衆議院

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第18号 平成17年5月17日(火曜日)

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平成十七年五月十七日(火曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 平沢 勝栄君

   理事 三原 朝彦君 理事 吉野 正芳君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      秋葉 賢也君    井上 信治君

      石破  茂君    小野 晋也君

      大前 繁雄君    左藤  章君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      園田 博之君    谷  公一君

      松島みどり君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    柳本 卓治君

      加藤 公一君    河村たかし君

      楠田 大蔵君    小林千代美君

      近藤 洋介君    佐々木秀典君

      樽井 良和君    辻   惠君

      松野 信夫君    松本 大輔君

      江田 康幸君    富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        滝   実君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            振角 秀行君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            大藤 俊行君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 加藤 治彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           舟木  隆君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  笹川  堯君     石破  茂君

  河村たかし君     近藤 洋介君

  仙谷 由人君     楠田 大蔵君

同日

 辞任         補欠選任

  石破  茂君     笹川  堯君

  楠田 大蔵君     仙谷 由人君

  近藤 洋介君     河村たかし君

    ―――――――――――――

五月十七日

 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七五号)(参議院送付)

同日

 国籍選択制度と国籍留保届の廃止に関する請願(首藤信彦君紹介)(第一一六八号)

 同(西村真悟君紹介)(第一一六九号)

 同(渡辺周君紹介)(第一一八四号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第一一九八号)

 同(阿久津幸彦君紹介)(第一二一一号)

 同(荒井聰君紹介)(第一二一二号)

 同(石毛えい子君紹介)(第一二一三号)

 同(小林千代美君紹介)(第一二一四号)

 同(高木美智代君紹介)(第一二一五号)

 同(山花郁夫君紹介)(第一二一六号)

 同(泉房穂君紹介)(第一二三一号)

 同(大出彰君紹介)(第一二三二号)

 同(石毛えい子君紹介)(第一二三三号)

 同(古屋範子君紹介)(第一二三四号)

 同(細野豪志君紹介)(第一二三五号)

 同(前原誠司君紹介)(第一二三六号)

 同(松木謙公君紹介)(第一二五七号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第一二七〇号)

 同(丸谷佳織君紹介)(第一二七一号)

 同(辻惠君紹介)(第一二八七号)

 同(横路孝弘君紹介)(第一二八八号)

 同(藤田一枝君紹介)(第一三一三号)

 民法改正において選択的夫婦別氏制度の導入に関する請願(土井たか子君紹介)(第一一九七号)

 同(渡海紀三朗君紹介)(第一二一七号)

 同(森山眞弓君紹介)(第一二一八号)

 同(菅直人君紹介)(第一二三七号)

 同(野田聖子君紹介)(第一二三八号)

 同(藤田一枝君紹介)(第一二三九号)

 同(小渕優子君紹介)(第一二七二号)

 同(古賀誠君紹介)(第一二八九号)

 同(大石尚子君紹介)(第一三一四号)

 国籍法の改正に関する請願(五十嵐文彦君紹介)(第一二六九号)

 同(横路孝弘君紹介)(第一二八六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 会社法案(内閣提出第八一号)

 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八二号)

 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七五号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、会社法案及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官振角秀行君、金融庁総務企画局参事官大藤俊行君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長大林宏君、財務省大臣官房審議官加藤治彦君、経済産業省大臣官房審議官舟木隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 おはようございます。民主党の近藤洋介でございます。

 私たち衆議院議員は常在戦場でございまして、私もまだ一期生議員なものですから、毎週金曜日地元に戻って、街頭演説をしたりミニ集会をしたり個別にお話を伺ったりして現場を歩いているわけでございます。私の地元は山形県なのですが、政府は景気回復したとおっしゃっていますけれども、全くそういう状況が見えなくて、非常に厳しい状況が続いているわけでございます。とりわけ、地元に帰るたびに、経済政策の誤りといいますか、九〇年代の初頭から二〇〇〇年代初頭のこの十数年間の経済失政の傷は完治していないなと感ずるわけでございます。

 政府の御認識は私と異なるようでございまして、竹中平蔵大臣は、この一月の本会議で、経済財政演説でこういうふうに発言しております。「私は、不良債権問題の終結が見えた今、もはやバブル後ではないと明確に申し上げたいと思います。」こう発言しておるわけでございます。

 バブル後ではないとおっしゃるのであれば、今般審議をしておりますこの会社法、経済の基本である会社法には、経済敗戦とも言われた政府の政策に対するしっかりとした反省と、そして新たな経済社会への思想なり政策理念がこれまたしっかりと埋め込まれなければいけないと思っているわけでございます。

 本日は、会社法の質疑、ある意味で、もうそろそろ採決も迫っておりますけれども、総括でございますので、改めてこの点を強調していきたいと思うわけであります。

 実際に、九〇年代の初頭から現在に至るまで、バブル処理、不良債権処理に大変多くのコストを我が国はかけてきているわけであります。先送り政策を続けた結果、その処理コストも非常に膨れ上がってきたわけでありますが、この授業料が、どれだけ我々が国家として受けたのかという認識をどれだけ持っているかというのが、私は、これは会社法を質疑する、考える上でも非常に大事なスタートラインになると思うわけであります。

 そこで、まず最初に認識を共有するためにお伺いしますが、このいわゆるバブル処理、不良債権処理問題に一体どれだけの公費がトータルで投入されたのか。

 バブル問題の端緒というのは、私は九二年だと思っておりますが、平成四年でございます。このときに、東洋信金初めいわゆる金融破綻処理が表面化してきたわけでございます。この九二年から現在に至るまで、破綻処理も含めた金融機関への公的資金は総計でどれだけになるのか、金融庁にまずお伺いしたいと思います。

大藤政府参考人 お答えいたします。

 預金保険機構が初めて資金援助を実施した平成四年四月から平成十六年三月末までの預金保険機構による資金援助等の実施状況を申し上げますと、破綻金融機関の処理に際して預金者等の保護のために実施した金銭の贈与が十八兆六千百六十二億円、破綻金融機関等からの資産の買い取りが九兆六千四百八十三億円、金融システムの安定化のために行われた資本増強が十二兆三千八百六十九億円、その他の資金援助等が六兆一千五百三十九億円となっております。

 これらの金額につきましてはおのおの資金の性格が異なりまして、単純に合計することは適当でないと考えますが、あえて合計すれば、四十六兆八千五十三億円となっております。

近藤(洋)委員 これは、四十六兆八千億円、これのほかに、いわゆる住宅金融専門会社、住専に対する六千八百五十億円。さらには、証券会社の破綻、山一証券への特融もありますね。山一証券、さらにはほかのさまざまな中小証券会社がございます。生保の破綻も合わせますと、五十兆円程度と見ていいのかな。さまざまな計算がございますが、四十八兆円程度といいますか、それだけのいわゆるお金がつぎ込まれています。

 さらに、もっと広い目で見れば、株価の下落であるとか地価の下落で、国富、トータルの我が国の国富が毀損されたということを考えますと、このコストというのは百兆円を下らない、何百兆円あるかわからないという見方もある意味ではできるかと思うわけです。はっきりしているものだけでも五十兆円弱の公的資金が投入されたというわけでございます。

 これだけの授業料を払ってのこの経済失政の再スタートの第一歩が会社法なんだということでございます。

 そして、このバブル処理は、裏返せば、この期間、九二年からさまざまな経済犯罪、不祥事が一気に表面化した時期でもあるわけです。十数年間、金融処理をめぐり、不祥事をめぐり多くの方々が逮捕、起訴されております。

 そこで、今度は法務当局に伺いたいんですけれども、金融機関の破綻後に刑事事件で起訴された件数、そして四大証券のいわゆる不祥事事件、大蔵省、日銀への過剰接待事件等で起訴された件数をお教えいただきたいと思います。

大林政府参考人 お答え申し上げます。

 株主に対する損失補てんが問題とされたいわゆる四大証券事件では、商法違反や証券取引法違反の罪により合計四十三件の起訴がなされたと把握しております。また、いわゆる大蔵省、日銀接待汚職事件では、贈収賄罪により合計二十件の起訴がなされたと把握しております。

 さらに、破綻金融機関の役職員による刑事事件につきましては、平成十年十月のいわゆる金融再生法施行以降に破綻処理を行った金融機関の役職員による刑事事件についてお答えさせていただきますと、商法違反や証券取引法違反の罪などにより合計七十九件の起訴がなされたと把握しております。

近藤(洋)委員 ただいまの整理をされた数字でも合計で百三十件程度ということでございますが、これはいわゆる経営陣側だけの話でございますから、借り手の側の方々、いわゆるバブル紳士と当時言われましたけれども、そういった借り手の側の事件、この件数はないわけであります。また、平成十年以降の金融機関の破綻後ということでございましたから、その前の時期もあるわけです。そうすると、やはり大変多くの事件が、これはまた一つのくくりで見ますと、まさに未曾有の金融関連事件がこの十数年間起きてきたわけですね。

 この間、刑事被告人の中で、被告といいますか、取り調べの中でみずから命を絶った経営者の方もいらっしゃいますし、また、そういった自殺に追い込まれた、追い込まれると言うことは語弊がありますが、亡くなった方もいらっしゃる、大変大きな事件だったというか一連の動きだったということを、これは、これまたお金と同時に認識しなければいけないと思うわけであります。

 そこで、検察当局の皆様方がこういう形で調べられてきたバブル処理、この動きというのは、やはり私はバブル処理、その後の体制づくりで、これはあくまで結果としてですけれども、結果として相当のそれなりの影響を与えてきた部分もあると思います。

 そこで、そういう意味で、司法といいますか、検察のこのあり方論をめぐりまして、大変興味深い本が最近出版されております。「国家の罠」という本でございます。著者は元外務省分析官の佐藤優氏、いわゆる鈴木宗男前代議士の側近の外務官僚と言われた方の著書でございます。

 これは外交関係で非常に衝撃を外務省関係の方に与えたと言われているわけでございますが、もう一方、この取り調べの状況についても非常に赤裸々に告白をされていらっしゃいます。この中の具体的な中身の真偽をこの法務委員会で私は問いただすつもりはございません。ただ、一つどうしても確認しておきたいと思う点がございます。

 委員長のお許しを得て配付させていただいております資料の一の中身をごらんいただければと思うんですが、この配付資料の資料一でございます。西村さんという東京地検特捜部の検事の方と佐藤氏との取り調べのやりとりが記載されているこの抜粋でございます。

 線を引いているところを読ませていただきますと、一行目の「西村氏は「本件は国策捜査だ」と明言し、その上で「闘っても無駄だ」ということを私に理解させようと腐心した。」西村氏「これは国策捜査なんだから。あなたが捕まった理由は簡単。あなたと鈴木宗男をつなげる事件を作るため。国策捜査は「時代のけじめ」をつけるために必要なんです。時代を転換するために、何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪するのです」、中略をいたしますが、真ん中の方のところで「国策捜査は冤罪じゃない。これというターゲットを見つけだして、徹底的に揺さぶって、引っかけていくんだ。」等々、このやりとりを書かれております。

 この中のことを一々紹介するのは以上にいたしますが、要は、ここで書かれていることは、私が注目したいのは、いわゆる国策捜査という言葉でございます。

 この本によりますと、国策捜査というのは、すなわち、何らかの政策的な、または政治的な意図を持って、そして時代を転換するために何か象徴的な事件をつくり出して断罪すること、ここで言うところの国策捜査と言われておりますが、果たしてこういう国策捜査が実際に行われているのでしょうか。確認したいと思うのです。

南野国務大臣 先生のお問い合わせでございますが、法務大臣として具体的事件にかかわるコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げるのであるならば、検察当局において、御指摘のような政策的な意図を持って象徴的な事件をつくり出して断罪するというような捜査処理を行うことはないものと承知いたしております。

近藤(洋)委員 ないということでございますね。それを聞いて安心をいたしました。

 そこで、ぜひ改めてもう一つ確認をしたいんですが、最後のところでございます。この資料一の最後の行のところでございますが、いわゆる高橋治則、イ・アイ・イの事件は覚えているだろうというところのくだりでございます。

 いわゆる金融不祥事、先ほど伺った金融の部分がここで触れられているからなのでございますけれども、最後のところに、この検事の方の発言として、こういう記述で書かれております。「うちが大蔵をあげる事件をしなければ、金融と財政の分離もなければ、大蔵省の財務省への再編もなかったぜ。大蔵省の機能を転換するためにあの国策捜査はひとつの「時代のけじめ」をつけたんだ」というくだりがございます。

 ここを、改めて確認でございますが、私はこの事実が正しいか正しくないかということ、真偽を言っているわけではございません。まさに、改めて確認です、こういう意図を持った捜査はないということですから、これは望ましい姿でないということでよろしいんですね。

南野国務大臣 そのとおりでございます。

近藤(洋)委員 大臣、私は検察の方というのは正義を実行する方々だと信じておりますし、私も知人に、大学の友人等で検事の方がおります。使命感を持って仕事をされているということも知っております。ただ同時に、この書物が実は当時の金融関係の方々にもある程度の共感を持って読まれているということも私は聞いておるんですね。何となく何か割り切れないものを感じている関係者の方々がいるということだけは、認識というか頭の隅に置いておいていただきたいと思うわけであります。

 検察の正義は私も確信しておりますが、割り切れないものを持っている方々が、当時の事件、まさに百三十件以上起訴されて、私はその検察のやられたことというのは、大変一つの大きな、大事なことだったと思っておりますけれども、割り切れない気持ちを持っている方々もたくさんいるということを頭の隅に置いていただきたいと思うわけでございます。

 そういう経験を踏まえての、大きなコストを、資金的にも、また世の中の社会的な影響も含めて、大きなことを含めたその集大成が今回の会社法なんだということでございます。

 法案に移りますが、今回の会社法案では、企業の自治を幅広く認めている、機動性を高めているということが柱であり、この方向性を私も大変高く評価をしているところでございます。ですから、私、この委員会でも機会をいただいて、チェック機能の仕組みが重要であることを指摘してまいりました。

 外部からのチェックという意味では、株主からのチェックという意味では、情報公開が非常に重要であるわけであります。そのかなめになるのが、一つは定款なわけですね。そして、この定款、会社の約束事、会社運営の約束事をあらかじめ示す重要な文書ですけれども、現在でも登記所へ行けば閲覧できるということですけれども、さらに一歩進めて、この法の運用に当たって、いつでもどこでもだれもが見られるように企業に公開を積極的に義務づけるといった仕組みをつくるべきだと思いますが、いかがでございますでしょうか。

滝副大臣 インターネット時代でございますから、会社の最も重要な定款が各会社それぞれインターネットで掲載される、それをみんなが読めるということは、それはある意味では時代の要求ではあろうかと思います。

 しかし、定款というのは、原則として、株主の間でつくったものでございますから、そういう意味では、現行の会社法でも新しい会社法でも、株主あるいは債権者に対して定款の閲覧権を与えている、こういうような仕組みをとっているわけですね。ただし、上場会社の場合はまた事情が違いますから、これは、定款のうち重要な部分については開示義務を課するとか、そういうことをやっているわけでございます。

 しかし、今委員の御指摘のようなことは、やはり会社がそれぞれ、この際広くインターネットで開示するということをおやりになるという判断をされることは望ましいということは言えるだろうと思っております。

近藤(洋)委員 副大臣の方から、こういう方向は望ましいという御発言をいただきました。上場企業については有価証券報告書の添付資料ということでなっておりますということを金融庁から伺いましたが、企業の公開云々についてはこれは法務省の話でございますというような形で、ちょっとその辺のすき間がややあったものですから、改めて、そういう望ましいというお話の中で、ぜひ政府の中で今後検討していただければなと思うわけでございます。

 今回の審議で大きなテーマになったのが、いわゆる敵対的買収の防衛策というのが議論されてきたわけでございます。その中で、会社の責任、会社とは何かという議論もされてまいりました。

 私は、せんじ詰めれば、会社、企業というのは、従業員にちゃんと給料を支払って、そして税金を納めて、その上で配当する、これが会社の根源だと思うんですね。そういうことがきっちりできる会社は、よいサービス、よい商品を提供できると思っているわけでございますし、敵対的買収の防衛策、いろいろ論議されましたけれども、最大の防衛策は配当を上げることだと思うんですね。高配当の企業はそう簡単に買収されないわけであります。急に、慌てて最近、買収が表明されてから配当を上げるというのは、ちょっとこれはもう後出しじゃんけんのような話でございまして、ちゃんと配当を上げるということが大事なわけです。

 そこで、今、ちょうど今週から相次いで上場企業の決算が発表されております。平成十六年三月期の決算も大変好業績でしたけれども、十七年三月期というのも、これは過去最高ということが新聞報道で伝えられております。まだ現時点の途中段階ですけれども、集計で約千六百八十社、金融を除く上場会社で、きょう時点で四五%が大体発表しているようでございますが、経常利益で約二四・五%増というのがきょう時点の集計でございます。大変な高収益でございます。

 ところが、日本の企業の配当を見ますと、非常に低いわけでございますね。資料の二に棒グラフで示させていただいておりますが、これは平成十五年度、要するに十六年三月期の配当性向、税引き後利益を分母にして、そして配当金額を分子にした数値、利益のうちどれぐらい配当に回しているかという数値でございますが、この表によると日本は二一%、米国は三三%なんですね。なかなか配当が高くならない、高収益でも高くならないということです。

 配当だけじゃなくて、実は給料も日本の上場企業は低いんです。これは次のページをごらんいただければと思うんです。資料三ですが、先進各国のCEO、いわゆる最高経営責任者の報酬を載せた表と、いわゆる平均賃金、これは農林漁業を除いた二次産業、三次産業の平均賃金が下の段に載っておりますけれども、企業のトップは、ソニーで報酬が約二億三千万、トヨタは六千五百万なんですね。ところが、アメリカはオラクルが九百十七億円、デルコンピューターは二百六十一億円、これは確かにもらい過ぎという気もいたしますが、では、ドイツ銀行はどうかといえば、十五億九千万円ですね。

 私は、日本の企業のトヨタの社長がアメリカの経営者の百分の一しか働いていないのかとは到底思えないわけであります。また、世の中の常識からして、世界のトップ企業が、いろいろな、これも六千五百万円だけじゃないと思いますが、ほかの部分もあるにしろ、もっともらっていいと思うわけですね。国会議員の給料とか総理大臣のあれはともかくとして、やはり日本を引っ張っていく大企業の経営者は、それだけの責任を持つべきだし、報酬をもらい、責任を果たすべきだと思うわけであります。

 給料、いわゆる平均賃金も低いんですよ。では、会社ももらっていなくて、賃金も、日本は三百六十三万円ですね。アメリカは三百九十五万円となっております。イギリスは四百二十六万円。いろいろな統計の仕方がございますが、これは政府税調の資料ですから、それなりに一つの指標だと思うんですけれども。

 トップの給料も低い、従業員の給料も低いというわけであります。配当も低い、そういうわけであります。こういう中途半端な、少なくともトップの給料などを考えてみますと、報酬を見ますと、中途半端な報酬だから中途半端な責任しかとらないんじゃないかとすら思えるわけでございます。

 会社法の現代化を政府が提出するのであれば、政府全体で、賃金体系とかこういったものも含めて、トータルに考えて、いかに高配当、そして高い賃金という体系をつくるかということは、そういうパッケージの政策を出すことは、僕は大事なことだと思うわけであります。

 そこで、何といってもやはり配当だと思うんです。この低過ぎる配当性向を高めることを促す政策が必要だと思うのですが、有価証券報告書には企業の配当政策の記載を義務づけています。しかし、実際にこの欄を見ると、非常に無味乾燥な文しか出ておりません。

 資料四にソニーとトヨタ自動車のそれぞれの有価証券報告書の配当政策の部分の記載を抜粋しておりますが、非常に無味乾燥な文章です。数値基準を設けている企業というんですか、具体的な数値基準的なもの、こういう配当性向をいたしますよということを掲げている企業というのは全体の八%しかないというのが資料二の資料で出ております。これは生保協会がアンケートした結果でございます。

 そういう意味では、投資家サイド、株主サイドの要望、配当性向をある程度数値基準を出してほしいという要望は非常に強いわけですが、金融庁、この点について、具体的な数値基準を記載するよう企業に求めるべきだと思いますが、いかがでございますでしょうか。

振角政府参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 配当につきましては、先生御指摘のように、有価証券報告書におきまして配当政策の基本方針等を記載するようにというふうに今書いているところでございます。

 具体的には、配当をどうするかというような、どういうタイミングでやるかとかどのように表示するかということについては、会社の経営判断に起因するところがかなり大きいと思いますので、一律に法律で強制するということについては十分慎重な対応が必要だと思いますけれども、先生が御指摘のように、配当政策については今非常に投資家の関心も高まってきております。まさしくライブドア事件以降、これも新聞報道等によりますと、増配する企業あるいは復配する企業が非常にふえているというふうに思っておりまして、我々としても、投資家の投資判断のために、自主的にできるだけ前向きな開示が行われることは望ましいと思っておりますし、関係の団体、証券業協会あるいは東証と連絡をとりつつ、前向きな開示が行われるように努力していきたいというふうに思っておるところでございます。

 東証におきます決算短信におきましても業績予想というのを任意で開示しておりまして、多くの会社におきましては一株当たりの配当金の予想額も開示するようになっていると思いますので、今の状況等を踏まえまして、今後ともいろいろ考えていきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 ぜひ、振角審議官、金融庁内で議論をしていただきたいと思うわけでございます。

 資料四に書いておりますが、これはソニーという会社、この配当政策を見ますと、「当社は、株主の皆様への利益還元は、継続的な企業価値の増大および配当を通じて実施していくことを基本と考えています。」云々と書いていますが、これだけでは、企業がどういう配当政策なのかというのは、これはだれでも書ける、ソニーでなくても、どこでも同じ言葉になってしまっているわけですね。

 今回、会社法の見直しの中で、配当が相当自由にできるように、何回でもできるような形に変更になっているわけです。だから、そういう意味も含めて、配当をちゃんと出すような世の中をつくるということは、促すということは、私は、日本経済全体にとっても、株式の市場の国民化といいますか、大変重要なことだと思うわけでありますし、そして、そういう株式市場をちゃんとつくるということが、金融庁、あえて言いますけれども、バブルの反省というものをちゃんと踏まえた政策だと思うわけです。

 ですから、しっかりやっていただきたいと思いますが、簡単にお答えください、金融庁はこの経済失政の総括、十数年間のこれまでの総括を何らかの形で審議会なりないしは内部で行ったもの、正式に、何が悪かったのか、どうだったのかということを総括されているんでしょうか、したものを公表しているんでしょうか。イエスかノーかだけで簡単にお答えください。

振角政府参考人 お答えしたいと思います。

 基本的には、金融審議会におきまして、国内金融に関するいろいろな制度の改善等について議論をしているわけでございますけれども、その際に、これまでの行政の取り組みとか金融機関をめぐる状況等を踏まえ、それまでのことにつきましていろいろ検討を行ってきているということです。

 具体的には、例えば平成十四年の中期的に展望した我が国の金融システムの将来ビジョン、あるいは平成十五年に検討しました「金融機関に対する公的資金制度のあり方について」というふうに、それまでの市場行政や公的資金の増強の取り組み等を検証したということでございます。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

近藤(洋)委員 それは、ビジョンのところで多少は検証したんでしょうけれども、もっときっちり、何がどうなったのか、調査報告が行われていないと僕は思うんですよ、金融庁。ぜひここはきっちりやるべきだと思うんですね。

 冒頭の質問でも明らかにさせていただきましたけれども、九二年から表面化した一連のこの問題、不良債権処理問題で、公的資金だけでも五十兆円以上のお金がつぎ込まれているわけです。幾ら返ってくるか、これはまた、トータルで最終的な損失がどうなるかというのはこれから確定するわけですけれども、つぎ込まれている、この事実ですよね。そして、国富ベースで大変な国富が毀損されたということ、その中で、中小企業の経営者さんから、さらには大企業の経営者まで、人生を狂わされた方が無数にいるということ、こういう社会的な大きなことを受けたこの十数年間、そして、結果として日本の低迷はいまだに続いているんですよ。うちの地元では、まだいまだに日本の低迷は続いているんです。

 こういうことは世界で類を見ない、後で、後世の歴史家がこの日本の十数年を見たら、世界に類を見ない大変高コストの失敗政策だったということを総括されると思うんです。これだけ高い授業料を支払ったわけですから、この事実に対して謙虚に総括をすることなしに、改革など、そして会社法に魂を入れ込むことなんてできないと私は確信をいたします。

 具体的に、なぜこのような事態に陥ったのか、企業の行動はどうだったのか、政策としての過ちはどうだったのか、優秀と言われた霞が関の皆さん方がなぜこういう過ちをしたのか、そして意思決定システムはどうだったのか。政治家も責任があると思いますよ。政治家の責任もあると思います。

 塩崎委員長、ちょっといなくなってしまいましたけれども、塩崎委員長を含めて与党の先生方、そして当時の野党も含めてです、国会の責任もあるわけです。そういったものをきっちり、政策空白を生み出したその結果を総括すべきだと思います。会社法の法案はこんなに厚いですけれども、これの十倍ぐらいの調査報告書がなければいけないと思うわけです。

 私は、バブル崩壊、もはやバブル後ではないと大見えを切るならば、日銀も含めた政策当局、そして政府全体を対象にした調査会なりというものを設置するとか、第三者機関の、それこそ事故調査委員会ではございませんが、そういった特別のものを衆議院に設けるとかいう総括をしていかなければいけないと思うわけでございます。

 山一証券が破綻したときに、企業の内部の調査報告書をちゃんと出していますよね。非常に詳細な関係者の証言をとった報告書を出していますよね。一つの企業が破綻しただけであれだけのものを出しているんです。政府は何にもないじゃないですか。何も出していないんです。

 ここは、私は、日本のバブル生成、崩壊、そして長期停滞について、国民的な、国家的な見地からの調査をすることは、この時代を生きた霞が関の皆さん方、官僚の皆さん方、そして政治家も当然でありますけれども、これは時代の責任だと思うんです。

 この中にも、だれとは言いませんけれども、当時の金融行政、さらには検察の立場から捜査にかかわった方も幹部の方でいらっしゃるわけですよね。いまだに残っているわけですよ。そういう方々が、きっちり記録を残す調査を、どういう形でもいいです、院に置いても結構です、調査委員会をつくるのも結構、霞が関でみずから判断するのも結構ですが、そういうものを政府として取り組むべきだと思うんです。

 ここは法務大臣、副大臣でも結構ですが、ぜひ、どうでしょう、これは代表選手として、こういったことをきっちり総括するということを、政治家としてのお考えでも結構ですが、ちゃんと調査すべきじゃないか、その上で会社法というものを、新しい時代の扉を開く法律を成立させるということの御決意をお聞かせいただきたいんですが、どうでしょうか。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 不良債権処理につきましては、政府としても経済運営上重要と考えておりますが、会社法案は、より一般的に、最近の社会情勢、経済情勢の変化、それへの対応等の観点から、会社に係る各種の制度のあり方について体系的かつ抜本的な見直しを行う、それを目的としているものでございます。先生おっしゃるとおりでございます。

 いずれにいたしましても、会社法制は我が国の経済活動、企業活動の基盤をなす重要な法制でございますので、法務省といたしましても、必要に応じて関係各省と連絡しながら、その運用状況の調査研究をするなど、今後の我が国の経済活動、企業活動の発展のために必要な措置を講じていきたいと考えております。

近藤(洋)委員 ありがとうございました。

 時代の総括は、大臣の答弁を伺っていますと、無理だな、やはりこれは政権交代しか総括する道はないなということをしっかりと申し上げまして、御質問を終えたいと思います。ありがとうございました。

田村(憲)委員長代理 次に、松野信夫君。

松野(信)委員 民主党の松野信夫です。

 会社法案の具体的な質疑に入る前に、大臣の資質に関する点について若干触れておきたいと思います。

 ことしの五月二日の東京新聞ですが、これに、自民党の森派は党活動費に資金を上乗せして配っていた、こういう報道がなされております。いわゆる森派、清和政策研究会は大臣も加わっておられると思いますが、新聞報道によりますと、実際は党の政策活動費に派閥独自の資金を上乗せして配っていたということが幹部の証言で明らかになった、こういうことであります。

 具体的には、毎年夏と冬、所属議員にいわゆる氷代、もち代を渡していた、党活動費に派閥資金を上乗せして、むしろ派閥資金の方が多かった、これは長年の慣行だった、こういう指摘があります。

 さらに、新聞報道によりますと、ことしの一月に疑惑が報道された際に森派の幹部が協議をした、どうするかということで、一つは、収支報告書を訂正するか、それとも、訂正をせずにすべて記載義務のない党の政策活動費だったということで押し通すか、どっちかということで協議したようですが、後者の方に意思統一をして、党の方にも事情を説明し、所属議員にも徹底させたことが判明した、こういうような新聞報道であります。

 そこで、お聞きをいたしますが、一九九八年から二〇〇三年までの間、南野大臣は、所属する派閥森派から、いわゆるもち代とか氷代とか、名称のいかんを問わず、そういうような資金の供与を受けておられたかどうか、この点についてまずお答えください。

南野国務大臣 昨日、先生から御質問があるということをお聞きいたしまして、お尋ねの期間について調査をさせておりますが、その結果、そのような資金を受け取った事実はないとの報告を受けております。

松野(信)委員 そうすると、新聞報道によりますと、今申し上げたように、ずうっとこれは長年の慣行だということで書いて、夏と冬、名称はもち代か氷代かはともかくとして、やっていたというんですが、南野大臣は一切、名称のいかんを問わずですよ、名称のいかんを問わず、そういうようなお金は受け取っていなかったということで間違いないんですね。もう一度確認します。

南野国務大臣 私の資金管理団体の政治資金につきましては、政治資金規正法に従って適正に処理いたしております。

松野(信)委員 派閥に所属するというと、大体、長年の慣行で、節目節目にはそういうものが一般的に配られるというようなことは、大臣はお聞きになったことはないですか。ある意味では、そのために派閥にも所属しているということではありませんか。

南野国務大臣 私は、清和会の運営または経理に携わっておりませんので、そういうことについては承知いたしておりません。

松野(信)委員 これは南野大臣は知らないということですけれども、しかし、杉浦官房副長官はそういうようなことを認めておられるわけで、南野さんが知らないとはちょっと信じがたい思いがするんですけれども、本当にどうですか、その点は。

南野国務大臣 存じ上げておりません。

松野(信)委員 知らないと言うのであれば、余り押し問答していても仕方がありませんので、この点についてはこの程度にして、さらに何かまた問題が出てくれば引き続いて質問をさせていただきたいと思います。

 そこで、会社法の質疑の方ですけれども、大分質疑が進んでおります。重複するところもあろうかと思いますが、かなり重要な点については再度質問しておきたいと思います。

 まず第一点は、取締役会の書面決議という問題です。

 本来ならば、法案の三百六十九条の一項で、ちゃんと取締役が出席をして、その上で、いろいろと議論をした上で、過半数の多数決で会社の重要な方針を決定していく、これが大原則なわけですね。ところが、三百七十条を見ますと、一定の要件、全員賛成するというような要件であれば、言うなら書面決議でよろしいですということを定款に定めることができるということになっているわけであります。

 そうすると、中小企業もあるいは大きな企業も、取締役が全員集まらなくても、書面決議だけでどんどんと重要なことが決められてしまう。そうすると、事実上、取締役会の持つ意味というのがなくなってしまう、あるいは取締役会が極めて形骸化するのではないか、こういう心配があるわけですが、この点はどのようにお考えでしょうか。

南野国務大臣 現行の商法では、取締役会につきまして、書面決議の方法により行うことは認められておりませんが、これに対しまして、今先生がお話しになられましたように、会社法案では、取締役会の書面決議を認めることといたしております。

 ただし、無制限に認めるということではなく、書面決議を行うことができる場合を定めており、定款に定めを設けている場合でありまして、さらに、かつ、取締役会の決議の目的事項につきまして、全取締役が同意をし、かつ、業務監査権限を有する監査役が設置されている場合には各監査役が特に意見を述べることがないときと限定いたしております。

 このように、書面決議が認められますのは、一定の場合、すなわち、株主、監査役、取締役、いずれも問題がないと認める場合に限られておりますので、取締役会決議の趣旨を損なうものではないというふうに考えております。

松野(信)委員 取締役会の決議の中で、簡単な、軽微なものであれば、場合によってはそういうことも言えるかもしれませんが、非常に重要な会社の方針を、右に行くか左に行くか、あるいは重要な財産を処分するかしないか、そういうような大変重要な問題まで、みんな賛成で、もう集まるのは面倒くさいから書面決議でやっちゃいましょうというような形にするというのは、私は大変、いかがなものかということですね。

 今回の会社法は、確かに、かなり中小企業の現実に合わせたということでありますけれども、反面、使い方によっては非常にルーズに流れるおそれがある。その一つがこの書面決議でもあろうかと思うわけです。

 この法案によりますと、どんな大会社であっても、定款にちゃんと定めて、全員一致であれば、どんな重要なことでも書面決議でいい、こういうふうになっていると思います。これは果たしてどうだろうかなと。やはり取締役がきちんと集まって、同じようにみんな情報を得て、その上で、しっかり議論をした上で会社の方針は決める、これが本筋だと思うんですね。

 ですから、場合によっては、情報がうまいこと操作されていて、重要な情報が伝わらないで、ああ、そんな簡単なことならみんないいよいいよということで、実は案外重要な情報が隠されていたということだって十分にあり得るわけですね。そういう点から見ると、特に大きな会社の場合、そして特に重要な案件の場合に、書面決議で押し通してしまうというのは特に問題だという気が私はしております。

 それで、念のために確認をしておきますが、三百六十九条の一項、これは原則として取締役が出席をしてということになっているんですが、この出席というのには、最近裁判所でも時々使っておりますテレビ会議とか電話会議とか、これは裁判所でも時々使って、弁護士さんあたりがやっているんですが、こういうのも出席扱いになるんでしょうか。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

寺田政府参考人 これは現行法でもある問題でございますけれども、この三百六十九条の取締役会における決議の際の出席というものには、おっしゃったような、実際に意思表示をすることがお互いに理解し合える手段ということでございますので、テレビ会議のようなものも含まれるというふうに私どもは解しております。

松野(信)委員 先ほどルーズに流れはしないかという危惧を申し上げましたけれども、その点もありますけれども、さらにもう一つ。

 この会社法案もそうですし、最近の毎年のように行われている会社法の改正を見ましても、要するに、会社の経営をする者とそれから監督をする者との分離というのがだんだん進んできているわけですね。具体的な執行をするというのは、トップはCEOとか、その次はCOOとか、そういう形で、専ら執行をする執行役員というのを一方では設ける。他方では、執行役員がきっちり会社の方針に従って実行しているかどうかをチェックする取締役というのを設ける。社外取締役というのも、ある意味ではその方向性なわけですね。

 ですから、企業内部のなれ合いとか不正とか、あるいは経営の暴走とか、そういうのを一方では取締役がしっかりチェックをしようという方向性が出てきているわけであります。

 そういう流れについても、今回のこの書面決議を容認するというのは、ちょっと逆行するのではないか、これでは、しっかり取締役が監督をするということが必ずしも十分できないのではないかなという気がしております。特に日本の会社の場合は、これまでを見ましても、なれ合いとか、まあまあということで余り、反論するとか反対するというと会社の中の空気を乱すということで、なかなか反論しにくいという風土もできているわけですね。ですから、よほど気骨のある人でないと反対しにくい、こういう状況になりかねないと思います。

 私は、この書面決議については、かなり重要な問題とか、あるいは大企業についてはかなり制約的にしていかなきゃならないし、あるいは、書面決議の濫用を防止するというようなことも考えなければいけないのではないか。今のところ、法案を見ても、書面決議の濫用をこういう形で防止できる、そういう担保がありますというのはどうもないようなんですけれども、この点についてはどのようにお考えですか。

寺田政府参考人 そもそもの考え方でございますけれども、おっしゃるとおり、濫用の危険というのはゼロではないわけでございます。しかし、他方、どんなことでも絶えず全部集まって協議をした上で決めなきゃいけないということになりますと、むしろ現実の問題としては、そういうことはおっくうなので、できるだけ回数を減らそうとかいう弊害が逆に出てくるわけでございます。

 あるいは、やや言い過ぎになるかもしれませんけれども、いろいろな人材を集めてチェックをしていきたい、いろいろな方を取締役にしてこの取締役会の実を上げたいという場合に、では、どんなときでもその人は出席していただかなきゃできません、非常にささいなことを決める際も全部取締役としては出ていただかなきゃ困りますというようなことを法制上堅持しなきゃならないということになりますと、やはり運用上はいろいろな弊害が出てくるだろうと思うわけでございまして、むしろ、事の軽重、アクセントをつけるという意味では、非常に重要なことを一生懸命に議論していただいて、そうではないことだけの場合にはこのような書面決議で済ますことも全くあり得ないわけではないということが合理的ではないか、このように考えているわけでございますし、意見の照会をいたしましても、このようなことを御支持いただく方が多数であられるという現実もございます。

 おっしゃるとおり、濫用に至るようなケースも全くないわけではないわけでございますけれども、その場合には、取締役会の決議の効力ということに影響を及ぼす場合もあり得ないわけではないというふうに思っております。

松野(信)委員 この書面決議については、濫用の防止というのが法案の中では具体的にどうも出てきていない。今局長が答弁されたように、極めてささいなことについてみんなが集まらなきゃいけないというのは、確かに不便な面もあろうかと思いますが、しかし、使い方によっては、極めて重要な問題についても、先ほど申し上げたように、情報を隠して余り反論させないような形でこれでやってしまう、こういうことになると、まさに企業内部のなれ合いとか最近問題になっている企業経営の暴走になりかねないことだけは十分今後とも留意をしていかなきゃならない、このように考えております。

 次に、余り時間がありませんが、重要財産委員会についてお伺いをしたいと思います。

 この重要財産委員会も、これは二〇〇二年五月の法改正で新たに取り入れられたものですね。それを今度は、どうも重要財産委員会という名称は、この法案の中、どこをひっくり返したって出てこない。

 もともと重要財産委員会というのは、大会社について、重要な財産の処分とか譲り受けとか多額の借金とか、こういうものについては一定の重要財産委員会の方に委任をしましょう、これで非常に機動的な経営が可能になる、こういううたい文句で、二〇〇二年五月の法改正で導入されたわけですね。ところが、現実にはこれはほとんど使われていない。私が聞いているところでは、これを導入している会社はたしか二社だったと思いますが、間違いありませんか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、二社だと私どもも承知しております。

松野(信)委員 この二〇〇二年五月の法改正のときもえらくこれは宣伝をされて、重要財産委員会というのはよろしいというふうに宣伝された割には、たった二社しか使われていないという実態。

 それで、二年しかたっていないのにたちまち法改正をして、今度は、法案で言うと三百七十三条で、重要財産委員会という名称はもうやめてしまう。それで、取締役会とは別の機関とはしないで、ただ取締役会の決議要件の特則ということで、特別取締役による取締役会の決議、こういうふうな形にしていまして、これもいささか朝令暮改に近いような気がしてならないわけです。こういうふうに変更した理由は一体何でしょうか。

寺田政府参考人 この位置づけの変更は、必ずしも、先ほど御指摘になった、この制度が非常に期待されて誕生した割には余り利用されていないということと直接関連を及ぼすものではなくて、むしろ法制的な整理ということになるわけでございます。

 すなわち、今の商法のもとにおける株式会社の機関構成というのは、基本的に、どういう大きさのものはどういう機関構成ということが決まっておりまして、それに対する例外を定款ないし取締役会決議で決めているというごくわずかなものがある、こういうことになっておりますけれども、この新しい会社法においては、機関構成というのはむしろ当事会社の方で、それぞれの会社のありようというものをいろいろお考えになった上でみずからお選びいただく、それで、定款でいろいろお定めになるということを基本といたしております。

 そういうことからいたしますと、この重要財産委員会というのは、従前、取締役会の決議によって設置されるというもので、法律上の会社の機関という構成になかなか見にくいような構成になっております。それで、固有の権限も、これはそれ自体として決まっているわけではございませんで、取締役会がどういうことを委任するかによってそれぞれその機能、権限というものが決まってしまうということで、なかなか、ほかのものと比べますと、ちょっと異質だということは否定できないところであります。

 殊に、今回、このように基本的に株式会社の機関というものは定款で決めるということになりますと、この取締役会決議のみによってつくられる重要財産委員会というものの異質性が際立つわけでございます。

 そこで、法制的な整理といたしまして、あえて株式会社の機関という構成をとらずに、取締役会というものが決議をする際にどういう要件が必要かということの特則であるということで、特別取締役制度という形での整理をしたわけでございます。

 逆に、委任の問題でございますけれども、これは具体的委任をするかどうかということとは切り離しまして、制度上そういう考えはとりませんで、特別取締役を設けるということになりますと、当然に重要財産の処分等に権限を有するというワンパターンの権限の付与ということになって、むしろ第三者から見ると、この方がどういう仕組みになっているということがよりわかりやすい、取引の安全に寄与する、こういう形での整理になっているわけでございます。

松野(信)委員 趣旨はわからないではないんですが、どうも、先ほど申し上げたように、やや朝令暮改に近い形で、重要財産委員会、それこそ宣伝をしてやっていた割には、先ほどお話ししましたように、全国でたった二社しか採用にならなかったということで、では、今後この三百七十三条の特別取締役による決議というのが実際どれくらい本当に浸透するか、やや怪しい気もしないでもないのです。

 それで、たった二社だけのことになるんですが、それなら、旧法で重要財産委員会をつくっていたところは、これはどうなるんでしょうか。従来の重要財産委員会はどうなるんでしょうか。

寺田政府参考人 今度の法律に基づいて、特別取締役という形での整理をしていただくわけでございます。

松野(信)委員 会社法は毎年のように法改正があるんですが、やはり本当に使われるという制度にしなければならないわけで、せっかく法制度をつくっておきながら余り見向きもされないというのであれば、これは何のために一生懸命ここで審議しているのかという気もしないわけではないのです。

 それで、時間が余りありませんので、次に、議決権行使の基準日の点について質問したいと思います。

 これは百二十四条にあります。これは、一定の期日、これを基準日と定めて、この株主名簿に記載されている人が権利行使できる、こういうふうになっているわけですね。これが原則なわけですが、ただ、この百二十四条の四項のところを見ますと、これは、会社の判断で、基準日の後に株主になった者についても議決権行使をすることができる、そういう株主が定められる、こういうふうな規定があるわけです。そうすると、やはりこれも、いささかルーズなふうになりはしないか、あるいは恣意的な運用になりはしないかという心配があるわけです。

 例えば、基準日ということで決めてしまって、これもコンクリートしておけば特段問題はないわけですが、基準日以降に株を取得したという場合、Aさんは会社の方に賛成するから、では、Aさんには議決権を与えよう、Bさんはどうも敵対的らしい、反対しそうだ、では、Bさんには議決権を与えるのをやめよう、こういう恣意的な運用になりはしませんか。

寺田政府参考人 この制度は、もともと会社に対して権利を行使する株主総会等における株主というものの存在というのを画一的に決めよう、そういう趣旨でできているものでございます。

 ただ、基準日から株主総会までの間に、当然に、最近ですと組織再編あるいは新株発行等の事象が生ずるわけでございますけれども、その場合に、こういう新しい出来事によって株主になった者の権利行使を一切認めないというのは、これは実務上も大変御不便が多いというように私どもも御指摘をいただいているところでございまして、それにこたえて、今回はこのような会社の側から議決権を行使される方というのを認めることができるというふうにいたしたわけでございます。

 ただ、おっしゃるとおり、株主平等の原則というのはやはり大原則でございますので、今回明文でもそれを定めていることでもございますし、それに反するような運用というのは許されないわけでございまして、例えば、新株発行をして新しく株主になった者のうち、一部の者にはこれを認めるけれども一部の者には認めないというような扱いは、今申し上げたような株主平等の原則に反するわけでございますので、そのような運用は許されないということになるわけでございます。そういう面での実質的な歯どめというのは当然あるべきところでございます。

松野(信)委員 株主平等原則に反してはならないという、これはまさに大原則ですから、それはもう当然のことではあろうかと思います。しかし、運用によっては、株主平等原則に抵触しないでやられる、うまいこと潜脱をしてしまうという危険性もこれは十分にあり得るわけです。

 例えば、基準日から一週間後あるいは二週間後までに取得した人については議決権行使を与えるけれども、その一日後に取得した者はだめというような線で切ったとしますと、基準日から二週間以内に取得した者には議決権を与える、だけれどもそれから一日でも過ぎた者には与えないというのは、これは、ある意味では確かに客観的な基準のように一見思えるので、そうすると、これは株主平等原則には反しません、こういうふうな取り扱いになるんじゃないかなと私は思うんです。

 ところが、そうすると、会社の方は、要するに、反対しそうな株主が仮にいれば、その直前のところで線を切ってしまって、あたかも株主平等原則には反しません、それで事実上会社の方針に反対するような株主を排除する、こういうことも十分にあり得るのではないか。

 ですから、恣意的な濫用を防止するという防止措置が株主平等原則だけだというのであれば、これはいささかどうかなという気もしておりまして、もし株主平等原則以外に恣意的運用を防止する担保措置があるのであれば、ちょっとその点、御説明いただけますか。

寺田政府参考人 これは平等原則一般に言えることかもしれませんけれども、結局のところ、区別をした取り扱いというものがどのように合理化されるかという問題だろうと理解をいたしております。

 すなわち、今おっしゃいました一定の日でもって分けるというのが、果たして会社にとって、一方を議決権を行使できる者として取り扱い、他方を議決権として行使することを許さないという者、そういう扱いが、何らかの合理性があるかということになるわけでございまして、当然のことながら、新株発行の場合には、どのような新株発行かによって議決権を与える与えないということの前提があるような場合があるわけでございます。そういうような一定の合理性がある場合にのみ平等原則を打ち破れるものとしての意味があるわけでございまして、そういう面での歯どめというのは、当然ある種の合理性というものでもって画されるべきものだろうというふうに考えております。

松野(信)委員 もう時間が参りましたので終わりますが、今の答弁にもありましたように、多分に運用の面で不正を防止するということが大変重要になっているわけでありまして、今後ともこの点については留意をしていかなきゃならない、こう思います。

 終わります。

塩崎委員長 次に、辻惠君。

辻委員 民主党の辻惠でございます。

 今般の会社法案の質疑も大詰めを迎えているということで、私は、この質疑においては、全体の俯瞰図というか、現在、現状の企業法制、そして今後あるべき、整備すべき企業法制を含めた諸制度について、全体の俯瞰図的なものを描き出せればいいのかな、そういう観点から質問させていただきたいというふうに思います。

 それで、今回の会社法案については、体系的かつ抜本的な会社法制度の実質的な改正を行うんだということがうたわれておるのでありますけれども、例えば、敵対的買収の防衛策を整備する必要性があるから合併対価の柔軟化の導入については一年間おくらせる措置を盛り込む等という点に端的なように、どうも全体的な理念なり構想というのがいまいちはっきりしないということが言えると思います。

 私も前回の質疑の中で、企業結合法制を含めて、やはり今回の会社法というのは全般をカバーし切れていない、部分的なものでしかないのではないか、したがって、今後の日本の企業法制を俯瞰していく全体的な理念なり構想というのが必ずしもきちっと提示できていないのではないか、この点、問題点があるのではないかということを指摘させていただきました。今もってその思いは変わらないということであります。

 まず、現在の企業法制をどう整備していくのかという観点に立って、今般のこの会社法案は、法務委員会そして経済産業委員会、財務金融委員会の連合審査に付されたということだと思うんです。つまり、法務委員会だけではカバーできない領域をも含んで、今後の企業法制の展望を明らかにしようということで連合審査に付されていると思うんですが、この連合審査に付された意味、何で経済産業委員会、財務金融委員会を含めた連合審査になっているのか、その点について法務大臣としてはどのようにお考えなのか、この点、お伺いしたいと思います。

南野国務大臣 法案審査が連合審査に付されるか否かにつきましては、当該法案の内容やその影響する分野等にかんがみまして、国会の各院において御判断されるものと承知いたしております。

 したがいまして、私の立場で会社法案が連合審査に付された理由について申し上げることはいかがかと存じますが、会社法制が、我が国の経済活動の根幹をなす会社のあり方を規律し、経済、金融、証券の分野とも密接な関連を有する法制であるため、財務金融部門及び経済産業部門の先生方にも御審議いただくべきであるとの考えにより連合審査に付されることになったのではないかと思っております。

辻委員 昨晩ちょっと遅くなって質問通告をしましたもので、通告書を出した後、やはりこれは経済産業委員会だけでなく財務金融委員会の方にも来ていただいた方がよかったのかなというふうに思ったりいたしましたけれども、時既に遅しということで、まあ、今のようなお答えしか戻ってこないんだろうなというふうに思うんですね。

 今回のこの法制を見ても、有限会社と小規模の株式会社、そしてまた株式の譲渡制限のない公開会社というべきものでしょうか、全部を包括的にカバーしている。しかし、法規制というのは、それぞれの会社の実態及び特殊性に応じてもっと的確に設定されるべきであるという面があると思うんですね。それはやはり今後の課題だろうというふうに思います。

 小規模の会社について具体的にもっとフィットしたような法規制をしていかなければいけないし、一方で、公開会社について、これは参考人の質疑の中でも明らかになっておりますけれども、今回は企業再編とかそういう面に主要に問題意識があって、企業のガバナンスの点については今後の課題だというふうになっていると思うという江頭参考人からの指摘もあったように、それぞれの企業の実態に即して、そして、場面に、局面に即した問題点がもう少し詰められて、その上で全体的な俯瞰図が描けるように、早急に問題意識を整理すべきだろう。そのときには、証券取引法の関係でもさまざまな指摘があるわけだし、そちらで整備しなきゃいけない問題もあるというふうに思っております。残された課題は非常に多い。

 二〇〇五年六月号の「企業会計」という本の中で、「M&A規制のループホール」ということで服部暢達一橋大学大学院助教授が書かれております。これは、敵対的買収の対抗策としてのライブドアの問題やベルシステム二四の問題やその他の問題も取り上げて、いろいろ論じられておりますけれども、例えば企業買収についての対策についても今次の会社法案では十全に手当てはされていない。むしろ、経済産業省の設置している企業価値研究会でのいろいろな議論は、まだ最終的なガイドラインを出すとか出さないとかいうような話は途上なわけであります。そういう意味で、残された課題はなお多いというふうに思わざるを得ません。

 残された課題について、どういう問題なのかということをもう少し明らかにしていきたいというふうに思います。

 まず、この会社法ということを考えた場合に、いろいろな立場の当事者がいる。ステークホルダーと言われておりますけれども、そもそも、この会社法案においてはどのようなステークホルダーが存在するということを措定して、それぞれについてどういう利害があって、それに対してはどういう利益の保護措置がとられるような制度的な担保がなされているのか、その全体像について御説明いただけませんか。

南野国務大臣 一般的に、株式会社のステークホルダーは、株主、従業員、債権者、取引先などであり、特に上場会社では一般投資家等も含まれると考えられると承知いたしております。

 これらのステークホルダーの利益につきましては、いずれも重要でありまして、いかなる委員会で議論されるかを問わず考慮されるべきものであると考えられます。そして、それぞれの委員会によりまして、関心を持って議論される事項や、同一の事項についての議論であってもその方向性に差異が生ずることもあり得ると思われますけれども、会社法案につきましては、最終的に目指すべき各ステークホルダーの利害調整のあり方は、同一の事項については同一のところに帰着するものと考えております。

辻委員 ステークホルダーということで、株主、従業員、債権者、取引先、一般投資家、それ以外に地域というのを挙げたり、いろいろ意見が出ているんですね。ただ、現状において主要な問題なのは、株主と、買収者というか投資家と、そしてその間に立って取締役という存在があると思うんですね。

 取締役は独自のどういう利害を持ったステークホルダーとして位置づけるべきものなのかどうなのか、これは恐らく議論があるところだと思うんですが、敵対的買収の問題や、親子会社の、ともに上場するとか、完全子会社の中で株主の権利がスポイルされているのではないかという問題を含めて、この株主と投資家、そしてその間に立った取締役というそれぞれの立場、利害の調整というか、その辺をどう制度設計するのかというのは一番焦眉の課題のように思うんです。

 この点において、取締役の位置ということについてはどういうふうにこの会社法では措定されているんでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、会社法のステークホルダー、利害関係者というのはさまざまございます。しかし、その濃淡といいますか、やはり基本は、どこの国でもそうでございますが、株主という会社を資本の面で支えている人と、それの委任を受けた取締役その他の執行部というものの間に、日本の民法でいえば委任の関係が成立しているわけでございますけれども、それをどう利害関係を規律していくかという、エージェンシー問題と申しますが、そういう問題がございます。これはどこの会社法も、会社法の中の法規制としては基本中の基本でございます。

 しかし、それはどこの会社にとってもそうではございますけれども、とりわけ今委員がおっしゃったような上場会社についていえば、これは潜在的な株主、投資家というのがおいでになるので、こういう方々の利益をどう勘案してそれを反映させていくかというのも次に重要な問題になるわけでございます。他方、株式会社というのは有限責任の法人でございますので、債権者というものの利益をどう保護していくかということが非常に重要で、これが会社法制の本来の基本であろうかと思います。

 今お尋ねになりました株主あるいは潜在的株主と取締役等の執行部との関係でございますが、言うまでもなく、取締役というのは、全体の株主総会で選ばれて会社から委任を受けているわけでございまして、実質的には株主から委任を受けているというように見ることもできるわけでございますけれども、会社全体に対して、善良な管理者の注意をもってその任務を果たすべき、そういう立場にあるわけでございます。したがいまして、株主との間の関係を見ますと、株主の利益を最大に確保するということが取締役に課せられた非常に重要な使命ということになるわけでございます。

 そこで、次に買収という場面を考えてみますと、おっしゃるように、潜在的な株主というのが次においでになるわけでございます。この方と会社の取締役というのは、当然、会社の取締役は現在の株主に対して忠実義務その他の義務を負っているわけでございますので、直接の関係にはないわけでございます。しかし、会社全体から見ますと、今の株主を含めて潜在的な株主がいることによって会社の利益がなお広がる、つまり、潜在的な株主が置きかわることによって新たな取締役の選任ということが可能になる、新たな執行部の選任ということが可能になるわけでございますから、そういう意味で、必ずしも潜在的な株主というものと取締役というものの利害というのは一致するわけではないわけでございます。当然、その方々に対する忠実義務などというものはおよそないわけでございます。

 こういう構造において会社、特に公開会社あるいは上場会社というものが考えられるわけでございますので、私どもといたしましては、静的な意味での法律関係を見ますと、会社というのは、株主のために取締役が善管注意義務をもって、利益を最大限にするべき義務を負って職務を遂行している、こういう関係になるわけでございますけれども、しかし、先ほど申し上げたような潜在的株主、買収者というものを念頭に置きますと、取締役と会社との間に必ずしもぴったり利害が一致する場面ではない場面も生ずるということを前提に物事を考えていかなければならない、そういう関係にあるというふうに理解をいたしております。

辻委員 取締役は株主の利益のために忠実義務を負って行動するというのは、建前、本来あるべき任務として規定されているけれども、ある意味で擬制なんですね。そういうふうに形として措定されているということであって、現実の利害関係を見れば、現にいる株主、これは従来は持ち合いの形になっていたし、機関投資家の意向さえ聞いていれば、意識していればいいということで、そのほかの株主の意向なりということについては当然信任が出てくるものだということに擬制されていたわけですよ。

 しかし、株式の持ち合い関係というのはどんどん減少していくし、新たな潜在的な株主、投資家ということが非常にダイナミズムを持ってあらわれてくる、それは敵対的な形ででもあらわれてくるという状況の中で、現株主と未来の株主、投資家ということと、その中で取締役という、取締役は株主の利害を代表するものである、そういう忠実義務を負っているということを単に形式的に言っていれば済むような、そういう状況ではないんですね。

 これは同僚委員からもありましたけれども、やはり取締役というのは、もっと独立的な権能というか、例えば報酬についてももっとたくさんのものをもらって、権限と、しかし一方で責任をしっかり負うという形で今後規制されていくべきものだろう。だから、取締役というのは、独自の存在として、それこそ独自のステークホルダーとしての位置ということを、きちっともっと実態に即して見るべきなんだろうというふうに思うんです。

 そのときに、現在の会社法は、現在の株主の利益を図るものとして取締役の役割がある、そういう擬制の上に立って、この緊張関係について株主の側からのチェック機能を、取締役にもっと株主の意向を反映させるような制度的な設計ということがおろそかにされていると思うんですよ。だから、もっと株主の利益を反映させるべきだということであれば、そのために何らかの制度設計をもっとこの会社法の中でしっかりうたうべきなのではないんでしょうか。その点、どういう問題意識を持っておられるのですか。

寺田政府参考人 これは、法制度の建前あるいは現実ということをそれぞれ見ますと、大変難しい問題です。

 つまり、戦前の商法を考えてみますと、株主総会というものが非常に建前上は強い権限を持っておりまして、しかし、実際上も個人株主が多くて、それなりに株主が会社の運営に寄与している、あるいは権限を持っているということに意味が感じられていたわけであります。

 ところが、戦後といいますかその前から、経済の規模が非常に大きくなってまいりますと、そのような株主総会のあり方というのは理想の一つではありますけれども、しかし非現実的な側面が非常に強くなってきたということで、戦後、昭和二十五年に授権資本制度、授権株式制度というのを採用した場面で、既に株主万能というところからかなり大きく考え方を転換いたしまして、実際にそれを運用できるのは、取締役という執行機関をもう少しコンパクトに監視できる機関というものを設けることによってしかできないのではないか、このように考えてきたわけでありまして、その当時から取締役会中心の意思決定というものが非常に多くなってまいりました。

 しかし、あるときは、それが非常に会社の不祥事につながって、機能していないという側面が強くなって、また監査役という制度を重視されたり、ある意味ではもう少し機動的な運用をなすためにさまざまな工夫もまたされたわけであります。

 つまり、非常に大きな考え方として、株主としては、ある程度会社の資金調達の機動性を中心とした運用上の機動性というものを重視することによって会社の価値を上げる、そのことによって結果的に会社が非常に繁栄をし、それによって自分の持っている株価が上がる、あるいは配当が多くなるということを主に考えるか、それとも、もう少し客観的な自分の会社に対する貢献というものがあり得るというふうに考えて、株主によって会社の運営をもう少しチェックしていくということで、実際に会社の運営に口を出す場面をふやしていくかというのが非常に大きな二つの流れでありまして、現行法は、基本的には前の方の考え方に立ちながら、しかし、株主代表訴訟を初めとする単独株主権あるいは少数株主権によるさまざまなチェック、あるいは第三者機関としての会計監査人等、さまざまなチェック機関を設けることによってそのバランスをとってやっていこう、こういう考えに立ってきているわけであります。

 今回の会社法も、少なくとも公開会社あるいは大会社と言われる部分については、現実にはそういう考えの延長上にしか合理的な仕組みはあり得ないだろうというように考えているわけでございますが、逆に、譲渡制限会社、小さな会社においては、実際の機構が動きやすくするということを理念として持っているわけでございまして、そういう意味では、大きな会社と小さな会社のそれぞれ実情に即した運用の仕方というものを通じて、株主の最大の利益をそれぞれ追求できる仕組みをそれぞれの会社においてお考えいただくというのが今回の会社法の改正の基本的な理念であると言ってよろしいのではないかと思います。

辻委員 私が言いたいのは、株主がいて、取締役がいて、未来の株主がいる、投資家がいるということで、スタティックに規制すればそれで足りる、もうそういう状況ではないだろう。現状を見れば、非常にダイナミズムに基づいて、それぞれの立場で利害を掲げて、いろいろな行動が生まれている。したがって、取締役と株主との関係を考える場合にも、取締役については、例えば独立取締役とか社外取締役をもっと積極的にきちっと位置づけて導入すべきであろうし、その辺の情報開示とかいうことについても、株主と取締役との緊張関係がもっとダイナミズムに応じて対応できるような、そういう制度設計を考えるべきだろうということを私は言いたくて、先ほどからの質疑をしているわけであります。

 一方で、投資家、未来の株主との関係においては、これはまさに公開会社における証券取引の適正の問題であって、証券取引法のいろいろな手当てをしなければいけない。日本版のSECを設ける必要もあるだろう。だから、そういうダイナミズムの中で、それぞれの領域において、もっと制度設計が緻密に、そして未来を見通して設計されるべきだろうということを私はもう一度申し上げておきたい。

 現在、経済産業省で、企業価値研究会ということでいろいろ研究をされているというのは、まさにダイナミズムに応じて、企業価値というふうにいっても、何かスタティックに物を考えればいいのではなくて、それぞれのステークホルダーの利害なり動向を受けたその総和としての企業価値ということを考えなければ現実にフィットしないという考えで議論されているんだと思うんですけれども、その辺、議論の状況について御説明いただけませんでしょうか。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 企業価値研究会におきまして、四月二十二日に論点公開という形で公表しておりますが、この中で、先生おっしゃいましたように、企業価値を損ねるような買収提案に対しては否定的に機能して、企業価値を向上させるような買収提案に対してはそういう防衛策が機能しないといったような合理的な防衛策を提示しているところでございます。

 今先生おっしゃいましたように、ステークホルダー、いろいろなステークホルダーがいるわけでございます。企業価値という中に、当然いろいろなステークホルダーの利益等々も考えながら、そういった株主全体の利益、ステークホルダーの利益、この両立を図るべく、合理的な防衛策の基本を示したというところでございます。

辻委員 企業価値研究会というのは、今申し上げたダイナミズムの中で、企業買収という切り口で、取締役の権限、役割、そして現在の株主の利害をどう反映させるのか、そして新たな買収者との利害の調整をどうするのかということで検討されていると思うんですが、それぞれのステークホルダーの利害を配慮して、ダイナミズムの中で今後適正な企業買収というルールづくりについて、これは小此木副大臣、どのような予定というか構想をお持ちなんでしょうか。

小此木副大臣 先生がおっしゃるようなルールづくりというのは、これはまさに今御議論いただいている中でも、これからの会社のあり方でも急務だというふうに思っておりまして、具体的にはまだございません、今月中にも法務省とともにこの買収防衛策の指針を策定していきたい、今のところはこういう考えでございます。

辻委員 もう時間がなくなりましたので、最後に、上場企業のガバナンスに関する領域については、経過を見るというようなことで、今回主要な改正項目に上がっていないということが指摘されています。そしてまた、企業結合法制についても不十分である、どのように制度設計していくのかが問題だ、そして情報開示ということについてどう充実させていくのかということについても今後の課題として残っていると思うんですね。

 日常の業務を遂行するという局面におけるそれぞれの問題、そしてまた会社合併等の企業買収の局面におけるそれぞれの課題、それぞれについて全体的に今後どういうふうに制度設計を目指そうと考えておられるのか、最後にこれを総括的に御答弁いただければと思います。

寺田政府参考人 今御指摘になられました問題というのはそれぞれ非常に重要な問題で、性質を別にはいたしますけれども、いずれも会社法にとっては、今後見直しが仮にあるとしたら、そこにおいて検討していかなきゃならない問題だろうというふうに認識をいたしております。

 まず、情報開示の充実でございますが、先ほどから申し上げておりますように、今回の会社法制の一つの大きな柱というのは、中小企業を柱といたしまして、さまざまな会社について、さまざまな会社の機構があり運用がありということを前提にした上で、それぞれにふさわしい形態をとっていただけるような、いわば全く既製服ではなくて、オーダー的な要素を非常に多くつけ加えたわけであります。

 しかし、それに対して、当然のことながら、さまざまな利害関係者というのがおいでになるので、こういう利害関係者に対してきちっとした情報を開示することによって自分の会社のありようというものを見せていくというのが非常に重要な今後の会社運営の一つの柱になるだろうというふうに考えております。

 それをどういう場面でどこまで規制するあるいは強制するかというのは、これはまた一つ非常に問題で、私ども、できれば、それぞれの会社の方で、会社自体が情報開示の価値をお認めになって開示が広まっていくというのが望ましい形だと思っておりますけれども、またこれについては注視してまいりたいというふうに思っております。

 それから、上場企業を中心といたしましてガバナンスの問題は、平成十四年までの間にさまざまな手当てをしてまいりましたので、参考人の方も、今回は様子を見ているという表現をされたわけでございますが、私どもとしては、ガバナンスの面においてはいろいろな手当てをして、それなりの結果が出るはずであるというふうには考えているわけでございます。委員会設置会社というような大きな選択肢も設けたわけでありますが、それについても、まだそれほど時間はたっていないわけでございます。

 これについて、先ほどおっしゃられました、特に上場会社においては、上場会社としての潜在的な株主あるいは投資家あるいは敵対的買収者というような方がさまざまおいでになって、それらの方々に対するある種のダイナミックな考慮というものをした上でのいろいろな法規制を考えなきゃならないというのは、それは一般論としてはおっしゃるとおりであろうかと思いますが、それについて、上場企業の法規制を担当しておられます政府の別の部署とも十分協議をして、あるべき姿というものについて御協力して努力をしてまいりたいというふうに考えております。

 企業結合法制については、この場でもこれまでさまざま申し上げましたが、大変難しい問題です、正直申し上げまして。つまり、一つの会社における自己完結的な一つの組織体のあり方ではなくて、企業結合体全体においてそのガバナンスをどう考えるかということでございますので、今までと比べますと飛躍的に難しい問題がたくさん出てまいります。十分な検討、慎重な検討も必要でございますが、外国法制もございますので、そこも十分参考にしながら勉強はしてまいりたいというふうに考えております。

辻委員 まだまだ課題がたくさんあると思います。今後も積極的に提言していきたいということを申し上げ、質疑を終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 いよいよ会社法の質疑も最終バッターになりまして、本当に千条からの新しい法律をこの程度の審議時間で終わらせていいのかなという気もいたしますけれども、何か複雑な思いがしております。

 四日ほど前に司法書士会の方が来られまして、今までの審議された議事録をずっと検証させてもらったけれども、肌で感じて、取締役の任期が長過ぎる点と商号の点について、やはり最後にもう一度確認をとってもらいたいというような要望がございました。私も法案の質疑に立たせていただいて、株主代表訴訟の点とかあるいは新しく導入された会計参与の問題点などについて疑問を呈させていただきました。今の司法書士の皆さんがおっしゃるような点については、私も時間があればぜひ質疑に立ちたいと思っていた論点で、最後になりましたけれども、この二点について質問させていただこうと思います。

 まず、取締役の任期は原則として二年、しかし、譲渡制限会社の場合には定款で十年まで延長できるということになっているんですが、これは余りにも長過ぎないかという点についてどうお考えでしょうか。

南野国務大臣 先生お尋ねの点でございますが、会社法案におきましては、現行の有限会社の取締役の任期につきまして全く規制がないことを踏まえながら、株式会社の取締役の任期を原則二年とした上で、株式譲渡制限会社においては定款によって最長十年までその任期を伸長することができるものといたしております。これは第三百三十二条でございます。

 これは、株式譲渡制限会社におきましては、一般的には株主の変動が頻繁ではないため、短期間で取締役の信任を問う意義に乏しいと考えられますし、むしろ、それぞれの会社の実情に応じまして、一定期間、取締役を経営に専念させた方が望ましい場合もあるものと判断したためであるということでございます。その一定期間につきましては、無制限とする考え方もないわけではなかったのでございますけれども、限定は必要であるということで十年としたものであります。

 したがいまして、株式譲渡制限会社に関しまして、定款により最長十年まで取締役の任期を伸長することができることとしましても、健全な企業統治の観点から不合理ではないものと考えております。

山内委員 私は、今回の会社法案は、単に有限会社法を改正するわけでもないし、商法の会社法の規定をまた新たにつくり直すということでもなくて、やはり会社法という本当に新しい法律をつくり上げていくという作業だと思ってこの審議に臨んでいたんですね。ですから、今まで無制限な期間だったのを何か足して二で割って十年だという議論は、やはり私はおかしいと思っております。

 取締役でない人が十年の間であっても登記簿に載っている、あるいは亡くなった人も商業登記簿に載っている。商業登記簿というのは、それをとって見たら会社の概要が大まかにわかるという効力もありますし、ある事項については対抗力もある、そういう重要な、かつ信頼性が最も重視される登記簿だと思うんですね。

 そういう面からしても、十年何も株主の批判にもさらされないままに、そういう重要な項目が変えられないまま残ることについては大変危惧をしているんですが、どうでしょうか。

南野国務大臣 会社法案におきましては、株式会社の取締役の任期を原則二年としながら、株式譲渡制限会社においては定款によって最長十年までその任期を伸長することができるものとしておりますが、任期ごとに従前の取締役の退任の登記と新たな取締役の選任または重任の登記をしなければならないこととされております。これは第九百九条でございますが、この点は、規制のあり方として現行法と何ら変わるところはございません。

 したがいまして、取締役の任期を最長十年とすることによりまして、商業登記の信用性が失われるものではないと考えております。

山内委員 信頼性は失われるでしょう。なぜならば、例えば、十年のうちの一年目で取締役をやめた人でも、あとの九年間、次の改選までやめさせませんよ、仕事はしてくださいよという擬制をつくり上げることというのは、やはり私はおかしいと思っているんですね。つまり、十年の間かえない、かわらないということは、友達同士、非常に仲がいい者同士が定款で最初に決めて、それでお互いに取締役をかえ合うのはやめような、そういう思いにつながりかねないじゃないですか。つまり、なれ合って経営をする、批判は抑えていく、あるいは批判を受けないような制度をつくっていく。

 私は、大臣が説明されてもまだそういう不安が抜けないんですけれども、もうちょっとすかっとしたような説明はないでしょうか。

滝副大臣 先生の問題意識からいたしますと、すかっとした説明はなかなか難しい面があるだろうと思うのでございます。

 先生が御指摘のように、十年の任期であっても、一年ぐらいで退任しちゃったらそれがそのまま残るじゃないかということでございますね。これは、先生も御承知の上でおっしゃっているんだろうと思いますけれども、一年で退任すれば変更の登記をするのは当然でございますよね。それを変更の登記をしないでほっておいたらどうなのか、こういうことでの御心配があるんだろうと思います。

 しかし、そういうようなことで、退任しているのにそのまま放置しておいたら、それはやはり会社としてあるいは取締役会としての責任を生ずるわけでございますし、それを信じていろいろな法的な行動を起こした者は、それなりの会社の責任を追及すればいい、こういうようなことだろうというふうに思います。

 そこで、もう一つ、なれ合いの経営の問題でございます。

 これは、そういうような長期安定的な経営をさせるんだということで株主総会で定款を定め、取締役会もそういうような了解のもとに、安定的な経営を目指すということで意思決定をいたしておるわけでございますから、そういうようなことで、了解の上でやっているということであれば、それはなれ合いという表現には、批判はあるかもしれませんけれども、安定的な経営という一方の価値判断もあるわけでございますから、そういう意味では、それなりの評価をしていいんじゃないだろうかなというふうに思っております。

山内委員 会社の自治に任せるという点はわからないわけではないんですけれども、有限会社を、存続会社は別にして、日本の法体系の中からなくしていこうというのが今回の法案なわけですから、できるだけ今までの株式会社的な考えになるべきだと思うんですね。そのためには、二年ごとという仕組みはやはり必要だと思うんですよ。ですから、二年が安定的な経営を阻害するという副大臣の答弁も、そうかなとは思うんですけれども、二年が短ければ例えばその倍の四年とか、そういうことを考えられないんでしょうか。

 といいますのも、例えば法務局にしても、資料の保存期間というのは大体五年ぐらいで焼却しちゃうわけですから、そうすると、添付書類はなくなって形だけの登記簿がまた出現するという事態にもなってくるわけで、そういう意味でも、任期を、もう少し運用の面も見ながら、法改正をされるんでしたらぜひ運用の見直しというか、そういうことに取り組んでいただきたいと思うんですけれども、どうでしょうか。

滝副大臣 確かに、法務局に登記をするときの取締役の任期というか、仮に十年とした場合でも、届け出るときの付票は五年間の保存期間だそうでございます。

 だから、私は、今先生の御指摘のように、付票の保存期間が五年間で任期が十年というのは、何となくちぐはぐな感じがするからおかしいじゃないかということを部内でも議論したことがあるのでございますけれども、もともと、付票というか添付書類というのは、どうも登記するときの確認事項じゃないだろうか、こういうような意見も部内では交換をいたしておるわけでございます。それならそれで、きちんともう少し整理した方がいいのかなと。

 どっちに整理するかは、今先生の御指摘のように、十年であれば十年、保存するのは法務局としてもなかなか大変かもしれませんけれども、その辺のところのはずを合わせておく、あるいは、もう一遍その辺は、委員御指摘のような格好で、少し整理のための検討をさせていただくということは考えた方がいいのかなというふうには思っております。

山内委員 この登記簿の関係は、例えばみなし解散にも影響すると思うんですね。

 任期が十年になって、見直しの期間を十二年というふうに立法すると、例えば、五年間で十一万社にも上る会社が休眠状態になって、本当につぶしますかといって通知をすると、そのうちの三万社が、いやいや、まだ会社を残しますと連絡をしてきて、だけれども、結局、差し引き八万社が解散の登記がされるということになるわけです。そうすると、その三万社の応対をしてきた企業は、例えば、会社を今まで休眠させていたわけですから、ただ残しておくだけ、あるいは人に会社の名義を売却するとか、まあ、そういうような感じなんでしょう。

 しかし、これが十二年ということになると、単純計算をしますと、五年間で八万社ですから、十二年となると約二十万社、二十万社の日本じゅうの株式会社が実体のない会社ということになるわけで、これは国家の政策としても余り許しておけない問題じゃないかと思うんですが、どうでしょうか。

南野国務大臣 最後の登記後五年を経過した株式会社を休眠会社とする現行制度におきましては、御指摘のとおり、おおむね五年ごとに休眠会社の整理を行ってまいりましたけれども、会社法案では、休眠会社の要件が五年から十二年に伸長されますので、現在の運用より長い期間を単位として整理を行いたいと考えているところでございます。

 具体的に何年とするかという点に関しましては、休眠会社の整理の必要性を十分考慮して適切に運用してまいりたいというふうに思っております。

山内委員 適切に対処されるのはいいんですけれども、やはり幽霊会社とか実体のない会社がふえるわけです。

 特に、サラ金会社の相談を受けていまして、サラ金会社が例えば株式会社何とかというダイレクトメール、はがきを全国に二、三十万枚ずつ送ってサラ金の被害が発生しているわけですね。そういう相談を受けていて一番思うのは、株式会社でないのに株式会社という名前を使って発送したりしているんですね。それから、株式会社という名前が載っていて、確かに会社登録しているんだけれども、もうその会社は他人が経営していたり、実体のない会社になっていたりする。

 だから、日本じゅうに、法律をきちんと守ってきれいな経済活動を行っていこうという社会を実現するためにも、余り実体のない会社が多く出るような見直しの期間の長期化というのはいかがなものかなと指摘をさせていただきます。

 任期の問題については最後にしますけれども、十年の間に登記が変わらないというと、登記を怠っているから変わっていないのか、十年の任期を定款で決めている会社だから変わっていないのかというのが、商業登記簿をとった相手方にとってはわからないわけなんですね。ここで取締役の任期について登記をしておけば、取引先あるいは新たに株主となろうとする者等々のそういう不安についても解消できると思うんですが、その点についてはどうお考えでしょうか。

富田大臣政務官 先生御案内のように、現行商法では、株式会社における代表取締役の氏名及び住所、取締役の氏名並びに監査役の氏名はそれぞれ登記事項とされておりますけれども、取締役の任期につきましては、定款で二年より短くすることが可能であり、必ずしも二年であるとは限らないものの、登記事項とはされておりません。また、現行有限会社法では、有限会社において取締役等の任期を定めた場合であっても、その任期は登記事項とこれもされておりません。

 これは、会社の業務執行等につき権限と義務を負う代表取締役及び取締役、そして監査につき権限と義務を負う監査役は、一定の場合に第三者から任務懈怠に基づく損害賠償責任を追及されること等から、その氏名等を債権者などの利害関係者に開示すべきであるが、それ以上の公示は必要ではないとの考えによるものであります。

 一たん選任されました取締役等につきましては、仮に任期満了または辞任によって退任しても、後任者が就職するまでの間は、なお取締役等の権利と義務を負い、また、後任者が就職した場合であっても、その登記が残存する限り、それを信じた善意の第三者は保護されることになっております。こういう形で、登記を信じた第三者の保護が図られております。

 会社法案におきましても、商法と同様の趣旨から、取締役等の任期はいずれも登記事項とされておらず、他方で、登記を信じた善意の第三者の保護につきましては商法と同様の措置が講じられております。これは、先ほども述べましたとおり、業務執行等の権利と義務を負う取締役等がだれであるかという第三者が必要とする情報は、その氏名が登記されることによって十分に開示されていると考えているからです。

 逆に、先生御指摘のように、仮に取締役等の任期までを登記事項とすると、任期を満了したにもかかわらずいまだ変更登記がされていない取締役等がいた場合には、この取締役を信じた第三者に対し、当該取締役等から、任期満了によって既に退任していることは登記簿上明らかであるといった主張がなされる可能性があり、かえって善意の第三者の保護に欠けるのではないかとの危惧が生じることになりかねません。

 したがいまして、取締役等の任期を登記事項とすることは適切ではないというふうに考えております。

山内委員 政務官、とても詳しい御説明をいただきまして、ありがとうございました。

 同一商号の点についても若干お聞かせ願いたいと思います。

 同一商号禁止の制度を廃止されるわけですけれども、これについても、随分実社会の中で混乱が生じるのではないかと弁護士や司法書士の間から声が上がっておりますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

南野国務大臣 同一商号についてのお尋ねでございます。

 同一商号についての紛争の具体的な数もお求めでございましたか。その数については現在把握いたしておりませんけれども、なお、裁判所の集計によりますと、過去五年間の商法第二十条、第二十一条に関する民事訴訟の新受事件は、毎年数件程度であるということを伺っております。

山内委員 そんなに少ないんですかね。随分私なども相談を受けたりするんですけれども。

 この同一商号の禁止を廃止するという仕組みは、そもそも、今までの審議の経過でお聞きしていますと、例えば新しく会社をつくる人が、自分で好きな名前を商号で登記して、活発な経済活動を行いたいと。たまたま同一地域内にあっても、やはりそれはそれで健全な経済活動をやっていけばいいんじゃないかというような趣旨だと思って聞いていたんです。

 しかし、不正の目的を持った商号の登記というのはやはり許さないという法律になっておりまして、そうすると、結局は不正な商号があるかどうかを調べなければいけない。それを調べる方法が、先に商号を登記している会社にとってはわからないので、そういう登記の申請がありましたよというのを法務局が通知するという仕組みをここで説明されたと思うんです。

 そういう仕組みをつくり上げたり、あるいは不正な目的を持った商号を登記しようとしていることについて調査をするということが必要になってくるとすれば、先に登記をしている人にとっては、やはり調査の負担とかがそのまま残ることになって、それから、もちろん、これから登記をしようという人にとっても、気を使いながら登記をしなければいけないとなって、余り意味のある改正じゃないんじゃないかなと思うんですが、どう思われるでしょうか。

南野国務大臣 会社法案の第八条におきましては、現行商法二十一条に相当する規定がございます。

 本条は、不正の目的を持って営業の主体を誤認させるような商号を使用することを禁止するとともに、これに違反して商号を使用する者がある場合には、これによりまして利益を害されるおそれがある者に、その商号の使用の差しとめを請求する権利を認めるものでございます。

山内委員 余り難しい質問をしているとは思わないんですけれども、少しずれているようです。

 では、今の差しとめを求めるということも条文に書いてありますけれども、仮処分などを申し立ててその商号の使用を禁止するという手続が今は普通だと思うんですね。だけれども、裁判所を利用しての手続というのは、なかなか思い切った判断が必要ですし、やはり勝ち負けということも当然意識しなければいけない。かといって、今まで政府の皆さんから説明があったような、何かADRをつくりますというのも、ADRをつくるということは、ADRに双方が出かけていって話し合いをするということなので、双方がそういう機関に出かけていって話し合いをするというほど仲がよければ、もうそれまでに解決できることでもあると思うんですね。

 ですから、もうちょっと簡易な商号の争いについて解決をしていくという仕組みを、ADRで考えていますじゃなくて、もっと何かないんですか。

滝副大臣 大変悩ましい御指摘でございまして、確かに、ADRで解決するような話であれば、その前段階として当然当事者同士で協議はしているわけでございますということは言えると思いますので、私どもも、そういうふうに言われますと、さて、どうしたものだろうか、こういうことを言わざるを得ないのでございますけれども。

 当委員会におきまして民事局長からも事務的に少し申し上げたかと思うのでございますけれども、この問題については、まず、どういう格好で後発の申請を関係者に調査をしてその情報を伝えるか。そういうようなことができるかどうかということも含めて、やはりその辺のところは、もうちょっと具体的な方法のあり方ということで検討させていただかなければいけないんじゃないかな、こういうふうに思います。

山内委員 最後にしますけれども、今の論点については、附帯決議を考えた者の間で考えつきまして、簡易な解決方法を考えますという条項を入れさせてもらいましたので、ぜひとも施行の前、直前じゃなくてもっと早い段階で、そういう仕組みを考えていっていただかないと本当に混乱をすると思いますので、その点、よろしくお願いします。

 今の附帯決議の話でいきますと、十三項目附帯決議をつけさせていただきまして、私が経験した中でも、多分附帯決議の条項として一番多いんじゃないかなと思うんですね。千条もある条文だから十三項目ぐらいになるのかなという思いも一方ではありますけれども、十三項目も論点があるというふうに政府の方では御認識していただきまして、運用の実態を含めて、見直すべき点はしっかりと見直していただきたいと思いますということを最後にお願いし、質問を終わります。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、両案に対し、田村憲久君外七名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。田村憲久君。

    ―――――――――――――

 会社法案に対する修正案

 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田村(憲)委員 ただいま議題となりました会社法案に対する修正案及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案について、提出者を代表して、その主な趣旨を御説明いたします。

 まず、会社法案に対する修正案について御説明いたします。

 第一は、取締役等の利益供与責任についてであります。

 原案では、会社に係る諸制度間の規律の不均衡の是正等の観点から、会社に対する取締役の責任を原則過失責任として再編成することとしておりますが、委員会等設置会社においても無過失責任としてとどめられている利益供与に係る責任については、反社会的勢力に対する利益供与が摘発されている現況にかんがみ、これを過失責任とすることは、取締役のコンプライアンス意識の低下を招き、モラルハザードが生じやすくなるものと考えます。

 したがって、本修正案では、無過失を立証することにより責任を免れることができる取締役等から当該利益の供与をした取締役を除くこととし、このような取締役等は引き続き無過失責任を負うことといたしました。

 第二は、自己株式の市場売却についてであります。

 原案では、会社は、定款に定めがあるときは、自己株式を、買い取り請求、事業全部の譲り受け、合併及び会社分割等により取得した数を限度として、募集株式の発行等の手続を経ず市場取引により売却することができることとしておりますが、平成十三年の商法改正において、自己株式の処分は新株発行と本質を同じくするという立場で法整備をしたところであり、これをさらに緩和することは、インサイダー取引や株価操縦に悪用されるおそれが広がることとなると考えます。

 したがって、本修正案では、市場において行う取引による自己株式の売却に係る規定を削除することといたしました。

 第三は、株主代表訴訟についてであります。

 原案では、制度趣旨に反する株主代表訴訟に対する抑止策として、実体的な訴訟要件を新たに法定し、取締役の会社に対する責任が認められる可能性があっても、会社の利益を考慮し、その訴訟の提起を制限することができることとしております。しかし、事前規制の緩和に伴い取締役の行動の自由度が拡大しているため、その行動を事後の責任追及で制御することが有効かつ重要な方策であり、新たに訴訟要件を法定することにより過度に株主代表訴訟の提起を萎縮させるべきではないと考えます。

 したがって、本修正案では、株主が責任追及等の訴えの提起を請求することができない場合のうち、責任追及等の訴えにより当該株式会社の正当な利益が著しく害されること、当該株式会社が過大な費用を負担することとなることその他これに準ずる事態が生ずることが相当の確実さをもって予測される場合を削除し、そのような場合でも責任追及等の訴えの提起を請求することができることといたしました。

 次に、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案は、会社法案に対する修正に伴い、関係法律の規定を整備するものであります。

 以上が、両修正案の趣旨であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

塩崎委員長 これにて両修正案についての趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 これより両案及び両修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、会社法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、田村憲久君外七名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、田村憲久君外七名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 この際、ただいま議決いたしました会社法案に対し、田村憲久君外七名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。松野信夫君。

松野(信)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    会社法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 本法が、我が国の経済社会において会社が果たす役割の重要性にかんがみ、その利用者の視点に立った規律の見直し、経営の機動性及び柔軟性の向上、経営の健全性の確保等の観点から、会社に係る様々な制度を抜本的かつ体系的に見直し、企業の多様なニーズへの対応を可能とした趣旨を踏まえ、各会社において、それぞれの実情に即した適切な管理運営のあり方を選択することができるよう、本法の内容の周知徹底を図ることをはじめとして、適切な措置を講ずること。

 二 株主総会の招集地に関する規定の変更については、株主総会が株主の権利行使の重要な一局面であることにかんがみ、その招集に当たって、株主の利便性を損なう恣意的な招集地の決定がされることがないよう、株主総会の招集通知の記載事項のあり方等について適切な措置を講ずること。

 三 会社に対する取締役の責任を原則として過失責任に再編成することに伴い、会社財産の流出を防止し、株主や会社債権者を保護するという観点から、会社内部で適正なコーポレートガバナンスが確保されるよう、周知徹底に努めるとともに、今後の状況を見ながら、必要に応じ、会社に対する取締役の責任のあり方について見直しを行うこと。

 四 破産手続開始の決定を受け復権していない者を取締役として選任することを許容することについては、そのような者に再度の経済的再生の機会を与えるという目的について十分な理解が得られるよう、その趣旨の周知徹底に努めること。

 五 株主による取締役の直接の監視機能として、定期的に取締役の改選手続を行うことが重要であることにかんがみ、取締役の任期のあり方については、今後の実務の運用状況を踏まえ、必要に応じ、その見直しを検討すること。

 六 拒否権付株式等、経営者の保身に濫用される可能性のある種類株式の発行については、その実態を見ながら、必要に応じ、これを制限するなどの法的措置も含め、検討を行うこと。

 七 敵対的企業買収防衛策の導入又は発動に当たり、防衛策が経営者の保身を目的とする過剰な内容とならないよう、その過程で株主を関与させる仕組みなど、早急に具体的な指針を策定し提案すること。

 八 企業再編の自由化及び規制緩和に伴い、企業グループや親子会社など企業結合を利用した事業展開が広く利用される中で、それぞれの会社の株主その他の利害関係者の利益が損なわれることのないよう、情報開示制度の一層の充実を図るほか、親子会社関係に係る取締役等の責任のあり方等、いわゆる企業結合法制について、検討を行うこと。

 九 株主代表訴訟の制度が、株主全体の利益の確保及び会社のコンプライアンスの維持に資するものであることにかんがみ、今回の見直しにより、この趣旨がより一層実効的に実現されるよう、制度の運用状況を注視し、必要があれば、当事者適格の見直しなど、更なる制度の改善について、検討を行うこと。

 十 類似商号規制の廃止については、その運用状況を注視し、必要があれば、既存の商号に対する簡易な救済制度の創設を含め、対応措置を検討すること。

 十一 会社設立時の出資額規制の撤廃については、企業家のモラル低下、会社形態を悪用したペーパーカンパニーの濫立、会社設立後の活動資金不足などの問題が生じることのないよう注視し、必要があれば、対応措置を検討すること。

 十二 会計参与制度の創設については、会計参与が主として中小会社における計算の適正の確保に資する任意設置の機関として設けられた趣旨を踏まえて、制度の周知徹底に努めること。

 十三 合同会社制度については、今後の利用状況を観察し、株式会社の計算等に係る規制を逃れるために株式会社から合同会社への組織変更等が顕在化した場合は、必要に応じ、その計算に関する制度のあり方について、見直しを検討すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

塩崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。南野法務大臣。

南野国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

塩崎委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、参議院送付、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。南野法務大臣。

    ―――――――――――――

 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

南野国務大臣 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 現行の船舶の所有者等の責任の制限に関する法律は、昭和五十年に海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約に準拠して制定され、その後、昭和五十七年にこの条約を改正する千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約の締結に伴い改正されたものでありますが、この千九百七十六年条約は、成立後既に三十年近くが経過し、その間のインフレーションの進行等により、現在の社会経済の実態にそぐわなくなる等の問題が生じております。そのため、国際的にも、船舶の所有者等の責任の限度額を引き上げるとともに、旅客の損害についての責任の制限に関し、その撤廃を含め当該議定書が規定する責任限度額以上の限度額を締約国の国内法において定めることを認めること等を内容とする千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する千九百九十六年の議定書が成立し、昨年五月十三日に発効しており、既に英、独等主要海運国がこの議定書を締結しております。

 そこで、政府におきましては、千九百九十六年議定書を締結するため、今国会にその承認方を求めているところであります。

 この法律案は、千九百九十六年議定書の締結に伴い、船舶の所有者等の責任の制限に関して所要の規定を整備する必要がありますので、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正しようとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げますと、第一に、人または物の損害に関する債権についての責任の制限の場合における責任限度額をおおむね二倍から三倍に引き上げることとしております。

 第二に、旅客の損害に関する債権についての責任の制限を撤廃することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

塩崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十五分散会


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