衆議院

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第7号 平成18年3月17日(金曜日)

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平成十八年三月十七日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 石原 伸晃君

   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君

   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君

   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    太田 誠一君

      笹川  堯君    下村 博文君

      林   潤君    平沢 勝栄君

      三ッ林隆志君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      石関 貴史君    枝野 幸男君

      河村たかし君    津村 啓介君

      細川 律夫君    伊藤  渉君

      保坂 展人君    滝   実君

      山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   法務副大臣        河野 太郎君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    小林 武仁君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     林   潤君

同日

 辞任         補欠選任

  林   潤君     柴山 昌彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)


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     ――――◇―――――

石原委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、警察庁警備局長小林武仁君、法務省刑事局長大林宏君、法務省入国管理局長三浦正晴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平沢勝栄君。

平沢委員 おはようございます。

 杉浦大臣初め関係者の皆さんには、本当にお疲れさまでございます。時間が限られていますので、できるだけ簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。

 今回の入管法の一部改正は、おととしの十二月に政府が決めましたテロの未然防止に関する行動計画、これを踏まえて所要の改正を行うわけでございますけれども、とりわけポイントとなるのがテロ対策でございます。国際テロ組織アルカイダは日本の中心部をねらうということも言っておりまして、日本もテロには無縁ではないわけでございまして、この点については、これからおいおい質問させていただきたいと思います。

 今回の法改正は、国民の生命と安全を守るといいますか、テロの未然防止策をこれから不断に見直していく、そういった観点から極めて意味のあるもの、まだまだ不十分な点はありますけれども、大きな前進、第一歩であるかなという感じがしております。

 まず、杉浦法務大臣にお伺いしたいと思いますけれども、今回の法改正について、この趣旨といいますか意義について、大臣はどういうお考えをお持ちか、御所見をお伺いできますか。

杉浦国務大臣 今回の法改正内容は、先生御指摘のとおり、テロ対策、未然防止に大変有意義なものだと思っております。

 内容についてはこれから御審議願うわけですが、電磁的方法による本人の同一人性の確認、それによって私どもの保有する要注意人物リストとの照合が容易になります等々の利点がございます。また、これは入国の問題だけじゃなくて、政府全体として取り組んでおります治安対策、外国人犯罪対策及び不法滞在者対策にも資するというふうに考えております。

 ただ、これはまだ途中経過で、途中経過といいますか、不断の見直しを行って努力していかなきゃならない問題だと思っております。

 ちょっと時間をいただいていいですか。

 韓国はもっと進んでいまして、この間一月に行ってびっくりしましたけれども、韓国は住民基本台帳に写真を貼付しているんですよ。日本から要請されてやったんだと言っていましたけれども。ですから、韓国人のパスポートも基本台帳につなげて、ぱっと接続するんですね。これは日本ではちょっとできませんけれども、住民台帳に写真貼付なんかは。

 まあ、いろいろ申し上げたいけれども、韓国は非常に進んでおる。我々のパスポートも、写真の部分はさっと記録しまして、帰るときにすっと照合するんですね。各国ともさまざま努力しておりますので、国際協調をしてテロの問題等々対応する必要があると思っております。

平沢委員 今回の法改正の中で、生体情報の提供を義務づけているわけです。ポイントは指紋と顔写真になってくるわけですけれども、一部、例えば日弁連なんかは、顔写真の提供についても相当慎重にやるべきだ、ましてや指紋は反対である、こういう形で言っています。

 まず、顔写真と指紋と両方義務づけるその意味はどこにあるのか、一方だけではだめなのかどうか、これについて、法務省、教えていただけますか。

三浦政府参考人 ただいま委員御指摘いただきましたとおり、今回の法改正で、上陸申請時に指紋と顔写真の情報の提供を求めるということを考えておるわけでございますが、これは、旅券の名義人と申請者本人との同一人性の確認でございますとか、要注意人物リストとの照合ということが主な目的になるわけでございます。

 顔写真の情報につきましては、すぐ目の前にいる人間と旅券の名義人との一対一の確認ということについては意味があるわけでございますけれども、要注意人物リストというのが非常に数が多うございまして、これに対して迅速に、なおかつより高い精度で照合を行うということになりますと、どうしても指紋の情報が必要になると考えておりまして、指紋の提供をいただくことが不可欠であると考えておるところでございます。

平沢委員 そういうことだと思いますけれども、今回のこの生体情報の提供の義務づけに関しまして、とりわけ指紋につきまして、憲法とかあるいは国際人権規約上問題があるんじゃないかということも言われているわけでございます。しかし、憲法十三条の規定も公共の福祉で必要性がある場合にはそれなりの制限を受けるのは当たり前のことでございまして、今回の場合は立法目的に十分合理性があるというか必要性があるわけで、私自身は全く問題がないと思っていますけれども、今回のこの提供の義務づけに関しまして、憲法とかあるいは国際人権規約上はどうなのか、それについてのお考えをお聞かせいただけますか。

杉浦国務大臣 日弁連が公式には反対しているのも、先生おっしゃったような趣旨で反対しているわけです。日弁連は非常に幅の広い考えがあって、いろいろな人がいらっしゃるわけですが、建前と本音、本音の部分では私は多くの弁護士の方々はやむを得ないと思っておられるとは思うんですが、根拠とされているのは最高裁判例でございます。

 平成七年、八年、例の外国人登録法の問題の前に出された判例ですが、そこで、何人もみだりに指紋の押捺を強制されない自由を有するというべきである、国家機関が正当な理由もなく指紋の押捺を強制することは憲法十三条の趣旨に反して許されないという判示をしておるわけですけれども、他方、同じ判決で、その自由も、国家権力の行使に対して無制限に保護されるものではない、公共の福祉のため必要がある場合には相当の制限を受けることは憲法十三条に定められているところであるとも判示いたしております。

 先生のおっしゃったように、今回、状況の激変、国際情勢、国内の激変を受けて、国民の生命と安全を守るために、テロを未然に防止しなきゃならないう見地から、外国人の上陸審査時に指紋の提供を義務づけることは立法目的に十分な合理性があると、先生おっしゃるとおり私どもも考えております。

平沢委員 いや、日弁連の言うのはとんちんかんなんですよ。だから、聞いてやることないんですよ。

 では、言いますけれども、国際人権規約に違反していると言っていますでしょう。アメリカは国際人権規約を締結しているんですか、どうですか。アメリカは、もう既にビザの段階、入国段階でやっているじゃないですか。アメリカは締結しているにもかかわらず、国際人権規約に違反しているんですか、日弁連が言うように。これをちょっと答えてください。アメリカは、国際人権規約に違反しているということで国際的な批判を受けたことがあるんですか。日弁連はそう言っているんですから。ちょっと教えてください。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 米国におきましては、二〇〇四年の一月五日から、いわゆるUS―VISITということで、上陸申請をする方から指紋情報、顔情報を電磁的に取得する、また、さらにそれに加えて、査証の申請時にも同じように指紋情報等を採取しているわけでございます。これにつきまして、既に二年以上の運用実績がございますけれども、これまでに市民的及び政治的権利に関する国際規約、今委員御指摘のいわゆる人権規約違反だというような国際法上の問題が生じているということは全く承知しておりません。

 なお、米国はこの規約には一九七七年に署名をいたしまして、一九九二年に批准をしている状況でございます。

平沢委員 ですから、日弁連が、もし国際人権規約違反と言うなら、アメリカ政府に厳重に抗議したらいいんですよ。何でしないんですかね。私はさっぱりわかりません。

 それはともかくとしまして、アメリカが、今のお話では二〇〇四年の一月から始めた。そうしたら、二年ちょっとほど実際に運用の実態があるわけですけれども、その間の運用の実態といいますか、その間の実績といいますか、何か効果があったのかどうか、これについて、もしわかっていれば教えてください。

三浦政府参考人 本年一月二十五日に米国政府から公表された数字がございます。これによりますと、二年余りの期間に、四千七百万人以上の申請者を対象にいわゆるUS―VISITを実施したということでございます。この生体情報の活用によりまして、一千人以上の犯罪者等を入国審査の段階で摘発している、こういう報告がなされております。

平沢委員 二年ちょっとの実績でそれなりの効果があったということなんですけれども、日本でも同じような効果があると思われますので、テロ対策の面は当然のことながら、私は、犯罪捜査あるいは不法滞在者対策等でいろいろと効果があるんじゃないかなと。

 そこで、まず第一にお聞きしたいのは、国際テロの面でどういう効果があるかということなんです。

 きょう、警察庁、来てもらっていますけれども、国際テロというのは、先ほど言いましたように、アルカイダは日本をねらうと言っているんですけれども、まだ幸いなことにねらわれていないんですけれども、今まで、国際テロ、特にイスラム過激派のしわざであるというような犯罪が起こったことはあるのか、あるいはこの過激派の連中が日本に入国したような実績があるのかどうか、これについて、警察庁、お答えいただけますか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国で過去に発生した国際テロリストが関与した可能性がある事件として、一つには、昭和六十三年三月に発生しましたサウジアラビア航空事務所及びイスラエル大使館付近における、私ども、千代田区内同時爆弾事件と申しておりますが、この事件で大変高性能の爆薬が使われまして、この事件がそれに該当するのではないかと思います。

 また、平成三年七月に発生いたしました、茨城県内の筑波大学構内における、その当時、「悪魔の詩」という邦訳者の殺害事件に関しまして、これも、現在捜査中ではありますが、同書の出版に反発する世界各地における動きが当時ございまして、また、殺害形態も非常に特異なものであるというようなことから、それとの関連性も含めまして、現在捜査中ということであります。

 また、入国でそういうような者を阻止すべきといいますか、その際に阻止できるかということでございますが、一つ、最近、アルカイダの関係者が日本にひそかに入国しておりまして問題になった事案がございます。

 これは、フランス等から殺人、爆弾テロ未遂等の罪でインターポールを通じて国際手配されておりましたフランス人のリオネル・デュモンというのがおるわけですが、この男が平成十一年九月以降、我が国に不法に出入国を繰り返しておりました。他人名義の旅券を使用していたために、我が国への入国が判明しなかったわけでございます。

 こういうことに対しまして、当時、デュモンに対しては、インターポールから指紋つき手配書が配られていたわけですね。その手配事実を私どもは入管の方に通知しておったわけではございますが、仮定の話ではございますが、その当時、入国審査時に指紋採取を行い、手配されていた指紋と照合することができたならば、他人名義の旅券を使用したとしても、同人の入国を阻止することができたんじゃないか、可能性があったのではないかと考えております。

平沢委員 今のアルカイダ関係のフランス人デュモンの話、あるいは筑波大学の五十嵐助教授の関係、これは今回の法改正と極めて密接に関係していますから、ちょっと敷衍して質問させていただきたいと思います。

 まず、フランス人のデュモン、日本に六回、出入国を繰り返していたんでしょう。警察庁に確認しますけれども、警察庁はインターポールから手配を受けていたんでしょう。指紋の提供も受けていたんでしょう。にもかかわらず、偽造旅券で入ってきたから、全然、見逃して、日本国内でどんな活動をしていたか知りませんけれども、六回も入っていたんでしょう。それで、これはドイツで捕まえたんでしょう、多分。そうでしょう。

 ですから、ドイツで捕まえられなかったら、これからも偽造旅券で何回も日本に対する出入国を繰り返していたでしょう。ですから、今回の入管法改正、これは警察の立場からすれば大きな意味があると思いますけれども、まず、この問題について一言。

小林政府参考人 デュモンでございますが、最初は一九九九年九月に入国しましたけれども、その当時は指紋つきではなかったんですね。正確に申しますと、その次の二〇〇二年三月に入国した際、インターポールの手配の中に指紋というものがございまして、それ以降の入国が五回ございます、委員御指摘のとおり。だから、それについては阻止できたのではないか、こういうふうに思います。

平沢委員 ですから、こういう国際手配されて、指紋の提供も受けていて、それを全くチェックできないで、自由に出入国できるという今までの出入国管理体制が極めておかしかったんじゃないかなと。

 そこで、もう一つお聞きしたいんだけれども、今の筑波大学の五十嵐助教授が殺害されたケース。

 警察庁は言いにくいから、私の方から言いますよ。これは、イスラムの過激派がやったことでほぼ間違いないんじゃないですか。まず、殺害の手口をちょっと説明してくださいよ。殺害の手口からして、イスラムの過激派であることは間違いない。

 それから、警察庁が言わないから、もっと私から言いますよ。当時、指紋がいろいろ残っていて、その研究室に出入りする人間全部チェックして、それでもわからない指紋が残っていたんですよ。この遺留指紋を照合すれば、犯罪を犯して逃げちゃったらどうにもならないわけだけれども、もしそれが照合できれば、捜査には大変なプラスになったと私は思うんですよ。

 ですから、今回のケースに関して、コスト的にどうのこうのと言う人がいますけれども、警察官をどれだけ使ったんですか、この五十嵐助教授の事件で、この警察官が足らないと言っているときに。どれだけ使って、そして、その人件費だ労力だ何だと考えたら、莫大なものがあるでしょう。それを考えたら、今回のコストがどのくらいかかるか知りませんけれども、犯罪捜査の面でも極めて安いと思うんです。

 まず、この五十嵐助教授のケース、これは私はイスラム過激派で間違いないと思うんだけれども、そして、遺留指紋も残されていたんじゃないですか。しかも、だれだかわからない。だって、研究室に出入りする人間なんて決まっているんだから、その指紋と照合すれば、これはだれのものだろうという、わからない指紋が残っていたはずなんですよ。まず、それをちょっと答えてくださいよ。それで、それはイスラム過激派であることに、私は殺害の手口から間違いないと思いますけれども、どうですか。

小林政府参考人 委員は大変この事件にお詳しいので私からコメントするのもなんでございますが、基本的に、先ほど申し上げましたように、その当時、世界各地でそういった「悪魔の詩」の問題をめぐる反対動向がございまして、日本でもあったわけですね。

 それから、遺留指紋について、これはまだ捜査中でございまして、答弁を差し控えさせていただきますが、私どもはそういうことも視野に入れて、現在もなお捜査中ということをお答えしたいと思います。

 それから、捜査経済の話もちょっと一言だけ言わせていただきますと、事件認知当時から、茨城県警察においては、刑事部長を長とする百名体制でございます。百名体制で、警備、刑事の合同の捜査本部をつくってやっておりました。

 委員よく御存じのように、捜査本部をつくるということは、警察本部から所轄の署から、もうあらゆる人を動員し、かつ、資機材を動員してやるわけですね。集中的にやるというふうなことで大変なコストがかかるわけでございますし、また、捜査本部事件は一たん設置しますと、やはり中には、複雑、大変困難なもの、長期にわたるものも本件のようにあるわけですね。そんなことで、コストというものを数字には出せませんが、大変なコストがかかることは事実でございます。

平沢委員 警察庁は言いにくいでしょうけれども、当時、これはもう世界の常識なんです。「悪魔の詩」の関係で、これはイスラムの過激派がやったものであろうということは、当時からずっと言われていたんですよ。当時の報道をずっと見てくださいよ。

 それで、捜査本部の人は、警察は言えないでしょう、だから私から言いますけれども、捜査本部員も、みんなそういう感じを持っているんです。あの殺害の手口が、羊を殺す手口じゃないですか。日本人が殺害するときの手口で、今まであんな例はないんですよ。その辺のことも踏まえて、今回の入管法改正には大きな意味があると思うんです。

 それで、犯罪捜査の関係でもう一つお聞きしたいと思うんですけれども、今、日本で犯罪を犯して国外へ逃げていったという手配中の者、これはどのくらいいるんですか。要するに、日本国内で犯罪を犯して、今逃げていることがわかっている、これは恐らく、指紋でわかったんじゃなくていろいろな状況でわかって今手配している人間。この連中はまた偽造旅券だとか何かで再入国する可能性大いにありだと思いますけれども、どのくらいいるんですか。

米田政府参考人 昨年末の時点での国外逃亡被疑者の総数は八百十九人、うち外国人が六百五十一人でございます。

平沢委員 この六百五十一人というのは、当然、また再入国してくる可能性大いにありだろうと思います。先ほどのデュモンじゃないですけれども、ドイツで捕まって、日本では偽造旅券で何回も出入国を繰り返していたわけですから。

 それで、法務省にお聞きしたいんですけれども、不法滞在者、今二十五万人いますね。これを平成二十年までに半減すると総理も施政方針演説で言っている。半減したところで、十二万五千人ですよ。その中には、不法残留者とそれから三万人の不法入国者がいるんです。

 不法入国者というのは、偽造旅券で入ってきているか、あるいは他人の真正な旅券に成り済まして入ってきている連中でしょう。これが三万人もいるんです。これを、政府のあれでは半減して一万五千人。不法残留じゃなくて不法入国、偽造旅券や成り済ましで入ってくるのが一万五千人、平成二十年の目標だと。これはちょっとおかしいんじゃないですか。不法残留はともかく、不法入国はゼロにするというのが目標でなきゃおかしいと思いますけれども、これについて、大臣、どうですか。

杉浦国務大臣 もちろん、先生のおっしゃるとおりゼロを目指しておるわけですが、政府としては、平成十六年から五年間で当面半減を目標にして努力するということを決めたわけでございまして、ゼロを目指していることは間違いございません。

平沢委員 これはゼロにしてもらわなければならないわけでございまして、その目標に向かって今回の法改正がどのくらいの意味があるかということなんです。

 そこで、法務省にお聞きしたいんですけれども、昨年、退去強制手続をとった数はどのくらいあるのか、そのうち、かつて入ってきてまた退去強制手続をとったそのリピーターはどのくらいあるのか、この数字をちょっと教えてくれますか。

三浦政府参考人 平成十七年の一年間で退去強制手続をとった外国人の数でございますが、五万七千百人余りでございます。そのうちの一三%に当たります七千四百七十九人について、退去強制手続の中で調べるうちに、過去に退去強制手続を受けたことがある、いわゆるリピーターであったということが判明しております。

平沢委員 リピーターが七千五百人もいるというのは、ある意味では、国家として異常だと思いますよ。その意味でいえば、一言で言えば、外国に行けば偽造旅券なんかを入手できる国なんて幾らでもあるわけですよ。あるいは、他人に成り済まして入ってこようと思ったら幾らでもそんな旅券が手に入るところはあるわけですよ。ですから、今回は、その意味でいえば、一歩前進かなと。

 しかし、私自身は、先ほど言いましたように、テロ対策あるいは犯罪捜査あるいは不法入国者、こういったものの対策を完璧にとるためには、出国時にも、場合によってはこれをとってもいいんじゃないかと思いますけれども、今のところはこれは入国時しか考えていませんけれども、これについてはどうお考えなのか、ちょっと教えていただけますか。

河野副大臣 委員おっしゃるように、出国時にも指紋を採取することができれば、退去強制その他非常に有益だと思いますし、入管法違反についても非常に有益だと思います。

 ただ、外国人の出国は一応自由でございますので、円滑に外国人を出国させるために、当面は出国時には指紋の採取はいたさない方向でございますが、違う旅券で入ってきたというのは指紋を見ればわかるわけでございますから、そういう人間はブラックリストに載せて、次に入ってくるときにはしっかり入国時に上陸を拒否する、そういう体制で当面は臨みたいと思います。

 出国時の指紋採取につきましては、検討課題として引き続き検討してまいります。

平沢委員 ぜひ将来の検討課題としてよろしくお願いしたいと思います。

 次に、生体情報の保有期間、これについて、日弁連は、入国段階で即時に消去すべきということを言っていますけれども、これでは何の意味もないと思うので、何をとんちんかんなことを言っているのかなと思います。これは必要な期間保管しなかったら何の意味もないと思いますけれども、これについての法務省の御所見をお伺いできますか。

河野副大臣 指紋が、違う旅券で入ってくるときにそれを見破るための重要な個人情報であることを考えると、その人間が生存している期間中は変わらないわけでございますから、基本的に、期間はその人間の生存期間。生きているか死んでいるかというのを日本の政府はなかなかわかりませんので、指紋の最低採取年齢が十六歳ということを考えると、七、八十年は保有したいというふうに考えております。

平沢委員 保有期間はそれ相当の間持っているのは国家として当然のことで、だけれども、期間は私は言う必要はないと思いますので、この辺は法務省にぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 ところで、今回、空港段階、入管段階で、もし、例えばテロリスト、先ほどのデュモンみたいなケースとわかったら、そこで即時に退去強制の手続をとるんですね。これは、私はおかしいんじゃないかなと。例えば金正男が日本に入ってきたとき、入管段階で押さえてすぐ、丁重にですよ、丁重にVIP待遇で北京に送り届けたんですけれども、あれは、やり方として、対応として、非常におかしいんじゃないかなと私は思います。

 本来ならば、テロリストが入ってきたら、後はこれを泳がせて、要するに、今法令でコントロールドデリバリーという、麻薬なんかができますけれども、そういったような形で、日本でだれと接触してどういう活動をするのか、これを全部洗い出すというのをやらなかったら、送り返したって、今度は別の人間がかわりに入ってきて、それで、国内の支援組織というかテロ組織というか関係者というのはそのまま温存されるわけですから。

 ですから、私は、入国段階で強制送還するんじゃなくて、むしろ国内で泳がせるべき、将来、少なくとも今後はそういうふうにやるべきだと思いますけれども、これについてどうお考えですか。

河野副大臣 御指摘のとおり、麻薬捜査その他で一部の例外はございますが、基本的に、上陸拒否の際にはお帰りをいただくことになっております。

 確かに、入れて泳がせるという捜査手法があることは承知をしておりますが、テロリストの場合は泳いでいるうちに国民に危害が加えられるということもあるわけでございますので、長期的に検討課題とさせていただきたいと思います。

平沢委員 いや、それは、泳がせている間にテロに及ぶと言うかもしれないけれども、国内で何かしようとして入ってくるわけだから、その実態が全然わからない方がもっと怖いんじゃないですか。その人間が来なかったら別な人間が入ってくる可能性があるわけですよ、または別な形で入ってくる可能性もあるわけだから。だから、国内の実態を、全容を明らかにする方が大事じゃないですか。どうですか。

河野副大臣 おっしゃるとおりでございますが、泳いでいるうちに万が一逃げてしまって国民に危害が加えられないかということもございますので、少し検討させていただかなければならぬと思います。今すぐにやるというのはなかなか難しいと思います。

平沢委員 その辺は将来の検討課題としてぜひお願いしたいと思うんです。

 今回は主としてテロの未然防止という観点から行われるわけでございますけれども、私が先ほど申し上げましたように、まだまだ、諸外国のテロ法制なんかと比べると、あるいはテロ対策に比べて、私は不十分だなと。

 日本の場合は、犯罪が起こってからいわばそれなりの対応をとるというのが筋ですけれども、テロの場合は、犯罪が起こってからでは、今河野副大臣が言われたように、遅い。だから、テロの場合は、犯罪を未然に防止する、そのために諸外国の場合はいろいろな法整備もできているわけで、例えば、無令状の逮捕だとか、あるいは通信傍受も、今日本は認められていませんけれども、こういったテロについての通信傍受だとかおとりだとか潜入捜査だとかあるいは司法取引とか、いろいろな制度が認められていますけれども、日本は、そういった点からしますと極めて生ぬるいなという感じがします。

 時間が来ましたので、最後の質問にさせていただきます。

 今回の入管法の改正は第一歩ですけれども、これから将来に向かってもっともっと、とりわけテロの面では、あるいは犯罪もこれから非常に凶悪化していきますから、もっともっと制度面の整備が必要になってくると思いますけれども、これについて大臣の御所見を最後にお伺いできますか。

杉浦国務大臣 もう先生のおっしゃるとおりだと思います。さっき韓国のことをちょっと触れましたが、国際協力を緊密にして、各国と足並みをそろえてきちっとした体制をつくる。今はまだ日本は本当に不十分だと思います。今後ともやっていかなきゃいけないと思います。

平沢委員 時間が来たから終わりますけれども、犯罪というのは、特にテロは起こってからでは遅いので、ぜひこれからもよろしくお願いしたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

石原委員長 次に、松島みどり君。

松島委員 自民党の松島みどりでございます。

 私は、一昨年、平成十六年の二月に、この法務委員会におきまして、当時の野沢法務大臣に対して、外国人犯罪が急増している、日本の治安を守るために、外国人の入国審査時に指紋や写真など本人を特定するものを日本当局が確保していくことを考えるべきだというふうに質問いたしました。それに対して野沢大臣が、指紋や虹彩など、生体認証のうち、どれが一番いいか調べて対処していくというふうに答弁していただきまして、それがスタートになってこのような法律の改正に結びついたのではないかと自負するとともに、感慨深いものがございます。

 ただいま平沢委員は主にテロ対策という観点で御質問されました。私は、一般的な犯罪、窃盗やすり、強盗、そしてまた、そういったことがうまくいかなかった際に殺人にまで結びつく、こういった外国人犯罪の増加に対応する観点で、今回の法律について質問させていただきたいと思っております。

 日本の治安がよくなるということは、私たち日本人にとって住み心地がいいことだけでなくて、日本に旅行や投資を望んでいる外国人にとっても、日本が魅力的な国になることはいいことでございますし、そしてまた、日本に住んでいる善良な外国人にとりましても、外人は怖いというような間違ったイメージを不当に抱かれずに済む、そのためにも、この指紋採取による入国管理は必要だと私は考えております。

 まず、河野副大臣に実務的なことを伺いたいと思っております。幾つかまとめて伺わせていただきます。

 まず、生体認証がいろいろあるうち、指紋を選ぶことにした理由は何でしょうか。そしてまた、指紋をとって、どういうときに入国を拒否することになるのか。さらに、全国にこの機械をどの程度設置し、まとめて幾らぐらい金額がかかると考えられているかということを伺いたいと思っております。

河野副大臣 生体認証の手段としてはいろいろなものがございますが、なぜ指紋にしたかといいますと、これまで我が国は、退去強制をいたしました約八十万人に上る外国人の指紋のデータベースがございます。退去強制をした者が入ってくるリピーター率が八人に一人でございますので、今持っているデータと照合をしてそういうリピーターを、未然に入国を防ぐというのが最大の目的でございますので、そのためには、今我々が持っている生体情報を使わなければならないということは指紋ということになります。

 さらに、もう一つの目的でありますテロリストの入国防止ということを考えますと、各国の捜査機関が持っている、あるいは我が国に提供いただくテロリストの生体情報は指紋が圧倒的に多いわけでございますので、そういう意味でも指紋が役に立つ。

 また、顔写真も一緒に入れさせていただきますが、顔写真と比べまして指紋の精度というのは極めて高くなっております。そういう意味から、今回は指紋を選んだわけでございます。

 申しましたように、これまで退去強制を受けた人間、あるいは外国から提供されたテロリストのブラックリストに載っている者は、入国に際しまして、そこで入国を未然に防ぐことになります。

 また、お尋ねの、機械がどれぐらい必要かということでございますが、とりあえず三十四カ所の主要な空港あるいは港にまず機械を設置したい。恐らく、そこにあるブースに設置することになりますと、三百台の機械が当面必要でございます。それ以外に、チャーター便の着きます地方空港にはもう少し簡便な機械を用意して、携帯用のものが何台か必要になるというふうに考えております。

 事務方は年間の費用として約七十五億円必要だというふうに言っておりますが、反応時間をもう少し短くするとか精度を上げるということを考えると、私は個人的に、百億円ぐらい年間に費用をかけさせていただきたいなと思っております。

松島委員 こういった機械は精度が高くないと、そしてまたスピードもないと、入国管理についていらいらして、いろいろな問題が起こりますので、多少お金がかかってもびしっといくものを買えるように、我々議員も一同、予算獲得に向かって頑張っていきたいと思うところでございます。

 次に、また副大臣にですが、上陸を拒否された人はそのまま自費で帰国するのか、その日に帰りの便がないときはどうするのかを伺いたいのと、もう一つございます。今回、航空機の機長や船長に乗客リストの事前提出を義務づけておりますけれども、事前に提出してもらうことによってどのようにいいのか、どんなことが期待されるのか、そしてまた、警察の情報も参考にして協力体制をとっていくのか。二点あわせてお答えください。

河野副大臣 基本的に、上陸を拒否した者は航空会社がその責任と費用で送り返すということになっております。航空会社がその本人に費用の請求をするかどうか、するケースもあるというふうには伺っておりますが、それは航空会社と本人の間でやっていただくということになります。

 それから、その日に便がないということもあるわけでございまして、かつては空港のそばのレストハウスに航空会社の費用でお泊めをいただいておりましたが、例えば日本政府がビザを出している人間を上陸拒否したような場合には、少し官もその費用を持たなければいけないのではないかということで、現在、空港内にそうした施設を設けて、そこにお泊まりをいただくということになっております。そういう場合の飲み食いの費用は航空会社に御負担をいただいているわけでございます。

 それから、事前に乗組員あるいは乗客の名簿提出をお願いするわけでございますが、事前にきっちり審査をすることができますので、厳正な審査ができる。それと同時に、一般の問題のない乗客に関しましては、比較的スムーズに入国審査をすることができるというメリットがございます。そういう意味で、我が国の治安、安全の確保に資することになるのではないかと思っております。

 また、そういう人間が万が一上陸してしまったようなときには、警察としっかり緊密な連携をとってまいりたいというふうに考えております。

松島委員 確認ですけれども、空港内に施設というのは、つまりそこから出ていかれたら困るので、見張りというか、かぎをかけるというか、お泊まりいただくという上品な言葉で言われましたけれども、そんなリッチなものではないんだろうと思って、一応確認でございます。

河野副大臣 お泊まりいただく際には、当局が警備の方の手配はしっかりいたします。

松島委員 次に、質問させていただきたいと思っております。

 先ほど、強制退去させられた人がまたやってくる、リピーター率が八人に一人である。そしてまた、平沢委員の質問に対して警察庁の方から、指名手配された犯人が外国に逃亡する、それが外国人である場合が、昨年は六百五十一人というふうに伺いました。大変な状況だと思います。

 それで、日本には真っ当なビザ、パスポートで来て、日本に入ってくるときは問題なかったということで、指紋をとったけれども、ちゃんと、きちっと日本へ入れた。ところが、その人が日本の中で、ひそかに犯罪を犯したり超過滞在をしていて、そして成り済まして、ほかの人のビザあるいはパスポートを借りて、あるいは盗んで、それで出る。貸した方、あるいはそれをお金を取って貸した人は、後から、なくしましたとか盗まれたとかいって届ければいいわけですから。そうやって成り済ましで外へ出る場合もかなりあると思われます。この成り済ましを防ぐためには、やはり出国のときにも指紋の確認が必要だと私は思います。

 そしてまた、昨年六月に私ども自民党がまとめました新たな入国管理施策への提言の中にも、外国人の出国時に指紋情報を取得することを盛り込みました。ところが、今回の法改正では、出国時には指紋をとることになっていません。指紋をとって調べるということになっていない。これについて疑問があるんですが、お答えいただきたいと思います。

河野副大臣 日本の国の中で犯罪を起こした場合には、次は上陸拒否事由に当たりますので、データベースに登録をして、次回の入国時にはもちろんはねることはできます。

 出国時に指紋をとるべきではないかということで、それは、例えば違う人間のパスポートを利用して出国しようというときに、指紋の採取をすればそれがわかるではないかという御指摘もございますが、基本的に外国人の出国は自由でございますので、余り長い列で、空港で長い列をつくって待って出国審査をしてというようなことがないように、スムーズに外国人の出国をさせなければいかぬということもございますので、当面は入国時の指紋採取ということにしたいというふうに思っております。機械の反応時間ですとか、そうしたことを考えながら、長期的に、出国時の指紋採取についてどうすべきかということはしっかり考えてまいりたいと思っております。

松島委員 わかりました。

 確かに、出ていきたいという外国人をとどめ置くということは難しいかとは思いますけれども、機械の反応時間という言葉がございましたが、もし、反応の早い機械を開発し設置する、それだけの金銭的ゆとりがあるならばやろうということでございましたら、これはまたみんなでバックアップしていきたいなと思っております。

 次は大臣に質問させていただきます。

 昨年、広島の小学校の女の子が殺された事件で、ペルー人が十一月三十日に逮捕されました。このペルー人は日系人ということで、定住者の資格で来日した者でございました。実際に、本当に日系人なのかどうか、向こうでごまかしているんじゃないかとか、そういうことはまだしっかり判明はされていないんですけれども、母国で、ペルーで、同じような犯罪、幼い女の子に対する犯罪を犯した可能性が指摘されているところでございます。

 これまで、どんな資格での入国の場合でも、出入国カードに、例えば成田空港に来たときに、本人が犯罪歴があるかどうかの有無を書くという形で自己申告させるだけだった、その国で犯罪の過去があるかどうかにかかわらず日本に入れていたということを知って、私は驚いた次第でございます。在留資格を与える前に、母国の、その当該国の治安当局から犯罪歴がないことの証明を出させるようにすべきではないかと私は考えます。

 そしてまた、杉浦大臣も、十二月九日の記者会見でそのような意向を述べられています。十二月九日の記者会見でおっしゃったこと、きょうはもう既に三月の半ば過ぎでございますが、もう既に実施されているのでしょうか。

杉浦国務大臣 御指摘の点ですが、あの事件を受けて、その前から、刑法犯検挙人員のうち、定住者の在留資格を有する者がふえているという状況も踏まえまして、緊急の治安対策といたしまして、定住者の在留資格に関する法務省告示を改正することに着手、方針を決め、準備をしてまいりました。

 具体的には、日系人及びその家族が定住者の在留資格を取得する要件として、素行が善良であることを追加いたしまして、委員御指摘のように、本国の権限を有する機関が発行した犯罪歴に関する証明書の提出を求めることといたします。早ければ本年度内にも告示改正を行いたいと考えており、現在所要の準備を進めております。

 なぜこんなにかかったかとおしかりを受けるかもしれませんが、これを改正するために、告示だけじゃなくて、いろいろな関連するものを改正しなきゃならないということで、関係省庁との協議に時間がかかったということでございます。

松島委員 こういう根本的なことが大臣告示というだけで行われるというのも私は非常に不思議ですし、これまでずっと全部うのみにして入国させていたというのも非常に不思議な気はしております。

 おっしゃったように、関係省庁との関係があると思います。しかし、同時に、これは必ず日本の治安にとって必要なことでございますし、そしてまた関係先のいろいろな国の治安当局、こういうことを言ったらなんですけれども、国によっていろいろな体制があると思います。外務省も、一緒に力を合わせて、きちっとされるように、そしてまた、南米の幾つかの国々では、日系人ならば日本に働きに来ることができて、稼ぐことができるということで、日系人であることの戸籍だとか証明書が売り買いされている、そのような報道も多々見られるところでございます。

 このあたりについては、きょう、別の質問のことで伊藤信太郎外務政務官にもお越しいただいておりますが、どうか外務省の方からも、各国に対するその徹底を、そういうことがないようにということをぜひよろしくお願いしたいと思っております。

 先ほど、大臣、大臣告示を今年度中と言われまして、今年度中ということはあともう一週間ちょっとでございますので、ぜひ早々とやっていただき、この点については一般国民からも非常に関心のあるところだと思いますから、これまでひどかったということも率直に認めて、こういう制度、こういう状況だったけれども、こういうふうにしっかりやっていくからということを、わかりやすい形で、記者会見なりその他で新聞にも出るようにしていただきたいと思うところでございます。

 次に、また副大臣に伺いたいと思っております。

 平成十五年十二月の犯罪対策閣僚会議で決定されました犯罪に強い社会の実現のための行動計画、この中で、今後五年間で不法滞在者を半減させるということになっております。もう既に十八年の三月になっております。十六年初めの不法滞在者が二十五万人とされていまして、このうち、これもちょっと一応確認したいんですけれども、密航などによる不法入国が推定三万人で、入国審査に通って入国した者の不法在留は二十二万人と言われています。

 一応、御答弁いただく前に確認させていただきたいのは、不法入国というときに、偽造ビザや偽造パスポートで入ってくるのが不法入国かと私は思っておりましたら、どうやら不法入国というのはそうじゃなくて、不法入国というのは、やみに乗じて入ってくるような、日本の海岸線から入ってくるような人、あるいは空港でこそこそっと入ってくるのを不法入国といって、ビザやパスポートを偽造したり変造したりして来る場合は、不法入国じゃない方の不法残留に入れているというふうに聞いたので、その確認をしたいのと、もう一つ、二年たった今でも不法残留というはっきりわかる数の方は十九万三千人。減った減ったといっても、二十二万人が十九万三千人に減った、これぐらいの程度だということでございます。

 今から三年足らずの間に十一万人まで減らすというのはかなり大変なことだと思うんですが、今回の水際作戦で、指紋の採取の導入でどれぐらい減らせるとお考えになっているか、効果がどれぐらいとお考えになるか、また、この指紋採取以外の方法、例えば税関との連絡を密にするなど、そういう共同戦線を張ることによって不正な入国を減らすことにどれぐらい効果が上げられるとお考えになるか、副大臣に伺いたいと思います。

三浦政府参考人 まず、最初の御質問のいわゆる不法入国、密入国者の関係でございますが、これはちょっと言葉が同じで非常にわかりにくいかとは思いますけれども、偽造パスポートなどを持って成田空港に来まして、入国審査官がこれを見破れずに入国させてしまいますと、表見上は合法の在留ということになってしまいます。したがいまして、統計上は、こういう方は、在留期間内は合法な在留ということでありまして、もしその在留期間を過ぎても帰国しないということになりますと、これはいわゆる不法残留、オーバーステイということで統計に載ってしまいます。

 ですから、先ほど委員がおっしゃったように、いわゆる二十五万人のうちの三万人の不法入国者というものは、そういうところを経ていないということでございますので、まさに夜陰に乗じて船でひそかに上陸した、こういう人たちのことをいうわけでございます。

河野副大臣 今まで別な旅券で入ってきたような人間が、今度は指紋できっちり確認をするということになりますと、そうなかなか日本には入りづらいぞというアナウンスメント効果というのも大いに期待できると思いますし、現実に、そうした場合にはしっかりと入国を押さえることができるというふうに思っておりますので、これはかなり効果があると思います。

 それ以外に、税関等ともしっかりと連携をして、不法に入ってくるような者を水際で押さえていきたい。例えば、短期滞在ですと言って真夏に入ってきて、どうもおかしいというので税関で荷物をあけたら、真冬のものがいっぱい入っていたとか、ワールドカップの日本対イランの試合を見に来たと言ったら、その試合は実はきのう終わっていた、そういうことでイラン人の不法入国を現実に税関との連携でしっかり押さえた、そういう事例もありますので、確かに、十一万人に減らすのは大変だと思いますが、大変だと言わずに、しっかり実現するつもりで頑張ってまいりたいと思います。

松島委員 今、リアルな税関との共同作戦のことも例示を挙げていただきました。荷物をあけさせるという強権は入国管理にないと思いますので、これは税関とも、今や税関は税金を取るところじゃなくて、こういう密輸で悪いことを、例えば、密輸でにせブランドなんか入れないようにとか覚せい剤入れないようにとか、そういうことが主たる仕事になっていますが、こういう怪しげな人が入りそうなときもぜひそうやって力を合わせてやっていただきたいと思っております。

 伊藤外務政務官にお越しいただきまして、伺いたいと思っております。二つございます。

 一つは、日本人のパスポートが、三月二十日、ちょうど来週の月曜日でございます、三月二十日の発行分からIC入りの新しいタイプのものになると聞いております。どんなものであるのか、そしてまた、それが治安対策上どのような効果があるのかを教えていただきたいと思います。

伊藤大臣政務官 松島議員にお答えいたします。

 このICチップには、現物をお見せした方がいいと思いますが、サイズは同じなんで、これは五年と十年ですけれども、こちらに今までのような通常のものがございます。この真ん中ぐらいのページを見ますと、ちょっと折れないプラスチックが入っていますね。このプラスチックの、余り言うとあれですけれども、この辺にICチップが入っていまして、この辺にアンテナがあります。

 こちらの顔写真情報、あと、氏名、生年月日等の情報がコード化されてここに入っております。通常こちらを偽造するんですけれども、このコードは秘密になっておりますので、なかなかこれは偽造できません。ですから、この情報とこの情報が照合しないと、これは偽造だということになるので、相当今度は偽造が困難であるということになると思います。

 このICチップには、ICAO、国際民間航空機関の国際標準に基づき、今申し上げたように、顔画像のほか、氏名、生年月日、旅券番号、発行年月日等の旅券面の情報が、電磁的な方法でコード化されて記録されています。今申し上げたように、顔写真等を張りかえてもこちらと照合しませんので、偽造ということがすぐ判明するということで、今後のいろいろな密入国に大変効果があるものというふうに承知しております。

松島委員 つまり、顔写真のところを上手に張りかえるのは難しいような気がするのですが、昔のパスポートに比べれば今の方がずっとよくできていますから難しいと思いますけれども、刷り込み式でも張りかえることが今まではできた。それが、おもてのところだけ変えても、中のICチップと一致しないと、これはにせものであることがわかるということですね。どうもありがとうございます。

 もう一つ質問なんですけれども、三月二十日発行分からということなんですけれども、ICが入っているのがいいなと思って、これまでの自分のを切りかえてもらおうと思ったら、できるんですか。

伊藤大臣政務官 できると承知しておりますけれども、詳しい手続については事務方から答弁させます。――希望者には、登録していただければ、発行することは可能でございます。

松島委員 了解いたしました。この三月二十日から新しいものになるというのも余り知られていないので、これもぜひ世の中に多く知られるようにしていただきたいなと思っております。

 せっかく来ていただきましたから、伊藤外務政務官にもう一つ質問させていただきたいと思います。

 私、せんだって、この法務委員会の一般質疑で、韓国人の短期滞在査証の免除について質問させていただきました。それは、すりなど犯罪面で問題があるという観点で質問させていただいたんですが、前回時間切れだったので、それにつけ加えてもう少し伺いたいことがございます。

 韓国に対してパスポートの精度の改善などをこれまで日本は求めているのか、韓国のパスポートのレベルというものについて教えていただきたいと思います。

伊藤大臣政務官 前回お答えしましたように、韓国人に対する短期滞在の査証免除ということを実施することにしたわけでございますけれども、この際、犯罪対策の重要性というものが非常に考えられるわけです。このことに対して、日本は、韓国政府にいろいろお話ししたわけでございますけれども、韓国政府は、写真転写式の新型旅券を導入すること、そして当該旅券と住民登録の写真というものを電磁的に照合することを可能にする旅券自動読み取り機の設置ということによって、出入国管理を的確に行うという措置をとってきたと承知しております。

 また、韓国人の我が国における犯罪への対策として、治安問題に関する日韓協議の立ち上げ、日韓刑事共助条約の締結交渉なども進めてまいりました。治安問題に関する協議においては、韓国人不法滞在者の減少、偽造、変造旅券の対策、また韓国人すり団対策等について、両国の捜査当局の出席も得て意見交換を行ってまいりました。また、日韓刑事共助条約は、本年一月二十日に署名が行われ、現在両国で早期批准に向けた作業を進めておるというところでございます。

 政府といたしましては、以上申し上げたような出入国管理及び犯罪対策における韓国側の努力も十分に踏まえて、また、韓国側においても、我が国に対して同等の査証免除措置をとることを前提として、引き続き韓国側でも犯罪対策に取り組むことを求めつつ、この査証免除というものを行うということを決定したところでございます。

松島委員 了解しました。

 最後に、副大臣に伺いたいと思っております。

 日本人や在日韓国人で、自分の意思で指紋を提供し、入管にかかる時間を節約したい人に対して、今回、便宜供与が与えられるようになるというふうに聞いております。どのような制度でしょうか。

河野副大臣 今回は、特別永住者あるいは日本人、希望する方にはあらかじめ指紋を登録していただきます。

 それで、自動化ゲートというのは、最近、指紋でお金を引き出せるようなATMがございますが、ああいうATMのように指紋を置いていただきますと、指紋とあらかじめ登録していただいた指紋が一致すれば、ETCのようにすっとゲートがあいて通ることができるというものでございます。専任の人間を置きませんので、ブースをたくさん確保することができれば、そうした人間の出入国が非常にスムーズにいく。逆に、その部分の人をほかにかけることができますので、それ以外の人の出入国審査もスムーズになる、そういうメリットを想定しております。

松島委員 しょっちゅう外国へ行き来されるような方の場合には、やはりそういうことを望む方が多いというふうに伺っております。自分は犯罪を犯さないんだから指紋をとられてもいいんだという方々のためにも、ぜひそうしていただくとともに、要望がございます。

 事前に登録ということなんですが、例えば東京入国管理局、芝浦にあるところなんか物すごく込んでいる。不法滞在の外国人が強制退去をさせられるか、みずから出頭した人たちで、もうごった返しております。そういうところへ行って登録するというのはそれだけでも時間がかかるんですから、例えば、成田空港、関西空港などの主要な空港で、出発する前にそれをやれば後は簡単だみたいなシステムをつくっていただきたいと思いますが、副大臣、いかがでしょうか。

河野副大臣 空港でも登録ができるようにしたいと思っております。出国の直前に登録してできるかどうか、そこは技術的にいろいろ研究をさせていただきますが、込んでいるところへ行かずに、海外へ行くときには空港に行くわけですから、そこで登録ができるようにしっかりさせていただきたいと思います。

松島委員 ぜひよろしくお願いします。

 そしてまた、半減作戦、本当ならば、不法滞在、悪いことをやめるのに目標として半減というのはおかしいので、ゼロを目指す作戦というのが正当なはずなわけでございますから、せめて半減は確実にできるように、入国管理局、職員の方も少なくて大変ですが、ぜひ、私たちも職員をふやすためにも努力したいと思いますので、しっかり頑張っていただきたいと思います。よろしくお願いします。

石原委員長 次に、矢野隆司君。

矢野委員 私は、自由民主党近畿比例ブロックから選出をさせていただきました矢野隆司でございます。

 本日、この法務委員会、初めて質問をさせていただきます。この場をつくっていただきました諸先生方に、まずもって御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 早速ですが、日本の世界に向けての玄関口といいますと、これは何といいましても成田の新東京国際空港ではないかと思います。私の地元、関西にも関西新空港、あるいは大臣のお地元の愛知にも中部国際空港がございますが、やはり、悔しいけれども、何といっても一番利用が多いのが成田空港ではないかと思います。

 そこで、早速ですが、私も何度も成田空港を利用したのでございますが、大体、出国と入国、どちらが込むかというと、もちろん日本に入ってくるときでございまして、主に外国人の専用のブースというのは大変長蛇の列ができております。わけて、午後の三時あるいは五時台、そういった時間帯が大変混み合っておるように聞いております。

 まず最初にお伺いしたいんですが、私ども日本人はすっと入国できますので、彼らが何時間ぐらい並んでいるのか、さっぱりわからないのでございますけれども、そういう記録といいますか統計と申しますか、法務省の方で、一体あの人たちは何時間ぐらい並んでいるのかな、ピークのときで。ございましたら、まず教えていただきたいのでございますが、よろしくお願いします。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 成田空港の例で御説明いたしますと、ちょうど昨年の今ごろに調査をしたことがございまして、昨年の三月六日の週の中で三月八日に、一番最後尾に並ばれた方で審査を終わるまでに五十九分という時間を記録していたところでございまして、これは今御指摘ありましたように大変長時間だということで、我々としても申しわけないと思っておるところでございます。

 その後も、何とかこの待ち時間を短縮すべく、大臣、副大臣等からの御指示もございまして、いろいろな方法を講じているところでございますが、具体的に申しますと、ブースでちょっと慎重に審査をすべきであるという人が出た場合には、これを別室に連れていきまして、別室でその方は審査をする、あいたところに次に並んでいる方を、すぐ審査に入る、こういう、いわゆるセカンダリー審査と呼んでおりますが、第二次的な審査方法を導入いたしました。

 また、今ブースのお話がございました。日本人用と外国人用のブースを別々に分けておるのでございますが、従来、ともすると日本人の方に先にスムーズに出ていただくということで、日本人用のブースをかなりたくさんとっていったのでございますが、そうしますと、外国人の方は長蛇の列で日本人の方はどんどん出ていくということで、ちょっと外国人の方に対してもどうかということでございまして、これも、ブースの割り振りを変えました。若干、日本人の方には前に比べるとスムーズさがちょっと、御不便をかけるかもしれませんが、その分、外国の方がスムーズになったというようなことでございます。

 あとは、旅客数に応じまして職員の配置を臨機応変に措置するというようなことをいたしまして、本年の三月六日の週で見ますと、三月十二日の記録で、先ほどの五十九分が二十七分にまで短縮されております。今後とも、このような措置を継続していきたいと思っております。

 なお、中部空港、関西空港におきましても、成田と同様の措置を講じているところでございます。中部などはまだできたばかりの空港でございまして、以前の資料というのが持ち合わせがございませんけれども、両空港とも二十分程度の待ち時間になってきておるということでありまして、今後とも、こういう時間を維持していきたいというふうに考えておるところでございます。

河野副大臣 一言だけつけ加えさせていただきますが、羽田、成田、関空、中部、最長で二十分を切れるように、目標で今後も審査時間の短縮に努めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。

矢野委員 ありがとうございます。

 そういう大変激務と申しますか、たくさんの来日の方をさばいておられる審査官の方々でございますが、それだけ処理をされている中で、いわゆる不正を摘発すると申しますか、これは悪質だなということで最終的に告発にまで至った案件というものは、一年間にどれだけございますでしょうか。また、その中で、いわゆる偽造、変造あるいは成り済まし等の旅券に絡む事案というものは何件ぐらいありますでしょうか。

三浦政府参考人 平成十七年に全国の入国管理局におきまして、上陸審査時に、成り済ましでございますとか偽造旅券の行使などを発見して警察に告発を行った件数でございますが、四十四件ございました。そのうち、偽造旅券の行使に係るものが三十六件という数字になってございます。

矢野委員 そこで、本年は、法務大臣は治安回復元年と位置づけておられまして、不法滞在者を半減しよう、先ほど平沢委員も少しお触れになられましたけれども、その不法滞在者半減計画、私もこれはゼロに限りなく近づける計画をおつくりいただきたいなと思うのでございますが、その半減計画の取り組みと進捗状況といったものをお聞かせいただきたいのでございますが。

河野副大臣 半減というのは、先ほど大臣からも答弁ありましたように、当面五年間の目標でございまして、究極的にはゼロにしたいと思っております。

 平成十六年から摘発方面隊というのを設けまして特定の地域をせっせと摘発する、そういう摘発の強化、それから警察などとも緊密に連絡をとらせていただいております。代表的なのが歌舞伎町でございます。

 それから、成田に送還センターという三百人収容できる施設をつくりまして、今は警察の方から、摘発しても収容する場所がないではないか、神奈川県警などからは横浜の港に船を浮かべてそこに収容したらどうかというようなことも言われておりましたので、三百人の収容施設をつくりまして、そこに収容ができるようにしてございます。

 それから、警察の方から、起訴をせず、刑事の事件のルートに乗せるのではなくて、警察から直接身柄を引き受けて退去強制をする、そういうルートを設けました。それと、今回のこの指紋、これが大いに役立つのではないかというふうに期待をしているところでございます。

矢野委員 入管法では第六十六条に、不法上陸、不法滞在を見つけた者については、退去強制令書が送付された場合について、通報者に五万円以下の報償金を支払うことができると。私、今回、これを初めて存じ上げたわけでございますが、大変これは立派な制度じゃないかなと私は思っております。やはり、この半減計画の達成のためにも有用な手段ではないかと思いますので、ぜひ予算措置も含めた制度の充実をこの際お願いしたいと思っております。

 さて、先ほど指紋のお話が出ましたが、今回の改正で大きな特徴は、原則として外国人の来訪者から個人識別のために指紋提供をしていただく、生体認証、いわゆるバイオメトリックスでございますが、これまでにもいろいろ検討されたかと思います。例えば、イスラエルなどでは試験的には、手のひら、掌紋、掌形と申しますかそういったもので実験的にされたようなこともあるように聞いておりますけれども、今後、この指紋、まだ先の話でございますが、指紋に加えて何らかのそういう生体認証の方法を追加的に取り入れられるようなお考えはございますでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点で考えておりますのは、指紋と、あと顔写真の情報ということでございます。これは、先ほど副大臣からもお話がございましたが、我々が持っておりますいわゆるデータ、過去の前歴のある人のデータというものが指紋と顔情報に限定されているということによるわけでございます。

 ただ、今委員御指摘ございましたように、最近では科学技術の進歩によりまして、手のひらの掌紋でございますとか、あと、指や手のひらの静脈でございますとか、ひとみですね、虹彩。これらも個人識別情報としては非常にすぐれた機能を有しているということが言われておりますので、将来的にこういうことも我々、研究を怠らずに進めていきたいと思っておりまして、もし非常に有効な形で使えるということであれば、将来的にはその導入も検討をしてまいりたいと思っております。

矢野委員 その指紋でございますが、それらの指紋を提供していただく一つの目的が、いわゆるテロリストの上陸阻止ということでございます。

 これは、政府の統一見解というものは多分ないのでございましょうし、明示的な定義はないともされておられますが、テロリストの定義、この法律で言うテロリストの定義といったものを教えていただきたいのでございますが。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 我々、よくテロですとかテロリストという言葉を使うわけでございますが、国際的に見まして、テロやテロリストを確立した定義というものがあるわけではないというふうに私ども承知しておるところでございます。一般に、テロリズムのことを略してテロと言うわけでありますが、この用語の意味といたしましては、特定の主義主張に基づいて国家等にその受け入れなどを強要しまして、または社会に恐怖感を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものというふうにされておるところでございます。

 今回の入管法の改正案につきましては、このようなことを踏まえまして、退去強制の対象となる外国人テロリスト等につきまして、テロ行為を行うおそれのある者という形での規定の仕方をしておるところでございます。

 具体的に申し上げますと、「公衆等脅迫目的の犯罪行為、公衆等脅迫目的の犯罪行為の予備行為又は公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として法務大臣が認定する者」という規定の仕方をしておるところでございます。

矢野委員 テロリストのことに関連してお尋ねいたします。

 現在、我が国が掌握あるいは入手されておられますテロリストのデータというものは、恐らく欧米各国から手配されているものが中心ではないか、大半ではないかと思いますが、いわゆる我が国独自で認定をしておるテロリストというものがいるのでしょうか。大変答えにくい問題かもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。

三浦政府参考人 現時点で一般的にテロリストを指定、認定する制度というのは我が国では持っておりません。

 我が国では、現在、外為法によるテロリスト等の資産凍結を国連安保理決議に基づいて行っていると承知しておるところでございます。これは、国連安保理制裁委員会というのがございますが、ここで指定されましたタリバンの関係者等約四十八個人、団体がございます。これに対して資産凍結措置を講じているということでございます。

 また、国連では指定されていないテロリストなどにつきまして、安保理決議に基づきまして、米国など主要国と協調いたしまして、二十七個人、団体に対して資産凍結措置を講じているわけでございます。あえて言うなら、この二十七が日本が国連決議とは別に認定をして措置を講じているという言い方ができるのかもしれません。

矢野委員 そこで、またテロリストと関連いたしますけれども、今回、子供、少年でございますね、十六歳未満の子供からは指紋の提供を求めない、原則として求めない、こういうことでございますが、外国においてはそういう小さな子供でもテロにかかわっておる事例があるようでございまして、個別具体的には申し上げませんけれども、やはりケース・バイ・ケースで、そういう原則は原則としながらも、子供からも指紋をとるようなケースも想定されると思うのでございますが、その辺は、十六歳未満はとらないとされた理由というものがございましたら教えていただけますか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 お答え申し上げる前に、前の御質問に対しまして、私、タリバン等の関係者についての国連安保理の制裁委員会で指定された個人、団体の数について四十八と言ったようでございますが、四百八十の誤りでございます。大変失礼いたしました。

 それから、今回の法案で、十六歳未満の子供につきましては指紋情報の提供を求めないということにしている理由でございますが、十六歳に満たない子供につきましては、そのほとんどが親と同一行動をとるというのが常態でございます。また、かなりの人数の方が修学旅行に、十六歳未満、日本にお見えになるわけでございまして、先生の監督のもとで団体行動をするというようなことが通常でございますので、こういうことを勘案いたしまして、個人識別情報の提供を一律に義務づけるという対象からは除外することとしたわけでございます。

矢野委員 引き続きまして、関連でございますが、本年の朝日新聞の三月七日の夕刊によりますと、今回の改正に伴いまして、航空機や船舶の乗員からも運用上全員から指紋提供を求める、こういう記事がございました。

 私個人としましては、かつてラングーン事件というのがございまして、船舶がぐるになって韓国の外務大臣を爆殺した事案があったと記憶しておりますが、現在、アメリカでも航空機の乗員につきましては、出入国の両方で全部の指の指紋確認と顔写真の確認を実施しておるようでございます。

 報道のとおりであれば結構なことと私は思うのでございますが、この点、間違いないかどうか確認をしたいのでございますが。

三浦政府参考人 ただいま、委員御指摘ございましたように、今回の改正法の条文は、いわゆる旅客については義務的に指紋情報等の提供を求めることになっておりますが、乗員に関する規定ぶりを見ますと、審査官が必要と認めるときに提供させることができる、こういう書きぶりになっております。

 これは、実は非常に法律技術的な問題でもございまして、入管法上、一般の上陸につきましては、外国人が入管法令に規定する上陸条件に適合していますと、審査官は、裁量の余地がなく、規則的にこれに上陸の許可を与える、こういう形になっております。これに対しまして乗員の上陸許可につきましては、許可をするか否かにつきまして審査官がその裁量によって決定することができる、こういう形になっておりますので、この違いによって指紋の提供を求めることができるというような書き方になっております。

 ただ、当然できるという規定ぶりではございましても、すべての人にこれを求めることは当然可能でございますし、私ども、テロ対策という観点からいたしましたら、原則としてすべての者にこの指紋の提供を求めるという運用をしていくこととしております。

 ただ、一部に非常に小さい海の港などがございまして、船員もごく限られた人数の人たちなどが、たまたま短時間、ちょっとどうしても陸におりなければいかぬというようなケースがありまして、必ずしも一〇〇%対応できないことがあるかもしれませんが、そういうところにつきましても順次きっちりやっていきたいと思いますけれども、当面、施行直後にすべての港だということになりますと、若干お許しをいただけないかなと思っております。ただ、そういう港でありましても、問題の船舶というものが来る際には必ず赴きまして、指紋はきっちりと採取をしたいと思っております。

矢野委員 ありがとうございます。

 そこで、先ほど松島委員からも御質問がございましたが、いわゆる自動化ゲートの質問に移りたいと思います。

 河野副大臣からも御説明があったのでございますが、現実問題といたしまして、こういう自動化ゲートを採用されている国というものは他国で例があるのでございましょうか。もしあるとすれば、問題点あるいはその効果といったものを含めて教えていただきたいのでございますが。

三浦政府参考人 空港におきます出入国審査で自動化ゲートを導入している諸外国につきまして私どもで承知しておりますのは、アジアではシンガポール、マレーシア、タイ、香港、アラブ首長国連邦などでございます。このうちのアラブ首長国連邦につきましては、外国人の入国者がこの自動化ゲートの対象になっております。シンガポールにつきましては、自国民と在留の外国人が対象でございます。その他の国につきましては、自国民を対象に自動化ゲートを行っているというふうに承知しております。

 また、ヨーロッパにつきましては、イギリス、ドイツ、オランダにおきまして国際空港に自動化ゲートが設置されまして、EU諸国民などを対象として運用が行われているというふうに承知しております。

 これらの自動化ゲートの導入の効果といたしまして、あらかじめ登録を行った問題のない人につきまして、待ち行列などをつくることなく円滑な手続を行うことが可能になっているというふうに承知しております。

矢野委員 ここで少し問題を変えて質問を変えたいと思いますが、これはお答えいただける範囲で結構でございます。

 かつて、パン・シオンという人定ができなかった北朝鮮の人物の退去強制事案というのがございました。国会でも各委員会で大変取り上げられたわけでございますが、いわゆる金正男という北朝鮮の首領の長男ではなかったかという人物の件でございます。

 当時は国民も大変関心を持っておったわけですが、その事件のてんまつと申しますか、結局、入管法の第五条で言う上陸の拒否の事案で、これで言いますと、このパン・シオンなる人物の再入国が認められないといいますか、拒否できる期間というものは五年間入国できないということを聞きましたが、これで間違いないのかどうか、まず教えてください。

三浦政府参考人 今の御質問の趣旨は、偽造旅券を行使して不法に入国した者が退去強制された場合、その後、何年間我が国に入国ができないか、こういう御質問だと思いますが、五年間が上陸拒否の期間になっております。ただ、平成十二年の二月に入管法の改正がございまして、それ以前は一年というふうにされておりました。

矢野委員 ということは、このパン・シオンという人物の場合は、平成十三年の五月に発生しておる事案でございますので、五年間入国できない、こういうことになるかと思います。そうしますと、計算いたしますと、ことしの五月で五年が過ぎるということで、そうなりますと、ことしの五月以降、この人物は無罪放免といいますか、また日本に来ようと思えば来られる計算になると思うんですが、一方で、平成十三年五月二十四日の参議院法務委員会議事録によりますと、この人物からは指紋も写真もとっております、こういう答弁がございます。

 もし今、五月以降ですが、もちろん今回の改正があっての話でございますが、パンなのか金なのかよくわかりませんが、この人物が、もしいかなる別人の名前で入国しようとも、今回の改正で、指紋があるわけですから、いわゆるヒットしてすぐに、少なくともその人物が前回来たパン・シオンであるということがわかると思うのでございますが、そのことの確認が一点。

 それから、前回は人定がうまくいかなかったということでいわゆる告発を見送られたということも聞いておりますが、今回また来た場合に、どういった対応が視野として入るといいますか、考えられるのか、あわせてお答えいただきたいのですが。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今の御質問の趣旨は、要するに、過去に退去強制された者が、その五年間の上陸拒否期間内に例えば偽造旅券などを持って入ってくるようなケース、それから、五年の期間が過ぎた後に日本に再び来るというような場合にどうかという御質問だろうというふうに理解いたしますけれども、今回、まさに指紋、顔情報を採取するという制度をとることとなりますと、当然、その前の退去強制の際に指紋情報を入管でとっておりますので、電子的な照合によりまして同一指紋であるということがわかりますので、上陸拒否事由がある人であるということはわかります。

 偽造の旅券を持ってきておれば、そのこと自体がいわゆる不法入国になりますので、これは退去強制事由ともなるわけでございます。そういうことが判明いたしましたら、入管といたしましては、事案に応じた適切な措置をとることになるというふうに考えます。

矢野委員 しっかりやっていただきたいと思います。

 そろそろ残り時間も少なくなってまいりました。ここで少し提案をお願いしたいことが一点ございます。

 現在、入国カード、EDカードと申しますのは、外国人の方が日本に来るときに記入して提出するカードでございますが、これが現在、実は日本語と英語の二国表記しかございません。私は、中国あるいは韓国からたくさんの方が来られておりますので、そういった国の言語のカードもあるものだと思っておりましたところ、ないということでございます。

 昨年、二〇〇五年で四百万人以上の方がアジアから日本に来られておるわけで、そういう来日観光客をふやす意味でも、ぜひともこういったカードを、中国語やハングルでつくられたカードも備えつけていただけたらなと思うんですが、その辺はいかがでございましょうか。

三浦政府参考人 御指摘、まことにごもっともだと思っております。

 我が国に来日する外国人の方で、中国人、韓国人の方は非常に多いわけでございます。これまで英語と日本語の表記ということでありまして、英語、日本語が理解できない観光客の方などが機内でそのカードを書く場合に戸惑って、上陸審査ブースのところで記載漏れがあるというようなケースがありまして、これも待ち時間が長くなっていた一つの要因であるというふうに思っております。

 私どもとしましては、中国語と韓国語の表記を加えた様式を既に作成してございまして、これは十八年度中のなるべく早い時期に全国の空港、海港に配りたいというふうに思っております。

矢野委員 とにかく入国審査でもたつく一つの要因とも言われておるようでございますので、ぜひとも早急に整備していただきたいと思います。

 それから、ついでに、これはお答えは結構でございますので、お願い事をもう一つ申し上げますと、その入国カードには、質問事項として四つ質問事項がございますが、私、いささかこれが数として頼りない、こういうふうに思います。アメリカでも七項目ぐらいの質問をしておりますけれども、例えば入管法五条で言うところの、あなたは伝染病にかかっていませんかとか、売春目的での入国ではありませんかと。まあ、そんなことを聞いても、本当に書いて入国する人はいないと思いますけれども、違反すれば何年間入国を認められませんよ、そういったことまで書けばいささかなりとも抑止力になるのではないかな、こう思っております。これはもうお答えは結構でございます。

 それで、現在、我が国では観光立国計画というもので、先ほどのEDカードの件とも絡むのでございますが、二〇一〇年に一千万人の訪日観光客、来訪者を達成しよう、あるいは二〇三〇年に四千万人にしよう、こういう壮大な計画がございます。四千万人というと大変大きい数字に思いますが、イタリア一国の観光客の数とほぼ一緒でございます。

 勢い、そういう数の観光客をさばく、こなすという意味では、地方空港、ここにもたくさんの外国人が来なきゃいけない計算になると思うわけでございます。

 現在、日本では、第一種から第三種まで空港の種別がございます。第一種は羽田、伊丹、成田、関空、中部。第二種の空港そして第三種の空港を足しますと、八十一空港がございます。チャーター便や臨時便、その他特別なフライトも含めてかなりの数が離発着しておるわけでございますが、その中で入国管理局としては、人数、体制ともに大変やりくりに苦労されていると伺いますけれども、今後の地方空港での入管整備といいますか、入国管理の業務の取り組みについて、お考えをお伺いしたいと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 政府の観光立国に向けた取り組みの中で、入管といたしましても、特に地方空港における出入国手続の円滑化、迅速化を図る必要があると考えておるところでございます。

 どのような対策を講じているかという点についてでございますが、平成十七年度におきましては、我が国に向けて多数のチャーター便が出発しております台湾の中正国際空港、ここに入国審査官を派遣いたしまして、事前確認の手続をとっています、これはプレクリアランスと呼んでおりますが。ここで、台湾からの観光客の方に事前に確認をしておりますと、こちらに、日本の地方空港に着いてからの入国審査手続が大幅に短縮されるという結果になっております。

 また、この措置は十八年度も続けていきたいと思っておりますが、十八年度におきましては、さらに人員の増加を今お願いしておるところでございまして、十八年度予算が成立いたしますと、出入国の審査の応援要員という形で十六人の増配置が可能になるものと思っております。

 具体的には、新千歳空港に九人、北海道は非常にチャーター便が来る空港も多いものでございますので、新千歳空港に九人置きまして、そこから臨機応変にいろいろな空港に派遣をするということ、それから、羽田空港にも、全国を対象地として七人の職員を増配置したいと考えております。さらに加えまして、地方自治体の職員の方にいろいろ応援をしていただこうというふうに思っておりまして、こういうことも含めまして、今後とも観光立国実現のために努力をしていく所存でございます。

矢野委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。

石原委員長 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 今回の法改正の大きな柱の一つは、テロの未然防止のための規定の整備というふうに承知しております。

 日本がテロの対象になるかどうかということについて、この前、軍事評論家であります小川和久さんの「日本の戦争力」という本を読みました。こう書いてありました。アメリカを敵視しているテロリスト・グループにとって、日本はアメリカの最重要同盟国としてテロの標的になり得る。また、対テロ戦争を戦っている国としても、世界を牽引する主要国としても、テロの標的になり得ることは覚悟すべきでしょうというふうに述べられておりました。

 私自身も、日本がテロの標的になる可能性は十分にあるというふうに考えております。国民の生命の安全を守るために万全な措置を講ずるべきだと思っておりますが、この点に関する大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

河野副大臣 我が国は、不当にもアルカイダからテロの対象国として名指しをされております。また、先ほどの平沢委員の御質問にお答えをさせていただきましたような、現実にテロと考えられるような事件が起きているわけでございますので、我が国に対するテロのおそれというのを決して過小評価してはならないと思いますし、テロというのはあくまでも未然に防止するというのが政府の責務であると思いますので、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。

漆原委員 ありがとうございました。

 今、副大臣のおっしゃったテロの未然防止、一番大事な観点かと思いますが、これに対する政府全体の取り組みはどうなっているのか、御説明を願いたいと思います。

河野副大臣 政府といたしましては、平成十六年八月に閣議決定をもちまして、国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部を設置いたしました。十六年の十二月十日でございますが、テロの未然防止に関する行動計画というのを決定してございます。

 その中に、速やかに講ずべきテロの未然防止対策として、例えば、テロリストを入国させないための対策、テロ資金を封じるための対策、テロリストを自由に活動させないための対策、あるいは物質をしっかり、テロに使われないように物質を確保するような対策というのを、十六項目を盛り込んでおります。そのための方向性、期限を切ったわけでございます。

 今回の入管法の改正は、その中の最初の三項目に当たるわけでございますので、ぜひともよろしくお願いをしたいと思います。

漆原委員 そこで、法案についてお尋ねします。

 六条の三項は、上陸時に外国人に指紋等の個人識別情報の提供を義務づけております。ここに、特別永住者を除かれておりますが、特別永住者が除かれた趣旨、そして、現在日本にどのくらいの方がいらっしゃるのか、人数についてお尋ねします。

三浦政府参考人 今回の法案におきまして、個人識別情報の提供義務を課すにつきましては、危険性の程度が低いということと、それから配慮の必要の程度が高いということを基準といたしまして、一定の範囲の外国人に対しましてこの義務を免除しておるところでございます。

 特別永住者の方々につきましては、その歴史的な経緯及び我が国における定住性にかんがみまして、その法的地位のより一層の安定化を図るため、入管特例法が制定されておるところでございます。配慮の必要性が極めて高いということから、義務を免除することとしたものでございます。

 なお、平成十六年十二月現在の特別永住者の人数でございますが、四十六万五千六百十九人となっております。

漆原委員 かつて日本に在留している外国人の指紋採取については、人権上の観点から、この当委員会でも審議をして廃止した経緯がありますが、今回の法案との整合性についてお尋ねしたいと思います。

三浦政府参考人 今回の法案におきます指紋等の個人識別情報の提供義務につきましては、この最大の立法目的はテロの未然防止というところにあるわけでございまして、水際対策という観点から、国民の安全、安心、生命を守るということが目的になっておるわけでございます。そういう観点から、従来の指紋押捺制度とはちょっと違うということでございます。

 また、かつてのいわゆる指紋押捺制度というのは、スタンプ方式といいますか、墨を使って指紋を十指採取するというような形になっておったんでございますけれども、今回、我々が考えておりますのは、電磁的方法によりまして、コンピューターで指紋の情報を採取するという点におきましても、違っておるわけでございまして、そういう意味では、かつての指紋押捺制度とは全く異なったものでございまして、廃止との整合性ということにつきましては問題ないものと考えておるところでございます。

漆原委員 今、指紋採取の方法が出ましたけれども、例えば、もっと具体的に、指一本でいいのか十本なのか、その辺どうなのか、お答えしていただきたいと思いますが、あわせて、指紋提供の義務づけについては、先ほど来話がありましたように、プライバシーとか品位といった、人権を傷つけるという批判もなされておりますが、指紋にかわる個人識別情報として、顔だとかあるいは静脈だとかいろいろあるとおっしゃいましたね、そういうものをしないで今回指紋にした必然性はどんなことなんでしょうか。

三浦政府参考人 指紋を対象とした最大の理由につきましては、我々が保有しておりますデータ、過去の前歴のある人のデータが指紋が中心になってございます。それと顔写真もございますので、この二つ、特に指紋の方が正確性が顔写真よりもさらに高いということから、これは絶対に不可欠だろうと思っておりますが、この二つの情報を取得することによりまして、問題のある外国人のチェックができるということでございます。

 もちろん、今御指摘ございましたように、そのほか静脈等、いろいろ個人識別情報は最近出てきております。こういったものにつきましても、利用価値がどの程度あるかということについて今後研究を重ねてまいりたいと思っております。(漆原委員「あと、方法」と呼ぶ)

 方法ですね。今回、私どもが予定しておりますのは、右手と左手の人差し指の指紋をそれぞれ採取するということで、今いろいろ検討を続けているところでございます。これは基本的に、入管で持っております指紋、十指ございますので、このデータのうちの人差し指の指紋との照合をするという形を考えております。

漆原委員 将来は、指紋、写真その他の個人を識別することができる情報として、法務省令で定めるものとすると。現在は、指紋と顔写真というふうに考えておられるわけですね。将来は、場合によっては、虹彩だとかあるいは静脈だとかいうことも考えられるというふうに理解をしておきたいと思います。

 問題は、指紋だけで本当にテロの防止になるのかなと。グミの使用によって、指紋がうまくとれないとか違った指紋になるとかいうことも言われておりますけれども、いろいろなことをやっておる諸外国の例で、諸外国がどんなことをやっているのか、報告をいただきたいと思います。

三浦政府参考人 米国の例を御紹介したいと思います。

 米国では、先ほどもちょっと御説明いたしましたが、二年前からUS―VISITと呼ばれておりますプログラムを実施しておるわけでございますが、この中では、まず、外国人が米国に行こうとする場合に、査証を申請するケースがございます。この場合に、査証の申請時に指紋情報を取得するとともに、申請書に張りつけられた写真をスキャナーで電子情報として読み取るということをしております。また、当該外国人が米国に到着した際の入国審査におきましても、同様に指紋情報を取得するとともに、デジタルカメラで顔を撮影しまして、これらを情報として保管するという形であります。

 いずれのときでありましても、テロリストですとか犯罪者等の要注意人物データベースと照合を行いまして、該当しているかどうかを確認しているというふうに承知しております。

 また、EUにつきましては、現在はまだ実施していないようでございますが、二〇〇七年中に運用開始を予定している査証情報システムというのがあるというふうに承知しております。

 この中身でございますけれども、EU加盟国のいずれかの国での査証申請時に、申請者の顔及び指紋の情報を取得する。それから、顔と指紋で構成される要注意人物のデータベースとその取得した情報との照合を行いまして、新たに査証発給を拒否した者については、その顔及び指紋に係る情報や拒否事由などを要注意人物のデータベースに登録する、こういうことを予定しているようでございます。

漆原委員 具体的に提供を受けた指紋あるいは顔写真等を一定のリストと照合することになると思うんですが、日本が保有しているリストとしてはどのようなものがあるのか、また件数はどのぐらいあるのか、これは法務省と警察庁に尋ねたいと思います。

三浦政府参考人 法務省のリストの関係で御説明いたします。

 平成八年に被退去強制者指紋照合システムというものの運用を開始いたしました。それ以来、我が国におきまして入管法違反の容疑で退去強制手続をとりました外国人につきまして、違反調査や収容手続の過程で指紋画像情報と顔の画像情報を取得しているところでございます。現在、このようにして取得しました情報、指紋の画像情報は、約八十万件に達しております。

 こうした指紋の画像情報ですとか顔画像情報に加えまして、他の機関からいただきました情報をもとにしまして、上陸審査時において上陸を拒否すべき者、あるいは慎重に審査を行うべき者としての要注意人物データベースを今後きちっとしたものを構築していこう、こういうふうに考えているところでございます。

米田政府参考人 この制度が導入されましたならば、警察庁は入国管理局に対しまして、ICPO手配者、指名手配容疑者等に関するリストを提供することになるわけでございますが、これらのものに係る情報の保有件数は一万数千件でございます。この制度の導入の目的を効果的に達成するために、これを有効に活用してまいりたいというふうに思います。

漆原委員 警察庁が持っているICPO手配者情報には、どのような人がリスト化されているんでしょうか。

米田政府参考人 逃亡犯罪人あるいは常習的な国際犯罪者として手配がなされている者でございます。

漆原委員 警察庁、ありがとうございました。結構でございます。

 そもそも、日本にはテロリストの個人識別情報の蓄積は多分少ないんだろうなというふうに思っております。しかし、テロの未然防止のためには、できるだけ多くのテロリストの情報を集め、その入国を阻止することが大事だと思います。

 そこで、法六十一条の九、これは諸外国の外国入国管理当局との情報の提供をお互いに交換を可能にしている条文でございますけれども、現在、日本に対してテロリストの情報提供をしている国はあるのかないのか、あればそこを教えてもらいたいし、将来、諸外国との間でテロリストに関する情報交換をもっともっと広げていく必要性があるんじゃないかと思っておりますが、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 御指摘いただきましたとおり、できるだけ多くのテロリストの情報を収集いたしまして、その入国を阻止することが重要であるというふうに認識しております。現在は、主に国連ですとか国際刑事警察機構を通じまして、テロリストに関する情報を入手しているわけでございます。

 今回のこの改正法が成立をしたといたしますと、個人識別情報を有効に活用できることになるわけでございますので、より積極的に諸外国から情報を入手していく所存でございます。

 ただいま御指摘ございました入管法六十一条の九の情報交換ができる規定、これは昨年の通常国会でつくっていただいた規定でございますが、これを十分に活用いたしまして、有効な情報交換が適切にできますよう、諸外国の入国管理当局と協議していく所存でございます。

漆原委員 今回の指紋等の提供の義務化によって膨大な数の情報が蓄積されることが予想されますが、年間大体どのくらいになるのか、そして、その蓄積された情報の使途についてどのように考えているのか、お尋ねします。

三浦政府参考人 まず、一点目の御質問でございますが、平成十七年の外国人入国者数を見ますと、約七百四十五万人でございます。この中から、指紋採取対象外の、免除をされる十六歳未満の人ですとか特別永住者などを除いて計算してみますと、おおむね一年間に六百万から七百万人くらいの外国人が指紋、顔情報採取の対象になるだろうと考えられるところでございます。

 これらの情報をどのように使うかという御質問でございますけれども、まずは上陸審査のときに、照合のための機器を利用いたしまして、要注意人物リストの指紋と照合いたしまして、これに該当いたしますと直ちに上陸拒否、退去強制、警察への通報など必要な措置をとるということになるわけでございます。

 また、入管当局がこのようにして保有する指紋等の個人識別情報につきましては、当然のことながら、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に規定されます個人情報として同法の適用対象になるわけでございます。この法律に基づきまして利用及び提供が可能なところにはこれを利用提供するということになります。

 例えば、警察等の関係機関から犯罪捜査の目的で捜査関係事項照会など法律に基づいた照会がございますれば、法律で認められる範囲内に限ってこの情報を提供するということも考えられるところでございます。

漆原委員 日本は、住んでよし、訪ねてよしの国づくりということで、観光立国日本の実現を目指しているわけでございますけれども、日本を訪れた外国人が指紋を提供することによって、日本の入管当局に管理されているというふうに感じたら、決して居心地はよくないと思うんですね。テロリストの入国の未然防止ということで、今回、指紋情報等の提供を義務づけたわけでありますが、その上陸審査において目的を達成した、要らなくなった指紋等については速やかに廃棄処分にして、目的外の使用は慎むべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 御指摘いただきましたとおり、個人情報につきましては、これを濫用するようなことがないように、十分に管理に万全を期してまいりたいと思います。もちろん、出入国の公正な管理に必要な限りにおきましてこれを保管することとなると考えておりますけれども、これが必要でなくなった場合には、保存しておく必要がまさにないわけでございますので、これは適正に廃棄するなどの処理をすることになるというふうに思っております。

漆原委員 今の御発言は微妙で、先ほど副大臣は七十年くらい保管をしておくということをおっしゃったわけですが、必要なくなったときというのは一体いつなのか、よくわからない。副大臣、どうぞ。

河野副大臣 今回採取します指紋を利用して、その者が別の旅券を使って入国をしないようにするというのが今度の入管法改正の目的の一つでございますので、そういうことを考えると、少なくとも、その人間がもう一度日本に来る可能性がある場合には保管をする必要があるというふうに認識をしております。

漆原委員 そこで、大臣にお尋ねしたいんです。

 先ほどメモで通告させていただいて、大変急な話で申しわけないと思ったんですが、ずっとお話を聞いておりますと、指紋採取の目的、テロ対策、それから不法入国者の阻止という今副大臣おっしゃったこと、あるいは日本に入国した外国人の犯罪捜査にも使えるというふうな話、こういう話をずっとされております。特に、不法入国者対策、あるいは犯罪捜査の対策ということが、私の前の皆さんの質問で多くその効用が指摘されておったと思います。

 ただ、よく考えてみますと、大臣の趣旨説明の中に、この指紋の提供を義務づけたということはテロの未然防止のための方策として挙げられているわけですね。先ほどから指摘されている不法入国者対策とか、あるいは外国人の治安対策には全くお触れになっておらない。こういう趣旨説明からして、この指紋採取の目的はテロの未然防止のためなのか、あるいは不法入国者対策のためなのか、あるいは日本に入国した外国人の治安対策のためなのか、この辺、大臣の趣旨説明と絡めて御説明いただければありがたいと思います。

杉浦国務大臣 もちろん、この指紋採取は、政府の行動計画に基づくテロ未然防止のために法制定いたしまして指紋をちょうだいする、目的はテロの未然防止対策でございます。趣旨説明ではそう申し上げたわけでありますが、もちろん、指紋をちょうだいいたします、データベースと照合いたします。そのデータベースの中には、退去強制者のデータも入っておりますし、ICPOとか国連から提供されるテロリストの情報も入っておりますが、それと照合いたしますので、いわゆる退去強制者、テロではないけれども退去強制した前歴がある者がそれで発見されることもあるわけでございまして、そういう場合には入国を拒否する、いわゆるリピーターですね、拒否することができるようになります。

 そういうことから、不法入国対策にも資するし、また、外国人犯罪、不法入国者が外国人犯罪の温床になっておりますから、外国人対策にも資するというふうに申し上げたわけでございます。

漆原委員 退去強制をされた者のデータリストが、データが残っている、これはまだ残しておかなきゃならぬと思うんですね。今回、新たに、入国するに際して指紋を提供していただいた、そこで、そことぴったり合えばもちろん入国させちゃならぬわけですけれども、しかし、それと照合しても全く問題なかった、この情報というのは目的を達した情報じゃないのかなと。要するに、不法な目的で入る人ではないという。そういう意味では、この目的を達した指紋等の情報が年間六百万から七百万、ずっと七十年間も保管しておく、リスト化しておく必要があるのかな、ないんじゃないかなと思うんですが、大臣、どうでしょうか。

河野副大臣 現時点では、退去強制処分を受けていないということはわかると思うんですが、要するに、その人間が別の旅券を持ってくるときに、前にAという旅券で河野太郎の指紋で入ってきたということがわからないと、Bという旅券を持って河野太郎で指紋をとったときに、これは違う旅券で入ってきたということがわからないことになりますので、都度情報を消してしまうと、何度来ても、その指紋とこの旅券という組み合わせでオーケーならばいいということになってしまいます。

 そこは、データベースを持っていて、河野太郎はこの旅券で前回来ておる、今回も間違いなくそうだということが確認できなければ不法入国を阻止することができないということになってしまいますので、これは個人情報として必要な情報だと入管の観点から申し上げたいと思います。

漆原委員 そういう自民党の皆さんの提案がありますね。提案の中には確かに、不法入国者を阻止するという提案がございました。それに従っているのかなとも思ったんだけれども。一方、政府の方の行動計画では、この指紋情報を義務づけるということは、これはテロリストを水際で防ぐんだ、こういう目的が書いてあるわけですね。それとあわせ、今回の大臣のこの趣旨説明を拝見しますと、第一番目に、テロの未然防止のために外国人に指紋等の個人識別情報の提供を義務づける、こういう位置づけになっている。

 したがって、もしも、今副大臣がおっしゃったような不法入国者対策がありますよ、あるいは加えて、外国人の犯罪が多いんだ、それを適切に処理する必要性もあるんだと大臣はおっしゃったんだけれども、そういう目的もあるのであれば、やはりこれは大臣の趣旨説明の中にお書きいただくのが、お述べいただくのがいいのではないか、丁寧になるのじゃないかなと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

杉浦国務大臣 法律の提案趣旨説明として申し上げたわけでございますので、それもつけ加えておけばよかったかなと思っていますが、しかし、目的はテロの未然防止対策でございます。それとまた、入管局長が説明しましたように、データベースは、リピーター防止と申しますか、退去処分した者、あるいはICPO等々から提供のあった要注意人物のデータベースをつくるわけですので、たまたまヒットする場合もある。その場合には不法入国防止にも結果として資することになりますので、資するという趣旨で申し上げた次第でございますが、表現を加えるとすれば、これによって不法入国防止、外国人犯罪の防止にも結果として資することになるという、書き加えるとすればそういう趣旨になるんじゃないかと思います。

 法律の趣旨としては、もう明らかに、明白にテロの未然防止でございますので、附帯してといいますか、結果的に、効果としてそういう効果にも資するんだというふうに御理解いただきたいと思います。

漆原委員 時間がなくなりましたので、最後の質問になります。

 二十四条の二第一項、法務大臣がテロの認定をする場合には、「外務大臣、警察庁長官、公安調査庁長官及び海上保安庁長官の意見を聴くものとする。」こう規定されておりまして、内容はすべて法務大臣に任されておることになっていますね。

 それで、何を認定するかというと、いわゆるテロ資金処罰法の犯罪行為、予備行為、実行を容易にする行為を行うおそれの有無というふうに法律上はなっておるわけなんですけれども、非常にこれは、犯罪行為の実行を容易にする行為のおそれを認定するわけですから、物すごくこれは幅広いわけですね。どんな場合を想定されているのか、典型的な例をおっしゃっていただきたいと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 行うおそれの認定につきましては、個々のケースによってさまざまであろうかと思いますので、慎重にこれを行うことになろうかと思いますが、現時点で具体的なケースを仮定して申し上げるというのはなかなか難しいところがございます。

 一般的に想定されるケースとして一つの例を申し上げますと、例えば、国際テロ組織のメンバーが爆弾テロを起こそうとして我が国に入国するというような情報があった場合に、これに基づきまして認定するということが考えられるというふうに思います。

 このような場合におきまして、我が国で爆弾を仕掛けることとなっている者が公衆等脅迫目的の犯罪行為を行うおそれがある者ということになるだろうと思いますし、我が国では爆弾の製造に必要な部品の調達のみを行う、出国後に海外で実行しようとしている者がいる場合には、公衆等脅迫目的行為の犯罪行為の予備行為を行うおそれがある、こういう者としての認定がされることが考えられるだろうと思います。

 また、我が国で他のテロリストのために資金を収集、集めようとしている者が考えられるわけでございますが、こういう者につきましては公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする行為を行うおそれがある者として認定され得るのではないかというふうに考えるところでございます。

漆原委員 時間になりました。どうもありがとうございました。以上で終わります。

    ―――――――――――――

石原委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十二日水曜日午後二時二十分理事会、午後二時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十六分散会


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