衆議院

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第8号 平成21年4月28日(火曜日)

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平成二十一年四月二十八日(火曜日)

    午前十時九分開議

 出席委員

   委員長 山本 幸三君

   理事 大前 繁雄君 理事 桜井 郁三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 谷畑  孝君

   理事 加藤 公一君 理事 細川 律夫君

   理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      近江屋信広君    河井 克行君

      木村 隆秀君    北村 茂男君

      笹川  堯君    清水鴻一郎君

      平  将明君    谷川 弥一君

      長勢 甚遠君    萩山 教嚴君

      早川 忠孝君    町村 信孝君

      松本 文明君    武藤 容治君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      石関 貴史君    中井  洽君

      古本伸一郎君    山田 正彦君

      神崎 武法君    保坂 展人君

      滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         森  英介君

   法務副大臣        佐藤 剛男君

   法務大臣政務官      早川 忠孝君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 園田 一裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 佐村 知子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  西川 克行君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           戸谷 一夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           杉浦 信平君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           北村  彰君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       石塚 正敏君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   法務委員会専門員     佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十八日

 辞任         補欠選任

  杉浦 正健君     北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  北村 茂男君     松本 文明君

同日

 辞任         補欠選任

  松本 文明君     谷川 弥一君

同日

 辞任         補欠選任

  谷川 弥一君     杉浦 正健君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官園田一裕君、警察庁刑事局長米田壯君、総務省大臣官房審議官佐村知子君、法務省大臣官房司法法制部長深山卓也君、法務省刑事局長大野恒太郎君、法務省入国管理局長西川克行君、文部科学省大臣官房審議官前川喜平君、文部科学省大臣官房審議官戸谷一夫君、厚生労働省大臣官房審議官杉浦信平君、厚生労働省大臣官房審議官北村彰君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長石塚正敏君、厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢野隆司君。

矢野委員 おはようございます。自由民主党の矢野隆司でございます。

 きょうは、一般質疑ではございますが、先週の金曜日から質疑に入りました入管法の一部改正法案、これを中心にいろいろと伺いたいと思います。

 ただ、入国管理にいささかというか、かなり絡む事案としまして、例の豚インフルエンザ、もう新型インフルエンザという名称になったとも聞いておりますけれども、けさ方フェーズ3からフェーズ4へ引き上げられたということで、ますます感染の拡大が懸念をされているところであります。

 そこで、先般、麻生総理御自身も、もうまさに国家の危機管理上の重要課題である、こういう御発言までされておられるという中で、入国管理を所管される法務省として、入国管理にとどまらぬところでも結構でございますので、省としての今後の取り組みといったものを大臣から直接伺いたいと思います。

森国務大臣 今委員から御指摘がございましたように、本日の早朝、WHOにおいて、フェーズ3からフェーズ4へ格上げする宣言がなされました。

 このたびの豚インフルエンザの海外発生に関しましては、四月二十五日に、当面の対策として、全国の地方入国管理官署に対して、最寄りの検疫所との連携を緊密にすること、また、発生国を出発地とする乗客等に対する慎重な入国審査を実施することについて指示をしておりました。

 けさの格上げの宣言を受けまして、午前八時に総理大臣が政府全体の対策本部の設置を命じられました。

 したがって、政府全体でこの問題に立ち向かっていくわけでありますが、入国管理局においては、入国管理局長を本部長といたします新型インフルエンザ対策本部を設置いたしますとともに、水際対策として、検疫所などとのさらなる連携の強化を図ること、また、発生国からの上陸申請者に対して慎重な上陸審査を実施し、新型インフルエンザに感染の疑いのある者については検疫所の診断にゆだねること、さらに、出入国審査場等のパトロールを強化し、不法上陸の防止を徹底することなどの措置をとり、国内への侵入防止を図るよう指示をしたところでございます。

矢野委員 ありがとうございます。

 ただいま大臣から、発生国からの上陸者というお言葉がありました。そこで、担当局長として連日大変御苦労されておられる西川局長からいろいろと伺いたいと思うんです。

 いわゆる感染症法という法律があると聞いております。航空機の機内などでそういうインフルエンザが発症したということがわかれば、どうやってわかるのか私もちょっと細かいことはまだわかりませんが、要するに、その方が日本に到着された、そうすると、その法律に基づいて、停留、いわゆる施設に隔離をするんだ、こういうことだそうですが、この場合は日本に一たん入国をしたことになるのか、その辺の手続的なことを教えてください。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 本日早朝、世界保健機構において、豚インフルエンザについて、ヒト・ヒト感染が発生している、したがってフェーズ4にするという宣言が出されまして、これを受けまして、厚生労働大臣におきまして新型インフルエンザの発生を公表したところでございます。

 これらの宣言等を受けまして、豚インフルエンザについては、今後、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に定める新型インフルエンザ等感染症として取り扱われることになり、同インフルエンザの感染者等は、検疫法に定める隔離や停留措置の対象になるとともに、出入国管理及び難民認定法第五条第一項第一号による上陸拒否の対象になるということになります。

 通常、検疫の検査は出入国審査の前に実施されますので、検疫の段階で発見されればその段階で必要な措置がとられることになりますが、検疫の段階でそのような措置がとられず入国審査の段階になった場合、入国審査官においてこの疑いを持った場合については、上陸させることなく、検疫所に直ちに連絡をしてその者を引き渡し、所定の措置をとっていただく、こういう取り扱いになります。

矢野委員 ということは、法律上は、実際入国しているんだけれども、入国はさせていないということでカウントされるということでよろしいですか。

西川政府参考人 おっしゃるとおりでございます。

矢野委員 済みません、インフルエンザの話ばかりで恐縮ですが、もう一点だけ。

 今フェーズ4ということですけれども、新聞等の報道あるいはマニュアルなんかをちょっと拝見しますと、今後、空港については、成田、中部、関空、福岡の四空港に離発着制限をするんだとか、あるいは旅客船の出入りする港も三カ所に限るんだというようなことが決まっておるんでしょうか。

 加えて、貨物の船の限定的な集約というようなものがあるのかないのか、教えてください。

西川政府参考人 旅客等については、そのような制限をするかもしれないという話は聞いておりますが、まだ確定的な話としては伺っておりません。

 それから、貨物についても、これからの検討ということになりますが、貨物船については、出入国港が非常に多いということで、さらに困難な問題があろうというふうには思っております。

矢野委員 それでは、一たんこの問題についてはこれでとめ置きたいと思います。

 次に、もう一点、この法案には直接関係ないのかもわかりませんが、これも入管局長さんに教えていただきたいんですが、先週衆議院を通過しましたソマリア沖における海賊行為に対する対処あるいは処罰の法律案について。

 雑誌などの媒体によりますと、一説では、あの海域でばっこしておる海賊というのは二百五十人から三百人だというような報道もあるようですけれども、要は、あの法律案が成立した場合には、事案の悪質性によって、場合によっては身柄拘束をして、海賊行為の被疑者を日本に移送するということも想定をされておるということですが、法案自体には最高刑として死刑まで書き込まれていたかと思います。

 そこで、いわゆる刑事処分などを受けた海賊行為の被告というか、元受刑者になるのかどうか、その者が今度送還される場合に、その手続というのは入管法上どういったものになるのか。特に、恐らく退去強制処分になるケースが大半であろうと思うんですけれども、一たん茨城県の牛久あるいは大阪の茨木市にある入管の収容センター、そういったものに収容するのかどうか。恐らくするんだと思いますが、そして、ここが一番肝心だと思うんですが、そういう送還の費用というのはだれが負担をするのか。大体一般論で想定できる範囲で結構ですので、お答えをいただきたいと思います。

西川政府参考人 一般論でお答え申し上げますが、刑事処分を終了した者が入管法の退去強制事由に該当すると認められるときには、退去強制手続をとることになり、原則として、地方入国管理局の収容場あるいはセンターの収容場等に身柄を収容して手続を進めるということになります。

 退去強制手続の結果、退去強制令書が発付された者につきましては、これは実際上の取り扱いとして、できるだけ自費による出国を促すという取り扱いにしておりますが、どうしても負担ができない場合等については、国の負担により国籍国等へ送還するという場合もございます。

 お尋ねのような事態が発生した場合は、その状況に応じて、入管法にのっとって適切に対処するということになります。

矢野委員 ソマリア自体が破綻国家であるとか、いろいろ悩ましい問題もあると思うので、この点はいろいろとこれから機微に触れた問題になるかと思いますので、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

 それでは、法案について伺いたいと思います。

 先日、大阪の新聞に若い入国審査官の方が大きく取り上げられておりました。要は、不法上陸を防ぐ第一線で大変活躍をしている姿を非常にいい意味で紹介した記事だったんですけれども、その中で、一日に二件ないしは三件の不正な旅券を発見するんだ、日進月歩でそういう偽造の技術も高まっておるので気が抜けないというような苦労の話も紹介されておったんです。

 そこで、まず、全国の入管当局がまさに水際作戦として真正旅券以外の旅券を摘発する、あるいは発見する一日の件数というのが出るのであれば、ちょっと教えていただきたいと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十年中に全国の海空港における出入国審査において発見された偽変造文書は、合計六百二十九件でございます。これは、一日当たりに換算しますと約一・七件発見されているということになります。そのうち、偽変造旅券、これは三百一件となっており、偽変造文書の半数近くを占めております。ほかのものは、旅券に押印や貼付されている査証それから証印等の偽造ということになります。

 なお、最も偽変造文書発見件数の多い空港、これは成田空港でございまして、平成二十年における同空港の偽変造文書発見件数は四百十九件となっており、そのうち偽変造旅券発見件数は百九十七件ということになっております。

矢野委員 要は、成田空港では平成二十年度でざっと二百件近い新しい偽変造旅券が摘発されておる、こういうことだと思います。

 まさに水際で一生懸命やっておられるということだと思うんですが、さはさりながら、やはり不法に上陸あるいは不法に残留しておるという外国人、これに対する対策というのは従来省を挙げて取り組んでおられたという中で、今回、外国人登録法に基づく外国人登録証、これをなくして在留カードに一元化しようじゃないか、こういう法案だったと思います。

 そこで、一番問題といいますか根幹になる部分は、在留資格の有無を問わずに外登証が発行されてきて、したがって、滞在が長期になればなるほど、社会生活を送る上でさまざまなそごを来してきたと言えばちょっと言葉足らずになるかもしれませんが、いろいろなそういう問題が今日顕在化してきたということだと私は思っております。

 そこで、今回法案で在留カードによる一元管理を図るがゆえに、これは、ある意味法務省できちんと管理するんだ、あるいは把握するんだということになるんでしょうけれども、その真逆に、要するに地下に深く潜って潜行するといいますか、行方知れずになるような不法な滞在者も逆にふえるんじゃないのかなという指摘がありますが、この点について教えてください。

    〔委員長退席、大前委員長代理着席〕

西川政府参考人 委員御指摘のとおり、現行の外国人登録制度におきましては、外国人登録証明書が不法滞在者にも交付されているため、その在留の継続を容易にしているという批判がなされているところ、新たな在留管理制度におきましては、在留カードは我が国に中長期間適法に在留することができる外国人にのみ交付され、不法滞在者には交付しないということにしております。

 ところで、現行の外国人登録証明書につきましては、事業主等が外国人を雇用する際に、外国人登録証明書を見ただけでは、当該外国人が就労可能な在留資格を現に有しているか否かを容易に判別できないのに対し、在留カードには在留資格等について常に最新の情報が記載される上、その券面上に、就労制限の有無や、資格外活動許可を受けているときはその旨を記載することになるので、事業主等が在留カードを見ただけで、当該外国人が就労可能な在留資格を有しているかを容易に判断できるということになります。これにより、在留カードを所持していない不法滞在者においては、在留資格のないまま不法に就労することが困難になるということが予想されます。

 さらに、今回の法改正では、法務大臣が継続的に把握すべき情報の正確性を担保するために、届け出事項について事実の調査ができるようにしていること、所属機関から外国人の受け入れの状況について法務大臣に届け出なければならないことを明文化し、外国人本人と所属機関双方からの情報を照合、分析することが可能な仕組みを設けるなどしております。

 以上から、本改正は、不法滞在者を潜行させるものではなくて、むしろ顕在化させる効果を有するものというふうに考えております。

矢野委員 今局長から、顕在化させる方向のものでもあるというお答えだったんですが、実は、入管法の六十六条ですが、ここには、不法上陸や不法滞在を見つけた者については、退去強制令書が発付された場合について、通報者に五万円以下の報償金を払うことができるという条文がございます。この条文について、なかなか一般の人は余りよく知らないんだと思うんですね。

 今、省として、先ほどの入国審査の水際の大変な御苦労、そして今回この法律をつくって一元的に把握していこう、こういう二段構えでいろいろやっておられる中で、やはりその中から今度こぼれ落ちる部分については、なかなかこれを、摘発という言葉を使っていいかどうかは別として、捜し出すということは非常に困難じゃないかと私は思うんです。

 そこで、ぜひこの入管法の六十六条というものを積極的に活用をする、あるいはもっと広報をして周知して、もし、この人はおかしいな、この人は絶対に不法にいるんじゃないかというようなときは、最寄りのそういう当局にちょっと通報と言うとおかしいかもしれませんが、連絡をしてあげる。何もこれは密告社会を助長しているとは全然私は思っておりません。ですから、こういう条文にもちゃんと明示されておるわけですから、この六十六条をぜひ活用すべきだと思います。

 これは特段質問通告をしていませんが、局長、もし何かあれば。

西川政府参考人 御指摘の報償金制度、これは、退去強制事由に該当する者を摘発する上で、一般の方からの積極的な協力を期待して設けられているというものでございます。

 近時、不法滞在者は非常に小口化、分散化しておりまして、事案が巧妙化しているというようなこともありまして、情報を求めております。平日に限らず、例えば休日も情報を受け付けるなどしております。

 一般の方からの情報の提供を促しているということでございますが、御指摘も踏まえまして、この制度も活用して、さらに情報提供を呼びかけてまいりたいと思っております。

矢野委員 ありがとうございます。

 次に、非常にテクニカルなことを伺いますが、この法案を子細に点検というか読ませていただきますと、これまでの外国人登録法では、居住地を申告というか届け出ることになっていた。ところが、今回の法案では、居住地ではなく住居地を届け出るということになっております。居住地と住居地、私はどっちも一緒じゃないかと思うんですけれども、何がどう違うのか、もともとの居住地では何か不都合があったのかどうかを教えてください。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、現行の外国人登録法上の申請の対象となる居住地でございますが、これは一時的な滞在をする場所を意味する現在地、ですから、あるいは時には道路、公園等、社会通念上人の生活の本拠とは認められない場所も含む概念というふうにされております。

 一方、改正法案において届け出の対象となる住居地は、本邦における主たる住居の所在地という意味であり、これらの現在地等の場所を含まないことにしようということで考えております。

 このように、居住地を住居地に改めるということにした理由は、外国人の在留管理上、届け出事項とした上で、在留カードに記載すべき居住関係情報としては、住居と評価できないような場所を含まない住居地の概念がより適切であるというふうに考えたということでございます。

矢野委員 済みません、局長、重ねて伺いますが、では、これまで道路だとか原っぱをそういう住居地で届けておられた方もいたということでよろしいんでしょうか。

西川政府参考人 そのような例もあったと聞いております。

矢野委員 わかりました。次に参ります。

 今回の法案で、特別永住者の方の問題について伺いたいと思いますが、在留カードとは別に、これらの特別永住者の方には証明書を出して、そして常時携帯をする、こういうことになっておるようですが、これについてはさまざまな意見もあるようです。

 ただ、実はこれは、社会生活を送っていく上で、さまざまな形で本人確認を求められるときの有効な手段の一つじゃないかと私は思っております。

 と申しますのも、先日も、今銀行はマネーロンダリングの関係で、ちょっとまとまったお金を出したり預けたりするときに何か身分がわかる証明書を出してくれと言われて、たまさか私、そのときは衆議院議長さんの発行していた衆議院の身分証しかなかったんです。それを窓口に提示しましたら、これはだめですと言われたんですね。どうしてですかと言ったら、その住所地のところが、私が住民票を置いている、銀行に届けている住所じゃなくて、議員宿舎の住所が書いてあったものですから、これではちょっと本人確認できないので別のものを持ってきてくれと言われて、出直したことがありました。衆議院議長さんという三権の長のお一人の出しておられる証明書が使えない、なかなか銀行のロンダリング対策もしっかりしたものだなと思いながらも、割り切れない思いがあったんです。

 それはそれといたしまして、改めて、そういう意味で、この証明書の常時携帯の意味というか理由を教えていただきたいと思います。

西川政府参考人 特別永住者につきましては、法改正後の新たな制度では、これまでの外国人登録証明書にかわりまして、同様の機能を持つ証明書として特別永住者証明書を法務大臣が交付するということにしております。

 特別永住者につきましては、その歴史的な経緯及び我が国における定住性にかんがみて特段の配慮が必要であるということはもちろんでございますが、我が国を取り巻く環境や、特別永住者に成り済ます事案が発生する可能性等をも考慮し、特別永住者といえども、日本人とはその法的地位が異なるため、その居住関係、身分関係を明確にして即時に把握できるようにする必要性が生じる場合もあるということから、特別永住者証明書についても常時携帯を義務づけるということとしているというものでございます。

矢野委員 わかりました。

 ところで、今回の法案では、入国者の収容所というものについても盛り込まれておりますが、現在、先ほど申し上げましたけれども、茨城の牛久あるいは大阪の茨木市にありますそういう収容センター、これはそもそも刑事施設なんでしょうか、教えてください。

西川政府参考人 入国者収容所は、刑事施設ではございませんで、退去強制される外国人の身柄を収容し、また送還を行うための施設でございます。

矢野委員 ということは、行政の施設だということなんだと思いますが、そこで、この入国者収容所について、今回視察委員会を設置するということが書かれております。これは、施設の運営に資することをその委員会のテーマとして取り上げる組織であって、個別の入所者の不服や苦情に対してはここでは取り上げないんだというような御説明を受けました。

 そこで、入所しておる、間もなく送還されるであろう人々にもやはり人権はあるわけで、何らかの苦情や不服もあるかもしれません。それでは、そういった個別の申し立て、これをどういうふうに処理をされておるのか、あるいは何か変わるのか、教えてください。

西川政府参考人 入国者収容所等に収容されている被収容者は、被収容者処遇規則に基づきまして、自己の処遇に関する入国警備官の措置に不服があるときは、入国者収容所長等にその旨を申し出ることができ、さらに、その申し出に対する入国者収容所長等の判定に不服があるときは、法務大臣に対して異議を申し出ることができるということになっており、この制度の運用により処遇の適正を図っているところでございます。

 新たに設置される入国者収容所等視察委員会は、入国者収容所等の視察や被収容者との面接を行った上で、入国者収容所等の適正な運営に資する意見を入国者収容所長に対し述べることを目的として設置されるものであり、個々の被収容者に対する処遇の適否を検討する不服申し出制度とは異なるものであって、個々の不服申し出そのものには関与しないということでございます。

 不服申し出制度についてさらなる透明化という問題はあるわけでございますが、当局としては、別途、不服申し出制度についても、第三者によるモニタリング制度のようなものを設けることの可否、要否等について検討してまいりたいというふうに考えております。

矢野委員 そこで、この視察委員会の委員の選任方法というのは、最終的に大臣がお決めになるということだと思うんですけれども、そもそもの選び方というのはどういうふうにされるつもりか、教えてください。

西川政府参考人 入国者収容所等視察委員会は、入国者収容所等の適正な運営に資するため意見を述べてもらうという仕組みでございます。委員の人選に当たりましては、委員が特定の職業集団や団体などの者に偏らないようにするとともに、選任の方法が恣意的にならないものとすることを考えております。

 具体的には、刑事施設視察委員会等の運用状況等も参考にしながら、学識経験者、法曹関係者、医療関係者など、幅広い分野の有識者に参加していただくことができるようにするとともに、公私の団体から推薦を得るなどの方法をとることによって、選任方法が恣意的なものとならない仕組みとしたいと考えております。

    〔大前委員長代理退席、委員長着席〕

矢野委員 最後に、入管法の改正法案の第五十三条について伺いたいと思います。

 これは、退去強制などで拷問国、拷問のある国ということなんでしょう、拷問国には送還しないということが書かれているんだろうと私は理解しておりますが、今回この規定が新たに設けられた理由というものをまず教えていただきたいと思います。

西川政府参考人 現行の入管法第五十三条第二項におきましては、国籍国または市民権の属する国に送還できないときは、本人の希望により、我が国に入国する直前に居住していた国、我が国に入国する前に居住していたことのある国等に送還をする旨定めているところ、この「送還することができないとき」には、単に物理的に送還が不可能な場合だけではなくて、被退去強制者が国籍国等において拷問を受けるおそれがあると信じるに足りる実質的な根拠がある場合も含むと解しており、現行法上も、国籍国等が拷問の危険性がある国の場合は、当該国への退去強制は行っておらず、本人の希望を考慮してその他の国へ送還するということにしております。

 しかしながら、拷問禁止委員会におきまして、締約国は、外国人移住者の収容及び退去強制に関するあらゆる措置及び運用が拷問等禁止条約第三条に完全に適合するよう確保すべきであり、特に、締約国は、退去強制対象者が拷問を受けるおそれがあると信じるに足りる相当な根拠がある国への退去強制を明確に禁止すべきである、この旨指摘したということなどを踏まえまして、今般の法改正において、退去強制を受ける者を送還する場合の送還先に、拷問が行われるおそれがあると信じるに足りる実質的な根拠がある他の国を含まないということを明確にすることとしたものでございます。

矢野委員 ということは、新聞やニュースで、あそこの国は拷問があるんだなとか、あそこは拷問が日常的に行われているなというような、一義的にどこそこの国は拷問国だということを指し示すものではないんだ、こういうことでいいんでしょうか。

西川政府参考人 結論から申し上げれば、改正法によって、ある国が一義的に送還先から除外される対象となる国と決まるわけではございません。拷問等禁止条約第三条第一項は、その者に対する拷問が行われるおそれがあると信じるに足りる実質的な根拠がある他の国への送還を禁止しているということでございまして、改正案はこの規定を受けたものでございます。送還される個別の者について拷問の対象となる具体的な危険性がある場合に送還が禁止されるということになります。

矢野委員 ありがとうございました。

 大臣、本当にインフルエンザの対策、大変だと思いますけれども、どうぞしっかり水際で食いとめていただくようにお願いをいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、神崎武法君。

神崎委員 公明党の神崎武法でございます。

 本日は、審議中の入管法改正案を中心にお尋ねをいたします。

 今回の入管法改正案の主な項目は、在留カードを発行し、在留情報の一元的把握、管理の徹底、外国人研修制度の見直し、留学と就学の一本化などとなっております。特に、新たな在留管理制度の導入とともに、新たな外国人台帳制度に移行したことが大きな特徴になっているわけでございます。

 そこで、お尋ねをしたいと思います。まず、新たな在留管理制度につきましてお尋ねをいたします。

 外国人は、在留カードの記載事項のほかに、その在留資格に応じて、その受け入れ先や身分関係に変更があった場合には届け出しなければならないとあります。そうしますと、住所は同じなんだけれども職場だけがかわった、こういう場合も入管局に届け出をしなければならない、こういうことになるのでしょうか。

西川政府参考人 まず、現行の外国人登録法におきましては、永住者、特別永住者を除きまして、すべての外国人について、勤務先に変更があった場合に変更登録の義務を課しております。

 今回の改正では、法務大臣が取得する情報は在留管理に真に必要な情報に限定するという観点から、このような取り扱いを改めまして、所属機関の存在が在留資格の基礎となっている場合に限ることとし、例えば人文知識・国際業務等のいわゆる就労資格をもって在留する外国人についてのみ勤務先の変更届け出の義務を課すということにしております。これらの外国人については、住所に変更がなくても、勤務先がかわった場合には届け出をしていただくということになります。

神崎委員 在留情報の管理が目的ということでありますと、入管に本人がわざわざ届け出に行かなくてもいいのではないか。当局はインターネットによる届け出の方法も検討しているということも承知しておりますけれども、現行よりも負担が重くなるのでは、これは何のための改正かということになりますので、外国人本人あるいは所属機関である当事者の負担軽減の方法をどのようにお考えになっておられるのか、伺いたいと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、外国人からの変更等の届け出申請のうち、新たな在留カードの交付を伴います氏名、国籍、生年月日、性別の変更の届け出につきましては、外国人の同一性の確認等のため入国管理局に出頭してもらう必要がありますが、これらの事項については、そもそも変更する頻度が低いということに加えまして、例えば婚姻に伴って氏名や国籍を変更した場合には、同時に在留資格の変更申請が必要であるということも多く、そのようなときには当該申請に合わせて行うこともできることなどから、ほとんど負担の増加にはならないものというふうに考えております。

 それから、所属機関の変更や配偶者との離婚等につきましては、外国人登録制度では一部の例外を除き在留資格の種別を問わず届け出義務が課されておりましたが、新制度におきましてはこれを改めまして、前者につきましては所属機関の存在が在留資格の基礎となっている者、後者については配偶者としての身分が在留資格の基礎となっている者に限ることとしており、外国人の負担を軽減しております。

 また、届け出の方法につきましても、インターネットや郵送など負担を軽減する方策を検討したいというふうに考えております。

 次に、永住者の在留カードの更新申請については、これは七年に一回入管局等に来ていただかなければならないということになりますが、これは、七年に一回であるということに加えまして、在留期間の更新申請等とは異なりまして、在留カードの即時交付が可能であるということが考えられることや、弁護士、行政書士等、申請の取り次ぎを認める者の範囲を広げる予定であることなどから、過度の負担増にはならないものと考えております。

 所属機関からの届け出につきましては、従来から、教育機関あるいは研修先から任意で地方入国管理局に届け出をしていただいたところでございますが、これらにつきましても、インターネットや郵送など負担を軽減する措置を検討したいというふうに考えています。

神崎委員 ぜひ、負担増にならないように軽減措置をしっかり検討していただきたいと思います。

 本人が届け出をしなかった場合とか事実と異なる届け出をした場合には罰則を科することとしているわけでありますけれども、次の更新時などにおいて不利益になるということが言われておりますけれども、どのような不利益になるのか、それから、事故や病気などで届け出ができない場合、行政上どういう取り扱いになるのか、お伺いをいたします。

西川政府参考人 委員御指摘の届け出義務の不履行や虚偽届け出につきましては、次回の在留期間更新申請の審査に際しまして、その違反の態様等を勘案した上、やはりこれだけで不許可と決まるわけではないというふうに思いますが、消極要素の一つとして評価されることになるものというふうに考えます。

 ただし、事故や病気等やむを得ない事由によって届け出が遅延したというような場合につきましては、そうした事情の具体的な説明を受けて、その理由が正当なものというふうに認められますと、消極要素として評価されることはないというふうに考えております。

神崎委員 大臣にお伺いいたしますけれども、在留カード、これは特にICチップが搭載されることになっておりますし、この在留カードにある情報は身分証明書と全く同じものだろうと思います。そのために、運転免許証と同じように使用したり、在留管理制度だけではなく、将来的には多くの分野におけるサービスを受けられるときに使用できるようになることも考えられると思いますが、いかがでしょうか。

森国務大臣 まさにおっしゃるとおりでございまして、在留カードは在留に関する許可に際して法務大臣が交付する文書であり、外国人の身分関係、在留資格や就労の可否を証明する公的な証明書として機能するものでございます。

 このように、在留カードは法務大臣が交付する公的な証明書でありますので、運転免許証と同様に、社会生活上のさまざまな場面で住居地や年齢等を証明する身分証明書としても利用されることが想定され、それによって外国人の生活における利便性が向上することを期待しております。

神崎委員 次に、外国人研修制度の見直しについてお尋ねをいたします。

 外国人研修・技能実習制度は、開発途上にあります国々に対して技術、技能の移転を図り、それぞれの国の経済発展を担う人づくりに資することを目的といたしておりますけれども、実態は、崇高な理念とは違って、余りにもかけ離れていると言わざるを得ないわけであります。違法行為、時間外労働、低賃金、暴力、セクハラ、パスポートの取り上げなど、いろいろなことが行われております。

 一つは、受け入れ機関の不正行為などに対しては、研修生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針で運用されております。不適正な行為を行った機関には研修生の受け入れを三年間停止する措置を講じておりますけれども、研修生保護のための法律はありません。研修生、技能実習生が不利益を受けることだけになっているのが現状であります。

 二〇〇八年三月二十五日の閣議決定で、受け入れ機関が不正行為の認定を受けた場合及び受け入れ機関の倒産等により研修・技能実習が継続できない場合には、他の機関に受け入れられる場合には引き続き在留が認められる、また、他の受け入れ機関において研修・技能実習を継続できるよう受け入れ機関の開拓を行う仕組みを構築することが決定されているわけであります。その後、この点、どのように具体的な取り組みがなされたのか、お伺いをいたします。

西川政府参考人 入国管理局といたしましては、受け入れ機関の不正行為によって、研修生や技能実習生に責めがないにもかかわらず途中帰国しなければならない等の不利益を受けることがないよう、十分に配慮した対応が必要であるというふうに考えております。

 当初の受け入れ機関での研修の継続ができない場合は、当該受け入れ機関に対して、研修・技能実習を継続するための新たな受け入れ機関を探すよう指導を行っているところでありますし、また、新たな受け入れ機関を探すための期間が必要であるという場合につきましては、研修生、技能実習生から在留期間更新または在留資格変更の申請があった場合には、これに柔軟に対応することとしているところでございます。

 また、この場合の新たな受け入れ機関の研修生の人数要件については、基準省令等を画一的に適用することなく、適正な研修の実施を阻害しない範囲内で柔軟に認めることとし、これを地方入国管理局に対して指示しております。

神崎委員 現在、世界的な大不況の中にあるわけでありますけれども、その大不況の中で、研修・技能実習の継続ができない事例もあると思います。これに対してどのように対応されているのか、また、研修・実習生の途中帰国はどのくらいいるのか、お伺いをいたします。

西川政府参考人 まず、数の問題でございますけれども、地方入国管理局に対し、受け入れ機関の倒産、事業縮小等により帰国した旨の報告のあった研修生、技能実習生の数は、昨年十月から本年二月までの間に一千五百二名となっております。

 この研修生、技能実習生につきましても、本人らの責めによらず研修・技能実習の期間を全うすることができないということで、まことに気の毒な立場ということになります。先ほど、不正行為のところで申し上げたとおり、受け入れ団体や企業に対して、新たな受け入れ先の確保に努めるよう指導しております。この場合、新たな受け入れ機関を探すため期間が必要であるとして、研修生、技能実習生から在留期間更新または在留資格変更の申請があった場合には、これに柔軟に対応して、できるだけ次の行き先を探すということをさせているということでございます。(神崎委員「あと、途中帰国。研修・実習生の途中帰国が今のあれですか」と呼ぶ)

 冒頭に申し上げました、昨年十月から本年二月まで、受け入れ機関の倒産、事業縮小等により帰国した研修生、技能実習生の数は千五百二人です。

神崎委員 昨年十月からこの二月までに千五百二名の者が途中帰国したということでありますけれども、これらの実習生等は、来日するために七十万円から百万円程度の借金をしているけれども、途中で帰るとしますと、借金しか残らないわけでございます。

 在留期間中は、研修・技能実習を受ける機会を国としてやはり保障すべきではないかというふうに考えます。場合によっては他の職種への移転を認める方向で考えてはどうかと考えますが、どうでしょうか。

西川政府参考人 委員御指摘のとおり、入国管理局としましても、受け入れ先の倒産、事業の縮小等の事情によって、研修生、技能実習生の責めに帰さない理由によってこれらを継続することができない場合については、できるだけ研修・技能実習を継続できるような措置を考えているということでございます。

 例えばでございますが、同一職種であれば、類似する他の作業であっても、適正な研修・技能実習の実施が見込まれることを条件として移籍を認めるというような取り扱いをしております。

 これも一例でございますけれども、例えば、旧受け入れ機関で紳士服製造の研修が行われていたけれども、新受け入れ機関では婦人子供服製造の研修が行われたというような事例について認めた経緯がございますので、職種、作業の問題につきましても柔軟に解しまして、できるだけ研修・技能実習を継続させる方法で対応してまいりたいというふうに考えております。

神崎委員 ぜひ柔軟に対応をしていただきたいと思います。

 それから、研修生の本国における送り出し機関の問題、これもやはり問題があるということが指摘されております。多額の準備費用を負担させられ、契約に違反した場合には保証金の没収、土地、家などの担保をとられる。そのため、日本の受け入れ機関から、劣悪な労働環境とか時間外労働、最低賃金よりも低い給料など労働条件が異なっていても、また人権侵害を受けても、権利を主張することが極めて困難になっているということが言われているわけでございます。

 私は、この送り出し機関についても、問題のある送り出し機関の実態を調査することも必要ではないか、そして、これらの違法行為があればこういった機関からの受け入れを禁止する、こういうことも必要ではないかと思いますけれども、どうでしょうか。

西川政府参考人 送り出し機関が不当に保証金等を徴収したり、保証金の一部を不当に返還しないような場合は、適正な研修生、技能実習生の受け入れを阻害するものであるというふうに考えております。

 現行制度におきましても、入国管理局における審査の過程で不当な行為を行う送り出し機関であることが判明した場合、その送り出し機関からの受け入れを認めないこととする等の対応を行っております。また、このような観点から、入国管理局といたしましては、送り出し国政府との領事当局間協議等の場を通じまして、機会のあるごとに、送り出し国政府に送り出し機関の適正化についての申し入れを送っております。

 さらに、今回の法改正に合わせまして、関係省令の改正等により、入国審査の際に送り出し機関と本人との間の契約書の提出を求め、当該契約に不適正な取り決めがないか確認するなどし、不当な行為を行う送り出し機関からの受け入れをより確実に阻止することを予定しており、今後とも、このような送り出し機関に対して厳格に対処し、研修・技能実習制度の適正化に努めてまいりたいと考えております。

神崎委員 ぜひ、違法行為をする送り出し機関に対しては厳正に対処していただきたいと思います。

 それから、研修生、実習生の受け入れ側なんですけれども、企業単独型と団体監理型、二つのタイプがあります。団体監理型は、事業協同組合等が受け入れ団体となって研修生、実習生を受け入れて、傘下の中小企業において実務研修及び技能実習を実施しているわけでございます。

 二〇〇三年から二〇〇七年の五年間で不正行為と認定された千百六十件のうち、千百二十八件は団体監理型であったという結果を承知しているところでございますが、マスコミ上取り上げられる研修制度の違法行為、劣悪な労働条件、人権侵害などの大部分は団体監理型と言われております。

 このことから、団体監理型の受け入れ、これは廃止すべきではないか、こういう指摘もありますけれども、法務大臣はどのようにお考えでしょうか。

森国務大臣 神崎委員御指摘のとおり、過去に不正行為と認定された事案の多くが団体監理型であることは事実でございまして、これは母数が多いということもあると思いますが、いずれにしても、問題なしとは言えないというふうに思っております。

 しかしながら、現に団体監理型の研修が多数活用されておりまして、また、制度の趣旨に沿って適正に行われているものも当然ながら少なくなく、さらに、中小企業等の有する技術移転に当たっては有益な方法であるというふうに考えておりますので、団体監理型の受け入れを直ちに廃止することは適当ではないというふうに思います。

 もとより、団体監理型の受け入れでは、受け入れ団体が適切に研修・技能実習を監理することが重要でありますので、今回の法改正に合わせ、関係省令を見直し、受け入れ団体の指導監督体制を強化することなどにより、受け入れ団体の業務運営の適正化を図ってまいりたいと考えております。

神崎委員 ぜひしっかり対応をしていただきたいと思います。

 それから、こういう事業協同組合等の受け入れ団体、これを一次機関、それから、その傘下の企業、実際に受け入れる企業、これを二次機関というふうに呼んでいるそうでありますけれども、何か通称ゼロ次機関と呼ばれるものがあるそうです。それは、例えば、去年、岐阜県関市の縫製関連会社が、実習生の監理業務を代行した上、給料を最低賃金以下に抑えるなどの違反行為を受け入れ機関に指南していた。こういう監理業務を代行する会社が現実にあって、それがゼロ次機関というふうに呼ばれているということであります。入管法上も、このゼロ次機関というのは想定外の機関であって、罰則もないということであります。

 このような監理代行に対する制度改革が必要ではないかと言われておりますけれども、法務当局のお考えはいかがでしょうか。

西川政府参考人 委員御指摘の事例につきましては、岐阜県の六つの協同組合が、本来ならば一次受け入れ機関として行うべき業務を他の機関に代行させ、当該代行機関が二次受け入れ機関に対して労働関係法規違反を指南していたという事例と承知しております。このような事例において、当該代行機関が第一次受け入れ機関でないことから、ゼロ次受け入れ機関と呼ばれているということも承知しております。

 ところで、研修生の受け入れに関し不適正な行為を行った機関に対して不正行為の認定等をすることとしておりますが、その対象となる機関は、必ずしも研修生の受け入れ機関に限定されるものではなく、いわゆるゼロ次機関と称されるものを含め、外国人の研修にかかわる不正行為を行ったすべての機関や個人が対象となり、そのような不正行為を行った機関や不正行為を行った個人が経営者や管理者等となっている機関が研修生を受け入れたりあっせんしたりする研修は、三年間これを認めないということにしております。

 御指摘の事例につきましても、所要の調査を経まして、いわゆるゼロ次機関の代表者個人を含めて不正行為の認定等を行っており、このような悪質事案につきましては、今後とも厳正に対応していきたいと考えております。

神崎委員 研修生や技能実習生が病気などで死亡するケースがふえていると言われております。昨年は三十三人が死亡、心筋梗塞など心疾患によるものが多いということであります。理由としては、劣悪な労働、居住環境によって健康を害したとか、こういう健康管理体制の不備が指摘されているところであります。

 これらについて、どのように当局は把握し、関係機関への監督指導をしているのか。これは厚生労働省にお尋ねをいたします。

杉浦政府参考人 外国人研修生、技能実習生の事故、疾病等の状況につきましては、財団法人国際研修協力機構、JITCOと略称しておりますが、JITCOを通じまして、受け入れ企業に対して報告を求めているところでございます。

 平成二十年度におきましては、御指摘のとおり、不幸にも三十三名の方がこの期間中に死亡するという事態となっております。内訳としましては、脳・心臓疾患が十五名、それから作業中の事故等が六名、交通事故が四名などとなっております。

 このような状況を踏まえまして、対策といたしましては、まず第一に、JITCOが実施をします巡回指導におきまして、入国前の健康診断あるいは受け入れ企業における健康診断の実施の確認あるいは指導を行っております。第二に、業務上の災害や脳・心臓疾患等の死亡事案につきまして、現地調査を行ったり指導を行っております。第三に、研修・技能実習中のみならず、私生活を含めた日常生活における脳・心臓疾患等の予防対策をまとめたマニュアルを作成して普及をいたしております。さらに第四としまして、全国の主要都市におきまして、健康管理の徹底と注意喚起を行う事故防止・健康確保経営者セミナーというものを開催したりしております。

 こういった事業をJITCOに委託して実施しておるところでございまして、引き続き、研修生、技能実習生の健康確保に取り組んでまいりたいと考えております。

神崎委員 次に、外国人台帳制度についてお伺いをいたします。

 新たな外国人台帳制度の特徴は、行政サービスに活用するとか、新たな在留管理制度に対応、対象となる外国人の範囲の三点だというふうに言われておりますけれども、現行の外国人登録は、在留資格がなくても登録がされております。新たな外国人台帳制度は、在留カードを持っている外国人、特別永住外国人等が対象となっておりまして、在留カードを持っていない外国人は、市町村が行政サービスを行う対象となっていないわけであります。

 現在は在留資格がないけれども、日本人と結婚したので入管に出頭し在留特別許可を待っている場合とか、難民認定申請をしている場合なども外国人台帳の対象から外れてしまうことになるのでしょうか。さらに、在留資格がなく、長く日本に住んで地域に密着している外国人や、現在外国人登録をしている人でも在留資格がない場合、これも新たな台帳から外されてしまうことになるのかという点。それから、今まで行政サービスを受けていたのが受けられなくなる、こういうことがあるのか。あるいは、在留カードは在留カードであって行政サービスは従来どおり受けられる、こういうふうに理解してよろしいか。その点をお伺いいたします。これは総務省にお伺いします。

佐村政府参考人 住民基本台帳法の改正によりまして本法の適用対象とされるのは、観光目的などで短期に滞在される方々を除く、適法に三カ月を超えて在留される外国人の方でございます。したがいまして、難民認定申請中の仮滞在許可者なども住民基本台帳に記録されますが、不法滞在者は当該台帳には記録されないものでございます。

 それから、もう一点お尋ねの、各種行政サービスの対象範囲は、それぞれの制度において定められるというものでございまして、不法滞在者もその対象とされているものがあると私ども承知いたしております。

 このために、住民基本台帳に記録されない者、不法滞在者でありましても、従前より当該行政サービスの対象とされている者につきましては、引き続きその対象とされると承知いたしておりまして、本改正法はその対象範囲を変更するものではございません。

神崎委員 ただいま御答弁があったように、在留カードのあるなしで行政サービスも異なってくるとか、今まで受けられていた行政サービスが受けられなくなるとか、ぜひそういうことにはならないようにしていただきたいと思います。

 それから、新たな外国人台帳に載っていない場合、就学通知も行われず、教育を受ける権利が保障されなくなるのではないか。現行では在留資格がない子供も学校に通っておりますけれども、子供が義務教育を受ける権利は在留資格がなくても保障すべきだと思います。

 ただいまの答弁がありましたけれども、具体的な事項ということで、文科省にこの問題をお伺いいたします。

前川政府参考人 我が国に滞在いたします外国人が、その保護する子の公立義務教育諸学校への入学を希望する場合におきましては、すべての子供の教育を受ける権利の保障を求めております国際人権規約等の規定に基づきまして、在留資格のいかんを問わず、無償での受け入れを行っているところでございまして、今回の住民基本台帳法の改正が行われた場合におきましても、台帳への記載の有無にかかわらず、希望があれば公立の小中学校等に受け入れるという取り扱いに変わりはございません。

神崎委員 最後にお尋ねをいたしますけれども、現在、外国人については、ほとんど全省庁と言っていいくらい各省庁が関与をしているわけですね。ですから、何か外国人についていろいろ決める場合には、十数省庁の関係省庁会議を開くとか、そういうことで開いているわけです。これは外国人本人にとっても、何か関係するところが十数庁になると、いろいろな手続もそれぞれやらなきゃいけないということで、非常に煩雑だと思うわけです。問題解決もなかなかスムーズにはいかない。

 将来的には、外国人を管轄する外国人庁、こういった設置が必要であるというふうに考えますけれども、法務大臣はどのようにお考えになっておられますか。

森国務大臣 外国人の適正な管理や外国人が住みやすい環境づくりのためには、今委員から御指摘がありましたように、多方面にわたる行政分野の連携が不可欠でございます。

 そのための一方策として、省庁を一元化して、例えば外国人庁の設置が必要ではないかとの御指摘や御議論がなされていることも承知をいたしております。

 ただ、現時点では私の考えを申し述べる段階とはまだちょっと思いませんし、いずれにしても、こうした御議論の推移を見守ってまいりたいと思います。

 いずれにしても、外国人にとって住みやすく、外国人と共生できる社会を目指し、引き続き、外国人の方々に対する施策を総合的に推進すべく、法務省といたしましても、関係省庁と連携を図りながらその実現に努めてまいりたいと思います。

神崎委員 終わります。

山本委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川律夫でございます。

 きょうは一般質疑ということで、何点か御質問をさせていただきます。

 矢野委員の方からも既に質問がありましたけれども、けさ、舛添厚生労働大臣は、新型インフルエンザが発生した、このように宣言をいたしました。WHOの方では、豚インフルエンザの警戒レベルをフェーズ4に引き上げたわけでございます。政府の方でも新型インフルエンザの対策本部を設置した、こういうふうに報道されておりまして、第一回目の会合をお昼に開く、こういうことであろうかと思います。

 これは、新型インフルエンザが発生をするかもわからない、特に鳥インフルエンザの関係で、いろいろ日本でも、政府でもこれに対しての対応をずっと検討、準備もしてきたところでありますけれども、今度は豚の方のインフルエンザ、しかも新型インフルエンザということで、人から人への感染という大変な事態が発生をしたわけでございます。

 したがって、まずこれにつきまして、今メキシコの方で大量発生、こういうことでありますから、メキシコの方から、あるいは隣のアメリカでも発症をいたしております。そういうことで、日本に飛行機あるいは船、そういうことで関係者が入国をしてくる、こういうことも想定をしていろいろな対策が立てられると思いますけれども、まず、厚生労働省の方に、どのような対策を具体的にとるのか、とりわけ成田空港などの航空の関係、これについてお伺いをいたします。

石塚政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、本日未明、WHOの方でフェーズ4が宣言されまして、本日から従来の豚インフルエンザが新型インフルエンザと法的にも位置づけられたところでございます。私ども検疫を担当しておりますが、検疫法という法律におきましても、この新型インフルエンザ対策が検疫感染症としての法的な位置づけを持つようになったところでございます。

 成田空港検疫所におきましては、メキシコ、アメリカ、カナダからの便に対しまして、機内検疫、これは医師を初めとする検疫官が飛行機に乗り込んで検疫を行うわけでございますが、この機内検疫によりまして、乗員乗客全員から質問票を徴収し、サーモグラフィーによる発熱者の確認、そして、発熱、せきなど急性期呼吸器症状を有する方に対する診察を実施するなど、検疫体制を強化したところでございます。

 また、症状の有無にかかわらず、全員に対しまして、一定の期間、およそ十日を考えておりますが、検疫所からの連絡を受けて、最寄りの保健所から健康状態の確認をその後行うということにしております。

 このほか、広く海外に渡航される方に対しましては、広報資料等により情報提供や注意喚起というものを行っているところでございます。

 ちなみに、各検疫所において、現在のところ、この新型インフルエンザを疑わせる事例というものはまだ確認されておりませんが、引き続き検疫体制の充実強化に努めてまいる所存でございます。

細川委員 検疫とともに入国審査、これが法務省の方の所管でありますけれども、法務省としてこれにどう対応をしていくのか。

 重ねての質問になりますけれども、対応をどうされるのか、いま一度法務大臣の方からお聞かせをいただきたいと思います。

森国務大臣 今回の豚インフルエンザの海外発生に関しまして、去る四月二十五日に、当面の対策として、今言及されました成田空港を初めとする全国の地方入国管理官署に対して、最寄りの検疫所との連携を緊密にすること、また、発生国を出発地とする乗客等に対する慎重な入国審査を実施することについて指示をいたしました。

 今御指摘もありましたように、本日早朝、WHOにおいてフェーズ4に格上げの宣言がなされたことを受けまして、午前八時に総理大臣が政府全体の対策本部の設置を命じられたところでございます。

 したがって、政府全体でこの問題に立ち向かっていくわけですが、入国管理局においては、入国管理局長を本部長といたします新型インフルエンザ対策本部を設置いたしますとともに、成田空港を含む全国の地方入国管理官署に対し、水際対策として、検疫所等とのさらなる連携強化を図ること、発生国からの上陸申請者に対して慎重な上陸審査を実施し、新型インフルエンザに感染の疑いがある者については検疫所の診断にゆだねること、さらに出入国審査場等のパトロールを強化し、不法上陸の防止を徹底することなどの措置をとり、国内への侵入防止を図るように指示をいたしました。

細川委員 この新型インフルエンザの危険性については、国民の皆さんもいろいろなマスコミの報道によってある程度知っておるものと思いますけれども、しかし、いたずらに、危険だということで余り度の過ぎた大騒ぎになっても、これもまたどうかと思いますし、そこは冷静な対応も必要かというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、新型のインフルエンザということで、これには日本としてはしっかり水際で対応をしていかなければならないというふうに思いますので、厚生労働省の方も、また法務省の方も、しっかり取り組んでいただきたいと心からお願いをいたします。

 厚労省の方はもう結構でございます。ありがとうございました。

 次に、法曹養成あるいは法曹人口のことについてお伺いをいたしたいと思います。

 裁判員制度は五月の二十一日実施をするということでありまして、もう一カ月を割ったところでございます。この裁判員制度と並んで大変大事な司法制度改革の大きな柱は法曹養成でありました。

 当初、法科大学院卒業生の司法試験の合格率というのは七割から八割というふうに想定をされておりましたけれども、しかし、現実には、三割程度だ、こういうことになっておりまして、それでは、生活を捨てて相当な経済負担もかけ法科大学院に進んだというような学生は大変気の毒ではないかというふうに私は思っております。今後、法曹を目指す若い人たちのためにも、この際しっかりと制度を再点検しなければならないのではないかというふうに考えております。

 日弁連からは、これらの問題について、この一月、新しい法曹養成制度の改善方策に関する提言というものが出されまして、法科大学院の定員の削減など、具体的に提案がなされているところでございます。

 この提案の前提として、新しい法曹養成制度について、その理念との乖離が一部で生じているという認識がありまして、現在の法科大学院における教育が法曹たるに十分な質の確保ができているか、質の確保に結びついていないのではないのかという懸念があるところでございます。

 そしてまた一方、文科省の中教審の特別委員会でも、法科大学院の抜本的な定数の削減、あるいは大学院同士の統廃合、これを求めているものでございます。

 私、司法制度改革の際の議論に戻って考えてみれば、そもそも、規制緩和の影響のもとで、法科大学院の乱立がこの間違いのもとだったのではないかというふうに考えております。法科大学院の定員をまずは抑制しながら教育の質を高めていかなければ、制度そのものが危うくなるのではないかというふうに考えております。来年度の法科大学院の定数については、一八%の定員減というような報道もあったりいたしまして、さらに抜本的な対策が必要ではないかというふうに思います。

 そこで、大臣にお伺いをいたしますけれども、今後の法曹養成のあるべき姿について大臣はどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

森国務大臣 私も、細川委員とおおむね同じ問題意識を抱いているものでございます。

 私は、やはり法科大学院は、質、量ともに充実した法曹を養成するための、いわば新たな法曹養成制度の中核的な機関として、その修了生の質を向上させることが重要であると思っております。しかるに、法科大学院の現状に関しましては、その数や学生定員が制度設計時の想定を超えておりまして、教育内容や水準にもばらつきがある等の問題意識を持っているところです。

 今御指摘のあった中教審の法科大学院特別委員会が、このたび、法科大学院教育の質の向上に関する提言を取りまとめましたが、この提言は、私どもと同様の問題意識に立つものと認識をしております。

 法務省といたしましても、この提言の方向でもって法科大学院教育の改善を促進するために、今後とも文部科学省と協力をいたしまして、改善に努めてまいりたいというふうに思っております。

細川委員 もう一つの議論は、法曹人口に関しまして、これは法曹養成と表裏一体の問題でありまして、この法曹人口というのは法曹養成を抜きにして語れないわけでございます。

 この法曹人口についてはいろいろ議論が錯綜いたしておりまして、前の鳩山邦夫元法務大臣は、就任直後に、三千人は多過ぎるというようなことを発言いたしまして物議をいろいろ醸したわけでございますが、日弁連は、先月、三月十八日の提言で、今後は数年間、現状の二千百から二千二百人の合格者を維持すべきだ、こういうふうに明確に増員の見直しを求めております。

 そこで、大臣にお伺いをいたしますけれども、大臣はこの国会の所信で、閣議決定のとおり、平成二十二年ごろには三千人にするということを述べられたわけでありますけれども、現在もその考えに変わりはないのか、お聞きをいたします。

森国務大臣 まず、鳩山元法務大臣の法曹人口についての御発言についてでございますけれども、今細川委員は、司法試験合格者三千人は多過ぎる、こういうふうに発言されたということでございましたけれども、その本意は、閣議決定は守って三千人は目指す、しかしながら、目標年の二十二年を超えてもずっと三千人でいくかどうかについては検討の余地があるというのが趣旨だったように私は理解をしておりまして、そういう意味において、私も三千人を目指すという閣議決定を遵守してまいりたいと思っておりますし、今もってその旗をおろすつもりはございません。

 と申しますのは、やはり二十一世紀の司法を支えるためには、人的基盤の整備として法曹人口を大幅に増加させる必要があるということはおおむねコンセンサスの得られているところであると思いますので、そういうことで、見果てぬ夢に終わるかもしれませんけれども、その旗をおろさないつもりであって、またその時点が来ましたら、やはり各方面の御意見を伺いながら、また今後のあり方を考えるべきではないかというふうに思っております。

細川委員 三千人の目標で、見果てぬ夢かもわからないというような、何かそんなことで実現がなかなか難しいような、そういうことの発言かと思うけれども、見果てぬ夢かもわからないということについては、ちょっと首をかしげるような、そんな感想を持ちます。この法曹人口の問題については、これは非常に重要な問題でもありますし、これからもしっかりと議論をしていかなければならないというふうに思っております。

 それからまた、四月の二十四日ですか、予備試験の実施方針案が明らかになったという報道がございました。

 予備試験というのは、法科大学院に通えない人たちの迂回路でありまして、法科大学院卒業と同様の能力を検査するための資格試験という意味で設けることになったんだろうと思います。

 与党の方の議員さんの一部には、この制度の簡素簡略化を提案されておりまして、受け皿を広げようと言っておられる方もおられるわけですけれども、しかし、この制度、予備試験の合格者がふえていけば、これは一方で法科大学院の存在理由が問われる、こういうことにもなってくるわけでございます。

 この予備試験ということについて、どういう方向に行けばいいのか、これについて大臣はどのようにお考えでしょうか。

森国務大臣 予備試験は、法科大学院を中核とする法曹養成制度において、今委員のお言葉にもありましたように、新司法試験の受験資格を法科大学院修了者に制限しつつ、法科大学院を経由しない、いわばその迂回路として、法科大学院修了者と同程度の能力を有していれば、同等に新司法試験の受験資格を与え、法曹となる道が確保されるようにする趣旨で設けられたものでございます。

 法律上、予備試験は、法科大学院修了者と同程度の能力を判定する試験として位置づけられておりますので、この判定を適切に行うことによって、法科大学院を中核とする法曹養成制度の理念を損ねることのないようにする必要があると考えております。

 他方、予備試験を通じて法曹を目指す方が、法科大学院修了者と比べて、法曹資格を得るに当たって不利益にならないようにする必要があり、法科大学院を経由しない人にも公平に新司法試験の受験資格が与えられる必要があると考えております。

 こうしたいわば二つの必要条件を満足させつつ、司法試験委員会において適切にその実施方針が検討されるものと考えております。

細川委員 この予備試験をどういうふうな形の予備試験にしていくかということによっては、予備試験からの合格者で司法試験を受ける者の数がふえてまいりますと、予備試験を受けるためのいわば予備校のようなものができて、それによってまた合格者数がふえていくということになってまいりますと、本当に法科大学院の制度そのものの根底が問われるようなことにもなってくるというふうにも考えられますので、この点についても、司法試験委員会の方で決定されると思いますけれども、これはしっかり見きわめていかなければいけないんじゃないかというふうに私は思っているところでございます。

 次に、私自身、この委員会でしばしば死因究明制度について提起をしてまいりました。ことしに入って与党の皆さん方も議連をおつくりになり、議連を中心に積極的に今議論が進んでいるということも聞いておりまして、大変心強くも思っておるところでございます。きょうは、その中でも、これまで余り議論をされていなかった個人識別、これに関してお伺いをしたいというふうに思います。

 ことし二月に、オーストラリアのビクトリア州で死者が二百十名に及ぶ山火事があったことは御記憶のことと思います。このことは我が国でも大きく報道をされましたが、メルボルンにある死因究明施設でありますビクトリア州の法医学研究所、ここで、二百十の全遺体にCTがかけられまして、法医の解剖がされまして個人識別が行われたということは、そのこと自体は余り報道をされていないところでございます。

 我が国では、大規模災害の際、ほとんど解剖が行われていない点、これはきょうは触れないことにいたしますけれども、主に個人の識別、個人識別について話を進めていきたいと思います。

 個人識別については、言いかえれば死亡者の身元の特定でありまして、遺族にとっても、また死因究明の一環としても非常に重要な作業でございます。我が国においても、一九八五年の日航機墜落事故、九五年の阪神・淡路の大震災、それから二〇〇五年のJRの福知山線の事故などで個人識別の重要性が指摘をされてまいりました。それ以外に、身元不明死体、その検視などで身元確認が必要な場合も大変多いわけでございます。

 個人識別については、例えば日航機事故では、指紋、歯形、あるいは着衣、顔貌などで行われましたけれども、最近はDNAの鑑定などによる場合もございます。

 オーストラリアのせんだっての山火事の場合も、火事での損傷ですから、大変激しい損傷のために、識別の手段はいろいろあるけれども、その中でも歯形の所見、歯科の所見が最も有効であった、特に歯のCTが役立ったと言われております。したがって、個人識別の場合の作業は歯科医によって行われている、これがオーストラリアでございます。ビクトリア州では、法歯学者と言われる専門家が主に活躍をしていた。

 一方、では、我が国ではどうかといいますと、日航機事故を契機に、各都道府県に警察歯科医という制度ができておりまして、警察の要請によって身元不明の死体の個人識別を行っている、こういうところでございます。

 オーストラリアの方では法歯学者と言われる専門家が活躍をしている、一方、日本では警察歯科医と言われる人たちが活躍をしている、こういうことであります。

 そこで、警察庁にお伺いをいたしますけれども、一般に、身元不明死体の身元確認作業、身元がわからない場合に、身元確認作業業務というのはどういう流れになって行われるのか、現場と警察歯科医との連携はどうなっているのか、これについて警察庁の方から御説明をいただきたいと思います。

米田政府参考人 委員御指摘のとおり、警察の遺体取扱業務につきましては、死因究明とともに身元確認というのが非常に重要でございます。

 この身元確認の流れでございますけれども、遺体の着衣、所持品、人相、歯牙の形状等身体的な特徴、そして指紋、DNA型鑑定、それから関係者からの事情聴取、こういうことにより行っているわけでございます。

 それで、所持品や指紋採取等によっても身元が判明しない場合には、歯科医師の協力を得て歯科記録、いわゆるデンタルチャートを作成しまして、そして既存の治療データと照合することにより身元を確認するという流れになっております。

 先ほど委員が御指摘になりましたとおり、現在、各都道府県で警察歯科医師会あるいは警察歯科協力医会等の名称で、警察の身元確認作業に協力する歯科医師の会が結成されております。各種事件、事故等が発生した場合、警察が身元を特定することになりますけれども、この歯科医師の方あるいはこの協力医会の方々の御協力によって身元の特定に大きな貢献がなされているところでございまして、今後とも一層緊密に連携をしてまいりたいと考えております。

細川委員 今お話にありましたように、警察歯科医にいろいろと御協力をいただいて身元確認を進めている、こういうことでありますけれども、その警察歯科医というものと法歯学者の違いについて考えてみたいというように思っております。

 この比較は、法医解剖などによって死因究明を行う法医学者、死体の検案を行う警察医というものが今あるんですけれども、この法医学者とそれから警察医の関係と、先ほど言いました警察歯科医と法歯学者との関係によく似ているわけでございます。

 警察歯科医の多くは開業の歯医者さんでありまして、半ばボランティアで身元の確認をしていただいております。一方、我が国の法歯学者、これは大学の歯学部とかあるいは医学部の法医学教室に属しておりまして、教育研究の傍らに個人の識別を行っております。

 そこで、まず文科省にお尋ねいたしますけれども、法歯学あるいは歯科法医学の現状についてどうなっているのか。せんだってのこの委員会で、他の委員からの質問では、法医学については必要なら予算措置も考慮するというような答弁がありましたけれども、法医学じゃない法歯学の方にも同じようにいろいろと予算措置をして考慮していくということ、法医学と法歯学、両方同じようにやっていただけるか、お答えをいただきたいと思います。

戸谷政府参考人 お答え申し上げます。

 歯科法医学教室の現状ということでございますけれども、現在我が国に、歯学部の設置の大学、国立、公立、私立含めまして全体として二十九の歯学部があるわけでございます。

 そのうち、今先生御指摘の歯科法医学を専門に教育研究を行う講座等を有している大学ということにつきましては、東京歯科大学、あるいは日本大学、神奈川歯科大学といったような大学で、かなり限定をされておるというのが実情でございます。また、歯科法医学センターといったような、講座とはちょっとまた別の学内組織を有している大学につきましても、明海大学、鶴見大学、日本歯科大学等々がございますが、先ほどの二十九大学ということから見ますと、これを専門とする講座等の設置については、法医学と比較いたしますと、必ずしも全体として設置されているわけではないという実情でございます。

 他方、多くの歯学部を設置している大学におきまして、では実際に法歯科学に関する講義はどうかということでございますけれども、かなりの大学におきましては、このような大学の先生方の協力とかあるいは法医学の方の先生方の協力も得まして教育についても一部行われておりますけれども、ただ、法医学が医学部全体としてやっているということから比較いたしますと、法歯科学の教育についてはまだ大分差があるということも実情としてございます。

 今先生御指摘のように、この分野につきまして、最近学会ができたりとか、幾つか活動も見受けております。私どもといたしましては、歯科法医学教育といったような点につきまして、基本的には各大学またいろいろな御判断があるわけでございますけれども、各大学の方からそういった教育研究の充実に向けて具体的な支援ということでお話がありましたならば、関係各省とも相談をいたしまして検討してまいりたいというふうに思っております。

細川委員 今御説明をいただきましたけれども、法歯学については非常に貧弱なところでありまして、今お話がありましたように、専門的な講座があるのはわずか三つの大学であります。専門家は二十人というようなことで、我が国の歯科法医学、言い方によっては法歯学の現状は大変貧弱ではないかというふうに思います。

 外国の例で、オーストラリアなんかはどうなっているかということを御紹介いたしますと、人口は二千万人ですけれども、いわゆる専門家、法歯の学者が十四人いる。人口でいくと日本なんかより大分数が多いということだろうと思います。その数だけではなくて、オーストラリアでは、歯科の医師免許を取得した後に、法歯学を十八カ月受講いたしまして法歯学者として認められるということ、またアメリカでは約百名の有資格者がいるということであります。

 我が国では、わずかの歯学部と法医教室にいるぐらい。先ほど言いましたように、三大学であります。そういうことで非常に貧弱でありまして、今ちょっとお話がありましたけれども、学会そのものもこれまでなかったということで、日本法歯科医学会というのが一昨年、これはやっとできまして、この点については私はいいことであって、この分野の発展も期待ができるというふうに思っております。

 そこで、警察庁から、警察歯科医とのいろいろな協力関係について先ほども御説明をいただきましたけれども、法歯学とそれから警察歯科医との関係というのは必ずしも法医学者と警察医の関係と同じとは言えないということなんですけれども、司法解剖の鑑定は法医学者が行って、警察医は主に死体検案書の作成に携わるわけでありますけれども、身元確認の場合には、大体警察歯科医が鑑定を行っております。つまり、我が国では法歯学者である専門家、歯科法医学者ともいいますけれども、この専門家が個人識別の実務の中でしっかり位置づけられていない、認知されていないんじゃないかというふうに私は思っております。

 国際標準では、専門家としての訓練を受けた者が、CTやレントゲンによってデンタルチャートと言われるいわば歯の地図を作成いたしまして、そして生前の歯科の所見と比較して身元を確定する、決定をしていく。このことは、非自然死体の医学的な死因究明とそして個人識別、これを法医学のさまざまな分野で全体で担っている、このことの一環でもあるというふうに思っております。

 そこで、警察庁でも、そうした事情を理解して、身元確認の実務について、これまでに各県ごとに決めていた歯牙鑑定の謝金について、標準的な目安を設けたというふうにも聞いておりますけれども、これはそういうことになったんでしょうか。

米田政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、このたび、警察庁におきましても、司法解剖に係る謝金等を参考といたしまして、歯牙鑑定で例えばデンタルチャートの作成あるいは鑑定書の作成等、その実施する内容に応じて標準的な単価を設定いたしました。これに基づきまして、各都道府県警察において、謝金等を歯科医の方に支出するということになります。

細川委員 ぜひ積極的に歯牙鑑定、これは予算措置もつけていただいて、警察歯科医が活躍できるようにしてもらうとともに、法歯学者がいろいろと活動できるようにぜひ進めていただいて、身元確認、これをきちっとやっていただけるようにぜひ進めていただきたいというふうに思います。

 歯の鑑定といいますか、歯形がどうなっている、歯の治療をどういうふうにしたかというような、歯によって身元が確認をできる、これは外国の方では非常に進んだ形でそれが行われておりまして、ぜひ我が国でも、その方向にしっかり大臣も進めていただけたらというふうに思っております。

 きょうは大変細かい質問になりましたけれども、ちょっと日ごろから私が関心を持っていた歯の鑑定、それらによって身元確認、これは、日本でも大災害が起こって一体何が何だか判別がつかないような、そういうようなことも起こる可能性もありますので、きょう議論したようなことについて、いわゆる身元調査についても科学的に進めていくように、ぜひ進めていただけたらというふうに思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 次に、滝実君。

滝委員 無所属の滝実でございます。

 児童虐待の問題につきまして、関係省庁から状況をお聞きさせていただきたいと存じます。

 大阪で、小学校四年の児童が虐待を受けて殺害された、こういう事件が起きました。御案内のとおり、児童虐待防止法が施行されて十年になるわけでございますけれども、この間、児童虐待ということについての認識がかなり徹底してきたようにも思われるわけでございますけれども、相変わらずいわば悲惨な事件が起きるということについて、どうしたら防げるのかということを改めて問いたい、こういう観点から質問をさせていただきます。

 まず、警察庁に、家庭内暴力によって児童が被害者として出てきた刑事事件というのは最近ふえているのか、ふえていないのか、その辺のところからお尋ねをしたいと思います。

園田政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年、平成二十年の児童虐待事件の検挙状況を申し上げますと、検挙件数は三百七件、検挙人員が三百十九人、それから被害児童数が三百十九人となってございます。このうち、検挙件数と被害児童の数でございますけれども、これは、統計をとり始めた平成十一年以降、最も多い状況になってございます。

滝委員 一般的に、世の中が景気が悪くなったりあるいは不安、動揺が広がってくると、それが児童虐待としてあらわれる、こういうふうに言われているわけでございますけれども、最近の状況として、刑事事件になってきた事件が昨年は過去十年間で一番多かった、こういうことでございます。それは、一つには虐待ということについての認識が広がってきたとも言えるわけでございますけれども、やはり社会情勢ということもあるいはあるのかもしらぬ、こういうふうに判断されるわけです。

 そこで、今回の大阪の子供の事件は、報道で知る限りにおいては、学校もある程度知っていた、こういうことでございますし、しかし、もう一歩突っ込めば、学校から児童相談所あるいは社会福祉事務所等関係機関への連絡がなかったというふうにも報道されているわけです。

 そこで、これは厚生労働省になるんでしょうか、学校側が子供の家庭での異常な状況を知りながら、学校から児童相談所へ通告しない場合もありますし、通告する場合もある。通告しない場合はもちろん厚生労働省も数字として把握できないわけですけれども、学校から児童相談所へ年間どのぐらい通告があるのか、その辺のところをお知らせください。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省が全国の児童相談所に調査をいたしまして把握しております福祉行政報告例、この調査報告によりますと、十九年度におきまして学校から児童相談所に寄せられた児童虐待の相談件数は約四千九百件でございます。

滝委員 四千九百件というのはかなり大きな数字のように思うわけです。

 ただ、先ほど警察庁から御答弁いただきましたように、刑事事件として二十年度では三百十九件あった、こういうことでございますけれども、学校から児童相談所へ通告があったのは四千件を超えている。あるいは、その中で実際に刑事事件として出てきたのが何件とか、そういう刑事事件と児童相談所への通告事件が必ずしも分析されていないんですね。そこのところに何か問題があるようにも思うんです。

 具体的に、学校から児童相談所へどの程度連絡できていないのか。連絡できていないけれども今回のように刑事事件として悲惨な事件につながっているというところの解明が不十分だと思わざるを得ないわけでございます。最近は、ネットワークをつくって、関係省庁が地域でもってこの問題に取り組むという姿勢が出てきているようでございますけれども、その辺のところをもう少しきちんとしていっていただきたい、こういう感想を持たざるを得ませんので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 もともと、児童虐待は家庭内で起こるんですね。ですから、当然、加害者は実母か実父かあるいは養父か養母か、こういうことに大体なるわけでございます。

 ところで、こんな状況でございますから、インターネットの世界で今回の大阪の事件をどういうふうに見ているかというと、家庭内の事件だから、隣近所がこの問題について通告するとかしないとか、そういうことがなかなか難しい事件じゃないのということに大体やりとりがされているように見受けられます。

 そこで、厚生労働省にお尋ねするわけでございますけれども、家庭内で起きる事件ですから、ほっておけば通告されずに終わってしまう、そこのところを厚生労働省は具体的にどういうような指導をしているのか、お尋ねしたいと思います。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 児童虐待の防止のためには、発生予防から早期発見、早期対応、そして児童の保護、支援という切れ目のない総合的な支援を行っていくことが重要でございますけれども、とりわけ早期発見、早期対応ということが、御指摘のとおり、家庭という外部から見えにくい環境で行われる児童虐待の対応において極めて重要なことでございます。

 このため、児童虐待防止法におきまして、近隣住民、知人、親族などを含めまして、広く一般国民に対しまして、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合に、速やかにこれを市町村、あるいは児童相談所に通告する義務を課しているところでございます。

 また、その場合におきまして、近隣住民あるいは知人、親族などを含め、虐待の通報をちゅうちょしないようにするためにも、児童相談所や市町村の担当部署の職員には通告者を特定されるものを漏らしてはならないという規定もあるところでございます。

 さらに、学校あるいは児童福祉施設など児童の福祉に業務上関係のある団体などにつきましては、児童虐待を発見したりしやすい立場にあることも自覚いたしまして、児童虐待の早期発見に努めなければならないというふうに規定されているところでございます。

 児童虐待防止法におきましては、広く関係機関あるいは住民などから寄せられる情報に基づきまして、児童虐待の早期発見、早期対応に資する仕組みとしているところでございます。

 実際に全国の児童相談所に寄せられた児童虐待に関する相談の経路別件数を見てみますと、福祉事務所が約一六%、もちろん、家族からも一四%、近隣、知人からも一四%とございますけれども、学校から一二%、警察などから一〇%というふうになっているところでございます。

 厚生労働省といたしましても、関係省庁とも協力をいたしまして、児童虐待の早期発見、早期対応のための相談対応の強化につきまして全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。

滝委員 今の御答弁を聞いていてわかることは、とにかく近親者だけが通告を義務づけられているんじゃなくて、学校とかそういうところも、耳にすれば当然その判断において通告をしていかなきゃいかぬ、こういうことですね。それから、近隣の住民の方々も、虐待ということがわかれば当然通告義務がある、こういうふうなことが児童虐待防止法の条文になっている、こういうことですね。

 そこで、もう一つ。問題は、どういうのが児童虐待かというのでなかなかもう一歩前に進めないところがあるんじゃないかと思うんです。あれは平成十六年の改正ですか、児童虐待されていると思われるケースについても通告義務を課しているのではなかったでしょうか。そこのところをもう一遍正確におっしゃっていただきたいと思います。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十六年の児童虐待防止法、児童福祉法の改正におきまして、御指摘のとおり、通告義務の範囲の拡大を行いまして、虐待を受けたと思われる場合も対象とするというふうなことになっておるところでございます。

滝委員 ありがとうございました。

 インターネットの世界では、とにかく家庭内のことだから近隣の人たちは踏み込めないと。それが、事件が起きると、後になって、学校側は気がついていたけれどもそこまでいっているとは思わなかったとか、あるいは近隣の人たちも、家庭内のことだからそれをとやかく通告するのもどうかといって腰が引けている、こういうようなことになりがちでございますから、そこのところをもう一遍、私は徹底した方がいいように思います。

 最後に、時間が少しありますので、法務大臣から法務省としての対応について、今後どうされていくのかをひとつお伺いしておきたいと思います。

 というのは、今申しましたように、学校も、ある意味ではこれは責任なんですね。ある程度知っていた。しかも、条文上ではありますけれども、虐待されていると思われるケースも通告義務があるんですね。それから、近隣の人たちも、そういう虐待が行われているんじゃないかというふうな節があれば通告を義務づけられているのが、これが児童虐待防止法の条文の趣旨なんですね。必ずしも、きちんと正確に念を押して書いているわけじゃありませんけれども、少なくとも改正の経緯から見るとそういうふうに読めるわけでございます。

 そこのところを通じて、やはりこの問題は、今警察が捜査している最中でございますけれども、法務省当局としても、今回の経験にかんがみて、少し踏み込んだ対応をしていただく必要があるのではなかろうかなという感じがしますので、法務大臣の御感想をお聞かせいただきたいと思います。

森国務大臣 いわゆる児童虐待につきましては、人権擁護上看過することのできない重要な問題であると認識しております。

 法務省といたしましては、人権擁護機関において、人権擁護委員の方々の御協力などもいただきながら相談体制の充実に努めるとともに、児童虐待に関する講演会や研修会の開催等の啓発活動を行ってまいりたいと思っております。

 そして、児童虐待を認知した場合は、速やかに児童相談所、警察などと連携を図るとともに、人権侵犯事件として所要の調査を行い、事案に応じた適切な措置を講ずるなどいたしまして、問題の解決に向けて積極的に取り組んでいきたいと思っております。

 さらに、児童虐待の事案が刑法上の傷害罪、暴行罪などの刑罰法規に当たる場合には、検察当局においても、警察と連携の上、事案に応じ適切な捜査処理及び科刑の実現に努めていくものと思っております。

滝委員 大臣の決意のほどをお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。

 これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

山本委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律案の審査のため、来る五月八日金曜日午後一時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る五月八日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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