衆議院

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第2号 平成20年2月26日(火曜日)

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平成二十年二月二十六日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 下村 博文君

   理事 倉田 雅年君 理事 実川 幸夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 早川 忠孝君

   理事 水野 賢一君 理事 加藤 公一君

   理事 細川 律夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    木原 誠二君

      清水鴻一郎君    杉浦 正健君

      武田 良太君    棚橋 泰文君

      長勢 甚遠君    丹羽 秀樹君

      西本 勝子君    古川 禎久君

      馬渡 龍治君    武藤 容治君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    石関 貴史君

      枝野 幸男君    河村たかし君

      楠田 大蔵君    近藤 洋介君

      園田 康博君    田名部匡代君

      中井  洽君    西村智奈美君

      古本伸一郎君    神崎 武法君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         鳩山 邦夫君

   法務副大臣        河井 克行君

   法務大臣政務官      古川 禎久君

   最高裁判所事務総局総務局長            高橋 利文君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  河合  潔君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小野 正博君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         宮本 和夫君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    末井 誠史君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    倉吉  敬君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    梶木  壽君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    西川 克行君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           黒川 達夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        高原 正之君

   政府参考人

   (国土交通省航空局飛行場部長)          室谷 正裕君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 尾澤 克之君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  七条  明君     丹羽 秀樹君

  棚橋 泰文君     木原 誠二君

  古本伸一郎君     田名部匡代君

同日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     棚橋 泰文君

  丹羽 秀樹君     西本 勝子君

  田名部匡代君     園田 康博君

同日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     七条  明君

  園田 康博君     近藤 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 洋介君     楠田 大蔵君

同日

 辞任         補欠選任

  楠田 大蔵君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  西村智奈美君     古本伸一郎君

    ―――――――――――――

二月二十六日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(寺田学君紹介)(第二一一号)

 成人の重国籍容認に関する請願(寺田学君紹介)(第二一二号)

 外国人住民基本法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第二五四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

下村委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官河合潔君、警察庁長官官房審議官小野正博君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長宮本和夫君、警察庁交通局長末井誠史君、法務省大臣官房司法法制部長深山卓也君、法務省民事局長倉吉敬君、法務省刑事局長大野恒太郎君、法務省矯正局長梶木壽君、法務省保護局長西川克行君、法務省入国管理局長稲見敏夫君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君、厚生労働省大臣官房審議官黒川達夫君、厚生労働省大臣官房統計情報部長高原正之君、国土交通省航空局飛行場部長室谷正裕君、防衛省大臣官房審議官尾澤克之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局高橋総務局長及び小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。清水鴻一郎君。

清水(鴻)委員 自由民主党の清水鴻一郎でございます。

 きょうは、鳩山邦夫大臣の所信に対しまして質問をさせていただくということになりました。大変光栄でございます。

 まず最初に、法務大臣の所信表明を承りまして、大変同感するところが多いな、そのとおりだなというふうに感じました。法務行政も国民にわかりやすいものにしなければいけない、まさにそのとおりだろうと思いますし、我が国が大事に守り育ててきた和をなす文明、そしてまた美と慈悲の文明、あるいは相互尊重、相互理解、相互扶助、日本人の精神、知恵ともいうべき伝統を守っていかなければいけないということも含めまして、本当にそのとおりだろう、今、何か日本に欠けているのがそういうものだろう。そこがぎくしゃくした親子の関係あるいは兄弟、そういうものが、一昔前ならばなかなか日本では、ゼロではなかったですけれども、最近ではそういう大きな事件が起きても、数日たてばまた新しい事件が起きて忘れてしまうというようなことも含めて、今の日本の中に、そういう本来近い関係にある者の中でも意思の疎通がうまくいかないというようなことも含めて、何か日本のよさというものが失われつつあるのではないかな、そんなふうに思って、大臣の冒頭の所信表明につきましては、そのとおりだなと思っています。

 まず最初に、質問といたしましては、まさに今大臣が、国民にわかりやすいものでなければいけないということの中で、そういうものも含めて、裁判員制度というものが導入されるということでございます。

 裁判員制度、今国民に対して本当にいろいろな説明を法務省もされていますけれども、なかなかまだわかりにくいし理解しにくい、そしてまた国民の間でも、裁判員制度は重要な意義があるけれども、しかし、この制度は本当にいいのかな、あるいはそれに当たってやれるのかな、量刑も含めて判断できるのかな、また、裁判員制度とは少し違いますけれども、アメリカの制度、そして映画とかを見ますと、何か劇場型になって本当に正しい判断がされるのかな、そんなことも含めて、批判的な意見もありますし、心配する旨もございます。

 施行まであと一年と迫ったこの機会に、改めて裁判員制度の意義につきまして、大臣の御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

鳩山国務大臣 確かに先生おっしゃるとおり、欧米の文明、欧米といっても、法律的にいえば、大陸法と英米法、成文法主義か不文法主義かというような点では全く異なっているわけでありましょうし、そういう中で、裁判員制度を導入するのは、外国のまねごとをする、そういう観点では全くないわけでございまして、日本の社会に合った形でこれを定着させたいというふうに思っております。

 やはり一番重要なのは、国民が裁判の過程に参加して、国民の一般的な感覚が裁判の内容に反映されることが大事で、そのことによって、司法に対する国民の理解というのでしょうか、あるいは支持のようなものが深まっていって、司法というものが国民的な基盤の上に成り立っているという形になればありがたい、それが一番いいという意味で裁判員制度というものを考えているわけでございます。また、そういう場合には、裁判の手続とか判決が国民にとって非常にわかりやすいものになることが期待されるわけでございます。

 やはり、距離といってはおかしいかもしれませんが、裁判というものは、自分が経験しなければ別世界のことで、特に刑事裁判は別世界のことで、すごく距離がある、そういう状態にあると思いますが、裁判員制度がうまくいきますと、その距離が縮まって、司法に対する国民の理解、また、いずれ自分も参加するかもしれないということで、そういうなじみよさみたいなものが出てくるのではないだろうか。

 ただ、問題は、私自身が国会議員を三十年近く務めておりながら、また、新聞等を読んでおりながら、実際、法務大臣になるまで、裁判員制度の具体的な中身について周知していたとは全く思えない自分です。ということは、国民の理解を進めることはなかなか大変なんで、それは法務省と最高裁と協力して、今後のPRというのはうんとやっていかなくちゃいけない。それから、模擬裁判のようなものも、私も見に行きましたけれども、できるだけ数をふやしていきませんと、国民の理解が進まないというふうに危惧いたしております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 裁判員制度を円滑に実施していくために、まさに今おっしゃいましたけれども、国民に対しての十分な制度の説明、それから理解をしていただくということ、そしてそれを解消していくために、今少しおっしゃいましたけれども、具体的にはどんなふうな取り組みをしていくということを考えておられますか、大臣。

鳩山国務大臣 繰り返しになりますけれども、とにかく国民に理解されて裁判員制度を始めなければならない。もうあと、実質一年ぐらいしか準備期間はないというところまで来ております。

 法務省においては、最高裁それから日弁連などと連携協力して広報活動を一生懸命やっているつもりでございますし、私の名刺にも裁判員制度と書いてあるわけで、副大臣や政務官の名刺にも全部裁判員制度と書いてあるわけですけれども、具体的にパンフレットやリーフレットの配布、広報用ビデオ制作、その上映ということで、これはとにかくそういうビデオ等もできるだけ多くのところで上映をしていただかないと困るわけでございます。

 全国の検察庁では、その組織力を活用して、検事正や多くの職員が、出前というんでしょうか、地域の集まりとか、あるいは企業、特に企業の場合は、大企業になれば、裁判員になってくれませんかというのが、必ず大きな企業には何人かのところに行くわけでございますから、そういう大企業の理解を得るための説明とか、いろいろやっておるわけでございますが、草の根広報活動をやらなければならぬな、ちょっとそんなような言葉も使って頑張っていこうと思っております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、冒頭おっしゃいましたように、裁判員制度が、国民に身近になって、そして真の理解を得る、そういうことに役立つように、そして正しい国民的な判断が裁判の中にも導入されるということを期待したいと思います。

 次は、ちょっと通告をしていないんですけれども、大臣の所信表明で、まさに私も同感したところでありますけれども、死刑の判決を受けた後、国民から見ればブラックボックスに入ってしまうのはおかしいということで、その情報公開をされたことは大変意義深いと私自身は思っています。

 あと、大臣の所信表明の中で、実刑と執行猶予の差が大き過ぎるということを実感されておるということでございます。まさに、実刑と執行猶予の差は大きいなと私も思います。

 さらにまた言えば、死刑と無期懲役、いわゆる終身刑ということでありますけれども、日本の場合、私も詳しくは知りませんけれども、無期懲役だと何年かすれば出てくるというようなことも含めて、死刑と無期懲役の差も大変大きいのではないかなというふうに思っています。

 この辺、大臣がそういう観点から勉強していきたいというふうに所信を述べられていますけれども、どのような勉強を具体的にしていく、どのような方向性というものを追求したいと考えているのか。ちょっとこれは通告していませんので、大臣の意思といいますか、所信に述べられたことだけでもお聞きできればと思います。

鳩山国務大臣 社会奉仕命令という公共のために仕事をさせるやり方は、開放処遇の一環として考えられるところでございまして、もちろん私が法務大臣になる前に法制審に諮問をしているわけですね。

 ただ、法制審の議論を待たなきゃならないところなんですけれども、これは私見でありますけれども、役所の皆さんにも大体理解をしていただいたと思うんです。

 清水さん、刑務所の過剰収容問題というのがありますね。過剰収容を解消する道は、犯罪を減らすか施設をふやすか、どっちかしかないと思うんですね。それを、刑務所が過剰だから、懲役、禁錮、本来収容しておかなくちゃいけないのを、少し出して外で社会奉仕命令で仕事をさせたらどうだという感覚は、私はとってはならないと思います。

 そうではなくて、今先生から御指摘があったように、実刑と執行猶予の差がすごく大きいわけですね。もちろん、それは司法で判断するわけですから、執行猶予でいいよという判断は厳正なものだと思いますけれども、これは極端に差があるわけですね。保護観察がつくというのが一割だけしかないですね。だから、実刑を免れて執行猶予になるとフリーみたいな形になってしまう。その間に、執行を猶予してやるけれども、少し社会奉仕したらどうだというようなものがあってもいいんではないかというふうに考えることがあるということでございます。

 それからもう一つは、死刑の問題については、廃止論者の声もいろいろと聞かせていただいておりますけれども、いわゆる終身刑という概念がありますね。これは、最も残酷な刑だということも考えられるわけですね。一生、絶対出さない、出られないみたいな。そういうもので、結局、死刑廃止論者が終身刑を訴える場合もあるし、被害を受けた遺族が、無期懲役じゃいずれ一定の期間で出てくるから終身刑を設けてくれという、要望はいろいろな形で出てきているわけですけれども、これは仮釈放という制度があったり、それの全くない終身刑というのを設けるとか、やはり最も残酷ではないかとか、いろいろな議論がありますので、これは相当慎重に構えていかなければ、終身刑という議論はそう簡単に結論が出ないと思っております。

清水(鴻)委員 ありがとうございました。いろいろ検討していただくということでお願いしたいと思います。

 時間もありませんので、次の質問に行きますけれども、大臣は所信表明の中でも、我が国をいわゆる訴訟社会にしてはいけないということを述べられています。そういう中で、今、医療の中でも、産科とか外科、脳外科を初め、訴訟が大きいという原因のために、その科に行く人も少ないというような現象も起こっています。

 そしてまた、奈良とかでもありましたけれども、救急医療へ行っても受診できない。それは実は、一度も受診したことのない無受診の妊婦の方が、初めて七カ月、八カ月、出産というような時期を迎えて医療機関を探す。一度も診たことのない方を診て、全く状態がわからないわけですから、引き受けて、そして責任のある治療ができるかどうかということも医療機関にとっては責任問題であります。

 でも、引き受けよう。引き受けた結果、例えば前置胎盤であって大変緊急性を帯びて、そこで手術をするべきかどうか判断をしなければならない。あるいは、福島県ですか、県立大野病院でありましたように、産婦人科の先生が、全前置胎盤という大変リスクの高い状態であって、これを後送病院まで送れば母体もだめになるかもしれないということも含めて緊急の手術を行った。そして、当然出血の多い手術でありますから、出血が多量にありまして、もちろん血液もオーダーしているわけですけれども、その血液も、緊急でありますから、なかなか間に合わないということもあってお母さんが亡くなってしまった。しかし、子供さんは帝王切開等でうまくいった。

 その場合、例えば搬送していれば赤ちゃんも含めて亡くなったかもしれないということもあるわけでございます。だけれども、やはりその先生は一応逮捕という形をとる。そうなれば、なかなか医療機関も、訴えられたり何かするよりは、つまり自分の責任の持てる範囲でしか仕事をしない、いわゆる萎縮医療にもつながっているのかなというふうに思います。

 もともと、医師法二十一条というのは、医師は、死体または妊娠四カ月以上の死産児を検案して異状があると認められたときは、二十四時間以内に所轄の警察署に届け出なければならないと定めていまして、そしてまた、違反者に対しましては、五十万円以下の罰金という刑罰を科すというようなことが医師法で決まっています。

 しかし、この医師法二十一条というのは、実は明治の時代に由来していまして、もともと犯罪、つまり不審な死が犯罪に起因している可能性が高い、あるいは可能性があるということで、初動捜査等も速やかにしなければいけないということで、二十四時間以内に届け出るということが原点であったようでありますけれども、ある時期から、厚労省の通達等もあって、医療過誤あるいは医療過失による死亡の可能性がある場合は所轄の警察署に医療管理者が届け出なければいけない、つまり院長が届け出なければいけないというようなことになってしまった。それで、拡大解釈の中でそういう状態になりました。

 そこで、警察に訴えられる。警察が調べに来る。カルテを見る。警察の方ももちろん多少は素養を踏んでいられるかもしれませんけれども、専門家でない方が、ここで手術をする、ここでこういう治療をしたということに対して正しいかどうか、今の医学的レベルでどうかということを判断するのは大変難しい、説明してもなかなか理解してもらえない。となると、つまり、もうリスクの高いものはなかなかできないということになってしまうと思うんです。

 その中で、死因究明制度の中で、医療安全調査委員会、仮称でありますけれども、今厚労省等が立ち上げようとしている。つまり、まず警察に届け出るということではなくて、医療安全調査委員会という専門家の集団でつくられたものに届け出る。そこで、明らかな過失あるいは故意等があれば、これはやはり警察というものに届け出なければいけないけれども、医学的な判断の中で、これはやむを得ない、危険性の高い手術であって十分な説明もなされた中でそういうリスクは当然考えられる範疇であるということであれば、それは警察の問題ではないという方向になってきています。

 これは、実は前回長勢法務大臣にも質問して、そのことに対してどういう大臣としてのお気持ち、あるいはその取り組みはどうかということをお聞きしたことがありますけれども、随分前へ進んで、かなり具体的な形が出てきました。

 そこで、鳩山大臣にも、こういう取り組みに対してどういうふうにお考えか、できれば積極的な御意見をいただければと、御質問させていただく次第でございます。

鳩山国務大臣 清水鴻一郎先生、高名な医師であられて、いつもいろいろと教えていただいておりますことを心から厚く御礼申し上げます。

 確かに、死因究明というようなことで細川律夫先生が非常に専門的に研究されて、いつも貴重な御意見を賜っておりまして、私もこういう問題は大変大きいと思っておりますが、これが医療過誤というか医療の問題になってまいりますと、結局医師が、いろいろ追及される、場合によっては裁判になるということを過度に恐れて治療とか手術を萎縮してやらなくなるということが起きれば、国民的な大損失になるわけですね。

 したがって、自民党でも、今、医療紛争処理のあり方検討会というのを開催されておられて、医療の透明性、信頼性の向上のために議論していただいているので、それを見守っていきたいと思います。

 それで、厚生労働省が主催している診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会、ここが中心になって今検討していただいておりまして、死因究明のための第三者調査組織を設けることを前提とした議論が進んでいるというふうに聞いております。この検討会には当然法務省もオブザーバーとして参加をいたしておりますので、議論を見守りながら、その議論に法務省も参加をして、どういう方法が一番いいのか、それこそ政党を超えて政治がこれから解決をしていかなければならない大きな問題であるという認識は持っております。

 余り個人的なことを言うべきでないかと思いますが、私の父がかなり難しい手術を受けたときに、事前に期待したのとちょっと別の結果になってしまうと、その時点で死んだわけではありませんけれども、医学のことがわからない家族としては、やはり何だと思いたがってしまうわけですから、やはり権威ある第三者組織が存在するということはいいことなのかなというふうに思います。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、国民のために、萎縮医療にならないように、そして、もし何かあっても、専門家の方に、正しいといいますか、そういう判断が下されるようにということを願って、ぜひまた法務省や警察の関係の方もそれに対して御協力を願って、国民のためのものになる、そういう制度にしていただきたいと思います。

 それから、同じ死因究明に関しまして、これは質問はもうしませんけれども、この前、いわゆるお相撲さんが亡くなった、そのとき、実は愛知県警では異状なしということで、事件性はないということでしたけれども、遺族の方が新潟大学に解剖を依頼したということの中でああいうことが発覚したということがありました。

 死因究明というのは捜査の原点ではないかと思いますけれども、実際に、例えば昨年でも異状死体は十五万四千六百体あった。しかし、専門の検視官が出動したのは全体の一一・九%でございました。そしてさらには、検視官が大変少ない。全国で百四十七人しかいないというようなこともございます。そしてまた、犯罪性が疑われる場合の司法解剖も、昨年実施された司法解剖が約五千九百体ということで、異状死全体のわずか三・八%でございます。遺族が求めて行政解剖をした、そういうことを含めても解剖率九・五%。

 もし何かあって後で事件になっても、解剖がないと、いわゆる証拠がないといいますか、確定的なことができないということも含めて、やはりこれは死刑制度も含めて、冤罪あるいは逆に日本が一番ある意味では事件が見逃されている、特に毒殺とかそういうことも含めて見逃されているということも言われている。つまり犯罪天国だという。つまり、それだけ司法解剖などの解剖がちゃんと十分にされる制度が、人も含めてないということでございます。

 これは、質問していくと時間がもうありませんので、その辺のところは、大臣にも積極的に理解していただいて、そしてぜひ前向きに、日本が犯罪天国にならないように、また、アルカイダなどが日本に出入りしたというようなこともあって、これはまた別の角度でありますけれども、日本がちゃんとした司法国家として、犯罪が見逃されない、冤罪もあれでありますけれども、した人が逆に見逃されてしまうということのないような制度をしっかりと構築していただきたい。同じ死因究明の関係でありますので、少し私の意見も含めて述べさせていただいて、大臣の積極的なお取り組みをよろしくお願いしたいと思います。

 次に、法教育の問題であります。

 司法改革を進めていくに当たりましては、司法制度自体をより使いやすいものにするだけでなくて、国民の皆さんに、先ほど裁判員制度でもありましたけれども、国民が司法を支えているということを理解していただくことが大変重要だ、教育の世界の中で法や司法を適切に教えることが必要であるというふうに考えます。

 例えば、私が長年携わってきました医療の世界でも、国民の、自分たちの健康は自分たちで守るという意識は大変重要だと思います。こういう意識を身につけてもらえるように、今、保健や体育の授業などでわかりやすい教育が実際医療に関してはされている。しかし、同様に、司法や法律の世界でも、国民に、自分たちの権利は自分たちで守るという意識をさらに身につけてもらえるような学校教育、法教育をわかりやすく進めていく必要があると思います。

 今般、文科省から学習指導要領の改訂案が示されまして、法教育が小学校、中学校において充実されることになっているということであります。その評価も含めて、評価できるものと考えられますけれども、これについて政務官に御所見をお伺いしたいと思います。

古川大臣政務官 法教育、自由で公正なる社会を支える物の考え方を身につける、この法教育につきましては、法務省もこれまで、大変意義のあることだということで普及発展に努めてまいりました。

 今般、文部科学省で、学習指導要領の改訂案の中で、委員御指摘のような項目が上がっておるわけですけれども、これは法教育を強化するという方向性でございますので大変評価しておるところでございます。今後とも、連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 続いて、法整備支援の国際協力について、自由民主党からその重要性を踏まえた提言もなされているところでありますけれども、これを受けて、先般開催されました海外経済協力会議においても、同会議が司令塔となって基本戦略を議論する旨が合意されました。

 今後、法務省としてはどのように法整備支援国際協力ということに取り組んでいかれるのか、その方針をお伺いしたいと思います。

河井副大臣 今御質問をいただきました法整備支援、積極的に取り組んでおりまして、既に平成六年、ベトナムから始まりまして、カンボジア、ラオス、インドネシア、ウズベキスタン、中国、そしてことしは中央アジア諸国にその輪を広げようということで、具体的には、専門家を長期あるいは短期で派遣する、そしてその国からこちらに来ていただく、その両面を今実施している最中であります。

 民法、民事訴訟法等を中心とする基本法令の起草支援とか実務の改善、法律家の人材育成支援などを行っておりますが、課題としましては、法務省の中にこういう国際的な分野で頑張ってくれる人材の確保と、それから言葉の問題も含めてしっかり養成をしなきゃいけない。

 また先生の御支援をいただきまして、私も事務方をしっかり督励していきたいと考えております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。ぜひ積極的にやっていただきたいなと思います。

 続いて、都市再生の円滑な推進を図るために、全国の都市部における登記所備えつけ地図の整備の取り組み状況につきまして、それから続けて、不動産登記のオンライン利用促進に関する取り組み状況についてお伺いしたいと思います。

鳩山国務大臣 都市部においては、確かに登記所、法務局備えつけの地図の整備が非常に重要でございまして、従来、市区町村が実施する地籍調査というのが一番のいい材料。これは測量しておりますので、それをもとにして備えつけ地図を整備してきているわけでございますが、いまだ十分でないという状況にございます。

 したがって、登記所備えつけの地図が存在しない、整備されていない場合にはせいぜい公図程度のことでやらなくちゃならない。実は、私の先祖代々の音羽の家も、何か隣といろいろやってみたら境界が違っていたということが二、三十年前に判明したことがあって、そういうことになりますと、なかなか不動産取引ができにくくなって、あるいは道路、下水道等のインフラ整備、都市再生のさまざまな事業もきちんとした地図がないとできない、こういうことでございますので、今緊急に整備しなくてはならない、いわば地図混乱地域という呼び名があるわけで、要するに、混乱している地域において特に重点的に作成作業を急がせるというふうに努力いたしております。

 それから、オンラインの問題は、とにかくオンライン申請が〇・〇二%ということで、本人確認の、個人認証が必要とかいろいろあるんです。細かい説明は省きますが、何か添付情報をオンラインじゃなくて郵送してもいいとかいろいろ簡易化しましたところ、平成十九年四月から十二月の間はトータルで九千件だったわけですが、この改善策を実施したら一月で五万七千件の申請が来たということで、やはり申請のやり方を簡素化すればオンラインはふえるんだな、こう思って、これからふえ続けていくように努力をしたいと思います。

清水(鴻)委員 ありがとうございました。

 質問をまだちょっと用意していたんですけれども、時間が来ましたので、これで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

下村委員長 次に、馬渡龍治君。

馬渡委員 自由民主党の馬渡龍治でございます。

 きょうは、再犯防止と、昨年始まりましたバイオメトリックスのことについてお話を伺いますが、いっぱいありますので、大臣、簡潔に御答弁賜りますようお願いします。

 今、日本の国民全員がそうだと思いますけれども、随分物騒な世の中になったな、テレビや新聞などで傷害、殺人、強姦などが連日のように報道されていて、これを抑止してほしいなという気持ちはだれもが持っていると思います。

 ところが、平成十九年版の犯罪白書を見てみますと、平成十四年をピークに少しずつ一般刑法犯の総数は減ってきている、認知件数は減っているようなんですが、ここでびっくりしたことがありました。要するに、三〇%の再犯がある、その者によって六〇%の犯罪が起きている。要するに、少数の者によって多数の犯罪が起きているという事実を知ってびっくりしました。ですから、初犯を予防するのも大事ですが、今、この現代にあっては、再犯を防止すること、ここに力を入れていくことが重要じゃないか。

 それで、この間まで、明治時代からずっと続いてきた監獄法というのがあったと思うんですけれども、確かに、刑務所においては刑罰が何か主になっていて、確かに刑務作業とか資格取得のための指導なんかはちゃんとやっていただいているんですが、まだまだ足りないところがある、そう私は感じます。

 そこで、大臣に、再犯防止のための取り組みについてお聞かせいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 これは最大の課題でございまして、今、馬渡委員おっしゃったように、再犯、もちろん再々犯も含めておりますが、犯罪が一回でない、そういう方が全体の六割の犯罪を犯しているわけです。それからまた、非常に悲しい数字でございますけれども、刑務所に今収容されておられる、そういう方が仮に満期出所した場合にどれくらいの犯罪、再犯をする率があるか、これはやはりかなり高い、六〇%なんという数字になる。ただ、仮釈放された方は、それだけ行状がいいから仮釈放、それでもやはり半分近くが再びそういう状況ですから、再犯の防止というのは、まさに馬渡委員おっしゃったように、初犯の人が二犯目を起こさないということが何よりも大事だということでございます。

 したがって、矯正施設、更生保護官署相互に連携して、いろいろな犯罪処遇のプログラム、とりわけ性犯罪などというのは繰り返しが非常に多いものですから、プログラムを実施しているわけでございます。やはりここで明らかなのは、仕事があるかないか、つまり有職者に比べて無職者の再犯率がはるかに高いということでございますので、これは厚労省と連携して、無職の保護観察対象者等が幅広い産業分野で就労できるように努力しています。

 それともう一つは、甘利経済産業大臣からも協力の申し出がありまして、例えば商工会議所とか商工会連合会とか、あるいは中小企業団体中央会とかそういうところに声をかけていただいて、犯罪を一度犯しても、そういう方が仕事につけるようにお願いをしてきているところでございます。

馬渡委員 確かに、大臣おっしゃるように、多数回の再犯者だって最初は初犯ですから、ここのところでしっかりと社会復帰できるようにしていただきたいと思います。

 ただ、再犯率が高い、高いといいますと、どうしても世の中で偏見が高まってしまう。そうすると、逆にうまく社会復帰できないでまた再犯を犯してしまうという悪循環になると思いますから、ここは大臣、世の中の皆さんが、犯罪を犯した人でも刑期を終えたら社会の一員として受け入れてあげるというような雰囲気をつくっていただくようにも御努力いただければと思います。

 先ほど大臣からお話しいただきましたが、再犯者は検挙時無職の場合が多い。そうなると、出所後の就労や更生保護施設の設置などの社会復帰プログラムの充実を図るというお話があったと思いますけれども、この再犯に向けて、刑務所における処遇プログラムはどのように実施して充実させていくのか、ここをお聞かせください。

梶木政府参考人 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律のもとでは、受刑者に対しまして、作業のほかに、本人に必要な改善指導を受けることを義務づけております。そこで、特に個々の受刑者が有する問題性に応じて特別改善指導といたしまして、例えば、薬物依存離脱指導、暴力団離脱指導、性犯罪再犯防止指導、被害者の視点を取り入れた教育、交通安全指導、就労支援指導、この六類型の指導を実施しているところであります。

 今後の取り組みでありますけれども、これらのプログラムを実施する中で、それぞれのプログラムの見直しを図るとともに、指導担当者の育成に努める所存でございます。

 また、本年六月をめどにいたしまして、新たに飲酒運転事犯者に対する認知行動療法を活用した効果的な処遇プログラムをつくろうということで、今、研究を重ねているところであります。

馬渡委員 河井副大臣は、副大臣会議で、ハローワークの活用だとか協力雇用主を多く得るために御活躍と聞いていますが、受刑者の自立を支援するということは、就職をしていただく、これは本当に再犯を抑制する上で大きな効果が期待できると思いますけれども、受刑者の円滑な社会復帰のために就職を支援する、そのためには職業訓練を充実させなきゃなりませんけれども、その具体的な内容を教えていただけないでしょうか。

梶木政府参考人 委員が御指摘になりましたように、職業訓練は受刑者の円滑な社会復帰を図る上で極めて重要だと考えております。

 職業訓練充実のための具体的な取り組みでございますが、平成十九年度におきましては、フォークリフト運転科、これにつきまして、例えば四施設百六十人を増加させるというようなことをいたしましたし、新たに配管科それから測量科、それからビル・ハウスクリーニング科、この三種目につきまして新設をしたということをしております。

 また、平成二十年度につきましては、新たにCAD技術科あるいは総合美容技術科といった新しい職業訓練の科目を導入すべく準備を進めているところでございます。

馬渡委員 次に、保護観察所が実施する再犯防止へ向けた処遇プログラム、これについてはどうなんでしょうか。その概況をお知らせください。

西川政府参考人 保護観察所では、再犯防止へ向けた処遇プログラムとして、平成十八年度から性犯罪者を対象とする処遇プログラムを実施しております。平成十九年十二月までに仮釈放者六百六十六人、保護観察つき執行猶予者四百五十四人に対してこのプログラムを実施しております。

 また、暴力的な犯罪を反復した仮釈放者及び保護観察つき執行猶予者のうち、覚せい剤依存、シンナー依存、暴力組織への加入等の暴力行為を誘発しやすい問題性を有する者については、暴力的な再犯を惹起するおそれが高いことを踏まえ、平成十九年度から、保護観察官の面接頻度を高めた綿密な生活状況の把握と、問題類型に応じた重点的な処遇を行っております。更生保護法施行後は、暴力的な性向のある仮釈放者や保護観察つき執行猶予者の感情の統制に焦点を当てた体系的な暴力防止プログラムの受講を特別遵守事項により義務づけて、実施する予定であります。

 また、覚せい剤事犯仮釈放者等に対しては、平成十六年度から、本人の自発的意思に基づく簡易薬物検査を実施することにより、薬物を絶つ意思を強化し、持続させる処遇を実施しているところですが、更生保護法施行後は、これを簡易薬物検査を含む体系的な覚せい剤事犯者処遇プログラムとして構成し、仮釈放者及び保護観察つき執行猶予者に対して特別遵守事項により受講を義務づけて、実施する予定です。

 さらに、飲酒運転者対策としましては、平成二十年度に保護観察対象者に対する飲酒運転防止のための指導教材を作成し、その指導を強化する予定です。

馬渡委員 それでは、更生保護法の施行に伴う保護観察の充実強化策について、その概要はどうなっていますでしょうか。副大臣。

河井副大臣 再犯防止につきまして、馬渡議員に大変興味と関心をいただきまして、感謝しております。

 先ほど、副大臣会議の話を御紹介していただきました。それは十一月十五日のことでありまして、鳩山大臣のお許しをいただきまして、特に私から、各役所、積極的に協力してほしいという要請をしたところであります。ただ、その中で、やはり法務省が、自分のところの所管でありますから、人一倍しっかり汗を流さなくちゃいけない。

 更生保護法が今度新しく施行されますけれども、この一条に、これまでにない文言、つまり、「再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに、」という文言が入りましたので、これまでよりも積極的に、具体的には保護観察官について、その使命と能力を高めるように教育指導を充実していく。

 それから、重大事犯者や暴力的性向の強い者、処遇に特段の配慮を要する者については、保護観察官がみずから直接処遇を行い、保護司の先生方と適切な役割分担を行っていく。あるいは、専門的な処遇のプログラムが必要な薬物、それから暴力的な性向の強いそういった保護観察対象者につきましても、特別遵守事項を義務づける。そして、これは一番重要でありますけれども、今後、各業界の就労支援に向けた幅広い御協力をいただくことができるように、国民の皆様のさらなる御理解と御協力をいただくことができるように、法務省として一生懸命これからお願い、そしていろいろな意味での一般的な世論喚起に努めていきたいと考えております。

馬渡委員 この再犯防止のためには、刑事司法機関の相互の連携はもちろんですけれども、就労、教育、保健、医療、福祉、いろいろなものに協力してもらわなかったらうまくいかないと思いますから、そこのところは鳩山大臣と副大臣のリーダーシップで、ぜひうまくいくように頑張っていただきたいと思うんです。

 さてここで、再犯を防止していくために、直接的に刑事施設職員の方々がきちんとやっていただくかどうかというのが、やはりいい結果を出すかどうかに関係すると思います。

 ところが、今、肉体的にも精神的にも、職員の数が少なくて大変な思いをしているとか、前回も質問のときにお話ししましたけれども、今お住まいの宿舎が大変老朽化している。だからここで、再犯防止ということで、やはり生きたお金を使っていただいて、そうすると、国の治安がよくなる、治安がよくなれば、国民も安心して暮らせるようになる、そうすると、景気もよくなっていくと思いますから、そういった意味でも、きちんとそこのところの予算はつけていただくように大臣にもお願いしたいと思います。

 続いて、出入国管理について。

 バイオメトリックス関連について、大臣が所信表明でも、テロリストの入国を阻止することを目的として、昨年十一月二十日から、個人識別情報を活用した新たな入国審査が開始されています。これは、一部の対象者を除く外国人の入国審査をする際に、指紋及び顔写真の提供を義務づけて、いわゆるブラックリストの照合を行うというものであるようですが、ほかの国はどうなっているのか、これを簡潔に教えてください。

稲見政府参考人 お答えいたします。

 まず、アメリカでございますが、二〇〇四年から、空港等の入国審査及び査証申請、ビザの申請の際でございますが、指紋、顔写真の提供を義務づけております。さらに、昨年の十一月からでございますが、空港等の入国審査の際に提供する指紋の数を従前の二指から十指に変更するという取り扱いを開始しております。

 さらに、イギリスでございますが、これは二〇〇六年から査証、ビザの申請時に指紋の提供を義務づけるということを開始しておりまして、日本に対しましても、昨年の十一月から同様の措置が開始されております。

 それに、詳細はまだ調査中でございますが、つい先日、EUにおきまして、二〇一五年までに入国審査に個人識別情報を活用するということが決定されたと承知しております。

 以上でございます。

馬渡委員 当初、これを導入したら外国から来ていただく観光客が減っちゃうんじゃないかとか、それから、物すごい時間がかかって大変なことになるんじゃないかという懸念がありましたが、そこのところはどうなんですか。

稲見政府参考人 お答えいたします。

 まず、外国人の入国者の数でございますが、新しい入国審査導入後でございますが、対前年比で一四%増ということで、導入前と同様のペースで入国者はふえております。ということで、順調に推移していると考えてもよろしいかと思います。

 それから、指紋あるいは顔写真の提供を拒否した場合、これは法令上、日本から退去を命ずるということになっているんですが、開始後今日まで、そのようなケースは一件も発生しておりません。

 ただ、委員御指摘のとおり、導入当初は、新しい審査への習熟度が不足していた、あるいはマシンの方にトラブルがあったというようなことで、実はかなり長い審査待ち時間ということが発生しております。その後、待ち時間の短縮に全力で取り組んでおり、いまだ十分とは申せないんですが、徐々に待ち時間の短縮が図られているという現状でございます。

 以上でございます。

馬渡委員 この指紋と顔写真の照合で、それなりの効果というのはあったんでしょうか。

稲見政府参考人 お答えいたします。

 提供いただきました指紋及び顔写真、これをブラックリストに照合した結果、この三カ月の間に二百五十六人の方の入国を阻止させていただいております。

 その主な内容でございますが、過去に退去強制された者が上陸拒否を免れるために偽変造旅券を行使して入国しようとしたのを発見した、あるいは同じように、過去に退去強制された者が、上陸拒否を免れるためには同じでございますが、自分の名前の一部あるいは生年月日を変えて、偽変造旅券ではなく有効な旅券をとり直して入国を図ろうとした、これを提供いただいた指紋と顔写真で発見したというものが主な内容でございます。

馬渡委員 これによって、不法に入ってくる人をぜひ減らしていただきたいと思いますが、大臣、不法滞在者半減計画というのがありますよね。あと一年足らずとなりました。これが、今のこととあわせて、これからどうなるのかということ。

 時間がないんですが、もう一つは、二〇一〇年までに来日外国人の一千万突破の実現というのがありますでしょう、続いて質問があると思うんですけれども。これを両方合わせて大体五分ぐらいで御答弁いただければありがたいんですけれども、よろしくお願いします。

鳩山国務大臣 個人識別情報を活用した入国審査で、上陸拒否期間中の人が入ってこようとしても、今二百五十何人という話がありましたが、これは確実に拒否できる。そういうことで、不法滞在者の半減にも効果があると思うし、ほかにもさまざまな努力をしてきているんですが、ただ、平成十六年から二十年の五カ年計画で、五年で半分というのは、まあ完全に半分になるというのは残念ながらきついので、これからまた延長戦をやらなくちゃならぬだろう。二十二万ぐらいが十三、四万にはなるのではないかということでございますが、当然残されたのは一年足らずですから、これまで以上に不法滞在者削減のための施策を頑張っていかなければならないというふうに思います。

 毎年相当送還しているわけですから、新規の不法滞在者の発生を抑えることが全体数を抑えることにつながるわけです。ただ、意外と苦戦しているというのか、船による密航、これは結局、実際には入管も何も通っていないからわからないわけですよ。数量的な把握も想像でしかないわけです。これも厳しくやってはおりますが、日本も海岸線が広いわけですので、どうも減り方がそれほどでもない、はかばかしくないのではないか、そういうことを考えております。

 次に、要するに観光立国との関係ですね。先ほど説明がありましたように、昨年の十一月二十日に個人識別情報をとることにして、それでも日本にやってくる外国人の数は全然減らないでふえ続けてきたので、それを嫌がって、日本に行くと指紋をとられるから嫌だといって来なくなった外国人というのは非常に少ないと見ていいんだろう。

 そういうことで、最大のテロ対策にもなるわけですから、安全な国というのはやはり観光客にとってはいい国ですから、日本は安全な国だということで観光客がふえるように持っていくのが理想の形ではないか、こう思っておりまして、人数的には、先ほど先生御指摘の数字になっていきはしないかとは思っているんです。

馬渡委員 ぜひ一日も早く、また治安のいい国日本と誇れるような国を取り戻していただきたいと思います。

 さて、全然話は違いますけれども、もうここからは質問じゃなくて、時間がないので、私の大臣に対する提言をさせていただきます。

 この間、自民党の人権問題等調査会で、冒頭、大臣は、以前の人権擁護法案は再提出しない、前の法案をベースにせず自由に議論してほしいと言っていただきました。私はこれは、白紙の状態から大いに議論をして、本当にどういった形がいいのか、そういうお気持ちがあるんだと思います。

 ところが、私自身は、全く法の素人でありますが、十七年のあの法律の案を見ますと、疑問とか不安が出てきます。

 一つは、例えばDV防止法とか、例えば児童虐待防止法とか、例えば高齢者虐待防止法などの人権にかかわる法律を活用して、足りなければそれを改正して適用できないものかどうか。

 もう一つは、パリ原則、いわゆる国連の勧告によって、独立した機関、委員会が必要だということですが、私が承知しているのは、実は、財政的に独立をして、そして政府が影響を及ぼすことがないように、財政でコントロールされないように職員とか事務所を持つようにという内容ととらえておりますが、なぜかしら、三条による強力な権限を持つ委員会というのが十七年に出てきました。ただ、ここで質問にしなかったのは、法案そのものが今ない状態ですから、質問してもお答えのしようがないと思いますから、提案です。

 そしてもう一つは、人権侵害という定義があいまいなのに、これを処罰してしまうような法律があっていいのかどうか。例えば、本人には全くそんな意思がなくても、受けた方によってとらえ方がまた違うと思います。重大な人権侵害があったといって委員会に訴えたときに、例えば出頭を命ぜられたり、関係する書類を提出させられたり、立入検査があったりと、本人がそのつもりでなくても、相手が重大な人権侵害だと言えばそうなり得る可能性もあるんじゃないかな、あの法律案を見てそう思いました。

 となると、私は、弟子として、大臣が一番大丈夫かななんて心配をしたりするんですけれども、要するに、そんな思いじゃなかった、そんな思いじゃなかったけれども、相手のとらえ方によっては何かすごい心配をするような法律があっていいのかな、そう思うんです。

 それで、大臣は所信の中でこうおっしゃっていました。和をなす文明、美と慈悲の文明、そしてより身近でわかりやすい法務行政をやっていきたい、そうおっしゃっていただきました。

 私は法律の素人ですから、それでもこれだけの疑問が出てくる。今、日本国じゅうで多くの人たちが、一体どういうことなのかと。出ないお化けにおびえてもしようがないんですが、事と次第によってはすべての国民が対象となる法律だと思います。だから、すべての国民が疑問と不安と恐怖感を持たないような形にしなきゃいけない、そう思っていまして、大臣のあのときの、もう一回白紙からやってくれというのは、私はいい方向に解釈したんです。

 最後に、エスニックジョークというのはおわかりになりますよね、民族の特性をあらわしたような。スープにハエが入っていたときの話というのがあるんですね。これは、日本人じゃなくてアメリカ人がつくったジョークです。ある国の人は加熱しているから大丈夫だといってハエをよけてスープを飲む、ある国の人はハエごと食べちゃう、ある国の人はここにハエが入っていたのは日本のせいだといって物すごい抗議をする、ところが、日本人は周囲に気を遣ってお店の人にそっとハエが入っていたので取りかえてくださいと言うような民族性を外国人があらわしているわけですよ。

 だから、うまく社会を回していくための、それこそ相互尊重、相互理解、相互扶助という日本民族ならではのものがありましたから、まだ形がわからないのにこういうことを言ってはいけないんでしょうけれども、少なくとも十七年のあのような法律ができると日本の国はぎくしゃくしちゃうのかな、私はそう思って心配なんです。

 ですから、大臣もこのことは、過去物すごい激しい論争があったということを御承知だと思いますが、私としては、そもそもこれが必要なのか、そこから始めてまた勉強していただければありがたいなと思います。

 時間が参りましたので、これで質問を終わります。ありがとうございました。

下村委員長 次に、神崎武法君。

神崎委員 公明党の神崎武法でございます。

 まず、ロス疑惑につきまして、法務大臣の感想をお伺いいたしたいと思います。

 いわゆるロス疑惑につきましては、一美さんに対する殺人罪、殺人事件について、日本の裁判所で無罪が確定をいたしております。このたび、ロス市警が、一美さんに対する殺人と共謀の罪で三浦和義を逮捕したということでございますけれども、日本には一事不再理の原則がある。ただし、日本の裁判所の効力は外国に及ばないということでは、こういうこともあるのかなとは思いますけれども、異例の事態だろうと思います。

 法務大臣として、今回の逮捕の感想についてお伺いをいたします。

鳩山国務大臣 個別の事件としては私は答弁はしてはいけないんだと思いますけれども、やはり感想としては私もびっくりいたしまして、これは前例のないことだと思うんですね。全く類似の例というのはないのだと思います。

 したがって、一般の国民の皆さんと同じように私もびっくりいたしまして、ああ、そうか、世界各国にはそれぞれ、司法や刑事手続等はみんな違っているから、こういうこともあるんだなとびっくりしたというのが何よりの感想でございまして、日本とアメリカの間にはいわゆる捜査共助の条約というのが結ばれておりますから、そういうようなことはどういうふうになっていくのかななんということを新聞を見て驚きの中で考えたということでございます。

神崎委員 この件で警察庁にお尋ねをいたしますけれども、FBIの方から日本の警察庁に新証拠を発見したと正式に連絡をしてきたという報道もありますけれども、事実はどうなのか。新証拠というのはどういうことを指すのか、また、逮捕に至るまでに日本側に事前通報というんですか、事前の連絡というものがあったのかどうか、あわせてお答えをいただきたいと思います。

小野政府参考人 警察庁の方には事前の連絡等はございませんでした。

 また、新証拠というようなことで報道されておりますが、それがどういうものを指しているのか、私どもも十分には承知しておりません。

神崎委員 では、通報がないということなんですけれども、捜査共助法等もあるし、全く同一事件について連携がなくていいのかなというふうにも思うので、ぜひ、よく連携をとっていただきたいと思うわけであります。

 それから次に、大臣の冤罪発言についてお伺いをいたします。

 鳩山大臣は、二月十三日の検察長官会同の席上、志布志事件について発言されましたけれども、内容が不適切であったということが指摘されております。志布志事件は冤罪と呼ぶべきではないと考えている、この点についていろいろな御批判があったわけでございます。

 そもそもは冤罪という言葉について、これは法令用語にはない言葉だと思います。ですから、一般的にどういうふうに理解されているかということで、例えば、有斐閣の法律用語辞典では、「無実の者が罪に問われること。これを救済する方法として、刑事訴訟法は、再審制度を規定する。」こういうふうに規定しています。また、講談社の日本語大辞典では、「実際には罪を犯してない者にかぶせられる無実の罪。ぬれぎぬ。」と定義されております。こういうことからしますと、一般的には、この志布志事件を含めて冤罪に当たる、こういうふうに見るのが通常だろうというふうに思うわけであります。

 法務・検察当局は、この冤罪について法務・検察としての何か定義をお持ちになっているのかどうか。

大野政府参考人 冤罪という言葉でございますけれども、今委員御指摘のございましたように、法令上の用語ではございません。社会生活上、さまざまな意味に用いられているというように理解しております。

 その意味、意義につきまして、法務・検察当局として特定の定義をしているということではございません。

神崎委員 大臣は、人違いの場合に限定されて冤罪という言葉をお使いになったように思いますが、一般の理解とは一致していないというふうに思います。大臣の真意はどこにあったのか、改めてお伺いをいたしたいと思います。

鳩山国務大臣 神崎先生御指摘のとおりでございまして、私の頭の中には何となくそういう整理がありまして、ちょうど氷見と志布志とあるわけでございまして、人違いというんでしょうか、法令上の言葉ではなくて定義もできない言葉なので、そういう表現を使ったこと自体が今では誤りだと思っておりますけれども、私は、当時、やはり人違いでその方が裁判を受けて有罪となってしまったようなケースを頭に描いて、それが冤罪というのかな、志布志の場合は、裁判が行われて、証拠等とか捜査上の問題とかあったということで、分けていくような私の頭の中の整理があったわけです。

 ところが、いろいろ厳しい御批判をいただいて、私なりに一晩、一晩しか考えませんでしたが、懸命に考えまして、踏み字だとかとんでもない捜査が行われる、そこで無実の方が捕らえられて非常に悲惨な目に遭う、名誉を傷つけられたりして、その方たちが無罪をかち取られた、そういう方々が、我々は冤罪だったんだ、冤罪を晴らすことができた、冤罪が晴れたというふうにおっしゃれば、私は、それは素直にそれを受けとめなければならないな、そう考えたものですから、それまでの頭の整理ではいけない、こう思いまして、そもそも冤罪という定義自体は、これからもなかなかできがたいものだろうかと思いますが、志布志の方々に不愉快な思いをさせてしまったということで、素直におわびをしなければならないというふうに発言をいたしたのでございます。

神崎委員 ただいまの説明で真意はわかりましたけれども、不適切な発言で誤解をされないように、発言には慎重を期していただきたいと思います。

 次に、死因の究明につきましてお伺いをいたします。

 大相撲時津風部屋の序の口力士、斉藤俊さんが急死した事件で、元親方と三人の兄弟子が逮捕、勾留されました。捜査当局によりまして、事件の真相が解明されますことを期待いたしたいと思います。

 事件発生から逮捕まで七カ月間要したということは、相撲部屋という特殊な環境のもとでの事件という面もあったと思いますけれども、この事件では検視制度の問題も浮き彫りになりました。

 当初、斉藤さんの死因は病死とされ、県警も事件性なしと判断をいたしました。遺族の強い要望により、新潟大で解剖が行われ、死因が多発外傷による外傷性ショック死と診断されました。

 警察としては、今回の事件を通して、このようなミスを今後犯さないためにどのような措置を講じられたのか、お伺いをいたしたいと思います。

小野政府参考人 御指摘の事案につきましては、愛知県警察におきまして所要の捜査を進めまして、前の親方や兄弟子の暴行による被害者に対する傷害致死が判明している段階でございます。結果といたしまして、犬山署の初動捜査につきましては問題があったというふうに考えております。

 警察におきましては、都道府県警察に対しまして、昨年十一月に、適正な検視業務の推進についてということで刑事局長通達を発出するとともに、全国の刑事調査官の会議を開催いたしまして、指示等を徹底しております。

 中身につきましては、刑事調査官制度の的確な運用とか基本捜査の徹底ということはもちろんでありますが、さらに、この調査官を増強することを含めました検視体制の強化、それから、検視に当たりまして、CT検査や薬物検査キット等の整備、活用というようなことを指示しております。

 ただ、この死因究明に関する事務は複数の官庁に横断的にわたっているものでございまして、警察のみで十分に実効的な対策を講ずることが困難な面もございます。

 現在、内閣官房のもとで、関係省庁にも参加していただきまして、死因究明に関する検討会を開催し、現状の問題点の認識の共有化、さらには、今後、打開策等を図ってまいりたいと考えている次第でございます。

神崎委員 刑事事件におきます被害者の権利、これは拡充されてまいりましたけれども、死因究明についての遺族への情報提供の開示、これが十分でないように思います。司法解剖や行政解剖の根拠となります刑事訴訟法や死体解剖保存法に、遺族への情報提供の規定がありません。

 二〇〇四年、福岡市内の自宅マンションで急死した米国男性マシュー・レイシーさんの死因につきまして、福岡県警中央署は、側頭部にこぶがあったのに、検視だけで病死と判断、遺族の要請による解剖で頭部打撲による脳挫傷と判明、県警は転倒による事故死と判断を変えました。遺族は納得をせず、法医学者などに鑑定書などを送って鑑定してもらったところ、他殺の疑いがあるとの回答を得て、再捜査を要求しているということでございます。

 具体的な事件になってしまいますけれども、この事件の再捜査を警察として行うのか、初動捜査に問題があったと思うけれども、どのようにお考えになっているのか、この点、警察に伺いたい。

 また、遺族は福岡地検に鑑定書などの開示を求めたが、捜査資料非公開の原則のため、開示されたのは事件の三年後だったという。私は、遺族から求めがあれば、こういった死因について遺族が知りたがるのは当然のことですから、早急に情報を開示する、制度としてもそういうことを考えるべきではないかと思います。

 あわせて、昨年、地下鉄サリン事件で夫を亡くした婦人が、遺族に解剖結果の情報提供を求め、要望書を法務大臣に提出したということが言われております。要望があったのか、どのように対応したのか、これもあわせて法務大臣にお伺いをいたしたいと思います。

小野政府参考人 まず、御指摘の福岡の事案について御説明申し上げます。

 御指摘の事案は、平成十六年の八月に、当時四十一歳の米国人男性が、福岡市内のマンションの自室におきまして変死体で発見された事案でございます。

 ただ、この件に関しまして、報道等が必ずしも正確でございませんので、少し詳しく御説明申し上げますと、福岡県警察におきまして、まず、司法検視を実施いたしまして、死体の状況、また、立ち会い医師の意見等を踏まえまして病死と判断したわけでございますが、ただ、明確な死因が特定できないということから、遺族に、実は警察の方から行政解剖をすることを勧めております。遺族も承知していただきまして、行政解剖を実施しております。その上で行政解剖を実施しましたところ、死因は頭部打撲による頭蓋内損傷によるものと認められるということで、事件性の疑いが出てまいりました。そこで、直ちに司法解剖に切りかえまして、司法解剖を行いますとともに、死者の御自宅につきましても検証を行っております。

 その結果、福岡県警察におきましては、頭部に打撲があるんですが、棒とか鉄棒で殴られた、そういうものでありませんで、平面に打ちつけた、つまり、床とか壁とかそういうものに打ちつけた傷であるということが判明しておりまして、また、死者の御自宅の状況からも第三者の介在の跡が認められないということが出てまいりました。

 そこで、結論としては、事件性なしという最終的な判断をしたものでございまして、初動の段階におきましても行政解剖実施、さらに司法解剖、検証等を実施した上での判断でございまして、当初の捜査は不適切なものではないというふうに考えております。

鳩山国務大臣 先ほど清水委員の御質問にもお答えしましたけれども、やはり最大の問題としては、これはもちろんいろいろな誤りやミスがあったんだろうとは思いますが、やはり異状死体が大変な数に上る中で、検視官の数が信じられないほど少ない、あるいは法医学の専門家の数も決定的に不足している。したがって、解剖される先生も少ないし、それも、法医学の専門家として解剖するのとそうでないのとでは成果が全然違うだろう。そういう中で、それこそ犯罪性が見逃されているようなことがあってはいけないというふうに思っております。

 神崎先生御指摘の、福岡のアメリカ人が亡くなった件だったと思いますけれども、先生は専門家ですから、私が先生に答弁するのはちょっとはばかれるんですが、刑訴法の四十七条が、原則として公判の開廷前には捜査資料はオープンにしないということがあるわけです。それは、公判前にこういうような書類等捜査資料をオープンにすれば、プライバシー、名誉を傷つけるおそれ、捜査に不当な影響を及ぼす、あるいは捜査がおかしくなるというようなさまざまな理由があるということなんでしょう。したがって、刑訴法四十七条はそういう立法趣旨でありますけれども、ただし書きに、公益上の必要その他の事由があって相当と認められる場合は捜査資料も開示し得るとなっているわけで、私は、やはり一番大事なのは被害者あるいは被害者の遺族の方々のことだと思います。

 それは、犯罪被害者等基本計画においても、被害者等に対し、適時適切に捜査状況等の情報を提供するよう努めていくこととなっておるわけですから、そのバランスの中で弾力的に運用して、問題をうまくいい方向へ持っていければというふうに思っております。

 それから、サリン事件の件で、御主人を亡くされた遺族の方から、解剖後に臓器を保存しているのだったらきちんと説明してほしいなどという要望書が私あてに来ておりますことは知っております。この事件について、さまざまな手続の段階で被害者あるいは御遺族の方に御説明をしておりますけれども、御要望については、警察など他省庁に関連する部分も多いものですから、関係省庁とも連携しながら検討してまいりますが、できる限り被害者や被害者の遺族の方に温かい形になることを私は望んでおります。

神崎委員 ぜひ前向きで対処をお願いしたいと思います。

 それから、死因の究明は、犯罪を見逃さないという視点が大事でありますけれども、同時に予防という視点も大変重要だと思うわけです。その意味では、同じような死が起こらないように、今後の予防や対策につなげるため、変死体の死因を明確にし、正確に統計をとり、結果を公表することが重要だと思います。

 我が国ではこのことが正確になされているのかどうか、厚生労働省にお伺いをいたします。

高原政府参考人 私どもの人口動態統計の死亡の原因でございますけれども、医師の死亡診断書に基づくものでございます。人口動態統計の死因分類は、世界保健機構が勧告いたしました国際的な死因分類に準拠しておりますので、諸外国と同様の分類となっているところでございます。

 以上のことから、我が国では、諸外国に劣らず正確な統計を作成し公表している、こういうふうに考えているところでございます。

神崎委員 統計上はきちんとWHOのルールに従ってやっているということなんですけれども、その統計を見ましても、診断名不明確及び原因不明の死亡者が一年間に五千六百三十一名いるんですね。ですから、死因がわからないまま統計に載せられているのがこれだけいるわけなんですね。

 ですから、各国と比較して日本のこの死因不明というのが多いのか少ないのか、そういうのもあわせて、厚生労働省としては、単にWHOの指示どおりやっていますよというだけじゃなくて、できる限り死因を究明していく、そしてまたそれを今後の対策、予防に生かしていく、そのことをぜひやっていただきたいと思います。

 次に、取り調べの可視化の問題についてお伺いをいたします。

 最高裁司法研修所は、長期化しがちな否認事件の審理時間を短縮する方法につきまして、本年一月十日、研究成果をまとめられました。この中で、証言の任意性立証のため、検事や警察官を証人として尋問することが多かったが、こうした立証は水かけ論になりやすいという指摘があります。それから、取り調べ状況の録音、録画は、自白調書の一方法として有力な選択肢となり得るというふうに述べられているわけでございます。

 裁判員制度が間もなく始まりますけれども、この制度が始まりますと、審理時間を短縮するために、任意性立証についても録音、録画による立証方法がふえてくると思われますけれども、最高裁、法務当局はこの点についてどのように認識をされているのか、まず最高裁の方からお伺いをいたします。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、平成十八年度司法研究の中で、取り調べ状況の録音、録画は、自白の任意性を肯定すべき具体的な事情の立証手段として有力な選択肢となるというふうにされております。

 ただ、司法研究は、あくまでも大型否認事件の一つの類型でございます自白の任意性が争点となる事件について、迅速、適正な裁判を実現していくためには、そのような立証が有力な選択肢になるということを指摘しているにとどまるものでございまして、検察官は必ずそういう立証をすべきであるとの意見を述べているものではございません。

 裁判員制度施行後も、個々の事件において自白の任意性に関しどのような立証を行うべきかについては、立証責任を負う検察官が判断すべき事項でございまして、録音、録画による立証がふえるかどうかについても、基本的には検察官の判断次第だと考えております。

鳩山国務大臣 裁判員制度が始まりますと、よりわかりやすい裁判、とりわけ自白の任意性について裁判員の方々によくわかっていただくことが大事だということで、先導的な試行を百七十回やったんだろうと思います。非常に効果があったというふうに思われるわけで、実際、裁判で使われたのが四回で、そのうち三回は自白の任意性がおおむねこれでわかる。一回は、これによって自白がどうも任意性がないのではないかというふうに否定をされて使われたということは、意外と公平、中立性のあるものだということがわかるわけでございまして、こうした結果を踏まえて試行拡大をする。

 私も、実はこの間、副大臣、政務官とみんなで東京地検に参りまして、録音、録画をする装置、いろいろ撮ってみたりしたんですね。なるほどこういうやり方をするのかということで、大いに参考にはなったわけですけれども、いい使い方をしなければいけないということは当然だと思っております。

神崎委員 今、大臣からもお話がありましたけれども、これまで検察庁におきます録音、録画の試行が行われてまいりまして、このたび中間の取りまとめがなされたと承知しております。

 現在行われているのは、取り調べの過程の一部分を録音、録画するものでありますけれども、供述の任意性立証の手段としての有効性が認められ、任意性をめぐる争点を解消する効果も期待することができるというふうに、積極的な評価がなされているところでございます。しかし、全事件、全取り調べのすべての過程を録音、録画することは、一般的に取り調べの真相解明機能を害するおそれが大きく、取り調べを担当する検察官がその職務を全うすることを著しく困難にするものである、中間でありますけれども、こういう結論となっております。

 なぜ全過程を録音、録画することが捜査の支障になるのか、もう少し詳しく説明をしていただきたいと思います。

大野政府参考人 御説明いたします。

 我が国におきましては、被疑者の取り調べは事案の真相の解明に不可欠の役割を果たしております。例えば、物証の乏しい事件などでは、被疑者から真実を聞き出さなければ真相を解明できない場合が少なくありませんし、また組織犯罪などでは、末端の実行犯から供述を得ないと首謀者の検挙が困難な場合が少なくないのであります。

 そこで、取り調べ官は、被疑者に対して真実を供述するように説得するなどして十分に取り調べを行った上で、被疑者が任意に供述し、かつ、供述調書に記載することを同意した内容につきまして、これを供述調書に録取しているわけであります。

 ところが、仮に取り調べの全面的な録音、録画が義務づけられますと、被疑者といたしましては、自己の発言のすべてが記録され、後にそれが公になり得ることを意識して警戒する結果、例えば羞恥心や、あるいは犯罪組織から報復を受けるのではないかという恐怖感などから、他人に話すことがはばかられるような事柄あるいは組織、共犯者の関与などについて真実を供述することをためらったり、場合によっては、録音、録画向けに演技や虚偽供述をしたり、あるいはそもそも供述しなくなるというようなおそれがあるように思われるわけであります。

 また、全面的な録音、録画のもとでは、取り調べ官も他人のプライバシーや捜査の秘密等にわたる事柄に触れることが困難になりまして、その意味でも十分な取り調べができなくなることが懸念されます。

 さらに、現在の捜査でありますけれども、例えば、取り調べによって被疑者から得た供述をもとに収集したほかの資料を証拠として犯罪組織における上位者を検挙する場合があるわけであります。ところが、被疑者が報復等を恐れまして調書に記載しないことを希望する場合がございます。そういう場合には捜査の端緒を明らかにしないで捜査を進めることになるわけでありますけれども、取り調べが全面的に録音、録画されるということになりますと、こうした捜査手法を用いることもできなくなってしまうということになります。

 こうしたことから、我が国において取り調べの全面的な録音、録画を義務づけますと、取り調べの機能が大きく損なわれ、事案の真相の解明が困難になるなど、大変大きな影響が生じるのではないかと考えているわけでございます。

 以上です。

神崎委員 富山の氷見事件、鹿児島の志布志事件の反省から、警察庁は一月二十四日、取り調べ時間は一日に原則八時間以内、部屋にはマジックミラーを設置する、監督部門を新設するなど、取調べ適正化指針を発表いたしました。冤罪をなくすために警察も取り調べの可視化が必要である、こういう指摘もあります。

 適正化指針では触れておりませんけれども、適正化指針の発表に至る過程で庁内において可視化の議論はされたのかどうか、されたとすればどのような議論が行われたのか、伺いたいと思います。

小野政府参考人 今回、取り調べの適正化指針というものを警察の方で出しております。

 これは、今御指摘のような志布志事件、富山の事件等を踏まえまして、国民の中に取り調べというものに対する懸念が生じているということを重く受けとめまして、取り調べの一層の適正化を図ろうという観点から、今御指摘にありましたような、時間について本部長等がチェックをするシステム、さらに、捜査部門だけに任すのではなくて、総務または警務部門におきまして、取り調べの不適正につながるおそれのある行為を未然の段階で防止しようということで、そのチェックをしよう、また、被疑者本人または弁護人等からの苦情も申し出を受けつけようというようなことを考えた制度を検討しているところでございます。

 この方針の策定に当たりましては幅広く意見を取り入れておりまして、例えば有識者の方の懇談会を開催しておるところでもございます。昨年十二月に第一回を行っておりますが、例えばこの中では、取り調べの適正化の方策のあり方を論ずるに際しては、取り調べの録音、録画に関する議論は避けて通れないんではないかというような御議論もありました。また、録音、録画すれば取り調べの適正化が直ちに図られるという意見もあるが、それほど単純ではないんではないかというような御意見もありました。また、取り調べ状況の録音、録画による捜査への弊害というものを国民にわかりやすく説明すべきではないかというような御意見もいただいているところでございます。

 警察といたしましては、取り調べの全過程の録音、録画ということにつきましては、今法務省刑事局長の方からお話がございましたように、取り調べの機能が大きく阻害されるということになりまして、事案の真相解明が困難になるということを考えているものでありますので、その義務づけには慎重な検討が必要であろうというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、刑事警察にとりまして本来的な課題である捜査の適正化という要請にこたえることが喫緊の課題でございますので、この指針に基づきまして、なるべく早く捜査の実務に適用してまいることが我々の使命であるというふうに考えておる次第であります。

神崎委員 終わります。

下村委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川でございます。

 まず、ロス疑惑の問題について冒頭お伺いをいたします。

 先ほど神崎委員の方からも質問がございましたけれども、二十二日に三浦和義元社長がサイパンの方で、ロサンゼルス市警の要求の逮捕が現地でなされました。これは私も、今ごろ何でというように大変びっくりしたんですが、先ほど大臣も驚いたというような意味の御発言でしたけれども、どういう意味で大臣は驚いたんでしょうか。驚いた意味、それをちょっと聞かせていただけますか。

鳩山国務大臣 それは、やはり日本を騒がせた大変有名な事件で、私は過去のことだからいいと思いますけれども、裁判の結果も逆転していくというような非常にすごい事件だったわけですよね。最終的には銃撃事件の方では無罪になるということで、随分前の話と思っておりましたところ、私は余りテレビを見ないものですから新聞中心で、新聞にばあっと出て、いろいろな新聞を読みましたけれども、一番驚いたのは、もう終わったことだと思っていたものがアメリカの司法当局によって逮捕と。世界にはいろいろな刑事司法制度があるんだなというふうに思いました。大体みんなそれは違うだろうとは思いますが、例えば五一%ルールなんというのは、イギリスで採用しているのと日本の考え方は全然違うし、違うというのはわかっていながらも、遠い過去の事件で逮捕というのは、いろいろな仕組みを各国お持ちなんだなと思ってびっくりしました。

細川委員 今大臣が言われた、この事件はもう過去のもので終わっていたものだと思っていたのが今回アメリカの司法当局によって逮捕された、やはり私もそういう意味でびっくりしたんですけれども、日本の最高裁判所で最終的な判決が出て無罪ということで決着をした、これでもうこの事件は終わりだなというふうに普通にみんな思っていたんではないかと思います。それが今度逮捕されたのでびっくりした、こういうことだと思います。

 そこで、お伺いしますが、先ほどの神崎委員の質問では、事前に連絡はなかった、こういうことでございましたけれども、逮捕した後、何らかの連絡があったんでしょうか。

小野政府参考人 本件は米国の司法当局が行っております捜査にかかわることでございますから、個別具体的なコメントは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

細川委員 それはどういう意味ですか。これは大変大事なことじゃないですか。国民の皆さんが大変関心を持って、一体どうなるだろうと。今大臣だって、これは終わっていたものじゃないか、こう思っていたのが突然逮捕される。

 どうして、連絡があったかないか、どういう内容の連絡があったかというのが説明できないんですか。だって、日本の主権の問題でもあるんじゃないですか、日本人が外国で逮捕されたということは。ちょっとはっきりもう一回答えてください。

小野政府参考人 現在、この件はアメリカが、捜査当局の方がアメリカの主権に基づきまして捜査を行っている事案であろうと理解しております。

 私どもまだ十分な状況把握もできていないところでございますし、アメリカの捜査の中身について私どもで申し上げることもなかなかできないということを御理解いただきたいと思います。

細川委員 だから、私は、連絡があったかということを聞いているんです。連絡があったか、まずそこから教えてください。

小野政府参考人 ですから、私ども、その後の状況につきまして、この場でお答えをさせていただくことは控えさせていただきたいということを申し上げております。

細川委員 だから、今後の状況とかそんなんじゃないんですよ。逮捕されてから、アメリカの方から連絡があったかどうか、そのことをまず聞いているんです。

小野政府参考人 身柄拘束後につきまして、必要な私どもの対応はさせていただいておりますが、まだ十分に掌握している状況ではございません。

 また、そのやりとりにつきましては、私どもとして対応できませんので、コメントさせていただくことは控えさせていただきます。

細川委員 ちょっと委員長、はっきり答えさせてください。連絡があったかどうかということ、まずそこであったかないかと聞いているんですから。状況だからわからないとかわかるとかって。ちょっとはっきりさせてください。

小野政府参考人 私どもといたしましても、必要な情報収集等はしておりますが、その内容等については答えることは差し控えさせていただきます。

細川委員 もう一回、ちょっと委員長、委員長の方からしっかり言っていただきたいと思いますが。

下村委員長 中身じゃないというのをちょっとはっきりおっしゃってください。

細川委員 いえ、まず最初に聞いているのは、向こうから連絡があったかどうか、それだけを聞いているんですよ。

小野政府参考人 アメリカの捜査につきまして、私どもとしては十分に承知をしておりません。

 アメリカの方に対して私どもも必要な情報収集等はしているところでございますが、その中身については申し上げることはできないということを御理解いただきたいと思います。

細川委員 何も答えていないよ。あったかないか。

下村委員長 小野審議官、質問に対して的確に、その答えのみ答えてください。

鳩山国務大臣 事前にありませんし、事後も、逮捕したという連絡が法務省にあったとは聞いておりません。逮捕したという事実ですね。そういう連絡があったという情報は得ておりません。

細川委員 そうすると、いまだに日本の方にアメリカの方からこの件について連絡がない、こういうことですか。

鳩山国務大臣 これはもう細川先生、皆様よく御理解いただけると思いますが、ですから、逮捕したという連絡は法務省に、アメリカからそういう連絡は入っておりません。

 日本が捜査共助条約を結んでいる国は韓国とアメリカ二国だけでありまして、アメリカとは結ばれておりますから、今後、捜査共助というようなことになるかならないかわかりませんけれども、そういうことになると、これは捜査上の秘密ということでそれ以上のことは言えないという状態になりますが、単純な事実として、今細川先生がおっしゃっているのは、逮捕したという連絡があったかと言われますと、それは法務省には来ておりません。

細川委員 ということは、法務省にないということは、警察庁の方にも外務省にもないと。わからないということですか。そうすると、法務省には一切ないということですね、この件に関して連絡は。

 いやいや、アメリカから直接じゃないですよ。だから、日本に、それはほかのところに来ているかもわかりませんけれども、外務省から例えば法務省に連絡とか、警察庁とか法務省に連絡とか、そういうことははっきりして……。

 いいですよ、どうぞ。あったかないかだけでいいですよ。

大野政府参考人 三浦氏がサイパンで拘束されたということは、外務省を通じて法務省に連絡が来たということでございます。現地の情報をということで、領事から参考情報が来ているということでございます。

細川委員 そうすると、アメリカの方から正式な形で連絡があったということについては、法務省の方にはいまだ一切ないというふうに確認させていただいてよろしいですか。

鳩山国務大臣 少なくとも、私も法務大臣という立場にありますから、重要な情報は上がってくると信じておりますけれども、要は、三浦和義という男をサイパンで逮捕したぞという連絡をアメリカから私はいただいておりません。

細川委員 ということは、これは法務の最高の責任者として、日本人が一つの事件で日本で捜査そして裁判を受けて、そして無罪という落着をしているわけですね。その人がアメリカで今度逮捕された、サイパンで逮捕されたというようないろいろな情報が行き交っているときに、これは一体どうなんだというようなことは法務省としてやらなきゃいかぬことじゃないでしょうか。

鳩山国務大臣 日米に捜査共助条約があります。もちろん、条約がなくても、外交ルートを通じて捜査協力してくれというのは我が国もやったりやられたりしていることですけれども、条約があって、捜査協力を頼むよという段階があるかどうかわかりませんが、もしあれば、あとはもう捜査の秘密ということで私も物が言えなくなるわけです。例えば、三浦和義さんが逮捕された、そうすると、日本政府としては、邦人保護というのか、邦人保護的観点で現地の領事とか総領事がということで、そういう意味では外務省マターなんだろうというふうに思います。

細川委員 それでは、この件に関しては、向こうから捜査の協力だかそういうような形で来るまで、いずれにしろ手をこまねいて待っているということですか、法務省としては。ちょっと確認です。

鳩山国務大臣 捜査の話になれば、これは捜査を頼まれたからやりますよと公言できることではないわけですね。だから、それは頼まれたかどうかも言えないという状況になるんだろうと私は思います。ですが、現段階では逮捕したという話すら私のところには届いていないということです。

細川委員 この事件は、事件そのものは一つですね。それに対して、捜査そして裁判をどこの国でやるか、日本とアメリカ両方がそういう権限を持っている、そういう事件なんです。

 大臣に一般的なことでお聞きしますが、一つの事件で、一つの国で捜査そして起訴、裁判をされて結論が出た。それに対して、もう一度同じ事件でもう一つの別の国で同じように捜査をし、そして裁判をしてその判決が出る、そういう二重に、二回行われるということについて、大臣は、制度は別にして、どうお考えになりますか。

鳩山国務大臣 個別の事件……(細川委員「個別じゃないです、一般論です」と呼ぶ)一般論でいいんですか。

 一般論ですが、我が国の憲法は一事不再理という原則を定めていますけれども、これは、我が国自身の裁判権の範囲内で同一事実について二重に刑事責任を負わすことはないという解釈でしょうから、したがって、何かちょっと表現は悪いんですけれども、二重課税を防ぐために租税条約というのがいろいろ結ばれていますね。やはり、まだこの刑事法の世界ではそういうようなことというのは、基本的にそれぞれの国の制度が違っているわけでして、だから、一般論として申し上げまして、国際捜査共助等に関する法律というのがあるんです、それから日米刑事共助条約というのがあるので、同一事件について、我が国において無罪判決が確定していることが直ちに共助の拒否理由とはならないというのが現在の私どもの解釈でございます。

細川委員 私は、そういうことを聞いているのではないんですよ。一人の人間の方から見れば、一つの事件で、裁判が一たん確定をしたにもかかわらず、また行われるということでしょう。それについて大臣はどう思いますかという一般的なことを私は聞いているんです。

鳩山国務大臣 ですから、冒頭申し上げましたように、私がびっくりしたというのは、あれは少なくとも日本国内で終わった話だ、そういうふうに認識しておったわけですが、アメリカの刑事司法制度の中ではこういうこともあるんだなと思って二重にびっくりした、それが私の率直な感想です。

細川委員 私は、一人の個人の方から見れば、これがどこの国の裁判であろうと、二回受けるということはやはりおかしいというふうに思いますね。

 例えば今度の事件なんかは、日本で無罪となって罪に問われなかった、これがアメリカで今度は裁判になって、例えばこれが死刑だとか、仮にそういう判決が出るとなると、これは個人にとっては本当に、二重の危険といいますか、一事不再理というのはそのことだと思うんですけれども、私は、これはやはり考えていかなければいけないと。

 特に、今回の事件は今までかつてなかったことだというふうに思いますけれども、しかし、このグローバル化された社会においては、これからはこういう問題は十分起こり得ることだと思うんですね。そうしますと、こういうことが起こり得ると考えられるのならば、国際的に、こういうものはどちらかの国の裁判で一回で終わらすようなことが大事なんじゃないか。

 例えばこの件で、捜査の段階では日本とアメリカとの捜査当局が協力をしているわけですね。向こうの捜査当局も日本に来られて、いろいろ日本と協議もされたわけですよ。日本の検事も五人ほど何回か行って捜査をしている。それに対して、全面的にアメリカは協力もしてくれているわけですね。その結果、日本で裁判をやって決着がついたんですから、私は、日本の最高裁判所の判決の権威にかけても、アメリカの方ではこれを尊重してもらうようなことも大事なことじゃないかと思うんですけれども、これはいかがでしょうか、大臣。

鳩山国務大臣 何ともお答えしにくい御質問でございまして、先生の御指摘で全く正しいのは、グローバル化して地球が狭くなる、そうしますと、一般論ですが、要するに国外犯、日本の法律からいえば国外犯というものだって当然日本でも裁く、それを、国外犯ですから、日本の刑法が追いかけて、向こうから連れ戻して裁く、向こうからやってきてもまた裁くとか、やはりそういうことの可能性が高くなりますよね。

 だから、そういった意味では、この事件についてのコメントはできません。全くできませんし、それはやはりアメリカのそういう仕組みがあるんだなと、私は、ある意味でいうとびっくりしたり、みずからの不勉強を恥じたりという思いですけれども、これから地球が狭くなってくると、そういうことも国際的に話し合っていく時代になるべきなのかなという感想を持ちます。

細川委員 この事件で、大臣、びっくりしたとか、あるいは国際的に話し合っていくべきかなと思うとか、そんなことでは、日本の司法行政の一番最高の責任者としては、やはり私はそれではちょっとだめだと思いますね。

 やはり、将来こういう問題が起こり得ることがあるんですから、大臣としては、きちっとこれをどういうふうにするか国際的にも話し合って、そういう問題を解決していくように頑張ってもらわなきゃ困るんですよ。私は、日本の国の法務大臣として積極的にこういう問題に取り組んでいってもらわなきゃならぬと思うんです。

大野政府参考人 今委員が指摘されているのは三浦氏に係る具体的な事件になるわけですけれども、制度として考えた場合には、同一事実について裁判権が競合して、ある国で裁判が先に行われる、その場合に、先に裁判を行ってしまえばほかの国は全く裁判権が行使できなくなるかというと、国際的にはそういうふうになっておらないわけでありまして、先ほどお話がありましたように、一事不再理というのは国内の問題であるというふうになっているわけであります。今回はたまたま日本の手続で先に結論が出ていたということで御指摘があろうかと思うんですけれども、逆に、外国の手続で先に結論が出る場合もあるわけです。

 日本の刑法でございますけれども、日本の刑法五条に「外国判決の効力」というのがありまして、外国で有罪判決を受けた場合、これは確定裁判ですね、確定裁判を受けた者であってもさらに処罰することを妨げないということで、一事不再理をとっていないことは刑法の条文からも明らかなわけであります。

 また、日本の裁判は大変権威の高いものだというふうに私は思うわけでありますけれども、こんなことを申し上げてはなんですけれども、もちろん他国の裁判にはいろいろなものがあると思います。それに対して、日本の司法権としてまたこれは別途の判断をしたいという場合もあるんじゃないかというふうに思われるわけであります。だといたしますと、抽象的に、一回どこかの国が裁判をして確定判決を経ると、その後、重ねてほかの国で裁判ができなくするような制度にするというのは、若干やはり問題があるんじゃないだろうかというふうに考える次第でございます。

細川委員 それは私もわかって質問しているわけであって、それはそうですよ。日本の国としては、それはそれで、そういうことが規定をされていることもわかっておりますが、しかし、こういうような事件が起こって、そこで二重に裁判が起こるようなことがあると、いろいろな問題、不都合も起こってくる。そうなれば、そういうことができないような、二重にならないようなことを事前に双方の国同士で話し合う、協議ができるというような仕組みもやはり考えておくことも大事じゃないかと思って私は提案をしているわけでございます。

 ぜひ大臣には、そこは、今後どういうふうに解決、あるいはこういう問題に取り組んでいくかをもう一度やはり真剣に考えていただきたいというふうに思います。

鳩山国務大臣 今の刑事局長が読み上げた刑法第五条というのは、そういうのがある。もちろん諸外国にも同じような条文があるのかどうか私はわかりませんけれども、現時点で一般論で申し上げれば、世界連邦ができておって、司法や刑事の手続がみんな同じというふうになっている状況ではない中で、やはり、日本で確かに裁判が確定した事件ではあっても、アメリカの手続においてこういうことがあるんだな、それが私の一つの驚きでもあるわけです。

 ですから、本当にこういうことがおかしいというふうに思うならば、それは本当に、国連かどこかわかりません、国際的な話し合いというのがなされなければいけないんだろう。これは、それこそ地位協定の問題に何か似たような気もしないでもないんですけれども。相互の国でやるのか、あるいはマルチでやるのかわかりませんけれども、いずれはそういう形にいかないと、先生御指摘のとおり、地球が狭くなって、こういう大事件でなくても、小事件でもしょっちゅうこういうことが起きたら、やはりそれは法治国家として非常に難しい状況になるんだろうなとは思います。

細川委員 大臣の積極的なこれに対する取り組みというものが全く感じられないので非常に残念なんですけれども、時間がたちますので、質問をかえたいと思います。

 大臣は、二月の十三日、検察長官会同という会合の中で、鹿児島県議選の買収事件について、冤罪と呼ぶべきではないと考えているというようなことを述べまして、大きな波紋を呼んでおります。先ほど神崎委員の方からもこれについて質問がありましたけれども。

 そもそもこの会合ですけれども、どういう趣旨で行われたのか、それからマスコミなどにも開放して行われた会合なのか、そこらあたりを説明してください。

鳩山国務大臣 検察長官会同と申しますのは、検察長官というのは、検事長と検事正を含めて、高検の検事長が八名それから地検の検事正が五十名の五十八名の方々が一堂に会しまして、現下の諸情勢について検察運営上どういうことをこれから考慮していったらいいかを話し合う会議で、二日間行われたようでございます。朝から夕刻まで行われております。訓示をいたしますのは検事総長と私でございまして、その際には報道機関が入っております。それ以外は報道機関は入っておりません。

細川委員 まず、冤罪という言葉は、先ほどもありましたけれども、もちろん法律用語ではないわけでございます。法務省内でどういうふうに使われているかは私は知りませんけれども、先ほど神崎委員の方からも、辞書などで冤罪とはどう書かれているのかというようなことで、これは、罪がないのに疑われたり罰を受けたりすること、無実の罪、そういうようなことでございます。

 したがって、一般には、判決が確定しているかどうかというようなことが問題になるのではなくて、無実であるのに社会的に疑われていることをいう。例えば、本当は無実であるのに逮捕され、起訴され、裁判にかけられただけでも冤罪、こういうふうに呼ばれているわけなんです。

 この意味からしますと、大臣の発言というのは一般の常識からは離れて、冤罪被害者と言われております志布志事件の元被告の人たち、この人たちを大変侮辱するものだというふうに私は思いますし、また、この冤罪被害者の人たちからは強い怒りや、あるいは大臣に対する失望の声も聞こえてきております。

 そこで、まず大臣、なぜあのような発言をしたのか、お伺いをいたします。

鳩山国務大臣 冤罪という言葉が法律用語でないということは、私自身も理解はしておりました。したがって、さまざまな形や意味で使われている言葉でして、また、社会生活上の用語例としてはいろいろまたさまざまにあるんだろうと思いますが、私の頭の中の整理では、人違いというところから始まって、まさに氷見事件のように、全く罪を犯していないのに裁判で有罪とされてしまったような場合、当時はそういうような理解の仕方をしておりまして、公の場で冤罪という言葉を使ってしまった。それは、私の完全な誤りであったと深く反省をいたしております。

 なぜならば、そういう定義のない言葉を使ったことと、社会的な用語の例でいえば、社会通念上と言ってもいいんでしょうか、やはりもう少し広く用いられているケースが多いだろう。少なくとも志布志事件で、またあれはとんでもない捜査や取り調べがあったということで、検察、警察の方でも真剣な反省がなされているし、これを教訓としていかなければならない、そういう事件だという認識がある。そういう事件で被告とされ、名誉を傷つけられたり、中には、それこそいろいろな形で仕事を失われたという方もおられるかもしれない。非常に悲惨な目に遭われた方々に対する私の配慮が足りなかったことが誤りであって、つまり、そういう方々が、自分たちは冤罪であった、冤罪が晴れたというふうにおっしゃられれば、私はその言葉をそのまま素直に受け入れなくてはならないな、そう思いまして、翌日、不愉快な思いをさせてしまったことに対しておわびを申し上げたといういきさつでございます。

細川委員 全国の検事正、検事長を集めての会同で、あの事件は冤罪とは言えないんだ、そういうことをわざわざなぜ言われるんですか。

鳩山国務大臣 それは、私の当時の頭の整理がそういう形であったから、氷見事件と志布志事件を区別してしまったということです。

細川委員 だから、志布志の事件は冤罪ではないんだというようなことを検事長や検事正の会同のところでなぜわざわざ言わなければならなかったんですか。聞くところによれば、そもそも原稿にもないようなことで、つけ足して大臣は言われた、そういうことも仄聞しておりますけれども、どうしてそういうことをわざわざ言ったんですか。

鳩山国務大臣 ですから、私としては、当時、そのような頭の中の整理をしておったものですから、やはり冤罪という言葉を非常に強く、狭く解釈しておったものですから、氷見事件の方は完全な人違いであるから冤罪ではあるけれども、当時の整理では、志布志の方は判決無罪ということなのかなという意味で申し上げたわけです。

 しかし、その認識は間違っているということに気がついて、翌日おわびをしたということです。

細川委員 初めにお聞きをしましたけれども、その会合には、マスコミの方にもオープンで、カメラも入っていたわけでしょう。オープンならば、大臣の話はあの志布志の元被告の人たちにも当然伝わるということはわかっていたはずでしょう。それをあえて何でそこでお話をされたんですか。この被告の皆さん方にも伝わるということはわかり切っていて、なぜそういう発言をしたんですか。

鳩山国務大臣 私としては、氷見事件についても志布志事件についても、そもそも事件の捜査、取り調べ、公判についてもそうでしょうが、検察としても真剣に反省をしなければならない、今後、この反省を厳しくしていく中で、適切に検察権の行使をしてもらいたいということを話したわけでございまして、そのときに、志布志事件と氷見事件について私が頭の中でそういう整理をしておったものですから、あのように発言したということでございます。

細川委員 大臣の頭の中ではそういう整理をしていたと。それは後でつけた大臣の理屈ではないですか。本音のところが出たのではないですか、その発言の中では、私はそういうふうに思いますよ。

鳩山国務大臣 いや、それはそういうことではありません。冤罪という言葉は割かしよく一般にも使われていますよね。例えば今度の三浦問題でも、アメリカが逮捕していって、これが冤罪だったらどうするんだなんという識者のコメントが出ておりますよね。

 だから、冤罪という言葉は法律用語でありませんから、公の場では基本的に私は使ってはならないというふうにこれから戒めていこうと思っておりますけれども、志布志の方々に対して非常に申しわけないような捜査や取り調べがあって、本当に申しわけないことをしてきたんだということは、私は十分認識し、何か一部に誤解があって、私が無罪じゃなくてグレーと言ったんじゃないか、そういう気持ちは全くなくて、それはもう真っ白真っ白の無罪なわけですけれども、しかもその取り調べがおかしかったわけでございまして、そういう観点で、私は、従来から自分の頭の中で考えていた整理を話してしまったということです。

細川委員 これについては予算委員会の方でも質問が出て、そのときの大臣の答弁は、志布志の被告であられた方々が不愉快な思いをされたとすれば、おわびをしなければならない、こういうような表現をされております。これをもってマスコミなどでは陳謝したというような報道もありましたけれども、しかし私は、不愉快な思いをされたとするならばという言い方が、非常に大臣の気持ちそのものが出ているような気がしてしようがないんですよ。本当の意味で志布志の人たちに申しわけない、そういうようなお気持ちなのかどうか。

 この点については、志布志の皆さん、捜査の件でもいろいろな件でも不愉快な思いを、大変な思いをされた、申しわけないと。では、直接にあの人たちに謝罪ということはこれまであったんですか。

鳩山国務大臣 直接謝罪をしたわけではなくて、公の場でした発言でございますので、国会等の公の場で謝罪の意を示しておるつもりで、それは深刻に反省をし、心から申しわけないと思い、謝罪をしたと考えております。

 先ほど、予算委員会のときの発言は、不愉快な思いをされたとするならばおわび申し上げたい、こう申しましたけれども、その後、非常に不愉快な思いをされたということが伝わってきておりますので、今は、不愉快な思いをさせてしまって心から申しわけなく思っていますということを申し上げます。

細川委員 私は、大臣が、マスコミにオープンにしながら、検事長それから検事正を集めての訓示の中でこういう話をされた、非常に軽率だと思いますよ。しかも、原稿にないようなところをわざわざつけ足して、冤罪ではないんだというような話をされる。これは本当に、被害者の皆さんからすれば、もうそれは心中察するに余りあるというような表現ができると思います。

 大臣は、これまでもいろいろなことで、就任以来、いろいろなことを発言されまして、私は、大臣が果たして本当にふさわしいかどうか疑問を持っております、失礼ですけれども。

 そもそも、最初に、就任直後には、死刑執行については、ベルトコンベヤーと言ってはいけないけれども、乱数表なのか、自動的に客観的に進む方法を考えるべきというような発言をされまして、これは物議を醸しました。そして、その後の執行状況を見ますと、十二月七日に三人、二月一日に三人、足早に執行が行われまして、二カ月足らずでこのような執行というのは、平成五年の執行再開以来最短というようなことでありまして、まさにベルトコンベヤーという表現のようなやり方がこういうことなのか、そういう思いもいたします。

 それから、十月には、これは外国の通信社など報道機関の特派員協会ですか、そこで、友人の友人はアルカイダだ、こういう発言をされました。これも、この発言そのものが、日本がテロに対して非常に警戒をし、そしてその対策をしっかりやらなければいけない、こういうことで、例のインド洋に対しての給油のあれも、再開をするということについては衆議院の三分の二、そういう可決でやったわけですね。そのときも、テロ防止のためだ、これが大義名分で、これが非常に重要なことだということでされているわけですね。

 日本がそういうテロ対策をとっているときに、一国の法務大臣が、私の友人の友人はアルカイダだというような発言をしたことが、どれだけ日本の国が、あるいは日本の政府が外国から色眼鏡で見られるといいますか、私は、これは大変な発言だったと思うんですよ。

 あるいはまた、委員会では、元総理大臣の秘書をやっていたときに、ペンタゴンからの接待を毎月のように受けていたと。これだって、一国の法務大臣が正式の委員会でそういう話をされると、これはまさに、こんなことをされていたのか、あるいは法務委員会でこういうことを法務大臣が発言されると、一体何だ、国民の皆さんはそう思いますよ。

 私は、これまで、大臣が就任されて、今私が申し上げたことについて、余りにも軽々な発言だと思いますね。法務大臣というのは、日本の国民の命と財産そして人権を守っていく、日本の法秩序をしっかり守っていくという国家としての根幹的なところを担っている省ですからね、法務行政というのは。その大臣ですよ。一番トップなんですよ。そういう方がこんな軽々な発言をされては、国民も大臣に対して何だと失望しますし、こんなことで果たして法務行政をしっかりやってくれるのかという、もう失望ですよ。資格がない、そういうふうにみんな思っていますよ。マスコミの論評でもそういうふうに書かれているじゃないですか。

 私は、大臣は日本の今の大臣として資格がないと。大臣、どう思いますか。

鳩山国務大臣 数々の御指摘をいただきまして、私も、さまざまに反省をしなければならないと考えております。

 私の表現が粗暴というのか不適切であったがためにさまざまに御批判をいただいてきたことも肝に銘じて、今後そういうことがないように努めていかなければならないと思っておりますけれども、とりわけ志布志事件についての私の発言は、弱い立場にある方の、あるいは苦しむ立場にある方のことを考えるのが政治の原点であるというみずからとってきた政治姿勢に全く反するものでありましたので、強く反省をしているところでございます。

 死刑執行の問題については、これを粛々と進めていく方法はないだろうか、刑事訴訟法の要請にこたえるのはどうしたらいいんだろうかということを極めて粗雑な表現で申し上げたわけで、表現上の誤りについて、これは深く反省をしなければならないと思っております。

 アルカイダの件は、みずから経験したことを超党派かなんかのいわゆるインドネシア議連等でも申し上げたこともあり、あるいは、各マスコミの皆さんに、マスコミの組織力で調査できないだろうか、もちろん防衛省にも言ったりしまして、全く今まで反応してくれなかったことで、実際に日本に六回も入国して潜伏しておったアルカイダのデュモンのような存在を考えますと、決して安全ではない、もっと公安調査庁も励ましていかなくちゃならない、入管も厳しくやらなきゃならない、そのような思いで言ったことなんですが、これも表現が不適切で、いろいろな受け取られ方をされたこと、これも反省をいたしておりますが、私としては、今後とも、法務大臣として日本の法務行政をつかさどらせていただこうと思っております。

細川委員 昨日の予算委員会でも法務大臣がいろいろな質問もされていたようでありますけれども、いろいろな問題発言をして、そのたびに謝罪をする、陳謝をするということだけでは、私は、法務大臣は務まらないというふうに思います。

 最後になりますけれども、きょう、私は、死因究明についても大臣にいろいろ質問をしようというふうに思っておりました。午前中、これまでに四人質問いたしましたけれども、そのうち三人まで、死因究明の問題でいろいろ質問をされております。それくらい死因究明に関しては関心があり、何とかしなければいけないということだというふうに思いますが、残念ながら、せんだっての大臣の所信表明のところでは、この死因究明については載っていないですね。まことに残念に思ったんですけれども、時津風部屋のあの事件、もうすぐ勾留期限が来ると思いますので、起訴になるだろうと思いますけれども、この事件もきっかけにして、ぜひ死因究明の制度をきちっと確立するように強く要望いたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

下村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

下村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。加藤公一君。

加藤(公)委員 民主党の加藤公一でございます。

 午後一の再開のタイミングというのはなかなか委員がそろいにくいのかわかりませんが、幾ら忙しくても与党の理事の先生ぐらいはおそろいいただきたいなと思いますので、御無礼ながら、一言苦言を申し上げてからスタートさせていただきたいと思います。

 今国会においては法務委員会最初の質疑の時間でありますので、大臣の所信に対してと、もう一つは、法務省、検察庁絡みで幾つか不始末が発生をしているようでありますので、そんなことも含めてきょうは質問させていただきたいと思います。

 質問については既にきちんとお知らせをしてあるんですが、その前に一個だけ、簡単なことなので大臣に伺いたいことがあるんです。

 徳島刑務所の松岡医務課長の件がかねてより問題になっておりますが、これに関連して、カルテを資料として提出してくださいということをお願いしていたんですね。出していただきました。出していただいて、大変な量がありますから全部を私は拝見しているわけではありませんが、一部、素人ながら見せていただきましたら、素人から見ても、あれ、これはどういうことなんだろう、こんなのでいいのかなと思う部分が散見されます。

 大臣、これは中身をごらんになったことはありますでしょうか。

鳩山国務大臣 見ておりません。

 ただ、私が報告を受けておりますのは、今法務省で懸命に調査している中で、肝炎の方が相当多いという報告を受けました。カルテ自体は見ておりません。

加藤(公)委員 この件をきょう深く私がやることはしませんので、もうそれで結構なんですけれども、素人から見ても、あれ、こんなやりとりが本当に適切なのかなと思うような部分もあるものですから、大臣もお忙しいとは思いますが一度ぜひ中身をごらんいただいて、ちょっとおかしいぞと思えばさらに調査の方に力を入れていただくように、冒頭お願いしておきたいと思います。ちょっと疑問の残るところが、私から見てもございますので。

 それでは、大臣の所信に関連をして質問させていただきたいと思います。

 まず、所信表明の中で、アルカイダ関係者が日本に不法入国を繰り返していた、あるいはアルカイダを初めとするイスラム過激派が我が国を再三テロの標的として名指ししていた、こういう御発言がありました。そして、さらにそれを受けてテロに関する調査の充実強化を進める、こういう御意思が表明されたところであります。

 まとめて伺いますけれども、アルカイダ関係者が不法入国を繰り返していたというのは事実かどうか、事実だとすれば、それは一体だれのことを指しているのか。そしてまた、再三にわたって日本をテロの標的として名指ししていたアルカイダを初めとするイスラム過激派というのは一体どんな組織のことなのか、そして、いつ、どこを標的としていたのか、これをまとめて伺います。

 そして、一番大事なのは、政府としてそれぞれの機会にどういう対応をしてこられたのか。ここまであわせて御回答をお願いします。

鳩山国務大臣 私の仕事の第一は、治安のいい国、安全な国をつくるということで、これは私だけじゃなくて政府の最大の課題でもあろうかと思っております。

 午前中にもお答えいたしましたけれども、私自身、強い危機意識を持っておるものでありますから、表現上問題になるようなことも言ってしまったことがありますが、ただ、日本も決してテロリストから安全な国ではないんだ、みんなでもっと頑張らなくちゃいかぬということを言いたかったということでございます。

 今、加藤先生御指摘の不法入国を繰り返していたアルカイダ関係者というのは、フランス国籍だそうですが、リオネル・デュモンという人でございます。結局、後からわかったわけで、だから怖いのです。つまり、今回、個人識別情報を始めますと、日本は厳しくなったから行きにくいということで未然防止にも役に立つと思うのです。

 彼は、一九九九年九月以降、六回出入国を繰り返していたことが判明したわけです。これは、ヨーロッパで捕まって、彼が持っている偽変造旅券、多分二つだと思うのですが、それを見て、ああ、これなら日本に六回も入っておった、通算では一年四カ月ぐらい日本に滞在しておったということが後から明らかになるということでございまして、非常に怖いわけでございます。

 それから、前に私がアルカイダ発言をしたときに、アルカイダという確証があるかという御質問をいただいたこともありまして、これは非常に難しい。では、例えばジェマー・イスラミアみたいなのが、アルカイダとほとんど同一歩調をとっておったこともあれば、別れたときもあったり、何がアルカイダなのかというのも非常に難しいのです。

 アルカイダは、もちろん再三にわたり日本をテロの標的として宣言してきているところでございますが、アルカイダのほかに、アブハフス・アルマスリ旅団、もう一つ、一神教聖戦団、ハレド・ビン・アル・ワリード旅団という少数組織が声明において我が国を名指ししているのです。これらの声明は二〇〇三年から二〇〇四年にかけて発出されて、攻撃対象として米国その他幾つかの国に日本を加えておるわけでございます。

 アブハフス・アルマスリ旅団は、二〇〇五年七月の英国同時多発爆弾テロに際して犯行声明を出した団体でございますが、その実態はつかめておりません。一神教聖戦団はアブムサブ・アル・ザルカウィが設立したイラクのテロ組織ですが、それと一緒になっておりますハレド・ビン・アル・ワリード旅団というのは実態がつかめておりません。

 結局、外国機関との連携を緊密にするなど、国際テロ組織の動向把握にはこれからますます頑張っていかなければならないわけですが、特に国際的な協力が重要だと思うのは、先生御承知のように、個人識別情報の場合、一回目はわからない、つまり、退去強制を命じたような人間がまた入ってこようとすればすぐわかるわけです。正当な旅券であれば、一回目はわからなくて、結局デュモンのように六回入国を繰り返されてしまって、後からわかる。今度は、二回目からはわかると思うのですが。一回目は非常に判別しにくいから、外国からの情報がどんどん寄せられておれば一回目で反応ができるんですが、そこが悩みの種だと思います。

加藤(公)委員 たくさんまとめて伺いましたから整理して聞きますけれども、最終的に、日本がテロの標的として名指しされたタイミングで我が国政府はどういう対処をしたんですかというところをもう一回お聞かせください。

鳩山国務大臣 それは国を挙げて取り組むべき課題でありまして、インテリジェンスにかかわるのでそうべらべらしゃべれないんでしょうけれども、当然公安調査庁にももっともっと厳しくやるようにということでありますし、もちろん警察との連携もありますし、外国への働きかけ、外国でそういうテロリストのリストのようなものがあればできるだけこれを把握するというようなことで、テロの未然防止というのはそう簡単な問題ではない、非常に難しいとは言いませんが、決して簡単な問題ではない。

 それから、前に公安調査庁長官が委員会で御答弁申し上げたと思いますけれども、日本の国内にそういうイスラム過激派の巣というのか、そういうことになり得るような、疑い過ぎてはいけないんでしょうけれども、場所がありますから、そういうところを監視するなど、やっておると思います。

加藤(公)委員 きょうの本題じゃないのでそこは余り深くは突っ込みませんけれども、大臣の所信の中で、国際テロに関する調査の充実強化をより一層図り、テロの未然防止に努めます、こういう御発言がありました。

 極めて重要なテーマだと思うので、であればこそ、これから先、どんな調査、何に対する調査をどういう方法で充実強化されるのか、ここが私は一番聞きたいわけですね。その前段階として、今までも既にテロの標的として名指しをされてきたからそのときどう対処してきたのか、だから今後こういう調査の充実強化を図りますというのが本来の筋だと思ったので今伺ったんですけれども、そこは多少大目に見て、後段の本質のところをお聞かせいただきたいと思います。

 もう一回聞きます。

 具体的に、テロに関する調査の充実強化というのは何に対する調査をどんな方法、どんな手段で強化されるおつもりなのか、そこを教えていただきたいと思います。

鳩山国務大臣 先ほど申し上げたことに尽きるわけですが、とりわけ国際テロ組織と申しましても、先ほど申し上げたように、犯行声明を出したりあるいは予告を、標的だと言っていながら、実態としてなかなかつかみにくい、そういう団体もあるわけですが、国際テロ組織とのかかわりが疑われる人物とか、さっき申し上げたような組織と言っていいかどうかわかりませんが、その辺の有無を調べて、それらの動向に関する調査を厳しくやっていこうということで、テロの未然防止に全力を傾注してまいります。

 しかしながら、インテリジェンスにかかわることでございますので、かえって業務遂行、安全を守るためにマイナスになってはいけないというので、これぐらいで差し控えさせていただきたいと思います。

加藤(公)委員 もうちょっと伺いたい部分ではあるんですが、時間との絡みもありますのできょうはこれぐらいにしますけれども、最後に一個だけ。

 大臣が御発言になっていらっしゃったお友達のお友達であるところのアルカイダとおぼしき方というのも当然調査対象になられるわけですね。そこだけ確認をさせてください。

鳩山国務大臣 私は、友達の友達と言ったのか、友人の友人と言ったかわかりませんが、加藤公一先生には前にもお話ししましたね。著名なチョウの標本商がいて、それがいわゆるイスラム過激派に走っていくプロセスのこともお話をしたと思うわけですね。私はもちろん直接の面識はないのですが、その男と取引をした人たち、日本人は相当数に上るわけですね。だから、私が友人の友人と言ったときに、その友人というのは自分ではないかと思った人が十人や二十人いたらしいんですね。それは理論的にはそうですから、その有名な標本商と取引しておった人間、そしてこういうチョウの趣味や研究の世界、私、大体みんな学会等で会っていますから。そういうようなことでございます。

 問題は、彼が間違いなく日本に入国をしておった、少なくとも単数ではない。そのことを私は随分当時防衛庁に言ったりいろいろなところに言ったんですが、だれも相手にしてくれなかった悔しさというのを今でも忘れないので、だから非常に危険でございまして、そのことは正直言って、当時私がここで名前を出したアントンという男も当然調査対象なんですが、その後の入国の経緯はないようでございますし、所在もつかめておりません。私は、自分が発言したりした関係があったから公安調査庁にいろいろ言うんですが、申しわけありませんがいまだわかりませんという答えです。

加藤(公)委員 その方だけのことを言っているわけではもちろんありませんけれども、その方も含めて、ことしサミットもあることでありますので、大臣、御発言のとおり、テロの未然防止に向けての調査というのは徹底的にやっていただきたい。引き続き、また次の機会に議論させていただきたいと思います。

 先ほど来、鹿児島県志布志の事件の件、既に議論にもなっておりますが、私からも改めて伺いたいと思います。

 この発言は、先ほど既に大臣から御答弁があったとおり、検察長官会同という会議の場で訓示としてなされたということでありますので間違いはないと思いますが、これは法務大臣としての公式の御発言ということでよろしゅうございますね。

鳩山国務大臣 年に一遍の検事長、検事正の集まりで、もちろん検事総長も役所の幹部も出席いたしておりますが、そういう正式の会同における正式の訓示でございます。

加藤(公)委員 では、法務省として、イコール法務大臣としてだと私は理解をしますけれども、法務省としての冤罪という言葉の定義をお聞かせいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 冤罪という言葉はさまざまに使われておりまして、社会生活上、さまざまに使われることがございます。したがって、一般に言う法律の条文に出てくる用語ではないわけでございまして、定義が甚だ不明確というか、定義のない言葉、それを私が軽々に使ってしまって志布志の皆様方に心の苦痛を与えてしまったことについておわびを申し上げているわけでございます。

 それは、繰り返しになりますけれども、私の頭の中の若干の整理があったわけです。要するに、神崎先生が午前中にお触れになったいわゆる有斐閣の法律用語辞典、つまり条文に出てくる言葉じゃないけれども、法律の世界で使われる用語の辞典で、私もこれは見たことがあるわけです。冤罪は、無実の者が罪に問われること、これを救済する方法として、刑事訴訟法は再審制度というものを規定している。

 結局、私は、これそのものではありませんけれども、何となくそういう整理を自分でしてしまって、無実の人が有罪になっちゃって別に犯人が笑っているというか、要するに、再審請求がされて再審が開始されて、それで無罪になっていくようなケースを何となく冤罪というふうに頭の中でとらえていたわけです。

 そこで、例えば氷見事件の場合はとんでもない人違いだったので、あれも再審をやって無罪にしたんだと思うんですね。だから、再審無罪というか有罪確定、そこまで狭くはないだろうと私は実は思っておりました。例えば、裁判中であっても完全に別の犯人が出てきた場合とか、そういうようなことを考えて使ってしまったわけですけれども、しかし、いろいろと御批判をいただいて、一晩考えて結論を出したのが先ほど申し上げたような私の考え方なのでございます。

加藤(公)委員 大臣の最初の御発言の段階の頭の整理というのは、恐らく刑事訴訟の手続の段階で、どこまで行ったらそこから先を冤罪と呼ぶという区切りをつけていらっしゃったんじゃないかと思うんですよ。

 つまり、一たん有罪判決を受けた後真犯人があらわれたらそれが冤罪だ、こういうふうな御認識だったんじゃないかと思うんですが、世間一般で冤罪といったら、一つには、別に真犯人がいるにもかかわらず罪を問われる、あるいは逮捕される、捜査を受けるというパターンと、もう一つは、そもそも犯罪も何もないのに、それがでっち上げられて犯人扱いされる。これは、刑事訴訟の手続でどこまで進んでいるかじゃなくて、広く一般、今申し上げたようなパターンというのは世の中では冤罪というふうに認識をされていると思うんですね。

 だから、大臣がおっしゃったことが、おいおい、ちょっとそれは違うんじゃないかという批判が沸き起こったというふうに私は理解をしておりますが、その発言をしたときではなくて、今現在は、大臣の認識は今私が申し上げたとおりでよろしいんですか。

鳩山国務大臣 私は、軽々に冤罪という言葉を使ったみずからを恥じておるわけで、反省しているわけでございます。

 要するに、志布志で苦しまれた方々が、我々は冤罪だった、冤罪を晴らした、冤罪が晴れたというふうにおっしゃられれば、それはもう私はそのとおりと素直に受け入れなければならない。だから、前日の自分の言葉遣いは間違いであり、心からおわび申し上げますと申し上げたわけです。私は、定義のない言葉をこれ以上、これは冤罪、これは冤罪でないというふうに分けた物言いはすべきでないと思いますけれども、今加藤先生がおっしゃられたようなお話を私は念頭に置いて、考えを改めておわびしたというふうに受け取っていただいて結構です。

加藤(公)委員 有罪が確定していなくて裁判で無罪判決が出たケースというのは、多分それ全部が冤罪じゃないんだというのが一番最初の発言のときには頭の中におありになったんだと思いますけれども、無罪判決が出たときには、一つは、確かに疑いは残る、その被疑者に疑いは残っているけれども証拠が十分でないから有罪にはできないという意味での無罪と、今回の志布志の事件のように、とんでもない捜査があって、事件そのものがないのに捏造されて、でっち上げられて罪に問われようとしていたというパターンと、これは両方含まれるわけですね。これを冤罪と呼ばないと言ったことによって、大臣がそうおっしゃったことによってどんな現象が起きるかというと、いや、もしかしたら、この志布志の事件の方々も、まだ疑いは残っているんだけれども、証拠が十分じゃなかったからたまたま無罪になっただけなんじゃないかという疑念を世間の皆さんに持たれることが一番私は心配なんですよ。それは、被害に遭われた方に、また二重、三重の苦しみを与えることになるからなんですね。私は、だからこそ大臣の御発言をここで取り上げさせていただいているんです。

 実際、十人以上の方が、不法な取り調べを受けて、大変な長期の勾留をされて、筆舌に尽くしがたい御苦労をされてきているのは事実でありますから、これは明らかに冤罪だということを認められて謝罪をされるべきだと思いますが、いかがお考えになりますか。

鳩山国務大臣 私の反省している事柄と今の先生のお話は非常に似ているというか、よく先生の言葉は私の心に入ってまいります。

 つまり、私が頭の中でどういう整理をしていたかというのは、先ほど申し上げたように、有斐閣の辞典のこともあるし、有罪確定されて後から犯人があらわれるというようなケースを念頭に置いておったわけですが、無罪というのは、確かに先生がおっしゃるように、無罪に種類があるとは言いませんけれども、やはり志布志の事件はめちゃくちゃな取り調べ、それはもう最高検を初めとして我々みんなが反省しなくちゃいけない、踏み字とか何だとかということがあれば、何もないところに、火のないところに煙が立ってしまうというような形に限りなく近いものができ上がるとすれば、それは再審、それは有罪でないから再審ということにはならないわけですけれども、全く誤認逮捕というのか何というか、そういうものができ上がってしまうものですから、やはり残念ながらそういう事件があったということで、私は素直に謝ろう、やはり志布志事件のありようというものに着目して素直に謝ろうと思ったという意味では、その道筋は先生が御指摘されていることと大差ないと思います。

加藤(公)委員 そういう御理解であれば恐らく次以降の話は御理解いただけると思うんですが、今回の発言は、検察長官会同における公式な発言、大臣の訓示として発せられたということは冒頭確認をさせていただきました。

 ということは、その正式な会議の場で大臣の公式の発言、訓示として発せられたことでありますから、その発言を撤回し、その内容を改めるというためにはそれなりの正式な手続が必要だと思うんですけれども、発言をされて以降、お考えを変えられて以降、これまでに何かその手続はとってこられましたでしょうか。

鳩山国務大臣 私は、あの会同の席で氷見、志布志両事件の捜査、取り調べ、あるいは公判も含めてだと思いますが、重大な反省をしなければならない、あってはならない結果を生み出しているわけでありますから、今後、適正な検察権の行使というんでしょうか、そういうものについて述べたわけであります。

 ですが、追加してみずから発言した中において、先ほど申し上げたような、つい不愉快な思いをさせてしまった、その真剣な反省の上に立っておわびを申し上げてきたわけでございまして、検察へ出向いてそういう説明をしたりということはいたしておりませんが、国会の場でさまざまなやりとりがあり、きょうのこういうやりとりもあり、検察の人たちは、私のその後の発言を聞いて正しく理解をしてくれていると思っています。

加藤(公)委員 ちょっと私、そこは納得いかなくて、今回の大臣の御発言によって、発言した場面というのは検察の幹部の方がいらっしゃるところで、その方々に向かって大臣の考え方を伝えるという意味で発言をされたわけですね。その発言が、さっきの答弁にもあったとおり、マスコミフルオープンだからそれが報道されて、志布志事件の被害者の方々の心を傷つけましたと。

 つまり、検察の幹部の方々に対するメッセージという意味と、冤罪被害者の方々を傷つけたという問題と二つあるわけです。大臣は、その後、国会の答弁では確かに、考え方を変えました、撤回をしますということはおっしゃっているとしても、では、正式にその検察幹部の方々に対して、あの訓示は誤りであったから、これこれこういう考え方で今後仕事をするようにという明確な意思表示がなされているかといえば、それは私はされていないと思います。

 国会で発言したことを全国の検察の幹部がすべて逐一チェックをしていて、ああ、大臣、言うことを変えたから我々も行動を変えようなどということにはならないはずでありまして、本来なら、いま一度検察長官会同を開いて、その場で先般の発言は誤っていたからこれこれこういうふうに訂正をする、こういう意思が真意なのでこれに従ってやってもらいたいということを言うべきだと思いますが、いかがお考えになりますか。

鳩山国務大臣 しつこいようですが、あの会議で、私は氷見、志布志両事件についての真剣な反省をしなければいけないということを申し上げたわけでございまして、その折に、私が冤罪という言葉を自分の頭の中で整理したもの、先ほど神崎先生からお話があった有斐閣の用語辞典を見たことももちろん過去にありますけれども、そういう自分の頭の整理。

 しかし、冤罪というのは公式の用語では使ってはならないというふうに今は思っておるわけで、使ったことに間違いがあるわけで、私は、検察の幹部はその後の私の発言等ですべてを理解してくれていると思います。そしてまた、彼らの事件に対する態度というのは、十分に反省してやってくれという部分を重く見て活動をしてくれていると思います。

加藤(公)委員 そんな希望的な観測でいいかどうかというのをちょっと別の観点から伺います。

 大臣はその御発言の後に、十六日の日だったと思いますが、自由民主党福岡県連大会の場でこう発言をしていらっしゃいます。天に向かって恥じることはない、今回の冤罪の問題は、法務省や検察が常日ごろ言っていることをそのまま言った、こういうふうに報道されておりますけれども、これは事実でいらっしゃいますか。

鳩山国務大臣 事実でございます。

加藤(公)委員 発言をしたことが事実だというのに加えて、ではもう一つ。

 その内容、つまり、法務省や検察においては常日ごろ大臣が最初におっしゃったようなことを言っていらっしゃるわけですか。もう一度確認をさせていただきます。

鳩山国務大臣 ちょっと細かいことですが、私も地元に毎週帰っておりますが、天に向かって恥じることはないというのは、今までの、例えば死刑は粛々と執行し、法務大臣がかわることによって執行しなくなったりするのはおかしいとか、あるいはアルカイダというのは意外と身近にいるから本当に気をつけなくちゃいけないんだとかということは暴言のようにしばしば問われるけれども、それは、表現下手であっても、私は自分の信念を言っているしうそは言っていないんだ、だから恥じることはない、しかし、今回のことについては、自分は恥じ入るものがあって真剣に反省をしている、大体そういう脈絡で地元ではずっと話をしてきているわけです。ですから、天に恥じるものはないというのは、冤罪発言のことを言っているのではありません。

 福岡県での自民党の県連大会だったわけですけれども、冤罪という言葉は基本的に答弁その他でも一切使うべきでないというふうにアドバイスを受けたこともあります。ただ、役所の中では、さまざまに朝から晩までいろいろな打ち合わせをしていく中で、私なりの頭の整理が、彼らとの日々のやりとりの中で、彼らがこうですよと言ったという言い方はできないかもしれませんけれども、私の頭の中に形成をされていったのは事実だと思います。

加藤(公)委員 では、少し聞き方を変えて同じことを確認いたしますけれども、法務省や検察庁においては、鹿児島県志布志の事件について、これはいわゆる広く世間で言うところの冤罪ではないと。つまり、何の罪もない人を罪に問おうとした事件ではないというふうに法務省・検察の中で常日ごろ認識をされているということなんですか。そこを確認させてください。

鳩山国務大臣 検察が氷見事件は冤罪ではないと日ごろから言っているというような事実はありません。したがって、最高検の報告書も真剣な反省文になっているわけです。

 ただ、氷見事件と志布志事件という非常にあってはならない二つの事件が相前後して起きた。このことをいろいろ話し合うときに、この二つは質は違いますよねという説明は常に受けてまいりました。そのことが、私の頭の中では、要するに、先ほどの有斐閣のあれではないが、再審無罪というのか、取り違えて有罪になった人が無罪になったケースを冤罪と言うのかな、そういうケースのみを冤罪と言うのかなという私の認識になっていったのは間違いないと思います。

加藤(公)委員 有罪判決が出ているかどうかという意味では氷見の事件と志布志の事件は違うと思いますが、被害者の側から見たら、全くやってもいない罪を着せられて、いわゆるぬれぎぬを着せられて、刑務所で服役したかあるいは長期間勾留されたかは別にして、いずれにしても大変な苦労をさせられたという事実自体は、被害者から見れば何にも変わらないはずです。

 検察庁や法務省の中で、その被害者側から見た視点がなくて、さっきも冒頭申し上げたとおり、手続上有罪判決が出たかどうかで線引きをして、こっちは、我々は悪くないんだよという考え方に立っているんじゃないですかという疑念を抱かせるから、そこが私は心配なんです。

 大臣はさっき、いや、そんなつもりはありません、加藤が言ったことの理解でいい、こういう話でしたが、法務省や検察の中も大臣と同じ認識になっているんですか。いかがですか。

鳩山国務大臣 そもそも冤罪論議というのを、法務省あるいは検察、私は検察と直接話をする機会というのはほとんどありませんけれども、冤罪論議というのをしたことはありません。

 ただ、さまざまな議論をしていく中で、氷見事件と志布志事件の本質的な違いというのは、まさしく有罪判決が出て、あの場合はしかも服役まで終えてしまったという大変な事件で、後から真犯人があらわれる、そういうことと志布志のこととは頭の中で分けてしまうという習慣が私にはでき上がってしまったということで、法務・検察は、冤罪という言葉は、例えばこういう国会の答弁等でも使わない方がいいというアドバイスを私に何度もしてくれていました。もちろん、人によって意見はいろいろあると思いますけれども。

 そういう中で、私は使ってしまったので、今は反省している、こういうことです。

加藤(公)委員 大臣所信の中にもたしかあったと思いますが、あるいは昨年の犯罪白書でも中心的なテーマになっていますけれども、例えば再犯を防止して治安の回復をしようとか、あるいはテロを未然に防ごうとか、国内治安の維持に対しては法務省も検察も極めて重要な組織であるし、だからこそ頑張ってほしいとも思うんですよ。思うんだけれども、ぜひ活躍をしてほしいとも思うけれども、その活躍の方向が間違っていると、今回のような被害を生み出すから、その方向だけは大臣がきちんとかじ取りをして、正しい方向に向けなきゃいけませんよねということを私は言っているんですね。

 そのときに、大臣が検察長官会同で誤った訓示をしたことは事実です。それは御自身がお認めになって、考え方が間違っていたとおっしゃったんだから。誤った訓示をした。だとすれば、それを国会の場で自分の発言で訂正したからそれでいいんだではなく、改めて会同を開くのか、それが物理的に難しいのであれば、何か書面でその参加者に対してはきちんと、こういう趣旨で、発言の真意はこうだったということを伝えるか、何がしか正式な手続を踏むべきじゃないんですかということを、さっきの一連の質問の頭で聞いたんです。いかがお考えになりますか。

鳩山国務大臣 国権の最高機関で申し上げていることでございますので、それは十分に伝わって、私が会同で申し上げたことと現在の心境、翌日の心境と言ってもいいんですが、大きく変わってきておわびを申し上げているという姿、国権の最高機関で申し上げておりますのでこれは伝わると思いますし、また、役所の中では、例えば刑事局長などとは毎日のように一緒におりますから、そういう中でいろいろ伝わっていくと思いますが、間違いなく伝わると思います。

加藤(公)委員 私は、厳格な組織であるからこそ正式な手続をした方がいいという趣旨で申し上げているところでありまして、本当はもうちょっと議論したいんですが、ほかに山のようにテーマがありますので、きょうのところはちょっとここに一たんおかせていただくことにします。ただ、何がしか正式な手続を踏まれることを私が望んでいるということだけは申し上げておきます。

 この氷見の事件あるいは志布志の事件、前回の質疑のときにも私申し上げましたけれども、大臣、一回被害者の方に直接会われたらいかがかと思いますが、どうお考えでしょうか。

鳩山国務大臣 たしか、氷見事件の方にもしお会いするような機会があれば、お会いしてお話をしたいということをこの場で申し上げたことがあるように思います。志布志の方に関しても、基本的にそういう機会があって、しかるべきときであればと。

 国賠を起こしておられますね。そうすると、国賠の場合は国を訴えているわけで、私が国の代表なわけですね。そういうような点もいろいろ考えていかなくちゃならないので、そう簡単ではないかもしれませんが、機会があればなと思っているのは間違いありません。

加藤(公)委員 前回も、富山に行く機会があれば氷見の事件の被害者の方には会って謝罪をしたい、こういうお話があったのは私も記憶をしております。

 今回の大臣所信の中に、虚心坦懐、心を無にして話を聞いてきましたという御発言がありました。御自身で御発言をされていますが、心を無にしてお話を聞いてきたというのであれば、官僚やスタッフの話だけではなくて、実際に大変な苦労をされた被害者の方にも直接会って、話を聞いて謝罪をするということを私は強く望んでおきたいと思います。国賠の件等々あって何かと難しいという事情はしんしゃくいたしますが、これは決してその人に謝れと言って騒いでいるわけじゃなくて、そのこと自体が、その御意見を承ること自体が法務行政のレベルアップにつながると確信をしているから申し上げていることでありますので、ぜひ御検討、御配慮いただきたいと思います。

 では、多少細かなことになりますが、ちょっと幾つか指摘をしておかなければならない件がありますので、申し上げていきたいと思います。

 一つは、財団法人民事法務協会の件でありますが、これはたまたま見つけてしまいましたので、ほっておくわけにいかないので、ちょっと細かい件ですけれども取り上げます。

 民事法務協会が職員の方を募集していらっしゃいます。ちょうど今週頭ぐらいまでの募集だったと思いますが、その中に年齢要件をつけているんですね。これは昨年の国会において雇用対策法が改正をされて、民間企業においては、募集、採用において年齢条件を付することが禁止をされました。それまでは努力規定だったものが、今度は禁止をされました。この財団法人民事法務協会東京支部の募集というのは明らかにそれに違反をしていると思いますが、大臣はどう認識をされていますでしょうか。

鳩山国務大臣 私もこれを知ったときは驚きまして、これはリクルートですか。(加藤(公)委員「「フロム・エー」ですね」と呼ぶ)「フロム・エー」というのはリクルートじゃない。(加藤(公)委員「まあグループですね」と呼ぶ)先生はリクルートにおられたのですか。(加藤(公)委員「私は本社にいました」と呼ぶ)いや、それは本質ではありませんけれども。

 五十歳ぐらいまでと書いてありますね。私は事務所の秘書には随分優しくしているつもりなんですが、案外やめるのが多くて、秘書募集もよくやるんですね。最近、募集するときには非常に神経を使うわけですね。やはり、いろいろプライバシーを侵すようになってはいかぬとか。それが、年齢なんて言ってはいけないはずと思っておるのに、雇用対策法違反というか、今事実関係を早急に調査しておりますけれども、法令を遵守して募集を行ってほしい、つまり不適正だと思いますね。

加藤(公)委員 実は、この雇対法の改正のときに、私、それこそサラリーマン時代から年齢差別禁止論者だったものですから、議員立法も出させていただいて、過去三回も出させていただいていましたし、昨年の雇対法の改正のときにも質疑にも何度か立たせていただいて、そのときに、実は外務省とか防衛省とか、あるいは文科省関連で、それは公務員の募集、臨時職員の募集でしたけれども、年齢要件をつけている件があって、即日修正をしていただいたという経緯があります。地方自治体でも当時年齢要件をつけている募集が随分ありまして、それも明らかにおかしなことだから、すぐに修正をしようという話になったんですね。

 その後、その議論を経て雇対法が改正されて、昨年十月一日から施行されています。今回の民事法務協会の募集は、完全にそれに触れているはずです。今大臣がおっしゃったとおりです。監督権者として早急に指導していただきたい、是正をしていただきたいと思いますが、していただけますね。

鳩山国務大臣 加藤先生は元気はつらつでお若くて四十三歳。私は、ことし還暦になるので、こういうのを見ると非常に不愉快ですね。五十歳ぐらいまで、私はだめだ。

 関係はありませんけれども、やはり人間というのは年齢には逆らえないので、私もことし還暦になってきますから、若いころに比べると、年齢について制限を加えるということに対する不合理さというんでしょうか、そういうものを強く感じる年齢でもありまして、これは早急に指導したいと思っています。

加藤(公)委員 ぜひ、よろしくお願いします。

 では、もう一つ。本年一月十日に長野の副検事の方がJRの特急を臨時停車させるという事件が発生をいたしました。とめる、とめないの判断はJR東日本の判断ですから、ここではとやかく私は議論いたしませんが、今回の件は御自身がうっかりしていて乗り過ごしたということですから、これは弁解の余地はないと思うんです。仮に、災害とかあるいは事故とかで、公判が設定されていても、そこに例えば担当の検事が遅刻をするとか行けないとかいうケースというのは当然起こり得ると思うんですね。

 先週末から今週にかけてのこの土日、大変な風が吹いておりまして、これで随分JRを初めとして電車のダイヤが乱れました。ちょうど大学の入試だったり、あるいは看護師さんの試験もたしかあったと思うんですが、そんな試験にも影響が出たようでありますけれども、そういうことは当然あり得る。

 法務省あるいは検察庁として、仮に何かの不慮の事態によって担当の検事が公判に間に合わない、行けないとかおくれるという場合にはどう対処することになっているのか、ルール、規則があるのであればそれを教えていただきたいと思います。

鳩山国務大臣 特にルールのようなものを定めてはいないようでございます。

 事故、災害、みずからの不注意というのはこれは許してはいけないことでしょうが、公判におくれる場合の対処の仕方は、こういう場合こうしろというふうに決められているのではなくて、基本的にはケース・バイ・ケースで、個々の検察官の判断において裁判所におくれる旨を連絡して、また裁判所がどう判断してくれるか、あるいは大もとの検察庁に連絡して対処の仕方を相談するなど、ケース・バイ・ケースでございます。

 ですから、例えば裁判所にお願いをして公判の時間調整を図ったり、予定されている審理の内容の関係で代理の検察官を立会させるとか、いろいろなやり方があるようでございまして、例の電車をとめておりた件は、実質的な審理が予定されておって、事件に関与している検察官は当該副検事のみだったので大変だという焦りでああいう行動をしたんでしょうけれども、本来は、裁判所へ連絡して、みずからの失敗をわびて開廷を待ってもらうとか、そういう方が合理的だったのかなと。

 前に、新幹線をとめた国会議員だか何だか、あれは候補者だったかな、候補者でありましたけれども、泣きついて、とめるのはJR側の判断なのかなとは思いますけれども。

加藤(公)委員 さっきも申し上げたとおり、とめる、とめないはJRの判断ですからここでは私は申し上げませんが、とめてもらえると思って申し出るところが既に人として私は間違っていると思いますよ。民間企業のビジネスマンが、例えば営業でお客さんと約束している、大事な取引だ、自分が乗り過ごして遅刻しそうだというときに、電車をとめてくれと言ってもそれはとめてくれないでしょう、特急電車を無人駅に。それは、あり得ない話だと思いますよ。注意処分になったということ、それが軽い、重いということは一々申し上げませんけれども、ちょっとないんじゃないのというのが私の感覚ですし、さっきも申し上げたとおり、極めて大事な任務を担っていただいている組織だからこそ、もうちょっと緊張感を持ってやってもらいたいということだけにとどめておきますので。

 今度は、刑務所の件について伺います。

 川越少年刑務所の看守と法務技官が、大変残念なことでありますけれども、書類送検をされるという事件が発生いたしました。大臣、この事件の内容を御存じですか。

鳩山国務大臣 報告を受けているだけですから極めて詳しく知っているわけではありませんが、川越少年刑務所において、二月二十二日、看守や法務技官が受刑者の頭をたたいたとか、いわゆる特別公務員暴行陵虐容疑に問われてさいたま地方検察庁に事件を送致した、その報告を二度ほど受けているので、頭をたたくといっても相当ひどかったのかなという程度の想像をしておりますが、詳しく知っているわけではありません。

加藤(公)委員 頭をたたいただけではないようでありますから、後で矯正局長からでもしっかり聞いてください。

 実際どうだったのかは私も知りません。現場にいたわけじゃありませんからわかりませんが、何でこんなことが起きるの、乱暴するにしても何でこんな乱暴の仕方なのと思うようなみっともない恥ずかしい事件でありますので、大臣、中身は後で、私、ここでしゃべって議事録に残るんじゃたまったものじゃありませんから、自分で後で確認しておいてください。それぐらいみっともない事件です。(鳩山国務大臣「今、資料に少し出ていますよ」と呼ぶ)何でこんなことが起きるんだというような事件ですから、そこは内容を理解していただきたいと思います。

 では、今資料を見て大体御理解いただいたことを前提に伺いますが、この書類送検された法務技官は職業訓練を担当していたということですけれども、何の職業訓練を担当しておりましたか。

鳩山国務大臣 今まだ資料を十分見ていなくて、報告を受けたのは頭をたたいたという程度のことだったんですが、実際にちょっと恥ずかしくてここで言えないような中身が入っておるようで、これは本当に虐待というような概念に当たるんだなと。

 職業訓練をしていた技官は木工の職業訓練、受刑者に対する技術指導ですから、木工というのは、やはりいずれ家具その他をつくる訓練だと思います。

加藤(公)委員 もちろん、職業訓練ですから、どんな内容であれ、きちんと手に職をつけるなり、あるいは職能を高めることというのはどんなことであれプラスにはなるとは思いますが、しかし、そうはいっても世の中にはニーズというものがありますので、何でもかんでも教わればそれで済むという話ではないはずなんですね。

 この職業訓練担当の法務技官が教えていたその木工の仕事というのは、受刑者が社会復帰して就労しようとする際に果たして役に立っていたんでしょうか、どうお考えになりますか。

鳩山国務大臣 私の受けている報告によれば、いわゆる木工科職業訓練というものは、木工工具の種類や作業手順などを教える学科講義、木工の基礎から応用までの実習訓練などを通して家具などの木工製品製作に関する知識と技能を習得させるもの、これらを習得することによって出所後の家具製作業等への就労の際に十分に役に立つであろう、実際に立っているというふうに私どもは考えております。

加藤(公)委員 では、大臣の所信にあった御発言からそれに関連をして伺いますけれども、治安を回復させるために再犯の防止が非常に重要だということでありました。それは、私もこの白書などを拝見して、そのとおりだという認識があります。その再犯を防止するために就労させる、単に、罪を償った後、刑務所を出てそれっきりじゃなくて就労させる、就労の確保というのが大変大きなかぎを握る、この認識も恐らく相違はないだろうと思います。

 では、具体的にどういう施策を打ち出してその就労を確保していくのか、まずそこから伺います。

鳩山国務大臣 法務省と厚生労働省との連携による刑務所出所者等総合的就労支援対策というのを昨年度から開始しておりまして、このうち、刑事施設は最寄りのハローワークと連携をする、あるいは職業講話をしていただく、職業相談、職業紹介等を実施しているということで、民間の就労支援スタッフを配置し、いろいろな助言指導、ハローワークとの調整等を行っている、こういうことでございます。

 これが成果が上がっていくように心から期待をしているわけでございまして、いろいろな雇用情勢がありますが、職業訓練によって必要な知識や技能を受刑者に与えて、場合によっては資格とか免許を取って就労しやすくさせるということもやっておるわけでございます。

 それから、先ほど、午前中にもお話を申し上げましたけれども、甘利経済産業大臣が非常に協力的でございまして、商工会連合会とか商工会議所、あるいは中小企業団体中央会とか、そういうところに声をかけていただいて、やはり満期で出所した方とか、あるいは仮釈放されたような方が就労できるように法務省と厚労省と経産省で全力を尽くしていきたいと思っております。

加藤(公)委員 実は、きょうの質疑で私が一番問題意識を持っているのはここの分野なんですね。

 何かというと、今大臣がおっしゃっていた厚労省とタイアップする、要するにハローワークと連携をするということは、いざ就職するときのマッチングの機能だけなんですね。

 つまり、雇用主側から見たときに、その方が、この人が自分の職場に来てくれればプラスになるなという状態にあれば、あとはマッチングなんですよ。どこか一番合うところ、条件の合うところ、あるいはそれぞれ勤務地なりなんなりいろいろな条件が合うところにマッチングさせるという機能は、これはハローワークがやっています。

 そもそも、AさんならAさんとしましょうか、出所した、罪を償って出てこられたAさんが、雇用主から見たときに、この人が欲しいと思われない限り、幾らマッチングの機能だけ充実させてもそれは職につくことは容易じゃないんですね。だとすると、そのAさんの職能を高めるということ、つまり、刑務所の中にいるときに職業教育なり職業訓練をするということは非常に重要だというふうに私は実は思っているんです。

 思っているんですが、ただ、さっきも申し上げたとおり、何でもかんでも教えればいいかというと、ないよりはいいです、何にもやらないよりはよっぽどいいけれども、世の中で必要とされている職能を身につけない限り、ただでさえハンディを抱えて世間に出ていくわけですから、なかなか就職に結びつかないという懸念を持っております。

 そこで、これまで刑務所内で職業教育あるいは職業訓練をしてきたことが、果たして世の中のニーズに合っていたというふうにお考えかどうか、大臣の御認識をまず伺いたいと思います。

鳩山国務大臣 これは非常にすぐれた指摘だと思うんですね。

 それは、雇用情勢も社会情勢も、消費者の需要、どんどん変わりますよね。したがって、職業訓練で、教えやすいから教えて技術を身につけさせよう、しかし、実は身につけた技術は社会に出てみると企業が余り欲しがっていないということになれば、せっかく技術を学んでも、意味がないというか就労に役に立たないという可能性があるものですから、先生の今の御指摘、全く正しいので、例えば有効求人倍率が非常に今後高くなるようなものを予想して、職業訓練の内容を臨機応変というか徐々に変えていくことは大事だと思います。

加藤(公)委員 実は、さっきの川越の書類送検された法務技官が担当していた木工という職種、職種と言っていいのかどうかわかりませんが、分野は、有効求人倍率が非常に低いんですね。全国平均から見ても非常に低い。つまり、その仕事を身につけてもなかなか就労に結びつきにくいわけですね。

 たまたまその分野を担当していた方が不祥事を起こしたというだけのことだとは思いますが、今大臣がおっしゃったように、一つは有効求人倍率も目安になるとは思いますし、それは地域によっても変わるとは思いますけれども、世の中のニーズに合った職業訓練、手に職だけじゃなくて、これは時間があれば本当は議論したかったんですが、職能の前に、そもそも人として、社会人としてきちんと生活できるという態度そのものも実はある種の職能でありますから、そこも含めて、きちんと就労できるような体制を整えていくということはぜひ力を入れていただきたいと思いますし、今後も私も議論をさせていただきたいと思います。

 時間ですので、きょうはこれで終わります。

鳩山国務大臣 今の加藤公一先生の最後の御指摘は、最後に先生がおっしゃった部分、人としてというところ、これは職業訓練以上に大事だと思います。

下村委員長 次に、河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしです。

 時間がないもので、ちょっと早うやりますけれども、まず、最高裁、いいかね。

 きょう、皆さんのところに写真が、配付資料に写真がついておりまして、一枚目は、何か行った人がおるらしいけれども、記念撮影じゃないですからね、これは言っておきますけれども。一枚目と二枚目を比べていただきますと、これは最高裁です。きょうのテーマは、最高裁に傍聴に行くと、この二枚目が傍聴人の入り口です。中に立っておるのが私ですが、この間、私、世紀の悪法の住基ネットの傍聴に行きまして、くそ寒いですわ、ここは。くそ寒い。大臣も聞いておいてよ、これ。この傍聴人が入るところ、裏口ですよ、はっきり言いまして。

 御承知のように、皆さん、最高裁の入り口は、この一枚目、これは表口ですよね、表玄関。これはなぜ載せたかというと、左側に観光バスがあるでしょう。これを見てほしいんです。これに意味がある。観光バスで見学者が来ると、表口から入るんですよ、こうやって。一方、傍聴人が来ると、抽せんがないときもありますけれども、くそ寒いところで立って、たまたま私は三倍弱の倍率で十一番で当たりましたけれども、だれにしろ、ずっと待っておらなならぬ。

 これはもう、最高裁、言いましたように、あなたたち、国民の司法とかなんとか言っておるじゃないですか、裁判員制度で、国民が主役だとか。ラーメン屋のおやじは、言っておきますけれども、お客さんは正面から入ってくるんですよ、おやじさんは裏から入るんですよ、みんな。こんなもの、当然、玄関から入っていただいて、それでちゃんと、抽せんなら抽せんで、部屋は幾らでもあるがな、見てきたら、暖房のよくきいた。そういうところで待っていただいて抽せんをするというのが当たり前だと思うけれども、そう言っておきましたけれども、そういうふうにするんですね。

高橋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今、裏門とおっしゃいましたが、正確には私どもは南門と呼んでおります。一番公共交通機関、地下鉄からのアクセスのいい場所ということで、南門を使っております。

 御承知のとおり、有楽町線にしましても、半蔵門線の永田町駅にしましても、赤坂見附駅にしましても、すべて隼町の交差点にまでみんなずらずらと皇居に向かっておりてきていただいて、そこがこの写真の二枚目に写っている南門でございます。そして、この写真の二枚目の向こう側に見えています四角いもの、これが実は小法廷でございます。

 つまり、傍聴される法廷の一番近いところにあるのが南門でございます。交通機関、地下鉄から歩いてきていただいて、この南門を入っていただいて、この上にはひさしもつけております。これは雨風をよけるためのものでございます。そこで、ここを上っていきますと、写真には写っておりませんが、身障者用のスロープ、さらにエレベーターもここにつくってございます。

 そういう意味で、一番歩いてこられる利用者の方についてアクセスの便利なところがここということで、昭和四十九年に新しいこの最高裁判所の建物ができて以来、この南門を傍聴者用の門として使っております。

 他方、今御指摘がありましたこの立派な正門の方でございますが、ここから入ろうとしますと、お堀に向かって延々約四百メートルぐらい歩いていただかなければいけません。そして、河村委員が立っておられるこのあたりを真っすぐ歩いてもとへ戻っていただいて、さらに階段を上り、また中央ホールを渡って、この左側に見えている四角いところが小法廷でございます。ここへ行かなければならない。

 そういうことを含めて、昭和四十九年以来、ここを傍聴者用の門として使っております。(河村(た)委員「変える気があるのかないのか言って」と呼ぶ)変える気がといいますと、南門を傍聴者……(河村(た)委員「正面から入れるように変える気があるのかないのか」と呼ぶ)

下村委員長 河村君、手を挙げてから発言してください。

河村(た)委員 では、この中へ入るのは、正面じゃなくても、この横に入り口をつくればいいからね、バスの裏の辺に。そうすると、ほんのちょこっとですよ、五十メーターか百メーター。地下鉄だとか、そういううそを言うのでおれは気に入らぬのですよ。そんな、地下鉄から歩いてくるといったって、国会だって、それでは、すぐ横のところにあるけれども、ここまで行かないかぬじゃないですか、ずっと。ここの門があるじゃないですか。あいていないじゃないですか。そうでしょう、国会だって。そういううそを言うのでおれは気に入らぬのですよ。そんな、明らかに、傍聴者というのは裏から入れ、狭いところから、そういうことに決まっておるじゃないですか、そんなもの。

 それか、気がついたら直せばいいんですよ。正面から行かなくて、このバスの裏のところに入り口をつくればすぐに来られますよ、言っておきますけれども、ここから入れるようにして。

 少なくとも玄関から入ってもらって、抽せんの前まで暖かいところで待っていただく、そのぐらいの気持ちがないのに、何が国民の司法だというの、本当に。すぐ改める気があるかないか、言ってくださいよ。

高橋最高裁判所長官代理者 先ほど一部答えを落としましたけれども、さらに、見学者、一枚目の写真に写っているバスは、小学生、中学生の方々が毎日数百名見学に訪れております。これは恐らく国会も同じだろうと思いますけれども、私たちも、これも裁判所を御理解いただくための非常に大事な手段だと思っております。

 この方々と傍聴の方とがまじり合ってはいけないわけでございまして……(河村(た)委員「それなら国会はどうなっているんですか。こんなに人が傍聴している」と呼ぶ)今裁判所のことを申し上げておるわけでございまして、そういうこともございます。

 だから、そういうことで、動線が重ならないようにやっておるわけでございます。

河村(た)委員 もう話にならぬですよ、こういうふうだから。要するに、傍聴に来るような人間は裁判に対していちゃもんをつけてくる、そういう人間だと思っておるでしょう、はっきり言って。

 それと、言っておきますけれども、傍聴の方は、公開の法廷でと憲法に書いてあるんですよ。これも一つ当たり前かもわからぬけれども、見学者はそういうものじゃないわけで、そんなもの、せっかくここで言っておるんだから、これは考えますぐらい言ったらどうですか、裁判員制度をやろうというのなら。

 それでは、あそこで自分で一遍立って待ってみなさいよ、くそ寒いときに三十分も。いいかげんにしてくれないかぬ。それで、明らかに裏から入っていかないかぬので、これ。

高橋最高裁判所長官代理者 傍聴希望者の方を長時間あそこで待たせているじゃないかという御指摘でございますけれども、これは、実は前の日に掲示板に張り出しておりまして、傍聴希望者には全員整理券を配ることになっております。ですから、整理券の締め切り時刻に来ていただければそこで全員お渡しできるわけで、待っていただく時間はせいぜい十分程度ということでございます。

 さらに、傍聴希望者と見学者とはそれぞれ目的が違うわけでございまして、片や裁判官のいる法廷で実際に事件を行っている審理を傍聴される方、これが傍聴者でございます。そこでは、やはりセキュリティーの問題もございます。片や見学者の方は、つまり、庁舎をごらんになって、あいている法廷、何も使われていない法廷を見学になっていく方でございまして、そこは目的が全然異なるわけでございます。

河村(た)委員 そんなばからしい話を、国会だって傍聴と見学は一緒ですよ、はっきり言いまして。それと、傍聴に来ていただいてありがたいと。セキュリティーは、金属探知器がありますけれども、議員会館だって入り口にあるじゃないですか、置いておけばいいわけですよ。見学窓口と傍聴の通路をちょっと変えればいいわけですよ。少なくとも暖かいところで待っていただく。よくおいでいただきました、最高裁へいらっしゃいませと。全然その姿勢がありゃせぬじゃないですか。

 時間がないので、法務大臣、ちょっと今聞いておったので、感想を一言言ってくださいよ。

鳩山国務大臣 法務大臣としては、判決ではありませんけれども、司法の御判断に余りコメントする立場にないと思います。

河村(た)委員 言っておきますけれども、これは司法というわけじゃないからね。これはいわゆる裁判そのものの問題じゃないですから、これは大臣もよく聞いておいて、そのぐらいの気持ちがなかったら、本当に、何が国民の司法だというの。まず、自分のできることからやってちょうだいよということですよ。

 それと、大臣、一遍寒いときに傍聴に行って、十分だ、二十分だと言っておるらしいけれども、一遍立って待ってみなさいよ。立っておらないかぬですよ、こうやってずっと。一方、こっちの辺にどえらい大きい部屋があって、暖房ばかばかで、ずっとあいているんですよ、きょう見てきましたけれども。それを踏まえて、どうですか。

鳩山国務大臣 きょう風邪を引いておりますので、また風邪が治ったらと思いますけれども、確かに先生がおっしゃるとおり、裁判員制度をやる、国民と司法の距離を縮める、これは司法制度改革というか、革命的な大きな変化ですね。そういう意味では、司法と国民の距離が近づくようにしなければいけないとは思います。

河村(た)委員 それでは、最高裁に再度聞きますからね。全く変えなかったら、本当に口先だけということがはっきりわかりますね。普通のビジネスをやっておる人だったら、こういうことはありません。まず自分で身近なことからやります、必ず。お客さんを一番大事にします。そうじゃないと倒産するからです。最高裁はだれも失業せぬからこういうことを言っておるんですよ。そういうことなんです。

 では、次の問題。

 前の委員会で言いましたけれども、大臣に、例のヤンキー先生の八百四十万、これはどうなったんですか。御本人からも返却のお申し出があると聞きましたけれども、それで法務大臣、何か、これは本当につまらぬ税金の無駄遣いと言いましたね。どうなったんですか。

鳩山国務大臣 義家弘介氏が出演したビデオが、彼が選挙に出たので使えなくなったという一件でございまして、広報ビデオの出演料について、義家さんからは返納する用意があるということを、前先生が質問されたときにも、義家さんからのそういうメモというのが来て、私はここでお話をしたんですが、ところが、これは損害賠償するわけでも何でもないわけですね。

 そうなりますと、国会議員が国に出演料を返納するということは、公選法に言う公職の候補者等の寄附ということになりますね。したがって、法律上、非常に難しいんですよ。これは、彼が返納すると公選法違反になる可能性があるので、本人から用意がある旨の連絡がありましたが、返納を求めておりません。(河村(た)委員「あとのお金、八百四十万、出演料以外」と呼ぶ)八百四十万というのは制作費でしたか。(河村(た)委員「払ったか」と呼ぶ)

 これは、あの時点で義家さんが選挙に出るかどうかというのは、一応確かめたら出ないということであった。たしか先生から御指摘いただいた、雑誌に彼が出馬するようなことを言ったんでしたか。前に何かありましたね、先生。それは実は法務省としてはだれも把握していなかったということがありまして、これは非常に情けないことですが、情けない支出をしてしまったということでございます。

河村(た)委員 それは、月刊現代だったか何かに出ておったのを、普通なら出馬する可能性があると見ないかぬわな、法務省に何人かおるんだから。それを見落としたらしいけれども、うそだよ、そんなこと。だれか見たに決まっている、そんなもの。それでもビデオに出演していただいて、八百四十万かかって何にもないというわけだ。

 国民の皆さん、よく聞いてちょうだいよ。八百四十万、役所が失敗すると何もなしだわ。そんなもの、選挙に出るかもわからぬと月刊現代だったか、書いてあったんですよ、ビデオをつくる前にということ。これは慈悲ですかね。鳩山さんの大好きな、慈悲の心と言っていますが、法務省に対する慈悲ですか。ヤンキー先生に対するお慈悲ですか。これは何ですか、鳩山さん。

鳩山国務大臣 趣旨が必ずしもはっきりしませんが、少なくとも義家さんが返却をするとすれば、国に対する寄附となってしまって、公選法にひっかかる形になる。(河村(た)委員「八百四十万、あとの金」と呼ぶ)その八百四十万というのは支出した出演料ですか。(河村(た)委員「いや、全体の金ね」と呼ぶ)全体の金ね。これは非常に、いわゆる税金の無駄遣いになってしまったということだと思います。

河村(た)委員 これで責任がないというんだから、大変だわな。そんなもの、何がないの。何万人おるんですか、法務省。出たことを知らなかったんだって、これ。そういう言いわけが通ると思うの、鳩山さん。

鳩山国務大臣 これは本当に厳しく反省して、本当に典型的な税金の無駄遣いになったわけですから、こういうことが二度とないように……(河村(た)委員「慈悲だな、慈悲」と呼ぶ)慈悲というのは私は別のときに使っておりますけれども、これは本当に情けないことで、国民に謝らなければいけないことだと思いますよ。

河村(た)委員 謝る、謝ると言って、国民みんな、何でも失敗したら謝れば済むというものじゃないですよ。ちゃんと弁償するんですよ、これ。それで、法を犯せば刑務所にも入らなならぬ。あなただけ謝れば済むの。偉い人は済むんですか、それで。

 だから、法務省に対する慈悲ですか、これ。過失があったとは思われませんよ、言っておきますけれども、本に出ているから、ずばり言いますと。もう一回ちょっと考えたらどうですか、一応。答弁だけしておいてちょうだい。

鳩山国務大臣 法務省の職員には、もっと綿密に調査をしておれば、月刊現代を見つけて立候補の意思の可能性というものを知って使わないで済んだところにこういうばかばかしい出費をしたわけですから、厳しくしかりつけておきます。

河村(た)委員 本当に、しかりつけるどころか、ああ言ったけれども、まあいいわ、いいわといったものでしょう、はっきり言いますけれども。お慈悲を垂れるわけでしょう。いいかね、国民の皆さんとは全然違うんですね。中小企業の皆さん、怒らないかぬよ、こういうの。そんなことをやったら大変ですよ、言っておきますけれども。ラーメン屋か何かで、居酒屋でも、ちょっと食中毒間際のものを出したら大変ですよ、これは。済みませんで済まぬですよ、言っておきますけれども。まあ言っておきます。

 それから、今ちょうど冤罪問題がよく出ていますので、これはちょっと通告がないですけれども、ずっと前から鳩山さんに言っていますからわかっておることですけれども、名古屋刑務所の刑務官の佐藤孝雄さん、わかっておるね、鳩山さん。その話も、そのお金をみんなでカンパしたらどうだと言っておきましたけれども……(鳩山国務大臣「手紙を下さった方」と呼ぶ)そうです、そうです。あの方は冤罪じゃないんですか、佐藤さんは。

鳩山国務大臣 ですから、先ほどから申し上げておりますように、冤罪であるかどうかということを公の場で申し上げるということは私は今後は差し控えたいと思って、だから、志布志の一件は、捜査等がめちゃくちゃであったような、さまざまな情報が入ってきておりますので、彼らが、冤罪だったんだよ、冤罪が晴れたよとおっしゃったことに対して、私は素直にこれを受け入れると。(河村(た)委員「じゃ、名古屋刑務官は」と呼ぶ)

 ただ、これは無罪判決が確定したんでしょうけれども、どういうプロセスであるか、いずれにしても、私は今後、冤罪かどうか、この事件は冤罪か、この事件は冤罪でないかということについては差し控えていきたいと思っております。

河村(た)委員 これは、鳩山さん、本当に一言。最近ちょっとだんだんそれてきたんだけれども、大体、鳩山さんは、初めは佐藤さんの話を一遍聞くと言っていましたね、ここで。だけれども、時間がたつと、法務省の皆さんがやめてくれと言うもんで、やめちゃった。

 だけれども、今、いわゆる刑務官が何したとかいう話があるでしょう。本当の現場で何が行われておるかというのを、いいかね、例えば鳩山さんがどこかの会社の社長だとしますわね。どこかの工場の中で事故が起きた、二人亡くなって一人重傷を負ったとなっている。原因は何だろうか。どうも工場の中でけんかか何かが起こって、そういうことで解決されたのが、どうも違うらしい、一人。そうしたら、社長だったら絶対、あなたどういう意味かわかる、刑務官はあなたの部下だからですよ。それで言っているんですよ、佐藤さんはあなたの部下ですから、自分でできることだから、ほかの会社のことを言っているんじゃない。だから、普通だったら、自分の会社の部下を呼んで、これはどういうことだったんだと、再発防止に努めるのが当たり前じゃないですか。

 だから、鳩山さん、本当に聞かないかぬですよ、佐藤さんの。いいかね、これ。手紙まで来ているじゃないですか。

鳩山国務大臣 もちろん、私が現在法務大臣でございますから、刑務官というのはいわば部下ということになるわけでしょうから……(河村(た)委員「いわばじゃありませんよ」と呼ぶ)部下でございますから、いろいろ検討して機会を考えてみようと思います。

河村(た)委員 これは本当に、鳩山さん、やらないかぬですよ。信なくば立たずなんて書いていますけれども、信頼されませんよ、言っておきますけれども、言っておることとやっておることが別だったら。

 ほかのテーマがありますので、言っておきますけれども、ぜひ御在任中に聞いて、本当に刑務官がいかに日の当たらぬ職業であって、それから、現場というのはどういうふうになっているか。本当の偉い様しか聞いたことないでしょう、多分話は、刑務官の上の方の。だめなんです、こっちは。無事故表彰があって、本当のことを教えてくれない。本当の現場がいかに大変かということを、今しか聞けないですよ。すごい苦しんでいるんだから。一千万この間収入が減ったんだ。慈悲をお与えになるなら、どうですか、カンパでもしたら、みんなで十万円でも。私もやりますよ、大臣が十万円カンパするというなら、関係した人は。

鳩山国務大臣 たしか、前にも同じようにおっしゃいませんでしたか。(河村(た)委員「やると言いましたよ」と呼ぶ)私は……(河村(た)委員「いいですか」と呼ぶ)私はいいですよ。私はいいですが、法務省の他の職員に強制することはできないと思っております。私の個人の意思としては、お手紙もいただいて、本当におつらい目に遭われて収入も途絶えた時期があったわけですから、私個人は全然構いませんけれども、選挙区ではありませんから、公選法は調べなくちゃなりませんけれども。

河村(た)委員 それじゃ、それは大変立派だと思います。これはなかなか普通の大臣は言わないと思う。ここは本当に、一千万弱の収入減で大変苦しんでおられますので、大臣を筆頭にして、私は二番目にカンパしますから、ぜひ……(発言する者あり)できますよ。できますよ、当然。何ができないんですか。選挙区でも何でもありませんよ、これ。そういうのを慈悲というんですかね。慈悲の悲は、苦しむ叫びなんだね。そういう苦しんでおる人に哀れみを、哀れみというと何かちょっと上みたいですけれども、そうじゃないです。無上の愛を与えようという言葉なんですけれども、まあそうしたいと思います。

 それでは、次に、三浦さんの逮捕がありまして、これは驚きましたけれども、文書にいただいておりますけれども、これは普通からいいますと、日本で無罪判決が確定しましたから、それは例の憲法の規定によりまして一事不再理になるということですが、警察と検察ですが、いずれもこの文書をちょっと読んでいただくなら読んでいただくでいいんだけれども、アメリカが逮捕するについて、普通からいえば、アメリカ側と何か話があって、協力なり何かしておるのではないかと思ったんですが、どうですか、法務省、警察。時間がないので端的に。文書をいただいておりますので、それを読んでいただいてもいいですが。

大野政府参考人 今回の件ですけれども、米国の司法当局によります身柄拘束につきまして、法務省がこれをあらかじめ承知していたというようなことはありません。

 以上でございます。(河村(た)委員「協力、協力」と呼ぶ)

 それから、個別の協力要請の有無等につきましては、これは米国の捜査にかかわることでありますので、コメントは差し控えさせていただくということでございます。

河村(た)委員 警察の方も。

宮本政府参考人 今回の事案につきまして、事前に何か警察庁として承知していたということはございません。

 また、本件につきましては、米国の捜査当局が行っている捜査にかかわることでありまして、米国との信頼関係の維持の観点から、個別具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

河村(た)委員 そういうことで、ちょっと時間がないものですから、ここから一切わからぬという現状だけわかったということをちょっと会議録に残しておきます。

 それから、ギョーザ問題。

 ギョーザ問題について、新聞にも出ていますけれども、中国側が日本の生協に、八袋か十袋か悩ましいですが、提供していただいて、そこから一切そういう毒が見つからなかったということで、混入は中国ではない、そういうことを言っておるということが報道に載っていますね。

 それで、全量を、普通からいうと、大事な証拠ですから、完全にちゃんと確保、絶対外へ出すなということをなぜきちっと言わなかったんですか。警察。

小野政府参考人 警察におきましては、現在、被害が出た商品と製造日が同じ同種商品につきまして、必要に応じ押収し、ギョーザやパッケージの鑑定等の捜査を推進しております。業者の方にも保管についてお願いをしているところでございます。

河村(た)委員 それでは、時間がありませんが、これは生協にきのう聞きまして、何で出したんだ、そんな大事なものを、これは恨まれますよと言いましたら、一応、これは警察も聞いておいてほしいんですが、こういう文書、皆さんにちょっと資料をきょう出してあるところですね、「二月十日付産経新聞の冷凍餃子に係る報道について」。これは前の二月十日のものがあったんですが、生協はこれをちょっと書きかえまして、二月二十五日。一番ポイントは、一番下の三行ですね。五行ぐらいから読みましょうか。「なお、弊会では全国から回収されている該当商品のうち、健康上の影響が報告された現品と、検査希望があった現品について別途管理し、優先的に農薬検査を進めております。今回、調査団に提供したものはそうした検査対象以外の、一般回収品として保管されていたもので、その旨を調査団に説明したうえで提供しております。」

 今回変わったのは、「その旨を調査団に説明したうえで」ということで、生協はきちっと文書を書き直しておりまして、何が言いたいかといいますと、中国に渡したものは、要するに、腹が痛かったかわからぬ、だからこれを調べてくださいよといった一グループ。それからもう一つは、何か気持ち悪い、そういう病状はないけれども、これも調べてくださいといったもう一つのグループ。それから、それと全く関係がない、当時在庫のあった、日本じゅうからかき集めたもの、一般回収品。ですから、その中からは多分毒はまず出ないだろうと言われた旨をちゃんと中国に説明して渡したんだと。では、はっきり書きなさいよと言ったら、こういうふうに生協は書きました。

 ということでございますので、生協の名誉のためということでもありませんけれども、それでは、私、この委員会で言いますよということですから、こういう旨を受けて、察庁におかれましても、ちゃんときちっと、最後はうやむやになるんじゃないかとわしは思っておるんです、これ。刑務官の話もそうだけれども、でっかい組織と個人の話になると……(発言する者あり)ええ、もらいましょう。でっかい組織と個人の話になると、絶対にでっかい組織を守るために個人の犯罪にするか、それともうやむやにするということでございますので、中井さんからもリクエストがありましたけれども、察庁の今後の捜査の方針について、こういう生協の話を受けて……(発言する者あり)今の話、知っていますか、まず。別個のグループであったということ、それから、きちっとやるということを言ってください。

小野政府参考人 ただいまの件についても、私ども承知しております。

 また、私どもといたしましては、まず、国内の販売、流通ルートにおきまして毒入りのギョーザがどのほどあるのかということを踏まえ鑑定等をしているところでございますが、今のところ、流通してる中の一部のものについて、そういうメタミドホスの検出が出ているという現状にございます。

 ただ、これを調べてまいりますと、流通ルート、兵庫と千葉と両事案ございますが、それぞれ別ルートでございまして、また、このメタミドホスが、日本国内で流通している試薬的なものではない、不純物の入っているものであるということも判明している段階でございます。

 ということから、私どもとしては、これらの事実解明を明確にしていきたいということで、中国当局とも話も既にしておりますし、今後とも解明に努めてまいりたいと考えておる次第でございます。

河村(た)委員 では、マスコミの方もこれを見ておられると思いますので、報道の記事が若干違うと思いますので、中国側が毒物が検出されなかったと言うのは、あたかも、今言った、ABCに分けますと、Aが一応腹が痛かった、可能性がある、それから、そうでもないけれども不安なもの、このAとBを調べたところが毒物が出なかったと中国側が言っているようにマスコミに書いてありますので、そこのところはひとつ、マスコミの方も正確に報道いただきたいということです。

 最後に一問ですけれども、例のイージス艦の事故について。

 あの航路、どうも私が思うには、まず、あれはハワイへは多分よく行くと思うんですよ。だから、イージス艦はでかいですから、同じところを通っておった。そこへ漁船が来ると、お上下々で、そこのけそこのけお馬が通るで、おまえさんらがよけるのは当たり前だ、そういう状況ではなかったのかと。だから、そんなこと言えやせぬものだから、結局、現場の連絡ミスにするんじゃないか。先ほどのように、組織を守るために末端のせいにするということでありますので、まず、あそこの通路、通っておった道というのは、よく通るいわゆる通常の航路であったかどうか、ちょっとお願いします。

尾澤政府参考人 お答え申し上げます。

 あそこの航路は、通常、自衛隊の艦艇が横須賀に入港する場合には通るコースでございます。

河村(た)委員 最後にしますけれども、これもなかなか重要な話なんですね。

 では、そういうところは、本当のことを言って、右舷優先でこうやって回るというのがルートだったらしいけれども、イージス艦は回るのに時間がかかるじゃないですか。だから、はっきり言いまして、漁船がよけるものだ、そういうような認識があったんじゃないですか。

尾澤政府参考人 お答え申し上げます。

 海上自衛隊の使用する船舶につきましても、一般の船舶と同様に、海上衝突予防法の適用を受けているところでございます。

 したがいまして、今回の衝突事故に関し、「あたご」と漁船の清徳丸の回避義務などについては、同法に基づいて決められるものというふうに承知しております。漁船の方がイージス艦を回避するというような暗黙の了解とか、そういうものがあるわけではございません。

 現在、事故原因につきましては、海上保安庁において鋭意捜査が行われているところでございまして、どちらに回避義務があったかなどについては、本来的には捜査の結果を待つべきものというふうに考えております。

河村(た)委員 では、これで終わりますが、イージス艦がほとんど真っすぐ通っていた、いつも、ではないかというふうに伺っております。

 以上でございます。

下村委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 鳩山大臣、冒頭、予告していないことなんですが、ちょっと記憶をたどってみていただきたいんです。

 三年前に立教大学で、つくろう、ブラックバス駆除ネットワークという集会があって、そこで鳩山大臣は、その当時、自民党自然との共生会議議長という立場で、当時の環境省が昆虫採集を禁止しようとしているということに反対という立場で、もし昆虫採集を禁止されたら、私はブラックバスを各県に放つ会をつくってやろうと思っています、こうあいさつされているという記録が、釣りの雑誌ですかね、載っておるんですが、これは本当ですか。

鳩山国務大臣 要するに、私は、あのころブラックバスが、バスフィッシングとして産業として成り立っていることは別ですが、日本の水の生態系をめちゃくちゃにしている、ブルーギルもそうかもしれませんが、オオクチバス、コクチバス、両方基本的には同じではないだろうかと。したがって、ブラックバスをどこかの湖に限定して、そこで釣りをさせたらどうかという考え方もあったし、あるいは、琵琶湖のように、あそこのイサザという最高においしい魚がブラックバスのために全滅しかけているというようなことで、我が自民党の中も半々に割れるような事態で、ブラックバスを追放するのはどうかというような話が随分あったわけです。

 実は、私は全く冗談で言った話で、環境省はそれをやっているわけですが、環境省が、国立公園の中の特別保護地域と保護地域かなんかで、多分種を指定して昆虫を採集禁止にするという法律上の措置をやろうとしておったわけで、これは本当に絶滅しそうなものであるなら別だけれども、やみくもに指定して、要するに昆虫採集というのは子供たちが自然と触れ合う最高の機会なんだけれども、そういう教育機会を奪うようなことをやったらもう環境省の味方はしないぞみたいなことで、冗談で言った話でございます。

保坂(展)委員 冗談だったということですから、今それを本気でやろうとしていないということだと思いますけれども。

 多分、例え話でいろいろ表現をされる、その場その場で。しかし、社会的な、あるいは反社的なというか、効果という点で、あの志布志の発言の話は、ぜひしっかり反省もしてもらわなければ困るし、先ほど来やりとりがありました。

 大臣に予算委員会でこの「抗議声明」を渡しました。この最後のところに、「今回の事件で不幸な目に遭ったとは言え、めげることなくかの地で過ごさなければなりません。政治とは政治家とはそういう私たちの生活を安心して送れるように手を尽くすことが使命だと考えます。」ということで、抗議の文書でした。

 鳩山大臣は、この藤山団長の抗議声明に何かお返事をされましたでしょうか。

鳩山国務大臣 しておりません。

保坂(展)委員 先ほど来からのお話ですけれども、きのうも電話で直接現地の人たちとお話をしましたけれども、確かに国賠訴訟をやっているんですね。国賠訴訟をやっているという意味では、訴訟の中身について法務大臣が立ち入るのはいかがかというふうに自戒されるところはわかるんですが、今回はそういう構図を超えて、大臣みずからが言われているように、みずからの発言で傷つけてしまったということに対してしっかり謝罪をしたい、こう言われているわけですから、この声明の中にも、一度懐集落に来てほしいというのがありますよね、左側の方に。直接おわびになったらどうかと思いますが、いかがですか。

鳩山国務大臣 実は、どれくらい前だったかと思いますが、ある仲立ちをされる方があって、志布志事件のいわば真の被害者、被告であられた方々、単数であるか複数であるかわかりませんが、会いませんかという話があったことがあります。多分それは、私が鹿児島に行くという意味ではなくて、東京にお見えになったときということだったかと思います。

 私のかなり親しい人間からそういう話があったものですから、ああ、それは私も、自分が法務大臣のときの事件ではないけれども、その取り調べとかそういうのが、私が謝る価値はあるよねという話を実はしておったんです。

 ところが、そのときにいろいろ相談しましたら、例の国賠の訴訟で、結局、国賠の訴訟というのは、要するに、起訴や何かに過失があった、こういう観点からやっていくものだろうと思うんですけれども、その被告側の代表が私みたいなものですから、そのことを言われて、ああ、そうかと、自分を半分に分けることはできないかななんということで、お会いしなかったという経緯があります。

 先ほど申し上げましたように、国賠の問題があるので慎重に判断しなくちゃならないけれども、私自身はそういう機会があればなという思いは常に抱いております。

保坂(展)委員 ですから、国賠の中身に大臣みずからが全部入り込んでということにしなくても、今回の発言についてやはり一番傷つかれた当事者の人たちがどんな苦しみを持っているのかということについて、大臣の判断でこれはしっかり当事者の方たちに謝罪をするということが大事なんじゃないでしょうかね。ぜひそういう機会をつくってほしいと思います。

鳩山国務大臣 私が公の場で発言したことですので、国権の最高機関である国会で何度も、予算委員会でもありましたけれども、おわびをして、それが伝わっていくこと、そのことを心から期待するわけですが、ただ、私は、今正直に申し上げたように、国賠の関係の矛盾というものを処理できるものだったら、機会があればと思っているんです。

保坂(展)委員 先ほどからのこの問題の質疑で、要するに自民党県連大会でおっしゃった話ですね。例えば、真犯人が後にあらわれた場合を冤罪と言い、裁判による無罪は冤罪とは言わないのが法務・検察の基本的な考え方だと。これは大臣に聞いているので、ちょっと後ろの方、余りちょこちょこやらないで。これは重要なんですよ。後ろの方が答弁を出すような質問じゃないんです。

 これは、冤罪という言葉を使うなというアドバイスを大臣は受けていたとおっしゃいましたよね、先ほどの質疑で。冤罪という言葉を余り使うなというアドバイスを受けていたとおっしゃいましたよね。これはだれから受けていたんですか。法務省ですか。どの担当官から言われていたんですか。

鳩山国務大臣 それは多分、私が法務大臣になって何度も衆議院や参議院の法務委員会で答弁をしておるわけで、志布志、氷見あるいはほかの事件かもしれませんが、御質問の方に冤罪という文字が入っている場合に、冤罪というのは定義がない言葉ですから、大臣としては冤罪という言葉をお使いにならないで答弁される方がよろしいのではないでしょうかと。それは若い人だったか、はげた人だったかよく覚えておりません。とにかく、みんなで打ち合わせするときにそういう話が出たのははっきり記憶にあります。

保坂(展)委員 例えば、参議院の法務委員会で、昨年の十月に千葉景子議員の質問に対しても鳩山大臣は、「冤罪というものは。しかも、服役までさせてしまってから真犯人が現れるということでありますから、」こういう趣旨で述べられていますね。

 これは刑事局長に伺いますが、答弁書はだれが書いたんですか。つまり、答弁書を起草して、刑事局長まで決裁して、それで大臣に、今持たれていますよね、こういうふうに持っていただくという手続を経たものですか。それとも、鳩山大臣がとっさに思いついて言ったものなんですか。今度は局長。

大野政府参考人 個別具体的な答弁案につきましては確認しないまま申し上げるわけにまいりませんけれども、一般的に申しますと、刑事局の所管にかかわる答弁につきましては、私ども事務方で素案をつくりまして、担当者の方から大臣に御説明することがあるということでございます。

保坂(展)委員 鳩山大臣、大臣自身の言い方も私は批判をしましたけれども、多分、福岡県連の大会で大臣が言われていること、これは法務・検察の見解なんだと言われていることは、本当ではないかというふうに思うんですね。

 つまり、今も答弁書を持っておられますけれども、その答弁書が上がってくるわけです、何回聞いても、この冤罪をめぐって、いわば冤罪の定義というのはないと。そしてまた別のところでは、冤罪は法令用語ではないけれども、社会通念上はやはり有罪が確定してその後実際に真犯人があらわれてというようなことを、法務省の刑事局長が答弁したりもしているんですね。また何か出されましたね。

 要するに、今大臣に聞いているのは、法務・検察の見解を言ったということなのか、鳩山大臣が思いつきで言ったのか、それははっきりさせてくださいよ。

鳩山国務大臣 正直言って、法務・検察といいましても、検察庁の、それは最高検、検事総長を初めとする方々と日ごろ打ち合わせをするということはほとんどありません。私も訴訟を指揮するわけではありませんから、指揮権発動しませんから。ですから、基本的には検察庁から見えている充職検事たる法務省役人ということですね。そういう大勢の方たちと毎日、朝から晩までいろいろな打ち合わせをする中で、それは私自身が、先ほど申し上げた神崎先生がお使いになった有斐閣の用語集の中の、再審で助かる、有罪が再審で無罪になるのが冤罪というようなことは、どうしても私の頭にあった。

 ただ、この間、予算委員会のときの先生にお話ししたように、氷見のように有罪確定、服役でなくても、完全な人違い、逮捕して、それが裁判中にあらわれてくれば、やはり同じようなケースになるのかなというようなことを、たしか予算委員会で先生に申し上げたことがあったような気がするんです。

 ですから、法務省の人は、これを冤罪と言い、これを冤罪でないということを私に図で示したようなことはありません。冤罪という言葉は答弁等で一切使わないというのが本当は一番いいのではないでしょうかというアドバイスを何度も受けましたけれども、ただ、私の冤罪を狭く概念し過ぎた先ほどから申し上げている概念は、日ごろみんなと打ち合わせして、大体そんなに違わないなとは思っておりました。

保坂(展)委員 冤罪という言葉を使わないというのは間違った総括なんですよ。人権擁護のために、冤罪という言葉はどんどん使ってもらわなきゃ困るんですね、冤罪を生んではならないわけですから。判決が出ようが出まいが、誤認逮捕する、あるいは誤認逮捕じゃなくて、事件の構図も虚構だった、捏造だったとしたら、これはもう国家権力による犯罪というふうに言わざるを得ないですよね。だから、冤罪という言葉を使わないというところに大臣が今着地しているというのは非常に不可解なんです。

 刑事局長にもう一度聞きますけれども、大臣は福岡県連の自民党の大会で、検察の方は謝るべきでないと思っただろうが、私は自分の気持ちでおわびした、こう言っているんですね。法務省刑事局長として、大臣が予算委員会で謝罪をした、あるいは今も、「としたら」というのをとって、志布志の人たちに迷惑をかけたということを謝罪されたことをどうとらえているんですか。同じ見解を持っているんだったら、法務省刑事局長としても同じように謝罪したらどうですか。どこが違うんですか。

大野政府参考人 ただいまの委員の御指摘は法務大臣の御発言についてのことかと思いますけれども、検察当局はもとよりでありますが、法務当局におきましても、法務大臣の御発言につきまして意見を申し上げる立場にはないというように考えております。

保坂(展)委員 大臣は、やはり個別事件じゃなくて、検察全体を指揮する、そこには冤罪事件なんか生んじゃいけないわけです。きょう、二度と志布志のようなことをしちゃいかぬということで大臣が謝罪をしているわけですよ。しかし、法務省の方は涼しい顔をしている。これはおかしいと思いますね。

 要するに根本は、志布志事件のような事件、これは完全に白だとおっしゃいましたけれども、本当にそうなんですか。検察の中に、あるいは法務省の中に、あれは冤罪じゃない、冤罪とは言うな、言うな、そういう空気があったとしたら、大臣がちゃんと指導しなきゃいけないじゃないですか。ちゃんと謝罪させるべきですよ、本当は。

鳩山国務大臣 そういうことはないと思います。この志布志事件に対する真剣な反省というものは最高検自体もやっていることでございますし、私もそれは、余計なことを言ってしまいましたけれども、あの会同において、基本的に我々の真剣な反省というものが必要であるということを申し上げているので、もちろん一々個別の裁判の判決についてコメントしてはいけないのかもしれませんけれども、それは灰色でも何でもない、完全な白だと。ただ、どうしてこんな事件、結果を生んでしまったのかという反省をしておりますので、それは法務省もみんな基本的に真っ白と認識しているはずです。

保坂(展)委員 刑事局長、志布志事件は真っ白なんですか。真っ白であれば、これだけ長期拘禁をして、そして、それこそ田舎の中で非常に甚大な苦痛を与えたことに対して、この場で謝罪してください。

大野政府参考人 志布志事件についてでありますけれども、無罪判決が一審で確定しております。その無罪判決の中では、四回あったとされる会合のうち、二回についてはアリバイが成立したと認められておりますし、また、四回の会合があったという点について、自白された被告人の方の自白も、これは信用できないとされているわけであります。

 法務・検察当局は、この無罪判決を真摯に受けとめております。そして、最高検の報告書にもございますけれども、多くの点において反省しなければいけないというふうに明らかにしているわけでございます。

 ただいま御指摘のありました拘禁の関係でありますけれども、これも最高検の報告書の中に記載がございます。確かに、この事件では、一番長い方で、たしか一年を超えるくらいの未決勾留があったわけでありますけれども、今後、こうした裁判に伴う勾留をなるべく短縮するための手だてとして、最高検の報告書の中では、公判前整理手続を活用して早期に争点を絞り、そして、その争点に合致した形での証拠調べを先に進めることによってこうした事態が起きることを可能な限り防いでいこう、こういう反省をしたところでございます。(保坂(展)委員「謝罪は」と呼ぶ)

 ただいま申し上げたように、法務・検察当局としてはこの事件を大変重く受けとめて、これを繰り返さないようにしたいというふうに考えておるわけでございます。

保坂(展)委員 ぎりぎりまで言うんだけれども、謝罪までは出ないんですよね。これはやはりおかしいでしょう、大臣。

鳩山国務大臣 私は、ですから、先ほど河村たかし先生の質問で、これは冤罪か、こういう佐藤さんの件がありまして、それは冤罪かどうかということを積極的に自分で言うことはこれからしませんと申し上げました。ただ、私は頭の中で整理していたものを変更した。それは、志布志の方々に非常に不快な思いをさせてしまったということについて、率直におわびをいたしております。

 ですが、その根拠は、めちゃくちゃな取り調べがあって、結果として火のないところに煙が立ったのかはわかりませんけれども、めちゃくちゃな捜査とか取り調べというのは、やはりでっち上げを生むような恐ろしいことがあり得るとするならば、そういうふうに思ったればこそ、彼らが、我々は冤罪だったんだ、冤罪が晴れたんだという発言については、これを素直に、全面的に受けとめると申し上げているわけです。

 したがって、刑事局長はいろいろまた立場もおありでしょうが、法務省のトップとして、そういう志布志のような、私は警察の分を物言うわけにはいきませんけれども、検察のやってきたこと、あるいは公判その他、そして出た結果等についていえば、申しわけないことであった、こう率直に申し上げます。

保坂(展)委員 これは大臣、局長がしっかり、はっきりここで謝罪できるように言ってください。

 もうワンテーマありますので。ちょっと次の質問、どうしてもしなければいけないので。

 徳島刑務所の問題なんですが、これは矯正局長に来ていただいていますが、松岡医師の治療が、いわゆる直腸指診、指を入れてさわる、そして調べるんだ、これが頻繁にあり過ぎるということを問題にしてきました。

 先般、こういったカルテも、一人分、非常に多いものを出していただいて、大変膨大なものを少し目を通させていただきました。例えば、から揚げをのどに詰まらせたという、およそ直腸指診と何の関係があるのかなということでその後直腸指診に至ったり、これは松岡医師が、そこ、どうですかと。つまり直腸指診ですね。嫌です、それはやめてくださいと言うと、じゃ、もう診ませんよ、帰ってください、こういう対応が、何か微に入り細にわたりせりふで書いてあるんですね、このカルテは。

 これを見ると、これは一体どういうことだろうかと。今調査中だ、報告を間もなく上げると聞いていますが、このカルテを見て一体どうとらえているのか。やはりこれは不適切な、しかも違法性の強い、治療という名による虐待だと私は思いますよ。いかがですか。

梶木政府参考人 今お話がありましたように、松岡医師の診療行為について、カルテを中心に検討しているところでございます。我々だけではということで、外部の医師にお願いをいたしまして、合計で百八十件程度のカルテを順次、記載を見ていただいております。

 実は、これに非常に手間がかかっていて、これが全部まだ終わっていないわけでございますが、いろいろ今御指摘があったような記載がかなり詳細になされていて、それに対して、専門家である医師の方から幾つかの指摘をいただけるだろうというふうに思っております。その指摘を前提として我々も検討をしていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

保坂(展)委員 鳩山大臣、驚いたのは、このカルテを見ると、例えば、要するに直腸指診ということを拒んでいくと、その患者さんを、受刑者ですけれども、突き放すような言動があるんです。

 よろしいですか。今ちょっと紹介しますけれども、例えば、受刑者が、もう二度と、死んでも来ませんわ、所長に面接つけますわというふうに言うと、その松岡医師が、あなたも大人ですから、私に相談しなくていい、自分で決めて行動してください、こう言うんですね。ところが、その方が熱で倒れて、意識不明になってストレッチャーで運ばれてくる。そして、ストレッチャーで目を覚ますわけですね。そのときにその医師が言うのが、あら、死んでも来ぬと言うておったじゃないですかと。そして受刑者が、いや、意識がなかったので仕方がなかったんですと。こういうやりとりがカルテに記載されているんですよ。

 それから、これは自殺して、ついに亡くなった方ですけれども、直腸指診ということを嫌だ嫌だと言いつつ、だんだんぐあいが悪くなってくる。吐き気と熱と肺がおかしい。この前に安静を指示していたのに、指示に従わなかったですね、自業自得だと思うことはないですかと。思いますと。自業自得ですねと医者が言いますか。その後、便も確認しましょうか、いえ、いいです、しませんと。こういうやりとりがあって、この方は結局首をつって亡くなってしまうんですよ。

 これだけのカルテがあるんですね。こんなですよ。そのカルテを法務省矯正局は見たはずなんですよ、現地に行って、松岡医師にもインタビューして。これは大臣、どうですか。調査はもう大詰めですよ。大詰めだけれども、法務省の関係の医者だけを入れて、全部適正だったなんという報告を出すんじゃないかと私はちょっと一抹の不安を持っていますよ。これまでずっと、何回調査しても、これは適正だったと言ってきたんですよ。いよいよカルテが出てきた。法務大臣、どう思いますか。

鳩山国務大臣 徳島刑務所の件も、ずっと尾を引いてしまっている事件でございますね。今、矯正局長も答弁しましたように、矯正局において、調査検討チームが徹底した調査をしている、そういう中でカルテ等も調べているんだと思います。

 午前中もちょっとお話ししましたけれども、そのカルテの中で肝炎の方が百人ぐらいいるんではないかというようなことも、これはきょうになって私は報告を受けておりまして、やはりこれから調査を進めていく中で、改善すべき点を認めていって改善策をとっていかなければならないと思います。

保坂(展)委員 もう一問。

 苦しんでいる患者が、もし直腸指診というのをやりますかと言われたら、私だって嫌だと言いますよ。それを嫌だと言った受刑者に対して、じゃ、もうあなたはいいですよと言って薬をやらないとか診療しないというのは医師法違反なんですね、これは。許されない行為。これは矯正施設のあり方としてもとんでもないことですよ。

 ということで、もし、この調査の結果、医師の診療方針、治療のやり方が著しく適切を欠いていたし、人権を侵害していたといったら、厳しい処分を出しますか。

梶木政府参考人 この医師の行為については、先ほど申しましたように、外部の医師からカルテの記載についてのチェックをしていただいているところであります。

 当然のことながら、新聞等でもありましたように、幾つかの告訴、告発がなされて捜査の対象になっているというものもございます。我々としては、そういうことを念頭に置いた上で、その医師の御意見を虚心坦懐に伺って検討していきたい、こういうふうに思っているところでございます。

鳩山国務大臣 私が報告を受けただけでもさまざまなことが起きていますし、今の保坂先生の御指摘も頭の中に入りましたし、矯正局がより一層厳しい調査をした段階で決めていくことだと思います。

保坂(展)委員 私は鳩山大臣に、身の処し方をしっかり御自分で考えてほしいということを二週間前申し上げました。きょうの答弁を聞いていて、どうもやはり、法務・検察の中で日ごろ言われていたことだということ、これは事実だと私は思いますよ。しかし、そこは余りお認めにならず、大臣だけが謝罪をして、局長の方は謝罪せずというところはますます課題が残っていると思います。やはり身の処し方を考えていただきたいということを申し上げて、終わります。

下村委員長 次に、滝実君。

滝委員 無所属の滝実でございます。

 一番最後になりまして、恐縮でございますけれども、三十分間時間をいただきましたので、おおよそ二つぐらいのテーマで御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の血液製剤によるC型肝炎問題、これのいわば訴訟に関連した問題がずっと新聞あるいはテレビをにぎわしてまいりましたけれども、この問題は基本的には刑法の問題も、単なる賠償問題とは別に、あるはずなんですよね。

 そこで、刑事局の方に端的にお答えをいただきたいと思うんですけれども、血液製剤を使った段階では、C型肝炎を防止するような、あるいは発症するような情報がなかったということなんでしょうけれども、それがわかった段階では、医療機関は患者さんに対して指導しなきゃいけない、そしてまた、情報をつかんだ厚生労働大臣は当然医療機関に指示をしないといけない、これは医師法の義務だと思うんですね。したがって、この医師法で定めている義務に違反をしてそのまま放置したという場合には、これは刑事事件というか刑法の傷害罪の対象になり得るのではないだろうかな、こういうふうに思います。

 いろいろなケースがありますから一律には言えないと思いますけれども、法の建前としてはそういうことがあり得るのではないだろうかな、こう思いますので、刑事局にお尋ねをしたいと思います。

大野政府参考人 犯罪の成否は個別の事案におきまして収集された証拠に基づいて判断される事柄でありますので、一般的にここでお答えすることは差し控えたいと思うんですけれども、一般論といたしますと、業務上必要な注意を怠って、それによって人を死傷させた場合、これは刑法に定める業務上過失致死傷罪が成立し得るものというように承知しております。

滝委員 なぜこういうことを刑事局の方から御回答いただくかといいますと、どうも賠償問題、賠償問題ということだけが前面に出ていますと、厚生労働省からいろいろな情報が得られる、あるいはマスコミを通じて情報が入ってくる、それに対して、医療機関が必ずしも的確に対応しているかどうか、甚だ怪しいところがあるんですね。ですから、根っこにはやはりそういう刑法上の問題があり得るんだという自覚を持ってもらうことが、やはりこの種の問題が発生した場合には必要なんだろう、こういうふうに思って、今、一般論としてではございますけれども、そういうような性格の問題が、こういう薬害問題が時々出てくるわけでございますけれども、そういう際にはお考えいただかないといけないんじゃないだろうかな、こういう思いでお尋ねをしたところでございます。

 そこで、厚生労働省に、このフィブリノゲンの投与によるC型肝炎について、厚生労働省は大体いつごろから、こういうものの発生をつかみ、そしてこれがC型肝炎の発症につながるというような認識をお持ちになったのか、その辺の経緯をお述べいただきたいと思います。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 昭和六十二年、一九八七年でございます、三月二十四日、厚生省は青森県の診療所からフィブリノゲン製剤を投与した患者について肝炎が集団発生した旨の報告を受けました。これを受けまして、厚生省は、同年の三月二十六日に、ミドリ十字社に対し全国調査の実施を指示しております。また、同年四月三十日、加熱製剤を承認し、その後、同社に加熱製剤使用症例の追跡調査を指示する、こういった対応を行っております。

 その後、加熱製剤における肝炎発生症例について逐次報告を受けたことから、昭和六十三年六月、ミドリ十字社に対し、フィブリノゲン製剤は必要最小限の使用に限るとの緊急安全性情報配付の指示をするに至っております。

 なお、C型肝炎ウイルスが発見されたのは昭和六十三年でございまして、それまでは、非A非B肝炎として、病原体は不明の状態でございました。平成元年に抗体検査ができるようになり、これによってC型肝炎ウイルスに感染した患者を特定できることになった。こういうことから、C型肝炎の病態や予後が解明されるに至ったわけであります。

 例えば、肝硬変でございますけれども、C型肝炎をその成因とするものについては四九・三%との報告が平成元年になされ、肝がんについては、同様の数字でございますけれども、六八・九%との報告が平成六年になされております。

 このように、肝炎、肝硬変、肝がんが、アルコール摂取によるものよりウイルス性のものが過半を占めるとの認識がされてまいりましたのは、昭和六十二ないし六十三年ごろよりももっと後のことでございまして、昭和六十二年、六十三年当時の肝炎に対する認識は現在のものとはかなり違ったものであったということは御理解いただきたく考えております。

滝委員 ありがとうございました。

 そこで、今のお話のように、古くは六十年代の初めに集団的に発生した、こういうことでございますし、その当時は、これが血液製剤によるものかどうか、C型肝炎ということさえもわからない時代でございますから、これはもうしようがない、こうなるわけですよね。

 ところが、今回も、この集団訴訟に関連しまして、平成十六年あるいは十九年、その都度その都度厚生労働省から医療機関等にいろいろな文書をお出しになっていると思うんですけれども、そもそも、医療機関に対して、あなたのところはこういう血液製剤を使って危ないというような公表というか連絡をしたのは平成十六年なんでしたかね。それから、そのときの医療機関なんかの対応というのを厚生労働省はその際に把握しているんでしょうか。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十六年十二月に、フィブリノゲン製剤が納入された約七千の医療機関の名称等を公表し、これらの医療機関に対し、元患者の方に対するできる限りの情報提供を協力依頼したというところでございます。

 また、改めてのことでございますが、今回、平成十九年十一月七日付文書によりまして、これらの医療機関に対しまして、改めてフィブリノゲン製剤を投与された患者の特定と告知の依頼をしたところでございますが、その際には、患者の特定や告知に活用していただけるよう、カルテのみならず手術記録、分娩記録、製剤使用簿等も十分調査いただくことを依頼したところでございます。

 それから、大変申しわけございませんが、先ほどの私の答弁の中で平成元年と申し上げましたが、平成三年の誤りでございましたので、訂正させていただきます。

滝委員 ありがとうございました。

 そこで、昨年の十一月七日に厚生労働省が各医療機関に文書をお出しになって、いわば調査というか、題名は協力依頼という名前だったんじゃないかと思いますけれども、そこでいろいろ調査を依頼すると同時に、患者さんに対して、要するに注意を喚起する、あるいは検査の受診をするように、こういうようなこともその文書の中で指示していると思いますね。その結果、具体的な反応というのは何かおつかみになっているんでしょうか、医療機関の反応。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 追加調査の実施期間は平成十九年十一月七日から十二月五日となっておりますが、現在も回収中でございまして、作業が続けられておるということでお答えさせていただければと思います。

滝委員 私の仄聞するところによりますと、この文書はなかなかよくできていて、要するに、カルテの保存期限は原則五年ではありますけれども、いろいろな、カルテを初め、期限を過ぎていても残っているカルテ、あるいは病院、医療機関に残っているその他の資料といいますか、その保存を指示しているんですよね。

 そういうようなことを指示しているんですけれども、具体的に、それを受け取った医療機関は、自分でカルテの中身を一々調べて、個別にその患者さんを洗い出して注意を喚起するというところまではなかなかいきにくいんですね。病院によっては膨大なカルテを持っているわけですから、それを一々調べ上げて、血液製剤を手術のときに使った、こういうことを取り上げるのはなかなか大変でございますし、しかも、今のお話にございましたように、既に十年、二十年前の手術のことになると、これは患者さんをつかみ出すのはなかなか難しい、こういうことが言えるのでございます。

 それにしても、医療機関が具体的にそういう作業が、膨大なものですから、なかなかやりにくいという問題があるのでございますけれども、そういう個々の作業については、厚生労働省はどういうふうにお考えになっているんでしょうか。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生も御指摘いただきましたとおり、告知の依頼をいたしまして、その際に、患者の特定やそれから告知に活用していただけるよう、カルテのみならず手術記録、分娩記録、製剤使用簿等も十分調査していただくこと、このような工夫や依頼、お願いということで、協力依頼をただいまやっておるところでございまして、今後とも努力を続けてまいりたいと今考えております。

滝委員 既に古い話でございますから、患者さんの中には、C型肝炎がかなり悪化して、肝臓がんになって苦しんでいるとか、あるいはもう既に命を失っているとか、そういうような最悪の事態も、それはそれなりに当然、年齢、高齢化とともに出てくるんですよね。

 それに対して、そういういろいろな資料を持っているところはできるだけ速やかに、本人自身が肝炎だということでもう医療機関にかかっていると思いますけれども、そういう意味での救済措置、賠償請求とは別に、やはり医療機関は医療機関としての、自分のところの患者さんを面倒見るという姿勢がないと、これはなかなか救われないんじゃないだろうかなという感じがいたします。

 厚生労働省は調査しているということでございますけれども、調査したって、これはわかり切っているんですよね。その膨大なカルテをだれがチェックするのか、そして患者さんをどうやって把握するのかということをもう少しマスコミの力もかりてPRしないことには、これは個人個人、一人一人を救済するというのがなかなか難しいんじゃないだろうかな、私はこう思うのでございます。

 それに対して、厚生労働省は次の一手をどう考えているのかを、ひとつこの辺で明らかにしておいていただきたいと思うんです。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 どのような手を考えておるのかという御質問だと思いますけれども、先ほど先生からもお話しいただきましたように、私どもから行いました協力依頼の中で今回の調査の意義、重要性等をるる説明しますとともに、それから、ホームページでの照会状況とか、また元患者さんにとってはどういうような意味があるのか、肝炎の早期発見、早期治療につながる可能性等があるというようなことも踏まえまして、渾身の説明を申し上げているところでございます。こういったことを、可能な限り努力をもう少し続けさせていただきたいと思っております。

滝委員 これは、単純に協力依頼というよりも、私は、医師法二十四条の二の指示という格好できちんとした対応を厚生労働省がおとりになった方が、もう少しぴんとくるんじゃないだろうかな、こういうふうに思いますので、その辺も含めて、改めてもう少し徹底するような、単なる協力依頼ですと、協力しましたというだけで終わってしまうというおそれが多分にありますので、もうちょっときちんとした方がいいように思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 法務大臣は、所信表明で、慈しみということを法務行政の課題に取り上げていらっしゃいますけれども、かたい、冷たい法務行政というのじゃなくて、慈しみのある法務行政というためには、やはり、民事、刑事あわせて、ひとつ大きな国の問題に対してそういう観点から発言をしていただきたい、こういうふうに願う次第でございます。

 この問題はこの程度にいたします。どうぞ厚生労働省は結構でございます。

 次に、マスコミで報道されるところによりますと、空港会社の株式について外資規制を取り入れたい、こういうような報道がなされておりますし、報道ではおもしろおかしく、閣内での意見対立もある、こういうようになっているわけでございます。

 この国土交通省が用意されていると伝えられている空港会社の外資規制について、法務省も当然関係省庁でございますから、法案協議を受けていると思うんですね。その際に、法務省はどういう姿勢であるのか。外資規制やむを得ず、こういうふうに賛成の立場なのか、あるいはその他の意見をお述べになっているのかをお聞かせいただきたいと思います。

倉吉政府参考人 委員御指摘の空港整備法及び航空法の一部を改正する法律案、このことだろうと思いますが、現在、まだ立案作業中、閣議決定及びこれを前提とする与党審査も未了であると承知しております。

 この関係におきましては、少なくとも所管官庁が検討を進めている内容と申しますのは、委員ただいま御指摘のとおりでございまして、詳しく申しますと、外国法人等が直接または間接に有する議決権の割合が当該会社の総議決権の三分の一以上を占めることとなる場合には、その限度で取得された当該株式についての議決権は認められないこととなる、こういったものを内容としているものでございます。

 そこで、法務省といたしましては、会社法を所管しておりますので、会社法を所管している立場で法務省としてはどうかということが問われるわけでありますけれども、この点につきましては、もう委員も御承知のとおりでございますが、株式の議決権というものにつきましては、議決権制限株式という種類株式が会社法上認められているところでありまして、株式の内容として、議決権が必ずなければならないというものではございません。

 したがいまして、一定の政策的な目的のため、その目的を実現すべき個別の法律の規定によって株主の議決権を制限するということも一律に許されないわけではない、このように考えております。現に、当省の所管ではございませんけれども、平成十七年に成立した電波法及び放送法の一部を改正する法律におきましても、同じような規定が設けられているところであります。

 むしろ委員のお尋ねになりたいのはその政策目的の方だということになろうかと思いますが、この法案で所管省庁が定めようとしている議決権の制限に関する政策的な目的の内容あるいはその当否等については、法務省としてはコメントを差し控えさせていただきたいと考えております。

滝委員 なぜこういうことを問題にするかと申しますと、今お話にございました会社法の制定の際に、企業の乗っ取り、買収ということに関連して、あのときも、外資からどうやって守るかということが大きな課題となって、そしてこの点については一年間の施行猶予、こういうことをやりましたよね。その間、経済界は経済界で勉強会をやる、法務省は経産省とガイドラインをつくる、こういうようなことをやってきたわけでございます。

 したがって、特に外資だけをねらい撃ちにして特定の法案をつくるというようなことは、あの際には念頭になかったと思うんです。一般的に、株式の公開をどうするか、それに対する防御措置をどうするかということで議論があって、一般的な制度としてガイドラインをつくろうということになったはずなのに、コペンハーゲン空港が外資にやられたから日本もやらないかぬ、報道されるようなことはいかがなものだろうか、こう思うのでございます。

 そこで、国土交通省の方は、この問題をどういうふうにお考えになっているのかをお聞かせいただきたいと思うんです。

室谷政府参考人 お答えをいたします。

 空港あるいは空港関連施設を持つ企業に対する外資規制の意義という御質問かと思います。

 我が国は四面を海に囲まれております。したがいまして、成田国際空港を初めとする国際拠点空港あるいは羽田空港のターミナル施設につきましては、我が国の国際的な経済社会活動にとって不可欠な経済基盤である、社会基盤である、代替不可能な施設であるというふうに考えております。したがって、安全保障あるいは危機管理といったことへの対応など、我が国の国益を確保する、図っていく上で極めて大事なものであるというふうに考えております。

 このような施設あるいは事業の特殊性を踏まえますと、空港会社の完全民営化に当たって、やはり、先ほど申し上げましたような公益性であるとかあるいは公共性といったものを十分に担保して、適正な運営が行われていくべきであろうというふうに考えておるところでございます。

滝委員 今、航空局からそういうお答えをいただきましたけれども、平成十七年の会社法の議論の延長線で考えますと、今のような理由はまことに薄弱と言わざるを得ないと思うんです。私も、どっちがいいかというのは別問題、しばらく棚に置いておくとしても、あのときの要するに企業買収の対抗要件について議論をした延長線で考えても、今の御議論は大変不思議な感じがするんですよね。

 確かに今まで、例えばNTTについては外資規制で、あれは五分の一までかなんかのあれがありましたし、放送局についてもそういう外資規制をやりました。それはそれなりの理屈があったと言わざるを得ないと思うんですね。NTTはちょっと、会社法の前ですからどうかと思いますけれども、少なくとも放送法の関係は会社法と大体同時期に出てきた法案ですから、これは特段の理由があったと思うんですけれども、今の飛行場のことを考えると、何となく理屈がよくわからないんですよね。とにかく、コペンハーゲン空港が乗っ取られて、専ら収益本位でもって会社運営されたから、サービスが低下し、設備投資が制約されて危ない危ない、こういうことなんでしょうけれども、どうもそれだけでは、法案として外資規制の問題を出すというのはいかがなものだろうか。なぜ対抗要件としての株式のいろいろな仕組みというものをその中に検討する余地がなかったのか。ただいまも民事局長からお話がありましたように、議決権のない株式ということも検討されたんだろうと思うのでございますけれども、どうもそこのところが薄弱のように思うんです。

 これを一つ一つやっていくと、せっかく会社法という格好で一般的な制度として平成十七年を期して新法をつくった意味が何となく薄らぐような感じがするんですけれども、当時、民事局長は法制部長でいらっしゃったんでしたかね。そういう立場から、当時の状況を振り返って、どんな感想を持っているかをお述べいただきたいと思うんです。

倉吉政府参考人 大変難しい御質問ですが、会社法の買収防衛策と、それから今議論されている外資規制の、先ほど国土交通省から説明があった国策といったものは少し観点が違うのかなというふうに思っておりますので、その点をちょっとお話しさせていただきたいと思います。

 会社法上は、ただいま御指摘がありましたように、種類株式制度であるとかそれから新株予約権制度を利用いたしまして、いわゆる敵対的買収に対する買収防衛策を導入することが可能となるような法制にしてあります。

 よく言われておるライツプランなんというのは、一定割合以上の株式を買い占めた買収者だけが行使することのできない新株予約権、これをすべての株主に発行して、そうすると、最初に買収しようと思っていた人の株式が薄まってしまう、保持率が低くなってしまう、こういったものでございます。

 それから、黄金株というのがございまして、これは、合併承認等の一定の重要な事項について拒否権を有する、そういう種類株式をあらかじめ発行しておきまして、これを会社と友好的な株主に持っていていただく、そして、いざというときには拒否権を行使してもらう、こういったものがございます。

 それから、さらには、株主総会の決議要件をあらかじめ過重にしておくということで買収を防ごう、こういう手段もとれるわけでございます。

 確かに、御指摘のように、こういう買収防衛策がとれるようにしようということで、本来の会社法の施行期日を、合併等対価の柔軟化に関する部分に限りまして一年間延ばしました。平成十九年五月一日まで延期したわけでございまして、その間に多くの上場会社がこの買収防衛策を準備したということも承知しております。

 ただ、ここからでございますが、このように会社法の規定を活用して導入される買収防衛策というものは、個々の企業の個別具体的な判断により、その導入や内容等が決定されるものであります。今問題になっております空港整備法及び航空法の一部を改正する法律案のように、これは個々の企業の自主的な判断ではありませんで、当該企業が営む事業の中身、その実質に着目をして、そこに国策等の政策的な観点から外資による買収を防止しようというものでございまして、こういう政策的な発想による対応ということになりますと、会社法で対応することは法制的には困難でありまして、個別の各業法により手当てがなされるべきもの、そのように考えております。

滝委員 民事局長は甚だ苦しい御答弁をされたようでございますけれども、あの会社法のときも、基本的には外資からの企業乗っ取りをどうやって防御するか、こういうことで始まった議論でございます。したがって、会社法の防御方法と、国策として外資の規制をどうするかとは違うといっても、国策としてでき得るというよりも、会社の中でやれる、それがあのときの外資に対する防御のためのガイドラインであったはずなんですね。だから、そこのところが、どうも会社法のあのときの熱い精神とはちょっとずれているんじゃないだろうかなという感じを残念ながらせざるを得ないと思う。

 民事局長としては、当然政府部内の混乱を避けるために大分ニュートラルな御発言をされているようでございますけれども、法務大臣、ひとつどうでしょうか。また閣内に波紋を投げてはいけませんけれども、やはり法務省は、ここは一言なかったらいけないんじゃないかと思います。

鳩山国務大臣 私、会社法のときの議論を余り勉強しておらないので確たることは申し上げられませんで、先生の御指摘あるいは民事局長の答弁等で大いに勉強させていただいているつもりでございます。

 MアンドAだとかTOBだとか、そういうものが花盛りになることが、果たしてそれが全面的にいいことなのかというと、甚だ私は疑問も感じるわけでございまして、金がフロンティアを求めていろいろなところへ攻めていくというような姿が本当にいいのかなという思いがありますし、会社法の改正によってさまざまな防衛策が決められたということはいいことだと思っておりますが、空港のことをそれとどう解釈するかということについては、これからまた勉強させていただきたいと思います。

滝委員 大変ありがとうございました。

 以上で終わりたいと思います。ありがとうございます。

下村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十九分散会


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