衆議院

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第10号 平成18年3月28日(火曜日)

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平成十八年三月二十八日(火曜日)

    午前十一時四分開議

 出席委員

   委員長 石原 伸晃君

   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君

   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君

   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    太田 誠一君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    高鳥 修一君

      平沢 勝栄君    三ッ林隆志君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    柳本 卓治君

      石関 貴史君    枝野 幸男君

      篠原  孝君    津村 啓介君

      細川 律夫君    鷲尾英一郎君

      伊藤  渉君    保坂 展人君

      滝   実君    今村 雅弘君

      山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   法務副大臣        河野 太郎君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   最高裁判所事務総局総務局長            園尾 隆司君

   最高裁判所事務総局人事局長            山崎 敏充君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁情報通信局長)  武市 一幸君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小貫 芳信君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    大泉 隆史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     高鳥 修一君

  石関 貴史君     鷲尾英一郎君

  河村たかし君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  高鳥 修一君     赤池 誠章君

  篠原  孝君     河村たかし君

  鷲尾英一郎君     石関 貴史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)


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     ――――◇―――――

石原委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房総括審議官片桐裕君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、警察庁情報通信局長武市一幸君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長小貫芳信君、法務省入国管理局長三浦正晴君、公安調査庁長官大泉隆史君、外務省大臣官房審議官木寺昌人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局園尾総務局長及び山崎人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 本日は、この入管法の改正案について質問させていただきますけれども、まず、前回の委員会で、局長と副大臣、それと大臣、それぞれ、ちょっと聞いている方としては答弁がばらばらだった部分も感じましたので、またきょう改めてそこを丁寧に説明していただければと思います。

 まず、入管当局が生体情報を指紋、顔写真等とるということでございますけれども、その保有期間なんですけれども、一体どのぐらいを考えて、そしてどこに規定があるのかということ、これは大臣から答弁をお願いします。

杉浦国務大臣 御答弁申し上げます。

 上陸審査時に特別永住者等を除く外国人から提供を受ける指紋等の個人識別情報につきましては、出入国の公正な管理に必要である間は保有することになります。したがって、まず、提供者がいまだ出国せず我が国に在留している間は保有いたします。また、出国後も、事後的な確認の必要性や再度の入国の際の審査で利用する可能性に備えて、内部の運用基準で定める一定の期間は保有いたします。具体的な保有期間については、施行後、その結果を踏まえて最終的に決定することとしたいと思います。

 少し詳しく説明をさせていただきます。

 まず、出入国の公正な管理の典型例でございます、事後的な、つまり上陸審査終了後の確認の必要性について、補足して具体的に御説明を申し上げます。

 我が国への不正な出入国の状況を、事後的に得られた情報に基づき、具体的には四年以上前にさかのぼって確認する必要性が生じた外国人テロリストの具体例として、フランス国籍でアルカイダの関係者であるリオネル・デュモンがおります。デュモンは、二〇〇三年十二月にドイツで爆弾テロ未遂容疑などで逮捕されましたが、その後の調べで、一九九九年、平成十一年九月以降二〇〇三年、平成十五年九月までの間に、偽造旅券で上陸審査をすり抜け、六回にわたり我が国への入国を繰り返していたことが判明いたしました。

 デュモンの場合、使用した偽造旅券に関する情報が事後的に得られたために、法務省入国管理局ですが、その偽造旅券上の氏名等の情報を頼りに、可能な限度で事後的に不正な出入国状況の解明に努めたものでございます。

 これに対し、今回の入管法改正案の施行後は、外国人テロリストの指紋情報が得られれば、例えば、デュモンの例で警察庁から前に御説明がございましたが、ICPOから指紋情報の提供がなされれば、当該外国人テロリストが使用した偽造旅券に関する情報が得られなくても、将来の入国を阻止できることはもちろん、保有期間内の指紋について検索を行い、当該外国人テロリストの過去の入国状況の全容を解明することができます。

 この事情は、外国人テロリストに限らず、国際的に手配されている外国人犯罪者や、偽造旅券を使って我が国への入国を繰り返す国際犯罪組織のメンバーについても同様でございます。

 この点について、前回の当委員会において参考人として意見陳述をされました京都大学情報学研究科の鷲見和彦教授は、過去がわからないと未来の対策もない、どういう形でシステムを破ったかがわかればより確固たるシステムに改善することもできると述べられ、その重要性を強調しておられました。このことは、委員の先生方の御記憶にも新しいことと存じます。法務省としては、このような専門家の御指摘も踏まえ、遺漏のない運用に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

 以上、具体的な例を挙げて述べましたように、テロリスト、国際犯罪組織のメンバーやその疑いのある外国人の出国後も事後的な確認の必要性が存在することは明らかでございます。ましてや、当該テロリストや犯罪者がいまだ出国せず我が国に在留、すなわち潜伏しているのであれば、指紋を利用して検索いたしまして、上陸年月日、上陸申請時に名乗った氏名、国籍、使用した旅券の旅券番号等を特定する必要があることは当然でございます。そうした作業によって初めて、出国確認時や在留審査時、例えば、当該テロリスト等が在留中に在留期間の更新を申請した場合には、その審査のときに、旅券番号等の情報をもとに当該テロリスト、犯罪者を発見し、認定テロリストや不法入国者として収容した上で退去を強制することが可能となるからでございます。

 次に、出入国の公正な管理のもう一つの典型例でございます、指紋を再度の入国の際の審査または在留中の審査で利用する可能性について、補足して御説明申し上げます。

 これはいわゆる名寄せと申しますか指紋寄せと申しますけれども、名寄せを行うことを念頭に置いたものでございます。

 既に副大臣から繰り返し御答弁させていただいたとおり、提供を受けて保有期間の範囲内で蓄積される膨大な数の指紋について、提供者たる個々の外国人の上陸審査時ではなく、その後に、ある程度時間をかけてバックオフィス、入管の情報処理部門において名寄せを行うことは効果的であり、また可能でございます。

 例えば、同一の指紋の提供者が、本来は同じ旅券を使うはずなのに、実際には複数の旅券を使い分けて繰り返し我が国に入国しているとしますと、偽造旅券や他人名義の旅券で不法入国をしている外国人テロリストや国際犯罪組織のメンバーである可能性が高いわけでございますが、指紋を利用した名寄せを行うことによりまして、こうした要注意人物を抽出して特定することができます。そして、その指紋を要注意人物リストに掲載すれば、上陸審査時の指紋照合により次回の上陸を水際で阻止することができますので、法務省としては、このような観点から遺漏のない運用に努めてまいりたいと考えております。

 以上、具体的な例を挙げて申し上げましたように、テロリスト、国際犯罪組織のメンバーやその疑いのある外国人の出国後も、再度の入国の際の審査で利用する可能性が存在することは明らかであると存じます。ましてや、当該テロリストや犯罪者がいまだ出国せず我が国に在留、すなわち潜伏しているのであれば、指紋を利用した名寄せによりそうした要注意人物を抽出し、上陸年月日、上陸審査時に名乗った氏名、国籍、使用した旅券の旅券番号等を特定する必要があることは当然でございます。そうした作業によって初めて、出国確認時や在留審査時に旅券番号等の情報をもとに当該テロリスト、犯罪者を発見し、認定テロリストや不法入国者として収容した上で退去を強制することが可能となるからでございます。

 なお、名寄せは、試算として既にお示ししている予算の範囲内で同時に実現が可能でございます。すなわち、名寄せに必要な予算は、上陸審査時に要注意人物リストと照合するために必要な予算としてお示しした試算一、約四十五億円、ICPO手配者及び指名手配容疑者合計一万数千人と照合する場合、または試算二、約七十億円、これに加えまして被退去強制外国人約八十万人とも照合する場合に含まれております。

 上陸審査時に特別永住者等を除く外国人から提供を受ける指紋等個人識別情報の具体的な保有期間につきましては、指紋を活用した二次的審査、セカンダリー審査、上陸口頭審査や名寄せを実際に行い、その成果や問題点を踏まえる必要があることから、したがって施行後に決定することとしたいと思います。

 なお、そうして最終的に決定する具体的な保有期間、あるいは現時点で検討している具体的な保有期間の選択肢については、テロリストや国際犯罪組織のメンバーに有益な情報を与えることになりますので、公表を差し控えることとしたいと存じます。

 この点について、若干補足して御説明いたしますと、仮に、日本政府が、出国後一年間あるいは三年間で指紋を廃棄する方針であると公表したといたします。そうしますと、複数の偽造旅券を使い分けて我が国へ入国を繰り返す外国人テロリストや国際犯罪組織のメンバーは、日本に不正入国する際は、一年間あるいは三年間は同じ偽造旅券を使う必要があるが、最終出国から一年間あるいは三年間を過ぎたら別の偽造旅券に切りかえても指紋照合で発見されるリスクはないということを認識いたします。つまり、外国人テロリストや犯罪組織者が、発見されるリスクを正確に計算し、これに応じた対策を立てることが可能となるわけでございますので、テロリストや国際犯罪組織のメンバーに有益な情報を与えることになるのは明らかだと存じます。

 この点について、前回の当委員会において参考人として意見陳述をされました先ほどの鷲見和彦教授は、犯罪者が処罰のリスクを避けるために日本に入ることをやめるという抑止効果の重要性を強調しておられました。このことは、委員の先生方の御記憶にも新しいことと存じます。

 法務省としては、このような専門家の御指摘も踏まえ、遺漏のない運用に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 なお、副大臣が本委員会において、入国審査時に提供を受けた指紋等個人識別情報について七、八十年保有したい旨発言いたしましたが、これは、前回の本委員会で繰り返し御答弁し、本日も改めて御説明いたしました法務省の方針を踏まえて、国民の生命と安全を守るためのテロ未然防止対策という立法趣旨からすれば、論理的に可能な保有期間は最長で七十年から八十年になるとの趣旨で発言したものだと理解しております。副大臣もその旨繰り返し答弁しておられるところですので、大臣である私、あるいは法務当局と副大臣の間で不一致はないと存じます。

高山委員 今のお話を伺いましても、少しわからない部分がまだあったんです。

 まず、保有期間の部分なんですけれども、論理的に八十年まで保有することができるということと、デュモン氏の例、デュモンが四年後に入ってきたということで、例えばですけれども、出国後に、では五年にしようとかというのと八十年というのでは物すごい開きがあると思うんですね。

 確かに、テロリストに有益な情報を与えることになるというような御答弁が今ございましたけれども、他人の、外国人の指紋をとったり顔写真を撮ったりというのは、今までの文書のテキストの情報、どこに住んでいるだれだとか、何歳だとか、男だ女だというようなことに比べて、やはり人権侵害の程度は大きいものだと思うんですね。そこまでのことをしてテロ対策をやらなきゃいけないという必要性もわかります。けれども、それでまたテロリストに情報を開示することになるので言えませんということで、自分がとられた指紋あるいは顔写真、これを日本政府というのは一体いつまで持っているんだということを日本に旅行に来た方はずっと思い続けるわけですね、七十年も八十年も。そのことの均衡を考えると、やはり八十年というのと五年というのはちょっと差が開き過ぎているような気がするんですね。

 ですから、大体何年ぐらいとか、例えば三十年以内だとかと区切る必要があると思いますが、この点に関して、期間が余りにも開きがあり過ぎるので、これでは、ほぼ無限と一緒じゃないか、九十九年租借するというのと一緒じゃないかと私は思いますので、大臣といたしましてどのくらいの程度が適切とお考えか、伺いたいと思います。

杉浦国務大臣 この点については、こういう個人識別情報を入国時にとらなくて、この制度を導入しなくてテロリスト等を防止できれば、それは一番いいと思うんですね。

 ですけれども、現下の状況、テロリストが世界でばっこしている状況にかんがみると、国際的協調でテロを未然に防止しようということでやっているわけですから、確かに、人権侵害と申しますか、そういう個人情報を国の意思で入国時に登録するということは、人権侵害と申しますか、意に反してとるわけですから、人権侵害とは言えないにしても問題がないとは言えないと思うんですけれども、しかし一方において、守るべき国民の生命財産の安全がある。国際社会でテロを封じ込めるという目的がある。そちらと比較考量いたしますと、このような方法をとることによってテロを未然に防止していくということはやむを得ないし、憲法上も問題はないと私どもは考えておるところでございます。

 具体的な保有期間については、再三御答弁申し上げているとおり、今申し上げましたようにいろいろなことがございますので、施行後、その結果を踏まえて最終的に決定することといたしたいということで、何年にするとか、七十年、八十年とか、そういう具体的な年限については申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、テロが終息していけばとらなくてもよくなるわけですし、状況もございます。そのあたりは常識的な線でお考えいただければよろしいかと思います。

高山委員 私は、今伺いましたのは、大臣も今悩みながら、非常にバランス感覚のすぐれた大臣だなというふうに伺いましたけれども、その中で、バランス感覚のすぐれた中で、大体どのぐらいが適正と考えるのかというのを常識の範囲でお答えいただければ結構でございます。

杉浦国務大臣 その点は、今も申し上げさせていただいたように、現時点で申し上げることは差し控えさせていただくべきだと思います。

 再三繰り返します。まだ始まっておりません。これは法律成立後一年半以内に施行することになるわけですが、その間の事情、状況の変化もいろいろあるでしょうし、施行後、その結果どういういい成果が出るのか、テロの未然防止との関係でどのように有効に機能していくのかという点を慎重に見きわめながら、抑止力になるのは間違いございませんから、状況を踏まえて判断させていただくということで、御理解をお願いしたいと思います。

高山委員 ちょっとこの点につきましても、また同僚議員の方から改めて質問をさせていただくことといたしまして、もう一つ、指紋と顔写真をとったということで、この生体情報の利用の仕方なんですけれども、まず、入管行政の中でどのように利用していくのか。それと、一番我々が懸念を持っている、これは捜査だとか、要するに、他の国家機関で流用されてしまうんじゃないかという懸念を持っているわけですから、それは一体どういう基準で行うのか。これは前回も質問しておりますので、もう一度丁寧な答弁を求めます。

杉浦国務大臣 大変重要な点ですので、またちょっと詳しく御説明をさせていただきたいと思います。

 今回、個人識別情報、指紋及び写真の提供を義務づける趣旨はもう再三繰り返しているので申し上げませんが、それをどのように利用するかということでございますが、先ほど御説明いたしましたように、出入国の公正な管理のために利用するということは、もう繰り返して御説明するまでもないと思います。

 次に、指紋及び写真等を法務省が他の行政機関に提供する場合がございます。法務省が保有する指紋及び写真につきましては、行政機関保有個人情報保護法という法律に規定する個人情報として、同法に基づいて可能な範囲内に限り利用及び提供を行うこととなります。したがって、法務省が利用目的以外の目的のために他の行政機関等外部への提供を行うことにつきましては、同法第八条に規定する利用及び提供の制限の適用を受けることになります。

 行政機関個人情報保護法第八条の第一項は、まず、大原則として利用目的以外の個人情報の提供を禁止しております。したがいまして、法務省が保有することになる個人識別情報についてもこの基準、大原則は適用されることは当然でございます。

 同項は、他方で、法令に基づく場合であれば利用目的以外の提供が可能であるといたしております。このように、行政機関個人情報保護法におきまして、法令に基づく場合が利用目的以外の提供の原則禁止の対象から除外された理由については、他の法令の規定はそれぞれの立法目的から保有個人情報の提供を可能としており、合理性が認められるためであると承知しております。

 また、実際に提供することの適否については、それぞれの法令の趣旨に沿って適切に判断される必要があるというのが行政機関個人情報保護法の解釈であると承知しております。ここで言う法令の規定の例は、国会法第百四条第一項が規定する官公署に対する報告、記録提出の要求、刑事訴訟法第百九十七条第二項が規定する捜査関係事項照会、民事訴訟法第百八十六条が規定する調査の嘱託等数多くありますが、法務省としては、それぞれの法令の趣旨に沿って、実際に提供することの可否について適切に判断することとなります。

 警察等捜査機関から犯罪捜査の目的で刑事訴訟法百九十七条二項に基づいて特定の指紋を有する者について照会がなされた場合を例にとって具体的に御説明を申し上げますと、まず、行政機関個人情報保護法の解釈上、当該照会に応じて個人情報を提供することは可能であります。また、刑事訴訟法の解釈上は、当該照会に応じることは義務でもございます。

 ただし、刑事訴訟法に基づく警察等捜査機関の照会権限は、あくまで具体的な犯罪ないしその嫌疑があるときに犯人及び証拠を捜査するためのものでございます。

 また、かかる照会に対しまして、これを受けた法務省、入管になりますが、において回答するわけでございますから、照会に係る指紋、個人識別情報を照合するのは照会を受ける側である法務省、入管であること、照会に応じて提供するのは法務省による照合の結果ヒットした指紋だけであることは当然でございます。

 したがって、法務省が刑事訴訟法に基づく照会に応じて警察等捜査機関に対して指紋等個人識別情報を提供するのは、これらの基準を満たす場合に限られることになります。逆に言いますと、法務省、入国管理局が保有する指紋等個人識別情報を刑事訴訟法に基づく照会に応じて包括的に警察等捜査機関に提供するなどということは、法制上も運用上もおよそあり得ないところでございます。

 次に、行政機関個人情報保護法第八条二項は、刑事訴訟法等他の法令に基づかない場合において、個人の権利利益の保護の必要性と個人情報の有用性を考量し、例外的に利用目的以外の提供ができる基準を規定しております。

 まず第一の基準として、本人、個人情報によって識別される特定の個人または第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、個人情報の提供を一切禁止しております。法務省が保有することになる指紋等個人識別情報についてもこの基準が適用されることは当然でございます。

 次に、第二の基準として、本人の同意があるときは個人情報の提供は可能であるとしております。法務省が保有することになる指紋等についてもこの基準を適用されます。

 さらに、第三の基準として、個人情報の提供を受ける他の行政機関が法令の定める事務または業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、利用することについて相当な理由のあるときは、個人情報の提供が可能であるとしております。法務省が保有することになる指紋等個人識別情報についてもこの基準を適用されます。

 なお、相当な理由のあるときとは、行政機関の長の恣意的な判断を許すものではなく、少なくとも、社会通念上、客観的に見て合理的な理由があることが求められるというのが行政機関個人情報保護法上の解釈であると承知しております。また、相当な理由があるかどうかは、個人情報の内容や利用目的等を勘案して、行政機関の長が個別に判断することになるというのが、行政機関個人情報保護法上の解釈であると承知しております。

 法務省が保有することになる指紋等個人識別情報については、利用目的以外の提供が許容されるのはあくまでも例外であることを踏まえつつ、かつ、本来の利用目的を勘案しつつ、相当性を特に厳格に解釈、運用してまいります。

 したがって、法務省入国管理局が保有する指紋等個人識別情報を行政機関個人情報保護法第八条第二項第三号に基づいて包括的に他の行政機関に提供するなどということは、法制上も運用上もおよそあり得ないところでございます。

 なお、この規定に基づいて他の行政機関に情報を提供する例は余り考えられませんが、ないとは言えないだろう。余り考えられませんが、例えば、警察から、我が国で事故死した外国人の身元確認のため指紋情報の提供依頼がある場合に、それに応ずることはあり得ると考えます。しかし、この場合にも、先ほど申し上げましたように、相当性を特に厳格に解釈して運用してまいります。

高山委員 これは、前回同僚議員が質問して、ちょっと話がややこしくてわからぬので文書で出していただきたいというようなことを協議いたしましたら、大臣からの丁寧な答弁を冒頭するのでということでしたけれども、これはやはり複雑な部分が多いので、後できちんとした文書の形で、ここはこうだ、ここはこうだということを出していただきたいと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

 これはちょっと、今大臣も読むときかなり混乱されていましたけれども、これはきちんと説明していただければ、人権侵害の程度は低いんだということを理解できると思うんですけれども、大臣、いかがですか。

杉浦国務大臣 これは、委員会の御指示がございますれば、検討させていただきます。

高山委員 それでは、委員長、これはもう一度、委員会の方も、ちょっと今ばっというふうに読まれただけですので、資料の要求をいたしたいと思います。

石原委員長 後刻、理事会で協議をさせていただきたいと思います。

高山委員 それでは、続けて質問させていただきます。

 今大臣から御答弁いただきましたのは、国内の他機関への利用ということで、それが、正直言いますと、この行政機関保有個人情報保護法の規定によるということで、本当にいいのかなと。今まで全部、これはテキスト情報、文書の情報とかに関する情報であって、指紋ですとか、いわゆる生体情報に関して今までこれだけ大量に扱ったことはないわけですから、新たな立法措置、あるいはこの法律特有のものを設けてもよかったのではないかなというふうに私は思います。

 それに関しまして、まず大臣、これは特別の規定は定める必要はなかったのかあったのか、ちょっともう一度お願いできますか。もうこの一般法の規定でいい、十分であるというふうに大臣はお考えでしょうか。

杉浦国務大臣 先生の御指摘は、個人情報保護法制との関係についてだと思うんですが、今回の入管法改正案と、御指摘になりました行政機関個人情報保護法、あるいは個人情報保護法制との関係について、法務省の基本的立場を御説明申し上げます。

 行政機関における個人の情報に関する基本的事項を定めることにより、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする法律として、行政機関個人情報保護法、正式名称は行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律がございます。

 行政機関個人情報保護法におきましては、生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものを個人情報として定義しておりますから、今回の入管法改正案に規定する個人識別情報が指紋を含めて個人情報に該当することは当然でございます。

 なお、この点は、上陸審査時に特別永住者等を除く外国人に提供を義務づける指紋等個人識別情報でございましても、自動化ゲートの利用希望者である日本人または一定の範囲の外国人が登録時に任意に提供する指紋でございましても、同じでございます。

 このように、個人情報全般の保護を目的とする行政機関個人情報保護法が存在する以上、個人情報の一種でございます指紋の取り扱い、保有、利用、提供等の制限について、入管法に規定する必要は法制上はないと考えております。

 また、法務省の政策判断としても、個人識別情報の取り扱いについては、個人情報保護の基本法である行政機関個人情報保護法の規定するところに従って適正に、あるいは個人情報保護法制に従って適正に行うことといたしました。

 すなわち、行政機関個人情報保護法に規定されている個人情報の取り扱い、保有、利用、提供等の制限について、入管法に重ねて規定したり、あるいは行政機関個人情報保護法と異なる特別な規定を置くことはしなかったものでございます。

 以上の整理は、法務省が独自の見解に基づいて勝手にしているわけではございません。先生方の御記憶にも新しいことと思いますが、前回の本委員会の参考人質疑におきましても、個人情報保護法制の専門家であられる千葉大学法経学部の多賀谷一照先生が同様の見解を示しておられました。

 多賀谷教授のお言葉を一部おかりすれば、現に行政機関が保有しているのは、犯罪歴、精神疾病の記録など機微なものを含め膨大な個人情報であり、そうした個人情報がみだりに収集されたり濫用されたりしないために個人情報保護法制が必要とされたということでございます。また、本委員会におきましては、指紋はセンシティブであるから他の個人情報とは違うという御議論もなされておりますが、多賀谷教授によりますと、いわゆるセンシティブ情報について、行政機関個人情報保護法に個別の規定を置くという議論もございましたが、その範囲が明確でないので立法から見送られたとのことでございます。

 この点につきましては、法務省といたしましても同様の認識でございます。

 先進諸国の経済協力機構でございますOECDでの経験を見ましても、同様のことが言えます。すなわち、一九八〇年九月のプライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関するOECD理事会勧告がございますが、それにおきましても、専門家グループは、差別の危険性というような各種のセンシティブ性の基準について議論してきたが、センシティブと万人に認められるようなデータを定義づけることは不可能であることがわかったという理由により、センシティブ情報についての特段の勧告はなされなかったと承知をいたしておるところでございます。

高山委員 ここは見解の相違でもあると思いますので、やはり指紋ですとか顔写真というのは、例えば、自分が杉並に住んでいるだとか埼玉に住んでいるということは、これは引っ越せば変えられるような情報ですけれども、指紋とか顔写真というのはもう変えられませんから、非常にセンシティブ、かつ、まさにアイデンティティーの根本だというふうに私は考えます。

 あと、もう一つ気になる、次の質問に行きたいんですけれども、日本で集められたこういう生体情報を海外の機関にも提供できるという規定がございますけれども、この基準もちょっとはっきりしていただかないと、特に海外から日本に旅行される方は、日本に旅行したはいいが、自国の捜査機関からちょっとした、あいつは万引きの犯人じゃないかとか、そういうちっちゃい犯罪で疑われて、指紋と顔写真の提供を日本の政府から求められるというようなことになりはしないかという懸念もあると思うんですけれども、この海外への情報提供の基準について、大臣からまた丁寧な答弁を求めます。

杉浦国務大臣 外国への提供でございますが、入国管理局が保有する情報を外国に提供するのは、入管法第六十一条の九の規定に基づいて直接外国入国管理当局に提供する場合と、国内の他の行政機関、例えば外交ルートを通じて間接的に外国政府に情報提供する場合とがございます。

 まず、入管法第六十一条の九に基づく場合について御説明申し上げます。

 入管法六十一条の九は、昨年御審議いただき、新設された規定でございますが、この規定は直接外国の入国管理当局に情報提供することを予定しており、この規定により、入国管理局が提供する相手は、我が国の入管法に規定する出入国の管理及び難民の認定の職務に相当する職務を行う外国の当局、外国入国管理当局、繰り返して申しますが、その当局に限られ、提供する情報も、外国入国管理当局の職務、つまり、我が国の入管法に規定する出入国の管理及び難民の認定の職務に相当するものに限られます、この職務の遂行に資すると認める情報に限定されます。したがって、法制上、この規定により外国入国管理当局に当たらない外国の機関に情報提供がなされることはあり得ません。

 なお、外国入国管理当局の職務遂行に資する情報提供の例としては、退去強制等の措置によりテロリストの入国を規制する職務を有する外国入国管理当局に、入国規制の対象とされる国際テロリストの情報を提供することが考えられます。また、複数の国において人身売買を行っているブローカーの情報を外国入国管理当局に提供することも考えられます。

 我が国の入国審査の際に提供された外国人の指紋情報全体については、外国入国管理当局がその職務を遂行するに当たり必要があるとは認められません。したがって、法制上、当該情報を一律にあるいは包括的に外国入国管理当局に提供することはあり得ません。

 一方、特定の個人についての指紋情報を外国入国管理当局に提供することはあり得ます。例えば、我が国の上陸審査時に提供された指紋情報がテロリストの指紋であることが明らかになったような場合には、テロリスト情報として、入国管理局が保管する要注意人物のリストに入れることになります。我が国の入国管理局が要注意人物リストに入れた情報は、外国入国管理当局においても出入国の管理に必要な情報となり得ますから、そうした場合に、テロ対策における国際協力の観点から、この指紋情報について外国入国管理当局に情報提供することはあり得ます。

 次に、入管法第六十一条の九の対象とならない情報について御説明申し上げます。

 このような情報提供の例といたしましては、外国の捜査機関から外交ルートなどで我が国に対して捜査共助を要請した場合が考えられます。この場合は、国際捜査共助等に関する法律に基づいて、その枠組み内で情報提供の可否が決定されることになります。

 なお、同法は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第八条第一項の「法令に基づく場合」に当たります。そして、捜査共助は具体的な外国の刑事事件の捜査に必要な証拠を提供するものでございますので、法制上、個人識別情報を一律にあるいは包括的に提供することはあり得ません。

 捜査共助のように具体的な法令の根拠のない場合は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第八条第二項の制限の範囲内でのみ提供することになります。具体的には、同項第四号に基づき特別な理由があると認めるときに限り提供することを想定しております。余り適用が考えにくいんですが、例えばこのような場合の例として、海外で大きな事故が発生し多数の死者が出たときに、入国管理局が、安否を確認したい本人の家族の依頼を受けて外交ルートで、被災民の特定を担当する海外の機関に指紋情報を提供することが考えられると思います。

高山委員 捜査共助等が入ってくると、これは結構、ああ、じゃ、日本に旅行したらもう顔写真と指紋全部とられちゃうんじゃないかなという懸念も当然あると思うんですよ。

 その点、昨年、その前ですか、US―VISITがアメリカの方で導入されましたよね。このときに、アメリカ合衆国を訪問するビジネスマン、旅行者全員の指紋と顔写真をとるということで、これは当然日本人も、そんな、アメリカに行ったらもう全部顔写真と指紋とられちゃうんだ、これがまた今おっしゃったみたいに日本の捜査なんかに利用されたら嫌だなと思う人、これはその当時も相当多かったと思うんですね。そういった国民の意見を代弁して、当然日本政府としても、このUS―VISIT導入当時にアメリカ政府にいろいろ注文をつけているようなんです。

 まず、これは外務省に伺いますけれども、このUS―VISITの導入時に日本政府として、アメリカ政府に旅行者に対する配慮ですとかこういったことを何か要望されたと思うんですけれども、それは何か要望されましたか。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 日本政府は、日米規制改革イニシアチブの場などにおきまして、US―VISITプログラムにより取得された生体情報につきまして厳格かつ適正に管理するよう米国政府に対して求めてきております。これに対しまして米国政府は、日本政府の懸念を十分に理解するとしつつ、生体情報が不適切な形で使用されないよう厳重に管理していることを説明してきており、規制改革イニシアチブの成果に関する首脳への報告書でもその旨明記しております。

 政府といたしましては、今後も引き続き米国政府に対しましてUS―VISITプログラムによって取得されました生体情報を厳格に管理するよう求めてまいる考えでございます。

高山委員 引き続き、外務省に伺います。

 私、これは外務省の方からいただいたもので、日本政府から米国に対しての要望事項、それに対する返事、またもう一回要望して返事がと、毎年のやりとりを全部いただきましたけれども、こういう要望事項をつくるときは、これは外務省だけの判断なんですか。それとも、国内の関係省庁と相談した上で外務省が、これは外交のことですから、代表して持っていくという形をとられるのか。どちらですか。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 関係省庁と十分相談して米側に要望を提出しております。

高山委員 引き続き、また外務省に伺います。

 そうしますと、このUS―VISITの指紋の取り扱いあるいは生体情報の取り扱いに関して十分注意をしてくれ、これは法務省と外務省の方で事前に協議をして、その協議結果をアメリカの方に外務省としては伝えた、こういうことでよろしいでしょうか。どこの省庁と協議したということをお願いいたします。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 そのとおりでございます。

高山委員 これはまた引き続き外務省に伺いますけれども、そのときに、このUS―VISITのことで法務省から、米国政府にこういうことを要望してくれと、どういう具体的なミッションがあったのか教えてください。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的には、US―VISITプログラムによりまして取得される生体情報について厳格な管理を米側に要望するというものでございます。

高山委員 要約するとそういうことになるんでしょうけれども、これは二〇〇四年の六月に返ってきた報告書でしょうか、この中に、この個人情報のことで、米国を出国するときに云々というようなくだり、細かいものがありますけれども、この報告書の方にはこれは何て書いてありますか。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 個人情報は当該個人が米国を出国する時点で消去されるべきであるという日本国政府の立場も十分に理解するというくだりがございます。

高山委員 今度は法務省に伺います。

 去年かおととしの時点で、大臣は当時、もっと官邸にいて、当然こういう報告書にも目を通された立場だったと思いますけれども、これは出国した時点で消去することを要望しているじゃないですか。これは法務省内で何かどこか意見が変わったんですか、この二年間の間に。

杉浦国務大臣 官邸にいたときにそういうことは、私は承知しておりません。

 米国政府とのやりとりの中で今外務省が申されたような経緯があったわけでございまして、具体的に日本側から要望事項として挙げてはいないというふうに承知しております。

高山委員 これは、私が何かガセネタだとかそういうことでやっているんじゃないですよ。これはそちらから出していただいた資料を今外務省の方が読んだものですので、それは大臣の事実誤認じゃないんですか、今は明らかに。だって、これは消去されるべきであるという日本国政府の要望を踏まえということを言っているわけですよね。では、アメリカがおかしいということを言いたいんですか。ちょっと大臣、これはきちんと説明してください。

杉浦国務大臣 我が国は、米国政府に対しまして、在米邦人企業を含む経済界や在米邦人等からの要望も踏まえまして、先ほど外務省が申されたとおり、米国入国時に採取される指紋情報に関し厳格に管理するよう言及してきていると承知しております。

 日本政府としては、そのような経緯も踏まえた上で、国民の生命と安全を守るために本システムの導入を決定したものでございます。

高山委員 大臣、全然今、質問とは関係ないでしょう。私が今聞いているのは、これは二〇〇四年の時点では、自分の日本国民に対しては、アメリカに行って指紋をとられたら出国後直ちに消去しろと要望していて、海外の方が来たのは、最大八十年ですか、論理的に八十年もとっておく、あるいははっきり期間は言えないと、これはちょっと国際協調の観点からもおかしいじゃないですか。自分たちはすぐ消去しなきゃ問題があるというふうに思っていたんじゃないんですか、二年前は。何か法務省は考え方を変えたんですか、そこを説明してください。

杉浦国務大臣 その文書は法務省が要求したと書いてあるんですか。(高山委員「いえ、政府ですよ、政府」と呼ぶ)政府。私どもは、米国政府とのやりとりの中で米国政府による個人情報管理の厳格化のための具体策をとるように求めておったところでございまして、その一案として個人情報の出国時の消去について言及があった経緯はあるようでございますが、具体的に日本側からの要望事項としては挙げられていないというふうに承知しております。

高山委員 いや、大臣、だから、私がさっき外務省の方に、こういう個別のことをやるときに必ず法務省と協議するんですかと伺いましたら、当然協議してから言っていますと。それはそうですよね。外務省だけの判断でできることではないと思いますので。

 その上で、アメリカにしてみれば法務省と外務省が違うことを言っているなんというんじゃ困りますから、日本政府としてこういう意見でございますと、これは外交交渉では当たり前ですよね、一元化してくるわけですから。その意見が、個人情報は当該個人が米国を出国する時点で消去されるべきという日本政府の立場ということでありますけれども、これは要求しているわけですよね。とにかく、この矛盾についてきちんと説明してください。

杉浦国務大臣 具体的に日本側からの要望事項として挙げられたものではないというふうに承知いたしております。

高山委員 意味がわからないですよ。

 ちょっと委員長、これはおかしいですよ。意味がわからない。だって、これは私が出してきている資料じゃないですから。これは外務省の資料ですから。

石原委員長 高山君の質問に、法務省はどなたでも結構でございます、責任を持ってお答えいただきたいと思います。

河野副大臣 日本政府が米国政府に公式に要望しているのは、個人情報管理の厳格化でございます。そのやりとりの中で、例えば出国時に消去をするというようなことを例示したことはあるんだろうと思いますが、日本政府から正式に要望しているのは、厳格に管理をしてくれということでございます。米国政府がそのやりとりの中で言及されたことについて申し述べたことはあるかもしれません。

高山委員 今の副大臣の御答弁ですけれども、例えばということで、出国後直ちに指紋を消去するという提案を日本がしたということでしょうか。

河野副大臣 そのやりとりの中でどちら側か、そういう厳格管理をする一例のやり方としてそういうやり方もあるねということが協議の中で恐らく話し合われたんだろうと思いますが、日本政府からの公式な要望は、個人情報を厳格に管理してくれということであります。

高山委員 いや、河野副大臣、この報告書によれば出国後直ちに消去されるべきだという日本政府の立場と言っているんだから、これは日本政府が言っているに決まっているじゃないですか。これはこの文章の読み方だけの話で、だから、この文章と今の法務省の見解に矛盾があるんじゃないんですかという質問をしているので、この文章そのものはもう変えようがない事実なんじゃないんですか、副大臣。

河野副大臣 日本政府の要望は、あくまでも個人情報管理の厳格化を要望しているわけであります。その中で一例として出国時に消去をするという方法も恐らく検討をアメリカ政府がしたんだろうと思いますが、日本政府の要望は、あくまでも個人情報の管理の厳格化であります。

高山委員 いやいや、これはたまたま今私、ここを取り上げて言っていますけれども、こういう提案を日本側がしたけれどもアメリカ側としては結局受け入れられないでそのまま保存しているという、これは私がきょう出した毎日新聞の「出国時の消去要請へ」という新聞、これに事のてんまつは書いてありますけれども、新聞よりも正確を期するために政府の報告書を今外務省の方に読み上げてもらっただけですので、これは日本側から提案しているんですよ。そこは副大臣、全然争いにならないと思いますよ、申しわけありませんけれども。

 私が今問題にしているのは、その当時の日本政府の考え方と今の法務省の見解と何か変わったんですかということを聞いているんですけれども。副大臣でも結構ですよ。

河野副大臣 当時の日本政府の公式な要望は、個人情報管理の厳格化であります。

高山委員 いや、個人情報の管理の厳格化なんというのは当たり前ですよ。それはそういうふうに要望するでしょうし、今も、我々が今度導入しようとしている日本版のVISITも個人情報を厳格にしますというのは当たり前で、そうするために、では具体的にはどうなんですかということで、今、出国したときには指紋情報を消去したらどうでしょうかということでやりとりがある中で、日本政府としても以前これはもう提案しているじゃないですかという話をしているんですけれども、では、この当時の日本政府からはこういう提案がなかったということを今副大臣はおっしゃりたいんですか。ちょっとそこだけまず答弁をお願いします。

河野副大臣 当時、交渉の中でのやりとりについては私存じ上げませんが、公式な要望は個人情報管理の厳格化でございます。

 今回の入管法の改正に当たりまして、我々法務省は、個人情報管理を厳格にやりたいと思っております。

高山委員 ちょっと、さっき聞いたら、委員長からですよ、法務省の方で責任を持って答弁される方と言ったら副大臣が手を挙げられて、それで答えられて、当時のこの要望書の要望事項の中には、定かではないが、やりとりの中でその指紋の消去についてもあったんじゃないかという答弁をされたのに、今個人的にはと言いますけれども、どういう立場で答弁しているんですか、副大臣は。全然立場が変わっちゃっているじゃないですか。個人的な意見なんて全然聞いていないですよ。

 昔の法務省と今の法務省と、私から見るとこの指紋の即時消去ということに関して矛盾があるじゃないか、おかしいですねと言っているのに、個人的にはそう思いますということを言うんだったら、こんなの全然質問できませんよ、委員長。しかも、委員長の御指示にも全然従っていないです。おかしいと思いますよ、これは。だから、責任ある答弁をもう一度させるか、あるいはここでちょっと、これ以上は続けられません、これでは。

石原委員長 それでは、誤解があるといけませんので、高山委員が御指摘をされました政府の、外務省の文書でございますか、もう一度木寺大臣官房審議官からそこのくだりにつきまして読ませて正式な見解を聴取し、その後、法務省を代表して責任ある御答弁をお願いしたいと思います。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカ側の報告書でございますが、「個人情報は当該個人が米国を出国する時点で消去されるべきであるという日本国政府の立場も十分に理解する。」と記載されております。

杉浦国務大臣 それはアメリカ側の文書のようでございますが、それは木寺審議官のおっしゃったとおりだと思います。具体的に日本側から要望事項として挙げられていないというふうに承知しております。

高山委員 先ほどから言っていますけれども、この要望のやりとり、今ここだけじゃなくて全部やりとりがあるわけで、これは公表されていることで、それも見て新聞記者の方も書かれたんだと思いますよ。これを日本から要望していないというのは、大臣、そこは明らかにおかしいですよ。要望したんでしょう、これは。日本から要望もしないのに何でこんなのが入ってくるんですか。おかしいですよ、これは。

杉浦国務大臣 アメリカ側の文書にそういう記載があることについては木寺審議官が説明したとおりでございますが、日本側から正式に要望した事項としてではないというふうに私どもは理解しております。

高山委員 先ほどの副大臣の答弁ですと、正式に要望した事項は個人情報の厳格化ということでしたけれども、その具体例として出国時の指紋の消去なども話し合われたというような話がありましたけれども、そこがすごく問題なんですよ。

 ですから、ちょっと、杉浦大臣、これは確認してくださいよ。これは私たちでは確認しようがないですよ。どういうやりとりを日米間でやったのか。しかも、それが今の日本の法務省の政策と全然矛盾していないならいいですけれども、これは大矛盾じゃないですか。出国後、直ちに指紋を消去するということを要望しておいて、今この委員会で、先ほど三十分前に話したのでは、指紋を、運用上どうなるかわからないけれども、最大、論理的には八十年もとっておくかもしれない。全然、これは矛盾していると思いませんか、大臣。まず、今のこの二つは矛盾していると思いませんか。どうですか。

杉浦国務大臣 外交交渉といいますか、アメリカとの話し合いは外務省がやったものだと思います。法務省は恐らく立ち会っていないんじゃないかと思うんです。

 合議した時点では厳格にやってもらうという点について合議しているわけで、話し合いの中でどういう話し合いが行われたのか、そこに記載されているのは、どういう経緯でそこに記載されたかは木寺審議官がおっしゃったとおりだと思いますが、私どもとしては、厳格に、適正に管理してほしいという要望事項以外はないというふうに承知しておるわけでございます。

高山委員 これは委員長にも要望いたしますけれども、これは政府側の正式な報告書なんですよ。それと今の答弁との矛盾が見られるので、私としては、では一体、だれが要望した話なのか、そこでどういう返事があったのか、この事実関係をまず明らかにしていただきたいと思います。

 それがなければ、他国に対してこんなことを言っていて、自国では全然違う法案を通しているなんて、審議をこれ以上続けることはできませんね、ここをまず明らかにしてもらわないと。私としては、すっかり、昔はこうだったけれども、考え方が変わりましたと言うのかと思ったら、まずこの時点からお認めにならないのでは、これでは、これ以上審議を続けることはできません。

 ですから、ここをまず、法務省と外務省の方で、どういう事実関係だったのか、これを明らかにしてください。

河野副大臣 要望は、個人情報管理の厳格化であります。これが日本政府の公式な米国政府に対する要望でございます。そのやりとりの中の話について、米国政府が米国政府の出す報告書にどう書くかは、それは米国政府の方針でございますので、法務省とは矛盾することはございません。

高山委員 今の副大臣の答弁はおかしいですよ。だって、日本政府がこういう立場だということを米国が書いているわけですよね。では、米国が、日本が別にどういう立場をとっているか、全然違う、これは百八十度違いますよ。出国時にすぐ指紋を消去するという立場と、今大臣や副大臣が答弁されたように八十年も人の指紋をとっておくというのは百八十度違う立場じゃないですか。こんな間違いをしますか、米国政府が。だったら、クレームをつけないといけないですね、米国に。

 副大臣、どうぞ。

河野副大臣 米国政府がやりとりの中で日本政府の立場をどのように推しはかるかは、米国政府が推しはかるわけでございますから、その推しはかった日本政府の立場について、米国政府が米国政府の出す報告書についてどう記載するかは米国政府の自由だと思いますが、日本側の公式な米国に対する要望は、個人情報管理を厳格化してくれということでございます。

 その当時の個人情報を厳格に管理しなければいけないという立場と、今回の入管法改正に当たりまして、法務省がとっている個人情報をしっかり厳格に管理しようという立場に、何ら変更はございません。

高山委員 だから、個人情報保護を厳格にするという立場ではそれは同じかもしれないけれども、ではそれをどうやってやるんですかといったときに、即時指紋を消去するというのと、いや、それよりもテロの危険を優先して何十年も指紋をとっておくんだ、全然違う立場じゃないですか。

 ですから、私は、ここに日本政府がそういう指紋消去をすぐやってくださいという立場だということが書いてあるので、当然法務省としても、法務省というか日本政府として米国にそういう要求をしたんだろうなと、この報告書を読んだら通常の人は思うと思いますよ。

 ですから、これは、どういう経緯で二〇〇四年に交渉して、そして、今もし考え方が変わったのであればどういう理由で変わったのか、法務省と外務省で、政府で統一した見解を出していただかないと、全く政府の方はどういう方針なのかわからないですね。

 だから、これでは質問に入れないと思いますので、委員長に、委員長も今聞かれていてあれっと思った部分が多々あると思いますので、政府が統一してきちんとした説明をすることを要求していただきたいと思います。

石原委員長 それでは、若干議事を整理させていただきます。

 政府側、法務省の答弁は、当時は、厳格な運用を行ってほしいということで終始一貫した御答弁をいただいております。

 しかし、外交文書等々につきましてこの場で明らかにすることは、資料また答弁者がおりませんので、後刻、理事会協議、先ほどの文言の整理ということとさせていただきたいと思います。

 高山君。

高山委員 とにかく、時間が参りましたので、これはちょっと、質疑の前提となることですので、まずこれをはっきりさせていただかないと次の質疑に移れないなということを申し上げつつ、私の質問は終わります。

石原委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十四分開議

石原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 午前中の質疑におきまして、ちょっと外務省と法務省で意見が割れているのか、あるいは二年前の法務省と今の法務省で百八十度方針転換されたのか、はっきりしない部分がありましたので、再度答弁をお願いいたします。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 日米規制改革イニシアチブにおけます我が国の対米要望におきましては、これまでUS―VISITプログラムにより取得される生体情報について厳格な管理を要望してきておりますが、出国時の生体情報の消去は、具体的、正式要望事項として言及されておりません。

 御指摘の米報告書の記載は、我が国の要望事項を踏まえた米国政府とのやりとりの中で、米国政府による生体情報の管理の厳格化の具体策の一案として出国時の情報の消去について言及があったことを踏まえ、報告書が米国政府の立場を記載したものと承知しております。

杉浦国務大臣 ただいま外務省から答弁があったとおりでございます。

 日米規制改革及び競争政策イニシアチブのもとでの対話については、毎回要望書を交換しております。一番新しいのは平成十七年十二月八日付で、これは外務省のホームページにも載っておりますが、この関連部分について、この要望書、これは先方に渡されていると思いますが、

  日本国政府は、米国政府に対し、以下を求める。

  (一)引き続き、各出入国地点で審査に要している時間を把握の上、更なる入国審査の迅速化のために必要な措置をとること。

  (二)US―VISITプログラムによって取得された個人情報を厳格に管理すること。また、指紋情報を読み取られることについての日本国民の不安を軽減するため、可能な範囲で、個人情報保護のために米国政府が講じている一連の措置を明らかにすること。

  (三)日本国民のUS―VISITプログラムに対する理解を深めるため、引き続き、本プログラムについての広報活動を行うこと。特に、今後、本プログラムの適用地点の拡大や、無線周波数による認証技術の導入等が行われる際には、制度の変更に伴う混乱も予想されるため、充分な広報活動を行うこと。

以上、三点が該当部分の日本政府の要望として記載され、これは文書になっておりますので……(高山委員「最新のものね」と呼ぶ)最新のものです。

 十六年のもの、米国の規制改革及び競争政策に関する日本国政府の要望事項、十六年十月十四日、これは問題に出た新聞記事の後ですが、そこでも、読みましょうか。

  以上の事情を踏まえ、以下を要望する。

  (a)本年九月三十日の適用対象拡大以降は年間平均延べ四百五十万人の日本人米国渡航者が対象となると想定される。したがって、同日以降の入国審査の混雑状況を改めて幅広く調査し、必要な場合には人員の増加等の体制強化を図ることで、入国審査の迅速化を行っていただきたい。

  (b)指紋情報を読み取られることについての日本国民の不安を軽減するために、指紋情報読み取りがインクを使わず電子スキャナでごく短時間に行われているという事実及び個人情報保護のために米国政府が講じている一連の措置を一層積極的に広報していただきたい。

  (c)米国・メキシコ国境において想定される混雑を回避するために米国政府が採っている(又は採ることを予定している)措置を早急に明らかにしていただきたい。

以上、三点を要望書に記載して、要望いたしております。

 十五年分のにも大体同趣旨でございますが、

 以下の二点を要望する。

これは十五年十月二十四日付要望書でございます。米国の規制改革及び競争政策に関する日本政府の要望事項、

 二点を要望する。

  (1)上記(a)の措置に比べ、本件措置は導入までにきわめて限られた時間しか残されていない。ついては、一連の生体情報採取措置に関し、取得した情報の適正な管理のために米国政府が講じている具体的方策、及び、取得した情報の利用範囲にいかに歯止めをかけているのかにつき、早急に明らかにしていただきたい。

  (2)査証を所持して米国に入国しようとする者全てから入国時に生体情報を取得すれば、特に制度導入当初は、旅客数の多い空港において入国審査処理時間が大幅に延びることが予想される。ついては、そのような混雑を回避するために米国政府がとっている(又はとることを予定している)人員・設備の増強措置を早急に明らかにしていただきたい。

この二点を要望いたしております。

 ですから、文書として、要望事項を取りまとめて、先方に提示した中には入っておりません。

高山委員 今大臣から、文書として相手方に要望した中には入っておりませんという御答弁をいただきましたけれども、ちょっと先ほどの外務省の答弁、少しおかしかったので、もう一度伺います。

 指紋を消去どうのこうのというのはアメリカ政府の立場ですというような言い方、おっしゃいましたけれども、ここに書いてあるのは全然違いますよ。米国を出国する時点で消去されるべきであるという日本政府の立場も十分理解してということを書いてあるわけですよ。だから、指紋を消去してくださいというのは全然、それはアメリカ政府の立場でも何でもなくて、日本政府の立場なんじゃないんですか。ちょっと、まずそこを伺いたいんですけれども。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど私が申し上げました部分につきましては、文書全体がアメリカ側の立場を示したものという意味でございます。

 以上でございます。

高山委員 それでは、また外務省に伺いますけれども、午前中の委員会で審議官に読んでもらった部分がありますね。ここは、だから、これが日本政府の立場だというふうにアメリカがまとめたわけですよね。だから、日本政府はこういう立場だったんじゃないんですか、この交渉の過程で。どうなんですか。

木寺政府参考人 先ほども申し上げましたように、当該部分は、米国政府とのやりとりの中で、米国政府による生体情報の管理の厳格化の具体策の一案として出た話題かというふうに承知しております。

高山委員 今の、指紋消去という話題が出たんだということでございますけれども、だから、それは日本側から提案したんですか。この文書、この報告書によれば、どうも日本側から提案したように読めますよ、この報告書は。だから、日本側から提案したんじゃないんですか。

木寺政府参考人 アメリカ側の文書は、そのとおり読めば、日本政府の立場ということで書かれております。

高山委員 いや、外務省、だから、先ほど法務大臣が言っていたことは、文書では要求していないけれども、今あなたがおっしゃったように、口頭なり会議の中で、その具体策ということで、日本側が指紋の即時消去を要求したということなんじゃないんですか。もう一回、ちょっと外務省の答弁をお願いします。実際に交渉に行っているのは外務省ですからね。

木寺政府参考人 アメリカ側との協議におきまして、さまざまな論点が出る可能性はございます。

 しかしながら、先ほど法務大臣から申されましたように、具体的要望事項として我が国が正式にこの問題を取り上げたことはないんだと思います。

高山委員 ちょっと、さっきから外務省の答弁、繰り返しになっているんですけれどもね。

 だから、文書では要望していないということは法務大臣の先ほどの御答弁で明らかになりましたけれども、話の中で出したわけでしょう。だからアメリカ政府は、日本の立場は指紋の即時消去なんだなと受けとめてこういうふうに書いたわけですよね。

 だから、外務省に今私が聞いているのは、日本が交渉の中で日本側から指紋即時消去ということを出したんですねという確認を今しているんですけれども。これは外交当局で行っているわけですからね。しかも、その交渉がわかる人を答弁させてくださいということで、今、午前中から休憩挟んでまた審議官が出てきたわけですから、必ず答弁してください。

石原委員長 木寺大臣官房審議官、高山委員の御質問にのみお答えください。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカの協議の詳細につきましては、相手側もあることなので、答弁を差し控えさせていただきます。(高山委員「ちょっと今のはおかしい。相手方があると言われたけれども、報告書にこれは書いてあることですよ、こんなの。委員長、ちょっと、もう一回答弁させてください。今のは答えにならない」と呼ぶ)

石原委員長 木寺審議官に申します。高山委員の質問に再度、御丁寧にお答えいただきたいと思います。

木寺政府参考人 高山先生の御質問でございますが……(高山委員「もういい。答弁できる人をと言っているんですから。これはおかしいですよ、委員長。だって、答弁できる人をお願いしますということで理事会でも協議したんですから、これはおかしいですよ」と呼ぶ)

 お答え申し上げます。

 ただいまの点につきましては、日本側よりアメリカ政府に対する生体情報の管理の厳格化の具体策の一案として、先ほど大臣言われております出国時の消去という具体案の一案が出てきたということで、この議論を踏まえて米国政府の立場が記されたものと承知しております。

高山委員 今、具体案の一案として出国時における指紋の消去というのが出てきたという御答弁をいただきましたけれども、外務省に伺いますが、これは日本側からの提案ですね。

木寺政府参考人 重ねてお答え申し上げますが、米国政府による生体情報の管理の厳格化の具体策の一案として出国時の情報の消去についての言及があったということでございまして、この報告書は米国政府の立場を記したものと考えております。(高山委員「そういうのはちょっと、繰り返しでおかしいですよ。委員長、これはちょっとおかしい。だって、米国政府の立場じゃないことは明らかじゃないですか、これは書いてあるんだから。ここはおかしいですよ。全然これは答えていない」と呼ぶ)

石原委員長 木寺大臣官房審議官に申します。

 ただいまの厳格な管理を求める一環の中で日本側から……(高山委員「指紋の即時消去のね」と呼ぶ)その話が出たのかどうか、私は出たというふうに受け取りましたが、高山委員は答えていないとお答えになっておりますので、もう一度答弁をお願い申し上げます。

 外務省木寺大臣官房審議官。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点につきましては、日米間のやりとりの中で、厳格化ということであれば日本側からということになろうかと思いますけれども、そういう議論の一環で出てきたというふうに承知しております。

高山委員 今、もう審議官がお答えになったので、もう一回、再度確認いたしますけれども、では、こちらの米国の「個人情報は当該個人が米国を出国する時点で消去されるべきであるという日本国政府の立場」と書いてあるけれども、出国時に即時指紋を消去というのは、当時日本側から提案したことなんだと。正式な文書の提案ではないですよ。だけれども、その話し合いの中で日本側から提案をしたことなんだということを、もう一度ちょっと確認させてください。それでいいんですね。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの点につきましては、厳格化の一つの案として、一つの考え方として出てきたものと考えております。

高山委員 だから、日本側が出したんでしょう、それをはっきり言ってください。日本側から出したんだということを正確に答えてください。主語がありません。主語を言ってください。だれがやったんだということをはっきり言ってください。

石原委員長 木寺大臣官房審議官、主語を言ってください。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げたように、厳格化を求めていたのは日本側でございます。ということで、日本側から出たということが考えられます。

高山委員 法務大臣に伺います。

 日本側からこういった提案があったということを外務省の方が言っておりますけれども、法務省としてもそれでよろしいですね。

杉浦国務大臣 協議の席上でどういう言及があったかはわかりませんが、法務省としては、先ほど申し上げた三通の文書、これは法務省のみならず、外務省、経産省等と各省合い議で決定した要望事項でございますので、法務省としてそういうことを申し上げるとは考えにくいことでございます。

高山委員 そうしますと、外務省と法務省で矛盾しているということですか、これは政府の統一見解じゃなくて。この方がよっぽどおかしいですね。では、外務大臣に聞いてみるなり、外務省の人に聞いてみないとわからないですね。

 これは法務大臣にもう一回伺いますけれども、先ほどの外務省の答弁ですと、これは日本側から提案したことだ、話の中でこちらから言及したことなんだということでよろしいですね。

杉浦国務大臣 審議官は言及したと申しておられるわけで、協議の席上ですから、いろいろなやりとりがあった中での、一つの厳格化云々の中での言及じゃないでしょうか。提案ではございません。

高山委員 再度確認しますけれども、提案じゃなくて言及でもいいんですけれども、では、この協議の中で日本側から指紋の即時消去ということを言及したということでよろしいですか。

杉浦国務大臣 法務省としては承知しておりません。(高山委員「だから、それが困るんですよ。その経緯をはっきりさせてくださいということで休みをとっているんですから。全然答弁になっていない。委員長、これはおかしいですよ。そこをはっきりさせてくださいということでわざわざ休みも入れているんでしょう。そこを答えてもらわないと」と呼ぶ)

石原委員長 高山君。(発言する者あり)

 高山委員に申し述べます。質疑を続行してください。

 高山君。

高山委員 そうしますと、外務省は、協議の中で日本側から出したんだということを言っているんですから。これはもう、その中に出したと言っているわけでしょう。だから、法務省の方でそれを知りませんというんじゃ困るんですよ。

 だって、午前中の質疑で、ちょっとお互いに情報交換ができていないみたいだから、休みを挟んできちんとやって、午後からもう一回やりましょうということで今再開しているんですよ。それをさらに知らないというのは何ですか。協議してくださいよ、昼間の間に。何でそんなことをやっているんですか。

 もう一回、ちょっと法務大臣に聞きますけれども、日本側から指紋の即時消去という提案というか言及したということでよろしいですね。

杉浦国務大臣 政府内部で各省合い議して、要望事項を文書をまとめて提示したということでございます。

 アメリカの文書にそういうことが記載されているということは、外務省の立場とすれば、アメリカが間違っているとは言いにくいでしょうから、アメリカ側の文書でそういうふうに言っておられる以上、何らかの言及があったのではないかということで答弁しているのだと私は思います。

高山委員 それは困りますよ、外務省。アメリカにちょっと面と向かって言いにくいからいいかげんな答弁をしたんですか。事実を話してくださいよ。日本側から言及があったのかどうなのかということを聞いているんだから。そんな、アメリカがどう思うかとかという、そういう話じゃないんじゃないですか。事実だけ言ってください。(発言する者あり)

石原委員長 それでは、議事を整理させていただきます。

 ただいまの高山委員の質問に対しまして、木寺大臣官房審議官並びに杉浦法務大臣、御答弁を願います。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどから御指摘の部分は、生体情報の管理の厳格化を求める具体策の一案として言及があったのではないかと思われます。(高山委員「日本側からね、言ってくださいよ、それはどちらからなんですか」と呼ぶ)日本側から言及があったのではないかと思われます。(高山委員「それじゃ困るんですよ。だから、どっちかということを。委員長、これは午前中にはっきりさせてくださいということで、答弁できる人を連れてきたんでしょう」と呼ぶ)

石原委員長 高山委員に申し上げます。

 ただいまの木寺審議官の答弁は誠実に答えていたと思います。外交協議の中で日本側からそういうような言及があったものと考えるということを指摘されておりました。

 それと、日本政府といたしましては、杉浦大臣から先ほど御答弁いただきましたように、文書においては厳格化ということを含め三点で、高山委員の御指摘の点については言及されていないということも明らかになったと思います。

 質疑を続行願います。

 高山君。

高山委員 今の委員長の整理で、そのとおりだと思います。

 ただ、私は、午前中、法務省と外務省で何かやりとりでおかしかった部分は、今外務省の方が言ったように、午前中では、どちらから提案したことかはっきりしなかったから、だから、どっちがやったのかをはっきりさせてくださいね、答弁できる方はだれなんですかと。それで、審議官以外にも、ほかに責任もある、ちゃんと答弁できる方をということで休憩をとっているので、思いますでは困りますね。どちら側から出した話か、はっきりおっしゃってください。

木寺政府参考人 先ほどもお答え申し上げましたように、アメリカ側とのやりとりの中で、日本側から言及したものと思われます。(高山委員「同じじゃないですか、それじゃ。僕はどう思うかなんてことを聞いていないんだから、今のところ」と呼ぶ)

石原委員長 木寺大臣官房審議官に御確認をいたします。

 このように承知しているという御理解でよろしいんでしょうか。

 高山君、質問を続行していただきたいと思います。

高山委員 委員長の裁きですから、もう一度外務省からの丁寧な答弁を求めます。

木寺政府参考人 御答弁申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、アメリカ側とのやりとりにおいて日本側が生体情報の管理の厳格化を求めていたわけでございますから、日本側から言及したものと思っております、思っております。(発言する者あり)

石原委員長 再度、外務省木寺大臣官房審議官に申し述べます。

 高山委員の質問に丁寧にお答えをいただきたいと思います。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 その部分は、米国政府による生体情報の管理の厳格化の具体策の一案として、具体化、厳格化を求めたのは日本側でございますので、日本側からそういう考え方として提示があったのではないかと考えております。(発言する者あり)

石原委員長 改めて、外務省木寺大臣官房審議官に委員長から御質問をいたします。

 承知していると解釈をしてもよろしいんでしょうか。

木寺政府参考人 何度も恐縮でございますが、米側報告書の記載につきましては、米側政府による生体情報の管理の厳格化の一環で、日本側から言及したと思われます。(発言する者あり)

石原委員長 私は、先ほど来の議論を聞かせていただいて、審議官の立場としては、思う、承知しているとまでしか、その場に居合わせたわけではないし、政府を代表して御答弁をいただいておりますので、そのように理解をさせていただいておりますし、それが不十分であるならば、外務委員会等々で、外務大臣から詳細について御質問をいただければ、より詳しくわかるのではないかと考えております。(発言する者あり)

 高山君。高山君。(発言する者あり)高山君。

高山委員 そうしましたら、では、思うと承知しているはほとんど同じだというようなことなんですか、外務省の方は。

 そうだとすると、今の日本政府が行っている政策と大矛盾だと思うんですね。これは、指紋を即時削除せよと。今、日本の政府は、河野大臣によれば八十年保存すると。全然違いますよね、これ。ですから、これは法務省として外務省に、全然違う交渉をしているじゃないかということで抗議されますか。法務大臣に伺います。

杉浦国務大臣 協議の過程でいろいろとやりとりがあることは考えられることですから、私どもは政府の立場を合い議いたしましたから、先ほど申し上げた申し入れ事項について。それで、政府として要望事項を決定してアメリカに伝えたものだというふうに理解しております。その点については、私ども、今度御提案している出入国管理法改正の内容と全く矛盾するものではない、基本的に立場は同じだというふうに思っております。

高山委員 これは、二〇〇四年の時点でのアメリカからの返答の中にこういうことが書いてあったわけですね。日本側から指紋の即時消去を求めるということを二〇〇四年の時点で書いてあって、今、大臣が読んでいただきましたけれども、最新のものでもいろいろ要望しているわけですよね。そのときに、だったら、これは否定したんですか。日本側はこういうお立場なんですねとアメリカが言ってきたわけですから、いや、我が方としてはそこは勇み足であり、本当の立場は指紋消去を求めていませんというようなことを言い直したりしているんですか、日本側としては、最新のものでは。

杉浦国務大臣 厳格管理の要望を出しております。先ほど読み上げたとおりでございますので、そういう要望をいたしておりますから、議論の過程でいろいろな話は出たかもしれませんけれども、我が国の要望としては、繰り返しますと、三点でございます。先ほど申し上げた三点を要望しておるということでございます。

高山委員 いや、だから、二〇〇四年の時点で、日本政府の方としてはこういうことでございますといろいろ返答が来た上で、また今度は新しい要望書を出していく、こういう書簡のやりとりをやっているわけですよね。

 ではどうして、最新のものの中に、いや、日本政府はそんな即時消すなんということを主張していませんよ、こういう否定をしないで、何でそのままになっているんですか。否定するチャンスはあったじゃないですか。ことしとか去年と、二〇〇五年の時点と二〇〇六年の時点で。どうして即時指紋を消却してくださいということを、これは二〇〇四年の時点で向こうから返事が来ているわけですから、二〇〇五年と二〇〇六年で何で否定しないんですか。

杉浦国務大臣 消去は要望事項じゃございませんので、議論のやりとりの中で出た話のようでございますので、要望としては、一番新しいものも、十七年度も十六年度も十五年度も、大体同じ内容の要望をいたしておることは、先ほど御答弁で詳細申し上げたとおりでございます。

高山委員 それは大臣、違います。これは、要望事項やらその周辺のを含めて、米国側がこういうふうに回答してきた回答書の中の一部なんですよ。だから、これは否定しておいた方がよかったんじゃないですか。それは一問一答じゃないですから、向こうも、文書で書いたのと口頭での言及したのも含めて、ああ、日本はこういう立場なんだなということで、こうやって返事をしてきているんですから。二〇〇五年の時点で、いや、指紋即時消却というのは勇み足でした、訂正いたしますということを要求するなり文書で書くなり、何かしたらよかったんじゃないですか。どうして否定しなかったんですか。

杉浦国務大臣 この文書は二〇〇四年六月八日付でつくられているものでございますが、その後も、さっき御紹介したように二回要望書を取りまとめて出しておりますが、そこには要望事項としては入っておりません。政府の立場は明確であると思います。

高山委員 そうしますと、指紋を即時消去するかしないかというのは、結構これは今の委員会でも大きい論点になっているぐらい大きい論点ですけれども、この点に関して、文書では否定はしていないけれども、また言及する形で、あるいは口頭とか会議の中で、それは日本側の立場ではありませんということを米国側に伝えたんでしょうか。法務大臣に伺いますけれども。

杉浦国務大臣 一々のやりとりは知るべくもございませんが、法務省入管当局が、日本国が、出国時にすべて消去するという立場をとることは全く考えにくいことでございまして、そのやりとりの中でさまざまやりとりがあったでしょうが、交渉に臨んだ方が、やはり私ども日本の要望はこうだということを明確に申し上げていることで、この問題については、日本政府の立場については明らかになったんじゃないかと思います。

高山委員 全然明らかになっていないですよ。

 今、法務省の入管当局はそういうことを言うのはあり得ないと言いましたけれども、アメリカ政府としてみたら、では、どこと交渉したらいいんですか。それは外交ルートは一本でしょう。そうしたら、初めは外務省の方が指紋の即時消去を会議の中で求めてきて、日本側から提案してきて、その後、二回、全然何の否定もなくて、そうしたら、指紋は即時消去、これは協議事項としてずっと残っているのかなと思いますよ、外交交渉で。何でこれを明確に否定しなかったんですか。おかしいじゃないですか。だから、考え方を変えたんだったら、こういう理由で変えたということを言ってくださいよ、大臣。

杉浦国務大臣 こちらの要望事項に入っておりませんし、このペーパーが出た後の要望にもきちっと、入っていない要望を先ほど申し上げたとおりしておるわけですから、この文書とアメリカ側の言及と矛盾していないと思いますけれども。

高山委員 いや、米国からのこの回答書は、要望事項にだけ答えているんじゃないんですよ。要望事項以外にも、そういう交渉過程で出たことをいろいろ踏まえて全部答えているんですよ。だから、要望事項の初めの文書に入っていないからうちは要求していないんだということは、それはさっきので仕切りがついていますよね。要望事項の文書には入れていないけれども、外務省としてはそれに言及して、日本側から言っていると言っているんですから。

 だから、ずっと考え方を変えていないんですか、日本政府としては。いつ変わったんですか。こうやって、外国人の方の指紋を即時消去するというふうに初め言っていたのが今度八十年も保存すると、いつ変わったんですか。

杉浦国務大臣 法務省の立場は一貫して変わっておりません。政府の立場も、先ほど申し上げましたとおり一貫して変わっていないと思います。

高山委員 外務省と法務省で全然考えが違うじゃないですか。全然違っているじゃないですか。外務省の言っている意見がずっと生きていたら、それは指紋を即時消去してくださいということをずっと主張し続けているんじゃないですか。それとも、日本政府というのは、アメリカに入る日本人の指紋は即時消去してほしいけれども、日本を訪れる外国人の指紋は八十年間保存する、こういうお立場なんですか。それなら矛盾はないと思いますけれども。

杉浦国務大臣 再三御答弁申し上げているとおり、いささかも変わっておりません。

高山委員 もう時間もあれなので。

 いささかも変わっていないこともわかりました。だから、そのお考えというのは、我々日本人がアメリカに行くときの指紋や顔写真は出国時には即時消去してほしいけれども、海外から日本に訪れる外国人の指紋と顔写真は七十年、八十年保存する、こういうお考えなんですか。

杉浦国務大臣 アメリカに対してそういう要望はいたしておりません。(高山委員「それはおかしい、それはおかしいよ、委員長、今のはおかしい」と呼ぶ)

石原委員長 高山君に申し述べさせていただきますが、管理の厳格化の中で言及があったということは二〇〇四年当時お認めになられております。そして、政府の正式な要望としては、杉浦大臣から再三再四御答弁させていただいているように、正式にアメリカ側に対して除去というものの要望はしておりませんし、政府内部も、経産省、法務省、外務省と政府の統一見解というものも何ら変わっていないということは、これまでの質疑で明らかになったと思います。

 高山委員の御質問は、そういうことがあったのかなかったのかということでございますので、二〇〇四年当時のことが明らかになった段階でございますので、質問をそろそろお取りまとめいただきますようにお願い申し上げ、まだまだ多々疑問の点がございましたら、まだ質疑時間がございますので、その中でこれからも御質疑をいただければと思います。

 高山君。

高山委員 今、委員長からの御下命もありましたので。

 ただ、今大臣が、日本から要求したことがないというのはおかしいですよ。だって、外務省がこちらから言及したということはもう二〇〇四年の時点では認めているわけですから、だからその点に関しまして、二〇〇四年の時点までは、外務省の言ったとおり、日本側からも指紋の即時消去を要求していたわけですよ。それがいつの時点で変わったのかわかりませんが、きょうの時点では、この延長していただいた時間ではここまでのことが明らかになったということで、終わりにしたいと思います。

石原委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党の津村啓介でございます。

 それでは、私からも入管法改正につきまして御質問させていただきます。

 国際的なテロの脅威が近年とみに高まる中、今回のこの入管法改正ということが出てきたわけでございますけれども、しかし、その内容を見てみますと、アメリカとほぼ同様の、逆に言いますと、他国には例を見ない大変厳しい対策ということになると思います。

 こうした対策をこの日本が、我が国がとるに至る、とらなければならないと御判断したその背景として、日本が国際テロの標的になる可能性というものをどのように認識されているのか、法務大臣の見解をお尋ねいたします。

杉浦国務大臣 お尋ねの点でございますが、昨今の国際テロ組織の動向に照らしてみますと、まず第一に、我が国は米国、アメリカの主要な同盟国であり、国際社会と協調してテロとの闘いに取り組んでいること、二つ目に、我が国はアルカイダやその関連組織から再三にわたってテロの標的として名指しされていること、三番目に、アルカイダとの関係を疑われる者が我が国への不法入国を繰り返し、相当期間潜伏していたことなどから、我が国が国際テロ組織の攻撃対象とされる可能性があると認識しております。

津村委員 今大臣がお述べになったようなことというのは、近年の国際情勢の分析としては一つの御見識だと思いますが、しかしながら、国際情勢は大変流動的といいますか、将来にわたって固定的なものではないわけですけれども、今回の措置というものは恒久的な措置として改正案が提出されている、そう理解しておるわけですが、それはなぜでしょうか。

杉浦国務大臣 政府は、平成十六年八月二十四日の閣議決定によりまして、国際組織犯罪等対策推進本部を国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部に改組いたしまして、国際テロの未然防止対策の検討をその正式な課題といたしました。

 この推進本部は、所要の検討を行った結果、同年、平成十六年十二月十日にテロの未然防止に関する行動計画を本部決定いたしました。この行動計画では、今後速やかに講ずべきテロの未然防止対策といたしまして、新たな対応を必要とする十六の項目が明らかにされております。その改善のための方向性と期限がそこに示されております。

 今回の入管法の改正は、そのうち最初の三項目、すなわち、一、入国審査時における指紋採取等による入国審査の強化、二、テロリストに対する入国規制、三、航空機及び船舶の長による乗員・乗客名簿の事前提出の義務化、この三つを実現するものでございます。これらの措置が実現することによりまして、我が国におけるテロの未然防止対策が一層強力に推進されることとなると考えております。

津村委員 大臣、恐らく質問通告の次の質問のお答えをされているんじゃないかなと思うんですが、私がお尋ねをしたのは、テロの未然防止策の内容をお尋ねしたのではなくて、今回のような諸外国と比べても大変厳しい、相対的に見て厳しい措置を我が国がとるに至った理由をまずお尋ねしました。そのお答えというのは、最近のアメリカとの関係あるいは国際情勢についてのお答えでしたからそれは仮に理解するとして、ただ、今回の措置は時限的なものにはされていない、将来にわたって恒久的な措置とされている。こうした厳しい内容のものを恒久的な措置とされる理由として、昨今の国際テロをめぐる情勢だけでは少し不十分じゃないか、なぜ恒久的な措置とされる必要があったのかを更問としてさせていただいたわけです。御答弁ください。

杉浦国務大臣 九・一一の同時多発テロ以来、国際テロの状況は拡散し、深化し、改善される傾向は全くございません。そういうテロの対応のために、国連の決議もございますし、国際社会、協調関係を深めながら準備を進めておるわけでございます。

 我が国もその一環として、日本国民の安心と安全を守ることを基本として国際テロに取り組んでいこうということで、先ほど申し上げた基本計画を決定したわけでして、着実に国民の御理解を得て推進していくことが大事だ、こう思っております。

津村委員 私がお尋ねしたのは、現状の国際情勢の厳しさあるいはテロ対策の必要性、その重さということではなくて、時間軸として恒久的な措置を御提案される趣旨についてです。もう一度御答弁ください。

    〔委員長退席、松島委員長代理着席〕

杉浦国務大臣 先生の御趣旨ですと、なぜ時限立法じゃないのかという関心がおありかもしれませんが、仮にテロの状況が一変しておさまれば廃止してもいいわけですし、これは国権の最高機関たる国会において。ただ、現状で、時限立法で決めるべき事柄とは到底思えない、先生とちょっと認識に差があるかと思いますが、恒久対策として強力に推進することが必要な方途であろうと私どもは思っております。

津村委員 誤解なきように申し上げるんですが、私は、何も時限立法でよいと言っているわけではなくて、これだけの内容のものを、国民の理解あるいは国会での理解を得るための説明として多少乱暴なんじゃないかなと、テロの脅威についての御説明が。そこを詳細に、もう少しわかりやすく御説明いただきたかっただけなんです。

 次の質問ですが、指紋採取の対象年齢が十六歳以上となっていますが、米国では十四歳以上ということでございます。十六歳とされた根拠をお尋ねいたします。

 ちなみに、先日の参考人質疑の場で同じ質問を参考人の方にさせていただきましたところ、生理学的には十六歳ということには何の根拠もないという御答弁をいただきました。

杉浦国務大臣 年少者については、一般的に、危険性が極めて低く、逆に配慮する必要性が高いということから、指紋等の個人識別情報の提供義務を免除することが相当であると考えるわけでございます。

 十六歳未満とした理由でございますが、現時点で、安保理決議に基づく入国、通過防止の対象者などに十六歳未満の者がいないということが一つ。もう一つは、十六歳未満の者は我が国では中学生以下でございます、相当の配慮を要すると思われます。出入国管理法令及び外国人登録法令上、十六歳に満たない者については各種の義務が免除されております。具体的には、旅券等の携帯義務、外国人登録の際の写真提出義務、登録証明書の携帯義務が免除されており、また、上陸の申請等に際して代理人によることが認められております。それぞれの法律で決まっております。

 こういった諸般の事情を考慮いたしまして、十六歳未満の年少者について当該義務を免除することが適当と判断したわけでございます。

津村委員 ごめんなさい、途中お声が小さくてよく聞き取れなかったんですが、年少者に配慮とか相当の配慮というのは、何に配慮するのかがよくわからなかったということと、それから、入管実務上、各種の証明書の携帯義務がないとおっしゃられましたけれども、それは確かに、子供がそういった大事な書類を携帯することについては、もちろん、親の目が行き届かないと実務的に不都合があるというのはわかるような気がします。

 しかし、問題は、これはテロ対策ですから、中東の情勢などを詳しく知っているわけではありませんけれども、子供を使って自爆テロ、少女の自爆テロなんかも報道されていますけれども、さまざまなテロ行為が行われているという現実も一方にあるわけで、現状、安保理決議のことはそうかもしれませんが、アメリカが十四歳、日本が十六歳という余り合理的な説明にはなっていないと思います。もう一度御答弁をお願いします。

杉浦国務大臣 どこで線を引くかについてさまざま議論があることは承知しております。少年法は十四歳で切っております。

 十六歳で線を引いたことについては先ほど御説明申し上げたとおりですが、配慮が必要だというのは、年端もいかないといいますか若い子供たちのことですから、大人と違った配慮が要るという意味でございます。ほかの、入管法、外国人登録法等の規定と合わせて十六歳が適当ではないかということで、このような御提案をさせていただいたわけでございます。

    〔松島委員長代理退席、委員長着席〕

津村委員 大人と違った配慮というのはよく意味がわからないので、もう一度教えていただきたいのが一点と、それから、いわゆるブラックリストに十六歳未満の方が載った場合には、この法律は改正されるということですか。

杉浦国務大臣 若年者に対する配慮ということで、いろいろな説明が可能だと思いますけれども、テロリストに十六歳以下の者がいるかもしれない、そういう御指摘もございます。ただ、これは、生体情報をとることの義務を免除するだけでございまして、入国審査はきちっと行いますので、もし特別な情報がもたらされるというようなことがあれば、厳格審査をして排除することまで排除しておりません。

津村委員 そんなことは聞いていないわけでして、要するに、非常にいいかげんなというか、根拠なく、入管実務と合わせて十六歳にしているだけという印象を持ったものですから御質問しているわけです。

 現状、いわゆるブラックリストに十六歳未満の方が載っていないということを先ほど根拠に挙げられたので、それに対して、もしブラックリストに十六歳以下の者が国際的にも載るようになれば、それは法改正を検討されるということですかと御質問しました。もう一度御答弁ください。

杉浦国務大臣 これはあくまで立法論の問題でございますので、国会で御審議いただいて、どの年齢で切るのが適正かは最終的に御判断願いたい、願うべきことだと思いますが、私どもは、今申し上げた理由で十六歳未満とすることが相当と考えて御提案申し上げているわけでございます。さまざまな御意見があることは承知しております。

津村委員 非常にアバウトな御答弁だと思いますので、また会議録を精査させていただきます。

 続きまして、やはり要件の問題ですけれども、外国政府や国際機関の公用、外交の活動に当たる人がこの対象から免除されているわけですが、これは具体的にはどのような人を指すのか。

 例えば、国会議員や一般公務員はこれには当たらないけれども外交官は当たるというふうな御説明もいただいたことがあるんですけれども、これはちょっと理解に苦しむと私は思っておりまして、外交官の各種の特権、国際儀礼というものが国際法上認められている、国際慣習上認められていることは理解できますけれども、そのこととテロ対策というのは全く次元が違うものではないかというふうに思います。

 どうしてこうした方々が対象になり、あるいは、具体的にはどういう方が対象になるのか、基準を示してください。

杉浦国務大臣 上陸審査における個人識別情報の提供の義務化につきましては、危険性の程度が低いこと、配慮の必要性の程度が高いことの二点を基準といたしまして免除することとしております。

 委員御指摘の外交、公用活動に従事する者についてでございますが、その範囲については、入管法の外交の在留資格に該当する活動を行おうとする者、すなわち、日本政府が接受する外国政府の外交使節団の構成員や条約により外交使節と同様の特権及び免除を受ける者など、及び公用の在留資格に該当する活動を行おうとする者、すなわち、日本国政府の承認した外国政府または国際機関の公務に従事する者などが当たります。これらの者がテロリストであったり不法滞在を企画する可能性は極めて低いと考えられますし、国際儀礼上の配慮の必要性も極めて高いことから、個人識別情報の提供義務を免除することとしたものでございます。

津村委員 御答弁を聞いておりますと、国際儀礼上の配慮の必要性が高いということを一つおっしゃられましたが、逆に言いますと、指紋押捺をするということは、今回こういう仕組みでする場合でも失礼に当たるという御理解なんでしょうか。

杉浦国務大臣 外交官につきましては、条約によりまして一定の特権、免除が認められております。これを踏まえた特別な配慮が必要であると考えておるわけでございます。

津村委員 一定の特権というのに、恐らくこういうケースは今までなかったわけですから、どこの条約にも指紋押捺は失礼に当たるということはないと思うんですけれども、どうして今回の改正案では、これが外交、国際儀礼上失礼に当たるものだと解釈されたのか、そう規定されるのか、それをお尋ねしています。

杉浦国務大臣 外交官について特別の配慮が必要だろうということから免除することにしたわけでございます。必要でない、一般並みに扱えということは、ちょっといかがなものでしょうか。

津村委員 一般の方に対しても、非常に短い時間で、しかも、安全な方であれば審査がより早く進むというような、そんな御説明をされている一方で、外交官に対してだけはこれは失礼だというのは、どうも一般国民の皆さんからはわかりにくい論理だと思います。どうして外交官にはこれが失礼で、一般国民や、国会議員も含めて、一般公務員も含めて失礼に当たらないのか、御説明ください。

杉浦国務大臣 失礼ないしは失礼でないで決めているわけではございませんで、先ほど申し上げましたとおり、これらの者が、外交官等が、テロリストであったり、あるいは不法滞在を企画する可能性は極めて低いと考えられますし、また国際儀礼上の配慮の必要性も極めて高いということから、提供義務を免除することとしたものでございます。

津村委員 その根拠がいま一つよくわからないんですが、一般公務員や国会議員と比べても外交官はそういったリスクが、いろいろな国があると思います、いろいろな国があると思いますが、どこの国の外交官であってもそうした危険は低いということなんでしょうか。

杉浦国務大臣 一般的に、我が国が国交を有している国の外交官について適用する考えでございます。

津村委員 私が聞いているのはそんなことではなくて、国会議員や一般公務員と比べて外交官が特別に低いとされる理由を伺っています。

河野副大臣 若干誤解をされているのかもしれませんが、政府が認めた、公務で来日をされる方でありますので、相手国の外務省に勤められている方ということではなくて、国会議員であっても、その国を代表して公務で来られる方というのは当然この公用に入るわけでございますので、国会議員だからどうとか、外務省に勤めているから免除ということではございません。

 それから、ウィーン条約の二十九条に外交官の身体の不可侵という規定がございますので、やはり指紋採取その他につきましてはこうしたことを類推しなければいかぬだろうと思います。

津村委員 身体の不可侵にこれが当たるとは私は思わないというのが一点。それから、外交官の方は、では、これはわかりますよ、公用というのが、公務員であったり、国会議員であったり、あるいは場合によって民間の方であっても、公用で、あるいは外交にかかわることであればというのは先ほどの大臣の御答弁にもありましたからそれはわかるんですけれども、逆に言うと、外交官の方のいわゆる外交特権というのは、それはプライベートに当たっても適用される話だと思います。

 そういう意味で、これは外交特権の一部なのかということと、外交特権の一部だとしたら、なぜこれが外交特権なのかということを伺っているわけです。

河野副大臣 ウィーン条約に認められている外交特権に準ずるものとしてこのたびの入管法改正では扱いたいということでございます。

津村委員 そう扱いたいようですので、その理由を聞いているわけです。これがどうしてウィーン条約の身体不可侵に該当するケースなのか。これは身体を侵すものでもなければ、人に対して失礼なものでもないというのがこれまでの御説明だったわけですから、外交官に対してのときだけ、これが身体を侵すものであり、あるいは国際儀礼に反するものであると解釈する理由がわからないということです。

 できれば大臣にお答えいただきたいんですが。

石原委員長 河野副大臣、続きまして杉浦大臣、御答弁を願います。

河野副大臣 諸外国から公用あるいは外交の公務で来られる方がテロリストである可能性は極めて低い、あるいは、不法滞在に至ることは極めて低いわけでございます。それと、このウィーン条約の、何といいますか、外交官に関するいろいろな規定を準拠して、外交、公用の方には今回この採取をしないということでございます。

杉浦国務大臣 外交、公用の方も生体情報をとるべきだという考えはいかがなものかと思います。やはり、それなりに国を代表し、あるいは国の公務のために国交を有している国からお見えになる方ですから、特別に待遇してもいいのではないかと私は思っております。

津村委員 どうも何か質問と答えが食い違っているような気がしますけれども。

 関連しまして、もう一つ御質問いたします。

 指紋押捺に関連しましては、二年前でしょうか、アメリカのUS―VISITが運用を開始された当時、ブラジルの方から対抗措置として、アメリカからの入国者のみに指紋押捺それから顔写真の登録が義務づけられたという経緯があった、そういうふうに理解をしているんですが、今回も、諸外国の方々から見れば、これは余り愉快な措置ではないと思うわけですけれども、渡航者の多い中国や韓国も含めて、海外諸国に対しては、こうした法改正を考えているということを御説明はされているんでしょうか。また、されているのであれば、どのような反応があるのか、お聞かせください。

杉浦国務大臣 まだ本法案は成立しておりませんので、御審議いただいているところでございますので、現時点では、海外諸国への説明は具体的には行っておりません。

 本法案が成立した場合には、施行まで約一年半、一年半以内に施行となっておりますが、外国政府や外国人旅行者の理解を得て円滑に本制度を実施するため、積極的に広報を行い、また外務省の御協力もいただいて、外国政府に対しても十分な説明を実施していきたいと考えております。

 このような広報や御説明を通じまして、アジア諸国を含む諸外国政府に、本制度の趣旨がすべての国連加盟国が取り組むべきテロ対策であることを十分御理解いただけるものと考えております。

津村委員 確かに、この案はまだ成立をしていないわけですけれども、仮に成立をした暁に、アメリカのときもそうですよね、成立した後にブラジルから対抗措置がとられて、結果として、アメリカからブラジルに行かれる方は、それを不利益と見るかどうかはわかりませんけれども、一定の影響を受けているわけですね。

 逆に言いますと、日本の国民も、このことで、もし法改正後、中国、韓国その他どこの国かわかりませんけれども、これを不愉快として、日本人入国者に対して何らかの対抗措置というものがとられれば、そこで影響を受けるのは日本国民あるいは日本国なわけで、そういった意味では、この法改正案を審議する今の段階でもその後の影響というのは当然考えておかなければいけない、考慮しながら国会で審議するべきだというふうに思います。

 その中で、先ほど最後に大臣が、これは理解を得られるものと判断している、そういう認識だとおっしゃられましたけれども、そういった自信を示される根拠は何でしょうか。

杉浦国務大臣 国際社会が国連決議等々に基づいてテロ対策を協調して進めております。現在、この制度を実施しているのはアメリカだけですが、我が国以外にも検討している国があることは承知しております。

 私としては、国際社会が、少なくともすべての国連加盟国がこの制度を取り入れて同じように取り組んでいただければ、国際テロ対策になる、テロの未然防止に大いに役に立つと思いますし、ひいては、不法入国とか不法滞在、それを温床とする外国人犯罪の防衛にも役に立つんじゃないか。すべての国でやってほしい、そういう状況だ、地球上の状況はそういう状況だというふうに認識をいたしております。

津村委員 残り時間が短くなってきましたので、少し大きな質問になりますけれども、この三月でいわゆる地下鉄サリン事件から丸十一年が経過をしております。同事件は、海外の安全保障あるいはテロの専門家から、ある意味では過去に例を見ないケースということで大変注目をされまして、国際安全保障あるいはテロ対策の観点からさまざまに議論を呼んだケースだと思います。

 しかし、それに対して、日本のテロ対策の取り組みというものがどの程度世界で注目され評価されているのかというのが余り実感として伝わってこない、あるいはもっと議論があってもよいという個人的な印象を持っているわけですが、この事件をめぐっては、折しも、昨日の午後、松本被告の控訴棄却を東京高裁が決定するなど、引き続き国内的な関心も高い、そういう状況にあるかと思います。

 テロ対策における同事件の教訓、それから今後のテロ対策にどのようにこの事件の教訓が生かされているのか、御答弁をお願いいたします。

杉浦国務大臣 先生仰せのとおり、地下鉄サリン事件を未然に防止することができませんでした。サリン事件発生前には、オウム真理教についてさまざまな指摘があった中で、その動向、危険性を十分に把握できなかった、そのために事件の発生を未然に防止し得なかったわけでございます。これは、ここから学ぶべき教訓は多々あると思いますが、テロに対しては、情報をできるだけ早期に入手するとともに、テロの未然防止に必要な対策をとっておくということが極めて重要である、オウム真理教事件の一つの教訓であろうと思います。

 このような認識のもとで、私ども法務省としても、国際テロについては、先ほど申しました平成十六年十二月のテロの未然防止に関する行動計画に従いまして、テロリストを入国させないための対策、テロリスト等に関する情報収集能力の強化等、種々の対策を講じておるところでございます。出入国、今度の改正をお願いするのもその趣旨に出るものでございます。

津村委員 それでは、もう時間が余りありませんので、最後に一問、法務省、警察庁、最高裁に同じ質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど同僚議員からも関連の質問があったかもしれませんが、私物パソコンや、あるいは役所の中にとどまるべき情報を家に持ち帰って仕事をしたために在宅のパソコンから情報流出するという事件が、この年明け、さまざまな省庁で実際に起きているわけですけれども、法務省、警察庁、最高裁で、それぞれどのような対策をとられて、そして、お聞きしたいのはこのポイントなんですけれども、完全にその対策が実施されるめどというのはいつごろ、いつまでという期限を持って対策に取り組まれているか、御答弁ください。

 その前段には、前回のこの法務委員会での質問において警察庁さんに同じ質問をしたところ、各都道府県県警に通達は出しているけれども、しかし、いつまでという期限を区切っていないので、都道府県ごとにどうなるかわからないという、私は非常に無責任と思う答弁がございましたので、今回改めて期限を、事前通告をして伺っている次第です。

杉浦国務大臣 法務省におきましては、職員の私物のパソコンを公用パソコンとして管理している事実は把握されておりませんし、職場において必要な台数のパソコンは整備されていると承知しております。パソコンについてはそうでございます。

 法務省としても、遺憾な事態が発生したことはまことに残念でありますが、それを重く受けとめまして、当面の緊急措置といたしまして、職務上の情報を上司の許可なく庁外に持ち出さないことを改めて全職員に対し周知徹底するとともに、自宅等のパソコンから職務上の情報を完全に除去し、保存の必要がある情報については外部記録媒体に移して職場で保管するよう全部局に指示いたしました。

 今、省内に情報流出防止緊急対策連絡会議を設けまして、事務次官をトップといたしまして設置して、全省的な情報管理のあり方について緊急点検を行っており、情報流出を未然に防止するための必要な対策を講じるよう指示しておるところでございます。

 また、昨年十二月に政府機関の情報セキュリティー対策のための統一基準が作成されたことを受けまして、法務省においても、現在、この統一基準に基づく新しいセキュリティー対策基準の策定作業を進めており、この新しいセキュリティー対策基準においては、情報の重要度に応じたアクセス制御をするほか、職員に対するセキュリティー教育の実施など、さまざまなセキュリティー対策が盛り込まれることになっております。

 今後は、これらの対策を徹底させまして、適正な情報管理に努めてまいりたいと考えております。

武市政府参考人 お答え申し上げます。

 先日発生いたしました情報流出に関する事態に関しまして、私ども、通達を発しまして、緊急対策をしろということを全国に示達しておるわけでございます。

 この内容につきましては先回も御報告申し上げましたとおりでありまして、重ねて申し上げることはいたしませんが、ここ最近の調査によりますと、公費で整備したパソコン、この台数が、前回、十七年四月一日の数字でお答え申し上げましたが、ことしの三月十日では公費のパソコンが十一万九千台、前回申し上げた数字より二万七千台ふえております。一方、公務で使っております私物のパソコンにつきましては八万八千台でございます。前回、十七年四月一日付の数字として申し上げました数字から比べますと一万六千台減っております。

 こういった状況があるということを前提にして申し上げたいわけでありますけれども、都道府県警察職員が捜査資料等の作成のために使用しておりますパソコンは、原則、地方の経費による整備ということになっております。各都道府県警察におきまして、それぞれの財政事情を踏まえながらも、私物パソコンをなくそうということで各県努力しておるところでありまして、私の方から私物パソコンはいつなくなるんだということを具体的なめどとして申し上げることは、今申しましたような事情がございまして、困難であるということを御理解いただきたいと思います。

 ただ、業務には、当然のことながら、私物パソコンではなくて公費で整備したパソコン、これを使うことが望ましいことは間違いございませんので、職務上パソコンが必要とされる職員につきましては公費で整備したパソコンが利用できるよう、公費整備によるパソコンの整備について今後とも各都道府県を指導してまいりたいと思います。

園尾最高裁判所長官代理者 裁判所におきましても、このたび、東京地方裁判所民事部の書記官が部内検討用のメモを作成するために自宅に持ち帰った執務関連の電磁的情報を同人が自宅で使用していたパソコンに入れていたところ、そのパソコンがウィニー関連のコンピューターウイルスに感染したということで、職員が意図せず、この個人的なファイルとともに、裁判所も執務上使用した文書ファイル約千個が外部に流出するということがございまして、その中には、過去の決定例など、住所及び氏名によって個人が特定できるものが約百五十名分ございました。

 裁判所におきましては、個人のパソコンを職務に使用するという実態は一般に生じておりません。裁判所におきましては、裁判官に対して、判決の作成などのために一人一台のパソコンを整備しております。また、書記官及び事務官につきましては、必ずしも一人一台というわけではございませんが、執務室の規模に応じた必要な台数のパソコンを整備しておりまして、そのために、私物パソコンを職場に持ち込んで職務に使用するという事態は一般に生じておりません。

 にもかかわらず、今回このような情報の流出が起きたということで、今回の事件を受けまして、最高裁判所では緊急に、二月二十四日、全国の職員に対しまして、職務上の電磁的情報をインターネットに接続した私物パソコンから消去すること、これをさらに保存をしない、それからファイル共有ソフトをインストールするというようなことが、これが職務上の電磁情報を扱うパソコンに行われないようにというような指示を行いました。

 これに加えまして、裁判所における情報システムの情報セキュリティーの確保をさらに徹底するために、本年の四月中を目途といたしまして、執務関連の電磁的な情報に関する総合的な流出防止策を策定いたしまして、これを全職員に周知するとともに、改めて個人情報保護の趣旨と服務規律を徹底させたいというように考えております。

津村委員 法務省、最高裁からはかなり具体的に明確な御答弁をいただいたんですが、警察庁さんに一つだけ端的に御質問いたします。

 ゼロになる具体的なめどを示すことが困難だとおっしゃられましたけれども、それは、都道府県警察が予算の必要な措置をいついつまでにとるということを、この件に限らずですけれども、警察庁本庁から通達する、そういった権限を持ち合わせていないということか、それともそういった意思を今回持っていないということか、そのどちらでしょうか。

武市政府参考人 お答え申し上げます。

 警察庁といたしましては、一刻も早く私物パソコンをなくすということを各県に言っているわけでありまして、ただ、それと、今申しました予算的な措置の制度につきましては、国として、いつまでに予算をさせて整備をしなさいということを、しなさいという言い方はなかなかできない、してください、早くやってくださいという言い方はできても。その辺のところの県警察と警察庁の関係について、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

津村委員 都道府県予算の使う優先度を示すこともできないということですか。

武市政府参考人 お答え申し上げます。

 今申しましたように、それぞれ地方が行政を進めていく上で財政的な措置というのは必要になってくるわけでありまして、そんな中で、今回の事案にかんがみまして、各都道府県が公費のパソコンの整備を優先的に進めるということについては、ぜひやってくれというふうにはこちらから申し上げているところでございます。

津村委員 時間が参りましたので、終わります。

石原委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 二回目の質問にはなりますけれども、随分いろいろと問題のある法案でありまして、第一回目に質問したことだけじゃなくて、ほかにもたくさんあるものですから、まず最初に、前回質問していなかったことを中心に質問させていただきたいというふうに思います。

 いわゆる退去強制事由に関する規定の整備に関してでございますけれども、ここで、公衆等脅迫目的の犯罪行為あるいはその予備行為あるいはその実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者については強制退去の対象者としていくんだというような法制が今度とられようとしているわけであります。

 この法務大臣の認定についてでありますけれども、これは認定の手続がどうなのかということも大変重要な問題でありますけれども、認定されたときには、その者については公表とか通知がされるんでしょうか、どうでしょうか。

杉浦国務大臣 テロリストの認定を本人に通知するかどうかという問題ですね。

 法務大臣は、特定の外国人について、入管法改正案第二十四条の二の規定に基づいて、外務大臣、警察庁長官、公安調査庁長官及び海上保安庁長官の意見を十分に聴取し、その根拠として提供される証拠、資料を踏まえて、相当の理由があると判断できるときに認定を行うこととなります。

 そして、認定された外国人テロリストを発見し、実際に退去強制手続をとる際には、第二十四条第三号の二に該当する旨そのテロリストに告知した上で手続を進めることになりますが、認定そのものについては、法務大臣による告示その他の方法による公表や通知を義務づける規定は置いておりません。

 それは、本改正案におけるテロリストの認定制度は、被認定者本人について退去強制手続をとる目的で行うものであり、その利益の保護は退去強制手続における告知で十分図られ、それ以前に通知、公表を行うことは、その必要はないばかりか、被認定者たる外国人テロリストや同人が関係するテロ組織を利することとなり、国民の利益にも国際社会の利益にも合致しないものと考えられるからでございます。

平岡委員 ちょっと今のは変な話だと思うんですね。

 例えば指名手配なんかをする場合は、これは当然公表されているわけで、こういうテロリストというのは、皆様方、全部ひっくくった上でテロリストというふうにとりあえず呼んでおこうと思いますけれども、テロリストがいた場合は、やはりその人が危険だというふうな判断をしているわけですから、そういう人が周りにいたら積極的にいろいろと周りの人たちから通報してもらうとか、そういうような仕組みも必要なんじゃないんですか。そういう必要性があると認められるのに、何で通知も公表もされないという仕組みでいいんですか。ちょっとおかしいじゃないですか。

杉浦国務大臣 かえって、通知をしたら逃亡したり日本に寄りつかなかったりできるわけですから、告知するのは、退去強制手続に入る際に、とる際に告知する、それで収容をするということで十分だと思います。

平岡委員 大臣、寄りつかなかったりするからという、何か寄りついてほしいかのような答弁だったように思うんですけれども、もともと、外国人が入国する際の生体情報をとろうというのは、ある意味では抑止効果みたいなものを期待しているというようなことも言われているわけでありまして、公表とかすればそれだけ寄りつかないんだろうから、むしろ当局が期待しているようなことができるんじゃないかというふうに思うんですよね。

 そういうふうに考えると、こういうことを認定したということを全く当局の内部の情報にとどめておくというのは私は何か変だと思うんですけれども、むしろ、私がより変だと思う理由というのは、要するに、自分の知らないところで勝手に認定されてしまって、あるとき突然、あなたはこういうふうに認定された人ですよといって拘束されて強制退去の手続が始まってくるというのは、何かちょっとやはりおかしいと思うんですよね。

 だから、そういう意味では、認定に対して不服を申し立てることができるような仕組みというのがやはり必要じゃないかと思うからこそ、公表とか通知ということが必要ではないかというふうな視点で私は問うておるんですね。そういう意味でいったら、認定されたときに、その認定に対して不服を申し立てる仕組みというものはないんですか。あるべきじゃないでしょうか、大臣。

杉浦国務大臣 認定後、発見されまして、実際に退去強制手続をとられた者には、一般の被退去強制者と同様に、入国警備官による違反調査、入国審査官による審査、特別審理官による口頭審理を経て、法務大臣による裁決に至るまでの手続の全過程において、入管法により、十分に告知、弁解、防御の機会が与えられております。この過程において、法務大臣による外国人テロリストであるとの認定の当否についても当然争うことができます。

 しかし、認定の時点における公表、通知を前提に、認定そのものに対する不服申し立て制度を設けることはいたしておりません。

平岡委員 していないからこそ、なぜしていないのかということを聞いているのであって、その理由をちゃんと述べてもらわなきゃいけない。捕まえてから、ちゃんと手続があるからいいじゃないですかというのは、ある意味では、当局が勝手にそういうふうに思うところであって、捕まえられる方の立場に立ってみたら、何だ、私はそんな人に該当することはないよ、何で認定されたんだろうというような状況のもとで拘束がされているというのは、私は極めて不自然な状況だというふうに思うんですよね。

 大臣、どうですか。少なくとも認定したらそれを公表するということで、救済にも努め、そしてテロが起こるのも防止するという意味では、公表するという仕組みが必要じゃないですか、どうでしょうか。

杉浦国務大臣 私は必要だと思っておりませんし、かえって、そういう制度を設けることは、外国人テロリストを利して、よくないと。

 認定そのものは、先ほど申し上げましたとおり、第二十四条の二の規定に基づきまして、外務大臣、警察庁長官、公安調査庁長官及び海上保安庁長官の意見を十分に聴取して、そこで提供される証拠、資料を踏まえまして、相当の理由があると判断できるときに認定を行うわけでございますから、その認定のもとで外国人テロリストを水際で捕捉して、しかるべき手続をとるということが最善だと思っております。

平岡委員 ちょっと話が全くかみ合わないということで、とにかく今の制度でなければいけないというような、今政府が提案しているような制度でなければいけないんだというようなことをかたくなに守っているとしか言いようがない。この国会での審議というものを生かしていこうという姿勢がないというふうに感じられました。

 そこで、認定をしっかりやるんだということを言われておられますけれども、そもそも、認定の事由そのものが、先ほど言いましたような、予備行為とかあるいは実行を容易にする行為ということについて、「行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」というふうに、非常に幅広くなっているように思うんですね。これは司法手続で認定するわけじゃないわけですから、行政機関が認定するわけですから、もっともっと、安易な認定にならないような限定をしていく必要があるというふうに私は思うんですけれども、大臣、いかがですか。

杉浦国務大臣 国際テロ行為の行われている状況をつぶさに見てみますと、なかなか大変であります。このテロ行為を未然に防止し、国民の生命と安全を守るという目的の達成はなかなか容易ではないと思います。その万全を期すために、また我が国に国際テロ組織の拠点をつくらせないためには、テロ行為だけでなくて、その予備行為、その実行を容易にする行為を行うおそれがあると認められる外国人についても、発見後、直ちに我が国からの退去を強制することが必要でもあるし、また合理的でもあるというふうに考えております。

平岡委員 ちょっと幅広過ぎるんじゃないかという話を全然別の次元で答弁されているということで、すれ違い答弁の典型みたいな話でありますけれども、具体例を挙げてみて、これはそういうものに該当するということになるのか、認定の対象になるのかどうかということをちょっと教えてもらいたいと思うんです。

 我が国で、本国政府に反対する活動をしているということで、難民の認定を受けた定住者であるところの外国人が、その本国政府から、その難民の認定を受けた者が日本の国で、あるいはどこかで爆弾テロを行おうとしているという情報をその本国政府が提供してきたという場合には、これは退去強制事由に該当する、その認定の対象になるんでしょうか、どうでしょうか。

杉浦国務大臣 個別具体的な事情に相なります。

 先ほど申し上げましたように、その方がテロリストかどうか、外務大臣、警察庁長官、公安調査庁長官及び海上保安庁長官の意見を十分に聴取し、そこで提供される証拠、資料を踏まえまして、果たしてそういう情報が相当な理由に当たるかどうか、判断できた場合には認定を行うということになると思います。

平岡委員 ちょっと問題を端的に言いましょう。

 例えば、外国から難民という形で我が国に入ってきて難民の認定を受けた。その人は、本国政府から、そいつは危ないやつだ、テロも起こすようなやつだというような情報の提供があったときに、それは一律に、そういう本国政府からの情報があったからといってその人をテロリストとして認定するということはしないということですね。

杉浦国務大臣 正直に申して、今おっしゃったようなことで、それだけで認定できるかどうか。

 先ほど申しました各種の情報を掌握している各省庁で十分検討して、証拠もそろえ、資料を出して検討する。その結果、相当の理由があると、その方の場合でしたら爆弾攻撃を行う理由があると判断できるときに認定を行うことになるわけでして、一般論としてはそういうことになります。

平岡委員 全体的にいろいろな情報をもってして判断するということで、先ほど言いましたように、難民の場合に、本国政府から一片の情報が伝わってきたからといってすぐに認定するものではないというふうに理解させていただいて、次のケースをちょっとお聞きいたしたいというふうに思います。

 例えば、我が国に永住資格を有している外国人というのが、アメリカ政府を批判する集会に出席して、国際テロ組織の活動に賛同する旨の発言を繰り返していたというような場合は、これはテロ活動の実行を容易にする行為を行うというような範疇になるとして認定が行われるんでしょうか、どうでしょうか。

杉浦国務大臣 その件も、その発言が一つの事情には相なろうと思いますが、先ほど申しましたように、関係四省庁十分協議の上、意見を十分に聴取して、そこから証拠、資料を提出していただき、検討して、おっしゃったような事情がテロリストとして認定するに相当の理由があるかどうかということを判断することに相なるだろうと思います。

平岡委員 端的にもう一遍聞き直します。

 集会に出て、国際テロリストの活動について、それを支援するような、それに賛同するような発言を繰り返しているということは、ここに言うところの「実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」に該当するということなんですか、どうですか。

杉浦国務大臣 個別具体的な事案のことでございますので、発言を繰り返していること自体が相当の理由に当たるかどうか。

 何回も繰り返して申し上げていますが、外務大臣、警察庁長官、公安調査庁長官、海上保安庁長官の意見を十分聴取して、根拠として提供される、例えばそういう発言があったとか、さまざまな証拠、資料を踏まえまして、相当の理由があると判断できるかどうかという問題だと思います。

平岡委員 要するに、極めてあいまいな概念になっていると私は思うんですよね。これほど幅広い概念の中で認定が行われるということは非常に問題が多いというふうに私は思います。そのことをまず申し上げさせていただきます。

 それで、先ほどちょっと大臣の方から、強制退去に関する手続の中で、不服があれば申し立てていけばいいというような趣旨の答弁がありましたけれども、先ほどの答弁の中で、認定されていることについてはその旨告知をするんだというふうに言われましたけれども、認定していることだけ告知したのでは、一体どういう状況のもとでどういう理由で自分がそういうふうに認定されたのかというのはわからないわけですよね。

 ということは、やはりしっかりとその認定に至った理由というものもその者に対して告げられるというふうに私は理解しているのですけれども、その理解でいいでしょうか、どうでしょうか。

杉浦国務大臣 ある外国人につきまして、改正入管法二十四条三号の二に基づいて、法務大臣がテロリストと認定した者と同一人物であると疑うに足りる相当の理由があるとして、主任審査官により発付された収容令書によって当該外国人を収容するときには、入国警備官は、容疑事実の要旨が記載された収容令書を当該外国人に示さなければならないこととされております。したがって、収容令書により身柄を収容する際、当該外国人にはテロリストの認定がなされていることが明示されることとなります。

 また、入管法には強制退去事由に該当すると疑うに足りる根拠自体を明示する手続はありませんが、前述のとおり、収容令書には容疑事実が記載される上、収容後の退去強制手続、すなわち入国審査官による審査、特別審理官による口頭審理を経て、法務大臣による裁決に至るまでの過程において、収容令書に示された法務大臣によるテロリストであるとの認定の当否について争うことができることとされておりますので、この手続において、防御を尽くすことはできると考えております。

平岡委員 今の答弁は非常にわかりにくかったんですけれども、容疑事実が示されるということは、その容疑事実の中に、どうしてあなたはこういう人に認定されたのかということはちゃんと書かれているということを意味しているんですか。それとも、示せないけれども、今大臣が読み上げられたことを言うから、その過程の中で何かわかってくるんじゃないでしょうか、そういう意味ですか。どっちですか。

杉浦国務大臣 収容令書は、第四十条で「容疑者の氏名、居住地及び国籍、容疑事実の要旨、収容すべき場所、有効期間、発付年月日その他法務省令で定める事項を記載し、且つ、主任審査官がこれに記名押印しなければならない。」と、容疑事実を示されなければならないと相なっております。

 容疑事実の要旨の中には、当然、テロリストとして認定されている事実は含まれると考えております。

平岡委員 テロリストとして認定した根拠となる事実がその容疑事実の中に示されているということでいいんですね。

杉浦国務大臣 収容令書に示された容疑事実の要旨には、当然、テロリストとして認定されている事実は含まれるものと承知しております。

平岡委員 今、ちょっと最後のところがよくわからなかったのですけれども、認定がされたことの事実というのは、認定したかしなかったかというだけの話ですから、それは当然、書かれているのは当たり前だと思いますけれども、私が言ったのは、認定の根拠となった事実関係というものがこの容疑事実の中にちゃんと書かれているんですねということを聞いているんです。

杉浦国務大臣 その点は、退去強制手続に関することですから、事務方から答弁させます。

三浦政府参考人 大臣から御答弁ありましたように、容疑事実の要旨を記載することになっておりますが、そこには、要するにテロリストとして認定された者であるということ、それから、今回の改正法でいわゆるテロ資金規制法の中に規定された幾つかの行為類型がございますので、こういうものに当たるとして認定されたということは書かれるんだろうと思いますけれども、要は、今委員御指摘の、その者がどのような内容でテロリストとして認定されたかということにつきましては、この一連の手続の流れの中で、当然本人が不服があれば争うわけでございますので、その中で、刑事手続でいいますと証拠調べのような形で、おのずから明らかになっていくものであろうというふうに思っておるわけであります。

平岡委員 争う中でおのずから明らかになっていく、そういう何か本当に人権無視といいますか、管理社会的な、お上によらしめるような、そんな仕組みというのはやはりおかしいですよ。

 認定するということは、私がさっきから言っているように、極めて抽象的な概念の中で、非常に幅広い事由になっているわけですよね。繰り返し言うのも、何回も言うのも大変ですけれども、「実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある」とか、もう何を言っているかわからないようなぐらい幅広くしている。そういう幅広いことにしてその人の人権を拘束していく、そういうことになるわけですから、具体的な認定の根拠となった事実、どういう理由で認定に至ったのかということについては、やはり最初からしっかりと示すべきじゃないですか、どうですか。

 大臣、それはぜひ行っていただきたいと思いますけれども、どうですか。

杉浦国務大臣 収容時に収容令書を示す、そこに容疑事実が記載されている、それにテロリストとしての認定された事実の記載があることは、入管局長が言ったとおりでございます。

 収容後、退去強制手続に入っていくわけですが、入国審査官による審査、特別審理官による口頭審理等の中で、そのような事実、証拠があれば証拠をもとにして審理が進めていかれるものと承知をしております。

 どういう審理手続を経るかは、入管局長から答弁させます。

三浦政府参考人 委員既に御承知のことかと思いますけれども、退去強制手続は、いわば裁判の三審制のような形になっておりまして、最初に、入国警備官が退去強制事由に当たると認められる外国人を発見した場合には、調査を開始するということでありまして、身柄を収容した場合には、審査官に引き渡して、審査官の方で審査を行う。その結果、退去強制をすべき者であるという認定をした場合に、本人がそれに従えば、本人の意思で本国に帰る、こういうことになるわけであります。

 もし自分がその認定について不服であると、テロリストの関係で言いますと、まず考えられるのは、一つは、テロリストと名指しされた人物と自分は同一人物ではない、こういう主張をする可能性もあるでしょうし、または、自分は確かに名指しされた特定個人ではあるがテロとは関係がないという主張をすることもあるだろうと思います。そういったことにつきましてさらに不服がある場合には、特別審理官による口頭審理を申し立てることができますので、その手続の中で、その認定について双方主張をしていくということになります。

 その結果として、特別審理官において、やはりこれは退去強制事由に該当する人であるという認定をしますと、その段階で退去強制の対象になるわけでありますが、さらにこれに対しても異議申し出ができる、そういうシステムになっておりまして、その異議申し出につきましては法務大臣に対して行う、最終的には、行政手続の最後として法務大臣が裁定を行う、こういう手続になっております。

 もちろん、これは他の一般の退去強制事由によって手続をとられる人と同じ扱いになっておりますので、いわゆる行政訴訟の提起も当然可能であるということでございます。

平岡委員 そういう手続になっているのは、私もそれほど詳しくはありませんけれども、大体わかっているんですよ。わかっているんですけれども、今回の認定をするということについては、非常に幅広い概念の中で認定されてしまうものですから、適正手続という視点からも、やはり最初からしっかりと理由というものを示して手続を進めていかないと、むやみやたらと、無実と言うべきなのか、関係のない人が身体拘束を受け続けてしまうというようなことになりはしないかということを心配して私は言っているわけでありまして、ぜひそこは、ここで押し問答をしていても仕方がないと思いますけれども、認定に至った事実関係、背景となる事実関係、理由、このことを、この手続を進めるに当たってはしっかりと示していくことを要請しておきたいというふうに思います。

 時間がないので、ちょっと次の話に移ります。

 自動化ゲートの話でございますけれども、この自動化ゲートについて言うと、いろいろな説明の中では、これで便利になりますから、皆さんが出入国する際に、非常に使いやすいので、ぜひ利用していただくために、皆さんの利便性を高めるためにつくりましたというような説明をされるんですけれども、本当にそうなんだろうかというのは、やはりちょっと疑問があるんですよね。

 例えば、平成十七年三月に法務省が作成した第三次出入国管理基本計画というものの中に、この自動化ゲートのところについては、どういう位置づけになりどういう表現になっているかということを見てみますと、まず位置づけとしては、「強力な水際対策の推進及び不法滞在者の大幅な縮減を通じた我が国の治安を回復するための取組」という位置づけの中に書かれておって、こういうふうに表現されているんですよね。「日本人の出帰国審査においては、当面は、希望者についてバイオメトリクスを活用することにより、自動化ゲートの導入を図り、」こう書いてあるんですよ。

 「当面は、希望者に」というふうに言っているということは、いずれはすべての日本人に対してこれを強制的に使わせる、つまり、生体情報というものを、出入国をするすべての日本人に対してさせようとしているのではないかというふうに思うんですけれども、大臣、そういう意図はあるんですか、どうですか。

杉浦国務大臣 先生、若干誤解しておられると思うんですが、第三次出入国管理基本計画において、「強力な水際対策の推進及び不法滞在者の大幅な縮減を通じた我が国の治安を回復するための取組」の部分に、バイオメトリックスを活用した出入国審査の導入について記載してあることは、そのとおりでございます。その趣旨は、もちろん、テロ対策の観点からバイオメトリックスを出入国審査に活用して、出入国審査の厳格化を図るというものでございます。

 なお、そこに、後段で自動化ゲートの導入に言及されておりますので若干混乱が生じたんだと思いますけれども、その目的は、出入国審査の円滑化を図ることでございます。バイオメトリックスを活用した出入国審査という点では、バイオメトリックスを活用した出入国審査の導入と共通する部分があったためにその部分に記載されているものにすぎませんで、あくまでも、さきに答弁したとおり、自動化ゲートの導入の趣旨は、出入国手続の簡素化、迅速化でございます。

平岡委員 大臣がそういうふうに言われるのなら、これだけは確認させてください。

 これは今、「当面は、希望者について」と書いてありますけれども、いずれにしても、希望者以外の人に対して強制的に自動化ゲートを通過させるというようなことは、制度的には将来も行わないということをここで明確にお約束してください。

杉浦国務大臣 この法律においても考えておりませんし、将来も考えておりません。

平岡委員 そういうふうにお約束していただけるということであれば、しっかりとテークノートしておきたいと思います。

 ただ、これは希望者だけというふうにいっても、実質的には、さまざまな意地悪をするというようなことを通じて半分強制的に行われてしまうというようなこともあると思うんですよね。登録している人と登録していない人との間に何か扱いの差が生じて、実際には半強制的になってしまうというふうなおそれがあるわけですけれども、例えば、審査時間として、出国審査あるいは帰国審査時の時間の短縮、スムーズにいくというのなら、どのぐらい違うことになるんですか。この点についてちょっと教えてください。

河野副大臣 今、空港の入管業務における待ち時間というのを短縮するように鋭意努力をしているところでございます。自動化ゲートの導入を今試験的に始めようとしておりますので、具体的にどこまで短縮できるかというのは現時点ではなかなか申し上げにくいことでございますが、少なくとも、自動化ゲートを希望する方が使っていただければ一般の行列が短くなるわけでございますし、あるいはそこの部分の人間をほかの外国の入国の審査に振り向けること等もできますので、総体的にはいろいろな効果を上げられると思います。

平岡委員 それは、自動化ゲートを使う人以外の人に利便を及ぼすために自動化ゲートを導入するような、そんな説明だったように思うんですけれども、自動化ゲートを使うということのメリットがあるから希望する人があるわけであって、その希望する人たちに対しては具体的にどういうメリットがあるのか、このことを聞いているんですよ。どうですか。

河野副大臣 指紋を登録していただいて自動化ゲートを使うということは、一般の入国審査よりも早く審査が済んで、審査といいますか、ゲートを通っていただくことができると思いますので、それ以外の行列よりも自動化ゲートを使う方が早く入管を通過することができるということになろうと思います。

平岡委員 そこで、自動化ゲートを使っている人と使っていない人との間に余り違いが出過ぎちゃうと、また逆にこれは、半強制的に自動化ゲートを使わせる、つまり半強制的に生体情報を提出させるということにつながるわけですよね。何か二律背反みたいな話になってしまうわけでありますけれども、逆に、自動化ゲートを使わない人たちにとってみても、それを使わないで不利益をこうむる、あるいは多大な時間を要する形によって不便を来す、こんなことがないということを、まずここでお約束いただきたいと思います。

河野副大臣 自動化ゲートの導入の目的は、スムーズに入管の審査を通っていただくことにあります。希望する方には自動化ゲートを通っていただくわけでございますが、自動化ゲートを希望されない方が、それによって不必要に審査時間が長くなったり、その他不合理な扱いを受けることは、当初の目的でもありませんし、実際にそういうことにはならないようにいたします。

平岡委員 そこで、今度、自動化ゲートを使うということで生体情報を提供した人たちについてなんですけれども、先ほど大臣が長々と何か読み上げられた、どういう利用の仕方をするのかということについて言えば、外国人については名寄せみたいなことがあると。これもどこにも資料がなくて、河野副大臣が概念図だと言われて、私もちょっと頭にきておるのでありますけれども、そんなことでごまかそうとしちゃいけないということをこの前も強く申し上げましたけれども、名寄せについて、邦人についてはやるというようなこともあるのかどうか、自動化ゲートを使用するために提供された邦人の生体情報というのはどのように使われるのか、このことについて、まず明確にしてください。

杉浦国務大臣 自動化ゲートを利用する方は、頻繁に出入りされる方だと思うんですね。一年に一回とか一生涯に一回とか出られる方はなさらないと思います。

 いずれにしましても、自動化ゲートの利用を希望する日本人から利用登録時に任意に提供を受けるわけですけれども、その指紋等の個人識別情報は、目的が、自動化ゲートが利用者の利便性を向上させるために導入するものであることを踏まえまして、法務省が個人情報を保有するに当たっての利用目的も、利用登録者と自動化ゲートを利用する者との同一人性の確認という一点に集約されることになります。

 なお、利用目的以外の利用については、午前中高山議員に詳しく御説明申し上げましたが、個人情報保護法の制約のもとでのみ可能でございます。

平岡委員 同一人物であることの確認だけだということなので、ぜひ、その範囲内での利用ということを厳格に守っていただきたいというふうに思うわけであります。

 逆に、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づいての、本来の目的ではない、目的外利用もあるということでありますから、そのことについても、例えば犯罪捜査のためにも使われることがありますよというようなことについても、これは私は、この自動化ゲートを使おう、申し込もうとする人に対してはしっかりと周知を図る必要があるというふうに思いますけれども、大臣、この点についてはいかがでしょうか。

杉浦国務大臣 あくまでも、自動化ゲートは利用者の利便性の向上でございます。そのために導入する制度でございますので、出入国管理を厳格化するための制度ではございませんので、その趣旨で保管されることになります。

 登録等の手続の詳細につきましては、まだ手続は決めておりませんが、さらに検討の上、運用開始までに確定いたしまして、広く一般に周知いたしますとともに、法務省の内部運用要領を定めたいと考えております。

 利用目的及びこれと密接に関係する保有期間につきましては、利用希望者が個人識別情報を提供して登録することにより自動化ゲートの利用を希望する旨の意思を表明したときから、その意思が撤回されるまでの間に限定されるべきものであり、利用者にはその旨明示するとともに、法務省の内部運用要領で、当該利用希望者が利用の意思を撤回した場合には当該個人識別情報を抹消する旨定めることといたします。

 なお、細かいことになりますが、自動化ゲートを利用する意思が撤回されたことは、原則として、法務省に対して利用希望者本人から通知される必要があると考えています。本人からの通知もなされないのに、法務省が勝手に、あるいは家族の通知を受けて、本人の意思を確認せずに利用意思が撤回されたと判断し、登録を抹消した場合、かえって利用希望者の意思に反することになりかねないからでございます。

平岡委員 私が聞いたことに端的に答えてください。聞いてもいないことを長々と答弁書を読んでも、それは時間稼ぎにはなるかもしれませんけれども、実のある議論にならないので、大臣、私が聞いたことにだけ答えてくれればいいんです。

 私が申し上げたのは、この自動化ゲートを使うときに提供された生体情報というのは、本来の目的以外にどういうときに使われるのかということについてしっかりと周知をした上で、この登録ということについての申し込みを受けてほしいということを申し上げたんです。大臣はそういう趣旨のことを述べられましたから、しっかりとその辺は周知されるというふうに思います。その点だけ、まず確認をさせてください。そういうことでよろしいですね。

杉浦国務大臣 そのようにいたします。

平岡委員 そこで、前回からいろいろ問題になっている部分について戻っていきたいと思うんです。

 今この委員会でいろいろなことを議論させていただいておりますけれども、そもそも、生体情報の問題についてこれほどまでに議論しなければいけない理由は一体何なんだろうかと考えてみると、前から言っているように、生体情報といったようなセンシティブな情報について、どう取得し、どう保有し、どう管理し、どう利用していくか、どう削除していくか、このことについて本当はしっかりとした法整備をしていかなければいけないんじゃないかというふうに私は思っておるのでございます。それができていないからこれほど大きな問題になってきているということだろうと思うんですけれども、そこで、まず質問をします。

 そもそも、入管当局が被退去強制外国人から指紋を採取する法的根拠というのはどこにあるんでしょうか。刑事訴訟法二百十八条なんかを見てみますと、明示的にも指紋を採取する場合はこうなんだというようなことが書いてあるにもかかわらず、私はいろいろ見させていただいたら、条文的にはどこにもあらわれていない。それなのに指紋を強制的に被退去強制外国人からはとっているということは、やはりおかしいんじゃないかというふうに思うんですね。

 どうですか、大臣。指紋を採取している法的根拠というのは一体何なんですか、どこにあるんですか。

杉浦国務大臣 入国管理局が指紋を採取する法令上の根拠について御説明いたします。

 入国警備官は、入管法二十七条に基づきまして、退去強制事由に該当すると思料する外国人があるときは、当該外国人、すなわち容疑者につき違反調査をすることができます。

 入国警備官は、入管法第二十八条第一項に基づきまして、違反調査の目的を達成するため必要な取り調べ、すなわち任意調査をすることができます。この任意調査の一環として、容疑者の個人識別等のため、容疑者から指紋を採取することができます。顔写真を撮影することもできます。ただし、任意でございます。

 違反調査から始まる退去強制手続が進むと、退去強制の対象者は、入国者収容所または地方入国管理局の収容場に収容されることになります。法務省令たる被収容者処遇規則によれば、入国者収容所長及び地方入国管理局長は、新たに収容される者を入国者収容所または収容場に収容するときは、十六歳未満の者を除き、入国警備官に指紋を採取させ、身長及び体重を測定させ、かつ、写真を撮影させなければならないものとされています。同規則十二条であります。

 これは、入管法第六十一条の七第四項により認められている被収容者の身体検査の一環として、入管法同条第六項の委任により制定された法務省令に基づき、個人識別の趣旨から行うものでございます。

平岡委員 だから、形式的には法律に基づいて法務省規則で書いてあるんだということを意味しておられるんだろうと思いますけれども、前から言っているように、こういう人の人権にかかわる、プライバシーにかかわるような話を法務省規則といったような一片の省令で物事を規定していくという発想こそ今や変えていかなければいけない、そういう時代に来ているんだろうと私は思うんですよね。いかがですか、大臣。

 法律で具体的に委任がされているということじゃないわけですね。一般的な委任規定に基づいて、こういった指紋の採取といったような、プライバシーにかかわる、人権にかかわるようなことが行われている。このことに対して、人権擁護の所管官庁である法務省として問題があるとは思いませんか。どうですか。

杉浦国務大臣 被収容者処遇規則第十二条は、入管法六十一条の七第四項に規定する被収容者の身体の検査の一環として行われているものでございますが、その方法については、法律上、特に限定はございません。そして、同条第六項は「前各項に規定するものを除く外、被収容者の処遇に関し必要な事項は、法務省令で定める。」として、身体の検査の具体的な方法について、入管法は省令に委任したものと理解いたしております。

 先生、法制局にいらっしゃったのでいろいろお詳しいわけですが、省令も、委任を受けた場合、法令の一部ということでございますので、適法であります。

平岡委員 形式的に書いてあれば何でも書いてもいいというものじゃないんですよね。やはり法律で書かなければいけないことはちゃんと法律で書く。法律で政令とか省令に委任する場合も、具体的に何を委任するのかということは明確に書かれていなければいけない。この発想を、法務大臣なんですから、まずしっかりと持っていただきたいというふうに思います。そういう意味では、私は、今回の生体情報の取得から削除までの一連の行為についてしっかりとした法整備をしていくということを、これからの課題としてぜひ受けとめていただきたいということをお願い申し上げたいというふうに思います。

 そこで、ちょっと午前中の同僚議員の質問なんかにも関連して、私が前からお願いしていることについて、一応説明は聞きましたけれども、よくわからないので、またしっかりと精査していきたいと思います。

 一つ大臣が言っておられるのは、指紋とかの生体情報について、保有期間については法律が施行されてからいろいろ考えていきたい、しかし、どのぐらいの期間なのかというのはいろいろ問題があるから明らかにしないんだ、こういうふうに言われていますけれども、この生体情報の保有、利用等については何で決めるんですか、どういう仕組みでその制度を決めていくんですか、まずそれを教えてください。

杉浦国務大臣 法務省において、内部で運用基準を定めるつもりでございます。現在、まだできておりませんが、運用基準を定めて、そこで一定の期間保有するということを決めてまいりたいと思っております。

平岡委員 その運用基準というのは何ですか。法務省規則ですか。何ですか、それは。

三浦政府参考人 今大臣からお答えがありましたように、運用の基準を法務省内部で策定いたしまして、それに従って、どういった形で保存をしていくのかということを決めることになると考えております。(平岡委員「運用基準というのは法務省令ですかと聞いているんですよ」と呼ぶ)省令は想定しておりません。

平岡委員 省令で規定しないということは、そういうような根拠として、何ですか、それは。ちょっとよくわかりませんけれども。

 大臣はさっき規則までは発言されましたけれども、何で決めるんですか。どういう根拠に基づいて、何で決めるんですか。

三浦政府参考人 先ほど来大臣の方からも御答弁ございましたが、保存期間、保有期間をどの程度にするかということにつきまして、これを公表するということになりますと、テロリスト等に資することになりますので、内部的な運用基準で定めるということを考えておるわけでございます。(平岡委員「その根拠は。その根拠を聞いているんです、さっきから」と呼ぶ)

 根拠といいますと、それは法律で、指紋、顔情報を採取するという規定がございます。そして、必然的に、採取したものについては一定の利用目的というものが法律の規定から出てくるわけでございますので、それをどの程度保存するかということにつきましては、大もとは入管法の規定であるというふうに考えております。

平岡委員 いや、それはどの規定に基づいてそういうことが許されるんですか。これは、法務省令に定めるところによりとか、いろいろ書いていますよね。それだったら、法務省令をちゃんと書かなきゃいけないんじゃないですか。法務省令で秘密の法務省令というのがあるんですか。そんなものないでしょう。どういう根拠に基づいて、運用基準でやるというんですか。ちょっとそれを示してくださいよ。それを示さなかったら、保有期間は決めるけれども秘密です、そんな話をそのままうのみにはできないですよ。

三浦政府参考人 もちろん、法律案をごらんいただきますとおわかりのとおり、採取する指紋情報等についてどのような手続で行うかといったことですとか、具体的にどういう情報を採取するかということにつきましては、省令に委任されているわけでございます。省令ではそういったところの手続を定めることになるわけでございますが、そのような手続に基づいて採取された指紋等の個人識別情報の保存、保有の期間については、これは内部の通達で定める。(発言する者あり)運用基準と申しますのは、通達にそういう表題をつけるようなことは、済みません、失礼いたしました、今のは撤回させていただきます。

平岡委員 法務省の中で、先ほど言った内部通達とか内部運用基準で外部に公表していない、公表できない秘密のものというのはどれだけあるんですか。どういう分野でどれだけあるか、これを示してください。

三浦政府参考人 法務省全体ということでお尋ねであれば、私、ちょっと今資料を持ち合わせておりませんので、入管の部分について、若干、自信はないのでありますが、記憶で申し上げますと、いろいろな点について、先ほどちょっとお話ししました運用要領というものを通達でつくっておりまして、いろいろな在留資格の認定手続等について、どのような形でやっていくかというようなことを内部的に職員に指針を示したりするわけでありますが、こういうものにつきましても、これを一般に公表すると事務処理上問題が生じるという部分については公表をしないという扱いにしております。また、多くの部分については公表しますが、一部分については公表しないという扱いのものもございます。

平岡委員 どれぐらいの期間保有するかとかというのは、まさに人のプライバシーとか人権にかかわる重大な問題なんですよね。これを、秘密だからといって内部の運用要領みたいなものだけでとどめておくという発想そのものが私はおかしいと思うんですよ。

 必要なら必要だと、ちゃんと何年間か書けばいいじゃないですか。それが妥当かどうかは別ですよ。河野さんが言われているように、七十年、八十年と書けばいいじゃないですか、本当に必要なら。それを秘密にしておかなければいけない、その理由がさっぱりわからない。何で秘密にしなきゃいけないんですか、こんなものを。堂々と明らかにしたらいいじゃないですか。何でこのことを秘密にするんですか、大臣。

杉浦国務大臣 何度も御答弁させていただいておりますけれども、テロリストや犯罪者に有益な情報を与えることになりますので、公表を差し控えることとしたいと思っております。

 具体的な保有期間につきましては、施行後、その結果を踏まえて、最終的に決定することとしたいと思っております。

平岡委員 法務省で、人の人権とかプライバシーにかかわるような話について秘密にしている規則、基準、こういうものでどういうものがあるのか、全部出してもらえますか。中身を書くというのは、それは秘密ですから、だめなんでしょうけれども、例えば、こういう形で取得した生体情報の保有期間、これは秘密です、こういう秘密事項、中で決めていることで秘密事項、どういうものがどれだけあるのか、ちょっと示していただきたい。大臣、よろしいですか。

杉浦国務大臣 通告にないことでございますので、今答弁できませんが、持ち帰って検討いたします。

平岡委員 持ち帰って検討していただいて、一体どういうものがそんなものがあるのか、人権を擁護するということについての所管官庁である法務省が、まさにそういう問題について秘密にしているということ自体が、極めて不思議な、おかしい事項だというふうに私は思いますので、至急検討していただいて、この法案を採決する前には、しっかりと提示していただきたいというふうに思います。

 それから、これは先ほどの話に戻りますけれども、名寄せをするということを言われましたよね、外国人の分については。入国のときの照合することと、それから名寄せをすること、それ以外には何か考えていることはありますか。この外国人の生体情報の利用については、法務省の中で、利用することについて、何かほかに考えていることはありますか。

杉浦国務大臣 先ほど高山委員の質問に詳細をお答えいたしましたが、出入国の公正な管理の典型例としての事後的な確認の必要性については申し上げました。

 それからもう一つ、出入国の公正な管理の典型例でございます、再度の入国の際の審査または在留中の審査に利用する可能性、いわゆる名寄せでございます。

 それから、その他の利用ということでも高山委員に御説明申し上げましたが、それ以外の利用は考えられないと思います。

平岡委員 私は強く抗議申し上げたいのは、最初にこの法案説明をするときに、名寄せの話というのはどこにも出ていないんですよね。システム図の中にも書いていないんですよ。そういうようなことで名寄せをするということは極めて問題がある。本当に必要性があるなら、しっかりと、堂々と示して、堂々と議論したらいいじゃないですか。副大臣、そう思いませんか。どうですか。

河野副大臣 何度も繰り返すようですが、主たる目的はテロリスト対策であり、従たる目的が出入国の適正な管理でございますので、そうしたことは当初から内容に盛り込まれております。

平岡委員 この前の委員会でも示したように、あの図の中には全く書いていないんです、名寄せの話は。当初から示しておりますというのじゃないんですよ。当初から書いていないということですよ。そんなことでごまかしてもらっては困る。

 こういう問題については、本当にセンシティブな情報の取得、管理、運用の問題ですから、しっかりとそこは国民の皆さんに示して、こういうことをやるんだよ、このためにやるんだよということをしっかり示して、やはり国民的な賛同を得られる形で導入すべきだということを強く抗議申し上げたいというふうに思います。

 ちょっと時間がないので、この前、アメリカの永住者、移民について適用除外としていることについて、US―VISITでは、査証を取得する際に指紋を採取しているから、要するに入国時はとらなくてもいいんだという答弁をされているんですけれども、何か変なんですよね。

 そもそも、やはり入国時に指紋をとって、もともと登録してあるものと正しいのか、あるいは、どこかのテロリストとか犯罪者生体情報と照合して問題ないのかということをチェックしようとするのがこの仕組みなわけですよね。だから、この前の答弁は全く答弁になっていないというふうに私は思うんですけれども、そういう意味では、やはり、アメリカと同様、永住者の入国時の指紋提供については必要ないんじゃないですか。どうですか。

河野副大臣 永住の在留許可を得た人間が一度海外へ出られまして戻ってくるときに、その人間が確かにその人間であることをやはり証明していただかなければなりません。そのためには指紋を使うのが一番適正でございますので、我が国では、永住者まで含め対象とさせていただくことになっております。

平岡委員 必要性を言えば切りがないんですよね、ある意味では。日本人だって、本当に成り済ましで、日本人に成り済まして来ているという可能性だってあるわけですからね。外国人が日本人に成り済まして、私は日本人ですよと言って来る可能性だってある。そうすると、日本人だったら別に指紋採取というのは強制的になっていないわけですから。それを言い始めたら切りがない。

 そういう意味では、永住者というのは、移民というのは、アメリカでもやっていないことを日本がわざわざやる。その理由は、僕はちょっと行き過ぎだというふうに思いますよ。どうですか、大臣。

杉浦国務大臣 河野副大臣がお答えになったとおりでございます。

平岡委員 河野副大臣がどうお答えになったかということを聞くつもりはありませんけれども、私が聞いていることと河野副大臣が答えていることとは全然趣旨が違うんですよね。そのとおりだと言われたら、本当にこの委員会というのは全然議論にならない。こんな審議をしていて、もうこれを通すというのは、本当に承服しがたい。はらわたが煮えくり返るぐらいの気持ちを持っています。

 ちょうど質疑時間が来ましたので、とりあえずきょうはおしまいにしますけれども、この後、本当に、先ほど私がお願いしましたような情報、資料とかをいただきまして、問題があるようであれば、まだまだ採決には応じられないという事態に至る可能性もあるということを申し上げまして、私の質問を終わります。

石原委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 まず、私の方も自動化ゲートについてお聞きをしていきたいと思います。

 法務省の入管局作成の自動化ゲートの事前登録のところ、先日も聞きましたが、登録時に要注意人物のデータに一応アクセスをしておく、先日の入管局長答弁では、外国の方が再入国する際に上陸拒否事由該当者などをチェックするという答弁だったんですが、これはどうなっていますか。日本人も含めて、定住外国人も含めて一応ブラックリストに照合するというふうに私はこのシステムを理解しているんですが、間違いないですか。

三浦政府参考人 自動化ゲートに関してのお尋ねであるというふうに理解いたしましたが、今回の法案におきましては、自動化ゲートを利用できる外国人の要件といいますか、これが九条の七項に規定が置いてございます。

 日本人につきましては、特に法律の手当てをせずに省令の改正で可能になるわけでございますが、外国の方につきましては、この九条の七項の中で要件が定められておりまして、再入国の許可を得ていることと、それから、「法務省令で定めるところにより、電磁的方式によつて個人識別情報を提供していること。」それから、「登録の時において、第五条第一項各号のいずれにも該当しないこと。」これはすなわち上陸拒否事由のことでございますが、これも、外国の方は調べますが、日本人についてはそういう問題は全くございませんので、日本人についてはそういうことはないわけでございます。

保坂(展)委員 きのう私は、二時間以上説明を聞いたんですが、日本人についてもブラックリストに照合は一応あるというふうに聞いていますよ。ちょっと正確に答弁して。

三浦政府参考人 申しわけございません。ちょっと私、誤解いたしました。

 日本人で犯歴がある方がおりますので、これについては確認をすることになります。

保坂(展)委員 手配中だったり犯歴についてはブラックリストに照合するということはわかりました。

 次に、この「自動化ゲートの運用プロセス」の図の真ん中に「指紋情報データベース」、こういうものがございます。これは恐らく、局長よろしいでしょうか、ここにブラックリストが入るんだと思いますが、今の答弁を踏まえて。つまり、こちらに要注意と書いてありますけれども、指紋情報を登録しているデータベースそのものにブラックリストの情報がインプットされているはずだと思いますが、それでいいですか。何人分ぐらいが入っていますか。

三浦政府参考人 申しわけございません。今ちょっと遠かったものですから、先生、図面のどの部分を指し示されたのか、ちょっと見えなかったもので……(保坂(展)委員「真ん中です」と呼ぶ)

 これは、登録した指紋のデータベースという趣旨で記載されているものでございます。ですから、ブラックリストの方はまた別途のところに保管されておりまして、そのブラックリストに当ててみて要注意人物であるかどうかということを確認して、問題がない人であればデータベースの方に登録して自動化ゲートを利用していただく前提の登録をする、こういうことになります。

保坂(展)委員 私が聞いているのは、局長、例えば、矯正で持っている情報で、仮釈で保護観察中の方、海外へ行っちゃいけない方ですね、そういうデータであるとか、今言いました犯歴あるいは指名手配中である方たちかどうかというのをチェックしないと、いわゆるブラックリスト照合にならないわけですね。おわかりですか。

 では、登録のときに何人分ぐらいを大体チェックして当てるんですかということ。

三浦政府参考人 失礼いたしました。ちょっと私、細かい数字を今持ち合わせていないので、申しわけございませんが、若干名はあるんだろうと思いますけれども、それで確認はすることになると思います。

保坂(展)委員 若干名ではないと思うんですが。

 では次に、先日、我々は委員会として成田を視察させていただきまして、APISですか、こちらの方の、大変そうな作業でしたね。事前に乗員・乗客名簿ですか、これを送付されてきて、こちらの図にあるように、これは、法務省で把握している、警察庁で把握している、財務省で把握しているシステムにそれぞれ当てて、問題ある人物かどうかを見る。こういうことでありますけれども、そういうことで形成される総合的なブラックリストの対象者というのは大体何人ぐらいなんですか。

三浦政府参考人 APISの関係では、上陸拒否事由の対象者ということで、入管の方で四十万ぐらいのリストを持っております。そのほか、警察のリストが若干あるというふうに聞いております。

保坂(展)委員 これももう少し本当は明確に答弁をしていただきたかったんですが、しっかり時間をかけて、しっかり答えてください。

 次に、大臣とのやりとりの中で、二ページ目の方の資料なんですが、これは前回改正入管法の逐条解説部分です。私と同じ保坂さんという方が入管局の局付でいらっしゃって、書いていらっしゃいますね。

 六十九条の九のところに一、二、三とございます。これは、「法務大臣は、」で始まるところで、三のところにアンダーラインを引いてありますが、「当該要請に係る外国の刑事事件の捜査又は審判に使用することについて同意をすることができる。」ただし、除外しますよと、除外規定がその下にありますね。例えば、政治犯とかそういうものは除くということなんでしょうけれども。

 そして、この解説の方を見ると、「提供された情報が事後的に刑事手続に使用されることは、一般的には、目的外使用となるが、組織的犯罪処罰法第五十七条の情報の交換の仕組みと同様、国際捜査共助法と同様の制約の下での相手国の同意を条件として、提供された情報を事後的に刑事手続一般に用いることができる仕組みとしている。」と。

 明快ですよね。私が条文を読んでそういうふうに思ったというとおりの解説なんですが、大臣、これはそういう理解でよろしいですか。

杉浦国務大臣 そのとおりの御理解でよろしいと思います。

保坂(展)委員 そうすると、三浦局長に伺いたいんですが、先日、委員会でかなり時間をかけて何回もこれはやっているんですが、そういう情報は行きませんという答弁をずっとなさっているんですね。これは、今大臣のおっしゃった、この逐条解説どおりの対応がされるというのとちょっと違うんですが、その点はちょっと修正してもらえますか。

三浦政府参考人 前回の当委員会で保坂委員の方から御質問がございまして、私、お答え申し上げたのでありますが、どうもちょっと言葉足らずであったということもあったかなというのと、委員の御質問の趣旨を十分理解していなかったのかなというのをまことに申しわけないと思っております。

 私が委員に申し上げたのは、いわゆる入管法の六十一条の九の規定で、外国の入管当局に情報が提供できることになっておるわけでございますが、一般に……(保坂(展)委員「一般は聞いていない」と呼ぶ)あのとき申し上げたのは、いわゆる外国人から指紋情報をとりますね、一年に七百万ぐらいあります。また、自動化ゲートでも、日本人と日本に在留している外国人の方の指紋情報があるわけでありますが、こういうものを一括して、一まとめにして外国の入管当局に情報提供するということはない、こういう趣旨で申し上げたわけでございまして、それ以外に、先ほど来大臣の方からもお話がございましたが、いわゆるテロ情報などにつきましては、これは各国の相互の協力という面から、有益な情報として提供することはあり得るというふうに考えております。

保坂(展)委員 刑事局長に伺いたいんですが、この逐条解説のところに、「目的外使用となるが、」以降に、組織的犯罪処罰法五十七条とあって、これはマネロン関係の金融庁所管の情報だということで、刑事局としては直接は答弁しにくいというふうに聞いたんですけれども、前回の質問の中で、例えばマネロンの共犯とかで容疑が固まって、これを海外に照会するとかいうようなことはないのかということを入管局長との間でやりとりをしたんですが、この逐条解説のところにも、従前も外国捜査機関等に外交ルートを通して捜査照会などの形でやられていた。あるいは、マネロンのFIU関係でもこれはあるというふうに承知していますが、それでよろしいですか。

大林政府参考人 私の方、ちょっと前回のやりとりは存じませんが、今おっしゃられる意味が、マネロンなんかの犯罪に当たるものとして、いわゆる国際捜査共助という枠組みに入るものとして乗っかる性質のものならば、委員おっしゃるようなこともあるというふうに思います。

保坂(展)委員 法務大臣に、今の刑事局長の答弁を踏まえてお聞きしたいんですが、入管でプールしている指紋情報には、今二種類ございますね。外国人、そして日本人、定住外国人の指紋の登録ですね。これらを含めて、例えば捜査共助であるとか、あるいはマネーロンダリング関係であるとかということで提供したり、これはその数は少ないか多いかは別にして、提供したりあるいは提供されたりということはあるんですね。

杉浦国務大臣 外国人の指紋等であれ、日本人、定住者の指紋等であれ、法務省が保管する個人情報という点では変わりはございません。ですから、個人情報保護法の定めるところに従って、提供する場合はあり得ると思います。

保坂(展)委員 答弁を整理していただいて、我々が危惧するところ、やはり指紋の登録もかなり大勢になっていくでしょう、US―VISITではもう既に五千万人近い指紋情報が登録されたと聞きます。

 さて、それでは三枚目、ちょっとめくっていただきたいんですが、これまでテキストデータで、入管にかかわるいわゆるコンピューター化ですね。カードで整理していた時代から、この三枚目の資料、入管局長に聞きますが、ずっと見ると、これは日立が、いわゆるレガシーシステムという形の、つまり、ちょっと業者変更がやりにくいというか、事実上できない仕組みなんですね。業者変更ができないかどうかという点と、総額幾らになったかという点を簡潔にお願いします。

三浦政府参考人 今委員から御指摘いただきましたように、いわゆるレガシーシステムと呼ばれているシステムを入管でも使っている現状にございます。

 この経緯でございますけれども……(保坂(展)委員「いや、経緯はいい」と呼ぶ)よろしゅうございますか。それは非常にたくさんの情報を一括して扱うということで、どうしても以前の技術からしますと、ホストコンピューター方式で、ハードウエアとソフトウエアを一体的に開発してもらわないと使い勝手が悪いということで、最初、そういう形で導入したというふうに聞いております。こうなりますと、極めて他の業者が入りにくいようなシステムになってきてしまっております。これをいわゆるレガシーシステムというような形で呼んでいるようでありますけれども、ただ、当時はその方がすぐれていたということでございます。(保坂(展)委員「額は」と呼ぶ)

 額についてでございますが、約二十二年分、トータルで六百八十億円ほどでございます。六百八十億でございます。

保坂(展)委員 では、河野副大臣にこの辺を聞きたいと思うんですが、この注の二のところには、システムについてはリースである、リースだからベンダーに所有権がある、つまり日立製作所が所有権を持っている。それから、注の三のところにも、ソフトウエアは、基本的なものはベンダー側だということは書いてありますね。つまり、新たに開発したものについての著作権、使用権については法務省が保有していくが、問題はこれまでのものですよ。これまでのものは、例えば日立製作所以外のメーカーに頼もうといっても、残債がどんと出てくる、これだけ払ってくださいと。かなり巨額に払わなきゃいけない。

 それからもう一つは、入管のコンピューターシステム自体のハード、そして基本ソフトの著作権なり使用権を業者側が持っているということをそのままにして、今回こういった新たな、年間五十億、七十億という、指紋情報を今度インプットしていくようないわばシステム構築をするのか、この辺、整理してお答えください。

河野副大臣 私もレガシーシステムの問題を追及してきておりますので、今回の入札から、ハードウエアとソフトウエアをきちっと分離したいと思っております。

 それから、仕様につきましては、可能な限りオープン仕様なものにしていきたいと考えておりますので、これを契機にレガシーのシステムとは決別をして、きちっとアップデートができる、あるいは必要ならば納入先を変えることができる、そういう仕様のものに変えていきたいと思います。

 入札方法等につきましては今後検討していきますが、間違いなく、レガシーの愚を繰り返さないようにしてまいりたいと思います。

保坂(展)委員 明快な答弁、よかったんですけれども、では、入管局長に今のことを聞きますけれども、これは、従前のテキストデータ、ずっと二十二年間積み上げてきたデータを使うわけですよね。そこのシステムに蓄積したデータと今度新しいデータベースとを連動させて、これからやるわけでしょう。よろしいですか、聞いていますか。そうすると、これは日立製作所以外のメーカーも可能なんですか。

三浦政府参考人 今、副大臣からも御答弁ございましたように、新しいシステムの構築に当たりましては、いろいろ汎用性があるような形で構築をしていきたいというふうに考えておりますので、現在のいわゆる日立でのシステムについてのいろいろなデータも、行く行くは新しいシステムの中に取り込んでいって、将来的には一体のものとして非常に効率的に使いたいということで計画を立てているところでございます。

保坂(展)委員 河野副大臣、自民党の中でこの問題を追及されたというので、そういう意味では仲間としてお聞きしますけれども、(発言する者あり)いや、その点ではそうじゃないですか。

 ごらんになってわかると思いますけれども、一般競争入札というのは極めて少ないが、この一般競争入札というのは、本来は、日立製作所以外に落とせない一般競争入札というのはあり得ないじゃないですか、ほかのところがとったらシステムはとまっちゃうわけですから。こういうのを一般競争入札と普通は言えないはずですよね。

 そして、これらも、六年前はわからないよという資料で出てきているわけですね。六百八十億を投入して、それから、総額ではなくてそれぞれの仕組み、このレガシーは何系列かあるみたいですね、きちっとわかるようにして、どこに問題の所在があるのかというのも整理して再提出していただきたい、そのことを指示していただけますか。

河野副大臣 十一年度が出ておりませんが、どこまでさかのぼれるかわかりませんが、可能な限りきちっと整理をさせたいと思います。

保坂(展)委員 先ほど法務大臣が、具体的な期間については言えないんだと。保存期間に戻ります、よろしいですか。ずっとこの委員会のテーマでございます。きのうも参議院で福島議員とやりとりもあったと聞いておりますけれども、大臣よろしいでしょうか、保存期間を明かすとテロリストを利することになる、その理屈もさもありなんということなんですが、では、先に河野さんによろしいですか。七、八十年というのは今も変わりませんか。

河野副大臣 論理的には、十六歳で指紋を採取した人間が何年生きているか、これが、人間の平均寿命が飛躍的に延びて平均寿命が百五十歳ですということになるか、あるいは、地球環境が悪くなって平均寿命が極端に短くなるということがあれば、この論理的に可能な年数というのは変化をすることがないとは言えないと思いますが、少なくとも、十六歳で指紋を採取した人間が論理的にどこまで生きるかというのは、大体平均寿命というのがあるわけですから、それを超えて保有することはないんだろうと思います。

保坂(展)委員 河野副大臣の発言、国会のやりとりですからお許しいただいて、今の答弁が、これは議事録にもインターネットにも載っていますから、これはテロリストを利すると思いますか。

杉浦国務大臣 短かったら利するかもしれませんが、長い場合は利さないと思います。

保坂(展)委員 杉浦大臣、大変正直な答弁で、テロリストを利することにならないんですよね、今、河野副大臣の言うとおりであれば。しかしどうも、杉浦大臣はもうちょっと短いところを考えていらっしゃるというふうに聞こえたんですけれども、それはどうですか。

 河野副大臣のかなり長い年月は別にテロリストを利するという話にならないですね、ああ、ずっと保存するんだなということですから。だけれども、そうではない年月が出てきたときにその論理が初めて出てくるわけで、これはもうちょっときちっと調整して、統一していただけませんか。

杉浦国務大臣 一致しているつもりでございますが、実際、実施は法律が成立してから一年半以内に実施することになるわけでございまして、実施を始めまして、結果が出始めます。どの程度抑止効果があるのか、結果的に見て不法滞在とかそういうものにどれだけプラスになるかとか、名寄せをしてみて摘発できるかどうかとか、いろいろやってみた結果、それから、もちろんテロ情勢も変化してまいります。そういった状況を踏まえて、実施後、適切な期間を決めさせていただきたいと思っておるわけで、言ってみれば、透明白紙の状態でともかく始めさせていただきたいというふうに思っておるわけです。

保坂(展)委員 大臣の答弁、白紙を確認しながら進むというのも嫌なものでございまして、国会審議、白紙ではない基準を明確に求めているわけです。

 一点、外交に携わってこられた杉浦大臣ですから御承知かと思いますけれども、US―VISITが導入された当時、やはり反発がございました。多分、日本政府も反発したんでしょう。私も体験したけれども、気持ちがいいものではありませんでした。それで、対抗措置としてブラジル等が、その当該国民に対して同じことをやるよ、つまり、アメリカ国民に対しては顔写真、指紋の採取をするよという措置があったのを御存じかと思います。今回の日本のこういうUS―VISITならぬ日本型US―VISITですか、これの導入に当たって、そういう他の国の反応が予想できないのか、心配されないのかということ。

 そしてもう一つは、国民に対して、自動化ゲートで確かに便利だけれども、犯罪捜査などにかかわっては、これは例外的かもしれないけれども使われることがあるということも、しっかりここは事実として告知をすべきじゃないかという二点。いかがですか。

杉浦国務大臣 他国の反応と申しましょうか、御理解を得て、できるだけ理解をいただいて、日本に来られる方の御理解もいただいて、円滑にスタートすることが望ましいと思っております。

 私は、個人としては、ブラジルなんかもアメリカだけにやらないで、我々が計画しているとおり全部の人についてやってもらう。世界各国も国連に加盟している国は足並みをそろえてこの制度を導入して、テロリストを追い詰めていくということをやっていただきたいと個人的には思っております。

 ただ、先生のおっしゃるとおり、余り愉快なことじゃないことは間違いないわけで、こういうことは、できることであれば一日も早く世界じゅうがやめられて、テロリストがいなくなって、何もそういうことなしに自由に行き来できるようになることが一番望ましいと思っていますが、現実はそれと違いますので、ともかく、テロリスト、テロリズムを撲滅するまでは、これはやむを得ない。国民の皆さんにも御理解をいただき、それがひいては国民の安心と安全を守ることにつながりますので、諸外国にも理解をしていただいて進めてまいりたい、こう思っております。

 先ほど白紙と申しましたが、大変失礼しました。要するに、テロリストにとって、あの方々にとって白紙、いつまでかわからないという状態に置いておくことが大事だという趣旨で申し上げました。必要である間、内部の運用基準で定める一定の期間は保有させていただくということで御理解をいただきたいと思います。

 短ければ短いほどそれはいいわけで、そういう事態が来ることを願っておりますが、まあ、七十年、八十年というのはともかく、私は生きておりませんけれども、理論的には考えられると思う。そこまで世界が平和でない状態というのは望ましくない、もうできる限り早い時期にテロリストを撃滅できて、こういうものがない状態に戻すような世界になってほしいと心から願っております。(保坂(展)委員「二問目は、日本人に対して、国民に対しても、捜査に使われることが例外的にもあるということを言うべきじゃないか」と呼ぶ)

 それは、自動化ゲート、登録する際にはちゃんと御説明するようにしなきゃいけません。この制度の趣旨については、国民に向かっても正確に広報するということが必要だと思っております。

保坂(展)委員 ごめんなさい。最後に、公安調査庁長官に来ていただいているので、もう本当に一問だけになってしまいましたが、今、公安調査庁で把握している、いわゆるこういった入国管理に係るデータベースができるわけで、ブラックリストという言葉が出てきているわけですね。公調として把握しているブラックリストの累計及びその員数は、概数で結構ですが、どのぐらいでしょうか。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 実は、私どもの方でブラックリストという形で、特定の行為をさせないといいましょうか、抑止するために、直接リスト化して持っているというものはございません。私どもの場合は、その団体とか人物の行動について破壊活動防止法の観点から調査を進めているというものでございまして、いわゆるブラックリストというものの形にはなっておらないということでございます。

保坂(展)委員 大変重要な審議で、やはりちょっと委員会室が寂しいのが非常に気がかりで、大臣も、白紙というのは、あれは言い違いだったというふうに信じたい。大変重要な点が出てきていますので、しっかりこれからも審議をさせていただきたいと申し上げて、終わります。

石原委員長 次回は、明二十九日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三分散会


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