衆議院

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第5号 平成17年3月15日(火曜日)

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平成十七年三月十五日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 園田 博之君 理事 田村 憲久君

   理事 平沢 勝栄君 理事 吉野 正芳君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    大前 繁雄君

      左藤  章君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    谷  公一君

      早川 忠孝君    松島みどり君

      三原 朝彦君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      加藤 公一君    河村たかし君

      小林千代美君    佐々木秀典君

      樽井 良和君    辻   惠君

      松野 信夫君    松本 大輔君

      江田 康幸君    富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   参考人

   (日本弁護士連合会副会長)            清水 規廣君

   参考人

   (日本司法書士会連合会会長)           中村 邦夫君

   参考人

   (日本土地家屋調査士会連合会会長)        西本 孔昭君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 不動産登記法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、不動産登記法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、日本弁護士連合会副会長清水規廣君、日本司法書士会連合会会長中村邦夫君、日本土地家屋調査士会連合会会長西本孔昭君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、大変御多用中のところにもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いを申し上げたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、清水参考人、中村参考人、西本参考人の順に、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず清水参考人にお願いをいたします。

清水参考人 日本弁護士連合会副会長の清水規廣でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、この法案につきまして、司法書士法及び土地家屋調査士法の改正部分を含めまして反対はしないという立場でお話をさせていただきたいと思います。特に土地の筆界特定手続につきましては、運用いかんによっては、現在の制度より簡易迅速に土地の境界が確定するのではないかと期待するものであります。

 土地の境界が確定していないために困る事態というのは、よく言われますように、土地の売買や再開発のときだけではなくて、遺産分割をしたいけれども土地の分割ができない、分筆登記ができないとか、あるいは防災用の擁壁工事の着工ができないなど、さまざまな場面でございます。しかし、境界の確定作業を円滑に行うという要請が強い反面、逆に、土地の境界をめぐる争いは、国民の権利義務に影響を及ぼす争い事の最たるものでありまして、昔から裁判の代表格でありますので、その解決に当たりましては、国民の裁判を受ける権利を十二分に保障したものでなければならないと考えております。

 筆界の確定は、公法上のもの、つまり公の法律のものであるから、直接、国民の権利義務に影響を及ぼさないという考え方もございます。しかし、筆界の確定は、土地の客観的な範囲だとか限界というものを定める、変動を生じさせるものでありまして、所有地の範囲に実質的に影響を与えるものであります。

 わかりやすくするために、お手元に配付させていただきました図面をごらんいただきたいと思います。左側の一番の土地、甲の所有のものでありますけれども、それから右側の二番の土地、乙の所有の土地があるわけですけれども、乙から、自分の土地の二番の筆界AB線を越えて甲が家を建ててしまった、この建物の一部を撤去してくれ、こういうことで争いになった場合を考えてみたいと思います。

 甲の方は、何を言っているんだ、あなたの土地と私の一番の土地との境はCD線じゃないか、こういうことをまず言うと思うんです。ですから、裁判の第一の争点というのは、筆界がAB線なのかCD線なのかというところが問題になります。次いで、甲は、仮に筆界がAB線であるとしても、自分はもう二十年以上にわたってABCDの部分、この土地の部分を使っているから、もう既に時効で自分のものになったんだ、こういうことを主張するようになります。

 このように、裁判の実務だとかあるいは国民の認識では、土地の筆界問題と所有権の範囲、つまり所有権境の問題とは密接不可分なものであります。

 法務省の説明では、筆界特定登記官による特定というのは、筆界確定の効果を持つ行政処分ではなくて、登記官による認識の表明であるとか、あるいは筆界の位置についての証明力を有するにすぎない、国民を拘束しない、こういう御説明であります。

 しかし、甲と乙との争いで、乙が申請をして登記官がAB線であるというふうに特定をしますと、結果として乙側に登記官の方が軍配を上げたことになります。また、裁判に至らなくても、ある土地の周囲の筆界がすべて特定されれば、登記官は職権で十七条地図を訂正したり、地積更正登記をすることも可能となります。

 したがいまして、筆界の特定は、先ほど申しましたように、事実上、国民の権利義務に影響を及ぼしますので、この手続を行うに当たっては、当事者からの主張、立証を尽くさせる、民事訴訟手続に準じた運用が行われる必要があると思います。当事者の主張、立証を切り捨てることにならないよう配慮した適正な手続の詳細を法務省令で定める必要もあると思います。

 さらに、筆界特定登記官に対しては研修をしまして、手続の迅速性だけではなく、民事訴訟手続に準じた、当事者の主張、立証等を尽くさせる、そういう手続についても教える必要があると思います。また、この適正な手続を進めるに当たっては、今まで境界確定裁判を担ってきました弁護士の調査委員の役割も大きいというふうに考えております。

 当事者の主張、立証を尽くさせるためには、もう一つ、相手方から提出された証拠資料や取り寄せた資料等を開示するだけではなくて、法務局がもともと持っていた手持ち資料、特にこのうち、調査委員が調査に利用した資料も当事者に開示することが必要ですので、省令を検討するに当たりましては、この点の情報公開にも御配慮いただきたいと思います。

 次に、裁判手続との関連について申し上げたいと思います。

 筆界特定が行われた土地につきましては、土地の境界確定訴訟や所有権境に関する裁判の進行が早くなるものと思われます。裁判所へ筆界特定手続の記録が提出されることになっておりますので、特定手続で作成された図面を裁判所、裁判の当事者ら、それらの共通の図面とすることができまして、資料も証拠に利用することができますので、迅速な争点整理手続にも役立つと考えております。また、鑑定や検証を行うに当たりましても、法務局の方から来ました資料が有用であると思います。

 従来、訴訟手続と登記行政とが連携していなかったということから、たまに判決書や和解調書で地図訂正だとか分筆登記ができないというような報告もありました。今後は、筆界特定手続を行った土地については、このようなことは少なくなるというふうに予想しております。

 また、特定手続が未了の土地につきましてでありますけれども、判決等に添付する図面と法務局が要求する図面、データとの統一性を図ることや、土地家屋調査士の専門委員の活用の仕方などにつきまして、裁判所や法務省、弁護士会などとの協議をして運用改善を図っていく必要があると思っております。

 ところで、先ほどの図の例で、甲と乙との紛争を話し合いで解決して、例えば、甲と乙とは一番の土地と二番の土地との所有権境をCD線で区分されることを相互に確認しましょう、こういう和解をすることができます。しかし、その場合に、登記官が筆界をどこと認めるかによって、その後の手続が変わってまいります。CD線が筆界であると登記官が認めたときは、一番と二番とそれぞれの地積更正登記を行えばいいということになりますけれども、逆に、AB線であると登記官がした場合には、二番の土地からABCD部分を分筆する登記をして、さらに、乙から甲へこの部分の所有権移転登記をしなければ甲のものになりません。ですから、課税の問題も生じてまいります。

 このように、紛争解決という観点からしましても、筆界と所有権境とは密接不可分であります。ですから、筆界特定手続が創設されたからといって、この手続だけで地図混乱地域の筆界問題が一気に解決できるというものではないと考えております。

 私は、この問題の解決策の第一として、現在法務局が進めております不動産登記法十七条地図の作成作業をもっと推し進める必要があると申し上げたいと思います。

 この作業を行った世田谷などの実例では、大部分の地権者が筆界を承諾して十七条地図が整備されたとのことであります。作業を行っても地権者全員の承諾に至らない筆界につきましては、境界確定訴訟の前の手続としてこの特定手続は有用であると考えます。特に、街区一帯の測量等を行う十七条地図作成作業と併用して、あわせて特定手続を行いますと効果を発揮すると思います。また、必ずしも所有権の範囲に争いはないけれども筆界は定かでないという土地につきましても、この手続を使って簡易迅速に特定できる場合も多いと思います。

 解決策の第二としまして、簡易裁判所での調停や土地家屋調査士会が弁護士会との協働で進めておりますADR、境界問題相談センターなどで、相談、調停等の話し合いの手続と筆界特定手続との連携を図るということを挙げたいと思います。まず話し合いを進めながら特定手続を行った方がいい事案、あるいは逆に、訴訟を前提にまず話し合いをとりあえずして、特定手続は訴訟手続と並行して行った方がいい事案というのがあると思うんですが、その辺を、簡裁での調停やADRでその後の手続の振り分けをする機能を持たせることも必要ではないのかというふうに考えております。

 運用に関しまして、申請人が負担すべき費用がどのぐらいあるのかよくわからない部分がありますけれども、省令にゆだねられている部分につきましては、省令制定の際に、また弁護士会として意見を申し上げたいと考えております。

 いずれにしましても、法務局、土地家屋調査士会、弁護士会などが制度の実施前後を通じまして協議して、国民にとって使い勝手のよい運用にする必要があると考えております。

 以上で私の意見を終わりにいたします。(拍手)

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

田村(憲)委員長代理 どうもありがとうございました。

 次に、中村参考人にお願いいたします。

中村参考人 日本司法書士会連合会会長の中村邦夫でございます。

 本日は、不動産登記法等の一部を改正する法律案に関しまして、参考人として意見を申し上げる機会をいただきましたことに、法務委員会委員の先生方にまずもって厚く御礼を申し上げます。

 国民がより利用しやすい不動産登記制度並びに司法制度、これに関連するよりよい司法書士制度の実現に真摯な御努力を重ねていただいておりますことに対しましても、心から敬意を表し、重ねて厚く御礼を申し上げます。

 司法書士会は、今日まで、司法書士制度を、国民のための、そして国民に愛される身近な法律家制度として充実発展させるべく、精いっぱいの努力をしてまいりました。さらには、本日このような機会をお与えいただき、司法制度並びに不動産登記制度の充実発展のためにも、それを担う存在としての役割を着実に果たしてまいりたいと改めて決意する次第でございます。

 このような私どもの決意から見ますれば、本日意見を述べさせていただきます不動産登記法の一部改正法案並びに私ども司法書士の職能に関する司法書士法の一部改正法案につきましては、その早期の成立を心から願うところでございます。

 まず、不動産登記法の一部改正法案の内容であります筆界特定手続の創設に関しましては、土地の境界に関しさまざまな資料、情報を有している登記所の機能とそれに関係する専門家を活用し、筆界に関し信頼性の高い判断を示すことにより、かかる境界争いを全体として迅速かつ的確に解決する作用を営むものと期待するところであります。

 司法書士は、従来より、本来業務として、本人訴訟の支援者として、裁判所に提出する書類作成を通じて、土地境界紛争においても一定の役割を果たしてまいりました。簡裁代理権が付与された後におきましては、固定資産税評価額が比較的少額である地方では、当事者の代理人として土地境界の紛争解決に当たることが少なくありません。

 通常、一般国民間の境界争いは、地番範囲の争い、つまり、何番の土地はどこまでか、すなわち、隣人同士で勝手に線を引くことのできない筆界の紛争とともに、支配範囲の争い、つまり、自分の所有地はどこまでか、すなわち、隣人同士で合意することのできる所有権の範囲の紛争が混在しております。したがって、このような事情から、境界争いが訴訟に持ち込まれた場合には、通常より長引く傾向があることは否めません。

 このような現状にかんがみますと、今回創設されようとしておりますこの筆界特定制度は、土地の筆界の迅速かつ適正な特定を図り、筆界をめぐる紛争の解決に資するためのものであり、国民からも大きな期待が寄せられるものと考えます。私ども司法書士といたしましても、この筆界特定制度の導入により、迅速かつ的確な証拠収集手続が可能となり、訴訟手続などの迅速化により、紛争解決における国民の時間的、経済的な負担の軽減が図られるものと考えているところでございます。

 以上の観点から、不動産登記法の一部改正法案に賛成する次第であります。

 次に、司法書士法の一部改正法案に関しましても、これに賛成し、その早期成立を強く期待するところでございます。

 この司法書士法の一部改正法案の要点でございますが、まず第一点が、司法書士法第三条二項の司法書士に対する上訴提起の代理権付与であります。

 現在の司法書士法におきましては、例えば簡易裁判所に代理人として関与した事件の判決に不服がある場合、司法書士は控訴審に関する訴訟代理権がございませんので、当事者は、控訴審において本人訴訟を行うか、もしくは新たに弁護士に訴訟行為を委任するかの選択を迫られるわけでございます。

 御案内のとおり、控訴期間は判決書を受け取った日から二週間と定められております。控訴審において本人訴訟を行うかどうかの決断には一定の時間が必要でありますし、新たに弁護士を選任する場合であっても、事件の内容を十分に説明し、今後の見通しなどについても、第一審における訴訟代理人であった司法書士の的確な情報提供が、事件を引き継ぐ弁護士に対して必要になるところであります。かかる情報提供と当事者の弁護士選択にも一定の時間が必要となるところであります。

 また、敗訴判決を受けて、本当に上訴すべきか否かの判断を行うに当たっては、原審の証拠調べが十分であったか、あるいは新証拠が存在するか否かなど、さまざまな角度から総合的に考察しなければなりません。そのような内容を最もよく知り得る立場にあるのは、本人よりもむしろ第一審を受任した代理人である司法書士であると言えます。その意味からも、第一審を受任した訴訟代理人たる司法書士は、上訴すべきか否かに関する当事者の最終判断に対するアドバイス、すなわち、当事者に対するみずからの見解の提示などを行うべきだと考えております。

 このように、司法書士の上訴提起の代理権は、当事者が上訴提起に対する的確な判断を下すためにも、さらに、控訴期間の徒過を避け、不服申し立ての機会を確実なものとするためにも必要であると考えます。ぜひとも、控訴状の提出時までの役割を司法書士に果たさせていただきたく、お願い申し上げる次第でございます。

 第二点目は、同じく司法書士法第三条二項の司法書士に対する仲裁手続の代理権の付与であります。

 仲裁手続は、いわゆる仲裁法の整備により、いわゆる裁判外の紛争解決手続の一つとして、今後、一層充実発展していくものと考えております。一部の専門的な紛争事案だけではなく、国民の日常生活において発生する民事紛争事件につきましても、その活用が期待されるところでございます。したがいまして、国民に最も身近な法律家であると自負しております私ども司法書士が仲裁手続に関与することによって、国民の日常生活において発生するさまざまな紛争がより迅速に解決することが可能になると考えるところでございます。

 司法書士会といたしましては、裁判外の紛争解決機関として、全国五十の司法書士会において司法書士調停センターを設置し、その活動を充実していくための準備を現在具体的に行っているところでございます。さらに、仲裁法に基づく司法書士仲裁センターの設置も具体的な検討を開始しておるところでございます。

 司法書士は、今回の仲裁手続の代理権の付与により、国民の身近な紛争を迅速かつ適切に解決するために重要な役割を果たさせていただくとともに、仲裁手続の実施機関としても、今後充実した機能を果たすべく真摯に努力してまいりたいと存じます。

 第三点目は、先ほど申し上げました、筆界特定手続に関する書面作成業務及び一定の代理権の付与であります。この点におきましても、国民に身近な境界争い、すなわち土地境界確定訴訟の迅速な処理のために、司法書士業務にぜひとも必要であると考えておりますので、重ねての御理解をお願いするものでございます。

 以上、るる申し述べてまいりましたが、今次の不動産登記法等の一部を改正する法律案は、国民の法的生活の安定に資する重要な事項が数多く含まれておると理解しております。ぜひとも、早期の成立を重ねてお願いいたしまして、私の意見とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

田村(憲)委員長代理 どうもありがとうございました。

 次に、西本参考人にお願いをいたします。

西本参考人 私は、日本土地家屋調査士会連合会会長で、土地家屋調査士の西本孔昭と申します。このような格調高いところへお招きいただきまして、ありがとうございます。かなり緊張しておりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私たち土地家屋調査士は、常に現地の境界と登記簿の内容、そして登記所地図とが安定して符合していることを願って業務に努力しています。

 このたび、参考人として出席を通知いただく書面とともに法律案等同封して受領いたしましたが、この黄表紙の衆議院調査局法務調査室第百六十二回国会法務参考資料第三号を拝見しまして、多岐にわたる実情について綿密に調査された内容に驚きましたし、司法制度改革推進本部を中心とする関係機関、諸先生方、本委員会の先生方の偉大な業績に改めて心から敬意を表します。

 この資料に記載されています、今、土地は、投資の対象とした取引から、実際にどのように利用されるかの用途性が重視されるようになり、例えば、建物を含めて、サステーナブルコンバージョンと称する利用転換等再生型の高度利用が図られつつあります。このとき、登記所備えつけ地図が現地とも登記とも一致しない場合が少なくないために障害となり、多額の費用と日数、時に年月を要することとなります。このことは、公共用地の取得や経済再生にもしばしば問題とされてきたところであります。

 そこで、近年、登記所備えつけ地図の緊急整備に重点が置かれまして、この資料一の(七)の表のとおり、平成十六年度から予算が増加し、各法務局、地方法務局で精力的に取り組み、私たちも、公共嘱託登記土地家屋調査士協会を通して筆界の調査、立ち会い、測量等作業を進めているところであります。また、その何十倍もの予算の国土調査法に基づく地籍事業や、都市再生本部から示された民活と各省連携による地籍整備の推進事業に既存地図の調査という段階からお手伝いをしております。

 また、分筆登記、地積更正登記などに際しまして、私ども土地家屋調査士の作成する地積測量図が登記所備えつけ地図を補う役割を果たしております。

 土地家屋調査士制度が昭和二十五年に議員立法によって誕生しましてから満五十五年になります。この間、各地で実施しています無料相談会に持ち込まれる悩み事や、私たちが現地で遭遇しますトラブルの数々を分析しまして、共通する問題から解決策を探りまして、広く提言していくもの、即実行できるものを考えて行動してきました。

 その中の一部を申し上げますと、第一に、境界管理についてであります。多く公共建物や道路を含めまして、工事前には境界標を熱心に定められますが、工事完了後しばしば軽視されがちでありましたところの正しく復元する境界、境界標管理がその一であり、常にいつもだれでも復元可能となる数値図面、数値資料管理がその二であります。

 境界管理に現地管理と資料管理が重要な紛争予防となることを御理解いただきまして、次に重要なことは、専門家の適切な、しかも時を得たアドバイスだろうと考えますが、不幸にして、取引に際して、あるいは相続等のために分筆等をしようとしたり、建物の工事に当たって筆界が判明しないとき、あるいはもっと悪いことには判明しないまま実行してしまったことに起因する紛争になりかけたときには、まず客観的に筆界を見きわめることが重要であります。

 明治時代からの古い資料や図面、地域の慣習などを調査し、関係者、近隣の人の立ち会いと工作物等を含む現況の測量をして筆界を見きわめる作業をしながら、この資料六ページ四の(三)の中段にあるような状況から、合意を得て登記所備えつけ地図と現地の符合を図る手続へと移行する手段がないかと考えまして、境界問題相談センターとか境界問題解決センターといったADRを立ち上げました。

 御案内のように、境界紛争の原因は、まず一番に筆界。筆界といっても、大きくは県境から市町村界、字界と地番境が一体になっているものもあります。これが不明である。二に、災害等自然界の作用により不明となった。第三に、何代かにわたって私的に移動させたが、手続を経ていない、あるいは忘れてしまう。四、工事の不注意、アフターケアの不足。五番目に、それらのいずれかが感情的なもつれとなり、あるいは日常的に単純に感情のもつれとなり、日常的に精神的な苦痛を伴うに至っているものが多く、私たち土地家屋調査士会が試行してきました境界問題相談センターや紛争解決センターは、それぞれ各地の弁護士会の温かい御支援、御指導を賜りながら、常に弁護士さんとの協働型で立ち上げ、運営してきました。これからも市民、都民に頼りになる存在として発展させたいと考えております。

 一方で、法務局のする境界確定委員会制度が検討され、私たちも大いに期待していたのでありますが、資料七ページ下段五(二)に筆界特定登記官、筆界特定委員制度に落ちついた経緯が記されており、残念なことと申し上げざるを得ません。

 法務局職員の中から選抜されまして、短いとはいえ約六カ月間、東京で測量講習を受けて表示登記専門官になる資格を得ます。その表示登記専門官から、さらに公図等の沿革や資料の分析、解析に要する能力を得て筆界特定登記官に指定されることになると考えられますが、将来広くそれらの能力が評価され、実績を積まれて発展されることを期待します。

 その一方で、不動産登記法等の一部を改正する法律案第百二十八条に、「筆界調査委員の欠格事由」の中に、突然、司法書士の文字を見ることができます。測量の能力を伴わない、法務局備えつけ地図作成にかかわらない資格名が浮上したことに、全国土地家屋調査士の多くの会員がとても驚いております。

 代理権に関しましてはともかく、もちろん、正しい筆界が不明だとして筆界を求める過程で訴額が本当に算定できるのかなという疑問があるにしても法の趣旨を認めますが、筆界調査委員に指定されることはとても考えがたいことであり、落着している業際問題が再燃しないことを願うばかりであります。

 最後に、この法案の成立をお願いしまして、通過、成立しました後も、弁護士協働型の土地家屋調査士会の境界問題相談センター、解決センターの適切な運用に対する御指導と、筆界特定登記官制度が本来の目的を果たすための御指導を賜りますようお願い申し上げて、結びといたします。

 どうもありがとうございました。(拍手)

田村(憲)委員長代理 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田村(憲)委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。

 三人の方から、大変専門的な、貴重な御意見を伺いまして、ありがとうございました。むしろ、それを聞いた私、詳しい仲間もたくさんいるわけでございますけれども、私自身が十分理解しているのかというのが問題かもわかりません。そうはいいましても、限られた時間、何点かお尋ねしたいというふうに思います。

 まず、清水副会長の方にお尋ねしたいというふうに思います。

 御意見を聞いて、消極的な賛成かなというふうに思いました。当初、要綱案では、日弁連の資料を見ますと、相当きついといいますか、反対であるということでございましたが、そういうことを踏まえたのか、あるいはパブリックコメントの意見も踏まえて、法務省の方は、委員会を組織しないとか、業務範囲を特定するとか、あるいは職権確定はしないというような修正をされて今回の法律案になったかと思うんですが、それでも、反対はしないというふうに言われたと思います。

 では、どういう法改正であれば積極的賛成をしたのかということについて、まずお尋ねをしたいと思います。

清水参考人 私が冒頭、歯切れの悪い、反対はいたしません、こう申し上げましたところ、早速そこのところを突っ込まれたわけでございますけれども。

 当初の法務省案でやはり日弁連が一番問題としたところは、先ほども申し上げましたけれども、所有権の問題というのは、これは司法の問題であるわけですね。土地の筆界の確定の問題というのは、非訟事件、つまり裁判にあらない事件だ、こう言われておりましたけれども、明治の時代からずっと裁判所において行われてきたわけです。戦前の法律ではそれを裁判所で行うということがはっきり書いてあったようでございますけれども、戦後ではなくなったんですけれども、ずっとそれが継承されてまいりました。

 密接不可分の問題だけれども理屈では別々だ、こういうことで非常に難しい問題があるわけですけれども、そうなってきますと、当初の法務省案の制度設計というのは、登記官によって行政処分として土地の筆界を確定しようということで、筆界確定処分を行ってしまう、それで文句があるのであれば被告を国にして行政訴訟を起こしなさいよ、こういう制度設計だったわけですね。

 それから、隣同士で境界争いがない土地がたくさんあるわけですね。ない土地だけれども境界がはっきりしていないというような場合も、法務局の方が職権で行うことができる、こういうことになりますと、隣同士、けんかもしていないものがけんかになっちゃうわけですね。行政の中立性といいますか、そういうものの観点からしますと、やはりいろいろ問題があるのではないか。

 先ほども申し上げましたけれども、地図の混乱地域等があるということはよく指摘されておりますけれども、何でなんだろうかと思うと、先ほど世田谷の例を申し上げましたけれども、やはり国の方でお金をかけて十七条地図を整備するということで、付近一帯、街区一帯をずっとはかってくれば、随分と、お互いに納得して承諾印を押せるわけですね。それを、そういうものをまずやらないで、いきなりかたい行政処分としてがちんとやるということについてはどうだろうか、こういうことで反対をさせていただきました。

 ところが、本法案ではその辺の障害がなくなったものですから反対はしない、しかし運用によってはこれは期待できるものもありますよ、こういう歯切れの悪い結論になったわけであります。

 以上でございます。

谷委員 実は、どういうやり方で土地の所有権を確定していくかということについては、それだけで相当の時間なり、いろいろな方の意見もあろうと思いますので、きょうはその点についてはおいておきまして、では次に、司法書士連合会の中村会長の方にお尋ねしたいというふうに思います。

 土地家屋の西本会長の方も今遠慮ぎみか言われておりましたが、司法書士がこういう境界確定なり筆界確定について、やはり少し違うのではないか。専門的な測量の能力といいますか、力量というのか、そういうのが伴うような今回の法律改正に絡むようなことについて、余り司法書士の方々がかかわるのはどうかというのは少し言い過ぎかもわかりませんが、どうも、先ほどの西本会長のお話を聞いて、本音はそういうところにあるのかなと思わないでもなかったんですが、反論といいますか、見解を再度、もう少しお述べいただければというふうに思います。

中村参考人 私ども司法書士は、詳しい数字は今把握してございませんが、全国で大体年間一千万件前後の登記をやって、約九五%の事件を私どもが大体扱っております。その中で、所有権移転に関する登記というのは相当な部分を占めておるわけでございます。

 そういう所有権移転、売買であれ、あるいは贈与であれ、あるいは相続であれ、そういう登記事件を受託する際に非常に多いケースとして、土地の境界がなかなかすっきりしていないというケースがございます。そういった問題を常に私どもは事前に、受託する場合に相談を受けているということがございます。

 と同時に、もう一つは、私は、今回の筆界特定の問題というのは、先ほどもちょっと申し上げさせていただきましたけれども、いわゆる筆の境、いわゆる地番の確定の問題と、それからもう一つは、所有権、権利そのものについて紛争があるという問題、この二つ、両面性がどうしても入っているというふうに思っているわけでございます。

 すなわち、筆界を決めるということと同時に、それはどうしても一種紛争性といったものが前提にあるというふうに考えております。そう考えますと、私どもは今回、簡易裁判所訴訟代理権なども付与させていただいたわけでございますけれども、そういう観点から申しまして、この紛争性といったものの解決に私どもも当然当たらなきゃならないし、当たることもできるだろうと思っております。

 それともう一つ、筆界の確定の問題で、確かに測量そのものを私どもはするわけではございませんけれども、同じ法務局、登記所の方に年じゅう入っている、仕事をさせていただいておるという関係がございますので、おおよそ、ほとんどの場合ですけれども、土地の境界がどのような形で決められているか、どういうふうな形で確定しているか、また、そのための資料がどういうものが存在しているかということは承知しております。

 そういった意味で、そういった承知している知識というものをもとにして、先ほど申し上げた、例えば、権利に関する登記を受託した場合の、そういう紛争性のある場合については、私どもの立場から今までも意見を申し上げていますし、考えを申し上げてきたということでございます。

 そういったことでございますので、今回の問題は必ずしも測量技術云々という問題ではなかろうというふうに私どもは考えておるところでございます。

谷委員 実は私の親戚も大阪の梅田の方で司法書士をずっと前から、お父さんの代から開いているんですけれども、土地家屋調査士も持っているんです。数字はともかく、現実に相当おられるのではないかと思うんですが、どちらの会長さんがいいのかどうかあれですけれども、実際には相当、両方の資格を持っておられるという方がおられるのではないですか、半数以上。もしおわかりになれば。

西本参考人 具体的に兼業者の数を把握してはおりませんが、かなりの人数いることは確かでありまして、無理に司法書士としてやらなくてもいいのではないかと。

 それから、なお、表示登記の件数は、やはり九八%が、法務省のデータによりましても土地家屋調査士が関与しておりまして、筆界というのはまさに表示登記の分野の仕事であるということでございます。

 それから、今回の筆界特定制度は、紛争性のあるものを避けたところに落ちついたような気がしますので、あえて申し上げる次第でございます。よろしくお願いします。

谷委員 それでは、少し別の観点から、西本会長の方にお尋ねしたいと思います。

 地籍調査がなかなか進まない。ずっと前から力を入れているんですけれども、全国で四六%、私のふるさと兵庫は一五%と恥ずかしい次第でございますが、東京でも一八%、隣の大阪、後ろに左藤先生おられますけれども、わずか二%、いろいろそういうことを思えば、なかなか我が国のこれからの活力の維持にとっても大きな支障になるのではないかというふうに思います。

 そういう点で、地籍調査というのをもっと積極的に進めるべきだと私自身は思いますし、政府の方でも、二年ほど前でしたか、五年で都市部の約五割を実施して、十年で概成するという目標を立てているところでございますが、そういう進捗を実効あらしめるために、会長の方で、こういった方策をとったら有効だとか、いや、このままではとてもその目標は難しいよというようなことは、現場を掌握している立場で御意見があればお聞きをしたいと思います。

西本参考人 ありがとうございます。

 谷先生のおっしゃるとおりでございまして、都市部の地籍調査が進んでおりません。これは大阪に限らず、どこも都市部は同じでございます。これには、余り税務上の利点がなかったということが昔はございます。

 というのは、郊外、田舎の方をやりますと、随分ふえている、登記面積から、時には何倍になるようなこともございます。そうしますと、税収アップになります。

 ところが、都市部は、おおよそ明治時代の地図から面積的には大した差がないということ。それからもう一つ、都市部では非常に精密な測量を要します。同じような単価ではできないということ。それから、基準点、あるいは位置参照点といいます、非常に精密な、例えば、GPSといいまして、人工衛星から電波で計算するような、非常に高度な技術が要ります。そして、後世に残る基準点とか図根点をつくる必要があります。

 そういったことで、これからも予算をぜひお認めいただきたい。都市再生地域事業等が脚光を浴びております。ぜひお力をおかしいただくようお願いしたいと思います。

 それから、不動産登記法第十七条の地図、新法では十四条になっておりますが、この地図作成に法務省予算にもひとつ力をつけていただきますようお願いを申し上げまして、私どもも一生懸命お手伝いをして都市部の十七条地図をつくっていきたいと思っております。よろしくお願いします。

谷委員 それでは、これが最後の質問になります。もう一度清水副会長の方に戻るんですけれども、今回の法改正で筆界特定登記官、土地所有権に事実上重大な影響を及ぼす権限を付与されるということになろうかと思いますが、専門的なお立場から見て、現在の職員、表示登記専門官の中から選ばれるということになろうかと思いますが、その資格や能力について御意見を伺いたいというふうに思います。

清水参考人 従来の登記官というのは形式的な審査をしていただけでありますね。今度、筆界特定登記官というのができまして、どういう形での能力の担保措置がとられるかというのは必ずしも法案の中では見えません。そういうわけですから、先ほど申し上げましたような研修というのは非常に重要だと思います。

 従来、土地の境界確定訴訟で裁判官が担っていたものを筆界特定登記官が丸々担えるかというと、今度の法案ではそういうふうにはなっておりません。最終的な処分というのは、最終的な確定をさせるものは裁判所ということになっておりますので、そういう面では、裁判の前の手続ということを考えておりますので、筆界特定登記官にプラス、専門家である土地家屋調査士とかあるいは弁護士等が調査委員につきますので、そういう面では、調査委員会という言葉は使っておりませんけれども、調査委員の方々の意見を入れて、まずそれに事実上拘束されるような運用がなされるのではないかというふうに私は考えております。

 筆界登記官の能力というふうに申し上げましたけれども、アンパイア役をやるのは筆界登記官でありますので、私の方としては、むしろ、先ほども申し上げましたように、適正な手続を確保する役割を担っていただきたいというふうに考えております。

 以上であります。

谷委員 どうもありがとうございました。

田村(憲)委員長代理 次に、井上信治君。

井上(信)委員 自由民主党の井上信治でございます。よろしくお願いいたします。

 きょうは本当に、お忙しい中、参考人の先生方、大変ありがとうございます。もうとにかく、専門家の三人の参考人の方々が、皆さん基本的には賛成ということで、大変心強く思っております。やはり我々も、この専門家の方々の御意見を真摯に受けとめて、より国民のためになるこの筆界特定制度、これをしっかり成立を図っていかなければいけないというふうに思っております。

 お話の中にもありましたけれども、今、境界確定訴訟といった制度があるわけでありますけれども、それだとどうしても当事者の方々は時間的にも経済的にもなかなか難しい、そういう中で、こういった簡易であり、かつ紛争解決にも資するような、そんな制度が必要だということで、これは非常にその必要性は高いなというふうに思っております。

 ただ、他方で、この筆界特定制度、私も考えますと、一つは紛争の解決、あるいは、紛争がないとしても筆界が不明確なところをしっかり明確にしていくということで、こういった簡易な制度があるというのは非常に重要だと思うんですけれども、他方で、やはり、先ほど谷議員の質問にもありましたけれども、地図整備の促進、これをしっかりやっていかなければいけないな。この筆界特定制度があることによって、またあわせて地図整備の促進も進められるのではないか、そういったことにも期待をしているわけであります。

 そういった意味では、本当に地籍調査、あるいは十七条の地図も含めて、全国でまだまだ四六%ということですから、これは私が思いますに、とにかく地図というのはもう国家のインフラ、プラットホームでありますから、これをしっかり行政が責任を持って一〇〇%整備していかなければいけないのかなというふうに私も思っております。

 先ほど西本会長の方からは御意見、御答弁いただきましたので、清水副会長そして中村会長の方にも地図整備の促進についてぜひ御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

    〔田村(憲)委員長代理退席、吉野委員長代理着席〕

清水参考人 先ほど申し上げましたけれども、地図の整備というのはまさに国家の責任であるというふうに私は考えております。

 今まで、十七条地図が整備された部分というのは全部、法務省以外の他省庁の管轄で行われてきたものであります、区画整理、土地収用、国土調査。ですから、法務局自体が今まで積極的にやっていなかったのか予算がとれなかったのか、その辺はわかりませんけれども、少なくとも、私は測量の専門家ではございませんけれども、十七条地図が整備されていなかった一番大きい原因というのは、やはりきちっと予算をとって法務局を挙げて地域ごとの整備をしてこなかったということが一番大きいというふうに考えております。

 以上であります。

中村参考人 私ども、常々権利に関する登記を行っておるわけでございますけれども、その権利に関する登記の前提となりますのは、どうしても表示に関する部分が確定している、しっかりしたものになっているということが前提でございます。そういった面から申しますと、先ほど来先生のお話の中にございましたけれども、残念ながら、まだ土地に関するそういった面の措置というのは十分なされていないというふうに思うところでございます。そういう意味で、地図の整備といったことが最も基本的に大事なことであろうというふうに私は思っております。

 今、国家の方でもさまざまな手当て、予算措置とかそういったものもあるんでしょうけれども、ぜひそういうものを含めて十分充実したものにしていただきたいというふうに私どもは常に念願しておるところであります。

井上(信)委員 ありがとうございました。

 本当に私も、平成十五年の都市再生本部の決定によりますと、五年間で都市部の五割、そして十年間で概成しようというようなことを言っておりますけれども、これは本当にできるのかな。大変難しい、しかも予算もかかる、そしてマンパワーもかかることですから、これは今すぐでも本当に必死になって取り組まなければいけないと私も思っております。

 続きまして、この筆界特定制度、これはすばらしいことではあるんですけれども、もちろん初めての制度を導入するということで、せっかくできたものがどの程度活用されるのかというのがまた一つの心配事であります。

 今、境界確定訴訟自体は大体全国で年間千件弱ぐらいということでありますけれども、これは法務省さんの方に伺いましたら、まあ見通しとして同じぐらいかなみたいなこともちょっと伺っております。しかし、それで十分なのかどうか。せっかくできる制度でありますから、これは十分に活用して、そして国民のためになる制度にしてもらいたい、そのように思っておりますけれども、その辺の境界確定訴訟との関係、先ほど清水副会長の方からは、この境界確定訴訟をやるに当たって、その前の段階として筆界特定制度を活用するということも、これも一つの方策ではないかというようなお話もありましたけれども、それも一つです。

 ただ、他方で、この境界確定訴訟と筆界特定制度が常に合わせわざみたいなことになってきますと、これはこれでおかしいのかな。やはり独自の制度でありますから、それぞれ趣旨も目的も違うわけですから、それぞれがその役割に応じてたくさん活用されるということが私は望ましいと思っております。その辺について、清水副会長の方からお話をいただきたいと思います。

清水参考人 ただいま年間の土地境界確定訴訟千件というお話がありましたけれども、これは、裁判所の方のデータは事件の名前でとっております、事件名ですね。ですから、土地の境界確定訴訟事件として申し立てがあったものが千件ということだろうと思われます。先ほど私が図面で具体的な例を申し上げましたけれども、建物を壊せ、あるいは塀を撤去しろとかという訴訟の中で土地の境界について争われたというのは、このデータの中にはあらわれてこないわけですね。ですから、実際、土地の境界をめぐる裁判というのはもっともっと多いというふうに考えております。

 それで、訴訟とそれから特定手続との問題でございますけれども、例えばの話ですけれども、交通事故による損害賠償の裁判がございます。その場合に、例えばむち打ち症になったというような場合に、後遺症が何級であるか、何等級であるかということで賠償額が変わってまいりますけれども、後遺症の何等級かというのは非常に価値判断を伴うものですし、また医学的な知識も必要になるものですから、自賠責保険の中についております査定事務所の査定を受けているかどうか、後遺症十四級という査定を受けているか十二級であるかというようなことをまず裁判所としては聞きたがる。裁判の中で、その査定を受けていない場合には、一度査定を受けたらいいんじゃないですかということで、査定の結果が上がってきて、当事者がそれについて不服があればまた鑑定をするなり、あるいは別のお医者さんの診断書を取り寄せてやるとか、また裁判の中で争っていくことができるわけですけれども、同じようなものが土地の境界をめぐる訴訟の中で、この特定手続というのが使われてくるのではなかろうか。

 ですから、特定手続をやっているところについては、まず資料を法務局からとりましょうと。それで、特定登記官が行った特定に不服がある場合は、なぜ不服があるのかということを当事者から出していただいて、それを裁判所が判定する、こういうことになってきますので、今までは最初から、一からやっていた作業が、土地の境界をめぐる訴訟の中でも少なくとも特定手続である程度の水準に達していた問題については、それはそのまま活用できるわけですから、私としては、裁判自体も早くなるし、当事者にとっても共通した図面、共通した土俵の中で争うことができるようになりますので、費用も安くなるというふうに考えております。

 以上です。

井上(信)委員 この筆界特定制度でありますけれども、せっかくの制度ですからぜひ活用してもらいたいというのはあるんですけれども、では、実際本当に活用するニーズが非常に高かった場合に、行政の対応は十分なのかどうか。筆界特定登記官についても、これは法務局単位で設置するというふうに聞いておりますけれども、これが本当に十分なのかどうか懸念をしているわけであります。

 そういった意味では、本当に最も関連の深い西本会長の方からそこについて御意見を伺いたいと思います。

西本参考人 スタート時点では、各局、地方局で一人、二人ということのようですが、おっしゃいますように、使いやすいシステムとして十分に機能を発揮すれば人数は足らないだろうと思います。ただ、予備軍としまして、申しましたように、表示登記専門官という方々がございます。なるべく法務省としてもそういう方々を指定できるような体制、予算的にもお願いしたいなというふうに考えております。かなり相談はあるのではないかと思っております。

 といいますのは、民間型のADRには、例えば裁判所ですと、四時までに来なさいとか三時半までに来なさいとかということですが、民間型であれば、事前に相談を受けまして、五時からでもいいよ、あるいは六時からでもいいよというようなことでおいでになる方もございます。そういった意味で、柔軟な対応をすれば需要は多いというふうに考えます。法務省にもそれに対応する努力をお願いしたいと思っております。よろしくお願いします。

井上(信)委員 次に、中村会長に伺います。

 これは今回の法案に限らない話かもしれませんけれども、百四十万円の区分けのところであります。やはり、利用者といたしましては、自分の相談事が本当に百四十万円以下なのか、あるいはそれを超えているのかということ、これは相談してみないとわからないというところがありますから、そういう意味で、本当にこの金額で区分けをするということがいいのかどうか。これは利用者の利便に沿わないのではないかというようなことを考えておるんですけれども、そこについて中村会長の御意見を伺いたいと思います。

中村参考人 現在、私どもに付与されている権限というのは、今先生がおっしゃいましたように百四十万円以下ということでございます。したがいまして、私どもといたしましては、相談を受けたりあるいは調査した結果百四十万を超えるものであれば、これは当然のことながら弁護士さんの方にお願いする、こういうふうなシステムに今なっておるわけでございます。そういうふうなことで今やっているわけであります。

 ただ、実際問題として、相当話が進んできた段階で百四十万を超えてしまうことがはっきりわかった場合に、また改めて弁護士さんのところに行ってもらうというのは、相談される方にとっては大変なことだろうなとは思いますけれども、ただ、そこのところは今の法律のシステムの中で弁護士の先生方の方で十分対応していただくということを我々としては考えておりますし、また、そういうことで今進んでおるところでございます。

井上(信)委員 どうもありがとうございました。

 いろいろお話を伺うと、この法案もさることながら、やはりこれが成立した場合に、それをどのように運用していくのか、あるいはさまざまな手続規定などもこれから設けることになると思いますから、それが非常に重要なのかなというふうに思っております。

 清水副会長の方からも、今後のそういったことに対する懸念ということもお話がありましたけれども、そういう意味では、本当に専門家の先生方がしっかり法務省と協議、調整をされて、せっかく新しくつくる制度でありますから、国民のためになる筆界特定制度となるように、そしてそれを最大限運用してもらうようにお願いを申し上げて、私の質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、三人の専門家の先生たちから貴重な御意見をいただきまして、大変私も勉強になりました。ありがとうございました。

 三人のそれぞれを代表する方々からの御意見では、私も、今の御意見としては、やはり基本的にはこの筆界特定制度の新設においては賛成である、そのように理解をさせていただきました。

 本法律案の取りまとめに当たりましては、皆様からの強い要望があって、まずは、境界確定委員会は組織せずに筆界調査委員をもって行うものとすること、また、当該調査委員の業務の範囲は所有権に関する調停から筆界特定に限定するということにしたこと、また、境界確定は職権で行うことなく、申請があった場合について筆界特定のみを行うとしたこと、さらには、当該筆界特定は行政処分とすることなく、境界確定訴訟は存続させる、そういうことにした、このような修正がかかった上での今回の制度創設であろうと思います。したがって、皆様方にとって、基本的にこれに賛意を表明されたのだと思っております。

 我々も、この制度が国民のためにはやはり今の段階では一番いい制度の創設であろうと考えておりますので、この成立に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

 まずは、質問でございますが、基本的なところを一つお伺いさせていただきます。

 従来の境界確定訴訟と併存することに対する考えを改めて、そのメリット、デメリットについてお伺いしたいと思います。無論、今回この筆界特定制度が新設されますけれども、行政処分でない以上、特定はされても確定はできない、結局裁判でしか確定できないということにもなるわけでございまして、とにかく、併存する場合のメリットそしてデメリットについて、西本参考人と清水参考人にお伺いいたします。

西本参考人 私どもは、裁判と併存でも、例えば改正されました民事訴訟法でも、訴えを提起する前に証拠を出しなさいとか判断しなさいとかという項目ができましたように、前置機関としても大いに役割を果たすのではないかなと考えております。したがいまして、併存もある意味で現時点では当然かなという気がいたします。

 ただ、簡便に済むものまですべて裁判を経なければならないかということも若干疑問がございます。といいますのは、筆界の不明なところがはっきりすればそれですべて終わるというところもございます。その意味で、この制度が早く実施されて効果を上げれば十分にいけるのではないか。

 それから、当然、地図づくりのためには一々裁判をしておっては間に合わないので、簡便に終わるというシステムをいずれ定着させたいなと思っております。

 よろしゅうございますでしょうか。

清水参考人 裁判制度とこの特定手続が併存するということのメリットにつきましては、先ほどお話しさせていただきました。法務局の方の特定手続記録が裁判所に来ることによって裁判自体が非常に効率よく進むというふうに見込まれるということであります。

 デメリットについて申し上げたいと思いますけれども、今思いつく点は費用の点でございます。申請人が、この特定手続の中で申請費用のほかに測量等の費用がどれだけかかるかということが申請時には必ずしもわかりません。民事訴訟の場合であれば、測量等を申請する方が負担するわけでありますけれども、この特定手続は、調査委員の決定でもって、どこの範囲まで何回測量するかというのが決められるようになるかと思います。申請人の方からすると、申請した時点でどれだけ測量費用がかかるのかということが見えないのではなかろうか、また、裁判になった場合にそれがそのまま流用できるものかどうか必ずしもわからないという点で、費用が若干かかるかなという感じはしております。

 では、時間はどうであろうか。特定手続をやってさらにまた民事裁判をやっていくという余分な時間がかかってしまうんじゃないかということでありますけれども、それはむしろ、時間をかけただけの資料が裁判所に来るわけですから、私としては、時間は余分にかかるということはないのではないかというふうに考えております。

 なお、民事裁判そのものでございますけれども、昨年の四月から改正された民事訴訟法が施行になっておりまして、専門委員として裁判官のそばについて当事者や裁判官に専門的な知識を説明するという制度がついております。ですから、土地の境界確定訴訟の中で土地家屋調査士等の専門委員がついて訴訟が早くなるというようなことだとか、あるいは争点整理手続をきちっとやるとか、あるいは集中証拠調べをやっていくとか、そういう制度的な改善が図られておりまして、まだ実績が出ておりませんが、裁判自体も早くなってきているということを申し上げたいと思います。

 以上です。

江田委員 今、特にデメリットの点について非常に参考になりました。

 私も、次の質問で筆界特定制度の公費費用負担の必要性ということをちょっと聞こうと思ったんですが、今おっしゃられるように、費用につきましては、申請費用に加えて測定費用、それといわゆる調査費用というのがどうなるのか。そういうような意味で、費用については本来これは国の責任として、いわゆる国土調査、地籍調査それから土地改良事業などで筆界特定というのは必須のことである、そういうことからすれば、国としても公費負担があってもいいのではないかというような御意見もあることは私も重々承知しております。

 この点について一言だけ、その公費負担の必要性、それから今後の利用見込みについて、ちょうど出ましたので、弁護士会の清水先生、お願いします。

清水参考人 費用の点につきましては、筆界そのものの持っている公共性といいますか、もちろん筆界は隣同士との間の境ですから、民民の問題だとすれば個人にもメリットがあるものですけれども、公のメリットもあるものですから、先ほど言いましたように、十七条地図を整備する、一帯を測量していく、その一環としてこの特定制度を使うと申請人の方も費用が非常に少なく負担するということで、非常に有用かと思います。

 なお、私の方は、お願いしたいのは、省令の中で恐らく規定されるんでしょうけれども、官有地等の間の境がよくわからないというのがあるんですね。いわゆる畦畔、青地だとか赤道だとかと言われる部分。そこの点の費用は、官有地の方は必ずしも、役所の方で境界をはっきりさせたいという場面は少ないわけですね。民間の方がそこを開発したり家を建てたいという場合に役所の方へ折衝してやるということなんですけれども、その点を、この特定制度ですと申請人の負担になってしまいますね。そこも少し御配慮いただけないかなというふうに考えております。

江田委員 大変参考になりました。今後の法律改正の中でしっかりと議論もしていきたいと思っているのがこの公費負担であり、また自己負担の程度だと思っております。

 時間も最後になってきましたので、最後の一問でございますけれども、これは西本参考人にお伺いすることになります。

 土地家屋調査士は民間紛争解決手続の代理業務を弁護士と協働して行うことができるように今回の改正でなるわけでございますが、全国四カ所の境界問題相談センター、これは実績を上げられている。しかし、まだ試行的な段階で、だから大都市部四カ所に限定されて、全国に展開するまではまだまだ時間がかかる。

 今回の法改正でいきますと、これはそういう問題が解決して全国展開ができるようになるのか。考えられる問題点としては、弁護士の少ない地域におきましては、なお問題はそのまま残るような気がいたしますが、さらには弁護士との協働の効果、問題、こういうことについてお考えを一度お伺いしたいと思います。

西本参考人 弁護士さんとの協働型ということで、私冒頭にも申し上げましたが、境界紛争あるいは境界問題というのは境界問題だけにとどまりませんで、近隣関係のいざこざとか、感情的なしこりというのは相当、常に一体化しております。そんなことで、土地家屋調査士だけが単独で事に当たるというのではなくて協働型を最初から考えております。

 それから、今月既に宮城会を立ち上げました。それから、あす神奈川会の立ち上げでございまして、今年度中に十地区くらいを想定しております。さらに、一県でできない場合には数県のブロックででも共同しながら立ち上げるような形も考えております。

 そんなことでよろしゅうございますでしょうか。

江田委員 ありがとうございます。

 土地家屋調査士が運営されているところのこの境界問題相談センター、これは国民のために非常に有用なセンターであると評価しておりますし、この発展拡充を将来的に進めていく上での将来構想があれば最後にお聞きしておきたいんですが、どうでしょうか。

西本参考人 少なくとも、市民の方が相談したい場合には、最寄りの調査士会に行けば必ず相談できるようなシステムにつくっておきたいというふうに考えております。仮に常設でなくても、相談をお受けしておいて、そして今、ブロックという考え方がございますので、地域としてまとめて当たるということも考えておりますので、いずれはどこの方も相談いただけるように体制を整えております。よろしくお願いいたします。

江田委員 ちょっと時間がありますので、最後に中村参考人にお聞きしたいんですが、先ほども西本参考人からはちょっとした批判が出ましたけれども、司法書士業務と境界紛争のこれまでやってきた経験、実情についてお伺いすると同時に、今回の筆界特定業務へのかかわり方についての御意見をお伺いしたいと思うんです。

中村参考人 私どもは、今回のこの筆界特定制度が、なぜこういう制度が創設されたかという趣旨を考えております。

 それは、先ほど来お話が既にあると思いますけれども、境界に関する紛争というのは非常に解決までに時間がかかる、こういうことがございました。そういう観点から、最も情報の集積している登記所の方の知識、そういったものを利用して、その以前の段階かもしれませんけれども、紛争解決に役立つようなものをそこで取り上げたい、こういうことだろうというふうに思っております。でありますから、当然のことながら、裁判になりますとそれは有力な証拠として利用されるだろうというように前提を考えております。

 ですから、そもそもそういう制度の趣旨から考えますと、前提として紛争性は当然のことながら内在しているというふうに私どもは考えております。であるからこそ、この制度を申請する者は、職権、すなわち法務省側が、法務局側が職権で行うのではなくて当事者の申請をもって行う、そういうシステムになっているということも、実は紛争性がそこにあるということの裏打ちではないかというふうに考えております。

 それから、先ほど、どの程度今現在司法書士会がそれを扱っているかということでございますけれども、ただ、私どもが簡易裁判所訴訟代理権を付与されたのはまだつい一年ちょっと前のことでございまして、その具体的な統計というのは今ここではまだ持ち合わせておりませんが、二〇〇四年度の実績で申しますと、六千名が、私どもの会員の中の簡易裁判所訴訟代理権を付与された者が、約一万件の簡易裁判所の訴訟事件を扱っているというふうな統計が出ております。その中でこの境界に関するものがどの程度あるかということは、まだ今のところでは定かではございません。

 ただ、今後は恐らく、先ほど申し上げましたけれども、私どもの仕事そのものがこの法務局、特に前提としての土地あるいは建物、この場合は土地でございますけれども、土地の確定というものは重要視されるわけでありますから、私どもとしては今後もこれについては全力を挙げて取り組む必要があるだろう、それが国民に最も身近なものを扱う我々の職務であろうというふうに考えているところでございます。

江田委員 ありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 三名の参考人の皆様、本当に貴重な、御示唆に富む論点についてお話をしていただきましたこと、本当に心から感謝申し上げます。

 こうやって、不動産登記法の質疑に与党も野党も全然入らない前に、参考人の皆様からこの法案にはこういう点をしっかりと質疑してほしいというような話を聞くというのは、私は非常にいいことだと思います。

 今、国会で私がくだらないなと思っていることの一つに、予算を議決するときに、公聴会の日程を入れるかどうかで予算がいつ通るかどうか決まるという慣行があるんですね。ところが、公聴会で選ばれた人たちを見ますと、それも当代の、日本の経済を左右するような高名な経済学者等が、ほんの何分間かしか話をされないで、しかも十数人を一挙に集めて公聴会をされているんですね。それは、お一人お一人の学者の先生方の話をたっぷり一時間、二時間聞いても損にならないくらい、大変、今の日本の経済を左右するような御意見を皆さん言われるんですよね。ところが、それを予算の採決の取引材料にするというのは、本当に私は、国会の慣行をそういう点からも変えていかなくちゃいけない。そのためにも、こうやって質疑の前に皆様方からお話が聞けて、本当によかったと思っております。

 まず、清水参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほどから話に出ておりますけれども、今、簡易裁判所の調停でも、土地の争いについては解決される場合がございます。それから、司法書士さんとか土地家屋調査士さんとか、日弁連も考えておられるのかどうかわかりませんけれども、民間のADRという法案を私たちは昨年通しましたので、これからそこに土地の境界争いについての相談が行くということも当然考えられます。

 それから、もう一つは、先ほどお話しになっておられましたけれども、西本参考人が、日弁連と一緒になって全国に、あれは何カ所ぐらいあるんですかね。(西本参考人「あすで六カ所になります」と呼ぶ)六カ所ですか。六カ所ぐらいの、そういう土地の境界について相談あるいは解決の機関がある、そして今回の筆界特定制度がある、それから境界確定訴訟もあると。

 たくさんの仕組みができて、市民としては、選択できるというメリットはあるかもしれないけれども、一方では、いっぱいあって混乱をするということもあるんじゃないかと思うんですが、その仕分けというか、先にどこに行けとかというような何か案とかでもございましたら、まずお伺いしたいと思います。

清水参考人 これは、隣同士のトラブルで、このトラブルがどういうふうに将来推移していくか、簡単に話し合いで解決がつくのか、それとも相当時間をかけ、あるいは費用をかけてやらなきゃならないのか、その辺の見立ての問題だと思うんですね。いろいろなメニューのある中で、まずどれを使ったらいいかという、これはやはり具体的に、こういう場合はこうだという、なかなかマニュアル化できない部分がありますので、トラブルの解決の経験のある弁護士が入ったADRだとかあるいは調停だとかで振り分け作業をしていくのがいいんではないか、今のところそういうふうに考えておりますけれども、まだまだ、この特定手続が立ち上がって、実際にどう運用されていくか、それによってまたその振り分け機能が変わっていくのかななんというふうにも考えております。

 ただ、今回の法案の中では、法務局自体は相談窓口はつけていないわけですね。私は、やはり法務局が相談窓口をつくるということについてはどうだろうかな、それはやはり民間がやるべき問題ではないかなという意見は持っております。

 以上です。

山内委員 中村参考人、今まで法務局の職員の方が法務局外の人と一緒に仕事をするということがなかなかなかったと思うんですね。例えば、人権相談で人権擁護委員さんたちと打ち合わせをするということはあったにしても、特に筆界特定の問題については、いや、弁護士さんだ、土地家屋調査士さんだと、全然一緒に毎日仕事をしていない人たちと仕事をしていくということが新たな仕組みとしてとられる。しかも、筆界特定登記官の方というのは、そういう委員さんと一緒になって、資料を出せとか、この日には現地に行くとか、それから、この法案の読みようによっては、争いになっていない土地の人たちにもその境界、筆界を特定するために必要があれば立ち入ることも認めるとか、筆界特定登記官の能力とかも随分要求される事態にもなると思うんですね。

 それで、会長の名前で、昨年の七月五日に法務省の民事局の方に意見書を提出されておられます。その中で、そういう割と職権的な要素も入ってくるので、しっかりと意見陳述の機会とかそれから資料の提出の機会を保障してくださいよという御意見も当局の方に出されておられますけれども、その辺の不安みたいなもの、そして、こういうふうにしなくちゃいけないという御意見でもございましたら、お願いします。

中村参考人 まず、確かに、これから実際にスタートすることでございますが、いろいろな問題があるんだろうというふうに想像はいたしておるところでございます。

 昨年、私どもがそういう要望をお出しいたしましたのも、恐らく相当技術的な問題がそこには入ってくるだろう、境界の紛争性があるわけですから、なおのこと、そういうことになるだろうというふうに思っておるわけでございます。そういった意味では、どういうふうな資料、どういったものをあらかじめ用意しなきゃならないかということについては、申請される方、すなわち国民の方は相当お困りになるだろうというふうに思っております。

 私どもは、ちょっと問題がずれるかもしれませんけれども、いわゆる総合法律支援法という法律の中で、いわば物事にお困りになった国民の皆さんがどこに行ったらいいかという相談を受ける受け皿を、司法書士会では今考えておるところでございます。全国に最終的には三百カ所の相談窓口を設けるつもりでおります。とりあえずは百カ所でございます。そういった相談窓口の中で、この筆界特定の具体的なありようについても、私どもの方で具体的な方策についていろいろアドバイスができるのではないかというふうに考えております。

 と同時に、そこで生じてくるさまざまな問題、こうした方がいいんではないんだろうか、こうすればより有効的な解決が図れるのではないかということについては、今後も、できるならば法務省あるいは法務局の方にも意見を申し上げていきたいというふうに思っているところでございます。

山内委員 それでは、西本参考人にお伺いしますけれども、土地家屋調査士という職業が土地の境界について極めて専門的な領域を担当されていたということで、その専門的な分野については非常に活躍をされてきたと思うんですけれども、まだまだ、一般的な職業として、土地家屋調査士さんというのはどういうことをされるんだろうかという部分も国民は思っていると思うんです。

 それで、恐縮ですけれども、土地家屋調査士という職業がこれまでに土地境界の紛争の解決にどのような形で関与してこられたのか。そして、先ほど清水参考人にお話をお聞きしたように、いろいろな仕組みができ上がってくる、そうすると、土地家屋調査士さんの仕事というのはますます繁忙をきわめると思うんですが、通常業務とこの筆界特定の新たな仕組みとがどういうふうに今後の仕事の上で影響が出てくるのか、そのあたりをお聞かせいただきたいと思います。

西本参考人 土地家屋調査士は、資格名が長ったらしいということもありまして、なかなか市民の方に広く理解されていないといいますか、PRの仕方も難しいところがございますのは確かでございます。

 実は、昭和二十五年に議員立法で土地家屋調査士法というのが制定されましてから誕生したわけでございますが、基本的には日常業務は、土地にかかわるものは、分筆ですとか合筆ですとか、地積更正、地図訂正といったような問題がございます。これは一々、すべて筆界を明らかにした上でないと分筆ができません。そういう意味で、日常的に筆界を明らかにする仕事をしておるわけでございます。これには、証拠の調査であるとか、人の調査であるとか、現地の地物の測量ということでございます。

 きょう、お届けしてございますこの表紙の中にこういうものがございますが、例えば、この白地に黒で、墨で引いてありますのが、現在法務局にある公図というものでございます。登記所備えつけ地図でございます。これは登記所にあるだけで、こちらのカラーのものと現地は一体でございます。これが明治十八年ごろから各地でつくられた、これも名古屋の地籍字分全図の一部でございます。これには、赤道それから青地、先ほど先生がおっしゃったいろいろな情報が詰まっています。

 これを書き直しただけでこうなっておりまして、実測してこうなったわけではない。したがいまして、地籍の宝庫は実は法務局にはなくて、それぞれ違ったところにあるわけです。例えば、これは愛知県公文書館にあるものでございます。

 同じように、こういう薄紙を重ねた地図もございます。これも同じように、これがもともと明治時代に各地で一生懸命つくられた図面でございまして、上の半透明の用紙が今法務局にある図面でございます。重ね合わせますとおおよそ一致はしますが、全然、うそが出てまいります。例えば、横に長い線は幅四尺と書いております。縦に延びております線は幅三尺と書いてあります。これは毛筆ですから、筆圧で違います。これを墨で書きますと、あたかも、四尺と三尺、幅員が逆転しております。

 このようなものを調査しながら、現地で果たして本当の筆界がどこまであるかといったようなことを調査して、正しい筆界がどこにあるかということを一生懸命探し出すという業務がかなり大きな業務でございます。それをもとに、隣接する方々の同意を得ながら測量をして分筆登記等をしております。したがいまして、筆界と土地家屋調査士の業務とは切っても切れないものだというふうに考えております。

山内委員 皆様方の意見を参考にさせていただきまして、いい法案をつくり上げたいと思います。これからも引き続き御指導をよろしくお願いします。どうもありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、樽井良和君。

樽井委員 民主党の樽井良和です。

 きょうは、参考人の皆さん、本当に朝からありがとうございました。私で最後でありますので、もう一頑張りよろしくお願いいたします。

 まず、土地、個人資産といたしましても企業といたしましても、不動産というのは非常に大きな意味を持っておりまして、その筆界をきちんと確定するということは大事なことであります。むしろ、今まできっちりと確定できていなかったという方が私の方は驚きなんですが、ちょっと時間がありませんので質問に入らせていただきます。

 まず、日弁連の清水参考人にお伺いしたいんですが、日弁連の方は当初の法務省案である新たな土地境界確定制度の創設案に対しましては反対していたというふうに伺っているんですが、なぜ本法案には反対されなくなったのか、その辺の所見をお伺いしたいんですが。

    〔吉野委員長代理退席、田村(憲)委員長代理着席〕

清水参考人 先ほどお答えいたしましたけれども、簡単に言いますと、法務省の最初の案が非常にハードな制度設計をされて、国民にとりましては非常に、逆に法務局自体が土地の境界争いに巻き込まれてしまう、こういうような制度設計であったわけです。法務局で土地の境界問題を最終的に確定しよう、こういうことになりますと、それこそ法務局に、成田闘争じゃありませんけれども、むしろ旗が立っちゃいますよというようなことまで法務省さんの方には申し上げたこともあります。

 そういうことであったわけですけれども、こちらでいろいろ指摘させていただいた内容が、今回の法案ではその辺が、非常に御苦労があったかと思いますけれども、非常にソフトな制度設計に変えていただいたということで、積極的に賛成はいたしませんけれども反対はいたしません、こういう立場になったわけであります。

 以上です。

樽井委員 次に、土地家屋調査士会の西本参考人にお伺いしたいんですが、土地家屋調査士は境界の専門家であるとされています。業務の実情とか研修の実態についてちょっとお伺いしたいんですが、それとあわせまして、技術的な面でちょっと私は疑問に思うんですけれども、いろいろな土地の形として、例えば円があったりとか、あるいは山のように傾斜があったりとかして、そういったところを測量士の方々とかを見ていますと線ではかっているんですが、この辺は、土地の確定をしますと固定資産税とかにもかかわってきますので、なるべく正確な測定が必要だと思うんです。

 その辺で、技術的な面でありますとか、あるいは、今の時代に合ったもっと新しい測定する技術とか、その辺の面で見出されようとしていることとか、その辺があればちょっとお伺いしたいんですが。

西本参考人 測量には確かに、昔考えたら難しいなというものがたくさんございました。今は、ありがたいことに、科学技術の発達、それから人工衛星を用いるGPSという測量システムがございまして、比較的楽になりました。

 日常的には、今、例えば皆さん方御存じのスチールテープを当てて物の長さをはかるということは、本当に短い距離でなければほとんどございません。すべて、光波測距儀といいまして、光を発しまして、その戻る時間から距離を計算しております。したがいまして、角度と計算、座標という方法を用いれば、高低差があろうが、どんな屈曲をしていようが簡単でございます。

 それから、円も、カーブ計算、ソフトの計算が非常に発達しておりまして、半径が二百五十・五メートルであるとか五百メートルであるとか、そのうちの内角が何度とかというふうに計算できます。あるいは、三点を通るカーブを求めるというようなソフトがございまして、カーブ計算も簡単にできるようになりました。したがいまして、私どもでも、三十年前の教科書なんというのは全く役に立ちません。

 研修も常時新しい技術でやっております。それから、新しい制度に合うための研修もやっておりまして、今全国では、必ずしも無料研修では追っつかなくなりまして、有料研修もかなり進めてやっております。

 そんなことで、これからもこの制度が発展していきますために、ぜひ先生方の御指導もお受けしたいと思います。研修には全国燃えております。よろしくお願いいたします。

樽井委員 今後、もうちょっと精度が高い確定の仕方等、開発等もやっていただきたいと思います。先ほど伺いました、何か墨で書いているとか、土地の境界線をそんなことでいいかげんな、あやふやな管理の仕方をしていること自体がちょっと今の時代にはそぐわないんじゃないか、そういうふうに強く感じました。

 では、ちょっとお三方にお伺いしたいんですが、この特定制度ができて、土地境界確定訴訟や所有権の範囲をめぐる裁判、あるいはADRの実務、これができることによって実務はどう変わっていくんだろうかということをお伺いしたいんですが、それとあわせて、裁判手続と登記行政との連携の図り方をどういうふうにするのか、この辺をお伺いいたします。

 では、日本弁護士連合会から司法書士会、そして土地家屋調査士、順番によろしくお願いいたします。

清水参考人 筆界をめぐるトラブルといいますか、筆界をめぐる裁判と今回の特定手続との連携の問題につきましては先ほどお話しさせていただきましたけれども、今後は、少なくとも、弁護士が依頼者から土地の境界の問題について相談を受けて具体的に事件として引き受ける際には、まずこの特定手続を使ってみようかというのを考えるようになろうかと思います。

 それは、先ほど言いましたように、共通の図面と申しましたけれども、裁判の場合は、それぞれが主張する自分の土地の図面を中心にしてその裁判の訴状添付図面というのをつくるわけですね。逆に、被告の方もその答弁書に引用するものとして自分の土地の方をつくるものですから、共通した図面がなかなかつくれなかった。それがこの特定制度をつくることによって、一つの土俵というのを法務局の方でつくりますので、その中で争い事をするようになるということで、非常に簡便になろうかと思います。

 登記行政と裁判との間の連携につきましては、従来はほとんどなされていなかったと思いますけれども、この特定制度を契機にして、やはり裁判所、法務局それから我々代理人の立場で、実務的な研究だとかあるいは協議を今後進めていかなければならないと考えております。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

中村参考人 当然のことながら、この特定制度は相当利用がふえるだろうというふうに予想されます。それは、そもそもこの制度ができた趣旨からいけば当然のことだろうと思っております。

 そういった意味で申しますと、いわゆる登記所と裁判所の関係といったもの、この関係が非常に深くなってくるだろうというふうに思うわけであります。と同時に、裁判における適正な証拠の収集のための大きな力になるわけでございますので、そういった意味で、非常に厳正な、適正な運用が望まれるだろうというふうに思っております。

 私どもの、司法書士の方の実務にどういう影響を与えるか、こういう御質問だったと思います。

 当然のことながら、冒頭に申し上げましたけれども、私どもは、所有権移転に関する登記をずっと受託してまいります。今後も同じように、土地の境界をめぐる紛争を抱えた事件が登記の受託事件に関連して出てくることは、今までと同じようにあるわけでございます。今後は、そういった問題をまず、いろいろ相談センターであるとかあるいはADRであるとか、そういったところに行くということもございますし、それと同時に、この筆界の特定制度というものを利用するような慣習を、私どもとしては申請人の方にもお願いすることになるでしょうし、ということは、私どもの実務そのものについても、そういったものについてこれからより一層の研さんを積むということが必要になってくるだろうというふうに思っております。

西本参考人 三月七日に施行されましたばかりの改正不動産登記法では、登記官の地図訂正のかかわりですとかというのは非常に明確になりました。以前は、分筆登記しますときにも、全体を測量しますと登記面積より大きい、そのときに、地積更正をしなきゃならない、地積訂正登記をしなきゃならないというときに、周辺の所有者の印鑑証明つきの承諾書がないとできないといったような、実務的に大きな縛りがございました。

 こういう制度ができますと、この改正登記法、また今回の改正によりましても、一層登記官が当事者としてこの筆界を特定していくという問題に積極的にならざるを得ないというふうに考えまして、大変歓迎しておるところでございます。

 それから、先ほど申し上げました図面の毛筆の件は、あれは明治時代からのものであります。ところが、それを墨でかきかえただけのものが今法務局にある。だから、法務局にある図面だけでは、短絡的に、法務局にある図面がこうだから筆界はこうだという判断をされては困るということで、土地家屋調査士は、時には、あなたたちは考古学者にでもなったつもりかと言われるぐらい、古い資料を実は探しまして、土地の由来というものを調査して筆界の確認に当たっております。

 それで、この制度ができましたら、それぞれに長所、短所を生かしまして一生懸命努力したいと思っております。よろしくお願いいたします。

樽井委員 ふだん多くの努力をされているということに心から敬意をあらわします。

 実際に、例えば、これは確定してデータ化するということを私のような若い世代の議員だったら当然思うと思うんです。紙ではなくて、将来的には、例えば不動産会社の方が法務局に行って閲覧する。それも、余りスピーディーにできない、見にくい書類であり、申請をしなければならないということでやるのではなくて、例えば、経済の発展を考えた場合であるならば、不動産会社に、あそこの土地はだれの持ち物だろうかというような問い合わせがあったときは、ぱっとそこでインターネットあたりを使って、パスワードでも打てば、とにかくゼンリンの地図みたいな形のものがあれば、そこをクリックしたら、大体、面積と所有者、どういった形であるか出てくるような、そういったデータの作成というものは将来的には考えていかなければならない、そういうふうに思っております。

 そういった技術的な提案でありますとか、あるいは社会全体における利便性の確保みたいなものは、やはり私も、質問取りをしたり訴えたりしても、民間の皆さん方からしていただかないとなかなか改善することが難しいというふうに最近は実感しておりますので、こういった法律のことに意見を、非常にきょうはありがたかったんですが、実務の、本当にこうやった方が効率がいいぞというような、そういったこともぜひ今後とも政府にいろいろな意見の方を伝えていただけたらと思います。

 ちょっともう時間が来ましたので、きょうは本当にありがとうございます。有意義な御意見、助かりました。ありがとうございました。

塩崎委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十六分散会


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