衆議院

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第10号 平成16年11月19日(金曜日)

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平成十六年十一月十九日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君 

   理事 園田 博之君 理事 田村 憲久君

   理事 西田  猛君 理事 平沢 勝栄君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    宇野  治君

      大前 繁雄君    北川 知克君

      左藤  章君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    谷  公一君

      早川 忠孝君    松島みどり君

      三原 朝彦君    水野 賢一君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      柳本 卓治君    加藤 公一君

      鎌田さゆり君    河村たかし君

      小林千代美君    佐々木秀典君

      高井 美穂君    樽井 良和君

      辻   惠君    松野 信夫君

      松本 大輔君    江田 康幸君

      富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    岡田  薫君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  増井喜一郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            厚木  進君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            鈴木 勝康君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大谷 泰夫君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            鈴木 正徳君

   政府参考人

   (日本政策投資銀行副総裁)            山口 公生君

   参考人

   (早稲田大学大学院法務研究科教授)        山野目章夫君

   参考人

   (日本弁護士連合会司法制度調査会副委員長)    奈良 ルネ君

   参考人

   (商工組合中央金庫組織金融部担当部長兼法務室長) 中村 廉平君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十九日

 辞任         補欠選任

  森山 眞弓君     北川 知克君

  柳本 卓治君     宇野  治君

  仙谷 由人君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     柳本 卓治君

  北川 知克君     森山 眞弓君

  高井 美穂君     仙谷 由人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)(参議院送付)

 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、民法の一部を改正する法律案及び債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、早稲田大学大学院法務研究科教授山野目章夫君、日本弁護士連合会司法制度調査会副委員長奈良ルネ君、商工組合中央金庫組織金融部担当部長兼法務室長中村廉平君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくように心からお願いを申し上げたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、山野目参考人、奈良参考人、中村参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願いたいと思います。

 それでは、まず山野目参考人にお願いいたします。

山野目参考人 早稲田大学の山野目でございます。

 本日は、このような意見開陳の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 大学におきましては民法を専攻いたしておりますが、そのような立場から見て、いずれも大変に意義の大きい法律案について本日の御審議が予定されているものと認識いたしております。

 既に参議院の審議において明らかになっておりますとおり、この二つの法律案は極めて多岐な論点を含むものでありますが、いずれも国民生活に関係の浅からぬものであると考えます。

 すなわち、民法の保証の制度の改善は、さまざまの問題を引き起こしてまいりました保証につきまして民事法制の観点から一定の明確な規律を及ぼそうとするものであり、また、動産譲渡登記の制度の創設及び債権譲渡登記制度の改良は企業の資金調達に資するものでありますから、いずれも、現下の社会経済情勢をにらみますならば、それぞれ大きな意義を持つものであることは多言を要しないものと存じます。

 また、法典としての民法の現代語化は、法律を市民にとって読みやすいものにするという観点に立脚するものであり、目下進められている司法制度改革の精神にかなうものであると評価することができます。

 そこで、以下におきましては、まず民法の一部を改正する法律案を、次いで債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案を取り上げ、いささか内容に立ち入って所見を申し述べさせていただきます。

 早速、民法の一部を改正する法律案でございますが、これにつきましては、さらに法典としての民法の現代語化と、それから保証契約に係る民事的規律の整備拡充という二つの柱がございます。

 前者の現代語化は、その検討経過を確認いたしますと、御案内のとおり、一九九一年から、法務省民事局の依頼により、民法の研究者から構成される民法現代語化研究会というものが設けられて、その検討に着手いたしました。その検討の成果は一九九六年に取りまとめられておりますが、その後、法務省は、これにさらに検討を施した現代語化の案を策定し、本年になって、それについて一般の意見を徴する機会を設けました。民法を研究する者の一人として、私もそれについてその機会に意見を申し述べましたし、その一部が、本日御審議の法律案にも反映されてございます。

 御存じのように、明治期、大正期に制定された基本法典のうち、民事訴訟法、刑法、破産法など、既に現代語化されておりますが、本日の法律案をお認めいただけますならば、民法という基本法典が市民にとって読みやすい法律となり、主なものでは商法あたりを残すのみとなりますから、法典現代語化の一連の営みにおいて大きな画期を迎えることとなります。

 具体的に内容を見てまいりますと、まず法条の番号につきましては、一方で煩雑さを感じさせる枝番号の法条をなるべく減らす努力が講じられ、会社分割法制の導入に際して生じた三百九十八条ノ十ノ二のような二重枝番の規定が姿を消しております。反面、公序良俗違反の法律行為を無効とする九十条のように、運用上定着している基本的規定は番号を動かさないようにする工夫がなされているということも見落とすことができません。

 法文の内容におきましては、一方で用語の平易化が図られ、囲繞地通行権のところは「他の土地に囲まれて公道に通じない土地」というふうに言いかえられております。また、実質的な内容の面で、判例上実質的に追加された要件の明文化が図られていることも指摘しなければなりません。

 私、実は昨日、司法研修所に参りまして、教官の先生方と、要件事実論と民法学との対話という主題で研究討議をする機会がございました。表見代理の百九条などが話題となり、相手方の善意無過失を抗弁、再抗弁などのどこに位置づけるかといったことを論議いたしましたけれども、そもそも相手方の主観的容態の規律は明文からは読み取ることができませんから、これでは、受験勉強をした司法修習生はともかく、市民にはわかりません。こうしたところも、この民法改正を実現していただければ改善します。

 さて、もう一つの民法改正案の柱は、保証契約に係る民事的規律の整備拡充でございます。商工ローンの問題に代表されますように、保証についてさまざまのミゼラブルな社会的問題が生じておりますことは多言を要しません。

 これにつきましては、私として、一つ鮮明に覚えていることがございます。昨年の通常国会におきまして、本委員会等の御審議を経て成立を見ました担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律の立案準備を拝命した法制審議会の審議におきまして、その際も保証の問題を何とかしなければならないということが話題となりましたが、その席で、私は、このテーブルで論議可能な問題ではないということを発言いたしました。もちろん、保証の問題がどうでもよい問題であるということではなくて、それはそのための本格的な法律案の検討をすべきであるという趣旨でした。

 その本格的な対応に向けての法律案が、本日御審議いただく民法四百四十六条の改正及び同法への四百六十五条の二以下の追加の提案でございます。ぜひこれをお認めいただきたいものと考える次第です。

 具体的に内容を見ますと、四百四十六条の改正により、保証契約に係る普遍的規律としてその要式行為化が図られますし、また、いわゆる根保証をめぐるさまざまの深刻な事態への対処として、貸金等根保証契約という新しい法制上の概念を設け、それに係る特別の規律が準備されました。

 すなわち、「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする」という根保証の要件と、その主たる債務の範囲に金銭の貸し渡し等により負担する債務が含まれるという貸金等債務の要件とを充足するところの貸金等根保証契約は、主な効果として二つの規律が課せられます。

 第一は、極度額を必ず定めなければならないことであり、定めなければ保証契約が無効となります。第二は、元本確定期日の定めをコントロールすることであり、それを五年を超えて先に定める定めは無効ですし、また、そのようにして無効とされる場合を含め、何も定めなければ三年後に元本が確定するものとされますから、これにより、保証債務の額がタイムリミットなしで膨らむということが抑制されます。

 今述べました保証のお話は、不適切な態様での資金調達を防止する観点からのものでありますが、反面において、適切な資金調達を支援する制度もまた現下の社会経済情勢のもとで求められているところでございます。

 本日御審議のあと一つのテーマの方に移らせていただき、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について意見を申し述べます。

 この法律の立案経過を御紹介申し上げますと、まず、昨年九月に、法務大臣は法制審議会に対し、動産担保及び債権担保の実効性をより一層高めるという観点から、動産譲渡及び債権譲渡を公示する制度の整備を早急に行う必要があるとして、その要綱の検討を求める諮問をいたしました。これに基づき、同審議会には動産・債権担保法制部会が設置されました。そこでの審議における委員の一致した見解により策定された要綱案を踏まえて法制審議会がした答申を受け、政府が立案したものがこの法律案でございます。

 私は、同部会の幹事として、この立案準備の調査審議に参画する機会がありました。この法律案に盛り込まれている制度の基本理念は、企業が有する動産や債権を活用してする資金調達にとって障害となっていると考えられる民事法制上の障害を除去して、そのような資金調達を支援することにあるものと考えております。

 まず、大きな柱は、動産譲渡の対抗要件に関する民法の特例及び債権譲渡に係るそれの二つがございますが、動産譲渡の対抗要件に関する民法の特例について申しますと、これは、従来、動産の譲渡担保取得に当たり占有改定しか対抗要件がないという状況にありましたところ、今般、動産譲渡登記の制度が設けられることにより、対抗要件具備の明確な法律的基盤が整備を見ることになります。登記可能とされる譲渡は、その目的を限定しておりませんから、後日に登記の効力をめぐる無用の紛議を避けることができますし、また、資産の流動化などのためにも活用が可能です。また、集合動産と個別動産のいずれもが登記可能であり、その点からも広く活用を期待することができます。これにより、日本も、アメリカ合衆国の統一商事法典が定めるファイリングなど、欧米の制度に相当程度近づくことになります。

 関連して、動産譲渡登記ファイルに記録された事項の情報開示について申しますと、譲渡人となる企業で働く労働者など、情報開示をすべきであると考えられる方々にはきちんと開示することとする反面において、企業が競争相手との関係において秘匿を欲する情報もあることから、無制限の開示を不適当とする事項は概要のみを開示する取り扱いが提案されています。

 なお、これらは債権譲渡登記ファイルについても同じであり、また、債権譲渡登記の内容を法人登記簿に連携させる措置は、関係者に無用の心理的抵抗感を及ぼすことがあるなどのことを考慮し、これを廃止する扱いとしております。

 次に、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例でございますが、何と申しましても、債務者不特定の将来債権譲渡に係る登記可能性を開くという画期的な提案がなされていることを強調申し上げます。

 債務者が特定されておらず、または、これを特定することが困難である債権として、例えば、クレジット業者が将来において顧客となる者に対して取得する将来のクレジット債権や、不動産所有者が将来において不動産に入居するテナントに対して取得する賃料債権などがございますが、これらに係る簡便かつ確実な対抗要件具備の道を開くことは、不動産担保に依存しない企業の資金調達を可能とする効用を期待することができます。

 なお、このようにして将来債権の譲渡可能性が実際上広げられることを見据えつつ、債権譲渡登記の制度についても幾つかの合理化を考えました。さきに申しました情報開示に関する工夫のほか、将来債権については、譲渡される債権の総額が不確実であり、これを強いて登記する場合は無用の混乱も生じ得るところから、これを必要的な記録事項としない扱いとしております。

 以上、二つの法律案について所見を述べさせていただきましたが、最後に、今後に残される課題について若干申し述べさせていただきます。

 保証に関する今般の民法改正は、もとより民事法制の観点から適切と考えられる規律を導入しようとするものでございますが、その成立をお認めいただきます際には、今後の運用の中で、貸金業の規制等に関する法律など関連する行政的取り締まり法規が設ける規律との適切な連携を図るなどして、その制定趣旨が遺憾なく発現されるべきであります。

 また、動産譲渡登記制度の創設及び債権譲渡登記制度の拡充につきましては、それが労働債権など他の債権者の債権の行使可能性に影響を及ぼすのではないかという観点からの危惧が法制審議会の調査審議において指摘されたところでございます。

 そのような観点への配慮といたしまして、今般の法律案におきましては、既に述べましたように、登記ファイルの記録事項の情報開示において労働者の立場に配慮することのほか、登記の効力を原則として十年に限ることとして、過剰に包括的な担保の取得、保持が他の債権者に及ぼす影響を可及的に回避しようとする工夫も講じました。加えて、労働債権保護の方策について今後さらなる検討をすべきことが、特に法制審議会の答申において付記もされたところであり、法制審議会の部会審議が委員の全会一致で合意を見ましたのもそのような背景においてであるものと認識しておりますから、立法府におかれましては、かような課題に関しましても引き続き御関心をお持ちいただきたいものとお願い申し上げる次第でございます

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

塩崎委員長 どうもありがとうございました。

 次に、奈良参考人にお願いいたします。

奈良参考人 日本弁護士連合会司法制度調査会副委員長の奈良でございます。

 本日は、機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 本日は、特に、民法の一部を改正する法律案のうちの保証契約の適正化の部分と、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について意見を申し上げます。

 民法の現代語化については、平仮名、口語化の表記とし、時代おくれの用語を平易なものに改めるなどして、国民一般にわかりやすい民法とする方向に異議はございません。ただ、法案検討の過程で、私ども弁護士に対しては、本年八月四日に、九月三日を期限として法務省から意見募集がなされましたが、国民生活を規律する基本法であり、全条文一千四十四条が対象となっていたことから、この一カ月という検討期間は短過ぎたのではなかったかという印象を持っております。

 保証契約の適正化について申し上げます。

 日本弁護士連合会は、本年六月に法務省から本件に関する要綱中間試案が公表された際に意見書を提出しており、これから述べます私の意見も、ほぼこの意見書と同じ内容となります。

 保証契約というのは人的担保として広く行われていますが、その実態は、親族関係などの情実的関係を背景としてなされる場合が多く、しかも、保証人が現実に保証債務の履行を求められるか否かは、保証契約締結の時点では確定的ではありません。そのため、保証人は、負担はないものと軽信して、軽率に保証を引き受けてしまうことも少なくありません。また、保証契約は、原則として無償契約、片務契約です。保証人は何ら対価を得ずに、専ら、他人である被保証人のために債務を負担します。

 このような保証契約の特殊性からしますと、契約自由の原則のもとに何らの制約を課さないでいると、過酷な負担を保証人に強いる結果になりかねません。特に、保証期間と保証額に限度のない包括根保証契約を締結した保証人にとっては、このことはさらに顕著となります。

 銀行などの金融機関は、中小企業に融資をする際に、経営者個人の個人保証を求めることがよくあります。商工ローン業者も、経営者からは包括根保証を、第三者からは期間や限度額の定めのある限定根保証を求めています。

 根保証契約は、個々の融資を行う際に一々保証契約を締結する必要がないため、広く利用されています。しかし、主債務者である会社が倒産して借入金を返済できなくなった場合、根保証人は過酷な返済責任を負うことになり、経営者自身が個人破産をせざるを得なくなったり、時によると夜逃げや自殺に追い込まれるという悲劇も起きています。商工ローン業者による保証被害が大きな社会問題となったことは御存じのとおりです。

 殊に、第三者が根保証をしている場合は、経営者は、第三者に迷惑をかけまいと法的整理手続をとることをちゅうちょし、その間になお債務が増大していく事態も起こってきています。結果として、会社や個人は再起の機会を失っております。

 個人の保証人が、保証債務を負担することにより経済的に破綻する例も数多く見受けられます。日本弁護士連合会は、平成九年、十二年、十四年の三回にわたり、最高裁判所の御協力を得て、全国の地方裁判所で破産記録全国調査を実施しましたが、破産者が多重債務を負担するに至った理由のうち、保証債務・第三者の債務の肩がわりの占める割合は約四分の一くらいあります。会社が破産等の法的手続をとる際に、保証があるために、代表者個人や親族の個人破産申し立てをしなければならないのもよくあることであります。

 法律案が、保証契約一般を要式行為として書面でしなければ効力を生じないとすることは評価いたしますが、実務上、保証契約が締結される場合、書面の作成がなされるのが通常であることからすれば、さらに一歩進めて、根保証契約書が根保証人に交付されなければ契約は効力を生じないとすべきと考えます。

 法律案が、貸金や手形割引に関する債務が含まれている主たる債務について個人の包括根保証を禁止したことは、大いに賛成いたします。しかし、個人と実質的に異ならない零細な個人会社への適用については再検討をお願いしたいと思っております。

 また、主たる債務の範囲を貸金と手形割引に限定していますが、これ以外にも、貸金債務との区別が容易でない債務や賃貸借契約、継続的売買契約などの継続的契約の包括根保証についても、保証人の保護の方策を引き続き検討されることを希望いたします。

 法律案は、時間的な制約もあり、保証契約の見直しの範囲が限られたものとなっていますが、この法案が成立しても、消費者金融などから生ずる保証被害はなくなるものではありません。包括根保証を禁止しても、限定根保証で極度額を大きくすれば、包括根保証と変わりなくなります。保証人の保証能力を超える契約の締結の禁止や保証の内容を説明する義務、クーリングオフ制度の導入など、特に、個人や個人と実質的に異ならない個人会社の根保証については、なおも将来的に検討していただけたらと思います。

 今回の改正案には盛り込まれておりませんが、個人の根保証人は、一定の事由がある場合に、債権の元本の確定を請求することができるとすべきと思います。主たる債務者と根保証人との関係に変更があった場合、例えば、法人である主たる債務者の役員であることから保証人になった者が役員の地位を失ったときや、代表者の配偶者であることから保証人となった者が離婚したときなどです。また、債権者と主たる債務者の間で取引内容が大きく変更されたり、主たる債務者の資産状況が大きく変わったときなどの事情がある場合も同様です。今後、このような制度を検討していただきたいと思います。

 さらに、債権者には、主たる債務者に一定の事由が生じた場合は、それを保証人に通知する義務も設けるべきと考えます。根保証人だけでなく、保証人であっても、契約締結後の主たる債務者の不履行などの情報を持たない場合が多く、あるとき突然多額の保証債務の履行を求められることがあります。債権者から情報を得ていれば、保証人は債務者に対し履行の請求などの働きかけができます。

 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について意見を申し上げます。

 本年四月、日本弁護士連合会は、法務省が公表した要綱中間試案について司法制度調査会の意見書を提出していますが、会内には賛否両論があるため、その際、日弁連の他の委員会の意見書や各地の弁護士会から寄せられた意見書を添付いたしました。動産譲渡に登記という公示制度を設ける点については賛成論がやや多く、債務者不特定の将来債権譲渡を登記で公示することについては反対論が多いという状況でありました。

 昨今の経済情勢から、特に中小企業や新規事業者に、今まで十分に活用できなかった売掛金債権や機械設備、仕掛かり品、在庫商品などの動産を担保とする資金調達の要請があること、金融機関や商社などの与信側にもこれらの活用を望んでいる状況があることは理解しております。

 従来、実務で行われてきた動産譲渡担保は、占有改定の方法で第三者に対する対抗要件を備えるため、外部からわからず、公示力はないに等しく、不安が残るものでした。そこで、公示制度を整備し、より利用しやすく、安定性、実効性を高めたものとすることにより、資金調達、資金供給手法が多様な発達を遂げることが期待されますので、登記という公示制度を設けることには一定の評価をすることができます。

 しかし、動産の特定方法によっては企業のすべての動産が担保となる可能性があることから、労働者や納品業者らの債権の引き当てとなる財産がなくなる危険性があります。殊に倒産時には、担保を取得した者と労働者や納品業者との間の不公平感が際立ちます。改正破産法において労働債権の一部が財団債権化されたにもかかわらず、財団に残っている財産が少なければ、結局、労働者は保護されないことになります。再建型の倒産処理手続では、事業再建の障害となることも懸念されます。また、担保動産の評価、管理、換価の仕組みが不完全なことから、新たな与信や貸し付けに利用されず、既存債務の補強や過剰担保を強いられる場面で使われる危険性もあります。

 そこで、動産の特定方法の工夫などで、すべての動産を包括的に担保にできないような制度とし、労働債権の保護についても何らかの方策を検討すべきと思います。また、担保にとった動産を適正な価格で処分できる市場ができてくるような施策も必要となります。

 法律案は、すべての動産譲渡を登記制度の対象とし、登記は単なる対抗要件としています。しかし、動産譲渡一般を登記制度の対象にすると、動産取引に与える影響が多いので、慎重であるべきと考えます。登記できる動産譲渡を動産の譲渡担保に限定した上で、登記した動産譲渡担保は、先行する占有改定により対抗要件を備えた動産譲渡担保に対抗できるという特別の効力を持たせるのがいいのではないかと思います。これにより、動産譲渡担保の安定性、実効性が増し、登記をするメリットも出てきますので、動産譲渡担保の公示方法を登記に誘導できます。

 以上のように、法律案には賛成しかねます。

 先ほど、日本弁護士連合会内で要綱中間試案の検討をしたときには、動産譲渡に登記という公示制度を創設することについて賛否両論があり、評価する意見がやや多かったと申し上げましたが、その評価する意見の多くは、今申し上げましたように、登記制度の対象を担保目的の動産譲渡に限るという意見でして、現在御審議されている一般の動産譲渡に広げるという意見ではありませんでした。

 債務者不特定の将来債権の登記について述べます。

 要綱中間試案の時点では、弁護士会には反対する意見が多かったことは冒頭で述べたとおりです。その理由のほとんどは、先ほど動産譲渡の登記制度について述べた懸念と重複しますので、省略させていただきます。

 法律案に対する意見を述べます。

 債務者不特定の将来債権譲渡を登記によって公示する制度を設けることは、先ほど動産譲渡の公示制度で述べました懸念がすべて当てはまります。それだけでなく、債権譲渡には次のような疑問もあります。

 それは、債務者が不特定で、将来いつ発生するかも特定できない債権で、債権額も明示しないという権利について、権利の内容が不確定であるのに公示制度をつくることになり、取引上混乱が生ずることになるのではないかということです。これが債権の特定性の緩和に向かうのではないかという不安もあります。また、動産以上に、このような不確実な債権を債権譲渡の際に正当に評価する方法を確立できるのか、疑問もあります。

 その上、第三債務者から見ますと、債権譲渡登記ファイルにも、譲渡人や譲受人から交付される登記事項証明書にも自分の名前は記載されていません。果たして、第三債務者は、自分の債務が債権譲渡されたのか否かを的確に判断できるのでしょうか。

 以上の理由で、賛成しかねるものであります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

塩崎委員長 どうもありがとうございました。

 次に、中村参考人にお願いいたします。

中村参考人 ただいま委員長より御紹介を賜りました中村でございます。

 本日は、参考人としてお招きをいただき、愚見を申し上げる機会を賜りましたことにつきまして、大変光栄に存じますとともに、感謝を申し上げます。

 私は、中小企業専門の金融機関で金融法務の実務に携わっております。また、商工会議所等経済団体の諸活動におきましても、経済法規に関する政策提言づくりに参加しており、そのことから、法制審議会保証制度部会並びに同じく動産・債権担保法制部会の委員にも就任し、議論に参加してまいりました。これらのことを背景に、本日は、金融機関と中小企業の双方の視点をもって意見を述べさせていただきます。

 なお、以下は、中村の個人的見解であることをあらかじめお断り申し上げます。

 まず、本日の案件でございます二つの法律案についての総論としての評価を申し上げます。

 両法律案とも、中小企業の資金調達の多様化並びに地域金融の機能強化に資するものとして、賛成をいたします。

 すなわち、中小企業におきましては、資金調達手段の確保が経営上の最大かつ喫緊の課題であります。長期にわたる資産価値下落の状況下、不動産担保並びに第三者保証等への過度の依存からの脱却、企業のキャッシュフローのモニタリング等の実施、債務者企業による経営状態の適切な開示により、中小企業の資金調達手法の多様化を図ることが現下の急務となっております。

 その意味で、両法案ともに、現在の中小企業金融における問題点の解決に資するものとして、高く評価できるものであります。

 次に、それぞれの法律案の細目について申し上げます。

 第一に、民法の一部を改正する法律案であります。この法律案のうち、包括根保証を禁止する旨の箇所につき、特に意見を申し上げます。

 我が国経済の礎となっている中小企業におきましては、金融機関から融資を受けるほとんどの場合、経営者の個人保証を求められており、加えて、経営に直接関与していない第三者、親族、知人等の個人保証を求められることも少なくありません。

 また、その保証の内容につきましては、特定債務保証や期間、限度額を定める限定根保証ではなく、そうした定めのない包括根保証が求められるケースがありましたが、その場合、第三者であっても、債務者との情義あるいは債務者の資金調達の便宜を顧慮し、あえて包括根保証を受諾することもありました。

 さらには、当該包括根保証の法的な責任の態様、換言すれば、債務者が破綻した場合に想定される保証人の責任範囲や連帯保証であるがゆえの厳しさ、これは、催告の抗弁権や検索の抗弁権が排除されているということに代表的であろうかと思いますが、これなどについて債権者から満足な説明を受けないまま保証人となる事例も散見されたのであります。

 しかしながら、保証人が個人として包括根保証を負っている場合、経営者であるなしにかかわらず、特定の債権者に対するすべての債務を一括で弁済することが求められるなど、実質的に個人保証人が無限責任を負っているに等しく、あたかも人生を担保として提供しているかのようであります。

 このような個人保証人の過度の負担ゆえに、債務を負担している企業の破綻が直ちに個人保証人の破綻、破産、失踪あるいは一家離散等につながる悲劇を生じさせているとの指摘も聞かれます。

 中小企業金融におきまして、過度の個人保証依存が改善されなければ、現在強く求められております経営のモニタリング等によるキャッシュフロー評価や事業の将来性評価に基づいたリレーションシップバンキングが定着しないばかりか、保証かぶりを恐れる経営者等の判断の遅延により、業績不芳企業の早期再生が困難となるなどの懸念が払拭されません。

 以上のような問題認識に立って、法案に賛成するものであります。

 さらに、具体的な条項について付言いたします。

 極度額、限度額の定めのほか、元本確定期日、保証期間の制限の定めが設けられたことで、保証人にとって、半永久的に保証の責務を負うということよりも、例えば、契約によって五年ごとに自己と債務者との関係を見直し、保証継続の可否の判断が可能となります。また、元本確定事由として、強制執行を受けた場合や破産手続開始決定を受けた場合は当然のことながら、特に死亡した場合は、御遺族など相続人の精神、経済生活両面にわたる御負担に思いをいたせば、自明なこととしてうなずくものであります。

 また、根保証契約を含む保証契約は書面、契約書によらなければ無効とすることにつきましても、債権者が保証人に不当に圧力をかけて口頭で保証の条件を強要した場合はもちろんのこと、法的、経済的知識や経験に乏しい人が債権者に言われるままに口頭で合意するといった懸念を払拭することになると存じます。

 ここで、法律案には直接関係のない事項に若干言及させていただきます。

 まず、個人保証人に係る制度的見直しはさることながら、次に述べます動産や債権等の多様な資産の活用によるリスク補完の提供等、個人保証に過度に依存しない形での保全手法の進展も図られるべきであります。

 また、根保証の提供の必要性や債務者の資金ニーズに合った合理的な極度額の設定などについて、個別の案件ベースでの金融機関の説明義務、アカウンタビリティーの充実が必要であり、金融庁の総合監督指針にうたわれておりますとおり、顧客から求められれば、事後の紛争を未然に防止するため、理解と納得を得ることを目的として、その契約が合理的かつ客観的理由に基づくものであることを説明する体制が金融機関において整備されることが必要であることは言うをまちません。

 さらに、中小企業自体におきましても、これまで以上に適切な会計慣行を確立することにより、信頼性、透明性を維持向上させることも不可欠のことであります。

 本法律案は、さきの第百五十九回国会において成立し、本年六月二日に公布されたいわゆる新破産法の御審議の際の衆参両院の法務委員会の附帯決議にも沿った内容であり、その意味で、まことに国民の声を尊重されたものと言うことができるものだと思っております。

 第二に、動産及び債権譲渡の公示制度の整備を旨とする債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案についてであります。

 中小企業におきまして、在庫等の動産を担保とすることは、事業の収益状況、キャッシュフロー重視の資金調達手法の多様化を実現する手段として有効であります。また、個別動産の担保につきましても、当該動産の購入資金等の調達がより容易にできることが必要であります。

 譲渡担保の場合の対抗要件は引き渡しでありますが、これは民法百七十八条であります。引き渡しは占有改定で足りるとされております。占有改定によって対抗要件が具備されている場合には、既存の譲渡担保が存在しても、外形的にはこれが判然としません。そのため、債務者のもとにある動産に譲渡担保を設定しようとする際、予定していなかった既存の担保権が存在する場合がありますが、占有改定による即時取得が認められていないため、後発の譲渡担保は既存の譲渡担保に劣後することになります。金融機関等は、こうした点を懸念し、動産に担保権を設定しての融資に消極的になりがちであります。

 なお、習慣上、明認方法を利用することがありますが、倉庫に張り紙をするといった明認方法は、債務者側からの抵抗感も強いため利用しづらく、また剥離等の懸念もありますので、占有改定による公示性の低さを補うための手段としては甚だ不完全であります。このような動産譲渡担保の公示手段の不十分性が、動産に対する譲渡担保の安全性を低くしており、動産の担保としての活用の障害となっていることがつとに指摘されておりました。

 すなわち、集合動産、個別動産を問わず、在庫等の動産を担保とする融資モデルを確立、定着させるためには、第三者対抗力の有無を外形上識別できず、したがって、担保としての予見可能性、安定性に欠けている現行の譲渡担保のあり方を見直し、公示制度を創設することは、まことに有用であります。

 また、第三債務者不特定の将来債権を担保に提供し、かつそれを公示する制度の整備につきましては、例えば在庫のライフサイクルを考えた場合、在庫、売掛金もしくは手形、さらに預金という流れになるのであり、その視点から、キャッシュフロー重視の融資慣行の確立と相まって、動産と一体的に担保として提供されることが考えられます。既に、ある地域金融機関にあっては、そのような手法を実施したと仄聞しております。今後、公示、登記制度が整備されることになり、特に地域金融のより一層の進展が期待できるものと考えます。

 以上から、実効性のある公示制度の整備を主眼とする本法案に賛成するものであります。

 さらに、第一の場合と同様に、法律案とは直接の関係のない事項に触れさせていただきます。

 動産等の担保融資、アセット・ベース・レンディングが実務上確立していくためには、公示制度の整備を重要な契機として、さらに、担保評価の手法や担保品の処分市場の確立、そのプレーヤーとなる事業者の育成といった環境整備が必要であります。この点は今後の重要課題と言っても過言ではないと存じますが、既に一部の物流専門商社等がプレーヤーとして名乗りを上げております。

 また、動産等の担保が債権者において過度の保全強化の手段として濫用されることのないよう、債権者は十分に留意をする必要があります。このことは、債務者の倒産を見越した上での担保取得が破産法上の否認権や民法上の詐害行為取消権の対象となり得ることで制度的な手当てはなされていると言えますが、さらに金融機関にあっては、担保提供の必要性等について、さきに述べた総合監督指針に従ってアカウンタビリティーを果たすことが必要であり、また、金融機関以外の債権者も、合理的な範囲内での担保取得を常に念頭に置くことを強く望むものであります。

 冒頭に申し上げましたとおり、両法律案はいずれも、中小企業金融の第一線に立つ者として、長年の懸案であった問題の解決に資するものとして、換言すれば、不動産担保や人的保証への過度の依存から脱却し、事業の収益性に着目した融資慣行を確立し、地域金融の機能強化につながる重要な第一歩であると認識しております。適切な御審議を経て御承認をいただき、速やかに施行されることを望むものであります。

 以上、雑駁な内容となりましたことを御容赦いただきますようお願い申し上げます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

塩崎委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 参考人の皆様におかれましては、本日は、御多用中のところ、本当にありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 さて、早速、法案の内容について、事例を交えて質問させていただきます。

 まず、動産の譲渡の対抗要件の特例に関する質問でございます。

 例えば、法人Aが法人Bに対してその倉庫の内容物を譲渡する、そういう契約を結んだといたします。そして、それについて動産譲渡登記ファイルにしっかりと対抗要件を備えた。そうした場合に、第三者CがAから当該倉庫動産を譲り受けた場合、Cは即時取得によって保護される余地があるのでしょうか。山野目参考人、いかがでしょうか。

山野目参考人 御質問ありがとうございます。

 動産譲渡登記制度の創設を見た場面における民法百九十二条が定める即時取得制度の適用関係との関係につきましては、これは、基本的には従来法制との関係で大きな変更を加えるものではない。御提案申し上げている法律案の中におきましても、民法百九十二条との関係での改正であるとか特例であるとかいうことは設けられておりませんので、基本的には従前法制が維持されるというふうに考えるべきであろうと思います。

 その上で、ただいま議員から御質問のありました設例について申し上げますと、Cが登場した際に、通常は、Bなる者の存在を知らないでCが取引に入ってきて、民法百九十二条が定める要件を充足しているというふうに認められて、それらの要件が立証された場合には、当然のことながらCの即時取得が認められるわけでございます。

 Cが、何と申しますか、取引裡において専門的に事業を行うような者ではないような、通常のという言い方はちょっと変な言い方でありますけれども、そのような譲受人である場合につきましては、そのような即時取得の要件の充足が認められる可能性も高いのではないかというふうに考える次第でございます。

 しかしながら、例えば、Cが、事業裡において、あるいは取引裡において登場してくる人物でありまして、このような動産譲渡登記制度の存在、あるいは動産に係る譲渡担保の取引慣行のようなものを知っているんだというふうなことが言えて、そのような観点から動産譲渡登記の内容について注意を払う、調査、確認をすべきことが期待されるような場面におきましては、当然、そのような観点を考慮に入れて、百九十二条が定める善意かつ無過失、とりわけ過失の方でございますけれども、その認定判断がなされるということになりましょうから、そのような場面におきましては、場合によっては百九十二条の要件を充足せず、したがって、Cのための即時取得の成立が妨げられるということも一般論としてはあり得るのではないか、かように考える次第でございます。

 以上でございます。

柴山委員 結論としては、即時取得、場合によっては可能ということですが、最高裁判所昭和六十二年の判例で、登録制度のある自動車については即時取得の適用がないという判断が下されておりますが、これとの整合性はどのように説明をされますか、山野目先生。

山野目参考人 ありがとうございます。

 ただいま議員御指摘の点に関しましても、従来法制及び判例との関係で大きく何か変更を加えようという提案が今般の法律案に含まれているものではない、かように考える次第でございます。

 議員も御案内のとおり、自動車に関しましては、登録が所有権移転の対抗要件であるという仕組みがとられているわけでございますけれども、反面、未登録の自動車については、通常の民法百七十八条の規律のもとで取引が行われるわけでございまして、この未登録の場面に関して申しますれば、自動車であるからといって殊さら何か特段の取り扱いの違いが生ずるわけではなく、今般御提案申し上げております動産譲渡登記制度の対象としてその登記をすることも可能でございますし、それがなされた場合の法律関係の運用も、従来法制及びそれに基づく、議員も御指摘のとおりの判例に基づいた運用がなされるであろうというふうに考えられるわけでございますので、未登録の自動車の法律関係については、一言で申し上げれば、従来と同じに考えてよい、かように考える次第でございます。

 以上でございます。

柴山委員 しかしながら、登録された自動車と登録された倉庫動産については規律を異にする。具体的には、登録された倉庫動産についてはその後の譲受人が即時取得をすることが可能だけれども、登録自動車の譲受人については即時取得によって保護されることはない、この不均衡があることはお認めになられるわけですね。

山野目参考人 ただいま議員御指摘の法律関係がそういうふうになるということは確かにそのとおりだと存じますけれども、それをもって不均衡というふうに考えるべきかどうかということ、それは評価がいろいろあり得るのではないかと思いますけれども、それは、従来の自動車に関する登録がなされた場合の法律関係について即時取得の適用関係が変容を来してくるということから、十分にあり得ることでございまして、それによって関係取引当事者に何か甚大な、民事上の紛争処理において困ったことが生ずるかというと、必ずしもそうではないというふうに参考人としては認識いたしております。

 以上でございます。

柴山委員 ありがとうございます。

 当然のことながら、自動車の場合は、登録制度はその自動車と終始するものであって、容易にそれを調査することが可能である。一方、今回の登録動産につきましては、これは必ずしもその動産について登録がされているものではなくて、指定登記所あるいは譲渡人の本店所在地において概要ファイルが設置されているだけだ、そういうような違いもあるのかなということから、私は、こういった扱いをすること自体については特段異議を述べるわけではありません。

 ただ、その場合、Cからさらに当該倉庫動産を譲り受けたDについては、これは前者につき、いかに調査しようとも登記が出てくることはないわけですから、この場合は、従前と同じように、登記されていようがされていまいが、Bは権利を失ってしまう、当初の譲受人Bは権利を失ってしまうということは避けられないと思いますが、この点、いかがでしょうか。

山野目参考人 御質問ありがとうございます。

 ただいま議員の御指摘のDが登場してきた場合のそのDの保護は、まさに民法百九十二条の一般的な適用によってそのDを保護しなければならないと考えますし、仮に、動産譲渡登記がBのためになされていたからといって、またその担保取引を保護する一般的、経済的な必要があるからといって、ただいま御指摘のような場面のDを保護しないということも、これはまたちょっとバランスが欠けていておかしいわけでございまして、それはもちろん、百九十二条の一般的要件を充足すればDは即時取得が可能だと思いますし、また、そのような結果でよろしいと。

 そのことは、恐らく、この動産譲渡登記制度による例えば譲渡担保の推進といったようなことにとって別に欠点ということではなく、従来法制上、一般的に予定されている、一つの限界といえば限界であろうというふうには思いますけれども、それなりに合理的な結果なのではないか、かように思料する次第でございます。

柴山委員 次の質問に移ります。

 今回の動産登記制度において、担保目的の譲渡と真正譲渡の区別は結局のところなされなかったわけですが、例えばその場合に、債務者が破産した、そういう事例であれば、この両者は、いずれにせよ、別除権なり、もちろん譲渡の場合は否認権が行使されない限り財団から外れているということで、統一的に処理をしてよいかと思うのですが、債務者が会社更生手続に入ったような場合、これは更生担保権になるのか、あるいは債務者の財産でなくなるのかということで、私は大きな差があるのではないかと思いますが、この点、担保目的の譲渡と真正譲渡の区別がなされなかったということについて、実務家の立場から、奈良先生、どのようにお考えでしょうか。また、これについて妥当性があるとお考えでしょうか、山野目先生。

奈良参考人 私どもの意見は、先ほど申し上げたように、余り積極的に賛成してはおらないわけですね。しかし、動産の登記制度の必要性の要請というのも非常に理解できるので、限った範囲で認めてはどうだろうかという程度の意見でございますので、今のように、真正譲渡と担保目的譲渡の違い、会社更生上の違い等は検討しておりませんので、まことに申しわけありませんが、お答えすることができません。

山野目参考人 議員御指摘の、倒産手続が開始された場合の動産譲渡登記に係る譲渡担保の設定などがあった場合の関係処理のことでございますけれども、これは確かに、法制審議会における調査審議の中でも、管財業務などを担っておられる弁護士の先生方からの意見が出されて、それらを踏まえて調査審議を進めたところでございます。

 確かに、対抗要件具備の方法が広げられることによって従前以上に幅広く担保権が機能するということになりますと、破産管財人が処理をして配当等の原資にすることができる財産の保護に影響を与えてくるのではないかということが一般的に懸念されるわけでございまして、そのような一般的懸念はさらに、当該倒産手続が破産であるか、会社更生であるか、民事再生であるかなどによって若干の違いはあるところでございますけれども、一般的な御懸念として理解できるところでございます。

 しかしながら、例えば民事再生手続の場合に、譲渡担保権は、明文の規定はございませんけれども、恐らく別除権として取り扱われるということになるんだと思うんですけれども、しかし、別除権として取り扱われるからといって、必ずしも管財人のお仕事がしにくくなるようにがっさりと常に債権者が持っていってしまうものなのかということを考えますと、それは恐らく、倒産処理実務の実地のことを見てみますと、何分にも問題となっているものは動産でございますから、それをとんとんと売却して権利を、別除権を行使していくということにはなかなか実際上難しいこともあるのではないかと思います。

 そういう場合に、再生債務者自身に処分をしてもらって、別除権協定などが成立するといったようなことの期待を踏まえて、そのうちの一部を債権者に分配し、しかしまた、その自余の部分については別途の処理を考えるといったような、いわば法律の字面とは違う実地運用というものを期待していく余地というものは大いにあるのではないかというふうに考えるものですから、議員御指摘の御懸念がもっともであると同時に、それに対しては一定の合理的な対応を期待することができるのではないかということも申し上げさせていただきたいと存じます。

 以上でございます。

柴山委員 最後に、この動産登記について、質権の行使というものは結局今回は検討されなかったわけですか。

山野目参考人 検討しなかったわけではございませんけれども、結論として、質権については適用がないというふうな法律案の内容になってございます。何分にも、需要が確認でき、立法事実の認知できるところについて法律案を策定するという方針で法制審議会の調査審議及び立案が行われました。それらを踏まえて考えますと、動産の質入れではなくて、非占有型の担保である譲渡担保をコアとなる立法事実として考慮の上制度設計を仕組んだ、かようなことであるというふうに理解しております。

柴山委員 次に、債権譲渡の対抗要件の特例についてお伺いします。

 債務者不特定の将来債権をAからBに譲渡された場合に、Bの債権者が、Bが債務不履行であるということで当該債権を差し押さえしてその満足を得る方法について、どのようになるのでしょうか。山野目先生あるいは奈良先生、いずれか。

山野目参考人 お答え申し上げます。

 AからBに譲渡されたときに、Bの債権者が差し押さえをするということでございますと、通常の差し押さえの手続と同様の仕方で行われるということで、特に従前法制との関係で変更がないというふうに考えられます。

柴山委員 私が申し上げたかったのは、債務者が特定されていない場合には差し押さえ命令は第三債務者には送達されませんので、この場合について、それでもBからあるいは第三者に転々譲渡されてしまう可能性がある場合に、債権者としてはこれを差し押さえる必要があるのではないかということで質問させていただいたところでございます。

山野目参考人 議員も御案内のとおり、債権差し押さえ命令の発令を執行裁判所に申し立てる際には、第三債務者を表示して差し押さえの申し立てをすることが必要でございます。恐らくそのような観点からの御質疑をいただいたんだというふうに考えますけれども、これは当然、まだ債権が文字どおり将来債権であって発生していない段階では、第三債務者を表示することができませんので、その差し押さえができないということは、物理的にと申しますか、事柄の、事物の本性上当然のことだと思います。

 債権が発生して、そして第三債務者を特定、誰何するという努力は、やはりその申し立てをする差し押さえ債権者にしていただかなければいけないわけでございますし、その表示をした上で債権差し押さえ命令を申し立てていただくということになります。この手続の流れは、今までの債権譲渡登記制度の運用のもとで行われてきたことと特段変わるところはないというふうに認識しております。

柴山委員 結論としては、Bに対して債権者は当該債権を差し押さえることができないというように承りました。

 さて、時間が非常に限られていますので、本当はもっとたくさんあったんですが、一点だけ。

 民法の一部改正について、包括根保証はこの後松島委員の質問にお任せするとしまして、それ以外の、民法の例えば不合理な規定、百二十二条ただし書きで、取り消し得る行為を一定の追認権者が追認したときに当初から有効なものとする、ただし、第三者の権利を害することができないという規定がありますけれども、このただし書きは、もともと当該行為というのは有効なんだからただし書きは不合理ではないかというような議論がいろいろあったと思うんですが、この点について、そのまま放置されたというのはどういう根拠によるものでしょうか。

山野目参考人 議員、何分にも民法を大変よく研究しておられて、大学の講義でいつも議論が展開されるような御質問を今ちょうだいしたんだというふうに考えまして、私も大変自分にとっては親しみのあるフィールドのお尋ねをいただいたというふうに感じました。

 御指摘のようなことも、例えば大学の講義や演習の授業などで議論する際に、なぜあの規定が置かれたのかというようなことについて諸説あって、いろいろな議論をいたします。例えば、立法の過誤ではないのかとか、いや、そうはいってもやはり適用がある場面があるんだとかいうようなさまざまな議論が学説裡において交わされております。

 そのことを踏まえて申し上げたいのは、今般の民法の現代語化の法律案は、およそ判例、学説上異論のないところであって、かつ、それが法文上明らかになっていない事柄については内容的な変更であっても大いにつけ加えていこうではないかという方針で作業を始めたことでございまして、反面において、今申し上げたように、若干でも、例えば一人の学者が言っている異論でも、一応これはもう少し検討してみる必要があると思われるところは、それを現代語化の作業で一遍にやってしまって規定を入れるということになりますと、やはりそれは今後の学界論議とか判例の運用等に影響を与えてまいる部分がございますから、そこはやはり慎重に考えて控えよう、かような方針で作業が始められたものだというふうに認識しております。

 御指摘の法文についての議員の御所見といいますか解釈は承りましたけれども、なお論議がある部分であるということもまた申し上げさせていただきたいと存じます。

 以上でございます。

柴山委員 時間になりました。以上で終わります。

塩崎委員長 次に、松島みどり君。

松島委員 きょうは、三人の参考人の方からとても有意義なお話を伺いました。ありがとうございました。

 私は、東京の下町で、中小零細企業の集中している地域から国会へ送っていただいて五年になります。そして、この包括根保証制度の廃止というもの、これはずっと私が求めてやまなかったもので、今回民法改正によってこれを成し遂げられるということは非常に喜ばしいと思っております。

 しかし、思っていたんですが、今三人の参考人のお話を聞く中で、そうか、こんな問題点もあったんだと、目からうろこというのが幾つかございましたので、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、一番大きなのが極度額の設定、そして年数、五年と限り、そして年数が書いていない場合は、つまりこれまでにもう包括根保証しちゃったような場合は三年たったら無効にする、これは非常にいい制度だと私は思っております。

 しかしながら、この中で、お話を伺っておりますと、極度額を設けるといっても、これは非常に大きな額で設けられて、それも弱い立場にある人が保証人に、私、特に問題だと考えているのは、より一層深刻なというかかわいそうなのは第三者保証だと思います。

 第三者保証というのに、弱い立場だから思わずいいよと言わざるを得ない場合と、余りよくわかっていなくて、じゃあねと言ってオーケーする場合と両方あると思いますけれども、それを考えましたときに、この極度額の設定というもの、たしか奈良参考人と中村参考人からこの問題の指摘がございました。

 この中で、法整備として極度額、余り資産もない人が、五億、十億で極度額を設けたからいいといったって、これは全然意味がないわけでございまして、この極度額の設定ということを法的に整備、これからこの法律を今回通しても、この後さらに、例えば改正していくなりでそういうことが法的なことでできるんだろうかということ。

 もう一つは、中村参考人が言われましたように、金融機関の説明責任ということ、これはもちろん求められるわけですけれども、そうしましょうねとかけ声だけでできるものかどうかわからない。そのあたりの、例えば別の法律でどういうふうに整備するかとか、そういった点についてどういうふうにお考えか、奈良参考人と中村参考人に極度額の問題で伺いたいと思います。

奈良参考人 極度額の制限の問題です。

 結論を申しますと、私自身、民法では無理だなと思っております。民法で唯一考えられるのは、現在のところは九十条の公序良俗違反というのを使うかということでございますが、これはもう相当極端な場合でなきゃ使えないものですので、民法では無理であろうと。だから、金融機関に対する行政庁からの御指導なりほかの部分で、何とか保証人の資力に見合った額が定められるようになればよろしいなと思っております。

中村参考人 御質問ありがとうございます。

 極度額の設定に関しましては、本来は中小企業等の債務者の資金ニーズに沿って保証の額というものが定められるはずでございますので、したがって、経済合理性を持った算定というのが一般的であろうと思います。

 ただ、実際のところ、御案内のような極度額の過大な設定ということがないとは言えないと思うんですが、これはあくまで個別案件によって随分とその様相が異なるというふうに思っておりますので、むしろ立法的な形で一律的な制約を設けるというよりは、例えば、先ほど申し上げました、預金取扱金融機関等であれば総合監督指針において行政上の措置が講じられる、また、預金取扱金融機関以外のいわゆるノンバンク、一般事業会社等の貸金等につきましては、それぞれの業界団体等の自粛措置であるとか、いろいろなそういう任意の措置を設けられた方がよろしいかというふうに私は思っております。

 以上でございます。

松島委員 今中村参考人が言われたことで確認なんですが、つまり、金融機関が第三者保証を求めるということは、貸したお金が返ってこなかったときにそれを差し押さえるというのが前提だから、むげに、むやみやたらに大きくするというのは、金融機関側にとってもそんなことをしていいことは何もない、常識的に考えればそうだからということになるのでしょうか。

中村参考人 一般的に、保証人が判こを押すわけでございますから、具体的に金融機関からなぜこの金額であるかということの説明を求め、それをまた金融機関が説明するということで判こを押すということが一般的でございますので、そういった点では、ただいま御案内のような御指摘になるかというふうに思っております。

松島委員 次の質問は、これもたしか奈良参考人が、恐らく御経験も踏まえてだと思うんですが、おっしゃっていました。個人の保証のことが今回民法で問題になっているけれども、零細企業の場合、個人会社の場合というか、会社であっても個人とほとんどイコールである、そういったことも規制の対象、この場合除かれているというか、この法律でどういうふうにこれがカバーされていないというふうにとれるのか、そして、その場合どういうふうにしていけばいいのかということ。

 実は、先ほど申しました私の地元のふだんつき合いのある方々というのは、今、商工中金の中村さんがきょう中小企業金融の代表ということで来られていますけれども、商工中金にお金が借りられるなんて、そんな大きな会社はめったにない。基本が、国民生活金融公庫だとか、中小企業金融、そういうような感じで、商工中金にあそこ紹介しようといったら、私の後援者の中では大きな会社ぐらいの、そういうイメージでございますので、それも含めて奈良参考人と中村参考人に、会社であってもこういう問題があるというのを、御自身の経験を踏まえて教えていただければと思います。あと、規制の方法。

奈良参考人 議員御指摘のとおり、本当に、法人といっても個人と全く変わらないというのはかなり世の中に幾らでもあるわけでして、この方々を何とか入れる方策はないだろうかということは私どもの頭にまず浮かぶところではあるんですけれども、ただ、個人と限ってしまったとしますと、現実には入れるのはかなり難しいのかなと思っております。

 以上でございます。

中村参考人 御質問ありがとうございます。

 法人の保証に関しましてですが、そもそも御指摘のような小規模会社というのは、所有と経営が未分離であるということから苦境に立たされるというふうなケースが多いかと思うんですが、翻って考えますと、個人であればまさに人生そのものを担保に提供しているということでございますが、法人であれば、いわゆる倒産隔離が起こりまして、よしんば会社が保証かぶりをしたとしても、それは会社の財産を処分する、その限定的な範囲の中で履行すればよいことでございます。

 ですから、そういった点では、所有と経営がいかに未分離状態の小規模会社であっても、法人という壁によって事実上その代表者は守られているというふうにとらえる見方もできるかと思います。

 以上でございます。

松島委員 重ねての質問になるんですが、ただ、一応法人と個人が分離とは申せ、実際には、社長さん本人が個人保証しない限りお金は借りられない、その社長さん御本人の家も何も全部が入っているというのが前提の場合が多いんじゃないかということを感じております。ということですけれども、どうでしょうか。

中村参考人 御質問ありがとうございます。

 それは、法人が債務者の場合の代表者保証ということであれば、それはそのような形になるかと思います。ただし、法人が保証人になっているということとはまたそれは様相が異なることではないかなというふうに思っております。

松島委員 中村参考人と、さらに山野目参考人にも伺いたいんですけれども、法人が保証人になっていて、そして法人の全財産を投げ出した、そうしたらその会社がつぶれそうとか極めて経営が悪化する、そしてその会社自身の借金も返せなくなったら、それの裏打ちというのは、個人、つまり零細な会社の個人オーナーがやっているというふうにやはり考えられるんですけれども、中村参考人、それから理論的に山野目参考人、いかがでしょう。

中村参考人 それは御指摘のとおりだと思います。

 ただ、恐縮でございますが、やはり、むしろ小規模会社でも法人を設立することによって事業を運営するということがかえって有用性があるわけでございまして、その法人が保証人になるということは経済取引にあってはしかるべくあるというふうに私は考えております。

山野目参考人 議員の御懸念のことについて、まず最初、法律案との関係で二点指摘させていただきますと、確かに零細な企業に関しても保護を及ぼすべきではないかというふうな課題があるんですが、何をもって零細というかということを民事法制上の規律で、例えば資本金幾ら以上とか、そういうことを民法の法文に書き込むことはかなり困難なのではないか。

 それからもう一点は、先ほどから中村参考人が指摘していることで、議員の顔が少し曇っておられて、ちょっと話がかみ合っていないところがおありなように拝見しているんですが、あくまでも法人が保証人になっているときに、保証債務の履行を求められて強制執行を受けるのは法人の財産でございます。零細な企業自身が保証人になった場合に、確かにそこにオーナーとか役員とかという個人がいると思いますけれども、あくまで保証人になっているのは法人でありますから、強制執行を受けるのは法人の財産であるということになります。

 そういうことが起きますと、そのオーナーにとっては気持ちの上で大変厳しい状況かもしれませんけれども、そのオーナー個人が持っている個人の邸宅に執行官が踏み込んできて差し押さえがなされる、個人の財産についてなされるということはないわけでございます。

 あるいはこういうことを御懸念なのかもしれないんですけれども、その場合において、零細な企業のオーナー自身が保証人になっていたらやはり追及を受けるではないかという御懸念が、そうですよね。ところが、それについては、しかし、今般法律で、個人が保証人になっている場合については規律が及ぶわけでございますので、そこのところ……(松島委員「そうか」と呼ぶ)そうかとおっしゃっていただいて、恐らくこの疑問が氷解したのではないかと思うんですけれども、かように考える次第でございます。

松島委員 一応了解しました。

 この法律改正、包括根保証制度が廃止される。さらに、もう一つの法律に絡むかなと思いますけれども、三人の参考人が言われたように、特に倒産、破産したときに、労働債権との関係でございます。

 私、通常国会において、破産法の改正でこの労働債権の問題というものを非常に懸念して、労働債権の立場は強くなったとはいえ、担保つきの金融債権というのは何よりも、オールマイティー、一番強いんだということになっている。

 それで、私が不思議に思いましたのは、お金を担保つきで貸すということは、金融機関がそれを返してくれる前提で貸すんだから、何があっても倒産したらまず取り立てると言うんですけれども、そんなことを言い出したら、会社員が働くということは給料をもらえる前提で働いているんだから、これをどうしてくれるんだということを言っても、どうも余りらちが明かなかったんですけれども。

 今後、こうやっていろいろなものが差し押さえられるような、それは企業がお金を借りやすくなるというのは非常にいいことでございますけれども、もしもの場合に、そこで働いてきた人が、自分の給料がちゃんと、未払いの三カ月分の給料も払ってもらえないおそれが一層強まるということにならないか。これに対してもう一つ何か法制化が必要じゃないかと思うんですけれども、より一層、例えば破産法をまたさらに改正するということが必要じゃないんだろうかという気がしますが、三人の参考人の方、いかがでしょう。

山野目参考人 ただいま議員からは、この債権譲渡、動産譲渡の法律に関する極めて重要なポイントの問題提起をいただいたものだというふうに認識いたします。

 法制審議会の審議におきましても、まさに議員のお言葉で言う働く者、もっと言えば生活者でしょうか、その視点を考えなければいけないということで、いろいろな工夫を考えまして、大変に悩み抜いて審議を進めたところでございます。

 この法律案に盛り込むことができた事項と、やはり限界があってこの場では解決ができなかった事項と両方あるということについて御理解をお願いしたいというふうに考えますが、まず前者から申し上げますと、そのような問題があるところから、例えば、労働者が、どういう動産譲渡登記、債権譲渡登記がなされているのかといったようなことについての情報開示を求めてきたときには、概要だけではなくて、これは広くオープンにして情報を得ていただこうではないかという措置を講じました。

 また他方、この動産譲渡登記などにつきまして、非常に包括的、過剰な担保取得がなされるということも懸念されるところでございますので、動産譲渡登記の効力を十年に限定するという仕方で、そこのところが余り強くならないようにするというようなことも考えた次第でございます。

 しかしながら、今般法律案のスコープの中で対応が可能なのはそこまででございまして、より一層強く、おっしゃるように三カ月を超えて給料などの労働債権を保護する方策というものは、今般法律案とはまた別な席、機会において検討されるべきではないかと考えるものでございます。

 昨年、担保・執行法制の御議論を国会においていただきましたときにも、両議院の附帯決議におきましてそのことにもお触れいただいているところでございますので、むしろその面で、立法府において今後またさらなる御検討を積み重ねていただければありがたいものというふうに考える次第でございます。

奈良参考人 御指摘の問題点は、まさにそのとおりだと思います。

 企業の資金調達の手法が多様化して企業が借りやすくなる、それだけ倒産を防げる、それが労働者にとっても利益であるという論法が一つあることは理解しておりますが、私ども弁護士ですので、やはり最悪の事態を考えますと、せっかく新破産法が一部労働債権を財団債権化したにもかかわらず、倒産時には会社財産に何も残っていないという事態が生ずるのではないかと考えております。

 それに対する方策としては、これはもう皆さんいろいろお考えになっておりますが、かなり難しく、この法律、あるいはどこで決めればいいのかも含めて、今後検討をいただけたらと思っております。

中村参考人 大変重要な御指摘をいただきました。

 私は、あくまで中小企業の資金調達の多様化の観点から先ほどいろいろと賛成する旨を申し上げましたが、労働債権者の保護に事欠くような法制を求めるということではございません。

 一言申し上げますと、この労働債権の保護につきましては、ひとりこの債権譲渡特例法の問題だけではなくて、担保取引全般に通ずる問題であろうかと思います。その意味では、あくまで今般の立法ではなく、むしろ社会政策の観点から別途の立法で補うことが相当であるというふうに考えております。

松島委員 どうもきょうはありがとうございました。この法律によって、経済を理由に自分で死ぬことを考えるような人が一人でもいなくなることを祈りながら、そして、なおまた立法府の立場でより一層の整備が必要かと思いました。

 どうもありがとうございました。

塩崎委員長 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。きょうは大変ありがとうございました。

 保証の話、根保証の相談を受けますと、そもそも根保証契約わからない、そんな契約結んだ、普通の保証かと思っていた、あるいは、契約書そのものが手元にない、だから我々も判断しようがない、こういうケースによくぶつかるわけですね。それから、思っていたよりも莫大な金額になっちゃうとか。

 そういう経験からいって、奈良参考人の話は非常によくわかりました。根保証契約書の交付を要求すべきだ、それから、一定の場合には保証人の方から確定させる権利を認めるべきだ、いろいろな例を挙げられました。さらに、不履行があった場合には、債権者の方から通知をして、もうそろそろ来るぞという、払うなら早く払った方がいいよというチャンスを与えることも、これも重要だなと思いました。

 今回の法制にはないんですけれども、この点に関して山野目参考人と中村参考人はどのような御意見を持っておられるのか、お聞きしたいと思います。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

山野目参考人 議員御指摘のとおり、保証に関して、とりわけ根保証に関してはいろいろ悲惨な問題が社会的にも指摘されているところでございまして、そういうことを考えますと、今おっしゃったような、例えば、契約書を作成してその書面交付義務を考えるべきであるとか、あるいは、今般法律案の提出の中に入っていないような局面においても、元本確定請求を保証人の側からする道を開くべきではないかといったような御懸念があることは、御懸念といいますか問題提起があることは大変よく理解をすることができます。

 ヨーロッパの法律家の間で、こういうふうな言葉、表現がなされることがございます。保証契約というのは危険な契約である、危険な契約の一つであるというふうに言われたりいたします。そういうものについて、今まで我が国法制は、貸金業の規制等に関する法律などの業法的な規律しかなくて、民法が内容的に深みのある規律、対応を行ってこなかったといううらみがございました。

 今般法制におきまして、民法がしなければいけなかったところをきちっとここで入れようというお話と、しかし、民事的な規律になじまないことから、申し上げました貸金業の規制などに係る他法の、別の面での法制にゆだねようという部分と、両方の分担関係の上に今般法律案をお認めいただけますれば、今後のこの種の問題に対する対応がなされていくのではないか、かように考える次第でございます。

 その点で申しますと、民法は、今般改正をお認めいただけますれば、とにかく書面をつくらなければいけないというところまで進みます。その書面を当事者に交付しなければいけないとか、一定の場合に通知をしなければいけないといったようなことは、それが必要であるという場面もあるのではないかと思いますが、民法の普遍的規律の中に入れることが果たしてなじむか。さまざまな保証の事例がございます。そういうことを考えますと、やはり貸金業規制に係る法制等にゆだねるということがよろしいのではないかというふうに思われる次第でございます。

 また、つけ加えますと、そのような書面交付や通知などがなされなかったときに保証契約が無効になるのかとか、半分は請求することができなくなって一部無効になるのかとか、そういうことはちょっと考えにくいものですから、そのような意味でも、民法的な規律になじむかどうかということについて疑問があるところでございます。

 また、いろいろな事由があったときに、今般の法律が設けている三つの確定事由以外に確定請求を認める余地というのも大いに考えていくべきだと思いますが、これもまたいろいろな保証のケースがあるところでございますので、無理に法文に入れようとすると、非常に抽象的な、何か最初とは事情が変わったときとか、そういうふうな条項になるんですが、それは余り入れても意味がないわけでございまして、やはりそこのところは、新しい立法事実が確認されれば別でございますけれども、当面、今般法律を受けての判例上の運用に期待していかなければいけない論点なのではないか、かように考えております。

 以上でございます。

中村参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、運用の観点からお話を申し上げたいと思うんですが、御案内のございました特定債務保証あるいは根保証等の説明の問題でございますが、これは、契約締結時点できっちりと金融機関が行うべく、先ほど申し上げました金融庁の総合監督指針でもその指導がなされておりますので、実際に運用面で、むしろ昨年から改善をされ履行されているというふうに認識をしております。

 ただ、後ほども御案内いたしますけれども、書面の交付等につきましては、同様にその総合監督指針にありまして、金融機関においては、複写方式であれ、その写しの交付であれ、それなりに書面を交付するということが義務づけられておりますが、一方で貸金業規制法においてもその旨のこともございますので、むしろ、こういった法律による立法的な規制ということは、あえて言えば不要であろうというふうに思っております。

 それから、債権者からの通知の問題でございますけれども、実を申し上げますと、第三者保証人が特に指摘されることでございますが、みずから保証人になってその企業の資金調達を具体的に行わせしめたいというふうな、自分から保証人になる場合と、それから、債権者から特に債務者の信用の補完のためにその保証を求められるというふうな場合がございまして、そういうふうに実は保証のあり方も多々個別案件ごとによって異なりますので、例えば、みずからが保証人として進んで捺印をされているような方に関しては、あえて申し上げましたらわざわざ通知をするまでもなく、債権者に問い合わせをするとかいうふうなことも考えられます。

 そういう意味では、むしろ一律的な規制ではなくて、例えばコベナンツといいますが、特約などを設けて、それぞれの案件ごとに、その保証人さんと債権者並びに例えば主債務者でございますけれども、こういった三面契約を結ぶとか、そういった手だてがあってもよろしいかなと。つまり、任意の、運用の問題だろうというふうに考えております。

漆原委員 奈良参考人、今のお二方の御意見についてどんな御感想でしょうか。

奈良参考人 民法の保証契約を利用するのは、金融機関、貸金業法の適用のある業者だけではなくて、これは一般国民が利用できるものですので、そのような業者についてはそれぞれの業法がある、あるいは指導があるということはわかりますけれども、やはり私は、書面交付義務なり、確定請求なり、通知義務なり、もちろん私が意見を申し上げたような形よりももう少し絞った形になるのかもしれませんが、民法に規定を設けていただけたらと思っております。

漆原委員 中村参考人が、保証というのは人生そのものを担保にするんだというふうな、名言だなと私は思いました。

 確かに、日本の場合は、中小企業は、会社が金を借りるのに経営者が保証するわけですね。万が一パンクしちゃうと、本人の持っている土地建物まで全部なくなってしまって、再起不可能になってしまうわけなんですね。そういう意味では、日本の場合はどうも過度に保証人に偏り過ぎているんじゃないのかなという気がするんです。

 私どもは、将来は保証制度を考え直さなきゃいけないな、無意味な保証をとっちゃいけないよというぐらいの感覚で今臨んでいるんですけれども、諸外国なんかでは、企業の経営者が保証した場合は保証を求めない、こんな法制度があるんだというふうな話も聞いたんですが、この辺について、中村参考人、いかがでしょうか。そんな制度、諸外国にはありますか、保証を制限するような制度。

中村参考人 恐縮でございます。寡聞にして聞いたことがございません。恐れ入ります。

漆原委員 皆さん、そのほかいかがですか。御存じなら。

山野目参考人 民法など私法の一般的な規律として、保証契約の内容そのものを、こういう場面でとってはいけないとか、この額の限度を超えて徴求してはいけないとかいうようなことはなかなか規定しにくいことだと思います。

 それで、世界じゅう隅から隅まで調べたかというふうに仰せをいただけば自信がないところがございますけれども、そういう面での規制というのは、少なくとも我が国の法制を立案するに当たって参考にする範囲では見当たらないというふうに申し上げてよろしいのではないかと申し上げたいと思います。

 それで、観点の整理といたしまして、保証の問題を考えるときに、入り口でのどういう方式、手順を踏んで保証契約を結んでもらうかという話と、成立させる保証の中身が幾ら、余り高額の極度額にしてはいけないとか、そういう中身の問題に関する規律等を考えたときに、今回はどちらかというと方式の面での規律というものが目立っておりますし、こちらは民法的な規律を比較的しやすい部分なんだと思うんですね、書面を作成しなければいけないといったようなことなんですが。

 ただ、それを超えて、方式のさらにいろいろな問題とか内容の問題にかかわってきますと、民法ではなかなか規律しにくいところがございます。

 例えば、書面の場合にも、書面を交付しなかったら、では、その保証契約は無効になるのかといったようなことを民法の条文ですとどうしても書かなければいけないものですから、それはちょっとなじみにくいところがあるのではないか。また、極度額についても、余りむやみやたらな大きな極度額の保証はいけない、それはだれでもそのように考えますけれども、では、一億円を超えたらいけないのか、五千万円を超えたらいけないのかということになってきますと、これもなかなか難しいところがあるわけでございます。

 そのようなところから、ぎりぎり、手がたい、民法的な規律を絞って、今回、四百六十五条の二以下の追加提案をさせていただいているんだ、かように認識いたしております。

漆原委員 債権譲渡、あるいは債務者が特定しない将来債権の公示方法をつくったり、あるいは動産の登記制度をつくって資金調達できるという、中小企業の皆さんの資金調達という点では非常に、私は一つの方法だなと思うんですね。

 だけれども、今議論になっているように、片や労働者の立場から見ると、根こそぎ何もないという、破産の申し立てがあったらもう何にも残っていない、こういう問題があるわけですね。ここが、それでもこの法案を認めようか、いや、だから反対だという二つ、賛否が分かれるところなんだけれども、ただ、何とか、労働者の債権、労働債権を保護するにはどうするんだと。

 先ほど来、山野目先生、参考人の方からは、十年間の期間があるよ、あるいは情報開示があるよ、こういう制度をつくったよ、これがとりあえず限界だというふうに説明があったんですが、労働債権を保護するということも大事な法律の役目です。

 そういう意味では、将来の課題になりますけれども、ではどうするかという点をお三方にお聞きして終わりたいと思います。どんな方法があるかということをお聞きしたいと思います。

山野目参考人 この問題につきましても、先ほど申し上げましたように、今回の法制審議会の審議の中で、大変な留意を払って、悩み抜いた上で対応させていただいた論点でございます。

 まず、手順の問題として強調させていただきたいことでございますが、法制審議会の答申の付記事項として、これは、答申に付記がつくということはしょっちゅうあることではないんですけれども、とりたててこのことを付記しておかなければいけないというふうに法制審議会の部会及び総会の審議におきましては考えまして、労働債権保護の方策について今後さらに検討しなければいけないということを書かせていただいた次第であります。

 また、そのような配慮を踏まえたればこそだと思いますけれども、法制審議会の部会審議におきましても、労働者の利益を代表する方が委員としてそこに列席しておられましたが、その方も含めて、委員の全会一致でこの部会提案をお認めいただいているということも、この際、議員の皆様に御認識いただきたいところでございます。

 その上で、今後どうするんだという先ほどの議員のお尋ねでございますけれども、やはりこれについても、手続の問題と、実体といいますか中身の問題の両面で一層労働債権の拡充の方策を考えていかなければならないと考えます。

 例えば、一般先取特権の申し立て、行使に関して、実際に労働者が手続をしようとしたときに、民法には規定があるけれども、なかなか手続が重くてできないといったようなところを軽からしめることが必要でございますし、加えて、権利の中身の問題として、一般先取特権の現在のあり方について改良すべき点があるとすれば、それも考えなければいけないと思います。

 国際労働機関条約の批准など、周辺整備あるいは対処すべき論点をクリアしながら、これらの問題を引き続き検討していかなければいけないということは、昨年、通常国会の際の御院の附帯決議においても指摘されているところでございますので、政府としても鋭意努力すべきであると思いますし、また、立法府におかれても御関心をお持ちいただきたい、かように考える次第でございます。

奈良参考人 二つの方向があるかと思います。

 会社財産のすべてを担保にとることができないような法制というのが一つ、つまり、包括的に全部とってはいけないのだというのが一つ考えられると思います。

 もう一つは、山野目参考人も言われましたように、労働者保護の特別法制あるいはほかの担保権との関係について何か別途の手当てができないかということでございますが、私が考えますに、先ほど申し上げましたように、かなり難しいんだけれども、何か考えられるとすれば、基金の設立なり保険なり、実はそういう方向に行くのではないかなという感想は持っております。確固たる意見ではございませんが。

中村参考人 御質問ありがとうございます。

 今般の法律案でもってすべて無制限の資産の把握が担保権者においてできるという理解は私はしておりません。

 まずは一点目でございますが、在庫等を担保にとったといたしましても、よしんばそれが非常に過度で、しかも倒産を見越した上での悪意のある担保提供、取得であるということであれば、これは、例えば新破産法におきまして容易に行使ができるようになりました否認権であるとか、あるいはまた詐害行為取消権というふうな形で取り戻しはできるというふうに思っております。

 それから、この債権譲渡特例法の改正案等につきましても、これからいろいろと考えられますでしょう登記のあり方によりまして、いろいろな制限を設けることは可能かと思うんですね。ですから、すべからく資産は登記できるべしということではなくて、あえて言えば、財産の種類であるとかあるいは債権の種類というふうな形で、登記できるものを限っていくとか選択制にしていくとか、そういったことなどで行政上の手当ては十分にできるのではないかなというふうに思っております。

 最後でございますが、やはり奈良参考人と同様でございますけれども、別途、社会政策的な視点から新たな御措置をとられるというふうなこともぜひ御検討いただければというふうに思っております。

 ありがとうございました。

漆原委員 以上で終わります。どうも大変ありがとうございました。

田村(憲)委員長代理 次に、加藤公一君。

加藤(公)委員 民主党の加藤公一でございます。

 きょうは、三人の参考人の皆様、お忙しい中、そしてお足元の悪い中、ありがとうございました。また、貴重な御意見を伺いまして、大変参考になりました。ありがとうございます。

 私は、この法案、民法の改正につきましては、包括根保証の問題に規制が加わること等を含め、これまでの失敗を許さない社会から、再起を期すことができるように一歩踏み出せるのではないかということも含め、あるいは昨今の経済的なことを理由とした自殺者の急増などの解決の一助となるということも含め、理解をいたしますし、また賛成をするものでございますが、一方の債権譲渡の問題に関しましては、その効果と、それから一方の問題点ということのバランスに幾分疑問があるものですから、そこをぜひ、現場の感覚も含めて、何点か御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、中村参考人に、それこそ現場の感覚としてお話を承りたいと思います。

 今回の債権譲渡の問題、中小企業の皆さんを中心にニーズが高いというふうに承っておりますけれども、中小企業といいましても、大変いろいろなタイプ、種類があるわけでございまして、規模もさまざまでございます。また、会社設立以来の企業の歴史といいますか、成長期にあるのか、安定期にあるのか、あるいは場合によっては多少厳しい状況にあるのかということも違うでありましょうし、また、業種、ビジネスモデルもさまざまかと思います。

 今回の法案が成立をいたしたと仮定いたしますと、どんな中小企業の皆さんにとって最も有効なのか、一番活用をされ得るとお考えか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

中村参考人 御質問ありがとうございます。

 これはあくまで一般論として考えるところでございますけれども、動産を担保とする融資のあり方につきましては、中小企業の成長過程においてそれぞれ考えられ得る、ただいま御案内のとおりでございます。

 例えば、創業間もない企業、それから成長過程にある企業、さらには再生の過程にある企業というふうに三つのステージが考えられるのではないかなというふうに思っております。

 まず第一の創業間もない企業でございますが、これは、社歴の浅さなどから信用が確立していないということを背景にいたしまして、資金調達に関しては、動産担保の活用のニーズは当然にあろうかというふうに思っております。

 また、次の成長過程にある企業でございますが、これが最も恐らくニーズがあると思うんですが、企業が成長する場合、売掛金や在庫が急速に膨らんで、運転資金の需要が大変大きくなるという反面で、実は不動産などの固定資産は準備ができていない、極めて成長が速い場合はですね。言ってみれば、自分の着る服がないんだというふうなケースもあるわけでございまして、そういう場合にこそ、むしろこのような動産担保の資金調達ということ、実はこれまでそれができなかったがゆえに、資金繰りに窮すると、かえって成長過程にある企業の方が大変になるというふうなケースもございましたので、こういう場面では大変有効であろうというふうに思っております。

 また、再生過程にある企業でございますと、むしろ不動産担保等は別除権あるいは更生担保権等で相当程度占められておりますので、そういう意味では、動産等を担保にして、いわゆるDIPファイナンス、これを得ることができるということも考えられます。

 以上でございます。

加藤(公)委員 続けて中村参考人に伺いたいと思うんですが、今のような場合分けといいますかステージ分けがあって、もう一つ、私の考えるところでは、やはり業態によっても随分事情が違うんだろうというふうに思っております。

 動産といいましても、例えば商品在庫であるとかあるいは機械設備が主なものになろうかと思いますけれども、逆に言いますと、そうしたものを持たない業種でありますと、資金需要があっても、今回の法案で資金供給がふえるということにはならないのではないかという疑問があります。昨今話題のIT系の企業などの場合は、動産といっても、いわゆるサーバーやパソコンのようなものになるというぐらいしかないわけでありまして、実際には、果たして、この法案が成立して、そうした企業への融資がふえるんだろうかという疑問があります。

 その点に一つお答えをいただきたいのと、あわせて、仮にそうしたある一部のタイプの企業に対してこの法案が資金調達の手段をふやすことにならないとするならば、では、一体どういう方法がいいのか。一説には、直接金融をもっとふやすべきではないかとか、投資家に対する税制を考えるべきではないかとか、いろいろな議論があるかと思いますが、どんな方法が考え得るかということを教えていただきたいと思います。

中村参考人 御質問ありがとうございます。

 ただいま御案内ございましたIT系の企業等でございますが、例えばブロードバンド業者等、コンテンツを中心にして、これなどは、本来であれば知的財産権等の担保を活用したものだということで資金調達を得る見込みがあるかと思います。

 ただ、一方で申し上げますと、例えばケーブルテレビ会社であろうとか、そういったところは設備も実は大変高価なものがある。加えまして、将来の契約者、つまりは、これは第三債務者不特定の将来債権になるわけでございますが、一方で、その将来の契約者を事実上売掛金として見込んで担保に提供するというふうなことも大いに考えられ得るわけでございます。そういう意味では、動産などの資産がなくても、かえってよろしいかなというふうに思っております。

 もう一点でございますが、むしろ、例えば店頭在庫しかない、つまりは小売業者でございますが、こういった小売業者は、これまで売掛金の債権譲渡担保をとろうとしたって、売掛金というものがそもそもなくて、であるならば、一体何が担保資産になるかというと、実は在庫しかない、店頭の商品しかないんだと。そういう場合に、実は、これまでは占有改定型の担保しかなかったものですから、それによっては資金調達はできない。したがって、申し上げますと、これまでの債権譲渡特例法の恩恵を受けていない小売業者のためには、むしろこの動産担保の公示制度というのは実は大変有用ではないかなというふうに思っておる次第でございます。

 最後になりましたが、こういった特例法等の活用ができない者に関しては、先ほど申し上げたとおり、知財権であるとか、あるいはその他の諸施策によりまして、いろいろと担保活用が考えられるように施策を講じるべきだと思いますが、一方で、キャッシュフロー重視の融資慣行の確立という形で、みずからの事業そのものの信用を得るべく、透明性等を勘案した経営形態をもって融資のスキームをむしろ提案されていくというふうなことも考えられるのではないかと思います。

 以上でございます。

加藤(公)委員 では、今度は、お三方、皆さんから御意見を承りたいと思います。

 この法案におきまして、動産譲渡担保の効力というのが民法の百七十八条の引き渡しと同様であるということでありますが、そうなりますと、占有改定がなされて先に担保権が設定されていた場合に、後から登記をしても、その占有改定の方が優先されるということになる。

 法理論上はいろいろ議論があったようでありますし、また、結論としては、理屈ではそれしか方法がないんだというような議論も実はせんだっての委員会でもあったのでありますが、そうだといたしますと、仮に登記の制度ができても、融資をする側からすると、不安が解消されずに、実際、この制度が機能しないのではないかという懸念を持っているのでありますが、お三方それぞれの立場から、この問題、いかがお考えか、教えていただきたいと思います。

山野目参考人 議員御指摘のことは、法制審議会の審議におきまして、御案内のとおり、大変熱っぽい議論を呼んだ論点の一つでございます。

 ただいま整理いただきましたように、例えば、債権者が動産を担保にとるときに、自分よりも前にいて占有改定で取得している人に勝つといいますか、その人との関係で自分の立場を安泰なものにするというテーマと、それから自分より後に出てくる人との関係で、きちっと登記をしているからこっちが勝つんだよ、後行者に勝つことのその要請と、両方満たされれば、それは理屈の上で一番万全な制度だろうと思います。

 ただ、その両方を満たす制度を考えたときに、それがどの程度ニーズが、そういう完璧な制度をあくまで追求するということのニーズがどれくらいあるのかということと、そのいわば完璧な仕組みをとったときにもたらされる弊害といいますか副作用といいますか、その両面があって、それぞれ御指摘をさせていただきたいと思います。

 前の方との関係で、安心したいということなんですが、それは理屈の上では確かにそういうことがありますし、その方が債権者はいいよねということは確かに言えるんですけれども、それほど深刻なことであるだろうか。つまり、前の方にとっている債権者も、自分が占有改定、今議員御指摘のとおり、占有改定は対抗要件として必要ですので、そのことは証明しなければいけないわけでありますから。そう考えますと、そのニーズというのはあることはありますけれども、それにこたえないことがそんなに深刻かということを議論いたしました。

 法制審議会の席上では、おられた実務のことをよく御存じの方に、いわば先行者覆滅のテーマというのは何が何でも実現しなければならないことですかというように、私、それを問う発言をしたことを自身覚えておりますが、必ずしもそうとは言えないという発言を引き出しておりまして、そのことを踏まえて、今般法律案の内容でよいのではないかというふうに私自身としては評価しています。

 もう一つ、弊害の問題なんですけれども、やはり登記をすると、登記をしただけで占有改定に勝つんだということになりますと、対抗要件の制度が大変複雑になってまいりまして、議員御承知のように、占有改定と、それからもちろん現実の引き渡しと、場合によっては指図による占有移転がある上に、登記が出てきて、これとこれとの関係ではこっちが勝つけれども、これとこれとの関係ではこっちみたいな、民法の規律をそういうふうに複雑な対抗要件制度にしてしまうということはやはり避けた方がよい。

 繰り返しますが、それをやって得られるメリットが、先ほど確認させていただいたようにそんなにないんだったら、やはり平明な制度として、今般の単純な百七十八条の特例ということがよいのではないか。恐らく、法律案の提案趣旨はそのようなことではないかというふうに理解しております。

 以上でございます。

奈良参考人 先ほど述べましたけれども、実は、私自身は、他の対抗要件よりももう少し強力な効力を登記に持たせた上で、それは具体的には、前にある占有改定で対抗要件を備えた動産譲渡担保に勝てるというところなんですけれども、そういう効力を持たせた登記に限って認めた方が、かえって、動産を担保にとる者は登記制度を利用するようになっていくのではないか。そうすると、動産を担保にとろうとする者は登記簿を見るというような取引の仕組みもできていくのではないか。

 確かに、山野目参考人が言われましたように、かなり複雑な問題は出てきますけれども、その方がいいのではないかなと思いまして、私の考えは先ほど申し上げたとおりでございます。

中村参考人 御質問ありがとうございます。

 理論的な問題や法制審議会の議論の経過につきましては先ほど山野目参考人の方からるる御案内ございましたので、私は、言ってみれば中小企業者の思いとか金融機関の思いということを一言申し上げます。

 これまで、占有改定型の譲渡担保にありましては事実上隠れた状態にございましたので、それは中小企業者にとっては、在庫を担保に入れているんだなということは外側にわからないという意味ではかえって安心だったかもしれませんが、担保権者にとってはやはり不安感があった。自分の担保なんですよということを明確にすることによって、世の中に知らしめることによって、かえって担保としての安定性が出てくるというふうな御議論もございまして、そういう意味では、あえて申し上げますが、オープンに登記をするということ、これがこれからの融資のあり方の第一義的な流れになるんだというふうに我々も受けとめて、またそれを促進していく必要があるだろうというふうに思っております。

 むしろ、占有改定を、つまりサイレント型を望むんだというのは、何か御意図があるんですかというふうに伺えるような、そういう御認識に立って融資を進めていくのが必要だろうというふうに思っております。

加藤(公)委員 ありがとうございます。

 時間も迫っておりますので、最後に一問伺いたいんですが、先ほど来、労働債権の件が何度も登場してきておりますし、私自身も、この法案に関しては、やはり最大の懸念というのはその問題ではないかという気がいたしております。

 確かに、この法案が仮に成立したとすると、そのことによって倒産が回避される企業が出てくる可能性というものがある、こういう議論があります。しかし一方で、それでもなお企業が倒産をしてしまった場合には、労働債権の確保はこれまでよりも格段に難しくなるんではなかろうかという心配をしておりまして、その御意見については、既にさきの委員の質問の中で出ておりましたので、私からは割愛をさせていただきます。

 そういうスタンスだということを申し上げた上で、あえて労働債権の確保に関して、特に中小、とりわけ零細企業の場合には、例えば経営者の方の御家族がその従業員として働いていらっしゃるというケースもあろうかと思いますが、そうした場合の労働債権まで、今ここで議論がされてきた一般の労働債権と同じように保護するべきか否かというところについて、御意見をお三方から承りたいと思います。

山野目参考人 今議員御指摘の、まず前半の方におっしゃった、倒産が少なくなるから労働者は守られるんだという議論だけはやっちゃいけないということは、まさにこの議論のポイントをついておられるわけでありまして、私どももそういう議論をしてはいけないと思うんです。御指摘のとおり、にもかかわらず倒産したら、その労働者にとってはどうなんだという問題があるわけでございますから。

 その上で申し上げますと、労働債権一般に対する保護のあり方としては、やはり今般法制の中での手当てとしては、登記の効力を十年に限定するなどして、余り広く投網をかけるように担保をとるということはできにくいようにする。さらに、これから法務省令の仕組みの中で明らかにされていくことですが、動産の登記制度も、どういうふうに書いたら登記できるのかというところも工夫をすることによって、余り投網にならないようにするというふうな配慮がなされていることで一定の対処ができるであろうというふうに思います。

 保護されるべき労働債権にいろいろなものがあると思います。しかし、民法の一般の先取特権の解釈上は、やはり労務の提供によって取得した債権であれば先取特権による保護があるということになろうと存じます。昨年、通常国会において、法務省の民事局長からも、そのように幅広く労働者の概念を解釈するべきであるというふうな答弁も、見解も出されているところでございます。

 議員御指摘のように、個別のケースについて見て、こんな人まで労働者なのかというようなケースは出てくると思いますし、個別の法理によってそういうものをはじくという余地は理屈の上ではないではないかもしれませんけれども、一般法理としては、やはり余り狭めない方向で解釈していくのがむしろ基本的方向ではないかなというふうに私などは考えてございます。

奈良参考人 まさにその家族が労働者に当たるか否かという解釈問題に尽きることだろうと思っております。

中村参考人 御質問ありがとうございます。

 御家族であるかどうかということではなくて、むしろ、主債務者の経営に責任のある一角を占めて、例えば取締役としてあるいは株主として、それ相応に責任をとられるということであろうかと思います。御家族であっても、そのような立場になくて、まさに労働に従事しておられるということであれば、それは当然に労働債権とみなしてよろしかろうと思います。

加藤(公)委員 大変参考になりました。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 参考人の皆さんにおかれましては、本日は、お忙しいところ御出席を賜りまして、本当にありがとうございます。また、貴重な御意見を賜りまして大変勉強になりましたこと、重ねて厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございます。

 まず、包括根保証の廃止について御質問させていただきたいと思うんです。

 先ほど来、法外な極度額の設定というものを懸念する声が上がっておりまして、第三者保証についてはちょっと一概には言えないという御意見もあったんですが、参考として、では、法人が債務者の場合に、代取が行っている包括根保証は銀行実務の上でどのぐらいの規模を、どのぐらいの具体的な金額を設定されるのかということをちょっとお伺いしたいと思いまして、ぜひ、銀行の実務者の立場で、すてきなお声の中村参考人から教えていただければなと思います。

中村参考人 御質問ありがとうございます。

 法人が債務者である場合のその代表者の保証の金額でございますが、これはあくまで一般的なこととして申し上げれば、法人の資金ニーズに沿ってその極度額が設定される。したがって、その代表者の個人資産の額であるとかそういったものではなくて、あくまで経営責任、モラルハザードを防ぐための金額というふうな、そういう目的も実はございまして、単純に個人資産見合いのものではない。

 したがって、資金需要で、例えば短期運転資金枠が三千万円ですという形でお約束させていただいて手形割引とか手形貸し付けをやるということであれば、その三千万円の枠に関しての保証をいただくというふうに、あくまで、繰り返しますが、主債務者企業の資金ニーズに沿うものであるというふうに理解をしております。

松本(大)委員 本当はもう少しお伺いしたいんですけれども、ちょっと時間の関係もありますので、もし時間が残れば、最後にまた伺わせていただければなというふうに思います。

 次に、動産と債権譲渡の公示制度の整備に関する件について御質問させていただこうと思うんですが、倒産に至る前に、すべての動産や債権を、既存借入先であるというか、既存の借り入れの提供者である金融機関に既に追加担保として差し押さえられてしまって、それで、いざ再建を目指そうにも何も手元に残っていないという状態があるのではないかということは、再三ほかの委員の先生方も御指摘をされてきたとおりであります。

 山野目参考人からは、債権者が十分に留意するべきである、否認権や詐害行為取消権の対象ともなり得るということをおっしゃっていただいてはいたと思うんですけれども、一方で、日弁連さんの、この参考人の資料としてちょうだいした意見書の中には、さらに、ちょっと引用しますと、再建型の倒産処理も十分に機能しなくなる可能性さえあるという御指摘をされております。

 先ほど、中村参考人の方から、まさにDIPファイナンスという御指摘があったんですけれども、商工中金さんは、企業が倒産に至る前の融資ももちろんなさっているでしょうし、一たん企業が倒産という事態に至ったときにDIPファイナンスを提供する、その提供者でもあられるわけです。その際に、今回の法改正によって、要は、例えば、他行に既存の貸し付けの担保として所有の動産や債権を差し押さえられてしまって、再建を手助けしようにもDIPファイナンスの担保にとれないという状態も想定されるわけなんですが、これについての御見解をお聞かせいただければと思います。

中村参考人 御質問ありがとうございます。

 これは二点ほどお答え申し上げたいと思うんですが、第一点は、そのようなケースが十分考えられますから、むしろ今後、民事再生法やあるいは会社更生法におかれては、当該DIPファイナンスについて優先的な順位、配当順位を与えるような、そのような法制度の整備というものも御検討をいただく余地があるのではないかなというふうに思っております。

 これはいわゆるスーパープライオリティーとか言われておりますけれども、諸外国の例でもそのようなケースがございます。つまりは、動産担保制度というようなものが欧米ではよく発達をしておりますので、逆にそういう懸念があります。したがって、再生過程においてのDIPファイナンスの優遇措置というものが考えられてしかるべきだというふうに考えております。

 それから第二点でございますが、実は、民事再生や会社更生というような再生の過程にあるケースでございますけれども、在庫などを担保にとっているとしても、その債権者は、あくまで別除権とかあるいは更生担保権として認められて、しかしながら、一方で、それは収益からの弁済を計画に沿って求めていくわけですね。したがって、その担保物を全部引き揚げてきて自分たちによこせとか、そういう形で処理をするということは、むしろ再生の過程にあっては想定されないというふうに見ていいと思うんです。在庫の価額を評価されて、それを担保権の額として認められて、長期的な弁済を収益から図られる。

 したがって、実は在庫処分ということはおおよそあり得なくて、それはきちんと通常の営業活動で処分、売却をされて、それが運転資金になって一般的な弁済資金やその他の資金繰りに充てられるということには変わりはないのではないかというふうに思っております。

 以上でございます。

松本(大)委員 別除権者が別除権を行使するかどうかは、民事再生を債務者が申し立てた時点から裁判所が決定するまでの間に、いや、これはもう期限の利益を喪失したから実行しちゃえという判断を行うケースもあり得るわけで、DIPファイナンスにその優先的な順位を与えるよう協力するかどうかというのは、これは期待の域を今のところ出ないものだと私は考えます。

 それで、改めてお伺いしたいんですが、先ほど来、こういう懸念に対しては否認権やあるいは詐害行為取消権というもので対応できるのではないかという御意見もあったんですが、では、一体どういう要件を満たせばその否認権や詐害行為取消権というものを使うことができるのか。

 先ほど、悪意が認められればというお言葉があったんですけれども、その悪意とは、では、具体的には、どういう条件があれば悪意であるというふうに認められるのか。これについてはお三方の御意見をちょうだいしたいと思います。

山野目参考人 議員の御指摘、大変ありがたく承りましたが、否認権、詐害行為取消権の論点を強調申し上げたのは中村参考人の方でいらしたと思うのです、私ではなくて。私から先ほど申し上げたことで、今議員の問題提起のことに正面からお答えをさせていただきたいと試みますけれども。

 すなわち、確かに、議員御指摘のとおり、民事再生手続のときには、更生担保権ではなく別除権として譲渡担保権が認められるという解釈になってございますので、御懸念のことは確かに理屈の上では深刻かもしれません。

 しかしながら、倒産法制の整備、それからそれに伴うその運用を見てみますと、担保権のイメージというものが全体的に変わってきているんではないんでしょうか。従前は、担保というのは、とったら、もう倒産のときには債権者が根こそぎとっていくことができるし、またそうするものなんだというイメージで考えてきましたし、その方向からの御懸念だと思うんですが、しかし、倒産各法制、民事再生法もそうですけれども、担保権実行中止命令に代表されるような、民法上、実体法上、担保権があったらそれを徹底的に使えるんだという仕組みでは必ずしもなくなってきているということに御留意いただきたいと思います。

 それから、倒産実務の現実の運用の中でも、先ほど申し上げましたように、例えば、別除権協定というようなものが管財人などのイニシアチブによって結ばれて、場合によっては、在庫の一部で適切と認められる範囲を再生債務者が処分し、その代金の一部を債権者に与えるということでひとまず満足していただいて、さらに企業の再建を続けるといったような慣行といいますか工夫もなされております。

 こちらは運用でございますので、常に必ずそうするかとおっしゃられると、それはなかなかそうではない部分もあるかもしれませんけれども、しかし、期待していく余地はあるのではないか、かように受けとめております。

奈良参考人 先ほどの悪意の具体化というのは、実はこれは個々の事例によりますので、非常にお答えにくいところ、法律の規定の要件のことでございますので。

 DIPファイナンスのことについてお答えいたします。というよりも、実務を見ての感想ということになりますけれども。

 担保権が変わってきているというのは、今山野目参考人の言われたとおり、そういう方向にあることは理解できますけれども、ただ、余りに強力な力を持っていて、それを背景に当該倒産企業あるいは管財人と交渉するということになりますので、もちろん交渉の力次第とか担保物件の中身次第によりますけれども、そんなに管財人なり会社の再建に回ってくる金額というのも期待できない可能性はあるのではないかと思います。それは、いざというときには、では担保権実行しますよと言えるだけの担保権者だからです。

 以上でございます。

中村参考人 御指摘ありがとうございます。

 ただいまの否認権とか詐害行為取消権、確かに私が申し上げましたところでございますが、このことにつきましては、本来は、民法やあるいは破産法等の法規に定めがございますから、そのことを御紹介すればよろしいのかもしれませんが、より実態的なことを申し上げますと、結局は、窮境にある債務者、大変困っている債務者に対する貸金などを保全するために、他の債権者を害することを知って担保提供を求めるということだと思うんですね。

 そういうことにかんがみますと、結局、状況からいいますと、早晩倒産するなというふうに見きわめた債権者が駆け込みで担保をとる、これは駆け込み担保とよく言われるんですが、そういうケースがやはり否認をされてしかるべきである。これは、決して債務超過状態とか、そういった会社に対する有用な資金の提供を伴わないで、みずからの貸金の、従来からある貸金の保全のみを一辺倒で考えるような場合、これは特に否認をされてしかるべきだろうなというふうに思っております。

 それから、もう一点でございますが、先ほど奈良参考人からも御指摘がありましたDIPファイナンスのことなんですが、例えばアメリカではUCCファイリングシステム、あるいはイギリスではフローティング・チャージ・システムというふうに、このような動産担保を活用したような担保制度というのがございまして、それであるがゆえに、議員御指摘のようにDIPファイナンスのなかなか保全がとれないということから、むしろ倒産法制条令、プライミングリーエンとかあるいはスーパープライオリティーというふうな概念を持ってきてDIPファイナンスの処遇をしているということでございますので、その方向性をもって、よしんばでございますけれども、倒産法というものも御検討いただけないかなということは、実務家として一点申し添えさせていただきます。

 ありがとうございました。

松本(大)委員 ありがとうございます。

 山野目参考人のおっしゃるとおり、私もメモをしておりました、一般的懸念として理解できる、しかし、別除権者が常にがっさり持っていってしまうわけじゃないだろう、法律の字面とは違う実地運用を期待するというふうに確かにおっしゃっていました。申しわけございませんでした。

 次の御質問をさせていただきたいと思うんですけれども、会社整理の際に労働債権が保護されなくなるのではというようなお話が、先ほど来、ほかの委員の先生方からもあったんですけれども、別途、保険であるとか基金であるとか、社会政策としての立法措置が必要なんじゃないかというお話があったんですが、私の聞きかじりでございますけれども、未払い賃金の立てかえ払い制度というものがありまして、まさにこれはそういう意味では別途の立法措置ではないかというふうに私は思っております。

 ですから、労働債権の保護と労働者が保護されるかどうかというのは微妙に違うんじゃないかなというふうに思っておりまして、実際の破産実務において、労働者がその未払い賃金をどういう形で受け取っているのか、どういう割合で受け取っているのかというところをちょっと御説明いただければなというふうに思うんです。

 お答えいただける方で結構です。

奈良参考人 倒産法制に特に詳しくないものですので、概略的なことを申し上げます。

 会社を整理する場合というのもいろいろな形態がありまして、基本的に会社が存続するような方向に行く場合には、当然、労働者の保護というか、労働債権は支払われるという形で済まされると思います。

 任意整理、これが実はかなり問題の部分でして、任意整理の場合でも、債権者の頭の中には労働債権は優先すべきだという頭がありますので、割合、労働債権が支払われる場合もありますけれども、ただ、経営者の考え方次第、債権者の力関係次第ということで、労働債権の一部しか支払われなかったり、全く支払われなかったりということはあり得ます。だからこそ、法的な整理の手続というのが必要になるんだろうと思います。

 問題は破産なんですけれども、現行法上は、一般の先取特権ということで、優先権を有している。新法によりますと、先ほどから申し上げているように、一部、財団債権に格上げされている。ただ、幾ら労働債権をこういう形で保護されましても、会社財産がそのときに何も残っていなければ全く機能しないということであります。

 では、実際に会社の破産の手続においてどうなるのかということで、統計年報をちょっと調べて、必ずしもその数字がそのまま当てはまるわけではないと思いますけれども、株式会社の破産申し立ての事件で、一年間の、全地方裁判所で、配当手続に入るものが三四%ぐらいです。それで、いわゆる破産廃止といって、もういわば財産がないからそこで手続をやめますよという破産廃止の手続で破産手続が終わるものが六二%。これは概略を申し上げましたけれども、平成十五年の司法統計年報からの数字でございます。

松本(大)委員 破産配当から受けられるか、それとも労働者健康福祉機構から受けられるか、労働者の視点から見た場合に、では実際にどのぐらいの違いがあるのかというお話を実はこの後もお伺いしたいなと思ったんですが、時間が参りました。本当はもっともっとお伺いしたかったんですが、どうもありがとうございました。

塩崎委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の方々には、本委員会にて審議をしております二つの法律案につきまして、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して御礼を申し上げたいと思います。(拍手)

 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、警察庁刑事局長岡田薫君、金融庁総務企画局長増井喜一郎君、金融庁総務企画局審議官厚木進君、金融庁総務企画局審議官鈴木勝康君、法務省民事局長房村精一君、厚生労働省大臣官房審議官大谷泰夫君、中小企業庁事業環境部長鈴木正徳君、日本政策投資銀行副総裁山口公生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 大臣、まず、のっけからで恐縮なんですけれども、おれおれ詐欺というのを御存じですか。

南野国務大臣 はい、知っております。

山内委員 けさのニュースでも、息子さんがお医者さんで、そのお母さんに、投薬ミスをしたということで五百万円、やはりお母さんというのは医者になった息子を本当に大切に思うんだなと思うんですけれども、すぐ五百万円振り込むんですね。ですから、おれおれ詐欺というのは本当になくならないなと思うんですよね。

 一月から十一月までの間だけでも、何か百三、四十億円の被害額だそうなんです。やはりこれは男が大体事件を起こすからおれおれというんだと思うんですけれども、女性は起こさないんですかね。女性だとわたしわたし詐欺ということになって、なかなか言いにくいなということがあるかもしれないんですけれども。この百三十億、四十億のお金が、私は、やみ金規制法でやみ金がやりにくくなった分、暴力団がおれおれ詐欺に、この分野に進出しているんじゃないかと思うんですよ。

 だから、そういう意味でもやはり懲らしめなくちゃいけないなと思うんですが、何で事件がなくならないんだ、取り締まり当局が、十分な捜査とかあるいは厳罰の求刑とか、そういうことをしていないんじゃないかというちまたの意見もあるんですが、その点、大臣、どうお考えですか。

南野国務大臣 検察においては適正に処理されているというふうに思いますが、おれおれ詐欺というのは本当になくなってほしいな、そのように思っております。

山内委員 警察庁にもお聞きしますけれども、おれおれ詐欺というのは電話が主なものですから、遠隔地から詐欺行為を行うということで、県とかが離れている、つまり、管轄が違うところから犯罪行為が行われている。そういうことで、縦割りの管轄の問題があってなかなか積極的に取り組まないんじゃないかという指摘もありますし、それから、特に、配置につく要員が少ない、そういう問題もあって、おれおれ詐欺が毎年続けて百億だ、五十億だというような被害金額になっているという指摘もあるんですが、今までの取り組みはどういう状況なんでしょうか。

岡田政府参考人 御指摘のように、おれおれ詐欺と言われるもの、あるいはそれに類似した形態のものというのは、電話をかけてくる者、口座から金をおろす者、あるいは被害者の場所がかなり離れた都道府県に及ぶということがございます。そういう意味で広域的な犯罪でありますし、従来、詐欺というのは面接型のものだったんですけれども、詐欺罪が変質したという要素があると思います。

 そうしたことを踏まえた上で、警察庁では、おれおれ詐欺の発生が目立ってまいりました昨年の十月、詐欺事件の捜査を担当する捜査二課と被害防止対策を担当する生活安全企画課の両課長連名による通達を出して、各都道府県警察に対して、その捜査及び被害防止の推進を指示しております。

 しかし、残念ながらその後も被害がやまず、加えて架空請求、融資保証金詐欺等についてもその被害が目立ってまいりましたことから、この種犯罪を重点対策知能犯罪と位置づけまして、ことしの五月に局長連名で各都道府県に通達を出して、それぞれの都道府県警本部において対策班あるいは対策本部を設置すべきこと、それから抑止対策に必要な実態の迅速かつ的確な把握、分析、そしてまた各部門の総合力を発揮した捜査の推進、あるいは被害防止対策の推進等について指示をしております。

 これに基づいて、それぞれ各都道府県ではその取り組みを強化しておりますし、また、いわゆるおれおれ詐欺、架空請求詐欺の実行行為者のみならず、その事件に利用される不正口座の開設ですとか売買行為も犯罪になりますので、そうしたものについての取り締まりについても努力をしているところであります。

山内委員 多分、対策班と対策本部というのは一緒だと説明づけられるかもしれませんけれども、熱心に取り組んでいる弁護士や司法書士の皆さんや、あるいは被害に遭った方々は、対策班を各都道府県に設置していますと言われると、やはりもっと何か対策本部としてしっかりと取り組んでほしいという希望がありますので、その点も含めて検討していただきたいんですけれどもね。

 一番大きな問題は、口座が、だれが最初開設したものを、悪いやつらが口座を譲り受けて、すぐお金を引き出して口座をなくして、被害者が取り戻そうと思っても取り戻せないというのが一番原因だとは思うんですが、もう一つ、プリペイド式の携帯電話が必須アイテムですよね。

 これらの連中にとって、そういう犯罪の武器を持たせること自体を禁止することも取り締まり当局としては必要な措置ではないかと思うんですが、どうでしょうか。

岡田政府参考人 御指摘のとおりだろうと思います。

 いわゆるこの種犯罪においては、口座と携帯電話、それから場合によっては名簿といったものが犯罪の三点セットになっております。そうしたものが犯人たちの手に入らないようにさまざまな規制をしていくということは、大変大事なことであろうかと思います。

山内委員 プリペイド式携帯電話を持っている人がすべて悪い人だというふうに見られるということは、私としてもそれはそういう思いではないんですが、やはりこういう悪い連中らが持つということについては、しっかりと取り締まりの方策を考えていただきたいと思っています。

 それからもう一つ。大臣、架空請求ということは御存じでしょうか。

南野国務大臣 はい、存じ上げております。

山内委員 実は、私の後援会のある方のところに、最近はがきで、法務大臣認可法人赤坂総合法律事務所という名前で、洋服代金をまだ未払いですから払ってくださいという請求が来たんですね。その方は私のところに相談に来られまして、いや、こんなのはほっておいたらいいんじゃないですかと言ったんですけれどもね。

 まず、昔、信販で買ったのか、あるいは現金でそのお店からじかに買ったのかはわかりませんが、どうもそういう名簿を手に入れているようなんですね。

 もう一つは、もちろん、今言ったような赤坂総合法律事務所というのはありそうでしょう。ですけれども、ないんですね。ですから、そういう名前で架空請求が来ていて、私の知人は電話とかしたり払ったりはしなかったんですけれども、そんなに高額でなければ、何かかかわりたくない、煩わしさを味わいたくないということで、払っちゃう人が結構いるんですよね。

 それも許せないことなんですけれども、これについては警察庁の方はどういう取り組みをしていますか。

岡田政府参考人 おれおれ詐欺が大変注目されているわけでございますが、私ども、重点知能犯罪として考えておりますのは、そのほか、架空請求でありますとか担保融資詐欺、そういったものも被害がかなり高額になってきておりますので、同じように重点対象として取り締まりに当たっているところであります。

山内委員 しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 先ほど言いましたおれおれ詐欺というのは、人の、子供や孫を思っているその親心や、おじいちゃん、おばあちゃん心をうまく利用して、法律の無知につけ込んでそういう犯罪を犯していく。だから、私は一番嫌な犯罪の形態だと思っているんです。

 もう一つ、最近というか、取り組んでいる人たちにとっては、もう数年前から自分たちは叫び続けていたんだと言うんですけれども、さっき話も出ました、年金を担保にお金を貸し付けるという業者がいるんですよ。

 これは、公務員を退職した人や軍人恩給などをもらっている人たちは国民生活金融公庫で年金担保でお金が借りられますし、それから、それ以外の年金制度を利用されている方々は、また厚生労働省が別につくっている外郭団体というんですか、そういうところで担保でお金を貸すんですが、許せないのは、例えば、チンピラやくざが貸金業の登録を取って、それで、年金が振り込まれる通帳や引き出しの印鑑や証書、そういうものを預かってお金を貸し付ける、これを違法年金担保貸し付けというんですか、これが結構はやっておりまして、これも、ある人が私の地元の事務所に相談に来ました。うちの事務所というか地元は、結構だまされやすい人が多いのかなと思うんですけれども、それだけ人がいい人が多いと思ってください。

 その相談に来られた人に、私は、では、振り込みをされる口座を閉めちゃって、別な銀行に口座をつくってそこに年金が振り込まれるように、年金の振り込み場所とよく話をして振り込み場所を変えれば、そこから引き出されることはないですよということは言うんですが、それでその人はその面では助かるかもしれませんけれども、年金証書なんかも戻ってきませんし、いろいろな問題が後を引きずるわけですね。そいつらも、それで辛抱してくれればいいけれども、またどんどんいろいろな手を使って攻めてくるかもしれませんので、心配もするんです。

 そういう事態をなくすために、年金を担保にお金を貸すというところは限られた国民生活金融公庫等だけにして、あとはもう違法ですよと法律でうたい上げること、それから、そういう悪い連中が、自動引き落としとか、あるいは通帳でどんどん引き去りをするということを抑える、許さないということ、それから、そもそも通帳や印鑑やカードや証書を預かること、このこと自体も禁止をするという法律をしっかりと、まだできていませんので、早急につくり上げることが必要だと思うんですけれども、どうでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、年金などの公的給付について、生活に困窮した受給者が受給権を譲渡あるいは担保等に供してしまいますと、生計の維持に支障を来すおそれが大きいということで、そもそもが譲渡や担保提供等の行為が禁止をされているということは先生御承知のとおりでございます。

 私どもは、例えば、貸金業者が、そういった公的給付を受けている者の困窮に乗じて、受給者である債務者から年金などの振り込み口座の預貯金通帳あるいはキャッシュカード等を提出させて預かって、その預金口座に振り込まれた公的給付を貸金債権の弁済に充てるなどの行為というのは、今申し上げました法令の趣旨を没却するというふうにも思いますし、貸金業者の業務の遂行上、不適切なものというふうに考えております。

 私ども、そういった観点から、貸金業法自体にも、いろいろな取り立て等の業務を行うのに当たり、「偽りその他不正又は著しく不当な手段を用いてはならない。」というような規定もございますし、それに伴って金融庁で事務ガイドラインなどを設けておりますが、いずれにいたしましても、今先生の御指摘のような、法制化をする動きというのもあるというふうに私ども承知をしております。

 詳細について、今、与野党間で協議が行われるというふうに承知しておりますけれども、したがいまして、詳細についてコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、そういった弁済に充てる目的で通帳、キャッシュカードあるいは暗証番号等を提出させる行為等を禁止する等々の法制整備というのは、貸金業者の適切な業務の運営に資するものというふうに考えておりまして、検討状況を注意深く見守らせていただいているところでございます。

山内委員 もちろん、刑事罰も含めてしっかりとした法制度をつくり上げて、資金の面からそういう暴力団組織などを締め上げていくという政策が必要ではないかなと思っています。

 ホームレスになっている人たちからいろいろな聞き取りをやっている人から聞いたら、やはり借金を背負ってこういう生活を送っているという方が結構おられるそうなんですね。もちろん、今景気がすごく悪いですから、経済苦を理由に自殺をされる人も一万人近くおられるという統計結果もありますし、大変ひどい状況の上に、最後の生活の糧である年金まで搾り取られて、何も生きていくための糧がない状態に陥らされるわけですから、やはりこれは警察庁としても看過できない問題だと思うんですが、どうでしょうか。

伊藤政府参考人 いわゆる貸金業に関しましては、昨年七月に貸金業法及び出資法の一部改正がなされまして、警察では、この改正にあわせまして、全国の都道府県警察にいわゆるやみ金融事犯に対する集中取り締まり本部を設置しまして、今、強力に取り締まりを推進しているところでございます。

 昨年、平成十五年下半期のやみ金融事犯の検挙は三百二十七事件、七百七十七人と、統計を開始しました平成二年以降、下半期としては最多の件数となっておりますし、また、本年上半期の検挙も二百五十四事件、五百十六人と、上半期としては同様に最多となっているところでございます。

 そうした意味で、今後とも、こうしたやみ金融事犯の取り締まりにつきましては、全力を挙げて取り締まってまいりたいと考えているところでございます。

山内委員 厚労省にも来ていただいているんですが、こういう事例があるんですね。生活保護手当、身体障害者手当、それから被爆者健康管理手当などを担保にとる貸金業者もいるんですよ。多分、外郭団体というんですか、厚労省の独立行政法人である福祉医療機構、あるいはその代理店業務をやっている銀行には、そういう人たちは駐車場の外で待っていて、年金受給者だけを銀行とか福祉機構とかに入れてお金を借りさせたりすると思うんですけれども、こういう実態があるということはよく理解していただきたいし、そういう皆さんが、年金は取り上げられて、高利金融にまた二重に借りに行かざるを得なくなるという実態があるということを理解していただいた上で、この問題についてどのように対応していかれるのか、お聞きしたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 特に、年金の問題、こういう年金担保の融資等が大きな問題になっておるわけでありますけれども、先ほど先生御説明がありましたとおり、本来、公的年金というものは、受給権を譲渡したり、あるいは担保に入れたりすることができない。しかしながら、高利の資金を借りて生活困窮に陥るという事例が発生したために、昭和四十八年、法律改正の際に、不意の資金需要を生じた年金受給者に対しまして例外的にこういう公的機関で安全な融資を行うという道が開かれたというのが現在の状況ではございます。

 しかしながら、今御指摘のように、また、その制度の中で、例えば窓口にそういった業者と一緒に同席して借りていかれるとか、そういった事例が発生したということもありまして、現在、独立行政法人の福祉医療機構におきましても、窓口におけるそういった本人確認、あるいは同席している方には席を外してもらうという指導をするとか、そういうことを今徹底しておるところでありますし、あわせて、相談に見えた方々に対しましても、そういった証書を担保にすることはいけないということであるとか、それから、そういった貸金に手を出すことの危険性を事細かに説明するということを各窓口機関にもお願いしておるところでございます。

山内委員 警察庁と厚生労働省、ありがとうございました。

 大臣、包括根保証の問題を若干お聞きしたいんですけれども、そもそも大臣は人の保証人になったことはありますか。

南野国務大臣 今、ちょっと思い当たりません。

山内委員 保証人になった経験がないと、なかなかこの保証の問題についての審議というのはちょっと理解できない点もあるんじゃないかと思うんです。やはり保証人になるとすごく、主たる債務者、借り主が本当にきちんと返してくれるんだろうかなと思って、どきどきはらはらもすると思いますし、そういう経験のある人ならいいかなと思って質問させてもらったんですけれども、済みませんでした。

 金融庁に伺いますが、今、日銀の市場貸出金利というのは多分一%とか二%とかという感じだと思いますし、それから、私たちがお金を預けても〇・〇二ぐらいの利息しかつきませんね。そういうような経済情勢の中で、貸金業者は二九・二%ですか、こういう、私にとってはすごく高利で貸し出しをしているなと思うんですけれども、経済の実態と合わないような金利水準だと思うんですが、金利についての何か指導とか検討とか、そういうものはされているものなんですか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生が今御指摘の金利の関係でございますが、例えば、貸金業者が元本百万円以上の金額を年利一五%超で貸し付けた場合に、利息制限法上、その超過分について無効とされているというのは御承知のとおりでございます。それから、いわゆる出資法という法律がございますが、これも、業として金銭の貸し付けを行う場合に刑事罰の適用を受けることになります上限金利、今、先に先生が御指摘になりました二九・二%とする、そういった規定がなされているわけでございます。

 特に、出資法の、今申し上げました二九・二%でございますが、この上限金利につきましては、与野党におけるさまざまな御議論がございまして、昨年七月に成立いたしましたいわゆるやみ金融対策法、ここにおいて現行の上限金利二九・二%を据え置くとされたというふうに私ども承知をいたしております。

 ただし、そこで、やみ金融対策法の附則におきまして、この上限金利につきましては、施行後三年をめどとしまして、資金需給の状況その他の経済金融情勢、あるいは資金需要者の資力または信用に応じた貸し付けの利率の設定状況その他貸金業者の業務の実態等を勘案して検討を加え、必要な見直しを行うというふうにされたところでございまして、金融庁といたしましては、そういった見直しのことも踏まえ、まずはこの法律の適切な施行に努めながら、貸金業者の業務の状況等を注視してまいりたいというふうに思っております。

山内委員 保証債務の見直しについては閣議決定もされているんです。この閣議決定をされた趣旨というのは、多分、私が思うところでは、これから、銀行とか貸金業者とかから直接にお金を借りて運転資金にするんじゃなくて、できるだけ自分の企業の魅力を市場に開示して、市場から株を買っていただいたり社債を持ってもらったりして、それによって自分の会社を経営していこう、そういう世の中にしたいというのが、私は閣議決定をされた政府の思いだと思うんです。

 保証人をとるというのは、私はそれにやはり反しているんじゃないかと思うんですね。ですから、保証人になっていただくためには、主たる債務者が、保証人になってくれと頼むわけですよね。保証人になってくれと頼む人に、自分はひょっとしたら返せなくなるかもしれないけれども保証人になってくれと頼む人は絶対にいないと思うんですよ。迷惑をかけないからとか、名前だけだからとかと言って頼む人ばかりだと思うんですよね。だから、そういう意味からしても、主たる債務者を保護する以上に、やはり保証人さんの方をより保護していこうという姿勢があっていいと思うんです。

 そこでなんですけれども、包括根保証の議論のときに、個人主義あるいは契約原理を徹底しようということだと、その都度の借り入れのときにきちんと保証人をとっていこうというのが、私は今の現代のあり方だと思うんですが、幾ら限度額を決めていて、あるいは期間も決めていても、包括根保証自体をやめていこうというような考慮はなかったんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のような、いわゆる根保証、例えば一定期間あるいは限度額が定まるにいたしましても、保証契約締結時点では特定していない、その後発生する不特定の債務を保証の対象とするという、そのものを廃止するかどうかという点でございますが、これは、企業に対する融資の仕方、さまざまなものがございます。相当長期間を予定した融資もございますが、運転資金等、比較的短期間に何回も繰り返し融資が行われ、返済が行われる、そういった形の融資もございます。

 法律関係を明確にするという観点からは、委員から御指摘のように、その都度保証契約を締結するということが、ある意味では一番明確になる方法だろうとは思いますが、しかしながら、企業の活動としては、やはり融資に非常に迅速性が要求されるという面もございますので、そういう運転資金のように繰り返し融資がなされる場合に、その都度保証契約を締結しなければならないということになりますと、融資をする者、融資を受ける者、あるいは保証する者、その人たちにとっての事務的な負担も相当大きくなります。そういうことから、やはり不特定の債務を対象とする根保証というものについての必要性は、これは認めざるを得ないだろう。

 そもそも、契約自由の原則のもとで自然に発生してきたのがこの根保証という契約形態でありますので、やはり社会的にはそれなりの需要がある。ただ、包括根保証のような、極度額も期間も定めのないものの場合には、余りにも過酷な責任が保証人に負わされることがある、こういう御指摘を受けて、その点についての制限をするということをしたのが今回の改正法でございます。

山内委員 聞いていますと、イメージとしては、できるだけ短期間のうちに、中小企業金融を円滑にするために、その都度保証人の意思を聞くということも、貸し出しが渋滞というんですか、したらいけないという考慮もあって、いわゆる限度額のある、期間の定めのある根保証は認めていこうという趣旨だというふうにお聞きしたんですけれども、保証人さんが、主たる債務者が倒産とか自殺とか夜逃げとかいろいろな形で保証かぶりになって、たまに相談に乗ったりすると、何でこんなに主たる債務者に貸し込んだんだ、お金を貸したんだ、もっと少なかったら保証人さんは自分でも払えたのにと。自分も一緒になって破産したり夜逃げしたりしなくちゃいけないんじゃないかという声をよく聞くんですね。

 つまり、貸し出しについての与信の審査というか、そういう能力が、今、金融機関にちょっと欠けているんじゃないのかな。金融機関としては、お金を貸してもらわないと年末の手形がクリアできませんとか、家族みんな連れて銀行で土下座されてお願いされたら、なかなかつれなくできないというのもよくわかります。だけれども、過剰与信ということがたくさんの保証人にも被害を及ぼすんじゃないかと思うんですよ。

 先ほど、限度額があるからいいんじゃないかという指摘もあったんですが、百万円単位の貸し出しをしている主たる債務者に、根保証人に例えば一兆円の限度額の定めをさせた場合でも有効なんですよね。そうすると、限度額を定めるという意味の限度額というのがそれこそ青天井になっていくんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。

房村政府参考人 極度額について、例えば一定の範囲に限定する、余りにも高い極度額の定めを認めないようにというような法律的な規制ができないかということも、検討の対象にはなったわけでございます。

 ただ、実際に適正な極度額を考えるに当たりましては、もちろん、保証人の財産状況、それから融資を必要とする状況、経済状況その他いろいろな状況を考えて決めていかなければならないだろう。そういたしますと、それを法律で規制していくというのは非常に困難だ、要件の定め方が難しいわけですし、余り不明確な要件になりますと、かえって無効になることを恐れて金融機関が融資にちゅうちょしてしまうということも心配される。そのようなことから、これは当事者の合理的な判断にゆだねようということになったものでございます。

 また、そういうことで、法律上特に極度額の定め方について制限はございませんが、それはやはりおのずから、融資をする、あるいは保証人の保証契約をしていただくという当事者間には信義則というものがございますので、先ほどの例に挙がりましたような極端に高額の極度額の定めをする、そういうような場合には、従来の判例の考え方に従いまして、保証人の責任を合理的な範囲内に制限するという個別的救済ももちろんあり得ますし、また、そのような高額の極度額を定めるに当たって優越的な地位を濫用しているというようなことが認められれば、その契約自体が無効になるということもあり得るだろうと思っております。

山内委員 商法の株主代表訴訟の規定の改正にも私は立ち合ったんですが、企業の取締役が経営ミスをして会社債権者に損害を与えた、その場合に責任を制限する立法をしましたね。つまり、取締役の賠償責任の範囲を、一年間もらっている取締役報酬の何年分にしようとか、そういうような形にしたんです。

 今おっしゃったように、裁判で最後には信義則で決するという形じゃなくて、やはり保証人に対しても何らかの基準というものを法律で規定することはできなかったのか。あるいは、法外な、主たる債務者の債務の全額を請求されて、思ってもみない高額だった保証人に、減殺請求、そういう主張をする権利を法定できなかったのかという意見もあるんですが、どうでしょうか。

房村政府参考人 今回、極度額の定めのない根保証契約を無効とするといたしましたのは、まさに、そういう保証人になる者にとって思ってもみないような額になってしまう、そういうことを防ぐために、あらかじめ保証契約のときに自分が負う責任の限度額を当事者の合意で定めていただく、こういうことを考えたわけでございます。したがいまして、その極度額の定め方が合理的にされている限りは、そのことによって思ってもみなかったような保証債務を負担するということは防げるだろうと思います。

 御指摘のような、極度額が極端に高くなってしまっている、そういう場合には、先ほど申し上げた個別的な救済、あるいは、契約に至る経緯を踏まえて、契約そのものの効力を問題とする、そういう救済の仕方はあり得るだろうと思っております。

山内委員 金融庁は、今の論点についてはどういうふうに銀行等を指導していくんですか。

鈴木(勝)政府参考人 ただいまの御指摘の点について申し述べさせていただきますけれども、先ほども御議論ありましたように、本法案は、やはり企業の資金調達手法の見直しといいますか多様化の観点から、包括根保証の禁止を初めとしまして、保証契約の内容を適正化するということでございます。

 当庁としまして、極度額につきましては、これ自体は根保証契約自体を禁止するものではない。極度額についても、今御説明ありましたように、個々の取引の状況によって、金融機関と保証人の間で、やはり合理的な当事者間の合意によって定められるということでございます。

 したがいまして、我々としましては、とにかく、この法案につきましては、もしこれが成立した場合には、金融機関に対して法の趣旨の周知徹底を図っていくと同時に、それから、今、取引関係の見直しについて、例えば、そういったときにも金融機関から顧客に対して適切かつ十分な説明が行われているということが極めて重要であると認識しております。

 したがいまして、そういったことから、包括根保証の禁止を口実とした不適切な説明ですとか、そういったものが行われないように監督してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

山内委員 その趣旨をぜひ徹底していただきたいと思うんです。

 もう一つ、要式行為と改正されたということに絡んで指摘させていただきますと、私の立場からいうと、主たる債務者より保証人の保護を徹底すべきじゃないかと言わせていただいているんですが、最初に根保証契約を締結して根保証契約書を金融機関に差し出す、その金融機関に差し出した根保証契約書の写しは必ず根保証人に控えを上げてくださいとか、それ以上に、主たる債務者の金消契約、その契約書面も渡しなさいとか、あるいは民事局長がおっしゃったような、短期間の煩雑さを防ぐために根保証ということもいいんじゃないかというその立法根拠からすると、保証人に不意打ちを与えないために、短期間であっても、借り入れの都度、金融機関と主たる債務者の締結した金消契約は、その都度保証人に発送しなさい、そういうようなことはこの立法化に当たっては検討されなかったんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のような、例えば保証人に対して主たる債務がふえたときに通知をする、そういうことについては、立法過程でももちろん検討の対象となりました。現に、貸金業の規制等に関する法律では、貸金業者にそういった書面の交付義務等を課しているわけでございます。

 確かに、契約関係を明確にする、あるいは保証人に不意打ちを与えないということを考えますと、書面を交付したり、あるいは主たる債務の額について変動があったときに通知をしたりということは、望ましいことであることは間違いないと思っております。

 ただ、民法の規定というのは、広く一般の契約にすべて適用される。したがいまして、貸金等を対象とする根保証契約すべてに適用されますので、必ずしも貸金業者あるいは金融機関と借り受けをする者との間の債務についての根保証という場合に限定されていないものですから、そういう民法で広く書面の交付義務とか通知義務を課すということはなかなか難しい問題が起きるのではないか。具体的な事例の場合に、かえって不都合な結果を生ずるおそれもある。

 また、そういった義務を課した場合の効果の問題もございます。民法でそういった義務を課しますと、民法上の効果としては無効とする、あるいは責任の範囲を制限するというような相当強力なものになりますが、それはちょっと効果としていささか強力に過ぎるのではないか、こういう御指摘もありました。

 そのようなことから、今回、民法ではそういった交付義務とか通知義務というものは規定しないという結論になったわけでございます。

山内委員 一般の貸し借りにもそういう契約書や保証書、控えを渡したり、あるいは貸し出しの都度に通知をしなさいというと、一般の貸し借りの場合には酷じゃないかというような指摘もあったんですが、民法で要式行為という一つの全く今までと違った新しい制度を盛り込んだわけですよね。そうすると、民法、つまり国としては、あらゆる場面でこういう法の趣旨を徹底してくださいというのも一つの政策のあり方だと思うんですよ。

 ですから、煩わしいかもしれないけれども、一般の人たちも、そういう細やかな心遣いを保証人にしてあげてください。それによって、一般の人たち同士の貸し借りの方が情義に反して後で人間関係が壊れていくんですよね。友達を失い、親戚を失っていくわけですよ。

 だから、私は、金融機関は割と簡単なことだから、金融機関についてはこういう制度は当然やっていいんじゃないかなと思いますし、一般の人たちについても、本当に信頼関係をつくり上げていく、そして住みよい世の中をつくり上げていく、そういう思いがあれば、こういう通知義務とか控えを渡していくということは、やはり徹底していくべき政策考慮じゃないかなと思っていますので、一点、御指摘をさせていただきます。

 それから、よく相談があるのが、会社の経営者が会社経営から、代取から外れたときに、それ以降の保証債務は負わない、負いたくないということがございますよね。そういう場合に、例えば元本確定請求をその根保証をした会社経営を退く人に保証の期間中であっても認めていくというような立法が今回見送られていますけれども、それはどうしてなんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のような、会社の経営者が経営者であるがゆえに保証した、それが経営者の地位を退いた、このような例は、保証人に期間内であっても元本の確定請求を認めるべきではないかという典型例として、実は法制審議会でも議論の対象になったわけでございます。

 一般論として言いますと、確かに、経営者であるがゆえに保証をした人について見ますと、経営者を退いたら確定をする方が、ある意味ではその人の保護のために望ましいということは大体一致するわけでございます。

 ただ、その議論の中で指摘をされたのは、経営者を退くといってもさまざまな態様がある。例えば、経営者を退いても非常に株をたくさん持っていて実質的に会社を支配している人の場合もあれば、あるいは、その人は退いたけれども後任の社長になったのが子供で、実質的には親族関係を通じてその会社を支配している、そういう場合もある。そういうときに一律に確定請求権があるということでは、やはり融資をしている方としても困る、そういう指摘もありました。

 また、そういう場合以外にも、保証契約を締結した当時予想できないような事情の変更があって、保証人に元本の確定請求権を与えるべき場合があるだろう。そういう場合を網羅的に法律で規定するのは非常に困難であると。

 しかしながら、現在の判例、学説の考え方といたしましては、今申し上げたような事情の変更があった場合には確定請求権があるということが確立した考え方になっておりますし、実際に確定請求を認めたり、あるいは責任の範囲を制限している判例も数多くございます。

 したがいまして、そのような、やはり個別事情によらざるを得ないものについては、そういった個別事情に応じて、従来からとられております元本確定請求権の考え方を裁判所で適用していただいて救済を図るということが望ましいのではないか、そういうことから今回の立法に盛り込むことはしなかったわけでございます。

山内委員 ただ、円満に退任する場合はそれでもいいと思うんですよね。だけれども、おまえの経営のやり方が悪かったから解任だと、自分はもっとやりたかったのに追い出されるようにして退任させられたような代表取締役や取締役もいると思うんですよね。だから、一概に運命共同体だみたいな話でくくることもできないんじゃないかなと思いますので、この点も一つ検討課題にしてもらいたいと思います。

 それから、先ほど参考人の意見の中であったんですが、例えば夫婦で保証人になっているという場合がございますよね。例えば私も、選挙資金をある銀行から借りるときに女房が保証人になってくれているんですね。だから、夫婦そろってきちんと返していこうなと言って、いつもそういう話をしているんですけれども、というわけでもないか。

 夫婦関係だから保証人になっている場合に、離婚をすると、やはり身分関係も経済状態も、全くなくなっちゃいますよね。特に、今、新しい離婚のあり方があって、別れた後も同居しているというケースも何かあるようですけれども、普通の場合には、もう顔も見たくない状態になるのが離婚だと思うんです。

 そうなると、そういう人たちにまで、五年間、あるいは極度額という以内はしっかりと保証人の関係ですよというのは酷じゃないかなと思いますし、昔の判例を調べていましたら、主たる債務者の信用金庫取引契約を包括根保証した者が内縁関係にあった、内縁関係が解消になったという場合に保証契約が解約できるというような判例もあると思うんですけれども、この辺はどう考えていったらいいんでしょうか。

房村政府参考人 これも先ほどの経営者の場合と同様に、やはり夫婦であるということから保証した者が離婚をしたような場合には、特別解約権、従来の考え方でいえば特別解約権、今回の法律の考え方でいきますと確定請求権ということになろうかと思いますが、そういったものを行使させるべき大きな要素だろうと思います。ただ、それは、離婚に至る事情であるとか保証の事情というもの、個別事情にもよりますので、裁判所において、そこの個別事情に応じた適切な解決が図られるのではないか。

 今回の法律で極度額あるいは期間が定められるといたしましても、そのことによって、予測できないような事態が生じたときに、特別解約権あるいは元本確定請求権、これが行使できるという従来の裁判例の考え方が変わるわけではないというぐあいに考えております。

山内委員 そういうケースの場合に保証の解約を認めないとか、あるいはそういう場合には元本確定請求というものを将来的に認めていかないよというようなぎすぎすした関係になれば、では、別れても、内縁関係を解消しても保証責任がついて回るんじゃないかと思ったら、仕方なしにひっついているというか、つまり、内縁関係というか愛人関係を継続させるような法政策もやはりマイナスだと思いますので、この点もちょっと指摘をさせていただこうと思います。

 あと二点ですが、包括根保証に制限が加えられるという今回の法の改正によりまして、それで、以前から、金融機関には貸し渋り、貸しはがしということが生じているんじゃないかと指摘されている上に、保証のとり方が難しくなったということで、ますますお金を貸さない金融機関がふえてくるんじゃないかということを心配している方がたくさんおられます。このような点、金融機関に対してどのような指導をされるのか、お聞きしたいと思います。

鈴木(勝)政府参考人 先ほども触れさせていただきましたように、この法案につきまして、企業の資金調達の手法の見直しの観点からやるものでございますので、金融機関に対しましては、とにかくこういった法の趣旨の周知の徹底を図っていくということが必要だと思いますし、それから、取引関係の見直し時も含めまして、やはり金融機関からの顧客に対する適切かつ十分な説明といったことが行われることは極めて大事だと認識しております。ですから、こういった包括根保証の禁止を口実とした不適切な説明が行われることのないように、しっかりと監督してまいりたいと思います。

 なお、極度額その他につきまして、これは根保証契約自体を禁止するものではありませんので、そういった適正な極度額というのが取引の中で決まっていくものだと考えておりますし、その極度額なりなんなり、あるいは、そういったことに対する指導を行うということは、かえって当事者間の円滑な融資の妨げになるおそれもありますので、それは適切でないと考えております。

 いずれにしましても、基本的に、金融庁としましては、中小企業向けの貸し出し、こういったものが円滑に進みますように、今、リレーションシップバンキング等の取り組みをやっておりまして、担保や保証に過度に依存しない、そういった融資をしていただくようにということを要請しておる次第でございます。こういったいろいろなことを考慮しながら、監督に努めてまいりたいと考えております。

山内委員 最後に大臣、私も、例えば定時制の高校生や、それから、これから大学や就職に旅立つという高校三年生の子供たちに、地元の高校にこういう話をしに行くんですよ。やはり計画を立ててきちんと借りてくださいよとか、保証人になるというのは、友達を本当になくすかもしれないので、断ることもやはり大切なことだよとか、そういうような話をしに行くんですが、保証契約や金銭消費貸借契約、借金をする際に注意すること、保証人、保証とは何なのかというようなこと、こういうことを広く国民に対して教育とか広報を行うことも国の仕事だと思うんですが、最後に大臣の御見解を聞いて終わりにしたいと思います。

南野国務大臣 ありがとうございます。本当にそのとおりだというふうに思っております。

 法教育というものを我々はやっておりますが、法が身近であることを理解して、それを日常生活において主体的に利用できるというような力を養うということも、今先生がおっしゃったお話の中にあるのではないかなと思っております。

 法務省では、昨年の九月から約一年間、法教育研究会というのを開催いたしまして、我が国における法教育のあり方などについて検討しており、その内容を具体化した四つの教材も作成いたしました。

 そのうち、「私法と消費者保護」と題する教材では、契約自由の原則、今先生が御指摘いただきましたような内容になろうかと思いますが、私的自治の原則など、基本的な考え方について理解をしていただくとともに、経済活動が法と深くかかわっているということを認識させる内容となっております。

 今後は、文部科学省または関係機関との協力をいただきまして、報告書の内容について広報を行い、これらの教材が学校で利用され、法教育が全国各地で進められるようにしていきたいというふうに思っております。そのとおりでございます。

山内委員 大臣、よろしくお願いします。

 終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。樽井良和君。

樽井委員 民主党の樽井良和です。

 短い昼休みだったので、温和な質問に変えていこうと思っております。大臣も肩の力を抜いて、消化不良にならない程度に質問いたしますので、どうぞ思ったとおりのことを答えていただけたらと思います。

 大体、今、知価社会といいますか情報化社会になりまして、今回の動産担保というのは非常に評価できるところなんですが、そういった社会の中では次元が一つ上がったと思うんですね。今まで二次元の経済といいますか、空間の中に存在する、二次元の中にあるもの、つまり不動産であるとか自動車であるとか、明らかに空間の中にあるものが売れて、空間の中にあるものをもらう、そういう経済であったんですが、一つ次元が上がって、三次元の経済といいますか、時間を節約できるとかソフトウェアとか知識とか、そういったものが、それ自体が価値を生み出して、それ自体をもらう、そういった新しい経済が起こってきているんです。

 そんな中で、今回のは動産を担保にするということでかなり前向きなんですが、朝も質問ありましたが、知価社会の中で、知識あるいはそういった知的所有権自体をもっと担保に取り入れて積極的に取り組むべきだと思うんですが、その辺の見解、いかがですか。

房村政府参考人 御指摘のように、現在の金融というのは不動産あるいは保証人に過度に依存し過ぎている、こういう指摘を受けまして、今回私どもの用意いたしましたこの法案は、その対象を動産あるいは債務者不特定の将来債権という形で広げていくということを考えたものでございます。

 御指摘のように、これからの日本の将来を考えますと、まさに価値を生み出していく源泉となる知的所有権、そういうものをどう活用していくかということは大きな課題だろうと思います。ただ、これはまさにこれからの検討課題ということだろうと思っております。

樽井委員 先ほど大臣も手を挙げられていましたので、簡単に、御所見の方、伺います。

南野国務大臣 先生御指摘のとおりでございまして、今御説明があったかと思いますけれども、これまでの企業の資金調達のあり方というのは先生も説明されたとおりでございます。不動産を担保に借り入れする、それに頼り過ぎておって、今後は不動産以外の資産を活用して資金調達方法を確立する必要がある、そう考えております。

 本法律案は、企業が所有する動産や債務者を特定しない将来債権、それを担保としても活用できるようにするものでございまして、企業の資金調達方法の多様化ということについて大きな意義があるというふうに思っております。

樽井委員 コンテンツ産業とかもだんだんこれから強くなっていく中で、やはり、例えば大スターと契約をしている権利であるとか、そういうのも担保としては十分考えられるような、そういった時代になってくると思いますので、その辺、国の方としても、対応の方、ぜひよろしくお願いします。

 それで、ちょっと具体的に今回の動産の件で質問いたしますが、例えば、極端な話、ガッツ石松さんの好きなバナナであるとか、あるいは缶詰ぐらいだったら動産としては十分まだもつと思うんですが、生鮮食品ですね、刺身とか、そんなものがだあっとあるストアとか、そういうのも担保になるんでしょうか。

房村政府参考人 今回の法案で、動産譲渡登記の対象となる動産については特に限定を加えておりませんので、御指摘のようなバナナあるいは生鮮食料品、こういうものも法律的にはその対象となり得ます。

樽井委員 法律的にはなるということなんですが、例えばお刺身を担保にお金を貸していて、それが取り立てのときには腐っていたとなると全然話にならないので、その辺の評価というものをもっと具体的に決めておかないと、銀行の方としてもどうすればいいか、はっきりしないと思うんですね。

 それで、動産の価値の査定なんですけれども、今、粉飾決算する会社というのが結構問題になっております。そんな中で、要するに、書類の面ですごくいいかげんな動産の評価をして金融機関に多額のお金を借りようとするような企業は当然この法案が通ると出てくると思うんですが、そういった危険性であるとか、あるいはそれを防止する策、こういったものはないんでしょうか。

房村政府参考人 もちろん動産を担保として利用しようと思いますと、それをどう評価するかということがやはり大きな問題になります。御指摘のように、動産にはさまざまなものがございますので、それをどう評価していくかということは本当に大きな問題だろうと思っております。

 そういう意味で、日本においては、従来、動産を譲渡担保としての利用が必ずしも広く行われておりませんでしたので、担保として動産をどう評価するかということについていいますと、必ずしも確立した考え方があるわけではないのが実情だろうと思います。そういう意味では、今回こういう法律が定められまして、動産の担保としての利用が広がっていくということが見込まれますと、そのために、当然、適正な担保の評価に対する需要も起きてくるだろうと思います。したがって、そういうところにその専門家が育ってくるということが期待されるわけでございます。

 現実に、福岡の銀行では、そういった動産等を対象とする融資の枠組みをつくって、評価を専門に行うところ、あるいは監査を担当するところ、そういうものがいわばチームを組んで適正な融資を行う、こういうことを考えているというようなことが発表されております。

 したがいまして、そのような努力がこれからいろいろなところでなされることによって、適正な評価がなされ、適正な担保としての利用が進んでいくのではないか、こう思っております。

樽井委員 適正な担保の評価といいましても、ある程度、法的にこの程度だというのを決めておかないと、ちょっと限度とかもわからないと思うんですね。

 例えば、決算書に出てくる棚卸資産の評価額とかありますよね。これが、税金を払うときは余り払いたくないからえらい低い値で評価しておいて、銀行に借りるときは高く評価して、これぐらいの査定として見ても当然だというようなことを言ってくる経営者がやはりいると私は予想しているんですが、例えば、具体的なんですが、決算書との連動性とかに関してはいかがでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、棚卸資産の評価については、例えば、商品、製品、半製品、原材料、仕掛かり品等の棚卸資産については、原則として購入代価または製造原価に引き取り費用等の付随費用を加算し、これに個別法、先入れ先出し法等を適用して算定した原価をもって貸借対照表を書くとするというような考え方がとられております。これは、やはり貸借対照表の客観性を保つために、そういった一定の基準が必要となるんだろうと思います。

 ただ、担保にとるということになりますと、現実に担保にとってどう換価するかということまで考えなければなりません。先ほどのお刺身の例でも、通常お刺身のままですと実際に担保として換価するということはほとんど不可能だろうと思いますが、ただ、例えば、融資をして担保にとったところが店を持っていて、そちらで直ちに利用できるというようなことであれば、ある程度の担保評価をすることも可能になります。

 したがいまして、担保に対する評価というのは、単に物の客観的価値ということではなくて、換価可能性あるいはその他社会情勢、そういうものによって相当変わってくると思いますので、これを客観的な基準で定めるというのはなかなか難しいのではないか、こう思っております。

樽井委員 決算との連動性というふうに言ったのは、そうすることによって、例えば、経営者というのは、税金を抑えたいものだからなるべくちょっと利益が上がっているような設定をしたりして、金を借りるときはやはりどんともうけたような設定をするものですから、そこで統一的に、もうその決算書と同じ数字じゃないと、あなた言っていることがおかしいですよというのがなければ通じないと思いますし、また、国も、そうしないと法人税を取ることがちょっと減っていくんじゃないか、そういうふうに思うので、ぜひその辺も考えてやっていただけたらいいんだと思います。

 ただ、地価の方は、公示価格というのがあるので、普通に考えたら、不動産の場合、ある金融機関はここを五百万、ある金融機関は五千万ということはない、大体四千万とか四千万ぐらいだろうといって評価してくれるわけですけれども。金券ショップの金券とかだったら大体わかりますが、そうじゃない普通の商品とかの場合は、限りなくその評価は上限、下限あると思いますので、大体、生鮮食品の場合こんなのだったら幾ら、あるいは玩具でこの辺だったら定価の何掛けとか、きちんと表とか評価をする基準みたいなものをある程度、民間と連動してでも結構なんですが、国としてはつくるべきだと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

房村政府参考人 実際に担保をとるということになりますと、その企業の存続可能性、今後どういう形で利用されていくのか、あるいは、その企業がおかしくなったときに、担保にとっている対象の動産を幾らで換価できるのか、そういうことを評価していかないといけない。しかも、それは当然、換価する場合であれば、換価をする流通市場の整備の仕方によっても変わってまいります。そういったことを踏まえて適正な評価をするというためには、専門的なノウハウが必ず必要になるだろうと思います。

 先ほども申し上げましたように、現在の日本においては必ずしもそれが十分発達しているとは思えないわけでありますが、今後、まさに利用が促進されることによりまして、そこに専門知識を持った人たちが参入してきてそういった基準ができ上がっていくのではないか。まずは、そういう形の環境整備を進めるということが現段階においては求められているのではないか、こう思っております。

樽井委員 そういった評価基準がなければ、また貸し付け過ぎとかいう状態も起こってくると思います。常識的な範囲内で行えばいいんですが、当然、国の方としては、指導するという程度でもそういった部分では管理するべきだと思います。金びょうぶで四十億貸すような人はいないと思いますが、そういったこともなきにしもあらずというのがこの法律だと思いますので、ぜひその辺もきちんと考慮して対応していただけたらと思います。

 それで、この時期、もうかっている経営者というのは、ここから先、公務員の方から考えるよりもすごく楽しい時期なんですが、もうかっていない経営者というのは、本当にこれから先、クリスマスのあたりから年末年始にかけて、きつい時期を迎えます。

 よく、中小企業や零細企業の社長さんは、この時期、クリスマスツリーが町に出てくると、うちなんかはクルシミマスだ、そういうことを言われる方がたくさんいるんですが、やはりサラ金とかで金を借りてでも、何とか、零細企業の社長さんにしたら、従業員にボーナスを支給したいというような、そういった思いでいられる経営者の方はたくさんいるんです。

 それは要するに、これぐらい売り上げが上がるだろうとかもうかるだろうと大体思っているんですが、もうぎりぎりまで待っていてやはり売れなかったときとか、それでも十二月例えば十日にボーナスを支給しないといけない。そういうときに、銀行に要するに融資を申し込むと、もたもたして、では、いろいろな書類を出して審査してといったら、とてもじゃないが間に合わない。そういったときに、駅なんかに行きますと、物すごくイルミネーションが輝いているわけです。五十万とか百万、無担保でぱっと借りられるから、つい手を出して、年末大した売り上げがなくて、そこからつぼにはまっていく経営者というのが多々おられるんだろうと思います。

 そんな中で、やはり銀行が、例えば五%やらそこらで五年ぐらいの融資をするんだ、それには物すごくきちんと精査されますよ、消費者金融の方は、一八%とか二八%ぼんと取って審査もなしにぱっといってしまうようなイメージではなくて、例えば一〇%ぐらいの金利で早急に手配します、あなたのことはよく知っていますという、銀行にふだんからつき合いがあればですけれども、そういった早急に対処できる、例えば三百万なり五百万ぐらいのお金を無担保無保証人でさっと緊急避難的に出していただける、そういったシステムがあれば非常にこの年末年始ありがたいと思うんですが、その辺の、ちょっとグレーゾーンの金融機関のそういうシステムというのはどうでしょうか。

鈴木(勝)政府参考人 必ずしもグレーゾーンかどうかという点は別にしまして、今御指摘の点は大変重要な点だと思っております。

 中小企業向け、あるいは個人向けでもそうなんですけれども、無担保無保証でスピーディーな融資、そういった商品がないかどうかといった点については大変我々も関心を持っておるわけでございまして、金融庁としては、従来からといいますか、金融機関に対して、担保や保証に過度に依存しないということで、新たな融資制度、これへの取り組みを繰り返し要請しております。

 例えば、昨年三月に公表したリレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム、これについてもこうした取り組みを推進しておりまして、例えば、今いろいろな金利の範囲の中で、しかも約定までの営業日、期間を非常に短い期間で、ただ金利の条件についてはやはりいろいろな弾力的な幅があるといったような商品も十分に見られているところでございます。

 金融庁としましても、今後ともこういった取り組みを積極的に推進してまいりたいと考えております。

樽井委員 カードローンだとかあるいは消費者金融でローン、多重債務、こういったことが、ここから先、年末にかけてどんどんと出てくるものだと思いますので、その辺の方をまず早急に対処していただかないと、なかなか経営者の皆さん、そういうシステムができないばかりに困っている方、たくさんいらっしゃると思います。それでまた、そういうのができることによって、一八%やら二八%で五十万、百万借りていっても零細企業のところにしたらえらいきついですから、一たんそこから借りて全部返済して、もうちょっと安い金利でまとめて返した後一つにできるというような、そういった部分で、年末年始、ちょっと落ちつく部分もあると思いますので、ぜひ考えてほしいと私の方は思います。

 実際に、さっきも言いましたけれども、駅なんかでは物すごくふえましたよね、ネオンが。前はあんなひどかったかなと思うんですよ。昔なんかいえば、ああいう消費者金融、サラ金と言われていた時代なんかは、入っていいものかどうかみたいなイメージの、これは入ったら人生がちょっと傾くんじゃないかというイメージだったんですが、最近はもう、加トちゃんが宣伝したり、井上和香ちゃん、ああいう子がかわいらしく、非常に明るいんですね。ぱっと手が出てしまうんで、国の方も、もっと明るい、目立つ、そういうのを救えるような、対処できる金融システムというのをつくっていくべきだと考えております。

 それで、言ってみれば、今回の法律が通って、資金調達の、例えば動産が担保になりますよというようなことを普通の社長さんが認知できるように、ちゃんと周知徹底をどういうふうにするのか、ちょっと教えていただきたいんですが。

鈴木(正)政府参考人 ただいまの委員御指摘の、どのように周知するかは、大変重要なことと私ども考えております。実は、今回の法律改正案につきまして、中小企業にとっては大変意義深いものという意見も伺っておりますし、私どももそのように感じております。

 現在、中小企業庁、全国三百二十六の中小企業支援センターに専門家を置きまして、それぞれ個別に御相談に乗っておりますけれども、私ども、そこでも周知徹底させていただきますが、その上で、ホームページ、また私どもメールマガジンを発行しておりまして、約六万の方が御登録いただいております。毎週一回情報提供をしておりまして、こういうものを通じましてきめ細かに周知をいたしまして、またさまざまな御相談に乗ってまいりたいと考えております。

樽井委員 そういった面で、メールマガジンとかホームページも非常に結構なんですが、割と、商売としてはまずくないんだけれども金融音痴みたいな経営者というのは結構いるんですよね。金策音痴といいますか、お金をつくるというか、借りたりするそのやり方が下手なばかりに、本当に得なシステムがあっても、それを利用しないで終わっている。また、それは例えば町工場なんかで一生懸命やっている社長であればあるほど、そういった参謀のような経理の方もいらっしゃらないし、一心に物をつくっているからそういうところに目が行かないのが実情なんだと私は思っております。

 実際に、例えば商工会議所とかで紹介するにしても、ああいうライオンズクラブとかに入って活動されている方は割と余裕がある経営者の方が多くて、本当にあっぷあっぷしていて、しかも商売としては悪くないんだという、今回、例えばねじなんかをつくっている会社で、では、そのねじ自体も動産として担保になりますよといったこと、これで救われる経営者がかなりいると思うので、そういったところに周知することというのをまず一つ考えてほしい。この辺を訴えておきます。

 それで、普通に考えたら、自動車保険のサイトなんかを見るとわかるんですが、僕も実際に利用してみたんですけれども、大体、年齢とか、今まで事故をしたかとか、そんなのを打ってぱっとやると、どの自動車保険が一番安くて得ですよみたいなリストが出てくるんですね、見積もりと一緒に。それでそこに契約できるというのがあって、恐ろしいことに、例えば八万円ぐらい今入っている自動車保険と違ったりしまして、僕なんかは選挙区の方じゃない人と契約していたので、すっとかわりましたけれども。

 そういうので、要するに、簡単にわかりますよね、そういうシステムですよ。例えばお金を借りようと思ったときに、何年経営していますか、どれぐらい収益がありますかとか、チェックして打っていけば、例えばおたくの場合はここの金融機関のこの融資のシステムを利用したらいいんじゃないかというリストがばあっと出てくるようなものであるとか、あるいは旅行に行くんだって、まず、普通自分で考えて行くというのは珍しいもので、やはり旅行代理店に行って、パンフレットがだあっとあるわけです。専門のツアーコンダクターか、そこの方がいて、きちんと、どこそこへ行きたいんだとか、温泉を楽しみたいんだったらこういうコースがありますけれどもと出してくれるわけですね。あれみたいに、要するに案内所というかコンシェルジェみたいなものが金融にもあってしかるべきだ、こう思います。

 これぐらいの商品を持っていて、これぐらいの不動産担保があります、これぐらい借金がどこそこで借りて残っているんだ。それで、会社の状況、定款なりを持っていったら、おたくだったら、では、こことこことここぐらいのこういう融資ができるんじゃないか、国から五百万借りたらこの分金利が安いです、こういうふうにちゃんと説明してあげて、融資先を紹介してあげるような、そういう機関が必要なんじゃないかと私は考えるんですけれども、その辺はいかがですか。

鈴木(正)政府参考人 ただいま委員御指摘いただきました点につきまして、私どもも、できれば今後の課題として検討してまいりたいと考えております。

 実は、先ほど委員御指摘ございました、中小企業の会計が不透明である、これにつきましては、平成十五年以来、中小企業の適用すべき会計ということにつきまして、税理士会連合会さん、また公認会計士協会さんと相談いたしまして基準をつくってまいりまして、非常にこの会計を適用される企業が多くなってまいりました。これに伴いまして、銀行の方も、この会計を適用していればこういうローンを出しますという金融機関が非常にふえてきておりますので、そのような会計とあわせまして、こういうような財務状況ならばこういうものがありますというものがすぐにわかるような、そういうシステムを関係機関とも相談してまいりたいと考えております。

樽井委員 なかなか普通の経営者でも、どういうふうにしたら幾ら金利を取られて、それで、何年借りるとした場合はどこで借りるのが一番得なのかとか、そういうことはわからないもので、大体、自分の取引先の信用金庫とか銀行に行って、もう目線が全然ほかのところに行かずに、すっと借りようとする。それで結構損な借り方をしていた方というのが今までたくさんいると思いますので、情報サイトの件もそうですけれども、先ほど言ったコンシェルジェといいますか紹介所みたいな件を、もっと、先ほど言った消費者金融に負けない程度に、代理店みたいなものをどんと駅に設けるなりするぐらいのことがなければ、お金がスムーズに回転して、年末年始、パワフルな経済状態を創出するようなことはないと思います。

 その辺も考えて、ぜひ経営者の、利用する側の立場になって、実際にこの法律が通った後はどうしたらこれが有効に機能するのかというところまで手を入れるのが国の役目だと思いますので、ぜひその辺も考えて実行していただけたらありがたいと私の方では思っていますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 それで、よくドラマでもありますけれども、大体、つぶれそうになった、破綻しかけたら、いろいろな取り立て屋さんみたいなのが来て、たんすとかテレビにべたべたべたべた張って、トラックで持っていかれるような、そういったのがありますよね。実際に、今回、動産が担保ということなんですが、破綻情報を真っ先にキャッチした債権者が、工場とかあるいは社長の家に押しかけて、物をとって帰る。ひどいのになると、リースしているコピー機まで持って帰られたような会社もたくさんあります。そういったことが、今回の法律が通った後はなくなると考えてよいんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、倒産時にいわゆる取りつけ屋といいますか、実力で物を持っていってしまうという事例が時々あるということは私どもも聞いております。今回の法律ができて、法律があるから、では取りつけが全然起きないかというと、それはなかなか難しいかと思います。

 ただ、実際上、取りつけというのは、民法上はもちろん不法行為に当たりますし、刑事罰にも当たるような行為であります。それに対しては、当然、権利を持っている者としては、取り戻す権利がございます。これを法的に行おうと思えば、まずは裁判所に行って仮処分を出してもらう。これを処分されてしまうともうあれですから、持っていかれたらできるだけ早く裁判所に行って仮処分を出してもらって、それを押さえておくということがまず求められるわけですが、そのときに、登記をしてありますと、その権利の疎明が非常に迅速に行えますので、命令も早く出してもらえる。そういう意味で、対抗する手段としてかなり使える、こういうことは言えようかと思います。

樽井委員 今までも、要するに、無法状態になれば、それは違法だったわけですよね、とっていくのは。でも、やはり実際にはそれをやっていたわけですから、例えば銀行なり貸し付けた金融機関なりが、そこの商品とかを動産で担保でずっと金を貸しているのに、いざ破綻して会社へ行ってみたら、全部きれいに持っていかれてなくなっていた。こういった場合は、対処の仕方としてはそういうふうに言われますが、実際問題、十分起こり得る話でありまして、この辺は非常に、私なんか考えると必ず起こり得るだろうということでありますが、今さっき言われたような対処の仕方でやれても、それは戻ってくるんですか。

房村政府参考人 ですから、本当に隠されてしまいますとこれは難しいんですが、例えば動産を運び出して、また、ここにあるというのがわかっている、その段階で裁判所の仮処分命令をもらって、ともかく占有移転禁止をかけて、そこで確保する。執行官が保管をしますので。そういうことであれば、しかも、その後本訴になっても、登記で権利の所在を証明することは非常に容易でございますので、場所があって確認ができて、物があれば、それは十分取り戻せます。

樽井委員 破綻情報みたいなものをそういった取り立て屋みたいなところが真っ先にキャッチするという、これ自体もちょっとおかしくて、貸している方みんなに同時に知らされて、それはある程度、法律のもとで、例えばそこの会社の関係者やらみんながそこへ集まって、きちんと一回会計で押さえて、とっていかれないように置いた状態でみんなが集まってまたやらないといけない。こういうふうなのも厳格に指導してください。その辺もお願いいたします。

 それで、最後にちょっと、これは意見なんですが、今まで、経営者としてお金を借りに行くと、大体、社長というか経営者というのは二十とか十代というのはほとんどないので、社長さんといったら四十、五十ぐらいになると、お父さん、お母さんなんて、そんな、これを保証人にするといったって、無職であるとか退職している方が大概、ほとんどなんですね。

 そんな中で、両親が無理なんでと言うと、では別に保証人をさらにつけ加えてくださいと。これで、何か事業をするとか、あるいは何とか生き延びるために融資をもう一回受けようというときに、親戚とかあるいは友達とか、そういうところに保証人になってくださいと言うのが物すごく心苦しかったと。そういう事態でやめられた方とかもたくさんいらっしゃると思いますね。この無保証人というのは、本当のところで機能すれば、結構な成果を上げると思います。

 時間がないので、また今度、違う機会に質問をしますが、無保証人にしたり、担保も動産でもオーケーだよ、どんどん経営者に対していいような法律をやる、そのかわりに、さらに、経営状態が悪ければもっと国も厳しい措置をとる、こういったこともちゃんとセットで法律を上げていかなければならないと思っております。

 その辺のこともまた考えて、どんどんと、この金融状態からこれをきちんと整理することが未来の日本の経済をつくる上で非常に大事だと思いますので、ぜひ、今後ともその辺は留意して、全力で力を合わせて日本経済をもう一回盛り上げるように頑張っていかれるということを強くお願いして、時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。

塩崎委員長 次に、松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫です。

 時間が少ないんですけれども、私の方から、まず動産譲渡担保の登記の問題、そして債権譲渡の登記の問題についてお伺いをしたいと思います。率直に申し上げて、いずれもいろいろ問題が多いというふうに私としては考えております。

 まず、動産譲渡担保の登記の方ですけれども、恐らく大きな問題になるだろうというのは、動産の特定をどうするのか。動産の特定をめぐって、それは担保に入っているとか入っていないとかいうことで現場に混乱を招きかねない、そういう側面があるのではないか、こういうふうに思っております。

 そこで、まず、きちっとした原則を立てなければいけないというふうに思いますが、動産の特定について、こういうふうにして特定をするという、まず原則はどのようになっているんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、動産譲渡登記をするに当たっては、対象たる動産をどう特定するかということが大きな問題になります。

 今回の法律では省令委任事項になっておりますが、現在私どもで考えております動産の特定の仕方といたしましては、まず、動産を二種類に分けまして、個別動産と集合動産。個別動産は一つ一つの動産を登記する、集合動産は集合物としての動産を登記するということになります。

 個別動産の場合に、登記事項といたしましては、動産の名称、種類に加えまして、動産の型式、製造番号など、個々の動産を他の動産から区別するに足る特質を登記事項とする、こういう形で、一つ一つの動産を登記するということになります。

 それから集合動産の場合ですが、この場合には、動産の名称、種類に加えまして、動産の保管場所の所在地及びその名称、ですから、どこどこの何番地所在の何々倉庫、そこにあるこういう商品、そのような特定の仕方をするということを予定しております。集合動産で特定をする場合には、今申し上げた保管場所にある対象動産をすべて登記の対象とするという形で特定をしていただくことにしております。

松野(信)委員 個別動産についてはある程度特定性は確保できるかなという気がしますが、集合動産について見ますと、例えば、倉庫の中という特定の仕方を見ても、出たり入ったり、ふえたり減ったりしているわけですので、どこまで担保に入っているのかというのはなかなか、率直に言って難しい問題だろうというふうに思います。肝心なのは、それが担保に入っているか入っていないかがしっかりわかるというところだろうというふうに思うんですね。

 その観点からいうと、これは少し極端かもしれませんが、例えば、企業が有する動産すべてというのもある意味では特定されるわけです。もうごちゃごちゃ言わずに、特定の企業が持っている動産も全部だというのも、これは特定としてはある意味では明確になるわけですので、什器、備品だろうと倉庫の中のいろいろな材料だろうと全部入ることは一目瞭然なわけですが、こういう特定の仕方はいけないんでしょうか。

房村政府参考人 理論的には、確かに企業の有するすべての動産ということになれば、その企業の有している動産であればすべて対象になるわけですので、特定は可能だということは言えようかと思います。

 ただ、幾つか問題がございまして、まず、今回の動産譲渡登記を考えましたときに、やはり、不必要に企業の持っている財産をいわば洗いざらい担保にしてしまう、そういうことを余り容易に認めると過剰担保の問題が生ずるのではないか、あるいは他の債権者を害するのではないか、こういう指摘もございました。それが一つ。

 それからもう一つは、やはり譲渡担保であれ流動化目的であれ、対象となる動産を適正に評価するということが通常の取引のあり方だろうと思います。そのような場合に、ただいまのような余りにも包括的な特定の仕方でありますと、その評価そのものが合理的に果たして行われるのであろうか。そういうことを考えると、実際に行われるであろう合理的な取引の前提としては、もう少しその範囲を絞った具体性のある特定の仕方を要求してもおかしくない、また、この制度が適正に用いられるためにはそのような要請をする方がより妥当ではないか。こういうことから今回のような特定の仕方を考えたわけでございます。

松野(信)委員 それから、どこまで品目とか種類とかを求めるかというのもなかなか難しい問題だと思うんですね。例えば電気工事会社があるとすると、その電気工事会社はいろいろな電気資材を持っている。ソケットもあれば蛍光灯もあれば白熱灯もある、ケーブルもある。そういうのを、例えばどこどこの倉庫に入っている電気資材一式、こういうようなものは特定性を満たしているというふうにお考えでしょうか。

房村政府参考人 ただいまのような特定の仕方であれば、一応特定性としては満たしているのではないか。その場合には、その倉庫にあるそういった電気資材と呼ばれるようなものはすべて対象になる、そういうことになります。

松野(信)委員 それで、特定性を満たしているか満たしていないかという判断は実際だれがするのかという問題があろうかと思います。

 実際に問題になるとすれば、登記をするときに特定性を満たしているか満たしていないかという問題になるので、恐らく登記官の方で、これはいいですよ、これはだめですよ、そういうふうになるのかなというふうに思います。そうすると、登記官によっては、Aという登記官は割合幅広く認めて、Bという登記官は非常に厳格になる、そういうことにでもなると困った問題になるので、やはりしっかりとしたガイドラインをこれは設けないと、現場が混乱する、登記官によってまちまちに判断されてはたまったものではない、こういうふうに思うんですが、こうしたガイドラインをしっかりつくるというお考えはあるんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、例えば先ほど申し上げたような企業の有するすべての動産というような形で来たものは、特定されていないということで登記官が却下をするということになります。

 登記官が判断をする場合にばらつきが出るのではないかという御指摘でございます。

 今回の動産譲渡登記につきましては、この登記を扱う登記所は一カ所ということで現在予定をしております。したがいまして、もちろん複数の登記官がおりますが、同じ登記所でございますので、そういった点で十分な打ち合わせを行えば、登記官によるばらつきというのは最小限にとどめられるのではないか。また、利用していただく方々のことも考えまして、今後、名称、種類の記載の仕方とか、そういったものについては、こちらとしてもどんなことを考えているか、できるだけ広くお知らせする努力はしたいと思っております。

松野(信)委員 それから、念のために確認をしておきたいと思います。

 参考人の山野目先生のお話にもありましたけれども、特定の動産について譲渡担保を登記しておった、しかし、それを全然知らない人が買い受けてしまうということだって大いにあり得るわけですね。そうした場合に、登記になっている動産についても即時取得の対象となり得るか。先生のお話だとどうもなり得るようなお話でございましたが、法務省の方もそのようにお考えでしょうか。

房村政府参考人 理論的には即時取得の対象になり得ると考えております。あとの問題は、即時取得をする人の善意無過失の判断の問題ということになろうかと思います。

松野(信)委員 この辺が率直に言ってなかなか難しい問題だろう。不動産とかあるいは登録された自動車というのは一般的には即時取得ということは考えられないと思いますが、動産の場合は即時取得の問題が出てくるので、そういう点もやはりこの動産譲渡担保登記については問題があるなというふうに考えております。

 それから、これは大臣の方にお伺いしたいと思いますが、この動産譲渡担保あるいは将来の債権まで債務者不特定でも担保にとって登記できる、こういうふうな改正になっておるんですが、これはよく言われるように、労働債権に対して大変な痛手を与えるのではないか、労働債権の保護をどうするんだ、この問題は大変指摘をされているところなので、ぜひこの点については大臣からお考えをお聞きしたいと思います。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 労働債権は、先生がおっしゃるとおり、本当に労働者にとっての生活の元手でございますから、その保護をどのように図るかということは極めて重要な問題であると認識いたしております。

 法務省は、これまでにも、一般先取特権ということによりまして、担保される労働債権の範囲の拡大、また破産手続における労働債権の優先順位の引き上げなど、そういうものを法整備を行ってまいりました。

 今後も、動産及び債権の登記制度の利用状況、また企業の倒産時における労働債権の取り扱いの実情などを踏まえながら、どのような施策を講じる必要があるのかということを検討して考えていきたいと思っております。

松野(信)委員 金融機関あるいは金融を得たいという人の便宜性、これは私は別に否定するものではありませんが、やはり労働債権はしっかり保護していかなければいけないし、それとのバランスをしっかりとってもらいたい、このように思っております。

 ちょっと調べましたけれども、独立行政法人労働者健康福祉機構、これがいわゆる国の事業として未払い賃金を立てかえるという事業をやっておるわけで、昔は労働福祉事業団というところがやっていたんですが、これを調べてみますと、毎年毎年、国の方が立てかえ払いをしている未払い賃金というのが非常にふえているわけですね。平成六年度で見ますと六億九千万ぐらいの立てかえになっていた、それが平成十四年度になりますと四百七十六億と大変ふえているわけで、十五年度も三百四十億ぐらいありました。

 それだけ賃金がもらえない、やむなくこの立てかえ払い制度によって救済をしてもらう。しかも、これも必ずしも一〇〇%ではありません。一定の限度が設けられているわけですから、労働者たちがこれで全面的に救済されるというわけではないわけですので、やはり、中小企業の金融の便宜に資するということで今回のような新たな担保あるいは登記制度というのを設けるのであれば、片方の労働債権の保護についてもぜひしっかり見ていかなきゃいけないだろう、こういうふうに考えております。

 しかし、聞いておるところでは、今回は特に労働債権の保護について何か新しい手だてというものは今のところどうも考えていないように思うんですが、将来的に、この労働債権について、例えばこちらの方を優先させる、優劣の順位について変更させるとか、何らかの、労働債権について保護の前進を図るというようなお考えはあるんでしょうか。

房村政府参考人 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、私どもとしても労働債権の保護を検討していかなければならない、こう思っております。

 ただ、現段階では、具体的にどういう方法でというところまでは具体案があるわけではございませんので、今後、この法律が施行されました一定の時期に、労働団体の関係者を初めとして経済団体の関係者であるとかあるいは労働法制の研究者、こういうような方々に集まっていただいて研究会を立ち上げまして、そこで、企業倒産時における労働債権保護の実態であるとか諸外国における労働債権の法律上の保護のあり方、そういったようなものを参考にしつつ、具体的にどういう保護の方法があり得るかということを真剣に議論して検討していきたい、こう思っております。

松野(信)委員 ぜひ真剣に御検討をお願いしたいと思います。

 それから、これは一応念のために確認をとっておこうと思いますが、動産譲渡担保について登記したという場合と、それから対抗要件としては占有改定というのも一つの対抗要件として従来からあるわけですね。そうすると、占有改定の場合はちょっと見た目ではなかなかよくわからない場合が多いわけで、占有改定が既に行われているものが例えば動産譲渡担保で登記する、こういうこともあり得るわけです。

 そうした場合にどっちが勝つのかというと、これは同じ対抗要件ですから、先に対抗要件をとった方が勝つというのが民法理論の大原則になろうかと思いますので、それで間違いないだろうとは思うんですが、そうだとすると、片方は登記という、これは客観的にだれが見てもよくわかる、ところが、もう片方は占有改定ということでややあいまいなものですから、例えば、登記していた日時よりも前に占有改定がなされていたように取り繕って口裏を合わせるということだってできなくはないわけで、それがある意味ではばれなければ、占有改定の方が先になされていたということでこっちが勝ってしまうということになるのかなと。

 ただ、それは余りよろしくないことですので、何かそれについて防止策みたいなものをお考えであれば答弁をいただきたいと思います。

房村政府参考人 御指摘のように、今回の法案では、占有改定と登記による対抗力は同一のものとして、先後関係によって決まることとしております。

 これは、ただいまの御指摘のとおり、隠れた占有改定がありますと、登記を経ても結局権利を取得できないということになるので動産譲渡登記を設ける意味が薄れるのではないか、こういうようなことで、登記をした場合には、占有改定が先行していてもその占有改定に勝つ、こういう登記優先ルールを採用してはどうかということが法制審議会でも最後まで議論の対象となりました。

 確かに、そういたしますと、登記制度を利用する方にとっては非常に強力で安心していられる、こういう面があるわけでございますが、ただ、同時に、そのときの議論で出てまいりましたのは、やはり、譲渡担保を設定する人として担保を設定したことを知られたくない、こういうことから占有改定を利用せざるを得ない場合もある、そういうときに、後から登記をされるとひっくり返ってしまうというのでは、その占有改定をした人の利益が余りにも保護されないのではないか、そういう問題。

 それから、登記がそれだけ強力になりますと、逆に、占有改定があるのを知りながら登記をすることによってその権利を無にする、そういう悪用の仕方もあり得るのではないか。

 それともう一つ、占有改定が隠れているという点については、実は実務家から、譲渡担保を新たにとるときにはその事情をよく調べて、相手方からも聞いて、既に担保に供されているかどうかという点は相当詳細に調べる、そういうことをやっているので、隠れた譲渡担保がされているというおそれは余りないんだ、それよりも、登記が余りにも強力になって、悪用されるというようなことで取引が混乱する方が心配である、こういうような指摘もございました。

 そういうことから、今回、登記優先ルールは採用しなかったわけでありますが、仮にそういう実務慣行で譲渡担保設定時に相当丁寧に調べていただいているとすれば、仮に後になってその日付をさかのぼらせて口裏を合わせようといたしましても、設定当時のいろいろな事情が証拠資料で残っておりますと、それがそう簡単に裁判所をだませるということにはならないのではないか。そういうことで、何とか全体のバランスがとれるのではないか、こういうぐあいに思っております。

松野(信)委員 済みません、時間がありませんので、最後、債権譲渡については、将来の債務者不特定の債権の譲渡が登記可能だということでございます。

 例えばアパートの家賃、これは将来だれが入居するかわからない、そういうのも担保にということですが、これは基本的には、やはり、入る人、つまりテナントあるいは借家人の保護に欠けることがないように、安心してその人たちが払えるような措置をとらなきゃいけない。特に多いのは、銀行で自動引き落としになっているような場合、知らずのうちに旧債権者の方に払って、下手すれば二重払いになるというようなことがないような運用をぜひお願いしたい、この点だけ申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 きょうは、民法の一部改正案のうちの包括根保証の限定ということに関連して、その立法目的及び立法事実にかかわる諸問題について質疑をさせていただきたい、このように考えております。

 まず、民法一部改正法律案提案理由説明を見ますと、包括根保証契約の限定に至る理由として、現在の厳しい経済情勢のもとで、個人の保証人が予想を超える過大な責任の追及を受ける事案が多発している、根保証契約の内容を適正なものとするための措置を講ずる必要があるということで、そのための合理的な規制を加えるんだ、こういうふうに書かれております。

 ところで、これは、衆議院調査局法務調査室の「政府等における検討」というところを見ますと、二〇〇二年の六月に「「経済財政運営と構造改革における基本方針」において、「起業の促進・廃業における障害除去という目的実現の観点から個人保証の在り方の検討、見直しを進める。」」というふうになっているんですね。

 だから、起業を進めるという観点から保証の見直しが必要だということ、そして、保証制度、とりわけ包括根保証において弊害が生じているんだということから見直しが必要なんだという二つのことをどうもおっしゃっているように思います。

 とりわけ、業を起こすという点も確かに指摘としてはあるように思いますが、社会問題としてなっているのはむしろ、包括根保証に基づいて、とりわけバブルの崩壊以降、非常に悲惨な状態に直面している債務者の方々が多いという現実なんですね。

 二十四万人を超える人が自己破産を余儀なくされているその原因の多くは、包括根保証による債務負担の問題かもしれない、かなりの部分がそうだろうというふうに思います。また、三万五千人に至る毎年の自殺者の数、これもやはり包括根保証のために強硬な債権の回収に追い込まれて、そしてみずから命を絶たざるを得ない状態に追い込まれる、こういう現実もあるというふうに思うんですよ。

 そういうことを考えたときに、とりわけ包括根保証による包括根保証人の悲惨な現状をどうするのかということが立法事実として厳然と存在するんだ、そして、そのことを解消することを立法目的だというふうに掲げるとすれば、今後発生する包括根保証にかかわる問題に対処すればそれで済むという問題じゃないわけですね。既に発生している包括根保証による被害者、悲惨な状態にある人々に対してどう救済の手を差し伸べるのかということが立法府の役割であり、また行政の役目であって、為政者のなすべきことだろう、このように私は思います。

 このような観点に立ったときに、どうも、今回の包括根保証の限定の改正案、これだけで、では現在苦しんでいる人たちが救済されるのかということになると、全然救済される措置が講じられていないというふうに思いますが、この点、大臣、どうお考えですか。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 先ほど先生もお話しになられましたが、期間や限度額の定めのない包括根保証契約、これは保証人が予想を超える過大な責任を負うおそれが大きいために、改正後の施行時に既に締結されていたものであっても保証人を保護する必要性はあるというふうに考えております。

 しかしながら、契約が成立した時点では有効であった根保証契約を法律の施行と同時に直ちに無効とすると、関係者に予想外の損害を与えるというおそれがあります。

 また、そこで、本法律案では、既に締結されている根保証契約で極度額の定めのないもの、直ちに無効とはしておりませんけれども、改正法の施行後三年を経過した日以後に行われた融資については保証人は責任を負わないものとして、保証人の保護を図っております。

 この措置は、関係者に予想外の損害を与えることを回避しつつ、保証人の保護を図ったものであるということを御理解いただきたいと思っております。

辻委員 大臣、よく質問を聞いてください。そういうことを聞いているんじゃないんですよ。

 既に発生している包括根保証による被害者、悲惨な現状に対して、この法案の改正案だけでは、何ら救済の手だてを講じられたことにならないじゃないかということを言っているんですよ。

 だから、それについて、今法案でそのことはカバーできていないけれども、では今後どのような方向で考えるのか。そういう立法事実、本当に包括根保証で苦しんでいる多くの人たちに対して救済の手を差し伸べることが為政者の役割なんだ、そのことを重大な立法事実として、今後その改善策を講じていくんだというその姿勢があるのかないのか、その点についてまずお答えください。

南野国務大臣 我々としては、誠意にこれを取り組んでいきたいということの気持ちは変わりございませんが、知人の保証人になったために家や屋敷をとられたというようなこと、また、保証債務の履行ができず、とうとい命が絶たれたなどというお話は私自身もこれまで耳にいたしております。深刻な事態にあったということは、十分に認識して、理解しているつもりでございます。

 このような認識を踏まえながら、本法律案では、根保証をした個人の保証人が予想を超える過大な責任を負うことがないようにする措置を講じているというところでございます。

辻委員 本法案のことを聞いているんじゃないんですよ。既に生じている悲惨な状態について、場合によっては、この法案につけ加えて、修正を加えて、さかのぼって、一部救済策を講じるような措置も考えるべきかもしれない、私は創意工夫を凝らして考えるべきだと思うけれども、それは今すぐに、きょうあすは難しいわけだから、今後どうするのかということについては前向きに考える、そういう立法事実が非常に重要な、大切な問題なんだということをちゃんと法務大臣の立場で認められるかどうか、このことを聞いているんですよ。

南野国務大臣 そのような考えをしっかりと持っていかなければならないということは思っております。

辻委員 それで、ちょっと時間の関係がありますから、例えば、具体的に包括根保証で現に苦しんでいる人たちの救済の措置として、とりわけ、破綻した金融機関から債権の譲渡を受けたRCCが多くの包括根保証人を苦しめている現実がある、非常に過酷な取り立てを行って、これは国民の怨嗟の的になっているんですよ。そういうRCCの跳梁ばっこを許さないような法規制をやはりやっていくべきだというふうに私は思っております。

 例えば、不良債権について、額面どおりで、元本のとおりでは買っていないわけですよ、RCCは。いろいろな情報で新聞紙とかで見る限り、五%で買っていたり三%で買っているわけですよ。例えば、一億の債権を五百万で買っている。ところが、包括根保証人が五千万の自宅を持っていればそれを差し押さえて競売にして回収するというような行為も現に起こっている事実をやはり伝え聞くということが多いわけですよ。私は弁護士だから、現にいろいろな事例でRCCと対決してきましたから、そのやり方については認識しているつもりですよ。

 だから、そういう現実をかんがみれば、例えば、不良債権を買い取った、支払った代金以上の請求権は制限するというような法案があったっていいじゃないですか。こういうことについてもやはり一つの検討課題として私は考えていただきたい、こういうふうにとりあえず申し上げておきます。

 それで、まず金融庁のその点についての認識を伺いますが、破綻した金融機関からの不良債権の譲り受けを受けているRCCについて、毎年毎年どのような報告を受けているんですか。何件ぐらいそういう事態が、買い取りの事案があって、買い取り金額は幾らぐらいで、回収の実績はどれぐらいなのかということについて概略の報告を受けているんでしょうか。

鈴木(勝)政府参考人 RCCからの報告、破綻金融機関からの譲り受けの回収実績いかん、こういうお尋ねでございます。

 RCCにおきましては、破綻金融機関等から譲り受けました貸付債権等につきまして、回収の極大化を使命としましてこれまで迅速かつ効率的な回収に努めているものと承知しておりまして、その結果、十六年三月末現在までの回収累計額ですが、譲り受け債権約四兆六千五百五十二億円のうち回収累計額は四兆三百四十三億円、回収率で八六・七%となっていると承知しております。

辻委員 その譲り受けた四兆六千五百五十二億は幾らで買い取っているんですか、RCCは。

鈴木(勝)政府参考人 先ほど申し上げました譲り受け債権額、さっき申し上げました、これが買い取り額、約四兆六千五百五十二億円ということでございます。

辻委員 では、その買い取った四兆六千五百五十二億円のもととなる譲り受けた元本の総額は幾らですか。

鈴木(勝)政府参考人 これにつきましては、個別の金融機関の状況によって異なりますので、今手元に数字もございませんし、現在この場で申し上げることはできないことを御理解ください。

辻委員 では、それは調査の上報告をしていただくということでよろしいですか。

鈴木(勝)政府参考人 その辺につきましては、数字があると思いますので、後ほどお知らせをしたいと考えております。

辻委員 それは数字はきちっと報告をしていただきたいと思いますが、概算、買い取り価格は元本に対する何%ぐらいなんですか。それは大まかな数字は言えるんじゃないですか。アバウトでいいですよ。おっしゃってください。

鈴木(勝)政府参考人 大変恐縮でございます。質問通告におきましてそういったお話を聞いておりませんで、まことに申しわけないんですけれども、数字がございませんのでこの場でお答えできないことを済みません……(辻委員「後で」と呼ぶ)そういった報告できる数字かどうかを見まして、もしそういう報告できる数字であるということであればお話しさせていただきたいと思います。

辻委員 RCCは、中坊さんが社長に就任するときに、血も涙もある回収を行うというふうに見えを切ったんですよ。それで国民の称賛の的になった。数年後には一挙に下落をしたわけでありますけれども。

 要するに、RCCがその後世間でやっていることは何なのかということ、これは、それは多くの反論は当事者からはあることは重々承知の上でありますけれども、町の金融機関よりも厳しい取り立てをしているというふうに言われているんですよ。その辺は、やはり検証する意味でも、先ほどの元本に対する買い取りのパーセントとかその辺の事実、さらに関連する事実について、監督庁である、まあ預金保険機構が一〇〇%株式を持っているわけでありますから、その預保に対する監督庁である金融庁にその辺、後日でいいですから報告を求めたい。

 つまり、私が言いたいのは、RCCのそのような金融行政の一環として行っている回収行為について、これは金融庁は無関心でいられないはずなんですよ。不適当、不相当な回収行為があったら、これはやはり破綻した金融機関の貸し手責任の問題にもかかわってくるわけだから、やはりこれは放置できない問題なんですよ。

 不適切、不適当な回収行為をRCCが行っているか、行っていないか、これはチェックしなければいけない、重大な関心を持って見詰めなきゃいけない問題だというふうに金融庁はお考えなんですか。いかがですか。

鈴木(勝)政府参考人 御説明させていただきます。

 御承知のように、RCCは銀行法上の銀行であります。当庁としましても、RCCの債権の回収に当たりまして、手続の各段階において、顧客から求められればその合理的な客観的な理由、それについての説明責任を的確に果たすように求めているところであります。

 それで、RCCにおきましても、個別の回収業務に当たって、個々の債務者の実態等を踏まえまして可能な限り任意の話し合いによって返済を行ってもらうよう努めているものと承知しているわけでございます。その辺は、先ほどの委員の御指摘とどうかという問題はあるかもしれませんけれども、そういった点で我々としましてもそういった説明責任を的確に果たせるように求めていきたいというふうに考えております。

辻委員 今のお話は、RCCとの紛糾になっている当事者、債務者から苦情が出た場合に、それは説明責任をよく果たすように言っているよというふうにおっしゃっているわけですよ。まあ指導もしているということなんだけれども、RCCはいわば準国家機関であって、これは当時中坊さんのときに、国松警察庁長官といつでも面談をして、あそこの不法占有しているのは強制執行妨害だというようなことをじきじきに言うような関係で、刑事手続を、私なんかが見ていると非常に短縮してというか、むしろ本来のデュープロセスにのっとった形でそれを処理しているのか疑わしいようなことだってやっていたように私は思うわけであります。

 だから、そういう意味で、RCCの行状について、これは表現の方法はいろいろあるのでお許しいただきたいと思いますが、やはり少なくとも、可能な限り実態を把握する責務が金融庁としてもあると思いますよ。その点についてはそのとおりでいいんでしょう。

鈴木(勝)政府参考人 先生の御指摘でございますが、監督上必要なことにつきましては報告を受けております。

 繰り返しになりますが、RCCの個別のそういった回収業務に当たって、個々の債務者の実態等を踏まえて可能な限りそういった任意の話し合いでそうした返済を行ってもらうように努めているものと承知していますし、そういったことで承知しておるものでございます。

辻委員 具体的な苦情が預保に行くよりもむしろ金融庁なんかに行く場合の方が多いと思いますけれども、その場合には、やはり事情を問い合わせる、事情を聞いたりするわけでしょう、するんだと思うんですけれども、そういう件数というのは、年間どれぐらいあるんですか。

鈴木(勝)政府参考人 これは先生も御承知だと思いますが、そういったものにつきましては、個別取引先に係る事案でございまして、いろいろそういった関係で、金融機関に対してそういう具体的な問い合わせなり指導監督、そういった内容についてコメントは差し控えたいと思いますので、申し上げることは御遠慮させていただきたいと思います。

辻委員 あなた、南野法務大臣と同じ答えをしているじゃないか。何を言っているんですか。過去の事実に学ばなきゃだめなんだよ。内容を聞いているんじゃないんですよ。苦情について報告を聞いたり事情聴取をしているんでしょう。それは毎年何件ぐらいあるんですかと聞いているんですよ。内容を聞いていないじゃないですか。あなた、南野さんになったんですか。おかしいですよ。

鈴木(勝)政府参考人 ただいま申し上げたことにもよりまして、数字については把握してございません。

辻委員 把握していないというのはどういうことですか。苦情が寄せられてRCCから事情を聞くというようなことをやっているかやっていないか自体、把握していないんですか。やっていれば、どのような件数、大体、概算ですよ。概算、年間どれぐらいやっているんだ、今まで累計何件ぐらいやっているんだ、当然それは答えられるんじゃないんですか。そういう調査というか事情聴取を行っていないということを意味しているんですか、あなたのおっしゃっていることは。まじめに答えてください、まじめに。

鈴木(勝)政府参考人 誠意を持って答えているつもりではございますが、必要に応じてそこはお話を聞き、そういった報告を受けているわけでございます。数字につきましては、把握していないわけでございます。

辻委員 金融庁として、ではこれは数字を把握していない、こういう正式な回答ですか。金融庁として把握していないということなんですか。どうなんですか。

鈴木(勝)政府参考人 把握してございません。

辻委員 金融庁は、それは全く怠慢ですよ。これは金融庁の責任者を呼ばなきゃいけない。徹底的に、それはどういうつもりなのか、どういう姿勢で金融行政に当たっているのか、これは徹底的に解明しなきゃいけない問題ですよ。これは次の機会に必ず、必ず実現しますから、そのつもりでいてください。

 RCCの回収について不適切、不相当な回収方法があってはならないということについては、これは金融庁もそういう理解に立っているということでいいんですか。

鈴木(勝)政府参考人 不適切な対応があってはならない、おっしゃるとおりでございます。

辻委員 これはRCCの発足に当たってだと思いますが、人間性を尊重して回収に当たるとか個々の債務者の実情、実態に即して回収に当たるとかいう基本方針が述べられておりましたけれども、これについては、基本方針としては妥当であって、それに沿うような回収が行われるように監督指導するのが金融庁の立場である、こういう理解でいいんでしょうか。

鈴木(勝)政府参考人 先ほどからるる御説明いたしておりますように、RCCの個別の回収業務に当たっては、個々の債務者の実態等を踏まえ、可能な限り任意の話し合いによって返済を行ってもらうよう努めているということで承知しております。

辻委員 そうすると、個々の債務者で考慮すべき事情としてどういう事情が考えられるんですか。とりあえず、例示的に、こういう点、こういう点、こういう点、こういう点、あるんだということについて、例示的に述べてください。

鈴木(勝)政府参考人 具体的に申し上げますと、RCCに引き継がれた債権に係ります債務者の状況、それから融資の実態等の取引状況、そういった点等々事情を考えながら行っていると認識しております。

辻委員 今回の法案の参考資料で、「個人保証の問題点」ということで、これは三ページに書いてあるんですけれども、保証に関しては、直接対価を得ることなく一方的に責任のみを負うという意味での無償性、責任内容を十分に理解しないまま個人的な情義から安易に保証人を引き受ける場合が多いという意味での未必性、情義性がある。つまり、保証人は、よくわからないんだけれども頼まれたから義理で、よくわからないんだけれども、しかもそれでいて保証の報酬をもらうわけでもないのに保証するんだというようなことがあるわけですよ。これは個別の事情として考慮されているものの中に入るという理解でいいんでしょうか。

鈴木(勝)政府参考人 先ほども申し上げましたように、具体的にRCCに引き継がれた債権に係る債務者の状況と融資の状況等の取引状況、それに先ほどあります、保証人の立場や認識ですね、予測の範囲内であるか否かという問題もあろうかと思います。そういったものにつきまして、事情を当該保証人との返済交渉の中で把握していただく、どの程度の保証を求めることが妥当であるかということで、個々に対応するというふうに聞いております、承知しております。

 いずれにしましても、RCCにおきまして、そういった個々の、全体としての取引の実態、債務者の事情等を踏まえて対処しているものと承知しております。

辻委員 あなたが今おっしゃっているのは、聞いているって、だれから聞いているんですか。金融庁の見解を聞いているんですよ。RCCの口写しで物を語れなんて言っていないんですよ。勘違いしているんじゃないですか。RCCを指導監督する立場にあるんですよ。RCCの言いなりになっていてどうするんですか。不正なりおかしな点をチェックできないじゃないですか。答弁をやり直してください。

鈴木(勝)政府参考人 RCCは、銀行法上の銀行として一つの形態をとっておるわけでございます。その中で、我々としても必要に応じまして、監督上必要なものは聞いて、報告を受けておるということでございます。

辻委員 次に進みますけれども、要するに、包括根保証の限定ということがこの法案で問題になっているけれども、包括根保証の根保証人の責任を追及する場合において、包括根保証人は本当に思いも寄らない状態になっている、しかも、従来の包括根保証契約というのは、二十年、三十年前の契約であってもそれは有効なんですよ。しかも青天井で、金額は最初は五百万ぐらいだったのが一億、二億になったってこれは包括根保証で、保証人は債務を負わなきゃいけない。保証人は、先ほど申し上げたように基本的には無償でやっていることだし、それは未必性ということで思わぬことであったり、情義において仕方なくやっている、そういう悲惨な状態なわけであります。

 だから、そういう包括根保証をめぐる悲惨な状態、実態ということは、やはりこれは回収に当たって考慮すべき、個々のしんしゃくすべき事情の中に大きく言えばそれは含まれるという理解でいいんでしょう。どうなんですか。金融庁の立場で答えてくださいよ。

鈴木(勝)政府参考人 個々の債務者の実態等の中に今御指摘いただいた点も含まれているものと認識しております。

辻委員 それじゃ、ちょっと具体例を挙げて、それを参考にしながら、どういう問題点をどう解決していかなきゃいけないのか。やはり議論というのは、そういうことを知恵を尽くす場でありますから、ともに考えていっていただきたいという前提で、具体例をちょっと紹介させていただきたいと思います。

 これは、岐阜県の岐阜県総合協同組合、岐阜商工企業協同組合、前者は一九五〇年七月の設立、後者は一九五三年二月の設立であります。これは、いずれも一九四九年に、中国の合作社の日本版ということで企業組合制度が導入されて、当時の衆議院商工委員会で、大臣は、企業組合はいわゆる合作社式の形態なんだというふうに言っていて、そしてこの年の七月に法案が成立しているわけであります。

 岐阜においては、同業種、同地域、同程度の人々で、十人前後で分散型の法人として設立された。これは、後に社会党の県会議員や国会議員になられた渡辺嘉蔵さんや杉本武夫さんがそれぞれ中心になって、そういう企業組合設立運動をなされた。そして、そのような各企業組合員をそれぞれの組合員として、協同組合、先ほど申し上げた二つの協同組合、これは杉本武夫さんが専務理事であったようでありますが、組合が成立した。そして、構成員である企業組合と協同組合の関係において、いろいろな資金繰りの調達の便宜を図る必要もあるということで、東海信用組合という金融機関が一九六七年三月に設立されて、その東海信用組合、東信と略しますが、東信から二つの協同組合、岐阜総合協同組合、岐阜商工協同組合、略して岐総協、岐商協と申しますけれども、この二つの組合に貸し付けがなされたという。その中で、二つの組合がいろいろな事業を行っていた。

 ところが、その貸し付けの金額がかなり高額に上るから、限度額をオーバーするので、もっと貸し付けの金額を低くしてくれということで、一九七三年に岐阜県の指示で、両協組に対して東信が有していた十三億八千万の貸し付けをばらばらに分けてくれというような指示があって、二つの協同組合を構成している企業組合が、一たん東信から借りて、名義だけ貸して、即その各企業組合から協組の方にお金が渡る。つまり、迂回融資なわけですね。迂回融資の構造を県の指示で一九七三年に行った。

 そのときに、東海信用組合、東信も、そして二つの協同組合も、専務理事は同じ杉本武夫さんであった。だから、杉本武夫さんの指導下で、県の指示に基づいてこの迂回融資のスキームができ上がった。そのときに、各企業組合の代表者が保証人にさせられたんだけれども、このときに絶対に取り立てとか利払いの請求はしないとか、名前をかりるだけなんだということを杉本さんも言っているし、県がそういうふうに指示をしているんだということで、このようなスキームがとられた。

 ところが、その二つの協組が行っていた宅造とかテニスコートの造成とかいう、また、ブラジルで牧場をつくろうとかいう事業が破綻をして、結局、東海信用組合は最終的には一九九七年四月三日に破綻をした。そして、翌年にそのうちの不良債権分がRCCに債権譲渡された。不良債権分は百三億だ、元本として百三億だというふうに言われている。こういう事案があります。

 この事案の中で特徴的なのは、一九七三年に今言った迂回融資のスキームができた後、一九八二年に東海信用組合に岐阜県の検査が入って、欠損金額が十八億九千八百一万何がしになるということが明らかになった。これは、今手元にそのときの検査報告書がありますが、この中にはっきりそれは書かれております。十八億九千八百一万九千円の膨大な累積欠損額が生じるというふうに推定されるというふうに書いてあって、貸し付けの仕方とかいろいろなことに問題があるんだという検査報告書が、これは県の側から出ております。一九八二年九月です。

 ところが、その後十四年間にわたって、その協同組合においては、総代会において黒字の決算書がつくられているんですね。翌年、翌々年は配当までなされている。最終的に九七年四月に破綻するまで、その前年まで黒字であるという決算書が出ている。ところが、途中の一九九一年の九月には、岐阜県が再び検査に入っている。その検査に際しては、恐らく東海財務局がお手伝いに入って、いろいろ指導助言をしているというふうに思われるわけです。最終的に九七年四月に東信が破綻して、損失が百四十八億、そのうちの正常分は大垣共立銀行へ八十八億円譲渡されたけれども、不良債権分はRCCに百三億譲渡された。こういう事案であります。

 また、付言すれば、九一年の検査の前に、九一年の八月に、これも県の指示で、各企業組合が千円だけ内入れ弁済をした形になって、時効中断の措置までとっている。これも県の指示であり、杉本専務理事の指示で行っている。こういう事案があります。

 この件は、その後RCCが二百三名の包括根保証をした各企業組合の代表者の人たちに対して訴訟を起こして、元金三十三億円、遅延損害金を入れれば二倍、三倍になる、そのような訴訟を起こして、今訴訟が係属中であるというような事案であります。

 これは、特徴を整理すれば、融資の限度額逃れのための迂回融資の形をとっている点が一つ、しかも、それが岐阜県の指示に基づいてなされている。そして、各当事者は、すべて創業者である杉本武夫が支配している。各企業組合の、東信から融資を受けて、それをさらに二つの協同組合へ貸し付けるに際しての小切手の発行や銀行印なんかについては全部杉本さんが保管をしているというような、全くのお任せであるような状態なわけであります。

 つまり、名義貸しをした各企業組合というのは、すべてを杉本さん、そして二つの岐総協、岐商協にゆだねる、そして、それは東信とツーカーの関係にある、このような全くの名義貸しの事例であるということ。そして、RCCから訴訟を起こされた被告は、この企業組合の、名義だけの企業組合の借り入れの、しかも形だけの保証人であるという事実。

 そして、さらに指摘しなければいけないのは、八二年九月に県の検査が入って、八二年の段階で欠損金が十八億九千八百万あると検査結果報告書が出ている。だけれども、放置をされる。そして、九一年の時点でも、もう一回検査が入っているのにまた放置をされて、九七年四月にお手上げになって破綻をしたということで、その後、不良債権を譲り受けたRCCが、百三億のうちの三十三億の元本について訴訟を起こしている。こういう事案なわけです。

 これは、包括根保証で悲惨な状態に追い込まれる人たちがたくさんいる。今の日本の中にたくさんいる。破産を余儀なくされる、家や屋敷を奪われる、自殺も余儀なくされる、そういう人々がたくさんいる。そういうまさに氷山の一角なんですよ。こういう問題について、どのように救済の手を差し伸べるのか、どのように規制をしていくのかということが、やはり国会の場において、そして行政に問われている問題だろうと私はまず思います。

 そこで、これは金融庁に伺いますけれども、七三年の、要するに、貸し付けの限度額がオーバーしているから、東信の二つの協同組合に対する貸し付けは一たん解約をして、間にその二つの協同組合の組合員である各企業組合をかませて、迂回融資のような形をしようというふうに県が指導していますけれども、これは銀行なりそういう金融行政のあり方として、こういう金融機関のやり方というのは妥当なものなんですか、許容されるものなんですか。この点はどういうふうに金融庁としては考えますか。

鈴木(勝)政府参考人 今委員からいろいろ御付言がございましたけれども、民間の個別の事案に係る事項、事案につきましてコメントは差し控えたいと思いますが、一、二点、ちょっと申し上げたいのは、先ほど引用なさいました東海信組でございますけれども、御承知だと思うんですけれども、信用組合に対する監督事務について申し上げますと、平成十一年度までは、事業地区が一の都道府県の区域を超えない信用組合に対するものについては都道府県知事が監督事務を行うこととされていたというところでございまして、委員御指摘の平成九年四月に経営破綻をしました東海信用組合に対する監督ですけれども、その他につきまして、信用組合の監督権限が国に移管される前の事柄でありますので、当時の監督官庁である岐阜県において指導監督がなされていたということで、金融庁としてはコメントする立場にないということを御理解いただきたいと思います。

辻委員 質問をよく聞いてくださいよ、あなた。質問に対して答えていないんだよ。

 七三年のこういう迂回融資の実例がある、これを一つの参考で考えていただきたい。一般論として考えて、本来の銀行なり、信用組合でもいいですよ、金融機関が貸し付けをしている、それについて、何か限度額とかがオーバーするからということで、別の第三者を間に入れて、迂回融資という形でその限度額の規制なりをくぐり抜けようというふうに金融機関が行うということは、一般的に考えて妥当な貸付行為なのかどうなのか。

 これは金融行政を指導監督する立場から一般論としてどう考えるのかというのを聞いているんですよ。具体的なことを聞いていないの。ちゃんと答えてください。答えられる話ですよ、これは。

鈴木(勝)政府参考人 さきに委員から東海信組に対することが挙げられたものですから、それにつきまして申し上げて、東海信組において迂回融資が行われたか否かについて金融庁はコメントする立場にないということは御理解賜っているものと承知しております。

 一般的に、先生の御指摘、いろいろあるわけでございまして、いわゆる迂回融資という点につきましてのことについてはやはりさまざまな対応がある、先生からも御指摘いただくように、いろいろな判決事例でもあるというので、どのようにとらえるかというのは、私法上の有効性等も考えまして、私自身つまびらかにしていませんけれども、例えば、金融機関において、当該借入人の財務状況から、本来、融資先として適切でない、適当でない先に融資を行うことを目的とするとかあるいは大口の信用供与の規制違反を逃れる目的だとか、真の債務者でない第三者に融資を行う可能性が全くないとは言い切れないと認識しております。

 金融庁は、金融機関の融資業務に関しまして、仮に不適切な事例が把握された場合には、金融機関の業務の健全かつ適切な運営を図る観点から、必要に応じまして監督上の適切な対応をとっていくこととしております。

辻委員 ちょっと、もっと凝縮して答えをしてほしいんだよね。一般論はいいんですよ、基本的には理解しているつもりだから。だから、問いに対する答えを的確に行ってください。

 要するに、だから、これは小泉さんの話ではないけれども、迂回融資の概念を事細かく言っているわけではなくて、ある意味で脱法行為的な形で迂回融資の形態がとられていることについて、これは妥当な貸付行為とは言えないということは常識的に考えたってそうなんですよ。だから、常識を金融庁に確認しているだけの話なんですよ。役所が常識を踏まえないでどうするんですか。その辺は常識的に答えてください。

 その上で、八二年の九月に県が検査をやって、これについては検査結果報告書というのが出ていて、さっき申し上げたような巨額の欠損金が出ているんだというふうになっている。それで、貸し付けの仕方とか貸付先の信用とか、詳しくこれは書いていますよ、また場合によってはお見せするし、コピーをお渡ししますけれども。

 だから、そういう状態の中なのに、翌年から十四年間、総代会においては黒字だということでそのまま通ってしまっているわけですよ。これはやはり県がもう少し注意深くあれば、当然いろいろ事情を聞いて、それはどこまで深くその事情を聞くかということについてはやはりケース・バイ・ケースだから、それは厳密な話ではないけれども、やはりもう少し注意深くこれは検査、指導すべきものであっただろうと私は思うし、これは県のことだから私は知らないというふうに金融庁に言われても困るんだけれども、仮に金融庁の管轄下でこのような問題があれば、十八億九千万の欠損金が推定されるというときに、翌年からの総代会の決算書の審査において、もう少し金融庁としてはやはり注意深くあるべきだというふうに普通考えると思うんですけれども、違いますか。

 簡潔に答えて、時間が余りないから。

鈴木(勝)政府参考人 信用組合を含みます金融機関の決算につきましては、自己責任のもとで、金融機関がみずからの資産の自己査定とそれを踏まえました適切な償却、引き当てを実施しまして、会計監査人による監査を経た上で、資産の内容の実態を客観的に反映した財務諸表を作成することとなっております。

 当局としましては、これに基づいた自己責任における作成した財務諸表の提出を受けることとなりますが、検査やそういったオフサイトモニタリング等においてその正確性は適切にチェックするというところでありまして、必要に応じ、監督上の措置を講じているということでございます。

辻委員 あなたに聞いていたら時間が本当に足りない。二倍欲しいですよ、僕は。

 十八億九千万の欠損金があると言っているのに、それを、何を言っているんですか、あなたは。そんな一般的なことで足りる、それで十八億の欠損金が、結局、最終的には百四十八億に膨らんでいったわけじゃないですか。行政の責任は明らかですよ。こういうことについて、あなたのような無責任な対応を岐阜県もとっているからこんな事態を放置したことになったんだということをやはりこれは指摘しておきたいと思いますよ。

 結局、このような行政の極めて不適切な指導そして無責任なチェック、そして迂回融資という形でスキームを岐阜県自体が指導をしている、そのような中で、包括根保証人は全く本当に、そもそも迂回融資の真ん中に入れられた企業組合自体、名義だけなんですよ。それのたまたま十人ぐらいの企業組合に加盟している、小さな本当の零細企業の代表者が包括根保証人にとられている。そして、その人たちが今自宅を奪われるような危機になっているわけですよ。

 このような事態、これはやはり包括根保証の弊害じゃないですか。こういうことが積み重なって社会的に問題になっているから、今後変えましょうということで今回の法案がなっているわけですよ。だから、今回の法案を可決すればそれで足りるわけではなくて、過去のそういう悲惨な状態に対してどういうふうに手当てを講じていくのかということが問題であって、それについて、現実に金融行政にかかわる金融庁として、やはりRCCに何らかの物を申す必要があるんだろうと私は思いますよ。

 これについて、もう意見を述べるにとどめざるを得ませんけれども、まず、破綻した金融機関の貸し手責任が一方ではあるのに、その貸し手責任は問われないで、それを買い取ったRCC、しかもその買い取ったRCCは五%かそこらの金額で買い取ったにすぎないのに、三十三億の訴訟を起こして無理やり自宅までもぎ取ろうとしている。

 そういう事案について、これは、具体的に金融庁として、その行方について厳正に見守る必要があると私は思いますよ。厳正に見守る、場合によって不適当な面が見え隠れすれば必要な指導を行う、そのことぐらいはこの場で確約できるでしょう。おっしゃってください。

鈴木(勝)政府参考人 先生に重ねて御理解賜りたいのでございますが、民間のこういった個別事案に係る事項でございます。我々としてコメントはできないということだけは、御理解いただきたいと思っております。

辻委員 広島高裁岡山支部で平成十二年九月十四日の判決があって、これは、銀行の融資について、名義貸しの間に入った迂回融資なんですけれども、その名義貸しをした人間に対しての、これは保証債務じゃなくて通常の貸付債務の請求事案において、結局これは、迂回融資は単なる名義貸しである、そして、その名義貸しを積極的に行ったのは債権者であり、現に迂回融資の最終的な受け手である、真ん中にある名義貸し人は積極的な協力をしたものではないんだということで、結局、貸し主の地位は法的保護に値しないんだということで、民法九十三条ただし書きの心裡留保の類推適用で、これは請求を棄却しているんですよ。こういう事例がある。

 そういう社会的な矛盾に対してどのように解決策をするのかということが、やはりこれは為政者の役目であり、行政官の役目ですよ。

 最後に、これは一般論として大臣にお聞きしますけれども、理不尽な取り立て、回収行為については、これは一般論としてやはり控えるべきだというふうに思いますけれども、大臣、お考えはいかがですか。

南野国務大臣 先生のお考えのとおりだと思います。

辻委員 本件の岐阜の例、これを本当に厳正に見守っていただきながら、今おっしゃった趣旨を本当に今後生かしていただきたいということを最後にお願いして、質問を終わります。

塩崎委員長 次に、松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 早速ですが、南野大臣にお尋ねしたいと思います。

 先ほど樽井委員からも御指摘がありましたが、今回の法改正、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案の目的について、端的に大臣のお言葉で御説明を改めてお願いします。

南野国務大臣 債権譲渡特例法の目的と効果、効果は要りませんか。目的でよろしいんですか。(松本(大)委員「目的だけでいいです」と呼ぶ)はい。

 近時、企業の資金調達方法について、これまで十分に活用されていなかった動産や債権を利用して資金を調達する方法が注目を集めております。そこで、本法律案は、法人が動産及び債務者の特定していない将来債権を譲渡した場合に、登記によってその譲渡を公示する制度を創設することにより、企業が動産や債権を活用して円滑に資金を調達できるようにすることを目的としております。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

松本(大)委員 ありがとうございます。

 企業が動産や債権を活用して円滑に資金調達ができるようにという御答弁がありました。

 その目的は本当に達せられるのか。例えば、再建中の企業の再建の努力を応援してくれるものとなり得るのか、企業の経営刷新を後押ししてくれるものとなり得るのか、あるいは資源に乏しい企業に新たな資金調達の扉を開くものとなり得るのか、そういった観点から本日は御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、債権を活用した資金調達について取り上げたいと思います。

 債権を裏づけとした融資というのは、これまでも手形割引等が広く行われてきたわけでございますが、売り掛け債権を担保としたものについても既に信用保証協会が実績を上げております。今回の法改正によって債権担保融資がどの程度活用されるのか、資金調達が拡大していくのかということを考える上で、今既に存在しているこの制度の検証から入っていきたいというふうに思います。

 そこで、経済産業省にお伺いしたいと思いますが、信用保証協会の売り掛け債権担保融資保証制度の実績を制度創設以来の累計でお答えいただけますでしょうか。

鈴木(正)政府参考人 ただいまの委員御指摘ございました売り掛け債権担保融資保証制度でございますけれども、本制度、平成十三年の十二月に制度が創設されております。本制度は、中小企業の方が売り掛け債権を担保として融資を受ける際に、信用保証協会が通常の保証と別枠で保証する制度でございます。

 累計でございますけれども、累計で二万二千件、六千五百億円になっております。特に今年度上期の保証承諾件数、前年同期比で比べまして約三倍となっておりまして、本制度の利用が加速しているというふうに私ども考えているところでございます。

松本(大)委員 以前にちょうだいした資料で、売り掛け債権保証金融機関別保証承諾実績というのがありまして、金額については、十一月五日までで累計で二千五十七億円という数字をいただいておりまして、かつ九月末まででも千九百七十三億円という数字だったんですが、今、六千五百億というお話だったんですけれども、これは信用保証協会を含めてその他すべての実績なんでしょうか。もう一度確認させてください。

鈴木(正)政府参考人 ただいまの私の答弁、一つ足りないところがございまして、まことに申しわけございません。

 この六千五百億は、保証がつきました融資の総額でございます。保証の額そのものは、先ほど委員が御指摘になりました二千億円でございます。

松本(大)委員 保証の承諾額は累計で約二千億ということで、実際に融資が行われたのは六千五百億円ということなんですが、これが果たして多いものかどうかというのは、なかなか比較ができないと思いますが、調査室の資料で、百四十ページですか、五月七日付の日経新聞が掲載されておりまして、アメリカでは市場規模が年間約三千億ドル、約三十三兆円に急成長しているというような表記があります。資産担保ローン、これは動産も含むんでしょうけれども、資産担保ローンの市場としては約三十三兆円に成長していると。こういった市場規模と比べれば、日本はまだまだこれからということになるんだと思います。

 そこで、何が課題なのかということを考える手がかりとして、売り掛け債権担保融資の中身についてちょっと見ていきたいと思うんですけれども、先ほど保証承諾額は累計で約二千億というお話がありましたが、このうち中小企業からの返済が滞って信用保証協会が肩がわりする、いわゆる代位弁済について、その金額と、そしてそれが保証承諾額に占める割合、代位弁済率についてお聞かせください。

鈴木(正)政府参考人 代位弁済額でございますけれども、七・七億円、先ほどの保証承諾額分の代位弁済額、これは代位弁済率と呼んでおりますけれども、代位弁済率では〇・三九%でございます。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

松本(大)委員 ありがとうございます。

 〇・三九%というのは非常に低い数字だなというふうに思います。つまり、銀行から見れば、その保証がつけられた融資というのはかなりの優良資産ということになるのではないかと思います。しかし、見方を変えれば、これだけ代弁率が低い、事故率が低いというのは、要するに、優良企業にしか使われていないんじゃないか、あるいは、売り掛け債権の銘柄として非常にしっかりとしたものに限られているのではないかなという疑問を私は持つわけであります。

 そこで、経済産業省さんにお問い合わせをしました。一体どういう銘柄が多いんですかと聞きましたら、お調べいただきまして、きょうデータをいただきました。

 信用保証協会一般としては、資本金一千万円以下の企業に対する保証というのが全体の八二%を占めているのに対して、この売り掛け債権の担保融資についての保証については、資本金一千万以下の企業は六五%しかない。つまり、一般の保証実績に比べてこの売り債の担保保証というのは、実は限られた企業にしか保証が行われていないということなんですけれども、私は、この数字を聞いて、ちょっと、果たしてそれでいいのかという気持ちを持たざるを得ません。これはかなり本末転倒なんじゃないかなということであります。

 つまり、信用力がある、規模も大きい企業であれば、みずから資金調達ができるわけです。そうじゃない場合であっても、しっかりとした売り掛け先を持っていれば、その売り掛け先の信用力でもって資金調達ができる。だからこそ、この売り掛け債権担保融資という制度が活用される余地があるわけなんですけれども、ましてや、信用保証協会が普通の融資よりもさらに企業規模の大きいところに優先的に保証を出しているというのは、これは信用保証協会の制度の創設の趣旨からいって本末転倒なんじゃないかなという気持ちを持たざるを得ません。

 そこで、ぜひちょっとお調べいただきたいのは、もう一点の疑問の方ですね。売り掛け債権としてどういう銘柄のものが多いのか、資本金あるいは売上額で見て、どういう銘柄のものが多いのか、非常にしっかりとした銘柄のものに限られていないかというところをぜひお調べいただいて、これは後日で結構ですから、御報告をお願いしたい、そういうふうに思います。

 続いて、代位弁済後の回収について伺いたいと思うんですけれども、信用保証協会が肩がわりした後、債務者企業から回収できた金額と回収率についてお聞かせください。

鈴木(正)政府参考人 代位弁済額でございますが、先ほど七・七億円とお答えいたしましたが、それに対します回収額はまだ二千二百万円、回収率で申し上げますと二・八六%でございます。

 ただ、一点だけ申し上げさせていただきますと、これは平成十三年の十二月に制度が発足いたしまして、その後代位弁済というのがございまして、まだ引き続き本件につきましては回収の続行中でございますので、今後この回収率が上がってくるのではないかというふうに考えているところでございます。

松本(大)委員 済みません、ちょっと補足させてください。

 何で僕がこの信用保証協会の話を取り上げているかというと、売り掛け債権担保融資が限られた先にしか許容されていないとすれば、それは、今後アメリカのような三十三兆円という規模には広がっていかないということを意味しているからですよ。それで、信用保証協会というような普通の民間金融機関よりももっとリスクのとれるところ、あるいは政府系金融機関からまずは腰が引けることなく取り組んでいくべきじゃないかということを申し上げたいからさっきの資料をお願いしていますので、ぜひよろしくお願いします。

 さっきの御答弁、約二千万円で二・八六%という数字なんですけれども、これも非常に低い数字です。回収率が二・八六%というのはどういうことかというと、さっきの数字からいうと、事故る可能性は低いかもしれないけれども、いざ事故ってしまえば担保として見ることがなかなか難しいよ、こういうことになるんじゃないかと思います。実際に売り掛け債権を担保として見ていたけれども、金額の二・八%分ぐらいしか要するに担保としての実際の価値はなかった、こういうことになるんじゃないかと思います。

 債権を特定していても現状そうなのですから、今回の法改正によって不特定の債権にその対象を広げたとしても、それで果たして新規融資の担保として広く活用されていくものにつながっていくのかどうかというのは、これは私はちょっと疑問に思っています。法改正だけで本当にそんな大臣の言われるような円滑な資金調達というのは広がっていくのかなというのは、僕は非常に疑問に思うわけですよ。

 それで、今回の法改正のもう一つの柱は動産譲渡登記制度の創設なんですけれども、商取引が成立して売掛金として固まっているものですら、先ほど申し上げたように、担保として二・八六%しか見れないんだから、商取引がまだ成立していない在庫を担保とした場合というのは、これは、どれだけ担保として見れるかというのは、もっと難しいんじゃないかなと思うんですね。各委員の方の御指摘のように、だから、担保としてどれだけに見えるのかという評価手法の確立が必要だとか、実際に事故ったときにそれを換金処分するセカンダリーマーケットが必要なんだということが言われているのは、まさにこういうことなんです。

 そこで、また調査室の資料を引用させていただきたいんですけれども、動産担保融資の例というのがこの調査室の資料でも出ているんですね。ただ、ピーター商事さんにしてもハナテンさんにしても、売り上げ数十億という規模というのはなかなかありませんし、大体これは、中小企業基本法上の中小企業じゃないんですよね。

 中小企業基本法上の中小企業じゃないということはどういうことかというと、日本の企業全体のうちの〇・三%の側に位置するということですよ。〇・三%の側に位置している。つまり、しっかりした売り先を持たないとか、あるいはみずからの資本力とか財務体質がそんな盤石じゃない企業に、果たして、法改正をしたとしても、債権譲渡担保融資とか動産担保融資というのが広がっていくのか、法改正だけで本当に大臣の言われるような資金調達の多様化とか円滑化が図れるのかというのは、僕は非常に疑問に思っているわけです。

 だから、きょうの午前中の参考人の方の意見陳述の中でも、本当にこれがニューマネーの担保として広がっていくのか、むしろ既存借り入れの追加担保として銀行にとられちゃって、引き当て強化にしかならないんじゃないか、中小企業の円滑な資金調達にはつながっていかないんじゃないかという懸念をいろいろな委員の先生もおっしゃっているわけですね。

 資金調達の円滑化というのをこの法案の提案理由というか目的として高く掲げるのであれば、政府にはこの不安を払拭しなきゃならない義務があると僕は考えています。こういう不安がありますという声が上がっているんだから、それに対して、その不安を払拭するような説明を行う義務があるというふうに私は思っています。

 財務体質や担保余力もない、売り掛け先もそんなにしっかりしているわけじゃない、しかし、そうであっても、場合によっては政府系金融機関や信用保証協会を中心に円滑な資金調達をできるだけ図っていくんだという姿勢を、僕は政府の姿勢としてぜひ見せてほしいんですよ。法改正は法改正です、経済産業省も財務省も知りませんということではなくて、法改正で目的を掲げているのであれば、縦割りの壁に阻まれるんじゃなくて、それの実効性を担保する制度を政府を挙げて取り組んでほしいんですよ。その整合性がとれた仕組みをぜひつくってほしいということで、ちょっと経済産業省さんにまたお伺いしたいんです。

 公的金融機関に対する風当たりというのはかなり強いものがあるわけなんですけれども、このまま安穏としていたら生き残れないというのは重々御承知かと思います。ですから、協会保証をこれからもっと弾力的に運用されるとか、あるいは商中や中小公庫さんがこういった動産担保融資であるとかあるいは債権担保融資の証券化を例えば助けていく、そこに踏み込んでいくというぐらいのぜひ気構えを持ってほしい、私はそのように思います。協会や政府系金融機関の腰が引けているようでは、絶対これは市場として広がっていかないんですから、企業の資金調達を目的として高く掲げるのであれば、ぜひ政府として取り組んでいただきたいと思うんです。

 そこで、ちょっと質問通告の答弁者とは違いますけれども、経済産業省さんにぜひお伺いしたいと思います。

 特に中小企業金融の円滑化を図るために、売り掛け債権担保や動産担保融資の活性化に向けて今後経済産業省さんとしてどう取り組んでいくのか、ぜひ力強い御決意をお願いいたします。

鈴木(正)政府参考人 委員御指摘の、例えば売り掛け債権担保融資保証制度、私ども、まだこの利用拡大をするために幾つかの課題があると考えております。

 例えば債権の譲渡禁止特約の存在。国の方では、債権の譲渡禁止特約、これを全部解除いたしました。ところが、まだ地方公共団体でも御理解をいただいていないところがございます。私ども、こういう地方公共団体また民間企業に強くこれを働きかけまして、まず、債権譲渡禁止特約、こういうものを解除してもらおうと思っております。

 それから、やはり、このような債権までを担保にするのか、売り掛け債権まで担保にするのかということで、風評被害ということがありまして、中小企業の方には御心配の方がたくさんいらっしゃいます。このような風評被害をぜひ私どもは払拭したいということでやってまいりたいと考えております。

 それから、動産等を担保といたしました融資、今回、この国会でこの法律改正がお認めいただきました場合には、私ども、次のステップといたしまして、ぜひ制度金融としてもこのようなものをしっかり考えていきたいというふうに考えております。

 あわせまして、来年度、平成十七年でございますけれども、政府系金融機関の無担保無保証、この融資を拡大すべく、今財務当局と折衝をしております。

 それから、最後に、委員から御指摘ございました証券化ということでございますけれども、中小企業の方への無担保無保証の融資が民間の金融機関でもできるだけ進めるように、私ども、中小企業金融公庫でことしから証券化の業務を始めております。これにつきましても、来年度、枠の拡大を図りまして、民間金融機関が無担保無保証で中小企業に貸していただく、そういうような債権につきまして証券化をして、そして民間金融機関がもっと無担保無保証融資を進めたい、そういうお気持ちになっていただくようにやってまいりたいと考えております。

松本(大)委員 ちょっと時間が厳しいので余り突っ込みたくないんですけれども、済みません、ちょっともう一声欲しいんですよ。

 無担保無保証融資に取り組まれているというのは知っているんですけれども、今回の法改正の主目的である動産担保融資であるとか債権担保融資についても、証券化の業務であるとか、さらにもう一歩踏み込んだ取り組みというのはされるんですか。

鈴木(正)政府参考人 私ども、まずは法改正をしていただきまして、その法改正が成立しました暁には、やはり不動産担保や個人保証に過度に依存しない新しい融資手法、これが必要だと考えておりますので、検討してまいりたいと考えております。

松本(大)委員 ぜひ積極的に検討していただきたいなというふうに思います。

 済みません、政策投資銀行の方をお呼びして、大変お待たせして申しわけないんですが、これが多分最後の質問になってしまうかもしれませんが、今回の法改正によって、午前中の審議でもこの話があったんですけれども、会社整理の前にすべての債権や動産も担保徴求されてしまって、いざ民事再生法や会社更生法での再出発を期そうとしても、もう何も残っていない、したがって、DIPファイナンスやDIP保証を受けようにも担保提供できるものがない、そういうふうな懸念の声が上がっているわけです。商中の方が午前中参考人としていらっしゃったので私聞きましたら、DIPファイナンスに優先的な地位を与えられる法制度が考えられてしかるべきという私見を御開陳いただきました。

 こうした中で、ちょっとこれは時間の関係もあるので、政策投資銀行さん、ぜひお答えいただきたいんですけれども、企業の再生支援について今後どのように取り組んでいくのか、再挑戦可能な仕組みを制度的にどうやって担保していくのか、不安の払拭のためにどういうふうな取り組みを進められていくのかということを、ちょっと最後にお伺いしたいと思います。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 企業再生については、いろいろな金融機関がいろいろな形で支援していくということが大変重要でございます。特に、今先生が申されたDIP融資等はより積極的にしていく必要があると考えております。

 このDIP融資については、法的な観点から、共益債権性がはっきりと認められていれば問題が比較的スムーズなんですが、その辺がややあいまいな形で、金融機関としても逡巡している面がございました。しかし、私どもはそれを率先して取り組んでまいりまして、このDIP融資が一般化してまいりました。

 それで、今の共通認識としては、市場では、DIPは共益債権性がある、つまり優先的に返してもらう安心できる債権であるというふうに考え方が固まってまいりました。まだ裁判例はございませんけれども、アメリカのような制度にだんだん近づいているというふうに思っております。

 したがって、そういうことを念頭に置いて、私どももより積極的に、また民間金融機関もより積極的に対応していくことができるのではないか、そうしていきたいというふうに思っております。

松本(大)委員 本当はもっと突っ込みたいんですが、時間が終わってしまったのでこれで終わりますけれども、要するに、資金調達の円滑化を図るためには、法改正だけでは絶対無理ですから、政府としてぜひ整合性のとれた制度設計というものを行っていかなければむしろ弊害の方が大きいということを指摘して、私の質問を終わります。

塩崎委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより討論に入ります。

 両案中、内閣提出、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、討論の申し出がありますので、これを許します。加藤公一君。

加藤(公)委員 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。

 本案は、法人がする動産及び債務者の特定していない将来債権の譲渡についても、登記によってその譲渡を公示することができることとして、動産や債権を活用した企業の資金調達の円滑化を図ろうとするものでありますが、その効果には疑問がある反面、大きな弊害が予測されることから、反対いたします。

 以下、その理由を述べます。

 反対理由の第一は、動産担保の公示制度を導入することとしますと、倒産時における労働債権の保護が後退することが懸念されるからであります。倒産時の労働債権は、破産手続において、一定の範囲で財団債権として取り扱われることとされておりますが、破産管財人に対抗し得る譲渡担保権者の増大が実質的に労働債権の保護を後退させざるを得ないこととなります。

 反対理由の第二は、将来発生する債務者不特定の債権についてまで債権譲渡を公示することとしますと、倒産時における労働債権の確保をさらに困難にすることが懸念されるからであります。労働債権を中心とする一般先取特権との均衡が著しく崩れることになります。

 反対理由の第三は、動産担保の公示制度における登記の効力が、先行の占有改定に劣後することとなり、登記によっても貸し手の不安は解消されず、動産担保権の安定性、実効性に欠け、さらに、我が国においては、担保にとった動産を換金処分する流通市場やノウハウもないことから、この公示制度だけで動産担保による融資が急拡大するとは考えにくく、中小企業の資金繰りが直ちに改善することは期待できないからであります。

 総じて、この法律案が意図する中小企業の資金調達の円滑化の効果よりも、労働債権の確保が困難になるという弊害の方が大きく、まずは、企業の倒産時における労働債権を保護する制度を確立しない限り、本法律案に賛成できるものではありません。

 以上、本法律案に反対する理由を申し上げ、討論を終わります。

塩崎委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、参議院送付、民法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、田村憲久君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山内おさむ君。

山内委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 根保証契約の適正化については、多数の企業倒産による保証人への責任追及が厳しい現状にかんがみ、個人の保証人が支払能力を超えた保証債務を負担することのないよう、金融機関や保証に依存しがちな企業を始め広く国民に対し、特に極度額の設定や保証期間の制限の制度が創設されたことについて、その周知徹底に努めること。

 二 根保証契約の適正化にあたっては、担保力に乏しい中小企業者等に対する信用収縮が起きないよう、また、中小企業金融の円滑化が阻害されることのないよう、必要に応じ対応を検討すること。

 三 個人の保証人保護の観点から、引き続き、各種取引の実態やそこにおける保証制度の利用状況を注視し、必要があれば早急に、継続的な商品売買に係る代金債務や不動産賃貸借に係る賃借人の債務など、貸金等債務以外の債務を主たる債務とする根保証契約についても、個人保証人を保護する措置を検討すること。

 四 民法の現代語化については、日常生活や経済活動などのあらゆる場面と密接に関連するものであることから、早期に、国民全般に浸透するよう、積極的な広報活動を行い、その周知徹底に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

塩崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 次に、内閣提出、参議院送付、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、田村憲久君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。加藤公一君。

加藤(公)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 動産譲渡及び債権譲渡の公示制度の整備については、中小企業等における資金調達の円滑化が主な目的であることにかんがみ、資金調達の新たな手法として広く活用されるよう周知徹底に努めるとともに、債権回収の手段として濫用されることのないよう、十分な配慮をすること。

 二 企業の倒産時における労働債権の法律上の保護のあり方については、本法施行後における動産譲渡及び債権譲渡の公示制度の利用状況や労働債権の取扱いの実態等を注視し、必要に応じ、更なる検討をすること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

塩崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、両附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。南野法務大臣。

南野国務大臣 ただいま可決されました民法の一部を改正する法律案及び債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎委員長 次回は、来る二十四日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十三分散会


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