衆議院

メインへスキップ



第13号 平成15年5月14日(水曜日)

会議録本文へ
平成十五年五月十四日(水曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    小西  理君
      河野 太郎君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      中川 昭一君    中野  清君
      平沢 勝栄君    保利 耕輔君
      星野 行男君    保岡 興治君
      吉川 貴盛君    吉野 正芳君
      鎌田さゆり君    今野  東君
      齋藤  淳君    津川 祥吾君
      手塚 仁雄君    中村 哲治君
      永田 寿康君    水島 広子君
      山内  功君    上田  勇君
      山田 正彦君    木島日出夫君
      中林よし子君    保坂 展人君
      山村  健君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   政府参考人
   (司法制度改革推進本部事
   務局長)         山崎  潮君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (法務省大臣官房司法法制
   部長)          寺田 逸郎君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (財務省主計局次長)   勝 栄二郎君
   参考人
   (明治大学法学部教授)  菊田 幸一君
   参考人
   (龍谷大学法学部客員教授
   )            鴨下 守孝君
   参考人
   (岐阜刑務所会計課長)  三井 健二君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十四日
 辞任         補欠選任
  後藤田正純君     河野 太郎君
  鎌田さゆり君     永田 寿康君
  日野 市朗君     齋藤  淳君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  河野 太郎君     後藤田正純君
  齋藤  淳君     津川 祥吾君
  永田 寿康君     手塚 仁雄君
  中林よし子君     不破 哲三君
同日
 辞任         補欠選任
  津川 祥吾君     今野  東君
  手塚 仁雄君     鎌田さゆり君
同日
 辞任         補欠選任
  今野  東君     日野 市朗君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 法務行政及び検察行政に関する件(行刑運営の実情)
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関する件(司法制度改革)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 法務行政及び検察行政に関する件、特に行刑運営の実情について調査を進めます。
 本日は、本件調査のため、明治大学法学部教授菊田幸一君、龍谷大学法学部客員教授鴨下守孝君、岐阜刑務所会計課長三井健二君、以上三名の方々に御出席いただいております。
 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、菊田参考人、鴨下参考人、三井参考人の順に、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。
 それでは、まず菊田参考人にお願いいたします。
菊田参考人 ただいま御紹介いただきました菊田でございます。
 たまたま、きのう、参議院の法務委員会でも参考人として意見を述べさせていただく機会がございました。多少重複することもございますので、御勘弁願いたいと思います。
 最初に、私は、たまたまと申しますか、行刑改革会議というところの委員に任命されましたので、その関係でこの参考人としてお招きもいただいたんじゃないかというふうに思っております。したがいまして、まず、改革会議のあり方といいますか、そのようなところに対する私の思いから簡単に述べさせていただきたいと思います。
 私的諮問機関と申しますけれども、公的なものでもございますので、名古屋事件を初めとした不祥事を契機に、今までの法務大臣の言動を新聞等々ニュースなどでお伺いするところ、非常に真剣に改革に取り組もうとされていることがうかがわれますので、長い間犯罪学を研究してきた者の一人として、この際、一生懸命この改革に取り組んでいきたいという覚悟をしておるところでございます。
 ただ、これは、戦後長い歴史を持つ矯正と、そして監獄法という明治四十一年にできた百年に近くなろうとするこの法を、目標としては廃棄して、新しい刑事施設法をつくろう、これは大きなことでございますので、そう簡単にはいかないという思いもございます。
 当面は、例えば十二月末までに答申しようということですけれども、答申は可能でしょう。しかし、それは大きな柱。当面は、今の受刑者の状況というものを可能な限り公開するということ、つまり、外部交通権という専門用語がありますけれども、すべてにおいて密行主義が優先しているということを打破しなきゃいけない。これをどうするかという具体的な方策を確立することが、どうしても緊急の課題だと思っております。
 第二点は、今回の事件にも直接かかわりのあります不服申し立て、これも制度としてはいろいろな制度がございます。法規に基づくものもありますし、弁護士会、あるいは行政裁判等に対する訴えというものもあります。例えば、国連の規約人権委員会に対する政府答弁でも、これこれのものがあります、こう言って、日本では人権救済についてはすべて完備しています、こういうふうに言っておりますけれども、実体が伴っていない。その証拠にこういう事件が起こっているということでございますので、この不服申し立て制度を、抜本的に新しい制度をつくらなきゃならない。
 具体的には、第三者委員会という言葉がありますが、そういうものを設けてやらなければいけないということでございますけれども、これは少しうがった考え方かもしれませんが、御存じのように、人権擁護法案というのが今法案として出されようとしております。これに対しては、野党を中心として、つまり法務省の外局としての委員会、これでは本当の意味の第三者の人権救済に当たらないという批判があることは御存じのとおりでありますけれども、もしこういう不服申し立て制度が、我々、会議であるべき姿を出しましても、この人権擁護法案の中に組み入れられるということになりますと、これはまさに実体を伴わないものになる危険性が十分あります。その辺について、私どもは非常に、私個人は非常に問題にしております。人権擁護法というのを、この会議の答申が終わるまで可能な限り差し控えてもらいたいというような思いもしております。いろいろ技術的な方法はあろうかと思います。
 以上のほかに、一番緊急の課題でありますところの刑務所における医療問題、医者の問題、医師の問題、これは何としても今回改善しなきゃならない課題の一つであります。具体的にはどうするか。今の医師のあり方、これも案としては、法務省から独立すべきだという案も出ております。
 以上三点については、当面緊急の課題として改革会議がそれを答申するはずだと私は考えております。
 ただ、もう少し大きな問題として、本当に刑事施設法案というものを、あるいは新しい刑事施設法というものをつくるということになりますと、何といっても懲役、禁錮という、懲役、これは懲らしめの役です。それで、とにかく八時間、強制労働するということが基本になっているわけです。それは、背景には刑法というものがあって、刑法にそういう規定があるわけですね。ですから、これは刑法の改正をしなければ事実上不可能だと思います。それまで至らなきゃならない。
 私は、理論的には、例えば刑事施設法という特別法でありましたならば、特別法というのは原則法を侵食する、これは法の発展から当然のことでありますので、この際、刑事施設法というものが新しくできたときには、刑法の改正についても法制審議会で真剣に懲役をなくするということを議論いただきたいということも考えております。
 なお、この行刑会議自体が、本来私は議員立法でこういう問題を、具体的に条文を提示すべきだと思っておりましたが、内容はどうも、法務省刑事局かあるいは官房かよくわかりませんけれども、法務省主導のもとに具体的な法案がつくられようと予定されているようですけれども、ここでもう既に議員立法という手を離れているんじゃないか。そういう点で、幾らある意味での答申が出ましても、これに対して骨抜き、言葉は悪いですけれども、条文において骨抜きされる危険性は十分あります。これは、今までの経験といいますか、経過から見ても、そういうことがよくあったことでございます。
 したがって、現時点においては、議員の方、特に法務委員会の先生方、あるいは学者、有識者、弁護士等々は、条文の各細則に至るまで意見を交換し、そして情報の交換を法務省もお願いした上で議論を重ねて、あるべき条文、具体的な条文というものをつくってもらう必要があるというふうに思っております。
 なお、これは私の個人的な意見が強いんですけれども、一方で行刑改革をやりながら、一方で死刑執行というようなことは、これはとても私の良心としてはできません。ですから、私はきのう申し上げたんですけれども、法務大臣に、こういう行刑改革の会議を存続していく、あるいは、近くまた、死刑執行停止法案というものが出されようとしています。あるいは、国際的にも既に、一月一日までに、EUからは、死刑執行を含むモラトリアムを何らか具体的に示せという勧告を受けております。それは過ぎております。そういう国際的な状況の中で、私は、今や死刑の執行を停止する時期が来ていると思っております。そういう中での行刑会議、一方では法的に、合法的に殺人をやりながら、一方では行刑改革、これはもう理屈としてはとても通らない。
 やはり刑務官というのは、何といっても矯正教育であります。一方で同じ刑務官が人殺しをやっているじゃないか、そういう死刑がある中で、一方ではこういう事件が起こったからどうのこうのと言っても、それは基本的に、私はそこに論理の矛盾があると考えております。そういうことを含めて行刑会議に臨んでいきたいというふうに思っております。
 なお、刑務所の諸問題については広範囲にわたります。たまたま私が「日本の刑務所」という本を書きました。それ以前にも、「受刑者の人権と法的地位」とかあるいは「受刑者の法的権利」というような本を何冊か書きましたし、「プリズナーの世界」という本も、百名近くの元受刑者にインタビューして書いた、そういうようなものをまとめて新書に出した。これは、しかし、私が出した直後に名古屋事件が偶然起こったわけですけれども、今までのような事件というものは、決してこの数年起こったことじゃなくて、ずっと、十年も前から起こっていることです。それはいろいろな意味でも、私の書いたことはほかのところでも書かれているんですね。
 ところが、いかんせん、マイナーな出版社であったり、あるいは私自身も、受刑者にインタビューしても、おまえは一方的な受刑者だけの意見だけを聞いて、彼らは自分の合理性を主張するのが非常にうまいんだからだまされているんだ、こういうことで、ひそかにぎくしゃくとしたものを感じていた。ところが、名古屋事件が起こって、あの本がその前に出たということで非常に話題になったわけですけれども、今日始まったわけじゃないわけです。
 いろいろな課題がありますが、一つは、トピック的な問題として、とにかく矯正局長、これは検察官であります。検察官は、御存じのように、検察官一体の原則に基づいて、これはもう上命下服のもとにできている組織であります。これは訴追官であります。訴追官が矯正局という、そういうところのトップにいること自体が許せないんじゃないか、この際、検察官は少なくとも矯正局から排除してほしいということを私は申し上げたい。そのために、ここにおられるけれども、長い間刑務官として刑務の実務を積んできた方が最高に行っても矯正管区長しかいかない、そんなことがあって許されるか、そういう問題があります。この際、その点を真剣に考えなきゃならないというふうに思います。
 さらに、そういう中で、現在の刑務所の職員、この人たちの発言の自由というものが極度に制約されています。「刑政」という、これは矯正協会のある意味では私的な雑誌ですけれども、全国の刑務所の職員に、強制的に全員が買わされて、そしてそこに載せているのは、要するに、発言したいこと、いろいろな論文を出したい人、そういう人の意見というものがすべて上司の許可を受けなきゃ発言できない。外から見た、もし誤りがあれば、実務官おられるから後で訂正していただきたいですけれども、要するに、矯正局の管理下における雑誌であるわけです。矯正協会という財団法人でありながら、矯正局の支配下において発行されている。言論の自由は全くない。
 私は、そういう意味で、刑務官の組合をつくらなきゃだめじゃないか、刑務職員組合、これを早急に検討する必要があると思います。消防署の人でも公労協等の組合のメンバーにもなっているというふうに聞いております。刑務官が組合をつくれないはずがない。私は、刑務官が団結して組合をつくり、そして自由な発言をできる場を設定するという方向に行かなきゃならないだろうというふうに思います。
 細かいことを言うと、そのほか、刑務官は自分の名前を明らかにしていないんですね。これは所によってはやっているようですけれども、全国的にはそういうことになっておりません。受刑者も自分の名前をほとんどのところでは明らかにしない。番号で呼ばれている。番号と、名前を明かさない刑務官、これで人間教育ができるか。それは、いろいろな事件が起こったときに、だれだれにこういうことをされたということが特定できない、そういうような状況を予想しているんじゃないか。簡単なことで、刑務官に胸に名前をつけなさい、受刑者を名前で呼べ、そういう簡単なことも、これは実現可能なことでありますから、私はやっていただきたいというように思っております。
 あるいは、私どもに大いに関係のあることですけれども、一言に申しますと情報公開。規則とか、そういう大きなことではなくて、通達とか達示とかいろいろな通知とか、人によると毎日、所長がかわるごとにいろいろなことが出てくるようですけれども、指示とかですね、そういう、いわゆる行政命令、そういうものが自動的に我々に入ってこない。
 例えば、昔、矯正六法というのがありました。そして、私どもの自宅に自動的に配付されてきました。それはもう全部ストップをされて、今は十年以上前の台本だけが残っていて、差しかえができなくなっております。あるいは全国の刑務官が持っている赤六法というのがありますけれども、それは全部番号を振っていて、仮に、退職した人もそれを部外の人に見せてはいけない、そういう状況の中で、刑務所のことをおまえは知らないとか、あるいはどうのと言うこと自体がおかしいじゃないか。こちらも努力しなきゃいけない。もちろん努力すれば手に入ります。だけれども、相当な努力をしないと弁護士もなかなか手に入らないという、こういうようなことを情報公開の中の一環として、ぜひともこれは公開するという方向にやっていただきたい。
 あと、いろいろございます。個別的にも御質問を受けた上でお答えしたいと思いますけれども、受刑者の問題としましては、単純なこと、丸坊主。これは法律上、一センチとか五センチとか、いろいろやっていますけれども、刑務所に入った途端に丸坊主にして、これは屈辱を示す何物でもない。おまえは悪いことをしてきたんだから、頭を丸める、こんなことが今なお許されているということ自体が問題だ、こういうふうに私は思います。
 あるいは衣食住という点からいきますと、食事の点もいろいろございますけれども、例えば水が飲みたい。私も今ここで話していて水が飲みたい。水が飲みたいといっても、時間が決まり、そして飲む量というか、それも限られている。水というものは、飲むということは、飲みたいときに飲ませる、これが一つの、人の扱いの基本じゃないか。
 そういうようなことも含めて、人としての扱い、人としての存在、いかに犯罪者とはいえ、人としての存在、それを刑務所、そして社会全体が認めているという中での本当の意味の処遇というのが成り立つ。
 今、朝、受刑者が起きて、同僚におはようと言っても、これは規則違反なんですよ。もちろん刑務所によって違いますよ。だけれども、多くの刑務所はそういうふうに、黙して語らず、仲間ともあいさつもしない。ましてや、工場で作業中に物を落として、拾うときにも、手を挙げて許可を受けていなければ、人の物を拾っては違反だ。そういう善意でやる行為すら許されない。こういうような、いわゆる一口に言うと軍隊調というものが今なお全国の刑務所を支配している。
 これは昔はそうじゃなかったです。一九七〇年以前はそういうことはなかったように私は思います。死刑囚の扱いも非常に緩やかな扱いでした。だけれども、今はとにかく想像を絶する状況に変わってしまった。なぜ変わったのか。これは法律によるとか規則によるとか、そういうことじゃございません。どうも刑務官という人たちが、そういう社会に、善意な人も非常に立派な人も、そういう慣習の中に置かれると、その置かれた中で従わなければ自分も生きていけない。そういう悪い意味の日本型行刑、いい意味の日本型行刑じゃなくなって、悪い意味の日本型行刑が今は定着して、そしてああいう事件になって発展してきたんじゃないかなというふうに思います。
 したがいまして、例えば保護房という問題をとりましても、保護房というものは、あの今ある保護房というものは私は廃止すべきだと思います。
 本来、保護房というのは自殺とかいう危険のある者を保護するためのものでありながら、今使われている保護房というのは、懲罰に利用されています。私は、そうじゃなくて、保護房というのは、もっと窓が明るくて、そして原則的に、今まで住んでいた居房と同じ物理的な状況の中に置く。そして、審査会を経て本当に違反ということが明らかになったときに、改めて懲罰を科す。その懲罰はいろいろ種類がありますでしょう。そういう段取りのためのものであって、今、保護房というものが目的外に使われている。軽屏禁と言われるような刑罰以外に、保護房そのものが懲罰の手段として使われているというようなことがございます。
 ここで、今、革手錠廃止ということが決まりましたけれども、それにかわるものとしていろいろなことを考えられているようです。だけれども、私は、何でそんな、かわるものが必要かと思いますね。いすに座らせて、そして強制力で拘束する、あるいはベッドに寝かせて手足をくくる、みんな同じですよ、どんな方法をとろうと。暴れてどうしようもないのなら、精神的に問題があれば、これは精神上の処置をとらなきゃならない相手であり、ただ単に暴れるのなら、それは警察の保護房というか、フェルトの入った、自殺を試みても安全なところに置くというようなことで十分であるわけですね。そういう形に、それ以上に保護房に入れた上でさらに物理的に拘束するというものがあってはならないというようなことを思っております。
 いずれにしても、あと、受刑者の賃金問題とか、その他、受刑者が弁護士とかあるいはその他の審査会、人権擁護委員会等に手紙を出すについても、全部検閲するんですね。今回、情願の問題もそうですけれども、情願は検閲できないようになっていますが、法務省で幹部があけていたということですね。これはもう全然その精神が通っていないわけですね。だから、これは、その他公的な手紙は一切検閲してはならないということも確立しなきゃならないだろうと思います。
 そういうことがなされていないために、受刑者は不満を申し上げることが事実上できない。これは、いろいろな方法があります。例えば、廊下に箱を置いて、それで受刑者がいつでも言いたいことを書ける。そして、第三者委員会が来て、あるいは、刑務所訪問委員会というものが諸外国の先進国にありますが、そういう人たちが来て、その人たちだけが読むことができる。中には、訴訟狂と言われるような、いても、いることも承知の上でそういう制度を設けることこそ、本当の意味の人権というものを未然に擁護する一つの姿勢だと。
 とにかく、人を人として扱うこと。食事にしても、刑務所に入った途端に、これは人間として我々を扱ってくれているんだ、そういう思いから、受刑者は積極的に時間というものを自分のものとして過ごそうという気持ちになるわけです。ところが、今の状況は、お互いに、監視する方と監視される側が本当に敵対関係、こういう異常な状況です。受刑者に言わせると、仲間と一緒じゃなくて刑務官の中に一人置かれたら非常に恐怖を感じる、こういうようなことが、現に今の刑務所の中にあるんじゃないか。それはすべてとは言わない、刑務所長によっては非常にすばらしい施設もあるわけです。だけれども、その所長がかわれば、また非常に、もとのもくあみになる。
 こういうような、地方によって、人によって変わる。これは、国際的あるいは人道化という旗印のもとにおける今後の刑務所のあり方としては、人権という点においては、もっと普遍的なものであってなきゃならない。そういうような方向での手だてというものを、いろいろな形で、一つや二つでは済まない手段を必要とします。いろいろな形で、また積み重ねが必要です。そういうことの、細かいことを含めた提示を今後ともやっていかなきゃならないというふうに思っております。
 また、いろいろ御質問いただいた中でお答えできればありがたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
山本委員長 ありがとうございました。
 次に、鴨下参考人にお願いいたします。
鴨下参考人 ただいま御紹介いただきました龍谷大学法学部客員教授の鴨下であります。
 今は、菊田参考人の大変ハイレベルなお話で、私の頭が整理できないわけですが、私は、本年三月末まで、大阪矯正管区長をしておりました。三十七年間の刑務官生活に終止符を打ちまして、現在は、龍谷大学あるいは中央大学等において、矯正概論あるいは矯正処遇論の講座を担当して、刑事政策を学び、研究している学生に対しまして、長年の行刑実務の経験と研究をもとに、犯罪者処遇の重要性、基本理念、処遇方法、それと行刑の仕事のすばらしさというようなものについて講義しております。
 その私が、この長年の刑務官生活の中で最も残念だったことは、監獄法改正作業に十七年にわたって携わりましたが、全力を尽くしたにもかかわらず、昭和五十七年に国会に提出されました刑事施設法案は、平成元年に廃案となってしまったことであります。ただ、大変うれしいことは、平成十三年、仙台の管区長のときに、当法務委員会の委員視察を受けまして、福島刑務所の農耕地を御案内しまして、新しい刑務所の新設の必要性ということを説明いたしました。その御理解を得て、お力添えもあって、千五百名規模の新しい施設ができるということが具体化したことであります。
 私は、平成元年ころから今日まで、行刑は本当に平穏かというテーマで、繰り返し問題提起を行ってきました。今日、名古屋刑務所問題を初めとして、いろいろな問題が指摘され、社会から批判を受けている現状は、まさにその指摘してきた問題が現実化したものと受けとめております。
 以下に、その要点を申し上げます。
 まず、行刑運営のあり方についてであります。
 行刑は、受刑者を施設に収容しまして、個々の資質、環境等に応じまして、社会復帰に効果的な矯正処遇を計画的に行うということを基本目的としております。このことは、一九六六年のいわゆる人権B規約にも規定されているところであります。
 受刑者に対する社会復帰処遇を円滑、適正に実施するためには、適切な処遇環境及び安全で平穏な生活環境が確保されなければなりません。国際連合の最低基準規則にも、規律秩序は厳正に維持されなければならないと規定されています。しかし、規律秩序の維持ということは、受刑者の行動の自由を制限することもあり得ますので、最低基準規則でも、制限は、安全な拘禁及び秩序ある所内生活のために必要な限度を超えてはならないと規定しております。
 このように、受刑者に対する社会復帰処遇も規律秩序維持も、受刑者の人権あるいは権利、自由への配慮が常に求められているのであります。すなわち、行刑運営を円滑、適正に行うためには、適切な社会復帰処遇の実施と厳正な規律秩序維持と受刑者の人権への配慮、この三点がバランスよく行われなければならない。そのために法的安定性を確保するということの必要性から、これらの三点が、行刑法令に具体的に明記されていなければなりません。しかし、現在のこの古い監獄法では、それは全く規定がされておりません。
 次に、行刑の現状について述べます。
 行刑の現状について、私は、次のような問題があると考えています。
 一つは、行刑の近代化、法律化、国際化を図るために必要な法制度が極めて不備であるということであります。現行監獄法は、先ほどもお話がありましたように、制定、施行以来、もう九十六年を超えております。今日まで、実質的な改正は一度も行われておりません。受刑者の処遇制度及び権利、自由の保障規定、行刑施設の運営管理規定など、いずれも、法的根拠が全くないか、あるいは不十分で、一般社会の権利保護意識あるいは受刑者の権利意識が強まる中で、適切な社会復帰処遇の実施あるいは適切な施設運営管理の面でも支障が生じているのであります。
 二つ目として、行刑法の改正ができないために、現在は訓令以下の行政指導等によって行刑運営の改善がされておりますが、これでは、管理面、手続面に偏ってしまって、職員の負担が重くなる反面、受刑者の処遇面、権利保護面の改善には限界があるため、バランスのとれた施設運営が難しくなっていることであります。
 三つ目は、平成六年に刑務官の階級制が存置されたままで専門官体制が採用されました。現場の最前線では、旧来的な施設運営方法と新しい施設運営方法とが混然となっておりまして、しばしば運営管理に混乱が生じていることであります。
 四つ目として、刑務官が武器を持たず、保安警備と処遇を一人で同時に行っているということが我が国の行刑の特色でありますが、受刑者の生活面での動静を把握しながら処遇に当たる刑務官の負担は非常に大きいことは事実であります。しかし、ほとんどの刑務官は、処遇専門職員としての意識が高く、今日まで非常に少ない職員で厳しい行刑運営を持ちこたえてこられたのは、これら第一線刑務官の高い意識と能力があったからであります。
 しかし、受刑者の収容増が顕著となって、施設の設備の収容能力を著しく超える状態が続いているのに、刑務官の増員は遅々として進まず、その心身に及ぼす負担が極めて大きくなっていることが問題であります。同じく過剰収容に苦しんでいる欧米先進諸国と比べましても、我が国の刑務官一人当たりの受刑者の負担率は最も高い状況にあると承知しております。
 一部に、刑務官の人権意識や能力が低いとの指摘が見られますが、我が国の刑務官の研修訓練制度はさらに改善充実を図る必要はあるものの、国際的にも高い水準を維持していると評価されておりまして、充実した研修訓練が計画的に行われているということを申し添えたいと思います。
 収容施設の、あるいは刑務官の顕著な増員が期待できない状況下にあって、過重な負担を強いられながら受刑者の処遇に当たっている刑務官が今最も求めていることは、監獄法の改正がどうなるのか、行刑施設の新設計画がどのように具体化されるのか、あるいは職員がどの程度増員されるのかといった将来構想であります。
 今日の問題発生の要因について、次に述べたいと思います。
 今日、社会から厳しい批判を受けている問題発生の要因は、単に事件にかかわった職員の資質の問題として片づけるべきものではないと考えます。
 先ほど一で指摘したように、法制度が不備なために、受刑者に対する適切な処遇と厳正な規律秩序の維持及び受刑者の人権への配慮のバランスを欠く状況が発生するおそれがあるということ、さらに、現状の諸問題として指摘したような構造的な問題が錯綜して発生したものであり、このような問題状況が改善されない限り、同じような問題が今後も繰り返し発生する可能性がぬぐい切れません。
 では、どのようにしてこういう問題の解決を図るべきかについて、次に述べたいと思います。
 犯罪者をどのように処遇しているかは、その国の社会的、文化的水準を示しているとよく言われております。明治時代に我が国が世界に先駆けて監獄法を制定し、外国の専門家を招聘して獄制の改善整備と監獄職員の研修に努めたのは、そのための努力であったと考えております。
 そのような努力と高い目標があったからこそ、これまで国際社会で高い評価を受ける行刑運営を維持することができたのでありますが、行刑の現状は、法制度の面でも、職員の組織体制の面でも抜本的に再構築する時期に来ておりまして、それをすることが最も有効な解決策であると考えます。
 法制度の整備について、学者や法曹人の中には、依然として欧米崇拝主義から脱却できず、既に行刑制度が破綻に瀕している欧米諸国において既に失敗していると報告されているような第三者委員会による受刑者の不服申し立て処理制度の導入などを声高に主張し、あるいは、本来的に行刑法の分野で論議する問題とは言えない死刑制度や代用監獄の廃止を主張して、我が国の行刑を全面的に否定したり、あるいは、建設的な意見を明らかにすることなく、法改正に反対する意見を繰り返している人が少なくないということが、私にとっては残念でなりません。
 受刑者の人権保護を考えるのであれば、まず、受刑者に保障される権利、自由の具体的内容及びそれを制限することのできる根拠と限界を明らかにし、刑務官の保安上及び処遇上の職務執行権限の内容と限界を具体的に示し、受刑者に対する社会復帰処遇の具体的な内容と実施方法を明らかにし、受刑者の衣食住の生活水準の保障を具体的に明記し、権利侵害に対する救済を保障するため、民事・行政訴訟、告訴、告発、人権侵害申し立てその他、一般国民が申し立てることのできる権利救済制度の行使を制限してはならないということを明記し、さらに、裁決処理期間を短期間に限定した行政内部の権利救済制度を整備し、いつでも、どのような内容でも制限されることなく、上級監督機関に苦情を申し出ることができる制度も整備するというようなことを内容とした行刑法の一日も早い制定、施行、そして、その附則において、三年後あるいは五年後の見直し規定を置き、問題があればその都度改正することを明記するくらいの柔軟な考え方で改正法の実現を図るべきであると考えます。
 法制度を整備し、刑務官の適正な職務執行が担保されなければ受刑者の人権保護はあり得ないというのが、私の長年の刑務官経験に基づく意見であります。
 以上で終わります。(拍手)
山本委員長 ありがとうございました。
 次に、三井参考人にお願いいたします。
三井参考人 ただいま御紹介を賜りました岐阜刑務所会計課長として現在勤務しております法務事務官、看守長の三井と申します。
 聞くところによりますと、このような衆議院の法務委員会に現職の刑務官が参考人として、国会の国民の信任を得られました議員皆様の方々の前で矯正行政についてお話をさせていただくという機会はまずめったにないということを聞き及んでおります。その旨で今回私はこの席に参りましたが、私がこれまで勤務してきた中で、被収容者の処遇、それから、幹部として、一現場の職員として施設運営に携わってきた経験につきまして、ここで隠すことなく正直にお話をしたいと考えております。
 まず、簡単に私の略歴の方から御説明をさせていただきます。
 私は、昭和六十三年三月三十一日に大学を卒業しました。その後、一年間の社会経験を経まして、平成元年二月一日、甲府刑務所法務事務官、看守としてこの矯正の道に入りました。
 その後、甲府刑務所の方では、警備に関しまして、表門担当勤務、いわゆる施設の表門に立衛し警備を担当する職業、それから、その後につきましては、新入考査工場、いわゆる新しき受刑者が施設に入ってきたときに、一週間ないし二週間にわたって、所内生活の心得から所内生活、作業そのほかの生活に関係する物事に対しましてを教化教導する仕事をさせていただきました。
 その後、工場担当、いわゆる現在矯正におきます担当制度に伴いまして、工場担当として、被収容者の作業、それから日常生活の指導、処遇を行い、その後に、昼夜独居担当、いわゆる集団生活に属することのできない処遇困難者を拘禁しております、そこの担当勤務を経まして、平成九年四月一日、この日に、主任矯正処遇官、いわゆる主任、係長ポストとして松本少年刑務所で二年勤務をさせていただきました。
 この際につきましても、いわゆる少年受刑者、ここで言う少年というものは、少年院に入るという少年は別といたしまして、簡単に申せば二十歳以上二十六歳未満、この受刑者を取り扱う施設でありますが、こちらにおきまして二年間勤務をさせていただきました。
 平成十一年から、名古屋矯正管内にございます名古屋刑務所管下にございます豊橋刑務所で二年、その後、平成十三年四月一日より名古屋刑務所の方で一年間、舎房担当、いわゆる統括矯正処遇官、第六担当、舎房担当として一年間勤務をさせていただきました。
 なお、御承知おきのように、平成十三年十二月、名古屋刑務所で惹起いたしました放水事犯につきましては、私はその部署の担当、統括として勤務をしておりました。この件につきましては、また後ほど追って質疑の方があるかと存じますので、その際につきましては、また詳細に当時のことについては述べさせていただきます。
 その後、平成十四年に名古屋矯正管区保安課、そして平成十五年四月、岐阜刑務所の方に参りまして、現在会計課長として勤務しております。
 実務の状況につきまして、御説明をさせていただきます。
 いわゆる我々法務事務官、看守としては、日に三度星を見るということを私は拝命の当時に言われました。日に三度星を見る、一つはまず明けの明星を見ながら施設に向かい、昼は昼で弁当箱を開き梅干しの星を見、そして夕は夕で空に星が上るぐらいにやっと家に、帰路につく。これだけの激務の現場である。しかし、なぜゆえにこれだけの激務をしなければならないか。それは日本の法秩序を守るためである。君たち、そのときは先輩の方から、おまえたちは日本の、法治国家である日本の最後のとりでだ、おまえらが崩れてしまえば日本は法治国家ではなくなる。そういうような教えを受けまして、現在これまで勤務しておりますし、また気持ちは変わっておりません。
 今、二方の参考人の方から、受刑者の人権それから受刑者の処遇ということについてお話がございました。この点につきまして、現場職員としましての考え方を述べさせていただきます。
 受刑者に人権があるかなしや、これは人権は当然ございます。そして、現場の職員は当然それを認知しております。私は今ここで皆様方にこうやってお話をしております。私の言葉を皆さん当然聞かれて御理解をいただいているとは思いますが、私たち刑務官は人間であります。当然受刑者も人間であります。これは当然、言葉でお互いが意思を通じ、そしてお互いの主張をお互いの立場で考え、そして処遇をする。
 確かに、我々は彼らを処遇する立場であり、法に基づいた業務を執行しております。個人的に言えば、受刑者が心の中に持っている不満であるとか苦しみであるとかつらさであるとか、今後社会に出てからどうやって自分の生計を立てていけばいいのか、罪に対するその償う気持ちであるとか、異様な、もう多種多様な気持ちが受刑者個々の中にございます。刑務官が全くそれを無視して、ただただ単に受刑者を塀の中に置いておけばいい、部屋の中に置いておけばいい、我々は支配する側だ、彼らは支配される側だというような気持ちで勤務をしている職員はおりません。この点につきましては、この当委員会で断言させていただきます。
 受刑者は、その多くが社会的にとっては弱者に当たります。私、昨日、東京で一泊させていただきました。その際に、とある山手線の駅のガード下に、何人もの定住しない、言葉は失礼かもしれませんが、いわゆる浮浪者という方がおられました。中には、ペットボトルをまくら元に置き、そして段ボールの上に寝転んで生活をしている方もいらっしゃいました。
 彼らが生活をする上で、一体どのような処遇があるのでしょうか。経済的にどのように自立すればよろしいのでしょうか。これは大きな問題ではありますが、そういった者が結局最終的には犯罪に手を染め、そして裁判を受け、刑事施設へと送られてきます。社会にいたときの彼らの声は、全く我々の耳にも届きませんし、またここにおられる議員の方々の耳にも直接届かないのではないかと思います。
 そうした受刑者が刑事施設、いわゆる刑務所に入ってきて、そして一番最初に接するのが我々刑務官です。我々は、彼らに処遇をするに当たって、彼らの生育歴から、彼らがどのような学歴を進んできたのか、どのような社会生活を送ってきたのか、詳細に科学的に調査し分析し、そして、その性格の方向性であるとか特徴であるとか、そういうものをこちらの方で把握し、彼らにどのような処遇をすればいいのか、彼らが何を望んでいるのか、これを現場における担当職員とそれから我々監督する幹部の職員がともにひざを交えて、ない知恵を絞り合い、そして処遇をしているというのが実際の刑務所の運営の状況です。
 受刑者は、社会的弱者といいながらも、自分の希望であるとか要望であるとか要求であるとか、そういうものを初めて言葉にし、そして我々に伝えてくれます。そのために、我々は、確かに法の制限下のもとではありますが、彼らの人権を一方的に無視して、そして彼らに虐待的な行為そして強制労働、そのほかのものを課することは一切ありません。
 私のもとにも出所した受刑者から何通も礼状が届いたことがございました。孫の顔を見てよかった、担当の先生には厳しいことで指導されたかもしれないけれども今出て思えば非常によかった、感謝しているという文面の礼状が多々届くことがございますし、私が幹部職員として担当勤務者を私の監督下に置き勤務した中も、その担当においても、ありがとうございました、今精いっぱい頑張っています、もう施設に入ることは一切ありませんというような礼状が幾たびか届いたことを私も目にしております。
 また、受刑者が施設に対しまして起こしました民事訴訟につきましても、過去何件も起きております。これにつきましても、その裁判の結果から、我々もどこの点に注意すべきなのか、そして情願が採択された案件につきましても、一体施設の運営にどこに問題があったのか、受刑者処遇に対してどういう問題があるのか、そして今社会がどういうような判断を求めているのか、社会は刑事施設に対してどのような処置を求めているのか、これらに対しても細かく検討しまして、日常の処遇の業務に反映させているのが実情であります。
 今般、名古屋刑務所におきまして幾多かの事案が発生いたしました。この中には、受刑者の中で負傷を負った者、そして死に至った者等がございます。
 私は、名古屋刑務所で一年間の勤務ではありましたが、今回起訴された者たちは、いずれも私が一年間部下として一緒に勤務した仲であります。一部新聞報道であるとかマスコミ報道において、まさしく彼らが人格的におかしい、人格的に、人道的に外れた性格、性癖の持ち主であったかのようなマスコミ報道がされております。しかし、一年間彼らと一緒に、ともに勤務をさせていただいたこの私から述べさせていただければ、彼らは、この矯正の仕事に対して熱意と誠意を持って当たってきた職員であります。決して、受刑者を個人的な感情で虐待し、そして負傷し死に至らしめるような、そのような行為を日常的に行っていたような職員では決してありません。むしろ、自分の家族との団らんの時間であるとか自分のプライベートな時間までを犠牲にし、夜間であり、また休日も施設に出勤し、居残り、そして多大な業務を粛々とこなしてきた人間であります。
 今般の事件について、現在刑事裁判が行われております。この結果につきましては、また刑事裁判の方で真実が明確になり、明らかになり、そしてそれらの結論を待つしかないと私自身、日々思っておりますが、ただ、この場をおかりいたしまして皆様方に一つ申し上げたいのは、現場の職員は、日々それぞれに心の中にいろいろな悩みを感じ、そして、それでも自己の矯正行政に対しての熱意と、それから真摯的姿勢をもちまして、日々勤務をしております。
 今、鴨下参考人の方からございました新法の話も含めまして皆様にお願いしたいのは、我々現場の刑務官に、誇りと自信を持って勤務ができる、そういうものを我々に与えてください。全国一万人を超過する刑務官は、全員、今、これから先我々はどうなるのであろうか、この船はどこに進むのであろうかということを現場看守から監督者までが日々胸に抱き、悩みつつ勤務をしているこの状況です。ですから、お願いです。日本における矯正行政として誇りを持って勤務ができる、その場を我々に与えてください。我々は、公務員であり公安職として、法治国家たる日本を守るために、日々一生懸命これからも勤務してまいります。
 何とぞこの点だけお酌み取りいただきたく、甚だ簡単ではございますが、意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
山本委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。園田博之君。
園田委員 参考人の方々、ありがとうございました。きょうはいろいろな立場、いろいろな角度から御意見いただいたので、過去の法整備のための参考人、どのときよりも非常に有意義だったと私は思っています。
 実は、この名古屋事件が起きた当座、率直に言って私はこういうふうに考えたんです。一つは、非常に暴走する刑務官が事件を起こしたんだなということが一つ。もう一つは、これは長年にわたっての事件でありますから、そのことを見過ごしてきた矯正行政に大きな問題があった、そういう程度の認識だったんですね、実は。
 その後、私は名古屋刑務所に二度参りましたし、刑務官の方にもお会いしましたし、それから実は、後で質問に立つでしょうが、河村委員のあっせんで在宅起訴された被疑者の方にもお会いして、私が今現在大まかにこの事件をどう考えているか。
 非常に難しい事件だと私は思っているんですけれども、大ざっぱに言いますと、これはやはり、一つは、日本の行刑の運営にルールというものがきちっとしていなかったために起きた事件である、これは皆さん方と大体同じ意見だと思うんですが、私は、特に在宅起訴された方々とお話をしていますと、非常にまじめで、もう一つは、犯罪意識はありません。なぜかというと、名古屋の刑務所で、そういう方々から見れば、そこの刑務所の秩序を守り、そして受刑者を社会復帰に導くために運営されてきた慣行の中でやってきたことであって、それがなぜ犯罪に問われるのかという感覚なんですね。
 だから、結局はこの矯正行政というものを、これは今最後に三井さんがおっしゃったけれども、刑務官というのは、それは確かに緊張感を強いられた中で、相当の自分の職務に対する誇りというものがなければやっていける仕事じゃないんですね。そういう中で一生懸命やってきたのに、なぜ犯罪に問われるのかと。つまり、私は、基本的には、矯正行政というものが、法的にもそうだけれども、運営上もやはりきちんとしたものを現場を見ながら考えるという責任を果たしてこなかったために起きてきた事件であって、確かにこれらの今の犯罪の問題は裁判で事実が明らかにされて結論が出ていくんだろうと思います。
 場合によっては、度が過ぎている、これは虐待の度合いが濃いということが言われる可能性も私はあるかと思いますが、基本的にはやはり、法整備もさることながら、もう既にその事件が起きてからもずっと刑務所の運営というのはされているわけですから、そういう中でどうルールみたいなものをつくって、さらにその上で刑務官の方々に誇りを持って仕事を続けてもらうためにはどうしたらいいのか、こう私は思っているわけです。
 それぞれの参考人の方に、今度の事件のポイント、幾つか実は言っていただいているんですが、今度の事件に限って言えば、どこに問題があったのか。例えば、刑務官の方々の研修に手抜かりがあったのか、あるいは運営そのものに矯正行政上気を配るものがなくて、運営そのもののルールがあったかなかったかわからないような状態だった、こう考えるのか。
 そういうことを考えると、もしこれが犯罪ならば、やはり組織的な、犯罪と言うとこれは語弊がありますがね、そういうものが実は最大の要因、どういうことが最大の要因だったとお考えになるのか、ちょっと一言ずつお話をいただければなと。私のこういう考え方が間違っているのかどうか、菊田参考人からちょっとお聞かせ願いたいと思います。
菊田参考人 私は、これが原因だという単一なことは非常に難しいと思います。
 そもそも、先ほど申し上げたように、刑務所長自体が三、四年でかわっていくわけだし、現場に残された第一線の人というのが地元から何年にもわたってそこに勤務するという、上部と下部と言うと語弊がありますけれども、現場と管理職との間が、私は非常にそこに意思の疎通がないということが一つ大きなことだと思います。
 その象徴的なことは、先ほど申し上げたように、矯正局長が全く素人だ。素人あるいは中央官庁が、一方的に下に向かって、下部機構に向かって通達、指示を出す、あるいは所長が下に向かって通達、指示を出す、こういう、一方的に受ける。受けた方は、それに従って、理解と協力という意思もなく、一方的に中身を充実させていかなきゃならない。
 我慢していれば、そのうち所長なりすぐかわるわけですから、そういう中で、仲間意識と申しますか、お互いに、やはりこれは人間そうですけれども、私の卒業生もたくさん矯正界に出ておりますけれども、最初は非常に理想とか理念に燃えていても、おまえ、それではこの世界生きていけないよと言われると、その先輩の言うとおりに自分の意思を否定していかなきゃならない、そういう体制ができている。
 もちろん、個々的に非常にすぐれた刑務官、先ほどのお話にあるわけですけれども、私は、とにかく、近代化された刑務所と、あるいは国際的な立場からの、置かれている今の状況というものを、法的関係ということでとらえていかなきゃならない。もちろん、それだけでは済みませんので、やはり密行主義という、従来の刑務所の基本的なあり方というもの、やはり刑務所というものは社会的存在であり、税金でできているわけですから、また社会の資源というものが無数にあるわけです。いろんな形で刑務所というものを社会に開かれた中で、自信を持ってそういうことをやれるという空気をつくっていくということに欠けていたんではないかというふうに理解いたします。
 以上です。
鴨下参考人 ただいまの御質問に先ほどかなり御意見として申し上げたと思うんですが、一番問題は、法令の中に規律秩序の維持というものがどの程度必要なのかということが全く今は書かれていないということ、それが、現状の運用が適切なものであったかという御批判を受ける原因ではなかろうかというふうに思います。
 それと、例えば警察官であれば警察官職務執行法という、八カ条程度ですけれども、きちっとした規定があって、それに基づいて仕事をしている。ところが、現在の監獄法令のもとでは、すべて所長だけが権限を持っていて、その手足として刑務官が動いているという法律的な構成になっているのに、実際には現場の第一線の職員の判断で動かざるを得ない場面が規律秩序の維持という面ではある。組織がうまく機能していない場合はここにそごが生じるということが、私の長年の経験、施設長としても六施設に勤務しておりますが、非常に問題があろうかというふうに思っております。
三井参考人 今の御質問の趣旨が、このような名古屋刑務所における事犯がどうして起こったのかというような質問だと判断いたしますので、それについて、現場といたしましても、現場で勤務いたしました私の所感を述べさせていただきます。
 今般の事件に関しまして、今般の事案が発生したその原因につきましては、まず第一に言えることは、職員の資質に問題があったということではないと私は考えております。むしろ、施設の秩序維持をいかにして守らなければならないか、また、受刑者処遇をいかにして適正に行わなければならないかということが、いわゆる現場サイドの方に重くのしかかっているような状況であり、そして、それを根本的に解決するような体制が当時の施設の方にはなかったがために、現場の職員の行為が、今回のような、いわゆる事件と呼ばれるような事犯になってしまったのではないかなと現場としては考えております。
園田委員 もう一つ、よく言われたことは、これは鴨下参考人と三井参考人にお伺いしますが、名古屋刑務所は非常に荒っぽいところである、その証拠に、革手錠の使用回数も非常に多いと。その理由はまた、全体として非常に規律を厳しくしないと秩序を維持できないんだ、そのために、いつの間にかどんどん受刑者に対する対応が荒っぽくなったんだ、これはほかの刑務所と違う状況なんだということもよく言われました。
 お二人は、鴨下参考人も刑務官を長く続けておられましたので、名古屋刑務所に特にそういう問題があったのかどうか、ちょっとお聞かせ願えればと思います。
鴨下参考人 お答えします。
 私も、府中刑務所長を経験した経験からお話ししますと、名古屋刑務所は、ある時期までは非常にきちっとした運営がなされていたというふうに私は認識しております。
 ただし、この経済不況の状況が続きまして、刑務作業が非常に低下してしまったということで、刑務作業だけが社会復帰処遇の主たる部分とは私は思っていませんが、それがなくなってしまう、不十分になってしまったときに、保安、規律面だけが前面に出てきて、職員がそれに必死に取り組んだ結果が、先ほども言いましたように、法的な根拠、限界が明確でないままに行き過ぎがあったとすれば、それが問題になったのではないかなというふうに思います。
 実は、いろいろな保安維持作用というのは、恐らく三井参考人の方から直接の経験としてお話があると思うんですが、私も、三千名近い収容人員を抱えている府中刑務所の所長を経験した経験からいいますと、組織でもって対応すれば、そういう問題は恐らく起きなかっただろう、それから、いろいろな社会復帰処遇を多様化する、それを充実してやっていけば、もう少し違った方向に向いたのではないだろうかということが、長年の経験からの意見として申し上げられると思います。
三井参考人 お答えいたします。
 私は、平成十三年の四月一日から平成十四年の三月三十一日まで、名古屋刑務所で一年間勤務いたしました。その間、私は、さきも述べましたとおりに、処遇部処遇部門統括矯正処遇官、第六担当、いわゆる舎房担当として、工場に出せない、いわゆる集団生活にはなじまない昼夜独居に、いわゆる昼夜独居というのは昼も夜もそれぞれの単独室で生活をする、処遇を行う受刑者のことを指しますが、それらの処遇に当たっておりました。
 名古屋刑務所の規律がほかの施設と比べて著しく異なっており、また厳しいものであり、また虐待行為が行われてきたというようなことは一切ございません。むしろ、私がおりました一年は、名古屋刑務所の収容率も非常に高い傾向になりつつある時期でしたので、諸々受刑者の方から出てくる不平であるとか不満であるとかそういうものは、我々現場の方で実際にその受刑者からその意見を聴取し、そして、こちらの方でも積極的に改善を行うべきという形のもとで運営をされておりました。
 ちなみに申し上げるのですが、私も、大規模施設が初めての経験であったものですから、当時は余り名古屋刑務所の運営というものに対して深い理解はありませんでしたが、勤務をしてみると、担当の立場に当たっている職員が、やはり受刑者の性格であるとか性癖であるとか、また人格であるとか、そういうものを非常に認知しておりましたので、そういう面でいえば、私が監督者として勤務をしておりましたが、現場での担当職員からの情報も速やかにこちらの方に上がってまいりましたし、また、それに基づきまして私も幾多の面接をいたしまして、受刑者の方からその理解を得たというようなこともございます。著しく厳しい処遇が行われたという実態はございません。
 以上です。
園田委員 私は、いずれにしろ、これはどなたも一致していると思いますが、今度の事件を犯罪事件としてとらえて、それで済ませたら、これはもう大変なことになっちゃうので、おっしゃるように、最終的には、菊田参考人がおっしゃいます、大体、監獄法なんという名前からして、我々は法律家じゃありませんから、そういう法律があったのかというぐらいのものが百年近くも存在しているということから、抜本的に変えていかなきゃだめだと思うんですね。それで、やはり、なるべく法律には具体的に書き込まにゃいかぬ。そうしないと、こういう不幸な事件がまた起きてくる可能性もあると私は思っております。
 そこで、菊田参考人から、相当具体的な提案が幾つかございました。
 例えば、矯正局から検事は排除せよ、刑務所職員、刑務官の発言が自由にできるようにしなきゃだめだ、これは私の方もつくづく思いましたね。そのために組合をつくれ、これも具体的な提案だったんですね。それから、刑務官の名前も明らかにして、ちゃんとここに名前を書いてやるようにせよとか、保護房を廃止せよ、本来、保護房というのは、受刑者が自分の体を傷つけるためにいろいろな動作を行うために、保護するためのものじゃないかと。
 そういう相当具体的な提案がありましたが、これについて、差しさわりなければ、差しさわりない程度に、またお二人から、その御提案に対して意見をちょっと聞かせてもらえませんか。
鴨下参考人 お答えします。
 菊田参考人の御意見、非常に多岐にわたりまして、私も余り整理ができていないんですが、もっともだと思われる意見もございます。しかし、それが行刑の本質的な問題かと思われる御意見もあったやに理解しています。
 本質的な問題というのは、先ほどもちょっとお話がありましたが、法整備がきちっとされていないがために、訓令とか通達で行政指導をせざるを得ないと。しかし、訓令、通達で行政指導をするということは、内部で勤務している職員に対する命令、指導にはなりますが、受刑者の権利、自由の面の保護という観点からすると、直接的なものは法律ではありませんから書けない、要するに反射的な効果としてだけしか及び得ないという、そのことが非常にずれが生じているように私は思っています。そういう意味で、いろいろな、私も法改正のポイントというのを五つ、六つ挙げたと思いますが、そういう本質的な問題をまずきちっとしなければ、問題の解決にはならないのではなかろうかというふうに思います。
 例えば、名札をつけるということはいつでもできる話でありますし、名札をつけなければ職員の名前がわからぬと菊田参考人はおっしゃっていますが、毎日二十四時間勤務して顔を突き合わせている職員と収容者が、名前を知らないなんということはあり得ない話であります。私などは、卒業した高校、大学、家族構成員、すべて収容者は知っております。インフォーマルではありますけれども、そういうものはあるわけでして、なおかつ形式的に名前を、名札をつけろと言われるのであれば、それはいつでもつけられる話でありまして、それが行刑改革の基本であるということとは私は思っておりません、もっと大事なことがあるのではないか。それが整備されない限りは、組織なり職員の勤務体制の整備もあり得ないというふうに考えております。
三井参考人 お答えをいたします。
 先ほど菊田参考人から多々幾つの改善というものが示されましたけれども、今、鴨下参考人の方からございましたように、名札の問題につきましては、現場の職員から言わせていただきますと、受刑者はほとんどの職員の名前をもう既に認知しております。まさしく二十四時間彼らに対して勤務をしておりますので、それらのことから、いわゆる職員が職員同士を呼ぶときに受刑者が耳を澄ませて、ああ、あの職員はああいう名前なのかなというようなところであるとか、あとは、書類そのほかを扱うときにこちらの方も印鑑を使ったりしますので、それらをまた受刑者が見て、ああ、この職員はこの名前だなというようなところで、名札をつけずとも、ほとんど自分が担当している職員、それから自分が担当している受刑者の氏名というのは、実際的にはお互いが認知しているような状況にございます。
 菊田参考人が、暴行を受けたときに名前がわかるようにというようなことを今御発言ございましたけれども、現場から言わせていただければ、暴行をした際にその人間が特定できるために名札をつけるというのは、これは本末転倒な考え方でありまして、むしろ名札をつけるというのであれば、鴨下参考人がおっしゃったように、いつでもそれはつけますし、我々の業務につきましては、当然正当な業務であるという自信を持って勤務しておりますので、つけろと言えばすぐつけさせてはいただきますが、これも今挙げましたように、根本がやはり整いませんと、やはりそういうわけにはいかないと思います。
 ただ一点、私として、現場、現場と言っては申しわけございませんが、現場の職員として一点言わせていただきたいことは、今回の事件に関してはそうなんですが、非常に、このような法務委員会、いわゆる今回の事犯について、行刑を改革するというこのような会に当たりまして、やはり現場の職員の声が余りにも反映されないのではないか。また、今回の事犯につきましても各種マスコミの方で報道されておりますけれども、やはりそういうものに対しても、現場の刑務官がどれだけ頑張っているのか、どういう苦労があるのかということも全く一切出ないままに一方的な報道がされているような向きを非常に今回感じさせていただきましたので、でき得れば公的なこういうような機関の場において現場の職員が発言できる機会をやはりもっといただきたいな、このように私としては考えております。
 以上です。
園田委員 三井参考人に、ついでにもう一つ。
 国会だとかこういう場で発言の機会というのはそうは、これからもそんなにはないと思うんですね。それよりも、菊田参考人がおっしゃったのは、恐らく矯正行政上、現場の刑務官が組織内でも発言の機会がどうも少ない、多分そういう感覚で言われたんじゃないかと思うんですね。それに対してはどう思っておられますか。
三井参考人 組織内での、現場の発言につきましては、現場におきます研修会であるとかそういうもので、現場の職員の意見というものは活発に出されております。
 ただ、私が申し述べたいものは、実際、現在、国民の皆様につきましても、刑務官のそういう勤務が一体どういうものであるのかという理解というのはほぼ乏しい状況にあると私は考えておりますし、私も制服を脱げば一社会人として、ほか、外の人と会うこともありますけれども、やはり刑務官というのは、牢番であるとか、これまでテレビであるとかマスコミであるとか、ドラマの主人公のわき役のかたき役のような、そういうような印象が非常に強うございます。これがやはり今回の件につきましても皆様の印象の第一番目にあるものではないかなと思います。
 そういうものを払拭するために、やはり我々現場の刑務官がどのような勤務をしているかというようなことについてもっと明らかにしていただきたいですし、そのためであれば我々は、勤務で知り得た個人的な情報であるとか受刑者のプライバシーであるとか、あと保安上のことというようなことはやはり話せませんけれども、それ以外のことであれば、我々の日常勤務について御理解をいただけるように、こちらの方、こちらの方と言ってはおかしいですけれども、そういう場があれば行って、やはり現場の声として発したいと考えております。
 ただ、施設内の方でいえば、やはり現場で、本当に第一線で苦労している職員が、いろいろな受刑者の処遇に対しての苦労とか組織に対する不満であるとか、そういうものも確かに口にするところはありますけれども、私の立場としては、それは聞いてまいりましたし、それを改善するように努力をしてまいりました。私はこれまでに略歴で説明したような施設で勤務しておりましたけれども、すべからく上司には恵まれまして、そのような不満も聞き届けていただきましたし、そういう経験もありますので、私自身、そういう上司になりたいと思って現在も勤務しているわけですので、そういう点でいえば、やはり下の者が言う、下の者と言ってはおかしいですけれども、現場の第一線の職員が言う言葉には耳を傾けて、善処したいと考えております。
園田委員 ちょっとさっきの質問、悪かったかな。菊田参考人の言われた意見を、細かいところを聞いたものですから。菊田参考人は、実は根本的なことを基本的には述べておられるので。
 実は来週、また医療の問題をちょっと集中して、こういう参考人の方から御意見を聞こうという計画がありますので、きょうは医療の問題は余り申し上げていないんですが、そういうことまで含めて、いかにして受刑者が、鴨下さんがおっしゃるように、受刑者が社会復帰へ向かうその処遇というのを基本的に刑務所内でやっていって、そしてその中で受刑者の人権を守って、しかも刑務所全体の秩序や規律が守っていける、そういうものを基本的に組み立てていけるような法整備と運用をこれからやっていかなきゃならぬわけですね。
 基本的なことも菊田参考人からおっしゃったんですが、菊田参考人に最後に聞きたいのは、日本の行刑制度で、それでは、他の国と比べて、この点はきちんとやはり守っていくべきだ、今もこれはいい伝統だ、いいルールだという点がありましたら、ちょっと述べていただければと思いますが。
菊田参考人 それまでに、今、三井参考人が発言されましたけれども、発言の内容は、一般の刑務官はその職務に非常に忠実にやってきたという御意見だろうと思うんですね。三井さん自身も、私はある記録の中で、今回の事件にかかわっておられたように思いますけれども、そういう点の反省が全くないですね。率直に反省いただけるのかと思っていましたけれども、ないので残念だと思っていますが。そういう使命感というか、これは日本型行刑といって、日本は日本的な行刑を世界的にもさんとしてやってきたんだというふうに居直り論が非常に前提にあったように私は思います。
 しかし、御存じのように、国際化された中で、これは日本的とかどの国的ということはあってはならないわけで、もちろんその国において人権というものは、そのレベルはいろいろ異なりますけれども、あるべき人権に向かってその国がどう努力していくかというその努力の永遠な追求にあると思いますね。
 そういう点では、日々努力するという、反省と努力、絶えざる努力、これが必要なので、私は、とにかく一言で言えば、国連の最低基準を守り、そして人権条約の精神なり理念なりに向かって日本がやってもらいたい。居直り論はこの際もう聞きたくないというのが私の思いではございます。
 以上です。
園田委員 三井さんをちょっと擁護したいんですが、時間がなくなったので、今後も思っていることを両方おっしゃっていただきたい。
 終わります。
山本委員長 次に、河村たかし君。
河村(た)委員 きょうは途中で時間が分かれましたものですから、初め四十五分やります。これは、主に十二月事案、私はあえて事件とは言いません。事案ですけれども、をやって、あと午後は革手錠について話をしたいと思います。
 まず、参考人さん、御苦労さんでございました。
 菊田先生、今反省の弁がないと言われたけれども、私は本当に反省しているんですよ。なぜかって、これは放水を自分でやったこともないし、革手錠施用されて、現場を見たこともないし、当事者の意見を聞いたこともない。本当にあの事実があったのかどうか、全然僕は検証していなかったんですよ、実は。あの事実があったことを前提として、それを隠した法務省が悪いと言ってきたんですよ。
 人権侵害、人権侵害と言いますけれども、僕はみずからに常に厳しくあろうと思っていますよ、絶対に。自分がもし、刑務官のあの八人の皆さんが無実だったらどうするんですか、これは一体。受刑者の人権も大事ですよ、一つ一つ大事にする。このことが本当にあったのかという責任を持った態度をとらないで、僕は本当に申しわけなかったと思っているんですよ。許してほしい。
 二回、僕は委員会で質問しました。刑務官の暴行があったと。だけれども、僕は実は聞いていなかったから、あのとき。現場にも行っていなかった、放水もしていなかった。あったということを何か新聞で読んで、法務省の言うことを全部信じただけなんですよ。
 だから、菊田さん、一言今言われたけれども、菊田さん、ちょっと余りきつく思わないでくださいね。医療も含めて、今までの行刑施設に問題があったということは、私もそう言っているんだから。だけれども、だからといって無実の人をつくっちゃ絶対いけませんよ、これは。冤罪に手をかすというのは人間の最もおぞましいことだと、私の生き方の中で、五十四歳になりましたけれども、私はそういう価値観で生きていますので。
 菊田さん、本当にあなた、先生、そう言われた以上は、それじゃ放水を、三井さんは放水がされた後、実際に現場にいた方です。それは反省するというんだったら、放水現場に行かれてどういう放水であったか見られましたか。当日の人、だれかに聞かれましたか、あなたは。
菊田参考人 ここは刑務所不祥事件の事実について、私は裁判所じゃないんだから、そういう争いをするつもりで来たわけではございません。私は研究者でございまして、刑務所はもとより中身を見ているわけじゃなし。
 問題は、死者が出ているんですよ、現に何十人も。そういう事態を隠していたんですね、法務省は当初。ですから、先生方の御努力によってそういう事実が明らかになってきて、今となれば事実そのものにこれ以上、国会議員の方は、それ自体は非常に大事ですけれども、これを契機にして将来この行刑というのは建設的にどうあるべきかということを私は一生懸命考えなきゃならぬというふうに思っているわけですから、今おっしゃったようなことについて特段、私が見たわけではないのにとやかく言う必要もございません。
 しかし、ちまたでは、とにかく国民の多くは刑務所で殺されたという事実で、余りにもショッキングなことで、受刑者というのは刑務所へ入ること、ところが殺されに行くんじゃないか、こういうことすら象徴的に言われるようなことを、これはこの際猛省してもらって、そしてあるべき姿を今後とも考えてもらいたい。特に国会議員の方にお願いしたいということでございます。
河村(た)委員 いや、制度については大いに考えます、それは。誤解してもらっては困ります。ちょっと、初めに厳しくなったけれども、本当に。
 それと、何があったかについては、有罪無罪は確かに裁判所だと思いますけれども、やはり半年間にわたって、固有名詞もみんな出てきています、これ、委員会で私しました。乙丸さん、前田さん、みんな出てきていますよ。それと、法務省が事実を認定して中間報告に書いていますよ。書いています。
 だから、それが、どういうことがあったかということは検証しないと、事実検証して、有罪無罪という機能をするところは裁判でしょう。だけれども、そういうことがあって、どういう矯正行政が必要なんだ、そして今回法務省が行っているこういう休職処分、無給にすること、これは行政処分ですから、こういうことが妥当なのかというのは、これは委員会でやらないと、まさしく委員会の務めです、これは。委員長、そうでしょう。一言言ってください。
山本委員長 事実、その課題を究明するために参考人質疑をやっておるという認識でございます。
河村(た)委員 そういうことでございますので、絶対逃げてはいけません、絶対逃げては。国会がもし無実の人たちをこうやって半年間言ってきたとすれば、本当に救いがたい人権侵害になりますから、これは。
 そんなことで、時間もございませんので、まず、ずばり聞きますと、三井さん、きょう写真を持ってこようと思ったけれども、余りにも、ちょっと、死んだ人の写真とか、そういうのになりますので。よく体にあざがあるんですよね、結構。おでこだとかひじだとか、あざがあって、刑務官は何か暴行して殴ったりけったりしているんじゃないか、そういう感覚が結構あるんです。これについてはどう思われますか。
三井参考人 お答えさせていただきます。
 受刑者が施設の中で、いわゆる職員に対する暴行であるとか同囚に対する暴行であるとか、それらの暴力行為等を行ったときに、我々は、当然ながら放置はできません。それらに対して、いわゆる実力行使ということで、本人たちの体を制しなければなりません。
 しかし、例えば警棒であるとか盾であるとか、そういうものも確かにはございますが、そういうものを持って暫時みだりに打ったりとか、けったりとか殴ったりとかいうことをして本人たちの動きをとめるわけではありません。矯正護身術といういわゆる関節わざが、対応の護身術の方法がありますので、それらを毎日習得しておりますから、それらを使いまして本人たちの体を制しようと思いますが、しかし、あくまでも本人たちの体、これにけがをさせたりあざをつくったりというようなことがないように、それでも本当に細心の注意をして、最小限の力で何とかしようと食いとめるがゆえに、受刑者たちの制圧を行う際に、本人たちが暴れて、壁であるとか机の角であるとか床であるとか、そういうところに打ちつけて、そのような傷が生じることは多々ございます。
 また、そのような傷が生じた場合につきましては、当然、医務の方で診察も行いますし、カルテの方にも記載させて記録化しておりますので、刑務官が殴ったりけったりというようなことをして受刑者の体にあざを負わせる、傷を負わせるというようなことはございません。
 以上です。
河村(た)委員 そういうことなんですね、これ。
 私は、日本じゅうで、だれもないとは言いませんよ、実に処分されている人もいますからね。だから、そうやって殴るけるという人もおりますけれども、一般的に刑務官が、ぱっと写真を見ると、本当についているんですよね。だけれども、ちょうどこれは出っ張っているところなんです、私が見たのは。でこだとか、本当にひじだとかひざだとかですね。だから、当然、押さえるときにばたっとなるというようなことでなる、そういうふうに理解していいですね。
三井参考人 はい、そのように理解して結構であります。
河村(た)委員 そうしたら、時間がございませんので、きょうの中心的なテーマというか話に移りたいと思います。
 三井さん、放水があった現場、そこに立ち会ったことがございますか。
三井参考人 平成十三年の十一月の二十八日、それから翌月、平成十三年の十二月の四日、二度、保護房内において放水をするのに立ち会いました。
河村(た)委員 その放水の内容については後で聞きますけれども、時間がなくなるといけませんので。皆さんにきょう資料を配ってくれたかな。――配ってあると。私に、もらわないかぬ。皆さんのところに中間報告が行っておると思います。三井さん、菊田さんにも行っております。
 そこに、十二月事件のところを読んでください。これは法務省の出した書類でございます。十二月事件のところ、裏表になっていまして、表というか、アンダーラインを引きました。
 受刑者Xの出血の発見状況について、同人が着用した下着に出血が認められたとの客観的事実に反する事実が通報されたということになっています。それから次の段、下ですね、出血の発見状況について受刑者Xの下着に出血が認められたなどという客観的事実に反する事実がつくり上げられた、こういうふうになっています。次は、出血発見状況として下着臀部に出血したような汚染を発見したと客観的事実に反する記載がされているということで、下着に出血が認められたという痕跡が、報告があったんだけれども、それはうそであるというふうに法務省が断定しております。
 これは、どういう意味があるかといいますと、もう一つ、冒頭陳述の要旨がありますので、皆さん、見てくださいますか。冒頭陳述の要旨であります。ここに、これは乙丸さんの裁判の冒頭陳述、この下のところに、三行目に、「十数秒間にわたって多量に放水する暴行を加え、甲に肛門挫裂創・直腸裂開の傷害を負わせた。」こういうふうになっております。すなわち、どういうことかといいますと、水をかけたことによって肛門が破れて、その奥の直腸が破れたということになっております。
 この下着は、もし下着に血がついておれば、放水前に、本人に対する放水前に既に出血していたということになる。これは決定的な証拠になるんです。そういうことでしょう。放水によって出血したと言っているんだから。放水前にこれを脱がせても、しりにかけていません。しりにかけるときは、かかるときはズボンを脱がせなきゃ意味ないですから。こうかけます。
 ですから、この点につきまして、三井参考人はその血がついたパジャマ、下着を見たというふうにお話をいただいておりますので、どういう状況で見られたか。三井さんの参考の資料がございますよね、三井さんが出されました、先ほどかかれましたこれを皆さんに配ってありますので、この図面の中でどういうところにかきつけて、ちょっと時間がありませんから短く、どういう状況の中で、ここはどういうところであって、どこに血痕のついた下着があったか、そこをちょっと御証言願えますか。
三井参考人 では、手短にではありますが、説明させていただきます。
 お手元の方に図面があると思いますが、下の方に……(河村(た)委員「三井さんに一枚渡してください」と呼ぶ)済みません。
 今お手元の方にお渡ししました図面は、私の記憶によりますと、平成十三年十二月十四日午後四時過ぎに、私が、保護房、当時、第一室と第二室がございましたが、保護房の第二室、こちらの方の現場を見たときに記憶している図面です。
 下の方に、二重線の四角いような長方形の印がございますが、これが入り口でございます。ですから、入り口から見てこのような状況だったと認識していただければ結構です。
 中央の方にございます、こちらの広いこの部分ですが、こちらの方は布団があったと記憶しております。こちらの方にちょっと長方形のいびつなこのような形がございますが、こちらの方は、こちらの方がいわゆる敷布団、こちらの方がかけ布団であった、このように記憶しております。
 中は非常に散乱をしておりました。残飯であるとかそういうものもこちらの方に一面に広がっておりましたし、また、その際に気づきましたのは、細かい、一センチ程度ぐらいの細かいプラスチック片がこちらの方に、中の方にずっとありました。
 私が衣類を発見したのは、ちょうどこの上の方にございますこちらの場所です。こちらの方で私は、本人が着用していたと思われる衣類を発見いたしました。これにつきましては、パジャマの上下、それからいわゆるメリヤス下着の上下等がくしゃくしゃになったような形でこちらの方にあったと記憶しております。
 以上です。
河村(た)委員 その衣類を本日、本物を、官服といいまして、刑務所で使っていたものをぜひ出してほしいと矯正局に何遍も頼んだんですが、出していただけませんでした、残念ながら。私は非常に抗議しておきます、法務省に。なぜ隠すんだ、こんなことをですね、やはり真実を明らかにするときにむしろ協力すべきなのであって、抗議しておきますが。
 そのとき、なるべく近いといいますか、状況のもの、色ですね、色を持ってまいりましたので、これが、こういうような、もうちょっとネズミ色の色でした、私は写真に撮ってありますけれども。できれば、ちょっと近いという感じですけれども、これが上着のズボンですね。それから、これはステテコですけれども、実はもうちょっとあれですね、いわゆるもも引きという感じのものでございまして、その下にパンツがあったんですけれども、どうも話を聞いておりますとパンツはないようでしたが。
 後でまたちょっと詳しく三井参考人に言ってもらいますけれども、もう一回戻ったところで詳しく見ておられますけれども、この状況の中で、どういうところにどういう血痕がついていたか。ちょっとかいていただけませんか、大体、色の感じで、今。了解はとってありますから。――ちょっと提示していただけますか、皆さんに。こんな状況であったという話も入れて。
三井参考人 私がそのときに入った際については、両方ともこちらの方にある衣類はぬれておりました。ぬれている状態で、非常にメリヤスが重く、水を吸って手にずっしりとしたような感覚があったことを覚えています。
 ちょうど、よく子供がおふろに入るときに衣服を一緒に面倒くさいから脱ぎ捨てるような形になりますが、こういう形になりますが、こういうような形で、本当に丸められたような形で、私が提示いたしましたその図のところに置いてありました。
 私は、本人が負傷いたしまして手術室に応急処置の応急手術のために運んだ後に、現場がどういうものであるのか確認するために入りましたので、その際に、何か証拠になるような、後に本人がどうして負傷したのかわかるような、何か物証的なものはないのか、それを確認するためと、それから、もしあればそれを保全するためにそちらの方に参りましたが、その際に、私が提示したところにちょうどずぶぬれの状況で脱ぎ捨てられておりました。
 私も手が汚れるような形もありましたけれども、ちょうど置いてあるものをこのような形でつまみ上げましたところ、本人がはいていたと思われるパジャマとそれからメリヤスというような形でしたので、上げたところ、臀部のところにこのような血痕が……(河村(た)委員「もうちょっと広げてもらった方が」と呼ぶ)この程度の血痕でした、があるのは私は確認をいたしました。
 中の方もちらっと見たところ、中の方にも、ごらんになられるでしょうか、ちょうどこういうような形になります。裏表というような形で血痕らしき、印象的には茶色というような色でしたけれども、そちらの方がついている衣類を発見いたしました。
河村(た)委員 そのものは便である可能性もあるんですが、そこのところは間違いないですか、やはり血でしたか。
三井参考人 色は、イメージ的には茶色でありました。茶色といっても赤がくすんだような色でありましたし、経験則上からいって、これがいわゆる本人が肛門に裂傷を負った際に出血した血が付着したものなのだな、当然、位置もこのような、パジャマそれからメリヤス下着の臀部についておりましたので、明らかに血であるという認識をいたしました。
河村(た)委員 ちょっとくどいようですけれども、これは決定的な証言になりますから。放水によって出血しなかった、放水以前に既に出血していたということになりますから。
 これは、三井さん、きょうは参考人招致ですから、いわゆる証人喚問ではございませんので偽証罪はありませんけれども、私はあなたを疑うわけじゃありません、しかし非常に重要なポイントですから、これは絶対に間違いない、うそを言っていない、仮に偽証罪に問われる場合であっても、宣誓して話します、そういうふうに、どうですか。
三井参考人 これにつきましては、この場において、虚偽であるとか、またうそを言ったりする必要は一切ありませんし、私もその所存はございません。私は見たままを申し上げておりますので、このような衣類があり、それにこのように血痕と思われる跡があった、それが保護房の第二室の中にずぶぬれた状況で置いてあったということについては間違いありません。
河村(た)委員 となりますと、これはやはり大変なことなんですね。
 まず、中間報告は完全に間違っています。こういう報告が、血がついたのが上がったというのはうそであるというふうに法務省は断定しているんです、先ほど言いましたように。要するに、放水によって出血したというのは、事実認定としては絶対的な要件になっています。これは、放水以前、パンツを脱がせる以前、ズボンを脱がせる以前に出血していたということになります。
 ということは、革手錠は午後やりますけれども、彼らは無実だったんだろう、無実だったんだろうと。なぜこんなふうになったのかと思いますけれども。私は断言しています、本当に。僕もちゃんと国民から一定の信頼を得て出てきていますし、むちゃくちゃは言いません。私は、これは冤罪だとはっきり言っております。
 これは、三井さん、御自分でそう思われていますか。
三井参考人 現在、この放水の事案につきましては、私の知り得る職員等が刑事事件の被告として、在宅を含めまして起訴されております。この事件につきましても、私も二度ほど法務省の方から調査を受けました。その際につきましても、このようなものが中にありましたということは私は申し述べておりますし、今回、本人たちが行ったことについて、冤罪かどうかというようなことに関しましては、それは刑事裁判にゆだねるしかありませんけれども、やはり事実は事実として究明していただきたい、真実を明らかにしていただきたい、このように考えております。
 以上です。
河村(た)委員 それで、三井さん、それを見られまして、もう一回これをそこに置いて、後の行動を、もう一回ちょっとどこかへ戻られて、もう一回これを確認されて、あと何か袋に入れられたという話をちょっと聞きましたけれども、そこのところを詳細におっしゃっていただけますか。ちょっと時間がないものですから、割と短くですが。
三井参考人 当日、四時三十分ごろ、今説明をいたしましたこちらの衣類の方を保護房の第二室で発見をいたしました。
 その際に、職員の方はちょっと特定できません、記憶にはちょっとございませんが、片づけをしている職員に、布団はもうびしょびしょにぬれているような状況で、もう使い物にはならないような状況でしたので、布団については廃棄と。そのほか、この衣類については、後ほど、負傷を負った受刑者、これがどうしてこの負傷が生じたのか、それは本人からも事情聴取をしなければならない、実情については、やはり完全に傷がついているような状況でしたので、これは明確にしておかなければならないと思いまして、こちらの方を一応証拠物として保存を命じました。
 その際、これが全部ぬれておりましたので、保護房に隣接している舎房、いわゆる受刑者が生活する居住棟の中から、黒色のビニール袋、いわゆるごみ袋に使うような袋、こちらの方にそれを入れて持ってこいというような形で指示をいたしました。
 その後、処遇部門の事務室、処遇本部と言わせておりますが、処遇本部の方に、職員が先ほどの保護房の中の第二室の衣類関係ですという形で持ってまいりましたので、私は、警備隊の方にございました、手術用のゴムの薄手の手袋がございましたので、そちらの方を両手にはめて、再度袋をあけまして中のものを幾つか探し出して取り出したところ、やはりこの先ほど示しました衣類がずぶぬれの形で、大分異臭も放っておりましたけれども、出てまいりましたので、こういうような形で取り出しまして、やはりこれは血に間違いないなと。それで、中ものぞき込んだところ、血の跡がありますので。
 ですので、そのときは傷の大きい小さいはわかりませんでしたけれども、いわゆる本人の臀部の血がメリヤスからしみ出て、パジャマの方にしみ出て、この程度の大きさまでしみ出るような状況であったんだなと思いましたし、また、数名の職員がおりましたが、変な話ですが、これがやはり河原がやった跡だなというようなことを言って、後それをまた、詳細はそのときには本人には確認できませんでしたので、手術中でありましたので、これをまたそのまま黒のビニール袋に戻しまして、それで、この黒のビニール袋は証拠品といたしまして、名古屋刑務所の処遇管理棟の一階隅にございます警備倉庫、いわゆる盾であるとかそういうものを保管しております、その警備倉庫の中に保管しておくように指示いたしました。
河村(た)委員 保管後はどうなったかは、これは三井さん、御存じないですか。知らないなら知らないで結構です。
三井参考人 保管を命じたのは、私の記憶によると、名前を出しますけれども、岡本主任矯正官、それから西川看守部長の両名ではなかったかと記憶をしておりますけれども、断定の方はちょっとできませんが、彼らも私の部下でしたので、多分その両名のうちどちらかの方に保管するように指示したと記憶しております。
河村(た)委員 その後どうなったか、保管後。
三井参考人 その後、保管をした後につきましては、いわゆる本人の死亡が確認をされましてから、どうしてその肛門部の裂傷が生じたかというようなことの詮議、せんさく等が行われた際には証拠物として提出しようと思いましたが、特段その必要がなく、すべての処置が進められておりましたので、そのまま警備倉庫の方にしばらくの間はずっと保管してあったと思います。その後のことにつきましては、ちょっとよくわかりません。記憶の方にはございません。
河村(た)委員 それから、今ちょっと同僚から指摘があったんですが、確認しておきますけれども、保護房第二室で出血した衣類を見たのが四時ごろですけれども、放水が二時二十分ごろだったですかね、ちょっと今メモがないんですが。そういうことですから、放水前にパジャマに出血していて、はっきり言えば、二時二十分から四時の間にだれかが脱がしてからそれをつけたということがあり得るといえばそれはあり得るんですけれども、そういうことも確認しておいた方がいいのではないかという指摘もありましたので。
 そこら辺のところは、自分でわかる事実でいいんですけれども、私からすれば、証人をもう一人でも呼べば、わざわざ脱がしてからしりのところに何か血のようなものをわざとつけるということはまず考えられないと思うんですけれども、一応時間系列がそうなっておりますので、三井さん、ちょっとお答えいただけますか。
三井参考人 衣類は大分汚れておりましたが、その中のいわゆる血痕等が、鮮血の赤ではなくて、大分茶色っぽく変色しておりましたので、多分時間経過的には、仮の話ですが、その二時二十分の放水時において出血してそれが付着したものであるとすれば、血液の色自体がそれほどやはり黒ずんでなく、鮮血色であったと思います。
 それから、このメリヤスは実際は大分厚手のものでありますし、パジャマの生地は、これと、用意してくださったものとほぼ同様ですが、メリヤスの生地は大分生地が厚いので、それを浸透して、直径十センチ程度ぐらいだとは記憶しておるんですけれども、この程度に血がしみ出るまでには大分の時間経過も要すると思いますので、ですから、そのような細工をしたというようなことは私としては考えづらい、むしろ考えられないと考えます。
河村(た)委員 十センチほどだと言われていますけれども、もうちょっと正確に、大体何センチぐらいか、十センチという記憶ならいいんですけれども、お答え願えますか。血の大きさですね。
三井参考人 記憶としては、まさしくちょうど示していただいた程度の範囲の血痕だと記憶しております。
河村(た)委員 そういうことでございます。
 私は、一刻も早く公訴を取り消して、こういうことは恥ずかしいことというわけじゃないです。やはり人間、検事総長におかれましても過ちがあるし、僕でも過ちはあるんですね。こういう過ちが起きたときには一刻も早く取り消して、やはり一人の命を、生活を救ってやる。給料は無給ですし、今家族はどんなつらい思いでいるのかというふうに思います。ですから、裁判だ、裁判だと言われますけれども、無給で一体どうやって裁判を続けられるんですか。私は、受刑者の人権を一人でも大事にするなら、こういう事態においてとにかく全力でこの事実を究明して、現に苦しんでいる人を救うことが一番大事なことだ、特に、正義を実現する法務委員会は何よりもやらないかぬことだというふうに思っております。
 それで、もう一つ、この中にプラスチックの破片が入って、では、どうして、この受刑者は肛門のところに外傷がありまして、中十一センチのところが五センチにわたって直腸が裂開していたと。死因は肛門ではなくて、肛門は縫いまして、その奥の、肛門から十一センチのところが五センチにわたって切れている、これはなぜだろうかということで非常に争いになったんです。
 検察といいますか、そちら側としては、これは高圧放水で当たったんだと言いますけれども、高圧放水といいますけれども、これもはっきり言っておきますけれども、私は自分の党だといって特別かばいません。我が党としまして実験をやりました。党としてやったんです。私たちもみんな責任があります。やった実験は、平方センチ当たり六キロの水圧でした。標準なのを使おうということで六キロでした。これは記者会見をして訂正をしております。実際は、よくわかりませんが、検察庁が冒頭陳述で言っているのでも〇・六キロです。〇・六キロ。
 そのときは水漏れがない状況でいろいろなところへ使っていますから、民主党の実験は、少なくともテレビで全国に放映されたあの実験は十倍以上の水圧で行ったということですので、この点につきましても、党といたしまして、記者会見もしましたけれども、訂正しておわびをしたい。まことに申しわけなかったと言っておきます。特に、今起訴されている皆さんには、本当に御迷惑をかけたというふうにおわびをしておきます。許していただきたいと思います。
 それで、あと、今この中に、では、その裂傷がどうやってできたんだろうかということで、一つの可能性として、こういうようなものが当日、実は水を飲むための水筒が入っていたということなんです。この水筒は、この間法務委員会で視察に行ったときになぜか入っていなかったです。これは非常にやわらかいものであると。私はちょっと聞いておりましたから、いや、違うんじゃないの、もっとかたいのじゃないのかと言ったら、制服を着ておられる方が、いや、実はもっとかたかったですということで、当日、納入業者を探し当てまして、私のところで購入いたしました。
 これがその当日保護房に入っていたものなんですが、三井さん、これは確認できますか。
三井参考人 私が勤務している際に、保護房に収容された人間に対して、水筒として中に湯茶を入れていた容器と同様のものとして間違いありません。
河村(た)委員 では、実はここで踏みつけてもいいんですがやめておきますが、これはこんなふうにばりばりに割れるんですよ。非常にかたい、硬質のプラスチックです、硬質の。例えばこんなような、これですと、長さが十五センチぐらいの、幅が五センチぐらいの切片になるんですね。これを肛門に入れれば十分傷がつく。ちなみに、これはドクターからそう言われております。
 これをひとつ、こういうものがここに、先ほど言われましたけれども、今の保護房の図面ですね、この中の奥の方にあったと言われていますよ。置きますけれども、これがこういうような状況であったかちょっと確認いただけますか。この保護房の奥の方です。
三井参考人 最初に現場の方を見に行きましたときに、確かにこの程度の大きさのプラスチック破片が五、六個あったのは現認しております。そのほかは、本当に細かい、この細かい程度のものが幾つかありました。
 最初、このような現物の形がわかるような破片はありませんでしたので、こういう破片は一体何たるものかなと思って係の者に聞いてみたところ、このポットを本人の舎房の中に何回か入れている、また本人がそれを多分割ったのではないか、その破片だということで、なるほど、確かに見た当時に、またこのポットの方を大分壊してこういうような破片をつくったのかなというような形では感じました。
河村(た)委員 それは普通でいいますと、三井さん、仮にそういうプラスチックがあったとしても、肛門が切れることは切れると思いますけれども、そんなものを果たして肛門に突っ込むんだろうかということで、普通、ちょっとイメージは、塩崎さんもこの間言われたけれども、何でそんなことをするんだと言われましたけれども、その辺のところを、現場から言って、可能性というか、ちょっとお話をいただけませんか。どういうことがあったのか。
三井参考人 当時、保護房に収容していた受刑者の処遇を、私は本人が死亡に至るまでの間でしたので、おおむね八カ月にわたりまして行っておりました。
 かの者の人格をすべて否定するわけではございませんが、かの者は性格に非常に偏向性がある者でありました。言ってみれば、我々施設側に対する不満等もあった人間ではありますが、本人の生育歴そのほかを確認いたしますと、やはり小さいころから貧困が続き、一時期は暴力団にも加盟しているというような人間でありましたし、また、経済的に自立しておるところもありませんでしたので、いわゆる社会的にいえば弱者の部類に入った人間ではなかったかなと推測されます。その人間は、当初におきまして、多々、幾つの不平不満を言ったり、また職員に暴行を行ったりというようなことで、実際は府中刑務所の方で服役していた受刑者ですが、余りにも処遇困難者であるということで、府中刑務所から名古屋刑務所に送られてきた人間でありました。
 彼のなりわいはともかくとしまして、今議員がおっしゃられた質問に対しまして、過去の私が経験した事例から幾つか言わせていただきますと、要は、例えば刑事被告人であっても、刑事施設、いわゆる拘置所等に拘禁をされている際に、やはり外部に出たい、拘禁を解いてもらいたいということですが、刑事裁判上それができないというようなことから、いわゆる自分の歯ブラシであるとかそういうものをのみ込んで、そして病院の方で治療を受けると。病院の方に治療に行く際については、刑事施設のいわゆる物理上外に移るというようなことで、それらをあえて自分から行う人間もおりましたし、また、これは本人ではありませんが、性格異常者としましては、快楽を得るために肛門等に異物を入れ込むという受刑者も当然ございました。
 本件についてこれでどうこうということは、もしかして仮にこれで自傷したということは、要は、本人は保護房に拘禁をされておりましたが、自分からいわゆる保護房を解除してもらいたいと言うにはちょっと語弊がありますけれども、要は、本人が保護房からそのまま外に出るためには、我々が戒護を解くのか、それとも本人がみずから中で自傷行為をして保護房の外に、物理的に外に出るというようなことも当然ありますので、その上で、あえてみずから身を傷つけたというようなことも当然考えられると私は認識しております。
 以上です。
河村(た)委員 時間がだんだんなくなってきましたので。
 当時の放水の水ですね、あそこの消火栓の水の状況というのが、一般にこれは大変な誤解を生じたのが、装置だけはいわゆる出初め式で使う道具なんですよ。消火栓であり、消防用ホースであり、筒先もああいう物すごい立派なものなんです。だから同じ、民主党もそういうことです、全体がそう思っていた。報道が高圧放水、全裸受刑者に高圧放水という全く間違った報道からスタートしてしまったということでしたが、当時の水の勢いというんですかね、あそこの、はどんなものでしたか。
三井参考人 当時の名古屋刑務所は、非常に水事情は悪うございました。いわゆる受刑者が、四階建ての舎房がございますが、受刑者が一階、二階、三階等で水道を使うと水圧が急激に落ちまして、四階での居室の方の水道の水が出ないというようなこともありました。
 それから、消火栓につきましての水の勢いですが、消火栓の水の勢いにつきましても、今議員の方から、一センチメートル四方当たり〇・六キログラムの圧力というような形ですが、実際に放水してみますと、垂直方向でも三メーター、それから上に上げたとしても、実際筒先から二メーター程度ぐらいのちょっと放水しかできないというような状況でありましたので、テレビそのほかで出ておるような、本当にコンクリートの壁をも壊すような、あのような勢いのある放水ではありませんでしたし、そのような水は出ませんでした。
河村(た)委員 そういうことだったんです、実はこれ。大変なことをしてしまったというふうに思っています。
 それから、先ほどのことですが、血がついたパジャマがあったとか、それから、このプラスチックのことを言われたかどうかわかりませんが、こういうのは検察官に取り調べのときにお話しされましたか。そのときに、どういうふうにその結果なりましたでしょうか。
三井参考人 現在係属している刑事訴訟ですので、余り発言の方等わかりませんが、私がこの事件につきまして取り調べを受けたことも、検察官による取り調べを受けたことも事実ですし、その際につきましても、事の終始を説明してもらいたいという捜査機関からの要請でしたので、当然、こちらの方の衣類が発見されたということ……(河村(た)委員「血のついたね」と呼ぶ)血のついた衣類があったということ、それから、部屋の中にプラスチック片があった、散乱をしていたということ、これ等も、私としては供述して、検察官に御説明を申し上げました。
 その後につきましては、一応検察官の方が調書の方を作成していただきましたが、その内容につきましては、刑事訴訟上のことがあると思いますので、こちらの方では言えませんけれども、とりあえずこちらの、いわゆる放水の事情を終始説明したような内容で終わりましたので、こちらの衣類やプラスチック片につきましての、特に捜査言及の方はございませんでした。
河村(た)委員 あと、警報ベルが鳴って皆さん集まられますよね、そのときに、組織立ってというか、何か懲らしめる目的で、組織立ってやった、共謀するという、そういうような話があるんですけれども、まず、懲らしめ目的というのがあり得るものなんだろうか、懲らしめ目的。それから、共謀ですね、みんなで、じゃ、こういうふうに一緒にやろうというようなことがあるか。それから、その場で本当にシステムとしてなっていたのか。その三つについてお答え願えますか。
三井参考人 まず、一人の、個人的に受刑者を特定して、その者に対して実力行使を行う、事前に本人が何ら行為をしていないのに実力行使を行うというようなことはあり得ません。
 それから、非常ベルで、非常通報等で現場に駆けつけたときに、だれがどの役割を行うかというようなことにつきましては、実務上は、その場におる職員、その場に駆けつけた職員の最も上部における職員が指揮をとりますので、事前にそれを、共謀等をして、だれが何をやる役目であるとか、そういうようなものを決めることはありませんし、実際に現場に非常通報で行った際については、それらの役割分担を行うような時間的余裕もありません。現場にいた最も上位に当たる職員が指揮を行いますので、その指揮どおりに実力行使が行われますので、それらの共謀というようなことは考えられません。
河村(た)委員 では、午後に引き継ぎしたいと思います。では、木島さんにバトンタッチいたします。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 三人の参考人の皆さんには、大変大事な供述、ありがとうございました。私の個人的な事情で質問の順番を入れかえていただいたことに対して、同僚委員の皆さんに大変感謝をしたいと思います。
 時間の制約がありますから、簡単に三人の参考人に聞きます。順序を入れかえまして、最初に三井健二参考人から、私は、簡単な事実だけお聞かせ願いたいと思います。
 参考人が、平成十三年十二月十四日に名古屋刑務所のどういう職域にあったか、職をお聞かせ願いたいと思うんですが、委員長、平成十五年三月三十一日の法務省行刑運営に関する調査検討委員会報告の中に、平成十三年十二月時期の名古屋刑務所の組織図がありますので、示してよろしいでしょうか。
山本委員長 はい、どうぞ。
木島委員 あなたはこの組織図のどこにいたのでしょうか。
三井参考人 私は、黄色の枠内にあります首席矯正処遇官の下の方にございます統括矯正処遇官、第六担当として勤務しておりました。
木島委員 組織図の、所長の下に処遇部長があり、その下に処遇担当、最高責任者が首席矯正処遇官、花岡栄次氏でありますが、その下に六つ系統図がありますが、その六つの系統図の一番下に、独居房・病舎・分類センター、統括矯正処遇官、第六担当、ここに三井参考人はおったということですね。
 その中の何番手ぐらいでしょうか、上から。階級ですが。
三井参考人 第一統括から第六統括まではおおむね横並びではありますけれども、当時は第一が上席統括矯正処遇官となりましたので、その序列からいきますと、私は六番目の方に当たります。(木島委員「二番目」と呼ぶ)二番目です。
木島委員 はい、ありがとうございました。
 名古屋刑務所で起きた平成十三年十二月十四日のホース水放水による死亡事件、翌年五月の革手錠死亡事件、翌年九月の革手錠傷害事件、いずれも事実がずうっと隠ぺいされ、その後、昨年の秋以降になって、ようやく真実または真実らしきものが表へ出てきた。大変重大な事態なんです。
 三井さんにお聞きいたしますが、あなたはそういう立場にいたと。先ほどのお話によりますと、大変大事な、平成十三年十二月十四日、放水のあった直後のこの房の中にも立ち入っていると。今お話しのようにズボン、下着等を発見して保管を命じたということのようでありますが、一点だけ聞きますが、当時、名古屋刑務所所長から法務省本省矯正局長と名古屋矯正管区長に受刑者死亡報告書なるものが作成をされ提出されたのは、作成日付は平成十三年十二月なんですが、現実に届けられたのが平成十四年一月十六日と一カ月おくれて届けられたんですが、あなたは当時、事故てんまつについて、名古屋刑務所から事情聴取をされておったんでしょうか。
三井参考人 お答えいたします。
 事案の状況につきましては、処遇部長等には口頭をもって報告をいたしましたが、そのほかにつきましては、特に管区それから矯正局の方からは事情聴取を受けたことはございませんでした。
木島委員 この問題が大変事実として噴き出した昨年の秋以降、今日に至るまで、法務省当局は、この名古屋の平成十三年十二月に起きたホース水放水事件について大変調査をされ、当委員会に先ほど示した中間報告なるものを提出してきているんですが、昨年の秋、この国会でこの問題が取り上げられたころ以降、今日までの間に、法務省当局から、あなたは岐阜におられたようでありますが、事実について聴取を受けたことはありますか。
三井参考人 私の記憶では、二回、矯正局の方から調査を受けております。(木島委員「いつでしょうか」と呼ぶ)一回目につきましては、昨年の、平成十四年の十月ぐらいであったかなと記憶しております。第二回目につきましては、平成十五年の四月上旬に一度事情聴取を受けております。
木島委員 もう中には立ち入りませんが、二回の矯正局による事情聴取の際に、先ほど述べたような事実を含む、あなたが体験した真実は述べておりますか。
三井参考人 第一回目に受けました平成十四年の十月においての調査の際には、当時、放水事案の件についての事情の方の説明はすべてしておりますので、その中では衣類のこと等、それから部屋の状況等につきましても申し述べてあります。
 二回目の方につきましては、特段その辺につきましての事情聴取の方は受けませんでした。
木島委員 もう、事実は裁判で明らかにするべきことでしょうから、私は立ち入りません。
 ただ、平成十五年三月三十一日に法務当局が我が法務委員会に提出した行刑運営に関する調査検討委員会中間報告によりますと、先ほども同僚委員から指摘をされておりましたが、十二ページのところで、「同月十五日早朝の名古屋地方検察庁への通報の時点から、受刑者Xの出血の発見状況について、同人が着用していた下着に出血が認められたとの客観的事実に反する事実が通報され、消防用ホースによる放水の事実は隠蔽され、また、肛門部の裂傷は、」云々と書かれております。
 あなたは今、これは承知していると思うんですが、この報告は、それでは、「同人が着用していた下着に出血が認められたとの客観的事実に反する事実が通報され、」という文章になっているんですが、そういう報告が法務当局から我が国会に出されているんですが、これは真実と違うとあなたは確信をしているということですか。これはイエスかノーかだけで。
三井参考人 私は、法務局の調査におきまして、私が見聞きしたことの事実を申し述べておりますので、私がここで述べたこと、私が見たことはすべて事実でありますので、それに基づいて報告されたその結果、中間報告の方に差異があるとすれば、私としてはちょっと発言することはできませんけれども、実際、私がそれらのものを見たのは事実ですので、それはたがえようもございません。
 以上です。
木島委員 では、最後に一点だけ。私も何度も、この名古屋事件は重大だというので、ここで質問を法務当局に対してしてきました。平成十三年十二月十四日にホースで水が受刑者にかけられたことは事実だと思います。それで傷を受けたかどうかは私はわかりません。ただ、その大事な事実が、国会に提出された視察表とか処遇票、十五分おきにきちっと真実を書き込まなければならない、刑務所にとって一番大事な視察表、処遇票には全く書き込まれていないという事実があるんですね。そういう視察表、処遇票が法務当局から我が委員会に出されているんです。この事実、あなたはどう見ますか。
三井参考人 それについては、ちょっとわかりません。
木島委員 はい、終わります。
 それでは、鴨下参考人にお聞かせ願いたいと思います。
 参考人は、大阪矯正管区長を平成十五年三月に退職されたと。矯正管区の基本的な役割は何かということをお聞かせ願いたいと思います。
 といいますのは、この中間報告の十二ページのところにこういう大変な記述があるからであります。平成十三年十二月十七日、
 名古屋刑務所から、名古屋矯正管区に、1司法解剖が実施される旨の報告がなされ、次いで、同矯正管区に、2緊急報告様式で作成された報告書が送付された後、名古屋刑務所長久保勝彦は、同矯正管区第二部長鍬間猛に、「直腸の傷が原因となった死亡である。事故者が大便を塗るため、指を肛門から差し入れ、傷をつけたものと思われる。」旨報告し、鍬間第二部長は、受刑者Xの死亡は、受刑者自身の過失に基づく事故であると安易に判断し、管区長の了解を得た上、名古屋刑務所に緊急報告規程による報告の必要はない旨指示したようである。
大変大事な報告が我が委員会に提出をされているわけであります。
 私は、もう時間がありませんから詳しく論じません。ここに、法務大臣が平成八年三月十二日に出した法務省矯総訓第五一六号、矯正緊急報告規程というのを持ってきております。これを見ると、間違いなく真実を名古屋刑務所長は名古屋矯正管区長に出さなきゃいかぬことになるんですが、今の報告書にありますように、名古屋矯正管区鍬間第二部長は、それは上げなくてもいいということを指示したようであると。
 あなたは、当時、大阪矯正管区長の立場でありますが、こんなことはあり得るんでしょうか。これが真実だとすれば、何でこんな状況が生まれたとお考えでしょうか。
鴨下参考人 今の木島委員の御質問ですが、その名古屋刑務所の件については、私は実は、隣の管区におりましたが、はっきり申し上げて、詳細は報告がありませんでした。
 ただ、今の委員の御質問についてお答えをするとすれば、私の長年の経験からしますと、そういうことは非常に希有な事例ですから、恐らく管区としては、当然係官を派遣して現場の実情を調査し確認した上で、必ず緊急報告を上げると思います。ですから、事実そういうことがあったとすれば、私は信じられないことだというふうに思います。
木島委員 参考人は、先ほど来指摘している行刑運営の実情に関する中間報告、平成十五年三月三十一日、これは全文お読みになっておるでしょうか。
鴨下参考人 はっきり申し上げて、読んでおりません。
木島委員 それでは、質問は取りやめます。
 ただ、一点だけ、参考人は再三、これらの一連の事件の一番問題は法制度の不備だとおっしゃるんですが、法制度を正したから直るんでしょうか。
 私は、刑務所というのは完全密室の中の世界、そして、受刑者と刑務官との間には隔絶した身分の違いがある、絶対者としての地位にある、やはりそこを変えるということが、それが法制度の改革になるのかもしれないんですが、一番大事なことかなと思っているんですが、時間も迫っていますから、簡単に。
鴨下参考人 木島委員初め法務委員の先生方は、私は現場の施設に勤務していたときに何回かお迎えして所内の御案内等もしたつもりでありますが、私は、先ほどから何回か出ている、行刑は密行主義だというお考えは全く違うと思っております。行刑施設の中には外部のボランティアの方もたくさん入っておりますし、しかも、九九・九%の人は社会に復帰していくわけでして、密行だ、密行だというのは私は違うんじゃないかな、私の長年の施設長経験からしても、そういうことはおかしいんじゃないかなという気持ちでおります。
木島委員 それでは、最後に、菊田参考人にお聞かせ願います。
 参考人は、行刑改革会議の委員であります。私は、この委員会でも、今回の一連の事件について大事な観点は三つあると。一番は、真実を全部明らかにすること。特に名古屋刑務所三事件の、これはもう隠ぺいされていたし、私は中間報告はうその報告だと考えておりますので、真実を徹底的に明らかにすること。二つ目には、責任者の責任をしっかりとっていただくこと。そして、それを前提にして制度その他の問題点を洗い出し、制度改革につなげることだと思うんです。
 それで、菊田参考人が加わっている行刑改革会議は、とりわけこの名古屋三事件の真相解明をやるということになっているんでしょうか。
菊田参考人 一部の方はそういう意識を持っておられるかと思いますけれども、私個人的には、そういうことに余り関心がございません。法務委員会であるいは各政党等で一生懸命追及されていることでございますので、問題は、この先どうするかということ、これを経験として。
 保護房自体も、私は、例えば二十四時間ビデオをつけるとかいう形で客観的にそれが証拠に全部が残るということを、制度としてこの先考えていかなきゃならないだろうという将来的なことを一生懸命考えているところでございます。
 それから、第三者委員会とかいうものについていろいろ批判がありますけれども、やはりこれは、例えば訪問者委員会というのがございます、諸外国の先進国に。民間人がいつでもあらゆるところに、食堂でも保護房、懲罰房でも自由に立ち入りして、そして受刑者の意見を取り入れるというようなことも制度としてなきゃだめだ、それでなければ公開できないというふうに思っております。
 もう一つ、ついでながら、実は……(木島委員「いいです。もう時間なので、私は切り上げますから」と呼ぶ)そうですか。よろしいですか。
木島委員 済みません。
 私は時間で切り上げたいと思うんですが、ちょっと菊田参考人の意見と私は違うので、特に名古屋事件その他真実が隠ぺいされ続けてきた、そして、どうも真実がまだまだ当国会にも報告されていない。行刑改革会議が本当に制度改革をしようと思うのなら、やはり真実は徹底的に洗い出して、どこに問題があるのか、それをやらないとやはり制度改革につながらないんじゃないかということだけ、これは私の意見ですが、申し上げまして、ちょっと失礼でありますが、私は質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 参考人に対する質疑を続行いたします。河村たかし君。
河村(た)委員 参考人の皆さん、長時間御苦労さまでございます。
 そうしましたら、先ほどの放水の方は一応そういうことですが、聞き忘れておったのはありましたかね、あれはいいと思いますね。
 では、革手錠の方の、いわゆる五月事案という、それから九月事案というものがありまして、革手錠の施用が、そういう、五月の方は亡くなっておりまして、九月の方は重傷だと言われておりますが、これは実は、これはちょっと議事録に、私、残しておきたいと思いますけれども、九月の方は、私は、これは余り言っていいかどうかわかりませんが、ドクターからちゃんと聞いておりますが、腸が四十センチ切れたということに報道されましたけれども、あれは実際は、切れたものは、腸間膜が五センチ切れた、だけとは言いません、受傷された方、大変ですので、ということが事実でございまして、そこから血管がこういうふうに腸間膜から小腸に出ている。それで、もし血が回らぬようになると腸が壊死する可能性があるということで、切らなくてもよかったんだけれども、一応もう一回開腹するようなことになるといけないので四十センチ取ったということでございまして、その革手錠そのもので四十センチ腸を取ったというような報道もありまして、私も誤解しておりました。これは事実として違いますから、ここで議事録に残りますから言っておきます。
 ただ、腸間膜が五センチなぜ切れたのかということについては、典型的な例としては、車で運転しておったときに、どんとぶつかってハンドルがどんと当たったような事例とか、要するに背骨と腸の膜が何かで急激に圧迫されたというようなことはなかったかという話でございまして、例えば、制圧されるようなときに、ばたばたっとなりますから、ここで、例えばこういうふうな角でどんと腹を打つというようなこともあり得るのではないかと、そんなことを前田さんが話をしたという話があるんですよ。
 そのことは、ちょっと、三井さん、制圧するときにどどっとなりますから、先ほどとちょっと重複しますけれども、これは、でこのあざとか、こういうのを打つ場合は、やむを得ない理由で、そういうことはあり得るんでしょうかね。
三井参考人 私の勤務した処遇における経験から申しますと、そういうことはあります。
河村(た)委員 これも、そういう事実なんです、園田さん。ぜひ本当に、いやいや、委員長、本当に先入観でとか単なる推測で人を罪に陥れることは絶対に避けなきゃいけませんからね、これは。これはあらゆることの前提ですよ、これは。あらゆる、人間が生きていく上に前提ですから。
 また、これは金曜日で結構ですけれども、ぜひ本当に、何遍も言いますけれども、裁判で、裁判でとすぐ言われますけれども、とにかくこのことは、私もそうでした、私もちゃんと事実、謝っていますよ、僕は二月ぐらいからですけれども、すべて事実があったことである、刑務官が暴行したんだということを前提としてすべて始まってきたということは事実ですので、本当にもう一回さかのぼって、本当にそれはどういうことで、真実究明を絶対するという姿勢、これは再度、委員長、ひとつ言ってください。
山本委員長 なお委員会で真相究明のために委員に尽力をお願いしたいと存じます。
河村(た)委員 それでは、ちょうどきょうは革手錠の本物を持ってきておりまして、これは先ほど理事会で許可をいただいておりますので。なかなか本物を持っておる人は珍しいですよ。
 これは本物でございます。私、名古屋刑務所に実は使ったものをくれと言いましたけれども、どうしても、くれるなり貸してくれと言いましたけれども、くれませんでした。私も、もうここまで言う以上は、やはり自分の責任もありますから、刑務官の皆さんの名前を出して、仮にその人たちを悪人と言うんだったら、本当に責任がありますよ。だから自分で買いましたよ。二万九千円ほどでした。余り、そう高くないかどうかわかりませんが、本物です。
 今ちょっと三井さんにこれを施用、彼はプロでございますので、僕にかけていただいて、世上言われる、これで、これを締めたことによって、よく、先ほどのあれを見ていただきますか、中間報告。ぜひもう一回、ちょっと委員の皆さん、中間報告出してください。ここの、三井さん、ありますか。ちょっとそっちの方になかったら――ありますか。
 先ほど見ましたのが表のところで、「十二月事件」と書いてありますけれども、もうすべからく事案に変えてほしいと思っておりますけれども、裏が五月、九月ということですね。これを読みますと、犯行状況と書いてありまして、これも何たる、法務省、ひどい言い方だ、これは。一体どういう断定をして被疑者だというふうに、仮に万が一そう言ったって、ひどいですよ、この書き方は、「犯行」とは。それも自分たちのかわいい部下なんですよ、最大の問題は。刑務官の皆さん、法務省の、部下なんですよ、これ。
 それを読んでいきますと、例えば五月ですと、推定胴囲八十センチメートルの受刑者Yに対し、円周七十・二センチメーターの状態で固定した、これがありまして、二人がかりでベルトを強く引き、尾錠に最も近いベルトの穴、五十九センチに尾錠のつめを入れて革手錠を固定した。すなわち、ですから、八十センチの人を六十センチまで引きますから、二十センチですね、腹の大きさの二十センチまで引く、これは認定しております。
 それから、九月、そこで、ト副看守長は、受刑者Zに腕輪をして中サイズの革手錠のベルトを受刑者Zの身体に巻きつけて強く引いたものの、それほど強く締まらなかったため、さらに緊度を強め固定しようと考え、もっと小さいのを持ってこいと、これは僕が書いていますが、これは本人に、私、接見して聞きました、違うサイズを持ってこいと言ったということです、などと言い、看守長もその指示をしたところ、小サイズの革手錠が届けられたということですが、これも私、現場に行って確認してきましたが、大、中、小、特大、極小とありますけれども、あれは腕輪の大きさなんです、実は、腕輪の。名古屋刑務所の極小のベルトは一番大きいです、長さ。事実ですからね、これ、私が刑務所で確認しましたから。全然違うんです、この辺も、違う。腕輪の大きさなんです。あとはそれぞれ違います。穴の位置も違います、手づくりですから。十センチごとということは正しいんですが、穴の位置が違う。もっと小さいのを持ってこいということは、別のサイズを持ってこいということは、十センチ引かなくても、もうちょっと、ちょっとでぴったりくるサイズを持ってこいということだったんです、実は。そういうことだったんです。その後ずっと読んでいきまして、一番最後に、胴囲約八十センチメートルの受刑者に、尾錠に最も近い穴、六十センチに尾錠のつめを入れ革手錠を固定したということですから、やはり二十センチ引いています、みんな。
 二十センチ引いたことによってということですから、ちょっとこれ、三井さん、悪いですけれども、私ちょっと服脱ぎますので、ちょっとこれをかけていただいて……(発言する者あり)僕は一メーターあります。だから、僕が八十センチまで本当に引けるかどうか。これ、本物ですから、皆さん、ぜひ見ていただきたいと思います。
 ちょっと私、シャツになりますけれどもね。こういうことは、人権というか人の命というか、人権がかかっていますので、本当に、誠実にというか、真実を追求するために全力でやらないかぬと私は思っていますよ。
 脱ぎます。コンベックスがあるんです。ゲージがありますので、ちょっとどなたか、これは手伝ってもらって、回りをはかっていただけませんか。
 では、ちょっと三井さん、済みませんけれども。これ、本物ですが。では、まず胴囲をはかってください。余り自分の、ちょっと小太りで恥ずかしいんですけれども。――ちょっと大きい声で言ってください。――百六。いや、ベルトの部分じゃなくて、シャツのところだけ。――百二です、書いてください、一メーター二です。
 では、ちょっと済みません。(発言する者あり)お金払いました。(発言する者あり)いや、もうこれは、そのためなら、皆さんを救えるんだったら、こんな安いことはありません。救うというより、やはり事実を検証したいんですよ。(離席する者あり)
 ここが大中小なんです、ここのところで。きちっとやっていただいて。大中小、これを見るとわかるけれども、穴が違っていまして、ここがサイズが違うんです。ちょっと見せていただいて。ここが違うでしょう、はめる位置が。これが大中小なんですよ、ここが。本当は制圧されていますから下にどんとついていますけれども、ちょっとそれはやめにしまして。いいですか、下について。(発言する者あり)いいですか。
三井参考人 上ですと、このあばら骨の方に入ってしまいますので、当然折るおそれもありますので、あばら骨の上の方には押しません。それから、こちらの方には骨盤がありますので、こちらの方でかけますと骨盤損傷のこともありますし、また骨盤でかけたとしても、もう御存じかと思いますが、人体の体は骨盤の上はすぐにもうわき腹なのですっと入りますので、結局、骨盤でかけたときには径が大きくなりますから、逆に今度は、かけた後に受刑者が上に引っ張るとゆるゆるの形になるということですので、骨盤にはかけません。ですから、骨盤とわき腹の間のところを確認してベルトを通すような形になります。
 これは大きなバックルのような形になっておりますので、よく荷物をこん包するようなときのベルトがありますけれども、いわば引けば引くほど締まるというようなものではありません。必ずこのつめをこの穴に入れなければなりません。普通の服のベルトと同じようですので。
 両腕のかけ方については、ちょっとありますが、今回は両手前という形にさせていただきます。
 刑務官として業務に、全職員に配付しております刑務官必携という教本の中にも、まず、ベルトは体に密着させなさい、要は動かないようにしなさい、それから、かけるときに本人が腹に力を入れる、腹を膨らませるというようなこともあるので、その際についてはいわゆる腹をへこませた状態でかけなさい、要はここに余りすき間をつくるな、すき間をつくれば手が結局動いてしまうので、戒具として本人の両手を制するだけの能力に欠けてしまうということから、それらの注意事項等がございます。
 この時点でかけます。失礼します。
 実際にはこれでかかりましたけれども、本来は、こちらの一つの穴に入れれば、入れることによって……(発言する者あり)まことに申しわけないですけれども、実際は、これだけやはり皮の肉厚がありますので、これ以上引くのはもう……
河村(た)委員 もうできません。もうこれ以上僕を引けないでしょう、絶対に。引いてもらってもいいですよ、二人で。
三井参考人 この時点で入れればこれだけの、この緩さが生じてしまうのは、ここの革手錠のつめを入れる穴が長いがために、入れれば一番端のところに移動してしまうために、若干のやはり緩みが生じてしまうというのが……(発言する者あり)これはもう制式の方で決定されていることですので。
河村(た)委員 これでだから八十センチ締まったかといって、一遍後で胴回りを見てみるといいんですよ。だから、一遍締めてください。
三井参考人 よろしいですか。失礼します。
河村(た)委員 普通で。――まあこの辺。
三井参考人 もう無理です。
河村(た)委員 もう無理ですよ。よく締まってこれですよ。(発言する者あり)ええ、そういうことです。
 今そこは何番目に入れたか、わかりますか。
三井参考人 二つ目の穴ですね。二つ目の穴に入りました。
河村(た)委員 そこで、ちょっと尾錠から……(発言する者あり)そこをちょっと外して、ゲージではかって。ちょっと委員部、今ここではかってもらった人、穴はどこでしたか。今そこの穴を――こういう状況ですか。この状況ですから、これでちょっとはかってもらえますか。(発言する者あり)いやいや、中を、中を。もうちょっと押さえて、きちっと。――九十八。じゃ、四センチぐらいしか締まらないですね。(発言する者あり)外しますか。外すとなると、どこでやりますか。(発言する者あり)ここからですよ、ここからですよ。(発言する者あり)ここでも八十四ですよ。(発言する者あり)いやいや、ここでももう締まらないですよ、それ、今私やりましたけれども。
 じゃ、ここからはかります。――八十八ですか。
山本委員長 委員長から申し上げますが、速記がとれませんので、河村委員、正確に描写をして、その他の方々は着席をして、発言を控えてください。
河村(た)委員 この尾錠のところからですと八十八ですか。――八十八。
 また一遍ちょっとこれは、こういう委員会ですから、若干ちょっとばたばたしておりますけれども、今八十八センチなんですよ、これ。それで、私言いましたけれども、八十八センチ、かなり苦しいんですね。かなり苦しい。ぐっとしましたから。だから、あと十センチ引くということは、これはできないと思います、はっきり言いまして。機械で引かない限り、これは。まずそういうのが現状であると。
 十センチ引いたところの段階でも、私はあの状況で、例えば自分でだっとやれば、ぐっと動いたりするとかなり圧迫感がありますので、やはりそういうことで、いわゆる自傷行為といいますか、ここによく、写真を見ますと、赤く確かにはれたりして、内出血しておる跡がある場合があります。それはやはり起きる可能性は十分ある、十センチ引いたところでも。
 その先の十センチというと、緩いんですよ。緩いと、ちょっと時間がないから、脱げちゃうんですね。そこはちょっと、ぜひ三井さん、緩くて脱げちゃうという例はあるんでしょうか。
三井参考人 私が勤務した際にかけた人間が、革手錠を施用したんですけれども、その際、本人が下から抜き取ってぶらぶらになってしまった、いわゆる戒具の用を足さなかったというようなことはあります。
河村(た)委員 自分でこれ、ネクタイしたり大変ですけれども。これは今、私、ネクタイを全部ほどかずに途中でとめる手法を発明しまして。(発言する者あり)まあ、ベルトはいいですわ。
 大変失礼しました。
 そういうことで、今、実験させていただきましたが、委員長、きょうはこういう場ですから何か変な風ですので、一度また別に、何か任意のような席で、任意というか当委員会で、またちょっとこれを、どういうものであるかということを一遍、できれば刑務官の方に本当に来ていただいて、できればじゃなくてぜひ、やはりその状況でないとわかりませんから、検証する機会をつくっていただきたいと思いますが、どうですか。
山本委員長 理事会で検討させていただきます。
河村(た)委員 理事会でと言わぬで、そのくらいはやると言ってくださいよ、委員長。
山本委員長 理事会でゆっくり。
河村(た)委員 ということで、皆さん、わかっていただきましたように、これ、本当に物事というのは、僕も、推測というか、物すごい危険だと思いますね。ただ言ったことをうのみにする、マスコミの皆さんもうのみにする、国会もうのみにして質問をするということがあります。
 結論を言いますと、十センチ間隔、十センチしか入らないんです、こういうふうになっていますから、バックルが。十センチ前だと、今三井さん言われたように、抜けた例だってあるんですよ。抜けちゃう。その後十センチですよ、今私が締めた例が。十センチ締まっただけですけれども、あれでも結構ぐっと入っていますからね。その向こう十センチを締める、こう中間報告には書いてありますけれども、それはできません、はっきり言って、機械で締めないと。何せ、もう本当にぐっとなって、そこでぶっ倒れますよ、そこで。ということですから、ぜひここのところを誤解のないように。
 真実追求ですから、私が言っているのは。私は別に、受刑者の味方でも刑務官の味方でも、そういうものじゃありませんよ、言っておきますけれども。真実を追求するという立場で言っておるということでございます。
 それで、今言いましたように、こういうようなことで、革手錠というのは、実は、革手錠を単なる締めただけで、もう二十センチ先は締められませんから、十センチ締めただけで、五月の亡くなった事案、それから九月、ちょっと話が先ほど出ましたけれども、九月の、いわゆる重傷とされていますけれども、実は、いやこれは、手術された方に申しわけないけれども、腸を切っていますから、それは事実ですけれども、四十センチ切れたのは違う理由ですから。そういう事案があったんですが、これは、三井さん、長年の経験から、どういうような理由が五月と九月、考えられると思いますか。
三井参考人 本件につきましては、現在、刑事裁判等で真偽が争われているところですから、これに関係するような言動は控えたいと思いますが、私の経験則から言わせていただければ、私は、これまでに数え切れないほどの革手錠の施用に立ち会い、また、自分も革手錠の施用をしておりますが、革手錠を施用した際に、本人の腹部、腸、内臓等に疾患を及ぼしたということはありませんし、その例を聞き及んだこともございません。今回の名古屋刑務所における五月、九月の事例が初めてでございます。
 ただ、今回のことに関しましては、経験則から言わせていただければ、事前の制圧時において、例えば机の角であるとかいすであるとか、例えばそういうものが周囲にあったとした場合に、制圧時にそれに強打したことによって、実際、内臓においてそのような損傷を発したという可能性はあると考えております。
河村(た)委員 そういうことでございます。
 あと、本当に、先ほどの園田さんのお話にもありましたかね、名古屋刑務所では非常に革手錠の施用が多かったということで、名前を出しますと、この間奥様にも会いましたけれども、前田さんのときに非常に多くなった。その個人の資質によるものだという表現をしまして、私は、これは本当に怒りに震えるぐらい怒っております。資質と言うとは何事だ、一体、ということですよ。
 本当に、これは有罪が確定して、そうならいいですよ。今言ったように、全然、今の状況から、十センチから締まらないものを、資質だなんて断言、それを、自分の一番かわいい部下、きょう午後、小泉さんが来ますけれども、小泉政権の皆さんを支えている、一番現場で働いている人たちを、あなたたちの資質が悪いとは何たることだ。どっちの資質が悪いんだ。そんなこと言う管理者の方がよっぽど悪いんですよ、上の方の資質の方が。僕は本当に信じられない思いなんだ、これ。
 それで、ちょうどそのときに名古屋刑務所にみえましたから、先ほどもちょっとありましたけれども、どうして革手錠の施用がふえていったのか、処遇困難者がどうであったのか、本当に前田さんの個人の資質で、それでふえていったのか。そこら辺のところを、三井さん、お答え願えませんか。
三井参考人 お答えいたします。
 今、名前の挙がりました前田という職員は、一年間、私と苦楽をともにした職員でありますので。彼は、まさしく、刑務官としての資質にすぐれ、部下からの信頼もあり、責任感の強い人間でもありました。ですので、一部報道にありますような残虐非道、人格的に欠如しているというような人間ではなかったということは、この場をもちまして明言したいと思っております。
 あと、名古屋刑務所における革手錠の使用件数の件につきましては、この事件が起こりましてから、私も、名古屋矯正管区に勤務していた関係上、その経緯について詳細に自己検討等を行ってみましたけれども、その原因についてはわかりません。
 ただ、上司の方から、革手錠をどんどん使いなさい、言うことを聞かない受刑者については、もう指導する必要がないので革手錠をどんどん使え、そして言うことを聞かせろというような指示を受けた事実は一切ございません。
 一部報道等によりますと、類似する施設から考えると非常に件数が多いというようなことがありましたが、当時の名古屋刑務所は、医療協力センターもあったこともあり、覚せい剤中毒後遺症と判定されている受刑者が多数収容されておりました。それらの者につきましては、やはり、季節の変わり目等につきましては非常に活発期になりますので、それらの者が、大声であるとか、あとは部屋の中で物を壊すとかいうような行為が多い時期でしたので、その件数から考えますと、やはりその時期に急にふえたというようなことになりますが、実際にはやはりそういう問題が、そういう案件が多発いたしましたので、こちらの方と、当時、私としましても、やはり本人に対して、身辺の保護を考える上で革手錠等を使用いたしました。
 以上です。
河村(た)委員 名古屋刑務所では年間百件ですか、多かったというのは、これは百人という意味じゃないですよね。これ、数出してくれと言っているんだけれども出さないんですよ、今のところ。実は複数かけますから、一人に、特に処遇困難な方。違うんですよ、これ、根本的に、ここも。これは、三井さん、どうですか。
三井参考人 確かに、処遇困難者という表現を余り使っていいかどうかということは、ちょっと私自身も疑問がありますが、やはり、そういうような形で、職員に対する暴行であるとか受刑者に対する暴行、それからもう一つは自傷行為、みずからの体を傷つける行為、それからあと器物損壊、これも、施設に対する反発であるとか、また、自傷行為を目的として起こす者も中にはおりますけれども、そういう者が、累行する者もおりましたので、すべてがすべての人間にかけたということではなくて、その計上された数の中には、やはり何回か、革手錠、戒具、これらの施用をしなければならなかったという人間が含まれていることは事実であります。
河村(た)委員 それから、何か、あれは警報じゃないか、非常ベルが鳴って、要するに、皆さんでばっと駆けつけるらしいんですよ。それは、受刑者同士のけんかであったり、刑務官に殴りかかったりとか、そういうようなときに駆けつける。
 これは聞いた話ですけれども、例えば便所に逃げるとか、要するに、そこへ行けば、そこは修羅場なわけですよ、問題が起きることはわかっている。だから、そんなことに駆けつけずに、便所に逃げたりコンピューターの前に座っている、そういう人もある。しかし、今回の八人の起訴された方は大変勤務熱心な方であった。自分が一番最初に駆けつけて、そういうところへ行くと自分が大変ですよ、それは。だけれども、一番最初にそこに駆けつけて、やはり秩序を守っていこうという人たちであったという話があるんですけれども、その点、三井さん、いかがですか。
三井参考人 今回、すべての案件において、逮捕それから起訴されている者は、中には、私と同じ時期に研修を受けた同期もおりますし、また、そのほとんどが、私の部下、もしくはそれに関係する職員であります。いずれも仕事熱心な職員であり、まさしく、何回も繰り返して申しわけございませんが、それらの職員が適性を欠いていた、いわゆる職務に対しての適格、適性、これを欠いていたというような人間ではないということは、この場をもちましてお答えさせていただきます。
河村(た)委員 ぜひ、三井さん、こんなことが起こったのは、僕も、検察官が悪意でやったとはとても思いません。だれもそんな人はいなかったと思うけれども、多分、本当に皆さん、きょう、三井さんに来ていただいて初めて聞いたと思うんですよ、これは。ですから、こういう会はなかなか呼びにくいですから、自民党ないし民主党等においても、いろいろなところへ出てきて、これは上司に、法務省が許しを出さないかぬですけれども、許しがあればという前提ですが、ぜひ、いろいろなところへ出てきて真実を語っていただきたい。
 私は、はっきり言いまして、九月、十二月のホースの問題は全くなかったことである、全くなかったこと。水をかけたことも、非常に肛門近辺が汚れていた、そういう人は、二十度の温かい水で、本当にざあっと出るぐらい、そのままほかっておけばよかった。これは、ちょっと答弁もらいたいんです。仮にその受刑者が、では一緒にふろへ行こうか、あんた、しりが汚れているぞ、では一緒に行きましょうと言って歩くんだったら、これは保護房解除になるわけです。そういう人じゃないんでしょう、その人は。
三井参考人 放水を実施する際に、私の上司である処遇首席から指示を受けた際については、本人が応じているのであれば、保護房を解除し、そして汚染を取るためにふろに入れるべしという指示を受けておりましたが、当時、本人につきましては、そのような動静が落ちついている、もしくは保護房解除に該当するような状況ではありませんでした。
河村(た)委員 そういうことなんですよ、実は。そういうことなんです。
 だから、ぜひひとつ、私は、十二月については全くなかったこと、一刻も早く起訴を取り消さないかぬ、家族の名誉も回復せにゃいかぬですよ。どうやって回復できるか全然わかりません、正直言って。めちゃくちゃ書かれていますから、どれだけ苦しんでいるかと私は思いますよ。ぜひ国会も責任を感じないかぬと思いますね、これ。それから、五月、九月も、私は、ほかの事案での事故であった、革手錠ではないというふうに思っております。
 それで、最後に、三井さん、いろいろな党とか、そういうところへ呼ばれたら、ぜひ積極的に、いろいろな話をしたいと、刑務官、三井さんだけじゃなくて、そういう決意を一言言ってください。それで終わります。
三井参考人 ありがとうございます。尽力させていただきたいと思います。
 一言、真実、事実は明らかにされるべきだと考えております。明らかにされた上で、施設の改善、それから法体制の整備、それらは当然ながら着手されるべきものだと思います。ただ、この場にこのような形で招いていただきましたので、一言だけ、私は、真実は明らかにされるべきである、このように確信しております。
 以上です。
河村(た)委員 ありがとうございます。
 以上で終わります。
山本委員長 次に、石原健太郎君。
石原(健)委員 参考人の皆様には、本日はありがとうございます。
 先般、府中の刑務所を視察して、いろいろお話をお聞きしましたが、昨年中、刑務所で亡くなった方が、私の記憶では五名で、その平均年齢は五十七歳ということなんですね。世間一般の平均年齢と比べると随分早死になさるわけですけれども、名古屋で亡くなった何人かの方も、皆さん、五十歳以下だったんじゃないかと思うんです。参考資料としていただいた、一人の亡くなった方は、何か、刑務所に入って二、三日過ぎたら保護房に収容されて、その後二カ月近く、短時間、保護房から出されるんですけれども、また保護房に入れられて、五月に入って、八月だったかと思うんですけれども、亡くなってしまった。
 そういう状況、あるいは名古屋のことをいろいろ考えますときに、覚せい剤の常習とかあるとは思うんですけれども、日ごろ生活していた状況から、突然、余りにも変わった環境に置かれる。普通の人間でも、何でもなくてもおかしくなる人もいるわけですから、あれほど環境が変われば、精神がおかしくなるということも考えられると思うんです。また、私なんかでも、一人で海外に何年か行ったりしたとすると、やはりホームシックみたいなこともあると思うんです。
 そうした面で、刑務所に入る人が、そういう環境の激変の緩和ということも考えなくちゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、鴨下参考人と菊田先生にお尋ねしたいと思います。
鴨下参考人 ただいまの御質問にお答えさせていただきます。
 環境が変わって精神的におかしくなるという人もいるかと思いますが、刑務所に入ってくるまでには、裁判を受けている間、拘置所で大体三カ月から四カ月ぐらいの経験を経て、刑が確定して、刑務所の方に入るというケースが多いのではないかというふうに、実務上、承知しています。ですから、入った途端におかしくなるというよりも、むしろ、入る前から精神状態がおかしかったという人は、これは実務上私も経験をしております。来た途端に保護室へ入れなければいけないというような人がいたこともあります。
 ただ、いろいろな形で、入所しますとすぐに面接等をして、問題がある場合は、相談、助言あるいはカウンセリングというようなことをどの施設もやっていると思います。その中で、心情安定をいかに図るかということに努めているのが実務の状況だと思います。
 精神的に非常におかしな場合に、それを精神科医なりに診てもらって、要するに、薬剤投与ということにするかどうかということのケースももちろんありますが、今申し上げたように、要するに、心情安定を図るという意味で、あるいは心情把握をするという意味で、相談、助言、カウンセリングというようなことをやって努力しているということを御紹介したいと思います。
菊田参考人 私は実務家ではございませんので、的確に答えることはできませんけれども、実は、革手錠の問題については、私のところへきのう受刑者から手紙が参っております。
 ちょっと読ませていただきますと、先ほどは物理的なことで非常に問題にされていましたけれども、この方は、私自身も名古屋刑務所では革手錠をはめられた上、殴るけるはもちろんのこと、あげくの果てには遺言があればおとっさんとおかっさんに伝えてやるから言えとおどかし文句まで言われた経験をしたのですが、あれから数年が経過しているので今さら何も思うことはありません、マスコミの報道すべて事実です。
 こんなことがたまたまきのう私のところへ受刑者から送られてまいりました。つまり、こういうことは、とにかく発覚すること以前にもう数限りなくあるということは事実であります。
 話が少し外れますけれども、やはり一九八四年に国連の拷問禁止条約というのが採択されております。これが昨年の十二月に国連総会で、拷問等禁止条約の選択議定書というのが採択されました。これはぜひとも日本で批准をしていただきたいというふうに思います。日本は一九九九年にこの条約を批准しておりますけれども、一年以内に国内の拷問状況について政府報告書を提出しなきゃならないことになっておりますけれども、現在のところまだ提出されておりません。
 そういうことで、この選択議定書そのものも批准していないわけですが、この条約批准国は、こういった警察とか刑事施設、あるいは精神病院も含めてですけれども、こういうところについて、定期的に臨時に各施設について部外から委員会ができて訪問するということを義務づけるようなことも役割として持っておるわけですけれども、ぜひともこういうものの実行に御努力願いたいというふうに思います。
 以上です。
石原(健)委員 三井参考人にお尋ねしますが、先ほどのお話で十一月と十二月に放水したと。やはりこんな寒い時期に放水するというのはちょっと人道的でないような感じもするんですけれども、こういう放水するなんということは往々にしてやっていることなんでしょうか。
三井参考人 お答えさせていただきます。
 今御質問がございましたが、この十一月とそれから十二月の案件につきましては、保護房に拘禁された人間が非常に長期にわたって保護房内に閉じこもって出ようとしないということで、長期にわたりましてはおよそ三カ月弱にわたって保護房内で生活をしていたという経歴の持ち主でありますし、また前刑時におきましてもそのような癖があったということで、これにつきましては、本人の受刑に関する資料の中にも明記されておったような人間でありました。
 当時、私どもも本人に対していろいろな呼びかけをいたしましたし、また保護房に入れていない状態、いわゆる通常の居室における処遇におきましても、本人に対して何回かの呼びかけや面接や面談等を実施しておりました。
 今回、放水のことについてお尋ねではありますが、当時の状況において、本人に対して直接放水をせよというような指示は一切ございませんでした。あくまでも、汚染の甚だしい保護房内に本人を長期間にわたって拘禁していることは、これは保安上からも不適当であるし、また衛生面からも不適当であるという判断のもとに、何とか本人を、たとえ保護房拘禁にするにしても、別個に設けられた保護房の第一室ないし第二室、いわゆる衛生保全が保たれている部屋に本人を移すためにいかにするべきかというような形と、それからあと一つは、やはり汚染された部屋を清掃するについて、一番合理的かつ単純な方法で一番どれがいいかというような判断のもとに、いろいろな考えが確かにその間で検討、検案されましたが、職員が数名、狭い保護房の中に飛び込み、制圧行為を行えば、またそこで本人がけがをしたりする可能性も当然ありますので、それをいかにして未然に、本人の身体を保護する上で、本人の部屋の衛生保全とそれから転房を実施できるかという上で、考えた上でのことでありますので。
 なお、申し添えますが、その後につきましても、本人の体をちゃんとタオル等でふきまして、新品の衣類それから臥具、これを用意しまして、そして、時期が時期でありましたので、当時、名古屋刑務所の保護房に設置されていた床暖房を使用する等して、本人の健康保持には努めた次第であります。
 以上です。
石原(健)委員 三井参考人にお尋ねしますけれども、刑務所では、真冬でも朝夕二回、受刑者は看守の前で着衣を全部脱いで、手のひらなんか広げて、何も持っていないということをやるんだというようなことを聞いておりますが、実際そのとおりなんでしょうか。
三井参考人 お尋ねのありましたことは、要は、受刑者が生活する居室から本人が作業を行う工場への行き帰りにおいて行われる身体検査のことを指しているかと思います。
 当然ながら、刑事施設でありますから、工場から居室にいわゆる武器になるもの、凶器になるもの、それから所持を許されないもの、これらのものを持ち込む事犯が決して少なくはございません。その上で、本人たちの身体のチェック、確認をするために、名古屋刑務所では、確かに、居室で、いわゆる部屋で着ていた衣類とそれから工場で作業する際の衣類をすべてかえた状態で行き来をさせておりましたので、その着がえる際に、本人たちの身体を確認するために、全裸ではありますが、本人たちの身体を確認するということは検査上行っておりました。
石原(健)委員 菊田参考人にお尋ねしますけれども、先ほど名古屋刑務所で放水があった受刑者がおりますけれども、そういう受刑者というのは、先生のお考えからすれば、どのような取り扱いといいますか、名古屋刑務所の場合は、どこもかしこも同じような仕組みじゃないかと思うんですけれども、こういう人はどういうふうに扱うのが望ましいとお考えか、お聞かせください。
菊田参考人 何といいますか、精神障害という場合と、やたらと暴力を振るうという人、いろいろあるんだろうと思いますが、一般的に、何か違反行為があったときに、私も、受刑者などの聞き込みによりますと、いきなり毛布をかぶせられて、それで保護房へほうり込まれるというような経験をした人がいるわけですが、だれでもそういうことをされれば抵抗するというのは本能だと思います。そういう意味で、やたらと物理的な拘束というのが過剰にあるということは、私は否定されないんじゃないかというふうに思っております。
 もし精神障害ということであれば、これは時間をかけてやはりそれなりの措置をとっていただけなきゃ、刑務所じゃなくて措置をとるようにしていただけなきゃ困ると思いますし、ともかく、先ほど申し上げましたけれども、保護房というのは自殺防止が主たる目的でございますので、私は、要するに、一時隔離するという意味では、保護房というのがああいう形の暗い形のものじゃなくて、もっと一般の居房と同じように窓も明るくて空気も流通がいいというところに一時隔離するということを目指すべきじゃないかというふうに思っております。
石原(健)委員 菊田参考人にお尋ねします。
 懲役というような刑罰はやめた方がいいんじゃないかという御意見のようですけれども、やめるとすればどんな形の刑罰が望ましいとお考えなのか、お聞かせください。
菊田参考人 今、国際的には懲役、禁錮ということはございませんで、自由刑と称しているわけですね。つまり、受刑者というのは、刑罰というのは自由を拘束するということが刑だということでございますから、自由を拘束された中では基本的に普通の生活をさせる、人間としての。朝起きて寝る。働く意欲のある者はもちろん働かせる。それから、その他のいろいろな肉体的な訓練とか、あるいはいろいろ外の社会の役立つ仕事を、身体障害者の自転車をつくるとか点字を翻訳するとか、ボランティア的な活動を目的としてする人間にはそういうものをさせるとか、それぞれ本人の希望に応じて時間を消化させるということが主体に移っているというふうに私は理解しております。
 日本では逆に、頭から八時間強制労働させる、しかも報酬がない。これが私は、むしろ奴隷的扱い、奴隷とは申し上げませんが、もともと奴隷というのは、賃金を払わないということが奴隷の言葉のように聞いております。そういう意味で、私は、奴隷的使役だ、それを脱却しなきゃならないというふうに考えます。
石原(健)委員 鴨下参考人にお尋ねいたします。
 まず、最近の状況におきまして、刑務官というのが一人で何名ぐらいの受刑者を担当しているのかどうか、そしてまた、理想的には一人の刑務官が何人ぐらいの受刑者を担当するのがよいのか、お聞かせいただけたらと思います。
鴨下参考人 刑務官の数と収容人員の数で、一応負担率というようなことが国際的にもいろいろ調査をされていますが、今、欧米諸国においても、あるいは中国、ロシア、日本も含めて、非常に過剰収容で苦しんでいる状態が続いております。その中で、一人の刑務官がどれだけの収容者を負担しているかという数字、私が理解しているのは若干古いかと思いますが、非常に低いところは、職員対収容者の関係が一対二ぐらいのところも先進国ではあると聞いております。
 日本の場合は、特に刑務所でいいますと、私が勤務していた大阪矯正管区では、負担の高いところでは、職員一人に六・七あるいは六・八ぐらいの負担であったと思います。これはかなり全国的には高い。ただ、これは単純な算数でやった負担でありまして、二十四時間勤務で翌日非番という職員もおるわけですから、そうしますと、一つの工場あるいは一つの収容棟で一人の職員が見ている収容者の数というのは大体五、六十人、多いところでは百名近い数になろうかと思います。
 適正規模ということがよく言われますが、大体三十人から四十人ぐらいでしか、日本の場合は、保安警備と処遇を一人の職員がやるわけですから、それぐらいが適正ではないかなというようなことが実務家の間では言われているということを御紹介したいと思います。
石原(健)委員 菊田参考人と鴨下参考人にお尋ねしたいのですけれども、もしあれなときはいいのですけれども、現在の刑務官の採用試験のあり方についてどうお考えになっているかということと、改めるとしたらどういう点を改めるのか、また、刑務官採用時に重視されるべき点はどういうことかというようなことについてお考えを聞かせていただけたらと思います。
菊田参考人 日本の公務員、とりわけ刑務官についても非常に厳格な国家試験というふうに移っておりますので、私は、採用される人間は非常に優秀な人間が採用されているというふうに理解しております。
 中へ入ってからも非常に、研修制度そのものは世界に冠たるものだというふうに言われておりますので、研修も十分行われているはずですけれども、研修の内容が、私もかつて研修所の教官をやったことがありますけれども、途中で首になってしまいました。人権等についてもかなり偏った研修がなされているというようなことは、私は疑問に思っております。
 以上のような状況です。
鴨下参考人 偏った研修がなされているとただいま菊田参考人はおっしゃいましたが、私は逆だろうと思います。やはり、講師によって非常に偏った指導をされると、非常に刑務官の考えが偏ってしまうということがあるのではないかというふうに思います。私も研修所の教頭もやっておりますので、問題のある講師の人はおやめいただいておりました。
 レベルとしましては、人権研修は非常に重要で、やっております。特に、一つ間違えば、今、違法か違法でないかという法的限界が明確でない中で刑務官は日夜仕事をしているわけですから、そこは徹底的に指導しないといけないというふうに我々は心してやってきたつもりであります。
 今、採用のときの問題のお話がありましたが、警察官とかほかの公務員の場合はどうかわかりませんが、刑務官の場合は採用と同時に定員の中に組み込まれてしまっている。しかも、一人前になるまでに一年かかる。というと、定員の中に入っていながら一年間は責任ある仕事がつけさせられないという今の刑務官の採用状況が、非常に、現場にとってみれば、例えば新採用職員が多数ふえても、その人が一人前になるまではほかの職員が負担をしなければいけないというようなことが現実にありまして、なかなか難しい問題があるんじゃないかなというふうに思います。
 採用についても、あるいは研修についても、まだ十分だと申し上げることはできませんけれども、やれることはやっておりますし、日本の国内に国際連合の研修所があるくらい、日本の研修制度についてはレベルが高いと言われていることは自負しておりますし、今後ともそういうことに私たちも協力していかなければいけないと思っております。
 以上です。
石原(健)委員 受刑者の経験者が書いた本なんか読みますと、刑務所に入って病気になったらまず死ぬものと覚悟しなくちゃならないというようなことも書いてあるのですけれども、現在の医療体制はなかなか、不足しているというか、不備だと思うのですよね。その点について感じられていることがありましたら、菊田参考人と鴨下参考人からお答えいただきたいと思います。
菊田参考人 結論から申し上げますと、私は、今の医師が矯正局の支配下に置かれているということを根本的にやはり問題にしてほしいと思います。可能でありましたら、やはり厚生省のもとにある医師を採用するという形で、法務省と独立した機関にするということが私は望ましいと思います。
 現状は、とにかく、いろいろな病気を訴える者が出るわけですけれども、なかなかすぐにそれに対する対応をしてくれないという不満があります。そして、本当に病気になったときは手おくれであるというようなことが起こっております。それから、例えば持病といいますか、そういうものに受刑者がなった場合に、それ相当の治療がしてもらえないために命を短くするということも起こり得ることであります。
 それは、一つは、日本の受刑者にとって健康保険の適用がないということがあります。ですから、施設側も高価な治療というのはできないんですね。これは法務省だけの問題じゃなくて、国の政策のあり方の問題だろうと思います。
 アメリカなどでは、自分が何かおかしいなと思ったときにすぐに届けなさいと。もし思ったときに届けないことが規則違反になっているんですね。日本は届ければそれはむしろ問題になる、そういう逆の発想なんですね。そういうところがやはり、健康保険というものを含めて、抜本的に考え直さなきゃならない課題じゃないかなというふうに思っております。
鴨下参考人 出所者の書いたものがすべて正しいということでは、私はないと思います。
 私も六施設、施設長を経験しておりますし、管区長も二つ経験しておりますが、医療の問題については、非常にお金がかかりますけれども、成人病の検査、あるいは生活習慣病の検査、対応、あるいは人工透析患者の対応、高額な医療も必死でやっているのが今の矯正の現状だと思います。その実情もわからずに、出所者のことだけを受けて、何かすべて矯正の医療がおかしいと言われるのであれば、現場の勤務を長くした者として、まことに残念であります。
 ただし、入ってくるときにもう既に重体である、重篤であるという収容者も決して少なくないわけでありまして、その点が裁判制度の中でどういうふうに理解され、把握されてきたのかということを、実務家の人は、かなり多くの人は疑問を感じているのではないかなというふうに思います。
石原(健)委員 どうも、貴重な御意見をお聞かせいただき、ありがとうございました。質問を終わります。
山本委員長 次に、保坂展人君。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 まず鴨下参考人に、今参考人自身が施設の長を六カ所されてきたということで、ずっと矯正の畑を歩んでこられたということで、ぜひ、こういう機会、なかなかないものですから。
 この委員会で、受刑施設の中の亡くなった方の記録が果たしてどうなっているのか、こういう議論があって、御承知のように死亡帳というものが千五百人、千六百人近く出てきたわけでございます。この扱いについて、幾つか、御体験を踏まえてお話をいただけないかというふうに思いますけれども、まずこの死亡帳というものは、所長、施設の長が必ず見て署名捺印などをするという性格のものなのでしょうか。
鴨下参考人 施設の中で不幸にして死亡する例、あるいは私の経験でも、自殺を既遂になった事例等も経験がありますが、そういうものの記録、司法検視あるいは検察官の判断による司法解剖等を受けた経験もございます。
 いずれにしましても、記録はきちっと確認しておりますし、私は施設長として、例えば大阪拘置所長当時でも、司法解剖はみずから立ち会って、自分で死体の背中も全部裏返しをして検察官に確認をしてもらっておりました。このことは、断じてうそではありません。
 ということで、記録については、自分が見たこと、それから報告、全部確認した上で決裁をしている、そういうことをずっとやってきたつもりでおります。
保坂(展)委員 今おっしゃったような、監獄法が九十六年、大変長きにわたって、実情に合わないんだという話もありますけれども、今私たちがこの委員会で問題にしてきたのは、実はその監獄法の組み立ての中にもあった、複数の目でチェックをする、施行規則の中にある百七十七ですか、今おっしゃった、所長みずからが検視をすべきということと、自殺その他変死の場合には検察官及び警察署に通報すること、これは実際にはほとんど行われていないですね、全国、この十年見ると。行われていないんですよ、ほとんど。青森と京都で散見、わずかにあるのがありましたけれども、検察に通報するのはありますけれども、警察はまずないんですね。このあたりの実情は、どういう運用でしたか。
鴨下参考人 御案内のとおり、裁判の執行は検察官が指揮をすることになっておりまして、ほとんどの場合、私どもは検察官の方に通報をしてやってきていると思います。
 例えば重症患者の場合は、事前にその都度その都度報告をしていますので、その結果、仮に死亡に至ったというときには検察官の方に通報して、こういう状況で何時何分死亡したということを連絡しますと、それでは検視するかどうか検討した上で連絡しますということでやってきまして、警察官とは行政検視のことをおっしゃっているのかどうかわかりませんが、それをやってくれということを検察官の方から指示がある場合もなきにしもあらずと聞いておりますが、私の経験ではございません。ほとんど検察官に通報していました。
保坂(展)委員 いや、それを聞いているのではなくて、監獄法施行規則の中に書き込まれているんですよ。検察官または警察署ではなくて、「検察官及ビ警察署」というふうにありますが、それはまず行われていませんねということを指摘したわけなので、そこは正確にお答えいただきたいと思います。
鴨下参考人 ですから、今申し上げたように、司法検視なのか行政検視なのかでそこが分かれるというふうに私は承知しておりました。三十七年間、そういう理解でおりました。
 ですから、司法検視の必要があるというときは検察官の方に通報し、行政検視で足りるという場合は警察官の方にやるのでしょうけれども、裁判の執行の監督は検察官が行うという刑訴法上の建前がありますので、ほとんどのケースが検察官にやっていたということで、「及ビ」と書いてあっても、それは司法検視なのか行政検視なのかという理解で私どもは区別していたというふうに理解しております。
保坂(展)委員 そこはこれから議論していきたいところですけれども、当時は複数の目で、所長が見るというのも、監獄の長で現場から一番いわば遠いトップが見るという趣旨でしょうし、また、捜査機関が変死の場合は見るということは複眼の目で検証する、こういう趣旨なんだろうと理解をしているんですが。
 大阪の管区長をされていたということでお聞きしたいんですが、大阪刑務所から出てきたこちらの死亡帳の方を見ると、ある時期までは非常に詳しく検察官に通報し、そして検察官の名前があって、また、何時に電話したということまでつぶさに非常に細かく書いてあるんですね。これは、平成七年から十一年までは、何時何分に電話したとつぶさに書いてある。
 ところが、十一年の次のページ以降、すべて、どんな死亡の件でも司法検視なし、特記事項なしに全部なっちゃっているんですね。これは、何か全国の死亡帳を見ていても極めて極端な扱い、急死の場合はやはり司法検視をするというようなことも事実上行われていなかったということなんですが、何か背景事情、管区におられて御存じだったら教えてください。
鴨下参考人 私の管区長在任は、昨年の四月からことしの三月末までであります。
 この問題が起きてから、確かに私も確認をさせていただきました。どういう経緯なのかということも、要するに従来の細かく記録することが本来のやり方であろうと私は承知しておりましたので、なぜそうなったのかということの調査もさせてもらいましたが、結論として、詳しいことはよくわかりません。ただし、それではよく確認がとれないのではないかということで、もう一度従来の方針に、方向に是正するようにという指導はしたつもりであります。
 ただ、その当時の死亡帳は確かに簡単なんですが、例えば先ほどから出ているいろいろな記録、ほかの記録とあわせて見れば、ほかの詳細な記録と同じ程度の内容は把握できるという事実は確認はされていたと思います。
保坂(展)委員 また、府中刑務所の長もされていらっしゃったということなんですけれども、これは今おっしゃったように、府中刑務所は、これは平成十二年の四月から一年間されていたというふうに伺っていますけれども、これは所長検視の欄を見ると、所長代理が十二年だとほとんどになっておりますが、これはどういうことなんでしょうか。今、御自身でしっかり見られたというふうにおっしゃっていたので、どういうことなんでしょうか。
鴨下参考人 私が直接見たというのは大阪拘置所長時代までのことでございまして、府中刑務所の場合はたしか処遇部長が見ていますが、処遇部長は全部施設長経験者が府中刑務所はなっておりまして、そういうことで、処遇部長が代理でやりますということを申し出があって、それでやっていただいたということに承知しております。
保坂(展)委員 そうすると、府中刑務所は大きな刑務所ですが、受刑者が亡くなったとき、そう毎日起こるようなことではないわけですから、そういうときにやはり監獄の長が見るという趣旨は、本来は徹底すべきじゃなかったんですか。
 いろいろ見ていますと、総務で見られたこともあれば処遇で見られたことも、ほかの府中以外も見てみるとそのような扱いになっております。その点はいかがですか。
鴨下参考人 理屈で言えば、確かにそれが一番正しいし、一番望ましいことだと思います。私が横着をこいたつもりはございませんが、非常に多忙な中で対外的なことも結構あったということで、申し入れがあれば、ではそれでやってほしいという指示を出したことは事実であります。
保坂(展)委員 それで、府中刑務所、これは在任中ではないんですが、私が死亡帳を見ていて非常によくわからなかったのは、所長検視の欄の下のところに、検察官が来て書く司法検視の欄があるんですね。そこに処遇部の方の署名があって、その検視が行われたというふうに、どうもこれだけ見ればそう思える記載がこのように、例えば、府中刑務所処遇部、これは病死と認められると。これはどういう扱いなんですかね。これも検視の一つという、所長検視というのが行政検視だと私は理解していたんですが、この下の部分というのは、ではどういう理解をしたらよろしいんですか。
鴨下参考人 ちょっと私の在任中のことではありませんのでよく詳細はわかりませんが、私の受けている理解では、例えば検察官の方が申し述べたことを聞き取り書きするという形でやる例は視察表なんかにはあったと思います。
 今先生御質問のケースは、私はちょっと承知しておりませんので、わかりません。
保坂(展)委員 では、最後になりますけれども、検察官に、変死じゃなくて受刑者が死亡したときは通報するというのもこれは当然の扱いですが、これが千五百人中相当数なされていなかったということが矯正局の調査によってわかりました。どうしてこんなふうなことになっていたんでしょうか。
鴨下参考人 ちょっと私はそれは承知しておりません。どこの施設であったのかも私も知りませんが、私は、自分の在職中勤務した施設では必ずしていたと思います。検察官というか検察庁の方がいいと言われても、既に重症通知で刻々と症状を報告してあるのでもういいですと言われても、私は念のために来ていただきたいということで、お願いをして来ていただいたケースの方が多かったと承知しています。
保坂(展)委員 これは、私どもがこの死亡帳を取り寄せてみて気がついたのではなくて、矯正局の方で一覧表を作成していただいたときに私ども受け取って、検察官通報なしというのが少なくとも何百とあったんです。これだけは申し上げておきたいと思います。
 それでは次に、三井参考人にお願いをしたいと思います。
 先ほど、革手錠の河村議員とのやりとりで実際見せていただいたわけなんですけれども、三井参考人が名古屋で勤められていたときに、革手錠の使用頻度というのがかなり上がっていった時期なのかなと思います。二〇〇〇年が三十二件で、二〇〇一年が五十八件で、二〇〇二年が百五十八件ですか。こういった時期だったんでしょうかね、まず時期として。いかがでしょうか。
三井参考人 私が勤務した時期において集計された数を後ほどかんがみて検討したところ、平成十四年の一月、二月、三月では数が上昇していたという形で認識しております。
保坂(展)委員 先ほどのお話で、三井参考人自身も革手錠を使用もしたしということですが、多いときに一日何人もということもありましたか。それはいかがでしょうか。
三井参考人 集団でいわゆる受刑者同士がけんか等、事犯等を行った際におきまして戒具を使用したこともありますので、一日のうちに複数件数使用したという案件はあったと記憶しています。
保坂(展)委員 先ほどの革手錠のやり方を見ている限りにおいては、それによって例えば腸閉塞になるとか、あるいは死に至るということは、これはなかなか難しい、もしそこに至る強さということであるとすれば、もっともっと強く締めなければいけないと。しかしそれは、無理をして締めれば逆に大変なことになるんだと思うんですが、実態が、私のもとにもいろいろ手紙なども届きます。その中には、やはり制圧過程で強く締めろというふうに言われて、非常に苦しかった、こういう手紙も届いているんですね。
 そういう実態はどうだったのか。先ほどのようなことが通常で、あれ以上の強い締め方はなかったとすれば、革手錠の問題というのが何か本来存在しない問題になってしまうんですけれども、その辺はいかがですか。
三井参考人 革手錠の施用につきましては、既に通達の方も発出されておりますし、使用については十分注意するようにというような内容の通達も発出されております。我々看守長以上の人間は、施設において実力行使の際の現場指揮をとる部分がありますので、その点については十分指示を受けておりましたし、また、施用した際につきましても、最終的にその施用が適正であるかどうかの確認もしておりました。
 革手錠のいわゆる締め方については、物理的に入らない穴に無理やりに入れたりというようなことはございません。ただ、今先ほど革手錠の施用の際について説明したとおりに、いわゆるベルトの密着度、これがやはり緩ければ戒具としての要件は成り立ちませんので、これにつきましては、やはり体にしっかり密着するように施用せざるを得ませんでした。
 また、形式上からいいまして、ある種特殊なベルトのように、締める部分が無段階に設定されるような様式ではありませんし、十センチ間隔であのような穴があいているようなものでしたので、それを踏まえて、本人の体に密着して施用するには、例えば一つ革手錠のベルトを使用したとしても、きつく締めようと思えばやはり穴が入らない、ちょうどいいという穴では、ちょうどいいというよりも、入る穴でやってしまうとやはりすき間があき過ぎてしまうということから、若干その際に、別に用意してありますサイズの違う、穴の間隔が違うというよりも、長さの違うベルト等を使用してかけたことは確かにございます。ただ、緊縛度につきましては、人体には限界というものがありますので、それを超過したような形で施用したような記憶はございません。
 以上です。
保坂(展)委員 幾つかの情願とか、あるいは中には告訴、告発もあったというふうに思いますが、そういった中で受刑者の方が、傷が残った、いわば革手錠の跡が残ったというふうに主張しているケースを私は知っているんですが、御承知ですか。
三井参考人 出所したいわゆる受刑者が、マスコミ等の報道によって、この傷が刑務所において革手錠を施用されたときにつけられた傷だということを主張している記事は、読んだ覚えがございます。
保坂(展)委員 私は、これは公判の中で、刑務官の方たちが、自分たちは法務省や矯正局の指示どおりに動いてきたと。たしか一番最初の初公判のものを見ますと、逮捕に至るまで、例えば所長から改善の指示など一つもなかった、いわば組織の一員として動いたのになぜ、あるいは自分たちはいけにえなのかというようなことが書かれていたと思います。
 それでは、一人一人の刑務官の方がまじめに使命感を持って働いておられるということもよくわかります。しかし、実際にけがをされた方、あるいは亡くなった方、亡くなった原因が何なのかということ、これは事実はわかりません。まだ不明なところがありますけれども、けがをされたり亡くなった方という人たちに対しては、どのような思いをお持ちになっているのか、受刑者について。三井さんに。
三井参考人 実務の立場、そのほかをすべて除きまして、いわゆる刑事施設、受刑している人間に際しては、入所したときと同じ、年齢の経年はございますけれども、同じ状況で、いわゆるけがをさせずそれから死亡もさせず、入所したときの体、刑務所の中で病気等の治療をすれば、それも改善されればそれは望ましいところでありますが、そういう形で社会の方に送り出す、社会生活を送れるように矯正施設の方から出所させるというのが我々の仕事ですから、今回、原因はわかりませんが、負傷した並びに死亡したという事実については厳粛に受けとめておりますし、やはり今件については原因を子細に調査した上で、このようなこと、いわゆるけがをしたり死亡させるというような案件が起きないように注意すべきだと考えております。
保坂(展)委員 例えば刑務所長というと、先ほど鴨下参考人にお聞きしたように、最終的には組織の責任をとらなければいけないという役割だと思いますけれども、これはなかなか、こういった出来事が起こると、そういう一番枢要なところの人たちがきちっと責任を果たしたのかどうかということを私は極めて疑問に思っていますけれども、もし、これは無理にとは言いませんけれども、何か思いがありましたら。三井さんに。
三井参考人 事平成十三年の十二月の放水事案につきましては、私が直接は現場にいたわけではありませんが、その負傷した後から私は現場の方に戻ってまいりましたので、それにつきましては、私は、ある意味でというよりも、当時の当事者として、現在責任を感じているところではあります。ですから、もしそれにつきまして私自身に責任を求められれば、それについては、責任をとると言ってはおかしいですけれども、それに応じた責任はやはり自分が背負うのが幹部の仕事だと思っておりますので、その点につきましては、厳粛に受けとめたいと考えています。
 以上です。
保坂(展)委員 次に、菊田参考人に伺いますが、この法務委員会の議論の中で、なかなか刑務所の中の実態というのはやはり見えてこなかった。国会の中で、保護房の中で五年間に亡くなった方の人数まではわかりましたけれども、一体何人の方が亡くなっているのか、それすら、大変膨大な量の身分帳を調べなければいけないのでこれは出てこないんだという説明を国会全体で受けていた。しかし、その身分帳というものが出てくれば、これはもちろん、先ほど鴨下参考人がおっしゃったように、一枚の紙ですから、それはわかりません、しかし、少なくとも手がかりにはなるわけですね。こういったことが、ないと言っていたものが実はあったということが、やはり一つのこの議論の出発点になっております。
 さて、そこで、菊田参考人は行刑改革会議のメンバーでもいらっしゃいます。そして、この行刑改革会議の役割、機能、そしてどういう土台をつくるのか、どういう土台を、行刑改革においてどこまでの役割を担おうとしているのか、まだ私どもの方には伝わってきていない部分もあります。また、国会での議論との関係もできるだけ密接にやるべきだと私ども思っていますけれども、いかがでしょうか。
菊田参考人 要するに密行主義であったという一言ですけれども、私ども研究者も、そういう点では、ただ密行主義だったと言うことで責任逃れをできるような立場ではございません。
 したがって、国会でこういう形でとことんまで追及されたということについて、物すごくその業績を踏まえてこの行刑会議というのはできたわけですから、先ほども申し上げましたけれども、法務大臣の私的機関とはいえ、真剣にこの事態を前向きにやろうという言動ともどもがひしひしと伝わってまいります。
 したがって、先ほどのどなたかの御質問のように、私どもは素人ですから、部外者ですから、この事件の究明ということにこれ以上私の方は権限も何もございません、国会議員ではございませんし。ですから、問題は、この先どうするかです。
 それで、基本的には現行監獄法を廃止し、そして新しい施設法案を作成する。それには、聖域なき改革をというふうに言われておりますから、私はそれを頭から信じて、実現のために一つ一つをやらなきゃならない。先ほど申し上げましたように、懲役の廃止、あるいはその他の、賃金制の問題とか、また刑務職員の組合の結成とか、あるいは情報の公開とか、あるいはその他の細かいことで現実にできること、それを長期にわたるものとそれから短期のものとを分けて、長期のものについては、たとえ内閣がかわろうと、この際将来に向かって具体的に実のあるものを実現するというふうに私は強く決心をして、仕事をさせていただきたいというふうに思っております。
保坂(展)委員 私の認識は、恐らく共通のテーマとして喫緊に急がれるべきものは、やはりまずは医療だと思います。
 刑務所の中には医療設備も整ってはおりますけれども、しかし、矯正局から出していただいた、いわば異変が起きて入院した、入院してから亡くなるまでが、大体二十四時間以内がほとんどです、一覧で見ましたけれども。長い方で一カ月とか中にはいらっしゃいますけれども、大体容体が手がつけられないような状態になるところのぎりぎりまで処遇という考え方で引っ張っている。やはり医療というところにもっと早く切りかえてほしい。これは五年かけてというわけにいかないと思うんですね。これは早くやらなきゃいけない。
 もう一つは、先ほどの名古屋、府中の保護房の問題もそうですけれども、果たしていわば今までの矯正ということで処遇をするべき人なのかどうか。特に、薬物犯が物すごく激増していますよね。御案内のように、薬物犯の方たちは、例えば作業といってもなかなかこれは難しい。そしてまた懲罰といっても、懲罰効果で、例えばそこを一回するとまた違うようになるということじゃなくて、同じ人が繰り返し保護房に入っている。これは刑務官の方たちも大変な御苦労を、いわばなかなか成果が出ない、むしろそれで最終的に容体が悪くなって病院に連れていかれて亡くなるみたいな、これはやはり近代国家としていかがかと。
 薬物のしっかりした治療の役割を持つ矯正の組織というものをどこかに緊急に用意しなきゃいけないんだろう、そういう緊急の課題などを我々も話し合っていますので、行刑改革会議の皆さんとぜひ胸襟を開いて、フリートークであれ、あるいは正式な懇談でもいいですけれども、こういうことをぜひお願いをしたいなと私個人としても強く思っているんですが、菊田参考人、いかがですか。
菊田参考人 大変私も同感でございますが、一つは、今の刑事裁判というのは、御存じのように刑法上の責任主義というのが基本原則なんですね。それで、ほとんどの場合、例えば鑑定という形で精神上の鑑定を依頼し、その結果、責任能力なし、あるいはその他のかなり責任能力に問題があるという結果が出ても、それを採用するかしないかは裁判官の判断で、自由なんですね。
 ですから、これは刑務所も非常にお気の毒なことです。千葉刑務所なんかでも、四%、五%の精神障害者も入っている。本来精神病院に行かなきゃならない人間が、そういう刑務所で自分が今ここで何をしているかわけもわからないで刑務作業をやらされている。そういう人間をまた扱わなきゃならない刑務所の苦労というものもあると思いますね。
 だから、これはもっと大きな問題ですけれども、裁判官の養成ですか、再認識というものも改めて検討してもらわなきゃ困るんじゃないかなというふうに、総論的には考えております。
保坂(展)委員 懲役という話も出ましたけれども、私ども、死刑を一たん国民的な議論に付そうという法案を超党派で今準備をしているんですけれども、例えばその中で、犯罪被害者の救済の角度で、実際に刑務所内の労働にして、対価として、やはり一般の労賃に相当するかそれの七割とか八割、そういうものをしっかり払って、その中から犯罪の被害に遭われた、みずからの犯罪によって被害を生じせしめた被害者の遺族であるとか被害者自身に補償していくというようなことも含めて、抜本的な議論をしていかなければいけないというふうに思います。ぜひ、行刑改革会議の委員の皆様に、そういった議論を早い段階でしたいということもお伝えいただきたいと思います。
 終わります。どうも御苦労さまでした。ありがとうございました。
山本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 また、行刑行政の調査及び行刑改革に資するため、本日の参考人質疑で明らかとなりました事実も含めまして、なお一層の真相究明を行うべきものと考えております。今後もそのような趣旨で委員会審議を進めてまいりたいと存じます。重ねて参考人に御礼を申し上げる次第でございます。(拍手)
 午後三時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後二時三十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時開議
山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関する件、特に司法制度改革について、内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。
 この際、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省大臣官房長大林宏君、大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、刑事局長樋渡利秋君、矯正局長横田尤孝君、人権擁護局長吉戒修一君、入国管理局長増田暢也君及び財務省主計局次長勝栄二郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。漆原良夫君。
漆原委員 公明党の漆原でございます。
 本日は、小泉総理が総理大臣になられて初めて当法務委員会に御出席ということで、本当にうれしく思っております。そしてまた、大変な、御多忙な外交日程を目前に控えた中での御出席を賜りまして本当に感謝申し上げるとともに、総理の外交が大成功されることをまずお祈り申し上げたいと思います。
 早速質問に入らせていただきますが、まず司法制度改革の意義についてお尋ね申し上げます。
 現在、総理は行政改革を初めとする諸般の構造改革を進めておられます。事前規制型社会から事後チェック・救済型社会への転換を図られる中で、司法の果たす役割は今後ますます重要になるものと考えております。その意味で、今般の司法制度改革は、諸般の構造改革を根底から支える極めて重要なものであると私は考えておりますが、司法制度改革の意義について、総理の御認識をお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 法治国家として司法制度をしっかりと確立しているということは最も重要なことだと思います。
 なおかつ、司法というのが国民の協力、これは国民の信頼なくしては成り立たないものでありますので、今後、より司法が多くの国民にとって身近なものである、しかも透明性の確保に努める、だれでもが司法に対して身近で信頼できるものにしていこう、公正な判断だといって共感が持たれるような、そういう司法制度にしていきたいなと思いまして、多くの専門家の御意見を聞きながら、よりよい司法制度に取り組んでいきたいと思っております。
漆原委員 司法ネットについてお尋ねします。
 国民の期待と信頼にこたえる司法制度を構築するためには、これは総理のお言葉でございますが、司法は特定の人しか利用ができない高ねの花にとどまらないで、手を伸ばせば届くという、だれにとっても利用しやすい存在でなければならない、総理はそうおっしゃっております。そのとおりだと思います。そのためには、いわゆる弁護士過疎地域の解消の問題、民事法律扶助制度のさらなる充実の問題、被疑者段階での公的弁護制度の創設など、公的制度の整備が必要であると考えております。
 この点について、総理は司法ネットの整備を進める必要があると述べておられますが、この司法ネットとは具体的にどのような内容をお考えなのか、総理の御所見を求めたいと思います。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、司法は国民のだれもが手を伸ばせば届くような身近な存在でなければならないと考えておりますし、起訴前、被疑者段階の公的弁護制度の導入を含めまして、刑事の分野でも法的サービスを充実させることは望ましいと考えております。
 また、全国どこの町でも、あまねく国民が法律上のトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供が受けられるように、そのようなネットワークの整備を進めるという必要があると考えまして、総理がおっしゃっているのはそのような意味であろうというふうに思っておりますが、具体的な内容につきましては、現在、司法制度改革推進本部において検討を進めているところでございます。
漆原委員 次に、法科大学院への財政支援についてお尋ねします。
 新たな法曹養成制度、いよいよ来年四月には法科大学院が開校することになっておりますが、その授業料、年間二百万円を超えるというふうに大変高額なものが予想されております。このままですと、経済的資力に乏しい者は法科大学院に進学することができない、法曹となる道を閉ざされてしまう、こういう結果になりかねません。
 若いころ苦学をして司法試験に挑戦し合格した人の中から、人権感覚の豊かな、また人情味あふれる立派な法曹がたくさん今現在出ていることが、育っていることもまた事実でございます。したがって、私は、政府が積極的な財政支援を講ずることよって、資力の十分でない者も法科大学院で学ぶことができる、そういうふうな制度設計をすることがぜひとも不可欠だというふうに考えております。
 そこで、そのための方策として四つの提案をさせていただきたいと思います。第一は、私立大学への助成を充実して法科大学院の授業料を抑制すること。二番目は、現在の日本育英会の奨学金を拡充すること。三番目、いわゆる政策金融の発動により国民生活金融公庫の教育ローンを拡充すること。四番目、銀行を初めとする民間の資金を活用するため公的な債務保証制度を創設することなどのさまざまな方策を講ずることが必要であると私は考えております。
 しかしながら、当法務委員会などの審議において現在の検討状況を聞いておりますと、財務省、文部科学省、法務省など、関係省庁の縦割り行政の弊害のためか、十分な検討が進んでいると言うことはできない状態でございまして、これから法科大学院に受験しようという学生が大変不安に思っておることも事実でございます。
 そこで、今後は総理の力強いリーダーシップによって、法科大学院への積極的な財政支援策を講ずる必要があると考えておるものでございますけれども、私の四つの提案に対する評価も踏まえて、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 司法制度のみならず、いかなる制度もこれをしっかりしたものにするために一番大事なのは人材だと思います。人間だと思います。適切な適材を、いかにその制度の運用に当たるために来ていただくかということを考えますと、この人材養成、非常に重要なものだと認識しております。
 日本が今日ここまで発展してきたのも、やはり教育に重きを置いてきた、資源も何もない日本が今日まで発展してきたのもやはり人間の力といいますか、多くの分野でよき人材に恵まれた、また意欲ある人材が育ってきたということだと思います。そういう面において、今回、法科大学院のみならず、教育に重点を置いていくという方針に小泉内閣としても変わりはございません。
 そこで、今、日本では、教育を受けたいという意欲のある人に対してはすべて教育が受けられるような体制をとるための拡充策が必要だということでいろいろな施策を実施し、さらに不足があれば検討していこうということで、担当各省、鋭意努力をしているわけでございますが、今挙げられました、漆原議員が指摘されました四つの具体的な提案のみならず、本人に資力がない、あるいは親御さんが急激な時代の変化によって収入もないという場合にも、本人が意欲さえあれば、能力さえあれば必要な教育が受けられるというような助成策、これについては今後しっかり対応していくことが必要だと思います。
漆原委員 勉強したい、法曹になりたいという人が、お金がないことによって法曹の道を歩めなくなる、こういうことは断じてあってはならない。現在の司法試験制度のいいところというのは、一発勝負というこれはある意味では悪い側面もあるんですが、だけれども、すべてに開かれている、公平性、一人で受験勉強して苦労して受かれるという、これが一番いいところだと思うんですね。
 そういう意味では、三年間大学に行かなきゃならないということは、こうなってきますと、三年間行く時間的なゆとりがない、あるいは三年間通うだけの資力のない方、この方は結局法曹になる道がなくなってしまうというのが今回のロースクール構想でございますから、ぜひとも、国家がロースクール構想を司法制度改革の中心に、メーンに据えた以上は、そういう、お金がないことによって法曹になることができなくなるという人が一人でもいなくなるように、今総理のおっしゃった、学問をしたい、勉強をしたい人は全部国家が積極的に援助していくのだ、ぜひともこういう強い姿勢で臨んでいただきたいということを改めてお願いしておきたいと思います。
 続いて、国民の司法参加についてお尋ねします。
 現在、推進本部では、刑事裁判における裁判員制度の導入を検討しております。この裁判員の抽出、選出方法でございますけれども、司法制度改革審議会の意見書では、選挙人名簿から無作為抽出するということが提唱されております。
 司法に対する国民の幅広い支持と理解を得るためには、裁判員を無作為抽出するなどの方法によって広く国民が司法に参加することが必要であると考えますが、まず一点、総理のこの点の御所見をお伺いします。
 また、二つ一遍に申し上げますが、その一方で、裁判員制度は国民に相当の負担をかけることになります。したがって、裁判員制度に対する国民の深い理解と積極的な協力がなければ、この制度は砂上の楼閣になってしまうと思います。
 日本弁護士連合会は、四千万円の費用をかけて「裁判員」というビデオをつくりました。国民に幅広く働きかけております。委員長の許可を得て資料を配付させていただいておりますが、石坂浩二主演の「裁判員」。「嫁が姑を殺したとされる殺人事件 裁判官と一緒に裁くのは選挙人名簿から無作為に選ばれた市民たち 裁判員 決めるのはあなた」、こういう内容のパンフレットでございますが、ビデオをつくって、法務大臣はごらんいただいて、大変好感を持っておられるそうでございますが、きのう総理の方にもこのビデオをお渡ししてあります。どうぞ、九十分ぐらいのビデオだそうでございますので、時間のあるときに見ていただけば大変ありがたいと思います。
 日本でも、昭和三年十月一日に、陪審員というのが、陪審員制度というのがつくられまして、陪審法が施行されました。当時の政府は、陪審制実施の準備のために相当精力的に取り組んでおります。講演会を全国で開きまして、延べ三千三百三十九回講演会を開きました。それで、聴衆が百二十四万人集まった、百二十四万人の人がこの講演会に参加して聞いたそうでございます。また、啓蒙用パンフレット類は、実に二百八十四万部つくった。また、映画も七巻つくったというふうに言われております。
 裁判員制度の導入については、国民に対する十分な周知徹底と国民の協力を得るという努力が政府としてぜひとも必要であると考えますが、その取り組みに対する総理のお考えをお伺いしたいと思います。第一点は、裁判員の無作為抽出の件、第二点目は、裁判員制度の周知徹底と協力を得るための政府としての努力、この二つの点について、あわせてお尋ねしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 「裁判員」というこの映画、まだ私は見ていないんですが、いずれ見たいと思っております。
 裁判員制度について、果たして日本の社会においてうまく機能するかどうかという点についてはいろいろな御議論があるということは承知しております。しかし、裁判の結果、時に国民感情に合致しない判決が出る場合もあると思いますが、やはり裁判制度というのは、多くの国民の協力、そして健全な常識のもとで判決が行われるということが大事だと思い、そういう点から、専門家だけに任せないで一般国民の参加、協力を得るということが大事だという視点から、この裁判員制度というものを採用したらどうかという議論が出てきているんだと思います。
 いろいろ私も聞いてみますと、果たして無作為抽出で適切な方が裁判に参加して協力してくれるだろうかという点については、確固たる自信といいますか、そういう点については持てないという方があるのもよくわかります。日ごろ仕事を持っていながら、果たして、仕事の時間を割いて自分の関係ないことに本当に全力で関与してくれるかなというと、一抹の不安もありますが、そういう点については今後専門家の方にもよく議論していただきまして、この裁判制度というのが、多くの国民の参加と協力を得ることによって、より健全な常識が生かされるような、国民の共感と納得ができるような判決が行われるという趣旨だと思いますので、こういう点につきましては今後議論を重ねて、よりよい制度のためにも、裁判員制度というものはどうあるべきか、しっかり検討していただきたいと思っております。
森山国務大臣 広報宣伝活動については、先ほど先生がお挙げになった日弁連での映画も私は拝見いたしまして、大変参考になり、また多くの方に見ていただいたらきっと説得力があるだろうという感じを持ったのでございますが、前の、昭和の初めごろの試みについても御披露がございました。そのときに比べますと、今情報を提供する方法はとてもたくさん、いろいろとございますので、いろいろな多くの方に御協力をいただいて、ぜひともこの趣旨を徹底し、国民のすべての方に理解をしていただいて、もし万一裁判員をお引き受けになっていただくような場に当たりましたら、ぜひ誠実にその務めを果たしていただくようにしたいものだというふうに考えております。
漆原委員 最後の質問になろうかと思いますが、犯罪被害者の刑事手続参加についてお尋ねしたいと思います。
 司法に対する国民の支持と理解を得るためには、犯罪被害者や遺族が直接刑事手続に参加をして、事実関係について被告人に質問したり、被害感情や意見を述べる機会を与えられることも重要であろうかと思います。
 お手元に配付させていただきました東京新聞の二月十二日付でございますが、「犯罪被害者の声 法廷で語らせて 長男の命日前に 法制化願い母 街頭署名」、こういう記事が載っております。
 現在の刑事訴訟法では、犯罪被害者や遺族というのは、基本的には証拠の一つ、犯罪を立証する証拠の一つとしての位置づけしかありません。私は、被害者や遺族が法廷で意見を述べたり、事実関係について質問したりして発言をすることは当然の権利ではないのかというふうに考えております。
 ヨーロッパでは、被害者や遺族の方々が法廷で独自に求刑をできるという国もあると聞いております。総理のこの点に関する御所見をお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私、前に「グリーンマイル」という映画を見たことがあるんです。これは、殺された遺族が、犯罪者が死刑になると、死刑の場に遺族が立ち会うんですね。それで、あれ、当時は、もうかなり前の出来事ですけれども、事実に基づいた映画でありますから、全部が事実とは言えませんけれども、歴史上の事実に基づいて小説的手法も重ねた架空の出来事でありますが、事実として、過去の歴史において、遺族が立ち会って、犯人が死刑にされるその場を見るという、今から考えてみれば極めて残酷なことですよね。しかも、電気ショックですから。もう実にすさまじい、苦しむ姿を遺族が見るんですから。
 こういうことまで行われていた歴史的事実を考えますと、今、被害者の気持ちが十分判決に生かされていないんじゃないかという被害者の気持ちもわかります。そういう点も含めまして、加害者の権利も大事でありますけれども、被害者の権利というもの、被害者の気持ちをどう裁判に反映するかという点についても、私は、時代が変わりましたけれども、十分反映されるような形にどのように持っていくかという点につきましても、今後検討が必要だと思っております。
漆原委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
山本委員長 次に、河村たかし君。
河村(た)委員 総理をねらう男、河村たかしでございます。ごぶさたしておりました。
 今、司法を国民のものとするためにどうした方がいいか、こういう議論を続けてきまして、やはり、身近なケースを通じて社会ということが出てくるので、ぜひ総理に、これは本当に聞いていてほしいんです。私が予算委員会で森山大臣もいるときに質問しましたよね、名古屋刑務所の事件。本当に聞いていてくださいよ、これ。
 あの名古屋刑務所の事件は、ホースでしりに水をかけて死に至らしめた、刑務官が。それから、革手錠を締め過ぎて、これも一人、死に至らしめる。それからもう一人は、これは実は腸が切れたんじゃないんですけれども、傷になったということを、私、質問しました、本当に。今、本当に申しわけなかったと思っている、これ。
 なぜかというと、事実を検証していなかった、僕は実は。だれに聞いたんだろうか、これを。何か党からは言われましたけれども、そんな責任にはしません。新聞に書いてあっただけ。これ、法務省の言っていることを全部うのみにしちゃった。もし冤罪だったらどうなんだろうか。やはり、当事者の刑務官の意見をなぜ聞かなかったんだろうかと。たまたま、総理、私、名古屋なものだから、友達の友達にいるんですよ。
 だけれども、僕は、若干いいところは、やはり、とにかく相手の意見をどうしても聞かないかぬということがあって聞いたら、全く違っていました、全く違っていました。小泉総理の、小泉政権を本当に支えている、一番末端と言うと彼らは怒ると思いますけれども、本当に下積みでやっておられる刑務官、これは実は、本当に忠実にやっていたんですよ。全然違います。放水では全く死んでおりません、これ。
 先ほどの午前中に新事実を明らかにしました。その放水の前にはいていたパンツ、こういうようなものです。これが、本物を出してくれと言ったら出してくれなかったから、自分で買ってきました。これは受刑者がはいていたのによく似たズボンです。ここに、しりに血がついていたということで、これを脱がせてから、脱がせてばっと放水しました、しりに。だから、放水の前に実は出血していたんです。これは、今確定しました、この事実が、午前中に。刑務官が来まして、見た人です、これをこうやって見た人です。こういうものはないということを、法務省の中間報告に実は出ています。それは虚偽であったと報告しています。こういうことが一つ。
 それから、医師がそのうち来ると思いますけれども、水が入りますから、こういうふうになるんですよ、水腹に、当然、もしそうなら。だあっと入りますから、当然、そうでしょう。だけれども、豚で実験したのは、どうも、七リッターと三・五リッター、二つ、こういうふうになっていた。人間は、いわゆるこういうふうには全くなっていない。通常の水は入っていますけれども。これ、医師が言っています。水ではなかった。
 それから、当時の水は、総理、民主党がやりました放水実験、御存じですか。知りませんか。知らないなら結構ですが、あれは実は六キロでやりましたけれども、実際は、法務省が言っておるのでも〇・六でした。東京都の水が一で、〇・六よりさらに低いんです、実際。上に二、三メーターしか、ここからだと天井ぐらいにしか飛ぶ水でしかなかった。それをかけたというだけの事件。
 それから、もう一つの革手錠は、先ほどここでやりましたけれども、革手錠、これ、現物ありますよ。本物です、これは。レプリカではありません、本物。私、買いました、これ。法務省にくれと言ったけれどもくれない、貸してくれと言ってもくれない。だから買いました。なぜかって、冤罪に手をかすということは人間の最もおぞましいことだからですよ。私、政治生命かけてやろうと思っています。
 これは、十センチごとに間隔があって、緩いか、その後かなりきついかなんです。十センチあるんです、間隔が、これ。それ以上、十センチは引けません、機械でない限り。そういうことなんです。
 だから、これは、いわゆる革手錠じゃなくて、ほかの何か、例えば、制圧しますとばたばたっとなりますわね、暴れているから。だから、こういうところで、角で打ったのではないかということを、その中の、今、無実の罪で入っている方が言ったけれども、一切取り上げてもらえなかった、捜査に、こういう現状なんです。
 野党の質問が非常にきつくて、法案がとまったりしましたものですから、そんなことで、上の方から、これはいかぬ、何とかせないかぬという指示があったとも聞いております、そういうような指示が。
 そういうような事実の中で、どうやってやったら、僕は経済の方がもともとは専門でよく質問させていただいておりますけれども、国家の独占というのはやはり間違いが起こりやすいということだと思うんですね。司法の民主的コントロールというのもそういうことです。
 だけれども、裁判というのは人権擁護の最後のとりでだと言っていまして、これはもう絶対に公正にやらないかぬということでございますが、冤罪というのは、総理、抽象的に、まず冤罪というのはどう思いますか。
小泉内閣総理大臣 実際、罪を犯していないのに、罪を犯したように犯人扱いされるということで、はかり知れない損害を受けている方も、過去にも現在にもいると思いますし、今、河村議員が言われたことを私は初めて聞きました。今までの報道によれば、実に残酷なことをしたという報道が多かったわけでありますが、現実、よく当たってみると、必ずしもそうじゃないということでありますが。
 この冤罪を晴らすためにはどれだけの本人の苦労なり努力が要るかということでありますが、同時に、冤罪をなくすような制度的な整備も大変重要ではないか。どのように冤罪を晴らすか、細心の注意が必要だと思います。そのためにも裁判制度があるわけでありまして、一方的な裁判が行われないような制度面と運用面、また、人的な配置等、十分な細心の配慮が今後も必要だと思っております。
河村(た)委員 そんなに総理と話せる時間がありませんので、もう一つ事実だけ言っておきます。
 ここにタッパーがあるんですけれども、実はこういうものが保護房に入っていたんです、かたい、硬質プラスチックが。実は、これがばりばりに割れていまして、こういうような破片状になって散乱していた。これはきょう午前中証言されましたから。こういうものがある。これを、こういう場ですけれども、肛門の中に入れると、ちょうどそのときの状況の傷ができるんです、その受刑者の。そういう事実がある。これは可能性がある、非常に可能性が高い、これでやったと。なぜそんなことをやるのかについては、きょう言いましたけれども、保護房を出たいためにやる場合があるということです。
 それから、これは医師が言っていますけれども、豚の方の放水は、肛門の周りが赤く炎症を起こしておりまして、ぱっと見てわかるというそうです。だけれども、人間の方は一切そういうことがなかったということで、本当に、どう見たって、これはやはり公訴を間違えたとしか思えない。やはり僕は、故意だとは言いませんよ、それは人間も間違いがあるから。検察庁は間違いないんですか。やはりそれはないでしょう。あってはなりませんけれども。
 こういう前提に立ってぜひ、法務大臣、ちょっと伺いますけれども、最高検が名古屋の地検にこうしてほしいとか、起訴してほしいとか、そういうことを言ったやに聞いておりますけれども、そういう話はありませんか。
森山国務大臣 検察の関係者は、最高検あるいは事によっては高等検察庁その他それぞれの上級官庁に対して、こういう件があるのでどうしたらいいかという御相談をしたり、あるいは自分としては起訴をしたいと考えるがどうかというような御相談はすると思います。それぞれ上級官庁からその意見を申すでございましょう。しかし、最終的には、決定するのはそれぞれの所轄の検察庁であり、そこで起訴ということを決めたものだというふうに思っています。
河村(た)委員 そんなことを聞いております。
 僕、今総理の話を聞いて、反対にあれっと思って非常によかったと思ったんだけれども、普通、形式的な判断できまして、そんなことだったのかと言わずに、いや、そのことは捜査当局に任せてありますと言うかなと思ったら、やはりさすが総理だと思うね。非常に率直で、そこのところはすばらしいと思いました。
 それで、総理にお願いしたいのは、私もこういうところでしゃべっておる以上は相当な決意もありまして、何しろ、イラクとか北朝鮮で疑獄事件、いわゆる政治犯というのがありますよね、あれは敵対しておる人間をああやってやるんですけれども、あれもいかぬですけれども、小泉政権の、あなたの政権を支えている、本当に足の先で支えている刑務官の皆さんです。この皆さんに、今、客観的に、きょう午前中に今言いました血のついたパンツがちゃんと証言で出ましたから、だから、これは放水以前に出血していたということです。ですから、この事件をもう一回徹底的にぜひ、あなたが社長の会社の一番現場で苦労している人たちですから、僕たちも委員会でもやりますけれども、全部きちっとやり直して、そこから法務省がどういう体質であったんだろうか、そういうことも出てくると思いますけれども、それをひとつお答え願えませんか。
小泉内閣総理大臣 実は、今初めて聞きまして、実際驚いているんです。
 今までの報道ぶりから判断しますと、いかに刑務官が受刑者を残酷に扱ったかということについて、多くの人は疑いを持たなかったと思うんですね。それは、今初めて、河村議員の話で実はそうじゃなかったんだと。こういうことはまさにあってはならないことでありまして、いっときの感情論にとらわれないで、冷静に、事実を正確に把握するということが裁判にとって最も重要なことでありますので、今言った御指摘を十分踏まえまして、法務省としても、この事件の対処に誤りなかったか、手落ちはなかったか、しっかり再調査する必要があると思っております。
 その上で、もし過ちがあれば、今後それを正していくというような対応を考えていかなきゃならないと思っておりまして、今の御意見というものを、現場主義といいますか、みんな自分の目で確かめるという、その河村議員の対応にも敬意を表したいと思います。
河村(た)委員 ありがとうございます。
 私も、五十四にもなりまして、こんなとんでもない質問をしたと思って、本当に申しわけないと思っています。謝罪したいと思っています。
 それから、総理、家族の方がこれは無給なんですね。停職処分で無給なんです。無給だけではなくて、聞きましたら、保険を払わにゃいけない、社会保険を。だから、毎月七万円ぐらいマイナスになっていて、ある人は兼業も実質上ほとんどできないような状況になっていて、無農薬野菜を商うというか扱って、なぜといったら、残った野菜は黄色くなるでしょう、それをみんなで食べて、前田さんとか皆さんに分けて、そうやって生活しているというんですよ。だから、裁判だ、裁判だと言われる人はいるんだけれども、僕は、裁判がとても、これは何年かかるかわかりませんよ、皆さん否認していますから。これはイコールフッティングになっていないんですよ。
 だから、これは総理、一刻も早く、本当に皆さんの仲間だったんです。私わかりましたけれども、暴れておると、発報というんだけれども、ブザーが鳴るらしいです、ジーンと。何もそんなことをやらずに、便所かどこかにおれば楽なんだけれども、一番最初に駆けつけた最も職務に熱心な、そういう人たちがみんなこんなふうになっちゃったんですよ。みんな起訴されている。どうしても制圧しに行くから。
 ですから、総理、本当に、無給でこういう苦労になっていますので、ぜひその点も踏まえて、一度法務省にそれをちょっと調査させるか、これは総理の感覚でいいですから言ってください。
小泉内閣総理大臣 これも実際冤罪だとしたら、こんな逆に残酷なことはないのでありまして、この無給かどうかという問題について、これは実に悩ましい問題だと思うんです。今、国会の議論でも、逮捕されて勾留された人に本当に給与を与え続けていいのかという批判もあります。それで、実際の犯罪者に対しての問題と冤罪であるということに対して、区分けというのは実に難しいと思います。
 しかし、現実の問題として、もしも冤罪だとして、給与が支給されなくて、家族までがつらい目に遭っているということは、これは忍びないことでありますので、どういう対応があるのか、これは本当に難しい問題だと思いますが、御指摘の点を踏まえて今後十分検討されなきゃならない問題だと考えております。
河村(た)委員 それからもう一つ、やはり総理の部下ですから、ぜひ家族の意見を聞いてやってほしい。やはりいろいろ聞かなきゃだめだと思いますね、こういう究極的な場面になったら。これもぜひ総理、お忙しいこと、ようわかっています、ようわかっていますけれども、こういうやはり本当の末端で働いている人たちの意見を聞くというのは、僕は総理の性格ならやってくれると思うので、ぜひ聞いてやってもらえませんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私が直接聞くかどうかは別にいたしまして、この問題、今御指摘の点も踏まえまして、法務省担当者に十分意見を聞いて、その実情についても私も関心を持って対応したいと思っております。
河村(た)委員 ひとつせっかくですから、一般論にこれを広げまして、こういう起訴を間違えた場合どうするかというのは、やはりこれは歴史的に、世界的に大きい問題なんですよね。例えば、アメリカだと大陪審というのがあって、起訴そのものが適当かどうかを、陪審員みたいに入って決めるんですよね。だから、総理、せっかくここまで司法の国民参加に踏み出すんですから、やはり一たん起訴されたら終わりなのかと。
 それから、名誉もすごいですよ、総理。これは、新聞を読まれたと思いますけれども、放水のときなんか特にですけれども、陵虐的事件ですから、これは。だから、そういうことにならぬように、ぜひこの際、起訴そのものの乱用というか、まあ失敗ですね、要するに乱用というより、多分、人間ですから、検事総長も誤ることはあると思います。私でも過ちはありますよ。そういうときにどうやってチェックしていくか、そこをもう一つ踏み込むというところをひとつ御答弁いただきたいと思います。――いや、これは総理にしてください。
小泉内閣総理大臣 検察の判断が常に正しいとは限りませんし、もし間違いがあれば正さなきゃなりませんし、その一つの制度として検察審査会というものもあると承知しておりますし、これから国民の健全な意見というものが反映されるような制度というものも十分工夫しなきゃいかぬと思っております。
河村(た)委員 総理、検察審査会というのは、ですから不起訴不相当なときなんですわ、あれは。不起訴処分が不相当だから問題にしよう、起訴にしようという話なんですね、これは。だけれども、今言っている話は起訴不相当の場合ですね。今の、現に名古屋刑務所の事件、私はそう言っている。起訴が失敗したという場合に、今のところないんですよね、何も。一般的には無罪の判決をとることになります、無罪の。無罪の判決をとるためには、これは、当然おわかりになるだろうけれども、何年もかかって大変なことになります。
 ですから、今あるんですよ、制度は、アメリカは大陪審というのがあって、イギリスは廃止したらしいんですけれども、やはり起訴そのものがどうかということを国民が参加するというのがありますので、大臣じゃなくて、これは別にいいです、これで言ったから総理がどうということはないけれども、ぜひ、今回のあの名古屋刑務所事件を振り返り、またもう一つは、国会が、やはり国会というのは裁判の手続じゃないですから、当事者の言い分を聞く手だてがないんですよ、これ、考えてみたら。だから、非常に危険なことが起こり得るんですよ。
 その辺も含めて最後に一つ、いやちょっと悪いけれども、時間がないから、ちょっと総理に、国会も含めてですから、ぜひ御感想を承って、終わりにしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これは本当に珍しいケースだと思うんですね。このような事実を指摘されまして、やはり現実の犯罪捜査に対して、どのように正当な捜査が行われるかということに対して大きな一石を投じられたと思っております。この御意見を十分踏まえて適切な対応をするように、さらに法務省内での一層の、今までのあり方に対する反省も含めて、対応をしっかりするようにしていきたいと思います。
河村(た)委員 終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、山花郁夫君。
山花委員 民主党の山花郁夫でございます。よろしくお願いいたします。
 昨日、裁判の迅速化に関する法律案、その他の法律案も衆議院を通過いたしましたので、本来であればこの法案の審議の際にお尋ねできればよかったのでありますけれども、司法制度改革推進本部の本部長たる小泉総理に改めてお伺いしたいことがございます。
 と申しますのも、この迅速化に関する法律案の中で、二年以内のできるだけ短い期間内に第一審の訴訟手続を終わらせよう、そういった目標が掲げられているわけです。ただ、当委員会でも一時委員会が紛糾をした時期がありまして、と申しますのも、もともと総理の司法制度改革推進本部顧問会議におけるあいさつがあって、できるだけ早く裁判を終わらせるべきだ、そういった趣旨のごあいさつがあってこの法案ができたということもありました。
 そこで、少し委員会の経緯を申し上げますと、ただ、現在でも諸外国に比べても、必ずしも日本の裁判というのは平均値で見ると長くはなくて、第一審、民事訴訟でいうと、二年内で終わらないものというのは七・四%しかない。刑事事件については、二年以上かかっているものというのは〇・四%しかない。そういう中で、すべてとは申しませんけれども、長くかかるのにはそれなりの理由があるケースも結構ある。
 ただ、私は別に速くやらなくていいと言っているわけではありません、もちろんそうなんですけれども、ただ、裁判ということと、総理はかつて厚生大臣を務めていらっしゃいましたし、医療の問題はお詳しいと思いますけれども、医療というのは、実は非常に私は似ているところがあるのではないか。つまり、もしかしたら結果は一緒なのかもしれません、人の命でここまでしか生きられないというときに、お医者さんに対して満足する方と不満な方と、そのケースを、話を聞いてみると、結果は一緒かもしれないけれども、お医者さんが一生懸命説明してくれたとか手を尽くしてくれた、言うことを聞いてくれたという方は大概満足しているんですけれども、そうじゃないケースだと大変不満に思う。
 裁判もやはり似たようなことがあって、法律的な解決というのは、結論はもしかしたら一緒なのかもしれないけれども、裁判所に行って、裁判官が自分の意見をちゃんと聞いてくれた、あるいは、もっとこういう人を呼んで、あの人の話を聞いてちゃんとこの事実関係について確定してほしい、まあ今似たような事件についての、ちゃんと話を聞いたらこうだったという話がありましたけれども、そういうことをちゃんとやるのかどうか。つまり、中身の充実ということももちろん大事なんだから、これは二律背反ではなくて、充実した審理とともに迅速に行う、この両方が大事なんだよねという話が一方でありました。
 ところが、本法案で二年という目標値を設定してしまうと、例えば、裁判官、裁判を行う側がその目標の方にとらわれてしまって、本来であればもう少し若干かかるようなケースでも、もう二年だからということで手続を打ち切ったりとか、あるいは本来もっとやるべき証人調べを打ち切ったりとか、そういうことをするのではないかという懸念が表明をされまして、副本部長たる森山法務大臣からも、本部長の意を体してお答えいただくということで、これはあくまでも目標値であって、その中でできるだけのことはやる、二年になってしまったからといって雑な手続はやるものではない、つまり法的な拘束力はないのだという御答弁をいただいたんですけれども、改めて本部長からそのことについて御確認をいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 裁判については、できるだけ早く終了するべきだというのは、多くの国民の共通するところだと思います、無罪であれ、有罪であれ。しかも、もし冤罪であったら、これは長引けば長引くほど苦しみは長くなるわけですから、そういう点について、裁判という制度につきましては、できるだけ早く判決を出すのが望ましい。
 ほとんどの裁判案件につきましては、九割以上は二年以内に終結しているということでありますが、大きな社会を騒がす問題については実に遅過ぎるのではないかということで、「思い出の事件を裁く最高裁」という川柳を私は紹介したわけであります。私がつくったわけじゃありませんよ。そういう川柳があったから、なるほどな、国民というのは、いかに裁判というのは遅く長く、遅々として進まない、何をやっているんだろうという憤慨があの川柳に出ているんじゃないかという気持ちで、私はこの川柳を紹介したわけであります。
 しかし、いかに速くやってもその審理が雑であってはならないのであって、十分正当な手続を経て正しい判断が行われるような制度というものを整える必要があるということから言ったわけであります。そういう点については私は法務大臣と一致しておりまして、これからも、社会を騒がし、多くの国民の関心を持っている裁判であればあるほど長くかかるという弊害というものをやはり是正していく必要があるんじゃないか、九割以上が二年以内に終わっているというんだったらばそれも可能じゃないかという意味から、私は、できるだけ二年以内に終わるような制度を整えるということが必要じゃないかということを言っているわけでございます。
山花委員 世間を騒がせた事件だけではなくて、比較的、行政事件の訴訟、行政訴訟関係も長い傾向があるんですね。今後、行政訴訟、行政事件訴訟ということではなくて行政訴訟についても改めていきましょう、そういった方針が示されているようであります。
 今、資料配付をさせていただきました。一枚目なんですけれども、これは諸外国と比べても日本の行政訴訟というのは大変制限が強くなっておりまして、例えば現行ですと、行政指導、行政立法、行政計画、通達、空港騒音、ごみ焼却場設置、用途地域の指定、第二種市街地再開発事業計画決定、告示によるみなし道路指定という、七、八、九、十、十一、十二、十三、十四、十五というところを、もしあれでしたらごらんいただければと思うんです。対比の表がございますので、済みません、恐縮ですがごらんいただければと思います。諸外国と比べても、日本は非常に司法審査の対象となる範囲が狭くなっております。
 こういったことについて、今後行政訴訟についても改革を行うのだという方針が示されていますけれども、この行政事件訴訟の改革の意義についてお尋ねしたいと思います。
 つまり、先ほども少々議論がありましたけれども、事前規制から事後規制へという流れの中で、やはり事後審査の中核というのがこれから行政訴訟になるというわけですから、いわば行政改革のまさに最後の集大成ともいうべきものが行政事件訴訟だと私は思うんですけれども、司法制度改革本部長の御認識をお聞かせいただきたいと思います。
森山国務大臣 行政事件訴訟法の改正というのは、司法の行政に対するチェック機能を充実して強化して、国民の権利救済をより実効的に保障しようとするものでございます。国民にとって頼りがいのある司法制度を構築するという観点から、今般の司法制度改革の重要な課題の一つだというふうに考えております。
 今後とも、このような観点から、国民各層の意見を拝聴しながら、鋭意検討を進めてまいりたいと思います。
山花委員 本部長も全く同じ御認識だということでよろしいですね。一言いただければと思いますけれども、総理。
小泉内閣総理大臣 そのとおりでございます。
山花委員 ところで、今回この行政訴訟法の改正について、資料で配付をさせていただいた二枚目ですけれども、新聞報道などでも、最高裁とすり合わせをして議論の中身をやっているのではないかというような報道がございます。
 また、資料の四枚目以降につけさせていただきましたけれども、委員のところに消し忘れてメールでついていたと言われている中には、「最高裁案で確定」であるとか「最高裁修正で確定」であるとか「法制局修正」だとか、タイトルを見ると非常に気になるようなものがあって、ただ、これについて担当の方から聞いたら、いや、中身については技術的なことですということなので、それはそれで、もしかしたらここでやっていることは技術的なことなのかもしれませんけれども。
 それはそれとして、ちょっと気になるのが、こうやって事務方の方で資料をつくった際に、こういったメールでのやりとりをして、法制局だとかあるいは最高裁と字句だとか法律上のことについて御指導いただきましたという話なんですね。
 仮にそうだったとしても、やや気になることがあって、資料の最後の方につけさせていただきましたけれども、ここに、つまり資料の最後のところで「行政訴訟制度の見直しについて検討の方向性が概ね一致していると思われる事項」ということで、実際に委員の方に配られた資料に書いてある中身がまずいということではないんです。ただ、これだけではなくて、もっとほかにもおおむね一致していると見られるのが、きょう配付した資料の一番最後のところに表にさせていただきましたけれども、これだけではなくて、もっとほかにも、「概ね一致していると思われるその他の事項について」というものも、これは日弁連につくってもらったんですけれども、あるんですね。つまり、ほかにもあるにもかかわらず、検討委員のメンバーにはもっとダイジェスト版のようなものが配られています。
 これは、いわば第一トラック、第二トラックとあって、第二トラックについては将来もっと検討しましょうと。第一トラックについてはすぐやりましょうと。すぐやりましょうということについて、こういうのがつくられたようですけれども。
 つまり、何が言いたいかというと、これだけじゃなくて、本当はもっとおおむね一致していることがあるわけですから、せっかく今行政訴訟について、全く今までの、従来のことにとらわれることなく議論しようというふうになっているわけですから、今回、報道ではいろいろちょっと疑念が言われていますけれども、権力分立の観点から疑問があるんじゃないかというような疑念を表明されていますけれども、絶対にこの事務方ベースであるいは最高裁ベースで議論をするのではなくて、本当にこの検討会のメンバーの人々の意見を踏まえて、しっかりと今後の行政訴訟改革について取り組んでいただきたい、このように思うわけですけれども、この点について御答弁いただきたいと思います。
森山国務大臣 司法制度改革を進めるに当たりましては、検討過程の透明性を確保しなければいけないということで、いろいろな努力をいたしておりますし、さらに国民各層の意見を幅広く聞きまして十分に反映できますように、これからもやっていきたいと思います。
 御指摘の点について、具体的なやりとりがどのようなものであったか、細かい点については私もよく存じませんけれども、事務方が伺いまして御説明いたしましたような趣旨であろうと思いますし、今後、そのような間違いがありませんように、さらに透明性を確保して頑張ってやっていきたいというふうに思います。
山花委員 透明性のこともそうですけれども、もう一言言っていただきたいのは、検討委員会の議論をこういったことで縛らないで、検討委員会のメンバーの意見をすべてちゃんと酌んで議論をしていただきたい。いかがでしょう。
森山国務大臣 失礼いたしました。
 当然、縛るなどということは考えておりませんで、自由に御議論をいただきたいというふうに思っております。
山花委員 そのとおり、本部長たる総理も全く同じ認識ということでよろしいですね。一言お願いします。
小泉内閣総理大臣 広くいろいろな方々の意見を聞いて検討すべきだと思っております。
山花委員 また、政治改革推進本部の本部長たる、小泉国務大臣なんでしょうか、あるいは、たる総理大臣なのかわかりませんけれども、総理としての立場もおありになりますので、改めて確認をさせていただきたいというか、所見を伺いたいことがございます。
 先ほど、同僚の委員からも、法科大学院に関する財政支援の話がございました。やはり法科大学院ということは、本当にこれからの法曹を養成するということで大事なことだと思いますし、全く新しくつくられるものです。ただ、育英会の資金であるとかあるいは私大の助成だとか何だとかいう話になりますと、どうしてもこれは予算を組むときに、どこの省庁の予算が大体これぐらいで、その中でという議論になりがちな過去の傾向があると思いますけれども、これは本当に新しくつくるものですから、各省とのシーリングとか、こういう枠にとらわれずに、そういうものにとらわれないというのが小泉総理の姿勢だと承知をいたしておりますので、そういうことにとらわれず、やはり本当に必要なことについてはしっかりとつけていただくという御決意を表明していただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 日本は、教育を受けたいという意欲のある人に対しては、すべて受けられる制度をつくってまいりました。これからもその方針に変わりありませんし、法科大学院につきましても、意欲と能力のある方に対しては、たとえ資力はなくても受けられる制度の拡充に努めてまいりたいと思います。
山花委員 最後の質問になるかもしれません。これも総理にお伺いしたいと思います。
 先ほど名古屋刑務所の事件のことが少し議論となりました。個別の案件について今申し上げようとするのではありません。これも少し予算が絡むものですから、ぜひ頭に入れておいていただきたいと思うことがございます。
 総理は、この小泉内閣の方針ということの一つで、今治安が非常に悪くなっているので警察官をふやそうということで、今後大変多くの警官がふえると承知をいたしておりますし、また、そのことと直接関係があるわけではありませんけれども、今後、司法制度改革ということで、年間三千人程度の、従来の言い方で言うと司法試験合格者と申しましょうか、法曹ができてきます。ということは、裁判官も検察官も当然ふえるわけです。
 ただ、警察官もふえました、いっぱい犯人を捕まえました、事件もどんどん早く処理しますといっても、行き着く先は刑務所じゃないですか。ところが、刑務所というのは、今度福島に新しく、何百人でしたっけ、できるぐらいで、今ですら過剰収容なわけですよね。私は、刑務所だけじゃなくて拘置所だとかもっとつくるべきではないかということはかねてより議論させていただいていましたし、法務大臣も随分総理に言われたと聞いておりますけれども、ただ、まだやはり十分じゃないと思います。
 それで、どうしても、箱物をつくるということになりますと、当然お金がかかりますけれども、それこそ総理には釈迦に説法かもしれませんけれども、こういう委員会で言うと、いろいろな方がいらっしゃるので、いろいろ言われるかもしれませんけれども、本当に必要性が十分かどうかわからない道路だとか港だとか空港だとか、そういうのをつくるんだったら、本当に治安、本当に必要なものに対して私はお金はつけるべきだ。つまり、刑務所というのは絶対これから必要になる。刑務所だけじゃないです、行刑施設というのは必要になるわけですし、結果、反射的な効果として経済効果も、しかも永続的なものがあるわけですから、従来、迷惑施設と思われていたかもしれないけれども、必ずしもそうでもないわけです。
 ぜひとも、今後しっかり、そういった施設に対する、予算をつけますという言い方はちょっと嫌らしいですけれども、そういうことについても、特に来年度以降のことについても御配慮いただきたいと思いますけれども、この点についての御所見をいただいて、質問を終わりたいと思います。
小泉内閣総理大臣 世界一安全な日本という、この神話を復活させようということで努力しております。
 そういう面において、今、必要な刑務所あるいは拘置所等、足りないという声も聞いておりますので、私は法務大臣にも、必要な予算は堂々と要求しなさいということは指示しております。刑務所がいっぱいだから逮捕もできない、拘置もできない、そういうことでは治安の面においても不安を及ぼす。世界一安全な日本であるという、治安の面においてもそう言えるように、必要な予算は確保していくよう、むしろ私の方が担当大臣にハッパをかけているところでございます。
山花委員 ありがとうございます。終わります。
山本委員長 次に、石原健太郎君。
石原(健)委員 総理には、お忙しい中、当委員会に御出席をいただいてありがとうございます。
 時間も限られていますので、早速質問させていただきたいと思いますけれども、司法制度改革ということで、さまざまな新しい法案とか改正案などがこの委員会に提出されてくるわけでありますけれども、憲法の定める司法に関する規定について総理はどのようにお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 法治国家として、司法制度が充実している、また国民の協力によって信頼されているということは最も大事なことであると私は思います。そういう面において、司法制度改革、時代に合うような、また国民の支持と協力が得られるような司法制度改革に取り組まなきゃならないということで、今回この司法制度改革本部を設置して意欲的な改革を進めているという点につきまして、今後とも御理解と御協力をいただければありがたいと思います。
石原(健)委員 漆原議員また山花議員からも既に指摘されていることでありますけれども、また、総理からもただいま答弁あったばかりですけれども、私も予算ということについてちょっと感じておるところがあるので言わせていただきたいと思いますが、これまでの日本は経済成長とか産業の発展ということに大きな目標が置かれて、そうしたことで予算も配分されてきたような感じがいたします。しかし、これからの日本はやはり家庭生活とか社会生活が充実、安定して、また国民が将来に不安なく過ごせるような世の中を築いていくことが大事だと思うのでありますけれども、そのためには財政支出の構造的な転換も必要になってくると思います。その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
小泉内閣総理大臣 限られた財源の配分ということを考えますと、現在の日本の財政状況を考えますと、何でもふやしていけばいいという状況ではない。むだな点を排除すると同時に、必要な部分についてはふやしていかなきゃならないというのも当然であります。重点配分、そういう点から、同じ予算の中でも、日本の制度でありますと一度つけると減ることがない、何でもかんでも一度つけちゃえばあとはふやすだけという点を改めなきゃいかぬということから、私は、各省庁の中でも重点分野と削減する分野があるはずだということがよく認識されて現実の予算に反映されなきゃならないと思っております。
 特に、今の厳しい財政状況の面におきましても、多くの国会議員の皆さんも地方の住民の方々も、予算をふやしてくれ、必要なお金をつけてくれ、財政支援をしてくれ、税の優遇措置をしてくれという要求は、ふえることはあっても減ることはないんですね。そういう声ばかりに耳を傾けますと、予算の規模は膨らむばかりであります。それで、増税はしていけないとなると、国債に頼るしかない。後、これはどうするんだということで、私は、実質的に予算の規模はふやさないで、重点分野と削減分野をよく考えて予算編成しなきゃならないという方針で今までやってまいりました。これからもそのような方針を堅持して、今後、新しい時代に伸ばすべきところ、削減すべきところをよく考えながら対応していきたいと思っております。
石原(健)委員 ちょっと陳情めいて恐縮なんですけれども、日本は法治国家と言われながら、法務省の予算は全予算の一%にも満たないという状況にあります。それで、司法制度改革等に伴って、法務省の予算は恐らく伸びざるを得ないと思うのですけれども、総理の御理解もよろしくお願いしたいと思います。
 次に、現在提案されている人権擁護法案に盛られている委員会は法務省に付随する形となっております。人権の侵害は公務員等行政側によるものが間々ありますので、より独立性の強い、例えば公正取引委員会のような立場のものとすべきと考えますが、総理のお考えはいかがでしょうか。
森山国務大臣 人権委員会を法務省の外局として設置するということにいたしましたのは、平成十三年一月に実施されました中央省庁の再編に当たりまして、人権擁護は、国民の権利擁護をその基本的任務とする法務省において引き続き所掌すべきこととされまして、今後特に充実強化すべきものとして整理されているわけでございます。
 そのことと、二番目に、法務省は、人権侵害に関する調査及び救済措置としての調停、仲裁、訴訟援助、差しとめ請求訴訟の提起等の職務の遂行のための法律的な専門性を有する職員をたくさん擁しておりますし、人権救済に対する専門的な知識経験の蓄積があるということによるものでございます。
 また、人権委員会は、国家行政組織法第三条第二項に基づく独立の行政委員会といたしまして設置されまして、委員長及び委員の任命方法や身分保障、職権行使の独立性の保障等によりまして、その職権の行使に当たっては、所轄の法務大臣から影響を受けることがないようにいろいろと配慮されておりまして、高度の独立性を確保することができるようになっておりますので、法務省の外局として設置しましても、独立性の観点からも問題はないと考えているわけでございます。
石原(健)委員 何か総理の御所見がありましたら。
小泉内閣総理大臣 現実の対応として、人材の観点から、やはり独立性というものをよく考えながら、今の大臣の答弁のとおりで私はいいのではないかと思っております。
石原(健)委員 次に、難民のことなんですけれども、日本の難民認定はこれまで厳し過ぎたのではないかという感じがいたします。また、外国人労働者の受け入れももう少し幅広くしてよいのではとも感じております。
 さきに新聞でこれは見たことですけれども、フィリピンのアロヨ大統領が、日本の老人介護にフィリピンの若い人たちをぜひ働かせてほしいというような話があったようですけれども、それが日本側に拒否されて、今度フィリピンにそういう施設をつくって、日本の老人をフィリピンの方になんという話もあったようですけれども、この労働者の受け入れ等について、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
森山国務大臣 難民の認定申請につきましては、従来から、国際的な取り決めである難民条約等によりまして、個別に審査の上、難民として認定すべき者は認定しておりまして、それ以外の場合でも、人道的観点から必要と認められる者につきましては、本邦での在留を特別に許可することといたしております。
 そのようなわけで、平成十四年の場合を例にとってみますと、難民と認定した者と実質的に庇護した者の合計は五十四名ございまして、その庇護率は二四%ということになっております。このほかに、我が国は昭和五十三年以降インドシナ難民の定住受け入れを継続的に行っておりまして、平成十四年にも百四十四人受け入れております。
 また、法務省といたしましては、我が国社会の安全と秩序を維持しながら、外国人労働者の円滑な受け入れを図ることが必要であると認識しております。外国人労働者の受け入れにつきましては、我が国の経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点から、専門的、技術的分野の外国人労働者の受け入れをより積極的に推進するとともに、いわゆる単純労働者については、我が国経済社会と国民生活に多大な影響を及ぼすということから、国民的コンセンサスを踏まえながら検討していく必要があるというふうに考えております。
石原(健)委員 日本国民の人権を守るという考えからお尋ねしたいんですけれども、北朝鮮には、今戻られている方以外にも大勢の方たちが拉致されている。その方たちの帰還の問題とか、中国に抑留されている法輪功の金子容子さん、何か中国でチラシを配っただけで勾留されて、一年半の労働を命ぜられているようでありますけれども、この方は御主人が日本人で、ずっと、ずっとというか、日本で生活しておられた。
 きのうこの委員会でお聞きしましたが、外務省としてはいろいろな手だてを尽くしているようでありますけれども、この北朝鮮抑留者、あるいはこうした金子さんのような人、日本政府に対して一層強力な努力をお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
森山国務大臣 昨日の刑法改正の審議におきましてもお話が出ておりまして、その御指摘を踏まえまして、これから私どもなりに努力したいと思います。
石原(健)委員 北朝鮮に拉致されている人たちについては、どのように対処されていかれるんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 北朝鮮に対しましては、現在も拉致された方の家族が、日本に帰国しておりますが、まだ残された家族の方もおられるわけであります。この点につきましては、日本政府として今後も北朝鮮に対しまして交渉していかなきゃなりませんが、各国との首脳の場におきましても、また、国連の場におきましても働きかけを強めていかなきゃならないと思っております。
石原(健)委員 次に、天災とかミサイル攻撃、テロ等に備えた包括的危機管理体制の整備強化は、緊急の課題と考えます。この点につきましても強力に推進していただきたいと思いますけれども、総理のお考えをお聞かせいただければと思います。
小泉内閣総理大臣 今回、有事関連法案につきまして、与党と民主党との間で修正合意が成立いたしまして、本日、衆議院の委員会で採決が行われたと思います。いわばミサイル等のみならず、有事に対してどう対応するかという法整備について与党と野党が認識を共有して、これからの国民の安全確保に取り組むという合意がなされたということについては、私は大変よかったのではないかと思っております。
 今後とも、危機に対してどういう日ごろからの対応が必要か、あるいは法整備が必要かという点に対しては、私は党派を超えて協力すべき問題ではないかと思っております。
石原(健)委員 ぜひよろしくお願いします。
 ちょっと時間が余りましたけれども、これで私の質問を終わります。ありがとうございました。
山本委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 委員長、資料配付をお願いいたします。
山本委員長 はい。配ってください。
木島委員 先ほど、今総理が答弁のありました有事関連三法案について締めくくり総括質疑を、私、別の委員会で総理に行いました。
 大変お疲れのところだと思いますが、当法務委員会に総理大臣が出席をして、司法制度の問題のありようについて基本的な質疑を交わすというのは大変有意義なことであり、めったにないことだと思いますので、二十分でありますが、私は基本問題について、司法制度改革推進本部長たる総理の基本的な認識についてお聞かせ願いたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 私、手元に一昨年六月十二日に司法制度改革審議会が発出した司法制度改革審議会意見書を持っております。大変大部のものでありますし、法律用語も含めて大変難しい言葉遣いもありますし、読みこなすのは大変なことかと思います。
 要約いたしますと、三つの柱で組み立てられているんだろうと思います。一つは、司法制度を国民により利用しやすく、わかりやすく、頼りがいのあるものにするための、国民の期待にこたえる司法改革。二つは、質、量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹の確保。三つは、国民的基盤の確立のための、国民が訴訟に参加できる制度の導入等による、司法に対する国民の信頼を高める。国民の司法参加という、民主主義という観点でしょうか。
 これを総理が一昨年六月十二日、受け取ったときの、第六十三回司法制度改革審議会議事録を私今持っております。総理大臣が、これを佐藤会長から受け取って、意見、あいさつを述べているのが手元にあります。もう細かいことははしょりますが、この基本的なスタンスですが、総理は、「司法制度改革は、行政改革を始めとする社会経済の構造改革を進めていく上で不可欠なものであり、国家戦略の中に位置づけるべき重要課題と考えております。」と、大変基本的、重要な認識をされております。
 二年たちました。初心忘るべからずといいますが、今まさに、ことし、来年にかけて、この実行段階、仕上げ段階に入ってきております。総理のこの司法制度改革審議会意見書を受けての基本的認識、重ねてここで御開陳いただけませんか。
小泉内閣総理大臣 とかく法律というのは難しいもので、法文を読んでもなかなか理解できない点がたくさんあると思うのであります。国会議員でもそうであります。ましてや一般国民が法文を読むと、いかに難しいか、読むだけでも嫌だという一般国民はたくさんいると思うのでありますね。
 専門家に任せていけばいいやというような気持ちになるのも無理ないのですが、やはり司法というのは、民主主義を支える最も重要なものである、法治国家、身近なものでなければいけない、また信頼されなきゃいけない、かといって専門家に任せていけばいいというものじゃない、国民全体の健全な常識というものが反映されなきゃいかぬ、国民の協力を得なきゃいけないという点から、司法制度改革というものも時代に合った制度にしていかなきゃならない。
 そういう観点から、司法制度改革に取り組んでいるわけでございますが、よりよい制度にしていくためにもやはり基本は人であります。人材であります。そういう制度面、それから人的の問題、さらに運営の面、いろいろあると思います。そういう点についても、多くの専門家の意見を聞きながら、国民に身近な、そして協力が得られるような、そういう司法制度に改正していきたいということで取り組んでいるものでありまして、こういうことにつきましては、国会でも十分な御議論をいただきたいと思っております。
木島委員 司法制度に対する基本認識は、私も基本的に共通です。有事法制については百八十度立場が違う、激突をしてきたばかりでありますが、司法制度については総理がそういう立場なら私も共通認識であります。
 人材だ、人だとおっしゃいました。そこで、資料を見てください。大きく日本の司法について、人的体制がどうなっているのかとお聞きをします。
 まことに小さな司法、器が小さいというのが、私は日本の司法を評価するときの基本じゃないかと思うんです。我が国の裁判官、検察官の数が、先進五カ国の中でどういうふうになっているか。皆さんに資料を配付いたしました。群を抜いて少ないわけでございます。
 人口十万人当たり、アメリカは一一・三三、イギリス六・八九、ドイツ二五・三八、フランスが八・七〇、日本は簡裁判事を含めても二・四三、簡裁判事を除くと何と一・八〇。検察官は十万人人口比、アメリカ一二・四〇、イギリス四・〇三、ドイツ六・一三、フランス二・八三、副検事を入れても日本は一・八二、副検事を除きますと一・一一。
 今、総理は人材、人だとおっしゃいました。まことにそのとおり。それでは、この基本的な人を、いろいろ社会制度が違うのは私承知しておりますが、それでも小さ過ぎる、裁判官の数、検察官の数、少な過ぎる。これを抜本的にふやすということは今急務ではないかと思うんですが、総理の決意を表明してください。
小泉内閣総理大臣 確かに、人も大事であります。同時に、法律だけでよくなるかというと、これまた必ずしもそうとは言えない。やはり法律を支える倫理観といいますか、社会的な国民の観念といいますか、これも大事な要素であります。
 日本は確かに、今言われたように、外国から比べれば人員についても少ないんですが、それだけに、話し合いの過程で解決するという、外国にはない、いい面もあるのも事実であります。こういう点も考えながら、かといって、これからますます事件がふえてきた場合には、適切な人材というものの配置もしていかなきゃならないという点で、人材面においても数の面においても質の面においても充実していかなきゃならないということで取り組んでいるわけであります。
 一概に各国と比較はできませんが、本来だったらば、法律が全然なくて、お互いの話し合いで解決できれば一番いいんですけれども、そうも言っていられませんので、こういう点については法的整備、法的以前の道徳観、倫理観、責任感、そういう日ごろからの国民における健全な常識の養成、教育ということの充実も一緒に図っていかなきゃならないものだと思っております。
木島委員 実は、司法制度改革審議会の意見書は、法曹人口増加というのは基本的に大事なスタンスとして打ち出しております。
 どういう数字を出しているかといいますと、平成三十年ころまでには実働五万人規模にすると数字を挙げています。今、実働二万数千じゃないでしょうか、具体的数字を挙げています。司法試験合格者数も、平成二十二年ごろまでには現在の千二百人から年間三千人にするという数字、具体的に挙げています。
 この三十年間を見ても、弁護士の数だけは着実にふえてきました。しかし、裁判官、検察官の数はほとんど変わっていないんです。
 お渡しした資料の二枚目のグラフを見てください。私もこのグラフを見まして、改めてびっくりをした次第であります。昭和二十一年から平成十四年までの裁判官の数がどう変化したか、検察官の数がどう変化したか、弁護士の数がどう変化したか、左の方に、ほとんどふえていないのが裁判官と検察官の数です。右のように、ずっと左上から右下にふえてきているのが弁護士の数なんですね。弁護士だけが着実にふえているんですが、裁判官の数と検察官の数は昭和二十五年から平成十四年までほとんど変化なし、こういう実態なんですよ。
 それで、問題なのは、司法制度改革審議会意見書を読んでも、司法試験の合格者をふやす、結果的に弁護士の数はふえる。しかし、肝心の、総理、裁判官の数と検察官の数を、では、十年後、二十年後、三十年後、何人ぐらいにするかというその具体的数値目標がないんですよ、この司法制度改革審議会意見書の中には。それではだめじゃないか。
 そうしますと、総理は、失礼ながら、裁判迅速化だけは非常に大きな声でハッパかけておりますが、裁判官の数がふえる、こういう客観的なバックボーンがなければ、これは私は裁判迅速化ならぬ裁判拙速化になると。真実の発見というのは裁判の命です。真実の発見ができなければ、先ほど河村委員も言っていましたが、刑事事件は冤罪が多発になります。民事事件で真実が発見できなければ、国民の当然受けるべき権利救済がおろそかになります。
 ですから、やはりこれは裁判官、検察官もきちんとふやすということを、数値目標、必要じゃないかと思うんですが、もう長い話は要りませんが、どう思いますでしょうか。これは総理、だめですか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、国民の期待にこたえる司法を構築するためには、司法の人的基盤を充実強化することが必要不可欠でございまして、裁判官とか検察官の増員は重要な課題であると考えております。
 裁判官の増員につきましても、検察官につきましても、司法制度改革推進計画において、裁判官、検察官の大幅な増員を含む司法を支える人的基盤の充実を図ることが必要とした上で、これらを着実に実施するために、本部の設置期間中においても、裁判官、検察官の必要な増員を行うとされております。
 今後の各年度の裁判官の具体的な増員につきましては、毎年の事件数、犯罪動向等を考えるということはもとよりでございますが、こうした推進計画のもとで、各種の制度改革の進展や社会の法的需要、司法修習生の志望動向、いわゆる弁護士任官の動向なども踏まえるとともに、これらの制度等を効率的に活用しながら適切な措置を講じていく必要があると考える次第でございます。
木島委員 総理も法務大臣と同意見ですか。一言。
小泉内閣総理大臣 法務大臣の御意見のとおりでございます。
木島委員 それで、決定的なのは、やはり予算なんですよ。これは総理の専権ですからね。
 裁判所の予算が、国全体の予算の中で全然ふえていないんですよ。これは歴史的な問題があります。資料を見てください、総理。私は、昭和二十八年、一九五三年度から十年ごとの数字をとってみました。どうですか。一九五三年は、総予算に占める裁判所予算〇・八五六、十年たった一九六三年には〇・七四四、十年たった一九七三年には〇・五九三、それから十年たった一九八三年には〇・三九六、それから一〇年たった一九九三年には〇・三九二、それから十年たったことし、二〇〇三年度には〇・三八九まで来ておる。
 これは、総理、難しいでしょう。財政が厳しいのは私わかります。しかし、配分の問題。そうしますと、やはり国家戦略として大事だ、司法。思い切ってこの配分をちょっとずらすということが必要じゃないでしょうか。非常に小さい予算ですから、そんなにふやすのは難しくないんです。一言、この数字を見てどういう印象か、それと決意をちょっと述べてください。
小泉内閣総理大臣 この表を見ますと、割合は減っていますが、額はふえているんですよ。削減している中で額がふえているということもありますので、いろいろ今後考えていきたいと思います。
木島委員 この数字を見ればじくじたるものが、総理、あると思うのはわかるので。
 先進五カ国の裁判所予算の国家予算に占める割合を最高裁にお願いして、持ってきてくれと言ったら、資料のとおりの数字しか持ってきませんでした。
 アメリカは連邦裁判所の数字しか持ってこないんですよ、国家予算に対する、〇・一九。少ないです。ドイツも連邦予算に対する裁判所予算しか持ってこないんですよ、〇・一七。アメリカとドイツは連邦裁判所と州裁判所があって、むしろ州裁判所にお金がかかっていると言う人もいるんですよ。だから、こんな数字しか日本の最高裁がつかんでいないなんというのは、全くもってのほか。
 日本と、そういう連邦と州との関係のないイギリス、フランス、見てください。国家総予算に対する裁判所予算は、イギリス〇・九三、フランス一・四八、日本は〇・三九ですよ。だから、細かいことはもう時間があれですからはしょりますが、これは、アメリカ、ドイツの州裁判所の予算がもし正確につかめれば、この数字、はね上がることは明らかですよ。やはり少ないんですよ。そう思いませんか、総理。
小泉内閣総理大臣 この表を見ますと少ないんですが、逆に、いつも裁判をすればいいのかという問題もあります。アメリカみたいに何でも裁判ざたが多ければいいという問題でもないと思います。
 そういう点については、いろいろ御意見があると思いますが、現状の司法制度をより改善していこう、改革していこうということで取り組んでいきたいと思います。
木島委員 二年前に総理がこれを受け取って、司法の充実が国家戦略だという所信を語られた。二年たったら、所信が大分忘れ去られてしまったんじゃないかという印象をぬぐえないんですね。予算が厳しいのはわかりますよ。しかし、インフラ、基本ですよ、日本の民主主義の基本です。非常に地味で目立ちません、司法というのは。しかし、日本社会を支えている土台ですよ。重要性はおわかりかと思います。
 その予算の中でも、特に大問題が、次の一覧表を見てください。国民の裁判を受ける権利を本当に保障できるかどうか、特に、所得の少ないいわゆる貧しき人々の権利が裁判で保全されるかどうかが決まるのがやはり民事法律扶助なんですね。お金のない人が本当に権利の救済のために裁判を起こせるかどうか、民事法律扶助なんです。これに対する国庫負担の国民一人当たりの金額が驚くべき数字であります。ここに一覧表に示したとおりであります。
 国民一人当たりの予算総額、アメリカですら百九十二円、イギリス二千五百八十七円、ドイツ六百六円、フランス三百五十八円、日本は、二〇〇〇年度は十七円にすぎませんでした。民事法律扶助法という法律ができて、法律で、国はこれに予算をふやせ、そういう責務が規定されて、ようやく今日、二〇〇三年度で、それでも国民一人当たり二十七円という数字でございます。
 大変すばらしい活動を、法律扶助協会の皆さんとそれを支える法律家の皆さん、頑張り抜いているわけでありますが、昨年のお話をしますと、国家予算三十数億ですが、もう九月ごろまでには枯渇してしまう。基金がなくなってしまう。だから、破産宣告したいと言っても、もうお金がなくなって受理できない、受任できないという状況が生まれております。
 昨年も、たしか六十数億予算要求したのですが、三十数億じゃないでしょうかね、そのぐらいの規模ですよ、二けたの億ですよ。これは思い切って、私は、ことしたしか三十数億ですから、来年六十億、百億ぐらいにする、これが必要じゃないでしょうか。総理、どうでしょうか。
森山国務大臣 確かに御指摘のとおり、この表によって拝見いたしましても、一人当たりの金額がよその国に比べて大変少のうございます。
 しかし、二〇〇〇年度と二〇〇三年度、わずか三年でございますが、その間にそれ自体としてはかなり大きく伸びているわけでございまして、今後も精いっぱい努力をしたいと考えております。
木島委員 法律をつくった年だけふえたんですよ。そうしたら、もうことしふえないんですよ。
 ちゃんと正確な数字を言いましょう。今年度予算は、法律扶助協会は六十六億円要求いたしましたが、ついた予算は三十四億八千八百九十万円であります。この数字でいきますと、本年度は恐らく、代理援助というのですが、四万件ぐらい来るんじゃないかと言われているんですが、半分ぐらい、秋口には枯渇すると言われているんですよ。
 総理が、総理大臣在任が長ければ、補正予算を組むかもしらぬ。そうしたら、これは枯渇しないように、大した金額じゃないんですから、きちっとつけていただくということをお願いして、時間ですから終わります。
山本委員長 次に、保坂展人君。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 私も、お金の話をさせていただきたいと思います。
 総理にまず聞いていただきたいのは、小泉内閣が発足してちょうど二カ月後ぐらいでしたでしょうか、一昨年の六月の末に、私、検察官の待遇などに関する質問主意書というものを出させていただきました。といいますのは、司法制度改革審議会で、法務省や最高裁が、検事千人、裁判官五百人と大幅増員のプレゼンテーションがあったということを聞いて、私も増員をすることには大賛成です、しかし、その給与水準がいかばかりなのかということを少し問題にしたわけです。
 その質問主意書で、各省庁の事務次官と同額以上の給料をもらっている検事、裁判官の数をお聞きしたんですけれども、当時、二年前ですが、検事で六十四人、そして裁判官で二百五十一人、計三百十五人だったんです。昨日、同じ、どうなっていますでしょうか、二年たって、こういう質問をしたところ、現在は、検事の方で六十七名、裁判官で二百六十二名で、三百二十九人。検事で三人、裁判官で十一人、計十四人ふえているんですね。
 財務省の方で、各省庁の事務次官の年収及び退職金というのはおわかりでしょうか。今、数字はありますか。――ないですか。では、それなら後ほどにして、法務省の官房長の方で数字を答えていただきたいんですが、検事総長、次長検事、東京の検事長、それから検事長、検事一号の年収総額、これは、年収総額と、その中に含まれるボーナスはどのぐらいかということを答えていただけますか。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 各省事務次官と同額以上の給与を受けている検察官は、今の御指摘どおり、検事総長、次長検事、検事長及び検事一号の俸給を受ける検事でございまして、その年収について俸給と期末手当または期末特別手当の合計額で算出いたしましたところ、検事総長が二千八百十万五千四百五十円、東京高等検察庁検事長が二千四百九十二万九千五百円、次長検事及び東京高等検察庁検事長以外の検事長が二千二百九十六万五千八百七十五円、検事一号の俸給を受ける検事が二千二百四十八万七千七百七十五円となります。
保坂(展)委員 今読み上げた方たちが事務次官以上、同等以上ということですね。
 退職金もあわせて御紹介いただけますか。現在の退職金、数字だけで結構です。
大林政府参考人 勤続期間が職員によって異なりますので、一応の例として、勤続三十五年以上で定年退職したと仮定した場合の試算について申し上げますと、検事総長が一億三百二十万四千二百円、東京高等検察庁検事長が九千百五十四万二千円、次長検事、その他の検事長が八千四百三十三万一千五百円、検事一号が八千二百五十七万五千九百円となります。
保坂(展)委員 これで終わりじゃないですからね。一億の退職金をいただいた後いろいろな天下り先もございますし、今、CAPIC、矯正協会といいまして、刑務所の作業などの品物を売っているところですが、そこにも元検事総長の方が下っておられるわけなんです。
 財務省に来ていただきました。財務省は、二年前に、大幅増員はいいけれども、これは司法制度改革で必要だけれども、やはり給与水準の見直しについて、これも同時にやってもらわなきゃ困るという意見をお持ちだったと答弁書にお書きいただいているんですね。控え目な表現です。給与制度のあり方などについての検討も必要ではないかと国会議員や関係省庁について述べた、こういう答弁が二年前です。これは、もうちょっと詳しく言っていただけないですか。現在どうなっているのか。このとき言っただけで、今はどうなんですか。
勝政府参考人 お答えいたします。
 裁判官と検察官の給与水準の見直しにつきまして、平成十三年ですかのお尋ねの質問主意書に対しまして、次のように回答いたしております。財務省主計局の担当官が財政当局の立場として、裁判官及び検察官の増員につきまして国民の理解を得るためには、増員の必要性の検討とあわせて、給与制度のあり方等についての検討も必要ではないかとの考え方を示したということをお答えしています。その後、司法制度改革審議会におきましても意見が出されまして、これは十三年六月と書かれていますけれども、現在の報酬の段階の簡素化を含め、そのあり方について検討すべきであるという意見が出されています。
 今現在は、裁判官等の給与につきましては、その職務と責任の特殊性を踏まえつつ、事務次官以上の給与を受ける者が相当数いるのではないか、あるいは判事や行政官の指定職俸給表に相当する給与を受けているなどの指摘があるというふうでございますので、さまざまな観点から司法制度改革の中で議論すべき問題だと考えております。
保坂(展)委員 総理に伺いたいんです。裁判官や検察官が身分がぐらぐらしているような待遇ではこれは困ると思います。しかし、九九年ですから今は水準がもう下がっていると思うんですが、このときの答弁書では、五十五歳以上五十九歳以下の国民の平均的な年収、勤労者のですね、五百四十六万円ほど。日弁連の調査でも、弁護士の平均年収は千五百万円ぐらい。これと比べても相当高いわけです。もちろん官舎もありますから、可処分所得ということになるとかなりの開きがある。
 抜本的な見直しなんですから、司法制度改革は。聖域があってはいけないわけで、こういうことが裁判官や検察官がなかなかふやせない一因になっているんじゃないかと私は思うんですね。見直していいと思いますが、総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 かねてより、給与あるいは退職金等で優遇され過ぎているのではないかという批判があるということは承知しておりますので、今御指摘の点も踏まえまして、見直しというものは必要だと思っておりますので、今後、国会でもいろいろな委員会等の場で御議論いただきたいと思います。
保坂(展)委員 私は、裁判所や法務省の予算、刑務所の問題も先ほどから出ていますけれども、これは全体はふやした方がいいと思っています。しかし、やはり国民の実情に合わせて、例えばサラ金に追われて本当にひどい思いをしながら大変な事件の被害に遭ったとか、あるいは加害者に転じてしまったとか、いろいろなケースが経済不況そのものの中で続発していますので、そことどれだけ近い位置に検察官や裁判官はいるのかという点に、ぜひぜひそこを注目していただきたいと要請をしたいと思います。
 実は、九九年の一月に、これは司法制度改革審議会ができる前なんですが、読売新聞が、時の中村法務大臣の構想を報道しているんですね。これは、法務省として、司法制度改革の検討事項としてまとめたペーパーなんです。
 私は総理に伺いたいんですけれども、その中に大変私共感した部分がありまして、それを紹介しますと、「検察行政の国会に対するアカウンタビリティー(説明責任)の明確化」というのをうたっているんですね。刑事訴訟法四十七条の定めなどで捜査上秘匿しなければならない事柄がございます。これと国政調査権の関係を整理してルール化すべきであるというような提言がなされているんですね。これは、司法制度改革審議会ではどうも余り議論されていないテーマなんですね。
 ここは総理も御存じだと思いますが、検察の調査活動費、いわゆる調活費という問題で、現職の検察官がインタビュー直前に逮捕されて、これは口封じ逮捕じゃないかというふうなことも言われたことがあります。最近何かこの方が本を出されたと聞きまして、やはり検察が、それは捜査の細かいことについてはだめですよ、しかし行政組織なんですからきちっとチェックを受ける、お互いがチェック・アンド・バランスをきかせるということは必要だというふうに私は思うんですね。こういった事柄について、総理の考えを聞きたいと思います。総理に伺います。
小泉内閣総理大臣 調査活動費にしても、これは秘匿しなければならない点もあると思いますが、国民の税金でありますので、適切に使われるように常に細心の注意が必要だと思っております。
保坂(展)委員 ということは、それは役所の方は問題ないということなんでしょうけれども、いささかでも疑念があれば、やはり国民が信頼できる、絶大な権限を持っていますから、そこはしっかり検証するというふうに私どももしたいと思いますが、総理はいかがですか。
小泉内閣総理大臣 こういう点についても、国会という役割も大変大きいと思います。この点についても、日ごろからの見直しといいますか、適切な使われ方についてしっかりとした議論をし、対応が必要だと思っております。
保坂(展)委員 先ほど、冤罪というお話、総理の方からも、もう本当にこれは何物にもかえがたき損害をこうむった方がいるというお話も出てまいりました。
 実は、戦後、死刑囚で、再審請求を何度もして、そして無罪になった事件が四件ございました。いずれも、獄中三十年以上、三十四年あるいは三十五年とか、あるいは二十九年、その個別については伺いません。しかし、それは無罪だったんですね。何十年という間、獄につながれてしまった。この冤罪を生む捜査の土壌について、総理、どのような認識をお持ちでしょうか。これはもう総理との議論にさせてください。
小泉内閣総理大臣 土壌、冤罪を生む土壌と言いますとちょっと語弊があると思いますが、犯罪事件の中で、全く無実の罪に問われて、不当な扱いを受けている方は歴史上かなり存在しているということは事実だと思いますし、先ほど河村議員が指摘されたような事件もございます。
 この冤罪が生じないように常に十分な配慮が必要だと思いますし、冤罪によって苦しんでいる方に対する救済の面等、いろいろ問題が多いと思いますが、要は、いかに正確な捜査が行われ、冤罪が生じないような対応がなされるかという点については、今後、十分な配慮をしていかなきゃならないと思っております。
保坂(展)委員 国会の中には数え切れないぐらいの議員連盟があるそうなんですが、比較的活発に活動している議員連盟として、死刑廃止を推進する議員連盟という、これは超党派でつくっている議員連盟なんですが、昨年五月に、欧州評議会の議員十数人が来られまして、これは参議院の議員会館の中で二日間行ったんですが、こういったセミナーを行って、衆参両院の議長や森山法務大臣にもごあいさついただいたり、かなり熱心な議論をしました。
 そうした議論の中で、これは会長が自民党の亀井静香さんなんですね。大変熱心に活動していただいているんですが、亀井さんがこんなことをおっしゃっているんですね。
 警察時代の自分の経験からすると、被疑者が逮捕され、しゃばと遮断された状態になって、縄手錠をされて引きずり回されるようなことになりますと、かなり異常な心理、拘禁性のノイローゼになってしまうことが現実には多い。羞恥心も全部見透かされ、すべてを預けてしまう、そんな状況になる。したがって、取り調べ官との関係が王様と奴隷のような心理状態になり、すべて取り調べ官の言いなりになってしまうことが多い。したがって、今の司法制度の中で、依然として、自白が証拠の王ということは変わらない。
 そうすると、冤罪でありながら、確定死刑囚になって命を奪われるということが、これは絶対あってはならないというのは、死刑に対しての考え方の一つになっておられるんですね。
 私たちはぜひ、大変重い課題で、これは日本の世論の中にも、この死刑制度、ぜひ必要だという声も多いのも知っています。しかし、他方、国際間で、やはりこの死刑をなくしていこうという議論も起きている。
 とりわけ、こういった冤罪で四人の方がこうして無実を晴らしたということが過去あったということを見ると、これはやはり慎重に、この制度自体をきっちり議論をしていくということが本当に必要だと思います。総理、いかが思われますか。
小泉内閣総理大臣 私は、冤罪と死刑廃止とは別だと思っています。
 死刑囚であれ、死刑囚でない者であれ、冤罪というのは過去にあった。これからもあるかもしれない。冤罪があるから死刑を廃止しろという議論には、私は賛成するものではありません。現代においても極めて残酷な犯罪者はいるわけであります。そういう人に対して死刑は当然だと思う国民も多数いるわけでありまして、私は、死刑制度を廃止した方がいいかというと、そうではありません。私は死刑廃止論者ではございません。
 死刑があるから残酷だと。確かに、冤罪だったら残酷であります。しかし、死刑でなくても、冤罪だったら残酷なんです。そういう点から、冤罪があるから死刑廃止という議論には結びつかないんじゃないか。現実に、冤罪でない、本人も承知し、極めて残酷な犯罪を犯した者に対して、むしろ、しかるべき刑の重さで罪を償うということがあってもいいのではないかと私は思っております。そういう観点から、死刑廃止論に賛成するものではありません。
保坂(展)委員 私は、総理が死刑廃止か否かということをお尋ねしているのではありません。
 私がさきに紹介したのは、社会をシステムとして維持していくためには、冤罪の人が仮に死刑の執行者の中に、死刑になる人の中に含まれていても、それは社会防衛上必要だという議論もあるんです。私は、それはおかしいというふうに思っています。
 問題は、今お尋ねしたかったのは、そういう議論を広く深く重ねていこうじゃないかということでございます。それについての認識をお尋ねしたわけであります。
小泉内閣総理大臣 冤罪、無実の人が罪を着せられるようなことがないように、十分な配慮が必要だと思います。
保坂(展)委員 と同時に、要するに、死刑制度について、さまざまな国民の世論がある。また、専門家の意見もある。海外の動きもあります。国連加盟国の中で死刑廃止国もふえていますし、また、これはヨーロッパ連合などが、そもそも、加盟の条件にそれを条件づけたりしている国際情勢もある。そういう中で、しっかりとした議論を取り交わしていきたいというふうに考えているんですが、そのことについて答弁いただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 死刑廃止論につきましては、むしろ、各党派超えて廃止論者もおられるわけでありますから、そういう点については、いろいろな場で議論するのは当然あっていいことだと思っております。
保坂(展)委員 積極的に存置、また廃止、またその中間はないのか、あるいは、刑罰の今の体系が本当にこれでいいのかということも含めて、議論をさせていただきたいというふうに思います。
 司法制度改革の重要な、今回の中身にはありませんけれども、大事な柱だと思って、お聞きをいたしました。
 どうもありがとうございました。
山本委員長 次回は、来る十六日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.