衆議院

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第21号 平成18年4月28日(金曜日)

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平成十八年四月二十八日(金曜日)

    午前十時三十二分開議

 出席委員

   委員長 石原 伸晃君

   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君

   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君

   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    太田 誠一君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    平沢 勝栄君

      三ッ林隆志君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      柳本 卓治君    石関 貴史君

      枝野 幸男君    河村たかし君

      津村 啓介君    細川 律夫君

      松木 謙公君    松原  仁君

      森本 哲生君    伊藤  渉君

      谷口 和史君    保坂 展人君

      糸川 正晃君    滝   実君

      今村 雅弘君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 沓掛 哲男君

   内閣官房副長官      長勢 甚遠君

   法務副大臣        河野 太郎君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      遠山 清彦君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 辻   優君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十八日

 辞任         補欠選任

  河村たかし君     森本 哲生君

  伊藤  渉君     谷口 和史君

  滝   実君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  森本 哲生君     松原  仁君

  谷口 和史君     伊藤  渉君

  糸川 正晃君     滝   実君

同日

 辞任         補欠選任

  松原  仁君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  松木 謙公君     河村たかし君

    ―――――――――――――

四月二十八日

 民法改正において選択的夫婦別氏制度の導入に関する請願(岩國哲人君紹介)(第一六八六号)

 同(渡海紀三朗君紹介)(第一六八七号)

 同(中川正春君紹介)(第一六九九号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第一七二〇号)

 同(川端達夫君紹介)(第一七三三号)

 同(古賀誠君紹介)(第一七三四号)

 共謀罪の新設に反対することに関する請願(河村たかし君紹介)(第一六九七号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一六九八号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一七二一号)

 同(泉健太君紹介)(第一七三五号)

 同(金田誠一君紹介)(第一七三六号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第一七三七号)

 同(重野安正君紹介)(第一七三八号)

 同(日森文尋君紹介)(第一七三九号)

 同(細川律夫君紹介)(第一七四〇号)

 同(小川淳也君紹介)(第一七五三号)

 同(田島一成君紹介)(第一七五四号)

 同(辻元清美君紹介)(第一七五五号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一七五六号)

 同(松本龍君紹介)(第一七五七号)

 同(北橋健治君紹介)(第一七九四号)

 同(郡和子君紹介)(第一七九五号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一七九六号)

 同(北神圭朗君紹介)(第一八〇七号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一八〇八号)

 同(前原誠司君紹介)(第一八〇九号)

 同(松木謙公君紹介)(第一八一〇号)

 同(山田正彦君紹介)(第一八一一号)

 同(津村啓介君紹介)(第一八三三号)

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案廃案に関する請願(北神圭朗君紹介)(第一七一九号)

 同(前原誠司君紹介)(第一八〇六号)

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案の廃案に関する請願(辻元清美君紹介)(第一七五二号)

 同(辻元清美君紹介)(第一八三二号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(鳩山由紀夫君紹介)(第一八〇四号)

 成人の重国籍容認に関する請願(鳩山由紀夫君紹介)(第一八〇五号)

 選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願(小宮山洋子君紹介)(第一八三一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十三回国会閣法第二二号)


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     ――――◇―――――

石原委員長 これより会議を開きます。

 第百六十三回国会、内閣提出、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案及びこれに対する早川忠孝君外二名提出の修正案を一括して議題といたします。

 原案に対し、昨二十七日、平岡秀夫君外二名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。高山智司君。

    ―――――――――――――

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨説明をさせていただきます。

 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表いたしまして、その提案の趣旨及び内容を御説明いたします。

 本法律案は、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約及びサイバー犯罪に関する条約の締結に伴い必要となる罰則の整備等を行おうとするものであります。

 しかしながら、殊に、本法律案に規定されている組織的な犯罪の共謀の罪あるいは証人等買収の罪については、国際的な組織犯罪を防止するという条約の目的を超えた内容となっており、むしろ、日本国憲法で保障された国民の自由と権利が侵害されるおそれなしとしません。

 サイバー犯罪取り締まりのための処罰規定、証拠収集規定の整備についても、国家権力の利益に不当に偏した内容となっているとの批判は否めません。

 そこで、民主党といたしましては、こうした本法案の問題点を払拭し、国民の方々に広く御理解いただける内容とすべく、本修正案を提出した次第であります。

 次に、その内容について申し上げます。

 第一に、組織的な犯罪の共謀の罪として処罰される場合を限定しようとするものであります。

 具体的には、共謀に係る犯罪が、死刑または無期もしくは長期五年を超える懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪であって、かつ、条約で言うところの性質上国際的な犯罪に当たる場合に限って、処罰されることとしています。

 また、共謀に係る犯罪が組織的な犯罪集団の活動として行われる場合、すなわち、死刑もしくは無期もしくは長期五年を超える懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪または別表第一第二号から第五号までに掲げる罪を実行することを主たる目的または活動とする団体の活動として行われる場合に限り、その共謀が処罰されることとしています。

 さらに、組織的な犯罪の共謀の罪は、その共謀をした者のいずれかがその共謀に係る犯罪の予備をした場合に限り、処罰されることとしています。

 第二に、証人等買収の罪として処罰される場合を限定しようとするものであります。

 具体的には、証人等買収の罪についても、その対象犯罪を、組織的犯罪集団の関与する、性質上国際的な犯罪等に限定しています。

 これらのほか、電子計算機の差し押さえに当たり電気通信回線で接続している記録媒体から電磁的記録を複写できるものとする規定について、その複写できる電磁的記録を専ら当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されているものと認めるに足りる状況にある記録媒体に係るものに限定するとともに、不正指令電磁的記録作成等の罪や通信履歴の電磁的記録の保全要請の制度等についても、所要の修正を加えることとしております。

 以上が、修正案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ、十分な御審議の上、委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)

石原委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

石原委員長 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長大林宏君、外務省大臣官房参事官辻優君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 これより原案及び両修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲田朋美さん。

稲田委員 おはようございます。

 本日は四月二十八日、昭和二十七年にサンフランシスコ平和条約が発効し、我が国が主権を回復した記念すべき日に質問できますことを光栄に存じております。自由民主党の稲田朋美でございます。

 前国会から継続審議となっております犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案につきまして、先週、与党修正案、そして、昨日、民主党修正案が出ましたので、これら修正案について質問いたしたいと思います。

 さて、本法案は、平成十五年、第百五十六回通常国会で自民、公明、民主、共産が賛成して承認された、いわゆる国際組織犯罪防止条約に伴う国内法の整備でございます。したがいまして、条約を承認しておきながら、条約の中で既に義務づけられた法整備の要件についてそれを今さら変更するということは、条約を遵守するという日本国憲法九十八条の要請からも認められないのではないかと思います。

 しかし、他方、共謀罪の新設については、我が国の刑法が原則として行為があって初めて処罰するという法制度をとっていること、また、前回の委員会でも問題になりました共謀罪の構成要件の明確さという点について疑問が呈されたところでもございます。この点をかんがみて与党修正案が提出されたと認識しているところでございます。

 民主党修正案については、民主党は条約の承認に賛成しておきながら、果たして、条約で義務づけられた重大性の要件や国際性の要件を今さら国内法化する際に加重することができるのかという疑問があると考えております。

 では、まず、民主党の修正案に関連して外務省に御質問いたします。

 国際組織犯罪防止条約においては、共謀罪の対象犯罪は、重大な犯罪、すなわち、長期四年以上の拘禁刑またはこれより重い刑を科すことができる犯罪としなければならないと明確に定められているところでございます。

 ところで、前国会の当委員会で平岡委員の方から、ウクライナはこの条約の留保及び宣言の名のもとに対象犯罪を限定しているのではないかという御指摘がありましたが、この点、外務省は調査されましたでしょうか。また、その結果はいかがでしたでしょうか。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナは、本条約の締結に当たりまして、留保及び宣言という名のもとに以下のような宣言を行っております。

 条約第二条の重大な犯罪という用語は、ウクライナ刑法に言う重大な犯罪及び特に重大な犯罪に相当するものである。ウクライナ刑法に言う重大な犯罪とは、法により五年以上で十年を超えない自由刑が定められた罪をいい、ウクライナ刑法に言う特に重大な犯罪とは、法により十年を超えるまたは無期の自由刑が定められた罪をいう旨表明しております。

 今先生御指摘のように、昨年秋に御質問を得て以来、その具体的な趣旨についてウクライナ政府に照会をしておったところでございますけれども、今般、ウクライナ政府から次のような回答を得ました。

 その内容といたしましては、この留保及び宣言は、本条約とウクライナ刑法の関係を説明するために行われたものにすぎないのであって、国際法上の意味での留保を付す趣旨ではなく、本条約第五条1(a)(i)に言ういわゆる共謀罪に相当する行為は、ウクライナにおいても広く処罰の対象とされている旨の回答を得ました。

 具体的な法文の説明もございまして、ウクライナ刑法第十四条では、二年を超える自由刑が定められた犯罪について共謀することが処罰の対象とされている、条約上義務とされている犯罪対象より広い範囲の犯罪について共謀罪が設けられている旨の説明がございました。したがいまして、説明のとおりであれば、対象犯罪を限定しているということにはならないと考えております。

 以上でございます。

稲田委員 ありがとうございました。

 ということは、ウクライナでも対象犯罪を限定しているわけではないということでございます。

 さらに外務省にお伺いいたしますが、では、国際組織犯罪防止条約の言う重大な犯罪を長期四年以上のものにすると定められているものを、長期五年以上とか、民主党修正案のように長期五年を超えるものに変更する留保を付すことができますでしょうか。

伊藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 結論から申し上げると不可能でございますが、御説明申し上げます。

 本条約で言うこの重大な犯罪を長期五年以上または五年超の自由刑を定めた犯罪に限定して、長期四年以上五年未満または五年以下の自由刑を定めた犯罪を排除するとの趣旨の留保を付すことは、法定刑に基づく一律の基準により定められた重大な犯罪を対象として共謀罪等を設けることをすべての締約国に義務づけることにより組織的な犯罪を実効的に防止しようとする本条約の趣旨、目的に反するものでございます。そしてまた、ウィーン条約法条約第十九条に規定しているとおり、本条約上、そのような留保を付すことは許されないものと考えております。

 現在までに本条約を締結した国において、重大な犯罪の範囲を限定するような留保を付した国があるというふうには承知しておりませんで、かかる理解は国際社会においても広く共有されていると考えております。

稲田委員 次に、外務省にさらにお伺いいたします。

 国際性の要件についてでございますが、条約三十四条二項では、条約五条の共謀罪や条約二十三条の司法妨害罪は国際的な性質とは関係なく定めるとされています。これに対して、国際性を規定することは何ら問題がないという意見がございますが、この条約の解釈として、国際性を国内法で規定することはできるのか、外務省の見解をお伺いいたします。

伊藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 結論から申し上げますと、国際性の要件をつけることはできないということでございます。

 国際組織犯罪防止条約第三十四条には、第五条、第六条、第八条及び第二十三条の規定に従って定められる犯罪については、各締約国の国内法において、第三条1に定める国際的な性質とは関係なく定めると規定されております。これは、国際性の要件とは関係なく定める、つまり、各国の国内法において、国際性を要件とすることなく犯罪化することを義務づけた規定であるというふうに解されます。したがって、この第五条のいわゆる共謀罪や第二十三条の司法妨害罪を国内法において犯罪とする場合に国際性の要件をつけることは、本条約第三十四条2によりできないというふうに考えます。

稲田委員 関連いたしまして、条約三十四条一項で「締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置をとる。」と定められている規定を根拠に、国際性の要件を付すことを禁止している三十四条二項について留保した上で、国際性の要件を付すべきであるという意見があります。国際性の要件をつけるような留保をつけることが可能であるか、外務省の御意見をお伺いいたします。

伊藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 可能ではございません。

 本条約第三十四条2の規定は、法の抜け道を巧みに利用して行われる国際的な組織犯罪の実態に適切に対応するために、その防止に有効であり、またその取り組みの必要性が特に高い行為類型について、国際的な性質の存在を要件とすることなく犯罪とすることを各国に義務づけたものでございます。これは、国際的な組織犯罪への効果的な対処を目的とした本条約のまさに中核をなす規定であると考えられますので、したがって、かかる規定に留保を付すことはできないというふうに考えております。

 また、本条約第三十四条1は、「締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置をとる。」と規定しております。ここで言う「自国の国内法の基本原則」とは、各締約国の憲法上の原則等、国内法制において容易に変更することができない根本的な法的原則を示すものと解されております。

 我が国の場合、罪刑法定主義、適正手続の保障等がこれに当たるものと考えられますが、国際性を要件としないで共謀罪等を定めることは、我が国の国内法の基本原則に反するようなものではないというふうに考えております。

稲田委員 ありがとうございます。

 そうしますと、今の外務省の御回答で、例えば、重大性の要件を加重するとか、また国際性の要件を付すということは、本条約に違反しており、できないというふうにお伺いしてよろしいですか。

伊藤大臣政務官 そのとおりでございます。

稲田委員 それでは、与党修正案についてお伺いいたします。

 伊藤政務官、どうもありがとうございました。

 まず、構成要件の明確性の観点から、早川委員にお伺いいたします。

 法案の、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者」という構成要件の団体の活動に市民団体や労働組合の活動も入るのではないかというのが、前国会の当委員会でも問題になりました。

 この点、修正案では、「団体の活動として、」の「活動」の後ろに括弧書きで「(その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体に係るものに限る。)」と入れたわけですが、このように修正することによって、修正前とどこがどのように変わったのでしょうか。

早川委員 政府案におきましても、これまでの法案審議の中で法務省から答弁がありましたように、普通に活動している一般の団体の活動がいわゆる組織犯罪に係る共謀罪の対象となることは、通常は想定しがたいものと考えられるところであります。

 しかしながら、政府案では、条文上、この点が必ずしも明確であるとは言いがたく、また、団体の共同の目的それ自体が重大な犯罪等を実行することにあるという限定がされているわけではありませんでした。そのようなことから、政府案に対してはこれまで、一般の労働組合や民間団体の活動も共謀罪の対象となってしまうのではないかとの御懸念が示されてきたところであります。

 そこで、今回の修正案は、このような御懸念なども踏まえて、法案の組織犯罪に係る共謀罪が成立するのは、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体、すなわち犯罪組織と言えるような団体の活動として行われるものについてだけであり、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにあるとは認められない団体については、条文上、組織犯罪の共謀罪が成立しないこととしております。

 このように、今回の修正案は、政府案に比べまして、法案の共謀罪が成立する範囲について、条文上より明確にするとともに、これを限定するものであります。

稲田委員 これに関連いたしまして、共同の目的が重大な犯罪等を実行することにあるという要件に加えて、過去に現に重大な犯罪等を実行したという活動実態を有することも要件とすべきであるという意見もあります。しかし、その点は修正案では要件にされていませんが、その理由についてお伺いいたします。

早川委員 国際組織犯罪防止条約は、共謀罪の対象となる犯罪について「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件をつけることを認めておりますけれども、この「組織的な犯罪集団」の定義というのは、「一又は二以上の重大な犯罪」「を行うことを目的として一体として行動するものをいう。」と規定されているところであります。過去に現に重大な犯罪等を実行したという活動実態を有することまでは要件とされておりません。

 したがいまして、仮に、団体の活動における「団体」に関しまして、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにあるという要件に加えまして、過去に現に重大な犯罪等を実行したという活動実態を有することをも要件とした場合には、この条約が義務づけるところよりもその処罰範囲が狭くなるおそれがあり、この条約の義務の履行上、問題があると考えられます。このようなことから、今回の修正案におきましては、組織犯罪に係る共謀罪の要件に言う「団体」について、過去に現に重大な犯罪等を実行したという活動実態を有することまでは要件としませんでした。

 もっとも、今回の修正案によりますと、共同の目的の判断に当たっては継続的結合体全体の活動実態などが考慮されることから、実際上は、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体と認められるのは、過去に現に重大な犯罪等を実行したことがある団体であることが多いものと思われます。

稲田委員 それでは、法務当局にお伺いいたします。

 大林局長は、前国会の委員会審議において、政府法案の解釈としても、「団体」の意味について、犯罪行為を行う集団であって一般の団体は含まないというふうに答弁されていたかと記憶しておりますが、今回の与党の修正案によって、その解釈が構成要件上より明確になったというふうに評価されますでしょうか。

大林政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、政府案におきましても、普通に活動している一般の団体の活動がその要件を満たして共謀罪の対象となることは想定しがたいものと考えておりますが、条文上はこの点が必ずしも明確であるとは言いがたいという御批判があることは十分承知しております。また、御指摘のとおり、共同の目的それ自体が重大な犯罪等を実行することにあるという限定がされているわけではございません。

 今回の修正案は、その提案理由において述べられておりますように、法案の共謀罪が成立する範囲をさらに限定し、一般の団体の活動についてはおよそ共謀罪の対象にはならないということを条文上も明確にする趣旨から、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体、すなわち犯罪組織と言えるような団体の活動として行われるものである場合に限って共謀罪の対象となることを条文上明示するものであり、法案の共謀罪の構成要件が一般の国民の方々にとってもより明確なものになると考えております。

稲田委員 提案者にお伺いいたします。

 今の御答弁の関連で、修正案は、現行の組織犯罪処罰法六条本体の「団体」には限定を加えず、共謀罪に係る六条の二だけに限定を加える結果になると思うんですけれども、同じ法律の間で整合性を欠いているのではないかという指摘があるんですが、その点はいかがでしょうか。

早川委員 今回の修正案では、法案の共謀罪が成立する範囲をさらに限定しまして、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体、すなわち犯罪組織と言えるような団体の活動として行われるものである場合に限って組織的犯罪の共謀罪の対象となることを条文上明示することとしたものであります。

 これは、先ほど来御説明をしておりますけれども、これまでの法案審議において、政府案に対して、一般の労働組合や民間団体の活動も共謀罪の対象になってしまうのではないかとの御懸念が示されたこと、また、我が国においては犯罪の実行の着手に至る前の行為を処罰することは例外的なものであり、共謀罪を設けるに当たっても謙抑的であるべきではないかとの考え方が示されてきたことから、これらを踏まえまして、このような御懸念を払拭するとともに、原則、例外の関係を逆転させるものではないことを明らかにするためのものであります。

 他方、御指摘の組織的犯罪処罰法第六条第一項は、組織的な殺人の予備罪と組織的な営利目的拐取の予備罪について規定しているところであります。これらの予備罪の対象となる犯罪は、殺人と営利目的拐取の二つの罪に限定をされているところであります。これが例外的なものであることは明らかである上、これらの予備罪につきましては、一般の団体の活動がその対象となるような懸念も全く認められないことから、今回の修正案において、この第六条の「団体」についてまで限定をすることはしないことといたしました。

稲田委員 それでは、法務当局にお伺いいたします。

 修正案では、「その共謀に係る犯罪の実行に資する行為」という要件を付加されたわけです。これは、前国会でも議論になったオーバートアクトの要件をつけるべきであるという考えに基づくものであると思います。

 そこで、政府案ではこういったオーバートアクト要件を付しておらなかったその理由についてお伺いいたします。

大林政府参考人 国際組織犯罪防止条約第五条は、国内法で共謀罪を新設するに当たり、合意の内容を推進するための行為を伴うものという要件をつけることを認めておりますが、このような要件をつけるべきか否かについては、法制審議会でも議論されたものの、既に厳格な組織性の要件がつけられているので処罰範囲が不当に広がるおそれはないと考えられること等に照らし、さらにそのような要件をつけるまでの必要はないとされた経緯がございます。

 このようなことから、政府が提出した法案におきましては、条約の言う、合意の内容を推進するための行為を伴うものという要件をつけなかったものです。

稲田委員 では、同じ質問を提案者にいたします。なぜこの要件を修正案では付すことにしたのでしょう。

早川委員 まず、これまでの法案審議におきまして、政府案に対しては、犯罪の共謀をしただけで処罰することは人の内心を処罰することと紙一重ではないかなどといった御懸念が示されてまいりました。このような意見の背景として、我が国において犯罪の実行の着手に至る前の行為を処罰することは例外的なものであり、共謀罪を設けるに当たっても謙抑的であるべきではないかとの考えも示されてきました。

 政府案でも、先ほど局長から答弁がありましたように、共謀とは二人以上の者が特定の犯罪を実行することについて具体的かつ現実的な合意をする行為をいうと解され、真剣でない話し合いや漠然とした相談をしただけでは共謀罪は成立しないということになるわけでありますけれども、しかしながら、外からその存在や真剣さを確認することが困難な合意というものだけで処罰範囲が画されることは、一般の国民の方にとって萎縮的な効果をもたらすおそれがあるのではないかという御指摘もあったところであります。

 そこで、今回の修正案は、このような御意見等を踏まえ、共謀をしただけの段階にとどまる限り、その処罰を差し控え、さらに進んで実行に向けた段階に至ったことのあらわれであります外部的な行為が行われた場合に限って初めて処罰の対象とすることにより、共謀罪への処罰範囲を明確かつ限定的なものにするため、共謀に加えて、実行に資する行為、すなわち、共謀に係る犯罪の実行に役立つ外部的な行為が行われた場合に初めてそのような共謀を処罰することとしたものであります。

稲田委員 犯罪成立要件ではなく処罰要件としての共謀に係る犯罪の実行に資する行為という要件ということでございますが、前回の柴山委員の質問の中で、処罰要件だとすると、共謀のみの段階で強制捜査することができるのではないかという御質問がありました。この点について、そのような危険性があるのかないのか、提案者にお伺いいたします。

早川委員 処罰条件ということで、実行に資する行為というのを明定するということにいたしました。ということは、この処罰条件を満たさないものについては、そもそも有罪をとることはできない、要するに、処罰の対象にならないということになります。結果的には、起訴をしても当然無罪にならなければならない。そういったものについて、犯罪の捜査をする、いわゆる強制捜査をするということは、これはあってはならないことだと私どもは考えております。

 ただ、任意捜査の、一般的な捜査の端緒を得るということ自体、これはどの世界でもあることでありますので、私どもが考えますのは、こういった処罰条件が明定されている、これを満たさないことが明らかである場合に強制的な捜査というのはあり得ないというふうに考えております。

稲田委員 そうしますと、共謀の実行に資する行為の要件を付した場合、例えば殺人の共謀罪と殺人の予備罪とはどこが違うことになるのでしょうか。修正提案者にお伺いいたします。

早川委員 今回の修正案におきます実行に資する行為の要件は、共謀の処罰範囲を明確かつ限定的なものにするという見地から設けた処罰条件であることは御説明したとおりであります。

 そこで、犯罪として処罰されるのは、実行に資する行為ではなく、あくまでも共謀自体であります。これに対して、予備罪におきましては、犯罪として処罰されるのは、予備行為それ自体であります。また、この実行に資する行為と言えるためには、第一に、共謀が成立した後であること、第二に、共謀の段階を超えた、すなわち、共謀する行為とは別のものであること、第三に、共謀に係る犯罪の実行に実質的に役立つ行為であること、この三つの要件が必要だと考えております。

 結局、先ほど申し上げましたように、実行に資する行為の要件は、処罰範囲を明確かつ限定的なものにするために設けたものでありまして、実行に資する行為自体がある程度危険なものであることまでは必要ではないというふうに考えているところであります。

 これに対しまして、予備罪における予備行為につきましては、例えば、昭和四十二年の東京高等裁判所の判決によりますと、「実行行為着手前の行為が予備罪として処罰されるためには、当該基本的構成要件に属する犯罪類型の種類、規模等に照らし、当該構成要件実現のための客観的な危険性という観点からみて、実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要する、」こういう考え方が示されているわけであります。

 この裁判例の考え方に従いますと、予備行為と言えるためには、その行為自体が客観的にある程度の危険性を備えたものであることが必要であることから、この点で、実行に資する行為と予備行為とは異なる部分もあるのではないかと考えられます。

 この点についての具体的な例を挙げますと、例えば、ある場所で組織的な殺人を実行する者の共謀がなされた場合において、あらかじめ現場の下見をする行為は、個別具体的な事実関係にもよりますけれども、通常は実行に資する行為に該当し得ると考えられますけれども、先ほどの東京高等裁判所の裁判例の考えでいえば、予備行為とは認めがたい場合もあるのではないかと考えているところであります。

稲田委員 それでは、最後に法務副大臣にお伺いいたします。

 国会で審議をして条約を承認した以上、条約で義務づけられた共謀罪等を国内法化するのが私たちの務めであるというふうに思います。しかし、単に条約で定められているからという消極的な理由ではなく、今回の法案の成立が国民生活の安全のために欠かせないものであり、その要件が明確であり、決して運用によって危険性があるものではないということを国民に理解してもらう努力をしなければならないと思います。

 この点、新聞報道などを見ますと、国民の理解が十分でないようにも思いますが、法務省として、国民の理解を得るためにどのような努力をなさっているのか、お聞かせください。

河野副大臣 現在審議をいただいております法案につきましては、自民党、公明党、民主党、共産党、国会で、このもとになる条約を、留保事項あるいは附帯決議なしに承認をいただいているわけでございます。この条約は、国際的な組織犯罪、あるいは人身取引、あるいは密入国、そうした犯罪に世界の国々が力を合わせて対応していくという極めて重大な条約であります。その条約を我が国もしっかり締結するためには、国内法の整備をしなければいけないわけでございます。

 そうしたことを、ホームページを使ったり、あるいは大臣の記者会見で考えをお述べになっていただいたりということをやってきておりますが、どうも最近の新聞、テレビの報道を見ておりますと、大分誤解をされている、あるいは、キャスターが意図的に誤解をしたようなことをおっしゃっていることがあるようでございますので、法務省としましては、積極的に、そこは間違っていますよということで対処していきたいと思っております。

稲田委員 全く同感でございます。与党から出された修正案によって構成要件が明確になり、さらに、単なる内心の意思ではなく、行為を要件にしたことにより、我が国の刑法体系においても共謀罪と認めることが可能ではないかと思います。国際テロなどを未然に防止して国民の安全を守るためにも、また、日本が国際社会の一員としての責任を果たすためにも、本委員会で、修正案を含めた法案が十分に審議され、国民の理解を得た上で速やかに成立することを望んでおります。

 本日は、どうもありがとうございました。

石原委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川律夫でございます。

 きょうは、今国民の皆さんから大変注目をされておりますこの法案について質問をいたしますが、連日のように、私の事務所にもファクスやらメールが大変多く届いております。そのほとんどが、共謀罪の新設については危惧をする、そういう内容のものばかりでございます。また、最近は、マスコミでもこの共謀罪が取り上げられまして、茶の間でもこの報道によっていろいろと話題になっているようでございます。

 こういう国民の心配をしている声に十分こたえるためにも、慎重に審議をして、そしてさまざまな批判に対しては謙虚に耳をかして、そして後世、後悔をすることがないように、そういう結論を出すような審議にぜひしていかなければいけないというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 そこで、まず第一にお聞きをいたしますのは、犯罪の実行に資する行為と準備行為についてでございます。

 与党の修正案、そして民主党の修正案、それぞれについてお聞きをしたいと思いますが、与党の修正案では、共謀罪につきまして、処罰条件として、その共謀に係る犯罪の実行に資する行為が行われた場合を要件として付加をしております。一方、民主党の修正案では、その共謀に係る犯罪の予備をした場合、こういう要件が付加されているところでございます。そこで、実行に資する行為と予備をした場合のこの予備、どのように違うのかを、ちょっと具体例を挙げながら聞いていきたいと思います。

 例えば、三人のA、B、Cという者が、ある人の殺害を共謀したといたします。その中のAが、Xをホテルにおびき出す、そのためにホテルの予約をしたといたします。与党の提案者にお聞きをしますけれども、このホテルの予約というのは実行に資する行為、こういうふうに言えますか。

漆原委員 今回の修正案におけます実行に資する行為の要件は、共謀が行われるだけでは足りない、これに加えて、共謀に係る犯罪の実行に向けた段階に至ったことのあらわれであります外部的な行為が行われるまでは処罰を差し控えるというものでございます。したがって、実行に資する行為と言えるためには、共謀が成立した後の、共謀の段階を超えた、いわゆる共謀する行為とは別の、共謀に係る犯罪の実行に実質的に役立つ行為、この三つの要件に該当する必要があるというふうに思っております。

 具体的にはどのような行為がこの実行に資する行為に該当するかについては、個別具体的な問題でありますから、事実関係にもよるわけでありますけれども、一般論として申し上げれば、委員が御指摘のような、ホテルに呼び出すためにホテルの予約をする行為、これは実行に資する行為に該当するというふうに思います。

細川委員 それでは、民主党の提案者に同じようにお聞きをしますが、ホテルを予約することは犯罪の予備と言えますか。

平岡委員 お答え申し上げます。

 この委員会でもいろいろな議論が行われておりますけれども、我々の修正案でいきますと、犯罪の予備ということを処罰条件という形にさせていただいております。このことは、やはり日本の国内法制の基本というものをしっかりと踏まえて私たちとしては組み立てなければいけない。実行に資する行為というような、我が国にとってみて何のことかさっぱりわからない、これまでの経験もなければ実例としての法律もない、そういうような状況の中でこれを導入するということに対しては、やはり非常に大きな問題があるというふうに考えております。

 御質問の件について言いますと、この委員会でも既にいろいろ答弁されていますけれども、予備というものについては、東京高裁の判決でも、簡潔に言えば、「客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要す」というふうになっておりますので、委員が御指摘のような事例については、民主党案では予備には該当しないというふうに考えております。

細川委員 それでは、ホテルを予約するということ自体では、これは一般的にもよく行われる行為でありますから、ホテルの一室を例えば殺害の現場にするのか、あるいは、Xを殺す場合、そこでは殺害じゃなくて、ただ話し合いのためにそのホテルに呼び出すのか、そういうことはただ予約だけではわからないわけですね。

 そうしますと、犯罪の実行に資する行為とするには、一体どういうことを証明しなければいけないのか。ただ予約するだけではわからないわけですね。その点、これは法務省に聞きましょうか。

大林政府参考人 具体的事案に応じて証拠の収集が行われることになると思いますが、今御質問のものについて考えてみますと、これは前から申し上げているとおり、共謀罪の共謀の内容、これは他の共謀と同じではございますけれども、具体性、現実性、そういうものがなければならない。

 特に今回の場合には、組織的な、団体によって共謀がなされるということですから、その内容はある程度分担行為まで含んだような内容でなければならないはずでありまして、それは確かに委員がおっしゃいますように、外形的に見た場合は、予約する行為自体は一般人もする行為ではございますが、その前提として、共謀がなされたその殺人に至る過程の行為として見た場合には、やはり、当事者の何らかの供述なりそれから先のメモが出るなど、ある程度内容を立証できるかどうかということがこの犯罪成立の問題かなと。

 ですから、先ほど、実行に資する行為としてお尋ねの、予約する行為自体が当たるのかということであれば、具体的事案にもよりますけれども、それは当たる場合があり得るでしょう。ただ、それについて、ではどう立証するかというのは、今申し上げたような証拠等があれば、それは立証できる場合もあるかなと。

 ただ、一般的に申し上げて、共謀自体は多くの密行的なものでありますので、なかなか立証は困難だということを一般論としては申し上げられるかもしれませんけれども、先ほどの条件があった場合には、それは立証される場合もあるかなと考えております。

細川委員 今、私の質問の答えで非常に立証は困難だろう、こういうふうに言われました。僕は、非常に難しいと思うんです。殺人をするということとホテルの予約、これが殺人行為のために予約をするのかどうかは、これはまさに共謀の段階だけではなかなか判断しにくいから、結局は、共謀でどんな話をしたのか、こういうことを知らなければいけないわけですね。

 そうしますと、結局、当事者なんかの話とかあるいは会話、いろいろなところで例えば盗聴だとかメールだとか、そういうのを盗み見したり、そういうことをしないとなかなか犯罪に資する行為という証明はできないと思うんですよ。そうすると、捜査そのものが盗聴だとかそういうものを非常に誘発するというか、それに頼っていかざるを得ないような捜査になってくるのではないですか。

大林政府参考人 共謀罪の新設と新たな捜査手段の導入、拡大とは別の問題であり、今回の法案で、共謀に係る実行に資する行為や共謀自体の立証を念頭に、今おっしゃられたような新たな捜査手法を導入することは考えておりません。先ほど言いましたように、それはもうケースケースでの証拠により判断するしかないというふうに考えております。

細川委員 私は、そういう捜査手法が頻繁に取り入れられるのではないかと大変危惧をいたしております。

 それでは、先ほどの具体的な例に戻りますけれども、このA、B、Cが殺人を共謀したということで、では、その中のBという者が殺人の凶器に使う包丁を入手した、こういう例といたしますが、これは犯罪の実行に資する行為ですか。提案者、どうぞ。

漆原委員 先ほど申しました具体的な事情にもよるわけでございますけれども、先ほど三つの要件を申し上げましたが、その要件に該当すれば当たり得るというふうに思います。

細川委員 いや、具体例でちょっと聞いておりますから。包丁を入手したら、これは実行に資する行為ですね、こういうことですが。

漆原委員 今の具体例だけでストレートにいけるかどうかわかりませんけれども、そういう場合が十分にあり得るというふうに考えます。

 詳しく申しますと、先ほど三つの要件、共謀が成立した後の、共謀の段階を超えた共謀する行為とは別の行為であって、さらに実質的に役立つ行為、これに当たれば私は十分該当するというふうに思います。

細川委員 答弁ぶりからいたしますと、凶器の包丁を入手することは実行に資する行為だというふうに伺っておきます。

 同様の例で、これは予備行為と言えますか。民主党の提案者にお聞きします。

平岡委員 お答え申し上げます。

 与党修正案に言うところの犯罪の実行に資する行為というのは、犯罪の準備行為とかあるいは予備行為というものよりもはるかに広い概念であるということで、先ほど来からの御質問のとおりだろうというふうに思います。

 例えば、共謀行為があった後に、その人が、実行行為者でない一人の人が、頑張ってくれとか成功を祈るよといった言葉による応援といったようなものも新たな活動、行動、行為ということでありますから、そういうことも含まれてしまうのではないかというふうに我々としては考えます。

 そういう意味で、先ほど来から言っておりますように、我が国の刑事法制の中でそれなりに確立してきた予備あるいは準備という概念で本来こういったものは構成すべきであるというふうに考えたところでございます。

 なお、この点については条約との関係がいろいろ指摘されるかと思いますけれども、この委員会で明確に政府が答弁で答えております。顕示行為というものを処罰条件とする場合に、その顕示行為の具体的内容については、各国が国内法制を踏まえてそれぞれ合理的に解釈することが条約上認められているんだということを政府の方から答弁していただいておりますので、そうした考え方に立って、我々としては、実行に資する行為ということではなくて予備という形にさせていただいたところでございます。

細川委員 今、予備とかあるいは犯罪の実行に資する行為、こういう言葉がずっと出てきておりますが、今の刑法では、重大な犯罪については陰謀というのがありますね。これは、大体共謀と同じように考えていいと思います。さらに、予備という概念もございます。それから、まさに実行行為があるわけですね。

 そこで、今の刑法の法体系では、内面で、内心で犯罪の意思を生じる。それが進んで、何人かで、あいつを殺してやろう、こういう共謀あるいは陰謀があるわけです。そして、その犯罪を実行しようという準備段階があるわけですね。準備段階は、これは予備なわけですね。そして、その準備段階を進んで実行行為、犯罪の実行に進むわけですね。だから、今の刑法は、逆に行くと、実行行為の前が予備、予備の前は陰謀、それから内面の意思、こういうふうになっておると思うんです。

 そうしますと、実行に資する行為というのは、新たに今の刑法の中に、陰謀、これは共謀と見ていきます、共謀とそれから予備の間に新たな概念を入れるのか。そういう感じで私は受け取っておるんですけれども、そういうふうに受け取ってよろしいですか。

漆原委員 日本の刑法が、犯罪の成立のために故意と実行行為が必要だという点は、全くそれが日本の刑法体系の原則だという点は、私もそのとおりに思っております。

 今回の共謀罪は、政府案によれば内心の合意だけで成立するということでございますから、それではやはりいかがなものかな、私もそう思っておりまして、何らかの外形的な行為が必要だということをこの委員会でも何回か質問させていただきました。

 ただ、共謀罪の成立と処罰要件は別だろうなというふうに思っておりまして、今回は、共謀罪は共謀自体で犯罪としては成立する。しかし、内心の問題と紙一重という、先ほど答弁がいっぱいありますけれども、内心の事由をもって処罰する可能性があるというふうにも批判されている。したがって、私は、そういう批判に加えて刑法の原則から考えても、日本の全体の法体系からいって、何らかの外形的事実をもって処罰するというふうにした方がいいのではないかなと思って、我々は、犯罪そのものは共謀によって成立しますけれども、処罰要件として客観的な行為が必要だ、資する行為が必要だというふうに修正をしたわけでございます。

細川委員 そうしますと、共謀とそれから準備、この間の行為概念ということではないですね。新たな概念をつくり出すということなんでしょうか。それとも、こういう概念はそもそも入れるのではないということですか。そこをちょっとはっきりしてください。

漆原委員 犯罪の成立要件としてそういう概念を入れるものではないというふうに思います。

細川委員 今お聞きすると、犯罪の要件として入れるのではないということでありますけれども、犯罪の実行に資する行為、その行為ということを条文の中に入れてきているわけでございますから、そこをどう位置づけるか。単なる処罰条件ということで、刑法のこれまでの体系とは全く関係ないというようなことは、私は、どうも今の刑法の体系にはなじまないのではないかと思いますし、その概念がどうもよくわからない、あいまいだ、これは共謀罪の処罰範囲を限定化するものとも言えないというふうに思います。

 今質問したように、凶器を購入すれば、具体的な犯罪と関連をすれば、これは予備で十分足りますし、例えば日常行われるような、さっきのようなホテルの予約だとか、この前にも審議で出てまいりました預金の引き出しとか、あるいはレンタカーの予約というようなことについてはなかなか立証もしにくい、密接に犯罪とかかわるということではなかなか立証もしにくいだろうと思います。

 そうしますと、最初に共謀でもう犯罪は成立する、こういうことでございますから、まず、共謀があったらその共謀の事実で逮捕して、その後に実行に資する行為を捜査の中で発見していくというか見つけ出す、こういう処罰条件を後づけするようなことにならないのか、この点についてはいかがですか。

漆原委員 先ほど申しましたように、実行に資する行為というのはあくまでも処罰条件でございまして、犯罪として処罰されるのは共謀自体であります。

 したがって、共謀が行われたという嫌疑があるのであれば、犯罪が行われた嫌疑があるということになりますが、しかし、共謀との関連性が明らかではなくて、実行に資する行為が行われるかどうか不明な段階で逮捕、捜索を行った場合には、その後に実行に資する行為が行われるということはまず想定できないわけであります。そうすると、当該行為と共謀との関連性を明らかにできなければ起訴することはできません。

 したがって、現実の問題としては、そのような捜査が行われるということは考えられないというふうに思います。

細川委員 それでは、まず、共謀だけでは逮捕はできない、資する行為がなければ逮捕はできないんですよね。そうですね。

 では、もう一回聞きます。共謀のほかに、加えて実行に資する行為が科罰条件としてあるわけですね。その資する行為が現実になければ逮捕はされないんですね。逮捕できるんですか。

漆原委員 犯罪が成立し処罰できるかどうかという問題と、いつ逮捕するかという問題はちょっと別問題だと思うんですね。共謀だけで犯罪が成立します。したがって、逮捕をすることは法的に可能と考えます。

 先ほど申しましたように、実行に資する行為がなければ事実上起訴できません、犯罪が成立しませんから。処罰できませんから、起訴できません。したがって、実行に資する行為が行われる前段階で逮捕や捜索をするということは、後にその集団が実行に資する行為を行うということは考えられないわけでありますから、したがって、共謀の段階で逮捕をすることは現実問題としては考えられないというふうに申し上げました。

細川委員 そうしますと、起訴はできないけれども、理論上は逮捕できる、こういうことですか。

 そうしますと、まず逮捕しておいて、それで、後づけで実行に資する行為があったかどうかを捜査でどんどん調べていって、それを見つけていく、こういうことが可能になるんじゃないですか。僕はそこを心配しているんです。

漆原委員 証拠との関連をどういうふうにするかということは、これは一般の犯罪と全く同じことでございまして、この問題に特有な問題ではないというふうに思っております。あくまでも、実行に資する行為がなければこれは処罰できないわけでありますから、実行に資する行為があったかどうかということが問題なんだというふうに思っております。

細川委員 時間もあれですから、私は、その点が大変重要な問題点だということを指摘しておきたいというふうに思います。そういう実行に資する行為がなければ、これは逮捕できないんじゃないかと私は思うんです。

 まあ百歩下がって、理屈としては共謀でできるとしても、実行に資する行為が、ホテルの予約もそうだし、お金をおろす行為も資する行為だ、レンタカーを予約する行為も、これも資する行為だということになると、どんどんどんどん簡単に、せっかく資する行為というふうにやっても、安易に逮捕されやすいんじゃないか、しやすいんじゃないか、僕はそう思って、これは、この資する行為そのものがあいまいではないかということを指摘しておきたいと思います。

 その点、では、民主党の、実行に資する行為に対して予備となっているんですけれども、これはどうですか。説明してください。

平岡委員 先ほども少し申し上げましたけれども、我が国の裁判例でいきますと、予備行為というものについての意義というのは、「実行行為着手前の行為が予備罪として処罰されるためには、当該基本的構成要件に属する犯罪類型の種類、規模等に照らし、当該構成要件実現のための客観的な危険性という観点から見て、実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要する、」というのが一つの東京高裁の裁判例でございます。

 ということで、先ほど来の実行に資する行為というのは、日常的な行為を後から、これが資する行為だということで強引に結びつけていく、これを結びつけていくときにまた自白を強要する、そういう危険性もあるというふうに私たちとしては思います。

 そういう意味では、この実行に資する行為というのが余りにも範囲が広過ぎるというようなことで、我々としては、先ほどの裁判例でも申し上げましたように、ある程度、判例とか、あるいは今までの学説等で確立されてきた概念である予備行為というもので律するべきであるというふうに考えて、予備ということを要件とさせていただいたところでございます。

細川委員 それでは次に参りますが、では、この共謀罪の対象となる団体についてこれからお聞きをします。

 与党案では、政府案の団体要件に新たに加えまして、その団体を「その共同の目的が重大な犯罪又は別表第一に掲げる犯罪を実行することにある団体」、こういうふうに限定をされております。こういうふうに団体を限定することによって、一般の会社とかあるいは市民団体あるいは労働組合の活動は共謀罪の対象にはならない、こういうことは提案理由でも述べているわけでございます。

 しかし、私はどうも、こういう限定をしたとしても、疑問に思います。というのは、そもそも、団体で犯罪そのものを共同目的とするような、そんなことを言う団体なんというのは世の中に一つもないと私は思いますよ。むしろ普通の会社組織あるいは民間団体、そういうのを名目で、あるいはそういうことを装って犯罪を行っている団体もあるのではないかというふうに思います。

 そこでお聞きをいたしますけれども、一見、団体が適法に普通の活動を行う、外見からはよくわからない、それが犯罪を目的としているかどうか、これはだれがどのように判断をするんでしょうか。法務省にお聞きします。

大林政府参考人 第一義的には捜査機関が判断をして捜査を行い、最終的には裁判所が犯罪が成立するかどうかを判断するということではないかと思います。

細川委員 それは最終的には裁判所でしょうが、ここでちょっと具体的にお聞きをしたいと思いますが、犯罪を目的にした団体、こういうふうに判断するのはなかなか微妙な問題もあろうかと思います。特に、この法を適用して捜査をしていく上においては、都合よく、犯罪を目的にした団体というふうに判断することになるのではないかというような心配もございます。

 そこで、与党の提案者に具体的に聞きますから、端的に答えていただきたいと思います。

 ある労働団体が団体交渉をしていく上に、どうしても社長を長時間にわたって拘束する、そういう事態が予測をされた、そういうふうな前提でございます。この場合、事前にこれを捜査当局が察知いたしまして、その社長を逮捕監禁する共謀があったということで捜査を開始する、こういう場合に、この団体は犯罪を目的とした団体と言えるでしょうか。

漆原委員 組織的犯罪処罰法における団体の共同目的というのは、結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的、すなわち、構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的をいうというふうに解釈されております。

 したがって、団体の共同の目的が何であるかについては、継続的な結合体全体の活動状況などから見て、客観的に何が構成員の継続的な結合関係の基礎になっているか、これは社会的通念に従って判断されるべきだと思っております。

 一般の労働組合や民間団体のように、構成員の継続的な結合関係の基礎が正当な活動を行うことにある団体につきましては、仮に、幹部らがある特定の時期に、ある特定の犯罪に当たる相談をした場合であっても、そのことだけで直ちに重大な犯罪等を実行することがその団体の構成員の継続的な結合関係の基礎になっているということが認められるわけではないというふうに思っております。

 したがって、今委員御指摘のような事例につきましては、共謀罪として処罰されることはないものというふうに考えております。

細川委員 それでは、重ねて、この団体という前提でお聞きをしますが、この団体が政治活動なども行って、公安当局からは、犯罪を犯す大変強いおそれがあるというようなことでこの団体を見ていたと仮定しますと、こういった場合は、公安当局が共謀罪で捜査に着手をして逮捕令状を請求するようなことはあるんでしょうか。

漆原委員 要するに、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにあるかどうか、これは基本的には証拠のいかんによるものだというふうに考えております。したがって、収集された証拠からそういう共同の目的の有無ということを判断していかなければならないものだと考えています。

 したがって、具体的な事実関係にもよりますけれども、表向きは労働組合、正当な目的を有している、裏では別なことをやっているというふうな、労働組合の実態がなく、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体であるということが証拠によって客観的に認定されるような場合であれば共謀罪が成立することもあり得るというふうに考えますが、先ほど申しましたように、その認定はあくまでも収集された証拠によって客観的になされることが必要でありますから、委員が今御指摘のように公安当局ににらまれているということだけでは、そういう判断にはならないんだろうというふうに思います。

細川委員 それでは、もう一つ例を出しますが、例えば民間の会社で、リフォームなんかをやっている会社で、ずっと仕事をそこでやってきたわけですけれども、これが今度、なかなか経営がうまくいかなくて、それで、例えば年寄りなんかをだまして必要もないのにリフォームをさせていく、こういうことで収益をその会社が上げていく、こういうのをきちっと取締役とか役員会で合意していた、確認していた、それでやっていた場合なんかは、これは団体になるんですか。

漆原委員 昔、正当な営業活動をやっていたものが、その途中からリフォーム詐欺をやろうではないかという会社ぐるみ、そういうふうになった場合どうかというお尋ねでございます。

 これも事実関係によりますけれども、先ほど申しましたように、ノーマルな会社、ノーマルな団体がある時期、ある特定の犯罪をやったこと、それ自体をもって会社全体が重大犯罪を行うことを共同目的にしたというふうに直ちに認定できるものではないというふうに先ほど申しましたが、今委員御指摘の場合も、やはりこれは、その段階において、その会社全体がそういう重大な犯罪を行うことを共同目的とする結合体であるのかないのかという事実をそこで判断する以外ないというふうに考えております。

細川委員 だから、犯罪を目的とする団体かどうかの判断というのは、実態に即して考えなきゃいかぬと思いますが、なかなか難しいだろうと私は思いますが、そういうときに捜査当局の恣意が働かないように、しっかり限定をした方がいいのではないかというふうに私は考えております。

 この点について、では、民主党の修正案についてはどうですか。

平岡委員 お答えいたします。

 先ほど、漆原委員の方から、共同の目的ということで説明がありました。その中では、構成員が継続して結合しているという、構成員の継続的な結合関係を基礎づけている根本の目的だというふうに答弁がありましたけれども、まさに共同の目的ということが一般の人たちにそう理解されるのであれば、私はそれなりの定義だろうというふうに思うんですけれども、ここに「組織的犯罪対策関連三法の解説」という法務当局が書いたものがありますけれども、ここでは、共同の目的というのは継続性を要件としているわけではないんですね。結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的ということでありまして、継続性ということは全く要件になっていない。

 こういうような状況のもとでこのような法律を規定するということは、まさに委員が心配しておられるようなことがあり得る。一般的には通常の企業とかあるいは団体のような状況にあるけれども、あるとき共同の目的を持って犯罪行為を行うということもあり得る、それが本当に排除されているのか、非常に私としては疑問に思っているところでございます。

 そういう意味で、我々の修正案については、そうしたそもそも犯罪を実行することを目的としない通常の団体が組織的犯罪処罰法の適用対象とならないことを明確化するために、犯罪を実行することを主たる目的または主たる活動とする多数人の継続的結合体が今回の共謀罪の対象となり得る団体というふうに定義をさせていただいたところでございます。

細川委員 歴史を振り返ってみますと、戦前の治安維持法でも、最初は共産主義者のみを対象にする、こういうことだったんですけれども、その治安維持法がひとり歩きをしまして、結局、自由主義者までが投獄されるというような事態になったことは、皆さんも御承知のとおりでございます。そうした法律のひとり歩きを許してはいかぬというのは、これはもう、ここの委員各位は共通の認識だろうというふうに思います。

 だからこそ、こういう法律を制定する際には、極力権力の行使は謙抑的になるように当初から法律にも明記して、しっかりそこはやっていかなければいけないというふうに考えておりますが、大臣、きょう私の質問でいろいろと議論をしてまいったところ、お聞きをされて、この与党案が十分に謙抑的なのかどうか、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

杉浦国務大臣 先生がいろいろと御懸念を持っておられることは承知しております。

 今先生、治安維持法の例を出されましたが、戦前の治安維持法は別にして、この法律は、テロ対策で条約を国際的な場でつくったわけですね。そこで日本も参加して条約をつくった。国際間で協調してテロ対策をやろうじゃないかというのが出発点でございまして、その国内法をどう整備するかという点は、治安維持法と比べると根本的に違うと思うんです。この点だけは申し上げさせていただきますが、ただ、先生の御懸念、前々からお伺いしておりますし、今度の与党修正案もそういった懸念を踏まえて出されてきたものだと理解しております。

 国会審議も、これは七国会目になります。実質審議が行われましたのは、前回の選挙後の特別国会、ここで、参考人質疑四時間を含めまして、十七時間三十分質疑を行っております。解散前の通常国会、平成十七年ですが、そこでは七時間質疑を行っております。そこでもさまざまな懸念が表明されました。与党からも表明されておる。そういったさまざまな御懸念を踏まえまして、今度、与党の修正案が出されてきたものでございます。

 具体的には、まず「団体の活動として、」に言う団体を、その共同の目的が重大な犯罪を実行することにある団体に限定する。一番わかりやすい例は、振り込め詐欺集団でしょう。彼らは詐欺をやることを目的として結合しているわけですから、そういう団体、組織暴力団も当たるかと思いますが、そういうふうに限定することによりまして、一般の団体の活動についてはおよそ共謀罪の対象にならないことを条文上に明確にする。

 二番目は、実行に資する行為を処罰条件として付加することによりまして、共謀しただけの段階では処罰を差し控えて、さらに進んで実行に向けた段階に至ったことのあらわれである外部的な行為が行われた場合に限って初めて共謀罪として処罰する。

 三つ目には、共謀罪等の規定の適用に当たっては、万が一にも思想及び良心の自由を侵したり、団体の正当な活動等を制限するようなことがあってはならないという運用上の留意事項を条文に明記したということなどをその内容とするものでございます。

 このように与党修正案は、法案の共謀罪が成立する範囲をさらに明確かつ限定的なものとするものでございます。その結果、より謙抑的な内容のものになっていると評価できると私は思っております。

細川委員 終わりますが、この法案につきましては、もう少し刑法そのものの客観主義、主観主義、刑法の原則と例外、これが今回の改正で逆転をするのか、従来どおり実行行為があってから処罰をするという原則、これが守られていくのか、これをお聞きしたかったところでありますけれども、他の委員の質問に譲りまして、私の質問は終わります。

石原委員長 次に、石関貴史君。

石関委員 民主党の石関貴史です。

 細川委員に引き続いて質問をさせていただきます。

 まず、法務大臣にお尋ねをいたしますが、先ほど細川委員への御答弁にもありました、大変長い時間を国会の中でこの審議に費やしてきた法案でございます。にもかかわらず、反対そして不安の声というものが大変大きな声となっている。連日、マスコミでもそういった国民の不安というものが報道されておりますし、ますます私は日々その声が大きくなっているというふうにとらえておりますが、法務大臣は、どうして、これだけ審議を尽くしてきて、今に至ってますますこういう声が大きくなっている、不安の声がさらに大きくなっているというふうにお考えでしょうか。どうしてこんな状況になってしまっているか、お尋ねをいたします。

杉浦国務大臣 この法案の共謀罪につきましては、例えば、友人同士で犯罪について相談しただけで処罰されるのではないかとか、あるいは正当な市民団体、労働組合とか会社の活動についても対象になるのではないかなどといったさまざまな御懸念や御批判があることは承知しております。

 しかし、この法案の共謀罪は、重大かつ組織的な犯罪を実行することについて、具体的かつ現実的な合意をした場合に限って初めて成立するものでございまして、犯罪の実行について談笑したり、これを漠然と相談しただけでは、この罪は成立いたしません。

 また、法案の共謀罪には、厳格な組織性の要件が付されていることから、このような団体の活動とは無関係に犯罪の共謀をしたとしても共謀罪は成立しませんし、先ほど申し上げましたが、一番わかりやすい例は振り込め詐欺集団ですね。彼らは詐欺をやることを目的に結束しておるわけですから、そういう犯罪実行部隊のように犯罪行為を実行するための組織を持つことのない一般の会社や労働組合、そういった団体に属する人が犯罪の共謀をしたとしても、やはり共謀罪は成立いたしません。

 このように、法案の共謀罪の成立する範囲は極めて限定されているものでございますが、普通の社会人の方が普通の生活をしている立場からいうと、全く関係ない、処罰は考えられない内容でございますが、先生御指摘のような御懸念がまだあるということは、この点に関する正確な内容がまだ十分に伝わっていないということであろうかと思います。

 私ども法務省といたしましては、法案の共謀罪について国民の皆様方に正確に御理解していただけるよう、もちろん、この国会を通じて、審議を通じて国民の皆様に御理解いただくのはもとよりのこと、一層努力していかなきゃいけないと思っております。

 私も、何回か記者会見で具体的に詳細に御説明いたしましたし、また、新聞記事、例えばこういう投書があったというような投書の記事とか、あるいはいろいろ新聞に出た場合に、事務当局に指示しまして、誤解を解くようよく事態を御説明するように、そういう指示はして、事務当局もやってくれております。ホームページにも載せておるわけでございますが、今後とも、こういった点についての広報、私どもも努力を充実させていかなきゃいかぬ、こう思っております。

石関委員 大臣が御答弁いただいたような答弁は、繰り返しこれまで政府の方からなされてきたわけでありますが、それを繰り返し繰り返しここでやられてきても理解がされていないということを私は問題にして、今、お尋ねをしているわけであります。

 実際、マスコミの報道だけではなくて、そういった投書や何かもあるということでもありますし、この国会の周辺でも反対の集会ですとか活動というのが実際行われております。大臣もごらんになっていると思いますが、こういったものを見て、大臣はいかがお考えですか。今のように、わからない人がこういった活動を行っているんだ、そのように大臣としては認識をされているんでしょうか。

杉浦国務大臣 まだ反対する方がおられるということだと思います。

 国民の皆さんの一〇〇%の賛成を得ることはできないかもしれませんが、しかし、我々としては、中身としてはちゃんとした法律でございますので、できる限り、先ほども申し上げましたが、あらゆる機会をとらえて御理解いただくように努力してまいりましたし、これからも努力していかなきゃいけないと思っております。

石関委員 私、何もマスコミの報道が正しいとか、そういうことを言っているわけではありません。マスコミも、必ず正しい報道だけしているということではなかろうというふうに思います。ただ、そういった皆さんの声、マスコミの報道等を私も踏まえて、自分でも、これは国民の間に十分な理解まで到底至らない、そういった認識を私は持っております。

 これは、けさの朝日新聞の社説でありますが、この朝日新聞の立場も、共謀罪の必要性というのは認めているというふうにはっきりとうたってあります。

 その中で、「政府案より対象を絞ろうとする姿勢は評価したい。」と、与党修正案について言っております。「しかし、条文はやはり抽象的でわかりにくい。拡大解釈の余地が消えたとは言えない。 それに比べ、民主党の修正案はすっきりしている。対象とするのは「組織的犯罪集団」とはっきり書く。対象となる犯罪は国際的なものに絞る。罪を問われるのは、共謀した者が犯罪の具体的な準備をした場合に限る。 国際的な犯罪集団に対象を絞ろうという姿勢が明確になっている。「自分たちも共謀罪の対象にされるのではないか」と心配する市民は少なくなるだろう。」というふうにこの社説には書いてあります。

 大臣、先ほど与党修正案の評価をされましたが、こちらには違った評価がされているということであります。

 また、これは実際、マスコミや活動を私自身も目にするだけではなくて、大変いろいろな文書も送られてまいります。これが私は、国民の皆さん、あるいは弁護士さん、かかわる方々の本当の声だというふうに思っております。

 一つの例ですけれども、本当にすごい量が毎日送られてきています。これは、四月二十七日付、京都弁護士会の会長さんの声明であります。犯罪の実行行為どころか予備行為さえなくても、黙示の合意も含めて合意さえあれば処罰の対象となる、共謀の概念が極めてあいまいである、近代刑法の原則である罪刑法定主義を覆すというふうに言い切っています。また、自首減免規定についても、これは密告社会になる、監視社会化を進めるということで、こういった大変な懸念が表明をされております。

 先ほど投書や何かを読まれるということですが、こういった声、直接大臣の耳にはどのような形で届いているんでしょうか。投書を読まれるとか、あとは役所の方々がまとめたものを大臣は目を通されているということなんでしょうか。ほかに大臣が直接国民の皆さんの声をどのような形で聴取をされているか、どのように認識をされているか、もう一度お尋ねをしたいと思います。

杉浦国務大臣 けさの朝日新聞の記事は拝見しておりませんですけれども、新聞報道、テレビ等で報道されたこと、それから、何よりも委員会で御審議いただいてきたことがございます。そういったことなどから、まだ懸念が完全に払拭されていない現実ですね、しかし実際には、御心配ないですよと言いたいんです。本当に心配要りませんというふうに申し上げたいんですが、そういう声が聞こえてまいっております。

 そういう印象の話で申されるんですから、私の体験で申し上げますと、私、法務委員長のときに、組織犯罪対策三法というのを成立させました。あのときはごうごうたる反対が起こりましたね。ですけれども、修正に修正を加え、今の法律ができたわけですけれども、あれができてもう十年ぐらいになるでしょうか。組織暴力団にはあの法律が適用されて効果を上げております。

 今度の与党修正、先ほど私の考えを申させていただいたんですが、今までの審議の経過等を踏まえまして、さらに具体的、明確に、運用の指針まで法に書き入れるというようなことで、この条約の実施のための法律の修正としては非常に明確な修正の案だ、その御懸念をさらに払拭する内容だと私は思っております。

石関委員 心配要りませんよと言いたいというお言葉でありましたけれども、記者会見を行ってたびたびお話をされているということでありますが、そのほかに、大臣は、この法案を通そうということで具体的にはどのような努力をされてきたんでしょうか。こちらで御答弁をされる、記者会見を何度か開くということで、ただ、それでも一向に国民の不安が取り除かれないという状況であります。大臣としては、何かほかに具体的な行動というのはこれまでとられてきたんでしょうか。

杉浦国務大臣 この国会で御審議を願ってまいったわけですし、今も御審議を願っておるわけですが、国民の代表である国会議員の皆さんに御議論願って、一刻も早くこの法律を成立させていただきたいと思っております。

石関委員 その国民の皆さんの代表である国会議員の相当多数が納得できないという状況であろうと思いますし、また、先ほど、印象でというふうにおっしゃいましたが、印象ではなくて、具体的に行動されている方々がたくさんいる。そして、報道の皆さんもそのことを的確に、国民の皆さんの不安というのを伝えていらっしゃるというふうに私は思います。

 しかし、先ほど、前の例をおっしゃられまして、修正に修正を重ねて国民の皆様の理解を得る努力をして、そして通った法案ということをおっしゃいましたが、具体的に、それではこの法案についてもそういう努力をされたらよろしいんじゃないでしょうか。

 修正案というのが出て評価をされておりましたが、それでもまだあいまいだ、これでは不安だという声が出ている現状でありますので、私は、大臣まさに先ほどおっしゃったように努力を重ねて、修正に修正を重ねて、多くの皆さんが納得ができる、皆さんの代表である我々国会議員が納得ができる、この法案はぜひ通そう、そういう形に私はすべきであると思いますが、こういった努力は今までされていないというふうに考えてよろしいんですか。おっしゃったとおりに私はやっていただきたいと思います。

杉浦国務大臣 私は、政府提出の法律案でも御懸念はない、こう考えておりますが、もちろん立法権は国会に属するものでございますから、今、政府・与党側から修正案を御提案いただいておるわけですが、さらに明確にする、懸念を払拭するという趣旨で修正が御提案されておるわけでございますが、その御提案については、より謙抑的な内容を盛り込んだものだというふうに思っております。

 ちなみに、先ほど申し上げました組織犯罪対策三法も、政府提案に対する議院による修正でございました。

石関委員 御懸念がないようにということですが、御懸念が大変あるので、その立場で御質問申し上げているということであります。

 継続になっている案件でございましたが、政府・与党はこの法律の改正の成立というのを大変急いでいる、性急に行っているというふうな印象を受けております。今回の国会において大変急いでいるということですが、法務大臣にお伺いしますが、今国会でこの法律が成立しないということになった場合はどういう問題が生じるんでしょうか。

    〔委員長退席、松島委員長代理着席〕

杉浦国務大臣 この法案が成立するまでは、我が国は、国際組織犯罪防止条約やこれに附属する人身取引に関する議定書なども締結することはできません。

 国際組織犯罪防止条約につきましては、既に百十九カ国もの国々が締結しております。我が国においても、既にその締結について、平成十五年の通常国会において、自民、公明、民主、共産党も賛成いただいて、条約の締結は承認していただいておるわけであります。我が国としても、この条約を早期に締結して、百十九カ国、これらの国々と手を携えて、協力して組織犯罪に立ち向かっていくことが必要だと思っております。

 また、この法案は、我が国において、暴力団による組織的な殺傷事犯ですとか、何回も触れておりますいわゆる振り込み詐欺の事犯など、組織的な犯罪による重大な被害が発生しておりますが、それを未然に防止する、国民の安心と安全を確保することにも資するものでございますし、最近、ウィニーを通じた情報流出などで問題となっているコンピューターウイルスの作成等に適切に対処するために必要な法整備を図ろうとするものでもございますが、その成立がおくれれば、このような治安に関する取り組みもおくれることになってしまうわけでございます。

 したがって、法務省としては、この法案につきまして、既に七回目の国会、審議時間は、第百六十二回通常国会、去年の通常国会で七時間、解散後の特別国会で参考人質疑四時間を含めまして十七時間三十分にわたる御審議をちょうだいしているわけでございますが、できる限り早急に成立させていただきたいと考えております。

石関委員 それだけ審議をしてきて、不安で不安でしようがないということを問題にしているわけであります。

 今の同じ質問になりますが、外務省にお尋ねをいたします。

 条約は承認をされているということでありますが、実質的な国内法の整備についてこれだけ大変な問題になっているということであります。今国会でどうしてもこの改正案が通らないということになった場合にはどんな問題があるんでしょうか。外務省にお尋ねをします。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 今、法務大臣からも御答弁がございましたけれども、既に締結につきまして国会で御承認をいただいております国際組織犯罪防止条約、それを補足いたします人身取引議定書、密入国議定書、そしてサイバー犯罪条約、これらにつきまして締結できないということになります。また、それ以外にも、現在国会にお出ししております腐敗防止条約、これも同様でございます。

 そういう意味で、これらの条約を通しました国際的な協力というものをきちんと早急に進めていくためにも、条約について御承認いただいているものですから、ぜひ国内法についても早急に議決いただきまして、実施できるような形にさせていただければと強く思っております。

 以上です。

石関委員 各国とのいろいろなやりとりがあるんだと思いますけれども、具体的にお尋ねをしたのは、今回、この国会で通らないということになったらどんな問題、そんなに大変なことですか。お尋ねをいたします。

辻政府参考人 繰り返して申し上げて恐縮でございますけれども、既に条約について国会で御承認をいただいております。したがいまして、行政府といたしましては、できるだけ早くこれを国際的に実施できる状態にするのが外務省として当然望むものでございますので、したがいまして、早急に国会で国内法の議決をいただきたい、そういうことでございます。

石関委員 この条約の趣旨はよしということで承認をしているというふうに私は理解をしておりますが、実質、国内法の整備をするときに大変な問題があるので、これはそんなに性急に、無理無理に通すようなものではないのではないかなというふうに私は思います。

 それでは、各国の状況についてはどのようになっているか、各国の批准状況、特にG8についてはどうなっているかをお尋ねします。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の締約国は、先ほど法務大臣からも御答弁ございましたけれども、昨日現在で百十九カ国でございます。

 G8の中では、カナダ、フランス、ロシア、米国、英国が既に締結済みでございます。我が国を除きます残りのイタリア及びドイツにつきましては、既に国内の手続を了して、現在締結手続を残すのみ、そういうふうに承知してございます。

 近隣アジア諸国について申し上げれば、中国、マレーシア、フィリピンが既に締結済みで、韓国は現在締結に向けた作業を行っている、タイも同様に国内担保法の整備に努めている、そういう状況だと理解しております。

 以上です。

石関委員 各国の状況はわかりましたが、やはり国内の状況、それから、これだけの問題があるということはしっかり踏まえてやることが第一義じゃないかなと私は思います。

 先ほど申し上げましたけれども、この条約の趣旨、国際組織犯罪防止条約の趣旨を考えたときには、性質上、国際的な犯罪、いわゆる越境性の要件を課すというのが妥当であろうと考えておりますが、これを不要とすると、処罰の対象を条約の趣旨を逸脱して拡大するということになるのではないか、私はこういう懸念を持っておりますが、これについてはどのように大臣はお考えでしょうか。

杉浦国務大臣 国際組織犯罪防止条約では、その三十四条二項で、国内法で共謀罪を新設するに当たっては、国際的な性質とは関係なく定めると明確に規定しております。国際性を要件とすることは認めていませんので、今回共謀罪を新設するに当たり、国際性を要件とすることはできないものと考えております。

 そもそも、国際組織犯罪防止条約が犯罪化を義務づけている共謀罪などは、組織犯罪対策上有効性があることから、これらを犯罪とする罰則を各国が標準装備すべきものであると考えられたため、その犯罪化が義務づけられたものと考えられるところでございます。

 そして、実際には、ある犯罪について、その背後に国際的な犯罪組織が存在するなど、国際的な犯罪組織が関与していると考えられるものの、しかし、個別具体的な犯罪行為だけを見ると、単独犯であったり、犯罪行為自体が一国内にとどまるため、性質上の国際性を認めがたいような場合があることなどを踏まえますと、仮に犯罪化に当たって国際性を要件といたしますと、対象となる犯罪事象が組織犯罪の実態に照らして不当に狭くなる上、早期かつ的確な検挙、処罰が困難となり、ひいては、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するという条約の趣旨、目的を没却してしまうことになりかねません。

 また、実際上の問題としましても、仮に国際性を要件とした場合には、例えば、我が国の暴力団が外国の対立するマフィアの構成員を実行部隊を使用して殺害するという共謀をした場合には国際性が認められ、これを検挙して処罰することができるのに対し、同様に、我が国の暴力団が国内の対立する暴力団の構成員を実行部隊を使用して殺害するという共謀をした場合には国際性が認められず、これを検挙して処罰することができないこととなりますが、組織犯罪対策としてそのような結果となることは不合理であると考えられます。

石関委員 それでは、与党の修正案の提出者に同じことをお尋ねいたします。

 どうしてこの修正案には越境性の要件というのは入れていないんでしょうか。

漆原委員 条約上の制約があって入れていない、入れなかったということでございます。

石関委員 それでは、この条約三十四条の二項についてお尋ねをします。

 この経緯についてですが、この三十四条二項というのは初めから入っていたものか、途中で入ったということなのか。どこの国が提案をしてきたのか。反対する国はどうだったのか。どういう交渉の経過でこういう形になってしまったのかというのをお尋ねします。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 今、四点御質問があったと思いますので、もしカバーしていなければ御指摘いただきたいと思います。

 まず、三十四条二項の規定がいつ入ったかという御質問でございますけれども、これの交渉となる原案といいますか、もとの案文につきましては、平成十年七月に開催されましたアドホック委員会第十回会合において提案されたものでございます。したがって、一番最初からあったものではございません。

 二番目の問いでございますが、三十四条二項はどこの国の提案かということですが、これを提案しましたのはフランスでございます。

 三番目、三十四条二項に反対する国はあったか。当該条文については、ごく一部に反対する国はございましたけれども、我が国を含む多数の国がその内容を支持して採択されたものでございます。

 四点目でございますが、どのような交渉経過で行われたのか、こういう御質問でございますけれども、条約交渉におきまして、組織的な犯罪集団への参加、犯罪収益の洗浄等の犯罪化に際して国際性等の要件をつけると、本来犯罪化すべき対象を不当に狭めるおそれがある、こういう意見が一方にございます。他方で、犯罪の対象となる範囲を安易に拡大することは適当でないという意見もございました。

 しかしながら、累次交渉の結果、法の抜け穴を巧みに利用してさまざまな国において活動を展開している組織的な犯罪集団の性格にかんがみれば、国内法において犯罪化する行為については、国際性等の要件をつけるべきではないということが多数でございまして、それで基本的に合意となり、最終的に現在の条文になった、こういう経緯でございます。

石関委員 この交渉の過程にあった非公式協議でございますけれども、平岡委員もたびたび質問をされてきた内容でありますけれども、やはりこの協議の内容というのは法案の内容に密接につながっているものでありますから、私は、これは国民の皆様に納得をいただく、国会の中でも納得をいただくという中では公開をすべきものではないかなというふうに思います。改めて、この内容の公開というものをすべきと考えますけれども、これについてはどうお考えですか。

辻政府参考人 今御質問にございましたけれども、この点につきましては前国会においても御議論のあったところでございます。

 御指摘いただきました非公式協議の内容を公開すべきでないかということにつきましては、非公式協議に関する公電全体及び非公式協議の内容を記載した部分につきましては、公開しないことを前提として各国で交渉を行ったという発言が記載されてございます。したがいまして、こうした性格の文書を開示する場合には、他国との信頼関係が損なわれるおそれがあるため、開示していません。ただし、公開された文書等については既に開示してきております。

 なお、不開示部分を含めました条約の審議経過につきましては、本条約に関係する法案の御審議のためという事情を踏まえまして、昨年の七月八日及び十月十九日の法務委員会理事懇談会において、書面にて配付しております。とりわけ、昨年十月十九日に配付したものは、審議経過につきまして相当十分に説明したものだと思っております。外務省としてはできる限りのことをさせていただいたものだと思っていますので、御理解いただきたいと思います。

 以上でございます。

石関委員 配付のものでは何が何だかわからないということでこのことを要求しているわけであります。また、各国との外交の信頼というのも、もちろんこれはしっかりと確保していかなきゃいけない問題でありますが、そもそも、こういうことでは国民の皆様の信頼がまず全然得られないだろうと思っております。

 続いて、条約の留保についてお尋ねをします。

 これは可能であるという立場でお尋ねをしますが、既に平岡委員の方から、この可能性についてはしっかりとただされております。

 当時の小野寺政務官、御指摘のとおり、本条約に対し留保を付すことは可能というふうにおっしゃっております。しかし、本条約については、通常国会で、留保を付さずに締結することにつき国会の承認をいただいている、行政府としてはという答弁をされておりますが、これについて、こういう考え方があります。

 政府は国会で留保を付さないで承認を求めて、承認がなされているというふうにしているが、留保は政府の行為であって、国会が留保を付さずに承認している条約についても、政府が国内法化の過程で必要と考えれば、留保は当然に可能である。政府の答弁は間違っている。こういう指摘がありますが、これについてはどのようにお考えですか。

    〔松島委員長代理退席、委員長着席〕

辻政府参考人 後段の部分につきまして、必ずしもどういう御意見だかつまびらかでないので、まず小野寺政務官から御答弁したことについて、若干補足させていただきたいと思います。

 小野寺政務官から御答弁申し上げましたのは、この条約自体につきまして、留保を一般的に付すること自体は禁止されていないという趣旨でございます。他方で、同時に、小野寺政務官からも明確に御説明申し上げましたけれども、条約法条約第十九条の規定に従って、この条約の趣旨、目的に反するようなものはできませんということも御説明申し上げました。

 したがいまして、この条約の国際性の要件というものについて留保を付せるかという御質問につきましては、明確にそういうことはできませんと御答弁してございます。それは、けさほどの伊藤政務官から御答弁したことも同様でございます。

 二番目の点、もし御質問の文書自体の趣旨をつまびらかでなければ補足でまた答弁いたしますけれども、留保につきましては、法制局長官も以前答弁していますように、これは行政府が行うものでございます。他方で、留保規定に基づかない留保を条約につきまして行うときには、国会にお出しするときに議案の中で留保を付して締結いたしたいという形をいたしておりますので、通常そういう形で国会の御理解を得ている、そういうことでございます。

 以上でございます。

石関委員 このことについてはよく理解ができました。ありがとうございました。

 自首減免についてお尋ねをします。

 これは、対象犯罪について広くこの自首減免を認めるということにした場合には、密告をよしとする社会的な風潮というのが引き起こされる、国家の品格どころではなくて、大変これは健全な社会を阻害するという風潮を起こしてしまうのではないか、スパイ国家になってしまう、私は、このことによって大変よくない風潮というのが我々の国に蔓延してしまう、こういう懸念を持っております。

 法務大臣は、そんなことはないんだ、大丈夫ですよということなのか、同じような懸念を大臣もお持ちでいらっしゃるのか。この自首減免の措置について、大臣のお考えをお尋ねします。

河野副大臣 最近ですと、公益通報者保護制度とか、あるいは談合のときに先に手を挙げてもらう独占禁止法の改正とかございました。そのときにも同じような議論をされる方がいらっしゃって、公益通報を認めると密告を是とする社会的風潮を惹起するとか、あるいは、談合のときに手を挙げさせると健全な社会の形成を阻害するおそれがあるから、そういうのはいかぬのではないか、そういう御議論がございました。

 石関さんがその両案についてどういうお考えだったか私はわかりませんが、今回の組織的な犯罪共謀罪の自首減免の規定は、自首による刑の減軽または免除を必要的なものとすることによって自首を奨励し、重大な犯罪が実行されて甚大な被害が生ずることを未然に防止しようという政策的配慮に基づくものであります。ですから、私はこれは非常に必要なものだと思っております。

 法案の共謀罪には厳格な組織性の要件が付されておりますので、例えば暴力団による組織的な殺傷事犯、悪徳商法のような組織的詐欺事犯、暴力団の縄張り獲得のための暴力事犯の共謀など、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀に限って処罰されることになり、国民の一般的な社会生活上の行為が共謀罪に当たることはあり得ません。

 したがって、共謀罪を新設し、自首した場合の刑の減免の規定を設けたからといって、御懸念のように密告を是とする社会的風潮を惹起することにはならないと考えております。

石関委員 非常に声だけ明快だったというふうに思いますが。

 共謀罪規定が内容の規定がある、こういう不安が大変広まっていると最初から申し上げているわけでありますが、いわゆる内心の自由を初め、国民の自由と権利を不当に制限するおそれがある、こういう不安であります。私は、配慮規定を法文上明記をしておく必要があるというふうに思いますが、この観点について大臣はいかがお考えでしょうか。

杉浦国務大臣 細川委員がいつも御指摘なさいますように、国家権力の行使は謙抑的でなければならない、そのとおりでございますし、ましてや、捜査機関がその権限を濫用して恣意的な捜査を行うことがあってはならないということも当然のことであると考えております。

 他方で、政府案の共謀罪については、いわゆる内心の自由などを侵害するおそれがあるのではないかといった御懸念が示されていることも承知しております。

 本来、政府案でもそういったおそれについては全く御懸念には及ばないんですが、与党修正案におかれまして、共謀罪の規定を適用するに当たって、万が一にも思想及び良心の自由を侵すようなことがあってはならないという運用上の特に留意すべき事項が定められている、御提案されていると理解しております。

 法務省といたしましては、この法案が成立して施行されることになった際には、そのような趣旨をも十分に踏まえまして、万が一にも憲法の保障する基本的人権が不当に侵害されることのないように、適切な運用に努めてまいりたいと考えております。

石関委員 次に、第七条の二、証人等買収の罪についてお尋ねをしたいと思います。

 刑事事件において弁護人が証人等に面談する際に交通費とか日当を払う、私は、これは通常行われているものだというふうに認識をしています。こういった常識の範囲で行われている弁護活動、こういった活動について犯罪視するような傾向が捜査機関に出てきてしまうのではないか、こういう懸念を持ちます。このことによって、弁護活動、刑事弁護に対する萎縮効果というものが生じてしまうのではないかな、こういう懸念を持っておりますが、これについてはいかがでしょうか。私は、大変な問題になろうというふうに思います。

大林政府参考人 今委員御指摘のように、捜査にもちょっと絡む問題でございますので、私の方からお答えさせていただきます。

 証人等買収罪は、自己または他人の刑事事件に関し、虚偽の証言をすること等の報酬として金銭その他の利益を供与した場合等に成立するものです。したがって、証人等買収罪が成立するためには、このような行為をすることの報酬として証人等に金銭その他の利益が供与等をされることが必要であり、御指摘のように、弁護人が証人予定者と面談する際に交通費や日当等を支払うなど仮に証人等に対して何らかの利益を提供したとしても、それが偽証等をすることの報酬でない限り、証人等買収罪が成立することはないと考えられます。

 このように、証人等買収罪は、弁護人による正当な弁護活動としての証人等への働きかけまでも処罰するものではなく、この罪を設けることにより弁護人の活動に萎縮的な効果をもたらすことはないと考えております。

石関委員 それでは、与党修正案の提出者にお尋ねをします。

 政府案の御説明、御答弁、今のとおりでありましたが、与党の提出者の方はどのようにお考えでしょうか。

漆原委員 この証人等買収罪そのものにつきましては、私は基本的には政府の今の御答弁と同じ考えを持っております。したがって、報酬として金銭その他の利益を供与されるということですから、委員がおっしゃったような日当だとかあるいは食事だとか、いろいろなのがありますね、これは全然問題にならないというふうに考えております。

 しかしながら、当委員会でも御指摘がありました、いろいろな弁護活動に萎縮効果をもたらすものではないと私は思うんですが、もたらすものではないかというふうな御懸念がありましたから、修正案において、いやしくもそのようなことが生じることのないように、弁護人としての正当な活動を制限することがあってはならないということから、運用上特に留意すべき事項を条文化、条文で明記したという趣旨でございます。

石関委員 刑事訴訟というのは当事者主義という原則がある、当事者主義の原則というものに基づいていると思いますが、刑事訴訟の一方の当事者である検察官の方が、みずからの意に沿わない弁護側の証人への働きかけについて刑事罰を加える、こういったことというのは行き過ぎというふうにも言えるのではないかと思います。検察官の方が、意に沿わない弁護側の証人への働きかけについて刑事罰を加えるということ、私は行き過ぎだというふうに認識をしておりますが、この点についてはどのようにお考えですか。

杉浦国務大臣 証人等買収罪によって犯罪とされますのは、証人等に対しまして偽証をすることなどの報酬として財産上の利益の供与をする行為でございます。その処罰の対象となる者は、そのような利益を供与した者であって、その利益の供与を受けた証人にはその犯罪は成立いたしません。

 また、そもそも、偽証等をすることは現行法上も偽証罪、刑法百六十九条等の犯罪に当たり得るものでございまして、仮に、弁護人がこのような行為を行わせるために利益を供与した場合であって、供与を受けた者が現実にこれらの行為に及んだときには、このような弁護人の行為については、現行法においても偽証教唆等として処罰され得るものでございます。

 このように、証人等買収罪は、証人自身を処罰するものではなく、また弁護人による正当な弁護活動としての証人等への働きかけを処罰するものでもございませんから、御指摘のような批判は当たらないものと考えております。

石関委員 それでは次に、第六条の二の関係、組織的な犯罪の共謀、そして七条の二、証人等の買収、今のお話であります。この適用についてお尋ねしますが、心の中で思ったことを処罰するということと紙一重ではないかという指摘がありますし、私もこういった懸念を抱いております。この審議の中でもいろいろな例が出されました。居酒屋等での戯れの会話が処罰されるのではないか、こういう懸念が多くの皆さんに持たれているのは、私は事実だろうと思います。また、会社や労働組合等の団体の正当な活動を妨げてしまうのではないか、こういった懸念もございます。

 思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由、並びに勤労者の団結、団体行動をする権利、その他憲法の保障する国民の自由と権利の確保、この調整をどのように行うか、大変重大な問題であると思いますが、法務大臣、この点についてお尋ねします。

杉浦国務大臣 先ほど来何回も御答弁申し上げておりますけれども、先生がいろいろおっしゃられた御懸念は、私やそれから修正案の提案者から御説明したところで払拭されていると思います。

 権力の行使は謙抑的でなければならない。捜査機関がその権限を濫用して、労働組合でございますとかNPOですとか会社等、正当な活動を妨げるようなことがあってはならないのは当然のことであります。どうも、そういう御懸念がまだ一部にあるということも事実でございます。

 そういう御懸念を払拭する努力を私どもしていかなきゃいけませんが、政府提案の法律でもその点は十分措置しておるところだと思いますけれども、与党修正案におきまして、共謀罪や証人等買収罪の規定を適用するに当たって、万が一にも団体や弁護人の正当な活動を制限するようなことがあってはならないという運用上の特に留意すべき事項が提案されているものと理解いたしております。政府原案にございます規定の趣旨は、さらにこれで明確にされたというふうに思っております。

 法務省といたしましては、この法案が成立して施行されることとなった場合には、そのような趣旨をも十分踏まえまして、万々が一にも、憲法の保障する権利や自由が不当に侵害されることのないよう適切な運用に努めてまいる考えでございます。

石関委員 冒頭の朝日新聞の社説でございますが、最後、「共謀罪をつくるにあたっては、乱用の余地を残してはならない。国民の権利を大きく侵害しかねないからだ。対象を厳しく限定した民主党案を軸に、国会でじっくり論議してもらいたい。」というふうに書かれております。

 私は、まだまだ国民的な議論が足りない、採決にはとても早過ぎてそういう段階ではないというふうに思います。このことを強く強調いたしまして、私の質問を終わりにします。

石原委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時四十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時五十九分開議

石原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 共謀罪を含む条約刑法については、この通常国会は冒頭から与党の修正案というものが出されたということで、私たちとしては、基本的にはこれは法案が提出し直されたというふうに思っておりますし、そして私たちも本来であれば対案という形で示すということが筋かもしれませんけれども、委員会の流れの中で、抜本的な修正案ということで、対案的修正案という形で出させていただいたというふうに思っておりまして、ようやく我々としては審議を始めてきたということでございますので、これからもしっかりとこの法案の問題点についてこの委員会で審議をしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。

 そういう意味で、まず最初に、前特別国会のときにも議論をした話でありますけれども、大臣以下、政治家のそれぞれの役職の方々もかわっておられますし、委員長もかわっておられるということなので、改めて我々の要求というものをしっかりと考慮していただきたいということで、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、条約の交渉経緯ということで、今回の法案について言うと、さまざまなところで、もともとの条約の案の提案から最終的に決まるまでの間、かなり大きな変遷といいますか、どうも我々としては理解できない日本国政府の対応もあったように思っております。

 そういう意味で、TOC条約のアドホック委員会の第七回会合、第九回会合及び第十回会合に関する公電を開示していただくことを改めてここで要求いたしたいと思います。

遠山大臣政務官 お答え申し上げます。

 先生御発言の中で御指摘ございましたけれども、昨年十月の本委員会におきまして外務省から答弁した内容と余り変わりはないわけでございますけれども、御指摘いただきました公電のうち、非公式協議に関する公電全体及び非公式協議の内容を記載した部分には、公開されることを前提としないという条件のもとで各国が行った発言が記載をされております。このような性格の文書を開示した場合には、他国との信頼関係が損なわれるおそれがあるため、開示をしておりません。ただし、それ以外の文書につきましては既に開示をしております。

 なお、不開示部分も含めた条約の審議過程については、本条約に関係する法案の御審議のためという事情を踏まえ、昨年の七月八日及び十月十九日の法務委員会理事懇談会におきまして、書面にて配付をいたしました。とりわけ昨年十月十九日に配付したものにつきましては、審議経過が十分にわかるようなものにするように努力をしたところでございます。外務省としてできる限りの対応をさせていただいたものでございまして、その点、御理解をいただきたいと思います。

平岡委員 私は前から、公開しろと言っているんじゃないんですよね。この委員会を秘密会にしてでも、要するに、この法案審議をする私たちが、その前提とする条件というのが一体どういうふうになっているのか、このことを確認する意味でも見せてほしいということを言っているんですね。

 そういう意味では、私は、この委員会を秘密会にしてでも、ぜひこの公電を我々審議する委員がチェックできるようにしていただきたい、このことについて委員長にお願い申し上げたいと思います。ぜひ秘密会で公電を私たちが確認できるようにしていただきたい、このことをお願い申し上げます。

石原委員長 御要望は承らせていただきましたので、後刻、理事会でさらに協議を進めたいと思います。

平岡委員 それでは、理事会で協議させていただくということで、実は法務大臣に確認したいんです。

 法務大臣は、この法案を今回大臣になって担当されたということでありますけれども、我々は、やはりこの法案を提出するトップの方が、提出はされなかったわけですけれども、審議する政府当局としてトップの方が、この公電の中身をしっかりと確認された上で、このままの法案でいい、そういうような判断をされているんだろうと思いますけれども、この公電はちゃんと自分の目で見られて、確認をされましたですか。

杉浦国務大臣 公電は読ませていただいております。

平岡委員 その上で、読んだところで、どういうふうにみずから御判断をされましたですか。

杉浦国務大臣 公電の内容の詳細を私の口から申し上げることは適当ではないと考えておりますが、今外務大臣政務官が言われたように、外務省において作成し、詳細、二度にわたって御説明された概要でよく内容が伝えられている、同内容のものだというふうに承知しております。

平岡委員 とりあえず、それを前提にしまして、まず共謀罪の話に入りたいと思います。

 この共謀罪を創設する際に法制審議会で審議がされていますよね。これもこの委員会で何回も確認されているんですけれども、そのときの当局側の説明というのは、国内的な立法事実があるかないかといったようなところについて、この法案、今回立法しようとするものについては、国内的にそのニーズにこたえるという形はとっておりませんで、条約締結のために必要な犯罪化等を図っていきたいということを基本に考えているわけでございます、こういうふうに述べています。

 ということで、条約締結のために必要な犯罪化等を図っていくんだ、こういうことが書いてあるんですけれども、このもととなったTOC条約の作成の背景、趣旨というのは一体どういうものだったんでしょうか。これは外務政務官にお聞かせ願いたいと思います。

遠山大臣政務官 お答え申し上げます。

 平岡委員御存じのとおり、この条約は、法の網をかいくぐって暗躍する国際的な組織犯罪に効果的に対処するということを目的としております。具体的には、各国の法制度を整備し、法執行活動を強化するとともに、国際的な組織犯罪の捜査や訴追における国際協力を促進することを目的としております。

平岡委員 法務大臣は、この法案を提出するに当たって、TOC条約の作成の背景、趣旨というのはどのように理解されておられますか。

杉浦国務大臣 ただいま遠山大臣政務官から申されたように理解させていただいております。

平岡委員 法務大臣は、さっき同僚議員の細川委員からこの点のことを聞かれまして何か答弁されておられるんですよね。今答弁書が来たようですけれども、もう一度、このTOC条約の作成の背景、趣旨については大臣としてどのように御理解されているか、答弁願います。

杉浦国務大臣 国境を越えて組織的に敢行される国際的な組織犯罪の脅威が深刻化していることは、先生も御案内のとおりでございます。サミットの声明等でも繰り返し指摘されておるところであります。

 一方、我が国におきましても、集団密航事犯、覚せい剤の密輸事犯、クレジットカードの事犯、ピッキング用具を使用した窃盗事犯など、国際的な犯罪組織によって敢行される各種の犯罪が多発しておるところでございます。

 国際組織犯罪防止条約は、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し、これと戦うための協力を促進することを目的としております。そして、このような目的を達成するため、重大な犯罪の共謀等の一定の行為を犯罪とすることを義務づけるほか、広範な分野にわたる協力に関する規定を設け、締約国間における組織犯罪対策のあらゆる協力の促進を図ることとしております。

 このような国際的な組織犯罪の脅威という現実や、このような犯罪を防止し、これと戦うことを目的として、そのためのさまざまな方法等を定めているこの条約の内容にかんがみますと、我が国としても、この条約を締結する意義は大きなものがございます。これにより、司法、法執行の分野における一層強化された国際協力のもとで、国際的な組織犯罪から国民を守ることができるようになるものと考えております。

平岡委員 大臣、整理されたものを読んでいただいたのでお気づきかと思いますけれども、さっき細川委員の質問のときに大臣は、この法案というのは、国際条約でテロを防止する、テロに対抗するための法案なんだ、条約なんだということを言っておられるんですけれども、それは随分ごまかしなんですよ、今まで。テロだテロだということで国民の恐怖心をあおってこの法律を通そうとしている、そこにまず、姿勢がおかしいというふうに私は言いたいのです。

 つまり、何を言おうとしているのか。もともとこの条約というのは、国際組織犯罪ということで、主な例として言われていたのは、薬物や銃器の不正取引、盗難品の密輸、詐欺、横領等の企業犯罪や経済犯罪、通貨、支払いカード等の偽造、汚職、脱税や資金洗浄等の金融犯罪、売春、不法移民、児童、女性の密輸、こういったようなことに対抗するためにこの条約はつくられ、そしてその国内法制化が今行われようとしているわけです。

 これは後でまた議論しますけれども、実は、皆さんがテロだテロだと言って、大量虐殺があるようなときに何でこういうことを設けちゃいけないんだと言われますけれども、そういう犯罪はしっかりと国内法の中で、本当に共謀罪が必要ならば、それを手当てするべきなんですよ。こういう、そもそもつくられている条約の目的が違うものを持ってきて、これはテロに役に立つんだから、テロ対策なんだからといって強引につくろうとしている、この姿勢こそが今問われているというふうに私は思います。

 そういう意味で、今回のこの共謀罪を含む条約刑法の国内法制化に当たっては、国内の基本的な法律の原則、特に刑事法の原則というものをしっかりと守りながら条約に対応していくという姿勢こそが求められているというふうに私は思います。事実、この条約の中では、三十四条の第一項で、国内法の基本原則に従った立法化をしていくんだということを規定しているところであります。

 そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、我が国の国内法の基本原則というものは、法益侵害の結果が生じたものについて処罰するということが原則であって、中には非常に重大な犯罪については未遂あるいは予備というもの、さらには陰謀、共謀といったようなものを処罰するものもありますけれども、基本原則はそうではないということであります。

 そういう意味では、共謀罪とか陰謀罪というのは、我が国の法制の中では例外的に設けられているにすぎない。TOC条約三十四条第一項に基づいて、国内法制化する場合には、我が国の国内法の基本原則に従った立法化をすべきであるということは、私はこれは大原則だと思います。大臣、この点について御所見をお伺いします。

杉浦国務大臣 御指摘の国際組織犯罪防止条約第三十四条一項に言われております「自国の国内法の基本原則」とは、各国の憲法上の原則など、国内法制において容易に変更することのできない根本的な法的原則を指すものと解されております。

 一方、我が国の刑事法におきましては、現実に法益侵害の結果が発生した場合はもとより、いまだそのような結果が発生していなくても、その危険性のある一定の行為を未遂犯や危険犯として処罰することとされているほか、特に重大な罪や取り締まり上必要がある犯罪については、予備罪や共謀罪等として、実行の着手前の行為をも処罰することとされております。

 そして、法案の共謀罪は、すべての犯罪の共謀を一般的に処罰するものではございません。重大な犯罪であり、かつ、厳格な組織性の要件を満たす犯罪の共謀に限って処罰の対象とするものでございます。

 したがって、法案が定める組織的な犯罪の共謀罪を新設することが我が国の国内法の基本原則に反するということはないと考えております。

平岡委員 その辺の認識は、何か憲法とかに書いていないからいいんだとかいうふうなことでは決してないというふうに私は思います。

 これまで長い間、もう何十年間あるいは百数十年間にわたって日本の刑事法制というものがどういう原則に基づいてやってきたのか、このことこそ、本当に法務省、もともと刑事法制を所管してきた省庁としては、しっかりと理解し、そしてそういう方針に基づいてやってきたんだろうと思います。それを今回大幅に狂わせてしまうということについては、私はこれは大いに疑問があるということを申し上げて、次の質問に入りたいと思います。

 組織犯罪集団の話でございます。

 条約上は組織犯罪集団ということで規定してあるわけでありますけれども、実は、私がかつてこの委員会で質問しましたし、いろいろ同僚議員も質問いたしましたけれども、官庁における例えば裏金づくりの話について聞いたことがあるんですね。そのときに、当時は南野法務大臣でありましたけれども、南野法務大臣は、この官庁における裏金づくりの話についてはこういうふうに言っていたんですね。そもそも官庁は正当な目的を持って活動している団体でありますので、仮に、たまたまその幹部が組織ぐるみで裏金をつくることを共謀したとしても、このような犯罪行為を行うことが官庁の共同の目的と相入れないことは明らかでございますから、これの、共謀罪の適用となる団体にはならないんだということを言っておりました。

 しかし、私は念のため、その後、質問主意書でこの点についても確認をいたしましたら、全くそれとは違うことが書いてあるんですよね。全部読むと大変だから、ちょっとそのポイントだけ読みますと、

 お尋ねのような集団

これは官庁のことですけれども、

 「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるもの」に該当すると認められるか否か、共謀に係る重大な犯罪に当たる行為が、「団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するもの」としてこれを実行するための組織により行われるものに該当すると認められるか否か、二人以上の者によりこのような犯罪に当たる行為を遂行することについての具体的かつ現実的な合意がなされたと認められるか否か等により決せられることとなるものと考えている。

 つまり、官庁による裏金づくりについても、今私が読み上げたような話として適用対象になり得るんだということを質問主意書で明確に言っているわけですよね。

 大臣、この点、どうですか。委員会における答弁の中身と質問主意書に書いてあること、これは違うんじゃないですか。大臣、どうですか。これは質問通告してありますから、大臣。

大林政府参考人 法案の共謀罪は、重大な犯罪であって、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行われる犯罪または団体の不正権益を獲得等する目的で行われる犯罪を共謀した場合に成立いたします。

 基本的には、御指摘のような事例について共謀罪が成立するか否かは、個別具体的な事実関係のもとでの状況で決まるものと考えられます。

 御指摘の委員会の答弁の際の、今お話が出ました一つの例示として、警察署のような官署において組織ぐるみの裏金づくりがなされている場合につき共謀罪の成否についてお尋ねがありましたので、具体例に即した答弁をしたものでございます。

 他方、御指摘の質問主意書では、官庁における組織ぐるみの裏金づくりの共謀が共謀罪に該当するのかという一般的なお尋ねをいただいたものと理解して、共謀罪の成否に関する一般的な説明をしたものでございまして、その内容に食い違いはないものというふうに考えております。

平岡委員 ちょっと、局長はもう答弁しないでいいですよ。ちゃんと大臣とやりましょう。

 私はあのときに、この質問を見てもらったらいいのですけれども、官庁とまず言っているんですよね。だけれども、警察署というふうな名前を挙げると失礼だから、警察署とかというふうに言わないでくれというふうに言われていますのであえて言いませんけれどもということで、だけれども官庁ということでやっているんであって、だからそれは質問主意書の中でも官庁と書いてあって、何も私の質問は、警察署という具体的な名前が挙がっているからこういう答弁になり、官庁という抽象的なものでしかすぎないから、この対象になるかならないかわからないといったような答弁をするというのは、それはおかしいですよ。

 大臣、どうですか。官庁というのは今回の皆さんの、政府の法案でいきますと、これは共謀罪の対象になる団体ということもあり得るわけですね。どうですか。

杉浦国務大臣 官庁そのものが団体に当たるとは思いません。犯罪行為をやるのを目的として成立するわけではございません。

 ただ、南野大臣の答弁を詳細に承知しておりませんけれども、この法案の共謀罪というのは、重大な犯罪であって、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行われる犯罪または団体の不正権益を獲得等する目的で行われる犯罪を共謀した場合に成立するわけでございます。

 そして、団体とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的または意思を実現する行為の全部または一部が組織により反復して行われるものをいい、団体の活動とは、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものをいうわけでございます。組織とは、指揮命令系統に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体となって行動する人の結合体をいい、共謀とは、二人以上の者が犯罪を遂行することについて具体的かつ現実的な合意をすることをいうと解されます。

 したがって、御指摘のような事例につきまして共謀罪が成立するか否かは、個別具体的な事実関係のもとで、ただいま申し上げたものに該当するか否かによって決まることになるものと考えられます。

平岡委員 今の答弁で明確になりましたね。官庁でもこの共謀罪の適用が可能性としてあるんだということを今大臣は明確に言われましたね。いろいろなことを総合的に判断してやるんだ、こういう答弁ですね。

 それで、今回の修正案、与党修正案でいくと、これはどうなるんですか。今政府が答弁されたように、官庁でも裏金づくりのようなケースの場合、共謀罪に該当するケースがあるかもしれない、総合的に判断するんだという話だったんですけれども、与党の修正案だとこれは大丈夫なんですか。

早川委員 ただいま法務大臣の御答弁を伺いながら、やはり一般の国民にはなかなかわかりにくい説明ぶりになってしまうかな、紛れがあってはならないというふうに思っております。

 いずれにしても、ある団体が組織的犯罪集団であるか否か、これは実際の事件をもとに個々具体的な状況に基づいて判断をしなければならないわけでありますけれども、一般論として申し上げますと、まず、法案の共謀罪が成立するためには、共謀に係る犯罪が団体の活動として行われるものであることが必要であります。今回の与党修正案において、ここに言う団体を、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体だけに限定するものであります。

 そして、組織的犯罪処罰法において、「「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるものをいう。」と定義をされているところであります。この「共同の目的」とは、結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的、すなわち構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的をいうと解されております。

 したがいまして、御指摘の官庁というものが、こういった重大な犯罪を行うことを、継続的な結合関係の基礎になっている目的を持っている団体というふうには解されないというふうに考えております。

平岡委員 今、与党修正案の提案者の方から答弁がありましたけれども、大臣、そうしますと、今回の与党修正案で政府案の考えている中身が変わって、政府案のままであれば官庁も共謀罪の対象となる団体になり得るけれども、与党修正案ではならなくなったというふうに理解していいんでしょうかね。大臣、いかがでしょうか。

杉浦国務大臣 官庁そのものがこの法律に言うところの団体に当たるものであるとは思いません。

 ただ、お尋ねの趣旨が組織的に裏金づくりをするとかそういう趣旨であれば、個別具体的にその人の結合体について検討した上で結論が出されるべきものだと思っております。先ほど申した構成要件に該当する団体であるかどうかというのが問題になると思います。

平岡委員 では、例えば、ある宗教団体が自分たちの財政基盤を強化するために脱税をしようということで脱税をしておりました、毎年毎年やっておって、来年度もやろうということで意思決定をしました。これは共謀罪になるんですか。

 先ほどの大臣の話だと、これはなるんですね。大臣、それでよろしいですか。これも通告してありますから。

杉浦国務大臣 あくまでも一般論としてしか申し上げられませんけれども、政府案のこの共謀罪が成立するためには、個別具体的な事実関係のもとで、共謀に係る重大な犯罪に当たる行為が団体の活動として行われるものでなければなりません。そして、団体の活動とは、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものをいうわけでございます。

 したがって、犯罪を行うことが、団体、すなわち共同の目的を有する多数人の継続的結合体の意思決定に基づくものに該当するか否かの判断に当たりましては、形式的にいかなる意思決定手続によったかということだけではなくて、より実質的に判断されるべきものであり、そのような犯罪行為を行うことが多数人の継続的結合体として有する共同の目的と相入れないものではないかという点もあわせて検討されるべきであると考えられます。

 そこで、このような考え方によれば、一般論としては、正当な共同の目的で活動している団体については、たまたまその団体の幹部が犯罪を行うことを共謀したとしても、通常はそのような犯罪行為を行うことはその団体の共同の目的とおよそ相入れないと考えられますことから、その団体については、「団体の活動として、」という要件を満たさないことになると考えられます。あくまでも一般論であります。

平岡委員 今のを聞いていて、私が例示したケースが共謀罪の適用がある団体となり得るのかなり得ないのか、わかった人はほとんどいないと思いますよ。私は、前半を聞いていて、これはやはりなるんだなというふうに聞いていましたね。だから、それぐらいあいまいなんですよね。

 仮に、与党修正案の方々の修正が、今大臣が言われたものをさらに厳格にしていって、適用にならないものだというふうにしようとしているものであったとしても、この法を適用しようとしている法務当局は、なるかもしれないというような話で言われたのでは、これは一般の市民の方々はもう怖くてしようがないですよ、この法案。この与党修正案の方々が考えておられるのと全然違う方向で答弁がされているんじゃないですか。

 どうですか、与党修正案の方々は、大臣の答弁を聞かれて、何かこれ、我々が修正しようとしていることと違うんじゃないか、そういうふうにお感じになりませんでしたか。ちょっとそこの、例えば宗教団体が脱税をずっと繰り返しておりました、その中で、今度、来年度も脱税をしましょうということを決めたら、これは共謀罪になるんですか、どうですか。

早川委員 これは私自身が去年の通常国会で質問させていただいて、だれが聞いても、だれが読んでも同じような解釈になるようなことを考えなきゃいけないということで、多様に解釈される余地があるのではないだろうかということで、与党の理事あるいは委員等からも、弁護士資格を持っておられる同僚からそういう発言も相次いで出たところであります。

 そういう観点から、趣旨として、政府提案のこの内容もそういったものを意図しているというふうには御説明をいただいたんですが、なかなかその辺が腹に落ちないというところから、より構成要件を明確化し、かつ、限定をする、こういう趣旨でもって今回の与党修正案を提案させていただいた次第であります。

 そういう観点で今御質問があったことを整理申し上げると、まず、個別具体的な事情に基づいて、その団体が、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体に当たるかどうかということを判定しなければならないわけでありますけれども、特に重大なことは、ある特定の時期に、ある特定の犯罪に当たる活動をしたことだけで直ちに、その団体の共同の目的が重大な犯罪等を実行することであると認められるわけではなく、いまだ重大な犯罪等を実行することが構成員の継続的な結合関係の基礎になっているとまでは認められない場合には、要件に当たらないということになるわけであります。

 以上、御答弁申し上げます。

平岡委員 いや、全然わからぬ答弁ですね。これは何が問題かというと、共同の目的ということをどのように理解するかにもよるんだと思うんですね。

 そこで、大臣、ちょっとお聞きします。

 私の後援会の方々が日帰りのバス旅行に行くということにしました。俗に言う団体旅行です。その団体の共同の目的というのは一体何ですか。

杉浦国務大臣 先生の後援会でしたら先生がよくおわかりだと思いますが、犯罪じゃないですね。

平岡委員 いや、私はそんなことを聞いていない。団体旅行の団体の共同の目的というのは何ですかと聞いているんですよ。(発言する者あり)いや、そんなことじゃない。

 団体旅行の団体の共同の目的は何ですか。

杉浦国務大臣 参加された皆さんがどう理解されているかによるんじゃないでしょうか。

 私の後援会の場合でしたら、親睦を深めるとか、私の大臣室を見るとか、そういう共通のものがありますけれども、そういうのが目的じゃないでしょうか。

平岡委員 まさに大臣が言われたように、親睦を深めるというのもあるかもしれませんし、旅行に行きたいからみんなが集まって、旅行愛好家みたいな気持ちで行かれる、それが共同の目的かもしれませんね。

 つまり、この共同の目的というのは、先ほど継続的結合体とか難しい言葉を使って言っておられますけれども、別に、ある時期にぱっと集まった団体でも共同の目的というのはあり得るんですよ。それにもかかわらず、何か無理をして、この共同の目的というのは継続的な結合体の何たらかんたらというのでなければいけないような、そんなことを言っているからわかりづらくなってしまうんですね。

 そこで、その点についてちょっと確認をしたいと思います。

 実は、与党の修正案が世の中に何となく出てしまって、そのときに、団体の活動というものに括弧書きして、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体である場合に限る、こういうふうに書いてある。これを見たある大学の教授が、ここの委員会にも参考人質疑で来ていただいた人が、この方は、この「その共同の目的」というこの「その」というのは、団体の活動というのがその括弧の前についていますから、団体の活動を指しているんだと。活動だから、要するに活動の共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体であるならば、それは、その団体がたまたま何かしようとしている、何らかの活動をしようとしているという場合だって適用になるんじゃないかということを言っているんですね。

 まさに、ある意味では正論ですよね。団体の活動というのに括弧して、その団体の活動の共同の目的がというふうにこれは読める。これは大学の教授でもですよ。一般の人たちじゃないですよ。法律を専門に勉強している大学の教授や刑法の教授がこういうことを言っているんですよ。

 何か誤解がありますか。何か間違っているんですか。なぜこんなことになるんですか。

早川委員 今回の与党修正案によりまして、政府案における共謀罪の成立要件の中の「団体の活動」という文言の後に、御指摘のとおり、「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体に係るものに限る。」という文言を追加いたしました。ここに言う「その共同の目的」の「その」というのは、直前に置かれております「団体の活動」という文言の中の「団体」を指すものであります。お尋ねの「その」とは団体のという意味でございますので、御理解をいただきたいと思います。

平岡委員 私なら信頼関係に基づいて理解してもいいかもしれませんけれども、一般の人は、さっき言った大学の教授ですら、これは活動の共同の目的というふうに理解して、その活動に共同の目的があると。確かに、バス旅行へ行く、そういう活動に共同の目的があるんでしょう、先ほど大臣もいみじくも言われたように。そういう状況の中でのこの改正というのは、私は非常におかしいと。何がおかしいかというと、やはり共同の目的ということをどう理解するかなんですね。

 例えば、先ほど私は答弁のときにも言いましたけれども、二十五日のこの委員会での答弁の中で、いみじくも提案者の方々が、これは漆原先生かもしれませんけれども、共同の目的というのはどういうことなのか、そのために構成員が継続して結合しているという、構成員の継続的な結合関係を基礎づけている根本の目的である、こういうふうに言われているんですけれども、大臣、さっき私がバス旅行の団体の共同の目的は何ですかと言ったときに、こんなに、継続的な結合関係を基礎づける根本の目的というようなところまで限定して使われている言葉ではないということは容易におわかりだろうと思うんですね。

 そして、これは法務省の組織的犯罪処罰法の制定にかかわった担当官が書いた解説書を見ると、同じ法律の中で共同の目的ということを定義して、「結合体の構成員が共通して有し、その達成又は保持のために構成員が結合している目的」、まさに、継続的な結合関係を基礎づけている根本の目的というようなことではなくて、もっと一般の人が理解しているような言葉で使われている。そのことを同じ法律の中で混同されるように使っている。これはまさにおかしいと私は思いますね。

 大臣もそういうふうに思われませんか。この与党修正案ではどうもおかしいなというふうにお感じになりませんか。

杉浦国務大臣 私は感じないですけれども、厳密に言おうとするとわかりにくい表現に、わかりにくいというか、こういう表現になるわけで、例えば振り込め詐欺集団を考えていただいたらわかりますが、何人か、三人か五人か結合して、彼らの目的は振り込め詐欺を実行するという目的で役割分担をして行動しておるわけなんです。彼らの目的は詐欺という犯罪行為です。それ以外の何物でもございません。

 先生御指摘の共同の目的で、引用された解説のところにございますが、団体とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的または意思を実現する行為の全部または一部が組織により反復して行われるものをいいます。

 これは振り込め詐欺の集団あるいは組織暴力団を考えたら非常によく理解できるんですけれども、そして、この共同の目的とは、結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的、振り込め詐欺をやることなら詐欺をやること、すなわち構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的をいうと解されていますということでございまして、与党の修正案が括弧書きで「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体に係るものに限る。」と限定されたのは、政府原案の趣旨をさらに明確にしたものだというふうに理解しております。

平岡委員 先ほど同僚の細川委員も言っていましたね。共同の目的ということで犯罪行為を行うことにある団体というようなことを、そういうことを掲げている団体というのは一体どれだけあるのか。

 例えば、先ほど言いました振り込め詐欺をするような会社というのも、私たちは振り込め詐欺をすることを目的とした会社ですよというようなことは一切ないですよね。リフォームの詐欺だってそうですよね。私たちはリフォーム詐欺をやる会社です、団体ですというようなことはないですよね。やはり彼らは、自分たちは営業を行って、そこでもうける。ただし、その営業をするときに、違法な行為が含まれていたり、あるいは違法な手段によって利益を上げようとしているというだけの話ですよね。

 つまり、私が言いたいことは何なのかというと、どうも目的という言葉が、本当に目的なのか、それとも何かやろうとしている活動あるいは事業なのかということは、一般の人たちにとってみれば、これは非常にわかりづらいんですよね。

 例えば、商法では、会社の目的という言葉が出てくるんですよね。では、この会社の目的というのは何を指しているのか。これは定款記載事項ですね。これはやはり法務省の民事局の方々が書かれた解説書を見ると、会社の営もうとする事業というのを書けと書いてあるんです。会社は営利を目的として、お金をもうけることを目的としているけれども、定款に書かれる目的というのは営もうとしている事業を書くというふうにも言われているわけです。

 先ほども、私は、目的という言葉を使って大臣にお聞きしましたけれども、国語辞典で目的というのを引っ張ってきたら、事をなし遂げようとする目当て、こう書いてある。つまり、目的という言葉はこの日本の中ではいろいろなことに使われていて、先ほど言った共同の目的という言葉がこの法律の中に、同じ法律の中に二つあるけれども、それぞれ指している意味が違う、こういう状況になっているんですよ。

 例えば、先ほど大臣も引用されました、この法律の中で定義してある共同の目的というのはあるわけではありませんけれども、共同の目的という言葉が使われているのは法律の第二条の団体の定義規定の中にありますね。共同の目的を有する多数人の継続的結合体というのが団体である、後にも、さらにいろいろ定義がつきますけれども。

 ということは、この共同の目的という言葉の中には継続的結合体という言葉は要するに意味していないからこそ、継続的結合体という言葉が後から出てくるんですよ。それにもかかわらず、与党提案者は、共同の目的という言葉の中に、その団体の構成員の継続的な結合関係を基礎づけている根本的な目的ということを共同の目的の中に意味を込めて書いてある。これは全く意味をなしていないですよ。共同の目的ということを、継続的な結合関係を基礎づけているというのが、どこにもこんなことは出てこない。一般の常識にも反している。こんな与党の修正案は、私は、本当に恥ずかしくて、世の中に出したらどんなことになってしまうか。

 大臣、こんな修正案ではだめだということをここで明確に言っていただければと思いますよ。

早川委員 平岡委員も法制局におられた弁護士、法律家であります。私も、自治省で、役所にいた当時、やはり法案の作成作業をやり、三十年余り、弁護士として、あるいは東京弁護士会の役員としてさまざまな立法提言作業を行ってまいりました。法律用語の定義というのをどういうふうに明確なものにするか、これは大変な作業でございます。

 まず、平岡委員の御指摘の中で、一つ御訂正をいただいた方がいいのかなと思いますけれども、目的の中に、例えば結合云々ということよりも、その団体という存在の中に、継続的な結合関係、こういうのがあるわけであります。

 例えば、これは四月二十五日の委員会の審議での答弁と、それから、組織的犯罪処罰法二条の団体の定義規定の中での「共同の目的を有する多数人の継続的結合体」、この規定ぶりとの整合性の問題が質問をされました。

 もう既に御説明申し上げたところでありますけれども、現行の組織的犯罪処罰法において、まず、「「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるものをいう。」と同法の第二条第一項で規定をしているところであります。

 そして、この規定に言う「共同の目的」とは、結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的、すなわち構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的をいう、こういうふうに解するわけであります。

 修正案の提案者としては、法令の解釈というのは、やはりその提案の、いわゆる立法の趣旨に基づいて理解をしていただく、これが立法府としての当然の役割ではないかと思います。もちろん、成立した法案について、その書きぶりから、さまざまな解釈、拡大解釈あるいは縮小解釈、いろいろなことがあるわけでありますけれども、その場合に大事なことは、今回の修正案の提案というのは、あくまでも構成要件を明確化し、かつ、限定をしていこう、こういう趣旨の中での修正であります。

 私どもの、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体の意義についての答弁につきましては、団体を定義する規定に言う共同の目的についての現行法の解釈に基づいたものであって、整合性がとれているものであり、御批判は全く当たらないと思っております。

杉浦国務大臣 政府がこの法案で考えております共同の目的も、今、修正案提案者のお述べになったものと全く同じでございます。

平岡委員 まあ、長々と答弁して、言葉でごまかすというか、全然、聞いていても、何かよくわかりませんでしたね。私は、そんなことで一般の市民の方々が理解していただけるとはとても思えませんね。

 そういう意味で、もうちょっと具体的に聞いていきたいと思いますけれども、皆さんが言っておられる、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体というのはどんな団体なんでしょうかということで、幾つか例を挙げてみますから、これが含まれるのか含まれないのかということを御答弁いただきたいと思いますね。

 重大な犯罪等を実行することだけを共同の目的とする団体、これはどうですか。

早川委員 先ほども申し上げましたとおり、繰り返しますけれども、共同の目的とは、構成員の結合関係の基礎になっている目的、すなわち、まさにそのために構成員が継続して結合しているという、構成員の継続的な結合関係を基礎づけているその根本となる目的でなければならないと考えられます。

 したがって、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体の一般的な意義としましては、その構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的が重大な犯罪等を実行することにある団体ということになります。

 そして、ある団体の共同の目的が何であるかについては、継続的な結合体全体の活動実態などから見て、客観的に何が構成員の継続的な結合関係の基礎になっているかが社会通念に従って判断されるべきものと考えられます。

 したがって、お尋ねの点につきましては、結局、問題となる団体が有する種々の目的や全体の活動実態などを総合的に見て、その構成員を継続的に結びつけている基礎となっている目的が重大な犯罪等を実行することにあると認められるか否かという個別具体的な事実認定によることとなると考えられます。

 そこで、あくまで一般論として申し上げますと、お尋ねの、重大な犯罪等を実行することだけを共同の目的とする団体については、通常、これに該当することになると考えられます。

平岡委員 何か、基礎となっているとか、根本となっているとかというようなことを言っていますけれども、そんなことはどこにも書いていないんですよね。さっきあった共同の目的という解説書を見たって、そんな、基礎となっているとか根本となっているとか、全然書いていない。共同の目的を幾つか持っている団体もあると思いますね。

 例えば、二番目のケースとして言えば、幾つかある共同の目的の中に重大な犯罪等を実行することが含まれている団体、これは皆さん方の修正案でいくとどうなるんですか。

 ここで皆さん方の修正案を、ちょっと概括を読むと、その共同目的が重大な犯罪等を実行することにある団体、別にこれは、実行することにあるということであって、これが主になっているか従になっているか、幾つかある中の一つになっているかということは一切載っていませんから、共同の目的の中の一つにそういうことがあればすべてそういう団体として適用になるんだというふうに私には読めます。こういうことをまさに皆さんが心配しているわけですよね。どうですか。

早川委員 先ほどの解説書には何も記載されていないことだというのは当然でありまして、今回ようやく我々の修正案を提案させていただいたばかりでありますので、その趣旨がどういうところにあるかということを解説するだけの有権的な存在がないわけであります。結果的には、本日の委員会におけるこの質疑の内容そのものが委員会におけるこの見解であります。

 そこで、提案者の立場として御説明を申し上げますと、先ほど申し上げましたとおりに、個別具体的な事実関係を踏まえた事実認定によることとなるため、一概に結論を申し上げることは極めて困難であるということを前提とした上で、幾つかある共同の目的の中に重大な犯罪等を実行することが含まれている団体というものがあった場合に、問題となる団体が有する種々の目的や全体の活動実態などを総合的に見て、共同の目的、すなわちその構成員を継続的に結びつけている基礎となっている目的が重大な犯罪等を実行することにあると認められるか否かという個別具体的な事実認定によることとなるわけであります。

 そこで、共同の目的、すなわち構成員の継続的な結合関係の基礎となっている目的が、例えば生計維持のための正当な活動を行うことにあるような場合に、仮に、ある一定の時期に、ある一定の犯罪に当たる活動を行ったとしても、そのことだけで直ちに、構成員の継続的な結合関係の基礎が重大な犯罪等を実行することにあると認められるわけではありません。したがって、お尋ねのような場合には、修正案の要件に当たることはないと考えます。

平岡委員 この文章で、共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体、こう書いてあれば、共同の目的の中の一つにでも重大な犯罪等を実行することが含まれていれば当然適用対象になるというふうに普通は読みますよ。拡大解釈ではなくたってそう読みますよ。だから、私は問題だと言っているんですよ。だからいいと言っているんじゃなくて、だから問題だ。

 では、ついでに最後に聞きましょう。

 共同の目的というのが、例えば地域社会の皆さんの福祉の向上とか、あるいは構成員の生活の維持向上とかというような目的のもとに、これが普通よく掲げられている目的ですよね、そういう目的のもとに、正当な業務と違法な業務とを行っている団体があった。これは、この皆さんの修正案でいきますと、共謀罪の適用対象となる団体なんでしょうか。どうでしょうか。

早川委員 繰り返しますけれども、構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的が生計維持のための正当な活動を行うことにあるような場合には、仮に、ある一定の時期に、ある一定の犯罪に当たる活動を行ったとしても、そのことだけで直ちに、構成員の継続的な結合関係の基礎が重大な犯罪等を実行することにあると認められるわけではありません。通常はそのような団体がこの要件に当たることはないというのが私の答えであります。

平岡委員 今まで議論してみて私が思うのは、与党修正案でいくと、この目的という言葉でイメージするいろいろな概念が、一般の人たちはいろいろな概念を思い浮かべますよね、その概念というものと活動とか行為というものの区別が非常にあいまいなままに使われているんじゃないかというふうに思うんですよね。

 そういう意味でいけば、普通は、何らかの目的があって、それを実現または維持するためにいろいろな活動が行われている、その活動が重大な犯罪等に該当しているものがあるというのが一般の人たちが考えている普通の意識だと私は思います。だから、そういう意味でいったら、この修正案というのは全くおかしいですよね。

 大臣、そう思われませんか。

杉浦国務大臣 社会一般の会社にしても団体にしても、犯罪行為を行うことを目的に掲げてやっているところは皆無だと思いますね。掲げる掲げない。ただ、例えば振り込め詐欺集団を考えてみますと、名乗りもしなければ、目的も掲げなければ、黙々と詐欺をやるわけですね。彼らが行う行為に着目をして、その実態を見て、組織的に結合している。

 理屈を説明すると、提案者から言われたような、私が言ったように難しい表現になりますが、そういうことではないでしょうか。その実態に着目して犯罪集団であるかどうかということを決めていくことになるんじゃないでしょうか。

 ですから、普通一般の会社なり労働組合なりの方々とは無縁の犯罪集団を処罰するためにこの法律を制定しようとしているというふうに御理解いただければ非常にたやすく御理解いただけるんじゃないか、こう思っております。

平岡委員 繰り返しになるんですけれども、そういう概念の混同みたいなものがあって、確かに、漆原先生以下が、ここで使われている共同の目的というのはこういうことなんだというふうに言っておられる、これは私、それなりによくできた概念整理だなと思うんだけれども、こういう概念整理をするためには、さっき言った、共同の目的という一般人が描いているイメージと相当違うんですよね。だから、むしろ、私は、こういう話ではなくて、皆さんが言っておられることをそのまま法律の中に書き込んでいって整理をするということが必要ではないかと思います。

 この皆さんが使われている共同の目的という言葉を定義する言葉として、構成員が継続して結合しているという、構成員の継続的な結合関係を基礎づけている根本の目的、そういうものがどうだこうだというような形で整理することはできないんですか。どうですか。そうやって書けばいいじゃないですか。

早川委員 修正案の提案者としては、これまで御説明したとおりの意義をもって、「その共同の目的」、こういう表現を選んだわけであります。私は、この表現で法制的にいえば明確になって、誤解の余地は、この本日の質疑を理解していただけば、そういう内容でもって必ず解説書が出されるはずであり、いずれにしても、構成要件の明確化と限定、さらには、あえて留意事項という形でもってもう一つの歯どめをかけているということの中で、目的は十分達成できるのではないかと思っております。

 ただ、いずれにしましても、与党の修正案、さらには民主党の方からの修正案も出されているところでありますので、これはこれでまた協議はしなければならないのかなというふうには思っているところであります。

平岡委員 解説書で書くというようなことは、例えば、さっき言った「組織的犯罪対策関連三法の解説」という解説書がありますよ。ここには共同の目的について解説してありますよ。「結合体の構成員が共通して有し、その達成又は保持のために構成員が結合している目的」と。多分、これはやはり書き直さなきゃいけなくなるんですね、早川先生の、提案者の理屈でいったら。

 これを書き直すということはどういうことかというと、当時、この組織的犯罪処罰法が制定されたときは共同の目的というのはこういうふうに考えていたけれども、その後の議論によって、この共同の目的というのはこういうふうに直しますということで変えられてしまうことが行われる。まさに、法律にちゃんと書いておかなければ、いついかなるときに勝手に変えられてしまうかわからない、そういうリスクがあるわけですよ。最初はこうやって言っていて、解説書がいつの間にかまたもとに戻されちゃうかもしれない。そういうおそれだって、だれも知らないところで起こっちゃうわけですよ、法務省さんだけに任せておけば。

 そういう意味では、先ほど、せっかくいい言葉を使っておられると私は評価しているんですから、その言葉をもとにちゃんとした修正案をつくったらどうか。これだけ易しい提案はないですよ。どうですか。

早川委員 まず第一点、いわゆる既にある組織的犯罪処罰法の解説の中でいろいろな解説がなされている、それと私が本日御説明していること、基本的にはやはり一緒なんだろうというふうに理解をしております。説明ぶりの問題があるのかなと思いますけれども、私どもの本日の、いわゆる組織的犯罪に係る共謀罪の修正案という趣旨は、きょうの質疑に明らかなところであります。

 また、違った書きぶりがあるかというところでありますけれども、相当苦心を重ねた表現で、現行の法の規定ぶりとの関係でこういう表現を選んだということであります。

 民主党の方からもいろいろな御提案をいただいて、きょうそれを今勉強しているところでありますけれども、ただ、その書きぶりが、私どもの修正案よりも限定的に解釈されるのか、果たして、かえってちょっと甘くなるんじゃないか、こういうふうに、構成要件の理解の仕方によって若干変わってくる部分があるのかなというふうに思っております。

 そういう意味では、私どもとしては、この修正提案、これが現時点においては一番妥当するものだというふうに考えております。

平岡委員 私たちの提案は、別に自分の頭だけで考えたわけではなくて、ほかの国がどういうふうに規定しているかとか、そういうことを踏まえて、例えば、ノルウェーが組織的犯罪集団ということを定義する中で、犯罪行為を行うことを主な目的としている、またはそのような行為を行うことがその活動の大部分を占めている三人またはそれ以上の人々で組織された集団のことだ、こういうふうに組織的犯罪集団の定義をしているんですね。だから、そういうものを参考にして我々は書いた。私は、比較的わかりやすいんじゃないかと。目的とか活動とかということをある程度常識的に区別しながら、どういうふうに仕分けしていくのかということをしているわけですから。

 それに比べると、共同の目的という言葉を、本当にあえて何か自分たちが思っている方向にぐっと押し寄せて、それで組織的犯罪集団を定義しようとしているということに非常にわかりづらさがあるし、そして、一般の市民の人たちにとってみれば、これは実際、共同の目的というのは、別に継続的かどうかということも問われていません。先ほど私の言った、団体旅行の人たちが、たった半日間だけ一緒に団体旅行をするというような人たちだって共同の目的があるんですよね。共同の目的がある。そういう人たちだって、もしかしたら組織的犯罪集団というふうに位置づけられてしまうかもしれない。幾つかある……(発言する者あり)いや、非常に短期的にやった場合ですよ、短期的な結合体でしかないようなものでもそういうことがあるかもしれないということを言っているんですよ。

 それから、幾つか共同の目的がある中で、たまたま一つしかない、一つが重大な犯罪に該当するようなものであるかもしれない、そういうものだって適用されるかもしれない。さっき言った、ある宗教団体が脱税を繰り返してきていて、また来年度も脱税をしようということを意思決定したら、もうこれは共謀罪ということになるということですよね。そういうこともあり得るかもしれない。

 そういうことを考えていると、やはりこの規定ぶりではとても安心できないですよね。大臣、どうですか、ちゃんとしっかりと取り締まれますか。

杉浦国務大臣 先生は法制局におられて、法制審査に当たっておられましたから、厳密な意味での法律の書き方について御意見がおありになるんだと思うんですが、修正案提案者が共同の目的という文言を使われた、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律で使われている言葉でこの修正をなさったということは、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律との整合性を図る意味で適切だと私は思います。

 「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪」、つまり犯罪行為を「実行することにある団体に係るものに限る。」と明確に限定されたことによりまして、この法律はそもそもそういうものを処罰しようとしているわけでありますが、それが明確になったというふうに理解しております。

平岡委員 先ほど私が挙げたような、共同の目的の中で幾つかあって、その一つが重大な犯罪に該当するような場合、あるいは、共同の目的というものは何も違法性がないような中で、その共同の目的のもとで行われている業務が重大な犯罪に該当するようなものがある場合、こういうものが本当に除外されているのかどうかということについて極めて不明確なこの修正案については、私は、これは余りにもあいまい過ぎて、決して認められるものではないということを申し上げておきたいと思います。

 そして、さらに、先ほど稲田委員がいい質問をされていまして、私が質問しようとしたことの一つの前ぶれみたいなことをしていただいたわけでありますけれども、「団体の活動」という言葉は、今回つけ加える六条の二だけではなくて、先ほど稲田委員は六条も挙げておられましたけれども、三条にも「組織的な殺人等」という見出しの中にあるもので、「次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。」と書いてあるんですね。この「団体の活動」には特に今回修正案の方々が付されているような限定はない。

 ということは、これは反対解釈ですよね。六条の二の部分は重大な犯罪等を行うことを共同の目的としている団体だけれども、ここに言う団体はそういう限定がない、普通の団体でも対象になるんだ。これまでもこの委員会で保坂議員なんかを中心にして問題点として指摘されてきたことがまさにこの改正によって明確に、この三条の団体は、そういう犯罪を行う団体ではなくて普通の団体も入るということが明確にされたというふうに思いますけれども、そういうことでいいんでしょうか、修正案提案者。

早川委員 御指摘の組織的犯罪処罰法第三条第一項の組織的な殺人等の罪につきましては、現に実行された殺人等の犯罪が、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体の活動として行われた場合だけでなく、それ以外の団体の活動として行われた場合であっても、現に実行された犯罪の重大性やその態様の悪質さ等にかんがみれば、同様に加重処罰の対象とすべきであると考えられる事案であります。

 他方、今回の修正案は、我が国において犯罪の実行の着手に至る前の行為を処罰することは例外的なものであり、共謀罪を設けるのであっても謙抑的であるべきであるといった御意見等を踏まえ、法案の共謀罪の成立範囲を明確かつ限定的にするものであります。現に実行された組織的な殺人等を加重して処罰するための要件を修正するまでの必要はないというふうに考えているところであります。

平岡委員 今は殺人みたいなことで言われましたけれども、この中を見ますと詐欺の罪も入っているんですよね、加重されるものとして。

 例えば、さっきから議論されていますけれども、正当な目的で活動している会社が、もうからないからということで、リフォームについて、少しちょっと詐欺的になるかもしれないけれどもやってみようということで実行したときには、この第三条の規定が適用になるというふうに解していいわけですね。これはまず法務省の見解をお伺いして、その後、与党提案者にお聞かせいただきたいと思います。

杉浦国務大臣 御指摘の事例、リフォーム詐欺ですか、犯罪の成否を個別具体的な事実関係を離れて申し上げることは困難だということは御理解いただけていると思いますが、あくまでも一般論として申し上げますと、加重処罰の要件を満たすためには、個別具体的な事実関係のもとで、一定の犯罪に当たる行為が、団体の活動として行われたものでなければなりません。そして、団体活動とは、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものをいうわけでございます。まあ、リフォーム詐欺をやる会社もあるわけですが。

 したがって、行われた犯罪が、団体、すなわち共同の目的を有する多数人の継続的結合体の意思決定に基づくものに該当するか否かの判断に当たっては、形式的にいかなる意思決定手続によったかということだけではなく、より実質的に判断されるべきものであり、繰り返しになりますが、そのような犯罪行為を行うことは、多数人の継続的結合体として有する共同の目的と相入れないものではないかという点もあわせて検討されるべきであると考えられます。

 このような考え方によりますと、一般論としては、正当な共同の目的で活動している団体については、たまたまその団体の幹部の意思決定に基づいて犯罪を実行したとしても、通常はそのような犯罪行為を行うことはその団体の共同の目的とおよそ相入れないと考えられることから、その団体については、「団体の活動として、」という要件を満たさないことになると考えられます。

平岡委員 今大臣が言われたのは、もう本当に法律を読み上げているだけであって、私が聞いていることに対して全く答えていません。別に私、個別論で、あそこで起こったリフォーム詐欺はこれに適用になりますかと聞いているわけではなくて、正当な目的で活動している会社が、あるときリフォーム詐欺をすることを決定して実行したとき、そのときはこの第三条の適用対象になる団体ということでいいんですねと。

 だから、これは与党の修正案を出された方々も、ここにあえてつけなかったということは、まさに三条に言う団体というのは、そういう違法な、重大な犯罪等を行う団体ではない、普通の団体も入るということでこういうふうに書かれたと理解していいんですね。

早川委員 まず、今回の与党の修正案でありますけれども、組織的犯罪処罰法の第三条第一項と同じ、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により」という要件を用いて共謀罪を規定していた、これが政府案でありますけれども、ここに言う団体について、その共同の目的が重大犯罪を行うことにあるというふうな修正を共謀の罪についてだけでやった場合に、それでは、現行の第三条第一項の「団体の活動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により」という、こういった要件をそれでは拡張することになるのかということであれば、これは拡張するものでは全くない。私どもの修正案については、そういう意図は全くないわけであります。

 そこで、いわゆるリフォーム詐欺の点について申し上げますと、いわゆるその多くの業務が正当である会社がリフォーム詐欺を行うといった事例についての考え方ですけれども、これは、問題となる団体の活動実態などから見て、共同の目的、その構成員を継続的に結びつけている基礎となっている目的が重大な犯罪等を実行することにあると認めるか否かという個別具体的な事実認定によることとなると考えられますけれども、一般論として申し上げれば、多くの業務が正当であるような会社の場合には、その構成員の継続的な結合関係の基礎はそのような正当な業務を行うことにあると認められるのが通常であります。これが重大な犯罪等を実行することにあると認められることは想定しがたいところであります。

 リフォーム詐欺を行う会社を設立し、その業務計画を策定したというような事例であればどうかということでありますけれども、これは、その構成員が当初から重大な犯罪等を実行する意思を有し、そのために継続的に結合して集団をつくり上げたということに該当するであろう。その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体に当たり得るというふうに考えます。

平岡委員 私が聞いていないこともちょっと答弁していただいたようでありますけれども、まさにこの与党修正案によって組織的犯罪処罰法がぐちゃぐちゃになってしまっているというのが私の理解ですね。そこまでいろいろ解説しなければ三条と六条の二の関係がよくわからないというような関係になってしまった。反対解釈すれば、三条の方は、全く違法性のない、通常の正当な業務をしている会社についてですら、ここに掲げてあるような罪を行ったときには組織的犯罪処罰法の適用があるという可能性も十分に出てきたというふうに私としては思うということであります。

 そこで、もう一つ似たような話として、今回設けられる第七条の二の証人等買収罪の創設について、関連がありますのでお聞きしたいと思います。

 まず、大臣、この第七条の二の第一項と第二項というのはどういう趣旨で設けられたのでありましょうか。それぞれ別々に設けられておりますけれども、その別々に設けている趣旨をまず説明していただけますか。

杉浦国務大臣 まず、法案の第七条の二第二項でございますが、証人等の買収行為が組織的な犯罪に関して行われた場合には同条第一項の罪の刑を加重することとしておりますけれども、その趣旨は、現行の組織的犯罪処罰法第七条の組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等の罪が設けられている趣旨と同じでございます。

 すなわち、組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等の罪は、組織的な犯罪については、その構成員などによってさまざまな証拠の隠滅が行われることが多く、真相解明に困難を伴うわけでありますが、その実態解明を著しく困難にする行為によって、組織が温存されて、犯罪が継続される温床になるなど、その違法性が高いために、重い量刑を得てその抑止を図る必要があり、そのために刑法の罪を加重することとしております。

 証人等買収罪についても、これが組織的な犯罪に関して行われた場合には、同様の理由からその違法性が高いと評価されるので、加重処罰の必要性があると認められ、また、国内法の整合性の観点からも、犯人蔵匿罪等の場合と同様に取り扱うことが適当であると考えられたことから、刑を加重することとしたものでございます。

平岡委員 この第七条の二というのは、第一項というのは今回の条約とは関係ない話なんですよね。第二項が、今回のTOC条約に基づいて設けられている規定だということでありますね。

 そうしますと、この第七条の二の証人等買収罪の第二項の中にある団体の活動として行われた場合の証人等買収罪のところは、これはやはりTOC条約に基づいて限定されて考えるべきだということになれば、今回の第六条の二と同じように、やはりここは同じような限定が団体の活動については付されなければいけない。つまり、団体について制限が付されていなければいけない、こういう関係になるはずなんですけれども、これについて、与党修正案では何の手当てもしていない。これはまさに欠陥ではないんですか。どうですか。

早川委員 そもそも、第七条の二の関係の規定というのは、国際的組織犯罪防止条約の締結に伴って犯罪化しなければならない、そのために設けられた……(平岡委員「第七条の二の第一項もそうですか」と呼ぶ)一項ですね、はい、そういう規定ですね。

 そこで、加重処罰の対象とすべきであるという必要性については、法務大臣から御説明があったところであります。

 私どもの与党修正案の趣旨は、いわゆる組織的犯罪の共謀罪についての構成要件の明確化と限定を行うという趣旨であります。要するに、共謀罪というのは、いわゆる具体的な法益侵害というのが明確化していない段階で条約の締結に伴って犯罪化を要請されたもの。しかし、その適用についてさまざまな懸念が指摘をされてきた。この懸念を取り除くということがどうしても必要である。そのために、共謀罪の関係で、政府案としてはもう十分その趣旨であるという説明であったものを、さらに一層明確化し、限定するというために設けたものでありまして、現に行われた罪についての加重要件についてまでそれを限定するという必要性はないし、また、条約の趣旨に相反することになるのではないかというふうに思います。

平岡委員 今、与党修正案の提案者が、七条の二の第一項も今回のTOC条約の規定に基づいて設けられたものであるというふうな説明がありましたけれども、大臣、そういう理解でいいんですか。

杉浦国務大臣 そのとおりだと思います。

平岡委員 外務省、ちょっとお聞きしますけれども、条約の第二十三条の「司法妨害の犯罪化」の中に、こういう証人等買収罪を設ける根拠規定となっているのは、(a)のところに、「この条約の対象となる犯罪に関する手続において虚偽の証言をさせるために、」云々とあって、要するに買収といったようなことも入っているわけでありますけれども、「この条約の対象となる犯罪」というものの中に、第七条の二で組織犯罪集団がかかわっていないようなものについても、この条約では、犯罪化しなさい、犯罪の対象となる、この条約の対象となる犯罪というふうに位置づけられているんですか。どうですか。

辻政府参考人 お答えいたします。

 この条約は、幾つかほかの点で御説明申し上げましたけれども、第三条において、その適用の範囲ということで、「性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するもの」と書いてございます。

 他方で、条約第三十四条二項にございますけれども、第二十三条の規定を含めまして、「国際的な性質又は組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定める。」となってございますので、組織的な犯罪集団のみを対象とすることはこの条約の規定するところではないと私は理解しております。

平岡委員 だからそこは、二十三条の話もそうなんですけれども、要するに、もともと、共謀罪が適用されるものについて言うと、組織的犯罪集団が関与しなければいけない、関与しているもので定めることはできる、だけれども証人等買収罪についてはそういう前提条件がなくなっている、こういうことですか。

辻政府参考人 お答えいたします。

 済みません、今、平岡委員御質問の、前提がなくなっているという趣旨、必ずしも理解しておらないんですけれども、ほかのいろいろと共謀罪等々が出ておりましたけれども、この条約の適用範囲では、基本的に組織性、国際性といいつつも、実際に処罰をするときには、第三十四条の二項で組織性、国際性は基本的に要件としてはいけないという規定となっておりますので、それと同様のことだと理解しております。

 以上でございます。

平岡委員 私も、それぞれの答弁を検証した上で、もう一度ちゃんと質問をしていきたいというふうに思いますけれども、いずれにしても、団体の活動というときのこの団体というものについて規定する場合に、まさにこれは団体の、組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定めるといっても、関係があって定めるときに、そういう組織的な犯罪集団ではないものについて別に規定していくということは、全く整合性に欠けていると思いますね。

 要するに、第七条の二というのは、一項、二項あわせて確かにこの条約で定めるものか知らないけれども、組織的な犯罪集団がかかわっているものについて別記してやる場合であれば、それは、六条の二でそういうふうに別記してやったと同じような平仄をとって規定しない限りは、全く平仄に欠けてしまう。どういうものが組織的な犯罪集団というふうに皆さんは概念しているのかということが非常にあいまいな概念になってしまうという点、これはやはり立法上、大変整合性に欠けている、ミスですよ。そのことを強く指摘させていただきたい。

 首を振っておられる方がおられますけれども、そういうことを、どういうふうに考えておられるかわかりませんけれども、後でしっかりと説明していただきたいというふうに思います。

 そこで、きょうはちょっと時間がなくなってきたので、与党修正案の中にありますいわゆる顕示行為ということについて、予定したものがほとんど質問できませんので、一つだけやります。

 きょう、共謀があったことで逮捕されるのかというふうに細川委員が質問したときに、漆原委員は、共謀があったことで既に犯罪が成立するので逮捕することはできるけれども、その後、実際の、顕示行為と呼ばれるような犯罪の実行に資する行為というのが行われる可能性が、逮捕されちゃったらないのだから、逮捕されることは事実上ないんじゃないかというふうな答弁をされたと思うんですけれども、その答弁はそういうことでよろしいでしょうか。

漆原委員 委員のおっしゃったとおりで結構でございます。

平岡委員 ただ、共謀罪が成立する場合の犯罪の実行に資する行為というのは、条約上は、合意の内容を推進するための行為ということで、これは、共謀した者のだれかが顕示行為というのをやればいいんですよね。逮捕された人は、共謀した人の中の、何人かいる中の一人かもしれない。それ以外の人たちは、これはやはり犯罪の、合意の内容を推進するための行為というのをだれかがやるかもしれません。だから、そういう意味でいったら、逮捕してしまったらそういう行為をする可能性がないから逮捕されることはないんじゃないかという答弁は、私はこれはおかしいだろうと思うんですよね。

 だって、全然別々の人が、合意した人の中で逮捕された人はAという人、それ以外の人たちはB、C、D、Eとかたくさんいる、そういう状況の中では、犯罪の実行に資する行為をやる人は当然いるんじゃないですか。それをいないと言うこと自体が私はちょっと答弁としておかしいんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがですか。

漆原委員 犯罪の実行に資する行為をする人は一人に限りません、みんなおのおの分担をしていろいろなことをやる可能性は十分あるわけですから。そのうちの一人が仮に捕まったとなれば、ほかの人は行為をやめます。仮にまだその段階で実行に資する行為が行われていなければ、その後行う人は一人もいません。だから、現実的にはないだろうというふうに申し上げました。

平岡委員 時間が来たので、今の問題も含めて、この犯罪の実行に資する行為というのは余りにも幅広過ぎて、我が国の刑事法制の中ではほとんど経験のない話で、強引に、これは犯罪の実行に資する行為だと。

 預金をおろす行為とか、細川委員がいろいろなことを指摘しましたけれども、先ほど私が言いましたように、精神的な支援をする、合意した後に、頑張ってねとか成功を祈るよといったような言動、言葉を発するという行為、これをしただけでも犯罪の実行に資する行為になるということもあり得るという意味においては、極めて幅広くて、我が国の刑事法制の仕組みの中ではなじみのないもので、こんなものをこの機会に導入するということは大きな問題があるということを指摘しておきたいと思います。

 さらに、先ほどの組織的犯罪集団の定義についても、同じ法律の中で共同の目的ということが使い分けられてきてしまうような話、あるいは、共同の目的という言葉自体が、一般の人たちが使っている言葉の意味とは全く違うものとして使われている、説明されている、そういう状況にあるということで、ますますこの共謀罪というものが、一般の善良な人たちの団体についても、あるときたまたま何か起こったときにも適用されてしまうかもしれないという危険性を残したものであるということを指摘して、私の質問を終了いたします。

石原委員長 早川君、何かございますか。どうぞ。(平岡委員「指定していない」と呼ぶ)

早川委員 大変恐縮でありますけれども、今、平岡委員から、頑張ってよという言葉があっただけで、この実行に資する行為に当たるんだという説明があって、そのまま終わってしまいますと、いかにもそのような誤解が残ってしまいます。

 条約に、合意の内容を推進するための行為、そういう表現ぶりがあるわけであります。実行に資する行為というのは、言ってみれば、犯罪の結果により近づく、そういう意味では条約の合意の内容を推進するための行為と同一の概念というふうに我々は理解して「実行に資する行為」という表現ぶりを使っておりますので、この点については、例えば単に精神的に応援をする行為がすべて該当するんだというふうなことは完全な誤解になりますので、よろしくお願いいたします。

平岡委員 自分たちがこう思っているから、人が言っていることは誤解だというのは、そういうことだったらちゃんと書いてくださいね。ちゃんと書いてくださいよ。犯罪の実行に資する行為といえば、どんなものがあるかわからないじゃないですか。それは、自分たちがこう考えていますから、それでいいんですというのでは、これはもう本当に法律の審議にならないですよ。そういうことだったら、やはり法律にちゃんとしっかりと書いてください。

 そのことを指摘して、私の質問を終わります。

石原委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 私たち社民党はこの条約には反対をしましたので、そういう立場ですけれども、与党並びに民主党の修正案提出の御努力には敬意を表して、しっかりと審議をしていきたいというふうに思います。

 まず、法務大臣に伺います。

 個人が心の中で犯罪を決意する、これは悪いことでしょうが、これが処罰されないのはなぜなのか、伺います。

杉浦国務大臣 心の中にあることはだれにもわかりませんから、是非善悪、喜怒哀楽、外に表示され、行動に移されない限りわかりません。

 我が国の刑事法も、これは釈迦に説法ですけれども、刑罰は、法令により定められた構成要件に該当し、違法かつ有責な行為について科されるものでございまして、心の中で犯罪を決意するだけであれば、それは単なる意思であって、そもそも行為自体が存在しませんから、これを犯罪として位置づけることはできないと考えます。何人も思想だけを理由に処罰されることがあってはなりませんし、また、外部に何もあらわれていない段階で法益侵害の危険性を認めることは、事実上困難でございます。

 また、先生、これも釈迦に説法ですけれども、刑罰法規では必ず何らかの行為が犯罪として規定され、また刑法には、三十八条一項ですが、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。」ここに行為が出てまいります。四十一条、「十四歳に満たない者の行為は、罰しない。」といった規定がございますが、行為の存在が犯罪の前提とされておるところでございます。

保坂(展)委員 心の中はわからない、全くそのとおりですよね、心の中はわからない。多数人ならわかるのかということで、この議論が始まっているわけです。

 大臣もおっしゃいましたけれども、心の中で決めても、現実の被害、法益の侵害が生じていない、そして、みだりにそこに踏み込んだとすると、憲法上定められた思想、信条の自由、そこに踏み込むという危険もある。また、その認定が非常に困難であるということもありますよね、心の中では。

 次に伺いますが、既遂、犯罪を遂げて、もう結果を出してしまう既遂から、犯罪に取りかかる中途の未遂、そしてその手前の予備、そして共謀、このようにあります。

 順番でいえば、言った順に犯罪そのものから、重大な結果を呼び起こす犯罪から遠のいていくはずでございますが、六百十九の犯罪の中には、その予備が科せられずに共謀のみ処罰対象になるというのが多い。これはなぜですか。

河野副大臣 六百を超える犯罪が対象になっておりますが、これは、この法律案のもとになりました条約が、各国の法律において定められている刑罰の重さを基準として、長期四年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科することができる犯罪を共謀罪の犯罪対象とすることを義務づけております。

保坂(展)委員 大臣、それは聞いていないんですよ、そういう答弁はもうわかっているんですが。既遂、未遂、予備、共謀とあって、共謀にかかわってくるわけですね、今、河野さんが答弁したように。

 しかし、予備罪では処罰されないのに共謀でのみ処罰というのは、我が国の刑法体系においておかしくならないのか。法務省も当初そういうことで、刑法体系、日本にはなじまないということを主張されていたんじゃないですか。

大林政府参考人 一般論として申し上げれば、今委員がおっしゃられたように、既遂、未遂、その前の段階の予備、共謀という形の段階があることはそのとおりでございます。

 ただ、これも委員御案内のとおり、今回の共謀罪の前提としては、団体の活動として、組織により行われるものの遂行を共謀したということで、今の一つの系列以外に、処罰条件といいますか、犯罪が成立するためのもう一つの大きな要件がございますので、その要件を前提として考えると、共謀罪というものが今回のような定め方になっても、これはそれなりの理由があると考えております。

保坂(展)委員 今の件なんですが、局長の答弁で、法務省の事情と、今回の立法の背景はもちろんわかっています。

 ただ、私が聞いているのは、刑法体系の原則を、ここで予備が罰せられないのに共謀のみ罰せられるということを生んでしまっていいのかということについて、大臣の答弁を求めます。

杉浦国務大臣 現在の刑事法でも、共謀だけが罰せられるものはございます。内乱陰謀、外患陰謀、私戦陰謀、その他、爆発物使用共謀、破防法ですが政治目的殺人・放火等陰謀、自衛隊法ですが防衛秘密漏えい等共謀、競馬法等でございますが不公正な方法による競走等の共謀、比較的重いものが多いわけですが、共謀が罰せられるものがございます。

 したがって、共謀を罰するのは刑法の体系上なじまないんじゃないかという御指摘は当たらないと思います。

保坂(展)委員 今おっしゃったもの以外についてはどうなのかということで、ちょっと明確な答弁は得られないということで、非常に残念です。

 「組織的犯罪対策関連三法の解説」ということで、今、早川先生からも、こういった逐条解説書ですか、これは法曹会から出ているわけで、多分、現場で警察官ないし検察官が事件に直面して犯罪事実を見るときに使うものだと思うんですね。

 昨年、私が指摘しましたのは、この定義のところで、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体」というところで、「その目的自体が必ずしも違法・不当なものであることを要しないのであり、例えば、会社が対外的な営利活動により利益を得ることなども、「共同の目的」に当たり得る。」と。

 これは、とりあえず刑事局長に聞きますね。そのときに答弁で、これは誤解を招く表現であるということをおっしゃいました。それから、この執筆者は個人としてお書きになっているのであって、法務省としての見解ではないともおっしゃいました。しかし、早川先生がおっしゃるように、現場ではこれは使われている。私は、そのときに、誤解を招く、あるいは、書いた方もそういうふうに言っているというのであれば、必ず直して、きちっとした内容の見解をまず出してくれということを言いました。今、再度、法務省のしっかりした解釈をこの部分について言っていただきたい。

大林政府参考人 今も委員御指摘になりましたけれども、この解説書は、立案当時に議論のあった点などについて、担当者個人の見解または説明を記述したものであり、もとより法務省としての確定的な見解を示したものではありませんが、いずれの記載も、組織的犯罪処罰法の各条文ごとに、それぞれの条項に規定されている文言の意味、内容等について説明を行った、いわゆる逐条解説と呼ばれるものであり、第二条第一項にその定義が定められている「共同の目的」という文言自体の説明としては、必ずしも誤りがあるとは考えておりません。

 もっとも、この「共同の目的」の定義は、組織的犯罪処罰法第三条第一項に言う「団体の活動として、」という文言を解釈するに当たり必要となるもの、言いかえれば、第二条と第三条とをあわせて、「団体の活動として、」という要件を解釈する中で意味を持つものであると理解されます。

 そのような点からしますと、組織的犯罪処罰法において問題となり得る団体における共同の目的が犯罪行為を行うことと相入れないものであるということは通常考えがたいことから、御指摘の解説書の部分において、第二条に言う共同の目的について「必ずしも違法・不当なものであることを要しない」としている部分については、第二条の説明としてはそれ自体に誤りがあるとは考えておりませんが、全体としては若干誤解を招きやすい記載方法であると思われたことから、御指摘のような答弁をした次第でございます。

 なお、法務省として、この要件についてどのように考えているかについて、当委員会における答弁内容を紹介する形で昨年中に各検察庁に周知させております。

保坂(展)委員 その検察庁に周知、これはあれですか、使っているのは検察庁だけなんですか、この逐条解説書は。法務省ホームページも発表されたそうなので、もっと広範にそういうところでしっかり流布、広報する必要はないですか。

大林政府参考人 この本の問題につきましては、最終的な刑事事件の処理をするのが検察官だということで、とりあえず検察庁に対して、ここでの私どもの答弁の内容について文書で発出したところでございます。(保坂(展)委員「ホームページ」と呼ぶ)それは検討させていただきます。

保坂(展)委員 早川先生にちょっと感想なんですけれども、やはり私は、この逐条解説というのは、法律ができて実際に動き出すときの一つのもうまさにマニュアルであって、これは不正確では困る。誤解なんか与えてはなお困るわけですね。個人的に書いたものである、法務省としての見解ではないというふうに刑事局長は言っているんですが、今おっしゃられて、この間同僚議員に答弁されてこられましたけれども、やはり法文で誤解のないように書くべきだと私は思うんですね。どうですか。

早川委員 法文に極めて明確に誤解がないような表現を選んで法律をつくる、これは大原則であります。私どもはいろいろなコンメンタールをつくるんですが、若干、やはり後で考えるとこの表現が一番ベストな表現であったかどうか反省をしなければならない場合もあります。そういうことの中で、結果的には、一つの用語だけでは全部わからない、むしろ国会における質疑の内容でもってその趣旨が明確になって、要するにその趣旨が間違いがないような形になる、そういうものもあろうと思います。

 そういう意味では、今回私どもが修正案を提案させていただいた趣旨は、だれが見ても同じような解釈ができるように、明確にかつその適用範囲を制限しようという趣旨で出しております。委員が御指摘することとは基本的に違っていないのではないかと思います。

保坂(展)委員 それでは、提案者の方に少しお聞きしたいと思いますが、今回の修正案にある実行に資する行為というのは、アメリカにおけるオーバートアクトと同義なのか、簡単にお願いしたいと思います。

早川委員 今回の与党修正案に記載しております実行に資する行為の要件、繰り返しますけれども、共謀をしただけの段階にとどまる限りはその処罰を差し控える、さらに進んで実行に向けた段階に至ったことのあらわれである外部的な行為が行われた場合に限って初めて処罰の対象とする、そのことによって共謀の処罰範囲を明確かつ限定的なものとするため、共謀に加えて、実行に資する行為、すなわち共謀に係る犯罪の実行に実質的に役立つ外部的な行為が行われた場合に初めてそのような共謀を処罰することとしたものであります。

 したがって、実行に資する行為とは、共謀が成立した後の、共謀の段階を超えた、すなわち共謀する行為とは別の、共謀に係る犯罪の実行に実質的に役立つ行為でなければならないと考えております。

 この点、アメリカ法におけるオーバートアクトにつきましては、例えば、共謀が成立した後に、共謀に係る犯罪の実行の準備のために話し合いをしただけでも足りると解されていると承知しております。共謀に係る犯罪の実行について話し合いを行う行為は、通常は共謀する行為とは別の行為であるとは言えないことから、与党修正案の実行に資する行為には当たらないものと解されます。したがって、完全に同一ではないと考えます。

保坂(展)委員 ちょっと時間が限られていますので、本当は一つ一つ例を挙げて聞きたいんですが、では、ちょっと刑事局長に伺いますけれども、昨年、黒シャツ党という例を挙げて、オートバイを使ってひったくりを繰り返しているようなこういった集団がいたと、そして、十二時の駅裏というふうにリーダーがそう言えば、オートバイに二人乗って、だれがひったくってみたいなことがほぼ細かく打ち合わせする必要がないという場合の共謀の成立についていろいろお聞きしました。

 ケース・バイ・ケースだということだったんですが、この際、その実行に資する行為というのは一体何なのか。例えば、バイクにエンジンをかけることなのか、ガソリンスタンドで給油することなのか、駅裏に近づいていくことなのか、お答えください。

大林政府参考人 車の窃盗団の話ですか。(保坂(展)委員「ひったくりです」と呼ぶ)ひったくりですか。(保坂(展)委員「はい、オートバイを使ったひったくり団」と呼ぶ)集団で、団体として繰り返しているという意味ですね。

 これもケース・バイ・ケースなものですが、窃盗ということを前提にしますと、当然、ある人を対象にしましょうと近づいていく。それで、そういう相談のもとにその一部の者が近づいていく、これは資する行為に当たると思います。

保坂(展)委員 では確認ですが、そうやって駅裏に近づいて、ラーメン屋に入って食べているうちに、ここはまずい、きょうはなしだ、やめたと言っても共謀罪成立ですか。

大林政府参考人 共謀罪の成立を前提といたしますと、共謀罪というのは、共謀した時点において既遂になりますから、いわゆる中止犯がございませんから、理論的に言えば、その共謀というものが真なる共謀である限りにおいて、共謀をした段階で共謀罪は成立する。だから、その内容を変えて、後日別なことで共謀すれば、それはまた別な共謀罪が成立する、そういう形になると思います。

保坂(展)委員 心の中はわからないので、オートバイで駅裏に近寄ったということが、ではどういう証拠として出てくるのか、この辺が非常にあいまいだという気がするんですね。

 インターネットにちょっと話題を移してみたいと思います。局長に続いて伺います。

 インターネットを使った、例えば公開された掲示板がありますね。不特定多数の人が寄ってくる。そこに、例えば、ある企業であるとかある団体をいわば困らせてやろうと、具体的な手段、こうやって困らせてやろうというふうに書き込んでいく。ある人が書き込んだ、Aという人、B、C、Dと、いろいろ書き込んでいく。そして、実際にそういうことが行われて、困った企業とか困った団体があったとしましょう。そうすると、また、次はここだということが書き込まれていった。証拠的にはこのインターネットの掲示板というのは残るわけですね。

 こういうのはどうでしょうか。例えば、順次共謀というのは、一人一人が一堂に会さなくても、二人で話す、また別の人と話す、そして共謀が成立するというふうに聞いていますが、円環共謀というんですかね、要するに、みんな知り合いではないんですけれども、ネット上でいわば集団を形成している、こういう場合の共謀罪成立というのはあり得るのか。その場合、実行に資する行為というのは一体何なんだろう。

大林政府参考人 まず、一般論で申し上げますと、今のような事例は、インターネットの中においての書き込みで共謀が成立することはあると思いますが、ただ、それはお互いの意思を通じ合うということで、一般的な罪についての共謀が成立することはあるかと思います。

 ただ、今御指摘のような事例だと、顔も知らないとかいう場合に、これは一方、共謀罪は、前提として、共同の目的を有する多数人の継続的結合体だ、団体の活動として、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果、これによる利益が当該団体に帰属するという二条、三条の規定がございますので、その要件を満たすことはなかなか困難かなと。

 ただし、知らない者同士で何らかの犯罪を計画して実行するという例があるというふうに私も聞いておりますので、そういう意味での共謀というのは成立するかなと思います。

保坂(展)委員 そうしますと、今お話ししたのは、ネット上の、ネットに接続し得る不特定多数の人たちがアクセスする、またそこに書き込むこともできるということでお聞きしました。

 ただ、会員制の掲示板というのもあるんですね。ミクシィというようなものも非常に今広がっています。会員制の掲示板というと限定されるわけですね。そうすると、そういった会員制の掲示板でいろいろ書き込みがあって、例えば威力業務妨害に該当するような内容が書かれて、その手段なども明示されていたというと、やはり共謀罪が成立するということは言えますか。

大林政府参考人 今御指摘の、会員制であっても、やはり団体性といいますか、会員であることが団体ではなくて、通常言われる暴力団とか詐欺集団とかいう前提の中での共謀なものですから、今御指摘のような事案について、一般犯罪について共謀が成り立つ場合もあるとは思いますけれども、今回の組織的犯罪処罰法の共謀罪ということはなかなか困難じゃないかと考えています。

保坂(展)委員 では、ちょっと前提条件を変えます。

 今、政府原案ないし与党修正案も出ていますけれども、与党修正案も加味したところで、例えば別表一に掲げる犯罪を目的としている継続的な結合体とみなされる、そう認定し得るネット上の会員制の掲示板、これによって書き込みがされていった場合には成立するわけですね。

大林政府参考人 基本的には、やはり団体の活動というところでひっかかってくるのかなと。

 例えば、通信手段として今メールを使うこともあります。例えば、暴力団が多少離れたところとの連絡手段としてメールなりインターネットを利用する。おまえは何時にあそこへ行ってだれを待て、だれが来たらだれを殺しに行けとか、そういうような割合と閉鎖された、もともとの集団の中での通信において共謀が細かくなっていくということはあると思いますけれども、通常のインターネットの利用者、例えば会員制であっても、そういうものが団体あるいは団体の活動として、いわゆる会員制であるということはここで言う団体には当たりませんので、やはり団体の活動として組織が利益を得るような犯罪をしていくということが前提ですので、ちょっと考えにくいかなというふうに思います。

保坂(展)委員 インターネットで堂々と犯罪計画を掲示板に書くかどうか、まあ常識論だという話もありますよね。ただ、会員制であって、あるいは暗号化したり符牒化したりして、ネットによる連絡を、それはその共謀罪なり、こういう前提から外すことはできないじゃないですか。

 では、早川さんに聞きますけれども、例えば会員制の掲示板に、与党修正案の設けたハードルを越える団体要件、そこを満たすグループが計画、犯罪の共謀を大体なす内容が見てとれるというふうになった場合に共謀は成立する、しかし、実行に資する行為というのは何なのか。

早川委員 少なくとも、私の解釈から申し上げると、団体性がないだろうというふうに思わざるを得ないのであります。

 この修正案の関係でいえば、その共同の目的が重大なる犯罪を実行することにある団体、こういうふうにさらに定義をすれば、ますますそれには該当しなくなります。単に意気投合したとか、単にその段階で一定の犯罪行為を実行するといっても、それはその直接の当事者間においての個別の犯罪の共同謀議があるだけであって、組織的犯罪の共謀罪ということで今回条約の締結に伴って国内法を整備する、その組織的犯罪処罰法の改正規定に言う組織犯罪の共謀罪には全く該当しないと思います。

保坂(展)委員 これはもうちょっと真摯に議論したいなと思うんですけれども、どうでしょうか、この国会審議が全部背景になって立法趣旨になるというのであれば。

 私は非常に限定的に言っているわけですよ。与党修正案の条件をクリアした団体がネットを使って、場合によったら暗号化されているかもしれない、いわばコミュニケーションツールですからね、そういう中で成立したというときに、実行に資する行為はどこなのかと聞いているので。そこはお答えになれないというのなら、いいです。

 時間がないので、刑事局長に、あと一問だけ残しているのがあるので。

 例えば、贈賄、贈収賄事件。業界の利益を政治家に働きかけて、そして業界の権益あるいはサバイバルのための法律を通してもらおう、予算をつけてもらおうということで、表裏の献金あるいは接待、こういうものを繰り返してきた。業界団体は正当な目的なんだけれども、その中の一部の、五人なら五人がこういった贈賄ということを、全体にわからないように会計担当者とつるみながら贈り続けていたというような場合には、この与党修正案で言うところの別表一に掲げる中に贈賄があったように思いますから、これはいわば共謀罪が成立する団体の要件を満たすのかどうか。いかがですか。満たさないのなら、どこなのか。

大林政府参考人 お尋ねのような事例の業界団体が、与党修正案に言う共同の目的が贈賄を実行することにある団体に該当するかという点でございますけれども、この要件に言う共同の目的とは、構成員の継続的な結合関係の基礎となっている目的、すなわち、まさにそのために構成員が継続して結合しているという、構成員の継続的な結合関係を基礎づけているその根本となる目的でなければならないと理解しております。

 したがいまして、お尋ねのような業界団体につきましては、その構成員の継続的結合関係の基礎となっている目的は、通常はあくまでも正当な事業活動にあるというふうに思われますので、その共同の目的が贈賄を実行することにあるというふうに認めることは困難だと思います。

保坂(展)委員 それでは、その五人なら五人が、例えば政治家に献金したことにしておいて、その半額を実は分配していた、こういうことを繰り返してきた集団だったら該当するんじゃないですか。

大林政府参考人 結論から言うと、それは無理だろうと思います。

 共同の目的がその犯罪を実行することにある団体、基本的にはそういうふうに認められないと、その過程の中で悪さをする人がちょこちょこいるかもしれませんけれども、団体としてここに記載のある犯罪をする団体、そういうふうな記載の仕方であると私たちは考えております。

保坂(展)委員 本当はこの後、暗黙の共謀の際の実行に資する行為はどういうものかとか、いろいろお聞きしたいことがあったんですが、時間が来たようでございます。

 終わります。

石原委員長 次に、倉田雅年君。

倉田委員 自由民主党の倉田雅年でございます。

 本日は、私は、主として民主党が出された修正案について質問をしたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 それでは、提案者に質問してまいりますけれども、国際組織犯罪防止条約、この法案のもとになっているものでございますが、これは第五条で共謀罪を設けることを義務づけているわけですけれども、共謀罪の対象となる重大な犯罪については、条約の第二条で、法定刑を基準として長期四年以上のものと定義しているわけです。また、条約の第三十四条2の方ですが、国際的な性質を有するものに限定することを禁止している、こういう条約でございます。

 これは、世界各国が協力して組織犯罪に立ち向かうために、一定の犯罪を一律に共謀罪の対象とすることによって各国が同様の罰則を備えて組織犯罪に立ち向かうという、いわば罰則の国際標準化といいますか、グローバル化という言葉でもいいんですけれども、そういうものをやろうというものだと理解いたします。

 そこで、このような罰則を整備しようとする今回の法案について、私が対象としている民主党の修正案によりますと、条約の方は長期四年以上の犯罪を共謀罪の対象としなければならないと義務づけているのにもかかわらず、長期五年を超える犯罪だけに限定し、かつ、条約が禁止しているのにもかかわらず、国際的な性質を有する犯罪だけに限定する、こういう内容だと思います。

 これまでこの条約を締結した国は、現在までに百十九カ国あると聞いておりますけれども、民主党案のように限定した国はなく、いずれもこの条約の定めに従っていると聞いていますけれども、民主党案によると、なぜ我が国だけがそのような限定をしなければならないのかなと思うわけでございます。

 その五年とすること、国際的な性質を持たせるということの合理的な理由は何か、これを御説明願いたい。

平岡委員 答弁申し上げます。

 今委員の方から、我が国だけが条約と違うことをやっているんじゃないかというようなお話がありましたけれども、我々も、各国がどういうふうになっているのかということをいろいろ調べてくれということをこの委員会で申し上げておりますけれども、必ずしもその関係の返事が来ておりません。

 そういう状況の中で、国連のホームページには、ウクライナについて言えば、長期五年以上のものを対象にするというふうに書いてあったりとかいうようなものもありますから、我が国だけがそういうふうな限定をしているかどうかということについては、我々としては定かではない。もっと全世界的な各国の情報をまず我々が質問しているんですから、まずそれに対して答えていただくのが筋ではないかというふうに思います。

 それから、先ほど来から、国際的な性質とか長期四年以上の罪の話をされましたけれども、これは条約交渉過程で、もともとは、例えば国際的な犯罪に関係する罪というのは一体何なんだろうかということをリスト方式で交渉しようとか、いろいろやってきているんですよね。そういう交渉過程についても、我々は、公電を明らかにして、もし公表するのがだめなら秘密会ででもしっかりと確認させていただいてやりましょうということを言っていますけれども、それも認められないというようなことであります。

 そういうことを前提として考えれば、我々は、この条約の三十四条の第一項に、自国の国内法の基本原則に従って国内法制化をしていくんだということがまず大原則としてあるということでございます。そういう意味では、我が国の刑事法制の体系の中では、共謀罪というものは極めて限定されたものですよ。規定としては二十一ぐらいありますけれども、その多くは、公営ギャンブルについての不正な試合をやることについての共謀とか、それから自衛隊とか在日米軍の秘密とか機密を漏らしたようなものとかそういうものであって、先ほど大臣が答弁されましたけれども、極めて刑法の中には限られている。こういうものをこれだけ大量に導入するということについてはやはり非常に謙抑的であるべきである、そういう視点に立って我々としては考えたわけです。

 そういうことで言うと、長期四年以上の刑というのは、この委員会でも議論されましたけれども、まず六百十九ほどある。世界では一体どれだけの数があるのか。これも教えてくれと言っていますけれども、政府は答えてくれません。六百十九あるということはどれだけ巨大な数か。そういうことを考えたときには、長期五年以上でも六百を超えているんですよね。長期五年超になったら初めて三百ぐらいになる。三百六という数字になる。

 つまり、我が国の刑事法制で見たときには、五年以下と五年超との間にかなり大きな考え方の違いがあるというふうに私は思います。そういう意味では、五年以上ということが、我が国の刑法の基本原則に従って、本当に重大な罪、犯罪ということで考えてもいいのではないかというふうに思います。

 それから、国際的な性質の問題でありますけれども、この問題についても、もともと、たしか第二条だったと思いますけれども、この条約は、性質上国際的な犯罪、かつ組織的な犯罪と書いてありますけれども、の防止、捜査及び訴追について適用するんだというふうになっているわけです。純粋に国内的なものについてはこの条約は適用しないということに基本的になっている。それにもかかわらず、条約交渉過程がはっきりしませんけれども、国際性とか国内的とかかかわりなく定めるということ自体が、私はこの条約の本来の趣旨に反している。

 そういう意味では、確かに条約に文言的に書かれていることとは違うかもしれませんけれども、条約法に関するウィーン条約の中でも十九条で、条約の趣旨に反しない限りは留保することが可能であるという形になっています。そういう仕組みをしっかりと使って我が国の刑事法制の体系の中に合うものをつくっていく、このことが今我々の委員会に課せられている使命だというふうに私は思います。

 そういう意味で、御説明になったかどうかわかりませんけれども、そういう考え方に立って謙抑的にこの共謀罪の創設については考えていただきたいということを、特に倉田先生にはお願い申し上げたいというふうに思います。

倉田委員 平岡委員が提案者としていろいろお答えになりましたけれども、その中で、最後の方に、条約の文言とは違っていると。つまり民主党案は、長期四年という条約と文言上違っておる。つまり整合性がない。それからもう一つは国際性の問題ですが、こちらの方も文言が違っている。この点はお認めになるわけですね。

平岡委員 文言上違っているということは確かに、別に認めないわけじゃないです。だけれども、どうしてそういう文言になってきたのかということについての経過が、要するに、我々にとってみれば公式のものとして明らかにされていないということ。

 それから、先ほど来から申し上げているように、条約法に関するウィーン条約というものがあって、条約の留保ということができる。それは条約の趣旨に反しない限りはできるようになっている。我々は、この条約の趣旨というのは、あくまでも国際的な組織犯罪、重大な犯罪についての防止をする、あるいは取り締まりをする、捜査協力をすることにあるというふうに考えていますから、我々の規定でも決して条約の趣旨に反していないという意味において、条約の留保も、あるいは解釈宣言という手法を使ってでもやっていきたいということを申し上げているわけです。

倉田委員 条約の留保というようなこと、あるいは解釈宣言という言葉が出ましたけれども、この長期四年以上、あるいは国際性をこれこれの犯罪については持たせてはいけないというようなことは、この条約の核といいますか、コアの部分ではないか。そうしますと、条約について、コアの部分についての留保とかそういうことは難しいんじゃないかと思います。

 次の質問へと移っていきますけれども、共謀罪の対象となる犯罪について、民主党の先生方はもともと、こんな質問をなさっておりました。十七年の十月のことだと思いますけれども、国際的組織犯罪防止のために重大な犯罪として、ここの中に規定されなければならない犯罪だと到底思えないものもいっぱいある、やはりもっともっと抑制的にこの犯罪を特定していくことが必要だろうと思う、あるいは、重大な犯罪についても、一律に長期何年ということだけじゃなくて、本来はどういう犯罪が条約で目的としていることに沿うものであるのか、一つ一つの犯罪の中身の議論をしなければならない、これは平岡議員でございますけれども、こんなこともおっしゃっておりました。

 このような内容からしますと、民主党さんとしましては、国際組織犯罪の防止という趣旨に従って、国際的な犯罪組織が犯すような典型的な犯罪だけを対象とすべきであると考えておられるのではないかと私は思うわけでございます。

 しかし、今回の民主党案によりますと、共謀罪の対象を長期五年を超える犯罪だけ、こういうことにしておりますと、四年以下の懲役とか五年以下の懲役という刑が定められている犯罪は除外されてしまうわけであります。例えば人身売買の罪、これは刑法二百二十六条の二の第一項でございまして、三月以上五年以下の懲役、あるいは出資法第五条の高金利受領罪、これは五年以下の懲役、あるいはいわゆる入管法の集団密航者を不法入国させる罪、これは五年以下の懲役、こういうものが対象から除外されてしまうということになると思いますね。

 しかし、これらの犯罪は、それこそ典型的な国際組織犯罪ではないかと思うんです。こういうものを外してしまうということに合理性があるのか、こういう疑問を持ちます。大きな穴のあいた法案になってしまうのではないか、こう考えるわけであります。

 それから、これらの犯罪が、今例を挙げた三つの犯罪が入るようなものになっていなければいかぬと思いますけれども、どうでしょうか、その点について。

枝野委員 私どもの修正案は、政府提出の法律案に対する修正案をお出しいたしました。政府提出の法案は、いわゆる国際犯罪防止条約を国内法化する法律案であるというふうに理解をいたしておりますし、そうした説明を聞いております。

 御指摘のとおり、私どもの線引きをいたしますと、いわゆる典型的に国際的な組織犯罪と思われる犯罪の幾つかが長期五年超に該当しないというものが出てまいりますが、例えば今御指摘にもございました集団密航的な話の部分の出入国管理法などでは、集団密航者を本邦に入らせる行為の準備罪、あるいは収受した者の予備罪等、個別具体的な法律で賢明な政府・与党の皆さんが、国際的な組織犯罪に該当する問題のある事案については既に立法をされているものと理解をいたしておりますし、さらに、必要があって本法では対象から外れるものについては、個別の法律で予備罪等をつくられればそれで問題はないと。

 この法律は、条約で一律に一定基準以上のものについては共謀罪をつくろうということに基づいてのことであれば、そうした個別のものが外れるということについて別法できちっと対処するということでいいし、逆に、その別法で対処すべき部分のところまでここの修正に載せるということは、本法の修正案の趣旨としてもおかしいというふうに考えております。

倉田委員 この条約の目的は、やはり人々が国境を越えて交流をする、こういう世界になった、それで、共通のものをつくっておこうではないか、こういう考え方から出ていると思います。私は、これは決して後ろ向きのことだけではなくて、人類が理想とするいわゆる世界連邦とか、こういうものに向く方向ではないか、こんなことを考えているわけでございます。

 さらに聞いていきます。

 今回の民主党の修正案の、国際性を付すという条件の問題ですけれども、例えば、日本のカルト集団が日本で無差別大量殺人を実行しようと計画をしておりました、こういう場合を想定しまして、この計画を、まずどこで計画を立てたか。外国で立てたときは、これは国際性があるということになるんでしょうね。日本でやりますという計画を外国で立てたときには民主党さんの案で当たるんでしょうね、該当する。

 しかし、日本のカルト集団が日本で計画を立てて日本で実行しようとした、この場合は共謀罪は成立しない、こういうことでよろしいんですか。

枝野委員 倉田先生御指摘のとおり、国際化の時代、人が交流する時代、特に重要な問題については国境を越えて統一のルールのもとで物事を進めていくということは理想でありますし、そういった方向に近づいていくことは重要だと思います。

 ただ、例えば今御指摘されましたカルトというものも、ではカルトとは何なのかということを考えてみますと、例えば、EUにおいては、新しい型の宗教組織による法の侵害に関するEU議会決議というのが一九八四年にあるそうでございまして、それに基づくと、フランスでは、日本においては適法とされて大々的に活動をされている宗教団体がカルトと扱われているというようなことも言われております。

 したがって、各国ともベースになる法制度が違う以上は、そのベースになる法制度との矛盾のない範囲内で国際的な共通化をしていきませんと、ではEUでカルトとされていると日本でもそうしないといけないのかというような議論になりかねないということで、逆に我が国の信教の自由に関して問題が生じるのではないか、こういうこともいろいろなところであり得るわけでございます。

 その上で、今御指摘をいただきましたとおり、我が党の修正案に基づきますと、性質上国際的なものではない、つまり、日本国内で完結をしているような例えば無差別大量殺人という行為については、本法による共謀罪は成立をしないということになります。

 しかしながら、いわゆる無差別大量殺人というケースであれば、殺人罪につきましては、先生も御承知のとおり予備罪が規定をされておりますので、当然のことながら、予備行為のあった段階で、実行に至る前にそれを阻止することが、もちろん証拠関係が収集できた場合でありますけれども、十分可能であるということで、実質的な問題はない。さらに、もし問題があるならば、本当に国内完結しているものについてもさらに法整備が必要であるならば、それはこの条約に基づく法改正とは別に、立法について検討すればいいというふうに思っております。

倉田委員 カルト集団についてですが、これは私が例として出しました。犯罪実行を目的とする集団の例ということで理解していただければいいと思います。

 結局、民主党案によりますと、カルト集団という言葉はやめまして、無差別の大量殺人を日本で実行しようという団体があったとしまして、日本で計画をした、その場合は、この共謀罪、与党案あるいは政府案では成り立つんでしょうけれども、民主党案では成り立たないことになる、これでいいわけですか。

枝野委員 繰り返し申し上げておりますが、この法律、もともとのベースになっている法律が、条約を国内法化するということで提起をされているわけであります。本当に可罰的違法性があって必要があるということであれば、個別の法律を改正する議論をするのが筋である。

 例えば、いわゆるオウムのサリン事件などを考えれば、サリン等による人身被害の防止に関する法律という具体的な法律もございます。さらに、その要件といいますか、必要性があれば可罰対象を広げるとか広げないとかという議論があればいいということでありますし、そもそも、この組織犯罪処罰法の本来の越境的部分とか共謀以外の部分のところで、必要があれば行えばいい。

 逆に、国内で完結をしている事件で、犯罪が起こりそうだというようなことをあらかじめ取り締まりができるという状況に捜査機関が情報、証拠を収集しているということは、やはり一定の予備行為がなければ、捜査当局もそれについて把握はできないのではないか。その段階では、今、現状、現行の刑法本体でも殺人予備罪があるのでありますから、十分にこれは対応できる。つまり、被害発生を事前に食いとめることはできるというふうに考えております。

倉田委員 そういうのも一つの御意見ではありましょうけれども、私が言った大量殺人という極端な例ではなく、人々が国境を越えて行き来することによって、非常に多くの重大犯罪について同じような問題が起こってくる、こういうことからこの条約の締結の必要性が出てくるのではないかと思うわけでございます。

 そこで、大分時間がなくなってしまっているんですけれども、ある某国の外国人たちが日本へと住んでいます。それで、その国の人たちの民族の集まりのような、国の集まりのようなことをしました。時たま、自分たちの母国で、テロ行為といいますか大きな犯罪が起こった。それに呼応して、我々もやろうということを共謀して、結社をつくって共謀した。これも当たらなくなっちゃうんですよね、民主党さんの案では。これも個別的につくればいい、こんなような御意見になるんでしょうかね。

枝野委員 日本の国内、つまり、動機において、海外で何か起こったということが動機としてあるということがあったとしても、その犯罪の関係当事者も全部日本国内にいて、日本国内で謀議が行われ、日本国内で準備行為が行われ、日本国内で犯罪が行われるというケースであれば、それはまさに越境性を持たない国内的な犯罪であります。

 先生御指摘のとおり、確かに、あらゆるルールが国際的に共通であればその方がいいに決まっていますけれども、各国の法体系は全部違うんですから、各国の事情に応じて、国内のことはやる。ただ、国境を越えて犯罪が行われるときには、証拠関係含めて国境を越えて存在しているということであるから、そのことについてはできるだけ統一していこうということが私は条約の趣旨だと思っていますので、すべての証拠関係から行為が一国内で行われているということについては、国内的な法律の整備の中で、必要があれば対応するということで十分であると思います。

倉田委員 大分時間がなくなっていますけれども、国際的な性質というものについては、当の条約で幾つか例を挙げて、例といいますか定義が行われているわけですね。例えば、条約の三条の2の(b)では、「一の国において行われるものであるが、その準備、計画、指示又は統制の実質的な部分が他の国において行われる場合」とされているけれども、この場合の「実質的な部分」という概念ですね。要素ですね。それからまた、三条の2の(d)では、「一の国において行われるものであるが、他の国に実質的な影響を及ぼす場合」。この「実質的な影響」というのは、具体的に何なんだろうか。

 こういうことを考えますと、国際性というのをすぱっとくっつけることによって、かなりあいまいな部分が逆に出てくるということも考えられると思いますが、いかがですか。

平岡委員 あいまいな部分と言われると、条約があいまいなままでつくられてしまったということを意味してしまいますので、そこまで倉田先生も言われているわけではないんだろうと思いますけれども。

 実質的な部分ということをどう考えるかということについて言えば、これは条約を所管している外務省に権限ある説明をしていただければというふうに思いますけれども、ここは英文でいくとサブスタンシャルという言葉を使っているのであります。サブスタンシャルということを日本語でちょっと調べてみますと、実質的ということ以上に、実体が何かある。だから、実質的なものが何か起こっているというようなことを意味するかもしれません。重要なとか、相当なとか、本質的なとかという訳もこれはあり得るので、なかなかちょっと、私自身も、ここのところでサブスタンシャルという言葉を実質的なというふうに訳された意味自体が必ずしもはっきりとしませんけれども、あくまでも条約交渉の中でこういう言葉を使うということでやられた話ですから、それなりの定義というものがしっかりあるのではないかというふうには思います。

 我々の方で、あえて、権限ある当局ではございませんけれども、この点について言えば、ほかの号にありますように、二以上の国において行われる場合ではないものの、社会通念上、二以上の国において行われた場合と同様の評価を受ける場合をいうものというふうにも解しているところでございます。

 先ほど、ちょっと私、答弁したかったことがあったんですが、長期四年以上とか、あるいは国際的な性質を入れないというのは条約のコアの部分だというふうに言われましたけれども、さっきも当局の方から話がありましたけれども、もともとそういう提案じゃないんですよね。長期四年以上ということは最後になって出てきた話で、交渉の過程の中で、どういう交渉の過程かわかりませんけれども、最後になって出てきた。国際的な性質については国内法上はつけないというのも最後になって出てきた。

 そういう最後になって出てくるようなものが、本当に条約のコアな部分なのか。私は決してそうじゃないというふうに思いますので、コアな部分だというふうに指摘された部分については、私の方からも反論を申し上げたいというふうに思います。

倉田委員 はしょって聞きますけれども、自首減免の対象を民主党さんの案は相当絞って、死刑、無期、それだけに絞りましたかね。これですと、むしろ、軽い方の、それ以下の罪を犯して、なおかつ自首したときには減免されないと、おかしな結果が生じますけれども、簡単にお答えください。

高山委員 倉田委員にお答えしますけれども、そもそも私どもは、まず、自首減免というのが密告社会を奨励するし、よくないじゃないかという立場なんです。だけれども、重大犯罪においては、本当に結果が発生してしまったらこれはえらいことになるので、自首減免の規定を入れておこうじゃないか、こういう考え方でございます。ですから重大犯罪に限ったわけでございます。

倉田委員 今のお答えを聞いていますと、軽い犯罪なら起こっても仕方がないんだというふうにも聞こえますので、それもおかしいなと思います。

 先へ行きます。

 この条約を審議した平成十五年の通常国会では、民主党さんもこの条約の締結には賛成なさっているんですよね。その際に、現在おっしゃっているようないろいろな主張がおありであるならば、ちゃんとこの点は留保するんだよと、その段階で、そもそも条約自体の中で留保するような御発言がなきゃいけなかったと思うんですが、それがなかった。今になってこのようなことをおっしゃるというのもちょっと理屈が合わないなと思っておりますが、その点はいかがなんですか。

平岡委員 条約審議の状況の中でも、我が党の議員がこの共謀罪の問題点については指摘をさせていただいております。

 ただ残念なことに、条約について言えば、なかなか、意思をどういうふうに示すかというのは賛成か反対かということしか、条約では修正とかないわけですよね。そういう意味で、留保つき賛成とかというものを国会でもお認めいただくようなことであるならば、そういうこともできたのではないかというふうに思います。

 ただ、基本的に、国際的な組織犯罪を防止していくという条約の趣旨には我々は反対するものではない。しかし、この趣旨にのっとって国内法制化をしていく、国内法制化できなければこれは締結できないということですから、国内法制化するときにしっかりと国内法の基本原則に沿ったものをつくっていく、まさにこれを今やっているということであって、決して矛盾するものではないというふうに思います。

倉田委員 まだ幾つも御質問申し上げたいことがあるんですけれども、時間が参りましたのできょうの質問は終わりますけれども、民主党案では、今私が言ったことのほかに、さらに証人等買収罪、本法の第七条の二ですか、こちらの方でも、条約上は三十四条の2で禁止されているところの国際性それから組織性、これも盛り込んである。ちょっと余りにも不整合で、到底ついていける修正案ではない、こういう考え方を申し上げまして、私の質問、時間が来ましたので終わります。

石原委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 それでは、きょうは長丁場でございましたけれども、随分たくさん、いろいろまだ質問することが残っておりますので、きょうできる分だけ質問させていただきたいと思います。

 まず、先ほど同僚議員がいろいろと、団体をどう限定するか、法の文言上あいまいじゃないかという話がさんざんありましたけれども、まずその点に関して、法務大臣にちょっともう一回確認しておきたいんです。

 これは先ほどの答弁にあったことですけれども、南野大臣の答弁の中では、警察なんかはこの組織犯罪の主体となり得るという話でございました。しかし、先ほどの局長答弁では、質問主意書の中では、一般的に官庁なんかが主体となることはないということでしたけれども、杉浦法務大臣にもう一度ちょっと確認したいんですけれども、これは、警察がそのまま裏金づくりを組織的にやっていたりした場合、この組織犯罪になり得るということでよろしいでしょうか。

杉浦国務大臣 先ほどの繰り返しになりますけれども、官庁そのものが犯罪を目的としている、犯罪行為を行う組織じゃありませんから、それは明らかなんですが、御指摘のような官庁の者が犯罪行為を行うというようなことになった場合、個別のことについてはそれぞれの事案に即して判断されるべきものでございますので、ここで申し上げることはございませんが、一般論として申し上げますと、これは繰り返しになりますけれども、政府案の共謀罪が成立するためには、共謀に係る重大な犯罪に当たる行為が団体の行動として行われるものでなければなりませんし、団体の活動とは、団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が当該団体に帰属するものをいうわけであります。

 したがって、犯罪を行うことが団体、すなわち共同の目的を有する多数人の継続的結合体の意思決定に基づくものに該当するか否かの判断に当たっては、形式的にいかなる意思決定手続によったかということだけではなくて、より実質的に判断されるべきものであって、そのような犯罪行為を行うことが多数人の継続的結合体として有する共同の目的と相入れないものではないかという点もあわせて検討されるべきであると考えられます。

 このような考え方でいいますと、一般論としては、正当な共同の目的で活動している団体については、たまたまその団体の幹部が犯罪を行うことを共謀したとしても、通常はそのような犯罪行為を行うことはその団体の共同の目的とおよそ相入れないと考えられることから、その団体については「団体の活動として、」という要件を満たさないことになると考えられるところでございます。

高山委員 大臣、先ほどからそこの答弁はもういいので、私が伺いたいのは当てはめの部分なんです。私も、警察庁全体が犯罪組織だとかということは、これは私が言っているんじゃないんですよ、南野大臣がそういうふうに答弁しているので、それはちょっとひどい話だなと思うんですけれども、例えば警察署の中の、何とか県警の刑事課とかこういうような単位であれば、組織性、これは持つというふうに考える、多分そういうことを想定しての答弁なんでしょうか、この南野大臣のは。

杉浦国務大臣 あくまでも個別具体的なケースについて判断するわけですから、先生のおっしゃられたその言葉だけ、それを前提にして判断するというのは適切ではないと思います。

高山委員 それでは、何々県警の捜査何課とか刑事課みたいなものですね、組織の中だけれども一部、あるいは、例えば経済産業省の官房企画室とかそのぐらいのところですよ。そういうところは組織になり得ませんか。なり得るか、いや、それはなるということじゃなくて、絶対ならないなら絶対ならないということでお答えください。

杉浦国務大臣 あくまでも個別具体的な問題に即しての判断でありますので、先生のおっしゃるような抽象的なことでは適切なお答えはいたしかねる問題でございます。

高山委員 では、例えば経済産業省の官房企画室で、代々、その室長が通帳までつくって還流したお金をずっとためてある、これはそういうことが事実としてあったわけですけれども、そういうのを代々これからも続けていこうねというような話し合いをしているというのは、この共謀罪になるわけですか。

杉浦国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、役所の組織というのは正当な目的で活動している団体でございますから、一般論ですけれども、たまたまその団体の幹部が犯罪を行うことを共謀したとしても、通常はそのような犯罪行為を行うことがその団体の共同の目的とおよそ相入れないと考えられますし、その団体については「団体の活動として、」という要件も満たされないことになると考えられます。あくまでも一般論であります。

高山委員 では、先ほどから同じような話ばかりになっちゃいますので、ちょっと前回の質疑の中で、当初は正当な団体であったとしても、途中から団体が変質して組織犯罪集団とみなされる場合があるんじゃありませんかという質問をこの委員会の議員がされましたら、それはあるんだというようなお答えを法務省からいただいたということですけれども、これはもう一回確認したいんですけれども、これは法務大臣に伺います。

 当初は普通の宗教団体であった。だけれども、途中から変質してきてサリンをばらまくようになってしまった。こういうふうに、当初の目的は普通の団体でも途中から変質してくるという場合には、この組織犯罪に当たりますか。

杉浦国務大臣 あくまでも一般論ですけれども、あり得るんじゃないでしょうか。私の知っている人で、リフォーム会社をやっておって随分もうけたんですけれども、その後、会社ぐるみでリフォーム詐欺をやりまして、会社の幹部社員、全員逮捕されたというケースがございます。できた当初は、まあ、まともかどうか知りませんが、リフォーム会社だったんですけれども、摘発されたときはそういう状況だった。

 この法律が施行されておりませんから、どういう評価を受けるか、あくまでも個別具体的な事案に即して判断されるべきものですけれども、そういうことはあり得る話ではないかと思っております。

高山委員 今大臣が例を出されたように、当初、普通の会社で、まともな会社であった、だけれども途中から変質してそういう悪質リフォーム会社みたいになってしまうというようなこと、これは当然私もあり得ると思うんですね。大臣御自身も出された例であり得るということでしたけれども、そうすると、この団体がいつ変質したかというのは、これはどうやって調べるんですかという質問を前の議員もされているんですけれども、これはまずどうやって調べるんですか。

杉浦国務大臣 それは事実認定の問題ですから、まず第一義的には捜査当局が事実を克明に調べて認定をして、最終的には裁判所が認定することになるのではないでしょうか。

高山委員 いや、これは今大臣が例を出されたみたいに、本当に悪質リフォーム会社としてばんばん何か悪質リフォームをやって、実績と言うと変ですけれども、だました実績がどんどんあるならばですけれども、今話題になっているのは共謀罪でございまして、実際にだます行為を始めなくても、そういう相談をした段階でもう既遂になってしまうわけですよね。

 そうすると、実際問題、ああ、この会社はまともな会社だなと思われる会社をどういう段階で調査していくんですか。これをちょっと伺いたいんですけれども。実際、被害も何も出ていない段階から、そういう相談をした段階でもう既遂にするというわけですから。

杉浦国務大臣 何度も申し上げておりますが、あくまでも事実に基づきまして、この法律の構成要件該当性が検討されるわけでございます。一義的には捜査機関が捜査を行って事実を認定して、この法律に基づく処罰をすべきかどうかを判断して、最終的には裁判所が決めることで、いつからどうこうというのが自動的に法律で決まるというふうになっているわけではございません。

高山委員 余り時間がないものですから、ちょっとこのいただいた白表紙の方ですけれども、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約ということで、条約の方がここに出ているんです。

 ここの一番初め、第二条のところに、「「組織的な犯罪集団」とは、三人以上の者から成る組織された集団であって、一定の期間存在し、かつ、金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するものをいう。」ですとか、「「組織された集団」とは、犯罪の即時の実行のために偶然に形成されたものではない集団をいい、その構成員について正式に定められた役割、その構成員の継続性又は発達した構造を有しなくてもよい。」ですとか、割合詳しく書いてある、条約の方が今の政府提出の法案より詳しい書きぶりだと思うんですけれども、政府案はどうしてこういうふうに詳しく書けなかったんですか。

杉浦国務大臣 通告のあった事柄ではございませんが、もともと国内法で、組織犯罪対策法で定めがございましたから、その定めをもとにして、条約の定める方向でどう対応するかということをした結果であるというふうに思っております。

高山委員 いや、通告も何も、条約にこういうふうに書いてある方が、条約の方が限定的じゃないか、それに比べて政府案の方が全般的にどうも処罰範囲が広いように私としては思われたわけですけれども、どうも政府の方針といいますか、この条約ということにかこつけて、どんどん何か処罰範囲を広げるような、そういう危惧を私はちょっと持っているんです。

 条約に規定のないものでもどんどん今回の改正案には入れてきていますよね。どうしてこれは、条約のものだけをただ国内法化するだけではなくて、こういうふうに広げてきているんでしょうか、それをまず法務大臣に伺いたいと思うんですけれども。例えば、だからサイバー法の部分もそうですし。

杉浦国務大臣 サイバー関係のものは、サイバー防止条約という別の条約を締結した、それを担保するために、たまたま一つの法律でやっておりますけれども、この法律でお諮りを申し上げているわけですし、もともと条約にあるものもありますが、我が国の国内犯罪対策として同時に検討すべきものも入れさせていただいておるわけであります。

高山委員 官房副長官にお越しいただいていますので伺いたいんですけれども、私は、今回のこの条約刑法の審議を通じて、どうも最近、政府による監視社会といいますか、これはちょっと紋切り型の表現であれなんですけれども、どうもそういうのが強まっているんじゃないかなという気がいたします。

 これは政府の方針として、内閣情報センターなんかでウィニーの情報流出を突きとめたりとか、いろいろと常時ネット上も監視しているようなんですけれども、今後もこのように、例えばこの条約なんかが通りますと、これは後で国家公安委員長の方にも聞きますけれども、本当に犯罪が起きてからじゃなくて未然の段階で防ぐということも当然必要なんですけれども、そのために、ちょっと一般の社会を盗聴的な手法であるとか、あるいは常時監視しておくとか、網を広げて監視体制を強めておく必要が今はあるんだというふうにお考えですか。

 まず官房副長官に伺って、次は国家公安委員長に、警察としましても、実際犯罪が起きるよりは犯罪を未然に防ぐということで監視体制をとられているんだと思うんですけれども、こういうことはやはり今後も必要だというふうに考えているんでしょうか。

長勢内閣官房副長官 今回の法案は、御案内のとおり、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約及びサイバー犯罪に関する条約の締結に伴い必要となる所要の法的整備を行おうとするものでございます。世の中大分変わってきまして、国際的な組織犯罪なり、あるいは国際テロなり、あるいはサイバーテロなりというものを何としてでも防止していかなければ社会の安定が保たれないというのは国際的な状況でございますし、そういう中で、我が国も国内体制をきちんとして、国際社会の中できちんとした体制をとっていきたいということは当然のことだろうと思いますし、そのために今回の法案を出させていただいていると思っておりますので、御理解をいただきたいと思います。

 今、日本も監視社会になっていくのではないかという危惧を持っておられるようでございますが、今言ったような状況の中で、社会のいろいろな情報伝達手段その他が変わる中で対応しなきゃならぬことはしなきゃなりませんけれども、我が国をそういう暗黒的な監視社会にしなきゃならぬということはあってはならないことだろうと思っておりますし、そういうことを企図していることは全くないということは申し上げなければならないと思います。

沓掛国務大臣 我が国の治安を守っていく上において、国際的な協力というのは欠かせない大事なことだというふうに思っております。特に凶悪な犯罪等に対しては、事前にそれに対応していくことも極めて重要だというふうに思っております。

 今回の共謀罪は、国際組織犯罪防止条約の締結に伴う法整備として設けられたものでございますが、この内容そのものについては、これは法務省所管でございますので、私の方から何かということは申し上げる立場にはありませんけれども、しかし、一例として、一般的に、具体的に言えば、暴力団による組織的な殺傷事犯とか、いわゆる振り込め詐欺のような組織的な詐欺事犯とか、あるいは暴力団の縄張り獲得のための殺傷事犯などについては、当然これは、事前にそういう共謀されたものについての的確な対応を図っていくことは、我が国の治安上欠かせない大事なこと、必要なことと思っております。

 いずれにいたしましても、法律が制定された後は、警察に対して、しっかりと適切な捜査を推進して、法と証拠に基づいて対応していくように督励したいと考えております。

高山委員 今国家公安委員長から御答弁いただきましたけれども、法と証拠に基づいてやるのは当然なんですけれども、その証拠収集方法が、最近随分捜査手法が変わってきて、人の知らないところで何かやっているんじゃないかというような印象を受けるんです。

 私が言いたいのは、組織犯罪ですとか暴力団とか、こういうものに対して、こちらもハイテク捜査といいますか、いろいろな手法を使って捜査をする、あるいは盗聴なんかも許されるかもしれない、私はそう思うんですけれども、どうも今回の条約刑法は、そういった範囲にとどまらないで、一般の人がうっかりやってしまうような犯罪ですとか、仲間内でそれこそちょっと自転車を盗んじゃおうとか、そういうようなことまで全部網羅的に取り締まるような、確かに自転車を盗むのも悪いことですけれども、今回の共謀罪、これは次の日になってそれをやめても既遂ですからね。ちょっとその範囲が広がり過ぎているんじゃないか、こういう印象を私は受けたわけです。

 それで、時間もないので、その中で特にサイバー法のところに移りますけれども、このサイバー法の中で、文言の問題なんです。

 ウイルスをつくる罪、ウイルスをつくるのを罰しようという趣旨で、その書きぶりが、「その意図に反する動作をさせる」というような書きぶりなんですけれども、これは前回も私は指摘させていただきましたけれども、条約の方ではもっと詳しく書いてあるわけです。サイバー条約の方では、二条、三条、四条、五条で、今読み上げませんけれども、かなり限定的に書いてある。

 それを、今回のこの国内法化された方のサイバー刑法では、「その意図に反する動作」というだけで、ちょっと文言がこれはあいまいなんじゃないか。だから、このウイルス作成ですか、これが正当な行為まで全部入っちゃうんじゃないかということで、プログラミングが萎縮するんじゃないかというふうに私は思っているんです。

 この点、ちょっと済みません、今だれに聞くかということを言わなかったんですけれども、まず法務大臣に、この文言があいまいだということを、なぜこういうふうに条約よりあいまいな文言になったのかを伺って、その後官房副長官に、やはりこれは、何か条約以上のことを広げて、この期に乗じて監視社会を強めるためにやっているんじゃないかということで伺います。それを聞いた後で、もう一回違う質問を国家公安委員長にします。

河野副大臣 今回の法案で新設する不正指令電磁的記録作成等の罪は、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、コンピューターウイルスを作成することなどを処罰するものです。

 研究者などが研究や実験目的でコンピューターウイルスを作成したり取得して保管したりする場合には、通常、自己のコンピューターまたは同意を得ている他人のコンピューターで実行させる目的を有しているにすぎず、人の電子計算機における実行の用に供する目的があるとは言えないため、その作成等の行為が処罰されることはないものと考えられます。

 ですから、プログラミングがこの法案によって萎縮するということはありません。

高山委員 正当な行為は除かれるので萎縮はしないというような今御答弁でしたけれども、条約の方は、私はこれはあえて読みませんけれども、物すごく多いものですから。ばあっと、違法なアクセスとはこうです、違法な傍受とはこうです、データの妨害とはこうですというふうに、かなりこれは詳細に書いてあるわけですよね。

 どうして、条約の方はこれだけわあっと詳細に書いているのに、今回、法文の方では「その意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせる」なんというあいまいな文言で書いているのか、ここをまず伺っているんです。

河野副大臣 今回の不正指令電磁的記録作成等の罪は、データの破損を内容とする犯罪の予備的な犯罪として構成したものではありません。電子計算機のプログラムが不正な指令を電子計算機に与えないという社会一般のものまたは広範囲のものの信頼、期待を保護する必要があるとの考えから設けることとしたものであります。

 電子計算機の使用者の意図に反する動作をさせるような不正なプログラムは、それだけで人のプログラムに対する信頼を害するものでありますから、これを他人のコンピューターで実行させる目的で作成する行為は十分に処罰の必要があるものと考えております。

 その客体をデータの破損等を行うプログラムに限定すると、例えば、近時大きな社会的問題となっているウィニーによる情報漏えいの原因であるウイルスのように、使用者の意図に反するデータを送信したり不正プログラムの作成等を行う行為にも対処できなくなり、適当ではないと考えております。

 この罪の構成要件における、電子計算機の使用者の意図に反するか否かは、プログラムに対する社会の信頼を害するか否かという観点から、規範的に判断するものと考えております。

 ですから、この意図に反するとして本罪が成立したり、意図に反しないとして本罪が成立しなかったりするというようなことはあり得ず、「意図に反する」との文言がこの罪の処罰範囲をあいまいにしているということはないと考えております。

高山委員 そうですかね。私は、今の「意図に反する」というだけでは随分あいまいだなという印象を持ちましたけれども、これはかなり前から通告している話ですし、もうちょっと明確にお答えいただきたかったなと思います。

 このウイルス作成罪ですけれども、今、副大臣の答弁の中で予備的なものではないというような話もありましたが、もう一つ、不正アクセス罪というのがありますね、人のパスワードを使って銀行なんかの口座にアクセスする。これは一年以下の懲役なのに、どうしてこれは三年以下なのか、ちょっと法の権衡を欠くと思うんですけれども。だって、これはつくっただけですよね。実際に攻撃をしかけなくてもこちら三年以下。それで不正アクセス罪の方は、実際に攻撃をしかけて、不正なパスワードでアクセスして一年。これはちょっと法益、権衡、バランスを欠いているというふうに私は感じるんですけれども、この点、まず法務省に伺います。

河野副大臣 御指摘の不正アクセス罪は、他人のID、パスワード等の識別符号の入力等をして、ネットワークで接続された個々のコンピューターを利用し得る状態にする行為を処罰の対象とするものであります。

 これに対して、不正電磁的記録作成等の罪は、広範囲のコンピューターで実行され得るプログラムであって、プログラムに対する社会の信頼を侵害する電磁的記録などを新たに存在するに至らしめ、またはその被害を社会に拡散する行為を処罰するものであります。

 このように、この二つの罪は、その行為態様等を異にしていることから、法定刑に相応の差異がある、不正アクセスが一年であり、もう片方が三年以下であることは非常に合理的であって、これを同じように扱うことこそが合理性を欠いていると思います。

高山委員 今の副大臣の御答弁ですと、ウイルスを作成することが社会的法益を侵害するというような言いぶりでしたけれども、これはつくるだけで、実際には使わない前に罰するわけですよね。別に法益侵害は発生していないんじゃないですか。

河野副大臣 この罪は、広範囲のコンピューターで実行され得るプログラムであって、プログラムに対する社会の信頼を侵害する電磁的記録等を新たに存在するに至らしめ、またその被害を社会に拡散する行為を処罰するものであります。極めて重大な罪だと思っております。

高山委員 いや、拡散させるように人にメールを送ったりとか人のパソコンに入れたら、それは確かにえらいことだなとは私も思いますけれども、別に、プログラムして、つくって、自分のパソコンの中で持っておくだけで、それが人にどういう迷惑をかけているんですか。ちょっと副大臣に聞きたい。

河野副大臣 誤解されていると思いますが、この罪は目的犯でありまして、自分のパソコンで持っている分には構いませんが、他人のコンピューターでプログラムを走らせるという目的を持ってつくっている場合が処罰の対象でありますので、自分のパソコンの上に他人の目的で走らせるプログラムを持っているからいいではないかということではないと思います。

高山委員 目的犯だということはわかって質問しているんですけれども、目的を持ってここで例えばつくった、つくったけれども、別にどこにも攻撃しかけていないんだったら、全然迷惑を生じていないじゃないですか。

河野副大臣 コンピューターがこの社会の中で大変大きな存在になっているわけでありまして、このコンピューターに対する信頼が揺らぐということは非常に大きな問題であります。

 ですから、持っているからいいではないかというわけではありません。他人のコンピューターで使う目的がないのに持っている分には構わないのでしょうけれども、他人のコンピューターの上で走らせる目的でつくっている以上、これはやはりプログラムに対する信頼を失わせる、そういう反社会的な作用があるわけであります。

高山委員 いや、副大臣、いいですか。他人に害を与えるような目的でプログラムをつくったと。つくったけれども、これは攻撃をしかける前なんですよ。攻撃をしかけてから罰すれば十分じゃないですか。

河野副大臣 不正指令電磁的記録作成等の罪における不正指令電磁的記録は、それ自体、コンピュータープログラムという性質上、広範囲のコンピューターで実行され得るものであるという点で直ちに広範囲に及ぶ被害をもたらすものであります。

高山委員 済みません。そうすると、では、さっきの不正アクセス罪も、人のパスワードを知った段階でこれは既遂なんですか。

河野副大臣 多分、委員は誤解をしているんだと思いますけれども、悪質なコンピュータープログラムをつくって、利用し得る状態になっている段階で犯罪になるわけであります。不正アクセスのIDを知ったからといって、その時点で処罰されるのと比べるのは若干おかしいんじゃないかと思います。

高山委員 私は誤解しているかもしれませんので、利用し得る状態になったというのは、この文言上どこで明らかになるんでしょうか。

河野副大臣 不正アクセス罪は、他人のID、パスワード等の識別符号の入力等をして、ネットワークで接続された個々のコンピューターを利用し得る状態にする行為を処罰の対象としております。

高山委員 済みません。では、ウイルス作成罪の方はどこの文言でそういうふうになっているんですか。そっちを教えてください。

河野副大臣 ウイルスを作成して、他人のコンピューターで走らせる目的で作成をした段階で処罰の対象になります。

高山委員 質疑時間が来ましたので、これで終わります。

    ―――――――――――――

石原委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております各案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る五月九日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時四分散会


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