衆議院

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第3号 平成17年10月7日(金曜日)

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平成十七年十月七日(金曜日)

    午前九時四十一分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 早川 忠孝君

   理事 平沢 勝栄君 理事 三原 朝彦君

   理事 吉野 正芳君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      秋葉 賢也君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    太田 誠一君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      高木  毅君    谷  公一君

      福田 良彦君    松島みどり君

      三ッ林隆志君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    枝野 幸男君

      小川 淳也君    河村たかし君

      津村 啓介君    伊藤  渉君

      保坂 展人君    滝   実君

      今村 雅弘君    山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   法務副大臣        富田 茂之君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   最高裁判所事務総局家庭局長            山崎  恒君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  竹花  豊君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久保 信保君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小貫 芳信君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  小西 秀宣君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月七日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     福田 良彦君

  松島みどり君     高木  毅君

  石関 貴史君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  毅君     松島みどり君

  福田 良彦君     井上 信治君

  小川 淳也君     石関 貴史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二〇号)

 最高裁判所裁判官退職手当特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長竹花豊君、警察庁刑事局長縄田修君、総務省自治行政局選挙部長久保信保君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長小貫芳信君、法務省人権擁護局長小西秀宣君、法務省入国管理局長三浦正晴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局山崎家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 せんだっての南野法務大臣のごあいさつ、我々は所信表明というふうに位置づけておりますけれども、それを受けまして、今回は、特に法務省を中心とした法務行政あるいは最高裁判所に来ていただいて、司法についていろいろとお聞かせいただきたいと思っております。

 きょうの私の質問の視点というのをまず最初に申し上げたいと思うんですけれども、私は今、日本の社会というものがこれからどうなっていくのか、ある意味では大変不安に思っています。心配しています。

 今進もうとしている日本の社会がどんな社会かということを、ちょっと簡単に私の感想を申し上げますと、権力を持っている人たちについては何のチェックもできなくなっているような無法社会になりつつある。そして、逆に今度は、一般の市民とか社会的に恵まれない人々にとってみれば、権力でそういう人たちは抑え込んでいくというような管理社会、このような方向に向かってきているのではないかということを大変心配しています。

 きょう私が質問いたします事項というのは、いずれもそういうものに関連した、ある意味では法務行政の根幹にかかわる事項だと思っておりますので、できる限り法務大臣のお考えも聞かせていただきたい、このように思っている次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 そこで、まず最初に、権力を持っている人たちにとってはチェックがほとんど行われていないという無法社会の話をちょっと取り上げてみたいと思います。選挙違反の問題であります。

 実は、公職選挙法という法律がありますけれども、法務省の所管ではございません。ただ、この法律は大変わかりづらい法律でありまして、例えば、一般の人たちが選挙を応援するということでいろいろ応援に入ったところ、何か公職選挙法の規定にひっかかってしまって、とんでもないことになっちゃった、もう二度と選挙は手伝いたくない、選挙にはかかわりたくない、こんな気持ちを持って、どんどん政治から、選挙から一般の人たちが離れていってしまう。

 こういうことになったのでは多分よくないだろうということで、私もかつて、倫選特でいろいろな問題について例示を挙げまして、こういう問題についても、しっかりと国民の皆さんにわかりやすく、啓蒙活動とか広報活動とかしてほしいというようなことも申し上げました。

 逆に今度は、ある意味では、一般の人ではない人たちについて見ると、法律が無視されているようなことがあるのではないかというふうにも思うわけであります。

 そこで一つ、まず利害誘導罪ということをちょっと聞いてみたいと思うんですけれども、南野大臣、利害誘導罪というのを聞いたことはございますか。率直でいいです。

南野国務大臣 それは特にございませんけれども、読んで字のごとしかなというふうに、利害が汚された、利害を失った、そういうような方向での援助というようなことともとれるのかなと思っております。

平岡委員 実は、この利害誘導罪というのは本当に難しいんですよね。かつての選挙違反の中でもこれが適用された例というのは、えっ、こんなのが本当に選挙違反になるのかなとか思うようなこともありますし、いや、こんなの、これじゃなくて別の犯罪じゃないのかなとかいうのもあります。

 例えば、こういうのがあります。だれだれ候補に投票しなければ補助金を削る、だれだれ候補に投票することを働きかけなければ補助金を削ってやるというようなことがよく選挙では行われているというふうに言われていますけれども、これは私の理解では公職選挙法二百二十一条第一項第二号の利害誘導罪に該当するような行為ではないかと思うんですけれども、この点について、公職選挙法を所管している総務省からまず御見解をいただきたいと思います。

久保政府参考人 公職選挙法第二百二十一条は確かに利害誘導罪を規定しておりますけれども、利害誘導罪が成立するためには三つの部分に分けて考えることができると思います。

 まず、特定の候補者の当選を得もしくは得しめまたは得しめない目的を持って誘導行為がなされるということ、それから、誘導行為が選挙人や選挙運動者に対してなされること、そして、当該誘導行為が選挙人または選挙運動者自身の、あるいはそれらの者が関係する団体の特殊の直接利害関係を利用してなされるというふうになっておるわけでございます。

 ただいま事例を挙げてお話しになりましたけれども、個別の事案につきまして利害誘導罪として成立するか否か、これは具体の事実に即して判断されるべきものと考えております。

平岡委員 今、選挙部長さんが構成要件を整理していただいたので大変参考になりましたけれども、確かに、一つ一つの事象が犯罪になるかどうかというのは具体の事象に照らして判断されるべきものだ、それはわかりますけれども、私が聞いているのは、構成要件として私が先ほど申し上げたようなものは該当する可能性があるのか、このことを聞いているんです。お願いします。

久保政府参考人 私ども、具体の事実関係を承知する立場にございませんし、また、それを調査する権限がないということをまず御理解いただきたいと思いますが、私ども、選挙の期間中とかそういう時期になりますと、事前にいろいろな照会をお受けいたします。

 そのときには、ただいま申し上げましたような、まず、これは当然、私どもの立場でございますので、条文の解釈論をまず述べまして、そしてその上で、一般論でありますよとお断りをした上で、これこれの場合には利害誘導罪という規定があります、それに抵触する可能性もありますよといったような形で注意を喚起するというケース。これはしばしばございまして、ただいま委員御指摘のようなケース、これが仮に選挙期間中に私どものところに寄せられた場合には、あくまでもこれは一般論として申し上げますけれども、二百二十一条という利害誘導罪の規定というのがございますよといったようなことをあるいは申し上げるような事例かなというふうには理解しております。

平岡委員 政府あるいは与党の方々に大変気を使った答弁ではありましたけれども、可能性があるということでありますから、それに従って議論を進めたいと思います。

 実はきょう、皆さん方にも見ていただこうと思って資料を用意したのでありますけれども、ちょっと理事会で与党の理事さんの方から、こういう月刊誌とか週刊誌とかというようなものを資料として提出するのはいかがなものかというクレームがつきまして、お渡しすることができませんけれども、何かお手元にはあるようでありますから、それは抹消していただいても結構でございますけれども、出すことはできなかったので、関係箇所だけちょっと読み上げさせていただきます。

 これは、今回の選挙に関してでありますけれども、

 中央からの露骨な圧力に大半の者は震え上がったが、それでも中には党本部への忠誠を誓わない者もいた。武部は、そうした「反乱者」に対しては、さらにこう脅したのだった。

 「わかった。じゃあ、補助金を削ってもいいんだな」

  選挙が戦争である以上、このような行為はある意味当たり前かもしれない。だが、郵政民営化論争を軸とした「政策論争選挙」というのは、結局、絵空事に過ぎなかったのではないか。小泉は自分があれほど批判のやり玉に挙げてきた、利益誘導型の政治、利権をちらつかせて相手を味方につける選挙手法を用いて、勝利をより確実なものにしたとも言える。

これは、月刊現代十一月号の上杉隆というジャーナリストが書いた文章でございます。

 さて、そこで質問させていただきますけれども、こういうことが報道されています。これが事実だというふうに私も判断するだけの情報はありません。しかし、仮にこれが事実だとしたら、これは利害誘導罪に該当するのではないでしょうか。この点については、捜査に当たる法務省から見解をお伺いいたしたいと思います。

大林政府参考人 利害誘導罪の構成要件につきましては、ただいま総務省から御説明があったところでございます。

 具体的事案における犯罪の成否は、捜査機関が収集した証拠に基づいて個別具体的に判断されるべき事項でありますので、法務当局としては、答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。

平岡委員 そういう答弁になるということは、いつものことでありますから、あえてそれ以上聞くことはいたしませんけれども、先ほど来一連の流れを聞いていたら、政府とか党の権力を持っている人が総務省に事前に、こういうことをやっても大丈夫かということを聞くことも多分ないだろうし、それから、法と証拠に照らしてという、この証拠がどれだけ集められるかというのはわかりません。

 ただ、こういうことが日常的に行われているということがよく言われているということでありますから、こういうことが、日本の権力者の人たちに対してもしかしたら何らのチェックも働かないということになっているとしたら、一体この国はどういう国なのかということが問われなければならないということだろうというふうに私は思います。

 利害誘導罪に関して、もう一件質問させていただきます。こういうケースが利害誘導罪に該当するかということでございます。

 これは、かつて、昨年の倫選特でも同趣旨の質問が行われておりますので、それを踏まえて答弁していただければと思います。

 候補者またはその選挙責任者が、ある団体の支持政党に比例区で投票するよう有権者に働きかけることを約束して、その団体の幹部に選挙運動または投票を依頼すること、このことについては公職選挙法の利害誘導罪に該当するのではないかと思いますけれども、この点について、公職選挙法を所管している総務省から御見解をいただきたいと思います。

久保政府参考人 これも先生、最初にお尋ねがあったのと同じ話になって甚だ恐縮でございますけれども、利害誘導罪に該当するというときには、解釈論としては、先ほど申しましたように、三つの要件を満たす必要がありますというふうにお答えをし、そして、具体の事案についてのお尋ねがあれば、それは私ども、そういう立場にないということを言わざるを得ないのでございますけれども、先生がお触れになりました、昨年でございますか、前選挙部長がそれについて答えておりますけれども、これも私が先ほど申し上げましたのと同じことであろうと思います。

 仮に、選挙運動の期間とか、あるいはその前に私ども、今お示しのあったような事例を照会を受けたということがございますと、利害誘導罪、二百二十一条というのが、これはあくまでも一般論でございますとお断りをした上で、そういった規定もございますということを注意喚起するといったようなケース、そういうケースに当たるかもしれないという気がいたします。

平岡委員 これも世の中では一般的によく行われているというふうに言われていて、新聞報道にもそういうことが出ていることもあるんですよね。そういう意味でいくと、やはり日本の今の選挙のあり方というものをこの法の趣旨に照らして本当にチェックができているのかどうか、このことを我々としては法務省にもしっかりと目を光らせていただきたいと思うとともに、そういう立場にある、権力を持った人たちについてもしっかりと自制をしていただきたいということを私としては要請いたしたいと思います。

 それから、次の選挙違反関係の問題に移りたいと思いますけれども、この事例はどういうことになるのかということについてまずお聞きいたしたいと思います。

 選挙期間中に特定の候補者への投票を依頼したり特定の候補者に対しての応援を依頼したりするために数社の会社を訪問することは、公職選挙法で禁止している戸別訪問に該当するのではないでしょうか。いかがでしょうか、総務省。

久保政府参考人 公職選挙法第百三十八条に規定しております戸別訪問は、選挙に関し、投票を得もしくは得しめまたは得しめない目的を持って連続して二以上の住居あるいは会社等を戸別に訪問するというものであると解されております。

 恐縮でございますけれども、個別の事案、これが戸別訪問の禁止に該当するかどうか、違反するかどうか、具体の事実に即して判断がされるべきものであると考えております。

平岡委員 もし事前に、こういうことをしてもいいかというふうに聞かれたら、どうお答えになりますか。

久保政府参考人 ただいまのような百三十八条、これの解釈論をまず御説明いたしまして、一般論であるとお断りをした上で、公職選挙法の第百三十八条というのがありますのでその点は御注意をされた方がよろしいのではないでしょうかといったようなケースに当たるのかなとも思います。

平岡委員 戸別訪問の規定に違反するとどういう処罰がありますか。被選挙権、選挙権の停止の問題も含めて、ちょっと説明していただけますか。

久保政府参考人 公職選挙法第百三十八条、戸別訪問の規定に違反して戸別訪問をした者につきましては、公職選挙法第二百三十九条第一項第三号によりまして一年以下の禁錮または三十万円以下の罰金に処することとされております。

 そこで、この当該規定に違反して禁錮または罰金の刑に処せられた者は、原則として一定期間選挙権及び被選挙権が停止されることとなります。そういう公選法の二百五十二条の規定がございます。

平岡委員 もう一枚資料がありまして、私が提出を認められた資料でございますけれども、九月十日付の読売新聞であります。

 これはどことは申しません。それぞれの県の名誉がありますのであえて言いませんけれども、該当箇所だけちょっと、さっと読み上げます。

 おい、手振るぞ。台風十四号の影響で、激しい風雨に見舞われた六日。黒いミニバンがH市のH製造所を後にした。開いた窓から雨が降り込むのも気にせず、県議、県会議員ですね、県議四人は遠ざかる社屋に向かって手を振り続けた。県会議長、党県連会長、党県連総務会長、県議会副議長の重鎮四人。同社やK工場など五社を回り、支援を求めた。隣の選挙区から駆けつけた県会議長は、異例のことだが、F君を勝たせなきゃいかぬからと話した。隣の区の県会議員S氏、M氏、両県議は五日、県木材協会顧問の肩書を生かし、選挙区内の木材業者九社を回った。案内役を務めた協会幹部、七十五歳は、こんなの初めて、自民党の本気さが伝わったと驚くというようなくだりがございます。

 これが事実だとすれば、公職選挙法で先ほど言われた処罰対象になるんでしょうか。総務省。

久保政府参考人 個別の事案につきましては、具体の事実関係を承知する立場にございませんので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

平岡委員 個別の問題の具体の当てはめは総務省にできないだろうと思いますので、そこはあえて聞きませんけれども、これは戸別訪問の規定に違反するということであるならば、先ほど答弁されたように処罰の対象になる。罰金、禁錮というのがある。そして、そうなれば被選挙権の停止ということが公職選挙法上認められる。こうなると、この県会議員さんたち、もしそういう事実に当たり、そして処罰されたということになると、この県会議員さんたちの身分はどうなりますか、総務省。

久保政府参考人 県会議員の方が刑を犯して被選挙権が停止されたという場合には、地方自治法第百二十七条の規定によって失職するという定めでございます。

平岡委員 普通の人だったら、選挙権がなくなる、しばらく停止されるという程度であれば大したことないのかなというふうに、選挙に行かない人もいますからね、大したことないのかもしれませんけれども、こういう公職にある立場の人がこういうことをやったら、これは場合によっては失職をするという大きな効果があるということなんですよね。こういうことに対して政府が何らのチェックもできていないということだとしたら、私は非常に大きな問題ではないかなというふうには思うんですね。

 そこで、ちょっとお聞かせいただきたいんですけれども、本件については捜査というのは行われているのでしょうか。これは警察庁にお願いします。

縄田政府参考人 ただいま捜査を行っているか否かというお尋ねでございますけれども、あくまでも具体的な事案の捜査にかかわることでございますので、これも関係者の名誉、プライバシー等もございますし、この場での答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、いずれにいたしましても、刑事罰を科すべきものがあれば、議員であろうがなかろうが厳正に対処しておるところでございますし、今後もそのように努めてまいりたい、こういうふうに思っております。

平岡委員 こういう問題ですから、警察庁にしても法務省にしても答えられる範囲というのがあると思いますから、私もそれ以上聞くつもりはありませんけれども、先ほどから申し上げているように、権力を持っている人たちに対して何らのチェックもきかない無法社会というのができてきたら、日本は本当にどんな国になってしまうんだろうかということを私が心配しているということだけは冒頭申し上げたとおりであります。

 そこで、法務大臣、今私が申し上げましたようなことがいろいろと報道されたりしているというような実態も踏まえて、我が国の法秩序を維持していく責任がある法務大臣としてどのように受けとめられたか、その所感をお伺いいたしたいと思います。

南野国務大臣 御指摘のような実態があるかどうかということはともかくといたしまして、あくまで一般論として申し上げるならば、選挙のルールが守られるべきは当然であろうと思っております。

 また、検察当局におきましては、法と証拠に基づきまして、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、それは適切に対処されるものと思っております。

平岡委員 法務大臣が直接指揮するわけにもいきませんけれども、しっかりと目を光らせていただきたいと思います。同じ県の出身者だったと記憶しておりますけれども、そういう正義感の強い県民性もあろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続いて、今度は逆に、先ほども冒頭申し上げましたように、一般の市民の方々あるいは社会的に恵まれない人たちに対して権力で押さえ込んでしまうような管理社会ができ上がってしまいつつあるのではないかという、そっちの心配の方の問題に関して、少年法の関係をちょっと御質問させていただきたいと思います。

 実は、少年法が改正されたのが、平成十三年四月一日からの改正の部分がございまして、私もこの少年法の改正に当たりましては、直接その当時かかわった人間として、当時の少年法の改正というもののあり方が、やはり厳罰化というような言葉でくくられていましたけれども、適切であったのかどうかということについては非常に疑問に思っています。当時も、そういう視点からいろいろと質問をさせていただきました。

 そこで、改正少年法が施行されて以降の状況をちょっとだけ紹介していただきたいと思います。

 まずは、この改正少年法の施行の状況の中で、原則検察官送致というのが入っていたわけであります。つまり、できるだけ刑事事件に持っていけということでありますけれども、そういう状況の法律改正があった中で、原則逆送というものがどれだけ行われたかということについて、改正法施行前と後で比較していただいて、状況を教えていただきたいと思います。

山崎最高裁判所長官代理者 改正少年法によって設けられました少年法の二十条二項は、犯行時十六歳以上の少年が故意の犯罪により被害者を死亡させた事件を原則検察官送致対象事件としておりますが、その人員は、改正法が施行された平成十三年四月から本年七月までの間で、全国で合計三百二十二人でございまして、このうち百九十九人が検察官送致となっております。検送率は約六二%になります。

 これに対しまして、法改正前十年間の平成三年から平成十二年までの間の検察官送致決定の状況を見ますと、統計のとり方に法改正後と多少の違いがございますが、改正後の原則検送対象事件となる殺人、強盗致死、傷害致死事件の人員合計千五百七十三人のうち二百三十八人が検察官送致となっております。検送率は約一五%ということでございます。

平岡委員 当時は、少年に対して処罰をする対象を広げていくとか、あるいはこうした形で手続の中でも刑事事件の方にできるだけ持っていく、そういうような改正が行われたわけでありますけれども、それを行った一つの目的というのは、少年犯罪が、特に凶悪犯罪がふえているというような情報分析の中で、これをすることによってそうした犯罪が少なくなるのではないかというような、ある程度、検証をされてはいない。逆に、一九八〇年代のアメリカにおいては、厳罰化をすることによってむしろ再犯率が高まってしまったというような逆の結果が出て批判されたということもあったわけであります。

 そういう意味でいくと、当時の少年法の改正、厳罰化の改正というものがその後の少年犯罪の発生にどういう変化が生じてきているのか、どのような状況になっているか、この点について法務省から御教示いただきたいと思います。

大林政府参考人 統計から見ますと、少年刑法犯全体の検挙人員は、平成八年以降おおむね二十万人前後で推移しておりましたが、平成十六年は約十九万三千人と若干減少しました。これを少年人口一千人当たりの検挙人員、人口比で見ますと、平成八年以降上昇傾向にあり、平成十五年は一五・五となりましたが、平成十六年は一五となっております。

 ただ、このような検挙人員の問題はいろいろな要因がございますので、改正少年法の影響が直ちにあるということはなかなか言いがたいかなというふうに感じております。

平岡委員 分析するのはなかなか難しいんだろうと思いますけれども、改正少年法で厳罰化を図ったことが、決して少年犯罪あるいは特に凶悪犯罪が減少しているということにつながっていないんだろうというふうに私は思うわけであります。むしろ、その当時も議論しましたけれども、少年犯罪という問題については、その少年を取り囲んでいるさまざまな環境、家庭であったり社会であったり学校であったり、そうした環境というものが非常に大きな影響を少年に与える。そうしたところをしっかりと総合的に対策を講じていかなければいけないということを我々としては申し上げてきたところでございます。

 今、るる計数的にも状況が報告されました。私の方の考え方も申し上げさせていただきましたけれども、法務大臣に、今までの少年法改正前後の状況を踏まえて、平成十三年に施行された改正少年法に対する評価というもの、どのようなものを今お持ちですか、その点を御教示いただきたいと思います。

南野国務大臣 先生もおっしゃられているように、少年に対しては、やはり矯正というようなところをポイントに置いて、立ち直っていただきたい、いい大人になっていただきたいという心は十分に持っていると思います。

 平成十二年の少年法等の一部改正は、少年及びその保護者に対し、その責任について一層の自覚を促しながら、少年の健全な成長を図るために、処分のあり方を見直すこと、少年審判における事実認定手続の一層の適正化を図り、少年審判に対し、被害者を初め国民からの信頼を維持強化するための制度を導入すること、また、被害者への配慮を充実すること、この三つの柱を大切にしているものでございます。

 この少年法改正の効果につきましては、例えば、数値上、重大な犯罪について検察官送致率が増加しております。また、検察官が少年審判に関与すること、また抗告の受理申し立ての制度によりまして、事実認定の適正化にも寄与しているものと考えております。

 私といたしましては、少年犯罪の動向を引き続き注視しますとともに、関係機関において法改正の趣旨を踏まえた運用に努められて、少年の健全育成が図られることを期待いたしております。

平岡委員 今、法務大臣、法務省の方がお書きになったものを多分読み上げられたんだと思いますけれども、その中に、一々突っかかるつもりはありませんけれども、要するに、検察官送致がふえていることをもってして何か成果が上がっているかのような、そういうくだりがありましたけれども、それは私は逆だろうと思うんですね。検察官送致されると、刑事事件として処罰されるということになるわけでありますから、むしろ、少年を立ち直らせていく、育て直していくということについては、逆に私はいろいろな大きな問題が生じてきているのではないかというふうにも思います。

 南野大臣は、余り法務行政の方は詳しくない、そういうつもりじゃないです、詳しくないというよりは、むしろ厚生行政の方が本当に専門家であられると思います。厚生行政のあり方から考えてみても、こういった少年をいかに健全に育てていくか、もし誤った道に進んだ少年がいれば、いかに育て直していくか、立ち直らせていくか、この視点をぜひこれから持っていただいて、この少年法の問題を考えていただきたいと思うわけであります。

 そこで、もう一つ、私、こだわって質問していたことがありまして、その状況を聞いてみたいと思います。

 実は、前回の少年法改正のときには年少少年に対しても刑事罰を問うということが認められまして、そして、その結果として、十四歳、十五歳の義務教育の年齢にある子供たちが刑務所に入らなければいけない、こういうことになりました。そうしたら、本当にこの子供たちにちゃんとした義務教育に相当する教育が施せるんでしょうか、どうでしょうか、そういう体制が整っているんでしょうかというふうに申し上げたんですけれども、もともと、そういう少年刑務所、刑務所にはそういう人たちが入らないことを前提にしかつくられていませんから、私は法務省の責任は大変大きいんじゃないかというふうに思って聞いていたわけであります。

 その点について、十四歳、十五歳の年少少年についての義務教育、刑事施設における義務教育がどのようになっているのか、お答えいただきたいというふうに思います。

南野国務大臣 先ほどの件でも申し上げましたけれども、矯正という問題につきましては、我々、今充実の方向に向かっているということは一言申し添えさせていただきたいと思いますが、御指摘の少年につきましては、少年院において刑を執行することが可能でありますけれども、その場合には、保護処分によって送致された少年と同様に生活指導または教科指導、教育という面につきましても矯正教育を行うことといたしております。

 他方、少年刑務所に収容された場合におきましても、個々の受刑者の特性やまた教育の必要性に応じた個別的な処遇計画を作成いたしまして、個別担任による面接指導や教科教育等の矯正教育を充実して、体制を整えていっているところでございます。

平岡委員 本来、この十四歳、十五歳の子供たちに懲役刑を科するということ自体、私は極めて大きな問題があるというふうに思いますけれども、仮に事実としてそうなった場合に、こういう子供たちが立ち直ることができないというようなことにならないように、しっかりと注視をしていっていただきたいということをお願いしたいと思います。

 そこで、実は、これはその後の話でありますけれども、前の通常国会に少年法改正法案というのが出されたと聞いております。その中には、少年院送致の年限の引き下げというのが提案されているというふうに私も聞いております。これもある意味では、私は、年少者、十四歳未満の子供たちを少年院に送っていくということ自体、これはいかがなものかと。逆に、今までこういった子供たちについては児童相談所とか児童自立支援施設の中でしっかりと育て直しをする、立ち直りを図っていく、こういうことの努力をしてきたわけでありますし、もしその努力が十分でないというのなら、そういった施設でしっかりと育て直しができるような、そういう環境を整えていくことがまず考えるべきことであって、そういった子供たちを少年院に送るということで考えるのは、私は逆の考え方ではないかというふうに思うのです。

 そういう意味で、なぜ、その少年院送致の年限の引き下げということを提案する、そういう考えに至ったのか、その理由をお聞かせいただきたいと思います。

南野国務大臣 時代の状況、またはいろいろと教育の問題点、そういった社会環境も含めながら我々は考えていかなければならないと思っておりますが、現在の少年院法は、少年院には十四歳以上の者を収容するといたしております。十四歳未満の少年の処分、これは保護観察か児童自立支援施設等への送致しかありませんが、しかしながら、十四歳未満の少年でも、凶悪、重大事件を起こしたり、または悪質な非行を繰り返すなど、深刻な問題を抱える者に対しては、早期に矯正教育を授けることが本人の改善更生に適する場合があるというふうに考えており、こういう場合にはそれを適用したいということでございます。

 そこで、十四歳未満の者でありましても特に必要と認められる場合に限り、初等少年院または医療少年院に収容できることとするのが、個々の少年の抱える問題に即した適切な処遇の選択につながるものというふうに思っております。すべてそのようにということではなく、特性をその中から見ていくということもこの配慮の中にはあるというふうに思っております。

平岡委員 この改正法案はこの国会には出ていないようでありますけれども、まあ、いずれまた出てくるのかもしれません。それは私もわかりませんけれども。もし仮に、こういう少年に対して厳罰化であるとか、あるいは厳しい処分をしていくという方向で物事が考えられてくるとしたら、私は、この問題については徹底的にこの場でも議論させていただきたい。

 むしろ、やるべきことは、先ほどから申し上げているように、児童相談所とか児童自立支援施設のあり方をしっかりと、こういった少年たちにも効果があるようにしていく、その方向で物事を考えるのがまず先であって、それができないときに、では次は何を考えるかということが私は順番だと思いますので、その辺をしっかりとまず、大臣、法案をもし提出されることがあるのかどうか知りませんけれども、そのときには、もし法務大臣としてとどまっておられたら、大臣の段階でしっかりとチェックしていただきたい、このようにお願い申し上げたいと思います。(発言する者あり)

 それから、悪い大人もしっかりと、先ほど来から議論してきましたが、法律に違反した悪い大人にはしっかりと目を光らせていただきたい、このように思います。

 そこで、次に、これもこの法務委員会を中心にして大分議論のあった、正規の名前を言いますと、私もちょっと長かったのですけれども覚えていますので、心神喪失等の状態で重大な他害行為をした者の医療及び観察に関する法律というのがありました。これも委員長が当時、どういう立場だったか忘れましたけれども、一生懸命与野党の間を修正案をつくろうとして走り回っておられたのを今でも覚えておりますけれども、その修正案でも我々は納得がいかないということで、強硬に反対させていただきましたけれども、施行されることになったというか、七月十五日に施行されました。

 ただ、施行されたのはいいんですけれども、どうも聞くところによりますと、余り準備が整わない状況のもとに施行されているのではないかというふうに言われているようであります。

 そこで、ちょっとお聞かせいただきたいのでありますけれども、この心神喪失者等医療観察法案の中で規定されている指定入院医療機関の整備状況というのはどういう状況になっているんでしょうか。

 私は、いろいろなところから、これは整備が大幅におくれてしまっているというような指摘を受けているところでございますけれども、そうした認識があるんでしょうか。この点については、まず厚生労働省の方からお聞かせいただきたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 厚生労働省におきましては、医療観察法施行後三年の間でおおむね七百二十床の病床を確保するという計画のもと、準備を進めてまいりました。現時点におきましては、指定入院医療機関については三医療機関、九十床が確保できるめどが立っております。これは年度内でございます。

 それらのうち、国立精神・神経センター武蔵病院、これは七月十五日に、それから独立行政法人の国立病院機構花巻病院、東北でございますが、十月一日、それぞれ既に指定を行っておりまして、今後さらにその確保に努めているところでございます。

平岡委員 私は、大幅におくれてしまっているんじゃないかという指摘がありますがどうでしょうかということで聞いたんですけれども、とりあえずは三医療機関、九十床について目途が立っているというお話でございました。

 ただ、聞くところによると、この法律に基づいて指定入院医療機関に入ることになるであろうと予想される件数は月二十人から二十五人ぐらいだろう、こういう話で、先ほどの九十床も、北陸病院については来年二月か三月ぐらいにならないと使えないというような状況。そうして考えていくと、これは三カ月か四カ月ぐらいたってしまうともう施設が足りなくなってしまうというような状況になってしまうのではないかと思いますけれども、既に三施設については大体見込みが立っているという話でありましたけれども、それ以外の施設については順調に進んでいるんでしょうか。見込みが立っているんでしょうか。どうでしょうか。

西副大臣 委員御指摘のように、この整備計画、私どももことしの年頭から、かなり厳しいということで、私が中心になりまして、それぞれの今予定されている病院を一つ一つチェックして、地元の説明会も丁寧に行ってきたところでございます。そんなところで、今年度中には三病院ということですが、それぞれ今設計をしている最中、それから調整をしているところ、そういうところを鋭意これから前に進めるように頑張っているところでございます。

 もう一つは、国立、それから独立行政法人の病院の比率を三分の一で当初予定していたんですが、やはり役割をもっと果たすべく、二分の一程度に役割をふやすために、今の八カ所からもう少し広げていこう、こういうことで打開を図ろうとしているところでございます。

平岡委員 今の御答弁の中では大変厳しい状況にあるという感じがちょっと薄れた感じで、一生懸命努力しているということでお話があったわけでありますけれども、多分、事実は大変厳しい状況にあるんだろうと思います。

 なぜそういう状況が発生しているかというと、やはり、もともとこの法律にかなり無理があったのではないかというふうに私としては思っているのです。

 当時、我々が提案したのは、やはり捜査段階での精神鑑定をしっかりとやるということがまず第一である。そして、精神保健医療法の適用をしっかりと、精神病患者の方々に対して本当に医療が施せるようにしっかりとやっていくこと、このことが大事であるということを申し上げてきたんですけれども、こういう施設をつくるという形の法律ができてしまったということで、多分、私は、法律の制度設計がかなり、いろいろな現実とか国民の皆さんが望んでいることとはかけ離れたところにあったのではないか、こんな気がしてしようがありません。

 そういう意味で、こういった事象が現実に生じてきていることに対して、私は、ある意味では、厚生省あるいは法務省に対して責任を問うていきたいと思いますけれども、余り責任を問うといったってどうしていいかというのがわかりにくいので、その辺はとりあえずおいておいて、こういうことをちょっと聞いています。

 政府は今、整備不足となった指定入院医療機関について、指定入院医療機関としての規模も設備も持たない小規模病床で代用しようとしているというふうに一部で言われています。この言葉が正しいかどうか、あるいはこういった現象があるのかどうか、私にはちょっとわかりませんけれども、検証できていませんけれども、そうした事実はあるんでしょうか。どうでしょうか。

西副大臣 お答え申し上げます。

 指定入院医療機関につきましては、当初三十床規模の独立した病棟のみを想定して出発をしていたところでございますが、それぞれの自治体、それから医療機関の個別事情の状況を踏まえまして、医療の質や安全性が確保されることなど一定の要件が満たされている場合においては、十五床規模の病棟、それから既存病棟の改修による病棟も中に繰り込んでいくということを考えているところでございます。

 なお、これらの病棟におきましても、三十床規模と同等の人員配置をしていくという意味では、医療の質を十分確保した上でやっていきたいというふうに考えているところでございます。

 したがって、いずれの病棟においても手厚い専門的な医療を提供するということが可能でございまして、そういう形でこれから鋭意病床数を確保するために頑張ってまいる所存でございます。

平岡委員 現実はなかなか厳しいので、見直しの中で、十五床程度の小規模のもの、あるいは既存の病棟を改造してそうしたものに充てるといったような苦労をしておられるという話がありましたけれども、そういうやり方で、本当に政府は国会で答弁したような高水準の手厚い医療が提供できるんですか。

 この点について、先ほども若干答弁では触れられていましたけれども、もともと予定していたものができない、そのかわりこんなものをつくるんだ、こんなもので代用していくんだということであるならば、当然医療の水準は落ちてくるんじゃないかというふうに私は思いますけれども、この点、本当に大丈夫なんでしょうか。どうでしょう。

西副大臣 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、当初三十床規模ということで整備を進めてきたことは事実でございますが、一病棟三十床規模ということが必ずしも医療の質を担保するのに必須のものであるということではないというふうに考えておりまして、事実、先進国と言われるイギリスでも三十床規模が一応標準ということになっておりますが、十七、八床規模の専門病棟も存在するわけでございまして、我々としましては、医療の質が担保されるということを大前提として、それぞれ個別の状況に応じて適切な病棟を設けていきたいというふうに考えているところでございます。

平岡委員 今回、まだ施行されて間がないので、私も余り実態把握ができていませんので、いろいろ指摘があった点についての質問をさせていただきました。この点については、さらにいろいろ実態を見させていただいて、さらに質問をさせていただきたいというふうに思っています。

 そういうことを前提として、今までの議論を通じて、法務大臣もこの法律の所管大臣の一人でございますので、法務大臣としての御所見をいただきたいということ。

 あわせて、実は私も、かつて法務委員会におりましたときに、いろいろな行刑施設を見させていただきました。そこで、医療施設も中にはあるわけでありますけれども、特に精神医療についてかなり厳しいといいますか、貧相なといいますか、不足しているといいますか、なかなかこれでは大変ではないかというような状況を目の当たりにさせていただいたわけであります。この点について、法務省としてどのように対応されているのかということについてもあわせて御答弁を願いたいと思います。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 まず、最後にお話しになられました行刑施設に関することについてでございますが、精神科治療は、刑の執行機関という枠組みの中で精神障害を有する受刑者の治療を行い、また、健全な状態で社会復帰するということを目的といたしておりますが、専門的な精神治療を必要とする受刑者につきましては、医療刑務所等に収容して治療を行っております。また、医療刑務所等に収容するまでもない軽度の方は、一般の刑務所において治療を行っております。

 近年、精神障害を有する受刑者を初めといたしまして、処遇困難者が増加傾向にあるということは先生も御存じだと思いますが、そういう場合、非常勤の精神科医師や作業療法士などの配置を進めているとともに、心理療法士または臨床心理士とも言いますが、その資格を有する民間のカウンセラーの導入をも図っております。

 また、受刑者の処遇にかかわる職員に対しましても、精神疾患やその特徴、精神障害を有する受刑者の処遇方法等に関する正しい知識を付与するための医療関係研修を実施いたしているところであり、今後とも行刑施設の精神科医療の充実に努めてまいりたいと思っております。

 さらに、その次の厚生労働省との関連でございますが、この法律の対象となる方々の社会復帰の促進のためには、手厚い専門的な医療、これは先生もお話しになっておられました、それが提供できる指定入院医療機関を整備するということが大変重要である、これはともに共感を持っているところでございます。

 厚生労働省におかれましては、ただいま、既にお話がございました、その必要な数の病床を整備するため全力で努力されていることを私も目の当たりにいたしております。法務省といたしましても、今後とも、必要に応じて厚生労働省と協議するなどして、これに協力してまいりたいというふうに思っております。

平岡委員 心神喪失者等医療観察法についてはさまざまな問題があると我々は思っていますけれども、ある以上は、これが本来多くの方々が望んでいる方向でしっかりとした運用がされなければいけないということもまた事実なんだろうと思います。そういう意味では、また、法務大臣もしっかりと、本来の目的を逸脱するようなことにならないように、しっかりと監視をしていっていただきたいと思います。

 時間が来たようでありますので、用意した質問ができずに多くの方々に御迷惑をおかけしているかと思いますけれども、残した質問は、再犯防止対策推進委員会におけるさまざまな問題点、それから入管行政、人権救済の問題、これらの問題については、この特別国会でも法案審議の合間合間に一般質疑をやっていく予定にしておりますので、ぜひまた御協力いただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしでございます。

 きょうは、もう三年になりますか二年になりますか、名古屋の刑務所で刑務官が暴行したとされて、これは真実は全く違っているんですけれども、国会で調べましたら、自民党も含めまして、公明党さんには悪いけれども、民主もそうですけれども、共産さんもそうですね、社民党さんもそうです、全党の全議員の方が刑務官が暴行したということを断定して、法務大臣におかれましても、刑務官の資質に問題があるという全く人格をずたずたに引き裂いたような答弁というか、大臣も見えますけれども、個人というわけじゃなくて、全体でしたので、こういうことがありました。

 調べてみますと、それは国会から始まったんですね。国会の質問から始まっていった。行政がそれにこたえる格好で、刑務官が逮捕なり起訴されていったということなんです。

 私は、何でこんなことが起こってしまったのかと。それと、国会と行政はいいのだろうかと。真実究明は、無論、司法の独立というのは極めて重要でございまして、そんなことは言うまでもないんですけれども、裁判における真相究明というのは、疑わしきは被告人の利益にということでいいわけで、行政とか国会の調査というのは、保護房内で受刑者がもう一回傷つかないように、仮に事故だとしたら事故が起きないように、徹底的な真相究明が要るんですよ、国会と行政というのは。

 だから、私は、何で起きたのかということを、ちょっとこれは後で委員長にもぜひお願いしたいけれども、初めのプロセスをやはり検証しておかないと。こんな無責任なことというか、これは八名の刑務官ですけれども、家族もおりますけれども、たまったもんじゃないですよ。こんなことをやっていいんだろうか、国会議員は、委員会は。こういうことから、若干、なぜ起こったのかということを検証していきたいということでございます。

 私も、革手錠の話と放水の話をしたんですが、今回は放水の話だけに絞りたいと思いますけれども、医者に聞きましても、あり得ないと。傷の切片のことですが、水でこんなことはあり得ないと。

 ちなみに、冒頭陳述、これは国会に報告されましたから裁判とは別に分けた方がいいんですけれども、行政からも国会に報告を受けていますからね。そこでは、〇・六キロの水圧ということになっています。〇・六キロというと、東京都の平均的な水道、そこで水をひねれば一・二ですからね。あそこの半分ぐらいの水をかけて、肛門の括約筋が切れているんですけれども、これはあり得ないと。

 それから、ここへ来て参考人でお話をされた二村さんという、今、日本外科学会の会長をされている非常に立派な医者ですけれども、あの人も、こう水をかけまして、受刑者さんは伏せていますので、直腸は縦の方向に、逆にこういうふうにあって、こちら側からかけたものがこんなふうに上がっていくということになりまして、これはあり得ないという話で、全く違うという話をしておりまして、何でこんなことが起こったかということでございます。

 まず、委員長に冒頭聞いておこうか。

 今まで何遍も話していますから、塩崎さんも非常に、そこら辺は余り政局どうのこうのじゃなくて、やはり国会としての役割でしょうか、間違ったときにはただす、間違ったかどうかをきちっと検証するということは国会独自として必要だと思うんだけれども、委員会の権威といいますか国会議員の義務だと思うのですが、いかがでございますか。

塩崎委員長 一般論としては正しいと思います。

河村(た)委員 一般論という変な条件をつけぬでください。なしで言ってください。

塩崎委員長 いや、正しいと思います。

河村(た)委員 では、御一緒に、当然、制約は三権分立上のいろいろな問題がありますけれども、そういう立場でやっていくということでひとつお願いしたいと思いますけれども、どうですか。

塩崎委員長 理事会で諮って、皆さんの御同意を得られる範囲でやっていきたいと思います。

河村(た)委員 私、しょっちゅう思っておるのですが、理事会で理事会でと言いますけれども、理事会というのは本来は本当の機関ではありませんし、委員長は別に自分でリーダーシップをとってやってもらわないかぬですよ、これは本当に。それほど委員長の仕事というのは大事な仕事だということです。

 それで、まず、それでは、国会に報告されたところもあるんだけれども、中間報告等でありまして、私が今まで聞きますと、要するに検察庁の捜査状況のとおりだったということでございますので、初めに、検察も当然、行政の一環としてこの委員会での対象になっておりますし、個々の検察官が独立して職務を行うというのと、検察官一体の原則というのがありますけれども、あれはどういうふうなものですか、特にこの名古屋刑務所の話についてはどうだったんでしょうか。

大林政府参考人 検察官の独立性と、検察権が、司法権の独立に準じて、他の力に左右されることなく公正に行使されなければならないことから認められた原則でございまして、検察官は、個々の検察権は個々の検察官に属し、個々の検察官がみずから検察事務に関する権限を行使することとされております。

 その一方で、検察権の行使が全国的に均斉に適正になされることは国民の基本的権利義務にかかわる事柄で極めて重要でございまして、検察同一体の原則として、個々の検察官はその上司の指揮監督に服し、また、検事総長、検事長または検事正がその指揮監督する検察官の事務をみずから取り扱い、またはその指揮監督するほかの検察官に取り扱わせることができることとされております。

 このように、検察官は、検察権行使について、上司の指揮監督を受ける地位に置かれていますが、これは個々の検察官が検察権行使の意思決定機関であるという原則を否定するものではなく、個々の検察権行使の権限と責任は個々の検察官にあります。

 名古屋事件は具体的な事件の問題でございますので、これに当てはめてどうかということはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 最後に述べられたことですけれども、それはいかぬですよ。やはりここまでちゃんと報告してきて、真実がどうであろうと、手続的に、検察庁内部で国会への報告がどういうステップでなされたか。個別の名前を挙げるかどうかは別としまして、どういう機関で相談してどういうステップでこういうことが国会に中間報告でなされたかということ、これは聞かないかぬですよ。大臣、そう思うでしょう。

 あなた、何かこの間そこで書き物を読まれて、司法は非常に重要だということでいろいろ言っておられるじゃないですか。刑事に関する体制の充実はもちろん、時代の要請に即応した法整備を図ることも重要な課題であるということで、諸課題に取り組む決意でありますので、よろしくお願いしますと私らに頼んでおりますけれども。

 だから、どういうふうに逮捕なりそういうのがなされていって、名前は別ですよ、一定のシステムの問題をお話しいただくのは当然でしょう。大臣、どうですか。

南野国務大臣 今、検察当局において、法と証拠に基づきながら調査されておる件でございますので、個別の案件として私から申し上げることはできないということでございます。

河村(た)委員 そんなことばかり言っておると聖域になってしまう。

 委員長、いいですか、報告を受けた書類がどういうステップで決裁されていって、どういうふうに相談されていったかということがわからぬということですよ。

 こういうのはだれに聞いたらいいんだろう。これは本当は委員長だけれども、そうするとまた理事会でと言うんでしょう。

 もし委員会で報告を受ける方が、それはわからぬと言うんだったら、何ですか、これは。当然そうだと言ってくださいよ、これだけは。こんなのは理事会要りませんよ、当然ですよ、委員長。

大林政府参考人 今、個々の検察官とそれから上司の検察官の権限といいますか、そういうことについて申し上げました。

 私も、一般論として御説明できるところは御説明したいと思います。ただ、今の名古屋事件については現在係属中であります。ですから、主任がだれだとか、どの決裁を受けてどのような各人の判断がなされたかとか、これは検察内部の問題でもございますし、あるいは公判中の事件でもございますし、この点の具体的なお答えについては、これは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、一般論としてどういうシステムかということについては、お尋ねがあればお答えしたいと存じます。

河村(た)委員 裁判をやっておるといって、こっちもやっているんですからね。言っておきますけれども、こっちも。

 真相究明は、何遍も言いますけれども、これは裁判所とはまた別個に、大臣、行政にありますね、再発防止のために。では、それをもう一回確認しておこう。

南野国務大臣 いろいろな予防的な問題については、それはそれで個々にあるかもわかりませんけれども、今先生がお尋ねの案件につきましては、今既に調査中の案件でございますので、私の方から、先生がおっしゃることが正しい、どなたがおっしゃることが間違っているとか、そういうことは私の立場で言うことではないと思いますので、お答えできません。

河村(た)委員 調査義務があるかどうか。

南野国務大臣 法務省では、行刑行政を所管する立場から、これまでにも可能な限りの行政上の調査を行い、国会に対してその結果を御報告してきたところでございます。

 一連の名古屋刑務所の事案につきましては、現在、先ほども申しましたように、名古屋地方裁判所で公判が係属しているものと承知いたしておりますので、今後とも公判の推移を見守りながら必要な調査等を実施してまいりたいと考えております。

河村(た)委員 こういうのは本当は許しがたいけれども、ここでとまっちゃうので、残念ながら。これは裁判とは違うんですから。あなた、めちゃくちゃですよ、こんなことを言っておったら。

 では、一般論として、検察官が逮捕、逮捕は大きいですよね、やはり人生をどうするかということで非常に。それはやはり個々の検事、検察官が判断する。それで、上司には、アドバイスか何か受ける、どうなんですか、一体の原則の場合、実際は。

大林政府参考人 先ほど申し上げましたように、検察事務、事件処理につきましては、検察官、個々の検察官が責任を負う。しかしながら、御案内のとおり、事件には非常に重大な事件と一般的な事件と、いろいろございます。ですから、一般論として申し上げれば、特に重要事件については、その身柄処理等も含めて上司に相談をするというのが通例ではないか、このように思います。

河村(た)委員 相談をするということですかね。

 そうすると、それなりに決裁をするというのか、上司は、それは検事正さんなのか主任なのか、その辺もちょっとお聞かせ願いたいんだけれども、決裁をするわけだ、逮捕状、請求してもいいよと。こういうことになるんですかね。そのときには、捜査記録とかを上司は全部読むんですか。

大林政府参考人 一般論として申し上げれば、検察官の上司は、いわゆる決裁を行う前提として、事案の性質に応じて、事件記録に目を通すこともあれば、個々の検察官からの報告に基づいて判断することもある、このように承知しております。

河村(た)委員 今、重要な事件はと言われましたけれども、その重要な事件というのをちょっと聞いておこうか。

 どういうふうにそれを分けるんですか。検事一人で逮捕状を請求する場合もあるんですか。それがある一定のものになると、それは主任なのか検事正なのか検事長なのか、最高検なのか検事総長なのか、そこら辺はどういう仕切りなんですか。

大林政府参考人 今のお尋ねが、例えば逮捕状を検察庁において請求するという場合をお尋ねであるならば、原則として、やはりそれは主任検事がその名前において請求するのが通例であろうと思います。ただ、それは事件の性質あるいはその検察庁の規模、組織がいろいろ異なりますので一概には言えませんけれども、私の承知している限りでは、主任検事の名前においてやるのが通例ではないか、このように考えております。

河村(た)委員 それは、主任検事は、今言われたことですから、当然上司に、アドバイスといったらいいんですか、相談というんですか、許可をもらうんですか。どういうことなんですか。

大林政府参考人 これは、先ほど申し上げましたように、事件の規模等によって異なるわけでありますけれども、いわゆる重要事件については上司に一応相談しまして、協議を経て、それで、例えば令状請求をするとかいう判断に至ることもあろうかと思います。

 それから、先ほど、重要事件とは何かというお尋ねがございました。

 これは、各庁によってその感覚、感覚といいますか取り扱いが違うかもしれませんが、一般的に私どもが理解しているのは、量刑、求刑といいますか、非常に重くなるような重大凶悪事件と言われるもの、それから、刑はそんなに重くなくても、新聞等に大きく出て国民の皆さんが関心を持つような事件、こういうものはやはり重要事件とされているのではないか、こういうふうに理解しております。

河村(た)委員 そうなると、名古屋の話も、これは当然重要事件でしたね。

大林政府参考人 私はそのように理解しております。

河村(た)委員 そうすると、やはり冒頭陳述とかああいうものも、現場の方が、主任がやられて、それでどうなるんですかね。ああいうようなものについては、検事正なんですか、やはり最高検なんですか、これはどうなるんですか。

大林政府参考人 今お尋ねのものは、具体的事件における検察部内の判断の過程にかかわる事項なので、法務当局としてはお答えすべき性質のものではないというふうに思いますが、今まで私が御説明しているとおり、一般論で申し上げれば、上司がそれなりに見ているものというふうに思っております。

河村(た)委員 上司の中にはどういうものがあるんですか。やはり最高検というのもあるわけですね。

大林政府参考人 今お尋ねのものは、私の受けとめ方としては、一つの検察庁内部の手続としてお尋ねだというふうに理解しております。ですから、通常言う主任検事がおり、大きな検察庁であれば副部長とか部長とか、あるいは次席とか検事正とかいうふうにあります。

 名古屋事件の場合にどのような決裁の仕方がなされたのかということは申し上げられませんけれども、一般論で申し上げれば、重要事件について、それは主任検事限りではなくて、上にも御相談し、いろいろ議論はされているんだろうというふうに一般論では思います。

河村(た)委員 その上というのは、最高検まで行く場合があるかどうか、ちょっと一つ。

大林政府参考人 御案内のとおり、検察庁は、地方検察庁の上に高等検察庁があります。それから、その上に最高検察庁があります。それは、検察権行使のトップは最高検察庁でございますので、事案によっては高等検察庁に御相談することもあるし、最高検察庁に御相談してその指揮を仰ぐ、そういうこともあろうかと思います。

河村(た)委員 何か御前会議というのがあるという話を聞きますね。最後に検事総長という大変偉い方がそこにお見えになって、その下が次長さんですか、次長検事か、現場から上がってきて、それを決裁する、そういう非常に重要な会議があると聞いておりますけれども、それはどうでしょうか。

大林政府参考人 一般論として申し上げれば、地方検察庁や高等検察庁は、事件の捜査方針等について最高検察庁などの上級庁に協議を行うことがございます。今おっしゃる御前会議と称するかどうかはともかくといたしまして、そのような協議の場に検事総長が出席することもあり得る、このように承知しております。

河村(た)委員 そういう報告というのは、文書で上がってくるのか口頭なのか、どういうことでしょうか。上への報告。

大林政府参考人 これも一般論でございますが、割合と緊急を要する場合については口頭ということもあります。それから、当然文書を用いた方がいいケース、これは少なくないとは思いますけれども、これについては文書をもって協議に当たるということもございます。

河村(た)委員 これはやはり本当に委員長のお力をいただかぬといかぬのだけれども、最低でも名古屋刑務所のああいうものは、ここへ出していただいた報告書がありますよね、中間報告。あれはどういうふうに、あの資料はだれがどうつくったんですか。あの入手経路は何なんですか。入手経路というか、あれに書いてあったことは、どなたから聞かれてどうされたんですか。

大林政府参考人 前にも御答弁させていただいたと思いますけれども、これは名古屋地方検察庁が主として捜査を行ったものでございますので、検察庁から入手した情報もあります。それから、もともとは矯正当局の管轄のものでございますので、矯正当局からその情報をいただいたものもございます。それらをまとめて報告書として出させていただきました。

河村(た)委員 そうですか。やはり矯正当局もあったんですか、矯正当局からのいろいろな情報も。

小貫政府参考人 調査委員会の御指示に基づいて種々の調査をなした、こう承知しております。

河村(た)委員 そうしたら、少なくとも、これは矯正局長に聞きますけれども、今回は放水でいえば、放水のいろいろな話が出てきますので、その間、それはどう調査をされたのか、そこのところをちょっと教えてもらえぬですか。

小貫政府参考人 名古屋刑務所の職員等に対する聞き取り調査等々を行っております。

河村(た)委員 実際はそれもほとんどなしに等しいんですよね、その調査も。

 はっきり言うと、検事の言ったとおり書いたんじゃないの、局長。

大林政府参考人 これも前に御答弁させていただいたと思いますが、当時の経緯は、今被告人とされました人たちについては、いわゆる身柄、逮捕することになり、ある面では隔離された形になっています。

 当初においては、事案の真相を究明するということにおいて、検察において中心になって動いておりましたので、矯正においては、その捜査の妨げにならない限りにおいて職員等の調査をした、このように承知しております。

河村(た)委員 だから、その検察庁の中で、最低でも、どういうプロセスを経て、最高検が指示したかどうかぐらいは聞かないと。委員長、本当にそのくらいは聞かないと。

 大臣、あなた、何か刑事司法を充実させると言っているけれども、このぐらいのシステムがわからぬで、これは国会軽視じゃないけれども、無視に近いですよ。そんなことも教えてもらえぬで、書類を出されて、これを信じなさいと言われたんですよ。どうですか。

 では、今の名古屋刑務所の話でいったら、今そこで矯正局がそう言われていまして、主に検察がやっておったからというわけでしょう。だから、検察内部で最高検は指揮したんですか。

大林政府参考人 また一般論で恐縮でございますけれども、例えば、今名古屋刑務所の事件で何が肝心かということは、その事実があったのか否か、それから、被告人たちに対して量刑がどの程度が適正か、まさにそこが司法で争われていることでございまして、この事件において決裁官がだれであったかとか、どのような決裁がなされたのか、それが集約された形、それを集約のものとして今起訴され、公判活動が行われているわけでございまして、私どもとして、そのような具体的な捜査の内部、判断過程についてちょっと申し上げることはできませんので、それはやはり裁判を、それを凝縮した形として裁判が、どのような形で判決が出るかということを見ていただきたいなというふうに考えております。

河村(た)委員 裁判を見ていただきたいというのは裁判上の話で、悪いけれども、それはちょっといかぬですよ。

 私は真実を、どういうことがあったとは聞いていないんで、少なくとも最高検が名古屋地検を指揮したかどうか、どういうやりとりが行われたか、内容は別としてですよ。そのプロセスぐらいは聞かなかったら、これはちょっと、こちらに何にも出しておらぬのならまた別ですよ。それから、国会議員の方が、これは全員ですからね、それを信じて質問したのは。ほとんど全マスコミが刑務官が暴行を働いたということを日本じゅうに宣伝したわけでしょう。

 だから、その一番最初の、どういうプロセスを経て検察庁の中でそういう報告書ができ上がったか、このくらいのことは言ってもらわないといかぬですよ。これを言わなければ、検察庁は本当の聖域になりますよ。

大林政府参考人 委員がおっしゃるように、それは、司法としての役目と、それから国会としての役割というものは、一応三権分立とは言われていますけれども、私どもも、国会、委員会が重要な機能を果たしておられることは十分承知しておりまして、捜査に関することでも、中間報告、その後の報告において、できる限りこの委員会に報告したつもりでございます。

 ですから、その役割を否定するものではございませんけれども、それ以上の内容、今おっしゃられるような内部の決裁あるいは報告関係については、これは検察機能という問題もありますし、いろいろな観点から、ちょっと法務当局としては申し上げられないということを御理解願いたいと思います。

河村(た)委員 ちょっと待ってちょうだい。それでは、これを言ったとして、どういう不都合があるんですか。どういう不都合がありますか、最高検において決裁したとか、こういう指示を出したとか。

 まず、それでは一つ言いますけれども、一番最初は国会の質問でしたよね、本当の端緒は。これは国会。そこからですから、国会から何らかのアクションが行ったはずなんですよ、一番最初に国会の法務省担当から。だから、そこら辺のところはどういう不都合があるんですか。

 反対に、自信を持って言えばいいじゃないですか、検察庁一体の原則として堂々と起訴しましたと。最高検も、御前会議かどうか私は知りませんよ、それが本当にあったかどうか。そういうところで合意して、堂々と起訴いたしましたと言えばいいじゃないですか。なぜそれを言えないんですか。言えないのはどういう不都合があるのか教えてください。

大林政府参考人 まず、捜査の端緒につきましては、いわゆる九月事件について、名古屋地方検察庁において、名古屋刑務所から通報を受け、捜査を開始したものと承知しております。

 それから、今の内部の問題でございますが、それは一般論で申し上げれば、先ほど申し上げたとおり、検察官の独立の原則で、基本的には主任検事において起訴等をする権限を持っております。ただ、それが恣意的なものにわたらないということで上司に相談し、最終的には、検事総長をトップとする最高検察庁の指揮監督権もございます。

 ただ、いろいろな事件を処理する場合においては、それぞれの検察官がそれぞれの経験に基づいて、いろいろな意見が当然交わされることになります。それは、だれがどう言ったとか、どういう指揮をしたということではなくて、私どもの検察活動として凝縮されるものは、起訴状であり、不起訴裁定書であり、それから公判活動でありという問題で、そこですべて最終的な結論といいますか、そういう外に向かっての検察権の行使の中身が出ているわけでございまして、そこの内容を余り申し上げるわけにはいかないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

河村(た)委員 私は内容を聞いているわけじゃないでしょう。最高検と相談されて、最高検の了承の上に逮捕状を請求されたのか、それを答えてくださいよ。こんなことは言わないかぬですよ、本当に。

大林政府参考人 それも捜査の内容にかかわることでございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 どこがかかわるんですか。どういう不都合があるんですか。反対に堂々とちゃんとしておいた方がいいじゃないですか。検察一体の原則で、ちゃんとこういう審議を経て、最高責任者の了解も得てやりましたと。一体何がいかぬのですか。

大林政府参考人 何度も恐縮でございます。

 検察庁における事件処理というのは刑事事件の最終的な処理をするということで動いている官庁でございまして、先ほどから申し上げているとおり、主任検察官において処理する検察官独立の原則というものを中心としております。

 その過程におきまして、いろいろ協議をし、参考意見が出、最終的な結論が出るものだと思いますけれども、そのプロセスというのは、一般論で申し上げればいろいろな事件がありまして、それにおいて、それぞれ検察の内部においていろいろな判断がなされ、適切な形で今のような処理がなされているものでありまして、やはり個々の事件についてどのような決裁が行われたかということを法務当局として申し上げることはちょっとできないと思います。

河村(た)委員 こんなことでは、これは本当の聖域ですよ。決めてきたプロセスぐらい教えてもらわないと。

 どうもこれは、あれじゃないですか、結局、実際は一体の原則になっていて、上が指揮してやるんだけれども、失敗することもある、そのときは、検察官独立ですか、独任制ですか、独任制の官庁ですか、だから主任とか現場の検事に責任を負わせる、そういうことじゃないですか。検察庁の内部はそうなっているんじゃないですか。上は責任をとらない、現場の検事だけ、失敗したときは責任をとらせる。そういうためにあなたはこれを答弁しないんじゃないの。

大林政府参考人 今の責任の問題云々、内部の例えば責任の問題のこととは、ちょっと私はそれは違うかなと。

 今のシステムは、あくまで主任検事がその権限に基づいてするべきだというシステムになっておりまして、最終的にそれは主任の判断において起訴したわけですから、その判断が間違っていれば、その責任を問われることはあるかもしれませんが、上がその責任を逃れるために今のシステムがつくられているというものではない、このように考えております。

河村(た)委員 それなら堂々と言わないかぬですよ。検察、最高検も一緒になって、証拠に基づいて堂々と起訴しましたと。では、そう言ってくださいよ、名古屋地検、名古屋刑務所問題。

大林政府参考人 先ほども申し上げましたように、一般論として申し上げれば、いわゆる重要事件について、決裁のやり方はいろいろ異なるとは思いますけれども、それは事件の性質等に応じて上級庁である高等検察庁なり最高検察庁がその相談にあずかるということはありますけれども、何度も申し上げて恐縮でございますが、具体的事件における決裁状況等について申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。

河村(た)委員 これでは、やはり検察庁は聖域だね。聖域ですわ。神ですね。神の領域ですよ、これは。(発言する者あり)そういうことです。プロセスまで教えてもらえぬのですから。これは、ちょっと時間がないのであれですけれども、次にまたやります。

 では、後で、教えられない理由をもうちょっと詳しく文書にして回答していただきたいんだけれども、それはいいですか。

塩崎委員長 理事会で諮ります。

河村(た)委員 それでは、リラックスして答えていただいてもいいんですけれども、仮に名古屋刑務所事案が無実となったときに、国会に対する皆さんの責任、国会議員もそのまま許されるとは私は思いませんよ、だけれども、これはどうなりますか。

 ちょっと若干書いてきたんだけれども、特捜部長、次席検事、検事正、高検検事長、最高検検事総長、法務省刑事局長、法務大臣、この皆さんは国会に対してどういう責任をとられますか。国民に対してと言ってもいいんですけれども、これをちょっとお答え願えますか。

大林政府参考人 今お尋ねの事件は現在公判係属中でございます。その具体的事件について、無罪判決を想定してのお答えはいたしかねるということを御理解いただきたいと思います。

河村(た)委員 こう申し上げておきましたので、これは国会としては、重大なことですからね、もしこうなった場合は。

 いいですか、委員長、これは重大なことですよ。なぜこうなったのかを明らかにして、しっかり責任をとってもらう。それを答弁してください、委員長。

塩崎委員長 そのときはそのとき、議論しましょう。

河村(た)委員 何ですか、それは一体。当たり前のことじゃないですか、そんなことは。当たり前のことではなくて、その場合は重大な責任が発生する、それは言ってくださいよ。

塩崎委員長 あくまでも仮定の話ですから、どうなるかもまだわかりませんので、その結果が出たときに考えましょうと言っているんです。

河村(た)委員 まあ、いいですわ、一応。もっと本当は委員長というのは権限があるんだから、権威があるんですからね、堂々とやってもらわないと。

塩崎委員長 いや、だって、どうなるかわからないんだから、まだ。

河村(た)委員 いや、なったときと言っているじゃないですか。

塩崎委員長 それは仮定の話だと言っているんです。

河村(た)委員 まあ、いいわ。一応、それでは、なったときはちゃんと議論するということでいいですね。

塩崎委員長 そのとおり。

河村(た)委員 では、もう一つ最後に、これは刑事補償の問題で、こういう無実を争ったような場合に、これは刑務官の場合なんかでも百分の六十出ていますけれども、あとの百分の四十については、これは裁判のことになるかわかりませんけれども、たしか出るのがあったですね。

大林政府参考人 制度の説明をいたしますと、無罪判決が確定した場合、刑事補償制度の補償の範囲等につきましては、裁判所が、拘束の種類及びその期間、本人が受けた財産上の損失、得るはずであった利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮し、公益の代表者である検察官と請求人の意見を聞き、決定し、補償額につきましては、その日数に応じて、一日千円以上一万二千五百円以下の割合による額の補償金を交付することができるものとされております。

河村(た)委員 最後に一問、もう時間が来ましたので。

 私選弁護人の弁護費用、それから鑑定、本来はこんなの法務省がやらないかぬのだけれども、物すごい努力をして、真相を明らかにしてやっているんですけれども、そのお金については、これはどうなるんでしょうかね。

 ちょっともう時間がないのですが、国賠ということになると、いろいろな故意過失を証明せないかぬことになりますので、やはりそれは酷だと思うんですよね。そういう場合には、何か規定があるようなふうですけれども、実際、そんなことは、費用補償ですか、弁償ですか、そういうことでやったことはあるのか。

 そこのところはもうちょっと、将来の対応についても、民間人が実は検察庁のやるべきことをやったわけですから、検察庁は無罪の代理人をすることもあるわけでしょう、公益の代表者として。その場合はやはりきちっと補償する、できぬならできぬでそういう道を今考えるとか、ちょっと一言、最後にお願いします。

大林政府参考人 委員御指摘の弁護費用につきましては、刑事訴訟法に規定された費用補償の手続において弁護人に対する報酬が補償されることになっておりまして、その補償は、被告人であった者の請求により、無罪の判決をした裁判所が決定することになります。

 また、鑑定費用につきましては、これも同様の費用補償の手続におきまして弁護人に対する報酬額の算定をするに当たり、必要かつ相当の範囲内でしんしゃくされるものと思われますが、最終的には、被告人であった者の請求により、無罪の判決をした裁判所が決定することになります。

河村(た)委員 ちょっと不十分ですが、また今後引き続いてやります。

 以上で終わります。

塩崎委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 若輩ではありますけれども、このたび法務の理事にさせていただきましたので、どうぞよろしく御指導をいただきながら、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、これは大臣にちょっと伺いたいのです。

 今回の総選挙で、小泉総理、大勝された。これから財政的にもきつくなるこの国で、税金のむだ遣いもやめなきゃいけない、民間にできることは民間に、官から民へ、こういうようなキーワードでいろいろやられたと思うんですけれども、やはりそういう中で、お金の使い方、とりわけ税金が最後どういうふうに使われているかということは極めて重要だと思うんですね。だから、できることなら、税金を原資とされているものは最後の一円まで明らかにする、できることならですよ、こういう姿勢が望ましいと思うんです。

 大臣、税金の使い方ということに関して、どういうようなお考えを持たれて今まで政治活動をされてきて、そして今大臣としてやられているかということをちょっと伺いたいのです。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

南野国務大臣 税金というものの本来の姿であるならば、これは国民から皆いただいているわけでございますので、それが一円たりともむだに使われることのないように、我々、ちゃんとしなければならないと思っております。

高山委員 今大臣からも、本当に最後の一円までむだにしないように使わなければいけないと。そして、私は特に、これはもともと国民のお金ですから、すべてオープンにして、可能な限り、どういうふうに使われたのかとやっていくべきだなというふうには思っております。

 でありますけれども、政治家の資金管理団体で、今、五万円未満のものは領収書をもらわなくていいというような話があって、そこは使途不明になっているじゃないかというような議論もされております。そんな中で、確かに、タクシーにちょっと乗ったとか、ちょっとした会合で領収書をもらい忘れた等、これは多々あると思うので、使途不明が出ることは、少額であればやむを得ないというふうには私も思っております。これは後で時間があれば聞こうと思っております。

 もっと大きいむだ遣いといいますかお金の使い方について、法務省の中に特別会計があると思うんですけれども、この件についてまず伺います。

 それで、時間があれば、さらに細かい、その使途不明金がどういうものがあるかというお話、大臣も副大臣も政務官もきょうはいらっしゃいますけれども、それぞれ国会議員の先生でございますので、伺っていきたいというふうに思っております。

 まず、特別会計ですけれども、これはまず大臣に伺いますけれども、法務省に登記特別会計というのがございますけれども、これは一体どういう目的でつくられて、どのぐらいの規模、規模というのは年間の収入がどれぐらいあるというものなのか、まず教えていただけますか。

南野国務大臣 全国の登記所で取り扱っております不動産登記及び商業・法人登記の事務につきましては、高度経済成長以降の激増する登記事件に対する登記事務処理が大幅に遅延するなど、憂慮すべき状況となっていたために、早急にコンピューターの導入を図るなど登記事務処理体制の抜本的な改革を行い、事務処理の円滑化と適正化を図ることが必要となっていたという土台がございます。

 そこで、これに対する経費は登記制度の利用者が負担する登記関係手数料で賄うということになっておりましたし、登記関係手数料はコンピューターなどの登記関係経費に充てられることを明確にするために登記特別会計が創設されたものであります。これは昭和六十年でございます。

高山委員 今、利用者負担というお話、それと登記手数料がコンピューター化に使われることを明確にするために行われたんだというお話でしたけれども、そうしますと、近年のもので構いませんけれども、大体、毎年幾らぐらいの収入があって、そしてそれが幾ら何に使われているのかということをお答え願いたいのです。これはコンピューター化に使われているということですから、ちょっとその詳細もお願いいたします。

南野国務大臣 年間の収入につきまして、これは平成十七年度でございますが、約千八百二十九億円です。そのうち手数料は約九百七十四億円でございます。

 また、歳出につきまして、これも平成十七年度でございますが、約千七百三十四億円ということでございまして、歳出の主なものは、登記所の職員の人件費または登記情報システムの運営経費またはコンピューター化の移行経費、それから登記所の設備費などでございます。

高山委員 あれ、ちょっと大臣、今、登記所の職員の人件費あるいはコンピューター化の経費というようなお話をされましたけれども、登記特別会計は、これはコンピューター化の経費のために、それを明確にするためにできたものなんじゃないんですか。

 ちょっとその割合を教えてください。人件費にどのぐらい使われていて、そしてコンピューター化にどれだけ使われているのか。

 それを教えていただかないと、これはちょっと看板に偽りありなんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣もそのように当然思われると思うので、ちょっとその割合を教えてください。(南野国務大臣「ちょっとお待ちください、調べています」と呼ぶ)では、時間をとめてください。時計をとめてください、調べているので。

吉野委員長代理 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

吉野委員長代理 速記を起こしてください。

 南野法務大臣。

南野国務大臣 今先生お尋ねの分について、人件費は大体九百六億円でございますが、今割合はちょっと出ませんので、この額で御了解いただきたいと思います。

高山委員 先ほどの大臣の御説明ですと、九百七十億円の支出があると。その中で九百六億円も人件費なんですか。これは全然コンピューター化に使われていないじゃないですか。看板に偽りありなんじゃないですか、このままだと。ちょっと大臣、どう思われますか、今御自身で言われた数字を聞いて。

南野国務大臣 十七年度の歳出、これは約千七百三十四億円でございます。

高山委員 失礼。

 だから、千七百三十四億円のうち、半分人件費じゃないですか。コンピューター化に幾ら使われているんですか。登記特別会計はコンピューター化をするための、それを明確にするための特別会計なんだというお話でしたよね、大臣。半分人件費に使われていますよ。

 ちょっと、コンピューター化に幾ら使われているのかも、先ほどから聞いておりますけれども、続けて、お答えがなかったのでもう一度お願いいたします。

富田副大臣 コンピューター化のためだけに登記特別会計を設けたわけではありません。大臣も先ほど答弁の中で、コンピューターの導入を図るなど登記事務処理体制の抜本的な改革を行い、事務処理の円滑化と適正化を図る、そのために登記特別会計を設けたというふうに言っておりますので。

 人件費が九百六億円、そのほかに物件費が七百七十七億円、この物件費の中に、コンピューターシステムのいろいろな設計とか、そういう費用が入っております。

高山委員 物件費というと、庁舎のいろいろな設備とかどんどん入ってきていますよね。コンピューター化に幾ら使っているのか。今副大臣から、もちろんコンピューター化だけにじゃないんだというような御答弁がありましたけれども、大臣、これはちょっと看板に偽りありじゃないですか。

 コンピューター化のために特別会計をつくりました。年間二千億近い収入がある。しかも、それで、コンピューター化に今どれだけ使われているんですか、その割合も御答弁されないというのは、ちょっと何か隠したいことでもあるのかなというふうに勘ぐることになりますね。

 ぜひ、この割合をまず教えていただけますか。額でもいいですよ。十七年度の額でもいいです。

南野国務大臣 先生お尋ねの登記事務のコンピューター化事業といたしましては、全国約五百二十カ所の登記所、これを接続する大規模なコンピューターシステムの機械の借料として約百五十八億円、システムの整備運用経費として約二百二十五億円、紙の登記簿を電子化するための移行経費として約百九十七億円、登記情報システムと連動してインターネットによる登記情報提供サービスまた電子認証サービス等を提供する関連システム等の経費として約十五億円となっており、合計約五百九十五億円になるでしょうか。

高山委員 大臣、今大臣おっしゃったものでいきますと、では今の移行経費は百九十七億円ということですね。これは十分の一じゃないんですか。(南野国務大臣「三四%」と呼ぶ)十分の一ですよ。これは百九十七億円、十分の一。ちょっとこれは余りにも看板に偽りありじゃないんですか。登記特別会計、コンピューター化に移行するのに使っているということでしたけれども。もし補足があるのであれば。

南野国務大臣 その全体で使われているものが先ほど合計ということで申し上げた五百九十五億円であり、コンピューター化の割合としては、三四%ということでございます。

高山委員 済みません、今の三四%というのは、その五百九十何億円のうちの百九十七億が三四%だということですね。これはパーセンテージを大きく見せるために言っています。いいですか、二千億円中幾らなんですかということですよ。

 ちょっとそれでは改めまして、いいですか、二千億円中のこの五百億円の三十何%だということでしたけれども、これは今聞いたら、この移行費用である百九十七億円とほぼ同額に近いぐらいの費用、百五十八億円が、機械のレンタル費用ですか、そして二百二十五億円が運営費だという話ですけれども、これは大臣、この百五十八億円と二百二十五億円というのは、つまりこれは毎年出ていく費用だということですか、この費用というのは。当然そういうことになりますよね。

 ちょっと伺いたいんですけれども、それがそうなのかという確認と、毎年毎年これだけの、三百七十億円近くというのはちょっと額が大き過ぎるとは思いませんか。

南野国務大臣 借料は多少減少傾向でありますけれども、これは毎年出る分でございます。

高山委員 ちょっと大臣に伺いたいんですけれども、コンピューター化のこの経費で、この三百七十億円、毎年毎年借料、レンタルとそういう運営費で出ていっているということですよね。これはちょっと多過ぎませんか、この額は。毎年ですよ。

 それで、先ほどの説明ですと、コンピューター化、昭和六十年から始まっているということですよね。コンピューター化に二十年近くかかっているということも、時間がかかり過ぎているので私は後で問題にしますけれども、まず、大臣、毎年毎年これだけの額が出ていっているというのはちょっと多過ぎるなと思いませんか。

南野国務大臣 多過ぎる、多過ぎないというのは、これはそれぞれの価値観といいますか感覚ということにもよると思いますが、全国約五百二十カ所の登記所、それを対象としているということでございます。

 さらにまた、登記情報システムにおけるコンピューター借料が高過ぎるという先生の御意見、これに対しましては、登記情報システムは、全国約二億七千万筆個の不動産、そして三百五十万社の会社、法人の登記情報を記録さらに保全する登記事務を行うシステム、そういったものがあり、今申し上げましたように全国五百二十の登記所で稼働しようとしている巨大なシステムでございますので、お金は、それを五百二十で除していただけると、各一個一個ということについてはそれなりのリーズナブルなものではないかなと私も思っております。

高山委員 いや、これは確かに大臣おっしゃるとおり、明治時代から続いている登記の制度だとか会社の登記の制度、こういうのを全部変えていくという、「プロジェクトX」にも出られるぐらいの大事業だとは思いますよ。思いますけれども、これだけの額、これは毎年三百七十億ですけれども、一体これがどういうふうに移行の作業が行われていて、もっと安くできる工夫はなかったのかな。

 当然、これは検証、二十年間ありましたから、あったと思うんですけれども、そういった検証はされましたか。二十年前に設計したのを私は責めているんじゃないですよ。その後でコンピューターは日進月歩でどんどん進んでいますから、途中で検証を当然していると思うんですけれども、あるいは、そういう検証をされたかどうか、ちょっとまず伺います。

南野国務大臣 先生が、高過ぎないかということでございますけれども、現在のシステムにつきましては、旧式のシステムであることによりまして、最近の安価で汎用性の高いコンピューター機械のソフトが利用できておりません。そういう条件もこれありでございますので、目的に向かってはやはりそれだけの費用がかかる。

 そこで、現在、システムの再構築に取り組んで、端末機器または印刷機器等の汎用化に努める、それからホストコンピューターの集中化等を実施いたしまして経費の削減を行っているところでございますが、次期システムの開発によりまして思い切った経費削減に取り組んでいるというのが今の実態でございます。

高山委員 大臣、今そういう取り組みをしているということは評価できると思います。けれども、これはもう始まって二十年ぐらいたっていますよね、この登記の移行というので昭和六十年から特別会計ができて。二十年というのは、幾ら何でもちょっと時間がかかり過ぎませんか。

 それで、最近そういう見直しを始めたと言いますけれども、今まではずっと見直ししていないんですか。ずっとその一番高い設計のままやられているんですか。これはまずその基本的なところが問題だと思いますよ。

 だから、当初どういう計画で、つまり私が聞きたいのは、当初、昭和六十年の時点では、では何年に完成しますよ、だけれども、今こういうコンピューター物は日進月歩ですから、もっと早くできるようになったとか、当然あると思うんですけれども、そういう計画の見直しというのは今までやったんですか。

南野国務大臣 担当者はそれなりの努力をいたしておりまして、その間に経済の状況でバブルの時期があったりと、いろいろな問題点を反省しながら、それを、状況を取り入れながらそのような形の改築に向かっているということは情報を聞いております。

 登記簿のコンピューター化のための移行作業、これは国民の権利に直接関係する登記簿の内容を電子化する作業であるということは我々自身思っておりますが、年間約千八百万筆個の膨大なデータを処理しなければならない。それに加えて、登記簿に記載されている事項のうち、現に効力を発揮する部分の判定作業、これに専門的な知識、能力及び細心の注意が必要となってまいります。

 明治年間に書かれている登記簿をごらんになったことがあると思いますが、読める文字もあれば読めない文字もある。ユーザーにマイナスにならないようにはどのような形でそれをやっていくか、それは専門能力を持った人じゃないとできない大変難しい分野があります。

 そういうことも含めまして、移行経費も相応の金額が必要となるところでございますので、現在の移行単価につきまして、毎年ノルマアップや事務処理の見直し等により経費の節約を図ってきております。適正なものであると考えております。

高山委員 大臣、今私が聞いたのは、当初の、二十年前のコンピューターシステムで何億円かかると。だけれども、コンピューターというのはだんだん安くなりますよ。この十年間で能力は三十倍、価格は三十分の一ぐらいになるぐらい、とにかくどんどん変わっていくわけでしょう。そういう検証をされたんですかということですよ。移しかえるのが特殊な仕事だということはそうでしょう。そういうのを計画の途中でまずやられたのかということ。

南野国務大臣 それは、いろいろな仕事を任されている担当局としては、それをするのが当たり前だと思っております。

高山委員 いや、大臣、そうでもないんですよ。これは二十年間ですよ、コンピューター化するのに。例えば、巨大な銀行とかが三行合併しましたといってシステムを統合するのに二年も三年もかかっていますか。あんなのは、一夜にしてとまでは言いませんけれども、すぐできますよね。大臣、こんな移行作業に二十年かかるのは、どう考えてもこれはかかり過ぎだと思いますよ。

 それで、私、これは何万件何万件ということをいろいろおっしゃいますけれども、これは機械的に、だって、今あるのをどんどん移していく作業ですよね。これを今どういうやり方でやっているのか、ぜひともちょっと教えていただきたい。

富田副大臣 今の委員の前提が、ちょっと誤解があると思います。機械的に移していく作業じゃなくて、大臣がお話ししましたように、土地の登記簿謄本を思い出していただければいいんですが、甲区欄にずっと権利の移転がありますよね。乙区欄には担保権の設定がずっとある。それが今現在どれが有効なのかの判断とか、そういうのを全部した上でやるわけですから。それが二億七千万筆ある。それは機械的にただ移せばいいという話じゃありませんので、やはりかなりの時間をきちんととった上で一つずつやっていく。

 その前提で、それでも時間がかかり過ぎだという、それは評価はあると思いますが、前提が手作業になってしまうものですから、そこがちょっと銀行の統合とは違ったような状況があるというのはぜひ御理解いただきたい。

高山委員 今、手作業でやられているというような話をされましたけれども、これはある程度専門的な知識がある方じゃなきゃできないとは思いますよ。思いますけれども、これは二十年間にわたってかどうかわかりませんけれども、とにかく近年は毎年毎年三百七十億円も使ってやっている。だから、この三百七十億円も移行費用で使われているという、失礼、これはレンタルか。五百五十億でしたか、近年は移行費用で五百五十億、とにかく使われている。これがどういうふうに使われていて、本当にそれが適正なものなのかというのは、当然検証があってしかるべきだと思うんですよ。

 それで、これはどういう競合でこの仕事をやられているのか。まさか、法務省の職員の方がやられているのか、本当に移す作業ですよね、これはどういうところがやっているんですか。

南野国務大臣 今先生、簡単にここからここに移す作業というふうにおっしゃいましたけれども、その移したものが本当に適正なのか、そのユーザーにマイナスにならないのかどうなのかということもちゃんと確認の上、検査してコンピューターに載っけなきゃ、我々は不安定なものを載っけてしまうということはできません。

 そういう意味では、一つ一つの問題が大切な、また時間がかかる課題でもあるわけでございまして、不動産登記の事務をすべてコンピューター化するためには、全国で約二億七千万筆個……(高山委員「それはもういいですよ、だから、だれがやっているかということですね」と呼ぶ)それは専門的な人に任せることもありますし、また、そういうような人たちが筆界というような問題までも行って、それがうそでないような形で展開しなければならないということであります。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

高山委員 ちょっと大臣、いいですか。私は、これは機械的にただの学生バイトがどんどん移せばいいだろう、そういうことなんか言っていないですよ。だから、専門的なことが必要だと言うのであれば、これは法務局の公務員の方がみんなやられている作業なのか。これは一体だれがやっている作業なのか。それこそ民間にできることは民間にですから、こういう移す作業ですから、正確に移せばいいわけですから。だれが一体やられているのか、それを答えてください。

南野国務大臣 先生おっしゃるように、だれがしているかという関心でございますが、法務省の人間も多少お手伝いはしておりますけれども、ほとんどは、これは民事法務協会へ委託しております。約百九十六億中の百八十億円、この協会はこのうち移行会社に百二十億を支出し、これは入力作業の外注などでありますけれども、協会自身は約六十億円で原稿作成と移行確認を行っているわけです。この確認は本当に大変だと思います。

 移行会社における入力単価は一筆個当たり五百七十円、これは入力、校正、修正等を含んでおります。また、キーパンチャーのみでは二十一円という単価でさせていただいております。

高山委員 急に大臣から詳細な答弁が出てきて僕はちょっとびっくりしたんですけれども、では、この百九十六億円、これは法務省の予算というか特別会計のものですね。これは百八十億円も、民事法務協会ですか、そこに全部この仕事を投げちゃっているんですか。印象としては、ほとんど丸投げに近いですね、ここの民事法務協会というところに。

 百九十六億円の予算、これは一年でしょうけれども、それが百八十億円丸々民事法務協会に行っているということですか。さらにその後も百二十億円ということで、またほとんど外部の会社に丸投げしちゃっている感じですね。そういうことですよね。

 これは、最後百二十億円がどういうふうに使われているか。あるいは、こういうのを、今一件当たり五百七十円という急に細かい話が出てきましたけれども、これも適正かどうかというのは考える必要があると思いますよ。

 キーパンチャーが今二十一円と言いましたけれども、普通、あて名の入力なんて一件一円とかですよ。だから、最後の機械的に入力するのに二十一円というのも二十倍ぐらい高い印象を持ちますけれども、大臣、この辺の一個一個の単価が適正なのか、あるいは百八十億円を百二十億円分民間のところに投げていると言うけれども、こういうのは適正なのか、ちょっと大臣の意見をまず伺いたいですね。

南野国務大臣 説明を受けた限りでは、これは適正に処理されていると私は思っておりますが、百八十億円の中から移行会社に百二十億ということでお願いしている。これは入力作業の外注など、先ほど申し上げたとおりでございまして、協会自身は約六十億円で原稿作成とか移行確認等を行っているということは先ほども申し上げたとおりです。

高山委員 私、ここからは大臣にちょっと政治家として御判断を伺いたいんですけれども、これは莫大な額ですよ。何か二百億ぐらい移行費で、これは委託、純粋に移す費用ですけれども、これが毎年毎年かかっているわけですよね。専門的で大変だということはわかりますけれども、ちょっとこれ、毎年毎年二百億というのはかかり過ぎじゃないですか。

 しかも、今聞いたら、これは全部、民事法務協会というところに委託されているということですけれども、例えば司法書士の協会の方ですとか、ほかにも民間で、能力があってできる人はいると思いますよ。

 どうして、いろいろ競合をしないで、民事法務協会というところに二十年間頼み続けているんでしょうか。国がカモられているんじゃないですか、ずっと同じ、高どまりして。大臣はどうお考えですか。

南野国務大臣 確かに、入力原稿の作成作業や移行確認業務、これは登記に関する専門的な知識を要するものでありますから、登記に関する代理資格を有する司法書士であればこの作業を行うことができないわけではないというふうに考えておりますが、司法書士のような資格者に移行業務を委託することとすれば、委託のための単価については現在の水準におさまらないということは明らかである、私もそのように思いますし、外部委託のあり方としては、そういうお金の高いことについてはできないということで、鋭意検討しておるわけでございます。

高山委員 大臣、司法書士に頼んだら明らかに高いというようなことをおっしゃいましたけれども、ちょっと根拠を教えてください。(発言する者あり)

塩崎委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 では、速記を起こしてください。

 富田法務副大臣。

富田副大臣 済みません、司法書士の先生方の時間単価が幾らなのか、今、手元に資料がないということですので。

 私も弁護士出身ですから、司法書士の先生方が時間単価が幾らぐらいで仕事をするかということを考えた場合に、民事法務協会の職員と比べれば、それは、同じ値段、それ以下でやれることはまずないというふうに常識的に考えられると思います。

 先ほど先生がキーパンチャーにあて名を頼めば一件当たり一円だというふうに言われましたけれども、登記簿謄本をコンピューター化するのをちょっと想像していただきたいんですが、コンピューター化された登記簿謄本も何枚かになっています。全部打ち込むわけですよね。だから、そういう意味では、住所を何十件分打ち込むと同じような、それが一件当たり二十一円ですから、決してそんな割高になっているわけではないというのをちょっと御理解いただきたいと思います。

高山委員 私、今伺いましたのは、副大臣が個人的にこう思うという話じゃなくて、これは二十年間も、毎年毎年、移行費用でこれだけかかっている、そして、民事法務協会というところにずっと委託し続けている。一回ぐらいこれは競合をさせなきゃだめですよ、大臣。単価が適正かどうかわからないじゃないですか。

 一般的にはどうだこうだと言うのは、それはお話としてはいいかもしれませんけれども、国民の税金を一円もむだにしないという観点から、一回も競合をした形跡もなく、ずっとここに頼み続けている。しかも、この単価が高いんじゃないかというのは、僕がきょう初めて言っているわけじゃないですよね。財政審議会でも言われているし、前の委員会でも指摘されているし、ちょっと怠慢じゃないですか。

 一回ぐらい競合をやったんでしょうか。これは大臣に伺います。

南野国務大臣 私個人の考えとしては、見直しをしているものというふうに思っておりますが、それはまた後で確認してみます。

高山委員 これは極めて大事なことなんですけれども、二十年間ずっと同じところで、しかも、単価が高いんじゃないか、高いんじゃないかと延々指摘されてきているんですよ。だから、一回はきちんと競合をさせるべきだと思いますね。

 例えば司法書士さんにも、思いますとかじゃなくて、では、こういう仕事をもし振ったらどうなるのか。そういうやりとりがあったなら、きちんと正式な文書でいただかないと、ここで私はこう思いますという話ではちょっと納得できませんね。

富田副大臣 今、数字が出てきましたので、司法書士さんの相談の時間単価、一時間三千五百九十円が平均だそうであります。

 その相談単価から考えますと、司法書士さんにこの業務をやっていただくと一カ月約六十万円、民事法務協会の方で実際に雇っている職員は、約三十万円で雇っていると。

高山委員 今の副大臣のお話も、今そこで、ほとんど思いつきのように、司法書士は単価が幾らなのでこうだということですけれども、それはちょっと、事務所に行って相談して複雑な話をするのと、今までの登記簿を見てやる話とは、根本的に違うと思いますよ。なので、それは仕事の単価の比較にはならないと私は思います。

 私が言いたいのは、大臣、いいですか、このように争いがあるんですよ。その仕事の単価が適正かどうかというのは、今のように争いがあるわけです。ちょっとしたことでも、いや、それは違うんじゃないか、もっと安くできるんじゃないかと。何で二十年間もこれを放置していたんですかね。大臣、これは税金のむだ遣いを放置していたと言われても仕方ないと私は思いますよ。

 だから、これは必ず一回、市場化テストなりなんなりで、きちんとした競合をやるべきだと思いますけれども、大臣、この市場化テストに関してどう思われますか。

南野国務大臣 今、資料が出てまいりましたが、見直し単価、これは年々低くなっている。その指数をちょっと見てみますと、平成元年には指数が一〇〇であった、平成十年には八一、十七年には六九というように、一応、下降現象ではあります。

高山委員 済みません、大臣、今のそれは余りにも唐突過ぎて、申しわけありませんけれども、今のでは何の指数だかわかりません。

 それとあと、これは言いたくないですけれども、私、これをもう二日以上前から結構お願いして聞いているんですよ。大臣にこういう細かい話をするのは大変申しわけないなと、政治家として、ちょっと大きい話を、お母さんの胸をかりるつもりでやろうというふうに思っていたのに、今言った数字とか、全然出てこないんですよ。だから、何かこれは隠そうとしているんじゃないのかなというふうにちょっと勘ぐりました。

 それで、この民事法務協会という団体も、どういう団体なのか、私はこれから調べなきゃなとは思っていますけれども、まずその前に、やはりこれは、適正だったのかどうなのか、市場化テストをやるべきだと私は思いますよ。

 大臣にちょっとお考えを伺いたいんですけれども、それは今後やるつもりはありますか。今からだって十分遅くないですよ。平成十八年度の予算からでも十分遅くないと思いますよ、少しでも節約できますから。

南野国務大臣 市場化テストについては、いろいろな分野で法務省も協力いたしている分野がございますので、そういうことについても検討する余地はあるのかなと。これは検討を重ねてみようと思っております。

高山委員 今の大臣の御答弁ですと、登記特別会計の事務作業に関しては、市場化テストを検討していただけるということでしょうか。これは年間二百億円ですからね。今、一年だけ節約しても、本当に随分節約になりますよ。これはやっていただけますか。

南野国務大臣 そのような方向で検討してみたいというふうに思っています。

高山委員 それと、大臣、この登記特別会計ですけれども、これはもうエンドレスですよね。もう二十年間、延々二百億円、毎年毎年こんなランニングコストをかけてやって、この特別会計は一体全体いつまで続くんですか。これが未来永劫ずっと続いていったら、一年間に、例えば移行だけでも二百億円もかかっているんですよ。これはちょっと、そもそも移行なんかしなくていいよという意見も出るかもしれませんよ。いつまでこれをやるつもりですか。

南野国務大臣 平成十九年までということで、移行作業がそこで終わるだろうというふうに我々は見越しております。あとわずかな年数でございます。

高山委員 私、これは事務方の方にも、当初の計画では、一体全体、昭和六十年から始まって、いつまでの計画で幾らのものなんだ、それがずるずるおくれちゃっている話なのか何なのかというのを聞いたけれども、何か明確な答えがないんですよ。

 それで、今大臣は十九年に移行作業が終わるということをおっしゃいましたけれども、冒頭質問させていただいたときに、この登記特別会計はコンピューターの移行作業に使うことが一番メーンであるというお話でしたよね。十九年に移行作業が終わったときに、この特別会計はなくしていただけますか。

南野国務大臣 それは、だれでもでき上がったらやめたいというふうに思いますけれども、この作業にはいろいろなものが後をついて歩いているわけです。どういうものがついて歩いているのかといいますと……(高山委員「利権がですか」と呼ぶ)いやいや、仕事がです。

 登記の特別会計につきましては、地図のコンピューター化が完了する予定の平成二十二年度までは存続する必要が極めて高いと考えており、その時点で登記制度を取り巻く諸情勢を勘案して特別会計のあり方について検討する必要がある、その旨、法務省の考え方を特別会計小委員会において説明したということでありまして、地図その他の問題点についても、その確認作業等は後をついて回ることであろうと思っております。

高山委員 大臣、そうしますと、私も、地図というのは当然不動産のですから要ると思いますよ。それで、その作業が二十二年に終わるわけですよね。そうしたら、登記特別会計はもう要らないんじゃないですか。

 いや、今聞きましたよ、その時点で検討というのは聞きましたけれども、大臣の今のお考えを聞きたいんですよ。これだけ毎年使われて、単価の適正化もちょっとはてながついているものを、二十二年までやられたらもう要らないんじゃないですか。ちょっと大臣の今のお考えを伺いたいのです。

南野国務大臣 あと二年後ですから、二十二年までというのはもうしばらくの時間でございますので、その間にどのような経済状態、また国がどのようになるかということも、それは何とも言えないことでございますけれども、登記制度を取り巻く諸情勢を勘案いたしまして特別会計のあり方を検討する必要がある、これは申し上げておきたいと思っております。

高山委員 いや、今、コンピューター化でしょう。二十二年までに安くなったり早くできたりすることは当然あると思いますよ。だけれども、それが延長するというのは、今のこのコンピューター化の波を見て、僕はあり得ないと思うんですよ。ちょっと大臣も、延長だけはあり得ないなというふうに、今うんうんとうなずいておられますけれども、早く終わることはあっても平成二十二年より後になるということはないですよね。ちょっと一応確認させてください。心配なので、年間二百億円かかっていますから。

南野国務大臣 いろいろそのときの情勢を勘案しなければいけませんが、私の気持ちも先生の気持ちも同じ方向であるということだけの確認はさせていただきたいと思っております。

高山委員 いや、大臣、気持ちも大事ですよ。だけれども、年間二百億円も使っていて、きょうはもう時間がなくなってきましたから、本当にこの二百億円が適正かどうかというのは、当然、後で集中審議しないとちょっとできないなと私は今思っておりますけれども、これは二十二年以降はさすがにやめなきゃなと。総理大臣だって、今、特別会計を全部見直そうということを言われているわけですよね。ちょっと法務省もいいところを見せて、これをやりましょうよ。

 大臣、どうですか。二十二年以降、必ずこれは廃止しなきゃということをちょっと一回確認させてください。

南野国務大臣 この場を離れたら先生に同調したいわけでございますけれども、でも、それはそのときの状況がどうなっているかということで、あとちょっと残っているのにもかかわらずそれをやめてしまうということは、それはできませんので、なるべく二十二年には完成できるように、まず努力するということを先にさせていただきたいというふうに思います。

高山委員 この税金を原資とするお金の使途不明の問題というのは、そういう今言った法務省全体の大きい問題から極めて政治家個人の使途不明金の問題まで、本当は多々あるんですよ。多々あるんですけれども、今時間が終了しましたので、それはまた続きでやりたいと思いますけれども、ちょっと最後に大臣にお願いしたいんですよ。

 私は、細かい資料というわけではなくて、この二百億円の内訳がどういうふうに使われているのか、そういうのを、ここ三、四年の予算の執行が終わったもの、これを聞いているのに、いや、ちょっとそれは今作成中ですというのは、おかしいと思いますよ。ただコピーして渡していただければ済む話ですから。何か隠したいことが特別ないのであれば、予算の執行状況に関してはかなり詳細なものまで出していただくように政府に協力をお願いしたいんですけれども、大臣、その点はいかがですか。

南野国務大臣 きのう遅くまで係の者はいろいろと作業いたしていたというふうに……(高山委員「私も作業しました」と呼ぶ)そうですね、先生も本当に、そういう意味では先生に大変御迷惑をおかけしましたということを申し上げたいと思っておりますが、今後、御依頼のありました資料につきましては、できる限り早期にお手元にお届けしたいというふうに思っておりますし、そのような努力をしていこうと思っております。

高山委員 ありがとうございました。

 この税金のことに関しては、できる限りということでなくても、これはもう決算が終わっている話ですから、当然出すべきものだということを訴えまして、終わります。

塩崎委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。この委員会で二年ぶりに質問をさせていただきます。

 まず、南野法務大臣に基本的な認識を伺いたいんですが、裁判で刑が確定をして、なおかつ私は無罪であるということで再審請求をして、そして、狭き門なんですが、これは認められる場合もあって、再審無罪ということが出たケースもある。再審の制度について、大臣はどう認識されているでしょうか。

南野国務大臣 大変悲しいことでございますが、再審制度というところに適応しなければならないという問題につきまして、主として事実認定の不当を是正し、無実の人を救済するために認められた確定判決に対する非常救済手続であると承知いたしております。

保坂(展)委員 ちょっとメモから離していただいて、つまり、私は、これはとても大事な制度だというふうに思います。大臣はいかがですか。

南野国務大臣 それは事例事例にもよりますけれども、中身としては大切な審判であろうと思っております。

保坂(展)委員 戦後、死刑が確定をして、なおかつ再審請求をして無罪が確定した事件、何件ありますか。

南野国務大臣 四件ございます。

保坂(展)委員 では、局長に伺いますが、これら免田事件、財田川事件、島田事件、松山事件の四件において、再審請求は何回出されておるんでしょうか。

大林政府参考人 無罪が確定した順に申し上げますと、いわゆる免田事件は六回目、いわゆる財田川事件は二回目、いわゆる松山事件は二回目、いわゆる島田事件は四回目となっております。

保坂(展)委員 大臣に最後。今局長の答弁にあったように、一回で認められたケースは余りなくて、多いものだと、免田事件だと六回請求があって認められて、長い獄中生活を経て無罪ということで、何度も請求をして、その請求が認められて無罪判決を得ることができたということについてどうお感じになりますか。所感を伺いたい。

南野国務大臣 一つ一つの事件にみんなが努力して一つの方向性を持っていっているわけでございまして、そして、その事件についても今の四件のケースが、そういうように個々のケースとして発生しているというその事実は認めますけれども、個々の案件の中身について、それでよかったとか悪かったとかということについては、ちょっと私の立場として御報告できないと思います。

保坂(展)委員 個々具体的な事件ではなく、再審請求が何回もあって、その何回目かに認められたということについてはどうお感じになりますか。

南野国務大臣 それはそのときの状況判断ということもございますでしょうけれども、できるだけそういうものが早期に行われればよかったのではないかな、これは私の感想でございますけれども。

保坂(展)委員 ことしに入って、資料でお配りしているように、名張の毒ブドウ酒事件、これは有名な事件で、日弁連の対策委員会も組まれていたかと思います。再審開始が決まりまして、死刑確定事件の再審というのはしばらくとまっておったんですが、これは大きなニュースとして受けとめました。また、これは死刑事件ではありませんけれども、二人の無期懲役が確定をしていた布川事件ですか、これについても、この秋、再審開始が決定されたと聞いています。

 具体的に個々の事件については今聞きませんが、死刑の問題にあわせてこの再審のことを考えてみたいんですけれども、大臣、死刑執行の刑場はごらんになりましたか。

南野国務大臣 視察させていただきました。

保坂(展)委員 私も、法務委員会で、一昨年でしょうか、東京拘置所の刑場を見せていただいたんですが、個々いろいろな感じ方があろうかと思います。しかし、死刑というのは、私は死刑制度には反対で、百人前後の超党派の死刑廃止を推進する議員連盟という活動が長らく国会の中にもあるわけで、個々議員によっていろいろ立場が違うと思いますが、今回、九月十六日、北川晋死刑囚の死刑執行が行われました。

 私どもは、その議員連盟として南野大臣にお会いして、大変残念だったということと、また、看護師、そしてまた助産師という、命をはぐくむお仕事をされてきた大臣にとっては、その決裁をするということについて大変つらい場面だったろうと推測いたします。また、その際に、法の秩序あるいは犯罪の被害に遭った遺族の被害感情、いろいろなことをお考えになったと思いますが、冤罪の可能性について思いをめぐらせたことはございましたか。大臣。

南野国務大臣 先生が今お問い合わせの死刑という問題については、それぞれに人の命は大切なものであるという前提のもとに、それぞれの感じがあるだろうというふうに思っております。私も、死刑ということについて、どのように一般国民の理解が得られるのかどうかということで、今日のような重大な犯罪が続いている、それでアンケートの結果につきましても、八割以上の人が、被害者、加害者ということの関連の中から、やはり許せない、死刑は存続してほしいという要望があることも十分受けとめなければならないと思っております。

 私の過去の仕事が助産婦であるからということと、今法務大臣を拝命しているというこの立場は違うものであるというふうに思っております。

保坂(展)委員 その認識についてまたいろいろ伺いたいことはあるんですが、時間がありませんので、冤罪ではないのかなということについて思いをめぐらせた御記憶はありますかという点、一点だけお答えいただけますか。

南野国務大臣 私といたしましては、その裁きをした方、そのあり方を尊重いたします。そういう観点からすると、冤罪かなと思うようなことについては私は思いをめぐらさなかったということを申し上げたいと思います。資料を調べに調べたということでございます。

保坂(展)委員 最後の瞬間の、死刑執行についての責任者は法務大臣ですから、当然、冤罪かどうかということについて思いをめぐらすということは、ぜひこれはしていただかなければならないというふうに思います。

 局長の方に伺います。

 かつて、再審請求中であって、なおかつ死刑が執行されてしまったというケースはございましたでしょうか。私ども、抗議に行ってその議論をした記憶があるんですが。

大林政府参考人 お尋ねの事例はあると承知しております。

保坂(展)委員 法務大臣に伺いたいんですが、先ほど来、同じ理由で同じ事件について死刑が確定した死刑囚が再審請求して、戦後には四件認められたケースがある。そして、再審決定はもう一件、名張の事件で出ました。にもかかわらず、再審請求中であるということは、裁判所がこれについて結論を得るまでの間、死刑執行というのはあってはならないと思いますが、この点についてどう考えていらっしゃいますか。

南野国務大臣 再審請求、これは、法文上、刑の執行停止事由に当たらないとされておりますけれども、死刑執行命令を発するに当たりましては、死刑の執行のもたらす重大な結果にかんがみまして、再審請求されている事案につきましては十分参酌することといたしております。

保坂(展)委員 副大臣に伺いたいんですが、この件、再審請求中の事件について、今慎重にとおっしゃいましたけれども、副大臣の方はどうお考えですか。

富田副大臣 突然の御指名ですので。

 まず、大臣と同じように、執行停止の理由には法文上ならないと大臣言われましたけれども、現実には十分その点をしんしゃくして決断されているというふうに考えています。

保坂(展)委員 現実に再審請求中でありながら執行されたケースがあり、その際の法務省とのやりとりで、再審請求中でも同じ理由でやっている場合はこれは妨げないんだというようなお話もありましたので、ここは、今後は慎重に、ぜひ今の答弁のように期していただきたいということを申し上げたいと思います。

 次のテーマに移らせていただきたいんですが、先ほどちょっと触れましたけれども、行刑改革会議、国会での議論の中で、既決囚の処遇については画期的な改善も含んだ改革案が成立をしたと聞いております。

 ただ、既決ではなくて未決の方の話なんですが、実は、資料でお配りしておりますけれども、予定日の一カ月前に「被告に「陣痛促進剤を」」という記事がございます。これは東京新聞ですけれども、この女性は三十代初めの女性のようですけれども、お子さんを連れて友達のところに出かけたそうですね。そして、その友達の女性が、我々も非常に深刻だと思っている児童虐待、要するにお子さんをなぐって、それがもとでお子さんが亡くなる。そして、遊びに行ったこの女性、仮にA子さんとしますと、このA子さんは共犯ということで起訴されているそうです。そして、私は現場にいなかったということで、関与していないという主張をされているようですが、事件そのものについてはここでは問いません。

 大臣が、それこそ助産師としてあるいは看護師として、現場で多数、これから生まれてくる命に立ち会う経験をされたんじゃないかというふうに思うのです。その御経験からして、陣痛促進剤と分娩の関係ですね。これは、なかなか生まれてこない場合は、いろいろ母子に影響があるということで医療的に処置する場合もあるとは聞いていますけれども、どうも、新聞を見ますと、ちょうど五月十八日あたりが出産予定日でゴールデンウイークがかかってしまう、病院の都合でちょっと早く出産をお願いしますよというような理由による使用、これはかなりこれまで問題になってきたのではないかと思いますが、そこについての認識を伺いたいと思うのです。

南野国務大臣 出産と陣痛促進剤というような意味のその二つのポイントから考えてみれば、この事案がどうだったかということはさておきましても、いわゆる陣痛剤を使わなければならないという適応については、これはドクターが判断するものであろうかと思います。適切であれば使うということもあり得ると思いますが、大方の人、お産に向かう、自立したお産をやりたいと思っておられる女性たちは、自然分娩ということも多く念頭にあるのが昨今の傾向であろうというふうに思っております。でも、この方の状況が、例えば破水をしたとか陣痛が来なくてということであれば、それは適応になるというふうにも思っております。

保坂(展)委員 局長に伺いますが、この方の場合は、陣痛促進剤を使おうかという話を東京拘置所を出て、民間病院の側がしている、あるいは弁護人を通してそういう話があるというのを聞いて、それはやめてほしいというふうに申し入れて、申し入れたことが一応聞き入れられて、警察病院の方に入院をして大体予定日どおりの十九日に出産をしているということのようです。

 これまで、東京拘置所の中あるいは全国の行刑施設の中で、出産の際、分娩の際に陣痛促進剤を使うというケースはどのぐらいあったのか。それから、今回の事件を機にやはりこれは改善すべきじゃないか、こういうことがあってはならないと思いますが、いかがですか。

小貫政府参考人 平成十六年中に行刑施設の被収容者が出産した件数は三十件でございます。そのうち陣痛促進剤を使用した件数は七件、こういう報告を受けております。

 今後のことにつきましては、医師の的確な判断を最大限尊重して対応してまいりたい、このように考えております。

保坂(展)委員 大臣にもう一度伺います。

 いろいろなケースがあるんですね。ただ、先ほどのケースのように、五月十八日が予定日で、四月下旬の段階で、ゴールデンウイークもあるので陣痛促進剤をというようなことは、これはやっちゃいけないというふうに思いますが、いかがですか。

南野国務大臣 やはり、分娩というのは月満ちて生まれるものであり、それを無理やりに陣痛をかけてということは余りよくないことではないかな。だけれども、それは適応がある。例えばユーザーの方から要望をして陣痛剤を使ってほしいということもありますが、このケースについては、今私が思っているとおりでございます。

保坂(展)委員 私は大臣と違って一回だけですけれども、子供が生まれる際に、病院が小さい産院で、泊まり込みで立ち会うことが可能だったんですね。ということで、かなり出産というのは、私たちは男ですからわかりませんから、大変なことだなと思いますよ。そして、産んだ後の、精神状態も含めてかなり不安定になりますよね。

 この女性の場合、出産後に、いろいろ当局の規則もあるんでしょう、手錠がかけられてロープで縛られるような状態でおったということなんですが、こういう出産直後の女性の扱いについての配慮、もう少し改善できないのかというふうに思うんですが、いかがですか。大臣に。

南野国務大臣 その方がどういう立場で今その分娩室にいるのかというようなことも、これ一つ、拘束しなければならないという立場があったとするならば、それも無理からぬことかなと思いますけれども、もちろん、そういう行刑施設としては犯人を勾留するというようなことが指定されておりますので、逃走とかそういうものとの関係がなければ本当に自由な環境を与えてあげたいというふうに思うのは、これは人間の心であろうと思いますが、いろいろな環境がそこに必要であるとされるならば、それはいかんともしがたい環境であろうと思っております。

保坂(展)委員 さきに触れたこの刑事施設及び受刑者の処遇に関する法律の中で、女子受刑者が産んだ子供を養育したいという場合は一歳まで、また、希望がある場合は一歳半まで養育できるということが盛られております。これは、先ほど言ったように、既決の場合ですね。しかし、未決の場合は、まだ要するに刑は確定していないし、本人は無罪を主張していますから、このケースの場合、今私がお話ししたケースの場合は、やはり一般の面会の形でしか産んだお子さんと会うことができない、だっこしたりそういうことはできないんですね。

 これは、少なくとも、法務省において、この法律に準じて、未決囚の場合も、出産直後の母子の結合、これは大事ですよね。法務総合研究所の研究でも、少年院に在院しているようなお子さんたちの中で、かなり児童虐待の体験者も多かった、それから、要するに母子関係、親子関係に対する確たるつながりが確認できない、こういうケースは多かったと思うんですが、この面会とか養育について私はこのケースで強く感じたんですが、大臣の所見を伺いたいと思います。

南野国務大臣 どういう環境であれ、母子というものの両者の間の中には、もちろん夫も入れて、父親も入れてですけれども、母子ボンディングというのは、これはもう一番大切なことであるということは助産婦の立場で十分理解し、それも今、比較的早期に家庭訪問しながら子育ての意欲を持たせ、価値観を持って、そして児童虐待をなくそうということをやっておるところでございますので、先生のお心も酌み取れるかなというふうに思っております。

 未決の問題につきましては、なるべく早く皆様方の御審議をいただいて、その法案を通していただきたいというのが次の課題になってくるだろうというふうに思いますけれども、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律によりますと、受刑者につきましては、子の養育を最長一年六カ月まで許可することができるということですが、未決の被収容者につきましては、刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律、これは第十二条によりまして、刑事施設内における養育は満一歳までしか許可することができませんので、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律が施行された場合であっても、受刑者と同様の運用はできないものと認識しておるのが現状でございます。

 したがいまして、御提案いただいた件につきましては、今後の未決被収容者の処遇に関する法改正において本当に検討していただき、早く法改正をお願いしたいというふうに思っております。

保坂(展)委員 もう終わりますけれども、法改正の前に、抱き締めるとかあやすとかいう基本的な母子の関係は、これはやはり大臣の判断できちっと認めていいんじゃないか。法改正をする前にも、それはこういうものをつくっているわけですから、既決についても。大事だと思います。

 入管についても質問を予定していましたが、時間が来ましたので、終わります。どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

塩崎委員長 次に、内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及び最高裁判所裁判官退職手当特例法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。南野法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案

 最高裁判所裁判官退職手当特例法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

南野国務大臣 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及び最高裁判所裁判官退職手当特例法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を便宜一括して御説明申し上げます。

 まず、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。

 政府においては、人事院勧告の趣旨等にかんがみ、一般の政府職員の給与を改定する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案を提出しておりますが、裁判官及び検察官につきましても、一般の政府職員の給与の改定等に伴い、その給与の改定等を行うため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は、次のとおりであります。

 第一に、一般の政府職員について、平成十七年の民間の賃金水準に合わせて俸給月額を引き下げることといたしておりますので、裁判官の報酬月額及び検察官の俸給月額についても、おおむねこれに準じて引き下げることといたしております。

 第二に、一般の政府職員について、給与構造の変更に伴って平成十八年度から俸給月額を改定することといたしておりますので、裁判官の報酬月額及び検察官の俸給月額についても、おおむねこれに準じて改定することといたしております。

 第三に、号俸の整備等の観点から、判事について、報酬月額に関する特別の定めを削除して、いわゆる判事特号を廃止し、副検事について、検事八号に相当する号俸を新たに設けることといたしております。

 これらのうち、第一に御説明した内容は、一般の政府職員の場合と同様に、公布の日の属する月の翌月の初日、ただし公布の日が月の初日であるときは、その日から施行することといたしております。また、第二及び第三に御説明した内容は、平成十八年四月一日から施行することといたしており、これに伴う所要の経過措置等も定めております。

 次に、最高裁判所裁判官退職手当特例法の一部を改正する法律案について御説明いたします。

 政府においては、国家公務員制度改革における国家公務員退職手当制度の改革の必要性や国家公務員の給与構造の改革の状況等にかんがみ、国家公務員の退職手当制度を改定する必要を認め、今国会に国家公務員退職手当法の一部を改正する法律案を提出しておりますが、最高裁判所の裁判官の退職手当につきましても、国家公務員の退職手当の改定の状況等にかんがみ、その特例を改定する措置を講ずるため、この法律案を提出した次第であります。

 改正の内容は、最高裁判所の裁判官が退職した場合に支給する退職手当の額を、退職の日におけるその者の報酬月額に、その者の勤続期間一年につき百分の二百四十を乗じて得た額に引き下げるなどするものであります。

 以上が、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及び最高裁判所裁判官退職手当特例法の一部を改正する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

塩崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十一日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十三分散会


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