衆議院

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第26号 平成18年5月19日(金曜日)

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平成十八年五月十九日(金曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 石原 伸晃君 

   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君

   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君

   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    太田 誠一君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    平沢 勝栄君

      三ッ林隆志君    水野 賢一君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳澤 伯夫君

      柳本 卓治君    石関 貴史君

      枝野 幸男君    河村たかし君

      小宮山泰子君    細川 律夫君

      伊藤  渉君    保坂 展人君

      糸川 正晃君    山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   法務副大臣        河野 太郎君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 辻   優君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十九日

 辞任         補欠選任

  滝   実君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  糸川 正晃君     滝   実君

    ―――――――――――――

五月十七日

 共謀罪の新設反対に関する請願(吉井英勝君紹介)(第二〇〇一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二〇八四号)

 同(石井郁子君紹介)(第二一五六号)

 民法改正において選択的夫婦別氏制度の導入に関する請願(保坂展人君紹介)(第二〇〇二号)

 同(池坊保子君紹介)(第二〇八五号)

 共謀罪の新設に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二〇〇三号)

 同(大畠章宏君紹介)(第二〇〇四号)

 同(黄川田徹君紹介)(第二〇〇五号)

 同(高山智司君紹介)(第二〇〇六号)

 同(西村智奈美君紹介)(第二〇〇七号)

 同(横光克彦君紹介)(第二〇〇八号)

 同(篠原孝君紹介)(第二〇三二号)

 同(高木義明君紹介)(第二〇三三号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第二〇八六号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第二〇八七号)

 同(笠浩史君紹介)(第二〇八八号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第二一五七号)

 国籍法の改正に関する請願(寺田学君紹介)(第二〇〇九号)

 同(池坊保子君紹介)(第二〇九〇号)

 同(小川淳也君紹介)(第二〇九一号)

 選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願(池坊保子君紹介)(第二〇八九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十三回国会閣法第二二号)


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     ――――◇―――――

石原委員長 これより会議を開きます。

 第百六十三回国会、内閣提出、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案並びにこれに対する早川忠孝君外二名提出の修正案及び平岡秀夫君外二名提出の修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 去る四月二十一日、早川忠孝君外二名から提出されました犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、撤回を許可するに決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 この際、原案に対し、早川忠孝君外二名から、自由民主党及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。早川忠孝君。

    ―――――――――――――

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

早川委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表いたしまして、その提案の趣旨及び内容を御説明いたします。

 本法律案は、第百六十三回国会から継続審査となっている法律案でありますけれども、これまでの委員会の審査におきましては、殊に、組織的な犯罪の共謀の罪について、一般の会社や市民団体等の活動も共謀罪の対象になってしまうのではないかとの懸念、犯罪の共謀をしただけで処罰することは人の内心を処罰することとなってしまうのではないかとの懸念などが示されました。加えて、証人等買収の罪あるいは通信履歴の電磁的記録の保全要請等についても、さまざまな懸念が示されたものと承知しております。

 そこで、このような委員会での議論を踏まえ、これらの懸念を払拭するため、さきに修正案を提出したところ、民主党からも同様の趣旨に基づく修正案が提出され、これらの修正案について、引き続きさまざまな質疑が行われました。

 自由民主党及び公明党は、これらの議論を踏まえ、民主党の修正案に含まれる事項についても、関係する条約との整合性を考慮しながら、可能な限り、民主党と共同して本法律案を修正する新たな案を取りまとめることを目指し、民主党との協議を積極的に行ってまいりました。残念ながら、その協議は成案を得るには至りませんでしたが、これまでの委員会の審査及び民主党との協議を踏まえ、改めて、指摘される懸念をより一層払拭するため、本修正案を提出した次第であります。

 次に、その内容について申し上げます。

 第一は、組織的な犯罪の共謀の罪の成立要件を明確かつ限定的なものとすること等についてであります。

 具体的には、組織的な犯罪の共謀の罪が成立するのは、その共謀に係る犯罪が組織的な犯罪集団の活動として行われる場合に限られることとし、その組織的な犯罪集団とは、その結合関係の基礎としての共同の目的が死刑または無期もしくは長期五年以上の懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪等を実行することにある団体をいうものであることを条文に規定するとともに、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律における団体の定義規定に所要の修正を加え、一般の会社や市民団体等の正当な目的を有する団体の活動については、およそこの罪の対象にならないということをさらに明らかにしようとするものであります。

 また、組織的な犯罪の共謀の罪に処罰条件を付加し、その共謀をした者のいずれかによりその共謀に係る犯罪の実行に必要な準備その他の行為が行われた場合に限り処罰されるものとすることで、共謀をしただけの段階にとどまる限りその処罰を差し控え、さらに進んで実行に向けた段階に至ったことのあらわれである外部的な行為が行われた場合に初めて処罰の対象とすることとしております。

 さらに、自首により、刑が減軽し、または免除される場合を限定するとともに、組織的な犯罪の共謀の罪の規定の適用に当たっては、思想及び良心の自由並びに結社の自由その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限するようなことがあってはならず、かつ、労働組合その他の団体の正当な活動を制限するようなことがあってはならないことを条文上明確にし、この点、その運用において留意がなされるべきこととするものであります。

 第二に、証人等買収の罪について、その規定の適用に当たっては、被疑者または被告人の防御をする権利を不当に制限するようなことがあってはならず、かつ、弁護人としての正当な活動を制限するようなことがあってはならないことを条文上明確にし、この点、その運用において留意がなされるべきこととするものであります。

 これらのほか、通信履歴の電磁的記録の保全要請について、その期間は六十日を超えてはならず、かつ、書面で行わなければならないものとするとともに、不正指令電磁的記録作成等の罪についても、所要の修正を加えることとしております。

 以上が、修正案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ、十分な御審議の上、委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)

石原委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

石原委員長 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、法務省刑事局長大林宏君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 これより原案及び両修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細川律夫君。

細川委員 民主党の細川律夫でございます。

 今、与党の方からまたまた修正案が提案をされまして、その趣旨説明が行われたところであります。

 そもそも、この法案につきましては、二〇〇三年に提案をされ、二回廃案となり、そして、三回目のこの提案でございます。しかも、継続審議であり、前国会からの引き続きの審議でございます。そういう大変問題のある法案でありながら、さらに与党である提案者の方から二回も修正案が出てくる、こういうことは、この法案がいかに問題があるかということの明らかな証明ではないでしょうか。こういう事態を見ましても、この法案は、まずは撤回をして、出し直してくるのが本来の姿ではないか、このように私は考えます。

 それでは、今、再々修正案が出ましたので、その点についての質問をさせていただきます。

 犯罪の実行に必要な準備その他の行為という点についてお聞きをいたします。

 前回も私は、与党の皆さんの修正案で、共謀のほかに、犯罪の実行に資する行為、こういう修正案に対して、この資する行為は非常に幅が広く、行為そのものは日常的な活動とほとんど変わらないものも多くあり、また、その範囲も漠然とした、そういうことも申し上げ、この審議の中でそのことも明らかになりました。

 そこで、今回は、さらに再々修正案で、犯罪の実行に資する行為が「犯罪の実行に必要な準備その他の行為」という表現ぶりに変わったところであります。しかし、「準備その他」、「その他」というのが入っておりまして、この文言を見る限り、範囲がどのように狭まったかということは全く不明でございます。

 そこでお聞きをいたしますけれども、前回も私は、殺人の共謀で、その対象の人をホテルに呼び出すためにホテルの予約をする、こういう行為について、これは資する行為かどうかということでお聞きをいたしましたけれども、今度は、さらに修正をされました、犯罪の実行に必要な準備その他の行為に当たるかどうか、お答えいただきたいと思います。

漆原委員 今回の与党再修正案におきましては、従前の与党修正案の「実行に資する行為」という文言を改めて、今委員御指摘のように、「実行に必要な準備その他の行為」ということにしました。

 従前の実行に資する行為の意義につきましては、繰り返し説明させていただいたところでありますが、この委員会の審議の中で、委員初め民主党の皆さんから、そのような意義に限定されることが文言上必ずしも明らかでないのではないかという御指摘をいただきました。そのような御意見も踏まえ、さらにその趣旨を明確かつわかりやすくするために、実行に必要な準備その他の行為というふうに修正をさらにさせていただいたわけでございます。

 この実行に必要な準備その他の行為の意義につきましては、まず実行に必要な行為でなければならないことを前提とした上で、この実行に必要な行為の一つの例示として、準備という行為を挙げたものであります。

 したがって、実行に必要な準備その他の行為とは、三つありますが、一つは、共謀が成立した後の、二番目、共謀の段階を超えた、すなわち共謀する行為とは別の、三番目、犯罪の実行のために必要な準備行為またはこれに準じるような行為でなければならないと考えております。

 また、その法的性格については、処罰条件でありますことは従前と同じであります。

 そこで、先生がお尋ねのような行為がこれに該当するか否かにつきましては、個別具体的な事実関係を離れて一概に申し上げることは困難ではありますけれども、一般論として申し上げますと、共謀に係る犯罪行為の内容が、ホテルに対象者を呼び出した上で殺害するというものであることを前提としますと、殺害する対象者をおびき出すホテルを予約するという行為と認められるものであれば、この実行に必要な準備その他の行為に該当し得ると考えます。

 なお、誤解のないように申し上げておきますが、単にホテルを予約するという行為が該当し得ると申し上げているのではなくて、あくまでも、その行為が殺害する対象者をおびき出すホテルを予約する行為であると認められる場合に、そういう共謀に係る犯罪の実行に必要な準備その他の行為に該当するというふうに申し上げておきたいと思います。

細川委員 それでは、ホテルを予約するためにお金がかかる、お金がかかるので預金からそのお金をおろした、そういう行為はこの準備その他の行為に当たりますか。

漆原委員 それは大変難しいことで、一般的には、先ほど申し上げましたいろいろな事実関係を検討しなければなりませんけれども、先ほど申し上げた条件のもとで、ホテルを予約するためにお金がかかる、そのホテルには当該殺害する目的の対象者を呼び出してそこで殺害する、こういう事実関係を前提としまして、そのホテルを予約するのにお金が要る、そのお金を借りる行為ということになると、私は、準備そのものではないかもしれませんが、必要なその他の行為の範疇に当たるのではないかと考えております。

細川委員 自分が預金をしているお金をおろすなんということは日常茶飯事であることで、共謀して、お金をおろす行為で、それが処罰条件となって犯罪が成立するのでは、これはもうどんな犯罪でも何か成立するようで、全く歯どめがかからないんじゃないでしょうか。

 せっかく、資する行為よりはもっと犯罪の成立を狭めるというか明確にするために、このような、犯罪の実行に必要な準備その他の行為というものに変えたわけですが、しかし、今の説明では、変えても何ら変わらないんじゃないですか。全く変わらないじゃないですか。

漆原委員 先回も民主党の皆さんから御指摘がありました。犯罪の実行に資する行為とは一体何かという話がありました。

 しかし、先回の質問の中でも、生きていること自体が犯罪の実行に資することになるのではないか、呼吸をすることも犯罪の実行に資することになるのではないかというふうな、ある意味では極端な意見も出ましたが、そういうものではないんだと。犯罪の実行を前提として、そしてそれを、犯罪を共謀して、それを客観的な行為にあらわした、そこを処罰要件としたということでございます。

細川委員 何度聞いても私には全く理解ができません。

 それでは引き続きお聞きをしますが、共謀と必要な準備その他の行為、これで、逮捕の関連でお聞きをいたします。

 この間私が質問したときには、この共謀罪については、共謀だけで犯罪を構成するので、理論的には共謀だけで逮捕ができるけれども、処罰できないと。処罰できないから、つまり起訴できないんだから、現実的には逮捕することがないだろう、こういう答弁がございました。これでよろしゅうございますか。

漆原委員 再修正案の犯罪の実行に必要な準備その他の行為の要件は、いわゆる処罰条件として設けたものでありまして、犯罪として処罰されるのは共謀自体であるというふうに考えております。

 したがって、共謀が行われたという嫌疑があるのであれば、犯罪が行われた嫌疑があるということになりますので、仮に、共謀行為はなされたものの犯罪の実行に必要な準備その他の行為は行われていない段階でありましても、法的には逮捕をすることは可能と考えられ、この点は再修正案においても変わりはありません。

 ただ、現実問題として、起訴をすることができない、また、犯罪の実行に必要な準備その他の行為が行われたかどうかも不明の段階で逮捕手続をすることは考えられないというふうに申し上げておきます。

細川委員 それでは、もう一度念のために聞きますが、共謀だけではそこで現行犯逮捕とかそういうことはできないですね、共謀だけの段階。犯罪が成立しても逮捕できないですね。

漆原委員 法的にはともかく、共謀の段階で現行犯逮捕をすることは現実にはあり得ないというふうに思います。

細川委員 現実的にできないということは、では、理論的にはできるということですね、現行犯逮捕。

漆原委員 先ほど申しました、これは多分民主党も同じなのかなと思いますけれども、共謀罪は共謀だけで犯罪が成立するわけでございますから、その段階では法的には可能だというふうに思っております。

細川委員 理論的には共謀の段階で現行犯逮捕もできるということでありますが、現実にはなかなか行われないだろう、こういうことでございます。

 それでは、犯罪の実行に必要な準備その他の行為が行われた、その現場で現行犯逮捕はできますか。

漆原委員 共謀があった、共謀行為があった、その後、先ほど申しました犯罪の実行に必要な準備その他の行為があったということであれば、現行犯逮捕は可能だと思います。

細川委員 それでは、先ほど私が殺人のときのホテルの予約の質問をしましたけれども、予約がされたときに、その現場で、予約で現行犯逮捕というのはできるんですか。

漆原委員 共謀がなくて、仮に……(細川委員「共謀はあったんですよ」と呼ぶ)共謀があって、さらにその後にホテルを予約する行為が、この我々が言うところの、修正案で言うところの犯罪の実行に必要な準備その他の行為に当たれば、処罰条件を満たすわけですから、法的には可能だと思います。

細川委員 提案者に申し上げますが、これは通常逮捕じゃないですか。逮捕状をとらないと逮捕できないんじゃないですか。

漆原委員 先ほどから申し上げております。共謀の事実が確認された上でということを申し上げております。したがって、共謀の事実があるかないかわからない、それで、ホテルを予約する行為だけで現行犯逮捕、法的にはないでしょうね。先ほどから申し上げているように、共謀の事実があったというそこを確認した上で、さらにそれに基づいて具体的な行為が行われれば、法的には現行犯逮捕は可能だというふうに思います。

細川委員 では、ちょっと法務省。

大林政府参考人 お答え申し上げます。

 逮捕の要件というのは、もう御案内のとおり、刑事訴訟法により、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」とあります。この「罪」とは、共謀罪においては共謀行為をいいますので、その後のいわゆる処罰条件のものではない。要するに、共謀行為がその対象であると思います。

 それから、今お尋ねの件ですけれども、共謀とそれから今お尋ねの例えば予約する行為が、その後の処罰行為との関係においては、今度は現行犯逮捕の要件の問題が出てくると思います。現行犯逮捕は、刑事訴訟法二百十二条によりまして、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。」と書いてあります。ですから、共謀が基本ですけれども、共謀に引き続いて必要な準備行為が行われた場合、これは一体として現に行い終わった、こういうふうな評価ができますから、そういう現行犯逮捕ができる場合があり得る、このように考えております。

細川委員 現行犯逮捕があり得るというのが刑事局長の答弁ですけれども、共謀とそれからその準備その他の行為というのが本当に密接していれば、それは現行犯逮捕ができるでしょう。

 では、ホテルで殺そうというところまで共謀して、そしてそのホテルを予約するということで、先ほど言った、では、そのお金を借りるのに二キロ先のところへ行ってお金をおろす行為、これは準備その他の行為に入るというのですけれども、そのお金をおろしているところで逮捕できますか。

大林政府参考人 委員はもう十分に御承知のことと存じますけれども、現行犯は、もう一つ、準現行犯と、多少その要件を緩和している部分もございます。ですから、今の要件があるかどうかというのは、具体的な事実関係によると思います。逆に申し上げて、恐らく委員のおっしゃりたいのは、共謀とそれから準備に必要な行為がかなり時間的に離れた状況にあれば、これは現行犯の要件を満たさない場合もあり得ると思います。

 ですから、先ほど言いましたように、共謀行為がありました、それから引き続いて、例えば今おっしゃるお金をおろしてきたという問題が時間的、場所的に接着しておりまして、全体的に見て「現に罪を行い、」と評価できるならば、それは現行犯人としての要件を満たす場合もあり得ると思います。

 ただ、今例示しましたように、かなり時間的、場所的に離れているというのは、これは事実認定の問題、最終的には裁判官が是非を判断することになりますけれども、そういう具体的な状況下において、現行犯逮捕、今のように離れた場合においてできない場合、現行犯として見られない場合ももちろんあると思います。それから、接着している場合は、そういうふうな現行犯と評価される場合もあると思います。

細川委員 提案者もそうですが、それから刑事局長の答弁でも、この共謀とそれから準備その他の行為というのは分けられていますから、そうしますと、どの場合に現行犯で逮捕していいか、あるいは通常の令状をとってそれで逮捕しなきゃいかぬのかというのが、本当にあいまいになりますね、そういう答弁では。一般の国民の人権を害する心配というのは、これはもう大変なことじゃないですか、こういうあいまいでは。

 それでは、共謀があった、理論的には逮捕状が請求できる、この逮捕状を請求したら、これは当然逮捕状は発付される、許可される、こういうことでよろしいですね。提案者、どうですか。

漆原委員 法的要件を満たせば、裁判所は令状を発付すると思います。

細川委員 非常に明快です。

 そうしますと、共謀罪は共謀で成立いたしますから、その段階で全部逮捕状を請求できるわけですね、やれるわけですね、実務的にも。そうしますと、逮捕状をとって、次に準備その他の行為をいつやるかというのをずっと待っていればいいじゃないですか。あるいは、それを捜し出すために、まずは先に令状請求ということになるでしょう。そうなったら、これは大変じゃないですか。そうでしょう。

 それは、提案者のお二人も法曹経験者というか弁護士だからよくおわかりのように、そんなことをやったら、先に令状をとって、処罰条件だということであれば、これはもうあれですよ、まず令状をとって、その後どういう動きをするかと。それで、しかもお金をおろす行為や予約する行為まで準備その他の行為になっちゃえば、これはどんどん広がっていくじゃないですか。捜査当局のやりたい放題になるんじゃないですか。どうですか。

漆原委員 与党再修正案の犯罪の実行に必要な準備その他の行為の要件は、いわゆる処罰条件として設けられるものと理解しておりますので、犯罪として処罰されるのは共謀自体ということでございます。

 したがって、共謀が行われたという嫌疑があるのであれば、犯罪が行われた嫌疑があるということになりますので、これが刑事訴訟法第百九十九条第二項の、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき等の要件に該当する場合には、仮に、共謀行為はなされたものの犯罪の実行に必要な準備その他の行為は行われていない段階であっても、先ほど申しましたように、法的には、裁判官から逮捕状の発付を受けることになることは可能だというふうに考えております。

 もっとも、共謀を立証するための証拠と犯罪の実行に必要な準備その他の行為を立証するための証拠は共通している場合が相当多いと考えられまして、共謀については逮捕のための十分な嫌疑があるのに、犯罪の実行に必要な準備その他の行為の存在や当該共謀との関連性についてはこれを立証する証拠がないということ自体、実際には想定しがたいというふうに考えております。

 また、仮にそのような証拠がない場合があったとしても、そのような場合に被疑者を逮捕すれば、その後に実行に必要な準備その他の行為が行われることが想定されず、起訴もできないこととなりますので、実際問題としては、先ほど申しましたような逮捕状の請求をすることは考えがたいというふうに思っております。

細川委員 説明を聞きましても、捜査当局が職務に熱心な余りどんどん逮捕状を請求してやれば、これは犯罪が成立するということになっていますから、そうしますと、その逮捕状に基づいて、準備その他の行為を見つけていく、こういうことで、私は、これはもう大問題だというふうに思います。

 そして今度は、では、さっき言ったように、準備その他の行為というのはなかなか立証できない、しかし、立証できないとしても、共謀のところできちっと要件が整うようにやっておけばいいというお考えですから、そのためには、事前にきちっと、どういう共謀があったとか、細かいことまでやらなきゃいかぬでしょう。そうするとどうなるかですよ。

 共謀ですからね、客観的とかはないんですから。そうすると、捜査のやり方としたら、盗聴とかメールの盗み見とか、そういうことをやらざるを得なくなるんですよ、これでいきますと。私はそこを非常に心配しますし、不安に思っております。そういう意味では、この法律は、ますます管理社会といいますか監視社会、そういうようなことを非常に危惧いたします。

 私はこういう観点から物すごく心配しているんですけれども、捜査を担当する警察庁、私の意見に対してどういうふうにお答えになりますか。

米田政府参考人 共謀罪というのは、殺人とか窃盗とか、犯罪そのものが明らかになっているというものではございませんで、ほかにも、現在もございますけれども、潜在する事案をどのように摘発していくかという捜査手法だと思います。

 それは、現在もやっておりますように、私どもは、協力者から情報収集をしたり、また、そういうことを見聞きしている人間からいろいろ聞いたことを端緒として、そして内偵を進め、捜査を進めていくということになろうかと思います。

細川委員 私の危惧は払拭できません。

 それでは、ちょっと時間がないから次へ行きますが、犯罪収益のところで質問をいたします。

 提案されております法律案の第三条のところに「第二条第二項に次の一号を加える。」こういうことがありますね。「第三条 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を次のように改正する。」こういうことで、第一条、第二条、それから「第二条第二項に次の一号を加える。」こういうことで五号が加わっております。

 外務省に聞きますが、これは条約の要請に基づく文案ですか。簡単に。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の部分は、ただいま御指摘の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律改正案の第二条第二項第五号の規定に係るものと理解いたします。

 この条約は、第六条で犯罪収益の洗浄の犯罪化を定めるなど、犯罪収益の規制の強化を求めていますが、御指摘の規定は、本条約で直接求められているものではございません。

細川委員 これは大変な問題じゃないですか。条約で要請されていないものがなぜこの法律に載るんですか。これはおかしいじゃないですか。

 この法律案の第三条の一番最初、第一条、目的の項ですけれども、「第一条中「かんがみ」の下に「、並びに国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するため」を加える。」目的に加えるわけですね。それでこの五号が何でこの中に入ってくるんですか。条約の要請ではない五号がなぜこれに入るんですか。

大林政府参考人 今御指摘のとおり、本条につきましては、条約が直接義務づけているものではございません。しかしながら、このような財産につきましては、共謀に基づく犯罪の実行の準備のために取得されたものであり、共謀罪という犯罪を遂行する過程で得た財産としての実質を有することから、既に犯罪収益とされている犯罪行為により得た財産と同様の性質を有するものと考えられること、また、犯罪の実行のために使用する目的で準備された財産であるので、仮に犯人にその保持、運用を許せば、犯罪組織の維持拡大や将来の犯罪活動等に用いられるおそれも大きいと考えられること、さらに、組織的な犯罪集団が関連する犯罪に係る収益を広く犯罪収益規制の対象とすることは犯罪収益規制の強化を図ろうとする条約の趣旨にも沿うものと考えられること等から、このような財産についても犯罪収益とすることが適当であると考えたものでございます。

細川委員 この条約には、こういう五号のような、資金を没収することができる、あるいはしなければいけないとか、要請は一切ないわけでございます。それをあえて、何かこの条約に便乗してこれを入れ込んでいるというように私は思います。

 それでは、具体的なことでちょっとお聞きをいたします。

 例えば、リフォーム会社がまじめに仕事をしてきちっとお金ももうけていた、ある日、あるときから、会社ぐるみのリフォームの詐欺をやろう、こういうことを共謀して、お年寄りの多い地域に営業拠点、営業所を新設する、こういうことで資金の口座をつくった、こういう場合、別口座をつくってそこに資金を入れたら、これは、ここで言う犯罪収益に当たりますか。

大林政府参考人 お尋ねのような財産については、犯罪収益には当たらないというふうに考えております。

 すなわち、今回の法案においては、犯罪収益として、共謀した者が、共謀に係る犯罪の実行のための資金として使用する目的で取得した財産を加えることとしています。これに該当するためには、法文に書かれておりますように、共謀に係る犯罪の実行のための資金として使用するという目的、それから取得したということが認められることが必要でございます。そして、この取得したとは、その者が使用、処分を行い得る地位を得て、これが可能になった、こういうものをいうと考えられます。

 したがって、その者が財産を取得したというためには、財産の管理主体が変更される必要がありますが、お尋ねの事例は、資金を別の口座に移しかえただけであって、その前後で管理主体に変更があったと認めがたい事案であるというふうに思われますので、このような場合は、この別の口座に移しかえられた資金について、共謀に係る犯罪の実行のための資金として使用する目的で取得した財産と認めることはできないのではないかと考えております。

細川委員 ちょっとよくわからなかったんですが、それでは、資金を借り入れたような場合はどうなるんですか。自己資金じゃなくて、借り入れた場合は成立しないですか。

大林政府参考人 借り入れた場合は、事実上、これを使用、処分し得る地位を得た場合というふうに当たるんだと思います。

 私の委員の御質問に対する理解としては、今までまじめに企業をやっていました、それである口座に入れていました、今度はその人が犯人側に立って共謀をしました、それで自分の手元にあった保管がえの資金を使ったという場合は、取得という要件に当たらない、今、主体が同じですから。

 ですけれども、例えば、今共謀した人間がいます、それが第三者からお金を借りた。そうしたら、そのお金についての支配権は当然犯人側に移りますから、これは当然、その資金と、没収の対象になる、そういうことになると思います。

細川委員 よく理解ができませんけれども、私は、この条約にそもそも書かれていない、条約で要請もされていないこの五号をあえてここに載せてきたということについては、全く納得がいきません。

 しかも、今回の国会にもう一つ法律が出ておりまして、全くこの法律案と同じような、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案、この法律案とは別のところで別に法案が出ているわけなんですよ。そこで犯罪収益をちゃんと規定しているんですから、本来ならば、この法律が成立するかしないかは別にして、これが処理されてからそちらの方で法案に出せばいいことであって、全然趣旨の違うところへ持ってきて、この法律で処理をしようとした。私はちょっとおかしいというふうに思っております。これについて何かありますか。

大林政府参考人 本法案は、条約に基づいて、それをカバーする国内担保法として、それが主たる目的で成立したものでございます。

 今委員がおっしゃられる問題は、犯罪収益に関連するものとして、条文としては関連しますけれども、今おっしゃられたものについては、今、法上、犯罪収益というものは、基本的には没収するということになっています。ただし、それを没収した場合には、被害者たる人が、例えば、それがそのことによって資産を失ってしまうと、被害として損害賠償請求をしても受け取れないことだってあります。ですから、今の法律は、まず犯罪収益を定め、それが被害財産に当たる場合には没収してはならないというふうに規定しているわけでございます。

 ただ、そうすると、今度は、例えば、相手が暴力団などの場合には、被害者が訴訟を起こしても、実質、起こしにくい、怖くてできないという形になっていますので、今の法令に穴をあけまして、それを没収できる形にして、それで検察官がその被害を分配するというところに視点があるものでございまして、そういう点で法の趣旨が全く異なるというものでございます。

細川委員 よくわかりません。それなりの理屈をつけられていると思いますけれども、私は、今別の法律案で出してきております、そちらの方で犯罪に関する没収についてはきちっとまとめてやっていけば、それでいいんじゃないか。こっちの共謀の方にまとめているのはおかしいというふうに意見を申し上げまして、ちょっといろいろほかにも質問を用意してきましたけれども、これで終わりたいと思います。

 以上です。

石原委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社会民主党の保坂展人です。

 与党の提案者の皆さんから、きょうお昼前ですか、いただいたものですから、一点だけお聞きします。

 六条の二、ここに組織的犯罪集団ということで縛りをかけて、その中で、「別表第一(第一号を除く。)」と。ここに絞って、なぜ第一号を除いたのか、お願いします。

早川委員 これは、政府原案の中では、条約に基づいて、長期四年以上の罪を重大な犯罪とするということの中で、それを国内法に移しかえるときにそのまま例示をしておりました。子細に検討していく過程で、言ってみれば、その別表の中に共謀の罪というのがありますので、共謀の罪の共謀ということについては、これを技術的に外してよろしいのではないかというふうに思いまして、今回の再修正案ではこれを外すことにいたしました。

保坂(展)委員 さすがに見識の高い修正作業で、ここは評価するわけですね。私も共謀の共謀はないと思います。

 そうであれば、これは質問ではありませんが、内乱予備・陰謀の共謀とか外患予備・陰謀、私戦予備の共謀も論理的にはあり得ないので、ここは宿題になるなと。来週以降、ぜひ議論をさせていただきたいというふうに思います。

 刑事局長に伺いますが、前回議論させていただいた中で、いわば暗黙の共謀、法務省の規定する団体要件、これをクリアした上で、暗黙の共謀の中には、うなずきとかまばたきとか、こういうものも含まれると。私は少し驚いているんですが、しかし、これは間違いないですか。

大林政府参考人 共謀の過程において目くばせや暗黙の意思連絡が行われるといいますか、その共謀の一部となり得るということはあるということは、この間御返事、そのとおりでございます。

保坂(展)委員 刑事局長、目くばせとまばたきの違いを述べてください。

大林政府参考人 ちょっと、私がそれをお答えする立場かなという感じがいたしますが、先日も申し上げたとおり、目くばせ、要するに、言語を用いない形で、サインといいますか、合図という形も、それはこの間申し上げたとおり、同じ仲間の中で、そういうものがどういうものを意味するかということがわかれば、そういうものも共謀の一つを構成することはあるでしょうというお答えでございまして、今の御質問の定義といいますか、私、ちょっとそこまでは、申し上げるのはいかがかというふうな感じがいたします。

保坂(展)委員 これは、人から注意されるのではなくて、共謀罪が成立して、それこそこの与党案でも、実行に資する行為、変わった部分が認められれば逮捕されるということですから、これは説明してもらわなければいけないんですが。

 法務大臣、前回、言葉がひとり歩きするのは怖いんだと言いながら、まばたきあるいは目くばせということで成立することもあり得なくはない、これはもちろん組織的な犯罪集団であるとかいう条件をクリアした上でという前提がありますが、それでよろしいですか。

杉浦国務大臣 先生のような御理解でよろしいと思います。

保坂(展)委員 そうすると、私、実は、なぜ目くばせという話になってしまったかというと、当初、刑事局長は、練馬事件の最高裁判例を挙げられたんですが、その後に出た、いわゆる暗黙の共謀を記している最高裁判所の確定判例ですよ。

 これは暗黙の共謀ですから、実は、前回、刑事局長の答弁の中で、綿密な打ち合わせを重ねて、ある種共謀が完成している場合に、目くばせがサインになって共謀が完成するというようなことがあり得るとおっしゃいましたけれども、実は、暗黙の共謀というのは綿密な打ち合わせが要らない、むしろ、そういった打ち合わせ等なくても、謀議などは具体的になくても認定し得るという判例じゃないですか。

大林政府参考人 共謀共同正犯におきましても、法案の組織的な犯罪の共謀罪におきましても、共謀があったと言えるためには、単に漠然とした相談があった程度では足りず、犯罪の目的や対象、実行の手段、実行に至るまでの手順、各自の役割など、具体的な犯罪計画を現実に実行するために必要な要素を総合的に考慮して、具体性、特定性、現実性を持った合意がなされたと言えることが必要だと考えられます。

 具体的な事件におきましては、証拠による事実認定の問題でございますので、一般的にこの場合ということはなかなか言えないというふうに思います。

保坂(展)委員 刑事局長、私は、犯罪の結果が出ていない共謀罪の共謀と、けん銃所持という、犯罪の結果が出ていて、暴力団の親分が銃を持つなと言っていたといっても、それは習慣的に彼らは持っているということを知り得ていただろうという暗黙の共謀を認定した最高裁判決と一致させて、共謀という概念は同じで、共謀罪の範囲も暗黙の共謀を含むんだという答弁はおかしいと思いますよ。ここまで広げちゃうと、今与党の皆さんが言っている、つまり、いろいろな積み重ねであるとか、あるいは共謀そのものがどこまで強固に成立したかどうかなんという事実認定は非常に幅広になりますよ。暗黙の共謀ですから、言葉はなくていいんですよ、習慣的でいいんですよ、その場の空気を支配していたものということでいいんですよ、そういう解釈でいいんですか。

大林政府参考人 前にも御答弁しましたけれども、犯罪の遂行に向けた具体的かつ現実的な合意があることということでございまして、委員の前提が、団体要件とかほかの共謀の要件を全部クリアしたということを前提としておられる、非常にある面では仮定でございます。ですから、私はその仮定で申し上げているんです。

 ただ、私は、実際の問題としては、今のその前の、団体要件なり、具体的、現実的な共謀、組織内における役割分担等の共謀がなされたか否かという認定が一番問題ではないか。そこにおいて、現実的にはそこを共謀だけによって立証するということは、一般的に言えば難しいことだと思います。

 ですから、そこの要件に当たるかどうかというのが、本当の証拠収集なり事件の実態なりの性質からくるものであって、それは黙示の部分が含まれるか否かということが本質だというふうには私たちは考えておりません。

保坂(展)委員 結局、先ほどの目くばせとまばたきの違いは、目くばせは意思伝達行為なんですね。要するに、自分の意思があって、これはサインなんですよ、手を振るのと同じように。まばたきというのは自然的生理現象なんですね。

 刑事局長は、まばたきでも成立するというふうに前回おっしゃっているので、これはますます幅広になってきたと思うわけです。

 もし、暗黙の共謀が成立するという、今るるおっしゃった前提はもう答えないでいただきたい、時間がもったいないですから。その前提の上に立って、暗黙の共謀であれば、まばたきでもということは、では、ほおづえをついていても、あくびをしていても、漫然とただ空を見ていても、何をしていても成立するということと同義ですよね、まばたきは。

大林政府参考人 今委員がおっしゃられたまばたき、いわゆる自然現象といいますか、生理現象というもので私はお答えしているんじゃないんです。あくまでも、先ほど申し上げたとおり、目くばせあるいはそれに類するようなサイン、そういうものが共謀の一部をなすことはあるでしょうと。

 ですから、今おっしゃっているような、例えばこの間から問題になっている呼吸をすることとか、共謀と全く関係ない状態のまばたきが、共謀の中を、一部を構成するというふうに考えているわけではございません。

保坂(展)委員 それでは、刑事局長、前回の答弁は間違っていますよ、私、議事録をよく読んできましたから。これは間違っている。訂正してください。

 だから聞いているんですよ。目くばせとまばたきはどう違いますかと聞いたじゃないですか。そんなもの、意思を込めたまばたきは目くばせと同じだなんということはわかっていますよ。まばたきで成立するなんといったら、何をやっていたって成立するんですよ、呼吸だって。死んでいない限りは成立するんですよ。意識混濁していない限りは成立するんですよ。そんなに幅広く言っていいんですかということですよ。

 刑事局長に聞きますけれども、これだけの刑事法の答弁で、ぐるぐる回ってとか、あるいは行きつ戻りつとか、非常に感覚的な、かちっと固まっていないとか、非常に誠意を持ってお答えになっているのはわかっていますけれども、しかし、やはりあいまいじゃないですか、その言い方そのものも。目くばせとまばたきが違うぐらいは、前提として最初に聞いているわけですから、きちっと修正するなら修正してください。

大林政府参考人 今委員も御指摘になったように、私としては、この法案、これから適用されるものでございます。ですから、この委員会においても、委員の先生方の御質問に対してはできるだけ誠実に、具体的に御答弁申し上げるように努めてまいりました。

 今おっしゃられるような、私としては、まばたきと目くばせというのは、要するにサインのものとして私はこの間申し上げたんですが、ただし、委員がおっしゃられるのがその言い方がおかしいということなら、それは訂正させていただきたいと思います。私としてはそういうふうな、この間も申し上げたとおり、言葉にあらわさない、言語にならない、そういうサインの仕方が共謀の一部になることは、これはいつも申し上げているとおりでございまして、生理現象的なものを含むという趣旨ではございません。

保坂(展)委員 刑事局長に伺いますが、では、今のまばたきは撤回されたということでとらえていいですか。うなずかれていますね。

 それで、目くばせ、これはサインですわ、意思を伝達する行為。これも共謀の一部として構成される場合があり得る。その前段として言われているのは、犯罪計画や周到な打ち合わせがあるということでしょう。それ自体、もう共謀が成立しているじゃないですか、目くばせしなくたって。何で目くばせが共謀の一部になるんですか。実行に資する行為じゃないですか。そこまで綿密に組んであるんだったら成立しているじゃないですか。

大林政府参考人 私が委員のお尋ねに対して、大分前にその例を挙げました。

 その例は、いろいろな組織において、例えばだれかを殺そうという共謀をしました。その場合に、Aさんがどこへ行って、Bさんがどこへ行ってそういう犯罪行為をしなさいという共謀もできました。その場合に、例えば親分なりその意思決定者が、ではいつやろうかということがまだ決まっていない、その段階において、ある時期が来たと組織の者が判断しました。その場合に、親分に対して、やっていいですか、やりますかと言った場合に、うなずくなり目くばせして、そういうことで、そこで、要するに時期まで、犯罪の時期なり役割が完成した段階で共謀が成立するわけですから、やはりそれは完成したとは言えないんじゃないでしょうか。

保坂(展)委員 これは全く違うんですね。暗黙の共謀というのは、やっていいですか、うんというのは、これは暗黙じゃないですよ、コミュニケーションなんですね。親分に伺いを立てて、うんと、これは言語とほぼ同じ返答なんですね。暗黙の共謀というふうに言っているのは、そうじゃないんです。ちょっと議論が全然実らないんですが。

 今回、法務省が作成をしたと言われる「組織的な犯罪の共謀罪 対象となり得るケース・ならないケース」というのがあるんですが、これはちょっと提案者に伺ってよろしいでしょうか。

 こういった表が、今回、提案者の提案された再修正案あるいは再々修正案で、なるケースが減るものがあるのかどうか、ないのか、これはいかがですか。

早川委員 ただいまお示しをされたその表は、私が再修正の提案をするに当たって、個別具体的な、典型的な事例を取り上げて、該当するもの、該当しないものを一覧表に作成を指示したものであります。

 そういう意味では、その中で特に対象が変わるというふうには思っておりません。

保坂(展)委員 法務大臣に伺いますけれども、確かに、団体の規定を厳しくすることによっていわば限定的な絞りをかけたというんですが、こうやって例示されているものは特段減ることはないということなんですね。

 そして、組織的犯罪処罰法という法律、これは通信傍受法とともに成立したわけなんですが、大変な議論がありました。確かに、これまでの立件事例を見ると、これは暴力団であるとか組織的詐欺集団に限られていたように見えますが、近年、政治家であり弁護士であるという方が、弁護士法違反だけではなくて、この組織的犯罪処罰法に問われました。また、一般の法人、会社ですね、ハートライフ社という札幌の健康食品販売会社が、適用されたのは個人なんでしょうが、いわば会社の形態、別の会社を設立するということで組織的犯罪処罰法を適用されているんですね。

 昨年の特別国会における議論の中で、この法律の適用は限られているんですよという議論でした。しかし、その議論とは裏腹に、いわば初適用という範囲を、このマネーロンダリング関係の法律、ふやしているじゃないですか。このことはどういう背景があるんでしょうか。大臣にお願いします。

杉浦国務大臣 私は、私が法務委員長時代にかかわった組織犯罪取締法でしたか、その法律がどのように現実に運用されているか、詳細を存じ上げておりませんので、先生の御指摘に対して的確な御答弁をするものを持っておりません。

保坂(展)委員 被疑者になり、身に覚えのないことを捜査機関に追及される場合もあろうし、あるいは、ある一定のことはしたけれども、そこまでのことは全く考えていなかったということで、弁護士として大臣も人権の擁護に当たったという体験を踏まえて、先ほどからのやりとり、例えば目くばせかまばたきかとか、暗黙の共謀が成立してしまう。既遂の事件について係る最高裁判例でも、実際、これは幅広過ぎるんじゃないか、共謀共同正犯の積極論者の方も、どうだろうかという疑義を唱えていらっしゃいます。

 この共謀共同正犯理論というんですか、今の判例の実態とイコール当てはめてしまうことには無理があるし、誤解や懸念が広がるのはそこにもあると私は思うんですね。いかがでしょうか。

杉浦国務大臣 これは共謀共同正犯の理論とはちょっと違うと思いますけれども、しかし、先生が前段におっしゃった、この法律の運用が基本的には謙抑的に、それから法律の条項でも、修正者の方でも、思想信条等の活動を、正確な表現はちょっと手元に持っておりませんが、侵してはならないという条項も加えられるとか、厳格に組織犯罪、犯罪集団に対して適用すべきだという点では、相当明確になったというふうに私は思っております。

保坂(展)委員 大臣、今大事なことを言われました。私は、そう言ってほしかったんですよね。

 共謀共同正犯という、結果がある、既遂がある、その共謀と、結果がない、まだ犯罪行為がない共謀とは当然違うんですよ。違うだろうとおっしゃいましたよね。だけれども、十月二十一日の法務委員会で、刑事局長は同一だと答えているんですよ。だから、目くばせとかまばたきの議論になっちゃうんですよ。

 違うのなら、早速見解を統一してもらえませんか。私は、違うというふうに明言するべきだと思います。いや、刑事局長は同一だと言っているんですから、一貫して、きょうまでそうなんです。

杉浦国務大臣 誤解を与えたとしたら訂正いたしますが、共謀共同正犯というのは、多数人が共謀して、そのうち一人が実行をしたという場合に、その実行行為が共謀した全員に及ぶというのが共謀共同正犯ですね。

 ですから、この場合の、この法律で言っている共謀というのは、共謀そのものを考えた場合には共謀共同正犯の共謀と同じだと思いますが、罰する対象が、共謀共同正犯については、共謀に参加した、実行行為には加わっていない者まで広く罰するという趣旨と違うという意味で申し上げたわけでございます。共謀ということでは同じということでございます。

保坂(展)委員 ということは、大臣も、最高裁判例の暗黙の共謀、何も言わずに成立するということもあり得るということで、刑事局長の見解と同一ですね。それ、大事ですから、答えてください。

杉浦国務大臣 刑事局長が答弁したとおりだと思います。最高裁判例を精査いたしておるわけではございませんが、共謀には必ずしも明白な意思表示をしたものだけではない部分もあり得ると思います。

保坂(展)委員 この点、非常に大事なので、こういうことで、六百十九種類の犯罪で共謀したかどうか、目くばせまでは意思伝達で、まばたきは違うなんて、またきょうひっくり返りましたけれども、到底、ちょっと政府の見解が定まっていないというふうに感じました。もっと議論を続けるべきですし、委員長には、きょう、くれぐれも質疑を中断するようなことのないようにお願いをして、終わります。

    ―――――――――――――

石原委員長 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官辻優君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 先ほどちょっと入った情報によりますと、河野衆議院議長も、与党がこの共謀罪を含む条約刑法について強行採決をするというような事態を心配して、もっと修正について協議せよと言われているというような話のようでございます。我々としては、強行採決という事態に至らないように、与党がこれから抜本的な修正に踏み出していただくことを期待しておきたいと思います。

 そういうことで、法案の中身について審議をしていきたいと思いますけれども、この共謀罪の創設については多くの心配があるということでありますけれども、いろいろなことをこれから精査しなければいけないと私も思っています。

 最近、そうした多くの心配の中で、捜査の面についてもいろいろな報道がなされているようであります。

 これは五月十八日に報道された中身でありますけれども、警察に勤務した経験のあるような方々が、この共謀罪の捜査のあり方について、あるいは、今回つくられる共謀罪というものが仮にできたとしても捜査にどんな影響が及ぶのか、そんな点についても指摘しておりますので、最初にその点をお聞きしておきたいと思います。

 例えば、これは我々が問題としております必要的自首減免制度を設けていることについてでありますけれども、こういうふうに話があったようですね。暴力団やらテロ集団一味の中から警察に密告するやつが出てくると思うか。しっかりとした犯罪組織ほどそれはあり得ないんじゃないのか。やくざとテロリストは警察より組織が怖い。坊やの意見は、これは記者の方のようですけれども、お利口さんのキャリア官僚、これはもしかしたら法務省の官僚の方か外務省の方かわかりませんけれども、キャリア官僚と同じ机上の空論ってやつよ。こういうことのようであります。

 警察当局の方としては、この点についてどのように考えておられますか。

米田政府参考人 組織犯罪に対する捜査というのは大変難しいものがございまして、私ども、やはり組織内部あるいはその周辺にある協力者から情報をいただき、その被害者から被害届を提出してもらわなきゃいけない。しかしながら、相手が組織犯罪ということで、やはり報復を恐れるということで、協力者については絶対に向こうにわからないようにする。あるいは、被害者については、場合によっては二十四時間警察官が張りついてガードするというようなことをしておりまして、この組織犯罪の捜査一般について大変困難な点があるという点は御指摘のことと共通すると思います。

 ですから、これは共謀罪云々ということではなくて、私ども、組織犯罪一般についてそこは大変重要な問題であると考えております。

平岡委員 いや、私がお聞きしたのは、自首減免規定というものを設けて密告を奨励するようなことをこの法律の中で書いているけれども、それはあくまでも机上の空論であって、そんなことは決して期待できないんだということを言っている、このことについて警察庁としてどうお考えになりますかということです。もう一遍。

米田政府参考人 先ほども申しましたように、組織犯罪相手の捜査というのは大変困難なものがございまして、自首減免規定があるというだけで、直ちにいわゆる密告といいますか垂れ込みというものが進むというふうに考えてございません。やはり、それはそれなりに私どもがいろいろな手当てをして運用してやっていくということになろうかと思います。

平岡委員 そういう中で、さらにこういうことも言っているわけですね。仮にそうであるとするならば、これから年がら年じゅう盗聴をやるというところに行き着くんじゃないですかというふうな指摘がされたところ、まあ、そういうふうになるかもわからぬけどねというような警察OBの方の指摘があったようでありますけれども、今、答弁の中で、いろいろ考えていかなきゃいけないということの中に、共謀罪のような問題について、盗聴というような捜査方法もさらに拡大していくというようなことをお考えなんですか、どうでしょうか。必要だと思っておられるんですか。

米田政府参考人 共謀罪の新設ということと新しい捜査手法の導入ということ、これはあくまで別のことであると思っております。それはまた捜査一般のこととして、捜査の実情等を踏まえながら検討されていくべき問題であろうと考えております。

平岡委員 今、警察当局も、共謀罪との関係で盗聴というものを捜査方法として拡大していくということを決して否定はしなかった。

 私、前に南野法務大臣にも聞いたんですよ。今回こういうものを導入して、捜査方法がいろいろと拡大していくんじゃないですか、盗聴とかおとり捜査であるとか司法取引であるとかということを言ったら、いや、今回はそういう捜査方法の拡大は考えておりません、今は考えておりませんというふうに答弁がありました。まさに、今回この共謀罪を我が国に導入するということは、日本の捜査方法に対して非常に大きな影響を与えてくる、まさに我々が心配しているような捜査方法がとられてくるんじゃないかということを私は心配しております。

 法務大臣、これは南野大臣もそういう点を言っておられますから、もう一度、ちょっとここで法務大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。

杉浦国務大臣 通信傍受については、既に通信傍受法という法が制定されておりますので、もし通信傍受を行うとすれば、その法律に従って、要件に従って、手続的にも厳格な手続が規定されておりますけれども、なされることとなると思います。現時点で、共謀罪を導入させていただくことによって捜査方法を特段変更することを考えておるわけでないことは、南野大臣が答弁したとおりでございます。

平岡委員 この記事の中では、共謀罪が導入されたら、警察行政といいますか、警察の捜査にどういう影響が出てくるかということについても言っているんですね。

 共謀罪が始まったら、きっと重大事件の捜査に支障が出てくるだろうね。組織の一員と名乗るやつが密告してきたら、警察は一応捜査しなきゃならなくなる。こういうものが次々に出てきたらどうなるんだろうか。本当に大事な事件の方は人手不足になってしまうんじゃないか。こういう指摘もされています。

 どんどん密告が奨励されているわけでありますから、そういうものがふえてきた、そうなると警察の方も大変だろうと思うんですけれども、どうですか、警察の方の見解としては。

米田政府参考人 この法律が成立、施行されれば密告がいっぱい来てという認識が果たしてそうなのかどうかというのは、ちょっと私どももよくわかりません。

 ただ、私ども想定しておりますのは、あくまで相手は犯罪組織でありますので、そうしますと、例えば暴力団とか薬物の密売組織とか、私どもは継続的にこれを見ております。組織内の動向ということもある程度は把握ができておるわけで、そういう中でいろいろな話が入ってくるということになりますと、例えば、一から、白紙の上でそういう話が入ってきてばたばた調べ回るというのではなくて、それはそれなりに対応できるのではないかというようには考えております。

平岡委員 対応できるかどうかというのはわかりませんけれども、多分、大変大きな影響を与えるのではないかということは容易に想像がつくところであります。

 同じく、これは公安警察のOBの人の話ということで出ておりますけれども、共謀罪というのはこれから五年、十年かけて拡大解釈されていき、きっと治安維持法みたいになりますね。警察はノルマ社会だから、事件数の統計を伸ばして予算をとりやすくしたいんだよ。こういうことも指摘していますけれども、警察当局としては、こういうことになるとは多分言えないと思いますけれども、こういう指摘があることに対してどのようにお考えになりますか。

米田政府参考人 私どもは、この法律が成立すれば、条文及び証拠に基づいて、それは適正に適用していきたいと思っております。

 それから、ノルマ社会ということでございますけれども、あくまで治安の維持に資するためにいろいろなことをやっておるわけでございまして、何も統計上の数字を伸ばしたいとかなんとかということを考えておるわけではございません。

平岡委員 そうはおっしゃいますけれども、この記事でも指摘されていましたけれども、けん銃の取り締まりというものに力を入れていこうということになれば、高いお金を払ってでも、いろいろな取引をしてでもけん銃を入手するといったようなことが行われていることも指摘されているわけですよね。

 今警察当局が言われたことが、そのまま、はい、そうですかというふうに我々としては受けとめることはできない。こういう危険性を非常に大きく含んだ法案であるということを改めて指摘しておきたいと思います。

 さらに、ジャーナリストの方が言っておるのでありますけれども、共謀罪ができても犯罪組織からの垂れ込みなどはあるはずがない。これはさっきの警察OBの方のお話でありますけれども、これについては、市民団体にスパイを潜り込ませてつぶすために使われるだけだろうというような指摘もあります。

 この点については、警察当局の方はまずどのようにお考えですか。

米田政府参考人 私ども、先ほど申しましたように、あくまで法と証拠に基づいて適正に条文を適用してまいりたいということでございまして、特に念頭に置いておりますのは犯罪組織でございますので、犯罪組織を壊滅し、その違法行為を防止するために努力してまいりたいということでございます。

平岡委員 これ以外にも、今回のような共謀罪法案、犯罪組織のメンバーの密告を促すような内容になっている共謀罪法案については改めて必要とは考えられないというような警察OBの話もあります。

 そういうことを含めて法務大臣にお聞きしますけれども、こういうふうに警察の経験者の方々がいろいろな問題点を指摘している共謀罪を含む条約刑法、この立法に当たって、こういう指摘は多くの国民の皆さんが持っているんだろうと私は思うんですね。そういう国民の皆さんが持っている不安、心配、これに対して、法務大臣としてどのようにお答えになりますか。

杉浦国務大臣 今回の与党の再修正案でより明確になりましたが、対象となるのは組織的な犯罪集団のみであります。その定義も厳格に定められておりますので、拡大解釈の余地はないと思います。一般の市民団体がその対象となることはあり得ないと理解いたしております。

平岡委員 本当に組織的犯罪集団に限定されているかどうかということは、これからまたちょっと検証していきたいと思いますけれども、これはある意味では非常にテーマの広い話でありますから、なかなか、これをやっていると一時間という時間はあっという間に過ぎてしまいますので、これはまたしっかりと審議をする時間をとるということを前提にして、ちょっと周辺的な話を聞いておこうと思います。

 今回、必要的自首減免規定というのが設けられているわけでありますけれども、実は、五月十日の参議院の決算委員会で、法務大臣がこういうことを言っておるんですよね。自首してきた人に対して減免するということについてなんですけれども、そういうことを設けることについては、「そういう者を自首してきた場合に減免するというのは、自首減免というのはどの罪にもございますですけれども、」というように発言しておられるんですけれども、すべての犯罪について必要的自首減免規定というものがあるという御理解なんですか、法務大臣は。

杉浦国務大臣 必要的と申し上げたつもりはありませんで、御指摘の決算委員会での、私が自首減免規定というのはどの罪にもございますという趣旨のことを申し上げたのは、刑法の総則第四十二条一項ですが、そこで、一般的に、捜査機関に発覚する前に自首したときに、刑の任意的減免、減軽でございますが、減軽することができる、こう定められていることを御説明するために申し上げたわけでございます。

平岡委員 そうであるならば、この共謀罪だって、自首減免規定ということについて言えば、任意的な刑の減免規定というのは適用されるんでしょう。法務大臣、どうですか。

杉浦国務大臣 この法案の第六条の二第一項ただし書きにおきまして、実行の着手前に自首した場合には、発覚の前後を問わず、刑を必要的に減軽し、または免除することとなっております。これに対して、刑法第四十二条第一項におきましては、犯罪一般につきまして、捜査機関に発覚する前に自首した場合には、刑を任意的に減軽することができるとされておるところでございます。

 両法は、いわゆる特別法、一般法の関係になるわけであります。刑法四十二条一項が一般法、今回の六条の二第一項ただし書きは特別法の関係でございます。一般的に申し上げますと、特別法が適用される場合は一般法は適用されず、特別法が適用されなくても一般法は適用されることになります。

平岡委員 では、逆に聞きますけれども、この組織的犯罪処罰法の必要的自首減免規定が仮になかったとした場合は、この刑法四十二条の減免規定は適用されるという理解でよろしいですよね。

杉浦国務大臣 先生のおっしゃるとおりであります。

平岡委員 そうであるならば、大臣がいみじくも五月十日の決算委員会で、「自首してきた場合に減免するというのは、自首減免というのはどの罪にもございます」というふうに書いてあるように、これがあれば十分じゃないですか。何も、あえてこういう規定をつけ加えなくたっていいんじゃないですか。どうですか、大臣。

杉浦国務大臣 あのときの発言の記録を正確に手元に持っておりませんが、どういう御質問だったか、先生のおっしゃるような趣旨で、一般的規定があるから特別法の規定は要らないんだという趣旨で申し上げたつもりではないと思いますけれども、ちょっと私のその答弁の経緯を正確に記憶しておりませんので、この法案では、必要的減免が認められるという趣旨で規定しておるわけであります。

平岡委員 私、ちゃんと通告していますし、五月十日の参議院の決算委員会での大臣の答弁がこういうふうにあるのはどういう趣旨なのかと。大臣も、これは自分で答えられている話ですから、どういう状況で自分として答弁したのかということはおわかりだろうと思うんですけれども、今の答弁では全然整理されていませんから、また再度質問させていただきますので、ちゃんと整理をしていただいて答弁していただくことを要請しておきます。今この場でそういう聞き学問でやったんじゃいけないので、しっかりと精査した上で答弁をしていただきたいと思います。

杉浦国務大臣 そのときの答弁の全文が参りましたが、例えば、「組織暴力団の一部の者が警察に密告をして、その結果共謀を阻止して犯罪行為を止めるわけですから、これはむしろ望ましいことであって、むしろ彼らによる犯罪が抑止されるわけですから、そういう者を自首してきた場合に減免するというのは、自首減免というのはどの罪にもございますですけれども、特にこういう組織犯罪集団による犯罪から社会を防衛するためにはむしろ大事なことであって、それを認めるからといって密告社会になるなんというのは、」云々、こう答えておるところでございます。

平岡委員 答弁を読み直したからといって私の質問に答えているわけじゃないので、ちゃんと整理した上でまた答弁をお願いしたいと思います。

 そこで、今現在、大臣が、こういうものについては必要的な自首減免規定が必要なんだというふうに言われていますけれども、では、どういうものについて必要的自首減免規定が設けられているのか、どんな犯罪があるのか、そして、その考え方はどういうことで必要的自首減免規定になっているのか、このことについて御答弁を願います。

杉浦国務大臣 現行法では、先ほど来申し上げましたように、刑法総則に任意的な自首減免規定が設けられているほかに、刑法の各則や特別法に個別の自首減免規定が設けられております。

 実行の着手前に自首した場合に、その刑を減軽、免除することとしているものを挙げますと、例えば、刑法の内乱予備・陰謀、七十八条、八十条や、私戦予備・陰謀、九十三条については、その刑を必要的に免除することとされておりますし、刑法の身の代金目的略取等予備、二百二十八条の三、組織的犯罪処罰法の組織的殺人等の予備、第六条、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の資金提供罪、第四条については、その刑を必要的に減軽または免除することとされております。

 これらの規定の趣旨、目的といたしましては、例えば刑法の内乱予備・陰謀につきましてその刑を必要的に免除することとしているのは、内乱目的の実現を目指す、暴動に至る前に自首した者に対して必要的刑の免除を与えることによって、内乱、暴動を未然に防止しようという政策的配慮に基づくものであるとされておるところであります。また、刑法の身の代金目的略取等予備についてその刑を必要的に減軽または免除することとしているのは、自首を奨励し、実行の段階に進むことを防止しようという政策的配慮に基づくものであるとされております。

平岡委員 今大臣が全部、つぶさに、必要的自首減免規定があるものを網羅的に言われたわけではないとは思いますけれども、数は相当限られているんですよね。ちょっと私も数は数えていませんけれども、多分数十個ぐらいだろうというふうに私なりに思っていますけれども、そういうことで考えてきたときに、現在、皆さん方がつくろうとしているこの共謀罪は、まさに六百十五の罪についてすべて必要的減免規定を適用していくという、密告社会、告げ口社会をつくろうとしている、こういうふうに私は思うわけであります。

 そこで、与党の再修正案については、きょう趣旨説明があったばかりで、まだまだ我々としては十分な検討ができておりませんから、改めてしっかりと質問するとしても、この再修正案では、長期五年以上の懲役もしくは禁錮刑といったようなものについてだけ必要的自首減免を認めるというようにしていますけれども、先ほど言いました六百十五の共謀罪の対象となっている罪、これは過失とかは除いて計算するわけですけれども、与党再修正案でいくと、今度はどれぐらいの数になるんですか。

早川委員 まず、与党再修正案の内容について御説明をしておきたいと思います。

 これまで組織的な犯罪の共謀罪を犯した者が実行に着手する前に自首した場合に必ず刑を減軽または免除する自首減免規定は、重大な組織犯罪が実行されて深刻な結果が生ずるのを未然に防止するためのものであります。民主党から、これが密告社会につながるのではないかとの懸念が示された上で、この自首減免規定の対象となる犯罪について、死刑または無期の犯罪だけに限定する修正案が提出されました。

 そこで、民主党との修正協議の中で、民主党の御意見等を最大限踏まえて検討を重ねた結果、この自首減免の対象となる犯罪については、長期四年の犯罪を除外し、長期五年以上の犯罪に限定することといたしました。

 すなわち、長期四年の犯罪については、一般的な自首について任意的な刑の減軽を定めた規定もあることにかんがみますと、必要的に刑を減免することとしなくとも、必ずしも特段の不都合は生じないと考えられます。

 長期五年以上の犯罪としては、長期五年の犯罪だけを見ても、蛇頭組織による不法入国者の集団密航、あるいはブローカー組織による人身買い受けや児童買春のあっせん、あるいはいわゆるやみ金によるマネーロンダリングなど、典型的かつ重要な組織犯罪があるところであります。これらの重大な組織犯罪が実行されて被害者に深刻な結果が生じるのを未然に防止する必要性は極めて高いことからして、これらの罪を除外することはやはり適当でないと考えられた次第であります。

 以上から、長期五年以上の自由刑についての必要的自首減免の規定を置くということにしたわけであります。(平岡委員「数を聞いているんだ、数を。聞いたことに答えてください」と呼ぶ)

 念のため、この長期四年の犯罪としては、合計で十三個あるということになっております。

平岡委員 私が聞いたのは、必要的自首減免規定が適用される犯罪の数というのは幾らですかと聞いたわけですからね。十三というのは、逆に引く数字ですよね。十三しか減らない。六百十五の罪が六百二になるという答弁でいいわけですよね。

 ちょっともう一遍、ちゃんと答えてください、私が聞いたことを。

早川委員 あくまでも法定刑から考えて現在六百十五というふうに数えますと、それから十三を引けば六百二になるという計算であります。

平岡委員 では、逆に今度聞きますけれども、今与党提案者がるる述べられた犯罪がありましたよね、何か未成年者誘拐とか。これは、実行についてやめたときの、自首してきたときの必要的自首減免規定というのはありますか。共謀については何か今度設けたわけですけれども、そうじゃないやつはありますか。どうですか。

早川委員 今回の組織的犯罪処罰法の改正の中での、要するに組織犯罪共謀罪の関係でありますけれども、あくまでも共謀の段階でこれを処罰の対象とする、そのことによって犯罪の発生を未然に防止しようということであります。

 そのために、言ってみれば、こういった典型的な重大犯罪について組織犯罪集団がこれを実行に移すことがないように、必要的な自首減免規定を置くという政策をとったわけであります。これが現実に実行されてしまいますと、これは刑法の総則が規定をされることになります。

平岡委員 何か全然私が聞いていることと違うことを答えているのであれですけれども、要するに、共謀罪については、自首してきたときには自首減免規定が必要的なものとして適用されるということになっており、先ほど与党提案者が言われた罪については、別に実行すること自体についてこれをやめたときに必要的減免規定があるわけではないということですよね。

 そういうことだったら、何か物すごい変な世界ですよね。共謀の部分については自首してきたら必要的にこうするけれども、そうでないやつについては必要的にしないんだというのは、これは本当に、ある意味では刑法体系の中で非常にゆがんだ仕組みをもたらしているというふうに私は思いますよ。どうですか。

早川委員 これはあくまでも組織犯罪集団による重大犯罪の実行を未然に防止しよう、そのための政策的な判断であります。

 個人的な感想を申し上げると、実は独禁法の改正の段階で、課徴金制度の適用対象をどうするかという規定がありました。その公正取引委員会の権限の強化にあわせて談合行為を未然に防止するという政策的な判断の中で、課徴金についての、言ってみれば、申告をした場合にこの課徴金を課すことを免除するあるいは減軽する、こういった制度が導入されました。そのことによって大きく談合行為が防止されるということがあります。

 組織犯罪による重大犯罪の実行ということを未然に防止するために、必要的な自首減軽規定を設けるということが有効であろうという観点からのこの規定の設置であります。

平岡委員 政策的、政策的とかと言い始めると、それが本当に政策的な必要性があるのかということをやはり一つ一つきっちりと検証していく必要があると思うんですよね。本当にそれで全部ありますかね。私は大変疑問だと思いますね。

 議長からさらに抜本的修正をしろということを言われているようでありますから、しっかりと一つ一つについて、本当に刑法の一般的な規定との関係の中で、この共謀罪についても必要的減免規定をそれぞれ置く必要があるのか、これについてもしっかりと私は検証していかなければいけないと思いますよ。

 そういう理解でどうですか、そういう理解でもいいですよね。与党提案者。

石原委員長 法務大臣から発言を求められております。杉浦法務大臣。

杉浦国務大臣 実行の段階に入った場合に引き戻すあれとしては、中止犯というのがございまして、中止すれば、これは必要的減免の規定が働くわけでございます。刑事局長、間違ってないですか。そういうことでございます。

平岡委員 議論していることとは全く違う話が、中止犯の話は、またこれは刑法総則の中で、四十三条で規定されている話で、必要的減免規定というのはそれぞれの犯罪のところでちゃんと書いてある話ですから、ちょっと話を混同させないでいただきたいですね。

 そういう意味で、もう一遍ちょっと、私が聞いたことについて、与党提案者、どうですか。

早川委員 与党提案者としては、これまでの委員会における審議の経過あるいは参考人の御意見、あるいは一般の方々からの御意見等を参考にさせていただきながら、何とか、構成要件の明確化、限定化、さらに運用に当たっての厳格化、留意事項を設ける、こういったことを提案させていただいて、本日の再修正案に至ったわけであります。

 そういう意味では、この修正案を提案させていただくまでには、二月の十四日以来、約三カ月、民主党の担当の理事との間で協議はさせていただいた、その結果を何とかきょうの委員会の再修正案の中身に反映させていただきたいということで、最大限努力をした成果が、本日提案をさせていただいている次第であります。

平岡委員 最大限という、言葉だけは美しく聞こえますけれども、我々から見たら、六百十五が六百二になりました、これで最大限だとはとても思えませんね。あと一つ一つ、ちょっとチェックしてみましょうよ。本当に最大限に譲歩したのかどうか、譲歩したというか、最大限考えたのかどうか、我々はチェックしていきますよ。まあいいです、もう。ということで、その点についてはこれからしっかりと検討していきたいと思います。

 そこで、さっき大臣がいみじくも中止犯という話をされたので、私も中止犯の話を聞こうと思っておりましたので、その話にちょっと、話題として移っていきたいと思います。

 今、大臣が御指摘のとおり、刑法四十三条には中止犯の規定が書いてあって、これは柴山議員もかつて質問されておられました。結局、ある犯罪、今回の例でいけば重大な犯罪ということでもいいと思いますけれども、ある重大な犯罪の実行に着手した後に、自己の意思で中止したという場合には、刑法四十三条では、刑の必要的減免が行われるという仕組みになっています。しかしながら、共謀罪について言えば、これは、政府の答弁におきますと、共謀罪が、これは意思の合致によって、合意によって成立してしまうということなので、その後に、共謀罪の対象となっている、共謀罪に係る重大な犯罪を実行することを自分たちの意思で中止しても、これは処罰されることになるんだというのが政府答弁ですね。しかし、このことは、何かいかにも私は不整合な取り扱いのような気がするんですよね。

 実行することを、実行に着手しても、実行の途中で自分の意思でやめたら、それは刑の必要的減免が行われるのに、まだ合致しただけで、意思が合致しただけでこういう重大な犯罪となるような行為について、やろうという意思が合致して、それで共謀罪が成り立つ。だけれども、その後、もうやめましょう、やはりやめようということを意思合意しても、自分たちの意思でやめても、これは必要的減免の規定が適用されないというような形になると、何かいかにも常識に反すると私は思うんですね。

 そういう意味でいったら、この点についても、しっかりとした整合性のある法整備をしなければいけないというふうに私は思うんですけれども、これは大臣、中止犯についての通告もしてありますから、大臣、どうお考えになりますか。

杉浦国務大臣 いわゆる中止犯につきまして、刑法第四十三条は、犯罪の実行に着手したが、既遂に至る前に、自己の意思によりその犯罪を中止した場合には、刑を減軽または免除する旨を規定しておりますのは、先生おっしゃったとおりであります。

 一方、法案の、組織的な犯罪の共謀罪は、重大な犯罪を実行することについての合意がなされた時点で既遂に達します。したがって、共謀後に翻意しても、既に既遂に至っている以上、中止犯とはなりません。この点は、予備罪や準備罪について中止未遂の規定が適用されないのと同様であります。

 そして、本法案は、共謀した者が実行に着手する前に自首した場合には刑を減軽または免除することとしていますし、実行前に翻意したという事実については、刑事手続においても当然に有利な情状として考慮されることになるというふうに考えられます。

 したがって、お尋ねのような場合であっても、現実に不当な処罰がなされることになるとは考えにくく、法令上、何らかの調整が必要であるとは考えておりません。

平岡委員 大臣の、ちょっと本当にかみ合っていないと思うんですけれども、私の質問と。共謀罪ということで意思の合致があった、そこで共謀罪が成立するというのは、これまでもここで議論してきた、政府の答弁でもそうなりますね。

 ただ、その後、もうやめようよということで意思がまた合致したということになったときに、これは、さっきの中止犯みたいに、自分たちが犯罪の実行に着手して、自分たちの意思で犯罪を中止したときには、その刑が、減軽または免除するという形で必要的減免が行われるという仕組みになっているわけですよね。

 それにもかかわらず、共謀の段階で、共謀していたんだけれども、それをやめようと言ったにもかかわらず、自首してこなければ刑は減免されない。これはいかにも制度として不整合じゃないですか。やめるということを決めたら、それはそれでもう、中止犯と同じとは言いませんけれども、少なくとも中止犯がそうなっている以上は、共謀していたことをやめるということを決めたら、当然これは刑の減免ということがあってしかるべきじゃないですか、制度として。大臣、どうですか。

杉浦国務大臣 先ほど御説明いたしましたように、共謀した者が実行前に翻意したという場合には、具体的な情状にもよると思いますけれども、刑事局長が答弁した方がいいかもしれませんが、検察官が起訴を猶予することも十分あり得ると考えられるところでありまして、実際に不当な処罰がなされることになるとは考えにくいと思われます。

 なお、先ほど申し上げましたように、現行法の予備罪についても中止未遂の規定は適用されないと解されていますので、理論上は同様の問題があり得ると思われますが、これまで実際に、この点について不当な処罰がなされたというような御意見は承知いたしておりません。

平岡委員 陰謀罪とか共謀罪とかというのは、我が国に本当に数少ない、本当に例外的にしかないわけですね。今までそんな例がなかったからいいんだという話じゃないんですよ。

 今回、皆さん方が導入しようとしているのは、六百を超える犯罪について共謀罪を導入しようとしている。こういう中で、先ほど来から、そういう犯罪の発生を防止するために自首減免規定も設けるんだと言っているにもかかわらず、共謀したということをやめることを勧めていくようなことが、逆に言うと、どうしてとれないんですか。これは、逆の考え方からいくと変じゃないですか。どうしても自首してこさせよう、自首してこなければ自首してこさせて、ちゃんと情報をとって、何かいろいろと、管理社会で、警察あるいは検察がしっかりと世の中を管理するようにしていかない限りは刑の減免は一切しないんだ、こういう意図が見え見えじゃないですか。そんな政策をとってどうするんですか、本当に。

 皆さん方が言っておられるように、少しでも、共謀されたことの犯罪の実行を減らしていきたいというのであれば、それは当然私は、ここに中止犯と同様に、ちゃんと、共謀したことをやめたのならそこで必要的な自首減免があるという仕組みがやはり整合的であるし、必要じゃないかと思うんですけれども、大臣どうですか、おかしいと思いませんか、その答弁は。

大林政府参考人 委員御指摘の御趣旨は私もわかりますけれども、その原因たるものは、いわゆる中止犯というものは、実行に着手して、自発的な意図でやめたということで設けられている制度でございます。

 大臣も御説明しましたように、予備罪とか共謀罪の場合は、その予備行為なり共謀の行為が完成すれば、もうそれは、完成すればという言い方はおかしいですけれども、それは実行の着手という概念がないものですから、そこでもう要するに中止未遂の適用はできなくなる。理論上の、これは制度の問題だと思います。

 ただ、おっしゃられるように、その場合に、実際に実行に着手したものとアンバランスじゃないかという御指摘だろうと思います。

 それは、一つの問題は、前の答弁にもありましたけれども、一つ考えなきゃならないのは、共謀をやめたということが、これは仮定の論理としては、共謀が完成した、あるいは完成した後にやめたと言えるんですけれども、実際の現実の問題として、では、ある事実について共謀しました、だけれども実際にそれはやめちゃいましたというのが、実際の問題として共謀が完成していると言えるのかどうか、現実にはですよ。そういうふうに簡単にやめられるものが今言う共謀罪に当たるものかどうかという、まず認定の問題もあるんじゃないかなと。

 それから、仮に論理的な問題として、成立した場合には、今おっしゃられるように自首減免規定の問題はあります。それから、犯罪として共謀罪は成立しますけれども、実害は生じていないことも事実です。ですから、そういう面については警察官の、先ほど答弁にもありましたように、そういうものについて処分する必要がどうかという問題であろうと思います。

 ですから、なぜ中止未遂が認められないのか、規定が設けられないのかというのは、今の中止未遂の定義上の問題でございます。ですから、そこの点はぜひ御理解いただきたいと思います。

平岡委員 理解できないですね。やはり理論というのは我々がつくっていくんですよ、基本的には。

 今、刑事局長が、検察官とか警察官の判断で捜査をしなかったり起訴をしなかったりすることもできるんですからいいじゃないですかと。それは、まさに日本を警察国家、検察国家、警察官、検察官のさじかげんで物事を律していこうという、私は本当にいいかげんな社会になってしまうと思いますよ。これはやはり与党の先生方も、いろいろなところで警察、検察とのかかわりのある方もおられると思いますけれども、検察、警察のさじかげんで物が決められてしまうような社会がどれほど不合理な世界であるかということは考えていただきたいというふうに私は思います。

 理論の問題があるというのなら、しっかりと理論をこれからお互いに研究していきましょう。こんな共謀罪というものを日本に導入するということは、本当に、ある意味では今までの日本の刑法の基本原則を大きく変えていく、そういうことなんですよ、前から指摘しているように。そのときに、いろいろな問題が生じるのは当たり前なんです。そういう障害を乗り越えてこそ初めて私は共謀罪というものを日本で考えることができるんだと。それなしにして、ただ単に、今までちょこっとあった共謀罪というものがあるから、ほかの理論的な研究はしなくてもいいんだという形で導入するというのは、私は極めて不見識な態度だというふうに思います。

 そういうことで、その辺についても抜本的な見直しの中ではしっかりと検討していきたいというふうに思いますので、どうぞ、法務省のこういう方面について造詣の深い方々もしっかりと参加をしていただきたい、こういうふうにお願いを申し上げたいと思います。

 そこで、きょうは、余り時間もないようでありますけれども、外務副大臣に来ていただいたんですが、ちょっと質問に至らずに交代されてしまいましたけれども、質問させていただきたいと思います。

 先日、私、先進諸国において長期四年以上の自由刑というのはどれぐらいあるのか、つまり、共謀罪の対象となる、条約上対象としなければいけないとしている犯罪はどれぐらいあるのかということをお聞かせいただきました。回答は、余りにもたくさんあり過ぎてよくわからぬという何か不見識な回答しかありませんで、そういう先進諸外国の実情がわからないままに我が国がこういう共謀罪を導入するということは、私はいかがなものかというふうにも思います。思いますけれども、さらに、では、こういうことはわかるのかということでお聞かせいただきたいと思うのであります。

 共謀罪というのは、政府答弁の中でも出てきますけれども、コモンローの法体系の中で一般的に設けられている犯罪である、こういうようなことでありますけれども、我々としてはなじみがないので、我が国の刑法の基本原則にそぐわないものでありますから、どういうふうに運用されているのか、どういうふうに適用されているのかというのはようわからぬわけですよ。私も、いろいろ文献を見ましたけれども、なかなかちょっとよくわからないというのが実態であります。

 そういう意味でいくと、このコモンローの法体系とされているアメリカとかイギリスとかカナダというのは、共謀罪について年間大体どのぐらい起訴されて、そして、そのうちどのぐらいが有罪とされているのか、こういうところをちょっと教えていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

山中大臣政務官 副大臣でなくて申しわけないですが、回答させていただきます。

 先般来、当委員会において、米国、英国及びカナダにおける重大な犯罪に該当する犯罪の数というものについての御質問をいただいております。

 御指摘も踏まえ、改めてこれら三カ国に文書で回答を求めたところ、既に米国及び英国より、重大な犯罪に該当する犯罪の数を把握することは困難であるとの文書による回答を得ました。

 今般、昨日、委員の御指摘を踏まえ、取り急ぎ、共謀罪による起訴等の件数につき再度、米国、英国に対して照会した結果は次のとおりでございます。

 まず、米国について御説明申し上げますと、連邦及び各州ごとに刑事関係法規が独立して制定されており、すべての犯罪を網羅した統一的な犯罪統計というのは作成されておりませんことから、連邦及び各州を含む全米レベルで、共謀罪で起訴された件数が何件あり、有罪とされた件数が何件あるかということは不明であるという回答が参りました。それはアメリカからの回答でございます。

 それから英国については、共謀罪の起訴件数及び有罪件数は把握していない、個別の犯罪類型についても、基本的には、共謀罪によるものとそうでないものを分類した統計はとっていないとの回答がありました。

 カナダについては、まだ回答が得られておりません。

 以上が、昨日、照会したところの、入手できた回答でございます。

平岡委員 本当に、こういう国々で共謀罪がどういうふうに適用されているのかということが全くわからないままに、我が国でこれまで共謀罪ということは本当に限られた、ギャンブル関係の共謀とかを除けば片手ぐらいしかない、片手の数ぐらいの共謀罪しか、陰謀罪しかないわけですよね。そういうものを導入するときに、ほかの国でどういうふうになっているかということが全くわからない状態でこれを導入するというのは不見識きわまりない、私はこう思いますよ。

 そういうことでいくと、私は、本当に実態はよくわからないんですけれども、先日たまたま、カナダ出身の日本で活躍されているジャーナリストの方にお話を聞く機会がありました。今、日本で共謀罪というのが導入されようとしていて、大変多くの国民の皆さんが不安に思っているんですよ、カナダでもコモンローの法体系の国として共謀罪があるというふうに聞いていますけれども、カナダの方々はこの共謀罪についてはどういうふうに認識されておられるんですか、こう聞いたんですね。そうしたら、その回答というのはこういうことだったんですよ。

 日本はやはり警察、検察というのが大変権力を持っていて、国民の皆さんから、ある意味では信頼されているかもしれないけれども、ある意味では、いろいろなことで権力の濫用みたいな話とか癒着みたいな話とかがあって心配されているのかもしれませんけれども、カナダでは、警察というのは尊敬され、そして変なことはしないというふうに信頼されている。だから、もし共謀罪というのがあっても、それほど……(発言する者あり)いや、私が言っているんじゃないですよ。私が言っているんじゃなくて、それほど心配しなくても済んでいるのではないかというようなことだったんですよ。

 だから、私が思っているのは、日本の国で共謀罪を導入するに当たっては、本当に英米法の国々と直接、要するに、同じように考えていいのかどうか。この点については枝野議員も指摘されていました。

 やはり捜査のやり方が英米法の国と日本とでは違う、あるいは裁判のやり方、起訴のやり方も違う。こういう中で共謀罪というものが、物すごい多くの罪について共謀罪というのがあり得るということだったら、本当に物すごい数、膨大な数だったら、日本で、まじめなというか、法律に基づいてきちっと捜査をしようとするような日本のお国柄でいったら、これはもうとんでもないことになっちゃうんじゃないかと私は思うんですよ。

 その点が、やはりコモンローの世界でずっと慣習法的にいろいろやってきて、何となくこの辺のころ合いでやるべきじゃないかということがある程度できている国なら、こういうものがあってもある程度いいのかもしれないけれども、我が国はそういう状況になっていないというふうに私は思うんですよね。

 そういう意味で私はお聞かせいただきたいと思いますけれども、コモンローの法体系の国では、共謀罪の適用については、かなり、現実にしゃくし定規に法律を適用していったならばたくさんのものがあるということなんでしょうけれども、そうじゃなくて、それなりに抑制的に運用、適用されているんじゃないかというふうに思うんですけれども、外務省としては、その点についてどういうふうに把握しておられるでしょうか。お願いします。

山中大臣政務官 他国の法令の適用状況については、何をもって抑制的と言うかは明らかでないわけで、国によって違うわけです。ですから、御質問の点についてお答えするのは困難でございます。しかし、コモンローの法体系の国である英国及び米国においては、いずれも法の支配の理念のもと、共謀罪についても適切に運用されているものと考えますので、日本もそのように運用されるものと思っております。

平岡委員 適切に運用されているものと思います、それは確かに、不適切に運用されているというふうに外務省が答弁したら大変失礼なことになってしまいますから、そんな表現で聞いたって我々の参考にも何にもならない。ちゃんと、もっとしっかりと、先ほど数も聞いたじゃないですか、起訴の数とかいろいろ。そのことも把握していません、わかりません、そんな状態で一体我々は何を手がかりにこの共謀罪の問題について、英米法の国々でどうなっているかということが把握できるんですか。このことについて、外務省はもっとしっかり、条約を交渉してきたという立場にあるわけでありますから、しっかりとこれは説明できるように準備していただきたいというふうに思います。

 そういうことで、ちゃんと調べた上で報告していただくことを約束してもらえますね。そんなの書かなくたって、書いたものを見なくたって、私に約束してください、そんなことぐらいできるでしょう、あなたなら。

山中大臣政務官 先ほどから申し上げましたように、相手の回答が十分でないかもしれませんけれども、調査していることは調査しています。しかも、昨日、問い合わせに対して返事は来ているわけですから、その内容が皆様というか先生の本当に必要としているものに合致しているかしていないかという点においては、していないかもしれません。

 ですから、鋭意調査は、御期待に沿えるように努力はしておりますが、一つお願いしたいのは、国によっては言語も違いますし、法体系も違います。ですから、多少とも時間がかかるということをきちっと認識していただければ大変幸いでございます。よろしくお願いいたします。

平岡委員 ちょっと、言語が違うと言われたって、これは、アメリカとかイギリスとかカナダというのは大体英語で通じるような国ですよ。そこで言語が違うからできませんとかというような話にはならないと思いますよね。私は確かに、この適用状況とかを聞いたのはつい最近ではありますけれども、これは、条約交渉過程の中からそれぞれの国の状況というのをしっかり把握して交渉していかなければいけないという立場に少なくとも外務省は立っているんですよ。

 だから、こういうことで聞かれたときにはさっと説明できるように、これは外務省は大使館を通じて相手国の政府に聞いているだけなんでしょうけれども、そんなんじゃ外務省は役に立たない。外務省であれば、その国々の制度がどうなっているか、政策がどうなっているかということについては、常にいろいろな人とネットワークを張って勉強していかなきゃいけないですよ。こんなことを聞かれたときには、条約の交渉をやってきているわけですから、すぐに答えられるようになっていなきゃいけない。このことを私は強く抗議とともに申し入れさせていただきたい。

 幸い、今政務官はこれから努力をしていきますということを言われましたので、しっかりと努力していただいて、我々の法案審議にたえられるだけの情報を収集していただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたが、何かありますか。

山中大臣政務官 現在までも鋭意努力しているという点はぜひ御理解いただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

平岡委員 どれだけ努力しているかということは我々には目に見えないものですから、政務官が努力しているんだというふうに言われるのなら、それは信じたいと思います。

 しかし、聞いたときに、条約締結交渉もしてきたという立場であるにもかかわらず答えが返ってこないということは大変残念なことであるから、これからしっかりと調査をしていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 ちょっと時間がないので、与党の再修正案については、先ほども申し上げましたように、これからまたしっかりと審議していきたいんですけれども、一つだけ確認しておきたいことがあります。

 今回、与党の修正案では、組織的な犯罪集団の定義ということを変更されているわけでございます。これを見ますと、組織的犯罪集団の定義が、「団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が死刑若しくは無期若しくは長期五年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪」等を「実行することにある団体をいう。」と書いてありますね。

 この前もちょっとあったんですね。フランスの凶徒の結社罪というときに、フランスのものは五年以上の自由刑に相当する行為を行うものができているというふうなことになっている。それは条約に反しているんじゃないかというふうに私は聞きました。そうしたら、外務省さんもいろいろと調べていただいて、その点については確かに一つの理解としては正しいのかもしれない。ただし、あくまでもフランスの刑法だけを見たらそうです。だけれども、フランスにも、この前、長期四年以上のものがどれだけありますかと聞いたら、刑法典では二百十だけれども、それ以外は特別法があって、どれだけあるかわかりませんというような答えですから、私は、決してフランスの中でも、四年以上の刑、五年未満だけれども四年以上の刑というのがないとは言い切れない、そう思います。

 そういう意味ではまだまだ調査が不十分だと思いますけれども、逆に、今回の与党提案者にお聞かせいただきたいのは、そういうふうに、今回の組織的犯罪集団の定義が、要するに長期五年以上の自由刑というふうに、条約に形式的には反している。我々の趣旨から言えば、条約の趣旨、目的に反しなければ、ある程度我が国の実情に応じてやってもいいんじゃないかというふうに今言っているわけでありますから、決してそれを非難しているんじゃないですよ。今回、それが条約の規定に反してまでそういうふうにしているということであると思うんですけれども、そういう理解でいいですね。

早川委員 今回の与党の再修正案というのは、民主党との修正協議の中で、民主党の御意見等を最大限踏まえ、できるだけ組織的な犯罪の共謀罪、組織犯罪共謀罪の対象となり得る団体を限定することができないかとの観点から検討を重ねた結果、長期四年の犯罪については、いずれも、これを実行すること自体を共同の目的とするもの、すなわち、その構成員の継続的な結合関係の基礎がこれらの罪自体を実行することにあるような団体は想定されないと考えられたことから、これを除外することとし、共同の目的が長期五年以上の犯罪を実行することにある団体に限定することとしたものであります。

 お尋ねのとおり、国際組織犯罪防止条約においては、共謀罪の対象犯罪の要件とすることが認められる「組織的な犯罪集団の関与」に言う「組織的な犯罪集団」とは、「重大な犯罪等を行うことを目的として一体として行動するもの」と定義されております。

 しかしながら、先ほども申し上げましたとおり、共謀罪の対象犯罪に関与する組織的な犯罪集団として、我が国において、その共同の目的が長期四年の犯罪自体を実行することにある団体は、実際上想定されません。したがって、関与することが想定されない組織的な犯罪集団までその対象としなくても条約の締結上は問題はないと考えているところであります。

平岡委員 ようやく与党も実質的な犯罪の中身を見て法制していくべきだという立場に立っていただいて、私も心強く思っています。そういう意味ではしっかりと協議をしていきたいと思いますけれども、ここで大臣政務官にお伺いします。

 今、形式的には条約に反しているということでお認めになったわけでありますけれども、こういう内容を国内法制化したときには、国際的にはどういう手続をとることになるんでしょうか。その手続だけちょっと教えていただけますか。(発言する者あり)

山中大臣政務官 御声援ありがとうございます。

 国内法においては、長期四年以上五年未満の懲役、禁錮刑が定められているというのが日本の体系でございますけれども、長期四年と定められた罪が存在するわけですけれども、ただいま与党修正案の提案者から御説明があったように、国内法において長期四年と定められた犯罪を実行すること自体の結合関係の基礎として、この共同の目的とするような組織的な犯罪というのは、この中身を検討しましたところ想定されないので、条約の義務の履行上問題はないと説明ができると考えております。

平岡委員 私が聞いたことには直接答えていただけませんでしたけれども、では、政務官、将来、四年以上の罪でこの組織的犯罪集団に関係のあるような犯罪類型、法律の犯罪がつくられないということをあなたはここで約束できるんですか。どうですか、そんなことできないでしょう。(発言する者あり)

石原委員長 御静粛に願います。

 山中政務官。

 平岡君にも申し上げます。お約束の時間が来ておりますので、御協力をお願いいたします。

 山中政務官。

山中大臣政務官 ただいま御説明申し上げましたように、現在の法制上、四年という、そこのところは想定されないというふうに考えておりますので、修正案の提案者のとおりで、法律の履行上、国際法的にも問題はないというふうに考えられます。

 以上でございます。

平岡委員 要するに、本当に御都合主義なんですよね、だから。長期四年以上の罪がどんなものになるかというのは、だれも予測できないですよ。だれも予測できないのに今回勝手に五年以上にするということは、私はこれはそれなりの政策判断だと思いますけれども、条約との関係では、しっかりと国際的な手続をとらなければいけないことだというふうに私は思いますよ。

 そういう意味において、そこまで踏み込まれたわけでありますから、さらにもっと踏み込んでいただいて、国際的な手続もとっていくんだという前提でこれから修正協議というものをやらせていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

石原委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十二分散会


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