衆議院

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第25号 平成16年5月14日(金曜日)

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平成十六年五月十四日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 柳本 卓治君

   理事 塩崎 恭久君 理事 下村 博文君

   理事 森岡 正宏君 理事 与謝野 馨君

   理事 佐々木秀典君 理事 永田 寿康君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      左藤  章君    桜井 郁三君

      柴山 昌彦君    中野  清君

      早川 忠孝君    平沢 勝栄君

      保利 耕輔君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      山際大志郎君    荒井  聰君

      泉  房穂君    枝野 幸男君

      鎌田さゆり君    河村たかし君

      小林千代美君    小宮山洋子君

      辻   惠君    中井  洽君

      松野 信夫君    上田  勇君

      富田 茂之君    川上 義博君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   法務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           園尾 隆司君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (国税庁徴収部長)    徳井  豊君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            大道 正夫君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         門松  武君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十四日

 辞任         補欠選任

  加藤 公一君     荒井  聰君

同日

 辞任         補欠選任

  荒井  聰君     加藤 公一君

    ―――――――――――――

五月十三日

 破産法案(内閣提出第四一号)(参議院送付)

 破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四二号)(参議院送付)

同月十四日

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)

 不動産登記法案(内閣提出第七五号)

 不動産登記法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七六号)

 破産法案(内閣提出第四一号)(参議院送付)

 破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四二号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

柳本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、行政事件訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案につきましては、去る十二日質疑を終了いたしております。

 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、行政事件訴訟法の一部を改正する法律案について採決をいたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、塩崎恭久君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。佐々木秀典君。

佐々木(秀)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    行政事件訴訟法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 本法については、憲法で保障された諸権利に十分に留意し、国民の権利利益の実効的な救済の確保の観点から、国民が多様な権利救済方式を適切に選択することができるように配慮するとともに、行政訴訟の特性を踏まえた当事者の実質的な対等性の確保が図られるよう周知徹底に努めること。

 二 第三者の原告適格の拡大については、行政による多様な国民の利益調整のあり方を十分に考慮しつつ、これまでの運用にとらわれることなく、国民の権利利益の救済を拡大する趣旨であることに留意しつつ周知徹底に努めること。

 三 執行停止要件の緩和については、行政訴訟における救済が実質的なものとなるよう、事案の実情に応じた柔軟な運用がされるべき趣旨であることについて周知徹底に努めること。

 四 公法上の法律関係に関する確認の訴えについては、権利義務など法律関係の確認を通じて、取消訴訟の対象となる行政の行為に限らず、国民と行政との間の多様な関係に応じた実効的な権利救済を可能にする趣旨であることについて周知徹底に努めること。

 五 政府は、個別行政実体法、行政手続及び司法審査に関する改革など行政訴訟制度を実質的に機能させるために必要な改革について、所要の体制の下に、国民の視点に立った改革を継続するよう努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

柳本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 塩崎恭久君外二名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

柳本委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。野沢法務大臣。

野沢国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所にも本附帯決議の趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

柳本委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

柳本委員長 次に、内閣提出、不動産登記法案及び不動産登記法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長房村精一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内おさむ君。

山内委員 大臣、おはようございます。民主党の山内おさむでございます。

 政府のe―Japan重点計画によりまして登記手続がコンピューターでもできるということになりましたが、商業登記あるいは不動産登記手続がすべて電子化で可能な社会にしたい、そういう思いが大臣にまずおありかどうか、お伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 不動産登記や商業登記のような手続についても、国民の利便性の向上を図るため、オンライン申請を可能とするのが政府全体の方針でございます。

 今回の改正法案では、登記の正確性を確保しながら、不動産登記についてオンライン申請を可能とするため、申請手続の内容を全面的に見直しております。例えば、登記済み証にかわり、オンライン申請でも利用可能な登記識別情報の制度を導入しております。また、商業登記についても、いわゆる行政手続オンライン化法に基づきまして、オンライン申請を導入することとしております。

山内委員 オンラインシステムの導入によりまして、電子計算機をまず買いそろえなくてはいけないということ、それから技術的に、登記官が全部そういう能力があれば別なんですけれども、やはりそれを補助するような、たけた人材を配置しなければいけないと思うんですが、大体、オンラインシステムの導入に当たって、どれぐらいの総予算を考えておられるんでしょうか。

実川副大臣 お尋ねのオンライン申請は、既に構築されております法務省の汎用受け付けシステム及び各登記所におきまして既に導入されておりますコンピューターシステムを使いまして、既存の人員で処理を行うことを予定しております。

 また、オンライン申請システムにつきましては、開発経費といたしまして、平成十四年度から平成十六年度にかけましては約八億円を計上しております。また、運用経費といたしましては、平成十六年度予算に約二億円を計上いたしております。

山内委員 単年度だけでも相当多額の予算を必要とするわけですから、できるだけこのオンラインシステムの導入が成功してほしいと私は個人的に思うんですが、さて、オンライン申請がふえてきますと、当事者出頭主義が廃止されることに伴って、登記所の統廃合が進むのではないかと危惧するのですが、その点はどうなんでしょうか。

野沢国務大臣 オンラインの申請制度は、申請人の利便性を向上させるために、登記所に赴くことなく、自宅や事務所のコンピューターから登記の申請をすることができるようにするための制度であります。

 すべての行政手続を電子的に行うことを可能にする電子政府の実現という政府の政策の一環として導入されるものでございますが、これに対し、登記所の統廃合は、全国的に小規模かつ多数分散している登記所について、行政改革の一環として、数次にわたる閣議決定等に基づき、現代に見合った適正な配置を行うことにより、登記事務をより適正かつ迅速に処理し、もって効率的な行政サービスを提供することを目的として行っているものでございます。したがって、登記所の統廃合は、オンライン申請が導入されるか否かにかかわらず、行政改革の一環として推進しているものですから、今回の法改正によるオンライン申請の導入と直接の関係はありません。

 ただ、先ほど申し上げたとおり、オンライン申請制度は、国民の利便性を向上させるものですから、登記所の統廃合に伴う行政サービスの確保のための有力な手段となり得るものと考えております。

山内委員 しかし、統廃合を進めるということは、今十分な機能はしていないにしても、人権擁護の役割が法務局には求められておりますし、我が党はそもそも人権侵害救済法の制定について強く政府に主張している立場からすると、身近に法務局あるいは登記所、そういうような存在が必要であるということで、オンラインシステムの導入に伴って統廃合がしやすくなるというような考え方を実はとってはいただきたくないのですが、その点、どうでしょうか。

房村政府参考人 若干御説明をさせていただきますと、御指摘のように、法務局の仕事、業務的には登記が多いわけですが、それ以外の、人権擁護の仕事であるとか、そういったものもやっております。ただ、この事務を取り扱っておりますのは、いわゆる登記所と言われている出張所においては登記事務のみでございますが、人権擁護事務とかそういった他の事務は支局以上のところで扱うということになっております。

 現在、非常に数多くの登記所が全国に散在しているものですから、なかなか充実した人権擁護サービス等ができないわけでございますが、これを統合することによって、例えば幾つかの出張所を統合して支局にして、支局にいたしますと、登記事務だけではなくて、御指摘のような人権擁護事務、こういった事務も取り扱うことができるわけでございます。そこで、行政サービスの効率という意味からも、出張所を幾つか統合いたしまして支局化をして、総合的なサービスを国民の皆様方に提供する、そういう観点も含めて統廃合を行っているわけでございますので、御理解を賜りたい、こう思っております。

山内委員 行政の効率化ということについての理解はしますけれども、後で議論させていただきますが、登記官の審査権能というのが、表示登記の部分では旧法にも改正法にも規定されておりますし、それから権利の登記については新たに規定されているということからも、当事者の出頭ということが求められる場合があるわけですから、そういうことからしても、国民の利便性から考えて、物すごく遠いところに法務局や登記所ができていくということは、やはり簡単には統廃合を認めるということは厳に慎んでいただきたいと思います。

 それでは、登記の実務の問題についてこれから入らせていただきます。

 まず、地図情報を電子化するということとこのオンライン申請の連携ということについては、大体大まかにどういうふうにとらえたらいいのでしょうか。

野沢国務大臣 地図のようなものがコンピューターにのるかどうかというお尋ねは確かにございますかと思いますが、この改正法案において地図を電磁的記録に記録することができる制度とすることによりまして、登記情報と連携して地図情報を公開していくことが可能でございます。昨今の電子技術の進歩がこれを裏づけていただいておるということでございまして、そのため、現在、地図情報と登記情報との連携を可能とする地図情報システムの開発を行ってきたところでございます。

 本年一月から、水戸地方法務局においてシステムの検証を行ったところでございますが、その結果を踏まえまして、全国展開に向けたシステム開発を行いまして、できるだけ早期に各登記所にこのシステムを導入していきたいと考えております。

山内委員 しかし、公図というか字図というか、そういう図面につきましては、権利者の主張が対立し合って境界線を決められない、地図の作成が混乱している地域ですね、あるいは、もう随分昔からの、筆をなぞったような、あるいは赤い道とか、川については水色の線が引いてあるとか、そういうような古い時代の地図しか残っていない。それを代々の自治会長さんたちが受け継いでいくというような、まだまだ登記所にそういう公図についてしっかりとしたものができていない。

 統計によりますと、四六%全国でまだ未整備だということのようでございますけれども、それについては、年次を区切ってどれくらいの時期にこうするというような目標数値でもあるんでしょうか。

野沢国務大臣 委員御指摘のとおり、公図が読めるようになれば一人前と、私も、かねて用地の買収あるいは管理をしていたときに、そういうふうに先輩から言われたことがございます。大変これは読みにくいし、また難しい地図であることは承知しておりますが、現在登記所に備えつけてある地図のうちに、現地を特定することができる、いわゆる精度の高い地図の割合が、私どもの方の調べでは五四%ということになっておりますが、特に都市部についてはその整備がおくれておりまして、登記所に備えつけてあるものの大部分が旧土地台帳附属地図、いわゆる公図でございます。

 公図は、一般的に精度が低く、現地の境界を特定することが困難であることから、都市再開発や市街地整備等の事業に当たりまして、土地の境界、面積等を確定するために膨大な時間や経費が必要となり、土地取引の活性化を阻害しているとの指摘がなされているところでございます。

 平成十五年六月の内閣の都市再生本部におきまして、民活と各省連携による地籍整備の推進との方針が示されまして、法務省と国土交通省が連携して、全国の都市部における登記所備えつけ地図の整備事業を強力に推進することとされました。

 この方針におきまして、都市部の地図の整備については、平成十六年度から十年間でおおむね達成することとされておりまして、法務省としても、不動産登記整備を所管する立場から、積極的に取り組むこととしております。

 私も過日、東京法務局の現場等に参りまして、その進行状況等について見てまいったところでございます。

山内委員 大臣、私の父親も国鉄マンだったものですから、鉄道の用地と民有地との境界にしっかりとした標識をいけていかれたというような作業を鉄道がされていたということはよく私も知っているんですが。

 積極的に図面をつくっていくというのはわかります。省の方として、例えば五年おきに一〇%ずつふやすとか、そういうような目標があればそういうことをお聞きしたいし、図面を整備するということとそれを電子化するということはまた別だと思うんですね。そういう将来ビジョンはどういうふうに省として考えているのかお聞きしたいと思います。

房村政府参考人 この点は、ただいま大臣からも御説明いたしましたように、非常に地図の整備がおくれていますので、強力に取り組まなければいけない。ただ、その場合、何といっても必要性が高いのは都市部ということになりますので、現段階においては、まずは都市部の地図の整備を強力に推し進める。その目標として、おおむね十年程度で都市部の地図整備をやる。これは、最初の五年で約半分、残りの五年で残りをということを今考えておりますが、今、その準備段階といいますか、着手したところですので、具体的に年にどの程度というところまで数字は固まっておりませんが、目標としては十年程度で都市部の地籍整備を行うということになっております。

 また、そのために必要な地籍の境界紛争解決機関を創設するというような法整備もあわせて検討しているところでございます。

山内委員 不良債権処理というのが叫ばれていますけれども、競売を実行するあるいは流動化を促すにしても、土地と土地の境界がはっきりしていなければ全く話にもならないわけですから、その点は、省としては本格的に取り組んでもらいたいと思います……(房村政府参考人「電子化」と呼ぶ)電子化の……。

房村政府参考人 失礼しました。電子化のことをお答えするのを忘れておりましたが、これについても、特に地籍整備を進めるのと並行して、電子化もできるだけ進捗をさせていきたい、こう思っております。

 特に、地籍整備をしてきちんとした地図ができ上がれば、それを電子的な形で、電子化をして国民に利用していただけるようにしたい、こう思っておりまして、地籍整備作業と並行して進めるような工夫をこれからしたいと思っているところでございます。

山内委員 さて、土地が新しくできた、建物が新しく建築されたというときに、まず表示の登記が必要になるわけですが、例えば表示の登記を申請するときに、例えば土地でいうと、今まで申請書の副本、代理権限証書、地積測量図、土地所在図、所有権証明書、住所証明書が法定添付書類で必要とされていますし、これ以外に、地図に準ずる図面の写し、実地調査書、現況写真、案内図を持ってこいと言われることがよくあります。これらを完全に電子化することは将来的にも難しいと考えるのですが、この点についてはどう考えているのか、お聞きしたいと思います。

房村政府参考人 御指摘のように、表示の登記の申請に当たっては、その真実性を確保するためにさまざまな添付書類をつけていただくということにしております。中には、電子化が比較的容易にできるものもございますが、御指摘のように、なかなか電子化が困難なものも含まれております。

 そこで、今回の法改正に当たりまして、表題登記についてのオンライン申請において電子化が困難な添付書類については、申請人の便宜を考慮いたしまして、申請の段階では写しの送信でもよいということにしております。表示の登記につきましては、原則として、登記官が調査を行う、実地調査等を行うということになっておりますので、そういった機会に原本を確認する、あるいは必要があれば特に持参をしていただく、郵送していただくというような形で、事後的に確認ができればよろしいということで、オンライン申請そのものにおいては写しで足りる、こういう扱いをするということにしております。

山内委員 そうすると、今、私がお話をしました文書類について、一部は郵送ででもやってくださいというようなことを求めることは今後ないんですか。

房村政府参考人 ですから、これは登記官の審査権限の、表示登記における審査権限の行使の方法ということになりますが、原則としては、やはり原本を確認していただくということだろうと思っておりますが、その一環として、必要があれば郵送していただくというようなこともあろうかと思います。それは、その事案に応じて、登記官がどこまで調査をする必要があるかということを判断して行うということになろうかと思います。

山内委員 最初にお話しさせていただいたんですけれども、単年度でも数十億もかけてオンライン化を導入するわけですよ。ですから、オンライン化を導入するということは、つまり、オンラインで登記申請ができるということ、そして、そういう社会をつくり上げるというためにこの法改正をすると私は理解しているんです。

 ですから、オンラインで登記申請はする、附属書類は郵送で送るということをこの法改正はそもそも考えていたことなんですか。

房村政府参考人 オンライン申請の理想としては、そのすべてを電子的なやりとりで済ませるということが理想であることは御指摘のとおりだと思っております。

 ただ、現実に登記所になされております登記の申請、さまざまなものがございます。ですから、現段階においても、すべて電子情報で、比較的簡単にオンラインですべてができるものと、中には、特に建物の新築による表題登記のように、さまざまな資料が要る、その真実性を確保するためにはどうしても多様な資料の提出を求めざるを得ないというものもあるわけです。

 そういう、すべてについてオンライン申請が可能になるまで待つということではなかなかオンライン申請が実現できませんので、現段階において、ともかく可能なものはすべてオンラインでできるようにして、なお、オンラインに適さない資料があるものについては、別途それについての対応策を考えていくということで、今回のような工夫をしているわけです。

 御指摘のように、確かに、理想は、将来的にはすべてのものについてオンラインのみでできるようにしたい、こう思っておりますが、現実になかなか一足飛びにそこまで行きませんし、しかしながら、やはり真実性を確保するためには、多様な資料を出していただく、それを確認するという作業もこれまた必要でございますので、その中でいろいろ工夫をして、やや折衷的な扱いになりますが、現在のような法案にいたしたわけでございます。

山内委員 これは提案なんですけれども、附属書類で郵送をするということは、本来のオンライン化の導入という理念とは全く違うことなので、例えば資格者代理人が、こうこうこういう書類については私がしっかり確認しました、間違いありません、そういうような定型的な書面を打ち込むことによって、それは登記官としてもその打ち込みを尊重して、つまり、画面だけのやりとりだけで、あとは、資格者代理人がそういう認証行為をすることによって登記申請を受け付けていく、そういうような仕組みをとるべきじゃないんでしょうか。

房村政府参考人 もちろん、受け付けの段階では、そういうことで写しで足りるということにしたわけでございますが、何度も申し上げますが、表示の登記については、ともかく登記官が調査をして、内容の真実性を確認した上で行うということが原則になっております。

 ただ、例えば資格者代理人が作成した種々の資料があって、それに基づいて、あえて現地に赴くまでもなく登記ができるというような場合には、それは審査権限の行使の仕方として、そういう現地調査を行わずに登記をするということも現実の慣行としてやっているわけでございますが、そういう意味で、実際にどのような資料についてどのような形で出されるかに応じて、やはりこちらの審査権限の行使の仕方も違ってこようかと思います。

 ですから、そういう資格者代理人の方の書面で足りるという場合ももちろんあろうかと思いますが、特に、建物新築による表題登記の所有権の確認というような重要なことになりますと、これはやはり登記官として、その原本を確認して、所有権の真実の所在がどこにあるかということを確認した上で登記を行っていく必要があるのではないか。やはり提出される資料とその形態というものによって、場合によって違う扱いをしていくということになるのではないかと思っております。

山内委員 だけれども、登記官が必要があると認めるときという、そのときの基準というのは法文に書いていないものですから、だから、どういうものを登記官が要求されるのか。あるいは、例えば現場見取り図というか、現場にどうやって行ったらいいのかというようなことで、例えばゼンリンの地図でもって足りるようなことまである登記官は附属書類として求めてくるとか、そういうような全くむだなことまで、登記官が必要があると認めるときに当たるとは思えないものですから、その必要性の基準について、何らかのガイドラインというか、こういうときにはこうだ、現段階では全部オンライン化の要求にこたえられないので何年間はこうだとか、そういうものというものはないんですかね。

房村政府参考人 表示登記の申請のときに必要な資料、もちろんさまざまなものがありますが、これは基本的には現行の扱いがそのまま維持されるわけでございますので、登記に関係する方々であれば、その表示登記にどのような資料が必要であるかということはおわかりではないかと思っております。

 電子化をしたことによってそれが特に変わるわけではなくて、そういうもののうち、電子化可能な資料は電子的なものでいただきますし、紙のままで、電子化するのが非常に困難な場合については、当初は写しで、後、必要に応じて原本等の確認をさせていただくということでございますので、この点については、従来から使われております表示登記の基本的な考え方が維持されるということで、御理解いただけるのではないかと思っております。

山内委員 わかりました。

 では、境界のことについて、もう一点お聞きしますけれども、境界確定訴訟というのは割と複雑で、裁判が確定するまで四年も五年もかかるというようなケースも多いわけです。この間に相当お金も労力も必要ですし、何回も現地を見に行かなければいけないというようなこともこの裁判の特徴ではないかと思うのですが、既に土地家屋調査士と弁護士との間で紛争解決センターというものが境界に関しては全国に四カ所つくられております。

 国民の財産をしっかり守っていく、そして財産権を保障していくというような観点に立てば、国としてこの境界確定というものは相当重要な、そして最大の関心を持って取り組むべき問題だろうと私は思うのですが、裁判外紛争処理機関を法務省が設置するとか、あるいは土地家屋調査士によるADRを法務省が支援すること、こういうことを通じて迅速で安価な境界紛争の解決手段を制度として持つべきだと私は思うのですが、省の考えはどうでしょうか。

野沢国務大臣 御指摘のように、境界を訴訟により確定する場合、審理に時間がかかるとの問題点が指摘されております。

 ここが一番これからの課題として私どもは大事なことと受けとめておるわけでございますが、まず、その中で、訴訟の当事者が必ずしも境界についての十分な資料を持ち合わせていない、本人自身がよくわかっていないということも事実あると思います。また、境界についての専門的知識を有する者が審理に関与する制度的な仕組みとなっていないということ、また、さらには登記手続との連携が図られていないこと、また、職権で境界を確定する手段がないなどの問題点がこれまで指摘をされておるわけでございます。

 そこで、法務省におきましては、現在法律や実務の専門家から成ります境界確定制度に関する研究会を開催しまして、土地の境界が明らかでない場合に、境界について専門的知識を有する者を活用しまして、行政処分により土地の境界を確定する制度を創設することについて検討をただいま進めているところでございます。

山内委員 早急な検討が望まれていると私は思いますので、その点はよろしくお願い申し上げます。

 さて、表示の登記に関しての質問をこのあたりで終わりまして、次に、権利の登記について問題点を指摘させていただきたいと思います。

 甲と乙が不動産を売り買いする、甲が売り主で乙が買い主で。甲にはA銀行が抵当権を設定している。それから、乙の買い主の資金についてはB銀行が融資をしようとしている。これをその四者が集まって、例えば一つの司法書士の事務所で取引をする。これは連件申請と言うようですけれども、この仕組みについては、つまりB銀行から出たお金が司法書士の前で、例えば小切手か何かの形になってA銀行に支払いが終わって、すべてがきれいになって所有権の移転登記も終わる、そういうような仕組みについては、このオンライン化が導入されることによって、連件申請というやり方はこれからも保障されていくものなんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、複数の取引が一連の流れとして行われる場合、これを登記面であらわしますと、今の例で申しますと、まずはA銀行が売り主の甲に対してつけております抵当権を抹消いたしまして、それから甲から乙への移転登記を行いまして、その後に今度は乙に対して融資をしたB銀行の抵当権をつける、こういう三つの登記の申請が必要になります。

 当事者からしますと、この三つのどれが欠けても取引の目的が達成できない。そういうことから、いわゆる連件申請としてこの三つの登記申請を一括して提出いたしまして、三つすべてがそろった場合に初めてやってくれと。どれか一つに不備があって登記が実行できないときには他の登記の申請も実行しないでほしい、取り下げてしまう。こういう形で申請をするものを連件申請と呼んでおります。

 これは、今後オンライン化をした場合にも同じように連件申請を可能にするということで、オンライン申請に当たりまして連件申請であるということを表示いたしまして、一括して申請をしていただければ従来の連件と同じ取り扱いをする、こういう予定でございます。

山内委員 その連件申請であるという表示は、どこか定型的な文章として打ち込む欄ができるのでしょうか。

房村政府参考人 電子的なフォーマットを申請書について用意いたしますが、その中で、連件申請である旨を表示する部分を設ける予定でございます。

山内委員 これは確認なんですけれども、乙が買い主となって乙に所有権が移転した、しかし、乙の登記識別情報がまだできていない、だけれども連件申請であれば、B銀行の抵当権が設定できる。つまり、登記識別情報がなくても連件申請であればその場合に限って認めるということで、識別情報がない場合の例外として連件申請を認めるということになるのでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、一括して申請をする場合、買い主についてはいまだ登記識別情報はありませんが、これは連件申請ということで、買い主の乙に登記識別情報がなくてもそれは申請を認めるということになります。

山内委員 それから、できるだけオンライン化の導入を図るべきだという私の主張からしますと、例えば相続による所有権移転登記、これなども物すごく大変なことじゃないかなと実は思っております。

 これは、登記申請書や司法書士への委任状は当然のことなんですけれども、亡くなった被相続人について、これが例えば明治時代からのだとしますと、明治から第二次世界大戦終結直後ぐらいまでは家督相続によって、割と長男、長男をたどっていけばいいと思うんですけれども、それ以後非常に、何百通も戸籍謄本を集めないといけないということにもなるわけです。しかも、活字化になっていればいいんですけれども、筆の戸籍謄本もありますし、戸籍謄本だけじゃなくて除籍謄本、改製原戸籍、それから住民票の付票、戸籍の付票、そういうたくさんの書類が必要です。

 それから、印鑑証明書もすべてについて必要でしょうし、相続関係図、遺産分割協議書、相続放棄申述受理証明書、特別受益証明書、調停調書の正本、たくさんの書類が必要だと思うんですけれども、こういう相続による所有権移転登記についてのオンライン化についてはどう考えていますか。

房村政府参考人 御指摘のように、相続を証するためにはさまざまな書類が必要になりますし、特に古いものについてはそういう非常にさかのぼった戸籍の除籍簿までが要るということになります。そういう場合に、これがすべて電子化できるかというと、なかなか難しい面は確かにあろうかと思います。

 戸籍事務につきましても現在市町村においてコンピューター化を強力に推し進めておりますし、もちろん印鑑証明等については個人認証の方法が普及しておりますので、そういう形で電子情報になっていく情報も相当あると思いますので、電子情報だけでできる場合ももちろんこれからふえていくとは思いますが、現在の段階において、そういう古いものを考えますと、オンラインですべて処理をするというのはなかなか難しいのではないか、こう思っております。

 ただ、私どもとしては、ともかくできるものについてはオンラインを利用していただく、それが難しいものについてはともかく過渡的な措置として、それはそれでこちらとして従来の扱いで対応していくということで取り組んでいきたい、こう思っているわけでございます。

山内委員 私の立場からすると、例えば資格者代理人あるいは登記申請をする人の代理人が、登記は、戸籍の続柄は戸籍謄本を、これこれこういうのを取り寄せてこういうふうに確認しました、だからこの相続登記については正確なものですというような、そういう登記情報をオンラインに乗せて、それで申請をすれば、つまり、登記所としては、資格者代理人のそういう事前に一生懸命確認行為をされた、そういうことと、そういう登記情報が画面で映った、それを信頼して、もっと簡便にそのオンライン化を導入できるんじゃないかと思うんですが、どうですか。

房村政府参考人 資格者代理人の方がいろいろな情報を集めて、それに基づいて適正な申請をされているということはそうだろうと思っておりますが、しかし、現段階の申請につきましても、最終的にはやはり、申請内容の真実性、正確性を確認して登記を実行するのは登記官の責任でございます。

 したがいまして、やはり登記官としては、その登記内容が事実に合致しているのかどうか、正しいものかどうかということは最終的に自分の判断でやっていただく必要がありますので、そういう意味ではやはり原資料に当たって確認をするということは欠かせないのではないか、こう思っておりますので、オンラインになかなか、そういう古い資料が要る場合にはオンラインにはなじまなくなりますが、やはりオンラインのためにそういう本来の審査すべきものを審査しないで済ますというわけにはいかないのではないか、こう思っております。

山内委員 そうすると、では、登記官の審査権限のことについてこれから質問をさせていただこうと思います。

 権利の登記において登記官が本人確認を行うということが新しく立法化されようとしていますが、どういう場合を想定しているのでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、今回の改正法では、二十四条で登記官が本人確認をする旨の規定が設けられております。これは、申請人以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があるとき、この場合には、登記官は、本人あるいは代理人に対して出頭を求めて質問し、あるいは資料の提出を求めることができますし、また、疑うに足りる相当の理由があるということであればそうすべきである、こういう規定になっているわけでございます。

 これは、趣旨といたしましては、現行法においては本人出頭主義がとられておりまして、しかも、本人が出頭しないときには却下すべきであるという却下事由として規定されております。ということは、出頭した方が本人でないということがわかれば却下をする。そういう意味で、現行法の却下事由として不出頭が定められているということと、出頭主義がとられていることをあわせますと、少なくとも本人の確認については登記官の審査権限が及ぶというのが現行法の考え方でもあろうかと思っております。ただ、今回その出頭主義を廃止いたしましたので、そういう本人確認の登記官の権限について法律に規定を置きませんとこれが明確にならないということから、この規定を設けたわけでございます。

 ただ、特に本人に出頭を求めて調査をするというようなことは御本人に対しても負担になりますので、これが不必要に行われることのないようにということで、本人以外の者が申請していることを疑うに足りる相当の理由があるときという限定を付しまして、やはりいかにも疑わしい、こういう場合に初めて本人確認のための負担を本人にかけるんだということにしたわけです。

 具体的にどんな場合があるかといいますと、典型的なのは、例えば警察が捜査をいたしておりまして、いわゆる地面師が偽造書類を使って申請をしているというようなことがわかった、それが登記所の方に通知がある、そういうことから、登記官として、警察からそういう通知があれば、これはやはり本人以外の者が申請しているのではないかと疑うに足りる相当の理由があるということだろうと思います。

 あるいは、御本人の方から、自分の実印あるいは登記済み証が盗難に遭って悪用されるおそれがあるという届けがあらかじめあった、こういうような場合は、その申請があれば当然これを疑うということになろうかと思います。そのような場合を想定しているわけでございます。

山内委員 私も、すべての人を確認しなければいけないということも言っていませんし、全く確認しなくてもいいということも言っていないわけですね。すべて本人確認しないのであれば、問題のある登記申請というのを許してしまうということになるでしょうし、全部が全部本人かどうか確認しろということでは、オンライン化なんというのはおよそとれないのは間違いないし、手間も労力も何もすごい負担になるわけですから、それはよくわかるんですが、今おっしゃいました、例えば警察の通報による場合ですね。

 では、こういう場合はどうですか。警察が電話で言ってきた、文書で言ってきた、それから被害届が出た場合、逮捕まで至ったその事件の種類、罪種、あるいは、登記申請をする法務局と違う法務局に連絡が行ったり、法務省に連絡が行った、そういうような場合はどうなるんですか。

房村政府参考人 これはもちろん、その事件を処理する登記官の権限でございますので、その登記官がそういう疑うに足りる相当の理由があると判断できるような事情が登記官の耳に入らなければ困るわけです。

 他の登記所に連絡が行ったらどうだというのは、普通、警察の方も、どこの登記所に関係するかを調べて連絡をいただいておりますので、そういうことは多くはないかと思いますが、仮に連絡を受けた登記所の方で違うということであれば、それは警察の方に言って、管轄はどこの登記所になるので、ぜひそちらに連絡してくれということをお願いすることになろうかと思います。

 警察からの連絡については、これは、文書であるか電話であるかということの形式ではなくて、やはりどういった事情を警察官が把握して連絡をしてくれたのかということによると思います。例えば緊急の必要性があるときには当然電話で直ちに第一報を入れるというようなこともあり得るでしょうし、時間の余裕があるときはあるいは文書で教えていただけるかもしれません。そこは、警察から教えていただいた内容が、やはりこの登記がほかの人が成り済ましてやっていることを疑わせるに足りるようなものであるかどうか。

 漠然とした心配があるというだけではやはり登記官としても疑うに足りる相当の理由があるとは言えないでしょうし、具体的に、被害者からのそういう申述があるとか本人からの供述を得ている、こういうようなことがあれば、当然疑うに足りる相当な理由があるということになろうかと思います。

    〔委員長退席、下村委員長代理着席〕

山内委員 それから、二つ目の例で言われましたけれども、実印とか印鑑証明が盗難に遭ったということで、つまり事前に本人が申し出た場合ということですよね。それは、盗難という形以外に何か考えられますか。事前に申し出て、登記をストップしてくれ、あるいは本人確認を徹底してくれと登記官に申し出があったその例としては、そういう盗難事件の場合だけですか。

房村政府参考人 いや、それはほかにももちろんいろいろな理由があろうかとは思いますが、典型的な例として、盗まれたのでそれが悪用されるおそれがあるということを申し上げたわけでございます。

 それ以外にも、その具体的な状況を説明されて、自分の意思に反して自分の印鑑が使われるおそれがあるというようなことを本人の方から申し出があれば、その具体的な内容に応じて、これが相当程度に疑われるような場合であればこの審査権限を行使すべきであるということになろうかと思います。

 やはり、さまざまな事情がありますので、具体的な申し出の内容をよく登記官の方も聞いて、それに応じた調査を行うということになるのではないかと思っています。

山内委員 では、こういう場合はどうでしょうか。売買の事例で、例えば、妻が夫の代理人として契約の締結や履行を行うことがよくありますね。関与した司法書士が、夫から妻に対する委任状があったので、夫に直接連絡をとって、妻に売買に関する権限を委任したことや、売買に関する委任状も自分で署名したことを確認しました。そこで、司法書士が、登記申請委任状の義務者欄に夫の名前を代書してもらい、売買代金が支払われたことを確認して登記申請を行った。ところが、取引の直後に夫婦仲が悪くなって、代金の分配についてももめて、夫が、登記の申請後、例えば補正の完了までの間に登記所に行って、登記申請委任状の署名は自分が自筆で書いたものではなくて妻が勝手にしたことであるから、この登記申請は自分の意思に基づくものではないと申し出た。こういう場合は登記官としてはどう対応しますか。

房村政府参考人 それは、何といっても、申請者本人から、自分の意思ではないと言われているわけですから、それは、その御本人のおっしゃることをよく聞いて判断をすることになろうかと思いますが、おっしゃられたような場合であれば、実体上は当然、代理権限を付与して、その申請人の意思に基づいて実印が押捺されているわけでございますので、登記手続においては当然有効なものとして取り扱って処理をするということになろうかと思います。

山内委員 そうすると、法務省の考え方としては、登記官の本人確認権限というのは、どちらかといえば抑制的に考えて、その書面が形式が整っていれば、よっぽど何かない限り積極的に受け付けていこうという考え、スタンスなんでしょうか。

房村政府参考人 基本的に、登記の申請件数は非常に多いものですから、登記においては原則として書面に基づいて審査をして、その書面に問題がなければ登記を実行していくという考え方がとられております。ただ、その例外として、本人が本当に申請しているかどうかという一番重要なところについては、単に書面だけではなくて、疑いがあるときにはこれを調べるんだという、そういう意味でいいますと、基本的に例外的な制度であるということは間違いがございませんので。

 ただ、従来の登記官の意識として、ややもすると、書面のみに基づいて、そういう申し出があるにもかかわらず適切な調査を行わずに裁判になって、国家賠償で負けたというような例もあるわけでございます。

 そういうことから、私どもとしては、今回の法改正に当たりまして、単に権限ではなくて、疑うに足りる相当な理由があるときには、適正な登記処理あるいは真実の権利者の保護のために登記官はその審査権限を行使すべきであるということまで書いたわけでございますが、そういう意味で、権限の行使をきちんとやっていただかなければ困るわけでございますが、同時に、それはあくまで例外的な場合であるというのはおっしゃるとおりでございます。

山内委員 例えば、先ほどの連件申請のような場合に、B銀行からA銀行に、例えば土地の売買代金の一億円が小切手で支払われて決済も終わった。必要な書類は全部司法書士が受け取って、これであとは、そういう書類を参考に、はい、事務員さん、パソコンを打っておいてというような話になっていくと思うんですが、そのときに、売り主も、買い主も、売り主のそれまでの抵当権設定銀行も、それから新たに抵当権を買い主側につける銀行も、やれやれ終わったと思って、司法書士事務所を後にする。帰り際に、司法書士さん、本当に大丈夫ですねと言ったら、さあ、登記所から呼び出しが来るかもしれません、そのときは行ってくださいと。

 もしそういうようなことを司法書士さんが言うと、もうそれだけで登記制度とか司法書士制度に対しての信頼は、私は揺らぐと思いますが、そういう点からしても、本人確認を例外的な場合にするにしても、それは本当に、オンライン申請制度を導入するわけですから、やはり資格者代理人を信頼する、そしてオンラインシステムを信頼する、偽造、変造についてもなくしていく、そして登記制度に対しての信頼を担保していく、そういう考えが、私は法務省の中にもこれからますます必要になってくると思うんですが、どうですか。

房村政府参考人 御指摘のように、登記制度に対する国民の信頼、これをいかに維持するかというのは非常に重要なことで、登記に関係する者すべてが協力をして国民の信頼を維持し、あるいはさらに高めていかなければいけないだろうと思っています。

 ただ、そういう意味で考えますと、自分の知らない間に登記を移されてしまう、そういうことが万が一にでも起これば、これは一番、登記に対する信頼を傷つけるわけでございます。また、現実に甚大な被害をその人はこうむる。そういう、万が一にでも自分の知らない間に勝手に自分の重要な財産である土地建物が処分されてしまう、そういうことを可能な限り防ぐのが、やはり登記に関与する者全員の務めだろうと思っています。

 そういう意味では、もちろん、資格者代理人の方々も一生懸命、本人確認あるいはさらに原因関係も含めて調査をされて、適正な申請をしているとは思いますが、しかし、やはり一つの目より二つの目の方が、それは真実を発見するためには有効なわけでございますので、登記官において疑わしい場合にはやはりなおかつ調査をする権限があり、また義務を課して行うべきではないか。

 現実にも、もちろん、資格者代理人のところで偽造等が発覚して、未然に申請が防げている事案もございますが、中には、資格者代理人もだまされ、登記所もだまされ、最終的に刑事事件になっているというようなものもあるわけでございます。

 ですから、やはり、登記の信頼を確保するというためには、資格者代理人も登記所も協力をしながら、そういう偽造等を完全に防ぐ、そのために努力をすべきだろうと思っていますし、この登記官の権限もその方向でやはり国民のために行使をするんだということだろうと思っています。

山内委員 しかし、登記官の質が問われるような、資質が問われるような登記官もおられるんじゃないんですか。

房村政府参考人 その点は、登記官も数多くおりますので、それはすべてがパーフェクトな登記官だと申し上げるわけにはいかないだろうと思います。

 ただ、そういう意味でも、ですから、資格者代理人の方々にもいろいろ御協力をいただきたいわけでございますが、しかし、先ほども申し上げましたとおり、資格者代理人の方がだまされることもあり得るわけでございますから、できるだけ多くの目でそういったものもチェックをして、国民が登記を信頼して行動できるように、そのための負担はそれぞれみんなが負っていただいて、より真実の登記を実現していくということが必要なことではないか、こう思っています。

山内委員 虚偽な登記は許さないという民事局長の熱意はよく伝わってくるんですけれども、だけれども、実質審査はしないわけですからね。ただ本人かどうかを審査するだけでしょう。

房村政府参考人 登記にとって何が虚偽かといえば、実際の登記権利者の意思に基づかずに登記がされてしまうというのが最大の虚偽ですから、それを防ぐのが本人確認でございます。

山内委員 ですから、本人を確認するということ以上に、呼び出した人に、本当にあなた、売るんですかとか、売っていいんですかとか、代金をもらいましたかとか、そういうところまではもちろん問いとして発することは許されないでしょう。

房村政府参考人 先ほどから申し上げましているように、登記官の審査権限、本人確認、まさにこの申請が本人の意思に基づいてなされたものかどうかという点でございますので、御指摘のような、その原因となった売買契約が結ばれたかどうか、そういうような実体関係についての審査権限ではありません。

山内委員 だんだん禅問答になってくるといけませんのでこれぐらいにしておきますけれども、実体にまで踏み込まないということと本人確認というのがどの辺で線が切られるのかというのはなかなか、私としては大変難しい問題があるんじゃないかと思うんです。

 つまり、登記官の質がやはり問われてくるんじゃないかと思うんですが、登記官になるのに、内部職員が、あるとき登記官になるわけですよね。ですから、登記官試験というのを法務省の中で考えていく必要があるんじゃないか。特に、今回新しくこうやって本人確認というのが権利の登記については法定化されるわけですから、その辺の考慮が必要ではないか。少なくとも、実質的な、実体的な審査には入るなよというような教育研修というのはぜひ考えてもらいたいと思うんですけれども、その点はどうですか。

房村政府参考人 法務局の仕事、一番大きいのは登記でございますが、そのほかにも戸籍、国籍、あるいは供託、それから先ほど御指摘がありました人権擁護、それと訟務、こういうような業務を行っているわけでございますが、これはいずれも法律と非常に密接な関係のある業務でございます。

 そういうことから、法務省では、職員の養成に関しまして、各局あるいは法務省本省に職員を集めまして一定期間の研修を必ず行うということで、法律的な能力の養成を図っているわけでございます。また、現場において上司から適切な指導を行い、事件処理を通じての能力の養成も図る、こういうような形で対応しております。

 そういう幅広い法律に関する実務を経験した職員の中から、大体二十年程度の経験を持った者の中から、登記官として職務を行うに足りると思われる者を法務局または地方法務局の長が登記官として指定をしているわけでございます。

 したがいまして、特に試験をするまでもなく、現実に日々登記の事務処理を行っているわけでございますので、その職員が登記の処理を適正に行えるかどうかということは各職場で十分把握できている、こう思っております。ですから、特に登記官になるための試験というものを設ける必要はないかと思っております。

 ただ、御指摘のように、登記の事務処理を適正に行うためには、さまざまな法律知識あるいは登記の実務に関する知識、こういうものが必要でございますので、研修その他、十分な能力を持った者を登記官にしていくための努力は今後もより一層続けていきたい、こう思っています。

山内委員 では、権利の登記について、一点最後にお聞きしますけれども、固定資産税の評価証明書は、電子手続上、例えばこれにかわる証明書みたいなものを考えておられるのか、あるいは登記所が役場に照会をするというようなことが考えられるのか、御見解を伺います。

房村政府参考人 御指摘のように、登録免許税の算定のために不動産の価額が必要ですので、固定資産評価証明書の添付を現在求めております。これはオンラインで申請するときに、市区町村が電子化した固定資産税証明を発行していただければ、もちろんそれを添付してもらえば足りるわけですが、仮にそういうことがないと、紙のままですとオンラインに乗りませんので、そういう場合には、登記官の方で市区町村に対して連絡をいたしまして、固定資産評価額を聞くということを考えておりますが、円滑に行うために、こういう固定資産課税台帳に登載された情報をデータの形で受け取るというようなことも今現在検討を進めているところでございます。

山内委員 時間がなくなりましたが、やみ金やサラ金の被害はまだまだ続いております。私たちは、例えばチワワを使ったサラ金の宣伝とか、何か安易に青少年を金融、サラ金業者に向かわせるような広告宣伝についても、厳しくやはり考えていくべきじゃないかと思っているんです。

 商工ローンの問題についても、数年前、随分社会問題となりました。商工ローン業者は、十も二十も書類を借り入れのときにつくらせて、その中に例えば所有権移転仮登記あるいは抵当権設定の仮登記、そういうものの承諾書についてもばんばん判こを押させて、それで黙って仮登記の申請を行うというようなケースもたくさん事例として見ております。もし登記官の調査のあり方というものを論じるんでしたら、例えば、明らかに商工ローン業者からのそういう仮登記申請などの場合には、それこそ厳しく対応する、そういうような仕組みというのは考えられませんか。

房村政府参考人 商工ローンが当事者になって登記申請をするときに特に厳しくということですが、これは、どういう業種だからということはなかなか難しいわけです。

 先ほども申し上げましたように、仮に本人が知らない間に勝手につくられたものであるということを疑うに足りる相当な理由があれば、それは審査権限を発動すべき場合に当たりますし、そうでなければ、真実の実印が押捺された書類であれば、一般的に言えば、これは本人が押したものと考えざるを得ないわけですので、そこはどういう具体的な疑うに足りる事情があるかどうか、単に商工ローンが持ってきたというだけで疑うに足りるとはこれはとても言えないと思いますので、やはり個別的な事案によるのではないか、こう思っています。

山内委員 わかりました。

 今回の不動産登記法改正によりまして、比較的、不動産登記あるいは商業登記の手続が国民にとってもわかりやすいものになっていくのかなということでは評価をしたいと思います。

 しかし、オンライン化が採用されることによって、これまで違法事例とされていたケースとはまた別に、成り済ましの違法申請が出てくることや、問題ありの仮登記が、今後も今のお話ではどうもなくならないということを私は心配もしております。このような心配が杞憂で終わってよかったというふうな登記の仕組みにぜひなるように、これから政令や省令の制定なども考えられておられるようですけれども、法務省と資格者代理人の皆さんでしっかりとした登記手続制度をつくっていただきたいと切にお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

下村委員長代理 辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 不動産登記法の全面改正ということで、提案理由によれば、登記の正確性を確保しつつ、国民の利便性の一層の向上を図る、そのために、インターネットを利用したオンライン申請の手続の導入を行うとともに、現代語化するということが説明にあります。

 この国民の利便性の向上ということについては、まだまだ試行錯誤が余儀なくされるわけでありますから、そう簡単に、むしろ、ある意味では負担がふえるような場面もあるのではないか。今までの質問の中でそういう点も出ていると思います。したがいまして、それは今後の運用の中で、資格者代理人の方々とも綿密にしっかりと協議をして、運用を全うたらしめるように御努力いただきたいということをまず冒頭で申し上げておきたいと思います。

 それで、今般の不動産登記法の第一条で、目的として、表示の登記と権利の移動に関する登記でありますが、「国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。」ということがうたわれております。

 そして、過去の改正、平成五年、その前の昭和六十三年についても、いずれも附帯決議の中で、表示に関する登記については地図の整備ということがうたわれておりますし、権利に関する登記については真実性の担保ということを充実させるべきだということがうたわれておる。そのことを受けて、今回の目的の第一条で「国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。」その流れとして、今回第一条でうたわれているんだろうというふうに思います。

 そういう意味におきまして、本当に真実性確保の充実を図るために、今回提案されている諸制度がしっかりと根づくようにするにはどうすればいいのかということを主要な問題意識として質問をさせていただきたいというふうに考えております。

 まず最初に、従来、附帯決議で二回にわたってうたわれてきた地図の整備という点に関連して御質問をさせていただきたいと思います。

 今まで複数の質問者に対する御回答の中で、登記所に備えつけの地図の整備が必要、重要である、それについては十年以内を目途として整備をするんだというお答えがなされているように思いますが、この場合の整備というのは、要するに、従来の不動産登記法十七条の地図に限らず、旧土地台帳附属地図等も含めた全体のことをおっしゃっているんですか。その点はいかがでしょう。

房村政府参考人 広い意味では、登記所に備えつけられてある地図あるいは地図に準ずる図面、これの精度を全般的にともかく向上させるということではございますが、具体的目標としては、都市部において十年程度でできる限り十七条地図のような精度の高い地図を整備していくということを考えております。

辻委員 そうすると、今私の手元にある資料では、十七条関係は三百四十一万枚、そして旧土地台帳附属地図は二百九十一万枚、約です、概数ですが、結局のところ、何万枚ぐらいが十年後に整備されることになるんですか。ないしは、全体の割合の中でほぼどれぐらいの割合を目途として整備がなされるということなんでしょうか。

房村政府参考人 今御指摘の数字は全国を対象としたものでございますが、今回の地籍整備の対象は、その中の比較的限定した都市部、人口密度を基準にいたしましていわゆる都市部と考えられているところを重点的にやるということを考えたわけでございます。

 したがいまして、面積的にはもちろん全国の中では比較的少ない、ただ必要性は非常に高い、そこをともかく集中して十年でやるということでございまして、現段階ではちょっと、最終的にどのくらいできるかという数字を把握しておりませんで、準備不足で申しわけありませんが、そういうことでございます。

辻委員 そうすると、取引の安全と円滑に資するという、当面は主要には都市部でそのような取引が頻繁に行われるわけでありますから、優先順位とすれば、そういう取引の安全、円滑に資する順番でとりあえずのものは十年内に完備させたい、このようにお考えだというふうに伺っておきます。

 その後も、鋭意、地図の整備について、やはり法務省だけではない、国交省の所管でもあると思いますから、連携をしてその点には万全を期していただきたいということを冒頭で申し上げておきます。

 それで、登記情報と地図の情報との連携がオンライン化してシステム化される必要があるということで、別の委員の方からも質問があります。この場合に、やはり土地家屋調査士の方々が表示の登記については依頼を受けて行う割合が九八%とか九九%というふうに指摘されておりますから、そのような資格者代理人の方々の作成される書面というのが非常に有益というか、制度を支えるために非常に有益なものであろうというふうに思います。

 そういう意味におきまして、表示登記の申請に当たる法定添付情報について、先ほどのお答えでは、申請時でオンラインにおいては写しでいいというようなお話でありました。法定添付情報以外の事実関係を疎明する書面、例えば土地境界の確認書とか等につきましては、これは例えばそういう資格者代理人の作成される調査書なりで代替を考えてしかるべきではないかと思うんですが、この点はいかがですか。

房村政府参考人 御指摘のように、表示の登記に関しましては、土地家屋調査士の方がその専門的能力を活用いたしまして非常に重大な貢献をされている、そういう方が申請をされる場合には、ただいま御指摘のあったような調査書というような資料が添付をされておりまして、登記官の方でも、その充実した調査書が出てくればあえて実地調査までしなくても登記が実行できる、こういうことになっております。

 ただ、例えば境界の確認書のようなものは、これはやはり、例えば印鑑が押されているときに、その印鑑の現物を目で見ないとやはり、もちろん調査士の方も十分確認はされていると思いますが、繰り返しになりますが、登記官としても最終的に自分の責任で登記を実行するわけでございますので、そういう重要なものについては、やはり原本を見せていただく必要があろうかと思います。

辻委員 今お答えがありましたように、現地調査をしないというのがやはり慣行として成立しているわけですね。それは、やはり九八%、九九%、資格者代理人の方が関与されているという信頼性がその根拠になっていると思います。今おっしゃられたように、境界の確認書等については最終的に原本の確認をせざるを得ない場面もあるかと思いますが、調査書をきちっと活用して評価して、よりやっていただきたいということを申し上げておきます。

 それで、表示に関する登記をオンラインで申請する場合の所有権証明等の法定の添付情報について、これは先ほど申し上げたように写しで足りるということでありますが、地積測量図のフォーマットの作成等については、これは資格者代理人の意見を聴取しながらきちっと固めていくべきではないかというふうに思いますが、この点、大臣、いかがですか。

野沢国務大臣 御指摘の表示に関する登記のうち、土地の分筆の登記、地積更正の登記等につきましては、当該土地の面積及びその計算方法等を明らかにするとともに、当該土地を特定することを目的としまして地積測量図を提出することとされております。

 このような登記をオンラインで申請する場合には、地積測量図につきましても電子化して添付することになります。この場合の地積測量図のフォーマットにつきましては、できる限り利用者が申請しやすいものとする必要があると考えておりますが、これにより、現在も関係団体の意見を聴取しているところでございまして、今後とも、表示に関する登記制度の最大の利用者である土地家屋調査士等の御意見を十分聞きながらこれを進めてまいりたいと思っております。

辻委員 従来の附帯決議の中で、地図の整備という点については、今沿って伺いました。もう一点の、真実性確保の充実という点に関連して次に伺っていきたいと思います。

 今般の六十一条で、登記原因証明情報の提供ということで、登記原因証明情報というものが新しく設けられるに至りましたが、これはどういう趣旨なのか、概略、簡潔で結構ですので、お述べいただけますか。

野沢国務大臣 権利に関する登記につきましては、権利変動が生じたことを前提といたしましてこれを公示するものでございます。したがって、登記の原因となった事実または法律行為があったことを示す資料の提供を受けて登記をするのが妥当だからでございます。

 また、登記原因は登記事項とされておりまして、登記制度の利用者にとっては物件調査の手がかりとなる情報となるものである以上、登記原因自体も正確に公示されることを確保する必要があると考えております。

 そこで、今回の改正におきましては、登記の正確性を確保するための措置として、登記原因証明情報の提供を必要的なものとしておるところでございます。

辻委員 この登記原因証明情報の持つ意義というか作用というかを考えたときに、やはり登記原因が何なのかということを正確に反映している、それを確認するということが一つ大きな意味がある。また同時に、次の取引に当たって、後日別の取引が生じた場合に、それ以前の物権の変動がどうであったのかということをやはり調査する手がかりになるという、その二つの意味で意味があるのかなというふうに思いますが、この点、そういう理解でよろしいですか。

房村政府参考人 御指摘のとおりだろうと思います。

辻委員 そうすると、どのような内容の登記原因証明情報にすべきなのかということが問題になると思うんですね。既に質問でその点については出ておりますが、例えば売買を登記原因とする場合には、売り主、買い主、そして年月日。代金については必ずしも不可欠なものではないというふうにおっしゃっておりますが、具体的にどのような内容の情報を不可欠なものとして予定されているんでしょうか。

房村政府参考人 今の売買の例で申し上げますと、もちろん売買契約の当事者、対象物件、それから契約年月日、所有権移転の時期等、少なくとも所有権移転が行われるということがわかるような条項でございますね。それと、代金額の定めがあること。最小限、代金額の定めがあるということがわかりませんと売買契約とは言えませんので、額そのものは不明であっても、定めがあることは必要だろうと思います。多分、売買契約でいえば大体そのようなことが必須の事柄になるのではないか、こう思っています。

辻委員 そうすると、通常当事者間で取り交わされる売買契約書でなくても、例えばそれを簡略化した売り渡し証書みたいなものでも足りる、こういう理解をされているんですか。

房村政府参考人 はい。現在の登記実務において、登記原因証書として提出されるものには御指摘のような簡略化した売り渡し証書が多いわけでございますが、これは同じような内容が今後も登記原因証明情報になり得る、こう考えております。

辻委員 この登記原因証明情報の意味、物権変動を正確に確認できるようにするということと、後日の取引において物件調査の手がかりになるということがもう一つの大きな目的だというふうに確認できると思うんですが、だとすると、売り渡し証書のような内容であれば、例えば現在、多くは申請書副本でされている例が結構多いと思うんですが、申請書副本も、結局、登記権利者、登記義務者、登記原因、そして時期ということはうたわれているわけだから変わりがないんじゃないですか。

 だから、そういう意味では、登記原因証明情報でその程度のものしか要求しないということであれば、後日の物件調査に資するということは余り現行と変わらないというふうに理解できるんですが、この点、いかがですか。

房村政府参考人 必須の情報ということに限定いたしますと申請書の写しとそう大きな違いはないようにも見えますが、ただ、具体的に売り渡し証書に記載するときには、やはり申請書の場合よりはより具体的な記載がされることが多いわけでございますので、そういう意味で、より具体的である可能性が高くなるだろうと思っております。

 それともう一つは、やはり申請書でございますと、これを作成するのは資格者代理人の方で、直接この申請書に売買契約の当事者が署名押印するというわけではございませんが、登記原因証明情報であれば、少なくとも売り主である登記義務者はみずから、書面であれば署名捺印をし、あるいは電子情報で作成する場合には電子署名をするということで当事者が直接作成をするということになりますので、その点はやはり大きな違いがあろうかと思っています。

辻委員 後日の取引で、司法書士さんもそうだし、例えば弁護士もそうだし、いろいろ相談を受けたときに、この物件は以前、本当に実体的な権利変動として危険のない物件なのかどうなのかというのをさかのぼってやはり調査せざるを得ないわけですよね。

 それで、従来の紙、今も紙は紙なんですが、登記簿謄本は、従来、抹消をされた登記の変動の経過というのはかなり詳しく出ていたわけですね。ですから、さかのぼって物件調査をする手がかりに非常になった。それが電子化されて現在事項しか基本的に出てこないから、なかなか、少なくとも普通に八百円か千円の登記簿謄本を取り寄せたときに過去のものは出てこないということで、なかなか手がかりを得られないということを実感しているところがあるわけであります。

 私は、そういう意味において、この登記原因証明情報が登記所に備えつけられれば、過去にさかのぼって、具体的にそれを閲覧して物件調査を正確にしていくことができるのではないか、その点においても意味があるのではないかというふうに思いますが、そうだとすれば、備えつけの期間なりということについて、例えば、新築になった建物が土地つきで売買されるとしたときに、通常はやはり二十年とか三十年住んだ後にそれが売買されるというようなこともあるわけですから、その程度の期間はやはり備えつけがなされないと、過去にさかのぼった物件調査ということの用をなさない可能性があるわけですよ。

 だから、その備えつけの期間ということについてはどういうふうにお考えなんですか。

房村政府参考人 備えつけ期間の話の前に、ちょっと登記簿の関係でございますが、登記簿は、例えば抹消されたものは原則としてそのまま残るわけでございますが、ただ、現段階においては、コンピューター庁へ移行するときに過去のものは閉鎖をいたしまして、それでその時点で有効なものを移記するという形になっているものですから、コンピューター化されたところについてはコンピューター化以前の抹消されたものは出てこない、これは閉鎖登記簿の方を見ていただかないといけない、そういう意味でやや不便になっております。

 ただ、今後は、コンピューター化された後の履歴はずっと残るわけでございますので、そういう意味では、コンピューター化されて時間がたつにつれて、コンピューター情報だけで過去の履歴も相当古いところまではわかるようになる、それをさかのぼろうと思うとやはりその前の閉鎖までいかないといけない、こういう関係にはあります。

 それからもう一つ、そういう意味で、登記面での確認もありますが、同時に、備えつけてあります附属書類、これが特に訴訟等になったときには必要な資料として利用したいから保存期間を十年ではなくて二十年程度にしてほしい、こういう御要望、特に所有権に関する登記についてはその必要が高いというような御指摘を受けているわけでございます。

 ただ、これは、そういう要望もわかるわけですが、同時に、保存するということになりますとそのスペースの関係もあるわけでございまして、そのスペースの確保をどのようにするかというようなこともあわせて検討しなければならないものですから、その必要性と庁舎整備の状況等を見ながらさらに検討していきたい、こう考えております。

    〔下村委員長代理退席、委員長着席〕

辻委員 コンピューター化されてから出てくる謄本についてはそれ以前の分については転記されていないから、だから閉鎖謄本をとらないと、だから二重手間になるという意味で、正確にはそういう意味であるという理解で一応先ほど申し上げたつもりであります。

 要するに、すべてがオンライン化されるわけではなくて、ペーパーの申請もなお残るから、経過的にはスペースの問題とかいうことが生じるというのは確かに話としてはわかりますけれども、しかし、これはオンライン化を進めて、やはり将来的にはあまねく及ぼすというお考えに立っておられるわけであるから、やはりその制度を始める現時点において、登記原因証明情報について過去の物件調査に資するという役割を認めるんであれば、やはりそれはもっと工夫をして、十年ということではなくて、少なくとも所有権をめぐるものについては二十年なり三十年なり、ほかの情報とは分けてもとりあえずはやはり残すということで、まず最初出発すべきなんだというふうに思います。

 繰り返しになりますが、この点、やはりそういう必要性をお認めになるということなのかどうなのか。そして、具体的に必要性をお認めになった場合に、単に検討するというんじゃなくて、本当にちゃんと決意を持って進めるということでお答えになっているのかどうなのか、その点についてお伺いしたいと思います。

房村政府参考人 私どもとしても、そういう資料として有用性があるものだということで、そういう点からすれば、保存期間、今の十年では短いという御指摘はそれなりに理解できるわけでございます。

 スペースのことを申し上げたのは、現実に行うということでいろいろ今考えているわけですので、そういう意味で、実際に登記所のおよそスペースがなくて全く無理だということをここでお約束するわけにもいかないので申し上げているわけです。

 そういう意味では、そういう御指摘を受けて真剣に検討しているということで御理解いただきたいと思います。

辻委員 真剣に必要性を認めて検討されているんであれば、スペースの問題というのは、何年かたって徐々にスペースがいっぱいになるんだから、とりあえずは五年間は、やはり二十年先、三十年先も――ああ、そうか、これは矛盾になりますね。今の質問はちょっと撤回いたします。

 いや、真剣に必要性について御検討いただきたい。少なくとも十年間はスペースがあろうがなかろうがペーパーのものについても保存されるわけだから、十年たった時点でその十年目のものを破棄するのかどうなのかということについて、やはり五年後、六年後ぐらいからと言わないで、もっと早目の段階で将来的な見通しをきちっと立てて方針化していただきたい、このように申し上げておきたいと思います。

 それで、物件調査の端緒を与えるという意味でこの登記原因証明情報が意味があるとすれば、利害関係を有する者、取引に利害関係を有して入ってくる者はやはり閲覧をできる必要がある。そうでないと物件調査をすることにならないわけでありますから、だれもかれもができるというのは妥当でないかもしれないけれども、利害関係のある人間にはやはりある程度の緩和した要件で認めてしかるべきだと思いますが、この点はどのようにお考えなんですか。

房村政府参考人 登記簿そのものは、これはもうだれにでもお見せする、あるいは証明書、謄本を交付するということになっておりますが、その附属書類については、いろいろなプライバシーにかかわる情報も入っているということから、利害関係のある部分に限って閲覧を認めるというのが現行法の扱いでございます。

 この改正法においてもその扱いを踏襲しているわけですが、この場合、そういったことから利害関係のある者に限って見せているということで、利害関係のある者にこれから買おうとする者が入るかどうかという御指摘でございます。

 ただ、例えば、実際にその物件について現に登記名義を得ている、あるいは契約をしているというような方であればその真実性の確認もできるわけでございますが、これから買おうとしているということですと、だれでも買おうとしているということは言えますし、その確認もできない。買うつもりだと言われればもう全部ということで、買おうとしている方を利害関係人に含めますと、実際上はすべての方にお見せするのと同じことになってしまう。

 そういうことから、現行法のもとにおいても、解釈として、これは売買契約を結んだり、あるいは例えば予約をしたり、そういう具体的な何らかの関係のある方が利害関係のある方だ、こういう解釈で運用をされておりまして、その点は今回の改正に当たっても特段の変更を加えておりませんので、ただ、もちろんおっしゃるように、これから買おうとするからまさに調べたいんだということもそうだろうと思います。現行の法のもとでは、売り主の方は当然登記名義人で利害関係人になりますので、その方の了解を得て、例えば委任状をもらって調べるということは十分可能なわけでございますので、そういう形で利用していただきたい、こう思っているわけでございます。

辻委員 利害関係を有する者ということで、既に契約を締結しているか少なくとも契約の予約をしているかという場合は入るけれども、それ以外は、本当に買おうとしているのかどうなのか、その判断が難しいから軽々にそれを含ましめることはできないというお答えだと思うんですが、やはり買おうとする側からすれば、契約締結をすれば手付金を払ってしまわなければいけない、予約契約をするにしても多少の、要するにやはり金銭を給付しなければできないわけですから、現実に金銭を支払う以前に、この物件は本当に大丈夫なのか、過去の物権変動で疑わしい点がないのだろうかということをやはり調査したいという、これは当然の要求であると。

 じゃ、売り主の側から委任状をもらえばいいじゃないかというふうに御指摘になっておられますが、例えば売り主の側も、実際いろいろなケースではいろいろな駆け引きが行われるわけでありますから、一人の買い主だけを相手にするわけじゃなくて、より高く買ってくれる人についていろいろ駆け引きをして、なかなか委任状を与えないということも考えられるわけですね。

 そうすると、取引の安全と円滑に資するために、この不動産登記法は目的としてこれが今提案されているわけですから、そういう取引の実情により合致するようなやはりこれは制度の運用をすべきだと思うんですね。

 だから、買い主の側の、お金を払う以前にやはり物件調査をしたい、売り主の側から委任状をそう簡単にもらえないケースもある、このようなときを考えれば、これはこういう不動産登記制度を支えている、例えば司法書士さんとか、そういう資格者代理人についてはやはり閲覧する権限を付与するということは十分考えていいんではないかと思いますが、この点はいかがですか。

房村政府参考人 先ほども申し上げましたが、附属書類について利害関係のある部分に限って閲覧を認めるということをしておりますのは、やはりプライバシーにかかわるような情報が含まれていることもあって、それは本当に必要な人に限定するんだということでございます。

 資格者代理人の方々が見るというのは、これは自分が見るというよりも当然依頼者のために見るわけでございましょうから、それは依頼者の方々にその見た情報の話は行くだろうと思いますので、そうなりますと、結局はやはりそういうものを確認する利益があるかどうかというのは依頼者の方を基準に考えざるを得ないんだろうと思います。

 そういう意味では、やはり資格者代理人の方がお見えになる場合でも、買おうとする人の代理人であるということであれば、それは買おうとする人と同じ扱いをせざるを得ないというのが、法律の解釈としてはそうならざるを得ないのではないか、こう思っております。

辻委員 現段階のお答えとしてはそうならざるを得ないんだと思うんですけれども、やはり現実の問題としては、一方で守る必要のあるプライバシーの問題がある、他方でやはり不動産の取引が円滑に進む、しかも過ちないような取引が円滑に進むという要請、二つの要請の利益の調整の問題だと思うんですね。

 だから、一般の私人が買い主としてあらわれて見せてくれという場合には制限される、プライバシーの権利をより保護しなければいけないという要請が、それはそれでわかりますけれども、資格者代理人はやはり国家から付与された資格として、それは倫理規定もきちっとわきまえておられるわけだから、そういう形で組織されているわけですから、プライバシーに興味を持つということではなくて、やはり職責に照らして、その自分の職務に必要な過去の物件調査の情報を目的としてそれを知るわけだから、プライバシーの侵害、それを軽々に買い主さん、予定者の方にプライバシーとしていろいろおしゃべりをするということは、これはやはり通常は考えられないことだと思うんですよ。だから、そういう意味において、やはり利益の調整を考えたときに、不動産取引の円滑化というためには、その資格者代理人にそういう閲覧の権限を付与する方向で、もう少し具体的に検討をするということがあっていいと思うんですよ。

 現時点でのお答えはそれとしてわかりますが、その点、ちょっと前向きに検討するということで、いかがですか。御回答いただけませんか。

房村政府参考人 これは、附属書類の閲覧を利害関係のある部分に限定しているということの趣旨に係るものですから、なかなかこの条文を前提とする限りは難しいだろうと思いますし、この条文について、そういった附属書類には種々の性質の資料が入っているということから利害関係がある部分に限っている、そういう考え方そのものは現行法と基本的には変わらないわけですので、御指摘のような要請があるということは私どももわかりますし、全体としてどんな形で解決をするかということはいろいろな意味で検討をしていきたいとは思っておりますが、具体的に、資格者代理人の方に限って、そういう利害関係等はない場合でもすべて見せるということを積極的に検討するのはなかなか難しいのではないか。全体の仕組みとして、そういう登記履歴なり情報をどう確認するかということを考えていきたい、こう思っております。

辻委員 例えば、プライバシーにかかわる問題として、固定資産評価証明書とか戸籍謄本とかいうことについて、例えば弁護士は、ある定型化したペーパーで、訴訟の必要に使う場合にはそれを入手できるというような、そういう措置が講じられている。それは訴訟に使うという必要性にかんがみてだろうというふうに思いますけれども、不動産取引の円滑を、正確な取引を図っていくということを、やはりそれは社会的な必要性もあると思うので、確かにこの六十一条なり現行法の問題としては、すぐには難しいのかもしれないけれども、法改正を含めて、そういう必要性については十分今後検討していただきたい、このことを申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、登記識別情報についてですが、登記識別情報がない場合には厳格な事前通知の手続が必要だ、ただ、資格者代理人による場合には本人確認によってこれを省略することが可能だということになっています。

 ただ、法人なんかの場合に、特に非常に大きな法人の場合に、では本人確認、本人意思は、代表取締役社長ないしは代表取締役会長とか代表権限のある人でないと、それは本人確認として法人では認められないということであると、これはやはり社会の実情からするとかなり問題が大きく生ずると思うんですね。

 だから、私は、具体的な取引において、いろいろな部署で権限を任されて取引をやっている、例えば、だから訴訟になっても表見代理が成立したり、そういうふうに認められる一定の権限の方についても、これは本人確認の対象として考えていいのではないかと思いますが、そういうお考えはありませんか。

房村政府参考人 資格者代理人の方が行う本人確認でございますが、法人の場合は、その確認の相手方としては、原則を考えれば、やはり法人の代表者あるいは支配人のように、法令上その登記を代理する権限がある人ということになろうかと思います。ただ、実際には、御指摘のように、ある程度規模が大きくなりますと、そういう法令上代表権あるいは代理権のある方が具体的な登記にかかわっているということは非常に少ないのではないか。

 そういうことを考えますと、そういう場合には、その当該法人内部で実質的に登記の申請を行う権限のある社員であるということがわかるような、そういう資料を提示していただいて、それに基づいて資格者代理人の方が本人確認をして、法人として間違いなく登記申請の意思があるんだということを確認していただく。そういったことがわかるような情報を提出していただければ、あえて法令上に根拠のある代表権、代理権のある方以外の方に基づいて確認してもよろしいのではないか、こう思っています。

辻委員 そうすると、今担当の権限がある方だということが疎明されるような書面があれば、その方を本人確認の対象としていいんだというお話ですが、その書面というのは、何か既に熟したものとしてもうまとまって、つまり、こういう書面なんだというようなことは予定されているんですか。

房村政府参考人 今申し上げたように、法人内部でその登記についての権限を実質的に有しているということをわかるようなものを当然確認の手段として利用していただかなければなりませんが、具体的にそれはどういうものがあるかというのは多分各法人によってまた違うと思いますが、ですから、これは資格者の方で、まず間違いなくこの人は権限があるんだということをどうやって確認するか、まさにそれをきちんと書いて登記所の方に出していただければ、登記官もそれを見て、ああ、ここまで確認しているなら間違いないな、こういう形になるのではないか。また、具体的にそういう例がふえれば、それは一定のスタイルが確立するかもしれません。

辻委員 では、その点については、登記官、登記所の方でも、資格者代理人の方とよく協議してきちっと運用されるように取り計らっていただきたい、このように申し上げておきます。

 それで、一般にはペーパーレスということで、登記済み権利証がなくなるということになるわけでありますが、登記済み権利証がなくなるというのは、登記権利者の立場に立てば、登記済み権利証をもらって、ああ、登記になったんだということを理解できる、覚知できるという意味がありますよね。もう一方で、その次の取引において、登記済み権利証が不可欠なものだ、買い主側の売買の意思が慎重になされる意味で、その登記済み権利証の重要性ということが現に社会的に機能している。

 後者の点については、登記原因証明情報というのが代替するものとして新たに提案されているんだけれども、登記権利者が、登記をしたんだ、これを見て、ああそうなんだ、私は権利者になったんだということが理解できる、認識できる、そのつもりになれる、そういう機能というのも登記済み権利証は大きかったと思うんですね。

 この点について、これを代替するような制度というかシステムというのはやはり考える必要があると思うんですが、この点はどうなんでしょう。

房村政府参考人 まさに御指摘のように、現在の登記済み証の場合は、登記が完了したということを通知する機能と、次の登記で使っていただく、二つの機能があるわけです。今回の登記識別情報は、これは人に示せませんので、その利用の仕方はいろいろありますが、これは次の登記で使っていただくという方でございますが、登記が終わったということに関しましては、今回新たに登記完了証というものを設けることとしております。

 これは、不動産を示しまして、登記の目的も書き、そして、その上で登記官が、下記の登記申請について登記が完了しましたということを職印を押してお届けする。もちろん、オンラインの場合にはオンラインで通知をすることになりますが。そういうもので、登記官の職印も押されておりますので、紙の場合であれば、これを見れば、間違いなく登記が完了した、また、これを第三者に示せば、登記が無事に完了しているということは理解していただけるようになると思います。

辻委員 その点に関係してだと思いますが、日本司法書士会連合会の方では「売買による所有権移転登記原因証明情報(謄本)」という書式をおつくりになられて、これは司法書士法や司法書士法施行規則にのっとって、これを取り扱った司法書士さんが署名捺印を、記名捺印かもしれませんけれども、されて、ある意味では登記済み権利証の代替としてのそういう効果というか、を目指すものとして試みられようとしているように思いますけれども、こういうこともそういう意味では有益であるというふうに理解してよろしいんでしょうか。

房村政府参考人 これは、実際に登記に使われた登記原因証明情報について資格者代理人の方がいわば認証するというようなものであれば、それなりの証明力はあろうかと思いますし、先ほど来お話の出ておりました登記原因証明情報についても、そういうものが別途作成されておれば、登記所に来るまでもなく、当事者間で、こういうことで出しているということにも使える。そういう意味ではいろいろな機能を果たすのではないかとは思います。

辻委員 では、次に、二十四条に関連して伺います。

 登記官による本人確認、ほかの委員の方も質問はされておりますけれども、例えば、先ほどの山内委員の質問に対する御回答では、警察捜査が始まっている、警察署からの通知があったような場合は、この二十四条で言う「申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるとき」に当たるんだというふうにおっしゃったと思います。ただ、それ以外の場合というのは結構まれなんだというような御趣旨をおっしゃったように思いますが、そういう理解でよろしいんでしょうか。

房村政府参考人 登記件数全体から見れば、やはり、そのような疑うに足りる相当な理由がある場合というのは、極めて例外的な場合だろうと思っています。

辻委員 確かに、本人出頭主義であったから、本人出頭か否かということについて登記官の審査権限が及ぶということは、確かにそのとおりなんだろうと思いますけれども、本人の不出頭主義になったから、しかし、場合によっては本人の出頭を登記官は求めることができるんだということを規定しておかなければいけないんだということでこの二十四条を規定されていると思うんですが、この二十四条の文言を素直に読めば、「申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、」「当該申請人の申請の権限の有無を調査しなければならない。」と、義務的になっているんですよね。

 そうすると、今局長がおっしゃるのは、数からいっても、警察の捜査が始まっているという通知があったように、それに類するまれな場合が疑うに足りる相当な理由がある場合だというふうにおっしゃっているけれども、担当の登記官からすれば、その場合というのがどの場合まで及ぶかわからないわけだから、相当な理由があるというのは、担当の登記官にその判断権限がゆだねられているとも読めるわけですよ。

 そうすると、自分は権限の有無を調査しなければならないんだということになると、義務的になると、本来はまれな場合で、そんなにわざわざ疑わなくてもいいのに、多分それほど疑うべき事案でもないのにというような事案でも、登記官からすれば、「権限の有無を調査しなければならない。」と義務規定になると、不必要な場合にもあえて調査をしないと、自分はきちっと仕事をしていないのではないかというふうな強迫観念に駆られて、それで不必要な呼び出しをかけるということになる余地があると思うんですね。

 失礼な物の言い方かもしれませんけれども、お役人の立場からいうと、かたくかたくされるわけだから、自分のやっていることが権限を逸脱したとか義務規定に違反したのではないかというふうに言われることをできるだけ排除しようということで、かたくかたく運用されていくと思うんですね。そうしますと、この二十四条の規定は、義務規定にすることによって不必要に本人出頭をかける危険性がある、そういう観点でこの二十四条の問題点というのをちょっとお考えになるべきではないかと思うんですが、いかがですか。

房村政府参考人 御指摘のように、二十四条では、「疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、」「調査しなければならない。」という義務の形で書いております。

 これは、申請人以外の者が成り済まして申請していると疑うに足りる相当な理由がある、こう認めながら漫然とそれを看過した場合には、当然本来の申請人に被害を与えるおそれがあるわけでございますので、それはやはり、国民のための登記制度を預かっている登記官として、当然これを調査すべき義務があるということだろうと思います。

 現実に、警察から通報を受けたのに漫然と登記をしてしまいまして、それが後に国家賠償を起こされて、国が敗訴しているという例がございます。そういう例を踏まえて、私どもとしてはやはり、これは単に、登記官に対して、心がけとしてやるべきだということではなくて、法律上の義務として明記をして、国民の大切な財産を預かって、そのための正しい登記を実現する権限と義務を負っているのは登記官なんだ、こういうことを自覚していただく。法律的に考えましても、疑うに足りる相当な理由があるのにしなくていいということは、法律上も申し上げにくい、そういうことからやったわけです。

 ただ、御指摘のように、余りこれを心配して、必要もないのに本人の出頭を一々求めるということでは御本人に負担をかけるということになりますので、そこは、私どもとしてどんな場合を想定しているかということはこの国会でも相当限定的な場合を挙げて説明をしておりますし、今後、部内的にも、どんな場合が疑うに足りる相当な理由があるという場合なのかということは周知をして、そういった国民に不要な御負担をかけることのないように、それは運用に万全を期したい、こう思っております。

 これはやはり、あくまでもこの権限というのは、登記を信頼した国民のその信頼を裏切らないように、国民に損害を与えないように行使するものだということでございますので、そういう意味で適正な運用を試みたい、こう思っております。

辻委員 いや、だから、漫然と疑うに足りるような場合を看過してしまうというのは、これは論外の話で、それをきちっとチェックしなければいけないというのは、これは当然の要請だと思うんですね。

 私が申し上げているのは、その要請は、必要性はそれとして認めるけれども、義務規定としてこういうふうに規定してしまうと、逆にひとり歩きしてしまわないのかということを申し上げているのであって、例えば、登記官が漫然と見過ごさないように、それを職務の一環としてきちっと配慮すべきなんだということを規定としてうたうのであれば、例えば、申請人の権限の有無を調査することができるというふうに、ねばならないというふうに義務規定じゃなくて、相当な理由があるときは調査することができるんだとすれば、要するに、出頭を求める権限が登記官にあるということは満たされるし、また、登記官ができるのにしなかったんだ、漫然としなかったんだということになれば、登記官の責任の問題になるわけですから、登記官の職務の執行に当たって警鐘を鳴らすことにもなるわけですよ。

 だから、義務規定よりも、できるという規定の方が私はより合理的な規定の仕方だと思いますが、この点、今回の改正案ではそうすぐには無理だと思いますけれども、今後の問題として、運用の実態も踏まえてその辺はいろいろ検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

房村政府参考人 先ほどから申し上げておりますように、成り済ましであるということを疑うに足りる相当な理由がある、こういうことを認めながら、およそ調査しなくていいということは法律の条文の考え方としてもどうかというぐあいに考えてこういう条文にしているわけでございます。ただ、もちろん、その権限の行使が不必要に行われて、国民に負担をかけるようなことのないようにしなければならないというのもそのとおりだと思っています。

 ですから、私どもとしては、この条文の運用に関しては、先ほどから申し上げたように、通達等で適切な指導をして、国民に無用の負担をかけることなく、しかも適正な調査が行われるような、そういう運用を心がけたいと思っておりますが、もちろん、この法律が施行された後、実際にどうなるかということはにらみながら、措置が必要であるということであればこれは何らかの改善を加えなければならないでしょうし、そういう意味では、適正な運用に心がけて、かつ必要な対応はいつでもしたい、こう思っています。

辻委員 適正な運用を心がけるに当たってやはり考慮していただきたい点を申し上げたいと思うんですが、例えば民事訴訟で代理人がついたら、何か事が起こったときに、いろいろ情報を伝えなければいけないとか、いろいろ事態が変わったというような場合には、やはり代理人のところに裁判所は連絡をするわけですよ。御本人のところに直接連絡をすることはないわけですね。それは、訴訟はそういう代理人の制度できちっと運用されている、それは信頼した制度がきちっと確立しているからなわけです。だから、裁判官は、弁護士である代理人を通さないで、頭越しに原告なり被告、本人のところに連絡をとることはないわけですよ。

 そうだとすれば、二十四条の運用に当たっても、先ほど山内委員も御指摘になられましたけれども、これで決済が終わりました、あとは登記を申請しましたから大丈夫ですよというふうに言ったのに、登記官から直接、登記権利者、予定者のところに、ないしは、この場合には本人確認なんだから登記義務者ですね、ということで呼び出しがかかった。そうすると、登記義務者にかかれば、それは登記権利者にも当然情報が行くわけだから、それを取り扱った資格者代理人としては立場がないわけですよ。

 だから、やはり運用のあり方としては、疑念を持ったときにはとりあえず司法書士の先生に、どうなんですかということを、とりあえずはまずは問い合わせをするような配慮が運用としてはあってしかるべきだと思いますよ。この点はどうでしょうか。

房村政府参考人 それは当然、代理人の方による申請であれば、問題が生じたとき、まずは代理人の方に確認をするというのが、現に、実際に起きている不祥事件についての報告を見ておりましても、まずは代理人の方に確認をして、それでらちが明かないときに初めて本人の方から直接聞くというようなことをやっているわけでございますので、そういう運用は、別に、この条文ができたからといって変わるわけではなくて、やはり直接的な連絡の窓口としては代理人の方になろうかと思います。

辻委員 そのような運用を行うということを再確認していただいたということを申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、予告登記制度に関連して伺いますけれども、今般、予告登記制度が廃止になっているということで、予告登記がされるということは、確かに、御指摘になっているように、いろいろな濫用的な事例があるというのも事実ですけれども、しかし、予告登記がなされることによって、その取引が無用の混乱に陥らなくて済むというような場合もやはりあるわけだし、また他方で、予告登記にかわって、例えば処分禁止の仮処分でもかければいいんじゃないかというような意見もあるかもしれないけれども、それは、やはり保証金がかなり必要なわけでありますから、そう簡単ではないという意味で、予告登記を廃止しなければならなかった立法事実としてどういうものがあるのか。その立法事実について、どういう統計をとっていて、どういう具体的な判断に立ってこれは廃止するというふうにされたのか、その点についてお答えください。

房村政府参考人 登記原因が無効であるというようなことで登記の抹消を求める、そういう訴訟を提起しますと、裁判所からの嘱託によって予告登記がされます。

 これについては、単に警告的機能を有するだけで、それ以上の法律上の効果はないと言われておりますが、この予告登記について最も強く指摘されておりますのは、執行妨害等のために濫用されている。これは、例えば、抵当権に基づく競売の申し立てがされますと、なれ合いで抹消登記請求を行いまして予告登記をつける。そうしますと、買い受けをしようとする者から見ると、登記面には登記が無効になるかもしれないということが表示されておるわけでございますので、これを買い受けようとする者がいなくなる。そういうことをにらんで執行妨害に非常に使われている。

 これも、例えば、なれ合い訴訟で、登記抹消の勝訴判決を得ますと、予告登記はそのままでは抹消されません。予告登記のもとになった訴訟で勝っても、これはなれ合い訴訟ですから、別に実際の登記を抹消するわけではない。そうすると、いつまでたっても予告登記が残ったままになっていて、これを競売しようと思っても買い手がつかない、こういう事態が起こるわけです。

 これは、法制審議会の審議の過程でも、日弁連から推薦された弁護士の委員の方、この方は執行関係に非常に豊富な経験があり、日弁連の中のバックアップチームも入っているというような方ですが、この方が、予告登記については、執行妨害に使われるケースが非常に多い、それで買い受け人が大変ちゅうちょするというのがあるんだ、現在されている立法趣旨である予告登記の効用とその弊害とを比べてみた場合に、実際の印象としては、本当に効用はあるのかなと思うぐらい濫用なり弊害が多いのが目につくわけでございまして、いっそのこと廃止したらどうか、こういうことをお述べになっておられる。

 また、そういった予告登記の濫用事例についての文献も、判例タイムズとか金融法務事情などに幾つも掲載されております。

 先ほど申し上げたように、予告登記がいつまでも残ってしまう。その場合に、なれ合い訴訟で勝った者に対して、予告登記を放置している者に対して、当該権利の放棄を求める訴えというのが提起できるということになっておりますが、そういった訴訟が、例えば、平成十二年で見ましても、東京高裁で平成十二年十二月二十日、それから同じ十二月の二十八日、それから地裁の方で、東京地裁で、平成十二年の五月二十六日、同じ十二年の七月二十八日、同じ十二年の九月八日と、平成十二年だけでもこれだけの判決が出ている。ここまで行くというのは、本当に困っているから訴訟を起こすんだろうと思います。

 ですから、具体的に、予告登記が濫用されている統計的件数というのは、これは残念ながら申し上げられませんが、そういった実務に関与されておる弁護士の方々の率直な印象あるいは文献、そしてこういった訴訟事件が多いということを見ますと、これはやはり予告登記が相当濫用されているというぐあいに考えてよろしいのではないか、こう思っております。

辻委員 持ち時間が参りましたので、今の点については余り議論にわたることは避けたいというふうに思いますが、確かに、予告登記の廃止に関して、今おっしゃられたような判例が出ていると。予告登記抹消のために、登記請求権の不存在確認判決が権利放棄書面に該当するというような判決が出ているという、これは認識しております。

 ですから、そういう濫用の事例も多々あるだろう、日弁連の弁護士さんもそうおっしゃっている面もあるだろう、しかし、現実に、従来の制度趣旨として言われていた合理性も全くゼロになったわけではないというふうに思います。この点は、近時、短期賃貸借がなくなったり、滌除の制度がなくなったり、執行妨害に関連して、いろいろ制度がなくなって、本来の趣旨から逸脱して利用されている制度がなくされていっている、その一環としてこの予告登記の廃止もあるのかなと思いますけれども、この点についても、運用の中でやはりもう一回検証される必要もあるのではないかということを一応指摘させていただきたいと思います。

 最後に、きょう御質問させていただいた点、例えば、大規模法人の本人確認についてどういう書面が妥当なのかとか、そのほか、政令、省令にゆだねるとか、いろいろなことがある。この不動産登記制度を、もう九五%、九八%の土地家屋調査士の方や司法書士の方が関与されているということからいって、そういう、既にほかの委員の方で確認されていると思いますが、資格者代理人の団体の方々と綿密に今後も協議して、この運用が円滑に進むようにぜひしていただきたい。この点を最後に一言だけ御確認いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、登記制度が円滑に運用できるように、政省令の制定あるいは運用に当たりまして、資格者団体の方々と十分意見を交換しながら適切に進めていきたい、こう思っています。

辻委員 以上で終わります。ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

 この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十二分開議

柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、破産法案及び破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。野沢法務大臣。

    ―――――――――――――

 破産法案

 破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

野沢国務大臣 最初に、破産法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 現行の破産法は、大正十一年に制定されたものであり、昭和二十七年に免責の制度が導入される等の改正がされたほかは、これまで特段の見直しがされることなく現在に至っております。しかし、この間の社会経済情勢の変化は著しく、とりわけ近年は、社会経済構造の変化等に伴い、大規模な倒産事件が相次いで生ずるとともに、個人債務者の破産件数も激増している状況にあります。

 このような状況のもとで、現行法の規律する破産手続に対しては、手続の迅速化及び合理化を図る必要があるとの指摘がされ、倒産時における利害関係人の権利関係の調整に関する規律を定めたいわゆる倒産実体法につきましても、その規律を現代の経済社会の実情に適合したものに改める必要があるとの指摘がされているほか、破産した個人の債務者について経済生活の再生の機会を確保するための方策をより一層講ずる必要があるとの指摘もされております。

 そこで、この法律案は、現行の破産法を廃止して新たな破産法を制定し、債務者の財産の適正かつ公平な清算を迅速に図り、債権者、債務者その他の利害関係人の利害及び権利関係を適切に調整するとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ろうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げますと、第一は、破産手続に参加する債権の調査及びその確定手続並びに配当手続の迅速化及び合理化を図ったことであります。

 破産手続におきましては、破産手続に参加する債権者の債権の額等を調査し、これを確定させた上で、その確定した内容に従って配当をするという一連の手続がされることとなりますが、これらの手続を簡素かつ合理的なものとすることにより、迅速な処理を図ることとしております。

 第二は、破産事件の土地管轄規定を緩和したことであります。

 いわゆる親子会社や、法人とその代表者等の関連する倒産事件の一体的処理を可能にするとともに、債権者数が多数である大規模な破産事件については、処理体制の整った裁判所への申し立てを認める等、管轄裁判所の範囲を拡大しております。

 第三は、破産手続開始前における債務者の財産保全の措置を充実させたことであります。

 債権者の強制執行や債務者による財産の隠匿等により手続開始前に債務者の財産が散逸しないよう、債権者の強制執行等を全面的に禁止する包括的禁止命令の制度や、手続の開始前に債務者の財産の管理処分権限を制限する保全管理命令の制度を創設する等、債務者の財産保全の措置を充実させております。

 第四は、破産手続における各種債権の優先順位の見直しをしたことであります。

 現行法のもとでは、財団債権の次の順位とされる労働債権について、倒産時における労働債権の保護の重要性にかんがみ、その一部について優先順位を引き上げ、財団債権とする等の措置を講じております。

 第五は、個人である破産者が破産手続の開始後も自由に管理、処分することができるいわゆる自由財産の範囲を拡張したことであります。

 いわゆる自由財産のうち、特に金銭につきまして、その額を必要生計費の三カ月分とすること等により、破産者の経済生活の再生の機会を確保するための措置を講じております。

 第六は、否認権に関する規定を整備したことであります。

 破産直前にされた財産減少行為等の効力を否定するための制度である否認権につきましては、相当な対価を得てした財産処分行為を否認することができる場合についての規定を新設する等規定を整備し、その要件を明確化しております。

 なお、この法律の制定に伴い、最高裁判所規則の制定等所要の手続が必要となりますので、その期間を考慮いたしまして、この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 続いて、破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、破産法の施行に伴い、民事再生法ほか百六十九の関係法律について、規定の整備を行うものであります。

 以上が、これら法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。

柳本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長房村精一君、国税庁徴収部長徳井豊君、中小企業庁事業環境部長大道正夫君及び国土交通省大臣官房技術審議官門松武君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局園尾民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柳本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 私の方からは、破産法案の中の個人の破産手続の特則及び免責手続について何点か御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、個人破産の申し立て件数ですけれども、平成四年に四万三千二百九十四件であったものが、平成十年には十万件を超えて十万五千四百六十八件、一挙にもう十万件を超えてきた。平成十三年に十六万件を超えて、平成十四年には二十一万五千件に達した。昨年十五年、速報値ですけれども、二十四万二千三百七十七件の申し立てがあったというふうにされております。

 本当に急増という言葉がぴったりすると思うんですが、今回の法改正はこのような事件の急増が背景にあったというふうに理解をしておりますけれども、法務省として、個人の自己破産事件がこのように急激に増加してきた原因というのはどこにあるというふうにお考えなんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、個人の自己破産事件は非常にふえております。この原因もいろいろさまざまなものがあろうかと思っておりますが、一つには、それぞれの方の消費スタイル、そういったものが大きく変わってきているということも影響していようかと思います。

 特に、最近急激にふえていることにつきましては、やはりバブル経済崩壊後の長引く不況の影響、これによりまして企業が倒産をするあるいはリストラをする、そういうことによって職を失ったりあるいは給与が引き下げられてしまう、そういうことが影響して、個人の自己破産事件が非常にふえているのではないか、こう思っております。

富田委員 今局長が言われた大きな二点はそのとおりだと思うんですが、ただ、報道等でも、この何年かの自己破産の申し立てというのは、どうも安易にされ過ぎているんじゃないか。本来なら、もう少し努力して、借りたものをどういうふうに返していくかとか、破産ではなくて長期の分割で返済するとか、何かほかの方法をこれまでだったら考えられていたのに、もう何でも破産ですと。弁護士に相談に行くときには、いろんな道を選択するんではなくて、最初からもう破産の申し立てにお願いに行くみたいな、そういったどうも傾向があって、この二十四万件なんという数になっているんではないかと思うんです。

 私は千葉地裁の道路を挟んで反対側で法律事務所を経営しておりますので、千葉地裁に行って破産手続の書類等をちょっともらいましたら、ワンセットでくれるんですよね。申し立ての手引から、チェックリストから、要するに、行って、何でも書けば、あとは必要な書類を自分で探してきて、何でもやれますよという、本当にかゆいところに手が届くように裁判所の方でもやっているものですから、これまでだったら、ちょっと破産というのは難しいんじゃないかなと思うような人たちでも、ああ、簡単にできるんだと。どうも破産を認める総債務額についてもだんだんだんだん低額化してきているので、ちょっとこの手続に安直に飛びつき過ぎているんじゃないかなというふうに思えるんですが、そのあたりについてはどんな感想をお持ちですか。

房村政府参考人 確かに、破産事件は非常にふえておりますし、中には安易に利用しているという例も含まれているのではないかとは思っております。ただ、同時に、非常に債権者から厳しい追及を受けて、生活が破綻し、あるいは極端な場合、自殺まで追い詰められるという方々がいらっしゃることも事実でございます。

 私どもとしては、やはり法的な手続によってきちんと整理をしていくということが何よりも望ましい、こう思っておりますので、そういう意味で、なかなか再生が難しい場合には、これは破産を最終的には使っていただかざるを得ないだろうと思いますので、この破産手続をできるだけ使いやすくするということを考えたわけですが、しかし同時に、おっしゃるように、破産ということではなくて再生という形で、長期分割でも債務を一定の割合できちんと払うということも、これもまた望ましいことでございますので、今回の破産法の改正に合わせまして、再生手続についてもその利用が促進できるような改正も行っているところでございます。

 やはりそういう実情に応じた利用をできるだけ国民の方々にしていただきたいと思いますし、または、そういうことが進められるような周りの方々の指導も必要ではないか、こう思っております。

富田委員 ありがとうございます。

 最高裁にお尋ねしますが、この個人の自己破産事件、特に同時廃止事件ですけれども、この事件が、現在、各地の裁判所において、実際にはどのように処理されているのか、その点についてお尋ねします。

園尾最高裁判所長官代理者 個人の自己破産事件の中には、管財人を選任して処理をする事件と、管財人を選任しないで破産宣告と同時に破産廃止決定をするという事件とがございます。

 お尋ねの同時廃止事件につきましては、裁判所に納める予納金が二万円前後で済むということで、債務の支払いに行き詰まった個人が債務整理に利用しやすい手続として全国の申し立て件数が増加しておるという状況にございます。破産宣告と同時に破産廃止決定がされることになりますので、破産手続自体はもうその段階で終わってしまいます。以後は免責を認めてよいかどうかの審査が始まるということになりまして、その審査の仕方については、各裁判所において地域の実情に応じてさまざまな工夫がされておるという実情にございます。

 私が昨年の一月まで所属しておりました東京地裁破産再生部の実情をお話しいたしますと、弁護士が代理人として申し立てをしてまいりました破産事件につきましては、法律の専門家である弁護士が財産に関する第一次的な調査を終えているという前提で手続を進めておりまして、特に問題があるという事件でない場合には、申し立ての当日に同時廃止の決定をするということもやっておりまして、その後、免責の可否について債権者への意見照会をした上で免責審尋期日を実施するということにしております。

 ただし、若干でも問題があるという事件につきましては、原則として二十万円の予納金を納めてもらって、破産管財人を選任して手続を進めているということでございます。東京地裁では、管財人を選任する場合にも、今のように原則二十万円の予納金で手続が進められるということで、全破産事件の三分の一以上の事件について破産管財人を選任して調査をするということをやっております。このように、東京地裁では、問題がある可能性がある事件につきましては破産管財人を選任して、調査の上で、免責をするかどうかを決めるという体制をとっております。

 全国の他の裁判所では、全国平均での破産管財人の選任率は一割前後ですので、東京のように多くの破産管財人は選任してございません。しかし、これはそれぞれの裁判所で債権者からの意見照会の工夫をするというようなことで適正な手続を行うということになるように努力がされているものというように考えております。

富田委員 今園尾局長が答弁してくれたんですが、実は、局長が東京地裁の総括判事時代に金融法務事情に書かれた「東京地裁における破産事件の実情と課題 過去十年間の統計数値の分析と最近の手続の進展状況」という論文を読ませていただきましたけれども、本当にわかりやすくて、説得力に富む、本当に感銘いたしまして、今のようなお話も実は載っておりまして、即日面接と少額管財事件ということで、東京地裁では本当に充実した審理がされている。

 逆に、弁護士の方から見ますと、千葉で申し立てをすると、破産の審尋期日が一カ月、二カ月先だと。東京だと、弁護士に頼めばもうすぐやってもらえるということで、どうも破産事件が東京に東京にと行っているような実は実情もあるんですが、その論文の中で、園尾局長がこういうふうに言っておられました。

 ちょっと紹介をさせていただきたいんですが、「かつて支払不能に陥った債務者に対する制裁の側面が強く現れていた破産手続は、事件数の増加と運用の努力の積重ねによって、現在では、経済的に破綻した誠実な債務者の再出発の支援に軸足を移してきた感がある。その意味で、今回、破産法改正がセーフティーネットの整備の一環として取り組まれることとなったのは、時宜を得たものといえる。」というふうに、ちょっと、もう二年前の論文ですけれども、このように指摘されております。

 現在でもこのように今回の破産法改正について思われていますか。そこだけちょっとコメントをいただきたい。

園尾最高裁判所長官代理者 少し早い段階から述べてしまいましたが、現在も変わらずそのように思っておるということでございます。

富田委員 局長にリードされたんじゃないかなと思うんですが、今回の改正は。

 今回の改正の中で、実は、免責の調査について、期日における審尋によることを要しないという規定が入っています。これはどうしてこういう規定を入れるようになったのか。この点、まず法務省にお尋ねしたいのと、こういうふうにすると、実際に私が経験したんですが、破産の審尋も債務者、申立人本人に会わないで、書面だけでもう破産決定を行って、次に免責の手続ですよというふうにやられている裁判所もありました。そうすると、こういう規定が置かれると、裁判官が債務者に、まあ、破産決定でいえば破産者ですけれども、一度も会わないで破産、免責、それで手続が全部終わっちゃうということが法文上は可能になると思うんですね。それが本当にいいんだろうか。

 私はやはり、破産の申し立てをされる方というのは、弁護士に相談した場合は弁護士からも相当いろいろ注意されますし、やはり行ったことのない裁判所に行って、厳粛な雰囲気の中で裁判官からいろいろ質問を受ける、ちょっと隠しているようなことも全部さらけ出す、そういう中でまた裁判官からきちんと説諭を受けて、二度ともう多重債務者にならないんだという決意をさせる必要が絶対あると思うんですね。

 そうすると、こういう規定が置かれることによってそういう機会が失われるようになってしまうんじゃないかと思うんですが、それぞれ、法務省、裁判所の考え方をお聞きしたいと思います。

房村政府参考人 御指摘のように、裁判所で直接当事者と会って意見を聞くということは、裁判所にとっても意味のあることだと思いますし、また、審尋を受ける者にとっても感銘力というような点でも意義があるということは、本当にそのとおりだろうと思っております。

 私どもが今回変えたのも、決してそういう審尋の場を一切なくすということではありませんで、法律で義務づけるということになりますと、現在破産事件は非常にふえておりますし、その中に多種多様なものがございます。そうすると、中にはそこまでやらなくてもいいような場合、他の件で既に済んでいて、こちらで改めて審尋をする必要がないというようなものも当然あろうかと思いますので、そういった場合に一律に強制することはやめたということでございまして、あくまで必要に応じて裁判所が、もちろん職権で開くことは可能なわけでございますので、それを事案に応じて適切に運用していただけるだろうと思って、私どもとしては、今回、一律の義務づけをやめたということでございます。

    〔委員長退席、森岡委員長代理着席〕

園尾最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のように、破産手続でしっかりと感銘を受けて、以後はそのような事態に陥らないというような決意をしてもらうということが、破産手続、特に消費者の個人破産手続では大変大事だというように私どもも考えております。

 この感銘力をどのように与えるかということですが、これを裁判所ばかりが手続をすべて引き受けて感銘力を与えようというようにやっておりますと、手続の遅延、それから思い込みによる行き過ぎた運用、その他さまざまな問題が出てまいりますので、現在の方向性としましては、感銘力を与えるというその人物について、まず申し立て代理人、それから管財人、それと裁判官という者が適宜役割分担をしてやっていくべきではなかろうかというように考えておるところでございます。

 したがいまして、管財人を選任した場合には、管財人が徹底して調査をするという過程を通じて破産手続について十分な認識を持ってもらうということでございますが、同時廃止ということで管財人を選任しない場合には、御指摘のように、裁判所が感銘力を与えるというようなことで乗り出していく必要性が高いというように考えております。

 裁判所といたしましては、この法律案が成立しました場合にどのようになるか、どのような運用をしていくかということにつきまして、この法案が国会に提出されました直後であることしの二月下旬に、高等裁判所の所在地の地裁を含む十三の地方裁判所の裁判官、書記官に集まっていただきまして、幾つかの論点を絞って運用に関する協議をいたしました。

 その協議会の中で、ただいま御指摘のような論点についても意見交換がなされておりまして、その際の結論といたしましては、御指摘のように、少なくとも破産宣告までの段階で破産者の審問をしていないというような場合には、同時廃止の決定以後に免責審尋を実施するというのが適当である、こういう意見が多数を占めたところでございます。

 新破産法案が成立しました暁には、御指摘のような点も含めまして、さらに十分な検討をして施行に臨みたいというように考えております。

富田委員 もう既にそういう運用に向けての努力がされていると聞いて安心しました。

 ちょっと質問通告からは漏れていたと思うんですが、先ほどの園尾局長の論文の中に、集団免責審尋の問題点について御指摘がありました。私も、前々回の選挙で落ちて、七、八年ぶりに法廷に行きまして、千葉地裁で集団免責審尋をやっているのを見て、正直言ってびっくりしました、これは一体何じゃいなと。こんなことで本当にきちんとした審尋ができるのかなというふうに思ったんですが、東京地裁ではもうそれはやられていないというふうに局長の論文に書かれておりました。そういうことをやめた理由というのもきちんと指摘していただいていて、こういうふうに書いております。

 労力の節減という、そういうところからまず始めたと思うんですが、「たしかに裁判官の審尋期日での法廷滞在時間は短くなるが、書記官や事務官の労力まで合わせて考えると、労力の節減にはならない」、こういう結果だったと。

 もう一つ、「また、集団で審尋を行なうことによる心理的消極面を軽視できないということも判明した。破産者が、裁判官から一人の個人として特定して認識されていないと感じることにより、破産手続が事務的に流れていることを感じてしまう結果となるという問題点である。」これは、今両局長が言われた感銘力という点がなくなってしまうということだと思うんです。

 そうすると、東京地裁がやめたものを何で千葉地裁が新しくまたそういうものを導入してやっているんだ。まあ、事件数がばんと膨れて、どうしてもそうやらないと事件が処理できないんだというのはわかるんですが、一番忙しい東京地裁で全件個人面接をしているということであれば、先ほどの運用に関する協議会等で、やはり集団免責審尋はだめだ、本当に流されていってしまうというか、やはり最後に、ここで免責になってもまたいろいろな業者が寄ってたかって来て、多重債務者になりますよ、そういうことをきちんと裁判官から一人の人間として言われないと、なかなか決意できないと思うんですよね。

 この集団免責審尋を東京地裁がやめたということをできれば全国に波及させていただきたいなと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

園尾最高裁判所長官代理者 集団免責審尋の問題点につきましては、私もその書物に発表したところのとおり現在も考えているわけでございまして、一裁判官としては現在もそのように考えているわけでございますが、他の裁判所の方々には、そのような裁判官の指摘を公にいたしまして、それを見た上で研究して、みずからどうするかを考えていってもらうというのが基本であると考えておるわけでございます。

 と申しますのは、東京ではたくさんの弁護士の方々がこの破産手続に加わっておられまして、裁判所と弁護士会との緊密な協力のもとに破産手続を実施しておるということですから、さまざまな改善案が円滑に実施できるわけですが、そのような前提条件を整えていくという努力も同時にやらなければいけないものですから、集団免責審尋というところだけをとらえて、ここをやるということで、いわば強制的な行為が出てまいりますときには、必ずほかに副作用が出てくるというような経験則を持っているものですから、問題点を指摘して、その点についてよく検討してもらって、みずからの力でよりよい手続をつくり上げていくというようなことを考えてもらいたいというように、これも現在も希望しておるところでございます。

富田委員 わかりました。ぜひ裁判所の方、裁判官の皆さんにもこの審議の状況を知っていただいて、そういった方向になっていただければというふうに思います。

 次に、自由財産の件についてちょっとお尋ねしたいと思います。

 今回の法三十四条の三項と四項から七項で、必要生活費三カ月分への引き上げと、プラスして個別事情による拡張の制度の創設というのがされました。自由財産、破産者の手元に残る財産ですが、この範囲が拡張されることになったわけですけれども、なぜ今こういった見直しが必要なんでしょうか、その点についてお尋ねしたいと思います。

房村政府参考人 破産手続、個人の破産の場合、その方の持っている財産というのはすべて破産管財人の管理のもとに置かれてしまうわけでございますので、その人は個人ですからその後も生きていかなければならない、そのためにはやはり一定額を手元に残さなければならない、そういうことから自由財産が認められているわけでございます。

 これは実は、同じような考え方から、強制執行においても強制執行の差し押さえ禁止財産が決められております。その強制執行の差し押さえ禁止財産につきましても、認められている額が少な過ぎる、範囲が狭過ぎるという指摘が実はございました。そういうことから、昨年の民事執行法の改正におきまして、従来、現金で手元に残せる財産としては、一カ月分の必要生計費ということで政令でその額を二十一万円と定めておりましたが、これを二カ月分にふやしました。また、同時に政令も見直しまして、その一カ月二十一万であったものを一カ月三十三万円ということで、合計六十六万円が差し押さえ禁止財産になりました。

 現行の破産法におきましては、民事の関係の差し押さえ禁止財産をそのまま自由財産にしておりますので、ことしの四月一日以降は二カ月分の六十六万円ということに今ふえていたわけですが、同じように、やはり個人のそういった生活を考えると保護の範囲が狭過ぎるのではないかという指摘が破産においてもなされておりました。特に破産の場合には、個別執行と違いまして全財産が拘束されてしまいますので、やはり通常の生活を維持するために必要な額というのは、個別執行の差し押さえ禁止の範囲よりもより広くする必要があるだろうということが主張されたわけでございます。

 ただ、余りこれを広げますと、今度はその分破産債権者の配当に回らないということにもなりますし、余り多額のものを差し押さえ禁止財産として留保できるということであるとモラルハザードを招く恐れもある、こういう指摘もあったところでございます。

 そういうところから、個別執行で二カ月分の必要生計費分を手元に残せるということにするのであれば、包括執行の破産手続においては、やはり一カ月分程度はふやす必要があるのではないか。また、個別の事情で、例えば扶養家族が非常にいるとか病気であるとか、そういった事情もありますので、そういった必要に応じて個別的に裁判所が自由財産の範囲を拡張できる拡張の裁判の制度を設けるということでそういった個別事情のある人には対応しよう、こういうことを考えて現行法の改正案としたものでございます。

富田委員 今の局長の御説明ですと、個別執行で六十六万まで差し押さえ禁止になっている。今回の三十四条の三項ですか、これだと民事執行法百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金額、わかりにくいんですが、二カ月分で割って三掛けるから、要するに三カ月分で、これは九十九万までというふうになりますよね、数字的に。

 ただ、九十九万円が自由財産というと、今、破産、免責の実務の中では、二百万円台でも結構破産、免責が認められますよね。債権者側から見たら、二百万の債権が棒引きになって、本人のところに九十九万、百万近くの金が残っている。だったら五割配当しろよ、五割配当しないまでも、五十万は残してやっていいけれども、残りの四十九万は配当してもらって、そうすれば二割五分ぐらいの配当になるんじゃないかというのが債権者サイドから見た思いだと思うんですよね。

 債権者の方がかなり力が強くて金融機関だとかそういうことなら別ですけれども、個人の債権債務関係を考えると、ここまで自由財産を保護してしまうというのは、私は、ちょっと問題なんじゃないか。個別執行と同じようにしておいて、個別事情による拡張の制度を弾力的に運用して、本当にその人たちが生活できないというのであればそのときに広げるというふうにした方がよかったのではないかなというふうに思うんですけれども、個別執行と包括執行というふうに言われると、ああ、六十六万と九十九万だから、何となくそうかなと納得してしまいそうなんですが、どうもやはり債権者サイドから見るとちょっと違うんじゃないのかなと思うんですが、その点はいかがですか。

房村政府参考人 この点は、御指摘のように、まさに破産債権者と破産者の利害が正面から対立する。自由財産をふやせばその分配当は減ってしまうわけでございますし、配当をふやせば破産者の方の生活が困難になる。

 そういう中で、さまざまな御意見をいただいたわけですが、やはり、もちろん御指摘のような非常に少額のものもあろうかと思いますが、破産事件の多くにおいては、本当に家屋敷を全部手放して、もうあしたからの生活に困る、そういう例も多く見られるわけでございますので、そういう方々の、特にその家族の方々まで含めた生活を考えますと、包括執行である破産においてはやはり一カ月分程度をふやす必要があるのではないかということが議論の大勢を占め、今回の改正に至ったわけでございます。

富田委員 全部納得というわけにはいきませんが、経過はよくわかりましたので、次の質問に移らせていただきます。

 ちょっと通告した順番と違ってしまうかもしれませんが、法の二百五十二条第一項の十号で、再度の免責の制限期間を七年に短縮するというような書きぶりになっています。今までは十年だったものを、なぜここに来て七年にする必要があるのか。

 やはり実際に、破産とか免責の手続の流れの中で、二度とできないんですよと説明するわけですね、普通。やったら今度はもう破産、免責できないんですよ、十年は絶対できないんだからもう借りちゃだめですよというふうに、先ほどの園尾局長じゃありませんけれども、代理人が言い、管財人が言い、裁判官が言っているのに、それが今度七年になるというと、ちょっと一、二年は我慢してやっているけれども、また同じように何年か借りまくって、申しわけないけれどもまた破産してくださいと。七年だとそういう人が、私、相当出てくる可能性があると思うんですよね。

 そのあたり、どうして今、十年であったものを七年まで短縮しなきゃいけなかったのか。その背景について、何か根拠になるようなものがあったら教えていただきたいと思うんですけれども。

房村政府参考人 この免責の制度というのは、債権者の意思に反して、ともかくそれを払わなくていいという、カットしてしまうわけでございますので、債権者としては非常に不利益を受ける。そういう制度を余りたびたび利用できるということでは、まさにモラルハザードを招く。そういうことから、十年の期間、十年内にはもう一度免責を与えないということを昭和二十七年に制定したときに定めたものでございます。

 ただ、その昭和二十七年からもう半世紀以上経過しておりまして、社会の変化というのは非常に速くなっている。それで、特に、破産をして免責を受けて再出発をして、また経済的な活動をいろいろ行うという方もふえてきております。そういう方が誠実に努力をしたにもかかわらず再び失敗してしまうということも、昔に比べれば、どうしても経済活動の活発化に伴ってふえてきている。そういう方について、経済生活を再度行うという観点からすれば、誠実に努力したにもかかわらず再び陥ってしまったというときに、一切免責を認めないというのも非常に酷な話ではないか。

 そういうことを考えますと、現在の十年というのは、制定当時はともかく、今においてはやはり長過ぎるのではないか、こういう指摘がいろいろありました。それからまた、例えばアメリカを見ますと、アメリカでの再度の免責の制限期間は六年間ということになっておりますので、そういう点をいろいろ考えまして、余り短くしますとやはりモラルハザードを招くということもありますので、今回七年ということで、その程度の期間は我慢をしていただく。それを過ぎた場合には、やはり誠実な債務者であればそれは再出発の機会をもう一度与えてあげよう、こういう考え方でございます。

富田委員 今、アメリカが六年なんだということを教えていただきましたが、レクでいろいろお話を聞きましたら、信用情報が六年だというのもあって、そこにプラスしてというような考え方だというような御説明もいただきました。まあやむを得ないのかなと思いますが、今局長が最後に言われた、誠実な債務者の再出発を手助けする制度なんだ、ここをぜひ法務省も最高裁も運用面できちんとしていただいて、モラルハザードが生じないように、この改正案が通りましたらぜひ御努力をいただきたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

森岡委員長代理 御苦労さまでした。

 次に、松島みどりさん。

松島委員 自民党の松島みどりでございます。

 今、富田委員は専ら個人の破産のことについて質問されました。私は、法人、企業の破産、そして企業の破産に伴う保証人という形で、その経営者あるいは連帯保証人になった人が破産する、このことを取り上げさせていただきたいと思っております。

 総論として申し上げますと、私自身、この破産法の改正と申しますか、新破産法の制定というのは非常に期待を持って、もう三年ほど前に議論が始まったころから期待をしておりました。そして、総論としては非常にいい方向で行ったとは思っております。と申しますのは、一番私、関心を持っておりましたのは、手元に残せる資産というものの大幅な引き上げ、そして、それとともに、従業員、働いている人の未払いの給料、私は何が何でもこれが一番守られなければいけないと考えているのですが、それがかなり優先的に上位に来た。この二点について大きく評価しております。

 しかしながら、幾つか、その点を含めて、その点を中心に、まだちょっとおかしいんじゃないかと思う問題意識を持っておりますので、そこを質問させていただきたい。

 そして、大前提といたしまして、こういう法律、房村局長にほかの法律でも何度も申しているんですけれども、普通の日本語じゃない、普通の日本人がわからない。これだけ破産が身近なもの、不幸せにも身近なものになっているときに、大体、別除とか財団債権とか、さっきの集団免責審尋、自由財産、これではわからないですね。別除なんて、パソコンをたたいてもこういう字は出てきませんし、普通の日本人がわかる日本語にぜひとも法律をつくり直すか、あるいは、そうでなければ法案というものの最初に用語の手引というのを、一般の国民のためにも、これからいろいろな法改正のときにぜひやっていただきたい。

 そういう意味で、私は、自分なりに理解した言葉に置きかえて、法律用語を一応読んで頭には入れましたけれども、置きかえて質問させていただきますので、答弁の方もそのようにお願いしたいなと思う次第でございます。

 それで、破産というものに私がこれだけ関心を寄せているというのはなぜかと申しますと、私自身は十五年間、大企業、それも恐らくつぶれることが何十年間はないだろうという大企業のサラリーマンをやりました。そして、その後政治活動に入って、初当選まで長かったものですから、かれこれ九年間政治の道を、議員になる前から含めて歩いております。

 私の地元というのが東京の下町で、中小零細企業の町でございます。非常に親しくした人あるいは関係があった人のところへ久しぶりに、何カ月かぶりに行きますと、何か張り紙が、東京地裁何部とかいうような張り紙がございまして、どこへ行ったかわからないような状況に、もう消えられているとか、あるいは、あの人どうしたのと言ったら、それで姿を消したとか、あるいは、従業員なんだけれども、お金、もう何カ月か給料が払われていないだとか、そういったことをよく聞きます。

 私は、経済産業委員会、あるいは中小企業金融という分野におきましては、本人の、社長の保証なしの、個人保証なしで何とか貸す枠を政府系金融機関を中心に拡大できないか、それが無理でも、まず第一段階として連帯保証人、第三者保証というものをなくせないかということにずっと取り組んできたんですが、やはり同じ重さで破産法の改正が必要だ、そういうふうに実感しているわけでございます。

 質問を始めます。

 まず、今御自身でもおっしゃいました、東京地裁でも破産、倒産関係の、世の中ではミスター倒産と言われているという園尾局長にお伺いしたいと思っております。

 破産の件数なんですけれども、受理件数、これが平成十五年二十五万一千七百九十九件、これは五年前の平成十年に比べて二倍以上になっています。このうち企業の破産が八千九百五十件で、五年前に比べて一・六倍になっているわけでございます。

 それで、これまでの法体系のもとでの破産におきましての実例でいってどういう状況であるか、教えてください。

 金融機関の担保つき債権というのが別格扱いで、別除債権と言うようですけれども、まずこれが、会社が破産したら、銀行が全部担保を持っている限り押さえちゃう。今、担保割れしているわけですから、もちろんフルに活用できると思うんですけれども、これでさっさと銀行が土地を処分するなどしてお金を手に入れる。

 そうしますと、その銀行が持っていっちゃう分を除いたら、つまり、担保がないのは全体のどれぐらいの割合が残っているのかということと、それから、これまでの法体系では、税金とか社会保険料の未払いの分とか、そういうのが先に取られる、それよりも先に破産管財人が報酬を押さえちゃう。そうしますと、私が一番気にしております従業員の債権などに回っていくのは、無事に従業員の給料、未払いの給料が何割かでも支払われたというケースはどれぐらいなんだろうかということ、どれぐらいだっただろうかというようなことを教えていただきたいと思います。

園尾最高裁判所長官代理者 お尋ねの点につきまして、破産事件処理の経験に基づいて、大きなところの流れを御説明申し上げたいと思います。

 会社の破産事件につきましては、およそ半分が破産手続で配当がされるという事件でございまして、残る半分は破産事件において全く配当がないという事件でございます。

 配当が全くない事件といいますのは、ただいま御指摘のように、会社財産に担保権がついてしまっている、あるいは、仮に担保の対象外の財産がありましても、その換価代金の全額が租税債権の支払いに充てられてしまうというものでございまして、労働債権者や一般債権者には全く配当できないという事件でございます。これが約半数あるということでございます。

 残る半数近くの事件につきましては、率はさまざまですが、一般債権者に配当をしております。

 この中には、労働債権の届け出がある事件とない事件、あるいは労働債権全額を払える事件とその一部しか払えない事件というものがございますが、ごく大ざっぱに申しますと、配当がされる事件におきましては、過半数の事件について労働債権の支払いがされているという状況にございます。

松島委員 今もおっしゃいましたように、これまでだと、破産した会社の半分において給料というのは、もちろん未払いじゃない場合もあるかもしれませんけれども、一切払われていない。そして、給料未払いだけでなしに、その取引先、例えばそこに売り掛け債権を持っていたり、あるいは取引している中小零細企業に全く払われていないという、つまり連鎖倒産の憂き目に遭う状況が半数の倒産において見られるというのは、改めてショックだなと思っております。

 今、企業のいわゆる倒産、倒産というのは漠然とした言葉かもしれません、いわゆる企業の倒産が全体で減っている中で、破産というのがふえて割合が大きくなっている。民間の調査機関であります帝国データバンクの調べでは、平成十五年度は倒産に占める破産の割合が三四%まで高まって、過去で最高になっています。最高というのは、これまでに比べて破産がふえて、任意整理、個人にとっては任意整理というのはある意味で一番、ある程度ハッピーなわけですが、それが減っていると思うんですね。

 これは不幸だと思うんですけれども、何でこういうようなことになるのか。私も地元の中小零細企業の方たちと話していると、こういうことをよく聞きます。

 あそこの会社は、同業他社だけれども、あそこは早いうちにやめてよかったな、やめられるうちに廃業してあそこは幸せだったけれども、うちはやめられないで、つまり、ちょっとだけ借金が、ちょっとだけと言ったらおかしいですけれども、何億ともいかない、何千万の、それも小さい方ぐらいだけれども、それさえ銀行の借金がどうしても返せないからやめられなくて、あるいは、従業員何人かでも、少しだけでも退職金を払ってあげたいけれどもあげられないから、もうちょっとよくなれば、よくなればと待っているうちに結局破産というところまで追い込まれちゃったというのを聞くんですけれども、園尾局長からごらんになると、やはり破産の割合がふえているというのはどういったことが原因でしょうか、御経験から。

園尾最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の民間信用調査機関の統計は、これは負債額一千万円以上の企業倒産について調査をしたというものでございますが、その調査結果では、最近数年のうちに任意整理の割合が大幅に減少しておるということでございます。

 このように任意整理が減少しているのはなぜかといいますと、基本的な理由は、破産や民事再生の申し立てがしやすくなったということから、企業が倒産した場合に破産の申し立てや民事再生の申し立てをして清算するという割合がふえてきたということでございまして、法的整理の割合が、平成十年度にはこの統計によりますと全体の一七%であったものが、平成十五年度には全体の四一%にまで増加しておるということでございます。

 法的整理が増加いたしますと、会社の財産が債権者の間で法律の規定に従って平等に分配されるということですので、例えば財産隠しが行われなくなるということで公正な処理がされますので、この任意整理が減少するということ自体は、むしろこれは悪いということではないというように受け取られているというように思います。

 ただ、御指摘のように、早い段階で廃業ができたならなおよかったということなのに破産という事態まで行かざるを得ないという実情があるということは、これは事実でございます。

 なぜ早い段階で廃業できないのかといいますと、例えば、手形を発行している会社では、その手形の一部でも支払いができないと、銀行取引停止処分がされまして、すべての金融機関との取引が停止されてしまうということで、いわば自転車操業で手形決済資金の手当てをしているといううちに、負債が雪だるま式にふえていって任意整理ができなくなるということがございます。

 また、連帯保証債務があるという御指摘のような事例でも、会社債務が不払いになりますと連帯保証債務を追及されてしまうということで無理をしているうちに、債務が雪だるま式に膨れ上がってしまう場合もございます。

 さらに、従業員の生活のことを考えて苦しい中を事業の継続をしているうちに、債務が膨れ上がってしまったというようなこともございまして、そのようなさまざまな原因から、任意の了解を得るという手続では到底整理できないというような債務の状況になっておるということがあるというふうに認識しております。

松島委員 今お伺いしましても、本当に、金融機関の取り立てですとか、それから人に迷惑をかけないように、従業員が何とかもつようにと一生懸命努力した結果が最後まで行き着いてしまうというのが多々あるんだと思います。

 先ほど申しましたように、私もサラリーマンをやめてそういうのを見るようになりまして、サラリーマンというのは、もちろん会社が倒産したら大変ですけれども、普通にいっている場合は、自分が借金を背負うというのは住宅ローンだけでございます。それに引きかえ企業経営者というのは、真っ当に事業をやっていて、大して大きくない会社でも、何千万、何億の借金というのを背負っていて、本当に、そういう意味では非常に大変なことであるなと思っております。

 今おっしゃいましたように、破産や会社更生、民事再生といった法的な手続がやりやすくなっている、これは大事なことだと思うんです。これから質問させていただくわけですけれども、今回、新しい法律、新しいというか新しい法律をつくるぐらいの意気込みで法改正をしたわけでございますし、これについては、どうか、全国的に、新聞でも何でもいいから、わかりやすい言葉を使って宣伝をしていただいて、例えば、自殺に追い込まれる、それは本人が不幸なだけでなしに、残された遺族、子供たちも、親が自殺で死んだというのは言えない、あるいは夜逃げみたいなことにならないように、どうか、こういうふうに改正した、何も死ななくていいんだ、待ってくれというようなことを、やはりそういう宣伝をわかりやすい形でしていっていただきたいなと思っております。

 それで、法務省民事局長への質問に入らせていただきたいと思います。

 私、最初に評価すると申し上げました、労働債権の問題でございます。

 未払いの給料をちゃんと払ってあげましょうという非常に大事なことでございますけれども、破産した時点の話ですが、これは、今回の法律の規定は、未払いの三カ月分の給料とそれから退職金、給料三カ月分に当たる退職金という話があるんです。もちろん、退職金も大事なことですけれども、破産に追い込まれる会社、それも中小零細企業の場合は、退職金の規定などない会社がかなりメーンではないかという気もしております。

 私、退職金の話はちょっと置いておきます。もちろん、規定があれば払われた方がいいですけれども、まず、ひとまずは働いた分に相当する給料、それは何カ月がいいのかわかりませんが、それのことを専ら念頭に置いて質問させていただきたいと思っております。これは、もうどんな支払い、返済を踏み倒しても、働いた分の給料だけは払ってやる、それが約束されることがやはり会社の責任だと私は思っております。

 それで、新しい法律、今度の破産法で、これでもやはり、銀行の担保つきの債権というのが何か別に除かれて先に優先されちゃうんでしょうか。さっきの説明でも、半分ぐらいはもうそれで、かなりの企業がもうそれで終わっちゃうというような話なんですけれども、それをまず伺いたい。そのことを確認した上で、給料の未払い分より先に払われるものがほかにもあるのかどうかをまず確認させていただきたい。それと、なぜ三カ月なのか、もっと未払いの場合もあるんじゃないかということを含めて、一番基本のところを教えていただきたいと思います。局長。

    〔森岡委員長代理退席、委員長着席〕

房村政府参考人 まず、担保権がついている債権について申し上げますと、これは現行法でもそうですし、今回の改正法案でもそうですが、抵当権であるとか特別の先取特権、そういったものがついているものにつきましては、破産手続が開始された後も、その債権者はこれらの抵当権等の権利を破産手続とは別に行使することができる、そういうことから別除権と申しておりますが、これは変わっておりません。

 これはやはり、金融取引、融資をするときに担保物権をとって、その返還を確保した上で融資をするというのが実際に行われているわけでございますので、これは、そういう形で権利を確保している者の権利を破産手続においても尊重する必要がある。もしこの抵当権等が事後的な事情でそれに優先する債権が出てくるということでは、金融機関としても安心して融資をできない。そうなりますと、財産を持っていても十分な与信を受けられないということにもなりますので、そういう面から、やはり抵当権等の担保権につきましては別除権として別の行使を認めているということでございます。

 次に、現在の法律におきましては、そういった別除権がまずはあります。それから、財団債権として、租税債権あるいは手続費用、そういったものがございます。それが優先的に払われて、その後に破産債権になります。その破産債権の中では、給料債権は、民法上の先取特権の保護がありますので、優先的な破産債権として破産債権の中では最優先で支払いを受けられる、こういう形になっております。今回、その取り扱いを見直しまして、給料債権のうち未払い分の三カ月分と退職金について三カ月の給料に相当する分、これを破産債権から、それにさらに優先する財団債権に格上げをしたわけでございます。この位置づけとしては、従来、財団債権として認めておりました租税債権と同じ順位ということになります。

 財団債権の中では、手続費用、要するに、総債権者のためにかかった費用、これは破産関係のすべての者のための費用ですので、これが最優先でございます。その次の順位として、租税債権とか、それから今回繰り上がりました三カ月分の未払いもしくは退職金の給与というものが入ってまいります。順番としてはそんなところになります。

松島委員 いざというときに抵当権が行使されることが前提で金融が回っていると言われたんですけれども、でも、働いたら給料をくれることが前提で働くんですよね、みんな、そうだと思うんです。皆さん方は、国家公務員だったり裁判官時代も給料をもらえなくなるということは考えたことがない方々だから、恐らく審議会のメンバーの方々も、国立大学の教授なんかはそういうことを考えたことがないと思うんですよね。

 でも、世の中は、給料は払われる前提で働いているということ。そしてまた、今言われた銀行だって、時には貸し込むんですよ。貸してやるから何かしろとかそそのかしておいてやっておいたあげくが、半ば共同責任というか、企業の経営にある程度タッチしているんです、銀行は。何でそれが上なのか、私はどうしても許せないと思うんです。

 その次に、もう一つ、財団債権、これもよくわからない言葉ですけれども、その中で、手続に要する費用、これは裁判所に払うという意味なのと、それから破産管財人に払うということなんだと思うんですけれども、何で後からやってきた弁護士に払う費用が先に、大事になるのか。先に働いていた、その従業員がずっと働いていたから、うちの会社、おかしいかもしれないな、怪しいかもしれないな、でも、やはり一緒に頑張って命運をともに、とにかくやっていこう、立て直そうと思った人がやっているから、例えば彼らが三月にみんなやめちゃったら三月、四月につぶれるところを、そうやって頑張ったから会社が七月、八月までもつということもあるんですよね。

 せっかく喜んでいたら、こんな血も涙もない基本があるというのは物すごく悲しいんですけれども、何で、まあ、それについては局長にこれ以上聞いても、何からちが明かないような気がしますので、大臣は私以上にサラリーマン歴が長くあって、その会社は親方日の丸のときから、それからちょっと危なくなったりいろいろしたわけですけれども、どう思われますか。やはり従業員というのは基本的に会社から給料をもらうという前提で働いていると思うんですけれども、こんな、銀行が貸し込んだりしたから、銀行が先だとかいうのはやはり変だと思うんですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

野沢国務大臣 委員の御指摘はまことに庶民感覚に満ちあふれた御質問と思いますが、私も、つぶれないつもりで就職した会社がつぶれまして、しかし、見事に立ち直りました。

 そういうことでございますので、この質問のお答えに入ります前に、今回のこの法案を提案させていただいておりますのは、やはり一たん倒れた会社でもできるだけ立ち直りができるようにということで、現時点で最大限の配慮をした上でさまざまな課題に取り組んでおるというところでございますが、今のポイントも、改善した労働債権の問題についても、大きな進歩の一つではないかと思うわけですが、御指摘のとおり、企業が破産した場合の労働債権を保護する必要性というのは、もう言うまでもなく極めて高いという点では、認識は一緒でございます。

 しかし、他方において、金融機関が抵当権を設定して貸し付けた場合のような担保つき債権は、民法等の実体法において、担保目的財産については、労働債権を含む他の債権に優先する地位が認められている。要するに、会社というものがそういう前提で成り立っているということは委員も御承知かと思います。

 また、破産管財人の報酬請求権は、全破産債権者の利益に資するいわゆる共益費用の性格を有するということから、財団債権の中でも最優先の債権とされておるわけでございますが、このように、破産時における債権の優先順位のあり方は、各種債権の実体法上の地位や性質を考慮しまして、全体として整合のとれたものとする必要があると考えられるわけでございます。

 そこで、今回の破産法案では、このような考え方を前提としつつも、可能な限り労働債権の保護を図るために、労働債権の一部を財団債権として、破産債権に先立ち随時弁済を受けることができるようにしたものでございまして、相当大幅な改善を図っていると考えております。

松島委員 仕組みの上では確かに順番を上げたということになるんですけれども、しかし実際に、大体、担保がなければお金は借りられませんから、担保に全部土地とか不動産は入っちゃっている。残っているのといっても、預金でそんなに残っているわけないですし、あと、例えば在庫で倉庫に残っているものだとか、あるいは原材料で残っているもの、これは製造業の場合ですけれども、それがそんなに換金できるかというと、非常にきついと思うんですね。そうした中で、給料の未払い分が払われない、かなりカットされるというのは、そうなる可能性が高くて、それは、私はやはりつらいなと。

 今大臣の御説明を聞きますと、確かに民法上の規定の中で、民法というのが一番基本をなすということでしたら、民法も改正するのは国会の仕事でございますので、また私はそのときまで法務委員会のメンバーとして一生懸命に動きたいなと思っている次第でございます。

 この労働債権、労働債権を上にしろ、一番にしろと言っていてもらちが明かないので、労働債権の中身について質問をさせていただきたいと思っています。

 労働債権につきましては、つまり、今回上位で、財団債権という形で請求できる労働債権については、今回の法律の百四十九条で「使用人の給料」という表現になっています。一行で書かれています。使用人という言葉が古くさいとは思うんですけれども、使用人の給料というのは、つまり使用人というのは何だろう、定義は何だろうかと思っています。

 今、働くということの形態がいろいろな形で、いわゆる使用人というのがそこの従業員と考えて、それでも、正社員以外にパートやアルバイト、あるいは期間を区切った期間工などというのもあります。こういうのが入るのかどうか。そしてまた、民法では雇用契約とか請負契約、委託契約、いろいろなことがあると思うんですけれども、契約がそうじゃなくても、実際に労務の提供をしている、提供したというケースがしばしばあると思うんですけれども、どういうふうにとらえるか。

 これは、ちなみに労働に関係します労働基準法によりますと、労働基準法といっても、昭和二十二年にできた法律で古いんですけれども、九条というところで「「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」というふうになっているんですね。使用人の給料と似ているような、まあ、同じなのかなとも思うんですけれども。

 さっき申しましたパートとかですけれども、厚生労働省の調べでも、雇用者に占める正規社員、従業員の割合は、平成十二年には七四%だったのが、最近では六三%まで減っています。その分ふえたのが、パート、アルバイトが二〇%で、それから派遣社員とか契約社員とか嘱託というのが八%にまでふえています。この人たちが労働債権で言う使用人に当たるのかどうかという問題。この手の派遣社員というものなんですけれども、当たるのかどうかというのをまずお伺いしたいと思います。

房村政府参考人 破産法案の第百四十九条で使用人という言葉を使っておりますが、これは、民法三百八条で使用人の給与債権等について先取特権を認めておりますので、それを受けた規定でございまして、民法の使用人と同じ意味でございます。

 その中身といたしましては、労務の提供をして、その対価を受け取ることによって生活を営んでいる、これを広く使用人と呼んでおります。したがいまして、正社員はもちろん、パートであるとか期間工であるとかさまざまな形態がございますが、要するに、その会社に労務を提供して対価を受けていれば、これは使用人に当たります。また、契約形態が雇用契約であるのか委任であるのか請負であるのか、そういう形にはよらずに、その実質として、まさに労務の提供をして、その対価を受けているかどうか、そういう実質的な判断でこの概念はできております。

 もう一つ、先ほど労働債権の期間を三カ月財団債権に繰り上げた、その理由ということでまだ申し上げなかったんですが、よろしいでしょうか。(松島委員「おっしゃっていただければ」と呼ぶ)これは、労働債権を保護するためには、それはなるべく多く財団債権に繰り上げた方がいいことは間違いないわけですが、先ほども申し上げましたように、実体法上の順位としては労働債権は、一般の債権に比べれば、先取特権が与えられて優先的地位がありますが、実体法上は租税債権なんかの方が労働債権よりも優位に立っている、その全額については本来は優位に立っているわけです。

 そういう実体法上の順番を、特に破産手続の中で、特別の必要があるということで繰り上げて同じ順位にするということですので、余り多くの額を上げるというのは、実体法の基本的な考え方とそぐわなくなってしまう。

 それからもう一つは、特に破産の場合には、未払い給与とそれから退職金も今回繰り上げることにしておりますが、基本的には従業員にすべて退職していただくということになりますので、相当の額の退職金なり未払い債権が生ずるだろう。財団債権が余り大きくなりますと、破産手続の費用が賄えなくて、破産廃止になってしまうわけです。

 先ほどおっしゃった、例えば給与債権をとるためにどうするかと。すると、売上金を回収したり、それから否認でよそに行ったものを取り戻したりと、こういう破産管財人の権限をフルに使いまして財産をかき集めて、それに基づいて配当していくということが実際の破産手続の中で行われているわけです。ところが、余り財団債権を多くしてしまいますと、破産廃止で管財人の選任すらできない。そうすると、せっかく手続をとればもう少し財産も回復ができて配当ができたのが、それすらできなくなってしまう、そういう心配もあるわけです。ですから、余り財団債権をふやすということは、破産廃止事件の増加に伴ってかえってマイナスになる面もあるわけです。

 そういうようなことをいろいろ検討いたしまして、未払い債権三カ月分と退職金三カ月分、こういうことにしたわけでございます。

松島委員 三カ月の事情はわかりました。

 今、答弁の中に、雇用というか、労務の提供の実態を見るんだということでございました。請負とか委任とかそういう契約の形上のスタイルではなくて実態を見ていくということで、それはいいことだなと思っております。

 それで、具体的に質問があるんですけれども、建設産業という、非常に世の中でボリュームが大きいところでございます。これが、特殊なところといいますか、建設現場、例えば大きなビルをつくっていても、一千人、二千人というすさまじい数の方が働いているようなところでも、元請の、つまり事業主から直接契約を受けた会社、いわゆる大手ゼネコンとかそういうところの人は、現場監督というか、一人か二人、事務所長でいるかいないかぐらいですね。実際、九九・九%ぐらいの人はそうじゃないところの人が実際に労務を提供している、そこで働いております。ボリュームも大きいし特殊な業界なので、このことについて確認のため教えていただきたいと思います。

 そういった場合に、元請との関係の結びつきといってもいろいろあるんですけれども、実際に、例えばタイル屋さんだとか、とびとか、大工とかいろいろあって、それから家具の内装工事の人とか、いろいろあります。それが入るときの入り方として、一つは単なる労務提供で、実質、今一人親方とか一人職方さんとか言われるんですけれども、一人で入って、日給制だとか出来高払いですけれども、出来高払いといったって一平米塗ったらどれぐらいだとか、そういうようなので入るときがございます。これは一番労務提供に近いと思うんですけれども、こういう場合は労務提供と見ていいのかということが一つ。

 もう一つは、いわゆる下請という形で、さっき言いましたような、一応、タイル工事会社とか何とか内装有限会社とかそういうところで入っているんだけれども、そこの人たちが何をやるかといったら、仕様書に合わせてタイルを自分が買ってきて用意してタイル代も負担する、人も同業者で手があいている人を誘ってきて人夫として雇い入れる例があるわけですね。

 このうち、こういうタイル代まで先に負担しているとか、あるいは内装工だったらカーペット代、じゅうたん代を負担している、これは実際には一番きついんだけれども、さすがにじゅうたんとかタイルの部分というのはこれは労務じゃございませんから別としても、親会社、ゼネコンからもらうときは、そういう実費の材料費プラス人集めをした労務、みずからの労務を入れて、それから同業他社というか、同業の一人ずつやっているような人に声をかけて、来てくれ来てくれと集めて、何人分とその現場へ連れていくというか送り込む。その分両方入っていると思うんですけれども、この場合、労務に当たる部分だけは何とか会社がもらって、ちゃんとそれは渡るのかどうか。

 でないとまた連鎖倒産の、建設業界というのは連鎖倒産も大きいんですけれども、いわゆるひっかかり倒産とかいうものは大きいんですけれども、少なくとも労務提供の、さっきの労働者であり使用人、幅広い意味の使用人に当たるところはきちっと払ってもらえるのかどうかということで、二つお聞きしたいと思います。

房村政府参考人 この使用人の概念は、先ほども申し上げましたように、あくまでも実質に着目してということになりますので、そういう考え方からいって、もちろんいろいろな事情はありますでしょうが、さきに委員がお述べになりましたような最初の方の部分、こういった例ですと、これは直接の雇用関係がある、あるいは使用人である、こう考えられる可能性が高いのではないか、これはそう思っております。

 その次の例、いわば下請会社があって、そこがさらに人を集めてその人たちの給与相当分として払った分をどうするのかということですが、これは考え方としては、多分、労働債権として保護の対象になるのは、現実に集められて働いた人たちがちゃんと受け取れるかどうかということでしょうから、まさにそれは、中に会社が形式的に入っていても、それは元請と直接の雇用関係にあると認定できるかどうか、指揮命令権であるとか、そういった事情を個別に考慮して判断をしていくということになるのではないか、こう思っております。

松島委員 思ったよりうれしい答弁だったんですけれども、そこで、お願いというか提案があります。

 現場に即して、実態に即してという話なんですけれども、これが物すごく不安なんです、私。と申しますのは、破産管財人次第であるという場合、破産管財人が上手にやっていこうと思ったらそれを泣かせることもあり得る、あるいは、訴えることができないと思い込んでいる、自分はもう無理かなと勝手に思っているかわいそうな実態的労務提供者もいます。

 そこで、政令か省令かガイドラインか、よく法律にはそういうものができるものですから、それで、例えば日給制だった場合とか、あるいは出来高払いでもそういう単純な出来高払いだとか、それからよくあるのは、大きな工事現場に行って、朝点呼されて、ラジオ体操も一緒にやって、朝八時から夕方五時までとか、あるいはその現場の身分証明書みたいなのを、入構許可証で身分証明書みたいな、実態はここがやっているみたいな写真つきのを出されているとか、いろいろなことがあります。

 そういった場合に、実際に勤務の日誌もある、それから実態として作業員名簿も出ているという場合、作業員名簿を、さっき言われたクッションになる下請と称されるのがいても、実態は人集めしただけであって、実際に働いているのはこの人たちという、それが名前なんかで何日間か何カ月にわたってあるような場合、それはやはり実務的労務であるというようなことをガイドラインか政令か省令か何かできちっと書いて安心材料に、つまり働く人たちの、その方が安心ですからやっていただきたいと思います。

房村政府参考人 確かに、抽象的に、その実態に応じて雇用関係と認められるかどうかということだけではなかなかわかりにくいというのもそのとおりだと思いますが、しかし同時に、さまざまな形態があるのは委員の御指摘にもあらわれているところでございます。また、非常に変化の激しい社会でございますので、例えば昔、派遣社員というようなものはおよそ想定できなかったわけですが、今では非常に広く用いられている。そういう雇用形態の変化、これも非常に激しくなっております。そういうときに政令とか省令のような形でこの定義をいたしますと、どうしてもかたくなりますので漏れが出てしまう、新しい形態に対応しにくくなるということがあろうかと思います。

 やはりこのようなものについては、実際の現場を熟知しているところで、そういう個別の事案の処理を通じて、ある程度の基準というようなものができてくるのではないか。また、そういう努力を現に裁判所等でもされているのではないかと思っておりますが、やはりそういう現場の変化を踏まえたそういうところでやっていただくという方がより適切な判断が可能になっていくのではないか、こう思っております。

松島委員 現場と申しましても、それが破産管財人次第ということ、裁判次第であるということになると、当たり外れはやはりあるわけですよね、働いた人の方から見ますと。そして、実際には、それが不服だったら裁判に訴えろと言われても、未払いの賃金、給料も払ってもらっていない人が弁護士なんか雇えないし、裁判なんかやっている暇もお金もないんですね、次の仕事先も見つけなきゃいけないんだから。

 それはやはり、もちろん手とり足とりのそういう規制みたいに縛るのはいけないかもしれないけれども、私は裁判の世界はよくわかりませんけれども、判例になる前に、判例というか、今の局長の答弁も、立法者の答弁というのはこれは一つの基準になるかと思うんですけれども、それはちゃんとこういう場合はと、もちろん時代が変われば変わるというんですけれども、そうしたらそれは見直しをすればいいわけでして、書いていて人が不幸にならないようにというのは、これはぜひ、どうしてもだめだと言われれば附帯決議か何か私は求めようとは思っておりますけれども、考えていただきたいと思っています。

 どういう事例があるかと申しますと、これは、きょうは五月十四日で、ちょうど一カ月前、四月十四日に東証に二部上場していますゼネコンが倒産いたしました。倒産というか破産を申請して、それが受け入れられて宣告されました。負債総額、負債額が五百億円余りでして、従業員の二百六十人というのは、これは幸いにも未払いの賃金はなかった、この会社は。なくて、それから、退職金は規定に基づいて清算が終了した半年後ぐらいに払うことになっている、再就職先も親会社が探す。まあそれはいいんですけれども、ハッピーですけれども。

 そこで、その下請といいますか、下請、下職と言われる大工とか、とびとか、左官とか、そういった人たちには全然払われない。もちろん今の規定で。だけれども、今の規定だと従業員だってほっておいてもいいぐらいなんですからそういうことなんでしょうけれども、ここの関係者からもお聞きしたんですが、正規のいわゆる事務職みたいな社員よりもよっぽど長く、こことの関係で、とびの人でも大工でも左官でも塗装の人でも、長いこと何十年も、本当に三十年も、この建設会社の仕事だけしている人というのはもうざらにいるわけですよね。やはりこういうのが払われないとしたら、労働というものを、今さら経済の二重構造論まで持ち出すつもりはないですけれども、働くということについて、下請中小企業あるいは弱い立場の人たちという労働は一体どうなるんだろうかという気がしております。

 こういうケースも実態に合わせたら、本チャンのいわゆる社員と言われる人たちと同じように、実態が長いことそこで働いていて、それも単に労務提供だったら、同じような条件でカウントしてもらえることになってくるんでしょうか。

房村政府参考人 先ほどから申し上げておりますが、別に、正社員に限定するということは全くありませんので、それは形がどうであれ、まさに使用人として労働を提供して、その労務提供の対価としての給与を受け取っているということであれば、それは給与債権として今回の保護の対象に入ってくるということでございます。

松島委員 つまり、キーワードとして使用人として、それも指揮命令系統があって、労務を提供していて、賃金が払われているということですね。これをしっかり考えて、それに基づいて主張して頑張るということになるわけですね。わかりました。

 ただ、個々のそういう現場の人というのはなかなか、では、こういうふうに理屈づけて、これで責め立てると言ったらおかしいけれども、これで交渉して破産管財人にわかってもらおうとかいうことはなかなか難しいと思います。

 それで、例えば、下請会と言われるような、下請というと、委託契約かもしれないけれども、その中の、今言われたように労務の部分はあるし、そういうのもありますから、下請という名前ではあるけれども、実態は自分の個人の労働だけ提供している人もいっぱいいる。屋号で格好よく何とか有限会社、株式会社としていても、実際は一人でやっているところもたくさんあるわけですから、自分一人じゃわからない部分を、例えば下請会社が集まっているそういう組織、会合、下請会だとか、あるいは企業内の労働組合じゃないけれども、同業同種の人たちの集まる横断的な労働組合というものをぜひ、今法律に書いてあるのは、企業内組合だけ念頭に置いて、労組が、組合が破産管財人とも話ができるというようなシチュエーションは幾つもあると思うんですけれども、そうじゃない、今申し上げましたような下請の組織あるいは下職の組織、あるいは横断的ないろいろな業種のそういう労働組合なども交渉の対象として入るべきだと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

房村政府参考人 今回の改正案の百十条に代理委員という規定がございまして、「破産債権者は、裁判所の許可を得て、共同して又は各別に、一人又は数人の代理委員を選任することができる。」ということで、破産債権者、今御指摘のあるような、例えば共通の利害のある人たちが集まってだれか代理人になる人を選任する。その人は、別に破産債権者である必要はありませんので、例えば法的知識のある方であるとか、あるいは上部組織の方であるとか、そういった自分たちの利害を適切に主張してもらえるような人を代理委員として選任をいたします。このためには裁判所の許可が必要ですが。

 そうしますと、その代理委員の方は、破産手続の中で選任した人たちのために一切の行為ができる。したがいまして、その方たちの持っている、例えば、自分たちの持っている債権は単純な普通の破産債権ではなくて労働債権に当たるんだという主張であれば、それはそういうことを手続の中で代理委員の方に言っていただける、こういう仕組みになっております。

 また、今労働組合の話が出ましたが、労働組合についても今回の法案で一定の地位を与えておりますけれども、個々の労働者が自分たちの労働債権を破産債権として行使しようと思う場合には、やはりこのような代理委員の仕組みを使って交渉していただく、そこに組合が関与していくということになるのではないかと思いますので、同じような仕組みでこの代理委員を活用できるのではないかと思っております。

松島委員 今伺いましたように、企業内組合に限らず、同じ利益を持つ人たちの集まりの代弁者で、もうちょっといわゆるいろいろな法律知識などがある人が代理をできるということを聞いて安心いたしました。

 それで、あと、今後の指導と言ったらおかしいんだけれども、ほかの業界は行政指導できますけれども、弁護士は行政指導するわけにいかないのでちょっと難しいんですが、破産管財人の人たちがそういう意見をきちっと聞いてくれるようにという、これはどこに望めばいいのか、また弁護士の方々に望んでいきたいなと思う次第でございます。

 今ちょっと、建設業界という一つの既存の業界で特殊な雇用労働形態のところを申しましたので、ついでに、この分野で国土交通省の方にお話を伺いたいと思っています。これは別に、国土交通省が建設業界を育成、発展させようとしている、業界指導しているからという意味じゃなくて、私がお聞きしたいのは、単に公共事業の親分みたいな、ボスみたいな、一番大きなところでございますから、公共事業、ほかに、都道府県に聞いてもいいし、ほかの農林水産省やどこかの役所に聞いてもいいんですけれども、やはり公共事業の発注の仕組みについて伺うのは国土交通省がいいと思って、ちょっと伺わせていただきます。

 公共事業で道路とか橋とかダムとか建物を発注して、それが完成後、お金を払う、多分、前金で一番最初に四割か何か払うというふうに聞いていますけれども、それも確認したいんですが。あと、完成後、残りの額を払うときに、払う先のゼネコンがつぶれちゃっていた。もちろん、ちょうどそんなタイミングよくつぶれることもないかもしれないけれども、ほとんど九割何分でき上がったときに、つぶれて云々もあるでしょう、いろいろ、とにかくつぶれちゃっていた場合、そうしたらこの工事代金はどこにどういうふうに払われるのか。

 そのつぶれそうなとき、つぶれちゃったときに、破産管財人に渡されちゃうと、とんでもないことに銀行が全部持っていっちゃうわけですよ、さっきみたいな話で。それよりは、実際に現場で働いているのは、圧倒的に下請だとか実態で入っている人たちなので、そこへ、民間同士の契約なら無理にしても、公共事業の場合はせめて、国民の税金から出ているのが、個々の下請、下職、働いた人に直接そのお金を行き渡らせるようにできないだろうかと思いまして、現在の制度とこれについての取り組みについて。

門松政府参考人 発注者の一人としてお答えいたします。

 まず、前金制度でございますが、基本的にはといいますか一般的には請負代金の四〇%が先に払われます。その後は、完成後、残りの六割が払われるというのが普通でございます。

 それではお答えいたします。

 国土交通省の直轄工事におきましては、工事請負契約書に基づいて、請負代金は契約当事者である元請建設会社、建設業者に支払うこととなっておりまして、直接下請建設業者に支払うことはございません。

 また、発注者は、元請と下請との契約の当事者ではないために、両当事者間での代金支払いの有無等の債権債務の関係を正確に把握することは困難なものでありまして、直接下請に支払うこととすれば、二度払いとか過払いなどにより告訴も生ずるという問題が懸念されるところでございます。

 いずれにいたしましても、国土交通省といたしましては、元請のみならず下請の資金繰りの改善を図ることは重要であると認識しており、下請代金支払いの適正化について建設業者団体を通じて通達で指導するほか、下請セーフティーネット債務保証事業の活用を図りつつ下請建設業者の保護を図っていきたいと考えております。

 なお、答えの核心でございますが、元請が破産宣告を受けたときは、請負代金については裁判所により選任された破産管財人に支払うのが原則であると考えておるところでございます。

 以上でございます。

松島委員 契約を履行するというお話だったんですけれども、契約というのは、その建設会社と契約したとしたら、何でそれが破産管財人になっちゃうんですか。契約というのは、その建物なり橋なりをつくってくれた人という意味でその建設会社じゃないんでしょうか。何で破産管財人、弁護士になっちゃうのか。

門松政府参考人 私もプロではございませんからよくわかりませんが、破産法の定めによりまして、破産管財人が指名されるようになっているようでございますので、その方にお支払いするということでございます。

松島委員 これだとやはり物すごくむなしい気がするんですね。

 元請というのは、ペーパーだけだとは申しませんけれども、実際に建造物をつくっているわけじゃないんですね。だから、労働に関しては、労働債権のみならず、ペンキの調達をした人、そして建物のじゅうたんとかタイルとか、もちろん土木の中に道路もあるけれども、それ以外に、そういう部分は建物だったら必要になりますし、それから鉄骨資材を買ってきたり、あるいは鉄骨資材をつくったりした人に払われなくして、国民の税金というのが銀行の取り立てのところに回るだけというのは、本当にこんなことでいいんだろうか。

 それは、民法の契約及び破産法の法律上の規定に基づくと確かにそうなるかもしれません。でも、恐らくそういう支払いをされたときに、国土交通省のあるいはいろいろなところの発注の方々も、何かむなしいな、つらいなと思われるんじゃないかなと私は勝手に思っております。

 これについては、何らかの、もちろん下請を残すために、下請をきちっとするためのセーフティーネットとか、そういうのは、業法上というか、建設業法並びに建設業界の安定、そして雇用の安定というために、政策、施策を組むことは大事ですけれども、その支払いの根本のところをどうしなきゃいけないか。これは、私ども国会議員を含む、政治としても、やはりこれは国民の常識に沿ったという意味において何らか考えていかなきゃいけないなと私自身は思っております。

 この法務委員会で、破産法の審議だけでこれが通る話なのか。それとも、その前から、つぶれる前からのことも含めてなのか。確かに、二重払いや過払いはおかしい。国民の税金を使って、二重払いやたくさん過大に払い過ぎるのはおかしいだろうけれども、国民の税金を使って、関係ない人、銀行のために払われる。関係ないと言ったら悪いですけれども、道路をつくったわけでもない、ダムをつくったわけでもない人たちに払われるのはやはり私はおかしいと思って、これは何らかの、別の法律でも何でもいいからできないかな、仕組みをつくれないかなと、今後、私自身、政治家としての課題にしたいなと思っております。

 さっきの労働債権の仕分けの中で、ちょっとさかのぼるんですけれども、また民事局長、房村局長に、今建設会社という話をしたんですけれども、それ以外で、派遣会社の問題。

 今、派遣労働というのが、名立たる商社とか銀行なんかでも、いわゆる一般職というのは、もう新規の、新卒を採用しないで派遣だけというところがたくさんあります。派遣会社の社員としてどこかの会社に仕事に行っている。それは、もちろんその人がそういう労働のスタイルを望んだからそれでいいと思いますし、会社が順調にあるときは、確かに派遣で行っている人の方が給料が高いか低いか、いろいろなことはあるだろうけれども、それは納得ずくだからいいと思うんですね。

 ただ、倒れちゃったときに、同じように机を並べていて、正社員の人の場合は給料が三カ月分守られる、派遣の場合はだめだということになって、その中で、確かに派遣スタッフとして行っている人は派遣会社に雇われているんだ。有名なところ、名前を出したら悪いですけれども、テンプスタッフだとかなんとか、パソナとか、そういうところに雇われていて、そこで社会保険料も年金も面倒を見てもらって、給料の源泉徴収もそこでやっている。確かにそれは理屈だと思うんです。

 いろいろな会社に幅広く派遣を送り出している、そういう大手というか総合的な派遣会社の場合は、確かにそこの命令によって、自分が属したところの命令によって、ある会社へ行っていて、その会社がつぶれたときに、例えば銀行へ行っていてつぶれたときに、それはもとの派遣会社の方に申し立てれば、そこから給料が出るべきだし、出なければ訴えればいいと思うんですね。

 ただ、実際に今、派遣会社の中に、ある企業が、金融だとかほかいろいろな部門があると思うんですけれども、会社が、自分のところで働いてもらうんだけれども、雇用条件の切り下げのために、別に人材サービス会社をつくっている。もとの銀行の名前とかもとの大きな製造業の名前を冠して、何とかスタッフサービスとか何とか人材サービスとかキャリア何とか。そして、新聞の広告に出るときは、何とか銀行のきれいな職場でとか、何とか銀行の支店の窓口で案内する仕事ですよとか、本当に限定的な形でやっているところがある。

 その場合、その銀行なり、例が悪いですけれども、そういうところがつぶれたら、一緒に事実上その派遣会社はつぶれるというか、派遣会社はもうほかのところへ派遣することもできないし、お金は全然手持ちがないわけですね。そういったときにどうなるのか。銀行などもとのところはほかにも債権があるから何とかできる場合に、そっちで実態上勤めていたということで、さっきの労務の提供ということで面倒を見てもらえるのかどうか、ちょっと伺いたいと思います。

房村政府参考人 派遣会社のお尋ねですが、最初に御指摘受けたような、まさに派遣会社が本当に給料を払って、それで実際に働く場所が派遣先の会社である。そういう方の場合には、派遣先が倒産しても、別に自分の派遣会社から給料をもらえばよろしいわけですから、問題はないわけでございます。

 法形式としては、派遣の形をとるとそういうことになりますが、中には、おっしゃるように、派遣先企業が派遣社員を直接雇用することを避けるために、形として派遣会社を間に入れて、直接の雇用関係が法律上ないような形にしているという場合も中にはあろうかと思います。

 ですから、そういう場合は、これは先ほどから申し上げているとおり、まさに全体の実態を見まして、派遣先企業が実際には指揮命令をし、かつ給与の支払いも負担しているんだということが認定できれば、それは派遣という形にかかわらず、直接の使用人と認めることも可能な場合があろうかと思います。

 ただ、これはやはり個別事情によりますので、相当慎重に判断をしないといけないのかなと思っております。

松島委員 これもガイドラインがあればなと思うところでございます。

 最後に、国税庁に伺います。

 財団債権の中で租税債権が、今度は期日が来ていないもの及び過去一年間に取りっぱぐれているものということに限られるようになりました。

 そうしますと、今、徴税システムの中で、良心的というか誠意がある人の場合は、滞納していても納税猶予の制度があると思うんですが、これが、納税猶予なんかしている場合じゃないということで、これからやはり取り立てが厳しくなるのか。

 ちょうどきのうの朝日新聞の夕刊に大きく、税の中でも国税と都道府県税と市町村税で担当者が現場で鉢合わせするぐらい倒産情報に非常に慎重になって、倒産しそうなところはどっちが先に行くか、先駆け争いみたいにしているというのがあったんですけれども。いよいよ、一年間に限るとかになって、労働債権が上へ来たりして、税の取り立てが難しく、破産した場合の確保が難しくなるといったら、もっと頑張っちゃって、納税猶予制度もなくなるとか、あるいはそうやって頑張ることになるわけでしょうか、国税庁。

徳井政府参考人 今回の改正案が施行された場合、破産手続における租税債権の地位というのが一部引き下げられまして、国税の徴収確保という点で影響があると考えられますが、滞納整理に当たりましては、納税者の財産状況等の実情を的確に把握するということが今後とも必要だというふうに考えておりまして、滞納が発生したからといって早期に一律に差し押さえをするというのではなく、引き続き納税者の実情に即した適切な処理に努めていきたいと考えております。

松島委員 時間になりましたが、国税の皆さん、そしてまた都道府県、市町村の税の担当の方々は、確かに税についてのモラルが下がることがないように、あるのに資産を隠しているような場合は頑張って見つけていただきたい、そういう仕事の面はあると思います。

 それはそれで大変なお仕事だと思って、評価するし、頑張っていただきたいと思うんですけれども、同時に、これは国税庁に対する文句という意味じゃないですけれども、事ほどさように、やはり資産の実態は把握して、きちっと納めてもらおうとするのが国税当局は当然の仕事です。金融機関は金融機関で、つぶれそうな会社というのは、早目にとにかくお金を取り上げておこうとするのが当然でございます。金融機関は情報を知っている、経理の状況もある程度わかっている。国税もプロですから、滞納をずっとしている、ここは危ない会社かなということがわかって、時々情報を仕入れようと頑張る。

 そうしますと、一番何かほっておかれてというか、一番やはり弱い立場は、そこで勤めている人じゃないか。そして、勤めている人は、薄々危ないかなと思っても、社長も頑張っているのに、金策に走っているのに、とにかくつぶれる前におれに給料をくれとはなかなか迫れないのが人情でございます。これはやはり大事にしていただきたいし、同時に、それだけではなくて、今回はまだ立場は低いんですけれども、そこに納入している中小零細企業というのは、一つ大きい取引先がこけたら全部こけちゃいますから、そうしたら、そしてそこにも従業員がぶら下がっていますから、何とかできないものかと思う次第でございます。

 今度の破産法が改正されて、うまくいって、経済的な理由によって命を絶つような人がだれもないように、そういう日本になればと思っております。

 どうもありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さん。

 早川忠孝君。

早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。

 この破産法についてたくさんお伺いしたいんですが、三十分しか与えられておりません。

 私が昭和五十年に弁護士登録をしてから、破産の関係について幾つか経験をしてまいりました。世の中に倒産弁護士と言われる方々がおられますけれども、別に弁護士が倒産するんじゃなくて、倒産処理を専らの業務とする専門弁護士、こういう方々がおられます。私も、民事介入暴力対策の委員として、長年、そういった不法な取り立て行為をする方々を排除するということの中に、破産法の手続を活用させていただくということがしばしばありました。

 現在の破産法は、法務大臣から御説明がありましたとおり、大正十一年にドイツ法を模範として制定された。昭和二十七年に、アメリカ法の影響のもとに免責の制度を導入する等の部分改正がなされた。しかし、その後、特段の改正がなされないまま今日に至ったということでございます。

 平成四、五年でしたか、私が日弁連の方の司法制度調査会の委員になっておりましたときに、倒産法制全体の見直しをしなきゃならない、こういう議論がございました。破産法だけでなく、会社更生法、和議法、会社整理法、その他すべての倒産処理に関する基本法を一括して制定すべきではないだろうか、こういう議論をしたことがございます。

 今回は、現行破産法が廃止になって、全く新しい破産法が提案されるに至ったというこの経過を考えると、本当にすばらしいことになったものだなというふうに感嘆をしているわけであります。

 特に、平成十一年に民事再生法が成立いたしました。その当時、大阪地裁等でよく問題になったのは、和議の手続をやって和議が認可されたにもかかわらず、和議条件を履行されないまま終わっているケースが非常に多い。東京地裁等の、関東ではそれが少なかったということで、この和議法を何とかしなければならないという話がございました。

 それが、平成十一年に、再建型の倒産処理手続ということで民事再生法ができ上がったということで、これは、当時私も弁護士の実務から若干離れておりましたけれども、当時の法務大臣が特に主導されて、法曹三者の法制審議会の議論を一応は拍車をかけたのか、あるいはその手続を経ないでどんどんやれというふうに政治主導で行われたのか、どうも政治主導の面で法の制定がなされて和議法が廃止された。その延長上の中で今回、破産法が新たに提案されるに至ったのではないかというふうに思っております。

 いずれにしても、この破産法を提出されるに至った経過について法務大臣にお尋ねいたします。

    〔委員長退席、漆原委員長代理着席〕

野沢国務大臣 長年この破産法制に携わられた議員の御指摘でございますので、少しまとめて御説明を申し上げたいと思いますが、法務省では、平成八年十月から倒産法制の全面的な見直し作業を開始いたしまして、平成九年十二月には、倒産法制全般についての見直しが考えられる具体的事項を取りまとめました倒産法制に関する改正検討事項を策定いたしました。倒産法制全体について一括して見直しを図るべく作業を開始してきたところでございます。

 しかし、バブル経済崩壊後の不況の長期化と、これに伴う倒産事件の増加とにかんがみまして、平成十年九月からは法整備の緊急性の高い課題から順次検討を進めることとしまして、その成果といたしまして、ただいま御指摘もございましたが、平成十一年十二月には民事再生法が、平成十二年十一月には民事再生法等の一部を改正する法律及び外国倒産処理手続の承認援助に関する法律がそれぞれ制定されたところでございます。さらに、平成十三年三月からは、会社更生法の見直し作業と破産法及び倒産実体法の見直し作業とを並行して進めまして、より早期に検討が終了した会社更生法については、平成十四年十二月に新しい会社更生法が制定されたところでございます。

 その後は、破産法及び倒産実体法の見直し作業に集中的に取り組みまして、その成果に基づき、今回、破産法案を提出するに至ったものでありまして、これまでの破産倒産法制のいわば仕上げの段階に入っておりますが、引き続き、まだ残っております課題についても、これからも取り組んでまいります。

早川委員 私自身が破産の手続を採用するというケースは、大体、暴力団等の非常に不法な債権者がいて、その追及が余りにも過酷である、倒産整理をする代理人のいろいろな指導にも全く従わない、そういうケースがあるときには、これは、会社の整理手続の中で、破産法によることによって管財人が選任をされ、裁判所の監督のもとに破産整理手続が行われる。そういう意味で、非常にそういった不法な取り立て行為の抑制、抑止機能が働いていた。

 ただ、現実には余り破産手続はとらない。なぜかというと、破産手続をとった場合に、配当の原資が非常に限られている。破産手続でいくと、かつては五%、それが二%、一%の配当しかありません、こういうケースが続出をいたしました。

 そういうときに、何とか債権者の理解を得るために、任意整理手続を採用いたしました。そのときの説得材料は、破産手続でいけば、配当原資から考えた配当は、例えば三%です、任意整理手続でいけば配当は一〇%になります、どちらの方法を選びますか、そういうふうな説明をすると、大体は任意整理手続になって、そういう意味で、長年、破産手続よりは任意の整理手続が優先されて行われた。それが当時の倒産処理を専らやられた方々の指導ではなかったか。

 ただ、問題は、そういう任意整理手続をやる弁護士、代理人がいろいろ処理をする中で、先ほど言われましたけれども、従業員に対しての弁済を優先したり、あるいは、これは当然許されることだと私は思いますけれども、銀行はさておいて、取引先債権者だけのグループに対して配当をする、こういう、法律上の平等弁済という原則からいうと、いわゆるへんぱ弁済になるのではないかという疑いを持たれるようなことがある。その場合に、ある程度任意整理手続についても基準ルールみたいなものをつくっておかなければならないんじゃないか、そういう反省がございました。

 そういうことでやってまいりましたところ、最近は、破産あるいは民事再生手続を採用される方々が非常に多くなった。最初は皆さん嫌がっていたはずですが、どうしてこうなったのか。

 これは、最高裁にお伺いいたしますけれども、かつては全国で年間三千件程度あったというのが、既に年間二十万件を超える時代に突入したということで、従前の裁判所の体制からいえばとてもとても対応できないような、そういうふうな状況の変化があるときに、裁判所におかれては、こういった激増する破産事件に対してどのように対処されてこられたのか。また、こういった破産事件が激増するに至った背景事情、先ほど一部御説明ございましたけれども、これは園尾民事局長に、これまでの長い経験を通じて御説明を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

園尾最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のとおり、破産の申し立て件数は、破産法施行後約六十年間にわたりまして、二千件から三千件ということで、ある意味で安定をしていたわけでございますが、およそ二十年くらい前から事件数が増加するということで、最近では急激に増加しまして、二十万件を超えるということになってきておるわけでございます。

 これほどに事件数が増加いたしましたのは、まず、個人破産の分野で申しますと、国の経済が大きく申しますと農業中心から製造、加工、販売業中心の経済になるということで、土地その他の固定資産を持たない勤労者が社会の大部分になったこと、また、これに伴って相互扶助のいわゆる村社会というのが崩壊したということ、しかも、その勤労者を相手に無担保融資が活発に行われるようになったということから、破産という方法でしか債務者を救済できないという事例が大変多くなってきたということが基本にございまして、その上に長引く不況という最近の状況が加わってきたものと考えております。

 これに対しまして企業の破産事件はというと、これも大変増加しておるわけでございますが、これは、経済構造が大きく変化しておるということで、収益を上げる能力を失ったという法人が多数発生するということで、この経済構造の変化が激しくなったということが一つの大変大きな原因になっておるというように考えるわけでございます。

 このような原因で破産事件が増加しておりますので、破産事件の処理は、単に、かつてのように、例外的に生ずる支払い不能の債務者の問題ということで解決できるものではございませんで、社会全体の問題、あるいは経済全体の問題になってきたというように考えておるところでございます。

 このような事態に対処するために、最近では、特に裁判所だけで努力をするというようなかつての事件処理では到底難しいほどの事件になってまいりましたので、まず、弁護士会と緊密に協議をするということで、弁護士全体というものを破産処理の中に大幅に加わってもらうというようなことをレベルアップの基本にするということをやっておりまして、それに加えて手続を徹底的に時代に合ったように簡素化していく、このようなことを通じて、大量の事件を適正かつ迅速に処理をしておるというような努力をしておるところでございます。

早川委員 これは、金融法務事情の二〇〇二年の六月五日号に、当時の東京地方裁判所民事第二十部の総括判事ということで、今園尾局長お話しの内容が具体的なデータに基づいて出ておりまして、改めてこれを拝見して、裁判所側における大変な努力をされてきたなということで、これだけたくさんの事件がありますと、やはりそれなりの工夫をしなければならない。その具体的な工夫の点について、ちょっと御紹介いただければありがたいんですが。

園尾最高裁判所長官代理者 裁判実務の観点というところからこれまでいろいろ工夫を重ねてきたわけでございますが、これがほぼすべて今回の破産法の改正法案に取り込まれているということで、私ども、この法案が成立することを大変望んでおりますし、一日も早く施行をしていただきたいというように考えているわけですが、その基本は、まず第一に、手続を簡素化していくということ、それからもう一つは、不合理であるということで明らかに認められる手続を廃止していくこと、それから第三番目には、関係者の手続進行への協力体制ということを整備していくということが重要であると考えておりましたが、これが重要な改正事項として入っておるということでございます。

 手続の簡素化といたしましては、配当手続につきまして、簡易配当という大変簡素な方法を法定されるというようなことになっております。それから、配当がないというように見込まれる場合には債権調査をしないでよろしいということが正式に認められるという内容になっております。

 それから、不合理な手続の廃止といたしましては、例えば、法人に対して破産宣告をした場合に、法人の所有する個別の全不動産に破産登記をするという、ある意味ではむだなことを省くことができるということになっております。

 それから、関係者の手続進行への協力体制の強化という観点といたしましては、破産者の破産管財人に対する説明義務、これを大変強化しております。それから、破産手続の進行上必要な場合には、一定の要件のもとに担保権を消滅させるというような手続を認めておりまして、その限度で担保権者にも破産手続への協力義務を課するということにしておるわけでございます。

 これらの改革を含む今回の破産法改正法案が成立いたします場合には、裁判所の破産事件の処理能力がより一層向上するというように考えておるところでございます。

    〔漆原委員長代理退席、委員長着席〕

早川委員 ある程度、東京地方裁判所二十部が、全国の先駆けとして破産の実務手続を改善されたわけです。ある意味で改革、あるいは法が予定するものを超えた運用をされてきたというふうに私は評価をしているわけであります。

 そこで、なぜ法人について破産をしないで個人だけふやすかということの中で、実務上のネックとしては、裁判所に納める予納金の金額が、個人破産の場合には予納金が最初のころは二十万だったでしょうか、それが最近は五万で済むようになったとかというんですが、かつては、法人ですと、その規模によって百五十万とかあるいは二百万を予納しなきゃいけない、こういう現実がありましたので、結果的には予納金をつくるだけの状況がないということの中で、法人の破産はしないで個人だけの破産をして、一応さまざまな不法な取り立て行為から破産者を守るということを現実にやってきたわけであります。

 この点について、運用として、東京地裁で随分変わった運用をされたと思いますけれども、御紹介をお願いいたします。

園尾最高裁判所長官代理者 平成十一年の四月から少額管財手続というのを実施することにいたしましたが、それまでは、破産管財人を選ぶ場合には負債額を基準として予納をしてもらうということで、法人の場合には負債額が少なくとも数千万、億を超えるというものも大変多いという状況の中で、予納金がただいまの御指摘のように百五十万、二百万、あるいは三百万、四百万になるということで、予納金が準備できないために破産ができないということで、場合によっては弁護士の方が、もう夜逃げをするほかないという助言をせざるを得ないというような、そのようなことすら言われておりました。

 これは何とかしていかなければいけないということで、弁護士会の方々と協議をした結果、手続を徹底的に簡素化するという条件であれば、一件について二十万円の予納金で破産事件を引き受けましょうということになりました。裁判所も、その御好意にこたえるために手続を徹底的に簡素化するということ、それから、数件まとめてお願いをして、手間のかかるものと手間のかからないものとをいわば一つのセットにしてお願いをして、報酬などについても配慮をするというようなさまざまな工夫をいたしました結果、現在では、ほぼ、どのような法人でも、予納金二十万で破産の申し立てを受け付けることができるという状況になってまいっております。

 その上に、法人の代表者あるいは代表者の奥さんが連帯保証人になっておるという場合には、その方も一緒に破産申し立てをしていいですよということで、その負債額がやはり数千万あるいは億を超えるという場合があるんですが、そのように負債額が多い場合にでも、法人と個人を合わせて二十万、これを俗に一山二十万と言っておりますが、そのような方法で破産事件を処理するということまでできるようになったというのが現状でございます。

早川委員 まさに画期的な運用をなされたわけであります。この予納金というのは、結果的には、破産管財業務を遂行される破産管財人、すなわち弁護士がやっているわけでありますので、そういう意味では、これにかかわってこられた弁護士各位が犠牲的な奉仕もされたものがあったのではないかなというふうに私は思っております。

 そこで、法務省の房村民事局長にお伺いいたします。

 個人的なことで言えば、房村民事局長と私は、大学当時、ともに司法試験の勉強をさせていただいた。当時の破産法は非常に易しかった。今は難しくなりつつありますけれども。

 極めて多岐にわたっている破産法の改正事項でありますけれども、消費者団体や、あるいは経済界等から指摘されておりました幾つかの事項について、確認のために、今回の新しい破産法ではどのようになっているのか、お伺いいたしたいと思います。

 まずは、破産会社が有する特許の使用許諾を受けた企業の特許契約上の地位の保護はどうなっているか。これは、これからの社会でやはりこういった知的所有権関係の保護というのは非常に重要な課題になってくると思いますので、どうなっているかについて、まずお伺いいたします。

房村政府参考人 特許権等の知的財産につきまして、ライセンス契約が結ばれている場合、これは、現行法の破産法におきましては、双方の履行の完了していない双務契約ということで、ライセンスを設定した者が破産をいたしますと、破綻管財人が解除をすることができる、こういう規定になっております。

 ところが、これをそのまま認めますと、まさに、特許権についてのライセンスを受けて、それを企業活動の中核としているというような場合もあるわけでございますので、そういうときに、設定を受けている者にとっては、あずかり知らぬ破産によってその権利が消滅してしまうということになりますので、特に知的財産についての保護が欠けるではないか、こういう御指摘がありました。

 そこで、今回、法律を見直しまして、そういった権利、これは賃借権についても全く同じような問題があったものですから、その双方を含めて一つの条文に規定をいたしまして、五十六条で、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定する契約について、破産者の相手方が当該権利につき登記、登録その他の第三者に対抗することができる要件を備えている場合には、そういう管財人の解除はできない、こういう規定を設けました。

 したがいまして、特許権について専用実施権の設定を受けて、その登録を経ている場合には、設定をした者の方が破産をしても管財人は解除をできない、こういうことで、設定を受けている者が保護される、こういう形になっております。

早川委員 破産会社は、破綻に至る前に一生懸命頑張っている。そのときに、経営を維持するために不動産を売却した、しかし結果的には倒産をしてしまって破産手続に移行してしまった。こういったときに、破産会社の不動産の売却処分が否認という、要するに、法律的にその効力を取り消されてしまうということになりますと、結果的には、そういった破綻懸念の会社の不動産を購入するところがなくなってしまう、売却処分が進行できないことがあると思います。

 これについて、結果的に、今回の破産法ではどういう取り扱いになったでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、経済的な危機に瀕した会社が、その所有する不動産を適正価格で売却をする、こういう場合が当然あり得るわけですが、適正価格ですから、経済的に見る限りは特に損をしているわけではない。ところが、不動産で持っている間は、これはそう簡単に隠せませんが、現金になりますと容易に隠匿ができる。このようなことから、判例は、適正価格による不動産の売却であっても否認の対象になり得る、こういう解釈を示しております。

 そういうことから、御指摘のように、経済的に危うい状況にある者の不動産を購入するということに関して萎縮的効果が及んでしまっている。それで、今回、これを見直しまして、適正な価格で売却されたものについては要件を明確に規定をするということといたしました。

 これは、債務者が売却の当時、売買代金を隠匿したり、あるいは無益に費消するなどの意思を有していた、こういう場合にまず限る。しかも、そのことを取引の相手方が知っていた。この二つの要件を、これだけの要件ですと、相当明確になるわけでございます。かつ、それとあわせまして、取引の相手方がそういったことを知っていた事情は、管財人の方で立証しなければいけない。ここまで要件を明確にし、かつ、立証責任の負担を変えますと、相手方とすれば、これだけの状況を知っていれば、これはもう否認されてもやむを得ないだろうと。

 しかし、そうではなくて、ごく通常の取引で、信頼して適正な対価を払った場合には、まず否認されるおそれがない、こういうことで、安心して取引に応ずることができるようになるのではないか、こう思っております。

早川委員 破産者や破産者の家族等に対して、破産手続中に破産手続によらないでの取り立て行為をするという、これを何とか抑止しなければ、せっかく破産手続をとった意味がない。今回の法改正で、この点についてはどうなりましたでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、破産手続が開始されますと、すべての財産に関する管理権は破産管財人に移るわけでございますので、債権者としては破産手続の中で満足を受けていただくということになるわけですが、現実の問題といたしましては、破産債務者のところに直接押しかけたり、あるいは、その家族のところに電話をするとか、その余、さまざまな威迫的な行為を行うことによって、直接、自分だけが抜け駆け的に債権の満足を受けようとする、こういう行為が相当なされているという指摘がございました。

 このようなことを認めますと、他の債権者はすべて、破産手続の制約の中で、破産管財人の行為に協力して平等の配当を受ける、こういうことになっているわけでございますので、平等を害しますし、また、個人の場合には、個人である破産者の経済的再起を妨げるということになります。

 そういうことから、刑事罰をもってこういうものには臨もうということで、今回、破産法案の二百七十五条におきまして、「破産者又はその親族その他の者に破産債権を弁済させ、又は破産債権につき破産者の親族その他の者に保証をさせる目的で、破産者又はその親族その他の者に対し、面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」ということで、刑事罰則をもって臨むということといたしましたので、今後、この条文が余り活用されないことを祈りますが、万一こういうことが起きた場合には、適切に対応できるようになったと思っております。

早川委員 御説明がありましたとおり、今回の破産法の改正で極めて重大な、重要な役に立つ改正がなされた。ますます破産手続を活用して再生を図っていただくということが重要だと思います。

 ただ、これだけ役に立つ手続でありますけれども、手続的には簡便にやるという意味で、破産申し立て代理人の責務というのも非常に大きくなっているのではないか。説明義務、これは破産者の説明義務も、破産申し立て代理人の説明義務も重くなっている。刑罰でもってそれが担保されている、こういうことであります。

 そういう状況の中で、これは裁判所における管財人の選任手続あるいは申し立て代理人に対しての指導という関係でお聞きしたいんですが、まず、管財人については、これだけたくさんの事件があった場合、大規模な破産事件も当然入ってくる。当然、それに報酬が伴うわけですから、相当の報酬が伴うこともある、そうでないものもあるという場合で、公平に、あるいは管財人を機械的に配てんするということも考えておかないと将来的に問題があるのではないかということがあります。

 それからもう一つは、大量の破産事件を扱うということで、法律事務所あるいは司法書士の事務所の名前で破産申し立てをされるけれども、実は、弁護士やあるいは司法書士がみずから関与しないまま、事務員あるいは事務員と称するサラ金等の会社関係者が入ってきて債務整理をやる、こういうことも間々見られるわけであります。

 こういったことについて裁判所の方ではどのようにお考えであるか、お伺いいたします。

園尾最高裁判所長官代理者 まず、破産管財人の選任についてですが、破産管財人を選任する事件が少ない場合には、個別の事件ごとに適任者を探すということですので、公平性ということがそれほど大きな問題にならないわけでございますが、管財人を選任する事件が多くなってまいりますと、公平に選ぶ、機械的に事件を配てんしていくということがぜひとも必要だということになってまいります。

 東京地裁の例で申しますと、今から十年前であります平成五年当時は破産管財人を選任する事件は八百件前後でございましたが、現在は破産管財人を選任する事件は一年間に九千件に達しております。年間九千件の事件について管財人を選任するということになりますと、これは候補者名簿を備えおいて、その名簿の中に公平に候補者を選んでおくという準備をしておきまして、機械的に事件を配てんするということが必要だということになります。

 事件ごとに、小さな事件、大きな事件、あるいは中くらいの事件ということで分けておきまして、それぞれの事件ごとに名簿に基づいて公平に選んでいくということで、事件は、大中小、S、M、Lというように名前をつけたりなどして区分をしております。

 このような名簿をつくるために、東京の三つの弁護士会と協議をいたしまして、毎年、三弁護士会合同で新任管財人研修というのを実施してもらっておりまして、この研修を終えた弁護士全員を新任の管財人候補者名簿に登載するということにしておりまして、新任管財人にふさわしい事件について機械的に事件を配てんしていくという体制をとることができております。

 したがいまして、管財人の研修を受けた人がふえてくると、受け皿となる弁護士の数もふえてくるということでございますが、最近では、毎年三百人から四百人の新たな候補者が名簿に登載されておるということですので、九千件の事件について管財人を選任するのに全く人材の不足はないという状況でございまして、まだ少し事件が少ないというぐらいの状況でございます。

 それから、代理人の実質的な申し立てへの関与ということも、手続を簡素化して、迅速にすればするほど重要になってくるということでございまして、この代理人と管財人との事件の受け渡しのタイミング、お互いの事務分担をどうするかというのが大変重要になってまいります。そのようなことで、破産管財人が申し立て代理人のあり方についてもいろいろ注文をつけてくださるということで、弁護士会内部で研修あるいは議論をするということを通じて双方のレベルアップが相当に図られておるという状況でございますので、こういう体制をなお継続していくのが適当だというように考えておるところでございます。

 他の裁判所でも、事件の増加に従って、このようなことを参考にしながら、体制を検討していってもらえば、事件が大変スムーズに処理できるのではないかというように思っておるわけでございます。

早川委員 今回の破産法については、従前の破産宣告申し立てというのが破産手続開始の申し立てというふうな形で用語が変わっております。そういう意味では、何か懲罰的な破産法から、むしろ、債務者の方々の生活再建を一つの念頭に置いた新しい法制が今用意されつつあるということだと思います。まだ全体的に検討をいただかなきゃいけないことがあろうかと思いますけれども、この破産法を高く評価した、しているということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

柳本委員長 御苦労さま。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

柳本委員長 速記を開いて。

    ―――――――――――――

柳本委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております両案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十八日火曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時散会


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