衆議院

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第9号 平成18年11月10日(金曜日)

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平成十八年十一月十日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 棚橋 泰文君 理事 早川 忠孝君

   理事 松浪 健太君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    江渡 聡徳君

      近江屋信広君    奥野 信亮君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      杉浦 正健君    葉梨 康弘君

      藤井 勇治君    三ッ林隆志君

      武藤 容治君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳本 卓治君

      石関 貴史君    大串 博志君

      河村たかし君    細川 律夫君

      横山 北斗君    伊藤  渉君

      保坂 展人君    今村 雅弘君

      滝   実君    山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   内閣府副大臣       渡辺 喜美君

   法務副大臣        水野 賢一君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            畑中龍太郎君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   池上 政幸君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  宮腰 光寛君     葉梨 康弘君

  森山 眞弓君     江渡 聡徳君

同日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     森山 眞弓君

  葉梨 康弘君     藤井 勇治君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井 勇治君     宮腰 光寛君

    ―――――――――――――

十一月九日

 共謀罪の新設に反対することに関する請願(辻元清美君紹介)(第三〇八号)

 民法改正による夫婦別姓も可能な制度の導入に関する請願(松島みどり君紹介)(第三二二号)

 共謀罪の新設反対に関する請願(平岡秀夫君紹介)(第三三一号)

 同(保坂展人君紹介)(第三八三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 信託法案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第八三号)

 信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第八四号)


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     ――――◇―――――

七条委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、内閣提出、信託法案及び第百六十四回国会、内閣提出、信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに高山智司君外二名提出の信託法案に対する修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官畑中龍太郎君、法務省大臣官房長池上政幸君、法務省民事局長寺田逸郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川忠孝君。

早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。

 これまで信託法案については、財務金融委員会との合同審査を含め、参考人質疑等も含め、極めて充実した審議がなされてまいりました。民主党から、これまでの審議等を踏まえて修正案を御提案いただいたことは、立法府である国会の審議の本来のあり方を示すものであり、この点について敬意を表させていただきます。

 しかしながら、与党の実務担当者として、御提案についてこれを取り入れることができるものであれば共同修正として結実させたいというふうに念願してまいりましたけれども、残念ながら、今回の御提案は、結果的に信託制度改正のメリットを失わせるものとなっているとの感が否めません。

 八十年前に成立しました現行信託法の制定の趣旨は、信託に関する法律関係の明確化や信託の発展を図るといったことにはなく、主として当時社会問題化しておりました高利貸し的な信託会社を取り締まることにあったと言われております。このため、信託法は、民法を初めとする他の一般私法と異なり、私法法規でありながらも、当事者の私的自治が著しく制限された取り締まり法規としての色彩が強い法律であると指摘されてまいりました。

 参考人としても御出席いただきました東大の能見教授は、「信託法の基本法理が規制的で、営業信託ないし商事信託は自由度が大きいというのは考え方として逆転している。信託法の規定をできるだけ任意規定と解し、信託関係者の合意による自由な発展の道を開くことが重要であろう。信託の基本法理としての信託法では自由に、しかし、営業信託・商事信託では顧客保護という視点を忘れるべきではない。」と、その「現代信託法」という本で述べておられるところであります。

 今回の信託法の改正の趣旨の一つは、受託者等に対して極めて厳格な義務を課して、当事者の私的自治を過度に規制しているという現行法の問題点を見直し、規律内容の任意規定化を含む合理化を図るということにあります。

 しかしながら、民主党の修正案は全体として、本改正の趣旨を没却するだけではなく、現行法よりもさらに規制が強化されているものも散見されるところであります。

 信託の基本法である信託法ではできるだけ自由にし、他方、行政規制を定める信託業法では必要に応じた規制をかけるという方針、この方針は誤りである、あるいはとるべきでない、そのような認識を提案者はお持ちなのでしょうか。民主党の修正案では、商事信託だけでなく民事信託の発展の道も閉ざしてしまうということになると思料いたしますけれども、まず、民主党修正案の趣旨を御説明願いたいと思います。

石関委員 御質問の、今回の民主党修正案の趣旨及び概要について、まず御説明をさせていただきたいと思います。

 今回の信託法案、一九二二年に制定をされた信託法について、その表記を現代語化し、これまで必ずしも明らかでなかった受益者の権利や受託者の義務等に関する規定を整備するとともに、現代の社会経済情勢に対応した多様な信託の利用形態に対応するため、新たな諸制度を導入するというものでございます。民主党としましても、信託制度が、資産流動化などの経済活動のみならず、高齢者や障害者のためなど、民事の場面においても大いに活用されることを期待しているところでございます。

 しかしながら、この政府原案には、次のような問題点があると考えます。

 第一点、まず、信託行為における別段の定めにより受託者の義務を大幅に緩和、軽減できるものとされておりますが、特に高齢者や障害者が活用することが予定されている民事信託において受益者の利益が損なわれる可能性が否定できないというふうに考えます。

 また、自己信託、信託宣言については、企業会計など周辺ルールが未整備のまま導入されれば、租税回避、さらには第二、第三のライブドア事件などの温床となりかねない、こういった指摘が専門家からなされているにもかかわらず、特別の濫用の防止策が講じられていない、こういった問題がございます。

 さらに、受益者の定めのない信託、目的信託については、公益法人改革や公益信託制度に関する部分の見直しと整合性が本当にとれているのか、大変疑問が残るところであります。

 本修正案は、先に述べた点について最小限度の手直しを行うということによって、信託制度の本質を踏まえた新しい信託法の成立を目指そうとするものであることをぜひ御理解いただきたいと思います。

 そこで、議員の御質問、委員は、信託の基本法である信託法ではできるだけ自由に、そして他方、行政規制を定める信託業法では必要に応じた規制をかけるという方針の方が信託制度の発展に資する、こういったお考えであるというふうに理解をさせていただきます。

 しかしながら、先ほど申し上げましたとおり、今回の信託法が成立した際には、高齢者や障害者など、これまで信託制度とかかわりを持つことが少なかった一般の方々も、将来の生活の安定等を目的として信託を活用することが予想、期待をされているところであります。このような方々が必ずしも専門の信託業者を活用するとは限らないというふうに考えられます。特に、我が国においては、現行の信託法自体が、そもそも、信託の名をかたって高利貸し的な業務を行っていた悪徳会社の規制等を目的として制定されたという、委員も御承知の事情があります。

 必ずしも信託制度が国民の間に定着していないのでありますから、先に述べたような方々が万が一にも不当な不利益をこうむることがないよう、制度導入に当たってはきめの細かい措置を講じておくべきだという考えを持っております。そして、このような措置を講じておくことこそ、かえって信託制度の信用を高め、その定着、発展には必要なことである。民事信託の発展の道も閉ざしてしまうのではないかという御指摘は当たらないものであるというふうに考えております。

早川委員 木を見て森を見ないという言葉があります。あるいは、角を矯めて牛を殺すという言葉があります。具体的な内容についてお伺いいたします。

 信託事務の処理の第三者への委託について規定した法案の第二十八条に関し、修正案によりますと、第一号については、信託行為に信託事務の処理を特定の第三者に委託する旨が定められている場合であっても、それが受益者の利益を害することが明らかである場合には、委託を許さないものとし、さらに第二号については、信託行為に事務処理の委託に関する定めがない場合には、やむを得ない事由がない限り、委託をすることができないとするものとし、第三号については、信託行為に信託事務の処理を委託してはならない旨の定めがある場合には、やむを得ない事由があっても、第三者に信託事務を委託してはならず、受益者の承認を得る必要があるものとしています。

 法案の第一号と第三号については、現行法の規定の趣旨を踏襲するものであると承知しておりますけれども、これらについても修正される趣旨はどこにあるのでしょうか。

 また、第二号については、現行法が制定された当時に比べて社会の分業化、専門化が進んだ現代社会においては、信託事務のすべてを受託者が処理することを前提とするのは現実的ではなく、むしろ、必要な場合には信託事務の処理を第三者に委託することができるものとした方が、より適切かつ迅速に信託事務を処理することにつながり、ひいては受益者の利益にも適合するという趣旨で、新たに規定されたものと承知しております。

 修正案では、このような改正の趣旨を完全に没却することになると思われます。

 さらに、善管注意義務についてもお尋ねいたします。受託者の善管注意義務については、現行法でもいわゆる任意規定と解されております。今回の改正においては、法文上そのことを明確化したものと承知しております。すなわち、信託行為の定めにより、加重することもできれば、軽減することもできる。ただし、善管注意義務を完全に免除し、何らの注意義務を負わないとすることは許されないということになります。

 これに対し、民主党の修正案は、受託者の能力に期待して注意義務を加重することや、無報酬で親族に信託する場合など受託者が好意で信託の引き受けをする場合にも注意義務の程度を軽減することをも禁止するもので、現行法より不合理に規制を強化するものであって、信託の利用を阻害するものではないでしょうか。

 念のために申し上げますけれども、業者の提供する一方的な約款等に、受益者に不利な条項が盛り込まれるといった事態を懸念しておられるのであれば、それは信託業法の問題であります。信託業法における善管注意義務に係る規定は、信託行為による責任の加重、軽減にかかわらず、行政上の規範として規定が設けられたもの、すなわち強行規定であると承知しております。

 さらに、利益相反行為についてもお尋ねいたします。

 利益相反行為の制限について定めた第三十一条、第三十二条に対する修正案の関係で、特に二点に限って質問いたします。

 修正案によれば、重要な事実の開示を受けて受益者の承認を得たときは、形式的な利益相反行為等の禁止の例外を認めている条文、すなわち、信託法の三十一条第二項第二号、三十二条第二項第二号が削除されております。

 確かに、単に受益者から承認を受ければよいとしたのでは、受益者が承認するか否かの判断をするのに必要な情報を知らせることもなく、受託者がその判断を受益者に迫るといったことも考えられないではありません。

 しかし、信託法案では、単に承認を得ればよいとはせず、重要な事実を開示して、すなわち、受益者が適切な判断をするのに不可欠な事実を事前に開示して、受益者の承認を得る必要があるとしております。

 受託者の利益相反行為を禁止するのは、受益者を保護するためであり、保護の対象である受益者が同意している場合にまで一律に禁止する必要はないのではないかと考えています。例えば、テナントビルが信託財産であり、テナントビルの賃料を受益者に分配する信託において、受託者が適正な対価を支払うことを条件としてテナントとなることを希望し、受益者も受託者からの賃料収入により収益を得られることを期待して同意している場合などは、十分に合理的で容認されるべきものと思われます。修正案はそうしたことも認められないという趣旨でありましょうか。

 念のためにつけ加えますけれども、信託法案は、受益者の承認を得ても弊害が生じ得る場合についての弊害防止措置を講じており、信託行為の定めにより、受益者の承認による例外を排除できるものとしております。

 さらに、形式的な利益相反行為を行った場合には、その理由のいかんを問わず、すべての受益者にその事実を通知しなければならないとする修正案第三十一条第三項、第三十二条第三項関係でありますけれども、質問をいたします。

 受託者の当該通知義務について信託行為で別段の定めを置くことを許容している理由は、次の三点に集約されます。

 第一に、多数の受益者が存する場合などに、受託者の通知義務を強行規定とすると、通知に要する費用などがかさむために、かえって受益者の利益を害する場合があることであります。

 第二に、受託者である信託銀行等が、信託財産に属する金銭を第三者に対して送金する必要があるケースにおいて、一般顧客向け料率またはより低額の料率の費用を徴収して受託者が送金を実施する場合のように、受託者が日常的に繰り返し行う形式的利益相反行為については、そのたびごとに通知をしなければならないとすると、信託事務の円滑性を害し、受益者の不利益になりかねない場合があることであります。

 さらに第三は、委託者による監督を強化しているタイプの信託においては、受益者への通知が不要であると考えられる場合があることなどであります。

 修正案の提案者におかれては、今申し上げましたような具体的な事例についても、すべての受益者に通知しなければならないという趣旨なのでしょうか。

 以上、具体的なテーマについての提案者の御説明をお願いいたします。

高山委員 今、早川委員の方からかなり広範な疑問点をいただきまして、これを説明するためにも、しっかりまだ審議時間をとらなきゃいけないのかなというふうに思ってしまいました。

 簡潔に答えますと、委員は、業法による規制でそういう細かいことをやっていけばいいのではないかというようなお考えだと思うんですけれども、信託法とは何かというような原点に立ち返ってみると、他人に自分の財産を預けていくという中で、受益者あるいは委託者の権利がないがしろにされてはいけないんじゃないかということが私たちの基本にありまして、受益者の承認ですとかあるいは通知ですとか、こういったことを産業界からの要請がいろいろあるからといって軽視してはいけないなというふうには思っております。

 さはさりながら、やはり目まぐるしく変貌する、特に商事信託の分野では、余り煩雑な手続をとることが本当に信託制度全体の発展にとっていいものかどうなのかというのは十分考えなければいけないと思いまして、私も修正案の提出者ではございますけれども、今委員からの指摘を伺いまして、我々の修正案もさらに修正をしたり、引き続き早川委員としっかりと協議をしていかなければいけないなということを感じましたので、これで答弁とさせていただきます。

早川委員 一応問題点があることについては、提案者も御自覚があるということであります。

 さらに、民主党の修正案提案者が冒頭に述べられました御懸念の一部について私も共有するところであります。しかし、専ら今後の信託法施行までの環境整備や施行後の運用に係る部分が多かったと考えております。

 せっかくの修正案の御提案でありますけれども、先ほど申し上げたように、若干、木を見て森を見ない、結果的に角を矯めて牛を殺す、信託制度の発展を阻害することが強く懸念されるものであることを再度御指摘し、私の質問を終わらせていただきます。

七条委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 私の方からも、政府案についてはここまで相当な時間の審議が重ねられてきておりますので、修正案の提案者の皆様に御質問をいたします。

 まず、自己信託について。修正案附則第二項では、自己信託に関する「第三条第三号の規定は、当分の間、適用しない。」としております。

 しかしながら、この自己信託は、債権者の変更に対する債務者の心理的な抵抗を避けつつ債権の流動化を図ることが可能になること。また、会社が特定の事業部門を自己信託し、みずから当該事業部門を運営しつつ、当該部門の収益力をもとに資金調達を図ることが可能になること。また、障害を抱える子や未成年の子のために親が特定の財産を自己信託し、自己の経済的な破綻などに備えておくことが可能になる。こうした理由から、その創設が各方面から望まれていた制度であると私は認識をしております。

 また、政府の規制改革・民間開放推進会議に対しましても、貸出債権などの流動化における債務者の抵抗感の払拭により貸出債権などの流動化の促進が期待でき、金融市場の活性化に資すること。また、新規性の高い事業をジョイントベンチャーで行う際に、合弁参加企業の中心となる事業会社が自己信託により当該事業を行う部門を信託財産とし、ほかの合弁参加企業が当該信託の受益権を取得することにより、会社設立のコストや時間をかけることなく、かつ、合弁参加企業間での柔軟な権利関係を定めたジョイントベンチャーの設立が可能となること。またあるいは、特許権を用いた事業部門を包括的に信託の対象とし、かつ、みずからがサービサー的な当該信託財産の運用を行うことが可能になることで、特許権を引き当てとした資金調達が行いやすくなり、中小ベンチャー企業の資金調達手段が多様化をされ得る。こうした理由から、信託法において自己信託の制度を新設することの要望が寄せられております。

 また一方で、自己信託は濫用の懸念があると指摘をされておりますけれども、この信託法案におきましては、次に挙げる弊害防止措置もとられているものと理解をしております。

 まず、債権者詐害の懸念への対応として、自己信託の設定に公正証書などの書面を要求し、また、自己信託以外の信託とは異なり、委託者の債権者は、詐害信託取り消し訴訟を提起することなく、直ちに信託財産に対して強制執行などができることとしており、またさらに、不動産のような登記、登録制度のある財産については、信託財産である旨の登記、登録をしなければ自己信託の信託財産であることを第三者に主張できないこととしております。さらに加えて、会社がその事業の全部または重要な一部を自己信託する場合には、株主総会の承認を要することにもしてございます。

 以上、るる申し上げましたように、自己信託には多数のニーズが寄せられております。弊害防止に必要な措置も講じているところ、これを相当の期間一切認めないということは、どういう理由によるものなのか。

 また、自己信託の悪用のおそれがあるとのことでございますが、信託法案に定めた弊害防止の措置でも防止できないと考えている悪用の方法を具体的に御説明いただければと思います。

石関委員 委員の御指摘は、附則第二項において、自己信託に係る規定は当分の間適用しないものとしていることに関する質問であるというふうに理解をさせていただきます。

 この理由については、そもそも自己信託は、委託者がみずから受託者となる信託を指すものでありますが、現行法においては、信託法の第一条が他人に対する処分と規定をしていること、信託宣言を予定した規定が存しないことなどから、信託宣言は許容されないと解するのが通説であったと考えられます。ただ、これに対して、解釈論として、信託宣言は許容されているとの見解も存在をしたほか、立法論として、これを認めるべきであるとの見解も有力だったというふうに承知をしております。

 この点、政府原案においては、第三条第三号において、明文で自己信託を認めております。これは例えば、ビジネスにおいて、特定のプロジェクトに係る事業部門について資産を自己信託する、労働者の雇用形態を全く変えることなく、その事業部門だけ証券化を行い、受益権の形で資金調達をするようなケース、また、債権を流動化させるために、自己信託の形で債権者が債権を切り離して、それを受益権の形で販売されるというようなケースを想定しているということであります。

 この点、第三条第三号の方法による信託、いわゆる自己信託については、企業会計などのルールが十分に整備されないまま導入された場合には、租税回避や財産隠匿等のために使われる危険性等が指摘をされているところであります。

 政府・与党における検討の過程においてかかる懸念が指摘されたことを踏まえて、自己信託に係る規定が適用されるまでに政府等が企業会計、税制等についての所要の措置を講ずること等のために、自己信託に係る規定を一年間凍結する旨の規定が附則第二項に置かれたものであるというふうに承知をしております。

 しかし、たった一年間で先ほど述べたような所要の措置が十分に講じられるかについては、委員会質疑等における政府の対応にかんがみると、極めて疑問であると思います。政府原案のように一年間という期間ではなくて、自己信託に係る規定が適用されるために必要な措置が十分に講ぜられたことを確認した上で自己信託に係る規定を適用すべきであるというふうに考えております。

 そこで、本修正案においては、これらの措置の整備状況をしっかりと確認し、自己信託を実施する上で問題がないことが担保されてから自己信託の規定を適用することとするために、自己信託に係る規定を当分の間適用しないものとしたものであります。

 悪用の方法の具体例ということで御質問がありました。

 これにつきましては、参考人質疑等においても次のような問題点が指摘をされているところであります。

 自己信託によって自己信託を行った財産が信託勘定に転換をされ、その財産を裏づけとして信託受益権が発行された場合を考えますと、仮に資産の消滅要件を満たすという整理が行われたとすると、自己信託を行った企業が信託受益権を引き受けたときは、財務諸表には、その受益権は信託受益権勘定として計上されることになります。この点、現行の証券取引法等においては、この信託受益権勘定について、何が裏づけ財産となっているかについて開示する義務はございません。したがって、自己信託制度が導入をされますと、例えば不良資産が裏づけ財産となっている場合などについては、従前よりもさらにその実態が開示されないこととなり、財務諸表の信頼性が損なわれるおそれがあると考えます。

 この問題に対処するためには、金融商品取引法の政省令等において、信託受益権を財務諸表提出会社、連結子会社が保有する場合には、信託受益権の内容を注記等により開示させること等の措置を講ずべきであるというふうに考えます。

 このような問題点があることを踏まえて、本修正案においては、自己信託を実施する上で問題がないことが担保されてから自己信託の規定を適用することとするために、自己信託に係る規定を当分の間適用しないものとしたものでございます。

伊藤(渉)委員 一個ずつ聞いていきます。次に、目的信託についてお伺いします。

 修正案附則第三項は、別に法律で定める日までの間適用しないとし、別に法律で定める日については、公益信託に係る見直しの状況を踏まえて検討し、その結果に基づいて定めることとしております。これは、受益者の定めのない信託は公益信託に関する改正を行うまで凍結するというものであると考えます。

 しかしながら、受益者の定めのない信託については、政府の規制改革会議にも創設の要望が寄せられているなど、ニーズが認められ、かつ、弊害防止のための経過措置まで設けているにもかかわらず、別に法改正をするまで全くその利用を禁止することは合理性に欠けるのではないかと思いますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。

 また、信託法案に定めた弊害防止措置でも防止できないと考えている悪用の方法を具体的に御説明いただきたいと思います。

高山委員 この目的信託ですけれども、要望は確かにあるのかもしれませんけれども、我々が考える弊害もあり、公益法人制度も、今までだんだん時代にそぐわなくなってきた部分もあるから今改革しようという最中でございまして、やはり質疑の中でも、現行公益法人の制度でもできるものと、あるいは、今の公益信託でもう既にそれはひょっとしたらできるかもしれないというものもたくさんありましたし、また、新たに受益者の定めのない信託という新ジャンルを創設することの意義というのが、本当に必要なのかという立法事実、これが確信を持てなかったというのがまず本当の一番のことではあります。

 ただ、もう一つ、公益法人制度の改革に合わせなければいけないというのも当然でございまして、今、政府原案においては、公益法人制度に先駆けてこれを導入しようということですけれども、その導入を急ぐ理由もまた明らかでないというふうに私の方はまず考えております。

 それと悪用ですね。悪用に関しましても、御指摘の目的信託の悪用の具体例ですけれども、これは、執行免脱に悪用する可能性があるのではないかということはまず指摘はされておりますし、そもそも、悪用に行く以前の問題として、やはり、目的信託の具体例そのものが、現行の信託制度あるいは公益法人の制度、あるいは寄附、こういった制度で十分可能なのではないかという点も考えた上で、我々はこのような条文を入れたということでございます。

伊藤(渉)委員 もう一つ行きます。信託財産からの費用等の償還についてお伺いします。

 修正案第四十九条第二項は、費用を償還する場合に、受益者の同意を得て、信託財産に属する財産を処分することができるとしており、信託財産に属する財産の処分について、受益者の同意という要件を追加しております。

 費用などの償還は、受託者が信託財産に関して租税、公租その他の費用等をみずから支払った場合に信託財産からその償還を受ける権利であり、現行法におきましても、信託財産に金銭がない場合には受託者は信託財産を任意に処分、換価する権限を与えられております。これに対して修正案は、現行法よりも規制を強化しているのはやはり若干合理性に欠けるのではないかと考えます。

 例えば、祖父が、これから生まれる孫のために、孫を受益者として長期間にわたり一定額を給付する信託を設定し、孫が生まれる前に死亡をしたとします。しかし、孫が生まれる前に信託財産を管理するために費用が発生したため、受託者は信託財産として運用している有価証券を一部売却して費用を償還する必要が生じた場合には、受託者は費用をどう償還すればいいのでしょうか。

 受益者が現に存在しない以上、その同意を得ることはできませんので、受託者は信託財産を換価して費用を償還することができなくなります。そうすると、費用が償還できない以上、受託者は信託契約を終了させることになると考えられます。そのような結果は委託者の意思や受益者の利益に反するものであり、やはり合理性に欠けると思いますが、その点についてのお考えをお聞かせください。

横山委員 御指摘は、費用償還をする場合に、受益者の同意を得なければ信託財産に帰する財産を処分することができないというふうにしたのでは、受益者が正常な判断能力を失った場合、現にその受益者の同意を得ることが客観的に不可能な場合について、必要な費用を受託者が取得できず、信託事務の処理を遅滞させ、あるいは、結局、信託契約の終了を招くのではないかというものであると承知いたしております。

 しかしながら、御指摘のような事案が仮に生じたとしても、これは信託制度に特有の問題ではなくて、受益者が正常な判断能力を失った場合には、別に成年後見制度を活用することなどによっても対応が可能であると考えております。

 いずれにせよ、受益者費用を償還するためにという理由で安易に信託財産の処分を認めた場合には、信託財産という信託目的の達成のために、不適切な財産まで処分されてしまう可能性もあります。このような事態が生じた場合に最大の不利益をこうむるのは受益者である。今回、新たな信託法が成立した際には、高齢者や障害者などのため信託制度が活用されることが想定されております。このような方々が不利益をこうむることがないよう、防止措置を講じておくことは必要不可欠であると考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 以上で、質問を終わります。

七条委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川律夫であります。

 今回の信託法案は、新しいタイプの信託が認められますので、経済活動にとって大変プラスの効果を与えるものだというふうに認識をしております。そして、障害者やあるいは高齢者などの社会的弱者のためにもこれまた重要な意義があるというふうに考えておりますが、そういう法案に対して修正案が出されました。どういった趣旨で提案されたのか、その概要を提案者に伺いたいと思います。

高山委員 細川委員の質問にお答えいたします。

 今回の信託法案は、一九二二年に制定された信託法について、その表記を現代語化し、これまで必ずしも明らかでなかった受益者の権利や受託者の義務等に関する規定を整備するとともに、現代の社会経済情勢に対応した多様な信託の利用形態に対応するため、新たな諸制度を導入するものであるというふうに理解しております。

 私たち民主党といたしましても、信託制度が、資産流動化などの経済活動のみならず、高齢者や障害者のためなどの民事の場面においても大いに活用されることを期待しているところであります。

 しかしながら、政府原案には、以下のような問題点があります。

 まず、信託行為における別段の定めにより、受託者の義務を大幅に緩和、軽減できるものとしており、特に高齢者や障害者が活用することが予定されている民事信託において、受益者の利益が損なわれる可能性がやはり否定できないという部分であります。また、自己信託については、企業会計など周辺ルールが未整備なまま導入されれば、租税回避、または第二、第三のライブドア事件などの温床となりかねないとの指摘が専門家からなされているにもかかわらず、特別の濫用防止措置が講じられていない。そしてさらに、受益者の定めのない信託については、先ほどからありましたけれども、公益法人改革や公益信託制度に関する部分の見直しとの整合性がとれていないという疑問が残るところであります。

 民主党の修正案は、さきに述べた点について最小限度の手直しを行うことにより、信託制度の本質を踏まえた新しい信託制度の成立を目指そうというものであります。

細川委員 大変よくわかりました。

 次に、第二十八条について質問をいたします。

 二十八条は、信託事務の処理を第三者に委任できる場合を定めております。それに対しての修正なんですけれども、その第一号を、信託事務の処理を第三者に委託することができる旨の定めがあるとき、その後に、この修正案では、「当該委託が受益者の利益を害することが明らかであるときを除く。」こういう語句を加えておりまして、第三者に委託できる場合を限定いたしております。

 さらに第二号ですが、信託行為に信託事務の処理の第三者への委託に関する定めがない場合に、原案は、「信託事務の処理を第三者に委託することが信託の目的に照らして相当であると認められるとき」、このようにしておりますけれども、その「相当である」という部分を、この修正案では、「やむを得ない事由がある」というふうに変えて、ここでも第三者に対する委託ができる場合を限定しております。

 それから第三号ですが、信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合ですが、原案が単に、「信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められるとき」、こういうふうになっておりますけれども、修正案では、それに加えて、「かつ、当該委託について受益者の承認を得たとき」、こういう文言を加えまして、一号、二号と同様に、第三者に委託できる場合を限定いたしております。

 このように、二十八条では、信託事務の処理を第三者に委託することについての限定をしておりますけれども、これはどうしてこういうような限定をさらに加えているのか、提案者にお伺いをいたします。

石関委員 委員の御指摘の事項につきましては、まず、信託法のこの法案第二十八条の第一号において、受託者が信託事務の処理を第三者に委託することができる場合について、信託行為に信託事務の処理を第三者に委託する旨等の定めがある場合においては、当該委託が受益者の利益を害することが明らかであるときを除くものとしている修正点、それから、信託法案第二十八条第三号において、受託者が信託事務の処理を第三者に委託することができる場合について、信託行為に信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合においては、信託事務の処理を第三者に委託することにつき信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められ、かつ、当該委託について受益者の承認を得たときとすることに係る修正点についてであるというふうに理解をさせていただきます。

 現行法では、第二十六条の第一項で、「受託者ハ信託行為ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外已ムコトヲ得サル事由アル場合ニ限リ他人ヲシテ自己ニ代リテ信託事務ヲ処理セシムルコトヲ得」と規定をされているところであります。この規定の趣旨は、そもそも信託制度が受託者に対する個人的、主観的信頼を基礎とする財産管理制度でありますから、その信頼を保護するために受託者みずからが信託事務を処理しなければならないものである、また、みだりに他人に信託事務の代行をゆだねるべきでないとの考え方、すなわち、自己執行義務の原則及び代人使用禁止原則を定めたものでありますが、信託行為に別段の定めがある場合と、そしてやむを得ない事由がある場合に限って、さきに述べた原則的な禁止を解除するものであるというふうに理解をしております。

 一方、政府原案においては、第二十八条で、受託者が信託事務の処理を第三者に委託する場合について、「受託者は、次に掲げる場合には、信託事務の処理を第三者に委託することができる。」と規定した上で、第一号として、「信託行為に信託事務の処理を第三者に委託する旨又は委託することができる旨の定めがあるとき。」と、第二号として、「信託行為に信託事務の処理の第三者への委託に関する定めがない場合において、信託事務の処理を第三者に委託することが信託の目的に照らして相当であると認められるとき。」と、それから第三号として、「信託行為に信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合において、信託事務の処理を第三者に委託することにつき信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められるとき。」というふうに規定をしております。

 とは申しましても、社会の分業化、専門化が進んだこの現代社会においては、信託事務のすべてを受託者が処理することとしたのでは、かえって受益者の利益を害することも十分に考えられるところがございます。このため、民主党としても、一定の範囲で信託事務の処理を委託することを認めることについてはやぶさかではないという立場でございます。

 しかしながら、委託についてはあくまで、先ほど申し上げました原則に忠実であるべきである、政府原案のように、信託行為に定めがあれば無条件に委託できることとしたり、受託者の判断で容易に委託できることとすることは適当ではないと考えております。

 このため、本修正案においては、信託事務の処理を第三者へ委託することができる場合について、第一に、信託行為に信託事務の処理を第三者に委託することを許容する旨の定めがある場合であっても、当該委託が受益者の利益を害することが明らかであるときは委託できないこととすること、第二に、信託行為に信託事務の処理の第三者への委託に関する定めがない場合においては、信託事務の処理を第三者に委託することが信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められるときに限って委託できることとすること、そして第三に、信託行為に信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合においては、信託事務の処理を第三者に委託することにつき信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められ、かつ、当該委託について受益者の承認を得たときとすることとして、委託することができる場合をそれぞれ限定することとしたものでございます。

細川委員 それでは次に、第二十九条二項についてお伺いをいたします。

 原案では、このようになっています。「受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとする。」こういうふうになっておりますけれども、修正案では、このただし書きのところを全部削除して、受託者の善良な管理者の注意義務というものを非常に厳格化している提案なんですけれども、これはどうしてこういうような削除になったんでしょうか。その趣旨をお伺いいたします。

石関委員 お答えいたします。

 御質問のところ、受託者は、委託者や受益者の特別の信任を受けて信託財産の管理または処分その他信託目的の達成のために必要な行為を行うのであるから、信託事務の処理に当たっては、受託者の属している職業や社会的地位に応じて一般に期待されている注意義務、すなわち善良な管理者の注意義務を負うべきことは当然であると考えます。特に、今回の信託法では、高齢者や障害者の扶養等のために信託制度を活用することが期待をされているところであります。受託者に高度な注意義務を負わせることは、これらの円滑な活用を確保するためにも不可欠なものであると考えます。

 この点について、政府原案におきましても、原則として受託者が善良な管理者の注意義務をもって信託事務を処理すべき旨、規定しているところでありますが、私的自治の尊重という名目で信託行為の定めにより注意義務を軽減することを認めており、受益者の保護の観点から問題があると言わざるを得ません。

 このため、本修正案においては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもってこれをするものとする旨のただし書きを削除することとし、原則どおり、受託者は善良な管理者の注意義務をもって信託事務を処理すべきことを明記したものでございます。

細川委員 次に、三十一条、それから三十二条についてお聞きをいたします。これは、受託者と受益者の利益相反行為の制限規定でございます。

 そこで、三十一条第二項第一号に、修正案では、「(当該行為が受益者の利益を害することが明らかであるときを除く。)」こういう括弧書きでこの文言を加えております。それから、第二号で、原案は、「受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。」となっておりますが、修正案ではこれを削除いたしております。それから、三十二条第二項も三十一条と大体同様でございまして、いずれの修正も、受託者と受益者の利益相反行為について、原案よりもより厳格な修正内容になっておりますけれども、それはどういう趣旨でそのようにされたのか、その趣旨をお伺いいたします。

横山委員 お答えいたします。

 政府原案においては、受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たときは、第三十一条第一項各号及び第三十二条第一項に規定する利益相反行為をすることができることとしています。

 しかしながら、幾ら不利益をこうむる当人である受益者が承認したからといっても、客観的に見る限りは受託者の行為が利益相反的である以上は、そのような受託者の行為を有効なものとして許容してしまうことは、信託の基本である信頼、信認関係という性格にももとるものと考えられます。

 そこで、まず第一に、信託行為に利益相反行為をすることを許容する旨の定めがあるときに、受託者が当該行為をすることができるのは、当該行為が受益者の利益を害することが明らかであるとき以外に限るよう規定するとともに、第二には、受託者が利益相反行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たときは、受託者は当該行為をすることができるものとする旨を、この規定を削除することとした次第です。

細川委員 次に、三十一条の第三項、それから三十二条の第三項、このいずれも、受託者と受益者との利益相反行為の場合に、受託者の通知義務に関する規定が入っております。

 原案では、「信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」こういうただし書きがございます。しかし、修正案ではこのただし書きをすべて削除、こういうことになっておりますけれども、これはどういう趣旨で削除しているのか、お答えいただきたいと思います。

横山委員 第三十一条三項ただし書き及び第三十二条第三項関係についての質問でございます。

 政府原案におきましては、利益相反行為にかかわる受託者の通知義務について、「信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」ものとする、こうされております。

 しかしながら、利益相反行為は受益者の利益を害するおそれがあるため、一定の要件を満たした場合のみ行うことができると、第三十一条第二項及び第三十二条第二項、この旨規定されていること、また、受益者が適時に受託者に対して損失てん補責任、これは第四十条、を追及することを可能とすることが受益者の利益にかなうということにかんがみると、受託者が利益相反行為をした旨の事実を受益者に了知させることは非常に重要な義務であると言えます。

 政府原案においては、受託者が利益相反行為を行った場合であっても、そのことを受益者に通知しない旨を信託行為において定めることが可能となっており、これでは受益者の利益を不当に害するおそれがあると考えている次第です。そこで、利益相反行為にかかわる受託者の通知義務について、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによるものとする旨の規定を削除することとした次第です。

細川委員 以上で、私の質問は終わります。

七条委員長 次に、大串博志君。

大串委員 ありがとうございます。きょう、お時間をいただきまして、信託法改正案、そしてまた民主党側からの修正案も含めて議論を深めさせていただければというふうに思います。

 先般来、信託法を改正することに関するメリット、それからデメリット、リスクですね、そして、それに対してどういうふうな措置がとられているかということをるる議論してきたわけでございますけれども、そのリスクの中で、私も前回かなり指摘させていただきましたけれども、特に、自己信託を中心として、新しい制度が入ることによって、例えば会計上、監査、そういう面でのリスクを抑制する措置が十分にとられているかというところを中心に議論してきました。きょう、その辺をちょっと深めながら、もう少し議論させていただければというふうに思うところでございます。

 まず第一に自己信託の方から入っていければと思うんですが、自己信託のメリットとして、前回もちょっと指摘がございましたけれども、いろいろなメリットが考えられると。

 その一つとして、例えば、債権を保有する主体、銀行なんかもそうですけれども、債権をたくさん保有する主体が、債権の流動化という観点から自己信託を用いることによってまた有効活用していく可能性がある。その一つの例として、銀行などが不良債権比率を下げるというような効果も達成しつつ流動化を図っていくというような話がございましたけれども、銀行が、この流動化のために自己信託を使うことによって不良債権比率を下げることができる、この点について、金融庁の方に御確認したいんですけれども、本当に不良債権比率を下げるという結果につながるのか、お願いします。

渡辺(喜)副大臣 大串委員には釈迦に説法というのでございましょうが、確かに不良債権比率は下がり、自己資本比率が向上いたします。信託受益権を第三者に売却すれば、資産が圧縮をされます。つまり、リスクアセットが小さくなる、自己資本比率の分母が小さくなるわけでございますから、自己資本比率は向上するということになります。これは、一般の不良債権のオフバランス化と同様の現象でございます。

大串委員 ありがとうございます。

 その点、まさに今おっしゃったところなんですね。自己信託によって自分の持っている債権を自己信託します。それを信託受益権として販売していく。信託受益権として販売した後は、信託受益権として販売した分に関してはオフバラされた効果を有するということです。オフバラされた効果を有する部分に関しては、不良債権比率を下げる効果が達成できるし、かつ、自己資本比率の向上にも当たるということだったんですね。

 ところが、ここが非常に、本当にそれでいいんだろうかというような疑念といいますか、もう一回よく考えてみなきゃいけないんじゃないかということを思うわけでございます。例えば、その信託受益権が銀行の連結子会社に販売された場合にはどうなるかというような論点もあろうかと思います。この点につきましては、前回の審議の中で、連結子会社に販売された場合には、連結子会社なんだからそれはオフバラとは言わないんだというような答弁もありました。

 一つ考えるに、自己信託ですから、債権の所有権は銀行に残っているわけです。所有権が銀行に残っている中で、しかし、信託受益権が販売されればオフバラになる。ここは、この基本的な、根本的な考え方がどんなものなのかなというのがよくわからないわけです。つまり、所有権が銀行に残っているんだけれども、所有権は残っている中で、なぜ、信託受益権が販売されればその分オフバラというふうな性質になったと言えるのか。なぜ、所有権が残っているのにもかかわらず、信託受益権がなくなればオフバラと言えるのか、ここはどういうふうに考えればいいんでしょうか。

畑中政府参考人 お答えいたします。

 自己信託の場合、あるいは通常の信託も同様でございますが、信託をされますと、形式的な管理処分権は受託者に移りますが、実質的な管理処分権は受益者に移転をする、この特質を踏まえまして、そういった形態が生じた場合にはオフバランスが会計上も認められるということでございます。

大串委員 これまでの信託と同様というようなあれがありましたけれども、この自己信託でございますけれども、やはり、これまでの信託とはちょっと根本的に違った性質になっているんじゃないかと私なんかは思うわけですね。すなわち、これまでの信託であれば、他者に所有権が移って、そこで信託受益権が販売されていくわけですけれども、今回の場合は、銀行そのものに所有権が残ったままで信託受益権が販売されていくということでございます。

 恐らく、信託受益権が販売されていった後はその部分のリスクアセットが減るという考え方はどういうことかというと、すなわち、信託された債権、これは所有権を持っているけれども、この所有権に関する収益権なりあるいは収益権に伴うリスクファクター、ここが信託受益権に化体されて、それが移ってしまうというところが会計の考え方に沿う、すなわち、リスクアセットから信託受益権が買い取られた分を落としていいという根拠なんだろうと思います。

 例えば、今、金融商品なんかでいろいろなものが発売されてきています。銀行が債権を保有したままで、その銀行が保有する債権の収益権あるいはリスクをヘッジするための手段として、例えば、最近デリバティブなんかも売り出されるわけですね。例えば、百という債権、これの収益を見合いとしながら、それに対する下ぶれリスクをヘッジするためにいろいろなデリバティブが販売されて、そのいろいろなデリバティブをいろいろな第三者の投資家が買うことによって、実質上、その銀行はこの債権に対するリスクを負わない。逆に、その分収益を移転していることになるわけですけれども、そういうふうなこともあるわけです。

 よくよく考えると、自己信託というのは、債権を保有しながら、所有権を維持しながらデリバティブを販売して、リスクとリスクに見合った収益権を見合いにしながらリスクを外出ししていくということと、事実上、全く変わらないんですね。にもかかわらず、この自己信託の場合には信託受益権が販売された分だけに関しては不良債権比率から落ちていくということに関しては、若干のでこぼこがあるんじゃないかというふうに思うんですけれども、この辺はどうでしょうか。

畑中政府参考人 先生御案内のように、クレジットデリバティブというのは、社債でありますとか貸付債権の信用リスクの移転などを目的として、当事者同士で個別に条件を決めて行う取引でございます。このクレジットデリバティブを活用して貸付債権のリスクを低下させた場合、不良債権額あるいは不良債権比率は減少いたしません。御指摘のとおりでございます。

 他方、自己信託の場合には、信託受益権の第三者への売却によりまして、先ほど申し上げましたように、信託財産を実質的に保有しない状況になる場合にはオフバランスが認められ、結果として不良債権比率の低下につながる。これも御指摘のとおりでございますが、こうした違いが生じますのは、御指摘のクレジットデリバティブの場合には、保有する資産の経済価値の低下に対するヘッジ手段である、これが目的でございますが、自己信託の場合には、先ほど申し上げましたように、資産のオフバランスが達成される、この違いがあろうかと思います。

大串委員 今御答弁いただいた最後のくだりが非常に重要でございまして、自己信託の場合にはオフバランスが達成される、そこが違うんだとすぽっとおっしゃいましたけれども、なぜオフバランスが達成されるとすぽっと言えるかというところがまさにかぎでございまして、実態上、金融商品というのは、日々いろいろなものが出てきています。デリバティブもいろいろなつくり方があり得まして、かつ、実際にいろいろなものが出てきているんですね。

 実態上、債権を持ちながらデリバティブを売っていることとほとんど変わらない形での自己信託プラス受益権販売ということ、この二つが、経済行為としては恐らく非常に似通ったものであるにもかかわらず、不良債権処理という観点からするとでこぼこが生じる、でこぼこといいますか、違いがあるというような、こういう実態面の違いもあるわけでございます。恐らく、この辺は会計上のルールという検討を通じてさらに深めていかなきゃいけない話なんだろうと、まさに最初に御指摘しましたように思うところでございます。

 ですから、こういう点からしても、会計と今回の信託法改正による自己信託の導入等々に関しては、今話したことは極めて技術的なように聞こえますけれども、実態上は、不良債権処理額を大きく左右するという意味において、行く行く大きな差異をもたらしていく可能性があると思うんですね。ですから、こういう会計上の取り扱い面に関しては非常に、慎重の上にも慎重を期していかなきゃならないというふうに先日来申し上げているところでございます。

 もう一つ、会計の取り扱いについて、前回議論したことをもう少し深めさせていただければと思います。

 例えば、自己信託を用いて事業を信託していくことによって、前回、橋上参考人からの説明にもありましたけれども、ライブドア問題というのが起こりましたけれども、あれと実質非常に似たようなことが起こっていくんじゃないかと。ライブドア問題を通じていろいろなセーフガードを法律あるいは会計ルールの中で入れてきましたけれども、それをもってしても、今回、自己信託あるいはそれを用いた事業信託が行われることによって、セーフガードができなくなるということがあり得るんじゃないかということが言われておりました。

 そこで、ライブドア問題を受けて会計上のたがの締めが行われているわけですけれども、これは、一つは金融商品取引法によって開示及び連結のルールを厳しくし、かつ、会計士の皆さんの民間団体の方々の御努力で実務対応報告二十号というのがつくられて、まさにライブドア問題で起こったような組合の場合の連結のルールを明確化したということがございます。

 前回もちょっと話を進めようとして、なかなか深まらなかったんですけれども、今回、自己信託を用いて事業信託を行っていく。その場合に、連結の問題に踏み込んで議論しますと、ライブドア問題で起こったような、本来は連結で表示すべきような問題が、この事業信託という制度を用いたことによって連結逃れといいますか、実態上は同じようなものなのにもかかわらず、連結しないでよくなる、連結逃れみたいなことになるんじゃないかという気がするんですが、現在の実務対応報告二十号によると、自己信託そしてそれによる事業信託の場合には連結の対象になるのかならないのか、そこの事実関係を、ひとつ答弁をお願いします。

畑中政府参考人 ただいま御指摘ございました、ことしの九月に公表されました実務対応報告二十号、これによりますと、会社がみずから出資しております投資事業組合を連結するか否かの判断基準といたしまして、一つには、当該会社が投資事業組合につきまして業務執行権限の過半を所有している場合や、業務執行権限の過半を所有していない場合であっても、自己と緊密な者等と合わせて業務執行権限の過半を所有し、かつ、当該投資事業組合の資金調達総額のおおむね過半について提供を行っている場合等には、原則としてこの組合は連結されるということが明らかになっているところでございます。それは御指摘のとおりでございます。

 これが自己信託の場合にどうなるかということでございますが、これまでも再三お答えしておりますが、いわゆる信託財産につきまして受益権を売却しない、すなわち自己保有のままでありますと、貸借対照表からオフバランスは認められないことになるわけでございます。これは自己信託やいわゆる事業信託も同様でございます。

 御関心は、オフバラされる場合にどうなるかということでございますが、一般的には、受益権の売却先が委託者の子会社でありますとか関連会社である場合には、委託者の連結財務諸表に当該信託財産が反映されることになるものと考えておりますが、具体的な連結のあり方につきましては、今申し上げました実務対応報告二十号ではカバーされておりませんで、これはあくまでも投資事業組合に関する取り扱いでございますので、この点の御関心の具体的な連結のあり方につきましては、ASBJにおいて今後明確化が図られていく、このように考えております。

大串委員 なぜこの問題をもう一回取り上げたかと申しますと、最後に、今後委員会の方で具体的な連結のあり方について検討されるということではありましたけれども、御指摘させていただきますと、連結になるかならないかという会計のルールの根本的な考え方は、御案内のように、どれだけのお金を出しているか、つまり出資、株式なりいろいろな形でお金を出すことによって、それによって口を出す権利、物を言う権利を持っているか。すなわち、株式を五割以上持っているかとか、あるいは二割以上持っているかとか、あるいは一五%という閾値もございます。それプラス、いわゆる実行力基準といいまして、どれだけ株式とかお金に反映されて口を出す権利を持っているか、プラス、例えば人を派遣しているかとか、あるいは意思決定にどれだけ影響力を持つかとか、あるいは重要な技術を提供しているかとか、そういうふうに、お金、そしてそれに結びつく投票権なり口を出す権利に関連しない内容においても実質上影響力を及ぼし得るかというところも加味して連結するかどうかというのは考えられるというのが現在の会計ルールの考え方です。

 これを前提として、実務対応報告と照らして事業信託の場合を考えると、今おっしゃいました、信託受益権がずっと販売されていって、信託受益権が販売され切ってしまえばオフバラになるんだと。そうすると、恐らく考え方としては連結しない方向になっていくんだと思いますけれども。

 そこで考えなきゃならないのは、では、どれだけ信託受益権を販売してしまったら連結しなくていいのかというところを決めなきゃならぬというのが一つ。もう一つは、それとの兼ね合いで、自己信託をしている、すなわち、自分が信託をし、かつ、自分が信託を受けている。そこにはある一定の、いわゆる管理関係があるわけですけれども、その自己信託をお願いし、かつ、自分で受けているという関係が、先ほど私が申しました実行力基準、すなわち、事業信託した事業部門における実質的な意思決定にどれだけもともとの会社たるところが依然として影響力を持ち続けているかというところの評価もしっかりした上で会計基準をつくらないといけないということであると思うんですね。

 ですから、そこの会計基準のところの判断は、自己信託というものが実際に会社本体からなされて、事業信託の方でどの程度意思決定に本社の影響力が及ぶのかというところも綿密に考えてみないとわからないと思うんですね。ですから、私は、委員会における議論というのも、実はそんなに簡単じゃないんだろうというふうに思うんです。

 実際、ライブドア問題も含めて、連結問題に関してはいろいろ会計委員会の方で基準を締め直してもらってきましたけれども、ライブドア事件みたいな問題が起こった。それは組合という新たなスキームがどんどん出てきて、それに対応できていなかった、そういう事例が実際日本でもあったわけであります。今回、自己信託という全くこれまで我々が知らなかったものが出ていく、それに対して会計ルールが追いつくかどうかというのはやはり非常に心配だとこの委員会でも言われていて、今私が申し述べたように、自己信託した場合にどれだけ実効的な支配権なり意思決定に影響を及ぼすかというのは全く未知なわけでございます。

 そういう中で、今この信託法改正案においては、一年半以内の施行プラス一年のうちに自己信託に関しては入ってくるということになっていますけれども、本当にこれで、今申し上げたような複雑な会計基準も含めて議論し終えて、そして万全な体制で自己信託は入っていけるんだというふうに自信を持って大臣は言えるのかというところについて、ぜひ御答弁をお願いしたいと思います。

長勢国務大臣 自己信託は新しい制度でございますので、内容その他、周知徹底を図ることが必要でありますし、また、御指摘のように、会計上あるいは税務上の取り扱い、運用についてもしっかりしたものにしていくことが必要であるということはそのとおりでございます。そういうことがありますので、法案では、ほかの部分とは区別をして、自己信託の部分の施行を実質的に一年延期するということにしておるわけであります。

 今、先生御専門でありますので、なかなか難しいお話でありまして、素人の私にはわからないところも正直言ってありましたけれども、もう御承知のとおり、専門家の集まりであります企業会計基準委員会でこれは審議をされるわけで、専門家の皆さん方がきちんとした議論をされますので、その間にきちんとした結論を出していただけると確信をしておりますし、また、法務省にいたしましても、そこの議論が十分行われるように協力をしていきたい、このように思っておる次第でございますので、御質問の一年で十分かということについてお答えすれば、十分に必要な検討が行われるというふうに確信をいたしております。

大串委員 今御答弁いただきましたけれども、先日来るる議論していますように、この面が非常に心配なんです。かつ、問題があるということが非常によくわかっている。

 一年半以内にこの信託法改正案が動き出して、かつ、プラス一年、その後一年で自己信託が入ってくる。先般来議論がありましたように、会計ルールに関しては、これは民間団体ですから、政府で、いつまでに結論を出してくださいとか、こういうふうに決め打ちすることはできない。そういう中で、大臣は法律案の責任者でいらっしゃいますから、一年半プラス一年ということで、こんなに問題があり得るということがだんだん議論の中で浮き彫りになってきていることがなぜ大丈夫と言えるのか、その根拠のところを私、実に今回問いたいわけです。ぜひもう一度答弁をお願いします。

長勢国務大臣 専門家の企業会計基準委員会で今までもいろいろな事案を処理されてきたと聞いておりますし、こういう問題の関係の金融庁さん初め皆さん方とも相談をして一年間ということにいたしておりますので、十分な時間であると思っております。

大串委員 大臣、済みません。しつこくて大変恐縮ですけれども、二年半でございますね。二年半という期間が、この会計、今私は大変専門的に申しました。実は非常に専門的な領域ではあるわけです。かつ、日本において未知な領域ではある。

 二年半という期間が、法律の責任者として、提出された二年半ということでよしということで大臣は出されたんだと思いますけれども、先ほど来聞いていますけれども、なぜ二年半なら大丈夫というふうにお考えになったのかという、そこなんです。いや大丈夫と確信しているから大丈夫だということでは、私は非常に心配です。そのくらい大きな問題を今後はらみ得るんじゃないかという改正だと私は思っています。

 もう一度。済みません、大臣、お願いします。なぜ二年半あれば大丈夫というふうに確信されたのか、そこの御意見をお願いします。

長勢国務大臣 自己信託にかかわるいろいろな制度を法務省としては十分説明をいたしていきますので、今まで専門家の方々がこういう問題に取り組んでこられた実績その他を含めて、二年半あれば大丈夫だというふうに皆さんおっしゃっておりますので、そうだと思っております。

大串委員 今、これまでの議論の実績等々とおっしゃいましたけれども、今までの議論の実績とはどういうことなんでしょうか。その点について、もし、参考事例、こういうことがあるから大丈夫なんだというようなことがあるのであれば、それは非常に参考になりますけれども、何かその根拠はあるんでしょうか。

渡辺(喜)副大臣 企業会計基準委員会は民間団体ではございますが、前回もお答えいたしましたように、金融庁から要請をしております。投資事業組合のときもそうでございました。実質支配基準というものがもう既に当時あったわけであります。しかしながら、その基準がいまいち不明確ではないかということが問題になりまして、さらにこれを、より明確なルールをつくるべきではないかという要請に対して、企業会計基準委員会は実に真摯にやってくださったと思っております。パブリックコメントにも付しました。

 したがいまして、新しく出てまいりましたルールでいけば、これはもう疑いの余地がないぐらいに連結の対象になるということがわかるわけでございます。したがって、この信託法に関しましても、来年の夏までには当然、パブリックコメントという手続を経まして、新しいルールをつくってくれるものと確信をいたしておりますし、自己信託についてはさらにその一年後でございますから、十分な審議、検討の時間を経て、必ず企業会計基準委員会において会計基準はつくってくれるものと考えております。

大串委員 今の御答弁をお聞きしておりますと、先ほど長勢大臣がおっしゃった、会計ルールに関して、これまでの実績を踏まえると二年半で十分だと思われますということに対するお答えはなかった。すなわち、やはり答えとしては、二年半あれば十分だと確信しているというところにとどまっているという理解でよろしゅうございますでしょうか。

渡辺(喜)副大臣 企業会計基準委員会は民間の団体ではあるけれども、やはり会計基準という大変な、重要なルールの作成の担い手でございます。したがって、そういう立場から、法が施行され、現実の信託の新しい制度がスタートするときまでに会計基準ができてなかったなどということは、これはあり得ないことでございます。日本の会計基準と、今、国際会計基準のコンバージェンスという問題も抱えてやっておるわけでございますが、日本の市場が、グローバルな市場から見て全く会計基準も異質で、全くこれは話にならぬというようなことはあり得ないことでございますから、ぜひ、大串委員に私が答弁するのは本当に釈迦に説法というものでございますが、そのあたりは会計基準委員会を信頼いただきたいと思うのでございます。

大串委員 これまでの投資組合等々、ファンドの連結のルールの検討のときの例なんかも踏まえると大丈夫だとかそういうふうなことじゃないかと思いますけれども、自己信託というのは今回全く新しい制度で、自己信託した場合に、本社と事業信託されたところの部局がどれくらい経営執行権あるいは意思決定で影響を受けるか、だれも今まで経験したことのない世界に入っていくわけでございます。だから、そういう点も踏まえると、組合があった、それの連結を検討してきた、それはこの何カ月かで終わったから、自己信託の場合の連結基準も早々にできるだろうというのは、私は大間違いじゃないか、全く新しい領域に及んでいるということを認識しなきゃならぬだろうというふうに思います。

 この点、民主党の修正案においては、この辺の緊張感も大変持ってやってもらっているんだろうと思いますけれども、どのような内容になっているか、お聞かせいただければと思います。

高山委員 この一年間の施行延期というんでしょうか、これに関して我々の方は、「当分の間、」という書き方をしておりますけれども、これは、先ほど来の大串委員からの御懸念、これがやはりきっちりと解決されて、それでみんなにきちんとこの信託の制度が使ってもらえるように、関係の税制ですとか会計基準、これが整備されてから施行されるのがやはり一番、この信託制度そのものの信頼性を高めることにもなりますし、また、逆に言えば、政府側の先ほどからの答弁のように、これはふたをあけてみたら一年だったということももちろんあるわけでございますので、非常に適切な書き方であると自画自賛しております。

大串委員 より安全な案の方が望ましいということを申し上げて、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

七条委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡でございます。

 渡辺副大臣、帰ってしまわれるのは大変寂しいですけれども、今の議論を続けようと思っているんですけれども、実はちょっと、きょうは質疑が終局されそうだということで法務大臣以下しか質問通告をしていませんので、済みません、残念ながら、ルールに違反して質問しようとは思いませんので、法務大臣それから法務省の方に、ちょっと今の流れの中で聞いていきたいと思います。だから、法務省が承知している範囲で答えていただければいいんだろうと思いますけれども、私のきょう予定していた質問の順序を変えさせていただいて、今議論が盛り上がりました自己信託の話、適用延期の話についてちょっと質問してみたいと思います。

 金融庁が、先ほどの企業会計基準委員会の方に要請をしたというふうに言っておられました。当然、法務省としてもそういう要請がされているということについては承知されているというふうに思いますけれども、どういう要請をしているか、この点を明らかにしていただきたいと思います。

寺田政府参考人 私どもの承知している範囲では、新しい信託法についての会計基準ということで、今までの会計基準に新しくつけ加えるあるいは修正するべきところがあるということについての検討をお願いしたいということであろうというように聞かされております。

平岡委員 いつまでに結論を出してほしいというようなことについての要請も含まれているんですか、それは。

寺田政府参考人 私どもの理解では、これまでも、先ほども大臣から申し上げましたように、過去の立法、例えば有限責任事業組合等の立法においても、法律の施行に間に合うように会計基準が基本的には新たにつくられ、あるいは必要な修正が加えられているということでございますので、この法律の施行時期というものに合わせてそれをやっていただけるというように理解をいたしております。

平岡委員 具体的に要請したからといって、権限があるわけじゃないので、企業会計基準委員会の方が要請にこたえなければいけないという義務があるわけでもない。いろいろ研究してみたら、勉強してみたら、結果的には大変難しくて、こんな期間ではとてもできないということもあり得るかもしれない。そういう意味で、先ほど渡辺副大臣が、専門家を信頼して、専門家の意見をちゃんと聞いた上で一年間の適用延長だというような趣旨のことを言われたんですよね。

 専門家は、この一年間の適用延長についてどういうふうに言っているんですか。専門家が、一年間の適用延長であれば我々としてはきっちりとできますということを言っているんですか。

寺田政府参考人 これは、私どもが直接この委員会にいろいろお諮りしている関係ではございませんので、私どもが直接この委員会から聞かされているわけではございませんが、基本的には、この委員会というのは、従前は国が関与して行ってきたところを純粋民間ベースでやっているわけでありますけれども、しかし、それだけの責任を負ってやっておられるので、当然、法律の施行というものを念頭に置いておやりになるものだということで専門家の間でも理解はされているというようには、私どもとしては理解をいたしております。

平岡委員 自分たちで法律を勝手につくっておいて、勝手につくっておいたことを踏まえて専門家の人たちがやってくれると期待しているというのでは、全然、我々としては信頼できないですよ。

 まさに、信託法の中に、会計の原則の中で、十三条に、「信託の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。」こういう規定を置いており、そして附則で、自己信託については一年間の適用延長だということを書いている。

 この法律を所管しているのはまさに法務省なわけですよね。法務省が責任を持って、こうやって書いてある。その責任を持って書いてあることの根拠が、そうやって専門家の人たち、今までこういうふうにやってきたから多分できるだろうと思っていますという程度で、我々は、この法律を成立させるということはとてもできないですね。

 専門家が何を言っているのか、特に、皆さん方が期待している企業会計基準委員会がこの会計基準をつくることについてどういう見解を持っているのか、これをしっかりと示してもらわない限りは、我々としては納得できないですよ。

 大臣、どうですか。

長勢国務大臣 今、法案の審議中に、会計基準委員会に殊さらにいろいろなことを、見解を求めるというのもいかがかと思いますし、我々としては、先ほど来、金融副大臣も御答弁ありましたが、専門家の皆さんがきちんと、この法案が通れば、それに沿った結論を出していただけると思っております。

平岡委員 何か本当に、責任がないというのは失礼ですけれども、権限のない状態の中で、期待しているとかなんとかと言われると、法律で成立させようとしているんですよね、私はそこのところに非常に違和感を感じるんですね、ずっと最初から指摘しているように。

 私は、ぜひ、企業会計基準委員会、ここに呼んで、ちゃんと見解を委員会で述べていただくということをやるべきだというふうに思います。

 委員長、そういうことで、よろしくお願いしますね。

七条委員長 後日、理事会において協議いたします。

平岡委員 そこで、私たちは、先ほど来から議論しているように、自己信託の部分についての適用一年間延長というのを附則第二項で、政府案で示されているわけでありますけれども、これについては、やはり法律的な側面から見たときには、しっかりと、問題のない、準備が整ってからスタートさせるべきであるという意味から、「当分の間、」というふうに、これは法律的には「当分の間、」と表現せざるを得ないということで、趣旨としては、しっかりとした環境が整って、特に会計基準なんかについても、あるいは会計監査のあり方についてもしっかりとしたルールができてからスタートさせるべきだということで、趣旨として申し上げているわけであります。

 これについて、政府としての御見解をお伺いいたしたいと思います。

長勢国務大臣 民主党さんのこの問題についての修正案というのは、当分の間はこれをやらせないという趣旨でございますが、従来からずっと御答弁申し上げてきておりますように、自己信託については、商事的な分野あるいは民事的な分野でニーズが高まっておるわけで、たくさん、各界からその創設が要望されておるところでございます。また、そのことについて、今のような観点から、一切、当分の間これを施行しないということは相当ではないというふうに考えております。

平岡委員 一切という言葉を使われたんですが、大臣、附則の三項と混同しているんじゃないかと思うんですよね。先ほど来議論がありましたね。政令で定める法人に限ってスタートさせるというのが一部あれで、我々は、その部分については、ちゃんとした仕組みができるまではということで、一切だめだ、こういう話になっている。

 一年間は一切だめなんですよね、附則の第二項の取り扱いは。

 私は、本当に、ニーズが高まっているという大臣の御見解について否定しているんじゃないんです。ニーズがあるということは、我々の法案、修正案提案者の答弁の中でもしっかりと出ていたと思いますね。だけれども、やはり、本当に大丈夫なんだろうかという何か心配がある、それが一年間の適用延長になっているということですよね。

 だけれども、一年間の適用延長ということは、本当に一年間でちゃんとできるのかどうかというのは、一体だれが保証できるんですか、法律的にはどこに担保されているんですかとなったときには、これはないわけですよ。

 だからこそ、私たちは、ニーズは高まっていることは認めますから、しっかりとした環境が整ったということが確認できれば、いつでもスタートさせるということに我々としては賛同しますよ。

 そういう意味でいったら、これを一年間という形で、根拠がない、保証がない、権限がない、そういう中で一年間の適用延長に限定するというのは無責任じゃないかというふうに思うんです。

 どうでしょうか。

長勢国務大臣 この法案が通れば、当然、基準委員会において十分な検討が行われるように、政府としては万全の体制をとっていくわけでありますし、今先生おっしゃるように、一年間では無理だということを決めつけられるのはいかがかと。我々としては、それができるように御協力を申し上げ、またお願いもしてまいる、施行に万全を期していくというふうに考えております。

平岡委員 別に、一年間では無理だと決めつけているわけじゃないんです。

 先ほど高山委員が修正案に関して答弁したように、それは一年以内でできるかもしれない。それならそれで、そのときにぱっと、法律で施行を認めるような形をとればいい。だけれども、一年間でできる保証はないから、そこは「当分の間、」という形にして、それができ上がったときにちゃんとスタートさせるということでいいんじゃないかというのが我々の考えている趣旨です。

 いずれにしても、政府としては、提案した立場だから、修正を受け入れますということをこの場で言えるような話じゃありませんから、今、修正協議を与党との間でさせていただいているので、しっかりと与党との間で修正協議をさせていただきたいというふうに思っております。

 ちょっと、我々の修正部分から入ってしまったので、もう一つ、目的信託についての民主党の修正案について触れていきたいというふうに思います。

 民主党の修正案の趣旨については、先ほど来から、与党の方の質問、あるいは野党の方からの質問の中でもるる述べられているわけでありますけれども、この修正案について、政府としてはどのようにお考えになりますでしょうか。

長勢国務大臣 民主党の修正案は、公益信託に関する改正を行うまで、受益者の定めのない信託の利用を一切認めないという趣旨であると理解をしております。

 これにつきましても、目的信託についての国民から寄せられておるニーズ、こういうものについてどうお考えになるかという問題があると思います。先生御案内のとおり、これについても各方面からニーズがあるわけで、これにこたえるためにこの制度を新設するというものでございます。

 改正要綱試案の公表によって、パブリックコメントが寄せられておりますが、その中でも、日弁連さんを初めとして多くの団体からこれに賛成をするという意見が寄せられておるわけでありますので、これを無視するということは重大な問題ではないかなと思っております。

 また、この修正案の論拠は、多分、受益者の定めのない信託の濫用のおそれ、これが御心配の点だろうと思います。これについても、信託法案によって、今までもるる御説明申し上げてまいりましたが、十分な防止措置というものを講じておるわけでございます。

 そういうことを考えますと、このニーズにこたえるということ、また受益者の定めのない信託について十分な濫用防止措置を講じておるということから考えますと、法改正をするまで利用を禁止するということをする合理的な理由はないのではないかというふうに考えております。

平岡委員 ニーズがあることも我々は認めないわけではないんです。ただ、議論の中でも、今行われている公益信託との関係で、一体どの程度のことまでが公益信託で認められ、どういうものであれば公益信託として認められないのかというその仕切りの問題がなかなか、ちょっと議論があるのかなというふうには私も思いますけれども、ニーズがあること自体を否定しているものではない。

 しかし、信託法というのは基本法ですよね、基本法。基本法であるにもかかわらず、附則の中で、政令で定める法人以外の人は受託者として当分の間なれないんだ、こういう妥協の産物的な条文が残っている、あるというのは、当分の間といったって、いつになるかわからない。

 この前も議論しましたけれども、では、政令で定める法人というのがどんな法人なのかと考えたときに、何か、不正を働くかもしれないような人たちがいなくなるまでといった、そういう人たちを排除するために、政令で定める法人しかできないとしているわけですね。では、いつの時代になったらそういう不正なことをするやからが排除される国ができるのか。そんなことも別にわからないし、多分そういう時代に行くことはほとんどないだろう。こう考えたとき、どうも、この当分の間、政令で定める法人しか受託者になれないという仕組みそのものが、何か非常に意図的なものを私は感じる。

 むしろ、やるべきことは何なのか。やはり基本法でありますから、基本法にのっとってスタートできる体制をしっかりとつくった、そういう状況の中でこの制度をスタートさせるべきだ。それが今、公益信託について、公益法人の仕組みと整合性のとれる仕組みとしてスタートさせるということで、今回の政府の法案の中でもそういう取り扱いになっている。

 そして、公益信託というのは、ある意味では目的信託の中のまた一部という位置づけになっているわけでありますから、当然のことながら、公益信託をどうするのかということについては、目的信託をどういうふうにしていくのかということと密接にかかわっている、その目的信託の枠の中でまた考えていく、そういう問題であるはずだ。

 そういうものが整合的にでき上がっていない状況の中で、中途半端な形でスタートさせ、そしてまたその中で、当分の間は政令で定める法人しかできないんだ、受託者になれないんだというような形をとるのは、やはり制度のつくり方として非常におかしいというふうに私は思うんですね。

 大臣、どうですか。そういう指摘について、何か間違っていますか。私は間違っていないと思っているんですけれども、大臣、もう一度その辺ちょっと、自分の言葉で答えていただければと思います。

長勢国務大臣 筋の悪い話であるとは思っておりません、先生の御意見は。ただ、それをきちんとやればいいというだけのものでもないだろう。

 ニーズが高まっておりますし、早くやれという声が非常に強い、しかし、若干濫用されるんじゃないかという心配もあるという中で、両方を現実的にもたらす法改正を早くやろうということが今回の法案の趣旨でございますので、皆さん、この施行をした後、その心配がなくなれば、当然、政令で書く、縛るということもなくなっていくでしょうし、その間に公益信託の議論も進んでいくだろうと思いますので、先生の言われるのが筋だから、それが決まるまでやらない方がいいんだというだけの議論でもないんじゃないでしょうか。

平岡委員 逆の視点から今大臣が答えられたので、では私も逆の視点から問いたいと思います。

 もともと政府がつくろうとしたときには、こんな、当分の間、政令で定める法人以外の者を受託者とすることはできないというようなものは入っていなかったですよね。どこかの過程の中でこれが入ってきちゃったわけですね。それについては、大臣としてはどうお考えになりますか。政府としては、自信を持って出したものが何か変わってしまった、そこはもう政府としてのやはり落ち度、ミスがあったということですか。

長勢国務大臣 やはり法律を政府として出す場合にも、いろいろな方々の御意見を聞きながら、また、それを踏まえて検討して提出させていただいておるわけで、いわゆるそういう濫用についての不安があるという意見があることを受けとめるのは、政府として、落ち度というわけでもないのではないでしょうか。それは、今までやろうとしたことの中でもう少し考えるべき点があったということだろうと思います。

平岡委員 いろいろな方々の意見を踏まえてこうなったんだという話でありましたけれども、いろいろな方の中にはいろいろな方がおられると思うんですね。私のところにもやはりいろいろな方が、今回の民主党修正案について、ぜひこういう修正案を実現してほしいと言われる方もいれば、いや、ちょっと待ってほしい、民主党の修正案のような形だとニーズにこたえられないので何とか政府原案にとどめてほしい、両方からお話を伺いました。

 両方からお話を伺いましたけれども、そういういろいろな意見がある中で、私たちも、いろいろな心配がある中で、やはりもうちょっと慎重に、この目的信託についても制度の整合性を考えながら、そして、心配されるいろいろな問題点については、そういう問題点が解消される、少なくとも心配がそれほど大きくない状態で出発できるような形で基本法である信託法を出発させるべきだ、こういうふうに考えて修正案を出しているわけですね。

 そういう意味では、政府としても、もう出してしまったものをまた、先ほどの話ではありませんけれども、はい、わかりました、修正しますという立場でもないでしょうから、これも今、与党との間で修正協議をやっておりますから、しっかりと与党との間で修正協議を行っていきたいというふうに思っています。

 そこで、これは本当に信託関係、大変たくさんの議論があるわけでありまして、まだまだ足りていないところもあるんですけれども、一つの論点が限定責任信託でございますけれども、この点について少し議論をさせていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、大臣に総括的にお聞きしておこうかと思います。

 法制審の中でも、この限定責任信託についてはいろいろな問題点が指摘されています。その問題点、具体的にどこがどうだということを聞こうとは別に思いませんけれども、そうしたさまざまな問題点が指摘されているにもかかわらず今回の法案ではこの制度を導入したというのは、どういう考え方に基づいて導入されたのか、この点について、大臣の御見解を承っておきたいというふうに思います。

長勢国務大臣 この問題についていろいろな議論が、経過があったということは承知をいたしております。

 法制審議会における審議の過程では、信託法の中に、受託者の有限責任性を原則とする新たな信託の類型として限定責任信託を創設すべきであるという見解と、仮にこのような新たな信託の制度を創設するニーズがあるのであれば、別の法律において措置することとすべきであるとする見解とがあったというふうに承知をしております。

 そこで、パブリックコメントの手続において、この二つの見解を甲案、乙案として、両案併記をして提示したところでありまして、その結果、甲案に賛成する意見が大多数を占めたということになりました。

 そこで、以後の法制審議会においては、限定責任信託を創設する方向で議論が進められ、最終的には、債権者保護、濫用防止のための措置を十分に講じることとした上で、全会一致で創設が認められたというふうに理解をしております。

平岡委員 限定責任信託というのは、私が申し上げるまでもなく、信託行為においてそのすべての信託財産責任負担債務について受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の定めをし、そして、登記等をすることによって限定責任信託としての効力を生ずるという形で今回認められるというものであります。

 そこで、ちょっとお聞きしたいのでありますけれども、限定責任信託については、今回新たに導入される自己信託とか目的信託においても可能なものなのかどうか。理由等はまた後で議論しますので、まず、それができるのかどうかについてお答えいただきたいと思います。

寺田政府参考人 いずれも、その対象としてできるということになるわけでございます。

平岡委員 それでは、まず最初に、自己信託について限定責任信託をするということについての疑問点といいますか、どうなのかなというところをちょっと聞きたいと思います。

 自己信託というのは、委託者が自分で受託するということで、委託者と受託者が同じだということですよね。そうだとすると、一人の人が委託者であり受託者であるということの中で、先ほど言ったように、信託財産に属する財産のみでその履行の責任を負うという立場に立つ。

 つまり、自分の固有財産にまで及んで責任を負わないということとするのは、一人の人がやっているのに何でそんなことができるんだろうかというのが、ある意味では非常に常識的な疑問ですよね。何で自己信託のようなケースでも限定責任信託というものが認められるんですか。

寺田政府参考人 二つの面からお答えしたいと思います。

 まず、理念的な面で申し上げますと、たびたび申し上げていることでございますけれども、自己信託といえども、結局のところ、実質的にその財産の処分に目的からする拘束がかかり、受益者が存在するわけであります。したがいまして、これについて、特に責任を信託財産のみに限定するということができないという理由が逆にない、信託の理念からいうとないわけであります。

 ただ、委員が危惧されるのは、むしろ、第三者から見てわかりにくいということになりはしないかということではないかと思います。

 限定責任信託につきましては、限定責任信託である旨の登記を要求するわけであります。また、第三者と取引する場合には、それが限定責任信託のためにする取引であるということを明示しませんと、その効果を第三者に対抗することはできない。

 つまり、それをしませんと、第三者としては固有財産にも係っていけるということになるわけでありますから、仮に委託者と受託者が同一人物であって紛らわしいということが漠然とイメージされるかもしれませんが、実際には、その財産というのは拘束がかかっていて、しかもそれが、今言ったような明示された場合にのみその効果が生ずるわけでありますから、特に不都合はないと私どもは考えております。

平岡委員 それでは、ちょっとまた中に入っていって、例えば工作物責任のような無過失責任について、受託者の固有財産に対する負担がどうなるのかという点。

 これも通告をしている話ではありますけれども、どうも、無過失責任という位置づけでありますから、ある意味では、信託財産の範囲内でしか責任を負わない、履行の責任を負わないということでは、これは被害者の人たちにとってみれば大変問題があるというような気がするのでございますけれども、その点については、この限定責任信託ではどういう考え方になっていますか。

寺田政府参考人 限定責任信託の特例が規定されているわけでございますが、限定責任信託の場合に、責任が限定されて固有財産には係っていかない、信託財産にのみ係っていける債権というのは、一定の限定がございます。

 法案の二百十七条によりますと、限定責任信託においては、信託財産責任負担債務に係る債権に基づいて固有財産に対して強制執行等をできない、こう書いてございますが、括弧書きで、二十一条一項八号に掲げる権利に係る債務を除くと書いてございます。これは、内容的に言いますと、不法行為を除くというわけでございます。

 つまり、不法行為は、故意、過失によりまして相手方に損害を与えるわけでございますが、これについては責任限定ができないということを意味しているわけでありまして、これは、本来固有財産で責任を負ってもらうべきところ、信託財産にも係っていける場合がもちろんあって、その場合は求償の問題を生ずるわけでございますけれども、最終的には、固有財産でこそむしろ負担してほしい、そういう性格のものだと理解しているからこうなっているわけでございます。

 ただ、今委員がおっしゃいました工作物につきましてでございますけれども、むしろ、工作物の責任の性質といたしまして、所有者に係る第二次的な無過失責任というのは物自体から生ずる責任であるということから、この不法行為による扱いはせず、責任の限定がされることになるわけでございますけれども、これに対しまして、占有者としての工作物責任というのは、この不法行為責任と同様に責任の限定が当然なされるものではないという解釈になろうと考えております。

平岡委員 確かに、受託者というのが占有者という位置づけでもあるということで、その場合について言えば、局長が指摘されたように、信託法二百十七条の規定、そしてその第二十一条第一項八号の規定、これをあわせて考えていけば、そういうことだろうというふうに私も思うのであります。

 しかし、占有者の場合は、民法第七百十七条でいけば、土地の工作物の設置または保存に瑕疵あるによりて他人に損害を生じたときは、占有者がその損害賠償の責めに任ずる、こういうことで、確かに、故意、過失みたいなものが、何かの責任を問われるべきような事情があるというようなことでこうなっているわけですけれども、しかし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、今度はその損害は所有者が負うんだ、こういうふうになるわけですね。

 そうすると、責任を負う場面というのがちょっと違ってくる。だから、占有者という立場である場合には、さっき言ったような設置とか保存に瑕疵あるという場合には負うけれども、それがないときには、今度は所有者が負うんだ。そうなったときは、今度は所有者であるところの、これは受託者が所有者になっているわけですけれども、この立場として、今度は固有財産で責任を負わないということになってしまうと、先ほど言ったように占有者が免責されるようなときよりも、所有者の方が信託財産でしか責任を負わないということになってしまったら、これは何か範囲が限定されてしまう。

 つまり、特に自己信託なんかのケースのような場合を考えたときは、委託者、受託者がイコールで、それは一人の人が物を持っていて、所有者であると。だけれども、そのときに、占有者としてはこれだけの話で、さっき言ったような状況のときには責任を負うけれども、そうじゃないときには今度は所有者にかかってくる。所有者という立場になったときは信託財産でしか責任を負わないということになったときには、これは何か、被害を受けた人にとってみれば非常に酷な話であるというふうに私は思うんですね。

 その点についてはどう思われますか。

寺田政府参考人 責任の構造ついては、今おっしゃったとおりであります。

 ただ、もともと第二次的な所有者に対する責任というのは、それがいわば物自体から生ずる責任だというようにもともとの責任の性質として考えられるわけでございますので、それは、物が信託をされて、その物として存在している限りにおいて、その物の範囲で責任を負うというのは全くおかしいことではないと私どもは考えているところでございます。

平岡委員 だから、さっき言った委託者と受託者が同じ自己信託の場合、物自体といったって、例えばある塀が壊れて被害を受けたという場面のときに、その塀を持っている、その塀の財産の範囲内でしか所有者は責任を負わないということじゃないですよね。所有者は自分の全財産をもってしてその損害に対する責任を負うということですよね。

 だから、受託財産だけでしか負わないというのは、自己信託なんかのケースを考えてもらったら非常に奇妙なケースじゃないでしょうか。やはり固有財産、その人が財産を持っているのなら、受託財産で何か被害が生じたときは、やはりそれは固有財産をもってしてでもちゃんとした損害賠償をしていかなきゃいけない、そういうことじゃないかと思うんですけれども、どうもそこら辺がよくわからないんですけれども。

 物自体で起こったものだから、その物の範囲で損害の賠償に応ずればそれで済むんだというのは、ちょっと私には理解しかねますね。

寺田政府参考人 もう少し別の言い方をいたしますと、自己信託といえども、それは、先ほど申しましたように、第三者に譲渡されて、その第三者が持っている状態と同じ、この場合は、その第三者というのは受益者に当たるわけでありますけれども、そうである以上、その責任を本来の受託者が固有財産で負うべき理由はないのではないか、こういうように考えます。

平岡委員 だから、さっき言ったように、委託者と受託者が一緒になっていて、さっきは所有者は受益者と言われていましたけれども、例えば、今言った、塀を受託したのではほとんど収益性がないから、何か一つの施設を、ビルを信託行為によってやるという形にしたときに、そのビル全体が委託者から受託者へという形の自己信託が行われたときのビルの所有者というのは、あくまでもこれは受託者ですよね、所有者は。受益者ではないわけですよね。そんなことを考えたときに、やはりちょっと今の説明は私は納得がいかない。納得がいかないといっても、何か、では。

寺田政府参考人 ますますややこしい説明をすることになるかもしれませんが、もともと、責任というものをどういう者に負わせるかということについて、いろいろな考え方がもちろんあるわけでございますけれども、通常は、その人の故意、過失によって責任を負うわけでありますけれども、この工作物責任のような不法行為の特例においては、危険を生じせしめたところに責任を負わす、つまり、これは管理型の責任と申しますか。

 これに対しまして、利益のあるところ、結局その人が損害を負担しなきゃならないんだという考え方もありまして、この二重構造、つまり、占有者、所有者の二重構造というのは、前者は、その人がまさに管理する、そういう立場にあるからこそ負う責任、後者の所有というのは、まさにその人に利益が帰しているところからくる責任でありますから、信託の場合に、信託財産の範囲でのみその所有者責任が帰してまいるというのは、今のような考え方をいたしますと、少しも不思議はないところでございます。

平岡委員 だから、信託行為が仮になかったとしたならば、例えばビルを信託財産だ、こう考えて、仮に信託行為がなければ、そのビルの事故によって生じた損害というのは、所有者は、そのビルという財産の範囲内で負えばいいというのじゃなくて、やはり自分が持っているすべての財産をもってしてその損害はちゃんと賠償していくという立場に立つわけですよね。

 しかし、それが、委託者が受託者、自分に自己信託をしたときに、今度は、財産としてはたくさん固有財産もあるにもかかわらず、信託財産の範囲内でしかその責任を負わないとなってしまうというのは、やはりおかしいんじゃないか。これは常識的にはおかしいと思いますよ。

寺田政府参考人 常識的におかしくないということを申し上げているわけであります。

 つまり、それは、結局のところ、自己信託というものの理解からくる委員と私の説明の差だというようにも思うわけでございますけれども、仮に、平岡委員のおっしゃったビルが第三者に譲渡されたとします。それで、その第三者に譲渡されたものを、なおもともとの所有者が委託されて管理している、こういう状況だといたします。そういたしますと、第一次的責任というのは、占有者であります、管理しているもともとの者が負いますが、第二次的な責任というのは第三者が負うわけであります。第三者は、そのビルしかなければ、そのビルのみをもって、その不法行為債権の引き当て財産とするわけであります。

 こういうことを考えますと、それが、結局のところ、自己信託においては、自分が所有者のままだというようにお考えになるところで、むしろこの責任の性質についての説明が私と平岡委員との間で差ができるわけでありまして、これが、受益者にもう既に譲渡された財産だと考えますと、少しもおかしくないことになるわけでありまして、解釈論的には、私は、信託法の世界では、後者のように不法行為責任をとらえるべきであるということを申し上げているわけでございます。

平岡委員 受託者が第三者であったときに、その第三者が負うべき責任というものについていうと、その第三者は、自分の信託財産の範囲内でしか工作物責任を負わないということだとすると、逆に、今度はまた、その第三者は自分の固有財産も信託財産も持っているという状態、そして逆に、その第三者というのは固有財産と信託財産と同じものを全部自分の固有財産として持っている状態、そのときに工作物責任が生じるような事態が発生した、そのときは、工作物の事故によって被害を受けた別の人は、信託行為があるかないかによって、被害の救済、損害賠償の受け方が違ってくるということになるんですね、これは。だから、自己信託でない場合でも、受託を受けた第三者については同じようなことが起こってしまう。

 これが本当にそれでいいのかという問題が、これは自己信託だけじゃなくて第三者が受託する場合でも発生し得るんじゃないかなという気が、逆に民事局長の答弁を聞いていて思いました。

 ちょっと時間が来ましたので、この問題については引き続き審議終結をしないで続けたいというふうには思っておりますけれども、いずれにしても、この問題は別に法律をどうこうするという問題につながるかどうかわかりませんけれども、しっかりと整理をしたところで、また議論させていただきたいというふうに思います。

 以上で終わります。

七条委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 きょう、本題に入る前に、一、二問だけ。

 今、小泉政権五年五カ月で、タウンミーティングというのは大変大きな舞台だったわけですね。その舞台の中で、教育にかかわるミーティングで、複数の、最初八戸でしたが、きのうさらにあったということで、官房長官は全タウンミーティングを見直す、調べる、こうおっしゃっているわけなんです。

 ここで、司法制度改革という大事なタウンミーティングもやっているわけですね。この司法制度改革のタウンミーティングも当然調査の対象になるだろうということなんですが、官房長に来ていただいていますけれども、これは、どっちが重い、軽いはないんですけれども、国民が司法に参加するという司法制度改革、逆に言えば、一般の人からどんどん意見が出るようなテーマでは余りないわけですけれども、こういう中で、現在、内閣府あるいは文部科学省との間であったような発言依頼、ひな形を示す、あるいはそういう人に当てるというようなことがあったのかどうか、現状、わかっているところで答えてください。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 司法制度改革タウンミーティングにつきましては、平成十六年十二月以降平成十八年五月までの間に、東京、高松、宇都宮、金沢、那覇、宮崎、広島において計七回開催されております。

 お尋ねの司法制度改革タウンミーティングにつきましては、法務省も当然のことながらかかわって準備等に努めてまいりました。お尋ねの発言依頼等の有無等につきましては、現在、内閣府において御指摘のタウンミーティングも含め調査に取り組むものと伺っておりますので、法務省におきましても、この調査に協力してまいりたいと考えているところでございます。

保坂(展)委員 きのうぐらいからわかったのは、タウンミーティング室というのはかなり大勢の方が各省庁から来ていて、この担当に当たったのは、文科省からタウンミーティング室に来られた方が当たっておったということがわかっているわけですが、法務省は内閣府の中のタウンミーティング担当室にどのぐらい出向を出していらっしゃるんでしょうか。現在、何人いるのか。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの内閣府大臣官房タウンミーティング担当室に法務省から出向している職員は、発足当時から現在までおりません。

保坂(展)委員 では、その辺の出向者はいないということなんですが、当然、これは内閣府の調査にゆだねるということであっていいはずがないわけですね。これを全部政府で調べるのは年内いっぱいかかると言われていますから、そういうことがあったのかどうか。例えば、法務省の職員が司法制度改革タウンミーティングに行っていませんか。行っているでしょう。そういうことを、内部で、あるならあると早く認めて、しっかり明らかにしていただきたい。どういうふうに調査するのか、答えてください。

池上政府参考人 御指摘の点につきましては、今後内閣府において調査が行われますので、それに協力する過程におきまして、法務省におきましても、今後、事実関係の把握に努めてまいりたいと考えております。

保坂(展)委員 司法制度改革については、ちゃんと事務局があって大車輪で仕事をされていたわけじゃないですか。ですから、そこに協力を得ることがなければタウンミーティングなんかできないわけですよ。そうでしょう。だから、もう解散されていると思いますけれども、そういう位置にいた職員の方にどうだったのかねということを聞いてみるということで、しっかりまず法務省内でも調べていただきたいと思いますが、どうですか。これは大臣ですか、あるいは官房長。

池上政府参考人 内閣府の調査に協力する中で、御指摘の点等についても、今後、事実関係の把握に努めてまいりたいと考えております。

保坂(展)委員 大臣に聞きます。

 法務省というのは普通の役所じゃないんですね。文部科学省も、うそをつくなということで、今この問題を議論していますけれども、やはりそういうことはあってはならない、一番毅然としなければいけないところなんですね。ですから、内閣府がおやりになる調査を待って、まだ来ないな、まだかなと思いながらいるんじゃなくて、ちゃんと法務省みずから調べてくださいよ。ないのならないとはっきり我々に示してください。これは大臣にしっかり指導していただきたい。責任があると思います。

長勢国務大臣 タウンミーティングに法務省がどういうふうに協力というか担当しておったのか具体的にはわかりませんが、私が個人的に知っている限りでは、内閣府において担当というか主催県等と協力されておったのではないかと思います。おっしゃるようなことがあるのかないのかも含めて、私なりに聞いてみます。

保坂(展)委員 ちょっと語尾がよくわからなかったんですが、もう一度確認します。

長勢国務大臣 タウンミーティングの実施についての法務省と内閣府との関係等についても私はつまびらかにしておりませんので、そのことも含めて、私が聞いてみます。

保坂(展)委員 聞いてみますということなので、ぜひ聞いていただきたい。

 この司法制度改革のタウンミーティングは、司法制度改革を推進する事務局の協力なしには開けない内容ですから、法務省の方がだれもいない、協力しない、これではできませんから、そこはしっかり当時の方にも聞いていただきたいんです。いかがですか。

長勢国務大臣 推進室が協力をしなければできないタウンミーティングであったかどうかは私はわかりませんので、そういうことも含めて聞いてみますと申し上げています。

保坂(展)委員 では、本題に入ります。

 民主党の修正案が出ております。読みまして、なるほど、いろいろ問題点を整理していただいたなというふうに思います。

 そこで、提案者の方に伺います。

 既に議論もあったようですから簡潔に答えていただいて構わないんですが、まず第一に、二十九条第二項ただし書きを削って、受託者の注意義務を政府案より厳格化しております。この点と、さらに、利益相反行為の制限、これも政府案では緩和されているところを厳格化しているという点について、どこに着目をしてこういうふうな修正を施されたのでしょうか。

石関委員 それでは、お尋ねの部分の二十九条ただし書きについてお答え申し上げます。

 今までの質疑の中でもこの議論が出てきたところでありますが、政府原案においては、原則として受託者が善良な管理者の注意義務をもって信託事務を処理すべき旨規定しているところではありますが、私的自治の尊重という名目で、信託行為の定めにより注意義務を軽減することを認めているということであります。これは、私どもの考えでは、受益者の保護の観点から問題と言わざるを得ないということで、本修正案においては、「信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとする。」旨のただし書きを削除することとして、原則どおり、受託者は善良な管理者の注意義務をもって信託事務を処理すべきとすることを明記したものでございます。

横山委員 保坂委員お尋ねの件につきましての私どもの考えは、まず、政府原案には、受託者が行う利益相反行為が受益者の利益を害することが明らかであっても、信託行為に利益相反行為をすることを許容する旨の定めがあれば、受託者は利益相反行為を行うことができると解釈し得る点で、これだと受益者が不当な不利益を受けるおそれがあるというものです。

 また、いま一つ、幾ら不利益をこうむる当人である受益者が承認したからといっても、客観的に見る限り受託者の行為が利益相反的である以上は、そのような受託者の行為を有効なものとして許容してしまうということは、信託の基本である信認関係という性格にもとるものと考えられる点です。

 民主党案についてはよろしいですか。(保坂(展)委員「はい」と呼ぶ)

保坂(展)委員 大変的確な視点で修正を提案していただいたなと思うわけなんですが、まず一点目に挙げた受託者の注意義務の厳格化について、高齢者や障害者の扶養などでこれからこの信託制度が活用されるだろうというときに、やはり万が一にも間違ったことが起きないように、ここはしっかり厳格化するということに私も賛成なんですが、しかし、政府があえてこれは緩和だというふうに考える理由はなぜなのか、そして、民主党の提案のようにやった場合に何か不都合があるのか、答えていただきたいと思います。

寺田政府参考人 これは、再三これまでもこの規定の任意規定としての性格については御説明を申し上げたわけでありますが、一番申し上げたいのは、基本的に、信託というのは民事信託から商事信託まで、今後さまざまなものが、これまでも理論的にはさまざまなものがあり得たわけでありますけれども、今後はむしろ現実的にさまざまなものが出てくるだろうと予想した場合に、これを一定のレベルに限って、それより下のレベルの義務を課すということはおよそあり得ない、その硬直さというものがそういうものの阻害要因になりはしないかということを非常に懸念しているわけであります。

 もう少し具体的に申し上げますと、例えば、親が障害を持つような子に信託をどなたかに預ける場合に、それが非常に裕福な方で、信託銀行で手厚い管理をして、手厚い運用をしてほしいということであれば、おっしゃるところで賄えるわけでありますけれども、しかし、必ずしもそういう方ばかりではありません。むしろ、元気なおじさんに頼んで運用してもらうというようなことが民事信託では考えられるわけであります。そういった場合に、結局、常に善管注意義務のレベル、高いレベルというのを要求するのが本当にいいだろうかということであります。

 もっと申し上げますと、ビジネスの世界でこの受益者の保護を考えた場合にも、常に一定のレベルで管理運用すべきだということにいたしますと、結局のところ、その受益権というのは高くつくということではね返ってくるわけであります。これは、民事の世界、私法の世界では常にあることでございます。一定の規制をすれば、そのコストというのは、ある一定のものには高くはね返ってくるということになるわけであります。

 しかし、それが社会的にどうしても相当な場面というのはありますので、そこで、消費者保護でありますとか、その他の特定の場面にはそういうことがなされるわけでありましょうけれども、しかし、一般的にそういうことをおよそ許さないということは私法の世界ではやや行き過ぎではないかな、一言で申し上げますと、そういうことになろうかと思います。

保坂(展)委員 では、先ほどの平岡委員とのやりとりを聞いていても、前回、信託とは何かということを聞かせていただきましたけれども、自分とは、自己とは何か、私とは何かみたいな話も、財産をめぐって、信託という制度がもう一度非常に大きく、この改正によって広く使われるようになることを政府は意図していると思いますけれども、この信託の場合の受託者の責務といいますか、例えば一般的な委任というものと信託における受託者というのは一体どこが違うのか、どういう責務を負っているのかという点はいかがでしょうか。

寺田政府参考人 これは、最終的に申し上げますと、いろいろな形態がありますので、現実の世界では似たような場面というのは当然出てまいります。しかし、信託は基本的に、最初に申し上げましたように、信認をして管理運用してもらう、そこで完全に所有権というものの形は移転するということでございますので、それなりの強行性はどうしても必要にはなるだろう、私どもはそうは思っております。

 例えば、これについて情報をどういうように受益者に提供していくかということは、普通の委託の場合のこれについての契約相手方に対する義務とは違いまして、ある程度型にはまったものとならざるを得ないだろうと思われます。

 それから、例えば、相手方の違法行為があった場合に差しとめをすることができるかどうかというようなことで、保護するかどうかということも、これも一定程度は型にはめざるを得ないんだろうというふうに思います。

 また、受益者が何人もいる場合に、その人をどういうように扱うか。例えば、会社でありますと、株主の間は株主平等の原則というのがあるわけでありますけれども、信託の場合にも似たように受益者の間で公平に扱わなきゃいけないということは、これも普通の委任の相手方に対する義務とは違いまして、強行的に公平にしなきゃいけないということを決めても特におかしくはないだろうというように、といいますか、むしろそれが相当だろうと考えるわけであります。

 そういう一定の型にはまったというところがやはり違うのではないかなというふうに考えておるところであります。

保坂(展)委員 ちょっと先ほど言い間違えてしまったかもしれないんですが、受託者は、委託者の信頼に基づいて職務を執行して、委託者の利益ではなくて、受益者の利益を追求していく。委任の場合には、受任者は委任者の利益を図っていく。信託では、受託者は受益者をいわば守っていく、その利益を信託財産の管理、処分などの裁量権を持ってやっていくんだ、こういうことかと思うんですが、やはり自己信託ということの場合、では、どうですかね、民事信託というのがありますね、金融庁が必ずしもかまない部分もあるということも審議で明らかになりました。

 一般的に、信託、あるいは自己信託、これからどんどん使われていくとなれば、信託におけるそれぞれの役割について、とりわけ受託者の責任について、国民に多くわかってもらう必要があるんじゃないか。その辺はどのように、必ずしもわかりやすい制度ではない、極めてわかりにくい自己信託も含めて、どうやって政府は広報しよう、お知らせしよう、わかっていただこうとしているんでしょうか。

寺田政府参考人 これは、施行まで一年半の時間をいただいているわけでございます。それからまた、自己信託についてはさらに一年、より長い時間をいただいているわけでございますので、私どもはこの間もこの周知徹底を図るための期間ととらえて、十分な御理解を得たいと思います。

 信託を国民に御説明するというのは、二つの側面がもちろんあろうと思います。

 一つは、こういうことをして委託者なり受託者になれるという形での御説明です。これは、大いにこれからいろいろな形で利用していただかなきゃなりませんので、司法支援センター等情報機関もございますし、これに関連して、さまざまな専門の職種の方もおいでになるわけであります。そういった方の御協力も得て、十分な対策をとろうというように考えております。

 これとは別に、また究極的には、受益者という形で投資をされるという方がたくさん出ておいでになると思います。自己信託も含めて、結局、これについての投資者保護というような側面が出てまいると思いますので、金融庁とも十分に御相談をし、あるいは内閣府とも御相談をして、この新しい型のものについての周知徹底を図る策を検討してまいりたい、このように考えております。

保坂(展)委員 私は、心配のある点は、ただ延長ではなくて、修正案で示していただいたように、厳格化するところはしっかり締めておくということは必要だというふうに感じました。

 終わります。

七条委員長 これにて両案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十九分散会


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