衆議院

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第27号 平成17年8月2日(火曜日)

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平成十七年八月二日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 平沢 勝栄君

   理事 三原 朝彦君 理事 吉野 正芳君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      秋葉 賢也君    井上 信治君

      大前 繁雄君    左藤  章君

      柴山 昌彦君    菅  義偉君

      園田 博之君    武田 良太君

      谷  公一君    早川 忠孝君

      松島みどり君    水野 賢一君

      宮澤 洋一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    渡辺 博道君

      加藤 公一君    河村たかし君

      小林千代美君    樽井 良和君

      辻   惠君    松野 信夫君

      松本 大輔君    村越 祐民君

      山花 郁夫君    江田 康幸君

      富田 茂之君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   国土交通大臣政務官    岩崎 忠夫君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二日

 辞任         補欠選任

  笹川  堯君     渡辺 博道君

  松島みどり君     菅  義偉君

  柳澤 伯夫君     宮澤 洋一君

  柳本 卓治君     武田 良太君

  佐々木秀典君     山花 郁夫君

  仙谷 由人君     村越 祐民君

同日

 辞任         補欠選任

  菅  義偉君     松島みどり君

  武田 良太君     柳本 卓治君

  宮澤 洋一君     柳澤 伯夫君

  渡辺 博道君     笹川  堯君

  村越 祐民君     仙谷 由人君

  山花 郁夫君     佐々木秀典君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件

 出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特例に関する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 本日は、特に外国人の上陸申請の特例等について質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長大林宏君、法務省入国管理局長三浦正晴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内おさむ君。

山内委員 おはようございます。民主党の山内おさむでございます。

 まず最初に、同じ二期目の衆議院議員永岡議員が亡くなられたということに心からお悔やみを申し上げたいと思っております。

 そこで大臣、亡くなられた原因としていろいろなことが言われておりますけれども、その一つに郵政国会の混乱が挙げられている。とても残念なことなんですけれども、小泉総理の、私たちの立場からいうと間違った思いで国会と国会議員を混乱に陥れている。この事態を踏まえて、どういうお気持ちでおられるのか、まず最初にお伺いしたいと思います。

南野国務大臣 今まさに活躍しなければならない、まだ自分ではそのように思っておられたであろう方がこのように不慮の事故を遂げられたということは、本当に哀悼の誠をささげたいと思っております。さらにまた、御家族の気持ちはどうであろうかなというふうに察しますと、胸の痛みは高鳴るばかりでございます。

 先生が今お話しになられましたそのお亡くなりになられた理由というのは、周りがせんさくするものではないのではないかな、そのように思っておりますし、また、そのことが本意であったのかどうかということも知り得ない状況でございます。ただお安らかにと御冥福を祈るのみだというふうに思っております。

山内委員 ただ、副大臣が郵政法案の態度決定に合わせて辞任をされて、結局罷免という形になっているんですが、それによってまた三週間も法務委員会が開かれなかったということ、このこと一つをとっても、今の国民から見て、この今の内閣のあり方とかやり方というものに随分批判を、ぜひ大臣としてもその国民の声を感じ取っていただきたいと思っております。

 きょうは、台湾ビザの関係の前に二点ほど、今、国会に対して国民が、もっと議員の皆さんしっかりしてくれ、特に自浄作用を十分に発揮してくれということを思われておられること、論点二つについてまずお伺いをしたいと思います。

 ところで、刑事局長、検察審査会という仕組みがありますが、この検察審査会では、検察審査員さんはどういう資料を見て判断されるのか。つまり、検察官が裁判、公判に提出する、あるいは提出しようとしている書類だけを見て検察審査員さんは判断されるのか、それとも、もっと広範な資料を見て起訴相当、不起訴不当ということを判断されるのか、お伺いしたいと思います。

大林政府参考人 委員御承知のとおり、検察審査会は、基本的には不起訴になったものを前提といたします。したがいまして、公判請求の場合は当然裁判所に提出するもの、しないものという区分けをしていきますけれども、不起訴の場合にはそのような区分はございません。したがいまして、基本的には、捜査において得られたものは検察審査会に提出されるもの、こういうふうに承知しております。

山内委員 そうすると、あらゆる資料が大体検証をされて結論に至るということなんですが、検察審査員制度というのは国民主権がもとになっていると思うんですね。裁判員制度がこのたび制度として、昨年法案として成立をした、それに合わせて検察審査員制度というものも充実されて、特に起訴相当と判断された部分については一定の拘束力が検察官にかかるという仕組みに法律が改正されたんです。

 そういった国民の声をもっともっと聞こう、裁判の場でしっかり聞こうというのが裁判員制度であり、検察の不起訴について文句を言うという仕組みが審査員制度だと思うんですけれども、この仕組み、つまり国民の声をしっかり聞こう、そういう思いというか意欲というのは今の検察の皆さんにもあるんでしょうか。

大林政府参考人 検察審査会制度は、検察において不起訴処分にしたことが、国民の皆さんから見てそれが妥当かどうか、一つのチェック機関でございます。したがいまして、検察審査会で指摘されたことについては、当然それを踏まえて捜査を行い、また処分を行う、こういうものであろうと考えております。

山内委員 だとすると、このたびの検察審査会では、山崎拓議員に対して起訴相当という判断がなされた、つまり、検察審査員の十一名の皆さんのうち八名以上の皆さんが起訴が相当であるという判断をされたわけですが、その中に、五千万円の多額の献金であるのに検察官の取り調べが事実の詳細に深く迫るには余りに少ない、一般市民でも疑問に思う点について捜査が全く不十分である、こういう指摘がその決定書の中にあったんですが、これを聞いて大臣はどう思われますか。

南野国務大臣 東京の地方検察庁におきましては、御指摘の決議を踏まえながら必要な捜査を行われるものと承知いたしております。

 検察審査会の決議に対するコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

山内委員 先ほど刑事局長からいい答弁、つまり、国民の意思というものを十分に酌んで捜査に万全を尽くしますという答弁をいただいた後で、何ですか、その答弁は。

 検察官が裏づけ捜査が不十分だと指摘を受けた決定書については読まれたんですか。

南野国務大臣 読ませていただいてはおりますけれども、先生が御指摘なのは中に、細部にわたっていることでございますので、私としてはコメントを差し上げるのはできないということを申し上げました。

山内委員 私たち民主党が求めておりますが、橋本さんと山崎拓さんについては、しっかりと国会の場で、きちんと自分たちがもらったお金については弁明をする、証人喚問には応じる、そういう姿勢を、法務大臣、法の適正な執行を職務とされている法務大臣から、閣議の場できちんとそういう見解を述べる、あるいは国会の場でそういう見解を発言するという考えにはなられませんか。

南野国務大臣 刑事事件の関係者を証人喚問したり参考人として招致したりすることについては、国会が御判断される事柄だというふうに思っておりますし、捜査または公判への影響の観点も考慮しながら、慎重に御判断いただければと思っております。

山内委員 刑事被告人にまだなっていない方なんですけれども、どうですか。

南野国務大臣 関係者含めてでございます。

山内委員 それでは、二つ目の論点についてお伺いしますが、これも国民の声を難民認定制度に反映するという形で、難民認定について異議の申し立ての場合に参与員の意見を聞くという仕組みがこのたび法案で盛り込まれました。

 この運用状況について、まず法務省の方からお伺いをしたいと思っております。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 難民審査参与員制度につきましては、七月以降になりますが、異議申立人や代理人による口頭の意見陳述でございますとか、難民調査官や参与員によります審尋のための期日を順次開催しているところでございます。

 開催しました期日におきましては、異議申立人や代理人から真摯な申し立てがなされるとともに、参与員からも熱心な御質問がございまして、また、期日を終えた後も参与員の方々による活発な意見交換がなされるなど、充実した審理が行われているという状況にございます。

山内委員 その場合に、異議を申し立てる人が自分たちの異議申し立て理由を立証する、立証できるためにも、法務省が持っている資料を参与員に見せるんだったら、その資料を異議を申し立てる側の人たちに開示するという考えはありませんか。

三浦政府参考人 今委員御指摘の件につきましては、確かに、難民を支援する弁護団の先生方等からの開示の要請がございますけれども、これらの閲覧を求められています資料につきましては、開示することが不適切なものでございますとか、異議申し立て事案について適正かつ公正に判断する上で開示自体が不可欠なものとは言いがたいものであるというふうに考えておるところでございます。

山内委員 私は昔裁判所で聾唖の人の裁判を見たことがあるんですけれども、そのときに、通訳人が手話で通訳されるわけですが、どうも手話も何種類かあるようでして、なかなか、被告人席にいるその聾唖の方に手話通訳の方が裁判所や検事や弁護士の通訳をしていても、その被告人席にいる聾唖の方が時々わからないとか首をかしげるようなしぐさをされながら裁判が終わったという印象を強く持っておりまして、今のは手話ですけれども、そういう言語の通訳などにしても、やはり通訳人あるいは当該の人の能力とか、それによって、真実を確定しなければならない場での真実というのが不十分な形でつくられていくんじゃないかというのを随分心配した記憶があります。

 自分の供述した供述調書は、難民認定の異議申し立てをする人にもその供述調書は見せて、本当に自分が一次審査で発言している内容が間違いなく供述調書に残されているのかどうかということを検証するためにも、自分の供述調書ぐらいは開示してもいいんじゃないかと思うんですが、どうですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の通訳の関係についてでございますが、これは通訳にそごがあってはまことにまずい状態でございますので、私どもも、通訳につきましては能力のある通訳人にお願いして手続を進めているところでございます。

 また、御本人の供述、これはいわゆる第一次審査と言っておりますが、最初に難民認定の申請があった場合に、担当官が御本人からいろいろ事情を聞きまして、これを最終的には供述調書の形に取りまとめるわけでございますが、その際にも通訳人を介してという形になるわけでございますが、一般的に申しますと、本人の供述を録取した書面につきましては、その内容につきましては御本人が当然記憶しておるものであろうというふうに考えておりますので、特にこれを開示しなければ不都合があるというふうには考えていないところでございます。

山内委員 最初におっしゃったように、開示を全面的に行ってしまえば、第三者のプライバシーなどもあって妥当でないという理由づけは、それはそれとして承ってはおきますが、しかし、自分の供述調書については、あなたは自分の異議申し立てを応援してくれる人や弁護士などに一次審査のときにはこう言ったということを言えるんだから、供述調書まで見せなくてもいいじゃないかという理屈にはならない、さっきの理由がその理由にはならないと思うんですね。

 さっきからお話ししているように、参与員の皆さんの意見というものは、確かに拘束力が法務省にはないのかもしれませんけれども、参与員の意見というものはそれなりに尊重されるわけでしょう。だとすれば、参与員にどういう書類が行くのかということについては、その異議申立人であり、それを支援している皆さんというのは最大の関心事ではないでしょうか。

 だから、それを、自分が話していることなんだから、それまでも開示をしないということはおかしいと思いますが、どうですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、参与員の皆様方に対しましては、異議申し立て時点までに集められました各種の証拠はすべて見ていただいて、その上で審尋等を行っていただくということになっております。これは、参与員の皆様方はいわゆる非常勤の公務員ということで守秘義務も当然かかるわけでございますし、そういう扱いにしておるわけでございます。

 参与員制度がつくられました趣旨について御理解いただいた上で、必要があれば、当然、その異議申し立ての手続の中で参与員なりから本人に対して質問等もあるわけでございますし、また意見陳述の機会もあるわけでございますので、そういうところでいろいろ意見を言っていただき、また声を聞いていただいて適切な判断をしていただく、こういう運用に努めていくのが必要だろうというふうに思っております。

 先生がおっしゃいましたように、制度として、本人の調書はすべからく開示するということにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、必ずしもなじまないものではないかというふうに思っておるわけでございます。

山内委員 きょうの質問の時間が台湾ビザの関係でございますので、もしまた一般質疑、純粋な一般質疑の時間がとれましたら、そのときにお伺いをしたいと思っております。

 ただ、この二点についてなぜ聞いたかというと、やはり国民というのは、自分の知らないところで何かいろいろな手続が仕組まれたり、国会議員が一億円や五千万もらっても何も起きない。ただ、裁判所で、野中さんとか橋本さんとか青木さんですか、証人尋問がなされるということで、その面では気持ちがすかっとした部分が国民の皆さんにはあるのかもしれませんけれども、私たち国会の場で仕事をしていると、やはり国会で、理不尽な点あるいは不合理な点については、国民の皆さんから、しっかりとその点について追及をしたい、してほしいという要望もございますので、質疑をさせていただいた次第でございます。

 台湾ビザの件につきましては、これは後で同僚議員の方から詳しく質問もあるんですけれども、この制度が法定化されますと、やはり中国にも配慮をしなくちゃいけないと思うのですが、その点については政府はどういうお考えなんでしょうか。

小野寺大臣政務官 委員御指摘の点、私どもとしても、十分配慮する必要があると思っております。

 まず、台湾についての査証免除の措置でございますが、これは非政府の民間交流促進ということですので、日中共同声明に照らして問題となるものではないというふうに考えております。

 また、中国に対しましては、中国国民の訪日団体旅行者の査証発給対象地域を、ことし七月二十五日より、それまでの三直轄市五省から中国全土に拡大したところです。

 また、香港については昨年四月より、マカオにつきましてはことし三月二十五日より、査証免除を実施しております。

山内委員 中国について、全土に、まだ団体旅行客へのビザの発給でとどまっている。つまり、これから中国も国力が上がってきて、中国の国民の皆さんも所得が高まってくる。そうすると、わざわざ日本にまで来て、不法滞在を続けてでも稼ぎを本国に送るというような方もどんどん少なくなってくると思うんですね。そういう点からも、ビザの取得とか免除とかについては、よりグローバルにというか、そういう観点から今後も判断していただきたいと思います。

 それから、私が住んでいる山陰地区というのは、日本海の地図をぐるっと百八十度くらい回していただくと、韓国と一番近い関係になっておりまして、その分、経済や文化、芸術の交流というものもかなり頻繁に行われているんですが、韓国につきましては、今がどういう仕組みになっていて、今後どういう点を検討されていかれるのか、お伺いをしたいと思います。

小野寺大臣政務官 韓国につきましては、日本にいらっしゃる方が大変ふえておりますし、これからも大変重要なパートナーだと考えております。

 現在は、愛知万博実施時期に合わせまして、ことし三月一日より九月三十日まで、短期滞在、九十日以内ですが、査証免除を実施しております。十月一日以降、この査証免除の期間のことにつきましては、現在実施している査証免除の実施の結果、それからまた我が国におけます外国人犯罪の状況を踏まえまして、総合的に検討していくということを今考えております。

山内委員 それから、台湾とも、例えば私の鳥取県でいえば、二十世紀ナシを輸出したり、割と雪が降る、比較的南限に本県、我が県があるものですから、雪を見に来られる観光客なども多いんですが、先ほど少しお話しになったかもしれませんけれども、台湾の問題についてもお伺いできればと思います。

小野寺大臣政務官 委員の御地元は鳥取だと思います。大山、非常にすばらしい、人気のある観光地だと思いますし、もちろん台湾の方、雪に対しては大変な思い入れがあるということも伺っております。

 台湾につきましては、訪日者百万人を突破しておりまして、現在は、愛知万博期間を対象としまして、三月十一日より九月二十五日まで、九十日以内の査証免除措置がとられております。この愛知万博終了後も、台湾からの観光客の訪日の促進を図るという観点、引き続き査証免除を行うということは、台湾からの訪日者が不法残留や犯罪に占める割合が少ないということを踏まえて、政府としては、問題ないと思っております。

山内委員 最後になりますけれども、ほかの国にはというか、今まで出た国以外ですね、外務省としてはどのように、一時的な短期滞在についてのビザは比較的積極的に付与していこうとか、あるいは査証免除も検討していこうとかいう、そういう外務省としての将来展望みたいなものはあるんでしょうか。

小野寺大臣政務官 御案内のとおり、我が国、二〇一〇年には訪日外国人旅行者一千万人を突破させようと、ビジット・ジャパン・キャンペーンをしております。

 その中で、この短期滞在査証の免除につきましては、観光を含む二国間の人的交流促進の観点に加えて、大事なのは犯罪対策、入出国管理等の観点、これを総合的に踏まえて適切に判断していきたいと思いますが、できれば多くの皆さんに日本を訪問していただく、その利便性が図れればというふうにも思っております。

山内委員 不法滞在の予防とか対策というのはまた別途考慮できる問題でもあると思いますので、積極的な取り組みをお願いしたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、津川祥吾君。

津川委員 民主党の津川祥吾でございます。

 引き続きまして、台湾からの日本に入国される方の査証免除につきまして、それを中心にお伺いをさせていただきます。

 まず、査証というのはビザと言われるものでありますが、パスポートは旅券と言われまして、私なんかは、最初に海外旅行に行くときには、旅券というのは航空チケットのことだと思って、旅券というのがパスポートというものと一緒のものだとは知らなかったんです。パスポートと、ビザというものがさらにありまして、ビザというと今度はまたカードのことと誤解される方もあるんですが、パスポートとビザについて、それぞれどういうものでどういう違いがあるのかという、大変基本的なことで恐縮でございますが、確認をさせていただきたいと思います。

南野国務大臣 基本的な御質問、ありがとうございます。

 パスポートと申しますと、すなわち旅券でございます。先生がおっしゃったチケットではないわけでございますが、旅券の発給国政府が外国に渡航する自国民の国籍及び身分を公証して、かつ、渡航先の外国政府に対し、それを持っている人に対する保護と旅行の便宜供与を依頼する文書などをいうものでありまして、入管法第三条におきまして、有効な旅券を所持しない者は本邦に入ってはならない旨規定されている、そういう形のものでございます。

 一方、ビザは、査証とも呼んでおりますが、渡航先である国の在外公館におきまして、査証を申請する外国人の所持する旅券が合法的に発給された正式のものである、かつ有効なものである、期限などございますが、それを確認するとともに、当該外国人の渡航先国への入国及び滞在が査証に記載されている条件のもとにおいて適当であると認定するものであります。これは入管法の第六条第一項において、「本邦に上陸しようとする外国人は、」原則として「有効な旅券で日本国領事官等の査証を受けたものを所持しなければならない。」そのようなものが規定されております。

 また、我が国で発給する査証につきましては、外務省設置法に基づきまして、外国に駐在する日本国の領事官等がこれを発給することとされております。

 以上でございます。

津川委員 それで、今回、台湾についての議論をさせていただきたいわけでありますが、日本の近隣の国で、また非常に交流の盛んな地域であります日本と台湾、日本と中国、それから日本と韓国の間で、このビザ、査証について現在どのような措置が相互にとられているのかということをちょっと確認させていただきたいのと、ビザの目的、理由については今法務大臣から御説明をいただきましたが、では、その必要であるビザを免除するというのはどういうことなのかということにつきまして、これは外務省にお答えをいただければと思います。

小野寺大臣政務官 議員御質問の、日本と台湾、中国、韓国との間の査証の問題についてということでお答えをさせていただきます。

 台湾住民につきましては、我が国、愛知万博期間を対象としまして、平成十七年三月十一日から九月二十五日まで、短期滞在、九十日以内の査証免除を実施しております。また、台湾は日本人に対しましては、平成十五年五月から、三十日以内の滞在について査証免除を実施しております。

 韓国に対しましては、愛知万博実施期間に合わせまして、平成十七年三月一日から九月三十日まで、短期滞在、同じく九十日以内ですが、査証免除を実施しており、また、韓国は日本人に対しまして、平成七年一月から、三十日以内の観光、通過目的での滞在について無査証入国を認めております。

 中国に対しましては、日中両国が指定する旅行社による団体旅行に参加する場合には十五日以内の滞在が可能な短期滞在査証を発給しており、また、中国は日本人に対して、平成十五年九月から、十五日以内の観光、商用、親族・知人訪問もしくは通過上陸目的での滞在について査証免除をしております。

津川委員 今御説明をいただいたとおり、相互に見ると必ずしも一致をしないわけでありますけれども、この点についての見解を御説明いただけますでしょうか。

小野寺大臣政務官 査証につきましては、それぞれの国の主権ということが重要なことになりますので、それぞれの国の考え方、事情に合わせてお互いに発給し合うということになると思います。

津川委員 ありがとうございます。

 なるべく通告の中だけで質問させていただきますが、ちょっと答弁漏れがあったかなと思うんです。

 免除をすることの理由、これは、ほかの国が日本の国民に対する免除はその国がそれぞれ考えるという話で今御説明いただきましたが、では、日本はなぜ今そういった措置をとっているのか。本来必要であるはずのビザを免除しているということについて、御説明をいただけますでしょうか。

小野寺大臣政務官 先ほどお話ししました中国、韓国、台湾につきましては、近隣諸国であり、大変重要な役割、あるいは民間交流を今しているという状況にあります。また、日本としましても、これらの近隣諸国から日本を訪問していただき、それが経済面でもプラスになるということで、状況を踏まえながら今進めさせていただいているところだと思っております。

津川委員 特に今、期間が限定をされていて、九月二十五日ですか、愛知万博の期間までということですから、要するに、愛知万博に来ていただく方にはどんどん来ていただきたい、こういう話で今されているんだと思います。その考え方からいうと、万博が終わればまたもとどおりということに、このままほっておくとそうなるわけですね。

 中国、韓国の方々に対する対応は、政府の、いわゆる外務省の方針で、今後もさらに継続をするとか恒久化をするというような判断はできるということを伺っておりますが、台湾についてそのようなことが政府の方針だけでできるかどうかについて確認をさせていただきます。

南野国務大臣 台湾に関してでございますけれども、愛知万博の開催に伴いまして、台湾に居住する方に対しては、ビザ免除の措置を内容とする二千五年日本国際博覧会への外国人観光旅客の来訪の促進に関する法律が制定されるとともに、所要の政令が整備されたところでありますが、これは万博の終了の日をもってその効力を失うとされておりますので、愛知万博終了後は、その法律に基づいて台湾居住者に対してビザ免除を行うことができなくなります。

津川委員 ありがとうございます。

 それで、なぜ台湾については特別立法措置をしなければならないのかということについて、これは法務省でよろしいでしょうか、お答えいただけますでしょうか。

南野国務大臣 お尋ねでございますけれども、入管法の第六条第一項におきましては、本邦に上陸しようとする外国人は、有効な旅券で日本国領事官等のビザを受けたものを所持しなければならないとされておりますけれども、二国間協定の国際約束または日本国政府が外国政府に対して行う通告により日本国領事官等の査証を必要とされていないものにつきましては査証を要しない旨、規定されております。

 しかし、我が国は台湾を国または政府として扱っていないということがございますので、国際約束もしくは通告を行うことができないために、同項ただし書きを根拠として査証を免除することはできない。そのために、台湾の居住者につきましては、査証免除措置をとることを可能とするためには入管法第六条第一項の特例を設ける必要があるということでございます。

津川委員 なぜこういう質問をしたかというと、報道では、要するに、台湾の方に対する査証免除の法律がどうも出るらしいというお話が記事として出るものですから、そうすると、ほかはどうなるんですか、そんな台湾だけじゃなくてほかもやってほしいとかあるけれども、何でそういう台湾だけの法律なのかというような疑問を持たれる方があるものですから、改めて確認の質問をさせていただきました。

 さらに、実際、法律的には法改正を行えばできるところでありますが、それ以外にも何点か確認をしなければならないポイントがあろうかなというふうに思います。

 台湾の方への査証免除ということをすると、一つには、先ほど山内議員からもお話がありましたが、中国が何か言ってくるんじゃないか、中国への配慮というものも必要ではないかということがございますが、もう一度、外務省、御答弁いただけますでしょうか。

小野寺大臣政務官 中国への配慮というのは、今、国際状況を踏まえても大変重要な要因だと思っております。

 先ほど少し触れさせていただきましたが、中国につきましては、ことし七月二十五日より、それまでの三直轄市五省から中国全土に拡大して、中国国民の訪日団体旅行者の査証発給対象地域ということを広げております。香港につきましてもマカオにつきましても査証免除を今実施しておりますので、そういう配慮をしております。

 また、今回の愛知万博の開催に合わせ、この台湾の問題につきましての延長については、北京それから東京で、お互い、両方の政府がこの台湾の延長について、承認についてお話をしたところ、特に異論はないということですので、中国政府もこのことに関しては大きな異論を挟んでいるということはないと承知しております。

津川委員 済みません、今の最後の部分をもう一回確認したいんですが、今回の愛知万博の間、査証免除をすることについて中国は異論がないとおっしゃったのか、今後も立法措置で査証免除をすることについて中国は異論がないと、まだ法律が出ていない段階で異論がないというのも変な話ですが、そういうニュアンスで中国政府はおっしゃっているのか、ちょっと確認をさせていただけますか。

小野寺大臣政務官 言葉足らずで恐縮です。

 延長するということに関しても中国政府は異論がないというふうに承っております。

津川委員 ありがとうございます。

 もう一点なんですが、これはマスコミの報道でありますけれども、日華議員懇談会会長の平沼前経済産業大臣が、ことしの五月に町村外務大臣にお会いになって、台湾から日本を訪れる観光客へのビザの免除について万博終了後も継続するように要請したところ、外務大臣は、日本国内の治安も大事だというふうにおっしゃって、周辺諸国とのバランスも考えて総合的に判断するということを五月の段階では述べられたという報道があります。

 南野大臣もこのことを何度かおっしゃいますけれども、外国人による犯罪の増加ということを背景にして、ビザなし入国の増加を不安視する声というのは確かにあろうかと思います。台湾に対する観光ビザの査証免除措置を延長することによる治安への影響というものをどういうふうにとらえていらっしゃるか、御見解を伺います。

小野寺大臣政務官 国内で今いろいろな外国人犯罪がふえております。治安については配慮するということが大事だと思います。

 統計上、実は、外国からいらっしゃる方の中で、台湾につきましては非常に外国人犯罪が少ない国ということに私どもとらえておりまして、また、入国者の中で不法残留をされる発生率ということ、とても失礼な言い方ですが、これも日本にいらっしゃる主要国の中では最も低いという状況にありまして、台湾につきましては、今の国内の状況を見ても査証を免除することは問題がないのではないかというふうに考えております。

津川委員 法務大臣にもこの点についてちょっと見解を伺いたいんですが、国内の治安の中で体感治安が悪化をしているという話は大臣もこれまで何度かおっしゃって、その背景に外国人犯罪がふえているということがあるんじゃないかというようなことがありました。

 体感治安というのは、実際に発生をしている犯罪のことではなくて悪くなっていると感じているという話でありますから、要するに、データ上はそうであっても、データ上は台湾から来られている方の不法残留あるいは観光で来られる方の不法残留というのが非常に少なかったとしても、こういったことをすることによる体感治安は悪化をするかもしれないんですが、法務大臣の見解を伺いたいと思います。

南野国務大臣 統計上の数と体感というのとはこれまた多少違ってくるものだと思いますが、我々が体感で感じている、ああそうかな、台湾の方は少ないのかな、中国が多いのかな、そういうものはやはり統計でかっちりと見ていかなければならないし、統計で見て数の差が、今外務省がお話しになられましたが、そういうことであれば、ああそうなのかなと思うこと、これも体感の一つではないかなと思っております。

津川委員 これは私も何度も申し上げてきたことなんですが、外国人による犯罪が現実あるのも事実ですし、その件数がふえているのも事実だと思いますが、ただ、外国人がふえることが不安につながるということ自体が多分問題だと思うんですね。それは間違っております。

 特に、多くの外国人の方が、例えば日本に観光に来られる、日本の観光名所に外国人の方がツアーに来られるのが全く珍しくない、当たり前で普通の状態、それでいて、もちろん問題は起こらない、友好的な関係ができていくということの積み重ねが、むしろ、外国人で台湾から旅行に来られる方はどんどん来ていただくということが不安にならないという形をつくっていくべきだと思うんですね。

 そういった意味で、まさにビジット・ジャパン・キャンペーンですか、とられているところでありますが、こういった査証免除なんかも大いに活用しながら、外国から日本に観光に来ていただく方は大いに今後も数多く来ていただきたい、特に近隣諸国からは親しみを持って大勢来ていただくというのは、日本のその他の外交上の案件についても少なからず良好な影響をもたらすものだとも思います。

 そういった意味で、今回の台湾へのビザ免除措置というものを法律を改正して延長する、恒久化するということによる観光への影響というものをどのようにとらえていらっしゃるか、国土交通省に伺います。

岩崎大臣政務官 津川委員御指摘のとおり、ビザは、外国旅行に当たって制度的、心理的な障害ともなるものでございます。訪日観光客の増加そして観光立国の推進、こういうことから、ビザの免除を初めとしたビザ規制の緩和というのは大変重要なことだと考えているわけであります。そこで、これまでも、訪日外国人旅行者の増加を目指しまして、近隣諸国に対するビザ規制の緩和に努めてきたところであります。

 そこで、台湾からの訪日外国人旅行者は、昨年、二〇〇四年の数は百八万人ということでございまして、韓国に次いで第二位という訪日旅行者の数になっているわけであります。訪日外国人旅行者の全体の一七・六%を占めるということになっているわけであります。

 したがって、台湾に対してのビザ規制の緩和というのは訪日旅行者の増加に特に意味があるというように考えているわけでありまして、愛知万博期間中の台湾からの観光客のビザ免除のための法律を今国会で制定させていただいたわけであります。三月十一日からビザ免除が実施されているところでありますが、四月の統計で見ますと、台湾からの訪日者数が前年同月に比べて二四・五%の増という顕著な伸びを示しているわけでありまして、ビザ免除の効果が既に出ているということでございます。

 したがいまして、台湾に対するビザ免除の恒久化をしますれば、台湾からの訪日旅行者の増加に大きな効果が期待できる。したがいまして、台湾からの観光客に対するビザ免除が恒久化されますれば、ビジット・ジャパン・キャンペーンにおきましてもこれを最大限PRしまして、さらに多くの観光客を台湾から呼び込むことができるというように期待をいたしております。

津川委員 ありがとうございます。

 これは私の方で調べた数字というかデータで、愛知万博期間中に限ってビザ免除をしたけれども、愛知万博じゃないところに来られる方が結構いらっしゃるんですね。愛知万博にもぜひ来ていただきたいんですが、それとは関係ないところにもどんどん来られて、ある意味で、それがまさに、万博とは関係なくビザ免除の効果がそういったところに出ていると思いますので、万博にもどんどん来ていただきたいと思いますが、それ以外のところにも、まさにビザ免除というものを大いに宣伝していただいて、観光客の誘致ということを政府を挙げて取り組んでいただきたいというふうに思います。

 外務省と国交省さん、ありがとうございました。これで結構でございます。

 台湾ビザについて質問をさせていただきましたが、ちょっと時間が余りましたので、もう一つ、ちょっと別の点について質問させていただきたいんです。

 今まさに問題になっている点で、アスベストによる健康被害、その中の労災問題で時効の問題が出てきております。

 このアスベストの話は、私も調べれば調べるほど怖くなってきました。というのは、私も小学校の天井はアスベストでございまして、回転ぼうきという柄の長いほうきがあって、よく掃除の時間にそれで天井をどんどんどんどんつついて、上から粉がどんどん落ちてくるのをみんなかぶっていましたので、もう二十数年前になりますが、私たちの同級生もそろそろ中皮腫になるかもしれない。短いかもしれない人生ですが、太く有効に生きていきたいなと思います。それはそれとして、労災ではありませんけれども。

 ただ、この労災の問題で、要するに、仕事でアスベストを扱っていて、結果的にその因果関係が強く疑われる病気でお亡くなりになった。にもかかわらず、その事実そのものがこれまで必ずしも明らかではなかったというところで、最近になって、そういえば自分の家族が亡くなったのは労災だったかもしれないと思って申請しようとしたら、時効だからもう受け付けないというような話が出てきております。

 この時効について、先日厚生労働委員会の方で議論があったようであります。これは、労災保険法の方には、時効の期間、五年というふうには書いてありますが、起算点が書いていない。どこから五年なのかというところが議論になっておりまして、厚生労働省としては、死亡の場合には亡くなった翌日から五年というふうに考えているようであります。ただ、この時効という言葉は、民法上の、私どもの感覚でいうと、気がつかないうちに五年たってしまったので時効になってしまいましたというのはちょっとおかしな感じがいたします。

 その議論でもありましたけれども、民法で七百二十四条の類推適用というものと百六十六条一項の適用、判例でも二つ分かれているようでありますが、そもそも民法の七百二十四条と百六十六条に定められる時効について、それぞれの意義というものを御説明いただければと思います。

南野国務大臣 民法百六十六条の一項は、消滅時効の起算点について、債権一般に広く適用される原則を定めるものでありまして、客観的に見て権利行使が可能となったときから時効期間が進行するという形になっております。

 これに対しまして、民法七百二十四条は、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての例外を定めるものでありまして、交通事故その他の不法行為の関係では、時間の経過によりまして立証が困難になる、そういったことを配慮いたしまして、時効期間を通常の十年よりも短い三年とする一方で、加害者と損害とを認識しなければ現実的に権利行使ができないことを考慮して、被害者がこれらを認識したときから時効期間が進行するものというふうにいたしております。

 今大変な話題になっているアスベストでございます。二十年前にもアスベストの問題点があったと思っておられるんでございましょうが、お元気であるのが何よりでございますので、それらの問題についても今早急に取り扱わなければならない課題であろうかというふうに思っております。

津川委員 政府としてもこの問題を非常に重要視していただいているということは伺っております。労災問題というよりも、これはもう公害ではないかというような扱いをされて、これから何とか救済措置をとりたいということは厚生労働省の方からも伺っております。それはそれでしっかりやっていただければいいんですが。

 ただ、純粋に法律的な議論として、労災保険法に言う時効というものが、起算点が書いていないから民法の一般原則で言えばいいんだと。だから、本人が気づいても気づかなくても、五年と書いてあるから五年たったらそれで終わりなんだというふうに考えるのか。今大臣から御説明があったように、損害賠償請求に近いものだというふうに考えれば、因果関係がはっきりして、なおかつその請求をしなければそれは時効が成立するかもしれないけれども、知らないままにその時効期間が過ぎてしまうというようなことはないように、それはやはり時効を中断するというふうに考えるべきではないかというのが普通の感覚だと思うんですね。

 今回の関係でちょっと資料を調べさせていただいた中に、ちょっと古い資料ですけれども、平成二年発行の「労災訴訟の実務解説」という本、法務省の訟務局行政訟務第二課職員という方が編者になっている本の中に、「労災保険制度は、」ちょっと中略しますが、「民法上の損害賠償制度における被害救済の困難性を克服して労働者やその遺族を保護するために設けられたもの」である。やはり基本的にはこういう考え方だと思うんですね。法律的にさまざまな裁判所の判断があるのも理解はしますが。

 大臣にぜひここは御見解を伺いたいんですが、自分の家族がアスベストを扱うようなところで仕事をしていた。結果的に、結果的にというか、その因果関係が強く疑われる、例えば中皮腫などで亡くなられた。五年以上たってから、今になって、ああそういえばそういったことが原因だったかもしれないと思って労災の申請をしようとしたら、五年たってしまって時効でしたと言われるのは、民法を所管する法務大臣の見識からいって、やはり問題があるんじゃないかという見識をお持ちかどうか、伺いたいと思います。

南野国務大臣 やはり、我々が法律をつくるというのは、それが人を救済するという方向にも関与する法律であってほしいというふうに思いますが、不法行為による損害賠償請求の消滅時効、これは民法の七百二十四条の前段にありますけれども、それに関しましては、アスベスト被害のように、加害行為から長期の潜伏期間を経て発症する場合、潜伏期間があります、それも人によって違いますので、そこら辺の問題点も考慮しなければいけませんので、長期の潜伏期間を経て発症するような場合であっても、被害者が損害の発生を、自分が発症しているな、病気を感じた、そういうような認識をして、かつその加害者をも認識したのでなければ、三年の時効期間が進行しないというふうなことも考えられております。

 以上です。

津川委員 ありがとうございます。

 もう一つ、最後に確認をさせていただきますが、民法上の時効の哲学を伺います。

 三つぐらいあると言われていますけれども、長年継続した事実関係の安定。つまり、土地なんかを、自分の土地に人が家を建てていたとか、何か使っていたと。それは知っているか知らないかは別として、そこにもうずっと人が住んでいる。後になって、それは自分の土地だとわかった、出ていけと言われても、これは困るわけでありまして、やはりそういった意味で事実関係を安定させるということがまず一つ。

 もう一つは、時間がたって立証関係の困難性というものが出てくるという、先ほど大臣も指摘をいただいたところ。

 もう一つは、権利の上に眠る者を保護することの不必要性。権利があるけれども、行使をしないでずっとほっていた人をいつまでも守る必要はないのではないかというような、こういった点があったかと思います。

 ところが、今回の労災に関する五年という時効について、どうも厚生労働省が妙な説明をしまして、そういうやり方をすると事務が煩雑になるので画一をしたいんだと言うんですね。事務が煩雑になるということが、民法で言うところの時効の哲学には当てはまらないんじゃないかと思うんです。この労災保険法は別だといえば、それはまた別の委員会でやらせていただきますが、民法で言うところの時効というのは、事務が煩雑になるからだということは理由にならないということはちょっと最後に確認をさせていただきたいと思います。

南野国務大臣 先生おっしゃるとおりだというふうに思いますが、先生が三点挙げられたところの中で、民法上の時効制度の趣旨ということにつきましては、長期にわたって存在している事実状態の尊重、それからもう一つが、長期間経過した後の立証の困難性、さらにまた、権利の上に眠る者は保護に値しないという三点を挙げておられました。

 先生の考え方が一般的でありますけれども、これに対して、お尋ねがありました事務の煩雑さの回避ということについては、私がここで厚生労働省が本当だとか悪いとかということは申し上げられませんが、民法上の時効制度の趣旨にしてはこれは含まれないということを御報告したいと思います。

津川委員 終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

塩崎委員長 次に、出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特例に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来理事会等において協議いたしました結果、お手元に配付いたしましたとおりの起草案を得ました。

 本起草案の趣旨及び概要について、委員長から御説明いたします。

 我が国では、二〇一〇年までに訪日外国人旅行者数を一千万人にするという目標を掲げ、観光立国行動計画を推進するとともに、ビジット・ジャパン・キャンペーンなどの施策を官民一体となって実施しているところであります。

 また、訪日旅行者数で上位を占める台湾からの来訪促進が重要であることにかんがみ、本年三月二十五日から愛知県において開催されている二千五年日本国際博覧会、いわゆる愛・地球博にあわせて、現行の出入国管理及び難民認定法では措置することのできない、台湾居住者に対する査証免除措置等を内容とする二千五年日本国際博覧会への外国人観光旅客の来訪の促進に関する法律が制定され、所要の政令が整備されておりますが、同法は、愛・地球博の終了日である本年九月二十五日限り、効力を失うこととなっております。

 本起草案は、これまで、台湾居住者について査証免除措置を継続することに問題が生じていないこと、また、国際交流の進展に伴い、観光その他の目的で本邦に短期間滞在しようとする外国人の上陸手続の円滑化が重要であることにかんがみ、上陸の申請に係る特例措置を定める必要があることから、愛・地球博終了以降も、現行入管法では措置することのできない地域について査証免除措置を継続して実施することを可能とするものであります。

 以上が、本起草案の趣旨及び概要であります。

    ―――――――――――――

 出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特例に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎委員長 お諮りいたします。

 出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特例に関する法律案起草の件につきましては、お手元に配付しております起草案を委員会の成案とし、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塩崎委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、ただいま決定いたしました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時三十分散会


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