターポールを通じて受け取る情報というものが即日本国内の裁判で使える証拠となるかどうかということは、また別の問題が起こってくるだろうというふうに思っております。
木島委員 よくわからないんですが。
 概念は、同じ概念じゃないですね。捜査共助ができて、外交ルートを通じて証拠を出してほしいと求めることと、インターポール、ICPOを通じて警察が捜査をお願いすることとは、概念は違うと。
 どこの国に対してこれができるかでは同じなんですか、違うんですか。捜査共助というのは、捜査共助の二国間条約がないとできないということなんでしょうか。インターポールの場合はそういう制約がない、そういう違いがあると聞いていいんでしょうか。こういう理解は間違いなんでしょうか。
樋渡政府参考人 捜査共助の場合は、外交ルートを通じて捜査の共助を要請するわけでございますので、どの国に対しても外交ルートを通じて捜査共助はできる。ただ、これに応じていただけるかどうかは向こうの判断が要るということでございますが、インターポールの場合には、これは加盟組織内での情報の収集、提供だろうというふうに思います。
木島委員 大分わかってきました。
 それじゃ、捜査共助の場合は、どこの国に対しても外交ルートを通じて捜査願いができる、しかし願いを受けとめてくれるかどうかは相手国の勝手と。
 では、捜査共助といいますか、二国間条約があって、お互い捜査協力をし合おうという二国間条約を結んだ場合は、そこがどう変化するんですか。相手国は捜査に応ずる義務が生ずると聞いていいんでしょうか。
樋渡政府参考人 まだ我が国は捜査共助条約をどことも結んでおりませんでして、ただ、それを締約すれば、その今の関係はスムーズにいくだろうということでございます。
木島委員 アメリカ、韓国と結んでいないんでしたっけ。
樋渡政府参考人 その条約は、犯罪人引き渡し条約でございます。
木島委員 はい、わかりました。
 では、時間も迫ってきていますから、最後になりますが、その前に、私は今回の刑法の改正で、刑罰権の拡大という問題は、相手国、相手国といいますか、犯罪行為国の主権と日本国民の生命、身体という重大な利益保護法益とのぶつかり合いが生ずるんだと思うんですね。
 日弁連等からは、せめて相手国の刑法も日本の刑法と同じような法定刑がある場合にのみこれが適用できるようにさせたらどうかとか、相手国の刑罰が、例えば死刑がない場合、日本の刑罰よりも軽い場合は、軽い罪を適用できるようにしたらどうかとか、そういう制約をつけたらどうかという意見書が出ていたはずなんです。しかし、今回の刑法改正は、そういう制約全く抜きで、無条件で、日本人が外国へ行ってその国で殺害されたりした場合には日本の刑法がもろに適用できるという無条件適用なんですが、なぜそういうことにしたのか、ちょっと政策判断をお聞かせ願えませんか。
樋渡政府参考人 本法案は、国民保護の見地から、日本国民が殺人等の一定の重大な犯罪の被害を受けた場合に我が国の刑法を適用するものでございますから、法定刑につきましても、我が国の刑法の法定刑が適用されるのでありまして、犯罪が行われた国の法定刑に拘束されるものではないと考えております。
 また、そもそも、我が国の刑法は、各罪について合理的な範囲の法定刑を定めております上、世界各国においてこれらの罪にどのような法定刑が定められ、それが合理的なものであるか否かを網羅的に検証することも困難でございまして、犯罪地国の法定刑が軽いからといって、一律にこれに従うべき理由も見出しがたいということでございます。
 なお、外国法制におきましても、多くの国ではそのような法制をとっていないというふうに思っております。
木島委員 そこは私はちょっと疑問があるので、最後にこの質問をして、終わります。
 犯人に対する二重処罰のおそれの有無と、それを回避するための措置はどうなっているのか。私は、憲法三十九条と刑法五条本文があることを承知の上で、先ほど同僚委員も質問されましたが、二重処罰のおそれの有無と、それを回避するための措置はどうなっているのかということ。
 二つ目の質問は、犯罪地国の刑法には死刑が廃止されている、ヨーロッパはほとんど全部そうですね、しかし我が国には死刑がある、我が国へ連れ戻してきたときには現在の裁判所の現状からして当然これは死刑相当だ、そういう場合、我が国の検察、裁判は死刑の求刑、判決ができるのか。私は、これは今局長、当たり前だ、日本の刑法を適用するんだから日本の刑罰が適用されるのは当たり前だとおっしゃいますけれども、そう単純なものじゃない、ほとんど世界は死刑廃止になっていますからね。
 その二つ、一括して質問をして、終わります。
樋渡政府参考人 まず最初の御質問でございますが、犯罪地国におきまして確定裁判を受けた者が我が国において同一の行為についてさらに処罰を受ける場合におきまして、犯罪地国で刑の執行を受けているときは、刑の執行が必要的に減刑または免除をされることとされております。また、我が国におきましては、いわゆる起訴便宜主義をとっており、訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができますので、この訴追裁量の適正な運用により二重処罰を回避することも事案によっては可能でございます。
 次に、二つ目の御質問でございますが、犯罪地国におきまして確定裁判を受けた者でありましても、我が国において同一の行為についてさらに処罰することは可能でありますが、この点は現行法の他の国外犯においても同様でございます。もっとも、御質問のような事例といいますか、そういうことで、例えば、当該外国においてその者が無期あるいは長期の有期刑に処せられて、長期間服役した後に仮出獄し、その後何らかの形で我が国に入国したような場合には、その間の事情が捜査処理、量刑に当たって考慮され得るようにも思われます。
 これは、何らかの形で我が国に入国をしたような場合というふうに申し上げましたが、実は、出入国管理及び難民認定法によりまして、一年以上の懲役または禁錮に処せられた者は本邦に上陸することができないというふうになっておりますので、まさしく希有な事例であろうというふうに思います。(木島委員「死刑の話。死刑のない国でそれ相当の罪を犯した者が日本に入ってきたときに、だから密入国でもいいですよ、逮捕して死刑求刑、死刑判決ができるのかという質問を最後に」と呼ぶ)
 それは理論的にできます。可能でございます。
木島委員 終わります。
山本委員長 次に、保坂展人君。
保坂(展)委員 まず、この改正のきっかけになったTAJIMA号の事件、現在に至る経過をかいつまんでお聞かせいただきたいと思います。
樋渡政府参考人 いわゆるTAJIMA号事件とは、平成十四年四月、台湾沖の公海上で日本の海運会社が運航するパナマ船籍のタンカーに乗船していた日本人航海士がフィリピン人乗組員に殺害された事件でございます。
 我が国は、同事件の裁判管轄権を有するパナマ共和国政府からの逃亡犯罪人引き渡し請求に基づき、平成十四年九月六日、被疑者であるフィリピン人乗組員二名の身柄をパナマ共和国政府に引き渡しておりますが、現在、同政府において両名の起訴に向けて刑事手続を進めていると承知しております。
保坂(展)委員 かつての刑法にあった消極的属人主義というふうに言われる部分、今回は盛り込まれるわけですけれども、第一回の衆議院司法委員会で何かそういった議論がされて削除されたわけですよね。どうして削除されるに至ったのかという背景説明をいただきたいと思います。
樋渡政府参考人 昭和二十二年の刑法改正により、かかる規定が削除された理由につきましては、第一回国会衆議院司法委員会や同国会参議院司法委員会における刑法の一部を改正する法律案についての提案理由説明などにおきましては、諸外国の立法例や国際信義の原則にかんがみたものと説明されております。
保坂(展)委員 余り背景がわからなかったんですが、その後、国外での日本人の被害が大変出てきている。
 先ほど言われたTAJIMA号の事件などは超党派で議員立法で解決すべきではないかということで、我々もそのようにしたいというふうには思っていたところですけれども、いわゆる軽い法の原則と言われる扱いがあると聞いておりますけれども、これはいつごろ始まった扱いなのか、そしてまた条約や何か国際的な法規の規定などがあってのことなのか、そのあたりはいかがでしょう。
樋渡政府参考人 軽い法の原則といいますのは、自国の裁判所が自国の刑法を適用して裁判しようとする際に、行為地である外国の刑罰法規の法定刑が自国のそれに比べて軽い場合には、その軽い外国法の法定刑により処罰しようとする考え方であると思われますが、我が国が締結している条約のうち、同原則を定めた条約はないものと承知しております。
保坂(展)委員 それがなくても運用上そのように扱われているのはいつごろからのお話ですかという質問も入れておいたんですが、いかがですか。
樋渡政府参考人 他国の法制でございますので、いつごろそういうものがあったかということはつまびらかではございませんが、把握しておるところでは、スイスにおいては、行為地の法律の方が犯人にとって軽い法律であるときはその法律を適用する旨の規定を設けているように思われます。
保坂(展)委員 次に、この法律は、主権国家が存在をして日本人の被害ということでやりとりが想定されているわけですけれども、今、現実に戦争を経て、イラクのように主権が一時見当たらないというようなケースがありますよね。現実に、これは私の友人なども国際援助活動などでそういった地域に入って救援をする、あるいは医療やさまざまなキャンプの設営などに当たるというNGOの活動などありますが、その際不幸にも被害に遭ってしまった、ここに規定されているような重大な、生命も含めて被害に遭ったという場合にはどういうふうな扱いになるんでしょうか。
樋渡政府参考人 御指摘のような事案において、本改正により犯人である外国人に我が国の刑法が適用されることとなりましても、一般的には犯罪地国に犯人と証拠が存することから、当該犯罪地国にまずその捜査、処罰をゆだねるのが適当な場合が多いであろうと考えます。
 そこで、まずは外交ルート等を通じて、イラクにおいて捜査、処罰がかなうように促すことになると思われますが、復興中のイラクに対する外交ルートでの請求の具体的な方法等につきましては、外務当局と協議しつつ対処することになると思われます。
保坂(展)委員 じゃ、司法制度改革関連の質問をこの後何件かしたいと思いますが、山崎事務局長から、昨日、例の消し忘れメール事件と言うのはオーバーかもしれませんが、行政訴訟の議論をしている場の資料を十一人の委員に送った際に、内閣法制局修正であるとか最高裁意見で確定だとか、さまざまなそういった記載があったと。どういう記載があったのか、つぶさにいろいろ説明を受けました。
 それによれば、例えば表題のところで、行政訴訟見直しについての検討の方向性が一致していると思われる事項という表題に、おおむねを入れた、例えばそういうものである、あるいは、最高裁や法制局が見て、ここはちょっと事実誤認ではないかというようなことに、主にそういう性格のものであるという説明を受けて、おおむねわかったわけなんですけれども、さて、これはどうなんでしょうか。
 消し忘れたメールがあったこと自体が問題だったのか、それとも、この審議会の設置のときに私自身も、事務局が、かつての臨司と言われた臨時司法調査会ですか、そのような、司法官僚の方が全部舞台づくりをしてということにならないように、ぜひ委員がしっかりと議論をされるようにということをたびたび指摘をさせていただきましたけれども、むしろ今回、そういうことが大変な誤解である、例えば法制局修正だとか最高裁の意見だとかいうのが誤解だ、もっと技術的な問題で、そんな大ごとじゃありませんという説明はわかったのですが、そうであれば、むしろこれからは委員の皆さんに、こういう意見、指摘を受けてこのように積み上げているというようなことをお示しをした方が、より信頼が得られるんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
山崎政府参考人 事務局でさまざまな検討もさせていただいて検討会の参考になる資料を提出するということになるのではございますけれども、その間にいろいろなやりとりがあった細かいところまですべて記録に残すというのは、なかなかこれはちょっと難しいところでございまして、大きな議論、いろいろな意見があったということです。こういうことについては、きちっと実質を検討会で十分に議論をしていただきたいというふうに思っています。そういうつもりでやっていきたいというふうに思っています。
保坂(展)委員 これは日弁連の方も、検討会における委員の意見をぜひ尊重するようにと。委員には実は裁判所からも入られているわけで、司法を代表する立場で発言もなさっている、それから法務省からも入っておられると思うのですが、事前にそういう何か誘導のような方向性をつくっておられるんじゃないかという懸念がやはり表明をされているのは当然だと思うんですが、こういう第一トラック、第二トラックに分けてというようなことについても、全部、いわばニュートラルにして、しっかり土台から議論し直せということだと思うんですが、それに関してはどうですか。
山崎政府参考人 基本的に、日弁連等から指摘がございまして、検討会における委員間の議論を尊重し、最高裁及び内閣法制局との事前協議によって実質的な議論の方向性をつくらないことという御指摘がございました。まさにこれは私どもも、今までもそういうことはやっておりませんし、今後もそういうふうに疑われるような行動はしてはならない、現実にもやらないということはそのとおりでございまして、これはきちっと申し上げまして、了解を受けました。
 それから、もう一つ、検討会でどのように進めていくかということですね。これにつきましては、私ども、検討会の御議論を尊重して進めてまいりたいということで、これから検討会でどういうやり方をしていくか、そこでお決めになられることだろうと思いますので、そういうことで、決められたことに従ってまいりたいということで、御了解を得たということでございます。
保坂(展)委員 今回のことは決して、消し忘れたことに何か問題があったんじゃなくて、やはりそういった運営の仕方についても国会で検証するいい機会になったと思います。ぜひ、内閣法制局と最高裁と事務局で全部ベースがつくられてというようなことに絶対ならないように、そういう疑念が生まれたわけですから、しっかりそれを晴らしていただきたいということを強く求めたいと思います。
 それで、私は二年前に、例えば裁判所の増員の問題、それから、検事も足りない、今度司法制度改革の前提の中で人数をふやさなければいけないという問題を語られてきましたけれども、事務次官と同額以上の給料をもらっている検事の方、裁判官の方、それぞれ現在何人になっているか、お調べいただいたでしょうか。二年前は、四月一日現在で、検事の方で六十四名、裁判官においては二百五十一名だったのです。現在どうでしょう。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 各省の事務次官と同額以上の給与を受けている検察官は、平成十五年五月一日現在で、検事総長等の認証官十人を含め、六十七人でございます。
山崎最高裁判所長官代理者 裁判官についてお答えいたしますが、裁判官で事務次官の俸給と同等以上の月額の報酬を受けている者の数は二百六十二人でございまして、この中には最高裁判所長官、最高裁判事、高裁長官を含んでおる数でございます。
保坂(展)委員 減ってはいなくて、やはりわずかながら増加しているわけですよね。
 裁判官が足りない、検察官が足りない、これはわかりますけれども、法務大臣にちょっと失礼になるのでしょうかね、多分よろしいと思うのですけれども、法務大臣、つまり、閣僚の給料というのをお尋ねしてよろしいでしょうか。年収ベースでいかがでしょう。ちょっと比較をしてみたいと思います。お願いいたします。
大林政府参考人 私の方からお答えさせていただきたいと思います。
 国務大臣の俸給月額は百六十四万六千円であるというふうに承知しております。(保坂(展)委員「年収で」と呼ぶ)年収だと、これの十二でしょうか。月額ということで、私はそのように聞いておりますけれども。
保坂(展)委員 年収じゃないと、これは比較ができないんですね。
 実際に三百何十人の方が事務次官以上ということになっております。もちろん、裁判官は絶対的な身分の保障も必要ですし、検察官も身分保障は必要ですから、給料は、水準はしっかりしていなければいけない。しかし、司法制度改革でこれだけふやすというときに同じ水準でいいのかどうかというのは、これは議論しなきゃいけないと思いますね。三百人以上いるわけですから、それを際限なくふやしていったら、どうでしょうか。
 今、民間の、これは二年前の段階で、大体四十代の平均的な勤労者の所得というのは五百万台ぐらいですよね。ですから、これと比べても、ロースクールのときに議論しましたけれども、千五百万円、千六百万円というような給料というのは大分開きがありますし、さらに事務次官、多分、法務大臣、年収ベース、わかりますか。多分、それ以上の検察官、裁判官というのはたくさんいるんじゃないでしょうかね。
 大臣、どうですか、この問題は。どうお考えになりますか。
森山国務大臣 私は、私以上に給料をもらっている人が何人いるかというのは計算したことがございませんので、わかりません。
大林政府参考人 私どもの検察官の関係でございますと、国務大臣と同程度の俸給をもらっているというのは検事総長だけでございます。
保坂(展)委員 今、年収ベースがわからないのに、どうして検事総長だけだというふうにわかったんですか。年収ベースでお答えできますか。
大林政府参考人 申しわけございません。年額はちょっと私まだ調べておりませんけれども、要するに、法律で定められた月額、基本的な基準となるものは同じような形に定められているところでございます。
保坂(展)委員 そして、退職金もかなり多額だと聞いています、きょうはもう時間がないから触れませんけれども。
 その後、公証人の道もございますよね。公証人で、これは裁判官と検察官の方がそれぞれやはり相当数入っておられて、今どのぐらいの数になっているのか、年収はどのぐらいなのか、公証人をやめると幾らの退職金があるのか、これはおわかりでしょうか。副大臣にお願いします。
増田副大臣 お答えをいたします。
 公証人の数は、平成十五年四月一日現在、検事出身者が二百十九名、判事出身者が百四十八名であります。
 次に、公証人の年収についてですが、公証人の一年間の手数料収入は約三千万円程度と承知しておりますが、この手数料収入の中から役場の賃料、維持費、書記の人件費等を支払うことになります。
保坂(展)委員 今、試験がない状態だったわけですね。見直すということを私は聞いていたんですが、見直されて試験をやっておられるんでしょうか。
増田副大臣 試験についてですが、公証人の任用は法曹有資格者の中から行うのが原則とされているところから、公証人に要求される能力と同水準の能力を要求する試験として司法試験があることから、別個に試験を実施することはこれと重複をしたものにならざるを得ず、合理的、効率的とは言えないため、実施は今いたしておりません。
 なお、昨年度から公証人の任用について公募制度を実施しており、この手続において面接を実施し、公証人としての適格性を有するか否かを適切に判断することにいたしております。
保坂(展)委員 法務大臣にちょっと給料をお尋ねしたりして、別にこれは他意はございませんで、司法制度改革という中に、やはり庶民が、大不況の中でそれこそ差し押さえを受けたり、あるいは財産を全部失ったり、あるいは雇用を失って身分保全を求めたり、さまざまな生活の現実があるわけです。裁判官の身分、検察官の身分がしっかり保障されていなければいけないことは私は認めますけれども、しかし、余りにも高い水準というのは、やはり世を見る目を曇らせてしまう心配はないかというふうに思います。いかがでしょうか。
森山国務大臣 裁判官とか検察官は、それなりに大変大きな重い責任を持っておりますし、身分の安定ももちろん普通以上に必要であろうというふうに思いますので、ある程度の待遇を確保するということは非常に重要なことだと思います。
 それを高過ぎるとか、あるいはほかの一般のサラリーマン等に比べてどうかという話は、ちょっとまた違う次元の話かと思いますが、現在は、今私が申し上げたような理由で、それなりの待遇を得て、安定した仕事を落ちついてやっているというふうに思いますので、それはそれで非常に大事なことではないかと考えています。
保坂(展)委員 これは、一般のサラリーマンと比べることでは余りにも基準にならないかもしれないので、大臣の年収、出なかったのでわからなかったんですが、比べた場合にも、やはり高いんですよ。給料が高いということは、どうやら本当に大臣のもとで、今、行刑問題も含めていろいろ議論してきましたけれども、これでいいのかなと。私は、やはり増員を考える以上は根本的に考え直さなければいけないという意見を持っています。
 きょうは、これで終わります。
山本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、刑法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
山本委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。
    ―――――――――――――
 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
森山国務大臣 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 我が国においては、内外の社会経済情勢の変化に伴い、司法を国民に身近なものとし、国民の多様かつ広範な要請にこたえること等を目指した司法制度の改革が求められております。この法律案は、このような状況にかんがみ、司法制度改革の一環として、簡易裁判所の管轄の拡大及び民事訴訟等の費用に関する制度の整備、民事調停官及び家事調停官の制度の創設並びに弁護士及び外国法事務弁護士の制度の整備を行うことを目的とするものであります。
 以下、法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。
 第一に、簡易裁判所の取り扱う民事訴訟事件の訴訟の目的の価額の上限を百四十万円に引き上げるとともに、訴えの提起の手数料の額の見直し及び民事訴訟等の費用の額の算出方法の簡素化を行うこととしております。
 第二に、弁護士から任命される民事調停官及び家事調停官が裁判官の権限と同等の権限をもって調停手続を主宰する制度を創設することとし、民事調停官及び家事調停官の任命、権限、手当等について所要の規定を置いております。
 第三に、企業法務の担当者及び公務員等であって司法試験合格後に所定の法律関係事務に従事し、かつ、所定の研修を修了した者に対して弁護士資格を付与するなどの弁護士となる資格の特例を拡充するとともに、弁護士について、弁護士法上の公務就任の制限の撤廃及び営利業務従事の制限の緩和、弁護士の報酬規定の会則記載事項からの削除、日本弁護士連合会に綱紀審査会を創設するなどの綱紀・懲戒制度の整備を行うこととしております。
 第四に、外国法事務弁護士による弁護士の雇用並びに外国法事務弁護士と弁護士等との共同事業及び収益分配に関する規制を緩和するとともに、それに伴う弊害を防止するための所要の規定を置いております。
 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、明十四日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時九分散会


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