衆議院

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第9号 平成19年3月28日(水曜日)

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平成十九年三月二十八日(水曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 七条  明君

   理事 倉田 雅年君 理事 武田 良太君

   理事 棚橋 泰文君 理事 早川 忠孝君

   理事 高山 智司君 理事 平岡 秀夫君

   理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    井上 信治君

      石破  茂君    稲田 朋美君

      今村 雅弘君    近江屋信広君

      奥野 信亮君    後藤田正純君

      清水鴻一郎君    柴山 昌彦君

      杉浦 正健君    丹羽 秀樹君

      西本 勝子君    原田 憲治君

      三ッ林隆志君    宮下 一郎君

      武藤 容治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    山口 俊一君

      石関 貴史君    大串 博志君

      小宮山泰子君    中井  洽君

      松木 謙公君    横山 北斗君

      神崎 武法君    保坂 展人君

      滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   法務副大臣        水野 賢一君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   最高裁判所事務総局家庭局長            二本松利忠君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 荒木 二郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小野 正博君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    梶木  壽君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    藤田 昇三君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 古谷 一之君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           西阪  昇君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           村木 厚子君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  笹川  堯君     石破  茂君

  柴山 昌彦君     西本 勝子君

  杉浦 正健君     宮下 一郎君

  森山 眞弓君     丹羽 秀樹君

  山口 俊一君     井上 信治君

  河村たかし君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     山口 俊一君

  石破  茂君     原田 憲治君

  丹羽 秀樹君     森山 眞弓君

  西本 勝子君     柴山 昌彦君

  宮下 一郎君     杉浦 正健君

  松木 謙公君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 憲治君     笹川  堯君

  小宮山泰子君     河村たかし君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 少年法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第四四号)


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     ――――◇―――――

七条委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、内閣提出、少年法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官荒木二郎君、警察庁生活安全局長片桐裕君、警察庁交通局長矢代隆義君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長小津博司君、法務省矯正局長梶木壽君、法務省保護局長藤田昇三君、文部科学省大臣官房審議官西阪昇君、厚生労働省大臣官房審議官村木厚子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局二本松家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。

大口委員 少年法等の改正の審議がいよいよ始まるわけでございますけれども、今回の少年法等改正は、触法少年及び虞犯少年に係る警察による調査手続、十四歳未満の少年の少年院送致、保護観察中の少年が遵守事項を守らなかった場合の措置等に関する規定を少年法等に整備すること等をその内容としているわけでございますが、政府は、その提案理由として、少年人口に占める刑法犯の検挙人員の割合が増加し、強盗等の凶悪犯の検挙人員が高水準で推移していること、いわゆる触法少年による凶悪重大な事件が発生していることなどを示し、少年非行は深刻な状況にあり、法整備が必要である、こういうふうに説明をしているわけでございます。

 そこで、法務大臣に、少年非行の現状及びその背景について、統計的な観点も含め、所見をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 おはようございます。

 まず、統計から見ますと、少年刑法犯全体の検挙人員、これは昭和五十八年、三十一万七千人というのがピークでしたが、それからおおむね減少傾向ということが続いておりますけれども、ここ数年は約二十万人という状況で推移いたしております。しかしながら、少年人口千人当たりの検挙人員ということになりますと、平成八年以降は上昇傾向ということになっていまして、平成十七年においても一四・二人という高い数値にあります。この一四・二人というのは昭和五十六年ごろに次ぐ、昭和五十六年が戦後最高値でしたけれども、それに次ぐ高水準という状況でございます。

 罪種別では、殺人、強盗等の凶悪犯の検挙人員が平成九年以降、高水準で推移してきた上に、いわゆる触法少年による凶悪重大な事件も発生いたしております。

 次に、最近の少年非行の特徴としては、ささいなきっかけで凶悪、冷酷ともいえる非行に走り、動機が不可解で、少年自身、何でそのような事件を起こしたのか十分に説明できない場合があるということが指摘をされておるわけでありまして、その背景には、他人の痛みに対する理解力、想像力に欠け、また、自分の感情をうまくコントロールできないといった非行少年の感情、情緒面の問題があるというふうに考えられております。このように、少年非行の現状は、数量的にもなお高水準にあるだけでなくて、質的にも大変深刻な状況にあるものと理解をいたしております。

 この原因、背景についてはいろいろな見方があり、家庭や学校、地域社会のそれぞれが抱えている問題も複雑に絡み合っておると思いますし、これだということをきちんと言うことはなかなか難しいという非常に複雑な状況であると思います。

 いずれにいたしましても、少年非行の原因や背景、事情にはさまざまなものがありますので、これに適切に対処していく必要がある。そのためには、前提としての非行事実の一層の解明や、少年の状況に応じた適切な保護処分の選択を可能にするということが必要になっておるというふうに認識をいたしております。

大口委員 国立成育医療センターこころの診療部奥山眞紀子部長さんからお話を聞きました。

 低年齢、思春期前の子供の被暗示性、被誘導性の問題について、欧米では研究がされているが、我が国では全く研究されていない、こういうふうに言われております。また、子供の生き残り本能の問題がありまして、特に不適切な教育を受けた子供が、今この場を生き残る、切り抜けるためにうそをつく傾向がある、こういうことも言われております。子供の発言の真実性は科学的に解明されつつある幾つかの技法を用いて面接することによってのみ得られる、こんなお話もされていました。事実だけでも子供から真実を聞き取ることは熟練技術が必要であり、事実と事実をつなぐ動機部分あるいは因果関係は後からではほとんど真実を引き出すことはできないと考えている、こうもお話しされていました。子供の話は一番初めの内容が真実に近い。繰り返し、こうじゃないかと言われたら、子供自身、迎合したり真実と思い込んだりする傾向がある。誘導、暗示にかかりやすい。こんなことをしたのはなぜかと聞いても、何も答えられない、本人も理由はわからない。こうだろうと決めつけられたらそうなってしまう。任意性の問題もある。低年齢の子供の被暗示性、被誘導性について、専門家にこういうお話をお伺いしたわけでございます。

 少年は、心身、情緒の発達過程にあって、被暗示性、被誘導性が高いなどの特性を有することから、その調査においては、心身の発達の程度に即した方法や情操の保護等について特に配慮が必要であります。このことは、法制審議会少年法部会においても共通の認識として確認されています。

 今回の改正で、触法少年と虞犯少年に係る警察官の調査権限を少年法に明文で規定することとのバランスから、同部会では、このような少年の特性等にかんがみ、十四歳未満の少年に対する調査について法律に配慮規定を置くべきであるという意見が示されているわけであります。

 今回の改正で配慮規定を置かなかった理由について、また、私は配慮規定を置くべきだ、こう考えておりますが、法務大臣の所見をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 少年に関する委員の御指摘、まことにそのとおりかなと思いますし、そういうことを踏まえて、法制審におきましても、今御指摘の配慮規定を置くべきではないかという意見もあったことはそのとおりでございます。

 しかしながら、少年法は、既に第一条において、この法律自体の目的として、少年の健全な育成ということを掲げておるわけであります。さらに、触法少年及び虞犯少年の事件の調査は刑事責任の追及の側面を有しておるわけではありませんで、専ら当該少年の健全な育成のための措置に資することを目的とすることにかんがみ、第六条の二第二項において、今回、その旨を重ねて明示することといたしております。

 したがって、調査方法の選択や少年等との対応に際し、この目的に沿うべく、例えば、少年の情操を害したり心情を傷つけないように配慮すること、少年の心理や特性に関する理解を持って当たることなど、調査の性質に応じた配慮が求められることはこれら規定により十分明らかにされておる、またそのとおりできるというふうに考えております。

 また、配慮が必要という点では、触法、虞犯少年と犯罪少年とで区別されるものではないところでありますし、また、少年への配慮は、警察だけでなく、手続に関与するすべての者に求められるなどの問題もございます。

 法制審議会でも、いろいろ議論がありまして、今申し上げたような意見が多数を占めた結果、結論としては、いわゆる配慮規定を置くことはしないということになったというふうに承知をいたしております。

大口委員 私は、そうはいうものの、今言った特性等から配慮規定を置くべきである、こういうふうに考えておりますので、大臣、よろしく御検討いただきたいと思います。

 次に、また虞犯少年とは、少年法に規定されている一定の事由があり、その性格や環境に照らし、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年のことをいいます。今回の改正で、警察の調査対象となるのは虞犯少年である疑いのある者ということでありますが、解釈しようとすればどうにでも拡大解釈でき、警察官がその気になれば、すべての子供が対象となるとの指摘もあるわけであります。

 罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれとは、単なる推測ではなく高度の危険性が必要である、こういうふうに解釈されているわけでありますが、さらに、この対象に、明文で、客観的、合理的な検討を加え、例えば、虞犯少年と認めるに足る相当の理由がある者など、限定を付することを考えたいわけであります。この点、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 虞犯少年という定義でございますけれども、少年法第三条第一項第三号イないしニに規定されておりますように、例えば、家出の性癖とか、暴力団関係者との不良交遊や、性風俗店等いかがわしい場所への出入りといった、これは虞犯事由というものでございますが、それらの一つに該当し、かつ、その性格または環境から見て、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれ、いわゆる虞犯性、つまり虞犯事由とその虞犯性、これがある者を虞犯少年というわけでございますが、虞犯少年である疑いのある者というのは、合理的根拠に基づいて、虞犯事由及び虞犯性の双方が存在すると疑われる者をいうわけであります。

 したがって、例えば、深夜徘回しておったとかたばこを吸ったというだけでは直ちにこれに当たるわけではなくて、かつ、虞犯性、その環境とかいろいろな問題をよく見た上で、虞犯性があると思われる者だけが調査の対象となるわけであります。

 こういういわゆる虞犯の疑いのある者ということになるわけですが、虞犯少年と認められるのは、最終的には家庭裁判所の審判の結果でありますので、調査の開始時点では、これから虞犯少年であるかどうかの認定のために調査を行うのでありますから、虞犯少年であることが明白であるということをこの時点で要求することは相当ではないのではないか。そこで、本法案では、虞犯少年である疑いのある者を発見した場合において、必要があるときはというふうに規定をしておるところであります。

大口委員 犯罪少年や虞犯少年は、家庭裁判所の審判によって少年院送致されることが、現行法上は被収容者は十四歳以上の者とされているわけですね。今回の改正によって、この年齢制限が削除され、家庭裁判所が特に必要と認める場合には、十四歳に満たない少年についても少年院送致の保護処分をすることができる、こういうふうにしているわけです。

 家裁において、十四歳未満の少年については、原則として、少年の育て直しに有効な、開放的、家庭的な環境の福祉施設である児童自立支援施設がよいと私は考えておるわけですが、特に必要と認められる場合に限り、例外的に少年院送致を選択できることとしたのは、私としては、矯正教育の選択肢をふやしたものととらえております。

 しかし、年齢の下限をある程度決めておくべきではないか、十四歳未満の下限は何歳まで想定しているのか、ある程度ターゲットを絞った方が、受け入れる少年院の対応も明確になり、少年にとっても適切な処遇が受けられるので、現実的に、おおむね下限年齢を決めるべきだ、こういうふうに考えますが、法務大臣の所見をお伺いします。

長勢国務大臣 今回、十四歳未満の少年についても少年院送致の保護処分を選択できることとするのは、このような者についても、非行の内容及び背景、少年の性格、心身発達の程度、行状及び環境等を考慮し、個々の少年が抱える問題に即し、その健全な育成を図るために最も適切な処遇を選択できるようにする仕組みとするためのものでございます。

 このような観点から、年齢によって処遇を一律に区別するのは適当ではないのではないかというふうに考えられますので、先生の御意見もございますけれども、本法律案では年齢の下限は設けないということにいたしておるところでございます。

大口委員 大臣、参議院ということですので、どうぞ。

 私は、例えば、中学校に限る、小学校は対象にしないとか、おおむね十三歳とか十二歳だとかいう下限を設けるべきである、こういうふうに考えて、提案をしたいと思っております。

 次に、少年法改正の第二十二条の三の第二項において、一定の重大事件について、観護措置がとられている場合に、家庭裁判所は少年に国選付添人を付することができるようになったわけですね。これまでは検察官関与事件に限定されていたのが、これは廃止、そういう形になったわけであります。これは、高く評価されると思います。

 同条の三の第五項において、少年が終局決定前に釈放される場合、すなわち、観護措置の取り消しや試験観察決定がなされる場合、国選付添人の選任の効力が失われる、こういうことでございます。しかし、少年が釈放後も、国選付添人において少年や家庭に対する援助を継続することが少年の更生改善のために有効であり、特に試験観察の場合極めて有効である、そういうことから、選任の効力を失わせるべきでない、こういうふうに私は考えるわけです。

 私も、少年事件で、付添人として試験観察等を体験しておりますけれども、やはり、試験観察中に身元引受人と付添人が連携をとりながら、そしてまた、少年と試験観察でこういう形でやりなさいと絶えず連携をとって指導をしながらやる。ところが、試験観察になった途端に国選の付添人と少年あるいは家族とが断ち切られるということになりますと、私は少年の更生改善に対して非常によくないと考えておりまして、そういう点でも選任の効力を失うべきでない、こう考えますが、法務省の御見解をお伺いします。

小津政府参考人 本法案の内容の御説明ということで申し上げさせていただきます。

 本法案によります国選付添人制度は、観護措置がとられた重大事件を対象とするものでございます。こうした事件につきましては、一般に少年への影響の大きい処分がなされることが予想されますなど、より適切な処遇選択が要請されます上、身柄を拘束されております少年は家族その他周囲の者の直接の援助を受けることが困難な場合がありますことから、国選付添人制度を導入することとしたものでございます。

 これに対しまして、少年が釈放されました場合には、国選付添人を選任する前提となる要件が欠けることとなりました上に、一般には少年への影響の大きい処分がなされる可能性は相当程度減少すると言えようと思いますし、また、少年が家族その他周囲の者の援助を受けることも可能となることからいたしますと、このような場合にまで国選付添人を付す必要性は乏しいのではないかと考えられるわけでございます。

 また、試験観察は家裁調査官が指導監督等を行う中で少年の行動等を観察するというものでございますので、試験観察の場合も、一般的には少年が釈放される他の場合と状況に大きな差はないと考えられるということでございます。

大口委員 刑事局長もよくわかっておられると思いますけれども、実務におきましては、試験観察において付添人と少年、家族の関係というのは非常に大事だということを改めて認識していただきたいと思います。

 次に、今回の改正で、警察官による触法少年の事件の調査を円滑に行うため、警察官による触法少年の事件の一般的な調査権限を少年法に明文で規定し、さらに、警察官は虞犯少年である疑いのある者を発見した場合において、必要があるときは調査をすることができるとして、虞犯少年の事件についても警察官の一般的調査権限を少年法に明定する、こういうことにしたわけであります。

 触法少年の行為は、犯罪ではなく、警察は捜査することはできないというのが現行法の原則であるわけですが、この原則との関係でどうなのか、また、いわゆる虞犯少年についても、調査の名のもとに警察の監視が続き、教育、福祉の後退につながるのではないか、こういう懸念が出されておるわけでありますが、このような懸念に対し、法務省としての所感をお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 少年法等により行われます家庭裁判所による児童相談所送致や保護処分などの福祉的措置も、事案の真相の解明がなされることによって初めて適切に行われるものでございまして、警察の調査はこれに資する目的で行われるものでございます。このことは、この法案の第六条の二第二項に明記させていただいたところでございます。

 本法案が、触法少年の事件につきまして、捜索、押収等の物に対する強制調査を可能にしておりますのも、こうした目的から、事案の真相解明やこれに即した適切な処遇選択をより一層十全なものとするためでございます。また、触法少年及び虞犯少年に係る事件の任意調査手続の整備は、実務上、従来から行われてきた警察の調査についてその法的根拠を明確にする点に意義があるものでございまして、基本的に従来の法制度を変更するものではございません。

 したがいまして、本法案による警察の調査権限の整備が触法少年及び虞犯少年に対する教育的、福祉的な対応を後退させるものではないと私どもとしては考えているところでございます。

大口委員 また、今回の改正で警察官が調査をする必要があるときは、少年、保護者または参考人を呼び出し、質問することができる、こういうように少年法改正法案六条の三の第一項で規定されているわけであります。

 これについても、法制審議会の少年法部会で議論がありまして、触法少年や虞犯少年の事件に関し、警察官の呼び出し、質問について権限を整備するのであれば、その権利を保護するため刑事訴訟法と同様の趣旨を法律で明確に規定すべきである、そういう意見が出されているわけですね。少年の権利保護の規定を置かなかった理由について、法務省の見解をお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 触法少年及び虞犯少年の黙秘権、供述拒否権につきましては、これらの少年については、刑事責任を問われる可能性がない以上はこれら黙秘権、供述拒否権の問題は生じないという考え方の方が有力であると私どもとしては認識しておるわけでございます。

 また、触法少年及び虞犯少年への質問が少年の健全な育成のための措置に資することを目的として行われることにかんがみますと、少年を適切に保護するために少年がみずから話をしやすい環境を整えることも重要であると思われます。

 仮に、供述拒否権の告知を一律に義務づけるといたしますと、少年に正直に話をしなくてもいいというような誤った意識を生じさせるおそれもございまして、調査の目的に沿わないのではないかとも考えられます。そういうことで、供述拒否権の告知を一律に義務づけるのは適当ではないと考えているところでございます。

 もとより、少年に強制的に供述させることを容認するものではございませんので、あくまでも任意の供述を得ることを目的とするものでありまして、調査に当たっても十分にそのことを念頭に置く必要があると考えているところでございます。

大口委員 ここ数年、校内暴力事件、特にいじめに起因する事件の警察による検挙、補導人員が増加傾向にあります。今回の改正で警察官に調査権限が与えられることにより、このような事件にも積極的に警察がかかわっていくようになるのか、警察庁の見解をお伺いしたいと思います。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、現状から申し上げますと、昨年中、校内暴力事案では、一千百の事件で千四百五十五人を警察では検挙いたしております。対前年比で四十事件、七十人の増加、これは平成十五年以降増加の傾向にあるということでございます。

 また、いじめ事案でございますが、昨年中、二百三十三の事件で四百六十人を検挙しておりまして、対前年比六十八事件、百三十四人の増加、これも平成十五年以降増加の傾向にあるということでございます。

 今後とも、警察としましては、学校当局と連携をしながら個別具体のケースに応じて適切に対応してまいりたいと考えております。

 なお、今回、少年法の改正案で少年非行について警察の調査権限が規定されておりますけれども、このことは大変に意義のあることだと考えておりますが、ただ、この改正を契機として警察のこれまでの対応方針を変えるということは考えておりません。

大口委員 次に、社会内処遇としての保護観察は、保護観察に付されている少年に遵守事項を守るように指導監督することを主たる内容とし、保護観察官や保護司が少年と接触を保つことが前提である。しかし、実際には、少年が保護観察官等による再三の指導に反して遵守事項を繰り返し守らず、あるいは保護観察官等が接触することすらできない状態になるなど、保護観察が実質的に機能し得なくなっている事例も少なくないわけであります。

 今回の改正で、遵守事項を守らない少年に対し保護観察所の長が警告を発することができることとして、それにもかかわらず、なお遵守事項を少年が守らなかった場合は、保護観察所の長の申請により家庭裁判所において保護観察以外の保護処分である児童自立支援施設等送致、または少年院送致の決定をすることができる、こうしているわけであります。

 この点について、保護観察で少年院等への送致を背景に遵守事項の遵守を迫るというのは行き過ぎではないか、また同一事件について二重に保護処分をすることになるのではないか、こういう批判があるわけでございますが、法務省の見解をお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 保護観察は、御案内のとおり、教育的な側面を有しておりまして、信頼関係に基礎を置いておるわけでございますが、保護観察における働きかけは遵守事項を遵守するよう指導監督することによって行うこととされておりますけれども、その違反に対応するための手当てを設けることが、直ちに少年に対するおどしや威嚇につながったり、指導する側と指導される側との信頼関係を崩すことにつながるものではないと考えております。

 かえって、本制度によりまして、遵守事項の重要性が制度上も明確になりまして、保護観察を受けている者に対して、そのことの意味を自覚させることにつながるものと考えているわけでございます。

 次に、二重の危険の問題につきましては、憲法上の二重の危険の問題は少年審判には直ちに適用されるものではないと考えておりますけれども、少年審判につきましても、同一の事由について二重の処分をして、少年の地位を不当に不安定なものにすることがないようにすべきであります。

 本法律案における制度は、保護観察決定後に遵守事項を守らなかったという新たな事情をとらえて新たな決定をするというものでございますので、保護観察の保護処分決定の対象となった事由と同一の事由について重ねて保護処分決定をするものではないと認識しております。

大口委員 平成十二年の少年法改正において、施行後五年を経過した後に検討を加え、必要があると認めるときは、検討結果に基づいて法制の整備その他所要の措置を講ずることとされました。

 また、平成十七年十二月に定められた犯罪被害者等基本計画において、この検討において、少年審判の傍聴の可否を含め、犯罪被害者等の意見、要望を踏まえた検討を行い、その結果に従った施策を実施することとされています。さらに、同基本計画では、法務省において、犯罪被害者等に対し、保護処分決定確定後の加害少年に関する情報を適切に提供できるよう検討を行い、二年以内を目途に必要な施策を実施することともされています。

 平成十二年の少年法改正は平成十三年四月に施行され、昨年四月に施行後五年が経過していますが、被害者対策を含め、現在どのような検討を行っているのか、またいつごろを目途に結論を出す予定なのか、法務省にお伺いしたいと思います。

小津政府参考人 平成十二年改正少年法の附則第三条におきまして、同法により設けられた制度の施行後五年間の運用状況を検討し、必要があると認めるときは、その結果に基づき法制の整備等の措置を講ずるということにされておるわけでございます。

 また、御指摘がございましたように、平成十七年十二月に閣議決定されました犯罪被害者等基本計画で、この五年後の検討において、少年審判の傍聴の可否を含め、犯罪被害者等の意見、要望を踏まえた検討を行い、その結果に従った施策を実施することとされております。

 法務省といたしましては、これらを踏まえ、昨年六月九日、五年間の施行状況を国会に報告し、また、少年犯罪被害者を含むさまざまな立場の方々からの御意見をお聞きするために、昨年十月から十二月にかけて意見交換会を開催するなどしているところでございます。

 被害者による少年審判傍聴制度の創設等の論点につきましては、積極、消極双方の立場からさまざまな御意見があるところでございまして、今後も議論がなされるものと考えておりますので、法務省としては、こうした御意見、御議論を十分お聞きしながら検討を進めてまいり、できる限り早期に結論を出したいと考えているところでございます。

大口委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

七条委員長 次に、倉田雅年君。

倉田委員 自由民主党の倉田雅年でございます。

 今度の改正については幾つか問題点があると私は考えておるんですが、その第一点は、少年院へと送致できる年齢を十四歳未満まで下げるという点であります。

 この点につきまして、恐らく長崎事件、平成十五年の七月でございましたけれども、十二歳の少年が四歳の子供を略取誘拐した上で、パーキングビルの上から落として殺害するという衝撃的な事件がありました、センセーショナルな事件でございましたが、そういう事件に対処しなければならないであろうということで、十五年の十二月九日には、青少年育成推進本部が触法少年について、十四歳未満の者でも、実際に犯罪を犯した、しかし十四歳未満ですから刑事責任は問えない、触法少年につきまして、少年院への収容などを考えるべきではないかということ、あるいは、これは犯罪に強い社会の実現のための行動計画と題しておりますが、十五年十二月十八日に犯罪対策閣僚会議、ここでも同じような決定をしている、こういうことから出発していると思いますけれども、経緯としてはそれで正しいでしょうか。法務当局、どうぞ。

小津政府参考人 経緯としては委員御指摘のとおりでございますが、もちろん、その前提といたしまして、全般的な少年非行の現状がまだ非常に深刻な状況にあるという認識があるわけでございます。

倉田委員 少年非行全体が数的にも増大してきている、ピーク時の一九八〇年代に近いものがある、こういうことは私も理解しておりますけれども、問題は、その十四歳未満の者、触法少年については、これは一九八〇年代の真ん中あたりですか、千人当たり八・幾つかという数字になりました。それがその後、千人当たり四・二とか四・四とか、この辺で横ばいになっているのではないか、こういうふうに認識いたしますが、立法事実として、十四歳未満の者について少年院送りというようなことを考える以上、十四歳未満の者の非行動向、こういうものについてはどうか、ここらも確認をしておかなきゃなりません。どうぞ。

小津政府参考人 ただいま委員からも御指摘がございましたが、最近の触法少年の人口比、すなわち少年人口千人当たりの補導人員の比率を見てみますと、これはピーク時の半分以下でございますけれども、ここ十数年で減少する傾向も見られないというところでございます。

 その一方で、平成十五年には、先ほど御指摘のような事件を含むいろいろな凶悪重大な事件、例えば長崎市で十二歳の少年による幼児誘拐殺人事件、平成十六年には佐世保で十一歳の少年による同級生殺人事件が発生するなど、十四歳未満の少年による凶悪重大な事件も発生しておりまして、こういう点を深刻に受けとめているということでございます。

倉田委員 私は、十四歳未満の少年につきましても、一たん刑罰法令に触れる行為をした人間、つまり触法少年、これについては、処遇の多様化という意味で少年院送致もやむを得ないのかな、こう考えますけれども、今回の改正、二十四条のただし書き、十四歳未満の者も少年院に送る、この中には触法少年のほか虞犯少年も含まれることになるのではないでしょうか。政務官、お答えいただけますか。

奥野大臣政務官 そのとおりでございます。

倉田委員 そうだとしますと、どうでしょうか。虞犯少年というのはまだ、将来刑罰法令に触れるやもしれないというだけの少年でして、今まで何も実際に罪に当たるような行為をしたことはないという人間ですよね。大人の場合も、虞犯の成人というのは幾らでもいるわけですけれども、現実に刑罰法令に触れない限りは、これは収容されるというようなことはあり得ないわけですね。

 やはり少年院というのは、矯正施設だ、教育的な要素を持っているとはいいましても、親から、社会から隔絶される、つまり収容されるということですね。刑務所と近いものがもちろんあるわけですね。虞犯少年、つまり、今までやるおそれがあるかもしれないけれども全然刑罰法令に触れたことはない者を収容するということは、少年といえども、幾ら可塑性があるからとはいえ、人権というものがあるわけです。大人は逆に可塑性がないから入れない、子供は可塑性があるから、教育ができるんだから、何もまだしなくても入れてしまう、私は、これはちょっと行き過ぎではないかなと思いますが、いかがでございますか。法務当局がお答えになりますか、どうぞ。

小津政府参考人 現行法とこの法案の御説明ということで、私の方からお答えさせていただきます。

 まず、現行の少年法は、十四歳以上の少年につきましては虞犯少年に対しましても少年院送致を含めた保護処分に付することができるとされているところでございます。虞犯少年でございますけれども、これは、御指摘のとおり、具体的な犯罪や刑罰法令に触れる行為を行った者ではございませんけれども、暴力団関係者等との不良交友や、性風俗店あるいは犯罪にかかわるような場所への出入りといったような虞犯事由があります上に、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれがありますことから、できる限り早期に不良な環境から切り離して適切な処遇を行い、その非行性を除去することによって、少年が非行に陥ることのないようにしなければいけない、こういう考え方に立っているものでございます。

 現行法のもとで、十四歳以上の少年について、それでは虞犯少年がどのような保護処分に付されているかということを見ますと、平成十七年におきます少年保護事件全体に占める少年院送致の割合は六・四%でございますけれども、虞犯少年の少年院送致の割合は二〇・七%になっているわけでございます。虞犯少年につきましては、家庭裁判所において少年院送致が相当と判断される割合が高く、虞犯少年に対する少年院送致は実務上も重要な意義を有しているわけでございます。

 十四歳未満の虞犯少年でございましても、深刻な問題を抱える者にとりましては、早期に矯正教育を授けることが必要であると考えられます上に、例えば家出や無断外出を繰り返すというような少年について見ますと、開放処遇を原則とする児童福祉施設では対応が困難と考えられる場合もあるのではないかということでございます。

 少年院は、個々の少年の発達程度や特性に応じた成長、発達を促すための働きかけに特に重点を置いておりまして、福祉的な観点も十分取り入れた処遇を予定しているところでございまして、適切な処遇を行うことが期待できると考えております。

 以上のようなところから、十四歳未満の虞犯少年につきましても少年院送致の対象とするというのがこの法案の考え方でございます。

倉田委員 十四歳以上の少年についてはもう現在も少年院送りが実際行われているんだ、こういうことでございますけれども、やはり十四歳それ自体も私は実は疑問を持っておりますけれども、十四歳未満の少年ということになりますと、ますますもって、少年院というところではなく、いわゆる自立支援施設、親がわりの施設、こういうところへ行くのが教育的にふさわしいのではないかと思うわけでございます。

 現状、少年院は、壁で、塀で囲まれている。しかし、自立支援組織の方は、壁で、塀がない、開放組織である。それゆえ、逆に、不良交友などをやめない少年については、極端なことを言えば、部屋の中に、一室へ閉じ込めておかなければならない、そんなような問題もあるようですけれども、それら施設のあり方といいますか、施設自体の問題点を直していくという方法が正しいんじゃないかと思うわけで、あくまで私は、虞犯少年、ましてや十四歳未満まで少年院送りというのは疑問があるということを申し上げておきたいと思うわけでございます。

 時間もありませんので、次に移ります。

 少年について、警察当局に新たに権限を与えるといいますか、現状を是認した形で調査権を明確化するということ、これはいかなる非行少年をどのように処遇していくかということを検討するためにも、事案の解明ということは非常に重要だと思いますので、私は基本的にはそれを是認したいと思うわけでございます。しかし、先ほど来出ておりますとおり、少年の場合は被暗示性と申しますか、捜査官からこういうことをやったのではないかと言われればそのように思ってしまうというような要素もありますし、また、呼び出されて、そして部屋の中で調べられるということになりますと、萎縮ということも少年はするわけですね。としますと、どうしても密室の中での調査ということになるといろいろな危険が起こってくる。大人でも、やってもいないことを自白してしまうという、虚偽の自白ということ、少年についてはましてや危険が大きいのではないか、私はそう考えるわけです。

 そこで、一年ほど前に刑事施設法案につきまして本委員会で通しました。その際に、いろいろ審議があったと思いますけれども、取り調べの可視化、つまり録音とかあるいは録画、さらにはアメリカで行われているような弁護人の立ち会い、その前提的な録音、録画、こういうものについては試験的にも今後進めていくというようなお話が当局からもあったような気がしますが、実際問題、その辺の可視化の試験というのは行われているのかどうか。とすれば、現在どのような成果というか結果が出ているのか、法務当局にお尋ねします。

小津政府参考人 ただいま委員御指摘の点につきましては、検察庁におきまして取り調べの録音、録画の試行を行っているところでございますが、具体的には、平成十八年の七月から、東京地検におきまして、一部の事件を選びまして開始しておりまして、現在他の検察庁にも拡大しつつあるところでございます。これは、検察当局が裁判員裁判において自白の任意性について迅速かつ効果的な立証を行うための方策の一つとして試行する、こういう位置づけで行っているわけでございます。

 その具体的な内容でございますけれども、裁判員裁判対象事件のうち、被告人の自白の任意性を迅速かつ効果的に立証するという目的でこの録音、録画を実施する必要性が認められる事件につきまして、取り調べの機能を損なわない範囲内で相当と判断された部分の録音、録画を実施する、こういうことで現在やっているところでございます。

倉田委員 きょうは実は警察庁からも来ていただいていると思いますが、平成十四年十月十日付で警察庁次長が出されている文書があります。「少年警察活動推進上の留意事項について」という文書でございます。

 そこには、非行少年の取り調べにつきまして、「非行少年と面接する場合においては、やむを得ない場合を除き、少年と同道した保護者その他適切な者を立ち会わせることに留意すること。」こういう条項がございます。配慮規定としては非常にいい規定ではないかと私は考えるのですが、「少年と同道した保護者その他適切な者」、この中には、恐らく親は当然含まれるであろう、あるいは福祉司なども含まれるであろうと考えますが、弁護人は、弁護人といいますか付添人でもいいですね、含まれると考えてよいのかどうか、これが第一点。

 もう一点は、こういう配慮規定といいますか通達を出していただいているのは結構なんだけれども、その実施状況、もしできれば、数字的に示していただきたい。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ありましたように、次長通達、「少年警察活動推進上の留意事項について」におきまして、御指摘のような規定があることは事実でございます。

 これの趣旨でございますけれども、この趣旨は、少年に対して無用な緊張を与えることを避けて、真実解明への協力とか事後の効果的な指導育成の効果を期待するという趣旨のもとに、このように定めているものでございまして、適切な者とは、我々が典型的に考えておりますのは、保護者のほかに、学校の先生でありますとか、あと就職先の雇用主でありますとか、そういう方々を一応念頭に置いております。これは例示でございますので、弁護士の方を明示的に排除するものではございませんけれども、この趣旨に沿って、もしその趣旨に合うのであれば、これに弁護士の方も当たることはあり得るのではないかというふうに考えております。

 その実態でございますけれども、我々、全国的な調査は行っておりませんけれども、ただ、これは一律に立ち会いを義務づけるというものでもございませんので、現場におきましては個別の事案によって判断をしている、すなわち、例えば、少年の性格でありますとか、それからまた保護者との関係であるとか、それからまた保護者の監護能力とか、調査への協力の姿勢であるとか、そういったものは全部異なりますので、こういった個別の事案に即して、ケース・バイ・ケースで判断しているというふうに考えております。

倉田委員 私は、この規定が実際に今後どのように使われていくのか、少し警察庁としても、各警察の動向等を数字的にもとらえていただいて、今後に資していただければありがたいな、こう考えております。

 次に、六条の二でございましたか、これには、少年法の第三条第一項第二号または第三号に掲げる少年である疑いのある者を発見した場合には、事件について警察官が調査することができる、こうありますが、この少年である疑いのある者、特に三号ということになりますと、虞犯、つまり犯罪を将来起こすおそれのある、そのまた疑いのある者、こういうぐあいに読めてしまいまして、それでは余りにも、警察官が疑いがあると主観的に考えれば、どこまでも、どういう少年でも調べることができてしまうのではないか、つまり、歯どめがかからないのではないかと指摘する向きがあります。

 私は、疑いのあるというのは、いわゆる大人について被疑者という言葉がありますが、それと似たようなものであって、決して主観的なものを含んではいない、合理的な、客観的な疑いのある者という意味だとは思いますが、文面としてもう少し工夫する余地はないかと考えておりますので、これは意見として申し上げておきます、時間がございませんので。

 次に、今回の改正の中でかなり大きな点として、二十六条の四、つまり、保護観察中の者に対する措置というのを新たに加えようではないかというのがあると思います。

 この規定は、恐らくは現場の保護司さんたちが非常に、少年の教導において、遵守事項を守ってくれない、例えば定期的に会いに来てくれないとか、いろいろ御苦労をなさっておりますものですから、そうした実情は私もよく知っているつもりでおりますけれども、それに対処するために、遵守事項について少年が守らないときには、二号、三号、つまり児童自立支援施設とかあるいは少年院へ送る、つまり新しく保護処分をする、こういうような趣旨だと思います。

 現場としては、何としてもこういう規定を設けてもらいたいと願っていると思いますので、その方向としての必要性についてはわかるんですけれども、この二十六条の四の第一項をよく読んでみますと、家庭裁判所は、犯罪者予防更生法第四十一条の三の二項の申請があった場合において、これは保護観察所の長が言ってくるから申請するという意味ですね、そういう申請があったときには、第二十四条一項一号の保護処分を受けた者がその遵守すべき事項を遵守しないことの程度が重く、その保護処分によっては本人の改善及び更生を図ることができないと認めるときは、決定をもって、同項第二号または第三号の保護処分をしなければならない、つまり児童施設あるいは少年院に送らなければならない、そういう保護処分をしなければならないとあるわけですが、これは、その中身のよしあしは別としまして、法論理的に、一体何を対象として保護処分するのか、これだけでは対象がはっきり読めない。

 つまり、保護観察のもとになった事由、これは幾つか決められているんですね。犯罪少年、触法少年あるいは虞犯少年に当たるといったときに初めて保護処分がなされるわけですね。そのまた一番軽いと私どもは考えていますが、保護観察、これについて、保護観察処分にしたところが遵守事項を守らない、こういうことですね。そのときにもう一回保護処分をやるということになりますと、もし当初の保護事由についてもう一回保護処分をやるんだということであれば、御承知のとおり、憲法第三十九条、二重処罰の禁止、それから少年法の第四十六条、ここには犯罪少年についてのみ書いてありますけれども、二重の処分をしてはいけないということが書いてあります。そして、判例、通説とも、虞犯少年、触法少年についても二重の処分はできません、こう書いてありますから、もしこの規定が当初の保護処分についてもう一回、保護観察ではなく、例えば少年院送りというぐあいに決め直すんだということであれば、これは今言った各規定、一事不再理、これに反することになると思うわけですね。いや、そうではないんだというのであれば、このままの条文ではそうは読めないというのが私の考えですが、法務当局、いかがでございますか。

小津政府参考人 ただいまの委員の御指摘でございますが、まず、憲法第三十九条の規定いたしております一事不再理、これにつきましては、私どもといたしましては、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われないとする規定であると理解しておりまして、そういう意味では、直ちに少年審判に適用されるものではないと考えているところでございます。しかしながら、少年審判につきましても、同一の事由について二重の処分をして、少年の地位を不当に不安定なものにすることがあってはいけないということでございます。

 本法律案の制度は、保護観察決定後に少年が遵守事項を守らなかったという新たな事情をとらえて新たな決定をするというものでございまして、保護観察の保護処分決定の対象となった事由と同一の事由について重ねて保護処分決定をするというものではないわけでございます。

 その点は、本法律案によります改正後の少年法の二十六条の四、それから犯罪者予防更生法の四十一条の三によりますと、少年が保護観察の遵守事項を遵守しなかったときに、保護観察所の所長が警告を発し、なお遵守事項を遵守せず、その程度が重いときは、家庭裁判所に申請を行うこと、家庭裁判所は、保護観察所長から適法な申請があり、少年が遵守事項を遵守せず、その程度が重いこと、またその保護処分によっては改善更生を図ることができないことを審判において認定したときは、少年院送致等の決定をすることができると定めているわけでございまして、このような規定によりまして、同一の事由について重ねて保護処分決定をするものではないということをあらわしたつもりでございます。

倉田委員 受刑者の例を申しますと、受刑者が一定の犯罪を犯しました、例えば殺人です。受刑中に、看守の言うことを聞かない、刑務所の規則を守らない、こういうことがあったとします。そうすると、その規則の範囲内で独房へ入れられる、こういうことはやむを得ないと思うんですね。

 しかし、その規則違反、つまり、本来の処罰されている刑と比較すれば全然軽い規則違反ですよ。これと、この少年の場合の遵守事項というのは似ていると思うんですよね、保護観察中の規則に違反するんだという点で。

 ということを考えますと、この遵守事項違反そのものを対象とした新たな保護処分だということになると、しかもその中身がもともとの保護観察よりも私どもは重いと考えますけれども、一般にも重いと考えられている施設への収容ということになるというのはどうしたものかなと私は考えるんですけれども、必要性はわかっているけれども、その辺の疑問を持つわけです。

 もう一度念を押しますが、そうしますと、今の法務当局のお答えでは、遵守事項違反が新たな保護処分の審判対象となる、つまり、現在の少年法で決められている三つの事由、犯罪少年、触法少年、虞犯少年に加えて第四の審判事由をここで創設するんだ、こういう意味でしょうか。それならば、確かに二重処分には当たらない。しかし、その軽重ということから考えて、本当にそういうことでいいのかしらという疑問が起こりますが、法論理的に、第四の審判事由を創設するんだというお答えになるんでしょうか。法務当局、お願いします。

小津政府参考人 先ほどお答え申し上げましたように、遵守事項違反、そしてその程度が非常に重いということが審判の対象であるということでございます。(倉田委員「第四ということでいいですね」と呼ぶ)どのような分類というか表現にするかどうかはともかくといたしまして、内容としては、私が先ほど申し上げたとおりでございます。

倉田委員 もう時間がございませんので簡単に言いますけれども、第四の事由が一番重いというのはいかにも不自然だと思うんですね。

 しかし、私は、必要性があると思います。したがって、一つは、いわゆる大人の刑における執行猶予つきの、保護観察つきの執行猶予というような制度が考えられないかということ、それから、現状のままでも、試験観察、つまり遵守事項違反の保護観察を、もう一度審理する場合には必ず試験観察を付してみる、それでもだめな場合は施設送りというような工夫も考えられるのではないかというようなことを考えますので、意見として申し添えます。

 もう一点だけ。国選付添人ですが、やはり、少なくとも試験観察に付されているような場合に、途中で、一番肝心な最終審判のときに付添人がいないというのはいかにもまずいなと思いますので、二十二条の三の第五項、これを削除するか、少なくとも試験観察に付されている場合については別途とする、選任の付添人の効力を続けるというようなことを考えていただけないかと思いますが、簡単にお答えいただいて、終了させていただきます。

七条委員長 時間が来ておりますから、簡単明瞭に。

小津政府参考人 現法案でこのような内容にした理由につきましては、先ほど御答弁させていただいたとおりでございますので、これを踏まえまして十分に御審議いただければと思っているところでございます。

倉田委員 終わります。

七条委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 ちょっと定足数が足りていないような気がするので、定足数の確認をお願いできますか。

 ちょっと時間をとめてください。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 平岡秀夫君。

平岡委員 ちょっとそろわないみたいですから、休憩を宣していただくように要請します。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 定足数がそろいました。

 平岡秀夫君。

平岡委員 大事な法案でありますから、与党の方々もしっかりと質問もしていただきたいと思いますし、今倉田先生から大変いい質問がありましたが、時間が足りなかったようでありますから、倉田先生、またしっかり時間をとっていただいて、政府の法案について問題があるときにはやはり国会としての立派な見識を示していただきたいと思いますので、ぜひ質問していただきたいと思います。

 きょうは、第一回目の質問として、総括的、概括的に質問させていただいて、さらに掘り下げた質問を後日、さらにまた修正を含めた質問を後日やらせていただきたいというふうに思っておりますけれども、その質問に入る前に、ちょっと最近の話題として確認しておきたいことがございますので、質問させていただきたいと思います。

 代理母の問題について、この委員会でも議論させていただきましたし、私も、昨年の十月二十日の委員会とか、あるいはことしの三月十六日の委員会でも質問させていただきました。その後、今月の二十三日に最高裁判所が判決を出して、立法による解決の必要性ということを訴えているようであります。

 大臣、昨年の質問をした後にいろいろな努力をされておられるということは、前回、三月十六日の質問でも私は触れさせていただきましたけれども、最高裁判決が出たということを踏まえて、これまでどういうことをやってこられているのかということをまず世の中に明らかにしていただきたいというふうに思います。

長勢国務大臣 いわゆる代理出産の問題につきまして、昨年、私が就任させていただいたときから問題になってきた事案でございます。本委員会でもいろいろ御質問いただいたわけでございますが、そういうことも含めまして、昨年十一月三十日に、厚生労働大臣と一緒に、この問題を検討するに当たっての有益な知見を得るために、多方面の最高の有識者で構成されておる日本学術会議に対しまして御審議を依頼するということをいたしました。現在、学術会議において検討していただいておるというふうに承知をいたしております。

 御案内のように、この問題、医学的な問題もございますし、法律的な影響もありますし、同時に、親子関係あるいは家族関係、社会全体のあり方等々、生命倫理を含めた倫理の問題も絡んでまいります。そういう意味で、各方面の御意見を伺いながら、それを踏まえてさらに検討を進めていくのが適当であるというふうに思っておる次第でございます。

平岡委員 報道等によれば、昨年の十一月三十日に日本学術会議に審議を要請されたということとあわせて、ことしの一月に入ってから検討委員会というのが開かれて、一年を目途に方向性を出していくというような報道もされているわけですね。今その点については特に触れられませんでしたけれども、今回、最高裁の判決が出て、最高裁判所も立法による対応というのを促しているという状況の中で、大臣としては、具体的にどういうことをこれからやっていこうと考えておられるのか、最高裁判決を受けての方針として、もう少し明確に示していただきたいというふうに思います。

長勢国務大臣 最高裁決定においても、法的な検討が必要だということは書いてありますけれども、あわせて、いろいろな問題もあることも指摘をされておるわけで、今この時点で私がこの方向ということを申し上げる段階にはございません。学術会議においてもいろいろな議論がされておるわけでありますし、そういうことを踏まえて、各方面の御議論を踏まえて検討していきたいという段階でございます。

平岡委員 大臣から、明確な方針といいますか、こういうふうにやるんだという意図表明がなされないのはちょっと寂しい限りでありますけれども、しっかりと取り組んでいただきたいとは思います。

 もう一つ、民法七百七十二条の問題についてであります。

 三月十六日に、何か政府と与党との間の意思疎通が欠けているのか、あるいは余りにも意思疎通がよ過ぎてやらせをやっているのか、よくわかりませんけれども、非常に変な動きになっているということで指摘させていただいて、それで法務大臣が、検討していきたいということを言っておられた。その検討状況について、どうなっているのかということを事務方からちゃんと説明するように指示してほしいということをお願いいたしまして、説明に来られましたけれども、あるいは昨日も我々の勉強会の中でも説明を受けましたけれども、どうも何か、問題の所在はよくわかっているけれども、検討の方向性すらまだ何もわかりません、こんな段階なんですよね。

 こんなことで本当に法務大臣の答弁のとおりにおゆだねしてよろしいのかどうか。私としては、もう見切りをつけて、そろそろ我々としても、立法措置なり運用なり、こういうことをすべきだということをやはりやっていかなきゃいけないような時期に来ちゃったのじゃないかなという気がするんですけれども、まず大臣の答弁を踏まえて我々としてこれからどうするかということを考えたいと思いますので、もう一遍ここで明確に、どういう検討をしてきて、そして今ここまで来ていて、これからどういう方向でやっていくのか、この点について答弁をしていただきたいというふうに思います。

長勢国務大臣 私の記憶では、前回、与党の検討の中身についてということでありましたので、与党から聞かせていただければ聞いて、それを御報告させますということを申し上げたと思っておりますので、そのことをどういうふうに報告して、先生がどうお受けとめになったのかわかりませんが、今の御質問は、そういうことではなくて、法務省における検討の状況を述べよ、こういう御質問でございます。

 もういろいろなところで、予算委員会等々でも聞かれておりますが、いつも同じように申し上げておりますが、七百七十二条によって、離婚後三百日以内に出生されたお子さんが前の夫の子と推定をされるということになるわけで、それ自体は、私は一応合理的なものと思っております。

 しかし、現実に、嫡出推定を覆すためには裁判手続が要るということでございます。それは大変負担も重い場合も多いと思いますが、いろいろなケースがあるわけでありますから、裁判の負担が不当に重過ぎる、過大であるというケースについては、何らかの方法で対応できないものかということを今検討させております。

 そういう意味で、もし先生が、立法的な対応をどう考えているのかという御質問であるとすれば、私としては、今そこに取りかかっておる段階ではないということは申し上げなければならないと思います。

 具体的な対応の仕方、今、おまえでは頼りにならないというような御質問でございましたが、今鋭意民事局に検討作業をさせておる段階でございまして、私はその状況はある程度知っておりますが、それなりに進捗はしておると思いますけれども、事がこういうことでございますので、まだ具体的にこういうことまで来ているということを御報告できる段階ではないと思っております。

 いずれ我々として、こんなことでどうだろうという段階になれば、また御報告をしたり御相談をしたりするということにしたいものだと思っておるわけであります。

平岡委員 きのうもちょっと来てもらっていろいろ説明を受けましたけれども、検討の方向性すらもまだ決められないという感じなんですよね。これはちょっと幾ら何でもひどいな。こういう検討の方向性のもとで、今こういうことを、現実的に対応可能かどうかということを詰めていますとかというなら、ああ、そうかと思うんだけれども、こういう話もこういう話もありますという問題を羅列するだけで何らの方向性も示されないということでは、本当に、我々としては、法務大臣の答弁のとおり、このまま法務大臣におゆだねしていいのかどうか、極めて疑問に思っております。

 そういうことを大臣にお伝えさせていただいたので、我々も、信義則に反することなく、この問題についてはしっかりと対応を考えていきたいということをお伝えさせていただきたいというふうに思います。

 そこで、少年法改正の問題について入りますけれども、実は、私、初当選して最初にぶち当たった大きな課題というのは、当時の少年法改正でありました。二〇〇〇年の少年法改正、これは厳罰化ということで表現をされていた少年法の改正でありまして、私自身は、少年を厳しく罰する、あるいは罰するぞという威嚇をするような形で本当に少年が立ち直れるのか、少年がよくなるのか、大いに疑問であるということで、いろいろな論戦を挑ませていただきましたけれども、結局は成立してしまったということでありました。

 そのときにも言われていましたけれども、こんなようなやり方で本当によくなるのかどうかというのは検証をしていかなきゃいけないというふうなことが言われておったわけでありまして、まずは、私自身がこうだということを今決めつけるつもりはありませんけれども、政府として、二〇〇〇年の少年法改正で厳罰化、例えば、刑罰適用年齢が引き下げられるとか、重大事件については原則逆送するとか、そんなことが行われたのでありますけれども、こういう改正によって、少年事件の発生については状況が改善されたというふうに評価しておられるのかどうか、この点をまずお伺いさせていただきたいと思います。

長勢国務大臣 今御指摘の、十二年改正法の施行が非行の発生状況にどういう影響を与えたかということでございますけれども、統計上の数値を見ますと、少年刑法犯の検挙人員というものはここ数年二十万人前後で推移してきましたけれども、平成十六年では十九万三千七十六人、十七年では十七万八千九百七十二人、それぞれ前年より減少しておるということでございます。

 少年人口千人当たりの検挙人員で見ますと、平成八年以降上昇傾向にあり、平成十五年には十五・五となっておりましたが、十六年は十五・一、十七年は十四・二と連続して減少しておるという状況でございます。

 また、殺人、傷害致死、強盗殺人、強盗致傷の四種の重大事件について、平成八年から十二年までの五年間と、改正法が施行された十三年から十七年までの五年間とでそれらの検挙人員を比較いたしますと、殺人は五百人が三百九十六人、傷害致死は五百人が二百三十八人、強盗殺人、強盗致死は六十四人が七十一人、強盗致傷は五千五百六十二人が五千四百十四人、おおむね減少している傾向が見られるのではないかというふうに思っております。

平岡委員 数のとり方そのものもまたいろいろと問題を指摘される方がおられますので、今大臣が示された認識というものをしっかりと我々としても検証した上で、この点については議論をさせていただきたいというふうに思います。大臣がそういう数字を挙げられて、改善をしてきているんだというふうに言われるのであれば、本当にそうであるのかというところの検証をやはりしていかなければいけない、こういうふうに思います。

 そこで、次に、二〇〇〇年の少年法改正についての具体的な問題点の指摘というのがあるので、ちょっと触れたいと思います。

 まず、ちょっと総括的に、国連子どもの権利委員会の対日審査の最終見解というのが、二〇〇〇年の少年法改正後、二〇〇四年の一月に出されているわけでありますけれども、そこでは、二〇〇〇年の少年法改正で刑罰適用年齢を引き下げたということについて懸念を表明し、幾つかの勧告もしているというような状況にあります。これについて、政府としてはどういうふうに受けとめておられるんでしょうか、まずこの点をお伺いいたしたいと思います。

長勢国務大臣 国連児童の権利委員会は、我が国が刑事責任の最低年齢を十六歳から十四歳に引き下げたことを懸念する旨指摘をいたしております。

 ただ、平成十二年の少年法改正は、刑事責任の最低年齢を引き下げたものではなくて、刑事処分可能年齢を、刑法第四十一条が定める刑事責任年齢と一致させて十四歳としたものでございます。その趣旨は、十六歳未満の少年は、刑法の刑事責任年齢の規定により刑事責任を有するにもかかわらず、いかに凶悪重大事件を犯しても刑事処分に付されないということとなっておりましたけれども、十四歳、十五歳の年少少年による凶悪重大事件が後を絶たず、憂慮すべき状況にあったことにかんがみ、少年の健全育成のためには、この年齢層の少年であっても罪を犯せば処罰されることがあることを明示することにより、規範意識を育て、社会生活における責任を自覚させる必要があると考えられたため、刑事処分可能年齢を刑法における刑事責任年齢と一致させて十四歳とすることとしたというものでありまして、何ら問題はないと考えております。

 また、同委員会は、少年の年齢に関連して、十六歳以上の児童を家庭裁判所が成人刑事裁判所へ送致できることをその廃止の観点から再検証することという勧告をいたしておりますけれども、我が国において家庭裁判所が児童を成人刑事裁判所に送致する制度は存在しないわけであります。仮に、この部分が、家庭裁判所が児童を検察官に送致し、児童が起訴されて、成人刑事裁判所の裁判を受けることを指すものだというふうに考えますと、委員会の御指摘は、十六歳以上の児童についてはどのような場合も刑事処分に付すべきではないという趣旨なのかなと解されますけれども、条約はそのようなことまで要求するものではないと思っております。

 また、十六歳以上と指摘されておりますけれども、これは誤記でありまして、十六歳未満の趣旨だということだろうと思いますが、同条約は、刑事責任年齢に達している少年が刑事裁判所で裁判を受けることを全く禁止しているとは考えられないわけでありますし、同条約を批准しておる英国、フランス、ドイツ、韓国などの国は、十六歳未満であっても刑事裁判所で裁判を受けることが認められておると承知しておりますので、我が国のみそのような指摘を受けるいわれはないというふうに考えております。

 同委員会に対しては、今後とも、我が国の法制度について正確な理解が得られるよう努力してまいりたいと考えております。

平岡委員 確かに、この最終見解に書かれていることは、我が国の少年司法の仕組みというものが万国共通なわけではないので、それぞれの外国の担当者の受けとめ方というのがいろいろあって、正確な表現になっていないということもあるのかもしれません。

 ただ、言えるのは、二〇〇〇年の少年法改正というものが、本来、少年の利益といいますか、少年のことを考えたときには、方向性として逆の方向へ行っているということを指摘しているということには間違いがないと私は思うんですね。細かい表現の問題とか技術的な問題はともかくとしても、刑罰適用年齢の引き下げなのか、あるいは処分可能年齢の引き下げなのかというふうなことは、ある意味では表現の問題であって、本来は、指摘したいことは、要するに刑罰で少年を処遇していくということの方向性がやはりあるべき方向性ではないということをこの最終見解というのは述べているというふうに私は思うんですね。

 そういう意味では、大臣がるる技術的な、専門的な言葉でこの見解のちょっとミスみたいなところを指摘しておられましたけれども、決してそういうところで反論するんじゃなくて、本来の大きな方向性の中で、我が国がやっていることが本当に問題がないのかということをしっかりと議論していってほしいというふうに私は思います。

 そういう観点から考えたときは、私は、この厳罰化の方向というのは、諸外国の例を見ても、決していい方向には行っていないというふうに思っておりますので、その点はまた再度議論させていただきたいというふうに思います。

 そこで、個別的な中身の話にちょっと入りまして、二〇〇〇年の少年法改正の中身ですけれども、こういう指摘が出ております。この点についてどういうふうに認識しているのかということについて、見解を示していただきたいと思います。

 原則逆送規定が設けられたということに関連してでありますけれども、鑑別や調査官調査において、これは家庭裁判所の調査官調査だと思いますけれども、非行の結果が重視される一方、少年が抱える問題性、要保護性についての掘り下げた検討が十分になされていないという傾向が見られるという指摘があります。この点についてどう認識しておられるのか、最高裁、それから法務大臣にお聞かせいただきたいと思います。

長勢国務大臣 御指摘のとおり、十二年の少年法の改正により、いわゆる原則逆送制度、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、検察官送致決定を行うことを原則とするということとされました。少年法の規定によれば、検察官送致を原則としつつも、個々の事件の性質や少年の特性等を考慮し、例外的に保護処分等に付することも可能とされておるわけであります。

 そこで、少年鑑別所においては、資質の鑑別を実施するに当たって、まず、個々の少年の犯行の動機、性格、行動の特徴、問題性の深刻さ等を把握、分析し、その上で、原則どおり検察官送致とするのが適当なのか、あるいは個別の事情を踏まえてそれ以外の処分とするのが適当なのかを検討するものと承知をいたしておりますので、そういう御指摘もあるのは承知をいたしておりますが、法の趣旨に沿って執行しておるというふうに理解をしております。

二本松最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 原則逆送の対象となる事件については、原則どおり刑事処分を相当とする場合であっても、例外的に刑事処分以外の措置を相当とする場合であっても、社会調査を尽くして、非行のメカニズムをできる限り解明することが求められていることは変わりありません。したがいまして、各家裁におきましては、原則逆送事件の場合でありましても、他の事件の場合と同様に、非行の態様や結果だけではなく、少年の資質、環境など、少年の抱える問題性についても十分に調査を行っているものと考えております。

 以上です。

平岡委員 私は、あのときの議論の中でも、原則と例外を逆転させるという発想の中で、ある意味では原則と言われるものにかなり流されてしまうんじゃないかという懸念を持ったんですけれども、案の定、計数的に見ると、逆送された件数というのが非常に急増しているんですよね。そういう状況を見ると、やはり一人一人の子供の状況というものをしっかり見るという意欲は薄れてしまったのではないかというふうに思います。

 私は、それまでの例えば鑑別とか、あるいは家庭裁判所の調査官の調査というものがいいかげんに行われていたというふうには思いません。そういう意味でいくと、この逆送ということが、本当に、指摘されているような問題点を起こしている心配は、計数面からいってもはっきりと出ているというふうに思います。そういう意味では、この点について、やはり問題があるということを改めて指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 それから、次の指摘についてでありますけれども、この前の改正で、十六歳未満の年少少年とか犯罪性の進んでいない少年までが刑事被告人とされるようになったということで、こういう指摘があります。そのような少年被告人が、刑事裁判の審理期間中、何ら教育的働きかけのない拘置所での独居生活を長期間強いられており、心身への悪影響や、内省、更生意欲の減退が生じているというような指摘がありますけれども、これについては、法務大臣、どのように認識しておられますでしょうか。

長勢国務大臣 被告人は、御存じのとおり、刑事施設に勾留されるのが通常ですけれども、少年については、少年法第四十八条第二項により、少年鑑別所を拘置場所とすることができるものとされておるわけで、少年を刑事施設か少年鑑別所のいずれに収容するかは、裁判所により適切に判断されておるものと承知をしております。

 拘置所という場合には、少年はもちろん成人とは分離をして単独室に収容いたしておりますし、そして、一定の区画ごとに担当職員を配置し、これらの職員が、受け持ちの少年被告人について、日常生活における動静を観察して、心情把握に努めているというふうに承知をしております。特に、少年については、心情の安定を図るため、必要に応じて積極的に話しかけたり相談に応ずるなど、適切に配慮しておるというふうに思っておりますし、今後とも、少年であることを十分配慮して、適切に対応する必要があると思っております。

平岡委員 配慮しているという言葉で片づけられたのでは、ちょっと我々も、本当に実態がよくわかりません。確かに、配慮しているという気持ちは持っておられるかもしれませんけれども、その結果が果たして出ているのかどうか、それから、制度的に配慮しているだけでは十分な対応ができないというケースだって、それは当然あるわけですよね。そういう意味においては、こういう指摘が、本当にどういう状況になっているのかということもしっかりと大臣に把握していただきたいと私は思いますし、私たちも、大人の責任として、しっかりと把握して対応を考えていかなければいけないというふうに思います。

 それからもう一つ、少年の問題について言うと、刑事裁判に付されるケースがふえてきているわけでありますけれども、そういう中で、刑事裁判の審理の公開という原則のもとで起こっている話として指摘されている話としては、現職裁判官とか研究者からも、少年の成熟度等により公開を制限する制度の必要性が主張されているというふうに指摘されていますけれども、この点についてはどのように認識をしておられますでしょうか。

長勢国務大臣 裁判については、憲法上、原則として公開法廷で行うということにされておるわけでありますから、一定の裁判の公開を制度として制限することについては極めて慎重な対応が求められるものと考えております。とりわけ刑事裁判の公開については、その重要性から、被告人の公開裁判を受ける権利として保障されていることに照らしますと、その制約の可否という観点からも慎重に検討する必要があります。

 そして、実際上、家庭裁判所が逆送決定をする際には、逆送後に公判請求がなされ、事件が公開法廷で審理されることを前提としてその決定をしていると考えられますし、その後の刑事裁判においても、非公開とまではせずに、裁判所の訴訟指揮権の行使により、少年の保護、教育、情操保護の観点から、入退廷時につい立てを設置するなどの種々の措置がとられるなど、裁判所や訴訟関係人において一定の配慮がなされているところであると承知をいたしております。

 以上の諸点に照らしますと、委員御指摘の点については、慎重な検討を要するものではないかというふうに考えております。

平岡委員 今大臣が言われたことも私もわからないわけではないわけでありますけれども、そこで、根本的に、翻って考えてみると、原則逆送のような形で刑事裁判に持っていくんだというところ自体が、やはりもう一度問われなければいけないんじゃないか。つまり、公開で行われる刑事裁判ではなくて、やはり家庭裁判所の中で少年事件として、少年の将来を考え、あるいは少年に対する影響というものを考えながら物事を進めていくということの必要性が指摘されているというふうに私自身は思います。

 そういう意味では、この問題、確かに大臣が指摘されているような点もあろうかとは思いますけれども、もう一度原点に立ち戻って考えていくということを私としては要請いたしたいというふうに思います。

 それから、今回の改正の話に入ってまいりますけれども、まず、今回の改正に当たっての基本的認識を問いたいと思います。

 本会議における代表質問を昨年の臨時国会でさせていただきましたけれども、少年事件にどのように対応していくのかというその原則的なところ、どっちかというと、先ほど来から言っているように、今政府が進めようとしていることは、とにかく厳しく罰するんだ、厳しく対処していくことが少年事件に対しては必要なんだという色彩が非常に強く出てきている、場合によっては、悪いことをしてしまった子供たちに対して、見せしめのような形で対応しなければ示しがつかない、どうもそんなような気持ちが潜んでいるのではないかと私はちょっと感じているわけでありますけれども、そういうことは、本来、少年事件についての考え方としては、原則としてあってはならないことだというふうに私は思っております。

 そういう意味では、ちょっと本会議で質問したことのおさらいにはなりますけれども、大臣として少年事件への対応のあり方の原則についてはどのようにお考えになっているのか、まずここをお聞かせいただきたいと思います。

長勢国務大臣 十二年改正のとき、先生、委員であられたわけでありますが、私は法務委員長をしておった思います。当時の記憶が定かではありませんが、今先生おっしゃった、先ほど来指摘されているような議論が大変激しく行われたことを思っておるわけでありますけれども、その議論の成果として十二年の改正が行われたと思っております。

 そういうことも踏まえて、今の御質問でございますが、おっしゃるとおり、ただ重罰化をすればいいというものでもないということは、私どももそのように思います。

 少年法第一条は、少年法は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うことを目的とするということを規定しておるわけであります。少年非行につきましては、単に甘くするとか厳しくするというだけではなくて、少年が立ち直り、社会に戻っていくために適切な処遇を行うことが重要であると思います。この一種のバランスといいますか、そこはみんな十分に国民の理解が得られる中で考えていかなきゃならない問題と思います。今回の少年法の改正も、このような観点から行っているものであります。

 少年については、教育であるとか生活環境の整備といった問題も重要でありますし、また、社会全体が少年のいろいろな事件についてどう対応していくかということも重要であると思います。

 今後とも、広く国民の皆様のお声に耳を傾けながら、関係省庁と連携して、政府全体として少年事件、少年の非行問題に取り組んでまいりたいと思います。

平岡委員 こうして抽象的、一般的に議論しているときはそう大きな違いもないような気もするんですけれども、いざ具体的な法律改正になってくると、何でここまでしなきゃいけないんだ、今、現行法のもとでもやることはもっとたくさんあるんじゃないか、あるいは現行法のもとでやらないで怠ってきたことがあるんじゃないか、どうしてそういうふうな方向に考えが行かないのかというのが、私の率直な気持ちですね。

 そういう意味では、今回の改正においても、何でここまでやらなきゃいけないんだ、今の状況の中でももっとこういうふうにして大人がちゃんと対応すればできるんじゃないかというふうなことがたくさんあると思いますね。やはりそういう方向でしっかりと議論をさせていただきたいというふうに私は思います。

 そこで、今回の少年法の改正について言うと、なぜ行われるんだろうか、どういう立法事実があって行われるのかというところがちょっとはっきりしていないような気がします。はっきりしていないというのは、意図としてはこんなことをねらっているのかなというふうに思うんですけれども、では、それを裏づけるような事実というのは一体どんなことがあるのかというところがはっきりしない。

 大臣としては、どういう立法事実があって今回の少年法改正につながってきているのか、この点について御答弁いただきたいと思います。

長勢国務大臣 本法案、幾つかの事項を提案申し上げておるわけでございますが、触法少年、虞犯少年に係る事件についての警察官の調査手続の整備ということをしておりますけれども、これについては、現在、警察の調査権限に関する明確な規定が存在しないわけでありますので、例えば、死体解剖ができなかったために死因等が特定できなかったというような事例、事情聴取のために少年や保護者を呼び寄せたものの出頭を拒否されたというようなこと、非行に用いた凶器や被害品が少年の自宅に隠匿されている可能性があったにもかかわらず、保護者がその提出を拒んだために事実関係が確認できない、あるいは被害回復もできなかったというようなこと、少年の身上関係や事実関係の確認のために公務所等に照会する必要があったものの、回答、報告を得る上で困難を生じたというようなことがあったものと承知をしております。

 本法案は、非行に関する事実の解明をより一層進める必要があることから、これまでも行われた警察による調査活動の法的根拠を明確にしたいとするものでございます。

 また、少年院送致の年齢を引き下げることといたしておりますが、十四歳未満であっても、凶悪重大な事件を起こしたり悪質な非行を繰り返すなど、深刻な問題を抱える者に対しては、開放処遇を原則とする児童自立支援施設では対応が困難な場合もあるとかねてから各方面で指摘されてきたところでございます。

 そこで、このような少年について、特に必要と認める場合に限り初等または医療少年院に送致できることとし、個々の少年が抱える問題に対して最も適切な処遇の選択を可能にしたい、その立ち直りを図りたいという趣旨でございます。

 次に、遵守事項違反の程度が重い保護観察中の少年を少年院等へ送致するという制度を設けることにいたしておるわけでありますが、少年が保護観察官や保護司との接触すらしない、またその真摯な努力に反して遵守事項を守らないというような保護観察の不可欠の前提というものが破られる、守られていないという事例が少なくありません。

 こういうことから、違反の程度が重く、保護観察では本人の改善更生を図ることができないと認められる場合に、慎重な手続のもとに少年院送致等の保護処分を可能とするというのが趣旨でございます。これによって、保護観察における遵守事項の重要性がより明らかとなって、保護観察中の少年にその意味を自覚させることができる、その立ち直りにも資するというふうに考えております。

 また、国選付添人制度を整備することにいたしておりますが、観護措置がとられ、少年の身柄が拘束された重大事件では、一般に少年への影響の大きい処分がなされることが予想されるとともに、社会的影響も大きいわけであります。より適切な処遇選択が要請され、また少年は家族その他周囲の者の直接の援助を受けることが困難であるということでありますので、事案によって家庭裁判所が職権で弁護士である付添人を付することができることとしたいというふうに思っております。

平岡委員 個々の改正事項についての妥当性というのはこれからまた議論していきたいと思いますけれども、今ざっと大臣が言われたことについて私もざっと感想を言わせていただくと、警察の調査権限の拡大について言えば、何でここまで一挙に拡大しなければいけないのか、根拠を明確にするというなら明確にするで、それは間違ったことではないとは思いますけれども、やはりそこは、対象と方法というのはもっと厳格に考えられてしかるべきだというふうにも思います。

 それから、処遇の選択の幅を広げるということで、少年院送致の年齢を引き下げるというような話についても、別に児童自立支援施設でも閉鎖性のある施設というのもあるわけでありますから、そういう児童自立支援施設をもっと多様化する形で対応していくことは十分に可能である。それをなぜ少年院にしなければいけないのか。つまり、結局は、少年院に送るぞという恐怖感を与えることによって何かしようとしているのではないか、こんな気がいたします。

 それから、保護司との接触が十分にできていないという話でありますけれども、子供たちの方にその責任を押しつけるというのはまず短絡的だと思いますね。保護司さんたちが十分数的にも確保されているのか、保護司さんたちがどういうように活動するのかにおいて、そのための支援がしっかりとできているのか、そんなことをまずしっかりと詰めていくという作業をしなければ、子供たちを、こうしなければこうしていくんだぞ、守らなければこうなるんだぞというような恐怖の方を押し立てることによって言うことを聞かせるというのは、決していい結果をもたらさないというふうに私は思います。

 そういう意味で、ざっと私の感想を言わせていただきましたけれども、それぞれの箇所でまたしっかりと、改正の中身も含めて議論をさせていただきたいというふうに思います。

 次に、今回の改正の前提としての話でありますけれども、この前、法律案の提案理由説明の中で、例えば大臣は、「いわゆる触法少年による凶悪重大な事件も発生するなど、少年非行は深刻な状況にあります。」と言っておられるんですね。

 これまでもいわゆる触法少年による事件というのは幾つかあって、その中には重大なものもあったというふうに私は思いますけれども、今ここで触法少年についていろいろなことをやろうとしているのは、凶悪犯罪の低年齢化というような認識を何か政府として持っておられるのでしょうか。つまり、今までよりもふえてきているんだというような認識を持っておられるんでしょうか、どうでしょうか。

長勢国務大臣 全体として、いわゆる凶悪犯、特に少年非行のうちでも凶悪犯の状況というのは予断を許さない深刻な状況にあるということは、先ほど来御説明申し上げたところであります。

 そういう中で、最近、十四歳未満のいわゆる触法少年による極めて凶悪重大な事件も発生しているということであります。ただ、これが今の現状だと思いますけれども、先生御指摘のような低年齢化がどうかということについて、一定の傾向があると断定するということは困難でありますし、私どももそのような認識を前提としてこの法案を提案しておるわけではございません。

 そうではなくて、触法少年による凶悪重大な事件が発生したことによって、かねてから指摘されていた触法少年の事件についての事実調査や処遇選択をめぐる問題点が改めて認識をされるようになった、積極的な対応が求められるようになったということであると思いますし、この法案は、そういう状況を踏まえて、少年の非行に関する事実の解明をより一層進めるとともに、少年の状況に応じた保護処分の選択を可能にするために必要な法整備を行うという趣旨のものでございます。

平岡委員 一般的な話としての凶悪犯罪の低年齢化があるというような認識には立っておられないということのようでありますけれども、大臣が、いわゆる触法少年による凶悪重大な事件も発生するというふうに指摘しているものの中には、いわゆる長崎事件とか佐世保事件というような、十四歳未満で重大な事件を起こしたものが念頭にあるのではないかというふうに思います。

 ただ、これらの事件の少年の特性といいますか、なぜこんな事件が起こったんだろうかということをいろいろ考えてみると、果たして今回のような形で、いわば厳罰化、厳しく罰していくというような方向でこういう事件が防げるんだろうか、あるいは再発が防げるんだろうかということについて言うと、私は大いに疑問があると思いますね。

 そういう意味では、こういう十四歳未満で重大な事件を起こした少年については、まず、一人一人しっかりとその原因というものを専門的に見きわめながら、それに適した処遇をしていく必要があると思うんですけれども、こういう事件についての少年の特性についてはどういうふうに大臣としては認識して、こういう今回の少年法改正につながっているんでしょうか。

長勢国務大臣 個別の事件に関連する少年の特性について述べるということは差し控えたいと思いますけれども、最近の非行少年の特徴として一般的によく言われることは、善悪の見きわめがつかないというよりは、その場の感情に任せて意思決定を行い、規範を軽視する態度が目につくという指摘ですとか、年齢相応に人に対する思いやりや人の痛みに対する理解力を持つことができておらず、対人関係の結び方が身についていないという指摘などもよく聞くことでございます。

 御指摘のように、厳罰にすればいいというものではないのではないかということもあるでしょうし、といって、一方、何もしなければいいのかという御意見も片方にはあるわけで、その議論を踏まえて今回の法案としたものであります。

 もちろん、御指摘のような具体的な事件もありまして、そういう事件を契機にこういう法案が議論されるようになったということは否めない事実でございますけれども、この法案は具体的などれかの事件に対処するということを目的にして考えてきたものではないことは御理解をいただきたいと思います。

平岡委員 ちょっと今大臣が、何もしなくてもいいという根拠はないというような趣旨のことを言われて、ちょっと全体の脈絡の中でとらえなきゃいけませんけれども、私は、何もしなくてもいいということを言っているのじゃなくて、現行法のもとでもきちっと対応できていないところがあるのではないか、むしろ現行法のもとでしっかりとした対応をとっていくことの方が少年のためにはいいのではないか、そういうことを怠っておきながら、何か殊さらに厳罰化の方向にある法制度の改正をやっていくのはおかしいのじゃないかということを指摘させていただいているわけであります。

 そういう意味で、これはまた個別の問題を議論する中でそういう認識に立って議論をさせていただきたいというふうに思いますので、問題の指摘だけとりあえずさせていただきたいというふうに思います。

 そこで、今回の改正についてのそれぞれの項目について、概括的に議論を進めていきたいというふうに思います。

 まず、警察官の調査権限の拡大ということが今回の改正の中で行われようとしているわけでありますけれども、触法少年あるいは虞犯少年の調査権限の問題以前の問題として、少年事件全般に対する警察官による捜査、調査の問題として問題点をちょっと議論してみたいと思うんです。

 少年の場合でも、事実上強制的に身柄を拘束されて事情聴取を受けているというようなことがあるわけでありまして、任意の調査とは全く名ばかりというような状況の中で事情聴取が行われているということも聞くわけであります。

 そういうことでいけば、その事件がいずれ家裁に送致されるのか、それともまた逆送という形で刑事裁判がされていくのか、それはわかりませんけれども、家裁送致相当の事件についても、成年の被疑者に認められている黙秘権等の権利が保障されるべきではないかというような意見があるわけでありますけれども、この点について、どのようにお考えになっておられますでしょうか。

長勢国務大臣 触法少年及び虞犯少年については、刑事責任を問われる可能性がない以上、黙秘権、供述拒否権の問題は生じないという見解が有力であるというふうに考えております。

 また、触法少年及び虞犯少年への質問についても、本法案の第六条の二第二項に、「事案の真相を明らかにし、もつて少年の健全な育成のための措置に資することを目的として行うものとする。」というふうに定めておるわけでありまして、そのことをもちろん基本として、少年を適切に保護するために、少年がみずから話をしやすい環境を整えることも重要であると思っております。

 そういう中で、仮に供述拒否権の告知を一律に義務づけるとするならば、少年に正直に話をしなくてもよいという誤った意識を生じさせるおそれもありまして、調査の目的には沿わないというふうに考えるわけであります。したがって、供述拒否権の告知を一律に義務づけるというのは適当ではないというふうに考えております。

 もちろん、少年に強制的に供述をさせるというようなことを容認するというものではないわけでありまして、調査に当たって、今申し上げました規定に沿って行うことが必要であるということは言うまでもないことだと思っております。

平岡委員 一般的に指摘されている問題ではありますけれども、これから触法少年あるいは虞犯少年に対する調査権限の議論をするときには、当然こうした問題もあわせて考えていかなければいけないという意味においてちょっと指摘させていただきましたので、これについてはまた後刻しっかりと議論をしていきたいというふうに思います。

 それから、少年に対する取り調べの問題として指摘されている話としては、二〇〇〇年にフランスの刑事訴訟法の改正では、少年に対する取り調べをビデオ録画するということが法制化されているようでありますけれども、特に、一般の刑事事件についても我々は取り調べの可視化ということを言っているわけでありますけれども、とりわけ少年についてもこの必要性というのは高いのではないか。

 というのは、よく指摘されておりますけれども、少年の場合には、いろいろと大人に誘導されて、あるいは大人の言うことを聞かなければいけないという、そっちに迎合するという意識、そういうものが一般的にあるというふうに言われているわけでありますから、そういう必要性が高いのではないかというふうに思うんです。

 その意味において、少年事件の取り調べの可視化について、大臣としてはどのようにお考えになっておられますでしょうか。

長勢国務大臣 取り調べの可視化そのものについては、何度もこの委員会でも御議論させていただいておるところでございますが、取り調べ全体の中で、その位置づけ等々を踏まえて検討しなきゃならぬなというふうに思っておりまして、少年事件であっても被疑者の取り調べが有する役割の重要性に変わりはありませんので、同じように刑事司法制度のあり方全体の中で慎重に検討しなきゃならぬというふうに思っております。

 また、そもそも、触法少年や虞犯少年に対する質問というのは、刑事処分に結びつく犯罪捜査ではなく、身柄拘束もしないで任意に行うものでありますから、質問を録音、録画した場合には、少年を取り巻く家庭環境その他の人間関係、少年自身の抱える問題など、プライバシーに深くかかわる事実を話題とすることが困難になるということになりますので、少年に供述をためらわせる原因となり、事案の真相を解明し、少年の健全な育成のための措置に資するという調査の目的を阻害しかねないというふうにも考えられます。

 先ほど御答弁申し上げましたように、調査が、真相の解明とあわせて少年の健全な育成のために資するという目的に沿ったものでなければならない、またそのようにするように配慮しているところでございますので、今、この可視化ということについては不適切ではないかというふうに私は考えております。

平岡委員 今大臣が可視化が適切でないという理由として挙げられた理由というのは、この委員会でも一般の刑事事件について言われていることと余り違いがなくて、特に少年の場合はその影響が大きいんじゃないか、そういう指摘なわけですね。我々は、そうじゃなくて、少年事件の場合は、逆に、取り調べの中でいろいろな弊害が起こっている、その弊害を取り除いていくためにも可視化が必要ではないかという、そこの意見のぶつかり合いだろうというふうに思いますけれども、この話は取り調べの可視化全体の中でもしっかりと議論していかなければいけないというふうに思っております。

 そこで、これは今回の改正とは直接関係ないんですけれども、私たちが将来的に修正案を考える際に基礎的な前提条件として知っておきたいんですけれども、現在の少年法の第十条に付添人という制度があるのであります。「少年及び保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人を選任することができる。ただし、弁護士を付添人に選任するには、家庭裁判所の許可を要しない。」こういう規定になっていまして、実務としては、少年単独でもこの十条の規定によって付添人を選任することができるというように、ある意味では権利能力を与えた規定であるというような取り扱いがされているようでありますけれども、そういう理解でいいのかどうか、そこをちょっと確認させていただきたいというふうに思います。

長勢国務大臣 確認ということでありますので、間違いのないように御答弁申し上げたいと思いますが、少年法第十条は、少年及び保護者は家庭裁判所の許可を受けて付添人を選任することができ、ただし、弁護士を付添人に選任するには家庭裁判所の許可を要しない旨定めております。したがって、家庭裁判所における審判手続上、少年はみずから付添人を選任することができると考えられます。

 民法上は、未成年者が委任契約などの法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならず、これに反する法律行為は取り消すことができることとされておりますが、この民法上の効力とは別に、少年法上は、少年による付添人の選任は有効と解しております。

平岡委員 そういう取り扱いがされているということの是非というのはまたあるんだろうと思いますけれども、そういう取り扱いがされているということであるならば、それを前提にして、これからまたちょっと修正問題についても議論をしていきたいというふうに思います。

 そこで、今回の改正の大きな眼目となっている触法少年に対する調査の問題であります。

 先ほどちょっと大臣が触れられてはいましたけれども、触法少年について警察の調査権限を認めるというような改正になっているんですけれども、どうしてそういう必要性があるのか、この点について御答弁をいただきたいと思います。

長勢国務大臣 現行法のもとで、警察による調査にいろいろ困難がある、あるいは少年の健全育成のために問題があるということは申し上げたとおりでございますが、少年事件において事案の真相を解明するということは、非行のない少年を過って処分しないためにも、また、非行のある少年について、その少年が抱える問題点に即して適切な保護を施し健全な育成を図るためにも不可欠でありますから、こういう問題点を解決していくことが非常に大事だと思います。

 しかし、現実には、触法少年の行為については、刑事訴訟法に基づく捜査ができないとの理解から、捜索等の法律に基づく強制処分を行うことができず、また任意で行う調査についても法律上の根拠が明確でないため、先ほども申しましたような、円滑な調査に困難が伴う、事案の解明が十分にできないという場合がありますので、少年の健全な育成のための措置に資するように、警察の調査権限を法律上明確にすることとしたものでございます。

平岡委員 いわゆる触法少年について言えば、現在でも警察はいろいろ、調査といいますか、調べることはやっているんだろうと思いますけれども、それは権限なくやっているという理解なんですか。多分、そうではなくて、何らかの法的根拠に基づいてやっておられるんだろうというふうに思いますけれども、今現在はどういう根拠に基づいてどういうことまでが行われているのか、この点についてはっきりと答えていただきたいと思います。大臣じゃなくても別に結構です。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 警察では、今お話がございましたように、これまでも触法少年に係る事案についての調査を行っております。

 この根拠でございますけれども、警察法二条に定める警察責務の遂行のための任意の活動として行っているものでございまして、今回の改正はこの活動の権限の明確化を図ろうとするものであるというふうに理解をしておりまして、捜索、差し押さえ等の部分を除けば、これまでの警察活動に加えて新たな権限を付与するというものではないというふうに理解をしております。

平岡委員 強制調査権限の方はとりあえずおくとしても、今までの法律で権限としてはあるんだということであるならば、それをもっと明確にしていくといいますか、明確というのは、こんな形でやるというんじゃなくて、もっと周知徹底されるような形で考えていけばいいんじゃないかという気がするんです。

 先ほどもちょっと言いましたように、今回、調査権限を明確化するという中で何か一気に物事が大きく広がってしまったというのが私の印象でありまして、どうも、やろうとしていることが、本来明確にするというふうなことで言われているものがそれ以上に何か拡大をしようとしているのではないか、そんな印象がするわけです。

 そういう意味でいくと、そもそも警察法の第二条で権限があるんだというふうに整理していること自体がいいのかというところも、私は、もう一度検証しなければいけないんじゃないかというふうに思います。いわば設置法的なものを根拠にしてどこまでの行為ができるのかを考えるというのも、ある意味でちょっと雑な議論になっている、そんな気がします。

 これはまた議論させていただくとして、今回、触法少年について、警察が調査権限を明確にするという位置づけの中でしている改正でありますけれども、この調査権限が及ぶ範囲、触法少年だけじゃなくて、政府の原案では虞犯少年も入っているわけでありますけれども、この調査権限が及ぶ範囲というのはどこまでと考えておられるのか。いわゆる非行事実に関する部分に限定される調査権限なのか、それとも少年の要保護性に関する調査も対象としては含まれるというふうに考えておられるのか、この点についてお答えいただきたいと思います。

長勢国務大臣 警察の調査の対象という御質問でございますが、基本的には、いわゆる非行事実の存否やその原因及び動機を含む内容というものが中心になるというふうに考えておりますけれども、このほか、警察がとるべき措置の選択や処遇意見の決定などのために、少年の性格、行状、経歴、教育程度、環境、家庭の状況、交友関係等のいわゆる要保護性に関する事項も含まれるものと考えております。

平岡委員 ちょっと今の議論を聞いていると、少年に対してとるべき措置について考えるためというふうに言われたんですけれども、十四歳未満の子供たちについて言えば、そういうトータルな役割を果たすというのは、何も警察じゃなくて、児童相談所なり児童福祉施設といったようなものが中心となってやるべきだというふうに私は思うんです。

 今回の改正では、警察が自由にいろいろなことができる、非行事実に関する調査もできれば要保護性に関する調査もできる、それを何の制約もなくできる、そんな仕組みになっているように思うんですけれども、どうも、それはちょっと考え方として逆じゃないかというふうに思うんですけれども、その点はどうでしょう。

長勢国務大臣 いわゆる触法少年、虞犯少年については、児童相談所あるいは家庭裁判所も、ちょっと済みません。ちょっとタイム。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 法務大臣、どうぞ。

長勢国務大臣 御質問と合わなければ、また改めて答弁させていただきますが、要保護性まで踏み込むのはおかしいのではないかという御質問であると思いますが、となれば、警察の調査は、非行事実の存否やその原因及び動機を含む内容というものが中心であることは当然でありますので、それに関連して、先ほどのような答弁を申し上げた次第でございます。

平岡委員 それが中心となることは、確かにそうなんだろうと思いますけれども、さらに要保護性に関する部分への調査にまで及んでいくということとあわせて考えると、警察が何らの制約もなく調査に入ってしまう、そういうことで、これまでの児童福祉の観点あるいは少年の健全育成という観点からしても、私は警察が出過ぎじゃないかというふうに思うんですね。

 そういう意味で、ちょっと提案型の質問になると思いますけれども、触法少年事件に関する調査の主体というのはあくまでも児童相談所とか家庭裁判所というものであって、仮に警察が調査をするということの必要性があると認められるような場合には、それらの児童相談所とか家庭裁判所というものが警察に調査協力を求めるという形にやはりとどめておくことが必要ではないかというふうに思うんですよね。

 この点について、大臣はどういうふうにお考えになりますでしょう。

長勢国務大臣 それぞれ役割があるわけでございます。児童相談所においても調査をされるわけでありますけれども、児童相談所における調査というのは、児童や保護者等にどのような処遇が必要かを判断するために、児童の状況、家庭環境、生活歴や生育歴、過去の相談歴、地域の養育環境等の事項を調査するわけでありまして、非行事実の有無や内容を解明するということは直接の目的としては位置づけられていないというふうに承知をいたしております。また、家庭裁判所の調査についても、裁判所としての性格からいたしまして、事件が認知された直後の段階から能動的な証拠収集をみずから行うということは事実上困難でございます。

 このような状況において、少年の健全育成に資するように事案の真相解明を適切に図るためには、事実解明の手法や刑罰法令等に関する専門的知識と経験を有する警察が、児童相談所等から協力を求められて受動的に調査を行うだけではなくて、主体的かつ迅速に調査を行うことが不可欠であり、その結果を児童相談所や家庭裁判所が活用するという仕組みにすることが適当であると考えておるわけでございます。

平岡委員 一定の場合には警察の調査権限が触法少年に関する事件に及ぶということ自体を否定するつもりは私はないんですけれども、ただ、やはりそこは、おのずと警察としての制約があるでしょう。例えば、児童相談所とか家裁とかにどう持っていくかという事実関係の調査というふうなところ、それから、それ以上に行ったときには、むしろ児童相談所とか家庭裁判所というのが中心となって、警察がそれに協力していくというような形、そういうことが基本として整理されていないのが今回の政府の提案だというふうに私は思います。

 余りにも警察に対して広大な権限を与え過ぎているというのが率直な感想でありますけれども、先ほど来からしていただいている答弁をしっかりと踏まえて、この問題については、さらに突っ込んだ議論を後日させていただきたいというふうに思います。

 そういう中で、実は、特に触法少年、十四歳未満の少年について言えば、警察官の取り調べがどういうようなものとして少年に影響があるのかという点について指摘がございます。例えばこういう指摘があるんですけれども、この点についてどうお考えになるかということをお聞かせいただきたいと思います。

 すなわち、表現能力が未成熟で暗示や誘導にもかかりやすい低年齢の少年にまで警察官の取り調べが行われるとするならば、虚偽自白を生み出すのではないかというような指摘がされているところでありますけれども、今回の触法少年に対する調査の仕組みを明確にするという中で、この点の指摘に対して、警察としてはどのように考えておられるんでしょうか。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 前提としては、先ほど申し上げましたが、今回の権限の明確化ということの趣旨は、新たな権限をこれによって付与するわけではないということでございまして、御指摘の取り調べということでございますけれども、我々、取り調べと申しますと捜査を想起させますので面接と言っておりますけれども、面接を含めて、調査の性格、運用のあり方が変わるわけではないということがまず前提でございます。

 その上で、現在どういうふうに行っているかということでございますが、警察ではこれまでも、非行少年の調査につきましては、国家公安委員会規則として少年警察活動規則というものがございますけれども、この中で、少年の心理、生理その他の特性に関する深い配慮を持って接すること、また、少年の性行及び環境を深く洞察し、非行の原因の究明や犯罪被害等の状況の把握に努め、その非行の防止及び保護をする上で最も適切な処遇の方法を講ずるようにすること等と規定しておりまして、また、警察庁次長通達でございます「少年警察活動推進上の留意事項について」におきまして、少年に応じてふさわしく、わかりやすい言葉を使用すること、また、少年の話のよい聞き手となって、一方的にこれを押さえつけようとせず、その原因を理解することに努めることなどを定めておりまして、少年の人権でありますとか、今御指摘のあったような特性に配意した対応をするようにしているところでございます。

 また、非行少年の調査に当たりましては、犯罪捜査規範第二百七条を準用いたしまして、少年の呼び出しまたは取り調べを行うに当たっては、当該少年の保護者またはこれにかわるべき者に連絡することとするなど、その適正の確保に努めておりますほか、また、非行少年の自白に偏重することなく、物的証拠の収集、そして、これと供述との整合性でありますとか、または裏づけ調査の徹底といったような、適正を確保するための慎重な対応を行っているところでございます。

平岡委員 今説明されておられること、運用の実態がどうなっているかということも、我々としてもなかなかチェックするのが難しいという状況ではありますけれども、いずれにしても、今回、こういう調査権限を明確にするという法律改正をしようとする中で、本当に今言われたようなことが実行できているのかどうか、このことについても、いずれ確認をしていきたいというふうに思います。

 そこで、先ほどの未成年者の権利能力の関係で付添人の話をちょっと聞きましたけれども、触法少年も、十四歳未満ではありますけれども、先ほどの少年法第十条で言う少年から除外されているわけではないわけなので、十四歳未満でも第十条のことは変わりないという理解でいいんですよね。

長勢国務大臣 触法少年について、家庭裁判所で調査や審判が行われる場合においては、みずから付添人を選任することは可能であるというふうに考えております。

平岡委員 そこを確認させていただいて、きょうは質問通告していませんので、また、家裁による調査あるいは審判以前の問題として付添人のあり方を議論させていただきたいということで、ちょっと予告だけさせていただきたいというふうに思います。

 次に、警察の調査権限の中で、もう一つは、虞犯少年あるいは虞犯少年である疑いのある者に対する調査の権限も今回明確にしたいということで、触法少年と一緒に手当てをされているわけでありますけれども、虞犯少年という概念はこの法律の中で一応定義をされているということでありますけれども、虞犯少年である疑いのある少年というのは、ちょっとなかなか、どこまで入るのかよくわからないということですね。虞犯少年というのはそもそも、おそれのある少年。おそれのある少年である疑いのある者という極めて漠然とした概念となっているわけですね。

 ちょっと私としてはイメージがわかないのでありますけれども、具体的にはどんな少年を念頭に置いて虞犯少年である疑いのある少年というところまで調査対象を拡大しようと、調査対象を拡大と言うとちょっと言葉があれですが、今でもあるんだと言われたら、そうかもしれませんけれども、今までは、虞犯少年である疑いのある少年に対する調査というのが法律上どこで読むのかというのがよくわかりませんけれども、いずれにしても、対象となる人たちというのは具体的にはどんなイメージを言っておられるのか、このことについてお答えいただきたいと思います。

長勢国務大臣 虞犯少年の定義は、先生おわかりのとおり、少年法三条に規定されておる、家出の性癖とか、暴力団関係者との不良交友や、いかがわしい場所への出入りといった虞犯事由に該当して、かつ、その性格または環境に照らして、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれ、いわゆる虞犯性があるという者を虞犯少年というわけでございます。

 この虞犯少年というのは、最終的には家庭裁判所の審判の結果でありますから、調査の開始時点では虞犯少年かどうかはまだわからないわけで、当然、調べる段階では、その疑いがある者かどうかということを認定のために調査を行うのでありますから、こういう表現にしておるわけでございます。

 したがって、先生御懸念のように、何でもかんでもということはないわけでありまして、例えば、先ほども少し申し上げましたが、深夜徘回をしているとか喫煙をしたというだけで対象になるわけではありませんで、例えば、覚せい剤取締法違反容疑で暴力団のところを捜索したときに、同所に、そこに家出をして居候をしているのではないかというような少女を発見した、このまま放置をすれば薬物使用に及ぶおそれがあるという場合などが対象になるというふうに考えております。

平岡委員 先ほど指摘させていただいた国連子どもの権利委員会の対日審査の最終見解の中でも、こういう五十四項の(f)というところに、今回改正されようとしていることを予想して出ているのかもしれませんけれども、問題のある態度をとる児童を犯罪者として取り扱わないよう確保することというふうになっておりまして、いや、これは犯罪者として取り扱おうとしているんじゃありませんというふうに形式的に御答弁になるのかもしれませんけれども、まさに方向性としては、そういう虞犯少年である疑いのある者を、調査権限を明確にして警察が調査を進めていこうということは、より犯罪者に近い者として取り扱っていくということを意味しているという意味において、この勧告に反するような改正をしようとしているというふうに私は思わざるを得ないんです。

 大臣、この点については、いや、これは言葉が、犯罪者じゃありませんとかというようなことは答えなくていいですから、本質的なところで、そういう勧告に反する改正の方向になっているんじゃないかという点について、どういうふうにお考えになりますでしょうか。

長勢国務大臣 まさに先に御答弁いただいたようなものでございますけれども、虞犯少年は犯罪少年とは明確に区別をされておりますし、刑事処分を受けることはないわけでありますので、犯罪者として取り扱われることはないということが答弁になるわけでありますけれども、先ほど来こういうお話があるわけですが、我が国は我が国として、その国に合った形でやるべきことはやっておるということも踏まえて、御指摘のような団体に対して理解をしていただくように努力していかなければならないなと思っております。

平岡委員 ちょっと細かい質問になってしまうかもしれませんけれども、今回の改正法案の六条の二のところに、虞犯少年あるいは虞犯少年である疑いのある者を発見した場合について調査の対象となるのが、事件について調査をするということになっているんですけれども、我々は、一般的に、事件というと、殺人事件が起こった、傷害事件が起こった、その事件を調査するというのは非常にわかりやすいんですけれども、この虞犯少年あるいはその疑いのある人に対する事件の調査というのが、虞犯少年の要件の三条のところを見ても、どうも何か事件性というものがちょっと我々にはよくわからないんですけれども、一体これは何を対象に調査をしようとしているのか、これをちょっと明確にしてもらえますか。

長勢国務大臣 一般用語としての事件というのとは若干ずれがあるんじゃないかという先生の御懸念だと思いますが、ここに言う事件とは、まさに対象の少年が虞犯少年に該当する、先ほども御説明いたしております虞犯事由の一つに該当して、かつ、虞犯性があるかどうか、この虞犯事由及び虞犯性を基礎づける事実のことを事件というふうに承知しておるわけであります。

平岡委員 まさに、そういうような説明をされると、一体、事件というのはどこからどこまで入るということがどこで明確にされているのか、よくわからないんですね。虞犯少年について、この事件を明確にすれば調査の対象にしてもいいと言うつもりは全くありませんけれども、それほどかように虞犯少年に対する調査というものにあいまいさがあるということを私は指摘させていただきたいというふうに思います。

 そこを前提として、私なりに提案型の質問をさせていただきたいと思うんですけれども、虞犯少年に対する警察官の調査というのは、先ほど来警察庁の方から指摘がありましたように、多分、調査権限というのは、警察法第二条とか、そんなところを引用されるんだろうと思いますけれども、あくまでも児童相談所への通告とか家裁への送致のために必要な限度で行われるべきものであって、少年法六条の規定による通告とか送致の前提としての調査であることを明確にした取り扱いとすべきではないかというふうに思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

長勢国務大臣 これを明確に法文化すべきだという御趣旨でしょうか、御質問は。申しわけありません。

平岡委員 今回の改正は、虞犯少年に対する、さっき言ったように、事件に対する調査とかという形で、一体どこまでが調査の対象になっているのかがよくわからない。非常に幅広過ぎるのではないか。さらに、どういうやり方をするのかということも、どこまでやるのかということもよくわからない。つまり、どうしてこういうものが必要なのかといえば、やはり少年法第六条の規定による児童相談所への通告とか家裁への送致ということの前提として行われるものであるというふうに私は思うんですね。

 であるならば、そのことを明確にする形での、これは立法でやらなきゃいけないのか、あるいは現行法を前提としての取り扱いでいいのか、その点は意見が分かれるところかもしれませんけれども、少なくとも、考え方としては、そういう調査に限定されるのであるということをやはり明確にしておく必要があるのではないかということを指摘させていただいているわけです。大臣の御見解をいただきたいと思います。

長勢国務大臣 今回の改正によって、警察が、御懸念のように何でもかんでも好き放題やれるという誤解を与えるようなものであってはならないと私も思います。

 御指摘のように、家庭裁判所あるいは児童相談所に対する警察の役割を果たすことを目的として行われるべきものだと思いますけれども、ただ、それをやることが前提でやるということになると、これはまたなかなか難しい、いろいろな調査の結果、そういうものではないということも起こり得るわけですから、そういう現実を踏まえて、適切に行うべきものと思っております。

平岡委員 今大臣が、調査の結果、そういうものではないケースもあり得ると言われたので、どういうケースがあるのかというのがちょっとよくわからないので、もう一遍答弁を法務省の中で検証していただきたいと思うんです。

 あくまで私が今問題にしているのは、虞犯少年あるいは虞犯少年の疑いのある少年についての調査ですから、もしそういうケースでないのなら、これは調査をしてはいけないというケースだから調査をしなくなるというだけの話だというふうに思いますけれども、さらに、その虞犯少年が、調査した結果として、何か警察がもっともっと出ていかなければいけないというようなケースというのは、私はちょっと想定できない。虞犯少年あるいは虞犯少年である疑いのある人に対してできるのは、児童相談所への通告であったり、家庭裁判所への送致ということでとどまるという話ではないかというふうに思います。そこは、法務省の中で大臣の答弁をもう一遍検証していただいて、また答弁いただきたいと思います。

 切りがいいので、ここで終わりますけれども、きょうは概括的な話をさせていただきました。概括的な話はまだほかにも、少年院送致年齢の下限撤廃あるいは遵守事項違反による少年院送致の問題、弁護士による国選付添人の問題、こういったような問題も概括的な質問ができていないので、それはしっかりとやらせていただいて、さらに突っ込んだ議論、特に問題と思っているところについて議論させていただくということで、きょうの質問は終わらせていただきたいと思います。

七条委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官小野正博君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、財務省大臣官房審議官古谷一之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 質疑を続行いたします。石関貴史君。

石関委員 民主党の石関貴史です。質疑をさせていただきます。

 まず初めに、警察にお伺いをしたいんですが、三月二十六日の産経新聞の朝刊、そして同日二十六日の日本経済新聞の夕刊に報道されております件です。

 産経新聞の見出しは、「日テレ集団暴走誘発?」という見出しが出ております。「日本テレビが平成十八年八月に放映した情報番組「NEWSリアルタイム」で特集したJR前橋駅周辺の集団暴走報道をめぐり、取材スタッフが暴走に参加した少年らに事前に撮影予定を伝えていたことが二十五日、群馬県警の調べで分かった。県警は、テレビ取材が大規模な集団暴走を誘発した疑いがあるとみている。」という産経新聞の記事です。

 そして、県警の調べなどに対し、この集団暴走に加わったうちの約二十人の少年らが、テレビの撮影があるから来て走ったと供述をしている。少年問題であり、道交法違反でこの少年たちは二十三人逮捕されているということであります。県警は、撮影の事実が少年らから次々と伝わって、少年らの派手に映りたいという心理から二回目の大規模暴走を引き起こしたと見ている。暴走後には、少年の携帯電話に取材スタッフが電話をかけていたことも通信履歴などから判明したと。

 県警の幹部の言葉だということで報道されておりますが、これは群馬県前橋、私の地元の群馬県のことでもあり、こういった事実があるのか、警察の方からこの件に関しての御説明をいただきたいと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、本件の暴走行為の方ですが、これは平成十八年七月三十日の午前一時ころ、前日が土曜日、二十九日で、日がかわった後でございますが、群馬県前橋市内のJR前橋駅前等におきまして、暴走族構成員等三十九人でございましたが、自動二輪車等二十四台の集団で暴走行為を行った事案でございまして、県警では、この暴走に参加しました被疑者三十七人、うち逮捕が二十三人でございますが、これを道路交通法違反で検挙し、順次送致したとの報告を受けております。

 それで、報道の方でございますが、当時、前橋駅前で、週末の夜ですが、暴走族等の少年が集まってたむろするという状況があったようでございますが、日本テレビ系列のテレビ制作会社の関係者によりまして、その事案の前の週あたりからこの駅周辺に集まる暴走族等の実態につきまして取材が行われておりまして、この過程でこの七月三十日の暴走行為につきましても取材が行われて、八月二十八日の御指摘の番組で放映されたというふうに承知しております。

石関委員 それがその事実だということなんですが、私がお伺いしたいのは、日本テレビがこの少年たちに、また来るよ、こういう発言をして、この少年たちは、先ほど申し上げた記事にあります、派手に映りたいという心理を働かせたということであり、日本テレビ側は、暴走行為の撮影予定を伝えていないというふうに日経新聞には答えているんですが、このことについては把握をされているんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 このような暴走行為があったときに、それの教唆あるいは幇助に当たるような行為がないかということは当然捜査するわけでございますけれども、群馬県警では、取材の過程でいろいろなやりとりがあったようではありますが、現在把握している状況からは、そのように共同危険行為等の禁止違反の教唆または幇助として立件すべきような事実は出ておらない、こういうことでございます。

 それから、その前後の事情からしますと、確かに、暴走族仲間の間でテレビ取材があるという話が広まって、いつもよりも大勢の者が集まってきたという可能性がうかがえるわけでありますけれども、ただ、それ以上のものではないということでございます。

石関委員 それでは、法務大臣にお尋ねをしますが、納豆の問題、やらせというのが先日あって、これは放送法とかそういう関係もあるのかなと思いますが、今、教唆あるいは幇助ではないかというような言葉が御答弁の中にもありましたが、この件に限らず、いわゆるやらせということをした場合には、テレビ局は何か罪に問われるんですか。

長勢国務大臣 具体的なことは差し控えたいと思いますが、法と事実に基づいて、犯罪があれば問題になるだろうと思います。

石関委員 この件を離れて、いわゆるテレビ局によるやらせ、そのことによって引き起こされる事象にもよるんでしょうけれども、テレビ局がやらせをするとどういう罪に問われるんですか。

長勢国務大臣 具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

石関委員 やらせの一般論でお尋ねしたんですが、差し控えたいということで、差し控える理由がちょっとよくわかりません。やらせということでお尋ねをしたのであります。

 納豆でやせるということでどれだけの視聴者に被害がもたらされたかということを私はよく承知しておりませんが、そういった問題とはまた異なって、日テレ集団暴走誘発か、こういう見出しの今御説明があった件について、私は大変な問題だと思うんですね。

 教唆か幇助ではないかということですが、この件はそれには当たらないということですが、どうしてそういう判断をされているんですか。何でこれは教唆か幇助に当たらないんですか。これは県警の幹部という人が言っているわけですよね。少年らの派手に映りたいという心理があって、少年たちもそのように証言をしているということなんですが、これは教唆や幇助に当たらないという判断をされているのか、それとも、捜査を続行して、そのことも追及をしていくという姿勢で今捜査に当たられているのか。テレビ局は教唆や幇助ということはしていないという結論に今至っているのか。どちらなんでしょうか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、教唆といいますと、人に犯意を生じさせ、犯罪を実行させるということであります。したがって、最初に犯意はなかったのに、これを生じさせるということになります。それから、幇助ということになりますと、実行行為以外の行為で、正犯の実行行為を容易にする、こういうことでございます。

 これに該当する事実があったかどうかということでございますけれども、これは捜査の過程で得られてきている事実でございますので細かく御説明するのは控えるべきと思いますけれども、県警の判断といたしまして、それらのいろいろな捜査をした中で出てきた事実を判断して、教唆なり幇助に当たるような事実というのは出てきておらない、こういうことでございます。

石関委員 では、少年たちが言っていることは事実ではない、そういうことなんですか。この具体的な事例を離れて、少年たちが言っていることが事実であり、テレビ局がまた来るよと言ったから少年たちが集まったと。

 これは地元の問題ですので、私は地元の方にもお尋ねをし、私自身も知っている範囲で申し上げると、以前はここの前橋でこういった集団暴走というのは大変多く行われていた、私がさらに今より若いときはありましたし、今はどうかというふうに地元の方に尋ねたら、今は昔のようには行われていない、人数も少ないし、全然頻繁に行われていないということだったんです。

 テレビ局が来たから少年たちがみんな集まれということになったという報道なんですけれども、例えば、今のやらせの問題と同じですけれども、この件を離れて、テレビ局が撮影に来るからみんな集まってくれということで、それで暴走する少年たちが集まって暴走行為を行った、これは教唆とか幇助になる可能性はあるんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一般論として、暴走行為をするつもりがなかった段階で、これから撮影をする、雑誌に載せますとか、あるいは映画をつくりますとか、そういうようなことで撮影するということで、集まって走ってくれ、こういうことになれば、これは教唆に当たり得ます。実際に、過去にはそのようなもので立件したケースもございます。

石関委員 これはそういった教唆等に当たらないというふうにさっきおっしゃったんですけれども、当たった例というのは何があるんですか、ちょっと今おっしゃいましたけれども。こういうのは教唆だったり幇助だったということで、罪になったという例はどういうものがあるんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 事実関係になりますと、ちょっと不正確になることがあり得るということでお聞き願いたいと思いますが、ポイントだけ申し上げますと、例えば、暴走族関係の映画作成のために暴走族の集団暴走を演出したフリールポライターを共同危険行為等の禁止違反の教唆として検挙したことがございます。あるいは、集団暴走を撮影してやるぞというふうに言いました出版社の経営者を共同危険行為等の禁止違反の教唆として検挙したことがある、そんなことでございます。

石関委員 まじめに御答弁いただいているので余り絡みつくつもりはないんですけれども、とはいえ、この件に関しては、日テレの件ですけれども、少年たちが、テレビの撮影があるから来て走ったと供述をしているんですね、にもかかわらず教唆等にならない。

 捜査中だから答えられないということでないので、丁寧に御答弁いただいたので、そこは評価を申し上げたいと思うんですが、しかし、少年がこういう供述をしているにもかかわらず、教唆等に当たらないという判断を既にされたということは、どういう判断基準でやられているんですか、そこをもう一回詳しく教えてください。

矢代政府参考人 取材それ自体は教唆とか幇助になりません。そういうことがあったことについて取材しましても、それは教唆、幇助ということにはなりません。

 したがいまして、当然、取材の過程ではいろいろなやりとりはあったわけでしょうが、ただ、それの中で、先ほど申し上げましたように、集団暴走をする意思がなかったのに集団暴走をするような意思を生じせしめたとか、あるいは容易にしたとか、そういうことに該当するようなものが見出せないということでございます。

石関委員 今、警察の御答弁で、この件については教唆等に当たらないということで御判断を既にされたということでありますので、そのように理解をさせていただきました。

 しかし、これは少年法の改正の審議であって、やはり少年というのはテレビに出たいから、みんな集まれと言うと、おれもぜひ出たいと。暴走で出るというのは私はとんでもない話だと思いますが、我々大人になって判断がつくことと、少年の考え方とか心理というのは全くまた違う部分もあるということの一つの事例かなというふうに思います。であるから、この少年法の審議というのは大変慎重に、我々大人が子供の心理というのをよく考えた上で行わなければいけないなというふうに改めて思いました。

 それで、少年法自体の質疑に移らせていただきたいと思います。

 既に大臣から提案理由の説明をいただいているところなんですが、改めて、今回の改正の主な目的というのがどこにあるのか、大臣から丁寧に御説明をいただきたいと思います。

長勢国務大臣 提案理由の説明で申し上げましたように、少年非行をめぐる深刻な状況等に対応しまして、また、少年の非行に関する事実の解明をより一層深めるとともに、少年の状況に応じた保護処分の選択を可能にするということなど、少年の健全育成を図るために必要な法整備を図るということを主たる目的といたしております。

石関委員 それでは、この少年法ですけれども、そもそもの法の沿革というものについてお尋ねをしたいと思います。

 私の知っている限りでは、GHQの介入によって施行されたということであるので、もともとこの法律の考え方にはアメリカの伝統的な保護主義が反映されている、こういった識者の意見もあり、私も、法を読むと、またアメリカの当時の占領下の状況等を考えると、こういったことでこの法がつくられて施行されたのかなというふうに思うんですが、そういったところを私の関心の最大の部分として御理解いただいた上で、法の沿革について御説明をお願いします。

小津政府参考人 ただいま法の沿革につきまして詳細に御説明申し上げる資料を持ち合わせておりませんで恐縮でございますけれども、少年法が施行されましたのは昭和二十四年でございます。法律が制定されましたのは昭和二十三年でございますから、そういう時代、つまり、戦争が終わって、いろいろな意味で、日本の社会それから法律制度を新しくしていこうという中でつくられたものでございます。日本国憲法ができたということも一つの大変大きなことでありました。その全体としての戦後の法制度の改革、これにつきまして、アメリカ法制度の影響が大変大きかったということは御指摘のとおりでございます。

 御案内のとおり、戦前の我が国の法制度は、明治以降、主として大陸法系の影響を強く受けておりました。明治の初めには、さてイギリスはこうだ、フランスはこうだ、ドイツはこうだとやっておりましたし、民法は一番最初にフランスの方に来ていただいてやったということがございますが、刑事法の分野で申しますと、ある時期からはドイツ、なかんずくプロイセンの影響を大変強く受けたと承知しております。これは、刑法もそうかもしれませんが、特に行刑法の分野では大変強い影響を受けてまいったと思います。

 そういうことでございますので、全体のシステムが、我々が申しますところの大陸法系の影響を強く受けて、それはそれとして、一つの立派な制度として機能してきたと我々は思うわけでございますけれども、戦後のそういう状況の中で、少年法もアメリカ法の影響を受けてと申しますか、そちらをいろいろな意味で参考にして新しくつくられたものである、このように承知しております。

石関委員 今局長からアメリカの考え方の影響を強く受けてこの法が制定されたということですが、大臣もそのような御理解をされているということでよろしいでしょうか。

長勢国務大臣 そのとおりであります。

石関委員 それでは、アメリカにおいてはこういった少年法というようなものはあるんでしょうか、そして、その基本的な考え方、法の精神というのはどういった考え方に基づいてそういった法律があるのか、この二点についてお尋ねをします。

小津政府参考人 アメリカの少年法制度もいろいろと変遷もあろうかと思いますし、州ごとのこともあろうかと思います。ということで、恐縮でございますが、確たることを申し上げる準備がないわけではございますけれども。

 戦後のアメリカの少年法制の中におきましても、一つの基本的な理念といたしまして、非公開の裁判所で職権主義的な少年審判の手続が拡大したという時期もあったようでございます。また他方で、少年の手続におきましても、適正手続と申しますか、これをできるだけ保障していかなければいけないという流れもあり、いろいろな改革が行われて現在に至っているものではないか、そのように認識しております。

石関委員 何か私はよく理解できなかったんですけれども、改めてお尋ねをしますが、アメリカには、先ほど私が申し上げた言葉で、伝統的な保護主義だ、子供を、少年が犯罪を犯しても国で何とかそれを矯正をし更生をさせていこう、大人の犯罪とは違うというとらえ方をしているというふうに私は理解をしておりますが、仄聞するところによると、その後アメリカでは、どうもこの少年法に類する法律の考え方というのが厳罰主義へ転換をしている、こういったことを私は聞いているんですが、変遷があるというふうな御説明が今ありましたけれども、そういうことはあるんですか。

 私の理解が正しいかどうか。子供を守ろうというような基本的な考えから、その後アメリカで厳罰主義へこの少年法に類するものが転換をされた、こういうことはあるんですか、それとも、余りそれは変わっていないんですか。

小津政府参考人 先ほどいろいろな変遷があるということをちょっと申し上げたわけでありますが、その前提として、通常言われておりますのは、少年法について、英米型は福祉的と申しますか後見的色彩が強い、大陸型の方が刑事の特別法的な性格が強いというように言われているようでございます。

 アメリカにおきましても、その後のいろいろな動きというのをフォローしておるわけではないので恐縮でございますけれども、各州ごとに、深刻化する少年犯罪に対処する方向での改革の動きもあったというふうに聞いておりますけれども、その詳細につきましては、ただいまちょっと手元にございませんので、恐縮でございます。

石関委員 それでは大臣にお尋ねをしますが、そもそも、少年法の理念というか、ここにあるのは犯罪者を処罰するということだけではないんでしょうね。少年をどのように更生させ、国で、ある意味で守っていくかということであり、アメリカには国親、英語で何と言うかわかりませんが、こういった概念がある。国が子供を守り育てていこうということがあり、このことも、私が先ほど申し上げた、アメリカの考え方が反映されているとすれば、日本の少年法にも反映されていると思うんですが、こういった意味での少年法の理念というのはどういったものなんでしょうか。

長勢国務大臣 少年法の一条にこの少年法の目的が書いてあるわけでございまして、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年及び少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。」と明記されておるわけでございまして、この考え方は今も……(石関委員「国親ですか、それは」と呼ぶ)国親という言葉はちょっと私は余りよく存じ上げませんが、こういう考え方で今進めております。

石関委員 少年法の考え方、第一条にありますから、御説明いただきまして、より理解をしました。

 それでは、大臣は、趣旨説明の中で、近年、少年非行は深刻な状況にある、このようにおっしゃっていますよね。しかし、この深刻になっているというその根拠は何なんでしょうか。こういうふうに数字が変化をしているとか、凶悪犯罪がこれだけふえているから本当に以前に比べて深刻なんだということなのかなと思うんですが、深刻の根拠を教えてください。

    〔委員長退席、倉田委員長代理着席〕

長勢国務大臣 おっしゃるように、統計的にはピークの時代から比べると減ってはおりますけれども、水準としては非常に高い水準で推移をしてきておる。また、人口千人当たりの検挙率というものも高い水準にあるということが言えると思いますし、また、罪種別にいいますと、凶悪重大な犯罪の率が平成九年以降は大変高い水準になっておるということが言えると思います。

 こういう数量的なこともありますし、あわせて、最近の少年非行の特徴として、何かささいなことで大変なことに、残虐非道といいますか、冷酷といいますか、そういう非行に走る、あるいは動機そのものも何だかよくわからない、本人もよく説明ができないといいますか、不可思議といいますか、こういうことが今話題になっておるわけでありまして、これも私は大変深刻な事態ではないかなと思っております。

 こういう問題に対処してほしいというのが、今の一般国民の皆さんの要望であろうかと思っております。

石関委員 今まさに大臣が御答弁されたようなところで、しかし、本当に深刻なのかというところをお尋ねしたいというふうに思っております。

 大臣は同じ趣旨説明の中で、近年、凶悪重大な少年犯罪が発生しているというふうにおっしゃっておりまして、今もそのように御答弁いただきました。

 しかし、具体的にどんな事件があって、こういう少年の凶悪重大な犯罪というのを承知されているのか。幾つか凶悪重大な少年犯罪というのを挙げていただいて、御説明をいただきたいと思います。

長勢国務大臣 内容は省略いたしますけれども、お話しすれば思い出すような事件を若干申し上げますと、例えば、平成十五年には、長崎において、十二歳の少年による幼児誘拐殺人事件というのがありました。十六年には、佐世保において、十一歳の少年による同級生殺人事件というのがありました。十七年には、枚方において、十二歳の少年による実母傷害致死事件、また十八年には、吉川市における十三歳の少年による現住建造物放火事件というものがありました。こういうことが、大変深刻な事件であったと思います。

石関委員 近年ですとそういう事件がある、深刻化しているということですが、そのちょっと前を見ても、平成九年、神戸市の児童殺傷事件があり、十二年には、豊川市での主婦殺害、その後、バスジャックとか母親殴殺とか、これは確かに、大臣おっしゃるとおり、凶悪重大な犯罪というのはあるんですね。

 しかし、本当に近年になってこういった凶悪重大な犯罪が起こってきたのか、以前はそれほどなかったのかということを私はお尋ねしたいと思っておりまして、私の認識では、それ以前にもこのような事件というのは、数で判断できるかどうかわかりませんが、同じように起こっていたということではないのかなというふうに思っております。

 例えば、昭和四十年、一九六五年の時点でも、法務省がこのように述べているんですね。少年犯罪が凶悪化しているということを説明する中で、少年の凶悪犯は昭和四十年には昭和三十一年の一・五倍となっており、成人の凶悪犯が減少傾向にあるのと対照的である、また、凶悪犯が刑法犯の中で占める率は、成人が一・七%であるのに、少年は三・五%で著しく高い、四十年における少年の凶悪犯を内容的に見ると、強姦、強盗、殺人、放火、そのようなことが述べられております。これは、今大臣がおっしゃったのとほぼ同じことを昭和四十年にも法務省が言っているんですよね。

 大臣、もう一度お尋ねをしますが、これまでにも同じような事件があったんだけれども、殊さらに、ここ近年の今大臣が述べられたような幾つかの事件というのを取り上げて、凶悪化が進んでいるというふうに私は言えないのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。傾向が変わっているのか、どうなんでしょう。

長勢国務大臣 明治、大正、昭和、また戦後、おっしゃるように、まるでなかったのが最近起きたということはないのであって、その当時も少年による凶悪な事件はあったのではないかな、具体的には、正確には今把握をしておりませんが、そう思います。

 ただ、やはり法整備は、その時代時代、ほかの法制との絡みもあったり、国民の関心の向き方もいろいろ変わってまいりますから、当時は、起こる原因その他を含めて、いろいろな御判断があったのではないかなと思います。

石関委員 であれば、この提案理由にある、深刻化しているということは必ずしも言えないのではないかと思うんですが、この法を改正しようとする理由が、深刻化しているということであれば、そこがそもそも崩れてしまうんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

長勢国務大臣 先ほど申し上げましたように、なくなったのなら別でございますが、起きておることは事実でありますし、その数字、統計その他だけで深刻かどうかということにはならないわけで、やはり世間の受けとめ方、それから起こる原因等々も含めて深刻化しておるという認識に立って、この法案を提出させていただいておるわけであります。

石関委員 ちょっとそれでは納得がいきませんのでさらにお尋ねをしますが、少年による凶悪犯罪というのは、大臣が挙げられたものがあり、また私が補足をした、それから数年にさかのぼるものもありということで、しかし、これは近年急速に本当にふえてきたのかというのを私は疑問に思っておりまして、これは事務方で結構ですから、少し長いスパンで見ると、明治時代とか大正時代、昭和の戦前期というのは、この少年犯罪というのはどういう状況だったんですか。凶悪なもの、今大臣挙げられたようなものは、私はあったのではないかと思いますが、この長いスパンで見て、いかがでしたか。

小津政府参考人 戦前から戦後、また現在に至るまでの凶悪犯の推移という観点で、手元にある資料で御紹介いたしますと、殺人、強盗、強姦、放火、これを凶悪犯とくくりまして、これの検挙人員でございますけれども、戦前のずっと前のというのがございませんけれども、例えば戦争中の昭和十八年、十九年は一千件程度でございます。

 少年事件が戦後のピークであったと言われております昭和四十年代あるいは三十年代の終わりから四十年代、このころになりますと数千件という単位でございます。それからずっと下がってまいりまして、平成元年あるいは平成二年、三年のころが、件数的にはこの流れの中では一つの底を打ちまして、一番少ない数字が、一千二百人をちょっと切るぐらいになってまいりました。

 それからまた少しずつ上がってまいりまして、その後、多いところで二千四百件を超えるぐらいのところまで行き、そういう意味では、一千件ちょっとぐらいまでようやく落ちたのが、ここ近年、二千件近いところまで上がってきて、ここ一、二年は少し下がったといいますか、それでもやはり千八百件とか千七百件とか、そういう件数である、大体このような流れでございます。

石関委員 件数で見ると今御説明いただいたような状況であるということで、件数で見て、特にがあっと右肩上がりで犯罪がふえているということでもないのかなというふうに思います。

 また一方、大臣がおっしゃったような、凶悪な、世間の耳目を聳動し、こんなことが起こってほしくない、こういった凶悪な事件というのが果たして昔もあったのかないのかということについては、これは、一九五〇年代から八〇年ごろを調べると、同じようと言ったら恐縮ですけれども、やはり凶悪な事件というのは大変あるんですね。

 一九六九年には、川崎市で同級生の全身数十カ所を刺して殺害をした、切断した頭部を学校の裏庭に置いた。これは、近年では神戸の事件等があり、大変世の中が目を覆うような事件がふえているのかな、凶悪化しているのかなというふうに私自身も感じましたが、実は六九年にもこういった大変な事件が起きている。犯罪を犯した人は、一九六九年当時で十五歳ですね。

 五三年には、これは二十歳の人ですが、名古屋市で少女を殺害した、人を殺す小説を書くために経験する必要があったんだというふうに殺人の動機を自供をしています。七〇年には、二十歳の人が広島市で瀬戸内海のシージャック事件というのを起こしている。強盗傷害事件で逃走中、観光船を乗っ取る。これは、報道も大変されましたし、私は七二年生まれですからその前ですけれども、私も、小さなときに、事後ですが、この報道を目にしたことがあります。また、ホームレスの連続殺傷事件が八三年にもあり、切りもなくあるんですね、こういうのが。七九年にも、十四歳が同級生を校内で殺害をしている。

 大臣がおっしゃったようなことが、一九五〇年から八〇年を見ても、やはり同じようなことが起こっているということですから、また申し上げますけれども、数で見ても、それからこういった事件の質と言うのが適切かどうかわかりませんが、世の中の耳目を聳動する、大変凶悪だというインパクトを与える事件というのは以前にもあったということですので、私はやはり、今になって深刻化しているという証拠は見当たらないと今の答弁で思うんですが、改めてお尋ねをしますが、いかがでしょうか。

長勢国務大臣 おっしゃったように、昔も、みんな大変驚くというか、深刻に受けとめる事件が起きたことは事実だと思いますし、先ほど私、幾つか例を挙げましたのは、十一、二、三の方々の事件に限って御紹介を申し上げましたので、今先生言われたように、十四から二十までの間、もっと紹介すべきものがあったかもしれません。

 いずれにしても、数が特段に多いか少ないかということもありますけれども、何でそういうことが起こったのかとか、それからそのことを社会全体としてどういうふうに受けとめるかとかいうようなことは、時代時代によって変わってくるんだろうと思うんですね。同じことが起きても、余り驚かないと言うとおかしいですけれども、驚き方が違うとか、深刻度が違うということはあると思います。

 しかし、昨今は、あいまいな事件が起きておることもあって、国民の皆さんから、こういうことに対してしかるべき対応をすべきだという要望が大変強いということは事実だと思います。

石関委員 納得がいきませんので、しつこいようで恐縮ですけれども、これは当時、今私が挙げたようなもの、この時代にもやはり少年が凶悪化しているんじゃないかという言説というのは大変広まって、国民の皆さんから同じような要望なり、厳罰化するとか、いろいろな声というのはあったというふうに私は承知をしております。ですから、この法改正のそもそもの理由にある、近年、少年犯罪等が深刻な状況になっているので改正をするという前提の部分が随分怪しいのかなというふうに私は思うんです。

 仮に、大臣おっしゃるように、本当に深刻化しているということであれば、近年、何が原因で、この少年の犯罪、数がふえているのか減っているのか、凶悪化しているのか、何が原因だというふうにお考えでしょうか、大臣にお尋ねをします。

長勢国務大臣 一義的に、明確に御説明するのはなかなか難しいと思いますが、最近の非行少年の特徴として言われておることは、どうも、善悪の見きわめがつかないというよりは、その場の感情に任せて事を起こす、あるいはルールというか規範を軽視する態度というか風潮が目につくとか、人に対する思いやりや人の痛みに対する理解力がないんじゃないか、それから、対人関係の結び方というものを知らないんじゃないかというようなことが指摘をされておるかと思います。

 それが何によってこういうことになるのかというのは、いろいろたくさんの要因が絡み合っているんだろうと思います。地域の問題もあるでしょうし、家族の問題もあるでしょうし、教育の問題もあるでしょうし、社会全体としてその規範意識が薄くなれば、こういう行動はとりがちになるということも起こるかもしれません。特定の要因で固定して考えるということは極めて困難だとは思いますが、こういう状況が起きていることに対しては、現状を踏まえて対応していくことが必要であると思っております。

石関委員 大臣おっしゃった規範意識の低下等について、私もそういったものを大変憂慮しているところでありますし、そういった部分、共通認識があり、教育基本法の改正等も行われたというふうに私は思っておりますし、そういうベースも一部あるということだと思うんです。

 よく年配の方には、私、子供のころも、今はさすがに余り言われなくなりましたけれども、おれたちが若いころはよというふうに年配者は言うんですね、大臣が年配かどうかはわかりませんが。しかし、私は、時代が変わって、それは、占領されている間とか戦時中とか、特殊な状況下に置かれると、やはり我々国民の気持ちというのも、動揺したりとかいろいろなことがあるんだと思うんですが、しかし、長い期間で見ると、人間の考え方とか行動というのは、それほど大きく本当に変わるものなのかなという気持ちも一方であるんです。

 犯罪が凶悪化して低年齢化しているというふうに現状を憂える人たちは、数で見ると、おおむね比較的年配の方が多い。それはそうですね、若い人は今しか知りませんから、昔と比べてということは言わない。比較的年齢の高い方が、いや、おれたちの若いころに比べて大変なことになっているよ、やはりこういう考え方をお持ちの方が多いと承知をしております。

 しかし、その人たちの幼かったころ、幼少期、昔を考えて、先ほども例を挙げましたが、果たして今と違っていたのかというと、犯罪だけで見れば、五七年、昭和三十二年ですけれども、五歳児と六歳児が赤ん坊を殺害しているということがある。昭和二十九年、小学一年生が同級生を刺殺している。昭和三十五年には、小学四年生が強盗している。これは幾らでもあるんですね。三十二年、小学六年生が同級生をバットで殴り、重傷を負わせる。その後も、三十三年、中学一年生五十数人の不良グループが強盗、恐喝。十歳の少年を中学二年生がナイフで刺殺。昭和二十八年、中学二年生が連続強姦事件を起こしているということですから、時代が変わっても、こういったもので見る限りは、それほど変わっていないのではないかな、改めてそのように私は思います。

 もう一度、しつこいようで恐縮ですけれども、大臣にお尋ねをします。変わっているんでしょうか。

長勢国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、起きている、今御紹介のあったようなことは事実でありますし、大変深刻な事件だと思います。同時に、それが起きる原因あるいは少なくなるかもしれないというこれからの将来見通し、それ以上に、現在我々が生きているわけですから、その時々の感覚はその時代時代によって違ってきますから、それを見た人がどういうふうに感じて、どういうふうに評価するかということも、深刻と考えるかどうかの一つの大きな要因になると思うんですね。

 今、仮に同じことが起きても、当時の国民の皆さんの感じ方と今とはどうかというのは、その感じ方までは比較はできませんけれども、少なくとも、昨今、国民の皆さんは、こういうことについては何とかしてほしいという強い要望があるということは先生もお認めになるんじゃないかな、そのことを深刻に受けとめておるということを先ほど来申し上げておるわけであります。

石関委員 その立法事実、体感治安の悪化とかそういうことがあるんでしょうけれども、再三、しつこいからもう言いませんけれども、それは昔もあったんですね、私が挙げた例でいうと。近年深刻になったというのは、立法事実として私は認められないというふうに思います。

 しかし、法案が出ていることもあり、いっぱい質問することが法案の内容でありますけれども、まずこれが前提ですから、時間をいただいてやらせていただきました。(発言する者あり)そうなんです。これは大変大事な法案であり、じっくり時間をいただいて審議をさせていただきたい、またそのように大臣もお考えだと思いますので、まだいっぱいありますから、だんだん法律の方にも入っていきたいというふうに思います。

 次に、いわゆる触法少年による殺人、補導人員の中には、既遂だけじゃなくて未遂も含まれているのではないかと思いますが、触法少年による殺人の既遂事件というのは、年に何件発生をしているんでしょうか。また、少年事件というのは共犯事件というのも多くて、単独でなくて共犯であるというのも大人に比べて大変多いというふうに私は思いますが、その内訳というのはどうなっているか、教えてください。

小津政府参考人 警察庁でつくっておられる統計でございますけれども、これによりますと、平成十七年に殺人で補導された触法少年は六人と承知しております。統計上、この殺人には未遂犯も計上されるものと承知しておりますけれども、この六人の既遂、未遂の別につきましては、現時点で当省としては把握しておりません。

 また、共犯事件についてでございますが、同じ統計によりますと、平成十七年の少年の殺人の検挙件数は四十七件でございます。ただし、これは少年と成人の共犯事件は除いております。少年だけの殺人事件である四十七件のうち、二人以上で犯行が行われたものは三件であると承知しております。

石関委員 前回、平成十二年に少年法が改正されておりますが、簡潔にこの十二年の少年法改正について御説明ください。

小津政府参考人 十二年の少年法改正、大きく分けますと、少年事件の処分等のあり方の見直し、少年審判の事実認定の適正化、被害者等への配慮ということでございまして、少し具体的に申しますと、刑事処分可能年齢の引き下げ、少年院における懲役または禁錮の執行、凶悪重大事件につきましてのいわゆる原則逆送制度、犯行時十八歳未満の少年に係る無期刑の緩和を裁量的にする等々のこと、それから、別の項目といたしましては、保護者に対する措置を明文化したということでございます。また、審判の方式につきましても改正が行われたということでございます。

石関委員 十二年の改正においても、当時の現状にかんがみて対応しようということで法改正が行われたんだということであると思いますが、しかし、今御説明いただいた少年法の改正によって、少年の重大事件というのは減ったんでしょうか、それとも変わらない、どうですか。

小津政府参考人 平成十二年改正後の少年の特に重大事件の推移でございますが、少年刑法犯の検挙人員、先ほども少し御説明申し上げたかもしれませんが、ここ何年間かは二十万人前後で推移しておったわけでございますけれども、平成十六年は十九万三千人強、十七年は十七万八千九百人強ということで、それぞれ前年より減少しております。これを少年人口一千人当たりの検挙人員、いわゆる人口比で見ますと、平成八年以降は上昇傾向にございまして、平成十五年は十五・五となりましたけれども、平成十六年は十五・一、十七年は十四・二ということで、二年連続で減少したということでございます。

 それから、いわゆる重大事犯ということで、殺人、傷害致死、強盗殺人、強盗致傷の四罪種について、これは平成八年から平成十二年までの五年間と、それから平成十三年から平成十七年までの五年間、これを検挙人員で比較いたしますと、殺人は五百人が三百九十六人に、傷害致死は五百人が二百三十八人に、強盗殺人、強盗致死は六十四人が七十一に、これは若干増加しておりますが、それから、強盗致傷は五千五百六十二人が五千四百十四人ということでありまして、おおむねの傾向で見ますと若干減少ということでございます。

石関委員 減っているんだということですね。

 また提案理由に戻りますけれども、「少年非行の現状にかんがみ、」というふうにおっしゃっていますが、少年非行の現状から、警察による調査権限を拡大したり、十四歳未満の少年の少年院送致を導入する必要があるというふうに言えるんでしょうか。これをしなきゃいかぬ、少年非行の現状にかんがみると、警察の調査権限を拡大したり、十四歳未満の少年の少年院送致を導入する必要があるんです、こういう論理なんでしょうか。

長勢国務大臣 少年刑法犯全体の検挙人員というものは、昭和五十八年のピーク時に比べて減少はしたということではございますけれども、ここ数年も約二十万人前後で推移している、大変高い水準にある。また、先ほど来述べておりますように、凶悪重大な事件も発生をしておるということでございますので、このような事件の発生によって、かねてから指摘されていた触法少年の事件についての事実調査や処遇選択をめぐる問題点が改めて認識をされ、積極的な対応が求められるようになっておるのが現実だと思います。

 今回の法案は、こういう非常に強い御要望に対応するべく、少年の非行に関する事実の解明をより一層進めるとともに、少年の状況に応じた保護処分の選択を可能にするために必要な法整備を行うという考え方で行っておるものでございまして、今申し上げたようなことが少年非行の現状というふうに認識をしておるわけで、これに対応していかなきゃならないと思います。

石関委員 大臣がおっしゃるような認識で、調査権限拡大をしなきゃいかぬということで、仮にそうだというふうにしても、この強制の調査権限というのは重大犯罪に限って権限を広げれば済むのではないかなというふうにも私は思いますが、現在、法案は違う形で出ているわけですけれども、そういったことは検討の対象になったのか、大臣はそのことについてどのようにお考えか、お尋ねをします。

長勢国務大臣 調査手続の整備は、事案の真相を解明し、適切な処遇を行う上で必要不可欠でございます。これはすべての少年保護事件に共通するものでありまして、捜索や差し押さえ等の強制処分が必要となるのは法定刑の重い罪名にかかわる事件には限られない、家庭裁判所に送致される事件の多数を占める窃盗や傷害等の事件についても、盗品や凶器等の物的証拠や没収すべき物を押収するというようなことを認める必要性が高いと考えられているわけでございます。

 とりわけ、少年が非行事実を否認し争っているときは、客観的証拠に基づいて厳格に事実認定をなすべき要請が強く働くわけでございまして、こういう問題は、今言われたような重大事件に限ってという問題ではないと思います。

 一方、押収等の手続については、本法律案は刑事訴訟法を準用し、処分の理由及び必要性について審査を経るものとしております。このうち、処分の必要性については、行為の態様、事案の軽重、収集をしようとする証拠の価値、重要性、当該処分によって受ける被処分者の不利益の程度等の事情を総合的に判断して決せられるものであり、事案の軽重も考慮事由とされる以上、強制処分の対象となる事件の範囲はおのずから限られることになるのではないか、このように考えております。

石関委員 少年については、防御力というのが大人より格段に落ちますし、冤罪の危険が大人に比べて非常に高いというふうに思います。

 時間がないので、平成十八年に甲府家裁事件という少年の冤罪事件があったというふうに聞いていますが、簡潔に説明してください。

小津政府参考人 甲府家裁事件ということで、どの事件かということでございますが、平成十八年十月に、未成年者略取未遂保護事件につきまして、非行事実が認められないことを理由とする不処分決定がなされた事案がございますので、これのことであろうかと思われます。

 この事件につきましては、当該少年を犯人だと判断する資料とされた上申書等の証拠としての価値が基本的には否定されたということでございます。ちなみに、この事件は検察官が関与できる事件ではございませんでしたので、検察官が抗告受理申し立てはできなかったということでございます。

石関委員 冤罪だったということであり、ほかにもこういった少年の冤罪というのは幾つか例があるんですね、私が承知しているだけでも。こういった防御力が弱い特に十四歳未満の少年について、少年全般がそうでありますけれども、特に十四歳未満、低年齢の人にはそういった防御力が弱いということで、誤った自白をする傾向にもあるということで、私はこの改正、そういった配慮が大変欠けているのではないかというふうに指摘をさせていただきたいと思います。

 そして、この少年法の改正、冒頭から大臣にお尋ねをしているとおり、これは法務省の少年法を改正したいという不断の欲求があり、そして近年の、大臣が挙げられたような例を、殊さらにそれを強調して改正するという側面があるのではないかなというふうに私は受け取っております。余りそんな乱暴な論理で法改正の理由にされたり、法改正を推し進めるというのはいかがなものかなと大変疑問に思っているところであり、また時間もいただけると思いますので、さらにまたいろいろ質問をさせていただきたいと思います。

 きょうのところは、ありがとうございました。

倉田委員長代理 次に、大串博志君。

大串委員 民主党の大串博志でございます。

 本日は、少年法等の改正ということでお時間をいただきました。じっくり議論をさせていただきたいというふうに思いますが、まずその前に、先般来、一般質疑を通じて幾つか重要な法務行政にかかわる論点を議論させていただきました。そこで議論し得なかった点を少しきょう。まず、おさらいをさせていただきたいというふうに思います。

 いわゆる会社法の改正を受けて、この五月から会社の合併対価の柔軟化ということで三角合併が可能となる、そういうことになってきているわけでございますけれども、これに関して先般来、大臣にいろいろ議論をさせていただきました。これが投資促進になるのかどうか等々、単に会社法の話としてではなくて、会社そのもの、そして社会そのもの、経済そのものに与える大きな影響を考えて施策を考えていただきたいというふうな話をさせていただきました。この三角合併について、税の側面に関して先般きちっと議論できませんでしたので、きょうはその点を少し議論させていただければと思うんです。

 三角合併をする、外国の株と日本の株とを交換することによって合併をしていく、その交換をするときに、当然その価値が違いますから、そこで利益が生じる、その利益に関してどのような課税を行っていくかということが問題になっていくわけでございますけれども、この五月に向けて、財務省の方でこの課税関係、課税のあり方について検討をしていただいているというふうに思いますけれども、現在どのような検討方向、そして結果になっているか、これについて財務省の方からお答えください。

    〔倉田委員長代理退席、委員長着席〕

古谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 合併等対価の柔軟化に対応いたしまして、平成十九年度の税制改正におきまして、内外無差別ということを原則として、三角合併につきましても既存の合併と同様の要件を満たした場合に課税繰り延べが認められるように適格合併の要件等を見直すこととしております。

 具体的に申し上げますと、今回、合併等対価が柔軟化されるということで、合併法人の一〇〇%親会社の株式のみが消滅会社の株主に交付される場合を適格要件に追加いたしますとともに、合併法人と被合併法人との間で事業に関連性があることなど、既存の組織再編税制の適格要件が満たされる場合に、消滅法人側及びその株主に対して合併時の資産の移転に伴う課税を繰り延べるという内容でございます。

 したがいまして、事業を行っていないペーパーカンパニーなどが買収のための合併法人となりました場合には、事業をやっていないということでございますので、事業関連性の要件は満たさないということから、外国企業か国内企業かにかかわらず、この場合は課税の繰り延べがないということになります。

 この点につきまして、事業関連性ですとかその前提となります事業の判断基準につきましては、現在、税務執行当局の法令の解釈、運用にゆだねられております。この点につきまして、法令に記載されていないということで、外国企業側等から予測可能性が低いという御指摘もございまして、現在、財務省といたしまして、事業の中身ですとか事業関連性ということの具体的な判断基準につきまして、現行の解釈、運用を踏まえた上で省令において明確化するということで作業を進めてございまして、この省令の改正につきましては現在関係省庁と調整中でございますが、調整が整い次第、五月一日までの間に省令の公布をしたいというふうに考えてございます。

 以上でございます。

大串委員 ありがとうございます。

 今、話がありましたように、既存の合併法制、合併に係る税制と並び称する形で判断していくということでございまして、事業を行っているかどうかということが、課税の措置を受けるかどうかという点で重要なメルクマールだということでございました。これは非常にロジカルでよくわかるところでございますし、かつ、今お話があったように、それが運用に任されているので、それをできるだけ明文の形でやっていこうということ自体も、私は考え方として非常にいいことだろうというふうに思います。

 そして、今関係省令の整備を行っているということでございましたけれども、このたびの日経新聞の報道では、外資の準備会社の場合には、今説明のあった事業関連性、事業を行っているということを認めるんだというふうな報道がございました。この報道では、準備会社として、外国法人が日本にやってきてこれから活動しようとすることの準備会社ですから、広報とかいろいろな事業展開のための検討とか、そういうことを行っていっていれば、実態としてはまだ具体的な仕事がそう大きく行われていなくても、準備の段階だから、それをもってして事業関連性ありというふうに判断していこうというふうなことが報道として書かれていたんです。

 これは、確認させていただきたいんですけれども、このような準備会社のようなものでも事業関連性を認めるという方向での検討がなされているんでしょうか。

古谷政府参考人 お答え申し上げます。

 現在作業中の省令は、先ほど申し上げましたように、事業を行っていることが課税の繰り延べの要件であるということを前提といたしまして、事業が行われているかどうかの判断基準を明確化しようという趣旨でございまして、新聞報道に、いわゆる事業準備会社というような書き方をされておりますが、準備会社といった新たな概念をこの省令で設定して、それについて課税繰り延べを認めようといったような趣旨ではございませんことをまず申し上げさせていただきたいと思います。

 その上で、事業をやっているかどうかということにつきましては、現在、執行当局で解釈、運用が行われておりました、その事実関係を前提といたしまして、現在検討中でございますけれども、例えば合併法人、被合併法人双方が、事業を行うための施設であるとか従業員がおられること、あるいはその上で、商品の開発とか生産、広告、宣伝による契約の勧誘、そういったみずからの計算で事業を行っておられるといったような事実が確認できる場合に事業と認定をするといったような考え方になろうかと思いますけれども、詳細については現在作業を進めさせていただいているところでございます。

大串委員 ありがとうございます。

 詳細は検討中ということでしたけれども、もう少しお尋ねさせていただければと思うんです。

 双方の会社が施設や、あるいは従業員を持った上で、開発、広告、勧誘等の活動を行っている、こういうふうな基本的な考え方を一つのメルクマールとして事業関連性を見ていくということでございましたけれども、外国会社が日本に足場を持つ、新規会社を設立する、新規会社を設立すると、本当のペーパーカンパニーでない場合には当然、通常、法人の登記がされて、社屋が置かれて、そこに従業員がおって、そして開発なり広告なりいろいろな活動が始まっていくんだと思うんですね。始まっていった最初の段階では規模も小さかろうと思います。規模も小さい、歴史もほとんどない、日数も浅い、そういう段階でも、明らかにこれが施設や従業員を備え、かつ、これから開発、広告をしていく、この実際の活動を始めていれば、例えば日数は少なくても、あるいは規模は小さくても認められるという性格なのか。それとも、ある一定の年限なり、あるいは会社の規模、従業員の規模なり活動実績なりが必要なのか、その辺に関してはどのような方向性なんでしょうか。

古谷政府参考人 事業関連性を判定する前提といたしまして、事業をやっているという状態が必要なわけですけれども、現在の執行当局の運用におきましても、当然、設立登記がされただけという状態ではいかぬわけでございまして、事業を行うための設備、従業員がいて、みずからの計算として商品の開発や生産、広告、宣伝が行われている、あるいは事業上必要な資産の保有等が行われているといった場合には事業と現在認めておるところでございます。

 こうしたことを踏まえますと、事業の成果として収益が上がっていなければいけないというところまで求めていない現状がございますので、そういった点を踏まえて省令を定めていきたいと考えておりますが、そういう意味では、設立後何年しないとだめだといったようなことにはならないというふうに考えております。

大串委員 ありがとうございます。

 検討中の内容ですからなかなか詳しく言い切れないところもあるかと思いますが、だんだんイメージはわかってきたと思います。

 先ほど答弁の中で、外国の企業からもいろいろな要望等々があったというふうな話がございました。今検討されている方向性というのは、この三角合併という制度を使って外国会社が日本に合併という形で投資をしてこようとしている、これを、先ほどの課税の方法ですと、促進する方向になると考えていらっしゃるのか、それとも、いろいろな要望と相照らし合わせてみると、割と防御的になっているのか、その辺のイメージはどんな感じなんでしょう。

古谷政府参考人 今回の合併等対価の柔軟化に伴います適格要件の緩和は、内外無差別ということで、外国法人、国内法人ともに同じ要件を定めようということでございます。恐らく、合併等対価の柔軟化そのものが対内投資の促進という点では促進的な効果を持つものと思いますが、こういった内外無差別の要件の中でどのように外国法人が今後行動されるか、私どもとして一概にお答えできにくいことを御理解いただきたいと思います。

大串委員 ありがとうございます。

 それがどういうふうな大きな影響を与えていくかというのは、なかなか今の段階で知ることは難しいかと思いますが、一つの原則として、内外無差別という原則が租税法上の観点としてもあります。それを前提としてやっていかれるということですから、それは考え方としては正しいんだと思うんですね。

 大臣に御所見をお伺いしたいんですけれども、先般来お話ししました、この会社法改正、そして合併対価の柔軟化という問題、会社のあり方のみならず、外にある経済のあり方、社会のあり方に大きく影響を与えるというふうに考えて仕事をしていただきたいということを申し上げました。

 今法務省の中で、五月一日から行っていく際のいろいろな要件ですね、特殊決議にするのか特別決議にするのかというような論点がございましたけれども、これに関しては特別決議ということでやっていくというふうな方向性のことをこの間お話しになりました。法務省の方で今考えていらっしゃる合併対価の柔軟化、そしてそれによる対内投資の促進度合いといいますか、国内市場のオープン度合いといいますか、そういうものと、先ほどの課税当局のやろうとしていることは、完全に平仄が合っているものなのかどうか。すなわち、これだけ大きなインパクトを持つ制度なので、政府全体として整合性のとれた形で進んでいかなければならないと思うんですね。

 大臣はその点において、課税当局がやろうとされている方針、そして法務省においてこれから、五月一日からやろうとされている方針、これが国内の市場をどれだけオープンにしていくかという観点からして、整合性がとれているというふうにお考えか、それはどういうふうな点から御判断になっているのか、その辺に関して考えをお聞かせください。

長勢国務大臣 外国の投資をオープンにしていくという方向が一つの方向としてあるわけでありまして、同時に、国内の株主の保護等々ということも配慮していかなきゃならないという観点で今進めておりますので、その点、税務当局の方向と同じ考え方で進めておると思っております。

大串委員 何度も繰り返すようではありますけれども、会社のあり方自体が社会や経済の大きなあり方を決めていく、ひいては、そこに働く方々、株主の方々の生活のあり方も決めていくということでございますので、ぜひぜひそういう大局的な視点で対応していっていただきたいということを改めて申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 ちょっと次の論点に移ります。

 先ほど来、平岡委員の方からも話がありました民法七百七十二条、離婚後三百日以内に生まれた子供は前の夫の子と推定するという民法の規定に関する問題でございますけれども、現下の法務省における検討状況等々については平岡委員への説明の中でも聞かせていただきました。現在、この問題が非常に顕在化してきている、あるいは新しい医療技術によって、親の判断ができるような技術もできてきているという新しい時代背景を前提にぜひぜひ検討を進めていっていただきたいというふうに思います。

 一つ、確認させていただきたいんです。三月二十五日の日本経済新聞に、離婚後三百日の子は前夫の子の規定に関して、医師の証明で再婚相手の夫の子というふうに認めることができるというふうな通達を法務省として市町村に出すというふうな報道がございました。これに関しては、先ほどの答弁の中でちょっと詳しくなかったものですから、確認をしておきたいと思います。こういうふうな検討を法務省内でされているんでしょうか、お答えください。

長勢国務大臣 平岡委員にも御答弁申し上げましたが、今真剣に、またできるだけ早期に、いい方向が見出せないか、いろいろな観点から検討をいたしております。

 では、どれとどれとを検討しているのか言えという御指示なのかもしれませんけれども、ちょっとまだそこまで申し上げられる段階にないということも御答弁申し上げたとおりでございまして、今、日経新聞の記事についてのお尋ねであれば、間違いなく言えることは、そういうことを決定しているということは全くありません。

大串委員 先ほど来の答弁にもありましたように、いろいろなことを検討されているということなんですね。これは民法七百七十二条の法制、法律の構成自体の検討もありましょうし、また、これは推定規定ですから、推定というものを受けて、その推定をどう覆していくかという運用の面の話もあるんだと思います。多様な面の検討になると思いますが、先ほど来申しましたように、いろいろな問題が今顕在化している問題でございますので、ぜひ検討を急いでいただいて、公益に資するようにしていただければというふうに思います。

 そして、加えて申しますと、代理母の問題も同じでございます。この代理母、代理出産、社会で実際もう長い間行われているのは事実でございまして、日本の民法の構えにおいては基本的にはいわゆる伝統的な父母概念がございまして、そこからはみ出したものは父、母と認めることはできないということが今の最高裁の判断であったわけでございます。

 先ほど来お話ししましたように、医療の技術が進んで、高度な生殖補助医療も進むようになってきました。そして、親というものを確認する技術も、いろいろなDNA鑑定等も含めて進んでまいりました。こういうことも含めて考えると、できるだけ早期にこの問題も一定の方向性なり結論が出ることによって、これに関係していらっしゃる方々の思いがクリアになっていけるようにしていただければというふうに思います。

 これは、要望でございます。ぜひ、七百七十二条の問題、そして代理母の問題は検討を進めていただきたい。我々も、別途民主党としてもしっかりとした検討を進めていきたいと思いますけれども、ぜひ政府においても検討を進めていっていただきたいというふうに思います。

 さて、ここまで申し上げて、これから少年法の質疑に入らせていただきます。

 今般の少年法、先ほど石関委員の方から何度も繰り返し話がありましたけれども、まず、この少年法の改正を考えるに当たっては、改正する必要性、そして改正する内容の妥当性、この二つの側面から光を当てていかなければならないというふうに思います。

 改正する必要性という観点から議論を進めさせていただきますけれども、この改正する必要性ということを議論する場合においては、先ほど来石関委員の方から何度も繰り返しありましたけれども、提案理由説明の中でありました少年犯罪、少年の非違行為がふえているのかどうかという事実認定のところ、これは非常に大切なのであります。

 先ほど石関委員も時間をかけて議論をしておりましたけれども、私の方からも、いろいろな事実関係を見ておるとどうかなと思う点もありますので、その点について確認をさせていただきたいと思います。

 大臣、提案理由説明の中で、「近年、少年人口に占める刑法犯の検挙人員の割合が増加し、」これが一つ、それから「強盗等の凶悪犯の検挙人員が高水準で推移している」これが二つ目、「いわゆる触法少年による凶悪重大な事件も発生するなど、」これが三番目、四番目に「少年非行は深刻な状況にあります。」と、四つ事例といいますかポイントを述べられた上で、「このような現状を踏まえ、」ということで改正の内容に踏み込んでいる。

 これが提案理由説明でありましたけれども、この一つ一つを読んでいて私もあれと思うところが多かったわけであります。例えば一番最初の柱、「少年人口に占める刑法犯の検挙人員の割合が増加し、」というふうにあります。確かに、検挙人員の少年人口比というものを追ってみますと、注目すべき動きがあるわけでございます。

 昭和三十年代から一貫して伸びてきているように、長いスパンで見ると見えますね。ところが、これが本当に趨勢的に伸びてきている、あるいは今般少年法を改正することが必要だという議論を起こすところまで趨勢的に伸びてきているというふうに言えるかどうかというところは議論の余地があると思うんですね。特に、少年刑法犯の検挙人員、そしてその人口比の推移というものは伸びたりおりたりしていますね。五十五年以降はぐっと伸びて、また六十年以降はぐっと下がってきている。そして、平成十年ちょっと前からまたぐっと伸びて、また最近数年は減ってきているんですね。

 こういうことを踏まえると、大臣がおっしゃった「少年人口に占める刑法犯の検挙人員の割合が増加し、」これは事実関係として正しいのかというところについて、大臣、これはいかがでしょうか、事実関係として正しいのでしょうか。

長勢国務大臣 ピーク時に比べて今が若干低い状況にあるということは、お手元に数字があるんでしょうから、もう言うまでもないことでございます。ただ、かつて低い水準で推移していたときに比べればそれなりに高い水準にあるということをいろいろな方々は感じておられるということでございます。

大串委員 ピーク時から比べて下がってきているということは、今事実として認められました。確かに、ピーク時、昭和五十五年、六十年、この辺で少年刑法犯の検挙人員の人口比はぐっとピークに達してそこからおりてきている。しかし、先ほど確かにおっしゃったように、かなり昔の人口比が低かったときから比べると多くなってきているということは言えるんですけれども、今大臣自身も認められたように、ピーク時から下がってきているんですよね。下がってきてその後時々上がったりしているけれども、この数年また下がってきている。

 二〇〇〇年にも少年法改正が行われましたけれども、そしてまたさらに今回、法律の内容としては厳罰化という方向で改正をしようとされている。今回あえてこの時期に改正をしなければならないような検挙人員、人口比の推移の増加があるのかどうか。大臣、私はこの数字を見て今どうしてもやらなければならないというふうな印象を持てないわけでございますけれども、これがまず一点目の「検挙人員の割合が増加し、」ということに関する私の疑念です。

 もう一つの疑念は、「強盗等の凶悪犯の検挙人員が高水準で推移している」というお話がありました。これは、平岡議員の本会議での質問に対しても大臣はお答えになっていらっしゃいますね。「殺人、強盗、強姦、放火といった凶悪犯の犯罪少年及び触法少年の検挙人員は、平成二年には千百九十四人であったものが、その後上昇傾向に転じ、平成九年以降二千人を超える高水準で推移しておりました。」高水準で推移している、こういうふうにおっしゃっていますけれども、本当に高水準で推移しているのかというのは、ちょっと私、疑問なんです。

 具体的に教えていただきたいんですが、少年の凶悪犯が高水準で推移しているというのを、いろいろな統計数字で見ると、どこを見ればそれがわかるんでしょうか、ちょっとそれを教えていただきたいと思います。

小津政府参考人 数字のことでございますので例えばということで申し上げますと、強盗事件の少年の検挙人員を見ますと、これも確かに、昭和三十年代中ごろが強盗については少年の検挙人員が大変多うございました。その後ずっと下がってまいりまして、長い間数百人レベルで来たわけでございますけれども、特に近年と申しますか、平成八年、九年あたりから伸びてまいりまして、一千件をコンスタントに超えるレベルで推移しております。もちろんこれもここ一、二年、若干低下、減少しております。

大串委員 ちょっと細かくお尋ねしたいと思うんですけれども、この提案理由説明にもあります「強盗等の凶悪犯の検挙人員が高水準」、強盗等の凶悪犯というのは具体的にはどの犯罪を指すんですか、それをお願いします。

小津政府参考人 凶悪犯といたしまして、殺人、強盗、強姦、放火の凶悪犯につきましてそれぞれの推移が手元にございまして、さらに御質問いただければ御説明申し上げます。

大串委員 提案理由説明の中で、「強盗等の凶悪犯の検挙人員が高水準で推移している」というふうにおっしゃいました。その中で、今、強盗等の凶悪犯とは何かというと、殺人、強盗、強姦、放火ということをおっしゃいました。この数字をずっと見てみると、本当に高水準で推移して、今この時期に対応をとらなければならないというふうになってきているのかということが先ほど来疑問なわけでございます。

 例えば殺人で見てみますと、私がいただいた資料は昭和二十年代からある資料でございますけれども、昭和二十年代の初期は、毎年二百人、三百人、四百人、そういうオーダーでございました。それが昭和五十年代にかけて少し減って、最近もそこまでふえておらず、十五年、十六年、十七年という間は殺人に関しては百名を切る、九十名、六十名、七十名、そういうふうな数字なんですね。

 強盗に関して言うと、先ほど答弁されたとおりです。二十年代に二千人、三千人というオーダーだったものが、五十年代にぐっと減る、その後ふえてきて、九年以降千人台になってきているというのはそのとおり。

 しかし、そのほか、強姦も、これは二十年代から三十年代にかけて四千人、三千人台、そういうふうなオーダーだったものが、最近は、この数年間は二百人あるいは百人というオーダーなんですね。

 放火に関しても、これは五十年代あたりには五百人、四百人というオーダーだったものが、この数年間は二百人あるいは百人というオーダーなんです。

 これだけ見ると、強盗のところは確かに高どまりしているというのはわかります。しかし、それ以外のところはむしろ減ってきているんですね。こういうことを見ると、本当に強盗等の凶悪犯の検挙人員が高水準で推移しているということが言えるのかどうか非常に疑問なのでございますけれども、大臣、この点に関してはどういう御所見なんでしょうか。

長勢国務大臣 高水準かどうかというのは評価の問題でございますが、一時期よりも低いといっても、今の社会情勢の中で高水準で推移しているというふうに私は理解をしておりますし、そういうふうな理解に立って、国民の皆さんからも強い要望があるのが現状であると思っております。

大串委員 高水準で推移しているかというのは評価の問題だとおっしゃいました。確かに評価の問題ではあります。少年法の問題、少年の犯罪の問題、これは社会の中で非常に大きな問題でありまして、もちろん少年に限らず犯罪は社会の中からなくしていかなければならない、そのために厳正で、かつ、適切な法体系を構築し、執行体制を構築することによって社会の中から犯罪というものをなくしていかなければならない、これは私も全く同じ立場でございます。

 あとは、それを本当に必要なタイミングで、かつ、必要な施策を効果的に行っていくということが大切なわけでございまして、その観点から、今少年法等を改正して、厳罰化というふうに言われていますけれども、そのことも後ほど議論しますが、厳罰化と言われる措置をとっていくのが正しいのかということはきちんと検証しなきゃいけないと思うんですね。

 それで、先ほど、高水準かどうかというのは評価の問題だというふうにおっしゃいました。一つ、ちょっと繰り返しの問答になって恐縮ですけれども、大臣は、高水準で少年犯罪が推移しているがゆえに、このレベルであれば少年法改正をしなければならないというふうに思われた、その理由は何なのでしょうか。千人、千五百人、千六百人という、あるいは全部足すと二千人近くになります、少年の強盗等の凶悪犯でございますけれども、年間二千人程度の高さ、オーダーになるわけです。これを見て、これは少年法改正をやらなければならないというふうに評価された、そのもとのところをもう少しお聞かせいただければと思うんです。

長勢国務大臣 今先生、最前のような御指摘の統計上の話ですね。それ自体、先生は高水準じゃないというような御評価のようでございますが、少なくとも低水準というわけにはいかない、非常に社会に大きな影響を与えている、高水準であるというふうに思っております。

 したがって、この数字がこうだからというだけの話で今提案申し上げているわけではございません。ずっと私自身も、いろいろ地元では、非行少年はやりたい放題だ、どうにかできないのかという声をたくさん聞いてきましたし、また、いろいろなことがあって、社会でもそういうことに対する要望というのが非常に強くなっているというのが現状でございまして、これに早急にこたえていくのが政治の仕事だろう、このように思っております。

大串委員 今のお話の中にもありました、高水準かどうかを判断するときに、この数字がこうだからこうこうというのはなかなか難しいんだけれども、地元でも今の少年犯罪は問題だという声があり、かつ、先ほど来再三答弁でもおっしゃっていますけれども、社会の要望としても、少年犯罪に対してしっかり臨んでほしいという声があるというふうなことをおっしゃいましたが、それはどういうふうな場で、どういうふうなツールなりを通じて社会の声をとらまえられてここに具体化されているんでしょうか、それをお聞かせください。社会の要望も強いというふうにおっしゃるから、社会の要望をどうやって吸い上げていらっしゃるのか、アンケートか何かとられているのか、その辺はどうでしょうか。

長勢国務大臣 調査結果等の具体的なデータはあれば事務局から答弁させますが、どれだこれだというよりも、むしろ逆に、こういう少年非行とかの問題について何もしないのかという声以外の声は聞いたことがないというぐらいの印象でございます。

小津政府参考人 ただいま手元に少年に限ったものはございませんけれども、この間、政府におきましても、国民の皆様がどういうことについて不安を抱いているか、他方、どういうことについて日本の社会というものを評価しているかということについて世論調査があるわけでございます。

 以前は、我が国の中で大変いいという評価をしていた、ナンバーワンに近いところが治安だったわけでございます。ところが、最近はその評価の順位が非常に下がってきているわけで、これは極めて顕著でございます。他方で、何とかしてもらいたいという御要望の中について見ますと、以前はそこには治安はほとんど出てこなかったと思いますけれども、ここ近年は治安がトップあるいはトップグループに入っております。

 その中にはもちろん少年による各種の犯罪も入っている、これは例えば、マスコミ報道を見まして、少年の犯罪がどのように扱われているかということを見ましても、やはりそういう少年犯罪につきましても、国民の皆さんがいろいろと心配をされてそのような世論調査の結果に反映されているのではないかなと私たちは認識しております。

大串委員 国会の場ですから、きちっと答えていただきたいと思います。

 今、国民の意識の調査、世論調査等を見ると、治安というものが、昔は日本の非常にいい項目として上がっていたけれども、今は下がってきている、何とかしてほしいという項目の中にむしろ治安が入ってきているということをおっしゃいましたけれども、それは少年犯罪についてですか。私が知る限りにおいては、全体的な治安状況に関する世論調査なりは頻繁に見ております。しかし、少年犯罪に関して統計的、体系的な調査をもってして、国民の皆さんがどうこうおっしゃっているということに関して、あるんでしょうか。

 もしあるのであれば、大臣もこれは答弁されたことですから、社会の要望だというふうに大臣がおっしゃっているわけですから、それをどういうふうにされているか。先ほどわざわざ世論調査まで引かれたんですから、何がしかのことはお持ちなんだろうというふうに私は思います。あるんでしたら、ぜひ答えてください。

小津政府参考人 今私が申し上げましたのは、その中でも申し上げましたように、治安全般についての世論調査でございます。

大串委員 そうすると、少年犯罪による治安の悪化に関して体系的な国民の声を吸い上げたことは、大臣は社会の要望もあるというふうに今おっしゃったわけだけれども、そういうことをチェックしたことはないということですか。

 とすると、大臣はどういうふうな背景をもってそういうことをおっしゃったのかということが私の次の質問になるわけですけれども、その点に関してどうでしょうか、何が背景としてあるんでしょうか。

長勢国務大臣 治安そのもの、全体のことについては御理解いただいているという前提であれば、当然、外国人犯罪もあれば、少年犯罪もあれば、いろいろなことが話題になっておりますけれども、その中で、少年犯罪はそんなに心配ないよという話は聞いたことがありませんし、むしろ少年犯罪が大変だという声しか聞いたことがないというのが率直なところでありまして、それが、何らかの調査結果がないからというのはいかがかなと思います。

大串委員 少年法という、少年の将来を決めることに関して非常に大きな影響を持つ法律を議論しているわけです。確かに私も、少年犯罪を何とかしてほしいという声は地元を歩いていても多々聞きます。ですから、それに関して何がしかの対応は必要なんだろうということは思います。

 だけれども、それを考える際に、事実関係をしっかり踏まえた上で、そしてその必要度合いをきちんと判断し、かつ、その中から必要な政策をとっていくというのは、政府のやらなければならないこととして当然じゃないかと思うんですね。事実関係がどうかということを余り明らかにしないまま対応策をとるということは、政府としてはあっちゃいけないと思うんです。ですから、私は、先ほど来数字がどうこうというふうにおっしゃっているところが、あいまいなところが非常に気になっているわけです。

 少年犯罪に関して、社会として正しく、厳正に、かつ、適正な措置をとっていかなければならないという必要性があるということを私も否定しているわけではございません。それは、最近のいろいろな事件もあり、非常に必要性として私も理解します。ただし、現状をきちっと理解しなければならない。それに関しては、政策当局としては当然のことだと思うんですね。

 もう少し議論させていただきますと、三番目に、「いわゆる触法少年による凶悪重大な事件も発生するなど、」とあります。

 これは、先ほど来幾つかの事案も答弁の中で触れられましたけれども、今般、少年法の議論の中でいろいろな改正が加えられようとしているのは、十四歳未満の触法少年、そして虞犯少年なわけでございます。先ほど来、私がずっと議論してきたのは少年犯罪でありました。少年犯罪については、一言で言うと、比率は上がったり下がったりして、最近は下がっている。全体的な水準は、大臣は高水準で高どまっているとおっしゃいますけれども、私は、本当にそうかどうかはもう少し検証しなければならないという立場です。

 他方、今回、法律の改正をしようとされている対象の触法少年に関して言うと、これまた、さらに私は、問題事例が本当にふえているかどうかというと、このいただいた資料、数字を見ましても、なかなか判然としづらいなという感じなんです。

 例えば、先ほどおっしゃった凶悪犯罪、殺人、強盗それから強姦等々ですけれども、全部資料がありますから、見てみますと、それぞれの数字を過去三十年ほど、昭和二十年代から並べていただいていますけれども、殺人や強盗、強姦あるいは放火、これが顕著にふえているという数字になっていないんですよね。これを見ると、本当に今、十四歳未満のところを中心として、この少年法の改正をやっていかなければならないのかという思いにさらに疑念がわくわけでございます。

 大臣、この十四歳未満の少年犯罪、これは本当に今ふえているんでしょうか。お答えください。

長勢国務大臣 委員御指摘のとおり、触法少年の補導人員あるいは人口比というものが増加傾向にあるということではありませんけれども、他方で減少する傾向というものも認められないわけで、おっしゃるように、格段に伸びたから何かしなきゃならぬということで必要な場合もありますけれども、ずっと変わらないということ自体が問題なこともあるわけでありまして、十四歳未満の少年による凶悪重大な事件も発生はしておるわけであります。

 こういうことについていろいろな観点から御議論があって、平成十五年十二月に策定された青少年育成施策大綱や、犯罪に強い社会の実現のための行動計画においても、事実解明を徹底し適切な処遇に結びつけることや、個々の少年の状況に応じてその立ち直りに必要な処遇を選択できるようにするという観点から、検討事項とされてきたわけでございます。

 こういう点はかねてからも立法的手当てが必要ではないかと指摘されたこともございますし、こういう状況を踏まえて、今回、改正を行うということを御提案申し上げているところであります。

大串委員 今までの御答弁をお聞きしていますと、数字上で見ると高どまりしている、あるいは、触法少年の補導人員に関しても、その割合等々についても減ってはいないという表現を用いられました。高どまりしている、あるいは減ってはいない、そういう状況に関して何にもしないでいいのかという声がある、そういうふうな御答弁でございました。

 先ほど来私も繰り返して申しておりますように、確かに少年犯罪に関してはしっかりやってほしいという声が巷間あるのは私も認識しております。ただ、問題をきちんと認識しないといけないと思うんですね。

 先ほど来話がありましたけれども、確かにこの数年間、マスコミでも大きく取り上げられたような、非常に年齢の低い少年における凶悪犯といいますか、大変な事件が起こりました。数字上としては減っていない、あるいは高どまりしている、しかし、最近、こういうふうな報道といいますか、事件があったから、それに対応しなければならないというふうにおっしゃっているようにも聞こえるんですね。

 そうすると、いろいろな対応を考えていく際に、最近生じた幾つかの事例に関して過度に引きずられたといいますか、全体の必要な改革、整備からすると、幾つかの事案に引きずられた形になってしまうんじゃないかというのを私は懸念するわけです。全体像を見て、数字をきちんと確認して、どこにどういうふうな問題があるのかというのを確認した上で対策をとっていかなければならない。

 幾つかの事例に引きずられてはいけないんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣は、その辺に関して、どういうふうな思いでこの全体の法律改正を考えていらっしゃるんでしょうか。

長勢国務大臣 この問題に限らず、何か起きるとわっとそっちの方の議論が大きくなるということはよくあることでありまして、この問題に限らず、やはり冷静に議論をして結論を出していかなきゃいけないというのは当然のことだと思います。

大串委員 今おっしゃったことはまさにそのとおり、私も全くそのとおりだと思うんです。

 確かに、今いろいろ報道等でも取り上げられると耳目はそちらに行きがちですが、ただ、事実としては重要なことなので、起こっている個々の事例に対しても適切に対応できるような法体制なり運用体制なりをつくっていかなければならない、それも法律が対応していかなければならないことである、これは間違いありません。

 ただ一方、いろいろなマクロの数字も踏まえた上で、どこにどういうふうな問題があるかということをきちんと踏まえた上で対応策を考えていかないと、ゆがんだといいますか、不十分になるかもしれないし、十分な対策にならないかもしれないし、あるいはどこかに妙に力点が置かれた対応になるかもしれない。今後の、将来を担う少年に対する処罰といいますか処遇を決める少年法でございますので、その辺は非常に慎重に議論していかなければならないと思うんですね。

 ですから、私は繰り返し申しますけれども、現在の法案を議論する際に、この提案理由説明において幾つかおっしゃいました。少年の犯罪が今ふえているんだ、深刻化しているんだということをおっしゃいましたけれども、数字上ではそれをどのように評価するかというのは非常に微妙なところだと思うんです。非常に微妙だということを踏まえた上で、では、この改正案が今いいのか悪いのかということを、そういう非常に微妙な目をもって考えていかなければならないというふうに思うんですね。そういう観点から、少しずつ内容に入らせていただきたいというふうに思います。

 少年が犯罪を起こしたときに、どのようにしてこれに社会として対応していくかという問題であります。

 今回の少年法等の改正に関しては、厳罰化なんだというふうなちまたの言われ方があります。公権力の力がふえる分が、確かに改正内容から見ると見てとれます。

 今まで、先ほど来の審議でもありましたけれども、少年の犯罪、非行等々に関しては、罰則をもって臨むというよりも、社会の中に取り込んで更生を図っていく、そういうふうな対応、つまり児童福祉という観点からの対応が主にとられていたと思うんですね。先ほど来議論がありましたけれども、今意見の一致は見ませんでしたけれども、少年の事件が推移している、大臣は高水準とおっしゃいました。我々はなかなか、本当にどうかというところはまだ疑念があるわけですけれども、今の現状があって、ではそれに対してどのような対応をとっていくかです。厳罰化していくのか、それともこれまでの児童福祉のあり方を見直していくのか、こういう大きな方向性があろうかと思うんですね。少年でございますから、まだまだ未熟といいますか、これから人格も形成されて育っていく人々であります。ですから、本当に直接的に厳罰を与えるのがいいかということに関しては、これは慎重に考えるべきなんだろうというふうに思うんですね。

 青少年を担当している内閣府の方々に私はお尋ねしたいんですけれども、今、いろいろな少年犯罪に関して議論がありました。皆さんもいろいろな判断で少年犯罪の現況を判断あるいは評価されていると思いますけれども、現在の少年犯罪の現状を前提とすると、私は、その厳罰化というもの、その方向だけで臨むよりは、児童福祉をきちんと強化していく、そういうふうな方向で考えていくべきじゃないかというふうに思うんですけれども、青少年問題を担当されている内閣府の方々はどのように考えていらっしゃるか、お答えをいただきたいと思います。

荒木政府参考人 お答えを申し上げます。

 少年非行の現状につきましては、先ほど来いろいろ御議論があったところですけれども、私どもも、特に少子化の中で一人の子供もそういう非行に陥ったり、あるいは被害に遭ってはいけないということを考えておりまして、そういう意味で、人口比で見た場合に、子供の場合は、大人の平均と比べますと、成人の約六倍の犯罪、少なくとも検挙した人で見るとあるということを初め、そういった凶悪犯の連続等もございまして、やはり子供たちを大事にするということが非常に重要であるこの少子高齢化社会の中で、政府の最重要課題の一つとして取り組みをしなければならないと考えております。

 その際に、おっしゃいましたように、もともとこの少年法もそうだと思いますけれども、決して少年を捕まえてそれでいいということではないわけでありまして、福祉あるいは教育、それからもちろん警察も含めて、そういったところが社会を挙げて、あるいは地域のボランティアの人も含めて、どうやったら不幸にしてその非行に陥った子供の立ち直りができるか、現在、警察が捕まえた中で、少年院等に収容される人員というのは四%ちょっとでありまして、九五%以上は、保護観察が一〇%ちょっとですか、社会に戻ってくるわけですから、これを地域や家庭や学校でどうケアしていくかということが大変大事なことではないかというふうに考えております。

大串委員 今おっしゃったことは、非常に私も共感するんですよ。先ほど来申しましたように、私は、少年犯罪というものに相対峙するときには、罰をもって臨むというよりも、できる限り更生教育、社会の中で包み込むという方向で立ち直ってもらうような方向性をまず考えるべきだと思うんです。

 今内閣府の方が、地域あるいは家族等々も含めて立ち直っていってもらうということをおっしゃいましたけれども、今回、少年法等の改正が提案されて、かつ、その中では厳罰化とも一般に評価されているような内容が盛り込まれているわけです。

 では、この政府、日本の政府は一体、このような厳罰化というこの提案をテーブルにのせる前に、児童福祉強化という観点からの取り組みをきちんとやり尽くしただろうか、それをきちんとやった上で、それでもどうしようもないから厳罰化という方向に行っているのか、それとも、児童福祉強化という観点はまあまあやるけれどもとりあえず厳罰化という方向に行っているのか。

 私は、基本的に前者であるべきだ。すなわち、児童福祉の強化という面をとにかくきっちりやれているかどうかを検証し、やれていない部分があるんだったらその部分の改善を行い、その上でさらなる手だてを必要ならば考えるということが必要なんだろうと思いますけれども、今の政府は、児童福祉強化という観点から、すべてのことをやっているということを本当に十分検証したのか、検証しているとすると、どういうふうな検証をしたのか、その辺は内閣府の方でお答えいただけますでしょうか。

荒木政府参考人 お答えを申し上げます。

 現在、平成十五年の十二月に、総理大臣をヘッドといたしまして全大臣がメンバーとなっております青少年育成推進本部におきまして大綱が決定をされました。その大綱には、今おっしゃったようないろいろな子供の育成、各年齢期に応じた、どういうふうに育てていくかということとあわせまして、そういう困難を抱える少年、いじめや虐待に遭っている少年もそうでありますけれども、それに加えて、不幸にしてそういう暴走族に入ったり非行グループに入ってしまったような子供に対してどうサポートの手を差し伸べていくか、これが重要課題の一つということになっているところでございます。

 この大綱の議論をする場合にも、いろいろな有識者の懇談会あるいは特命担当大臣のもとでの検討会が行われまして、その際に、各種の民間のボランティアの方も含めて、いろいろな方の御意見をお伺いいたしました。その議論の中で、今回提案されております少年法の関係につきましては、触法少年について、大きな事件があったこともございまして、この適切な処遇をやらなきゃいけない、そのためにも、まず大事なのは事実認定だろう、ところが、事実認定をやるための手続が、何というか未整備である、これについてはぜひとも法的な整備が必要ではないかとか、あるいは、今回の改正案には入っておりませんけれども、大正少年法の時代には十八歳未満が少年とされていたわけですけれども、もう十八歳、十九歳はいいんじゃないかとか、そういう議論もございました。さらには、虞犯送致というのも、決して罰則を与えるためではございませんで、子供を保護するための送致でございますけれども、その活用のためにも手続を整備するべきではないかとか、さらには、今回入っておりますけれども、少年院等の処遇の改善でありますとか、保護観察の改善でありますとか、さらには親、家庭に対する指導をもう少し強めようじゃないかとかいうような各般の議論を踏まえまして大綱ができておりまして、そして、その大綱に従って、政府を挙げて現在政策を進めているということでございます。

大串委員 青少年大綱は私も見せていただきました。その中に今おっしゃったようなことが書かれていること、そしてそれが、少年法等の改正の中に盛り込まれているような内容が答申されていることも知っております。その上で私は問うているわけでございます。

 すなわち、政府で、その答申に書かれていること、あるいは書かれていないこと、現在、児童福祉の世界で行われていること、行われるべきことが本当にきちっと行われているのかということの検証が本当にじっくり行われているのかということなんです。児童福祉という観点から、いろいろな角度が、ディメンションがあろうかと思います。先ほど話のあった学校というものもありますでしょうし、地域というものもありますでしょう。それから、厚生労働行政等々の世界に入ってくると思いますけれども、児童相談所や児童自立支援施設あるいは保護司制度等々のいろいろな制度があって、その中で子供たちをいかに更生させていくかという制度が今成っているわけでございます。

 実は、私は、母親が保護司を十八年間やっておりました。十八年間でいろいろな子供たちを、もちろん子供たちだけじゃないですけれども見てきまして、いろいろな話を折に触れ私は聞いてきました。今回も、この問題に取り組むときに、いろいろな話を聞きました。一例ですから挙げさせていただきますと、少年犯罪に関してどうですかという話を聞いたところ、いろいろな保護司の方々の中で今話が出ているのは、非行を行った少年の方々が少年院あるいは児童自立支援施設なんかに入られて、早く出てくるねというようなことが言われているようであります。早く出てくるねというような言葉が出てくるから、私は、今回の少年法改正に書かれているようなことに賛成なのかと思って、もう少し話を聞いていくんです。

 そうしたところ、私の場合は限定された例ですから、それがどのくらい一般論としてあるかわかりませんけれども、どうも話を聞いていると、すなわち、自分たち保護司の世界でもっとやれることがあるという認識がやはりあるようなんですね。ところが、十分にやれていない。十分にやれていない中で、少年院や、あるいは児童福祉施設なんかに子供たちが入って、その中で、自分たちだったらこういうふうにしてあげたいというふうな更生教育を本当に十分に受けているのかなという不安を持つぐらい早く出てくる、そういうふうな思い、つまり、保護司の皆さんも、もっともっとやりたいという思いはやはりあるんだと。

 ただ、今いろいろな時間の問題だとか、あるいは基本的にボランティアですからなかなか時間も割けない。そして、なかなか難しい少年や、あるいは相手方の大人もいるんですね、なかなか難しい面もある。保護観察官の方々ともいろいろ話しながらするけれども、保護観察官の方々の数も十分じゃないし、保護観察官の方々とコンタクトしようとしてもなかなか難しいところもあったりする。その辺の連携がうまくいくと、もっともっと子供たちを取り込んでいけるのにねというふうな思いが保護司の方々にはあられるようでございます。御案内のように、保護司の方々、前職は保護観察官の方でいらっしゃったり、あるいは宗教家の方でいらっしゃったり、教員でいらしたり、いろいろな方がいらっしゃるから、子供たちを取り込んでいきたいという意欲はたくさんあられるようなんですね。

 例えば、この保護司の制度についても、十分な働きをしているのかどうかという検証みたいなものがなされているのかどうか、この辺が非常に私は心配なんです。これは内閣府の方にお尋ねして、それぞれ担当の厚生労働省や、あるいは学校のことであれば文科省の方々にお尋ねしなきゃいけないんですけれども、最後に、法務大臣にだけ一言お尋ねします。

 法務大臣、どうですか。少年法の改正を今回提案されている立場として、厳罰化以外の更生教育、教導という立場から、十分な施策をもって、それをやり尽くしたという形で今回法律を出しているのか、そこを本当に自信を持って言えるのかどうか。そこの点は、今回、思想的に非常に大切な点だと私は思うんですね。その点に関して、大臣は、日本の政府は十分やっているんだ、だから少年法を今回こういう形で出しているんだというふうにお考えなのかどうか。総論的ではありますけれども、その辺についての御見識を伺いたいと思います。

七条委員長 時間が過ぎておりますから、簡単明瞭に。

長勢国務大臣 少年非行に対して、いろいろな観点からいろいろな御意見が世の中にはあるだろうと思います。それからまた、今御指摘のあった、児童相談所を初めいろいろな各施設も保護司の方々も大変な御努力をされておられると思います。そういう中で、そっちがまだ足りないからという話だけで、国民の期待に対する政治の役割が果たせるかというふうに私は疑問に思います。皆さんそれなりに頑張っていただいている、それぞれの方々の活動が生きていくためにも、今回の少年法の改正が必要であろうと思っております。

大串委員 具体論に関しては、これからまた議論させていただきたいと思います。ありがとうございます。

七条委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 きょうは、大串議員、また平岡議員、石関議員がいろいろ伺っていましたように、今本当に少年法改正の必要性があるのかというような根本の基本的な問題を、法務省からいただきました、今副大臣がごらんになっているこの資料、こういうのをベースに、大臣、副大臣、政務官に満遍なく伺っていこうと思うんですけれども、まず、先ほどから法務大臣に同僚議員から随分御質問させていただいたんですが、副大臣と政務官にも同じ質問をさせていただこうと思うんです。

 実際、これの後ろについているデータを見ても、すごく少年犯罪がふえているのかな、また、凶悪なものがというような説明もあったけれども、データ上で見ると別にすごく激増しているわけでもないし、それを事前の予防、事前の予防ということで、やたら警察が介入してどんどんやっていくことが本当に適切なのかとか、あるいは調査という名のもとに事実上大人とほとんど同じ扱いをしていくことが本当にいいのかとかということを、やはり考えなきゃいけないなというふうに私も今質問を聞いていて思ったんです。

 まず、副大臣に伺います。

 この人口比の推移ですとか、こういうのを見ますと、実際は余り変わっていないですよね、これは法務省からいただいた資料ですけれども。まず、こういう資料が、ちゃんとしたデータが副大臣のところにも事務方からきちんと届いているのかどうか。また、副大臣自身も、こういうものの説明を聞いたときに、いや、でも実際はそんなに変わっていないじゃないか、本当に今やる必要があるのというような、これは継続だったので、もちろん副大臣が就任される前にこの法案そのものはできているわけなんですけれども、改めて、副大臣に就任してから、実際データ上で見るとどうなんだろうな、今本当にやる必要があるのか、そういうようなお話をされたかどうか。また、もう一つは、実際にこういうデータに基づいて見てみた結果、今本当に少年法改正は必要だというふうに思われているのかどうか。ちょっとまず副大臣に伺います。

水野副大臣 委員御指摘の、そういう資料をもとの説明を、資料を含めて、少年の刑法犯の推移とか、そういうものの説明を受けているかということでいうと、それは受けております。そういう資料はいただいております。

 確かに、先ほど来の議論にもありますように、刑法犯の数とかが、年々歳々ずっと一本調子で上がっているとは必ずしも言えない部分もあるんでしょうけれども、ただ、高どまりしている部分もあるでしょうし、そもそも犯罪というのは、年々歳々上がっているわけでなくても、一定数の犯罪があるということ自体が、それ自体がゆゆしいことですから、それに対して、そうした問題の解決のために少年法の改正というのが一助になるのかな、そんなふうに考えております。

高山委員 それでは、次に政務官にも伺いたいと思うんですけれども、民間企業でも、何か物事を決めたりするときに、当然、お客様からの電話だったりクレームだったり、いろいろなその時々の事象というのをもちろん考えなきゃいけないですけれども、やはり重要な決定をやるときはデータに基づいてしっかりやっていくものだと思うんですね。

 この点、もちろんこれは政務官も就任前のことでもあるんですけれども、政務官に就任して、こういういろいろな説明をまずきちんと受けているのかどうか、データに基づいて。それで、そのデータを見て、いや、でも実際は余りふえていないんじゃないのというようなことで、何か疑念を持った点、そのときにいろいろ事務方に質問したようなことがあれば教えていただければと思います。

奥野大臣政務官 最初の御質問でありますけれども、民間企業である限りは、すべてデータに基づいて、どれだけもうかるか、こういう議論になります。

 それから、その次、政務官になってからちゃんと説明を受けているのか。受けております。

 それから、では、この件に関してどうだということになるわけですけれども、この件をデータだけで議論して決めていいのかという疑問が私はあります。

 私自身、選挙区が奈良ですから、皆さん方は御承知だと思います、去年、おととし、大変な少年事件が多かったんです。先ほど大臣も言っておられましたけれども、地元へ帰るとやはり、少年の犯罪が非常にふえている、そういう認識だとみんなに言われています。では、データの上で出てこないことでみんなが心に感じていることは何かといったら、私はやはり凶悪度が上がっているんだろうというような気がします。

 それからもう一つは、先ほどもちょっと議論の中にありましたけれども、人格形成というのは基本的には小学生のうちにできるものだ、こう思います。ですから、できるだけ早い機会に人格を形成させて、一人前の人間にすることが一番大事なんだ、そのために今の日本の国で欠けていることは何だといえば、家庭教育であります。

 家庭において倫理観とか、あるいは道徳観、しつけ、そういったものを通じてしっかりとした人間に育てることが必要であって、それがうまくいかなかったから十二、三歳、十四歳ぐらいで犯罪を犯したとするならば、それはある種、もちろん、事実がどういうことであって、その人たちをもとへ戻す、もとの人格へ戻すような矯正作業も必要ですけれども、やはりそれはそれなりの処罰ということも、現代の社会では必要じゃないかという社会的な認識が結構多くなってきているのではないかなと、ただ、データでないですよ、私の感覚で申し上げているんですが、そういう感じがいたします。

高山委員 今、政務官がおっしゃったように、これは確かにデータだけで決められるものじゃないなというふうに私も思うんですけれども、家庭教育が問題だ、あるいは小学生までにほとんど人格が決まるというような、私も聞いていて、それは確かに否定し切れないなというような印象を持ったわけなんです。

 そうしますと、今回のこの改正によって、今、政務官が少年の問題あるいは少年犯罪の問題について原因だと考えられていることが、どのようにこれは解決できるんでしょうか。

奥野大臣政務官 これは、全く個人的な意見で聞いていただきたいと思います。

 私は、やはり社会の変化が著しくなってきて、法整備等々、全体のマネジメントのスキームというんでしょうか、それが現代社会にマッチしなくなりつつあるというふうに感じているんです。ですから、現代のそういう社会の環境にマッチしたいろいろなマネジメントのスキームを早くつくり上げていくということが一番大事じゃないかな、その中の一環として少年法の改正というのを考えてもいいんじゃないかな、私はこんなふうに思います。

高山委員 今、個人的な見解でということでお話しいただいて、まさに本当にそのとおりだなと。何か最近あらゆる面で、制度改革もどんどんやっていかなきゃいけない、そのとおりだと思うんです。

 この少年犯罪、今この少年法の議論ということでいえば、旧来の少年法で、これはもう明らかに時代おくれだ、なのでここは改正しなきゃいけないという部分、一番政務官が感じられた部分というのはどこですか。

奥野大臣政務官 私は、今の少年法の改正に対して大賛成の立場でありますから、ある意味、警察権が介入する年齢を引き下げるということも今の社会環境にマッチしたやり方じゃないかなというような気がします。

 それから、社会環境が随分変化しているというのは、非常に情報がいろいろなところから流れてきて、特にテレビなんかを通じていろいろな入れなくてもいいような情報を子供たちに入れているというような環境変化もありますから、そういったこともやはり取り締まりをしていくということも必要だろうと思います。

高山委員 今の政務官の御答弁、私も今回の改正が全部だめだというふうには思っておりませんので、確かにそうだ、そうだとうなずきながら聞いていた部分もあったんですけれども、この警察権の介入ということに関して、やはり現行法の少年法ではちょっと不足しているなという点、何かお感じになっていることがあれば教えてください。

奥野大臣政務官 不足しているというよりは、やはり今この法律の原点である事実確認をはっきりして、そして矯正をして人格をもとへ戻してあげよう、これは大事なことだろうと思います。それと、どうしてもやはり、凶悪犯罪を犯したからにはやはりそれなりのことを、ただ単に児童自立支援センターとか家庭裁判所の処遇だけじゃなくて、警察権で、世の中は警察を中心に大人たちは動いているわけですから、その大人の仲間入りをさせるということも、ある年齢は必要だなと私は感じているんですけれどもね。

高山委員 ちょっと、世の中は警察中心に動いているという物すごく本当のことを、今政務官の口からおっしゃっていただいたのであれなんですけれども。ただ、今どうでしょう。少年もある年齢からは大人同様に扱う必要があるというのはわかるんですけれども、それは、今までの感覚だと二十から、いや、十八歳だと、だんだん今下げてきているわけなんですけれども、どんどん今その対象年齢を下げてきているということは、これはやはり政務官の今のお考えからすると、少年に対しても、特別扱いしないでどんどんもうやはり大人と同様に扱っていいんだ、そういうようなお考えなんでしょうか。

奥野大臣政務官 これは先ほど申し上げたとおりでありまして、十四歳未満と言っているんだから、十四歳以上で、十四歳をボーダーラインにすることがいいかと言われると、人格というのはやはり小学生のときにできるものだ、私はこう感じているものですから、これは個人的な話と考えてください、十二歳、十三歳ぐらいはもうそういう領域に入れてもいいんじゃないかと個人的には考えています。

高山委員 その年齢の引き下げのこと以外に、現行の少年法ではこれは足らぬという部分、ほかに政務官がお気づきの点があれば教えてください。もう政務官がお気づきの点でいいんです。すごく詳しいから。

奥野大臣政務官 余り詳しくないんですが、私は、やはり今申し上げたように、十二、三歳ぐらいの人たちが社会である種の制裁を受けるということはいいのではないかと警察という言葉を使わないで申し上げたわけですが、私が今一番感じているのはそういったところでありまして、それ以外については、これというようなイメージのものは持っていませんけれども。

高山委員 ただ、今回、かなり少年法は大幅な改正なんですよね。ですから、今政務官がおっしゃられたこと以外にも、かなり改正する部分というのはあるわけですから、本当にもし必要ないのであれば改正する必要はないですし、先ほどの立法事実の話に戻れば、数字上のことでいえば、それほど本当に犯罪が今激増しているということでもないですし、どうして今この改正なんだというふうに私はちょっと感じる部分もあるものですから。

 先ほど政務官の話にもありましたけれども、警察なんですけれども、きょうは警察庁の方にもお越しいただいているので、まず、警察がこの少年犯罪を今取り締まりというかやっていく中で、現行法ではこういう点が不都合なので、今新たな少年法の改正で、ここが変わるともっとより効果的なことができるという、現行法、不都合な部分というのをちょっと教えていただいていいですか。どこが不都合ですか。

片桐政府参考人 午前中にも御答弁申し上げましたが、今回の改正、調査権限が新たに規定されますが、これは、従来私どもが警察法二条に基づいてやっております任意の活動でございますけれども、それの明確な根拠を与えようというものでございます。

 ただ、私どもが従来問題だったというふうに考えておりますのは、いわゆる物的な強制処分と申しますか、捜索とか差し押さえによって証拠物を押さえる権限がなかったということでございまして、それによって、現実の問題として、例えば、被害者が亡くなったようなケースで司法解剖ができないとか、また凶器等の物件とか被害品の提出を求めても保護者の方が拒否をするとかいったような形で物的証拠が集まらないというケースがあったわけでございまして、これが、今回の改正によってそういったことが解消されるというふうに考えております。

高山委員 これは、ちょっと古い新聞なんですけれども、平成十六年の、少年非行防止法制に関する研究会という警察庁の研究会のいろいろな報告があるんですけれども、これで、非行少年の補導手続なども明文化する必要があるとかいろいろな提言をされているわけなんです。

 今度、虞犯であるとか虞犯のおそれのある少年に対して警察官のかかわりが非常に強くなると思うんですけれども、今の法制度では、実際徘回しているような少年とか、これはちょっと非行少年だなと推察する人にどういうふうに接していて、今何ができないので改正の必要があるというふうに警察庁の方では、この報告書でどういうふうにまとめているか、また、警察庁の方の立場としては、何が今できないからここを強化する必要があるのかというところを話してください。

片桐政府参考人 まず、仕組みから御説明申し上げますと、いわゆる犯罪少年、犯罪を犯した十四歳以上の少年、それから十四歳未満でいわゆる犯罪行為に該当する行為を犯した触法少年、あと虞犯少年、その三つの類型が今少年法にございますが、このほかに、私ども警察としては、不良行為少年、要するに虞犯少年に至らない少年の範疇を設けておりまして、これに対して街頭等で補導を行っているということでございます。

 例えば、虞犯少年というためには、いわゆる虞犯事由と虞犯性が必要でございまして、単に飲酒しているとか、喫煙しているとか、深夜徘回しているとかいうことだけでは虞犯少年には該当しませんが、ただ、こういった行為は、一般的に子供または他人の徳性を害する行為でございますので、将来非行につながる可能性があるということで補導活動を行っているということでございます。

 そして、今御指摘のあった不良行為少年の補導のあり方に関する研究というのは、このうちの不良行為少年に係る部分でございまして、今回の改正とは別だというふうに理解をしております。

高山委員 その不良行為少年というのは、何で規定しているんですか。何か規則とかそういうのがあるんでしょうか。

片桐政府参考人 国家公安委員会規則に少年警察活動規則というのがございまして、そこで規定をいたしております。

高山委員 これは、例えば、今少年法の改正をするときに、虞犯も何かちょっとあいまいじゃないか、あるいは虞犯のおそれというのもあいまいだから、そういうのはきちんと法定した方がいいじゃないか、しかも、そこもまだ今議論がいろいろあるわけなんですけれども、これは規則に基づいて、非行少年ですか、そういうものの定義なんかを今決めて、事実上、虞犯に至らないような少年たちに対しても、補導ということで、警察官が一々呼びとめて、質問をしてということは、では、現にもう今行われているわけですか。まず、ちょっとこれは確認なんですけれども。

片桐政府参考人 結論から申し上げると、そういう活動はもう古くから、ずっと昔から続けているところでございまして、その不良行為の範疇というのは、またこれは通達で相当詳しく具体的に決めておりまして、例えば少年で飲酒をするとか、喫煙をするとか、それからあと粗暴行為を行うとか、性的いたずらを行うとか、そういった形をずっと並べておりまして、これに該当した場合には、街頭で声をかけて補導するということでございます。

 ただ、この補導は、警察官だけではなくて、少年補導職員というのがおりまして、これは例えば心理学の専門家とかがおりますけれども、そういった職員がやるとか、また民間のボランティアの方にもやっていただいているということでございます。

高山委員 これは、後で法務大臣にも伺いますけれども、今警察の方に聞くんですけれども、規則で決めている非行の状態というんですか、飲酒しているとかそういうものと虞犯と、いろいろ段階的なものがあると思うんですけれども、今回のこの改正で、虞犯のおそれ、こういうところまで少し虞犯が広がるようなイメージなんでしょうかね。

 この規則と今回の少年法の改正のと、先ほど何か関係ございません的な発言がありましたけれども、大きく重なり合っていると思うんですよね。少年の同じような行動をいろいろな方向から言っているだけの話であって、実際大きくこれは重なり合っていることだと思うんですけれども、ちょっとその関係を教えてください。

片桐政府参考人 関係がないと申し上げたのは、範疇としては別でございますということでございまして、実態的には関係がございまして、不良行為から虞犯に発展をするということはございます。

 それと、不良行為少年というのは、虞犯にまで至らないような、虞犯とありますが、例えばそういった性癖があるとか相当重い程度のものを予定していますけれども、そこに至らない、ただしかし、そこに至る可能性があるという少年を街頭で補導し、初期の段階で立ち直ってもらうきっかけにしてもらうということにしているわけでございます。(高山委員「虞犯のおそれのある」と呼ぶ)

 虞犯の事由は、少年法三条に書いてございますように、例えば保護者の正当な監督に服しない性癖があるとかいう、単に家出をしているとかいうことじゃなくて、それが常習的で、繰り返しているとかいうことをとらえてこの虞犯事由は述べているというふうに私も理解しております。したがって、街頭で単に、家出をしておりますという事実が判明しただけで虞犯事実があるというふうには判断をしておりません。(高山委員「規則上どうなんですか」と呼ぶ)

 規則上の不良行為少年というのは、虞犯よりも程度の低いものと規定をしておりますから、概念的には分かれていると……(高山委員「虞犯のおそれは、今回の改正案の」と呼ぶ)

 ちょっとまた話が発展していますけれども、虞犯の疑いですね、先生がおっしゃっているのは。虞犯少年の疑いがあるというケースでございますよね。

 それは、一応、虞犯少年の範疇というのははっきりしておりますけれども、ただ、最終的に虞犯少年であるか否かを厳しく決めるのは、少年審判、家庭裁判所でございますから、その前段階においては、やはり虞犯少年の疑いがあるという形でとらえる以外にはないのではないのかなというふうに思っています。

高山委員 大臣、ちょっと私も、今の答弁で、私の理解力ということもあると思うんですけれども、なかなかこれはわかりにくいなという印象を受けるんです。

 そこで、提出の責任者である大臣から、今の虞犯と、虞犯のおそれのあるところと、規則で決めている非行少年というんですか、ちょっとクリアに説明してください。

長勢国務大臣 もしクリアでなかったら、事務方から説明させますけれども、今警察庁から御答弁があったように、犯罪少年、触法少年、虞犯少年、こういう非行少年といわゆる不良少年とはまず違うということになるんだろうと思います。

 それで、少年法では、触法少年と虞犯少年について、家庭裁判所の所管として審判に付するということが定義をされておるわけで、まず、十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年は触法少年ということになります。

 第三条一項三号、ここに虞犯少年の定義が書いてあるわけでありまして、先ほど御説明があったように、保護者の正当な監督に服しない性癖のある者であって、将来、その性格または環境に照らして、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年、おそれのある少年が虞犯少年であります。つまり、こういう虞犯事由の一つを行い、かつ、虞犯性がある、こういう少年が虞犯少年。今回、調査権限の対象になるのは、虞犯少年の疑いのある者ということであります。

 先ほど来御説明いたしましたように、将来、刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年が虞犯少年ですから、それであるかどうかは家庭裁判所が決めるということになっています。ですから、調査の段階では決まっていないわけでございますので、その心配があるというか疑いがある者を調査権限の対象としたわけであります。

 したがって、先ほど、平岡先生だったですかな、何か私の答弁が不正確であったのかもしれませんが、疑いがあったから調査をするわけですが、調査の結果、何もなければそれで何もないということになりますし、疑いがあるというおそれがあれば家庭裁判所の方に持っていく、こういうことになるという整理であると思います。

高山委員 大臣、これはすごくわかりにくいなと思うんですけれども、もちろん虞犯かどうかというのは、最終的には家庭裁判所の方で決めていくというのは当然のことだと思うんですよ。その疑いがちょっとある人には当然声をかけてというのは、それは大人であっても、その人が本当に犯罪者なのかどうかというのは、疑いの段階でもちろん声をかけていくわけで、そこがいけないと言っているんじゃないんです。

 今回の少年法の改正で、調査ということで、警察官の方が、虞犯の疑いがあるな、あの少年、疑いがあるぞとなったときにはどんどん調査をしていけるわけですよね。そのことと、今もう現に補導という形でいろいろやられている、この規則に基づいて、現に町で声をかけて、君、何年生とか、何をやっているんだとか、やっているわけですよね。この区別を教えてもらいたいんですけれども、どういう峻別があるのか、これは結構大事なことなので。この今回の改正の少年法に基づいて調査しているのか、それともこの規則に基づいて今までと同じように補導しているのか、ちょっとその峻別をきっちり教えてもらいたいんですけれども。

片桐政府参考人 ちょっと整理してお答え申し上げます。

 少年法には、今申し上げましたように、犯罪少年と触法少年と虞犯少年があって、虞犯少年については、第三条第一項第三号で虞犯事由が決まっていて、この「事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある」、いわゆる虞犯性がある、要するに、虞犯の事由と虞犯性と両方を備えた者が虞犯少年であるというふうに規定をしております。

 それで、少年警察活動規則でございますけれども、この第二条には、ここでいろいろな対策を定めておりますけれども、ここで対策をとるのは、一つは、今申し上げた犯罪少年、それから触法少年、虞犯少年、これを三つまとめて非行少年と呼んでいます。不良行為少年と申しますのは、非行少年には該当しないけれども、飲酒、喫煙、深夜徘回その他自己または他人の徳性を害する行為をしている少年をいうということでございまして、虞犯少年に至らないけれども、徳性を害する行為をしている少年をいうということでございます。

 それで、恐らく質問の御趣旨は、一体どの段階から虞犯少年である疑いがあるというふうに言えるのかということでございますけれども、単に不良行為を行っているからといって、我々は虞犯少年の疑いがあるとは考えておりません。虞犯事由とまた虞犯性の両面を備えるおそれがあるということで我々は考えておりまして、例えば、ある少年が家出をしているということでございますけれども、ただこれだけでは不良行為少年であって虞犯少年ではない、虞犯事由にも当たらない。ただ、その少年がずっと家をあけて、また何回も何回も家出を繰り返しています、そういう性癖がありますということになれば、この虞犯事由に当たる可能性が出てきます。

 加えて、虞犯性もまた必要なんですけれども、例えば、この少年が暴力団の事務所に出入りをしているとか、また少女の場合であれば援助交際をしているとかいうことで、将来、犯罪につながるおそれが具体的にあるというふうに判断した段階で、我々は虞犯少年に当たる疑いがあると見て調査を始めるわけでございます。

 ですから、理屈の上で、虞犯少年に当たるかどうかの調査と不良行為少年に関するところの街頭活動は理屈の上では峻別をされているということでございます。

高山委員 なるほど、何となく今、理屈の上で峻別されているということだったんですけれども、そうすると、いきなりこれは調査というような感じじゃなくて、初めはやはり補導から入っていくんですか。それで、聞いているうちに、むむっと、これは虞犯性向があるぞというふうに段階的になっていく、こういうイメージなんですか。それとも、初めから、これはもう虞犯だな、明らかにそうだ、調査に行く、こういう二ケースあると思うんですけれども、ちょっとそれを具体的にイメージできるように説明してください。

片桐政府参考人 私どもが虞犯少年について認知するきっかけというのはいろいろあるんですけれども、一番多いのは親御さんからの相談でございます。親御さんからいろいろ詳しい事情を聞いて、その中から今申し上げたような具体的な話が出てきたということで疑いがあると判断すれば、理論的には虞犯少年の調査に移っていくということでございます。

 このほかに、いわゆる福祉犯と言っていますけれども、例えば子供に売春させるとか、また風俗営業所で働かせるとかいった行為は犯罪になりますけれども、被害者として子供を調べる中でそれが判明するという場合もあります。

 ですから、初めから非常に疑いが濃い場合ももちろんあります。ただ、今申し上げました街頭補導から始まる場合には、まだ疑いがほとんどない段階からだんだん濃くなっていくということは御指摘のとおりだと思います。

 ただ、誤解のないように申し上げますけれども、虞犯少年の調査といっても、あくまでも任意の行為でございますので、それ以外の不良行為少年の補導に関する調査と申しますか、活動と実態的には変わるところはないということでございます。

高山委員 では、これは実態的には今やっていることと同じなんだ、こういう意味ですか。法改正の議論を今しているんですけれども、法改正をしたといっても、実態的には同じことをやるんだ、大臣、こういうことなんでしょうか、ちょっと大臣に伺いたいんですけれども。やっていることは同じだ、そうすると、何のために法改正するのかなというふうに思ったんですけれども。

長勢国務大臣 虞犯少年の調査に関しては、やることは変わらないと思います。

 ただ、法的な根拠が明確でないものですから、いろいろ調査をするのに支障があるということで、明文化をして、きちんとした調査をやれるようにして、それが青少年の育成に非常に役立つ、こういうふうな理解で提案をしておるところであります。

高山委員 今大臣の話にもありましたように、法文上の根拠が明確じゃないというような話が、実際前々から言われていたと思うんですけれども、そうすると、今やっている行為というのは、この規則は行動準則だと思うんですけれども、どういう権限に基づいて少年のことをやっているんですか、一体何が根拠なんですか。法案が何か根拠あるんですか。

片桐政府参考人 これは先ほども御答弁申し上げましたが、現在やっております、触法少年もそうなんですけれけども、虞犯少年の調査も、警察法第二条に定める警察責務遂行のためにやっております。

 警察責務の中には、犯罪の防止というのが入っています。犯罪の防止の一環として少年の非行防止というのがあるわけでございまして、現に、お手元のデータにもあると思うんですけれども、少年の人口千人当たりの犯罪発生率というのは成人の六、七倍ございます。非常に高い比率なんです。ですから、ここの少年の非行を防ぐということが将来の犯罪の防止に極めて資する、そういう度合いが高いということでございますので、犯罪の防止の一環として極めて我々は重要な活動としてやっている。ただ、これは設置法に基づく活動でございますから、強制権限はない、あくまでも任意の活動であるということでございます。

 今回は、その活動を少年法上きちんと根拠を明確にするということで行われたというふうに理解をしております。

高山委員 今聞く前に言ってもらったんだけれども、警察法二条でやっているということですね。これは犯罪防止である、広い意味で、その中に少年犯罪の防止というのも入っているんだということだったんですけれども。

 大臣に伺いたいんですけれども、このいただいた少年法の資料にもある、少年法の目的というのもあると思うんですよね、これはどういうことが書いてありますか、この一条の目的です。

長勢国務大臣 何度も答弁を申し上げておりますが、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年及び少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的」としております。

 したがって、この健全な育成を図る上で、真相、事実を解明して、きちんとした対応をしていくという上で、調査をきちんとやれるような体制をとることは、この法律の目的の範囲内というか、この目的を達成する上で必要なことだと考えておるわけであります。

高山委員 いや、大臣、私は別に調査不要だなんて全然言っていませんよ。ただ、私がちょっと今大臣に伺いたいのは、警察法の目的というのは、どちらかというと、犯罪防止、捜査ということなんですね。

 それで、この少年法の目的というのは、見てみると、本当に何か犯人を捜して責任をとらせようとか、どうもそういうことではなくて、むしろそういう犯罪に走ってしまうような少年は保護して、矯正あるいは教育し直してあげる必要があるんだということで、これはかなり視点が違うなという印象を持つんです。何か今までのお話を聞いていますと、補導少年なんかに対することでいえば、結果として、全然目的が違うはずなのに、担い手が同じ警察官で、また全然違うことをやっているなという印象を私は受けるんですけれども、どうでしょうか、大臣。

 二つの法律の目的というのは全然違うんじゃないのかな。それが大きく重なり合うところで、何か同じ人が、つまり警察官が担い手となって、今までは補導活動ということで非行防止、犯罪防止みたいなことでやっていた。だけれども、少年法というのは、どちらかというと、そういう犯罪に走る少年を、もう二度と犯罪をさせないようにしようじゃないかみたいな、ちょっと目的が違うなというふうに思うんですけれども、大臣は、この二つの法律の目的がちょっと別の方向を向いている、今回、調査ということで、行為として見ると重なり合う部分が見えるんですけれども、これはどのようにお考えになりますか。

長勢国務大臣 それぞれの法律の範囲は違いますけれども、この問題についての方向は何も変わらないと思います。

高山委員 そうでしょうか。

 これは、警察法二条というもので声をかける場合は、こいつは非行少年じゃないのかとか、あるいは何か犯罪的なものにかかわるおそれがあるんじゃないのかというようなことで声をかけるんだと思うんですけれども、少年法の観点の調査というのは、徹底して調査をして真実を解明することで、より少年の将来の健全育成に資するんだということで、何かちょっと目的が、声をかけるときのスタンスが変わってくると思うんですけれども、この点、大臣はどう思いますか。全く矛盾はないというふうにお考えですか。

長勢国務大臣 ですから、警察の声をかけるケースというのはいろいろなケースがあるんだろうと思うんですけれども、少なくとも、触法少年なり虞犯少年についてやっている警察の職務の方向については変わりがないと申し上げたわけであります。(高山委員「警察法に基づいてやっていると言ったじゃない、根拠法」と呼ぶ)警察法の範囲がいろいろありますから、その範囲の中に、少年の非行を防止する、それが健全育成につながるという方向で警察の職務が遂行されておるわけで、少年法にかかわる部分については何ら方向が違うわけではないと申し上げたんです。

高山委員 警察法の二条に、何かそういう少年の健全育成みたいなことというのは、目的であるんですか。

 これはだって、警察法というのは大人も含めての全部の話ですよね、犯罪の防止だとか取り締まりだとか。少年法というのは、何か人をあやめてしまったりだとか、あるいは傷つけたとかということに関しては大人と同じだけれども、でも、やっている本人が少年なんだから違う取り扱いをしようじゃないかということで、根本的に少年法というのは理念が違うと思うんですね。

 だから、大臣、結果としてこれは少年の健全育成に資するんだというのは少しおかしいんじゃないですか。やはり警察法の目的は違いますよ。人を見たら犯罪者と思えとまでは言いませんけれども、基本的にはそういうスタンスですよね、治安維持だ。だけれども、少年法の目的は治安じゃないじゃないですか。やはり、少年個人を救おうというのが少年法の目的だというふうに思うんですけれども、大臣、どうお考えですか。

長勢国務大臣 ですから、警察の方々の職務は二条にいろいろ書いてあって、いろいろな職務をなさっておられると思います。

 少年法は、少年に関する部分だけの法律でありますから、それは範囲が違うわけであります。しかし、少年の問題について警察のやっている職務は、当然少年法と同じ方向を向いてやっておられるということを私は申し上げておるんです。

高山委員 今いろいろアドバイスもいただいたので、ちょっと警察の方にも伺いたいんですけれども、警察の職務をやる上で、この警察法二条というのは、どちらかといったら治安維持ということだと思うんですけれども、どういうところにそういう少年のことを健全育成しようとかいうことが書いてあるのか、教えてください。

片桐政府参考人 警察法第二条には大きく分けて二つあるんですけれども、一つは、個人の生命、身体、財産の保護、もう一つは、犯罪の予防、鎮圧、捜査、被疑者の逮捕、交通の取り締まりその他公共の安全と秩序の維持ということでございます。

 子供の健全育成というのは違うじゃないかとおっしゃられれば、一応概念上は分けられると思うんですけれども、ただ、一つの行為でも光の当て方で、こちらから見れば犯罪の予防に資するけれども、こちらの側からすれば健全育成にも資するんだということはあり得るわけでございまして、それがダブるということはあるわけです。

 子供の健全育成がなされれば、これは当然に、少年の非行がなくなり、犯罪もなくなるわけでございますから、そういった意味で警察の目的とするところと一致するわけでございます。したがって、概念上は確かに違うかもしれませんが、矛盾はないということだと思います。

高山委員 いや、概念上じゃないんですよね。この法律の趣旨ですよ、一番根本、一条のところに書いてあるこの法律の目的、この目的がちょっと何か違う方向を向いているのじゃないのか、秩序維持、治安維持みたいな話と少年の健全育成というのは。ここは、概念が違うとかじゃなくて、一条のこの目的の部分で、反するとまでは言わないんですけれども、全く同じような方向を向いているので矛盾はありませんということは、僕はちょっとないんじゃないのかなと思うんです。

 この点に関連してちょっと伺いたいのは、今までも、もう随分昔からこの補導というのはやってきて、警察の方も少年に対して、ほかの大人の人に対するのとは違う接し方ということで、いろいろマニュアルですとか、規則ですとか、多分そういうのがあるんだと思うんです。

 今回、少年の調査ということが行われるわけですけれども、実際に調査されるのは警察官がやることが多いと思うんですけれども、今回の改正に合わせてか、あるいは今回の改正をする前から、少年だということで特別に気をつけて規則上何か決めていることだとか、そういうことというのはありますか。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、子供の事件の処理については、やはり子供の特性に配意するとかいうことが必要でございますので、従来から警察官全般に対して、まず採用時、また昇任時、いろいろありますけれども、そのすべての段階で、少年警察とは何か、少年の補導のあり方とか事件処理のあり方とかいうことは教養をいたしております。

 加えて、少年警察を専門にする人間については、任用する前、または直後に、学校に集めてきちんとした教育を施すとか、また継続して、我々は専科教養と言っていますけれども、学校に入れていろいろな教育を施すとかいうふうなことをやっているということでございます。

 このほかに、先ほどもちょっと申し上げましたが、少年補導職員という警察官以外の職員がおりまして、これは心理学とかを専攻した方々が結構多いんですけれども、この方々は、まさに少年の補導とか、それから事件処理を専門にやっている方でございまして、高度な専門知識を持った方だということでございます。

 そういった形で今運用しているということでございます。

高山委員 今の少年補導職員というものですか、これは今回の調査ではどういう役割をするのか、教えてください。

片桐政府参考人 ちょっと今条文が出ないんですけれども、触法少年の調査とか、それから虞犯少年の調査、これに警察官と一緒に当たることができるという規定になっております。

高山委員 あと、いわゆる補導員というんですか、民間の人がいますよね、お手伝いしてくれる。この人はどういう位置づけになっているんですか。

片桐政府参考人 少年補導員という方々がおられまして、この方々は純粋に民間のボランティアでございます。

高山委員 これは法務大臣にも伺いたいんですけれども、今回の少年法の改正で、少年の改善更生ということで、やはり日常生活の態度だとかそういうのが大事だということで保護司、これは民間の方にも随分御協力いただいていると思うんですけれども、今まで保護司の方が、ここができなかったので、保護観察の遵守だとかそういうことでいろいろ不都合があったんだけれども、今回の改正で保護司の方もこういうことができるようになりますよとか、そういう改正点というのは何があるんでしょうか。

長勢国務大臣 この改正で、特に保護司さんにということではございませんけれども、当然、今現在も保護観察は保護観察官と保護司の協働体制を基調として実施をいたしておりますので、遵守事項を守れない非行少年についての考え方を今提案しておるわけでございますが、保護司はそういう方々と適度な接触を保って、自宅でその対象者や家族と面接し、あるいは訪問して生活指導を行うという大変御苦労をいただいておるわけで、今後、この保護司の方々にも御協力をいただくことになるというふうに思っております。

高山委員 ちょっとあれみたいなので、もう一回違う角度からも質問しますけれども、遵守事項を守らない子がふえているというような話があったと思うんですけれども、今回、保護観察の遵守事項をきちんと守らせるために、これは守らせた方がいいと思うんですけれども、どういう措置を新しく考えていますか。

長勢国務大臣 今回、この法律に基づいて何か新しく守らせ方についてということについては、ちょっと今正確にというか、特に今変わりはないのではないかと思います。

 いずれにしても、遵守をさせる保護観察の仕組み、やり方は、保護観察官、保護司の方々と相談をして、青少年の育成に役立つような指導監督をしておるというのが実態でございますので、それを守っていただくように今後やり方を工夫していかなきゃならぬと思います。

高山委員 そういうのをちゃんと保護司の方にもある程度フォローしないと、ただ遵守事項を守れといってもなかなか大変だなと。しかも、先ほど政務官のお話にもありましたけれども、そもそもこれはやはり親が悪いんだみたいな話というのは当然あると思うんですね。

 それで、今伺いたいのは、まず、少年事案に関して主役とも言える裁判所なんですけれども、保護者に少年の監護に関して責任を自覚させたり、あるいは親に対してこういうことをしないからだめなんだというようなことでやるべきだなと思うんですけれども、今現在どういう制度があって、どのようなことをやられていますか、親に対して。

二本松最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 さきの改正少年法で、二十五条の二に保護者に対する措置というものが設けられましたが、家庭裁判所ではその改正前から、審判や調査の過程におきまして保護者に対する訓戒や指導等を行ってきたところです。

 平成十二年の改正少年法で、明文の根拠規定が置かれた趣旨を踏まえまして、各地の実情に応じた工夫をしているところです。具体的に申し上げますと、例えば、保護者に監護能力を回復させ、あるいはこれを向上させるため、複数の保護者らを集めまして保護者会を実施したり、あるいは、被害の実情や被害者の方の心情等を保護者にも実感させるために、犯罪被害に遭ったことのある方にその経験や心情などを、少年らに対してはもちろんのことですが、保護者らにも直接語ってもらったりする、被害を考えさせる講習に参加していただいたりしております。あるいはさらに、地域の清掃活動等の社会奉仕活動にも、少年とともに保護者も参加していただいたりしております。

 家庭裁判所といたしましては、改正少年法でこの二十五条の二が設けられた趣旨を踏まえまして、調査や審判などのさまざまな機会をとらえて保護者にも教育的な働きかけを行うことで、保護者に対して少年の監護に関する責任を自覚させ、再非行防止につながるよう一層の努力をしていきたいと考えております。

 以上です。

高山委員 大臣に伺いますけれども、今、親に対していろいろ裁判所から随分できるようになっているわけですけれども、今回の改正でも、例えば少年院法の十二条の二ですとか犯罪者予防更生法の三十六条ですとか、結構保護者に対していろいろなアプローチができるようになっているんですけれども、これがどういう制度なのか、ちょっと教えてください。

長勢国務大臣 少年院あるいは保護観察所においても、先生御指摘のように、非行の背景には家族の問題があるということが多いわけでありますので、保護者との接触ということも重要な一文にしておるわけでございます。そういうことを今現在もやっておるわけでございますが、それを法律上も明らかにして、少年院や保護観察所の長が保護者に対して面接した機会等にいろいろ指導助言ができるということを明確にして、少年の矯正教育や更生保護の実効を一層図ろう、こういう趣旨で条文を、仕事の中身を明文化するということを今回この改正法に盛り込んでおるところであります。

高山委員 先ほどの裁判所の方にも、もう既にやっていることなので伺いたいんです。

 親に対してこういうことをいろいろしろとか、こういうふうにしたらどうですかと。これは、親が出てこない場合ですとか非協力的な場合に、どういう強制力で親に対して措置ができるようになっているんですか。

二本松最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 法制度上、強制力はございませんが、親にすれば、少年の処遇について裁判所の方が判断するということで、かなりの方が出頭をしております。ただ、問題は、そういう責任感の薄い親がいることも確かでして、そういう場合は、家庭裁判所調査官がその家庭を訪問していろいろ事情を聞いたり説得したり、そういうようなことで親の責任を自覚させるような措置も講じております。

 以上です。

高山委員 今局長の答弁の中にも、親にしてみれば子供の処遇があるので協力的であるというようなお話がありましたけれども、そうすると、親が非協力的な場合、これは何か子供の審判に影響しますか。

二本松最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 結論から申し上げますと、委員御指摘のとおり、これは少年の処遇にも大きく関係するだろうと思います。といいますのは、その少年が再非行に至らない、立ち直るためにはやはり一定の保護環境というものが必要でして、そういった保護環境が劣るということで裁判所の方もそれなりの処分を考えざるを得ない場合があるだろう、一般論としてはそういうふうに申し上げることができると思います。

高山委員 これは大臣のみならず政務官にも伺いたいんですけれども、今回新しい制度で、犯罪者の保護観察所ですとか少年院にも似たような制度を取り入れていくわけですよね。それで、確かに、家庭がやはり崩壊しているから少年のうちから犯罪に走るという子が非常に多いとは思うんですね。先ほど政務官のお話の中にも、大体小学生ぐらいまでに人格が決まっちゃうものだと。つまりそれは、多分政務官も、その子自身の責任というよりそれは親の責任だよというふうにお考えなんだと思うんですね。

 ただ、私、今のお話、悪いというんじゃないんですけれども、ちょっとした矛盾を感じるのは、親の責任で家庭が崩壊しちゃって犯罪に走った子がいる、その子の親がまた非協力的だとその子の処遇に影響してくるんだと。政務官に伺いたいんですけれども、どうでしょう、この制度というのはフェアですか。

奥野大臣政務官 ちょっと見方を変えるんですが、やはり家族制度というのは、子供も親を尊敬するような家族体系でないといかぬと思うんですよ。親が子供を見放したような形になると、子は多分、犯罪人とかかなり孤独な人間になっていくだろうと思います。

 そういう意味では、今おっしゃっているように、少年院の方も、親御さんがそういうことならばこの子供は面倒を十二分に見てやれないよといって、ぽいっと突き放しちゃうのはアンフェアかなという感じもしますね。

高山委員 同じように、これは大臣にも伺いたいんですけれども、少しこれは何となく矛盾をはらんでいるんじゃないか、矛盾とまでは言わないんですけれども。要するに、やはり家庭の環境が悪い子が犯罪に走ってしまう、犯罪に走りたくてすごく積極的に走っている子という方がやはり少ないような気もするんですよ。

 それで、今回みたいに、少年院あるいは保護観察所が、親にいろいろ責任を負わせて、親にアドバイスする、確かにこれはいいことだと思います。だけれども、親が非協力的なことだったり、その親がだめなことというのが、またこれは少年に負担として返ってきてしまう。どうなんでしょうか、この制度、フェアだというふうに感じますか、大臣は。

長勢国務大臣 制度としてフェアかどうかということよりも、私も少年院の方々のお話を伺うことがありますけれども、とんでもない母親に恨みを持っている少年院に入所している方々でも、どこか行くと親を頼りにするというか、親だと思いたいという気持ちはやはりなくならないということを聞いたことがございます。そういう意味で、そういう指導を通じて、お子さんのそういうことを理解した上で少年院の方々は御苦労されているんだなということを思ったことがあります。

 それにつけても、確かに親もそういうふうにわかってもらわないと困るので、そういう意味でも大変悩ましい仕事を、少年院の方々は御苦労されているなと思っております。

高山委員 今、私たち民主党は全体的に格差是正ということを言っていますけれども、やはり、生まれによって決まってしまう、本人の、個人の力ではもうどうしようもない格差というのがあると思うんですね。

 それで、今回の少年法のことも、今ちょっと議論していて思いましたのは、ある意味、すごく幸せな家庭に生まれた子ともともと何か不幸せな家庭に生まれた子で格差が、本当にこれは本人の力ではどうしようもない格差だと思うんです。それが全部悪だというのではないんですけれども、今回のこの少年法改正で、大人同様に少年に対して捜査的な手法をどんどん用いて、大人はある意味、二十を超えて、そこまで自分でいろいろな本を読んだり考えたり、いろいろな友達とつき合ってという責任があるから、犯罪者扱いというか、犯罪者ですから、きちんと捜査していくのはいいかもしれないけれども、本当にそういう小さい子、しかもどんどん低年齢化を今進めているわけですけれども、これは本当にその子の責任なんだろうか、本人の力でどうしようもない部分というのもあるんじゃないのかなということをきょうは思いました。

 これはやはり、本当に見えてくる、先ほど政務官も言いましたけれども、本当に犯罪として上がってくるデータだけとかでも決められないし、その背景にある物すごく大きな問題に取り組まなければいけない問題だなというふうに思いますので、これはなかなか大変な法案だな、時間もかけなきゃいけないな、そしてこれがまさに格差是正の一助にはなるんだなというふうに思っておりますので、また質問時間をとっていただければと思います。

 きょうは終わります。

七条委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 まず厚生労働省に伺っていきたいんですが、現在の児童相談所、我々は児童虐待防止法の二度目の改正作業に臨んでおりまして、相当ディープな議論を与野党ともに参加してやってきましたけれども、虐待の通報、そして虐待で入ってくる子が大変多いということですが、触法事件に対応できない、そういう現状があるのかどうか、簡単にお答えいただきたいと思います。

村木政府参考人 御答弁申し上げます。

 児童相談所に寄せられるいろいろな案件、大変ふえております。虐待は特に昨今ふえておりまして、平成十七年度において約三万四千件の御相談に対応しているような状況でございます。一方、触法も含めまして非行相談の対応、これも平成十七年度一万八千件ということでございまして、どちらも児童相談所にとって非常に重要な課題となっているところでございます。

 こうした問題にきちんと児童相談所で対応していけるように、児童相談所の強化ということを一生懸命今やっております。

 特に、中核になります児童福祉司でございますが、これは平成十八年度二千百四十七名と、児童虐待防止法が施行されました平成十二年度に比べまして一・六倍に人数をふやしております。またさらに、来年度でございますが、地方財政措置におきまして、標準人口百七十万人当たり、これまで二十五名の配置が基準でございましたが、これを二十八名、三名の増加、これまでにない大幅な増加でございまして、課題は大変ふえておりますが、体制整備に努めているところでございます。

保坂(展)委員 児童虐待防止法の改正作業の中でも、児童福祉行政と警察の役割、これを随分議論したんですけれども、警察庁に伺いますが、その次に厚生労働省にもお答えいただきたいんですが、例えば五十年前と比べて、少年担当の警察官や警察職員の増加率、五十年前を一〇〇として現在どのぐらいになるのか、答えられますか。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 警察は組織のあり方が随分変遷がございまして、したがって、少年警察活動を担当する警察官だけを取り出して数を出すということはちょっとできません。

 したがって、警察官全員の数で申し上げますと、一九五五年を一〇〇とした場合には、現在は二一〇となっております。

保坂(展)委員 同じように、厚生労働省、いかがでしょう、児童相談所について。

村木政府参考人 児童相談所の職員数でございますが、一九五五年、昭和三十年、千百七十名でございました。これが現在、平成十八年でございますが、七千六百六十二名ということでございまして、昭和三十年の職員数を一〇〇といたしますと、十八年は六五五ということで、およそ五十年間で六・五倍の増加でございます。

保坂(展)委員 児相の職員も六倍になっているのに、もう本当に処理ができなくて大変だという悲鳴も聞いているわけです。

 もう一点、児童虐待の問題をやっていて、少年事件と裏表の関係にあるなというふうに思ったのは、こちらに持ってきていますが、法務総合研究所で、これは三回に分けて、児童虐待に関する、少年院在院者ですか、全員にこの調査をかけて、児童虐待との関係を網羅的に調べたという非常に注目すべき調査があるんですが、簡単に、どういう結果が得られたのか、少年院に在院している少年たちのうち、児童虐待体験があった、そういう子供たちがどのぐらいいたのか、お願いします。

梶木政府参考人 ただいま御指摘の調査でございますが、調査の対象者は、当時少年院に在籍した者の中で、中間期教育というものを受けていた、つまりオリエンテーションが終わった後の子供たち二千二百五十三名でございますが、その約五割が虐待体験を有していたという結論でございました。

保坂(展)委員 この調査を見ると、やはり、虐待を一回だけ受けたということよりは継続反復して、性的虐待もありますね、これは大変な調査だったと思います。

 警察庁に伺いますが、この種のデータ把握というんですか、少年犯罪における被虐待体験の占める割合、何かデータをとっておられるのか、もしとっていないとすれば、今の法務省の報告をどういうふうにとらえるのか、簡単にお願いします。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 残念ながら、警察庁では今御指摘のようなデータはとっておりません。ただ、少年のいわゆる面接については次長通達を発しておりまして、「少年警察活動推進上の留意事項について」でございますけれども、その中で、面接に当たっては、少年の話のよい聞き手となって、虚言、反抗等に対しても、一方的にこれを押さえつけようとせず、その原因を理解することに努めることとしております。また、御指摘のように、被虐待経験も非行の一因になるということは、私どもも認識をしているところでございます。

 したがいまして、今後とも、御指摘の点を踏まえまして、少年の立ち直りに資するような面接活動を行ってまいりたいと考えております。

保坂(展)委員 実は、一番最初に大臣に聞きながら始めようと思ったんですが、少しということだったので、後の質問を先にやりましたが、ここからはお願いしたいので、ちょっと待たせていただけますか。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 保坂展人君。

保坂(展)委員 法務大臣に、先ほど、今の答弁で、法務省の調査で、児童虐待を受けた子供たちが、実は少年院の在院者を調べてみると半分だった、半分の子供が児童虐待を受けている、いわゆる被害も受けて、加害者なり犯罪に入ってしまったと。また、警察の方にもその点を聞いてという議論をしました。

 そこで、ちょっとこれは予告はないんですが、簡単な話なんです。

 今回の少年法改正、私は二回目の審議に立つわけなんですね。前回は神戸の事件が引き金になったわけで、二〇〇〇年の解散後にこの法務委員会で議論になりました。今回は、やはり引き金を引いたのは長崎の事件でしたね。

 端的に伺いたいんですが、このとき、鴻池大臣が閣議後の記者会見で、この加害少年の親は市中引き回しの上、打ち首にすべしと。これは、その後どういうふうに修正されたのかは別にして、そういう発言をなさったということは覚えていらっしゃると思うんですが、法務大臣として、こういう考え方についてはどういうスタンスでとらえられているのか。

長勢国務大臣 覚えているというか、今おっしゃったので、ああ、そういうことがあったなということをかすかに思い出しました。鴻池大臣がどういうお気持ちだったのか、ちょっと正確にわかりませんけれども、感覚的に、そういう気持ちの方も世の中にはおられるだろうなと思わないでもありません。

 しかし、ただ、やはり法を守る立場であります私としては、ちょっと乱暴な発言だなと正直言って思いますし、先ほども若干、母親を恨んでいるようなお子さんの指導をされている少年院の方々のお話、あるいは学校などでいじめの対象になって、それが非行の原因になった少年もおられるわけですね、そういう方々を本当に懇切に指導していくというのは大変なことだなと思っていますし、また、そういうお母さんに対してもどうやっていくかというのは、いろいろな面で考えていかなきゃならないことも多いと思います。

保坂(展)委員 そういったスタンスだということはわかりました。

 これは法務省刑事局長に伺いますが、ただ、鴻池大臣は、この発言はともかくとして、考え方として、やはりこの少年法は甘いんじゃないかという問題意識を明確に持たれたようで、少年非行対策のための検討会というのをみずから持たれ、二点、触法少年にも警察の調査権の付与、少年院入院年齢の引き下げ、いわゆる鴻池私案というものをまとめられて、この年、二〇〇三年、青少年育成施策大綱をまとめられた、このことが法制審議会に諮問され、そして現在の少年法改正の提案につながっているというふうに私はとらえているんですが、どうでしょうか、その流れを説明してください。

小津政府参考人 御指摘のとおり、この法案は、平成十五年十二月に策定されました青少年育成施策大綱等や平成十四年三月に閣議決定されました司法制度改革推進計画に掲げられた新たな検討項目を中心にいたしまして、五年というのは、平成十二年改正法の五年の問題とは別に検討されて今日に至っている、こういういきさつでございます。

保坂(展)委員 それでは法務大臣に、もう各委員から繰り返しあったことですが、つまり、少年犯罪は本当に激増しているんだろうかということについて伺っていきたいと思うんです。

 私は、実はこの鴻池大臣の発言の多分その日だったと思いますが、こういうことを言ってほしくないと抗議に行った記憶があります。それ以後、翌年に佐世保でやはり痛ましい事件がありました、今答弁にも出ているとおり。この事件には大変衝撃を受けて、小学校に計三回ですかね、現地にも四回行きまして、関係者の話も聞きました。

 そういったことを通して、確かに衝撃的な事件で、繰り返しワイドショーも含めて報道されますから、最近非常にひどい事件がふえているという印象を抱くのですが、ここに、我々のもとに届いている衆議院の法務調査室のまとめた数字があるんですが、少年刑法犯の検挙人員、昭和三十五年、ピーク時、それは八千百十二人、殺人だと四百三十八人。これが、つい最近のデータだと、全体で千八百三人、六十二人、殺人だけに限っていえば七分の一になっております。

 もう一つ、今回も議論になっている触法少年のピークということだと、昭和三十八年、これは全件で五百六十三人で、殺人六人。最近は、平成十七年で、全件で二百二人、殺人が六人、これは数は同じですね。ただ、強盗が百七人から二十六人に減っている。

 これは、全体で見ると、グラフでごらんのとおり、人口当たりという考えはあるんでしょうけれども、日本は他の国に比べて、例えばアメリカと比べて、ヨーロッパと比べて、ひときわ少年犯罪の増加が著しいということではなくて、むしろ比較的抑制に成功してきた、先ほど五十年という話をしましたけれども、長いスパンで見ればそう評価できるんじゃないか、もちろんいろいろ改善しなきゃいけない問題点はありますけれども、その認識はいかがでしょうか。

長勢国務大臣 ピーク時等々から比べて今がある程度減ってきた傾向を踏まえておるということは、そのとおりだと思います。それは、数字上はそのとおりであります。しかし、ある時期からまた若干ふえつつあって、それがまた落ちつくというか、その傾向が、必ずしも大きく差がある傾向にないというのも事実であります。

 本来ですと、こういう問題が、極端に言えばゼロになる社会が一番望ましいのであって、先ほど来衝撃的な事件のお話がありますが、本来、もともとそういうことが議論になっておって、そういう衝撃的な事件を契機にして国民の要望が高まるということはよくある話で、それにまたこたえていくのが政治の役割だと思います。

 そういう意味で、いつの時点よりも今一番高い時期ではないではないかと言われれば、おっしゃるとおりでございます。

保坂(展)委員 これも、昨年の三月十六日の毎日新聞の記事なんですが、「最高裁が初の調査」ということで、裁判員制度に向けて意識調査をしたら、成人より厳罰にするべきだというふうに考えている人が四人に一人もいた。要するに、我々がここでしている議論と大分違うわけですね。

 それから、大臣もおっしゃいましたけれども、大きな事件が起きるたびに法改正というのは、私は間違っているだろうと思います。つまり、少年法の議論をしています、もしかするとこの夏とか秋に何か大変衝撃的な事件が起きるかもしれない、また改正だ、こういうイタチごっこはやめようじゃないかという基本的なスタンス、そこを伺います。

長勢国務大臣 先ほどもどなたかに御答弁を申し上げたと思いますが、何かあればいつも何かしなきゃならぬという話だけではやはり冷静な判断というわけにはいかないとは思いますが、しかし、何があっても何にもしなくてもいいというわけでもないわけで、それはやはりケース・バイ・ケースだと思います。

 そういう意味で、ある事件があったからというだけで御提案を申し上げているわけではございませんけれども、ずっと、かねてからの課題でございますから、この際、こういう改革をしていくのがいいのではないかと我々は思っておるわけであります。

保坂(展)委員 ちょっと予定を少し変えまして、要するに、高山委員と大臣とのやりとりにもありましたが、私は、今回、虞犯の問題が非常にひっかかっているんですね。

 虞犯というものは、将来犯罪を犯すおそれですよね。今回の法案にあるのは、将来犯罪を犯すおそれ、虞犯の疑いですから、つまり、おそれの疑いということになるんですね。法文の解釈としてはかなり幅広くなるのではないか、先ほど警察庁はそうじゃないというふうに言っていますが。

 これは法務省としてはっきり定義していただきたいんですが、法務大臣、非常に簡単な質問で難しい質問だと思うんですが、おそれと疑いはどう違うんですか、同じなんですか。おそれと疑い、それぞれちょっと教えてください。

長勢国務大臣 法制的な答弁はいたしかねますけれども、今回、虞犯というのは犯罪を犯す将来のおそれということが書いてあるわけで、その虞犯の疑いのある者について調査をするということであります。

 先ほど来答弁していますように、虞犯少年であるかどうかというのは家庭裁判所で審判をしていただくことになるわけで、調査の段階で虞犯少年であるということはわからないわけでありますから、また、それがわかってから調査するという話ではありませんから、その心配のある、疑いのある方について調査をして、そのおそれがあるということであれば家庭裁判所に送るという手続を書いているわけであります。

保坂(展)委員 そうすると、大臣、虞犯少年を調査するではだめなんですか。

長勢国務大臣 虞犯少年であるかどうかは家庭裁判所において審判をいただくことになるわけでありますから、虞犯少年であることがわかってから調査をするということではないと思います。

保坂(展)委員 そうすると、では刑事局長に聞きますけれども、おそれの疑いというふうになると、おそれ掛ける疑い、あるいは虞犯少年自体がそのおそれで列挙されている少年法の要件がありますけれども、しかし、それの疑いですから、かなり万人が疑わしいのかな。補導されている人員を見ても、大体十人に一人ぐらいは十代、ティーンエージャーが補導されているというようなデータもあるのです。

 はっきり聞きますけれども、今回、虞犯少年に向けて調査をするという必要性、警察の調査権、虞犯少年の疑いについて調査ができると書いてありますよね。どうして必要なんですか。現状で何がだめなんですか。

小津政府参考人 現行法のもとでは、触法少年や虞犯少年の行為につきまして、刑事訴訟法に基づく捜査ではないということですので、もちろん強制処分を行うことができないのは当然のことといたしまして、任意の調査につきましても法律上の根拠が必ずしも明確ではないということで、円滑な調査に困難が伴って事案の解明が十分にできない場合があるのではないかという問題意識でございます。

保坂(展)委員 具体的な事例を挙げた方がいいと思うんですけれども。例えば、これは一九九七年の四月五日にあった事件で、家庭裁判所が四月五日に非行事実はないとしたものですが、警察官を見ながら足早に通り過ぎていく少年の様子や服装などから少年は不審だと職務質問されて所持品検査をされたにもかかわらず公務執行妨害で逮捕されたというようなこと。

 これはちょっと警察に聞くんですが、私、佐世保に行ってこういう話を聞きました。あれだけ衝撃的な事件が起きた後だという前提はあるんですが、小学生が、小学校三年生ぐらい、砂場でこうやって砂をかけっこするじゃないですか、子供ですから。その中に小石が入っていたらしいんです。その小石が額に当たってしまった。ちょっと泣いて、その子たちはそれぞれ家路についた。そうしたら、額からちょっと血が出て女の子が歩いていたんですね、帰宅時、学校から家に帰る間に。普通ならそこでお嬢ちゃんどうしたのと言えばいいんでしょうけれども、何と救急車を呼んだんですね。救急車を呼んで警察署に連絡が入って、その後が大変だったと。

 小石が当たっただけです。実際にけがというのはバンドエイドを張っただけで終わったそうなんですが、要するに、砂場に現場検証が入った。そして、その三年生ぐらいの子供たちが一人一人呼び出しがかかった。そして、先生が、それはちょっといかにも大変でしょうといって、付き添って行きますということだったんですが、かなり夜遅くまで取り調べが入ったし、事件として最後まで捜査し、翌日も警察は来たらしいんですけれども、これは明らかに過剰反応だと思いますね。現状は少年法を改正していないが、そういうことも聞いているんですね。

 ですから、今回の十四歳未満の少年の調査で、沖縄の浦添の件でも、夕方に連続放火事件ということで少年が保護されたということですが、警察署でずっと聞かれて現場の引き回しをされて、夜の九時に親が面会に来て、一晩警察で過ごして、翌日の夕方四時にようやく児相に通報されたなんというケースも聞いているんですね。

 現行少年法で触法少年に対する調査ができないという実態、残念ながら、今指摘したような、こういうこともあるんじゃないか。そのあたりについて、どうして法改正が必要なのか、明確に述べていただきたいと思います。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法令の制度下においても、少年法に明確な根拠はございませんけれども、警察法第二条に定める警察責務遂行のために必要な活動として、触法少年に係る調査は行っております。ただ、これは設置法に基づく活動でございますので、あくまでも任意の行為であるということでございます。

 問題は、やはり実態の解明を図る必要があるのと、物的証拠、これを強制的に集める手段が今ない。一つは、例えば、被害者が亡くなったような場合に解剖ができないとか、あと、凶器等の物件とか窃盗の被害品等を保護者に提出をしてくださいと言っても、保護者がそれを拒んで集められないとかいうふうなことがございますので、そういった意味での物的な証拠を集めるための捜索、差し押さえ手続等が設けられることが必要であるということで考えております。

保坂(展)委員 頭に小石が当たった女の子、警察の立場もわかりますけれども、ひどい事件が起きた後だから、一大事だと思って駆けつけたということなんでしょうけれども、大したことがなかったらすぐ引き揚げればいいわけですが、なかなかそうもいかないというようなことで、どうもその辺が非常に気がかりです。

 少年院の年齢についてお答えいただきたいんですが、今回、年齢が取っ払われるんですね。そうすると、十歳、八歳、五歳、こういうことでもあり得るんですか、ちょっとお願いします。

小津政府参考人 十四歳未満の少年院送致につきましては、非行事実、要保護性の程度、内容、それから少年の心身の発達程度、状況等を総合的に考慮して、少年院送致の保護処分が最も適当だ、かつ、ほかの保護処分ではその目的を達することができないという場合に、家庭裁判所の判断で選択されるわけでございます。

 もっとも、少年院送致の保護処分が最も適当だと言えるためには、少なくとも、少年の心身の発達程度に照らしまして、当該少年が矯正教育の意味内容を理解できることや、施設における集団生活になじむと考えられることが必要だと考えるわけでございまして、そのような観点からいたしますと、御指摘のような、余り低年齢の子供が対象になるということは想定しがたいと考えております。

保坂(展)委員 十歳、八歳、五歳、先ほど政務官は十二歳とおっしゃったんですかね、異論はありますが、十歳、八歳、五歳はあり得ませんか、大臣。(発言する者あり)

七条委員長 お静かに。

長勢国務大臣 家庭裁判所できちんとした判断をしていただくことになるわけでありまして、どういう事案があるかわかりませんので、少ないであろうとは思いますけれども、正確にあり得ないということを断言することはできません。

保坂(展)委員 これはまたちょっとあれですよ。あり得るということですか。五歳で少年院ですか。大臣、いいんですか、それで。

長勢国務大臣 想定しがたいとは思いますけれども、世の中どういうことがあるかわかりませんから、家庭裁判所で御判断いただくことになります。

保坂(展)委員 最後に厚生労働省にお聞きしておきます。

 佐世保の事件でも長崎の事件でも、強制措置を伴う児童自立支援施設に行っているわけですよね、その子供たちは。

 私も、武蔵野学院は見てまいりました。そして、武蔵野学院の院長だった先生が、今まで受け入れてきた、これは福祉施設ですから処遇とは言いません、これまで七七年から〇四年までに、殺人で六人、傷害致死で三人入所してきました、この中で、全員が集団寮に入って、学習や職業指導などの日課をこなした、指導が難しくて医療少年院に移ったのは一人だけだ、ほかの児童は、学院を出てから成人するまで、非行に走って家裁に通告、送致されることはなかったと聞いているんですね。私も行ってみて、農耕作業をやったり、勉強する学級があったり、やはり見ると聞くとでは大違いだなと思って帰ってきました。

 児童自立支援施設、特に国立の二つについて成果を上げているというふうに私は思いましたが、厚生労働省はどうですか。

七条委員長 時間が過ぎておりますから、簡単明瞭にお願いします。

村木政府参考人 先生御指摘のとおり、児童自立支援施設は、かなり処遇の難しいお子さんについても成果を上げてきていると私どもも思っておりますが、御指摘の武蔵野学院の担当者等ともお話を申し上げたところ、やはり開放処遇という形で処遇をすることがむしろ御本人の生活環境の確保という点から難しいケース、それから、先生が例で挙げられましたが、高度の医療的なケアが必要なケースなど、数がそんなに多いとは思いませんが、そういったケースもあり、選択肢を広げるということについては一定の意義があるというふうに考えているところでございます。

保坂(展)委員 ほかにたくさんありますけれども、大臣には、先ほどの答弁、非常に気になる答弁だったので、次回また掘り下げてやりたいと思います。

 終わります。

    ―――――――――――――

七条委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十七分散会


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