衆議院

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第14号 平成20年5月30日(金曜日)

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平成二十年五月三十日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 下村 博文君

   理事 倉田 雅年君 理事 実川 幸夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 早川 忠孝君

   理事 水野 賢一君 理事 加藤 公一君

   理事 細川 律夫君 理事 大口 善徳君

      阿部 俊子君    赤池 誠章君

      稲田 朋美君    近江屋信広君

      後藤田正純君    清水鴻一郎君

      七条  明君    杉浦 正健君

      平  将明君    武田 良太君

      棚橋 泰文君    長勢 甚遠君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      古川 禎久君    馬渡 龍治君

      松野 博一君    武藤 容治君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      安井潤一郎君    保岡 興治君

      柳本 卓治君    枝野 幸男君

      河村たかし君    中井  洽君

      古本伸一郎君    鷲尾英一郎君

      神崎 武法君    保坂 展人君

      滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         鳩山 邦夫君

   法務副大臣        河井 克行君

   法務大臣政務官      古川 禎久君

   最高裁判所事務総局経理局長            小池  裕君

   最高裁判所事務総局家庭局長            二本松利忠君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    梶木  壽君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    西川 克行君

   参考人

   (京都大学大学院法学研究科教授)         酒巻  匡君

   参考人

   (日本弁護士連合会子どもの権利委員会少年法問題対策チーム座長)      斎藤 義房君

   参考人

   (加古川市民病院診療局長)            土師  守君

   参考人

   (NPO法人民間危機管理再生機構青少年育成部キャップ)          原  伸宏君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十日

 辞任         補欠選任

  後藤田正純君     橋本  岳君

  清水鴻一郎君     萩原 誠司君

  棚橋 泰文君     阿部 俊子君

  長勢 甚遠君     松野 博一君

  武藤 容治君     安井潤一郎君

  保岡 興治君     平  将明君

  石関 貴史君     鷲尾英一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     棚橋 泰文君

  平  将明君     保岡 興治君

  萩原 誠司君     清水鴻一郎君

  橋本  岳君     後藤田正純君

  松野 博一君     長勢 甚遠君

  安井潤一郎君     武藤 容治君

  鷲尾英一郎君     石関 貴史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 少年法の一部を改正する法律案(内閣提出第六八号)


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     ――――◇―――――

下村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、少年法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、京都大学大学院法学研究科教授酒巻匡君、日本弁護士連合会子どもの権利委員会少年法問題対策チーム座長斎藤義房君、加古川市民病院診療局長土師守君、NPO法人民間危機管理再生機構青少年育成部キャップ原伸宏君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れば幸いに存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、酒巻参考人、斎藤参考人、土師参考人、原参考人の順に、それぞれ二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず酒巻参考人にお願いいたします。

酒巻参考人 おはようございます。京都大学法学研究科の酒巻でございます。

 本日は、参考人として発言する機会をお与えいただきましたこと、まことにありがとうございます。

 私は、現在御審議中の少年法の一部を改正する法律案に関しまして、法整備の要綱骨子を検討した法制審議会少年法部会に委員として参加しておりましたので、本日は、本法律案に盛り込まれている被害者等による少年審判の傍聴という制度を中心に、少年法部会における議論も踏まえて、制度の導入に基本的に賛成する立場から意見を述べたいと思います。

 少年法に関しましては、平成十二年の法改正によって、少年事件被害者への配慮の充実を図る観点から、既に、少年審判の記録の閲覧、謄写、それから被害者等の申し出による意見の聴取、さらに審判結果の通知の各制度が新設されております。

 また、司法の過程におきまして、かつては適切な心配りが欠落していた犯罪被害者やその遺族の皆様への配慮とその権利利益の保障という一層広い観点から、平成十六年には犯罪被害者等基本法が成立し、そしてその基本理念として、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」ということが明記されました。そして、これを受けて、平成十七年には政府で犯罪被害者等基本計画が策定されております。この基本計画の中には、「少年保護事件に関する犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた制度の検討及び施策の実施」についての記載がなされているところでございます。

 こうした被害者等の権利利益の保護の充実を図るという大きな流れの中で、今回、特に少年事件の被害者等に非公開である少年審判の傍聴を認めることとする規定などを盛り込んだ法律案が国会に提出された、そういう流れであるというふうに私は理解しております。

 先ほど触れました犯罪被害者等基本計画におきましては、「少年審判の傍聴の可否を含め、犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた検討を行い、その結論に従った施策を実施する。」ということが記載されております。

 今回の法律案要綱を審議、検討した法制審議会の少年法部会におきましても、被害者の御遺族の方々からヒアリングを行いました。お話を伺いました方の多くは、少年審判の傍聴をぜひ認めていただきたいという強い御意見をお持ちでした。こうした御遺族の方々の思いは、まさに犯罪被害者等基本法に規定されている犯罪被害者等の尊厳にふさわしい処遇に適合するという認識を深くしたところでございます。

 他方で、このような被害者の要請を法制度として設計し実現するに当たっては、少年法という法律の最も基本的な理念、目的は何であって、少年法が、刑事裁判とは異なって一般公衆の審判傍聴を認めていない、非公開で審理するという法制度を採用しているのはなぜであるかということをやはり基本から考えて押さえておくことが極めて重要であろうと思います。

 少年法は、非行を犯してしまった少年の将来に向けての健全育成を期することを究極の目的としております。被害者の方々の御要望があるからといって、それだけで無条件で少年審判の傍聴を認めるということにいたしますと、審判を受ける少年の置かれた状況というのはさまざまでありますから、場合によっては、健全育成を期するために施される少年審判自体の働き、機能が損なわれてしまうおそれも考えられないわけではありません。少年審判の場は、刑事裁判のような刑事責任を確定するという場ではなくて、裁判官や関係者が少年の健全育成を期して、対象少年の心情の安定をも配慮しつつその内面に深く立ち入っていわゆる内省の深化を図る、そういう働きかけをする場でもある、いわばカウンセリング的な機能を果たしている場でもあります。そのために、一般公衆には非公開という制度がとられているというふうに考えられるわけです。

 法制審議会の少年法部会においても、このような基本的な問題について突っ込んだ議論が行われました。そして、この法律案では、結論として、被害者の方々の直接傍聴を求める思いと、他方で少年の健全育成の両者のバランスを図るために、一つは、対象となる事件を殺人事件等の一定の重大事件に限っています。また、傍聴を個別にお認めするかどうかについては、裁判所が、少年の年齢ですとか心身の状態あるいは事件の性質、審判の進行状況その他のさまざまな事情を考慮して、きめ細かく傍聴をお認めするかどうかを判断するという仕組みになっております。ここで考慮されている事項というのは、私の理解では、ひいては少年法の基本目的に即し、これを阻害しない範囲でということを意味すると理解できるわけでございまして、本法律案では、少年の健全育成に十分な配慮がなされているというふうに考えております。

 こうしたことから、私は、本法律案に規定されました少年審判の傍聴という制度の創設につきまして、賛成したいと思います。

 この少年審判の傍聴という制度の導入には、さまざまな反対する議論もございます。幾つかの反対の論点が示されております。

 まず、これを認めると、少年が萎縮してしまって十分な弁解ができない結果、誤った認定がなされるのではないか、あるいは先ほど私が述べました、少年審判のケースワーク的あるいはカウンセリング的な機能が減退するのではないか、あるいは保安上不測の事態が生じかねないといった指摘がなされております。

 こうした指摘につきまして、確かに、個別具体的にそのような場面が予測される事態はあろうかとは思います。しかし、それはいずれも、一律に被害者の方々の傍聴を否定する理由にはならないというふうに考えます。

 本法律案では、先ほど述べましたとおり、裁判所がさまざまな事情を考慮して審判期日ごとにきめ細かくその相当性を判断した上で被害者の方々の傍聴をお認めするかどうかを判断する、そういう仕組みになっておりますので、これによって、裁判所が、適正な判断、少年の反省を深める妨げになることなく、的確に審判を進行することができると考えております。

 なお、さらに、傍聴が認められた期日でありましても、事件の性質上、例えば少年審判の場合は、家族関係の高度の秘密事項などプライバシーに深くかかわる事項を取り扱うような場合には、その場面に限って被害者の方に退席していただくという措置をとることも当然可能であろうと思われます。したがいまして、指摘されるような問題には個別に適切な対処が可能である制度設計になっていると考えます。

 次に、事実を知りたいという被害者の方々の要望については、既に法律的な手当てがなされている、例えば記録の閲覧、謄写の制度を活用することなどによって、十分に対処することができるのではないかという指摘もございます。

 この点につきましては、法制審議会におけるヒアリングにおいても明らかになりましたとおり、被害者の方々は審判の具体的な状況をいわばリアルタイムで直接見聞きしたいというふうに強く希望しておられますので、この要望は、記録の閲覧、謄写あるいは審判結果の通知といったいわば事後的な情報提供によっては十分対応することができないだろうというふうに考えます。

 また、傍聴を認めなくても、少年審判規則に基づく在席を認めることで対応できるのではないかという御指摘もあります。

 しかしながら、この規則の本来的な趣旨、目的は、審判のために必要がある場合に、裁判所の方で少年の処遇や生活環境に関係の深い、例えば学校の先生ですとか雇い主等について審判への在席を認めるものでありまして、被害者の方が審判の状況を直接見聞きしたいという場合に在席傍聴を認めることは、法制度の運用のあり方として適切ではないというふうに考えられます。

 次に、対象事件について申し上げます。

 この法律案では、十四歳未満のいわゆる触法少年に係る事件についても対象事件としております。この点について、触法少年は精神的に未成熟である、年少であって特に保護の必要性が強いということで、傍聴の対象から一律に除くべきであるという御指摘もあります。

 先般の国会で、少年事件における警察調査権限に係る法整備の際にも、御審議の過程で、年少者の脆弱性という観点から賢明な配慮規定が設けられたというふうに承知しているところでございます。

 しかしながら、被害者の側が受ける被害は、例えば一家の大黒柱のお父さんが殺されてしまった家族にとっては、犯人が十三歳であるか十四歳であるかということによって特別大きく変わるところはありませんし、審判のやりとりを自分でその場で見聞きしたいという被害者あるいは遺族の思いも変わるところはないだろうと思います。

 また、特に触法少年については、御承知のとおり、事件が刑事裁判になる、逆送されて公開の刑事裁判になる可能性が制度上ございませんので、被害者の方々にとっては、少年が審理される過程を直接ごらんになる機会は少年審判の場しかありません。

 触法少年が確かに精神的に未成熟であるということも踏まえて、しかし、先ほど述べた制度によって裁判所がまさに少年の年齢や状態を考慮して個別事件ごとに適切に相当性の判断を行えば、この問題には対処できると思われます。触法少年であるということ、それだけで類型的に一切傍聴を認めないとすることは、適切な設計ではないだろうと考えております。ただ、立法政策として、例は大変少ないと思いますけれども、極めて低年齢の少年の事件を類型的に脆弱であるということで除外する立法政策はあり得ることであろうとは考えております。

 また、傍聴の対象事件につきましては、過失犯である業務上過失致死傷などの罪を含めることに反対する意見、逆に、性犯罪や生命重大危険を生じていないものの、体に重大な故障がある場合についても傍聴を認めるべきであるという御意見もございます。

 この対象事件をどうやって切り分けるかという点は、理屈というよりはある意味で立法政策的な御決断に係る事項ですけれども、この点について、出発点であった被害者等の個人の尊厳にふさわしい処遇の一環として少年審判の傍聴制度を設ける趣旨からいたしますと、特に個人の尊厳の根幹をなすのは人間の命でございますので、命に害をこうむった被害者、遺族を傍聴の対象とするのを基本的な幹の部分と考えるのが一番その趣旨に合致するのではないかと思います。

 これについては、そうしますと、命を奪われたという点では故意犯と過失犯で違いはないだろうと考えられます。また、少年審判が非公開にされているという趣旨にかんがみますと、やはり、一般公衆ではなく、特別に被害者の方に傍聴を認めるとしても、対象事件としては、殺人等、命が奪われた事件のように、特に被害者の方々が、あるいは遺族の方々が事実を強く知りたい、傍聴の利益が特に大きいだろうと思われる場合に限定するのが適切なのではないかと考えております。

 次に、審判廷というのはかなり狭い場所でありますので、審判廷で傍聴を認めるのはさまざまな点で問題があるのではないかという指摘もありました。

 この点、法制審議会の少年法部会では、家庭裁判所の審判廷を見学させていただきました。私も実際に審判廷で机やいすの配置を拝見いたしましたけれども、確かに狭い。通常の大きな刑事法廷とは様子は違いますけれども、少年や被害者等の座席、座る場所を工夫するなどによって、少年と被害者の間あるいは裁判官と少年の間にそれぞれ一定の距離を保ちつつ傍聴に対応することが現状で可能であろうというふうに思います。また、将来的には、傍聴制度ができれば、それを踏まえた審判廷の構造の整備ということも可能であろうと思います。

 なお、傍聴の方法につきましても、被害者の方々がいわば別の部屋から、直接審判廷に臨むのではなく、モニターによって傍聴する方法を認めることの当否ということも法制審議会で若干の意見交換がございました。

 私自身は、モニター傍聴については、間接的ではあっても、少年その他の審判関係者が、被害者等から見られている状態、そして見られていることを意識するという点では変わらないであろう。モニター傍聴であれば直接傍聴による影響が減るというような場合が本当にあるのだろうかという点について、若干疑問に思っております。また、直接傍聴する場合に比べて、審判を主宰する裁判官としても、傍聴している被害者の方の反応を直接目にすることができない、審判の進行にやや支障が生じるという御意見にもそれなりに納得できるものがあります。

 もともと、この制度の設計に当たりまして、少年審判を直接間近にごらんになりたいという被害者の方々の思いが制度設計の出発点でございますので、これにモニター傍聴の制度を設けますと、もしかすると、裁判所の判断がモニター傍聴の方に流れてしまって、本来は直接傍聴できた方がモニター傍聴しか認められなくなってしまうということもないわけではない、そういう懸念もあります。これは運用の問題ですけれども、若干個人的には懸念しているところであります。

 モニター傍聴の制度、被害者の方に傍聴についてのオプションの制度を設けるかどうかにつきましては、まずは現在御審議されている直接傍聴の制度を運用し、引き続いていろいろな問題についても慎重に検討する必要があるのではないかというふうに考えております。

 最後に、閲覧、謄写の範囲の拡大について一言申し上げますけれども、今回の記録閲覧、謄写の拡大は、最もプライバシーにかかわる社会記録の部分は除外されておりまして、他はいわゆる刑事裁判における閲覧、謄写の範囲に合わせるということでありますので、この制度によって、少年や関係者のプライバシーが不当に侵害される、みだりに明らかになることはないというふうに考えております。

 以上、大変早口でお話しいたしましたのでわかりにくい点もあったかもしれませんけれども、その点は御容赦いただきたいと思います。

 少年法の基本理念を損なうことなく、被害者の方々の権利利益の一層の保護を図るために立案された今回の法案ができる限り早く成立することを願っているところであります。

 私の説明は以上でございます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

下村委員長 どうもありがとうございました。

 次に、斎藤参考人にお願いいたします。

斎藤参考人 斎藤でございます。

 今回の少年法改正法案に対する意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 まず、今回の法案の必要性の有無について述べさせていただきます。

 犯罪被害者の権利利益の保護を実現すべきことについては、異論はありません。

 日弁連も、犯罪被害者に対する早期の経済的、精神的支援の制度及び国費による被害者弁護人制度を拡充すべきであると主張しております。すなわち、犯罪被害者の生活のあらゆる場面での支援施策は実現されるべきであります。しかしながら、本来、少年の立ち直り支援を目的とする少年法の手続においてなし得る被害者支援には、おのずと限界があると言わなければなりません。

 もとより、少年事件の被害者が加害少年について知りたい、情報を得たいと希望することは理解できます。この観点から、二〇〇〇年少年法改正において、被害者に対し、記録の閲覧、謄写、意見の聴取、審判結果の通知、これらの制度を新設することに対し、日弁連も賛成いたしました。これらの制度を活用することで、被害者の知りたいという要望を実現することはできると考えております。これに国費による被害者弁護人制度が加われば、現行少年法の制度をさらに効果的に活用できるでありましょう。

 今なすべきことは、各関係機関が被害者に対し二〇〇〇年法改正で実現した各制度の存在をさらに丁寧に知らせ、これを被害者の方が活用できるようにする支援体制を整備することであります。また、現行少年審判規則二十九条によれば、裁判長は、少年の健全育成に役立つと判断すれば被害者を審判に在席させることができますし、実際に在席した例もございます。

 もし仮に被害者に事実を知らせる新しい制度を考えるのであれば、傍聴制度ではなくて、被害者の申し出により、事実関係や処分結果を家庭裁判所調査官が説明する制度の規定を新設する、このことは検討に値すると考えております。

 次に、今回の法案の内容の問題点について述べます。

 結論から言えば、今回の法案は、少年法の理念と目的に重大な変質をもたらすおそれがあります。

 我が国の少年法は、少年の健全育成を目的とし、少年を立ち直らせ、少年が再び非行に走らないようにすることを目指しています。そのことが、新たな被害者を生み出さないことになりますし、社会の安全につながります。そのために、家庭裁判所は、非行事実の認定のみならず、非行を起こすに至った背景、要因を深く調査分析し、その原因の除去に向けて福祉的、教育的手当てをします。

 我が国は、この少年法の理念と目的を堅持し、成果を上げてきました。そして、我が国は、いわゆる先進国の中で少年非行が極めて少ないと評価されております。

 さて、今回提案されている改正法案の柱は、被害者に少年審判の傍聴を認める制度の導入であります。この制度は、家庭裁判所の少年審判を大きく変えるおそれがあります。

 少年法二十二条は、審判は懇切を旨とし、和やかに行うとしております。これは、非行少年が環境や資質に大きな問題を抱えていることを踏まえ、まず少年からその悩みや不満を聞き取り、これを受け入れることが重要であることを示しています。

 特に、重大な事件を起こした少年ほど、虐待、いじめなど、不遇な生育環境に置かれていた子供が多いことが明らかになっています。また、少年が発達障害を抱えているにもかかわらず、発達障害に対する周囲の大人の無理解により不適切な対応を受けていたために重大な事件に至ったという事例も多いのです。

 そのような少年は、みずからが受け入れられるというプロセスを経ることによって、みずからが他人にもたらした被害に向き合うことができるようになります。そして、真に反省、内省を深めることになります。

 少年が立ち直りに向けて心を開くことができるようにとの目的から、少年審判は非公開とし、刑事法廷の五分の一程度しかない狭い部屋で少年と裁判官が対話をするという手続になっています。

 ところが、事件発生からさほど日を経ていない段階で開かれる審判を被害者の方が傍聴するということになりますと、精神的に未熟で社会経験も乏しい少年は、心理的に萎縮し、率直に事実関係を説明したり心情を語ったりすることが困難になります。

 裁判官も、被害者の傍聴を意識して、君も大変だったね、つらかっただろうといった少年の心情に配慮する問いかけをためらうようになるでしょう。その結果、少年が心を開けず、少年の言い分が反映されない事実認定がなされる危険があるとともに、審判の教育的、福祉的機能が損なわれてしまうおそれが極めて大きいと言えます。

 加えて、被害者の方が傍聴している状況では、少年の特性や生い立ち、家族関係の問題など、少年のプライバシーに深くかかわる事項について、これを取り上げることが困難になります。そうなりますと、少年の更生に最も適切な処遇選択が難しくなるという問題も生じます。

 また、内省が深まっていない少年の発言や態度によって被害者がさらに傷つくこともありますし、狭い審判廷内で少年の発言や態度に怒りを増幅させた被害者と少年の間でトラブルが発生するおそれもあります。

 さらに、審判で直接見聞したことを被害者がインターネットなどで外部に流す可能性は、記録の閲覧、謄写よりもはるかに大きくなり、少年の立ち直りの妨げになるでしょう。

 このように、被害者の審判傍聴は、これまでの少年審判のありようを大きく変質させるおそれが強いのです。

 他方で、少年事件であっても、逆送後の刑事裁判になれば被害者が傍聴できるのだから、少年審判も傍聴させてもよいのではないかという意見があります。しかし、少年審判は、少年を逆送して刑事裁判に付するのがふさわしいかどうかを判断する場面ですから、あくまでも少年法の理念に沿って行われる必要があります。

 国連人権B規約十四条四項は、少年と成人を区別して、少年の場合は、手続は、その年齢及び更生の促進が望ましいことを考慮したものとすると定めています。

 少年司法運営に関する国連最低基準規則十四条二項は、手続は、少年の最善の利益に資するものでなければならず、かつ、少年が手続に参加してみずからを自由に表現できるような理解しやすい雰囲気のもとで行われなければならないと定めています。被害者傍聴は、少年審判の雰囲気を大きく変えるおそれがあります。

 今回の法案策定に当たり、これらの国際人権法や少年法の理念との整合性をどのように検討したのかが問われていると思います。

 次に、法案の各論的問題点を述べたいと思います。

 第一は、被害者に少年審判の傍聴を認める家庭裁判所の判断基準が不明確であることであります。

 法案の条文では、少年の健全育成に照らし相当と認めるときとか、あるいは少年の健全育成を害するおそれがないと認めるときなどの基準が明記されていません。

 これでは、被害者の要求と、少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判の状況などが並列に置かれていると解され、結局は、被害者の強い要望によって、少年の健全な育成、立ち直り支援という少年法の理念、目的が後退していくおそれが強くあります。

 第二は、傍聴対象事件に触法事件まで加えていることであります。

 少年法二十二条の二は、触法事件の審判については検察官の関与を認めていません。その理由は、十四歳未満の少年は類型的に防御能力、表現能力が乏しいことを考慮したからにほかなりません。

 前述した被害者傍聴制度の弊害は、触法事件においてより一層顕著に出現いたします。

 第三に、傍聴対象事件を被害者死亡事件に限定せず、傷害により生命に重大な危険を生じさせた事件をも含めている点であります。

 生命に重大な危険を生じさせたとはどのような場合を指すのか、一義的に明確ではありません。これでは、裁判官は判断に悩み、実務の運用に混乱が生ずるでありましょう。

 第四に、今回の法案では、傍聴対象事件に傷害罪や業務上過失致死傷罪も加えています。

 この罪名の事件は、現行少年法上、家庭裁判所が国選付添人を選任する対象事件になっていません。そのため、裁判官が被害者の審判傍聴を認めた場合に、少年に弁護士付添人がついておらず、すなわち少年には法的援助者がいないまま、いわば裸の状態で、被害者の目の前で審判を受けるという状況がつくられます。その結果、少年は一層萎縮し、何も言えないという事態になることもあり得ます。これでは、適正な審理を保障したとは言えません。この点からも、今回の法案には重大な欠陥があると言わねばなりません。

 第五に、今回の法案は、法律記録の閲覧、謄写の対象として、少年の身上、経歴の部分を含むとしておりますが、これも重大な問題です。

 子どもの権利条約四十条一項は、刑法を犯したと申し立てられた子供が、社会に復帰し、社会において建設的な役割を担うことがなるべく促進されることを配慮した方法により取り扱われる権利を認め、同条二項は、刑法を犯したとされた子供に対する手続のすべての段階における子供のプライバシーの尊重を保障しています。

 少年司法運営に関する国連最低基準規則八条も、少年のプライバシーの権利は、不当な公表やラベリングによって少年が害されることを避けるために、あらゆる段階で尊重されなければならないとしております。

 法律記録の閲覧、謄写の対象として少年の身上、経歴を含めることについて、国際人権法との整合性を検討しているのでしょうか。少年の身上、経歴は、少年のプライバシーの中核部分です。それが被害者を通じて外部に流出することを防止する必要性は極めて高いと言えます。

 以上述べましたように、今回の法案には重大な問題がありますので、私としては反対したいと思います。法務委員会の審議において、ぜひとも再考をお願いする次第であります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

下村委員長 どうもありがとうございました。

 次に、土師参考人にお願いいたします。

土師参考人 まず最初に、このような機会を与えていただきましたことにつきまして感謝いたしたいと思います。

 私は、少年事件の被害者の遺族という立場でお話をさせていただきたいと思います。私の子供の事件は、改正少年法施行以前ですので、現在の少年法とは少し異なっておりますので、その点を御理解の上、お話を聞いていただきたいと思います。

 皆様の中でもまだ記憶されている方も多いのではないかと思いますけれども、十一年前に日本じゅうを震撼させましたあの神戸連続児童殺傷事件で私は次男を亡くしました。私ごとになりますが、先週の土曜日は十一回目の命日でした。一九九七年五月二十四日、当時十四歳の少年により私の子供が殺害されました。そして三日後、私の次男の頭部を犯人の少年が通っていた中学校の正門前に放置した上、さらに警察に対する挑戦状までつけられていたという極めて残酷で猟奇的な事件でした。

 事件発生当初から、事件のその特異性のために、マスコミ各社の報道合戦は非常に激しいものでした。当時、私はメディアスクラムという言葉を知りませんでしたが、この激烈をきわめた取材合戦のために、私たちは通常の生活を送ることさえもできず、そして何の罪もない被害者遺族である私たちのプライバシーは暴かれてしまいました。このような状態が一カ月ほど続き、マスコミもやっと少し落ちつく気配が見えたころ、犯人が逮捕されました。そして、それが顔見知りの十四歳の少年であったため、やっと鎮静化しつつあったマスコミ各社の報道合戦はさらに一層熱を帯びたものとなりました。

 逮捕された犯人が十四歳の少年であったことで、初めて私たちは少年法というものに向き合うことになりました。それ以前にも、私は少年法というものがあるということは知っていましたが、現実に少年犯罪の被害者遺族になって初めて、この法律がはらんだ矛盾に驚かされると同時に、我が国の後進性に気づくことになりました。

 十四歳の少年が被疑者として逮捕された後、少年法に基づいて手続が進行していきました。しかし、私たちの心にたまったおりのような悲しみや憤怒は全く晴れることはありませんでした。最愛の我が子をあのような形で失ったという悲しみとショックがすっかり心をふさいでしまっていたことも理由の一つでしたが、それ以外にも全く別の理由が少年法そのものにありました。

 いかに少年といえども、犯した罪を考えると、余りにも保護され過ぎているのではないか、また余りにも被害者を無視しているのではないか、実際、少年法に接してみて感じざるを得ませんでした。

 審判が開始されますと、私たち被害者遺族は完全に蚊帳の外に置かれることになりました。捜査中は、まだしもどのような状況かを知ることができました。もちろん、詳しい調書を見ることができるはずもありませんでしたので、少年が犯罪を犯した動機などのことについては知ることもできませんでした。しかし、少年審判ということになりますと、どのように審判が進んでいるのか、少年はどのようなことを述べているのか、また少年の両親は自分たちの子供が犯した犯罪についてどのように思い、被害者やその遺族に対してどのような謝罪の気持ちがあるのか、またはないのかなど、私たち被害者遺族が知りたいこと、当然知ることができると思っていたことさえ知ることができませんでした。

 そのような状況の中、私たちは、法律については詳しいことはわかりませんでしたので、弁護士の方の援助が必要と感じていたため、事件があった年の八月に、井関弁護士、乗鞍弁護士に代理人をお願いしました。

 私たちは、事件の真相を知りたいと思っていました。加害少年がなぜ、どうして私たちの子供の命を奪ったのか、加害少年はどのような顔で、どのような雰囲気で、そしてどのような性格を持った人間なのかを知りたいと思いました。そして、加害少年の両親は自分たちの子供が犯した犯罪を本当に知らなかったのか、知っていて黙っていたのか、また事件についてどう思っているのかなどのことを知りたいと思いました。

 これらのことを知りたいと思ったことに加え、知ることは、亡くなった子供に対する残された私たちの義務だと思っていました。さらに、私たちの苦しくつらい心情を審判廷の中で加害少年やその両親に向かって話をしたいと思っていました。

 井関、乗鞍弁護士の両代理人を通じて、神戸家庭裁判所の担当判事に対して、審判傍聴をしたいこと、審判廷で意見陳述を行いたい旨を申し出ました。私たち自身がだめな場合でも代理人が審判傍聴はできないかなどと、何度も繰り返し申し入れをしましたが、やはり私たちの思いはかないませんでした。

 審判を傍聴することが認められず、審判の状況を知ることもできず、また私たちのやりきれない、つらい心情を審判廷で発言することもできませんでした。被害者遺族として、事件の背景を知りたいと思う気持ちは至極当然のことだと思います。そのため、せめて両親の供述調書と犯人の少年の精神鑑定書くらいは見せてもらえないかと思い、代理人を通じてこれを要求しましたが、それらもかないませんでした。

 その結果、私たちは、審判についてほとんど何も知らされず、そして何も発言できないという立場に終始させられてしまいました。唯一私たちが情報を得ることができたのは新聞やテレビ、雑誌などによる伝聞のみであり、私たちはその信憑性すら検証するための手段を何も持っていませんでした。当然のごとく、何が真実なのかということは一切わかりませんでした。

 私たちが唯一意見を述べることができたのは調査官だけでしたが、そのときも少年や両親に対する情報を知ることにはつながりませんでしたし、また私たちの意見が正確に判事に伝わったかということも甚だ不確かなものでした。

 そのような状況の中、審判は終了し、犯人の少年は医療少年院に入所の上更生の道を歩むという決定が下されました。

 このときの審判では、異例なことでしたが、審判の決定要旨がマスコミに対して公表されました。しかしながら、事件の当事者である私たち遺族のもとにはこの決定要旨が届けられることはありませんでした。私たちが入手したのは、裁判所ではなくマスコミからでした。

 さらに、当然の気持ちだと思いますが、審判決定書の全文を見ることぐらいはできないものかと思い、代理人を通じて神戸家庭裁判所に要求しましたが、やはり見ることはできませんでした。

 このような八方ふさがりの状況の中、私たちは、事件の背景を知るため、また責任の所在を明らかにする目的で、民事訴訟を起こしました。裁判の過程で調書を見ることができるのではないかと期待していましたが、少年側が事実を争わないという立場に終始したため、争点にはならず、私たちが見たかった資料などは一切見ることができませんでした。

 民事訴訟を起こして勝訴したからといって、訴訟費用がかかるだけで、少年側からの賠償金の支払いなどは、当時、全く期待できる状態ではありませんでした。この裁判を起こして唯一よかったと言えることは、判決という形で、加害少年だけでなく両親の責任が認められたことでした。

 二〇〇〇年に少年法が改正され、一部記録の閲覧ができるようになり、意見聴取の制度もできましたが、あくまで限定的なものであり、権利ではなく、裁判官の裁量によって決まります。そのため、現在でも、少年犯罪の被害者やその遺族は、少年や両親に対しては直接的には何も言うことができず、事件の情報についても限定的にしか知ることができません。

 少年法が抱える問題につきまして、私なりの考えを述べていきたいと思います。

 もちろんのことですが、少年法の基本的な精神には私も賛同しており、異を唱えるつもりはありません。犯罪を犯した少年の保護、更生を考えることは重要なことだと思います。しかしながら、傷害、強姦、傷害致死や殺人などの重大な犯罪と他の軽微なものとを同列に扱うことは許されることではないと思います。多くの軽微な少年犯罪については、少年の保護、更生を第一に考えることは非常に大事なことだと思います。しかし、少年が犯した犯罪が遺族というような形の深刻な被害者を生み出す場合は、やはり考える次元が大きく変わってくると思います。

 現行少年法において最も大きな問題点は、被害者や遺族を審判から完全に締め出していることだと思います。この点については、改正前と何ら変わってはいません。

 少年審判は、非公開が原則になっています。憲法上は、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」と定めており、裁判は公開が原則になっています。しかし、少年審判では、少年の将来の不利益を避けるという理由に基づいて、非公開の原則が採用されているようです。しかしながら、審判を一般に公開しないことはまだしも、一方の当事者である被害者にさえも一切公開しないということは、被害者の知る権利を奪っているわけです。

 どのような理由で、またどのような状況で被害を受けたのか、その加害者はどのような人間か、そしてどのような環境で育ったのか、どうすればその被害を未然に防ぐことができたのかなどのことは、深刻な犯罪に遭った被害者であればあるほど、知る権利があるはずです。加害者を守るために被害者がその権利を奪われるということは、本末転倒ではないでしょうか。

 私たち遺族は、家族を守ってやることができなかったという思いにさいなまれ続けています。被害者にとって、審判廷に出席をして事実を知ること、そして自分のつらい気持ちを言うことは、実は立ち直りへの第一歩でもあります。この一歩目が踏み出せないと、被害者は立ち直ることが困難な状況に追い込まれてしまいます。その意味でも、審判への参加は重要な意味を持っています。

 犯罪を犯した少年を更生させることを目指すのは、当然のことです。更生とは、犯した罪を忘れ去ることではありません。加害少年に、一刻も早く事件のことを忘れて立ち直りなさいということではありません。

 では、更生の第一歩に何をなすべきなのでしょうか。

 私は、何よりもまず、犯した罪を十分に認識させることが必要だと思います。その罪の意識が真の更生の第一歩だと思います。その意識が生まれないままでは、どのような指導も説教も彼らを真の更生へと導くことはできないに違いありません。

 罪の意識は、被害者への謝罪の念と密接な関係があると思います。被害者やその関係者に対する痛切なおわびの気持ちが、犯した罪への激しい後悔の念を導くのだと思います。悲しみの底に深く沈んだ被害者や憤怒に震える遺族の姿を知るところから、本当の意味での更生は始まるのではないでしょうか。

 次に、事実認定についてですが、通常、少年審判においては検察官は関与しません。その場合、審判廷では加害少年の主張に対して反論する人はいません。そうしますと、加害少年の主張はそのまま事実として認定されてしまうことにつながります。加害少年が自分の立場を有利なものにするためについたうそが、事実として認定されてしまいます。そうしますと、少年に対する処分の決定にも大きな影響を及ぼしますし、何よりも、そのうそのために被害者の尊厳がさらに大きく損なわれてしまう結果となります。

 被害者やその遺族が審判に参加した場合、彼らの前では加害少年もうその主張をしづらくなり、本当のことを言う可能性が高くなると思います。すなわち、被害者やその遺族の審判への参加は、正確な事実認定を行う上においても非常に重要なことだと言えると思います。

 以上のように、被害者や遺族が審判に参加することの意義は非常に大きなものです。被害者や遺族の事件の真相を知りたいと思う気持ちをかなえるなど、被害者自身にとって非常に重要な意味を持っています。そして、副次的には、これらのことに加え、加害少年の真の更生への第一歩となるだけでなく、さらには正確な事実認定においても重要な役割を果たします。正確な事実認定は、冤罪を防ぐとともに、少年に対する処遇を決定する上でも必須なことです。このように、被害者の審判への参加は非常に有益なことだと思います。

 最後になりますが、少し聞いていただきたいことがあります。少年の健全育成について、少しだけ話させていただきたいと思います。

 少年事件において、健全育成の対象になる少年とはどのような少年でしょうか。少年事件において、当事者である少年として思い浮かぶのは、一般的にはまずは加害少年ではないかと思います。次には、どのような少年が当事者でしょうか。それは、被害を直接受けた少年であり、その兄弟たちです。これらの被害を受けた少年の数は、統計はされていないでしょうが、現実的には加害少年の数よりも多いのではないでしょうか。

 例えば、私たちの子供の事件の場合、加害少年は一人ですが、殺害された少年は二人、重傷が一人、軽傷が二人、それに兄弟を加えると、優に十人は超えてしまいます。これらの被害を受けた少年たちは、事件の当事者でありながら、加害少年とは異なり、公的な機関からの支援は全くありません。私の長男も、それはひどい状況に陥りましたが、全く何の支援もありませんでした。私たちは、家族三人で対処するしかありませんでした。

 少年法によって、一方の当事者である被害を受けた少年たちが健全な育成を阻害されていることは忘れてほしくないと思います。この件につきましては、少年法とは別の観点から、支援制度を早急に確立してほしいと思っています。

 被害を受けた少年たちも、大人と同様に、自分や兄弟たちが、なぜ、どうしてこのような被害を受けたのかを知りたいと望んでいます。彼らが、どん底の状態から立ち直り、前に進んでいくためには、事実を知ることは必須のことです。しかしながら、少年の健全育成といいながら、一方の当事者である被害を受けた少年の健全育成については全く放棄しているのが現在の少年法です。皆様方はこのような話を聞くのは初めてなのではないかと思いますが、これが現実の状況です。

 少年犯罪事件とは、少年審判という、被害者からも一般世間からも見えない場所で秘密裏に処理されているような事件です。加害者が成人であろうが少年であろうが、甚大な被害に遭ったことに変わりはありません。被害者にとって少年事件とは、加害者は存在せず、被害者のみが存在するような異次元の世界の出来事に思えます。

 二〇〇四年十二月に犯罪被害者が切望していた犯罪被害者等基本法が成立し、翌年には基本計画が策定され、昨年六月には改正刑事訴訟法が成立しました。このように、犯罪被害者を取り巻く環境がよい方向へと変わってきています。しかしながら、現在の少年法は、二〇〇〇年の改正で若干の被害者配慮規定が盛り込まれていますが、被害者の尊厳については全く配慮しているとは言えない法律だと思います。加害少年の保護と同時に、被害者の尊厳に配慮した少年法に改正していただきたいと切に希望する次第です。

 最後になりましたが、少年法は、二〇〇〇年に一部改正され、被害者等に対する配慮規定が少し盛り込まれたとはいえ、被害者やその遺族にさらなる犠牲を強いることにより成り立っている法律であるということに変わりはないということを、国会議員の先生方には肝に銘じていただきたいと切にお願いいたします。そして、その上で、改正に対する議論をしていただきたいと心よりお願いいたします。

 どうもありがとうございました。(拍手)

下村委員長 どうもありがとうございました。

 次に、原参考人にお願いいたします。

原参考人 よろしくお願いします。

 現在、NPO法人民間危機管理再生機構で青少年の更生扶助を行っております原と申します。

 事実、私も十七歳のとき、現在二十四歳なので七年前に、非行集団との間で事件を起こしまして、少年院送致という処分を受けました。今回は、そのような立場から、経験を踏まえた上で、法改正後にはどうなってしまうのだろうかといった話をしたいと思っております。

 レジュメにありますとおり、まず、被害者同伴による審判の変化ですけれども、少年の心情の変化についてまずは述べさせていただきたいと思います。

 審判に強い不安感を抱き、緊張状態ゆえ、自分の考えを正確に表出できず、不用意なことを述べることもある。

 これについては、現在の審判に当たる少年すべてに言えることであります。大前提だと思いますけれども、法改正後にはもちろんこの傾向は強まると考えます。

 次、被害者等を意識し、被害者の非を言いにくい、自己弁護しにくい、被害者にかかわる動機を言いにくいなどと感じ、事実関係を正確に陳述しない可能性がある。

 無差別といったものではなく、AをされたからBをしたなどという、犯行に直接結びつく動機があることも多いです。しかし、被害者を目の前にし、かつ、審判で自分の非を強制されていると感じた場合、または相手の非を言うことで自分に反省の色がないんじゃないかと被害者からもとられると感じた場合には、さすがにこのような動機については正確に陳述することはできないと思います。言えなければ、事実関係の正確な陳述にもなりません。

 要保護性に関する事柄は、信頼関係なくして表出する、またはさせることはできない。

 幼少期からの不可抗力的なプライバシーの問題が事件の根本にある場合は多々あります。それは裁判官にとって審判材料として必要不可欠ですが、被害者等と加害少年が信頼関係を築くことは不可能に近く、表出させることはできないと思います。

 触法、発達障害、知的発達遅滞の少年も多く、それ以外の少年以上に心情を述べるのが困難である。

 実際にこのような少年もいます。現在の審理においても、審判材料を引き出すことや事件の事実確認が難しい上に、被害者等がいることは、その傾向に拍車をかけるものだと思います。

 自分の考えや気持ちを以上により表出できず、審判に不信感を抱き、処分結果に納得できないことは、その後の更生にも支障が出る。

 反省を強制されている、心にしこりを残したまま審判を終える、この状況は更生にとって悪材料です。経験上、私は審判廷の家庭的な雰囲気、裁判官が自分の更生について真剣過ぎるほどに考えてくれていると感じました。もちろん、その場に被害者はいませんでした。私は、少年院送致となりましたけれども、裁判官のその真摯な態度に心を打たれ、処分結果で少年院になったことに心底感謝いたしました。

 次、被害者等の傍聴の件を事前に知っている場合、鑑別所にて自分が他人にあらわしてもよいと許容できる範囲しか内省を行わない。

 鑑別所にて、簡単な技官による心理の把握や、自分の社会での生活等を振り返る文章などを作成いたしますけれども、少年と最も接する立場であり、審判に直接つながるのは調査官の存在です。その調査官の報告は少なからず審判での裁判官の質問等に影響を与えますが、審判前から内省が限定的にしか行われないといったことは、審判の形骸化をもたらしてしまうのではないでしょうか。

 次に、裁判官の審理についてですけれども、被害者等が傍聴していることを常に念頭に置かなくてはならず、少年と対立する者として詰問、非難する存在となりやすく、教育福祉的機能は後退する。

 仮に、裁判官が、被害者傍聴の上でも少年に対して真摯に向き合い、更生を念頭にした従来どおりの審判をしようと努めるとしても、少年はそうは考えてくれないでしょう。あくまでも、被害者側の人間だととらえると思います。

 少年の過去の心的外傷、プライバシーに関する事柄の審理ができず、審判の形骸化をもたらし、要保護性の的確な把握は困難になる。

 さきに申し上げましたとおり、このことは少年犯罪における審理において極めて大きいウエートがあります。これを少年から表出させられないことは、正確な審理ができないばかりか、ただの事務手続化させる要因にもなると思います。

 審判の動的な過程をかんがみるに、上記のような事柄について審理する都度、被害者等を退席させることは困難であり、表面的な審理になる可能性があります。

 私が経験したような、少年の更生を重要と考えた裁判官の発言と場の雰囲気は、被害者等に対する配慮から不可能になる可能性があると思っております。

 私の場合は、さきに申し上げましたとおり、家庭的雰囲気の中、例えるなら、まるで親から諭されているかのごとく裁判官は接してくれました。しかし、被害者同席の中では、そのような少年の内省と事件への反省を表出させる場の醸成が困難であると私は思います。または、少年がそのように感じないと思います。

 次に、被害者等への影響ですけれども、上記のような審理材料の不足から、事実関係の断片的部分しか結果的にはわからず、求めるものとは異なる結果になることが多いと言えます。

 被害者が求める事実関係の正確な把握、少年の反省などは確認困難になると思います。それでは、被害者の求めるものが傍聴することゆえに手に入らないとしたら、本末転倒なのではないでしょうか。

 次、事件発生から短期間での審判ゆえに、被害者等の心理的整理ができていない。そのような状況での審判は、二次被害を受ける可能性や、少年の態度や不用意な言動により心的外傷を深める危険性があると思います。少年は望むようなことを述べるとは限りません。少年審判は事件から短期で行われます。逮捕から最長勾留と鑑別所を経ても、多くは二カ月ほどです。そして、勾留期間はすべてが事件の詳細の把握に当てられるため、少年の心的整理もできていないため、不用意なことを述べることもあり、被害者等にとって望ましくないと思います。

 最後になりますけれども、実際に私のようなNPOで、鑑別所から出てきたり、保護観察処分や、または少年院等から出てきた少年の更生扶助をやっておりますと、やはり青少年の更生に携わっている身分としましては、自分の罪をどのように受け入れ、処分に納得しているかどうかというのが、更生にとって物すごく重要なファクターだと私は感じています。

 被害者は、傍聴により、自分が責められているとか、謝罪を強制されている、反省を強制されている、または自分はこのように更生したいといったことを述べられないとしたら、その結果の審理での処分にはもちろん納得いきませんでしょうし、それゆえに安易に再犯に直結するとは申しませんけれども、そのような納得しない状態で、例えば少年院送致、少年刑務所なりに送られてきた少年が社会復帰するときに、そのような少年自身が更生に支障がある状態は、社会にとって望ましい状態なのか、社会にとって本当に有益をもたらしてくれるのだろうかといったことについて、より考えるべきであると思います。

 短いですし、ちょっと稚拙な文章になってしまいましたけれども、以上で終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

下村委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

下村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤容治君。

武藤委員 おはようございます。岐阜県から選出されています、自由民主党の武藤容治と申します。よろしくお願いいたします。

 きょうは、本当に朝早くから貴重な御意見を賜りまして、参考人の皆さんに心から感謝を申し上げます。また、土師さんにとりましては、十年以上たったとはいえ、いまだ心には傷が、その中で、きょうは答弁をしていただきまして、まことに心から感謝を申し上げます。

 被害者の方、それぞれ私も何人かお聞きしていますけれども、皆さんの御心情というのは察するに余りあるものがある。ただ、先ほど酒巻先生から法制審議会の話も聞きましたけれども、やはり少年法の理念というものと、被害者の皆さんの御心情そしてお立場というもののはざまで、本当に責任のある議論をこの国会でしていかなきゃいけないという重責を今感じているわけです。

 何せ、やはりそれ以上に我々が求めなきゃいけないものは、国家国民が安心、安全に暮らせる国づくりというところ、そこが絶対でございまして、この少年法というものの理念を十分念頭に置きながら、慎重にこの議論を進めて、かつ、迅速に法を直すところは直していかなきゃいけない、こういう立場にあるというふうに思います。

 先ほど、日弁の斎藤参考人さんからもいろいろとお話がありました。日弁さんの言うのも至極当たり前のところもありますし、御指摘もあろうと思います。

 まず酒巻先生に、ちょっと基本的なお話を伺いたいんです。

 法制審議会で、少年法の理念とのはざまで大変な御議論をされたと思います。裁判所の裁量という形の中で今回の傍聴を認めるということについて、先ほど御説明がありましたけれども、そこの部分の本質的な議論、さまざまなケースがあったかと思いますけれども、ちょっとその辺について、最初にまず御質問をさせていただきたいと思います。もう少し深掘りして、その辺の議論についてお話をいただければと思います。

酒巻参考人 御質問ありがとうございました。

 御質問の御趣旨は、制度の設計として、裁判所の裁量によって被害者の方の傍聴をお認めするということに法はなっているわけでございますけれども、そのような結論に至った法制審議会における基本理念と被害者の方々の思いの調整、どうしてこのような形になったのか、その点の詳しい説明をという御趣旨だと思います。

 先ほども申し述べましたとおり、やはり第一に考えなければいけないのは、少年法の最終目標は何であるか、それは短い言葉で言いますと、少年の健全育成ということになるわけでございます。

 しかし、個別の事件を起こした、いわゆる非行少年あるいは犯罪を犯した少年にはさまざまなタイプがあり、そして少年の健全育成という目標達成にとって、もちろん、これまで家庭裁判所は、少年の内省を深め、さまざまな働きかけを行い、場合によっては家庭裁判所の裁判官は、審判廷で少年をしかりつける、あるいは逆に、被害者について、被害者にも落ち度があったかもしれないといった、さまざまないわゆるカウンセリング的な機能を果たしてきたわけですけれども、そういうことの前提として、少なくとも一般公衆には審判は公開しない、そういう制度設計になっていた。

 しかし、それとは次元を異にして、先ほど申しましたように、犯罪被害者の方の、少年がどのようにして審判を受けているのかという姿をみずからの目でこの場で見たい、知りたいという御希望、これも当然、まさに基本法の定めている被害者の尊厳という観点から実現しなければならない。この二つの要請をどうやってバランスをとるのか。

 そのバランスをとる方法としては、やはり一律にだめである、あるいは一律に権利として認めるという方法ではなくて、そのようなバランスをとる法制度として最も適当なのは、さまざまな事情を、そしてさまざまな事情を検討する資料を一番持っている裁判所が相当と判断するかどうか、それが一番適した法制度であろう、技術的にはそういう結論になったわけです。

 背景にある議論は、今述べたとおりでございます。余りまとまりませんが、以上でございます。

武藤委員 ありがとうございます。

 今の理念のはざまのお話はわかるんですけれども、先ほど斎藤参考人からもお話がありまして、裁判所の判断基準が若干不明確ではないかという御指摘も、それは確かにそのとおりだと思います。その辺について、ちょっと御見解をお願いいたします。

酒巻参考人 裁判官のさまざまな事情を考慮した裁量に基づいて、最終的には相当と認めるとき、これはさまざまな法制度で認められているところでありまして、確かに、条文の字面だけを見ますと、裁判官のお考え次第でどうなるか予測がつかない、そういう意味で判断基準が不明確ではないかという御懸念はあり得るかと思います。

 しかし、今述べましたような背景事情のもとで定められた裁量でございますので、当然それを行使する裁判官としても、どの要素をどのような場合に重視するかという、まさに裁判官はそのような裁量的判断をするプロでございますので、結果として基準はかなりはっきりしたものになってくる、あるいは逆に、個別具体的な事案に即して最も適切な判断をする、そういうものになるだろうと思いますので、基準自体が言葉の上で不明確ではないかという御懸念は必ずしも当たらないだろうというふうに考えております。

武藤委員 酒巻参考人、ありがとうございます。

 それでは、斎藤参考人に、ちょっと先ほどのお話の中で伺いますけれども、新しく傍聴をしなくても調査官が説明するということで事足りるのではないかというようなお話もございました。実際、もちろん斎藤先生は被害者になったことはないと思いますけれども、そういう方々の御意見も伺っての話だと思います。そういう調査官の説明で、本当に足りるのかどうか。

 先ほど土師参考人の話も聞きましたけれども、実際の被害者の立場からいって、いや、とてもそれでは心が納得するわけがない、いわゆる傍聴において、やはりリアルタイムというのか、現場で加害者の心情的なものも含めて拝聴した方が、その後を考えると、やはり調査官の話だけでは心理負担というのはそのまままだ残るのではないかと私は思うんですけれども、その辺について、先生はどう思われますでしょうか。

斎藤参考人 お答えいたします。

 今の御質問でございますけれども、先ほど申しましたとおり、私も傍聴制度そのものがもたらす弊害というのはやはり極めて大きいというふうに考えておりまして、それはできるだけ避けたい、あくまでも少年審判あるいは少年法の理念、目的は、少年の健全育成、立ち直り支援にあるのだということをまず第一に考えていきたいと思っております。

 そういう観点からいえば、やはり少年にできるだけ心を開いてもらうようなシステムは維持したい、それを維持しつつ、被害者が知りたいという要望を満たす方法はないかということを一生懸命考えたわけであります。その結果、結論としては、一番少年と接触し、それから背景事情も詳しく調査した調査官、事実関係を一番よく把握している、それから付添人からも情報を得ている、その調査官が事実関係を説明するということの方がはるかに私は被害者の希望に沿ったものになるだろうと思っております。

 と申しますのが、少年審判の時間というのは、それほど長時間延々とやるわけではありません。刑事法廷と違いまして、一つの事件で四十分ぐらい。そうしますと、そこに出てくる事実というのは極めて限られたものであることもあるのです。全部を知りたいと思いましても、審判に出ることによって全部知ることができるかというと、それには限界がある。調査官から改めて説明を受ける方が、より被害者にとっても事実関係がわかる面があるというふうに思っております。そういう意味で、私どもはそういう提言をしているところでございます。

 さらには、事件後間もなく審判が開かれますので、少年自身が気持ちの整理がついていない面もございます。いろいろな障害を抱えている子供もおりますので、その態度を見たときに逆に被害者がショックを受けることもあるのです。逆に傷を受けることもあるのです。傷を受けるのも、それも被害者が望んだことであるのだからいいのではないかということでいいのだろうか、そこは私は非常に疑問を持っておりまして、国の制度としては、被害者も傷を受けないような制度設計をすべきだろうというふうに考えています。

武藤委員 ありがとうございます。

 今、斎藤先生がおっしゃったことというのは、当然法制審議会でもしかるべき議論をして、それはやはり必要であろうという中で、一律に傍聴を認めないというのは、被害者の方の心情を察するとやはりこれはよくないというので今回出てきた法改正ではないかと思います。

 今、四十分という中でそれはなかなか御理解いただけないだろうと。私、個人的な意見を言わせていただければ、裁判官もそうですけれども、調査官もそうですが、そういう意味では、いわゆる法曹経験者の資格、資質というものが大変重要だというふうに思っていますので、本質的には、そういう問題も含めて、いろいろな形でこれから司法制度改革の中でやっていかなきゃいけないと思います。いろいろ御指摘の点もあると思いますけれども。

 そういう中で、土師先生、ちょっと参考人としてお聞きするのはあれなのかもしれません。ずっとこの間、たくさんの被害者の方の御心情も伺っていらっしゃるんだというふうに思いますけれども、そういう御経験の中で、今斎藤先生がおっしゃったような話は、やはり先ほど冒頭におっしゃられたように、そういう意味では大変納得がいかないところも多々あろうと思います。

 ただ、法制度の改革で被害者の方に対して基本法からいろいろ今来ていますので、ざっくばらんに言って、今回のものというのは、とてもじゃないけれどもやはり傍聴という形の中で、いろいろ日弁さんから出ている御意見で、多少実務、運用的なところで変えるということで何とかここら辺はできるんじゃないかと思いますけれども、土師参考人はどう思われますか、先ほど皆さんの話を聞かれていまして。

土師参考人 先ほど、斎藤弁護士もおっしゃられていました。被害者が傍聴に参加することによりましてさらに傷つくことがあるんじゃないか、そういう話もありましたけれども、確かに傷つくこともあるとは思います。

 ただ、逆に、出ないことによって傷つくことの方がもっと大きいと思います。もう比べ物にならないくらい大きいと思います。出ることによって、加害少年なり、そして両親なり、実際に彼らがどのようなニュアンスで物事をしゃべり、どのような表情でしゃべっているのか、そういうことも全部見ることができます。やはり、文章ではそういう細かいニュアンスというのはまずわかりません。やはり、それが見たい、聞きたいというのが被害者の気持ちだと思います。

 ですから、ぜひとも傍聴というものをさせていただきたいというふうに心より思っております。

武藤委員 ありがとうございます。

 こんな例えがいいかわかりませんが、百聞は一見にしかずということで、それは私どもも少年の審判、審判廷も本当は見たいぐらいです。そういう意味では、やはりそれに越したことはないという皆さんの思い、私も同感であります。

 ただ、いろいろな意味で、少年法の理念というのは、運用的な問題でやはり相当維持できるところが多いのではないかと思います。ですから、そういう形での中で、斎藤先生なんかからもいろいろ御指摘がありましたけれども、ぜひその辺については、これから審議していく間に、またきょう午後もありますので、ずっと引き続きこの会でやらせていただけるんじゃないかと思います。

 最後に、ちょっと時間がなくなりましたけれども、せっかくですから原参考人に。

 原参考人は、加害者として御経験があるということです。初めてきょうお会いしましたけれども、そういう意味では大変すばらしい更生をされているんじゃないかと思います。

 今NPOの中で、いろいろな形で運動をされているんでしょうけれども、今ここへ来られている方というのは、そういう経験者の方ばかりというか、経験をされた、いわゆるもう更生して、例えば少年刑務所へ行って出てきた子とか、そういう子が皆さんと一緒に、今後少年の健全な育成をしようということで活動されているのかな。それで間違いないですか、ちょっとそれだけお聞かせください。

原参考人 同じ青少年育成部に所属している人たちは、そういった過去に加害経験がある人がいますけれども、全くないといった人もいます。

武藤委員 ありがとうございました。

 ある意味で、NPOさんのそういう活動というのは非常にこれから大事じゃないのかなと思います。私も少年刑務所に行って子供たちの表情なんかを見てきましたけれども、今後彼らが二度と犯罪をしないというのは、やはり地域で受け入れられているかどうかという点が大きな点だと思います、仕事にしても、そういうNPOの皆さんの活動にしても。

 そこら辺がこれから大変大事なことであって、少年法の今回の問題については、皆さんの御見識を伺った上でまた真摯に議論をさせていただきますので、きょうは感謝を申し上げまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

下村委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川でございます。

 きょうは、四人の参考人の皆さんには、貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。

 酒巻参考人には、この少年法改正案ができるまでの法制審議会での御議論の経過。そしてまた、斎藤参考人には、加害少年を弁護するといいますか、そういう付添人の立場であられる、そういうようなことが多い日弁連の考え方。そしてまた、土師参考人には、大事なお子様を亡くされたその体験をお話しいただきましたし、また原参考人には、これはまた、加害少年として審判を受けた、そのみずからの体験からいろいろな御意見をいただきました。この少年法の改正案を審議するに当たって、それぞれ本当に貴重な御意見をいただきましたことに心から御礼申し上げます。ありがとうございました。

 原参考人の方から私はお聞きしますが、原参考人は、審判廷に被害者の遺族などがおられたら自分は素直に意見が言えなかっただろう、そして、アットホームな、裁判官がいわば親のような気持ちで接してくれた、それによって自分はいろいろとお話ができたというようなことも伺いましたけれども、いろいろな被害者の方からお聞きをいたしますと、まず審判廷で少年が萎縮をする、しかし、その被害の実態なり、遺族の気持ちなりをまずはきちっと認識することから反省の一歩が始まるのではないか、こういう御意見もございました。そういう意見についてはいかがでしょうか。

 少年は萎縮をするんじゃないかというような意見、一方、萎縮しても、まずは被害者の遺族の気持ちとか、そこから内省がきちっと始まるのではないかということについてはどうですか。

原参考人 私が思いますに、被害者等の同席によって審判廷の雰囲気というものは、少年にとって、そのような遺族への気持ちだとか謝罪をしろといった、高圧的に謝罪、反省を求められている場と感じると思います。実際、そのような強制された謝罪、反省、内省、そういったものに何の意味があるのかと思います。

 被害者の求める真の反省というのはそのような形だけのものではないでしょうし、そのように強制されていると思ったからゆえ言った言葉に対して何の意味があるのかなというふうに思います。

細川委員 もう一度、ちょっとお聞きします。

 原参考人が実際に審判廷で審判を受けたとき、裁判官から受けた言葉として、あなた自身が最も印象に残っているのはどういうようなことだったのか。そして、もし原参考人の審判のときに被害者の傍聴があれば、素直に言えたかどうか、話ができたかどうかということ。

 そして、審判廷の広さというのもいろいろありますが、広さについて原参考人はどういうふうにお感じなのか。広い方がいいのか、それとも狭い方がいいのか。審判廷で経験したときの印象で、率直にお話をしていただけたらと思います。

原参考人 まず、十七歳のとき、私は当時、高校に通っておりまして、社会復帰した後は非行集団と関係を絶って大学進学を目指しておりました。しかし、逮捕から裁判までの間、自分はこのような立場に、犯罪者としての立場になったがゆえに、本当に社会復帰できるのか、住んでいる地域の人たちは受け入れてくれるのか、または、学校に戻った後に高校の仲間や先生とかは受け入れてくれるのか、そういったすごい不安がありまして、半ば社会復帰というものをあきらめておりました。そちらの悪い道の方に行けば、それなりに生きていけるのかなといった感じのあきらめです。

 しかし、裁判官は、私のこのような考えを真摯に受けとめていただき、端的にせりふとして申しますと、君はまだ十七歳であり、立ち直るには全然間に合う、周りの大人たちを信頼し、頼ってもいい、これからだよというふうに言われました。

 このような、言葉としてはもちろん少ないですけれども、意味としては物すごい意味が込められているものであると同時に、審判の一番最初のときから醸成された雰囲気ゆえのたまものである言葉だと私は思います。

 ゆえに、被害者が同席の中このような言葉が言えたかどうかというのは、その雰囲気の醸成のたまものであるがゆえに、言えないと私は思います。

 次に、審判廷の広さについてですけれども、私は比較的狭い方がいいのかなというふうに思います。なぜならば、少年と裁判官が近い距離で話すといったことはやはり少年にとっても親近感といったものがわくでしょうし、物すごい距離がありまして、例えば刑事裁判のように、何か批判の矢面に立たされているような、まるで何か孤立感を感じてしまうようなものよりかは、やはり近い存在で話した方が、より心のうちを表出できるのではないかと思います。

 以上です。

細川委員 それでは、斎藤参考人にお聞きをいたします。

 モニターの視聴についてこの委員会でも大変議論となりまして、これには積極的な意見もございました。その際、意見で出たのは、直接傍聴することは遺族として耐えられない、しかし審判内容を知りたいという御遺族の、被害者の意見もございましたし、それから、少年の側にしても、同室よりはモニターの方が萎縮する可能性が低いのではないかというような意見もございましたけれども、これについて参考人はどういうふうに考えますか。

斎藤参考人 お答えいたします。

 モニター制度につきましては、先ほど酒巻参考人の意見陳述の中にも、法制審議会がモニター制あるいは別室で傍聴するというシステムはとらなかった理由について御説明があったと思います。その理由づけは、私も基本的にはそのとおりだろうと思っております。

 さらに言えば、私が強調したいのは、確かにモニターであると子供に対する影響は若干小さくなるかもしれませんが、逆に裁判官あるいは付添人、調査官、そちらに対する影響というのはかえって大きいのではないか。被害者が隣の部屋で見ている、それがどういう表情をしているか全く見えない、しかし見られているという、大人の方が意識すると思いますね。裁判官は物すごく緊張するだろう。常に隣の被害者がどういう反応をしているのかということを気にしながら審判するという状況が生まれる。これは、本来の少年審判のありようではないと思います。

 もう一つは、どういう場合にモニター傍聴を認めるのかという、その要件が極めてあいまいになると思いますね。

 ある論者は、直接傍聴を許可できないような人であっても、そういう被害者であっても、モニターであるならばいいではないかと言われている方もいらっしゃるのです。こうなりますと、本来、裁判所としては傍聴させてはならないなと考えていても、モニターであるがゆえに許すという、その傍聴を認める範囲が非常に拡大していく、広がっていく、これを恐れます。

 本来ならば到底傍聴を認められないような方々まで別室でモニターで見るという事態が広がる。その情報がどう流れていくのか、これは極めて不安でありまして、この制度は極めて危険なものになるだろうというふうに考えております。

 以上です。

細川委員 それでは、土師参考人にお聞きしたいと思います。

 先ほど、原参考人の方からも意見が出ておりました。やはり、遺族の方などが傍聴すると率直に言えないような部分もあるというお話でございましたけれども、それについてのお考え、それから、遺族に対するいろいろな事件の内容あるいは審判後の処遇の問題とかいろいろについて通知制度があるけれども、現在の通知制度では不十分ではないかというようなことがあるところで言われていたりするんですけれども、遺族としては、さらにどういう通知制度が加わるといいのか、そういう点も御意見がありましたらお聞きをしたいと思います。

土師参考人 最初のお話なんですけれども、遺族が傍聴することによって加害少年がちゃんと言えないということですけれども、傍聴することによって言いにくいということ、これ自身が、まず反省の第一歩になるのではないかというふうに私は思っています。その短い審判の中でちゃんと反省しろとはだれも思いませんし、結局、長いスパンの中で、最初に反省するときの第一歩になれば、これはあくまでも傍聴における副次的なことなんですけれども、そういうふうに私自身は思っております。

 通知制度に関してですけれども、どのような経過でそういう最終的な審判の決定に至ったかという詳しいその経過がやはりきちんとわかるような、なぜ、どのような理由で彼に対してこういう決定を下したかというその詳しいことがわかるような通知制度はきちんとしていただきたいというふうに思います。やはり、それは被害者にとっても自身を納得させるためには非常に必要なことではないかというふうに思います。

細川委員 最後に酒巻参考人にお聞きしますけれども、審議会でのいろいろな審議の中で、最大議論になった、委員の方で意見が分かれて最も意見が対立したといいますか、そういう点はどういう点だったでしょうか、この改正案について。

酒巻参考人 お答えいたします。

 さまざまな点でいろいろな考え方の対立はありましたけれども、やはり何といっても一番基本的な部分、まさにこれまで非公開で行われていた少年審判というものに、被害者の遺族あるいは被害者の方とはいえ、全面的に非公開だったところに、そういう方々に傍聴ということをお認めするかどうか、そのものですね。そして、それが今もまさに国会の審議の一番中核だと思いますけれども、その形というよりは、まずお認めをすることができるのかどうかという点が、やはり一番根本的な議論の中核だったと思います。

 対立、そしてそのバランスを現在の法案が何とかしてとろうとしたということは、先ほど御意見として申し述べたとおりでございます。まさにこの点がこれまでとは画期的に違う、大きな変更する点ですから、一番議論になったということでございます。

細川委員 貴重な御意見、ありがとうございました。

下村委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 きょうは、酒巻参考人、斎藤参考人、土師参考人、原参考人、お忙しいところありがとうございます。

 土師参考人については、私も著書を読ませていただきました。被害者の側の思いというものを述べていただきまして、本当にありがとうございます。また、原参考人は、みずから見事に更生された、そういう体験もお持ちになってここに来られたことに対して敬意を表したいと思います。

 酒巻参考人にお伺いします。

 まず、少年法の目的、少年の健全育成がある、そのことから、審判の形式について、二十二条の第一項で、審判は懇切を旨とし和やかに行うものとする、こういうことで決められているということであります。それと、平成十六年に犯罪被害者の基本法、そして十七年に基本計画ということで、やはり犯罪被害者の個人の尊厳にふさわしい処遇をするということも、これは非常に大事な目的であります。その二つの目的をどう調和するかということで、いろいろと法制審議会で御苦労をされたと思うのですね。

 少年の健全育成の目的ということと傍聴を認めるということとの関係性でいきますと、考え方として、少年の健全育成にプラスになる場合だけ傍聴を認める、積極的にプラスになる場合だけ傍聴を認める、こういう考え方が一つあります。もう一つは、健全育成の妨げにならない限りできるだけ傍聴を認めるべきだと。こういうふうに、調和の関係、傍聴をかなり制限した形で考えるものと、できるだけ広く認めようという考えがあると私は思うのですね。

 この点について、法制審議会でどういう議論があったか、あるいは先生はどういうふうにお考えなのか、お伺いしたいと思います。

酒巻参考人 御質問ありがとうございます。

 今議員がおっしゃったような問題の整理の仕方で、正面からの議論は余り行っていないと思います。

 そこで、私の考えを述べますと、少なくとも、おっしゃいましたように、少年の育成に役に立つ場合に限って傍聴をお認めするという考え方もあろうかと思いますけれども、基本的な発想としては、確かに少年法の基本目的から出発しているわけです。

 今回の立法は、その大枠の中で何よりも実現すべき目標であったのは、これまで審判そのものを見るという観点からは完全に排除されていた犯罪被害者の方々の思い、そしてその背景にあるのは、その前にできた基本法であります犯罪被害者の方の尊厳にふさわしい扱い、そっちがやはり出発点でございますので、そっちを出発点にして、しかし、それを全面的に推し進めた場合に基本理念と衝突する場合もあるかもしれない、それをどうやって法律的に対処して調和的な制度をつくるか、そういう形であったというふうに私は理解しております。

大口委員 土師参考人にお伺いします。

 著書の中でも、少年法の壁という表現をされておられました。そして、傍聴制度、本当に真実を知りたい、こういう思いがつづられていたわけでありますが、今、酒巻参考人のこういう考え方に対してどのように評価されるか、お伺いしたいと思います。

土師参考人 被害者、被害者遺族の思いとしましては、そういう制限なく本来でしたら傍聴はぜひさせていただきたい。先ほど申し上げましたけれども、真実を知るということ、そして加害少年、そしてその両親の実際の生の状況を見たいというのは、被害者遺族の思いです。

 ただ、法律的なこともありますので難しいところだと思うのですけれども、その中の妥協できる範囲までは最低持っていっていただけたらというふうに個人的には思います。

大口委員 この考え方について、斎藤参考人はどういうようにお考えですか。

斎藤参考人 私の考えは、日弁連の意見書にも書いてありますが、少年審判規則二十九条の範囲で現行法でもできるという立場でございます。

 少年審判規則二十九条の立場は、まさに少年の健全な育成に資する場合に裁判官が審判廷に被害者の在席を認めることもできるではないかということだと思います。つまり、少年審判規則二十九条は、親族あるいは教師、あるいはその他少年の立ち直りの援助者となり得る方の在席を認めるという規定ですね、書きぶりですから。となれば、その被害者の存在が少年にとっても更生にプラスになるという場合がないわけじゃないと思います。

 例えば、非常に小さな万引きであっても、被害者にとってみては、その被害、盗品は大変な重い貴重なものである、それを被害者から直接伝えることによって、少年がその反省の意を強くあらわしていくこともあり得る、そういうような場合は、まさに少年の立場にとってプラスであろう。そういう場合に限って、私どもは、被害者の在席、場合によっては傍聴という形も認めてもいいかもしれないという立場でございます。

大口委員 このように、関係性、相当性の判断をする場合にもいろいろな考え方があるわけですね。そういう点で、この相当性の判断のことを考えてみましても、原則どうなのかということが非常に大事になってくると私も問題意識を持っております。ただ、やはり平成十六年の犯罪被害者等基本法の精神というもの、被害者の個人の尊厳というものを大事にしていきたい、私もこう考えておる次第であります。

 次に、酒巻参考人に、例えば触法少年につきましては、一般的、類型的に、精神的に未熟である、脆弱性がある、こういう類型であります。そういう点で、少年の年齢というものを相当性の判断の一番最初に持ってきておられるということであれば、やはり相当性の判断をする場合、触法少年ということについては、その判断の中で考えていく大きな要素ではないかな、こう思います。さらに、ある一定の年齢、例えば小学生のような場合は、傍聴の影響性というのはかなり大きいのではないかということも私は事実ではないかと思います。

 そういう点で、触法少年あるいは小学生というようなことで傍聴に対する一つの制限を認めたり、あるいは認めないということについての立法政策上の観点からの御見解をお伺いしたいと思います。

酒巻参考人 御質問どうもありがとうございます。

 先ほど意見を述べたときにも少し触れましたけれども、今回の立法は、現在の法制度の中の、十四歳、触法かどうかという枠で類型的に傍聴を認めないという制度にはしておりません。しておりませんけれども、やはり少年の年齢、特に年少であるということは、傍聴による影響について大変重要な考慮要素でございますので、まさに裁判官の相当性の判断の要素として明らかに少年の年齢というのを記載しているところだろうと理解しています。

 その上で、今先生がおっしゃいましたとおり、触法の中でさらに年少である、たしか前回の少年法の御審議で、少年院に入れる可能性、形としては、原案は十四歳未満でも可能ではあるけれども下限はつくっていなかったわけですけれども、それを、国会の御審議で下限を設定されたということも承知しております。

 一つの立法政策として、触法という類型ではないけれども、その中でさらに年少である場合に、やはり余りにも小さいので、これ以上若い人については立法として一律に傍聴を認めないという考え方も私はあり得るだろうと思っています。

 ただ、現在の立案された法制度でも同じような結論は、恐らく健全な裁量をする裁判官であれば、まさに考慮要素の中に年齢というのが入っているわけですから、条文がなくてもあっても、多分、年少の場合にはほとんど同じ結論になるのではないかというふうに想像はしております。

 以上です。

大口委員 私も、さきの委員会質疑で、モニター傍聴についてお伺いをしたわけであります。特に、被害者の方が同じ部屋で加害少年と顔を合わせたくないというような場合に、選択肢の一つとしてそういうモニター傍聴を認めてほしいという場合が私はあると思います。それに対して種々の弊害があるということもありますけれども、私は、やはりできるだけ、何が起こっていて、少年がどういう少年なのかということを知るための選択肢というのはふやしていくべきではないかな、こう思っております。

 そのことにつきまして、土師参考人のモニター傍聴についてのお考えと、それから原参考人には、別室でモニターで被害者が見ておられる場合と審判廷にいらっしゃる場合の少年としての心理的な感覚はどのようなものか、これは想像になると思いますけれども、お伺いしたいと思います。

土師参考人 傍聴につきましては、私自身が思います原則は、実際に審判廷での傍聴が原則だというふうに思っております。

 被害者側としては、どうしても同じ空気を吸うのも嫌だという方もおられますので、そういう場合はモニターでもいいのかなというふうに思います。それと、裁判官の判断でこれはモニターの方がというふうに判断された場合はいいのかなというふうには思いますけれども、基本的には、審判廷での傍聴が原則だというふうに私自身は思っております。

原参考人 モニターと直接傍聴するときの少年心理の違いですけれども、やはりモニターである以上は、直接近くに、数メートル先に被害者がいるよりかは心理的には多少緊張状態が和らぐのではないかとは思いますけれども、見られていると知った以上は言動自体が、言葉を崩しますけれども、格好つけた言葉になってしまうといったことには違いはないと思います。

大口委員 今回こういう法改正をするに当たって、私は、やはり裁判官あるいは捜査に当たる者、そして付添人の役割は非常に大事だな、こう思っております。加害少年が本当に反省するかどうかということにおいて付添人というのは非常に大事でございますし、また傍聴を認めるという上において付添人の役割が大事ではないかなと思いますが、日弁連を代表されています斎藤参考人からお伺いしたいと思います。

斎藤参考人 おっしゃるとおりでありまして、やはり付添人制度は極めて重要だと思います。

 私どもは、基本的に、先ほど述べたように、傍聴制度は望ましくないと思っております。しかし、どうしても一部でもそれを導入するというのであるならば、それは付添人、弁護士の法的援助は不可欠であるというふうに思います。それなくしては、まさに子供が被害者の前で物が言えなくなる状態になるだろうというふうに思います。それは、まさに適正な審理とは言えないと思います。適正手続の観点から、付添人は欠かせないということを申し上げます。

大口委員 ありがとうございました。

下村委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 まず、原参考人に伺っていきたいんですけれども、御自身が事件で逮捕されて少年院で過ごしたという体験を話され、また現在は青少年の立ち直りを支えるという立場からのお話を、貴重な話として聞かせていただきました。

 私たち大人は、子供、特に思春期のころのことを多くの場合は忘れて過ごしているわけですけれども、今、原さんのお話を聞いて、確かに少年の時期、特に事件の直後という不安定な時期に、例えば審判廷で強がりを言ってみたり、聞かれたときに思っていることと全く違うことを言ってしまったり、あるいは事実をわざと曲げて言ったりとか誇張したりとか、要するに投げやりな態度をとってみたりというようなこともあろうかなということを思いました。

 そういったときに、被害者の方がそこにいらっしゃるということを想定したときにどんなことが起こり得るかというのを、ちょっと経験の中から話してみてください。

原参考人 実際に被害者が傍聴の折、私の経験から考えますと、なぜ被害者がいるかといったことをまず少年は考えますね。

 その上で、少々年のいっている少年だとしたら、やはり打算的に、被害者が聞いていて耳ざわりのよいこと言ったりしますね。もともと裁判自体は被害者がいるということで、自分の心のしこりだとかそういったものは表出できない、だったらば、あくまでも事務手続として、自分の審理に有利になるように、被害者の耳ざわりのよいようなことを適当に言おうかなというふうに考える少年もいると思います。

 また、心身未熟な状態の幼い少年だとしたら、やはり被害者はどちらかといったらば加害者にとっては非難する側だと思うんですけれども、裁判官もそのような対象として見るでしょうし、狭い審判廷の中で自分に味方はいないと感じたら、やはり自暴自棄になってしまうでしょうし、もちろん不用意なことも言うでしょうし、より自虐的になってしまうのではないかと思います。

保坂(展)委員 斎藤参考人にお願いしたいんです。

 お配りをいただいている資料がございます。この資料の中には、少年審判期日における被害者等の意見の聴取ということで、具体的に、正座をしなさいとか、やりとりがインターネットで公開されたとか、十億、二十億でも足らない、死ぬまで許せない、悪魔とか、幸せになってはいけない、それぞれのケースですが書かれています。また、逆送後の公判期日におけるアクシデントですか、こういったことを資料で出された。

 この資料を踏まえてお話になりたいこと、これを踏まえてどういうことをお話になりたいのかということをお願いします。

斎藤参考人 ありがとうございます。

 資料としてお配りさせていただいたものがございます。日弁連として全国調査をいたしまして、可能な限り具体例を集めてみました。

 私どもは、こういう不幸な事態が生まれる、これは望ましくないと思っておりまして、できるだけ避けたいという気持ちであります。

 問題は、法制審議会、さらにはこの国会において、このような具体的な弊害が出るんだということをどこまで真剣に御議論されていただけるかという、法制審においてはもう過去形ですから、審議されていたのだろうか、そういう思いであります。

 狭い部屋であります。そこで被害者と加害者が顔合わせをする。事件発生後間もない。そこで、数は少ないかもしれませんが、数%であるかもしれませんが、事態が起こる。それについてどうするんだ、それを真剣にお考えいただきたい。具体的にどういうふうにこれを防げるのか、その対策はどうするのかということについて真剣に考えていただきたいと思うのです。そうでなければ、極めて無責任なことになると思います。被害者にとっても大変な不幸な事態、少年にとっても大変な不幸な事態になると思います。

 もしも被害者傍聴の制度を現実に実施するというのであるならば、予測されるさまざまな問題に対する対応策、裁判所の人的体制、物的体制も含めて、どうするのかということについてもぜひ真剣に御議論いただきたいというふうに考えております。

保坂(展)委員 斎藤参考人にもう一問なんですが、私どもは、この少年法の改正案についてはもっともっと議論をするべきだと。いろいろな、きょうは参考人という形で、原さん、そしてまたこれからお聞きする土師さんのお話もいただいていますけれども、ただ、国会も会期末で、午後からは一応修正案が提示をされて、実はきょう採決をするという予定になっております。

 修正案については、一定の努力があったことを私も認めるものであります。内容としては、少年の健全な育成を妨げるおそれがないということを明示することであるとか、あるいは傍聴の際に付添人の意見を聞くということであるとか、十二歳以下の触法少年については傍聴を認めないなど、ほかにも内容はあるんですけれども、こういった内容を骨格としたものが出されるんです。しかし、その歩もうとした方向はいいとしても、まだ少年法や審判に係る影響が重大だという点はなお残っているということで、私は意見を異にするものであります。

 斎藤参考人はどう考えますか。そういった現状の政府案に一定の修正を加えたとして、この新しい制度がどう機能していくのかについての評価です。

斎藤参考人 今保坂先生からお聞きしましたが、私自身、修正案の具体的な条文を見ておりませんので、どうなるかわかりません。

 ただ、一定の絞りがかかるとしても、その絞りに沿った裁判所の運用が本当になされるかどうか、その担保がどこまであるかということについては本当にまだまだ不安でありまして、かつまた、こういう具体的な弊害が生ずることを防止するような対策ができているかどうかについてもまだ不安があります。私どもとしては、慎重な御議論を続けていただきたいというふうに期待しております。

 それ以上、修正案の中身について私は読んでおりませんので、申し上げられません。

保坂(展)委員 続けて、土師参考人にお願いします。

 私も、お子様の事件が起きたときから衆議院の法務委員会におりまして、二〇〇〇年の改正のときにも少年法の議論をした立場です。

 二〇〇四年でしょうか、今から四年前に、佐世保で小学校六年生の女の子が同級生に殺されてしまうという事件がありました。浪人中だったこともあって事件を取材して、メディアスクラムの様子は一向に変わらず、そしてまた、被害者であるお父さんが家族をかばいながら、極めて苦しいところの中でメッセージを時々出されて対応しておられた。後にお会いして話をしました。真相を知りたいということは言っていらっしゃいました。

 そこで、聞きたい点は、審判の場に出ていって聞くということで、審判の時間がそう長くはない、そして全容がそこで語られるわけでもない。審判の後、その少女は児童自立支援施設に行きましたけれども、どのような変遷を経て加害の子供が罪を対象化していくのか、向き合っていくのか、あるいは意識していくのか、非常にその歩みは遅いかもしれないんですけれども、何の情報もやはり入らないということを御手洗さんはおっしゃっていました。

 そちらの方が大きいのではないかなというふうに私は感じるんですけれども、審判廷で見守るという中で、被害者の存在を少年審判全体の結論にやはり反映させたいというお気持ちが強いんでしょうか。

土師参考人 被害者の立場としてですけれども、少年審判の決定に関して私たちがどうこう言うつもりは毛頭ありません。実際に生の状況をこの目で見たい、それが遺族の望みです。

 御手洗さんは私も存じ上げておりますので、時々お話をすることがあります。その後の経過も当然知りたい、これは親として当然のことだと思いますし、彼女がどういうふうな経過をたどって、どのような状況に変遷していくか、それもきちんと情報として知りたい。それも当然なんですが、その前の審判廷での状況を知っていることによってその後の情報も非常に理解しやすい、そうなるというふうに私は思っております。

保坂(展)委員 それでは、最後に酒巻参考人に、今斎藤参考人から、日弁連の方でまとめた、少ないかもしれないけれども、かなり重大だなと思われる事態について、法制審ではどのように議論したんだろうか、あるいはしなかったんだろうかというお話がありました。その点。

 もう一つ、審判廷に被害者の方が入る場合に、被害者の方が不幸にして非常に人数が多い場合、例えば十人を超えてしまう場合、十五人とかもいわゆる事件の類型によってはあり得ることだろうと思います。そしてまた、被害者の御家族という中には、先ほど言いましたように、年少の、あるいは思春期の子供たちもいる。また大人でも、先ほど原参考人の、思ってもいないこと、強がりとか非常に不愉快な態度を目にして、傍聴される方のメンタルなケアといいますか、二重にショックを受けてしまって、ある精神科医の方は、事件そのものが一大ショックですけれども、さらにそのショックを上塗りするようなことで大変打撃を受けられる、その後に影響が及んでしまうケースがあるんじゃないかと。

 そういうことについて法制審議会で議論されたのか、あるいは御自身のお考えはどうなのか、お願いします。

酒巻参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、きょう資料として出されました具体的な事故といいますか問題事例ですけれども、法制審議会の審議の場では、このような具体的な形で事例が出されて、それについて特に議論したということはございません。

 しかし、条文を設計する前提として、被害者の方が、いわゆる感情が暴発してこのような事態が起こる事例というのはあり得るであろう、そのようなことが起こったとき、あるいは起こる可能性がある場合について、事前にどのような形で裁量的な判断をする裁判官が知る道があるであろうかというようなレベルで具体的に議論をして、被害者に関する情報も裁量権を行使する裁判官の手元である程度把握することができるので、そのような場合については傍聴をお認めしないという判断もできるような制度設計にした、そういう議論でございます。

 それから、先生がおっしゃいました、まず、余りにも傍聴希望者が多数に上るという場合。これは、刑事裁判の方では、意見の陳述等について、そういう場合には、やむを得ないので、陳述される方は限定するというようなことが現に行われているわけですけれども、これについては今記憶が定かでないんですが、そのような場合も、やはり審判廷の構造等の関係でやむを得ないところがございますので、全員の方に傍聴をお認めするのは難しいという判断がなされることもあるであろうと思います。

 それから、最後におっしゃいました、むしろ傍聴される方の精神的なケアの問題ですね。全体として傍聴の制度を認めるかどうか、そして認めるとしてどのような形態にするかの際に何度も繰り返し出てきた議論として、被害者の方は傍聴をすると非常なショックを受けられて、かえって気の毒なことになる場合もあるだろうという議論は随分いたしましたし、意見を聞きました。

 しかし、今回の制度設計は、そういう方がいらっしゃることはよくわかるけれども、そういうことを承知の上で、まさに自分の目でみずから審判の様子を見たい、あるいはその審判の様子をごらんになることが、先ほどの土師参考人の御意見の中にもありましたように、自分の立ち直りのまず出発点になると考えて御希望されている方もたくさんいる。

 そのような方々の希望を、そうでない、むしろショックを受けたくないという方々もいる、その二つがあるわけですけれども、そういう方々がいるからといって、ぜひ自分の目で見たいと言っている方々の要請を法制度として否定するのは行き過ぎであろう、そういう議論が行われたということであり、私も、それはそのとおりであろうというふうに考えている次第です。

保坂(展)委員 貴重な意見、ありがとうございました。これで終わります。

下村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

下村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、少年法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、倉田雅年君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。細川律夫君。

    ―――――――――――――

 少年法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

細川委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提案者を代表いたしまして、その提案の趣旨及び内容を御説明いたします。

 政府提出法律案は、平成十六年に犯罪被害者等基本法が議員立法として全会派一致により成立したことなどを踏まえ、少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るための法整備を行うものです。

 衆議院本会議及び本委員会における政府案に対する質疑全体を通じて、少年の健全育成を図るという少年審判の目的を損なうことなく、いかなる形で犯罪被害者等の権利利益の実現を図ることができるかということが各党一致した問題意識であったと思われます。

 そこで、このような共通認識を基盤として、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の与野党三会派が協議を行った結果、三会派合意案として本修正案を提出することとした次第であります。

 次に、本修正案の内容について申し上げます。

 第一に、被害者等による少年審判の傍聴の要件及び手続について、次の三項目の修正を行うことといたしております。

 その一は、少年の健全な育成を妨げるおそれがないことを判断基準として明示することとしております。

 その二は、傍聴する被害者等の座席の位置、職員の配置などを定めるに当たって、少年の心身に及ぼす影響に配慮することとしております。

 その三は、被害者等の傍聴を許す際に、弁護士である付添人の意見を聞くこと、加えて、意見を聞く際に弁護士である付添人がないときは、少年及び保護者が弁護士である付添人を必要としない旨の意思を明示したときを除き、弁護士である付添人を付さなければならないものとしております。

 第二に、触法少年に係る事件の傍聴について、特別の規定を設けております。すなわち、十二歳未満の少年に係る事件を傍聴の対象から除外するとともに、十二歳以上の触法少年については、傍聴を許すか否かを判断するに当たり、一般に精神的に特に未成熟であることを十分考慮することとしております。

 第三に、家庭裁判所による被害者等に対する審判の状況の説明について、規定を設けております。

 最後に、この法律の施行後三年を経過した場合における、被害者等による少年審判の傍聴に関する規定などの施行状況についての検討規定を設けております。

 以上が、修正案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

下村委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

下村委員長 この際、お諮りいたします。

 本案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長大野恒太郎君、法務省矯正局長梶木壽君、法務省保護局長西川克行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局小池経理局長及び二本松家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野賢一君。

水野委員 自民党の水野賢一でございます。

 時間も限られておりますので、ただいま細川理事の方から三会派共同の提案理由説明がございましたけれども、この修正案に絞って質問をしたいというふうに思います。

 まず、修正案提出者に対してお伺いをしたいと思いますが、今回の修正の大きい柱の一つというのは、被害者の傍聴というものを、少年審判の傍聴に十二歳未満を対象外にしたわけですね。この十二歳未満の少年を対象外にした理由について、まずお伺いをしたいと思います。

倉田委員 修正案において、被害者による審判傍聴を十二歳に満たない少年については認めないこととする、その理由でございます。

 御承知のとおり、審判に傍聴を認めることによって、その少年の心情の安定への配慮が要請されるわけであります。そして、本委員会の審議においても、触法少年、特に十二歳未満の低年齢の少年につきましては、被害者の方々による傍聴を認めることの影響が非常に大きいだろう、いずれかの年齢をもって傍聴を認める下限と定めるべきではないかという御意見があったこともございまして、修正案では、中学校に入学する年齢を目安とした、こういうことで、十二歳未満、十二歳以上、こういうふうに分けたわけでございます。

水野委員 確かに、新しい制度ですから導入に当たっては丁寧に導入をしていくということは、考え方として十分あり得ると思いますし、一方で、法律にも三年後見直し規定なんかもございますから、その中で、もっともっとやっていくべきだ、いやいやこれで十分だ、いろいろな議論というのはそのときにもまたあるのかな、そんなふうに思います。

 さて、十二歳未満を外すということになると、全体の中でどのぐらいの人が対象から外れるのかということが興味を引くわけなんですけれども、関心もあると思います。これは、数字の話ですから刑事局長で結構なんですけれども、被害者傍聴の対象となる事件で十二歳未満の少年が引き起こしたものというのはどのぐらいあるんでしょうか。

大野政府参考人 司法統計年報では年齢別の統計がとられておりませんので、正確な数値はお答えできません。

 ただ、触法少年の保護事件で今回傍聴の対象となるもののうち、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事案につきましては、平成十四年から十八年までの五年間の終局人員につきまして、七名となっております。この中で、法務当局が現時点において非行時十二歳未満であると把握している者は一名であります。

水野委員 ちょっとこれは通告がなくて申しわけないのですけれども、局長に続けてお伺いしたいんですが、五年間で一名ということですか、そうすると、全対象事案の中で見ると、ここで外れるのは一%未満みたいな感じのイメージでよろしいんでしょうか。確認です。

大野政府参考人 おっしゃるとおりであります。

水野委員 続いて、国選付添人についてお伺いをいたしたいと思います。

 今回、修正案に国選付添人の話が第二十二条の五のところで入ってきたわけですね。少年審判においての国選付き添いというのは必ずしも全く新しい話じゃなくて、今までの旧来の法律でも、第二十二条の三の第一項とか、同じく第二項なんかにもその規定があったわけなんですけれども、その部分と違って、今回こういう文言が入ってきているわけですよね。少年及び保護者がこれを必要としない旨の意思を明示したときにはこれは不要、そういうような文言が入っていますよね。

 今までの部分には、今申し上げた二十二条の三第一項とか第二項にはそういうような文言はないわけなんですが、この部分、つまり、少年とか保護者がそういう付添人は要らないよと言ったときはつけなくていいというふうにした。今までの部分と差がちょっとあると思うんですが、この辺はどういう理由なんでしょうか。

倉田委員 お答えいたします。

 御指摘の今までの部分というのは、少年法の二十二条の三の第一項や第二項の場合、つまり、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪とか、あるいは死刑または無期もしくは短期二年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪、この触法少年たち、この場合はなぜ必要的な国選付添人ということにしたかといいますと、この場合は、やはり非行事実とか、あるいは要保護性の判断の基礎となる事実、これらのものについて、厳密な、なおかつ、正確なところを審理しなければならない、こういうことで必要的な付添人としていると考えます。

 それに対しまして、今回は傍聴を許すか否かということの判断にまず当たってということでございますので、少年に及ぼす影響をできる限り軽減するという観点からでございます。ちょっと軽重の違いもあるであろうということでありまして、その場合に、御本人並びに御本人だけでなく保護者も含めまして、いや、私たちは大丈夫ですよ、国選付添人をいただかなくても十分安定した気持ちでお話ができます、特に結構ですからと言っていることが明示されたときには不要であろう、こういうことで外したわけでございます。

水野委員 この国選付き添い、新しく法律の第二十二条の五を新設することによって弁護士による国選付き添いが導入されるということですけれども、これは刑事局長の方にお伺いしたいんですが、こういう話というのは予算にも関係してきますけれども、それによってどのぐらいの人数が新たに国選としてつくことになるのか。もちろんこれは、当然のことながら、どれだけの被害者が傍聴を希望するかとか、どれだけの少年とか保護者が付添人を希望しないかとか、いろいろな要素によって変わってきますから一概には答えがたいとは思いますけれども、今の時点で、大体あらあらの数字というか、あらあらのイメージというか、どんなような形をイメージしますでしょうか。

大野政府参考人 現時点におきまして具体的な事件数を正確に予測することはできないという前提でお話しいたしますけれども、少年審判の傍聴の対象となる主な保護事件、これは被害者を死亡させた事件に限りますと、一年当たり約三百八十件ということになるわけであります。この中から、被害者等が傍聴を希望しない事件あるいは少年に既に弁護士である付添人が選任されている事件、これは除かれることになるわけであります。

 したがいまして、今回の修正案によりまして導入される国選付添人制度によって付添人が選任される件数はさほど多くはない、あえて申し上げれば、年間おおむね十数件、多くても数十件程度ではないだろうかというふうに思われます。

水野委員 さて、今回の修正案によって、第二十二条の六で、被害者に対して家庭裁判所は説明をしなきゃいけないというような規定が入りましたね。被害者、犯罪被害者の権利利益というもの、きちんとここに配慮をしていくということは極めて大切だと思いますから、こういうような条項が入ったことは評価をしたいというふうに思います。

 具体的に修正案提出者に対してお伺いをしたいと思いますけれども、家庭裁判所が被害者に審判の状況なんかを説明するときに、どういうような形で説明していくことを想定しているのか。法文上は、「最高裁判所規則の定めるところにより、」というような形で書いてありますから、もちろん今後最高裁判所が決めていくんでしょう。それはわかりますけれども、これは議員立法の議員修正の部分ですから、立法者の意思というか、そういうようなことにおいてはどういうようなことをイメージしているのか。例えば口頭で説明するのか、文書で被害者に対して説明するのか、どういうことをイメージしているのか、ちょっとお伺いをしたいと思います。

倉田委員 これは、御指摘のとおり、最高裁の規則でこれから決めていただくということではございますけれども、イメージを言えといいますと、この事件の調査に当たった調査官であるとか、あるいは審判廷の状況ということでございますから、書記官が主になるのではないか。しかし、それでは不足だというような場合には、現場のことでありますから、だれにどうやれというわけにもいきませんけれども、必要に応じては裁判官の説明を要する場合もあるやには考えますが、いずれにせよ、裁判官がすべてそういう場面で云々ということは、ほかの職務にも差し支えますので、そこらのことを含めてどうするか、これから最高裁判所の規則で決めていかねばならない。場合によっては裁判官は無理だろう、こういうこともあるのではないか、こんなことを考えております。

 また、口頭か文書か。これは、まずは口頭でございますね。

水野委員 この家庭裁判所によって被害者側に対して状況を説明するという部分の規定にこういうふうにあるわけですよね。二十二条の六の部分で、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときはそれを認めるということで、裏を返せば、少年の健全な育成を妨げるおそれがあったりする場合には説明をしないということもあり得るというふうに思うんですが、そうすると、被害者の方からすると、何で説明してくれないんだというような不満を当然持つということもあり得ると思うんですね。そういうときに、被害者の方は不服申し立てのようなことは何かできるんでしょうか。

倉田委員 これは、不服申し立てまでは認めないことになっております。

 と申しますのは、これは、傍聴を希望なさいました、相当でないということで許可されなかったということの審理ということになりますと、不服申し立てをしますと、当然上級審に行きますね。そういう場合に、家庭裁判所の方ではまだ少年の審理をしている、しかしながら、不服申し立てを審理するために高裁の方へと記録を送らねばならないなんという場合も出てまいります。そうしますと、本来の審理に遅延を来したり、こういうこともありますし、またさらに、認めるのが妥当か否か、相当かどうかということは、やはり第三者の裁判所というよりも、現場の本来の家庭裁判所にその判断をゆだねられるべきことではないか、こう考えます。

水野委員 こういう被害者の方々への説明とかということになると、裁判所の方は恐らく、ある意味では負担がふえる、大変というような声もあるかもしれないですね、裁判所の現場の中には。しかしながら、やはり被害者の方々を大切にする、その権利を大切にするということは大きい時代の流れであると同時に、また人道上からも当然のことでもありますし、裁判所の方も、こういうような規定ができたわけですから、しっかりとそれを踏まえて、被害者の方々に誠実に対応していただきたいというふうに希望しておきたいと思います。

 きょうは、時間の関係がありますので修正部分に限って質問をしてまいりましたけれども、今回の法改正というのは、従来、とかく、加害者の権利は守られるけれども、被害者の権利というものがないがしろにされてしまっているというような声が非常に強かった、そういうものを是正していくということで、この法改正自体、非常に意義深いものだと持っております。この法律が速やかに成立することを私も期待しておりますし、その中で、法務省、裁判所等々、犯罪被害者などの対策に向けても、また少年の健全な保護育成に向けても今後も頑張っていただくことを期待して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

下村委員長 次に、神崎武法君。

神崎委員 公明党の神崎武法でございます。

 振り返ってみますと、二〇〇四年に犯罪被害者等基本法が制定され、二〇〇五年には犯罪被害者等基本計画が策定をされました。この中では、「施行後五年を経過した場合に行う検討において、少年審判の傍聴の可否を含め、犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた検討を行い、その結論に従った施策を実施する。」としているところであります。

 その後、法制審議会少年法部会を中心に審議がなされまして、今国会に少年法の改正案が提案されたわけでございますけれども、私は、被害者等の権利利益を一層保護する制度改革に賛成であります。その立場で、再確認をさせていただきたいと思います。

 まず、犯罪被害者等によります少年審判の傍聴につきましてですが、現行法上は、少年審判規則二十九条に基づいて、裁判所の認める範囲で審判への在席が認められる場合があるということであります。

 今回、改正法で新たに被害者等による少年審判の傍聴手続を規定した趣旨につきまして、改めて法務大臣にお伺いをいたしたいと思います。

鳩山国務大臣 神崎先生御承知のとおりだと思いますが、少年審判規則第二十九条に、「裁判長は、審判の席に、少年の親族、教員その他相当と認める者の在席を許すことができる。」と。この相当と認める者の在席というのを物すごく幅広く解釈して、被害者も入るというような学説をお持ちの方もいるようではあります。

 しかし、これは少年側の方々、つまり、少年の生活環境や処遇に関係の深い方々、例えば親族、あるいはその少年の担任の先生、あるいは勤めていた場合の雇い主、あるいはその少年が前に保護観察を受けておったとすれば保護観察官等を在席させるための規定と解するのが一般的でございまして、この中に被害者や被害者の遺族を含めるのは無理がある、こういうふうに考えまして、今回、新しく被害者による傍聴というものを認めることといたした、そういう法改正をお願いしているわけでございます。

 最高裁判所によれば、審判の傍聴そのもののために規則二十九条が用いられた例については承知していないというようなコメントもあるようでございますので、余り機能していた規則二十九条ではなかったと存じます。

神崎委員 新たに被害者等による少年審判の傍聴の手続を定める必要はないという立場の方からは、少年審判規則二十九条に基づいて対応が十分可能ではないか、こういうことを言われているわけでありますけれども、この点については今大臣からも考え方をお示しいただいたところでございますが、裁判の実際の運用として、現行の取り扱いと、それから新たに改正法の手続とで、実際どういう変化が被害者等の傍聴について出てくるものなのか、最高裁判所にお尋ねをしたいと思います。

二本松最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 ただいま法務大臣が答弁されましたとおり、少年審判規則第二十九条により審判への在席を許すことができる者といたしましては、実務上も、少年の生活環境や処遇に関係の深い少年の親族、担任教諭、雇い主、保護司等をいいまして、被害者はこれに該当しないと解して運用されているのが一般でございます。

 したがいまして、本法律案が成立いたしますと、この法律によって被害者等の傍聴が認められることになると理解しております。

 以上でございます。

神崎委員 被害者等に傍聴を認めるべきであるという論拠の一つに、被害者等の知る権利に配慮する必要があるということが言われているわけであります。この点につきまして、既に、二〇〇〇年の少年法の改正におきまして、記録の閲覧、謄写、意見の聴取、審判結果の通知等の制度を新設しているのだから、これらを活用することで足りるんじゃないか、こういう批判をする方がいらっしゃるわけですが、これに対して、法務大臣、どういうふうに反論されますか。

鳩山国務大臣 この法案、つまり少年法の改正案は、例えば、ちょっと言い過ぎになるかもしれませんけれども、先ほど水野先生からのお話にもありましたように、加害少年の方についてはさまざまな規定があるんですが、これは一般の犯罪、大人の犯罪でも同じですが、結局、被害者の尊厳とか人権とか立場とか、そういうものがどうしても軽く見られてきた、それを改めようというのが犯罪被害者を救おうという計画でございまして、その中で、今回のような被害者あるいは遺族による傍聴という制度を設けたわけでございます。

 記録の閲覧、謄写という制度あるいは審判結果を通知するという制度は、平成十二年の少年法改正ですから、十三年から施行されているのだと思います。しかしながら、やはり実際に最愛の家族を亡くされたような方々からは、閲覧、謄写はできても、あるいは審判結果の通知は受けても、なお、審判の傍聴を自分たちみずからでしたかったという御要望や御意見が多数寄せられてきたわけでございます。

 これは、被害者の方々としては、書面により審判の内容を知るだけでなくて、審判の具体的なやりとり、それをみずからその場で直接見聞きして、その具体的な状況について十分な情報を得たい、そういう切実なお気持ちがあると思うんです。そういう意味では、記録の閲覧や審判結果の通知では足りないというふうに考えております。

 例えば、今までも、法制審議会のヒアリングでも、少年がどんな態度で何を言おうとするのか、裁判官や弁護士がどんな質問をして、どう答えるのか、被害者遺族の思いをどこまで理解しているのか、そういうところを知りたいんだ、こういうような意見が出されております。

神崎委員 被害者等に傍聴を認めるべきとの論拠のまた一つに、被害者にとっては加害者が成人か少年かは基本的に関係ない、成人の場合と同様に傍聴を認めるべきだ、こういう御主張があります。

 これに対しまして、反対する意見として、少年審判と刑事訴訟との相違を考慮せずに被害者側の事情だけで議論するのは相当ではない、訴訟構造も含めて全体、トータルで判断をすべきだという意見を述べておりますけれども、これに対して大臣の判断をお伺いしたい。

鳩山国務大臣 午前中の参考人の意見陳述とその質疑の内容は、私は実は記録でしか見ておりません。直接は聞いておりませんが、例えば、少年法は犯した罪に比べ少年を保護し過ぎている反面、被害者は蚊帳の外に置かれていたではないか、被害者が情報を知ることができるようにすることが重要だとか、少年審判を傍聴し意見を述べることが被害者の立ち直りに資するとか、いろいろな立場からいろいろな御意見が出ているわけでございます。

 先ほど申し上げましたように、被害者あるいは最愛の家族を失った被害者の遺族の方々にしてみれば、その事件を起こした人の年齢、それが、今度いろいろな規定がまた修正案で出されますけれども、十二歳であろうと十四歳であろうと十五歳であろうと十九歳であろうと、あるいは二十過ぎであろうと、それは全く無関係だと思うんですね。その痛みというのは全く同じものがあるだろう、こういうふうに思います。

 そういう意味では、少年審判は非公開でございますから、もちろん記録の閲覧とか謄写というのはありますが、非公開という形で、少年の健全な育成という大目標のもとで行われておるわけでございますから、傍聴をしなければ全く直接の場面を見聞きすることはできない、被害者にしてみれば加害者の年齢というのは関係がないわけですから、できる限り私は傍聴を認めるべきだと考えるわけです。

 しかしながら、少年法の目的というのがありますので、健全育成という少年側の事情とのバランスをとってこのような規定にしておるというふうに御理解いただければありがたいと思います。

神崎委員 同じく被害者等に傍聴を認めるべきとの論拠の一つに、現在の審判出席者は少年の協力者のみであり、反論する者のいない審判廷では少年の虚偽がそのまま認められる可能性があり、事実認定に不十分な面がある、こういう指摘があります。

 これに対しまして、少年の捜査記録が家庭裁判所に提出され、さらに二〇〇〇年改正で少年審判に検察官を出席させる制度を導入しているし、事実認定の適正化は図られている、したがって、被害者等の傍聴をあえて認める必要はないではないか、こういう反対意見もありますけれども、大臣、どのように反論されますか。

鳩山国務大臣 検察官関与の規定が新設されましたのは平成十二年の少年法改正でございまして、それまでは検察官関与というのは一切ありませんでした。きょうの午前中の参考人のお話でも、検察官関与がない事件では少年の主張がそのまま認められるので、少年がうそをつき、真の更生も図られない、被害者が傍聴していると少年も本当のことを言う、こういう御意見が述べられておりまして、私はまことにもっともだと思うわけでございます。

 確かに検察官関与という規定は新設されましたけれども、これは非公開で行われる少年審判でございまして、適正な処遇を選択するとともに、内省の深化、つまり、少年が自分の犯した非行あるいは犯罪について十分反省をするように促していく、そういう必要があるわけでございます。

 そういう趣旨で、先ほど冒頭、神崎先生からお話があったように、少年の生活環境や処遇に関係が深い者の在席は許すという規定があったわけですが、それだけでは被害者が全く蚊帳の外に置かれてしまうわけでございまして、ぜひとも今回のこのような法改正をお認めいただきたい、こういうふうに願うものでございます。

神崎委員 午前中に、日弁連の少年法問題対策チームの「少年審判での意見聴取、刑事裁判における問題事例」が配付されました。

 これを見ますと、例えば、「被害者の親が、意見を陳述する際、少年に向かって、人の話を聞くのに何でいすに座っているのか、床に正座しなさい、などとどなりつけ、さらに、意見陳述の後には、少年に向かって物をほうり投げた。また、調書の内容や審判廷での様子が、インターネット上で公開されてしまった。当初は完全に実名で記載され、その後、中止申し入れにより一部伏せ字となった。」これは傷害致死、大阪の事例。

 それからもう一つは、「送致事実でも被害者への殺意は認められない事案であったが、被害者の親は、少年に対して、「そんなに人を殺したかったのか」と述べたうえ、「悪魔」「人間とは思えない」「あなたは一生幸せになってはいけない」「あなたは一生結婚してもいけない」などと陳述した。」傷害致死、埼玉の事例です。

 こういう事例が報告されています。

 また、新聞報道によりますと、怒りをぶつけられた少年の一人は少年院で自殺を図ったが命を取りとめた、こういうことも報道されているわけであります。

 まず、これは最高裁と矯正当局にお伺いをいたしたいと思いますが、こういった事例があったのかどうか、よろしくお願いします。

二本松最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 ただいま委員が御指摘になった意見陳述に際してのケースと、そしてインターネットへの書き込みがなされたケースにつきましては、概要、そのようなことがあったと承知しております。

 以上でございます。

梶木政府参考人 平成十二年の少年法等の一部改正以降、全国の少年院から、矯正局に対しまして、合計十一件の自殺未遂事案の発生報告が来ております。

 いずれも、御本人の病気が原因であったりとか、あるいは両親との関係に悩んだりとかというようなものが原因であったようでありまして、委員が今御指摘になりましたような理由で自殺を図ったけれども命を取りとめたという事例については、私どもは承知をいたしておりません。

神崎委員 意見陳述をするだけでもこういうことが起こっているんですから、被害者等に審判の傍聴を認めると、やはり少年が萎縮していろいろなことが起こるんじゃないか、こういうおそれがあるじゃないかという批判だろうと思いますが、この少年を萎縮させないための配慮は十分可能なのかどうか、これは当局にお伺いしたい。

大野政府参考人 御指摘のように、従来、被害者等が審判廷に入ったことによってトラブルを生じた事例もあるということは承知しているわけでありますけれども、そうした事例はまれでございます。

 これからは制度の話でございますけれども、少年の年齢や心身の状態、それから少年と被害者等の関係はさまざまでありまして、傍聴すると、常にといいますか、直ちに保安上不測の事態を生じたり、少年が萎縮するというような弊害を生じるものではないと考えております。

 この法律案では、裁判所による適正な処遇選択や、それから少年の反省を深める妨げにならないよう、傍聴を認めるかどうかにつきましては、裁判所が少年の年齢や心身の状態等を考慮いたしましてきめ細かく判断することとしております。また、傍聴を認める場合におきましても、その審理の状況等によりまして被害者等に退席を求めることもできると考えております。さらに、裁判所は、少年と被害者等の関係につきまして、事前に家庭裁判所調査官の調査結果等を参考にいたしまして少年の状態を相当深く把握し、また被害者調査等を行うことも予定されているわけであります。

 したがいまして、被害者等の傍聴を認めても、御懸念の少年を萎縮させるというような事態を生ずることなく審判を行うことは可能性であるというふうに考えているわけでございます。

神崎委員 改正案は、被害者による記録の閲覧、謄写範囲を拡大しているわけです。

 いろいろ文章を要約してみますと、従来は、正当な理由がある場合で相当と認めるときは閲覧、謄写させることができる、こうなっていました。改正法は、理由が正当でないと認める場合と相当でないと認める場合を除いて閲覧、謄写させるものとする、こういうことで、一体これは実際どのように閲覧、謄写の範囲が拡大するのかどうか、どういうところで拡大するのか、その点についてお伺いをしたいと思います。

大野政府参考人 ただいまお尋ねがありましたのは、閲覧、謄写が認められる場合についてのお尋ねであります。

 現行法におきましては、損害賠償請求権の行使のために必要があると認められる場合その他正当な理由がある場合などの要件を満たす場合に限って閲覧、謄写が認められる、こうなっているわけであります。

 この点につきまして、被害者の側からは、単に事件の内容を知りたいという理由であっても閲覧、謄写を認めるべきではないかという御意見が示されております。これが現行法でカバーできるかどうかというのは微妙な点もございますので、こうした被害者等の心情を犯罪被害者等基本法の趣旨等に照らして十分に尊重すべきという観点から、今回の改正でこの要件を改めまして、原則として閲覧、謄写を認めることにしたわけであります。

 したがいまして、先ほど申し上げた、単に事件の内容を知りたいという場合であっても、当然にそれは、それ以外の特段の不相当とするような事情のない限り閲覧、謄写が認められる、こういうことにしようということでございます。

神崎委員 被害者等によります申し出による意見聴取につきまして、被害者の心身に重大な故障がある場合における配偶者、直系の親族または兄弟姉妹を新たに加えているところでありますけれども、実際にそういう必要性というのは生じたのでしょうか。

大野政府参考人 被害者が死亡されない場合でも、被害者の心身に重大な故障がある場合の配偶者等、これは現行法では意見聴取の対象とされていないわけでありますけれども、しかし、被害者の心身に重大な故障がありまして、被害者本人が意見を陳述することが困難な場合というのは当然あるわけであります。

 そうした場合に、いわば被害者本人にかわって配偶者等が意見を陳述することができるようにすべきであるということで今回の改正案になったわけでありますけれども、ほかの法律とのバランス、例えば刑事訴訟法における被害者等の意見陳述あるいは少年法における被害者等による記録の閲覧、謄写の制度等においては、既に被害者本人だけではなしに被害者の配偶者等もその対象とされているということにも合わせることになるわけでございます。

神崎委員 子供が被害者になった成人の犯罪の管轄の問題ですけれども、これを地方裁判所に変更することにいたしましたけれども、これはなぜこのように変更することとしたのかお伺いをします。

大野政府参考人 現行の少年法は、少年法三十七条一項に掲げる児童福祉法違反等の少年の福祉を害する成人の刑事事件につきましては、家庭裁判所が管轄権を有するものとしているわけであります。

 この理由でありますけれども、こういう成人の刑事事件は、少年事件を専門に扱って少年に理解のある家庭裁判所が取り扱うのが適当であるというのが一つ目の理由、それから二つ目の理由は、こうした事件は少年事件の調査の過程で発覚することが多く、証拠関係も少年事件と大部分が共通することから家裁が扱うのが便宜である、こういうことで、家裁の管轄権に属せしめられたと考えられているわけであります。

 しかし、実際のところ、刑事事件担当の裁判官も少年に対する理解を十分に有しておりまして、適切な対応が可能でありますし、また、少年保護事件と少年の福祉を害する成人の刑事事件の証拠関係が共通であるからといっても、少年保護事件の証拠が自動的に刑事事件の証拠になるわけではありません。

 さらに、今のような家裁管轄の状況ですと、当該の成人につきまして、家裁が管轄を有する少年法三十七条一項に掲げる事件とそれ以外の地裁が管轄を有する事件がいわゆる併合罪の関係にある場合に、家裁と地裁に別々に訴えを提起することになりまして、それによって審理期間が不当に長くなったり、あるいは併合して一括して審理された場合とは異なる刑が言い渡されるという不都合があるわけであります。

 また、家裁管轄の成人の刑事事件につきましては、家庭裁判所に起訴されるということで、簡易裁判所で出されることになる略式命令による処理ができないという不都合もあるわけです。

 そこで、今回、少年法三十七条を削除いたしまして、同条一項に掲げられた少年の福祉に係る成人の刑事事件につきましても、ほかの事件と同様に地方裁判所等で取り扱うこととしたものであります。

神崎委員 今回の少年法の改正案につきまして、与野党で修正合意ができました。これは大変喜ばしいことだと思います。

 修正案についてお尋ねをしたいわけです。

 先ほど水野委員もお尋ねになりましたが、触法少年に係る事件の傍聴について、十二歳未満に係る事件を傍聴の対象から除外をいたしました。十二歳で区切った理由はということでありますが、触法少年については精神上未成熟であるということを十分考慮して判断するということでもよかったのかな、何で十二歳ということでやる必要があったのか、その点を含めてお答えいただきたいと思います。

大口委員 ただいまの御質問にお答えしたいと思います。

 触法少年というだけで、やはり一般的に精神の発育が十分でなく、その心情の安定への配慮の要請がより大きいということで、今回その配慮という規定を置かせていただいたわけであります。

 さらに、低年齢の場合、特に中学校に入学する年齢を目安にして、十二歳未満の少年については、やはりこれは十分配慮をしなきゃいけない。

 ただ、少年院送致のときにも、昨年改正をさせていただきましたけれども、やはり小学生という状況の中で被害者に傍聴を許すという、その影響性というのは相当大きいだろう、こういうことで、一定の年齢ということで、どこを切るかということであったわけでありますが、中学校に入学する年齢を目安にする、こういうことでございます。

 先ほども御案内がありましたように、十二歳未満でこの対象事件に係るというのは相当レアケースであります。小学生がこういう重大犯罪を犯すということについては、やはりその環境等も十分配慮しなきゃいけないという意味におきましても、こういう規定を置かせていただきました。

神崎委員 最後に、弁護士である付添人の意見聴取について、意見聴取の手続をとればいいのかどうか、付添人の意見が反対ということであれば傍聴を許さないということになるのか、ちょっとそこの考え方を。

大口委員 お答えいたします。

 付添人は、やはり加害少年のいろいろな相談を受ける、そして、とにかくいろいろと教育もしていく、そして更生に対して努力をしていく、そういう点で、少年と付添人の信頼関係というのは非常に特別のものがあると思うんですね。

 そういうことからいきますと、傍聴を許可するに当たって、やはり裁判所がきめ細かくその相当性を判断する場合に付添人から意見を聴取していくということは非常に大事なことでありますし、また、傍聴を許す場合にもしっかりと付添人の意見を聞かなきゃいけない、こういうことにしたわけであります。

 ただ手続として意見を聞きさえすればいいのかというと、そういうものではありませんで、付添人が傍聴に反対した場合、では必ずその意見に拘束されるかというと、そうでもない。しかし、家庭裁判所が知らないような事情をその付添人から聞かされる、こういうこともありますので、傍聴を許すことが相当でないと認められるに至ったときは傍聴を許さないことになると考えられますけれども、付添人の意見を十分聞くということです。裁判所ですから拘束はされませんが、付添人の意見を十分聞くということでございます。

神崎委員 終わります。

下村委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川でございます。

 私は修正案の提案者でもありますけれども、修正案には質問せずに、専ら政府案だけに質問をいたしますので、どうぞ下がっておって結構でございます。

 私は、火曜日にも質問をいたしましたけれども、引き続いて御質問をいたします。

 まず、前回の答弁で気になったことについて確認をしておきたいというふうに思います。それは、傍聴を認めるか認めないか、これについての原則か、あるいは例外かというような問題でございます。この法案によりまして、犯罪被害者等によります審判の傍聴が原則認められるようになったかどうか、そういう点でございます。

 私の質問に対しても、それからそのほかの議員の質問に対しても、最高裁の家庭局長それから法務省の刑事局長も、このように答えております。

 裁判体が個別にその許否、許可するかしないかを判断するものであり、許可が原則であり、あるいは不許可が例外といったものではない、そういうような趣旨の答弁でございました。

 しかし、大臣は、我が党の階議員の質問に対しては明確に、傍聴を原則的に認めるというような趣旨の御答弁もございました。

 具体的に言いますと、こういうことでございます。

 傍聴の申し出があった場合には、原則希望は入れられるものではないか、しかし、そういう事情、被害者のそういうお気持ちはわかるけれども、きめ細かく配慮してみたら、例外的にやはりこれはあえて認めないということもあるのかなと思います、そういうことでありまして、後で保坂委員の質疑に対しては若干修正をされました。この点、はっきりしておかなければいけないというふうに思います。

 私は、犯罪という卑劣な行為によって人権が侵害された犯罪被害者等に格別の配慮をする、こういうことは当然と思っておりますし、大臣の答弁の言いたいところも理解するものでございますけれども、法案の審議というものはそれだけではないわけでありまして、やはり一条一条の大臣の答弁が法律が成立した後の運用に当たりまして大きな意味も持ってくるのでありますから、さらに大臣答弁というものがより重いものだということであります。

 そこで、お聞きをいたします。

 この解釈につきましては、刑事局長の答弁で運用していく、つまり傍聴の許否、許すか許さないかに当たっては、特にどちらを原則あるいは例外とするということではないという解釈で運用に当たるということについて、これは大臣の方からもいま一度明確に答弁をしていただきたいと思います。

鳩山国務大臣 さすが細川先生の鋭い御指摘なんでございますが、先ほども申し上げましたけれども、現在まで、あるいは近年までの我が国のさまざまな刑事司法制度等が、やはり加害者と被害者というのを比べた場合に、どうしても被害者に薄過ぎた、被害者の尊厳というものをもっと考えるべきであった、こういうことであり、その反省の中から犯罪被害者等基本法あるいは政府の犯罪被害者等基本計画ができてきた、こう考えるわけでございます。

 繰り返しになりますが、少年法は犯した罪に比べ少年を保護し過ぎている反面、被害者は蚊帳の外である、被害者が情報を知ることができるようにすることが重要である、これはきょうの午前中の参考人質疑で出た意見でございまして、従来の我が国の制度は、残念ながら、そう言われて仕方のない仕組みであったと思うわけでございます。

 そこで、私は、何物にもかえがたい御家族の命を奪われ、生涯回復できないのではないかというほどの被害あるいは精神的被害を受けた方々が、事件がなぜ起こったのか、あるいはどのような審理を経て処分が決められるのか、あるいはその加害少年、場合によっては触法少年ということもあるわけですが、どういう人間であり、どんなやりとりがあったか、そういうことを知りたいという切実なお気持ちをお持ちであろうと考えまして、そうした方々、被害者や被害者の遺族の方々の立場を十分に踏まえて、今回の法律案はそうした被害者や遺族の方々の御要望におこたえしたい、そのための法整備だという気持ちが、私はかなり強くあるわけでございまして、そんな中で、御党の階委員とのやりとりの中で、できる限り傍聴は認めてあげる方向にしたいものだという私の気持ちが出た答弁なんだろう。

 しかしながら、私も一応何カ月も法務大臣をやっておりますから多少のことは身についておるわけでございまして、実際にはそれぞれの裁判体が、それこそきめ細かく配慮をして、少年の健全育成という少年法の精神に照らして傍聴を許すか許さないかを決めていく、そのことは私も十分わかっているわけでございますが、被害者の方々や遺族の方々の御要望におこたえしたいという気持ちが、刑事局長より私の方が若干強いんだろう、こう思います。

細川委員 原則として認めるということではないんだということで、今の答弁をお聞きしておきたいと思います。

 それでは、もう一つ確認をしておきたいと思いますが、これは前回のこの質疑で、記録の閲覧、謄写について、刑事局長は、私の質問に次のように答えております。

 社会記録に匹敵するような、プライバシーに深く立ち入るような、外に出しては差しさわりのあるような事項は引き続き閲覧、謄写は認められないというような仕組みになっているというふうに考えておりますという答弁をされました。

 これは、大変大事なところでございまして、火曜日の質問のときにも申し上げましたとおり、情報を入手した人が、その守秘義務に反してインターネットなどで公開をするようなことに対して有効な防御策というものがない以上、プライバシーに深くかかわりますそういう情報を開示するということは非常に大きな問題がある、こういうふうに特に強調しておきたいと思っております。

 そこで、大臣にお聞きいたしますけれども、この身上、経歴に関する記録で、特に少年のプライバシーに関する事項に関する閲覧、謄写の可否について、もう一度はっきりお答えいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 細川先生御承知のように、今まで記録の閲覧、謄写というのは、いわば非行事実だけ、犯罪事実というケースもあると思いますが、非行事実だけだったわけでございますが、これを身上、経歴等の記録についても閲覧、謄写の対象とするわけでございます。しかしながら、一般に社会記録と言われるものは除かれて、閲覧、謄写の対象としない。

 ちょっと汚い図で申しわけないんですが、身上、経歴というものがもしあるとしますと、その中の社会記録については閲覧、謄写させない、その身上記録全体の中に、社会記録ではないが非常にプライバシーとして閲覧、謄写させるべきでない部分というのはやはりあるだろう、こういう解釈を我々法務省はしておるということなのでございます。

 ですから、今汚い図で示しましたけれども、身上、経歴のすべてが閲覧、謄写できるわけではない、社会記録を除くし、社会記録以外にも、少年のプライバシーに深くかかわって閲覧、謄写になじまない部分はこれから外す、こういうふうに御理解いただければありがたいと思います。

細川委員 それでは、次に参りますが、犯罪被害者などへの支援あるいは情報提供などについてお聞きをしたいと思います。

 犯罪被害者の皆さんの傍聴への要望をいろいろ聞く中で、それ以外にも、さらにもっともっと充実をさせなければならないようなことを感じたことがいろいろございました。その一つが、やはり情報の提供でございます。記録の閲覧、謄写とか、そういう以外にもいろいろな要望がございます。

 そこで、まずお聞きをいたしますが、検察庁は、被害者あるいは遺族の人たちに対して、支援制度あるいは通知制度などで対応しているというふうに聞いておりますが、どんなことを検察庁としては行っているのか、被害者ホットラインの利用状況、こういうのも含めてお答えいただきたいと思います。

大野政府参考人 お答えいたします。

 検察庁におきましては、現在、被害者支援のため、さまざまな取り組みを行っております。

 具体的には、まず各地方検察庁に被害者支援員を配置いたしまして、被害者の方々からのさまざまな相談をお聞きしているほか、捜査、公判に関するさまざまな情報の提供や、被害者支援機関、団体との連絡調整などを行っております。

 また、各地方検察庁に被害者ホットラインを設けまして、被害者の方々に来庁していただかなくても、気軽に、電話やファクシミリによりまして、被害相談や事件に関する問い合わせに応じることが可能になっております。その利用状況でありますが、平成十九年、この関係の件数は一万二千件余りあるというように承知しております。

 さらに、各地方検察庁では、従来から被害者等通知制度に基づきまして、被害者の方々やその御家族などで通知を希望される方に対しましては、事件の処理結果、つまり起訴、不起訴、それから公判期日、刑事裁判の結果、さらに懲役刑や禁固刑などを受けた者が釈放された場合にはその日にち、加害者が収容されている刑務所名や刑務所での処遇状況などを通知しております。

 そのほか、各地方検察庁では、担当の検察官が、捜査への影響等を勘案しながらでありますけれども、刑事手続の各段階におきまして、被害者の方々に情報提供をしております。捜査段階におきまして事情聴取をした場合、可能な範囲で捜査状況等の情報を提供いたします。

 また、不起訴処分をした場合におきましても、御希望に応じまして、捜査への影響等を考慮しつつ、事前あるいは事後に、その処分の内容や理由についても説明するようにしております。

 公判段階におきましても、例えば冒頭陳述の内容を記載した書面をお渡しする、あるいは公判の進捗状況を説明するというようなことをしているわけであります。

 検察庁としては、引き続きこうした取り組みを積極的に進めまして、被害者の方々の心情等に一層配慮するよう努めていくというように承知しております。

細川委員 被害者、遺族は、早く本当の事実を知りたい、これは少年事件だけではないと思いますから、ぜひしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 そこで、被害者の立場から、交通事故におきます調書の開示ということについてお伺いをしていきたいと思います。

 この少年法の改正案で、傍聴の対象となりますのは、多分、件数としては業務上過失致死傷罪等が圧倒的に多いだろう。現在、多くは、刑法の二百十一条第二項の自動車運転過失致死傷罪ということになるだろうと思います。いわゆる交通事故による死亡または生命重大危険の事案、これが多かろうというふうに思います。

 そこで、私は、交通事故においては、せめて実況見分調書くらいは捜査をやっている捜査中でも遺族や被害者に開示すべきだ、こういうふうにこれまでも主張してきましたけれども、どうも刑事訴訟法四十七条が壁になりまして、今までは法務省からなかなかいい答えがもらえていなかったわけでございます。

 私は、超党派の交通事故問題を考える国会議員の会というのがありまして、そこの事務局長もやったりしておりまして、そういう交通事故の被害者からいろいろな要望も聞きます。

 調書は、判決確定後は開示されますけれども、起訴されるまでは非開示でございますし、不起訴の場合には、特に供述調書なんかはなかなか開示されない、こういうことであります。特に、警察や検察の捜査に不満がある場合ですと、不起訴になって初めて実況見分調書などの内容がわかって驚いたといった例が相次いでおるわけであります。

 交通事故の場合は、どちらが被害者かわからないような場合が専ら多いわけでありまして、特に一方が死亡したような場合には、生存者の方が供述すること、それがそのまま採用されるということもいまだにあるようでございまして、私は、この点が非常に気になっているところでございます。

 そこで、少年法はちょっと離れるんですけれども、一昨日もテレビのニュース番組で報道されておりました。

 ちょっと御紹介しますと、事故はかなり前でありますけれども、平成十年の十一月に熊本県で起こっております。亡くなったのは、東京から単身でバイクの旅行をしていた男性でございまして、警察の調べでは、停車中の乗用車にバイクが追突をしたということでございますけれども、遺族がその実況見分調書を見たのは、乗用車の運転手の不起訴が決まった後だということです。そこで、その後、遺族は自分で調査を始めまして、警察の調べとは逆に、走行中の乗用車がバイクの前方に切り込んできた、だから乗用車にバイクが衝突した、そういう鑑定結果も出たりいたしました。しかし、そういう鑑定結果が出ても、遺族の主張は退けられるというような結果、結局乗用車の運転手は責任はないということになっております。

 しかし、この事件は現在も係争中でありますから、私はこの事実関係に入って余りどうこう言いたくはないんですけれども、一方は東京からバイクでずっと運転をしていった青年、一方、相手方は地元の女性、そして、その女性は警察官と結婚をしているとか、そういうようないろいろな背景もありまして、この警察の調べには疑問がある、そういうこともあるようでございます。

 そこで、長々と言いましたけれども、私が言いたいのは、被害者等が捜査に関する情報を得ようとしても捜査段階ではなかなか出してもらえない、こういう実情でありますから、仮に警察の捜査に問題があった場合、全くチェックが働かないということもこれまた私は問題だと思いまして、四月十一日の当委員会での私の質問でも、大臣は「検察がしっかりしておれば適正な捜査ができるのではないかというふうに私は思います。」というようなお答えもいただいておりまして、私がいろいろ交通事故の遺族の皆さんから要請を受けた件では、検察がしっかり機能を果たしているかといいますと、そうでもないというふうに思います。

 そこで、志布志や氷見の事件、あの冤罪事件を例に出すまでもないんですけれども、むしろほとんど検察は警察の捜査を追認しているというふうにしか思えない。警察の捜査に問題があった場合ではなくて、捜査が適正に行われる場合も含めて、被害者や遺族はできるだけ真実を知りたい、こういう気持ちであろうと思いますから、それを生かそうとするのが犯罪被害者等基本法の趣旨だというふうに私は思っております。

 そこで、少年法のこの改正案、傍聴が認められる事件というのは、そういう交通事故、業過の事件が大半を占めるだろう、こういうふうに思われますので、捜査段階であっても、せめてその交通事故の実況見分調書くらいは被害者に開示すべきだというふうに私は考えます。一般に公開をしろというのではなくて、被害者の気持ちにこたえる意味で、捜査に支障を来さない範囲で開示すべきではないか、これについて法務当局のお考えを聞かせてください。

大野政府参考人 ただいま委員が御指摘になりました刑事訴訟法四十七条というのがありまして、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。」ということで、原則として捜査段階の書類は捜査段階においては公にしないということになるわけでありますが、これはもちろんプライバシー保護あるいは円滑な捜査遂行の必要性を踏まえた規定でございます。

 ただ、この四十七条にはただし書きがくっついておりまして、「公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」とされております。

 そうした観点で、犯罪被害者等基本計画の中でも、検察官が捜査への支障等を勘案しつつ、犯罪被害者等に対し、適時適切に捜査状況等の情報を提供するよう努めることという条項も入っているわけでございます。

 そこで、現在、検察当局は、捜査段階でありましても、犯罪被害者等の方々から要望がある場合には、可能な範囲で、捜査への支障等を勘案しながら捜査状況等について説明をしております。

 そして、今委員が特に御指摘になりました実況見分調書でありますけれども、実況見分調書につきましては、いわば客観性の高い証拠ということになるわけでありますが、被害者に対する説明の際に、必要に応じて実況見分調書をお示しする場合もあるというように承知しております。

細川委員 被害者に説明する場合に、実況見分調書も示す場合もあるということでありますけれども、しかし現実は、私が聞いた限りでは、まず見せてもらえないというふうに聞いております。

 刑事訴訟法四十七条の後半では、「但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」こういう規定がちゃんとありますので、実況見分調書というのは本当に客観的な証拠でありますから、特に、それを被害者が見ても捜査の妨害になるとかそういうようなことは一切ない、被害者が真実を知りたい、こういうときには、やはり実況見分調書を見せるということが大事ではないかというふうに私は思いますけれども、ちょっと大臣のお考えを聞かせてください。

鳩山国務大臣 この少年法の改正案が、少年により重大な事件が起きて、最愛の御家族を失うというようなケースを想定して、そうした遺族の方々の、知りたい、どういう少年なんだろうか、少年審判でどんなやりとりをしているんだろうか、あるいは身上、経歴等もどんなふうであろうか、そういう切実な思いにこたえるような立法をしよう、それが犯罪被害者等基本法や基本計画に沿ったものである、そう考えているわけでございます。

 そのことを踏まえて、今の細川先生のお話を承りますと、先生御指摘の熊本県で発生した交通事故、今から十年前なんでしょうか、それは交通事故ですから、どっちに過失があったとかいろいろ難しい問題は出てくるわけでありましょうが、そのオートバイに乗った青年は亡くなってしまうわけですね。その遺族の皆様方の御心痛、察するに余りあるものがございまして、先生が切々とお話をされましたように、結局不起訴になっておって、後から実況見分調書を見る。これは、余りにも、余りにもという気がします、私の率直な思いは。

 したがって、少なくとも先生が御指摘のようなケースでは、刑事訴訟法四十七条というのは、その読み方は、ただし書きを極めて重く、あるいは幅広く読みほどくべきでありまして、実況見分調書を遺族の方に、それこそこのような例であるならば、お見せするのが原則であってしかるべき、こう思います。

細川委員 ありがとうございました。

 それでは、次に、少年事件の場合は、捜査や調査が終われば、主に家庭裁判所というのが舞台になるわけでございます。そこでお聞きいたしますが、現在も、記録の閲覧、謄写の制度あるいは意見陳述や審判の結果などの通知制度がございますが、これを被害者あるいは遺族の方にどのように周知徹底しているのか、あるいはまた被害者、遺族などが家庭裁判所を訪れたときに、きちんとこの人たちに対応する職員や場所が確保されているかどうか、これらの点について最高裁の方に御質問します。

二本松最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 ただいま委員が御指摘になられた被害者配慮制度に関する周知策といたしましては、少年事件の手続の流れや、あるいは被害者配慮制度をわかりやすく説明しましたリーフレットを作成し、各家庭裁判所に備え置くとともに、警察署、検察庁、弁護士会その他の関係機関に備え置きを依頼しております。

 加えて、現在、全国の家庭裁判所におきましては、被害者が死亡した場合などの一定の重大事件や、それ以外の事件でありましても、記録等を検討しまして被害者への配慮が必要と判断した事件については、被害者等からの被害者配慮制度の申し出を待たずに、ただいま御説明申し上げましたリーフレットを被害者にお送りするなどの運用を行っております。

 なお、今回の法律案が成立いたしますと、ただいま御説明申し上げましたリーフレットの内容につきましても、必要な改定を行い、周知に努めたいと考えております。

 次に、被害者の記録の閲覧、謄写に関する御質問ですが、現在、被害者の方々に事件記録を閲覧していただく場合におきましては、記録管理の適正という観点も踏まえまして、通常、職員が立ち会う別室を用いたり、職員が在室している書記官室において閲覧していただくなどの方法がとられているものと承知しております。

 今後とも、被害者等が窓口を訪れて、被害者配慮制度について御質問があったような場合には丁寧に説明し、また記録の閲覧等につきましても、その心情に十分配慮して適切に対応していきたいと考えております。

 以上でございます。

細川委員 そうしますと、審判が終了いたしますと、そこで処分が決まるわけでございます。その後の処遇の経過、例えば少年院からの退院あるいは保護観察の経過、こういうことについて被害者あるいは遺族の人たちが知りたい、こういうのは当然だろうというふうに私も思います。現在、そうした情報が、被害者、遺族の要望に従って通知はしているということではありますけれども、必ずしも被害者あるいは遺族の方たちが満足しているとも思えないわけでございます。

 そこで、お伺いいたしますけれども、こうした情報の提供について、通知制度の現状などはどうなっているのか、これは保護局長ですか、教えてください。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 保護処分を受けた加害少年の処遇状況については、現在の運用では、被害者等からの通知希望申し出に基づいて、被害者等に対して通知を実施しております。

 具体的には、加害少年が、審判の結果、少年院送致処分になった場合は、少年院長が、収容されている少年院の名称、個人別教育目標などの少年院における教育状況、出院年月日等を通知し、地方更生保護委員会が仮退院審理に関する事項を通知しております。また、保護観察処分になった場合や、少年院から仮退院を許された場合には、保護観察所長が、保護観察を担当する保護観察所の名称、特別遵守事項の内容、保護観察官、保護司との接触状況、保護観察終了年月日等をそれぞれ通知しております。

 従来、保護処分を受けた加害少年の処遇状況については、事案に応じて対応しておりましたが、昨年の十二月一日からこの新たな制度が開始され、今申し上げたような情報を被害者等に対して通知しております。被害者等の要望はさまざまであると承知しておりますが、この制度により、被害者等の方々に対しては、相当程度充実した情報をお伝えできると考えております。

 今後とも、被害者等が円滑に通知制度の利用が行えるよう、制度の運営に努めてまいりたいと考えております。

細川委員 では次に、少年審判の運営についてちょっとお伺いをいたします。

 午前中の参考人の意見の中で、原参考人は、非常に裁判官の親身な進め方によって、みずからいろいろなことを話す気持ちになったというような経験を言われましたけれども、しかし、必ずしもそうでない場合もあるようでございます。

 これは、元家庭裁判所の裁判官で今は弁護士をされております井垣康弘さんという方が、産経新聞で書かれている、その記事を拝見しましたので、そのことからお聞きをしたいと思います。ちょっと読みます。

 「少年審判の運営の実情や問題点について、書いてみたい。 実は、裁判官は、遠慮してか他の裁判官の審判をのぞかない。私は、後輩に、一度見においでよ、「裁判官の研修」という扱いで便宜を図るから…とお勧めしていたが、誰も私の審判を見に来なかった。もっとも私も」「審判を見に行かなかったけど…。 しかし、そのため、自らの審理の進め方を批判的・客観的に見つめることができない。従って、反省や工夫をするきっかけもつかめない。いつまでも各自がてんでバラバラな進め方をしている。裁判官ごとにみんな相当違った審判をしているということ自体、お互いにあまり分かっていない。」まだ後が続いておりますけれども、こういうこと。

 これは、この井垣さんという方の経験からの話だと思いますけれども、この記事を見る限り、裁判官は独自で審判をやっておるので内容もばらばらじゃないか、こういうことなんですけれども、今私が読んだ内容について、最高裁判所の方はどういうふうに聞かれましたでしょうか。

二本松最高裁判所長官代理者 お答え申します。

 委員御指摘のとおり、それぞれの裁判官が少年審判のよりよいやり方を工夫していくということは重要なことでありまして、各裁判官はいろいろな形でこれに努めているものと承知しております。

 また、裁判所におきましては、少年審判を担当している裁判官を対象としまして、少年審判の実務をより一層向上させるための研究会を実施しております。その中では、審判運営のあり方について裁判官相互で議論をし、お互いの審判のやり方について検証し合う、そういうことも行っているところでございます。

 以上です。

細川委員 引き続き、こういうことも書かれているんです。

 「私は、ある少年院を訪問して、「いろんな審判の進め方について、少年たちから具体的な不満をたくさん聞かせてほしい」と頼んだら、座談会を設営してくれた。 うち一人の少年は、ひったくりを三十件もやっていて、少年院送りは覚悟していた。でも、一応試験観察を希望して、その条件(約束事)を必死に考えて、五つにまとめた。それを言わせてもらえるものと思っていた。 ところが、予定の四十分の審理時間のうち、裁判官はひったくり事件の確認に三十五分を使ってしまい、その後で、「何か言っておきたいことがありますか?」と振ってきた。 しかし残り五分ではとても全部話せるわけがない。「裁判官は僕の希望を聞いてくれる気持ちなどそもそも最初からなかったのだ!」と分かった。頭が真っ白になり、思わず、「特にありません」と言ってしまった。 ついで裁判官は、親に「何か言いことがありますか」と聞いた。親は「なぜ僕が非行に走ったのか」さっぱり分かっていなかった(調査官たちも十分に教えてくれていなかった)ので、「いえ…あの…別に…」とつぶやいた。 すると「それでは君を中等少年院に送致します」と宣告され審判は終わってしまった。」まだ後にも続いております。

 「その少年は、当然「頭に来た」。少年院に来てからも、事あるごとに、「ここを出たら、その足で家裁へ行き、その裁判官を一発殴ってやる」とこだわり、仲間から、「殴ってもその裁判官は反省しないよ。それなら、罪に問われる君が損するだけだから、絶対に止めなさい」と何十回も助言され続けたそうだ。」こういう文章が続いているんです。

 これは現職の裁判官じゃなくて退官をされた裁判官ですけれども、こういうことを新聞に発表されて記事になっているわけでございますから、私は、全然こういうことがないんじゃなくて、こういうことも十分あり得るんじゃないかというふうに思いますけれども、どうですか、こういう審判が行われているというその感想。

 本来ならば、少年にできる限り率直に話してもらって、そして処遇を考えるというのが家庭裁判所の審判でありますけれども、しかしこのように、少年が本当に言おうと思っていたこと、言いたいと思っていたことも全然言わせてくれない、聞いてくれなかったというようなことがこの記事に書かれている。それも元裁判官が言われている。こういうことについて、裁判所の方はどう思いますか。

二本松最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 先ほど委員が御指摘になられたケースにつきましては、具体的な事例として承知しているわけではございませんが、そもそも少年法の第二十二条第一項には、審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、自己の非行について内省を促すものとしなければならないと定めております。

 各裁判官としても、少年の内心に踏み込み、そして再非行防止のために少年自身に考えさせるために、そのためにさまざまな工夫をしております。その前提としては、少年に率直に語らせ、その問題点について裁判官が具体的に指摘するなどして内省を深めさせる必要があります。そういったことは各裁判官、非常に重要なことであると考えて、そのような審判運営が可能になるように、さまざまな働きかけをしているものと承知しております。

 以上でございます。

細川委員 大臣、今ちょっと僕が読み上げた、感想といいますか、何かありましたら。

鳩山国務大臣 家裁の少年審判というのは、やはり少年法の世界でもありますし、一般の刑事裁判とイコールではないんだなと正直思います。家裁の場合は、非常に職権主義的な色彩があって、和やかにやらなければならぬということにもなっているようでございますし、非常に技術的にも難しい部分があるんだろうなということを、先生のお話を聞いて、やはり優秀な裁判官でなければいけないな、法曹の質を落としてはならぬなとつくづく思いました。

細川委員 ありがとうございました。

 裁判所でも、裁判官の独立というのがありますから、その独立を保障するというその中でこういう問題が指摘されているということならば、ぜひ裁判所の方では検討していただきたいなというふうに思います。

 次に、改正案の第二十二条の四の二項の、被害者等への付き添いのことについてお伺いをいたします。

 傍聴する被害者等に付添人を認める規定がございます。これは、被害者、遺族などの不安とか、あるいは緊張を和らげる点で意味のある規定だと私も思いますけれども、逆に、運用によってはトラブルの原因になるのではなかろうかというふうにも思っております。

 そこで、この付添人というのは一体どういう人を想定しているのか。私は、弁護士あるいは支援団体のカウンセラーというのを思い浮かべますけれども、他方、被害者や遺族の友達、友人、上司あるいは親族なども考えられると思いますが、一体どういう人を想定されているのか。

 その場合、付添人は「審判を妨げ、又はこれに不当な影響を与えるおそれがないと認める者」、この判断について、それはどういうような基準で判断が行われるのか、これについてもお伺いをいたしたいと思います。

二本松最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、法二十二条の四の第二項で、被害者等の不安または緊張を緩和するのに適当な者とされておりますが、これに当たるか否かは、最終的には裁判体の判断にゆだねられるべき事項であります。

 ただ、解釈上は、傍聴する者のそばにいて安心感を与え、不安や緊張を緩和することが期待できる者ということになりますので、例えば傍聴者の近親者や、あるいは事件直後から相談に乗って信頼を得ている被害者支援団体の支援員の方などが想定されるかと思います。

 なお、これも個別の事件における裁判体の判断となりますが、友人や上司でありましても、不安や緊張を緩和することが期待でき、審判を妨げ、またはこれに不当な影響を与えるおそれがないと認められる場合であれば、これに当たり得ると考えております。

 なお、どのように判断をするのかというお尋ねですが、家庭裁判所では、記録に当たるほか、傍聴者と付き添いの候補者との関係あるいは候補者の職業等の情報を申し出人などから得た上で、その者が審判を妨げ、またはこれに不当な影響を与えるおそれがないと認められるかどうかを判断することになると思われます。

 以上でございます。

細川委員 付添人については、専門家である弁護士がこれに当たるのが適当というふうに私は考えております。

 そこで、さきに今国会で犯罪被害者等に国選弁護士を選任する制度、この法律が成立をいたしまして、刑事事件での被害者参加について国選弁護士を選任することができることになりました。

 この審判の傍聴への付添人についても、国の選任する付添人があれば犯罪被害者あるいは遺族の人たちにもプラスになるのではないか、あるいは逆に、少年にとっても安心感が増すのではないかというようなことも考えられます。これは、ぜひ検討すべきことだと考えますけれども、どのようにお考えでしょうか。大臣でも局長でも、大臣が答えていただけるなら、大臣によろしくお願いします。

大野政府参考人 今委員が御指摘になりましたのは、いわば犯罪被害者等を支援するための公的弁護制度の導入というような御趣旨かと思います。

 この問題につきましては、内閣府に経済的支援に関する検討会が設置されました。ここで取りまとめ案が作成されまして、平成十九年十一月六日に、犯罪被害者等施策推進会議におきまして、この取りまとめに基づく施策の実施が決定されたわけであります。

 関係の部分でありますけれども、現在、総合法律支援法に基づきまして、日弁連が日本司法支援センターに委託して実施している犯罪被害者等法律援助事業がございます。これが適切に運用され、犯罪被害者等の支援のためにさらに充実が図られるよう努めるべきこととされているわけであります。この犯罪被害者等法律援助事業でありますけれども、被害者やその遺族が刑事裁判等に関する活動を希望する際に、その弁護士費用を援助するというものであります。

 実際に今回少年審判の傍聴が認められるということになりますと、その関係で援助されるかどうかということは日弁連の委託の趣旨によることになるわけでありますけれども、現在も、この犯罪被害者等法律援助事業の対象となる活動といたしまして刑事事件における法廷傍聴の同行もございます。また、少年審判における意見聴取の同行等も含まれておりますので、少年審判傍聴の付き添いもこの援助の対象になり得るのではないかというように考えているところでございます。

細川委員 それでは、大臣、お考えがあれば最後に聞いて、私の質問を終わりたいと思います。

鳩山国務大臣 大変粗っぽい言い方になるかもしれませんが、被害者の方々の人格とか人権とか尊厳、これをもっと重く見ようという少年法の改正をお願いしている。その趣旨から考えれば、被害者の方が傍聴に行く、それはさまざまな不安があるでしょう、家庭裁判所という審判廷なんですから。そういう意味では、詳しくは今刑事局長が御答弁いたしましたけれども、細川先生御提案のような国選付き添い、被害者への付き添いというのは、大人の方の刑事裁判では被害者弁護というのがあるわけですから、十分考えなければならない仕組みだと思います。

細川委員 ありがとうございました。これで私の質問を終わります。

下村委員長 次に、加藤公一君。

加藤(公)委員 民主党の加藤公一でございます。

 きょうは、先日本会議で本法案について質問させていただいたときの大臣の答弁に対して率直に、まだ疑問の残っている点がございますので、そこからお話を伺ってまいりたいと思います。限られた時間でございますのですべて網羅できるかどうかわかりませんが、時間の範囲で疑問点を少しでも払拭したいと思っております。また、多少話があっちのテーマ、こっちのテーマへと行くかもわかりませんけれども、法案の審議も終盤でございますので、ひとつお許しをいただきたいと思います。

 まず、そもそも今回の法改正の理由についてお聞かせをいただきたいと思っております。

 本会議の大臣の答弁の中に、少年審判の傍聴を一部認めることにする理由として、「被害者等から、審判におけるやりとりをみずからその場で直接見聞きして、その具体的な状況について十分な情報を得たい、そういう強い要望が示されている」こういうお答えがございました。

 これについては、何か統計的に調べて、そういう声がふえてきたということでお話しになられたのか、それとも、そうではなくて、何かその声が強くなってきているという別の御認識に至った理由があるのか、そこから御説明をいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 まず、加藤委員には、本会議において大変意義ある御質問をいただいて、その際、十分な時間がなくて、答弁も十分でなかったかもしれません。

 ただ、加藤先生と私のやりとりの中からこの改正案の本質がえぐり出されていったと思いますし、そのことが、今修正案の御提案がありましたが、そちらの方面にも生かされているものと思いまして、心から加藤先生に敬意を表したいと思っております。

 この傍聴の件は、何といっても被害者の尊厳を守っていこうという、今まで被害者の立場が余りに軽視されてきた法律であり行政であったということ、その反省に立って犯罪被害者等の計画もつくって政府全体で頑張っているところでございまして、例えば記録の謄写、閲覧というような道を開いた、あるいは審判結果を通知するというような仕組みもつくった、しかし、やはり審判廷に行って直接加害少年の様子等も見たかった、やりとりも聞きたかったという希望が相当多く寄せられていることは事実だと思いますので、その両面で、このような法改正、傍聴という制度を提案させていただいている次第でございます。

加藤(公)委員 ちょっと突っ込んで伺いますが、そういう声がふえてきたということが事実だとすれば、法律は変わっていなくてそういう声が強まってきたということは、何がしかの原因があったというふうに考えるべきだろうと思いますが、その点、大臣はどう認識をしていらっしゃいますでしょうか。

鳩山国務大臣 一つは、社会情勢の変化というのがその間に大きくあったかどうかというのは私も確かには把握しておりませんが、ただ、犯罪被害者の方々が重んじられていなかった、もっと被害者や遺族の尊厳というのを守るべきだということで法律もつくりましたね、そうした中で、被害者の方々の中でも機運が盛り上がるということはあったと思うんですね。

 例えば、法制審議会でそうした方々から御意見を聴取したときに、ヒアリングでございますが、少年がどんな態度で何を言うのか、裁判官や弁護士がどんな質問をしてどう答えるのか、被害者遺族、自分たちの思いをどこまで理解しているのか、そういうところが知りたいんですという率直な表現、あるいは、可能だったら傍聴に行きたかったんです、当時弁護士の先生から裁判所での流れを教えていただいておりましたので、じかに少年の発言や態度を見たかったわけです、死亡事故の場合は目撃者もなければ片一方の証言だけが正当化されがちですから、その証言が慎重なものか死亡した被害者の家族としても聞けるのがいいと思いましたと。

 こういうような、被害者の方々をもっと大切にしようという中から、被害者の方々の中でもそういう意見が多くなり、一つの盛り上がりを見せてきていると思いました。

加藤(公)委員 私も別に、科学的に何かその原因を分析しているというわけではもちろんないのですけれども、恐らくその被害者あるいは最悪のケース御遺族になられた皆さん、多分どなたもその皆さんをサポートしてこなかったという事実があるんだろうと思うんですね。もちろん、いろいろ事実を知りたいとかこの目で確かめたいということは当然あるんだろうと思いますが、それ以上にやはりケアが不十分だったがゆえに、より一層そんな声が強くなってきたのかなという気はしております、これはあくまでも感想でありますが。それに対応するための法改正ということと、それから、本法とは別にまた被害者支援というのもやっていかなきゃいけないということは、最初に申し上げておきたいと思います。

 では次に、傍聴を認める要件について伺いたいと思います。

 これも本会議で御質問をいたしましたところ、大臣から、審判に支障が生じない範囲で認めるんだ、こういう御答弁がございました。この審判に支障が生じない範囲という要件は、法案のどこに書いてあるのか、どこからどう読み取るのか、お答えいただけますでしょうか。

鳩山国務大臣 法律の条文そのものでお答えすることはできない。立法趣旨というか条文の趣旨ということでお答えをすれば、やはり少年の健全育成という少年法の大きな目標がある、したがって、少年審判において、少年等のプライバシーにかかわる事項を含め広く情報を収集して適正な処遇選択を図るというのが大きな目標なんだろう。

 したがって、家庭裁判所の少年審判というのは、たびたび申し上げておりますように、非常に職権主義的な、家裁の裁判官の思いによって比較的自由にいろいろな方法をとって審判を行っていくという仕組みになっておりまして、その中で、少年の心情の安定等、あるいは教育的にどういう効果があるかという点もきめ細かく配慮をして傍聴の許否を決める。つまり、審判への支障が生じないというときに傍聴を認める。むしろ、傍聴を認めることによって適正な処遇選択ができる、あるいは少年の反省を深めることができる、そういう感覚で傍聴の許否を決めていくということだと思います。

 ですが、たびたび申し上げておりますように、私は、この法律の改正の趣旨は、被害者の皆さんにできる限り温かく、被害者の尊厳、遺族の尊厳ということが中心に置かれておりますので、でき得る限り傍聴が広く認められるように持っていくべきであると考えております。

加藤(公)委員 本会議の御答弁を伺っても今聞いても、いま一つ私もちょっとよくわからないところがあるんです。

 というのは、何か法案の中に明文化されて書いてあるわけではないものですから、審判への支障がない場合に限って傍聴を認めるから、傍聴を認めた場合でも審判に対する支障はない、あるいは理念は変わらないと、何かトートロジーをおっしゃっているように聞こえて、どうもそこがよくわからなかったわけですね。いまだにちょっと釈然としないところはあるんです。

 その意味から、今回修正案が提出されておりますけれども、やはりこの基準というものを明確にするということに意味があるんではなかろうかと私は思っているところであります。

 その思いを前提にしてもう一つ伺いますが、審判への支障がない場合に限って傍聴を認めるんだ、こういう御説明ですけれども、それは、どういう制度的担保がこの法案の中にあるんでしょうか。

鳩山国務大臣 制度的担保というか、法律には少年の年齢とかそういうものを配慮しろと書いてあると思いますし、しつこいようですが、家裁の審判廷における裁判官というのか審判官というのか、私は法律用語はわかりませんが、非常に職権主義的な運営をしていく中で、きめ細かな配慮を家裁の裁判官がするということで、それはある程度は任せなければいけない点だろうと思います。

加藤(公)委員 では、私の理解を深めるために、もう何問かこのテーマでおつき合いをいただきたいと思います。

 例えば、傍聴を認める、あるいは認めないという判断が下されたときに、当事者の方が、いや、どうもちょっとその判断は納得いかないなというときに、法律用語として正しいかどうかわかりません、不服申し立てみたいな仕組みが今回はとられるのか、それとも全くそういうのはないのか、いずれですか。

鳩山国務大臣 これは先ほどのやりとりでも、前の質問でもあったかと思いますが、傍聴の可否について、傍聴を認めたら加害少年あるいは付添人側が異議を申し立てる、あるいは不服を申し立てる、あるいは認めないということを家裁で決めたならば被害者や被害者の遺族等がそれはおかしいと不服を申し立てるということを制度化しますと、やはり少年保護の観点から、少年審判手続というのは、とりわけ早期に審判を行って決定を出すという迅速性が要求されている。余り例を出してはどうかと思いますが、裁判等に口を挟むわけじゃありませんが、ロス疑惑の事件等のその後の成り行きを見ましても、いろいろなやりとりがあるじゃないですか。そのことによって、物すごく時間がかかるじゃないですか。そういうことを考えると、少年審判というのはそういうものではなくて、迅速性が要求されるものですから、職権主義的な家裁の裁判官の決めたことに従っていただく、そういう考え方に基づいて、不服申し立てのようなものは想定いたしておりません。

    〔委員長退席、早川委員長代理着席〕

加藤(公)委員 では、別の視点でちょっとお伺いをいたします。

 これも大臣の本会議での御答弁でありますが、「裁判所による適正な処遇選択や少年の内省の深化が妨げられることのないよう、裁判所において、傍聴を認めるか否かについて、少年の年齢や心身の状態等の事情を考慮してきめ細かく判断をする」こうおっしゃっています。

 そこで、適正な処遇選択あるいは少年の内省深化が妨げられるような審判の傍聴が認められないケース、そういうリスクがあるから審判の傍聴が認められませんよというケース、典型的な事例というのはどんなことが想定されるんでしょうか。

鳩山国務大臣 今加藤先生が読み上げられたんですけれども、結局は、そういうやり方できめ細かく配慮する、これを家裁に要請するのがこの法律の内容だろうと思っております。

 ですから、先ほどから申し上げるように、傍聴を希望された場合には、できる限り広く認められるべきである。細川先生とのやりとりの中の原則、例外ということは今はもう申し上げませんけれども、私は、できる限り広く希望が認められるべきだと思っております。

 例えば、少年の処分を決める少年審判で、その少年が性的な虐待を受けていた事実等があって、そのことが犯罪や非行につながったとすると、これは少年のそれこそ知られたくないプライバシーに深く関わることでございますので、そういうやりとりはやはり外に漏れては困るというか、傍聴してもらうわけにいかないということになるのかと思います。

 あるいは、いじめを受けていた少年が、いじめをしていた被害者を傷つけた、いじめに耐え切れなくなって仕返しをしたというようなケースですと、これは何か大人の世界の組織犯罪にもそういうことが多くあるかと思いますが、やはり複雑な人間関係があって、その被害者が傍聴に来れば少年は、自分をいじめていた当事者ですから、特別な思いを抱いて、言いたいことが言えないとか、そういうようなことを具体的に事件ごとに各裁判体が細かく判断するということだろうと思います。

加藤(公)委員 では、次のテーマといいますか課題でありますが、本会議の答弁の中に、触法少年であることを理由に傍聴を認めないという扱いはしないというお答えがありました。いわゆる年齢の部分についての議論であります。

 これは、先ほど来もうほかの委員の質問でも大分出ておりますし、水野筆頭の御質問の中では事件の件数まで含めて御議論がありましたから、また修正案も出ていますので、改めて確認ということになりますけれども、確かに一律に年齢でというのが決めにくいという気持ちまではわかるんですが、さはさりながら、十二歳未満の年少の少年については一律傍聴を認めないということは当然あってしかるべきだろう、修正案の中にもそういう項目がございます。

 これについて、午前中の参考人からも一つの考え方ではないかという御意見もあったかと思いますが、改めて大臣のお考えを伺いたいと思います。

鳩山国務大臣 十四歳未満の人は罪に問われない、罪を犯したというふうにならないわけでありますから、触法少年というのは、年齢的に区切られているわけですが、やはり特別な立場に立っているんだろうと思っています。また、主に小学生ということだと思いますが、十二歳という年齢についても、そこに考慮すべきラインが入るのかと思います。

 ですから、十四歳以下の触法少年には特別にある程度深い配慮が必要であるというふうに考えておりましたし、十二歳以下はまたさらに一層配慮が必要であると考えておりました。

 ただ、本会議や前回の委員会の段階では、被害者の立場から考えれば、例えばかけがえのない家族が殺されてしまったような場合に、その加害者が何歳であるかということは基本的には関係ない、関係ないというか、そのことによって被害者の感情が大きく変わるものではない、したがって、少年審判におけるやりとりをその場で直接見聞きしたい、具体的な状況について十分な情報を得たい、そういう心情には何の変わりもないということであのように答弁を続けたわけでございますが、修正案がまとまっていく中で、十二歳未満の場合は傍聴を認めるのはやめようではないか、あるいは、十四歳以下の触法少年ですから十二歳、十三歳ということになりましょうか、その場合はやはり特別な配慮をしようという修正案に、私は異議はございません。

加藤(公)委員 では、次でありますが、これも本会議のときにもお尋ねをしたのでありますが、少年の心身の状態を考慮するというところであります。

 その中で、私からも、発達段階におけるさまざまな障害の有無についても十分に配慮するべきではないかという御質問をさせていただいたところ、大臣からも、丁寧な対応が必要であると考える、こういう御答弁をいただいております。

 これは大変ありがたいお話なんですが、一つ気になっておりますのは、もちろん私もそうですし、失礼ながら恐らく大臣もそうではなかろうかと思いますが、その加害少年がどんな障害を持っているかということは、我々素人だとなかなかわかりにくいことが多うございます。障害といっても、もちろんさまざまですから、すぐに素人判断で、もしかしたらそうかもしれないなと思えることもケースとしてはあるかもしれませんが、逆に、専門家の方が判断をしなければ把握できない、理解できないということも多々あろうかと思います。

 私、実はその点をちょっと危惧しておりまして、全体として、大臣がおっしゃるとおり、被害者の皆さんの心情にできるだけ配慮したいという気持ちは私もそのとおりなんですけれども、あくまでもバランスの議論ですから、一方で、加害少年が健全な更生を果たして健全な育成をされていくということもまた大事な話であります。そのときに、仮にその加害少年が何がしかの障害を持っていた場合には、やはり特段の配慮をするべきだろうという気持ちがあります。だから、それを日本語で丁寧な対応というふうに大臣からもお答えをいただいたんだと思うんです。

 そのときに、家裁で裁判官の方というか審判官の方が判断をするだけで果たしてすべてがわかるか、十分な対応ができるかというとやや不安がございまして、私は、やはりそこには専門家の力、プロの力をかりるというケースがあってもいいのではなかろうかというふうに思っているんですね。つまり、心理専門職とか医師の方にできるだけ力をかりたらどうだろうかというふうに考えているんです。

 これは、障害をお持ちの皆さんに対する配慮の一つのアイデアなんですけれども、率直なところ大臣はどうお考えになるか、感想で結構です、お聞かせいただけますでしょうか。

鳩山国務大臣 少年鑑別所にいる間は、いろいろなそういう心の調査、精神的なものの調査というのがなされるんだろうと思いますね。ある意味でいうと、今裁判になっております僕パパ事件というのはちょっと悲しい部分があります。ああいうことが事件になるのは大変悲しいですが、実際、発達段階でいろいろな障害がある。

 こういうことは余り大きな声で言ってはいけないのかもしれませんが、障害があるから、発達段階での障害があるがゆえに犯罪を犯してしまうというケースは決して少なくないわけですから、そういう犯罪や非行を犯した少年にはそれなりの配慮がなければいけないということなんだろうと思います。実際、そのことと傍聴を認めるか認めないかということで、いつも申し上げているように、家庭裁判所の裁判官のきめ細かな配慮でうまくやるから大丈夫です、全部がそう言えるかというと、やはり発達段階におけるさまざまな障害の場合は難しい部分もあるかもしれません。

 家庭裁判所調査官の調査結果というものが出るようでして、その少年の状態を相当深く把握できるとは考えられますけれども、実際、障害の有無を含めて、少年の心身の状況、とりわけ障害があるかないかということについては、今先生がおっしゃったようなことで工夫がこれから必要ではないかなと率直に思います。

加藤(公)委員 付添人の方に対する意見聴取の件について伺いたいと思います。

 先日伺ったところですと、そもそも少年審判では、形にとらわれないで柔軟に審判運営を行うから、付添人の意見は必ずしも一〇〇%聞くかどうかわからない、こんな話だったかと思いますが、逆に考えると、傍聴の可否を判断する前の段階で付添人の意見を聞くことのデメリットというのは何かあるんでしょうか。

鳩山国務大臣 これも修正案が出て、私は、その修正協議のありようは知りませんが、出てきた修正案に決して異議はありません。

 ただ、修正協議が始まる前の段階でございますと、必ず付添人の意見を聞くという必要はないのではないか。これも、また同じことを何度も申し上げますけれども、職権主義的に行う家裁の裁判官がきめ細かく配慮するのでその点は信用してほしいということを私は言い続けてきたわけでございまして、付添人の意見を聞いて速やかに事柄を決定すればそれでいいと思っております。考えが変わったというか、あえて聞かなくてもいいだろう、こういうふうな形で法律案を出しましたけれども、付添人に毎回毎回お尋ねするのも悪くないな、こういうことです。

加藤(公)委員 大分修正案に対しても御理解と御納得をいただけているようで、安心をしております。

 では、最高裁に対して、設備面といいますか、施設面についてちょっと伺いたいと思います。

 私も、東京家裁だけではありますけれども、審判廷を拝見してまいりまして、よくこの委員会の議論でも出てくることですが、大変狭いなというのがあります。そこで仮に傍聴ということになると、本当に大丈夫だろうかという思いをいたしたわけであります。

 そもそも今の審判廷というのは、いずれかの段階で、どこかで傍聴ということがあり得るという前提で設計をされたものなのか、全くそうではないのか、いかがでございますでしょうか。

小池最高裁判所長官代理者 現在の審判廷は、少年審判が傍聴されるということを前提とした設計は行われておりません。

加藤(公)委員 法律がそうだったわけですから、当然なんだろうと思うんです。

 そうしますと、仮に今回この法律が成立をしたということになりますと、今まで使っていた審判廷そのままで設備としては何の問題もない、全国の家裁すべて、私は全部を拝見したわけじゃありませんが、何の問題もないというふうに考えているのか、それとも何かちょっと支障が出る可能性があるなとお考えなのか、どんな判断でしょうか。

二本松最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 これも、これまでにも述べさせていただきましたとおり、個別の裁判体の判断する問題ではありますが、現在の審判廷におきましても、傍聴が相当とされた事件について、例えば広目の審判廷を使用したり、座席配置を工夫するなどの方法により少年と被害者等の間に一定の距離を保ったり、あるいは少年と被害者等の間に机を置くなどすることも考えられ、こういったことで適正な審判運営をすることは可能であると考えております。

 以上でございます。

加藤(公)委員 これまでの議論にもありましたけれども、設備がないからこの法律を変えちゃだめよという理屈はおかしなことだと思いますから、別にそんなことを言うつもりはないんですが、裁判員制度のときも、法律が変わって裁判員制度が始まります、今度はそれにあわせて法廷を改修しましょうと。確かにコストは発生しますが、その順番ですね。それで準備を整えてきた。

 今回の件も、仮にこの法律が成立したとすれば、それにふさわしい設備を整えていくということは必要なんじゃなかろうかと思います。確かに、今あるものの中でいえば、広目のところを使いましょう、机をどうしましょう、席をどうしましょうという話なのかもしれませんが、本当にそれだけでいいのかというと、私はちょっと疑問を感じざるを得ないんですね。

 仮にこの法案が成立したときに、何かこの先、計画的に改修を進めるというような予定があるのか、あるいはそんな意思があるのかどうか、この点を伺いたいと思います。

小池最高裁判所長官代理者 今家庭局長から御説明申し上げましたとおり、当面、さまざまな工夫で円滑な審判運営は可能であると考えておりますので、審判廷を一斉一律に改修するということまでは予定してございません。

 ただ、被害者傍聴の制度が導入されますと、いわば審判の考え方、あり方というところが変わってくるわけでございまして、今までよりも審判廷の面積を広くした方が好ましいということは言うまでもございません。

 そういうことでございますので、現在、裁判所庁舎の建てかえ、あるいは大規模な庁舎改修を行ったりしてございますが、そういった折には、現状よりも広目の、それにふさわしい審判廷を整備してまいりたい、かように考えてございます。

鳩山国務大臣 加藤先生の本会議の御質問のときに、私は、役所のペーパーでなくてそのことを御答弁申し上げた記憶がございます。

 先生おっしゃるとおり、審判廷が狭いから傍聴制度はできない、あるいは法廷が小さいから裁判員制度は無理だというのは全く論理が逆で、裁判員制度をやるならばそれにふさわしい法廷をつくっていかなくちゃいけないし、傍聴を認めるのだったら、それにふさわしい審判廷をつくらなきゃならないと思っているんです。

 私も両方とも視察をいたしましたが、裁判員の裁判が予定されている法廷も、もし傍聴者が満員になりますと、閉所恐怖症でなくても、相当蒸れるような感じで、圧迫感がある。そのことで六人の裁判員の皆様方により御負担をおかけすることがあってはいけない、そう思うわけでございます。

 この傍聴の件も全く同じで、狭いがゆえに、いすを工夫する、バリアをつくる、いろいろとおっしゃるけれども、そのことで傍聴が審判に悪影響を与えるようなことがあってはならない、こう思うわけです。

 そこで、我々は国会議員でございまして、予算を審議する立場でもあるわけですから、例えば少年審判の傍聴対象事件が年間三百八十とか四百とかそういうオーダーであれば、与野党協力して裁判所、最高裁を応援しようではないか、こう思うわけでございます。

加藤(公)委員 予算のかかる話でありますから、簡単に答えられないのはそのとおりでありましょう。

 心配しているのは、例えば傍聴される方がお一人だ、せいぜい二人だという話であれば何とかなるケースもあるかもしれませんが、先ほど来の議論の中で、被害者の方、御遺族の方が多いというケースは当然あり得るわけで、仮に傍聴を認めるということを決めたときに、設備によって何か制約を受ける、制限を受ける、支障を来すというのはやはり望ましくないと思いますので、これは真摯に御検討いただきたいというふうに思います。

 では次に、モニター傍聴の件について伺いたいと思います。

 ちょっと時間の限りがありますので多少はしょりますが、先日、これも大臣の御答弁なんですが、モニターという機械を使うと、それが失敗して広がってしまうということも恐れなければならない、こういうお答えがありました。

 いろいろ読み返してみたんですが、それが失敗して広がってしまうという意味がよくわからなかったんですよ。何を失敗すると何がどう広がってしまうのか、教えていただけますでしょうか。

    〔早川委員長代理退席、委員長着席〕

鳩山国務大臣 私は、モニターによる傍聴というのも一つの有力な考え方であって、今後の検討課題であるということは率直に認めようと思っております。

 ただ、私は余り機械に強くありませんが、モニターで映像が映る、それがいろいろな回線の都合で、あるいはコピーされるというようなことで、ちょっとしたいたずらでほかのところでも見られてしまうとか、あるいは後日見られてしまうというようなことになったら、それは、それこそインターネットに載った情報が永久に消せないのと同じように、悪いことが起きるのではないか、そういう危惧の念を申し上げたところでございます。

加藤(公)委員 恐らくそれは技術的に解決できる話だろうと思いますので、御検討いただくということは既に御答弁いただいていますが、それも含めて真剣に御検討いただきたいと思います。

 そのモニター傍聴の議論なんですが、法制審の場でもその可否について大分意見交換があったということは聞いているんですが、果たしてその法制審の中ではどんな結論になったんでしょうか。そこがどうも私はよくわからなくて、つまり、圧倒的に反対派が多かったとか、賛成派が多かったとか、あるいはその数は拮抗していたとか、その法制審でのモニター傍聴に関する議論というのは一体どんな結論だったのか、教えていただけますか。

鳩山国務大臣 結論としては、モニター傍聴は今回は想定しないということなんですが、実は、モニターによる傍聴についての私が見ているペーパーを何度読み返しても、私にもよくわからないところがあるんです。ですから、刑事局長からちょっと説明させてよろしいでしょうか。私も、プラスとマイナスと両方あるだろうということはわかるんですが、余り説得力のある説明を受けておりませんので、加藤先生は私と違って強い説得力が必要ですから、あなた、ちょっと答弁してください。

大野政府参考人 法制審議会の部会における意見の状況でありますけれども、結論は、今大臣が答弁申し上げましたように、モニター傍聴について、多くの委員が賛同するということでこれが部会の結論にはならなかったわけであります。つまり、決をとったわけではありませんけれども、部会の議論の大勢として、モニター傍聴を入れるという方向にはならなかったわけであります。

 ただ、積極意見と消極意見がそれぞれその過程で述べられております。

 御紹介申し上げますと、積極意見、つまりモニター傍聴を認めるべきであるという意見といたしましては、一つは少年に対する関係でありますけれども、被害者が現に在廷することで少年に対する萎縮的な作用が予想されても、別室でモニター等を使うのであればこれを回避することが可能なのではないかという意見がございました。それから、被害者にとっての観点でありますけれども、被害者によりましては、少年の手続はきちんと見たいけれども近くに座るのは心理的な負担が大きい、そういう場合に配慮するためにはモニターによる傍聴が有用であるというような意見があったわけであります。これらが積極意見であります。

 しかし、一方で、消極意見がかなりあったわけでありまして、むしろこちらの方が強かったということでございます。消極意見は、やはり審判の経過が見られているという少年に対する影響でありますけれども、直接審判廷の場で見られているのか、モニターを通じて間接的に見られているのかを問わず、基本的には変わらないんだということでありました。また、被害者が審判廷にいる方が、裁判官にとっても被害者の反応などを直接目にすることができるので審判がやりやすい、そういうような意見も出されたわけであります。

 そうした意見の中で、この部会では、先ほど申し上げましたように、モニター傍聴をやろうということにはならなかったわけでございます。

 以上が、部会の議論の経緯でございます。(発言する者あり)

加藤(公)委員 大臣も、よくわからなかったとおっしゃいました。私もよくわからなかったし、今、お名前を出して恐縮ですが、中井先生もよくわからないんだよという……(発言する者あり)わからないんですね。

 何でわからないかというと、私も法制審の少年法部会の議事録とやらは読ませていただいているんですが、実はこれがわからないんですよ。ここに原因があります。わからないことの原因は。要するに、発言は書いてあるんですけれども、だれの発言だかが書いていないんですね。きょうの本筋の議論ではないんですけれども、法制審の少年法部会議事録、いつ開きました、どういう発言がありましたはいいんだけれども、だれが発言しているかわからないものだから、例えば一番目の発言と三番目の発言が別人なのか同じ人かもわからないし、いざいろいろな意見は出ているけれども、実は、賛成、反対いずれかの意見はもしかしたら一人がずっとしゃべっているだけかもしれないし、そういう事情が全くわからないわけです。

 私の価値観からすると、委員の方はもう既にお名前はわかっているわけですね。どなたがその会議に出席をしていらっしゃるかということは、委員でいらっしゃるかということは公開をされているわけですから、どなたが発言をされたかということぐらい、この議事録に合わせて公開をしてもそれは間違いじゃないだろう。

 この法制審での議論が、名前が公開されたからといって何か問題があるというふうには私には思えないんですが、大臣、どう思われますでしょうか。

鳩山国務大臣 この法制審あるいはほかの政府の審議会も同じかと思いますが、顕名化するかどうか、つまり名前を出してこの発言はだれかというのを出すか出さないかというのは、どうも一律の規則ではなくて、その審議会の総会で決めるということのようでございます。

 法制審というのは、私はよくわかりませんが、従来、相当おどろおどろしいような内容のことも審議してきたのかもしれません、歴史的には。そういう中で、何か、法制審は顕名化しないという歴史と伝統があったわけです。

 ですが、今、例の成年年齢の問題、これを引き下げるか、あるいは引き下げないか、白紙で諮問をいたしましたが、これは法制審にお願いをして、顕名化していただくことになりました。徐々にこうした問題も顕名化すべきだと私は思います。

加藤(公)委員 せっかく成年年齢の件を顕名化していただくような御指示があったのであれば、ほかの法制審の議論も、ぜひ大臣の御決断でお名前を明らかにした議事録を公表していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょう。

鳩山国務大臣 これは、私の権限でできるかどうかという問題があります。それはあくまでも法制審の総会の意思ではないかと思いますが、そういう方向になっていくように私なりに努力はしたいと思っております。

加藤(公)委員 ぜひお願いしたいと思います。別に、名前があったから、それでその人に対してどうしようこうしようなんという話じゃなくて、今の一瞬の議論でもおわかりいただけたとおり、だれが何を言っているかもわからないものですから、研究のしようがないわけですね。極端な話、A委員、B委員すら書いていないわけですから、これではちょっと議論の前提として、この議事録をもとに、法制審でこんな意見がありました、こんな議論がありました、だからこう提案しましたと言われても、さっぱり我々にはわからない、その場にいた人しかわからないということになってしまいますので、今の大臣の御発言には大いに期待しております。確かに、大臣の権限でどこまでできるかという問題があるのはよくわかりますが、ぜひ顕名化の方向でお願いをしておきたいと思います。

 では、今後の被害者保護政策について今度は伺いたいと思います。

 被害者の方々のための施策のさらなる充実に向けて努力をしていきたいということはこの前大臣に本会議でも御答弁をいただきましたが、少し各論で、個別具体的に、こういうケースについてどうお考えですかということを三点お聞かせいただきたいと思っております。

 まとめて御質問いたしますが、一つは、加害少年の処分決定後あるいは少年院の退院後、被害者の皆さんとの面会、謝罪も含めてですが、面会という場面についてどうお考えになるか。あるいは、謝罪、和解のプロセスなどを促進するための施策についてどうお考えになるか。そしてもう一つは、犯罪被害者の皆さんに対して、経済的な支援はもちろんなんですが、この前も申し上げましたけれども、心理専門職とかあるいは医師という専門家の方による精神面でのサポート体制の整備というのはどうか。この三点について伺いたいと思います。

鳩山国務大臣 まず、保護処分が決定されまして、あるいは少年院の中でどのように過ごしているかということもあるかと思いますが、あるいは仮退院をした後の加害少年の更生の状況等とか、こうしたことを被害者にお知らせするということは大変重要なことだと思っております。

 審判の結果、少年院送致になった場合には、少年院長が個人別教育目標など、少年院における教育状況等を通知するという制度が昨年から行われているようでございます。また、保護観察処分になった場合や少年院から仮退院を許された場合、これは外へ出てきている場合ですが、保護観察所長が保護観察の処遇状況等を被害者に通知する、これも昨年から始まっているようでございます。

 そういうことで、少年院においていわば被害者の視点を取り入れた教育というものを実施しようということで、加害少年の反省の深まりぐあい等を見きわめた上で被害者等に手紙を書かせるとか、あるいは面談により謝罪するというような機会を設けるようにしております。

 あるいは、保護観察所においては、被害者等から被害に関する心情等を聴取して、つまり被害者の心情等を保護観察所が聞いて、これを少年院仮退院者を含めた保護観察対象者に伝える、これにより、被害者等の視点を取り入れた指導を加害者に対して行うということをいたしております。

 それから、今のも一部そうだと思いますけれども、ヨーロッパでしょうか、いわゆる修復的司法というのがかなり盛んになってきているようでございまして、加害少年らに被害の実情とか被害者の感情を直接伝える、あるいは償い等の方法を考えさせるということは大変重要なことだと思いまして、これを実施するように努力してまいります。

 同じことになってしまいますが、保護観察所でも、先ほど申し上げましたように、被害者等から心情等を聴取して、それを加害少年に、あるいは保護観察対象者に伝達をして、被害者はこういうふうになっているし、こう思っているということを教えることによって指導するということで、修復的司法に一歩、二歩近づけていくように考えております。

 最後におっしゃった被害者のサポートの問題なんですが、政府にもそれ専門の官邸でやる会議がございまして、官房長官が中心だったかと思いますが、相当幅広い事柄を検討しておりまして、当然、いわゆる厚生労働省関係と思われるような心理専門職とか医師による被害者のサポートということは、これからどんどん進めていかなければならないと思っております。法テラスにも、相談をすれば、それなりの専門機関や団体を紹介するということを始めるようにお願いをしているところでございます。そんなところでございましょうか。

加藤(公)委員 午前中の参考人の方のお話の中にも、被害に遭った後ほっておかれたということがやはりあったんですね。犯罪被害者の方のサポート、特に経済的あるいは精神面でのサポートは非常に大事だと思いますので、ここの点はぜひお願いをしておきたいと思います。

 では、最後に、修正案の提出者に二つまとめて御質問をいたします。

 一つは、修正案の中に、加害少年の明示の同意があれば付添人を付さなくてもよいという旨の規定が含まれておりますけれども、その趣旨というのは一体どういうことなのかというのが一点。もう一点は、審判の状況を家庭裁判所が被害者等に説明をするという規定がございますけれども、これは個々の裁判体のことを指しているのか、それとも、一般的にいわゆる家庭裁判所、いわば裁判官でなくても調査官等を含め職員が説明をするということもあり得るのか、この点を御説明いただきたいと思います。

細川委員 付添人がいないときに傍聴を認める場合には、あらかじめ付添人を選任しなければいけない、こういうことにいたしました。それは、やはり少年に対する影響をできるだけ少なくするという意味で、専門の弁護士に付添人としてついてもらう、こういうことでございます。したがって、制度としては付添人をつける、こういう制度にいたしました。

 しかし、少年と保護者があえてつける必要はないというときまで強制的につける必要はないのではないか、こういうことで、その点については、私どもとしては、そういう意思がある場合にはつけない、こういうことにいたしました。

 それから、後の方の、裁判所の方で状況などを説明しなければいけない、そういう新たな条文を入れました。では、だれが説明をするか、これにつきましては、最高裁判所の規則にゆだねるというようにしております。

 今回の改正の趣旨にかんがみますと、裁判官以外の者、例えば裁判所の書記官あるいは調査官が説明に当たるというようなことも考えておりまして、裁判官あるいは書記官、調査官、いずれかが説明に当たる、こういうことになろうかと思います。いずれにしましても、最高裁判所の規則に私どもはゆだねるということにいたしました。

加藤(公)委員 ありがとうございました。終わります。

下村委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 まず、提案者の方にお聞きをしていきたいと思います。

 今回、修正案の中で、少年の健全な育成を妨げるおそれがないことの配慮規定ということを入れられたわけですけれども、先ほどの議論にもあったように、例えば審判に支障が生じない範囲でとか、より明確、もっと絞り込んだ規定はできなかったのか。この規定で、少年法の理念そのものですから、具体的にどういう有用性というか有効性が生じるのか、お答えいただきたいと思います。

細川委員 現行法の少年審判の運営におきましても、少年の健全な育成を期するという少年法の目的を踏まえて行われる、そして政府案におきましても、少年の健全な育成を妨げるおそれがあるときは傍聴を許されないということがずっと説明もされてきているところでございますが、私どもの今回の修正案につきましては、少年の健全な育成を阻害しない限度で傍聴を許すという趣旨を要件といたしまして、明確に、少年の健全な育成を妨げるおそれがない、そういう相当なときに認めるんだ、特にこういう限定を加えたところでございます。

 したがって、この修正によりまして、傍聴を認める場合の判断基準というものをより明確にしたというふうに考えておりまして、その効果もまたあるというふうに考えております。

保坂(展)委員 続いて、審判廷について、参考人質疑の中でも出ましたけれども、事件の被害者が不幸にして大変多い場合に、全員の方が入れない、こういうこともございます。

 その空間の問題が大分議論されましたので、続いて提案者に、もしこの制度が実現したら、希望される被害者が入るわけですね。そして、傍聴される。今のところ傍聴するだけなんですね、あえて言えば。ですから、生の声をぶつけたいとか、あるいは質問を少年に対してしたいとか、あるいは審判の決定の前に裁判長に一言言いたい、いろいろな要望が出てくる、そういうことは大いに考えられるのではないか。

 そうすると、少年審判の構造は、ぎりぎり変えないというところで提案されておりますけれども、その部分はどう予想されておりますか。

細川委員 今回の法案というのは、傍聴を認めるということですから、質問をするとかそういうようなことは、法案そのものは予測をされていないわけですね。

 そこで、少年に強い影響を与えないように審判廷をどういうふうに考えていくかということについては、審判廷の中で、いろいろと質問あるいは答弁などが行われましたけれども、私どもとしては、傍聴を許す場合には、裁判長が、被害者の座席と少年の位置とか職員の配置とか、あるいはそこにどういうような境をつくっていくとか、いろいろなことを考えまして、できるだけ少年の心身に影響を及ぼすことがないように、そういう配慮をしなければいけない、こういう規定にしているわけでございまして、今委員が指摘されましたような懸念を裁判長の方としてはできるだけ払拭するような工夫もきちっとしていただきたいというのが修正の趣旨でございます。

保坂(展)委員 では、もう一問だけ。

 大きな修正の点としては、触法少年に係る部分だと思います。触法少年に係って、十二歳未満の少年は対象から除外ということは私も賛成です。

 ただ、なぜ十二歳なのかということを考えてみますと、昨年の少年法のいわゆる少年院送致可能年齢、おおむね十二歳ですね。おおむねですから十一歳も入って、よく考えてみると、小学校五年生も一応、修正案でも、そういう例はないけれども、送れるんですね。

 そうすると、十二歳、確かに小学生と中学生だけれども、これは触法少年というふうにしっかりそこで区切るべきだったんじゃないか。つまり、犯罪少年と触法少年は明確に対し方が分かれているということを踏まえると、あえて十二歳というのにはちょっと根拠がないのではないかと感じるんですね。そこをお願いします。

細川委員 触法少年を含めます低年齢の少年につきましては、一般に精神の発達が十分ではなくて、その心情の安定への配慮ということが強く要請をされる、真実を語ってもらうためにはより一層の配慮が必要とされる、こういうふうに考えているところでございます。

 この委員会でもこの問題についてはいろいろと議論をされてまいりまして、被害者の方々の傍聴を認めることによってその影響が大変大きくて、いずれかの年齢をもって下限を設けるべきではないか、こういう指摘もあったことでございます。そこで、修正案としては、中学校に入学する年齢を目安にいたしまして、十二歳に満たない少年に係る事件は傍聴を許さないということにいたしました。

 そこで、十二歳から十四歳、こういった少年というのは、一年一年心身の状態は著しく発達をするというふうにも考えます。その意味で、傍聴に対していかに対応できるか、こういう点で、中学生と小学生では大きな違いがあるのではないかということを私たちは考えました。したがって、十四歳未満の少年に対しては個々に十分配慮をする、こういう規定を置きまして、そして十二歳未満は一律に除外をした、こういう規定にしたわけでございます。

保坂(展)委員 私どもはもう少し、審議が終盤になっているという感は私は持っていないんですけれども、全体の予定だときょうが採決ということで、最後に、大臣にいろいろ聞いていきたいと思います。

 前回、実は一回目だったんですが、私に対する答弁で、これは御紹介をされたということで、鳩山大臣の意見ではないんですが、犯罪少年島流し論というのを御紹介されました。

 議事録を繰りますと、大学の授業で、少年が凶悪犯罪を犯した場合は、大体過去をたどると不幸な目に遭っている、親に小さいころぶん殴られているとか、だから、そういう少年は何度でも犯罪を犯すから、離れ小島で開放処遇というのか、ボートもなくて、離れ小島でみんな住まわせればいいんだ、そういう意見もあるんだよ、そういう刑事学的な考え方を聞いたことがあって、なるほどなと思ったことがあるんですと。お話はその後、地元の、少年だとなぜ軽いんだ、こういう声がちまたにありますよという話につながっているんです。

 学生時代に大臣はなるほどねと思われたと思うんですが、今、少年法改正案を提案している立場で、これはどういう意味で紹介されているんでしょうか。

鳩山国務大臣 それは大学時代に、余り学校へ頻繁に行ったタイプではありませんでしたけれども、いわゆる刑事学とかいうようなことで、開放処遇という内容で授業を受けたんだろうと思います。

 開放処遇というのは、今先生おっしゃったようなことで、ただ、私がすごく興味を持ったのは、そのときに、六歳までの間に、父親が酒乱で、ぶん殴られたとか、あるいは両親のけんかがひどかったというようなケースは、強盗強姦致死とか殺人とか、そういう犯罪を犯した人間の過去のいわゆる追跡、過去にさかのぼった調査をすると、そういうケースがほとんどであるということを講義の中で聞き、それで、少年時代の傷というのはなかなか消えない、少年犯罪になる場合も多いし、大人になってから犯罪をすることも多いし、それが凶悪犯罪へ行ったり、あるいは累犯になっていくというような話を聞いて、私は、ある意味でいうと、むしろ幼児教育の大切さというものを学んだというふうに思っております。

 現在、少年法を提案する立場として、学生時代の、新派刑法学というのかわかりませんが、そういうような方々が主張した内容を参考にして何かをしようなどという気持ちは全くありません。

保坂(展)委員 最後の瞬間を聞いてちょっと安心しましたけれども、全く逆ですね。確かに、少年院在院者の中に虐待体験がある子が多いんですね。だからこそ、矯正の現場では、意を尽くして丁寧にその少年たちの更生に対処していくということで、そういう不幸な過去があっても更生をして頑張っている若者もいる、そしてもう大人になっている人もいるということは踏まえなければいけないというふうに思います。

 もう一つ、これはどうなんだろうと思ったところは、モニター傍聴のところです。

 これは民主党の階議員とのやりとりで、傍聴を認めるのはちょっと危険かなという場合に、傍聴は認めないんだけれども、モニターならいいですよ、そういう傍聴の補完的制度としてモニター傍聴を認めてはどうですか、大臣、そういう方向はいかがですかという質問があったんです。それに対して鳩山大臣は、被害者の方が少しでも満足され、傷は一生負っていかれるようなケースが多いわけですから、そういう方が少しでも救われるように傍聴という制度をつくりましたけれども、傍聴できない場合にモニターでとか、そういうことで温かく被害者に対処していかなければならない、こういう思いです、こうおっしゃっているんですね。

 ですから、先ほど議論はありましたけれども、この大臣答弁だけを聞くと、いや、傍聴は認めないけれども、モニターならどうぞという方向で、鳩山大臣は現場で運用をイメージしているというふうに受け取れるわけです、議事録の中で。二回しか、二日間しか審議がないですから。これはどういう答弁なんですか。大臣としての答弁なんですか、それは個人の思いなんですか。

鳩山国務大臣 先ほどやりとりを随分いたしましたけれども、モニター傍聴は今回は認められていないわけです。それを前提とした上で、将来の検討課題として、今申し上げたようなケースでモニターによる傍聴というのは考えてみるときが来るのではないか、三年後見直しということもありますから。そういう意味で、大いに検討すべき課題であるという認識を持っているということを申し上げたわけです。

保坂(展)委員 今そう言われるとわかるんですけれども、議事録を読んでいる限り、あのとき私が聞いていた限りにおいては、提案をされている議員の質問に対して、傍聴ができない場合はモニターでとか、そういうことで温かく被害者に対処していかなければならないというのは三年後の課題ですとは言っていなくて、こうですというふうに言葉を切っているので、なるほど、これが今回の立法趣旨なのかなというふうに議事録だけ読んだ人は混乱しますね。

 そこは、撤回されるのか、先ほどの答弁が正確だというふうに。

鳩山国務大臣 加藤公一先生の本会議での質問にも、モニター傍聴の話はあったかと思います。そのときに、今回は認めていないのは、これこれこういう理由であるということを申し上げた。しかしながら、私なりにいろいろ考えてみて、これは将来の検討課題としては十分値するものだということを大口善徳先生の御質問に対して、あるいは中井先生の御質問に対してお答えをしたといういきさつだろうと思います。

 ですから、それらを踏まえて、将来の検討課題としては十分検討すべきものであるということを申し上げているわけでございまして、今までの本会議の議事録からこの衆議院の法務委員会のすべての議事録をお読みいただければ、それほど誤解されることはないと思います。

保坂(展)委員 そうすると、その部分を聞いて、大臣は、運用の場で、モニターについては、傍聴が認められない場合でもモニターでということを努力するというふうに言っていますから、やはりこれは正確を期していただかなければ困るし、全体を読めばなんということではなくて、それに、該当部分がそういうところで抜き取られれば混乱を来すと思いますね。

 ですから、これは短く圧縮して思いを込めた発言かもしれないけれども、やはり新しい制度ですから、それについての運用では、現在の場合はモニター傍聴はできないんだと。傍聴が認められない場合、モニターで見るということはできないんですね。

鳩山国務大臣 現在の制度では、この改正案ではモニター傍聴を認めていないんですが、これは、将来の検討課題としては極めて有力なものだということを申し上げております。

保坂(展)委員 それと、審判廷の問題が出ていますね、広さが十五、六畳であると。先ほど細川さんにも聞きましたけれども、不幸にして被害者が大変多い事件は、そうすると、被害の軽重をつけがたい関係、被害者の方が例えば十人を超えて臨まれるケースというのはあり得るわけですね。しかし、それは全部実現できるかというと、具体的に言うと、できない場合も出てきますね。そういう場合、どう判断をしていくのか。その点、どうですか。

大野政府参考人 確かに、今委員が指摘されましたように、例えば死亡した被害者に複数の遺族がおられる場合等も含めまして、傍聴を希望される被害者側の方が複数名に上る場合は想定されるわけであります。

 実際に何人までの傍聴が認められるのかということは、まず、もちろん少年の年齢や心身の状態等もございますし、それと同時に、審判廷の広さ、形状等もございます。そうした事情を踏まえて個別の裁判所、裁判体によって判断されることになるわけでありますので、一概に何人までもというようなことはお答えできないというふうに思います。

 仮に、許容できる以上の遺族の方が傍聴の申し出をされてきた場合にどういうふうに対応するのか。これはもちろん各裁判所が個別に判断されることというふうに思いますけれども、例えばお話し合いをしていただいて代表者に傍聴してもらう等々、適切な対応をすることが考えられるのではないかというふうに考えております。

保坂(展)委員 裁判所に伺いますけれども、先ほど、日弁連の斎藤参考人の方から、そういうケースばかりではないけれども確かにあったケースとして、逆送事件だとか少年審判における例が紹介をされていました。いろいろアクシデントもあった、場合によっては手をかける方も中にはいたという話ですけれども。

 裁判所の法廷と違って、審判廷はさらに狭い。そして、東京地裁など、オウム事件以降かなり、我々が行ってもいわゆる身体検査、持ち物検査をされますね。家裁はそれに比べて比較的門戸を広げているという実態だと思いますけれども、そういった安全面について、いざ何かが起こったときに大丈夫なのかという点について、どうですか。

二本松最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、危険性等についてどういうふうに準備するかということについてですが、裁判所は、捜査機関から送られてきました証拠資料に含まれる少年や被害者等の供述調書を初め、被害者調査を含めたいわゆる家庭裁判所調査官による調査の結果などを十分考慮した上で、被害者が傍聴することで不測の事態が起こる可能性があるかどうかについて適切に判断することになると思います。それに応じて裁判所の警備あるいは審判廷へ職員を配置する等、そういうことも検討することになります。

 そういうことで、非常に厳しい警備をしなければいけない事件あるいは多数の職員を審判廷に入れなければいけないような事件というのはそもそも傍聴になじむかどうか、そういった観点から検討することになると思います。

 いずれにしても、裁判所の方としては、不測の事態は絶対に起こらないように、さまざまな観点から準備をしていきたいと考えております。

 以上です。

保坂(展)委員 先ほどちょっと聞き落としたところを提案者にもう一度お聞きしたいんです。

 加藤委員からお話があった、付添人は、少年及び保護者の意向によって特に必要ないという場合、そのときはつけないんだ、こういうお話なんですが、細川提案者も十分御承知のとおり、大体、家庭環境において親子がうまくいっていない場合が多いですね、少年事件の加害少年の場合。そうすると、親と子の関係で、そんなものはやめろと親が言うかもしれない。

 そして、この審判廷のそう長くない展開の中で、家庭裁判所の審判の中で、どうしてもプライバシーだとか生育歴とか親子関係にぐっと踏み込むような質問があるかもしれない。そのときに本人が、いや、傍聴されていますからちょっとこれは言えません、こんなことはできないと思うんですね。やはり付添人がいて、そこでちょっと示唆したり、そういうことは必要かと思うんですね。

 恐らく細川提案者も本当はついていた方がいいんだと思っていらっしゃると思うんですが、どうしてこういう修正になったんですか。

細川委員 傍聴の申し出があったときに付添人がいない場合には付添人をつける、こういうことにしたわけなんです。

 今の制度でも、検察官が関与したときには国選で付添人をつける、検察官というものが出てきて事実関係でやる、そのときには国選の付添人がしっかりそこに対応していく、こういう構図に今のはなっているんです。

 今度は、傍聴で付添人をつける、こういうふうにしたんですけれども、これは傍聴ということで、特にその中で少年に質問をするとかなんとかという場合ではないんですね。

 そうしますと、付添人を国選でつけるということにはなっているんですけれども、しかし、少年そして保護者、いずれもこれはつけなくていいというときにあえてつけることはない、こういうことにしたわけでございます。

保坂(展)委員 その点については、私はやはりちょっと意見が異なるということは申し上げておきたいと思います。やはり、大変親子関係にも問題があったりした場合に、親がつけるなというふうに言えば少年の多くはうなずくという関係があるのかなということも思います。

 鳩山大臣になお伺っていきますけれども、確かに、犯罪被害者の方の中からぜひあの審判廷を見たいという話を、参考人質疑できょうも土師さんからお聞きをしました。

 ただ、他方、私が十年前に取り上げた、世田谷における交通事故でお子さんを亡くした片山さんは、犯罪被害者が傍聴することによって、少年審判は非常に短い期間に行われるので、例えばお子さんの死亡という重大結果が生じて非常に間もない時期というのですか、余り月日がたっていないときからもう始まっていくので心の整理がいろいろできていない状態で、しかも少年の言うことが、少年も、自分がやったことが何なのか、少年が犯した罪について十分自覚したり反省したりという領域にそもそもなっていない、ですから、不用意な言動とか強がりとかひどい態度ということで、二重のいわば傷を負ってしまうのじゃないかと。

 それでも傍聴したいというそれぞれの方の意思ということになるんでしょうけれども、同時に、そういうメンタルヘルス面でのケア、余りにも二重のショックを受けてしまうようなことになるときにはそういった配慮も必要ではないか、こう思うんですけれども、いかがでしょうか。

鳩山国務大臣 保坂先生の今のお話は、現実的に確かに注意しなければいけない事柄だと思うんです。例えば交通事故で、業務上過失致死かと思いますけれども、加害少年がいて、被害者が亡くなってしまった、そして遺族がその少年審判を傍聴する。ともに非常に生々しい記憶がまだ消えていないというような状況。

 ですから、先ほどから何度も御答弁申し上げておりますように、家裁の審判廷を主宰する裁判官に、非常に職権主義的に裁量の多い裁判をやるわけでしょうから、そういう中できめ細かく配慮して傍聴を可とするか、あるいは否とするか決めていただく、こういうことだと思います。

保坂(展)委員 大臣、この新しい制度は、少年審判の目的や趣旨に支障を生じない範囲で行われるということで確認していいですか。

鳩山国務大臣 少年法の目的というか精神というものを大事にするという点では、この法改正によって何ら変化が起きるものではないと思います。

 ただ、今まで、これは少年審判だけではなくて一般の大人の犯罪を含めて、被害者という方々の立場とか、あるいは尊厳とか人権とか、あるいは経済的な側面もあるかもしれない、メンタルヘルスの問題もあるかもしれない、それが余りに軽視されてきたという反省の上に立って、この少年法ももっといいバランスのものにしようという形で、今回の改正案が提案されたものでございます。

保坂(展)委員 最後に、細川委員もお聞きになりましたけれども、原則と例外について、私も前回聞きましたけれども、例えば大野刑事局長は、これは常に傍聴をできるというものでは、それは適当ではないだろうというふうに答弁しているんですね。また、少年審判に支障のない範囲でということも言っておられる。大臣の本会議の答弁書もそうだったですね。しかしながら、思いの部分では、いや、原則傍聴できるんだ、こういうお話もなさった。しかし、それは大臣の思いであって、それは個人の思いなんでしょうね。

 法務大臣として、刑事局長の言っていることとやはり一致してもらわなければ法案の中身について私たち確定できないので、そこは刑事局長が言ってきたとおりなのかどうか、そこを最後に聞いて、終わりたいと思います。

鳩山国務大臣 刑事局長はやはり、今は検事であり、なおかつ役人であるという立場で、正確無比な答弁を心がけているんだろうと思います。私は、大臣という立場で、官僚に比べれば人間的な、心を前面に出して答弁をしたい、こういうふうに常日ごろ思っております。

 そういった意味で、保坂先生がおっしゃる少年法の精神とか存在意義というものは何も変わらない。少年の健全育成ということに十分注意を払わなければならない。しかし、最愛の御家族を例えば殺された、亡くされたという御遺族の気持ちは察するに余りあるものがあると私は思っている。そういう方々がその少年審判を見たいと痛切に思った場合に、そういう気持ちにはできるだけこたえられるあり方というものを考えたい。原則、例外という言い方は使いませんけれども、私は、そういう思いが強く出て、階委員とのやりとりの中であらわれたというふうに考えてください。

下村委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

下村委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 今回、三会派提出の少年法の一部を改正する法律案に対する修正案及び修正案を除く原案について反対の立場で討論を行います。

 今回の法改正は、被害者等に少年審判の傍聴を認め、家庭裁判所に被害者への審判状況の説明を義務づけるなどの内容であります。被害者側が加害少年の情報を得たいと希望することは十分理解できます。この点について、二〇〇〇年の少年法改正において、被害者に対する記録の閲覧、謄写、意見聴取、審判結果の通知等の制度が新設をされ、国費による被害者弁護人制度、また現行少年審判規則で被害者の審判への在席を認める制度の活用によって、被害者の知る権利は一定の前進を果たしています。こうした制度の存在を丁寧に知らせ、被害者の方が活用できるような支援体制の整備こそが求められているのではないでしょうか。

 本法案のように、少年審判を被害者が傍聴することで、精神的に未成熟で社会的経験も乏しい少年が、心理的に萎縮し、率直に事実関係の説明を行ったり、心情を語ったりすることが困難となるおそれがあります。傍聴している被害者等に影響され、少年の生育環境等の非行の原因と考えられる問題の真相に達することができず、審判が表面的なものになることが懸念されます。

 そもそも少年法は、発達途上にある少年に対して大人が受容的に接することにより、少年の健全な育成を図ることが目的であり、少年審判は、裁判官、調査官、付添人らの教育的、福祉的な働きかけにより、少年が犯した罪に真摯に向き合い内省を深める場となることを強く期待されて運営されてきました。被害者の怒りや悲しみと少年審判の場で向き合うことが、少年法の教育的、福祉的機能を損なうおそれがあり、賛成することはできません。被害者に対する支援施策はさらに充実させる必要がありますが、本来少年の立ち直り支援のための手続である少年法においてなし得ることには限界があり、別途な手だてが必要かと思います。

 なお、三会派による修正案は、少年の健全な育成を妨げることがないことを傍聴を認める要件として加えるなどの修正を行っておりますが、具体的な有効性、運用がどこまで歯どめになるのかが不明な点がございます。また、十二歳以下ということについての根拠も、触法少年という形で切れないのかという疑問もございます。拙速な修正ではなく、徹底的な委員会審議を行い、少年審判を犯罪被害者が傍聴することがどのような影響を生むのか、審議の中で本来はもっと多くの検証を行う必要があったと考えます。

 政府案、修正案ともに拙速のそしりを免れることはできず、少年法の教育的、福祉的機能を損なうおそれが強く、社民党としては賛成しかねるものであります。

 以上、反対の討論といたします。

下村委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

下村委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、少年法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、倉田雅年君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

下村委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

下村委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

下村委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、倉田雅年君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。倉田雅年君。

倉田委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    少年法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 犯罪被害者等の尊厳にふさわしい処遇の保障という犯罪被害者等基本法の基本理念を十分に尊重しつつ、少年の健全な育成という少年法の目的の達成に努めること。

 二 犯罪被害者等による少年審判の傍聴は、審判に支障が生じない範囲で認められるものであることを踏まえ、少年が萎縮し率直な意見表明ができなくなることがないよう、広めの審判廷の使用、座席の配置の工夫その他の配慮について周知すること。

 三 犯罪被害者等が別室でモニターにより少年審判を傍聴する方法については、その利点及び問題点を検証し、導入の当否について幅広い検討を行うこと。

 四 犯罪被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大については、社会記録が少年や関係者のプライバシーに深くかかわる内容を含むものであるとして引き続きその対象から除外された趣旨を踏まえ、法律記録の閲覧又は謄写をさせることの相当性の判断をする場合においても少年や関係者のプライバシーの保護に十分留意されるよう右の趣旨を周知すること。

 五 犯罪被害者等に対する情報の提供その他の犯罪被害者等を支援する施策については、個々の事情に応じたきめ細かい配慮を行いつつ、その充実に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

下村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

下村委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。鳩山法務大臣。

鳩山国務大臣 ただいま可決されました少年法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

下村委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

下村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十二分散会


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