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第21号 平成15年6月4日(水曜日)

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平成十五年六月四日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 山本 有二君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 園田 博之君 理事 吉田 幸弘君
   理事 河村たかし君 理事 山花 郁夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 石原健太郎君
      太田 誠一君    小西  理君
      後藤田正純君    左藤  章君
      下村 博文君    中野  清君
      平沢 勝栄君    保利 耕輔君
      星野 行男君    保岡 興治君
      吉野 正芳君    鎌田さゆり君
      中村 哲治君    水島 広子君
      山内  功君    上田  勇君
      山田 正彦君    木島日出夫君
      中林よし子君    保坂 展人君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        増田 敏男君
   法務大臣政務官      中野  清君
   政府参考人
   (法務省大臣官房長)   大林  宏君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君
   政府参考人
   (法務省保護局長)    津田 賛平君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月四日
 辞任         補欠選任
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
六月二日
 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(佐藤観樹君紹介)(第二七〇九号)
 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(山村健君紹介)(第二七一〇号)
 同(漆原良夫君紹介)(第二七六七号)
 同(水島広子君紹介)(第二七六八号)
 借地借家法の改悪反対、定期借家制度の廃止に関する請願(木島日出夫君紹介)(第二七六六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 法務行政及び検察行政に関する件


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     ――――◇―――――
山本委員長 これより会議を開きます。
 法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房長大林宏君、刑事局長樋渡利秋君、矯正局長横田尤孝君、保護局長津田賛平君、人権擁護局長吉戒修一君及び入国管理局長増田暢也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村たかし君。
河村(た)委員 前からずっとやっておりますけれども、早くこの質問を終わらせていただきたいということで、一つは、二十センチも締まらぬベルトを締めたなんて、とんでもない、物理的にできぬようなむちゃくちゃな起訴をして、忠実な刑務官たちを苦しめている。とんでもない犯罪だ、これは。そういうことを糾弾したいというか、明らかにしたい。
 それから、この事実をこのままにして何か行刑を論じるという話があるようだけれども、とんでもないことだ、これも。どういうことが起きたかという現場を離れてどういう制度をつくるなんて、あり得ないことですよ。何でこういうことが起きたかということをきちっと突き詰めていくと、あるべき行刑の姿が出てくるので、そんな怒りを込めまして。やらなかったら私延々とやりますからね、終生。こんなばかなことを許しておくわけにいかないよ。
 繰り返しますが、法務省というのは英語で言うとデパートメント・オブ・ジャスティスといいますからね。デパートメント・オブ・ジャスティス、正義とか公平とか。検察官になった人は、そのりりしさとかそういうことでほれ込んで、私たちもそういう気持ちでおりますよ、検事というのは。それが何でこんなことになってしまったんだということを、私はとにかくどれだけかかっても追及し続ける、ここを約束しておきます。
 まず第一問ですけれども、資料を見ていただけますか。配りましたか。
 総理の答弁ですよね。総理の答弁、大臣、ちょっと読みます。十四日、これは総理ですね。「いっときの感情論にとらわれないで、冷静に、事実を正確に把握するということが裁判にとって最も重要なことでありますので、今言った御指摘を十分踏まえまして、法務省としても、この事件の対処に誤りなかったか、手落ちはなかったか、しっかり再調査する必要があると思っております。 その上で、もし過ちがあれば、今後それを正していくというような対応を考えていかなきゃならないと思っておりまして、」ということで続くんですが、これは大臣、こういう趣旨で、いわゆる再調査、どういうふうにされましたでしょうか。
森山国務大臣 平成十三年の十二月の事案につきましては、冒頭陳述に続きまして、間もなく具体的な証拠調べ手続が始まると聞いておりますので、国会での御議論も踏まえて、公判の推移を見守り、必要な対応を図りたいと考えます。
河村(た)委員 十二月だけでなくて、五月、九月それぞれです。
森山国務大臣 五月、九月についても、基本的には同じ考えでございます。
河村(た)委員 公判の推移をということは、どういうことですか。何もやっていないということですか、法務省としては。
森山国務大臣 公判中のものにつきましては、その推移を見守る、慎重に見守るということがまずもって必要だというふうに考えます。
河村(た)委員 これは文章としましてもはっきり、法務省としても、事件の対処に誤りがなかったか、手落ちはなかったか、しっかり再調査する必要があると総理が答えられておるじゃないですか。なぜしないんですか。
森山国務大臣 河村議員の御質問に対する総理の答弁につきましては、河村議員が質問の中で指摘された事項が仮に本当であるならばという前提のもとで所感を述べられたと理解しておりまして、その趣旨を踏まえた対応を検討するためにも、公判の推移を慎重に見守るということがまずもって必要であるというふうに思います。
河村(た)委員 大臣、自分の気持ちに反することを余り言わぬ方がいいですよ。多分そうじゃないと思ってみえるはずだ。だけれども、後ろにたくさんおる法務省の役人がそうやって書くから、そうやって読んでおるだけで、いかぬよ、本当に。やはり議院内閣制というのは、役所を、いわゆる政治、選挙で選ばれた人がそれをコントロールというか行き過ぎを抑えていく、それが議院内閣制の趣旨なので、大臣、いけませんよ、本当に。あなたの気持ちをきちっと役人に言わないと、これは。
 これは、どう見たって、法務省としてはしっかり再調査する、その上で、過ちがあればですよ。事実だったら調査しますと、事実だったら調査なんかせぬでもいいじゃないですか、そんなもの。僕が言ったことが事実だったら、即刻全員というか、すぐ起訴をやめないかぬですよ、本当に、事実なんだけれども。
 どうですか、大臣。まず調査して、事実があるかないかを調査して、そう言っているんじゃないですか、総理は。
森山国務大臣 どのような対応が必要かということについては、裁判でどのような事実が明らかになるかということによって判断するべきことだと思われますので。
河村(た)委員 それは間違いですよ、基本的に。これは憲法違反ですよ、その考え方は。事実があるかないかは、言っておきますけれども、国会もそうだし、ジャーナリズムもそうだし、全国民がひとしく真相究明の権利や義務はあるんですよ。その中で、いわゆる有罪、無罪にするとか、民事だったら損害賠償幾らだとか、そういう機能を持つ作用を司法がやるということになっておる。その独立は重要だということだけれども、総理大臣は、裁判は裁判だけれども、「法務省としても、」とはっきり言っているじゃないですか。大臣、どう思われますか、これは。
森山国務大臣 総理大臣の御発言も、先ほど私が申し上げましたように、河村議員の御質問の中で指摘された事項が仮に真実ならばということで、その前提で所感を述べられたのでございます。
河村(た)委員 めちゃくちゃですよ。真実ならばと言って、真実かどうかを探るのを調査というんじゃないですか、言葉として、国語で。広辞苑でも引いてくださいよ。
森山国務大臣 真実かどうかということを探るのは、今のところ、この件については裁判をやっているわけでございますので、その推移を見守るということであります。
河村(た)委員 あなた、勝手に憲法を解釈してもらったらいかぬ、それは。裁判は裁判で重要です、それは。だけれども、真実探求がもしだめだったら、何で委員会に証人喚問の手続があったりいろいろな手続があるんですか、そういうことが。真実探求の放棄ということですよ、これは。
 こればかりやっておるとしようがないのでこれでやめておきますけれども、あなたは総理大臣ではないでしょう、森山さん。総理大臣の解釈を変えるわけにいきませんよ、これは。言っておきますが、そんなのは通りませんよ、どう考えたって。
 僕も、めちゃくちゃなことを言っておるなら、それは河村さんがどう言おうとええと思いますよ。だけれども、はっきり、放水前にはいていたパンツというかパジャマというか、ズボンに出血していたところを見たという人が証言したわけでしょう、ここで。それから、私はあなたの前で見せたでしょう、革手錠が二十センチ締まらないというのを。そこまで合理的な話があって、もしやらなければ、これは本当に違法になりますよ、あなたたち。法務省、本当に気をつけてくださいよ。これだけ合理的な証拠が出てきて何もやらなかったら、違法になるよ、悪いけれども。
 いいですか、大臣。お気持ちわかっておる。この間答弁で言いました、私も調べたいと言ったじゃないですか、木島さんの質問に。だけれども、わかってくださいと、非常に率直なことを言われたよ。役人がとめておるいうことだ、はっきり言えば。そうでしょう、大臣。そうですと言っていただけばいいんです。
森山国務大臣 河村先生が非常にまじめに、地道に難しい仕事をやっております刑務官に対して大変同情していただいて、御理解いただいているということには大変ありがたく思っております。
 しかし、この件については、先ほど来申しておりますように、今公判中でございますので、公判の推移を見守ると言うしかございません。
河村(た)委員 それと、もう一つそれには、検察権の行使についてはあなたの権限ですからね。だから、これだけとんでもない、物理的にできぬような起訴をした場合、私知りませんよ、言っておきますけれども。後で聞きますけれども、二十センチ――今にしておくか。
 二十センチ引くについて、では、ちょっと言いますけれども、実は最低二十三センチ引かなきゃいかぬのだ、これ、わかったけれども。これは何遍も出しますよ。なぜかというと、これは現場を離れて、ないからですよ。
 ここから一つ、二つ、ここへ入れたということになっているんだけれども、大臣、ここをちょっと見てもらおう。前で、ちゃんと見ましょうか。
 いいですか。ここの穴があるでしょう。ここから一つ、二つ目に、ここへ入れたけれども、そのときに、後ろを見てくださいよ。この二つ目のところはここだけれども、入らないでしょう。ここまで行かないと入らないでしょう。そうすると、ここからここまで引かなきゃいかぬ。ここからここで二十センチですから、それで、ベルトはさらにここへ戻っているから、ここからはかりますと二十八センチぐらいなんですよ。二十八センチ引かないと、検事が言っている二つ目の穴に入るということはないんですよ、戻っている状況からいうと。
 そんなことできるわけないじゃないですか、大臣。八十センチのウエストの人が、六十センチの穴に入れるために二十八センチ、二十四としても三割ですよ。いいですか。八十センチの、三、八、二十四としても、八十センチの人体のボディーが三十センチ縮まると思いますか、大臣。感想を言ってください。
森山国務大臣 このことにつきましても、裁判において十分解明されることと思います。
河村(た)委員 何を言っておるんですか、今、刑事局長も安心してうなずいておられたけれども。これは本当のことを言ったら大変だと思っておられると思いますよ、言っておきますけれども、矯正局長も検察官だから。これは検察官の良心として、ちょっと両方、矯正局長、刑事局長さんも、八十センチの人間の体が、人力で、それも伏せて暴れているところですよ。
 それから、一体だれだ。当委員のある自民党の方に、河村さんが二十センチ締まらないというのは、立ってやっておるからできないんだ、伏せてやって足でけっ飛ばせば締まると言った人がおるじゃないですか。そういうことを言った。だれなんだ、そんなことを言ったのは。きのう、ちょっと質問通告したけれども、だれですか、矯正局長。そういう説明に行ったのは。
横田政府参考人 今、突然……
河村(た)委員 突然じゃない、きのう言ってある。きのう質問通告してありますから。
横田政府参考人 ちょっと私、聞いておりませんが。
河村(た)委員 だれなんだよ。いかぬがね、それ。質問通告したかどうか返事してくださいよ。
横田政府参考人 私はそういう質問通告を受けたというふうに承知しておりませんが。
河村(た)委員 いやいや、じゃ、担当官に聞いてください、担当官に。――時間もないのでとめてくださいよ、こんなばからしいこと。本当に言ったんだよ、私。委員長、時間がないからとめてくださいよ、こんなことで。
横田政府参考人 失礼しました。
 今確認いたしましたが、先生のところにきのうお伺いした当局の職員に対して、先生から今申し上げたような御質問があったそうですが、それに対しては、お答えできないというふうに答えているというふうに聞きました。
河村(た)委員 お答えできないかどうか、はっきり言ったかどうかも記憶ありませんけれども、そういう虚偽の風説を流布してくれるなということを言いたいんですよ。
 下に伏せた方がまず締めにくいに決まっているじゃないですか。またここでやってもいいけれども、何遍もやってもしようがないから、またそのうちやりますけれども、ここで立って締めてくださいという方が締められるに決まっておるじゃないですか。そうでしょう、矯正局長。受刑者は、暴れているから革手錠を施用されるんでしょう。そちらの方がはるかに困難でしょう、立っておる人より、立ってどうぞという人より。答弁してくださいよ。
横田政府参考人 一般的には困難だと思われます。
河村(た)委員 そういうことなんだよ。やめてくれよ、もうこういう話は。
 それから、今の話でどうですか、八十センチの体を二十センチ引くには、最低二十三センチ引かなきゃいかぬ。入ったときは、ベルトが一番戻っておったら、五センチぐらいで穴があるから二十八センチ引かなきゃならない。ということは、八十センチのボディーの人だったら、八十から二十五を引くと五十五センチまで一たんは人間の体を、生身の体を縮小せにゃ入らないんですよ、これ。可能だと思われますか、矯正局長。
横田政府参考人 実験したこともありませんし、可能かどうかについて、ちょっとお答えいたしかねます。
河村(た)委員 刑事局長もお願いします。
樋渡政府参考人 お尋ねは、五月事件と九月事件のことであると思いますが、要は、検察は十分な捜査を尽くした上で、証拠に基づいて公判請求をしているものでございまして、その結果は公判で明らかになるというふうに思っております。
河村(た)委員 十分な捜査を尽くしたかどうかが問題なんで、それじゃ、どうやって調べましたか、八十センチが五十五センチに一たんなるということ。それは聞いておられますか。
樋渡政府参考人 その点は、具体的な検察活動に関するものでございますので、私からはお答えいたしかねると思います。
河村(た)委員 これはやはり検察だけは別なんだな、日本の国の中で別なんだ。そうなんだ。検察という別個の国があるんだよ、別個の国が。これは本当に、まことに情けないよ。
 言っておきますけれども、やはり検察官に対する信頼というのはすごいんだよ、当たり前ですけれども。私だって検察を信じていますよ、言っておきますが。だからこういって言っているんだから。法の番人としてやはり公正にやってほしい。そうでしょう。検察庁の何かマニュアルみたいになると、証拠に基づいてきちっとやれと書いてあるじゃないですか。
 あと、だれに聞こうかな、大林さんに聞こうか。八十センチのボディーが五十五センチに締まると思いますか。人間として答えてくださいよ、一遍。
大林政府参考人 今の刑事局長の答弁と重なりますけれども、やはり具体的な状況によるものだというふうに思います。
 私自身、まだ実験したこともございませんし、また裁判中でございますので、コメントは差し控えさせていただきます。
河村(た)委員 こんな話ばかり聞いておっても、あり得ぬ話で、もう何回言って、これは本当に全国にNHKでやってもらえば、全国民がびっくりすると思いますよ、言っておきますが。
 できるわけないんですよ、そんなこと。やってくださいよ。では、約束してみますか、皆さん。ベルトを貸しますから、それぞれ全部着用してみますか。局長さん答えてくださいよ、刑事局長。持っていきますから。
樋渡政府参考人 具体的な事件において公判が……(河村(た)委員「それは事件は関係ない」と呼ぶ)公判において明らかにされることでございまして、それを一々個人個人が、個人が実験されるのは自由でございますけれども、人にやらせるようなものではないと考えております。
河村(た)委員 やらせると言って、大責任者でしょう。大責任者でしょう。本当は大臣にやってほしいけれども、女性だからちょっと、これはぎりぎり遠慮して言っているんで、大責任者でしょう。
 矯正局長は少なくともやってくれるね、これ、持ってきますから。矯正局長。
横田政府参考人 委員会としての決定があれば……。
河村(た)委員 これは、何とも言えぬ話ですけれども、非常に私は誠実性を感じました。これはやはり自分の部下だから、刑務官は。
 委員長、決定してくださいよ、これ。
山本委員長 理事会においてしかるべく協議させていただきますので御了承ください。(発言する者あり)
河村(た)委員 いや、一々じゃないよ、本当にこれ。(発言する者あり)感情的じゃないです。八人の忠実な皆さんの、本当に足元で働いておった――私、何で言うかというと、私は実は小さい中小企業をやっているんですよ、去年やめましたけれども。私は、十何年前、リフトに乗ったりトラックに乗っておったですよ。現場のいわゆるブルーカラーだ。そういう人たちに敬意を持たない社会というのはつぶれるよ、言っておくけれども。刑務官もそうなんだよ。だから私は許さぬぞ、これを。何が国会で、法務省で、東京で言っているんだよ。社会を支えておるのはだれだということを言いたいんだ。その人たちがどうなっているかということは当然検証せないかぬ。革手錠をかけてどこが悪いんだよ、一体。一番先にやらないかぬじゃないか、それを。国を支えておる一番基礎の人たちだよ。僕は、そういう考え方には本当に驚きますよ。
 もっと現場の汗水垂らして働く人たちを大事にしてくださいよ、大臣。そうでしょう、大臣。ちょっと一言、言ってください、そこら辺のところ。
森山国務大臣 現場で難しい仕事を地道にやっている人たちに敬意を表するというのは、私も全く賛成でございます。しかし、この件については、先ほど申し上げたとおり、公判中でございますので、それを見守るしかございません。
河村(た)委員 大事にしとるにならないよ。普通の中小企業の社長なら、もしこういう事案だったら自分ですぐ実験しますよ、自分のところの会社の社員が苦しんでおれば。当たり前だよ、そんなことは。当たり前だよ、それは。
 それでは、時間がないから先に進みます。
 それから、ビデオが九月の方であるといいますけれども、このビデオは、ダビングとか編集されていませんね。
横田政府参考人 特に編集した事実はないと聞いております。
河村(た)委員 確認しておきますけれども、それは当然、検察庁で編集するということはあり得ないね。検察庁に提出されるまでに、マザーテープがそのまま来ておる、これでいいですか。
横田政府参考人 舌足らずでした。もともと所持していた名古屋刑務所において、したことはないということでございます。
河村(た)委員 そうしたら、あと、今接見の禁止が続いておりますが、これは、奥さんにも会えぬ人がおるんですよね。
 それから、私も、接見禁止の一部解除、ちゃんと私の名前で申し立てたというのか申し込みというのか、申請しました。だめでした、これは。法務委員会での質問の必要があるからと。当然、そうでしょう、ここで聞くために、本人の意見を聞くというのは最も大切なことじゃないですか。
 なぜだめなのか、これは。なぜオーケーしないんですか。裁判所だといいますけれども、検事が意見書つけるんでしょう、これは。それこそ懲らしめ目的で、必要もないのじゃないのか、これは。だれが懲らしめているんだよ。これはどなたに聞いたらいいですか、刑事局長ですか。
樋渡政府参考人 そもそも、接見禁止といいますのは、逃亡し、または罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときに、検察官の請求によりまたは職権で、裁判所の裁判により、勾留されている被告人と刑事訴訟法第三十九条第一項に規定する者、これは弁護人または弁護人とならんとする者でございますが、それらの者以外の者との接見を禁じる処分でございまして、刑事訴訟法上、検察官の判断のみによって一方的に付すことができるものではなく、ましてや、御指摘のように、懲らしめの目的で付することなどできるはずがございません。
河村(た)委員 それでは、僕なんかは何でだめなんですかね、悪いけれども。私。
樋渡政府参考人 私は、それがだめだと言われたということの内容を裁判所から聞いたことはございませんので、裁判所の判断がいかようなものであるかわかりませんが、先ほど申し上げましたように、逃亡または罪証隠滅のおそれがあるので接見禁止をしている、その趣旨に反するというのが一般的な話だろうというふうに思います。
河村(た)委員 承服できませんね。
 それから、先に行きますけれども、中間報告の調査ですけれども、これについてですが、これはちょっと、言うのを忘れていくといけませんので。
 ちょっと話があれですけれども、なぜやはりこの三事案について事実をきちっとしなきゃいかぬかということは、刑務官がみんないろいろ言っているんですよ、内部で実は看守さんたちが。
 例えば、立ち役とかいうのがあるんだよね。ある人なんかは、いわゆる現場の工場で働いている、工場が三十ぐらいあるらしいんだけれども、そこで立ち役というのが、一つの班長みたいな役ですけれども、そういう役には現役の暴力団とかはなってだめだということになっておる、過去にそうであった人とか。だけれども、三十ぐらいあると、そこにちゃんともっときちっとそういう人でない人が入るように割り振りしてくれればいいんだけれども、それで頼んでも、そんなもの、目をつぶるなり、適当にやっていけと。こんなようなことになってしまったという、上ではですね。そういうようなこともある。
 それから、いろいろなことを言おうとしても、改善提案をしても、どうも刑務所というのは所長が圧倒的に力を持っておるらしいですね、後でちょっと矯正局長に聞きますけれども。圧倒的に力を持っていて、それを何か、これを変えようと、例えば革手錠、革手、革手とみんな言っておるけれども、革手が十センチも穴があったことが問題なんだ、大きいのは。ほかにも問題があったとしてもですよ。十センチも。あれはもうちょっと構造を変えて、僕らのベルトみたいに二センチごとぐらいにできれば、もっと優しい施用というのができたかもわからぬ。そういうようなことを仮に言ったとしても、そんなものは、まず二言目に出てくるのが、案を出すと、すべて、根拠はどこにあるんだと。そういう話になってしまって、今までのいろいろな仕組みを変えるという雰囲気は全然ない、所長の中で。そういうところがこういうようなことを招いてしまったということですね。
 だから、事実をきちっと検証していかなきゃわからないですよ、こういう話というのは、刑務所内の問題は。本当に変えようとしている人おるんですよ、刑務官、当たり前ですけれども。だけれども、所長の辺で、それなら法律はどうなっとる、中は何が書いてあるんだということで、書いていないようにするためのを改革というんですね、それを直そうという、そういうのが一切そこでアウトになってしまうということを聞いておるんですが、矯正局長、どうですか。こういう話はよく聞いておられますか。
横田政府参考人 今委員がおっしゃったような個別具体的といいますか、そういう細かな話は私は承知しておりませんが、ただ、先生も御案内のように、一連の名古屋刑務所事件が一つのきっかけとなりまして、行刑の運営につきましてはさまざま御意見ございまして、改善すべき点も多々ある、そういう御指摘のあるところでございまして、現在、私ども矯正当局あるいは法務省におきましては、御案内の行刑改革会議等の議論も踏まえながら、あるべき行刑というものを今検討しているところでございます。
河村(た)委員 これはだめだ、悪いけれども。
 野党の皆さんにも言っておきますよ。ポイントは、行刑改革会議でやれといったって、今の肝心な、やる気のある刑務官、改善しようとした人たちがみんな途中でつぶれていくわけですよ、話が。そういう話をもっと前に出して行刑改革会議をやらないと、もうだめですよ、同じことを繰り返しますよ。渡邉貴志さんの手紙にあったでしょう。読んでくれた、あれ、もう一回。また私たちのような犠牲者を出してしまうと、彼は本当に無念の思いで言っておると思いますよ。
 中等科三十三名中トップで出た人ですよ。あれから私も接見にまた行ってきましたけれども、本当に涙出てくるよ、顔を見ておると。こんなばかな、本当に全くの冤罪だから、これは。ベルト、二十二センチ行かないんだから、まず。こんなことのために、最も熱心な職員を逮捕しちゃって、個人の資質に問題があると。そんなシステムのまま残して、行刑改革なんてとんでもないじゃないですか。
 もっと現場の声は、どこの会社でもそうだよ、言っておくけれども、やはり、現場で働いておる運転手さんやらリフトに乗っておる、そういう人たちがどういうふうにしたいと考えておるかというのは一番最初に聞きますよ、私は。これは上がっていないんだよ。どう思うんだよ、これは。
横田政府参考人 現場で実際に働いている人たちの意見を聞くということは当然だと思います。現在、私どもも、そういう声を聞くということで具体的に検討を進めて、動こうとしているところでございます。
河村(た)委員 そんなことで、またアンケートをとるとかなんとか言うだろうけれども、だめだと言っていましたよ、言っておきますが。
 だから、その辺の機構を、要するに所長の事なかれ主義ですよ、ここを改めぬことには新たな行刑のスタイルは見えてこないんですよ。そのために、こうやって苦しんでおる人たちがなぜこんなふうになったかということを明らかにせにゃいかぬ。委員長、本当に明らかにせにゃいかぬですよ。この問題をとにかくほおかむりして、今の法務省の、私も十年議員をやっていますけれども、わかっていますよ、これで幕引きにしようと。行刑改革会議に全部持っていこう、それで今までの検察の支配の一つの仕組みを温存しようというのはわかっていますよ、こんなこと。それはだめだよ、日本の国のために。
 委員長、どう思いますか。
山本委員長 委員の私見は私見としてきちんと承りたいとは思いますが、質問を続けてください。
河村(た)委員 何を言っておるんですか、一体。わけがわかりませんけれども、堂々と意見を言ってもいいんですよ、委員長は、別に。
 まあそういうことですよ。いい行刑、いい日本をつくるためには、所長クラスのところが、そういう事なかれじゃなくて、新たな、ここを変えようという人間を、よし、おまえの言うことをとったる、反対に、矯正管区もそういうふうに変えようじゃないかと、そういう風土をつくることが物すごい重要なんだよ。これはちょっと局長に答弁をもらっておこう。
横田政府参考人 それは、委員のおっしゃるとおりだと私も思います。
河村(た)委員 たまには褒めにゃいかぬですから、そういうふうで、ぜひひとつやっていきましょうということです。
 それで、あと取り調べのことについて、今度取り調べのことでずっと一遍やりますけれども、いいですか、驚くべきことがわかった、驚くべきことが。読み聞かせて、最後にサインするでしょう。その後に内容を変えているじゃないか、後に。これは刑事局長かな。これは、まず犯罪を構成するんじゃないですか。
樋渡政府参考人 まず供述調書を説明させていただきますが、供述調書は、検察官等におきまして被疑者等の供述を調書に録取した上、これを閲覧させ、または読み聞かせて、誤りがないかどうかを問い、被疑者等が増減変更の申し立てをしたときは、その供述を調書に録取し、調書に誤りのないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求める方法により作成することとされておりまして、検察当局におきましては、このように法令で定められた方法で供述調書を作成しているのでございまして、お尋ねの事件に関し、一たん署名がなされた供述調書について、供述人の承諾もないのに内容を改変するような、書き直しを行ったような事実があったとは承知しておりません。
 そういうような場合があったら犯罪かという問いに対しましては、そういうようなことがもしあれば、虚偽公文書作成等の犯罪が成立する可能性はあります。
河村(た)委員 よし、次、ではそれを証明しますからね。私は、刑事局長、本当に皆さんを信じておるから言うんですよ、検察というのは非常に重要だから。
 僕もびっくりした、こんなことがあるとは。単なる作文の供述の強要は、もうおびただしいです。みんな、要するに、二つ目の穴に入れたというふうにせにゃいかぬから、時間がないでいかぬけれども、早いこと言っておくと、検察も、五月は亡くなっている、九月はけがをされておる、保護房の中だ、何にも理由がないから、殴ったんだろう、けったんだろうといって、あと何にもわからぬから、結局困って、それで、自分で転んだ、ぶつかったというところに思いが至らなかったんだよ。ないし、そういうようなざん言があった、ざん言というか、架空のドラマをつくろうという、どこかに直木賞作家がおったんだ、法務省内部に。それで、無理やり二つ目の穴に入れるというドラマを全部つくっていったんだ。全員その供述調書をとっているんだよ。全員とまで言わないけれども、みんな書かされているんだ、そういう中で。そういうこともひどいよ、これは後で全部言います。
 それプラス、何とこういうことがわかったんです。サインした後に変えられておる。きちっと言っておる人がおりますよ、言っておきますけれども。
 それから、大臣、再度確認しますが、このことで刑務官が真実を述べるという場合に、絶対、そのことによって不利益なことをしないように、再度ちょっと答弁してください。
森山国務大臣 裁判において求められて真実を述べるというのは当たり前でございまして、そのために不利になるということはないというふうに思います。(河村(た)委員「裁判だけじゃなくて、ほかでもですよ」と呼ぶ)ほかでも、正直に本当のことを話すということは重要なことで、それによって不利になるということはないというふうに思います。
河村(た)委員 先ほど検察官と言ったかわからぬけれども、刑務官です、刑務官、ちゃんと言ったかな。
 刑務官が本当のことを言ったことによって不利になることはありません。これは皆さん、そういうことですから、ぜひ、テレビを見ておられる刑務官、そしてこの会議録を読まれる刑務官、やはり本当に表へ出て、皆さんのは大切な仕事なんだから、本当のことを堂々と言うようにお願いしておきます。大臣がそのことを保証してくれましたから、不利益にしないということを。
 それから次は、そうしたら、いわゆる血がついた下着がありますよね、認められたとの客観的事実に反する事実が通報されておる、こういうふうに中間報告に出ておりますが、客観的事実に反するというのはどういう判断でこうなったんですか。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、申し上げさせていただきますと、行刑運営の実情に関する中間報告では、血が付着した被害者の下着はなかったとして、その点で名古屋刑務所からの報告などの記載が客観的事実に反するとしているものではございません。
 被害者が死亡した直後に名古屋刑務所から名古屋矯正管区になされた報告などには、被害者を転房させようとした際、下着臀部に出血のような汚損を発見したので医師の診察を実施したところ、肛門部に負傷箇所が認められた旨記載されているところでございます。しかしながら、刑事局などからの報告によりますと、被害者の直腸裂開等は消防用ホースによる放水により生じたものと考えられ、また、出血の発見状況は放水が行われた直後に肛門付近から出血していることに気づいたというものであったと認められるので、名古屋刑務所からの報告に記載されている医師の診察を受けるに至った客観的事実経過は事実に反するものであり、中間報告で出血発見状況について客観的事実に反する記載がなされたとしているのも、その趣旨でございます。
河村(た)委員 ということは、検察庁の言っておることと違うからということですね。そういうことですね。
大林政府参考人 今申し上げたとおり、刑事局などの報告と矛盾していた、こういうことでございます。
河村(た)委員 刑事局ということは、樋渡さんのことかね。検察庁じゃないんですか。
大林政府参考人 そのもとをただせば、検察庁における捜査結果ということでございます。
河村(た)委員 これは、言いますけれども、検察の言うことというのは、何ですか、全部垂れ流しなんですか。いいのかね、これ、刑事局長。何か、僕らから検察に聞きますと捜査の壁でアウトになりますけれども、そちら側からどんどん入って、これ、いいんですか、検察というのは。独立しているんじゃないの、検察というのは。
樋渡政府参考人 検察の捜査活動の内容がすべて刑事局に来るわけではございませんでして、法務大臣に報告すべきこともあるわけでございまして、刑事局といたしましては、検察当局に報告を求めたり、あるいは検察庁の方で報告をしてきたりすることの内容を伝えるということでございます。
河村(た)委員 どうもそれはおかしい。また今度やります、もう時間がないから。
 次、最後のものですけれども、いわゆる消火栓ですよ。消火栓を直しましたよね、二月三日に実験をされて、その後に。これは、いわゆる証憑隠滅罪。消火栓が重要な証拠ですよね、本件については、どれだけ水流が出たかということですよね。証憑隠滅罪が成立しませんか、刑事局長。
樋渡政府参考人 お尋ねの本件消火栓の修理につきましては、名古屋地検としてはその修理に異を唱えなかったというふうに聞いておりますが、もともと施設管理権者が施設管理行為として行う修繕行為について検察官がこれに承諾を与える権限を有するものではないところ、あくまで一般論として申し上げますと、消火栓は消防用設備として防火の目的を達し得るものである必要がありますから、防火管理上修理の必要があるとの申し出を受けた場合、その申し出には十分配慮する必要がありまして、既に十分な証拠収集がなされている場合には、公判前であることを理由にこれに異を唱えることが適当ではないと考える場合が多いと思われます。
 本件消火栓につきましても、修理前に十分な証拠収集が済んでいますことから、あえて修理に異を唱えなかったと聞いておりまして、御指摘の証拠隠滅罪は、他人の刑事事件に関する証拠を隠滅等した場合に成立するものでありますから、一般論として申し上げれば、既に十分な証拠収集がなされている場合に修理等を了承しても、それが証拠の隠滅等に当たる場合とはおよそ想定しがたいと考えています。
河村(た)委員 他人の言うて、全く当たるじゃないですか、それは。
 それから、二月三日に実験されて、前回、このバルブを全開にしたという調書は二月四日にとっているんですよ、これ、全開にしたという。これも残念ながらうそだ、内容は。残念ながらうそです、申しわけないけれども。わけのわからぬうちにとったもの。その直後に、実際はたしか四回転ぐらいせな全開じゃないのを、よく回しても二回だ。だから、半分ぐらいの水量しか出ていなかったんだ。〇・六キロも、さらに下の、水漏れしとった、もっと低かったんです。水量も半分だった可能性があるんだよ、これ。それが怖かったから壊したんじゃないの、これ。いつですか、それ、消火栓直したの。――ちょっと時間ないので、また後日にしましょうか。では、委員長、ちょっと時間がありませんので、ルール守らないけませんから、かわります。
 また後日にしますけれども、ぜひこの点もしっかり、この現場の、やはり刑務所で何があったかを明らかにしましょう。それに基づいた新しい行刑のシステムをつくっていくというふうにしたいと思います。
 以上です。
山本委員長 山花郁夫君。
山花委員 山花でございます。
 矯正局長にお尋ねしたいと思います。
 前回、歯科医療のことについて質問をさせていただきましたけれども、実際の治療の実態について調査をしてほしいということをお願いいたしました。取り急ぎ、できたところまでで結構ですので、どういった治療がなされていたのか、あるいは待ち時間、願せんを出してから治療をしてもらうまでの待ち時間などについてお答えいただきたいと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 五月二十八日の当委員会におきまして委員から御質問のございました名古屋刑務所の歯科治療の実施状況につきまして、取り急ぎ平成十四年の状況を調査いたしましたので、その結果を申し上げます。数字がちょっと並びますけれども、御了承お願いします。
 平成十四年におきましては、一週間当たり約三回、一回当たり約十件、年間で合計千二百五十九件の歯科治療を実施しております。治療内容の延べ件数でございますが、充てん処置が四百七十六件、それから歯周病等に対する処置が四百五十五件、抜歯が二百九十七件、歯髄処置が百八十一件などでございました。
 それから、被収容者の申し出から治療の実施までのいわゆる待ち時間、待ち期間でございますが、最短、一番短いものが百十五日、それから一番長いもの、最長が百三十五日で、平均いたしますと百二十五日という結果でございました。
 なお、名古屋刑務所におきましては、本年四月以降、診療実施時間や患者の連れ出し方法の見直しなどを行っておりまして、先月の一カ月間について見ますと、診療日一日当たり約二十七件の歯科治療を実施しておりまして、申し出から治療までの待ち期間も約二週間程度にまで改善したという報告を受けております。
山花委員 治療の中身なんですけれども、義歯の治療であるとかあるいは自己負担で治療したものが何件か、そういうことについてはわからないでしょうか。
横田政府参考人 失礼しました。聞き間違いました。自費による治療はということでございますね。(山花委員「義歯」と呼ぶ)義歯ですか。義歯についてはちょっと把握しておりませんが……(山花委員「自己負担」と呼ぶ)自己負担はございません。すべて国費でございます。
山花委員 抜歯が二百九十七で、義歯についての治療が少なくとも今報告なかったわけですし、また、自己負担が件数がないということは、抜かれてその後歯を入れていないケースが非常に多いのではないかと想定をされるわけであります。前回も少し議論させていただきましたけれども、抜いたままの状態というのは非常によくないわけですので、その点、もう一度、どうしてこういう数字になるのかということは点検をしていただきたいと思います。
 また、待ち時間も、名刑についていろいろ議論があって改善はされているようですけれども、一時、平均百二十五日というのも、三カ月ですから、歯が痛いと言って三カ月待っているのは、これは大変なことだったのではないかと思います。
 歯医者さんの治療というのは、お医者さんですけれども職人のようなところがあって、矯正局長は御存じかどうかわからないですけれども、矯正歯科ってありますよね、歯の形、歯並びが悪い人を治したりとか。歯医者さんが見ると、その治療の仕方をぱっと口をあけて見たら、ああ、どこどこ大学の先生のあれですねというようなことがわかるぐらい、いわば職人的な作業なんですよ。
 現場の歯科医の方から聞いている話ですけれども、確かに名刑の歯科の器材は大きなものはあるんですけれども、器材がちょっと違う、会社が違うだけで少し扱いが違ったりとかがあって、そうすると、非常に、なれている人はその器材はやりやすいかもしれないけれども、なれていないとやりづらい。すべての会社のものを取りそろえろというのは、これは余り現実的な話じゃないですけれども、少なくとも例えば歯医者さんが自分で器材を持っていかないと治療ができないような実態があるとすると、これは好ましいことではありませんので、十分現場のお医者さんからもヒアリングを行って、これで本当に十分なのかどうか。
 数字を見る限りは、例えば、抜いた後、どうもちゃんと、それでおしまいでいいケースももちろんあるでしょうけれども、義歯を本来であれば入れる必要があるケースもあるんじゃないか。また、抜歯が二百九十七で、もちろん歯が悪い人がいて抜かざるを得ないケースもあるんでしょうけれども、本来であれば充てん処置をできたにもかかわらず、器材がないから抜いちゃっていたようなケースがあるんじゃないか。
 そういうことについては、改めて、改めてと申しましょうか、これは名刑だけじゃなくて全国、こういった問題もあるかもしれませんので、点検をしていただきたいと思いますけれども、一言答弁お願いします。
横田政府参考人 お答えいたします。
 物理的な問題でございますので、全刑務所、全件ということが果たして早急に可能かどうかございますけれども、いずれにいたしましても、今委員が御指摘のあったような点につきましては、十分、行刑施設におけるこれからの歯科医療のあり方という検討の中で、できるだけそういった点も実情を調査しながら検討していくという方向で進めてまいりたいと思います。
山花委員 歯科医療のことについては一応これで区切りをつけたいと思います。
 先日、五月二十九日に入国管理局長名で何か信じられないことが行われているんですが、資料を配付いたしております。
 読売新聞の記事に対して抗議の申し入れ書という書面が出されているんですけれども、どういった経緯でこういうものが出されたのか、そして、どうやって読売新聞東京本社にこれを到達せしめたのか、この点について説明をいただきたいと思います。
増田政府参考人 個別の案件についてのお尋ねですが、入管は、従来から、個々の難民認定申請の件につきましては、その申請者の生命身体の安全を保護しなければいけないという責任がございますし、あるいはまたプライバシー保護にも配慮しなければいけないということがございまして、どういう人から申請が出ているのか、あるいはどういう人の申請案件を審査しているのかについては、公式にはお答えを差し控えさせていただいてきているところでございます。
 そういったことがございますので、ただいまのお尋ねにも、現にその新聞に出ている人物から申請が出ている、それに対して審査を行っているということを肯定する趣旨ではどうもお答えしにくいところなので、その点はひとつ御理解をいただきたいのですが、その上で、ただいま御質問があったことについて、その記事に書かれている文章を前提としてということでお答えさせていただきますと、ただいま委員が引用なさいました、ことしの五月二十九日付の新聞には、北の工作員に対して難民認定へという見出しがあって、法務大臣が近くその人物について難民認定を行う可能性が強い、こういう趣旨の記載がございました。
 しかしながら、その記事の文章に即して言うならば、法務大臣が近くその人物について難民認定をする方向にあるとか、そういう方針が決まっているとか、そんな事実は全くないわけでございます。
 それにもかかわらず、難民認定の方針がいかにも決まったかのような、あるいは近く実際に難民認定が行われるような、そのような文章、記事になっておりましたので、これは読者に誤った印象を与える、もしこのままにしておくと国民の方々に誤解を与えたまま事態が推移するのではないか、このように考えまして、入管局としては、この記事内容が誤っていることを明確に伝達する必要がある、こういう考えで、入国管理局長の名前で読売新聞東京本社編集局長あてに抗議申し入れ書を作成したものでございます。
 その到達の経緯についてのお尋ねでございましたが、これは、法務省クラブに入っている新聞社の人を通じて、どのような形でその新聞社が受け取るか、それを聞きまして、その人を通じて、その局の編集員の人が、編集局長あての抗議書であれば受領する、こういうことの返答があり、それでその人に抗議申し入れ書を交付した、こういうことでございます。
山花委員 法務大臣、これは法務大臣は了承されていた話なんですか。あるいは事後的に、こんなことをして、ばかなことをするなと注意とかはされたんでしょうか。
森山国務大臣 読売新聞に抗議いたしました五月二十九日の夜、入管局長から、同日付の読売新聞朝刊の、今御質問のあった該当部分の記事につきまして、事実に反し、かつ読者に誤った印象を与えるので抗議したという事後報告を受けました。
 難民認定申請がなされているかどうかもお答えしにくいところでございますが、この記事を前提といたしますと、この事案は、複雑困難な背景を持った北朝鮮から来た方が初めて難民申請を行ったというケースになるわけでございまして、社会的にも大きな注目を浴びる、極めて重要な事案であるということになるわけでございます。
 そうであれば、本省入管局において慎重に検討すべきはもとよりでございますし、その上で、法務大臣である私が、熟慮に熟慮を重ねて、最終的な決断を下さなければならないということは言うまでもございません。
 それにもかかわらず、難民認定がいかにも決まったかのように書かれているわけでして、これでは国民に間違った印象を与えることになりかねないと思いまして、看過することはできないと思いまして、入管局長の対応を是とした考えでございます。
山花委員 是としたということは、了承していた、事後的に了承したということだと思いますが、ちょっと事実関係についてお尋ねしたいと思います。官房長にお伺いします。
 こういった申し入れをしたわけですから、官房として、例えば読売新聞の本社であるとかあるいは記者クラブに対して何らかの対応をとられたと推測されますが、その点について、どのような対応をとられたのでしょうか。
大林政府参考人 お答えします。
 今回の抗議につきましては、先ほど入管局長も申し上げましたとおり、入国管理局において、事実に反し、かつ読者に誤った印象を与える記事について、当該新聞社に対し、同記事が事実に反していることを明確に伝達する意図で行ったものでございまして、官房として同新聞社に対して特段の対応をとったということはございません。
山花委員 全くとっていないわけですね。間違いないですね。もう一回答弁してください。
大林政府参考人 本件は原局である入管局において対応しておりまして、官房として特段の措置をとったということはございません。
山花委員 措置をとっていないということは、読売新聞の東京本社であるとか、あるいは法曹記者クラブの記者に対して、何にもアクセスはしていない、そういうことでよろしいですね。
大林政府参考人 今の御質問の、アクセスという解釈だと思います。
 官房の秘書課におきましては、広報担当の事務がありまして、そういう面において多少通過する点はございますが、先ほど申し上げたとおり、官房の一つの意思決定といいますか、そういう形で本件に関与したということはございません。
山花委員 先ほど来、入管局長も法務大臣も、事実に反し、誤った印象を与えるということを言われていますけれども、これは記事のどこが事実に反しているのでしょうか、私にはさっぱりわからないんですけれども。
 つまり、観測、こうなるんじゃないかという観測ですよね。予想が当たるか外れるかということで、これは外れることもあり得るわけですけれども、どの部分を指して事実に反しと言われているんでしょうか。
増田政府参考人 文章の表現について御指摘だろうと思うのですが、少なくとも、この記事を読んだ読者は、法務大臣がこの人物について近く難民認定を行うのだ、そういう方針が決まったのだ、そういう印象を持つ文章であると私は考えます。
 蛇足ながら申し上げますと、この日の朝から法務省に対しては、この記事を読んだ読者から、法務大臣がこのような決定を決めたということを、そういう理解のもとに現に法務省にメールを次々とよこされるような動きもございました。私も、やはりこの記事は、可能性として右になるか左になるかというような記事ではないと理解しました。やはり、もう法務省は方針を決めたのだ、こういうふうに受け取られる文章だと理解したものですから、それは事実に反する、読者を誤解させるものだ、こういう考えで先ほどの対応をとったということでございます。
山花委員 刑事局長にお伺いします。
 この手の話というのは、よく刑事事件でもありますよね。週明けにも立件へとかいう記事が出されて、実際それが当たることもあれば外れることもありますよね。そういうときに一々抗議しますか。
樋渡政府参考人 まずは総論的に、あくまで一般論として申し上げますと、検察当局におきましては、個別の事件に関し適正な捜査の遂行に支障を生ずるような報道がなされた場合には、報道の自由にも配慮しつつ、事案に応じて適切な対応をしているものと承知しております。
 お尋ねの、これはいわゆる前打ちの記事だと思うのでありますが、それにつきまして、一般論として申し上げますと、このような記事は数多くなされているところでございまして、検察当局におきましては、これに一々対応する余裕は必ずしもないと思われますが、その内容が著しく捜査の妨害になるような場合には、当該報道機関に遺憾の意を伝えるなどして、適宜適切に対応しているものと承知しております。
山花委員 もう時間がないのであれですけれども、そうなんですよ。刑事局長が言われるとおりで、表現の自由に配慮しということで、よほどひどいケースについて遺憾であるということを、しかもこんな文書なんか出さないんですよ、せいぜい記者会見の場で言うぐらいの話で、今回だってそういう手法だってあったわけです。
 これは表現の自由にかかわる問題ですから、つまり、表現の自由というのはほかの人権よりも極めて重要な人権で、民主制の過程を支えている。つまり、例えば立法の際に誤りがあったとしても、表現の自由さえ確保されていればそれを言論によって正すことが可能なわけです。ところが、言論の自由が弾圧されてしまうようなことがあったり、あるいは萎縮的効果をもたらすようなことがあると、民主制の過程そのものが傷つけられてしまうからこそ、それに対しては本当に配慮しなきゃいけないということで、憲法学の上でも大変重要な人権だということが言われています。ましてや、憲法の二十一条の一項の解釈として、検閲は二項で禁止されているだけじゃなくて、一項で事前抑制の原則的禁止の法理ということが憲法学界でももう通説とされているわけですよ。一々東京本社の編集局長あてに入管局がこんなのを出すという、個別のものについて出すというのは、私はこれは憲法上も大変疑義があることだと思います。
 今、参議院の方で人権擁護法みたいなのがありますけれども、あんな根拠法がなくたって、こんなもう憲法に触れるようなことをやっているような対応については大変おかしいと思いますし、今の答弁を聞いたら余計、これで全く問題がないという認識のようですけれども、大変な問題ですよ、これは。根拠法ができたら本当に恐ろしいことだと思うということだけ申し上げて、質問を終わりたいと思います。
山本委員長 石原健太郎君。
石原(健)委員 刑務所の医療問題については、もうこの委員会でも随分取り上げられました。また、中間報告にも医療のことも書かれておりますが、報告が発表されて二カ月経過しております。
 矯正局の方では医療従事者に対してどのような対応をとられたか、お聞きいたします。
横田政府参考人 中間報告が発表されましてからおっしゃるとおり二カ月たっておりますが、その間に、矯正の医療に関してさまざまな御指摘、その前からでございますけれども、ございました。
 それにつきまして、例えば死亡事例の調査ということも一方で行われました。これもまたそれぞれの指摘も受けた、それを踏まえての処置でもございますけれども、そういうようなことを行いました。現在もなおその調査は継続しているわけでございますけれども、当局、矯正局におきましても、主として医療体制の見直しを図るという、そのための参考とするという観点から検討を進めておりまして、この結果を踏まえて、施設の医療従事者に対してはまた必要な指導を行いたいと考えております。
 なお、個々の事例につきましては、死亡帳等、死亡関係書類の記載上の不備があるなど明らかな問題があると考えられるものもございましたので、それらにつきましては、当局の所管課である医療分類課から当該施設の関係者に対して個別に指導を行うなどしてまいりました。
 また、医療体制の問題につきましては、先般当局に発足させました矯正医療問題対策プロジェクトチームにおきまして、外部医師のヒアリングや矯正医官を対象としたアンケート調査なども実施しながら検討を加える予定でございまして、その結果を踏まえて、また施設に対して必要な指導を行いたいと考えております。
 以上です。
石原(健)委員 お聞きしたところでは、医療体制全体についての矯正局の考えなどはまだ伝えていないようにも聞き取れましたが、例えばなるべく医師が長時間滞在するようにとか、そういうことは通達しようと思えばすぐできることなんじゃないでしょうか。
 それとまた、不審な死亡といいますか、正常と思われない死亡事例二百三十八件の一覧が出まして、その中を見ますと、死因として呼吸不全とか心不全とかあるわけですけれども、人が死ぬときはそうなるのが当たり前の話で、死因とは言えないと思うんですね。そういう受刑者が死亡したような場合には、公明さといいますか公正さを確保するためにも、刑務所の医師以外の医師にも、外部の医師に立ち会ってもらうとか、そういうこともやろうと思えばすぐできることだと思うんですけれども、以上の二点についてどんなお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 まず、医師の勤務時間といいますか、あるいは在所時間といいますか、その点でございますが、これにつきましても、これまでの個別の雇用契約を結ぶに至ったときのさまざま雇用条件等ございまして、きょうやってすぐあしたというわけにはなかなかまいらないのが実情でございます。
 ただ、その点について問題があるということはもう私ども十分承知しておりますので、これにつきましても、全般的な医療体制、特に人員面における体制の充実方策、どうあるべきかいかんといった観点から検討する中で具体的な方法をとってまいる、そういう予定でございます。
 それから、先生がおっしゃった死因の関係ですが、これも先ほど申し上げましたように、現在なお調査が継続しているところでございますけれども、それにつきましても、最終的な結果が出た段階で対応すべき事柄と思っていますので、その上でそれぞれに対応した適切な方策をとってまいる予定でおります。
 以上でございます。
石原(健)委員 受刑者が亡くなると死亡報告というのが上がってくると思うんですけれども、その中に、医師が立ち会いの検察官に、これは報道関係には伏せておいてくれといったような趣旨を述べたというようなことが報告されていますが、何かそういうのを見ますと、不明朗な感じもするわけですね。やはりなるべくオープンな方が、世間からも疑いの目で見られないようにするためにも、受刑者が亡くなったようなときには第三者的な医師に立ち会ってもらう、そういうことも大事だと思うんですけれども、いかがでしょう。
横田政府参考人 一般的には、死因に不審があれば、やはり検死あるいは解剖といった法律的な手続によって明らかにされることになります。また、刑務所内で死亡した場合については一定の基準がございますけれども、公表する、その公表の範囲を先般広げて、それを実施しているところでございます。
石原(健)委員 その資料につきまして、私の方にいただければよこしていただきたいと思います。
 それから、二百三十八例のうち、特に不審だと思われる者十五人について追跡調査をやっているということでありますけれども、その結果はどういうふうになっておりますでしょうか。
横田政府参考人 この二百三十八といいますか、先般中間報告はしておりますが、なお引き続きその一部について継続調査を行っているところでございます。その調査の終了を待って、また何らかの形で公になることと思います。
石原(健)委員 これは五月十三日に二百三十八例が公表されたわけですけれども、大分追跡にも時間がかかっているように感じますが、大体どのくらいのところまで進んでいるんでしょうか。
横田政府参考人 これは、実は法務省内部のことなんですが、この件につきましては、死亡帳調査班というものが編成されて、そこで今専属的にやっているところでございまして、私、ちょっとその状況についてつまびらかにしておりませんので、御勘弁いただきたいと思います。
石原(健)委員 質問通告のときにはこのこともしておったわけなので、そこまで詳しく局長の方で調べなかったというのなら、それはそれでいいんですけれども。
 次に、中間報告には刑務官の人権意識が希薄だというような記載がありました。このことについてはどのように対応されたでしょうか。
横田政府参考人 今回の一連の名古屋刑務所事件につきまして、中間報告でも報告されておりますとおり、その原因の一つとして、職員の人権意識の欠落あるいは希薄さがあったということは明らかでございまして、従来から実施してきた人権研修が必ずしも十分に効果を上げていなかったと認めざるを得ないと思います。
 そのため、昨年十一月に名古屋刑務所刑務官が逮捕されて以降、事件の重大性にかんがみ、矯正研修所の各支所におきまして、矯正施設の中間監督者に対し、外部の有識者の講義や戒具使用方法の指導など、人権に配慮した法執行について学ぶ研修を新たに実施し、これを各施設に持ち帰り伝達研修を行うことによって、全職員の意識喚起を図っております。本研修に関しましては、本年度以降も引き続き実施することとしております。
 また、これに加えまして、名古屋刑務所につきましては、本年五月、財団法人人権教育啓発推進センター理事長で、人権問題に造詣が深く、国際的にも活躍しておられる宮崎繁樹氏を講師として、これはビデオ視聴者を含みますけれども、名古屋刑務所の職員約三百七十名に対しまして、「二十一世紀の人権問題」と題する人権研修を実施したところでございます。
 今後は、矯正職員の人権意識の一層の向上を図るべく、人権研修のさらなる充実に努めますとともに、行刑改革会議の御意見や御提言をいただきながら、施設運営の透明性を高め、外部からもわかりやすい行刑運営に改革するなど、職員の人権意識が必然的に変わらざるを得なくなるシステムづくりを検討してまいりたいと考えております。
 以上です。
石原(健)委員 この委員会の審議の過程でも感じられたことですし、また中間報告にも載っていることですが、末端の出来事が責任者に伝わっていない、また責任者から矯正管区の局長に伝わっていないというようなことも感じられましたけれども、そうした下の声が上に上がっていかないというようなことについての対応はどのようにとられたんでしょうか。
横田政府参考人 確かに委員がおっしゃるような状況が見られましたので、その後、例えば、行刑施設におきまして革手錠を使用した場合には、関係記録を本省及び矯正管区に送付して速やかに報告するように、通達及び通知を発出いたしました。
 また、本省及び各矯正管区におきましては、行刑施設の長などを集めた協議会などにおきまして、施設内における業務処理体制見直し、上下の意思疎通が円滑に行われるよう、また報告規程に基づく上級官庁に対する報告は、その規程にのっとって速やかに行うよう指示しております。
石原(健)委員 そうした通達とか通知につきましても、いただけるものならいただきたいと思いますので、委員長、よろしくお願いいたします。
山本委員長 しかるべく。
石原(健)委員 それから、刑務所に行ってみますと、累犯者というのが随分多いという話も聞くんですが、過去三年間、出所者数とそのうちの累犯者数について教えていただければと思います。
横田政府参考人 お答えいたします。
 数字を申し上げますので、お願いいたします。
 三年間ということでございますので、まず平成十二年から申し上げますと、平成十二年の出所者数、出所受刑者の総数が二万三千七百十五人、そのうち入所度数が二度以上の者は一万三千三百七十二人ですので、五六・四%ということになります。次に、平成十三年でございますが、出所受刑者総数は二万五千七百十四人でございます。そのうち入所度数が二度目以上の者、この人たちが一万三千九百五十人でございまして、比率は五四・三%になります。それから、平成十四年の出所者数が二万七千三百八人、入所度数二度以上の者が一万四千四百二十五人で、五二・八%という比率でございます。
石原(健)委員 半分近い人が何回か刑務所に入っているわけですけれども、何でこう何回も入るのか、法務省としては、その辺、分析しておいででしょうか。
横田政府参考人 出所した者が再犯に陥る原因には、個々人によりさまざまな理由が存在すると考えます。特段これに絞って調査をしたということは、私は承知しておりません。
 理由として、例えば、そのまま仕事についていたかどうかというようなこともまた一つには考えられるかなという可能性はありますから、いずれにいたしましても、一概に分析することはなかなか困難ではないかと思います。
 しかしながら、例えば平成十三年の一年間におきまして、再入受刑者一万三千九百九十人のうち、覚せい剤取締法違反により再入した受刑者は四千二百六十三名でございますが、そのうち、前の刑も覚せい剤取締法違反であった、それによって服役したという者は三千百三十一名と、約七三%を占めております。こういった数字を考えますと、例えば覚せい剤取締法違反により受刑する者につきましては、覚せい剤への依存が再犯に陥る大きな原因であるということも考えられるかなというふうに思っております。
 以上です。
石原(健)委員 現場の刑務官の話などを聞いてみますと、やはり仕事が見つからない、仕事がないから、ついつい悪いことをやってしまうケースが多いんじゃないかというような話もしておられるわけです。
 それで、刑務所に五年とか十年いると社会からかなり隔絶されて、出所前には社会になれやすいようないろいろな手だてもされると思うんですけれども、実際、そういう五年も十年も刑務所にいた人が突然社会に出てきて仕事をすぐ見つけるということも困難だと思うんですけれども、こうした点については、法務省としてはどういう配慮をされておるんでしょうか。
津田政府参考人 保護観察所におきまして、出所者のうち仮出獄者に対しましては、保護観察処分の一環といたしまして、就労意欲の喚起を促すとともに、就職活動の具体的な情報と方法について指導助言を行っております。また、犯罪歴を承知の上で出所者を雇用していただける民間の協力雇用主を活用して、出所者の就職の促進を図っております。さらに、適当な住居がない出所者を引き受けている更生保護施設におきましても同様の就職支援活動を実施しておりますほか、これらの人たちが円滑に仕事につけるよう、社会適応訓練等の処遇技法を用いるなどして、その就職を援助いたしております。
 また、満期の出所者につきましても、本人からの申し立てがございました場合には、仮出獄者の場合と同様に、就職活動につきまして助言指導や、先ほど申し上げました協力雇用主の紹介等を実施しておるところでございます。
石原(健)委員 年間二万三千人、五千人という、今二万七千ぐらいになってきているんですか、そういう方たちが出所して、今保護局長からお話あったような努力、それだけでは、特に民間の場合なんか、なかなか、そういう出獄してきた人を雇おうという気持ちになる方はそうそうはいないと思うんですよ。
 それで、法務大臣にちょっと要望しておきたいんですけれども、こういう出所してきた受刑者に対するアフターケア、これをもう少し法務省として努力していただきたいと思うんですけれども、その辺のお考えをお聞かせいただけたらと思います。
増田副大臣 いろいろ御心配をいただいておりますが、先生が御指摘のように、近年の社会経済情勢がますます悪化であります。雇用情勢が厳しくなっておりますので、特に犯罪歴のある人の就労先の確保は、先生がおっしゃいましたように、とりわけ困難な状況にあるものともちろん認識いたしております。
 これに対しまして、犯罪歴があることを承知の上で雇用してくれる事業者、協力雇用主は、現在全国に約五千人ほどおられます。これは、何の見返りもありません。奉仕の精神で面倒見てやろうというような方であります。このような就労先確保が困難な中で五千人ほどやってくださっておる、このような役割はますます重要性を増しております。法務省といたしましては、これらの協力雇用主の一層の開拓に努め、協力雇用主の方々の協力が得られるように努めてまいりたい、このように取り組んでおります。
 また、更生保護施設につきましても、施設内におきまして社会適応訓練等の処遇を実施いたしまして、就職情報等を提供することにより、被保護者が速やかにかつ円滑に就労活動に入れるよう、いろいろな援助を行っておりますが、引き続き、これから社会生活に適応していただくために必要な生活指導を充実させてまいりたい、このように考えております。
 余計ですが、私も保護司の一人として、こういった分野にも時折出くわします。頑張っていきたいと思います。
石原(健)委員 一層の御検討といいますか御努力をお願いしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
山本委員長 木島日出夫君。
木島委員 五月二十八日に続きまして、行刑問題について質問いたします。
 五月二十八日の質問の最後の段階で、法務省の答弁で、本年四月三日から六日まで、法務省局付検事六人を含む十二人が名古屋刑務所に入り、六十余名の職員から事情聴取をしたという答弁がありました。何の目的でこんな調査が行われたんでしょうか。
 背景事情をお話ししますと、十二月ホース水放水事件については、既に三月四日に乙丸らが起訴されています。検察としての証拠固めは全部終わって、刑事事件が立件されている。三月三十一日には、名古屋三事案全部について、法務省としてのかなりの大部の中間報告が国会に出されている。法務省の見解、私は問題ではないかというので、この間、一貫して追及してきましたが、法務省としての基本的な見解が三月三十一日に出されている。
 その後、なぜ四月三日から六日まで、局付検事六人を含む十二人という大勢が名古屋刑務所に繰り出して、六十数人の刑務官等から調査をした。目的は何だったんですか。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 行刑運営に関する調査検討委員会では、本年四月上旬に特別調査班を名古屋刑務所に派遣し、名古屋矯正管区の協力を得て、十二月事案についての名古屋刑務所からの報告状況や被害者が情願を取り下げた経緯を中心に、職員からの事情聴取などの調査を行ったものでございます。
 この調査を行った理由でございますけれども、中間報告にも記載しているところでございますけれども、中間報告の十三ページに「このような誤った報告が行われるに至った経緯の詳細については、十分に解明されてはいないが、」というふうなことで、私どももそれは不十分であるというふうに感じておりました。
 また、本年四月一日、この委員会において委員から、その点に加え、被収容者死亡報告が平成十三年十二月十九日付で作成されながら翌十四年一月中旬に矯正局に送付された経緯や、被害者が情願を取り下げた経緯などについて、調査が不十分とする御指摘がありました。
 これなどを踏まえまして、係属中の刑事事件の審理に影響を与えない限度で事案を解明する必要があると考えたからでございます。
木島委員 私、時系列をずっともう一回精査してみました。確かに私、四月一日にかなり厳しく、前日出された中間報告を夜読んで、徹底して追及した。では、私が追及したので、こんな十二人の大挙、名古屋刑務所に押しかけたということですか。それは結構なことです。
 それでは、中間報告で、法務省の基本的スタンスがここに書き込まれています。これに矛盾する、これに抵触することを陳述したようなものがどのくらい、どの程度噴き出してきたんでしょうか。前回の質問に対して、矯正局長、突然の質問でしたからお答えになりませんでしたので、改めて答えてください。矯正局長じゃなくて、官房長かな。
 二点、答弁を保留しているでしょう、前回。私は三点聞きました。六十余名の事情聴取の中の一人が三井刑務官か。そして二つ目は、少なくとも被収容者死亡報告を上げる時点では、血痕の付着した下着、ズボンの存在はなかったということを確認しているのかということ。そして三つ目は、逆に、この六十余名の事情聴取の中で、血痕の付着したズボン、下着の存在をにおわせるような供述は何人ぐらいからあったのか。三点まとめて質問したら、大林官房長ですね、三井刑務官も調査の対象の一人だったということは認めましたが、その余の二つについては、ちょっと私の手元にないから調べさせていただきたいで答弁終わっているんですが、答弁してください。
大林政府参考人 先生の御質問に対して、宿題となっておりましたことについてお答えさせていただきます。
 まず、調査の際に、職員から、被害者が着用していた下着に血痕が付着していたという供述がなかったかどうかということについてお尋ねがありました。
 これについて私の方で確認いたしましたところ、特別調査班による調査の際に、被害者の下着に血が付着しているのを見たとか、あるいは血が付着している被害者の下着が保管されていた、こういう直接的な経験として述べた者はいなかったというふうに聞いております。
 ただ、名古屋刑務所で勤務していた刑務官のうち数名の者が、他の刑務官から被害者の下着に血が付着していたという話を聞いたという者がいたということでございます。ただし、これらの者はいずれも現場に居合わせたものではない、それから、その内容も、自分自身が下着を確認したというものではなかった、こういうふうに承知しております。
 それから、行刑運営の実情に関する中間報告では血が付着した被害者の下着はなかったとしているか、こういう趣旨の御質問でございます。
 十二月事案の被害者が死亡した直後に名古屋刑務所から名古屋矯正管区などになされた報告などには、被害者を転房させようとした際、下着臀部に出血したような汚損を発見したので、医師の診察を実施したところ、肛門部に負傷箇所が認められた旨記載されているところでございます。
 しかしながら、刑事局などの報告により、被害者の直腸裂開等は消防用ホースによる放水によって生じたものと考えられ、また、出血の発見状況は、放水が行われた直後に肛門付近から出血していることに気づいたというものであったと認められるので、名古屋刑務所からの報告に記載されている医師の診察を受けさせるに至った客観的事実経過は事実に反するものである、こういうふうにしたものでございます。中間報告で出血発見状況について客観的事実に反する記載がなされたとしているのも、その趣旨でございます。
 しかしながら、法務省による調査結果では、被害者が自傷した後にその下着に血が付着した可能性も否定できず、その意味で、血が付着した被害者の下着はなかったと断定しているものではございません。
木島委員 そうすると、最初の答弁ですが、ことしの四月三日から六日までの法務本省からの調査の結果、数名の刑務官から、自分が直接体験した事実ではなくて、伝聞として、同僚の刑務官の中に血痕の付着したズボンの存在やそうした保管状況について聞いたと陳述した者がいたということですね。そうすると、それはもう同僚の刑務官の名前もわかるはずですから、さらに追跡調査というのはしたんですか。
大林政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、本件調査の目的は、矯正局に送付された報告の状況あるいは情願を取り下げた経緯等、ある程度焦点を絞って調査をしたものでございます。今の血の付着云々という問題は、これ自体は公判で争点になることが予想されることでございまして、それ以上深く追及した調査は行っておりません。
木島委員 それが本当に私はおかしいと思うんですよ。公判廷にさわるからという理屈は私は今回棚に上げます。私が再三ここで問題にしているのはその観点じゃないんです。最初に、平成十三年十二月十四日に何かのことがあって、そして直腸裂開があって、縫合手術をした、しかし翌日死んだ。その受刑者死亡報告書が一カ月後に法務本省にも名古屋矯正管区にも上がっているんですが、その今法務省がうそと断定した大変大事な受刑者死亡報告の中に、今答弁のように、転房の際血痕の付着したズボン、下着類を発見という記述が入り込んでいるわけですね。だから私は問題にしているんですよ。今の答弁も、それは事実がなかった、あったということは賢明に避けましたね、答弁。ずるいなと思って私は聞いておるんですが、その存否、避けましたね。
 それは避けても結構ですが、しかし、今法務本省がうそと断言した三月三十一日の中間報告で取り上げられた受刑者死亡報告の中にそれにかかわる記述があるから、そしてそれに合うようなことを言っている者が名古屋刑務所の中にいる、そしてそれからまた聞いたという、そこまで調査したんだから、当然法務本省としては、最も大事な部分として、皆さんはうその報告を上げられたんだから、法務大臣はうその答弁を国会でしたんですから、昨年来。私は法務大臣の答弁を全部精査しましたよ。時系列を持っていますよ。ずっと、去年の十月、十一月、ことしの一月に入っても、うその答弁をし続けてきたんですからね、法務大臣。それにかかわる問題ですから、追跡調査しない理由がないじゃないですか。
大林政府参考人 先生御指摘の点が重要であることは私も認識しております。しかしながら、これは前にも申し上げたとおり、出血がどの時点で始まったのか、死因がどのような原因であるかということは非常に裁判の問題になります。確かに、出血の有無ということが報告の内容に記載されていますけれども、これは先ほどから申し上げているとおり、その事実経過において虚偽があるということで、私どもは中間報告にそういうふうに書かせていただいたものでございます。
 非常に重要なことであることは承知しておりますけれども、これはやはり公判の重要争点でもありますので、その推移を見ながら私どもの対応を考えさせていただきたい、こういうふうに考えております。
木島委員 だから、私は前回からの質問でも、非常に私も一線を画して質問しているんです。そういう血痕の付着したズボンや下着があったか否か、保管されていたかどうかということと、仮にそれが真実だったとしても、その汚物が血液だったかどうかということの事実の有無。さらにもっと言いますと、その血痕なるものが、仮に真実だとして、何でついたのか。ホース水の放水によってついたのか、自傷行為によってついたのか、その辺は大変私は、私も弁護士ですから、裁判では最大の争点になるだろうと思います。しかし、その点は、私は国会ではそこまでここできわめることはやはりしなくてよかろうと。むしろ、そういう部分は公判廷の、裁判の仕事だと私は思っているんですよ。
 しかし、「転房のため保護房を開扉した際、職員が事案者の着用していたズボンに血痕が付着しているのを発見した。」こういう報告が少なくとも受刑者死亡報告で上がったんですから、それを皆さん方がうそだと断言したんだから、果たして血痕が付着したズボンが存在したのか否か、架空の、でっち上げの事実なのか否か。存在して保管はしていた、しかし一定の時期に廃棄処分した、そういう事実があったのかないのか。あったとすれば、何でそんなことが起きたのか。この被収容者死亡報告に物すごく関係する部分だから、それは、刑事裁判とは切り離せる話ですから、徹底して調査して、やはり報告を国会にすべきじゃないですか。
 これは法務大臣の方が理屈がわかるかな。法務大臣、答弁していただけますか。――だから、刑事裁判を理由に調査は拒絶できないんじゃないかというのが質問の趣旨です。
大林政府参考人 委員の御指摘、私は十分理解しているつもりでございますが、中間報告書に記載しているのは、出血の発見状況しか言っていないのですから、これについてはそれ以上、私どもはちょっと申し上げられないと思っております。
木島委員 だから、そんな中間報告は不十分だ、不正確だと言っているんですよ。
 では、刑事局長は理屈わかっているかもしらぬから。私が言った要求を法務省がしっかり受けて、さらにこれは矯正行政として真実をきわめていくということは、決して名古屋で今行われている刑事裁判にはさわることじゃないでしょう。
樋渡政府参考人 伺っておりまして、理論的には委員の言うところは十分理解できるのでありますけれども、この種の事件につきましては、他の行政機関内で起きましたものも同様でございまして、そのような場合に他の行政機関が行政の立場でお調べになることはありますが、時にして報道機関等によりまして口裏合わせをやっているのではないかというふうに非難されることがあるわけでありまして、当省の場合におきましては、今度はかばい合うということの、今までもそういう批判をされることもあるわけでありますが、それ以上に、公判に圧力をかけるためにやったのではないかというふうな誤解を受けかねないところもあるものでありますから、その点を慎重に考えながら、行政としてできる範囲内の調整をやっているというふうに存じております。
木島委員 そういう答弁をするんでしょうから、私は逆に、あなた方は既に乙丸に対する起訴は終わっていると。基本的に、刑事で起訴が終わったら、起訴後の捜査はすべきじゃないんですよ。問題になるんですよ、起訴後の捜査というのは。弁護人から確実に批判されますよ。わかっているでしょう。そして、中間報告も法務省は我々に出してきた。それで私は質問しました、四月一日に。それで、いろいろ不十分な点、やりました。
 それ、結果を受けて調査するのは結構なんですが、調査結果をまとめて当委員会に報告するわけでもないのに、初めて、この前の私の質問に対して、何と、四月の三日から六日まで、局付検事六名も含めて一斉に名古屋へ入って、六十余名から事情聴取したと。私は言いますよ、それは何のためか。邪推をしたら、一つは国会対策、もう一つは公判対策だったんじゃないかと。名古屋の刑務官の中には不満が噴き出しています。その噴き出した不満の中心は、何で我々下っ端の刑務官だけが起訴され、幹部がみんなのうのうとしておるんだ、そういう不満でしょう。その不満の一つが噴き出したのが、河村さんを通じてここで質問になっているんでしょう。
 私は、四月三日から六日まで、これだけ本省から乗り出していって六十数名から事情聴取したというのは、逆に言うと、一つは国会対策であり、一つはまさに名古屋の地方裁判所で起きている刑事裁判対策だったんじゃないか、不満を上から押さえつけるためのものだったんじゃないかと。そういう目的がないにしろ、そういう効果を持つ、この六十余名に対する本省からの調査はね。変なこと言うな、検察の態度はもう起訴で明らかだ、法務本省の態度は三月三十一日の国会への報告書で明らかだ、悪いのは全部乙丸ら末端の刑務官だと。名古屋刑務所長以下、事件は知らなかったという構造でしょう。それを塗り固めるための役割を四月三日から六日までの一斉調査は果たす、客観的に、そういう意図は持っていないにしろ、そういう結果を果たすことになりはしませんか。
 だから、今刑事局長が、公判中のものを余り上から調査すると危ないから慎重にやるんだとおっしゃるんなら、私は、この四月三日から六日の一斉調査というのは、まさにそれを絵にかいたようにあなた方はやっているんじゃないか。
 その批判を避けようと思うなら、調査結果、全部ここへ出していただきたい。どの刑務官からどういう調査報告をとったのか。全容をここに出してもらわなければ、私は、変な意味の国会対策、変な意味の公判対策、そして不満の口封じという役割をこの調査は果たしたんじゃないかと思わざるを得ない。だから、大臣、調査結果、全容を出してください。そういう批判を受けたくないんなら。
 法務大臣ですね、これは。法務大臣が命令したんでしょう、こういう調査を。
森山国務大臣 今いろいろと御説明申し上げましたような目的で調査を行いました。その内容について、今きちっと精査しているところだと思いますが、その結果について、必要なものは御報告することと存じます。
木島委員 では、もう時間ですから、最後、一点だけ質問します。
 四月一日に、私、議事録持っています、質問しました。この名古屋の十二月事案の一番の決定的な問題は、果たしてホース水による暴行陵虐という行為を当時の久保名古屋刑務所長が知っていたのかどうなのかがポイントだというので、私、質問したんですが、横田局長は、調査はそこまで進んでいません、しかし知らなかったんじゃないかと。では、いつ知ったと思うんだと言ったら、ことしだと言って答弁したんじゃないかな、当時の刑務所長がそういう暴行事件を知ったというのはね。
 では、この四月三日から六日までの一斉調査の対象に当時の久保所長は含まれていますか。いろいろ事故があったのは、私、承知しています。入院中だったかもしれません。しかし、調査対象に入っていますか。そのとき久保前刑務所長はどう供述しましたか。
大林政府参考人 お答え申し上げます。
 本年四月上旬の特別調査班による調査の際に、当時の所長についても、特別調査班の検事において、入院先の病院で事情聴取をしております。しかしながら、元所長は不安定な精神状態にあり、具体的な事実の供述は得られない状況にあったというふうに承知しております。主治医から元所長の精神状態について聴取も行っておりますが、結局のところ、質問に的確に答えることはできないという状態で、余り具体的な供述は得られなかった、こういうふうに聞いております。
木島委員 革手錠死亡事件、革手錠傷害事件、そしてこの問題のホース水放水による死亡事件、かぎを握っているのは、私は刑務所長だったと思うんですね。その刑務所長に対する調査が現時点で全くできていない。これでは、私は、真相解明もできなければ、法務行政、刑務行政のどこが問題なのか解明できないと思うんですね。肝心かなめの人から事情聴取できていないんですからね。
 そこだけ指摘をいたしまして、もう時間ですから終わります。
山本委員長 保坂展人君。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 まず、矯正局長に前回、委員会で求めましたところ、きのう、割かし分厚い報告が来ましたので、速やかにこれからも出していただければ議論が進められるというふうに思います。
 一点、一〇〇%国費負担というところで、外来や入院治療を行刑施設の側がためらってしまうものがあるんじゃないか。そこでお聞きしますけれども、記録上確認できる治療費の最高額は幾らだったんでしょうか。その方たちの入院日数がもしわかりましたら、お答えください。
横田政府参考人 お答えいたします。
 取り急ぎ、当局に保存している文書で確認いたしました。その範囲内で、特に高額な医療費が必要となった事例が二件ございましたので、それについて御報告をいたします。
 一件は、急性大動脈瘤解離により緊急手術を実施し、入院日数二日間で約九百八十万円の医療費が必要となった事案がございました。それからもう一件は、脳内出血等によって二十五日間入院した事案で、これにつきましては約七百四十万円の医療費を要しております。以上、この二点が取り急ぎ確認できました。
 以上です。
保坂(展)委員 それだけかかっているということは、これ、一〇〇%の国費負担だということにもよると思いますけれども、実際上、容体が急変をして、そして病院に担ぎ込まれて、亡くなった方たちの二百三十八人の記録を見ると、ほとんどの方が、その日のうちにであったり翌日であったりということで、入院期間が非常に短い。処遇に当たっている方、処遇の系列の中で医療も見ているという関係にあるのではないかと思いますけれども、早く外来治療を施すべきであるとか、もう入院させるべきだという判断の決定権はどちらにあるんでしょうか。処遇と医療のそれぞれの見方で違ってくると思いますが。
横田政府参考人 お答えいたします。
 被収容者の治療は、原則として刑務所等の医師が行うこととされておりますが、施設内で適当な治療を施すことができない場合には外部病院に移送することができることは、監獄法第四十三条に規定されているとおりでございます。
 委員お尋ねの外部病院への移送の可否につきましては、施設の医師の医療上の判断に基づき、最終的には行刑施設の長が決定することになります。また、病院での治療期間は、外部病院の医師の判断で決まるものでございます。
 以上です。
保坂(展)委員 きょうは、先ほど山花委員もやりましたけれども、入管局長にも来ていただいていますので、この読売新聞の東京本社編集局長にあてた抗議申し入れ書について二、三、伺っていきたいと思います。
 事実関係ですが、抗議をしようというふうに判断されて、そして、実際にきのう伺ったところだと、法務省の読売新聞の担当記者にその方法を相談したところ、記事を書かれた記者が来省された、そして入管局の総務課総括補佐官が対応した。つまり、記者の方から法務省に来られたということでよろしいですか、事実関係だけ。
増田政府参考人 ただいま委員のおっしゃったとおりの経過であると承知しております。
保坂(展)委員 そうすると、この記事の内容には入り込みませんが、山花委員が指摘したところと同じですけれども、近く難民認定へというような、いわば記者の取材による一種の予測報道ということは他の分野にもあります。「極めて遺憾である。」ということは、言うことはあるでしょうけれども、「訂正と謝罪を求める」、こういうふうにあります。この訂正と謝罪は現在も求め続けているんですか。そして、返事がなければずっと要求する、こういう立場でしょうか。どうでしょうか。
増田政府参考人 現在も要求し続けているのかという問いが、抗議申し入れ書を出した後も、さらに継続してそのような申し入れをしているかという趣旨であれば、そうではございません。五月二十九日に抗議申し入れ書を渡しました。それ以後私どもは、その後、さらなる抗議とか申し入れはしておりません。
 それから、相手からの謝罪でございますか、謝罪などは、その後、私どものところには来ておりません。
保坂(展)委員 それはおかしな話であって、これは、口頭で言ったり、記者会見で否定したというのではなくて入管局長の、しかも読売新聞の広報ではなくて編集局長、記事の内容自体に責任を持っている方に訂正と謝罪というのを求めているわけです。
 この文書です。文書で求めて返事が来なければ、求め続けているということになるじゃないですか。では、これはもう撤回したんですか。撤回したのならもう求めていない、どうですか。
増田政府参考人 その申し入れ書を撤回した事実はございません。したがって、私どもとしては、私どもがその抗議申し入れ書で書いたとおり、今回のその記事、法務大臣が近く北朝鮮脱北者を難民認定する可能性が強い、そういう記事は誤りでありますよという私どもの意図は伝わったものと理解しております。
保坂(展)委員 これは今後についても触れていますね。「このような誤った記事を掲載することのないよう、厳重に抗議を申し入れる。」ということですから、誤っていない記事を掲載するかどうかは、入管局長、これから記事を予測で書くときには一応確認に来てくれということですか。大事な点なので、答えてください。
増田政府参考人 ただいま委員がお尋ねになられたような意図は、全く考えておりません。およそ記事の内容について、事前に当局にその内容を教えてもらいたいとか、それを当局が審査しますよなどということを要求できるはずがないことでございます。したがって、そのようなことはみじんも考えておりません。
 要は、国民に誤解を与えることのないように正確な記事の報道を求めます、そういうことで抗議申し入れ書を出したことでございます。
保坂(展)委員 この抗議の仕方は非常にとげがある。しかも、命令調だということを非常に感じますよ。今局長が答弁されたような、やんわりとというふうな文面にはなっていないということを指摘して、これはさらに今後どうするのか、注目していきたいと思います。
 刑事局長に来ていただいているんですが、私が生まれて間もないころの話なんですけれども、売防法事件という汚職事件が、昭和三十三年、一九五八年にありました。これは、十月十二日に、当時の赤線の業者さんたちの理事長、そしてまた副理事長などが逮捕されるという事件だったですね。
 この法律について、当時の法務委員会でもいろいろ議論があったそうですね。そして、政界あるいはその関係者に、この法律の成立阻止に向けた、意図をした献金がばらまかれたというような事件で、大変に世間の耳目を集めた。当時、天野武一特捜部長、伊藤栄樹さんが応援検事としてこの事件の処理に当たるということだったようです。
 実は、これは昭和三十二年十月十八日の読売新聞の紙面で、「U、F両代議士を売春汚職で召喚必至」という記事が載ったんですね。これは東京の、Uと書いてありますから、これは宇都宮徳馬先生であると一瞬のうちに皆さんわかったわけです。
 宇都宮先生は、全くいわれがないということで激怒をされて、即、読売新聞記者と東京地検、最高検の氏名不詳の某検事を告訴したという展開になりました。そして、六日目に、この読売新聞のスター記者ですね、スクープを放ってきた記者が逮捕されたんですね、東京高検に。そして、だれが君のニュースソースなんだという調べを受けて、彼は守秘義務ということで一切言わなかった。二カ月後に読売新聞は、これは誤報だったということを認めまして、そしてこの記者を懲戒処分にしたということで、大変優秀な記者だったのに、そういうことによって、その後記者生命を絶たれたという。これは、本田靖春さんが「不当逮捕」という本で書かれていると思います。
 実は、このとき調べに当たった伊藤検事総長が有名な「秋霜烈日」という本を書かれていまして、このことを振り返っていらっしゃるんですね。
  「売春汚職の捜査においては、初期からしばしば重要な事項が読売新聞に抜け、捜査官一同は、上司から疑われているような気がして、重苦しい空気であった。そのうち読売新聞に抜ける情報は、どれも赤煉瓦(法務省)へ報告したものであることがわかってきた。だんだんしぼっていくと、抜けた情報全部にタッチした人は赤煉瓦にも一人しかいない。そこで思い切ってガセネタを一件赤煉瓦へ渡してみた。たちまちそれが抜けたのが、例の記事だったのである。事の反響の大きさにあわてはしたが、犯人がわかってホッとした気分がしたのも正直なところであった。
  あれから三十年余、赤煉瓦にいた男の名前も、捜査員の中でガセネタを仕掛けた男の名前も、すっかり忘れてしまった」
忘れてしまったことになっているんですけれども、多分御存じなんだろう。
 これは大変有名な事件で、刑事局長はどういうふうにこの歴史的な事件を記憶されていますか。
樋渡政府参考人 突然のことでございますが、その実際の事件は、私も小学生のころの事件でございまして、確かにそういうような話の内容を何らかの本で、また今お持ちのようなエッセーで目にしたことはございますが、何といいましょうか、そんなものは、どろどろしたことがあったのかなという、不快な気持ちを若いころは持っていたと思います。
保坂(展)委員 それでは、矯正局長にも聞いてみましょうか。
 どういう記憶でお持ちでしたか。
横田政府参考人 私も、先生御指摘の本は、昔読みました。そういうことが本当にあるんだろうかというのが当時読んだ感想でございます。
 現在の立場としての感想は、何とも申し上げられませんけれども。
保坂(展)委員 結局、ここで多くの人の名誉が傷つけられた。少なくとも宇都宮先生は、全くいわれがない、ガセですから、大変な迷惑をこうむったわけです。そして、その名誉を傷つけたのは特捜部の検事だったということも後からわかる。そして、その特捜部のにせ捜査報告書が法務省の刑事課長のところに上げられて、これが記事になったんだろうとその後言われていますね、この「秋霜烈日」が出た後。
 官房長、こうしたことを考えると、やはりメディアと、法務省や検察ももちろんですけれども、いろいろな歴史があったわけで、しっかり襟を正して、誤解が生まれないようにしっかりと距離を持って接してほしいというふうに思います。いかがですか。
大林政府参考人 今おっしゃられる、報道の自由の問題が絡む問題は非常に慎重な対応が必要である、これは感じております。
 ただ一方、今回の件につきましては、やはり微妙な、だれもが関心を持っておられる非常に重大な事案である、したがって、入管局としては事実関係を伝えたいという気持ちで行ったものと承知しております。そういうメディアの関係というものについてよく考えた対応が必要である、こういう一般論としては、私はおっしゃられる意味はわかります。
保坂(展)委員 法務大臣に伺いますけれども、今紹介した事例は大変古くて、しかし日本の捜査の歴史の中で忘れてはならない、繰り返してはならない出来事でした。したがって、こういった極端な、一種の権力闘争のあげく、記者が犠牲になるということもかつてはあった。
 現状を言えば、やはり予測報道というのはかなりあるんですね。それは行き過ぎている場合もあるかもしれません。しかし、役所が、これはいかぬ、これは謝罪しろというところまで一々物言いを始めると、これはこれから同じ基準でやらなきゃいけなくなりますよ。これはしっかり法務省の中で詰めていただいて、私は、これは、この文書を今後どういう扱いにするのか、責任を持って回答をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
森山国務大臣 今先生がお取り上げになりました昭和三十三年の事件は、私はほとんど初めて伺いましたので、そういうことがあったのかということで驚いて拝聴したわけですが、最近の、先日の読売新聞の記事につきましては、私自身が書いて渡したわけではございませんけれども、法務省としての考えを読売新聞にお伝えしたということで、間違った印象を与えるような記事を書かないでほしいという気持ちをお伝えしたのだというふうに思っております。
 そういうことに、紛らわしいことがしょっちゅうあるのは私もよく承知しておりますが、これからもまた非常に難しいケースがあり得るかもしれません。そのようなときの対処のために、よく慎重に考えなければいけないと思いますが、今おっしゃいましたような、例えば謝罪というような言葉を使うというのは、もしかしたらきつ過ぎるのかもしれないなという印象を私も受けましたので、表現ぶり、あるいは方法について十分慎重に考えたいと思います。
保坂(展)委員 法務大臣、もし入管局長が答弁されているように、これは誤解を与える、そしてまたいろいろ国民から予断を持った反応もある、ちょっとこれは事実と違うんだというのであれば、きちっと連絡をして、その旨を局長なりが伝えて、実はこうなんですよということを言うという方法もあったんじゃないでしょうか。抗議と謝罪、今後やるな、これは何かおふれ書きみたいなもので、非常に穏やかではない。そして、返事もなかなかしにくいでしょう、こういうやり方では。いかがですか。
森山国務大臣 いろいろなことがこれからもあると思いますので、そのときのやり方につきましては、おっしゃったような方法もあるでしょうし、また、文書にするとしても、書きぶりもいろいろあるでしょうし、またそれを渡す方法、その他いろいろな工夫が必要かと思います。決して言論なり報道の自由を制限しようというような考えは全くございませんので、そういう誤解のないように、しかも正しい報道が国民によく伝わるようにということで、何らかの工夫をしなければならないと思います。
保坂(展)委員 我々、人権擁護法案については、法務省が取り扱うことに対して大変懸念を持っているわけですね。そういった状況の中で、今この抗議文の扱いをしっかりと結論を出していただきたいと思います。というのは、これからも予測報道はあるわけですから、同じようにこういう発出し続けるのかどうか、そういうことをしてはならないというふうに思いますので、そこはしっかり法務省内で議論していただきたいと思いますが、いかがですか。
森山国務大臣 議論して、十分検討したいと思います。
保坂(展)委員 終わります。
山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時七分散会


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