衆議院

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第2号 平成16年2月25日(水曜日)

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平成十六年二月二十五日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      小西  理君    左藤  章君

      佐藤  勉君    桜井 郁三君

      中野  清君    早川 忠孝君

      古川 禎久君    保利 耕輔君

      松島みどり君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    山際大志郎君

      山本 明彦君    泉  房穂君

      枝野 幸男君    加藤 公一君

      鎌田さゆり君    河村たかし君

      小林千代美君    小宮山洋子君

      辻   惠君    中井  洽君

      橋本 清仁君    松野 信夫君

      上田  勇君    大口 善徳君

      富田 茂之君    川上 義博君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局総務局長            中山 隆夫君

   最高裁判所事務総局家庭局長            山崎  恒君

   政府参考人      

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   政府参考人       

   (内閣府男女共同参画局長)            名取はにわ君

   政府参考人       

   (金融庁総務企画局長)  増井喜一郎君

   政府参考人       

   (法務省大臣官房司法法制部長)          寺田 逸郎君

   政府参考人       

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人       

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人       

   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君

   政府参考人       

   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君

   政府参考人       

   (外務省大臣官房審議官) 山口 壽男君

   政府参考人       

   (財務省大臣官房審議官) 加藤 治彦君

   政府参考人       

   (文部科学省大臣官房審議官)           金森 越哉君

   政府参考人       

   (文部科学省大臣官房審議官)           清水  潔君

   政府参考人       

   (厚生労働省大臣官房審議官)           北井久美子君

   政府参考人       

   (厚生労働省社会・援護局長)           小島比登志君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     山本 明彦君

  山際大志郎君     古川 禎久君

  鎌田さゆり君     橋本 清仁君

  上田  勇君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 禎久君     山際大志郎君

  山本 明彦君     左藤  章君

  橋本 清仁君     鎌田さゆり君

  大口 善徳君     上田  勇君



    ―――――――――――――

二月十九日

 外国人住民基本法の制定に関する請願(佐々木秀典君紹介)(第四九二号)

 犯罪捜査のための通信傍受法の廃止に関する請願(金田誠一君紹介)(第四九三号)

 成人重国籍の容認に関する請願(渡辺周君紹介)(第五四〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りをいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、内閣府男女共同参画局長名取はにわ君、金融庁総務企画局長増井喜一郎君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長樋渡利秋君、法務省矯正局長横田尤孝君、法務省入国管理局長増田暢也君、外務省大臣官房審議官山口壽男君、財務省大臣官房審議官加藤治彦君、文部科学省大臣官房審議官金森越哉君、文部科学省大臣官房審議官清水潔君、厚生労働省大臣官房審議官北井久美子君及び厚生労働省社会・援護局長小島比登志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りをいたします。

 本日、最高裁判所事務総局中山総務局長及び山崎家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどり君。

松島委員 自民党を代表して質問させていただきます松島みどりでございます。

 私どもが昨年秋に改選されましてから、初めてのこの法務委員会での本格的な質疑のトップバッターに立てることを光栄に存じております。

 今、治安の回復、日本を世界で一番安全で安心な国、そういう日本を取り戻そう、このことについては日本国民、非常に関心が高く、そしてまた小泉総理の施政方針演説、さらに野沢大臣の所信表明の中にもしっかりと盛り込まれておりました。私はこのことに絞って、このことに関連する事柄で、きょうは質問させていただきたいと思っております。

 平成十五年度補正予算でも、刑務所の増築、このために三百四十六億円の予算が計上されました。これで収容人員をおよそ三千人ふやす、そういうことが盛り込まれております。今、日本の受刑者は、昨年末、平成十五年末の数字で、六万一千人でございます。これは、一億三千万人の日本国民のうち、およそ一万人につき四・七人が受刑者ということになります。

 一方、この六万一千人の受刑者のうち、来日外国人、つまり外国人から特別永住者と永住者を除いた人たち、この人たちが三千百人余りいます。それで、全受刑者の五%強が来日外国人となっております。これは、来日外国人という全体の数、来日外国人で今日本にいる人の数は幾らかというのは、推定の域を出ないわけですけれども、外国人登録している人がおよそ百八十万人で、そのうち七十万人余りが特別永住者と永住者でございますから、こういう人たちを除きますと、ざっと百十万人余りが日本に滞在している。よそから来た外国人で日本にいる。この人たちに絞ってみると、実に一万人に二十七、八人ぐらいの人が受刑者なんです。その比率は、日本国民全体の場合に比べて五、六倍の割合になっています。来日外国人の受刑者の話でございます。

 さらに、警察庁刑事局のまとめでは、平成十五年上半期、一月から六月における来日外国人犯罪の検挙件数が一万八千五百七十九件、検挙人数は九千八十四人で、いずれも、件数も人数も前年同期を二割上回っております。これでもなお、来日外国人が犯人と思われる犯罪については、犯人の特徴が、周辺から情報が得られにくい。顔や言葉の特徴がみんな、周りの人も被害に遭った人も、わかりにくいということで、検挙は難しいとされていますが、それだけふえている。

 それで、これについて質問でございます。このことを防ぐのに、検挙件数を上げる、あるいは来日外国人の犯罪を抑止するためにも役立つと考えられていることについて質問させていただきます。

 指紋押捺制度でございます。これは、かつて、日本に指紋押捺制度が外国人登録法に基づいてございました。これを廃止したことは、私は正しいと思っております。とりわけ、歴史的経緯で日本に住んで、日本におられる特別永住者、朝鮮半島や中国出身の人及びその子孫の人たち、こういう方々や、永住者の人たちにまでこの指紋押捺というものを課していた制度は、ひどい制度だったと思いますし、平成四年に廃止されたのは遅過ぎたぐらいだと思っています。

 しかしながら、今新しくやってくる外国人について、入国管理法に基づいて、入国審査時に指紋や写真など、本人を特定するものを日本当局が確保していくことを考えるべき時期ではないだろうかと私は考えます。

 アメリカは、ことし一月からこのような制度をとりましたし、韓国もそのような、一定期間以上韓国にいる外国人に対して指紋押捺制度をとっているようでございます。このアメリカや韓国の制度についてどう考えられるか。そして、この両国の方法が参考にならないか。

 世界で最も治安のいい国日本というのは、私たち日本国民、日本人にとって必要なだけでなくて、日本に観光でやってくる外国人にとっても、日本に投資をしようという外国人にとっても、非常に魅力的なことだと思っております。

 このことについて、どのようにお考えになるか、大臣から答弁いただきたいと思います。

野沢国務大臣 諸外国における事例といたしましては、米国では、査証を要する外国人入国者から、出入国港において、両手人差し指の指紋採取及び顔写真の撮影をする、US―VISITという制度を実施していると承知しております。また韓国では、十四歳以上の外国人が一年以上の居留申告を行うときに、十指指紋を押捺するようになっていると聞き及んでいますが、同国は自国民に対しても十指の指紋捺印を義務づけしていると承知しております。

 ところで、委員も御承知のとおり、現在、ICAO、国際民間航空機関において、旅券等の渡航文書に導入するバイオメトリックスについての国際標準化作業が進められておりまして、外務省でも一部、日本旅券へのバイオメトリックスの導入を進めております。

 法務省といたしましては、テロリストや国際犯罪組織者の我が国への流入を水際で確実に阻止するための方策の一つとして、上陸審査において、渡航者自身から読み取った生体情報と、旅券に導入されております生体情報及び要注意外国人情報等を照合しまして、上陸審査業務に活用する方法について、目下検討しております。

松島委員 ぜひ早急に進めていただきたいんですが、この生体情報というのはどういったことを意味するのでしょうか。

野沢国務大臣 顔つきがまず一つ、これはだれでもわかりやすいわけですが、そのほか、虹彩というのが非常に個人に特定されているということがありますし、指紋は昔からよく使われた方法等でございまして、これらのうち、どの程度のものをどのような組み合わせで入れていくかということは、国際的な研究、検討の結果を待ちまして、どれを採用するかを決めていきたいなと思っております。

松島委員 ありがとうございます。

 専門的に見て、どのことが一番効果があるか考えて、ぜひ日本でもその制度を取り入れていただきたいと思っております。

 同じ考えからでございますけれども、九十日以内の短期滞在の人は除いて、これまでやると大変複雑になりますから除きまして、それ以上の期間、資格を持って日本にいるという人について、日本国民である身元保証人を必要とするという制度をつくれないか。かつてあったような気がしますが。そして、来日外国人が資格外滞在や超過滞在をした場合に、その身元保証人に罰則が生じるような仕組みを考えられないかと思いますが、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 御承知のとおり、短期滞在以外の在留資格で我が国に入国、在留するすべての外国人に日本人の身元保証人を求めることは、これら外国人に過重な負担を課すとともに、身元保証人をあっせんするブローカーが横行することなどが逆に危惧をされることもございます。

 法務省といたしましては、委員御指摘の対策についても十分に検討させていただきますが、当面は、不法滞在を初めとした不法行為を企画する者に対しては、厳格な出入国審査や在留審査を実施するとともに、不法滞在者の摘発強化等に努めてまいりたいと考えております。

松島委員 次の質問に行きます。

 現在二十五万人と推定されている不法滞在者を、ことしから五年間で半減させるということを日本政府は目標にしております。私は、このようなことのためでしたら、入国管理の職員をふやすこと、もっともっとふやしていただいていいと思いますし、そしてまた、連携をとる警察も、私は、行政改革の観点から公務員は減らさなきゃいけないけれども、警察も含めて、こういった治安を守るための職員はふやしていいと思っています。

 ところで、このことに関して、入国管理法と外国人登録法の矛盾を感じておりますので、これを指摘して質問とさせていただきたいと思います。

 外国人登録法というのは、日本にいる外国人はすべて、住んでいる自治体に外国人登録をしなければならないことになっております。登録をしますと、プラスチック製の顔写真つきの証明書みたいなものをもらうことになっていまして、これは見本のコピーなんですが、どういう項目があるかというと、名前、居住地、国籍、出生地、在留の資格、在留期限、職業、次回確認(切替)申請期間などの欄がございます。それで、受け付けた自治体、市区町村長の名前の判こを押すようになっています。

 私が持っていますこの見本には、大きく赤い判こを押してありまして、これは何が書いてあるかというと、「在留の資格なし」といって、赤字で書いて囲んでいるのが、判こを押してある。これが証明書みたいに、在留の資格なしという、だけども、名前も書いてあって、顔写真も入ってあって、自治体の長の名前まで入っている証明書というのは、一体何なんだろうか。つまり、入国管理法に基づくと、日本にいてはいけない外国人がこういう証明書を持って、外国人登録をしているという証明書を持って日本の中にいるという、何か物すごく、二つ相反した法律が存在していると思って、非常に不思議なんです、私は。

 そして、これは、不法滞在の場合も届け出ることになっているからなんですけれども、自治体の窓口の人は、パスポートを見れば、もう在留期間が切れているとか、まあ資格外、留学とか就学ということで来たけれども実際には学校へ行かずにずっと働いているなんというのはパスポートだけじゃわかりませんけれども、少なくとも、期限切れの場合なんかは窓口の自治体の職員の人はわかります。それでも受け付けることになっているのか、それは変えるつもりがないかということ。

 それと、受け付けたら、その際にすぐわかるわけです。それで、すぐにその受付の窓口の自治体の職員は通報する義務があるのか。たしかあったような気がするんですけれども、通報する義務があるのなら、本気でさっきの二十五万人の不法滞在者を半分にしようというんだったら、通報を、入管にすぐ電話をする、そこにちょっと待たせておいて電話をするか、あるいは、入管の職員というのも、摘発の人はそんなに全国にたくさんいらっしゃるわけじゃない、全国で千二百人しかいないからすぐは駆けつけられませんから、最寄りの警察にわかるように一一〇番通報するとか。そこで身柄を捕捉しちゃったら、もう不法滞在とすぐわかるわけなんですけれども、そのまま帰しちゃうのか。どこまで本気で減らすつもりなのか、ちょっと不思議な気はするんですけれども。

 もう一つ、自治体の職員というか自治体では困っていることがございます。届け出に来たときに、住所といって書いてある、居所といって書いてあるものを、本当に住んでいるかどうか確認しないで今は受け付ける仕組みになっている。それで責任持って首長の名前まで書いたカードを発行することになる。これが一つの問題です。

 もう一つは、いざ発行してしまったら、その後、その外国人が転居するかもしれない。もちろん日本人もあるところから転居はします。日本人の場合は、転居したら転出届と転入届を出す。外国人の場合は、転出届は出さなくていいんですけれども、新しく入ったところへ、外国人登録証明書に書いてある住所と違うところの自治体へ引っ越した場合には、移った場合には、そこで届けるように転入届で、転入というか、そこでまた届けを出さなきゃいけないことになっていますが、それをやらなかったときに、それで勝手に行方不明になっちゃっときに、自治体がとれる対応としては、日本人相手の場合と外国人相手の場合で違うんです。

 日本人、日本国民相手の場合は、住民基本台帳法で決まっているんですけれども、定期的に調査をして、あるいは、近所の人が、あの人、住んでいないみたいだけれども、郵便物はたまっているし、何かおかしいなんて通報があったら調べる。実態調査をして、自治体が、この人は住んでいない、どこかへ行方をくらましちゃったということになりますと、自治体は職権消除、職権をもって抹消することができる。それを告示すればいい。

 だけれども、外国人については、職権で消除できません、今の外国人登録法では。これでできないものですから、自治体としては、ずっとその人が住んでいるという前提でいろいろな通知をしたり、あるいはそのカードも、ずっと証明書も持ったままどこかに行かれてしまう。

 これはおかしいと思うんですけれども、まず通報制度、そして虚偽かもしれないけれども確認するのかどうか、それから職権消除のあり方について、外国人登録法を今後どのようにお考えになるか、教えてください。

増田政府参考人 市区町村の職員は、職務遂行に当たりまして、外国人が不法滞在者であることを知ったときには、入管法の六十二条に規定がございまして、その旨入管に通報する義務があるとされております。したがいまして、外国人登録事務におきましても所定の書式が定められておりまして、その市区町村は、所轄の地方入国管理局に対して、その書式に従って通報するとされております。

 ただし、十六歳以上の不法滞在者につきましては、市区町村長からの依頼によって地方入管が外国人登録証明書を作成いたしますが、その過程で、違反調査を所管する警備部門に対して直接通報を行っております。

 このように、不法滞在者に関する通報を受けて、現在、地方入管におきましては、所管する記録やあるいは関連情報を精査して、例えば、一つの居住地に多数の外国人が居住地登録をしている、このような場合には、そういった事案を中心として積極的な摘発を実施することといたしておりまして、例えば、昨年秋に東京で集中取り締まりを実施した際も、摘発した外国人の約四分の一は在留資格なしの外国人の住居地を手がかりとして実施した摘発によって発見し、収容したというものでございました。

 ところで、そういった在留資格なしの外国人が虚偽の住所を届け出ているのではないかということでございました。確かに、一部の不法滞在者が虚偽の居住地を外国人登録申請の際に申告する案件は散見されます。

 そこで、私どもといたしましては、今後、不法滞在者から新たに外国人登録申請があった場合には、これを直ちに受理するのではなくて、法務省におきまして出入国、在留、退去強制の記録を精査したり、あるいは市区町村においても、既に印鑑登録の手続でとられているような、郵便物を送付して、それによって、本当に居住しているかどうか、その居住実態を確認することなどによりまして、登録申請時の不正防止の対策をとってまいりたいと考えております。

 それから、外国人登録をした後に、居住地を変えながら、居住実態がもう失われているのにいつまでもその変更届けをしないことによる不都合についての御指摘でございまして、それは、市区町村から法務省に対して、これは何とかしてほしいという要望は現にこれまでも寄せられております。つまり、居住地を変えたにもかかわらず居住地変更登録申請を怠っている外国人の案件でございますが、これにつきましても、私どもとしましては、外国人登録事務取り扱いの一種として、長期間何ら申請がなされていないような外国人登録原票、これは、当該市区町村から法務省の方で一たん回収した上で、所在が明らかになるまでの間、法務省で保管するといったような方策について現在検討中でございます。

松島委員 今の部分で、市区町村の業務にかかわるところとしては、印鑑登録などと同じように、例えば、はがきなりを出して、本当にそこに住んでいるかどうかを調べるということをこれからやるということだと思います。それは早急に、そして、市区町村の事務はふえますけれども、それで確認した方が市区町村も安心だと思いますので、ぜひ早く通知を出してください。

 それともう一つ、住民基本台帳法における日本国民の場合と同じように、職権において、もう住んでいないなということが実態調査して市区町村がつかんだときの、今局長が言われたのは、長年その申請がされていないような場合という、そのことでございました。

 その長年という、五年も十年もということではなくて、自治体が、市区町村がきちっとつかんだら、それを信頼して、割とスピーディーに、では、もうおたくで管理しなくていい、ただ、そこで一度登録した歴史だけはとどめておかないと犯罪捜査でも困るから法務省が預かろうということだと思うんですけれども、それはもう長年待たないで、市区町村が調査を実施してわかったら、住民基本台帳の日本国民並みにできるように、その場合に、勝手に消去するだけじゃなしに、法務省で預かるというのをスピーディーにということと、それを大至急、今検討と言われたのを大至急決めて、また全国の困っている自治体にも伝えていただきたいと思います。簡単でいいです。

増田政府参考人 ただいま検討しているところでございますので、果たしてどれぐらいの期間が経過したら法務省の方で預かるのか、あるいは、それは期間でなしに、一定の事由が生じたときに預かることにするのか、その点はまだ確定的に決めていることではございませんので、これから速やかに決めた上で、何らかの対応をとりたいと考えております。

松島委員 次の質問です。

 冒頭に、今刑務所は定員オーバーで、そして補正予算までつけたという話を申しました。これらの設備費だけでなくて、受刑者がふえた分、食費も医療費もかさみますし、外国人の場合は、宗教上の理由から何か別メニューにしてくれなんて、そういう注文も、出したら受け入れるそうでございますし、いろいろと費用もかかります。通訳の費用もかかります。

 そこで、というわけだけではないんですけれども、刑が確定した段階で、外国人犯罪者を本国に送還する制度を創設できないでしょうか。これは、昨年六月に受刑者移送法が施行されましたけれども、この受刑者移送法、今できているのは相手が欧米各国、条約、何か枠組みの中でございますから、欧米各国だけが対象で、しかも、受刑者本人の同意を得なきゃいけないということになっている。

 日本で外国人受刑者の中で断トツに多いのは、四割以上を占めている中国です。そして、中国が千三百六十八人に対して、二番目はイランで三百九十七人で大分減るんですけれども、こういった国々も対象とし、なおかつ、本人の希望といいますと、本人は日本で刑務所にいた方が居心地がいいな、自分の国に帰るよりもよさそうだなと思ったら希望しませんから、それはもう、日本がきちっと決めて送り返すということが中国に対してもできるようにならないか。ぜひそうしていただきたいんですけれども、大臣、いかがでしょう。

野沢国務大臣 我が国から受刑者を移送するに当たっては、受刑者が本国で服役することによる改善更生及び円滑な社会復帰の促進という観点とともに、我が国の刑罰執行責任についても十分な配慮をする必要がありまして、比較的早期に移送することが適当な事案もあれば、逆に、余り早く移送を実施することは、犯罪の重大性あるいは被害者感情等の点から適当ではないと考えられる場合もあると思われまして、個々の事案に応じて最も適切な時期を見定めて移送を実施すべきであると考えております。

 なお、中国等の受刑者が非常に多いという中で、今、来日外国人受刑者全体の約四四%を占めているという実情にございますし、また、イラン国籍の受刑者も昨年十二月末で三百九十七人、こうなっております。特に、そのうち大事な、中国の受刑者の本国への移送についての道を開くために、昨年十二月から犯罪対策閣僚会議で決定されました行動計画の中で、外国人の受刑者の移送についての協定、条約の早期締結を進めなさい、こういう方針も出ております。

 そういうことで、今、外務省と協力しまして、中国との間で受刑者移送に関する国際約束について協議を開始していきたいと考えております。

松島委員 ぜひよろしくお願いします。

 最後に、これは法務省あるいは外務省なんですけれども、最近、中国で日本人に死刑の判決が下りました。これは、一・五キロの覚せい剤を所持、運搬していたということで、死刑の判決が出たんですけれども、犯罪は犯罪ですが、それでは余りにも重いという気がしております。日本の場合は、覚せい剤の所持でとても死刑にはならない、また、そんな法規定もないですが、これに対して、日本の場合は、同じような罪だったら最大どれぐらいの罰になるのかということと、そして、これは日本政府としてどういう対応をとられるか。

 覚せい剤所持、それも、中国の何か集団に、中国のグループに、例えばそそのかされたり運搬役を命じられたり頼まれたりして、日本人のホームレスとか、あるいは無職の人が何かよくわからないでやっている、報道による限りはそんな感じなんですけれども、これで死刑の判決が出て、その場合どうするのか。

 そして、一昨年も同じような事例があったんですけれども、既に処刑されたのか、日本政府はどういう対応をとっているのか、お願いします。

樋渡政府参考人 まず、前提といたしまして、あのような罪にどのような法定刑があるかということでございますが、これは各国の司法制度でございますから、各国のことをとやかく言うわけには私はまいりませんけれども、我が国に当てはめますと、これは覚せい剤の密輸出入にかかわる違反だと思いますが、我が国の法廷刑では最高刑は無期懲役でございます。

山口政府参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘の件は、中国の司法に関係する問題でございますと理解しております。

 我が国としましては、外国政府として司法手続に介入するということは適切ではないと考えていますけれども、邦人保護の観点がございますので、当該邦人に対する支援を行ってきているというところでございます。

 本件については、現在、当該邦人の上訴を受けまして、中国側の上級審が本件を審理中でございまして、外務省としては、今後とも可能な限りの支援を行っていくということで対応しております。

松島委員 どうか、その上級審の判決が出る前にでも日本が行動を起こすということをやっていただきたい。

 そして、先ほど、法体系としては、日本は、覚せい剤の密輸出入の場合は最高無期懲役と言われました。確かに、そういう罪は決めているかもしれませんけれども、日本では、殺人を、何人かの人を殺しても無期懲役にさえならないことがございます。そして、無期懲役でも大体二十何年で出てくる。それに比べて、日本人が中国で中国のプロにだまされて覚せい剤を運んでいたということで死刑になるようなことは断じてないように、日本政府として全力を挙げていただきたいと思います。よろしくお願いします。

柳本委員長 早川忠孝君。

早川委員 第一次の小泉内閣が発足した二〇〇一年、平成十三年が、二十一世紀の新しい時代の幕あけであるとともに、政治、経済、金融その他社会全般にわたっての新しい改革へのスタートの年でありました。小泉内閣発足の平成十三年六月に司法制度改革審議会の意見書が内閣に提出され、これを受けて、平成十三年十一月司法制度改革推進法が制定され、翌十二月に小泉首相を本部長とする司法制度改革推進本部が設置されましたが、いよいよ、本年十一月三十日をもってその設置期限を迎えます。

 私は、このたびの司法制度改革は、小泉構造改革の中で、その規模において最も大きく、その質においても最も根本的であり、歴史に特筆される大改革であると認識しております。この歴史的な大変革、大改革の仕上げのときに当たり、国民を代表する国会議員としてその現場に立ち会い、立法府の一員として発言をする機会を得ましたことを大変光栄に思うとともに、その責任の重大さに身が引き締まる思いであります。

 さて、このたびの司法制度改革は、今からちょうど五年前に衆参両議院で満場一致をもって可決、成立した司法制度改革審議会法に基づいて設置された司法制度改革審議会の意見書に示された諸改革を実現するものであります。

 司法制度改革審議会の意見書の取りまとめに当たっては、約二年間にわたり、六十三回もの会議が開かれ、この間、大阪、福岡、札幌、東京の四カ所で公聴会が開かれ、また、米英独仏の司法制度に関する調査も行われております。まさに、国民各層の意見と提言を反映しております。

 司法改革の具体的立法に当たりましては、司法制度改革審議会の意見書の内容を十分に尊重し、これを実現するとともに、後退させることのないよう特段の配慮をすべきであると考えております。

 そこで、法務大臣にお伺いいたします。

 法務大臣は、このたびの司法制度改革の意義をどのようにお考えでありましょうか。御所見をお伺いいたします。

野沢国務大臣 私は、昨年、法務大臣を拝命いたしましたときに、小泉総理から特命をちょうだいしております。その第一が司法制度改革を推進してほしいということでございまして、前回お示しいたしました私の所信の中でも、最初にこの問題を取り上げておるところでございます。

 この内容でございますが、社会の複雑多様化、国際化等がより一層進む中で、行政改革を初めとする社会経済の構造改革を進め、なお、明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後監視・救済型社会への転換を図りまして、自由かつ公正な社会を実現していくためには、その基礎となる司法制度を、新しい時代にふさわしく、国民にとって身近なものとなるよう改革していくことが不可欠であると考えております。

 このような意味で、今般の司法制度改革は歴史的にも極めて重要な意義を有する改革であると認識しております。

早川委員 それでは、司法改革の諸課題について個別にお伺いいたします。

 司法制度改革推進本部においては、国民が全国どこでも法律上のトラブル解決に必要な情報やサービスを受けられるような総合法律支援の体制を整備することとし、そのための司法ネットの中核となる運営主体を新たに設けることにしたと伺っております。このたびの司法制度改革の新たな柱として司法ネット構想が登場したことは、ある意味で、司法制度改革審議会の意見書を超える部分もあるとは思いますが、私は、国民のニーズにかなうものであると評価しております。

 これまでは、法律扶助協会や弁護士会あるいは個々の弁護士がその役割を担ってきましたが、法律扶助事業については、国庫補助が十分でないために事業の拡充ができない、あるいは、法律事務所が都市に偏在しているために、管内に法律事務所がゼロもしくは一つしかない地裁支部があるなど、司法過疎あるいは弁護士過疎等の問題が指摘されております。弁護士会では、公設法律事務所の開設や法律相談センターの設置等を推進し、着実にその成果を上げており、評価をされておりますが、国民の法的ニーズを十分に賄うまでには至っておりません。

 そこで、今回提案されている司法ネット構想は、国民の裁判を受ける権利を実効的に保障するシステムとして期待されるところでありますが、司法ネットにより国民にどのような利便が提供されるようになるのか、司法ネットの中核となる運営主体はどうなるのか、法律扶助事業について五十年にわたる実績を有する法律扶助協会の事業は今後どのようになるのか、司法ネットの財政的基盤は万全であるのか等について、司法制度改革推進本部から御説明をいただきたいと思います。

山崎政府参考人 まず、ただいま御指摘ございました司法ネットの意義の問題でございます。

 先ほど大臣からもお話ございましたけれども、社会が大きく変わっておりまして、構造的な変化を来しているということになります。特に、その変化の大きいのは、やはり事後チェック型社会への移行ということだろうと思います。そうなりますと、最後のとりでは司法であるという位置づけになってまいりまして、司法が十分に機能しなければならないという命題を抱えるわけでございます。それにこたえようとするものがこの司法ネット構想でございます。

 こういうような時代背景のもとで、やはり司法を国民により身近なものにするというために、民事、刑事を問わずに、あまねく全国で法律的なサービスそれから情報提供、こういうものが行われるように、そういう体制を総合的に整備をしていこうというものでございます。

 これを行っていく上で、やはり人、組織等が必要になるわけでございます。それから、内容等の充実も必要になってまいります。そういう点を考えながら、まず、新たな制度の効果的あるいは効率的な運営を図らなきゃいかぬだろうと思います。それから、所要の財政上の措置が講ぜられる必要もあろうかと思います。今後、そういう運営の内容とあわせてそういう点を検討してまいりたいというふうに考えております。

 それから、二番目の御指摘で、民事法律扶助の点でございますけれども、現在、財団法人法律扶助協会がこの事業を指定法人として行っているわけでございますけれども、この事業につきましては、今後、司法ネットの中核となる運営主体、ここで行う、そこに引き継がれるということを考えているわけでございます。したがいまして、扶助協会の事業が運営主体に引き継がれるということに伴いまして、扶助協会の方は廃止される方向で検討中であるというふうに理解をしております。

早川委員 今般の司法制度改革の三本柱は、第一に、国民に身近で利用しやすい司法制度をつくることである、第二に、法曹人口の拡大、法曹養成制度の改革、弁護士制度、裁判官制度の改革等、司法制度を支える法曹のあり方にかかわる改革、第三に、司法への国民参加、すなわち司法の国民的基盤の確立、この三つであります。

 二〇〇二年、平成十四年秋の臨時国会で法科大学院関連法が成立し、翌二〇〇三年、平成十五年の通常国会で弁護士制度、裁判官制度関連法が成立し、あわせて、裁判迅速化法、簡裁事物管轄関連法など一連の制度改正がなされました。いよいよこの通常国会で、総合法律支援法案、公的弁護制度等刑訴法改正関連法案、行政事件訴訟法改正法案、労働審判制度関連法案、知的財産関連法案等が審議されることになります。

 しかし、このたびの司法制度改革の核心には、国民の司法参加を実現する裁判員制度の導入がございます。裁判員制度の実現なくしては司法制度改革は完成しない、裁判員制度が実現しなければ司法制度改革は画竜点睛を欠くものとなろうと考えております。

 そこで、裁判員制度を導入するに当たっては、まず、国民が裁判員制度の意義を十分に理解するとともに、国民が担いやすい裁判員制度とすることが重要であり、裁判員の負担が過剰とならないような制度設計が求められております。

 裁判員が参加する裁判について国民の信頼を確保するためには、裁判の合議内容について裁判員に守秘義務を課することは当然ですけれども、裁判員としての職務を終了後、一切、生涯、みずからが関与した裁判について語ることができないということについては多少の問題もあるのではないだろうか。これに違反した場合には懲役刑または罰金刑が科せられるというのでは、今後、みずから進んで裁判員になろうという人がいなくなるおそれもあるのではないかと危惧されます。

 そこで、裁判員制度の具体的設計に当たって、裁判員に過剰な負担をかけないような配慮というのがなされているのかどうかについてお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の点、この制度導入に当たりまして大変重要なポイントだろうと思います。私どもも、そこは十分に意識をしながらその制度構築に当たっているという状況でございます。

 これを若干具体的に申し上げますけれども、まず、裁判員の候補の方でございますけれども、やはりいろいろな社会生活をされているわけでございますので、いろいろな事情が生じます。例えば、本人の病気、あるいは介護それから養育の必要、あるいはそれ以外の、例えば自分の事業の関係とか、そういうようなやむを得ない事由が生ずることがございます。こういう場合には、一定の場合には辞退をするということを認めようということを考えております。

 それから、迅速な裁判を実現するために、第一回公判前の準備手続、ここで争点整理を行いまして、それから公判を連日的に開廷していくということで、長期間拘束はしないようにという配慮をしております。

 それからさらに、出頭いたしました裁判員に対して旅費、日当等の支給をするということ。あるいは、職場を離れやすいようにということでございまして、例えば、裁判員の職務を行うために仕事を休んだことを理由として事業主が不利益な取り扱い、こういうことを禁止するというようなことも設けたいというふうに考えております。そのほか、もろもろの保護規定を置いております。

 ただいま御指摘ございました秘密保持の関係でございますけれども、守秘義務の関係でございますけれども、これも、考え方によっては裁判員を守るものでもあるわけでございます。一つは、その評議の内容が外へ出てしまうということになりますと、それによる嫌がらせ等が考えられることにもなりますし、それから、それ以外のもろもろの圧力がかかることもいろいろございます。そういうことになりますと、裁判の中で、評議の中で十分に意見を言うということができなくなってしまうわけでございます。これはかえって、そういうふうにかけておかないと裁判員の保護にならないという側面もございます。

 それともう一点、この秘密保持の関係では、事件の内容でございますからさまざまなものがございまして、他人のプライバシーにわたるものも出ているわけでございます。これを外に出されてしまいますと、その他人のプライバシーが大きく傷つくという問題もございます。そういう点を配慮して、守秘義務をかけ、その担保として罰則をというふうに考えたわけでございます。

 ただ、これにつきましても、どこまで守秘義務になるのか、そうでないのかということはきちっとしなければならないというふうに考えております。

早川委員 次に、行政訴訟制度の改革についてお伺いいたします。

 行政依存型の過剰な事前規制・調整型社会から、国民の自律を前提とする事後監視・救済型社会への転換が求められております。そのためには、司法による行政の事後チェック機能が十分に働くことが必要であります。行政訴訟制度の改革が司法制度改革の一つの大きな柱となっているゆえんであります。

 行政による市民生活や経済活動に対する規制は極めて広範囲に及んでいるのに対し、その行き過ぎや誤りに対するチェック機能は現状では弱いと指摘されております。行政行為を争ってその取り消しや無効確認を求める国民に対し、裁判所においては、原告適格に欠ける、あるいは行政処分に当たらないなどの形式的な理由で、実質的な審理をせずに訴えを門前払いすることが多いことは周知のとおりであり、また、行政事件において国民が勝訴する率も一〇ないし一五%程度と言われている。

 ドイツの行政裁判の事件数は年間約五十万件と言われておりますけれども、我が国の場合は年間一千件から一千八百件程度にとどまっているということにかんがみますと、我が国の現在の行政事件訴訟が国民にとって利用しづらく、余り機能していないのではないかと危惧されます。

 このたびの行政訴訟制度改革は、原告適格を拡大し、または出訴期間を現行の三カ月から六カ月へ延長する、その他、生活保護の拒否や高校不合格といった拒否の処分に対して、これを単に取り消すだけでなく、その支給あるいは合格などの利益処分を決定させるという内容の義務づけ訴訟とその仮決定制度等を導入する、その他の制度改革を実現するというふうに伺っております。

 行政訴訟制度を真に、さらに国民に利用しやすく、また機能するものに変えていくためには、行政訴訟に係る訴訟費用についての負担軽減措置等についても検討を進めていく必要があると考えられます。

 そこで、原告適格を拡大するということについての現時点での改正の方向、及び今回の改革で積み残しとなったその他の行政訴訟制度の改革については政府として今後どのように取り組んでいくことになるのかについて、司法制度改革推進本部の答弁を求めたいと思います。

山崎政府参考人 冒頭にございました、ドイツが五十万件で日本が二千件、これが訴えられることが多い政府がいいのか、そうじゃないのかというのはまたいろいろ評価はあろうかと思いますが、いずれにしましても、非常に狭いということを言われていることは間違いございません。

 そこで、私どもは、原告適格につきましては、処分または裁決の相手方以外の第三者について、取り消し訴訟の原告適格の要件でございます法律上の利益の有無、この判断をするに当たっては、その当該処分の根拠法令の規定の文言のみによることなく、根拠法令の趣旨、目的や、それから処分において考慮されるべき利益の内容、性質、こういうものを考慮すべきということを考慮事項として定めるということを念頭に置いております。

 具体的な事案における原告適格につきましては裁判所の個々の事案における判断によるわけでございますけれども、このような規定を設けることによって、これを踏まえて、それらの事項を考慮して、適切な原告適格の判断が一般的に確保されるということになり、原告適格が実質的に広く認められていくようになるということを考えているということでございます。

 それから、将来課題の点でございますけれども、今私ども、検討会の方でも、今回のことは今回のことで一応仕切りましょうということでございますが、そのほかに積み残したものがかなりございます。この中で、本当にやっていくべきものと、まだ難しいもの、いろいろなものがまざっておりますけれども、いずれにしましても、これをきちっと議論はしていきたいというふうに思っております。その点につきましても、私どもの事務局の方に設けられました行政訴訟検討会で引き続き検討を行っていきたいというふうに考えているところでございます。

早川委員 ありがとうございました。

 それでは、最高裁の方にお伺いします。

 司法制度改革の諸課題の中で、国民にとって最も密接であり、また関心の高いのが、裁判所及び裁判官制度の改革であろうと思います。国民にとって信頼できる裁判の実現を目指して、これまで最高裁判所で実現されてこられた裁判所制度の改革、あるいは裁判官制度の改革の到達点と今後の改革の展望について御説明をお願いいたします。

中山最高裁判所長官代理者 司法制度改革審議会の意見書を受けまして、裁判所といたしましても、その趣旨を実現すべく、裁判所が主体となってやっていかなければならないというものを、平成十四年三月に推進計画要綱ということでつくりました。しかし、そのうち最大の課題というものは、今委員御指摘の裁判所改革、裁判官改革であったというふうに認識しております。

 それらを計画的に進めてまいりましたが、今お話のありましたところの主要なところをかいつまんで申し上げますと、まず第一は、裁判官の給源の多様化、多元化についてでございます。これは、先ほど司法制度改革推進本部の事務局長が、今現在司法が求められている機能の強化あるいは体制の強化といったものの根源的なところを説明されていましたけれども、それらを受けて、そのためにはやはり裁判所が多様で厚みのある裁判官で構成されるということが非常に重要であり、そこに直結するものということになります。

 その実現の方策でありますが、第一は、弁護士任官の推進であります。これは、日弁連と連携協力しつつ、すぐれた人材が裁判所の方に数多く任官するようなものということで取り組んでまいりますが、日弁連も相当の御努力はされておりますけれども、なかなかこれがまだ足りない部分がある。これをどうやって軌道に乗せていくかというのが今最大の問題であります。

 また、この一月からは、いわゆる調停官制度、これは非常勤裁判官制度とも言われておりますけれども、これが施行されました。これは、調停の充実というところもありますけれども、これまで常勤の裁判官に対するハードルがなかなか高いといったところを、それを何とかこの非常勤裁判官制度でなだらかにしていけないか、より常勤裁判官、弁護士任官が進むようなものとして機能できないかということでこれも立法いただきましたが、それに先行して、日弁連と協議をして一つの形をつくっていってこれを実現したというものでございます。

 それから、二番目は、判事補の職務の経験の多様化の方策でありまして、これは現在司法制度改革推進本部の方で検討中ということをお聞きしておりますが、裁判所の方は、日弁連と協議いたしまして、それらが成立されましたときにはスムーズに運用できるように、その環境調整、どういった条件で行っていくかといったようなところを今詰めているところでございます。

 それから、第二には、裁判官の任命の問題でございます。あるいは人事の問題でございます。これは、ともしますと、憲法上、委員も御存じのように、最高裁判所が任命されるべき裁判官を内閣に指名簿を提出するということになっているわけでございますが、どんな形でどういう人物が指名されているのかさっぱりわからぬではないか、ブラックボックスである、あるいは、裁判長の任命等もどういう基準で行われているのかよくわからぬ、こういった御批判がありました。場合によっては、恣意的に行われているのではないかというような批判まで受けていたところでございます。

 そういうものを受けまして、その辺を透明化することによって、かえって、より信頼性の高い裁判官制度につながるのではないかということでやりましたものが、まず、昨年五月に下級裁判所裁判官指名諮問委員会というものを設置いたしました。これは、外部の有識者六名を含む裁判所外の委員九名と裁判所の委員二名、計十一名で成るものでありまして、最高裁が内閣に指名する裁判官の名簿を提出するに当たり、その適正というものを事前に判断していただくというものでございます。既にその成果はマスコミ等でも御承知のところと思います。

 また、人事評価につきましては、昨年の十二月に、人事評価をどのように行っていくかという規則を制定いたしました。これをこの四月から実施することにしております。簡単に申し上げますと、本人から自分自身の評価書、自分自身についての上申書みたいなものを出してもらい、あるいはそれをもとに面談し、そして所長が評価したところを本人に開示する、不服がある場合はそれもまた受け付ける、裁判の独立、裁判官の独立というところにも配慮しながら、外部情報を適切に収集し、これを反映する、こういったことを内容とするものでございます。これによって、裁判官人事制度の透明性は格段に高まっていくことになるというふうに考えています。

 最後が、裁判所運営への国民の参加でございまして、昨年三月に、地方裁判所委員会規則と家庭裁判所委員会規則を制定いたし、既にこれまで各庁で実践してきたところでありますが、そこでは、双方向の意見交換ということを、特に外部有識者等の方々の間でやるということを主目的にしております。議決を毎回するといったようなかた苦しいものではなく、各外部有識者が持たれているそれぞれの視点、そういったものを生かした、自由で豊かな発想で御提言いただく、それをできるところから裁判所の運営にも生かしていきたい、こういうものであります。

 まだまだ成果は上がってきておりませんけれども、おいおいその辺のところを御報告できるものというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

早川委員 本年四月からいよいよ法科大学院がスタートいたします。ただ、法科大学院に進学する学生にとっての経済的負担が大き過ぎるのではないか、もしこれが大き過ぎるということになると、一部の経済的な富裕層しか大学院に進学できないということになってしまいます。

 そこで、文部科学省にお尋ねしますけれども、法科大学院に対する奨学金制度、また、法科大学院を設置する大学に対する公的助成の実情についてお教えいただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 この四月から法科大学院が一斉にスタートするわけでございますが、私どもは、委員御指摘のように、その支援の重要性については非常に認識しておるところでございます。

 したがいまして、私どもは、政府予算案におきましては、まず、私立法科大学院の授業料抑制という観点から二十五億円、そして奨学金につきましては、希望する学生すべてに対して、そして貸与額の上限につきましても、十三万円から二十万円に引き上げるということで、合計六十八億円、その他、教育研究の充実のために十五億円ということで、総計として百八億円、真水で申し上げますと、五十四億円を今措置させていただいているというふうなことでございます。

 これによりまして、多様なバックグラウンドを有する学生が、まさに経済的機会によって法科大学院に進学する道が閉ざされることのないようということで、私どもも努力してまいりたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。

早川委員 最後に、今回の司法制度改革の最後の到達点は教育であろうと考えています。政治や行政、司法の利益あるいは不利益を享受するためだけの受け身の存在である国民が、政治や行政、司法を主体的に担う国民に転換するということが求められているのではないかと思います。

 そこで、現在、教科書では司法を取り上げることがわずかである、司法は義務教育で教えられていないという話もございます。今後、裁判員制度の導入に伴って、国民に対する法教育はどうすべきであるのか、どういうふうにお考えであるか、文部省と法務大臣に、それぞれ簡単にお答えをいただきたいと思います。

中野大臣政務官 早川委員の御質問にお答えしたいと思いますが、今、司法制度改革推進本部におきまして、司法ネットの整備や裁判員制度の導入など、事後監視社会にふさわしい国民のための司法のあり方について検討が行われておりますが、この改革を実りあるものにするためには、国民の側からの司法の領域に主体的に参加するなどという意識改革が求められていると思います。

 そのために、今委員が御指摘のとおり、初等中等教育の段階から司法の仕組みや法の働きに関する国民の学習機会を図ることは、ますます重要な課題になっております。

 今、司法制度改革審議会の意見書、先ほど委員もおっしゃいましたけれども、その中で、学校教育等に関する司法に関する学習機会を充実させることが望まれるとされておりまして、これを受けまして、法務省におきましても、十五人になりますメンバーで昨年七月に法教育研究会を発足させまして、初等中等教育課程におきますところの法教育のあり方について八回にわたって検討しておりまして、これからもさらに進めるわけでございます。

 特に、今御指摘の、裁判員制度の円滑な導入に当たりましては、何よりも参加をしていただく国民の理解と参加意識が必要でございまして、その醸成こそが不可欠であるというのはおっしゃるとおりでございます。そのために、研究会におきましても、学校教育のニーズとか現場の声、そういうものを反映させながら、文部科学省とも連携しながら、国民が法や司法を身近に感じ、司法制度に主体的にかかわる意識を育てるための法教育の具体的なあり方について、これからも積極的に検討をしてまいるつもりでございますので、よろしくお願いいたします。

清水政府参考人 先生御指摘いただきましたように、まさに単なる知識としてではなくて、みずからのものとして、みずからの生活やあるいはみずからの将来にかかわるものとして、法や決まり、あるいはそれにかかわる積極的な態度をどう育成していくかということは大きな課題であるというふうに認識しております。

 ただいま政務官から答弁ございましたように、まさに、法教育研究会の成果等も踏まえながら、十分連携をとって、生きたものとして法教育がなされるように、私どもとしても努めてまいりたいというふうに考えております。

早川委員 ありがとうございました。終わります。

柳本委員長 漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 法務大臣には初めて御質問をさせていただきます。よろしくお願いします。

 大臣おっしゃるとおり、本年は、まさに六十年、百年に一度と言われる司法制度改革の総仕上げの年であります。国民にとって身近で頼りがいのある司法制度の構築に、政府は全力を挙げてその実現に取り組んでもらいたい、こう思います。

 このときに、司法制度改革推進本部の副本部長、そしてまた法務大臣に就任された野沢大臣の決意をお伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 御指摘のとおり、本年は司法制度改革の総仕上げの年であり、最大の山場を迎えております。今国会には、司法ネットの整備、裁判員制度の導入など、さまざまな重要課題につきまして必要な法案を提出する予定でございます。

 司法制度改革推進本部の副本部長として、また司法制度を所管する法務大臣といたしまして、国民に身近で頼りがいのある司法制度を構築するために、全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。

漆原委員 司法ネットについてお伺いしますが、これは私の思い入れもありますので、若干意見も長々述べさせてもらいます。

 国民がいつでもどこでも気軽に司法のサービスを享受することができる司法ネットの構想は、私は、この司法制度改革の中で、国民が一番目に見える格好で、ああ変わったなという実感をしてもらえる形での改革であろうというふうに思っております。

 国民が法律上のトラブルに直面しても、相談先も解決方法もわからない。また、ゼロワン地帯といって、身近に相談する弁護士もいない、そういう地域が多いわけであります。さらに、仮に弁護士を見つけても、経済的な理由から弁護士に支払う費用がないということで、なかなか多くの国民が司法から遠いという存在でありまして、国民の二割の層しか司法のサービスを受けられない、いわゆる二割司法というふうに言われるゆえんであります。

 このような現状に対して、私どもの党は結党以来からずっと、政治や行政から置き去りにされてきている、庶民と言っていいんでしょうか、に対して、かねてから、無料法律相談を初めとするいわゆる草の根の市民運動、市民相談をやってまいりました。現在では、市民相談も年間百万人近くに及んで、その中で皆さんの法律上、行政上のトラブルに対する解決に取り組んでいるところであります。そんな中から、国民の裁判を受ける権利を保障する民事法律扶助制度、ぜひともこれを充実すべきだというような強い念願、強い希望が生まれて、この制度の推進に全力で取り組んできた、また予算の増額にも全力で今まで取り組んできた次第でございます。

 私自身も、実は議員になる前に、二十五年間、弁護士として各地の無料法律相談をずっと担当して、今でも大臣の出身地であります長野県の山間僻地を定期的に回って無料市民法律相談をやらさせていただいているところであります。そういう意味で、この制度が国としてできるということは、本当に私は実はうれしく思っております。

 そこで、この制度によって国民が具体的にどのような法的サービスを受けることができるのか、司法ネットの概要について御説明をいただきたいと思います。

中野大臣政務官 漆原委員の今日までの御努力に敬意を表しながら、御質問にお答えをしたいと思います。

 司法ネット構想というものは、司法を国民により身近なものにするために、民事、刑事を問わず、あまねく全国において法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるような、総合的な法律支援の体制を整備しようとするものであることは御承知のとおりでございますが、そのために、現状とかこれまでの対応とか取り組み、また問題点等を踏まえまして、その解決策に向けて、司法ネット構想の運営主体を中心にこれから努力するわけでございます。

 その具体的なものといたしまして、まず第一に、法による紛争解決制度の有効な利用に資する情報提供の充実強化の業務、これは今おっしゃった法律相談が中心でございます。二点目といたしまして、民事法律扶助事業関係の業務の充実でございます。それから三点目といたしましては、国選弁護人の選任に関する業務でございまして、これは今までの、被告だけじゃなしに、被疑者等を含めたいろいろな問題がございます。四点目といたしまして、先ほどもお話がございましたけれども、いわゆる司法過疎地域における法律事務に関する業務でございます。それから最後に、犯罪被害者の支援に関する業務等。以上五つが主な具体的な問題であると考えております。

 今おっしゃるとおり、政府といたしましても、法律的な問題を抱えた方に、ほぼすべての、例えば相談とかサービスとか、そういうものを初めとするところの総合的な法律支援の業務というものを、これを通して実現してまいりたいということが私どもの考えでございます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

漆原委員 今政務官がおっしゃったゼロワン地域の解消というのが私は大きな内容だと思うんですね。

 ただ、センターの設置が一体どのようになるのかなというのをひとつお答えいただきたいと思うんですが、都道府県にどのように配置されるのか。それから離島ですね。私の地元でも佐渡がありますが、法律相談を受けたいなと思っても、実は佐渡に弁護士は一人しかいない。センターがなければ、新潟市にセンターがあったとしても、船に乗って来なきゃならない。こういう場合に、身近に、気軽にということになれば、離島にも置いてもらいたいなというふうに思うんですが、この辺の配置の状況について、概要がわかれば教えてもらいたい。

山崎政府参考人 具体的構想は、運用上の問題でございますので完全に固まり切っているわけではございませんけれども、少なくとも、全国で均質な法的サービスを受けるということを考えますと、それぞれの都道府県に必ず一つはなければならないだろうというふうに考えております。

 その上で、ゼロワン地域をどうするか、あるいは離島をどうするかという問題がございます。それに加えまして、そういう点の実情、それからやはりどのぐらいのニーズがあるか、そういう点を十分に把握しながら、場合によっては、かなりのニーズがあるところには、そのまた支所みたいなものもつくらなければならないかもしれません。あるいは、そこまでいかなくても、巡回をしていろいろ相談に応ずるとか、さまざまなやり方はあろうかと思います。

 そういう実情を考えながら、国民のニーズにこたえるようなものを制度設計していきたい、こういうふうに思っております。

    〔委員長退席、塩崎委員長代理着席〕

漆原委員 この司法ネットの構想、国民に最も近いということになるわけなんですが、国民が一番望んでいるということなんですが、ただ、これも予算の裏づけがなければ絵にかいたもちになるわけでありまして、これはうんと予算をつけないといけないなというふうに私は思っております。

 法務省、どのくらいの予算が必要なのか、遠慮なく言ってもらいたい。

野沢国務大臣 予算の問題はこれからですので、むしろ決意表明に近いことになるかと思いますが、御指摘のとおり、今の説明にありましたように、民事の法律扶助、さらには情報提供、さらには国選弁護人の選任に関すること、それから過疎地域における法律事務に関すること、それから被害者支援、さまざまな事業が予想されますので、これらの業務が効率的かつ効果的に処理できる必要な予算をしっかり確保したいと思っております。

漆原委員 もう遠慮なく言っていただいて、これは、もう与野党一緒になって実現していきたいと思っております。

 裁判員制度についてお尋ねしますが、総理は、今回の百五十九回国会の施政方針演説の中で、「司法を国民に身近なものとするため、刑事裁判に国民が参加する裁判員制度の導入」ということを明確におっしゃっております。また、法務大臣も、裁判員制度の導入に関する法律を出したいというふうにおっしゃっております。

 司法制度改革審議会の意見書は大変いいことを言っているなと私は思っておりますが、こんなふうになっております。

 二十一世紀の我が国社会において、国民は、これまでの統治客体意識に伴う国家への過度の依存体質から脱却し、自らのうちに公共意識を醸成し、公共的事柄に対する能動的姿勢を強めていくことが求められている。国民主権に基づく統治構造の一翼を担う司法の分野においても、国民が、自律性と責任感を持ちつつ、広くその運用全般について、多様な形で参加することが期待される。

こういうことで、裁判員制度の導入となっているわけでありますが、長い間、私たちは、裁判というのは頭の優秀な裁判官がやるものだというふうに思い込んできたわけであります。新しい制度の導入に当たっては、国民が裁判体に入っていくということになるわけですから、多少の不安と混乱があるかもしれない。しかし、ここは、国民を信頼していただいて、国民の司法参加という大きな夢に向かって一歩を前進する勇気を持たなければならないというふうに私は思っております。

 今、いろいろな抵抗があるように聞いております。大臣も苦労されているなというふうに私は思うんですが、いかなる抵抗があろうとも不退転の決意でこの実現に取り組むべきだと思いますが、大臣の決意をお聞きしたい。

野沢国務大臣 大変力強い御支援をいただきまして、まことにありがとうございます。

 御指摘のように、国民が裁判官とともに刑事裁判に関与することは、司法に対する国民の理解の増進と信頼の向上に資するものであり、重要な意義があるものと考えております。このような裁判員制度の意義を踏まえ、その実現に向けて全力を尽くしてまいる所存でございます。

漆原委員 裁判員制度の導入に慎重な論者からは、大要、次の二点が言われているんですね。

 一つは、難しい裁判に素人である国民を参加させるということによって裁判に対する国民の信頼がなくなっちゃうよ、これが一点です。もう一点は、裁判員に選任される国民の立場に立ってみると、仕事を休んで裁判所に行かなきゃならない、国民に過度の負担を強いるものだという二つの観点から批判がなされているんですが、今回の法案はこの点についてどのような配慮がなされているのか、お尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 二点についての御質問でございますが、まず最初の国民の信頼という点でございます。

 これにつきましては、この裁判員制度は、裁判官と裁判員がともに評議をして、有罪、無罪、それから刑の量定を行うというものでございます。そういう制度であるということが一つでございます。それから、不公平な裁判をするおそれがある者などは裁判員となることはできないという形をとらせていただいているということ。それから、合議体を構成する裁判官のうち、少なくとも一人が賛成をする必要があるというような制度を設けることによりまして、やはり、裁判員が入られても、裁判官と一緒に常識的な判決をしていくという制度構築になっているということで、国民の信頼が失われるということはないというふうに考えております。

 それから、国民に過度の負担を強いることのないようにという御指摘でございます。

 これも、私ども、大変重要なポイントとして、いわゆる辞退事由でございます。辞退事由にはさまざまな事由があろうかと思いますけれども、そういうような辞退事由をきちっと設けるということ、それから、やはり裁判の手続を迅速に行ってなるべく負担を少ないものにするということと、それからまた、裁判員に就任される方の個人情報の保護等、さまざまな点について、裁判員に過度な負担にならないようにという手当てを考えて法案をつくりたいというふうに考えております。

漆原委員 裁判員の守秘義務について、懲役刑が選択刑として規定されておりますが、重過ぎやしないかという指摘がなされております。ただ、私は、先ほど局長がおっしゃったように、裁判員の発言の自由を確保するという観点から、懲役刑はやむを得ないなというふうに私は思っております。

 そうでなければ、何も知らない見ず知らずの裁判員が六人集まってきて、自分の言ったことがばらされるかもしれない、だれかお金にかえて、賛否、裁決の内容をばらされるかもしれないといったら、これは、もう参加した裁判員がだれもしゃべれなくなるわけですね。そういう意味では、懲役刑を選択刑として入れたとしても、逆に裁判員を守るんだ、こういう趣旨で私は理解をしております。

 しかし、これは、一方、今新聞等で報道されているところを見ますと、裁判員は、裁判員に参加して、見たこと、聞いたことすべてしゃべっちゃならぬ、墓場まで持っていくんだ、こういう報道がなされて、物すごく心理的に大きな負担が課されるような感じになっているんですね。

 したがって、私は、裁判員はしゃべってもいいことはあるんだ、これはしゃべってもいいんだ、これはしゃべっちゃだめなんだよということをもっと明確に国民に向かって明らかにする必要があるというふうに思います。

 したがって、どこまでしゃべっていいのか、どこがしゃべって悪いのか、わかる範囲でお答えいただければありがたいと思います。

山崎政府参考人 ただいま委員御指摘の点、これを明確にしなければならないということだろうと思います。じゃないと、国民が非常に不安になるということになろうかと思います。私ども、法文の中で書けることというのは、具体的に全部書くというのはなかなか難しい点がございます。それで、評議の秘密、それからプライバシー、これについては秘密を守るべきという構成をしております。

 では、評議の秘密とそれじゃないものがどこで分けられるかということでございますが、例えば、ちょっと例を挙げますと、公開の法廷でのやりとり、これは傍聴もできるわけでございますので、それはしゃべっても構わないだろうということになりますし、それから、判決書に記載されている内容でございますね、これも、判決は見ることができるわけでございますからいい。それから、それ以外に、例えば秘密に及ばない範囲で、裁判員となった職務についての感想を述べるとか、抽象的に言えば、そういう点については許されることになるだろうというふうに思われます。

 ただ、これは具体的に、では裁判員の人がどういうふうに理解をするかということでございまして、この点は、いろいろな運用上の問題として、わかりやすいパンフレットをつくる等、実務の方でいろいろお願いをしたい、国民が迷わないようにしたいということを考えております。

漆原委員 この裁判員制度が将来大きく成長して、その目的を達成することができるかどうかというのは、私は、一にかかって国民の支持と理解が得られるかどうかだと思うんですね。そういう意味では、国民に対する広報活動がこれから最も大事になると思いますけれども、政府は具体的にどのような広報活動を考えておられるのか、今考えておられる範囲で説明を願いたいと思います。

中野大臣政務官 今、漆原先生御指摘のとおり、裁判員制度がその役割を十分に果たすためには国民の理解と協力が不可欠である、これはおっしゃるとおりでございます。

 したがいまして、政府といたしましては、裁判員制度が実施されるまでの間におきまして、裁判員制度の意義やその具体的内容について理解と関心を深め、国民の皆様が進んで刑事裁判に参加いただけるようにするための積極的かつ十分な広報活動をする所存でございます。

 これまでも、テレビとか新聞、それからラジオとか政府広報等、いろいろなものをやっておりまして、例えば、法務大臣が新聞等に出るとかテレビに出るとか、また、いろいろな会合に出る。また、事務局長あるいはまた次長がテレビ等に出て、国民に啓発するというようなこともやってまいりました。

 今後は、具体的な活動といたしまして、例えば、この制度の内容をわかりやすく説明したパンフレットやビデオの作成とか頒布、講演会とかシンポジウムとか、また、先ほど申し上げましたテレビとか新聞とか雑誌とか、あらゆる機会をとらえまして、この効果的なあり方についてさらに積極的に検討して実施をしてまいりたいと思いますので、どうか漆原先生初め当委員会の各先生方におかれましても、国民が理解し、そしてまた関心も高めていただく、そして自分たちのものにするこの裁判員制度になりますように、御指導と御支援を賜りますことをお願いしたいと思います。

漆原委員 次に移ります。

 弁護士費用の敗訴者負担についてお尋ねしますが、この制度の導入は国民が物すごく心配をしておられます。私の弁護士経験からいっても、弁護士に着手金を払って事件を引き受けるんですが、負けた場合には着手金は戻らないんですね。二十万、三十万、五十万というお金が戻りません。一般に、依頼される人は勝つことを期待して依頼されるわけですから。しかし、弁護士は実務をやりますから、着手金をもらわなきゃできませんよね。しかし、依頼される方としては、勝敗の確率に、払った金が戻るのか戻らないのか、将来勝つのか負けるのか、物すごく神経質になるわけであります。

 こういう敗訴者負担が導入された場合には、相手の弁護料も負担するということになるわけですから、資力に乏しい一般の庶民の権利救済の手段を、私は不当に萎縮させるものだと思います。弁護士も、負けた場合には相手の費用まで払わなきゃならぬということになれば、裁判をやりましょうというふうに積極的に言えなくなるわけですね。だから弁護士も消極的になって、一般の国民も消極的になって、私は本当に、訴え提起を萎縮させることは明白だというふうに思っております。

 法務大臣、この法案を提出されるそうでございますけれども、今私申し上げたような、こういう普通の庶民が困る、心配されている点について、この法案はどんなふうに手当てされているんでしょうか。

野沢国務大臣 議員の実務に基づかれました御意見、大変貴重なものとして受けとめさせていただきますが、弁護士等の報酬の敗訴者負担制度の導入に当たりましては、消費者、労働者などが裁判の利用を不当に萎縮させられるということがないように、当事者双方が弁護士等の訴訟代理人を選任している訴訟において当事者双方による共同の申し立てがあったことを要件とするなど、慎重な立案作業を行っているところでございます。どうぞよろしくお願いします。

漆原委員 今大臣がおっしゃいました消費者契約、労働契約などは、契約の当事者の間に圧倒的な力の差があるわけですね。例えば、消費者金融に金を借りたいという人、あるいは、何とかこの会社に入りたいという人がいるわけですね。そういう人は、金融業者あるいは会社と対等な立場に立てない。

 しかし、相手方は逆にその立場を利用して、もう契約の中に入れちゃうんです、小さい文字で、不動文字と申しますけれども。仮に訴訟になった場合の弁護士報酬については負けた方が負担するというふうに書き込んじゃうわけですね。お金を借りたい、あるいはここの会社に入りたいという人は、そんな契約書は見ていません。入れるかどうかだけですから、ぽんと判こを押しちゃう。仮に見たとしても、異議は述べられないですよ、その会社に入りたいというのであれば。そうすると、結局判こを押してしまう。

 何かで裁判になった場合に、みんな負けた場合の費用を消費者とか労働者が負担しなければならないとなったら、これはやはり、僕は不都合が起きるんじゃないかなというふうに思うんですね。こういう一般的な細かい約款の中に既に書き込んだようなものはもう無効だというふうに私は思っているんですが、無効にした方がいいと思うんですが、大臣、これはどうですか。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の消費者契約あるいは労働契約の関係でございますけれども、この点につきましては、現在でもある問題ではございます。これは実体法上の問題でございまして、手続法上の問題とは少し次元が違うかもしれません。

 ただ、この点につきましては、現在、消費者契約法、そこでもやはり消費者を保護する規定がございまして、その解釈として、そういう契約はその効力を生じないということの解釈もされておりますし、また、労働契約関係は労働基準法に規定がございまして、そのような損害賠償の予約とか、そういうものについては効力を生じないという規定もございまして、実体法上の問題としては、そういう点で手当てがされているというふうに考えられます。

 ただ、それ以外のものについてどうかという御指摘でございますが、それは、約款のところに入るということもございます。これはもう約款の効力の解釈の問題ということになろうかと思いますけれども、その点につきましては、これは約款全体の問題にも絡む実体法上の問題というふうに意識はしておりますけれども、ただ、この問題について、現在、どういうふうにしていくという明確な方針はございません。今後、判例等で、不都合な場合は是正をされていくということになろうかと思いますし、ただ、この制度を設けたことによってそういう事態にならないように、やはり我々としてもいろいろな努力をしていかざるを得ないというふうに考えております。

漆原委員 大臣、社会的に、経済的に弱い人というのはいっぱいいらっしゃるわけですね。その人たちにとってみて、何か権利侵害があったというときには、まさに、憲法で保障されている裁判を受ける権利、これが最後の武器になるんですね。最後の権利救済のとりでになっているわけですよね。ここが自由に使えないとなったら、この武器が使えなくなったら、これはもう裁判を受ける権利も形骸化しちゃいますよ。また、最後の武器を取り上げてしまうという結果にもなりかねないと思うんですね。これはまた法案審議のときに申し述べますが、ぜひともそこは、弱い人が困らないように、運用上手当てするとか、いろいろなことをぜひ考えていただきたいということを申し述べておきます。

 判検事の弁護士研修についてお尋ねしますが、法曹一元という言葉が言われて久しいわけでありますが、私自身も、現在に至っても、社会的、法的基盤は整っていないんだろうなというふうに私も認識しております。他方、国民の中には、裁判官や検察官に、まさに世情に通じた人情味豊かな感覚を持ってもらいたいという希望もあることは事実であります。

 私は、そんな思いから、平成十一年の三月三十一日の当委員会で実は提案をしているのがあるんです。これは、研修弁護士制度の導入ということを提案したことがあります。これは日弁連の方が考えたんですが、研修弁護士制度は、司法修習終了後、すべての修習終了者が研修弁護士の資格において一定期間、弁護士実務を経験すること、これを弁護士登録、裁判官、検察官への任官の要件とする、こういう制度なんですね。私もこの制度をぜひとも、これはいいなと、法曹一元なんて言っているといつになるかわからない、そこで、法曹一元の制度の実現に向けての一里塚としてこの弁護士研修制度を評価すべきだというふうに当委員会で申し上げた事実があります。

 これは新聞でも大分当時評判になりまして、私の意見じゃないんですよ、日弁連の研修弁護士制度というのが評判になりまして、日経新聞ではこう言っていますね。豊かな市民感覚を持った法律家を育てるためには、直に依頼者と接し、その悩みを聞き解決策を探る経験が不可欠だと。また、朝日新聞でも、法曹に携わる者が、かかわる者が市民感覚からずれて独善的になるのも大いに困るんだ、司法には透明で公正な紛争解決のほか人権を守り行政をチェックする役割もある、そうした責務にこたえられる法曹を養成するためには、机上の知識や法律技術だけではなくて、生身の人間のさまざまな苦労や思いを肌で知る機会が不可欠だろう、こういうふうなコメントも出しております。

 まさに私もそうだと思うんですね。今回の判検事の弁護士実務というのは、まさに同じ考えだろうと思うんですが、この制度の意義と目的について、大臣の御所見を承りたいと思います。

中野大臣政務官 我が国の社会におきまして、国民に開かれた司法に対する要請が多様かつ広範なものになっている、これは事実でございますし、これにこたえるために、裁判官や検察官が専門知識だけでなしに、広くかつ高い識見を備えることが求められている、これは委員がおっしゃるとおりでございます。

 そこで、本制度といたしまして、法曹だけではないんでございますけれども、とかくプロの世界というものは視野が狭くなりがちだということがございますし、一般の国民の意識とか感覚というものを日常的に吸収するために、その職務を今委員おっしゃるとおり一時離れて、判事補及び検事が一定の期間、弁護士の職務を経験することを通しまして、広くかつ高い識見を身につけることによって、裁判官及び検察官の能力、資質の一層の向上、その職務の一層の充実を図ることを目的として実現をしたいと思います。

 また、付言して申し上げますと、現在も、今委員がおっしゃるとおり、そういう意味での教育という意味では、若い間に一度現場を離れて、そしていろいろと経験するということで、例えば外交、海外の公館とか、それからまた行政庁とか、また民間会社にも、今でも検事または判事の補の皆さんがそういう研修もやっているということも事実でございますので、そういう点もぜひ御理解の上、ぜひともこれからも御指導を賜りますようお願いしたいと思います。

漆原委員 時間がなくなりまして、刑事局長にはわざわざお出ましいただいて、質問ができなくて済みません。法案審議のときにしっかり聞きたいなと思っております。

 以上で終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長代理 大口善徳君。

大口委員 私からは、三点お伺いしたいと思います。

 私は、公明党の治安対策プロジェクトチームの事務局長をやっております。その関係で、治安関係についてお伺いをしたいと思います。

 まず、法務大臣が所信でも述べられておりますように、犯罪の認知件数、これは、三十年前は百四十万前後であったものが今二百八十五万と倍になっておるわけですね。そしてまた、一般刑法犯、これの検挙率が、昭和の時代は六〇%、それが平成に入って四〇%、今二〇%前後、こういうふうに検挙率も非常に下がっている、こういう状況でございます。

 それで、どうも平成に入って、警察も人員が非常に限られた人員の中で、軽微な事案よりも重い事案に重点を置こう、こういう方針もあったように聞いております。そのことから、要するに軽微な事案についての検挙率も下がってきて、それが今度、割れ窓の理論ということで、やはり軽微な事案もきちっとやらないと、これが国民全般の秩序というものがだんだん、秩序感というものが乱れてくる、そういうことによって、逆に今度は凶悪犯についてもふえてくる、こういうことが言えるのではないかな、こう私は分析をしておるわけです。

 特に、強盗につきましては、昭和の時代に七、八〇%の検挙率であったものが今は五〇%前後である。それからまた、恐喝も八〇%が四〇%。また、強姦とか強制わいせつ、これもかなり検挙率が落ちている。また、例えば器物損壊、こういうものは軽微ということなのか、また認知件数がいろいろ大きくなっているところなんでしょうけれども、四〇%台でもともと検挙率はそんなに高くなかったんですが、それが今は数%になっている、こういう状況でございます。

 大臣、所信でお述べになった検挙率の低下につきまして、御所感をお願いしたいと思います。

野沢国務大臣 委員御指摘のとおり、我が国の刑法犯罪認知件数は、平成十四年には二百八十五万件に達して過去最高を記録いたしました。昨年は二百七十九万件とやや総件数は減りましたが、内容あるいは社会に与える影響の大きな凶悪重大事犯が逆にふえておる、こういう状況にございまして、まことに憂慮すべき状況にあると認識しております。その一方で、御指摘のとおり、検挙率が二〇%前後ということで低下する傾向にございまして、このような治安の悪化と検挙率の低下ということに対して、国民の皆様が大変不安を抱いているところと承知しております。

 さきの総選挙の折にも、各党ともどもこの治安対策ということをマニフェストに掲げて信を問うていただいたということは、まことにこれはありがたいことでもあり、また、内閣の基本方針といたしましても、二番目の重点事項として治安対策を掲げている次第でございます。これをどうして改善するかということが一番の課題でございますが、さきに犯罪対策閣僚会議で取り決めました行動計画に盛られております事柄を一つ一つ確実に遂行していくということが極めて重要と考えております。

 刑事司法の機能を万全にすること、あるいはお巡りさんの数を増強して空き交番をなくすこと、さらには地域の連帯を強化するということが大変効果的だということも指摘されておるところでございまして、これらの施策を、関係方面と力を合わせて、しっかり進めてまいるつもりでございます。

大口委員 その中で、やはり外国人の問題がある。不法に入国する者、それから不法滞在者についての対策、これが非常に重要だと思います。

 水際につきましては、内閣官房に水際危機管理チームというものが設置されたわけでございますが、縦割りではなくて、しっかりと各省庁が水際危機管理についてやっていく、連携をとっていく、これが非常に大事なことだと思います。

 それと、入国審査官、また警備官、これがやはりまだまだ諸外国に比べますと少ない、こういうふうに考えます。

 例えば、これは職員一人当たりの在留外国人について見ますと、例えばアメリカの場合は四百五十人、ところがイギリスはもっと、二百人ということなんですね、一人に。ところが、日本の場合は七百人ということで、職員一人当たりの担当する数がアメリカ、イギリスに比べて非常に多い。これはさらに改善をするべきだ、こういうふうに考えます。

 そういうことで、危機管理チーム、それと入国管理職員の拡充、これにつきまして御意見をお伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 委員御指摘のとおり、入管の体制につきましては、諸外国と比べてもまだ手薄であるということではございますが、その職員一人一人は大変今優秀な職員が多うございまして、水際で食いとめるということについては着実に成果を上げてきておりますが、何よりもやはり、御指摘のとおり、窓口、水際でのまずチェックという意味で、まず入れないという、悪い人は御遠慮いただく、それから現在いる人を、やはり不法滞在の場合には帰っていただくという在留審査の内容審査も極めて重要でございます。

 そういった事柄を総合的に進めるためにも、これから入管職員あるいは関係の職員増強につきまして、ことしの予算の中にはしっかりとその内容が盛り込まれておりますので、この要員の強化と、それから、先ほども話題になっております旅券その他のバイオメトリックス化等の施策等もあわせまして、とにかく本人が確認できる、あるいは偽造、変造ができない、そういった形で、ハイテク技術も導入しながら、効果を上げてまいりたいと思っております。

 なお、私自身も、これは現場をやはりまず認識してなきゃいかぬということもございまして、入管の事務所の実態、それから新宿歌舞伎町等におきます不法滞在者の活動状況等について、私どもの入管職員の事務所がございますので、激励かたがた石原知事などと御一緒に現地の視察もしてきたところでございます。

 こういった一連の施策の中で、何としても御指摘の治安回復、そして外国人が、いい人にはたくさん来ていただき、そして困った人にはお引き取りいただくという、そういった施策をあわせ進めてまいるつもりでございます。

大口委員 ただいま大臣から、いい人にはしっかり入っていただく、こういう御答弁もございました。

 総理も平成十五年の一月に、観光立国を新たな国是ということで、海外からの旅行者の受け入れを倍増する、二〇一〇年までに一千万人にふやそう、こういうことを総理もおっしゃっておられるわけです。これからアジア大交流時代、また、そういう点では、非常に日本も観光立国として、しっかりとビジット・ジャパン・キャンペーンというものも展開しておるわけでございます。

 その中で、中国国民の団体旅行について、査証、ビザ発給対象の地域限定の問題があるわけです。この地域限定をしているところは、もう日本とそしてニュージーランド。オーストラリアは昨年の十月、従来の北京、上海、広東、これは今日本が、北京、上海、そして広東省、これは認めておったわけでありますけれども、昨年の十月、オーストラリアは、さらに重慶、河北、江蘇、山東、天津、浙江と六地域の追加の決定をした。あるいはEUも昨年の十月三十日、フランス、ドイツを初め、イギリス、アイルランド、デンマークを除く十二カ国、これが中国、EUの定期の首脳会議で、中国国民の団体旅行に関する覚書ということで、この対象地域を限定しない、こういう状況になっておるわけです。

 もちろん、日本も二〇〇〇年から三地域、要するに北京、上海、そしてまた広東省ということに限定して、二〇〇一年から受け入れておるわけですが、失踪者の問題、〇・四%、こういう問題もあって、今領事の当局者会議というものが昨日も行われたようでございますけれども、法務省として、これについて大臣から、このビジット・ジャパン・キャンペーンとの絡みで、中国国民団体旅行について御見解等を賜りたいと思います。

野沢国務大臣 ビジット・ジャパンということで、日本においでいただく外国人の皆様を倍増させようという計画が進行しておりますが、私どももこの点を踏まえまして、今後とも中国を初めとする観光の団体旅行につきましては、できるだけこれを拡大していくように御協力を申し上げたいと思っておるわけでございますが、他方、御承知のとおりの不法入国、不法滞在問題等がございますので、この状況を踏まえまして、関係省庁とも十分協議をいたしまして、先般内閣に設置されました水際の危機管理チーム等のお力、御協力もいただく中で、順次対象の、査証発給地域の拡大を検討してまいるつもりでございます。

大口委員 どうもありがとうございました。

塩崎委員長代理 川上義博君。

川上委員 鳥取選出の川上でございますが、初めて質問をさせていただきます。

 改革でございまして、二、三分しかないというところを、委員会の皆さんの御理解、特に自民党の皆様方の御理解で、二、三分を二十分与えていただきました。まことにありがとうございます。

 それでは、包括保証制度、SPC法、サービサー法について、新生銀行についての質問をいたします。

 サービサー法は、御承知のとおり、弁護士法七十三条で規定する禁止行為を、唯一民間企業で債権回収の業を営むことを認めた厳格な法律であります。にもかかわらず、資本と支配が一体となった海外SPCを用いて、かつ、サービサーと軌を一にして債権回収業務を行っていることは、サービサー法を制定した原則論を大きく逸脱するものであると思いますけれども、どうお考えでしょうか。

 次に、投資事業会社がいわゆる組成している海外SPCは、さらに不良資産を廉価で買いあさり、不動産競売手続をもって自己競落をする。これによって不動産そのものを廉価に仕入れて、転売をもって暴利を得る。その暴利行為は、不動産競売手続のみならず、ポンカス債と言われているんですが、残余債権に対し執拗な回収行為を繰り返し、やみくもに訴訟を提起して、時には破産申し立てという極めて乱暴な回収行為を用いている事実があります。このことをどの程度掌握されているでしょうか。

 この一連の回収行為によって得る利益を、さらに海外に組成したSPC法人という箱を利用して、その存在が我が国からの租税回避という行為までも行っています。これをどのように阻止することができるのか、どのような対策をお考えであるかどうか、お伺いします。

 先ほどの残余債権の重要な問題がいわゆる包括保証制度の問題であります。

 この包括保証によって、倒産した中小企業の経営者は、文字どおり身ぐるみはがされて丸裸になります。包括保証は、一度契約するとその呪縛から一生逃れ得ません。再建をかけて自己の持ち得る資産を売却し、日々努力してきた経営者に対し、ある日突然包括保証による回収行為が行われています。

 この包括保証をもとに、社会生活を奪う破産という切り札をもって回収手法に用いたSPC法人、特に海外SPC法人及びサービサーの執拗な回収行為の事実をどのように考え、どう対処されているのか、お考えをお伺いします。

寺田政府参考人 最初のサービサーの点についてお答え申し上げます。

 御指摘のとおり、サービサーの制度でございますが、これは、平成十年から発足しておる比較的新しい制度でございまして、まさに御指摘のとおり、弁護士法の例外といたしまして、極めて厳格な要件のもとに、しかし、当時の不良債権の処理ということに欠かせない、民間活力をある意味で利用する、そういう制度として使われて今日まで来ているわけであります。

 発足の経緯からいたしまして、この制度には非常に危険が伴う側面があることは私どもも十分意識しているところでございます。したがいまして、毎年計画を立てまして、実際にどういう回収行為を行っているかということについては、相当慎重にいろいろな検査等を行っておりますし、また、民間の方々から債権回収会社についてどういう苦情が寄せられているかということについても、非常に敏感に対応できるように体制を整えているところでございます。

 御指摘の弁護士法との関係でございますが、おっしゃるとおり、弁護士法の七十三条では、訴訟等を利用することを前提として債権を買い取るというようなことでその弊害が見られた実態がかつてございましたために、それはいわゆる事件屋と言われるものでございますけれども、その弊害を除去するという目的でつくられているものでございますが、そういうこととサービサーとの間には、おっしゃるとおり、一歩間違うと法の七十三条の問題にひっかかるような例が全く考えられないわけではないわけであります。

 当然のことながら、訴訟行為自体は、これは正当なものでございますので、破産手続も含めまして、サービサーがこれを行うことに何ら問題はないわけでございますけれども、本来の法の趣旨を逸脱したような行為が見られますと、これは、かつて懸念されたようなことになりかねないわけでございますので、私どもとしては、そういう意味で、その点についても極めて重視して見張っているつもりでございます。

 現在までのところ、さまざまな検査の過程あるいは調査の過程で、御指摘のような弊害が、このサービサー制度を揺るがすというような事例は見当たりません。しかしながら、今後とも、おっしゃるように、いろいろな例が出てまいります。不良債権の処理の実情からいたしますと、サービサーの活動というものもさまざまな面に上ってくるわけであります。十分に注意をして対処してまいりたい、このように考えております。

房村政府参考人 包括根保証の関係について、私の方から答弁をさせていただきます。

 委員御指摘のように、中小企業が融資を受ける際には、経営者が包括根保証をするということが多いために、企業が倒産した場合に、経営者が保証人として多額の債務の履行を求められてその再起が困難となっている、あるいは、場合によれば破産に追い込まれる、こういう御指摘がされていることは事実でございます。

 この問題につきまして、法務省としては、まず破産の問題につきましては、この国会に破産法の改正案を提出いたしまして、その中で個人の破産者が手元に残せる自由財産の範囲を拡大するというようなことで、少しでも再起を容易にするという対応策をとることとしております。

 また、根保証そのものにつきまして、根保証契約を締結する場合に、限度額やあるいは保証期間を定めるというような対応策が考えられるところでございますので、これらの対応策を含めまして、保証契約の内容を適正化するという観点から、今月の十日に法務大臣から法制審議会に対しまして、保証制度の見直しに関する諮問をしたところでございます。法制審議会の審議の結果を踏まえまして、本年中には結論を得て必要な措置を講じていきたい、こう考えております。

加藤政府参考人 課税関係のお尋ねについてお答え申し上げます。

 外国の法人が我が国で活動して所得を得る場合の課税でございますが、その場合は、外国法人の本国での課税権と、それから所得の源泉地である我が国の課税権とがバッティングいたしますので、その調整を行う必要がございます。現行の法制では、我が国において恒久的施設がある場合には、源泉地国である我が国において課税をいたしますが、恒久的施設がない場合には本国の課税権を優先する、こういう一般的なルールで課税が行われております。

川上委員 実は、よく認識していただきたいのは、外国の大口投資会社、よく言われていますローンスターとかサーベラスとか大手の証券・金融会社がみずから、いわゆる外資、内資を問わず、資本をSPC法人に提供するんですね、支配権を。もう一つは、サービサー会社にそういった投資会社が資本を提出してサービサー会社を設立するんです。そういう実態があるわけです。

 ところが、SPC法の百四十四条というのは、適切な受託者に委託をしなければならない、処分回収する場合ですね。委託をしなければならないにもかかわらず、このSPC法人とサービサー会社が一体となっておるんですよ。適切な第三者じゃないという実態があるわけです。したがって、この資本を共有しておる者が本当に適切な第三者であるかどうかということを、ぜひ御認識といいますか、本当に適切な第三者ということなのかどうか、これをお伺いしたいと思います。

 例えば、SPC法人が正常あるいは単純な債権を買い取ることは問題ではない、しかしながら、SPC法人が先ほどの、係争になる、事件性のある不良債権を専門的に買い取ることで業をなすということは、サービサー法とか弁護士法の違反になるのではないかということの指摘がありました。

 それでは、サービサー法では、正常、不良債権の区分が明記されているのかどうかということなんです。明記されていないからこそ、ファジーになって、あいまいになっているのではないかということが一つ。もう一つは、海外SPCはこの法律の弁護士法とサービサー法の適用を受けますかということもあるんですね。さらには、海外SPCは、資産流動化法の適用を受けていますか、受けていないですかということなんです。

増井政府参考人 資産流動化法の関係でございますが、先生御指摘のとおり、SPCは、通常の会社と区分を明確にする等の観点から、法律上みずからの資産の管理及び処分に係る業務を第三者に委託することが義務づけられておりまして、SPCがみずから債権の回収業務等を行うことはないという仕組みになっております。

 この趣旨を踏まえまして、資産流動化法におきましては、SPCから資産の管理、処分の委託を受けた法人の役員が当該SPCの役員になることを禁止しておりまして、資産流動化法上のSPCと当該SPCの資産の管理等を行う債権回収会社、すなわちサービサーでございますが、それが人的に一体となることはない仕組みになっております。

 なお、海外の関係でございますが、いわゆる資産の流動化のためのSPCにつきましては、今申し上げました資産流動化法に基づくSPCのほかに、海外で設立した法人や国内の株式会社等を使うこともございますが、こうした会社等につきましてはこういった制限はないということでございます。

寺田政府参考人 人的なつながり、あるいは資本上のつながりの問題でございますが、サービサー法上は、SPC法上は今御答弁があったとおりでございますが、サービサー法上は特に直接両者を兼職するということがいけないという規制はございません。

 それから、正常債権とそうでない債権、いわゆる不良債権との区別でございますが、これもサービサー法上はその区別に従って一方を取り扱ってはいけないとかいいとかというような区別はございません。

川上委員 ちょっと時間がないものですから、後でまた質問をいたしますが、先ほどの包括保証制度のことで、必要な措置を行う考えだということですけれども、どんな具体的に措置があるか。

 もう一つは、親族、要するに経営者、主たる債務者の経営者は対象になりますけれども、銀行はその親族とか第三者の保証もぜひとりなさいというわけです。だから、親族とか第三者に対する保証についてはどうなりますかということをお伺いします。

 それと、先ほどの答弁でまさによくわかったんですけれども、要するに規制がないわけです。それから、不良、正常という区別もない。したがって、いろんな事件が起きる原因になっているのではないかなというふうに思うわけです。もともとこの不良債権を専門的に、要するに業として買って回収できるのはサービサーだけなんです。要するに、サービサー法とか七十三条の適用を受けるにもかかわらず、SPCが譲り受け債権をみずから訴訟を提起して回収行為を行っているのはおかしいじゃないかということなんです。わかりますね。

 それから、海外SPCが国内の資産流動化法の枠外にあるということなんです。これもおかしいんですよ。なぜ枠外にあるんですか。サービサー法と七十三条の適用は受ける、国内のものは受ける。ところが、流動化法に関しては海外SPCは受けないというのはおかしいということがあります。そして、特に銀行からの、買い取り機構から譲渡されたものは不良債権であるんです、不良債権になる。これをSPCが業として買って回収して利益を上げているということは七十三条違反になるんではないですかということなんです。

 本来、不良債権の回収ができない者がサービサーを設立して、堂々とこの業をやって暴利をむさぼり、なおかつ租税回避をしているのは、どう考えてもおかしいんです。先ほど言ったように、正常、不良債権の区分が明記されていないのもおかしいんです。この者をどう規制をするかということが重要なんですよ。今までこれを放置しておったということが大変大きな問題であるんではないかなと思っています。これからこれをどう規制しますかということなんですね。これの御答弁をお願いしたいと思います。

 それから、新生銀行の問題がありました。新生銀行が上場しましたけれども、リップルウッドを中心とする外資が多額の利益を取得して、公的資金の投入が行われておったんですけれども、その公的資金の投入が半分以上は回収できない。最終的には我々国民にしわ寄せになるんではないかと言われている。その上場の、譲渡益に対して、また課税権が及ばない。このことについて、我々国民というのはもうふんまんやる方ない。地方財政計画はどんどん交付税は切っていって、こういうところに税金を投入して回収ができない、課税権もできないというのであれば、もう国民は大変怒り心頭だと思うんです。

 法務大臣は、このことについて、政治家としてどのようにお考えでありますか。そしてまた、このことについて財務省はどのような対策を考えているのか、お伺いをしたいと思います。

房村政府参考人 まず、包括根保証の関係についてお答えいたします。

 考えております必要な措置としては、法改正を考えておりますが、その法改正の具体的内容につきましては、先ほども申し上げましたように、根保証に限度額を設けるとか期間を設けるというようなことが考えられますが、その具体的内容につきましては、現在法制審議会で御審議をいただいておりますので、それを踏まえて法改正をいたしたい、こう考えているところでございます。また、親族等の保証につきましても、この今回の考えております対策は一様に適用される、こういうことでございます。

野沢国務大臣 お尋ねの特定の金融機関に対する公的資金投入に伴いますさまざまな今問題が出ていることは私も承知しておりますが、この問題につきましては、預金保険法等に基づいて行われておりまして、当省としてこれについてのコメントを出すことについては控えさせていただきたいと思います。

加藤政府参考人 補足説明になりますが、課税関係におきましては、今先生御指摘のように、いわゆる国際租税の課税権の調整ということで、租税条約等々で調整しておるわけでございます。現在、我が国は、OECDのモデル条約というのが基本的には租税条約の先進国間の規範となっているわけですが、日米も、それから日・オランダ間もその基本的なOECDモデル条約に準拠して条約を結んでおります。それに従いますと、先生御指摘のように、いわゆる株式投資につきましては、基本的に本国で課税をするというルールになっております。

 この問題につきましては、国会等におきましてもいろいろ御議論をいただいておりまして、三十五年ぶりに、今般、新たに日米新租税条約の署名をいたしました。これはまだ今後国会で御審議いただいて御批准いただくという前提でございますが、この中では、破綻金融機関の株式売却について一定の条件のもとに課税権を留保する条項も設けております。しかしながら、この条約はまだこれから御審議いただいて発効するということなものですから、現行では非課税という状況でございます。

増井政府参考人 SPCのいわゆる法人の規制の観点から、私も御答弁申し上げます。

 御承知の資産流動化法でございますけれども、これは先生御承知のように、投資家の保護を図りながら資産の流動化を促進するための法律でございます。したがいまして、資産の流動化の仕組み自体を規制するということについてはいろいろな形で慎重に検討が必要かというふうに考えております。

塩崎委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小宮山洋子さん。

小宮山(洋)委員 民主党の次の内閣で法務の責任者を務めております小宮山でございます。民主党の初めに、トップバッターで質問をさせていただきます。

 この委員会は野党は民主党だけでございますが、民主党としては、野党でありましても、やはり私どもの案を持って常に建設的な議論をしていきたいと思っておりまして、このたびの国民が主役になる大きな司法制度改革につきましても、民主党もかねてから提言をしてきておりますので、ぜひ建設的な議論をして、この国会でしっかりとつくり上げたいというふうに思っております。

 まず、この柱になります裁判員制度について、先日、予算委員会でも質問をさせていただきましたが、そのとき、まだ論点として残っていると思われる点などを中心に、まず、この裁判員制度について伺いたいと思います。

 大臣に伺いたいんですけれども、予算委員会のときの御答弁はどうもまだ私は納得がいきませんでしたので、もう少し具体的に、今回の司法制度改革は、国民から一番三権の中でも遠かった司法を、市民、国民が主役の司法に変えていこうという大改革なわけなんですが、その柱となっている裁判員制度につきまして、私たちは、やはりもっと国民を信頼して、例えば裁判官と裁判員の人数の問題でいいましても、専門の裁判官に伍して話ができる、そして多様な価値観を入れるという今回の趣旨からしても、もっと裁判員の割合が多くていいのではないかと思っています。

 現在は、裁判官三、裁判員六となっておりますけれども、当初、自民党の方でお考えだったときは三と四ということだった。そういうことですと、なかなか本来の、国民の普通の社会常識を入れて国民主役の司法にしていくという趣旨からすると、まだ足りないのではないか、もっと国民を信頼した制度にしてよいのではないかと思うんですけれども、その点について、大臣にまず伺いたいと思います。

野沢国務大臣 小宮山大臣におかれましては、大変積極的にこの司法制度改革につきまして御提言をちょうだいいたしておりますことについて、この席をかりまして感謝いたす次第でございます。

 司法制度改革推進本部で現在考えております骨格案についてお答えをいたしたいと思いますが、まず、評議の実効性の確保や一人一人の裁判員が責任感と集中力を持って裁判に主体的、実質的に関与することを確保するという観点から、合議体全体の規模には一定の限度があると考えておりまして、十人に至らない程度というのが適当であるというのがこれまでの議論の集約でございます。法廷などの設備から十人以下にしたのではないかとの御意見等もございますが、そのような理由によるものではございません。

 次に、裁判官の数についてでありますけれども、裁判員制度の対象事件は法定合議事件のうちでも特に重大と考えられる一定の事件でありますので、現行の法定合議事件と同様に、原則として裁判官三人による慎重な審判を行うことが必要であると思われます。そして、合議体全体の規模を一定の限度内とした上で、裁判に国民の感覚がより反映されるようにするため、相当程度裁判員の数を多くするという観点から、その人数を六人とすることとしたものであります。

 このような合議体の構成としました趣旨につきまして、ぜひ御理解をいただき、私どもも国民の皆様の常識を信頼いたしましてこの制度といたしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。

小宮山(洋)委員 先ほど申し上げた多様な価値観ということ、それから専門職である裁判官と伍して発言を評議などでできるということからして、いろいろな市民グループを初め関係者の御意見を伺っても、三倍以上は裁判員の数が必要という御意見が多い。私どももそう思っておりますので、民主党は、裁判官の方は一人、あるいはその補佐する人をもう一人つけたとしましても、裁判員は十人程度は必要ではないかと思っておりますので、この点については、また審議の中でいろいろ意見を言わせていただければと思っております。

 次に、裁判員の選任に当たりましては、国民に過度の負担を与えない、かけないようにすると同時に、幾つか辞退できる理由が記されております。疾病、介護や養育の必要、従事する仕事に著しい損害が生じるおそれがあるときなどは辞退できるとされているんですけれども、例えば著しい損害といっても、すべて裁判官の裁量に任されていいのか、ケースによっていろいろ差も出てきてしまうのではないかと思ったりもいたしますので、その合理的な理由の範囲について、ある程度の具体的な基準が必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 ただいまの点、重要な点でございますけれども、ただ、これは裁判の手続の問題でございますので、これをすべての事件について一律にという、すべてのものをというのはなかなか難しい。裁判の一態様でございますので、そこは御理解を賜りたいと思います。

 ただ、これによって国民の方が、どうしていいかわからないとか、そういう事態にはならないように、さまざまな運用上の工夫も含めまして考えていきたいというふうに考えております。法案の中でも、なるべく書けるものは書きたいというふうに思いますけれども、どうしても法律で全部を書くなんて難しいわけでございますので、そこは運用上の工夫でやっていきたいというふうに今のところ考えております。

小宮山(洋)委員 多くの国民が参加できるように、私たち民主党では裁判員休暇制度の創設ということも打ち出しておりますけれども、そういうものをつくるおつもりはないのかということ。

 それから、育児や介護は免除の理由になっておりますけれども、場合によっては、裁判所で見てもらえば可能な人もいるはずなので、裁判所に託児所や託老所をつくるというお考えはないのか、この点について伺いたいと思います。

山崎政府参考人 先日、予算委員会の方でも、労働基準法上の規定を申し上げました。これは繰り返しませんけれども。

 これに加えて、特別の休暇制度ということだろうと思いますけれども、これにつきましては、他にも同じような類似の例がございまして、これは検察審査会でございます。無作為抽出で選出をいたしまして、不起訴の事件についての当不当を判断していただくものでございますけれども、こういうような類似の制度とも全体的に整合性をとらなければならない。では、そちらで本当に特別の休暇制度があるかといったら、現在ございません。協力をいただいているという状況でございます。そういうような均衡の問題、それから、やはり事業主側の負担等も考慮しなきゃいかぬということで、これを今一律に決めていくということはなかなか難しいという点、これを御理解賜りたいということ。

 それから、託児所、託老所ですか、これも予算委員会で御質問ございましたけれども、今のところ、これについて、すべてのところにそれをつくっていくという考えはございません。各裁判所で年間どのぐらいの事件が来るかというのはまだわかりませんし、その中でそういう事由を抱えている方がどのぐらいいるかとか、その辺のところ、全く今のところわからない状況でございまして、これをすべてのところに設置をしておくということになりますと、これは大変な施設が必要になってくるわけでございます。人件費、物件費、全部かかるわけですね。

 ですから、そういうことで、今のところはそういう問題を考えておりませんけれども、育児の関係は辞退事由になっておりますので、それから、介護が必要であるという場合にも辞退事由の一つとして掲げられるわけでございますので、そういう点では、まずそこで辞退をしていただくという形で処理をするということが必要になるかなと。

 それから、あるいは裁判員になる者の負担とか、それから財政事情とか国民の意識、こういうものをもう少し総合的に勘案して、今後慎重に検討していくという命題だろうと思っています。

小宮山(洋)委員 例えば、無作為抽出で選ばれて、どうしても嫌だという人の場合はどうするんでしょうか。首に縄をつけてでもというわけにはいかないと思いますし、そういうのが辞退事由になるのかどうか。

 また、合理的な理由なく拒否した者には過料を科すということになっていますが、こういうところに過料を科すという必要があるのかどうか、そのあたりについてはいかがでしょう。

山崎政府参考人 これはなかなか難しいところでございますが、どうしても嫌だという方、首に縄をつけて引っ張ってくるのかということもよく言われるんですけれども、これはなかなか難しいだろうと考えております。

 ただ、ただ嫌だというだけで拒否できるというのもいかがなものかというふうに思いますけれども、私どもは、これは辞退事由ということよりも、一つ辞退事由に当たるとすれば、自分の人生観とか信念で絶対にやりたくないという方、こういうものもあろうかと思います。それから、宗教上の理由でやらないという方、それはあるいは辞退事由に該当する可能性もあります。それ以外の方でも、これは、そのままであれば、きちっと裁判をやっていただけるかどうか非常に不安がございます。そういう場合には、忌避事由として、忌避をするという形でお引き取りを願うという道もあろうかと思います。そういうことを通じて、どうしても嫌だという方にはそれなりの道がある。

 それから、現実に就任されましてそれでやっていたけれども、どうしても従っていただけないとか、もう嫌だと言われる、そのときにはやはりお引き取り願う。解任という形になりますけれども、そういう道も用意している。こういうふうに御理解をいただきたいと思います。

 それから、出頭義務の点で過料を科している点でございますね。これにつきましては、結局、国民の義務といたしましても、その担保が何もないということになると、本当に履行していただけるかどうかということがございまして、そうなりますと、来たい人だけが来るというような形になってしまうということで、広い範囲から裁判員の方を選ぶということがなかなかできなくなるという点がございます。そういう点を考えて、過料というものを設けているわけでございます。

 これはまた、従いました人と従わなかった人とのバランスの問題もございますので、そこのところでやはり最低限の担保として必要ではないかというふうに考えておりますが、あとは運用上の問題がいろいろあろうかと思います。

小宮山(洋)委員 やむを得ず辞退をした場合に義務を一定期間先延ばしできる延期制度というものを民主党は提案しているのだけれどもどうかということをやはり予算委員会で質問いたしましたところ、今政府で考えているのは、先延ばしということは考えていないけれども、リストからは外さないのでいいのではないかという御答弁だったかと思うんですけれども、今の政府案で考えられている重大な刑事事件を対象にした場合、一年に裁判員に選ばれるのは四千人に一人ぐらいではないかと聞いています。

 その四千分の一の確率と、一回選ばれてそれを延期するのとでは、やはり確率が全く違うと思いますので、私たちは、やはり延期制度というのを創設した方がいいのではないかと思っているんですが、いかがでしょうか。

山崎政府参考人 御指摘のような点については、世界でそういうような制度を持っているところもないわけではございません。私どももそういう点をいろいろ検討はいたしましたけれども、結局、これは新しい制度を導入していくわけで、これはもう安定的にきちっとやらなければならないということは当然だろうと思います。

 この場合、個人個人で都合のつく時期がそれぞれかなり異なるんだろうと思うんですね。これを全部別管理にしてやっていくということは非常に複雑な作業になるということと、一年間のリストを抽出するわけですから、その中で都合のつく時期がもうその一年間を超えてしまうということになれば、当然それはもうなくなっていく話でございます。いろいろなパターンが生じるわけでございます。

 それから、やはりもう一つは、優先権を持つという考え方が、これは無作為抽出で、それで公平に選んでいくという理念からいって本当にふさわしいのかどうかという問題も残りまして、私どもといたしましては、このような例外的な措置を考えるのは今慎重に考えております。ただ、もとのプールに戻すということで、当たる場合もあるし当たらない場合もあるという形で復活をさせていくということを考えております。

小宮山(洋)委員 迅速で充実した集中審議をするためには、証拠の開示を原則として義務づけること、また取り調べ状況をビデオ録画あるいは録音する可視化が必要だと考えますが、この点は、後ほど同僚議員が質問をするかと思いますので、譲りたいと思います。

 やはり、今一番大きな論点になると思われるのは、守秘義務の問題ではないかと思うんですね。公正な裁判の確保と知る権利のバランス、これは非常に重い課題なので、十分な議論が必要だと思っています。

 裁判員、公判中は確かに守秘義務がすべてにかけられるということは納得できますけれども、終わった後も、その評議の経過や職務上知り得た秘密を漏らしてはならず、守秘義務が課せられる。裁判が終わった後でも、当然、個人のプライバシーに関すること、評議でだれが何を言った、こういうことは守秘義務が課せられていいのだと思いますけれども、体験を、一定の範囲内で本人が話したい場合に話すということは、裁判員制度への理解を深めるためにも認めてもよいのではないかと思っています。

 そういう意味で、守秘義務の合理的な範囲と意見表明の自由の関係について、さらにこれは検討が必要ではないかと思いますが、この点はどうでしょうか。

山崎政府参考人 ただいまの御指摘は私どもも理解しておりまして、法律の上では守秘義務ということで書きますけれども、じゃ、守秘義務に当たる事項か当たらない事項か、これにつきましても、法律の中で全部書くわけにまいりませんので、これは、やはり運用上の問題として、こういう問題については話しても大丈夫、こういうものについては守秘義務に触れるというようなわかりやすいものを何かつくって御説明をして、納得をしていただくという作業が必要かなと思います。

 例えば、例を挙げますと、公判廷でのやりとりというのは、これはもうみんな見ていますので、これは話してもらっても構わないだろう、それから、判決書に書いてある内容、これも、判決書を読もうと思えば読めますから、これもいいだろうということになります。

 問題は、非常に微妙な問題を抱えるところは、秘密に及ばない範囲で裁判員の職務についての感想などを述べること、ここにポイントがあろうかと思います。この辺のところも、どのようなものであれば許されるか、許されないか、全部を書くわけにいきませんけれども、わかりやすいものは何かをつくって、迷わないようにしたいというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 そうですね。先日の御答弁に比べますと、かなり具体的に、すべてをいけないと言うのではなくて、何が当たらないかを具体的に運用上書いていく、それはぜひ必要なことだというふうに思っています。

 そして、その守秘義務違反に懲役刑も考えるというのは重過ぎるのではないかと思うんですね。検察審査会の場合も罰金だけですし、運用を柔軟にするという御答弁を先日もいただいていますけれども、やはり懲役の可能性もあるということは、ただでさえ難しそうな裁判員になることをちゅうちょされる要因になるのではないか。各国ではどうなっているのかも含めて、お答えをいただきたいと思います。

山崎政府参考人 御指摘の点でございますけれども、普通にやっていただければ懲役刑になることはまず考えられないわけでございまして、一番悪質な例を考えると、そこで知り得たもの、それをインターネットに載せてしまうとか、裁判の中身が全部出てしまうこと、それから、プライバシー、これをインターネットに載せられますと、もう全国に出てしまうということになります。そういうような悪質な場合には、やはり懲役刑でその担保をしておくという必要があろうかと思います。それだからといって、だれもかれもが懲役刑になるわけではございません。

 各国の状況ですが、私どもの承知している範囲でございますけれども、イギリス、フランス、イタリアにおいては、やはり、評議の内容を含め、秘密を漏らす行為に対して拘禁刑を含む刑罰を設けております。アメリカでは、公判終了後について一般的な規制はございませんけれども、州によっては、やはり報酬を受けての取材等を処罰する規定があるというふうに承知をしております。

小宮山(洋)委員 この裁判員制度を充実したものにしていくためには、義務教育段階からの法教育、これが必要だと思いますし、また国民にこの制度をよく理解してもらわないといけないと思うんですけれども、いろいろな調査の中で、まだまだ国民が理解しているとは思えない。基本的な教育、それから広報啓発をこれからどういうふうに進めていくのかを大臣に伺いたいと思います。

野沢国務大臣 御指摘のように、この裁判員制度の円滑な導入にとりまして、参加する国民の理解と参加意識を醸成することが大変重要であると認識しております。

 このため、委員御指摘のとおり、広報啓発活動と法教育をいわば車の両輪として位置づけ、これを推進していくことが、裁判員制度に対する国民の理解と関心を深めていく上で大切であると考えております。このため、今後もさまざまな手段を用いて広報活動に努めるとともに、文部科学省とも連携しながら、法教育のあり方についても検討を進めてまいりたいと考えております。

 そのため、この法律の施行についても、十分な準備期間をとって施行に移りたい、かように考えております。

小宮山(洋)委員 この裁判員制度につきましては、司法制度改革の柱でもございますので、また法案審議のときなどにしっかり伺っていきたいと思っています。

 次に、司法制度改革の中で幾つか法案が出ておりますけれども、私たちがちょっとこれはこのままでいいのだろうかと思っているものについて、一つ伺っておきたいと思います。

 敗訴者負担制度のことですけれども、訴訟で敗訴者が弁護士費用などをすべて負担するこの敗訴者負担制度について、これはそもそもどういう趣旨で導入をされようと考えておいでなのか、伺いたいと思います。大臣。

野沢国務大臣 御指摘のように、現在検討中の制度は、当事者双方が弁護士等の訴訟代理人を選任している訴訟において、当事者双方による共同の申し立てがあったときに、訴訟代理人の報酬に係る費用を訴訟費用とする制度でございます。

 この制度は、訴えの提起を萎縮させることなどを避けながら、当事者の選択の幅を広げることによりまして、訴訟代理人の報酬に係る費用を回収したいという期待にこたえる、ここが趣旨でございますが、この制度は裁判所へのアクセスの拡充につながるものであると考えております。

小宮山(洋)委員 当初、この敗訴者負担制度が考えられていたころには、学者の皆さんも含めて、負けた側が負担するのが正義じゃないかというような考え方もあったと聞いているんですけれども、やはりこういう制度をつくろうという実態とあわせて見ますと、今、アクセスをよくすると言われましたけれども、負けた場合のリスクを考えて訴訟をあきらめるケースがかえってふえてしまうのではないか。

 今、訴訟の数からいきますと、諸外国に比べて日本は本当に少ないですよね。それをまた萎縮させないようにとおっしゃいましたけれども、やはり、負ける可能性を考えたら、これは萎縮効果の方が大きいのではないか。そうなりますと、裁判など司法を身近なものにするという今回の司法アクセス拡充の理念なんかからしますと、反することになるのではないかと思うんですけれども、いかがでしょう。

山崎政府参考人 これは二つの要請が入っておりまして、一つは、例えば三千万円の名誉毀損の事件を起こしたといたします。判決で残念ながら百万円しか認められなかったといった場合に、弁護士費用が三百万といった場合には逆に持ち出しになってしまうわけですね。そうなると、裁判を起こすことをちゅうちょする方もおられるというわけですね。ですから、そういう方のためには敗訴者負担のような制度が必要になるかもしれないということになります。それから、逆に負けた場合には相手方の弁護士の費用も負担するわけでございますから、そうなったら訴訟が起こしにくいという方もおられます。そこを、ですから、この制度を導入するについても、一律に導入することなく考えなさいというのが改革審の意見書でございます。

 私ども、いろいろ検討いたしました。この中からいろいろ除外をしていくという範囲はどういう範囲にしようかとか検討しておりましたけれども、これが、全部きちっと除外の範囲をつくることは非常に難しいということ。例えば、力のある者とない者を考えたときに、それじゃ、巨大企業と零細企業というのはどこでどういうふうに分けるのか、それから法人と個人をどういうふうに分けるのかとか、さまざまな問題を抱えまして、結局、そういう方法は難しいと。

 しかし、両者の要請を満たすためには、それでは、訴訟になって、それから法律家がちゃんとついて、その上で共同の申し立てがある場合、これは両者がやろうというわけですから、こういう場合なら、アクセスする側もそれから逆の方の方もそれでいいと言っているわけですから、これはそういう意味では当事者の意思に合致しているということになるわけでございまして、本当に嫌な方はこの制度の申し立てをしなければいいという形になりますので、アクセスの障害にはならないと考えております。

小宮山(洋)委員 提訴した後、合意でと。提訴して大体方向性がある程度見えるケースもあると思うんですね。だから、提訴した後の合意というのがどの程度役に立つのか。

 得るものがないのに、気がつかないうちに私的な契約に入れられるというような心配もいろいろ消費者の方からも出ておりまして、例えば消費者訴訟などでは、持っている証拠などに企業と消費者で大きな差があるわけですね。製造物責任のようなことを考えましても、アメリカのように証拠開示を義務づけているディスカバリーといったような制度も日本にはないわけですし、そうしますと、非常に消費者が不利になる。

 このような中での敗訴者負担の導入というのは、消費者の訴訟などを一層やはりやりにくくするのではないかと思うんですけれども、いかがでしょう。

山崎政府参考人 訴訟の場面では、みずからの意思が入らなければ、このルールは適用されません。その訴訟に入る前に何かの契約でそういう条項が盛り込まれたという、多分そういう御心配のことだろうと思います。その場合は、これは現在でもある問題でございます。現実にあるかどうかという問題ではなくて、問題点としては今でもある問題だ。

 これは消費者を今例に出されましたけれども、消費者契約法がございまして、その中で、やはり通常生ずる損害、それを超えるものについては無効とするという規定もございまして、この敗訴者負担の点につきましては、通常生ずる損害を超えるものという理解をしておりまして、それぞれ、実態の問題としては、問題が起こり得るところについては、法律上の手当てもあるということでございます。

小宮山(洋)委員 先ほど除外の範囲をつくることは難しいと言われたんですけれども、今私どもが考えているのは、消費者とかあるいは労働訴訟とか、幾つか、やはりこれにはふさわしくないのではないかと思う範疇があるわけです。

 例えば労働訴訟につきましても、雇用者と労働者というのは対等な立場にありません。使用者が労働者を採用する際に、使用者が敗訴者負担条項に同意することを求めるようなことを契約の中に入れたりしたときに労働者が応じざるを得ないのではないか、このような心配もあるので、やはり、この労働を含めて、ふさわしくない分野というのは限定をする必要があるのではないかと思うんですが、重ねて伺います。

山崎政府参考人 私ども、消費者訴訟とそれから労働訴訟、これについて除外すべきだという御指摘、十分賜っております。

 この労働に関して言えば、やはり労働法制がございまして、現在もある問題でございますけれども、労働基準法の適用の問題がございます。労働契約等で債務不履行につきまして違約金を定めたり損害賠償の予定をしたりということはできない、してはならないという規定もございまして、そういうことで実態上の問題が解決されていくというふうに理解をしております。

小宮山(洋)委員 これもまた非常に議論をしなければならない点が多い問題だと思っておりますので、また今後議論をしていきたいと思っています。

 私の質問の三つ目、最後のテーマといたしまして、就学生、留学生の在留資格の厳格化の問題について伺いたいと思います。

 法務省は、昨年の十一月から、就学生、留学生の在留資格を、特に中国、ミャンマー、バングラデシュ、モンゴルについて厳しくされた。これはなぜで、どういう内容で厳しくされたのかを伺いたいと思います。

増田政府参考人 平成十五年一月一日現在の、在留資格、留学それから就学に係る不法残留者数が一万五千二百二十九人となっておりまして、不法残留者の多くはいわゆる不法就労を行っていると思われます。

 このような状況を踏まえまして、本年四月に入学を予定している者について、不法残留者を多数発生させている教育機関に入学する者で不法残留者が多数発生している国の出身者について、日本で勉学する上で必要な日本語能力を有しているのか、また、滞在中の経費支弁の能力を有しているのかなどについて厳格に審査することとしました。

 また、資格外活動容疑で摘発された者や犯罪で検挙された者が在籍していた教育機関、これらにつきましても、どのような入学選考を行っていたのか、あるいは在籍管理がどのようなものであったのか、生活指導はどのような状況であったのかなどについて確認を求めまして、これらに問題が認められる場合に、適切な対応を求めることといたしました。

 私どもといたしましてはこのような措置を講じましたけれども、今回の措置によって入国、在留できなくなるのは勉学する意思や能力が不十分な者であって、真に勉学する留学生や就学生が入国、在留できなくなるというものではございません。

小宮山(洋)委員 山形県の酒田短大の学生のアルバイト事件、あるいは出稼ぎ目的とか凶悪事件などが背景にあるという御説明だと思うんですけれども、やはり多くの学生はまじめに勉学をしているわけですよね。

 法務省は二〇〇〇年からビザ審査を大幅に緩和して、留学生が急増しているんだと思います。二〇〇三年五月現在の留学生、日本語学校などを含めておよそ十万五千人、そのうち六五%が中国からだということです。今回の厳格化で、一月に受け入れている日本語学校の中国人の申請が二百十一人あって、そのうち認定されたのは四人だけという日本語教育振興協会の調査もあります。四月から学ぼう、あるいは一月から学ぼうという人の中で、実際に非常に審査がおくれているのか、本当にそれが認められていないのかわかりませんが、勉学する意欲があってもそれができないでいる人たちがかなりいるのではないでしょうか。成績だけでなくて、経済的な資格審査、例えば過去三年間の収入に関する資料なども要求されていると思います。

 最初に申し上げたように、国によって、またこの四カ国だけ厳格化をした、これは国際的にも問題ではないかと思うんですが、いかがでしょう。

増田政府参考人 幾つかお尋ねを受けましたけれども、まず、留学、就学の在留資格で入国する者の中には、現実問題として、これまでの入国審査あるいは退去強制手続の調査の中で、当初から実は就労目的として日本に入ってきた留学生、就学生とか、あるいは、当初は勉学を志していたけれども、経済的な事情などから結局勉学できなくて働いている、そういった者が多数存在することから、先ほど申し上げたような措置を講ずることにしたわけであって、真に勉学する者について積極的に受け入れるというこれまでの方針に変更はございません。

 それと、委員が今例示された数字、一月期生についての数字を挙げられましたが、それは私ども直接には承知していないのですが、一月期生ということは、いわゆる日本語学校、一月の入学生を受け入れるというのは日本語学校のことだと思います。

 ちなみに、東京入国管理局管内で、ことし一月に留学生、就学生を受け入れたいとして申請した学校は、全部で四十校ございました。その四十校の中で、過去一年間に不法残留者を発生させなかった学校というのはたった三校だけで、中には、平成十四年一年間に十人以上の不法残留者を発生させた学校が十校、これはさかのぼって過去三年間を見ていきますと、十人以上の不法残留者を発生させた学校は三十一校ございました。

 そういった状況がありますので、最初に申し上げたとおり、不法残留者を多く発生させている教育機関については、これは従来よりは一層適正な審査をせざるを得ないというふうに考えたわけでございます。

 私どもとしては、あくまで、質の高い留学生、就学生を受け入れる、本当に勉学する意思、能力のある留学生、就学生を受け入れるということに変わりはございませんし、したがって、決して、今回の措置が国際的に問題があるというふうには認識しておりません。

小宮山(洋)委員 日本語学校の実態として、そちらで把握していらっしゃらないということでしたけれども、やはり、資格が取れなくて困っている人がたくさんいるということは、ヒアリングなどでも聞いております。ですから、就学生、留学生の不法滞在が犯罪の増加に結びついているという確証もあるとは思えない中でこのような措置がとられるということは、やはり問題だと思います。

 文部科学省では、国際理解のためにも留学生などをふやそうとしていると理解しておりますけれども、今回のこの資格厳格化について、文部科学省としてはどのように考えていますか。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、今、留学生、国際交流という観点からの受け入れは、私どもにとっても非常に重要なことであるという認識を持っております。ただ、しかしながら、その増加に対応して、教育機関における入学者選抜あるいは指導等の体制が十分かどうかという観点については、私どもとしても、いささかの懸念なしとしないという実態にございます。

 私どもとしては、大学、日本語教育機関において、入学者の選抜をやはり適切に行っていただくということ、そして、出席状況でありますとか、あるいは成績不良者への指導など、教育機関としての責任を持って果たしていただく、こういう体制をつくるということは必要なことであると考えておりますし、その旨指導を行ってきたところでございます。

 そういう意味で、関係機関との連携も十分図りながら、その実効を上げるように努めてまいりたいと思っておりますし、その際、入国、在留審査について一定の厳格化は必要であると考えますが、真に勉学を目的として留学を希望する学生が排除されるということがないよう、個々の学生の状況に応じた適切かつ慎重な審査が行われて、適切な受け入れがなされるよう、法務省とも十分連携をとりつつ進めてまいりたいというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 大臣に伺いたいんですけれども、やはり、学生が勉学する意欲があるかどうかというのは、今、文部科学省からもちょっとそういうニュアンスの御答弁もあったかと思いますが、学校がきちんとその辺を審査すればいいのであって、入り口で、入国管理のところで厳格化するというのはいかがかと思いますけれども、どのようにお考えですか。

野沢国務大臣 勉学の意欲を持った方が、将来、恐らく日本とその国とのかけ橋となっていただけるという期待は、十分私ども持っております。したがいまして、その本人の意欲、努力、そして将来の可能性を十分配慮しながら、かつ、入国に当たりまして必要な条件について慎重に審議をしてまいるつもりでございます。

小宮山(洋)委員 質問の最後に伺いたいんですけれども、外国人と見れば犯罪者と思えということはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、法務省の入国管理局のホームページで、今月の十六日から不法滞在者の情報提供システムというものの運用が始まっています。これは、不特定の人が不法滞在していると思われる外国人の情報を自由にネットで送れる仕組みになっています。そうでないかもしれないけれども気軽に情報が提供できる、こういうフォームになっているんですけれども、自分のことは余り、電話番号とかそんなのは書かなくてもよくて、例えば、ここに例が挙がっているのは、同じマンションに住んでいるんですが、学生ビザがあるというのに片言の日本語しか話せませんし、朝早くから作業服を着て出かけていますと。

 こんなような形で、何か、外国人と見たら、怪しいと思ったら全部できるというような形のものを、自由にネット上で情報をとるということは、虚偽告訴罪あるいは不法行為、人種差別撤廃条約などにも抵触をする、これは非常に問題がある仕組みではないかと思いますが、この点を伺って、私の質問は終わります。

増田政府参考人 我が国に入国して在留していらっしゃる外国人の大多数はルールを守っておられることは言うまでもないことですけれども、残念ながら、我が国には推定約二十五万人の不法滞在外国人がおりまして、入国管理局がこの不法滞在者に対して厳格に対応することもまた、国民から求められていることであって、社会の要請であると考えております。そのために、私どもは積極的な摘発活動を行う必要がございまして、これまでも、国民の方々から寄せられるさまざまな情報、これらを貴重な端緒として摘発などを行ってまいりました。

 今回の情報提供メールの受け付け開始は、昨今、電子メールが広く普及いたしている現状にかんがみまして、また特に、情報をこれまでお寄せいただいた皆様方の中に、二十四時間いつでも発信できる電子メールで情報提供したいというお声もございましたことから、情報提供を受ける手段を新たに加えたものでございます。したがって、電子メールによって寄せられた情報について、地方入国管理官署で内容の真偽について必要な裏づけ調査などを行った上で法にのっとった手続をとっていくことは、これまで国民の方々から電話とか手紙などで情報をいただいていたことと、何ら異なることはございません。

 加えて、今般、委員から御指摘のような御懸念の声も寄せられましたので、それにかんがみまして、今回のメールによる不法滞在者等の情報提供受け付けが、決して人権的な問題を生じさせることのないよう、十分な配慮を徹底してまいりたいと考えております。

小宮山(洋)委員 また法務委員会の中でいろいろ伺いたいと思いますけれども、やはり日本は、外国人をしっかりと人間として受け入れるという仕組みが余りにもなさ過ぎる。例えば、三K職場と言われる部分でも、中小企業の製造業などでは外国人がいないと仕事ができないのに、労働力が入ってくる、人間が入ってくる仕組みになっていない。いろいろな点が問題だと思っていますので、また機会を見て聞きたいと思いますが、このホームページはやはり問題だというふうに認識をしております。

 以上で終わります。

柳本委員長 小林千代美さん。

小林(千)委員 民主党の小林千代美でございます。法務委員会で初めて質問をさせていただきますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 きょうは時間、二十五分ということですので、一点に絞って質問をしたいと思います。DV防止法についてお伺いをしたいと思います。

 二〇〇一年の十月に、このDV防止法というものが制定、そして施行されまして、今まで家庭の中で行われてきた暴力というものが表に出てきた。今まで家庭の中で隠され続けてきたことがDVという犯罪となって世の中にいわば発見をされて、被害者が社会の中で登場をしてきた。そして、DVの、家庭内暴力の根絶というものが政策的な問題にもなったということに対して、私は、この法律が施行されたということは大変大きな意義があって、役割を果たしたというふうに認識をしております。

 この法施行から三年がたつわけでございますけれども、残念ながら、依然としてこの家庭内暴力というものは発生をして、被害が発生をしているという状況であり、被害を受けるのが被害当事者だけでなくて、子供やあるいはその被害者を支援している御家族ですとか、友人ですとかシェルター、そういうところまで被害が拡大をしているというのが今の現状ではないかと認識をしております。

 まず最初に、法務大臣の方にこのDVの防止に向けた法務省としての取り組み、そして大臣の認識というものをお伺いします。

実川副大臣 今委員御指摘の、配偶者からの暴力の防止と被害者の保護につきましては、男女共同参画社会の重要な課題でもあり、また政府全体といたしましても、積極的に対応していく必要があると認識いたしております。

 法務省といたしましては、従来から検察当局におきまして、配偶者からの暴力に係る刑事事件につき、警察等とも連携しながら所要の捜査を遂げた上、各事案の特性を勘案しつつ、その適正な処理に努めております。また、人権擁護機関におきましても、これを重大な人権問題として取り上げ、その防止のために積極的に啓発活動を行っておるところでございます。

 また、これらに加えまして、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関します法律、いわゆる先生今御指摘されましたDV法の施行に伴いまして、法務局では、保護命令の申し立てに添付する申立人の供述書についての公証人あるいは法務事務官が行う宣誓証書の事務につきましても適切に対処するとともに、また、検察当局におきましては、保護命令違反の刑事事件につきましても適切な対処に努めるほか、また、関係部局におきましても、DV法の趣旨というものを踏まえた取り組みを行っておるところでございます。関係職員に対する研修につきましてもさらに充実を図るなど、今後とも最善を尽くしてまいりたいと考えております。

小林(千)委員 細かいテーマに移らせていただきたいと思います。

 まず、保護命令についてなんですけれども、先ほど申し上げましたとおりに、被害というものが周辺の方にも及んでいる、例えば、子供の学校というものを探り出して加害者が子供をいわば連れていってしまうというようなことも起こっておりますし、かくまっている親ですとか友人ですとかサポーターあるいはシェルターまで暴力を加えて、あるいは嫌がらせをしようとしている事実がありまして、この保護命令の接近禁止の範囲というものを私はもっと大きくするべきだと思うんですけれども、どこまで拡大する必要があると考えていらっしゃるでしょうか。法務省に伺いたいと思います。

房村政府参考人 現行のいわゆるDV法でございますが、これが目的としておりますことは、配偶者からの暴力によりまして被害者の生命または身体に重大な危害が加えられる、それを防ぐという観点からこの法律ができております。その担保として刑事罰も加える。

 そういう目的からいたしまして、現行法では、直接的な配偶者に対する暴力を抑止するという観点から、配偶者に対するいわば接近禁止あるいは退去命令、こういうような制度を用意しているわけでございますが、配偶者のお子さんあるいは親族の方々、もちろん、こういう方々への危害が認められるわけでは決してありませんが、そういう方々への危害が直ちにその配偶者から暴力を受けている被害者の生命または身体に重大な危害が加えられるおそれを導くということはなかなか認めにくいというようなことから、現行法では、お子さんとか親族、あるいは支援者の方々への接近禁止というような制度は設けていないわけでございます。

 ただ、そういう方々への、例えば子供を連れ去ってしまうというようなことが、ひいては被害者がお子さんを取り戻すために加害者である配偶者の近くに行かなければいけない、そういうような事態を招くような場合は、これは現行法の趣旨からしても、いわば救済の範囲を広げるということは十分考えられると思います。

小林(千)委員 続きまして、自立支援について、内閣府及び厚労省の方にお伺いしたいと思います。

 そういった被害者の方々は、命からがらすべてを捨てて逃げるわけですね、暴力から。例えば、仕事を持っていても仕事を捨てて逃げざるを得ない。あるいは、住むところも、そこの家も出て逃げてこなければいけない。着のみ着のままで逃げざるを得ない状況であるわけでございますので、そういった方々の、逃げた後の被害者の方の自立支援、特に経済的な支援というものが必要になってくると思います。

 そういった上で、例えば市営住宅ですとか公営住宅へ優先的にそういう方々、被害者の方々を入居させるですとか、あるいは就労支援といたしまして、そういった当事者としての経験を持っている、親身になってその事態に対処できるといった立場から、各自治体が行っているような支援センターですとかそういったところへ相談員として積極的に就労させるというような、例えば被害者の方々への就労支援や自立支援が私は必要ではないかなと思いますけれども、そういったことをどのように具体的に支援をしていくべきでしょうか、お伺いしたいと思います。

 そして、もう一つは、法務省の方にお伺いしたいんですけれども、こういった自立支援ということに重きを置いていくという方向性のために、今のこの法律の名前、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律という名前ですけれども、ここをさらに積極的に、被害者の保護と自立支援というような言葉を入れるべきではないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

北井政府参考人 DV被害者の自立支援策につきましてお答えを申し上げたいと思います。

 暴力によりまして心と体に深い傷を受けたDV被害者の方が、心身ともに健康を回復して、自立した生活をできるようにするということは大変重大な、重要な課題であると認識をいたしております。

 現在、厚生労働省におきましては、まず、配偶者暴力の相談支援センターを務めております婦人相談所におきまして、自立のためのさまざまな相談や援助に応じております。具体的には、まず住宅の確保という観点から、施設入所であるとかアパートの入居であるとか、あるいは他の公的な住宅への入居であるとかいったようなことについての住宅の問題への相談。それから、貸付資金であるとか生活保護であるとか、さまざまな援助制度の利用についての相談。それから、就業に関する支援といったような、さまざまな相談に応じているところでございます。

 また、被害者の方が、婦人保護施設であるとかいわゆる母子寮、母子生活支援施設といったところに入所をされました場合には、これらの施設におきまして、心理的なケアを初めとして、ハローワークなど相談機関への連携、連絡であるとか、あるいは外へいきなり働きに出るということはなかなか難しい方がいらっしゃいます。こうした方々につきましては施設内で軽い作業を提供するであるとかいったような、就業面や生活面でのさまざまな相談を行っているところでございます。

 また、ハローワーク、公共職業安定所におきましては、本人の事情、経験、能力を十分勘案いたしましたきめ細かな職業相談を行いまして、職業紹介をし、就職促進に努めているところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、議員御指摘のように、この自立支援の問題は大変重大な課題でございまして、今後とも、厚生労働省といたしましても、一層の取り組みに努めてまいりたいというふうに考えております。

名取政府参考人 先生御指摘のとおり、民間団体、民間シェルターは、DV被害者に対してさまざまな支援をしております。民間団体への財政支援は、それぞれの地域におきます公的な施設の稼働状況ですとか、当該民間団体への支援の必要性、的確性などを踏まえまして、それぞれの地方公共団体の判断により行われているものであります。それにつきましては、全国一律というわけにはならず、それぞれのその地方地方の状況に合わせて行われているものと認識しております。

小林(千)委員 今、民間シェルターに対する支援のお話をいただきまして、地域地域によって事情があるということは私もとても認識しております。今、被害者の自立支援につきましては、そういった業務委託をしている民間のシェルターというものが大変大きな役割を担っているのが現状です。

 実は、私、地元が札幌なんですけれども、札幌にもこの民間のシェルターというものがございまして、ちょっとそこの情報をいただいたのですけれども、ここの札幌で行っている民間シェルターへは、都道府県として、道として年間六十九万円支援をしている。札幌市として年間百五十万円なんです。ですから、これは定期的に入ってくるものは年間約二百二十万円といいますと、話を伺ってみますと、ほとんど家賃で消えてしまうというのが現状だそうです。そして、いわば出来高払いといたしまして、DVから逃れてきた被害者の方一人に対して一日当たり六千五百三十円、そして子供を一人連れてくれば、子供一人当たり千五百六十円、これが一日ずつの支払い額だそうで、大人六千五百三十円といったら、現行としてはビジネスホテルにも泊まれないような金額でしかないんですよね。

 そういった出来高払いのところもまだまだ十分ではない状態、そういった地方自治体も大変多く存在をしております。そんな中で、民間シェルターで働いている方々は、ほとんど半分ボランティアに近い状態で働いていらっしゃる方が多く現状としてございます。

 今、こういった札幌の例を挙げましたけれども、こういった地方自治体の支援の差というものは全国で大変大きく温度差がありまして、DVの被害を受けた方は、なるべくその加害者や加害者の親族のいるところから遠いところへ遠いところへ逃げよう、あるいは自分の実家があるところに逃げようというふうにいたしますので、全国を飛び回ることになります。そういった中で、そういった全国にわたっての連携ですとか、あるいは全国での共通した例えば最低限のガイドラインみたいなものは、私は設ける必要があるのではないかなと思います。

 今、各地方自治体で基本計画をつくる予定になっておりますけれども、ぜひ、内閣府の方、お伺いしたいんですけれども、そういった全国最低限のガイドラインみたいなものを国が設定するおつもりはないんでしょうか。

名取政府参考人 いろいろと実情をお話しいただきまして、本当にありがとうございます。

 民間団体の財政支援は、それぞれの地域におきます公的な施設の稼働状況ですとか、それからそれぞれの民間団体の支援の必要性、的確性など、それぞれの地域によってさまざまでございますので、やはりその地方公共団体の御判断により行われるべきものであるものでございまして、全国一律に義務化すべきものではないと考えております。

小林(千)委員 地方に対して、押しつける、義務化するべきではないというのもわかるんですけれども、最低限としての国が支える範囲というものをぜひお示しをいただきたい。これは意見として述べさせていただきますけれども、そういう方向性をぜひ国としてもつくっていただきたいと思います。

 最後に質問をしたいんですけれども、ぜひ法務大臣にお答えいただきたいと思います。

 このDVというものは確信犯として行っているんですね。暴力で人を支配できる、こういったことを選択して暴力というものを使っているのです。この暴力によらない問題解決というものは大変重要な課題になってくると私も信じております。この法律をさらに実効性を高めるものにしていく努力は当然必要になってくると思いますし、このたび参議院の共生社会調査会の方で、このDV防止法の見直しに関するプロジェクトチームというものがつくられておりまして、今改正案の骨子がまとめられたところでもございます。今後の取り組みにつきまして、ぜひ大臣の所見をお伺いしたいと思います。

実川副大臣 今先生御指摘の、いわゆるDV法の見直しにつきましては、さまざまな御指摘また御議論があることは十分承知いたしております。法務省におきましても、関係部局におきまして必要な検討を行っているところでございます。

 このたびのDV法改正法案の骨子につきましては、参議院共生社会調査会に設置された、いわゆる配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関します法律の見直しに関するプロジェクトチームにおいて取りまとめたものでありますので、法務省といたしては所見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、今後の参議院共生社会調査会及びプロジェクトチームの動向を見守りつつ、法務省といたしましても必要な対応をしてまいりたいと思っております。

 今後とも、DV法の趣旨を踏まえまして、関係省庁と協力を図りつつ、取り組みの一層の充実に努めたいと思っております。

小林(千)委員 最後にもう一つお伺いしたいんですけれども、今被害者のことについてお伺いしたんですけれども、今度は加害者の方に対しての取り組みをお伺いしたいと思います。

 この犯罪は、被害者の方は、自分が暴力を受けて、自分は何も悪いことをしていないのに自分が逃げ続けなければいけない、加害者は平然として一方では暮らしている、こういった不条理を抱えているのが実情のところです。この法律名の中にも配偶者からの暴力の防止という言葉が入っているとおりに、暴力をこれからどう未然に防ぐための努力をしなければいけないかというものが大変重要な課題だと思います。

 今、こういった加害者というものは繰り返し暴力を犯すということも言われておりますし、加害者に対する再発防止のための更生措置と申しますか、そういった更生のためのプログラムというものをぜひこの法律の中に盛り込むべきではないかと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。

実川副大臣 配偶者からの暴力の防止のためには、被害者の保護とともに、加害者が二度と同類の行為を繰り返さないように、更生のための各種の働きかけが重要である、このように考えております。

 また、法務省といたしましては、今後ともDV法の趣旨を踏まえまして、関係省庁と連携を図りつつ、必要な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

小林(千)委員 ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思いますし、親の、暴力を受けるのを間近に見ながら育ってきた子供たち、育つ子供たちの心のケアというのも大変重要な課題だと思いますし、また、その当事者の子供たちだけではなくて、全体的に、学校教育の中ですとか、あるいは社会教育と申しますか生涯教育の中で、そういった人権教育への取り組みというものはこれからもっともっと行われていくべきではないかと思います。

 ぜひ、そういった教育の中での取り組みの必要性について、文科省の方から話をお伺いしたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 配偶者からの暴力を防止いたしますためには、学校や家庭、地域など、社会のあらゆる分野において男女平等の理念に基づく教育を推進いたしますとともに、人権尊重の意識を高める教育を行うことが重要であると考えております。

 このため、学校教育におきましては、児童生徒の発達段階に応じ、社会科や家庭科、道徳、特別活動等における学習指導を通して、人権の尊重や男女の平等、男女相互の理解と協力の重要性について指導しているところでございまして、学校の教育活動全体を通じて、規範意識や倫理観、命の大切さや思いやりの心などを身につけさせるとともに、暴力行為など社会で許されない行為は子供であっても許されないという考え方に立った指導に努めているところでございます。

 また、家庭教育や社会教育におきましても、女性と男性がともに自立し、対等なパートナーとして豊かな人間関係を築くことができますよう、配偶者からの暴力の防止等を含めて、学習機会を提供し、意識啓発に努めているところでございます。

 例えば、他人を差別し傷つけることが人間として恥ずかしい行いであることを親が子供にきちんと教えることや、夫婦がお互いに尊重し合うこと、さまざまな悩みなどを抱え込まず地域の相談機関等を積極的に活用することについて、私どもが子育てのヒント集として作成、配布いたしております家庭教育手帳や家庭教育ノートに盛り込んでおりますほか、人々が日常生活の中で人権問題に対する理解と認識を深めることができますよう、公民館を初めとする社会教育施設等を拠点とした学級や講座の開設など、人権に関する学習機会の充実に努めているところでございます。

 今後とも、配偶者からの暴力を防止するため、人権尊重の意識を高め、男女が相互に理解し、尊重し合うことができるような教育の充実に努めてまいりたいと存じます。

小林(千)委員 終わります。

柳本委員長 辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 きょう、朝から質疑を聞いておりまして、今回提案される予定である裁判員制度について、国民の参加という立場から、いろいろな考慮しなければいけない点についての御質問等々、多々ありました。その話を伺っていて、しかし根本的に欠落している視点があるのではないかというふうに私は強く思ったわけであります。

 それは、憲法三十二条で保障されている被告人の裁判を受ける権利ということが、この裁判員制度の中で極めて重要な観点である、極めて重要な問題である。一方で、国民の司法参加という尊重しなければいけない利益と、他方で、裁かれる被告人の裁判を受ける権利が実効的に保障されなければいけない人権保障の要請、この二つの要請を、果たして同等の優位性で扱っていいものなのかどうなのか。憲法三十二条以下四十条まで、憲法の中に刑事手続における基本的人権がきっちりとうたわれている、このことを考えるならば、被告人の裁判を受ける権利というものがより優先して語られなければいけない、そのことが保障されなければいけない。裁判員制度を論ずるに当たってはそのことが非常に重要なのではないか、私はこのように考えるものであります。

 今後の裁判員制度の議論の中で、今回提案されようとしている裁判員制度というのは、戦後の刑事裁判のあり方を根本から変える意味を持つ可能性のある制度である。そしてまた、準備手続の中ですべて立証計画を明らかにさせるということは、密室の中で論点の整理が行われる。そして、公判手続が開かれた後、数日で、裁判員が参加するのはわずかその数日で、評決が行われてしまう。果たして、被告人の側、弁護人の側に十分な防御する機会が与えられるのであろうか。戦前の予審裁判の制度を廃して、起訴状一本主義と予断排除の原則という、戦後の刑事訴訟法の二百五十六条にあらわれている原則を今変えることにならないんだろうか、この点を非常に問題意識として強く持っております。この点について、審議の中で十分に議論をさせていただきたいというふうに考えます。

 本日は、私は、被告人の人権保障の観点から、さらにその被告人になる以前の被疑者の人権保障という点に絞って、大臣を初めとした方々にお伺いさせていただきたいと思います。

 まず最初に、大臣の認識を伺いたいと思いますが、被疑者の人権において最も重要なのは、取り調べ時における人権ということでありますけれども、被疑者の人権が適正に保障されなければならない、取り調べの適正化が必要なんだ、この点については、大臣はこのようにお考えでありましょうか。

野沢国務大臣 現行憲法が基本的人権を主要な柱としておりますことについては、十分我々わきまえて立法作業に当たっているものでございますが、委員御指摘の、我が国の刑事司法が、適正手続の保障のもとでの事案の真相解明を使命とする以上は、被疑者の取り調べが適正を欠くことがあってはならないと考えております。

 それをまた、その適正化を担保するための方策は当然必要であると考えておりますが、取り調べに当たっての録音、録画制度の導入等につきまして、今、司法制度改革審議会意見においても、刑事手続全体における被疑者の取り調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であること等の理由から、将来的な検討課題ということになっておりまして、今後とも、ひとつ慎重な検討を続けてまいりたいと思っております。

辻委員 捜査の可視化、取り調べの可視化という問題については後ほど伺いたいと思いますけれども、取り調べの適正化が必要であるという認識をお持ちであるというふうに伺いました。

 一九八〇年代に、やはり捜査のやり過ぎであるということで、その結果として、冤罪事件、一九八〇年代には四つの死刑再審で死刑台から生還するということがありました。これは、自白を強要され、そして誤判に至ってしまった、取り調べに大きな問題点があった、このことが、戦後の混乱期ではなく、一九八〇年代に至ってもまだ問題になっているんだということが言えると思います。

 現時点において、やはりそのような取り調べをめぐる問題がある、誤判の可能性がある、そのような刑事司法の現状である、刑事捜査の現状としてそういう面があるんだ、こういう認識を大臣はお持ちなんでしょうか、そうではないんでしょうか。

柳本委員長 樋渡刑事局長。

辻委員 これは、やはり法務行政のトップの方の意見をまず聞かせていただいた上で、局長なりの意見を伺いたいと思いますが。

樋渡政府参考人 先ほど大臣が御答弁なさいましたように、我が国の刑事司法におきまして、捜査段階を問わず、公判すべての段階におきまして、被疑者、被告人の人権を全うしつつ捜査、公判、刑事訴訟を進めていかなきゃならないということは当然のことでございまして、それは、刑事訴訟法第一条のところにも書かれておるところでございます。

 そこで、検察、捜査機関といたしましても、その遵守をしながら、適正に捜査を進めているところでございます。

野沢国務大臣 現在進めております司法制度改革並びにこれにかかわる関連の改正は、すべて基本的人権の尊重ということが一番大事な柱になっていると存じておるものでございます。

辻委員 そういう認識は正しいものであるし、それは当然のことだというふうに思います。

 私が質問させていただいたのは、現在もなおそのような危険が現実のものとして起こっているという認識をお持ちなのか否なのか。その認識を持っているか持っていないか、それを強く持っているか持っていないかによって、具体的に何を政策として、施策としてやるべきなのかが、やはり大きく変わってくると思うんですね。

 そういう意味で、現にそういう誤判の危険性なり取り調べの違法性という現状が少なからずある、ないしは少しはある、そういう認識を現にお持ちなのか否なのか、この点についてはいかがでしょう。

野沢国務大臣 取り調べの適正化、これはもう当然必要なことと考えておりまして、それに必要な手だてはこれからも十分考えて進めていかなければならないと考えております。

辻委員 一九八〇年以降も密室での取り調べ時における暴行で無罪判決が出ている、そういう判例が陸続としてあります。

 例えば、大阪高裁、一九八六年一月三十日、貝塚ビニールハウス殺人事件。これは、取り調べ時の暴行が問題になって無罪判決が出ております。また、大阪府職員収賄事件、これにつきましても、大阪高裁で、一九八五年九月二十四日に、脅迫を理由として自白が迫られたということで、無罪判決が出ております。さらにまた、大阪高裁の一九八八年三月十一日付恐喝事件。これは、留置場から刑事部屋に入るときに、軍隊調に入りますと言えと命じ、声が小さいと何十回もやり直しをさせたり、耳元で名前を言い、質問に答えないと大声で両側から名前を連呼する。このような違法な取り調べがなされていて、これも自白の証拠能力を否定するということで無罪判決が出ているわけであります。

 ですから、そのような違法な取り調べが現にこの近代の日本の裁判において行われているんだということの認識をきっちり持っていただきたい、このように思うわけであります。

 そこで、より取り調べを適正化に導く方法として、当然、捜査、取り調べの可視化もそうでしょうし、取り調べ時の弁護人の立ち会い権を保障する、このことも要請としては当然出てくると思いますが、現在、法務省においては、そのような観点でどのような努力をされているんでしょうか。具体的にお答えください。

樋渡政府参考人 お尋ねの被疑者の取り調べの適正を図るための方策といたしましては、まず、関係省庁におきまして、身柄拘束中の被疑者、被告人の取り調べの過程、状況に関する事項につき、書面による記録の作成、保存を義務づける取り調べ過程・状況の記録制度を導入することとしておりまして、本年四月一日から同制度の運用が開始される予定でございます。

 また、最高検察庁におきましては、平成十五年七月十五日、次長検事を統括責任者といたします刑事裁判充実・迅速化プロジェクトチームにおきまして、刑事裁判の充実、迅速化に向けた方策に関する提言を取りまとめておりまして、その中で、捜査段階における自白の任意性を主として客観面から担保するため、検察官として留意すべき点として、今後導入される取調べ過程・状況の書面記録制度を適正に運用すること、任意性担保に関する資料を整えること、弁護人との接見に関して今後なお十分な配慮をすること、被告人調書の開示にできる限り柔軟に対応していくことを挙げているものと承知しております。

 取り調べの適正化につきましては、常日ごろから留意しつつ、捜査に当たっているところでございます。

    〔委員長退席、塩崎委員長代理着席〕

辻委員 今御紹介にあった最高検の提言、昨年の七月十五日付、そしてまた、取り調べ過程・状況の記録制度というのが、法務省で昨年の七月二十九日に、そういうものを創設するということになっている、そういう事実があります。

 しかし、取り調べ過程の一覧表をつくるというのは、捜査機関の側がつくるわけですね。一方当事者である捜査機関がつくる。それは、今までよりは半歩か一歩か前進かもしれない。しかし、取り調べの経過がどうであったのかということが問題になったときに、一方当事者の捜査機関がつくった一方的な、いわば捜査書類に類するものをつくるということで、これで事足れりなのか、なお不十分であり、なお制度をいろいろ模索していると考えておられるのかどうか、その点はいかがですか。

樋渡政府参考人 例えば、先ほど委員の御指摘になりました取り調べの可視化、録音、録画制度の導入につきましても、司法制度改革審議会の意見におきましては、刑事手続全体における被疑者の取り調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であることなどの理由から、将来的な検討課題とされているところでございます。

 その司法制度改革審議会意見書におきましても、先ほど私の方で説明いたしました記録制度でございますけれども、そういうようなものもつくるべきだというふうに言われたところでございまして、法務・検察当局といたしましては、そういう提言を真摯に受けとめ、まずはそういう記録の制度をつくりまして、今後ともなお一層適正な取り調べが担保されるように、さまざまな方策を考えていきたいと思っております。

 その一つとして、また、先ほど説明いたしましたように、最高検察庁におきましても、いろいろな角度から検討を加えているというところでございます。

辻委員 取り調べ経過一覧表の作成は、一方当事者の作成したものであるから、多少の前進ではあるかもしれないけれども、まだまだ不十分であるというふうに私は考えるということを先ほど表明させていただきました。これだけでは足りないのではないか、もっと具体的に考えるべきなのではないか、その点について御質問をしたわけでありますが、最高検の提言もあるんだということ以上、具体的なお答えが現時点ではいただけていない。これは今後きっちり議論をして、この問題については詰めさせていただきたいというふうに私は考えます。

 この点に関しまして、二〇〇三年の七月八日、参議院法務委員会で附帯決議が上がっております。どのような内容かと申し上げますと、「取調べ状況の客観的信用性担保のための可視化等を含めた制度・運用について検討を進めること。」国権の最高機関である国会が、このような附帯決議を上げているわけであります。具体的に、どのようにこの決議を受けて今準備をしているのか、可能な範囲で今お答えいただけませんでしょうか。

樋渡政府参考人 新たな裁判員制度の導入に伴いまして、これが導入されたらのことでございますけれども、裁判員の皆様にわかりやすい裁判をしなければならないということは、これまた当然の要請でございます。

 そのためにいろいろな方策を考え、最高検の方でも、先ほど申し上げましたような、そういう検討を加えているところでございますが、参議院の附帯決議にありましたように、その可視化問題も含めまして、今後、法曹三者の間でも検討しながら、我々として進めていきたいというふうに考えているところでございます。

辻委員 本当に取り調べの現状について改善すべきなんだという熱意があれば、もっと具体的に、もっと何をどうしようかと熱意を持って語るべきなんであります。そう思います。やはり法務当局のお立場に立っておられる方は、もっと真剣にこの問題について、違法な取り調べを日本から根絶するために何をするのか、このことを本当に真剣に考えていただきたい、このように思います。

 そこで、取り調べの可視化ということで、録画や録音という問題は非常に重要な問題である、それにとどまらず、被疑者の取り調べの時点において弁護人の立ち会い権を保障することがより重要である、私はこのように考えております。

 もちろん、今までの法務委員会の会議録をざっと振り返って検討をしまして、法務当局の現時点でのお考えの概要はわかっておるつもりでありますが、そのような、例えば取り調べの可視化に向けた録音、録画の導入の可否について、メリットとデメリット、これを具体的に検証していく必要があるだろうというふうに私は思うわけであります。

 メリットとしては、取り調べがやはり録画、録音されている、密室で勝手なことができないという意味では一歩前進であろう。また、調書の作成が任意になされているかどうかということについて、録画、録音がなされていれば、やはりこれも一歩前進であろう。そして、この次の点は議論があるところかもしれませんが、調書の任意性を争うということになれば、取り調べ官を証人尋問に呼んだりしなければいけない。その手間が省けるという意味で、裁判の迅速化に資する可能性がある。そして何よりも、誤判の防止に資する制度であるという意味でのメリットがあると私は考えます。

 他方で、デメリットとして、これは今まで法務当局の方々がおっしゃっている、供述を獲得することが困難になるんだ、そのことによって公判の審理のやり方も難しくなるし、凶悪な犯罪なり、そういう多くの犯罪の検挙率が下がってしまうことになるんだ、日本の治安をどうするんだ、このことについてどう考えるのだ、そういう点を取り上げてデメリットということをおっしゃっているように思います。

 この点について、本江威憙さんという元検事の方が、判例タイムズの千百十六号で「取調べの録音・録画記録制度について」という論文を書いておられますが、この点は認識されているんでしょうか。

樋渡政府参考人 そういうような論文を本江さんが書かれているということは知っております。

辻委員 法務当局の基本的な立場に立っていろいろ論じておられる。ですから、そこの論議をかみ合わせた形で、今後、私は具体的に詰めて、この問題について継続してさせていただきたいというふうに考えております。

 ただ、一点、本江さんはこのようにおっしゃっているんですね。つまり、取り調べの可視化、それ一つだけを取り上げるということではなくて、今の捜査なり公判なりすべての状況が、刑事司法のあり方が密接不可分に結びついているんだ、したがって、全体としてバランスを考えたときに、取り調べの可視化一つで刑事司法システムの機能が大きく変わるから、もっと慎重にしなければいけないんだというようなことを述べておられます。

 これは、ある意味においては、全体が変わらなければまず改善することはできないんだというふうにも読める。そうじゃなくて、一つを変えていくことから全体を変えていくというふうにすべきだと私なんかは思いますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

樋渡政府参考人 やはり各国には各国、いろいろな刑事制度がありまして、いずれもすべてが同じのものはないだろうというふうに思うのであります。

 我が国におきます取り調べの重要性というものは、委員もおわかりになっていただけると思うのでありますけれども、我が国では刑事事件、これを全容解明して、なぜそういう犯罪が起こったかというようなことを解明するように求められていることが他の国よりも度合いが多いのではないかというふうに思うわけでありまして、また、かつ、犯罪を犯した者といいますものが、その犯罪の罰を受けるだけではなしに、矯正をして、更生をして世の中に復帰してもらうことも考えなきゃならない。そうすると、そのまま真実を語ってもらわないままでいいのかというような問題もこれあるものでございまして、いろいろな刑事司法全般にわたっての問題に、この取り調べもその一つの中に入っているわけであります。

 各国を比べましても、我が国の捜査機関の与えられております手法というものも狭いのか、また、ある意味では大きいのか、いろいろなことがありますけれども、ほかの国にあることが我々には許されていない場合も多々あることは、先生も御存じだろうというように思うわけでありまして、そのようなことも全部ひっくるめまして、新しい捜査手法を取り入れることができるのかどうかというような観点も含めながら、取り調べというものの可視化というものもそれに含めて、全体的に考察をしていかなきゃならない問題だというふうに考えております。

    〔塩崎委員長代理退席、委員長着席〕

辻委員 時間がもう余りありませんので、問題点の指摘にとどめて、今後さらに議論を重ねていきたいと思いますが、今のような取り調べの可視化を行わないということになると、多々矛盾が生じているということが指摘されております。

 例えば、その一つとして、二〇〇三年五月二十五日に沖縄県の金武町で起こった強姦致傷事件、アメリカの海兵隊員の引き渡しについて、日本の捜査では弁護人の立ち会いが認められないんだということで、日米間で大きな問題になって、これについては日米司法手続協議の中で解決しようということになっていたと思います。この点について、やはり検討する必要があるだろう。

 さらに、具体的に、取り調べの状況について、可視化をしておかなければ非常に困難な問題としては、例えば通訳が必要な刑事裁判、例えば千葉地裁でべーカー事件という、イギリス人が大麻を輸入したということについて問題になっております。これについても、やはり取り調べ時がどうだったのかというのは、可視化が保障されていればもっときっちりとした審理ができるだろうと思います。このような点について、具体的に今後検討していくべきであろうと思います。

 そして最後に、私は弁護士出身でありまして、昨年からことしにかけて名古屋地検の特捜部が起訴した事件の弁護人をやっておりましたが、その取り調べ官が取り調べ状況について証人尋問で法廷に立つ、そういう経過がありました。なぜそうなったのか。芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の小説を題材にして、クモの糸をよじ登ってこい、そうすれば救われるんだということを検察官が被疑者に対して取り調べの段階で言っているんですね。つまり、お釈迦様の手のうちにおまえはいるんだ、だから、クモの糸に沿って登ってこなければ救われないよ、こういうことを取り調べのときに検事が言っている。これはまた確認していただければいいと思いますけれども、そういうことで、検察官、取り調べ検事が証人尋問されるというような事態が現に起こっているわけであります。

 過去の問題ではない。捜査の実態、そういう意味では、捜査機関の意識なり行動様式に目に余るものが現にあるという意味でもっと切実感を持っていただきたいと思います。現に、日本と捜査の構造が似ていると言われる台湾において、弁護人の立ち会い権や捜査の可視化が認められるということも言われておるということについて指摘しておきたいと思います。

 最後に、国際人権規約委員会というところが、日本政府の報告書に対する審査に基づく最終見解ということで、日本の捜査のありようについて指摘をしていることを紹介して、私の質問を終えたいと思います。

 三十五項目あるこの最終見解のうちの二十五項目めであります。委員会は、刑事裁判における多数の有罪判決が自白に基づいてなされているという事実に深い懸念を有する。圧迫により自白が引き出される可能性を排除するため、委員会は、警察の留置場すなわち代用監獄における被疑者の取り調べが厳格に監視され、また、電気的な方法により記録されることを強く勧告する。

 国際的に日本の捜査のありようについて批判が高まっているんだということを指摘して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

柳本委員長 松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫でございます。

 私の方からは、行刑問題について御質問をさせていただきたいと存じます。

 ここにございますが、平成十五年十二月二十二日付で行刑改革会議提言というものが出されております。中を拝見いたしますと、さまざまな提言、行刑全般にわたっての提言がなされております。私も、基本的には賛成できる部分が多いわけで、ぜひこの方向で進めていただきたい、このように考えているところでございますが、大臣は、この提言をどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

野沢国務大臣 現行の監獄法は、明治四十一年制定後、実質的改正を見ることなく今日に至っているものでございます。この問題点としては、国と被収容者との権利義務関係が不明確であったり、不服申し立て制度が十分に整備されていないなど、内容的に甚だ不十分なものとなっています。

 そのため、法務省は、かねてから監獄法の全面改正に向けて努力し、昭和五十七年以来三度にわたり刑事施設法案を国会に提出してきたところですが、成立を見ないまま現在に至っております。法務省といたしましては、委員ただいま御指摘の行刑改革会議の提言を受けまして、監獄法の速やかな改正がここで求められていることから、この提言を十分に踏まえ、関係機関と協議しつつ、鋭意改正作業を進めてまいりたいと思います。

 私も、就任以来、この監獄法で定められております例えば情願の制度等につきまして一生懸命取り組んでまいりましたが、何せ、現状の状況はとても大臣の個人の処理能力では及ばないということから、この辺についても喫緊の改革をしなければならない。そして、今委員御指摘の法律改正を経なければならないことと同時に、すぐできることは実行してまいりたい、かように考えております。

松野(信)委員 今、大臣からお話ありましたように、この監獄法というのは明治四十一年制定という大変古い法律であります。私も少し勉強させていただきましたが、例えば第十条あたりを見ますと、こう書いてあるんですね。「本法ハ陸海軍ニ属スル監獄ニ之ヲ適用セス」こういうような条項がいまだに残っている。これは喫緊、改正をしなければならない問題だというふうに考えております。ぜひ早急に改正に向けて取り組んでいただきたい、このように考えておるところでございます。

 具体的な中身について少し御質問をしたいと思いますが、受刑者に対する信書の制限あるいは外部の人との面会の制限というのは、現在の運用の中でも少し行き過ぎではないかというふうに思われる事案がございます。私の地元の熊本刑務所、ここでも、平成九年に、信書制限が行き過ぎじゃないかということで裁判にまで発展いたしました。

 現在の監獄法では、原則として親族以外の者との外部は制限、だめだ、特に必要と認められる場合に限って認めましょう、こういうふうになって、まさにこれは原則と例外をひっくり返すぐらいの改正をしなきゃならないんじゃないか、こういうふうに考えておりますが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘のように、受刑者の信書の発受の相手方につきましては、監獄法の四十六条第二項の規定がございまして、それによって、原則として親族に限るものとされておりますけれども、刑務所長が特に必要があると認めた場合には、親族以外の者との発受も許すことができるとされております。

 この信書の問題につきましては、先ほど大臣の話にありましたように、行刑改革会議の提言でもまた種々提言されておるところでございますので、引き続き検討してまいるということでございます。

松野(信)委員 ぜひ、法改正でこの点はしっかり決めていただきたいと思いますけれども、当面の運用としても、特に必要と認められる場合というものを、これは柔軟にやはり解釈をしていかなければ、信書制限が違法だというような裁判例もあるわけでございますので、そうした方向で考えていただきたい。

 私としては、特に秩序違反のおそれがあるとか逃亡のおそれがあるとか、そういうような具体的な危険性がないのであれば、基本的には容認するという方向で運用していただきたい。特に、弁護士との面会とか信書の発信、これは基本的には制限されるべきではない。現に、近時の裁判例などでも弁護士との接見や信書の制限は違法だ、こういうような裁判所の指摘もあるわけでございます。ぜひ、この線に沿って運用面で改善をしていただきたいと思います。いかがでしょうか。

横田政府参考人 お尋ねの、弁護士との信書の発受の問題でございますけれども、これにつきましては、その内容が訴訟の依頼であるとかそれから法律相談等に関するものであれば、各施設では、特に必要がある場合として許可する運用を現在もしているというふうに承知しております。

 この点に関しましては、先ほども申し上げましたように、先般なされました行刑改革会議の提言におきましてこのように言っています。受刑者が人権救済等を求めるため、弁護士会や弁護士等に信書の発信を求めた場合には、施設では、それらのことを確認するにとどめ、確認ができた場合には発信を認めることが相当である、このようにされております。

 したがいまして、今後、受刑者と弁護士との間の信書の発受につきましては、この提言の趣旨を踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。

松野(信)委員 親族の方は原則として認められるということになっているんですが、親族に関しても、例えば面会については月一回に限る、こういうような運用がどうもなされているようであります。また、友人、知人のたぐいはだめだ、こういうようなのがどうも運用でなされているようですけれども、基本的には、将来、社会に復帰をして更生をしていかなきゃならない、受刑者というものはそもそもそういうような地位にあるわけですから、できるだけやはり外部との適当な接触というものはぜひ運用の場面で進めていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

横田政府参考人 信書の発受につきましても、もちろんいろいろな意見があるわけでございまして、ただいまの委員の御意見の御趣旨も踏まえまして、さらに議論を重ねてまいりたいと思っております。

松野(信)委員 次に、不服申し立ての点についてお聞きしたいと思います。

 現在の監獄法では、先ほど大臣からもお話ありましたように、情願、情けを願う、そういう制度しかない。いわゆる請願の一種でございますが、こういう制度しかないわけで、これが十分に機能しているとは到底考えられないわけであります。近時はこの情願が非常にふえているというような報告もございますし、また、昨年の二月からは法務大臣がみずから情願を一つ一つ見ているというようなお話でございます。

 私は、本当に法務大臣が一つ一つ見ているのかというふうにお聞きしましたら、本当に見ているというので、ある意味では多少びっくりもしたんですけれども、何千にもわたるこういう情願を多忙な大臣が一つ一つ見ていくというのも、実際の問題としてはいかがなものかという気がいたします。

 むしろ、やはりしっかりとした第三者の組織を設置した上で、そこで情願あるいはこういう不服申し立て、苦情申し立て、そういうものをしっかりチェックする、そういう第三者の機関を設置する、これをぜひとも検討されたらどうかというふうに思います。

 監獄法の改正に向けて、大臣からも最初に御発言いただいておりますが、監獄法の改正が時間がかかるというようなことであれば、運用の面で、第三者の機関を設けてここでしっかりチェックをしていく、ぜひともこういうような改善をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

実川副大臣 情願につきましては、先ほど大臣からもお話がございました。

 委員御指摘の、昨年の末に示されました行刑改革会議の提言の中におきましても、被収容者からの不服申し立てにつきましては、「適正かつ迅速な処理を期するために制度を合理化する」ことが必要であるというふうに言われております。また、「公平かつ公正な救済を図るためには、矯正行政を所掌する法務省から不当な影響を受けることなく、独自に調査を実施した上で判断し、矯正行政をあずかる法務大臣に勧告を行うことのできる機関を設置することが必要不可欠である。」とされております。

 法務省といたしましても、この提言の趣旨を最大限尊重いたしまして、より実効的な不服申し立て制度の整備を図ってまいりたい、このように考えております。

松野(信)委員 残された時間について、外国人の受刑者の問題について御質問をしたいと思います。

 午前中からの質疑の中にもありましたように、近時、外国人の犯罪が非常にふえている。恐らく外国人の受刑者もふえているし、今後とも外国人の受刑者がふえるということは十分予想できるのではないだろうか。そうしますと、外国人の受刑者に対する処遇をやはりしっかりしておく、人権というような観点に立ってしっかりした処遇をするというのは今後とも必要なことだ、このように考えております。

 最近五年間程度で結構だと思いますが、外国人の受刑者、いわゆるF級というふうに呼ばれるかと思いますが、この受刑者の増加の状況について教えていただければと思います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 今委員からF級受刑者ということがございました。一般に外国人受刑者というふうに申し上げていますけれども、失礼ですが厳密な意味でここでちょっと御説明だけ先にさせていただきますと、F級受刑者といいますのは、同じ外国人の中でも、日本語の理解力もしくは表現が不十分なこと、または日本人と風俗、習慣を著しく異にすることにより、処遇上特別な配慮を要する者だということで、先生御案内のとおりだと思います。

 この数でございますが、五年間とおっしゃいましたが、まず、大ざっぱに、十年前の平成五年末の数を申し上げますと四百十四人でございました。それが年々、以後増加いたしまして、五年前の平成十年末は数を申し上げますと一千二百六十九人、それから翌年の十一年末が一千六百七十七、十二年末が一千九百六十八、十三年末が二千三百十五、十四年末が二千六百三十八、そして昨年末つまり十五年末が三千十人に上っております。

 したがいまして、この十年間で見ますと約七・三倍の増加でございまして、また五年間で見ましても約二・四倍の増加となっております。

 以上です。

松野(信)委員 外国人の受刑者の問題については、残念ながら、この行刑改革会議の提言の中にも余り触れられていない問題でありますが、今お話を聞きましたように、もう既に三千名を超える受刑者になっている、七倍にもなっているという御指摘でありますので、今後とも、外国人の受刑者、人権侵害をしないような形でしていかなければならないことは大変重要なことであろうというふうに思っております。

 しかし、残念ながら、近時、外国人の受刑者から、人権侵害がなされている、こういうようなことで弁護士会、日弁連や各地の弁護士会、いろいろな救済センターの方に苦情も寄せられて、結果として裁判にまでなっている、こういう例が続いているわけであります。国が敗訴しているというような裁判例もございます。

 こういうようなところから見ますと、一つは、外国人に対してやはり言葉の壁、通訳というものがしっかり設けられているかどうか。七倍にもなって、通訳がそれに対応するだけの数を備えておれるかどうか。また、外国人の受刑者もやはり、家族から連絡もされない、非常に孤立化した状態で、精神状態も非常に不安定ではないだろうかということにもなるし、また、日本の法制度を必ずしも十分に理解しているとは思えないような、そういうことも推察されるわけで、外国人の受刑者に対するやはり特別な配慮、待遇ということを今後ともこの改革の中でしていかなければならない、このように考えておりますが、大臣のお考えをお聞かせください。

実川副大臣 御指摘のとおり、外国人被収容者処遇におきましては、職員との意思疎通が非常に重要であるというふうに考えております。

 現在、日本語を話せない外国人受刑者については、特定の施設に収容し、高い語学力を有する職員が通訳また翻訳業務に当たっておりますが、これに加えまして、民間の業者と契約して通訳人を確保したり、あるいは個別に外部協力者に依頼するなどして、同業務が円滑に遂行できるように努めておるところでございます。また、各施設の必要性に応じまして計画的に語学研修を実施しておりますし、また職員の語学力向上を図っているところでもございます。

 今後とも、増加する外国人被収容者に対しまして適切な処遇を実施するために、通訳、翻訳体制の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。

松野(信)委員 頑張って対処されるということでお話をお伺いいたしましたけれども、しかし、残念ながら、現実は必ずしもそういうふうになっていない。行刑のまさに現場のところでは人権侵害的な問題がやはり発生をしているということは、もう厳然たる事実でございます。

 二つの裁判例を御紹介したいと思います。

 一つは、一昨年、二〇〇二年六月二十八日に東京地裁が判決を下しました。これはアメリカ人の方で、ケビン事件と呼ばれるものでございます。これは、二十時間にわたって革手錠を継続使用したということで、これが違法だということで六十万円の賠償が命じられまして、これは一審で確定をしている、国が敗訴したことで確定をしているわけです。

 それから、昨年の六月二十六日、これはイラン人のバフマン事件という事件ですが、これもやはり東京地裁の方で、拒否をしているバフマンさんに無理やり注射していることについて、これが違法だということでやはり六十万の賠償命令が下った。

 この事件で注目すべきは、イラン人はみんなうそつきだというようなことで現場の職員が人種差別のような発言がなされている、そして、左耳の鼓膜が破られるほど暴力をふるっている、殴っている、また、暴れるおそれがないのに二十時間以上も革手錠をして保護房に収容したということを裁判所は認定をしているわけです。ただ、この事実については三年という時効が経過しているので、この部分については賠償責任は免れたということでございます。賠償責任は三年の時効ということで免れたかもしれませんが、今申し上げたようなひどい状況が現実に発生をしているということでございます。

 大臣初め皆さん方、一生懸命されてはいらっしゃるかもしれませんが、現場の職員の方は、残念ながらこういう事件が発生をしているし、私は、これは本当にひどい事件ですけれども氷山の一角ではないか、現実には声も上げられない人たちがたくさんいるのではないか、こういうふうに疑わざるを得ないと思っております。

 こういうふうに、刑務所の現場の職員の人たちの人権感覚、こういうものをどういうふうにしっかり変えさせていくのか。現場の職員の人たちの教育、それから意思の疎通を円滑にするため、やはり相当の研修などが必要ではないかな、このように考えております。

 また、先ほど来申し上げているように、やはり外部とのいろいろな交通をできるだけスムーズにする、それから苦情、こういうものを、情願というのでなくて、やはり第三者の機関がしっかり取り上げる、こういうような全体とした対策がぜひとも必要ではないか、こういうふうに考えております。

 この点について、大臣の所見をお願いしたいと思います。

野沢国務大臣 委員指摘のとおり、受刑者の人権を尊重した処遇、それとあわせて、刑務官自身も大変現在過剰収容等で苦労しておりまして、ストレスがあっておるということもまた、ただいまの行刑改革会議の報告の中でも指摘をされておりますので、これをあわせ解決するべく、今収容設備の増強を初め、新しい民間手法を導入した行刑のあり方等についても具体的に仕事を進めておりまして、何としても、外国からのいわゆる受刑者の増加、これも予想される中で、新しい姿の行刑改革、これを進めたい、かように考えておりますので、どうぞよろしく。

松野(信)委員 もう時間がありませんので、まとめさせていただきたいと思いますが、やはり、憲法にもうたってありますように、基本的な人権をしっかり守っていくんだ、そうすること、それは日本人だけではない、外国人に対しても、受刑者に対してもやはりそういう人権をしっかり守っていくということが、まさに国際社会の中においても名誉ある地位を占める、小泉首相もそう言っておられますが、そういうことにつながっていくのではないか、このように考えているところでございます。

 時間の都合上、また、この行刑改革会議の中では触れられておりませんが、例えば監獄法の第一条第三項の中にあります代用監獄、これまた大変大きな問題で、これはこれでまた別途議論をさせていただきたいと思いますが、そういうような問題もあることを指摘させていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

柳本委員長 泉房穂君。

泉(房)委員 民主党の泉房穂です。

 私は、成年後見制度について取り上げていきたいと思います。

 高齢者、障害者が地域で暮らしていくためには、この成年後見制度の充実化が不可欠である、その認識のもとに私はこれまで弁護士としてやってきましたが、国会議員として、引き続き、成年後見制度が質量ともに充実化するまでこの問題を取り上げ続けていきたい、その思いでこの質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、どんな制度であれ、その制度が一体どれくらいの利用者を予定しているのか、にもかかわらず今どれくらいの利用者なのか、そこからスタートするべきであります。そこで、まず、この成年後見制度が予定している利用者、潜在的な利用者の数はどれくらいなのか、まずその点から質問いたします。お答えください。

小島政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の数でございますが、厚生労働省の統計によりますと、まず、知的障害者の方の数につきましては、平成十二年の推計で約四十六万人。それから、精神障害者の方の数につきましては、平成十四年の患者調査の推計で約二百五十九万人。それから、痴呆性高齢者の方の数につきましては、これも平成十四年の推計で約百四十九万人となっているところでございます。

 しかしながら、こうした方々の中には、判断能力を有する方や、家族の援助が受けられる方もいらっしゃると思いますので、権利擁護なり、あるいは成年後見が必要だという方はもっと少なくなるというふうに考えております。

泉(房)委員 もっと少なくなるというのは、どれぐらいをお考えでしょうか。お答えください。

小島政府参考人 今のところ、私どもとしては、権利擁護が実際に必要な方が何人かということについては把握をいたしておりません。

泉(房)委員 把握もせぬと、そんな仕事ができるんですか。お答えください。

柳本委員長 泉君、委員長に発言を求めて御質問ください。

 泉房穂君。

泉(房)委員 ごめんなさい。失礼しました。

 厚生労働省が所管しておるわけですから、一体この制度が何人の人を予定しているか、介護保険であれば介護保険のサービスを利用する人たちの数、支援費制度だって、やはりそれを予定している数があってこそ、その制度の設計、予算組みができるわけであります。その実態把握に努めるお気持ちがおありでしょうか。お答えください。

小島政府参考人 私ども厚生労働省といたしましては、平成十一年十月から、地域福祉権利擁護事業というのを発足させまして、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理、あるいはまた成年後見制度の利用支援というふうな制度を立ち上げてまいりました。十二年度から本格的に発足をいたしまして、昨年の十二月に一万人の方が今利用をされております。

 まだまだこれは非常に問題の点が多くありまして、私ども充実に努めているところでございまして、しかるべき時期には、先生のおっしゃるような全体の数の予想なりもしなきゃいかぬと思いますが、今のところは制度の充実に努めているということでございます。

泉(房)委員 実態把握に努めて、お答えください。

 では、実際、現在どれぐらいの方が利用しているかの問題でありますが、その前に、諸外国の利用者の率を調べますと、諸外国、ドイツなどですが、ドイツでは八千百万人の人口に対して実際の利用者は百万人を超えております。ほかの国を見ましても、約一%の人が同様の成年後見制度を利用しております。

 日本の場合は、高齢社会で比率が高いわけですから、一%を掛けても百二十万、恐らく百二十万人以上の方がこの制度を利用してしかるべきだと私は考えます。

 では、実際に何人の方が今利用しているか、お答えください。

山崎最高裁判所長官代理者 成年後見制度が実施された以後の、平成十二年四月から平成十五年十二月までの家庭裁判所に申し立てられた後見等開始事件の合計は、四万八千五十二件となっております。

泉(房)委員 四万八千というのは、これまでの裁判所の審判を足した数だと思いますので、死んだ方もいますので、実際上、現在利用している方はもっと少ないということだと思います。

 それはさておき、今ここでわかったことは、潜在的な利用者は合計しますと四百五十万人ほどいるであろう、実際、諸外国と比べると百二十万人以上の利用が見込まれてしかるべきであろう。しかるに、単純に足しただけでも、亡くなった方を入れずに足したとしても、いまだ四万人程度なわけであります。百万人台とわずか四万人、全く利用が進んでおりません。

 ところが、この法律ができた二〇〇〇年四月、介護保険の導入と一緒にできた、車の両輪と言われてできた制度ですが、このときに附帯決議があります。

 附帯決議の一、読みますが、「政府は、新しい成年後見制度の実施に当たっては、自己決定の尊重、ノーマライゼーション等の改正の理念が制度の運用に十分反映されるよう、新制度の趣旨・内容について、福祉関係者、司法関係者等の関係者に十分周知徹底されるよう努めること。」周知徹底するように附帯決議は求めております。

 また、この運用の面で非常に大きな問題とされております登記所の問題でありますが、この点につきましても、今は東京法務局一カ所であります。附帯決議はこのように言っております。「政府は、後見登記等の利用者の利便の向上に資するため、登記の申請数等を勘案しつつ、利用者にとって利用しやすい登記所の体制の整備に努めること。」このように、周知徹底を図ることを、登記所も拡充を図ることを附帯決議は求めております。

 しかるに、今申し上げたように、利用がほとんど進んでいない、登記所もいまだに東京法務局一カ所で使いづらい。この問題につきまして、どういう改善を図るおつもりであるのか。大臣、お答えください。

実川副大臣 今、委員御指摘になられましたように、平成十二年四月からこの制度が出発しております。法務省といたしましても、制度導入の前後を通じまして、制度の周知、また定着を図るために、法務局、また司法書士会等へのパンフレット、またホームページ等にQアンドAを掲載するなどいたしてまいっております。今後とも、関係機関と連携しつつ、引き続きパンフレットを配布するなどいたしまして、成年後見制度一般についての知識の普及に努めていきたいと思っております。

 また、御指摘のありました登記につきましてでありますけれども、これは現在、東京の法務局に、一カ所のみ取り扱っております。これを、利用者の方々の利便性を考慮すべく、なるべく早い時期に全国の法務局、また地方法務局におきましても登記事項に関する証明書の交付ができるようにするために、今準備を進めているところでございます。

泉(房)委員 法務局の数ですが、現在六百九十九あると思います。しかるに今一カ所。今のお話だと、拡充を図るという方向のようですが、いつまでに何カ所、その方向をお示しください。

房村政府参考人 ただいま副大臣からも御答弁申し上げましたように、登記そのものは東京法務局一カ所で扱っておりますが、登記についての証明書の交付、これは非常に件数も多うございますので、平成十六年度中に、全国にございます五十カ所の地方法務局においてこの証明書の交付事務が取り扱えるようにということで、現在準備を進めております。

泉(房)委員 今のお答えだと、十六年度中に五十カ所ということでありますが、全部で六百九十九カ所あります。あとはどうなさるおつもりでしょうか、お答えください。

房村政府参考人 当面、ただいま申し上げましたように、五十カ所についてということでございますが、その後のことにつきましては、この登記制度の利用状況、特に証明書の交付状況、こういったものを勘案しながら検討を進めてまいりたい、こう思っております。

泉(房)委員 普通の人が利用しようと思って東京法務局に取り寄せるのは大変です。五十カ所に広がっても、地方にお住みの方はやはり郵便手続などして大変なわけです。それを地元の、近くの法務局で手続ができる、そうすることによって利用も促進されるという関係にあるわけですので、利用がふえたからふやすのではなくて、ふやすことによって利用をふやしていく、そういう発想をぜひともお願いいたしたいと思います。

 また、私が声を荒げてしまうのは、実際上、弁護士として、数多くの痴呆の高齢者が多くの消費者被害に遭っていることを知っているからであります。呉服を売りつけられたり浄水器を売りつけられたり、要するに、何度も何度も繰り返し高齢の方が被害に遭う。それを救おうと思ってもなかなか救い切れない。クーリングオフ期間は過ぎてしまっている。そういう中で、身内の方が心配して、地域でひとり暮らしは無理だ、そういうことで施設への入所を決断する。そういった悲しい現実を日々味わっているからであります。

 また、親の財産をねらって、本当は地域で暮らしたいと思っているにもかかわらず、その家族が本人の意思に逆らって同じように施設に入れてしまう。そういった中で、施設に入っておられる方から、どうして私が施設に入れられてしまうんでしょう、そういった声を何度も聞いているからであります。

 そういった事態を避けるために、まさにこの成年後見制度はあるわけでありまして、まだ四万という利用、これを百万台に上げるには、こういったパンフレットを、今の啓発活動で実際やっておるのは、このパンフレットを法務局に置いているぐらいなものです。

 本当に必要な方というのは、法務局に行く方ではありません。知的障害者、精神障害者、痴呆性高齢者の方、そしてその家族のもとに届けるためには、在宅介護支援センター、そういった各障害者の施設にきっちりと情報が伝わるようなことをしていかなきゃいけない、そのように思いますので、その点につききっちりとやっていただきたい、そのように強く申し入れます。

 次に、最高裁の運用に関してであります。

 実際のところ、数の問題を今申し上げました。では、数は少なくても質はいいのかという問題です。質の問題も大変問題となっています。去年の最高裁の統計を見ましても、今の成年後見の利用は、実際上は、家族が、当の本人がもう判断能力がなくなってしまった後に財産の管理処分などを目的として利用している、それがほとんど多数を占めます。これは、本来の成年後見制度の趣旨とは違うものであります。

 成年後見制度の趣旨は、あくまでも本人が、まだその残存能力があるうちに、地域できっちり暮らしていくために、しかしながら、判断能力が不十分であるがゆえになかなか暮らしにくい、その判断能力の不十分さを補うような人をつけることによって、自己決定権を尊重していこう、ノーマライゼーションの理念を実現していこう、そういった、ある意味美しい、輝かしい理念のもとにできた制度であります。

 しかるに、今の制度利用は、数が少ない上に、かつ、その内実は、実際上は、家族が遺産分割のために、もう完全に判断能力がなくなって寝たきりの人のかわりに判こを押してもらうために利用している、そういうのが実態であります。それが非常に多い。そういう比率ではだめなのであって、その内実、質を高める努力が必要だと思います。

 そのためにも、最高裁の運用においては、運用面の大幅な改善が必要だと考えます。要するに、運用面の改善については、簡単に言えば、金が高い、手間がかかる、そして時間がかかる、この問題であります。

 費用については、現在、申立人費用となっております。しかしながら、本人のための制度なのに、申立人をする人が原則負担では、申し立てをちゅうちょしてしまいます。ドイツなどの例では、これは本人負担になっています。制度趣旨からすれば本人負担が当然であります。お金も、最高裁は五万以下がふえてきたと言いますが、五万でも高いんです。実際は十万ぐらいかかることがほとんどです。本人のためにと思っても、十万もかかるのではちゅうちょします。

 時間も、三カ月以内がふえたと言いますが、三月もかかったのではぼけが進んでしまいます。一カ月以内にちゃんとやるようにすべきであります。また、手続書類も必要書類が多過ぎます。一般の方が簡易に利用するには、今の制度は実際では使いにくい制度です。

 この点、どのように改められるのかお答えください。

山崎最高裁判所長官代理者 現行成年後見制度が施行される前の旧制度では、やはり時間や費用の面で当事者に少なくない負担がかかっているという指摘がございました。現行制度はこの点で改善を図ったものでございますが、なお一定の費用、審理期間、手続を要するものであることは委員御指摘のとおりでございます。

 これを少しでも改善すべく、費用のかかる鑑定手続に関し、冊子として「新しい成年後見制度における鑑定書作成の手引」などを刊行し、また現場におきましても、実際に鑑定を行う医師に配付して鑑定書を作成する負担の軽減を図っているほか、本人の状態を詳しく把握している主治医に対して積極的に鑑定を依頼するなどの工夫をしております。

 これらの工夫によりまして、この鑑定というものは人の行為能力の制限につながるものでございまして、医師の確保という問題もあってなかなか困難な問題がございますが、鑑定費用も一定限度低廉化されてきておりますし、当事者の費用負担が軽減して、鑑定期間自身も一定程度短縮され、全体の審理期間も短縮しつつあると思います。このような方向をより一層簡便なものになるように推し進めていきたいと考えているところでございます。

泉(房)委員 運用面が少しずつ進んでいることは、私も努力は本当に多といたします。

 しかしながら、繰り返し申し上げます。百万を目指すのに四万から少しずつの改善ではとてもとても追いつきません。抜本的な運用改善、このことを強く求めたいと思います。

 次に、監督の問題であります。

 この後見制度が内実を伴うためには、実際の後見業務が本当にこの制度趣旨に見合ったものになる必要があります。しかるに、実際のところ、先ほど申し上げました、家族がお金を目当てといいますか、財産目的でやっていることがかなりあります。

 実際上、解任の例を調べてみますと、最高裁の統計によりましても、後見人が解任されている数についてでありますが、解任事例は、制度発足時の十二年が三十七件、十三年五十一件、十四年八十八件、十五年は昨年末までで百十五件、辞任、これにつきましては、同様に百十七、百六十四、二百四十二、三百六十二とふえていっています。

 ただ、実際上、辞任や解任になるというのは表面化したケースにすぎません。ほとんどの多くは当の本人は判断能力はないわけですから、当の本人が自分の財産を食いつぶされていることに気づくことはほとんどありません。裁判所が気づくというのは本当に表面化したほんの少しです。

 この問題は本当に根深い問題がありまして、問題の所在として私がすごく危惧しますのは、家族というものはほとんどの場合親の財産の相続推定人に当たるということであります。親の財産をそのままにしておけば、子供が三人いれば三等分されて自分のもらい分は減ります。そういったいわば利害関係に立つという潜在的な状況があります。

 そのまま親の財産をキープしておけばもらい分が少ない、であれば少しずつでも、親の面倒を見ているのは私なんだから少しぐらいもらってもいいという非常に規範意識の低い中で少しずつ生活費に流用する、そういった面が事実上あります。こういった面につきまして、裁判所はどのような監督のあり方を御検討されているのかお答えください。

山崎最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、後見監督というものはなかなか難しいものがございまして、件数自体も、後見人選任事件がふえると同時に、そのまま件数として引き続いていくわけでございます。そして、後見人等が適切な財産管理を行えるかどうかということも大きな問題になっておりますので、その後見監督事務につきましても、いろいろな資料を作成して、その適正化を図るために各庁でいろいろな工夫をしております。

 後見監督事件、まず改善の工夫例を申し上げますと、後見人に選任される者に後見人の職務内容、責任等をきちんと理解してもらうことがまず重要であると考えられますので、後見人向けの手引書などをつくりまして、その職務、収入支出の管理の仕方、被後見人の財産から支出できるもの、裁判所との連携の仕方などを紹介しまして、あわせて、被後見人に損害を及ぼした場合には民事、刑事上の責任が問われることを認識させている庁もございます。

 また、適切かつ公正な後見人を選任すること、これがまず一番重要なことでございますので、後見人候補者から後見人を選任する際に、その候補者を見きわめた上で、選任することが必ずしも相当でない場合には、候補者として挙げられた親族以外の第三者を後見人として選任したり、複数の後見人を選任して事務を分掌させたりするなどの工夫をしておりまして、そのような取り扱いをする事案がふえてきておりますが、これも一つの改善工夫の一環であろう、成果であろうと思います。

 また、この後見監督事務の難しいところは、後見人としての職務、責任の自覚を強く促したり、親族以外の第三者後見人を選任しようとしたりしますと、その候補者である申立人が申し立てを取り下げるというようなこともございます。また、裁判所が厳しく監督しようとしますと、後見人との関係が悪化して資料の提出等が順調にいかないというような難しい問題もございます。

 こういう問題につきましては、各庁での研修の機会等を通じていろいろな取り組み例を紹介しつつ、改善を図っていきたいと考えております。

泉(房)委員 監督につきましては、裁判所の限界というのは本当に明らかだと思います。もっとシステムの問題、法整備の問題を含めてしていかないと、監督をきつくすれば利用は進まない、利用を進めるために簡単に手続してしまうと不正行為が続出するという非常に難しい関係に立つ。この問題を解決するためにはまた違った発想の転換も必要だと思いますので、引き続きこの問題に取り組んでいきたいと思います。

 そして、このように今質問してまいりましたが、この成年後見制度ですが、管轄といいますか担当が法務省なのか厚生労働省なのか最高裁なのか、今回質問するに当たって問い合わせてもなかなか答えがはっきりと得られません。

 成年後見制度というのは、まさに介護保険と車の両輪としてスタートしました。その後、支援費制度も導入され、ますますその必要性が高まっている。介護保険の見直しの論議も進む中、車の両輪である片方の論議が進むのであれば、もう片方の成年後見制度についての議論も深めていくべきだと私は考えます。

 そしてまた、今司法改革が進められておりまして、その中に、司法ネット構想という構想も進んでおります。その中に、この成年後見制度、これの拡充に向けての取り組みをこの司法ネット構想の中にも取り入れていただきたい。そうすることによって一気にこの利用を促進する。そういったことをぜひとも図っていただきたいと強く思っておりますが、この点、大臣お答えよろしくお願いいたします。

野沢国務大臣 泉議員におかれましては、成年後見制度の普及並びに適切な運用に邁進することによりましてお年寄りの福祉に大変日ごろから尽力をしておられることに、心から敬意を表するものでございます。

 お尋ねの、司法ネット構想の中にこれを取り込むということにつきまして、この構想の中核となる運営主体の窓口において、主要な業務の一つとして、相談の受け付け、情報提供、関係機関等への振り分けなどを行うこととしております。

 御指摘の成年後見制度についても、運営主体の窓口の相談を受けながら、一般的にあるいは個別的な案件に応じた適切な情報の提供がなされる必要があると考えております。

泉(房)委員 今の答弁は、極めて大きな答弁だと理解しております。司法ネット構想の中に成年後見制度が位置づけられる答弁だと私は理解いたします。

 しかるに、その内実につきましてこれから議論を進めるに当たりましては、きょう質問をしてまいりましたが、この成年後見制度を本当に必要としている数がどれくらいいるのだろうか、今の実態がどうなんだろうか、そこにどういった問題があり、運用改善、法整備も含めてどういったことが必要かということにつきまして、それぞれ関係各所からきっちりと話を聞いて、その改善点を含める中で、司法ネット構想の中で本当に拡充に向けての取り組みをしていただきたい、そのように切に願う次第です。

 この点につきまして、再度大臣の意気込みの方をお聞かせください。

野沢国務大臣 御指摘のとおり努力してまいります。

泉(房)委員 一緒に頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

柳本委員長 河村たかし君。

河村(た)委員 きょうは割と冷静に、日ごろは割とエキサイトしていろいろやっていますけれども、冷静に事実を淡々と確認したい、そんなふうに思っています。

 名古屋の刑務所の三事案、これをずっと私も、前回の、去年以来ですか、やってきまして、とんでもないことがわかりまして、これは事実が全く違っていたということなんですね。

 法務大臣も予算委員会で、裁判は裁判でやっておりますけれども、これは答弁いただきませんが、裁判は裁判で司法の独立は当然ありますが、同時に、行政というのは、いわゆる再発防止のために真相を究明して事実を解明せないかぬ。要するに、再発防止するためには事実を解明せなけりゃできませんので、そういう義務が別個にある、これはやらにゃいかぬということは確認をされております。

 それから、実はこれは調べたんですけれども、国会も、これは驚くべき数字ですね。今までの審議が、参議院と衆議院合わせて六十八名の方が六十時間四十九分。ただし、時間につきましては、自分の質問時間の中の一部の場合もありますから、その間全部やっておったというわけじゃございませんが、これだけ名古屋刑務所三事案について、ほとんどの方が、刑務官が暴行したということで、呼び捨てにされた方もかなりたくさんおみえになります、刑務官を。そういう前提で審議をした。

 マスコミも、ほとんどすべての新聞、テレビが刑務官の暴行だということで全国的に流したということで、予算委員会集中審議もやっております、これで。

 そういう状況の中で、私も三回だけは刑務官の暴行であったということを言いましたものですから、これは私、謝罪をさせていただきました、ここで。予算委員会でも謝罪しました。

 それから民主党も、私もはっきり言っておきます、民主党のあの放水実験がありましたけれども、三月三日でしたか、あれでブロックがぼんと飛んでいったやつをやりましたけれども、あれは当時六キロの水圧を用いまして、六キロというと垂直に飛ばすと六十メーター飛ぶやつですね、これ。やりましたけれども、実際は、これは法務省の中間報告並びに検察庁の冒頭陳述によりますと、〇・六キロ、十分の一の水圧。

 まあ、ただしあのところはまだ、弁護側の主張というか、私も行っていますけれども、ホースが古いのを使っていまして水漏れしていましたから、実際はまだ低かった可能性があるという水圧で、十倍以上の水圧で全国民に誤解を与えてしまったということで、この問題については法務部会の方で、民主党法務部会では謝罪すると、訂正報道をお願いするということで部会では決定しております、これ。

 そういう状況の中で、私は何とか、まあ、これは刑務官のためだけにやっておるんじゃありません、正直言いまして。やはり保護房の中で事故を起こさないように、受刑者の皆さんのためにもですよ。

 じゃ、どうしてこんなことが起こってしまったんだ。二人亡くなって一人事故を起こした、何でこんなことが起きたと。それはまだ現在でも、一年間に六千件近くですか、保護房に入っておられる方がおるから、事故を起こさないようにするために真相究明せないかぬということも当然ですけれども、やはり、ここは集団リンチの場じゃありませんから、本当に、ちょっと表現はきついですけれども。

 だから、僕は国会は本当に責任とらぬでもいいかしらと思いますね、これ。法律的な条文というのは別にどうもないようですけれども、もっと大きい意味で、やはり国民の権利を守るというのは当たり前のことでして、これ。これだけのすごい、延べ六十八人六十時間四十九分、枠を入れてですね、こういうことで彼らを苦しめてしまったことについては、これは何としてもストップせなあかんということで、僕は彼らを助けようということで、一年間必死になってやらさしていただいておる、そういうことです。

 それで、きょうは十二月の話があるんですけれども、これはどういうことかといいますと、いわゆる保護房の中で、放水事案といいますけれども、亡くなられた方が一人おみえになる。放水、放水ということ、放水があったことは事実ですけれども。

 これは、私らの主張としては、要するに中が非常に汚かったし、本人も非常にふん尿にまみれた状況だったから、かえって放水、それは井戸水だったんです、温かい水だったから。普通だったら、ふろへ連れていく状況がつくれればいいんですけれども、大変な状況だった、その方は、入っていくとばあっと来て。そういう状況の中で清掃を、清掃というか、洗ってあげた。かえって、もし洗わなかったら非常にひどい状況であったというふうに思っております。そんなくちゃくちゃの状況でほかっておくこと自体がいかぬかったということの中で、そういう水でということを言われておりますけれども。

 一方、そこにはプラスチックの、ああ、きょう持ってくるのを忘れたな、プラスチック状のいわゆるボトルですね、飲料用ボトル。かたいタイプのものがあって、要するに、保護房内で自傷行為に使えるようなものを置いちゃいけないんですよ、保護房というのは。入ったら、それはその保護房収容要件があって、そういう必要性のことについては、それはそういうことですけれども、その保護房収容者、収容された方がそこで事故を起こさぬようにせなあかん努めがあるわけです、これは、矯正局というか刑務所は。だから、そういうものは、あったとしたらこれはいかぬわけです。

 それで、これは質問ですけれども、平成十五年四月十六日、法務委員会の視察に行きました。これは山本有二さんが委員長のときに、これは正規の視察です。正規の視察に行きまして、そのときに私は、数日前に、要するに保護房内でどういうものがあったか、自傷行為に使えるものがあったかなかったか問題にしていましたから、保護房内に当時の、十二月の時点であった食器等を、その当時のものを出しておいてくれと頼んだんですよ、これ。

 ところが、行きましたら、いわゆる水筒が、自傷行為に使えない、いわゆるぐにゃぐにゃのタイプのものがあった。そこで、いや、こんなはずないじゃないかと、私聞いておりましたから言いましたら、いや、そういうのはもう今なくなりましたからという話があったんですね。

 だから、そのことについて、ちょっとその経緯を、私が質問通告というか、お願いをしたところからちょっと正確におっしゃっていただきたいということです。

横田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員のお話ございましたように、昨年、平成十五年四月十六日に、衆議院の法務委員会に名古屋刑務所の御視察をいただきました。その際、事前に委員の方から、五月及び九月事案に使用された革手錠、それが一つ。それからもう一つは、いわゆる十二月事案の際に用いられたホース。それから三番目として、いわゆる十二月事案の際に保護房にあった食器、スプーン、タッパーウエアなどを用意してほしいというお話がございました。

 この御依頼と申しますか、委員からの話にこたえて飲料用容器を用意した経緯について、現在調査中でございますけれども、これまでに判明した限りでお答えをさせていただきます。

 この視察が行われました日の前日の平成十五年四月十五日のことでございますが、衆議院法務委員会の御視察に備えまして名古屋刑務所に赴きました矯正局の職員、それから名古屋刑務所の幹部職員らが、準備のために打ち合わせいたしました。そして、したわけですけれども、名古屋刑務所の処遇部長を初めとする関係者は、以前に保護房内で使用していた飲料用の容器につきましては、既になくなったというふうに思い込んでいたという状況がございました。

 その上、この準備の際に、処遇部長が処遇部門の統括矯正処遇官に対しまして、保護房用の古い食器というものがあるのかどうか確認するように、委員からの御依頼もございましたので、指示いたしました。これを受けたこの処遇部門の統括矯正処遇官が当時の舎房担当の者に確認をいたしました。

 そうしましたところ、飲料用の容器につきましては、保護房用には平成十四年九月に変わった後の物しか使っていないということであったために、その舎房担当は、保護房用に使用している飲料容器はその容器であるという、そういう報告をいたしました。

 こういう報告がございましたことと、先ほど申し上げましたように、処遇部長らは、以前に保護房内で使用していた飲料容器が既になくなった、もう大分、いわゆる事案の発生からたっておりますことなどから、そう思い込んでいたこともございまして、それ以上詳細な調査を行うことなく、十二月事案当時の飲料容器はないものだというふうに即断をいたしまして、そして、そのために、四月十六日の御視察の際には河村委員にその旨お答えしたという経緯であったということが現時点でわかっているところでございます。

 他方、御視察の際に、当時保護房内で使用中の飲料容器を準備いたしましたのは、少しでも御視察の御参考になるようにというふうに考えたところによるものでございます。

 いずれにいたしましても、こういう事情がありますものの、結果として、御視察の際に河村委員に対して十分な御説明をしなかったということにつきましては、まことに申しわけなく思っている次第でございます。

 以上です。

河村(た)委員 そこで、きのうもちょっとお話ししたんだけれども、この四舎一階の舎房担当ですか、が、ないよと言った理由についてちょっと言われましたよね。そこのところ、ちょっとお答えいただきたいと思います。

横田政府参考人 先ほど申し上げましたように、舎房担当の者は、古い食器はないかというような、そういう聞かれ方をしたので、それはもうないというような答えをしたというふうに聞いております。

河村(た)委員 いや、きのう、邊野喜さんが、よかったら邊野喜さんに答えてもらってもいいんですけれども、伝言ゲームだと間違える可能性がありますけれども。邊野喜さんが、四舎一階の担当者は就任してすぐだったから、そこのところが、当時の平成十三年当時をよくわからずにそういう返事をしたと言われる。それで間違いないですか。言われましたけれども。

横田政府参考人 ただいま委員がおっしゃったような状況であるというふうに聞いております。

河村(た)委員 それは、就任したのは平成十五年の四月ですから、舎房担当がかわった後よね。舎房担当がかわったんですから、そのかわられた方はいつかわったんですか、これは。

横田政府参考人 舎房担当が交代いたしましたのは平成十五年四月一日ということで、御視察の二週間ほど前ということになります。

河村(た)委員 はい、じゃ、このことはこういうことで。

 これは、どういうことかといいますと、ぜひ自民党の皆さんも聞いとってほしいんですけれども、委員会として、余り党のこれは体質の、政局とは全く無関係でございますので、本当の、法務委員会で見に行ったわけですよ、これ。

 ところで、あの状況を見ますと、たまたま僕が知っていましたから、かたいタイプの物を使っていたということを知っていましたから問題になりましたけれども、普通の委員さんからすれば、そこを見ると、いわゆる本当にぐにゃぐにゃのやつなんですよ、持ってくるとよかったですけれども、今ありますけれども。ぐにゃぐにゃのもので、それをばりばりには多分割れないと思いますし、仮に割れたとしても、そんな物を自分で、自傷行為にはそれは全く使えるような物ではないと思いますよ、私は割ったことがないからわかりませんけれども。

 だから、ぱっと見ますと、ああ、これは法務委員会、法務委員全員が、ああ、これは確かに、亡くなった理由として、自傷行為、食器等で自傷行為によって亡くなるのは無理だと、ないと、その原因は、というふうに思うんです、これは。当然、思うんです。

 となると、なぜだろうかと。何かよくわからぬけれども、放水をしたらしいんじゃないか、これに何か原因があるのではないかというふうに、いろいろ可能性を探っていきますから、こういう誤解をまず確実に生んだということは、これ、局長、そうでしょう。

横田政府参考人 大変難しい御質問でございまして、御視察の委員の方々が、当時、保護房内に名古屋刑務所側が用意した食器、ただいま委員がおっしゃった飲料用の容器も含めまして、それをごらんになってどのようにお感じになったかというのは、ちょっと私にはわかりかねますが。

河村(た)委員 答えにくいからそういうことになると思いますけれども、これは私が言うよりしようがないんですけれども、そういうことなんです。やわらかい物しかないから自分を傷つけることはできないということで。

 委員会ですからね、これは、委員長、言っておきますけれども。委員会の正規の視察です、全国民から負託を受けた。それで、今言いましたように、膨大な時間をかけて、これは皆さん質問している。衆議院の予算委員会で集中質疑までやった。日本じゅうがテレビ、新聞でわあわあやっている。

 そういう視察で誤解を与えるような状況であったこと、これについてはもうきょう私に謝罪すると言いましたけれども、そこはちょっと、評価は別として、そこはちょっと謝罪していってくださいよ。

横田政府参考人 当時、名古屋刑務所、私どもも含めまして、委員から事前に御依頼のあった趣旨というものの受け取り方の問題もございまして、あのような結果になったというふうに私は理解しておりますが、いずれにしましても、結果としては、法務委員たる河村委員からの御依頼のとおりに、一〇〇%それが実行されていなかったということは、これは事実でございますので、その点につきましては委員会に対しても申しわけなかったというふうに思っております。

 以上です。

河村(た)委員 それで、実は、そのボトルが、今ちょっと話を聞いておられるとあれかわかりませんけれども、実はあったんですね。これはなかったということになっていまして、私もなかったと思っていました、私も。ないと思ったから。

 なぜわかったかと思いますと、質問なんかもあるんですけれども、これは平成十五年四月二十三日の法務委員会の質問なんかで出てくるんですけれども、例えば、河村たかし委員「これも、委員長、委員会で、中に何があって、現実にどういうタッパーであって、今全部かえてあると言いました。」とかいう表現で若干出てきますけれども、これはなかったと言われておったことは事実です、これは。なかったと。それをちょっと確認しておきましょう。

横田政府参考人 お答えします。

 私どももなかったというふうに理解をいたしておりました。

河村(た)委員 そういうことで、なかったということで、私も困りまして、自分で、そんなはずは、なかったと思っておるんですけれども、何とか手に入れにゃいかぬですから、頼んだんですけれども、ないということですから。

 だから、どうなったかといいますと、自分で業者を探し当てまして、納入業者を。それで、そこに直接電話をかけました、まだ覚えています、何軒かに。あなたのところにこういうのないですかと言っていったら、いや、実はこういうものを納入していましたとわかったんです。こういうことですね。

 それで、じゃ、次のあれですけれども、今度は平成十六年、この間ですね、二月十九日の予算委員会の質問通告をいたしまして、邊野喜さんやら夜見えて、私も言っておきますけれども、抜き打ち、やみ討ちしませんから、ちゃんと、堂々と、実はかたいタイプの物は現在も使っているんだと。あるどころか、あることもあるし、現在も使っているんだという話を聞きましたものですから、本当にあったのかと、これ。あったとすれば、委員会を裏切ったことになるから大変なことですよと、これ。それも、非常に中核的な事実ですから、これは。と言って、質問の文書でちゃんと質問通告をしました。

 では、その夜の邊野喜さんがお見えになった辺のところから、ずっと一連のことを御報告いただけますか。

横田政府参考人 お答えいたします。

 委員から質問通告がございましたのは、二月十九日の予算委員会の前の日であったというふうに理解しておりますが、おっしゃいますように、二月十八日に河村委員から質問通告がございました。

 それで、先ほど申し上げましたように、私ども、私もまた、いわゆる放水事案の当時に保護房で使われていたという、そのものの容器はないというふうに思っていたわけですが、委員から再度といいますか、またお尋ねがございましたので、これはやはり、徹底してもう一回きちんと調べなきゃいけないというふうに考えました。(河村(た)委員「一たんないと答えたところを言ってってください、邊野喜さんが言われたような」と呼ぶ)いわゆる質問レクの際には、ないという、私どもはそういう認識でございましたので、ないというふうにはお答えしました。

 しかし、それに対してなお委員の方から、本当にないのかというような、こういうお尋ねがあったと聞きましたので、これはやはりきちんともう一回やってみましょうということで、また名古屋刑務所の方に指示をいたしまして、確認いたしました。

 その結果、その間のまたいろいろいきさつがございますけれども、十九日、翌日の朝に至りまして、名古屋刑務所で再確認いたしましたところ、現在、保護房ではない一般房で、一般の独居房で使っている飲料用の容器が、いわゆる放水事案当時に保護房で使用していた容器と同種のものであるということがわかりました。いわゆるそういう報告が矯正局にございました。そこで、委員御承知のように、矯正局では取り急ぎその旨の御説明を委員に対して申し上げたということでございます。

河村(た)委員 矯正局として、昨夜というか、夜私にないと言った話が実はあったとわかったのは、これはいつになるんですか。

横田政府参考人 お答えします。

 私ども矯正局側が同種のものがあるということを知りましたのは、十九日の午前八時半ころでございます。

河村(た)委員 では、ちょっと、きのう邊野喜さんからも伺いましたけれども、どういうふうに伝達されて、今横田局長言われましたけれども、問い合わされて、どういう経路で後。きのうちょっと、官職名ですね、固有名詞はちょっととりあえず控えるということでしたが、官職は言うと言われましたので。どういう経路で、最後、私は本会議場から出てきたときに横田さん待ち受けておられて、二時ごろだったと思いますけれども、答弁ぶりを訂正させてほしい、まことに申しわけないという話があったけれども、そこに行くまでの、だれに具体的にどういう経路でその問い合わせが行って、伝達されてきたということをお知らせください。

横田政府参考人 まず、訂正でございますが、先ほど十九日の午前八時三十分ころに同種の飲料用の容器があることを私どもは知ったと申し上げましたが、これは名古屋刑務所側が知った時刻でございまして、私どもがそれを知り得ましたのは午前九時半ごろだったということでございますので、訂正をさせていただきます。

 それで、では経過をもう少し詳しく申し上げさせていただきます。二月十八日に話が戻りますけれども、この日に矯正局から名古屋刑務所の調査官とそれから第一統括、統括官に――失礼しました。もう少し前から、ちょっと長くなりますけれどもよろしゅうございますか。

河村(た)委員 いやいや、そこからでいいです。きのう聞いた話では、夜中の二時ごろにメールを送られたと。そこからでいいです。

横田政府参考人 では、そこから話します。

 先ほど申し上げましたように、河村委員の方から、それが本当になかったのかというような、そういうお尋ねがあって、もう一回確かめましょうということでやりました。その一つの方法として、昨年のあれは五月十四日だったでしょうか、衆議院のこの法務委員会で参考人の質疑がございまして、そのときに河村委員が三井さんという参考人の方に、プラスチック製と思われるその飲料用の容器を示しまして、そしてそれにお尋ねになりました。それに対して三井さんがたしか、同様なものが保護房では使われていましたというお答えをしたことがありました。

 それがありましたので、再度、私どもがあるんじゃないか、あるのかないのかと確認していることのイメージと、それから名古屋刑務所側が受け取っているイメージが違っているようなことがあっては、これは話が通じませんので、河村委員がその容器をお示しになっているビデオを再生いたしまして、そこの画面をカメラで撮りまして、そしてそれをメールで名古屋刑務所の処遇首席に送りました。これによって、河村委員はこういうものがあったんじゃないか、あるいはあるんじゃないかということをお尋ねになっているということで、わかるようにいたしました。

 その結果、十九日の午前七時ごろに処遇首席が登庁後にこのメールの写真を確認いたしまして調べました。その結果、四舎一階の配ぜん室流し台そばのかごの中に、このスクイーズボトルといって、現在保護房に入っている人に渡すそういう飲料用のボトルとともに、河村委員がお示しになったような、よく似た容器があることを確認いたしました。

 その一方におきまして、雑務係の職員が、以前保護房で使用していた飲料容器というのは今保護房ではない独居房で使用されているものであることをふっと思い出しまして、そして同じく四舎一階というところに行きまして、その河村委員がお示しになったものとよく似た容器があるのを確認いたしまして、処遇首席に報告しました。

 ここで、処遇首席がメール写真で確認したことと、それから雑務係の職員が思い出してもう一回確認したこととがちょうどうまく一致したわけで、ああ、これが、以前保護房でこういうものを使っていたなということがわかったということで、それが矯正局の方に報告があったということでございます。

河村(た)委員 そうすると、現在ある数を確認していきましょうか。それを矯正局に報告があって、九時半ごろわかったということですか。私のところへ言ってきたのは二時ぐらいですけれども、この間はどういうふうになっておったんですかね、これは。

横田政府参考人 委員のところに行くまでのことをお尋ねのようですが、当時委員は予算委員会に出ておられると思いましたので、いずれにしましてもすぐにその結果のお話をすることは難しいと思いましたので、結局時間的にもやや遅くなりました。私どもの方も、名古屋刑務所から報告のあったそれがどこまで客観的に正しいというふうに言えるのかどうかという、これももう一回話をいろいろ聞いたりしながら、信憑性というとちょっときついかもしれませんけれども、いずれにしてもそれが本当にそうか、これは河村委員にお伝えするに足る内容のものであるかどうか、これについては慎重に中で検討いたしました。

 その上で、河村委員は当時、予算委員会に出席されておられるというふうに思っておりましたので、それで本会議が終わるのをずっと待っておりまして、出られたところでお話ししたという次第でございます。

河村(た)委員 では、その日の朝、九時半には全体の個数もわかったわけですか、全部これ。

横田政府参考人 済みません。

 先ほど申し上げました八時半ごろに、名古屋刑務所の処遇首席や、それから職員が確認したその食器棚のところには、三個ございました。その後で、さらに所内をいろいろ探させましたところが、別に飲料用の容器二十個があることが確認されました。そういうことで、最終的には二十個ということが確定した次第です。

河村(た)委員 その間に、私のところの秘書が調べに行っておるんですけれども、これは当然、矯正局との間で、そういうものを隠したりとかそういうことはなかったでしょうね、それは。

横田政府参考人 そういうようなことは一切ございません。

河村(た)委員 私のところの秘書が行ったのは何時だったかな、十時、わかりますか、その時間とその間に、今のは一切ないということね。

横田政府参考人 河村委員の秘書が名古屋刑務所にお見えになったのは、午前十時三分というふうに聞いております。

河村(た)委員 その間には、当然、隠そうとか、そういうことはなかったわけですね。

横田政府参考人 もちろん、毛頭ございません。

河村(た)委員 では、次の質問ですけれども、今の十二月事案ですね。発生当時かたいのがあって、このやわらかいのになったんですけれども、それはいつごろ、どういう理由でなったのかということを。

横田政府参考人 お答えいたします。

 これも取り急ぎ調査して、現在私どもの方で把握している限りで申し上げますが、名古屋刑務所、現在使われているものはポリエチレン製の容器でございますけれども、それが購入されているのが平成十四年九月六日ということが記録上わかっておりますので、恐らくそのときから、現在使われている、これはスクイーズボトルというふうに呼んでおりますけれども、それを使っているというふうに理解しています。

 その変更理由ということに、結果としてはそうなるわけですけれども、それについては、特にそれについての文書などが残っているわけではございませんので、現時点においては判明をしていないというのが率直なところでございます。いずれにいたしましても、それぞれの時点において、保護房で使用するのに適当であるというふうに購入の担当者が判断したことであるというふうに考えております。

河村(た)委員 そこはしっかり一遍調べていただくように、委員長から命じてください。

横田政府参考人 この点については、引き続き調査をいたします。

河村(た)委員 だけど、私が聞いておるところは、刑務所というのはすごい、ある意味では秩序がしっかりしていて、いろいろな食器を変えるときなんかは全部、そういうような書類を出すということを聞いていますよ、私。そんな、一つずつ勝手に職員が変えれるようなものじゃないというふうに私は聞いておりますよ。どうですか、局長。

横田政府参考人 この点も含めて調査いたしますが、ここでちょっと感覚的に申し上げますと、これは消耗品でございますので、どの程度書類が残っているのかというのはちょっと。残っていなかったということについて、私はそれなりに、そうかなというふうに理解しておりました。いずれにしても、一回調査いたします。

河村(た)委員 ちょっと大臣に、先ほどいわゆるレクで、私、要するにもうないというような答弁ぶりですが、そういうのをレクを受けたわけでしょう。いつごろ受けて、いや、実はそうじゃなかった、ありましたというのはいつごろ受けられました、具体的に。

野沢国務大臣 この案件のレクの場合に、矯正局からお話を聞いております。

河村(た)委員 何時ごろですか、それ。

野沢国務大臣 ちょっと時刻までは記憶にございませんが。

河村(た)委員 ちょっとそれは思い出してください、後でいいですから。答弁できりゃどうぞ。

野沢国務大臣 河村先生の質問を控えまして、事前に受けたものでございます。

河村(た)委員 ちょっと後で教えてくださいね、後でね。了解いただいたようですので、時間がないもので。

横田政府参考人 法務大臣に、私の方からいわゆるレクというものをいたしましたのは、当日の午後三時ころでございます。

河村(た)委員 その午後三時というのは変更のレクですね、実はあったんだと。なかったと言っているのは何時ですか。ないというのと変更と二つあるでしょう。

横田政府参考人 もともと、いわゆる委員会の前のレクでございましたので、これまでなかったということを河村委員にも御説明しておりましたけれども、このようなことになりましたことで、大臣には一括して御説明いたしました。

河村(た)委員 それから、ちょっと時間がないですけれども、保護房の床を変更されておるようですけれども、それはいわゆる転倒等の事故がないようにやわらかいものにしたりとか、さらに今後やわらかいものに改造する予定ですけれども、それの理由と、どういう状況かを教えてください。

横田政府参考人 保護房の床につきましては、平成五年ころから、コンクリートの上に張るウレタンの厚みを増しております。これは、その後つくられた保護房はすべて、すべてというか、ほとんどそうしておりますし……(河村(た)委員「二センチ」と呼ぶ)二センチですね。(河村(た)委員「前が」と呼ぶ)一・五ミリから二センチになりました。

 なお、そのほかに、保護房については、いろいろこれから新しい観点から、例えば窓を大きくするとか、いろいろな形で保護房を変えていこうということで現在検討して、なるべく早い段階で実行する予定にしております。

河村(た)委員 いや、今後のやつはさらに事故防止のために、転倒事故等防止のために、さらに二センチよりももっとやわらかいものと聞いておるんですけれども。

横田政府参考人 床の厚さであったかどうか、ちょっと私、申しわけありません、記憶が定かでございませんが、いずれにしても、例えば内側に何らかの保護的なものを備えるとか張るとかという形も含めまして、さらに安全な保護房にしようということで、具体的には検討して実行する予定になっております。

河村(た)委員 それは転倒事故等の防止のためですね。

横田政府参考人 事故としてはいろんな場面が想定されると思っております。

河村(た)委員 それでは最後に、もう時間ですから。要するに、こういう新しい事実が出てまいりまして、ですから、受刑者のためも当然ですけれども、この八名は休職処分で、いまだ二人逮捕されたままでございます。

 子供も小さいものですから、皆さん、地獄の思いで暮らしてみえるということなんですけれども、裁判は別にしまして、休職処分というのは行政処分ですから、そういうものについてちゃんと行政調査を行って、こちらのことにも対処するというか、そういうことをやらぬとこれは職権濫用罪、不作為のですね。必要な行政調査を行わずに不利益な処分を続けるということは、これは職権濫用罪になるんじゃないですか。

野沢国務大臣 大変、委員が詳細にお調べをいただいて、新しい事実等も出てきておるわけでございますが、法務省といたしましては、この一連の名古屋刑務所の事案につきましては、可能な限り行政上の調査を行いまして、再発防止に努めることが必要であると考えております。

 今後とも、公判の推移を見守りつつ、必要な調査は実施してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

河村(た)委員 最後ですが、今言った、非常に重要な、水筒ですね、かたいもの、そういうものがあるのに、これは簡単にわかるんですからね、言っておきますけれども。同じところにあるんですから。そういうのを出さなかった。

 それから、そういうようなこととか、こういうのは証憑隠滅罪のおそれもありますし、それから、そうですね、名誉毀損の問題もありますよね。これは、各論はお答えになりませんけれども、一般的に、証憑隠滅罪というのはどういうところに成立するんですかね、これ。局長でいいですよ、御専門家だもの。

横田政府参考人 大変申しわけございませんけれども、立場上、これについての公権的なお答えはお控えさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 ありがとうございました。

 それじゃ、きょうは終わりますけれども、ぜひ、しっかりと真相究明を行っていただきたいと思っております。

柳本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会をいたします。

    午後四時二分散会


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