衆議院

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第14号 平成18年4月5日(水曜日)

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平成十八年四月五日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 石原 伸晃君

   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君

   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君

   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    太田 誠一君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    鈴木 淳司君

      平沢 勝栄君    三ッ林隆志君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    柳本 卓治君

      石関 貴史君    枝野 幸男君

      河村たかし君    津村 啓介君

      細川 律夫君    伊藤  渉君

      保坂 展人君    滝   実君

      今村 雅弘君    山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   法務副大臣        河野 太郎君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   安藤 隆春君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小貫 芳信君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月五日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     鈴木 淳司君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     柴山 昌彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八五号)


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     ――――◇―――――

石原委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房長安藤隆春君、警察庁刑事局長縄田修君、警察庁交通局長矢代隆義君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長小貫芳信君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津村啓介君。

津村委員 民主党・無所属クラブの津村啓介でございます。

 まず、法務大臣、そして警察庁にもお尋ねしたいと思いますが、昨日の当委員会の質疑の中で、杉浦法務大臣から、代用監獄の今後のあり方につきまして、将来的には廃止が望ましいという御答弁がございました。有識者会議での議論でもそうした強い意見が出されていたということでもございますし、また、大臣の大臣就任以前からのお考えもあるのかなというふうに理解しておりますけれども、改めて法務大臣、そして警察庁にこの点についてお伺いしたいと思います。

杉浦国務大臣 今回の法整備は、いわゆる代用監獄、代用刑事施設制度が現実に我が国の刑事司法制度において重要な役割を果たしているということを踏まえまして、この制度の存続を前提として、これに制度的改善を加えまして、代用刑事施設の被収容者の適正な処遇を図ろうとするものでございます。有識者会議での御結論もそういうことだと承知をいたしております。

 代替収容制度は、これを所与の制度と考えているわけではございません。刑事訴訟の迅速化、裁判員制度、公的被疑者弁護制度の導入が図られようとしておりますが、これらによって刑事司法制度全体が大きな変革の時代を迎えているということなどを考えますと、今後、刑事司法のあり方を検討する際には、取り調べを含む捜査のあり方に加えまして、代替収容制度のあり方についても、刑事手続全体との関連の中で、検討を怠ってはならないものと考えております。有識者会議の結論もそういうことであると承知しております。

 理想として廃止すべきだと申し上げたのは、長いスパンで五十年、百年、日本の社会、自由主義、民主主義を基本とする社会が成熟度を加えていく長い将来を考えた場合には、理想として廃止されるべきだという私の考えを申し述べたわけでございまして、現実に今回の法整備について述べたわけではございません。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 現在の我が国の刑事司法制度のもとでは、極めて短期間の身柄拘束の間に精密司法と評される緻密な捜査を行う必要があり、そのような適正かつ迅速な捜査の遂行のためには、被疑者の留置場所について、捜査機関と近接した場所にあること、さらに取り調べ室等の設備が十分に整備されていることが必要不可欠であると考えております。

 しかし、これらの条件を満たす施設を留置施設のほかに新たに整備するのは非現実的であります。一方、留置場は交通至便の地にありまして、これは弁護人等の利便性にも資するということでございますので、以上によりまして、代用監獄制度については、現行の刑事司法制度を前提とする限りは存続することが不可欠であると考えておりまして、これは未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議におきましても、今回の未決拘禁者の処遇等に関する法整備に当たっては、代用刑事施設制度を存続させることを前提とすることと提言されたわけでございまして、以上のように我々は考えております。

津村委員 杉浦大臣に重ねてお尋ねをいたします。

 今、御答弁の中に多少私も矛盾があるなと思いました。前段で大臣がお述べになられたのは、現在、司法制度改革が進んでいるということでございます。その中で、刑事司法のあり方について考えていかなければならないということをお述べになりました。三年後には裁判員制度が導入されます。そういった意味では、司法制度改革はまさにここ数年急ピッチに進んでいる、そういった営みでありまして、五十年、百年後の議論をしているわけではありません。前段と後段で時間軸が大分途中でおずれになったと思いますが、もう一度御答弁ください。

杉浦国務大臣 きのうもきょうもずれているとは思っておりません。理想は理想、現実は現実、現実を踏まえまして、日本の刑事司法制度のあり方として、五十年、百年という長い展望を考えれば、その理想の実現に向かって一歩一歩進むべきである、私はそう思っております。

津村委員 理想と現実がしばしば乖離することは現実にあることだと思いますが、しかしながら、立法に当たっては、その理想というものをどこかでしっかりと掲げていくことも非常に重要な立法の役割だと思います。そういった意味では、今回、例えば附帯決議等の形で、将来の理想はこういうものであるというビジョン、大臣は実際お持ちなわけですから、これは何らかの形できちんと残すべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

杉浦国務大臣 附帯決議は委員会において御検討いただくべきだと思います。

津村委員 同様に警察庁にもお伺いをしたいと思いますけれども、現行の司法制度を前提とするとというお話ですが、まさしく法務大臣の御答弁にもありましたように、現行の司法制度自体が今改革の半ばにあるわけです。この代用監獄制度が今後、私は将来の話をしているわけですので、将来に向けた見通し、あるいはあるべき姿、大臣の言葉をかりれば、理想はどういうものかということを御答弁ください。

安藤政府参考人 先ほど有識者会議を引用されたとおり、今回の法整備に当たっては、代用刑事施設制度を存続させることを前提とするという提言を受けた法案でありまして、我々としても、代用刑事施設制度の恒久化の有無をこの法案についてあらわすものではないということで、委員御指摘のように、理想としてはという点につきましては、これは今後、各関係者が議論をして、そういう議論の中で御検討されるということであると思います。

 我々事務方、警察庁としましては、そういうように、先ほど、最初の御質問に対してお答えしましたように、現在の状況におきましてはやはり必要不可欠なものであるという答弁をさせていただきたいと思います。

津村委員 警察庁官房長にもう一回伺いますが、本来あるべき姿として、法務大臣から、理想はこれはあるべきでない、将来的には廃止するべきである、五十年、百年後はというお話がございました。警察庁として、五十年、百年後のビジョンはどういうものをお持ちかということをお尋ねしています。

安藤政府参考人 理想につきましてといっても、やはりいろいろな条件を前提にして議論をしなきゃいけないと思います。日本の刑事司法制度、現在の司法制度という前提、あるいはいろいろな諸条件の中でどうするかということでありますので、直ちに警察庁として理想論を述べるという立場にはございません。

 そういう意味で、先ほど申しましたように、有識者会議の提言におきましても、代用刑事施設制度のあり方につきましては、刑事手続全体との関連の中で、検討を怠ってはならないというような提言でありますので、そういう議論がこれからされるものと承知しております。

津村委員 私は、法務省と警察庁さん両方にお尋ねしているわけですけれども、それぞれお答えになっている前提といいますか、時間軸の置き方が全く違うものですから、両方にお尋ねしている意味が余りないように思います。

 それでは、まず大臣の方にお伺いしますけれども、五十年、百年後というのは結構ですし、附帯決議については述べられるお立場じゃないということもわかりますけれども、大臣としては、その理想に向けてどういった取り組みを大臣自身の仕事の中でされているのか、具体的にお述べください。

杉浦国務大臣 一人の政治家、しかも法曹の道を歩んできた人間として、理想としては五十年後、百年後、そのころは私、生きていませんが、そういう理想を掲げるということは大事だという趣旨で申し上げたわけで、ただ、この問題が起こってからもう二十五年たっておるわけです。二十五年間、ずっと絶えず検討されてきたわけですが、あの当時の議論と今日の議論、この二十五年でも大変な変わり方をしております。

 今回の法整備は、繰り返し申しますが、代用監獄が現在の司法制度の中で果たしている重要な役割、現実、しかも、その代用監獄も二十五年前と今とはもうさま変わりであります。留置官制度が設けられて、捜査と勾留、留置の仕事はきちっと分かれております。設備もそのように整えられてまいっております。警察当局における運用も大きく改善されているという現実があるわけでございます。

 有識者会議が、この制度の現実に果たしている役割を踏まえて、この制度の存続を前提として、しかも制度的改善も加えております。現実に留置官制度で運用しておるわけで、それを法制化いたしておりますし、留置場視察委員会ですか、これからつくっていくわけですが、そういうものを設けて、留置施設のあり方について、第三者の目からウオッチしていくという制度も盛り込んでおりまして、そういった制度的改善も行われておりますから、いわゆる代監問題については、二十五年前に比べると、比較にならない大きな前進が加えられていると私は思っております。

 有識者会議の結論にもございますように、引き続き検討ということでございますから、先ほど申し上げましたような司法制度の大きな変革期の中で、今後とも代替収容制度のあり方については、刑事手続全体との関係の中で検討を怠ってはならないと思っておりますし、また、これは、最終的と申しますか、政治、政府が全体として取り組むべき問題でございます。一歩一歩前進していくと思いますが、私も、議員の職がある限り、いろいろな立場で前進が図られるように、今まで同様、今後とも努力を続けていきたい、こう思っておる次第でございます。

津村委員 私の質問に対して、最後の本当にワンフレーズでお答えいただいたような気がいたします。ただ、私は、一歩一歩前進をしていきたいと最後にお述べになったその具体的な中身を伺ったわけで、その前段のこの二十五年間の処遇の改善についてお尋ねしたわけではないんです。

 大臣が、昨日と本日の二日間にわたって、現在の現実と将来の理想ということを高く掲げて述べられているわけです。さらに、先ほどの御答弁では、自分は法曹の道の出身者として、政治家として思いを持ってこれまで活動されてきた、そして今法務大臣になられたというお立場であります。

 私は、これは政治家としての大臣にお尋ねしているつもりですので、ぜひ御自身のお言葉でお答えいただきたいんですけれども、これまで一政治家として、代用監獄問題についてある種の思いを持って、つまり将来的には廃止すべきであるという思いを持って取り組まれてきた方が、まさしくそのことに関する法案を提出するお立場にある法務大臣という、いわばその問題についての最高責任者として今国会にいらっしゃるわけですから、まさしくその具体的な、これまでの政治生活、大臣がおっしゃったこれまでの歩みと一貫した取り組みを示すお立場に今あるわけです。

 その中で、実際に前進をさせていきたいということも先ほどお述べになっているわけですから、当然具体的な幾つかの取り組みがあってしかるべきですし、ここで突然、理想と現実は違うと言って、一方では理想を語りながら現実には何もしないというお取り組みであれば、それはむしろ政治家として節を曲げられたということになってしまうと思うんですね。

 そういったことはないと思いますので、また、先ほど前進をしようとしているとおっしゃるので、その具体的な中身を教えてください、そういう御質問です。御答弁ください。

杉浦国務大臣 御提案している法案が、このような形で関係者の皆さんの大変な御努力で結実しまして、明治何年でしたか、以来の大改正が、まさに先生方の議論を経て成立させていただきたいと思っておりますが、ここまで来た、これをお諮りできること自体、大変な前進だ、我が国司法制度の中でも歴史的意味を持った改革だと私は思っております。

 ぜひとも、中身について十分な御議論をいただいて、これからの刑事制度の発展のある意味では出発点となるこの国会審議であっていただきたい、こう願っておるところでございます。

津村委員 それでは、私から、例えばこういった取り組みがあるのではないかということで、一つ申し上げます。

 一九八〇年の法制審議会において、いわゆる漸減条項というものが全会一致で採択されたという歴史的な事実がございます。拘置所の収容能力の増強に努めて、代用監獄に収容される例を漸次少なくするという、そういった内容と理解しておりますけれども、こういったものを、先ほど私、附帯決議と申しましたが、それは院で審議することだとおっしゃいますので、例えば、法案の附則とか、法案を修正して法案の中身に取り組むということも法技術的には可能だと思いますが、これは大臣、努力をされるというのであれば、そうした取り組みはどうしてなされないんですか。

杉浦国務大臣 昭和五十五年に法制審議会からちょうだいした監獄法の改正についての答申、第百十項(二)ですか、この趣旨でございますが、この御趣旨は、本来、刑事施設に収容することが相当と判断されるようなものについて、そういう判断は最終的には裁判官がされるわけでありますが、そういうものについて、刑事施設の収容能力の不足から留置施設に収容せざるを得ないという事態が現に存し、あるいはそのような事態が生じるおそれがあるとの認識に立たれまして、刑事施設を所管する法務省に対しまして、その増設等に努めることによって、そのような事態が生じることがないようにすべきことを要請するものであると理解しております。

 その結果といたしまして、やむを得ず被勾留者を留置施設に収容する例は少なくなりますが、法制審議会の答申は、代用監獄に収容される被収容者を漸次減少させて、代用監獄制度を将来的に廃止するという趣旨を、そこまでも含むものではないと理解しております。

 法務省としましては、これまでも、未決被収容者の収容定員の増加に努めてまいったところでございます。現在も、拘置所を増改築するように努めておるところでございます。

 起訴後の被告人についても、代用刑事施設から拘置所等への移送の停滞が見受けられる実情にあることも踏まえますと、さらにその収容定員の増加に努めていく必要があると思いますし、また一方において、既決被収容者の過剰収容状況がございますので、拘置所から刑務所への移送が渋滞しているという実情もございます。

 ですから、既決被収容者の過剰収容状況、一一〇%を超える過剰収容状況を解決しなければ、刑が確定した者を拘置所から円滑に移送できないわけであります。そして同時に、そのことは未決被収容者の収容能力を圧迫いたしておりますから、未決の被収容者の収容能力増強のためにも、既決の被収容者の過剰収容状況を解消することが大事であり、そのことにも努めてまいらなければならないと思います。現実に、多額の国費を投入いたしまして、既決被収容者の施設の増設に努めておるところでもございます。拘置所とあわせて努力いたしておるところでございます。

津村委員 私が事前に通告させていただいた別の質問を多少先取りしてお答えいただいた感じなんですが、それはあくまでも、現在、漸減条項が政府の方針として生きているか、あるいは、どうしてこれまでそういったことが十分反映されてこなかったのかということに対する答えにはなっているかもしれませんが、私が先ほどお尋ねしました、この漸減条項のようなこうした趣旨、あるいは、将来、先ほど大臣が五十年後、百年後の理想とおっしゃられた、代用監獄を将来的に廃止するという方向性を今回の法案の附則に盛り込んではどうかという私の提案に対する答弁にはなっていないと思います。

 もう一度御答弁ください。

杉浦国務大臣 先ほど、警察庁の方から御答弁があったんですが、捜査を行い、真相を解明していくということは、刑事司法にとって重要な責務でございます。

 捜査段階にある被疑者が捜査当局、あるいは、場合によっては弁護人からアクセスしやすい場所にあるということも一つの大きな要素でございましょう。きのうも御答弁申し上げましたが、地域によっては、裁判所、検察庁、拘置所が極めて近接した位置に立地して、弁護士会もその近くにあるというところは、全国にたくさんあると思います。そういう状況を、環境と申しますか、整備していくことも非常に大事だと思います。

 東京の場合、拘置所は小菅という、都心からすれば非常にへんぴなところに位置いたしまして、弁護士の立場からすると非常に不便だと。また、裁判所あるいは検察庁にとっても、公判出廷のために留置されている者を移送するのにも大変な時間と人、費用がかかるわけでありまして、じゃ、そういう状態を現実問題として解消するには、例えば、小菅は今新増設を行っておりますが、この拘置所が将来建てかえが必要だという時期が来た場合に、これは政治が決断すべきことではないでしょうか。

 そういった現実を踏まえまして、刑事司法が求めている内容にも的確にこたえられる環境づくりは、今後ともいろいろな面で進めていかなきゃならないと思います。

 差し当たっては、刑務所等を増設する、あるいはその過剰収容状態を解消するためにさまざまな努力、大臣PTを立ち上げまして検討を始めておりますが、そうすることも差し当たっては大変重要でございます。その解消によって、現在、拘置所から移送できない状態にある既決した人たちをそちらへ移送もできるわけです。そういったさまざまな努力は今後とも続けてまいりますし、そういう努力が必要なことは申し上げるまでもございません。

 ただ、今回の法制度の整備につきましては、そういった現実を踏まえまして、刑事司法の将来に向かって考えられる、言ってみればベストに近い法整備であると私は思っております。

津村委員 大臣が今お述べになったさまざまな、具体的な努力ということなんでしょうか、幾つかのお話が出ましたけれども、それが果たして十分なものかどうかといったことは、今後検証されていかなければいけないと思います。

 しかし、ここは立法府ですから、私がここで大臣にお尋ねしたいのは、立法府としての努力あるいは行政府としての努力として今回こうした法案を出されているわけですし、大臣はこれがベストとおっしゃいますけれども、さらに理想をしっかり掲げられているわけですから、きのうの御答弁をきょうも踏襲されているわけですから、そうであるならば、立法府としての意思を、法律としての意思をしっかりと、附則なら附則あるいは附帯決議というのも、それは委員会で議論することでありますけれども、大臣のお立場からすれば附則として示すということをすれば、先ほど御説明になったその他のことというのはすべて、その場その場の努力ですから、いわば既成事実の積み上げにしかならなくて、将来この制度はどういう方向に向かっていくかということを大臣のお立場でしっかり示していただかないと。

 この後、私もあるいは石関委員からも指摘があるかもしれませんが、これはさまざまな予算も使っている話ですので、どういう予算を組んでいくのか、どういう主体で組んでいくのか、この次に費用弁償の質問をさせていただきますが、今後どういうふうにこの制度をしていくのかということを、こうした立法の意思として示すことに大きな意味があると思うわけです。

 ですから、重ねてお尋ねしますが、どうして附則にそのことを書けないのかということをお尋ねしています。現在、そのほかに何をやっているかは聞いていません。もう一度御答弁ください。

杉浦国務大臣 法規範として附則に書くべきかどうかという問題と、政府が予算を編成いたしましたり、刑務所を建設するために用地を取得したり、人員を確保したりとはちょっと違うと思います。私は、法整備としては、ぜひとも、我々が提案しておりますこの法案を十分に御審議いただいて、一刻も早く成立させていただきたい、こう思っているわけでございます。

 将来の司法制度の変革については、ちょっと予測しがたい部分もあるわけでございます。例えば裁判員制度の導入、これは三年後になるわけですけれども、これによって刑事裁判がどう変わっていくか、ちょっと予測しがたいところもあるわけでございます。公的被疑者弁護制度の導入にいたしましてもそうでございます。

 ですから、これは発展と申しますか、変化と申しますか、そういうものを踏まえて、その時々の国権の最高機関である国会において十分に御審議を賜って、さらに刑事司法の発展のために、例えばこの法律でしたら、この法律の改正が必要であれば改正というふうに御尽力いただくのが適当であって、今の時点では、どう変化するか予測しがたいところを予測して、ある程度はしなきゃいけませんが、可能な限り予測はしなきゃいけませんが、予測はほぼ不可能な面も多々ございますので、時代とともに社会も司法制度も変わってまいるわけでありますから、その時々の変化に対応した法整備は、これから将来の国会で御審議いただけるんじゃないか、諮っていただけるんじゃないかと私は思っております。

津村委員 大臣のおっしゃるとおりだと思うんですよ。司法制度改革というのは今まさに道半ばですし、これから非常に環境は激変すると思います。また、そういった中での将来の理想としてもこの代用監獄というのは望ましいものでないということは、大臣も繰り返し御答弁になっているとおりです。

 だとすれば、今回この法案を、その他の部分は仮にこの形にするとしても、この措置はあくまでも当面のものなんだということを今大臣はお述べになっているわけですから、大臣がお述べになっているとおり、これが当面の措置であることを法案上に反映させるべきだということを申し上げているわけで、私は大臣がおっしゃっていることを否定していないわけです。大臣がおっしゃっていることを法案上に、附則なりなんなりの形でどうして示さないんですかとお尋ねしているんです。

杉浦国務大臣 私は何回も御答弁申し上げておりますように、今回の法整備は、いわゆる代用刑事施設制度が現実に我が国の刑事司法制度において重要な役割を果たしている、有識者会議でもこの認識は一致しておるわけですが、ですから、この制度の存続を前提といたしまして、これに制度的改善を加えたものであります。そして、今までのいわゆる旧監獄法では非常に不十分でございました代用刑事施設の被収容者の適正な処遇を図ろうとするものでございます。

 その意味の法制度の整備としては、現状においては最も適切なものだというふうに私は考えております。

津村委員 警察庁にお尋ねをいたします。

 現在、留置人に係る費用を弁償する制度があると思いますが、これはどういう制度でしょうか。簡潔に御説明ください。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 簡単に申し上げますと、被勾留者に係る費用につきまして、その一部を法務省から費用償還を受ける、負担をしているということでございます。

津村委員 法務大臣にお伺いいたします。

 今警察庁から御答弁がありました、この留置人に係る費用弁償の額というのは、近年、どのような額で推移しておりますでしょうか。また、今の警察庁の御説明は、あれで十分でしょうか。間違っていませんでしょうか。お尋ねします。

    〔委員長退席、早川委員長代理着席〕

杉浦国務大臣 代用監獄に収容されている留置人に係る費用弁償に要する額は、平成十七年度予算におきましては約八十億四千万円強、平成十八年度予算におきましては約八十五億一千八百万円となっております。留置人一人当たりの単価が、十七年度は千四百五十七円、十八年度は千四百七十六円で、償還人員を掛けて計算したものでございます。

津村委員 この制度というのは、代用監獄制度の現在の日本の法制度における位置づけというもの、あるいは歴史的経緯というものを反映された制度だと想像いたします。

 留置人に係る費用弁償というものが法務大臣のお名前で予算要求をされて、そして、実際には警察庁の留置業務に関して警察庁で費消されているというこの趣旨、法務省を経由して警察庁が実際には予算を使われているこの趣旨といいますのはどういうものでしょうか。法務大臣、警察庁、それぞれにお尋ねいたします。

杉浦国務大臣 この費用償還の制度は、もう明治以来行っておることなんですが、現在においても、代用刑事施設における勾留事務、これは地方の事務でございますが、この事務は国の利害にもかかわる事務でございますし、国庫が一定の範囲においてその経費を支弁または負担することが合理的であるとも考えられることから、今回の法整備に当たっては現行の制度を維持するということにしたわけでございます。

安藤政府参考人 代替収容事務はいわゆる自治事務でございますが、特に勾留事務等は裁判の執行という側面も有しております。この側面をとらえまして、刑及び勾留の執行に関することを所掌しております法務省が、過去の経緯をも踏まえて、その経費の一部を都道府県に対して償還することを定めているのが費用償還法でございまして、これは、地方公共団体の事務を行うために要する経費については基本的には当該地方公共団体が全額これを負担することとしている地方財政法九条というのがありますが、この地方財政法九条の特別法と整理されております。

津村委員 この費用弁償の制度について国会で取り上げたことは過去に余り例がないというふうにお聞きしたんですけれども、この制度というのは、私は、国民から見ると非常にわかりにくい制度かなという気がいたします。どうして、実際には警察庁の方で代用監獄の関係で使っている費用を法務省が予算請求しているのか。これは、今、明治以来とおっしゃいましたけれども、まさしく代用監獄というものが、いわば一時的な、将来は解消されるべき措置としてそもそも制度化された、制度として誕生したということを端的に示していることなのではないかなという気がいたします。

 そういう意味では、これは法務大臣に確認をしたいんですけれども、留置人に係る費用弁償について法務省を経由しているというこの仕組みを今回も維持されているわけですから、これは、代用監獄を恒久化しないということを法務省の意思として事実上表明していることになると私は思います。

 もし、現実というものを先ほどおっしゃったように理想と全く切り分けるのであれば、そして、現実これはもう必要なんだというふうに開き直られるのであれば、この制度は逆に警察庁が予算請求をする形に整理しなければ、予算請求されている方と使っている方が違っては、これは予算に対する規律が働きにくくなりますし、国民から見ても非常に不可解な、わかりにくい形になりますので、予算請求のあり方として問題だと思いますが、これが恒久的な制度でないという、先ほど来大臣がお述べになっているそういう趣旨であるならば、辛うじて理解できるかなというふうに思います。

 そういった意味で、今回ここに手をつけないということは、これは杉浦大臣の年来の思いでもあります、代用監獄の将来のあり方について、本来は廃止されるのが理想であるという大臣のお考えのあらわれ、そう理解してよろしいでしょうか。

    〔早川委員長代理退席、委員長着席〕

杉浦国務大臣 先ほども答弁しましたように、今回の法整備に当たりましては、代用刑事施設に収容された者に要した費用を法務省から償還するとの現行の制度を維持することといたしました。これは、代用刑事施設における勾留事務は自治事務でありますが、国の利害にもかかわる事務でございまして、国庫は、全部ではございません、一定の範囲においてその経費を支弁または負担することが合理的であることなどを考慮したものでございまして、これをもって代用刑事施設制度を恒久化しないことの立法的なあらわれであると考えているものではございません。

津村委員 それでは、端的にお伺いしますけれども、この制度は今後とも維持されるという方針をお持ちなんでしょうか。

杉浦国務大臣 費用の弁償制度を維持することは合理的であるというふうに考えておると再三御答弁申し上げたとおりでございます。

津村委員 そうお答えになる理由をもう一度お尋ねしたいのと、また、警察庁の方にも、この制度を今後とも維持されるおつもりなのか、変えるおつもりがないのかということを確認させてください。

杉浦国務大臣 重ねての御答弁になりますけれども、今回の法整備に当たって、代用刑事施設に収容された者に要した費用を法務省から償還するとする現行の制度を維持することといたしました。これは、代用刑事施設における勾留事務は自治事務ではありますけれども、国の利害にもかかわる事務であり、また、費用もかかることは当然のことですが、その費用について、国庫が一定の範囲においてその経費を支弁または負担することは合理的であると考えられることなどを考慮したものでございまして、理由としてはそういうことでございます。

安藤政府参考人 法務大臣の御答弁にありますように、今回の法改正におきまして法整備を行う関係におきまして、経費の負担関係については現行の制度を維持することとしたということで理解しております。

津村委員 またお尋ねをしていきますが、法務大臣の先日の柴山委員の御質問に対する答弁だったかと思いますけれども、取り調べの可視化についての御質問をさせていただきますが、多角的に検討していくという答弁をなさっていると思います。ごめんなさい、少し先ほどの話と変わっておりますけれども、具体的には、この取り調べの可視化につきまして、どのようなタイムスケジュールで、どのような観点から進めていくお考えか、法務大臣にお尋ねいたします。

杉浦国務大臣 多角的に検討という御答弁を申し上げたわけですが、法務省におきましては、裁判員制度のもとで、裁判員にわかりやすい審理のあり方はどうあるべきか等の観点から、取り調べ状況の録音、録画等の制度につきましても、我が国の刑事司法手続において取り調べの果たしている極めて重要な役割などに照らしまして、そのような制度を導入した場合、捜査や刑事手続のあり方全体にどのような影響を及ぼすか、諸外国における制度の具体的内容やこれらの国における捜査のあり方はどのようなものか、自白の任意性、信用性をわかりやすく立証するための方策としてほかにどのような手法が考えられるかなどについて調査、検討を重ねているところでございます。

 そして、この検討につきましては、一昨年の通常国会における衆参両院法務委員会附帯決議等を踏まえまして、裁判員制度が平成二十一年五月までに実施されることを念頭に置いて行っているところでございます。

津村委員 次に、留置施設の中の処遇についてお尋ねをさせていただきます。

 刑事施設及び留置施設において、女性を収容するに当たってどのような配慮が行われているのか。原則として、夜間の巡視等の業務があると思いますけれども、こうしたものは女性の収容者に配慮して刑務官や警察官がその処遇に当たるべきではないかと考えるわけですけれども、法務大臣と警察庁の御所見を伺いたいと思います。

杉浦国務大臣 女子の被収容者に対する処遇に関しましては、ここ一年半の間に三十四庁の拘置所等に四十一人の女子刑務官を新たに増配置いたしました。そして、適正処遇を維持していくための職員研修の充実を図っているところでございます。

 特に、拘置所等における夜間の巡回につきましては、男子職員が巡回せざるを得ない状況もございますけれども、女子の被収容者の居室の開扉は原則として女子職員が行い、男子職員のみによって女子被収容者の運動や面会の立ち会いをせざるを得ない場合は、原則として複数の職員で実施することとするなどの配慮を行っておるところでございます。

 また、女性に対する不適正な処遇を防止するために、女性の区域の廊下に設置しております監視カメラ等による監視体制の充実を図りまして、幹部職員による巡回を強化するなどを行っているところでございます。

 今後とも、女子被収容者の収容の動向を踏まえながら、女子刑務官の採用をふやすなどいたしまして、処遇体制のなお一層の充実強化に取り組んでまいる考えでございます。

安藤政府参考人 女性被留置者に関する処遇につきましては、可能な限り女性警察官が行うこととしておりまして、特に、身体検査、健康診断の立ち会い、あるいは入浴の立ち会いは女性警察官または男性警察官の指揮下に女性職員が行うこととしておりますし、さらに、護送時の戒護につきましては、女性警察官、または男性警察官の指揮下に女性警察官を充てる、こういうことで行っております。

 また、適正な職務執行を担保するために、以下の幾つかの点を実行しておるわけであります。

 一つは、女性被留置者のみを留置し、女性警察官により処遇を行います女性専用の留置施設の整備、推進を図っております。

 次に、女性被留置者を集中して留置します留置施設を指定し、女性警察官を配置する女性集中施設の整備促進を図っております。

 さらに、女性被留置者は複数で配置することとしておりますし、やむを得ず単独で留置する場合には複数の警察官により処遇を行うこと、あるいは幹部がランダムに巡視を実施することによりまして効果的な監督を行う等の施策を講じまして、適正な処遇に十分配慮を努めていると考えております。

津村委員 法務大臣の御答弁の中では、刑務官と警察官は違うといえばそういうことだと思いますが、原則として女性の刑務官が、そしてその原則の例外の場合は、これも原則として複数の刑務官がというふうにおっしゃいましたが、例外もまた原則というふうなお話ですから、例外の例外ということで、男性が一人でということもあるということですね。

杉浦国務大臣 女性の被収容者については原則として女性が対応するということは、警察官がそうであるように、法務省の矯正施設でもそうでございます。

 例外もございますが、その例外の場合に、男性が一人で対応することがない、複数というのは、原則でございます。例外はございません。一人でやるということはございません。

津村委員 原則という言葉の使い方がちょっとよくわからないんですけれども、警察庁の場合は、女性じゃない場合は必ず二人なんですよね、先ほど原則という言葉をつけませんでしたから。一方で法務大臣は、また原則というお言葉を使ったので、それは例外があるのかなというふうに感じたわけです。どちらも、ないということでよろしいんですか。

杉浦国務大臣 ないと申し上げていいと思います。ただ、夜間の巡回は一人でやる場合がございます。

津村委員 留置施設の処遇について引き続きお尋ねするんですが、留置施設において被留置者に対して行われる医療に対して、十分責任を持った対応をされていないという批判がございます。

 この法案において、被留置者に対する医療を警察機関の責任において行うものであることは明らかにされているんでしょうか。これは警察庁の方にお尋ねいたします。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 被留置者の健康を保持するということは、その身柄を拘束しております都道府県警察の責務でありまして、被留置者の傷病に関して適切な医療を提供することもその一つであると考えております。

 そして、留置施設におきましては、刑事施設と異なりまして、その職員たる医師を有していないことから、職員ではない外部の医師に診療行為を委託することは一般的であるところでありますが、診療の時期、診療を行う医師等、医療の提供の形態については、被留置者自身ではなく留置施設が判断をすることになっております。

 したがいまして、被留置者の医療に関しては、その機会を適切に提供するということにとどまらず、提供されました医療の中身、内容についてまで、これは身柄を拘束している留置施設が責任を持つことが適当であると考えております。

 そういうことで、新法では、留置業務管理者の委嘱する医師という文言を用いておりますが、これは留置業務管理者がこのような責任を負う旨を示したものでありまして、委員御指摘のような責任につきまして明文化されているところでございます。

津村委員 引き続き留置施設に関してですが、留置施設内においてのみ防声具を使用することができるということになっていると思いますが、刑事施設と留置施設において処遇の均衡が図られていないのではないかと考えます。これを見直す考えはございませんでしょうか。警察庁にお尋ねします。

安藤政府参考人 今回の法案では、刑事施設の被収容者に対します防声具の使用について規定されておりませんが、これは刑事施設におきましては、御案内のとおり、保護室が整備されていることによりまして、防声具を使用する必要がなくなったことなどによるものと理解しております。

 他方で、留置施設の方でありますが、留置施設における保護室の整備状況、あるいは、被留置者が大声を発することにより留置施設内の平穏な生活を乱すおそれがあることなどにかんがみまして、留置施設においてはなおも防声具を使用することが必要であるということから、保護室の整備されていない留置施設における防声具の使用につきまして規定したものであります。

 もっとも、各都道府県におきましては、留置施設への保護室の設置を推進しているところでありまして、保護室を備えた留置施設におきましては、以後、防声具を使用しないこととしているところでございます。

津村委員 医療に関しましても、防声具に関しましても、前向きな御答弁をいただいたものと理解したいと思います。

 続きまして、法務大臣にお尋ねをいたしますが、この法律案の第百十七条が準用いたします、第百十三条になるかと思いますけれども、弁護人と未決拘禁者との面会において、刑事施設の規律及び秩序を害する行為があった場合には、その面会の一時停止ができる、そう規定をされております。

 刑事施設の規律及び秩序を害する行為というものは、一体どのようなもので、それはだれがどうやって判断をするのか、お答えいただきたいと思います。

杉浦国務大臣 法案第百十七条の刑事施設の規律及び秩序を害する行為といたしましては、例えば、現実にあったことですけれども、弁護人と面会中の被告人が弁護人の言動に激高いたしまして、面会室の遮へいスクリーン、遮へい板の通話孔の部分をけりつけた上、こぶしで殴りつけまして、アクリル製通話孔もろとも、網入りガラス製遮断スクリーンをたたき割ったという事例が発生いたしております。

 また、これは弁護士ですけれども、接見室内に携帯電話を持ち込みまして、接見禁止中の被疑者に、接見室の仕切り板越しに被疑者の母親と携帯電話で会話させた事例もあるところでございます。この弁護士の方は弁護士会から懲戒処分を受けられたようですが、そういう事例が現実に起こっております。

津村委員 私は、後段、だれがどのように判断するかとお尋ねしました。

杉浦国務大臣 現場の担当官が個別具体的に判断いたすことになります。

津村委員 そのことに関連いたしまして、未決拘禁者と弁護人との面会において秘密交通の原則というものが保障されていると思いますが、この秘密交通の原則とは一体どのようなものか、法務大臣にお尋ねいたします。

杉浦国務大臣 刑事訴訟法第三十九条一項によりまして、未決拘禁者は弁護人等と立会人なくして接見することができるとされておりまして、今回の法案もこのことを前提として立案いたしております。

 こうした秘密交通の保障は、未決拘禁者が施設の職員にその内容を知られることなく弁護人と相談できることを保障することによりまして、その防御権を保障しようとするものでございます。

津村委員 この法律案の百十三条、先ほどの行為があった場合には弁護人と未決拘禁者との面会を一時停止させることができるとされていますが、これはどういう場合にチェックをされるのか。

 これは別の場所で、レクですけれども、事務方の方が少しおっしゃっていたのは、たまたま携帯電話をしているのを見かけた、問うたところ、本来話すべきでない人と話していたのでそれを問題にしたということかと思います。

 私が尋ねているのは、その手続の適正性を聞いているわけです。それは適正な手続かどうかということをお尋ねしているわけです。秘密交通の原則というものをどうやって担保されるのか。たまたま見かけた、要するに、中をのぞき見しているわけですよね。前者の方の、アクリル製の何かをたたき割ったというような話であれば、それは大きな音がするんでしょうし、あるいは助けてくれとか、そういった声が聞こえるのかもしれません。そういうことであれば、確かにこれは異常事態が発生しているということが外から感知できるわけですから、それはどういう要件をかければいいのかわかりませんけれども、中をのぞき見るのとは大分話が違うと思います。

 秘密交通の原則を担保するために、これはしっかりと要件を、基準を示しておくべきだと思いますが、どのような場合に中をチェックするようなことをされるんでしょうか。

杉浦国務大臣 弁護士接見室というのは、各拘置所できちっとできておりまして、職員が立ち会うこともいたしておりませんし、のぞき窓といいますか、中の様子を見る小さな窓はついておりますが、そこから見たところで、中で何が話し合われているかとかいうことはわからない仕組みになっております。

 ただ、たまたまそういうのぞき窓から中を見た際に、例えばさっきのような弁護人が携帯電話で被疑者に穴を通じて話させておるというような事態が仮に、そういうことは余りないと思うんですけれども、現認されることがあれば、それは担当者が中へ入って制止するということはあり得るかもしれません。そういう例があったから申し上げたわけですが、私は、弁護人については、もうほとんど例はないと思っております。先ほど申し上げました例は非常に極端な例ですが、被疑者といいますか未決拘禁者が問題を起こすということが多いんじゃなかろうかと思っております。

 制度的仕組みにおいて、拘置所職員が中の秘密交通を行っている場所を監視したり、あるいは耳をそばだてたりするようなことはできる仕組みになっておりませんし、そういうことはもちろんあってはならないことでございます。

津村委員 めったに例がないのであればなおさらですけれども、例えば携帯電話の事例でいいますと、それは携帯電話を持ち込み禁止にすれば、つまり入り口の段階でそういったものを防止すれば事足りるわけで、実際に中での行為に規制をかけようとするから、秘密交渉といいながら中で何が行われているかをチェックする必要が発生するわけです。つまり、秘密交渉の原則と矛盾しているわけですね。面会を一時停止させるようなことが規定されているということは、中の行為をチェックするというようなことを言っているわけで、それは秘密交渉の原則と矛盾するということを申し上げています。

 私は、この面会一時停止という規定は、ぜひ削除をして、修正をして、そしておっしゃったような刑事施設の規律及び秩序を害するような、そういったものを仮にしっかりと食いとめようということであれば、それは別のやり方、例えば入り口で持ち込むものを規制するとか、持ち込むものをチェックするという形で行うべきだと思います。

 また、中でそうした助けを求めるような、要するに秘密交通の原則というものを当事者が求めない場合、もういい、助けてくれというケースは、もちろんこの秘密交通の原則には当たらない例外的なことだと思いますから、そういった周辺的な措置で事足りるわけで、こうした法文上に面会を一時停止させることができるとするような、ストレートに秘密交通の原則と矛盾するような規定は削除するべきだと考えますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

杉浦国務大臣 いろいろ御意見があるところだとは思いますけれども、今度の法律では、刑務官は、刑事施設の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、刑事施設内において、被収容者以外の者の着衣及び携帯品の検査を行うことができることとされていますけれども、弁護人等については、その防御権の尊重の観点等から、検査の対象から除外され、刑務官は弁護人等の着衣または携帯品を検査することは許されないこととされております。これは至極当然のことで、弁護人がまさかそういうことをされるわけは通常ないわけでありまして、当然のことだと思っております。手荷物等を検査するというのはいかがなものかと思っております。

津村委員 最後の質問とさせていただきますけれども、この法律案には、死刑確定者の外部との面会の規定もございます。

 死刑確定者と弁護士との面会に当たっては、刑事施設の職員が立ち会いをするのでしょうか、それともしないのでしょうか。これは原則するべきでないと考えますけれども、どのような基準によって判断をするのでしょうか。最後にお尋ねいたします。

杉浦国務大臣 第百二十一条になりますが、死刑確定者の面会につきましては、刑事施設の職員に立ち会い等を行わせることを原則としながら、面会の目的によっては職員による立ち会い等を行うことが適当ではない場合もあり得ることでございますので、死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のためその立ち会いまたは録音もしくは録画をさせないことを適当とする事情がある場合において、相当と認めるときには、立ち会い等を行わせないこととしたものであります。

 どのような場合がその場合に該当するかは、事案に応じて個別具体的に判断されるものでございますから、一概に申し上げることはできませんけれども、死刑確定者が受けた処遇に関して弁護士法三条一項に規定する職務を遂行する弁護士のほか、再審請求などの代理人である弁護士と面会する場合は通常これに該当するものと考えております。

 また、そのような場合には、刑事施設の規律、秩序の維持や死刑確定者の心情把握などのために立ち会い等を行う必要性との権衡を考慮し、立ち会い等を行わせないことが相当か否かを決することとなりますが、例えば、当該死刑確定者の心情が不安定で心情把握の必要性が高いと思われる場合や、面会室で自傷行為などの異常な行動に及ぶおそれがあるような場合などを除き、立ち会い等は行わないこととなると考えます。

津村委員 終わります。

石原委員長 次に、石関貴史君。

石関委員 民主党の石関貴史です。

 同僚議員から大変深く質問がありましたが、冒頭に、改めて私からも確認をさせていただきたいと思います。

 法務大臣のこの代用監獄の存廃についてのお考え、同僚議員からも本当にるる、法務大臣からも御説明を受けましたし、警察からも受けたところですが、私の理解では、法務大臣としては、現実問題として当分やむを得ないけれども、これは廃止すべきであるという考えを明確にお持ちであるというふうに理解をしているんですが、これでよろしいでしょうか。

杉浦国務大臣 詳しく御答弁申し上げましたので、つけ加えることはございません。

 刑事司法制度も時代とともに変化を遂げていくものでございます。長いスパンで、例として五十年とか百年とか申し上げましたが、そういうことを考えた場合の理想の姿としてはそれが望ましいという私の個人的な考えを申し上げたわけでございます。

 ただ、この法制度、今回の法整備は、いわゆる代監制度が現実に我が国の刑事司法制度において重要な役割を果たしている、これも進化しております。この二十五年でも随分よくなりました。そういう役割を果たしていることを前提といたしまして、有識者会議の結論もそうでございましたが、この制度は、存続を前提として、今まで不十分でありました法整備を行い、制度的改善を加え、代用刑事施設の被収容者の適正な処遇を図ろうということで、関係者の皆様方の大変な御努力の結果、このような法律を提案できることになったわけでありまして、私は画期的なことだというふうに思っております。

石関委員 ちょっと私の問いかけに不明確な部分があったかなというふうに思います。私は余りこれをしつこくやるつもりはありません、同僚議員から十二分にありましたので。有識者会議の中で触れられたこと、今御答弁ありましたけれども、法務大臣として、理想というお言葉を使われておりますけれども、廃止をすべきであるという考えをお持ちであるということでよろしいんでしょうか。もう一度確認をさせていただきます。

杉浦国務大臣 法務大臣の立場としては、現在御提案しているこの法案について十分御審議を願って、これを一刻も早く御可決いただくことが最善であると考えております。

石関委員 大臣の前の答弁を伺って、理想という言葉を使って、私、大変感銘を受けました。まさにこれは、政治家が理想を求めていく、あるべき姿を提示して、その実現を図っていく、これが政治家としてあるべき姿であるというふうに思いますし、法務大臣からそういうお言葉を聞けたということは、私は大変結構なことだというふうに受け取りました。

 現実の問題にどう対応していくか、現実はこうなってきたので、過去こうだから、今こうあるんだと、今の御説明にありました、今回の法案、法律の改正にはこういう部分があるということでありますが、現実に日々対処していくというのは役人がやればいいことでありまして、現実こうなっているのでそれに即した形、また現実の中でできる限り対応していく、これは役人に任せれば日々進んでいくことというふうに私は思います。

 これは平成三年五月、当時の左藤法務大臣、この方は、代用監獄は本来なくしていくべきだとはっきり言い切っているんですね。死刑問題を取り上げさせていただいたときも、この左藤大臣の死刑に関しての発言を私申し上げさせていただきましたが、この方は、なくしていくべきだ、将来的にやらなくてはならないと明確に語られております。

 将来、これは平成三年ですから、今に至るまで、左藤大臣と杉浦大臣が別に同じ考えかどうかというのは関係ありませんが、大臣が理想をお持ちであれば、現実に対処する法改正というものは今論じられているわけですけれども、理想を語る政治家であれば、今何か踏み出して、そのことについてスタートしておかなければ、いつになってもこれは改善をされないということだというふうに思いますが、もう一度、存廃について、廃止すべきだという考えをお持ちなのかどうかということと、もしそうであるならば、そのために今何かをしなければいけないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

杉浦国務大臣 左藤先輩のおっしゃった内容については承知しておりませんけれども、今先生がおっしゃったようなお気持ちであられるとすれば、私と同じお気持ちでいらっしゃったんじゃないかというふうに思います。

 ただ、現実に、この二十五年をとってみても、代用監獄そのものがどんどん年を追ってよくなっております、運用も、設備も。そういう現実を踏まえ、現時点で考えられる最善の法整備として御提案申し上げているというふうに私は思っております。

 しかし、今後とも、今後の問題としては、この代用監獄制度は所与のものではない、引き続き検討していくべきものだ、これは有識者会議でもそういうことが述べられておるわけですが、今後の刑事司法の発展とともに、絶えず、引き続き検討を進めていくべき課題だというふうに思っております。

石関委員 現実だけではなくて理想を語られる立派な政治家である大臣に、私は、ぜひ踏み出して、何らかの対処を今始めていただきたいというふうに改めて思っております。

 それでは、具体的に代用監獄の現状についてお尋ねをしたいと思います。

 施設の数、これが幾つあるのかということ、それから収容者の数、それとそれの身分別の内訳をお尋ねいたします。

小貫政府参考人 お答え申し上げます。

 いずれの数字も平成十七年十二月末現在のものでありますが、刑務所、少年刑務所、拘置所の行刑施設は、その支所も含めまして百八十七庁ございます。そのうち、主として未決拘禁者を収容する拘置所、これは七庁でありますが、そのほかに、刑務所等の支所として未決拘禁者を収容する拘置所が百七庁あります。

 なお、行刑施設におきます収容人員は全部で七万九千五十五人、そのうち未決拘禁者は一万六百五十四人でありまして、その内訳は、被告人が一万六百十四人、被疑者が四十人となっております。

石関委員 それでは、拘置所の方なんですが、拘置所に関して、ここに勾留されている被疑者の方々の割合というのは、統計を見ますと、平成十六年に一・七%と非常に少なくなって低下をしているんですが、一・七%、ここまで減った理由というのは、何でこんなに少なくなっているんですか、お尋ねいたします。

小貫政府参考人 被疑者の勾留場所を拘置所とするか代用の刑事施設にするかにつきましては、原則、例外の関係にはございませんで、裁判官が諸般の事情を総合的に考慮いたしまして、その裁量によって決定しているものでございます。

 現在の司法の運用におきましては、御指摘のとおり、大半の被疑者が代用刑事施設に勾留されることとなっておりますけれども、その原因については、裁判官の判断によるものでございますので推測の域を出ないところですが、拘置所の設置数が限られているのに対しまして、留置施設が全国津々浦々に設置されている現状のもとで、捜査を円滑かつ効率的に行う必要性が高いこと、留置施設における処遇が改善されてきたこと、留置施設において捜査と留置の分離が徹底されてきたこと、未決拘禁者と弁護人等の接見の機会が拡充されてきたことなどが背景にあるものと思われます。

石関委員 最後の捜査と留置の分離が徹底されてきたかどうかということは、また後ほどお尋ねをしたいと思いますが、今の答弁を伺いますと、裁量であるからわからないと。総合的に勘案をしてということですが、わからないということなんでしょうか。推測をされて御答弁されたわけですけれども、端的に言うと、わかりません、これだけ減った理由はわからないということでよろしいですか。

小貫政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、裁判官の専権的な判断事項でございますので、私の立場からは推測して申し上げる域を出ません、こう申し上げた次第でございます。

石関委員 わからないということだと思いますが。

 それでは、拘置所の方がこれだけ減っていて、ただ、代用監獄というのは理想としても本来はあるべきでない、大臣もこのようにお考えになっているというところでありますし、なくすべきだというのが長い間論じられてきたわけですけれども、では、この代用監獄を現実になくそうとした場合には、拘置所の数というのはどれぐらいつくれば代用監獄はなくなりますよと。捜査やいろいろなことにこちらの方が便利だとかそういうことを除いて、代用監獄はよろしくないので、理想としてもなくすべきなので拘置所をしっかりつくらなきゃいかぬ。であれば、拘置所というのはどれぐらいの数が必要だ、そしてその予算というのはどれぐらいが見込まれるのでしょうか。これは現実の問題ですので、これだけ大変ですから代用監獄も必要だ、こういう部分もあろうかと思います。

 これは違った観点ですけれども、私は群馬が地元なんですけれども、ダムの存廃で大変議論になりました八ツ場ダムというのがあるんですね。これは総工費は八千八百億円、大変多額な額がかかります。これほどはかからないのではないかなというふうに私も推測を申し上げるんですが、どれくらいを見込まれているのかということです。

 これは、また違った観点から見ると、必要な箱物でありますし、地域の活性化、公共事業としても大変喜ばしい、どんどんうちへつくってくれ、こういう地域ももしかしたらあるのではないかなというふうに私は思います。公共事業が悪のように言われて久しくたっておりますけれども、こういう必要な箱物であれば理解も得られて、うちの方はぜひつくってくれ、こんな地域もあるんじゃないかなというふうにも思いますが、いかがですか。

小貫政府参考人 まず、前提といたしまして現状の数字から説明申し上げますと、平成十七年四月現在、代用刑事施設の設置数は約千三百でありまして、収容基準人員は一万九千七百人でございます。他方、全国に設置されております拘置所、拘置支所等は、先ほど御説明したとおりでございますが、すべての未決拘禁者を収容できる行刑施設を合わせてみますと百五十四庁という数字になります。行刑施設における現在の、昨年十二月末現在の数字でございますが、約一万一千人でございます。

 代用監獄をすべて廃止してこれに見合った拘置所を増設するとした場合に、未決拘禁者を収容できる約百五十の現存の刑事施設に加えまして、基本的に十倍に近い一千三百の拘置所を新設するということに単純計算上はなってまいります。そのためには、裁判所あるいは検察庁、さらには警察署に近接する市街地で用地を取得しなければならない、こういうことになりますので、それには相当な困難が伴うかなというふうに思われます。

 そういう数字を前提にしまして、参考までに試算をさせていただきました。これはいろいろな前提条件がございますので、この数字が確定したものだとかいうものではございませんので、それをあらかじめ御理解いただきたいと思うんですが、どこに幾つつくるかを度外視いたしまして、全国の代用刑事施設の収容基準人員に相当する収容定員の拘置所を新設する、こうした場合の費用は、近年、拘置所、あるいは新設の拘置所がありますが、あるいは改築に要した費用等が、八庁ございます。こういうところから推測した、大ざっぱに見積もってみますと、建設費用として約二千八百億円、土地購入費用として少なくとも一千四百億円を要する。これはしかし、八庁というのは相当田舎の拘置支所等を前提といたしておりますので、簿価は相当低いということになっております。

 さらに、新設する拘置所を管理運営するのに必要な職員として、留置業務専門員と同数の職員の増員が必要になる、こういたしますと、刑務所職員一人当たりの平均人件費から一年間の人件費として約九百五十億円の増額が必要になる、このような数字になってございます。(発言する者あり)

 それで、これらを合計いたしまして、代用刑事施設を廃止し、これに見合った拘置所を増設いたしまして、約二十年間、建物の改築期限等を考えまして約二十年間運営する、こう想定した場合に、管理運営に要する通常経費等を除いて、国における新たな負担は二兆三千億円。約二兆三千億円、二十年で。つまり、ランニングコストは除きますよという前提を立てた、こういう数字になります。

石関委員 場内から質問をしますけれども、何人になるんですか。

小貫政府参考人 一万一千二百七十二人と計算してございます。

石関委員 職員数は何人ですか。

小貫政府参考人 職員数でございます。

石関委員 詳細に見込額を計算していただいたり、ありがとうございました。

 これは、ダム一つで八千八百億という一つの例として八ツ場ダムというのを申し上げたんですけれども、これだけかかりますよという話だったんですが、やはり理想に近づけるには、見積もりも大体こんなものでしょうというのがありますから、法務大臣、こっちの方へも少し踏み出して、もっと拘置所を頑張ってつくろうと。いろいろな困難がありますよ、裁判所の近くじゃないといかぬとか、それは困難はありますけれども、理想に近づくにはこっちの方へ少し踏み出したらどうかと思うんですけれども、法務大臣、いかがですか。

杉浦国務大臣 現在、法務省としては、現在ある拘置所、古いものの改築ですね、大阪拘置所等でございますが、新設に全力を挙げておるところでございます。これは、国の財政事情、今、公務員の総人件費抑制というような大目標で政府全体として取り組んでおりますが、その時々の政府の政策目標等、全体が関係する問題でございます。財政事情の許す限り、今後とも全力を挙げて取り組んでいくべきだと考えております。

石関委員 これは必要なものだという認識をお持ちだと思いますので、財政事情の許す限り、積極的に頑張って、予算を獲得してやっていただきたいというふうに思います。

 次に、大規模の留置場というものについてお尋ねをいたします。

 大規模の留置施設というのは、本来、警察の施設として認められるべきものではなくて、拘置所として設置をされるべきである。また、同じような考え方で、大規模の留置場というのは所管がえをして法務省管轄の拘置所としたらいいのではないか、こちらの方が筋が通るんじゃないかという考え方もあります。日弁連の中からもこういう声が上がっているというふうに承知をしておりますし、これについてどうお考えか、お尋ねをします。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 現在、大規模留置施設といいますか、いわゆる専用の留置場というものが各県で幾つかつくられておりますが、これは御案内のとおり、犯罪情勢の悪化に伴いまして留置場が満杯になる、こういうことを打開するために、各警察署から近接した場所にこうした留置施設を設置するという努力がされておるわけであります。

 それで、拘置所との違いという御指摘もあると思いますけれども、やはりこれは、警察が捜査中の被疑者を収容することを前提として比較しますと、警察署からの近接性、取り調べ室の数、さらには護送体制、この点がやはり警察でなければこの要件を満たさないというふうに考えておりますので、そうした現在の日本の刑事司法制度の中で迅速な犯罪捜査を適正に遂行するという条件下におきまして、こうした専用の留置場というのも必要であるということで、現在、そうした設置を進めているところでございます。

 所管につきまして、こうした留置場を拘置所に所管がえするべきだという御意見につきましては、また法務省の方からも御答弁があるかと思いますが、我々としましても、やはり一つは財政的な問題という問題があるわけでありまして、これは現在、都道府県では、各県の治安に対する努力ということで、地方自治の趣旨からも、こうした施設を各都道府県の責任においてつくっておるわけであります。

 もし移管することになりますと、御案内のとおり、移管に伴う費用負担の問題とか、職員の身分というのは地方公務員であるということでありますから、こうしたいろいろな問題が生じるというだけではなくて、護送業務につきまして、現在、警察に附属する留置場、あるいは独立した留置場もそうでありますが、単独で専門にそれに従事している者だけ、いわゆる看守だけではこれに対応できない。つまり、緊急にいろいろ対応しなきゃいけない。例えば夜間につきまして、そういう対応をするときには、警察署におきまして宿直体制といいますか、そういう者がおるわけでありますが、そういうことで二十四時間、警察におきましては柔軟に対応できるということで、国に移管してそういう職員を常時確保するということは現実的ではないというふうに考えております。

 以上でございます。

    〔委員長退席、倉田委員長代理着席〕

石関委員 今、大変詳細な説明をいただきました。理屈を言えばそういうこともあるのかなというふうにも思いますが、しかし、法務大臣、今行革といって幼稚園と保育園も一緒にしましょう、こういうことをやっているわけであります。今、細々説明をいただきましたが、こういう大きな流れから考えれば、私にとってまだわかりづらい、大規模の留置場というものと拘置所ですね、私は違いがそれでもまだよくわからないんですけれども、同じような施設を警察も法務省もつくっていくと。

 今、保育園と幼稚園になぞらえさせていただきましたが、行革をやるんだと言っているときに、それは保育園と幼稚園にしても、いろいろ理屈をつければいろいろなことがあるんだろう、それでこれまでやってきたということですが、今大きな行革の中でこれをやろうと言っているときに、今の御説明を踏まえて、大臣としては、同じものを、同じようなものというふうにも私はとらえておりますけれども、それぞれの役所がつくっていくということについて大臣はどのようにお考えになっておりますか。

杉浦国務大臣 留置施設は、警察の方から御説明があったとおり、都道府県が地方の治安責任を全うする必要性から、独自の財源を充てて設置しているものでございます。仮に代監制度が将来廃止されたとしても、留置場は必要であります。治安を守る、警察については都道府県が責任を持っておるものでございます。

 これを国の所管に移すとすれば、これは、治安に関する地方公共団体と国の役割分担や責任の所在にかかわる重大な問題でございます。また、留置施設は、逮捕後の留置とこれに引き続く勾留を通じて用いられておりまして、要員の点でも、逮捕から勾留まで一貫して地方公務員である施設の看守勤務員が対応しております。

 したがって、仮に留置施設を国の所管に移すとしても、逮捕後の留置を行う施設としての留置施設は存続する必要がございますから、留置施設の機能を分割して被勾留者の収容に関する部分のみを国の所管とすることとなりますけれども、その場合には、国の業務を行う区画を別に設けるとか、共通した業務に従事する職員を国と地方ごとに配置せざるを得なくなるわけでございます。こうした点などにおきまして、留置施設の所管を警察庁から法務省に移すことは現実的ではないと考えております。

石関委員 これは問題が違うので、余りなぞらえるのも恐縮な部分もあるかと思いますけれども、まさに保育園と幼稚園についても、幼稚園は教育なんだということで文部科学省が所管をして、それの維持発展についてはそういう理屈を文部省なりにつけてきた。保育園についてはこれは厚労省だということでやってきたわけで、今までの論点とは違いますけれども、大きな行革をやる、効率的にするんだということも考えれば、今の御説明というのは役人的な御説明であると思うんですが、政治家として、こういった、そもそもの存廃のお考えも大臣はお持ちでありますし、それぞれの役所がこういうものをそれぞれやっていくというのはいかがかなというふうに思っているんですが、改めて大臣として、政治家として、お考えをもう一度お聞きしたいと思います。

杉浦国務大臣 国家警察にまとめるかどうかという大きな議論も一方にあると思うんですね。警察を都道府県、地方の事務にして、治安維持に当たってもらうという、制度の根本にもかかわるところだと思うんですね。

 拘置施設については、今なお設備、施設ですね、人員等不十分でございますから、充実を図っておるわけです。これを着実に進めていくことがまず大事だと思います。

 刑務所等、過剰収容ですから、そちらに送るべき人が拘置所に滞留しているということも事実ですから、全体をともかく解消して、大臣PTでいろいろこれから検討していきますが、過剰収容状態を解消する。これが仮に解消できれば、拘置所もすいてきますから、そこへ収容する数もふえると思うんですね。そういう努力を、当面は財政事情の許す限り努力していくということだと思います。

石関委員 それでは、先ほど同僚議員からもこの件で質問がございました。留置所と拘置所の振り分けですね。これについて、特に有識者会議の中で、重大犯罪や否認事件については自白強要のおそれがあるので、こちらの方は拘置所へ収容すべきだ、こういう意見が出ている。また、特に女性については拘置所への収容を原則とすべき、こういう意見があったというふうに承知をしているんですが、これについてはどのようにお考えでしょうか。

小貫政府参考人 まず、振り分けのことについて、先ほどの繰り返しになるところも若干ございますけれども、勾留場所を拘置所とするか代用刑事施設にするか、これについては、裁判官が当該事件に関する諸般の事情を総合的に考えて、その裁量によって決定していることでございます。

 その際に、裁判官がいかなる判断により勾留場所を決定しているかについては個々の裁判官の判断によるものでございますが、勾留場所の振り分けの基準なるものは、はっきりしたものは存在しないだろうと思っておりますけれども、一般論として申し上げますと、事件の性質、あるいは被疑者の状況、必要と考えられる捜査の内容、拘置所及び留置場の収容状況、さらには弁護人等関係者の接見の利便等、諸般の事情が総合的に考慮されているのではないか、こう考えているところでございます。

石関委員 それでは、今度は警察にお尋ねしますが、特に女性について、拘置所への収容を原則とすべきという意見も出ておりますし、私もこれはもっともなことではないかなというふうに思うんですが、これについては、警察としてはどのようにこの意見に対してはお考えになっておりますか。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 今、女性の被留置者といいますか被疑者につきまして、拘置所に勾留するという御指摘でありますけれども、女性に対しましては特別な配慮が必要ということで、先ほども御答弁申し上げましたが、現在、警察では、女性集中留置場というものの設置を促進しておりまして、これは、女性被留置者を集中して留置することによって、常時、複数の女性被疑者を留置する、女性警察官による看守を原則にする、こういうことで、女性特有の、由来します諸々の配慮というものに特段の注意をしておりますので、そういう現実的な対応で特に問題はないというふうに考えております。

    〔倉田委員長代理退席、委員長着席〕

石関委員 委員長、定足数、足りないようなんですが。

石原委員長 委員部をもって定足数の確認をお願い申し上げます。

 委員部、済みませんが、現員の確認を。三ッ林政務官、自席の方にお戻りいただきたいと思います。

 ちょっと、人数の報告をお願いします。何人でいいんですか。十八。今何人ですか。十七。済みません、今十八になりました。

 石関君。

石関委員 それでは、今度は次のところをやりたいと思います。

 先ほども質問が出ましたけれども、捜査と拘禁の分離についてしっかりお尋ねをしたいと思います。

 十六条の三項、留置担当者は、その留置施設に留置されている被留置者に係る犯罪の捜査に従事してはならない。先日、柴山委員もこのことについての御質問をされておりましたが、これは逆に、捜査担当者が被留置者の留置業務に従事してはならない、逆に考えるとこういう趣旨でもあるというふうに理解をしてよろしいでしょうか。

安藤政府参考人 そのとおりであります。

石関委員 そのとおりであれば、これは法律にも、捜査担当者が被留置者の留置業務に従事してはならないというふうに書いた方がいいと私は思いますが、警察、いかがですか。

安藤政府参考人 十六条三項につきましての解釈でございますが、ここで留置担当官と申しますのは、留置管理係に現実に所属する者のみならず、現に留置業務に従事する者をいいまして、第三項というのは、この留置担当官がその被留置者の捜査に従事してはならないことを定めているということであります。

 したがいまして、現に被留置者の捜査を行っている捜査官が当該被留置者の処遇を行いますと、この捜査官はこの留置担当官に該当することになりますので、この規定に違反するということで、いわゆる被留置者の捜査に当たっている者がその留置業務に当たってはならない、そういう適用関係にございますので、そうした捜留分離についての原則を貫くものと考えております。

石関委員 私も、そういったことをここの部分にそれでも明記をすべきだというふうに思いますけれども、今の御答弁を踏まえて、法務大臣は御感想としてどのようにお考えですか。

杉浦国務大臣 ただいま警察当局の方から御説明があったとおり、十六条三項の規定によって捜査担当者が留置業務に従事できないという趣旨は満たされているものと思っております。

石関委員 それでは、この留置担当者と捜査担当者、この関係について、それぞれがどの程度の権限を持っているかということをお尋ねしたいと思います。

 例えば、国家公安委員会規則の犯罪捜査規範の百六十八条の三項、ここには「取調べは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に行うことを避けなければならない。」というふうに書かれております。

 であれば、この留置業務の管理者の方が、深夜になっても取り調べが行われているというときは、この規範に反しておりますよとか、そろそろ時間ですから留置施設に戻してください、こういったことを捜査の担当者に対して命じたりあるいは注意をするということは、これは留置の担当者の権限としてできることになっているんでしょうか。いかがでしょうか。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 そもそもの前提といたしまして、被留置者の処遇を行う留置部門は、昭和五十五年以降、捜査部門から組織的にも区別することとしておりまして、その独自の責任と判断によりまして留置業務を遂行していることからも、留置業務が捜査に利用されるようなことはないものと考えております。

 さらに、適正処遇の実施を担保するために、一つ、被留置者の出場、入場の際には、その目的、予定の時間等につきまして書面に記載をし、責任ある留置担当官がその適否を判断すること、さらに、食事、就寝等の時間にかかるような取り調べにつきましては、留置部門から捜査部門に対しまして、取り調べの打ち切りについて検討を行うよう要請することなどの措置を講じているところであります。

 さらに、これらの措置の状況につきましては、警察本部長や公安委員会に対する不服申し立て手続あるいは留置施設視察委員会の視察等による施設の運営の透明化、さらには警察本部による実地監査、警察庁による巡察による専門的観点からのチェックなどによりまして、その適正性というのは担保されるものと考えております。

石関委員 いろいろ御説明がありましたけれども、ということは、留置の担当者というのは、捜査の担当者に、時間ですよと注意を喚起したり、そろそろ戻してくださいよと言う権限があるんだという御説明ですか。

安藤政府参考人 これは、被留置者の処遇は原則として日課時限に従って行われるわけでありますが、具体的な取り調べの状況によりましては、これを中断することによって著しい捜査不効率を招くこともあり得るわけであります。したがって、一律に取り調べ時間を規制するということは、やはり不適切であると考えております。

 ただ、もちろん、そういうふうに例外的に就寝時間を超えて取り調べを行わざるを得なかった場合におきましては、翌日の起床時刻をおくらせるなど、そうした守れなかった日課時限を補完する措置をとっているということで、そういう留置の処遇の目的と捜査の遂行、この両者の調和ということを考えて適正に実施されているということであります。

石関委員 今の御説明ですと、分離がそんなにしっかりされていないんじゃないかというふうに私は受けとめましたけれども、こういうことは、「留置業務管理者は、内閣府令で定めるところにより、」というふうに百八十四条にありますけれども、これは、先ほど申し上げた犯罪捜査規範とこの内閣府令、この間のすり合わせをしっかりしておかないといけないのではないかなというふうに思いますが、警察庁、これはどうお考えですか。

安藤政府参考人 この法案百八十四条の内閣府令の中身でありますが、これは現在、今考えておりますのは、告知をどのような形式で行うか、すなわち、告知を書面を用いて行うべきこと等について定めることを想定しておりまして、そういうプロセスといいますか、形式を定めることを予定しております。

石関委員 それでは、具体的に、この内閣府令の中で定めるところ、食事や就寝の時間というのを定める、それで告知ということになっていますね。食事や就寝の時間帯というのは、具体的に何時というのを考えていらっしゃるんですか。

安藤政府参考人 これは、百八十四条につきまして、内閣府令でそういうことを定めるわけですが、食事、就寝その他起居動作すべき時間帯を定めるんですが、これは、現在もそうですが、具体的な時間については、各都道府県によって多少ばらつきといいますか、独自の判断で規定されております。

石関委員 それでは、関連して、この捜査規範の百六十八条の三項、ここに「深夜」という文言があるんですけれども、この「深夜」というのは何時というふうに考えられているんですか。

縄田政府参考人 「深夜」という表現でございますけれども、一般的には夜半といいますか、十二時にわたる、それに近くなるような時間、これは一般常識の時間で、殊さら何時以降を深夜というと、そういうような定義づけは特段なされてございません。

石関委員 それでは、十時か十一時とか十二時、日が変わる日なのかというのはよくわからぬということですか。

縄田政府参考人 一般的に深夜と申しますのは、まさに日課時限を過ぎまして、十時を過ぎ、十一時前後以降ぐらいを一般的には考えるんじゃないかなということであります。まさに規範でございますので、一般的な常識の範囲内でこれをどう理解するかということでありますけれども、通常、私どもあるいは委員の御理解も多分その時間帯だろうと思います。捜査員自体もそういう理解で考えておることだろう、こういうふうに理解しています。

石関委員 これは一般的とかだろうということでは、基準が私は非常に不明確だと思いますし、これは教習所のだろう運転みたいな、出てこないだろうとか、こういうことでは、私は大変大きな問題だと思います。ここがはっきりしないようでは、捜査と拘禁の分離というのが、形だけのものであって、しっかりなされていないというふうに私は考えます。であれば、これを本当に実効あるものにするには、先ほど申し上げた犯罪捜査規範、こういうのを見直す必要が私はあるのではないかなというふうに思いますが、警察庁ですか、お尋ねをします。

縄田政府参考人 犯罪捜査規範、先ほども委員からも御説明ありましたとおり、犯罪捜査に関する警察職員の勤務及び活動の基準として、都道府県警察内において適用される規定をまとめたものであります。これは、まさに社会情勢あるいは捜査を取り巻く環境等々を踏まえながら、その情勢に応じて改正をしていっておるところでございます。

 御指摘の捜査と留置の分離の関係でございますけれども、これは、まさに御審議いただいております法律案において、先ほどもお話がございましたが、明確化されておると考えておりますけれども、ただ、捜査規範においてもさらに規定する必要があるのかどうかということは、十分検討すべきものだろうと私どもは理解しております。今後、適切に対処してまいりたい、こういうふうに思っております。

石関委員 これはしっかりやっていただかないと形骸的なものになってしまうと思いますので、しっかりやってもらいたいと思うんですが、先ほどからの御答弁を聞いていますと、一般的とかだろうということで、既にこの捜査規範というものが随分形骸化している部分があるのではないかなというふうに私は懸念をしております。

 一つの例で、この捜査規範の百二条、ここには、「捜査のため、被疑者その他の関係者に対して任意出頭を求めるには、出頭すべき日時、場所、用件その他必要な事項を明らかにし、なるべく呼出状によらなければならない。」というふうに書かれています。「なるべく呼出状」という表現をされているんですけれども、最近、この呼び出し状が用いられることが逆に少なくなっているという声が上がっておりますし、私もそのように承知をしております。

 私も実際聞いたひどい例では、警察から突如電話が来て、用件も言わずに、あしたの何時に来なさいというふうに言われたんだ、こういうことがあっていいんですかというのを私も尋ねられたことがあるんですが、現在、任意出頭を求める際に呼び出し状を用いている割合ですね、出てきてくださいよと言ったときに、「なるべく呼出状」、呼び出し状を用いている割合を教えていただきたい。

縄田政府参考人 警察におきましては、それらの種々の捜査活動を行っております。これは、被疑者あるいは参考人、あるいは本件関係者ということもございます。そういう意味合いで、何割かといいますか、そういう数値的なものを、私ども、特段統計もとっておりませんし、報告を求めておるわけではありません。したがって、詳細に今委員の御質問にお答えする材料はございません。

 ただ、私どもとしては、なるべく呼び出し状によらなければならないと規定されているのは、これは、呼び出し状による方法のほかに、例えば、先ほどお話のありました直接電話により出頭を求める方法とか、あるいは地域警察官がお訪ねして伝達をするというような方法とか、いろいろあるものですから、なるべくというふうに書いてございます。

 ただ、実態においては、委員御指摘のとおり、捜査の効率、利便性を考えた場合に、最近では、十分事実確認もできますし、電話による出頭のお願いといいますか要請といいますか、そういったことが結構多いのだろうというふうに承知をいたしております。

石関委員 先ほど、これは私、実際に聞きまして、そういうことがあったというのも確認をしているんですが、何の用件か言わずに、電話で来なさいと言うことは、全くこの規範の趣旨とは反しているというふうに思うんですが、このことはどう考えますか。

縄田政府参考人 事件の事案、あるいは被疑者であるかどうかとか、いろいろな場面があろうかと思いますけれども、電話において任意出頭を要請する場合に、ただ何時何分に出てこいと言うのは、それは大変失礼な話でもありますし、あくまでも任意出頭を求めるという基本的な規範の精神からもいかがなものかと私どもは思っております。そういうことがあれば十分指導してまいりたい、こういうふうに思っております。

石関委員 十二分にしっかり指導していただくと同時に、こういう批判が出ないように、この規範自体も私はしっかり見直していく必要もあるんじゃないかなというふうに思います。

 またこれの関連で、刑事訴訟法の二百四十六条についてお尋ねをします。

 法務省と警察にお尋ねをしますが、この二百四十六条には、「犯罪の捜査をしたときは、」というのがあります。二百四十六条、司法警察員から検察官への事件の送致に関するものですが、この解釈が検察と警察で違うのではないかな、こういう疑念を表明する方もいますし、私もいろいろ見てみると、どうも違った言い方をしているところがあるというので、確認をさせていただきたいと思います。

 検察官の教科書には、具体的には、司法修習所検察教官室編の「検察講義案」という本ですね。私が見たのは平成十二年のものですが、「司法警察員には、事件送致について裁量権がなく、原則として、必ず事件を送致すべきであって、犯罪を捜査した結果、犯罪が成立すると認めた場合はもちろん、犯罪の嫌疑が十分でないと認めた場合又は犯罪の成立を阻却する事由があると認めた場合でも、意見を付して送致しなければならない。」というふうに書いてあります。

 しかし、警察の方ですね、警察大学校の参考書になるんでしょうか、ここに持ってきておりますけれども、「捜査手続法資料」というのがあります。警察大学校の特別捜査幹部研修所刑事訴訟法研究会、ここで編さんされているものです。今持っている、この本ですね。

 ここに書いてあるのは、警察の方では、「「犯罪の捜査をしたとき」とは、「捜査を完了した結果、犯罪の嫌疑があると認められるとき」の意味である。」というふうに書かれています。「したがって、捜査の完了前に送致することを要しない。また、捜査を完了した結果、「罪とならないことが明らかとなった場合」及び「犯罪の嫌疑がないことが明らかとなった場合」も送致を要しない。「犯罪の嫌疑がある」と認められる場合に限り、本条による送致を要する。こう解することが、警察の独立捜査権を認めた現行刑訴法の趣旨及び捜査経済並びに容疑者の人権保障の要請に最も適合する」というふうに書かれていて、これはそれぞれ違ったことが書かれているんですね。

 そもそも、このいわゆる全件送致主義というのは、捜査のための捜査を許さない、これは、民主主義の日本の刑事法制の大原則だろうというふうに私は理解をしております。この全件送致主義に反する意見が、こちらの方で見ると、警察の周辺で出ているということについて心配だなというふうに思っているわけです。

 まず法務省にお尋ねしますが、犯罪の捜査をした結果、犯罪の嫌疑がないと明らかになった場合は、送致をするのかしないのか。法務省にお尋ねをします。

大林政府参考人 委員御指摘のとおり、刑事訴訟法第二百四十六条は、「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。」と定めております。

 この規定は、司法警察員が犯罪を捜査した結果、犯罪が成立すると認めた場合はもちろん、犯罪の嫌疑が十分でないと認めた場合などであってもその事件を検察官に対して送致しなければならないことを定めたものであると考えております。

石関委員 それでは、今度、警察庁にお尋ねをしますけれども、警察においては、捜査を完了した結果、罪とならないことが明らかとなった場合及び犯罪の嫌疑がないことが明らかとなった場合は送致を要しない、こういった解釈をされているんでしょうか。警察にお尋ねします。

縄田政府参考人 警察といたしましては、まさに犯罪として捜査をしたものにつきましては送致をいたしておりますが、委員御指摘のように、当初、犯罪があると思料するような状況になった場合に、事件性の有無を判断するために、警察庁としては当然さまざまな活動を行います。こういったケースは多々あろうかと思いますけれども、そういった中で、立件できるまでの犯罪事実の把握に至らなかった場合にはこれを送致しないということもあります。これは、私どもとしては、刑事訴訟法第二百四十六条に反することにはならないというふうに理解をしてございます。

石関委員 それは先ほど申し上げた全件送致主義という原則に反していると私は思いますけれども、反していないというふうにおっしゃいますか。

縄田政府参考人 繰り返しになりますけれども、私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、犯罪があると思料するような状況、いろいろな事象が、被害者の方とか被害に遭ったということですね、あるいは一般の方から情報が寄せられたり、いろいろなことがございます。そういった中で、いろいろな活動を私どもとしては行うわけであります。

 そういった中で、事件に全くならないといいますか、事件でないようなものを送致するということについては、先ほども申し上げましたように、これはいたしていないところであります。そのことと、全件送致主義といいますか、二百四十六条の法務省の局長の御答弁と、私どもとしては反するものではないというふうに理解をいたしております。

石関委員 いろいろなものがあるからということですけれども、まさに、いろいろなものがあれば全件にはならないということですから、私は、先ほどの法務省の答弁とは違っているように思いますけれども、いろいろなことがあるから送らない場合もあるんだということですが、今の答弁を踏まえて、法務省さんはどういうふうにお考えですか。

大林政府参考人 私の方の考えは、先ほど申し上げたとおりでございます。

 ただ、同じ刑事訴訟法第百八十九条第二項によりまして、「司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。」ということで、捜査という定義自体は書いていないわけですけれども、犯罪があると思料するときはという、こういう判断の問題もあろうかというふうには思いますが、私どもとしては、犯罪を捜査した結果、犯罪が成立すると認められた場合はもちろん、犯罪の嫌疑が十分でないと認められた場合であっても、これは送致しなければならない。現実に、そういうふうな、証拠が不十分であるという意見を付して事件が送致されている事例も少なくないというふうに承知しております。

石関委員 今のは、同じことを警察庁も法務省も言っているというふうに理解をしてよろしいんですか。法務省さんにもう一回お尋ねします。

大林政府参考人 一般論で申し上げますと、先ほど警察の方から答弁がありましたように、犯罪があるというふうに認めるという段階、一般論で申し上げますれば、当然、今の訴訟法の形態というのは、訴追することを、裁判にかけることを前提にした、いわゆる準備活動が捜査というふうに呼ばれているわけでありまして、それがどこの段階から捜査になるのかという問題があろうかと思います。

 それは、いろいろな事象があって、それで警察が捜査を開始するということで捜査をしてくるのだろうと思いますが、当然その中には事件性の有無等もいろいろ考慮されているのではないか。

 ただ、その捜査をする過程において、当然、起訴できるものもあれば、起訴できないものもあります。それは警察の判断もあります。それを、警察から送致を受けて、検察においてまた、起訴できるものと判断されたものについてうちが逆の判断をすることもあります。それはお互いの判断が違うわけであって、そういう意味において、捜査機関、検察も捜査機関の一つでありますけれども、それぞれの分担があろうかというふうに思います。

 ですから、基本的に、私どもの考え方としては、犯罪を捜査した結果については送致を要するというのが私どもの考えでございます。

石関委員 それぞれの御説明を伺っていてすっきりしない部分もありますが、いずれにしても、こういったものは刑事法制の大もとの部分でありますから、解釈に何か違いがあるような、こういったことがないように、しっかり詰めてやるべきだと思いますし、今回の法改正、先ほどの規範ですとか、そういった周辺のものをしっかりやっていかないと、捜査と拘禁の分離ですとか、そういったものが形だけのものになってしまうという懸念を私は非常に持っておりますので、そういった部分をしっかりと詰めてやっていただくことを今後ますます要望いたしまして、私の質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

石原委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

石原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしでございます。

 最初にちょっとあれを言いましょうかね。この法案の最初に必ず出てくるのが、名古屋刑務所の暴行事件を契機としてと、これはまくら言葉に使われておりますわね、大臣。これについて、後またちょっと、私も今週、金曜日があれで忙しいものですからあれですけれども、またこの審議の中で、あれが冤罪事件であって、この法案はとんでもない血塗られた法案である、現場の刑務官八人の本当に地獄の苦労の上に立った、人柱にしたとんでもない法案だということをまた明らかにしていきます。

 とりあえず、ちょっと質問通告はしていないけれども、大臣によくしゃべっておりますので大体わかると思いますけれども、まず、名古屋刑務所事案を契機としてと必ずまくら言葉で出るんだ。どういう御感想ですか。

杉浦国務大臣 名古屋刑務所の事件、先生御指摘のとおりなんですが、あの事件を契機にして、矯正施設のあり方の問題が国会でも問題になったし、それから国民の関心も高めたと思うんですね。皆さんの目が向いて、問題がいろいろ多いのではないかという意見も多々寄せられるようになりまして、そういう世論の変化、社会状況等、矯正施設が過剰収容状態ということも天下に明らかになりましたし、そういうことを踏まえて、監獄法の改正問題、紆余曲折があったんですけれども、この際本格的に検討すべきだというふうに政治の世界でもなっていった流れがあったというふうに思います。

 そういう意味においては、名古屋刑務所事件そのものの当否とかそういうことは抜きにして、この問題が、私などの感想からすれば、二十五年前にさかのぼって、代監法のことが問題になり、紆余曲折があったわけですが、それがようやく国会の場で監獄法改正の機運が出てきたと私は思っております。そういう意味で、きっかけとなったといいますか、そういうふうに思っております。

河村(た)委員 きっかけとなったということですけれども、もうちょっと、かえって大臣の方が聞きやすいんですよ、今までの大臣は関係しておった人だから。かといって、当然、これは杉浦大臣のすぐお隣ですよ。名古屋刑務所はすぐ横です。そこで今、八名の刑務官が地獄の思いをされておるということを踏まえて、これはきっかけとして何がどう影響を与えたんだと思われますか。

杉浦国務大臣 あの事件をきっかけにしていろいろな議論が始まったと思うんです。

 まず、刑務所で革手錠が使われているなんというのを知らない人が多かったんじゃないですかね、河村さん、実演しておられたけれども。それから、情願なんという手続があることすら、私は弁護士をやっていたけれども、そういう手続があったのかと思ったんです。

 要するに、監獄法という片仮名まじりの、読むのに苦労するような法律で、規則だ何だということで細かなことで実際、実態は運用されてきているんですけれども、やはりそういうさまざまな問題に政治の世界が根本から向かなきゃ、対面しなきゃいかぬじゃないかという機運を醸し出すきっかけになった、間違いなく私はそう思っております。

 それで、大臣に就任して、情願に目を通しております。一応全件に目を通して分類して、政務官はここから以上目を通す、選択されてきて大臣が二週間に、どうでしょう、少ないときでも二、三件に目を通すようにしております。項目を全部見て、いや、これはもっと検討した方がいいんじゃないかという指示もして、受刑者の声があの事件をきっかけにして政治家の目に届くようになったと思っております。

河村(た)委員 今、きっかけ、革手錠と言われましたけれども、あれは中間報告を出されましたので。三年前になりますかね、法務省の中間報告、あそこでは、いわゆる放水ないし革手錠の暴行があったということを前提としておりますね、大臣、その辺は御存じだと思いますけれども。わからぬことがあったら、質問通告はしていないですから、かわっていただいていいです。大林さんとかはずっとそのときにおられたからちょっとかわって、矯正局長はかわっていますけれども、大林さん見えますから、質問通告なしでも、余り細かいことは言いませんけれども、答弁いただけると思うんです。

 そうすると、やはりあれは暴行があったということを前提としてこの法律ができたということでいいですね。

杉浦国務大臣 詳しい実情は刑事局長がよく知っていますから、局長が答弁するのが適当かもしれませんが、あの事件を契機にして、少なくとも名古屋矯正管区について調査が行われ、法務委員会からさまざまな資料の提出を求められ、そして行刑運営に関する調査検討委員会が設けられて検討を始めたということでございまして、その検討結果がさらに行刑改革会議につながっていったというふうに承知をしております。

河村(た)委員 ということは、その中間報告にある、革手錠を締め過ぎた、八十センチを六十センチに締めた、こういうことですね。刑務官が暴行した。〇・六キロの、あれは高圧放水と書いてあったかな、多量の水だったですかね、あっちの方は。要するに、革手錠でいえば、中間報告で、暴行があったと完全に認定していますからね。それを前提とした法律ですね。これは間違いないでしょう。

大林政府参考人 委員よく御承知のことだと思いますが、おっしゃられているのは、その刑事事件がきっかけということでございますけれども、ただ、法律が今度できた経緯については、事件が起こったからというよりは、確かにその事件で大きく報道はされました。ただ、委員御承知のとおり、あれをきっかけにして、いわゆる施設内の死亡者がどういう原因で死んだのかということが大きくなりまして、いわゆる死亡帳の問題が出ました。

 それから、同時に、刑務官の方々が非常に苦労して処遇に当たっておられる、人数も足りない、非常に厳しい状況でやっておられるということがきっかけになって、そして今、刑務官の人員も非常にふえるようになりました。それから施設も、まだ厳しい状況にはありますけれども、改善されるようになりました。

 いろいろな意味で、国会でも取り上げていただくようになったということで、ですから、確かに事件が起こったということは事実ですし、今はこれは公判中ですのでそれについてコメントはできませんけれども、ただ、あれをきっかけにして、刑務所の実態といいますか、そういうものが大きくクローズアップされ、それが今回の法案につながったということで、例えば事件が有罪だからどうのこうの、そういう問題ではないというふうに考えております。

河村(た)委員 有罪無罪は裁判で判断することとして、中間報告に書いた事実があった、すなわち、刑務官が暴行したとはっきり書いてありますね、あれは。その事実を踏まえてこの法律がつくられていった、これは間違いないですね。

大林政府参考人 今御指摘の中間報告は、そういう事件のことについても書いてありますし、それから刑務所の実態といいますか、職員なんかの勤務状況とか、いろいろ広範な面で取り上げて報告書にしたものと承知しております。

河村(た)委員 いや、もっと正確に言ってほしい、事件のことも書いてあると言うんですから。

 あの事件が中間報告どおりの事実であるということを前提として、端的に言えば、革手錠でいえば、刑務官が八十センチのウエストの人に六十センチまで締めた、そういう暴行を働く状況にあるということを、刑務官の資質に問題があるとか書いてありますけれども、そういうことを事実として、だからどうしようということでこの法律ができた、これは間違いないですね。

杉浦国務大臣 河村先生、そこは私はちょっと違う認識を持っておるんですけれども、この監獄法改正問題は、長年にわたって、廃案になったり……(河村(た)委員「それは契機としてと書いてあるんですよ、いろいろ」と呼ぶ)ただ、あの事件が起こって、政治の世界も矯正施設の実情を、暴行があったかどうかは別として、認識するに至って、例えば我が自民党の中での審議はスピードアップされたと思うんですよ。漆原先生もいらっしゃるけれども、与党もそうですね。これは監獄法の改正を急がなきゃいかぬという機運が盛り上がった。

 だから、極端な言い方をしますと、あの事件が仮になかったとしたら、この法案をこういう形で審議して提案できるのはおくれたかもしれない。そういうふうな意味で、あの事件が契機になってこの法案の作成、提出が加速されたという意味で、きっかけになったという言葉を使っているんだと私は認識しております。

河村(た)委員 今、暴行があったかどうかは別としてと言われたけれども、あったかどうかは別としてということは、なかった可能性もあるんですね。そういう認識ですね。

杉浦国務大臣 あったかなかったかという問題は、事件になっておるわけですから、そこで裁判所の認定になると思うんですが、私が申し上げたいのは、そういうことよりも、何回も申し上げているとおり、矯正施設の問題が非常に大きな問題だということが、特に政治の世界では広く認識されるに至った。それが、この法案がこういうふうな形で国会の場で御審議をいただく大きな背景になっているという意味で申し上げておるわけでございます。

河村(た)委員 ちゃんと言ってもらえばいいんですよ、杉浦大臣の良心に基づいて。前の大臣じゃないんだから。こんなことは、法務省をかばうことはないですよ。私は何遍も言っておるけれども、議院内閣制というのは、役所と対抗するために民主主義で出てくるんですから、対抗というかチェックというか。役所を守るためだったら、そんなもの、事務次官が一人おりゃええですよ。

 だから、もう一回言いますけれども、あったかどうかは別としてということは、裁判は有罪無罪を決めることであって、あったかどうかを決めるのは法務省じゃなかったですか。そうじゃないと、法律もできぬし、全然再発防止策もとれぬじゃないですか。

 だから、ここでちゃんと、あったかどうか疑問であるということを言っていただければいいですよ。中間報告にもあったと書いてあるんだから。大事ですよ。裁判なんか関係ないですよ、これは。

杉浦国務大臣 正直に申して、私もこの問題をずっと長い間取り組んできたわけですが、私の認識の中には、暴行の有無とかそういうことよりも、この問題が社会問題になり、これは何とかしなきゃいかぬというふうになっていったと私は認識しているということを申し上げておるわけでございます。

河村(た)委員 そんなことだったら、法案審議自体できませんよ、言っておきますけれども。

 私、今ちょっとたまたま見ましたのであれですけれども、あのころのをずっと見ると、頭に、名古屋刑務所事件を契機としてとみんな書いてあるんですよ。それで、名古屋刑務所事件とは何かといったら、ずっと中間報告を法務省が出されて、刑務官が暴行したといって、それも物すごく詳しい事実認定をして、それでつくった法律ですよ、これは。そのこと自体が関係ないというか別だと言われたら、いわゆる立法事実がなくなっちゃうじゃないですか、大臣。(発言する者あり)それはそうですよ。一体、どういう根拠で法律をつくったんですか。

大林政府参考人 中間報告は、平成十五年三月三十一日で出されたものです。委員御承知のとおりでございます。

 その中には、おっしゃるとおり、名古屋刑務所のいわゆる三事件について経緯が書いてあります。ただ、その中の「問題の提起」という中で、処遇方法のあり方の見直しとか、情願制度の運用がこれでいいのかどうかという問題が論じられております。

 それで、いろいろ委員から御指摘があって、まだ裁判中なのに断定調だというようないろいろな御指摘がありました。それを踏まえて、七月二十八日付で「行刑運営をめぐる問題点の整理」という、これの続編といいますか、もう少し整理した形のものを作成させていただきました。

 その中には、当然、今のような三事案についての評価の問題が書かれています。それと同時に、過去十年間の被収容者死亡事案について調査した結果、それから医療上の問題、それから行刑運営上の問題点として、監獄法の改正とか過剰収容状況、職員の負担、革手錠の使用とか、広範な意味でこの報告で取り上げられているという状況にございます。

 ですから、この事件が発生したこと自体というのは、それが今おっしゃられているように有罪か無罪かは別といたしまして、それが非常に大きな意味を持つことは事実でございますけれども、それと同時に、今のように矯正の抱えるいろいろな問題点が取り上げられ、この委員会でも議論されてきた、それが今回の法改正につながっているものというふうに私は考えております。

河村(た)委員 革手錠でいえば、刑務官が本当に暴行した場合と事故であった場合、そこで受刑者が倒れた、それが事故であった場合、これは後の立法の持っていき方が全然違うでしょう。

 普通からいえば、事故だったのになぜ事故というふうに報告されなかったか、事故防止のためにどういう策をとるべきであったか。例えば、フロアをクッションにすべきではないかとか、革手錠のところにすごい金具がついている、それはおかしいじゃないかとか、事故防止なら事故防止に対するその報告体制は刑務所内でどうなんだ、そういうふうにいくわけでしょう、法律のつくり方というのは。刑務官がもし暴行したんだったら、それはそっちでまたいくわけでしょう。全然違うはずですよ。

 それもわかりっこなしに、はっきり言えばいいじゃないですか、暴行でしたと。これは書いてあったんじゃないんですか。何か疑問が出てきたんですか。

大林政府参考人 今おっしゃられた例えば保護房の、要するにけがをしないような形にするということ、これは現実に矯正において施設の改善がなされていることと思います。それから、今の報告体制の問題でもいろいろ御指摘がありました。それについても、当時から矯正局長は答弁していますけれども、できることからしていくということで、改善が進んできたことだと思います。それが一つの、いろいろな面での当面の問題。

 それから、今度の法律のように、全面的に矯正のあり方自体を変える問題、これも同時並行的に進んでいる問題でありまして、それは、今の事件が問題にされたということが大きな意味を持つことは事実ですけれども、それが今先生がおっしゃるように、事故だったか、それとも、そうでない、故意の犯罪だったか云々によって今度の法改正が変わったという問題ではないんじゃないかというふうに考えております。

河村(た)委員 本当ですか。事故か故意犯かで立法の態度が変わらないというのはむちゃくちゃですよ。それはないですよ。法律の成り立ち自体、こんなふうでどうしますか。そう思いませんか、本当に。考えないんですか。

 大臣、今大林さんが言われたけれども、床をクッション化されたと言いましたね。それでは、やはり事故の可能性もあったんですか。今言われた、そういうものは、名古屋で起こったことを契機としてフロアをクッション化するとかいうふうに言われたので、あの中間報告に断定してある事実にはやはり疑問がある、事故であった可能性もあるというふうになってきたんですか。

大林政府参考人 保護房内での事故の発生を防止するという観点から、矯正では施設改善をしたんだと思います。ですから、今先生がおっしゃるように、それが事故だったから、あるいは故意だったからということでの改善ではない。この委員会でいろいろ取り上げられ、議論された、その過程で、なるべくそういう事故防止をしなければならない、これはもう先生もあの当時おっしゃっていたことで、それに従って矯正もできるだけのことをやってきたということじゃないかと思います。

河村(た)委員 それではこのことがきっかけというふうに余りつながらないんですね。たまたま事故防止の方もやったということになるんですか。

 では、革手錠を廃止したのはなぜですか。これは名古屋刑務所の事件をきっかけにしているんでしょう。その辺は答弁してもらえると思うので、しょっちゅう言っておることですから。質問通告が要るというならそう言ってください。

小貫政府参考人 革手錠の廃止につきましては、革手錠の施用が身体に危険を及ぼす可能性がある、こういう御指摘をいろいろ受けて、身体の保護のためには別な安全な器具を開発するのがよかろう、こういう経過をたどりまして廃止に至った、こう承知しております。

河村(た)委員 革手錠そのものが体に危害を加えることもあり得るだろう。そのあり得る場合は、皆さんがこの平成十五年三月三十一日の中間報告に書かれたように、刑務官が暴行して、八十センチのウエストを六十センチまで締め上げてやる場合もある、僕はこんなことはあり得ないと思いますけれども、あると断定してありますわね。それと、やはり転倒する場合もあるんですね。今言った、体に傷害を与える可能性がある。転倒の事故の場合もあるんですね。

小貫政府参考人 転倒の事例があったという報告を受けておりますので、可能性としてはあり得るというふうに私は認識しております。

河村(た)委員 そうですか。やはり転倒事故の報告はあったんですか。(発言する者あり)これはどえらい大事ですよ。三年前の議論の中では、こんな話は一切なかったですよ。刑務官暴行一点張りだったんです。これは、悪いですけれども、民主もそうですし、自民党もそうですし、全党がここで、刑務官が暴行したという法務省の一方的な報告で、刑務官の大バッシングをやったわけですよ。やはり転倒事故もあったんですか。

小貫政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの点はちょっと説明不足があったようでございますが、私は、名古屋刑務所事案の中で転倒事故があったという報告を受けているという趣旨で申し上げたわけではございません。他の施設の中で転倒事故があったという報告を受けております、そういう趣旨で申し上げました。

河村(た)委員 もう一回ちょっと正確に聞きましょう。これは本当に重要なんですよ。やはり事実を確定していかないと、悪いですけれども、事故だったか刑務官の暴行だったかというのは、言っておきますけれども裁判は関係ないですよ、真相究明をきちっとすべきはここなんですよ、委員会なんです、再発防止義務があるから。裁判の方は有罪無罪ですから、最終的には疑わしきは被告人の利益のところまで行けばいいわけですよ。

 だから、今言った話で、それではほかのところでもいいですよ、革手錠施用で、いつごろ、どういう事故だったんですか。

小貫政府参考人 平成十五年の十二月十二日、岡崎医療刑務所の保護房で転倒した事故があった、こういうことでございます。

河村(た)委員 平成十五年の十二月十二日というのは、中間報告は三月三十一日ですけれども、たしか革手錠が廃止されたのはもうちょっと前じゃないですか。岡崎医療は革手錠をしていないでしょう。

小貫政府参考人 その辺については、またよく調べた上でお答えさせていただければありがたいというふうに思っております。

河村(た)委員 ここはひとつ、転倒事故についてしっかり調べて報告するように、これをちょっと命じてください。

石原委員長 法務省においては、河村君の質問に対して具体的にお答えできるように御努力をお願い申し上げます。

河村(た)委員 中身は、ちょっときょう突然、突然といっても、しょっちゅう話していますから、質問通告を常時しておるようなものですから、別にこの委員会でやらなくても、そういう意味なんです、これは。別にルール違反にはなっておらぬことですけれども。

 そうすると、あの名古屋刑務所で起こったことは、どういうことですか。もう一回言いますけれども、あれは故意犯であるということをあくまで絶対の前提としてこの法律がつくられたということなのか、いやいや、そうでもない、これは事故の可能性もあったんじゃないかと。

 そうなると、例えば直後にフロアをクッション化されましたね。あれを見ていると、どう考えても、やはり自分で倒れれば、これはすごいですよ、物理的に計算しても。どんと倒れれば、手がつけられないから、実はすごいんですよ。

 いや、転倒事故であったんじゃないのかということが、実際そういう可能性も出てきたということなんじゃないですか。そうでないと、全体の法律が、これはつくり方がおかしいですから。ちょっとそれだけ言ってもらえませんか。

小貫政府参考人 この法案のつくりにつきましては、名古屋刑務所案件が有罪かどうか、あるいは事故かどうか、それを前提としてつくっているものではございませんで、あくまでも未決勾留者及び死刑確定者の処遇等についていろいろ必要性がある、こういう判断に基づいて法案作成に取りかかったものでございます。

河村(た)委員 ちょっとそこはまた法案を見ていきますけれども、しかし、刑務官の増員があるでしょう、刑務官の増員。これもあのときに与野党合意で刑務官を増員しようとなったんです。あのときには、ああいう、刑務官が暴行を働く、過剰収容である、そういう前提だったんですけれども。それは断言されるんですか。今の、あくまで刑務官が暴行を働く、働いたという立法事実、それは、法律というより、刑務官の増員につながっていったと書いてありますね。そこはやはりそうなんですか。

小貫政府参考人 繰り返しで恐縮でございますが、あの事案が有罪であるとか無罪であるとかそういうことじゃなくて、あるいは事故か、そうじゃない、故意犯かという事実認定は別といたしまして、今回の法律については、いろいろな面で必要性がある、過去の歴史的な経過もありまして、それでこの機会に法案作成に至った、こういうことであります。

 なお、過剰収容については、名古屋刑務所案件、あれが契機となっていろいろ世間の注目を浴びたという経過はあったやに承知しております。

河村(た)委員 本当ですかね。あれが事故であったか暴行であったか、有罪無罪は関係ないですよ、これは。再発防止のためにはやはり完全に、これは受刑者のためにも、後の、施設をどうやって直すかとか、いろいろな刑務所内での指揮命令とか指導とか、刑務官の暴行であったか事故であったかで全然違いますから。そうでしょう。

 今の話を聞いておると、これは関係ないんですか、これにつながっていったのは。やはり両方あり得たんですか。それは今、大林さんが言われたように、後で、ほかの意見もあるというので直されました、直されるというか、ちょっとほかの意見を書いたのがありますけれども。

 だから、それでいいですよ。素直に言ってもらえばいいんですよ。これは裁判を考えたらいかぬですよ。もっとストレートに考えればいいじゃないですか、これは再発防止を考えないかぬのですから。刑務所の保護房の中で人が死んだりせぬように、やはり原因を考えないかぬでしょう、素直に。

 それで、あのときには、暴行でした、それも非常に具体的に、八十センチのウエストの人を六十センチまで締めましたと。それと、刑務官の人格に問題があるとまで書いた。

 だけれども、ほかの意見を書いたということは、よく考えてみると、やはり事故の可能性もあったと。だから、それはそれで、有罪無罪は裁判だけれども、将来の再発防止の、これは別に、あれは既決の場合ですけれども、未決でも当然、同じようなことと言ってはなんですけれども、保護房もありますからね、同じことが起こり得るわけですよ。だから、それはやはり後の、法律をつくったり、刑務所の内部のいろいろな対応によっては、影響は変わりますよね。だから、やはり両方あったんでしょう、事故の可能性も。

大林政府参考人 私が思いますには、当時、これが例えば過失、事故ということであったならば、あれほどマスコミに取り上げられることはなかったと思います。そういう意味において、そういう事件として取り上げられたために非常に大きな報道になったということは、それは事実だと思います。

 ただ、それが、今先生おっしゃるように、事故かそうでないかという問題は、裁判上、今争われているところでございまして、私たちとして、それについて言及することはできないと思います。

 ただ、今のように、マスコミに大きく取り上げられたことをきっかけにして、また、ここの法務委員会で大きく取り上げられたことによって、矯正におけるいろいろな問題点、刑務官の方々の苦労、あるいは受刑者の人たちの立場、いろいろ出てきたことが皆さんの理解を得るようになったんじゃないか、このように思います。

河村(た)委員 ちょっと待ってくださいよ。マスコミに取り上げられたからと言うんですが、マスコミが初めだったんですか。それと、法務委員会でと言いますけれども、これは法務委員会もありましたけれども、そちら側からいろいろ報告を受けて、ほとんど当局の話が先ですよ。マスコミが初めにこれを発掘したんですかね、この話を。本当ですか。

大林政府参考人 今の委員のように、発掘したという問題になってくるといかがかと私は思うんですけれども、ただ、私は、事実の問題として、マスコミで大きく報道され、また、この法務委員会においていろいろ御質問があり、私たちもできるだけの調査をし、資料としても提出させていただいた、それをいろいろ議論していただいたということが、矯正行政について皆さんの御理解を得るようになったということではないかというふうに思います。

河村(た)委員 何遍も言うけれども、一番初めはマスコミに出たからですか。マスコミに、故意で、暴行で人を死なせたということが出て、それから質問が起きて、法務省が対処した、こういうことですか。

大林政府参考人 ちょっと前になりますので、私もその前後関係を正確に記憶しておりませんけれども、ただ、今私が申しているように、具体的な先後関係は別にして、それがかなり大きくマスコミに取り上げられたことも事実でございますし、法務委員会においてかなりの時間を割いて先生方の御質問があり、それで問題化したということは事実だと思います。

 その先後関係の詳しいことについては、ちょっと、私、今断定はできません。

河村(た)委員 いやいや、マスコミから出たと言うと、刑務所内で起きていますので、やはり中で当然報告を受けていますでしょう。一番最初は、どう考えたって、事故報告というか、それでしょう。これをちょっと。

大林政府参考人 今御指摘の点はそのとおりでございまして、当然、名古屋刑務所から矯正局に対して報告があったということが、わかった最初だったというふうに記憶しております。

 ただ、これが非常に大きく問題として取り上げられたという意味合いにおいては、当委員会とそれからマスコミで大きく取り上げられたということだと思います。ですから、経緯として、もちろん法務省がその前に把握したことは事実でございます。

河村(た)委員 そうすると、初めに刑務所から局に、刑務官の暴行である、そういう報告が上がっておったんですか、一番最初。刑務所でもそういう報告だったんですか。まず、所長の方に現場から上がりますわね、それはああいうことだったんですか。

 朝日新聞夕刊の有名な記事がありますけれども、放水でいえば、「全裸受刑者に高圧放水」、これは違いますけれども。全裸受刑者も違います。高圧放水も違います。

 そうすると、何ですか、初めから間違っておったのか。これはマスコミが勝手に書いたんですか。

大林政府参考人 当時の委員会において、今の報告経緯、どこからどこ、私の記憶では、名古屋の方から本省に対して、矯正局に対して報告があったのが最初だったと記憶しておりますけれども、ただ、この件につきましては、当時、先生も御承知のとおり、委員会等でその経緯を詳しく御報告してあるはずでございます。ですから、もし先生の御要求であれば、当時の記録等をもう一回検討させていただいて、どのようにするか、その取り扱いについてまた御協議願いたいというふうに思います。

河村(た)委員 もう一回ちょっと確認しておきますけれども、あれがいわゆる事故であったか。本当に、八十センチを六十センチに人間の胴を二十センチ締めるというのは物すごいことですからね。私はここでやりましたけれども、締められませんでした。これは刑務官の皆さんがやって、十センチがようやくです。十センチも、腹にちょっと力を入れると一人じゃ入りませんでした。それはちゃんと会議録があります。

 だから、事故であったか、それとも本当に、今言ったような八十を六十に締めるような物すごい暴行ですけれども、暴行であったかによって、後の法律のつくり方、それから矯正のいろいろな行政の対応、施設をどうするかとか指揮命令系統をどうするか、これは違ってくるんでしょう。それは違うでしょう。

大林政府参考人 今御指摘の、締め方によってということでございます。委員もこちらで、ここの委員会で実験されました。

 ただ、私の認識、恐らくそれは矯正局もそうだと思いますけれども、あれを限界まで締められなかったという点は、あの当時も答弁に出たと思いますけれども、やはり人命に関する、そこ以上締められるか締められないかという問題と、どこまでが相当かという問題があったように思います。

 ですから、委員が御指摘のように、刑事事件の追及の問題と、それから再発防止に対する調査、委員会の任務といいますか、お役目というか、そういう問題とは並行して存在するとは思いますけれども、今おっしゃっておられるどこまで締められるか云々というのは、まさに刑事裁判で鑑定まで行われている事案でございますので、そこは見守らせていただきたいなというふうに思います。

河村(た)委員 いずれにしろ、後の矯正の対応というのはあったわけでしょう。なかったら大変ですよ、二人亡くなって一人けがをしておるんですから。それは、あれが暴行であったのかそれとも事故であったのかによって対応は当然違ってきますねという当たり前の質問なんです。

大林政府参考人 私の所管ではないので、私個人の意見として申し上げれば、個人というのもちょっとあれですけれども、ただ、この経緯を知っている者として発言させていただきますけれども、委員が何度もおっしゃるように、再発防止というのは大事だということを御指摘になりました。それは、これが事故であったかそうでなかったかによって変わるものじゃない。収容者の生命というのは大事なものですから、それが、こういうものが出て、オープンになったということで再発防止という問題が出てきたわけですから。

 ですから、それを踏まえた場合に、では、これが過失だったから……(河村(た)委員「再発防止策」と呼ぶ)策としては、今のように、では、これが結果的に、裁判の行方というのはわかりませんが、それがどちらかによることによって再発防止策等が変わったということはないんじゃないかというふうに私は思いますけれども。

河村(た)委員 ちょっと待ってくださいよ。そんなことを言っておったら、裁判が確定するまで再発防止策をとれぬことになりますよ。当たり前のことを言えばいいじゃないですか。

 具体的に言いましょうか。もし故意によってぐっと締めたことによって起きたんだったら、例えば、ある程度のところしか、それ以上締まらぬようにすればいいじゃないですか。それとか、十センチに一個ずつ穴がついていますから、あれをもっと細かくするとか、いろいろあり得ます。もし自分で転倒して倒れたんだったら、今御省がやられたように下をクッション化したり、すぐそちらの方をやるべきでしょう。だから、当然、対応策というのは変わってくるはずですよ、どう考えたって。

大林政府参考人 事件として取り上げられているのは、革手錠を締める等の暴行の問題が議論になっています。ただ、今委員がおっしゃるように、保護房というのは非常に注意して扱わなきゃならない問題であろうと思います。ですから、締めることがいいかどうかは別といたしまして、手錠によって何らかのけがをする可能性があるという問題があるのならば、それはそれなりの改善をすべきであるというふうに思います。

 ですから、それが、今のように、革手錠の危険性があるから革手錠を廃止し、また自傷事故みたいなものを防ぐということでいろいろ改善が加えられていますけれども、それは、今回のものが刑事事件として有罪になるかどうかという問題とは直接の関係はないんじゃないでしょうか。

 先生がおっしゃるように、要するに、受刑者たちがそういう負傷をし、あるいは死に至るような危険性をなるべく排除するという観点から矯正行政が今なされているんじゃないかというふうに私は考えております。

河村(た)委員 だから、端的に言ってもらえばいいんですが、何でそう気にするんですか。こんなもの、事故の可能性もあったかもしれないということですよ、はっきり言いまして。別に裁判は関係ないんですから。向こうは向こうでやっておるんですから。あの時点で、こうだといってそうやりましたけれども、だから床のクッション化もいたしましたと言えばいいじゃないですか。どうですか。

大林政府参考人 答弁が重複して恐縮でございますけれども、特段、私の方で特に言えないということはございません。

 今の、事故とか事件という問題とは離れて、矯正行政は、この委員会で指摘されたとおり、受刑者の方々が負傷なんかするような、そういう状況をつくり出すものはなるべく排除するという観点でこれまで改善がなされているんだというふうに思います。

 ですから、おっしゃられるように、では、事故なのかそうでないかによって今の矯正の対応が変わっているかといえば、私はそういうことはないんじゃないかなというふうに思います。

河村(た)委員 何遍も言っていますけれども、何かよっぽど言いにくいんですかね。それか、暴行であるともっと強く断定すればいいじゃないですか。

 それでは、何で床をクッション化したんですか。

小貫政府参考人 事案が故意か過失かによってということとは関係なくして、要するに、死亡というような不幸な結果を生じさせないようにいろいろ対応策を考慮して、例えばウレタン床にしたり、あるいは革手錠の廃止に至った、このように私は認識しております。

河村(た)委員 何か本当に、検察庁と一体か何か知りませんけれども、こんなことをやっておったら、本当に検察は聖域になってしまって、検察庁が一遍こうだよと言ったら、だれも何も言えないですよ、本当のことを言って。

 それは、床をクッション化したということは、過失というと裁判というような感じがありますから、要するに転倒事故ですね、転倒事故とか自分で倒れた場合もあるけれども、転倒事故の可能性もあったんでしょう。そう言ってくれればいいじゃないですか。

大林政府参考人 今委員が触れられている転倒事故だったか否かというのは、まさに裁判で争われているところでございまして、私どもの立場として、その可能性があったとかなかったとかということはちょっと申し上げられないということを御理解願いたいと思います。

河村(た)委員 しかし、再発防止策をとったんでしょう。それは御立派ですよ。一応建前は、やってまったで、検察庁のメンツがあるで引き下がれやせんもんだで、故意犯と言っておきながら、しかし、やはり受刑者のためのことも思って本当のことをやったわけですよ。本当は転倒事故であったと。だから、表は検察庁のメンツがあるから暴行のままにしておいて、しかし、もう一回起こると困るから、床だけはクッション化したんじゃないですか。

 動機の部分を肯定するのはつらいだろうからそれは別にしまして、やはり事故の可能性をも考えて、その後ですから、受刑者のためにも、転倒事故が起こらないように、そうやって配慮したんじゃないんですか。いいんですよ、そうやって言ってくれれば。その方が立派なんですよ、法務省は。

小貫政府参考人 繰り返しになりますけれども、死亡の原因はともかくとして、保護房内での死亡という結果は、これはどうしても避けなければいけない、こういうことでいろいろ対応策を講じてきた、こういうことでございます。

河村(た)委員 後ろでしゃべるのはやめてもらわないかぬわな。あんたら刑務官の上司でしょう。そんな残酷なことをやってええのかね、自分たちの部下を売るようなことをやって。

 こんなもの、端的に転倒事故と決まっておるじゃないですか。死亡のことを言うんだったら、もっといろいろな、道具を入れるなとかいろいろありますよ、食器を変えろとか。フロアをクッション化することは、何ですか、これは。頭を打ちつける場合もあるかもわからぬ、転倒事故もあるかもわからぬ。どっちかなんだって言えばいいじゃないですか。

小貫政府参考人 そういう意味であれば、頭を打ちつけたり、あるいは転んで頭を打ちつけるという事態もあり得ないわけではないというふうに思います。いかなる原因であろうとも、極力そういった死亡事故を防ぎたい、こういう認識のもとであのような改善策を講じた、こういうことであります。

河村(た)委員 それでいいんですよ、それで。

 頭を打ちつけるばかりじゃなくて、当然、腹にもいきますからね。人間は本能的に、手錠をかけて手が動けぬ状況で倒れますと、こうやってひじで防御するんですよ、ぐっと、こういうふうに。だから、まず腹へいくんですよ。自分でやってみるとわかりますけれども、危ないですけれどもね。初めから意識を失っておる場合は頭へどんといきますけれども。

 だから、今ちょっと、せっかくですから、転倒して、いわゆる革手錠のいろいろな構造的な問題ですね、角鉄と言っておりますけれども、鉄の部品や何かで体を傷める可能性があるということもいろいろ考えて、保護房をクッション化いたしました、そう言ってくれればいいですよ。

小貫政府参考人 死に至る原因というのはいろいろあるだろうと思います。その可能性について、私は、これはあり得ないとか、これしかないんだというようなことを断定するつもりは一切ございません。

 ただ、あの事案の場合どうだったかと聞かれますと、証拠関係の詳細を知らない私の立場で申し上げるのは差し控えるべきだろう、このように考えているところでございます。

河村(た)委員 これは来週以降もあるでしょう。(発言する者あり)あるようですから。

 だから、本当に、証拠という言い方をしましたけれども、証拠というのは、この法務省の調査でも、行政調査でも証拠と言うかどうか知りませんけれども、そういうことと裁判とは別に、再発防止策というのは非常に重要な仕事ですので。それでは、今言った話、またそこのところは今度きちっと調査します。

 ここで言っておきますけれども、そこら辺の立法事実関係ですね。あれが、いわゆる八十センチを六十センチに締めたというあくまで前提で、後、いろいろな対処がある。それでは、ちょっと分けて言ってもらえぬですか。後の対応、故意犯でこうやってやりました、もし事故だったらこうだと。どえらい違いますよ、言っておきますけれども。

 例えば故意犯だったら、何人かで見るようにしようとか、実際は保護房は一人では入りませんけれども、暴行が起きぬようにもっと何人かで入るとか、内部で、刑務所の中で常に話し合うチャンスをつくる、密告と言うとおかしいですけれども、そういうような内部告発するチャンスをたくさんつくるとか、いろいろあるじゃないですか。過失は過失で、過失というか、転倒なんかの事故の場合は、やはりそういうのが起きないようにどうしたらいいか。今のクッションの問題もそうですよね。

 だから、違いますから、ちょっとその対応を、それか、あくまでこれは暴行であると絶対的に断定しておるのかということについて、また報告をいただきますようにちょっと委員長から言っておいてください。今じゃなくて、また今度報告書をいただきます。

石原委員長 河村君の質問に対しては、できる限り丁寧に御答弁を願いたいと思います。

河村(た)委員 いや、答弁というか、ちょっと文書でひとつ持ってきていただくようにお願いします。

 しますと言ってちょっと返事をしてください。矯正局長、言ってちょうだい。

小貫政府参考人 委員会の御指示があれば、当然にそれに従いますし、なおかつ、必要があれば、こちらでもいろいろまた、私自身も勉強してみなければいけない点が多々あるな、こう思っているところでございます。

河村(た)委員 では、委員会でちょっと指示してください。ただそれを文書で出すというだけですから。

石原委員長 後刻、理事会で協議いたします。

河村(た)委員 このぐらい言ってくださいよ。こんなことを理事会で協議されちゃたまらぬですよ、本当に。委員長は立派なんだから。文書で出すだけですよ。ちょっと言ってください。

石原委員長 後刻、理事会でその点につきましても御協議をいたします。

河村(た)委員 委員長、悪いけれども、聞いたことないですよ、そんな話。理事会で協議すると大体なしになってしまうのが通常ですから。本当に、とんでもないですよ、これは。

 そうしたら、ちょっとそのことはまた後日にしたいと思います。

 今後ちょっとあるんですけれども、一つは、なかなか情報公開がうまいこといっておらぬようですので、これは質問通告をきちっとしてありますから、端的な数字になりますけれども、ちょっと警察庁の方から順次お答えをいただきたいと思います。

 まず、総逮捕者数と道路交通法違反による逮捕者数です。

矢代政府参考人 お答えいたします。

 平成十六年中の数字が一番新しいものでございますので、その数字ですが、平成十六年中の警察によります逮捕者の数、道路交通法に係ります業務上過失致死傷罪及び危険運転致死傷罪を除きましての刑法犯ですが、刑法犯、九万八千九百九十二人でございます。また、道路交通法違反につきましては、一万六千百三十六人でございます。

河村(た)委員 今の道路交通法違反の逮捕者数のうち、不起訴となった者の数。これは法務大臣に。

杉浦国務大臣 統計によりますと、平成十六年における道路交通法違反の受理人員は百五万五千百六人、不起訴の人員は十二万四千八百七十六人であると承知しております。

河村(た)委員 次は警察庁ですね。

 道路交通法違反の反則行為による逮捕は可能か、その要件は何か。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 道路交通法違反が反則行為に該当するかどうかということと、刑事訴訟法に基づきます逮捕が行えるかどうかは別の問題でありますので、反則行為でありましても、逮捕の要件に合致する限りは逮捕は可能でございます。逮捕の要件は、一般に、逃走のおそれ、罪証隠滅のおそれでございます。

 もっとも、道交法違反の捜査につきましては、その事案の特性にかんがみまして、原則として任意捜査によっているところでございます。

河村(た)委員 反則行為というのは、青切符というものだね。そうだね。これは何かないですか。逮捕の要件が合えば、即逮捕でいいんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 反則行為ですが、これは、反則行為に該当します類型につきましては、これを告知いたしまして、書いて通告いたします。反則行為であると通告いたしまして、反則金を納めれば、その後の公訴提起はしないという制度でございます。

 したがいまして、その根っこにあります道路交通法違反につきましてどのような捜査を行うかということとは別でございまして、その行った捜査に対してその反則金を納付するかどうかによって、起訴に至るか、あるいは起訴しないことにするかということになるわけでございます。これは、逮捕する場合も逮捕しない場合も共通でございます。

河村(た)委員 不起訴じゃなくて逮捕のところですね。道路交通法違反の青切符で零点というのは、免許証不携帯があるわね。これはたしか反則行為でしょう。違うかね。一番軽いの、一点とかいうのは何がありましたか、一たん停止違反はどうでしたか。

 ああいうので、では、不携帯で逃げていったとすると、即逮捕ですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 道路交通法違反も、これは法律に反する犯罪行為でございます。それで、これに対する取り締まりは、これは捜査でございます。

 それで、ただ、捜査のやり方として、逮捕できるかどうかということでございますが、先ほど申し上げましたように、逮捕の必要があり、逮捕の要件に合致すれば、逮捕は可能でございます。実際に逮捕するかどうかは別としまして、可能でございます。

 それで、罰金でいきますと、刑法は三十万円ですが、その他の犯罪でございまして、二万円以下の罰金、拘留または科料に当たる罪につきましてはさらに要件がございまして、これに加えまして、通常逮捕の場合には、定まった住居を有しない場合または正当な理由なく出頭の求めに応じない場合、現行犯逮捕の場合には、犯人の住居もしくは氏名が明らかでない場合、犯人が逃亡するおそれがある場合でございまして、これらに合致する場合には逮捕は可能でございます。

河村(た)委員 軽いものは極力逮捕しない規定とか、そういうルールというのは何かなかったですか。ないですか、青切符に。免許証不携帯、調べたら、確かにあなただなとわかったと。不携帯は零点だけれども、道路交通法違反ですね。免許証不携帯は一番軽いものじゃないですか。逮捕は、これはあるんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、道路交通法違反も犯罪でございまして、それの取り締まりは捜査でございます。

 それで、要件でございますが、免許不携帯につきましては、これは二万円以下の罰金でございますので、その先ほどの要件に加えまして、現行犯逮捕の場合には、犯人の住居もしくは氏名が明らかでない場合、また犯人が逃亡するおそれがある場合、これが逮捕の要件になります。

河村(た)委員 いや、私は、もうちょっと、何とか施行規則みたいなのがあって、こういう微罪については逮捕なんかしないようにとあると聞いたんですけれども、いいですか、それで。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねは逮捕できるかどうかということでございますので、これは逮捕できるということで御説明申し上げました。

 そこで、運用として逮捕するかどうかということでございますが、これは必要があれば逮捕するわけですが、運用といたしまして、道路交通法違反、これは一般でございますが、原則として、被疑者の逮捕は行わずに任意捜査によるところでございます。

 これは、道交法違反の場合には、通常、人定事項もすぐにわかりますし、それから証拠隠滅のおそれも乏しいということで任意捜査によっておりまして、このことは、犯罪捜査規範によりましても、第二百十九条に、「交通法令違反事件の捜査を行うに当たつては、事案の特性にかんがみ、犯罪事実を現認した場合であつても、逃亡その他の特別の事情がある場合のほか、被疑者の逮捕を行わないようにしなければならない。」となっておりまして、そのような運用をしているところであります。

河村(た)委員 まあ、いいです。ちょっと何か、大抵知られぬところがあるような気がしますけれども、これはまた今度やります。

 ちょっと、とりあえず数字なんかを確認してきてくれという話もありましたので、次に行きます。

 警察庁ですか、大型留置施設の収容人数と、それ以外の施設の収容人数はいかほどか。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 大型留置施設について特に明確な定義づけはしておりませんけれども、一つの基準としまして、男女の留置場が併設されているものを含めて収容基準人員百人以上である施設について申し上げますと、これは全国で五施設あり、その収容基準人員は合計で約五百三十人でございます。うち、女性が約二百五十人ということでございます。

 これ以外の施設につきましては全国で約一千二百八十施設ありまして、その収容基準人員の合計は約一万九千二百人でございます。

河村(た)委員 警察署と一体ないし近接していない大型留置施設の収容人数は何人ですか。

安藤政府参考人 今申し上げました収容基準人員百人以上の大型留置施設のうち、警察署の敷地内に設置されていない施設という御指摘だと思いますが、これは全国に三施設ございまして、その収容基準人員の合計は約三百三十人となっております。

 なお、これらの施設についても、最寄りの警察署とは近接しております。

 以上です。

河村(た)委員 大型留置施設は管理部門のみで構成されているのか。また、捜査の都合で処遇内容が影響を受けることがあるか。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 大型留置施設におきましても、通常の留置施設と同様に、留置業務は、捜査を担当する部門とは別の総務、警務部門の所掌事務として組織上区別しております。そういうことでございますので、留置担当官は捜査に携わってはならず、また、捜査員も留置業務に携わってはならないことといたしておりまして、組織上明確に分けられているところでございます。

 もう少し具体的に申し上げますと、例えば、被留置者の取り調べ時間につきましても、通常の留置施設と同様、被留置者を留置施設から出場させる場合には、出場時刻とか帰場時刻とか出場理由等を明確にして、留置主任官がその適否を判断することとしております。その他につきましても、いろいろ、留置主任官の責任におきまして、捜査と留置の分離というものが確保されております。

 以上です。

河村(た)委員 拘置所は法務省所管で、代用監獄は警察庁所管となって、どちらに収監されるかで不均衡が生じるため今回の法改正を行うとされておりますが、そうであれば、大型留置施設は法務省に所管がえをすべきではないのか。

杉浦国務大臣 留置施設は、先ほども御答弁申し上げたところですけれども、都道府県が、地方の治安責任を全うする必要性から、独自の財源を充てて設置しているものでございます。これを国の所管に移すことは、治安に関する地方公共団体と国の役割分担あるいは責任の所在にかかわる重大な問題でございます。

 また、留置施設は、逮捕後の留置とこれに引き続く勾留を通じて用いられており、要員の点でも、逮捕から勾留まで一貫して、地方公務員である施設の看守勤務員が対応いたしております。したがって、仮に留置施設を国の所管に移すとしても、逮捕後の留置を行う施設としての留置施設は存続する必要がございます。

 留置施設の機能を分割して被勾留者の収容に関する部分のみを国の所管とすることとなりますと、その場合、国の業務を行う区画を別に設け、共通した業務に従事する職員を国と地方ごとに配置せざるを得なくなります。こうした点などにおきまして、留置施設の所管を警察庁から法務省に移すことは現実的ではないと考えております。

河村(た)委員 数年前、原宿に留置場をつくるという話があったけれども、その計画はどうなっているのか。

安藤政府参考人 現在、警視庁におきまして計画中の原宿警察署新庁舎に、収容基準人員約三百名の留置施設を整備するという計画でございまして、本年十一月に着工し、平成二十一年春に業務を開始する予定と聞いております。

河村(た)委員 次に、女性の収容者に対するわいせつ事案が報道されるけれども、再発防止措置としてどのような対応、管理体制をしているのか。例えば、わいせつ行為を行った警察官のうち、解雇等の処分を受けた者、また、立件された者の割合はどのくらいか。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、過去五年間では、御指摘の非違事案につきましてでございますが、一件のわいせつ行為事案が発生しておりまして、当該看守勤務員は懲戒免職となったほか、特別公務員暴行陵虐罪で逮捕、送致されるなど、厳格な処分がなされているところであります。

 そこで、どういう再発防止策をとっているかということでありますが、もちろん我々としては、この種の事案というものはあってはならないことでございます。看守勤務員の女性被留置者に対するわいせつ行為事案の防止策としましては、まず何といっても、職務倫理教養を徹底するということを行っております。その上で、女性の看守勤務員がすべての処遇を行う、いわゆる女性専用留置施設の整備を推進するということが一つでありますし、また、女性専用留置場以外の留置場では、そういうものもどうしても予算の都合でございますので、そうした場合は、幹部による巡視の強化とか、あるいは複数の看守勤務員による処遇等を行っておりまして、平成十四年一月以降はこのような事案は発生しておりません。

 以上です。

河村(た)委員 拘置所等における女性被収容者の処遇体制を強化するために、女性の採用をふやしたり、女性担当者をふやしたりすべきと考えるが、どのような施策を講じているのか。

杉浦国務大臣 先生の仰せのとおりでございますので、そういう方向で努力をいたしております。

 ここ一年半の間に三十四庁の拘置所などに四十一名の女子刑務官を新たに増配置した上で、適正処遇を維持していくための職員研修の充実を図っておるところでございます。

 そのほか、女子被収容者の居室の開扉は原則として女子職員が行い、男子職員のみにより女子被収容者の運動や面会の立ち会いをせざるを得ない場合、そういうことがないように努力しておりますが、そういう場合には原則として複数の職員で実施するなどの配慮を行っております。

 また、女性に対する不適正処遇を防止するために、女性の収容されている区域の廊下に設置してございます監視カメラ等による監視体制の充実を図りまして、また幹部職員による巡回も強化するなどしているところでございます。

 今後とも、女子被収容者の収容の動向を踏まえながら、女子刑務官の採用をふやすなどして、処遇体制のなお一層の充実強化に取り組んでまいる所存でございます。

河村(た)委員 今回の改正で留置施設においての反則行為に関する禁止措置が設けられる。百九十条のたばこ、二百八条の書籍ということですが、これは留置施設への懲罰的処分の新規導入と言われている。趣旨は、過剰収容対策という説明をなされているようだが、被疑者への圧迫作用により冤罪が生まれやすくなるという懸念がある。過剰収容対策が進めば、この制度は廃止されるのか。これは警察庁に。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 監獄法のもとでも、留置場におきましては規定上懲罰の実施が可能とされていたところでありますが、警察におきましては、代替収容に関する議論が続けられていたことなどにかんがみまして、その必要性は認識しつつも、これを実施してこなかったところでございます。

 しかしながら、今委員の御指摘もありましたが、近年の過剰収容状況の悪化、問題被留置者の増加等にかんがみまして、被留置者の共同生活の場であります留置施設において規律及び秩序を保つことは他の被留置者の平穏な生活を保障するためにも必要であると認識しており、新法では御指摘の禁止措置の制度を設けることとしたところでございます。

 もちろん、警察としましても禁止措置の濫用は厳に慎むべきものと考えておりまして、法律上もその趣旨を明らかにしております。また、禁止措置の要件を限定し、厳格な手続を定めておるほか、その適正な運用を担保するための法的な手当てを行っているところであります。

 なお、本制度の将来的なあり方についてということでございますが、これは留置施設を取り巻く状況を踏まえまして検討してまいる所存でございます。

河村(た)委員 捜査段階の調書ないし弁解録取書の作成に当たっては、本人が供述していないことができ上がってくるという話がある。ひな形のようなものを使用して作成することはあるのか。

縄田政府参考人 供述調書や弁解録取書は、これは被疑者が供述した内容を捜査担当者において録取いたします。その内容を被疑者に読み聞かせるなどして十分に確認をさせまして、誤った点があれば訂正を行うなどした上で、被疑者が署名押印するということになっています。捜査担当者において、そういったことから、勝手に作成することはできないものというふうに認識をいたしております。

 なお、供述調書の内容は、個々の事件また個々の被疑者によってさまざまでありますから、ひな形等を用いて作成するということは基本的には考えられないものだと私どもは考えております。

河村(た)委員 そういう条件つきで、基本的にと言われたけれども、そういうひな形というのはあるのかないのかを言ってください。

縄田政府参考人 ちょっと表現があれかもしれませんが、ひな形を使って調書をとるということが基本的にはあり得ないといいますか、それぞれ個々別々に被疑者から事情を聞き、その内容もさまざまでございますので、そういった発想自体があり得ないということを申し上げたいのでございます。

河村(た)委員 まあ、ちょっときょうは、とりあえず前段階がありますのであれですけれども。

 次は、本法案の策定に当たり未決拘禁の実態についても集約を行ったという説明を部会で聞いているが、どのような集約を行ったのか。これは民主党の部会で、この間、現場の意見を聞いたのかと。例えば、拘置業務は現場の刑務官が担当することになると思うが、実際の刑務官の話を直接聞いたのか、どの管区の刑務官何名から聴取を行ったのか。

小貫政府参考人 当局では、行刑改革の一環といたしまして、現場施設の意見をあらゆる機会に酌み取るということで努力しているところでございます。

 例えば、各種協議会、研修の場で意見を聞くほか、現場職員からの職務に関する提案を矯正施設間のネットワーク上のメールを通じて受理したり、当局に匿名で意見や提案を申し述べることができる窓口を設け、さらに現場施設に対する実地監査である巡閲を実施する際に、第一線の職員からも職務に関する意見等を聴取するなどしているところでございます。

 本法案につきましては、未決拘禁者について、その人権を尊重しつつ適切な処遇を行うため、その権利義務の範囲を明らかにするなどして権利保障を図るだけでなく、監獄法におきましては職員の職務権限の根拠や範囲が明確でないために業務遂行に困難を来すという場面があるなどとします現場の職員の声も反映して、法案を作成したところでございます。

 なお、どの管区でどの程度やっているかという御質問でございました。急遽調べさせていただいてまいりましたが、CONETで職務に関する提案をしてきたのは三百四件でございました。これが十六年の二月から十七年の十二月。さらに、巡閲の際に現場の職員から意見を聴取する、面談をするということになっております。これが十七年度で五十六施設七百九十一名でありました。

 管区別の人数を調べなさいということでございました。札幌管区が七十名、仙台管区七十名、東京管区百五十八名、名古屋管区百三十三名、大阪管区百二十七名、広島管区七十三名、高松管区五十一名、福岡管区百九名の七百九十一名となっております。ただ、階級については、面接簿に記載がございませんでしたので、その集計はまだできておりません。面接の相手方の階級、こういう意味でございます。

 さらには、行刑改革会議の際に、平成十五年に現場に対するアンケート調査を実施いたしました。これが、府中刑務所、大分刑務所、網走刑務所で、有効回答数が五百十一通でありました。

 以上でございます。

河村(た)委員 これはだれが聞いたんですかね。直接局の方が出向いて、階級は書いていないと言うんですけれども、何かようわからんですけれども。ただ刑務所長が報告書をまとめたものを見た、そういうだけじゃないですか。

小貫政府参考人 これは矯正局の職員あるいは管区の職員が現場施設に赴いた際に、所長等を交えない場で個別に面談をする、こういう機会を設けるようにしてございます。その際に意見を聴取した対象人員が先ほど申し上げた数になる、こういうことでございます。

河村(た)委員 一遍ちょっと事実を、今度でいいですけれども、何月何日に、どこで、矯正局のどなたが、現場のどういう刑務官のどういう意見を聞いたというのを、それは全部だと大変だろうけれども、一応常識的に教えられる範囲で教えてもらえぬですか。

小貫政府参考人 その辺は、資料を整えて、何らかの機会に御報告申し上げたいと思います。

河村(た)委員 いや、何らかの機会にって、早く出してもらわぬと。それがどうこの法案に生かされてきたかということを、資料要求しようか、どうしようか。常識的な、全部と言うとどうなっておるかわかりませんが、そこはひとつお任せしますが、ぜひ資料を文書で出していただきたいということです。

小貫政府参考人 これにつきましても、委員会の御指示があれば出させていただきたいと思います。

河村(た)委員 委員会の御指示って、わしが言っておるんだで、何も委員会の御指示じゃなくても、やりますと言ってもええじゃないですか、そんなもの。委員会でちょっと御指示してやってくださいよ。

石原委員長 小貫局長、河村君の参考になるような資料を出すようお願い申し上げます。

河村(た)委員 では、次は警察の方ですね。

 留置業務を実際行っている警察官の話を直接聞いたのか、どの管区の警察官何名から聴取を行ったのか、同じような質問ですけれども。ついでにというか、今のと同じような資料を出してほしい。具体的に、何月何日、どういう人とどういう人が、どういう提言があって、それが今回のこの立法にどう生かされているのかというのを、常識的な範囲でいいですから。

安藤政府参考人 警察庁におきましては、各都道府県警察の留置業務につきまして、平素から巡回指導を行っているところでございまして、こうした機会を通じまして、現場の実情、意見等を聴取しているものでございます。

 それで、今回の法案審議ということも先に視野に入れまして、特に、昨年、平成十七年度の警察庁本庁によります巡回指導は、全国四十八留置場について行っております。一回当たり大体五名から十三名ぐらいの留置業務の勤務員との座談会を行って現場の声を直接聞いておるわけでございますが、管区単位でどれくらいかという数字は、統計をとっておりませんのでそれは申し上げられませんが、全国レベルではそういうことでございます。

 その中で、留置業務につきましての日ごろの看守勤務員のいろいろな苦労といいますか、そういうものを各種吸い上げて、いろいろ今回の法案の作成にも参考にさせていただいているところでございます。

 具体的な資料につきましては、どこまでこれが数字的にできるかという可能性はありますが、委員会の御判断に従いたいと思います。

河村(た)委員 またこれは、わしが言うより、委員会ばかりのあれを言われますので、委員長、言ってください。今のと同じ、矯正局長に言った話ですけれども、そういう具体的な資料をぜひ出していただきたいということです。

石原委員長 安藤官房長、できる限りの範囲でよろしくお取り計らいをお願い申し上げます。

河村(た)委員 それで、これは出てきてからでもええんですけれども、要するに、偉い様ばかりでやって、現場の話を聞いとりゃせぬという話はようあるんですわ、はっきり言って。特に刑務官のはよく聞きますよ。刑務官の方も、現場と、刑務官のちょっと偉い様と、その上に検事というまた超偉い様がおりますので、全然自分らの話を聞いてくれやせぬという話がありますので、出てきてからでもええけれども、一遍ぜひここで参考人で、やはり現場の人たちの話を聞く、これをぜひお取り計らいをいただきたいと思います。

石原委員長 後刻、理事会で協議いたします。

河村(た)委員 理事会でと言うと、本当に没になってしまうことばかりだで。頼みますよ。

 そうしましたら、先がた道交法の話がありまして、今度はちゃんと配りまして、テープ起こししたものを皆さんに配って、実際の実情というもの、これは珍しいですよ、逮捕の現場が録音されているというのは。それを今度やりますけれども、ちょっとその前提として、免許証の提示というのがありますわね、免許証を見せてくれというもの、これはどういう範囲で義務づけられておるんですか。道交法違反をやった場合、いつも提示せないかぬですか。

矢代政府参考人 免許証の提示の義務ということでありますね。

 まず、義務の範囲ですが、義務という意味は、これに違反しますと、その義務違反に対しまして……(河村(た)委員「違う違う、どういう場合に提示義務があるかということ」と呼ぶ)はい。義務という意味は、それに違反するとペナルティーがあるという意味での義務でございます。

 これは、道路交通法上五つ書いてありまして、運転者が無免許運転をした場合、酒気帯び運転の場合、過労等の運転の場合、自動二輪車の二人乗り制限違反をした場合、それから大型免許の運転制限違反をしていると認めるときには、運転免許証の提示を求めまして、運転者は免許証を提示しなければならないとなっております。提示をしない場合には、五万円以下の罰金ということになります。

 それから、それ以外で免許証の提示を求めますのは、これは道路交通法違反の捜査をするときに、この人はどういう名前でどういう者であるかという人定事項を特定する必要がありますが、その過程で免許証の提示を求め、これを特定していくことがあります。これは提示義務があるというわけではありません。

河村(た)委員 例えば、スピード違反は、わしも何十年前はありますけれども最近はないですけれども、あれは別に提示せぬでもええわけだね。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 スピード違反がありまして現場で警察官が取り締まりを行ったということで、私どもは免許証の提示をしていただきたいと思います。(河村(た)委員「義務じゃないの」と呼ぶ)はい。ただ、その違反をした場合に提示義務があるわけではありません。ただ、その場合に、ではこの人はどこのだれであるのかということを特定する必要がありますので、通例は免許証の提示を求めております。

河村(た)委員 通行区分違反ということで、例えば歩道の上を車が走った、これでもないですね。

矢代政府参考人 先ほど申し上げました五万円以下の罰金の対象となる義務の範囲にはございません。

河村(た)委員 では、最後にもう一問だけ。

 道交法違反による現行犯逮捕、これは犯罪捜査規範の第二百十九条との関係で、逮捕の必要性があるかということ。

矢代政府参考人 今の御指摘は、犯罪捜査規範の第二百十九条の、先ほど申し上げた件かと思いますが、それで、道路交通法の違反に対しまして逮捕するかどうかは、先ほど申し上げましたように、逮捕の必要性と逮捕の要件に合致するかどうかによって決まるものでございまして、犯罪捜査規範は、今のお話の第二百十九条は、「交通法令違反事件の捜査を行うに当たつては、事案の特性にかんがみ、犯罪事実を現認した場合であつても、逃亡その他の特別の事情がある場合のほか、被疑者の逮捕を行わないようにしなければならない。」という運用を定めておるものでございます。

河村(た)委員 では、これで終わりますけれども、なかなかショッキングなことを今度やりますので、ぜひひとつ逮捕の現状というものを皆さんにお知らせをしたいと思います。

 以上でございます。

石原委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 法務大臣に冒頭伺いたいんですが、受刑者処遇法が昨年成立をした。また、この法務委員会で行刑施設の現状を徹底的に審議して、現在、未決拘禁の人たちに関する扱いをこれで決めていくわけですが、大臣、菊田幸一先生を御存じでしょうか。

杉浦国務大臣 とっさの御質問でございまして、お名前と顔が浮かんでまいりません。

保坂(展)委員 菊田先生は、この法務委員会での議論を踏まえて法務省が行刑改革会議という会議を立ち上げて、受刑者の処遇にかかわる貴重な議論をしていただいたという方で、当法務委員会でも来週、参考人として来られるという方でございます。

 その菊田先生から連絡がございまして、私は郷里が宮城県なんですが、宮城刑務所においてちょっと心配する事態が起こっているということで、これはまず最初に大臣に聞いて、その後局長に聞いていきます。

 宮城刑務所では、報道されたように、携帯電話やたばこ、酒などの差し入れ、これは非常に規律が緩んでいたということがあり、そしてその反動で大変締めつけが強まり、その中で受刑者に対する暴力というようなことで、十二月二十日に訴訟が東京地裁で起きているということでございます。これらの事実について、菊田先生自身が弁護に当たるということで、大変重大じゃないかと。受刑者処遇法というものがせっかくできたけれども、施行に至る過程でこういった事態が起きてきたことに対して、御存じでしょうか。法務大臣、お願いします。

杉浦国務大臣 宮城刑務所において御指摘の不適正処遇があったということは聞いております。甚だ遺憾なものでございます。

 この事案は、監獄の職員が受刑者から、何といいましょうか、たらし込まれてというか、時々あるんですけれども、それで便宜を図るようになった、正規でないルートからそういった御指摘の酒、たばこ等を持ち込んだという事案でございます。

 刑務所の方で、事案発生に至った原因、その背景等を調査いたしまして、その対応策として、監督職員による工場、舎房の巡回頻度の増加、それから舎房の担当職員一人から二人への増員、一人だったから癒着が起こったということでございますから、二人への増員、規律違反行為に対する厳正な対応などの措置を講じたところでございます。

 受刑者の処遇を不必要あるいは不合理に厳しくしたことはないと聞いております。

 いずれにせよ、新しい受刑者処遇に関する法律は来月から施行されるわけでございますが、これは施行前の事案でございますけれども、法律の運用には遺憾のないように適切な処遇に努めてまいりたいと考えております。

保坂(展)委員 局長に伺いますが、まさにこの処遇法の土台に行刑改革会議の議論があったということは局長も御存じと思います。

 その菊田先生からの話ですと、昨年七月三日に受刑者が自殺をした。この菊田先生自身が近隣にいた受刑者に面会をされた。その際に、前の晩に、助けてくれ、こういう声も聞いているということで、これは一体、本当に、ちり紙を全部口に入れて亡くなるというような亡くなり方なので、事実はどうだったのかということを非常に懸念されているわけです。この事態はどうだったのかということ、そしてまた、宮城刑務所で、例えば昨年、自殺など不審な形で亡くなったという受刑者はどのくらいいるのか、お答えください。

小貫政府参考人 まず初めに、昨年の自殺者の数でございますが、昨年一年間の自殺は、先生御指摘の日であります七月三日に発生した一件でございます。本件につきましては、司法検視、司法解剖のいずれも行われておりまして、ほかに病死等はありますけれども、七件という数字でございます。

 この自殺というふうに認定した案件につきましては、遺書は見つかってはいないという状況のもとで、死因は窒息死、口腔内にちり紙が詰め込まれているのを発見された、こういう状況が判明しております。

保坂(展)委員 矯正局長に、この宮城刑務所に昨年十一月にいわゆる巡閲官が来られて、その際受刑者から、今指摘したような、例えば制圧行為であるとかあるいは暴力だとか、訴えがあったというふうに私どもは聞いているんですが、菊田先生を通してなんですが、そういった報告を、後ほどで結構ですから、きちっと、どういう報告を受けているのか、把握しているのかどうか、答えていただけますでしょうか。

小貫政府参考人 私、ちょっと今質問の趣旨が把握できなかったところがあるんですが、私個人が視察に行った際にそういう報告を受けた、こういう御趣旨でしょうか。そうじゃなくて、他の巡閲官が行った際の報告、こういう趣旨でしょうか。

 後者であれば、御指摘の昨年十一月に宮城刑務所におきまして、巡閲官情願において受刑者からお尋ねのような申し立てがなされているということは承知しております。(保坂(展)委員「その内容は後で報告してくださいと聞いたんです」と呼ぶ)はい。これは、職員による暴行があるなどという申し立てというふうに報告を受けております。調査はその後行っておりますけれども、職員による暴行の事実はない、しかも不当な処遇が行われている事実は認められない、こういう報告も私自身は受けているところでございます。

保坂(展)委員 ちょっと法案の審議に、もう時間がありませんので、今、一行ぐらいで答弁されましたけれども、どういうことを聞いたのかということを後ほどお示しくださいというのが質問だったんです。いかがですか。

小貫政府参考人 その点はさらに詳細に調査した上で、何らかの形で先生に御報告申し上げたいと思います。

保坂(展)委員 では、法案に入っていきたいと思います。

 法務大臣に伺いますが、この法案は代用監獄制度の恒久化を意味するのかどうか。端的に伺いますが、いかがですか。

杉浦国務大臣 既に何度も御答弁申し上げておりますけれども、代替収容制度は所与の制度と考えているわけではございません。刑事訴訟の迅速化、裁判員制度、公的被疑者弁護制度の導入などによりまして、刑事司法制度全体が大きな変革の時代を迎えていることなどを考えますと、今後、刑事司法のあり方を検討する際には、取り調べを含む捜査のあり方に加えまして、代替収容制度のあり方についても、刑事手続全体との関連の中で検討を怠ってはならないものと考えております。

保坂(展)委員 次に、警察庁に伺います。

 八〇年を境に、代用監獄制度に対する批判を受けて一定の改善を図った、こういうふうに言われているんですけれども、八〇年代以降、自白を導くための無理な取り調べがなされて証拠排除決定が出されたり、自白の信用性がないということで無罪判決が言い渡された事例が例えば近々あるかどうか、お答えください。

縄田政府参考人 例えば、自白調書につきまして証拠能力を否定された事案としましては、平成十一年一月、大阪市所在の住宅において覚せい剤結晶を所持していたという容疑で被疑者二名を逮捕いたしまして起訴した事案でございますが、平成十四年十一月に大阪地裁で無罪判決が出されまして、それが確定をいたしました。同地裁におきましては、事件の捜査段階での自白調書において、取り調べ時の暴行を認定されました。警察官の調書等につきまして、証拠能力を有しないと判断されたということでございます。この被疑者は、別の事件ではそれぞれ起訴、有罪確定をいたしております。

 もう一つは、自白の信用性が否定された事案ですけれども、平成十六年八月、栃木県の宇都宮市内におきまして発生しました強盗事件の容疑で逮捕しまして起訴された被疑者につきまして、起訴後に別事件の被疑者が本件の真犯人であるということが判明をいたしました。平成十七年三月に宇都宮地裁で無罪判決が出されて、確定したという事案がございます。この事案につきましては、同事件の捜査段階の自白につきまして、供述内容が警察官に迎合、誘導されたものであるということが推察されると認定をされまして、供述を直ちに信用することはできないと判断された、こういう事案があったと承知をいたしております。

保坂(展)委員 自白ということで、それが事実じゃない自白をした場合には、これは冤罪ということになっていくわけです。

 法務大臣に伺いますが、一九八〇年の法制審議会において、「関係当局は、将来、できる限り被勾留者の収容の必要に応じることができるよう、刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて、被勾留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること。」という、漸減事項ですか、こういったものが全会一致で採択をされているということなんですが、拘置所をふやしていこうというのが政府の方針かということも含めてお答えいただきたいと思います。

杉浦国務大臣 拘置所を整備し、拡充していくことは、私どもの方針でございます。

 御指摘の法制審の答申は、勾留の裁判は裁判官がなさるわけでありますが、どこへ勾留するかということは総合判断で裁判官がお決めになられることでございますが、刑事施設の収容能力がないために留置施設にやむを得ず収容せざるを得ないという事態が現にあり、また、そのような事態が生じるおそれがあるという認識を皆さんがお持ちになった上で、刑事施設を所管する法務省に対しまして、その増設等に努めよ、努めなさい、そのような事態が生じることがないようにすべきことを求められたものと理解いたしております。

 その結果として、やむを得ず被勾留者を留置施設に収容する例はもちろん少なくないわけでございますが、法制審議会の御答申は、代用監獄制度を将来的に廃止するという趣旨をも含むものではないと理解をいたしております。

保坂(展)委員 少し読み方とか受けとめ方が違うんですが、議論すると時間がなくなってしまうんですが。

 一番最初に、法務大臣がこの代用監獄というのを永久不変のものとして考えているわけじゃない、それも、検討のあり方も含めてこれから考えていくんだということを踏まえると、今度警察に聞きますけれども、拘置所が、拘置所増設は法務省の方針ですから、これがどんどんふえていけば、留置施設に行かなくてもよいという状態が生まれてくるんじゃないでしょうか。どうでしょう。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 被疑者の勾留場所につきましての決定は、先ほど大臣から答弁ありましたが、裁判官が決定しているところでございまして、拘置所の増設と裁判官の裁量とは直接には関係しないものと考えております。

 ただ、現在の過剰収容状況におきまして、刑事施設が増設され、刑事施設への移送を待っている状態にある被留置者の人たち、これが結構いるわけですが、この被留置者の移送が進むことになれば、その分の留置施設の被留置者数は減少するものと思われます。

 しかしながら、一方、現下の厳しい治安情勢下におきましては警察活動が積極的に行われることとなるわけでございまして、現実にもそういうことが起きておりまして、検挙人員の増加も考えられますので、過剰収容状態を早急に解消することは困難と考えております。

保坂(展)委員 法案審議の最初ですから原点に立ち返って、次に警察に聞きます。

 先ほど来話題になっている留置専用施設ですか、これは大規模な、百名を超えるものもあるということですね。そして、留置施設というのは警察署の中にあって、捜査と勾留がスムーズだと。逆に言えば、人権侵害やあるいは虚偽の自白などを誘導しやすいということで、これは何とか分離しろということをこの間我々も言い続けているんですが、その留置専用施設においては、捜査と勾留の近接性、つまり、近くにいるわけですよね、警察署の中では。しかし、留置専用施設というのは離れたところにあるわけですから、その近接性はないと思うんですが、先ほど、午前中の答弁で、何かあるような話もあったんじゃないでしょうか。そこを説明してください。

安藤政府参考人 留置専用施設、とりわけ大規模な留置専用施設というのは、幾つか各地でできておるわけであります。そのうち、警察署に附置されているものと独立しているものは御案内のとおりでありますが、そうした場合も、そういう離れておるといいましても、それは最寄りの警察署、幾つかあるわけでありますが、そこの留置施設の収容能力が現下の犯罪情勢の悪化によって対応できないということで緊急的にそういう施設をつくっておるわけであります。したがいまして、そういう最寄りの警察署から近接した場所にあるということは事実でございます。

保坂(展)委員 法務大臣、今の答弁なんですけれども、よろしいでしょうか、拘置所を増設するのは国の方針なんですね。一方において、留置専用施設という調べの現場とは一定程度距離のあるところにこういった施設ができ上がっている。これはもちろん、都道府県の予算で来ているわけですから簡単じゃないかもしれない、しかし、こういうものは拘置所でいいんじゃないかというふうに思うんですね。これはまさに拘置所で衣がえを図っていくべきではないかというふうに思うんですが、いかがですか。

杉浦国務大臣 留置施設は、都道府県が地方の治安責任を全うする必要性から独自の財源を充てて設置されているものでございます。犯罪情勢がこういう状況で、検挙率も上がってきたということで、各地の留置場も、留置場不足で頭を悩ませている警察署も多いと聞いております。

 片や、拘置所の方は、刑事施設、刑務所等が過剰収容でございますから、拘置所に既決囚がたまると申しますか、移送できない者もかなりいるという状況でございまして、本来、未決の人たちを収容する部分が既決の人たちで埋まっているという状況があるわけでございます。

 ですから、今、私どもが全力を挙げてやっておりますのは、適正規模の刑事施設を建設する。ことしの場合、通常予算と昨年度の補正予算で五百億円を超える刑務所等の予算をちょうだいいたしまして、大増設をやっておるわけでございます。

 こちらの方がある程度できてまいりますと、まだしばらくかかると思いますが、今年度予算で認められたものを含めまして、これが二年後には完成いたしますが、そういう状況であっても収容率は九五%でしたか、適正と申しますか、八〇%が上限だと言われているのに比べるとまだ過剰収容状態だということでございますと、拘置所の方が窮屈な状態はなかなか改善されないだろうということでございます。

 ですから、もちろん、必要な拘置所は増設する、刑務所は増設するということをやってまいるわけですが、なかなか現実に追いつかないという状況がございます。

保坂(展)委員 法務大臣、ぜひ原則に照らして答弁していただきたいんですね。ここは国会ですから、まさに、法務省から言い出しにくければ、留置専用施設というのであれば、これはやはり法務省管轄の拘置所にするべきだろう、都道府県も財政が厳しいわけですから、これは国が責任を持って拘置施設として法務省の所管にしていくということを我々が声を上げたら迷惑ですか。どうですか、率直に言ってください。

杉浦国務大臣 その点は、迷惑とか迷惑でないとか、政治家の立場で、政治が解決する問題ですから。ただ、私どもは、国の職責として、さまざまな施策を講じているところでありまして、留置施設というのは都道府県の自治事務でございます。ですから、その点について、留置の必要性があって、つまり検挙者がふえてきた、大変結構なことですが、この二年ぐらいふえております。それで、留置する場所が必要だという御判断のもとに進められているわけでありますから、先ほど別の意味で申し上げましたが、国と地方公共団体との治安の維持に関する役割分担、責任の所在も変わってまいりますので、なかなかこれは難しい問題だと思っております。

保坂(展)委員 杉浦大臣から、もちろん行政のトップとして、また政治家であるということで、これは、原則、留置専用施設は拘置所という方向ですねという答弁をやはりしていただきたかった。でないと、留置専用施設をどんどんつくり始めるということになると、一番最初に聞いた代用監獄の恒久化ということとほぼ変わらなくなるんですね、これは。ぜひそこは、もう一度次回聞きますから、きちっとした答弁をお願いしたいと思います。

 次に、警察に聞きますけれども、留置担当官と捜査官を分けているということなんですが、例えば、捜査をする、調べをする側はもっと聞きたい、きょういいところまで来たからもっともっと聞きたい。九時になった、十時になった、十一時になった、もっと聞きたい。だけれども、留置担当者の方は、もう随分、健康状態は悪いし、食事、睡眠も十分じゃない、そろそろ、この時間になったから、例えば九時になったから捜査の方はやめてくださいということをきちっと言えるんですか。言ったときに、今度はその捜査担当官がそれを聞く義務はあるんでしょうか。いや、だめだと言って、そう言っただけになるんですか。その辺はどうですか。

安藤政府参考人 実際の運用でございますけれども、捜査官の方からそういう要請があるということは時々あるわけでございますけれども、日課時限というのが定められておりまして、九時に就寝をするということになりますと、留置主任官の方から捜査の打ち切り要請とかそういうことを要請いたします。

 ただ、もう一方、被留置者の処遇ということも大切でありますが、他方、捜査の適正な執行と限られた時間内に真実を究明するというそちらの公益性というものとのバランスだと思いますが、捜査担当官といたしましても留置主任官の要請というものをできるだけ尊重しつつ、あわせて捜査の要請というのを判断してやっております。

 現実には、昨年のサンプル調査でありますけれども、九時以降取り調べを継続しているというのは約一%ぐらいということでありますので、警察の中でそうした規律が確保されているものと考えております。

保坂(展)委員 警察の方にも短く答弁していただきたいんですが、先ほど九九%、だったら九時で決めてもいいんじゃないかと思いますが、もう一点、留置施設の被留置者の出入りを記録して、裁判所から請求のあるときには提示すべきじゃないかと思いますが、その点ついて簡潔にお願いします。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 被留置者を留置施設から出場させまたは留置施設に入場させるときは、現在、留置人出入簿というものを作成しておりまして、これは被留置者の出場または入場を要請する者、それから出場または入場の理由とか予定の時間、出場先を記載しまして、留置担当官の承認を得ることとしているところでございます。これらの記録につきましては、裁判所等から提出ないし開示の要求があった場合には、その根拠とか目的とか被留置者のプライバシー等を考慮しまして、警察署長の判断により提出されるものと考えております。

保坂(展)委員 警察署長の判断により提出されるということは、その警察署長が嫌だと言えば出さないということですか。

安藤政府参考人 そういうことではございませんで、どういう中身を出すかという場合とか、そういう若干個別具体的な判断がありますので、その場合、先ほど申し上げましたようないろいろの要素を総合的に考慮して、警察署長の判断により提出するということであります。

保坂(展)委員 提出するというところにアクセントがあったので、では、提出するというふうに受けとめます。

 ちょっと時間が押してきていますけれども、法務大臣、最後に一問聞いて終わりたいと思いますが、与党の先生方からも、また野党の我々からも、今回の法案の中で、面会の停止規定、ここに弁護人も入っているということについて、随分やはり、こういうかつてなかった規定が盛り込まれたということについて、これはいかぬのじゃないかという指摘があると思います。例えば、弁護人がよからぬことを企てる。それはそれで、懲戒ということがありますし、発言を制止するとか、規律及び秩序を害するというような、そういうフレームに弁護人を入れるということはいかがなものかという指摘だったと思います。

 この点については、今回の審議の中で、やはりおかしいものは修正を施すべきではないかというふうに考えておりますけれども、弁護士でもいらっしゃる法務大臣、いかがですか。

杉浦国務大臣 実際、現実問題としては、弁護人さんがそういうことになることはまず考えられないと思うんです。

 ただ、ここでも申し上げましたが、一件、携帯電話で勾留されている人とその家族の電話を取り次いだ方がおって、ほかのことで明らかになって懲戒処分を受けられたようなんですが、そういうことがあったということもございまして、一応、未決拘禁者だけでなくて弁護人というのも入れはしたのでございますが、実態としては、まずあり得ないことだというふうに思っております。

保坂(展)委員 大臣、一人そういう弁護人がいたらそういうふうに法律をつくっちゃうのであれば、宮城刑務所で携帯電話やお酒やいろいろなものを差し入れた、そうしたらまたそれも法律につくるのかといったら、そんなことはないわけですね。

 やはり、弁護人についてもう一回考え直してほしい。いかがですか。それを聞いて終わります。

杉浦国務大臣 この規定は、未決拘禁者と弁護人等との面会交通の秘密を侵害するものではないと思いますし、実際、あのような事件が起こったのも信じられないぐらいですから、適用されるケースはほとんどないものと思いますが、法律の規定として、あり得ないことではございませんので、このような規定を入れさせていただいておるわけであります。

保坂(展)委員 議論をまた続行したいと思います。

 終わります。

石原委員長 次回は、来る十一日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十三分散会


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