衆議院

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第18号 平成16年4月22日(木曜日)

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平成十六年四月二十二日(木曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      左藤  章君    佐藤  勉君

      桜井 郁三君    早川 忠孝君

      平沢 勝栄君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    阿久津幸彦君

      井上 和雄君    泉  房穂君

      枝野 幸男君    鎌田さゆり君

      河村たかし君    小林千代美君

      小宮山洋子君    鈴木 克昌君

      中井  洽君    中村 哲治君

      松野 信夫君    上田  勇君

      富田 茂之君    川上 義博君

    …………………………………

   参考人

   (財団法人法律扶助協会専務理事)         藤井 範弘君

   参考人

   (学習院大学教授)   長谷部由起子君

   参考人

   (日本弁護士連合会日本司法支援センター推進本部副本部長)         市川 茂樹君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  加藤 公一君     阿久津幸彦君

  河村たかし君     中村 哲治君

同日

 辞任         補欠選任

  阿久津幸彦君     加藤 公一君

  中村 哲治君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 克昌君     井上 和雄君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 和雄君     河村たかし君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 総合法律支援法案(内閣提出第六九号)


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、総合法律支援法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、財団法人法律扶助協会専務理事藤井範弘君、学習院大学教授長谷部由起子さん、日本弁護士連合会日本司法支援センター推進本部副本部長市川茂樹君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせを賜りまして、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、藤井参考人、長谷部参考人、市川参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いをいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず藤井参考人にお願いいたします。

藤井参考人 おはようございます。財団法人法律扶助協会専務理事の藤井範弘と申します。よろしくお願いいたします。

 日ごろより法律扶助事業に対しまして御理解、御協力賜りまして、大変感謝しております。

 当協会は、昭和二十七年一月に設立された財団ですが、平成十二年十月、民事法律扶助法の施行に基づき、法務大臣から扶助事業を実施する団体として指定を受けました。現在、当協会は、指定事業である民事法律扶助事業と、自主事業として、刑事の被疑者弁護援助事業並びに少年保護事件付添扶助事業を実施しております。

 本日は、当協会の法律扶助事業の現状と問題点を御説明させていただき、事業を実施してきた立場から、今回の総合法律支援法について意見を述べたいと思っております。

 お手元にレジュメと資料を配付させていただきました。かなり長くなりますけれども、御参考にしていただければと思っております。

 平成十二年十月、民事法律扶助法が施行されました。この法律制定の意義は極めて大きいものがあるというふうに考えております。この法律によって初めて、民事法律扶助事業に対する国の責務が明記されました。

 法施行前の平成十一年度の代理援助件数、これは一万二千七百四十四件でありました。表を見ていただくとわかりますけれども、翌年の法施行後の平成十二年度においては二万九十八件、倍にはなりませんけれども、二万件を突破したということであります。

 国の当協会に対する補助金の推移を見ていただいても、法施行前の平成十一年度は、補正予算も組まれましたけれども、九億一千二百万程度にとどまっていたものが、平成十二年度は二十一億六千万程度というふうに飛躍的に増加しております。ちなみに、本年度、十六年度は四十億の補助金をいただいております。この補助金の大幅な増額というものは、やはり民事法律扶助法の制定によるものである、こういうふうに理解しております。

 しかし、昨今の経済不況を反映して、事件数が補助金を上回る勢いで急増しております。いわば、補助金が事件数の増加に追いつかないというのが実情であるかと思っております。

 その結果、さまざまな問題が生じてきました。十分な援助ができない。あるいは、年度の途中で資力要件など援助要件を厳しくしなければいけない、予算の関係で厳しく制約しなければいけないという問題が生じてきます。また、利用者の扶助離れが始まる。あるいは、事件数の増加に対して十分な事務局の体制が整備できない、こういう問題があります。

 なぜこうなってしまうんだろうということを考えてみました。民事法律扶助法の制定には大きな意義がありますけれども、やはり法律自体に問題あるいは限界があるのではないかというふうに思っております。

 民事法律扶助法は指定法人という手法を採用しましたけれども、扶助事業が本来国の事業なのかあるいは民間が実施すべき事業なのか、判然としません。ただ、国の理解としては、これを民間の事業と位置づけ、事業費の一部を補助する、そういう構成になっております。その結果、管理費が制約されるという現象が生じております。

 民事法律扶助を拡充して、資力のない人に対し全国どこでも扶助ができる、こういう体制の整備が求められているんだろうというふうに思っています。管理費が制約されるため、地方組織の強化ができない、結果として扶助事件が限定されてしまうという現象が生じます。これらの問題をどう克服するかというのが、我が国における扶助事業の課題ではないかというふうに思っております。

 民法上の一財団が法律扶助を実施するのではなく、明確に国の事業として位置づけて、運営団体のあり方を含めて民事法律扶助事業の抜本的な見直しが必要なんだろう、こういうふうに考えます。

 また、民事法律扶助の課題について、従前より、対象者あるいは対象事件を広げる、利用者負担のあり方を見直す等々の問題がさまざまな観点から指摘されていました。

 当協会は、刑事の法律扶助も実施しております。被疑者段階の援助事業と少年事件に対する付添人の援助であります。

 実績を見ていただければわかりますけれども、これも年々増加しております。十四年度で被疑者の段階が六千三百七十件、少年事件が二千六百九十五件という実績になっております。これらについては、現在、弁護士の特別会費ということで、いわば自己財源で事業を実施しております。やはり、民事と同じように、費用が追いつかないという現象が生じております。

 自己財源で実施するという点に関しましては、やはり限界に来ているんだろう、こういうふうに思っております。法律上の制度と位置づけ、国の責務を明確にしてこの事業を実施するということが求められているのではないか、こういうふうに思っております。

 今回の総合法律支援法は、今まで述べさせていただいたさまざまな問題に対しまして、全部ではありませんけれども、かなりの部分を解決するのではないか、こういうふうに理解しております。

 三点指摘させていただきます。

 第一点は、総合法律支援法は、民事法律扶助事業の質的転換を図るものである、こういうふうに当協会は理解します。今まで民間の事業と位置づけられていたこの事業が、今回の法律のもとでは、明確に国の事業と位置づけられたというふうに考えます。その結果、管理費も全額国が支出する、こういう構造になっているんだろうというふうに思っています。これは、単なる額の増額だけではなく、我が国における扶助事業に対する国の姿勢の質的転換である、こういうふうに考えます。

 二点目は、広い意味での民事法律扶助事業の拡充という点です。残念ながら、対象事件あるいは対象者の範囲、さらには利用者負担のあり方については積み残しとなりました。しかし、この法律のもとでは、司法相談窓口業務あるいは司法過疎対策業務、さらには犯罪被害者支援業務を本来業務の一つとして位置づけられております。これは、広い意味での民事法律扶助事業の拡充であり、正しく制度設計されれば、国民の司法に対するアクセスは大幅に改善されるんだろうというふうに思います。

 三点目は、刑事法律扶助事業の拡充であります。先ほど申しましたけれども、被疑者段階に対して初めてこの法律のもとで国費が投入されることになりました。刑事司法における大きな制度改革であると評価できると思います。ただ、残された問題も幾つか考えられるというふうに思っております。

 第一は、先ほど来申し上げましたけれども、民事法律扶助事業を正面からとらえて拡充するという点については積み残しになったということであります。今後、さらなる事業の運営を通じて、実施を通じて、この点を十分御検討いただければと思っております。

 二点目は、国費による当番弁護士制度の導入は見送られました。この点についてはさまざまな意見があると思いますけれども、少なくとも、被疑者段階の公的弁護の対象範囲が限定されるのであれば、国費による当番弁護士制度というのが極めて重要であろうと思います。身柄を拘束された被疑者に対する初回無料接見制度、この制度の導入が検討されてしかるべきであるというふうに思います。

 三点目は、公的付添人制度であります。残念ながら、公的弁護制度検討会において合意に至りませんでした。現在、継続協議となっておりますけれども、鋭意検討を重ねていただいて、少なくともこの総合法律支援法の施行までに何らかの制度設計をし、支援センターの本来業務として追加していただきたい、こういうふうに扶助協会は考えております。

 四点目は、犯罪被害者支援であります。確かに本来業務の一つとして法は予定しておりますけれども、残念ながら、その業務内容は、現時点では情報提供にとどまっております。やはり、犯罪被害者の継続相談あるいは刑事告訴、法廷傍聴、意見陳述支援、さらには刑事手続における和解、マスコミ対応など、弁護士による支援というものを正面から議論していただき、できれば犯罪被害者支援の業務内容を充実したものにしてほしいというふうに考えております。

 五点目は、今回の法律は、組織の施行が二年程度予定されております。実は、法律が仮に成立しても、この二年間の準備作業が極めて重要であろうというふうに思っています。制度の細部はこの二年間の準備作業にかかっているんだろうというふうに思います。

 アクセスポイントを適切に設置し、既存機関との有機的な連携を図る、いわゆる司法ネットを構築する、こういう作業が残されています。さらには、結局は事業は人の問題に帰着するか思いますけれども、スタッフとしての職員あるいは弁護士を確保して養成する、こういう作業も残されております。業務範囲に関しましても、適宜見直すことが求められるんだろうと思います。司法ニーズは時代の要請とともに変化いたします。国民の新たな司法ニーズに対応できる工夫が必要なんだろう、こういうふうに考えております。

 最後になりますけれども、どんなに立派な制度設計、正しい制度設計ができても、これを裏づける予算が伴わなければ、国民の司法アクセスの改善は望めません。きちっとした、適切な財政措置が講ぜられることが肝要であるというふうに考えております。資金があれば国民の権利を守ることができます。正義を実現することができます。この点に関してちゅうちょがあってはならないというふうに当協会は考えております。

 以上であります。(拍手)

柳本委員長 藤井参考人、ありがとうございました。

 次に、長谷部参考人にお願いいたします。

長谷部参考人 長谷部と申します。

 司法制度改革推進本部事務局の司法アクセス検討会で委員を務めさせていただきました。本日は、このような機会を与えていただき、大変光栄に思っております。

 司法アクセス検討会では、司法をより利用しやすくするためにはどのようにすればよいかということを検討してまいりました。その際の議論も参考にしながら意見を申し上げたいと思います。御審議に役立てていただければ幸いでございます。

 これまで、司法は国民から縁遠い存在であるというふうに言われてまいりました。その原因にはさまざまなものがあるかと思いますが、一般市民が法律業務を利用する上で障害があるということが重要であると思います。今回、総合法律支援法案が提出され、その中で、司法を国民に身近なものにするための対策が講じられることになっているということは、大変歓迎すべきことだと思っております。

 まず、全国どこにいる国民にとっても司法を利用しやすくするために、法案に基本理念が定められました。この基本理念は、司法アクセス検討会での検討課題であった司法をより身近で利用しやすいものにするという視点と同じ問題意識に根差すものでありまして、適切であると思います。また、国、地方公共団体、日本弁護士連合会、弁護士会、隣接法律専門職者団体、弁護士や隣接法律専門職者などの責務というものが定められておりまして、総合法律支援体制の整備についての土台が築かれた、このことは画期的であるというふうに考えます。

 次に、日本司法支援センターの創設についてお話をさせていただきます。

 司法に関係する機関あるいは団体にはさまざまなものがありまして、それぞれが個別的にサービスの提供を行ってまいりました。それぞれの機関あるいは団体のこれまでの取り組みは大いに評価されるべきであるというふうに思いますが、個別的なサービス提供にとどまり、相互の連携を欠いていたために、利用者にとって必ずしも使い勝手のいいものではありませんでした。例えば、訴訟による解決を必要とする事件を抱えて相談機関を訪れた人が、弁護士による専門的な助言を得る機会を与えられないといったこともあったわけであります。

 今回、この法案では、日本司法支援センターを設立し、支援センターが総合調整役となることにより、個々の利用者にとって必要なサービスが提供されるという点で大きな進歩であると思います。

 続きまして、支援センターの組織についてお話をさせていただきます。

 支援センターの組織については、独立行政法人の枠組みに従っておりますが、これは極めて妥当であると考えます。

 支援センターは、公的な資金を受けてサービスの提供を行う以上、効果的で効率的な業務運営を行い、税金のむだ遣いであるという批判を受けないようにする必要があります。また、その業務運営について、国民への説明責任を果たせる組織である必要もあります。そして、業務運営に関しての責任の所在は明確にされる必要があります。

 このような観点からは、国からは独立した法人であり、国の関与は必要最小限にとどめられ、法人の長が一元的に経営責任を負い、民間の発想を活用して効率的な業務運営を行うことができ、業務運営についての事後チェックが可能な独立行政法人の枠組みに従うのが最適であると思います。

 また、支援センターの業務が司法と極めて密接に関連する点を考慮して、最高裁判所が適切に関与することとなっている点も妥当であると思います。

 支援センターの組織の詳細については支援センターが自主的に決めるべきで、審査委員会を除いて法律による組織を設けず、支援センターの判断にゆだねたということは適切であると思います。

 支援センターにおいて適切な組織をつくっていっていただきたいと思いますが、同時に、特殊法人のように責任の所在が不明確になることのないようにする必要があります。そのため、理事長が一元的に責任を負うという枠組み、つまり、最終的には理事長の責任において判断するという枠組みは維持していただきたいと思っております。

 また、支援センターは、国民のために、弁護士だけでなく隣接法律専門職者の協力も得て、連携協力を通じて構築されるネットワーク全体として最良のサービスを提供できる体制整備の中核となるわけですから、国民から見て公正で中立な組織である必要があると思います。特定の業界に偏ったり、関連業界で支援センターの役員ポストの奪い合いが行われるといった批判を受けることのないようにと願っております。

 次に、支援センターの業務についてお話をさせていただきます。

 支援センターの業務については、司法をより利用しやすくするために重要であり、公的資金を受けて行われることについての国民の理解が得られ、民間では必ずしも十分な取り組みが行われないものを支援センターが行うべきであるというふうに思います。

 このような観点から考えまして、この法案で業務に掲げられている情報提供、民事法律扶助、公的刑事弁護、司法過疎対策、犯罪被害者支援、連携の確保強化はいずれも妥当であると思います。特殊法人の弊害として指摘されているように、業務が無限定に自己増殖するのは適切ではなく、公的資金によって行われることが適切である業務に限定するのは当然であるというふうに思います。

 また、民間活力の活用は重要であり、支援センターの業務が民業圧迫とならないよう、補完的に行われるべきことも当然であるというふうに考えます。

 個々の業務内容については、まず、総合的な情報提供が行われることが画期的であるというふうに思います。利用者にとっては、どこに行っても必要な情報が入手でき、紛争解決までの道筋が示されるということが重要です。これが実現される点で大いに評価できると思います。

 民事法律扶助について、スタッフ弁護士等の活用による業務の効率化が図られ、サービス提供の組織基盤が強固になる点は評価できると思います。対象事件の拡大等の問題は残されておりますが、納税者の負担増加に結びつく問題でもありますし、慎重に検討されるべき問題であると思います。

 公的刑事弁護については、被疑者段階の国選弁護が実現される点で評価すべきであると思います。被疑者の国選弁護人は迅速に選任される必要があります。また、裁判員制度の導入に伴う連日の開廷に対応できる弁護士の体制整備、とりわけ国選弁護人候補者の確保が重要です。支援センターがこれらの制度の土台となる国選弁護人の選任態勢の確保を行わなければ、被疑者国選弁護制度も裁判員制度も機能しないことになりかねないので、十分な取り組みを期待したいと思います。

 司法過疎対策について、公的な資金によって手当てがされることは画期的であると思います。弁護士人口が増加しても、弁護士過疎問題は解消されておりません。日本弁護士連合会が取り組みをしておりますが、これは大変積極的な取り組みで評価されると思いますけれども、資金面でも、弁護士過疎地域に赴任する弁護士の確保の面でも、難しい問題を抱えていると聞いております。

 司法アクセス検討会の検討の中で、弁護士過疎地域において、法律サービスに対する需要がないわけではなく潜在的需要はあること、また、弁護士がいないために、やみ金融等の悪徳業者による被害が多発していることなどが明らかになりました。こうした問題を放置することはできないと思います。今回、総合法律支援体制の整備の中で司法過疎問題への取り組みがされるのは、そういった点で大変喜ばしいことです。

 犯罪被害者支援について、民間での取り組みを尊重しつつ、適切なサービスが提供されるようになる点を評価したいと思います。犯罪被害者の置かれている状況に配慮して、適切なサービス提供がされるようになることを期待したいというふうに思います。

 検察庁でも、犯罪被害者支援員を置いて被害者の不安を取り除いたり、法廷付き添いをするなどの支援活動をしていると聞いておりますが、犯罪被害者にとっては、法律サービスもさることながら、心のケアが大変重要であると思います。こうした分野では、民間のボランティア活動も重要であり、民間のボランティアによる犯罪被害者支援活動がますます盛んになり、支援センターがこうしたボランティア団体と犯罪被害者をうまくつないでいくようになればと願っております。

 最後に、支援センターの業務に関して、法律サービスの提供に当たる弁護士等の独立性について申し上げます。

 支援センターの業務に関して、実際にサービスの提供に当たる弁護士等については、依頼者の利益のために事務を処理する立場にあり、その独立性を確保する必要があります。法案ではこの点が明記されており、妥当であると思います。

 他方で、万一、サービス提供に当たる弁護士等が違法、不当な行為をしたことが利用者の苦情等を通じて明らかになった場合には、支援センターが契約に基づいてきちんとした措置を講じて、利用者の信頼を確保していくべきだと思います。その場合でも、独立性への配慮が必要であり、その意味で、審査委員会の議決を経なければならないとしていることは妥当であると思います。

 最後になりますが、司法アクセス検討会での検討をも生かして、このような法案が提出されたことは大変意義のあることであると思っております。この法案は、これまで見落とされがちであった司法へのアクセスの部分に焦点を当てて、司法を国民により利用しやすくするための総合的な施策を講じることを内容としており、司法の利用者である国民に歓迎されるものというふうに考えております。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

柳本委員長 長谷部参考人、ありがとうございました。

 次に、市川参考人にお願いいたします。

市川参考人 市川茂樹でございます。

 この三月三十一日まで、日弁連の副会長をしておりました。四月以降は、同じ日弁連の日本司法支援センター推進本部副本部長として、この総合法律支援というテーマについて担当しております。本日は、お招きくださいまして、ありがとうございました。

 現在、国会におきましては、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案、それから刑事訴訟法改正案など、司法改革の総仕上げともいうべき重要な法案を幾つか御審議いただいておりますが、この中でも、市民の司法へのアクセスの充実を目指すものとして重要なのが、この総合法律支援法案であると承知しております。

    〔委員長退席、漆原委員長代理着席〕

 日弁連あるいは各地の弁護士会は、かねてより、いつでも、どこでも、だれでも良質な法的サービスを受けられる社会を実現するということを目指しまして、法律扶助の拡充でありますとか法律相談の全国展開、あるいは当番弁護士制度、弁護士過疎地への公設事務所の設置などの諸施策に取り組んでまいりました。また、日弁連等は、これらの取り組みの過程におきまして、つとに、これらのテーマというのは国の責務ではないのであろうかということも指摘させていただいたところであります。

 こういった経緯から、日弁連は、本制度構想につきましては、日弁連の経験あるいは意見を取り入れていただけるよう、関係各方面に意見を申し上げるなどの活動もしてまいったところでございます。

 本日は、この日弁連が申し上げてきた意見の一々をここで御紹介するということは省略させていただきますが、現在御審議いただいておりますこの総合法律支援法案につきましては、今申し上げました日弁連の意見がある程度取り入れられたものとなってございます。

 例えば、運営主体となる日本司法支援センターにつきましては、いわゆる非公務員型の独法に準拠するというふうにされておりますが、この非公務員型とされたこと、あるいはまた弁護士等々の個々の弁護活動の独立性を確保する旨の条文が設置されたこと、またさらにこの独立性を担保する機関といたしまして審査委員会が設置されたこと、さらには業務に地域の声を反映させるため地方協議会を設置するということが定められたことなどを挙げることができます。

 また、支援センターは、一定の枠組みのもと、公的団体からの委託によりまして、新たなニーズに対応する業務、目的外業務と申しておりますが、これも行うことが可能になったということなどもそうでございます。

 このように、日弁連が意見などを申し上げまして制度設計がある程度進められたという今回の法律案につきましては、日弁連といたしましてはこれを高く評価しているところでございます。

 具体的に申し上げますと、特に、新しく公的弁護制度が導入されまして、これにつきまして、それを運営するためにこの支援センターが設立されたということ、それから、いわゆる弁護士過疎対策につきましては、国がこれを行う、国の責任において行うというふうに明定されたことなどにつきましては、まことに意義深いものだと思っておりますし、市民に対する法律サービスの拡充のためには重要な意義を持つものと考えているところでございます。

 こういった基本的評価の上で、日弁連といたしまして幾つかの要望を述べさせていただきたいというふうに存じます。

 まず一つ、第一でございますけれども、この法人の運用に当たりましては、弁護活動の独立性の確保、これが十分に考慮されるべきであるということでございます。特に、刑事弁護におきましては、国家からの訴追の対象とされております被疑者あるいは被告人の権利を守ることが役割となっておりまして、個々の弁護士の弁護活動につきましては、支援センターからも、国からも、その独立性が確保されなければなりません。このことは、刑事裁判だけではなくて、行政を相手にする、例えば民事訴訟、これは国家賠償などでありますけれども、あるいは行政訴訟、行政処分の取り消しを求める訴訟でありますけれども、こういった訴訟などの場合にも妥当するかと存じます。

 法案では、前に述べましたとおり、弁護の独立を確保するため各種の手当てがなされてはおりますが、今後の詳細な組織づくりあるいは実際の運用におきましても、この点が重ねて十分配慮されることが必要であるということを申し上げたいと存じます。

 また、この点に関連いたしましてでございますが、法案の二十九条八項あるいは三十五条の二項におきましては、支援センターの契約弁護士等への措置に関しまして、「(懲戒を含む。)」という文言が使用されているわけでございますが、この点につきましては、自治が認められております弁護士会による懲戒との関係について疑義、混乱を招く記述になっているかとも思いますので、できれば削除をお願いできないものかと考えているところでございます。

 第二番目に、お願いの第二でございますが、すべての市民が良質な法的サービスを受けられる社会を実現するためには、この支援センターというのは国の責務に応じて積極的にその業務を展開することが必要であろうかと存じます。

 欧米諸国、先進国では、既に相当規模の財政出動によりまして、法律扶助事業を初めとする各種の法的サービスを展開しているところでございますが、我が国におきましても、総合法律支援の運営主体である支援センターに対しましては、十二分な財政措置がなされることが必要かと存じます。この点につきましては、法案成立後、なお継続して、政府はもちろんでございますが、国会におかれましても積極的な対応をしていただけるよう切望する次第でございます。

 お願いの三つ目でございますが、支援センターの行う業務の範囲につきましては、法案の成立後も引き続き拡充に向けて検討が継続される必要があるという点でございます。

 まず、民事法律扶助制度につきましては、法案は、裁判手続とその準備を援助するものとされております。したがいまして、裁判外手続、例えば、労災保険の審査手続でありますとか介護保険の審査手続、そういったようないわゆる行政手続などには扶助は及ばないものとされておるわけでございますが、この点につきましては、より幅の広い手続も弁護士の支援を対象とするよう引き続き検討をお願いしたいというふうに思います。

 また、資力要件を緩和する、あるいは、立てかえ制が原則となっておりますけれども、一部は給付制、渡しきりにして返還を求めないという給付制の導入等についても検討されるべきでないか、制度の拡充に向けて検討がなされるべきでないかというふうに考えるところであります。

 また、犯罪被害者の支援業務につきましても、法案の内容は必ずしも十分ではなくて、さらに犯罪被害者に対する保護法制の整備が図られるべきだと思いますし、また、この支援センターの役割につきましても拡充が検討されるべきであるというふうに存じます。

 四番目でございますが、日弁連あるいは弁護士会のこの法人の運営の関与の問題でございます。

 この法案の十条には、日弁連あるいは弁護士会の責務について、「総合法律支援の意義並びに弁護士の使命及び職務の重要性にかんがみ、基本理念にのっとり、会員である弁護士又は弁護士法人による協力体制の充実を図る等総合法律支援の実施及び体制の整備のために必要な支援をするよう努める」というふうに定められております。

 日弁連は、この責務を果たす観点から、支援センターに対しまして、市民の皆様が必要とする優秀な弁護士を確保、養成して継続的に供給していく所存でございます。

 総合法律支援制度が真に市民の役に立って、そして円滑かつ適切に運用されるためには、日弁連あるいは単位弁護士会との連携あるいは協力が不可欠であろうというふうに存じます。

 日弁連といたしましては、各地におきまして、支援センターの設立準備や発足後の運営に積極的に関与していくつもりではありますが、連携協力の実を上げるという観点から申しますと、例えば、理事長等の任命、業務方法書や法律事務取扱規程の認可、あるいは中期目標の指示など、法務大臣が、その権限を行使するに当たって、最高裁判所の意見を聞かなければならないとされておる事項につきましては、法務大臣はあらかじめ日本弁護士連合会の意見も聞くというふうに運用していただけると大変ありがたいというふうに存じるところでございます。

 今国会は、我が国の司法制度にとって歴史的な意義を持つ国会であると存じます。貴委員会におかれまして十分な御審議をいただきまして、よりよい法律とするようしていただきまして、今国会でこの法案を成立させていただきますようお願い申し上げまして、私の意見とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔漆原委員長代理退席、委員長着席〕

柳本委員長 市川参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川忠孝君。

早川委員 おはようございます。自由民主党の早川忠孝でございます。

 本日は、当法務委員会に参考人の各位にはわざわざ御出席を賜りまして、貴重な御意見を開陳いただきまして、本当にありがとうございました。参考人の方々すべて、今回の総合法律支援法案について積極的に評価をしていただいている、こういうことでございまして、内閣の提案された今回の総合法律支援法というのがいかに国民的な大きな基盤を獲得しつつあるかということを端的に理解した次第でございます。

 私自身も、弁護士として長らく法律扶助あるいは当番弁護士制度等の運用にもかかわったことがございます。今回のいわゆる司法ネットあるいは総合法律支援のシステムの中で、これは藤井参考人にちょっとお伺いしたいんですが、私自身は、平成七年の阪神・淡路大震災が発生したときに、日弁連の方で災害対策本部を設けまして、法律相談を総合的に行うということで各地から弁護士が現地に伺う、あるいは、最高裁、法務省もそれぞれ必要な措置を総合的に講ずるということで、共同作業でもって阪神・淡路の大地震による被災者救援のための総合的な活動をされた。それがある意味で法律扶助に対する国庫補助を急激に拡大させて、しかも、それが有効に機能した。

 その成果をやはりその後にもつなげなければならないのではないかなというふうに私は思っておりましたが、今般、総合法律支援法という形、あるいは日本司法支援センターという形で構想が結実をしてきて、いよいよ成果を迎える、こういうことでございます。

 従前の法律扶助事業と比較して、今回の総合法律支援構想というのは、どの程度に大きな歴史的転換を意味するのかといったことについて、まず、藤井参考人の御所見をお伺いしたいと思います。

藤井参考人 実は私も、平成七年の阪神・淡路のときには、一弁護士として神戸に、緊急な法律相談ということで何度か足を運びました。

 御指摘の点ですけれども、先ほども若干触れさせていただいたんですが、我が国における民事法律扶助の質的転換を図るものである、ただ予算が増額する、増額を期待しているわけですけれども、増額するというだけにとどまらず、私は、民事法律扶助事業に対する国の姿勢の転換を意味するものである、こういうふうに理解しております。その点は、やはり国の事業としてこの法律は位置づけている。

 民事法律扶助法は、これは議論がありますけれども、民間の事業として位置づけて、それを国がバックアップする。公共性の高い事業であるから、国はバックアップするという形で、補助金ということで国のお金が拠出されております。

 今回の総合法律支援法は、これを国の事業として位置づけ、管理費も含めて、つまり人件費ですとかもろもろの設備費ですけれども、管理費を含めて国が拠出する、こういう構造になっていると理解します。これは、我が国における民事法律扶助事業に対する国の姿勢の質的転換を意味するものである、大変歴史的に意義のある改革である、こういうふうに考えております。

早川委員 長谷部参考人にお伺いしたいと思います。

 長谷部参考人がかつて、これは「法律のひろば」に寄稿されている「「司法ネット」に求められるもの―イングランドの実例を手がかりとして―」こういう論文を拝読させていただきました。ここで、「イングランドをはじめとする諸外国が法律扶助制度の拡充に取り組んできたのは、資力の乏しい人々に対しても裁判を受ける権利を保障することが国の責務であると考えられたためであった。」冒頭にこういうふうな文章がありました。

 そこで、諸外国において、法律扶助制度というのはどういう位置づけで行われてきたのか。従前の我が国の法律扶助事業との格差といったことについてお教えいただければと思います。

長谷部参考人 私のつたない論文をお読みいただきましたそうで、どうもありがとうございます。

 イングランドは法律扶助制度の先駆け、そういう位置づけになるかと思いますが、それは第二次世界大戦が終了したそのころからでございますけれども、これは、党派の利害なく、すべての党派が一致して法律扶助事業を拡充しなければということで意見が一致いたしました。その基底にある理念と申しますのは、一つは、社会福祉の一環として、あるいは社会保障の一環として、裁判を受ける権利を保障するために必要な資金援助をする、そういう考え方があったというふうに思います。

 また、欧米におきましては、やはり紛争を司法によって解決する、あるいは訴訟によって解決するということが非常に強固な信念としてございまして、そのために、例えば、紛争を抱えていても訴訟による解決を得られないような人がないようにする、泣き寝入りをするような事態がないようにする、そういう考え方に基づいていたかと思います。

 以上でよろしいでしょうか。

早川委員 私は、そもそも、扶助という用語を使うことについて、若干、福祉的な、恩恵的なニュアンスが強過ぎて、これはまさに支援なり援助なりという用語の方が適当なのではないかなと思っておりました。今回は、司法支援というような形になったということは、従前の扶助という考え方が一歩前進したのかしら、あるいは、そういった法律上の援助を受ける権利性といったことが位置づけられてきたのかなというふうに思っております。

 それで、今回の総合法律支援構想の中では、いわゆる被疑者段階の公的弁護制度が導入をされて、その受け皿として司法支援センターが考えられるということでございます。

 私自身が平成元年に東京弁護士会の一つの会派であります法友全期会の代表幹事をしていたときに、十周年の記念事業として、まさに当番弁護士制度を我が国においても採用すべきであるということで、これは、イギリス等の先例を紹介させていただくということで、そのレポートを出させていただいた。その結果が、各弁護士会で具体的な当番弁護士制度に定着し、結果的には日弁連全体の事業として現在継承されている、こういう流れになるわけです。

 その中で、長谷部参考人の論文の中には、こういう刑事についての紹介がなかったんですけれども、現実には、イギリス等では、刑事についてのそういった司法的な支援というのはどうなっているんでしょうか。

長谷部参考人 私は、実は専門が民事訴訟法でございまして、それで、私の拙稿では刑事に関する部分というのは紹介していないわけですけれども、先生がおっしゃるように、当番弁護士制度というのは、イギリスにおいてかなり広く行われておりまして、弁護士会が積極的な取り組みをしてまいりました。非常に評価されている制度であるというふうに思います。

早川委員 また藤井参考人にお伺いしますけれども、法律扶助事業ではいろいろな独自の事業を実施されてきた。日本司法支援センターにこれがすべて移管されるのか、あるいは移管されないままで残るのか、その辺については法律扶助協会としてはどのようにお考えなんでしょうか。

藤井参考人 先ほどの意見陳述でも若干触れさせていただきましたけれども、当協会は、法律に基づく指定事業のほかに、自己財源を使って、いわゆる自主事業と呼んでおりますけれども、さまざまな事業を展開しております。例えば、犯罪被害者支援もそうですし、現在であれば被疑者弁護援助制度、これも自主事業というふうに位置づけられます。その一部、被疑者段階の弁護援助は、今回、公的弁護ということで本来業務に入りましたけれども、委託業務ができるという法律の構成になっております。この委託業務の条項を使いまして、現在当協会がやっている自主事業も、できればすべてこの支援センターに引き継いでいただきたいというふうに思っております。

 ただ、まだ業務方法書等が策定されておりませんので、準備期間の間に、関係機関と協議しながら、できるだけ多く自主事業を引き継いでいただきたい、こんなふうに考えております。

早川委員 これも藤井参考人にお伺いしたいんですが、弁護士会が主として設立する法律扶助協会の場合では、それぞれの地域の実情に応じて、さまざまな法律扶助業務というのが編み出され、実行されてきた。ところが、今回のように独立行政法人ということになった場合に、その事業内容をどうやって決めていくのか。さまざまな民間の需要というものを、だれがどういう形でそれを取り入れるのか。そういった事業内容を決める場合にどんな配慮をすべきなのかということについて、これまでの扶助協会での実績に基づいて、お考えがあればお聞かせいただけますか。

藤井参考人 当協会の自主事業は、今御指摘のとおりでありまして、各地の支部、その支部の地域の実情に応じて提案され、事業を実施してきた。したがって、全国的にやっている事業もありますし、あるいは、例えば東京都支部、大阪支部等々で、地域限定型で実施している事業もあります。これは、地域の実情に応じてやはり需要が違うんであろうというふうに思われますので、今回の法律のもとで成立する支援センターにおいても、地域の実情に合った事業の実施が行われるべきであるというふうに考えております。

 法案の三十条の二項に、いわゆる委託事業という条項が設けられております。この委託主体としては、例えば、営利を目的としない法人、さらには国際機関、国、地方自治体等々が記載されております。地方自治体というのは当然地域限定でありますから、また、営利を目的としない団体というのは日弁連だけではなく、地域の弁護士会も多分入るんだろうというふうに思われます。

 したがって、法律自体が地方公共団体の委託ということを想定している以上、地域限定型のいわゆる委託事業、地域の実情に合った委託事業も可能なんだろう、こんなふうに理解しております。

 この条項を有効に活用していただいて、さまざまな需要に応じた事業が実施できればと思っております。

早川委員 そこで、市川参考人にお伺いいたします。

 日本司法支援センターの業務に、日弁連及びそれぞれの単位弁護士会が具体的にどのように関与されるのか。

 それから、先ほど、有能な、優秀な弁護士を供給するということについての体制づくりというお話があったと思いますが、常勤となる弁護士あるいは契約弁護士の採用というのはどんな形で行われるのか。あるいは、そういった実際に司法センターで仕事をされる方々の待遇について、何か基準というのが設けられるのかどうか。余りにもコストがかかって、司法支援センターそのものが常に赤字で多額の税金投入をしなきゃいけないということになると、なかなか国民的な広がりが出てこなくなる。といって、しっかりした業務をしていただくためには、やはり日本全国どこでも均一の良質なサービス、いわゆるユニバーサルサービスが必要になる。その辺の兼ね合いの問題がありますので、それについて何かお考えがあるのかどうか。

 それから、最後に、こういった司法支援センターが発足することによって、一般の弁護士の業務というのは今後変わっていくのか、変わっていかないのか。一般の法律事務所とそれから司法支援センターとの間で、何らか弁護士業務の、法律業務提供についての競争関係が生まれるのか、生まれないのか。あるいは、一般の法律事務所がいわゆるワンストップの総合法律支援サービスといった形を他業種と提携してやるというような、こういう動きがあることに対しては、弁護士会としてはどういうふうにお考えなのか。

 そういったあたりについて、まとめてお答えいただけますでしょうか。

市川参考人 幾つか、かなりの論点についてお尋ねになりましたので、順番にお答えさせていただきたいと存じます。

 まず、日弁連なり弁護士会がこの法人にどのように関与をしていくのかという点が総論的な御質問としてあったかと思います。

 日弁連といたしましては、この点につきましては、大きく言いまして三つの関係でかかわり合いがあるだろうというふうに承知しております。

 一つは、先ほども申し上げさせていただきましたけれども、中期計画を提出するとき、あるいは中期目標を主務大臣が示すとき等々、節目の際に、日弁連として意見を言わさせていただく機会を与えていただきたい。そういう機会を通じまして、日弁連として考えていることを申し上げさせていただく。あるいは、期待されているところの連携協力の実を上げていくという、それを図っていきたいというふうに考えております。それがまず関係の一つでございます。

 もう一つは、御指摘ございました、スタッフ弁護士の供給という点での関係でございます。

 これは、御案内のように、ある程度の数の弁護士の供給がないと、この法人が期待されるような役割を果たすことはできないというふうに私どもも承知しておりまして、十分に役割を果たせるよう必要な数、具体的にはまだはっきりした数は示されておりませんけれども、少なくとも二百人とか三百人とか、そのぐらいになるんじゃないかと私どもは考えているわけでございますけれども、そういったオーダーの弁護士につきまして、ある程度の年限をかけて順次供給していく、それが責務であろうというふうに承知しているところでございます。

 それから、もう一つのかかわり合いと申しますのは、支援センターそのものの運営でございます。

 これには多くの方々が関与されることになるかと思いますが、その一翼をやはり日弁連あるいは弁護士会も担っていかなければならないのではないかというふうに承知しているところでございまして、例えば、今の法律扶助協会にも多くの弁護士が関与しているところでございますが、同じような意味合いにおきまして、この支援センターにも多くの弁護士がその運営に関与していくということになろうかというふうに思っております。

 それから、次の御質問でございますが、数をいっぱいやるのは結構ですけれども、赤字になったりしてはいけないでしょうし、国民の負担も考えなきゃいけないというような御指摘だったかと思いますが、おっしゃるとおりでございます。活動は活発にしていかなきゃなりませんが、むだと申しましょうか、工夫できるところは工夫しなければならないというふうに考えております。

 その点でいきますと、例えば、先ほどちょっと申し上げました、スタッフ弁護士というものをどう活用していくのかというのが一つの大きな論点としてあるのではないかというふうに承知しております。スタッフ弁護士の研修、研さんを重ねて専門化を図る、あるいはスキルアップを図る、マンパワーとしての増強を図るなどの措置を講じまして事件を効率的に処理するという工夫が必要であろう、そういうことによりまして全体的な事件処理、あるいは事務処理のコストを下げていくということが必要じゃないかというふうに考えているところでございます。

 それから、次にございましたのが、一般弁護士の業務とはどういう関係になるのかという御質問だったかと思いますが、一般の弁護士もやはりこのセンターには深く関与しなければならないというふうに思っております。

 先ほどスタッフ弁護士についていろいろ申し上げましたけれども、実は、スタッフ弁護士がいるということは、その前提として多くの、数千人というオーダーの一般開業弁護士がこの支援センターの仕事に関与する、それでも足りない部分、あるいはそれでは非効率な部分をスタッフ弁護士がやる、そういう構造を私どもは考えておりまして、先にスタッフ弁護士があってその後に一般開業弁護士があるというのじゃなくて、ベースとしては一般弁護士がいる、その上に、足らざるところといいましょうか、工夫すべきところにスタッフ弁護士がいる、そういう構造を考えておりますので、まず一般弁護士が広く関与していただかなきゃならないというふうに基本的に思っております。

 特に公的弁護などにおきましては、わずか二百人、三百人のスタッフ弁護士では到底処理できるものではない、多くの弁護士が必要である。現在、八千三百人の弁護士が当番弁護士として登録してございますけれども、その弁護士が丸々関与することは必要であろうかというふうに思っているところでございます。

 そういたしましても、それでも支援センターと一般の弁護士との競争なり何かの関係が出てくるのではないかという御指摘かと思いますが、私どももそれは御指摘のとおりであると思っています。

 具体的に申し上げますと、先ほど申し上げましたように、スタッフ弁護士というのは専門化も図られますし、大量の事件を迅速に処理するというスキルも身につけるわけでありましょうから、そういったスキルなりノウハウというのは一般弁護士にもかなり還流されてくることがあるのではないかというふうに予想してございまして、すぐというわけにはまいりませんでしょうが、支援センターの業務が開始されて何年かたちますと内部の研修、研さんも充実してまいりますでしょうし、先ほど、一般弁護士に対するそういう情報の提供、あるいはスキルの提供ということも通じて一般弁護士の能力向上にもまた役立っていくのではないかというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

早川委員 時間ですので終わります。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 三人の参考人の先生方、貴重な御意見を本当にありがとうございました。

 なぜか、この法務委員会の参考人、本国会は常に法案に賛成する方ばかりいらっしゃっておりまして私は非常に疑問なんですが、何で反対の人を呼ばないのかなというふうに思うんですけれども、和やかな委員会だということなんだと思うんですが、ちょっと反対の立場からの質問もさせていただきたいと思いますので、御容赦をお願いいたしたいと思います。

 最初に、長谷部先生にちょっとお伺いしたいのですが、学習院大学のインターネットで先生のところをちょっと拝見させていただきましたが、先ほど、早川委員の方からイングランドの著書があるというお話でしたけれども、「最近、興味のあること」というところに司法制度改革のことが書かれてありまして、ロンドンで在外研究をしていた一九八八年から九〇年までの間にイングランドの法曹制度改革に遭遇した、そのときに感じたのは、既得権益を有する勢力を説得して改革案を断行するのは容易ではないけれども、社会の要請を無視して現状に固執していてはいかなる職種といえども将来の発展は望めないということだったというふうに、本当にすばらしい御意見があるんですが、このとき先生が感じた障壁というか、またそれをどういうふうにイングランドでは破っていったのか、お教えいただければと思うんです。

長谷部参考人 この問題は本当に根深いものがございまして、特にイングランドの法曹制度というのは本当に何百年という伝統がございますので、そのまま日本とは対比にならないということを念頭に置いた上でお聞きいただきたいと思いますが、古くからの伝統に縛られていて、かつ、それによっていろいろな慣行がつくられてきたということがございます。

 現時点から見ると、必ずしも合理性はないんだけれどもというようなことがあります。例えば、バリスター、法廷弁護士というふうに言われる人は、これもまた昇進していくといいますか、年齢を積んで技術が向上してまいりますと勅選弁護士、QCという地位につきますけれども、勅選弁護士になったバリスターが法廷に出る場合は必ず、ジュニアのバリスターと言いますけれども、若い弁護士を一緒に連れていかなければいけない、そういうような慣行がございました。そのために、弁護士費用がそれだけ余分にかかるというようなことがありました。

 もちろん、そういった費用に関する問題というのは、もう既に依頼者からそれだけ取れるということになっておりますので、それをまた減額にするということは、既得権益を守るという観点からいいますとなかなか難しいことであった。そういう費用が絡むような問題につきましては、それを解決するのはなかなか大変であるというふうに思います。

 その後も民事司法制度改革がイングランドでは進んでおりますけれども、九五年からずっと進んでおりますが、弁護士費用に制度改革を加えようということになりますとなかなか難しい問題があるということがございます。一面では、もちろん、適切な、適正な報酬を確保するということは法律業務の質を向上させる上でも非常に重要なことだと思いますけれども、他面で、民事法律扶助がどのような形で、国の資金を使ってするということになりますとやはりある程度抑えなければならないという、そのあたりの兼ね合いが非常に難しいのだというふうに感じた次第です。

富田委員 ありがとうございました。

 実は、この三法案の審議の中で、反対の立場の方たちから事務所にいっぱいこういったファクスが送られてきます。法案に対する質疑の時間が私いただけないものですから、ちょっとこの機会を利用して、その中で、今回の総合法律支援法案について、国営弁護法案だというふうに書いて、五点ほど、これは批判なんだと思うんですが、刑事事件の簡易、迅速、重罰処理のための国営弁護システムをつくろうとするものですということで反対をされるんだと思うんですが、その中に、まず一つ目として、法務省の監督する日本司法支援センターが国選弁護を運営します。二点目として、支援センターの理事長は法務大臣指名、法務省が業務実績などを評価し、経済効率優先に業務を運営します。三点目として、重大事件の弁護は事実上支援センターが独占的に管理します。四点目として、国選弁護人は支援センターがセンターと契約した弁護士の中から指名し、弁護士会の推薦方式はなくなります。五点目として、契約弁護士には法務大臣が決めた基準どおりの刑事弁護が義務づけられ、懲戒もしますというように、何かまるで暗黒社会に向かうんじゃないかというような批判が述べられているんです。

 日弁連の中にもこういった考え方を持たれているグループがいらっしゃるということで、かなりの働きかけをされているんだと思うんですが、こういった考え方に対して、日弁連の副会長も務められていた市川参考人はどのように今お考えでしょうか。

市川参考人 今御紹介なすった意見というのは日弁連内にもございます。事実ございまして、私どもといたしましては、そういった方々も含めて御納得いただけるように、今会内で議論を進めているところではございます。

 とりあえず、まず私の考えを申し上げさせていただきますと、確かに、弁護士の相手になるのは検察官、検察官というのは法務省に所属しているということで、言ってみますと敵方同士みたいな構図になっていることは確かでございます。

 しかし、一つには、そういう相手方が国からどっちみち出るわけですから、国なり法務省がその主管であるという、そのことだけですべて決めるのはいかがなものかという私どもの考えでございまして、例えば、具体的な制度設計がどうなっているのか。例えば、論者に言わせたときに、法務大臣が干渉しようと思ったときに、あるいは法務省が干渉しようと思ったときに、干渉し得るシステムになっているのか、それを許さないシステムになっているのか、そこが大事だろうというふうに考えてございまして、今回の法案では、弁護の独立性を保障するという趣旨の条文が設けられましたし、審査委員会という特別の機関も設置されるようになりましたので、そういった制度設計につきましては十分な配慮が払われている。

 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、なお今後の運用に当たってもさらにその独立性についての配慮をお願いしたいということは申し上げているところでございまして、法務省の所管という一事からもう弁護の独立はなくなるというふうには考えていないということでございます。

 それから、先ほど御紹介なすった意見の二つ三つにつきましては、はっきり言って明らかな誤解も入っている。一々申しませんけれども、御懸念としてはわからなくもないのでありますが、誤解だけはやはり解いていただきたいというふうに考えているところでございます。

 その上で、日弁連として市民の皆様のためにどういう役割が果たせるのか、市民の皆様にどういうことができるのか、弁護の独立性も保持しながらどういうことができるのかという観点から、ぜひともそういう方々には御意見をちょうだいしたいなということで、会内で議論を進めているところでございます。

富田委員 ありがとうございました。

 市川先生のお気持ちはすごくよくわかりますし、先ほどの中に誤解の部分がかなりあるなというふうに私も思うんですが、先生が先ほど言われていた、日弁連として優秀な弁護士を確保、供給するんだ、ここが最大のキーになるんだと思うんですね。

 ただ、私は非常に懸念がありまして、今回の一連の司法制度改革の流れの中で、法科大学院がこの四月からスタートをしまして、これはかなりいい方向に行くんじゃないかと思うんですが、平成三年、平成四年ころから司法試験の合格者が急増しました。この中で、私はもう明らかにレベルはダウンしているというふうに思っております。このレベルダウンした人たちに対する教育がなされないままこのような司法制度改革が進んでいったときに、本当に支援センターと契約される弁護士さんたちがきちんと弁護業務を全うできるんだろうかということに対して非常に疑問を持っております。

 先ほどの市川先生のお話ですと、今、当番弁護士として登録されている八千人なり九千人が周りでしっかり支えた上で、それでも専従スタッフが二百か三百は最低必要だというお話でした。そういったスタッフ弁護士になるような方たちがどんなところから出てくるのかというのが非常に疑問なんです。

 きのうの毎日新聞に、「あなたの値段」というずっと続いているところに弁護士が出てきまして、「民事の報酬、青天井」なんて書いてあるんですね。年収八億円超なんというのが出てきまして、すごいなと思うんですが、その記事の最後の方に日弁連が行ったアンケートだということで紹介されているんですが、回答が四千二百七十七人ですから五分の一ぐらいですか、確定的なアンケートとはならないと思うんですが、年収が五千万以上と答えた方が五・三%いる。五百万円以下が一八・九%、五百一万から一千万が二五・四%。一千万以下の収入の方がかなり多い、ちょっとこれは驚きなんです。

 この四月から、日弁連は、日弁連としての報酬規定を廃止いたしましたよね。そうなると、ある意味で自由に報酬を決めていいというようになってきた。要するに、報酬のかなり低い部分の皆さんがどどっとスタッフ弁護士として流れ込んでくるのではないかというふうに私は非常に懸念をしているんですが、そのあたりは市川先生はどのようにお考えですか。

市川参考人 御指摘のように、スタッフ弁護士をどのように確保するのか、あるいはどの方面から確保するのかということは、私どもにとって非常に重要かつ喫緊の課題であるというふうに考えているところでございます。

 私ども、むしろ、課題だというゆえんは、用意できないのではないのかという意味での心配でございます。

 実は、日弁連で、昨年の夏に全会員を対象にアンケートいたしました。それは、司法支援センターが平成十八年発足を予定ということになってございますが、もしも発足した場合、あなたはスタッフ弁護士になっていただけますかという観点のアンケートを全国二万人の弁護士に出しました。うち、条件つき、つまり、無条件ではならないで、条件が満たされたらなってもいいとおっしゃった、その条件つき了解も含めて、なってもいいと言っててくれた方は五十四名でございました。無条件という方は二十数名でございます。

 そういう数字からいたしまして、私どもはその確保が大丈夫かという点の心配をしておりまして、それこそが日弁連の大きな課題、責務になっていくだろうというふうに今承知しているところでございます。

 具体的に、ではどう考えているかといいますと、一番の、今開業をしている弁護士が、看板を下ろして、事務所をたたんで支援センターのスタッフ弁護士になってもらうというのは、やはりなかなか現実の問題として困難ではないだろうか。先ほど、先生の方の収入のアンケートを見て、どどっと来るのではないかという御指摘もございましたけれども、私はそのアンケートはちょっと実は承知しておりませんでしたけれども、私どもとしては、現実の問題として、看板を下ろしてというのはなかなかないのではないのかと。アンケートの結果もそうなっているということでございます。

 やはり、そうなりますと、司法修習生のうちから、君はスタッフ弁護士にならないかという、ある時期からでありますけれどもお誘いをして、そして弁護士になったときにいきなり司法支援センターに行っていただくんじゃなくて、いわゆる協力事務所あるいはマザー事務所とも言っておりますけれども、それを一年なり二年かけて訓練、養成する事務所に入っていただきまして、そこで一、二年、いろいろな民事、刑事等々の事件の経験を積んでいただきまして、ある程度一通りできるようになってから司法支援センターに行っていただく、そういうシステムをつくらなきゃいけない、日弁連といたしましては。そのシステムの具体的な内容、制度設計の詳細はどうなければならないのかなどといったところにつきまして、今議論を進めているところでございます。

富田委員 ありがとうございました。

 最後に藤井参考人にお尋ねしたいんですが、先ほどの御意見の中で、広義の民事法律扶助事業の拡充にとっても大変いい法案だというお話でしたけれども、このレジュメの中では、「これらの事業が円滑かつ適切に稼働すれば、国民の司法アクセスは大幅に改善される」と。うまく機能できればと先ほどおっしゃっておりましたけれども、どういった点に留意すればこのシステム、この事業が円滑かつ適切に稼働していくというふうに、これまで現場におられたわけですから一番御存じだと思いますので、その点のアドバイスをいただきたい。

 もう一点、総合法律支援法の課題の中で述べられておりましたが、当番弁護士制度が導入されなかったと。先ほど早川委員が、当番弁護士導入にいろいろ尽力されたという御質問をされておりましたけれども、私も当番弁護士制度ができたときに千葉県弁護士会に所属しておりまして、最初に担当になりまして、初日に行った先で二件受任いたしました。これは本当にすばらしい制度だなというふうに思いました。ただ、実際にやっていますと、これはもうタコが足を食っているようなもので、弁護士の負担は本当に大変だ。その一番負担が大変な部分を残されていいとこ取りされたんじゃないかなというふうに今回の法案は思うんですが、その部分について、一番大変な部分を残されたということについて、法律扶助協会の方の立場としてはどんなふうに思われているか。

 この二点、御回答いただければと思います。

藤井参考人 まず第一点の、円滑かつ適切に実施されれば、国民の司法アクセスは大幅に改善されるという点の趣旨なんですけれども、今回の総合法律支援法は、基本理念と組織の骨格について触れられておりますけれども、具体的な事業の内容については、業務方法書あるいは契約約款、法律事務取扱規程、そこに定められるということが予定されております。

 問題は、どういう形で事業を実施するかということであって、それは今回二年間かけて準備作業の中で明らかになるんだろうと思います。

 留意点としては、一番大きな点なんですけれども、現在当協会は非常に脆弱な、組織が脆弱である結果、ほとんど弁護士のボランティアによって支えられている。全国の弁護士がいわば手弁当でこの扶助事業を支えているというのが現在の現状ではないかと思います。ただ、手弁当で、ボランティアでやっているということは、その反面非常に熱心に、正義感に満ちてやっている、こういうことも言えると思います。

 今回の予定されている支援センターも、今まで以上に全国の弁護士あるいは隣接の専門職種の方々も入りますけれども、そういう方々の全面的協力が得られる、そういう組織にしなければいけないし、全面的協力が得られるような業務の運営がなされなければいけない、この点が一番大きいんだろう。もし全国の弁護士あるいは隣接専門職種の方々がこの支援センターにそっぽを向いてしまうということになれば、やはり支援センターという箱ができたけれども、結果としては国民の司法アクセスの改善には役立たなかったということになると思います。

 したがって、これからつくられるであろう業務のあり方については、全国の関係者が全面的な協力をしようというような内容で業務方法書なり法律事務取扱規程等々の策定をお願いしたい、こんなふうに思っております。

 二点目の当番弁護士制度でありますけれども、多分さまざまな紆余曲折があったんだろうと思います。

 御承知のとおり、日弁連は、身柄全件に対して公的弁護制度を導入すべきであるという主張をしてまいりました。身柄全件ということであれば、結果として当番弁護士制度は要らないということになるかと思いますけれども、現時点の法案では、将来的には必要的弁護事件に拡充、拡大されますけれども、やはり対象事件が限定されている。

 これが今後どうなるかわかりませんけれども、対象事件が限定されるということであれば、やはり初回無料接見というのは極めて重要である。自分がこれからどうなるんだろうか、特に、例えば外国人の場合は、日本の法制のもとで自分がどうなるのかというのを非常に不安に思っています。適切に犯罪の趣旨を伝えるとともに、今後の見通しについて適切にアドバイスする。

 また、必要があれば、私選でもあるいは公的弁護、国選でも構いませんけれども、適切に弁護人をつけていく。場合によっては必要ないという事件もあるかもしれません。こういう、対象事件が公的弁護で限定されるという制度設計をするのであれば、国費による当番弁護士制度の導入というのが極めて重要である、こんなふうに理解しています。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

柳本委員長 御苦労さま。

 川上義博君。

川上委員 無所属の川上でございます。

 参考人の皆様には大変御苦労さまでございます。

 私、実は県議会議員をしておりまして、鳥取県で七年か八年前に、行政サービスの中に公的サービスを地方行政の中で入れたらどうかということを最初に考えまして、七年ぐらい前だったでしょうか、やりました。知事は、それは大変いいアイデアでございますということで、ぜひ積極的にやりましょうということでスタートしたんですけれども、逆に私は、弁護士を県が二、三人抱えて朝から晩までいろいろな相談に乗りなさいという提案をしたんですね。ところが、要するに、行政訴訟を起こされたら、その弁護士が、相談される方に行政、県を相手に訴訟を起こされたら弁護士法に抵触するかもしれないという問題がありまして、それでどうするかという話になって、日弁連さんがひまわりでやろうということで、鳥取県に、一地方都市にそれで実現したんですね。

 そういうことがありまして、実は長谷部参考人に聞きたいんですけれども、法務省の答弁は、支援センター設置に伴って自治体は必要な措置を講ずる必要があるという話なんです。公共団体の果たすべき役割というのをどのようにお考えなのかということなんですね。当然、地方団体にとっては、積極的に予算の措置を講じて参加する地方団体と、全く消極的な地方団体が出てくると思うんですね。その濃淡の、さっきユニバーサルサービスとありましたけれども、同じレベルのサービスを全国やるというのはどのようにしたらいいのか。地方の首長の考えもあるんですけれども、そのあたりはどうお考えですか。

長谷部参考人 司法アクセス拡充のために地方自治体が果たすべき役割ということは、検討会でも重要な論点ということで議論がされました。

 既に地方自治体の中でいろいろ取り組みの仕方、先生が御指摘のように濃淡があるということでありますが、積極的に取り組んでいる自治体がそれを取りやめることのないようにしてもらいたいということは非常に強い意見としてあったわけであります。そういった自治体は既にいろいろなノウハウも積み重ねておられることですので、それをぜひ生かしていっていただきたいということがあります。

 問題は、今まで必ずしも十分な取り組みがなされていないというところかと思いますけれども、そういったところに対して支援を広げていくという意味において、この法案は非常に意義があると思います。

 ただし、そうは申しましても、やはり自治体が一番一般市民にとっての最も身近な窓口であるということは、これは疑いがないわけでありまして、まずそこで相談を受けていただく、そして支援センターの方に回していただく、あるいは逆のこともあるかと思いますけれども、そういった形で連携をうまくしていただくということが今後司法ネットをあまねく全国に広げていく上で有益であるというふうに考えております。

川上委員 次に、先ほど、日弁連の意見を、いろいろな運営に意見を反映したいんだと支援センターの市川先生がおっしゃっていましたけれども、当然これをやる場合、弁護士の先生方の協力というのは必要不可欠なことだと思いますが、先ほど長谷部先生が、理事長が一元的に責任を負う枠組みがこれは必要なんだという話がありました。

 支援センターの最終的な業務運営の責任と経営責任というのは、当然、独立行政法人でありますから理事長があるいは理事が責任を負うだろうと思うんですね。したがって、余り過剰な意見とか、寄ってたかってどうのこうのというのは、その理事長というか理事の判断を危うくしたり、あるいは左右する、あるいは拘束するというふうな危惧があるんではないかなと思いますけれども、あくまでも発言される方は、責任が伴えばいいんですけれども、伴わない無責任な発言もされる方があるかもしれません。そのあたりの責任の所在の明確化ということについて、市川先生はどのようにお考えでしょうか。

市川参考人 この支援センターの組織というのは独立行政法人に準じたシステムとされておりますので、先生おっしゃられましたように、独法でやるということになりますと、やはり理事長は一元的に責任を負うというシステムになってございます。

 ただ、申し上げましたのは、法律上の仕組みは確かにそうでありますけれども、日弁連といたしましては、これに協力する責務を負うということが法律にも書かれておりまして、その観点からいきまして、先ほど申し上げましたような、必要とするスタッフ弁護士は教育しなければならないでありましょうし、日弁連も似たような仕事、事業を、弁護士過疎対策等々の事業をやっておりまして、それとの連携確保を図るということも大事なことであろう。国民の皆様に公平にかつ効率的にサービスを提供するという観点からは、やはり両者が適切に役割分担を果たすということも求められていることだろうというふうに承知するわけでございます。

 その観点からいたしますと、それぞれ勝手といいますか独自に、ばらばらに事業を進めるというのでなくて、連携をしながら、協議をしながら事業を進めていくというのは非常に有益なことなのではないかというふうに考えるわけでございます。

 そういった観点からいたしますと、日弁連はこういう事業を考えておりますし、こうしたいと思っていますということを申し上げなきゃならないと思いますし、支援センター側としてはその点どういうふうにお考えになっているのかというのはまた教えていただきたいなと思うわけでありまして、そのことは恐らく、立場を変えて、支援センター側もやはり同じようなことがあるのではないのかと。だといたしますと、意見を申し上げるという表現ではありますけれども、そこら辺のところの風通しをよくして、資源のむだ遣いと申しましょうか、そういったことを極力避けるようにするのがよろしいのではないのかというのが、意見を申し上げたいというゆえんの一つなのであります。

 もちろん、日弁連とは別な団体ではございますので、おっしゃるような、過剰介入というんでしょうか、そういうことになることは厳に慎まなければならないことだと思いますけれども、よりよいサービスを国民の皆様に提供するという観点からは、一定の限度で、節度を持ってそのような意見交換をする、風通しをよくするというのは、むしろ求められていることではないかというふうに考えておるところでございます。

川上委員 それにちょっと関連しますけれども、この支援センターというのは公共性の高い組織であるわけですね。したがって、中立公正に業務を運営するということは当たり前でありますが、そのセンターの役員がだれか集中的にある種の業の方が占めるとか、そういうことになるのはやはりちょっとこれはまずくなるんじゃないかなと素人的に考えるんですね。

 一番いいのは多様な人選を図っていく、これはすごく当たり前の話でありますが、例えば経営手腕にすぐれた人とか、学識経験者の方とか、あるいは法律、裁判員制度もそうなんですけれども全く素人の方を入れるとか、そういった配慮というのは、先ほど長谷部先生おっしゃっていましたけれども、ポストの奪い合いがないようにという話がありまして、これは非常に皆さんの良識をぜひ発揮してもらいたいと思うんですが、そのあたりはどのように。市川参考人にお伺いいたします。

市川参考人 センターの役員が関係各方面広くから構成されることが必要ではないのかという点につきましては、日弁連もそのように考えております。日弁連としまして、役員のすべてなり大多数を日弁連で占めたいということを主張したことはございません。

 ただ、申し上げておりますのは、先ほどの意見の関係で、やはり日弁連としては、相互の事業の実施を円滑に図るということ、それからスタッフ弁護士も、私、先ほど二百人とか三百人という話を申し上げましたけれども、それは私の方がそうでないかと思って言っているだけの話でございまして、支援センター側あるいは立法当局から二百人だの三百人だのという数字を言われているわけではないわけでございます。

 つまり、何人送っていいのか、何人求められているのかというのは厳密にはまだわからないわけでございまして、ただ、そういった点につきましても、日弁連、このぐらい必要だよ、これだけ用意しなさいよという話は早目にやはり言っていただかないと、きょう言われてあすと言われても提供できないわけでありますので、そういった意味での風通しも必要かと思うわけでございます。

 つまり、協力しようというお話なわけでありますけれども、協力いたしますけれども、協力するための環境もひとつ御用意いただきたいということをお願い申し上げているわけでありまして、そういう意味では、役員に関しますと少なくともやはりせめて一人ぐらいはという気持ちはございますけれども、あるいは御懸念されているような、大多数を日弁連でとかいうようなことは毛頭考えたことはございませんので、その点ははっきり申し上げたいと思います。

川上委員 いや、私は別に弁護士会の皆さん、敵対しているわけじゃなくて、私なんか、鳥取県で最初に我が鳥取県議会の議場で模擬裁判を実施した責任者でございますから、そのあたりは質問の誤解のないようにしていただきたいと思います。

 藤井参考人に、先ほど長谷部参考人から、税金なので、いろいろな運用とかお金を使う場合、厳密に処理されなければなりませんよ、当たり前の話ですという発言がありまして、サービスの提供というのは、行政もそうなんですけれども、不採算というか赤字になるというのは当たり前だろうと思うんですよ。

 サービスをやるからには不採算というのが必ず出てくるというのは当たり前なんですけれども、だからといって野方図じゃ困るんですね。いいかげんにやられたら大変国民が迷惑するので、支援センターの業務とか業務の運営を効率化する、それを明快に国民に示す、それで国民の理解を得るということが必要なことだろうと思いますが、そのあたりのことをどのようにお考えでしょうか。

藤井参考人 国費を効率的かつ有効に使うというのは極めて重要であると思っております。当協会は、現在も国から補助金をいただいておりますけれども、できるだけ適切に運用する、こういうふうに心がけております。

 具体的に、当協会も一部導入しておりますけれども、どういう方策が考えられるかという点ですけれども、例えば法律扶助を例にとりますと、現在、ジュディケア制ということで、開業弁護士の方々に一件一件事件をお願いするということになっております。もちろん、法務大臣が認可した支出基準に基づいて費用を支出する、こういう構造です。

 自己破産の申し立て事件、これを例にとりますと、現在、通常の一般弁護士の場合には二十万、三十万ぐらいの着手金ということになるんでしょうけれども、当協会は、通常の事件ですと十二万円、消費税がついて十二万六千円という費用でお願いしております。ただ、十二万円でも百件やれば千二百万円かかる、こういうことであります。

 支援センターではスタッフ弁護士を導入する、こういうことが予定されております。仮にですけれども、スタッフ弁護士が年俸八百万円で年間百件の自己破産事件をする、処理という言葉は適切じゃないですけれども、事件処理をするということになれば、四百万円が節約できる。もちろん管理費がありますから、そんなに単純な計算にはなりませんけれども、こういうことも国費の効率的かつ適切な支出ということが言えるんではないかと思います。

 当協会が現在やっていますけれども、ある中型というか中規模の事務所に契約を締結しまして、一件一件ではなくて数十件という形で事件の処理をお願いしております。通常の事件よりも一五%程度安くやっていただいております。専門ノウハウがあるということで効率的かつ大量に事件処理ができるという観点から、経費の節約に役立っているわけですけれども、こういういわゆる契約制、コントラクト制というようなものも必要なんではないか。さまざまな工夫を今後支援センターのもとでもしていかなければいけないんだろう、こんなふうに理解しています。

川上委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 泉房穂君。

泉(房)委員 民主党の泉房穂です。

 今から十五分間、よろしくお願いします。

 まずもって参考人、お忙しい中お越しいただきましたことを、また貴重な御意見、本当にありがとうございます。まずもって御礼申し上げます。

 さらに伺いまして、また御意見ちょうだいしたいんですが、思いますに、きょうお三方とも、日ごろから随分こういった分野に御尽力されていると思いますし、今回の制度設計、また今後もサービス提供者側の立場で努力されていかれると思いますが、きょうは、いわゆるサービスを受ける側、法的支援を受ける側の市民の方がお越しではありません。ただ、これまでの経験、それからいろいろな分野で、多方面の中からそういった声も聞いておられると思いますので、そういった市民サイドからの御意見等をまたちょっとお聞かせいただきたいと思います。

 具体的にちょっと例を挙げさせていただいた後にお三方からそれぞれ御意見を賜りたいんですが、まず五点ばかり例示させていただきます。

 まず一点は、センターの設置場所であります。司法過疎解消という意味での地方の方の司法過疎解消もありますが、例えばそうではなくて町中の場合であっても、もっと利便性のいいような駅前であるとか商店街であるとか、また巡回相談をするなどして市民の利便性を図れないかというような場所的な問題の視点もあろうかと思います。

 二点目は、時間の問題でありまして、これは日弁の方も随分努力されていると思いますが、夜間の相談とか土日、祝日の相談など、そういった時間面の配慮というような視点。

 三点目は、ITの時代でありますので、情報提供をホームページで行う、またメールによる相談といった工夫といいますか、そういったITの活用というようなことも市民サイドからは要望としてあるのかなと思います。

 四点目は、センターに来たら情報提供しますよということだけではなくて、センターの側から積極的に働きかけていく。具体的には、例えば、なかなかセンターに足を運びにくいけれども法的支援を必要としているような方々に、例えば施設入所されているような方に対して積極的にセンターの方から足を運んでいくなど、そういった工夫がないかという問題。

 五点目は、実際にセンターに来たとしても、例えば高齢の方、障害をお持ちの方など、ハード面ではバリアフリー化をちゃんとセンターですべきであるとか、またそれに限らず、手話や点字など、そういった支援を必要としている方に対する配慮などもやはり必要かと思います。

 これらの点、どの点でも結構ですので、順次、藤井参考人の方から、そういった市民の側の視点からの御意見等ちょうだいできればと思いますので、よろしくお願いいたします。

藤井参考人 それでは最初に私の方から御説明させていただきます。

 まず第一点は、センターの場所の問題でありました。御指摘のとおりだと思います。当協会も、例えば東京都市部を例に挙げますと、霞が関だけではなくて新宿、それから上野、立川、八王子、さらには渋谷、池袋というところに法律援助センターを設けております。やはり利用者の利便性を考えるという観点が必要だろう。その観点から場所もおのずと決まってくるんだろう。過疎対策ももちろんやらなければいけませんけれども、大都市の中にも事件過疎と言われている少額事件等に対する対応があります。利便性を考えるのであれば、そういうところに極めてアクセスのしやすい場所、これにセンターを設置する、こういうことが必要だと思います。

 夜間に関しまして、時間の問題ですが、当協会も一部夜間相談というのも実施しております。昼間お仕事をしている方が多いわけですから、こういうことも支援センターのもとでも配慮しなければいけないだろう、こんなふうに考えます。

 ITも、情報提供が支援センターの本来業務の一つになっていますから、さらに今後どんどんどんどん発展すると思いますので、このITの活用、まだ具体的には検討されておりませんけれども、今後検討しなければいけないというふうに思います。

 四点目は、センターの方から働きかけるべきであると。これも御指摘のとおりで、当協会も、例えば受刑者からの依頼というのがあります。この場合には協会の方から弁護士を派遣して事情を聞く。全部ではありませんけれども、そういう対応をしております。高齢者の方々あるいはなかなか町中に出られないという方々に対しては、巡回相談あるいは派遣相談、こういうことも考えなければいけないだろうというふうに思います。

 さらに、建物のバリアフリーの問題ですけれども、これは予算との関係も多分あるんだろうと思いますけれども、どこに支援センターの支部なり相談センターができるかわかりませんけれども、利用者の利便性を阻害しないようにいろいろな配慮が必要なんだろう、こんなふうに思います。

泉(房)委員 続いて長谷部参考人の方からも、重複する部分は割愛していただいて結構ですので、新たな視点があればお願いいたします。

長谷部参考人 先生の御指摘の点は私も非常に適切な御指摘であるというふうに思います。

 この法案との関係をちょっと御説明しますけれども、例えばセンターの設置場所について利便性のよいところを考える、あるいはバリアフリー化というような利用者が利用しやすいようにするということは、三十二条に「支援センターは、前条に規定する業務が、これを必要とする者にとって利用しやすいものとなるよう配慮するとともに、」というふうになっておりますので、出張してサービスをするということも含めて、この中でできるのではないかというふうに思います。

 それからITの点につきましては、三十条の第一号で「次に掲げる情報及び資料を収集して整理し、情報通信の技術を利用する方法その他の方法により、一般の利用に供し、又は個別の依頼に応じて提供すること。」とありますので、例えばメールによる相談サービスなどもITを使ってできるというふうに考えております。

 以上です。

泉(房)委員 ありがとうございます。

 市川参考人の方からも、新たな視点がありましたらお願いいたします。

市川参考人 基本的には御指摘のとおりだと存じます。

 一、二、ちょっと補足させていただきますと、まず設置場所につきましては、もちろん町中についても考えるべきは当然でありますが、物理的にまず弁護士が存在していないところ、いわゆる弁護士過疎地域と言われているところ、日弁連といたしましてはここを非常に重視しておりまして、ゼロワンという言葉、御案内のとおりでございますけれども、それを解消するということを当面の最大目標にしておりまして、支援センターにおいてもそういった観点も持っていただければ大変ありがたいというふうに思っているところでございます。

 それからITの件でございますけれども、いわゆるアクセスポイントと言われている拠点、あるいは司法窓口と言われる拠点、これは要は振り分け機能をやるというふうに説明されているところでありますが、これなどはIT技術を本当に活用できる分野ではないのか。インターネット等を使って、わざわざポイントまで足を運んでいただかなくても、市民の皆様いながらにしてIT技術を利用してその振り分け機能の享受を受けるということが当然考えられてしかるべきではないかというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

泉(房)委員 貴重な御意見、ありがとうございます。

 続きまして、市川参考人の方に三点ばかりお伺いいたします。

 サービスを受ける側からいきますと、そのサービスが良質なものである、質の問題が大きいかと思います。ここは弁護の独立性とも確かに関係するんでしょうけれども、よくあるといいますか、批判の中で、弁護士会の自治の中での懲戒がやはり甘いのではないかという御批判もありますし、一生懸命頑張っておられる弁護士さんもおりますが、中には手抜きといいますか、そのあたり、質的な問題点もあろうと思います。この点、今後、弁護士の提供側である日弁といたしまして、そういった心配は要らない、ちゃんと日弁でしっかりできます、また研修などにつきましてもしっかりするというようなことがありましたら、まずお聞かせいただきたいのが一点。

 それを踏まえまして、具体的な独立性の確保の問題につきましては、運用全般につきまして、法案には書かれておりませんが、日弁連会長の意見を聞くなどの運用も必要かと思いますが、それらの点、具体的に幾つか独立性確保についての具体策がありましたら、改めてお聞かせいただきたいのが二点。

 三点目は、民業圧迫というような言葉も出ますけれども、私からしますと、民業といいましても弁護士ですので、圧迫になってもいいから市民サービスが向上すればいいのではないかという視点を持っておるんです。この点、私としては民業圧迫の視点はむしろ日弁と司法センターともに充実させる中で解決したらいいのかなと思うんですが、その点、三点お願いいたします。

市川参考人 最初の御指摘ございましたサービスの提供のあり方につきまして、一部問題の弁護士が生じている例もなくはないわけでございまして、その点を踏まえた御質問があったかと思います。御指摘のとおり、一部世間をお騒がせするようなことが起きているということについては大変申しわけなく思っております。

 この支援センターに提供するスタッフ弁護士につきましてそのようなことがないよう、先ほども申し上げましたけれども、例えばいきなり修習生から支援センターにすぐ就職すると、そういうことも起こし得る余地が広がるのではないかという心配から、いきなり司法支援センターに行っていただくというわけじゃなくて、一般の弁護士事務所に入っていただきまして、そこで一、二年、いろいろな仕事ぶり、あるいは弁護士のあり方、弁護士の倫理等々を身につけていただきまして、その上で支援センターの方に行っていただくというシステムを日弁連としては今考えているところでございまして、そういった養成、教育期間の間にしかるべき教育なりを行いまして、先生御指摘のようなことの起こらないよう最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

 二番目の独立性の確保でございますけれども、先ほどからお話ございますように、センターの中には独立性確保の仕組みがビルトインされているわけでございますが、日弁連としてお願いしているような意見を言う機会が与えられるのであれば、その中におきましても、弁護の独立に関しまして、日弁連として必要な意見を申し上げさせていただくということに努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。よろしくお願いしたいと思います。

 それから、民業圧迫云々という御指摘でございますが、これは私どもとしては、実はその点については立法当局にも幾つかお話を申し上げたことがございまして、やはり一般の開業弁護士がきちんと市民の皆様相手にそれなりの役割を果たし得ている分野におきましては、それは民に任せていただきたい。

 それで、民ができかねることはあります。例えば、先ほど申し上げました弁護士過疎地域などにおいては、いろいろな事情から、個人の力では開業するのが非常に困難だという事情が残念ながらあったりします。こういう民の力の及ばないところでこの支援センターの事業をやっていただく、原則でございますけれども。そのように、まず事業の成立の仕方としては、そのような整理をしていただきたい。もちろん個別のところでは例外事象もあり得ることはあると思いますけれども、原則はそのことでお願いしたいというふうに常々言ってまいったところでございます。よろしくお願い申し上げたいと思います。

泉(房)委員 ありがとうございます。

 では、最後に、財政に関しまして、藤井参考人と長谷部参考人の方にそれぞれお伺いしたいんですが、まず、具体的な財政の規模というよりも、むしろこれまで扶助協会でやってこられた中で、実際上の資力要件の部分がなかなか厳しい中で、本当ならもっと多くの方にという思いもおありだと思います。長谷部参考人におかれましても、イギリスでの御経験の中で、一人当たりの国庫等負担扶助額につきましては、イギリスは七千円以上につきまして、日本は八十五円という、八十倍以上の差がございます。

 このあたりを含めまして、具体的に、藤井参考人におかれましては、やはりどの程度ぐらいまでの拡充を御希望なさるのかという、何かありましたらお教えいただきたいということと、長谷部参考人におかれましては、納税者の立場からある意味限定的な面も要るという御視点は確かにごもっともだと思いますが、ただ、そうはいいましても、やはり日本の現状を踏まえますと改善も必要かと思いますので、そのあたりをお聞かせください。お願いします。

藤井参考人 先ほども御指摘させていただいたんですけれども、正しい制度設計がされても、それを裏づける財政措置が講じられないと、やはり国民に対するサービスの提供というのは実現しないんだろうと思います。できるだけ多く、許される範囲で、財政事情も厳しいと伺っておりますけれども、許される範囲でできるだけ多く、重要な事業ですから、予算手当てをしていただきたい。今後の関係機関の協議になるかと思いますけれども、手当てをしていただきたい、こんなふうに考えます。

 それともう一つなんですけれども、その上で、現在の法律扶助事業というのは、原則として全額償還制という制度で、いわば立てかえ制度。ただ、原則立てかえ制度を仮に導入するのであれば、一部について、例えば少年ですとか犯罪被害者ですとか、やはり償還を求めないような制度の導入も必要なのではないか。こうすると利用者の利便性はさらに高まると思います。

 また、資力要件が一律になっているんですけれども、やはり事件の類型によって資力要件を一部変えるというような考え方も必要なのではないか。例えば高齢者にとっての資力要件と、ある程度働き盛りの方の資力要件というのは、おのずとお金の価値というのが違いますので、やはり違ってくるのではないか。高齢者あるいは障害者、病気の方々に対する資力要件と通常の方々は、やはり少し高齢者等の方には緩和していく、こういうような運用あるいは制度の改革、こんなものも必要ではないか、こんなふうに思っています。

長谷部参考人 イギリスとの比較ということをおっしゃいましたけれども、イギリスが確かにリーガルエイドの支出が非常に多い、日本に比べて多いということが言われておりますが、ただ、統計を見る場合に注意すべきなのは、刑事の国選に当たるものも全部含めた金額ということになっていることがございます。私は、刑事国選の場合と、それからそれが民事の場合ということでは、ちょっと事情が違うというふうに思います。

 刑事国選につきましては、これはオープンエンドという、例えば予算がなくなったからこれは刑事国選をつけませんというわけにはいきませんので、そちらはオープンエンドでするべきだというふうに思いますけれども、民事の場合は、これはそういった憲法上の保障というのは必ずしもないということもありますし、それから効率性ということも追求されるべきである、そういう視点が入ってまいりますので、それはある程度予算制をとることもやむを得ないかなというふうに思います。

 現在のイギリスの制度はそういう制度をとっておりますし、こちらの法案でも四十三条で、刑事国選の場合とそれ以外のものというのは分けて区分経理をするということになっているのがそれのあらわれだというふうに考えております。

泉(房)委員 ありがとうございました。

柳本委員長 松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫でございます。

 三人の参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。私が最後ということでありますので、もうしばらくおつき合いをお願いしたいと思います。

 それでは、まず、藤井参考人の方にお伺いをしたいと思います。

 財政的な側面についてですけれども、先ほどのお話では、国の補助金という、新しい平成十二年度の法律で大分ふえてはいるということで、平成十六年度が四十億円ぐらいは補助金が出されているようですけれども、しかし全体としては、弁護士の多分にボランティア的なところで支えられているということかなというふうに思っております。まだまだ予算的な面は今でも非常に不足をしているのかなというふうに承っておりまして、例えば、最近では特に破産事件が大変急増をしているということも聞いておりまして、破産の方にどんどん援助を出してしまうと、ある意味では年度の途中ででももう予算がなくなってしまう、そういうような実態もあるやに聞いておりますので、その辺のところについて、実態を少しお聞かせいただければと思います。

藤井参考人 お答えいたします。

 本日席上に配付させていただいた「総合法律支援法に関する意見」というところにデータが出ております。

 一ページ目でありますけれども、御指摘のとおり、平成十三年度、平成十四年度においては、年度途中で予算がなくなってしまうという現象が各地の支部で生じました。一部の支部では、残念ながら十月あるいは十一月に予算を使い切ってしまって、窓口を閉鎖するというような事態も生じました。これは関係機関にお願いしまして、また、国会議員の先生の御尽力もありまして、この一ページ目の表を見ますと、平成十三年度については二億八千万の補正予算を組んでいただきました。補正予算を組んでいただいた結果、何とか窓口を再開して、年度末まで事業が実施できたということであります。十四年度に関しましてもやはり同じ現象が生じました。二年連続で、この年も秋の臨時国会で補正予算をつけていただきました、三億強の補正予算を組んでいただいた。

 本来的には、こういうことはあってはならないんだろう。確かに、運営する側の予算管理の問題もありますけれども、やはり社会の需要に応じた予算手当てが年度当初からなされる必要があるんだろうというふうに思います。扶助協会の場合は補助金ということなので、使途が限定されておりますけれども、支援センターのもとでは運営費交付金ということで、民事と刑事は区分されますけれども、ある程度柔軟な資金の利用というのが可能になるんだろう、こういうふうに思っております。

 いずれにしても、需要に応じた適切な予算手当てをお願いしたい、こんなふうに理解しております。

松野(信)委員 それで、今後の財団法人の法律扶助協会が一体どうなるだろうかなというのが少し心配をしているところでもございます。

 今回のこの総合法律支援法が成立すると、二〇〇〇年に成立した民事法律扶助法が廃止されるということで、それこそ平成十六年度のこの四十億円というお金が全部なくなってしまう、こういうことになってしまうわけで、今後の法律扶助協会の業務というものが一体どうなるだろうか。

 全面的に司法支援センターの方に全面的に移管されて、めでたく発展的解消ということで法律扶助協会がもう消滅していいんだ、全面的に司法センターの方に移行したというならば、それはそれで一つのやり方かと思いますが、どうも全面的には移行しないで、一部残るところもあるのかな。

 そうすると、では、そこの財源は一体どうするんだろうかという心配もあるんですが、その点はどのようにお考えでしょうか。

藤井参考人 今回の法案の附則の七条では、財団法人法律扶助協会が、民事法律扶助法の廃止のときに、現に有している権利義務を引き継げる、こういう条項が附則に設けられております。

 現在、協会では、機関決定したわけではありませんけれども、やはり五十年余にわたる協会の実績と経験をこの支援センターに生かすべきであるという観点から、協会の職員それからノウハウ、設備等々を含めてこの支援センターに引き継いで、当協会が支援センターに参画するという方向で議論をさせていただいております。

 すべて現在の事業が引き継がれれば、それも一つの方法だという御指摘ですけれども、これは今後の準備期間における協議にゆだねられているんだろうと思います。仮に事業の一部が残ったらどうするかという問題ですけれども、場合によっては、日弁連あるいは各地の単位会が、みずからの事業としてその残された事業を実施する、こういう選択肢もあるんだろうというふうに思います。

 財源をどうするかという問題の御指摘です。これも大変重要な問題です。

 当協会の自主事業というのは、主に刑事の贖罪寄附あるいは弁護士等々の寄附金を財源にして運営しているということであります。したがって、弁護士会が残された事業を実施するというのであれば、場合によっては贖罪寄附の相手方を弁護士会にする、こういうような検討も今後行っていかなければいけないのではないか、こんなふうに思っています。

松野(信)委員 ありがとうございます。大変御苦労が多いかと思いますが、よろしくお願いをしたいと思います。

 続いて、それでは長谷部参考人の方に御質問したいと思います。

 先ほど来からも出ていますが、長谷部さんの方がお書きになりました「法律のひろば」の論文、私も拝見させていただいて、その中でイングランドとの比較をされていらっしゃる。そこで、CABという、シチズンズ・アドバイス・ビューロー、そこの組織についてもコメントをされていらっしゃるんですが、このCABと比較いたしますと、今回の司法センターというものはややお役所的な感じがしないでもないな。このCABというイングランドの方は、割合民間的な非営利組織だというような記述もございます。

 それに比べると、この司法センターというのは、法務省がかんだり最高裁判所が出てきたりということで、多分にお役所的なところもあるかと思うんですが、ほかの諸国との、もし先生がお調べになっておられたりして、比較して、これからつくろうというこの司法センターというものが日本まさに独特のものなのか、あるいは諸外国と非常に類似したものがあるということが言えるのか、その辺についてコメントいただければと思います。

長谷部参考人 イングランドのCAB、邦訳すれば市民相談所ということになるかと思いますけれども、先生が御指摘になられるように、民間の非営利組織ということで、ボランティアが主力を担っている、そういう組織であります。

 これも、先ほどのイングランドの法律扶助制度と同様に、非常に古い歴史を持っておりまして、第二次世界大戦中のさまざまな政府からの情報提供をするための組織ということで出発した、そういう経緯がございます。もう五十年以上を経て、歴史あるいはいろいろなノウハウの積み重ねということもございますので、そういった組織によって行っていくという、弁護士の業務が必ずしも十分には広がっていない司法過疎地域においてはこのCABが活躍しているというようなことも言われております。

 我が国については、諸外国に比べますと、まだボランティアの組織というのが、それほど全国的に広がっている、あるいは、それを統合するような組織ができているという状況には必ずしもないというふうに思います。

 そういった面で、確かにお役所的なところがあるかもしれませんけれども、これから、今この段階でつくっていかなければいけないということですと、こういう組織にせざるを得ないのかな。もちろん、今後、ボランティア組織が活躍していて、そちらとの連携を深めていくということは非常に重要なことであると考えております。

松野(信)委員 もう一問。

 悪く言う人は、この支援センターの理事長が法務大臣から任命されるというようなことで、何だ、これはまた一つ法務省の天下り先ができたんじゃないかというふうにちょっと悪く言う人もおられるんですけれども、その辺は先生はどのようにお考えでしょうか。

長谷部参考人 これは運用によると思いますけれども、そういったことのないように、人格、識見ともすぐれ、こういった法律業務についても理解のある方を選任していく、そういう運用がなされることを期待しております。

松野(信)委員 それでは、続いて市川参考人にお伺いをしたいと思います。

 日弁連でも、このいわゆる司法ネットの法案について、会員の弁護士の方に周知徹底というか、そういうようなことも一生懸命されていらっしゃるのではないかと思うんですが、どうも、いろいろな弁護士の話を聞くと、まだまだ、総合支援法とは一体何だということで、理解が必ずしも十分にされていない向きもあるし、また、弁護士過疎という対策についてもかなりばらつきがある。地域によっては一生懸命過疎対策をやっているところもあれば、地域によっては必ずしも余り熱心でもない、そういう地域温度差、この辺がまだ見受けられるかなと思っているんですが、それに対する対策というか、お考えがありましたら、お願いしたいと思います。

市川参考人 御指摘のとおり、各単位会におきまして温度差があったり、あるいは、この支援センターにつきましても情報が十分行き渡っていない面がないとは言えないことは、そのとおりでございます。

 私どもといたしましては、やはりまず会員の皆様に対する情報の提供は今よりももっと豊富に、あるいは徹底をしなきゃいけないというふうに考えておりまして、日弁連といたしましては、ことしは会内の会合を多く持つなどのイベントを多く企画しておりますし、また紙ベースの情報の供給なども昨年よりはふやしていって、会員の皆様に対する周知の徹底をなお一層図りたいというふうに考えております。

 また、同じ意味合いで、地域的ばらばら感があるというお話、これも確かにそのとおりでございますが、これにつきましても、最近は比較的足並みが整ってはきておりますけれども、なおまだないとは言えませんので、これにつきましても、同じように周知徹底をさらに図っていきたいというふうに考えているところでございます。

松野(信)委員 それでは、最後にもう一問、市川さんの方にですが、日弁連の中にもいろいろな批判的な意見もあって、例えば、現在の国選弁護は最高裁判所のもとに最高裁判所の予算で賄われている。ところが、今度この法案が通ることになると、そうではなくて、法務省の管轄の中で法務省の予算でやられるということになって、かなり質的に、例えば国選刑事弁護も変わってしまうのではないか、こういう危惧が一部にあるようですが、この点はどうでしょうか。

市川参考人 会内にそのような危惧があることは事実でございますし、また私も、先ほども申し上げましたけれども、そういう危惧が全然わからないわけではないわけであります。

 それに対する手当ては必要だろうと思っておりまして、先ほど申し上げましたような、立法の中に、法の中にそういう独立性を確保するためのシステムをビルトインすることが必要である。それについては、先ほど申し上げたとおり、手当てがなされました。

 それからもう一つは、この法人は非公務員型とされたわけでございまして、つまり、役職員は非公務員、公務員であることを要しないわけでございまして、極論いたしますと全員が民間人であっても構わないわけでございます。そうすると、天下り云々というのもかなりの程度排除し得る組織形態となっているわけでございます。

 運用によるところが確かに多うございますけれども、しかし、それはやり得る余地のある法人としてこの場が用意されたということが言えるわけでございまして、そういった御懸念が的中しないよう、私ども日弁連としては、与えられた制度あるいは非公務員型という法人の形態等々を適切に利用させていただきまして、弁護の独立につきましてはなお一層確保してまいりたいというふうに思っておるところでございます。

松野(信)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見を承りまして、まことにありがとうございます。厚く御礼申し上げます。(拍手)

 次回は、明二十三日金曜日午前九時十分理事会、午前九時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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