衆議院

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第7号 平成17年10月25日(火曜日)

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平成十七年十月二十五日(火曜日)

    午後一時四十三分開議

 出席委員

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 早川 忠孝君

   理事 平沢 勝栄君 理事 三原 朝彦君

   理事 吉野 正芳君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    秋葉 賢也君

      井上 信治君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    太田 誠一君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      谷  公一君    寺田  稔君

      松島みどり君    三ッ林隆志君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    石関 貴史君

      枝野 幸男君    小川 淳也君

      河村たかし君    津村 啓介君

      伊藤  渉君    保坂 展人君

      滝   実君    今村 雅弘君

      山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   総務副大臣        今井  宏君

   法務副大臣        富田 茂之君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小貫 芳信君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十五日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     赤池 誠章君

  松島みどり君     寺田  稔君

  玄葉光一郎君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     秋葉 賢也君

  寺田  稔君     松島みどり君

  小川 淳也君     玄葉光一郎君

    ―――――――――――――

十月二十五日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(荒井聰君紹介)(第一号)

 同(寺田学君紹介)(第三号)

 同(高木美智代君紹介)(第五号)

 同(鳩山由紀夫君紹介)(第六号)

 同(中井洽君紹介)(第九号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第一一号)

 同(岩國哲人君紹介)(第一二号)

 同(土肥隆一君紹介)(第一三号)

 同(細野豪志君紹介)(第一四号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一九号)

 同(仲野博子君紹介)(第二五号)

 同(伴野豊君紹介)(第二六号)

 成人の重国籍容認に関する請願(荒井聰君紹介)(第二号)

 同(寺田学君紹介)(第四号)

 同(高木美智代君紹介)(第七号)

 同(鳩山由紀夫君紹介)(第八号)

 同(中井洽君紹介)(第一〇号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第一五号)

 同(岩國哲人君紹介)(第一六号)

 同(土肥隆一君紹介)(第一七号)

 同(細野豪志君紹介)(第一八号)

 同(近藤昭一君紹介)(第二〇号)

 同(仲野博子君紹介)(第二七号)

 同(伴野豊君紹介)(第二八号)

 共謀罪の新設反対に関する請願(保坂展人君紹介)(第一一六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長縄田修君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長小貫芳信君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津村啓介君。

津村委員 民主党・無所属クラブの津村啓介でございます。

 共謀罪に関連する質問に先立ちまして、本日の午前中に判決がございました、いわゆるソロクト訴訟それから楽生院ですか、両療養所に関する訴訟判決につきまして、大臣の見解を伺いたいと思います。

 申すまでもなく、今回の訴訟は、いわゆるハンセン病の療養者、とりわけ戦前に日本が統治をしていた韓国、台湾の療養所に強制的に入所されました百四十二人の方を原告とする二つの訴訟ということですけれども、結果として判決は二つに、全く正反対の結果に分かれたようでございます。片や原告側勝訴、片や原告敗訴という結果になったわけです。

 実はまだ報道も速報ベースで拝見しておるだけですけれども、一部入手したものを読みますと、韓国の訴訟、つまり国が勝訴した方になりますけれども、補償対象となる施設の範囲について、法律上は、ハンセン病補償法においては「国立ハンセン病療養所等」という表記になっているわけですけれども、その範囲につきまして、韓国分の判決、いわゆるソロクト訴訟の判決においては、海外の施設を対象とするかどうか国会の質疑がないという指摘があって、その結果、これを、法律に記載がない以上、そして国会の質疑がない以上、補償の対象とする根拠はないというようなことが判決で指摘されているようでございます。

 今回の判決につきまして、法務大臣の所見を伺いたいと思います。

南野国務大臣 ソロクト更生園関係と、それから楽生院関係とでは、東京地裁の判断が分かれました。先生おっしゃるとおりでございますが、敗訴判決につきましては、国側の主張が認められずに、大変厳しい判決であったというふうに受けとめております。

 以上でございます。

津村委員 ちょっとがっかりしたんですけれども。

 二週間ほど前でしょうか、こちらで一般質疑をさせていただいた折に、間もなくソロクト訴訟の判決がありますが、これまで法務省としてもスピーディーな訴訟実務というか、訴訟の遂行に当たってこられて、異例のスピードで結審したというような報道もございました。現在、原告の皆さんが大変高齢になっているということや、あるいは日韓、台湾との戦後処理の問題ですから、余り時間をかけて進めるよりは、事実認定の部分が終わっているとすれば、あとはもう法律論的なところをできるだけ早く進めていこうという御配慮もあったのかなと推測しておるのです。

 今回原告が勝訴した判決については、そういった観点も含めて控訴を見送るべきではないかということを、先般も御指摘したんですが、当時は、まだ判決前なのでということでお返事を留保されたわけですけれども、もう判決後ですので、改めて南野法務大臣の見解を伺いたいと思います。

南野国務大臣 いろいろな御意見があることは承知いたしておりますし、また、判決が出されまして、まだ私も十分にこれを見ておりません。そういう意味から、控訴するかどうかというお尋ねについては、十分に判決を見させていただき、検討させていただきたいと思いますが、関係機関の御意見、これは厚労省になりますが、その御意見も十分にお聞きいたして意を決めたいというふうに思っております。

津村委員 ちょっと、十分お答えいただいたような気がしませんので、もう一点だけ重ねてお伺いします。

 ハンセン病の問題につきましては、この間、小泉さんが就任直後に上告を断念されたこともあって世論の関心も高まりましたし、つい先日は、天皇、皇后両陛下が長島愛生園、邑久光明園を訪問されたという報道もされております。

 そういった中で、今回の訴訟も、改めてこの問題について、法務省あるいは政府としてどういう取り組みを今後とも続けていくかということを考え直していただく大切な機会だなというふうに考えるわけですが、一方で、入所者、国内においても高齢化が進む中で、今後、例えば施設に入所されている方々の関連予算も含めて、先行きを不安視する声もたくさん私のもとにも届いております。今後のハンセン病問題に関する取り組みにつきまして、南野大臣の決意をお伺いしたいと思います。

南野国務大臣 今先生がお話しになられた小泉総理の大きな決断が過去にございました。そのときは、たまたま厚生労働省の副大臣を務めさせていただいており、坂口労働大臣といろいろとこの問題については真摯に対応させていただいたつもりでおります。そういう観点から、この課題については、私自身、真剣に取り組んでいるところでございます。

 このたびの課題につきましても、厚生労働省としっかり意見を交換しながら、それなりに考えていきたいというふうに思っております。

津村委員 それなりにという言い方はないと思うんですけれども、大臣のお考えということで拝聴いたしました。

 続きまして、共謀罪に関してお伺いをしていきたいと思います。

 細かい法律論の話あるいは立法事実等について後ほど伺っていきますが、その前に、この問題は大変大きな、日本の法体系にもさまざまな深く長い影響が残る立法の議論だと思うんですけれども、そうした中で、まず、議論の冒頭、我が国が現在国際的な組織犯罪についてどういう客観的な情勢にあるのか。この数年、どういう特徴的な動きがあると現状認識をされているのか。とりわけ足元の特徴的な動きについて、法務大臣と、そして警察庁の方もお見えでしょうか、伺いたいと思います。

南野国務大臣 今のことにお答え申し上げたいと思います。

 近年のグローバリゼーションの進展に伴いまして、犯罪行為が容易に国境を越えるようになりました。国境を越えて大規模かつ組織的に敢行される国際的組織犯罪の脅威、これは深刻化しております。我が国におきましても、いわゆる蛇頭を初めとする外国人犯罪組織やこれらの外国人犯罪組織と連携した暴力団等の犯罪組織によりまして、集団密航等の組織的な不法入国事犯、覚せい剤等薬物の組織的な密輸、密売事犯、クレジットカード偽造及び詐欺事犯、ピッキング用具を使用した住居侵入強盗、窃盗事犯、国外への不正送金を行う地下銀行等事犯は、悪質、巧妙な各種の犯罪が多発しているものと承知いたしております。

縄田政府参考人 警察の方からお答えをいたします。

 国際組織犯罪の現状でございますけれども、近年、国際化といいますかグローバル化の進展に伴いまして、国外の犯罪組織が、国内において、組織的な薬物の密輸、密売とか、あるいは強盗、窃盗事件等の違法行為に関係する事案が多々見られるところであります。また、日本国内の不法滞在者が、より効率的に利益を得ることを目的に、国籍や出身地等の別によりまして集団化いたしまして、これらのグループに入ります。これらの国外の犯罪組織と連携しまして、あるいは日本の暴力団と結びつきまして、悪質な犯罪を引き起こす事案も目立っているところでございます。

 若干、検挙事例から何例か申し上げますと、来日中国人の犯罪組織が日本の暴力団構成員等から全国の資産家に関する情報を得まして、緊縛侵入強盗を広域的に繰り返す事案とか、ロシア国内の犯罪組織から指示を受けた在日ロシア人が日本の暴力団とまさに結託いたしまして、ロシアへの密輸出を目的としたRV車の窃盗事件等を起こしたというような事案。あるいは、元暴力団構成員が中国人クレジットカードの偽造詐欺グループと結託いたしまして、全国各地で電化製品あるいは高級ブランド品を騙取していたような詐欺事案とか、都内の中国人犯罪組織の首魁が中国国内の犯罪組織と連携いたしまして、捏造した招聘証書等を使用いたしまして不法入国者を受け入れまして、就職先のあっせん等をしていた組織的な旅券偽造、不法就労あっせん事件。あるいは、ロシアの貨物船の乗組員が合成麻薬を大量に密輸入しようとした事例とか、イラン人、これは麻薬密売組織を持っておりますけれども、こういった縄張り争いによる対立抗争あるいは殺人事件等があります。

 国際組織犯罪の多発、深刻化、これが国内治安の脅威になっているものというふうに認識をいたしております。

津村委員 私は、この共謀罪の議論に入っていく前に、立法事実といいますか、共謀罪を新設する必然性ということについて詰めた議論をしていきたいんですけれども、やはりテロ対策というのは一つ明らかにあると思います。そこはある意味わかりやすいですし、そういうふうに絞って考えていけば、おのずと日本の法体系に親和的な、あるべき共謀罪の姿というのはまた議論が見えてくると思うんですけれども、そこを少しぼやかして、もう少し欲張ってといいますか、どうしてこの共謀罪というものを今日本において立法する必要があるのかという議論が多少整理されていないために、さらに立法論として話が、すそ野が広がってしまって、ためにする議論も含めてちょっと議論が混乱しているのかなという印象を持っております。

 そういった意味で、共謀罪を新設する立法事実につきまして正面からお伺いしたいのですが、多少私から勉強してきたことを申し上げますと、この間、法制審の刑事法部会においても、例えば第一回の刑事法部会、もう三年前の九月になりますが、これはどなたが発言されたかということは公表されていないようですけれども、国内的にそのニーズにこたえるという形はとっておらず、条約締結のために必要な犯罪化等を図っていきたいということを基本に考えているとか、条約加入のためにはまずもってつくるということが必要ということで、条約加入のためにということがかなり問題意識としてはあらわになって議論が当初されていた。

 ところが、少しずつ議論の幅が広がってきて、その後、三年前の十月ですけれども、第二回では、国内的にも、犯罪組織、それがさまざまな分野で違法、不当な行為を行っておる、もちろん犯罪行為を行っているという実情にある、そういったこともこの背景だという話になって、しまいにはといいますか、これも必ずしも議論はかぶらないんですけれども、ことしの七月十二日の当法務委員会において、私どもの仲間であります辻委員の質問に対しまして、当時政務官でいらっしゃった副大臣の富田さんが、条約を国内法化する以外の立法事実はあるのかという点の越境性を含んだ立法事実、そのような点もあると。御自分の言葉で答えられたのでこういう表現になっているんだと思いますけれども、六百余りの対象法令がある中で、越境性という点にやや焦点を当てた御答弁をされているわけです。

 今回、共謀罪、対象範囲が広い中で、これだけでは少し議論が尽きていないかなという気がするんですけれども、共謀罪新設の立法事実という点について、改めて整理した議論を聞かせていただければと思います。

富田副大臣 今、先生の方からかなり時系列的に整理していただいて、法制審での議論等も御紹介いただきまして、その経過等はもう先生御指摘のとおりだと思います。

 また、大臣並びに警察庁の方から御説明がありましたけれども、我が国におきましても、国際的な組織犯罪として、外国人犯罪組織や暴力団等による種々の犯罪が現に多発しているところでございます。御指摘の国際テロにつきましても、国際的なテロ組織が我が国をもテロの標的とする旨の声明を発したとの情報もあるなど、我が国の国民や国内の施設等を標的としたテロの脅威も高まっているというふうに承知しています。

 組織的な犯罪の共謀罪を新設することにより、テロリスト集団によるテロも含め、国際的な組織犯罪への対策として有用な、外国からの要請に応じた捜査共助等が可能となり、国際社会と協力して国際的な組織犯罪の防止に取り組むことが可能となります。

 また、国内におきましても、組織的なテロ事案が計画されているとの端緒を得た場合には、実際に重大なテロ行為が行われて取り返しのつかない甚大な被害が発生する前にこれを検挙し、処罰することが可能となるというふうに考えております。

津村委員 ちょっと、わかったようなわからないような、済みません、私の理解力の限界かもしれませんが、もう一回、それでは、こういう伺い方をしたいと思います。

 共謀罪が新設されたことによって、後ほど国内についても伺いますが、国際的な組織犯罪、特に国際テロ対策という観点で、どういった目に見える成果が今後期待されるんでしょうか。御紹介ください。

南野国務大臣 先ほども副大臣が述べましたように、共謀罪を新設することによりまして、国際社会と協力して、テロを含め国際的な組織犯罪の防止に取り組むことが可能となるということでございます。

 すなわち、我が国が外国からの捜査共助や、それから犯罪人の引き渡しなどの要請に応じるためには、共助や引き渡しの対象となる行為が我が国においても犯罪に該当するものであることが必要である、そういうものがなければいけないということもあります。現在は、我が国では条約が求める共謀行為が犯罪とされていないという点にありますが、外国からそのような犯罪について捜査共助なり犯罪人引き渡しの要請があっても、法律上これに応じることができないということになってまいります。

 しかし、今回、共謀罪を新設するということによりまして、外国からの要請に応じて捜査共助等を行い、国際社会と協力して、テロを含め国際的な組織犯罪の防止に取り組むことが可能になる、大変大切な法案であるというふうに思っております。

津村委員 同じ質問ですが、国内においてどのような目に見える成果が今後期待できるのか、御紹介ください。

富田副大臣 先ほど御説明しましたもののほか、我が国におきましても、例えば、暴力団による組織的な殺傷事犯、薬物取引や人身売買等の事犯、いわゆる振り込め詐欺やリフォーム詐欺といった組織的な詐欺事犯等が現に多発しておりますが、このような組織的な犯罪は計画性が高く、また組織の指揮命令等を利用して行われるため、実際に犯罪が実行されるおそれが高い。また、一たび実行されると重大な被害や莫大な不法収益を生ずることとなります。

 したがいまして、今回、組織的な犯罪の共謀罪が新設されますと、先ほど申し上げたような組織的な犯罪につきましても、これが実際に行われて重大な被害が発生する前にこれを検挙し、処罰することが可能になるなど、我が国における組織的な犯罪により一層効果的に対処することができることとなりますので、国民の生命や財産を保護し、安全と安心を確保する上でも十分に意義があるものと理解しております。

津村委員 済みません、今のお答えはかなり抽象的に聞こえるんです。というのは、組織犯罪が、振り込め詐欺も含めてこんなのが起きていますよ、それはわかります。そういったことがない方がいいのは当然のことです。

 しかし、そのことが、共謀罪が新設されるとそれが即なくなるという話にはならないわけで、そうでないと新設する意味はないわけで、共謀罪の新設によってどういう目に見える具体的な効果があるんですかと私は伺ったわけですから、もう少し具体的にお答えいただきたかったところですが、大臣、何かあればお願いします。

南野国務大臣 具体的に申し上げますと、例えば、暴力団による組織的な殺傷事犯、いわゆる振り込め詐欺のような組織的詐欺事犯、暴力団の縄張り獲得のための殺傷事犯などについて共謀罪の規定が適用されるというふうに想定されております。

津村委員 対象はわかるんですけれども、どういう行為をどういうふうにやれば共謀罪になるんですか。そういうことを今伺っているつもりです。

南野国務大臣 この法案は、組織的な犯罪に対する適切な処罰等を目的とするものである。そこで、組織的な犯罪という犯罪の性質に着目して、共謀罪の対象となる犯罪については、それが団体の活動として行われることなどが必要である、そういう要件を付しております。

 他方、団体を限定することにつきましては、組織的な犯罪集団の形態や性質、目的には多種多様なものがございます。これらを一律に基準に従ってその処罰規範を適切に画するためには、必要かつ十分な要件を定めることは容易ではない、多いということでもありますので、法案のような規定としているものであります。

 さらに、対象犯罪を限定することにつきましては、条約が、重大な犯罪、すなわち長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することができる犯罪のすべてを共謀罪の対象犯罪とすることを義務づけておりますから、条約上できないと考えられます。

 また、法案の共謀罪の対象犯罪は、いずれも組織的な犯罪集団が関与して実行されることがあり得ないというものではないので、過失犯など性質上共謀の対象となり得ないものを除き、いずれかの罪を対象犯罪から除外することは適当ではないと考えられております。

津村委員 どこで私の質問に答えていただくのかなと思いながらゆっくり伺っておったんですけれども。

 そもそも、議論の中に入る前に申し上げたいんですけれども、私がこの後伺おうとしていること、質問通告もしていますが、証拠の集め方とかあるいは新しい捜査手法というのはどういうものを想定しているかということも聞こうとしているんですね。それは一つの流れで質問していまして、まずケーススタディーをしたいということを言っているわけですよ。

 例えば、AさんとBさんがこういうことをしたら、ここの部分が共謀に当たるからそれは有罪なんだよとか、そういう一つのケースを、立法事実があるとおっしゃりながら法案提出をされているお立場ですから、一つのこういうケースなんかはもう典型的な共謀罪が成立するケースですよという具体的な事案をまず伺って、その後、では、そのケースではどうやって証拠集めをするんですか、その捜査手法はという話をきょうはさせていただくということで質問通告もさせていただいていますし、実際、今そう質問させていただいたわけです。

 具体的な事案として例えばどんな例ですかということを伺ったわけで、その前段では立法事実の議論もさせていただいているわけですから、ここでぽんと全然抽象的な話に戻られると、もう話が続かないというか、議論が成立しないわけです。

 具体的な事案としてどのようなケースを想定されているか、もう一度お尋ねします。(発言する者あり)

塩崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 富田副大臣。

富田副大臣 ちょっと、先生の質問にストレートに答えられるかどうかあれなんですが、具体的な事例を出せといっても、法律の適用というのは具体的な事案が出たときに適用するものですから、仮定の話になってしまいますけれども、先ほど大臣の方からお話ししました、例えば暴力団による組織的な殺傷事犯という事件を考えた場合に、対立する暴力団のだれかを殺そうというような合意を具体的にある暴力団の組長とその部下が行った、そういった場合には、その段階で共謀罪が成立するというふうに考えられると思いますけれども。

津村委員 まだ余り具体性がないと私は思うんですけれども、では、それに乗ってお話をしましょう。富田さんのおっしゃるような話でさせていただきましょう。

 それは、共謀があったという事実認定をどのようにするのか、どういうものがその証拠として想定され得るのか。それは関係者の自白だけなのか、それともテープなんかもあるのか。その辺の、イメージしている証拠あるいはその収集方法というものについて、これも事前通告しておりますが、お尋ねします。

南野国務大臣 法案の共謀罪の捜査につきましても、他の多くのひそかに行われる犯罪の場合と同様の方法でその捜査の手がかりを求め、必要かつ適正な捜査を尽くすことになると考えられております、今言われたような事案については。

 具体的に申しますと、実際に行われた別の犯罪の捜査の過程で共謀についての供述または犯罪計画書のような証拠となるものが得られることも予想されるわけでありますので、共謀に参加した者の自首や、それから共謀がなされたことを聞いた犯罪組織の構成員の情報提供などがきっかけとなって捜査が開始されることもあるというふうに思います。(発言する者あり)

津村委員 そうすると、これは共謀罪が新設されたことによって、新たに捜査の手法として何も特に目新しいものは考えていないということですか。

 たまたまいろいろな、今、別件捜査という声も出ましたけれども、要は、ほかの捜査の中から出てこないと、最初から共謀罪、つまり共謀という、それが今後犯罪となればですけれども、共謀という犯罪が行われていることを調べようとする努力というものは従来の手法にないというのであれば、要するに、捜査のしようがないわけですよね。別件で何かしたときにおまけに出てくることでしかないとすれば、もし共謀という犯罪があると推定して、それを捜査しようとしたら別件逮捕しなきゃいけないわけですけれども、これはどうやって捜査をするのか、御説明ください。

南野国務大臣 先生の御質問は、共謀罪を新設する、そのことに伴って新たに導入することを予定している捜査手法はあるのかというお尋ねでございますよね。それでよろしいですね。

 共謀罪の新設と新たな捜査手法の導入とは別の話であります。今回の法案におきまして、共謀罪の立証を念頭に新たな捜査手法を導入することはいたしておりません。将来、新たな捜査手法を導入するか否かについては、今後、各種の犯罪に関する捜査の実情などを踏まえながら導入の必要性などを検討すべきものであると思われております。

津村委員 共謀罪の今の質問、引き続き、少し細かくブレークダウンして伺うんですけれども、その前提として一つ伺いたいのです。

 要は、これからどのぐらいの、何となく、バーチャルとは言いませんけれども、具体的に立法事実もよく見えない、そして、捜査がこれからどういうふうに進められていくかもよく見えない。何となく観念的に、条約の必要上ということでこの話がおりてきて、実際に国内の治安対策でどういう目に見える成果があるんですかと伺ってもなかなか具体的なお答えがいただけないという中で、何が変わっていくのか、よくも悪くも、この法律を導入することによって、立法することによって変わっていくのかということをこの後伺っていくわけですけれども、その前に伺いたいんですが、過去五年間で、改正前の組織的犯罪処罰法の適用状況、今どういう犯罪分野での変化が起きているのか、具体的な数字で教えてください。

南野国務大臣 先生のお尋ねは、最近五年間の組織的犯罪処罰法の適用状況ということでございますね。

 一定の組織的犯罪に関する刑の加重処罰規定、すなわち組織的犯罪処罰法の第三条の違反につきましては、検察庁における最近五年間の通常受理人員の数は、平成十二年が二十三人、同十三年が六十九人、同十四年が四十二人、同十五年が百五十九人、同十六年が百八十五人であります。

津村委員 わかりました。

 その辺を踏まえてといいますか、それにプラスアルファ、今、こういった組織的犯罪処罰法、対象となるケースが足元、多少ふえているんでしょうか、そういう数字が出ましたけれども、共謀罪が新設された場合、法務省や検察庁でいいますとどこか、警察庁でいくとどこか、その担当部署を教えてください。

南野国務大臣 共謀罪が新設された場合には、共謀罪に関する事項につきましては法務省刑事局が担当することとなり、事柄に応じて各課が分掌することとなります。

縄田政府参考人 警察におきましては、基本的には組織犯罪対策部の方で担当すると思いますが、事案の中身、例えば殺人とかそういったものに係るものは捜査一課が中心になりますし、薬物に絡めば薬物銃器対策課等が担当する、それに国際捜査管理官等、国際捜査の担当部署と一緒になってやっていく、そういう形になろうかと思っております。

津村委員 それでは、続きまして伺いますが、今、共謀罪新設に当たってどなたの仕事がふえるのかという質問をして、それにお答えいただいたつもりなんですけれども、仕事がふえるはずですから、当然、お金もかかるでしょうし、マンパワーも必要だと思います。それはどのぐらいふえていくのか、それは実際、予算としてどうやって要求をされているのか、教えてください。

南野国務大臣 共謀罪の新設に伴って一般的に予算措置や人員配置がなされるのかどうかということだと思いますが、共謀罪に限らず、法務省といたしましては、犯罪情勢や事件数などを踏まえまして必要な予算措置や人員配置を行っているところであり、御指摘の点もそのような中で検討されるということでございます。

津村委員 検討された結果を聞いています。

南野国務大臣 今、それに特化して、この案件については幾らですよということはまだまだ決まっておりません。

津村委員 何でまだまだ決まっていないのか、全く理解に苦しむのですが、法案を提出されているわけですから、それが社会にどのような影響を与えるかということは当然想像されるべきですし、後に伺いますけれども、公布から、法案が成立してから施行されるまでわずか一カ月ほどなわけですね。そう将来の話を立法しようとしているわけではありませんから、これからどういうふうに世の中が変わっていくか、法案を提出されている責任者として誠実に答えてください。

南野国務大臣 予算、いろいろな考え方があるかと思いますけれども、共謀罪に限らず、法務省といたしましては、犯罪情勢や事件数、これもまだわからないわけでございます。それを想定するという形になりますが、それらの事件数などを踏まえて必要な予算措置、またそれにかかわる人員の配置などを行っているところでありますので、御指摘の点もそのような中で検討していくことである、これが通常の予算の考え方でございます。

津村委員 まだわからないとおっしゃいますが、先ほどなぜ私が新しい捜査手法を導入しないかという質問をしたかというのは、賢明な大臣であれば推測していただけると思いますけれども、要は、共謀罪を新設したからといって新たな捜査手法を導入するわけじゃないとおっしゃったわけですから、だとすれば、今までの、例えば殺人なりほかの犯罪での捜査は今までどおりしているわけですね。

 そういう中で、今までであれば、共謀の事実が供述や何かで得られていたとしても、共謀罪というものがなかったために、それに見合った追加的な捜査は必要がなかった、行っていなかった。しかし、今回、共謀罪という新しい犯罪は新設され、かつ新しい捜査手法は導入されないのであれば、要は、これまでの集まってきた情報をどう料理するか、どうさらに追加的な捜査を行っていくかいかないかという、ある意味では、あとは現場の判断をするだけの話ですから。

 新しい捜査手法を導入されるのであれば、これからどんなふうにそれがなるかわかりませんよということもそうかもしれません。しかし、今までの集まっている情報をどう料理するかという話で共謀罪を運用されるということを先ほどおっしゃったわけですから、であれば、先ほどの、組織犯罪がこれまで過去五年間でどれぐらいふえてきたかということや、あるいはそこで集まってきた情報をどういうふうに処理していくかという、まさしく今ある情報の処理という観点でこれは判断あるいは想像できる話で、やってみなければわからない、そういう立法のされ方とは違うわけですから、今の御答弁は、ちょっと、検討されるべきことをされていないというふうに聞こえるんですけれども、それは怠慢ではないですかね。

南野国務大臣 検討していないということではございません、法案をこのように提出させていただけるわけですから。だから、それらも踏まえて法務省の予算の中で検討していくということでございまして、今おっしゃったように、新しくここを設けてここに幾らということではなく、法務省の運用の全体の中で検討していくわけでございます。

津村委員 やはり、立法事実があるとおっしゃりながら、そしてこのことがこれからの国内の治安対策に必要であるとおっしゃりながら、どの程度の事案までカバーできるのか、どのぐらいの件数を想定するか、あるいはどこの部署の方が、今だってお忙しく仕事をされている方々が新しく仕事がふえるわけですから、そこをどう手当てするのか、あるいはスクラップ・アンド・ビルドしていくのかということが全く議論の痕跡がないということは、この共謀罪というものをよほど真剣にお考えになっていないか、それとも……(発言する者あり)今、立法事実はないというふうに本音では思っているんじゃないかという声がかかりましたけれども、私もそう思えてならないんですね。

 ここは立法府でもあると同時に、予算を、国会というのは国民の税金をどう使うかという大事な話をする場所で、そういう中で、お金のこともマンパワーのこともまじめに考えている形跡のない、あるいはそういうことをお話しいただけない法案を審議しているというのも随分人をばかにした話で、やはり国会議員あるいは大臣というのは、行政府の経営といいますか、限られた資源を活用してどういうふうに大きな成果を上げていくか、そういうコスト対効果の感覚をぜひ持っていただきたいんですが、これは、コストの話を一切されずに、幾らお金がかかる、人がどれぐらい必要だというお話を全く誠実にお答えしようとされずに、観念的に、意味のある法律だ、効果は上がるというのは、経営者として、リーダーとして非常に不誠実な姿勢だと思うんですが、どう思われますか、御自分のそういう答弁の姿勢について。

南野国務大臣 何度も申し上げておりますけれども、法務省全体としての考え方であり、今、全体の予算の中でも検討させていただいておりますが、もし、共謀罪の新設に伴って、法務省ではその広報とかそれから周知をさせるための予算措置、そういったことについても今先生のお問い合わせの中には含まれているのかな、そのように思いますが、それについても御質問の中に含まれているかいないかお聞かせいただいて、御質問に含まれているなら御答弁させていただこうと思っております。

津村委員 大臣のお人柄がしのばれるといいますか、この後、確かに私はそういう御質問をしようとしておりました。何といいますか、丁寧に議論しようとしてくださっているのはわかるんですが、そこはちょっと先取りし過ぎで、私が申し上げているのは、やはり、広報とかいうことは別途重要な議論です。もう時間も限られていますから少し先取りして申しますと、公布からわずか二十日間で施行される、その間に、これまでに私が伺っている限りでは、広報や周知のための何の予算措置もされていない。

 そうすると、さっき私が伺おうとしたのは、捜査なり、あるいは実際に共謀罪というものをどう捜査するか、どういう人たちをターゲットにして具体的に想像していて、その事案を処理するためにどれほどのマンパワーを確保しているか、そういう意味での準備状況を伺ったわけです。それはお答えをまだされていません。

 今、私がもう一つ、大臣がおっしゃったから、ではつけ加えますよと言って申し上げているのは、こういうことが今後は犯罪になりますよということはやはり周知されるべきだと思うんですね。倫理と違って、法律というものは、変わった以上、そこは知らないと困るわけですから、何がこの国では犯罪になって何が犯罪にならないのかということを伝える努力は当然なされるべきだと思うんですが、私が伺っている限りでは、公布からわずか二十日間で施行されるにもかかわらず、その周知、広報のための予算はゼロ円であるというふうに伺っておりますが、もしその認識が正しくなければ、ぜひ御紹介ください。

南野国務大臣 現時点ではまだ共謀罪が設けられておりませんので、その事件数等をあらかじめ予測することは困難であるということは申し上げたいと思います。今後、共謀罪が新設されれば、その運用状況を踏まえつつ、必要があれば予算、人員等の措置を講ずることと考えていこうとしております。

 それから、先ほど私の方から先生にお問い合わせをした広報のための経費等々につきまして、本法案を提出するたびごとに、法務省のホームページにQアンドAを掲載するなど、共謀罪を含む本法案の内容が理解されるよう努力してきたところであり、今年度の予算、一般広報印刷製本費として五百七十五万五千円、これは「あかれんが」とかというのがあるのを御存じですよね、そういう広報誌または一般的な広報ということにもこれを使わせていただいており、法務省のホームページ経費といたしましても千四百十五万五千円、これらが予算措置されております。

津村委員 全く、本当に、共謀罪というものに対する本気度といいますか、この法案というものをどういうふうに法務省さんが考えているかということが、私は、捜査の面からもそして広報の面からも、いかにずさんといいますか、これは大事なものだからきちんとやろう、そういう姿勢が法務省として、例えば予算の話にしても人の話にしても、あるいはこの施行までの期間のとり方にしても、どうして二十日なのか。きょうはもう時間がありませんからまた今後の機会に譲りますが、こういった、しっかり国民の皆さんにこういうことを、これから犯罪として対象になりますよ、ついては日本をもっと治安のよい国にしていこう、これが法務省としての姿勢ですよ、そういうメッセージが全く伝わらないというのは、本当に行政の怠慢でもありますし、国民に対して不誠実だとも思うわけです。

 そのことを申し上げて、この件についてはちょっと一たん、恐らくまた機会があるでしょうから御質問させていただきますが、もう一点、少し趣を変えまして、最後に一つのことについて伺っていきます。PFI方式の刑務所の運営について、その検証と監視をどう行っていくかという件でございます。

 現在、このPFI刑務所については、その運営形態がおのずから一般の刑務所とは異なるわけですし、現在、行刑施設について検証や監視ということに法務省としても取り組んでおられる中で、今回新しく、来年の四月でしょうか、山口県の美祢というところでPFI方式の刑務所ができるということで、地元からは、PFI方式の刑務所第一号だということで、さまざまな提言やあるいは不安の声も聞かれているということでございます。その中の一つが、外部の第三者によって構成された委員会によってその運営について監視なり検証を行っていくべきではないかという、これは中国地方の弁護士の皆さんが提言をされているようですけれども、そういった御意見もございます。

 本当は三つに分けて御質問する予定でしたけれども、一つにまとめて御質問しますが、こうしたPFI刑務所を新しく設置していくに当たりまして、こうした地元の声や提言も含めて、法務大臣として所見を伺いたいと思います。

南野国務大臣 先生関心を持っていただくPFI、これは第一号が美祢でございますので、そこをしっかりといい形に展開していくように我々努力しているところでございます。

 PFIの刑務所は、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律第二条に規定する刑事施設でございますので、同法第七条に規定する刑事施設の視察委員会が置かれることになります。加えまして、PFI刑務所におきましては、事業契約に基づきまして、事業者みずからによる日常的な監視及び国による定期、随時の監視が行われるほか、事業者に資金を融資する金融機関による業務実施状況等の監視も行われることになります。

 このように、PFI刑務所においては、官民協働により運営が行われるという特性を踏まえまして、他の刑務所に比べて同等以上に運営の透明性を確保する体制が整えられておりますので、これによりまして円滑かつ適正な施設運営が図られるものと考えております。

 そして、現在進めている刑務所のPFI事業につきましては、地域との共生、先生もお話しになられました、そういうものを大切な柱として掲げております。事業の趣旨や官民協働による運営につきまして、地方公共団体、司法その他の関係機関及び近隣住民の方々の十分な御理解を得ることが重要であると考えております。

 これまでも、第一号の予定地である山口県美祢市などにおいて、地元住民の方々へはもとより、市議会、弁護士会を含む司法関係機関や関係団体に対する説明会を累次にわたり開催いたしております。御意見などについても伺っているところでございますが、今後とも引き続き必要な説明を行ってまいりたいと思っております。

 そこには男女と入られるわけでございます。女性についても、健診その他、身体的な問題点も十分と管理していこうということでございますので、山大の病院とも、または美祢市の病院とも連携をとりながら、今話し合いを詰めているところでございます。

津村委員 質問時間が終了しましたので、これで終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也でございます。質問の機会をお与えいただきました先輩諸氏に感謝を申し上げたいと思います。

 四国比例区から参っております。また、私自身、今回初当選させていただきました新人議員でございまして、その意味で、ややうぶな質問もあろうかと思います。ぜひおつき合いをいただきたいと思いますし、また、自治官僚として約九年余りの務めを果たしてまいりました。そのこととの関連も含め、今回の組織犯罪処罰法の改正案、特に共謀罪の新設についてお尋ねをさせていただきたいと思っております。

 もとより、この委員会には法律の専門家の方々がたくさんお詰めでございます。そして、その点からの質疑はたくさんなされたはずでございまして、お聞きをした上でなお納得のいかないところを重ねてお聞きすることに加えて、申し上げましたとおり私自身が自治官僚出身でありまして、なぜここまでこの法案をめぐって混乱し、審議が滞り、大臣も大変御苦心を抱えておられることと思いますが、こんな事態に至っているのか、その原点に立ち返り、できれば必要な修正等の機運をおつくりいただきたい、そんな思いで質問に立たせていただきたいと思っております。

 まず、私は今は野党に所属をいたしております。今はです。そして、予算審議あるいは税金の使われ方をめぐって、よく与党さんと対立するわけであります。あるいは経済政策、さまざまな政策について一般的には対峙をして、対立して議論を闘わせるわけでありますが、時に、外交とか安全保障、これは相手のある話でもありますし、国家統治の基本でもございます。こういったものについては、与野党に余り差がない方がいいんじゃないかという議論があることも事実でありまして、私もそう思っています。

 しかし、この犯罪の創設、共謀罪の創設、国民の言動、行動、自由の範囲をどこで画すのかという極めて根本的な課題について、与野党に対峙して議論するようなことではなく、むしろ国会で政府ときちんと対峙して議論を進めるべき、私はそう認識をいたしております。それほど重要で本質的な議論だと思っております。

 その意味で、この質疑の準備に当たりまして、前国会、そして今国会の、私ども野党の質疑はもちろんのことでありますが、与党の質疑の中に、大変敬服に値する議論が重ねて行われてきておりますこと、特に、前国会におきます田村委員、早川委員、そして公明党の漆原委員、また今国会でも、柴山委員、稲田委員、そして同じく早川委員、同じく公明党の漆原委員。平沢先生については後ほど申し上げたいことがございます。これら与党の先生方から大変的確な御指摘を受けている大臣初め法務当局には、まずこの声、国民の代理人の声として真摯に受けとめていただきたい。そして、私も一人の国会議員として、与野党に限らず、これらの声を代弁する者として質疑を行わせていただきたいと思っております。

 ただ、これからお尋ね申し上げますが、大臣、内閣提出法案がことごとく国会でスムーズに成立してきた、私はこのことこそがむしろ異常だと思っています。内閣から出てきた法案を国会の場で審議をして、修正を加える、あるいは時に廃案になる、これこそむしろ日本の国会で当たり前のことにしなければなりません。その意味で、大臣を、ある種の責任はもちろん感じていただかなければなりませんが、必要以上に攻撃するつもりは全くございませんので、その前提も置いていただきたいと思います。

 それでは、質疑に入らせていただきますが、まず、総論でございます。

 この法律案、十五年の通常国会に提出されたとお聞きをしております。その間、一度の修正もなく五度の国会をやり過ごし、一度廃案になっている、これは間違いないかと思いますが、それが事実として間違いないこと、それから、そのことに対して大臣はどう感じておられるか、御所感をお聞きしたいと思います。

南野国務大臣 まずは、当選おめでとうございます。先生のようなフレッシュな風が入ってくるということがディスカッション、審議をすばらしいものにしていくものだというふうに思っております。

 このような重要な法案ということについては、与党、野党の利害関係があってはならないというふうに思います。これは国を守る問題であり、国民を守る課題でございます。今どのような形で国がこういった犯罪、共謀罪に直面しているかということを真摯に考えて、きょう審議することが一番大切であろうかというふうに思っております。

 それから、今まで幾つか、二回ぐらいですか、廃案になったということでございますが、それは先生方のこの場における審議が一番真理であろうと思っておりますので、そういう意味では、大いなるディスカッションをしていただければいい。我々は、これはすばらしいと思って皆様方に法案を提出させていただいてはおりますけれども、その審議を積み重ねることによっていいものになっていくことが、これが大きな目的であろうというふうに思って、国民に利する法律をつくりたい、そのように思っております。

小川(淳)委員 国会の審議を大変尊重した御発言、そのとおりだと思います。しかし、であるならば、前回廃案になった時点で、早川委員が与党質疑の中で御指摘なさったと思いますが、必要な修正、前国会で議論になったことを修正した上で出していただきたかったということをおっしゃったはずでございます。

 それから、もちろん、審議になかなか入ってくれなかった、あるいは、審議をしようと思ったら、非常にきかん気の強い総理大臣がおられて、気がつけば別件で解散になっていた。いろいろ不幸な経過があったことはそのとおりだと思いますが、今のような御発言であれば、やはり法案の中身に、当局として、法務省として、大臣として、内閣として、問題がおありだと思いますか、それとも国会の審議の方がおかしいと思われますか。お答えください。

南野国務大臣 私は、今総理大臣のことを暗におっしゃったかと思いますが、そういうことについても問題視いたしておりません。適切な総理大臣であると思っておりますし、また、この審議が廃案になったということについても、これもそのとおり事実を認めざるを得ないということでございます。

 そういう意味で、既に国会承認をいただいております国際組織犯罪防止条約、これは国際社会と協力して一層効果的に国際的な組織犯罪を防止することなどを目的とするものでありますので、国際社会の一員として、我が国としても早期に締結する必要があります。また、我が国における組織犯罪対策にも資するものでありますから、早急に条約の内容に従った法整備を行う必要があると思っております。

 法案の共謀罪につきましてさまざまな御意見や御批判があることは、いろいろな声を承っておりますけれども、法務省といたしましては、法案の共謀罪はこの条約の内容に従ったものであり、また、厳格な組織性の要件をつけることにより、組織的な犯罪集団が関与する犯罪の共謀に限って成立するものとしていることなどから、前回と同じ内容のものを提出するということにいたしました。その同じ内容を提出したことによって、皆様方に審議をしていただく、議員の皆様方の審議でそれをいい形にしていただけることが一つの方法であろう、目的であろうというふうにも思っております。

小川(淳)委員 そのとおりですね。ですから、国会の審議の状況、議論の中身を見て、法案を少しでもよいものにしたい、これは国会も内閣も同じ思いだと思います。

 その前提で、時代的な背景認識を少しお尋ねしたいと思っております。

 やはり、世界を決定的に変えた事件は、二〇〇一年の九・一一、アメリカでの同時多発テロ事件だったと思います。私も翌朝朝刊を開いて、その夜はニュースも見ずに床に入っておりました、朝新聞を見て、何が起きたのか理解ができませんでした。大変な事件でした。そして、その何年か前、平成七年、地下鉄でサリンがまかれたという事件がありました。私はあれも、当時沖縄県庁に勤めておりましたが、理解できませんでした。何が起こったのか、この日本で、世界で。

 それくらい、組織的な犯罪、また日常生活を脅かすような実体の見えにくい存在、これは確かに、この二十一世紀の新しい課題であり、国際社会が一生懸命に立ち向かっていかなければならない課題だと思います。

 大臣、このサリン事件、そしてアメリカの同時多発テロ事件、世界は不安な方向へ、日本は不安な方向へ向かっているというふうに思われますか。これは本当に素朴な情感、感情、直観で結構です。お答えをいただきたいと思います。

南野国務大臣 今のところ、いろいろな犯罪が国を越えております。国際的にも広がっております。そういう越境性の問題は、我々無視することはできないのではないだろうか。情報機関にしても、これは高度化いたしておりますし、煩雑化いたしております。そういう中では、そういうことに向かうという決定ということではなく、そのこともあり得るかもわからないということで、やはり準備していかなければならない。病気でいうならば、予防対策をしていかなければならない、そういうふうに思っております。

小川(淳)委員 看護界御出身の大臣ならではの御答弁、ありがとうございます。

 確かに、一人の人間として、世界が、あるいは日本が何か不安な方へ向かっていると感じられるのは、当然のことながら、真っ当だと思います。そして、そのことに対して、法務大臣として、大変重責を背負われる立場として、具体的な手を打っていかなければならない、そのこともそのとおりだと思います。

 しかし一方で、私は、ことしの春ですか、アメリカを訪問する機会がございました。入国管理のときにびっくりしました。何年かぶりで海外に出て、アメリカへは実は初めて渡ったんですが、入国管理のときに指紋をとられたんですね。そして、顔写真を写されました。ここまででもう長蛇の列なんですね、アメリカに入国しようとすると、大臣御存じだと思いますが。それは外での経験です。

 それから、日本の国内、私は愛知県の春日井市に直近、勤務をしておりました。そこで企画部に籍を置きまして、市政全般を拝見しておったわけでありますが、当時、春日井市内の警察署長さんから、春日井市の一番繁華街、大通りに防犯ブザーを設置したいというお話をいただいたんです。それはいいじゃないですかと警察署長さんに申し上げました。

 ところが、これは私の方が十分お聞きをする機会がなければならなかったんだと思いますが、設置をして除幕式に至ろうとするときに、その防犯ブザーには、防犯ブザーだけではなく監視カメラがついていたということを私はうかがい知ったわけです。急いで当時のお仕えしていた市長に報告を入れて、本当にいいんですかと。最も大きな繁華街で、人の出入りが多いところに監視カメラを設置するということに対して、私は大きな懸念を抱いたわけでありますが、当時の市長は、それも踏まえた上で、よしというふうに最終的には判断をされて、警察当局との話はついた、設置をされたわけであります。

 ほかにも、ロンドンの爆破テロ事件の犯人を挙げるのもカメラが役立ったと言われていますし、日本でも、歌舞伎町ですか、監視カメラがついた。あるいはエレベーターの中、いろいろなところに監視カメラがついている。

 世上、先ほど申し上げたように不安が高まって、漠然とした恐怖、おびえを感じながら生きる一方で、監視カメラの存在ですとかさまざまな統制、監視社会がやってこようとしている、これに対する危機感もあわせて増幅されている、これが今の世相ではないかと思いますが、大臣、その点いかがですか。

南野国務大臣 いろいろな国が自国に対しての予防策を考えていこうとしていることだと思っております。そういう意味では、その国の習慣またはいろいろなその国がなされていくであろう価値観とも考えて一つの予防策をしていくであろうと思っております。さらに、それだけでは済まない、そのそれぞれの国の状況と連動しながら、万一大変な事態に直面する可能性がある場合はそれを未然に防いでいかなければならない、そういうような思いがあります。それが共謀罪の一つであろうというふうに思っております。

小川(淳)委員 今申し上げたこと、恐らく大臣も同じような認識を持っておられると思いますが、まさにそういう時代背景の中で、平成十二年に今回改正の対象になっております組織犯罪処罰法ができたわけですね。そして同時に、通信傍受法が施行になっているわけですね。さらには、最近の流れを見ますと、有事法制、そして住基ネット、それから個人情報保護法。

 一方では、治安維持をしなければならない、あるいは社会を適正に管理、統制しなければならないという要請と、その一方で、人権侵害あるいは自由の侵害、自由な空気の侵害、この不安に脅かされなければならない。

 私は、これは両方、もちろんこの時代背景の中でやむを得ないことだと思っています。当然のことだと思いますが、大臣にぜひ心してかかっていただきたいのは、社会の治安を守っていく、あるいは適正に管理された、統制された社会を維持していく、秩序を守っていくお仕事、これは法務大臣のお務めであります。一方で、個人に天然のものとして保障しなければならない自由、人権、これがきちんと守られた社会にすること、守っていくこと、これも法務大臣のお務めであります。

 時に背反をし、この難しい時代だからこそ難しいバランスをとらなければならない大臣のお務め、これは大変なお務めだと思います。治安を維持すること、人権を守ること、両方とも大臣のお務めであり、まさにその難しいバランスをとることこそが大臣のお務めであると私は思っておりますが、その点、大臣、いかがですか。

南野国務大臣 先生おっしゃられたとおりでございまして、そのバランスは法務大臣一個人に当てられるものではなく、それも含めて、みんなで、国民で共同してつくっていく方がいいことであると思います。

 今、中学校の教育の中では法教育というものを導入し始めております。大人がなかなか法律を守れない、ルールを守れないという中で、小さいころから子供たちがそれを検討していくということになっていけば、もっとルールを守り、お互いを尊重し合う生活ができるんじゃないかなという基本的な問題点はあります。

 だから、今先生御指摘のとおりの法務大臣の役割というのもその中にございます。基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護等を図ることを任務とする法務省の事務を統括する立場でありますから、常日ごろからこれらに配慮し、いずれかに偏ることなく、犯罪の処罰や治安の維持、法秩序の維持、国民の権利、自由の擁護とのバランスを保ちながら、その職務に当たるべきものと考えております。

 バランスは人にも大切でございます。国の秩序にも大切でございます。バランスのとれた人が国の秩序をつくっていけるともっともっといいものになるというふうに思っております。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

小川(淳)委員 大臣、おっしゃるとおりですね。

 ただ、みんなで考えて、みんなでよくしていこう、これはそのとおりでありますが、お尋ねしたいのは、日本国において統治を任された内閣、そしてそこに所属された閣僚として、日本国の治安維持と人権擁護、この二つを所管しておられるのは、南野大臣、日本であなたしかいないこと、あなた一人しかいないこと、このことに関しては、厳重な責任意識といいますか、プロ意識といいますか、それをぜひお持ちいただいた上で共謀罪の議論に入りたい、そう思っております。

 共謀罪の具体的な個別論点については既に出尽くした感もあろうかと思いますので、重ねて、どうしても納得いきづらい部分をお尋ねし、議論してまいりたいと思っております。

 まず一点目、この共謀罪の新設は、まさに大臣おっしゃったように、条約を批准し、その条約を国内法制化するというのが大変大きな要請である。そして、その条約は、そもそも国際犯罪を取り締まる、予防していく、抑止していく、そういう観点から議論を進められたはずの条約であること。であるならば、この組織犯罪処罰法の改正に当たっても、刑罰法制を謙抑的なものにする観点から、犯罪組織あるいは犯罪の中身に対する国際性、越境性、これを日本国として求めるべきではなかったかと思いますが、大臣、いかがですか。

南野国務大臣 先生が今申し上げたこれらの要件に関してでございますけれども、国際組織犯罪防止条約三十四条二項には、国内法で共謀罪を新設するに当たっては、国際的な性質とは関係なく定めると明確に規定しております。

 そこで、法案におきましては、このような条約上の義務に従いまして、共謀罪の対象となる犯罪について国際性を要件とはしないこととしたものであります。

小川(淳)委員 確かに、条約でそういう定めがあるわけですね。

 そして、大臣、ここは誤解をいただきたくないんですが、ここは日本国の国会でありまして、法律で決まったことを受けて、法律の範囲内でしか定めを置けない条例を議論している地方議会ではないわけです。そうすると、条約にそういう定めがあることを前提に条約を署名した、つまり、その条約の中身を是と判断した日本国政府の価値判断を問うているわけです。

 日本国政府として、国際性、越境性を要件としない共謀罪を全世界につくろうじゃないかといった条約に賛同した理由をお伺いしています。大臣、いかがですか。

南野国務大臣 現実の社会におきましては、ある犯罪について、その背後に国際的な犯罪組織が存在するなど国際的な犯罪組織が関与しているものの、個別具体的な犯罪行為だけを見てみますと、犯罪行為自体は一国内にとどまるため、性質上の国際性を認めがたいような場合があります。それは先生御存じだと思います。また、特に捜査の初期の段階におきましては、捜査の対象となっている犯罪行為が国際的な性質を有するか、あるいは国際的な犯罪集団が関与しているかが明らかではなく、さらに捜査を進めてもその立証が容易でない場合も少なくありません。

 このような現実を踏まえますと、仮に国内法において国際性を要件とすると、対象となる犯罪事象は組織的犯罪の実態に照らして不相当に狭くなる上、さらに、早期かつ的確な検挙、処罰が困難となってまいります。それも先生御理解いただけているというふうに思います。

 さらに、実際上の問題といたしましても、仮に国際性を要件とした場合には、例えば、我が国の暴力団が外国の対立するマフィアの構成員を実行部隊を使用して殺害するという共謀をした場合は国際性が認められ、これを検挙して処罰することができるのに対し、同様に、我が国の暴力団が国内の対立する暴力団の構成員を実行部隊を使用して殺害するという共謀をした場合には国際性が認められず、これを検挙して処罰することができないこととなってしまいますが、組織犯罪を防止し、これと戦うという条約の趣旨から、そのような結果となることは不合理であると思いますので、先生のお考えいただいている国際性と国内性というものの、そこら辺をよろしく御検討いただきたいと思います。

小川(淳)委員 大臣、やはりそうだと思いますね。条約に書いてあるからではなくて、国際性を外した、そのことに対して日本国として積極的に評価をしたというふうな答弁でなければ、これは条約と法律との関係を論じるに当たっては大きく筋を履き違えた議論になるということですね。その点、まずここで確認をさせていただきたいと思います。

 では次に、犯罪類型を個別に限定しない理由についてはどうお考えですか。

南野国務大臣 このことに関しましては、この法律の共謀罪、これは国際組織犯罪防止条約の締結に伴う法整備として設けるものでございます。それが一番大切なポイントであるかとも思います。

 この条約は、その審議の過程で、対象となる犯罪をリスト化することの適否の議論を経て、最終的に、各国の国内法において定められている刑期の重さを基準といたしまして、「長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪」、これは各国共通したものになってくると思います。これを重大な犯罪としまして共謀罪の対象犯罪とすることが義務づけられました。そこで、法案におきましては、このような条約上の義務に従いまして、重大な犯罪、そのすべてを共謀罪の対象としたわけであります。

 また、法務省といたしましても、組織的な犯罪集団は、みずからの組織の維持拡大のため、種々の利益を求め、手段、方法を選ぶことなくあらゆる犯罪活動を行うという特性を有することから、組織的な犯罪集団が将来実行し得る犯罪を漏れなく選別することは現実的に困難であると考えております。

 また、法定刑は、それぞれの犯罪類型ごとに、その違法性の高さや責任の重さに応じて定められるものでありますことから、犯罪の軽重をはかる尺度として一定の合理性を有することを考慮すると、これを基準として一定の重さ以上の刑期が定められている罪を共謀罪の対象とすることには合理性があるものと考えております。

小川(淳)委員 犯罪組織がいかなる犯罪をもって脅威をもたらすか、それをあらかじめ類型化して個別にリストアップすることは実務的に困難だということですね。そういう議論があったわけです。

 では、お尋ねをいたします。同じく日本国内には、改正前の組織犯罪処罰法があるわけですね。そして、この組織犯罪処罰法の目的も、組織的な犯罪が平穏で健全な社会生活を阻害している、これに対して立ち向かう必要があるんだということを動機にして制定された法律であります。では、なぜこの法律の中では、個別に犯罪類型、この組織犯罪処罰法の処罰対象犯罪を殺人、逮捕監禁、強要、誘拐、信用毀損、業務妨害、詐欺、恐喝等々の十一の凶悪犯罪に限定することが実務的にできたのか、お答えください、大臣。

大林政府参考人 お答えいたします。

 犯罪の分類という点で、犯罪処罰法の方は暴力団的なイメージが非常に強いものですから、要するに、そういう組織犯罪集団がどのような犯罪を行いやすいか、それから、あれは犯罪収益を剥奪するという目的を持っていますから、どのようなものが犯罪収益を生み出しやすいか、それから、凶悪犯罪、今おっしゃられたような、基本的には五年以上の懲役を持つ犯罪で、かつ、犯罪収益を生み出しやすい、例えば賭博なんかも入っていますけれども、そういうものを対象にして、あの法律は、一方ではそういう集団にかかわる者が犯罪を犯した場合に要件を加重する、それからもう一つはそういう犯罪によって生み出された収益を剥奪する、そういう目的から、とりあえず必要と思われる犯罪をピックアップしたものです。ですから、今回のように網羅的な形ではなくて、そういう観点から選ばれたものだ、こういうふうに承知しております。

小川(淳)委員 とりあえず網羅をされたとお答えになられたわけですが、そこにはやはり重科の対象犯罪を限定しなければならない、抑制的に、謙抑的に組み立てなければならないという刑事法制の要請を受けたお考えがあったはずなんですね。そして、犯罪組織が国内において暴れ回ることはこの分野だろうという推測をされた、推論を組み立てられた。そして、今回の条約に基づくこの組織犯罪処罰法の改正は、そういった分野で暴れ回るであろう犯罪組織が国境を越えて暴れ回るだろうというおそれに対して設けられようとしているわけですね。

 私は、犯罪法制の本質論として、国際性だろうと、あるいは国内においてだろうと、本質論としては同じだと考えています。しかも、謙抑的に本来刑罰体系を組み立てなければならない刑事法制の当然の要請からすれば、現在の組織犯罪処罰法が個別限定で最もそのおそれの高いものをリストアップしているのと同じ趣旨で、この刑罰法規、共謀罪についてもリストアップすることが本来求められた要請ではなかったのかと思っています。

 条約上これは制限がある、あるいは条約にそう書いてある、そういった答弁では、なかなかさっきの議論では通らないわけでありまして、やはりその条約を認知した、署名をした日本国政府としての価値判断を積極的、肯定的に説明していただかないと国会、国民は納得しないわけであります。

 そこで、自由刑の長期の定め、四年以上をもって重大な犯罪とするということを条約には書いているわけでありまして、まさにそれを国内法化しようとしているわけですが、自由刑の長期の定めが四年をもって重大な犯罪だと認識をされた、その根拠について、大臣、お答えください。

南野国務大臣 先ほども申し上げたとおりでございますが、法定刑はそれぞれの犯罪類型ごとにその違法性の高さや責任の重さに応じて定められるものであるということから、犯罪の軽重をはかる尺度として一定の合理性を有することを考慮すると、これを基準として、一定の重さ以上の刑期が定められている罪を共謀罪の対象とすることには合理性があるものと考えております。

 そして、我が国におきましては、重大な犯罪の一般的な基準を定めるものはありませんけれども、例えば弁護人がなければ開廷することができない必要的弁護事件は長期三年を超える懲役もしくは禁錮に当たる事件とされ、また、急速を要し、逮捕状なしに逮捕することが認められる緊急逮捕は長期三年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪とされておりますことから、条約において重大な犯罪の基準として長期四年以上の自由刑とされたことは、我が国の国内法に照らしても合理的なものであるというふうに思っております。

 主要先進諸国におきましては、長期四年以上の自由刑が定められている罪にはどのような犯罪が含まれており、その数が幾つあるかについては一般的に調査したことはございませんけれども、条約が犯罪とすることを義務づけている共謀罪あるいは参加罪については、各国においてどのような立法がされ、どのような犯罪が対象とされるかについて調査をしているという段階でございます。

小川(淳)委員 委員長、恐れ入ります、先輩議員の御助言もございまして、定足数の確認をお願いします。

吉野委員長代理 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

吉野委員長代理 速記を起こしてください。

 小川淳也君。

小川(淳)委員 委員長、御協力ありがとうございます。

 質問を続けます。

 大臣の御答弁で、自由刑の長期四年以上の定めに合理性があるという御答弁がございました。そこはまさに議論のあるところでありまして、国内処罰法体系においてとってきた原則と、そして今回、条約に書いてあるとはいえ、それを受け入れようとする原則との間に余りに開きがあること、この点がまさに議論になっていることを指摘させていただきます。

 そして、おっしゃるように、国際性、越境性あるいは犯罪類型の個別限定、これは条約の条文上できないことになっているわけであります。では、一点お聞きします。

 この四年以上が合理的だと判断された根拠として、この条約自体、G8での議論が原動力になって進んできたというお話をお聞きしておりますが、それでは、主要先進国において、この長期四年以上の刑期の定めがある犯罪の一覧、せめてそれについては比較研究をされた上で合理性があると判断されたのかどうか。これは、もし私が法務大臣なら最も気になる点であります。大きく刑事法制の原則を転換しようとするときに、議論の原動力になった主要先進国でこの長期四年以上の刑期の定めとは一体どんな犯罪を網羅しているのか、その並び、バランスは果たしてとれているんだろうか。私が法務大臣なら、私が法務省の担当官なら、そこが最も気になった点であります。この点の研究成果について、大臣、お聞かせください。

南野国務大臣 主要先進諸国におきましては、長期四年以上の自由刑が定められている罪にはどのような犯罪が含まれており、その数が幾つあるかについては一般的に調査したことはございませんが、条約が犯罪とすることを義務づけている共謀罪あるいは参加罪については、各国においてどのような立法がなされ、どのような犯罪が対象とされるかについては調査をいたしております。

 例えば、アメリカ合衆国やイギリス、カナダにおいては、いわゆる共謀を犯罪としておりますけれども、特に対象犯罪を限定することなく、一般に犯罪を犯すことを合意することを処罰することとしているものと承知いたしております。

 また、ドイツにおいては、犯罪団体の結成の罪といたしまして、犯罪行為の遂行に向けた団体を設立する行為や、このような団体に構成員として関与するなどの行為を処罰しているものと承知いたしております。

小川(淳)委員 大臣、合理性があると判断された、私はその過程においては当然こうした比較研究があってしかるべきだったという気がいたしておりますので、その点、厳しく指摘をさせていただきたいと思います。

 その上で、この犯罪類型の個別限定、そして国際性については条約上これを盛り込むことができないわけでありますが、もう一つの主要な論点でありますいわゆる共謀内容を推進するための外形的あるいは客観的な行為、オーバートアクトと呼ばれているそうですが、これについては国内法上の必要があるときは導入していいんだという条約上の許容があるそうでありますね。これは、なぜ今回の改正案において取り入れなかったのか。大臣、その理由をお聞かせください。

南野国務大臣 国際組織犯罪防止条約第五条は、国内法で共謀罪を新設するに当たり、合意の内容を推進するための行為を伴うものという条件をつけることを認めております。このような条件をつけるべきか否かにつきましては法制審議会でも議論をされましたが、共謀罪については厳格な組織性の要件がつけられており、処罰範囲が不当に広がるおそれはないことなどに照らし、その必要はないとされた経緯がございます。

 このようなことから、法案におきましては、条約の言う合意の内容を推進するための行為を伴うという条件はつけておりません。

 以上でございます。

小川(淳)委員 ただいまの大臣のお答えなんですが、実はこの法律の団体要件とは、御存じのとおり、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体」としかないわけであります。確かに、この犯罪の適用事例が暴力団あるいは詐欺団に対して適用されていることはそのとおりだと思います。しかし、法律上、団体とはあくまで制限がつけられているわけではありません。この点、それをもって、このより緩やかな、オーバートアクトを導入しなくていいんだという議論に直接結びつけることには大変無理があるという点を指摘させていただきたいと思います。

 そこで、まさに法制審議会でこの点を議論されたというお答えがございました。法制審議会、私も詳しくございませんが、どんな議論がいつ行われたのか、その概要だけで結構です、あるいは諮問内容と答申内容とを簡潔にお答えいただきたいと思います。法制審議会とはいかなる組織であり、この共謀罪の審議に関して、いつごろ、どんな内容の議論をし、どんな答申をいただいたのか、概要だけで結構です、簡潔にお答えください。

    〔吉野委員長代理退席、早川委員長代理着席〕

南野国務大臣 先生お問い合わせの審議の概要についてでございますが、共謀罪の新設などを内容とする国際組織犯罪防止条約の締結に伴う罰則等の整備に関しては、平成十四年九月三日、当時の法務大臣が法制審議会に諮問を発出いたしました。これを受けた法制審議会は、刑事法部会の設置を決定し、以後、この部会において、平成十四年十二月十八日までの間、合計五回にわたり、諮問に付された要綱に沿って審議が進められ、さまざまな論点について慎重な議論が重ねられました。そして最終的には、この部会におきまして、賛成多数により、組織的な犯罪の共謀の罪を設けることなど、この条約の締結に伴う罰則等を整備することが相当である旨の決定がなされ、これを受けまして、平成十五年二月五日、法制審議会が法務大臣に対してその旨の答申を行いましたということでございます。

小川(淳)委員 大臣のお答えによりますと、十四年の九月から十二月にかけて、三カ月間で五回の審議を行ったということでございます。これも価値判断の問題だと思いますが、これだけ大切な中身の審議でございますから、三カ月で五回というのは、審議としては十分に足るだけ深まったのか、あるいは議論が高まったのか、その内容に大変疑義を持たざるを得ないことを指摘だけさせていただきます。

 ところで、よく法制審議会で議論をした、あるいは答申をいただいた、それをもって法制化した、これは法務省に限らずどこでも言うことであります。議論あるいは結論の正当性を多分補っておられる、補おうという趣旨だと思いますが、この法制審議会、大臣から独立された機関ですか。お答えください。

南野国務大臣 先ほども申し上げましたが、大臣の諮問機関でございます。

小川(淳)委員 大臣、では、法制審議会の委員の任命権はどなたにございますか。

南野国務大臣 諮問をお願いしている立場でございますので、大臣でございます。

小川(淳)委員 大臣が委員を任命された諮問機関であるということでございますが、現在、この共謀罪におきまして、さまざまな議論が国会の内外で起きているわけであります。そして、その議論の主要な世論形成をしている、あるいはしようとしている団体の中に日本弁護士会という存在があろうかと思います。

 大臣、この日本弁護士会、反対を表明していることは御存じだと思いますが、この弁護士会の意見について、これは通告外になりますので所感で結構です、詳しいことはもちろん御存じだと思いますが、弁護士会の意見あるいはその存在感についてお答えをいただきたいと思います。どんな感想をお持ちですか。

南野国務大臣 弁護士会は本当に専門的な方々のお集まりであり、いろいろと審議しておられることは傾聴に値するものだというふうに思っておりますが、すべての会員が反対しているというふうには思えないのではないかなという所感も持っております。

小川(淳)委員 おっしゃるとおりですね。

 そして、大臣、この委員会で平沢委員が質問された中に、弁護士会がいつも正しいわけじゃない。それはそのとおりです。そんなのは当たり前のことです。しかし、法曹界に、どちらかというと国家権力に対峙する側に回られて人権擁護に当たっておられる、被告の弁護に当たっておられるこの弁護士さんの意見というのは、先ほど申し上げた、治安の維持、社会秩序を守らなければならない大臣、一方で人権を擁護しなければならない大臣、その大臣にとっては、十分耳を傾け、その声を、その心に意識を傾けるべきだと私は思います。

 そこで、お尋ねをいたします。

 私は、先ほど申し上げた与党委員の敬服すべき質疑、これはすべて弁護士さんの御出身の方ばかりであります。そして、もう一度法制審議会の議論に戻りますが、法制審議会の委員には何名の方がおられますか。大臣、お答えください。

南野国務大臣 十五名の方でございます。

小川(淳)委員 そのうち弁護士さんは何名おられますか。

南野国務大臣 今リストを見せていただきましたが、お一人おられます。

小川(淳)委員 私は冒頭、価値観の話として、その二つをうまくバランスをとられるのが大臣のお務めだということを申し上げ、それについては大臣もうなずいていただいたと考えております。その意味で、法務省のあり方あるいは法制審のあり方についても、その両者の意見をもっとバランスよく吸収することに意を用いられるべきではないか、してもいいんじゃないかという気がいたします。

 今、十五名の中に一人の弁護士さんがおられる。あるいは、学者の先生方でどういった足場を置かれている方がおられるのか私も定かではありませんが、そういったことも含めて、人権擁護の立場と治安を守る立場、これはもっとうまく吸収をすべき。そして、そこに欠けていたことがあったことこそが、今回の法案、これだけ国会でなかなか審議が進まず、また、これでいこうじゃないかという空気が起きない、その大きな原因の一つではないかと私は思っております。

 ついでにお尋ねいたします。

 法制審議会の構成について今お尋ねをいたしましたが、あわせて、今回、共謀罪の企画立案をされた法務省の事務方の総責任者はどなたですか、大臣。

大林政府参考人 先ほども委員が御指摘のとおり、この法案は廃案となった経緯がございまして、大分前から出ているものでございます。私が起案したものではございませんが、私の前任に当たる刑事局長が一応責任者となって立案されたものと承知しております。

小川(淳)委員 大林局長にはいろいろと御苦心をいただいておること、委員会を見ておりましてよくわかります。

 大林局長、簡単で結構です、本籍地、御経歴はどちらですか。

大林政府参考人 個人にわたるものでございますが、せっかくのお尋ねでございますので、本籍は東京都でございます。

小川(淳)委員 役所の籍を置かれている本籍地をお伺いいたしております。

大林政府参考人 私は、今のところ、検事としての身分としては最高検検事でございます。それで法務省の刑事局長に充てられている、こういう形になっております。

小川(淳)委員 大臣、大臣を最も身近に事務方で支えておられる方、どなたでおられますか。

南野国務大臣 それは秘書官だったり副大臣だったり政務官だったりいたしておりますが、樋渡次官だというふうにも思っております。

小川(淳)委員 にも思っておりますというお答えでしたけれども、事務次官がおられるわけですね。事務次官はどんな御経歴の中から就任された方ですか。

南野国務大臣 検察官御出身でございます。ちなみに、秘書官も検察官出身でございます。

小川(淳)委員 刑事局長さんは検事さん、これも当然のことかもわかりません。そして、法務省、さまざまな権益、バランスをとらなければならない、その事務方のトップが検察官でおられるわけですね。そして、法制審議会、十五人の委員の中に弁護士さんが一人しかいない。

 大臣、冒頭に戻ります。大臣は、この国にたった一人しかいない人権擁護の代弁者であります。ほかには政府機関がございません。大臣がたった一人で人権を守らなければならない、自由な空気を守らなければならない。そのお立場に立って、犯罪抑止ももちろんそうですが、刑事法制、司法行政全般に当たっていただかなければなりません。その大臣が身を置かれる組織がそういった組織であること、これは大臣御自身が自覚をしておられるのとそうではないのとでは、一つ一つの判断に差異が出てくる可能性がございます。

 ぜひとも国民の代表として、もちろん刑事法制の責任者であると同時に、国民の代表として司法刑事行政の監視あるいはコントロールに赴かれていること、そのことをぜひともお心におとどめいただいて、この共謀罪の議論、もし必要があれば柔軟に修正等々協議を進めていくこと、前向きに御検討いただくことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

南野国務大臣 先ほど、弁護士の方が一人しか十五人の中に入っていないということでございましたが、その十五名の中には本当にバラエティーに富んで、お一人お一人が大切な御意見をいただいております。その方のほかにも、労働組合または企業の方、マスコミの方も入っております。ちなみに女性が十九人中六人ということで、三割を女性の方にも充てておりますので、大変自由な、民主的なチームを編成しているということは申し上げられると思います。

早川委員長代理 次に、河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしでございます。

 まずちょっと、オーソドックスでもないけれども、聞いてほしいということがありましたので。

 共謀の行為概念が広いということで、合意ということらしいんですけれども、対話ですか、信書、電話、電子メール、携帯メール、インターネット掲示板といういろいろな合意の手段がありますけれども、それらはすべて含むということで結構でございますか。

大林政府参考人 御指摘のように、一般に打ち合わせを行う手段にはさまざまなものがありますが、今回の法案の共謀罪の共謀する手段について、特段の限定はございません。

 今回の法案の共謀罪は、組織的な犯罪においては、計画性が強く、組織の指揮命令を利用して行われるため、それが実際に行われるおそれが高い上、一たび実行されると重大な被害が発生することを踏まえ、共謀の段階でその検挙、処罰を可能にするものでございます。

 そして、この共謀とは、二人以上の者が特定の犯罪を実行する具体的、現実的な合意をすること、すなわち、単に漠然とした相談程度ではなく、犯罪の目的や対象、実行の手段、実行に至るまでの手順、各自の役割など、具体的な犯罪計画を現実に実行するために必要な要素を総合的に考慮して、具体性、特定性、現実性を持った合意をすることを意味するものでございます。

 こうした合意は対面での打ち合わせでしか形成できないものではなく、電話や電子メール等によって形成することも可能であり、また、そのような合意が形成された場合の危険性等は、対面で形成された場合であれ電話等で形成された場合であれ変わりはないと考えております。

    〔早川委員長代理退席、委員長着席〕

河村(た)委員 インターネット掲示板だけちょっと確認しておこうか、それも入るということ。

大林政府参考人 入るものと考えております。

河村(た)委員 それから今度、共謀者の範囲も不明確だという批判があるので、共謀の現場にいた人も、実行を提案した人、積極的に賛同した人、特に異論を唱えなかった人、それからただいただけの人とか、これは全員なるものですか、どうですか。

大林政府参考人 今申し上げましたように、共謀罪における共謀とは、二人以上の者が特定の犯罪を実行する具体的、現実的な合意をすることをいいますので、個別具体的な事案に応じて異なるものの、一般論として申し上げれば、その場にいて発言しなかった者や特に異論を唱えなかった者について、そのような合意をしたと認められるためには、その者の地位、役割等を考慮し、慎重な検討が必要であると考えられます。

 共謀の概念につきましては、現行法上の共謀罪や共謀共同正犯に関する学説や判例上、その意味、内容が確立していると考えられることから、明確かつ限定された内容のものとなっており、共謀を行ったと評価される範囲についても限定されたものとなります。

 やはりケースケースでございますが、今申し上げたとおり、ただ居合わせたというふうなものを考えれば、それはもちろん除かれる者もあろうか、このように考えています。

河村(た)委員 聞くのはちゃんと聞いておかないかぬ。

 ただ、除かれる者もあろうかと言っておられますので、これはなかなか、私も十何年やらせていただいておるので注意はするんですけれども、だから、ただいた人でも、先ほど言われましたように、一定の地位等があって、おること自体がそれなりの、合意をシェアして、英語で言えばシェアですか、合意を分担しているというように見られれば、それはなり得るということでよろしいですね。ちょっと答弁してください。

大林政府参考人 御指摘のとおりだと思います。(発言する者あり)

河村(た)委員 全然関係ない人が犯罪になるわけないじゃないですか。そんなことは当たり前ですよ。

 そういうことだそうですので、関係者でもおれば、その場合の状況にもよるけれども、おっただけで共謀罪に問われる場合はあるということですよね。

 そうしたら、自白だけではだめだと言われておりますけれども、共謀に加わった者の他の者の証言、それだけで補強証拠になる、それもあり得るわけですね。

大林政府参考人 今、補強証拠についてお尋ねですが、自白の補強証拠が必要とされるということは刑事訴訟法の一般的な原則でございます。

 最高裁判所の判例上、補強証拠が必要とされる範囲については、必ずしも自白に係る犯罪構成事実の全部にわたる必要はなく、自白に係る事実の真実性を保障し得るものであれば足りるとされておりまして、また、補強証拠となり得る証拠の範囲については、共犯者の供述も補強証拠になり得るとされております。

河村(た)委員 今言った共犯者は、当然、共謀に加わった者ということで結構ですね。答弁してください。

大林政府参考人 そのとおりでございます。

 ただ、つけ加えさせていただければ、いわゆる被疑者になっている者とその共犯者との関係につきましては、いろいろ利害関係を持っております。ですから、補強証拠となり得ると……(河村(た)委員「裁判とは別で」と呼ぶ)いいですか。

河村(た)委員 別に裁判で有罪になるかどうかは別として、形式的に、法論理的にはなり得るということでいいですね。ちょっともう一回言ってください。

大林政府参考人 共犯者の供述も補強証拠になり得ると解されております。

河村(た)委員 そうすると、これはいろいろ御指摘があるように、なかなか大変なことで、どこかの会合に出ていって、あっ、そうか、団体性の要件があるとしても、御用になる場合があるということでございます。

 この間、ちょっと平岡さんも言っておったけれども、そういうことになれば、共犯者たる共謀者の証言が、優秀な検察官の前で、おまえは言わぬと出れぬぞ、逮捕するぞ、容疑をもっと重いものに切りかえるぞとか、そういうことによってつくられる可能性も非常に強いので、だから、やはりビデオで撮るぐらいのことはしたらどうだということはあるんですよ。

 この間ちょっと答弁されたけれども、せっかくだで、もうちょっと色気のある答弁をひとつぜひしてやってください。

南野国務大臣 色気があるかどうかはわかりませんが、我が国の刑事司法が適正手続の保障のもとで事案の真相を解明することを使命としていること、そういうことからも、被疑者の取り調べが適正を欠くことがあってはならないのは当然でございます。捜査機関におきましては、この点に十分留意しながら捜査に当たっているものと承知いたしております。

 先生御指摘の取り調べ状況の録音、録画等については、司法制度改革審議会意見におきましても、刑事手続における被疑者の取り調べの役割との関係で慎重な配慮が必要であり、将来的な検討課題とされております。(河村(た)委員「いいです。それでやめてください」と呼ぶ)はい。では、そういうことでございます。

河村(た)委員 そんな話を聞いておっても何にもいいこともないわ。本当に情けないわ。

 一つ進めて、それでは、大臣に聞くより、最近僕も、やはり行政権にちゃんと聞いた方がいいと思いますね。(南野国務大臣「そうですね」と呼ぶ)(発言する者あり)本当に。本当はとめてもいいけれども、では、今のを撤回させますか。大臣、撤回してくださいよ。(発言する者あり)

 今の発言、せっかく皆さんのリクエストがありますので、大臣として、議院内閣制の上から選ばれた法務省をつかさどる最高責任者としてどういうおつもりで言われたか、それを言ってください。(南野国務大臣「発言をしていません、ここに座っているわけですから。発言ではないです。正式発言ではないです」と呼ぶ)ひとり言ならひとり言と言ってください

南野国務大臣 ひとり言でございます。

河村(た)委員 普通だったらちょっとあれですけれども、先に行くとします。

 僕がちょっと聞いた話では、これは局長に聞いてもいいんですが、最高検の検事ということであらせられるなら、やはりちょっとビデオぐらいで撮っておいてくれた方が、僕があるところで聞いたら、要するに主任から無理やりにこういう調書をとってこいと言われると。私もそれは無理だと思うんだけれども、言われるもんだで、検察庁で出世せんならぬでこれはどうしようもならぬということで、かえって、やはりそういうビデオとか録音してもらった方が、本当の現場の検察官はその方がいいんだというお声がありますけれども、どうですか。

大林政府参考人 録音、録画についていろいろ御意見がある、また、この法務委員会においてもいろいろな、附帯決議等でいろいろ議論があることも私ども承知しております。

 ただ、これも前から申し上げているとおりでございますが、いわゆる特に初期捜査において、今犯人の実態をどういくか、要するに上の者をどうやって摘発していくかというところにおいて、またいろいろ捜査官としての経験等によって調べをしている。そういうことによって、結局、録画等によってその信頼関係が失われるといいますか、話しにくくなるという、一方捜査上の問題もあることは事実でございます。

 ですから、委員がおっしゃるように、私どもも、それは検討しなきゃならない重要な課題の一つであるということは十分認識しております。ただ……(河村(た)委員「そういう声はないですか、下から、僕が言ったような」と呼ぶ)それはちょっと、私は伺ったことはありませんけれども。

河村(た)委員 いや、多分あるんだと思いますけれどもね、そういう声。

 これはちょっと大臣に聞こうか。

 それでは、今言った話をどう思われる、大臣。どう思いますか。今言ったような、検事さんがやはりいろいろな、特に特捜なんかだと起訴方針というか捜査方針を決めるわけでしょう、こういうふうだといって。そうすると、途中で、いや、やはりこれは無理じゃないかと思っても、主任からこれだと言われるわけですよ。そうすると、まあ、しようがない、自分も出世せないかぬと思って、おまえ、どうのこうのと言って書かせるわけだ。

 だから、そういうことをやらぬようにするためにも、やはりビデオとか録音とかを撮ってもらった方がいいんだという声を私は聞いたことがあるんですけれども、それについてあなたはどう思われますか。

南野国務大臣 録画されたりいたしますと、これはなかなか本当のことは言いにくいですよね。そうじゃありませんか。そういうような意味で先ほども私はお答え申し上げたんですが、もう言わなくていいと言われましたので、引き下がったわけでございます。

河村(た)委員 情けないですね。反対だで、それ、大臣。とんでもない話だ、それは本当に。ということでございますが、では、次に行きましょう。(発言する者あり)そういうことですね。これは今ビデオで撮っておる、そういうことをやめさせようというのと非常に似ていますよ。

 それでは、次は、今度、対象の罪でちょっと具体的にいろいろ事例を設例させていただきます。一応刑法の条文をつくるんですから、一般国民からして、これが条文に、構成要件に該当するかどうか、それはやはり説明してもらわないかぬですからね。

 まず、特別公務員職権濫用罪、それから特別公務員暴行陵虐罪、この辺につきましては、この対象の罪になりますね。

大林政府参考人 今御指摘になりました特別公務員職権濫用罪及び特別公務員暴行陵虐罪については、その法定刑として長期四年以上の懲役または禁錮の刑が定められておりますので、共謀罪の対象となり得ます。

河村(た)委員 では、具体的な設例について考えたいと思うんです。

 刑務所とか警察、検察というのがありますが、例えば、まず刑務所でいきますか。

 刑務所内部で、革手錠というのがあったんですけれども、暴れる人に対しては、無理でも、懲らしめ目的で施用せよ、やむを得ないということで、上司なり、どこからかわかりません、一番上は矯正局長なんでしょうが、所長とか処遇首席とか、それからその下、看守長クラス、その辺のところが、それで、じゃ、ちょっといかぬかもわからぬけれども懲らしめ目的でやろうと言った。これは成立するんですか。

大林政府参考人 今回の法案の共謀罪は、今申し上げたように、重大な犯罪には対象になります。

 ただ、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行われる犯罪行為、または団体に不正権益を得させる等の目的で行われる犯罪行為を実行しようと共謀した場合に限って、そのような共謀をした者を処罰の対象とするものでございます。

 団体の活動とは、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものをいい、また、犯罪行為を実行するための組織とは、犯罪実行部隊のように、組織の構成員の結合の目的が犯罪行為を実行することにあるものをいいます。

 この要件が満たされて共謀罪が成立し得るのは、犯罪行為を行うことを共同の目的を有する団体として意思決定する、すなわち、犯罪行為を行うことが共同の目的に沿うような団体であり、かつ、団体内部に犯罪実行部隊を持つような団体の意思決定に基づいて共謀が行われた場合に限られる。

 仮に、たまたま正当な目的を有する団体の幹部が相談して犯罪行為を行うことを決定したとしても、共同の目的を有する団体として意思決定をしたとは言えないため、「団体の活動として、」という要件を満たさず、共謀罪は成立しません。

 今お尋ねの、刑務所の例を出されましたけれども、仮にその一部において特別公務員職権濫用罪等の犯罪の共謀が行われた場合でございますが、刑務所は正当な目的を持って活動している団体ですので、仮に、たまたまその幹部等が組織的に行われる具体的な犯罪を共謀したとしても、このような犯罪行為を行うことはその共同の目的と相入れないことは明らかですので、「団体の活動として、」という要件を満たさないと考えられます。もちろん不正権益の条件にも当たらないということで、これは想定しがたいというふうに考えられます。

河村(た)委員 いや、ちょっと待ってください、これは議事録に残りますので。

 例の名古屋の話を想定されるかもわかりませんけれども、あれは全く事実が違っておりますので、全くこれは冤罪なんです。冤罪というのが言いにくければ無実なんです。仮に、検察庁の言ったとおりのことを私は言っているんです。検察庁の方が言ったとおりどころか、中間報告書を持ってきましたけれども、これは平成十五年三月三十一日、行刑運営の実情に関する中間報告ということで当委員会に法務省が出されたものですね。もうちょっと後で聞きますけれども。

 そうすると、不正利益もいろいろあり得ますから、仮に想定してもいいですよ。それはほかの、例えば暴力団がおって、こいつらを懲らしめよう、それじゃ、後で幾らかお金を払う、それはありますよ。それは幾らでもあります、そういうことは。そういう団体としては、この刑務所とか、警察もあるかもわからぬな。

 それから、検察の場合は、やはり事実上、逮捕請求するということは、普通の場合、幾ら無罪になろうが、人生大変苦しい状況に陥りますから。だから、これは特別公務員職権濫用罪になる可能性は、これは前に一遍大林さんが言われたと思いますけれども、全く無実の人をわかって起訴した場合はなる可能性はある、抽象論です、こう言われましたね。

 そうなると、今ちょっと、刑務所はそういうようなところではないからそういう団体にはなり得ないと言われましたけれども、本当ですか。

大林政府参考人 刑務所の組織は、基本的には、犯罪者、刑を受けた犯罪者について矯正目的の処遇をするところでございます。ですから、そういう設立的な目的あるいは現実の行動としても、そのようなことで業務を行っているところでございますので、犯罪を行うことを目的とした団体であるということは到底言えないと考えております。

河村(た)委員 これは異なことをおっしゃるんですね。民間の会社、この間、私もここにおりましたら、これはどなたが聞いておったかな、平岡さんだったかな、高山さんか、漆原さんか、普通の会社であっても、定款で初めから犯罪を目的とすると書くわけないんですからね。

 例えば、商事会社、商売をやっておったとする。もうからぬようになった。それで、商売をやっていますから、詐欺もあり得ますし、この際、たまたまそういう地区にようけ売買に行っておった、ああ、何か覚せい剤とかいろいろあるじゃないか、じゃ、これで一発もうけようかということになった。これは十分あり得ますよ。あるというより、これが現実的かもわからないですよ。フロント企業で、初めからこれは悪だというときもあり得るだろうけれども、しかし、ある程度やっておって、苦しくなると人間はそうなるんですから。これは該当するんでしょう。

大林政府参考人 前に御答弁申し上げたとおりですけれども、例えば会社の定款等で犯罪目的じゃないということで、ただ、そういう会社であっても、この間例を申し上げたのは、例えば、もう全然業務が成り立たなくなったということで、後は専ら詐欺行為で利得を得るために団体として行動する、実行部隊として行動する、こういうものは、たとえ最初に正常な業務から始まっても、それは団体の活動というふうに認められる場合があるでしょうと申し上げました。

 しかしながら、普通の、通常の会社において、前も申し上げましたように、競争の世界ですから、あるいは商売の世界ですから、それはうそもあるいはあるかもしれませんし、脱税とか種々の犯罪に至る場合もあるかもしれません。しかし、それは、基本的には営業活動、商業活動を目的として活動しているという認定をする以上は、犯罪を目的とする団体というふうに認定はできない、そういうことでございます。

河村(た)委員 ちょっと待ってください。それでは、団体といっても、そればかりやっておる場合と、でかい会社の場合、そういうような貿易だけをやっておるのと全然違うのやと。いろいろなことをやっておるときがあるんですね。

 団体というのは、全体でなくても、例えばちょっと大きい会社なら薬の営業部とか、そちらだけで、それも団体性を満たすのでしょう。これは必ずしも法人登記をした全体でなくてもいいんでしょう。当然そうでしょう。

大林政府参考人 今の団体については組織的犯罪処罰法に定義があるわけでございますが、継続的活動体ということと、それからある程度社会的に独立した団体である、そういうものでなければ、単に人が集まったというものだけではなくて、それは今おっしゃるような、例えば、おっしゃられる例が、私、正確に受け取っているかどうかわかりませんが、例えば大きな会社があります、その一部に犯罪セクションがありますという場合は、基本的には、その会社を団体として見た場合は、それは団体の意思決定という、幹部がいるわけですから、その一部にけしからぬ連中がいたとしても、それはその犯罪が成立するだけであって、それはその団体の活動としてとは言えない、こういうふうに思います。

河村(た)委員 ちょっと待ってくださいよ。そうすると、いろいろな営業部があったとしますね。その営業部の中で、独立採算になっておる場合も結構ありますよね、登記は大きい会社だけれども。そうすると、その中の、それだけでは犯罪は成立しないんですか。絶対全部でないといかぬですか。それはあり得ないでしょう。

 そこが実際の犯罪集団化というか、自分たちのセクションが食っていけぬ、会社というよりも会社の一部、たまたま一部であった。それで、これはいかぬ、何とか食っていくために、自分らで麻薬の密売もやらないかぬかというふうになったり、例えば、がんの薬ではないけれども、わかっておるけれども、これは詐欺になるけれども、みんなで売って成績を上げる場合もあり得ますよ。それは該当するでしょう。

大林政府参考人 組織的犯罪処罰法の第二条に団体の定義があります。「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。)により反復して行われるものをいう。」それから、団体の活動は「団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。」として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われるということで、確かに非常にわかりにくい表現ではあるんですけれども、ここで言っているのは、今委員がおっしゃるように、それは大きな会社の中に一部セクションが分かれる、あるいは一番はっきりするのは、採算が独立しているという場合に、それはそれで独立しているような場合はその団体として見ることはできるでしょう。

 ただ、今前提とされているのはやはり商業活動の団体であって、その一部がそれに属して、例えばもう全然別な形、指揮系統も全然違う、利益の帰属の分配も違うという形でいっているなら、それはもう企業の一部とはちょっと言えないんじゃないかなというふうな感じがするんですけれども。

河村(た)委員 そうしたら、ちょっと刑務所の話をしましたけれども、非常に申しわけないけれども、やはり検察庁でいこう、一番わかりやすいので。

 やはり検察は本当にしっかりしてもらわないかぬですから、当たり前ですけれども。裁判も、当たり前ですけれども、まず検察、警察もそうですが、始まりますので、ここが正義を実行していなかった場合においては、人間大変ですよ、これは本当に。

 だから、検察庁で何かの取り調べをやろう、事件じゃないかと。これはおかしいな、こんなことでは犯罪は起こらないな、こんなはずはないと捜査官が思ったとしますね。だけれども、上から、いやいや、こういうふうに方針が決まっている、これでいこう、こういうふうになって、それでずっとみんなで延々とやって調書をとって、逮捕状を請求した。これは、特別公務員職権濫用罪の、逮捕状を請求してしまえばそれは実行行為だと思いますけれども、仮に、その前で終わった場合、終わったか、その前のを別個に評価する場合、これは主体となり得ますかね。

大林政府参考人 今の例で、主任それから上司とか、いろいろなときに相談した仲間がいるということを前提としてお聞きになっているんだと思います。

 まず一般論として申し上げますと、起訴とかそれから逮捕とかいう問題は、証拠の評価として、それはいろいろな考え方がありますから、そういう点で意見が違ってくるというのはあろうかと思います。ただ、委員がおっしゃるように、例えば職権濫用罪みたいな適用を考える場合は、これはもう完全に相手が無罪だと、冤罪なのに陥れてという個人的な恨みみたいな、何か特殊なそういう事情があるようなまれなケースしかちょっと考えられないと正直言って思います。

 一般論として、今のような、では今度は検察内部の相談の問題について申し上げますと、仮に検察官の公訴提起が何らかの重大な犯罪を構成する場合を想定したとしても、当該公訴提起について相談を受けたり決裁を行ったというだけで当該犯罪についての共謀が成立するものではありません。

 例えば、相談を受けたり決裁を行った者において当該公訴提起が犯罪を構成していることを認識していない場合には、共謀罪は成立しません。また、当該公訴提起について相談を受けたり決裁を行った同僚、上司が当該公訴提起が犯罪を構成することを認識しながらこれを認めるという事態もおよそ想定しがたいと考えられます。

 さらに、今回の法案の共謀罪は重大な犯罪を共謀しただけで成立するものではなく、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行われる犯罪等という要件を満たす必要があるところ、検察内部で相談を受けたり決裁を行ったりするだけでこの要件を満たすとも言えません。ですから、御指摘のような事態というのはおよそ想定しがたい。

 むしろ、逆に、いいですか、つけ加えさせていただければ、さっき刑務所の例を出されました。では、逆に、私が言うのもおかしいんですけれども、こういう職権濫用罪が共謀罪の対象になっているのも事実です。では、どういう場合に成立するかという問題はあるかもしれません。

 それは、私どもが考えるのは、むしろ、刑務官の話をしていましたけれども、例えば刑務官が暴力団組織にのみ込まれちゃっている、そしてその一員として活動している、そういう場合に、例えば、相手の敵対する組員がいる、あれをいじめてやれ、そういう意味で刑務所内でそういう共謀が成立して刑務官が職権濫用行為に及ぶ、こういうケースについては共謀罪が成立する場合があるんじゃないかというふうに思います。

河村(た)委員 それは民間の人間だって同じことなんで、暴力団と一緒に何かやろうとした場合、そうなるわけで。

 どうも局長の話を聞いておると、公務員とかそういう人たちは罪を犯さない人間であると。そうじゃないんですか。(発言する者あり)いやいや、同じじゃないですか。何を言っておるんですか。では、つくればいいじゃないですか、自分たちで。

 では、今、想定が浮かばないと言いましたけれども、本当にこんなことで起訴、絶対あり得ない、犯罪が成立しない、そういうことはあり得ないですか。あり得ますでしょう。これはあり得ますでしょう。

 これはだれが見たって、こんなことでは絶対こういう結果は発生しないとわかっておったときでも、それを何人かで、いやいや、とはいっても、ほかの政治的な要請とかいろいろな要請で、とにかく立件しようといって、それも相当長い時間をかけて、言っておきますけれども、すぐじゃないですよ、相当長い時間をかけて、悪くても半年ぐらいかけて、グループをつくって。検察とか刑務所だったらすごい組織力を持っているじゃないですか。物すごい組織力ですよ、民間より。だから、上から下へとみんな動くわけでしょう。

 そうやってやったら、それはまさしく該当するじゃないですか。民間の人間で商売がもうからぬようになってきて詐欺罪をやるよりもよほど組織的、団体的じゃないですか。どうなんですか。

大林政府参考人 組織として活動という面において、委員がおっしゃるその組織性ということはそうかもしれません。ただ、先ほど申し上げているとおり、団体の活動というものは、結局、帰属する利益とか、それからその目的が犯罪の行為をする集団的なものを規制することを前提としていますので、要するに、共同の目的が犯罪に直結したものかどうかというものだということで、ちょっとやはり想定しがたいということだと思いますが。

河村(た)委員 それは、それならもっと、検察官として言いにくければ、それでは長年皆さんが主張されてきた、刑務所の中で暴れるやつがおるのでこいつを懲らしめようと。そしてみんなで、こういうときだったら革手錠をかけろ、どんどん施用がふえていってもいい、おれたちが傷つくよりそっちの方がいいじゃないかと団体的にやれば、これは、それこそぴったりじゃないですか。成立するでしょう、これは。

大林政府参考人 例えば、昔、内部でリンチをしていった集団がありましたよね。そういういわゆる犯罪集団の中で一つの、殺すことを反復して、さっきの反復というのがありますけれども、反復していくような行為、これは犯罪集団だし、そういうものについて共謀罪は成立すると思います。

 ただ、おっしゃられるような、例えば刑務所というのは、先ほど言いましたように、犯罪者の矯正を目的としている団体です。これはこの間から申し上げているとおり、民間の団体だってそのそれぞれの、例えばNPOなんかの活動をしておられるわけです。そういうところについて、そういう活動を現に行っているところについて、多少一部の者が犯罪的なものをやったとしても、それは今回の共謀罪には当たらないというのは何回も申し上げているとおりであって、今回の今おっしゃる刑務所の問題でも、刑務所がまさに人を殺すために毎日活動しているところではございませんので、ちょっとやはり想定しがたいというふうに思います。

河村(た)委員 何を言っておるんですか、法務省が言ったことですよ、私が違うと言っておるものを。これは法務省が言った文章ですよ。読んでもいいんだけれども。これは中間報告に書いてあるんだ。これをちょっと読みましょうか。中間報告十五ページです。

 と副看守長は、規律維持のためには革手錠を積極的に使用すべきであるとの考えに固執し、その旨幹部にも進言したが、受け入れられずにいた。しかしながら、平成十三年夏ころに至り、被収容者の増加と精神障害を有する者など処遇困難な受刑者が増加するに及び、に首席矯正処遇官においても、このままでは所内の規律を維持できないとの危機感を抱くに至り、それまでの方針を転換して、と副看守長ら現場の刑務官に対し、要件があれば革手錠を使用するよう指示した。これを受けて、と副看守長らは、刑務官に反抗した者に対して懲らしめを目的として革手錠を施用するようになり、革手錠の使用件数は増加するようになった。さらに、平成十四年に入り、

云々と、ずっといくんですよ。それからさらに、

 受刑者を厳しく処遇するよう指示したところ、更に積極的に革手錠の使用が行われるようになり、

といって、それからずっといって、最後の方です。しかしながら、所長は、

 革手錠の使用が安易に行われていたことを問題視されるのではないかと懸念し、適切な指導監督を怠った結果、その後も、革手錠の使用件数は、高水準で推移していた。

 これは私が言っているんじゃないですよ。私は反対のことを言っているんですよ、これはうそだと。これはあなたたちが国会に報告して、全員これに従って質問したんだよ。これこそ継続的な犯罪集団じゃないですか。何を言っているんですか。それでは、あなた、受刑者になったつもりで思ってくださいよ。これははっきり、グループとして、懲らしめ目的でやってもいいと言っているんですよ。そうですよ。何を言っておるんですか、一体。

大林政府参考人 今の記載の部分ですけれども、これは名古屋刑務所の革手錠の使用状況について述べたところでございます。それで、今述べられたように、所内の規律の問題を考慮して革手錠を、このようにして使用回数が多くなったということが述べてあります。

 ただ、ここで革手錠を使うことが犯罪になることを前提にしているわけじゃないんです。いきさつとして、そういう革手錠を割合と頻繁に使うことになっていったと。それで、犯行に至る経緯というのは次の段落で具体的なものが始まってきているわけですから、それが直ちに違法になるという問題ではないと思いますが。

河村(た)委員 妙なことをおっしゃるが、それでは、その中で「と副看守長らは、刑務官に反抗した者に対して懲らしめを目的として革手錠を施用するようになり、」と。これは犯罪じゃないんですか。ただ状況を語っただけなんですか、これは。これで起訴されているんでしょう。

大林政府参考人 起訴されている案件はもう具体的に今裁判が行われているわけですけれども、今の、先ほど言いましたように、刑務所においては、当然それは、一つは矯正の目的。ただ、それは、多人数の収容者を預かっているわけですから、当然それは規律という問題があります。ですから、当然懲罰という問題もあります。それは業務上認められている行為でございますので、これが直ちに、先ほどから繰り返しになって恐縮ですけれども、犯罪という前提で書かれているものではないと思いますが。

河村(た)委員 では、もう一回確認しておきます。

 では、このくだりですが、いいですか、「刑務官に反抗した者に対して懲らしめを目的として革手錠を施用する」こと、これ自体は犯罪ではないんですね。(発言する者あり)いや、そう言われたから。これははっきり言ってくださいよ。これは重要な答弁ですよ。

大林政府参考人 私が申し上げているのは、今の懲らしめという表現、これも過去にいろいろ議論になったことがあります。その目的が、これは、具体的な証拠、一般論として申し上げれば、懲らしめ目的の例えば一般的な暴行にしたって、それが暴行罪になる場合もあれば、それは業務上の問題として正当化されるものもあります、一般論として申し上げれば。

 ですから、今おっしゃられる名古屋刑務所事件というのは現在公判係属中ですので、ちょっとこれを前提にして申し上げることはできないんですけれども、私が今御説明しているのは、今委員が読まれた部分は、これは、革手錠がどうしてそういうふうに使用されるに至ったかという、その前のことを説明している部分でありますので、これをもって直ちに例えば共謀罪に当たるとかいうような記載ではない、このように考えております。

河村(た)委員 では、もう一回聞いておきますけれども、今のこの文章ですね、正確に。「と副看守長らは、刑務官に反抗した者に対して懲らしめを目的として革手錠を施用するようになり、」と、この中間報告十五ページの下から八行目のあたり、これは、このことをもってして、懲らしめを目的として革手錠を施用しても犯罪を構成しない場合もある、する場合もあるし、しない場合もあるということでいいですね。ちょっと答弁してください。

大林政府参考人 いずれの場合もあり得るというふうに考えております。

河村(た)委員 時代が変わったというのか、これはなかなかですよ。当時のことからすると全然違いますよ、これは。これは大変なことです。

 では、犯罪になるときの方でいいですよ。犯罪になるときの方で、何としても私がわからぬのは、民間の会社じゃなくてもいいですよ、別に普通のグループでいいんでしょう。会社がすぐ犯罪団体になるよりも、むしろ何人かばあっと集まって、テロ集団なんかはそういうケースがあり得るんじゃないですか。何とかみんな集まって、これはテロにもう訴えるしかしようがないとなっていったという場合は、それは別に全体がそうでなくても、あるグループの中の一つのグループが何かで洗脳されてそうなった。それはそのグループとして独立しているから、これはなるわけですね。なるわけです。

 だけれども、検察庁とか、それから刑務所とか警察、こういうところはならないと。(発言する者あり)なり得るんですか。あなたの言うことと違うぞ。ちゃんと有権解釈を聞いておこう。

大林政府参考人 先ほど申し上げたとおり、想定しがたいということでございます。

河村(た)委員 いやいや、だから、なり得るかどうか、ちゃんと答弁して。想定しがたいという、そこはちゃんと、これは刑法ですからね、国民に対して、わからないかぬですよ。わからせる場ですから、法務委員会というのは。ちゃんと有権解釈を示してください。

大林政府参考人 答弁が繰り返しになって恐縮でございますが、先般来、例えば民間の団体とか組合の方の問題で私ども答弁しているのは、やはりそういう活動をされて、組合として、あるいは会社として、あるいは民間団体として活動しているかどうか、そこが問題である。それは、検察においても警察においてもそれなりの職務を執行しているわけです。したがって、そういうところで、団体の活動として犯罪行為を行う集団だ、団体だ、それはとても言い切れないのではないか。

 ですから、私は、民間の団体でも、その活動をしていてたまたま一部の人がなった場合に、共謀罪の対象にはならない、このように申し上げているわけでございます。

河村(た)委員 では、私の言ったことをちょっと、今の警察とか刑務所とか検察官、これは、この六条の二の団体となり得るのかなり得ないのか、これをちゃんと答えてください。

大林政府参考人 一般的な意味としての団体的な概念には、集まりとしての意味には、それは当たるかもしれません、団体としてですね。ただ、それが共謀罪の構成要件としての団体あるいは団体の活動には当たらないんじゃないでしょうか、こう申し上げているわけでございます。

河村(た)委員 いや、ちょっと待ってくれ。そうなると、民間はなると言っておるわけでしょう。途中で変質があるわけでしょう。公務員はないんですか。間違いないですか、これは本当に。(発言する者あり)いや、これは重要ですよ、言っておきますけれども。

 これは刑法ですからね、刑法ですから。だから、これは検察官はならないということですよ。(発言する者あり)官庁除くと書いていないです、本当に。

大林政府参考人 私の申し上げているのは、官庁だからならないという意味ではございません。

 委員のような例で申し上げますと、私は、日本の警察、検察、刑務所、それは民主的なものだと考えています。仮に、どこかの国がそういう、先ほどおっしゃったような、政敵を誘拐して殺しちゃおう、政府部内でそういう相談をして、そういう行動をした場合、それは共謀罪に当たる場合もあるんじゃないかと思います。

 ただ、今私の前提としているのは、今日本における警察とかそういう団体、そういうものについて、犯罪を行うことを目的としているような組織とは到底言えないと。(発言する者あり)

河村(た)委員 いや、やはりこれはちゃんとはっきり言ってもらわないと。今ちょっと高山氏が言っておるけれども、それでは、横領なんかがありますわね、本当に。公務員の二悪、これは裏金づくりと天下りだ。裏金づくりの共謀なんて幾らでもあるじゃないですか、そんなもの。それは継続的で。これはならないの。ならない、これ。

 では、これははっきりしてもらおう。この六条の二の、これは重要ですよ。では、それをいきましょう。

 では、裏金づくり。経済産業省であったじゃないですか。何年やっておるんですか。実は検察庁でもあったじゃないですか。警察は、まだ引き続きすごいじゃないですか。何ですか、あれはならないの。

大林政府参考人 それは、団体、組織、その一部が犯罪を行うということはあると思います。ただ、共謀罪としてのものは、組織犯罪処罰法から、いわゆる俗的な意味での団体じゃなくて、括弧書きで定義がされているわけですね。団体、団体の活動、そこに一つの枠が狭まっているわけです。

 ですから、私が前から申し上げているのは、民間だから、あるいは公務員だからということではなくて、その団体が犯罪を目的としているかどうかということで、そういうメルクマールで区別すべきだ。したがって、これはなりません。

 要するに、商業活動はある程度している、その上で半分で犯罪をしている、これはやはり犯罪を目的としている集団とは言えないでしょう、こういう説明をしているわけでございます。

河村(た)委員 条文に即して言っていますけれども、六条の二「次の各号に掲げる罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により」と書いてありますが、その団体に公務員は当てはまらないと、一般に。公務員、何で官庁は当てはまらないのか、ここをちょっとはっきりしておいてもらいましょう。

 もし民間しか当てはまらないとするんだったら、このまま審議は終わりですね。これは間違いなく憲法違反ですよ。終わりですよ、これ、当然。

大林政府参考人 もう少し説明させてください。

 団体とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的または意思を実現する行為の全部または一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体)により反復して行われるものをいいます。

 ですから、例を出します。例えばデモ隊があります。これは通常一時的に集団を形成しているにすぎないものでございます。それから、同好会、サークル、通常指揮命令系統が、関係が存しません。それから、住民運動のグループ、それは通常個々の住民が対等の立場で反対運動に参加しているにすぎず、指揮命令系統が存しない。そういうことで、そもそも団体に当たらない。

 ですから、今おっしゃられる、どこかの役所の話をしておられましたけれども、その役所は行政目的に従った活動をしているわけです。その一部の者が、それは犯罪に手を染めているかもしれません。ただ、それは共謀罪で言う団体あるいは団体の活動として共謀罪が適用されるという構成要件には当たらない、そういうことでございます。

河村(た)委員 いや、ちょっと待ってちょうだいよ。もうちょっと当てはめをきちっとやらないかぬけれども、今言いましたように、裏金を、悪いですけれども、検察本庁におかれましても、途中でわけわからぬようになりましたけれども、それから警察、警察はずっと民主党もやっていますわね、それから経済産業省の今の話。今の話を聞いたら、あれは業務としてやっているんですか。違うでしょう、あれは。あれは明らかに違法行為なんでしょう、明らかに。当然当てはまるじゃないですか。これははっきり言ってもらわないと。

 ここでもし答弁がなかったら、これはちょっと審議終わりです。これは終わり。

大林政府参考人 恐縮でございますけれども、それは違法行為であるという場合を前提としていますから、当然違法行為になるんでしょう。ただ、私が申し上げているのは、「団体の活動として、」という今度の構成要件に当たるかどうかということで、個々的に共謀をしてそういう犯罪を行ったこと、それは当然罪になると思います。

 ただ、今回の共謀罪は、団体あるいは団体の活動として共謀するということが前提になっています。ですから、今の団体は、その目的、共同の目的というのが問題でありまして、例えば、では、どこかの官庁といたしましょう。その官庁はそれなりの行政目的を達成するために日々業務をやっているんでしょう。だから今の、犯罪行為自体が業務か何か、それは業務じゃないと私は思いますけれども、目的としているものをやはり基準としないと、それは一部について犯罪があったら全部なっちゃうことになりますよ、そういう解釈になったら。(発言する者あり)

塩崎委員長 質疑者以外は質問や答弁まがいをしないようにしてください。

河村(た)委員 とりあえず、これはちょっと、多分局長も整理されていなかったんだと思いますよ。だから、法案審議はここでやめたらいいと思いますよ。(発言する者あり)いやいや、明らかに団体として。

 では、はっきり言わなきゃいけない。何を言っておるんですか。余り言ってもあれですけれども、経済産業省の何とか室ですか、あれがずっと金を不正蓄財しておった、これと、それでは民間企業でもいいですよ。民間企業でも、社長室が何か売り上げをくすねて不正蓄財していた……(発言する者あり)何でならないの。

塩崎委員長 答弁まがいはやめてください。

河村(た)委員 これは当然そうですよ。いや、どうもここははっきりしていない。だから、両方適用になるとはっきり言えばいいけれども。(発言する者あり)はい。

塩崎委員長 質問まがいもやめてください。

河村(た)委員 だけれども、もうちょっと準備してもらって、きちんと文書をつくってもらったらどうですか、これ。

 それじゃ、ちょっととめてもらって、ここでやめましょう、ちょっとあれだで。いや、こうやってやっておっても、準備不足なんだよ、要は。

塩崎委員長 質疑を続けてください。

河村(た)委員 いや、無用なトラブルがあるだけですから。この団体について、今言ったとこら辺、公務員の話。あれについて、なるかならないか、ちゃんと文書で新たに持ってきてもらうまでちょっとやめたいと思いますね。

塩崎委員長 質疑を続けてください。

河村(た)委員 それじゃ、次に枝野さんもおりますので、ちゃんと文書で今のところの、いろいろな質問をしましたので、公務員の、刑務所、警察、検察、それからいわゆる普通の役所の裏金の蓄財のような話ですね。それは、六条の二の「団体の活動として、」に当たるのか当たらないのかということをきちっと文書で出してください。

塩崎委員長 質問を文書で出していただいた方がいいと思うんですが、今のだと割合ばくっとした話なので。理事会に諮りたいと思いますけれども、質問事項がはっきりしないと議論にならないので、質問事項も書類で出していただいたらこちらで検討したいと思います。(河村(た)委員「今のを書いておいてくれておるで、いいじゃないですか。今書いてくれておるで」と呼ぶ)いや、質問を書面で出してください。

河村(た)委員 今言いましたよ。書面で書いてもいいけれども。

 それでは、そういうことで速記部に言っておきますけれども、僕のところにちゃんと持ってきてください、今の話を。いいですね。

 それでは、それを若干つけ加えまして、理事会に出します。

 しかし、言っておきますけれども、役所だけ犯罪が成立しないような、これはとんでもないことだし、それでは、なぜ職権濫用罪で特別公務員が重いんですか。これは、局長、なぜですか。

大林政府参考人 それは、当然、そういう任に当たる公務員の責任は重いということで、そういうことで、犯罪に至るということは民間人がするよりも重く評価されている、そういうことで重い刑が定められている、そういうふうに思います。

河村(た)委員 それとも言えますけれども、もう少し違うのは、やはり実力行使に当たるわけですよ、今言ったような人たちは。権力を持っているわけです。だから、そういう人権侵害が起きやすいわけですよ、濫用が。だから、戒めなさいと言っておるのであって。だから、そちらの方が、公務員の方が団体性に当たる可能性があるんだと言わなきゃだめですよ。そういうことなんですよ。犯罪を犯しやすいわけですよ、実力行使する人たちは。そうですよ。そっちを言わないかぬですよ。どうですか、局長。

大林政府参考人 今おっしゃられるように、確かに、そういう立場にいる者がそういうことを、それが起こしやすいかどうかは別として、そういうものを仮に起こしたら、それは強く処罰なりいろいろするという前提だと思います。

 ただ、繰り返しになって申しわけありませんが、それと団体の問題とはちょっと異なる側面があるというふうに思います。私は、公務員と民間とを区別しているつもりはございません。

河村(た)委員 余り承諾できませんが、また次のレポートに期待しております。

 それでは、終わります。

塩崎委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 今の河村さんがなかなかおもしろい視点で、私が聞こうと思っていることをいろいろと頭出しをしていただきましたので、総務省に来ていただいていますが、総務省にお尋ねをする前に、今の続きを聞きたいと思います。

 今の話をもう一回整理しますが、例えば、大きな民間企業。まず民間企業からいきましょう。済みません、今の流れで順番を全部変えますから。副大臣、大丈夫ですね。民間企業としては本業をちゃんと行っているけれども、そのある部局が部局ぐるみでこの共謀罪に当たるような犯罪をやった場合には、共謀罪に当たりますか、当たらないですか。

富田副大臣 団体の一部が犯罪を行ったという御質問ですが……(発言する者あり)違うの。民間団体のあるセクションが犯罪行為を行ったと今御質問でしたよね。(発言する者あり)

 いや、あなたに答える必要はないので。そこについて、ちょっとはっきりしてください。

枝野委員 もう一度、正確に申し上げますね。

 例えば、民間企業があります。民間企業のあるセクション、例えば経理部なら経理部が、経理部ぐるみで長期四年以上の本罪に当たるようなことを行った場合は、共謀罪が成立する余地はありますね。

富田副大臣 そのセクションの民間企業における位置づけとか、具体的な事情によると思いますが、可能性が全くないわけではないと思います。

枝野委員 役所の一セクションがセクションぐるみで長期四年以上の違法行為を行うということで共謀して行動したときは、共謀罪が成立する余地がありますね。

富田副大臣 ありません。

枝野委員 あり得ない理由を説明してください。

富田副大臣 民間企業の場合は、最初、先生が例に挙げられた場合には、全体として見た場合に、組織性の要件、団体性の要件を満たす可能性は出てくる場合がないわけではありませんけれども、官庁としてそういうふうに不法な目的で組織性を持っているわけではありませんから、官庁の一部に民間企業と同じように違法性を持ったセクションができたとしても、それは共謀罪における共謀には当たらないというふうに考えます。

枝野委員 要件のどこに当たらないのかがわからないんですが、例えば行政機関の一局とか課でもいいです。例えば、一つの課に十人の人間がいる。その十人の人間がいたとすれば、例えば二条の括弧の中、「指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体」と言えるのは間違いないですね。いいですね。

富田副大臣 組織性の定義は、今先生が指摘されたとおりだと思います。

枝野委員 共同の目的を有する多人数で、例えば一つの課だったら多人数の継続的結合ですね。一つの課というのは、「その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が」、さっきも括弧内を確認した「組織により反復して行われ」ている。

 一つの課の中で、課長か何かを先頭にして、こういう犯罪を犯しましょうということの目的、意思を統一させて行動していたら、当たるじゃないですか。当たらないですか。

富田副大臣 今、当該セクション、経理課を例に挙げられましたけれども、その経理課がもともとの会社と別個独立した社会的存在としての実体を有するものであれば団体に当たりますから、先生御指摘の例がそういうふうにもし当たる場合であれば団体というふうに言えると思いますが、通常は、別個独立の社会的存在というふうには考えられないんじゃないかと思いますけれども。

枝野委員 つまり、例えば大きな企業の場合は、大きな企業の中の一セクションだと独立した存在と認められないから団体に当たらない。役所の場合も、役所の中の一部局だったら独立性がないから団体性を帯びない。こういう理解でいいんですか。

富田副大臣 団体性に関しては、先生が今御指摘のとおりだと思います。

枝野委員 これは、僕、逆方面からも危ないと思うんですけれども。

 つまり、まともな会社の事業をやっていながら、その中の一部局にだけ組織的な凶悪犯罪をさせる部局をうまいことつくって潜り込ませていたら、この法律をつくっても意味がないですね。

富田副大臣 今、先生が例に挙げられた、意図して、一つの会社があるけれども、その一部にそういう目的を持ったセクションをつくるんだというふうにする場合には、会社全体がそもそもそういう目的で集団化されているわけですから、それは当たると思います。

枝野委員 ちょっと待ってください。全体のうちの例えば九五%は正業を行っていて、正業を定款に掲げて、正業を実行しているんですよ。それでも全体が、皆さんがよくおっしゃる犯罪集団に該当する、こういう解釈でいいんですね。

富田副大臣 今のは先ほどの質問と例が変わっているんですよ。もともと、大きなものの中で一つのセクションに意図してそういう集団をつくった、それだったら全体がもともとそういう犯罪組織集団になりますけれども、二度目のは全然違う形になっていますから、それは全然違います。

枝野委員 要するに、犯罪集団に当たるかどうかというのは、意図、目的で分けられるわけですね。つまり、もともと、このセクションを犯罪集団として使うためのダミーで残りのセクションをつくった、それなら犯罪集団だ。だけれども、正業もやりましょう、一部では犯罪もやりましょうということで、あるセクションは犯罪をさせる、八割、九割のセクションは正業をやらせる、こういう意図で初めから会社をつくったらどうするんですか。

富田副大臣 今の設問の設定ですと、何か殊さらに分業体制をとっているというふうに思われますので、もともと全体の中で犯罪性を帯びたセクションをつくっているんだという形になると思いますので、それは当たるのではないかと思います。

枝野委員 結局、その組織をどういう目的でつくったかという意図で判断するということですよね。そういうことになりますね。

富田副大臣 会社自体の全体としての共同目的が何なのかという点で、それで当たるか当たらないかが解釈される。

枝野委員 だから、その目的というのは、まさに主観で判断をする。目的というのは、組織を構成した人たちの主観ですよね、主観で判断する、こういうことですね。

富田副大臣 こういう会社と認められるか否かは、当該共謀が行われた時点における団体の活動実態、意思決定された犯罪行為の内容、当該犯罪行為を実行する組織の実態などの事実関係を総合的に考慮して判断される。だから、主観的な意図だけではない。

枝野委員 その主観的意図を認定するための今の材料の話じゃないですか。

 つまり、たまたま大きな組織の一セクションが犯罪集団化しているということがあったときに、全体を犯罪組織集団と認定できるのかできないのかといったことは目的で判断するんでしょう。今、その目的を認定するための材料の話をしたんじゃないですか。違いますか。(発言する者あり)

塩崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 富田副大臣。

富田副大臣 単なる主観だけで目的を判断しているわけじゃなくて、先ほど、総合的に判断すると言いましたけれども、その主観的な目的が結合体の基礎になることは事実であります。先生がそういうふうな趣旨で言われているのであれば、それは事実であります。

枝野委員 総務省に来てもらっているので、ちょっと別の視点から今の話に入っていこうと思うんですが、公職選挙法上、この共謀罪の対象になる犯罪はどういうものがありますか。

今井副大臣 公職選挙法上の共謀罪の対象となる犯罪はどんなものがあるかということですが、枝野委員さんはプロでございますので、条文だけでいいですね。たくさんあるんですよね。

 公職選挙法上、長期に四年以上の懲役、禁錮の刑が定められている犯罪でございますが、二百二十一条、二百二十二条、二百二十三条、二百二十三条の二、二百二十四条の二、二百二十五条、二百二十六条、二百二十九条、二百三十条、二百三十五条、二百三十五条の三、二百三十七条、そして二百五十三条があるところでございます。

 以上です。

枝野委員 それから、政治資金規正法上ではどうですか。

今井副大臣 次に、政治資金規正法上の御質問でございますけれども、これも、二十三条、設立の届け出前の寄附または支出の禁止規定違反の罪、それとあわせて二十五条ですが、収支報告書等の記載及び提出義務違反の罪があるところでございます。

枝野委員 これは法律の所管の総務省に聞いた方がいいのか、法務省に聞いた方がいいのか、お答えになる方、どちらでも結構ですが、それらの罪についての犯罪の成立の前提として、いわゆる違法性の認識は必要ですか。

富田副大臣 違法性の認識の問題については、判例の大勢は、故意の要素として違法性の意識は不要であるとの立場でありますが、違法性の意識を欠いたことに過失がなかったとき、あるいは行為者の誤信に相当な理由がある場合には、故意を阻却するとしたものもあります。

枝野委員 選挙対策本部とか政治資金団体は、したがって共謀罪の対象になり得ますね。

富田副大臣 選挙対策本部というのは、不法な目的のために設立されるものではありませんから、当然、候補者を当選させるという正当な目的で設立されるものだと思いますので、対象になりません。

枝野委員 資金団体は、政治団体はどうですか。政治団体はなり得るんじゃないですか。

富田副大臣 資金管理団体も、候補者あるいは候補者となろうとする者あるいは政治家の資金を適正に管理するために設立されるものですから、これもならない。

枝野委員 先ほど、政治資金規正法の長期四年以上の犯罪の中で、届け出前の出入金が対象になるという御答弁をいただいています。違法性の認識は犯罪の成立には必要ありません。

 だれかを選挙で当選させようと思って、政治団体をつくるために十人ぐらい集まりました。だれも政治資金規正法を知りませんでした。だれも政治資金規正法を知らないので、届け出など全くしないで、政治活動で入金したり出金したりということを継続的に続けていました。これは共謀罪、成立しませんか。

南野国務大臣 先生のお問い合わせでございますが、これは御指摘の罪に限らず、法案の共謀罪における故意の対象は、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの等の他の要件を別にすれば、対象となる犯罪の成立に必要な事実の認識と同じものとなると考えられます。

 したがいまして、政治資金規正法第二十三条の罪につきましては、一般論として、政治団体の届け出前に寄附を受けまたは支出をするという事実についての認識があれば足りると解されている以上、共謀の内容としては、政治団体の届け出前に寄附を受けまたは支出するという事実を認識しつつ、これを行うことについて具体的かつ現実的な合意をすれば足り、対象となる犯罪において必要とされる事実の認識を超える認識が必要とされるものではないと考えられます。

 もっとも、政治団体の届け出については、何らの相談がなされていなくても、共謀をした者が既に他の者が政治団体の届け出をしたものと認識していた場合は、故意を欠くことになるので、当然、共謀罪は成立しませんということです。

枝野委員 今の話は、最後のところ以外は、つまり、みんなが届け出をしなきゃいけないということを知らなくて、届け出をしないまま出入金を繰り返すということを目的にして政治団体をつくっているんですから、政治資金規正法違反の出入金政治活動をするという目的のために結合して継続反復しているんですから、共謀罪の対象の団体性を帯びるんじゃないですか。(発言する者あり)

塩崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 富田副大臣。

富田副大臣 もともと政治団体は、自分たちの主義主張なりをきちんと広めよう、あるいは政治家の応援をしようというような形で、正当な共同の目的のために活動している団体ですよね。その団体の中で、先ほど先生御指摘のように、政治資金規正法に反して資金集めをしたとしても、本来は正当な目的のために結合された団体ですから、それが政治資金規正法違反の行為をしたからといって、直ちに共謀罪に言う共謀に当たるということはないというふうに考えます。

枝野委員 どこの条文に、共同の目的に正当な目的だなんて書いてありますか。目的に限定は何もないじゃないですか。

富田副大臣 もともと政治団体というのは、共同の目的が正当なものだ、自分たちの主義主張を社会に広めよう、あるいは政治家の応援をしようということで、共同目的は正当な目的なわけですから。違法な目的でその団体がつくられたわけではありませんので。

枝野委員 だから、共同の目的が正当なものならいいだなんて、どこに書いてあるんですか。目的の限定はないんじゃないですか。目的が違法な目的のために共同しているという、違法な共同の目的をだなんて、どこにも書いていないじゃないですか。

 共同の目的が違法であろうと正当であろうと、犯罪を組織的に反復して行う集団は対象になるんじゃないんですか。政治活動をやるという正当な目的があっても、いいですか、その活動のすべてが違法行為なんですよ、今の届け出義務違反は。すべて違法な行為ですよ、お金の出入りについての。違法な行為を反復継続するためにその組織は活動しているんですよ、目的は正当かもしれないけれども。

富田副大臣 今の先生の質問は、ちょっと前提が変えてあるんじゃないかと思うんですが。違法な政治資金を集める目的のためにつくられた政治団体ではないですよね。(枝野委員「だけれども、日々の活動は全部違法なんですよ」と呼ぶ)それじゃ、その政治団体が何のためにどういう政治活動をしているのかがちょっと前提として出てこないですね、今のは。

枝野委員 つまり、どうも今の答弁を聞いていると、その団体の目的が正当であるならば、違法な行動がなされても構わない、少なくとも共謀罪の対象にはならないとお答えになっているようなんですが、それでいいんですか。

富田副大臣 今までの御説明を言いかえますと、団体が有している共同の目的が犯罪行為を行うことと相入れないような正当な団体については、仮にたまたまその団体が犯罪行為を行うことを決定したとしても、共同の目的を有する団体として意思決定したとは言えないため、「団体の活動として、」という要件を満たさず、共謀罪は成立しないというふうに考えられます。

枝野委員 犯罪を行うことと相入れない目的という言い方をしていましたね。犯罪を行うことと相入れない目的なんじゃないですか、多分、わかりませんけれども、多くの、本来この共謀罪で取り締まろうと対象にしている団体も。犯罪を犯すことを目的として組織を形成している団体というのは、あるのかもしれませんが、本来の目的は、お金もうけをしたいとか威張りたいとか、そういう犯罪を犯す以外の目的で組織をつくっているんだけれども、その団体の活動のかなりの部分が犯罪行為を伴う活動になっている、これが犯罪組織なんじゃないですか。ましてやテロ集団だなんというのは、彼らにとっては少なくとも正当な政治目的のためにテロをやっているんでしょう、きっと。

 だから、目的の部分のところで正当かどうかだなんという話で区切ったら、逆に、まさに主観的に、この団体は悪い目的の団体だ、この団体はいい目的の団体だということで、だれかがその目的の主観的正当性を判断するしかなくなるんじゃないですか。違いますか。

富田副大臣 今の先生の御指摘にストレートに答えられているかどうか、ちょっとわかりませんが、個別具体的な事実関係を前提とし、団体の共同の目的をどのようなものとして認定されるかが確定されなければ、法案の共謀罪の成否について一概に申し上げることは困難であるというふうに思います。

 そして、テロ組織とか、今先生がいろいろ御指摘されたような犯罪集団が、実態がどういうものかは定かでありませんが、民主主義社会において、正当な政治活動を行う団体とは異なり、一定の主義主張を実現する立場から暴力行為やあるいはテロ活動を中心的な活動として行うことが共同の目的と認められ、あるいはこれに沿うものと認められる団体もあり得ると思うんですね。先生が言われたのは、まさにこういう団体ではないか。

 結局、このような団体と認められるか否かは、当該共謀が行われた時点における団体の活動実態、意思決定された犯罪行為の内容、当該犯罪行為を実行する組織の実態などの事実関係を総合的に考慮して判断されるべきものではないかと思います。

枝野委員 条文のどこに暴力行為などについて取り締まると書いてあるんですか。

 つまり、本来、彼らは彼らなりに何か正当な政治目的があるんでしょう。正当な政治目的があるんだけれども、それを暴力的なことでやろうとしているこの人たちは、暴力は違法なことだから、そういうのは犯罪集団として認定していいんですね。そういう理屈ですよね、今の理屈は。

 何で暴力だけと限定するんですか。政治資金規正法の届け出違反だって、立派な違法行為じゃないですか。違法行為を継続して行うということについて、これだって犯罪集団じゃないですか。(発言する者あり)いや、わかるんですよ。実質的違法性の観点から全然違うのはわかるんです。だけれども、この法律は区別していないんですよ。形式犯的な違法性を帯びている話と、実質的にまさに凶暴凶悪でこれは許されないという重度の違法性を持っている犯罪とを全く区別していないから、こういうわけのわからない話になるんですよ。区別していないでしょう。どこか区別していますか。政治目的のために暴力でテロをやるからけしからぬ、だけれども、届け出違反なら構わない、そんなことの基準、どこに書いてありますか。

塩崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 富田副大臣。

富田副大臣 先生、今暴力集団だけに限るのかと言われましたが、それはそうではない。当然御存じのように、詐欺集団とかありますので。

 法案の共謀罪は、団体の活動として行われ、かつ、犯罪行為を実行するための組織により行われる犯罪を実行することを共謀したことをその構成要件としています。

 ここで、団体とは、組織的犯罪処罰法第二条第一項において「共同の目的を有する多数人の継続的結合体」等と規定されており、団体の活動とは、同法第三条第一項において「団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するもの」というふうに規定されております。

 このような規定からすると、「団体の活動として、」という要件を満たすためには、犯罪行為を行うことを共同の目的を有する団体として意思決定することが必要であり、したがって、犯罪行為を行うことがその団体が有している共同の目的に沿うものであることが必要であると考えられます。この規定に書いてあるというふうに解釈されます。

枝野委員 だから、同じように政治的主義を実現しようという共同の目的を持っている団体のうち、片方はそのための手段として暴力行為をやろうとした。みんなで暴力行為をしましょうといって、やった。これは、テロ組織、テロ集団だといって対象になる。こちらは、違法性の認識はないけれども、届け出もしないまま、政治資金の出し入れをしましょう。どちらも組織として共同の目的実現のために不可欠の手段として、片方は政治資金規正法違反の行為について共同の意思決定をして共同して作業している、こっちはテロを共同してやっている。

 もちろん、テロの方が悪いのはよくわかっています。だけれども、この法律ではどこに区別されているんですか。答えになっていませんよ。どうしてこの二つが区別できるんですか、テロと政治資金規正法の届け出違反と。じゃ、違法性の認識がないものは対象にならないんだったら対象にならない、どこかの条文で読めるなら、それはそれでわかりますよ。それから、軽微な届け出犯は対象にならないというんだったら、それはそれでいいですよ。軽微な届け出犯じゃないんですよ、長期五年の重大犯罪の中に入っているんですから。

 だから、全く法文上、今のことは、そういう解釈ですよねというのは一般常識論としてはよくわかります。一般常識論としてはわかるけれども、法律の条文を読む限り区別されていません。どこで区別されているんですか。

富田副大臣 条文については先ほど御説明したとおりで、今先生が例に挙げられた二つの例、同じ政治団体でありながら、片方は、暴力的な犯罪行為を行っている方が共謀罪に当たり、もう一つの政治団体の方は政治資金規正法違反を繰り返す団体、これが分けられるのはおかしいんじゃないかという御質問ですが……(枝野委員「いや、どこで分けられているんですかと聞いているんです」と呼ぶ)いや、だからこれは、最初のが当たって次のが当たらないと明確に言っているわけじゃなくて、先ほど来言っているように、総合的に判断するというふうにお話ししましたので。

 もともと政治団体として……(発言する者あり)

塩崎委員長 静粛に願います。

富田副大臣 政治団体として正当な目的を行っているというふうな前提でしたら、私は当たらないと思いますよ、仮にその中で犯罪行為を行ったとしても。政治資金規正法の方も当たらない。それは、もとが本来の正当な政治行為をしようとしてつくった政治団体であったら、私は当たらないんじゃないかと思いますけれども。

枝野委員 今の答弁、本当に政府公式見解でいいんですか。

 つまり、テロ集団みたいなものを取り締まろうというのは、これは条約上も対象になっているわけでしょう。国際テロ組織は、テロもやるけれども、デモもやったり、いわゆる真っ当な政治活動もしているんじゃないですか。それはテロしかやらないテロ組織もあるかもしれないけれども、テロもやるけれども、テロと同時に、自分たちの主義主張を通すための政治的なプロパガンダ活動もやっているんじゃないですか。両方やっていたらこの犯罪には当たらないんですねという解釈でいいという今の回答ですよ。そんなことないでしょう。

富田副大臣 いや、そういうことは言っておりません。もともと正当な政治団体だという前提で先生は質問されているので、今の質問のところで、テロ集団が正当な政治活動もしているし、テロ活動もしているんじゃないかという質問になったので。それは、もともとテロ集団であったら、この組織犯罪処罰法のもともとの対象になるわけですから。

枝野委員 だから、どこで区別されるのか。この間から、リフォーム詐欺みたいな話で、途中から真っ当な会社へ変わるとか。今度もそうですよ。最初は正当な政治活動でもいいですよ、正当な政治活動をやっていたんだけれども、どうも自分たちの主張が受け入れられないから、じゃ、テロにでも走ろうかといってテロも始めました。テロも始めましたけれども、正当な政治活動としてのプロパガンダ、多数派形成の活動もしています。これはどこから犯罪集団になるんですか。その判断基準はどこかに書いてあるんですか。

 一〇〇%テロしかやらなくなったら、それはテロ集団でしょう。では、半分半分だったらどうするんですか。二対三ならどうなんですか。その二対三というのは量的に判断できるんですか。できるわけないじゃないですか。では、一つでもテロをやったら犯罪集団なんですか。そうしたら今までの答弁、全部覆りますよね。どこで基準引くんですか。

塩崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 富田副大臣。

富田副大臣 答弁が何度もダブってしまうと思うんですが、今先生御指摘されました事例については、個別具体的な事実関係を前提として、団体の共同の目的をどのようなものとして認定されるかが確定されなければ、法案の共謀罪の成否について一概に申し上げることは困難であるというふうに思います。

 お尋ねのテロ組織がどのようなものであるかわかりませんが、民主主義社会において正当な政治活動を行う団体とは異なり、一定の主義主張を実現する立場からテロ活動を中心的な活動として行うことが共同の目的と認められ、あるいはこれに沿うものと認められる団体もあり得ると考えられます。結局、このような団体と認められるか否かは、当該共謀が行われた時点における団体の活動実態、意思決定をされた犯罪行為の内容、当該犯罪行為を実行する組織の実態などの事実関係を総合的に考慮して判断されるべきもの、こういうふうにお答えするしかないですね。(発言する者あり)先ほど条文については指摘しました。

枝野委員 先ほど、総務省、公職選挙法の二百二十一条が長期四年の罪とおっしゃいましたね。いわゆる組織的買収ですよね。組織的買収を選挙のたびに継続して行っているような政治団体があったら、該当しますね。

富田副大臣 選挙のたびに買収しているというその実態は、一つの判断材料でしかないと思います。共同の目的がどこにその政治団体としてあるのかが問題だと思います。

枝野委員 そこがよくわからないんですよ。つまり、テロ組織だって、我々から理解不能だけれども、ある政治目的を達成するための手段としてテロをやっているわけでしょう。テロ自体が自己目的化しちゃっている人たちもいるかもしれないけれども、少なくとも、ある種のテロ組織というのは、一定の政治目的達成のために、要するに暴力行為という犯罪行為を反復継続して、それによって自分たちの目的を達成しようとしている。政治団体も、自分たちの政治的主張を、つまり選挙で当選させるという目的のために反復継続して買収でも何でもやって選挙に勝とうというような組織があったら、法理論上、当然同じような対象にならないとおかしいですよねということをお尋ねしているんですよ。

富田副大臣 先生はおわかりの上で質問されているんでしょうが、やはり個別具体的な事案に沿って総合的に判断するとしか答えられないですね。

枝野委員 その判断の基準を法文上示してくださいという話なんですよ。逆に、こういう場合が心配なわけです。つまり、その都度実態に即して判断するということだったら、今の公職選挙法違反が共謀罪で組織的な犯罪だといって取り締まられて、一方で、テロをやっている方が、いや、我々はテロはやっていますが、主たる目的は政治的な主義主張を実現することであって、テロは一手段にしかすぎませんから、この共同の目的は違いますといって頑張ったら裁判に勝っちゃう、こんなことが起こったら困るんですよ。

 だから、どこの条文でどう整理されているんですかということを説明してくださいと言っているんです。結論として、こっちが犯罪で、こっちが共謀罪にならないのはよくわかりますよ、常識としては。だけれども、それを条文上どこでどう区別するんですか、解釈上。区別できていないじゃないですかと、御説明を聞いているんですよ。

富田副大臣 先ほど来御説明しているように、先ほど御指摘した条文に「共同の目的を」というふうに規定がありましたので、この共同の目的に沿うか否かが判断材料で、当該対象法人がどういう思いで主観的にやっているか否かは、この共同の目的に沿うか否かとは関係ないというふうに解釈しますけれども。

枝野委員 だから、その共同の目的が、テロも手段としてやっているけれども政治的な主義主張の実現という共同の目的の団体と、選挙違反もたくさんやっているけれども政治的主義主張の実現ということを共同の目的としている団体と、片方は対象になって片方が対象にならないということはないんですね。この区別をつけるためには、何となく常識的に、テロを政治的主義主張のために実現の手段としてやっている方はけしからぬけれども、選挙違反ぐらいならしようがないよなというのは、常識としてはよくわかります。常識としてよくわかるんだけれども、法文上どこで区別されるのか、全く理解できないんですよ。

富田副大臣 議論がなかなかかみ合いませんけれども、共同の目的が何かということによって、先生が先ほど来言っている、テロをやっている団体あるいは政治資金規正法違反をやっている団体、それがこの組織、団体に当たるかという判断をされるんだというふうに思いますので、明確に、テロの場合は当たって政治資金規正法の場合には当たらないというふうに言っているわけではありませんので、やはり総合的な判断、ケース・バイ・ケースで判断するしかないというふうに答えざるを得ないと思います。

枝野委員 ということは、さっきの話に戻りますが、いわゆる政治団体、選挙運動母体みたいなものが共謀罪の対象になり得ることは否定しないわけですね。

富田副大臣 通常であればあり得ないと思いますけれども、政治団体というふうな名称を使ったとしても、もともと犯罪目的で政治団体を名乗る団体もあるわけですから、そういう場合には当たる可能性があるというふうに思います。

枝野委員 いや、だから、さっきの例ですよ。反復継続して、自分は演説も下手だし、ポスターで写りもよくないし、売り物が何にもないから、とにかく金を配ることで毎回選挙を乗り切ろうとして、村会議員の選挙ぐらいだったらやりようがありますよね。初めからそういう目的で政治団体をつくって、それで村会議員になりましょう、こういう目的でつくったら、組織的買収について共謀罪の対象になりますね。ならないんだったら理由をちゃんとわかるように説明してください。

富田副大臣 今、買収を繰り返すというのは、共同の目的の判断材料として先ほど挙げましたけれども、活動実態の中身として判断されることになるというふうに思いますけれども。

枝野委員 だから、あり得るわけでしょう。否定しませんね。要するに、選挙の運動としては、とにかく一万円札を封筒に入れて、これでよろしくねということだけを選挙のときに毎回繰り返すような候補者がもしいたら、それは共謀罪は成立する。イエスと答えちゃえばいいんですよ、これは。

富田副大臣 それは、活動実態として判断材料の一つになるというふうに申し上げましたが、その候補者が当選してどういう政治を目指すのかとか、もともと政治団体として共同の目的を持つわけですから、そこがどういう目的を持って行動しているのかというところも総合的に判断しなければ、これは一概に言えないと思いますけれども。

枝野委員 今の答弁は、本当にいいんですね。ちょっと待ってくださいよ。例えばテロ集団だって同じことになりませんか。テロ集団だって、テロの結果実現しようという社会がどういう社会を目指しているのかということで判断は分かれるという話ですよ、今の話は。そんなばかな話はないじゃないですか。

富田副大臣 そういうことを言っているんじゃなくて、政治団体ということでお話をしたわけですから、政治団体が毎回毎回選挙のたびに買収をやっているけれどもどうだという最初の御質問ですから、それは共同の目的を判断する活動実態の一材料ですよというふうにお話をしたので、ほかにいろいろな判断材料があるわけですから、そこは政治団体の目的が一体どういうふうな目的なのかというところもきちんと判断の材料の一つになるというふうに申し上げただけです。

枝野委員 総務省、済みません、お待ちいただいて。もう結構ですので。

 結局、ここで言う団体が何なのか、今の答弁を聞いていてもさっぱり、では、どういう基準でここの団体性を帯びるのかということが全くわからないんですけれども。結局、その都度その都度総合的に判断して、組織犯罪の共謀罪の対象になる、その都度その都度総合的に判断して、共謀罪の対象にならない、そういうことでいいんですね。

富田副大臣 ある犯罪行為が共謀罪における共謀に当たるかは、今先生がおっしゃったように、その都度個別具体的な事案に即して判断するしかないというふうに思います。

枝野委員 共謀する側は、共謀した段階で、これが自分が犯罪に当たるのか当たらないのか判断しようがないわけですね。せめて客観的に判断材料を提供してもらわないと、罪刑法定主義に反するのかな……(発言する者あり)いやいや、だからその犯罪目的を今聞いているんですよ、最初から聞いていましたか、今の。

 犯罪目的といったときに、公職選挙法違反は何で犯罪目的に当たらないんですか。政治資金規正法違反、届け出義務違反は犯罪目的ですよ。何でそれが目的じゃなくなっているんですか。テロ集団は逆に政治的な目的を持っているんですよ、目的が重なっているんですよ。正当かどうかは別として、政治的な主義主張という目的とその手段としてテロ行為を行うという目的と、二つが重なっているんですよ。あるいは、政治的な主義主張、当選をさせるという目的と買収という犯罪行為を繰り返しやるという目的、重なっているんですよ。

 この二つ重なっているときに、どちらを重く見るのか、ケース・バイ・ケースだなんて話だったら判断しようがないじゃないですかと聞いているんです。

富田副大臣 今の御質問を伺っていると、それこそまさにケース・バイ・ケースで判断せざるを得ないというふうに私は思いますけれども。

枝野委員 だから、まず、目的が二つ重なっているときどうなるんですかということについて、条文上よくわからないんですよ。二条に「共同の目的」と言っている共同の目的というのは、例えば今のように目的が二つある、二重にあるわけですよ、究極の目的とそのための手段としての目的と。

 例えば、テロをやるというのは手段ですよ。その結果こういう主義の社会をつくりたいという目標があるわけですよ。買収というのは手段じゃないですか。そして、そのことによって当選するというのが目的じゃないですか。「共同の目的」という日本語を普通に考えたら、テロも買収も目的には当たらないじゃないですか。どうしてその手段がこの「共同の目的」の目的に読めるんですか。

富田副大臣 今のお話を伺って、テロは手段で、自分たちの主義主張を通すのが本来の目的だとおっしゃいましたけれども、よくよく考えてみると、テロは目的であって、目的を達した結果が自分たちの主義主張どおりの世界になるというふうにしか考えられないんですけれども、そこはちょっとレトリックがあるんじゃないかと思うんです。

枝野委員 ちょっと待ってください。確かに、テロ自体が自己目的の人たちはいるでしょう、きっと世の中に。だけれども、テロ集団と言われているものの中には、少なくとも、我々から理解不能だけれども、何らかの、ここで例を出すと多分やばいんだろうな、何とかという、こういう世界をつくりたいという目的があるのか、あるいは、このことによって何かどこかの神様のそばにおぼしめしで行けるとか、何かの目的があるからテロをする人たちがむしろ普通なんじゃないですか。

 今の話は、テロが目的であって、目的の結果政治的な主義が実現する。テロの結果政治的な主義主張は現実されませんよ、逆に。結果として自分たちの主義主張が実現されるだなんということはないんで、テロによっては。テロ自体が自己目的化している人たちはいるかもしれないけれども、まさに何らかの政治的目的のためにテロをしている。逆に言えば、何らかの目的のためのテロだったら共謀罪の対象にならないということですか。共謀罪だけじゃなくなりますよね。この組織犯罪処罰法の対象にならないということをおっしゃるわけですか。

 多分、これはやはり条文のつくり方に無理があるんですよ。だから、ちゃんと条文をつくり直して整理しないとだめじゃないですか。答弁していてもそう思いませんか、大臣。

塩崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 富田副大臣。

富田副大臣 組対法の条文は、先生もおわかりだと思いますけれども、組対法の第二条に、「この法律において「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるものをいう。」というふうに定義されています。

 そして第三条で、「次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。」というふうに規定されて、この法律は施行されて五年経過しているわけです。

 今回の条約刑法の今御審議いただいている法案というのは、それに加重要件を加えているだけですので、条文がよくわからないからとか、それだったら、組対法が通ったときにその議論がなされるのならよくわかるんですが、条文としては一緒ですので……。

枝野委員 ちょっと、今の答弁では議論を進められません。ちょっと時計をとめて確認してください。我が党は賛成していないと思うんですが、自分たちが賛成していない法案について、その中身を前提にして質問しろと言うのは、無責任な答弁ですよ、そんなもの。失礼な話ですよ。

富田副大臣 いや、前提にして質問しろと申し上げているのではなくて、五年前に成立した法案で、実際に施行されていて、先ほど来、五年間にこの適用が何件あったという御答弁もしているわけですから、この条文がわかりにくいとか解釈できないという御批判は当たらないのではないかというふうに申し上げているだけです。

枝野委員 だから、その話自体が、私は、今の日本の警察は、基本的には、河村さんは違うかもしれないけれども、大筋では信頼していますよ。信頼される警察が今運用しているから、おかしな解釈とかあいまいなところは抑制的にやっているだろうから、ちゃんと運用しているだろうと僕は信用しているんですよ。

 だけれども、それはたまたま今そうなのであって、法律というのは、つくったら、それをだれが運用するかということで、例えば、民主党政権になったら警察の運用もころっと変わるかもしれない、そのときには解釈の余地も全然変わるかもしれない。そういうものなんですよ、法の施行というのは。だから、どういう人たちが執行権を握ったときでも、ちゃんと、ここまでですねとわからせることが国会で法律をつくるときの責任じゃないですか。

 今まで運用しているからいいですだなんて話で、だから答えないというのは、そんな無責任な話じゃ話にならないですよ。

塩崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 富田副大臣。

富田副大臣 組織的な犯罪集団が関与するという限定がされていないのではないかという点につきましては、法案で新設する組織的な犯罪の共謀罪は、厳格な組織性の要件を満たす場合に限って成立することを条文上も明記しておりますが、これが必ずしも明確ではないのではないかという御指摘があることは、もう十分承知しております。

 先生はそういう観点から御指摘をされているんだと思いますので、その点に関して、この委員会で十分御審議をいただければというふうに思います。(枝野委員「ちょっと今の答弁は何を言っているんだかわからないですよ、私の質問とどうつながっているのか」と呼ぶ)

塩崎委員長 質問を繰り返しますか。(枝野委員「質問じゃなくて、まず、先ほどの発言をどうにかしてくださいよという話ですよ」と呼ぶ)

 どこをどうしてほしいの。

枝野委員 先ほどの発言を撤回してくださいという話でしょう、僕のは。

 つまり、運用しているんだからいいじゃないか、質問するなという無責任な発言をしたから、それはけしからぬという話をしているんです。それにどう責任をとるんですかという話なんですよ。

富田副大臣 質問するなとかいう答弁はしておりませんので、五年間運用しているということを御紹介申し上げて、直前の答弁では、問題点が指摘されているのは十分承知しておりますので、この委員会で十分御審議をいただきたいというふうに申し上げているわけです。

枝野委員 ですから、僕がずっと聞いているのは、どこで仕分けをするんですかと。共同の目的というときに、政治的主義主張を実現しようという崇高な目的と、それを実現するためには悪いことをしても仕方がないという手段と、この悪いことをしても仕方がないという手段がどれぐらいの程度になったら目的になっちゃうんですか。そういう話でしょう、ずっと言ってきている話は。

 いや、今の政治だけの話じゃないですよ。例えば、真っ当なお金もうけをしている民間の株式会社がある瞬間から詐欺集団に変わる。だけれども、全部お金もうけをする株式会社、営利企業というのはお金もうけをするという目的は何も変わっていないんですよ。それを、正業で行うのか詐欺で行うのかという違いだけであって、どっちも、共同の目的はお金もうけをするという目的であって、そのための手段として正業をするのか、それとも詐欺行為をするのか、なぜその手段がある瞬間に共同の目的になっちゃうんですか。それを説明してほしいとずっと言っているんですよ。

塩崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 富田副大臣。

富田副大臣 またダブっての答弁になってしまうかもしれませんが、御指摘のような事例につきましては、個別具体的な事実関係を前提とし、団体の共同の目的をどのようなものとして認定されるかが確定されなければ、法案の共謀罪の成否について一概に申し上げることは困難である、これはもう御理解いただきたいと思います。

 もっとも、一般の会社のように、正当な共同の目的のために活動している団体につきまして、違法行為が繰り返されるという事実だけで、当該団体が継続的な結合体として有する共同の目的が直ちに変容して、犯罪行為を行うことが共同の目的に沿うこととなるわけではないというふうに考えられます。

 もちろん、組織的な詐欺商法を行っている会社のように、犯罪行為を行うことが共同の目的と認められ、あるいはこれに沿うものと認められる会社もあり得ると考えております。

 結局、このような会社と認められるか否かは、当該共謀が行われた時点における団体の活動実態、意思決定された犯罪行為の内容、当該犯罪行為を実行する組織の実態などの事実関係を総合的に考慮して判断されるべきものというふうに考えられます。

枝野委員 ちょっと申しわけないけれども、繰り返し申し上げますが、答弁していただかないとこれ以上質問できません。

 いいですか、個別具体的に判断しなければ、それはそうです。個別具体的に判断するときの判断基準、条文上とか、どこかでちゃんと出ているんですかということを私はお尋ねしているんですよ。

 つまり、どういうときには、それは詐欺行為、例えば民間企業の金もうけ、金もうけという目的で正業をやるのも詐欺をやるのも一緒じゃないですか、目的という意味では。どっちもお金もうけでしょう。首を振っているけれども、どうしてそれが、正業である限りはお金もうけが目的である、詐欺をほんのちょっとだけやっているんだったら詐欺は手段でしかないと。

 何である瞬間から、どこの基準を超えたら詐欺行為を行うこと自体が目的になるんですか。そこは何にも書いていない。「共同の目的」と書いてあるだけで、その共同の目的の中身というものが、今のように、手段があるときから目的に変わる、どこまでが手段で、どこからが目的に変わるんですか。このことについて、何の説明も受けていないし、何の条文上の基準も書いていない。

 この答え、つまり共同の目的というものが、手段と思われるものと目的と思われるもの、どこでどう区別をするのかということについての判断基準を示していただかないと、これ以上質問できません。

塩崎委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 富田副大臣。

富田副大臣 今の御質問をこちらとして十分理解できているかどうかわかりませんが、先生の質問の中でも、手段と目的がどこで境があるのかというのははっきりしていないんだと思うんですね。

 つまり、金もうけの目的、それを詐欺的にどの程度行った場合に共同の目的になるんだという、その境がはっきりしないじゃないかというふうにおっしゃられているんだと思うんですが、そこはやはり個別具体的な事案で総合的に判断するとしか言わざるを得ないと思うんですけれども。

枝野委員 それじゃ判断にならないから、この条文じゃだめだと私は言っているんですよ。「共同の目的」という言葉で、手段にすぎないものも抱え込んでしまおうという条文なんかつくっているから、わけわからなくなっているんですよ。「共同の目的を有する」というところで、犯罪性を帯びているかどうかということをけっているわけです。つまり、真っ当な目的だったらここで入らないんですよということを共同の目的のところで切ろうとしているわけですよ、皆さんは。それは間違っているんですよ。

 「共同の目的」ということでここに置くんだとしたら、その共同の目的は、いい目的だろうと悪い目的だろうと、とにかくこれは一つの団体の定義ですから、一つの組織集団については、やはり共同の目的を持っているから団体としての組織性を持つので、これは価値中立的な言葉としてこの「共同の目的」という言葉は使わなきゃいけなくて、さっきの話のように、つまり、これは凶悪な組織犯、まさに犯罪集団であるからこれの対象だ、これは犯罪集団ではないから対象にならないというのは、別にもう一つ言葉を使って仕分けをするような文言を入れないと、幾らやっていても多分ここの区別はつかないと私は思いますけれどもね。

富田副大臣 今、先生の方で価値中立的な概念だというふうにおっしゃいましたけれども、この共同の目的というのは事実の認定の問題であって、ほかの罰則においても、例えば行使の目的等の事実認定についても、その基準は法定されておりません。これは事実関係でどう判断するかというのが残されていますので、この文言から全部わからなきゃいけないというものではないというふうに考えますけれども。

枝野委員 時間になったんですけれども、非常に時間をロスさせられているので非常に不満なんですが、今の話も多分、副大臣はわかっておっしゃっておられたんだと思いますけれども、行使の目的と共同の目的というのは全然違うじゃないですか。行使の目的というのは目的がはっきりしているんです、行使という目的なんだから。行使という客観的な行動に対する目的じゃないですか。共同の目的の目的は、この目的の中に手段まで入れ込んじゃった解釈をしているからおかしいと言っているんであって、今の例なんて、全く前提になっている水準が違う、次元が違う話を持ち出して混乱させないでください。

 いずれにしても、とにかく全く、これは多分私が聞いているだけではなくて、聞いていらっしゃる方も中立的に聞いていただければ、それはどこまでがどうなるのと、ますますわけわからなくなったと思います。

 私は、この条約のときには賛成をした立場ですから、こういう法律は必要だと思っていますが、よほど丁寧にきちっとつくらないと、二重、三重に引用をして、こうやって枠がはまっています、それで、詰めていったらこういうふうにわけわからなくなってくる。もう一度構成要件というか、多分、法律の組み立て自体から組み立て直した方が、わかりやすくてみんなから祝福される法律になると思いますよということを申し上げて、きょうの質問は終わります。

 以上です。

塩崎委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 先日の質疑で、共謀には未遂があるのかということを大林局長に伺いましたが、共謀という行為によって直ちに既遂に入ってしまう、したがって未遂という概念はないんだ、こういうお答えをいただきました。そうすると、共謀という行為は瞬間的に成立すると考えていいんですか。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

大林政府参考人 共謀が成立するまでにはいろいろな過程をたどるものと考えられます。委員がおっしゃるように、今のようないろいろな、この間から申し上げているとおり、当該事案における具体的な事実関係に基づき、その目的、対象、手段、実行に至るまでの手順、各自の役割等、具体的な犯行計画を現に実行するために必要とされる各種の要素を総合的に考慮することになると思います。

 ですから、まだ完成しないような状態のところを恐らく委員は未遂ではないかとおっしゃられているんだと思いますけれども、一応今のような共謀の定義に当たる、完成した時点をもって共謀が成立する、こういうふうに考えれば、成立した段階をもって直ちに成立しますので、未遂という概念を入れる余地はないのではないか、このように考えております。

保坂(展)委員 では、今の答弁どおりに考えると、共謀の合意を得るまでに時間を要するものもある、こういうことですね。もしあるのなら、共謀の未完成という状態はあるわけですね。

大林政府参考人 それは、まだ共謀として成立していないという段階はあろうかと思います。それについては共謀罪は成立しないということになろうと思います。

保坂(展)委員 未完成というのがあるというんですが、前回、私は例を挙げて、オートバイを使ってひったくりを繰り返している若者たちのいわば集団、この集団が黒シャツ党と名乗っていたというような例を挙げながらお聞きしました。次はどうしようか、こういう段階ではまだ提案なので共謀罪は成立しない、こういう答弁でした。十二時、あの駅裏、いつもの手順で、これもまだ不十分だということでしたが、そこで今出てくるんですね。繰り返し継続してひったくりをやってきたので、もう打ち合わせはできているというか、もう不要である。オートバイは二台あるいは三台、だれが運転している、だれが後ろに乗る、これはもう別に細かくやる必要ない。だから、いつもの手順でなんということを言わなくても、いつどこでというのだったら、これは成立するとおっしゃいましたよね、そういうふうに厳密に見ていけば。

 しかし、その後わからなくなるのは、やはりその時間は別のグループが来るからやめようかというとどうだろうかと言うと、二通りあるとおっしゃったんですが、このあたりで話を聞いている限りにおいては、思考過程とおっしゃいましたね、なので当たるかどうか、このあたりがよくわからなかったんですが、もう一回説明していただけますか。

大林政府参考人 二通り考えられるのではないかというふうに思います。

 一応共謀としては完成しました、ただ、その後の事情の変化によって、ああ、今回はやめましょうということになった、そういう事案については、共謀は完成していますから共謀罪は成立すると思います。ところが、今の、いろいろな過程を経る中で、それが最終的ないわゆる共謀としての完成まで行っていなくて、まだいろいろな思考、今おっしゃられたようにAかBかという選択の余地があるという状態においてとまっている場合には、それはまだ共謀罪とは言えないという段階もあろうかと思います。やはりそのときの当てはめといいますか、事実関係次第ではないかというふうに思います。

保坂(展)委員 というと、共謀罪というのは一場面だけで成立するものではないというふうにも聞こえるんですが、しかし、一番最初のやりとりだと、共謀というものが一たん成立してしまったら、成立してしまったらなんですが、どこでそれが成立してしまったらなのかということが一番わからないわけです。

 例えば、二時間にわたって相談をした、じゃ、こうやろうと。その後、何かコーヒーブレークでもいいです、三十分、一時間置いてまた集まって、やはりこれはちょっと冷静に考えたらやめようという場合はどうなるんですか。これは、今言ったように当てはまらないというふうに考えていいんですか。

大林政府参考人 今おっしゃられる例、これは本当に事実関係次第だと思いますけれども、冷静に考えたら、これまた言葉の問題でございます、冷静に考えたらというような一般的な用語で言えば、まだ完成していなくて、一つのぐるぐる回っているようなイメージを私は持つんですね。

 ただ、ある程度の犯罪実行の具体的なものは決まりました、ところが、ある事情でやめました、これは共謀罪が成立すると思います。それから、さらにまた、発展的な別な共謀罪が成立する場合もあると思います。それがまた全体的に一罪になる場合もあろうかと思います。それはやはり、要するに形、抽象的な言い方をすると、それなりの犯罪実行をするための一つのある程度の具体的な要件として一応形づくりました、そういう段階は共謀罪は成立する。ただ、今のように、反省したりいろいろな工夫がまだあるというような段階であるならば、まだそれは共謀の作成途中ということで、共謀罪のいわゆる既遂とはならないのではないか、そういうふうに思います。

保坂(展)委員 共謀罪は未遂はあり得ないんだという話だったんですが、そうすると、中止はあり得るということですね。

大林政府参考人 法案の共謀罪は重大な犯罪を実行することについての合意がなされた時点で既遂に達するということでございますので、共謀後に翻意しても、既に既遂に至っている以上、中止犯とはならない、このように考えております。

保坂(展)委員 何か突然ちょっとトーンが変わりましたね。今言われたように、かちっと固まる、もわもわどうしようかと揺れているときには当たらないんじゃないかと。

 私が言っているのは、その段階で、かちっと固まる前に犯罪から引き返してくるというのは中止に当たるんじゃないかと。中止犯があるのかどうかというふうに別に聞いているわけじゃないんです。中止と言えないですか、言えるでしょう。

大林政府参考人 先ほども申し上げましたように、もやもやしている段階は、共謀としてはまだ、成立過程にあるわけですから、そのときにはまだ成立もしていないし、逆に言えば、中止という概念を入れる余地もない、こういうふうに考えます。

保坂(展)委員 もやもやしているという中には、やろう、そういう声もあった、しかし、いや幾ら何だってという声もあり、いやそんなことを言ったってやろうよという声もあり、でも全体としてやめた、こういう意思形成がなされなかった、これは世の中で言えば中止というんじゃないですか。

 役所でも、企画を立ててイベントをやろうというときに、やはり成立の時期が短過ぎるからやめよう、これは中止と。会議で中止になったと言いませんか。

大林政府参考人 中止という言葉、一般的な用語としては委員がおっしゃられる中止もあるかと思います。

 ただ、今私が申し上げているのは、要するに、中止犯と刑法で言われて減軽の理由になるものについては、基本的には、着手してそれをとめるという形になるわけですから、今のような、要するに、共謀として成立した以上はもう既遂になってしまうわけですから、それは中止という概念を入れることはできないし、それからその前の段階は、共謀罪そのものがそもそも成立していないわけですから、それはいわゆる中止犯の問題ではない、このように感じます。

保坂(展)委員 そうすると、ちょっと堂々めぐりの議論になってしまうんですけれども、これまで、この共謀罪、団体性の要件を満たして組織として共謀がされる場合には、だれがどうして、どこで集まって、あるいはそれこそ手順ですね、役割分担などを厳密に規定して、それで初めて成立をするんだというお話でした。先日のやりとりで、この共謀の定義ということをめぐってお話しさせていただきましたが、これは共謀共同正犯における共謀の概念とほぼ同一で、言説を要しない暗黙の共謀、あるいは黙示の共謀ですか、黙って、これもあり得る、こういうことでしたよね。

 会議も打ち合わせも言語による指揮命令もなく、暗黙で共謀罪が成立するというのは、どういうケースがあり得るんですか。

大林政府参考人 先ほどからいろいろな、形成過程において、例えば、だれを殺そう、それからどういうグループ、手下で、例えば自宅へ押しかけていって殺そうというような話があったとします。ただ、いつやるかとかいう問題だけが、この間、目でというお話もありましたけれども、時期だけがまだ確定していなかったとします。そうすると、やはり共謀としてはまだ完成したとは言えないと思います。ですから、最後の段階で、例えば実行部隊が、親分、ではきょうやりましょう、それに対してうなずいた、おっしゃられるように、目でそれなりの肯定の合図をした。これは、そこで時期、手段も確定していますから、一つの共謀があったというふうな事例になるんじゃないかと思います。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

保坂(展)委員 ちょっと法務大臣に聞きたいんですけれども、共謀罪というのは実行がないんですね。だから、目くばせしたって、今おっしゃったように、それは相談していたかもしれない、しかし、目くばせをしたからといって果たしてその犯罪が実行されるのかどうか。我々が今まで聞いてきたのは、目くばせとかせき払いとか、あるいはすくっと立ち上がったとか、その程度で瞬間的に共謀というのが成立するとは思っていなかったんです。ただ、厳密にいろいろ要件を絞り込んでいくと、瞬間的に目くばせでもあり得るということなんですね。そういうふうにとらえていらっしゃいましたか。

南野国務大臣 ケースによって、十分に合意ができる仲間たちであれば、目くばせでも相手に自分の意思が伝えられることもあろうかなというふうにも思います。

保坂(展)委員 では、局長でもいいです。そうすると、その目くばせが、では果たしてその犯罪当該行為の実行に向けての目くばせだったのかという立証は非常に難しいですね、実際のところ。

 こういった、目くばせというのは行為ですけれども、目くばせもない、要するに暗黙の合意というんですか、あるいは会議も打ち合わせも目くばせも何もない、これも一応共謀として共謀共同正犯だと認められているんですね、一部最高裁の判例で。この点も同じですか。

大林政府参考人 これまで申し上げているとおり、共謀の内容が具体的、現実的な合意をした場合に成立するということでございます。

 ただ、一つ申し上げておかなきゃならないことは、先般も申し上げたんですけれども、いわゆる一般犯罪の共謀とそれから共謀罪の共謀と異なるところは、共謀の方は団体要件がついていますから、例えば役割分担とか、そういう団体に伴う共謀の内容まで含んでこなきゃなりません。

 ですから、例えば二人が単純な窃盗の共謀の場合はおうで済むかもしれません。ただ、共謀罪の方の共謀というのは、今のような、団体性を満たすようなものが要件に加わってきますから、だから、そういう面では、同じ共謀という名前を使っても多少の違いはあるのかなと。ですから、今おっしゃるように、ずっと黙ったまま、目くばせで役割分担とかそういうようなことまでが決められるのかどうかという問題があろうかなと。だから、そういう点では、なかなか現実的には、共謀罪の共謀というのはそこで本当に成立するのかなという問題はあろうかと思います。

 ただ、基本的な共謀の考え方は同じであろうというふうに思います。

保坂(展)委員 では、その犯罪を繰り返していた団体性の要件を満たした組織のトップあるいは幹部が、いわゆる犯罪計画がなされているのを知っていた、あるいは黙認をしていた場合はどうですか。

大林政府参考人 今おっしゃられる事例で、黙認でも、ほかの者がある程度具体的には知っている、最終的な問題でやろうという決断を団体の責任者として決断したというときには、やはり合意が成立した、そういう場合もあろうかと思います。

保坂(展)委員 居酒屋で話をしなくても、黙っていても、目くばせ、せき払い、あるいは何も会話なしというのでも、場合、ケースをいろいろ重ねていけば成立し得るという非常にわかりやすい答弁だったと思うのです。

 局長に聞きますが、政治資金規正法や公職選挙法をめぐる事件あるいは公判の報道等がきょうもきのうもされています。共謀罪は、当然ながら政治家の関与も除外していませんよね。

大林政府参考人 政治家の定義もあろうかと思いますけれども、それは除外しておりません。

保坂(展)委員 富田副大臣、先ほどのやりとり等を踏まえて、どうですか、除外していないというのはもう明確ですね。

 つまり、例えば公職選挙法上、最近の事例では、例えばアルバイトを雇ってやりましょうというときに、いや、それはちょっと違法と言われていますよ、だけれども、そんなことを言ったら落選しますよといって、それじゃわかった、こういうような場合は該当するんじゃないですか。

 いや、副大臣ですよ。委員長、副大臣。

塩崎委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩崎委員長 速記を起こしてください。

 富田副大臣。

富田副大臣 済みません。ちょっと質問の御趣旨がよく理解できなかったものですから。

 先ほど枝野委員に対して私が答弁したのは、きちんとした目的を持った政治団体がその団体としてどうなのかということを御答弁したのです。今先生は刑事局長に、公務員個人がその犯罪の対象になり得るのかという御質問でしたので、局長は、それは当然なり得るというふうに答弁したので、全然矛盾はしていないと思いますが。

保坂(展)委員 それでは、富田副大臣、今言ったのは、共謀罪について、政治家の関与というのは当然除外されていませんよねということを言ったわけですね。それはいいんですか。

富田副大臣 それはそのとおりだと思います。

保坂(展)委員 それでは、先ほど例示した、団体であっても、例えば選対本部でもいいです、団体ですよね。団体であっても、必ずしも最初から犯罪を目的に設立されていないですよ。しかし、例えば選挙戦後半になって、あるいは選挙戦が近づくにつれて、やはりあるところに踏み出してしまう、そういう会話がなされる、そしてそれを全体として合意がなされるというと、これは共謀に該当するんじゃないですか。そこはあり得ないということをずっとおっしゃってきたように私は聞いたので、確認したい。

富田副大臣 済みません。そこは先ほど来御説明しているように、あり得ないと思います。

保坂(展)委員 政治家が除外されないのに、政治家が主宰している政治団体の中での共謀罪の成立はどうしてあり得ないんですか。

富田副大臣 団体の問題として先ほど来御答弁をしているんですが、政治家が除外されないというのは、政治家個人が犯罪集団の構成員になり得る可能性があるわけですから、そういった意味で除外されないというふうに答弁しているのです。

保坂(展)委員 そんなこと言っていないでしょう。これまで与党の質疑でも、漆原さんの質問でもあるじゃないですか。団体本来の目的はどうあれ、現に、その団体が犯罪行為を組織として実行することを共謀した場合には、その構成要件に当たり得るのではないですかという質問もされているわけですよ。そういうふうに、ある種きちんとした団体であっても、その団体の、全員じゃなくてもいいですよ、一部が変質して犯罪を共謀するということはあり得ることでしょう。何であり得ないんですか。

富田副大臣 だんだん御質問の趣旨が変わってきていると思うんですが、今のような御趣旨であれば、犯罪集団に変容することは事実関係としてはあり得ると思いますけれども、当初の御質問はそういう趣旨じゃなかったと思いますので。

保坂(展)委員 では、そうすると、政治家は除外されないし、公職選挙法やあるいは政治資金規正法上も、例えば共謀の内容としても、全部手はずを整えて、逐一打ち合わせをするということではなく、例えば、大体同じような犯罪行為とされる行為が継続、反復されていた場合には、黙認、これでも成立をするというふうに考えていいですか。

富田副大臣 総合的に判断しなきゃならないので、今の先生の指摘だけで一概には言えないと思いますが、黙認でも共謀が成立する可能性はある。

保坂(展)委員 そうすると、では局長に聞きますけれども、今の共謀罪の提案、政治家の団体あるいは選挙のための団体ということも含めてしっかり見なきゃいけない、こういうやりとりとして確認していいんですか。

大林政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたけれども、共謀罪についての団体、共同の目的というのはやはり慎重になされなければならないと思います。それは、団体というのはこの社会にいろいろな形があるわけですから、その団体の構成員の一部が確かに具体的に相談し、その団体の一部の構成員自体は組織的にやったとしても、それが全部共謀罪に係るというふうには考えておりません。先ほど申し上げましたように、団体というのは、ある程度犯罪的なものを目的としたものであって、それで組織的にやるところに危険性も出てくるという趣旨でございます。

 ですから、今おっしゃるような政治団体云々の場合ですけれども、それはもちろんケース・バイ・ケースなんでしょうけれども、それは選挙運動を基本的にやっている、その過程に一部が選挙違反をやったからということで、その団体が一遍に犯罪集団だ、要するに共謀罪で言う団体あるいは団体の活動になるものではない。

 要するに、やっているもの、正規の、正当な犯罪にならない目的について全く放棄しちゃった、前の例だと、例えば正規の商社がある、それが倒産しちゃった、もう収入の道がない、あとは詐欺しか生きられないということで全員で詐欺をやった。これはもう犯罪集団と言えるんですけれども、だから、変質したというのは非常に認定というのが証拠上難しいんじゃないかというふうに私は考えております。

保坂(展)委員 今の局長の答弁というのは、この法案の法文のどこを見ればそのように書いてあるんですか。どこでそれが読めるんですか。

大林政府参考人 それは、組織的犯罪処罰法の定義、「団体」と「団体の活動」、これはあくまでも犯罪に向けて、その団体が今の組織性とか反復性とか、それから一部の実行部隊、それが犯罪をするという、次の犯罪のところに結びついて構成要件になっているわけですから、当然犯罪を前提としている、そういう集団であるというふうに考えなければおかしいと私は考えております。

保坂(展)委員 犯罪を前提にしている集団だけに限られた今回の法律ですか。そうじゃないということでこれだけ議論が混迷しているんじゃないんですか。

大林政府参考人 何度も恐縮でございますが、団体の活動として行われ、かつ、犯罪行為を実行するための組織により行われる犯罪を実行することを共謀したことを構成要件とする。「団体」とは、処罰法の二条一項において、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体」等と規定されています。それから、「団体の活動」とは、三条一項において、「団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。」と規定されています。

 このような規定からしますと、「団体の活動として、」という要件を満たすためには、犯罪行為を行うことを共同の目的を有する団体として意思決定することが必要であり、したがって、犯罪行為を行うことがその団体が有している共同の目的に沿うものであるということが必要である。言いかえれば、団体が有している共同の目的が犯罪行為を行うことと相入れないような正当な団体については、仮に、たまたまその団体の幹部が相談して犯罪行為を行うことを決定したとしても、共同の目的を有する団体として意思決定したとは言えないため、「団体の活動として、」という要件を満たさず、共謀罪は成立しないと考えられます。

保坂(展)委員 今の答弁だと、例えば中規模の工務店は正当な目的で設立されているわけですね、工事を請け負って建てていくと。ただ、一部、例えばあるセクションがリフォーム詐欺を手がけたということだと、これは当たらないということで整理できるんですか。

大林政府参考人 そこは、私、先ほども言いましたけれども、一つの線引きが必要だと思います。

 それは理論的に詰めていけば、委員がおっしゃるように、混合形態があろうかと思います。ただ、それをしていたのでは、今の団体の活動、それから今の目的ということからすれば、非常に、両方併存するような場合というのは、やはりこれは正当な活動であるというふうに見ないと、それは先ほどのような、例えば一部の者がやればもう団体の性格が変わってしまう、そういうものではないというふうに考えています。

保坂(展)委員 そうすると、そのリフォーム詐欺が業績を上げますよね、これは詐欺ですから。不況ですから、社長が、なかなか頑張っているな、ちょっとおかしなことをやっているなと、中身を知ったが放置しておいたという場合も該当するんですか。

大林政府参考人 これは、団体の活動としてそれを認容した、それでその間に合意ができたと認定される場合、そういう前提条件であれば、そういうこともあり得るかなと思います。

保坂(展)委員 そうすると、政治団体も同じですね。

大林政府参考人 政治団体ということについては、いろいろな定義もあります、公職選挙法上の問題もあります、それから政治団体を標榜している団体もあります。ですから、一概に政治団体ということはなかなか言えないんじゃないかと思いますが。

保坂(展)委員 ちょっと、さっきのやりとりがあるわけですから、もう時間もないのでちゃんと答えていただきたいんですが、工務店があって、一部の部課がリフォーム詐欺を始めた、しかしそれは、勝手にやっている部分については共謀までは問われない、しかし、団体としてですから、その会社の社長が、わかった、この調子でやれ、あるいはにやにやとうなずいた、要するに認容していたという場合は当たり得ると言っているわけでしょう。だから、工務店と政治団体や選対本部も団体としては変わらないでしょうと。

大林政府参考人 今の設例を整理してみますと、今委員がおっしゃるリフォーム詐欺の方が、仮に両方併存してやっていた、リフォーム詐欺はもうかる、それでその会社の意思決定として、もうこれでいきましょう、これからうちはリフォーム詐欺だけでいきましょうというような状態であれば、それは今の共謀罪は成立すると思うんです。ただ、併存した場合の認定は、先ほどから申しているとおり、非常に難しいことがあると思います。

 ですから、先ほどの政治団体として違反があるという場合であっても、政治団体としての目的なり活動をしている場合に、一部に犯罪があったからといって共謀罪が成立するとは言い切れないんじゃないか。やはりそれは、ケース、ケースがありますけれども、ただ、今のような、おっしゃるような、政治団体として活動している場合にこの共謀罪の適用があるというのはなかなか困難じゃないかなというふうに思います。

保坂(展)委員 そうすると、全然わからないですね。さっき、リフォーム詐欺の事例を挙げて、一部はならないと。しかし、リフォーム詐欺が業績を上げて、社長も暗黙で了承したという場合はあり得ると言ったじゃないですか。それは要するに、政党であろうが選対本部であろうが同じでしょう。違うの。

 では、何か除外規定があるんですか。除外規定があるのなら教えてください。

大林政府参考人 私が申し上げているのは、今の事例から援用される場合には、パラレルに考えなきゃいけないと思うんですね。今のように、工務店が、工務店の作業をやり、リフォーム詐欺をやった。ところが、リフォーム詐欺はもうかるから、もう一本やりでリフォーム詐欺でいこうと言った。その例を言うならば、政治団体であれば、政治団体の行動と、例えば片方、詐欺とか恐喝とかをし出した、こっちがもうかったから、もう政治団体の名目だけで実質は恐喝だけをやりますという形になれば、もうそれだけしかやらない、政治団体のあれはほうり投げたというような状態であれば、それは共謀罪が成立すると思います。

保坂(展)委員 もう整理しますけれども、そのリフォーム会社のやつは、もうリフォーム詐欺でうちはやりますなんといったら摘発されるに決まっているので、そんなことはやらないわけですよ。あくまでも正当を装うわけですよ。うちは地道にやっていますという会社なんですよ、だけれども、実態は、一部組織で始まったその違法行為が膨らんで、社長なり経営者は黙認しているという状況。

 では、公職選挙法違反で、アルバイトを何人も雇って運動させろということを一部の組織が始めて、その一部の組織のやっていることを黙認したり、知りつつ中止させなかった場合ということは、同じ構成要素じゃないですかということを言っているんですよ。

大林政府参考人 今おっしゃられるのは、ちょっと違う要件が加わっていると思うんですね。先ほど言いましたように、表向き標榜するという問題と今の団体の性格的な変質とはちょっと違う。それは、正規の会社の看板なりを掲げて、表向きそう装っているということと、実態が真っ黒の詐欺集団だという問題。今の政治団体もそうですよ。表面的には一応掲げている、だけれども中身は犯罪集団に化している、それは共謀罪になる場合があると思いますよ。それはちょっと、私の感じでは、表向きはどうかということとはちょっと違うと思うんですけれども。

保坂(展)委員 もう時間がないのでやめます。

 ただし、ずっと聞いていてもわけがわからない。この間のやりとり、ぜひちょっと整理をしていただきたい。先ほどの枝野委員とのやりとり、河村委員とのやりとりも含めて、政治団体は当たらないというふうにおっしゃっていましたし、また、今の最後のところではあり得るという話も出ました。ぜひ統一をして示していただきたいということを委員長にお願いします。

塩崎委員長 はい。

 大臣から発言を求められております。南野法務大臣。

南野国務大臣 先ほど、小川委員からの御質問に対するお答えで、少し言い足りない部分がございましたので、補足させていただきたいと思います。

 法制審議会の定員は二十名ですが、現在十九名の方がおられます。そのうち、弁護士の方は一名です。また、当時の法制審議会の刑事法部会の人数は十五名で、そのうち、弁護士の方は二名おられます。

 それだけ訂正させてください。

塩崎委員長 次回は、明二十六日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十八分散会


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