衆議院

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第20号 平成15年5月30日(金曜日)

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平成十五年五月三十日(金曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      荒巻 隆三君    岩倉 博文君
      太田 誠一君    小西  理君
      後藤田正純君    左藤  章君
      笹川  堯君    下村 博文君
      中野  清君    永岡 洋治君
      平沢 勝栄君    保利 耕輔君
      宮澤 洋一君    保岡 興治君
      吉川 貴盛君    吉野 正芳君
      大島  敦君    鎌田さゆり君
      中村 哲治君    水島 広子君
      山内  功君    上田  勇君
      山田 正彦君    木島日出夫君
      中林よし子君    保坂 展人君
      徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   最高裁判所事務総局総務局
   長            中山 隆夫君
   政府参考人
   (司法制度改革推進本部事
   務局長)         山崎  潮君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月三十日
 辞任         補欠選任
  太田 誠一君     宮澤 洋一君
  中川 昭一君     永岡 洋治君
  星野 行男君     荒巻 隆三君
  吉野 正芳君     岩倉 博文君
  日野 市朗君     大島  敦君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  荒巻 隆三君     星野 行男君
  岩倉 博文君     吉野 正芳君
  永岡 洋治君     中川 昭一君
  宮澤 洋一君     太田 誠一君
  大島  敦君     日野 市朗君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 仲裁法案(内閣提出第一〇〇号)
 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇二号)


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、仲裁法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君及び法務省民事局長房村精一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 次に、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所事務総局中山総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花郁夫君。
山花委員 山花でございます。よろしくお願いいたします。
 前回の続きという形になろうかと思います。前回、法案の方の第二十九条で、時効中断のところについて後日伺いますというふうに聞いた問題についてです。
 二十九条の第二項を見ますと、「仲裁手続における請求は、時効中断の効力を生ずる。ただし、当該仲裁手続が仲裁判断によらずに終了したときは、この限りでない。」とあります。仲裁の申し立ての後、仲裁の合意が取り消されたような場合には時効中断の効力がなくなるということなんでしょうけれども、例えば、仲裁判断によらずに終了したというケース、この二十九条二項のただし書きのケースでは、この時効中断効はどうなるんでしょうか。事務局長、お願いします。
山崎政府参考人 この二十九条の二項の規定によりますと、仲裁判断によらずして終了した場合にはこの限りにあらずですから、時効中断の効力がなくなるということを言っているわけでございますが、この点については、民法におきましても、裁判上の請求は訴えが却下された場合には時効中断の効力が生じないと規定されております。同じような規定ぶりでございます。
 これに関しまして判例がございまして、訴えが却下されても、訴訟の係属中はいわゆる裁判上の催告、これが日々行われているということになるという解釈から、それが終了した後六カ月以内に改めて時効中断の措置をとれば、時効中断効が維持されると解されているわけでございます。
 では、この仲裁についてはどうかという問題でございまして、これについても、権利の確定というのを裁判で行うか、仲裁で行うかという方法の差にすぎないわけでございまして、そのような同様な考え方から、仲裁手続終了後六カ月以内に訴訟提起等の時効中断措置、これを講ずることによって時効中断効が維持されるという解釈は十分に成り立つだろうというふうに思っております。ここに書き込んではおりませんけれども、解釈問題であるということでございます。
山花委員 仲裁という制度は裁判とは違いますので、恐らく、ざくっとした言い方で言うと、裁判手続と和解との間ぐらいのイメージを私は持っているんですけれども、つまり、厳格な証拠法則にのっとって権利関係を確定して、それに基づいて判断するというものではなくて、仲裁ですから、場合によっては和解に近いような形で、この辺で落としどころどうかというようなケースもあるわけですから、この点どうなるのかなと思ったんですけれども、提案する側の趣旨としては、民事訴訟に準じてということになるんでしょうか、催告としての意義を有するということで、恐らく、仲裁判断が終了した後六月以内に改めて手続をとれば時効中断ということでよろしいんだと理解をいたしました。
 ところで、前回もモデル法と対照して、「仲裁法制に関する中間とりまとめ」の過程と実際の提案がどうなったかということを質問してまいりましたけれども、モデル法で申しますと二十七条の関係ということになります。「裁判所の証拠調べの援助について」ということであります。この援助の申し立て権者について、中間まとめの段階では、これもA案、B案とあって、A案は、「仲裁廷のみが援助の申立てをすることができるものとする。」B案は、「仲裁廷のほか、当事者も仲裁廷の許可を得て援助の申立てをすることができるものとする。」A案、B案とあったわけですけれども、これはどういう検討の結果、今回のような提案になったのかということについて御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 御指摘のとおり、中間の取りまとめでは、A案、B案提示をさせていただきました。この結果、結論としていえば、本法案の三十五条一項本文と第二項でございますけれども、B案を採用したという結論になるわけでございます。
 この結論は、モデル法も実質的にこれと同様のものを定めている、それに合致しているということではございますが、その実質的理由でございますけれども、まず仲裁廷に申し立て権を与えるという趣旨は、仲裁判断をする職責を担い、その証拠調べの必要性を認めた仲裁廷自身、これにまず第一次的には申し立て権を与えるべきじゃないかということでございます。
 ただ、当事者にも申し立て権を与えるという趣旨は、例えば文書提出命令の申し立てや何かをする場合に、その文書の特定だとか提出義務の存否に関する主張というのは当事者の方がよくわかるわけでございますので、そういう詳しい事情を知る当事者にも申し立て権を与えるという方が簡便な場合もあり得るだろう、それから、迅速に判断することができるだろう、そういう場合もあり得るということから申し立て権を与えたということになるわけでございます。
 ただ、この当事者の申し立てについては、仲裁廷の同意を要するということにしたわけでございまして、これは、当事者が幾ら言っても、仲裁廷としてはそこまでは必要ないというようなものがある場合、最終的には仲裁廷が必要な証拠をどのように収集していくかということにもなるわけでございますので、不必要な証拠調べの実施の申し立てを制限できるというような趣旨から同意を入れた、こういうことです。
山花委員 そこでなんですけれども、仲裁廷及び同意を得ることを条件として当事者もということなんですけれども、最も利害関係と申しましょうか、大事な点になるのがその証拠調べの範囲、どこまでできるかということではないかと思います。
 この点についても、中間まとめの段階では、A案、B案、C案と三案ございました。A案は、「証人又は鑑定人の尋問、文書提出命令など、強制力や制裁を伴い得る証拠調べを対象とするものとする。」B案は、「仲裁廷がすることのできない証拠調べを対象とするものとする。」C案は、「民事訴訟法に定められている証拠調べ一般を対象とするものとする。」と、三案あったわけですけれども、これはどういう検討の結果、今回のような提案になったかということについて御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 ただいまA案からC案まで御説明ございましたけれども、C案はもうすべてのものということですから、ちょっとこれは除外をいたしまして、A案とB案、どこが違うかということでございますけれども、B案には、調査嘱託のようなもの、これが入ってくるということで、A案の文言からは調査嘱託、こういうものが読み切れないということでございます。調査嘱託についても、これは仲裁廷ができるという性質のものではないわけで、そこが範囲の違いでございます。
 それで、最終的に、この案文は、三十五条でB案を採用しているということでございまして、この一項を見ていただきますと、民事訴訟法の規定による調査嘱託、証人尋問、鑑定云々と書かれているわけでございまして、B案が採用されたということになります。
 この中で、当事者尋問、あるいは当事者が文書を提出する書証の取り調べ、あるいはその当事者が検証の目的物を持っていてそれを提示することができるような検証、これはもう仲裁廷の方でも当然できるものでございますので、それは除きまして、その余の証拠調べ、これを認めていこうという趣旨でございまして、こういう関係では、お互いに役割分担をして、仲裁廷でできるものはできる、できないものについては裁判所がお手伝いをする、こういう割り振りだということでございます。
山花委員 その裁判所がお手伝いをするときの要件なんですけれども、これも中間まとめの段階では、また三案あったわけですね。
 「裁判所は、証拠調べの必要性については判断せずに、援助の申立てが適法であるか否かのみを審査し、適法であれば、援助するものとする。」これがA案です。「裁判所は、証拠調べの必要性については判断しないが、援助の申立ての適法要件のほか、濫用的な請求でないかどうかといった点についても審査する。」これがB案です。「裁判所は、援助の申立ての適法要件のほか、裁判所が強制的措置に出る、あるいは制裁を課する必要があるか否かについても審査する。」これがC案ということになっているわけです。
 まずは、証拠調べの必要性であるとか適法性、こういったことについて判断するのかしないのか、これは議論の幅といいますか両極といいますか、随分分かれていたようですけれども、この点については、どういう検討の結果、今回の提案となったのかということについて御説明ください。
山崎政府参考人 中間取りまとめにおきまして、A案からC案というふうに掲げさせていただいておりますけれども、いずれにしましても、このA案からC案で、最終的に裁判所が何かをチェックすることにはなるんですが、要は、仲裁廷が必要と認めるもの、これについてはやはり仲裁廷の判断を尊重しようということでございまして、そこで、三十五条にも一項に書かれておりますけれども、「仲裁廷が必要と認めるものにつき、」という明文で書かれておりますので、まず第一次的には、仲裁廷で必要かどうかを判断していただく、それが前提となるということでございます。
 その上で、裁判所はどのような判断をするかということでございますけれども、その請求が、必要性はわかりますけれども、適法かどうか、それが濫用的じゃないかどうかという問題もあるわけでございまして、これは濫用されますと、証拠方法として、例えば証人が出頭してしゃべらなきゃいけないということにもなりますので、そういう負担を与えるということにもなり得るわけでございますので、基本的にはB案の考え方でこの条文はできていると。
 では、B案のような表現がこの法案上表現されているかということでございますが、これにつきましては、濫用的な請求ということが許されないということは書くまでもないという判断から、それはもう解釈で十分可能であるということで、このような案文になったというふうに御理解をいただきたいと思います。
山花委員 今の御説明からも、濫用的な申し立てについては、それは認められないということですが、条文上はないけれども、これは権利濫用であるとか、そういった一般的な法理の上で当然のことであるという趣旨であると理解をいたしました。
 ところで、これもモデル法の方で申しますと、二十八条の関係になります。
 「仲裁判断のよるべき準則について」ということで、中間まとめの段階では、「仲裁廷は、当事者が合意により指定した法律その他の準則を適用して仲裁判断をするものとすることはどうか。」「当事者が明示的に合意により指定したときは、衡平と善により判断するものとすることはどうか。」というように、衡平と善というのは国際私法などの言葉で出てくることがあるんですけれども、こういったことが検討された結果、どういった形で条文に反映されたのかということについて、御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 今御指摘の点につきましては、モデル法でも条項を設けているものでございます。
 この法案では三十六条に規定されるものということでございまして、ただいま御指摘をいただきました準拠法の問題については、この一項で、まず、「当事者が合意により定めるところによる。」という原則をうたっております。
 それから二項で、「前項の合意がないときは、仲裁廷は、仲裁手続に付された民事上の紛争に最も密接な関係がある国の法令であって」云々ということで、次に適用されるべき法律関係をうたっております。
 それとともに、三項に、「仲裁廷は、当事者双方の明示された求めがあるときは、」前二項にかかわらず、このような適用にかかわらず、「衡平と善により判断する」ことができるということで、国際的に認められている、今一般的に考えられている考え方をそのまま規定をしたということになります。
 まず、準拠法で、当事者が合意により定めるという趣旨でございますけれども、仲裁は当事者の合意に基づく紛争解決方法であるということから、仲裁判断をするに際して準拠すべき法律、規範ですね、これにつきましても当事者に選択させるのがまず妥当であるという考えによるわけでございます。
 それから、当事者が明示的に合意したという場合でございますので、そういうときには衡平と善によって判断をするというふうにしたわけでございますが、これは、世界的な仲裁を見ておりますと、衡平と善による仲裁というのもしばしば行われているところでございますし、また、その衡平と善による仲裁にふなれな当事者を保護するために、双方の明示的な合意、これを要求している、こういうことでございます。
山花委員 国内法で衡平と善という言葉が出てくるのは非常に珍しいケースかなと思っておりますけれども、国際私法などで言われている概念で、一般条項的なものだと思いますけれども、こういったことで判断するということのようであります。
 第四項に関係することかと思いますけれども、これも、「当事者が一国の法を仲裁判断に際し適用すべき法として指定した場合には、原則として、その国の実質法を仲裁判断のよるべき準則として指定したものと解釈することはどうか。」というような検討の結果、こういった条項になっているのだと思いますけれども、申し上げるまでもなく、仲裁は、従来ですと国際商事取引であるとか船舶の関係で利用されてきたことから、先ほどの衡平と善じゃないですけれども、いろいろな国の人々がかかわるということなんでしょうけれども、この四項立案の趣旨について御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 四項は、法律関係の適用はその前の一項から三項までに決まっておりますけれども、民事上の紛争でございますので、それぞれのところでいろいろな、世界各国でいろいろ取引が行われるわけでございますので、そういうところの適用することができる慣習があるときはそれも十分に考慮した上、判断をしなければならない、要するに実態に合わせた判断をしていこう、こういう趣旨でこの文言を入れているということでございます。
山花委員 それはそれで結構です。
 「当事者が仲裁判断のよるべき準則を指定しない場合の規律について」ということで、これもモデル法二十八条の関係ですけれども、「当事者が仲裁判断のよるべき準則を指定しない場合の規律につき、どのように考えるか。」というテーマがあって、これもA案、B案とありました。
 A案は、「仲裁廷は、相当と認める法抵触規則により決定される法に従って仲裁判断をしなければならないものとする。」B案は、「仲裁廷は、仲裁の目的たる権利又は義務が最も密接に関連している国の法に従って仲裁判断をしなければならないものとする。」
 A案、B案とあったわけですけれども、これはどういう検討の結果、今回の法の提案になったのかということについて御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 この点につきましては、今御指摘のように、A案、B案、双方の考え方があるわけでございますが、A案の考え方はモデル法が採用している規律でございます。それからB案の方は、これは最近立法例があるわけでございますが、ドイツあるいは韓国等が採用している案ということになります。ある意味では、モデル法と違う考え方をそれぞれの国で入れ始めているというものでございます。私どもの考え方は、このドイツ、韓国等の考え方、モデル法とは違う考え方を導入したということになるわけでございます。
 なぜこれを導入したかということでございますが、これは、A案ですと仲裁廷が相当と認める抵触法規規則により適用される法ということになります。抵触規則といいますと、日本でいえば法例という名の法律でございますけれども、これに従うということになるわけでございます。そうなりますと、例えば手続はどこどこの国の手続、それから実体的な効力は別の国の法律だとか、いろいろ分かれる可能性があるわけですね。そうなりますと、当事者にとっては、実体的にどこの国の法律が適用されるのか、それが非常に不明確になる、不安定になる、予測可能性がなくなる、こういうことでございます。
 そういうことから、やはり最も密接に関連する、例えば取引が行われたところ、あるいは不法行為であれば不法行為が行われて損害が発生したところとか、そういうような最も密接にその紛争に絡む、そういう密接に絡む地の法律とした方がわかりやすいということから、このような考え方を取り入れさせていただいたということでございます。
山花委員 そのほかにもモデル法との関係でいろいろテーマはあって、おおむねそのモデル法に従って今回のような法案の書きぶりになったのかなと推察をいたしますが、時間の関係もありますので、以下、モデル法には規定のなかった事項でいろいろと検討された内容についてお伺いをしていきたいと思います。
 まず、モデル法に規定のない事項ということで、仲裁人の責務などについて検討をされたようであります。つまり、仲裁人の行為規範ということで、仲裁人の責務について規定を設けるべきかどうか、もし設けるとしたらどうなるのかであるとか、あるいは仲裁人の行った民事上の責任についてどう考えるのか、こういうことが検討されましたけれども、今回、特に仲裁人の責務等については明文上ないような感じがしますけれども、この点については一体どのような検討がなされて、どうなったんでしょうか。
山崎政府参考人 確かに、中間取りまとめにつきまして、今御指摘がございましたように、仲裁人の行為規範それから民事上の責任等についてどうすべきかということを検討事項として掲げてございます。
 その後、私どもの検討会で議論をしたわけでございますけれども、その要点としては、仲裁人の行為規範あるいは仲裁人の民事上の責任、これはいずれにつきましても、当事者と仲裁人との契約内容によって定まってくるという性質のものでございまして、これを、そういうことを抜きにして一律に法律で規定するということは非常に難しいという判断に達しまして、そういう意見が大勢を占めたということから、今回の法律案には特段の規定を設けないという結論になりました。あとは、民事上の責任云々というのは解釈で行っていく、こういう判断をしたわけでございます。
山花委員 今の御説明に関連してですが、確認をしたいんですけれども、特別にこの仲裁法という中に仲裁人の責務だとかいうことは書かれていないけれども解釈でというのは、つまりは、当事者の意思解釈等もあるんでしょうけれども、民法の一般原則、つまり債務不履行だとか不法行為だとか、何か問題があったときはそちらの方で解決していく、そういうことでよろしいんですね。
山崎政府参考人 ただいま御指摘のとおりでございまして、契約があれば契約上の解釈の問題もございますし、仮に契約がないといたしましても、民事上の責任、一般の不法行為だとか債務不履行だとか、そういうようなことで処していく、こういうことでございます。
山花委員 「仲裁廷又は仲裁人による和解の試みについて」ということについても検討がされていたようであります。民事訴訟などですと、和解の勧試などはいつでもできるというような形になっておりますけれども、この仲裁のケースですとどうなるのかということについて、中間まとめの段階では、「仲裁廷は、両当事者の同意を得たときに限り、和解による紛争解決を試み、又は仲裁廷を構成する一人若しくは複数の仲裁人に和解による紛争解決を試みさせることができるものとすることはどうか。」こういったことが検討されていたようですけれども、この点についてはどうなったのでしょうか。
山崎政府参考人 確かに御指摘の点、中間取りまとめで提示をさせていただいております。
 これにつきましては、この法案の三十八条四項で、この中間取りまとめで提示した考え方と同様の考え方を導入したということでございます。当事者双方の承諾がある場合には和解を試みることができる、こういうふうになるわけでございます。
 なぜ当事者双方の承諾ということを要件にしたかということでございますが、これは、仲裁人は双方からの主張、証拠に基づいて判断をする責任はあるわけでございますけれども、和解を試みるということになりますと、和解案を提示するというのは当事者への圧力になるのではないかということ、あるいは、仲裁人が事案について見解を示すことは仲裁人の不偏、独立性と相入れない、そういうような指摘もございまして、そういうことならば、やはり両当事者の承諾があった上で和解の試みをしていくというのが妥当であろうということで、このような規定にさせていただいたということでございます。
山花委員 仲裁が最後まで行きまして、仲裁の判断が行われたといたします。これも、「内国仲裁判断は、当事者間において、裁判所の確定判決と同一の効力を有するものとすることはどうか。」ということが検討されていたようでありますが、この点について、どういった規定になったかということと、確定判決と同一の効力ということになりますと、執行力だとかそういうことなのかなと思いますけれども、趣旨などについて御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点でございますが、中間取りまとめでは、これは内国仲裁判断というふうに限定をしているわけでございますが、この考え方は、こちらの法案では四十五条一項に当たるわけでございますが、仲裁判断の承認の問題でございますが、ここでは、仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わず、仲裁判断に確定判決と同一の効力があるということを認めているわけでございます。ただ、執行を要するものについては裁判所の執行決定が必要であるということで、四十六条で別途また規定をしているということになるわけでございます。
 このような規定をした理由でございますけれども、仲裁は訴訟によらずに紛争を最終的に解決するという手段の一つでございまして、その結論である仲裁判断につきましては、裁判における確定判決と同一の効力を認めるべきであるということと、それから、外国の仲裁判断につきましても、外国判決に関する承認、これは民事訴訟法の百十八条で規定されておるわけでございますけれども、これにおきましても、承認拒絶事由がない限り確定判決と同一の効力を有すべきものとしているわけでございまして、やはり、仲裁がどこで行われようと、確定判決と同一の効力を持って紛争を最終的に解決していくものだ、そういう位置づけを承認しなければ仲裁自体が無意味になるということから、日本の国内で行われようと外国で行われようと、拒絶の事由がない限りは効力を承認していく、こういうことでございます。
山花委員 済みません、通告をしていないんですけれども、ちょっと細かなことなんですが、仲裁判断が確定判決と同一の効力を有するといったときの時間的な限界と申しましょうか、標準時というのは一体いつになるんでしょうか。例えば、民事訴訟で既判力の標準時といったときには、事実審の口頭弁論終結時と一般にされていますよね。仲裁の場合には、裁判と違って、手続でかっちりと分かれていませんから、どこになるのかなと思ったんですけれども、仲裁判断が出た時点が標準時になるというふうなことになるんでしょうか、それともその前の段階が標準時となるんでしょうか。
 つまりは、要するにある時点で、権利義務関係、一たん仲裁判断がなされたら確定されることになるんでしょうけれども、後からまた紛争が起きたときに、紛争の蒸し返しと判断されるのか、いや、新たな紛争であるかという判断をするときの標準時はいつになるのかということについて、どう考えていられるんでしょうか。
山崎政府参考人 仲裁の手続は、仲裁の判断をするときまでに提出された資料、これに基づいて判断をするということになりますので、仲裁判断がされたときということになります。
 法廷の方は、いつまで資料を出せるかということは法律で口頭弁論終結のときまでということになっておりますので、そこを基準時にしているわけですけれども、こちらの仲裁手続は、基本的には当事者が定めることにもなりますし、その足りないところは仲裁廷が定めますけれども、それほどがっちりした規定を置くと限らないわけでございますので、仲裁の判断がされたとき、こういうふうに考えております。
山花委員 ありがとうございます。
 その次、準拠法の関係についてなんですけれども、これも中間まとめの段階では、「仲裁契約の成立及び効力の準拠法について」ということで、いろいろなことが検討されています。
 例えば、準拠法については、「仲裁契約の成立及び効力の準拠法について、第一に当事者の指定する法律により、第二に仲裁地法によるものとすることはどうか。」これによって「定まらない場合について、どのように考えるか。例えば、仲裁の目的である権利又は義務の準拠法によるものとすることはどうか。」とりわけ、この当時は、「仲裁契約の方式の準拠法について」、「抵触法的処理を排除し、新仲裁法の定めによるものとすることはどうか。」この時点ではこういうふうなことが検討されていました。「仲裁可能性の準拠法について」は、これに関しては、「仲裁判断の取消し並びに承認及び執行の局面につき、法廷地法である日本法によるものとすることはどうか。」「仲裁手続の準拠法について」、「仲裁地法によるものとすることはどうか。」
 こういうことが検討された結果、特に仲裁契約の方式については、このとき、中間まとめの段階とはちょっと違ってきているようですけれども、これはどういった検討の結果、今回のような提案になったのかということについて御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 確かに御指摘のとおり、仲裁合意の成立及び効力の問題、それから仲裁の可能性の問題、それから仲裁手続の各準拠法、これにつきまして中間取りまとめで提示をさせていただいておりますけれども、これは、結論的に言えば、いずれもモデル法の規律に合わせているということになりまして、ただいまいろいろ御指摘がございましたけれども、仲裁合意の成立及び効力の関係につきましては、第一次的に当事者の指定する法律による、第二次的に仲裁地法によるもの、こういうような定めで、この法案でも四十四条、四十五条でそのような定めをしているということになります。
 それから、仲裁可能性の準拠法につきましても、法廷地である日本法によるものという規定を置かせていただいているということでございます。それから、仲裁手続の準拠法については、仲裁地が日本である仲裁にのみ適用する、こういうような規定を置かせていただいております。
 問題は、仲裁合意の方式の問題。具体的に言えば、書面によることを要するかどうかという問題に絡んでくるわけでございます。
 これにつきましては、法律行為の方式一般の準拠法について定めます法例八条という規定がございます。先ほど申し上げました法例という法律でございますけれども、これによって処理をするという考え方を採用いたしたわけでございます。この法例八条は、「法律行為ノ方式ハ其行為ノ効力ヲ定ムル法律ニ依ル」、こういうふうに書かれているわけでございます。ですから、ある仲裁合意がされた場合、それが外国で行われた場合、大体そこの規律に従う、こういうことになっていくわけでございます。
 この点につきましては、モデル法に沿った内容でございます仲裁法案の十三条の規定を外国仲裁についても常に適用するという考え方もございました。
 しかしながら、仲裁合意の書面性につきましては、仲裁合意の成立あるいは効力等の準拠法、それほど確固とした国際標準が存在するとまでは言えないんではないかということ、それから、現在UNCITRALではこの書面要件の規定について改正が検討されておりまして、早期に国際標準が確立されるという状況にはないということから、結局、各国の仲裁契約の方式についての考え方を尊重する、こういう規律にしようということから、この点については特段規定を置かずに法例八条の規定によるということにしたわけでございます。
山花委員 事物管轄の点についてお尋ねしたいと思います。
 事物管轄についても、これは中間まとめの段階では、A案として「地方裁判所に管轄を認めるものとする。」B案として「地方裁判所に管轄を認めることを原則としつつ、事項により簡易裁判所に管轄を認めるものとする。」こういった検討がされていたようですけれども、この管轄の点については、どういう検討の結果、今回の提案となったか、この点について御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 中間取りまとめでは、地方裁判所だけにするという案と、簡易裁判所にもという二つ考え方がございました。
 これは、簡易裁判所はどういう裁判所かというのは、法務委員会でも事物管轄の御審議の折に申し上げましたけれども、やはり簡易迅速に裁判を行っていくという特徴があるわけでございまして、事件的にもそれほど複雑じゃないもの、こういうものを集中的に速く行っていく、こういう性格のものでございます。
 そういうことになりますと、仲裁という、物によっては大変複雑なもの、あるいは取引に絡む、あるいは場合によっては国際的な取引の知識がなければというものもいろいろございまして、そういうことを考えていった場合には、地方裁判所に一本化した方がいいのではないか。確かに、協力を得るときに、簡易裁判所が近くにあるからいいじゃないか、それの方がいいじゃないかというふうに言われる方もおられるかもしれませんけれども、やはりこれは、同じ県内なら県内でございますので、地方裁判所の方に行っていただいて、そこできちっと判断できる裁判官のところでやっていただくという方がいいだろうということを考えまして、地方裁判所一本としたわけでございます。
山花委員 この点については、随分と細かなことがいろいろ検討されたようですが、それについては、この場でお尋ねするのは控えさせていただきたいと思います。
 次に、多数当事者仲裁ということについてお尋ねしたいと思いますけれども、中間まとめの段階ではいろいろと検討されていて、恐らく民事訴訟の話と少しパラレルに考えて議論されたのかなという印象を受けています。つまり、民事訴訟だったら、参加形態だとかそういったものがあって、途中から複数の当事者が訴訟するという形もあるわけですけれども、今回のこの仲裁法を拝見いたしますと、いろいろ議論があったのでしょうけれども、当初から多数当事者の場合についての定めとなっています。
 要するに、民事訴訟とかの対比でいいますと、民訴の場合ですと、訴えが提起されて途中から補助参加だとか独立当事者参加だとかそういう形態がありますけれども、それとの対比でいうと、今回のこの仲裁法はどういう検討の結果、こういう提案になったのかということについて御説明ください。
山崎政府参考人 確かに、御指摘のとおり、仲裁が始まりましてその後に第三者が仲裁手続に参加する場合というのは考えられるわけですね。それから、別途、また別のところで仲裁が行われておりましてそれを併合するとか、形態としてはいろいろ、観念的には考えられるところでございます。
 確かに、それを中間取りまとめでは指摘しておりました。これについて最終的には規定を置かなかったということになりますけれども、これは、既に存在する当事者あるいはその仲裁人の意向を無視して第三者が仲裁に参加するとか、あるいは別の仲裁を一緒にするということはやはりできないことになります。
 特に、仲裁は、基本的には当事者間の合意に基づいてやっていくということでございます。そうなりますと、結局は当事者及び仲裁人全員の同意あるいは合意を要するものという形になってしまうわけでございます。そうなりますと、このことを改めて規定する意味はないのではないか、みんなの合意が必要だということになれば、ですね。それは合意があればできるし、なければできないということで、特に規定を置かなくても不都合はないのではないかということから置かなかったということでございます。
山花委員 ということは、例えば民訴で言うところの訴えの併合のような形であるとか訴訟参加のような形であるとか、それはやってはいけないという話ではなくて、改めて関係当事者及び仲裁人との間で合意があればやっても構わないというものと理解してよろしいのですか。
山崎政府参考人 それはやっても構わないという趣旨でございます。それで、新しい方が入れば、もう一度手続のやり方とかそれは全部合意するはずでございますので、その合意に従ったやり方をしていただくということでございます。
山花委員 そうすると、恐らく理論的には、今までやってきたのについては一たんなくなって、新たな合意をするという形になるということでよろしいのでしょうか。それとも、つまり、今までやってきた手続を引き継ぐ形であったとしても、合意をしてやっていくことができるということなんでしょうか。ごめんなさい、これも通告していなかったのですけれども、はっきりしておかないと、時効中断の関係とか少し影響が出てくるのかなと思うものですから。
 要するに、全部真っさらにしておいて、要するに一たん終了した上で、新たな合意ができて、またそこから新しく始まるということなのか。もちろん、そういうケースもあるかもしれません。あるかもしれませんけれども、今までの手続を、流用してという言葉が法律用語としていいかどうかわかりませんけれども、流用する形態もあり得るのか。これはケース・バイ・ケースで、恐らく合意の中身によるのでしょうけれども、後者のケースというのもあり得るということでよろしいでしょうか。
山崎政府参考人 確かに、御指摘のとおり時効の問題とかがございます。両方の形態、それは当事者の合意ですからあり得るというふうに思っております。
 今まではAとBの二人で手続を進めてきた、今度Cが加わるといった場合には、今までのことは今までのこと、今後についてCを加えた場合どういう手続にするかというふうにつないでいくということも十分可能でございますし、合意によっては、では、Cが新しく入ったのだからもう一度全部やり直そうというのもあろうかと思いますけれども、継続していくやり方も当然あるということでございます。
山花委員 済みません、時間がなくなってきてしまいましたので。
 あと、仲裁人等の守秘義務についてどう考えるかということで検討されたようですけれども、この点についてはどういう検討をされて今回のような提案となったのか、御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 この点、結論的に申し上げますと、仲裁人の守秘義務の有無あるいはその内容につきましては、当事者と仲裁人との間の契約によって定まるものでございまして、法律で一律に規定を設けるのは難しいということから、規定を設けることは見送った、こういうことでございます。
山花委員 次に、これが大変大きな問題となっているわけですけれども、消費者保護に関する特則ということについて、いろいろ意見は出ておりますけれども、検討の経過など、あるいは趣旨などについて御説明をいただきたいと思います。
 まず、消費者と事業者との間の仲裁契約の効力については、消費者保護の観点ということで、これは中間まとめの段階ではA案、B案とあって、B案の中でもB案の1、2、3という形で分かれておりました。
 A案は、「消費者と事業者との間の仲裁契約については、消費者契約法第四条及び第十条等の規律に委ねることとし、特段の規定を設けない。」B案については、「消費者と事業者との間の仲裁契約の効力について、何らかの規定を設ける。」B―1案、B―2案、B―3案とあって、時間の関係でちょっと読み上げませんけれども、これだけいろいろな案があったのですけれども、どういう検討をされたのかということについて御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 消費者と事業者との間の仲裁については、今御指摘がございましたように、A案は全く規定を置かないという考えですが、B案は何らかの形で置いていく、その置き方で分かれているわけでございます。
 いずれにしても、中心的な議論は、消費者と事業者との間の仲裁合意のうち将来の争いに関するものについては、消費者は仲裁の意味を知らないということが多いわけでございますし、仮にその意味がわかっても、交渉力の格差等から仲裁合意を結ばざるを得ないことも多くなるということが考えられるということから、検討会における議論におきましては、仲裁合意の内容を問わずその効力を制限するB―1案あるいはB―2案の方向で意見が集約されていったわけでございます。
 この中で、仲裁合意を無効とするという案、これをとるのか、それから消費者に解除権を与えるという案をとるのかというところが最後に大きく分かれたわけでございます。
 これは、消費者と事業者との間の仲裁合意については、既に特定の分野について仲裁機関、建設工事紛争審査会を設置しているわけですが、そういう仲裁機関も存在いたしまして、将来の争いを対象とするものについても仲裁が現に行われておりまして、消費者にとっても有用であるとも言われているわけでございます。そういうことを考慮いたしますと、最初から無効にするというのは、現在ある実務、これは消費者にとっても有利なものもあるわけですね、仲裁として。そういうものを全部つぶしてしまうということになることから、消費者に解除権を与える、こういう案をとったということでございます。
山花委員 そのことと、「消費者と事業者との間の仲裁契約の方式等について」ということについては、これは中間まとめの段階では、A案、B案、C案、D案、E案と、大変多くの形が検討されたんですけれども、この方式の部分についても、どういった検討の結果、今回の提案となったのか、この点について御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 確かに仲裁合意について、主たる契約の契約書とは別個、独立の書面でしなければならないかとか、いろいろな意見がここに掲げられております。あるいは、事業者に説明書の交付を義務づけるかとか、そういう観点でここにその案が掲げられているわけでございます。
 結局、これにつきましては、法案の附則三条におきまして、将来の争いに関する消費者の仲裁につきましては、仲裁廷に説明書面の送付義務を課したり、あるいは口頭審理の実施義務を課し、そこで口頭による説明、こういうことをやっていくということですね。それから、消費者が口頭審理の期日に出頭しない場合とか、あるいは解除権を放棄する旨の意思を明示しないときには、消費者が仲裁合意を解除したものとみなすということで保護をする、こういう手続を設けたわけでございます。
 そうなりますと、結局、方式の規制では消費者に対する実効性のある保護が図れないということで、方式によるのではなくて、附則三条のような解除権を与える、こういうことによって逆に事業者としては、後にそれが無効になるということでは非常にむだになるわけですので、このことがあることによってきちっと説明もしていくだろうし、実務もうまく動いていくだろうということで、そこの方式についてはあえて問わないということにしたわけでございます。
山花委員 あと、「国際的な要素を含む消費者仲裁について」、これは日本の消費者保護のためにどう考えるかということで、これについてもA案、B案ありまして、A案は、「仲裁契約が日本に密接に関連する場合には、当事者の合意の有無にかかわらず、仲裁契約の成立及び効力の問題につき日本法が適用になる旨の規定を設けるものとする。」B案は、「仲裁契約の成立及び効力の問題については、新仲裁法及び消費者契約法の中の消費者と事業者との間の契約に関する規定が公序の内容となり、法例第三十三条により外国法の適用が排除され、新仲裁法及び消費者契約法の規定が適用される結果となるとみて、特段の規定を設けない。」この二つの案が検討されていたわけですけれども、この点については、どういった経過で今回の法案の形になったのか、御説明いただきたいと思います。
山崎政府参考人 結論的に言えば、法例三十三条によって処理をするという考え方にしたわけでございます。法例三十三条は「外国法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其規定ノ適用カ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スルトキハ之ヲ適用セス」、こういうことでございます。
 こういう考え方をとったということは、先ほど申し上げましたが、仲裁契約の成立あるいはその効力につきましては、附則三条の規定を置いております。それから、消費者契約法の規定が公序の内容となるということから法例三十三条により外国法の適用が排除されるということになることから、特段の規定を置かなくても不都合は生じないだろうということで、このような考え方を採用したということでございます。
山花委員 あと、仲裁費用の取り扱いであるとか仲裁人の報酬だとか、こういったことについて中間まとめの段階でかなり詳細な問題提起があったんですけれども、この点について、どういう検討がされて今回法案の形になったか、この点について御説明ください。
山崎政府参考人 費用、これも重要なポイントでございますので、中間とりまとめに掲げさせていただきました。これはモデル法には規定がないということでございます。
 これは、私どもといたしましては、法案の四十七条で仲裁人の報酬について規定を設けているわけでございますけれども、基本的には、第一次的には当事者の合意によって定めるということでございます。合意がないときは、仲裁廷がその相当額の報酬を決定するということにしたわけでございます。
 この仲裁費用につきましては、予納については、当事者間に別段の合意がない限り仲裁廷が費用の概算の予納を命ずることができるようにということにしたわけでございまして、仲裁手続が円滑に進行するように工夫をしたということでございます。
 この仲裁の費用の分担についてでございますが、中間とりまとめでは、当事者に合意がない場合には仲裁廷がこれを定めるということにしていたわけでございますけれども、この法案四十九条においては、当事者間に合意がない場合は仲裁費用は各自が負担するということで考え方が変わっています。これは仲裁廷がすべて決めていくということには、仲裁廷の負担が非常に重いということになることから、その重さを避けて、基本的には当事者が各自で払っていく、各自が負担をするという考え方を採用したということでございます。
山花委員 ところで、中間まとめの段階では消費者のことを大変問題とされていたんですけれども、労働者についてはこの段階では特に表には出てきておりません。今回のこの仲裁法によりますと、事前の合意は無効であるという規律になっておりますけれども、二つの点についてお尋ねしたいと思います。
 まず、何でこれは労働者については事前の仲裁合意が無効という規律になったのかということが一点。もう一つは、消費者の場合は解除できるという解除の法制になっていますけれども、消費者と労働者で規律に差異があるのはなぜでしょうか。
山崎政府参考人 まず、中間とりまとめのときには、消費者と事業者、この関係だけでございましたが、ここで意見募集もしている際に、各界から、労働についても、弱者強者の関係にあるんだから、その点についてもやはり別途規定を考えるべきではないかという御指摘がかなりございまして、私ども、その意見を踏まえて、もう一度検討会に諮って最終的な案にしたということ、そういう経緯でございます。
 なぜこの考え方が違っているのかということでございますけれども、労働契約の場合、仮に就業規則で仲裁条項が入っていたという場合に、雇われる側でございますので、そのときにまず嫌とは言えないだろう、そうしたら雇っていただけないということになりますので。これは、そういうやはり特殊な契約の形態にある。
 それから、では、雇われている間に、途中の段階で、採用されている段階でもいろいろ問題は起こり得るわけですので、そのときにもやはり、それでは嫌と言えるか、解除するとかそういうふうに言えるかといったら、そういう関係はやはり継続的契約ですので、それは難しいだろうと。
 そこで、やはり労働契約に関しましては、将来の争いの点については無効といたしまして、そのかわり、紛争が生じたときにどういうような紛争解決方法を選択するかというときには、もう十分自分の立場を意識しているはずでございますので、それについては有効にするということで、やはり消費者の関係と違っている。
 それから、今までも労働関係の仲裁というのは、ほとんど、実際の社会では余り利用はされてきていなかったという実態もございますし、契約の継続性、これを踏まえまして考え方を違えた、こういうことでございます。
山花委員 済みません、あと何問か残してしまいましたけれども、最後に法務大臣、仲裁制度の今回こういったものが、新たなADRのような形で導入されるんですけれども、仲裁制度の利用促進について、政府として何らかの施策を考えられているんでしょうか。その点についてお尋ねして、質問を終わりたいと思います。
森山国務大臣 仲裁の利用促進を図るために、政府といたしましては、仲裁制度の意義や新たな制度の内容を国民に広く理解していただくとともに、仲裁の実務を支える仲裁機関の充実や仲裁人の育成に資するよう、必要な施策に取り組んでいくことが重要と考えております。また、各仲裁機関等においても、新たな制度のもとで活発に取り組みがなされていくものと期待しております。
 この点に関連して、司法制度改革の一環といたしまして、ことしの四月に、仲裁を含むADRについて、関係機関等の連携の強化を通じて、その拡充、活性化を図るため、関係省庁等から成る連絡会議におきまして、当面、横断的、重点的に取り組むべきと考えられる施策をアクションプランとして取りまとめたところでございます。
 このプランには、ADRに対する国民の理解の促進とか、ADR機関等へのアクセスの向上及び担い手の確保、育成等に関しまして、関係省庁等が取り組むべき具体的な施策が盛り込まれておりまして、今後、民間の機関等とともに、連携しながらこれらの施策に取り組んでいくことといたしております。
 このような政府や仲裁機関等における幅広い取り組みを通じまして、仲裁の利用促進が図られていくことを期待しております。
山花委員 終わります。ありがとうございました。
山本委員長 石原健太郎君。
石原(健)委員 推進本部事務局長にお尋ねします。
 仲裁手続に裁判所が関与する場合はどのような場合でしょうか。また、そのように裁判所が関与することとしたのはどのような理由によるものでしょうか。
山崎政府参考人 仲裁は、当事者自治に基づく紛争解決手段であるということでございますけれども、その仲裁判断には、確定判決と同一の効力という強い効力を認めるわけでございまして、こういうものを認める以上、その適正と実効性を担保することが必要になってくるということがまず考えられます。また、そのためには、仲裁廷の構成だとか手続だとか、仲裁判断の適法性、適正さ、これが確保されていくという必要があるわけでございます。
 そこで、この法案におきましては、仲裁の自律性との調和を図りながら、裁判所が仲裁手続について援助あるいは適法性を中心とするコントロールを行うということを組み合わせているわけでございます。
 具体的には、何点か申し上げますけれども、まず通知について、所定の要件を満たした場合には、裁判所の方がお手伝いをする、当事者が行ってもなかなか受け取ってくれないとか、そういう場合には裁判所の方がお手伝いをしますという規定も置いております。
 それから、仲裁人は非常に重大な職責を担うということから、必要な場合には、当事者の申し立てによりまして、裁判所がその人選の決定とか選任等を行うということでございますし、仲裁人に一定の事由がある場合には、忌避、解任の裁判、こういうものを行うということで排除をするという後見的な役割も果たしているわけでございます。
 それから、仲裁廷に仲裁を行う権限があるかどうかというふうに問題になることもあるわけでございますが、そのような場合にも、一定の要件のもとに、仲裁権限があるかどうか、その有無についても裁判所が判断をする、こういうことにしております。
 それから、仲裁廷には第三者に対する強制力がございませんから、仲裁廷が必要とする証人尋問等の証拠調べ、これもできるようにするということでございます。
 それから、最後でございますけれども、仲裁判断の適法性を確保するため、仲裁判断の取り消しだとか執行決定の裁判をするという、こういうような制度を設けて、違法なものについては排除をしていく、こういうシステムを採用しているということでございます。
石原(健)委員 仲裁合意の際、仲裁人の数を当初は一名としたけれども、その後、仲裁人の数を三名とか五名にするということは可能なんでしょうか。
山崎政府参考人 この法案の十六条一項でその定めがされておりますけれども、仲裁人の数は、当事者が合意によって定めるというふうにされております。したがいまして、仲裁人の数を一名、三名、五名とか定めることは、いずれも可能であるということになります。
 また、一たん定めた仲裁人の数を変更するということも、両当事者の合意がある場合には、それはできるだろうということでございます。
 まず、仲裁人を選任していない段階で、その数を変更するという場合は、これはお互いに変更の合意をすればできてしまうということでございます。
 既に仲裁人を選任して仲裁手続が進行した段階にあって、数の変更の合意とともに、既に選任した仲裁人の地位をどうするかということを決める必要が出てくるという場合もあろうかと思います。
 仲裁人を留任させる場合は、当初、仲裁人を一名とする内容で成立した仲裁人と当事者との間の、その仲裁人となることについての合意が変更されるということになるため、その仲裁人の事前の了解を得ておく必要があろうかと思います。これに反しまして、仲裁人が解任されて新たな仲裁人を選任するという手続、これにつきましては、もとへ戻るわけでございます。最初からやるということと同じでございますので、この法に規定した形、これで利用していただければということになります。
 いずれにしましても、例えば仲裁人を五人とする特殊な形態、これは実際でも余り、世界の例を見てもないということから、そういうものについての規定を置いておりませんで、通常、今まで世界で基本的に行われているのは大体三人と。奇数じゃないと可否同数になってしまうおそれもございますので。一人だということになると、これもなかなか、公平な判断がきちっと担保できるかという問題もございまして、三というのを基本に置かせていただいたということでございます。
石原(健)委員 三十五条第二項では、裁判所による証拠調べの実施を申し立てるには、仲裁廷の同意を得なければならないとされていますけれども、このように仲裁廷の同意を要件としたのはどのような理由でしょうか。
山崎政府参考人 確かに、どのような証人が要るかとか、どのような証拠文書があるかというのは、当事者が一番よく知っているということにはなるんだろうと思います。そういう意味で、当事者に申し立て権を与えるということが出てくるわけでございますけれども、また、逆に見れば、証拠調べの要否というのは、元来、判断者でございます仲裁廷において決めるべきものではないかということでございます。
 当事者の自由な申し立てを認めると、不要な証拠調べについても多数の申し立てがされるというおそれもございます。そういうことを考えまして、基本的には仲裁廷がその必要性を判断して決めていくということでございますけれども、やはり、当事者は、どういう証人が必要か、どういう証拠があるかというのを一番よく知る立場にもございますので、当事者にも申し立て権を与える、しかし当事者が申し立てるときには、仲裁廷の同意を得て、本当に必要かどうかを判断してもらって申し立てる、こういうふうにしたわけでございます。
石原(健)委員 第三十八条では、仲裁廷は、当事者間に和解が成立した場合には、当該和解における合意を内容とする決定をすることができると規定されていますが、逆に言うと、当事者間に和解が成立した場合であっても、仲裁廷がその和解内容を認めないということもあるのでしょうか。
山崎政府参考人 法案では三十八条の二項でございますけれども、その内容は公序良俗に反してはならないということは、通常の仲裁判断の場合と和解でも同じだということになろうかと思います。
 ただし、通常の仲裁判断とは異なって、仲裁廷は合意の内容の形成に関与していないということが多いわけでございまして、そうなりますと、その裁量によって合意の内容を審査して、公序良俗に反することが認められるような合意については決定対象としないことができるということになりまして、してはならないわけでございますけれども、そういうことから、決定することができるということで、決定しなければならないと言っているわけではございません。排除するべきものは排除をするということで、公序良俗に反するようなものが含まれていればそういうものを排除しなければならないということから、決定することができるという文言にしたわけでございます。
石原(健)委員 第四十二条では、当事者が仲裁廷に対して仲裁判断の解釈を求める申し立てをすることができると規定されていますが、この規定の趣旨はどのようなものでしょうか。
山崎政府参考人 仲裁判断は紛争を解決するための判断でございますから、明確性が最も重要だというものでございます。しかしながら、例えば、国際的な仲裁において、仲裁人を含む仲裁関係者の日常用語と仲裁判断で用いられた用語が異なってくるという場合もあるわけでございまして、同じ概念が複数の意味を有したり、あるいは文脈によっては意味が変化したりするという場合もございます。それから、翻訳上の諸事情からも、仲裁判断がされた後に、その意味、真意をより明確にするという必要性と実益が認められる場合があるということから、当事者の申し立てによって一定の場合にその仲裁判断の解釈を示すという制度を設けることとしたものでございます。
 これは、解釈といっても、いわゆる法律の解釈、そういうものではなくて、仲裁判断の明確化のための、そこで使われている文言はどういう意味を持っているのかということを明確にする手段であるということでございます。
石原(健)委員 仲裁法第四十四条第一項各号の仲裁判断の取り消し事由はどのようなものでしょうか。わかりやすく説明してください。
山崎政府参考人 四十四条一項に、八号までですか、さまざまな取り消し事由が書かれております。簡単に御説明申し上げます。
 一号でございますけれども、これは、例えば、当事者が仲裁合意の当時、法律行為をする能力がなく、有効に法律行為をすることができなかったような場合でございます。
 第二号は、仲裁合意の成立効力は日本法によると合意されていた場合に、その仲裁合意に錯誤があって無効になる、こういうような場合ということでございます。
 三号は、いわゆる手続保障を欠く重要な例として、適正な通知がなかった場合を取り上げたものでございます。例としては、仲裁手続について口頭審理を行う場合に、その日時、場所が通知されずに手続が進められてしまって、仲裁判断に至ってしまったというような場合でございます。
 それから四号につきましては、仲裁判断の取り消しを求める申立人が、仲裁廷の行った仲裁手続において相手方の主張立証に対する反論の機会を与えられず、手続保障を欠いてしまったような場合ということでございます。
 五号でございますけれども、損害賠償についての仲裁合意をいたしたのに物の引き渡しを命じてしまったというようなものでございます。あるいは、百万円の支払いを求めたのに百五十万円の支払いを命じたとか、そういうものでございます。
 それから六号は、仲裁廷のメンバーでありますが、仲裁人の選任手続が行われていなかったりあるいは仲裁人の権限を有していなかったというような場合、それから、口頭審理を開くことが当事者間で合意されていたのに、それを開かないままその判断がされたというような場合でございます。
 七号は、例えば特許の有効性そのものの争いなどについて仲裁によって解決することはできないのでございますが、それについて仲裁判断が出されたというような場合でございます。
 それから八号は、例えば、禁制品の取引代金の支払いを命ずるような仲裁判断がなされたような場合。
 こういうようなことがいわゆる取り消し事由であるということでございます。
石原(健)委員 第四十五条及び四十六条では、仲裁判断の承認や執行決定について定められていますが、この仲裁判断の承認や執行決定とはどのようなものでしょうか。
山崎政府参考人 仲裁判断、この法案の四十五条で定められておりますが、確定判決と同一の効力を有するというものでございます。そういうことではございますが、必ずしも公的機関によって下されるものではないということから、国家によってその効力を認められるためには、日本の公序良俗に反していないことなど一定の事由がないということ、これが承認要件というわけでございまして、これが必要になるということでございます。
 このような、仲裁判断に確定判決と同一の効力を認めることを仲裁判断の承認というふうに言っているわけでございます。これは、承認については特別な手続はございませんで、具体的事件において仲裁判断の効力が問題となったときに、裁判所が承認要件を満たしているかどうかを判断するということになります。
 それから、仲裁判断の執行決定でございますけれども、これは仲裁判断に基づいて強制執行する場面で要求するものでございます。強制執行する上で、承認要件を満たしていると判断して強制執行を許可するという裁判をするということでございます。
 この法案では、仲裁判断の承認要件は、大体モデル法に従っておりまして、国際標準に沿ったものとしているわけでございます。具体的には、仲裁合意が無効である場合とか、仲裁手続が法令に反している場合、仲裁判断の内容が公序良俗に違反している場合、こういう点については承認をしないということになろうかと思います。
石原(健)委員 第四十五条第一項の括弧書きでは、仲裁地が日本国内にあったかどうかを問わないと規定されていますが、外国で行われた仲裁判断に基づいて日本国内で民事執行をすることについては不都合は生じないのでしょうか。
山崎政府参考人 債務者が仲裁判断で命ぜられた事項を任意に履行しない場合、この場合には、債務者の財産が存在する国において強制執行を行う必要があるということになります。そういう関係から、外国で行われた仲裁判断であっても、債務者の財産が日本国内にあれば日本国内で民事執行をすること、これを認める必要があるわけでございます。ただ、外国で行われた仲裁判断については、場合によっては、その内容が日本法に適合せず、日本国内でその効力を認めることが容認されない場合も出てくるわけでございます。
 それから、仲裁地が国内、国外、いずれであっても、仲裁判断は必ずしも公的機関によってされたものではないため、日本国内で効力を有するとして承認するには、日本の公序良俗に反しないことなどの一定の承認要件を満たしていること、これが必要になるわけでございます。外国で行われた仲裁判断も含めまして仲裁判断に基づいて国内で民事執行をするためには、裁判所による執行決定を得るということにしたわけでございます。
 物すごくわかりやすい例を申し上げますと、外国で行われました仲裁判断が、いわゆる損害のてん補の損害賠償に加えまして、いわゆる懲罰的損害賠償を命じているような場合、これは判例上、懲罰的損害賠償は日本の公序良俗に反するものというふうにされているため、その懲罰的損害賠償を命ずる部分については承認要件を満たさないということになるのではないかというふうにも考えられるわけでございます。
石原(健)委員 この仲裁法案は、国際仲裁と国内仲裁とのいずれをも対象としています。しかしながら、国際的な企業取引等について行われる国際仲裁と国内の一般的な仲裁とでは、紛争の規模や内容等に違いがあると思われますけれども、これらを統一的に仲裁法の対象とすることとしたのはどのような理由によるものでしょうか。
山崎政府参考人 この点につきましては、形式的な理由としては、司法制度改革審議会の意見で、国際商事仲裁も含めて国内も、その種別を問わず仲裁法の整備が必要であるというふうに要請されたわけでございます。この関係で、私どもの検討会でいろいろ検討したわけでございますが、UNCITRALのモデル法に沿って立案するということになったわけでございます。
 このUNCITRALのモデル法は、その事柄の性質上、国際商事に関する仲裁を直接の対象にしているというものでございますけれども、そこに盛られました規範、これは、国際仲裁または国内仲裁の種別を問わず、またその両者にも該当し得るという一般性のあるもの、それから商事であろうと通常の民事であろうと、そういう規範であるということで、そのどちらにも応用できる普遍的な考え方であるということから、今回、国際仲裁と国内仲裁をあわせて規定した。そのかわり、国内仲裁について、いろいろ問題があり得るものについては特例を設ける、こういう形にしたわけでございます。
石原(健)委員 この法案では、仲裁人の収賄罪の規定が刑法から仲裁法に移されるとともに、国外犯の処罰規定も置かれています。
 このように新たに国外犯の処罰規定を設けた趣旨はどのようなものでしょうか。例えば、仲裁の当事者が外国人で、仲裁手続が外国で行われたような場合についても処罰の対象となるのでしょうか。
山崎政府参考人 今回、わいろの罪の罰則規定が置かれているわけでございますが、これは刑法の方からこちらへ移したということでございますけれども、この点につきましては、この法案の三条一項という規定がございまして、仲裁地が日本国内にある仲裁に限って適用されるということでございます。したがいまして、対象とするのは、仲裁地が日本にある仲裁であるということで、このような仲裁を保護の対象とするものでございます。
 したがいまして、仲裁地として日本国内の地が定められた場合であれば、御指摘のような、仲裁の当事者が外国人でも、仲裁手続も外国で行われた場合であっても、日本における仲裁を保護する必要が認められて処罰の対象になるということでございます。
 仲裁地を我が国としても、その仲裁廷のやり方としては、仲裁の手続は外国で行うということも可能にしておりますので、仲裁地は日本に定めて外国で手続をした場合、そういう場合であっても処罰の対象になるということでございます。
石原(健)委員 終わりに、法務大臣にお聞きしたいと思いますけれども、仲裁法は明治以来今日まで改正もなく、この法案の提出に至ったわけですが、このような経過については、法務大臣としてどのように考えておいででしょうか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、明治以来の改正でございます。しかし、かねて仲裁法の抜本改正は求められてまいりまして、多くの立法論的研究がされてまいりました。
 法務省におきましても、これまでに改正作業の着手が検討されたことがございましたが、社会経済情勢の大幅な変化に伴いまして、より緊急性が認められました他の民事手続法の作業が先行して行われてきたものと考えております。
 その間、我が国においてもADRに対する認識が広まりまして、司法制度改革審議会意見におきまして仲裁法の早期整備が提言され、今般ようやく本法案を提出させていただくことになったわけでございまして、長い間の懸案に一区切りがついたというふうに考えるところでございます。
 この法案は、種々の事項について規定を整備しておりまして、わかりやすく使いやすいものになったと考えておりますし、国際的調和にも配慮しておりまして、国際的な案件にも十分対応できるものと自負しているわけでございます。
 この法案によりまして、日本における仲裁が活性化いたしまして、裁判と並ぶ魅力的な制度となることを期待いたしますとともに、今後ともそのための検討を重ねてまいりたいと思います。
 ありがとうございました。
石原(健)委員 終わります。どうもありがとうございました。
山本委員長 木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 二十七日に続く質問ですので、きょうは、法案に立ち入ってお聞きをいたします。
 最初に、法案第十三条の仲裁合意の効力の問題であります。
 十三条によりますと、「仲裁合意は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者が和解をすることができる民事上の紛争(離婚又は離縁の紛争を除く。)を対象とする場合に限り、その効力を有する。」とありますので、この解釈についてお聞きします。
 何点か聞きますが、順を追って聞きます。
 まず第一に、これは、行政事件訴訟法の対象たる紛争は除外されるんですか、仲裁合意の対象ですか。
山崎政府参考人 行政事件訴訟法の対象となる紛争でございますけれども、これは当事者が和解できる紛争ではないということから、仲裁の対象にはならないと考えております。
木島委員 そうしますと、国や地方自治体や独立行政法人が一方の当事者となる仲裁合意、行政事件訴訟法の対象ではない、例えば、国が発注する契約、請負契約なんというのは私的契約ですね、それから国家賠償請求訴訟の対象となる損害賠償請求事件、これらも行政事件訴訟法の対象ではありません。国賠訴訟の対象であります。
 そういう争いについては、一方の当事者が国、地方公共団体、独立行政法人であろうとも公的団体であろうとも、いわゆる民事裁判の対象でありますが、こういうものは仲裁合意の対象と考えていいんですか。
山崎政府参考人 御指摘のとおり、国、地方自治体ですか、それが当事者になるというものにつきましても、その対象が民事上の紛争であって和解ができる紛争であれば有効であるということでございます。今御指摘がございましたけれども、国賠の事件、これでも和解できますので、それは対象になり得るということでございます。
 先ほど言いましたように、行政行為については、そのもの、行政事件訴訟法の対象になるものについては和解ができませんので除かれますけれども、それ以外のものはオーケーだということでございます。(木島委員「契約はどうでしょう」と呼ぶ)契約の問題は当然入ります。対象になり得るということでございます。
木島委員 そうすると、公的機関といえども、契約は当然、契約の手続は談合防止のためのいろいろな規制がありますが、一たん契約をした請負契約、その他損害賠償の対象たる国賠事件、そういうものであっても、国としても、場合によっては、裁判を受ける権利の放棄である、そういう本質を持つ仲裁合意が締結可能だということですね。
 それでは、次に聞きます。
 この法案第十三条では、離婚、離縁の紛争は除外しています。それはなぜでしょうか。
 もう一点ついでに聞きます。人事訴訟手続法や家事審判法の対象たる紛争は、離婚、離縁に続いて、同じようにすべて除外されるんでしょうか。
山崎政府参考人 この離婚、離縁の紛争について仲裁適格がないとしたのは、結局、身分関係の変更はあくまでも本人の意思にゆだねることが望ましいということから、第三者が身分関係の変更について最終的な決定権を持つべきではないというふうに考えたことからこの除外をしているということでございます。
 人事訴訟法案でも、離婚、離縁について裁判上の和解をすることができるというふうになりましたけれども、裁判所が適当な和解条項を定めて和解をするという民事訴訟法の二百六十五条がございますけれども、この適用はやはり除外をされているということでございます。
木島委員 いや、適用除外はいいですが、では、人事訴訟手続法の対象たる紛争、家事審判法の対象たる紛争、たくさんありますね。いろいろありますね。そういうのは除外されるんでしょうか。仲裁合意ができた場合には、そういうのは第三者たる仲裁人の判断にゆだねていいんでしょうか。
山崎政府参考人 一般的には、やはり和解をすることができるという権利には当たらない。
 ただ、今度、離婚、離縁については人事訴訟法案で和解ができるという形にしたわけでございますが、そのときに、やはり全部をゆだねてしまう和解はだめと、みずからの意思で和解をするというならいいけれどもということで、あえて書いたわけでございますが、一般的に身分関係のものについては和解になじまないということでございます。
木島委員 確認します。そうすると、全部除外されちゃうということですか。親権者をだれにするかなんというのも、全部この仲裁合意から排除されるということですか。では、全部そうですか。人訴や家事審判法の対象のものは全部もう和解になじまないと断言できるんですか。
山崎政府参考人 原則としてそれは対象にしないということだろうと思いますが、ただ、家事審判法の中でも、どういうものが紛争性があって、当事者の和解に、処分になじむというのはちょっと個々に検討しなければならない問題はあろうかと思いますが、原則としては対象にならないということでございます。
木島委員 非常に大事な部分が答弁できませんね。人訴、家事審判法対象の紛争は幾らでもあります。今、抽象的な答弁しかできないんですね。原則として和解になじむかどうかで切り分けると。
 私に与えられた時間はまことに短いですから、その大事な部分がいまだに答弁できないのはいかがかなと思うんです。では、この問題は保留して、もう次の質問に移りましょう。
 非訟事件手続法の対象たる非訟事件に関する仲裁合意は有効でしょうか、無効でしょうか。
山崎政府参考人 これにつきましても、非訟事件の性格上、裁判所等が後見的な形で、当事者間で判断をしていくと。ですから、これについても原則としては対象にならないということでございます。
木島委員 では、念のために聞きますが、例外としては対象になる非訟事件手続法の紛争もあると。例外というのはどんなものが考えられますか。
山崎政府参考人 考えられるとすれば、借地借家で、借地非訟の事件があろうかと思いますけれども、その場合に、賃料をどのぐらいにするかとか、そういうものはございます。これは、最終的には裁判所の決定にゆだねるということになりますけれども、これについては、どのぐらいにするかというのは当事者間である程度お互いに決めていけるというような性格のものではないかというふうに考えられます。
木島委員 前回も私は指摘をしましたが、仲裁の本質というのは、両当事者間の裁判を受ける権利を放棄するという合意です。憲法三十二条でしたか、裁判を受ける権利が基本的人権の一つとして保障されている、それをお互いの当事者が放棄する、全部第三者の仲裁人にゆだねるという大変重大なものを秘めたものがこの仲裁制度なんですね。
 ですから、こういう紛争は仲裁の対象になる、こういう紛争についてはなじまない、それはあくまでも最終的には裁判所が決めるもの、あるいは、国家はこういう紛争については私的第三者にゆだねられないというのがあると思うんですよ。しかし、その区分けがいまだに鮮明でないということは、まことに私は憲法三十二条との絡みで問題だということを指摘だけしておきたいと思うんです。
 借地非訟事件、確かにあります。今の答弁ですと、賃料ぐらいは仲裁合意の対象になるんだなんということになりますと、まさに一番大事な部分が、裁判を受ける権利との関係で仲裁合意の対象だという答弁ですが、まだもうひとつあいまいですね。
 では、次に聞きます。宗教団体とか政治団体とか学校法人とか業界団体とかNPOなど、組織の構成員と組織そのものとの民事上の紛争、これは仲裁合意の対象でしょうか。特に仲裁人が組織の一部の人間が構成するような場合、大体そうなると思うんですね、もしこれがそういう組織対組織の構成員との争いまで仲裁の対象だとなれば、仲裁裁定というのは大体組織が決めてしまうと思うんですね。そういう場合の仲裁合意は有効になるんでしょうか。
山崎政府参考人 団体の構成員とその団体の間の紛争、これは私も事件としては経験したことはございますけれども、これが民事上の紛争に当たるという限りは仲裁適格があるということだろうと思います。その間で例えば損害賠償の関係で争いになるということがあれば、これは民事上の紛争ということになろうかと思いますが、当然対象にはなるということでございます。
 それからもう一つ、今御指摘の、団体と構成員との間の紛争について、構成員が仲裁人となるというような場合ですか、そういう御指摘があったかと思いますが、それをもって仲裁合意が当然に無効になるということではないと思いますが、その仲裁人について、やはり独立性あるいは公正性を疑うということに、そういう事由に当たるということであれば忌避の原因になって、仲裁人は忌避される、こういう関係にあるというふうに思っております。
木島委員 そうすると、組織とその組織のメンバーとの紛争について、民事上の争いなら仲裁合意は有効だと。そうすると、組織対組織を構成する個人との争いがいろいろあるんですね。
 規約に反して除名された除名処分の有効性を争う紛争、そういう場合は、これは民事の争いだから仲裁合意は有効だと。事前の仲裁合意も本法は有効ですから、その組織の構成員になる段階で大体サインさせられるんでしょう。そういう除名処分が有効、無効をめぐる争いなんかの、仲裁合意が有効か無効かの切り分けの基準というのは何なんでしょうか。
山崎政府参考人 団体内部といっても団体でいろいろありまして、団体内部のその争いが法律上の争訟に当たるかどうかという問題がまず前提としてありますが、争訟に当たるということになれば、それはみんな対象になっていくということだろうと思います。
木島委員 これは非常に難しい問題を秘めた質問ですから、私はこれ以上立ち入りません。
 宗教上の教義なんかを構成員と宗教団体とが争っている場合に、それで除名処分になったときに、果たして民事裁判が立ち入れるのかという民事裁判の根本問題がありますから、それと同じ問題が、この仲裁合意が有効か無効かもあるということだと思うので、大変難しい問題ですから、もう立ち入りません。
 しかし、十三条の、どういう仲裁合意が有効か無効かをめぐっても、非常にあいまいなグレーゾーンがたくさんある。ほんのわずかな質疑を通じても、まだ未解明の分野がたくさんあるということだけ指摘して、次の質問に移ります。
 仲裁人の選任、特に、仲裁人の公正性、独立性の保障の問題であります。
 前回も私指摘しましたが、仲裁の本質が裁判を受ける権利の放棄でありますから、選任される仲裁人の公正性、独立性の担保は特に重要かと思います。
 そこで、本法案は、十七条の規定によって、裁判所による選任の場合でも公正性、独立性が大事だと規定されております。それから十八条の忌避原因の中にも、公正性、独立性を疑うに足りる相当な理由があるときは、当事者は仲裁人を忌避できると、大変大事な規定があります。
 そこで、端的に聞きます。公正性、独立性とはどういう概念でしょうか。
山崎政府参考人 一般に公正とは、仲裁人が公平で、いずれの当事者にも偏らず、また偏っていると見られるような行為をしないことをいうというふうに考えられます。それから独立とは、客観的に見て、仲裁人が、当事者とそれに近い者、あるいは紛争対象、または自己の偏見による束縛を受けない状況をいうというふうに解釈されております。
 ここでは、条文上、ごらんをいただければおわかりのとおり、「公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるとき。」ということで、疑う理由があるときと少し広がっておりますので、対象はかなり広く網羅をしているということでございます。
木島委員 そうしますと、現在ほとんど機能してはいないんですが、仲裁の仕組みがあるものとして、日本海運集会所とか不動産適正取引推進機構とか指定住宅紛争処理機関などがあります。こういうのを民間団体型仲裁機関と概念上公称しているようであります。それ以外に、公が設立しているものとか弁護士会などが設立している仲裁センターとかありますが、それはともかくとして、民間団体型仲裁機関がある。
 では聞きますが、この業界の構成員たる事業者が締結するいろいろな契約、その契約に関する一切の紛争はこの仲裁機関に仲裁を一任するというような約款があって、それにサインをしてしまった場合に、このような仲裁合意は、あるいはこのような仲裁機関は公正性、独立性があると言えるんでしょうか。今答弁では、公正性の概念はいずれの当事者にも偏らずとありましたね。大変危惧されますが、どうでしょうか。
山崎政府参考人 公平性と独立性でございますけれども、これは仲裁人の忌避の原因ということになりますけれども、仲裁機関の問題ではないということでございます。
 御質問のような仲裁機関で仲裁を行う場合に、選任された当該仲裁人、これについて公平性あるいは独立性の疑いがあるという相当な理由があるかどうかということは、個別にその判断をされるということで、一概にそういう仲裁機関であるから一切だめということではないということでございます。
木島委員 どうですかね。そういう仲裁機関というのは、大体業界がつくっているんでしょう。不動産適正取引推進機構だってそうですよ。指定住宅紛争処理機関だってそうですよ。民間団体型。民間団体型というのは、結局業界がつくっている仲裁機構でしょう。そういうところには仲裁人の名前がずっとエントリーされていると思うんですよ。そういうものから指名された仲裁人がなると思うんですよ。そういう約款がつくられていると思うんですよ。そういうことを枠組みとしているような状況のもとに、ある業者がその業界に加盟している業者と契約をする。将来の争いについてもこういう枠組みの仲裁に従うんだというようなのが一項目入っていたと。
 そうすると、選任された個々の仲裁人が公正か独立かということは確かに今答弁されたとおりかもしらぬけれども、その枠組みそのものが業界にすっぽりと依存しているような場合には、全体が公正性がないんじゃないかと思うんですが、それは違うんですか。
山崎政府参考人 先ほど答弁したとおりでございますが、例えば、今委員の方から御指摘はございませんでしたけれども、建設工事紛争審査会がございますが、これは建設業法で定まっておりますけれども、この中には、これは法律で決めているわけでございますけれども、必ず弁護士が一名仲裁人に入らなければならないという規定を設けたりしているわけでございまして、そういう意味では、ある程度中立な、きちっとした判断ができるようにという配慮もしているわけでございます。
 ですから、今御指摘いただいたようなものについて、ちょっと今個々にどういう規定になっているか、直ちに今ここに持ってはおりませんけれども、その選任の仕方によっては中立的な方をきちっと入れてやるということも可能なわけでございますので、そういう機関がそういうものであるからだめということにはならないというふうに考えております。
木島委員 調査室が我々に出してくださっているこの仲裁法案の解釈によると、三つに分けているんですね。
 今答弁された中央建設工事紛争審査会、これは、区分は行政型と区分しているんですよ。船員労働委員会、労働委員会、公害等調整委員会、これは行政型だと区分されているんです。私がさっき指摘した日本海運集会所とか不動産適正取引推進機構とか指定住宅紛争処理機関は民間団体型。また、最も役割を果たしている民間団体型には国際商事仲裁協会がある。それはいいんです。それと別枠で、弁護士会型とあるんですね。
 ですから、今事務局長が答弁した中央建設工事紛争審査会というのは、確かに建設業法に基づく行政型であります。それだからこそ、仲裁人の一人は弁護士でなきゃいかぬという、公正性というんですか、担保されていると思うんですよ。
 しかし、もし今度の仲裁法が成立をいたしまして動き出しますと、私は、あらゆる業界が、これはいい制度ができたというので、自分たち業界が主導して民間団体型の仲裁機構がつくられるんじゃないかと。それは余り公正じゃないかもしらぬと。
 そういう業界に加盟する大手企業が業界に加盟していない外の企業と結ぶ契約、あるいはその業界に加盟している大手企業が結ぶ下請契約、そういうものまで全部仲裁契約が盛り込まれていきますと、公正という点の根本的な疑念があると私は思うんですが、それはどうでしょうか。
山崎政府参考人 もしそのような、今御指摘のような仲裁機関をつくるということになったら、それは仲裁機関の自殺行為にも等しいことになるわけでございまして、そういうことが本当にもつのかと、世の中で。そういうことを御理解賜りたいと思います。
木島委員 自殺行為と言うけれども、現に、不動産適正取引推進機構、これは民法上の公益法人ですよね、民間団体型。所管官庁、一応国土交通省とあります。確かにこれは、平成十二年度を見ましたら、受理件数、仲裁ゼロ、判断件数、仲裁ゼロ、こんなのはもうへんぱだから使われていないということかもしらぬですね。
 そうすると、今の答弁、大変大事だと思うのです。業界が勝手に、この法律ができて自分たちの都合のいい仲裁機構をつくり上げる、そして、その業界に加盟する大手企業が下請なんかと取引するときに、その仲裁機構を使うんだなんという仲裁契約をもし盛り込ませたとすれば、それはまさに自殺行為だから、そういうのは、仲裁契約は無効というか、取り消されるべきだと私は感じますが、それだけ指摘して、次に移ります。
 仲裁判断の取り消し、四十四条、不承認、四十五条についてお伺いします。
 法案四十四条二項は、どういう場合に仲裁判断を取り消すことができるかについて、こう記載しています。四十四条二項、これは、「仲裁判断書の写しの送付による通知がされた日から三箇月を経過したとき、又は第四十六条の規定による執行決定が確定したときは、」仲裁判断の取り消しの申し立てができないという条文であります。
 どういう意味なんでしょうか。二つ並べているんです。仲裁判断の通知があってから三カ月経過した場合、または執行決定が確定した場合。どういうことですか、この条文は。
山崎政府参考人 まず、仲裁判断書の写しの送付による通知がされてから三カ月、これは明らかであろうかと思いますが、問題は、執行決定、この申し立てがされてその裁判が確定したときということでございますが、この取り消しの判断と、それから執行決定の除外事由、これがほぼ同じような事由を掲げているわけでございまして、そちらの執行の判断の中できちっと主張すべきものは主張できたはずでございます。そういう意味で、執行決定が確定した場合には、そこで主張すべきであったので、これをここで改めて主張することはできない、こういうふうにしているわけでございます。
木島委員 私の問題意識は、こうなんです。この条文の解釈なんですが、そうすると、こういうことと聞いていいですか。仲裁判断の通知から三カ月経過してしまっても、執行決定を求める裁判が行われ、そして執行決定確定までは不利な仲裁判断を受けておった方は取り消しを求めることができるということですか。通知から三カ月たってしまったけれども、まだ幸いにして執行決定の裁判中はその裁判の中で抗弁として取り消しの主張ができる、そういうふうにこの条文を読むんでしょうか。
山崎政府参考人 先ほどの御質問にちょっと加えさせていただきますけれども、結局、判断の矛盾を避けるという意味で、執行決定の方で判断をされたものについてはそれに従う、こういう考えを採用しているということでございます。
 それから、今御質問ございました、三カ月経過した場合であっても執行決定の裁判をまだやっているという場合でございますけれども、これは、その場合でもやはり三カ月は三カ月で時期が来ますので、その理由は、執行決定を求める裁判の中で、取り消し事由と事由を同じくする執行拒否事由の有無について裁判所の判断を求める、その中で求めてください、こういうことになります。
木島委員 そうですか。そうすると、救済可能なんですね。抗弁として、私はこんな不当な仲裁判断を受け取ってしまった、そして三カ月たっちゃった、しかし幸いにして執行決定がまだ裁判中だと。その裁判の中で、こんな不当なものは取り消してほしいということが可能だということですね。これは、一定程度救われる気分がします。
 ところが、では、何で本法は通知の日から三カ月を経過したときはもう取り消しができないようにしてしまったんでしょうか。現行法は、たしか、当事者が取り消しの理由を知りたる日より一カ月の不変期間は取り消しができると規定していたんじゃないでしょうか。執行判断の通知が来ても、当事者が本当に取り消し事由があるのかないのかわからないような場合には、取り消し申し立てなんかできるはずないじゃないですか。私は、現行法から見て、これは大変な当事者にとっての不利益な変更だと思わざるを得ないんですが、何でこんな規定にしたんですか。
山崎政府参考人 現行法では確かに御指摘のような規定を置いていると思いますけれども、今回このような規定を置いたということでございますけれども、これは、仲裁判断後、当事者間の権利義務関係、これの早期安定のためということでございまして、執行決定の裁判が確定した場合に取り消しの申し立てができないとしたのは、裁判所によって取り消し事由と同一である執行拒否の事由の有無について判断が示されたものでございますので、改めて不服申し立て等を認める必要がないということでございます。そのような早期安定のために期限を付しているということでございます。
木島委員 早期安定のためと言うけれども、仲裁判断の通知が来た、自分に不満の仲裁判断だった、しかしどうも取り消しを求める理由が見当たらないような場合に、取り消し裁判を起こす人はいないですよ。それでも三カ月たったらもう救済できないというんでしょう。それは、現行法は違いますよ。取り消し事由を知ったときから一カ月取り消しの申し立てができる。これは、絶対に現行法の方がいいですよ。早期に確定するというのは、だから私言うんですが、力の弱い者が不利な仲裁判断を受けたときに確定を急ぐという、非常に力の強い者に沿った法案じゃないかと思えてなりません。
 ではもう一つ、何でこれは取り消しだけ法律に規定したんでしょうか。取り消し事由が八項目書かれております。これが重大な場合は、仲裁判断の無効と、無効確認の裁判を起こしてもいいじゃないですか。日本の法体系は基本的にそうですよ。そういう場合は三カ月過ぎても無効確認の請求ができるんです。なぜそういう救済規定をこの法案はつくらなかったんでしょうか。力の強い者におもねたんじゃないでしょうか。
山崎政府参考人 仲裁判断に承認不許とすべきような事由があるという場合に、これは仲裁判断、当然無効であるということもあり得るわけでございまして、その場合には、別の訴訟において、仲裁の対象となった権利関係の確認を改めて求めるということは許されるということになろうかと思います。
木島委員 そうですか。仲裁無効がこの法律には書いていないけれどもできるということですか。はい、大変結構なことであります。
 時間が来ましたから、最後に一点。仲裁費用、先ほども質問ありましたが、一点だけ聞きます。仲裁人の報酬は合意によると四十七条にあります。合意のないときは仲裁廷が決定するとあります。「相当な額」と書いてあります。「相当な額」とは何でしょうか。これが余りに高いという不服があるときにはどうなるんでしょうか。それだけ聞いて、私は質問を終わります。
山崎政府参考人 「相当な額」というのは、仲裁廷が相当額を定めるについて過大な額であってはならないということ、それから、一般的には事件の規模、あるいは難易、労力、手続の期間、その他の類似の事例における額、こういうような事情を総合して勘案すべきものということになります。これは、大体通常の場合は、仲裁人の費用を予納していることが多いわけでございますが、もしそれについて過大であるということになれば、これは民事上の手続で、不当利得返還請求ということで対応していくということになろうかと思います。
木島委員 終わります。
山本委員長 保坂展人君。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 前回の審議の中で、国民がどのぐらい仲裁の制度を、これまでもあったわけで、これから幅広く使っていただけるようにということなんでしょうけれども、そもそもどのぐらい知っているんだろうかということをお尋ねいたしました。そのときには事務局長も余り多くないのではないかということでしたが、何か見つかったでしょうか。どうですか。
山崎政府参考人 前回御指摘をいただきまして、いろいろ探しました。しかし、ぴたっとしたものは出てこなかったというのが結論でございます。ただ、若干それに近い調査をしたものがございますので、ちょっと御紹介をさせていただくということにしたいと思います。
 これは、平成十四年の五月に、消費者問題におけるADRに関する意識調査、これが、内閣府の国民生活局による国民生活モニター調査ということで実施がされております。
 そこで、これは、仲裁に限らず裁判外紛争解決手段、いわゆるADRと広くとらえているわけでございますが、ADRまたは裁判外紛争処理機関という言葉について見聞きしたことがなかったというふうに回答した者は五八%、見聞きしたことはあるが内容はよく知らなかったとする回答、これを含めますと、九二%はそういう状況である、八%の方は知っていた、こういうような状況でございます。
 そのほか、仲裁について直接問うわけではございませんけれども、仲裁を手がけております弁護士会の仲裁センターでございますが、これを知っているかという問いに対して、知っているとの回答は約半数、四三%程度であったということでございます。
 そのほか、若干だけ御説明をさせていただきますが、紛争解決の解決方法自体、これを問う質問でございますけれども、本人同士が話し合いを尽くす解決を求めるという回答が四一%、これは一番多かったわけでございますが、法令、判例等に基づく解決を求めるという回答が三六%、それから、判例とか法令等にとらわれず第三者に判断をゆだねる解決を望む回答が一九%、こういう状況で、これを仲裁に投影しますと、余りよく御存じでない、あるいは、そこに判断をゆだねるということで意識をされている方も多くない、こういう状況をあらわしていると思います。
保坂(展)委員 森山法務大臣に伺いますけれども、今の答弁で、ADR自体を、言葉も知らなかったという人と、聞いたけれども中身は知らないという人を合わせると九二%ですか、かなり多くの人がADR自体を御存じない、また、仲裁についてどのぐらい認知しているか調査もないということ自体も、また一つの水準をあらわしているかと思います。
 でも、一方、仲裁手続に入って、これを終えてしまえば、最初のところでそういう契約をしてしまえば、これは消費者とか労働は除外されていますけれども、小企業とかそういうところは除外されていません、裁判を起こす権利はなくなるわけですから、かなりこのことは、二つの意味で、仲裁制度を使って解決をしたらどうですかという側面と、逆に言うと、それを使わないまでも、そういう契約をするときに、そういう制度ですよということはかなり周知徹底しなければいけないと思いますけれども、いかがですか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、このような制度、今まであったことはあったんですけれども、長い間余り使われないままに過ぎてまいりまして、この際ということで、新しい法律を制定するわけでございますから、これは、使いやすくて皆さんから便利であるというふうに評価されるようになって、広く理解され、利用していただくというふうにならなければいけないわけでありまして、そのためには、いろいろな面からの広報がとても必要だというふうに思っております。
 これに関連して、ことしの四月には、仲裁を含むADRについて、関係機関等の連携の強化を通じてその拡充、活性化を図るために、関係省庁等から成る連絡会議におきまして、ADRに対する国民の理解の促進とかADR機関等へのアクセスの向上等に関して、当面、関係省庁等が横断的、重点的に取り組むべきだと考えられる施策をアクションプランとして取りまとめたところでございまして、今後も、民間機関等とも連携しながら、これらの施策をいろいろと進めて努力していきたいというふうに思っております。
保坂(展)委員 仲裁人の選任の仕方について聞いていきたいと思いますが、当事者の合意がない場合は三名ということになっています。これについてなんですが、これは十六条二項ですね。そして、その当事者の合意がないときの三人の決め方なんですが、それぞれ一人の仲裁人を選任することができる、そして、相談、合議によってもう一人選任できない場合は、裁判所が選任するものとする、こういうふうになっていますね。十七条の二項でございます。こういうふうになっている理由はどういうことなんでしょうか。
山崎政府参考人 現行法の仲裁法でございますが、これにおきまして、特に当事者で合意していなければ、仲裁人は二名ということになっております。これは、AとBが紛争があったとして、それぞれが一名の仲裁人を選ぶという形になっております。だから、みずから一名ずつ選ぶというのは、通常の考え方でございます。
 現在の法律は、その後どうなるかということなんですが、二名ですから、そうなりますと、仲裁判断に至るときに、可否同数ということが当然出てくるわけでございます。その場合には、仲裁がそこで終了してしまうという制度を設けております。これでは、せっかく仲裁をやって、最後は何もならないということでは、これは結局御利用いただけないということ、これがまず基本にあろうかと思います。
 それから、今、世界の仲裁の主流は、やはり三名で行っております。これは、今、もともとの考え方は、両方がまず選ぶということ、それから、この両者で合意をしていただいて第三の仲裁人を選んでいただくということは、非常に合理性があろうかと思います。
 ただ、ここで、それぞれA、Bの両方が選んだ者は、なかなか仲裁人、合意できないということになれば、仲裁が進まないわけですね。ですから、そういうところで、裁判所の方がお手伝いをして選任する、こういう考えによるわけでございます。
保坂(展)委員 前回聞いたんですけれども、先ほどの内閣府のアンケートでも、仲裁調停を行う者の中立性というのは非常に重要だと六七%の人が答えています。実際、法律にも、いわば公平で中立であることということに反する場合は忌避ができるというふうになっています。
 今、事務局長がお答えになったように、それぞれの当事者が依頼できるわけですから、そして、その依頼できる範囲というのは、その顧問弁護士とかそういう歴然たる関係はだめだけれども、高校時代の同級生であるとか、あるいは、もと会社で働いていた知り合いだとかいうような方でも依頼できるわけですよ。そうすると、日本社会の常として、どうでしょうか、頼まれた仲裁人の方は、ではお役に立てればというふうに考えるのが世の常というような気がするんですけれども、それは、公平性、独立性を疑うということの、この条項とぶつかってきませんか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘の点、それぞれが選ぶ仲裁人、これに関しても、独立あるいは公正なものでなければならないということは当然の前提になっておりますので、そこでもし疑われるような状況があれば、当然、相手方から忌避の申し立てが出てくるだろうと思いますし、また、この法案の十八条の三項で、「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実の全部を開示しなければならない。」ということを設けておりまして、やはりそういうものがあれば、きちっと開示をしていただく、その上でまず判断をしていただく。それがもし不幸にしてなかった場合には、後で忌避の問題、こういうことになろうかと思います。
保坂(展)委員 前回聞いたことですが、例えば高校時代の同級生だったとか、もと同じ会社で働いていたとか、一緒におみこしを担ぐという趣味があったとか、だって、そもそも知っている人じゃないと頼めませんよね、そうでない機関で紹介をしてもらうということもあり得ますけれども。今言ったような事実というのは、仲裁人が開示をしなければならないことに含まれますか。
山崎政府参考人 ただいま御指摘のような関係にあるから当然公正じゃないとは言えないと思いますが、周りから見ればその疑いを生じさせる理由として考えられることもありますので、それはやはり開示すべきだろうと思います。
保坂(展)委員 当事者がこの仲裁の手続について、これは大企業と零細企業でもいいし、個人と大きな企業でもいいですけれども、そういったことで仲裁の手続に入るときに、片方はもう本当にその手続を熟知した、当事者自身もプロの法務担当の方などが出てくるという場合が想定されますし、また、本来そうであってはいけないんでしょうけれども、仲裁人もベテランの方が、どちらかというとその企業が選任した仲裁人の方が、ベテランの方が出てくる。そしてもう一方の全く何も知らない当事者となった一市民の側は、手続についてよくわからずにだれかを選任する。そうすると、この仲裁手続の理解について雲泥の差がある。そういう場合には、まず手続についてどうやってその仲裁人に知っていただくのか。その辺のことはどういうふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
山崎政府参考人 御質問はあれですか、仲裁人にその手続をどのように知ってもらうかと……(保坂(展)委員「知らない人がなった場合」と呼ぶ)知らない人がなった場合ですか。
 まず、これはいわゆる裁判官と同じような役割を果たすわけでございますので、もし本当に知らない方は、依頼されてもそれはお断りになるんではないでしょうか。そういう法的な考え方、思考、行動をある程度できる方でないと、現実になったところで何もできないということになりますので、そこの最初の前提が少し違うのかなと私は理解をしております。
保坂(展)委員 それではお聞きしますけれども、事務局長、この仲裁人になるのに年齢制限はございますか。
山崎政府参考人 確かに、御指摘いただくと、何も設けておりませんので、年齢、職業、その他のこと、何も設けておりません。
保坂(展)委員 そうすると、ちょっと考えにくいケースだと言わないで、こういう法律というものはあらゆる事態を想定しなきゃいけないので、答えてください。年齢制限がありませんから、十六歳、十七歳の高校生、例えば生徒A、Bが当事者になって生徒C、D、Eを仲裁人として選任するということは、法律上はできますか。
山崎政府参考人 制限はございませんので、法律上はできるということになります。
保坂(展)委員 子供にも社会的な権利、発言その他しっかり保障していくという考え方でいいと思うんですけれども、しかし、日本国の法体系から見れば、成人年齢というのは一応二十歳ですよね。しかも、この仲裁の範囲自体も多岐にわたりますよね。現行法とのそごは生まれてきませんか、どうでしょうか。何にも支障はないんですか。
山崎政府参考人 確かに、おっしゃられればいろいろな問題はあるのかもしれませんが、仲裁はそもそも当事者の合意で定めていく世界、自治の世界というふうに、それが前提でございます。ですから、そこで仮に、では高校生にこの判断をゆだねようといえば、それは高校生がうんというかどうかはわかりませんけれども、それは禁止することではないだろうと。しかし現実に、本当にそれができるかという問題は全く別でございます。
 ですから、私的自治の世界に、ではどこで線を引くかというようなことを考えるのはなかなか難しいわけでございますので、そこは判断にゆだねているということです。
保坂(展)委員 ですから、そういった法律や手続を熟知しているスーパー少年が出てくれば、仲裁人になれるわけですよね。ただ、年齢制限や行為能力や責任能力について一定の要件をはめるべきだという議論もあったようですけれども、まあ一応それを全部なしとした理由はどこにあるんですか。
山崎政府参考人 先ほど資格の問題は特にないと申し上げましたけれども、民法の関係からいえば、別途の関係でございますけれども、未成年者は仲裁人となる契約はできない、単独ではできないということになりますので、そういう別途の制限はあろうということで御理解を賜りたいと思います。
保坂(展)委員 そうすると、この法律では、日本の国民であれば十七歳の仲裁人はあり得ないわけですね。そして、例えば他の国、成人年齢がもっと低い国であれば十九歳とか十八歳もあり得る、こういうことですか。
山崎政府参考人 今の、なること、締結はできるのですが、取り消しの事由になるという民法の規定でございますので……(保坂(展)委員「なれるけれども、取り消せる」と呼ぶ)取り消しの事由になるということでございます。
保坂(展)委員 今の、海外のケースはどうですか、成人年齢が違う場合。
山崎政府参考人 私が承知している限りで、仲裁法の中にこの規定を置いているということではなくて、それぞれの国の未成年者をどういうふうに扱うのかという法律があろうかと思います、その法律の適用を受けて範囲が決まっていくということだろうと思います。
保坂(展)委員 ちょっと極端なケースばかり聞いているようですけれども、この仲裁の当事者にいつだれがなるかわからない、これが広く広がっていけばいくほどわからないわけですね。
 ですから、今事務局長が、仲裁人なんというのはもう当然その法的な世界についてある程度イロハを知っていて、いわばその運用のほどを知っている人じゃなければそもそもならないでしょうというのは、私はいかがなものかというふうに思うんですね。そうでない場合がきっとあるだろうと。まさにその情報がこれだけ行き交い、また、その情報を持っている方と持っていない方の極端な落差がこういった分野についてはあるわけですよね。
 そうした場合に、もう一度伺いますけれども、当事者が選任した仲裁人が、その手続について全く知らない、あるいはほとんど知らない、しかし片方の当事者は熟知しているという場合に、この法案で二十五条に規定された当事者の平等待遇というところは、その面でも考えられなければいけないんじゃないですか、どうでしょう。その手続について、まずは当事者がきちっと知るということが大事だと思うんですけれども、どこで知ることができるんでしょうか。
山崎政府参考人 仲裁は、独立していろいろ仕事をするわけでございますので、当事者はそこの中で平等に扱われるということになりますが、では仲裁人にその手続を指導する方がいるかと言われれば、法的にはいないということになります。いろいろなところから、弁護士がいますのでそういう方にお聞きしてそれで勉強するとか、そういうことになろうかと思います。
保坂(展)委員 では、悪賢い相手側の当事者が仲裁やろうよと言って、だれでもいいからちょっとしっかりした人を選んでくださいよと言って選んじゃったという場合、その後、手続進めたら、全く一方的に進んでいっちゃうわけですね。そういう場合は全く平等じゃないわけですね。
 そういう扱いで始まり、また結論が下されたその仲裁判断というのは無効になりますか。それとも有効なんですか。どうですか。
山崎政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、当事者を平等に扱わなければならないというレベルで問題になれば、それは取り消しの事由になりますけれども、ただ、片方が知識があって、片方が知識がないという状況で進んじゃったから無効になるかといったら、無効にはならないというふうに考えます。
保坂(展)委員 そうすると、これはだれに聞けばいいでしょうかね。仲裁ということを示されたときに、よくわからない、どういう手続になるのかと。こうやって審議していてもわからないことはいっぱいあるんですけれども、それを国民が知りたいと思ったときに、少なくともそれに合意していいのかどうかということを判断したいと思ったときに、どうすればいいんですか。だれに聞きに行くんですか。だれに相談するんですか。
山崎政府参考人 さまざまなところがあろうかと思います。
 先ほど私、弁護士と申し上げましたが、弁護士会にお聞きになるというのもあろうと思います。それから、仲裁は広い意味ではADRの一つでございますので、ADRの機関等で御相談をいただく、あるいは、立法した当局に、どういう解釈になるのかとか、それをお聞きいただくということ、さまざまな方法はあろうかと思います。
 そこについては、特段、何も決めているわけではないということでございます。
保坂(展)委員 あと、ちょっと順番が前後しますけれども、書面によって通知をするという部分で、当然のことが書いてある中でちょっと気になるのは、仲裁手続における通知を書面でする場合において、つまり、住所などがわからなくなってしまった場合の人について、特段の合意がなければ、発信人は、名あて人の最後の住所にあてて当該書面を書留やその他配達を試みたことを証明することができる方法でオーケーであるという規定がありますね。
 つまり、そこにいないのはわかっていて、そこにはいないんだけれども書留で送ったことで知らせたことになるというのは、これはどうしてこういう規定を設けているんですか。それによって生じる不利益等はありませんか、当事者の方に。
山崎政府参考人 これは、いわば到達主義、到達したものとみなすということでございまして、その到達主義を定めているわけでございます。
 この点については、民法上の規定においても、そこの到達主義、みなし規定、こういうものを置いてやっていると思いますけれども、では、仲裁手続が通知が困難で全くできないということでは、やはり仲裁の契約をしてやっていくということについて意味がなくなってくることにもなりますので、そういうことから、到達したものとみなして手続を進めていくということにしているわけでございます。
保坂(展)委員 ただ、相手側の当事者がどこにいるかもわからない、もとの住所に訪ねても、電話をしても行っても、もうそれはいないし、そもそもその建物もないなんという場合にも、建物もなくても、そこの住所に、旧住所に送れば、配達をしたことをもって通知をすることになるということで、でも、仲裁は当事者がいなければそもそもできないんじゃないですか。ずっと進んでいっちゃうんですか、手続は。
山崎政府参考人 これは、いろいろな場面があろうかと思いますが、最初、仲裁人を選定するとか、そういう場面でわからなければ、そもそも構成しようがないわけですね。
 例えば、仲裁廷はできた、その後いろいろ通知をして、そういう関係で届かなかったような場合には意味がある話でございます。それで、これによって最終的に自己の権利について防御ができなかったという状況になれば、これは取り消しの事由になるということでございます。
 たまたま届かなかったという軽微なものもあるわけでございますが、これはみなして手続は進めますけれども、それが実体的な判断について影響を与えるということであれば取り消しの原因になる、こういうことで保護をしていくというふうに考えておるところであります。
保坂(展)委員 また、不熱心な当事者がいた場合に、仲裁廷が判断を示すことになっております。
 ただ、この不熱心な当事者の場合、「正当な理由がある場合は、この限りでない。」、こういうふうにありますが、他の条項に見られる相当な理由がある場合はこの限りではないという文言と、この正当な理由である場合はどのように違うのか。そして、どういった場合がここで想定されるのか。仲裁廷の判断について、正当な理由というのはどういう場合なのか。この二つを、正当と相当。
山崎政府参考人 正当な場合ということになりますと、よほどの理由がなければということになります。相当な理由というのは、そこに至らないでも仕方ないだろうと。そこの違いがあるということでございます。
 物すごく大ざっぱに考えれば、相当な理由というのは、例えば、ある行為が自分はできない、それは仕事が忙しいからだと。それは、相当である場合と相当でない場合があり得る。しかし、正当な場合というのは、もっときちっとした理由がなければならないということですから、例えば、本人が病気になって入院しているということ、あるいは天変地異で行動ができないとか、そういう程度のものをいうということで、これはおのずと違いがあるということでございます。
保坂(展)委員 もう一つ聞いていたんですけれども、では、それで最後にします。
 どういう場合が不熱心な当事者として、今、あれですか、天変地異や入院ということだけでしょうか、正当な理由として判断される範囲は。
山崎政府参考人 ただいま例示で申し上げたわけでございまして、これに限られるものではないということです。万やむを得ない事由だということでございます。
保坂(展)委員 では、最後に法務大臣に伺いますけれども、消費者団体あるいは労働団体などからは、やはり、今回これは経過措置として当面は適用しないということになっていますけれども、「当分の間、」ですか、当分の間というのは意外と早く見直されてしまって、またこれが適用除外ではなくなるんじゃないかという懸念の声も上がっているんですが、しっかり状況を見て、そこは、そういう不安や懸念が余り広がらないようにやっていただきたいというふうに思います。
 答弁いただいて、それで終わります。
森山国務大臣 おっしゃるとおりに、十分注意をして、推移を見守った上で、機の熟すのを待ってということになると思います。
保坂(展)委員 終わります。
山本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子君。
中林委員 私は、日本共産党を代表して、仲裁法案に対して反対の討論を行います。
 反対の第一の理由は、本法案が国内の一般民事紛争すべてを仲裁の対象としており、しかも紛争発生後の事件に限らず、将来において生ずる紛争すべてに仲裁合意を有効としている点であります。
 我が国の多くの企業間取引を見ると、下請関係や、卸、小売の関係、金融取引関係など、力関係に大きな差があるのが通常であり、下請企業が取引を成立、維持しようと思えば、将来の紛争を仲裁制度で解決するという契約事項を拒否することは不可能です。大企業や使用者に対して情報量や法的知識、交渉力に劣る労働者、消費者、中小企業などの社会的弱者が大企業の都合により不当な仲裁合意を結ばされてしまうことになり、紛争が発生した場合も裁判に訴えることができなくなります。
 我が党は、紛争発生後の事件について、当事者間の合意を前提に仲裁によって迅速簡易に解決するという仲裁制度一般について否定するものではありません。国際商事事件や一定の限定された分野での対等な立場にある当事者間において仲裁制度を活用することは合理的であり、これまでの法整備に当たっても、我が党は賛成してまいりました。しかし、本法案は、将来生ずる国内の一般民事紛争すべてを仲裁の対象としており、国民の裁判を受ける権利に重大な侵害を及ぼす危険が強いので、賛成するわけにはいきません。
 反対の第二の理由は、労働者、消費者に対する保護規定が不十分な点であります。
 本法案は、第一の理由で述べたような危惧を払拭するために、労働者、消費者について法律の附則で保護規定を設けています。しかし、あくまでも限定的に当分の間保護するというもので、仲裁制度の対象から外したわけではなく、これでは今後の改悪の危険性は残っていると言わなければなりません。将来の紛争に関する仲裁合意はすべての国内取引について無効とすべきであり、本法案については反対であります。
 以上で、反対討論を終わります。(拍手)
山本委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
山本委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、仲裁法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
山本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
山本委員長 次に、内閣提出、担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。
    ―――――――――――――
 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
森山国務大臣 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 抵当権等の担保物権の内容及びその実行手続については、社会経済情勢の変化への対応等の観点から、早急に見直す必要があるとの指摘がされております。また、民事執行制度については、司法制度改革の一環としても、権利実現の実効性を確保する見地から、強化する必要があるとの指摘がされております。
 この法律案は、これらの指摘にこたえるため、民法、民事執行法等の見直しを行うものであります。
 この法律案の要点を申し上げますと、第一は、抵当権と利用権との調整に関する民法の規律の見直しであります。
 現行の短期賃貸借制度については、執行妨害に濫用されており、賃借人保護の制度としても合理的に機能していないとの指摘がされておりますことから、これを廃止する一方、保護すべき賃借人に合理的な範囲で確実な保護を与えるため、抵当権者に対抗することができない建物賃借人に対して三カ月間明け渡しを猶予する制度及び抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度を創設しております。
 第二は、民事執行法上の保全処分の強化であります。
 占有屋等による執行妨害に対処するための保全処分について、不動産の価格減少の程度が著しい場合でなくても発令することができるようにするなど、その要件を緩和するとともに、保全処分の相手方である不動産の占有者を特定することが困難である場合には、相手方を特定しないで発令することができることとして、占有者が次々に入れかわることなどによる執行妨害にも対処することができるようにしております。
 第三は、強制執行の実効性の向上のための新たな方策であります。
 まず、間接強制の適用範囲を拡張し、直接強制または代替執行の方法によることができる債務についても、間接強制の方法による強制執行を認めることとしております。また、金銭債権についての債務名義を有する債権者等の申し立てにより、裁判所が債務者に対し財産の開示を命ずる手続を創設しております。さらに、扶養義務等に係る定期金債権に基づく強制執行においては、弁済期の到来していない将来分の債権についても、一括して債務者の将来の収入に対する差し押さえをすることができる制度を導入しております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。
山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る六月三日火曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時六分散会


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