衆議院

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第13号 平成19年4月25日(水曜日)

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平成十九年四月二十五日(水曜日)

    午前九時五十分開議

 出席委員

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 武田 良太君 理事 棚橋 泰文君

   理事 早川 忠孝君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      稲葉 大和君    今村 雅弘君

      近江屋信広君    奥野 信亮君

      木原 誠二君    後藤田正純君

      清水鴻一郎君    柴山 昌彦君

      杉浦 正健君    橋本  岳君

      原田 憲治君    三ッ林隆志君

      武藤 容治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    山口 俊一君

      石関 貴史君    大串 博志君

      河村たかし君    中井  洽君

      横山 北斗君    神崎 武法君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   総務副大臣        大野 松茂君

   法務副大臣        水野 賢一君

   財務副大臣        田中 和徳君

   総務大臣政務官      河合 常則君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   最高裁判所事務総局人事局長            大谷 直人君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   最高裁判所事務総局家庭局長            二本松利忠君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  石田 直裕君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   池上 政幸君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    梶木  壽君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    藤田 昇三君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   真砂  靖君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           村木 厚子君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  笹川  堯君     稲葉 大和君

  清水鴻一郎君     木原 誠二君

  保岡 興治君     原田 憲治君

同日

 辞任         補欠選任

  稲葉 大和君     橋本  岳君

  木原 誠二君     清水鴻一郎君

  原田 憲治君     保岡 興治君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本  岳君     笹川  堯君

    ―――――――――――――

四月十九日

 登記事項証明書交付申請に係る手数料の引き下げに関する請願(石破茂君紹介)(第八一九号)

 同(坂口力君紹介)(第八八八号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(古屋範子君紹介)(第八三二号)

 成人の重国籍容認に関する請願(古屋範子君紹介)(第八三三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 更生保護法案(内閣提出第五三号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

七条委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人の出席を求め、説明を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局小川刑事局長及び二本松家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大串博志君。

大串委員 民主党の大串博志です。

 委員長にまず、強く遺憾の意を表明させていただきたいと思います。

 先週、少年法等の改正案につきましては、我々としては、少年の将来の育成に非常に大きな意味を持つこの法案、審議時間を尽くして審議すべきだということを重ねて申し上げてきました。かつ、法案の内容について、修正協議もまさにこれから行われんとしているところを、一方的に修正協議も打ち切られ、強行採決という形で、少年たちの将来を決めるような重要な法案に対して、あってはならない委員会運営だったというふうに思います。この点について、委員長、いま一度、私、強く抗議を申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 そして、この少年法の審議、もっともっと審議したかったことはたくさんあります。きょう、そのことも議論させていただきたいと思いますが、その後の委員会運営も、今回、職権での委員会立てということで、これも非常に強硬。本来であれば、どういう法案をどういうふうに議論していくのか、しっかり与野党で議論した上でやっていくべきだと私は思います。そこをきちんと、委員会運営の場でも委員長に取り計らっていただきたいと私は思います。

 法務関係のこの議論、全体的に、基本的には、法務の議論ですから、国民生活に大きな影響を与える非常に重要な案件ばかりが並んでいる、そういうふうな委員会だと思います。だからこそ、委員会の場での審議は、時間もきっちりと決めて、与野党で議論した上でやっていくべきだと思うんですね。こういうところを、職権で立てずに、議論をして、合意のとれた中で委員会の運営をやっていただきたい、このことを強く強くお願いしておきたいというふうに思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 私の方からは、少年法に関しまして、これまでも議論させていただきましたが、まだまだいろいろ質問したかったこともございます。今回、少年法の改正が行われて、これで本当に少年の将来のためになっていくのかという点、確認しなければならない点、たくさんあると思います。その点を、時間の限りの中で逐次確認させていただきたいと思います。

 今般、少年法が改正され、最もメディアの注目を集めていたのは、やはり少年院への収容の少年の年限のことだったと思います。これまで十四歳のところで区切られていたものが、今般、おおむね十二歳ということで、このおおむねの意味するところは、一歳プラスマイナス、すなわち十一歳の少年も少年院に入り得るというような法律になっているわけでございます。

 今私が申し述べましたように、十二歳、先日、提案者の修正協議の中での説明では、十二歳というのはおおむね中学生というところで年齢を切ったんだという話でありました。しかし、一歳プラスマイナスということであれば、十一歳でございます。十一歳という年齢は、これは小学校五年生、そこから少年院に入る対象になるというところでございます。

 十一歳という小学校の高学年、小学生のところから少年院に入って処遇、矯正を受けるということが、非行を犯した少年のための強制処遇として本当に適当なのか、その点について、まず長勢大臣に、所感、そして、本当にこれでいいのかという法務大臣としての御所見を伺いたいと思います。

長勢国務大臣 御案内のとおりでございますが、少年院は、少年に罰を与えるとか刑事責任をとらせるという趣旨のものではなくて、その少年の立ち直りあるいは育て直しというための教育を行う、健全育成のための教育を行う、こういう役割を持つものでございます。

 ところで、今、厚生労働省所管の児童自立支援施設というものも、開放処遇を原則として少年の教育を行っておるわけでございますが、小学生であっても、無断外出を繰り返す者ですとか、暴力的な言動に及ぶ者ですとか、医療的措置が必要な者など、なかなかそこでの処遇になじまない、適切でないという者もおると考えられるわけでございまして、こういういろいろなケースがございますが、特別な場合には、深刻な問題を抱えるというケースもあるわけで、そういう者に対しては、数年間にわたって綿密な処遇を行うということも想定されるところでございますので、そういう趣旨を踏まえて、今回修正が行われたのではないかということが考えられるわけでございます。

 実際にも、佐世保市の同級生殺害事件など、小学生による大変深刻な、重大な事件も発生しておるわけでございまして、そういうことでございますから、家庭裁判所で今回の修正の趣旨を踏まえて御判断されると思いますが、小学生であるからというだけで保護処分をとり得ないというふうに考えるのは適当ではないのではないか、まさにおおむね十二歳ということを御判断いただくという法律でいいのではないかというふうに考えます。

大串委員 今、るる御説明されまして、法務大臣の方から、小学生においても少年院において矯正を受けること、この是はあるんだという話でございましたけれども、その場合には、法務大臣の肩に次にのしかかってくる説明責任としては、では、今の少年院において、本当に小学生も含めて矯正ができる体制なりがあるのかということだと思うんですね。

 すなわち、小学生、十一歳という年限から二十歳近くになる年限まで、非常に幅の広い年限を取り扱うことになるわけですね。本当に幅の広い年限を取り扱えるか。特に、低年齢化、小学生も含めて少年院において処遇した場合に、学業の問題もありましょう、あと、小学生ですから、恐らく十代後半の子供たちとは全く違う精神状況、心の発達状況もあるんだと思いますね。全く違うと思うんですよ。

 そういう十一歳、十二歳という小学生も含めて処遇できるような、入所してそれを処遇できるような施設というのは現在あるのかどうか、その体制があるのかどうかという説明責任を、大臣は、今、少年院に小学生が入るのはあり得ることだとおっしゃったからには、受け入れ側の体制はあるんだということをきちんと確認した上で、その点はおっしゃっていなきゃいかぬと思うんですね。

 大臣、いかがですか。今の少年院施設において、小学生、十一歳、十二歳も含めて処遇できる、学業やメンタルな面、そこも含めて処遇できる施設というのはあるんですか。

長勢国務大臣 現在は、もちろんないに決まっていますが、これから改正するわけですから、そのために準備を今進めておるわけで、当然、この法律ができれば、それに合った体制をつくる、そういう方針で今進めております。

 詳細は局長から答弁させます。

梶木政府参考人 今の具体的な準備状況を御説明させていただきます。

 東西に四施設ずつ、男子少年院、女子少年院、医療少年院、特別教科の課程の少年院、四つずつということで、合計八施設を指定しまして、準備をさせていただいております。

 また、その教育内容につきましては、我々と児童自立支援施設の職員の方々と相互に交流研修をしております。我々の施設を見に来ていただき、議論をし、我々も児童自立支援施設を見に行って議論をさせていただくということで、今委員がまさに御指摘になりました低年齢の子供たちに対する配慮みたいなもの、それを我々も今必死になって勉強しておるところでございます。

 我々のところでは、中学の教科の課程というのは既にたくさんございます。先ほど御指摘になりましたように、小学生の課程というのは初めてでございます。そこで、従来と異なりまして、処遇スタッフについても、男子の職員、教官、それから女性の教官、精神科医、カウンセラー、こういった人たちでチームを組みまして、いわば疑似家族的な雰囲気の中で子供の育て直しをしていこうということで準備を進めているところでございます。

大串委員 今、東西に四つ、合計八カ所の少年院において小学生も処遇できるようにしていく準備をしているんだ、勉強しているんだということでしたけれども、これはいつまでに準備が整うことになっているんですか。私が思うに、もう法律はできている、動き出すわけですから、子供たちの非行、犯罪は起こるかもしれない、極めて緊急にやらなきゃいけないというふうに思われますけれども、これはいつまでにやることになっているんですか。

梶木政府参考人 私どもは、実はこういった動きがあるときからずっと準備をしてきたわけでございますが、先ほど申しました交流研修にいたしましても、十八年度に随分やらせていただきました。したがいまして、法律が施行された暁にはすぐに、指定を同時にさせていただいて、チームを実際に立ち上げて教育をやらせていただく、そういうことで準備をさせていただいております。

大串委員 恐らく、今おっしゃったように、法律が施行になったときにはすぐ指定ができる、指定ができるということは、それなりの人員なりスタッフなり、設備なりも整っているんだと思うんですね。

 小学生が入るということで、例えば、ちょっと細かくお尋ねしますけれども、施設のあり方なんかも、改修したりするようなところもあるんですか。

梶木政府参考人 現時点では、今まで入っておりました十四歳以上の子供たち、中学の子供たちと、それからいわゆる小学生の世代の子供たちを分けて処遇をするのが原則であろうと。幸いなことに、この指定をいたしました施設には幾つかの寮舎あるいは教室がございます。ですから、とりあえずのところは、今申しました分離をして個別に処遇していくということはできるのではないかと考えております。

大串委員 今お話がありましたように、小学生と年齢の大きい子たちは、やはり精神の発達状況によっても大きな違いがありますから分離をする、恐らくそういうことになるんでしょうね。だから、施設的にも新たな負担等々かかってくるんだと思うんですね。それから、先ほどおっしゃった教官、精神科医等々、新たな人員、スタッフ等々もあると思うんですね。

 この点、ちょっとお尋ねしたいんですが、少年院で新たに小学生等々を含めてきちっと処遇していけるように予算的な手当ても必要だと思うんです。予算的な手当てが、例えばこれまでの予算、十八年度予算や十九年度予算でどういうふうに手当てされてきているのか、これが十分なのか、この点について、これは政府参考人で結構ですから、お答えいただけますか。

梶木政府参考人 私どもの準備状況の限度で申し上げさせていただきます。

 これから指定しようとしている施設については、当然のことながら、小学生の教員免許を持った職員も既におります。ですから、新たに何かをしなければならない、つまりそこに多額のお金がかかるという状況ではないというふうに現段階では考えております。

大串委員 そうすると、確認ですけれども、今回小学生が新たに処遇されますと、先ほどおっしゃった分離をしたり、あるいは小学生の学業を担当できる教官、男女、それから精神科医の方々も含めて手当てしていかなきゃならない。これに関しては、これまで、少年法は法制審においては十七年において結論が出て、それから法案化されているわけで、こういうふうな行政化の道をたどるというのは明らかにわかっていたわけですけれども、具体的な予算的な手当て、これは全く行われていないということなんでしょうか。

梶木政府参考人 少年院それから少年鑑別所の職員等の体制でございますが、平成十三年度から平成十七年度までの五年間で、少年院は法務教官百十一人、それから看護師二名の百十三人を、それから少年鑑別所は法務教官六十五人をそれぞれ増員したところでございます。

 平成十八年度の予算におきまして、少年院の教育処遇体制を充実するということで、法務教官三十人あるいは看護師一人、計三十一人の増員を、それから少年鑑別所の観護処遇体制の充実強化ということで法務教官十八人の増員をそれぞれ計上しているところでございます。

大串委員 今人数をおっしゃいまして、十三年度から十七年度にかけて百人を超える教官あるいは看護師の方々をふやした、十八年度においては教官の方を三十名それから看護師の方を一名ふやされた、このうち、少年法が成って小学生も含めて少年院において処遇されるということを踏まえてふえた人数、手当てされた人数及び予算、それは幾らなんでしょうか。

梶木政府参考人 今申しました少年院あるいは鑑別所の体制の充実といいますのは全体を考えてやっておることでございますので、一つずつに区切って幾らということはちょっとお答えしがたいところでございます。

大串委員 本当にそれでいいのかなという感じがするんですよ、大臣。すなわち、ある意味、少年法の大改正なんですよ。少年という、精神の発達段階においても非常にセンシティブな人たちを処遇するということなんです。それに関して、今矯正局長から話がありましたように、予算的にも定員的にも全く個別には考えていないということだったんですけれども、私、ちょっとにわかには信じがたいんです。

 ちょっと財政当局の方にお尋ねしたいんですが、財政当局の方がこれまで法務省から、十八年度予算あるいは十三年度から十七年度までいろいろ、先ほどの増員もありましたが、近年の予算の中で、法務省の方々から説明を受けていらっしゃる内容の中で、少年法、これによって少年院において小学生を処遇しなきゃならない、そういう点においてこれだけの予算増額が必要なんですということを財政当局として予算要求等々の中で受けたかどうか、その事実関係。

 そして、総務省の方には定員、先ほど定員がふえたとおっしゃいましたけれども、定員に関して、少年法によって少年院における処遇が小学生もふえるからこれだけ定員が必要なんですという内容をもってして定員要求、これを受けたことがないかどうか。

 私は、そういう予算要求がなかったとはちょっと思えないんですよ。そこのところを財政当局と総務省、定員担当のところに確認させていただきます。事実関係を、政府参考人で結構ですから、お答えください。

石田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど矯正局長の方から御答弁がありましたけれども、平成十九年度におきましては、少年院につきまして、教育処遇体制の充実強化ということで増を要求されておりまして、二十八人の増員を措置いたしたところでございます。さらに、少年鑑別所につきましても、十二名の増員体制を……(大串委員「さらにプラスして」と呼ぶ)教育処遇体制の充実強化でございますね。

 全体としては、少年院全体については一定の定員合理化をお願いしておりますけれども、その分野につきまして二十八人の増員を認めたということでございます。少年院全体でいいますと三人の減になっておりますけれども、この分野につきましては二十八名の、少年院全体といたしましては合理化計画で……(発言する者あり)その分野について、個別的にはちょっと今手元には来ていないんですけれども、少年法改正を含めまして、教育処遇体制の充実強化ということで要求をいただいております。

大串委員 今の説明の中で御確認させていただきますけれども、明示的に、少年法が改正されて、小学生も含めて処遇されるからという理由において増員になった分は何名でしょうか。

石田政府参考人 まことに申しわけない。にわかな御質問でございまして、今手元に持っておりませんので。

大串委員 それはぜひ教えてください、一番重要な話なので。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 大串博志君。

大串委員 今の点、実際、子供たちの処遇にとって非常に重要な点なので、きちんとした予算、それから定員の手当てができているかどうか、ぜひ確認させていただきたいというふうに思います。

 そして、小学生というと、学業的にも、これからきちっと義務教育を受けてやっていかなければならない、そういう時代なんですよ。すなわち、学校教育、つまり学業という観点から、小学生が少年院に処遇される、そして今少年院において行われようとされている、先ほど矯正局長からも話がありました、教官の方が増員されて、学業面においてもきちんとできるようにしていくという話でございました。

 文科省の方にちょっとお尋ねしたいんですが、今少年院において新たに手当てされようとしている小学生に対する学業指導のあり方、これが、子供の発展という観点からして、文部科学省として適正だというふうに判断していらっしゃるのかどうか、この点について確認させていただきたいと思います。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 総務省の方から御答弁願えますか。大野総務副大臣。

大野副大臣 少年法の改正に伴うところの増員の件でございますが、十八年度には少年院に三十人の増員措置をいたしております。

 十九年度につきましては、少年法改正に伴うものでございますが、特に明示はしておりませんが、教育処遇体制のために二十八人の措置をいたしているところでございます。

大串委員 先ほど、十九年の二十八人という数字はお聞きしました。

 それで、十八年には三十人ということでございましたけれども、その三十人、二十八人という数字をベースとして、それが、今回の少年法改正によって、小学生も含めて低年齢化した方々が処遇されるということを受けて、その部分に関して増員がどれだけあったんですか、そういう質問なんです。そこの部分のところをお答えください。

石田政府参考人 今副大臣が御答弁いたしましたけれども、平成十八年度につきましては、少年法の改正があったということでございまして、明示的に三十人の増員措置をそれに伴って行っております。

 十九年度につきましては、実質二年度ということでございますので、全体として教育処遇体制の充実強化ということで二十八人の増員をしたということでございます。

大串委員 少しずつわかってきましたけれども、すなわち、十八年度は、その前の少年法改正において増員が必要になったということで行われたということですね。十九年度の二十八名というところは、明確なイメージはないけれども、教育の体制の充実ということで二十八名ですね。

 そうすると、そこにいくとまた繰り返しになってしまうんですけれども、私が想像できないのは、少年法改正ということでこれだけ大きな問題になって、十四歳より下の、小学生も含めた低年齢化したところの処遇が行われる、そういうふうになっているにもかかわらず、定員要求としては、法務省からは、少年法が変わって、小学生も含めて処遇されるんですということの理由をもって定員要求されていない、そういうことですか。

石田政府参考人 お答えいたします。

 明示的には受けておらないようでございますけれども、全体として、教育体制の充実強化という要求はございました。

大串委員 長勢大臣にちょっとお尋ねしたいんですが、少年法のこれだけの大きな改正ですよ、小学生も含めて。もともとは、しかも、下限年齢を撤廃するという話になっていたんです。そういうふうに非常に幅の広い、選択肢を広げるんだとおっしゃった。にもかかわらず、定員要求の際に、それをもって、これだけの人数が必要なんだ、定員増が必要なんだということを定員要求されていないというのは、どういうことなんですか。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 長勢法務大臣。

長勢国務大臣 十八年度に、ちょっと私は数字は今持っていませんでしたが、副大臣からの御答弁ですと、三十人ですか、それは、十七年に法案を出しておりましたので、その分として三十人いただいたというふうに理解をしております。したがって、そこでいただいておりますから、まだ法案が通っておりませんでしたので、十九年度は、少年法ということで明示的な予算配分はいただいていない、しかし、教育充実のためのものとして二十八人いただいたということであると理解をしております。

大串委員 もう少しきちんと確認させていただきたいんですが、十八年度に、前回の少年法の改正ということで三十人増ということであった、これは、今回も含めてということですか、今回のものがということですか。

長勢国務大臣 前回のではございませんで、今回の少年法のためにいただいたということでございます。

大串委員 今のも、私はにわかには信じがたいんです。ぜひきちんと事実関係を調べていただきたいと思うんですが、法制審での議論が終わったのが十七年の二月ですね。法案化作業をそれから進められたわけですよ。そうすると、十八年度の定員要求、予算要求というのは、大体夏前につくります。四月、五月、六月とつくるんですよ、大臣。すなわち、ほんの一カ月ぐらい前に終わって、これから法案作業をしようとしているところで十八年度の三十人増というのが、本当に今回の少年法の改正を踏まえての定員増だったのか、そこが私は非常に疑わしいと思うんです。

 では、もう一回総務省の方にお尋ねしましょう。本当に、この十八年度の三十人増というのは、今般の、つまり小学生も含めて低年齢化するという部分での定員増要求だったのかどうか、もう一回総務省の方に確認させていただきたいと思います。

石田政府参考人 お答えいたします。

 十八年度の増員につきましては、少年法が改正されるということが閣法で出ておりますので、それを前提に措置をさせていただいたということでございます。

大串委員 今のお答えは、先ほどの答弁とちょっと違うわけですね。つまり、十八年度の定員増に関しては、閣法で今般少年法が改正されるということを踏まえて三十人増としたんだということでよろしいですね。

 委員長、ちょっと一つお願いがあるんですが、今の定員要求資料、これを私はきちんと見せていただきたい。ちょっと答弁が混乱しましたので、本当にそうかということは、定員要求資料、そして査定資料を見せていただきまして、確認したいと思いますので、その点、理事会においてお諮りください。

七条委員長 後日、理事会でお諮りさせていただきます。

 文科省の方からも、大臣政務官、お越しでございます。

大串委員 文科省の政務官、ありがとうございます。急な、急なといいますか、職権で開かれたものですから、非常に急な要求になったかもしれませんが、よろしくお願いします。

 私が先ほどお尋ねしたのは、今回、少年法改正によって、小学生も含めて少年院で処遇されることになりました、その中で、先ほど矯正局長からも、男性教官、女性教官を含めて教官を充実することによって、小学生の方が処遇されても学業の面も含めて遺漏なきよう図っておりますということでございました。

 私は、その辺についてきちんとこれから確認させていただきたいと思いますけれども、まず入り口として、現在法務省の方でやられようとしている、少年院において小学生の方が処遇されたとしても、学業の面や、あるいは小学生固有の情操の面で問題のない教育が展開されるということになっているかどうか、その点に関しての文科省としての所見をお伺いさせてください、そういうことでございました。

布村政府参考人 お答えいたします。

 少年院におきましても、学齢児童生徒につきましては適切な教育の機会が受けられるように取り組んでいただけるものと考えてございます。

 これまでも、児童自立支援施設の場合であれば、当該施設の者に就学義務が課せられるという形で学校教育と同じように取り組みがなされる、地域の小中学校に通学させるケースでありますとか、また、事情により通学させられない子供がいる場合には、児童自立支援施設の中に地域の小中学校の分校、分教室を設置して教育を行うという形がありますので、少年院におかれましても、同じような形で、学校教育に近いものが子供たちにできるだけ適切に受け入れられるように取り組みを進めていただければというふうに考えているところでございます。

大串委員 質疑時間が終了したんですけれども、今の答弁でも非常に心配なんです。児童自立支援施設ではこういうふうにちゃんとやっていただいているので、少年院でもやっていただけるものと思っておりますというような答弁なので、本当に文科省として子供たちの将来は大丈夫なんだということを確認されているかどうか等々、まだまだいろいろ確認しなければならない論点はあります。

 先ほど定員の要求のことについても確認しましたが、ぜひ委員長、資料の方、よろしくお願いします。予算面に関しても同じ議論が実はあります。予算面についても、本当に、充実したといいますか、必要な予算が要求され、確保されているのかという点についても、これからできれば質疑をしたいと思いますし、資料要求等々もきちんとしていきたいというふうに思います。

 先ほどの財務省の方、まだ来ていらっしゃらないのは非常に遺憾です。こういうふうに職権で委員会を立てられて、そういう中でこういう議論になると、どうしてもこういうふうなことに。私、この問題はどうしても聞きたかったんです、確認したかった。後でぜひまた機会をいただければというふうに思います。

七条委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 私も、さきの法務委員会で、採決を強行するようなことはぜひやめていただきたいと申し上げたんですが、残念ながら、この少年法というかなり大きな原則を変更するような法案について採決を強行されたことについて強く抗議をしたいと思います。

 また、この法務委員会、九九年に衆議院法務委員会でドイツの法務委員会を訪ねましたけれども、ドイツの国会の法務委員会は違憲立法審査権まであって、他の委員会の法案が憲法に合致しているかどうかまでしっかり審査する、こういう権威ある委員会でありまして、この法務委員会が、こういうペースで例えば次の更生保護法などもどんどん強行するというふうな委員会であってはならないだろうということを強く委員長に求めておきたいと思います。

 まず、法務大臣に伺いますが、この少年法をめぐる採決の報道の中で、これは官邸で安倍総理に記者団が聞いたんですが、厳罰化を図る内容であることについて、少年犯罪が凶悪化している、被害者の気持ちを踏まえればやむを得ない、これは厳罰化を図る内容ですねということに対してこうお答えになっているんです。

 法務大臣に伺いますが、この少年法改正はそういう内容なんでしょうか。総理のコメントを法務大臣としてどういうふうに受けとめているのか。

長勢国務大臣 もう言うまでもないことでございますが、少年法は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うこと等を目的としているところでございまして、今度の法案も、少年保護事件において事案の真相を解明するとともに、個々の少年が抱える問題やその少年の非行の内容に即して、本人にとって最も適切な処遇の選択を可能にするという少年の健全育成の観点に立って提案いたしておるものでございまして、厳罰化を図るものではございません。要は、本人が自分のした行為と向き合いながら立ち直ることが一番大切だと思っております。そういう趣旨のものでございます。

 総理の御発言は、当然このことを踏まえた御発言でございまして、そのように御理解をいただきたいと思います。

保坂(展)委員 多くの国民も、総理が厳罰化ではありませんよというふうに言っていただければはっきりしていたと思いますけれども、厳罰化ではないと今法務大臣は言われましたね。そうすると、なぜ十一歳から十三歳の子供たちを少年院に送致する必要があるのかという疑問が出てくるわけです。これまで十四歳以上の犯罪少年については少年院に送る場合がある、十四歳未満の触法少年については少年院に送ることはない、こういう形で少年に対して当たっていたわけですが、何か問題があったんでしょうか。

長勢国務大臣 まず、少年院は刑罰を科する施設ではありません。先ほども御説明いたしましたように、健全育成のための矯正教育を行う、そういう施設でございます。

 昨今、いろいろな事件があって、かつ、福祉の方の施設においても対応できないという状況もある中で、そういう人たちに対してより適切な立ち直りのための方法として少年院にするということも考えたらいいということが今回の趣旨でございまして、そのことを従来から御説明申し上げてきておるところでございます。

保坂(展)委員 今いみじくも法務大臣が言われた、福祉の施設では対応できない、こういうケース、恐らく長崎県で起きた事件、長崎市と佐世保で二つの事件がありました、こういった事件を想定されているんじゃないかと思うんです。

 もう一度厚生労働省に伺いますが、福祉施設、先般きぬ川学院にも、私自身は武蔵野学院にも行きましたが、対応できないという状態なんですか。事実としてそういう状態があるのかどうか。

村木政府参考人 児童自立支援施設の非常に家庭的な開放処遇というケアで、多くの児童について十分なケアが行われているというふうに考えております。

 ただ、少数ではありますが、開放処遇のもとではなかなか落ちついた生活環境を確保しにくいというお子さんが一部にいらっしゃるということは事実であろうかと思います。

保坂(展)委員 もう一問聞きますけれども、私がいろいろお聞きしたところによると、私たちは、世間で非常に騒がれた大きな事件を起こした子供がかなり問題を起こしたり困難だというふうになっているのかなと思うんですが、実際は違うというふうに聞いているんですね。要するに、児童自立支援施設にいろいろなタイプの子が入ってくるけれども、その中で対応が難しいのは必ずしも新聞に大きく出るような大きな事件の子供ではないというふうに聞いたんですが、それは事実ですか。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘のように、表面にあらわれた非行事実やその結果と、それからどういう処遇がその子に適しているか、開放処遇なのかそうでないのかということが相互に関連をして、重い子だから閉鎖処遇でということではないということは、御指摘のとおりでございます。

保坂(展)委員 法務省刑事局長に伺いますが、どういう場合、十一歳から十三歳の少年院送致というのが想定されるんでしょうか、今回の改正によって。つまり、何を想定して、本当はおおむね十二歳以上の要件もなかったわけですけれども、与党修正によってそうなりましたけれども、どういう基準でこれまで少年院送致されなかった低年齢の子たちについての少年院送致もあり得べしとしたんですか。

小津政府参考人 まず、全般的にといいますか、少年につきましては、その少年の年齢や心身発達の程度、ただ、それだけではなくて、非行に至る動機、背景、非行の内容、性格、行状、環境等々を総合的に考慮いたしまして、その非行を犯した少年の立ち直りを図るために最も適当な処遇が家庭裁判所によって選択されるということが基本でございます。

 十四歳未満の少年でございましても、凶悪重大な事件を起こしましたり、悪質な犯行を繰り返すなど、深刻な問題を抱える者に対しましては、早期の矯正教育が必要かつ相当でありましたり、また、児童福祉施設の開放処遇になじまない場合もあると思われるわけでございます。

 以前私が答弁申し上げましたときに余りにも年齢の低い者についての御質問がございましたので、やはり少年院という施設で基本的には集団生活をする、あるいはそこで行われる指導や教育の内容を理解するということが必要でございますので、そういう点は当然、家庭裁判所の判断の際に考慮されることになるであろう、このように考えているところでございます。

保坂(展)委員 法務大臣に伺いますけれども、今刑事局長が答弁したように、凶悪重大な事件あるいは開放的な児童自立支援施設よりは集団規律を重視した少年院の方がいい、大体こういう大枠で考えているということなんですが、大臣は前回、触法少年、犯罪少年、特段区別をしないで扱っていくというふうに答弁されているんですね。どういうふうにこの十一歳から十三歳までの子供たちを処遇するんですか、それはその答弁どおりでよろしいですか。

長勢国務大臣 当然、両方、犯罪少年も来る場合もありますし、触法少年が来る場合も、十四歳以上になれば現在おるわけでございますが、それにかかわりなく、少年一人一人の問題性、教育上の必要性に応じて処遇するということを原則としております。

保坂(展)委員 触法少年が来る場合はないんじゃないですか、現在は。それは基本ですよ。

長勢国務大臣 もちろんあるわけでございます。

保坂(展)委員 ということは、大臣、十四歳未満の子供たちは今でも少年院に入っているということですか。どういうことなんですか。

長勢国務大臣 現行の話でしょう。当然あります。

保坂(展)委員 大臣、法案出し直しじゃないですか。どうですか。与党の担当者も、どうですか、この状態で。

七条委員長 補足があるようですから。

梶木政府参考人 十四歳未満の少年が入ることはないわけでございます。(保坂(展)委員「今、違うじゃないですか、大臣はあると」と呼ぶ)

 ただ、要するに、十四歳未満で触法少年、例えば十三歳と何カ月という子供がおります。その子が審判を受けましたときに十四歳になりますと、それは裁判所は、それで、少年院で教育を受けることが必要であろうという判断をされる場合はあるわけでございます。そういうことを大臣がおっしゃったんだと考えております。

保坂(展)委員 これを国民の皆さんあるいは関係者、少年事件に真剣に、いろいろな立場で相対している人たちが注目していると思いますので、大臣、しっかり認識を持っていただいて、一体何が議論されているのかということを厳密に見て、その上で答弁されているのかどうか、本当にこれはちょっと疑問に思いますよ。

 虞犯少年の扱いについて、いわゆる警察の調査権は削除されましたが、少年院に入ることはあるんですね、十四歳未満の少年についても。大臣、どうですか。

長勢国務大臣 当然、今回の修正案が通れば、おおむね十二歳以上であれば入ることになります。

保坂(展)委員 虞犯少年というのは、犯罪を犯すおそれがある子供であって、犯罪を犯してはいないわけですよね、大臣。少年院に入れていいんですか。少年院の中で集団生活をすることによって、かえって犯罪を犯すおそれが助長される危惧もあるんじゃないですか。

長勢国務大臣 家庭裁判所において、これからの健全育成のために保護する必要があるという者が虞犯少年の中にあっても、それまでの性行その他の環境等々によって、あるということになると思います。

保坂(展)委員 矯正局長に伺いますが、大臣がおっしゃっている認識と局長が言っていることは前回も大分違うんですよ。

 つまり、十四歳未満の少年が入ってくる、子供が入ってくることに対して、以前は、五歳、八歳という非常に低い年齢の子たちについてもそう決まれば対応するとおっしゃっていましたけれども、少なくても十一歳から十三歳、おおむね十二歳以上というジャンルの子供たちが入ってくることに対して、何か八カ所でプログラムを用意しているというんですが、その八カ所というのはどういうところで、どんなプログラムを用意しているのか、お答えください。

梶木政府参考人 まず、受け入れの施設でございます。東日本では、赤城少年院、青葉女子学園、関東医療少年院、神奈川医療少年院を考えております。それから、西日本では、和泉学園、貴船原少女苑、京都医療少年院、宮川医療少年院を考えております。

保坂(展)委員 前回は、疑似家族制度も導入してということを言っているんですが、少年院の中に、児童自立支援施設にあるような小舎制、こういうものを導入しようという計画はあるんですか。

梶木政府参考人 委員が今お使いになりました小舎制といいますか、それは児童自立支援施設のことをお考えで御指摘になったんだと思いますが、ああいう形は現段階では考えておりません。

保坂(展)委員 そうすると、疑似家族制度というのも、疑似というと本物ではないというような印象も与えますが、私は、児童自立支援施設でやっていることは相当すごいことをやっているなと思いますよ、本当に、家族同様に寝起きして共感性を育てるということをやっているわけです。

 疑似家族制度というのは、矯正局長、答弁しているんですが、どういうことなんですか、具体的に言ってください。疑似家族制度というのは寝起きをともにするという意味ではないということですか。どこが疑似家族なんですか。

梶木政府参考人 疑似家族というのは幾つかの局面で考えておるわけでございますが、まず、男子教官、女子教官という性の違う教官が一人の子供の教育に携わっていく、それが父親的あるいは母親的な感覚で携わっていくというのがまず一つでございます。

 それからもう一つは、例えば生活環境にいたしましても、私服を着用させるということもちょっと考えております。それから、例えば食器でございます。小さい子供でございますので、食べる食器についても、普通の家庭で使うような食器を使わせようということで考えております。また、例えば小動物あるいは花、こんなものを生活の場面の中で子供に育てさせる、そういうものを教育のプログラムの中に盛り込んでいくということを考えております。

 また、例えば洗濯でありますとか掃除、家庭であれば当然子供もそういうのを分担するわけでございますが、そういった役割を分担する生活指導、これを取り入れながら年少者を処遇し育てていこうというふうに考えておるところでございます。

保坂(展)委員 矯正局の方でもいろいろ苦労して考えているということはわかりましたけれども、やはりこうやって聞くと、本当に審議は足りていないですよね。実際、少年院に十一歳から十三歳までの子が送致されるという修正案が提示されて、その後すぐに採決があったわけで、裁判所は、少年審判において、あるいは調査官の聞き取りにおいて、十一歳から十三歳までの子供たちに対して、この改正を踏まえてどういう対応を考えているんですか。

二本松最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今回の法改正により、児童相談所から家庭裁判所に送致される触法少年事件の数がどのように変化するかということは、今の時点では直ちに明らかではありませんが、家庭裁判所といたしましては、今回の法改正に伴って裁判所に係属することになる事件数の動向や新しい制度の具体的な運用状況を踏まえまして、必要な体制の整備に努め、送致された事件については適切に処理してまいりたいと考えております。

 以上です。

保坂(展)委員 警察の生活安全局長に伺いますが、前回、一番冒頭の審議で、那覇の放火事件について、私、具体的な事例を挙げて問うたと思います。これは、二〇〇四年八月七日、三時三十分に交番に任意同行されて、四時四十分現場、そして、結局、児童相談所に通知されたのは翌日の夕方四時であるという例を挙げました。

 これは、現在の調査について、こうやって一夜を過ごす場合には、警察はどこに少年を置いて、徹夜でというわけじゃないでしょうけれども、どういう扱いをしているんですか。

片桐政府参考人 保護場所の話でございますけれども、まず、御懸念は留置場を使っているんじゃないかということかと思いますけれども、それは使っておりません。適切な場所を選択して保護するという形になっていまして、これはケースによって違うんですけれども、例えば少年補導室にソファーを置いて、またベッドを置いてそこで寝かせるとか、また保護室というものがある場合にはそれを使うとかいうふうな運用をいたしております。

保坂(展)委員 触法少年に対する調査権ということが今回の法改正によって出てきたことによって、一時保護施設が使われるだろうというふうに聞いております。

 厚労省に伺いますけれども、世間の注目を集める、マスコミが非常に大きな事件だということで国民的な反応も非常に、驚愕も大きい、こういう事件を起こしてしまった子供を、現在、例えば都市部の一時保護施設、我々、児童虐待防止法の改正作業などで何度か見に行きましたけれども、かなり満杯状態ですね。事実上は、今、虐待をされた子供と非行の子供も一緒に、同じ部屋で寝起きしているような状態です。そこにマスコミの報道陣が詰めかけるような形で、一時保護施設で対応は可能なんでしょうか。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一時保護所が非常に満杯状態にあるということは、そういう大きな事件にかかわらず、この状態は何とか解消しなければいけないということで、十八年度の補正予算で環境改善を図ったほか、ことしの六月末までに、定員超過になっているところにつきましては緊急整備計画の策定をお願いしておりまして、これに沿って、できるだけ早くこういった状況を改善したいと思っております。

 また、先ほどありましたように、非常にマスコミ等で話題になった触法少年などのケースにつきましては、なかなかそれだけでは難しいところもございますので、実際には、その一時保護所や児童相談所だけではなくて、他の児童相談所や本庁からの職員の応援体制でありますとか、それから、場合によっては、児童自立支援施設を使って一時保護をするというような配慮をしていくということにしております。

保坂(展)委員 もう一問、警察に伺いますけれども、結局、任意の調査であるということで、十四歳未満の少年に対して、例えば十四歳以上の少年に対して刑訴法の適用をするような扱いをしないということでずっと答弁が続いていますけれども、これは任意なんだよという、任意ということを十一歳とかそういう小さい子供にどうやってわからせるのか。そして、帰りたくなったら帰っていいんだよということを本当に言えるのか。そして、子供が警察の方から話を聞きたいと言われて、では帰りたいと言えるものなのか。その辺はどういうふうに扱っていく予定なんですか。

片桐政府参考人 一つは、少年を呼び出したり面接したりする場合には、必ず御両親に、保護者に、これは保護者が原則なんですけれども、御連絡をして、その同意をいただきます。ですから、保護者は適切にそこで判断をされる、もし面接させたくなければ拒否もできるし、これは任意の調査でございますから、そういった形で担保できると思っています。

 それから、調査に当たる場合、面接に当たる場合には、これは繰り返し申し上げておりますけれども、やはり少年にとって話しやすい雰囲気をつくるということで、わかりやすい言葉を用いるとか、一方的に押さえつけないとかというような配慮を我々はしているところでございます。

 今回、修正案で、強要にわたってはならないという規定が置かれました。これは当然のことなんですけれども、しかしながら、この修正案のとおり国会で通れば、その趣旨はさらに、これは私どもに向けられた規定だと思いますので、私どもの方の係員に徹底をさせたいというふうに考えております。

保坂(展)委員 法務大臣、時間ももう残り少なくなったので、先ほど冒頭でお聞きした、ずっとこれにこだわっているのですが、結局、年齢を下げたわけですよね。年齢の下限はなかったんですが、与党修正で下限はついた。しかし、十一歳という、小学生ですね、この子供たちを少年院に入れるについて、私たちは入れるべきでないという立場ですが、しかし、それを入れるんだというときに、どういう配慮を求めますか。矯正の方でも考えているようですが、大臣として、どういう指示をしますか。

 つまり、これまでのような扱いでいいんだよ、特段、別に年齢が低いからといって変える必要はないということなんですか。これはすごく大事なことだと思うんですね。これまで大臣は、余り変える必要はないという趣旨の答弁をしているんですよ。矯正局長の方はちょっと違うんですよ。

 私は、どちらかといえば、矯正局長が言っている方が、要するに、年齢が低い子供は全然違うわけですから。つまり、少年法というのは、年齢が関係なければ少年法も必要ないわけで、大きく言えば。犯罪少年、触法少年の年齢を十六歳から十四歳まで下げて、そしてまた、一連、遠目から見れば、これは厳罰化の流れですよね。そうやって外形を示せばいいんだ、後は当局に任せるでは、やはり大臣として責任ある指示をするべきじゃないかと思いますけれども、どういうふうに考えているんですか。

長勢国務大臣 先生からたびたび御質問いただいてきましたけれども、まず、今回、与党修正でおおむね十二歳以上ということになったわけでありますが、それが十一歳も含むのではないかということで、おおむね一年前後ということであれば含むことになる可能性があるわけですが、十一歳以上を入れるということを決めているわけではないんだと思うんですね。そういう場合もあるということを決めているだけでございます。

 そういうことを申し上げると、何か十一歳以上は全部入れる、小学生でも入れるようなことを私が言ったように言われるのであればちょっと困りますし、それから、少年院における取り扱いについても、同じかどうかというようなお話になりますから、そのように申し上げれば、全く違いはないというふうに受けとめておられるようでございますが、当然、十四歳未満の方も含めて、発達程度に応じてきちんとした処遇をすべきことは当然でございまして、まして、仮に小学生、十一歳の方々が家庭裁判所の判断によって少年院に送られてくるというようなことになれば、それに沿った対応をきちんとしてもらうということは当然行うべきであり、そういうところに問題がないように、矯正局、担当者にも十分指導したいというか、そうするように指示をしたいと思います。

保坂(展)委員 最後に感想を述べて、もう答弁は要りませんけれども、大臣、聞いてください。

 矯正局長が言ったように、疑似家族制度だとか、例えば小動物だ、いろいろ言いましたね、食器をかえるとか、あるいは年齢に応じてと。つまり、十一歳から十三歳までの少年院入院対象者が拡大されるわけですが、それについて、こういう原則でやるんだということを大臣からちゃんと示してほしかったですね。そうするべきじゃないかということを指摘して、これからでもその議論をしっかりしなければいけないというふうに思います。

 終わります。

    ―――――――――――――

七条委員長 この際、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局大谷人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしでございます。

 少年法ということでございますが、かねてから言われておりますように、警察の調査ということになってきますので、まず、自白強要は大丈夫かということが一つと、それから、大きな組織に任せますと、最近、私、現代型の冤罪だと言っていますけれども、組織を守るために末端を簡単に切り捨てるということが少年実務でも行われるのではないかということです。

 まず、自白強要のおそれですが、委員長、うちの筆頭には言ってありますけれども、例の刑務官の話で、この間、無罪が一人確定しました。その方は佐藤孝雄さんという方ですけれども、ぜひここへ出てきて、実際にどういう取り調べを受けたか、それから、いわゆる実務、革手錠を施用するときの実務の実態をぜひ話をさせていただきたいと言っておられますので、一度、証人喚問でもいいですよ、参考人でもいいですが、ぜひお取り計らいをいただきたいと思います。いかがですか。

七条委員長 後日、理事会で協議をいたします。

河村(た)委員 さらに言いますと、本当に、これは四、五年前ですけれども、法務委員会でもそうだし、予算でもそうですけれども、ぼろかすに、これは全党ですよ、刑務官の人格にも非があると言って、法務省はレポートを出したんですよ。それが、理由もめちゃくちゃですけれども、それにしても無罪が確定したという場合に、本当に国会は検証せぬでもいいんですかね。免責特権があるとかいろいろ言いますが、何であるかといったら、自分でやれるからあるので、何でも言っていいわけじゃないでしょう、当然。

 そこのところは十分お含みの上、理事会協議でもいいんだけれども、理事会よりも、本当は委員長が決めればいいんですよ、理事会協議が決まり文句になっていますけれども。大体、理事会協議をすると、与党は必ず役所の防御をしますから、いつでもろくでもないんですよ。結局、何の真相も解明されず、それがこういう冤罪事件を引き起こすということもあるんですよ。

 もう一回、しっかりそういう立場でやると言っておいてちょうだい。

七条委員長 河村たかし委員からの今のお話、私の気持ちを述べるというよりも、理事会の中で協議する事項であることだけは間違いがございません。理事会で協議をさせていただきます。

河村(た)委員 では、そういうことにしますが、ぜひ、これは大変重い問題で、国会とは何であるのかということとも関係する問題ですから、逃げぬようにやってくださいよ、本当に。

 それから、同じようなことで積み残しておりますので、矯正局長に聞かないかぬけれども、例の革手錠の施用。

 革手錠というのは、もともと武器ではないですね。要するに、ピストルなんかだったらそれがそのまま危険性があるものですけれども、革手錠というのはあるところまでは適法なわけでしょう、当然。刑務官というのは、暴れている人に対してどういうふうに施用すればいいのか。血行を妨げないと言うんだろうけれども、それは外見からは見えないですからね。スーパー能力があるわけじゃないですよね。エックス線を持っておるわけじゃないんです、現場の刑務官たちは。どこから違法になるんですか。

 それと、もう一つ聞いておきますが、きのうちゃんと課長さんに言いましたけれども、みずからきちっと施用されて被験者になることと、自分がどなたかにかけて引っ張って、どういうものだということを試された感想を聞かせてください。

梶木政府参考人 まず、革手錠の使用の方法ということでございます。

 革手錠は、手の動き等をとめて暴行あるいは逃走といったものを阻止するために使用するものでございます。しかしながら、一方で、それを使われる者の体格、体調あるいはそれを使われたときの姿勢、そういったものによって力のかかりぐあい等が異なってくるものでございます。したがいまして、革手錠の使用に際しては、必要以上に締め方の度合いをきつくして使用部位を傷つけたり、あるいは血液循環を著しく妨げるというような方法で使用しないようにという指導をしてきたところでございます。

 今委員御指摘のように、昨日、私も改めてまたやってみたわけですが、本当に、革手錠のかかった位置あるいは姿勢等によって随分状況が違うということがわかった次第でございます。

河村(た)委員 きのうやられたというので、やった実態を、きょう三十分しかないものだからいかぬけれども、お聞かせ願いたいんです。

 内臓の腸間膜についておる血管が切れたんですけれども、本当に切れると思いましたか、自分で施用されて、ないし自分で引っ張って。これはすぐわかるんですけれども、どう思われましたか。

梶木政府参考人 昨日やったわけでございますが、何分にも、それを締めたのは私のところの職員でございますので、やはり立った位置あるいは力の入れ方も、はたから見ると、客観的にはさまざまだったんだろうと思います。したがいまして、一概にこうだった、ああだったというのはなかなか言いにくい状況でございました。

河村(た)委員 何を言っておるんですか。私、きのう言ったでしょう、矯正局長にぼろかす言いたくないのでちゃんとやっておいてくれと。疲れてきますよ。何で法務省のことをこうやって自分で言わないかぬのか、わけがわからないですよ、本当に。

 実際問題、まず、立ってやったんじゃないですか、あなた、立ったままで。地面に伏せてやりましたか。

梶木政府参考人 地面といいますか、ソファーの上でございますけれども、ソファーの上に伏せたり、あるいは立ったりということでやらせていただきました。

河村(た)委員 ソファーの上に伏せたりというのは何ですか。ソファーの上に横たわったんですか。こういうフロアでやらなかったんですか。

 もっとも、何メーターか二人で引っ張ると、体が動くからわかるんですよ。当たり前のこと、言いたいことは。一定の力、体重以上の力をかけたら体が動いちゃうんですよ。だから、それ以上内部に入るということはあり得ないんですよ、体が動いちゃうから。わかるはずなのに、やらなかったの、フロアで。(発言する者あり)何を言っておるんですか、あなた。何がそこまでやる必要ないだ。冗談じゃないですよ。ひどい話だよ、これは、今彼が言っておるけれども。いいかげんにしてくださいよ。ちょっと答弁してください。

梶木政府参考人 今委員御指摘のように、ソファーの上に伏せてやらせていただきました。(河村(た)委員「伏せてとはどういうことですか」と呼ぶ)腹ばいになってやらせていただきました。

河村(た)委員 ソファーということは、横につい立てとかがありますよね、それから施用状況も全然違いますね、はっきり言いまして。体が動くところまでやらなかったわけでしょう。ソファーから落ちなかったんでしょう。どうですか。

梶木政府参考人 ソファーからは落ちませんでした。

河村(た)委員 だから、今、ちょっと悪いけれども、早川さんもちょっと言われて、個人的には別だけれども、そこまでやらぬでもいいというのはないですよ。受刑者のためにもいかぬですよ。革手錠施用、簡単にできるんだから。私はここでやりましたけれども。

 矯正局、告発しているでしょう、あなたのところ、刑務官を。こんなことで本当に罪になりはせぬかね、実際にやらずに告発したら。どう思いますか、あなた。簡単にできるんですよ。鉄道事故みたいに、鉄道を同じように、そういうのじゃないんですよ。わずか数分でできますよ、目の前でやれば、同じ実験が。しなくてよく告発しましたね。告発しようか、皆さんを、誣告罪か何かで、職権濫用罪で。とんでもないですよ。そういう誤解でうちのところに暴力団関係者が来るんじゃないですか。どう思われるんですか。同じことをやらずになぜ告発したんですか。

梶木政府参考人 この事案は、我々の本来の管理し運営している施設で生じた事案でございます。また、職員が業務執行の過程で起きた事案でございました。

 我々としては、そこに、当然のことながら、犯罪の成否というのが収集された証拠に基づいて認定されることは当然でございますけれども、我々として、そういう職場を預かり、職員を預かっている我々の立場として、そういった公の調査、捜査、真相の解明をお願いしたということでございます。

河村(た)委員 何を言っておるんですか。告発しておるんですよ、矯正局は。お願いしたんじゃないですよ。告発しているじゃないですか。

 みずから、簡単にできますよ。実は、今からでもできるんですよ、手錠を持ってくれば。そんなことをやらずに告発しておるというのは、大丈夫ですか、本当に。お願いしたんじゃないですよ。告発していますよ。どうですか。

梶木政府参考人 先ほど答弁申し上げたようなことで告発をしたということでございます。

河村(た)委員 では、もう一回ここで要請しておきますけれども、ちゃんと今度はフロアに伏せて、受刑者が暴れておる状況で、革手錠を施用されるのと同じ状況でやってくださいよ、もう一回聞きますから。あれはビデオに映っていますから、ビデオどおりやればいいんですよ。それで、あなたの体はどうなりましたかと聞きますから、今度は。いいですね。

梶木政府参考人 委員が先ほど来御指摘になっているのは、そういった革手錠の具体的な使用場面における適法性の問題であろう、それを委員が一生懸命にいろいろお考えになって言っておられるんだろうというふうに理解しております。

 この問題は、委員も御承知のとおり、裁判所におきまして両当事者から具体的に証拠が出され、争われ、裁判所が判断を下し、そして現在法廷で、刑事裁判という手続の中で争われているわけでございます。(河村(た)委員「あなた、やらないというの、それじゃ。自分で実験、それだけ答えてください」と呼ぶ)ですから、あくまでもそういった証拠に基づいて認定されるべき事柄であろうというふうに私どもは思っております。

河村(た)委員 施用実験を、ビデオに映っていますから、簡単にできますから、やるのかやらないのかだけ答えてくださいよ。

梶木政府参考人 繰り返すようで恐縮でございますが、先ほど申しましたように、裁判所において両当事者が証拠を出しながら審理が行われております。今後、必要なことについてはさせていただきますけれども、今にわかにやるやらないということは申し上げがたいところでございます。

河村(た)委員 しかし、これは恐ろしいことですよ。

 いいですか、何遍も言いますけれども、あなたの体重以上の力で引っぱれば、体が動くんだから、それ以上締まりませんよ、当たり前ですけれども。そんなの、物理的にわかることでしょう、だれだって。そうでしょう。それはわかるでしょう。局長、あなたは体重が何キロあるのか知りませんが、八十キロなら八十キロあるとします、それ以上の力で引っ張れば、体が動きますよ、こちらに。そうでしょう。わかるでしょう、それは。わからない、それが。八十キロで締める、簡単にどこでも締められますよ、バネをつけてはかればすぐ出ますよ、今デジタルで。八十キロの力でこうやって締めて、内臓の血管が切れますか。簡単にわかるんですよ。やらないの、もう一回聞きますけれども。あなた、部下を告発したんですよ、かつての局長ですけれども。いいんですか、そんなことで告発して。犯罪にならないですか。

 刑事局長、これは犯罪にならないですか。

小津政府参考人 これは、その当時の根拠に基づき判断をして、そのような手続をし、その後は捜査機関において捜査を遂げて、本件につきましては起訴をして、裁判が行われて、一名の方につきましては、関与の程度をベースにして、その方の認識の問題が中心だと思いますけれども、有罪の判決をすることはできないということで無罪の判決が出たわけでございますが、そのほかの被告人については、基本的に検察側の主張が認められて有罪判決が出て、現在控訴審ということでございますので、すなわち、そのような刑事司法手続の中でしかるべく真相の解明がなされているものと承知しているわけでございます。

河村(た)委員 裁判所も実際よくやれたものですよ、本当に。私は失望します。そんなもの、自分でやってみなきゃわからないですよ、自分でさわってみなきゃ。よく裁判官がわかるものだなと思いますよ、人を有罪判決に。とんでもないですよ、本当に、却下しておいて。自分でつけられたのを引っ張ればすぐわかるんです、体が動くから。

 だから、少年法でもそうだけれども、でっかい組織にやらせると、あなたたちみたいに末端をそうやって切り捨てておいて、上だけ出世して残っていくんだよ、はっきり言うと。そういう構図なんだよ、これは。だから、少年実務でもそういうことになりはせぬかということなんですよ。

 それで、もう一回言っておきますけれども、局長、絶対やってくださいよ。あなたの部下なんですよ。それぞれ一人ずつ聞くとわかるけれども、みんな生活が大変ですよ、言っておきますけれども。

 それから、国会の皆さんにも申し上げたい、大臣にも言いたい。何かごちょごちょ言っていますけれども、簡単にできる実験をみずからやらずに、人を罪人扱いしちゃいけませんよ、本当に。とんでもないことですよ。(発言する者あり)裁判に圧力じゃないですよ。その前に行政調査というのがあるんですよ。革手錠のどういう施用が適法かどうかなんというのをやらないかぬじゃないですか。今廃止したといっても、この前までやっておったんですよ。裁判は関係ないですよ、そんなこと。革手錠の施用はどこからどうなったら違法なんだ、どういうことが適法だ、それは当然やらなきゃわからないでしょう。そういうことですよ。

 大臣、どう思いますか、今の話を聞いておって。では、一言言ってください。

長勢国務大臣 革手錠の施用の指導については、先ほど矯正局長から申し上げたとおりだと思います。

 先生から、私、就任以来たびたびこの話を聞かされているんですが、先生の御熱意には敬意を表しますが……(河村(た)委員「裁判は関係ないよ、行政調査の問題を言っているんだよ、今」と呼ぶ)先生の御意見もありますけれども、全然違ったことを言う人もおられて……(河村(た)委員「だから調査しなさいと」と呼ぶ)

七条委員長 答弁中ですから。

長勢国務大臣 今、裁判があるのは関係ないと言われるのも、ちょっと私はよく理解しがたいことであります。

河村(た)委員 行政調査で、革手錠の施用がどういう条件で違法になって、どういうことが適法なのかということは調査しなきゃわからないでしょう。それをやらないで、あなたたち、今までどうやって刑務官に指導しておったんですか。そうでしょう。血流を妨げないといっても、血流を妨げているのが外からわかるんですか。服の上からやるわけでしょう。どうやってわかるんですか。

 だから、やらないかぬですよ、本当に。法務省の調査、同時に国会の調査も要るということ、これだけ一応申し上げておきます。

 それから、最高裁に来てもらっておりますけれども、前の試験の問題の漏えいについて、ないと言われましたけれども、答弁だけでいいですけれども、それは担当官に聞いたと言いましたね。では、いつ、だれに、どういうふうに聞いたか、全部その調査の状況を詳しく報告書にして出してください、個別名を出して。

大谷最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 調査の概要については、前回申し上げたとおりで、九十九名の者に対して、一人一人、そして、前回申し上げませんでしたが、電話で直接聞き取り調査を行ったものであります。その結果、全員からそのような事実はなかったという確認がとれたということでございます。

河村(た)委員 その調査票、いつ、どこで、だれに、どういう言葉で聞いたか。

大谷最高裁判所長官代理者 だれにということについては、個人情報そのものでありまして、そのままの形で提出することは難しいかと思っております。

河村(た)委員 そんなこと、個人情報になりますかね。簡裁の判事さんはわかっておるわけでしょう、この方は合格しましたと。選考組というのはわかっておるわけでしょう、全部。こんなこと、個人情報になりますかね。

 とにかく、きちっと文書にして出してくださいよ。名前は名前で、本当の名前だけいかぬというなら、年とか、それから元何だということはわかるでしょう。どっちにしろ、個人が特定されるんですよ、これは。判事ですから、自分がそういうことを聞かれるのは嫌だというのはおかしいじゃないですか。出してください、文書。

大谷最高裁判所長官代理者 調査結果のより詳細なものについてまた提出することについては、検討させていただきたいと思います。その上で提出いたします。(発言する者あり)

河村(た)委員 ちょっと今御指摘がありましたので、何で隠そうとするんですか。

大谷最高裁判所長官代理者 名前そのものについて、先ほど申しましたように、個人情報であるという問題がございますので、提出についてはいたしますけれども、その内容については検討いたしますということでございます。

河村(た)委員 提出してくれるということだな。

 これは、もしいかぬかったら聞いてくださいよ、参考人招致が要りますよ。裁判官ですよ、言っておきますけれども。裁判官の任官に問題がある、不正採用ではなかったかというのは、どえらい問題ですよ。参考人招致が要ると思います、この場合は。これはまた御協議いただきますように。いいですか、一言言っておいてください。

七条委員長 先ほども申し上げましたけれども、理事会で後日協議をいたします。

河村(た)委員 それから、今度は警察庁の方に伺いますが、この間聞きました鹿児島、電話はあると言っておられましたけれども、最後の答弁で、「鹿児島県警と再度連絡をとってみたい、」こういう答弁をされておりますが、いかがだったでしょうか。

縄田政府参考人 お答え申し上げます。

 鹿児島県警に確認をいたしましたところ、いわゆる取り調べ小票の公判提出をめぐりまして、委員御指摘の死んでも出さない等、地検との協議文に記載されていることが違法捜査の隠ぺいになるのではないか、こういう御指摘につきましては、公職選挙法違反の公判対応等に関し、あるいは報道や、御指摘のような違法捜査を隠ぺいするために鹿児島地検と口裏合わせをした、こういうような事実はないとの報告を受けているところでございます。

 若干補足をいたしますと、当該資料、取り調べ小票につきましては、これは上司に対しまして取り調べの状況を報告するための捜査員のメモでございまして、その時々の被疑者の言い分といいますか供述を、特に事実確認等を精査しないままに警察官が記したものでございます。そのような未精査の事実や、あるいは、メモでございますので、いろいろな関係者の氏名等も書いてございます。こういったことが記されたものを公判廷に提出することにつきましては、個人のプライバシーを害するということもございますし、捜査に大きな影響を及ぼすということから、鹿児島県警としては、極力避けたい、こういう認識であった、このように報告を受けているところでございます。

 いずれにいたしましても、違法捜査を隠ぺいするという意図は当然ないもの、こういうふうに報告を受けております。

 供述が変遷していることを隠そうとしたのではないか等々の御指摘もございますが、判決におきましては被告人らの供述の信用性が否定される結果となりましたけれども、この理由に、供述の変遷というのが挙げられてございます。これは判決文に明記されておりますが、この中身は、警察官が作成した供述調書自体にもかなり変遷がある。鹿児島県警はある一定の時期ごとに調書をとっておりまして、これが変遷しておる調書自体が公判に出されておりますし、証人出廷におきましても、警察官が、供述がどんどん変遷しているということも証言をいたしております。

 こういったことに基づいて、信用性がないと裁判所の方で認定された、こういうふうに伺っております。

河村(た)委員 こういう文書があったことは事実なんですか、この小票は。これは、鹿児島版は詳しく書いてある、二〇〇七年四月二十日金曜日の朝日新聞にずっと書いてあります、小票の中身が。「朝日新聞が入手した県警の内部文書から、」となっておりますが、この文書があったことは事実ですか。中身もそのとおりですか。

縄田政府参考人 小票は、先ほども申し上げましたけれども、取り調べの状況等々、関係者の氏名等、あるいは捜査の状況等も一部メモされております。そういった中身につきまして、私どもといたしましては、これを確認するといいますか、それが事実である等々につきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 差し控えてはいかぬですよ。これはもう裁判が終わったことで、今後、取り調べの可視化なんかの問題を考えないかぬわけだ、当委員会としては。そのときの立法事実として、極めて重要ですよ。

縄田政府参考人 小票の関係は今申し上げたところでございますけれども、協議事項等につきまして、報告書の内容にわたる事項につきましては、以下の理由によって、明らかにすることは控えたいと思っています。

 一つは、これは捜査機関のやりとりに関するものでありまして、こういったものにつきまして具体的な中身にわたることを公表することは、今後、捜査運営上支障がある。

 それからもう一つは、報道された文書の内容にかかわる点につきまして一つ一つお答えを申し上げますと、これは、報道によれば、この文書は鹿児島県警の内部の文書であるということでございますが、まさに、その内部の文書が県警において作成されたものであるか否かにつきまして、確認を与えるといいますか、その確定にもつながるような情報にもなろうか、こういうふうに思います。

 この協議事項の報告書の中には、先ほども申し上げました、いろいろな方の名称もありますし、いろいろな事実が記載されておったり、あるいは捜査手法にわたることも書かれておりまして、こういったことが確認されるということにつきましては支障があるということでございまして、内容について、個々のやりとりの中身につきまして確認することは差し控えさせていただきたい、御理解をいただきたいと思います。

七条委員長 河村君、時間の関係上、手短にお願いします。

河村(た)委員 もう終わりますが、今言われましたけれども、こういうことを明らかにされないことは、委員会の審議に支障があるからね、言っておきますけれども。これは、可視化法案というのを提出しておりますので、この辺のところは皆さん御協議になると思いますが、そのために重要な事実ですから、立法の基礎事実。だから、出してもらわないかぬ。

 もしこういうようなことだったら、関係者を参考人でちゃんと呼んでいただきたい。実際の取り調べ実務がどうなっておるか聞かなければ、可視化法案は審議できませんよ。

 こういうことをちょっと委員長に要望して、終わります。

七条委員長 先ほども申し上げましたとおり、理事会で協議をさせていただこうと思っております。

河村(た)委員 終わります。

七条委員長 先ほどの大串君の質疑に対する補足答弁を、財務省の真砂主計局次長からお願いいたします。真砂主計局次長。

真砂政府参考人 お答えをさせていただきたいと思います。

 法務省の少年関係予算の全体の経費でございますが、全体で五百三十二億七千百万ということになっております。

 その内訳でございますが、大きく三つございまして、一つは、少年院における矯正教育の充実経費ということで二百十六億九千三百万、それから二つ目は、少年鑑別所における資質鑑別等の充実経費ということで百十億七千二百万円、それから、青少年保護観察の方の充実経費ということで百八十億六千七百万円というのが主な内訳でございます。

 今回の少年法の改正にすべての経費、関係があるわけでございますが、直接関係があるものといたしましては、国選の付添人経費というものを八千八百万円計上させていただいているところでございます。

 以上でございます。

七条委員長 もう時間が過ぎておりますが、一問だけ許します。

大串委員 ありがとうございます。

 少年法で今回、少年院に入る年限が十四歳未満になったわけですね、小学生も含めて入ることになった。それに対して必要な設備も恐らくあるでしょうし、人的措置もあるでしょうということです。すなわち、少年院に年齢の若い子供たちが入ることになったことを受けて、どのような予算要求がなされ、予算措置がなされましたかというその一点について、もう一度補足的にお答えいただければと思います。

真砂政府参考人 予算の金額につきましては今申し上げたとおりでございまして、その中で、今回の改正に直接関係する……(大串委員「少年院です」と呼ぶ)

 少年院の経費につきましては、今回、二百十六億九千三百万を計上しておるわけでございまして、この予算の執行に当たって、今回の改正の趣旨を踏まえた執行が行われていくものと私ども期待しているところでございます。

大串委員 つまり、執行面でやってくださいという話であって、今話を聞くと、すなわち、予算面においても、低年齢化することを踏まえて個別にきちんと具体的に予算手当てをしているんじゃないということがよくわかるわけです。私は、こういうところも詰めた上で議論しなきゃならなかったということが非常に残念だし、悔やまれる。その点の体制充実のところが非常に私は心配になります。

 その点を申し述べ、かつ、先ほどの定員と同じですけれども、予算要求資料、それから査定の資料、この点について、確認のために資料を、ぜひ理事会の方で提出いただくようにお諮りいただきたいということで申し述べたいと思います。

七条委員長 理事会で協議いたします。

大串委員 ありがとうございます。

七条委員長 次に、横山北斗君。

横山委員 民主党の横山北斗です。

 昭和二十三年の少年法は、親や保護者による適切な保護、教育が受けられない少年たちを国が親にかわって保護、教育するという国親思想の影響のもとに、教育、保護の側面が強いものとしてでき上がったものと認識しております。

 この少年法の理念は、今回の改正においても引き継がれているのでしょうか。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

小津政府参考人 現行の少年法の基本的な理念は、少年法の冒頭に書いてあるとおりでございまして、繰り返し大臣も御答弁申し上げておりますけれども、少年法の基本的な理念が今回の改正によって変わるものではございません。

 先ほど、国親思想というお言葉がございました。確かに、新しく少年法を戦後つくりますときの考え方としてそのような表現が用いられたことも、また、その後もその言葉が使われているということはあったかと思いますが、国親思想そのものがストレートに今の少年法に書いてあるかどうかということにつきましては、若干留保させていただきますけれども、以前にも私、御答弁申し上げましたけれども、アメリカの制度などを大いに参考にして現在の少年法はできているものだ、このように認識しているところでございます。

横山委員 それで、今回のこの改正を受けて小学生も少年院に入ることになる可能性について、新聞社などが安倍首相に尋ねたところ、犯罪被害者の気持ちを考えるとやむを得ないという趣旨の発言が新聞等に出ておりました。

 これは、なるほど、罪を犯した者が憎い、許せないという被害者の気持ちを優先した法改正であったのかなと。よく、罪を憎んで人を憎まずということをいうんですけれども、こういう考え方からは大きく転換しているような首相の御発言であったように思うんですけれども、この点、法務大臣はどうお考えでしょうか。

長勢国務大臣 総理が従来の方針を大きく転換するということを申し上げられたわけでは全くないだろうと思います。

 ただ、今先生御指摘のように、被害者の方々のお気持ちというものがあることも事実でございますが、そのことをおっしゃったんでしょうけれども、少年法の従来の考え方を転換するという趣旨でおっしゃったわけではなくて、先ほども御答弁申し上げましたように、少年法の目的にあるとおりでございまして、健全育成のための矯正教育ということを目的にするのが少年法でございまして、そのために今回の整備をお願いいたしておるわけでございます。

横山委員 それで、今回、法律改正までの経緯というものを考えますと、恐らくは、その日の夜のニュースとか翌日の朝刊で、こういうふうに変わったんだということを見て、びっくりした小学校、中学校の先生も大勢おられるかと思うんですけれども、教育現場の方から警察の方に、法律が変わったことに関して何か説明をしてほしいとか、あるいは警察として今後、こういうふうに変わったんだよみたいな、出張教室みたいなものを開いて周知徹底するとか、そういうことは考えておられるのでしょうか。

片桐政府参考人 一つ目の、教育現場から何らかの話があったかということについては、私の承知している範囲ではないというふうに思っております。

 それから、この中身を、例えば非行防止教室とか結構やっておりますけれども、そういう場で話をするのかということなんですけれども、その辺をどうするかはまだ決めておりませんし、この中身は基本的に各都道府県警察が判断して話をしますので、ちょっとにわかにお答えできないということでございます。

横山委員 それでは、引き続いて、警察庁に幾つかお尋ねいたします。

 法制審議会の少年法部会におきまして、強制調査の対象事件を、殺人罪など、特に事案解明の要請の高い重大事案に限定するべきではないかという意見も出ていますけれども、この警察官による強制捜査の対象を限定すべきではないかという点につきまして、どのようにお考えでしょうか。

小津政府参考人 この法案を立案した立場で御説明申し上げますと、真相を解明いたしますために、今回、御指摘のような新しいやり方というものも入ったわけでございますが、さて、それが必要な事件というのが殺人等々の凶悪な事件に限られるであろうか。つまり、結局これは少年にとって最もいい処遇を考えて決定していくための真相解明でございます。

 そういたしますと、決して一定の重い犯罪についてだけそれが必要になるというのではなくて、例えばでございますけれども、窃盗事件につきましても、事案の性質からいたしまして、盗んだものがその家にあるかもしれないということがあるわけでございますので、あるのかないのか、あるとしたらどうしたんだということをはっきりさせるということが少年の今後を考える上でも非常に重要だ、こういうことでございまして、そういうような観点から、一定の重大事件に限るということにはしなかった、こういうように我々は理解をしております。

横山委員 それでは、引き続きまして、虞犯少年の事件の調査については、これも法制審議会の少年法部会において、少年法で警察官の調査権限を認める必要はないという意見も示されました。今回、あえて少年法に明文規定を置いた理由について、そして、いま一つ、国家公安委員会規則に基づく調査と、少年法に新たに規定される権限に基づく調査との実質的な違いについてお聞かせください。

小津政府参考人 御質問の第一点については、私から御答弁申し上げます。

 提出させていただきました政府案におきましては、虞犯につきましても警察の調査権限を改めて明文で書くという案を出させていただきました。これは、それまでの警察の虞犯に対する調査、もちろん根拠があってやっていることでございますけれども、そのことを特定して明確に書いているわけではないということで、警察の虞犯事件の調査にさまざま支障があるということを踏まえてのことでございます。今般、その規定はやめるということで御決定がなされましたので、従来どおりの根拠規定で警察がやるということになると我々は理解しております。

 第二点については、警察の方から御答弁いたします。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 政府原案で書かれた調査権限というのは、あくまでも任意の調査権限でございまして、格別新しい権限を付与するものではないというふうに理解しております。したがって、少年法で規定されなかったからといって、されてもされなくても、基本的には変わるところはないというふうに考えております。

横山委員 今回の改正では、警察官は、警察官ではない少年心理等について専門知識を有する警察職員に触法少年及び虞犯少年の事件について調査をさせることができるとしておりますけれども、この目的についてお聞かせください。

片桐政府参考人 少年補導職員という職員が我々におりまして、この職員は、大学で心理学を専攻したとか、少年の特性とかに造詣が深いと申しますか、知識経験を有する者が当たっているわけでございます。

 従来もこういった職員が、例えば虞犯の調査とかいう部分で、また触法も含めて調査に従事をしてきたところでございますけれども、こういった職員の権限関係と申しますか、こういった職員もきちんと調査ができますよということを、法律上、今回明確化したいということで、その規定が置かれたということでございます。

横山委員 今回の改正では、警察官は、調査の必要があるときには、少年、保護者または参考人を呼び出して質問できるとなっております。

 刑事訴訟法上、被疑者は捜査のため出頭を求められた場合、出頭を拒み、またいつでも退去できること、また、捜査官は、被疑者の取り調べに際して、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならないことが規定されております。

 触法少年や虞犯少年の事件に関して、警察官の呼び出し、質問について権限を整備するのであれば、その権利を保護するため、刑事訴訟法と同様の趣旨を法律で明確に規定すべきであるという旨の意見も法制審議会の少年法部会で示されているんですけれども、この点につきましても御説明をお願いします。

小津政府参考人 ただいま御指摘の点につきまして、そのような規定、すなわち供述拒否権を告げることを義務づけるような規定を政府案でも設けなかったわけでございますけれども、その考え方といたしましては、触法少年につきましては、刑事責任を問われる可能性がない以上、黙秘権、供述拒否権の問題は生じないとの見解が有力であるということが一つでございます。また、これらの少年への質問は、当然身柄の拘束を伴うものではございません。

 さらに、触法少年への質問が少年の健全な育成のための措置に資することを目的として行われるということを考えますと、少年を適切に保護するために、話をしやすい環境を整えるという観点から考えますと、供述拒否権あるいは類似のことがあるということを告知することを義務づけるということが必ずしも相当ではない、すなわち、調査の目的に沿わないのではないかということも考えられたわけでございます。

 もとより、少年に強制的に供述させることを容認するものではございませんので、政府原案におきましても、任意の供述を得ることを目的とするものであると考えていたところでございますけれども、改めまして、今般、質問は強制にわたってはならないということが明記されたものというふうに理解しております。

横山委員 同趣旨の質問の繰り返しになるかもしれませんが、少年が思春期のまだ情緒的な発展段階にあって、暗示を受けやすいような特性がある、だから、その調査においては心身の発展の程度に即した方法や情操の保護等について特段の配慮が必要であるという意見があるわけですけれども、今回の改正ではこのあたりはどのように配慮されたのでしょうか。いま一度御説明を願います。

小津政府参考人 少年法全般にわたりまして、今委員御指摘のような考え方で調査、審判等すべて行われるべきものであるというのは基本的な考え方であろうと思いますけれども、今回の改正におきましても、その点について十分に配慮するということを前提にした規定を設けさせていただいたところでございます。

横山委員 先ほどの答弁をお聞きして、やはり少し考え方が違うのは、この審議の中でも、少年院というものの存在、その見方を変えたらいいじゃないかというような御発言もありましたけれども、やはり今の状況では、少年院に入るというだけで、犯罪というか、同じような意味が世間においては与えられると思うんですね。

 そういう中で、大人に認められている権利が子供に認められないということに対して、やはりおかしいんじゃないかなという声が私は強くあると思うんですけれども、つまり、供述に対してですよ、改めて、その点についてはいかにお考えでしょうか。

小津政府参考人 重ねての御質問でございますので、少し角度を変えて御答弁させていただきます。

 これは、少年法全般につきまして少年の健全な育成を図るという考えで、成人の刑事事件に限りましても少年の事件とは異なる手続にあえてしているわけでございます。

 そして、委員が先ほど御指摘になりましたように、特に戦後つくられました現在の少年法は、まさに少年事件の特性に応じた家庭裁判所を中心にした手続、そういう特性を非常に前面に押し出してと申しますか、いろいろなところでその考え方が生かされるようにしているわけでございます。

 他方で、それでは、そういう手続でありましても、少年にとって何が最もふさわしいことかということを明らかにするためには、事実関係を解明しなければいけないということが前提でございます。

 それから、少年にとって、もちろんいろいろと不利益と申しますか負担を負わせる処分があるわけでございますので、それをどのように適正な手続で行っていくべきかといういわば両方の要請があるわけでございまして、常に少年のために最もいい保護処分をしてあげるための手続だということと、その中で適正な手続の考え方をどの程度どのように入れていったらいいのかということであろうと思います。

 例えば、一つの最も大きなことといたしましては、この手続に検察官が関与することがいいのかどうか、それから、それともちろんパラレルではないと思いますけれども、弁護士さんが付添人としてどのような場合に入っていくのがいいのかということでございます。

 それらにつきましても、刑事手続においての検察官の役割や刑事弁護人の役割とは異なった考え方で、一定の場合に家庭裁判所の手続に関与していくというような考え方がとられているというように理解しております。

横山委員 やはりその考え方については、物の見方というか価値観が違うと、なかなか私の方なんかだと納得しかねるものがあるんですけれども。

 健全育成を図る目的、保護処分をよくするための措置ということであればそれはそれでいいんでしょうけれども、やはりやり方を間違うと、何かサラリーマン川柳みたいなもので、「小学生有無を言わさず年少に」みたいなことが一般に言われるような世の中になってはいけないと思いますので、特段の御配慮をお願いいたします。

 それでは、厚生労働省の方はお見えでしょうか。

 今回の改正によって警察官の調査権限が少年法に規定されると、一時保護を利用した警察官による少年事件の調査が一般的に行われる可能性も否定できません。警察によってこういう運用が行われた場合に、児童相談所に少年の身柄の確保の監視的な役割を負わせることになる、あるいは事実上の少年への対人強制になっていくという懸念も指摘されているわけですけれども、この点につきまして、警察庁、厚生労働省、それぞれの御見解をお聞きしたいと思います。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 一時保護の目的と私どもの調査とは目的が全く別でございますので、私どもの方で調査権限が規定されたからといって、一時保護に影響を及ぼすものではない、一時保護というのは、あくまでも児童相談所長等の判断で要保護性があるか否かについてきちんと判断した上で決定されるということでございますので、そういった御懸念には及ばないと考えております。

村木政府参考人 先ほど警察庁から御答弁がありましたとおり、一時保護については、一時保護の目的に沿って対応をしていくこととしております。

横山委員 もう一回厚生労働省の方に、一時保護の概要について改めて質問したいんです。一時保護の制度の概要をちょっと御説明ください。

村木政府参考人 一時保護でございますが、これは少年法等非行に関する場合だけではなくて、幅広く、虐待、迷子、置き去り、非行など、さまざまな理由によりまして、児童福祉法の十二条の四に基づきまして一時的に児童を保護するということでございます。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

横山委員 わかりました。

 今回のこの改正で、恐らくは、どこかの小学校、中学校で校長先生や教頭先生が、今度こんなふうに法律が変わったよというような話をしているんだろうなと私は思います。しかし、小学校、中学校の先生も忙しいですから、その保護者の方も含めて、まだ周知徹底されていない部分というものもあります。

 そもそも、今回の改正がよかったかということも含めて、今後、さまざまにこの法改正の内容等を警察庁の方には広めていくようなことを私としては望んで、質問を終わらせていただきます。

七条委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 きょうの委員会、極めて異常な状態で開会されている、職権によって立てられておるということではありますけれども、異常な事態で終わってしまった少年法の一部改正法案の審議について補充質問をするという位置づけでございますので、我々としては、やむなくではありますけれども、こうして審議をさせていただいているということでございます。

 それにしても、少年法の一部改正法案の審議、特に採決、修正案提出後の審議、採決については、私は極めて遺憾に感じておるわけであります。

 これまでの審議時間、少年法の今回の改正については、結果的には十六時間四十六分ということでありますけれども、前回の少年法改正は二十五時間四十五分も審議しておるという中で、決して過大な時間をとってやってきたわけではないし、修正案の提案というものが与党からあったのが採決された日の朝でありまして、午後からいきなりその質疑ということで採決というような状況に至っているということ、私は、これだけ重要な問題がこんな拙速な形で行われるということについて抗議を申し上げたいと思います。

 皆さんも既に新聞報道等でも見ておられると思いますけれども、マスコミなんかが今回のこの事態についてどう見ているか。これはまた後日適当な機会があるかと思いますからしっかりと申し上げますけれども、少なくとも、参議院では与野党が実りある議論を尽くして、少年の人権に配慮した改正法に修正することを期待したいということで、参議院での審議を期待しているという社説が、例えば毎日とか、西日本新聞とか、中国新聞とか、そういう各地の新聞で書かれているということで、私は、この衆議院の権威を失墜させるような行為を与党が行ったということに対して、厳重に抗議を申し上げたいというふうに思いますし、その与党の強引な物事の進め方に対して委員長が職権で対応したということについては、しかるべくけじめをつけなければいけないというふうに思っております。

 ということで、まず、冒頭、厳重に抗議を申し上げて、質問に入りたいというふうに思います。

 まず、今回の改正法でいきますと、少年院に小学生の子供たちも入るというようなことも道が開かれてしまったわけでありますけれども、小学生の子供が少年院に入った場合に、憲法二十六条で保障されている教育を受けさせる義務というのは、一体、具体的にはだれにどういうふうになることになるんでしょうか。これは政務官か副大臣か知りませんが、文部科学省にお聞かせいただきたいと思います。

小渕大臣政務官 お答えさせていただきます。

 基本的には保護者にその責任があるといった状況でありますけれども、今回の改正案、小学生に対して、義務教育をしっかり受けられるのかどうかというところで御心配の点があるのかと思いますけれども、小学生の教科指導等におきましては、学校教育に準ずる学科指導を実施することができるように法務省ともしっかり連携をとりまして、これまで以上に強化をしてまいりたいと考えております。

平岡委員 今の答弁、私の質問に答えていないんですよ。だれに、少年院に収容された子供たちに対する教育を受けさせる義務があるのか、これを聞いているんですよ。まず、義務者はだれですか。

 あなたはいい。こんな基本的なことにも答えられないようなら法案を出してくるな。(発言する者あり)

布村政府参考人 法案についてお答え申し上げます。(平岡委員「私は要求していない、私は要求していない」と呼ぶ)

 憲法に基づきます就学義務については、基本的に保護者において課せられているところでございます。ですから、少年院に入院した子供についても、基本的に保護者に就学義務が課せられている状況でございますけれども、その教育の機会がしっかり確保されるように、少年院におきましても適切に教育を対応していただくことが大切であろうと考えております。(発言する者あり)

七条委員長 どなたに答弁をしてほしいかということを、平岡委員、もう一遍しゃべっていただけますか。

平岡委員 少年院に収容された小学生について、教育を受けさせる義務、憲法二十六条に規定されている教育を受けさせる義務はだれにあるのか。

小渕大臣政務官 先ほどもお答えさせていただきましたけれども、基本的に保護者にその責任があるものと考えております。また、少年院におきましては、その長が、在院者に対する矯正教育のうち教科に関する事項については、文部科学大臣の勧告に従わなければならないとこの法にも書かれておりますので、義務教育に関しましては、文部科学省が示しております学科指導を実施していただけるものと考えております。

平岡委員 今回の少年法改正に当たって、文部科学省は、こうした少年院に収容される小学生についてどういう教育を行っていくかについて、いつ、どの段階で、どれだけの協議を行いましたか。

 あなたには聞いていない、あなたは答弁者として要求していないんだから私。では、ちょっと時間をとめてください。聞いていますから。

七条委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 文部科学省小渕大臣政務官。

小渕大臣政務官 この少年法の改正案につきましては、これまで、一つ一つ申し上げた方がよろしいでしょうか、大体大まかに、四点、こちらからの疑問点を申し上げまして、それについて法務省からの回答をいただいております。

 こちらといたしましては、法務省の方に質問を提出させていただいております。(平岡委員「いつ」と呼ぶ)

 こちらから質問させていただいた内容でありますけれども……(発言する者あり)

七条委員長 お静かにお願いいたします。

小渕大臣政務官 まず、改正少年法第六条の三及び第六条の四におきまして、警察官が行うことのできる調査のうち、強制力の程度と範囲について御教示願いたい。

 二つ目といたしましては、改正少年法第六条の三、一項におきまして、参考人には学校の教職員または教育委員会の職員等が含まれると理解してよいのか、また、同条第二項におきまして、公務所に教育委員会等が、公私の団体に学校等が含まれると理解していいのか、これにつきまして御教示願いたい。

 三つ目といたしましては、上記の解釈、今提示した解釈でよい場合、公立学校の教職員または教育委員会の教員等に関しましては、守秘義務と職務専念義務または個人情報保護との関係をどのように整理するのか、御教示願いたい。

 四点目といたしましては、改正少年法第二十四条におきまして、特に必要と認める場合とはどのような場合であるのか、具体的に御教示願いたいということで、こちらにつきましては法務省の方から御回答をいただいたところでございます。

平岡委員 いや、私が聞いたのは、いつそれを聞きましたかということですね、まず。そして、今質問された事項というのは、法務省から回答をいただかれたとの話ですけれども、いつ回答をいただかれましたか、それについて。(発言する者あり)やわらかく質問するような場を設定してくださいよ。正常化された状態の中でやりましょうということを提案しているにもかかわらず、職権で無理やり立てて、我々が準備できているかできていないかもわからないような状態の中でやらせるということになれば、それは当然です。

 では、お願いします。今、ちょっと検討する時間的余裕を差し上げましたので。

小渕大臣政務官 いつという御質問でありますけれども、文部科学省といたしましては、平成十七年二月の十四日付で質問をいたしまして、法務省の刑事局から平成十七年二月の十四日に御回答をいただいております。(平岡委員「今質問が十七年十月の十四日と言っていましたよ」と呼ぶ)平成十七年二月の十四日付で質問をいたしまして、同日お答えをいただいております。

平岡委員 今の質問事項とそれから回答事項、これを当委員会に提出していただけますように、委員長、お計らい願えますでしょうか。

七条委員長 今のは、理事会で協議をさせていただくことにいたします。

平岡委員 それで、今回いろいろな施設も見せていただいたわけでありますけれども、私の印象としては、児童自立支援施設というものはそれなりに設備としてもしっかりしており、人員も特に不足しているというような印象は受けなかったわけであります。

 昨日、法務省の出身の偉い方とちょっと話をしましたら、いや、少年院の方が専門家がそろっているので、少年院の方が矯正教育というか少年の育て直しにはいいんだよというようなことを言うような人がいたんですよね。

 厚生労働省の方にお聞きしますけれども、児童自立支援施設ではそういう専門家がいなくて、少年の育て直しというふうなことができない状態に今なっているんですか。

 ちょっと、大臣、大臣。あなた大臣じゃないよ。副大臣じゃないよね。私は、政府参考人はきょうは呼んでいませんので。(発言する者あり)大臣はいなくても、政治家で、副大臣か政務官。

七条委員長 きょうは、政府参考人は私に一任をいただいております。

平岡委員 私は呼んでいません。私は呼んでいないんですから。私が呼んだ分についての承認はあるかもしれない。私は明確に呼んでいません。私は明確に呼んでいませんので。(発言する者あり)

松野大臣政務官 子供たちの更生を図るに当たりまして、少年院と児童相談所とはおのずと違う性質を持っている……(平岡委員「児童自立支援施設」と呼ぶ)失礼しました。児童自立支援施設はおのずと違う役目を負っているというふうに思っておりますけれども、事の性質上、まずは、今回議論になっているところの、児童の発達段階に応じて、年齢によって少年とまた児童によって分かれるところがあると思いますし、起こした事案の性質上、また子供たちの環境において適切に指導、教育ができるというのが児童自立支援施設の特性ではないかというふうに考えております。

平岡委員 あなた、私の質問を聞いているんですか。私の質問は、少年院の方が専門家がそろっているので、育て直しは少年院の方がいいんだということを言っている人がいるけれども、児童自立支援施設にはそういう専門家はいないということでいいのか、そういう理解なのかと聞いているんですよ。

松野大臣政務官 専門家というお話でありますけれども、心理療法が必要と児童相談所長が認めた児童が十名以上いる施設につきましては、心理療法担当職員を常勤で配置しております。

平岡委員 今言われたのは、要するに、児童自立支援施設でも少年の育て直しというのはしっかりできる、そういう専門家がそろっているということなんですよね。にもかかわらず、この前から、少年院について言えば、なぜ十四歳未満の子供たちについても少年院に行かなければいけないのかという話について言えば、大臣、よろしいですか、厳罰化ではないんだということをずっと言っておられるけれども、少年院の方がいいんだというような話をされている人もいるけれども、児童自立支援施設を所管している厚生労働省では、自分たちのところでしっかりできる、そういう体制もそろっているというわけなんですよね。

 私は、本当に、十四歳未満の子供について言えば、やはりこういうしっかりとした、疑似家族的なやり方でもできる、それから専門家としての対応もできる、そういう施設でしっかりとやっていくべきだというふうに思いますよ。大臣、いかがですか。

長勢国務大臣 どちらがいいかとかということではなくて、どういう方にどちらが向いておるかというか、適切な処遇をする幅を広げるということが今回の目的でございまして、今回の少年法によって自立支援施設に入所させることを否定しているものでは全くございません。少年院も、また自立支援施設におきましても、それぞれのスタッフをそろえていろいろな工夫をして、それぞれの役割を果たすように大変な意気込みでやっておられるというふうに私は思っておりますし、それを、家庭裁判所においてしかるべく適切な処遇を御判断いただけるものと思っております。

平岡委員 全く答弁になっていないですね。

 そもそも、これは何のためにこういうことをするのかということを考えたときに、皆さん方の説明とやろうとしていることが矛盾しているんですよ。皆さん方も、少年の育て直しということを第一に考えるんだということを口では言うけれども、実は少年院送りというような形で処罰する。先ほどの、安倍総理が、被害者の感情を考えたらこれぐらいの厳罰化は当然じゃないですかというようなことを言っているのが政府の本音ですよ。だから、私は、それは本音とやっていることが違いますねということを改めて指摘したいと思います。(発言する者あり)

七条委員長 お静かにお願いいたします。

平岡委員 そこで、きょうはせっかくいろいろな人に来ていただいておりますから、少年院をそういう形でも使うんだという話で、先ほど来から予算の話も出ておりますけれども、財務省にお聞かせいただきます。

 今回、少年院法の改正によって、少年院がいろいろな子供たちの面倒を見なければいけない、それに伴っていろいろなことをやらなければいけない、こうなったときに、一体、法務省からは、幾ら予算がかかるというふうに要求を受けていますか。

田中副大臣 お答えをいたしたいと思います。

 これからの、二十年度の法務省の少年関係の予算については、今後、法務省から具体的な要望等、概算要求があるだろうと思いますし、また十九年度の、先ほど真砂主計局次長からも答弁いたしましたように、ことし予算を組み、今執行をしていくわけでございまして、こういう内容も精査をして、やはり、それぞれ現場の状況も十分踏まえて、それらを勘案して、財務省としてはしっかりとした予算を組んでいきたい、このように思っております。

 以上でございます。

平岡委員 少年院よりは、児童自立支援施設とか児童相談所の方もしっかりと見ていただきたいと思うんです。

 今、副大臣の答弁で、これからと言っていましたけれども、この少年法の施行はいつですか。

小津政府参考人 法案の条文に書かれていることでございますので、私から御答弁申し上げますが、公布の日から六カ月以内で政令で定める日でございます。

平岡委員 今刑事局長が言いましたように、これは公布されて六カ月以内に施行されるんですよ。施行されたら、いろいろ動き始めるんですよね。そのときに、どうやってやるんですか。これから精査しますというようなことで間に合うんですか。それはおかしいじゃないですか。副大臣は、この少年法がいつから施行されるかということを十分に知った上で答弁されたんですか。どうですか。

田中副大臣 平岡委員も、そういう予算関係では大変、前歴で御苦労され、プロフェッショナルでいらっしゃるからおわかりのとおりでございまして、政治的に言えば、水面下でこれはいろいろと、各担当は真剣な取り組みをしておるわけでございますけれども、まさしくその日がやってきたときに、何も手当てができなかった、準備が不十分だった、そういうことになってはいけませんので……(発言する者あり)だから、そういうことのないようにきちっと備えていく。そして、法務省の方の概算要求等、また細かないろいろなものをこれから詰めていくことになりますので、そういう答弁をさせていただきました。

 私の立場からは、先ほどの答弁で、私自身も、まあいいのではないか、このように思っております。

平岡委員 いろいろ、新たに問題提起されて、後からつじつまを合わせながら答弁をしている、そういうような気がしてしようがありません。

 とりあえず、ちょっと時間がないので次の質問に行きます。

 我々、いろいろ見に行ったんですよね。そのとき、少年問題についての現場の状況というのはどうなのかなというふうに見ました。児童相談所がやはりちょっと大変だなという気がしたんですよね。施設も非常に不十分でありますし、それから人も非常に忙しそうである。特に、虐待問題とかをやっておられたりして、虐待を受けた子供と非行の子供たちが一緒になって一時保護扱いされているとか、そういうような状況を見ると、児童相談所は本当にこのままでいいのかなというふうに思うんですけれども、これは厚生労働政務官、児童相談所についてどういう認識を持っておられますか。

松野大臣政務官 一時保護施設についての御指摘かと思いますが、(平岡委員「児童相談所」と呼ぶ)児童相談所における。大都市部を中心に、保護定員を超過し、虐待を受けた児童と非行児童が同室となる、いわゆる混合処遇の問題等が指摘をされているところであります。

 平成十八年度の補正予算におきまして、一時保護された子供の安全体制の強化を図るために、警備施設の整備や間取りの改善などの環境改善を実施しております。

 特に、定員超過の状況にあります一時保護施設を有する自治体については、本年六月までに緊急整備計画の策定を求めておりまして、一時保護施設の定員不足状態を解消するなどの措置を講じ、こうした指摘にも対応できるように必要な改善が行われているところであります。

平岡委員 必要な改善が行われているというふうに言われちゃうとちょっとあれですけれども、必要な改善をしようとしているということだろうと思うんです。

 そこで、ちょっとお聞きしますけれども、国の公務員についても厳しい定員問題、削減関係があります。児童相談所は、基本的には、設置主体というのは都道府県とか指定都市であるといったようなところでありますから、地方公共団体であるわけですね。そういう都道府県、指定都市が設置する組織における定員というものに対しては、国としてはどういうかかわりがあって、どういうふうな方針を持っておられるのか。この点について、総務政務官、お願いします。

河合大臣政務官 お答えします。

 国立の自立支援施設もあるのでございますが、公立のものが五十四、私立のものが二カ所、こういうことになっていまして、それぞれ……(平岡委員「あの、済みません、児童相談所について私、質問しているんですけれども」と呼ぶ)わかりました。

 児童相談所の交付税措置をどうするか。財政措置をどうするかということにつきましては……(平岡委員「定員の話」と呼ぶ)定員の話。それは、人口百七十万人……(発言する者あり)いやいや、ちょっと待ってください。定員の話は、我々のところは国立の定員管理の話は所管でございますが、都道府県のものにつきましてはやはり都道府県で、どういう人数、どういう施設で、こういうことになっていますので、大体何万人に一人、そういう計算できっちりと交付税措置をしてございます。(発言する者あり)

平岡委員 私が聞いたことをちゃんと聞いてほしいと思うんですけれども、これは地方公共団体が設置しているものですからそちらの方で定員とかを考えるということになるんでしょうけれども、総務省としてはこの問題についてどういうお考え方を持っておられますかということを聞いたんですね。

 もし追加があるのなら、どうぞ。

河合大臣政務官 これはやはり、子供たちのそういう面での人数がふえたり、状況に応じて計算をしていますが、大体、県の人口百七十万人に二十八人、そういう計算でしていまして、たまたま厚労省は、六万一千人に一人という計算になるかと思います。

 これで全体、ことしもふえていまして……(平岡委員「結構でございます」と呼ぶ)よろしいですか。十分なことになっています。

平岡委員 よその委員会に急に呼ばれて、いろいろ答弁させられて、職権で立てる方がおられるのでこういうことになっておりますけれども。

 それで……(発言する者あり)ちょっと静かにしてくださいね。質問が聞こえなかったら、また答える人が困りますから。私がしゃべっているときは静かにしてください。向こうがやっているときは……(発言する者あり)質問が聞こえないもの。

 それで、今回、触法少年について言えば強制調査が行われるような形になったわけでありますけれども、改正法案にある警察の調査権限と現在家庭裁判所に認められている押収、捜索、検証、鑑定という権限がありますけれども、これは一体どういう関係に立つのか、どういう関係で運用されるのかについて、家庭裁判所を所管する最高裁と、それから警察が調査を行うわけですから警察、それぞれからお話を伺わせていただきたいと思います。

二本松最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今御指摘のとおり、家庭裁判所の方にはそういう捜索、差し押さえ等の権限がございますが、これは今改正法で問題になっております警察の捜索、差し押さえ権限とは全く別のものと考えております。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 警察としては、今回、調査権限が明確化されましたので、調査の上で警察が必要と判断すれば令状をとって捜索、差し押さえを行う。

 また、家庭裁判所は、調査のために、これが家庭裁判所の御判断で必要であれば、捜索、差し押さえ等を行うという形でございますけれども、家庭裁判所がそういった捜索を行う場合に警察官も必要な援助を行うということになっております。

平岡委員 私は、多分、これは触法少年じゃなくて犯罪少年の場合でも似たようなケースがあるのかなとは思うんですよね。

 だけれども、ちょっとよくわからないんですけれども、家庭裁判所からも何か強制調査みたいなことが行われ、また警察の方からも強制調査みたいなことが行われて、一体どうなっちゃっているのというふうにも思うんですよね。

 だから、その辺の調整規定みたいなものというか、当事者がどういう関係でやるのかということについて、やはりしっかりとした調整規定を置いておかないと、少年の立場から見れば、どっちからもあっちからもこっちからも強制調査を受けるというようなことになるのも非常に変だと思います。

 例えば、警察の方は、この少年法の新しくできた規定に基づいて押収したものを、では、家庭裁判所はどういう関係に立ってくるのかとか、家庭裁判所の方ではそれを警察にまたとりに行くのか、私は非常におかしいなという気がしてしようがないんですよね。

 何か、刑事局長、頭をひねっているので、刑事局長には答えていただかなくて、法務大臣、どうですか。私が持っている疑問、共通の疑問はお持ちになりませんか。

七条委員長 もう時間が過ぎておりますので、簡単明瞭に。

長勢国務大臣 それぞれ別々のものだと思いますが、家裁に送致をする事前の段階では、家裁が調査に入るということはまずないわけでしょうから、その順番の話だろうと思うんです。

 その関係をどうするかということについては、ちょっと、法的に整備をすべきかどうか、私は今すぐ申し上げかねますが、当然、警察の提出したいろいろな資料を家裁の方で御審査されて、その上でさらに必要がある場合にはなさるんだろうと思いますし、そこは十分連携の中で進められることだろうと思います。それはきちんとすることが必要であるということは、そのとおりだろうと思います。

平岡委員 今、非常に重要なことをちょっと言われたのです。私は、聞こうと思っていたんですよね。

 家裁の方に送致された後は、触法少年については、警察の今回認められた強制調査は行われないというふうに、今、大臣は理解されて、答弁されましたけれども、そういうことでいいんですね。

七条委員長 もう時間が過ぎておりますが、もうこれを最後の答弁とさせていただきます。

長勢国務大臣 以前のここの委員会でもそういう御質問があったかと思います。正確な答弁は、そのときの議事録にあると思いますが、基本は今申し上げたとおりでございますけれども、補充的に警察が調査をすることはないということはないというふうに思っております。

平岡委員 事ほどさように、大臣もよく理解できないような話なんですよ、今回の法改正は。やはり、もうちょっとしっかりと、私は捜査のところを本当はきょうも時間をとりたかったのでございますけれども、これだけたくさんの方に来ていただいたので、ちょっと時間をとり過ぎてしまいまして、大変申しわけなかったと思いますけれども、やはりこれは捜査の話をもうちょっとしっかりとやるべきだ、いっぱい質問しなきゃいけないこともあります。

 そういう意味では、今回、本当に拙速に強行採決したことに対して厳重に抗議を申し上げ、このことについてしっかりとしたけじめをつけなければいけないということを自分に今申し聞かせているところでございますので、ぜひ、またよろしくお願い申し上げたいと思います。

七条委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時七分開議

七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 ただいま、民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合所属委員の御出席が得られません。

 事務局をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

七条委員長 速記を起こしてください。

 民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、更生保護法案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。長勢法務大臣。

    ―――――――――――――

 更生保護法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

長勢国務大臣 更生保護法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 更生保護は、犯罪をした者及び非行のある少年を実社会の中で適切に処遇することにより、その再犯を防ぎ、非行をなくし、これらの者が自立し改善更生することを助け、もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とするものですが、近時、社会及び犯罪の情勢が変化する中で、更生保護はその目的を十分に果たせていないとの指摘がされております。また、更生保護に係る法体系について、国民にわかりやすい制度となるよう関係法律の整備、統合に努めるべきとの指摘がされております。

 そこで、この法律案は、更生保護の基本的な事項に関し、関係法律の統合及び所要の法整備を行い、更生保護の機能を充実強化しようとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、犯罪者予防更生法及び執行猶予者保護観察法の整理統合であります。

 更生保護に関する基本的な法律は、昭和二十四年に制定された犯罪者予防更生法及び昭和二十九年に制定された執行猶予者保護観察法に分かれていますが、両法律の内容を整理統合して新たな法律とするとともに、更生保護の目的を明確化します。

 第二は、保護観察における遵守事項の整理及び充実であります。

 遵守事項は、現行法と同じく、これに違反したときに仮釈放の取り消し等の措置をとることのできる規範であって、保護観察対象者に対する指導監督の中核となるものとして位置づけます。

 そのうち、すべての保護観察対象者が遵守すべき一般遵守事項については、保護観察官または保護司の指導監督を誠実に受けること等の保護観察対象者が当然守るべき事項でありながら現行法では明記されていないものを加える一方、現行法に規定されている事項のうち、必ずしもすべての保護観察対象者に義務づける必要のないものを除いております。

 また、保護観察対象者ごとに定める特別遵守事項については、特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇プログラムを受けること等の一定の事項について、特に必要と認められる範囲内で具体的に定めることとするとともに、保護観察を一層弾力的なものとするため、必要に応じて変更することができるものとし、また、必要がなくなったときは取り消すものとしております。

 第三は、社会復帰のための環境調整の充実であります。

 受刑者等の円滑な社会復帰を図るため、その者の住居、就業先その他の生活環境の調整をより能動的かつ積極的に行うものとしております。

 第四は、犯罪被害者等に関する制度の導入であります。

 仮釈放または仮退院の審理において犯罪被害者等から意見等を聴取する制度及び犯罪被害者等の心情等を保護観察対象者に伝える制度を導入することとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

七条委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

七条委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

七条委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長小津博司君、法務省矯正局長梶木壽君、法務省保護局長藤田昇三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。

大口委員 平成十七年二月に、愛知県安城市で、仮出所直後の保護観察中の男がスーパーマーケットで乳児らを殺傷する事件が起きたほか、同年五月には、保護観察つき執行猶予の有罪判決を受け、保護観察中に所在不明になった男が少女を監禁したとして逮捕された事件がありました。

 これらの保護観察中の者による凶悪犯罪が短期間に連続して発生したことから、保護観察制度が機能不全に陥りかけており、その目的を十分に果たせていないのではないか、こういう国民の批判が高まったことは記憶に新しいところでございます。本法律案の目的、第一条に新たに再犯の防止が明記されたのは、このような事件が発生した社会的な状況を受けてのことと理解しております。

 本法律案の目的規定に掲げられている再犯の防止と自立、改善更生のための指導、援助との関係については、目的である自立、改善更生を通じて、結果として再犯を防止するのか、再犯防止と自立、改善更生をともに目的とするものか、二つの考え方があると思いますが、法務大臣の所見をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 更生保護法は、今提案理由で御説明申し上げましたように、社会内処遇において、犯罪を犯した方あるいは非行の少年等が社会の一員として自立し、改善更生することを究極の目的とするものでございます。

 当然、こういう改善更生がされれば、再犯また再非行ということにはならないということになりますし、また、再犯や再非行を犯すというようなことになれば、当然改善更生というものが行われていないということになるわけでございますので、今先生おっしゃったようなことがあったということ、またそういう中で従来の保護観察制度が十分機能しておったかどうかという反省に立って、この再犯防止と改善更生というものは一体として理解をされ、また、そういう立場で我々も努力をしていかなきゃならない、国民の皆さんにも理解をしていただきたいという趣旨でこの規定を設けることといたしたものでございます。

大口委員 更生保護の目的に再犯を防ぐことが明記されたことにより、今後、再犯防止の実効性が上がるのではないか、こう考えるわけでありますが、今後、この目的規定を受けて、社会内処遇をどのような方針で行っていくのか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 今御説明申し上げましたように、法案の第一条は、再犯や再非行を防ぐことと改善更生を助けることが一体のものとして行われねばならないということを法律上明示いたしたわけでございます。したがって、社会内処遇の基本的な方針というものは変わるわけではございませんけれども、社会内処遇の中心的な担い手である保護観察官の社会の安全、安心に対する責任意識というものが、そういう意味で向上が図られるということになりますし、また、保護観察官と保護司の役割分担に関する規定の整備、遵守事項の整理あるいは充実ということとも相まって更生保護の機能が充実強化される、そして再犯の防止という側面から見てもその機能が高まるということになると考えておりますし、そのように努力をしてまいりたいと考えております。

大口委員 有識者会議の報告書、「更生保護制度改革の提言 安全・安心の国づくり、地域づくりを目指して」の中で指摘をされていますように、更生保護は国の責任において実施すべきである、そして更生保護は省庁間の壁を越えて国家として取り組むべきことが重要かつ基本的な課題である、こう認識しております。

 本法律案の第二条一項で、更生保護に対する国の責務について規定しているところであります。更生保護法案第二条は、国の責務として、民間等の協力や地方公共団体の協力を規定していますが、社会内処遇を充実させるため、厚生労働省、地方公共団体、民間団体との連携強化を図ることが必要だと考えますが、どのような施策を行っていくのか。そして、更生保護は余り国民に理解されていないのではないかと思われますが、国民の理解を深めていくためにはどのような方策をお考えか、この二問について法務大臣の御所見をお伺いします。

長勢国務大臣 社会内処遇を充実させていくことが必要なわけで、そのことが国の責務ということになるわけでございますが、そのためには、高齢等の理由で福祉の措置が必要な保護観察対象者に対しても迅速に福祉の措置が受けられるようにすることや、あるいはアルコールの問題を抱える対象者もおるわけで、こういう者に対しては円滑な医療への橋渡しを行うということが必要であります。そういうことで、日ごろから地方公共団体との連携を密にするということが不可欠であると考えております。

 また、更生保護施設入所者の自立を援助するためには、今、更生保護女性会や保護観察対象者を積極的に雇用してくれる協力雇用主など、更生保護ボランティアを初め地域の民間の人々と連携協力を進めるということも大変大事な、必要なことであると考えております。

 法務省としても、保護観察所長が先頭に立って、地方公共団体に足を運んで、福祉や医療の方々も含めて更生保護というものの重要性を説明し、連携強化、協力を依頼しておる、また、地域の民間団体に対しましても、一層具体的な連携について理解と協力が得られるように努力をいたしております。

 更生保護が余り知られていないのではないかという御指摘は、そのとおりだということを我々も感じております。私自身も、保護司というのはよく聞いておりましたけれども、保護観察所というのは、前に法務委員会で関与するようになるまでは余り知らなかったぐらいでございまして、まことに申しわけないと思っておりますが、今まで社会を明るくする運動などを通じて更生保護の考え方などを広報してまいったわけでございますが、さらに本年度からは、全国の保護観察所に広報担当者を指名して、保護観察所長が先頭に立って、この広報担当者と一緒に地域の福祉事務所等の関係機関の研修会、町内会、商工会議所等の諸団体、学校等に出かけて説明をする、講演の機会を持つということを進めていく、継続的な、計画的な広報活動に取り組むよう指示をしたところでございます。

 今後とも、ぜひ国民の皆さんの理解をいただいて、更生保護、再犯防止が進むように努力をしてまいりたいと考えております。

大口委員 世界一安全な国づくりを目指しているわけですので、その世界一安全な国づくりのためにこの更生保護がいかに大事かということを大臣みずからやはりまた大いにアピールをしていただきたいと思います。

 本法律案で、すべての保護観察対象者が遵守すべき一般遵守事項と保護観察対象者ごとに定められる特別遵守事項とに分けて、その内容について細かく規定をしております。第五十条、五十一条でございます。

 この第五十条、五十一条二項による遵守事項の法的規範としての明確化に関連して、一般遵守事項と特別遵守事項に分けてその内容を細かく規定している理由及び一般遵守事項として画一的に遵守しなければならないものとした趣旨をお伺いしたいとともに、法律案では、保護観察を充実強化するため、すべての保護観察対象者が遵守すべき一般遵守事項として、保護観察実施者に対する面接及び生活の実態を示す事実の申告等を義務づけていますが、このような規定が設けられた経緯、また設けられることによって実際どのような効果が期待できるのか、お伺いしたいと思います。

藤田政府参考人 御指摘のように、保護観察対象者が守るべき遵守事項につきまして、現行法に比べて更生保護法案はかなり詳細に規定を設けております。これは、保護観察対象者の側から見ますと、どんな事項を自分は遵守しなきゃいけないのかということが明確になる、どんな行動をとるか、またはどんな行動をとってはいけないかということを自分で判断することが容易になるということで、そのことが改善更生に向けた意欲を一層喚起することにつながるだろうというふうに考えております。

 他方で、保護観察を実施する保護観察官等の側から見ますと、これは、保護観察の指導監督のいわば基準のようなものでございますので、これに違反するとどんな不良措置をとるかということも自分の側でも明確に判断できるということになろうかと思います。

 また、対象者ごとに特別遵守事項をきちんと定めるということにいたしますと、それに違反した場合の不良措置がとられるということが外にも明らかになりますので、いわば定め得る事項の範囲を限定して、余り過酷にわたらないというようなことも担保できるというふうに考えるところでございます。

 一般遵守事項と特別遵守事項は現在でも分かれておるわけでございますけれども、今回もそれを基本的には踏襲いたしております。一般遵守事項というのは、やはりすべての保護観察対象者が遵守しなきゃならない共通のものというのはどうしてもあるわけでございますので、これを一律に法律で規定するというふうにいたしたところでございます。

 この一般遵守事項において、今御指摘になりました、呼び出しに応ずる、あるいは訪問に応じて面接を受けることとか、あるいは保護観察官や保護司に生活の実態を示す事実を申告し、あるいはこれに関する資料を提示するということを新たに入れておるところでございますけれども、これは、保護観察官や保護司が、対象者の感情とか、あるいは生活態度、心理的な葛藤、欲求というようないろいろな状態を知って、十分に行状を把握した上で、改善更生を図るための必要な指導を行うということが必要でございます。そのためには、対象者としっかり面接をし、実態を示す事実についての十分な情報を得ることが不可欠であるというふうに考えたところでございます。

 これらにつきましては、現行法におきましても、対象者が当然守るべき事項と考えられてきたわけでございますけれども、やはり明文で一般遵守事項として明記することが、保護観察の実効性を高めるゆえんであろうと考えた次第でございます。

大口委員 次に、特別遵守事項について個別にお伺いしてまいりたいと思います。

 第五十一条二項一号で、「犯罪性のある者との交際、いかがわしい場所への出入り、遊興による浪費、過度の飲酒その他の犯罪又は非行に結び付くおそれのある特定の行動をしてはならないこと。」こう定めているわけですね。しかしながら、この規定の内容は抽象的であり、主観が入ってくるのではないか、こう思いますので、実際の運用上はどのように対象となる行為を特定していくのか、見解をお伺いしたいと思います。

藤田政府参考人 今回の特別遵守事項につきましては、今までは、法律に一切、特別遵守事項の類型なんかは示されておりませんでしたけれども、今回は、きちんと明確にしようということで、特別遵守事項の類型を細かく法律に書いたわけでございます。

 しかし、やはり幾ら書きましても、御指摘のように、抽象的な規定にどうしてもとどまらざるを得ないというふうに思います。そこで、実際には、この類型をもとにいたしまして、個々の対象者ごとに、わかりやすい、具体的な特別遵守事項を定めて、本人に守らせるようにしたいと思っております。

 例えば、今御指摘の、犯罪性のある者との交際をしてはいけないということにつきましては、例えば暴力団と関係のある仮釈放者がおりましたならば、○○組暴力団の構成員、準構成員とつき合わないというようなことでありますとか、あるいは、保護観察の原因となったものに共犯がいる事案でありますと、今回刑罰を受けることとなった事件の共犯者と接触をしたり、連絡をとり合わないことというように、細かく定めるということになろうかと思います。

 いかがわしい場所への出入りでございますと、例えば暴力団に関係のある仮釈放者であれば、○○組の暴力団事務所に出入りしないことというふうに定める。遊興による浪費でございますと、例えば、お金に困った、それは遊興が原因だということになりまして泥棒をしたような者につきましては、例えば、パチンコ、競馬、競艇、競輪をしないことというように定めるということになろうかと思います。

大口委員 無職者と有職者で再犯率が大きく異なっているというデータが出ています。平成十七年、無職者は三九・六%、有職者は七・三%ということからも明らかなように、対象者の改善更生を図り、再犯を防止するためには、対象者を定職につかせることが重要である、こう考えます。第五十一条第二項第二号において、特別遵守事項として「労働に従事すること、」が規定されており、その重要性がうかがえるわけでございます。

 この点、就労支援対策の一つとして、協力雇用主という制度があると伺っています。大臣が冒頭でお述べになられましたこの協力雇用主の制度について、現在どのような企業が雇用主になっているのか。それから、保護観察対象者の社会内処遇の一層の充実を図るためにということで、有識者会議が、民間経済団体との連携を強化して、現在六千事業にとどまっている協力雇用主を少なくとも三倍程度に増加させるべき、こういう提言もあるわけでありますが、そういう点で、協力雇用主制度の一層の推進を図るためにどのように対応するのか、法務大臣に御所見をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

長勢国務大臣 改善更生を図るためには職につかせるということが最も重要であるということは、御指摘のとおりでございます。

 今、協力雇用主についてのお尋ねでございますが、その前に、就職をさせるということのために、我々も大変重要だと思っておりまして、昨年四月から、厚生労働省と連携をした総合的就労支援対策というものを開始いたしまして、無職の保護観察対象者を何とかして職につかせたい、そのための身元保証制度や試行雇用奨励金制度を設けまして、それを活用しながら施策を実施しておるところでございまして、それなりに成果も上がっておるというふうに考えております。

 今御質問の協力雇用主でございますが、刑務所出所者等の雇用の受け皿を確保するために、こういう方々にお願いをしておるわけでございます。有識者会議では、これを三倍にふやすべきであるという御提言もいただいておるところでございまして、中央、地方の事業主団体、企業に対して積極的な働きかけを今行っておるところであります。

 同時に、協力雇用主にはなっていただいておりますけれども現実に雇用に至っていないという方もおられますので、実質的に、この方々を中心にして、そこで雇用してもらえるように、さらにお願いをするというか、働きかけを強化していきたいと思っております。

大口委員 次に、五十一条二項四号でございますけれども、今回、特定の犯罪的傾向を改善するため、専門的処遇プログラム、こういうものを定め、受講するということも特別遵守事項に入っていますね。「医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識に基づく」、そういう処遇ということでございますが、それはどのような内容のものなのかが一点。

 そして、薬物事犯に対しては、平成十六年度から覚せい剤事犯の仮釈放者に対して任意で実施されている簡易尿検査を専門的処遇プログラムの中に位置づけて、尿検査の実施を義務づけていく、そういう方針をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。

藤田政府参考人 今御指摘の、法案の五十一条二項四号に規定します「専門的知識に基づく特定の犯罪的傾向を改善するための体系化された手順による処遇」というものは、現在あるものは一つでございまして、これは、性犯罪をした仮釈放者及び保護観察つき執行猶予者、この二種類の対象者に対しまして行っております性犯罪者処遇プログラムというものでございます。

 これは、御指摘のとおり、心理学の認知行動療法という理論を基礎に、犯罪者自身に自分が性犯罪を起こす危険性の高い状況を自覚させて具体的な対策を考えさせたり、あるいは被害者の感情を理解させることによって性犯罪の再犯を防止しようというプログラムでございます。当面はこの一つだけでございますが、今後、もし体系化されたプログラムが他にできれば、それも考えられるところではございます。

 簡易尿検査でございますけれども、これは、現在も任意で、本人の同意を得て、覚せい剤の事犯者に対して行っておりまして、半分ぐらいの者が応じております。これは今後も続けていきたいと思うのでございますけれども、これを特別遵守事項にするかどうかにつきましては、尿検査を観察所に来て必ず定期的に受けろということだけを特別遵守事項にいたしますと、何か強制的に、保護観察の目的以外の、例えば捜査とかそういうことでやっているんじゃないかというふうに受けとめられるということもあるかと思います。そういうふうに受けとめられると、結局、保護観察対象者の改善更生にはやはりよくないというふうに思いますので、単体で特別遵守事項にするということは考えておりません。

 ただ、薬物犯罪者に対して、今後、先ほどの体系的なプログラムというものができて、その一環としてこの尿検査が位置づけられるというような形になりましたならば、そのときにはそれもプログラムとして受講義務があるということになろうかと思います。

大口委員 本法律案は、この遵守事項を守らない者にはペナルティーとして仮釈放の取り消しがとられるわけですね。仮釈放の取り消し手続においては、告知聴聞の手続を設けなくてもよい、こういうふうになっているわけですね。少年に対する仮退院を取り消す措置の場合については、家庭裁判所の決定によるわけでございますけれども、その審理に当たっては、医学、心理学、教育学等の専門家及び本人を収容中の少年院の職員の意見を聞かなければならない旨規定されているわけですね。仮釈放を取り消す措置については、このような規定はなく、事後的に不服審査が認められているにすぎないわけです。

 したがって、仮釈放の取り消しについて、事後的に不服審査を保障するだけでなくて、取り消しの措置をとる前に保護観察対象者に対して告知聴聞の機会を保障して、遵守事項違反の有無、その理由、情状などについて意見を述べ、資料などを提出する機会を保障するということも必要ではないか、こう考えるわけでありますが、御見解をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 仮釈放の取り消しの処分は、裁判によって刑罰として刑事施設への拘禁を命ぜられている者について、保護観察を実施して改善を図るという行政目的により、刑の執行の形態を変容させて緩和をしていた状態であるわけでありますが、それを本来の裁判どおりの刑の執行態様に戻すという措置であります。したがって、対象者本人にとって不利益な処分ではありますけれども、新たな不利益処分を科すというものではないわけでありまして、本人の言い分を聞く機会を設けてからでなければそうした処分をとり得ないというわけではないというふうに考えております。

 そういうことで、今御指摘のように、特別の手続を、告知聴聞という手続を明記していないわけでございますが、この点については、現行の犯罪者予防更生法でも規定されておる手続を変えるわけではないわけであります。

 そうはいいながら、何もなしにとんとやるわけではございませんで、実務上は、仮釈放取り消しの申請を行う保護観察所において、例外なく、観察官が対象者に十分その状況を聴取して、調査をして、その上で判断をするということでございますので、従来の犯罪者予防更生法で規定されている手続を変えないということにいたしておるわけであります。

大口委員 また、今回、犯罪被害者等に関する制度も導入をされました。本法律案に、被害者等から意見等を聴取する制度が導入されたわけですね、仮釈放の審理という点において。

 この場合、被害者から意見を聴取する際に、被害者の感情が変化することを踏まえて、被害者等の希望、意向に基づき、例えば反省や償いの様子といった、加害者、受刑者等の刑事裁判終了後の動向等に関する情報を被害者に伝達した上で意見を聴取する、こういった手続を検討する必要性について、有識者会議の報告書でも提言があるわけですが、その運用について大臣にお伺いしたいことが一点。

 それともう一つ、本法律案で、悔悟の情を深める指導監督を行うため、被害者等の心情を保護観察中の加害者に伝達する制度、これを導入しています。六十五条です。この規定にある心情等の伝達について、被害者等から申し出があった場合、すべて一律に伝達する扱いなのか、それとも伝達しない場合もあるのか、伝達しない場合があるとするならば、どのような場合が想定されるのか、運用のあり方についてお伺いしたいと思います。さらに、伝達しない扱いとした場合に、被害者等にどのような説明をするのかについても法務大臣にお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 犯罪被害者等基本計画では、仮釈放審理において被害者等が意見を述べる制度、保護観察中の加害者に被害者等の心情等を伝達する制度のほか、判決確定後の加害者の情報を被害者等に提供することについて検討し、施策を実施するということとされております。

 今回の法案では、このうちの、仮釈放等審理において被害者等が意見を陳述する制度と、保護観察中の加害者に対して被害者等の心情を伝達する制度を法案に盛り込んだところでございます。

 判決確定後の加害者の情報を被害者等に提供することにつきましては、現在、具体的に、いかなる情報を提供できるのかということを別途検討いたしております。その検討の中で、仮釈放審理における意見聴取制度及び保護観察対象者に対する被害者等の心情伝達制度で意見や心情を述べる被害者等に対しても、加害者に関する有用な情報が提供できるように検討していきたい、このように考えております。

 次に、保護観察対象者に対し被害者等の心情等を伝達する制度について、申し出があったらすべてこれを実施するのかという御質問でございますが、これは、申し出があればすべて実施するというものではありません。

 例えば、当該被害に係る事件が暴力団同士の抗争事件に絡んでいるものでは、被害者とされている者が実質的には被害者と言えないというような場合もありますし、被害者等の心情等を伝達することによって保護観察対象者が被害者等を逆恨みするおそれがあるということもあり得ますので、そういう場合には、被害者等から心情等を聴取せず、あるいは聴取した心情等を伝達しないということも考えられると思います。

 そういうことでございますので、伝達しないことがあるわけでございますが、そのような場合には、その旨を被害者等に説明をするということにしたいと考えております。

大口委員 今回、六十一条で、「保護観察における指導監督及び補導援護は、保護観察対象者の特性、とるべき措置の内容その他の事情を勘案し、保護観察官又は保護司をして行わせるものとする。」と役割分担を書いています。

 保護司への過度の依存をやはり解消しなければいけない、それが六十一条一項の趣旨であると思いますが、これについて大臣のお考えをお伺いしたいということと、全国で約九百の保護区があると承知していますが、全国の保護観察官のうち、観察実務を実際に担当している保護観察官の数は何名いるか、約九百ある保護区に最低正副二人ずつ程度の保護観察官を置くべきであり、そのために保護観察官の抜本的な増員の必要がある、こう考えておりますが、どのような見解をお持ちでしょうか。また、保護観察官の人的体制の強化に関して今後どのように取り組んでいくか、法務大臣の見解をお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 保護観察官が保護司に過度に依存するということがあってはなりませんし、また、役割分担を明確化すべきではないかという指摘がされておるところでございます。

 六十一条一項の改正は、こうした御指摘を踏まえまして、現行法では単に「保護観察官又は保護司をして行わせる」としか規定していないわけでありますが、「保護観察における指導監督及び補導援護は、保護観察対象者の特性、とるべき措置の内容その他の事情を勘案し、保護観察官又は保護司をして行わせるものとする。」ということにしております。

 といっても、まだ少しわかりにくいじゃないかという御意見もあるわけでございますが、なかなか、相手の状況あるいは観察官、保護司の能力その他の事情もありますので、余り明確に分けるのも必ずしも得策ではないということも考えて、こうしたわけでありますが、この法律を設けたことによりまして、例えば特異重大事犯や暴力的性向の強い者など、処遇上、特別の配慮を要する事案は、保護司さん任せじゃなくて、官がみずから行うのがいいだろう、保護観察官が直接担当するということも留意をしながら考えていかなきゃならないということになりますし、また、保護観察官が、より適切な場合、地域に密着して、相当日夜をかけてやれるような場合は、保護司の方々にお願いした方がいいだろうというようなこと等々を勘案しながら、双方の特性に応じた適切な役割分担というものを今まで以上に法律上も要請をされるということになると思いますので、そういう運用に努めていきたいと思っております。

 とはいっても、保護観察官の数が少ないじゃないか、おっしゃるとおりでございまして、今までもこの増員に努めております。御案内のとおりの定員事情でございますので、十分ではないわけでございますが、九百の保護区について、事件数等に応じて複数にしたりしておるわけでありますが、本年度から新たに代理官という制度を設けまして、保護区が、観察官がいなくても、出張中のような場合、問題が起きないというか、ちゃんとした対応ができるような体制をつくるとか、万全を期していきたいと思っておるわけでございます。

 増員と同時に、やはり、先ほども御説明いたしましたように、今まで観察官が直接保護に当たるというようなことが比較的少なかったり、また指導監督が十分ではないというような御指摘もありますので、専門官制を導入するとか、あるいは研修制度を充実するとか、その質の向上にも一生懸命取り組んでいきたいと考えております。

大口委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。

上川委員長代理 次に、赤池誠章君。

赤池委員 自由民主党の赤池誠章でございます。

 きょうは、更生保護法について質問をさせていただきたいと思います。

 小泉内閣から安倍内閣になりまして、世界一安全な国日本の復活、特に、統計的な数字だけではなくて、国民にとって、体感治安の向上というのが国政の重要課題ということではないかと思います。そういう面では、法務行政の役割はますます大きいというふうに感じております。

 そういう中で、今回のテーマであります更生保護ということは、犯罪や非行を摘発して、そして刑罰、矯正を行って保護処分を実施するという刑事司法制度の最終段階を担うということで、非常に重要な分野ではないかと思います。

 再犯を防止して社会を保護するという重要な分野にもかかわらず、残念ながら、今まで既に大臣の方からもお話がございましたが、なかなか国民の理解が十分ではなかったということで、そういう面では、国民の代表であります私ども政治家にとっても、認識が足りない面があったのかな、法制そして組織体制、人事面、予算面、そういう面で非常に十分ではなかった、そういう反省の上に立って質問をしたいと思います。

 大口先生からもありました、平成十七年の一連の重大事件というのは、調べましたところ、既に平成十三年には司法制度改革審議会から意見書が出ていたり、平成十五年にも、犯罪に強い社会の実現のための行動計画にも更生保護の充実強化というのがうたわれていたにもかかわらずなかなか着手できなかった、そんな中で、残念ながら、殺人やいわゆる監禁という凶悪な事件が起きてしまったということではなかったかなと思います。

 その中で、有識者会議が組織されて、報告書が昨年出てきたわけなんですけれども、この報告書を読ませていただきましたが、問題の所在、改革の方向性、提言としての当面の課題、中長期的課題ということで、非常にまとまった形で、勉強にもなりましたし、また非常に法務行政にとっては厳しい指摘があったなというふうにも感じております。重大事件から約二年、報告書の指摘どおり、改革は待ったなしという状況の中で、今回の更生保護法の法案ということではなかったのかなというふうに思います。

 更生保護法というのは、既に大臣の提案理由にもありましたように、昭和二十年代の犯罪者予防更生法と執行猶予者保護観察法という二つの法律を一つに統合するということでできてきているわけでございますが、今回、このような経緯、そして、この法案を統合して改めて更生保護法案を提案する、更生保護の機能の充実強化をする経緯と背景について、大臣から見解をお伺いしたいと思います。

    〔上川委員長代理退席、委員長着席〕

長勢国務大臣 我が国の更生保護制度は、常勤の国家公務員である保護観察官と民間ボランティアで無給の非常勤国家公務員である保護司あるいは民間の更生保護施設等が協働して行う官民協働体制をとっていることが最大の特徴となっております。この成果は、昭和二十四年の犯罪者予防更生法施行以来、民間の方々の多大な御協力をいただきながら相応の成果を上げてきたと思っております。

 しかし、平成十六年から十七年にかけて、お話しのように、保護観察中の者や以前保護観察を受けたことのある者による重大再犯事件が続発したことを契機に、更生保護が十分機能していないのではないかという御指摘をいただきました。これを受けて、更生保護のあり方を考える有識者会議が設置をされまして、昨年六月に報告書が取りまとめられました。

 そこにおきましても、「更生保護制度の目的は、犯罪や非行をした人の改善更生を助け、その人による再犯を防止し、社会を保護することである。しかし、今日、更生保護制度は、機能不全に陥りかけており、その目的を十分に果たせていない。更生保護制度が直面している事態の深刻さは、保護観察対象者による重大再犯事件が相次いだことなどから、露呈した。」先生も御指摘になりましたが、大変厳しい御意見をいただいたわけであります。

 こうした御指摘のように、現在の更生保護は、近年の社会情勢や犯罪情勢の変化に十分に対応できておらず、国民の期待に十分にこたえられていない面があるというふうに考えております。そこで、こうした御指摘を厳粛に受けとめまして、今回、先ほど御説明申し上げましたような内容の法的整備を図るための法案を国会に提出させていただいておるものでございます。

 世界一安全な国日本ということでございまして、どうしても世間の目は、まず犯罪の予防、摘発というところ、そして事件が起きれば大変な騒ぎになる、その方々を、裁判がどうなって刑務所というという話は、それなりにみんな目に見える形で大変話題になってまいりましたけれども、その後の話に余り皆さん関心がなくて、そのことが今度、再犯が頻発することによってようやく大きな話題になったということでありまして、川上から川下まで全部きちんとやって、きちんとした犯罪のない日本ということになると思いますので、この法律を早急に成立させていただいて御支援を賜りたいと思います。

赤池委員 まさに大臣が御指摘になったように、やはりどうしても、情報化社会、マスコミというのは、事件そのものにすごく話題が集中して、その後どうなったかというのはほとんど取り上げられないという状況の中で、やはり矯正、そして今回のテーマである更生保護、非常に重要だというのはそのとおりではないかというふうに思っております。

 報告書にもございましたし、また提案理由の説明の中にもございました。その中に、更生保護の目的を明確化していくという説明がございました。その辺、改めてどのような理由で明確化していくことにしたのか、副大臣の方から見解をお伺いしたいと思います。

水野副大臣 現行の犯罪者予防更生法の第一条で、犯罪をした者の改善及び更生を助け、社会を保護することを目的とするものであることを規定しておりますので、改善更生を助けることが同時に再犯を防ぐことでもあるという点は、これは言うまでもないので、あえてその再犯防止というこは、現行法では明示的には規定されておらなかったんですけれども、この点に関し、有識者会議の報告書では、国民が更生保護に対して再犯防止機能を期待しているにもかかわらず、保護観察官においては、就労の確保や生活習慣の改善等により対象者の生活の安定を図ることを保護観察の主目標と考え、対象者による再犯を防止して社会を保護するという意識が不十分であると指摘しており、その上で、更生保護制度に関する所要の法整備に係る提言において、刑事司法制度の一翼として、犯罪や非行をした人の改善更生を助け、再犯を防止し、社会を保護するとの目的を明確化することを求めております。

 そこで、今回お出ししている更生保護法案の第一条では、こうした提言を踏まえて、更生保護は、犯罪をした者または非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、また非行をなくし、その自立と改善更生を助けることを目的とするものであり、これらによって社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とするものであること、ここを明確にしたということでございます。

 そして、これによって、社会内処遇の中心的な担い手である保護観察官を初めとする更生保護官署職員の社会の安全、安心に対する責任意識の向上を図るというものでございます。

赤池委員 副大臣、ありがとうございました。

 そういう面では、時代の流れの中で国民の意識に根差した再犯防止、もともと持っていた更生保護、そういったものが明確化されるということは、非常に国民のニーズに合った、時代の流れに合ったものではないかというふうに評価をしたいと思います。

 その中で、具体的な更生保護の内容として、今回、遵守事項の整理充実というものがうたわれております。一般遵守事項、そしてさらに特別遵守事項ということで、整理をされて充実されたということでございます。

 そこで、具体的な中身に関しては既に大口先生の方からも話がございましたが、気になる部分としてございましたのは、平成十七年、いわゆる重大事件のときに、保護観察中に行方がわからなくなったということがございました。これは、統計的には保護局の方で既に、当時が千八百名、それがその後警察の協力もあって千三百名になり、最新の数字で、先ほど教えていただきましたが、平成十八年十二月末では千八十一名ということで、努力のかいもあって行方不明者が少なくなっているとはいえ、やはりまだ千名も行方がわからないということは、国民の不安、そして更生保護の制度の信頼が揺らぎかねない部分になるのかなということがございます。

 そういう面では、今回の遵守事項の整理充実が、具体的に保護観察中の行方不明者そのものを、当然きちっと管理をしていく、所在の問題、旅行に行くときには届け出ろということでありますので、この辺、効果というのはどのような形であらわれてくるのか、具体的にはなかなか難しいとは思いますが、基本的な考え方を含めて局長からお伺いをしたいと思います。

藤田政府参考人 御指摘のとおり、随分多くの所在不明者がおりました。これを少なくするということにつきましては、既に御案内のとおりかと思いますが、保護観察所における所在調査を非常に徹底してやるというようにいたしてもおりますし、また警察にも協力をお願いして、月々本当に少なくなりつつあるところでございまして、私ども手ごたえを感じております。

 今後ともこれを強化していかなきゃいけないと思っておりますが、観察対象者が所在不明となることを防ぐためには、まず、その兆候があることが多いんだろうと思いますので、その兆候を見逃さないで、素早くこれを察知して対処することが重要だと思っております。

 その点につきまして、今回の法案におきましては、御指摘のところでございますけれども、保護観察官または保護司との面接に対象者が応じなきゃいけないという義務あるいは生活状況を報告する義務を明示するというようなことなどから対象者の行状をより的確に把握することができるように一般遵守事項の充実強化をしておりまして、これはその役に立つんだろうと思います。

 それから、この法案で特別遵守事項の概念も整理されまして、この特別遵守事項が設定される段階で、仮釈の取り消し等、いわゆる不良措置と呼んでおりますけれども、これに結びつく可能性のある事項に特別遵守事項が絞り込まれるということでございますので、現に違反が認められた場合には速やかに不良措置が、常にとるというわけではございませんが、どうしてもとるべきときには機敏にとれるというふうになります。所在不明になる前に適切な対処がまたできるんじゃないか。

 それから、そういうことになったんだということを対象者が自然に知っていきますので、そういうことでも、所在不明にならないように本人も恐らく気をつけていく人がふえていくだろうというふうに思っております。

赤池委員 そういう面では、保護観察中の行方不明者、それがまた犯罪につながるということは、本当に仮釈放または執行猶予そのものの国民の信頼が揺らいでしまいかねない部分があるなというふうにも感じておりまして、少なくなるのは当然ですが、こんな数字が出てくるのがおかしいというぐらいに、ぜひこの法案の可決を通じてより一層の尽力をお願いしたいというふうに思っております。

 そして今回、特別遵守事項の中で処遇プログラムというものが、先ほど説明がございました性犯罪者処遇プログラムが導入をされて、既に実行されているということを聞いております。これは、欧米のいわゆる科学的な知見、それから体系的なアプローチということで、性犯罪防止に相当効果があるのではないかというふうに期待をされているところでございます。三カ月程度の中で、それぞれ一対一であったりグループミーティングであったりということで、心理学の学問的な知見を使った形でのプログラムというふうに聞いておりますが、途中経過でも結構ですので、この手ごたえみたいなものを局長の方から聞かせていただきたいというふうに思っております。

 それから、私も刑務所、甲府それから府中と視察、見学させていただきましたが、やはり再犯を犯す方というのは暴力絡みまた薬物絡みということもございます。性犯罪とともに引き続き、暴力に対する部分、それから薬物に対するそういった処遇プログラムみたいなものをぜひ今後調査研究、開発をして、実行に移していただければなというふうに思っております。その辺も含めて局長の方から見解をお伺いしたいと思います。

藤田政府参考人 性犯罪者処遇プログラムの方は、現在、平成十八年度から仮釈放者と保護観察つき執行猶予者、この二種類に対して実施を行っておりまして、平成十九年の一月までで三百五十一人に対してメーンになるプログラム、コアプログラムと呼んでおりますけれども、これを実施しているところでございます。

 効果でございますけれども、昨年の六月に、官房の秘書課を中心にしまして刑事三局、刑事局、矯正局、保護局、それから司法法制部とか法総研も入れてプロジェクトチームをつくりまして、法務省全体として性犯罪者処遇プログラムの効果検証のあり方について検討を続けておるところでございますので、もう少し時間をいただければ具体的な効果が申し上げられることがあるのではないかというふうに思っておるところでございます。

 それから、御指摘のとおりでございまして、現在特別遵守事項として胸を張って入れられるプログラムは性犯罪者処遇プログラムだけでございますけれども、私どもではいろいろなプログラムを私どもなりに鋭意勉強しております。贖罪指導プログラムというのも最近始めました。それから、アンガーマネジメントといって、怒りの気持ちをいかに抑えるかという抑え方を教えるようなプログラム、それから御指摘の、暴力防止のプログラムでありますとか薬物事犯者に対するプログラムというのも開発中でございます。

 できるだけ効果が上がるように研究いたしまして、体系化も進めて、いつかまた特別遵守事項になり得るようなものになればというふうに思いながら頑張りたいと思っております。

赤池委員 ありがとうございます。

 ぜひ、効果がまとまったところで速やかに、委員会であれ、また公表もしていただきたいなというふうに思っております。アンガーマネジメントというプログラムですか、聞かせていただいて、これは汎用性があるのではないかと勝手に思いましたけれども、ぜひそんな新しい調査研究、開発も進めていただきたいなというふうに思っております。

 それから、犯罪被害者の関与について、これは既に大口先生の方からもお話がありましたが、特に聞きたいのは、今回、保護観察官と保護司の役割分担ということが法案の中にも書き込まれているんですが、犯罪被害者の関与のところで、保護司の方々は被害者に対応することがあるということになると思うんです。

 その保護司は一方、当然、今までどおり保護観察対象者らの対応、処遇というものを受け持ちつつ、また新たに今回の法案によって被害者の対応の業務も受け持つ、これは役割分担、民に頼り過ぎないといいながら、また新たな犯罪被害者の関与に関しては保護司の方々にも対応をお願いしなければならないことになるのかどうなのか、その辺の実際について、局長の方からお伺いしたいと思います。

藤田政府参考人 今回導入いたします被害者関係の施策として、被害者の心情等を加害者側に伝達あるいは被害者等の意見などを仮釈放審理において述べていただくという手続におきまして、保護観察官が直接的にはいろいろな手続の主体になりますけれども、やはり被害者の方々にとってみますと、事情がわからない、あるいはどんなふうな書き方をすればいいのか自信がないというようなこともあろうかと思います。そういうことで、保護司さんに、例えば付き添いをしていただいたり、いろいろな助言をしていただくというような役割を担っていただくことになろうかと思っております。

 ただ、保護司さんは、従来は保護観察対象者の側の面倒を見ていただいておるわけでございます。被害者の方々のお気持ちといたしましては、被害者の世話をしていただける保護司さんというのは、保護観察の事件事務を担当しておられる保護司さんとは別の方にしていただきたいというようなお気持ちがおありのようでございます。これはもっともでございますので、被害者担当保護司さんというべき方々につきましては、少なくともその任期中におきましては専ら被害者の世話をするお仕事をしていただいて、保護観察事件は任期中は関与していただかないようにしたいというふうに考えております。

赤池委員 ぜひ被害者の心情を配慮しつつ、また民間有志であります保護司の方々の実情もかんがみつつ、ぜひ適切な配慮をお願いしたいというふうに思っております。

 そこで、今、保護司さんの話が出たわけなんですが、私の友人であったり、先輩であったり、地域の保護司さんという方が本当に第一線で活動をなさっております。

 今回の有識者会議の報告の中にも、余りに依存し過ぎているのではないかという指摘もあるところではありますけれども、これは日本独特の保護司制度ということに関して、実情のアンケートをとられたり、さまざまな意見表明が保護司さんの全国団体からもなされているわけなんですが、その辺の実情の認識、その指摘を受けて、どのような対策を講じられているのか。これは民間に直接かかわる、五万人の方々にかかわる点でございますので、大臣の方から御見解をお伺いしたいというふうに思います。

長勢国務大臣 更生保護行政、保護司の皆さんの大変な御協力のもとに成果を上げてきているわけで、日常的な普通の生活をなさっている方々、地域におられる方々が、ボランティアとして昼夜を問わず、大変献身的な御貢献をされておられることに対して、本当に感謝と敬意を申し上げたいと思っております。

 今御指摘のように、逆に保護司さんに頼り過ぎではないかとか、観察官との関係がどうだとか、観察官の体制がどうだとかいう厳しい御指摘が、保護司さんはもちろん、いろいろな方々からいただいておるわけでありまして、今回の改正を契機に、そういう点を十分に気をつけながら進めていきたいと思っております。

 先ほども大口先生にも御答弁を申し上げたわけでございますが、まず何よりも、観察官の体制が手薄でございますので、その増員には今後とも力を尽くしていきたいと思いますし、その質の向上にもいろいろ考えなきゃならぬことは多いと思っております。

 しかし同時に、保護司さんの方もなかなか確保が厳しい状況になっておるわけであります。私も幾つか状況を見せていただいたりしておりますが、保護司さんと観察官との関係というものは、法律で一々具体的に区分をするということは私は余りよくないと思いますけれども、難しい事件はすべて観察官というのもおかしいんですけれども、観察官自身が、あるいは観察所自体が直接更生保護の現場をやるという部分ももっとあってもいいのかなと。

 それから、指導監督の能力といいますか、保護司さんの信頼に足るものになるようにもっともっとやっていかなきゃならぬのかなというようなこともありますし、保護司さんの処遇の問題もいろいろ御議論がありますけれども、また御意見をちょうだいしながら、そこがこの法律を生かしていく上でも最も大事なところだろうと思っております。

赤池委員 ありがとうございました。

 私も直接、保護司の方から御意見をお伺いしましたけれども、やはりどうしても、数が多いと外見的な形になってしまったりとか、特に具体的に言いますと、刑務所の視察も通じて感じたことなんですが、暴力団絡みの案件とか、幾ら手を切ったといっても、実際のところ、社会に戻ると、人間関係からそういったところに行くときに、保護司さんお願いしますといっても、民間の方々はやはり暴力団に絡むと腰が引けてしまうのも実情という率直な御意見もお伺いをしております。

 そういう面で、先ほど大臣がおっしゃったような、その辺の役割分担をうまくやるような形、また少年の場合は、逆に保護司さんの方がより有効に機能するとも聞いておりますので、まさにこれは法律事項というよりも、実態に即した形で、信頼関係を持って的確に対応していただきたいなというふうに思いますし、もっと保護司の方が、社会的なイメージとか、四月二十九日にも褒章が行われますが、当然保護司さんは入っているんですが、いわゆる特別な公務員、民間ボランティアとして社会的な価値、地位がもっと上がるような形で、ぜひ大臣を中心にしてその方策も考えていただきたいなというふうに思います。

 それから、今回の法律の中でいえば、第二条に、それぞれ国、地方自治体の責務というものが新たに入りました。その中で、更生保護の目的実現に資する民間の活動を促進して、民間の団体と連携協力するようなことに努めなければいけない、地方自治体も必要な協力をするということが明記されたわけでございます。

 そういう面で、従来から、先ほど大臣の方からも、社会を明るくする運動、保護司さん五万人、更生保護施設百一、更生保護女性会が約二十万人、BBS会約六千人、協力雇用主が約五千から六千、いわゆる二十六万人以上の方々の民間ボランティアに支えられて、こういった形での一つの大きな更生保護というものが成り立っているという中で、こういった法律条項として明記する意義、そして今後の支援みたいなものがどうなっているのか、局長の方から御見解をお伺いしたいと思います。

藤田政府参考人 御指摘の更生保護法の第二条の国の責務等という規定は、まさに現行法にはございませんで、新設をした規定でございます。この趣旨について若干御説明を申し上げたいと思います。

 犯罪をした者とか非行のある少年の改善更生と自立を助けて犯罪予防の活動を促進するという取り組み、これは国がもちろん頑張らなければならないわけですけれども、やはり国が幾ら頑張っても、それだけでは目的を達成し得ない、広く社会全体で取り組む必要があるわけでございます。これまでも、更生保護女性会とかBBSとか協力雇用主等いろいろなボランティアの方から協力を得てまいりました。民間団体との連携をも深めてまいったところでございます。

 二条の第一項の前段でございますが、これは更生保護におけるそうした民間活動の重要性にかんがみまして、国が本法の目的の実現に資する民間の団体や、または個人による自発的な活動を促進して、これらの者と連携協力するよう努めるべきことを明らかにいたしまして、国による一層の支援と連携に向けた努力を促すことにいたしました。

 こうした民間の活動が地域社会の安全、住民福祉の向上に寄与するものであることにかんがみまして、第二項では、地方公共団体が必要な協力をすることができる旨の規定を置いております。同様の規定は保護司法にも更生保護事業法にも規定が置かれておりますけれども、本法案は更生保護の基本になる法律ですので、ここでもはっきりと明記することといたしたわけでございます。

 地方公共団体の方は、協力をすることができるという規定になっておりますけれども、これは本来国の責任であるということ、それから地方公共団体にそういうものを義務づけるというのはやや面映ゆいと申しますか、そういうこともございまして、任意の御協力を得られるように、その権限規定のような形で設けるのがいいかなというふうに思った次第でございます。

 こういう規定を設けることによりまして、更生保護に協力する民間団体などと国あるいは地方公共団体との連携協力関係は一層促進されて、活動がさらに活発化していくというふうに考えております。

 法の規定を受けまして、今もやっておりますけれども、更生保護女性会やBBSその他のボランティア、PTAや町内会など、地域の人たちに対しては、いろいろな情報が更生保護関係でもございますので、こういうようなものをどんどん提供していくようにしてまいりたいと思います。

 それから、団体の間での連絡調整の役も果たすようにいたしたいと思っております。例えば研修に講師を派遣する、それから、御指摘のありました功労のある、功績のある方々や団体に対する表彰といったようなことも考えてまいりたいと思っております。

赤池委員 時間が参りましたが、社会を明るくする運動自体、調べましたところ、昭和二十四年の、銀座の商店主から、当時犯罪者予防更生法が制定をされたことをきっかけにして、犯罪を予防しようという民間有志が始めた運動を国が後から追っかけた形で現在につながっているというふうにも聞いております。

 それから、日本の更生保護の原点というのは、いわゆる日本書紀にさかのぼって、持統天皇までさかのぼれるということでありまして、そういう面では、聖徳太子の和の精神みたいなものがずっとつながってきたのかなと。特に、保護司の先駆けというのも、明治二十一年、静岡県、上川先生も大口先生も静岡県ですが、金原明善さんという方が静岡県出獄人保護会社を設立して出獄人の世話を始めたということがきっかけだということを知りました。

 静岡刑務所であらゆる罪科を重ねた囚人が刑務所長の熱心な指導によって心底改心した、しかし、十年後刑務所を出獄すると両親はない、妻は再婚して、親戚から追い出されて、家もなく、職もなく、仕方なく彼は遺書を残して池に身を投げてしまった。それを聞いた金原翁が、刑務所だけではだめだということで、出獄した方を社会で保護する方法を考えなければならないということで、民間有志として出獄人保護会社を設立し、それが静岡県全域に広がって、さらに他県にも広がった。これが、日本独特の保護司というものの先駆けになったということを歴史として勉強させていただきました。

 さらに、これは日本だけではなくて、韓国、フィリピン、タイ、シンガポールにも輸出されているということも知ったときに、改めて金原明善翁の精神、罪を犯した人は変わることができるんだという、日本の伝統文化、和の精神に基づく日本の民主主義を生み出した、世界に誇り得べき制度ではないかということを感じております。

 そういう面では、伝統を現代に生かして、精神は残しつつ、制度としては時代に合わせて、変えるべきものは変えていくという今回の官民協働の更生保護制度実現、本法案の成立というものはぜひとも実現をしていただきたいと思いますし、金原翁の精神というものをぜひ、金原翁を知れば更生保護とは何たるかがわかるということだと思っておりますので、偉人、先人として教科書に載るような人物として、大臣、ぜひ文科大臣にも言っていただきたいなということを申しまして、質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

七条委員長 これより民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合の質疑時間に入ります。

 これにて民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合の質疑時間は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十六分散会


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