衆議院

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第16号 平成19年5月16日(水曜日)

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平成十九年五月十六日(水曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 武田 良太君 理事 棚橋 泰文君

   理事 早川 忠孝君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      今村 雅弘君    近江屋信広君

      大塚  拓君    奥野 信亮君

      後藤田正純君    笹川  堯君

      清水鴻一郎君    柴山 昌彦君

      杉浦 正健君    三ッ林隆志君

      武藤 容治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    山口 俊一君

      石関 貴史君    大串 博志君

      中井  洽君    細川 律夫君

      横山 北斗君    神崎 武法君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   法務副大臣        水野 賢一君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 荒木 二郎君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山田  務君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    梶木  壽君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    藤田 昇三君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局次長)          桝野 龍二君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局技術安全部長)      松本 和良君

   法務委員会専門員     小菅 修一君



    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  後藤田正純君     大塚  拓君

  河村たかし君     細川 律夫君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     後藤田正純君

  細川 律夫君     河村たかし君

    ―――――――――――――

五月十五日

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第八四号)(参議院送付)

同月十六日

 登記事項証明書交付申請に係る手数料の引き下げに関する請願(平将明君紹介)(第九〇二号)

 同(小川友一君紹介)(第九一四号)

 同(木原誠二君紹介)(第九一五号)

 同(越智隆雄君紹介)(第九四一号)

 同(島村宜伸君紹介)(第九四二号)

 同(松本洋平君紹介)(第九四三号)

 同(小杉隆君紹介)(第九八一号)

 同(鈴木恒夫君紹介)(第一〇二六号)

 共謀罪の新設反対に関する請願(保坂展人君紹介)(第九四〇号)

 裁判所速記官制度を守り、司法の充実強化に関する請願(保坂展人君紹介)(第一〇三九号)

 選択的夫婦別姓の導入など民法の改正に関する請願(小宮山洋子君紹介)(第一〇四〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第八三号)(参議院送付)

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第八四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

七条委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官荒木二郎君、公正取引委員会事務総局審査局長山田務君、警察庁刑事局長縄田修君、警察庁交通局長矢代隆義君、法務省刑事局長小津博司君、法務省矯正局長梶木壽君、法務省保護局長藤田昇三君、国土交通省自動車交通局次長桝野龍二君、国土交通省自動車交通局技術安全部長松本和良君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細川律夫君。

細川委員 おはようございます。民主党の細川律夫でございます。

 まず、トップバッターとして質問をさせていただきます。

 この交通事犯に関します法改正につきましては、私たちは、かなり以前から、超党派の交通事故問題を考える国会議員の会というのがありまして、この会を中心に議論をしてまいりました。交通事故被害者あるいは遺族の皆さんからも意見をお聞きしながら、特に、飲酒、ひき逃げなどの悪質な交通事犯に対しては、法律を改正して厳罰化すべきではないかというような意見が多数を占めまして、昨年春から議員立法の準備もしていたところでございます。

 そのさなか、昨年八月に、福岡で三人のお子さんが飲酒運転で死亡するという事件が起きまして、法案の策定を急ぎまして、昨年の臨時国会に提出をしたところでございます。新聞、マスコミ等では民主党案というようなことで報道もされましたように、結果的には民主党の単独提出ということになりましたけれども、しかし、この法案は他党の皆さんとも一緒に相談をして、議連の提案というような側面の大変大きなものでもございました。

 そして、この国会に、刑法と道路交通法の改正ということで、法務省と警察庁の方から法案が提案をされまして、その内容は私たちが意図する内容とほぼ同様の内容が入れられたということで、私たちの法案は継続をしておりましたけれども取り下げの予定、こういうことがこの間の経緯でございます。

 この間、政府の御努力は私どもも十分評価いたしたいと思いますけれども、一言申し上げれば、こういった改正をもっと迅速にできなかったものか、こういう点でございます。危険運転致死傷罪の問題点は法律の施行直後から大変強く指摘もされておりましたし、飲酒、ひき逃げに対する世論は大変厳しいものでございました。

 そこで、大臣にお伺いしますが、こういう法案はもっと早く私は提案をしていただくべきだったというふうに思っておりますが、大臣の方はどのようにお考えでしょうか。

長勢国務大臣 自動車運転、特に飲酒、ひき逃げ等による事故に対して国民の皆さんに安心をいただくということは、かねてからの大変な議論でありまして、先生におかれましても大変御苦労いただいてきたことに敬意を表しております。

 法務省におきましても、今お話しの危険運転致死傷罪を新設するなど、従来からもその問題に取り組んできたところでございます。しかし、その後もなお、かつ、重大な事件が頻発をしておるわけでございまして、さらなる法整備ということが先生方を初め各方面から出されてきた、こういう経過の中でありますし、また、現行の業務上過失致死傷罪の科刑状況も、運転に関するものについては相当上限近くに張りついてきているという状況もありまして、今回の改正になったところでございます。

 もっと早くできないのかという御意見もよくわかるわけでございますが、何といっても、刑法体系というものの社会の基本的性質、これは余りおろそかにはできませんし、そういう中での議論を尽くして整合的な制度をつくるということもありまして、若干先生から見れば遅かったんじゃないかというおしかりはごもっともかと思いますが、我々としても一生懸命努力をして提出させていただきましたので、よろしくお願いを申し上げます。

細川委員 それでは、内容について入ってまいりたいと思いますが、既に参議院先議で、審議を参議院でされておりますので、なるべく重複を避けて簡潔に伺いたいと思います。

 先ほど大臣の方から危険運転致死傷罪についてもお話がありましたけれども、この危険運転致死傷罪につきましては幾つかの批判が起こったところでございます。

 一つは、まず有期の最高刑、現在は二十年ですけれども、こういう厳罰に処すためには故意性を重視しなければならない、したがって立件のためのハードルが大変高くなった、例えば飲酒の場合に、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で四輪以上の自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者」、こういうふうに規定されておりますので、正常な運転が困難な状態というのを立証しなければならない、こういうことでございます。もし立証できなければ業務上過失致死傷罪の適用となって、他の罪との併合罪としても上限が七年六月にしかならない、こういうことで、この危険運転致死傷罪とのアンバランスが指摘をされていたところでございます。

 そして二つ目に、この危険運転致死傷罪で問題になりましたのは、大変厳しい罪であります危険運転致死傷罪を免れるといいますか、そのために現場から逃走する、つまり、ひき逃げを誘発するという指摘でございまして、実際、交通事故で亡くなる方は減っておりますけれども、ひき逃げの数は増加している、こういうことでございます。

 そういう二つの問題点がございまして、この第一の点、アンバランスの件につきましては、併合罪で十年六月になるということで一歩前進をした。それから、第二のひき逃げの問題については、これは道路交通法が今回改正をされる、そこでひき逃げの最高刑が十年ということになりますから、若干抑止効果が期待をされております。

 しかし、今回のこの法律でつくられます自動車運転過失致死傷罪、これは過失を問うわけです。そして、故意性を問う、あるいは要件としております危険運転致死傷罪、このアンバランスというものは解決はしていないというふうに私は思います。被害者とか遺族の中からは、もっと重罰にすべきだという声が強いのも、これは御承知のことかと思います。危険運転の立件が難しいために、二十年と七年という大きい差があるわけでございます。

 昨年の九月には、埼玉の川口で園児四人が死亡するという大変悲惨な事件が起こりまして、そのときの判決の中で、裁判官は次のように述べたんです。多数が死亡するなどの過失やあるいは結果が重大なケースでは、業務上過失致死傷罪の法定刑の上限である懲役五年では罪を十分に評価できない状況にある、こういうことを述べまして、現行法の不備を指摘いたしております。

 そこでお伺いしますけれども、この点、五年から七年に引き上げられたから、それで十分だということにはならないんではないか、したがって、今度改正されました内容を実施して、その実施状況を見て、これで妥当なのかどうか、七年でよかったのか、もっと上げなきゃいかぬのか、こういうことについても検討をしていくべきではないか、これからのことですけれども、このことについてはいかがでしょうか。

長勢国務大臣 危険運転致死傷罪と業務上過失致死傷罪の差の問題、あるいは今回案にしてもっと重罰化すべきではないかという御意見があるということは重々承っております。ただ、刑罰法規において、過失と故意というものを厳然と区別するというのはなしというわけにはいかないということが原則だろうと思います。そういう中で、今回七年に過失の中を上げたわけでございますが、これとてもいろいろな御意見があったところであります。

 今先生おっしゃるように、ほかの罪との加重という問題もあって、相当差は縮めたとはいうものの、なお、事件によっては一般に納得できないなと思うものもないわけではないかなとは一応思いますが、しかし、ここまで御議論いただいておりますので、また、これから交通事情というものも変わっていくと思います。そういうことも踏まえて、今回の改正を、施行状況等々を見ながら、さらに必要があれば検討するということで、我々も頑張っていきたいというふうに思っております。

細川委員 今、故意と過失は区別せざるを得ない、こういうようなお話でございましたが、私は、交通事犯というのは、傷害とかあるいは殺人などの一般の刑事事件と比べまして、故意と過失を分けるのは非常に難しいというふうに思っております。

 例えば、飲酒は死亡事故を起こします可能性が高まるという点で故意性が指摘されるわけですけれども、運転手が携帯電話で話すことも同様に事故の危険性が増す、スピードについても同じでございます。この交通事犯については、故意と過失で刑罰に大きな差を設けること自体が難しい、そういった指摘がずっとされているわけですけれども、例えば海外では、イギリスなんかは、交通事犯は交通事犯として、そこで刑罰法規を体系化している、実際にそういう事例がございます。交通事犯として独立の法律をつくって刑罰を科していく、こういうこともやっているわけでございます。

 そこで、私は、この交通事犯というのを、今は刑法とそれから行政法である道路交通法、こういう二本立てで刑罰を科する、こういう体系になっているわけなんですけれども、これは交通事犯の特殊性ということから、交通事犯に係る独立の法制を検討していってもいいんではないかというふうに考えておりますけれども、この点について大臣のお考えはいかがか、お伺いをしたいと思います。

長勢国務大臣 先生の御趣旨はわかるような気もいたします。

 ただ、これはやはり法律でございますから、仮に自動車関係の法律に一本化をしたとしても、故意犯と過失犯を分けなくて一本の刑罰法規にできるかというと、これもなかなか議論のあるところだろうと思います。今の時点で軽々に、おっしゃるとおりですねと言うわけにもなかなかまいりませんが、これから議論をしなきゃならぬことだと思いますし、いずれにしても、今後の罪のあり方、また事故の実態等々を踏まえて、必要な検討を行っていきたいと思います。

細川委員 ぜひ長勢大臣のときに検討を少し深めていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、ちょっと具体的な点で一点尋ねておきますが、これは道交法の方でございます。私たちが提案した法案の中で、政府案にほとんど取り入れたんですけれども、取り上げられなかったことが一つありますので、これをちょっとお聞きしたいと思います。

 私たちは、車の中に開栓済み、栓をあけたアルコールの持ち込みを禁止する、こういう法律の内容を提案しておりました。これは、罰則つきではないんですけれども。それはなぜかといいますと、特に長距離のトラックの運転手が車内で飲酒をする、これを予防するということが目的でございましたけれども、こういう点もさらに今後検討をしていただきたいということがあるんですけれども、この点について、警察庁、どのようにお考えでしょうか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの論点は、一つのもっともな御意見であろうかと思います。私ども検討いたしまして、道路交通法は交通事故防止のために幾つかの危険な行為を禁止する、制裁を科す、こういうことでやっておりますので、その一つの類型として、飲酒をして運転する行為は危険である、こういうことでございます。

 そこで、その前段階の、酒を車内に持ち込んでの行為ですが、予備的な段階でございますけれども具体化しておらないものにつきまして、これを制裁の対象にするのはいかがかなというふうに思いまして、現実の問題といたしましても、飲酒運転として取り締まれば足るわけでございますので、車の中に酒を持ち込むなどということは言語道断でございまして、まことにけしからぬことでございますが、これは情状として評価されていくものであろう、こう考えております。

 したがいまして、今回私どもが御提案申し上げている中には、そのほかにも、周辺者対策として、酒を飲ませないですとか、あるいは車を提供しないなどのものを盛り込んでおりますが、こういうものを含めまして、制裁の強化によりまして予防効果は上がるだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。

細川委員 アメリカなど、海外ではこういうのを法制化しているところもありますので、今後、ぜひ検討を進めていただきたいと思います。

 次に、参議院の審議を見ましても、交通事故についての刑罰を厳罰化するだけでは交通事故をなくすことができない、さまざまな施策が必要ではないか、こういうことが各委員からも指摘をされておりました。

 例えば、ことし二月に吹田市でスキーバスがコンクリートの柱に激突した事件がありまして、一昨日、この事故につきまして、社長、専務らが逮捕されまして、マスコミで大きく報道されておりました。この事件の背後には、過当競争による過労運転の日常化といった、貸し切りバスの運行に関してのさまざまな問題があるわけでございます。

 そこでちょっと何点か、交通事故を防止する、そのための課題について伺っておきたいと思います。

 参議院の方ではインターロックシステムについては議論があったようでございますから、もう一つ、私がちょっと申し上げたいのは、ドライブレコーダーの普及でございます。

 車の中から常時周囲の状況を録画するというシステムは、事故状況が的確に把握できるだけではなくて、装着自体が事故の抑止になると言われておりまして、タクシーなどにはもう既にドライブレコーダーがある程度装着をされているというふうに聞いております。

 そこで、現在、タクシーにはどれだけドライブレコーダーが普及をしているのか、国交省の方では、一部事業者に協力をしてもらって、ドライブレコーダーを装着したときの効果などについての調査を実施しているというふうに聞いておりますけれども、その調査結果はどうだったのか、こういうことについてお聞きをいたしたいと思います。

 これは、国交省の自動車交通局に質問をいたします。

桝野政府参考人 委員御指摘のように、ドライブレコーダーが安全に対して寄与するというような評価を私ども持っております。

 現在のところの普及状況でございますが、全国の法人タクシー二十二万七千台のうち、十七年度の調査、一年ちょっと前でございますが、三万四千台、一五%ぐらいの普及でございます。

 それとは別に、ドライブレコーダーの製作会社に、どのぐらい出荷しているか、これは同じ車に二回つけたり三回つけたりするものですから、何台とはっきりわからないんですが、この出荷台数を聞きました。十八年度末で、十万台ぐらい出しているということでございます。

 また、私どもの調査でございますが、二十四社にお願いいたしまして、アンケート等の調査をいたしました。結果として、事故率が五割ぐらい減った、かなり減ったという会社が八社、それから二割以上減ったという会社が五社ございまして、大体二割以上の事故減少をしたと答えた会社が六割ぐらいございました。かなり効果があったと思っております。ただ、二十四社のうち、つけたけれども減らなかったという会社も四社ございまして、いわゆるばらつきがあるという評価をいたしております。

 このことは、結局、ドライブレコーダーをつけるだけではなくて、つけた後の結果を検証して分析をし、これを安全教育に生かすということが必要である、ソフトと一体にならなければ意味がないが、一体になればかなり効果がある、こういう評価をいたしております。

細川委員 私は、ドライブレコーダーの装置というのは、さまざまな面で事故の予防あるいは事故の分析と再発防止に役に立つんではないかというふうに思っております。そういう意味では、タクシーだけではなくてトラックとかあるいはバスを含めて、将来、すべて営業車には装着する、そういうような方向で検討をすべきではないかというふうに考えているところでございます。

 アルコール依存症の人の飲酒運転、再発防止などについてもこの中で質問をしてみようと思っておりましたけれども、もう時間がありませんから、簡単にちょっとお聞きします。

 アルコール依存症の人は、飲酒運転で再犯といいますか、そういうのが非常に高い、そういうことでしっかりとこの点の対策を立てていかなければいけないんじゃないかというふうに思いますけれども、どういうようなことが考えられるか、簡単で結構ですけれども、ちょっと答えていただいて、私の質問を終わりたいと思います。

梶木政府参考人 今委員が御指摘になりました交通事犯者、特に飲酒運転による事故について、我々、矯正施設の中でプログラムを組んで改善指導しておるところでございます。大きく分けますと、交通事犯者に対しまして、交通安全指導、それから被害者の視点を取り入れた教育、そして酒害教育というのを行っておるところでございます。

 今委員が御指摘になりました酒害教育について焦点を当てて御説明をいたしますと、昨年から三十七庁でこれを実施しております。民間のグループであります断酒会あるいは病院等の御協力を得まして、グループワークを取り入れて、まず酒の害について理解をさせること、そして飲酒が周囲にいる人に及ぼすさまざまな影響や、それから断酒に向けた具体的な方策、御本人の取り組み、こういうことを考えさせる指導を実施しておるところでございます。

 この指導も、昨年から本格的に内容を考えて実施を始めたものでございますから、引き続き内容の充実に努めてまいりたいと考えております。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 飲酒運転をした場合には、これは免許を取り消して交通の場から排除するというのが大原則でございますが、さらに、これを治療あるいは矯正していくということは交通安全上非常に重要なことでございまして、現在、内閣府におきまして各省庁が寄って検討しております。それで、何ができるのか、何をすべきかということで検討を進めておりますので、その中から具体的な対策を見出して、各省で分担してやっていきたいと考えております。

細川委員 終わります。ありがとうございました。

七条委員長 次に、石関貴史君。

石関委員 民主党の石関貴史です。

 初めに、先日、四月二十七日、こちらで質問の時間をいただいてさせていただいたんですが、この部分の残を少しやらせていただきたいと思います。電車内の強姦事件についてということで、答弁の中で少し不分明な部分があり、十分に準備をしていただいて、きょう御答弁をいただければというふうに思います。

 まず、この経緯について、植園貴光被告、この方については、報道によると公判中であったということで、公判中の人が勾留をされていないのはどういうことなんだ、だれに責任があるんだということで私はお尋ねをしたんですが、その後、雑誌等にもやはり公判中というふうに記述があるということですが、担当の方に伺うとそういうことではないというようなこともあり、はっきりとどういう状態にこの被告がいたのかということ、関係する事件は幾つかありますが、これの経緯というのを簡明にお答えをいただきたいと思います。

小津政府参考人 先日お尋ねのございましたときには手元に資料がございませんで、失礼いたしました。

 お尋ねの事件は、平成十八年の八月三日に、電車の中で女性客に対して、大声を出すな、殺すぞと申し向けて脅迫して、わいせつな行為をするなどした上で、車内の男性用のトイレ等に連れ込んで強姦をしたというものでございまして、平成十九年五月十一日に裁判所に公判請求したものでございます。この被告人につきましては、今回の公判請求の前にも、平成十八年の十二月に起こした二件の強姦事件と平成十九年一月に起こした傷害事件によりまして、既に大津の地方裁判所に公判請求されておりました。その事件について、現在も公判係属中でございます。

 この被告人の身体の拘束の状況について申しますと、被告人は、この傷害事件で本年の一月七日に逮捕されまして、それ以降はその傷害事件や他の強姦事件による身柄拘束が続きまして、四月二十一日には、御指摘の、つまり、平成十八年八月三日に起こした強姦事件で大阪府警に逮捕されて、身柄拘束中ではありますけれども、別の事件で改めて逮捕の手続がとられた、こういう意味でございます。そして、その後検察庁に送致をされまして、五月十一日に公判請求をしたということでございます。

 したがいまして、御指摘の平成十八年八月の電車内での強姦事件は、別の事件で起訴されたけれども在宅のままだったとか保釈中だったということではないということでございます。

石関委員 今、特定してこの記事というふうにはお持ちをしておりませんし、事前にも出してありませんが、新聞の報道でも、それからその後の雑誌にも幾つか出ました。これはすべて、以前に強姦事件で逮捕されて公判中の植園被告が、あたかも自由に行動している中でまた犯した、こういう報道ぶりなんですね。

 これは当局の方も大臣もそのように御理解をされていると思うんですが、これは何なんだ、警察も法務省もこんな犯罪者を野放しにしていいのか、私自身も記事の範囲ではそういう印象を受けましたし、もし事実と違うのであれば、そうじゃないんだ、こういう危ない人についてはしっかり身柄も拘束して、手続の中で今こういう位置にいるんだということで、報道には間違いないようにしていただかないと困るというふうに思うんです。

 これは、私は何らかの、もし報道の方で事実誤認とかされているとすれば、当局の方からお話をされた方がいいのかと思うんですが、これについては何かアクションを起こされているのか、今後また事実と違ったり誤解をされるような報道はしないでくれ、このようなことをそれぞれ報道機関に申し述べる、このような御用意はありますか。

小津政府参考人 現時点で個別の記事について個別の措置をとっているということはございませんけれども、今後どのようにして、委員御指摘のように、そのような誤解が一般の方、そのもととなっている記者の方の中にあるとすれば、どういうやり方できちんとした御説明をしていくのか、ちょっと検討させていただきたいと思います。

石関委員 特に、裁判員制度というのも始まる直前でございますし、一般の国民の方々に、今、刑事の手続とかそれからこういった被告人の扱い、そういったものがどうなっているか、報道の自由というものはもちろんありながら、正確に知っていただくということは必要だと思いますので、特に重大なものについては、当局の方からもそういった配意を今後ますますお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、やはり先日お尋ねをした件ですが、性犯罪者についての専門的な処遇プログラムというものがあって、先日のお尋ねの際には、百ページぐらいのプログラムの本というかそういうものがあって、ちょっと通告もできない状況にもあり、なかなか今すぐはわからないということだったんですが、具体的に、またこれも簡略に、こういうプログラムを実施しているんだ、例えばこういうビデオを見せているとか、あるいはこれこれこういうものを実際に受講させているんだ、これについて教えてください。

梶木政府参考人 今委員がお尋ねになりました性犯罪者処遇プログラムでございますが、平成十六年十一月に奈良の女児の悲惨な事件がございました。それをきっかけに、平成十七年四月に保護局と矯正局とで勉強会を立ち上げまして、精神医学、心理学の専門家八名に構成員として入っていただきました。そこでプログラムの中身の検討をすると同時に、諸外国で実施をしておりますプログラムを取り寄せ、あるいは海外調査等を行って検討いたしました。

 我々のところで主として使わせていただいているのは、カナダのプログラムを中心としたものでございます。認知行動療法を基礎としたものということでございます。

 認知行動療法と申しますのは、問題行動の発現の原因となるみずからの認知の誤り、つまり物事の理解あるいはとらえ方の誤り、これにまず気づかせる、そしてこれを変化させることによって問題行動自体を変容させ、改善させようとする心理療法の一種であります。

 我々のところでやっておりますプログラムは、対象者八名程度で、二名の指導者が入ります。そういったグループワークが中心となっておりまして、さまざまな状況設定の中で、相手はどう考えているんだろうか、あなたはどう感じるのか、そういったやりとりをお互いにするというのがまず中心になっております。

 そして、それに加えまして、各自がグループワーク以外に個別に取り組みますワークブックというものも活用しております。このワークブック、平たく言いますと宿題のようなものでございます。グループワークで行ったことを前提として、あなたはその後何を考えたのか、そういったことを自分で反省させ、書かせるといったものでございます。

 さらに、八名の受講者もそれぞれ生い立ちあるいは問題の深さが異なりますので、その間に個別の面接を入れて問題点を吸収していく、こういうことでやっております。

 また、このグループワークの中では、参加者自身が自分の生い立ちを振り返って語る、いわゆる自分史を作成するというような言葉を使っておりますが、これを発表することによって望ましい対人関係のあり方を理解させる、あるいはそのためのロールプレーイングを実施するというようなことをしておりまして、再犯防止に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

石関委員 ありがとうございます。概要についてよくわかりました。

 今、カナダのプログラムを参考に導入したということなんですが、同じようなプログラム、先進各国でこのようなプログラムがあるという具体例を幾つか教えていただきたいのと、この処遇プログラム、また一歩進んで、国によっては、やはりそういった学習ではなかなか認知、行動が変わらないということで、ホルモンの注射を打つとかといった措置をとってそういった衝動を起こさせないようにする、こういう国もあるやに聞いているんですが、そういった例があるのかということ、この二点をお尋ねします。

 またもう一点、日本においてそこまでの議論が過去にされた経緯があるかどうか。というのは、先日お尋ねをいたしましたら、性犯罪者の犯罪、再犯率ということで、平成十六年のお答えをいただきました。仮釈放者の中で三〇・八%と、極めて高いということでありましたので、これはいろいろなプログラムが導入される前のことですが、なかなか性犯罪においてはその衝動を抑えることができない方が非常に多いというふうに私は理解をしております。

 こういった問題意識から、以上の三点、お答えをお願いします。

梶木政府参考人 まず、諸外国の関係を簡単に説明させていただきます。

 今、カナダの説明、カナダのプログラムを中心として我々がつくってきたプログラムについて御説明させていただきました。イギリスも同じようなプログラムを実施しております。イギリスは、どちらかというとカナダのプログラムを発展させたようなものであるということでございます。それから同じようなプログラム、これはやはり今申しました認知行動療法というヨーロッパ、アメリカで発展をしたものが基礎になっておりますために、オーストラリアあるいは香港等でも同じような手法によるプログラムが実施されているということでございます。

 それから薬物の療法でございます。

 アメリカ等でそういった試みがなされていることは承知しております。我々の施設の中でこれをやるかというようなことでございますけれども、薬物の施用についてはさまざまな副作用があるということ、それから御本人の了解をどうするんだというような問題もございます。そういうこともありまして、勉強はさせていただいておりますが、やはり今直ちに我々の施設でこういった療法をやろうということは考えておりません。

石関委員 処遇プログラムについてもまだ始まったばかりですから、これからいろいろ研究をして実効性のあるものにしていただきたいというのがあるのと同時に、薬物についてはいろいろな議論があると思いますし、大変難しい副作用もあるということですが、もし自分の家族がそういう目に遭ったらということもあり、感情で支配されてはいけませんが、実効性のある、再犯をできるだけ低く抑えるという観点から、いろいろな研究をますます進めていただきたいというふうに思います。

 それと同じように、同僚の大串委員はアメリカ経験が長く、彼に聞いたり、また自分でもちょっと調べたところによると、特にアメリカなどでは、保釈をされた後の性犯罪者あるいは刑期を終えて満期で出ていった人たち、アメリカも州や郡によってもいろいろ制度が違うようですが、ホームページで、性犯罪を犯した人がどこに住んでいるというのがわかる地域もあるということなんですね。日本においてはそういうことはないし、人権の問題がありますから大変難しいんですが、そういう危険性を考えて人権が抑制されるというのがアメリカの一部ではあるというふうに聞いているんですが、このような性犯罪者の釈放後の身柄についての各国のこういったような種類の例というのを御教示いただきたいと思います。

小津政府参考人 諸外国では、性犯罪者が刑期を終えて刑務所を出所した後、その再犯を抑止するためにさまざまな法制が採用されているものと承知しております。

 現時点で我々が承知しているものについて少し言及させていただきますと、委員御指摘のように、アメリカにおきましては、一定の性犯罪等を犯した者に対し、一定の期間、氏名、住所、顔写真、犯罪歴等の登録を義務づけて、その登録情報が公開されることとされているものと承知しております。また、イギリスにおきましては、出所後におきまして、性犯罪について有罪判決を受けた者について、住所等の届け出や子供と接触するような活動の禁止などを命令することのできる制度があるものと承知しております。そのほかの国についても、さらに研究してまいりたいと思っております。

 もちろん、御指摘のように、我が国で考えます場合には、既に刑事責任を果たし終えた者に対して権利の制約を伴う措置を講ずるとした場合に、どういう根拠で、どういう人に対して、どういう措置をとるのがいいか、もちろん慎重な検討を要するという認識ではあるわけでございます。

石関委員 現状についてはよくわかりました。

 ただ、重ねて申し上げますが、やはり私は特に許しがたい犯罪というふうに思います。被害者の人生を変えてしまう、家族も変えてしまう、この犯罪に限りませんが、こういった特に大きく報道される、こういった機会にぜひいろいろな研究をさらに進めていただいて、実効性のあるいろいろな施策を考えていただきたいというふうにお願いをいたします。

 それでは、法案の方に入りたいと思います。

 まず、刑法の改正なんですが、私自身、自分の父方の祖母が自動車に追突をされて平成九年に死亡しております。ちょうど留学をする準備をしていて、航空券も買ってあったんですが、祖母が自動車にひかれて亡くなったという連絡が入って、行く日程を少し延ばしてということが自分自身にもありますので、こういった交通事故については自分なりに特に関心があるところであります。

 私の祖母の場合は、夕方に自転車で見通しのいい田んぼの中の道を走っていましたら、猛スピードの車に後続から、飲酒はしていなかったようですが、追突をされて亡くなりました。亡きがらを見ると、遺族の方はどなたもそうだと思うんですが、なかなか見たくないような状況でもあり、そのほかの遺族の方々の気持ちというのもこういったものなのかなというのが私自身の経験からもあります。

 ですから、こういった今回の刑法改正の方向については大いに賛意を持っているところであります。

 そこで、これは先ほど細川委員からも同趣旨の質問がありましたけれども、改めて、できるだけ簡単に、国民の皆さんが聞いて、ああそうかとわかりやすい形でお答えをいただきたいと思います。

 平成十三年でやりました危険運転の致死傷罪、それから今回新設をされる自動車運転過失致死傷罪との違いというものについて、簡明に御答弁をお願いします。

小津政府参考人 危険運転致死傷罪は、故意に、わざとということでございますが、危険な自動車の運転行為を行い、その結果人を死傷させた者を暴行によって人を死傷させた者に準じて処罰しようというものでございまして、やや専門的になるかもしれませんが、暴行の結果的加重犯である傷害罪や傷害致死罪に類似した犯罪類型でございます。したがいまして、危険運転致死傷罪に掲げられております危険運転行為は、悪質、危険な自動車の運転行為のうちで重大な死傷事犯となる危険が類型的に極めて高い運転行為であって、暴行の結果的加重犯であります傷害や傷害致死に準じた重い法定刑によって処罰すべきものだと認められる類型に限定されているわけでございます。

 他方で、自動車運転過失致死傷罪は、人の生命身体の安全を保護法益といたしまして、自動車の運転上必要な注意を怠って人を死傷させた者を処罰しようとするものでありまして、これは過失致死傷罪の加重類型になるわけでございます。これまで自動車運転による過失致死傷事犯として業務上過失致死傷罪により処罰されてきたものは一般に本罪に当たる、このように考えております。

石関委員 平成十三年以降、先ほど細川委員からも同趣旨の質問がありましたけれども、やはり今の類型でいうと、前者の方の危険運転致死傷罪というのは、適用件数を挙げていただいて御答弁をいただきたいんですが、やはり少ない。これに類型されるものは、それでもそれほど多くはないんだということでよろしいんでしょうか。

小津政府参考人 まず件数だけ御答弁申し上げますと、平成十四年以降の統計で、平成十四年から平成十七年までは年間約三百人から三百三十人ほどで推移しておりました。平成十八年には、仮集計ではございますが三百七十六人となっておりまして、それまでと比べますと二割ほどの増加になっているということでございます。

石関委員 わかりました。理解をいたしました。

 次の質問に移ります。

 危険運転致死傷罪、平成十三年の刑事局長の答弁では二輪車への導入については否定をされておりますが、この五年間の中で、その必要性が、どういうところで認識が高まってこういうふうに必要になったんだということを改めてお尋ねしたいということと、今、五年間たってこれが導入されるということはやはり当時の判断が甘かったのではないかというふうにも思わざるを得ない部分があるんですが、これについてのお尋ねをいたします。

小津政府参考人 危険運転致死傷罪を新設いたしました平成十三年の刑法の一部を改正する法律に関しまして、衆参の両委員会におきまして、自動二輪車の運転者を同罪の対象とする必要性につき引き続き検討すべき旨の附帯決議がなされているところでございます。

 そこで、法務省におきまして、この点につき引き続き検討いたしましたところ、近時、酒酔い運転によるもの、赤信号無視によるもの、著しい速度超過によるものなど、二輪車の悪質かつ危険な運転行為によって被害者を死亡させたり重大なけがを負わせたりする事故が少なからず発生しているということが認められましたので、適正な科刑を実現するために今回二輪車を含めたいということでございます。

 ところで、平成十三年のときに、それでは二輪車を加えなかったではないかということについてでございます。

 先ほど御紹介いたしましたように、危険運転致死傷罪は、故意に重大な死傷事犯となる危険性が類型的に極めて高い運転行為を行って死傷させた者、これを傷害罪、傷害致死罪と同程度の法定刑で処罰するということでございますので、その対象となる運転車両につきましても類型的に非常に危険性が高いものに限定すべきものと考えまして、そのような観点から、二輪車についてはそこまで言えないのではないか、いわば慎重な検討の結果そのようにしたわけでございますけれども、その点についてはその当時から御議論、附帯決議もいただきまして、私どもとして、その後の二輪車の事故の実態について調査いたしまして、確かにそのような実態があるし、これを加えるべきであるという判断に至った、こういうことでございます。

石関委員 わかりました。

 これはこれで結構だと思うんですが、やはり当時からもそういう指摘があり、とはいえ、行政、我々自身も予見できる範囲というのは限られていますし、その後のいろいろな重大な事件等があって世論の動向もまた幾らか変わった、これを取り入れてこういった二輪車についても加えられるということだと思うんですが、やはりできる限り、指摘があったら、行政も無謬ということはありませんから、ただ、間違えましたとなかなか言えない立場ということはわかりますが、やはりそこの部分はよく含んでいただいて、適切な科刑や、それから厳罰化による抑止や、いろいろな部分がありますから、慎重な検討をいただいて、今後も取りかかっていただきたいというふうに改めてお願いをします。

 そこで、飲酒運転をしたりとか酒気帯びをしたりする人がいて事故を起こすということで、どういう例があるのかなということで拾ってみますと、何か、重ね飲みとかいって、酒気帯び運転とか飲酒運転をして、一回逃れてしまう、出頭する前に家で飲んで、いや、さっき飲んだんです、こう言って逃れようとする例がある。

 あるいは、先ほど民主党の細川委員からも説明がありました。民主党の案では、密閉されていないアルコール飲料をトランク以外の車内に積んで運転することは禁止というのがこの法案には盛り込まれていたところです。これについてはいろいろな理由があると思うんですが、議論の中ではそういった話もあったというふうに聞いております。

 これも、漫画なんかで出てくるんですね。飲酒運転や酒気帯び運転をしていて、アルコールをここに用意しておく、検問で窓をあけた瞬間に警官の前でそれを飲んで、いや、今飲んだんですと。これで逃れられるんだというのが若者の間でまことしやかに伝わったということが実際あるんですね。私も、そんな話も聞こえてきたり、漫画でそんなのを書いたものを読んだことがあります。

 だから、こんなことをしてもだめだ、こういった罪を犯した人間はしっかり検挙されて適切な科刑を受けるんだということを知りたいので、そういった例も含めて、重ね飲み等の例、これもしっかり検挙されて処断されますよ、こんなことを教えてもらえればと思います。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 飲酒運転につきましては、飲酒量を特定しますと、それによりまして、時間経過それから体重などによります一定の計算式で事故時ないしは取り締まり時の血中濃度が幾らであったかというのが計算できるわけでございます。実際、それで捕まえております。

 例を二つ申し上げますと、昨年六月ですが、岡山県で飲酒事故を起こした男ですが、警察官がすぐに行きませんでしたので、臨場する前にその男はビールとしょうちゅうをその事故現場で飲みました。酒は事故の後で飲んだんだというふうに主張いたしました。これは、飲酒検知をやりまして、それから飲酒量と突き合わせますと、事故前にも飲酒量があったということが特定できますので、業務上過失致死傷罪とあわせまして酒気帯び運転で検挙しております。

 また、昨年九月の神奈川県の例で申し上げますと、これは取り締まりの現場でございましたが、飲酒検知を行おうとしたところ、その直前に運転者が警察官の目の前で缶チューハイを飲みました。今、酒を飲んだということでございます。これも、検知量とそれから飲酒量の関係が出てまいりますので、これを立証いたしまして酒気帯び運転で検挙しております。

 したがいまして、数は全部調べ尽くせませんが、そのような措置をしておるわけでございます。

石関委員 先ほど申し上げましたけれども、若者の間に一部、こういうことで逃れられるんだと大変誤った言説が流布しているような部分もあると私も承知しておりますので、だめなんだということでしっかりと周知をしていただきたいというふうに思います。

 それと、最近、飲食店に行きますと、特に居酒屋さんとかレストランとかにステッカーがあって、飲んだら代行車を呼んでください、運転はだめですよということをよく目にするようになりました。これについては、酒を提供して、明らかにそれを飲んでいて、その方が飲酒運転なり酒気帯び運転をしていくということについての、酒を提供したお店の側が幇助に当たるということだからだというふうに承知をしております。

 これは、同じように、お酒を提供した人が幇助に当たってこれも罪に問われるということですので、アルコールじゃなくて、例えば日本における自動車の公道を走るときの最高速度というのは何キロになっているんでしょうか。標識がないところは六十キロ、高速道路は八十キロ、百キロあるいは百二十キロとかで走れるところはあるんでしょうか。日本の国内における法定速度は最高何キロなのか、教えてください。

    〔委員長退席、早川委員長代理着席〕

矢代政府参考人 申し上げます。

 法定の最高速度は道路交通法政令で定めておりますが、高速道路の本線車道では、普通自動車、バス、自動二輪車につきましては時速百キロでございます。大型貨物、大型特殊自動車が時速八十キロでございます。それから、高速道路の本線車道以外の道路につきましては時速六十キロでございます。原付につきましては時速三十キロということでございます。

 なお、公安委員会が道路標識でこれと異なる最高速度を指定した場合にはその速度ということになりますが、高速道路本線車道で時速百キロメートルを超える速度を指定している区間はございません。

 それから、それ以外、本線車道以外では原則として六十キロ以下になりますが、一部、自動車専用道路等で高速道路と同様の構造を持つ道路で、時速七十、八十あるいは百キロまでの規制はございます。

石関委員 わかりました。

 アルコールを提供すると幇助になるということですが、自動車メーカー等については、海外輸出用に限るということであれば別でしょうけれども、実際はほとんどの車は百八十キロぐらい出るようになっていたり、メーターは二百四十キロまで切ってあったり、高級車だともっとあるんじゃないですかね。原付についても、制限は三十キロということですけれども、六十キロ出ますよ。これは明らかに違反ですけれども、リミッターというのを切ってしまって八十キロまで出るとか、そういう若者もいるやに聞いておりますけれども、こういうものをつくらせているというのは幇助にならないんですか。

小津政府参考人 そのような車をつくっている理由につきましては所管外でございますので、幇助犯ということについてだけ御答弁申し上げます。

 もちろん、一般的に犯罪の成否は個別事案について検討すべきものではございますが、一般的に、幇助犯が成立するためには、幇助をする者の側に幇助意思に基づく幇助行為が必要であるとされております。そして、幇助意思があるというためには、正犯の実行行為を認識するとともに、自己の幇助行為が正犯の実行を容易にするものであることを認識、認容することが必要であるとされております。

 お尋ねの例に即して申しますと、幇助犯が成立するためには、製造、販売した自動車の運転者が速度超過の罪を犯すことをそのメーカー側が認識し、かつ、当該自動車を製造、販売することが運転者が速度超過の罪を犯すことを容易にするものであると認識するとともに、犯罪事実が実現しても仕方がない、やむを得ないと認容しているということが必要でございますので、果たしてそういう要件に当たるかどうかということになるであろうと思います。

石関委員 わかりました。

 国土交通省さんにもおいでをいただいておりますので、今の定義が幇助ということでありますが、ただ、やはり日本は百キロまでしか走れませんよということであって、それはごく限られた人は、自分のうちで何かサーキット場があって、そこでいっぱい走れる、こんな人もいるのかもしれませんが、今の認識、ない方がおかしいと思うんですね。

 日本国内で乗る車で百八十キロも出ちゃう。これは、国土交通省としては、メーカー、業界に対して、こういう認識をお持ちなのかどうか、あるいは最低、リミッターというものをつけてはいかが、幇助になっちゃいますよ、こんな指導をしてもいいのかなというふうに思いますが、国土交通省の認識、あと、こういった観点からの指導、業界とのいろいろな話し合い、これが行われてきたのか、今後こういったものもお考えになる余地があるのか、お尋ねをいたします。

松本政府参考人 自動車の構造、装置につきまして基準をつくって規制をしている立場からお答え申し上げます。

 自動車について一定以上の速度が出ないようにするということにつきましては、一般道のさまざまな速度規制、今ございましたけれども、それの状況に柔軟に対応できるような技術はまだございませんけれども、御指摘の高速道路での単一の制限でございますか、最高速度につきましては技術的に対応が可能でございますので、既に大型のトラックにつきまして、御指摘のリミッターという形で装着の義務づけを実施してございます。

 これは、事故分析をいたしました結果、高速道路での大型トラックの事故のうち、死亡事故の割合が大変大きい、さらに一事故当たりの被害も大きいということがございます。それから、大型トラックの死亡事故の半数以上がまさに速度違反領域で発生している、こういう統計もございますので、ここら辺を踏まえて実施したものでございます。

 具体的に、平成十五年九月からリミッターの装着を進めておりまして、これは新車だけでは時間がかかりますので、使用過程車も含めて、昨年の八月までの期間で対象車両について実施したところでございます。

 御指摘の乗用車を含む他の車種につきましては、高速道路の死亡事故の割合あるいは速度違反領域での死亡事故の割合ということを見てみますと、大型トラックに比べましてはかなり低い状況にございます。そういうことでございますが、今後のそういう領域での事故の発生率などをよく勉強しながら今後検討していきたいと思っております。

石関委員 ありがとうございます。

 取り組みについては評価をいたします。ただ、そのほかの車種についても、いろいろ検討して鋭意取り組んでいただきたいというふうに思います。高速道路とか普通の道でも、すごい車がいますよ。何でこんな、それは高級車ですからスピードは出るんでしょうけれども、大変危険な運転をしている人もいますから、その点についても、車は走る凶器だとか、こう言われることもありますので、取り組んでいただきたい。

 それから、内閣府さんについては、来ていただいていてせっかくですけれども、時間がなくなって恐縮ですが、やはり厳罰化だけで抑止ができるというものではないというふうに思いますので、法務大臣を中心に、それから内閣府、総合的な対策をとって、こういった事故が起こらないよう鋭意取り組んでいただきたいとお願いをいたします。

 ありがとうございました。

早川委員長代理 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 今回の刑法改正、特に飲酒、ひき逃げの厳罰化ということで、当然もっと前にやっておいてしかるべきことが随分おくれてしまったなというような印象を私は持っております。

 去年ですか、私の自宅は今埼玉の浦和なんですけれども、そのすぐ近くの川口市で起きた、幼稚園の園児の列に車が突っ込んでしまった、二十一人もの被害者が出ているというような事件、またそれ以前にも、九州の方で飲酒運転で幼い子供たちが亡くなったという話があります。

 まず、厳罰化というのは必要だなと私は思うんですけれども、本当にそういうことだけでいいんだろうか。例えば道路状況、うちの近所なんかでも本当にガードレールがないようなところはたくさんあるわけですよ。そういう裏道を車がびゅんびゅん走っている、トラックなんかも走っている、こういう状況をきちんと改善していくのが我々国会の責任ですし、また、何か事件が起きたから慌ててびほう策的に何かするということの繰り返しではなかなか、被害者というのは何の落ち度もないわけですから、特にこの交通事故の被害者というのは何の落ち度もない人たちなわけですよね、こういう人たちを一人でも今後起こしてはいけないなという思いで、本当にこういう厳罰化だけでいいのか、もっとその周辺部分にも議論を広げていく必要があるのではないかなというふうに思います。

 まず、根本的なことを大臣に伺いたいんですけれども、今回の刑法改正ですが、これは過失犯なのか故意犯なのか。故意犯であれば、厳罰化することで、これは重いからもうやめておこうということになるでしょうけれども、過失犯に対して本当に厳罰化ということが適切な対処方法なのか。

 被害に遭った人のお気持ちを考えれば、あのぐらいで罰してほしい、これは当然必要なことだとは思いますけれども、刑事政策的にどういうふうに犯罪を少なくするのかを考えたときに、そもそも人をけがさせようとか殺そうとかと思って車を運転している人はいないわけですから、故意犯ならわかりますけれども。これを厳罰化することでどういうふうに効果が出てくるのか、ぜひそこを説明してください。

長勢国務大臣 今度新設する罪は、人の生命身体の安全を保護法益として、自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた者を処罰する、こういう過失犯でございます。

 刑法上、過失は罰せないというのが前提でございますけれども、今回新設しますのは、交通事故の抑止だけを目的とするものではなく、近時の自動車運転による過失致死傷事犯には、飲酒運転中などの悪質かつ危険なものや、多数の死傷者が出るなどの重大な結果を生ずるものがなお少なからず発生しており、また、この科刑状況を見ても、現行の自動車運転による業過罪は、法定刑、処断刑の上限近くで量刑される事案が増加していることから、この事案の実態に即した適正な科刑を行うことを趣旨として、今回の罪を新設しようということであります。ぜひそのように御理解をいただきたいと思います。

高山委員 ちょっと今の説明では、本当に今、上限を上げることで犯罪者が思いとどまる故意犯と同じように考えていいのかどうか、なかなかわかりにくかったんですけれども、政務官にもちょっと伺いたいんです。

 実際、ひどい結果が生じている。これだけひどい結果が生じているのだから重く罰するべきだというふうに私は思っています。思っていますけれども、これは故意犯と過失犯ということがありますので、本当にこれを厳罰化することで過失犯を抑制することができるのか。だから、私、冒頭にも言いましたように、この刑法の改正だけで本当に問題の解決になるのかという今問題提起をしたいわけなんです。

 政務官にまず伺いたいのは、結果の重大性にかんがみて、厳罰化することは当然必要だと思いますけれども、将来の抑止という意味では、これを厳罰化することで過失犯、業過にどういう効果があるのか、どうお考えなのか、政務官、ぜひ被害者の生の声も聞いたお立場からお答えいただきたいと思います。

奥野大臣政務官 予期していなかったものですから、勉強不足かもしれませんが。

 この間、実は、先ほど委員のおっしゃった川口市の被害者が私のところへおいでになって、とにかくほかの犯罪と比較してバランスがとれないじゃないか、こういうことで、何とかもう少し厳罰化を考えてくれないかという陳情を受けました。

 私も被害者の気持ちはわかりますけれども、やはり加害者が、今おっしゃっているように故意にやったならば、あくまでもしっかりと厳罰にした方がいいと思います。ただ、過失犯については、ほかの犯罪の刑罰と比べてバランスがとれた形にすることが一つだろうと思うし、また、その人が将来社会で立ち直って一般市民として社会に貢献できるような余力だけは残すということも場合によっては考えなければいけないのかもしれませんし、あるいは、先ほど議論になったように環境整備も、道路の死角がもう少しなくなるようにとか、ガードレールがちゃんと整備されているようにとか、そういうようなことも考えなくてはいけない、そういったあらゆる要素を考えた上でバランスのとれた刑罰に持っていくことが我々としては必要なことではないかなというふうに思います。

 余り具体的な、委員が期待されるような答えではないのかもしれませんが、私は自動車会社にもおりましたから、そういう意味では、自動車の性能といったことももう少し考える必要があるところがあるかもしれません。いろいろな角度から見て、皆さん方が納得するレベルのバランスのとれた刑罰というものが、一方的に厳罰化だけじゃなくて、いろいろなバランスをよく見た上での最終判断というのが刑罰になるのではないかなというふうに感じます。

高山委員 今政務官の答弁にもありましたように、本当はこれはかなり深いきちんとした議論をしなければいけないのではないだろうか、そういうことをしないで、第二、第三のまた同じような被害を本当に防げるんだろうか、これはまさに国会の責任なんじゃないかなと私は思います。

 その点、今、過失犯の法定刑を重くすることでどういう犯罪抑止になるのか、こういうこともきちんと論じないで、結果としては私はこの厳罰化の方向には賛成ですけれども、どうも何か事件が起きたときにわあっと騒いで、例えばきょうも、委員の方々、特に自民党の委員の方なんかはほとんどいらっしゃらない。のど元過ぎればじゃないですけれども、きちんと委員会にも参加して議論をどんどん活性化させていく必要があると私は思います。そういうびほう策だけでやられているのであれば、残念だなという気もいたします。

 この点、もう一つ伺いたいんですけれども、酒類提供者への罰則強化ということで、これも以前から言われていたことです。あの人が飲むのはわかっているのに出してしまった、あるいは居酒屋さんなのに駐車場を完備しているとか、こういうことが今までは普通に行われていたし、まあそのぐらいいいじゃないかというような雰囲気がどうも世の中にあったと思うんですね。けれども、重大事件が報道されたり、あるいは社会の規範がどんどん今変わってきていますから、こういう酒類提供者への罰則というのも当然必要だと思うんですけれども、まずこの罪について、なかなかわかりにくいので、細かく説明していただきたいんです。

 まずは大臣に、ちょっと常識的な観点から伺いたいんですけれども、まず、酒類提供者が、あなた、車で来ていて飲むんですかと聞いて、飲むような、運転して帰るようなことを言っているのにお酒を出してしまったということだと思うんですけれども、いつこれは犯罪になるんですか。お酒をどんと出したときが犯罪なのか、一体これはいつが実行の着手の時期になるのか。常識的に考えて、これはいつなのか。

 なぜかというと、一杯目を出したときが罪なのか、それとも、重く、本当にこれで泥酔状態になるような五杯目のビールを出したときなのか、それとも十杯出して酔いつぶれちゃった場合には、それは別に罪にならないのか。いつが実行の着手の時期なのか、まず大臣に伺います。

長勢国務大臣 直接担当していませんので、私もよくわからないところがありますが、酒類提供罪の着手時期は、酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれのある者に対して酒類を提供した時点であります。ただ、処罰の対象となるのは酒類の提供を受けた者が飲酒運転をした場合に限られており、その時点で既遂となるということのようですけれども、よく私もわかりません。

高山委員 いや、大臣、これは物すごく大事な問題だから常識でということで私は初めに大臣に伺ったんです。

 というのは、せっかく、国会で法改正して、刑法で飲酒、ひき逃げ厳罰化の方向と出たはいいけれども、一般の酒屋の人だとかレストランの人がいつ罪になるのかわからないというのでは、ほとんど法改正をした意味がないですね。やはりこれはわかりやすくしなければいけないと思うし、しかも、今の御説明ですと、酒類を提供したときが実行の着手なわけですか。

 そうすると、何か刑法の総論の授業みたいですけれども、では、その人、運転者が眠っちゃった場合、それは罪になるのかどうなのか。今、運転を実際したときに処罰だということであれば、犯罪は成立して処罰条件ということなのか。これは細かい話なので局長にお願いします。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 酒類の提供罪は、酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれのある者に対して酒類を提供するということであります。着手時期というお尋ねですが、この酒類提供罪には未遂罪はございません。通常、未遂罪がありますと、ではいつ着手して、けれども未遂になったのか、こういうことになるんですが、これには未遂罪はありませんので、あくまで構成要件に該当する事実を充足したかどうかということでございまして、そうしますと、一つには、酒類を提供したということ、それから、酒類の提供を受けた者が飲酒運転をしたということ、これによりまして処罰の構成要件を充足することになります。

 したがいまして、今大臣からもお答え申し上げましたが、あえて着手時期はと問われれば、それはおそれのあることを知りながら酒類を提供した時点でありますけれども、その構成要件を充足するということで言えば、酒類の提供を受けた者が飲酒運転をした場合でございます。

高山委員 もう一つ伺いたいんですけれども、そうしますと、本犯とか従犯という言い方が適切なのかどうかわかりませんけれども、実際酒類を提供した、そしてその酒類を提供された運転者が運転したということになった場合に、その酒類を提供した者に教唆したり幇助したりということは考えられますか。

矢代政府参考人 論理的にはそれは考えられます。

高山委員 そうしますと、これは条文にももちろん書いてあるんですけれども、あえて確認でちょっと聞きたいんですけれども、酒類を提供したときに、駐車場つきの居酒屋みたいなところに行ったときに、お客様、お酒を飲んで運転しますかということを聞く役の人というんですか、それは多分、本当に末端の店員ですよね、その人が問題になるんですか、それとも店主の罪になるんですか、まずはそれを教えてください。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 酒類を提供するという意味でございますが、これは、自分でその酒につきまして処分権限がある者が、これを飲酒運転をすることとなる者に対しまして飲める状態にしてやる、こういうことでございます。

 したがいまして、居酒屋などのような場合には、店員などはみずから処分権限があるのではなくて、やはり店主に処分権限があるということで、酒類提供罪の主体につきましては店主を想定しているわけでございます。

高山委員 そうしたら、もう一つ伺いたいんですけれども、そういうレストランや居酒屋などで、運転者には酒類は出しませんよという張り紙のようなものを最近よく見るんですけれども、酒類を提供するに当たり、その人が本当に運転するのかどうなのか、どういう確認義務を課していますか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 飲酒運転を防止するための対策ないしは行動と、酒類の提供罪に該当するかどうかということを分けて考える必要がございますが、現在、そのような張り紙その他の行為をやっていただいておりますが、これは飲酒運転を防止するための自主的な努力としてやっております。したがいまして、そういうものを確認する義務というものは、法律上あるわけではございません。

高山委員 大臣にちょっと伺いたいんですけれども、あなた、飲むんですか、飲んで運転するんですかということを聞く法律上の義務もなくて、しかも、大体、あなた、飲んで運転しますかと聞いても、うそをついたりする可能性ももちろんあるだろうし、そういう確認義務がないのであれば、お客さんからビールちょうだいと言われたらついつい出してしまうことも当然あると思うんですよね、レストランや居酒屋の経営者が。それで、結果の重大性でどんどんさかのぼってきて、もう何人もの被害者が出ているんだぞと。

 運転者が悪いというのはまだわかりますよ。だから、厳罰化はこの刑法の改正に関してはいいと私は思うんですけれども、さらに今度、酒類提供者まで、おまえ、あのときお酒を出しただろうということになる。これは、確認義務を課されていなくて、さかのぼってきて、結果が重大だからということで。

 だって、その人はただ仕事をしているだけなんですよ。お酒を頼まれたから出しているだけなんですよ、お金、対価ももらって。どうしてこの人が罰せられなきゃいけないんでしょうか。大臣、ちょっと説明してください。

長勢国務大臣 所管の法律ではありませんので、責任ある答えができるかどうかはわかりませんけれども、一般的に、酒飲み運転をどうにかして制圧しなきゃならぬというのは社会的要請でございますから、こういう法律ができるわけでありまして、そういう法律のもとに、運転をするような人に酒を飲ませないようにすることについて店の方々も注意を払うのは、この法律に基づく一般的な注意義務だろうと思います。

 具体的にどういうことがあれば罪になるかどうかというのは事案によって判断されるべきことだろうと思いますけれども、今先生言われるように、確認義務その他がきちんと書かれていないから責任がないというのは、法の趣旨ではないのではないかなというふうに思います。

高山委員 今のはちょっとよくわからない答弁だったんですけれども、これは、居酒屋やレストランの経営者にしてみれば、別にただ仕事というか商売をしているだけで、何も別に違法行為をしているわけじゃないわけですよね。

 それで、このような犯罪化するようなことが出てきて、しかも確認義務も別に課されていないとなると、当然、先ほどの話だと、居酒屋やレストランの店主が責任を負うことになって、従業員さんは別に責任を負わないとなると、実際に確認するのは従業員の人が、あなた、運転ですかどうですかと確認するんだと思いますし、店主にしてみれば、本当に、結果が生じたがために、たまたまその店で飲んでいたということで罰せられるということになり、非常にこれは不適切だなというふうに私は思いますけれども、警察庁の方で補足的に説明することがあれば、短目にお願いします。もう一件、取り上げなきゃいけないことがあるので。

矢代政府参考人 社会生活上あるいは通常の営業行為の中で、酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれがあることが十分認識される場合とされない場合があります。したがいまして、一番典型的な例を言いますと、いつも常連客が車で来ている、またきょうも来たというような場合でございます。いつも飲んだら帰っていく、そういう場合が典型的でございます。

 仮に車で来たとしましても、その人が、車で帰るのか、置いて代行で帰るのか、それはわかりません、タクシーかもわかりません。

 したがいまして、通常の営業行為の中でこれを事実認定していきますと、これは運転することとなるおそれがある者であることを十分認識して酒類を提供していると認定できますので、そういう場合に処罰の対象とするわけでございます。

 その過程で、行政上はその義務を課しているわけではありません。

高山委員 あともう一点、短目にお願いしたいんですけれども。

 この酒類提供、二年と三年で法定刑に違いが出ているんですけれども、お酒を出す時点で、この人が泥酔するのかどうなのかというのはわかるんでしょうか、二年、三年というふうに法定刑に差をつけていますけれども。

 民主党案は、酒類提供者は一律三年ということで、お酒を出すことがいけないんだという価値判断ですけれども、この二年と三年の法定刑の差を説明してください。

矢代政府参考人 結果として、酒気帯びだったか、あるいは酔っぱらいだったかということで差をつけております。

 これは、そもそも酒類提供自体が幇助行為を類型化したものでございます。したがいまして、結果として、飲酒運転をした者が酔っぱらいだったか、あるいは酒気帯びだったかということと連動させるのが適切であると考えたわけでございます。

 認識としましては、酒類を提供してはならないということが規範でございまして、したがいまして、その結果、どこまでいくかというのは、例えば、保護責任者遺棄罪もそうですけれども、遺棄した結果、致死になるのか、致傷でとまるのか、あるいは危険運転致死傷罪を連想いたしますが、結果として、どのような結果になったかということも一つの要素でございますので、したがって、罰則に差を設けるのが適切であろう。

 これは、選択肢ですので、委員の御指摘のような考え方の整理も法制としては可能かと思いますが、私どもは、差をつけた方がいいだろうと判断いたしまして、御提案申し上げているわけでございます。

高山委員 酒類を提供する時点で、その人が重い飲酒運転なのか軽いのか、酒気帯び程度なのか、わかって出している人なんているんですかね。ちょっと雑な立法だなという気も私はします。

 どうも立法だけじゃなくて、かなり雑なことが捜査過程でも行われているのではないかと思いまして、二、三確認させていただきたいんです。

 押収資料、捜査をするときに押収する資料の所有権や管理権が一体だれにあるのか。またそれは、今日本では令状主義ということで、どこぞの機関が裁判所に対して、こういう事件があるのでこの物件を押収したいというようなことをきちんと明示して強制捜査の場合にはやっていくんだと思うんですけれども、よもやそういう捜査資料が流用されたりですとか、そういうことがどういうルールで行われているのか、ぜひ説明していただきたいんです。

 まず、強制捜査の場合と任意捜査の場合、もし違いがあるのであれば、それぞれ、その捜索、押収した資料の所有権や管理権がだれにあるのか、その管理責任がだれにあって、損害や毀損が生じた場合の回復責任等はどういう手続で行ったらいいのかということを伺った後で、押収資料の返却や廃棄処分などがなされる場合にはどういう手続をとるのかということを、これは事前にかなり詳細に通告してありますので、御答弁願います。

 これはできれば大臣にお願いしたいのですけれども、大臣がそういうことは把握されていないということであれば、局長からで結構です。ただ、大臣が把握されていないとなると、いろいろな重大な事件が起きるんじゃないかなと私は危惧しますけれども、一般論でお答えください。

小津政府参考人 まずは、制度のことでございますので、私から御説明申し上げます。

 刑事訴訟法には押収という概念がございます。押収には、差し押さえ、領置、提出命令の三種類がございます。その中で、差し押さえというのが、通常は裁判所の令状を得ることが多いわけでございますが、強制的に占有を取得するということでございます。領置と申しますのは、関係者が任意に提出した物の占有を取得するものであります。それともう一つ、提出命令。つまり、強制の場合も任意の場合もあるけれども、それを出してもらったところが責任を持って保管するということでございます。

 それから、捜査機関等との間で押収資料を相互に利用するということでございますけれども、これは、捜査の必要がある場合にそういうことを行うことがございます。ただ、その場合の手続が法律等で定められているかと申しますと、それを個別に具体的に規定した法律というのはございません。(高山委員「いやいや、一般的に」と呼ぶ)ですから、一般的にそのように具体的に定められたものはないということでございます。

 そして、その場合に、一般的に押収した資料を管理する者がきちんと管理しなければいけないという責任があるのは当然でございまして、それを怠ってどなたかに損害を生じさせた、そこに故意過失があったという場合につきましては国家賠償の問題が生じる、このような整理でございます。

高山委員 大臣、この点、先週、東京地検で証拠書類を過って廃棄してしまった、しかもそれが緑資源機構談合問題の資料である、これは農水委員の人が聞いたらびっくりするような、官僚組織一丸となっての証拠隠滅かと言う人までいますよ。それで、そのときの東京地検の次席検事は、当庁に全責任があり、おわびするしかない、こういうようなコメントをされています。

 大臣に伺いますけれども、全責任があるんだということをこの次席検事がおっしゃっていますけれども、これはどういうふうに責任をとって、どうやって損害を回復されていくおつもりなんでしょうか。

長勢国務大臣 私も報告を受けて、大変驚くというか、本当に申しわけないことだと思っております。

 現在、状況等も捜査中でございますので、それに沿ってきちんと対応しなきゃならぬというふうに思っております。具体的な対応について今の段階で申し上げる状況にはありませんので、お許しをいただきたいと思います。

高山委員 大臣、これは一件じゃないんですよ。これは警察庁のものですけれども、つい最近も、世田谷で年末に起きた事件で、何かのこぎりだとかの証拠品を部屋の端っこに置いておいたら間違えてごみと思って捨ててしまったですとか、こういうことが非常に多いんです。

 これに対してどういう再発防止の方策を練っていくかというのを真剣に考えないと、またこれで資料がなくなっちゃったということになると、これは捜査に影響が出るに決まっていますよ、押収してきた資料あるいは領置してきた資料がなくなっているわけですから。だから、捜査に影響が出るに決まっているわけですから、どういう対策を今考えられていますか。

長勢国務大臣 これは、検察の信頼を極めて損なうものであるだけでなくて、捜査そのもののあり方としても大変支障を来すことがあり得るわけですから、厳重にやらなきゃならぬことは言うまでもございません。

 当然、管理というのはそういうふうにやられているものと私は信じておりましたけれども、こういう事件が起きた以上は、どういうことになっているのか、きちんと調べて、対応すべきことはしたいと思います。

高山委員 きちんと調べて対応するのは当然だと思います。

 これからどんどん証拠品が、例えば、今度パソコンからデータをとってくることもできるようになった、またそれを消失してしまったですとか、管理の方法というのをきちんと考えないと、捜査手法が幾ら複雑化しても、肝心の捜査機関の方で、証拠をなくしました、あと勝手に流用していますみたいなことがどんどん続いていくということでは、これは、領置あるいは押収してきた物をどういうふうにきちんと管理するのかというルールをもう一回見直すべきだなというふうに私は思いますけれども、今時間が来たので、終わります。

早川委員長代理 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 法案に先立って、きょうの東京新聞にも、四十一年前に起こった袴田事件について話題になっておりましたが、私は、この事件は冤罪の可能性が極めて高い、こう思っておりまして、十年越しで取り組んできました。

 実は、長らくの間、彼は無罪をずっと訴え続けていたんですが、裁判に次々と敗れる中で、もうだれとも会いたくないと、弁護士だけではなくて肉親とも会わない状態、かなり長期にわたって会わないということがありましたが、今から四年前に三十分ほど、私は直接、弁護人や肉親のお姉さんとともに、御本人と話したことがございます。普通の会話は成立しなくて、彼の思い描いた空想の世界の中の話を延々と聞いた。袴田巌という人はもういないんだということで、全能の神が吸収した、全能の神は今どこにいらっしゃいますか、こういう話をずっと三十分いたしました。

 そこで、ちょっと矯正局長に伺いたいんですが、その〇三年に面会がかなった後、またしばらく会えなくなって、ただし、昨年の十二月くらいからかなり頻繁に面会にも出てこられるようになったと聞いているんですね。直近また面会しなくなっているということなんですが、どんな状況でしょうか。

梶木政府参考人 ただいま委員がお尋ねの事柄と申しますのは、我々が身柄を預かっております特定の被収容者の個人情報あるいはプライバシーの問題にかかわる事柄でございます。したがいまして、そういった特定の被収容者の病状等について、私の方からコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、一般論として申し上げますと、委員も御承知のように、東京拘置所は医院としての医療体制が整っておりまして、常勤の医師も多数おります。被収容者の病状に応じて適切に対応しているというふうに承知をいたしております。

保坂(展)委員 どうも職分、矯正局長という立場からはなかなかこういうことしか言えないということらしいんですが、実は、森山法務大臣のときにも私はこのお話を聞きまして、少々精神的に病んでいるようなことも聞いていますというようなことも、こういうやりとりでしているわけです。

 そこで、では大臣にお尋ねします。

 要するに、拘禁症というのがありまして、確定死刑囚ですから、非常に厳しい状態に置かれていて、他方で、日弁連支援事件ですから応援する人たちも多くて、たしか二年ほど前に、東京高裁で再審開始かもしれないと大変報道陣も集まったんですね。開始されたら、弁護士も御本人に会わなければいけないですよね。ところが、要するに、会うこと自体をもう嫌だというふうに拒否している。さらには、再審が開始されましたよという書類も、裁判関係書類はもうみんな嫌だということで拒否されるんですね。ということになると、再審がもし、そのときには棄却をされました、したがって今さらに最高裁で争っていると思いますけれども、開始をされたときに本人に伝えるという方法がないという状態が当時の現状だったんですね。

 もう一つ、そういう状態ですから、普通の状態ではないということで、成年後見制度というのを使いまして、この袴田死刑囚の財産に対する処分、ここに成年後見が必要であるという申し立てをして、今裁判所が認定をしようかどうしようかということで努力しているんですが、これまた裁判所も会えないわけですね、鑑定をしようと思っても。

 これに関して、やはり何か堂々めぐりみたいな状態になってしまって、本人の状態がどういう状態なのか、成年後見が必要な状態なのかどうかも判断できないような状態なので、身柄を預かっている矯正局、東京拘置所の方から裁判所に対して、医療記録だとか何かを含めて、裁判所が判断できるような資料はなるべく出してあげてほしいと思いますが、いかがですか、大臣。

長勢国務大臣 この問題、今お聞きしましたが、ちょっとお答えは今できませんので、よろしくお願いします。

梶木政府参考人 我々のところで身柄を預かっております被収容者に対しての面会等につきましては、法令の範囲内で適切に面会をしていただいたりしておるわけでございます。ただ、その際、御本人が会いたくないということで拒否されますと、御本人の意向というものも我々としては無視できない状況であります。

 また、委員が今御示唆されましたように、一般論として申し上げますと、我々がお預かりしている被収容者の中に、さまざまな法律関係が発展し、あるいは裁判所が関与されているというような場合があろうかと思います。そういった場合には、東京拘置所だけではなく、すべての施設において、我々の職員が裁判所あるいは場合によれば被収容者の代理人である弁護士の先生方とも適切に対応していく、そういうことに努めておるというふうに考えております。

保坂(展)委員 会えないわけなので、せめて資料は裁判所側が判断できるように出してあげてほしいということを要望いたします。

 では、法案の方に入っていきたいと思います。

 今も高山委員から質問があったようですが、今回の刑法と並んで、道交法の改正ということが参議院先議で衆議院に今送られてきている状況だと思います。

 ちょっとお尋ねいたしますけれども、今回は、飲酒をして、そして飲酒をしている状態であるということを知りながら車に同乗したという人も処罰の対象になっているやに聞いているんですけれども、それは間違いないですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおりでございまして、これは一定の車両を除きますが、「何人も、車両の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して」酒気帯びでございますが、「運転する車両に同乗してはならない。」ということでございまして、六十五条第四項ですね。(保坂(展)委員「法定刑について」と呼ぶ)

 法定刑につきまして申し上げます。

 まず、運転者が酒酔い運転の場合ですが、これは三年以下の懲役または五十万円以下の罰金でございます。それから、その運転者が酒気帯びの状態だった場合ですが、これは二年以下の懲役または三十万円以下の罰金でございます。

保坂(展)委員 ということで、同乗している者も処罰されるわけです。

 先ほどの質問とダブらないようにちょっとお聞きいたしますけれども、今回、道交法の改正で、私も実は片山隼君のひき逃げ事件とかいうことをずっと議論してきて、業過で、余りにもひどいんじゃないかという声、もっともだと思ってきましたので、総論として、交通事故対策のために厳罰化をする、今までの刑を見直すということには賛成の立場なんです。

 しかしながら、飲酒運転をした人と車両提供をした人は本当に同罪なんだろうかということをやはりしっかり考えておく必要があるのではないか、これは道交法についての問題ですけれども。

 つまりは、これまで飲酒運転の教唆とか幇助という形で処罰されることも可能だった人たちがいて、しかし、そういうことも当たらないとして、車両は提供したけれども処罰されない人もいた。今回、一律に、酒気を帯びた者に対して車両を提供した人、車両提供者が、百万円以下、五年以下という、運転者、つまりその実行犯、酒酔い運転の実行者と同じ刑になってしまう。その場合に、今までの幇助犯とか教唆犯以外の処罰されなかった人まで含まれてしまうんじゃないか、同じ法定刑にするというのはつり合いから見てどうだろうか、こういう点、どうですか、警察庁。

    〔早川委員長代理退席、委員長着席〕

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもが御提案をしております道路交通法の一部改正ですが、これは、飲酒運転者本人の制裁の重罰化とあわせて、運転者の周辺で飲酒運転を助長する行為、幾つかの行為について罰則を強化するということにしております。

 この飲酒運転を助長する行為ですが、さまざまなパターンがあるわけでございますが、これは幇助行為として現行法でも処罰可能なものでございます。ただ、非常に悪質なものがございますので、その中から一定のものを類型化して重罰化しようということでございまして、そのうちの一つとして、車両の提供というものを取り出しております。

 車両の提供の場合には、車両を提供してこれを運転していけといった場合には実は教唆になってしまう場合もあるわけですけれども、教唆にはならないという場合には、従前ですと幇助でやっておりました。これは本犯の半分以下ということでございます。

 ただ、車両というものは飲酒運転という犯罪の成立に欠くことのできない決定的な要素でございますので、これを提供した場合には、提供を受けた運転者はいつでも飲酒運転ができるという状態になるわけでございますので、提供行為について取り出しまして飲酒運転の本人と同様の制裁を科そう、こういうことでございます。

保坂(展)委員 この条文を見ると、「何人も、酒気を帯びている者で、」「車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。」こうありますよね。

 警察庁にもう一問聞きますけれども、要するに、酒気を帯びている者といえば、深酒をしてしまった二日酔いの人が例えば運転を業務とする配送所か何かに出てきて、いや、きのうちょっと酒を飲み過ぎちゃいましてというようなことを言って、上司が、おまえ、健康によくないから気をつけろよと言って、そのまま配送に出かけたというとき、事業所は処罰されるんでしょうか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 上司につきまして、実は、自動車の使用者の義務というのがもう一つ現在ございまして、それで、そういう業務関係で下命をしたり、あるいは容認した場合には、それ自体、一般の幇助行為とは別にもう既に制裁規定がございまして、それによりまして、下命容認行為ということでそういうものは罰せられることになります、その一定の地位があればですが。

保坂(展)委員 今ちょっと業務で配送所という例を挙げましたけれども、では、これは個人間でも罰せられるんですか。ちょっときのう飲んじゃいまして、いや、ちょっと頭が重くてみたいな人に車を貸してしまった場合は、五年以下、百万円以下なんでしょうか。

矢代政府参考人 そのような関係のないものにつきましては、一般に、一つの行為とそれに対する幇助行為ということでとらえますが、それが今回、車両提供罪の構成要件、つまり、運転することとなる者に対して提供すれば本罪の対象になり得るものでございます。

保坂(展)委員 これが私はちょっとあいまいだと思うんですよね。

 世の中に、注意深い人もいるし、何かそんなに細かく人を見ていない人もいるわけですね。もしかすると二日酔いということも、酒気帯びだという自覚があって、これは危ないなと思いながら貸した場合は構成要件に当たるのかもしれないけれども、全くそういうことは考えなかった、気がつかなかった、二日酔いだというのは聞こえた、しかしそれが酒気帯びだという認識はなかったという場合でもそれはあるんですか。

矢代政府参考人 まことに具体的な判断になってまいりますが、つまり、酒気を帯びて運転することとなるということを、これはあくまで故意犯ですので、認識する必要があります。そこで、二日酔いだなということで、それを聞いた者と本人が日常どのくらいのつき合いをしておって、事情を知る立場にあったかどうか、それらのものを含めまして、仮に飲酒運転をすることとなるということを認識しておればなる、認識できなければならないということでございます。

保坂(展)委員 これは、従来の教唆、幇助で十分機能するのではないか。これを実行行為者と同じ刑罰まで引き上げる立法事実というのはあるんですか。ちょっと刑事局長、どうですか、法務省の方は。法務省もちょっと見解を。

小津政府参考人 ただいま所管の局長の方から御答弁があったところでございます。刑事罰則ということでございますので、もちろん私どもといたしましても、構成要件の明確性あるいは罰則の他とのバランス等々のところでは重大な関心があるところでございます。それぞれの所管のところで、やはりそのようなことについてはこのような罰則は必要である、そしてその合理性があるということでおつくりになったもので、それについては、私どもも同様の認識を持っているところでございます。

保坂(展)委員 私はいろいろ新聞のファイルをしておりまして、二〇〇〇年、平成十二年の十一月の新聞記事に、検察庁関係者が事故を起こしてしまったという記事がございます。当時、東京地検の岩村修二さん、特別公判部長が運転する乗用車が中央分離帯に激突をして、乗っている方、検察庁の幹部の皆さんが、ある方は重傷を負ったという事故です。東名高速で中央分離帯に乗り上げて横転をしたというかなり大きな事故です。

 これに関して、どういう処分がされたのか。報道では、ゴルフで汗を流した後、軽くビールで一杯やった、こういう報道もあったやに記憶しているんですが、いかがでしょうか。

小津政府参考人 お尋ねの事案がこれであると認識しておりますが、刑事の処分につきましては、横浜簡易裁判所において罰金二十万円の略式命令が発付されたと承知しております。

 その公訴事実は、直線道路における単調な運転から注意散漫となり、前方左右を注視せず、かつ、ハンドル、ブレーキを的確に操作しなかった過失により、同乗していた二名に、それぞれ三カ月と一週間の傷害を負わせたというものでございます。

保坂(展)委員 ゴルフをやった後、ビールで軽く一杯という事実はどうなんですか。

小津政府参考人 当時の資料によりますと、そのような事実はなかったという記録が残っております。

保坂(展)委員 そういうような報道はありましたか。わからなければ確認してもらえばいいです。

小津政府参考人 今の時点では、ちょっと報道は把握しておりません。

保坂(展)委員 法務大臣、これは刑法、飲酒運転の厳罰化ということですが、事故を起こしたことは人為的なミスですが、この当時、運転されていた方は検察庁の東京地検特別公判部長で、東京地検次席検事になっていらっしゃいますね。そのほか、同乗していた人はみんな検察庁の幹部だったんですが、現在どういう役職につかれているかというのはおわかりになりますか。事前に通告してあるので。

小津政府参考人 失礼いたしました。

 そのときに同乗していた者は、それぞれ検察庁で働いていた者でございまして、現在の役職で申しますと、東京高検の次席検事、地方検察庁の検事正、現在、高等検察庁の検事長をしておる者もおります。

保坂(展)委員 何かはっきり言わないので、私が申し上げますと、静岡地検の検事正でいらっしゃったり、東京高検次席検事でいらっしゃったり、大阪高検検事長ですね。まさに検察を支えている最高幹部なわけですね。

 罰金二十万円ということなんですが、これは、ゴルフの後にビールを飲んで、やや注意力が散漫になって起きた事故なのかどうか、重大な関心がありますね。全くそういう事実はないと断言できるんでしょうか。

小津政府参考人 当時運転していて処罰をされた者については、飲酒の事実はないと認識しております。

保坂(展)委員 ということは、同乗していた方たちは飲酒していたということなんですか。

小津政府参考人 現時点でそこのところまでの確認はしておりませんけれども、あるいは若干飲酒をしていた人が同乗していたかもしれません。今のこの時点で、ちょっと私、確認しておりませんが。

保坂(展)委員 やはり検察庁としても、最高幹部が取り調べ対象だと、余り細かくは尋問したりしないものなんでしょうかね。

小津政府参考人 当然のことながら、この事故を起こした者について十分な取り調べをして起訴をしたわけでございますし、もちろんその被害の状況、程度につきまして、被害に遭った者、それはまさに今同乗者と言われました方々の中の二人でございますけれども、必要な捜査は行ったわけでございますけれども、被害に遭った方の検察官あるいは被害には遭わなかったけれども同乗していた者がいるとすれば、その人たちが果たして飲酒をしていたのかどうかということについては、申しわけございませんが、今私の手元には資料がございません。

保坂(展)委員 これは、こういう法案を審議する際にやはり重要なことだと思うんですね。実際にこれから、すべての国民に対して飲酒運転は根絶しますよと。現に今、飲酒運転が発覚をしたりすると、学校の教師でも懲戒免職になったり、公務員でも仕事をやめる、こういう選択になるケースがふえていますね。そのくらい、だんだん厳しくなってきた。

 それが二〇〇〇年の段階ではどうだったのかということがありますけれども、どういう事故だったのか、そしてその場面で、ゴルフをした後でビールを軽く一杯やって、もしハンドルを握っていた方も含めてそうだとすれば、今警察庁から御説明があったような同乗ということで、三年以下、五十万円以下、こういうふうにこれからの法律では変わるわけですね。だから、きちっと調査をして、後ほど報告していただきたい。

小津政府参考人 繰り返しになりますけれども、運転をして事故を起こしていた者は飲酒をしていなかったわけでございます。

 私が今、手元に資料がないと申し上げましたのは、同乗していた者、その中の二人は被害者でございますけれども、その人がアルコール飲料を飲んでいたかどうかということについては手元に資料がないということでございますので、その人たちについて、今度の新しい法律で飲酒運転の同乗という構成要件に該当するかという問題は生じないのではないかと思いながら聞かせていただきましたが、念のために、運転者についてだけ繰り返して申し上げさせていただきました。

保坂(展)委員 法務大臣、やりとりを聞かれていて、古いケースかもしれませんけれども、七年前ですよね。こういうことで、もともと法規範をつくるべき、そこをいわば枢要なところで担保している人たちがどういう事故を起こしたのか、それはどうだったのかということを、大臣としてもきっちり説明を受けて認識をしていただきたい。今事実はわからないわけですから。私は、そういう報道があったのではないかというふうに聞いています。しかし、ないというふうにおっしゃっている。細かいところはわからないとおっしゃっているので、大臣からもしっかり事情を聞いて、後ほどまた答えていただけますか。

長勢国務大臣 終了した事件、過去のことでございますから、直接この審議に関係するとは余り思えませんけれども、おっしゃるのであれば、必要があれば聞いてみます。

保坂(展)委員 具体的にどういうことだったのか非常に深い関心がありますし、ぜひそこのところは明らかにしていただきたいというふうに思います。

 以上で終わります。

七条委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

七条委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、刑法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

七条委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

七条委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、早川忠孝君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。高山智司君。

高山委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    刑法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 自動車の運転が国民の日常生活に不可欠なものとなっていることにかんがみ、改正内容の周知徹底に努めること。

 二 自動車運転過失致死傷罪及び危険運転致死傷罪の運用に当たっては、自動車運転による死傷事故に対し、事案の実態に即した適正な処理を行うこと。

 三 刑の裁量的免除規定については、交通事犯の被害者等の感情、今後における実務の運用等を考慮し、引き続き検討を行うこと。

 四 安全運転に資する処遇プログラムの充実を図る等、交通事犯の再犯防止策を積極的に推進すること。

 五 交通事犯の被害者等に対する情報提供その他これらの者を保護するための施策の充実に努めること。

 六 自動車運転による死傷事故の発生を防止するため、関係行政機関の連携を強化し、道路交通環境の整備、交通安全教育の充実等の総合的な施策の実施に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

七条委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

七条委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。長勢法務大臣。

長勢国務大臣 ただいま可決されました刑法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

七条委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

七条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

七条委員長 内閣提出、参議院送付、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。長勢法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

長勢国務大臣 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 裁判員制度のもとで、裁判所に同一被告人に対する複数の事件が係属した場合に、事件の内容等によっては、すべての事件をあわせて審理すると裁判員の負担が著しく大きくなることがあり得るところ、広く国民が裁判の過程に参加し、その感覚が裁判内容により反映されるようになることによって、司法に対する国民の理解や支持が深まり、司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになるという裁判員制度の意義にかんがみますと、幅広い層から、より多くの国民の参加が可能になるようにするため、裁判員の負担を軽減する必要があります。加えて、裁判員の参加する刑事裁判の審理において、証人尋問等を記録した記録媒体を評議等において活用することは、裁判員が充実した審理及び裁判を行うことができるようにするため特に有用であると思われます。また、検察審査員は、選挙人名簿から無作為抽出した名簿をもとに、選挙管理委員会における欠格事由等の資格審査を経て、検察審査会が無作為抽出で選定しているところ、裁判員制度では、裁判員の欠格事由等の資格審査は裁判所で行われることとなるのに伴い、検察審査員の資格審査等の事務も裁判所職員が充てられている検察審査会に移行することが合理的でありますから、そのための選定手続の整備等を図る必要があります。

 この法律案は、このような状況を踏まえて、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の司法制度改革関連法の円滑な実施を図るために必要な法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、裁判員制度のもとにおいて、裁判所に同一被告人に対する複数の事件が係属した場合に、裁判員の負担を軽減するため、一部の事件を区分し、区分した事件ごとに審理を担当する裁判員を選任して審理し、有罪、無罪を判断する部分判決をした上、これを踏まえて、新たに選任された裁判員の加わった合議体が全体の事件について終局の判決をすることができるようにすることであります。

 第二は、裁判員の参加する刑事裁判における充実した評議等を可能とするため、その裁判の審理において、証人尋問等を記録媒体に記録することができるようにすることであります。

 第三は、検察審査員の資格に関し、現在市町村の選挙管理委員会が行っている欠格事由等に係る資格の有無の判断を検察審査会が行うこととするとともに、検察審査員等の欠格事由及び就職禁止事由の整理、その他検察審査員等の選定手続等に関し所要の規定の整備をするものであります。

 その他所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

七条委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十八日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十八分散会


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