衆議院

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第12号 平成16年11月26日(金曜日)

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平成十六年十一月二十六日(金曜日)

    午後一時四分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 園田 博之君 理事 田村 憲久君

   理事 西田  猛君 理事 平沢 勝栄君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    大前 繁雄君

      左藤  章君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    田中 英夫君

      谷  公一君    津島 恭一君

      西銘恒三郎君    早川 忠孝君

      松島みどり君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    加藤 公一君

      鎌田さゆり君    小林千代美君

      佐々木秀典君    高井 美穂君

      樽井 良和君    辻   惠君

      前田 雄吉君    松野 信夫君

      松本 大輔君    室井 邦彦君

      江田 康幸君    富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   最高裁判所事務総局総務局長            園尾 隆司君

   最高裁判所事務総局人事局長            山崎 敏充君

   最高裁判所事務総局経理局長            大谷 剛彦君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          寺田 逸郎君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           徳永  保君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十六日

 辞任         補欠選任

  三原 朝彦君     西銘恒三郎君

  柳澤 伯夫君     田中 英夫君

  柳本 卓治君     津島 恭一君

  河村たかし君     前田 雄吉君

  仙谷 由人君     高井 美穂君

  辻   惠君     室井 邦彦君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 英夫君     柳澤 伯夫君

  津島 恭一君     柳本 卓治君

  西銘恒三郎君     三原 朝彦君

  高井 美穂君     仙谷 由人君

  前田 雄吉君     河村たかし君

  室井 邦彦君     辻   惠君

    ―――――――――――――

十一月二十六日

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(辻惠君紹介)(第三二五号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第三六四号)

 同(近藤昭一君紹介)(第三六九号)

 同(古屋範子君紹介)(第三八五号)

 同(池坊保子君紹介)(第四三一号)

 同(仙谷由人君紹介)(第四三二号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第四四三号)

 同(鳩山由紀夫君紹介)(第四六〇号)

 同(山井和則君紹介)(第四六一号)

 国籍法の改正に関する請願(渡辺周君紹介)(第三二六号)

 同(近藤昭一君紹介)(第三七〇号)

 同(山口富男君紹介)(第三七一号)

 同(金田誠一君紹介)(第三八六号)

 同(池坊保子君紹介)(第四三三号)

 同(仙谷由人君紹介)(第四三四号)

 同(高井美穂君紹介)(第四六二号)

 敗訴者負担制度を導入しないことに関する請願(仙谷由人君紹介)(第四三五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判所法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、文部科学省大臣官房審議官徳永保君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局園尾総務局長、山崎人事局長及び大谷経理局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。どうかよろしくお願いします。

 大臣、大臣の御親戚や知人の中に、司法試験を受験中の方はおられますか。

南野国務大臣 残念ながら、そのような優秀な人材は我が家にはおりません。

山内委員 私は、二十一世紀のあるべき法曹の姿というのは、単に法廷の活動だけにとどまるんじゃなくて、もうあらゆる場面で司法への需要にという期待にこたえられるような人材が必要だと思っているんです。

 だから、そのためには、もちろん専門的知識は十分に習得をする、しかしその一方では、やはり柔軟な思考力、あるいは説得能力があって交渉能力がある、社会に対しての洞察力がある。それから、私たち国会議員がやはり立法権という権限を行使するわけです。間違った法律をつくることはあってはならないけれども、あるかもしれないので、チェックの機能として違憲立法審査権という権限も法曹は持っているわけです。だから、そういう意味でも、いわゆる今あること、今ある法律、政策について批判をする能力というものも十分になければいけない。そういう法曹が求められていると思うんですが、大臣はどうお思いでしょうか。

南野国務大臣 先生おっしゃるとおりだと思いますが、批判だけではなく、やはりそこで何か新しくつくり出していく何物かがある方が私はプラス思考でいいのではないかなと思っておりますが、そのような素養を備えている方々というのは、本当に先生のように、もうしっかりと根づいておられる方だと思っております。

山内委員 そういう人材を育てるためにも、今までの司法試験という一点突破型の法曹登用制度じゃなくて、やはりロースクール、法科大学院で一生懸命、今言ったような論点や国際感覚あるいは人権の意識を持った法曹をロースクールでつくっていこうということで、法科大学院をつくった意味というのは、やはり法曹界にそういう新しい流れというか新しい血を注ぎ込んでいこうという思いでつくられた制度だと思うんですが、大臣もそういう御認識でしょうか。

南野国務大臣 私もそのように思っておりますし、この二十一世紀を背負っていただける法曹界の方々というのは大変な御苦労があるだろうというふうに思います。また、そういう中で、中身、いわゆる専門性を学習するということと同時に人間性を磨いていく。

 さらに、今おっしゃったロースクールのあり方の一つとしては、やはり実際を見聞して、実際の中の役割を理解しながら、そのように自分の役割を構築していく方々というためのロースクールであろうかなと。一点型試験でやるということではない方向で構築されていく新しいやり方を、私は意義を見つけております。

山内委員 私も、受験時代に目指した法曹の姿の中の何人かは、夜間大学出身の方だったんです。司法制度改革審議会の最終意見書にも、夜間大学とか通信制大学というものの、そういう構想を持った法科大学院制度をつくろうじゃないか、そういう指摘もあったと思うんですが、夜間大学あるいは土日の開講、そういう面で法科大学院を設営しているのは現在まだ全国に六カ所ぐらいしかないようでございまして、こういう問題については、例えば文科省はどういう認識を持っているんでしょうか。

徳永政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもといたしましても、各法科大学院が社会人等のニーズにこたえまして昼夜開講制など履修形態の工夫を凝らすこと、大変これは大事なことだと考えております。

 先生御指摘のように、法科大学院、十六年に開校した六十八校のうち六校で昼夜開講を実施しておりますが、また十七年に開校する六校のうち二校で昼夜開講制を新たに実施する、さらに一校が、これは全く純粋な夜間だけの法科大学院となる予定でございます。

 それぞれの大学院が具体的にどのような履修形態というものをするかは各大学院の判断によるところでございますけれども、今後、各大学院が社会人等のニーズにこたえてさまざまな工夫を講じ、努力していくことを私どもとしても期待をしております。

 なお、通信制で行うということにつきましては、この法科大学院制度創設の際に中央教育審議会でもいろいろ審議いただきましたが、その中央教育審議会の審議の中でも、学生に対して法科大学院にふさわしい十分な学習指導が行える体制が確保できるかどうか、そういった課題があるということも指摘されておりまして、現時点においては、通信制の法科大学院は設置をされておりません。

山内委員 多様な人材を法曹界に送り込むという理念からすれば、働きながら学んで法曹資格を得たいという社会人のための制度設計というのはやはり必要じゃないかと私は思っています。

 それから、もう一つ疑問に思っているのが、地方に法科大学院が少ないんじゃないか。どうも大都市圏、つまり関東近辺、それから近畿、中京、こういうところに法科大学院が多く設置されている。

 これは、私も、法曹になろうと思ったときの思いは、町医者というか、かかりつけの医師みたいに、風邪を引く前から何か気軽に相談できる、そういう存在でありたいなと思ったのもその勉学意欲をかき立てた理由の一つなんですけれども、そういう人たちを多く地域の中からすくい上げ、育てていって、地域の中に人材として送り込んで、またその地域が活性化してほしい、そういう思いの法科大学院の制度設計であるべきじゃないかなと思うんですけれども、どうでしょうか。

下村大臣政務官 お答えさせていただきたいと思います。

 おっしゃるとおり、司法制度改革意見書におきまして、地域を考慮した適正配置に配慮すべきとされておりまして、平成十六年度に開校された法科大学院は、地域ごとにアンバランスがありますけれども、結果的には、地域ブロックで見ますと、北海道から沖縄まですべてのブロックにおいて設置されております。

 この法科大学院の設置はあくまでも各大学の自主的な判断によるものでございまして、文部科学省としては、今までのような事前チェック制から事後チェック制になったということで、文部科学省の判断によって各地域に計画的に配置するというようなものではないというふうに考えてはおりますけれども、しかし、この司法制度改革審議会の意見書の、地域を考慮した適正配置を配慮するという趣旨を踏まえて、各地域に設置された法科大学院が十分に地域の期待にこたえられるような、私学助成における経常的経費の支援、それから法科大学院等専門職大学院形成支援プログラム、また日本学生支援機構による奨学金などを通じた支援によってバックアップをさせていただきたいというふうに思っています。

山内委員 大都市圏以外の地域の法科大学院を活性化させるということはやはり大きな意味があると思いますし、それから、地方都市、農村部に法曹を行き渡らせるというのはやはり国家戦略として考えてもいい問題だと思いますので、引き続き、例えば法務省は検事を教員として送り込み、あるいは、最高裁でいえば裁判官をどんどん、特に地方の法科大学院に積極的に送り込んでいただきまして、地域、地方での法科大学院の活性化に引き続き取り組んでいただきたいと私は思っています。

 司法試験の合格者数あるいは合格率の問題について少しお聞きします。

 新しい司法試験と旧の司法試験が併存する最初の年が二〇〇六年でございます。二〇〇六年の合格者数を千六百人ぐらいだと考えておられるようなんですけれども、例えば、法科大学院を出て新しい司法試験に合格する合格者数と、今までの旧試験、古い試験で勝ち上がってくる合格者の割合は、千六百人だとすると、例えば何人と何人ぐらいだと大臣思われますか。何人と何人ぐらいにしたいなと思われますか。どうですか。

南野国務大臣 先生のおっしゃるその難しい数というのは、現在司法試験委員会で検討中でございますので、逆に先生の御意見をお聞かせいただくと参考になると思います。

山内委員 しかし、司法試験委員会に、法務省の方で、新司法試験に合格する合格者数を八百人、旧司法試験に合格する合格者を八百人という一つのたたき台を出されているんですよ。

 だから、それが、たたき台だから法務省の案だろうとは私は言いませんけれども、もしそうだとしたら、新しい二十一世紀の司法界において活躍する法曹人はすべてロースクールを出た者から司法試験に合格した者を採用していこうというこの三年間にわたる司法制度の改革の波からすると、ロースクールを出て最初に受験して合格する人数が八百・八百人の八百人だとすると、極めて私は少ないと思うんですが、政府の方でどういう認識でしょうか。

寺田政府参考人 まず、委員が最初に御指摘になりましたこれからの法曹養成の理念、法科大学院を中核とするプロセスとしての教育というものを大事にしていくという点におきましては、政府は全くその同じ立場をとっていることを申し上げたいと思います。

 その上で、しかし、平成十八年から平成二十二年のいわゆる新旧司法試験の並行実施期間の数についてでございますが、委員御指摘のとおり、新しい司法試験による合格者が八百、現在の司法試験による合格者が八百という報道が一部報道機関によってなされたことは私どもも承知いたしておりますが、その記事にございますような、政府がそのような案をたたき台として出した、あるいは法務省がその案をたたき台として出したというような事実はございません。

 実際は、まだ司法試験委員会におきまして、これまでどのような議論が行われてきたか、これは司法制度改革の当初にさかのぼりまして、意見書でどのような考え方がとられてきたか、あるいは推進本部の、とりわけ法曹養成検討会においてどういう取りまとめをされたかということを踏まえた上で、実際どのようなケースがあり得るかというさまざまなシミュレーションを前提に、御議論をこれから進めていくという段階にございます。

 したがいまして、現在のところ、政府としてどのような数字が現に議論の中心になっていて、どのような結論が出得るかということを申し上げることは時期尚早だというふうに考えております。

山内委員 確かに、法科大学院の卒業生は七、八割確実に受かるというような、受験生とか大学の先生にとってはそう読める表現だと思うんですけれども、そういうことを約束した制度設計ではないと先日政務官から説明を受けて、政府側はそう読むんだろうということはそう思っていますけれども、七、八割は合格できるような仕組みを日本としてつくったわけですよね。ですから、それと、二割とか三割しか合格しないということのギャップは、これはもう相当なものでしょう。これをどうやって説明されますか。先日答弁に立たれた政務官、どうですか。

富田大臣政務官 先日、谷委員に対して答弁させていただきましたとおりだと思うんですが。先生が前提とされる二割か三割という数字も、今確定的なものではありませんし、ただ、意見書も、今先生御指摘のように、読み方によっては、やはり七、八割受かるんだと思って法科大学院に行かれた方もいらっしゃるというのも事実だと思うんですね。

 そういう意味で、今後、法科大学院がどのように学生の皆さんに教育をしてくださって、司法試験委員会の方でどのような人数枠を決定していくのかにかかるんだと思うんですが、やはり多くの方が合格できるような制度を国が責任を持ってやるべきだというふうに、私自身も法曹出身ですので、先生と同じような思いでいることだけは付言させていただきたいと思います。

山内委員 だとしたら、司法試験委員会での審議というのは公開にすべきだと思うんですよね。つまり、私たちが合格者数とか合格率というのを後で検証するにしても、どういう意見が出て結論が出たのかというのがわからなければ、今おっしゃったような法科大学院の理念は大切だと思う、そこと実際に出た結論が全く違っていれば、理念がわかっていないなと私たちはまた批判もしなくちゃいけないわけなんですよ。

 ですから、司法試験委員会の話は非公開とする、メモをとっても、外に出て話しちゃいけないというような厳しい規制をするんじゃなくて、検討委員会の議事録はだあっと出ているわけですから。もう毎回の議事録が出ているわけですね。司法研修所の所長の加藤裁判官の意見なんかも、読んでいて、本当に修習生に期待しているなというのがよくわかるわけですよ。

 検討委員会でしゃべらせて議事録も公表しているんですから、司法試験委員会は、だれが言ったのか、どういう発言をしたのかということもきちんと出していただきたいんですけれども、その仕組みづくりはできませんか。

寺田政府参考人 司法試験委員会は、本質的には試験についてあらゆることを御議論になるわけでございます。一体、受験生のレベルがどういうラインであるとか、あるいはことしの合格者のラインをどうしようというようなことは御議論になるわけでございますので、本質的には、その透明性、公開性に限界があるということは御理解いただけると思います。

 ただ、今委員が御指摘になられたとおり、この問題には政策的な側面がございます。したがいまして、御議論をいただく、御理解いただく上で、やはり検証というのも十分大事なことだろうということは私どもも理解いたしておりますので、どういう議論があったかということが十分わかるような形で議事の公開を後ほどさせていただきたいというふうに現在も考えております。

山内委員 司法試験合格三千人時代を迎えるということの政策的な考慮というものの第一は、やはり全世界的に見ても法曹の数が、国民の例えば一万人当たりに比較すると、随分各国より少ない。その上に、司法過疎といって、もう全く情けないですよね、ゼロワン地域といって、弁護士も何もだれもいないような地域が日本じゅうにある。

 だから、そういうのを解消していこうという大きな政策目標があったわけですから、やはりそれに向かって合格者数とか合格率というのを考えるべきだと思うし、その考える考えというのは、やはり国民こぞっていろいろな意見を出し合って、それで適正な量と質を考えながら、市場経済にマッチした形での法曹人口を考えていくということだと思うんですよ。

 例えば、単純な話で、最初、平成十八年の受験者が二千五百だとして、そのうちの例えばでは千人合格するとしますか。そうすると、千五百人が残って、翌年の六千人と合わせて七千五百人が、その翌年のまた三千人に満たない合格者数を受験するわけですからね。やはりどうしても、どう考えていっても、半分にも満たないわけですよね。

 それが平成十八年、十九年、二十年と計算できるからこそ、七、八割の人が合格できたらいいなと思って制度設計をした法科大学院が、もう最初の卒業生から、法科大学院に行っても合格できないという現実を学生中にわかってしまったから、だから、何はなくても法科大学院に進もうという有為な人材が、そういう行こうという動機づけがなくなるんじゃないかと私は思っています。

 本当に、合格者数、合格率、この問題については、透明な議論の中でしっかりと皆さんの検討をお願いしたい、そう思っています。

 今お話ししましたように、大学入試センターが行う法科大学院の入学の適性試験で、昨年が約三万五千人受験したのに、ことしは約二万一千人、約四割も受験者が減っている。まず、この原因は何か、文科省からお聞きしましょう。

徳永政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生の方から御指摘いただきましたように、大学入試センターが実施しました適性試験の受験者総数、昨年よりも三九・七%減りまして、一万四千人減っているわけでございます。このうち一万二千人がいわば既卒者等の社会人でございまして、なかなか私どもとして具体的に、ではなぜ社会人等の受験者が減ったのかということについては、必ずしも分析なり、その理由がわかるということではございません。

 ただ、一般的に申し上げれば、昨年は制度創設の年でございました。そういったことでかなり受験をされましたのが、ことしは二年目であり、志願者そのものも大きく減少したということも考えるわけでございますが、ただ、それ以外の要因については、ちょっと正直に申しまして詳細を把握しておりません。

山内委員 推進本部はどう考えていますか。

山崎政府参考人 ただいま文部科学省の方からも御答弁ございましたけれども、私ども、その実態について、現在把握する立場にございません。したがいまして、詳しいことはわかりませんけれども、これは、年々によってその受験者数というのは変わり得る話でございます。特に社会人グループの方については、必ずその一定の方が毎年毎年受験されるかというと、そうはいかないんではないかということもございますので、私どもとして、やはり五年ぐらいちょっと動向を見てみないと詳しい分析はできないんではないかというふうに思っております。

 いずれにしましても、有為な人材が来ていただいて、司法試験に合格して活躍できるような、そういうシステムを構築しなければならないということは間違いございません。

山内委員 今社会人が逃げているんじゃないかという発言もあったんですけれども、まさにそこが問題だと思うんですよ。今までの一点突破の司法試験の受験生あるいは合格者というのは、特に短期間で合格する受験生ほど、例えば予備校をよく使うあるいは論点主義で暗記も強い、そういうような受験生が合格している。その弊害をなくすというか、改める意味もあって、法科大学院で全人格教育をしていこうという発想になっているわけですよね。

 だから、その合格率も合格者数も、ロースクール、法科大学院を出ても本当に三割ぐらいの少ない合格率だということになると、今、ある大学の法科大学院にお聞きしたら、例えば医師が何名も法科大学院の学生になっているとか、あるいは、何で法科大学院に来たのかわからないぐらいの、優秀な、エリートコースを進んで、商社でも海外の大学にも行かせてもらって日本の貿易を担ってくれるような、そういう人材もやめて来ているんですね。そういう人たちが、三割ぐらいしかロースクールを出ても合格しないと思ったら、来ないですよ。だって、危ないもの。今までのキャリアをなくして来ようという魅力がないでしょう。

 ですから、そういう意味でも、事務局長が五年をかけてなんてことを言っておられると、例えば平成十八年に卒業をする人は、連続三回試験に挑戦したら、事務局長が五年かけて結論を出しても、まあ、局長はもう退任されるとは思いますけれども、もう遅いんですよ。今法科大学院に入学して、学部の学生ではない、寝食忘れて、いい法曹になるために頑張っている人たちにとって、もう遅いんですよ、そういう結論が出ても。

 だから、三千人体制というのを平成二十二年までにやっこらやればいいというんじゃなくて、例えば平成二十年には採用するとか、あるいはその動向を見て、平成の二十二年ぐらいには三千五百人とか四千人というような構想も考えるというようなアイデアは政府の方にはないんでしょうか。

寺田政府参考人 まず最初に、委員が御指摘になりました、これまでは司法試験に挑戦なさるようなことがなかったような、医師を初めとして、いろいろなキャリアをお持ちの社会人の方々、こういう方々が法科大学院に入学されて司法の世界に進むことを目指されているということは、私どもも大変歓迎している事態でございます。

 先ほど平成十八年の合格者数についてのお尋ねがございましてお答えしたところでございますけれども、同時に非常に重要なのは、平成十九年に、当初入られました三年の未修者コースの修了者の方々が受験されるわけでございますので、十九年の合格者数というのも非常に重要なポイントだろうというふうに、まず私どもは認識いたしております。

 次に、総合格者数の枠を三千人ということがしばしば出てまいります。平成二十二年ごろというのが意見書の立場であり、推進計画にもそのことが明記されているわけでございますけれども、私ども、この数値が平成二十二年ぴたりに絶対値だという形で理解はしておりません。

 先ほども申されたように、非常に優秀な方がたくさん出てこられるということも十分あり得ることでございますので、これは司法試験委員会で今後の動向を十分に御高察なされた上で、平成十八年から平成二十二年までどういうカーブを描いて総合格者数を決めていくかということも御議論をなさるというふうに理解をいたしております。

山内委員 私は、法科大学院の先生方にもいろいろとお話をお聞きしたんですよね。そうしたら、年齢が高い教員がロースクールに多い、だから、文部科学省の方からは教員の年齢の偏りを指摘されて、もうちょっと若い教員をそろえてくださいというような留意事項が付されて設立の認可が一年おくれになった、そういうような学校も聞いております。

 だから、法科大学院も七十校ぐらいあるんでしょうけれども、かなり無理もしているんじゃないかと思うんですね。だけれども、それだけ教員になった皆さんはやりがいを持って、この法科大学院を成功させようと思っていると思うんですね。

 だから、まだまだ法科大学院側の努力も必要だとは思うんですけれども、例えば、専任教員の三分の一は十年間、いわゆる学部との兼任をしてもいいようなダブルカウントが認められているようなんですけれども、そういうようなことを廃止して、プロを育てる、プロフェッションスクールに特化するというふうに文科省としても誘導してでも、国民から法科大学院を卒業した人材は間違いがない人材ばかりだと社会的な信頼を得るような人材が育ってほしいし、法科大学院の先生方も育てようと思っているんですよ。

 そうすると、今思いのほかの発言をしていただいて私もうれしいんですけれども、三千人というのは上限の数字じゃなくて、できるだけ早く達成しようという目標値でしかないということなわけですから、新司法試験合格者を例えば十八年から旧試験の合格者と同程度とか、全く法科大学院の仕組みを考えた当初の考えと反するようなことだけはやめていただきたいと思います。

 司法試験委員会の議論の中に法科大学院の先生方を取り込んで、そういう人たちの話も、委員として構成メンバーに入れ込んで話を聞いていくというようなことは考えないんでしょうか。

寺田政府参考人 これはこの前もお答え申し上げましたけれども、現に法科大学院の関係の先生方、法科大学院で現に教えておられる先生方が二人、司法試験委員会の中に入っておられますし、それから、司法試験においては、司法試験法によって、実際の試験を実施されるのは司法試験の考査委員の先生方でございますが、この司法試験の考査委員の先生方には多数法科大学院の関係者がお入りになられるだろうというふうに考えております。

山内委員 引き続き、そういう方々の意見も、現場の人材を教育している人たちの生の意見だと思いますので、尊重しながら、合格者数等についての審議の参考にしてもらいたいと思います。

 もう一つ、朝日新聞や読売新聞の報道でちょっと困ったなというのが、法科大学院を出た後も合格率が余り高くないんじゃないかというような大新聞の報道を見た学生は、こういうことを言ってきているんですね。

 例えば、私も地元の事務所で、エクスターンシップといって、出身大学が法科大学院の学生を何週間か引き取って教育してくれないか、そういう問い合わせがあるんですね。法曹資格のある皆さんの事務所にも、多分そういう問い合わせが出身大学から来ていると思うんです。

 そういうエクスターンシップなどの実務教育を法科大学院でやろうとしている、あるいは模擬裁判をやろうとしている、それから、ビジネス・ロー・コースといって、例えば経済学部が充実している大学の法科大学院では、そういう特色ある授業も開講していこう、そういうところが、勢い、三割ぐらいしかロースクールを出ても合格しないということになると、それこそもうそういう科目はやめて、また昔の論点主義の、司法試験に出る科目だけの授業ばかりをしていくんじゃないか、そういう懸念を持っているんですね。

 これは、学生ばかりじゃなくて、法科大学院の先生方も同じような懸念を持っているんですけれども、まさかそういうことにならないようにされるでしょうね。

下村大臣政務官 先生御指摘のような危惧はやはり考えられることでありまして、そのために、法科大学院は、これまでの司法試験でただの得点のみという選抜方式があったために、受験予備校に大幅に依存した結果、結果的に法曹となるべき者の資質の確保に大変な影響を及ぼしたということからこの法科大学院制度が導入されるわけでございます。

 そういう意味で、法学教育と司法試験とが有機的に連携するプロセスとしての新たな司法養成制度の中核的な機関としてそもそも構想されたものであるわけでありますから、法科大学院において、この制度の理念の実現に向けて、実務家教員の参画のもとに法理論と実務のかけ橋を強く意識した実践的な教育が実施され、また、今度の新司法試験においても、このような法科大学院の教育内容を踏まえた上で新たなものに切りかえられるというふうに承知しているところでもございます。

 各法科大学院では、そういう意味で、学生を司法試験に合格させるために努力をしているわけでございまして、今後、各法科大学院に対する社会的な評価というのは、単なるテクニック的なものということではなくて、本来の法曹養成実績というのが十分大学院の合格状況の中で重視されるというふうに期待をしておりますので、さらに、入学させた学生にどのような教育を行って、そして学習以外の面においてどのような指導を行ったかとか、こういうことが法科大学院全体の教育活動においてなされるということがこれからの評価基準にも法科大学院に対してなってくるというふうに思いますし、文部科学省としては、各法科大学院が国民から十分なそういうプラスアルファの付加価値としての評価と信頼が受けられるような努力をしていくことについて、バックアップをさせていただきたいと思っています。

山内委員 では、文科省としては、間違っても、例えば各法科大学院が補講、補修に予備校の先生を連れてくる、そういうような間違った仕組みは絶対にしないということですね。

下村大臣政務官 お答えします。

 新司法試験も、そういうふうな法科大学院の教育内容を踏まえたものに切りかえられるというふうに承知をしておりますので、今までのような得点のみによる選抜ということでは合格できないということの中で、法科大学院として、新試験制度にのっとった適格な教員が指導するということになると期待をしております。

山内委員 そういう期待感だけではなくて、例えば、司法試験の論文に出てこない国際的な分野、あるいは地域社会でどう頑張ったかとか、そういうような科目について充実している法科大学院については客観的な評価をたくさん与えていく、そういうような仕組みを担保とすれば、ますますいろいろな、多様なことを勉強した柔軟な、何にでも対応できるような法曹ができてくると思うんですけれども、そういうことは考えますか。

徳永政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、法科大学院、これはさまざま、ことし新たに六校できるわけでございますが、全体として、法曹養成の中核機関でございます。

 ただ、それぞれの法科大学院は、そういう全体的な状況の中で競い合って、いわば競争的な環境の中でそれぞれ切磋琢磨して、よりよい教育を目指しているわけでございます。当然、そういう法科大学院それぞれは、私どもといたしましても、例えば、知的財産あるいは企業法務などに力点を置いた特色あるカリキュラム、あるいはさまざまな幅広い分野のカリキュラムといった特色を出しているわけでございます。そういったことが、それぞれの法科大学院がそういう競争的環境の中で、学生にとってもあるいは社会的な信頼をかち得ていく上でも、より大切なことであると思っております。

 私どもも、この法科大学院の設立に合わせまして、現在、法科大学院等専門職大学院形成支援プログラム、こういう新しい補助制度をつくったわけでございます。これにつきましては、それぞれの法科大学院が、その教育内容、方法を工夫して開発する、特に、他のものと違う特色あるカリキュラムをつくるとか、あるいは各大学院が連携してよりよい教材をつくっていく、そういったことに対して、すぐれたそういう取り組みに対して支援をするプログラムでございまして、こういった支援等を通じまして、それぞれの大学院が法曹養成の中核ということではありますけれども、それぞれ、その中で特色を発揮していくということに大いに支援をしていきたいと思っております。

山内委員 最高裁にも来ていただいておりますけれども、ことしの司法修習の最後の試験で、合格留保者あるいは不合格者が司法修習の歴史の中では多分最も多い数字だと思うんですけれども、四十六人もそういう人たちが出た、この原因については、何が考えられるんでしょうか。

山崎最高裁判所長官代理者 本年九月に行われました第五十七期の司法修習生考試におきまして、ただいま委員お話しのとおり、四十六名の応試者が合否判定留保あるいは不合格となったわけでございます。

 この原因でございますが、五十七期修習生と申しますのは昨年四月に採用されたのですが、この期から人数が千人程度から千二百人規模にふえた、そういうことがございまして、どうしてもその点に目が行くということでございます。

 ただ、それが原因かどうかという点につきましては、必ずしも根拠がはっきりしないというふうに思っております。

 確かに、司法研修所教官等からは、修習生を指導する過程で、どうもこの期の修習生には力不足の者だとか意欲不足の者が多い、そういう話があったことは事実でございまして、結果として、修習の最後のところで合格の判定を得られない者が相当数出てしまったということであろうと思いますが、先ほど申し上げました人数の増加がこうしたことの直接の原因となっているかどうかは、先ほど申し上げたとおり、必ずしも明らかではございませんで、今後の状況をもうしばらく見ないと何とも言えないのではないかと考えております。

 なお、司法研修所教官は、こうした力不足の者に対しましては、個別にその不足の点を指摘いたしまして、努力するように指導してきているところでございまして、この点につきましては、今後ともやはりきちんとした指導をやっていきたいというふうに思っておることをつけ加えさせていただきます。

山内委員 私も、司法試験の合格者数がふえたことが直接の原因とは思っていないんですけれども、だけれども、国民はそう思いますよ。だから、国民に、これからその倍も合格していくわけですから、その辺の説明はやはり必要じゃないかなと思います。

 それから、修習の期間が短くなって、さらに新制度になるとまた短くなるわけですよね。そうすると、詰め込み教育が行われて、それにまたついていけない、あるいは消化不良を起こす、そういう人たちもふえてきて不合格者がふえたりして、あれ、そういう人たちに日本の法の支配を任せていいのかなとまた国民も悪く勘ぐってしまう、そういうような事態になってはいけないと思うんですけれども、最高裁の不合格者増に対しての改善点というか、決意を示してください。

山崎最高裁判所長官代理者 委員御承知のとおり、来年から千五百人程度にさらに修習生が増加するということが予測されておりまして、それがさらに今のお話のとおり三千人にふえるということになります。そういった新しい司法修習において人数がふえていくということにどう対処すべきか、これはまさに新しい司法修習のあり方という問題でございまして、最高裁判所に司法修習委員会というものを立ち上げまして、法科大学院の教授の方にも御参加いただき、その他有識者もお入りいただいて御議論いただいたわけでございます。そこでいろいろ議論をいただいております。

 まず、集合修習の関係、これは現在、委員御承知のとおり、クラス分けをしておりまして、それぞれのクラスに五教科の教員五人ずつが指導しておるということでございますが、これは人数がふえたらどうなるかということになると、これもやはりクラス編成を維持してきめの細かい集合修習を行いたいということを一つ考えております。

 それから、実務修習の関係でございますが、これも司法修習委員会でいろいろ御議論いただきました。

 二、三申し上げますと、それぞれ、民事裁判修習ですとか刑事裁判修習、検察修習、弁護修習と分野別修習がございますが、その修習においては、実務家の個別的指導のもとに実際の事件を処理する、いわゆる個別修習と申しておりますが、そういうものを中心にすべきである、こういった提言をされた上で、例えば民事裁判修習中に特定の事件について修習した者は、他の分野に移っても、その事件をその後もフォローして、あるいは合議を傍聴するですとか判決を起案するとか、そういうことをやって、きちんとした修習がやれるようにしてはどうかとか、それから、数がふえるということになりますと、それぞれの人に事件をたくさん経験してもらえるかどうか、そういう問題も出てまいりますが、この点は、修習生全員に、同じ事件について争点ですとかあるいは判断のポイントを書いてもらう、それで修習生同士議論して、その上で裁判官が指導する、そんな工夫をしてはどうか、こういった提言もちょうだいしております。

 私どもとしては、こういう工夫を通じまして、受け入れ数が増加しても効果的な指導ができるように、さらに具体的な修習のあり方について検討してまいりたい。それによって、従来どおり、法曹としてふさわしい基本的知識、技法を付与して修習の質を確保したいというふうに考えております。

山内委員 今の局長の話の中で、そういう司法研修所の中で一生懸命、最後、卒業前にみっちり鍛え上げたいというのはわかるんですが、研修所の教室の中でいろいろな知識を学ぶというのは、それは、法科大学院を設置したので、法科大学院でやることだと思うんですよ。法科大学院で、例えば二年、三年、みっちり教え込む、考えてもらう、そして司法試験を突破してもらう。そして、実務的な問題については研修所で一年間しっかりと最後のおさらいをしてもらうという仕組みとして、私は、この新しい法曹養成制度をつくったと思っていますので。

 和光の研修所に集めてまたじっくりやりますわというんじゃなくて、もしそうだとしたら、司法修習の一年間をほとんど実務修習に充てて、最後の卒業試験で、一年間の実務修習と、法科大学院でどれだけ一生懸命まじめな大学院生活を送ったのかというのが判断できるような試験をしていった方がいいと私は思っているんですけれどもね。

 とにかく、法曹に対して国民はすごく期待をしていると思うので、それを裏切らないような仕組みをつくっていかなければいけないなと思っています。

 給費制の問題についてお聞きしますけれども、これも大臣、裁判官、検察官、弁護士、この三者というのは、人権擁護と社会正義を実現する、この思いでやはり仕事をしてもらいたいし、おのおのがそういう職務を果たすことを通して公益の実現を図っていく、私利私欲のために働くんじゃない、そういう法曹が望まれていると思うんですが、どう思われますか。

南野国務大臣 もう先生がおっしゃっているとおりでございまして、裁判官、検察官、弁護士、それぞれの職責は違うと思いますけれども、法曹三者は、いずれも正義の実現、そして基本的人権の尊重を旨として司法に関与していただけるものというふうに思っておりますし、そのような目的で教育がなされるものというふうにも思っております。

山内委員 だとすると、貸与制の採用というのはかなりきついんですね。

 例えば、奨学金を受け取っている人、大学の四年間で毎月十万円の奨学金がもらえます。それをずっともらっている人は、もちろん返済をしなければいけませんね。ところが、その人が法科大学院に三年間進んで、法科大学院でも二十万円借りられるんですね、奨学金がもらえるんです。そうすると、二十万円、ずっと三年間毎月借ります、もらえます。

 そうすると、大学の学部時代の奨学金、それから法科大学院時代の奨学金、これを法科大学院卒業時点から返さなくちゃいけません。そうすると、月々の返済が五万円ぐらいになるんですよ。それから、例えば、国民生活金融公庫というのがありますね、そこで二百万円までの教育ローンを貸してくれるんですよ。それは、例えば法科大学院で二百万円を借りたら、法科大学院卒業時点から返済ということがかかってくるわけですよ。それが約三万六千円で、どっちも借りている人は九万円、毎月返済していかなければいけないんですね。法科大学院を卒業したころから毎月九万円。

 しかも、法科大学院を卒業して、その年に合格すると決まっていないでしょう。五年間のうちにチャンスがあるわけですから、五年目で合格する人もいるわけですよ。そうしたら、その五年間は、無職なのに毎月九万円ぐらい払っていかなくちゃいけない、計算上ですよ、なるんですね。それから、大学で奨学金制度をつくっている大学があります。そこも借りていたら、今の九万円にオンされるんですね、計算上はですよ。

 大臣、例えば、今法科大学院に六千人ぐらい入学しているんですよ。そのうちの何人が奨学金をもらっていると思っていますか。六千人いるんですよ、法科大学院に。そのうち何人ぐらいが奨学金をもらっていると思いますか。勘でいいですよ。

南野国務大臣 勘でいいということでございますが、ちょっと私ははっきりした数字はわかりません。

山内委員 半分の三千人がもらっているんですよ、受けているんですよ。つまり、六千人法科大学院に行っているうちの三千人が奨学金をもらっているんですね。その上に、国民生活金融公庫のシステムを使っていたり、大学の奨学金制度を使っている。それを利用している人たちを含めると、もう四千人ぐらいはいくと思うんですよ。ですから、それまでして頑張っている人に貸与制を採用すると、またそれが借金になるんですよね。

 だから、そう思うと、後で附帯決議でしっかりと最高裁にも大臣にも、守っていきます、猶予期間はしっかりとつくり上げていきますと宣言してもらおうと思うんだけれども、それほど法科大学院の道を選んだ者にとっては過酷な法曹養成の仕組みであるということだけはわかっていただきたいなと思うんですね。

 低所得の人でも、本当に庶民の苦しみを間近で見たり、自分の家庭がそうだったり、そういう人こそやはり人権感覚がすぐれていて、その痛みをわかる人が法曹になってくるんじゃないかと私は思うんですよ。あるいは、もう高校や大学時代からがり勉で、論点だけを勉強して、司法試験の予備校に行って、司法試験に合格するためだけの勉強をして合格した人に、なかなか、この苦しんでいる人たちの気持ちというのはわかるのかなと思うんですよ。わかる人もいると思いますよ、もちろん。だけれども、やはり身につまされて感じる思いというのはまた違うじゃないですか。

 だから、そういう人たちの、法科大学院に行こうあるいは司法試験にトライしよう、そういう夢を実現させてあげよう、そういう国家こそ民主主義がやはり確立されている国なんじゃないかなと私も思うんです。

 最後に、大臣、そういうようなことを何か感じられますか。

南野国務大臣 本当に日本の最高峰の学業を修めようという方たちにそのような奨学金をいただいていただきながら、法科大学院を卒業すると五年間の猶予はありますけれども、後十年かけてお返しいただく。この借りるお金も、これは国民の、本当に先生方に対する願いが込められていると思いますので、ある意味ではいいコースを選んでおられる方だな、私はそのように思っております。

 その人のお金を借りたその苦しみ、返していくその苦しみが本当に苦労となって、いい弁護をしていただく、いい裁きをしていただく、そういうような方たちにも成長していただけるというふうにも思いますし、専門性プラスその前に人間性がある、そのようなところでそれが涵養されていくのではないかな、そのように思っております。

 志して司法を目指す方々、本当に多く夢を持って目指していただきたいなというふうに思っているところでございます。

山内委員 例えば……

南野国務大臣 済みません、ちょっと訂正させてください。

 私が間違って言ったようで、修習資金は十年で返すわけでございます。ロースクールの奨学金は二十年で返していいということのようでございますが、そのようでございます。

山内委員 先ほどから指摘させていただいていますとおり、お金のない人でも、とにかく法曹になろう、あるいは法科大学院に進もうというインセンティブが働くような仕組みというのをやはり国の仕組みとしてつくってあげたいなと思うんですよね。

 悪く言う人は、優秀なのでもお金がないやつには、例えばどこかからひもつきで、例えば余り世間的に芳しくないような人から、団体からお金を出してあげて貸与制で借りたお金についても即座に返して、そのかわり、そのある団体のためだけに特殊な任務につく、そういう何かサスペンスみたいな、だけれども、本当に、心配する人はやはり心配するんですよ。

 だから、そういう意味でも、給費制の廃止だけじゃなくて、自分としてはこういう考えを持っている、そういう人材が、司法権の独立とか、私たちがもし間違った立法をしたらしっかりと直してくれるような仕組みを国家の制度としてつくっているわけですから、そういう意味で、本当に優秀な、私の後輩というか、そういう優秀な人材が育ってくる、そういうような仕組みをこれからも築き上げていただきたいと心から念願して、臨時国会最後の質問を終わります。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、松野信夫君。

松野(信)委員 臨時国会最後の質問をさせていただきます。民主党の松野信夫です。まだありますが。

 法科大学院の話が先ほど来からずっと続いております。私も最初にこの問題について取り上げて質問をしたいと思います。

 何回も出ている問題ではありますが、法科大学院がことしの四月に船出をいたしました。しっかりとした制度設計がなされて、やはり万全の船出ができるようにこれは政治の場でもしっかり見守っていかなければいけない、それだけ大変重要な問題でありますので、済みません、何度も取り上げさせていただきたいと思います。

 今やはり一番大きく問題になっているのは、法科大学院が設立をされて、全部で六十八校ございます。大学院生も五千八百人ほどおられる。ところが、実際どれだけ合格するんだろうかというのでもう大変心配、不安が生じております。

 これも従来から指摘されておりますが、司法制度改革審議会の最終意見書では、法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度、例えば約七割から八割の者が新司法試験に合格できるよう、というふうにはっきりこれは文言で出ているわけです。七割八割というのは、ある意味では、これまでに御答弁にありましたように、それくらい合格するぐらいしっかりとした教育をやるんだ、それはそういう説明も成り立つかもしれませんが、しかし、実際に七割八割という数字が明記されているものですから、まじめに勉強しておれば大抵それくらいは通るだろう、そういうふうに法科大学院の生徒さんが思われても、それについては私は非難はなかなか難しいんじゃないか、こう思っております。

 最近のこれはヨミウリ・ウイークリーという雑誌に「「七割合格」実は「七割不合格」 ロースクール院生「詐欺だ!」」というふうに取り上げられて、まあ、詐欺だというのはちょっと言い過ぎだとは思いますが、それくらい非常に不安感をあおり立てているところもあるわけです。

 一方では、法科大学院、特に私立にしても独立行政法人の大学にしても、これで何とか生き残りを図ろうということで、六十八校も設立されているわけです。そうすると、言うならば入り口の部分では、文部科学省の方は多数認可し、五千八百人も入学させる。ところが出口の方では、法務省あるいは司法試験管理委員会の方がぎゅっと合格者を絞ってしまう。今挙がっている数字から見ると、二、三割ぐらいしか合格しないというのがどうも正直なところじゃないか。ということで、先ほど雑誌を引用しましたように「「七割合格」実は「七割不合格」」こういうふうに指摘もされているわけです。

 そうすると、では、文部科学省の方にもお伺いしたいと思いますが、こういう事態、これにどう対応していくのか。もう既に設立認可しちゃったから、七割合格しようと三割合格しようとそんなことはどうでもいいというような無関心を装うような、これはやはり許されないというふうに思います。やはり、文部科学省としてのしっかりとした指導を求めたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。

徳永政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどもお答えいたしましたけれども、平成十七年度を対象とした入学者選抜の志願動向、現在ではその全容を把握できませんけれども、実際のところ、既に九つの大学では入学試験を行っておりますけれども、志願者数自体が平均四〇%ぐらい減少している。ただ、それでも募集人員を上回る志願倍率となっているということは間違いないわけでございます。現在、新司法試験における合格者数の設定のあり方、それにつきましては、法務省の司法試験委員会において検討されていると承知をしております。

 私ども、法科大学院、せっかく法曹養成の中核機関として設立し、それぞれの大学院、一生懸命教育をしているところでございます。また、学生さんも大変学んでいると承知をしております。私どもも、さまざま法科大学院の関係者あるいは学生さんのアンケート等につきましても、個別の大学院等にお邪魔いたしまして、それぞれの皆さんの御意見等伺っているところでございます。

 総じて申し上げれば、やはり法科大学院関係者にとっては、修了者が新司法試験に幾ら合格するのかといったことは重大な関心事だと認識をしております。法科大学院協会では、去る十月二十九日、この問題につきましての要望を取りまとめまして、公表したところでございます。文部科学省といたしましては、法務省の司法試験委員会におきまして、このような法科大学院関係者の要望も踏まえまして適切な方針が示されることを期待しているところでございます。

松野(信)委員 文科省の方として、大学院を設立認可する、その時点で一定の制度設計、大体どれくらいが入学して大体どれくらいが合格をしてどういう方向に進んでいく、そういう意味の、概略で結構です、詳細でなくてもいいですから、概略の制度設計というのはそもそも念頭にあったんでしょうか。何割ぐらいが大体合格して卒業して法曹として進んでいくだろう、そういうような設立認可当時の制度設計というのはあったんでしょうか。

徳永政府参考人 お答え申し上げます。

 法科大学院の設置ということにつきましては、司法制度審議会の意見書におきましても、関係者の自発的創意を基本としつつ、広く参入を認める仕組みとすべきということにされているわけでございます。また一方で、政府全体を通じて現在規制緩和を進めておりまして、その一環として、大学の設置認可等につきましても、従来ございましたような入学定員の抑制といった方針は文科省としては廃止をしたわけでございます。

 こういった全体の流れを受けまして、文部科学省といたしましては、法科大学院につきまして必要な教員組織あるいは教育課程などの定めを置いた専門職大学院設置基準といったことに基づきまして厳格な審査を行う、その厳格な審査を満たしたものについては設置を認めることとしております。

 したがって、これは先ほど政務官も御答弁いたしましたけれども、私どもとして定員管理を行うとかいうことではございませんで、あくまでも全体として大学の自主的な判断というものを踏まえつつ、その上で司法制度審議会意見書あるいは政府の規制緩和という基本的な流れの中で、必要な基準を満たしたものにつきましてはこれを認可していくということでございます。

松野(信)委員 規制緩和もいいですけれども、必要な基準を満たせば次から次に認可していった。どうもそれが実際のようで、そうすると、あとは大学院生が何割合格しようとそれはどうでもいいように、どうもそういうふうに、当初、認可時点では制度設計としてはそんな認識だったのかなというふうに言わざるを得ないわけで、それがいいのかどうか、これは時間をかけて議論していかなきゃいけない問題だろうと思います。

 それから、今後の問題ですけれども、法務省は法務省で、順次法曹の数をふやしていく、こういう一応の設計は、それはそれなりにお持ちであると思います。それに対して文科省の方はどういうふうにコミットされるおつもりなのか。合格者をどうするかというのは、それは法務省あるいは司法試験委員会の分野だから、自分たちはもうそれは一切あずかり知らぬ、こういうスタンスなのか、それについても連携をとりながらいろいろ協議をしていこう、こういう姿勢なのか、この点はどうですか。

徳永政府参考人 お答え申し上げます。

 法科大学院制度の創設に際しましても、法務省初め関係省庁と私ども十分連携をしてきたつもりでございます。現在でも、さまざまな意味で連携をし、意見交換等を行ってございます。ただ、司法試験の合格者のあり方といったことにつきましては、先ほども御答弁申し上げましたけれども、法務省の司法試験委員会で検討されていると承知をしております。

 私どもといたしましても、各大学院あるいはその各大学院の学生さん等の状況、そういったことについては、個別に大学院を訪問していろいろ状況をお伺いするということもしているわけでございまして、私どもとしては、まず何よりも法科大学院協会の先ほど申しました十月二十九日の要望、こういったものを踏まえまして、まず司法試験委員会において適切な方針が示されることを期待しておりますし、また、そういったさまざま法科大学院にかかわる問題につきましては、今後とも法務省を初め関係省庁と十分連携をとっていきたいと思っております。

松野(信)委員 先ほど申し上げたように、ロースクールの院生は大変心配をしているところでもありますので、引き続いて法務省とよく連携をとっていただきながら進めていただきたいというふうに思います。

 文科省さんの方はもうこれで結構でございます。ありがとうございました。

 それでは、残された時間で給費制の問題について質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、修習生の統一修習の問題ですが、これは、せんだって同僚の辻議員の方も質問しておったところです。多少重複するところもありますが、大変重要なところですので、指摘をさせていただきたいと思います。

 現在のような統一修習ができたのは、もう五十年以上前、一九四七年に裁判官、検察官そして弁護士、すべての志望者が統一修習することになりまして、同時に給費制も採用された、こういうわけでございます。せんだっての辻議員の質問に対して、山崎事務局長さんも、これは大変高く評価しておられるし、個人的な見解ということもありましたが、自分としてもありがたかった、こういうようなお話がありました。

 今回、この給費制を廃止しようということでありますが、やはり統一修習というものが大変大事である、それを経済的にもしっかり支えているのが給費制ということで、ある意味では車の両輪に近いような、そういう状況ではないかなというふうに思っております。この統一修習の重要性というのは、当初から、そして今でも全く変わらないというふうに私は理解をしております。

 ちなみに、手元に司法研修所報というのがございます。これは昔からずっと発行されているわけでありまして、これはかなり昔、昭和二十五年のを持ってきたんですが、「司法修習生諸君を迎う」という当時の研修所長前沢忠成さんの文章もありまして、ちょっと読みますと、「判事になる人も、検事になる人も、弁護士になる人も、二年間全く同一の修習課程を経ることが、新制度の眼目である」「よき裁判官は、同時によき検察官でなければならない、又よき弁護士であるべきだという三者全く一元という理想のもとに、司法修習生なる新しい制度が設けられた」、こういうふうにうたっているわけであります。それから、少し後に、「諸君は、やがては、国の法秩序維持の重任に当られる方々」である、「諸君は公務員ではありませんが、国家が尠からぬ給与を与えて勉強して頂いているいわば公務員に準ずるもの」だ、こういうふうに指摘がされております。

 この点については、私は、司法修習制度が始まった時点も、そして現在もこの理念というのは全く変わらないものだ、仮にこの給費制というものが廃止されたとしても、こういう統一修習の理念というものは変わらないものだというふうに考えておりますが、この点はどのようにお考えでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま委員から御指摘ございましたけれども、私もその点は同感でございまして、今回、給費制から貸与制に変わるということにはなりますけれども、統一修習の理念、この必要性、大切さ、これは今後も変わらないというふうに理解をしております。その発言がまさに、給与はなくなりますけれども、国家で修習をする、これはやはりそれなりの大切さ、これを認めてやるわけでございまして、今後もこれが続いていくというふうに理解をしております。

松野(信)委員 そうしますと、統一修習の大切さ、理念というのは変わらない、ただ残念ながら、給費制は廃止されて貸与制になる。そうすると、理念は変わらないけれども、この給費制が変わるというのは、専ら財政上の問題だ、貸与制の方が理念的にすぐれているからそちらをとるというのではなくて、専ら国の財政上の理由から、給費制から貸与制に変わるんだ、こういう理解でよろしいでしょうか。

山崎政府参考人 この点につきましては、今回、プロセスによる教育をしていく、こういう政策をとったわけでございまして、それは、質を落とさずに大量の法律家を輩出する、こういう目的でございます。

 そういうシステムを構築するということは、やはり非常に金がかかること、これは間違いございません。現に、相当、文部科学省の方でも予算をとっていただいているわけでございます。そういう点で、まず改革には金がかかるということは間違いございません。それから、これ以外にも、裁判員制度あるいは司法ネット、こういうものについてもそれ相応の金がやはり必要になってくる、財政が必要になるということは間違いございません。

 これは、必要なものはやはり要求をしてつけていただくということになろうかと思いますけれども、その際、やはり国の財政、限りがございますので、やはり司法として合理的な負担、財政負担はどうあるべきかということも考えざるを得ないだろうということでございます。これが前提でございます。

 その中で、では、合理的な財政負担という点でいろいろ見ていった場合に、この給費制という問題について一つのポイントがあるということでございまして、この点は、当初二百数十名の合格という、それで法律家も非常に少ない時代で、国家で給与を払って法律家を育てていく、これに対して国民の理解があったということでまさに法律ができていたわけでございますが、今後はもう三千人体制、十倍を超える体制をつくり上げるわけでございますが、その事情が変わったのに本当に国民の方は理解をしていただけるのかどうか、これについて、かなりいろいろ意見が出てまいったわけでございます。

 それからもう一つは、公務員ではない、先ほど公務員に準ずるというふうに言われましたが、そのとおりでございますけれども、公務員でなくて公務にも従事しない者が国から給与の支給を受けるというのは、現行法上も余り例がない、こういう制度であるということからもいろいろ批判があったということでございまして、理念は変わりませんけれども、それを置いておく政策的な背景、これが変わってきているということでございまして、それにこたえようというものが今回の法案だということでございます。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

松野(信)委員 わかりました。大体、専ら財政上の理由、司法全体の予算をどう使うか、そういうことだろう。それはそれで結構ですが、ただ、今ちょっと一つ気になりましたのは、今の御答弁の中で、給与制については、公務員でない、公務員に準ずる、だけれども給与が出てくるということについては、前々から何か批判があったような御説明がありました。

 しかし、私が聞いているところでは、そういうような批判というのは余り聞いておりません。もう五十年以上もこの司法修習生の給費制というのは続いておりまして、その間、給与を払うということについて特段の批判というのはなかったように思うんですが、もしそういう批判があったというのであれば、いつ、具体的にどういうようなことで批判があったのか、ちょっとそれを教えてください。

山崎政府参考人 私も、前からあったという趣旨ではなくて、最近ということでございますけれども、一つは、もう御案内かと思いますけれども、財政制度等審議会の意見でそういう指摘がされているということ。それから、改革審議会、この中の意見で、最終的な意見の取りまとめが行われておりますけれども、この中にもこの制度について批判される方もおられたわけでございます。

 それから、私ども、検討会を設けまして検討いたしました。かなりいろいろな御意見が出ましたけれども、最終的には、この給費制維持ということに賛成される方は一名ということで、あとは全員反対ということでございます。特に、法律家以外の方の意見が大変厳しかったという状況でございまして、私どもは、そのような意見に従ってまいったということでございます。

松野(信)委員 わかりました。前からというわけではなくて、要するに、今問題になっている司法制度改革をどうするか、ここの中でそういう批判も出てきたということかなと思います。

 ただ、要するに、修習を受けるあるいは研修をしっかりするということは、これは大変大事なことで、もちろん、限られた予算の中ですから無尽蔵に費やすというわけにはいかないと思いますが、ただ、私が調べたところでは、最近、厳しい財政状況の中でも、各省庁、それなりに研修というのに重きを置いて予算を使っている、こういう事実があります。

 私が調べた中では、各省庁が長期在外研究員、アメリカとかヨーロッパとかの大学院に研究員を派遣する人数、これは例えば平成七年度、各省庁を全部合計しても六十名でありました。これが平成十六年度では百二十九名と、倍以上に長期の在外研究員を送り出している。それだけ各省庁ともそういう研修というのに金をかけているわけでありまして、予算的にも、例えば平成十二年度で見て十億円だったのが、平成十六年度で十六億円ぐらい全部で使っているという実態があります。

 そして、最高裁、裁判官の外部研修の概要もとってみました。そうすると、裁判所も結構研修に金を使っているんです。しかも、これはふえている。平成十二年度で約一億一千五百万円、裁判官の外部研修にお金を使っている。これが平成十五年度で一億八千百万円、ふやしている。これは毎年ふやしている。

 つまり、研修の重要性というものは、予算的に見ても、確かに国の財政状況は厳しいですが、それでもやはりこういうところにお金を使っているというのが実態としてありますので、この点はぜひ指摘をして、給費制あるいは貸与制、この点についてもできるだけ、やはり司法修習生というのは、先ほども申し上げた立派な理念がある、よき法曹をつくって国家国民のために働いてもらうというわけですから、はっきり言って余りけちるなということを申し上げたいというふうに思っております。

 それから、先ほど申し上げた司法研修所の前沢所長の話にもありましたように、統一修習で「三者全く一元という理想のもとに、」というふうにうたわれておりまして、これは、前沢所長みずからやはり法曹一元というのを念頭に置いているのではないかなというふうに私は考えております。

 法曹一元については、かねてよりいろいろ議論もありました。大きなところでは、昭和三十九年の臨時司法制度調査会の意見書、いわゆる臨司意見書かなと思います。割合有名な文章で、法曹関係者は大体よく知っているかと思いますが、こういうふうにうたっています。「法曹一元の制度は種々の長所をもつた一つの望ましい制度であるから、それが実現されるための基盤を培養することについても、十分の考慮を払うべきもの」、こういうくだりがありまして、それなりの評価を行っている。

 私は、先ほど山崎局長も言われたように、統一修習をしっかり守っていく、また、この臨司意見書の中にありますように、基本的にはやはり法曹一元、裁判官の給源を弁護士あるいは検察官の方から出していく、そういうような法曹一元を基本的には目指していくという姿勢はしっかり保つべきだ。仮に今回の法案で給費制をなくして貸与制にするというふうになったとしても、やはりこの目指すべき法曹一元という方向性が変えられてはいけない、このように考えておりますが、この点はどのようにお考えですか。

山崎政府参考人 法曹一元につきましては、臨時司法制度調査会において、先ほど委員が御指摘になられましたような取りまとめがされております。いろいろ条件もございまして、その条件について、そういう整備がされた場合には一つの理想であるということだろうと思います。まだ現在ではその条件が満たされていない、こういうまとめだというふうに理解をしております。私どもも今いろいろな制度を進めておりますけれども、まだその条件が整っている段階には至ってはいないだろうというふうに思っております。

 ただ、この点につきまして、法曹一元、いろいろな内容を盛り込んでおりまして、言われる方によっていろいろ違ってくるわけでございます。したがいまして、今回、改革審議会でもいろいろ意見がございまして議論がされましたけれども、裁判官の給源を専ら弁護士から採用する、そういう理念というよりも、それとは別に、実質的な法曹一元を目指していこうというような立場が盛り込まれておるわけでございまして、この具体的な発現といたしまして、今回、私どもの司法制度改革におきましても、事実上の運用として、弁護士会と裁判所で、弁護士から任官していくシステムを制度化しようということ、あるいは弁護士さんが調停官として参加をする方法、それから、裁判官、判事補が弁護士になってその実務を体得してまた裁判をやっていく、こういうような相互交流、これを随分盛り込んでやってきたわけでございまして、法曹一元というのは多義的でございますけれども、こういう面では今回も手当てをしましたし、今後も大いに充実をしていくということが必要かというふうに理解をしております。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

松野(信)委員 ありがとうございました。

 続いて、法曹の公益性の問題について御質問したいと思います。

 統一修習というのが終わりますとそれぞれ裁判官になり、検察官になり、弁護士になる、こういうことでありますが、どうも一部の人からは、どうせ将来弁護士になって金もうけするんだろう、そんなのに何で国が金を払うんだ、こういうふうに言われる人もいないわけではない。しかし、それぞれ立場は三者違いますけれども、やはり国民の人権をしっかり守っていく、国家国民をしっかり守っていく、法律を適用することによって国の秩序、社会の秩序をしっかりつくっていこう、そして社会の正義をしっかり実現していく、この観点に立てば、立場はそれぞれ違いますけれども役割は全く変わらない、私はそう思っております。

 中には、いろいろ弁護士に向かっては、金もうけばかりしていてけしからぬというような批判をする人もいないわけではないんですが、大臣は、こういう法曹の公益性、あるいは大臣からお考えになって、弁護士というイメージ、これはどのようにお考えでしょうか。

南野国務大臣 私の考えもあわせて述べさせていただきますが、公務員であられる裁判官それから検察官、それはもちろん弁護士の方も、基本的人権の擁護や社会正義の実現を使命としております。特に弁護士の方では開業される方々もおられて、特に、悩む方々の身近におってそのお仕事をしていただける、これも大変貴重であろうかと思っておりますし、それらを、いろいろと使命を、おのおのの役割、使命を持ちながらお仕事をしていただく、そのお仕事も公益のために職務を行っていただけるもの、そのように認識いたしております。

松野(信)委員 裁判官、検察官は公務員でありますから、これは言うまでもなく公益性がある。ただ、弁護士もぜひ御理解をいただきたい。私が弁護士出身だからどうこう言うわけではありませんが、例えば国選弁護、これは裁判所の方の命令で、どんな極悪人といいますか、殺人なり強盗なりを犯した人でも弁護しなければいけない、そういう職責を担っているわけであります。そういう意味では、極めて公益性の高い仕事をしているというふうに言えるかなと思っております。

 しかも、最近は、弁護士会もいろいろな形で公益的な仕事をやっていこうというのが、かなり取り組みをしているんじゃないか、こういうふうに思っております。いわゆるプロボノ活動と呼ばれているものでありますが、今申し上げた国選弁護のほかに、これはまさに弁護士会が真っ先に取り組んでやりました、ボランティアでしましたのが当番弁護士制度。例えば、刑事事件が発生した、だれか捕まったということであれば二十四時間以内に弁護士が駆けつけましょう、これはまさに手弁当で始めたわけであります。そうすることによって無罪の人も救出して正義を実現していく、こういう意味合いが十分あるわけですね。そのほかにもいろいろな形で、無料での法律相談サービスを実施する、あるいは法律扶助というようなものも行うということでやっております。

 幾つかの弁護士会の中には、弁護士会の会則の中に、弁護士というのはそういう公益活動をしなきゃいけない、こういうのを義務づけしている弁護士会もあるわけで、恐らくこういう意味の公益性というのはますます高められていくのではないかなというふうに思っております。

 国選弁護だと、多少、弁護料は報酬ということで出ます。これは、私も調べてみましたが、標準的には一件八万五千円程度ということでありますので、通常の私選弁護に比べると何分の一かというようなことになろうかなというふうに思いますが、それだけ頑張ってやってもらっているということではないか。

 ぜひ、やはりそういう公益性があるというのを前提にして、統一修習と経済的なそれに対する支え、これをお考えいただいて進めていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

南野国務大臣 先生の意を体しながら、しっかりと頑張っていきたいと思っております。そのとおりだと思います。

松野(信)委員 それから次に、修習専念義務の問題であります。

 今回、法律で修習専念義務というのが明文化されるということであります。これまでの質疑を聞いてまいりますと、公務員でないけれども公務員に準ずるのが司法修習生だ、だけれども、給料が出てくるので、その辺をしっかり明確にする意味で法律上の明文で修習専念義務を課した、こういうことのようであります。

 そうすると、明文化されたけれども、実際上、この修習専念義務というのは法律に明文化される前と後とで実質的には何ら変化はない、こういうふうにお聞きしてよろしいですか。

山崎政府参考人 現行制度ではこのくだりがないわけでございますが、これは、給与を支給しておりますので、そこから当然解釈として読めるということで明文の規定はないということでございます。

 今回は、これが修習資金になるわけでございますので、修習資金が貸与されるということについて、それだけを書いただけで果たして本当に修習専念義務というのはどういう関係にあるのかということが非常に不明確になるおそれがございました。したがいまして、修習専念義務を担保する、こういう趣旨で修習資金の出資を法律上明確化した、こういうことでございます。

 したがいまして、明文で書かれる書かれないの違いはございますけれども、その内容的なものについては全く変わらない、こう理解をしております。

松野(信)委員 せんだって当委員会の質疑を聞いておりましたら、修習専念義務というのは土曜も日曜もなく修習専念の義務があるんだ、こういうような話もありまして、それでは修習生というのは休みをもらっちゃいけないのか、こういうふうにも伺えるので、この辺は実際のところどうなんでしょうか。例えば、土日、自分の実家が農家であれば、農家の自分の実家の手伝いや、何かお店でもやっていると、お店の店番にでも立ってお手伝いをする、そんなのもだめだ、こういう趣旨なんでしょうか。

山崎最高裁判所長官代理者 修習専念義務の関係で、土曜、日曜はどうか、そういうお尋ねでございます。

 他の業務を行うとか、それから他の職業を持つとか、そういう関係で申しますと、土曜も日曜もなくそういうことをやったらいけない、そういう趣旨でございまして、当然、合理的な範囲で休息も必要ですし、個人的な用務に時間を割くということは合理的な範囲では当然あり得べしということであろうと思います。しかし、そういうことを除いてはほかの仕事をしてはいけない、そういう修習専念義務があるというふうに理解しております。

松野(信)委員 今回、法文で明文化されましたので、やはりもう少し修習専念義務の中身を明確にしておかないと、ここだと義務違反かどうかというふうになったときに、ややあいまいじゃないかなという気がします。だから、先ほど私が申し上げたように、例えば修習生が土日、自分の実家の農業の手伝いをする、自分の実家のお店のお店番をする、そういうのは構わないというふうに聞いてよろしいんですか。

山崎最高裁判所長官代理者 修習専念義務の中身の一つとして、他の業務についたり他の職業を持つということが禁止というか、原則的に行えない、そういう形になっております。

 もちろん、最高裁判所の許可を得た場合にはそういうことが可能ということになっておりますが、その許可を与えるかどうかというのは、これは個別の事情に従って判断していくべきものだろうと思っております。それは、修習の持つ意義、重要性といったものが一方にございますし、一方ではそういう職業をしたり他の業務につくことの必要性といったもの、そういうものもございましょうし、そういうものを個別に検討しながらその許可を与えるかどうかを判断していく、そういうシステムになっております。

松野(信)委員 ちょっと、全然質問の答えになっていない。私の質問は端的に、土日に自分の実家の農業の手伝いをする、お店のお店番をする、これはいいんでしょうと。常識の話で、どうですか。

山崎最高裁判所長官代理者 ただいま、実家の、例えば農業を営んでいる、そこのお手伝いをする、それは業務として行うということではないという趣旨でございましたら、それは許可をされる対象にはならない、許可を与えるべきかどうかというその対象にはならないというふうに考えてよろしいかと存じます。

松野(信)委員 許可を与えるかどうかの対象にならないということは、その程度は結構ですよ、こういうふうに理解してよろしいですね。一応そう考えておきます。

 それと、よく、許可をとれば他の業務についていいんだということがこの質疑の中で何回も出たんですが、それでは、これまでの中でそういう他の業務につくからということで許可が出たという例はあるんでしょうか。どんな場合に許可が出たんでしょうか。

山崎最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおり、基本的には修習に専念していただく必要があるわけでございますが、例えば、非常に特別な場合でございますが、同族会社の役員になっておられる、その方が修習生になった場合に、その役員を外れるとその会社が成り立っていかない、非常にダメージをこうむる、そういうケースの場合に、修習期間中は現実の業務を行わない、会社の業務を行わない、そういう留保条件をつけた上で許可した例、例えばこういう例がございます。

松野(信)委員 許可した例、今一件お聞きしましたけれども、ほかに、私が聞いているのではこういう許可が出たというのはほとんどないと。そもそも許可の申請すらない。ここ四、五十年ぐらい、そういう許可の申請もなければ許可をしたこともないというふうに私は伺っているんですが、違いますか。

山崎最高裁判所長官代理者 委員がお尋ねいただいておりますのは、恐らくいわゆるアルバイトというようなものではなかろうかと思います。他の業務について報酬を得るというようなもの、そういうものについては許可した例は基本的にございません。

松野(信)委員 そうすると、今の御説明ですと、やはりアルバイトというのは基本的にだめだということになるのかなというふうに思うんです。

 ただ、実際、よかったか悪いのかわかりませんけれども、かなり前は、いわゆる司法試験の予備校みたいなのがあるわけですね。あるいは受験生仲間というのがあるわけです。そういうのに対して一定の問題を出して採点をしてあげたり、採点してあげれば一枚について幾らか、そのペイをもらう、そういう謝礼をもらったりするケースというのはよくあったわけです。全員とは言いませんが、かなりそういう例があったんですが、それも、アルバイトといえばアルバイトなんですね。だけれども、そういうものについて今まで許可が云々という話は私は聞いたことがない。

 今回、給与制がなくなるということになります。仮に貸与というふうになったとしても、給与制がなくなりますので、そうすると、給与をもらえないから生活が苦しくなった、ついついそういう、例えば司法試験の予備校のアルバイトで講義をしたりとか、あるいはちょっと採点をしたりとかいうことはあり得ることだろうと思うんですが、こういうことについてはどうなんでしょうか。

山崎最高裁判所長官代理者 委員のお話しになられました後輩の受験指導といったものでございますが、過去には許可を受けないでそういうことを行った例があるように私も聞いておりますが、そういった場合には、そういうことをしては困るというようなことで指導いたしまして、やめてもらったということがございます。

 経済的に非常に困窮したケースのことを申されました。そこは、まさに兼職、兼業の問題でございまして、先ほども申し上げました、一方では、司法修習というのは非常に大事でございまして、その課程をきちんとやっていただかなきゃいけない、そういう意味で修習に専念してもらう、あるいは中立公正性を保ってもらう、そういう要請がございます。一方では、兼業、兼職をしなければならない必要性もございますし、その態様といったものもございますので、そういう事情を個別的に検討して許否を判断していくということだろうと思っております。

松野(信)委員 どうも余りはっきりしないんですが。

 修習生は守秘義務を負っている、これは私はかなりやはり厳格に考えていかなければならない問題で、人の秘密をある意味では握っていますから、プライバシーをどんどんと暴露するというようなことがあってはならない、その点は高く、きちんと守らなければならないと思うんですが、この修習専念義務というのは、法文では出てくるわけですが、しかし、その中身たるや、率直に言って、ややあいまいであります。

 これを余り厳格にされて、修習専念義務違反だということで何らかの処分でもなされるというようであれば、これはおかしな方向になる。一方では給料はもうやめるというふうにしておきながら、一方では修習専念義務だという、義務の面ばかり強く押しつけるというようなことになっては、これはおかしな方向になるのではないかというふうに思いますが、どうでしょうか、この点は。

山崎最高裁判所長官代理者 先ほど委員が申されました、給与制がなくなることによって非常に困った状況が生じる、その結果としてそういった事態が生じる、これは実は、逆から申し上げますと、修習に専念していただくという点では非常に困るところでございます。そのために、私ども修習を預かっております最高裁判所としては、修習に専念していただくために必要な経済的基盤の確保ということをぜひお願いしたいというふうに思っておりまして、これが今回法案に出てまいります貸与制ということであろうかと存じます。

 したがいまして、その貸与制の中身をきちんと充実したものにしていくことによって、そういう困った事態が生じないようにしていただきたいというふうに考えております。

松野(信)委員 修習専念義務でその違反の程度がひどければ、場合によっては修習生は罷免、言うなら首切りになってしまう可能性もあるわけですので、この辺はよくよく慎重に考えなければならないし、あるいは、修習専念義務に違反するか違反しないか、場合によってはその辺のガイドラインあたりも示していただく必要があるのではないかなと思いますが、従来はこういうガイドラインというのはあったんでしょうか。

山崎最高裁判所長官代理者 修習生になられる方には、これまでも出ておりますように、修習に専念していただくことが必要なものですから、採用以前に、こういったことに気をつけていただくようにということで、司法研修所の事務局長から通知文書を出しておりますし、また、修習生に採用後も、一つの冊子をつくりまして、その中で、こういう問題が非常に重要であるということを修習生にわかっていただくようにしておるところでございます。

松野(信)委員 余り時間がありませんので、次の問題に移りたいと思いますが、専ら財政上の問題で給費制を廃止するというお話でありました。

 そこで、私も裁判所の予算というのをいろいろ調べてみたんですけれども、まあ、裁判所というのは三権分立の一つを担っているんですが、国全体の予算的な面から見ると、甚だ乏しいと言わざるを得ないんですね。

 これは、歴史的に見ますと、一般会計予算、今大体八十二兆円ぐらいあります。昔はその中の一%近くを裁判所の予算が占めていたという時代もあったんですが、これが年々下がってきまして、昭和五十年には〇・五八一%、平成十六年度では〇・三八四%ということで、要するに、裁判所は、三権分立の一角というふうに言ってはおりながら、予算的には極めて乏しい予算であります。

 日弁連あたりは、裁判所の予算をもっととれ、裁判官を増員しろということで、一生懸命、むしろ日弁連がその予算獲得運動をしているんですけれども、現実にはどうもそうなっていないというふうに思いますが、実際のところはどうでしょうか。

大谷最高裁判所長官代理者 最高裁経理局、予算折衝の任に当たっているわけでございます。我々、その折衝に当たる者として、裁判所の使命、これが、適正かつ迅速な裁判を実現する、この使命を果たすために必要な人的機構、物的設備、こういうものの充実を図って、裁判運営に支障がないようにその予算を確保するということ、これが裁判所の重要な責務であるということは十分認識しているところでございます。

 最近、裁判所に係属する事件は非常に増加してございますし、また、内容も複雑困難化している、また、裁判迅速化法が施行されるというようなこともございまして、司法の体制の充実強化を図る司法制度改革が進んできております。

 最高裁としても、こういう状況に対応いたしまして、その人的、物的体制の整備を図るということで、財政当局に裁判所の置かれた状況を説明しまして、その要求の必要性、合理性、こういうものを十分説明して、必要な予算の確保に向けて懸命に今努力しているというところでございます。

松野(信)委員 裁判所の予算については、御承知のように、財政法十九条というので二重予算という意味で、ある意味では保護されているんですが、どうも実際にはそういうものも使ったためしもないようであります。ぜひ予算獲得に向けて頑張っていただきたいな、こういうふうに思っております。

 時間ももう終わりになりますので、最後に、山崎事務局長の方に御質問、御質問というか、お礼も兼ねてお話ししたいと思いますが、長年、司法制度改革推進本部の事務局長として大変な御尽力をいただきました。毎回毎回、法務委員会でも質問の答弁に立っていただきました。中にはちょっと意地悪な質問をさせていただいたこともあったかと思いますが、いつも的確に御答弁をいただきまして、感謝を申し上げたいと存じます。

 通常国会から見ますと、司法改革の関連法案ということで、裁判員法、司法ネット、そして労働審判法等々、全く新しい司法制度に向けた法案が可決をされました。

 そこで、山崎事務局長からごらんになって、そういう司法制度改革の関連法案、可決されたものもあるし、そこに至っていないものもあるし、どの程度、大体、頭に描いていた中では達成されたというふうにお考えでしょうか。また、残された課題、推進本部は十一月末で終了するというわけですが、今後のあり方等についての御所見がありましたら、お伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 最後に機会を与えていただきまして、大変感謝申し上げております。若干、感想も含めて述べさせていただきたいと思います。

 今から三年前のきょうぐらいのころ、私は何をしていたかということでございますが、あと数日したらあらしの中にぶち込まれるという思いで改革審の意見書を読んでおりました。この意見書を読んでいるときに、こんなすごいことを何で三年でできるんだ、こんなむちゃな計画はないというのが正直な感想でございました。その理由は後でちょっと申し上げますけれども、目の前が暗くなるということはございませんでしたけれども、目がかすむ思いでございました。

 なぜそうかというのは、これを読んでいただければおわかりだと思いますけれども、司法制度の分野の中のありとあらゆることが指摘されておりまして、その中身たるや非常に国民の生活に密接な影響がある、そういうような大きなものが多々含まれているわけでございます。物によっては本当に哲学論争になるだろうというものもございますし、それから、制度が変わるというよりも、本当に日本の文化が変わっていくのではないかというものもあろうかと思います。これが何であるかは、もう委員の皆様方はおわかりかと思いますけれども、私は、そういう思いがしたわけでございまして、こんなに大切なことを本当にできるかな、しかしやらざるを得ない。

 それで、考えたことは、やり遂げるためにはどうしたらいいか。それは、これだけ価値観が多様化した時代でございますので、全員の言うことを聞いていたら絶対に何もできないということでございます。だから、百点をとろうなんということは絶対に考えちゃいかぬということでございます。最終の到達点が見えているとして、そこへ一発で行かない、走り幅跳びで行くのではなくて三段跳びで行こうということを考えたわけでございます。まず、仏をつくるわけでございます。次に、中身を詰める、魂を入れるわけでございます。それで、最後にその調整をする。この三段階を経て、やっと制度というのはいいものができるんではないか、こういう気持ちの切りかえをいたしました。

 したがいまして、百点はとらない、しかし、余りシャビーでは怒られますし、余り前に進みますとまたこれも怒られるということで、七十点ということを目標にしてまいりました。ですから私は、でこぼこはございますけれども、七十点というのは運転免許証の合格点でございますので、一応の到達点かなということでございます。

 これから、それを一〇〇%にするのは、まさに運用の問題でございます。これをどうやって定着させるか、最後の調整、これが望まれるということでございます。この運用の工夫が今後の最大の課題であるというふうに私は思っております。この定着をきちっとしないと、やはり国民に信頼していただけないということになろうかと思います。

 この中の一番のポイントは、プロの意識を変えるということでございます。国民の意識を変える前にプロが変わらなければならないということでございます。私もプロの一員ではございますけれども、大体プロというのは、頑固で、わがままですね。ですから、まずそこから意識を変えていただく、これが重要でございまして、今後、法曹三者はみずからにそれが問われるということになろうかと思います。これを真っ先にやって、それから国民の方に理解をしていただく、こういうことが必要かなというふうに思っているわけでございます。

 最後になりますけれども、私、二十年間にわたりまして法務委員会のお世話になってまいりました。本当に御礼を申し上げます。法務委員会の厳しい試練に耐えて、私も成長してまいりました。今後はこの経験を生かして活動していきたいというふうに思っておりますけれども、今後は、一法律家として、もう少し人生をスローに、スローライフで生きていきたいというふうに思っております。また今後とも、いろいろなところでお目にかかる機会があろうかと思いますが、よろしくお願いを申し上げます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

松野(信)委員 衆議院での最後の御答弁、まことにありがとうございました。私も、最後の答弁に立ち会わせていただき、まことに光栄であります。本当にありがとうございました。(拍手)

塩崎委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、本案に対し、田村憲久君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。田村憲久君。

    ―――――――――――――

 裁判所法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

田村(憲)委員 ただいま議題となりました修正案について、提出者を代表して、その主な趣旨を御説明いたします。

 修正案の趣旨は、本法律案の目的が、従来の司法修習生への給費制を貸与制に移行しようとするものであることから、十分な周知期間が必要であるのに、施行期日が平成十八年十一月一日では、周知期間が短過ぎるので延長すべきであるという点にあります。

 本法律案では、施行期日は平成十八年十一月一日としておりますが、法科大学院がスタートしたのは本年四月であり、第一期の法科大学院生が入学した時点では、まだ貸与制への移行やその時期が決まっていなかったので、第一期の法科大学院生に対して貸与制への移行の理解を得るには、周知期間が短過ぎると考えます。

 そこで、十分な周知期間を確保するとともに、第一期の法科大学院生に対し、給費制のもとでの修習を受ける機会を確保するとの観点から、施行期日をおくらせることとし、平成二十二年ころには司法試験の合格者数の年間三千人達成を目指すとされていることにもかんがみ、施行期日を平成二十二年十一月一日とすべきであります。

 以上が、本修正案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようよろしくお願いいたします。

塩崎委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、裁判所法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、田村憲久君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、田村憲久君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。鎌田さゆり君。

鎌田委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    裁判所法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府並びに最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 修習資金の額については、法曹の使命の重要性や公共性にかんがみ、高度の専門的能力と職業倫理を備えた法曹を養成する見地から、引き続き、司法修習生が修習に専念することができるよう、必要かつ十分な額を確保すること。

 二 修習資金の返還の期限については、返還の負担が法曹としての活動に影響を与えることがないよう、必要かつ十分な期間を確保するとともに、司法修習を終えてから返還を開始するまでに、一定の据置期間を置くこと。

 三 給費制の廃止及び貸与制の導入によって、統一・公平・平等という司法修習の理念が損なわれることがないよう、また、経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないよう、法曹養成制度全体の財政支援の在り方も含め、関係機関と十分な協議を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

塩崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣及び最高裁判所当局から発言を求められておりますので、順次これを許します。南野法務大臣。

南野国務大臣 ただいま可決されました裁判所法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

塩崎委員長 次に、園尾最高裁判所事務総局総務局長。

園尾最高裁判所長官代理者 ただいま可決されました附帯決議の裁判所に関する部分につきましては、その問題意識を十分に踏まえまして、最高裁判所として適切に対処してまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十分散会


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