衆議院

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第12号 平成21年6月26日(金曜日)

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平成二十一年六月二十六日(金曜日)

    午前九時四十五分開議

 出席委員

   委員長 山本 幸三君

   理事 大前 繁雄君 理事 桜井 郁三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 棚橋 泰文君

   理事 谷畑  孝君 理事 加藤 公一君

   理事 細川 律夫君 理事 大口 善徳君

      稲田 朋美君    近江屋信広君

      河井 克行君    木村 隆秀君

      北村 茂男君    笹川  堯君

      杉浦 正健君    平  将明君

      長勢 甚遠君    葉梨 康弘君

      萩山 教嚴君    早川 忠孝君

      牧原 秀樹君    武藤 容治君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      柳本 卓治君    若宮 健嗣君

      石関 貴史君    枝野 幸男君

      小宮山洋子君    園田 康博君

      中井  洽君    富田 茂之君

      丸谷 佳織君    保坂 展人君

      滝   実君

    …………………………………

   議員           葉梨 康弘君

   議員           森山 眞弓君

   議員           枝野 幸男君

   議員           小宮山洋子君

   議員           西村智奈美君

   議員           細川 律夫君

   議員           吉田  泉君

   議員           富田 茂之君

   法務大臣         森  英介君

   法務大臣政務官      早川 忠孝君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 園田 一裕君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   参考人

   (首都大学東京法科大学院教授)          前田 雅英君

   参考人

   (弁護士)        一場 順子君

   参考人

   (財団法人日本ユニセフ協会大使) アグネス・チャン君

   参考人

   (上智大学文学部新聞学科教授)          田島 泰彦君

   法務委員会専門員     佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十三日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     北村 茂男君

同月二十六日

 辞任         補欠選任

  清水鴻一郎君     葉梨 康弘君

  武藤 容治君     若宮 健嗣君

  矢野 隆司君     牧原 秀樹君

  古本伸一郎君     園田 康博君

  山田 正彦君     枝野 幸男君

  神崎 武法君     丸谷 佳織君

同日

 辞任         補欠選任

  葉梨 康弘君     清水鴻一郎君

  牧原 秀樹君     矢野 隆司君

  若宮 健嗣君     武藤 容治君

  枝野 幸男君     山田 正彦君

  園田 康博君     小宮山洋子君

  丸谷 佳織君     富田 茂之君

同日

 辞任         補欠選任

  小宮山洋子君     古本伸一郎君

  富田 茂之君     神崎 武法君

    ―――――――――――――

六月二十四日

 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案(細川律夫君外四名提出、衆法第一二号)

同月二十二日

 離婚後の共同親権・両親による共同での養育を実現する法整備に関する請願(田中良生君紹介)(第三四三三号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三四三四号)

 同(石井郁子君紹介)(第三四三五号)

 同(笠井亮君紹介)(第三四三六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三四三七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三四三八号)

 同(志位和夫君紹介)(第三四三九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三四四〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三四四一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三四四二号)

 登記事項証明書交付申請に係る手数料の引き下げに関する請願(太田昭宏君紹介)(第三四四三号)

 同(三井辨雄君紹介)(第三四四四号)

 同(中川秀直君紹介)(第三五四五号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(山田正彦君紹介)(第三五四四号)

 子どもの保護に名を借りた創作物の規制、捜査機関による濫用の危険性が高い児童ポルノの単純所持規制反対に関する請願(辻元清美君紹介)(第三五六五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案(森山眞弓君外二名提出、第百六十九回国会衆法第三二号)

 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案(細川律夫君外四名提出、衆法第一二号)


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 第百六十九回国会、森山眞弓君外二名提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案及び細川律夫君外四名提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。森山眞弓君。

    ―――――――――――――

 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

森山(眞)議員 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党及び公明党の提出者を代表して、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 まず、本法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 児童ポルノの所持、提供等の行為は、描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず、このような行為が社会に広がることにより、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長し、ひいては身体的及び精神的に未熟である児童一般の成長に重大な影響を与え得るものであります。したがって、児童ポルノについては、法律の施行状況や児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえつつ、厳しく規制していかなければなりません。

 私は、平成十一年に各党議員の御協力をいただきまして児童買春、児童ポルノ禁止法の成立に骨を折りましたが、あれから十年たちまして、世の中の様子は大きく変わりました。特に、インターネット等の発達により、映像が瞬時に世界じゅうに広がるようになりました。この法律が施行され、さらに平成十六年の改正によって厳罰化され、それなりに効果を上げてはきましたが、今日の状況は、児童の売買等に関する児童の権利条約選択議定書等の国際条約を初め、児童ポルノをより厳格に取り締まるべしとする国際的潮流があり、我が国の現行法については、G8諸国のうち六カ国が罰則をもって禁止している児童ポルノの単純所持が禁止されておらず、このことが児童ポルノの蔓延を助長しているとの国内外の批判が高まっており、我が国の信用にもかかわる問題になっています。また、インターネットを通じた児童ポルノの拡散による被害の拡大についても看過できない状況となっております。

 そこで、児童ポルノをめぐるかかる国内外の状況と、平成十六年改正時に三年を目途とする検討規定が置かれたことを踏まえ、児童ポルノについてさらに厳格な規制を設け、もって児童の権利の擁護に資することとするため、本法律案を提出することとした次第であります。

 次に、本法律案の内容について御説明申し上げます。

 第一に、適用上の注意規定を明確化しております。すなわち、この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないものとしております。

 第二に、児童ポルノ所持等の禁止規定を設けております。すなわち、何人もみだりに児童ポルノを所持等してはならないものとしております。

 第三に、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等についての罰則を設けております。すなわち、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持した者は、一年以下の懲役または百万円以下の罰金に処するものとしております。なお、罰則の適用については、施行後一年間は適用しないということにしております。

 第四に、インターネットの利用に係る事業者の努力規定を設けることとしております。すなわち、インターネットの利用に係る事業者は、捜査機関への協力、管理権限に基づく情報送信防止措置その他のインターネットを利用した児童ポルノの所持、提供等の行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとしております。

 第五に、児童ポルノに類する漫画等、すなわち、漫画、アニメ、コンピューターグラフィック、疑似児童ポルノの規制や、いわゆるブロッキングの措置に関する検討規定を設けることとしております。すなわち、児童ポルノに類する漫画等の規制及びインターネットによる児童ポルノに係る情報の閲覧の制限については、改正法施行後三年を目途として、児童ポルノに類する漫画等と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究及びブロッキングの技術の開発の状況等を勘案しつつ検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとしております。

 以上が、この法律案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

山本委員長 次に、吉田泉君。

    ―――――――――――――

 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

吉田(泉)議員 おはようございます。

 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、民主党・無所属クラブの提出者を代表して、その趣旨及び内容について御説明申し上げます。

 まず、本法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 児童ポルノは、児童に対する性的搾取及び性的虐待であって、その心身に有害な影響を与えるものであり、児童に対する重大かつ深刻な人権侵害であると言えます。しかしながら、従来の法律では、保護すべき子供の権利が必ずしも明確にはなっておりません。

 そこで、前回、平成十六年の改正時に、法律の施行状況や児童の権利の擁護に関する国際的動向等を踏まえて、三年を目途として検討すべき旨の規定が置かれたことから、児童ポルノに係る行為についてさらに厳しい規制を設けるとともに、心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する制度の充実及び強化を図り、もって児童の権利の擁護に資することとするため本法律案を提出することとした次第であります。

 次に、本法律案の内容について御説明申し上げます。

 第一に、「児童ポルノ」の名称の改正及び定義の変更であります。児童買春、児童ポルノ禁止法が、風俗犯に関する法律ではなく、あくまでも児童に対する性的搾取及び性的虐待に係る行為等の処罰に関する法律であることを明確にするため、その対象である「児童ポルノ」の名称を「児童性行為等姿態描写物」に改めることとしております。これに加え、その定義を明確にするため、第二条第三項第二号を「殊更に他人が児童の性器等を触り、若しくは殊更に児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態又は殊更に児童の性器等が露出され、若しくは強調されている児童の姿態」との客観的な要件に改めるとともに、同項第三号を削除することとしております。

 第二に、児童性行為等姿態描写物取得罪の新設等であります。

 その一は、児童性行為等姿態描写物の取得について罰則を設けております。すなわち、みだりに、児童性行為等姿態描写物を有償でまたは反復して取得した者は、三年以下の懲役または三百万円以下の罰金に処するものとすることとしております。

 その二は、児童性行為等姿態描写物の製造の罪について処罰の範囲を拡大しております。すなわち、提供目的以外の児童性行為等姿態描写物の製造の罪について、意図的に児童に一定の姿態をとらせて製造した場合に限らず、盗撮等の場合にも処罰範囲を拡大することとしております。

 その三は、適用上の注意規定を明確化しております。すなわち、これらの罰則の新設等にかんがみ、この法律の適用に当たっては、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護し、その権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して、他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない旨を明確にすることとしております。

 第三に、罰則の法定刑の引き上げであります。すなわち、児童買春罪、児童性行為等姿態描写物等提供罪等の罰則の法定刑をすべて引き上げることとしております。

 第四に、心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する制度を充実及び強化することとしております。すなわち、心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置を講ずる主体として、厚生労働省、都道府県、児童相談所、福祉事務所及び市町村を例示し、措置を講ずる主体及び責任を明確化することとしております。これに加えて、社会保障審議会は、児童買春や児童性行為等姿態描写物に係る行為により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとすることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

山本委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山本委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官園田一裕君、法務省刑事局長大野恒太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、本日午後二時、参考人として首都大学東京法科大学院教授前田雅英君、弁護士一場順子君、財団法人日本ユニセフ協会大使アグネス・チャン君、上智大学文学部新聞学科教授田島泰彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

牧原委員 おはようございます。自民党の牧原でございます。

 きょうは、私、本来は法務委員会のメンバーではないんですが、特に御指名を受けて、こうした大切な法律についての質疑の機会をいただきましたことに、まず感謝を申し上げます。

 この法律は、非常に重いということでございます。多くの皆様の人生や、あるいは権利や、あるいは人権や、こうしたことに物すごくかかわる、大変重くて、しかしながら大変重要な法律であるということをかみしめております。両案の作成者の皆様におかれましては、この大変重要な、大変重いテーマについて、法律の作成という形で御尽力をいただいておりますことに、まず心から敬意を表させていただきたいと思います。

 トップバッターでありますので、まず最初に、改めて議論の前提として、平成十一年、そして十六年に続いて法改正を行うということについての理由をお聞きしたいと思います。

 今、提案理由説明の中で、それぞれに、平成十六年までの法律ではまだまだ足りない、さらに厳しい規制を設けて、そしてそのことが児童の権利の擁護に資するんだということがともに述べられたような気がしております。このような理解、つまり今回の法案というのは、基本的には、今までの法案でまだ足りなくて、より規制を厳しくして、そして、もって児童の擁護に資するようにしたいんだ、こういうことでよろしいでしょうか。まず、民主党案の提出者の皆様にお伺いしたいと思います。

西村(智)議員 お答え申し上げます。

 冒頭、これは全員の共通の思いだと思いますけれども、児童ポルノは児童に対する性的虐待以外の何物でもないということであります。被写体となった児童は、撮影されたことのみならず、これが広く流通し、拡散していくことによってさらに被害を受け続けるものであります。児童ポルノによる被害を受けている子供たちのことを考えますと、私どもはしっかりとした法改正を一刻も早く行わなければならないと考えていたところでありまして、そういう思いで、平成十一年の法律制定時、また平成十六年の改正時と取り組んでまいりました。

 他方、刑罰法規であります児童ポルノの定義規定について、抽象的であいまいな主観的要件を中心とする規定のもとで捜査権力が不当でないものまで処罰するようなことがあってはならないし、また逆に、運用する当局にとっても、あいまいな規定のもとでは腰が引けたような運用になってしまって処罰すべき行為が処罰されないということにもなりかねません。こうしたあいまいさが、例えば小学生や中学生の水着姿の写真集が広く流通しているような現状にも影響していると思われます。

 加えて、いわゆる単純所持を処罰することについては、気づかないうちにメールで送りつけられていたなど、何らかの悪意で知らない間に持っていた場合なども不当に逮捕される事態が起こりかねないということであります。

 与党案では、目的犯という形で限定を加えておりますが、定義規定のあいまいさを残したままで所持を処罰し、さらに、自己の性的好奇心を満たす目的という主観的要件を課すことになれば捜査機関の運用に対する不信感はぬぐい去れないし、また、これを避けようとすれば過度に抑制的な運用に陥ることにもなりかねません。真に悪質なものについては処罰されるようにしながら濫用の危険性を排除するものでなければならないと考えておりまして、こうした考え方のもとで初めて、過度に抑制的な運用に陥ることなく処罰すべき事例が適切に処罰されることになると考えております。

 そういった背景で民主党案を提出しておりまして、具体的な全体の考え方については、また御質問いただければ答弁をいたします。

牧原委員 次に、今伺いましたが、同じ十六年に続く法改正についての理由を与党の提出者の皆様にお伺いします。

葉梨議員 お答えいたします。

 総論においては民主党さんが言われていることと与党が言っていることはそれほど違いがないように聞かれるかもわかりませんが、各論において相当違いがあるというふうに私は思っておりまして、そこら辺のところは本日の質疑でも明らかにさせていただきたいというふうに思います。

 私、個人的な経験から申し上げますと、平成九年から平成十一年までの間、警察庁少年課の理事官というのをやっておりまして、また、この制定時の立法過程において事務方からかかわらせていただきました。また、平成十六年の法改正においてはやはり提案者の一人として参議院でも答弁をさせていただいたというようなこともございますので、その経緯等を申し上げますと、もともと、日本の国は児童ポルノに対して甘いんじゃないかというような国際的な非難が相当ございました。

 一九九六年のストックホルム会議、これに当時社民党の清水澄子議員が出て、大変な国際的な非難を受けた。そういうようなところから、やはり我々としても、子供を物として、あるいは性的な虐待の対象として見るということ、これはあってはならないんだということで、この児童買春、児童ポルノ法の制定を見たわけですけれども、当時から定義等について、あるいは目的等についてしっかりと厳格な運用ができるようにというような配慮がなされたこともございます。

 ですから、この法律においては、例えば刑法にあるような、卑わいですとか、あるいはわいせつ物的なような表現は使わないで、できるだけ具体的に運用ができるような法律の定義ということで児童ポルノの定義も工夫をしたというようなことを覚えております。

 そして、その上で、当時から単純所持についてどうだという議論は国際的にもあったんですけれども、児童ポルノの関係について言うと国内的なコンセンサスがまだできていないだろうということで、検討過程ではございましたけれども、単純所持の規制というのは制定時には盛り込まれなかった。平成十六年にやはり与党から提出いたしましたのも、単純所持については罰則を設けないで一般的な禁止を置きましょうというような規定を提案させていただいたんですけれども、これも与野党協議の中で、基本的には罰則を強化するという形で単純所持の一般的禁止までは盛り込まないという形になったわけです。

 しかしながら、先ほど森山筆頭提案者からもお話がございましたように、非常に世の中が進んでいるわけですね、特にインターネットの普及等で。そして、さらにはこれで蓄積された児童ポルノというのは本当に大量なものがございます。これをそのままにしておいて、やはりそれを写された子供たちというのは、おびえて一生過ごさなきゃいけないんじゃないか。だから、やはりここは、十一年、十六年と議論した中で単純所持の禁止というところにしっかり踏み出していくということが今の段階ではどうしても必要になってくるんじゃないかというような思いから今回与党案を提出させていただいたわけです。

 翻って、民主党については、またこの質疑の中でもいろいろと質問、答弁等させていただきたいと思いますけれども、基本的に、今明らかな児童ポルノとして規制されているものが、民主党案によれば相当部分児童ポルノとして規制されなくなります、野放しになります。そういうようなことで本当に子供の保護が図れるのかどうかということがありますし、また、先ほど、蓄積されている児童ポルノについてどうだということについて議論を避ける形で、反復あるいは有償の取得ということを禁止する、それはちょっと取り繕い、びほう策ではないかというような感じを私自身は個人的には持っております。

 捜査の運用の過程あるいは捜査がしっかりと行われるような形にするというのはまさにこの国会で議論すればいい話であって、捜査に対する不信があるからといって、定義を狭めたり、あるいはびほう策に陥ることが本当にあっていいんだろうかというような感じを私は個人的には持っております。

 十一年、十六年、そして今回の提案の経緯については以上でございます。

牧原委員 今伺った理由、背景によりまして、児童の擁護に資するという観点、両方が思いをお持ちでありながら、若干各論で違っているということがわかりました。

 まず、今各論で違っていることのそれぞれの中で挙げられました単純所持という新たな規定についてお伺いをしたいと思っております。

 今、葉梨先生の方からも若干御回答がありましたけれども、平成十六年の改正のときの質疑におきましては、吉川春子委員に対する葉梨先生の見送りについての答弁の中で、やはり、国民意識の高揚や運用の積み重ねがその当時としてはまだ必要だという話がございました。この国民意識の高揚や運用の積み重ねが必要とされていたものが具体的に今回どう変わったのかということについて、もう少し国際的なことも含めて御説明いただけますでしょうか。

葉梨議員 重複することになるかもわかりませんけれども、国際的には、当時、平成十一年に法律を制定して、平成十二年に児童の権利条約の選択議定書というのが採択されたわけですけれども、当時から、単純所持についても国際的にはやはりある程度規制していくんじゃないかというような一般的な世論、国際世論みたいなものはございました。ただ、日本国内においてはまだまだそこまでいっていないということで、先ほど申し上げましたように、平成十一年の提案では単純所持の禁止というのを取り下げたわけです。

 平成十六年でございますけれども、これは私も答弁をさせていただいたわけでございますが、まさにその次の段階としては、罰則を強化するけれども、国際的な動向はどんどん進んでおりますし、また、国内的にもコンセンサスを広げるという努力をしていかなきゃいけない。そしてその中で、次の改正点、検討点としてはやはりこの単純所持の禁止というところに本当に真正面から取り組むということが必要じゃないかという、まさにそのステージに今あるんだろうと思います。

 国際的に申し上げますと、これはもうよく知られているとおり、G8諸国の中でロシアと我が国だけが単純所持についての禁止を設けていないというようなこともございます。そして、さらには我が国発の児童ポルノというのは、提供は禁止されているといいながら、今現在非常にネット社会が進んでおりまして、提供の禁止をされていながら国際的に何十万回も児童のポルノ画像がダウンロードされる。それが日本発である。

 ですから、先ほど申し上げましたように、そういったような蓄積されている児童ポルノについて、その被害に遭った子供たち、これについてしっかりと対処するという実態的な理由と、やはり、今現在、提供を禁止してそれを厳しくすればいいじゃないかというような意見もあるでしょうけれども、現実の問題として、日本発の児童ポルノというのが全世界的にこれだけ広がってしまって、世界的にこれだけの非難を受けているという状況に対応していくためには、今回、真正面からこの児童ポルノの単純所持の禁止、これに対して取り組まなければならないというように考えております。

牧原委員 よくわかりました。

 今の背景の中で、今回の与党案、そして民主党案というものが出てきているわけですけれども、今のお話によれば、多分与党案の方が規制が幅広いというか厳しいということなのかなというふうにお伺いをしましたが、この点について、今回の与党案の単純所持というものと、民主党案の反復あるいは有償での取得というそれぞれ新設されている罪がございますけれども、この対比において、具体的な事案ではどういうような差が出るのか。民主党案ではこんな事例がカバーできないんじゃないか、私たちとしてはこんな事例をカバーするために単純所持が必要である、この点について教えていただきたいと思います。

葉梨議員 単純所持の禁止について、私ども二つの提案をさせていただいております。

 一つは、一般的な禁止規定として、みだりに児童ポルノを所持、保管すること、これについては一般的な禁止規定を置いております。これについては罰則はございません。そして、自己の性的好奇心を満たす目的で所持、保管をする者については一年以下のということで、罰則の規定を置かせていただいている、この二段構えということになります。

 これはどういうことかといいますと、みだりにというのは正当な理由なくということなんですけれども、一般的な禁止規定を置くということ、それと、その中でも性的好奇心目的というのは罰則を付するということで、例えば、他人の性的好奇心を満たす目的、例えばお父さんが見ている、お父さんが見たいということで子供が無理やり持たされている、そんなことで子供を罰するわけにもまいりませんし、また、別の正当な目的、例えば捜査目的、これは正当な理由にもなりますし、みだりにということにも、また性的好奇心を満たす目的にもなりませんけれども、例えば捜査目的で児童ポルノを持っていますよというようなものまでこれを禁止するということではございません。

 ですから、そういった意味では、みだりに児童ポルノを所持すること自体を罰則をもって禁止するべきだという意見もあるんですけれども、基本的にこの法律というのは、ペドファイル、小児性愛者との戦いということでございますから、自己の性的好奇心を満たす目的で所持をしているというような場合を罰則をもって禁止しているというわけなんです。

 そして、民主党案についてのお尋ねでございますけれども、まず一つは、一般的な考え方として、児童ポルノを持つこと、これが悪いことである、つまり我が国として悪いことであるというような宣言、これは一切ございません。悪いことでないということであれば、それはいいことなんです。

 ですから、そういった意味でいいますと、児童ポルノを持ち続けても構わないということ、今の法律もそうはなってはいるんですけれども、それを議論する過程で、児童ポルノを今後持ち続けても構わないということを、まさに真正面から単純所持の禁止ということをこの国会で議論して、そしてその中で民主党案がいいということになれば、それを国会が認めてしまうということになってしまうのかなというような感じもいたします。

 また、有償でまたは反復で、そこのところは、私は民主党の提案者ではございませんので、民主党案について有権解釈をする立場では、立法者として解釈をする立場ではありませんけれども、拝見するところ、有償で取得をする、それから反復で取得をするというような行為、これを禁止するだけということになりますと、先ほど言っていましたように、持ち続けても構わないということですね。それで、だれだれさんの子供時代の写真を私はたくさんうちに抱えているんですよというようなことをそこらじゅうで言いふらして回ったって構わないということですね。テレビで言ったっていいし、新聞で言ったっていいし。

 そして、さらには、ビデオを他人に見せる、提供じゃありません、単に見せるだけですから。自分のうちに、ある友人を呼んできて、児童ポルノのビデオを他人に見せる、そして見せてお金を取る。これは営業としてやりさえしなければ、この法律は風俗営業ではございませんので、営業を規制しているわけじゃありませんけれども、少なくともこの法律は、例えばお金を取ったとしたって、そのような行為は多分禁止することはできないんだろうというふうに思います。

 また、家宝として児童ポルノを持っている。大量の児童ポルノを、これを相続によって取得する。相続というのは反復がありませんね、一回限りですから。そういった場合もこの法律によっては禁止することはできないんだろうというふうに思います。

 ですから、一般的な禁止規定を置きながら、ペドファイルの方々が自己の性的好奇心を満たす目的でこれを所持するというものについてはやはり罰則をもって対処するという、それぐらいのところまでは、我々としても、日本の子供あるいは世界の子供、これを守るために踏み込んでいかなきゃいけないんじゃないかというふうに考えています。

牧原委員 よくわかりました。

 所持のところと取得という能動的な行為の違いで差が出るということだと思いますが、逆に、民主党の案ではこういうことがカバーできるんだけれども、今の与党案ではこんなことがカバーできないじゃないか、こんなことが民主党案ではあるんでしょうか。

枝野議員 私どもも、児童ポルノ、特に悪質な児童ポルノを性的好奇心を満たす目的で持っているということがいいことであると思っているわけではありません。

 ただ、所持という構成要件は、どういう手法で入手をしたかということが全く問われません。提案理由等でも御説明をしたかと思いますが、例えば、インターネットをつないでいてメールをやっていれば、皆さんのところにも多々わけのわからないメールが飛び込んできます。一件一件内容をチェックして、そこに児童ポルノが含まれているのかどうかということをチェックされておられる方はいらっしゃらないだろうというふうに思いますし、仮にパソコンのごみ箱に捨てたとしても、映像は残っておりますから、所持という状態は続きます。

 仮にごみ箱を空にしても、すぐに復元できる状態でパソコン上に残りますから、これを本当に所持じゃない状況にしようと思ったら、復元不可能なところまで削除をするということは、普通、パソコンを使ってネットをつないでいる人間からすれば、ほぼ不可能を強いるということになります。しかしながら、こうしたことまですべて所持に入ってしまう。

 その上で、所持の故意という観点からすれば、これは未必の故意であっても故意が認められますから、つまり、多分そういってむやみやたらに送られてきているわけのわからぬメールの中には児童ポルノのような種類のものが含まれているかもしれないなということは、ほとんどの皆さん、ネットをつないでいらっしゃる方は、逆に言えば知っていらっしゃるわけでありますから、未必の故意は成立をします。

 そうすると、あとは性的好奇心を満たす目的という一点で、そうやって勝手に送られてきたものがどこかに残っていたものと、それからまさに性的好奇心を満たす目的で排除をされるべき対象、処罰を与えるべき対象とが区別をされるということになりますが、この点について外形上違いを判断する方法はなかなか困難、つまり内心の問題でありますので、最終的には、一般的に考えれば自白の有無というところに行かざるを得ないのではないだろうかというふうに思っております。

 自白の有無ということになれば、これはもう皆さん御承知のとおり、足利事件を初めとして、罪を犯していなくても、あるいは今回の足利事件の場合は暴力等はなかったかもしれないという状況であったとしても、やっていないことを詳細に自白をしてしまうというようなことが普通に起こり得る捜査の手法と捜査の手続というのが我が国の状況でありまして、こういった意味では、国際的な標準、スタンダードに我が国の刑事司法手続がまだそろっていないという状況がありますので、できれば、その問題についてこそ法務委員会で先にやっていただければ、そこは国際標準に並んだ時点で、では、こちらの方の国際標準をどうするのかということがむしろ筋かなというふうに思っております。

 いずれにしても、そこで性的好奇心を満たす目的とか、所持の故意とかということについて自白に頼らずに立証しようと思ったらどうするのか。それは、入手のプロセスを立証するしかないということに結果的にならざるを得ない。

 である以上は、結局、そういった場合の虚偽の自白による冤罪等を防ぐという観点からは、いずれにしろ、自白に頼らないならば、入手のプロセスについて立証せざるを得ないということを考えたときに、その入手そのものを可罰的な行為として取り上げれば足りるというふうに考えました。その限りでは、私どもは、冤罪になる可能性のものが与党案に対してそれよりも少ないというふうに思っておりますが、それを超えて我々の案の方が小さいということはないというふうに思っております。

牧原委員 済みません、今、質問は、構成要件でいうと所持、取得ですね、それぞれのまず客観的な行為についての質問だったので、若干、内心の主観的要件の話とは違うんですが。

 今御指摘があったように、今回、私もいろいろな御意見を伺っていますと、所持という客観的事実に加えて、自己の性的好奇心を満たす目的というのが主観的要件であります。

 これは、具体的に言いますと、例えば、かばんの中にいつの間にか大量に児童ポルノが入れられていて、そして通報がされて、警察がちょっとかばんをあけてみてくれと言って、調べてみたら児童ポルノが出てきた、これは所持という要件を満たしますから、その上で、これが自己の性欲を満たすための目的だったかどうかというのは取り調べてみないとわからないということで、警察としては一回そこで捜査に着手せざるを得ないんじゃないかというような懸念は確かにあります。

 このような捜査の恣意性ということが指摘をされていることについて、与党案ではどのようにお考えになっているのでしょうか。

葉梨議員 捜査の恣意性ということで今るるお話がございました。

 この点については、実は後で枝野委員の方から私もたんまり質問をいただいておりますので、いろいろと議論をさせていただきたいなというふうに思うんです。

 冤罪といいますけれども、例えば足利事件の場合ですけれども、まことに菅家さん、私は本当にお気の毒だと思います。また、当時DNA鑑定というのに頼り過ぎてああいうことが起こってしまったということは、本当に反省をしなければならないというふうに思いますけれども、具体的に、例えば犯行行為について、私はやった、やりませんという冤罪と、あとは内心の意思についてという冤罪と二つあるわけです。

 例えば、殺人の場合は、殺人の故意、つまり内心の意思、私は殺す意思を持って相手を殺したという事実。まず事実について、殺していません、傷害も加えていませんということが、多分、足利事件の場合は当然全くやっていないわけですから、そこにおいて争いとなったわけです。ですから、その意味で、性的好奇心を満たす目的を立証するのは自白によるんだということで足利事件を引かれるというのは、ちょっとレベルが違う話じゃないかなというふうに私自身は思っているんです。

 所持ということであれば、持っているという事実については、これは所持ですから、もう明らかなんですね。現行犯的なものでやっていかざるを得ないでしょうし、物がなければ所持ということになりません。

 そして、一つは所持の故意性です。ですから、先ほどの例で、もしかしたらこんなメールが送りつけられてくるかもわかりませんよというようなものが来たとして、私はそれで、個別に、全体として、単にパソコンを開いているということだけで未必の故意が成立するとは思えないんです。このメールというのはもしかしたら児童ポルノかもわからない、そういうような認識というのはやはり必要になってくるだろうと思うんです。

 さらには、それがたまたま人に入れられたものかどうか、そういうような抗弁というか話があれば、やはりそれはよく確認をしなければならないし、例えば、十分に信じるに足りるような弁解があったときに、警察において、捜査機関において、それで逮捕というようなことになるかといったら、私はならないというふうに思います。

 また、自己の性的好奇心を満たす目的でというのを、それは自白に頼らざるを得ないというふうに言われますけれども、例えば、殺人の故意というのは、私は殺すつもりはなかったんです、殺すつもりはなかったんですと言ったって、けん銃を持って相手をぼんと撃てば、どんな自白が、否認をしていたって、殺人の故意というのは客観的にやはり認められるわけです。

 ですから、自分の性的好奇心を満たす目的というのは、たとえその自白がなかったにしたって、うちに大量の児童ポルノを持っている、その横に大人のポルノもたくさん持っているというようなうちで、児童ポルノを持っている方が、私は自分の性的好奇心を満たす目的じゃございませんと言ったところで、それは裁判所では多分通らない話になってくるだろう。ですから、自白だけに頼るということじゃなくて、やはり客観的な証拠に基づいて捜査というのはできるんだろうというふうに私は確信をしています。

牧原委員 わかりました。

 ここはきょうの質疑で中心的なところになると思いますし、私自身は、今、葉梨先生はまさに警察にもいらっしゃった先生でありますし、最後は捜査機関への信頼性にかかるのかなと思っておりますが、おっしゃるとおり、客観的な状況というものをきちんと踏まえて、それ以上にいかないということになるだろうなと思います。いずれにしても、きょうの審議で尽くしていただきたい点でございます。

 ちょっと時間もなくなってきたんですが、両案についてはもう一個大きな違い、つまり、法律名と定義について民主党側が変更されたということがございました。この「児童ポルノ」というのを「児童性行為等姿態描写物」ということに変えるとともに、この定義が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という部分が削除されたということでございます。

 これについては、先ほど来述べられているように、捜査の濫用の危険だとかあいまいさをなくすという観点だと思うんですけれども、このような理由で削除をされたことについて、与党側はそのままになっているわけであります、与党側としてこれを変えるべきではない、そして削除すべきではないと思う理由について述べてください。

葉梨議員 児童ポルノという用語が本当にいい用語かというと、私は個人的には必ずしもそうは思わないです。

 当時、この法律をつくったときに、いろいろな形でこの定義規定についても工夫をいたしました、どういう名称を使いましょうかと。ただ、わいせつな画像という言葉も使えませんし、それから、卑わいな画像ということも使えない。やはりそこにおいては、日本が国際的なペドファイルとの戦いの戦列に加わるという意味からも、当時議論されていました、平成十二年に採択された児童の権利条約の選択議定書、さらには平成十三年に採択されましたサイバー犯罪条約、こういったものにおけるチャイルドポルノグラフィー、これをいわゆる国際的スタンダードとして禁止していこうという中で、そのチャイルドポルノグラフィーという言葉を、まさに日本もそれに加わるんだということで、児童ポルノを使ったということであって。

 ですから、ポルノが風俗犯、風俗犯と言われますけれども、風俗犯を規制する法律、取り締まる法律でポルノなんという言葉を使った法律は今までなかったんですね。一番最初に法律用語として、児童買春の禁止法の中でこの児童ポルノという言葉を使わせていただいたんです。むしろ、今までの風俗犯の体系とは全然違うんだ、そして国際的な戦列に加わるんだという意味で、果たして、言葉が個人的に好きか嫌いかという話は別として、児童ポルノということを使わせていただいたということの経緯を覚えております。

 性欲を興奮させ刺激させるということについては、また後の質疑でもあろうかと思いますけれども、基本的な当時の考え方としては、やはり医学書ですとかあるいは家庭内の成長の記録、こういったものは除かなきゃいけない。その中で、性欲を興奮させ刺激させるというような法令用語もあった、あるいは運用の積み重ねもある、現実に幾つかの判例も出ているわけでございまして、その言葉を使わせていただいたわけです。

 我々の考え方としては、児童のヌード、それから児童の性器等をさわる、さわられる、あるいは性行為、性交類似行為等の姿態、こういったものについては基本的に児童ポルノなんだろうというような考え方を持たせていただいたというわけであります。ですから、その考え方を今変える必然性は私はないと思います。

牧原委員 質疑時間が終了してしまいまして、用意した質問の全部は聞くことができませんでしたが、目的は同じだということだと思います。児童の方で被害を受けられた方は、この法律については本当にどうなるんだという思いで注目をされておるわけでございます。他方で、表現の自由やプライバシー権ということを心配されている方もいらっしゃるわけでございます。どちらを重んじていくのかというところも、非常にこの法律案の両案の違いにあるような気がします。審議を通じて、そして今国会でぜひとも成立をさせていただきたいということをお願い申し上げて、質問を終了させていただきます。

山本委員長 次に、葉梨康弘君。

葉梨委員 自民党の葉梨康弘です。お手やわらかにお願い申し上げます。

 主として児童ポルノ、この問題について、民主党の提案者に、三十分の時間をいただきまして質問させていただきたいと思います。時間もございませんので、特に、主に定義等について具体的な質問をさせていただきたいと思います。

 民主党案においては、第二条において、もともと与党案にありました三号というのを削除する、それから、性欲を興奮させ刺激させるという言葉を削除するというようなことがあるわけですが、先ほど私も述べさせていただきましたとおり、幾つかやはり私が懸念しておりますのは、現在児童ポルノとして規制されているもの、これが相当抜け落ちてくるんじゃないかというような懸念を持っております。そこで、解釈について伺います。

 まず、民主党案にあります「露出」とは、あらわれ出ることですから、見えるということですね。それから、「強調」とは、特に目立つように表現するというふうに日本語辞書にございますけれども、こういう解釈でよろしいでしょうか。

枝野議員 それは、そのとおりでございます。

葉梨委員 あと、この「殊更に」というのは、私も民主党の提案理由、それから解説、解釈というのも見させていただいて、ちょっと日本語とは違うなと思ったんですけれども、「殊更」というのは、正当な理由なく、必要以上に、わざわざという意味のようですけれども、いずれにしても、例えば児童のヌードであっても、つまり性器などをさわったりさわられたりはしていないような児童のヌードでございまして、性器などの露出や強調がない限り、これは規制対象にならないという理解でよろしいでしょうか。民主党さん。

枝野議員 私どもが「殊更に」と言っておりますのは、殊さらに露出をしたり強調したりされている映像ということでございますので、例えば、性器の部分だけが写っているとかということで強調あるいは露出ということではなくて、全体の映像の状況として、必然性なく例えば裸でいるというような状況等については「殊更に」に入る、合理的な理由なく性器などが露出をしているということになるというふうに考えております。

葉梨委員 「性器等」というのは、余りここの用語としては使いたくないですが、性器と肛門と乳首ですね。

枝野議員 そう認識をしています。

葉梨委員 では、性器、肛門、乳首が露出していなければ規制対象にはなりませんね。

枝野議員 「露出」のほかに「強調」ということを入れた意味は、今回の規制で、従来、いわゆる着エロというんでしょうか、性器や乳首だけはちょっと特殊な水着のようなもので隠されているけれどもまさにそこが強調されている、こういったものを明確に規制の対象の範囲内なんだということにしたいという趣旨でございまして、例えば乳首のところにだけ何かシールが張ってあってそこが露出をしていないということが、逆に、むしろそのことによって強調されているということになるというふうに考えています。

葉梨委員 それでは、後ろ姿のヌードはどうでしょう。肛門は見えません。

枝野議員 個別の状況によって、もちろんそれはお互いわかっていることですけれども、判断しなければならないと思いますが、肛門そのものが写っていなかったとしても、肛門と周辺部のところが殊さらに強調されているという状況、つまり臀部の肛門周辺のところが不自然な形で、つまり必然性のない形で露出をしているということになれば、結果的にそれが強調に当たるケースは十分あり得るというふうに思っています。

葉梨委員 では、パンツをはいた後ろ姿はどうでしょう。

枝野議員 パンツの種類にもよります。それこそ、先ほど申し上げましたとおり、この間、大変ひどい状況になってきているいわゆる着エロと称するものは、大変特殊なというか普通には着用しないような、パンツと言っていいんでしょうかね、というようなものをはいていることによって結果的に肛門等を強調しているというケースはありますので、はいていればいいということではない。そのパンツの形態とか、そのことによって全体の映像として肛門、性器等が強調されているかどうかということで判断されるというふうに思います。

葉梨委員 上半身裸で下はスカートをはいている、そういうような後ろ姿の画像はどうでしょう。

枝野議員 上半身裸ということによって、例えば乳首が露出をしていなくてもいいわけですけれども……(葉梨委員「後ろ姿」と呼ぶ)

 後ろ姿であったとすると、一般的には今回のこの法律の要件には該当しないというふうに思いますが、ただし、上半身が背中であるから、あるいは下半身にスカートをはいているからといって、では全部当たらないということになるかというのは、まさに着エロのような、はいている形はとっている、あるいは乳首、性器、肛門そのものは写っていない、けれども、まさにそこが強調されているという、まさに法の抜け道をやろうみたいな話のところというのは、「強調」という言葉でしっかりとカバーはできるというふうに思っております。

葉梨委員 どうとでも解釈できるということじゃないですか、要は。強調とは、特に目立つように表現することなんですよ。

 では、背中だけでスカート、それも強調だと言われるわけですね。

枝野議員 ですから、スカートといってもいろいろなスカートがあるわけですよ。つまり、実際に、多分葉梨委員も本案の作成とかあるいは審議に当たって、最近問題になっている着エロのいろいろな映像とかを心ならずもごらんになっているかというふうに思いますが、例えば、水着を着ている、水着を着ていれば全部オーケーかといったら、現実には、まさに本当に一センチか二センチぐらいの細い上の部分、それで乳首だけは隠していますという水着も現にあって、それでそういった写真が、とりあえず性器等が写っていない、そして着衣、つまり水着を着ているということで、ようやくつい最近こういったものについても摘発が始まっていますが、まさにあいまいで、そういったものをやっていいのかどうか、そして、厳密に現行法の、着衣の一部または全部を着ていないということのときに、それはそれで一応水着ですという抗弁に対してどうするのかということがあるように、例えばスカートだって、まさにスカートの態様によります。

 それから、背中だけで乳首そのものが写っていなければいいかということについてでも、それは撮影の角度とかなんとかで、そのことによって乳首を強調しようとしている、あるいは、スカートによって逆に肛門あるいは性器等を強調させようとしているという映像があり得ることを全面的に私は否定はできませんから、そこが、まさに全体の映像として殊さらに強調しているかどうかということで決まる。そこのところはしっかりと、悪質なものは「強調」という言葉で十分に取り込み得るんだというふうに私たちは思っています。

葉梨委員 何か、「強調」ということがよくわからないんですけれども。

 では、これで、(パネルを示す)どうも、おしりが見えていると強調だというふうには、通常の法令用語あるいは日本語の世界だったら、そうはならないと思うんですけれども、この資料一です。お配りしています。

 こちらで、下はちゃんとした着衣だと。この人は、性器、胸などを強調するつもりは全然ございませんね。これを撮りますと、これは強調になるんですか、下はちゃんとはいていた場合は。

枝野議員 まず、「強調」「露出」というのは、当該行為をしている児童の主観的な問題ではありません。本人が強調するポーズをとったのかとか露出するポーズをとったのかということは、私どもの定義では全く問題にされていません。映像そのものが殊さらに露出をし強調するものになっているかということを、映像全体の客観的な状況から判断をするということになります。

 今の漫画は、いわゆる盗撮的な部分のところのことを取り上げているのかというふうに思いますが、一般的に申し上げれば、例えば浴場とか更衣室等について、本人に知られないようなところから撮影をされている映像というものは、その中で例えば性器等が写っているような状況があれば、まさに、ふだん隠していて本人も隠そうとしているところで、ふだんは普通の人に見えないようなところで、そういったものを隠れて写すという、そういう映像であるということに映像の客観的な態様としてなりますから、そうした場合には、性器等が写っていれば露出に当たるということになるというふうに思っています。(葉梨委員「写っていなかったらどうなんですか。写っていませんよ」と呼ぶ)

山本委員長 発言者は立って発言してください。

葉梨委員 はい。

 これは写っていません。おしりも隠れています。どうでしょう。

枝野議員 おしりそのものが完全に隠れているという状況、つまり更衣、脱衣の途中ということでない映像であるならば、それは問題にはならないと思いますが、まさに脱衣の途中で、これからおしり、つまり肛門や性器等が見える直前の状況というのは、映像の態様によっては、強調しているということには十分なり得るというふうに思います。

葉梨委員 これは、いつまでたったって、性器、肛門が見えるというオケージョンじゃないんです。これは水着で、着がえている。通常、着がえるときに、性器、肛門は見えません。

 では、これは、ならないということでいいですね。

枝野議員 露出という定義からは、肛門等が見えなければ露出には当たりませんが、まさに着がえているところを盗撮されているという客観的映像は、基本的には、そこで肛門とか性器とかというものを強調している映像であるということに客観的に判断されるケースが多いと私は思いますけれども。

葉梨委員 それは、性器、肛門を強調するためじゃなくて、臀部を強調するというんだったらわかります。胸部を強調するというんだったらわかります。

 枝野先生も法律家ですから、最後の最後まで性器、肛門が見えないもの、見えないことが明らかにわかっているにもかかわらず、それで強調というのは、どういうような解釈でされているんでしょう。

枝野議員 最終的に見えなくても、例えば、先ほど来申し上げているいわゆる着エロなどというのは、例えば乳首の部分のところは全部隠しているし、肛門も性器も全部隠していても、それでもそれは強調に当たるというふうに言えるはずであります。

 最終的に見えるかどうかということではなくて、その映像を見た人たちがということになると主観的な要件になる。その映像からうかがわれる状況というのは、まさに間もなく肛門が見えようとしている、まもなく性器が見えるかもしれない、見えるか見えないか、どういう状況なんだろう、そういう状況にあるということが結果的に肛門とか性器とかということを強調しているという映像になるということは、見える見えないを問題にしているんじゃなくて、そのことによって、ふだんでは、例えば、きちっとした普通の水着を着て、あるいは普通の洋服を着ているという状況では、まさにもちろん臀部は見えませんし、性器や肛門が見えそうでもあるはずはないわけですけれども、それを、着がえをしている、しかも普通の脱衣所とかそういったところで着がえをしているという状況で、もうちょっと下げればもしかすると見えるかもしれないという状況の映像は、それは、客観的に見て、肛門とか性器とかそれから乳首とかという今回の法案の対象になっているところを強調している映像であるというふうに十分解釈ができるというふうに思いますけれども。

葉梨委員 これで明確な取り締まりは、今の答弁でできるんだそうですよ、民主党の方々。

 性器等がいつか見えるだろうじゃないんですよ。いつまでたっても絶対見えないんですよ。見えないんだけれども、おしりの強調ではあるのかもわからないです、無理くり「強調」ということを特に目立つように表現するということであれば。

 これも強調だと言われるんでしょうけれども、(パネルを示す)では、これは上着を着ていたらどうなんですか。性器見えません。乳首見えません。肛門見えません。いつまでたっても見えません。これはどうなんでしょう、当たるんでしょうか。

枝野議員 いつまでたってもとおっしゃっていることの意味が私には余りよくわからないんですけれども、静止画像の場合もあるし、動画の場合もいろいろあるんでしょうけれども、それは動画のことをおっしゃっているという……(葉梨委員「静止画」と呼ぶ)

 静止画像については、いつまでたっても、つまり、強調という定義を入れた以上は、いつまでたっても性器等が写らないのも強調に入るのは当たり前で、別に服を脱ごうとしている状況ではなくても、先ほど来何度も繰り返し申し上げていますが、着エロ的な映像というのは、別に何かを脱ごうとしているわけじゃないんですから、いつまでたっても乳首も性器も肛門も見えるような状態になるわけではないという映像であります。

 今御示しになった映像についても、その態様によって、まさに、例えばその形で半分パンツを脱がしているという状況とか、あるいは上半身が裸の状況で、胸のところ、乳首のところを手で不自然に隠しているとかという構造があれば、それは強調しているということに当然なるというふうに思いますけれども。

葉梨委員 相当細かに見ていかないといかぬということですが、ただ、この強調という意味、多分、委員の皆さんも聞かれていて、さっぱりちょっと、私も頭が悪くてわからないんですよね。要は、背中だけのヌードなんだけれども、下はちゃんと着衣を着ていますといったものも強調になるかもしれないし、ならないかもわからないということでいうと、現場は混乱しますね。

 そして、多分、衣服を脱いだ人の姿態というのは、性器などを露出、強調するものよりも、相当やはり広いは広いんです。今のお話を聞いていると、衣服を脱いだ人の姿態で性欲を興奮させ刺激させるといった方がよっぽど明確じゃないか、私自身はそういうような印象を持ちました。

 ただ、いずれにしても、この「強調」ということで、今現在児童ポルノとして規制されているものが、やはり抜ける部分というのは出てきますね。それはよろしいですね。

枝野議員 実はこれは、十一年前、まさに超党派の議員立法の当事者でございまして、そのときからこの今回外そうという三号というのは重要な議論のポイントになっておりまして、議員立法なのになぜ霞が関におられた方がかかわってこられたのか、私にはよく理解できないんですが。

 それはいいとしても、あのときから私自身、国会でも申し上げているんですが、この二条三項三号の条文を素直に読めば、例えば十六歳、十七歳の、わかりやすく言うとジャニーズなどの若い男の子が上半身裸でいる映像とかそういったステージとか、そういったものはたくさんあります。これは明らかに同世代の女の子たちの性欲を興奮させ、または刺激をしているというふうに思います。なおかつ、着衣の一部、つまり、上半身裸になって、あるいはステージの途中で着ていたものを上半身脱いだりするということがありますが、明らかにこれは条文上は入ってしまう。

 もちろん、それは社会通念上、そんなものは取り締まらないという現実になっているんでしょうけれども、こういったものが条文上入っていってしまうということは、もしかすると取り締まりの対象にされるかもしれない、そういう危険性があるという状況はやはり避けるべきである。

 一方で、この間、先ほど来繰り返しておりますが、着エロなどに対する取り締まりが大変腰を引けた状態でやってきた。これはやはりこの条文からでは、なかなか読み取ることについて迷いが出てくる、こういうことなんだろうというふうに思っていまして、そういったものをしっかりと取り締まりの対象に入れる一方で、私が申し上げた、例えば十六歳、十七歳の男の子が上半身を途中で脱いで裸になるというような映像は当たらない。まさにそういったものを外すことを目的としています。

葉梨委員 そうすると、では、十六歳、十七歳の男の子が上を脱いだものはすべて当たらないということですね。

枝野議員 わかってお聞きになっているんでしょうけれども、すべてこういうものについては、すべてということで果たして答弁できるのかどうかということについては、無責任なことは言うべきではないというふうに思っておりまして、つまり、例えばその態様によっては「殊更に」というところで基本的には扱われる。つまり、合理性を持ってということ。

 つまり、一種若い男の子に対する性的虐待というものも世の中には存在をしているわけでありまして、そういったことをうかがわせるような状況の中で、例えば男の子の乳首が写っている、それはむしろ一号や二号前段のところでカバーできるケースが多いかなというふうに思いますが、今ここで一切ないということを言うつもりはありませんが、先ほど例で挙げたようなケースについては明確に外すべきだということであります。

葉梨委員 ここの議論をしていても、そもそもその強調というのがどういう意図なのかというのが私自身もさっぱりわからない中で、アメーバのようにいろいろな答弁が繰り返されるものですから、これは相当やはり現場は混乱するなというふうに思います。

 私自身も平成九年から十年にかかわったときも、役所の立場という公的な立場というより結構私的な立場で、覚えていますのは、堂本先生が当時いらっしゃって、もう役人は出ていきなさいといって私も大分いじめられ、私個人でおるんですからということでいたような懐かしい経験もございますけれども。

 ところが、「性器等」といった場合には男性の乳首も入りますよね。ですから、ジャニーズが上が裸になったものは入らないというのは、これは性器等は明らかに露出はしている。露出をしているけれども、それは、ジャニーズの場合は「殊更」ということにならないけれども、普通の男の子が裸になったら、これは「殊更」になる場合もある。では、「殊更」というのは一体何なんだろうと。

 では、殊さらそれを強調するようにジャニーズが胸をこうやって乳首を出している、これはならないということですか。

枝野議員 「強調」も「殊更」も、その行為をしている児童の行動についてではない、映像そのものの性格である。

 ですから、例として申し上げたのは、ジャニーズの、一般的に我々が思っている、しかも現に行われている、例えばステージの上で上半身裸になるというようなことについては、これは「殊更」には当たらないだろうと。つまり、合理性がある、合理的理由があるだろうというふうなことを申し上げているので、仮に、ジャニーズの男の子であったとしても、先ほど申し上げたような、つまり一種同性愛的、あるいは男の子に対する性的虐待的なことをうかがわせるような映像において乳首の露出または強調があったりすれば、それは「殊更」「強調」、あるいは「露出」をしたものに当たる可能性は否定をしない。

 普通の男の子も、普通に、例えば海辺で、海岸に着いたから上半身裸になって、水着じゃないですよ、海水浴に行ったわけじゃないけれども、海に行ったから上半身をぱっと裸になってそこら辺で遊んでいる、これは、普通の男の子だって、それの映像を撮ったからといって、普通には殊さら強調した映像にはならない、こういうことだと思いますけれども。

葉梨委員 「殊更」と「強調」というところがみそで、どんなものでもなり得るし、どんなものでもなり得ないし、その場その場で見るしかないというようなことだとすれば、今の定義の範囲としては、私がこう言っては申しわけないんですが、ちょっとできがよくないというふうに言わざるを得ないかなというふうに思います。

 そもそも、今の三号の児童ポルノ、これについて、後で枝野先生からもいろいろと質疑いただきますけれども、実際に、捜査が恣意的に運用されるということについて、これは私も大変な懸念を持っていますので、それはそうならないように絶対していかなきゃいけないけれども、やはり今のお話を聞いていると、民主党案というのは、定義の明確化というよりは定義のアメーバ化で、何だかよくわからなくなっちゃったというような感じを持っております。

 後でまた議事録、もう一度御自分の答弁を読み返してみていただいて、また議論もさせていただきたいと思います。

 ちょっともう時間もありませんので、別の題に移りたいと思います。

 民主党が、「児童ポルノ」という用語を「児童性行為等姿態描写物」と変えようとしています。先ほどお答えいたしましたが、サイバー犯罪条約では、いわゆる疑似児童ポルノというのも児童ポルノに入っているんです、サイバー条約ですが。これは日本の法律の定義には入っておりませんけれども。

 これを、ただ「児童性行為等姿態描写物」とすることにすると、この法律の世界では、いわゆる疑似の児童ポルノ、漫画、アニメについては一切さわらないというようなことになりますけれども、そういう理解でよろしいわけですね。

枝野議員 これも、過去二回の制定、改正のとき、常に一貫して私どもの立場として、そういったものを仮に規制をしなければならない状況があったとしても、保護法益が児童が性的な虐待を受けたことという個人的保護法益であるこの法案、法律と、それから、そういった映像等がはんらんをすることによる弊害を防ぐという目的とでは、目的に大きな違いがある。

 もし仮にそういったことを立法する必要があるとしても、それは別の法律であるべきである。そのことの方が、この法律ではとにかく、実際に性的虐待を受けた子供たちを守らなければならないという趣旨が明確になるということで、我々はそこを分けるべきだと考えておりますので、本法には入らないということで結構でございます。

葉梨委員 そこのところは大変いろいろ議論のあるところで、例えば、今の法律でも実在の児童ということになっていますけれども、二百年前に製造された、明らかにその児童がもうこの世にいないといったものも、実はこの児童ポルノの対象にはなる。

 ですから、その意味では、いわゆる個人的な法益、社会的な法益ということで、我々は、ただ、二〇〇二年の米国の連邦裁の判決もよく承知しています。ああいう形でアメリカが強い規制をゲームとかアニメにかけたというのは、やはり表現の自由の関係から違憲であるというような判示がなされたわけですけれども、ただ、やはりゲームとかアニメでも、ひどいものはひどいんです。

 ただし、同じような規制を、実在の児童を被写体としたような児童ポルノと一緒にすべきだというふうには私は思わないんですけれども、少なくとも、エビデンスというのをそろえてこういう研究はしていかぬといかぬということから、与党案は研究という規定を入れているということを御理解願いたいと思います。

 ちょっと時間がないので、単純所持の関係ですが、児童性行為等姿態描写物の有償、反復取得の禁止で規制されない行為についていろいろと伺います。

 まず、先ほど言いましたけれども、大量の児童ポルノの蔵書を保有して、私は実はだれだれさんの子供時代のポルノを持っていますよ、私は実はだれだれの子供時代のポルノを持っていますよというのをだあっと宣伝して回る行為というのは、民主党案では禁止されないということですね。もうイエスかノーかで結構です。

枝野議員 民主党案では規制されませんが、与党案でも、「性的好奇心を満たす目的」が満たされるのかどうか、非常に疑問があると思います。

葉梨委員 多分、そうやって宣伝して回る方はペドファイル、小児性愛者ですから、与党案ではここのところを禁止されるだろうというふうに思います。

 自分が保有する児童ポルノを、友人であるばりばりの小児性愛者、ペドファイルに見せて、見せるだけよという代価として百万円をもらう行為、これは民主党案では規制対象となりますか。

枝野議員 お言葉ですが、持っていて見せるからといって、ペドファイルであるという推定がどうして働くんでしょうか。私は、そこがまさに、持っているということだけでこいつは悪いやつなんだということをうかがわせるという、それに基づいて自白が強要されるのではないかという危惧のまさに一番のポイントだろうというふうに思います。

 今の点についても、私どもの案でも入りませんが、残念ながら、一人にだけ見せるということはどちらの法案でも対象になっていないわけで、そちらは所持は対象になる。だけれども、その人が人に見せてお金を取ることを目的としているのなら、自己の性的好奇心を満たす目的というのはむしろ排除される推定が働くんじゃないですか。

葉梨委員 それはそうでもないと思いますね、一緒に楽しむということもあるわけですから。(枝野議員「こともあるわけでしょう。だけれども、違う場合もある」と呼ぶ)

 答弁者、それは客観的によく実態に即して考えてみたらいいと思いますよ。百万円をもらって、それを持っていて一緒に楽しむという形であればということで、もちろん、それを営業としてやっているような形であれば、自己の性的好奇心を満たす目的ではないということもあるでしょう、他人の性的好奇心を満たす目的で。ただ、営業としてやっているようなことであれば、それは別途の営業法の規制があるし、そもそも、「みだりに、」にということで一般的な禁止規定を入れていますから、そういったものについてはやはり廃棄するということは、与党案では期待をされるということです。

 小児性愛者、ペドファイルでありますお父さんが亡くなりました、その子である子供もやはり小児性愛者、ペドファイルでございます。大量の児童ポルノを家宝として相続する行為は、民主党案では規制対象となりますか。

枝野議員 小児性愛者であるかどうかということは内心の問題なので、客観的に判断できないというふうに思います。どなたかが持っていた大量の児童ポルノが、結果的に相続で違う方になったとしても、そのこと自体を違法性のあることとして排除することは、残念ながらできないというふうに思います。

葉梨委員 私、捜査機関じゃないものですから、小児性愛者であるかどうか判断できないというのは、これは具体的な捜査の事例に即して言っているのではなくて、ある小児性愛者が小児性愛者である子供に対して相続をした場合はどうですかというふうに聞いているわけで、立証できないからどうのこうのというのは、レベルの全然違う話なんです。

 最後になりますけれども、今回、民主党が単純所持について踏み込まないと。

 たしか十六年の改正でも、次の段階ではそこのところに検討を入れなきゃいけないなということは、実は武山百合子さんが委員長でした。私、委員長代理として参議院でも答弁したんですけれども、必ず次の段階で単純所持の禁止に踏み込みますよというようなことまでは言えない、それは当然ですけれども、やはりそこまでについては検討しなきゃいけませんねというような、次の段階ですというようなことにしたわけですけれども、民主党案においては、今のところそういうふうにはなっていないということでございます。

 ちょっと時間が来てしまいました。また本日、一日長いですから、議論をしてまいりましょうということで、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日、与党案そして民主党案がこの法務委員会で審議入りをしましたこと、また、この審議入りをするまでに、それぞれのいろいろな意見をまとめてそれぞれの案をまとめてこられました皆様に心から敬意を表したいと思いますし、また、質問の時間を与えてくださいまして、心から感謝を申し上げます。

 今回の法務委員会での審議入り、本当に待ちわびていた方がたくさんいらっしゃいます。私も、被害者の方ですとか、あるいはNGOの団体の方とか、いろいろかかわらせていただきました。その中で、本当に切実な思いで、被害に遭っている児童の皆様、あるいは被害に遭ったという経験を持っている方々からも、お手紙を拝見しております。

 被害を拡大させないためにも、大まかな御紹介をさせていただきますけれども、大学生の女性、小学生のころから親戚のおじさんによって性的な虐待を受けていた、それを写真に撮られていた、しかしながら、自分は何をされているのかわからないから、本当に笑顔でその写真に写っている、今、自分はインターネットを使えるような世代になって、自分で、もしかしたら自分の写真がインターネットの中であるんじゃないかと毎日インターネットを検索せずにはいられない、本当に自分の将来がつぶされたような思いがするといった声も届いております。世の中を変える力のある人がいるのであれば、どうか助けてくださいというお手紙も。

 本当に、きょう、ようやくこの審議に入れたこと自体をこの方たちがどんな思いで喜んでいただいているのか、また、ではこの被害に遭った自分をこれからどのような形で法律は救ってくれるのかという期待を持って見ている、そういった方たちのためにも、この法務委員会の審議が本当に、机上の空論で終わることなく、充実したものになるようにという思いで私も質問をさせていただきたいと思います。

 まず、与党の提案者にお伺いいたします。

 九九年に議員立法でようやくこの児童買春、児童ポルノ禁止法が成立をいたしました。実際には、この法律が成立をしたことで、コンビニですとかあるいは書店で児童ポルノの購入ができなくなったわけでございますけれども、今は、それから十年たちまして、インターネットあるいは携帯での技術が格段にアップいたしまして、より秘匿性を高くした中で、個々人のレベルに児童ポルノ画像がおりてきているという状況でございます。そういった国内の状況、また、この十年間、国際社会は児童ポルノへの取り組みを一層深めておりまして、日本に対する取り組みの不足というところが指摘をされているところでございます。

 まず、この法の改正の理念ともつながると思いますけれども、改めて、今回の法改正で何を変え、何をしようとしているのか、この点について御説明をしていただきます。

    〔委員長退席、大前委員長代理着席〕

富田議員 今、丸谷委員が最初にお話しされましたように、被害に遭われた方の思いというのは本当に大変なものがあると思います。いつ自分の映像が他人に見られるのか、それをずっとおびえながら暮らしていかなきゃならない、この思いというのは多分我々の想像を絶するものだというふうに思います。そういった意味で、委員会の審議が始まって、一刻も早い改正案の成立を、被害者の方、また、それを支援されているNGOの皆さんが望んでいるというのは気持ちとしてもわかります。

 我々自民党、公明党、与党は、昨年の六月十日に改正案を提出させていただきました。それまで公明党としてもプロジェクトチームで議論をしてきました。丸谷委員がその中心。また、与党としてプロジェクトチームで議論させていただいて、森山先生の方から提案理由の説明でお話ありましたけれども、最初の成立からもう十年たってきている、インターネット社会が進展して、当時とまたかなり状況は変わってきています。そういった中で、どういうふうに被害者を救っていくのか、また被害の蔓延を防いでいくのか、そういったことを考えたときに、単純所持が禁止されていない、そういった状況が被害を蔓延させている一番の原因になっているのではないかというところを、特にNGOの皆さんから与党PTにも御意見をいただきました。

 そこをどうにかしなきゃいけないというところで今回の法改正の議論が始まったわけでして、十六年改正時にも、三年を目途として改正しようというような規定がされております。先ほど来、葉梨委員の方からその経過もお話ありましたので、我々としては、何とか単純所持をきちんと禁止して、また、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持に対して刑事罰もきちんと置かせていただいて、児童ポルノについてさらに厳格な規制を設けて、児童の権利の擁護に資する法律にしていきたい、そういう強い思いで今回の改正案を出させていただいて、今審議しているところであります。

丸谷委員 一方、民主党案には、先ほど来議論になっておりますけれども、単純所持ということではなく、反復あるいは有償での取得というところで規定をされました。

 枝野議員も、この法律に当たっては最初からずっとかかわってこられて、何が問題で、何をどうしていかなければいけないのかというところを踏まえて十分に議論をしていらっしゃると思うわけですけれども、二〇〇七年の内閣府の世論調査では、単純所持を規制すべきだ、あるいは、どちらかといえば規制すべきという世論が九割を超えております。また、昨年リオで行われました第三回の児童の性的搾取に反対する世界会議では、各国に、児童ポルノの製造、販売、配布、所持のみならず、インターネット上のアクセスや閲覧さえ法的に禁止や罰則の対象とするよう求める宣言も採択をされております。

 昨年、ユニセフ協会あるいはNGOの皆さんが中心となりまして、児童ポルノに対する働きかけの署名を集められました。実に全国で十一万人を超える方が署名に賛同してくださったわけですけれども、そこのイの一番、一丁目一番地が単純所持の禁止の法制化でございました。

 こういった国内外の声にどういうふうにこたえていこうとしているのかが、今の議論を聞いていても私にはわかりません。この点についてお伺いいたします。

枝野議員 単純所持を違法化し、それに罰則を加えなければならないという意見、そして思いというものは私も共有をいたします。

 ただ、問題は、まさにネット社会ということの中では、本人の知らないうちに、あるいはほとんど気づかないうちに、いわゆる児童ポルノに該当するような映像を自己の所持のもとにしてしまう、あるいはさせられてしまうというケースは簡単にできる、こういう状況にあります。

 そうした中で、みずからそうしたものを集めて、そういったものにお金を出して、そういったものにアクセスをするという人については可罰性があるというふうに思いますけれども、どこかから勝手に一方的に送りつけられてきた、その映像について、しっかりと完全に消去して除去しないと処罰をされる可能性がある。しかも、それをおれは勝手に送りつけられたんだとかということを抗弁するといっても、結局それは主観的意思、目的と故意という、密室の中で行われる自白によって実は大部分証明せざるを得ない要素である。

 そういった現実を考えたときには、一方で刑事法は、処罰すべき人間をしっかりと処罰しなければならない一方で、処罰に値しない人間を処罰してはいけないということがあります。その両面を両立させようということの中で私どもは苦慮をいたしまして、最終的に、今回提起をいたしましたとおり、その取得のプロセスを客観的に立証するということによって、販売目的等の目的を有さない所持の大部分といいますか、ほとんどはきちっと処罰することが可能であり、なおかつ、処罰してはいけない人が間違って逮捕されてしまうなどということがないように、両面を両立させることができる、そういう知恵を絞ることができた、こういうふうに考えています。

    〔大前委員長代理退席、委員長着席〕

丸谷委員 通告をしていないんですけれども、今出てきた議論についてちょっと与党の提案者にお伺いをしたいと思います。

 今、目的所持ということで、自白の強要あるいは冤罪に対する懸念という意見が出てまいりました。しかしながら、既に刑法の中には目的所持の罪というのはございます。例えば刑法百七十五条のわいせつ物販売目的所持の罪というものがございます。これは、実際には、自白に頼ることなく、外形的な理由から判断しているわけでございまして、今までのそれぞれの刑法に照らし合わせても、しっかりと、自白に頼ることなく、また強要することなく、冤罪をということの懸念なく運用されている、私はこのように思うわけでございまして、児童ポルノに限って、この所持の目的について、自白の強要、冤罪というところでのこの目的所持というものが制定されないというのはちょっと違うのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

富田議員 今、丸谷委員がおっしゃるとおりだと思います。

 枝野先生の御答弁を聞いていますと、所持の故意と性的好奇心を満たす目的というところが、あたかもすべて内心の問題であって、それが自白として強要されるんだというような御答弁に、ちょっと後ろで聞いていると思えるんですが、所持をしているという故意も、その目的も、それぞれさまざまな客観的状況から認定されるものであって、すべて内心で決まるわけではありません。

 これまでのいろいろな刑法犯、またそれぞれの司法の過程においても、客観的な事情から認定される内心の問題だと思いますので、今、枝野先生の答弁を聞いていますと、やはり可罰性のある所持というのもあるといいながら、冤罪を生む可能性があるからそれは防がなきゃいけないんだ、その防がなきゃいけないというのはわかるんですが、可罰性がある所持を認めておいて、その所持が違法でないというのは、ちょっと我々与党からしたら理解に苦しむなというふうに思います。

    〔委員長退席、大前委員長代理着席〕

丸谷委員 民主党案では、有償または反復の取得罪がございます。逆に言えば、有償または反復でなければ児童ポルノの取得というのは合法だというお墨つきを与えるように私には思えますが、これについての見解はいかがでしょうか。

枝野議員 まず、先ほどのお話で、販売目的所持という場合には、販売目的というのは、販売をしようとしていたというような客観的な事実から、その目的を類推することが容易です。ただ、しかし、今回のような、性的好奇心を満たす目的ということについては、それこそ入手のプロセスとか、大量に持っている、大量に持っているということは、逆に言えばその入手のプロセスを立証することが容易です、いずれにしても、その取得のプロセスを立証しないと、性的好奇心を満たす目的ということを客観的に立証することはほとんど不可能であると私は思っています。

 したがって、結局は、取得の部分のところをしっかりと処罰することができれば、自白に頼らずに立証可能、事実、単純所持については処罰可能であるというふうに考えています。

 一方で、今のお尋ねですが、一回限りだったらいいのかと。一回限りの取得というのもいろいろあります。つまり、例えば、皆さんもほとんどの方がインターネットをお使いだろうというふうに思いますが、メールで勝手に送られてくるケースだけではなくて、インターネットのいわゆるネットサーフィンをしていますと、わけのわからないクリックボタンがたくさんあって、そこを知らないうちに、間違ってクリックをしてしまって変な映像が飛び込んできていたなんということは、皆さんも御経験あるんじゃないかと思います。それも、取得ということからいえば取得に当たってしまいます。では、その中に児童ポルノが入っていましたということが可罰的な行為か、違法な行為かといえば、それはそうではないというふうに思います。

 なおかつ、これも、間違ってクリックしたのか、それとも、なるほど児童ポルノだと思ってクリックしたのかなんということは、そのクリックをしたという客観的な事実の立証だけではわかりません。つまり、主観的な要因、つまり自白に頼らざるを得ない部分で、意識的にそのボタンをクリックしてしまったのか、それとも、何かよくわけのわからないところで間違ってクリックしてしまったのかということが分かれてくるという話ですから、やはり、これを処罰対象にするということは、処罰範囲が広きに過ぎることになるというふうに思います。

    〔大前委員長代理退席、委員長着席〕

丸谷委員 私の質問は、有償または反復でなければ児童ポルノの取得というのは合法ということですかという質問でございました。

 例えば、ただで一回に百枚の児童ポルノを取得した、これは有償でもございませんし、反復でもございません。これは民主党案では合法になるわけですか。

枝野議員 刑罰法規を科するに値をする違法ではないというふうに思います。

 というのは、百枚といっても、例えば雑誌のようなものを百冊だったら、それは違法性があるかもしれません。しかし、まさにインターネット上などでは、一度に百枚の映像がどんと送られてくるとか、クリックしたらどんと来てしまうなんということは日常的にあり得るケースでありますから、量が多いか少ないかということでは一律にはいけない。一回だけだったら、よくわからないうちに何か手に入ってしまった、自分の管理下に入ってしまったということは十分あり得るというふうに思いますので、そこは量ではなくて、やはり、ああ、この人は意識的にこれを集めているんだなということが客観的状況から類推できる、そういう要件を課さなければならない、こういうことです。

丸谷委員 わかりません。

 今、枝野議員は、送られてきた、送られてきたという前提でしか御答弁していただかないんですね。

 見たい、自分が児童ポルノを見たい、なぜなら自分は児童の裸体あるいはそういったものが好きだからということで見たい人が、今回、民主党案が成立した場合、ああ、これは民主党案であれば、だれか小児性愛のグループの皆さんから、見たいものに関してただで一回に百枚送ってもらう。送る方に関してはこれは罪に問われるわけですけれども、では、取得した人はこれは合法行為になるということですね。

枝野議員 議論がかみ合っていない理由が大体わかってきたんですが、自分が見たいと思って所持に至った人なのか、それとも間違って所持に至った人なのかということの区別は、それは客観的には、一義的にはすぐにはわからない。わかりませんよね。

 それは、特にネット上などが一番典型ですけれども、自分が小児性愛の趣味があって、そういった児童ポルノを見たいという意思でネット上から例えばそういったものを取得した人と、何か知らないボタンを押してしまったらそんなものが送られてきてしまった人というのはどうやって区別をするのか。結局は、その区別をする方法がないじゃないですか、自白以外に。

 自白以外にあるとすれば、この人はお金を払ってでも手に入れたということは、それは少なくともかなり違法性の高いかもしれない、お金の価値のあるものかもしれない、そういったことについての推定が働きます、意識的に入手をしたということが働きます。あるいは、同じようなことを繰り返していれば、間違って何かボタンを押しちゃってということではないということが類推できます。

 でも、一回に大量に入手をした、入手をしたというのは、手元の、自分の管理下に入ったという人が、そのことだけで、小児性愛者だからそういったものを大量に入手したのか、それとも間違って自分の管理下に入ってしまったのかということはわからないじゃないですか。どうやってわかるんですか。だれがどうやって判断するんですか。わかりようがないんですよ。

 それは、この人は小児性愛者、自分で私は小児性愛者だと言えばわかりますよ、だけれども、それ以外に何か区別のしようがない。結局は、繰り返し取得をしたり有償で取得をしたりすることによってという要件をかけることによって、ああ、なるほど、この人は間違えて手元に入ったのではなくて、本人の意図で手元に入ったということが客観的証拠から判明できるというふうに考えているんです。

丸谷委員 私もちょっと理解のスピードが遅いのかもしれないんですけれども、今の御答弁を聞いていますと、結局、何の目的で取得をしたのかというのはわからない、自分で取得をしたのかもわからないし、送られてきたのかもわからない、なので、例えば一回に百枚児童ポルノを取得したとしても、それは刑罰を科すに当たらないということを御答弁されたということですね。

枝野議員 正確に答えれば、刑罰を科すに当たらないのではなくて、刑罰を科するに当たるものかどうかが判断不可能であるというふうに判断しています。

丸谷委員 そうしますと、そういうことは、児童ポルノの存在そのものを肯定するものにつながってしまうんだと私は思います、その法改正によりますと。だって、見たい人にとっては、反復で有償でなければ、取得をしても、それはどうなのかわからないから国はノータッチだよ、逆に、一回に百枚だったら取得できるよということを指南するような法改正につながってしまうというふうに私は思います。

 また一方で、単純所持というものに関して、警察権力が悪用されるという可能性への懸念をそこまでお示しになるのであれば、警察権力の悪用に対しては、それ自体真っ正面から取り組むべき問題であって、所持というものを容認することで懸念を払拭するべきではないと私は考えます。別の問題だというふうに思いますが、この点については御答弁いただけますでしょうか。

枝野議員 私、理事じゃありませんので、理事の方から間接的に伺っているので正確ではないかもしれませんが、だから可視化法の審議を少なくとも同時並行でやるべきだと。つまり、これは主観的な要素の問題が問われているので、基本的には自白をとる、主観的な要因は自白をとることが一番簡単なんですから。自白をとった上に、それに合ったところで、客観的な状況があったとしても、それに合わせた自白をとらないと、故意とか主観的な性的好奇心を満たす目的というのはなかなか立証は困難ですから。

 いずれにしても、自白が大変大きな問題になる構成要件に与党案ではなっている。その自白がなぜ例えば強要されたり、あるいは事実と違う自白がなされたりするのかといえば、自白をとるための捜査が密室の中で行われているからである。だから、この部分のところを世界的なグローバルスタンダードにまさに合わせましょうよということで可視化の法案を出しているにもかかわらず、こちらの審議には入らないでこちらだけやる。少なくとも同時並行することが必要だというふうに思います。

丸谷委員 私も、法務委員ではございませんし、理事でございませんので、委員会の運営についてはよく存じませんけれども、今おっしゃったこととこの法律の審議というのは別問題だと思います。いろいろなことを背景にして、この単純所持についての前進あるいは解決を図れないということ自体が、先ほど質疑の冒頭で申し上げました彼女たち被害者の声にこたえることになるのか。今、例えば可視化法案が同時並行で入らないからということで、あなたたちの写真を今所持している人は合法なんですよ、あるいは、これからあなたたちの写真を一回に百枚取得すること自体は法で規制されませんでしたという説明で彼女たちの思いにこたえることができるのかというと、私はやはりそこにはかなり大きな違和感を覚えるところでございます。

 民主党案で、有償または反復での取得罪というのを制定されました。この罪が制定されても、過去に所持をしているものは破棄はしなくてもいいわけですね。この点を確認させていただきます。

枝野議員 児童ポルノということで取り上げられている、まさにおぞましいといいますか、児童に対する性的な虐待、ひどい虐待に当たる典型的な児童ポルノだけが対象であるならば、それは過去にさかのぼってすべて廃棄をしろということもあり得るかというふうに思いました。

 しかしながら、少なくとも、現行法の要件などを考えると、本法施行前には、十八歳前後の、特に女性の乳首等が露出をした例えば雑誌のグラビアや映画や、あるいは一般の書店で並ぶような書籍、それも大手出版社から、具体的に言いますと、これが出版時は十八歳でしたが、撮影時は十七歳なのか十八歳なのかわかりませんが、宮沢りえさんの「サンタフェ」などは典型だと思いますが、こうしたものが過去にさかのぼってたくさんあります。

 これらをすべて、持っている人たちに、これが現行法の、先ほど来、ある意味ではどちらの定義だとしてもあいまいさが若干残る、その定義の児童ポルノに当たるかどうかを判断して、持っているものは全部捨てろというのは、これはやはり無理を強いるものであるというふうに判断をいたしまして、それを仕分けして、もしも捨てろということが可能な法律構成ができるならばそれを否定するものではありませんが、やはり残念ながらそれは不可能であろうというふうに思っています。

 少なくとも、これから提供だけではなくて取得なども処罰をされるということになれば、こうしたものが流通をして広がっていくということについては十分に抑えることができると思っています。

丸谷委員 これからの取得は防げる、一回に百枚の取得は防げないけれども、これから反復をして有償での取得は防げる、しかしながら、今までの児童のポルノについて、被害者に対して、今までの持っているものは防げませんよということだと思います。これでは私は、児童の権利を守る、児童ポルノを撲滅するという視点からは全く不十分だというふうに考えます。

 また、次の質問に移りますけれども、今回、民主党案では、法律の「児童ポルノ」という名前を「児童性行為等姿態描写物」という変更をされました。私は、これは国内外ともに誤った政治的なメッセージを与えてしまうのではないかということを懸念しております。

 国際会議の場におきまして、今、現在法の公定訳というのは、チャイルドポルノグラフィーというものが使われています。最近、国際社会の中では、チャイルドポルノグラフィーにスラッシュ、そしてセクシュアル・アビューズ・イメージという形の表現になっておりますけれども、例えば、児童性行為等姿態描写物、これを国際社会で議論する際に、日本はこういった法律になりましたということで、タイトルをどのように英訳されるかわかりませんけれども、全く今まで使っていた児童ポルノというところからかけ離れてしまって、日本は何をやっているのか、後退してしまっているのではないかというイメージを与えることになるかと思いますが、いかがでしょうか。

西村(智)議員 児童ポルノの名称の変更でございますけれども、児童ポルノに係る犯罪が被害児童に対する性的虐待行為であると冒頭申し上げました。これは委員共通の思いだと思いますが、そういう認識のもとで、児童ポルノがなぜ悪質な犯罪なのかという根拠を明らかにするために行うものであります。むしろ、児童への権利侵害行為である児童ポルノへの取り組みの必要性を強調するためのものであって、この点は強調をさせていただきたいと考えております。

 個別の児童の権利擁護だけではなく、全体としての児童とか風潮といった趣旨を盛り込んで考えていこうという方向もあるようではありますが、民主党としては、あくまでも実在の児童の保護のための政策を充実させていこうという考え方でありまして、児童ポルノの名称の変更、既存の罰則の引き上げ、そして、ここは重要なところだと思いますが、被害児童の保護の充実など、すべてこのような考え方に基づいて改正案を提出しているところであります。

 また、国際的にも、先ほど委員おっしゃったように、セクシュアル・アビューズ・イメージズ、チャイルド・アビューズ・イメージズなどという児童虐待画像という言葉が用いられるようになってきております。この言葉は、児童ポルノが児童に対する犯罪行為を記録したものであるという現象の深刻さを反映しておりまして、また、そのことを強調するために使われる言葉です。

 民主党案においては、このような国際的動向も踏まえて、定義規定の内容を正確に反映する趣旨を含めて、用語の改正、見直しを行ったものでございます。

丸谷委員 例えば世論調査を今後行うとしても、児童性行為等姿態描写物に対する質問ということを言われても、国民の皆さんは、何なんだろうと、全くわからないことになってしまうのではないかと思います。こういった定義も非常に狭めたものに今回民主党案はなっていますし、この法律の「児童ポルノ」という名前も取って違うものにしてしまう、非常に私にとっては目くらましをされたような法改正になっているのではないかというふうな感想を持っている次第でございます。

 最後に質問をさせていただきたいと思うんですけれども、民主党の提案者の方に質問をさせていただきたいんですが、ちょっと通告をしていないので申しわけないんですが、今、児童ポルノに対する取り組みの国際的なスタンダードと、我が国の議論の基準というか、法律に対するこの差異というものは感じていらっしゃるんじゃないかというふうに私は思います。この点についてお伺いをさせていただきます。

 児童ポルノというのは、簡単に今インターネットで国境を越えていく犯罪ですので、一国だけでは解決しません。だからこそ、国際スタンダードに合わせる必要というのがあります。その大きな一つが単純所持の規制というものでございました。

 児童ポルノ自体が悪であるという国際スタンダードの今、キーワードはゼロトレランスでございますので、つくる人もだめ、売る人もだめ、ただで上げる人もだめ、もらう人もだめという、その存在そのものがだめというゼロトレランスで取り組んでいる。しかしながら、きょうの答弁を聞いていますと、では一回で百枚取得するのはいいのか、あるいは、今まで持っていたものは破棄されないということを考えますと、トレランスだらけという感じになりまして、国際スタンダードとはかなりかけ離れることになると思います。最後にこの点についてお伺いをさせていただきたいと思います。

枝野議員 まず、各国ごとに児童ポルノの定義が違っています。少なくとも、私どもが認識している限り、アメリカの児童ポルノの定義は、もしかすると、私どもが今回提起をしているものよりもさらに狭い定義で児童ポルノということになっています。

 それから、先ほど来申し上げておりますが、各国ごとに刑事司法手続が違っています。アメリカはかなり捜査の可視化が進んでいますし、あるいは、弁護人立ち会いでなければ取り調べができないというような州もあると聞いておりますが、そういった形で、自白の強要に対する予防、防止策というのが十分にできている国とそうでない国と、刑罰法規において同じでなければならないということにはならない。むしろ、そうであるならば、アメリカなどで取り入れられている可視化や、弁護人立ち会いでなければ取り調べができないということを一刻も早く日本に入れて、そちらも同時にそろえなければいけないというふうになります。

 それから、では日本が国際社会の中でどれぐらい、児童ポルノが世界じゅうに蔓延していることの中で、日本の法律がいわゆる単純所持が規定されていないことがそのことの大きな要素になっているのかということを見れば、単純所持が規制をされているとされているアメリカにおいてむしろ多数の問題が生じている、製造あるいは提供のもとになっているというようなことなどを考えたときには、むしろ、そちらのこと以上にやらなければならないのは、各国の協力をして、例えば日本における現行法においても、幾らでも取り締まれるところがまだ取り締まれていないところもたくさんある、そこのところの努力を怠らずにしっかりとやっていく、あるいは、アメリカとかロシアとか、提供をたくさんしている国の取り締まりをしっかりやらせるというようなことこそが、むしろ現実問題として児童ポルノによる被害を防ぐということにつながっていく、こう考えています。

丸谷委員 ありがとうございました。

 児童ポルノに関しましては、無関心こそが最大の敵だと思っておりますので、その意味で、この委員会において審議をしていることは非常に重要だと思いますけれども、見直しされるべき時期からもう二年も過ぎておりますし、充実した審議とともに、院の決断がされますように、採決が行われますことを期待しまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 まず、所持の故意と、性的好奇心を満たす目的というこの主観的要件について、特に今回、このいわゆる単純所持罪について、自白以外にどういう客観条件、つまり、自白を得られないときにどういう客観条件があればこうしたものの立証が可能なんでしょうか。

葉梨議員 答弁に入ります前にちょっと、先ほど来、この議論のやりとりを聞いていまして思いましたことは、この所持の禁止とも関連するんですけれども、まさにその肝になるところですね、枝野委員が御懸念されているのは、インターネットで勝手に送りつけられてしまう場合がある、それについては、自白以外に立証するすべがないから、そういったものは、もしかしたら可罰的なものはあるかもわからないけれども禁止すべきではないというような御議論なわけですけれども、世の中がどんどん進んでまいりまして、自宅に勝手に、郵送ではなくて何か物がどんどんどんどん届くというような、魔法の穴みたいなものができまして、そういうのができて麻薬もどんどん送りつけられてくる可能性があるという場合だったら、やはり麻薬のそういった所持というのも禁止すべきじゃないということになるのかどうか。

 そこら辺のところで、世の中が進めば、そういったものに対して対抗する姿勢というのをリトリートすべきであるというのはやはりちょっといかがかなというふうに思うんですが、ただ、捜査自体を恣意的に行わないというのは明らかに大事なことですし、また、ちゃんと立証していくということも大事なことです。

 そこで、今、枝野委員からお話のありましたのは、所持の故意と、自己の性的好奇心を満たす目的、この二つですけれども、まず所持については、まず、所持をしているという事実は、通常、所持罪の場合ですと、やはり物がないと捜査というのはなかなか難しい面はございます。それはもう御存じのとおりだと思います。ですから、現行犯的に物がありますよ、それから、パソコンの中にそれが保管されていますよと。

 そして、それについて、やはり所持については故意が必要です。実際にそれが児童ポルノであります、あるいは児童ポルノである可能性がありますということを本人がちゃんと認識している必要があるわけです。ですから、単にパソコンを開いただけで、メールが送りつけられてくる、どんなメールが送りつけられてきたかわからないというような状況のパソコン、これが未必の故意に当たるとはちょっと思えないなというふうに私は思います。

 それで、その部分が、必ずしも自白だけではなくて、実際にそれをクリックして見たかとか、そういった記録というのはあるわけですから、必ずしもそれは自白だけではなくて、とれるものだと思いますし、また、送信をいろいろなところから受けているわけですね。ですから、そういったような記録というようなものと客観的に合わせていくということがあれば、それは相当客観的な捜査はできるんじゃないかなというふうに思います。

 次に、自己の性的好奇心を満たす目的、これについてもお答えをしなければならないというふうに思います。

 自己の性的好奇心を満たす目的犯。目的犯が、全部これが自白によらなければいけないというのは、これは相当な誤解であろうかというふうに私は思います。ここは目的犯という形でしていますけれども、販売目的あるいは公然陳列目的、これについてはより重い罰則をかけるという形で、すべてこの所持の関係は、提供目的、販売目的、公然陳列目的といったような目的犯になってくるわけです。

 翻って、自己の性的好奇心を満たす目的というのは、自分が自白して、私の性的好奇心を満たす目的でしたというふうに自白をしなければそこのところは出てこないのかどうか。

 目的犯といいますのは、ちょっと故意とダブってきてしまいますけれども、先ほどちょっと例として申し上げましたが、殺人をする、殺意があるというようなことが、内心の意思ですけれども、果たして自白がなければそれが立証できないのかどうか。そんなことはございません。人を殺す器械であるけん銃、これを相手に向けて撃てば、まさか死ぬとは思いませんでした、そういった抗弁はなかなか通用しないわけです。

 ですから、例えば、自宅を捜索したところが、自宅の中にたくさんのポルノビデオがあって、そしてその中に児童ポルノもありましたというような場合は、相当、自己の性的好奇心を満たす目的ということが立証できる場合がやはり多いだろうというふうに思いますし、また、自分の自白だけじゃなくて、その方のいろいろな周りの方、そういったようなお話から、その人の生活行動、どういったような行動をしていたか、よくよく児童ポルノの店に出入りしていましたとか、あるいは、その方が児童ポルノを取得するためにいろいろな形で、手紙を書いたりあるいはメールを書いたりする、そういう中で、提供してくださいというような依頼をしたとか、そういったことも、やはりもろもろの要素というのを客観的に捜査した上で、相当客観的に立証はできると思います。自白だけということはないと私は思いますよ。

枝野委員 まず最初の、覚せい剤みたいな話との違いは、物と情報との違いというのは決定的に違うと思っていまして、どんなに科学が進んでも、ドラえもんのどこでもドアができるわけは物理的にあり得ませんから、まさに今回、情報は勝手に飛び込んできて勝手にパソコンなどに落ちる話があるということですし、それから映像、例えば郵便で送られてくる場合であっても、例えば、それなりの容積のある物と、紙一枚でも児童ポルノに当たるということで、厚い雑誌の中に一ページそんなものが入っているかもしれないということとの違いは決定的にあると指摘をしておきたいと思うんです。

 私は、今伺っても、結局、単純所持罪をつくっても、故意とか性的好奇心を満たす目的ということを立証しようと思えば、その取得のプロセスをそれなりに立証せざるを得ないということになるのではないのか。

 例えばパソコン上に映像があった、パソコン上に映像があったことだけで所持の客観的要件は満たします。でも、そこに所持の故意や性的好奇心を満たす目的ということを立証しようと思ったら、なるほど、本人がこれを積極的に手に入れようとしていた、あるいは繰り返し手に入れていた、お金を払っていた、こういったことが立証されて初めて所持の故意が認められる、あるいは、そういったことが立証されて初めて性的好奇心を満たす目的が立証されるということであるならば、実は両案は余り変わりはない。そして、むしろ欠けるところがなくて、与党案の方がいいのかもしれません。だけれども、そのことはどこにも担保されていないんですよ。

 逆に言えば、自白さえあって、自分の占有下に当該物があったときに、裁判官は無罪にしますか。明確な自白があって、客観的な証拠、物として、その人のパソコン上に児童ポルノの映像が残っていました、所持あるいは保管に当たるんでしょうね、そういう証拠はちゃんと出ていますと。そして、取り調べの中で、例に余り出すなとおっしゃいましたが、それこそ足利事件のように、本人は全くやっていなくても、まさに一種迎合的に、全部つじつまの合うような自白をしていますと。その二つの証拠を出されて、そして、あの足利事件だって、一審の途中までは本人は認めていましたよね。裁判でも争わなかったらそういう人は有罪になりますよね、当然、客観的に、裁判所は。

 逆に言えば、そのときに必ず入手したプロセスを証拠として挙げろということであるならば、我々の案と変わらないじゃないですか。だとすれば、冤罪を防ぐ見地から考えれば、取得のプロセスについてちゃんと立証する、そのこと自体が構成要件であるという制度にした方が安全じゃないですか。

葉梨議員 まず、自己の性的好奇心を満たす目的ということについての立証の仕方ということですが、先ほども申し上げましたけれども。

 ほかの法律にも同じような用語は多く使われていまして、その中で冤罪というような事例が起こっているということを私は承知はしておりません。

 そして、必ず取得の過程というのを立証しなければならない、これはちょっと違うんじゃないんですか。例えば、パソコンで、自分の外づけのHD、ハードディスクにある画像がありました、それを自分がダウンロードした、どこから取得したかわかりませんね。外づけのHDの中にある画像、もとはどこから取得したかというのは立証しないでも、自分のHDに、ハードディスクにそれをみずからダウンロードして、それを何回も何回も自分が開いて見ているということであれば、相当これは、自己の性的好奇心を満たす目的というのが立証の大きな材料になるんじゃないですか。そこにおいては、どこのサイトからとりましたということまで構成要件上必要はないというふうに思いますよ。ですから、必ず取得の過程というのを立証しなければならないということではないわけです。

 それと、先ほどからパソコン、インターネットの世界のことをずっと言われていますけれども、どこから入手したということは全く問題ないけれども、実際、有体物だったらどうでしょう。有体物として児童ポルノを持っている、それは、どこで買いましたということを立証しなければ、自己の性的好奇心を満たす目的というのは立証できないんですか。そんなことはありませんでしょう。自宅の中にたくさんの児童ポルノのビデオを持っていて、それをどこから買ったなんて関係ないですよ。そんなこと立証できなくたって、何回も何回も見て、にやにや笑っていれば、それは自己の性的好奇心を満たす目的で所持しているということになるでしょう。

 必ず取得の過程を捜査で立証しなければならないということは、それはちょっと違うと思います。

枝野委員 本棚にたくさん児童ポルノの映像が、ビデオが並んでいたというケースは、それは可罰性があるケースがほとんどでしょう。だけれども、逆に、この法律、与党案が通れば、一つでも持っていたら処罰されるんですよ。一つでも机の引き出しに何か入っていたら、あるいは本棚の本のすき間に入っていたら、あるいは自分の持っている雑誌の中に一枚でも入っていたら、客観的要件を全部満たすんですよ。パソコンの中で何度も何度も見ていなくたって、一度見ただけでも客観的構成要件は満たすんですよ。そのときに、それに自白がくっついてしまったら有罪になるじゃないですか。なりますね。そのことだけ。

葉梨議員 可罰性があるけれども、民主党案で、たくさんの児童ポルノを蔵書として所持している場合は罰せられないんですよ。そのことを踏まえて議論をしてくださいね。

 そして、一つの例として、それをとりました、自白がございましたと。でも、やはりその周りの状況というのは、つまり、それを開いてもいないというような状況であれば、果たして性的好奇心を満たす目的であったというふうなことが言えるのかどうか。あるいは、そのサイトの名前を、私は実はそのサイト、どこも全然知りません、知りません、知りません、けれども性的好奇心を満たす目的でしたというような自白、それにはやはり捜査の過程においても合理的な自白というのは必要だと思いますよ。

 ですから、一概にすべて、さっき、すべてということは言えないということを枝野委員もおっしゃられましたけれども、自白プラスそれがつけば必ずイコールということじゃなくて、やはりそれは外形的にいろいろな状況の中から、自白というのはもちろん証拠の王者ですから、大きな要素として判断されるだろうというふうに思います。

枝野委員 やっていないのに、合理性の、つじつまの合う自白をとっているじゃないですか、現実に足利事件で。そういうケースが起こり得るんでしょう。開いたのだって、一回しか開いていなくたって、開いたら見ていますよ。見て、何だこんなおぞましい映像はといって、パソコン上のごみ箱に捨てているかもしれませんよ。それでも、それに自白がくっついたら有罪になるんですよ、与党案では。

 それが本当に自分の意図で取得をしている人だったら、それは処罰に値すると思いますよ。変なボタンを間違って押しちゃって、送られてきて、あけてみたら、何だこれはといってごみ箱にほうり投げる。でも、ごみ箱にほうり投げても、これは保管に当たりますね、映像が残っているんですから。あるいは、パソコン上のごみ箱に捨てたらいいんだということになれば、逆になれば、悪質な人が、自分が見たい映像を全部ごみ箱に残しておけばいいんですから、ごみ箱に入れたかどうかは全然関係ないですね。処罰される可能性があるんですよ、そういったことを。そして、残念ながら、今の日本の刑事司法の現状からすれば、そういった自白がとられる可能性というのは相当ある。

 しかも、なぜか自分の知らないうちに自分の管理下に入ってしまったというのを、郵便であれ、メールであれ、第三者が陥れるために勝手に送りつけることは可能なんですよ。それこそ、政権を持っている権力が野党の議員のところにそういうものを送りつけておいて、それで令状をとって入っていって、実物があるといったら逮捕できますね、まず物があるんだから。それで、自白をとったら起訴できるんですよ。私のそこのかばんの中に知らないうちに入れられていました、それで、あ、一枚入っていましたと、逮捕されるんですよ。別に政治家じゃなくたって、みんなそうですよ。

 それが果たして、それは、そんなむちゃなことを警察はやりませんとおっしゃるのかもしれない。でも、やっているんですよ、足利事件で。現にやっているという現実を考えたときに、そういうことが起こらないような制度をつくるのは立法府の責任だというふうに私は思いますが、確認はいたしません。

 もう一点、法務省、わざわざ大臣に来ていただいたので、現行の児童ポルノ提供罪における十八歳未満であることの認識の必要性は、現行法であるんでしょうか。

森国務大臣 現行法二条一項は、児童の定義について十八歳に満たない者と規定し、二条三項の児童ポルノの定義も、児童の一定の姿態を描写したものであるとされています。したがって、現行法七条の児童ポルノ提供等の罪が成立するには、児童であることの認識、すなわち十八歳に満たない者であることの認識が必要であると解されます。

枝野委員 この行為も未必の故意でもいいんですよね。これはどちらでもいいんですけれども、提案者でも内閣でも。

森国務大臣 お尋ねの未必の故意とは、一般に、犯罪事実が存在するかもしれないことを認識しつつ、これをあえて認容していることを意味するものと思います。

 児童であることの認識という点でいえば、十八歳に満たない者であるかもしれないことを知りつつ、あえてそのことを認容しているという場合には、未必の故意が認められることになるものと考えられます。

枝野委員 先ほど質問にもお答えしました、例えば宮沢りえさんの「サンタフェ」を初めとして、本法施行のずっと前から、十八歳以上なのか、十八歳未満なのか、調べれば「サンタフェ」はわかるのかもしれません、撮影当時十七歳だったのか、十八歳になっていたのか。あるいは、初期の関根恵子の映画とか、いろいろなものがありますよ。十八歳未満の特に女性が裸になっている、しかも、大手の一般の出版社や大手の一般の映画会社から配給されたDVDなどが出ているというものはあります。

 こういったものを、自分の家の中にあるかどうか探して、全部捨てろということを与党案は言うんですね。

葉梨議員 先ほどから、答弁を求めていないので簡単に申し上げますけれども、自分のかばんの中に入れられたら陥れられる可能性があるといったら、それはけん銃だって入れられるかもわかりませんし、薬物だって入れられるかもわからないんですよ。非常に捜査機関に対しての不信感があるというのはよくわかるんです。よくわかりますけれども、だからといって、やはり実体法の世界でこの規制というのを緩めるとかいうことがあってはならないと思いますよ。

 それから、この法律ですけれども、もう昨年の六月に提出して一年。これは法務委員会の運営ですから、ここで言う話ではないので、もうこれ以上言いません。まあ、一年たつ、やはり早くちゃんとこういう審議をやろうやというようなこと、これが大事なことだと思います。

 そして、今の御質問ですけれども、大手の出版社が出したからといってオーソライズされるわけじゃないんですよ。大手の新聞社だって時々間違いを書くんです。ですから、その意味でいったら、社会の中で、十八歳未満の児童のポルノ、これについてはしっかり廃棄をしていきましょうというようなことがあれば、それは、この一年間の猶予期間があるわけですから、そういったものをやはりちゃんと廃棄していくということは、私は当然のことじゃないかと。

 要は、児童ポルノというものを持っているという状態、これは先ほどの捜査に対する不信とかいうのは別として、子供に対する保護のために、児童ポルノというのを持っている状態はいけないことだというふうに日本国民が考えるのであれば、それが有名な女優であろうが大手の出版社であろうが、それは関係ない話だというふうに思います。

枝野委員 まず一点目、御指摘をされたことについて申し上げれば、けん銃とか覚せい剤というものと、例えば映像一枚というものとでは、それこそ、それが例えばかばんの中に勝手に入っていたというときに、児童ポルノだったら、自分でどこかで知らないうちに、少なくとも、現状ではネット上とかなんとかで手に入れることが可能なんですよ。だから、持っていることだけで、単純所持を違法にしようと思ったら、何かどこかから手に入れたりしてできるんですよ。

 けん銃や覚せい剤はそんなことできませんでしょう。それこそ暴力団関係とかそういうところとか、何かからどこかから手に入れなきゃ、普通の人はかばんの中に入らないものですよ。そういうものは全然違うわけだから、陥れようと思ったって、けん銃や覚せい剤で陥れるのは簡単じゃないんですよ。だけれども、映像一枚だったら、ネット上かどこかから手に入れたんだろうということで、全然容易さが違うということをまずしっかりと認識をしていただきたいというふうに思います。

 その上で、私も、大手が出したからいいということを言っているんじゃないんです。かつて合法的に製造、販売をされて所持をしているものが世の中たくさんあるんです、いい悪いは別としても。その中には、例えば芸術性もあったりするというものがあると思うんですね。だけれども、これは、お互いどちらの党の案も、芸術性が高かろうと何だろうと十八歳未満の女の子の裸はだめだと。私はこれは正しいことだというふうに思いますが、過去において、芸術性もあったりとかして社会的に容認もされて、合法的に手元にあるものを、全部皆さん探して捨ててくださいということが、例えば「サンタフェ」を初めとして、可能なのか。

 「サンタフェ」は、十八歳なのか十七歳なのか、私も調べてみましたが、わかりませんよ。わからないですよね、十八歳ぐらいの女の子が実際の年齢が何歳だったのか。特に十年前、二十年前、三十年前に製造、販売されて手元にあるもの、そんなものをみんな調べるんですか。

 しかも、未必の故意でオーケーなんですから。どうも昔はそういうものがあったらしい、うちにももしかするとあったかもしれないな、まあ、それでもしようがないや、探すの面倒くさいから。私自身だってありますよ。平成十一年にこの法律をつくるときに、こんなにひどいものがコンビニなどでも売られているんですよといって、たしか野田聖子さんにだと思いますけれども、見せられて、サンプルとしてもらいましたよ、その児童ポルノの雑誌を。もちろん資料として、もしかすると審議が終わったころに捨てたかもしれない、だけれども、また児童ポルノを改正するときの参考になるかもしれないからとっておいたかもしれないな。自信ありませんよ。

 自信がないということは、未必の故意だったら、私は、あらゆる事務所を全部家捜しして、まさか残っていないか確認しなきゃいけないんですか。そんなことが日本じゅうの人に起こるんですよ。それは現実的じゃないですよ、残念ながら。

葉梨議員 枝野委員、もしかしたら事務所に持っていらっしゃるかもわかりませんね。でも、あなたの性的好奇心を満たす目的じゃありません。私も、児童ポルノをたしか中央教育審議会か何かで回覧したことがあります。これは正当目的です。みだりにもならないんじゃないかなというふうに思うぐらいですけれども、少なくとも、自己の性的好奇心を満たす目的、これにはならないです。

 それで、大家捜しをしなきゃいけないとかいう話もありましたが、例えば「サンタフェ」であれば、あれだけ有名なものであれば、未必の故意という話もありますが、大体、具体的に、それが一体十七歳なのか十八歳なのか、そこら辺のところはいろいろなところでまた問い合わせをしていただければいいし、それぐらいのサービスは政府の方もやってくれるんじゃないかというふうに思います。そして、児童ポルノであるかどうかということについて、児童ポルノかもわからないなというような意識のあるものについてはやはり廃棄をしていただくということが当たり前だと私は思う。

 ただし、それは、昔、うちの蔵の中に、蔵なんて私のうちはありませんけれども、旧家であれば蔵もあるんでしょう、蔵の中に、何百年か前の児童ポルノがあるかもわかりませんよ。そこまで家捜ししようという話じゃないので、これはあくまで、罰則がありますのは、自己の性的好奇心を満たす目的で所持、保管するという故意犯、これを罰しているわけです。そして、みだりに児童ポルノを所持し保管しちゃいかぬ、みだりにですから。それで、たまたま地震で蔵が壊れた、そういうものがあったといったときは、それはちゃんと廃棄してくれればいい、そういうことじゃないかと思います。

枝野委員 何百年前だったら、写真がないので、まずそういうことは現実としてあり得ないということを指摘しておきたいんです。

 それから、確かに、私のどこかの事務所の片隅に野田聖子さんからかつてもらったものが残っていても、それは抗弁がきくかもしれませんね。それは、ずっとこの問題に私が取り組んできていることをみんなが知っていますから。でも、そういうことがみんなに起こり得るんですよ、この法律は。

 今の法律では児童ポルノに当たる、児童ポルノに当たるのだって、まさに、それこそ二歳、三歳の女の子に性交をしているような、こういうものから、「サンタフェ」は十七歳だったら児童ポルノに当たるというところまで、いろいろな種類のものがあるわけですよ。それについて、どれか持っていた可能性があるよなと、いや、ちゃんと考えればみんな普通そうだと思いますよ。本法施行前は、現実問題として、十八歳前後の女の子の裸の写真は普通の雑誌にもたくさん載っていましたから。だからいいということじゃないですよ。いわゆる特殊な幼児性愛者向けの雑誌じゃない普通のところにも載っていましたよね、十七歳とかの女の子の裸の写真が。ああ、そういったものがあったはずだよなと、未必の故意はみんなあるじゃないですか。そんな何十年か前の週刊誌をたまたまとってあることはありますね、みんな。そのことが目的じゃないかもしれない。

 そうすると、それが立証されてしまったら、あとは主観的な目的なんですよ。主観的な目的も、確かにこの人は幼児性愛があって性的好奇心を満たす目的であるということがはっきりしている人を他の客観的な事情で立証すること、これはできます。おっしゃるとおりです。本人の自白がなかったとしても、自白に頼らなくても、なるほど、この人はこれこれこういう趣味で、こういったことを今までやってきている、あるいは周辺の人の証言でということは可能かもしれません。

 でも、逆に、そういう幼児性愛などの性向がなくて、御本人に性的好奇心がなかったとしても、現に持っている人が、いや、おれは幼児性向ではない、私は性的好奇心を満たす目的ではないということをどうやって抗弁できるんですか。結局は、性的好奇心を満たす目的であるという自白がとられてしまったら、それ以外にそれを否定する客観証拠を出して否定することはできないじゃないですか、まさに内心の問題ですから。それも処罰の対象になるんだというこの法律の問題点を我々は指摘しているんですよ。

 いや、それは仕方がないと。そういう人がたまたま一枚持っていた、たまたま一枚。大体、どうやってその単純所持を立件するのかというのはよくわからないんですけれどもね。つまり、単に自分で持っているだけという状況であるならば、そこに捜索が入るということは基本的には考えられない。たまたまかばんに入れて持っていたら、任意で荷物検査をしてその中に入っていましたとか、そういうことかもしれませんね。そこで一枚出てきましたと。そして、捜査官の方が大変熱心な捜査官で、おまえ、こんなものを持っていたんだから性的好奇心を満たす目的だろう、そういうことで、足利事件のようにつじつまの合う証言を得られてしまいました、こういう人は冤罪でも処罰されても仕方がないというんだったら、この与党案は正しい法案だと思います。

 でも、そういったことは絶対に起こしてはいけない。絶対起こしてはいけない中で、なおかつきちっと処罰をしなきゃならない人たちについては処罰をする、それが私たちに求められているので、少なくとも、現状の与党案は、その部分のところで決定的な問題があると思いませんか。

葉梨議員 冤罪は絶対にあってはなりません。これは絶対なくしていくように、お互いちゃんと努力をしていきましょう。

 しかし、今のお話を聞いてみると、ちょっと本末転倒じゃないかなというようなところもあります。

 一つの児童ポルノを持っている、これについて冤罪があるというのであれば、それはなくす努力をしっかりすべきであります。しかしながら、だからといって、そういうことがあるんだ、もしかしたらみんな陥れられてしまうかもわからないんだというような、私はそんなことはないと思います、ないと思いますけれども、そういう考え方で、たくさんの児童ポルノを蔵書として抱えている、それは許される、そっちに行ってしまうというのは考え方として違うんじゃないか。そういうことをもし言われるんだったら、何で民主党案は大量の児童ポルノを所持している場合を禁止しなかったんだというふうに私は思いますよ。一枚だけだったら大丈夫ですというように書くべきじゃないですか。

 それと、もう一つ申し上げますと、具体的に、自白だけでといったって、さっきの例でいえば、昔、確かに週刊誌の中には児童ポルノというのはあったかもわかりません、それは私もよく知っています。でも、家を見たら、それが本当に何十年前のほかの雑誌と一緒に束になって、それで全然見た形跡もないし、ほこりをかぶっているといって、それでこいつは性的好奇心をとる目的だと自白を強要する捜査官なんて私はいないと信じていますよ。

 そうじゃなくて、やはり、児童ポルノであれば、有体物であればそれを何回見たとかいう態様ですとか、それから、パソコンの情報であれば、それをダウンロードしているとか何回開いたとか、そういったことから、やはりこれは自分が見ているんだな、性的好奇心を満たす目的で見ているんだな、それで所持しているんだなということをおのずと明らかにするようなしっかりした捜査を行われることが私は求められていると思うし、もしも、捜査に対する配慮というのを、我々がしっかりしなきゃいけないということをさらに求めるんだったら、この国会でちゃんと捜査機関に対してしっかり求めていきましょうよ。

枝野委員 捜査機関が冤罪を防ぐためにしっかりとやるだなんてことは、別に今さら繰り返さなくたって、我々の条文に載っけましたけれども、そんなこと書かれなくたって当たり前なんですよ。当たり前なんだけれども、現に繰り返されているじゃないですか。

 立法は、民主主義社会は、基本的に公権力に対する性悪説で、間違いを犯すかもしれない、でも、間違いを犯しても、その間違いによって基本的人権を害すことのないようにしなきゃいけない、それが民主主義社会における、特に刑罰法規のつくり方じゃないですか。基本ですよ。性善説で、ちゃんとやってくれるでしょうと。ちゃんとやってくれなかったケースがあるから、民主主義国家にして、立憲国家にして、法律をつくって罪刑法定主義にしているんですよ。ちゃんとやってくれない可能性がある、ちゃんとやってくれないことがあったとしても間違いが起こらないようにする立法をするのが我々の責任だと思います。

 それから、もう一点だけ。

 大量にと。大量に所持している場合については、一枚だけについて、それの取得の経緯ということを立証するのはなかなか難しいかもしれません。しかし、大量に持っていれば、そのうちの何本かについては、あるいは蓋然的に、具体的な話じゃなかったとしても、反復継続して、あるいは有償でという我々の要件を満たす形で、その人たちは我々の法律にひっかかる可能性は十分にあると私たちは思っていますし、なおかつ、さらに言えば、今の点について私たちは、別に修正をすることについては、単純所持はだめだけれども、取得のあり方とかそういったことについては、我々自身も、単純所持的なものは全部だめだからといって否定をしているんじゃなくて、今回だって、何とか問題が起こらない範囲の中で、いわゆる単純所持として問題にされている部分を処罰するために我々なりに知恵を出してここまで持ってきているんですから、今のようなケースについて切り出してやることが可能であるなら、我々は否定するものではありません。

 しかしながら、一枚でも処罰されるという法形式であって、主観的要因については自白だけでも立証することは可能であるという、この法律を認めることは到底できません。

 終わります。

山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、委員長を初め与野党の理事の方には感謝を申し上げたいと思います。

 私も、通常は厚生労働委員会に所属をさせていただいておりましたので、この法務委員会での質問というのは初めての機会となるわけでございますけれども、今般の児童ポルノに関する法律のさまざまな論点の中で、やはり児童の、子供の権利擁護という点をきちっと明らかにしていかなければいけないのではないか、しかも、先ほどの議論で少し、午前中私も聞いておりましたけれども、児童ポルノという規定も後ほどちょっと議論をさせていただきたいと思うのでありますが、この児童ポルノそのものを、やはり我々としては根絶というものを考えていかなければいけない。その手法を、どのような形で取り締まっていくのか、それをこの議論の中で明らかにできればなという思いでいっぱいでございます。

 いずれにしても、自公案そして民主案ということで、両案がこの国会に提出をされ、そして本日から紳士的なあるいは活発な議論がなされるということに対して、法案提出者の皆様方には敬意を表させていただきたいと思っておりますし、また、この委員会で幅広くこの議論というものが熟成されることを願っておるところでございます。

 それでは、時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思っております。

 まず民主案でございますけれども、世界的な潮流の中で、やはりこの取り締まりをしっかりとやっていかなければいけないという思い、これは私どもも共有をさせていただいているところであります。しかしながら、世界の潮流の中では、この規制をするということに関しては、やはりしっかりとした定義規定がまず最初になければいけないんだという視点に立っているという点は、私も、同感、共有をさせていただいていくところでございます。

 そこで、今般、先ほども少し議論がありましたけれども、まず民主の改正案について、「児童ポルノ」という、チャイルドポルノグラフィーそのものの名称、これを変更いたしました。「児童性行為等姿態描写物」ということに改めておるわけでございますけれども、まず、そもそも、なぜこういったことから規定をしなければいけなかったのかというその趣旨であります。

 それからもう一点は、やはりもう一度、この改正になる前というか、現行法そのものの意義というかその法益、それをきちっと最初に確認させていただきたいと思っておるところでございます。それは、先ほど申し上げた、あくまでも児童に対する性的搾取あるいは性的虐待からの児童の保護というところにまずその個人的な法益というものがあるんだというふうに私は理解をさせていただいているところでありますけれども、それで間違いないかどうか、それをまず確認させていただきたいと思います。民主案でございます。

枝野議員 まず、「児童ポルノ」という言葉を変えたということでございますけれども、これは、ポルノ、ポルノグラフィーという言葉の、多分直訳的意味からすれば、現行法あるいは私どもの改正案の中身とも、もしかすると一致をするのかもしれません、私、語学が強くありませんので断定的なことは申し上げられませんが。ただ、日本の国内でポルノという言葉で受ける印象は、昔、ロマンポルノというんですか、ちょっと年代的に違いますのでよくわかりませんけれども、というような映画があった等のことから、非常に風俗犯的、風紀犯的なイメージを伴っている言葉であるということ。

 それから、逆に、この間、この児童ポルノの問題に絡んで、この十年来、大変えげつないといいますか、私自身も午前中の質問のときに申し上げたでしょうか、かつて並んでいた、本当に小さなお子さんが性的に虐待をされている写真等が載っていた雑誌を見たことがございますけれども、そういった本当にえげつないもの、こういうものを何とか防がなきゃということで動いてきた。

 その裏返しとして、定義上は、午前中、宮沢りえさんの「サンタフェ」も話題に上がりましたけれども、これが児童ポルノの定義に当たるのかどうか、私は、詳細な中身まで、朝日新聞の広告しか見ていませんので判断できませんけれども、芸術性との境目ぐらい、ぎりぎりのところのものまで非常に実は幅広く含まれている。

 もちろん、そういったものでも取り締まらなければならない対象のものはあるとは思いますけれども、児童ポルノという言葉で、ある人たちは昔のロマンポルノ映画のようなことで風紀犯的なことをイメージし、一方では、特にこういうものはひどいじゃないかということで、えげつない、大変ひどい、一番悪質なものを思い浮かべるということで、若干、その言葉によって受けるニュアンスが人によって違ってきたりしているのではないだろうか、あるいは誤解を招くようなことがあるのではないだろうか。

 むしろ、ここは素直に、何を取り締まっているのかといえば、児童の性的行為等の姿態を描写したものを取り締まっているので、あえて片仮名、横文字を使わずに素直な表現をしたことの方がどちらの方向にも言葉が紛れることがない、そういう思いで用語を変えるということを提起いたしました。

 それから、保護法益についてはもう御指摘のとおりでございまして、これは一貫して、条文上もございますけれども、被写体となった児童個人の性的虐待、権利侵害を防ぐ、そういったことから子供たちを守るという個人的な法益が保護法益であると認識をいたしております。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりでございまして、釈迦に説法でございますけれども、この法益の問題については、通常言われている部分でいきますと、個人的な法益を保護するかどうかというところ、それがいわゆる法律の射程に入るかどうか、あるいは、社会的な法益、広く一般に、通念上、社会的なものを守るべきものであるのかどうか、それに対する取り締まり罪というものも確かに刑法の中にはあるんだというところ、あるいは、国家的な法益と言われる、国家を守るという点からして、そこに幅広く、内乱罪のようなものが当たるのではなかったかなと思うわけでありますが、そういったものもきちっとやっていかなければいけない。

 そういったそれぞれの法益があるわけでございますけれども、殊さら、この現行法、児童ポルノ、買春禁止法でありますけれども、これは、あくまでも受けた個人の、子供の権利を守らなければいけないという前提に立った法益であるんだというところであります。

 したがって、先ほど少し議論がありましたわいせつ罪、刑法の百七十四条あるいは百七十五条以下のわいせつ罪については、これはいわゆる個人的法益というよりは、どちらかというと社会的法益であるんだというところが、やはりこの児童ポルノ禁止法とは少し性質を異にするんだという点、この部分を、やはりどこに視点を置いてこの法律の保護がなされるのかというところをまずきちっと把握しておきたいなというふうに思うわけでございます。

 そうなりますと、続けて民主案でございますけれども、今度、定義をさらに明確化をしていくということで、現行法のいわゆる二条三項の規定の中で一号、二号、三号というふうにあるわけでございますけれども、このうち三号を削除したわけでございます。さらに、二号についての要件をさらに改正しているわけでございますけれども、この理由というもの、そしてなぜ現行法の三号を削らなければいけなかったのか、その理由を教えていただきたいと思います。

枝野議員 これは、この平成十一年の本法のスタートのときの立法に深くかかわっている立場としては、反省も含めて申し上げなければいけないんですけれども、やはりこの三号というのは、非常にあいまいかつ広範である。これも、当時から申し上げておりますけれども、この文言を読む限りでは、十五、六歳の男の子のアイドルがステージ上で汗を飛ばしながら上半身の服を脱いでいくというのが、少なくとも文言上はかかってしまうのは間違いないというふうに思います。しかし、この法律の趣旨がそういったものを処罰するという趣旨でないというのもはっきりしていると思います。

 一方で、これも午前中に申し上げましたけれども、大変極端な水着、乳首と性器と肛門がわずかに隠れるだけで、そういった部分がむしろ強調されているような水着の、それも十八歳未満のお嬢さんの写真が、ある意味、ちまたに普通にあふれているという状況になっていて、ようやく、昨年でしょうか、こういったものについても取り締まろうかという動きが出てきたというふうに聞いていますが、逆に、これが本当にこの三号に当たるのかというのはなかなか判断が難しいところである。

 判断が難しいということは、これはまずいんじゃないのと思っていても、捜査機関が腰が引けてしまうということが現に起こってきているのではないかということを考えると、真に可罰的な映像というものをより明確にする知恵はないかということを、平成十一年の当時もいろいろ工夫をしたわけでありますが、この十年足らずの間のいろいろな検討や実態等を踏まえたときに、今回提起をさせていただいた形に変えることによって、より明確、より客観性を高め、もちろん、具体的には個別の案件ごとに判断しなきゃいけないわけでありますけれども、取り締まるべきものは明確に取り締まることができることになるというふうに思っております。

園田(康)委員 そうすると、今回、三号の規定を削って、なおかつ二号の規定を細かくというか、もう少し明確にするべきだということであります。

 先ほどくしくも、与党といいますか自公案提出者の御発言の中で、いわゆる提出者が質問に立たれたときに、さまざまなパネルといいますか容姿を見せて、そしてそれによって、これはどうなのか、当たるのか当たらないのかという御質問がなされたわけでありますけれども、当然ながら、そういった部分の判断というものが、一つ一つやっていかなければいけないものであろう。今の現行法においても、今御指摘があったように、さまざまな議論というものがあって、そして、その解釈があいまいになってしまう。それによって捜査機関が、この部分は取り締まれるのかどうかというところがむしろ引けてしまうのではないかという危険もあるんだという危惧を私もいたしております。

 したがって、いずれにせよ、もし与党の皆さんから反論があればお伺いをしたいと思っておるのですが、この児童ポルノに対する禁止規定を、後ほど議論はさせていただきたいと思っておりますが、さらに可罰性をもって厳しく取り締まっていく、それで冤罪はないんだというものを自信を持っておっしゃるということであるならば、この現行法の部分もあいまい性を残したまま、それをさらに規定を盛っていくというのは少し危険があるのではないのかなと私は今現に思っておるところでございます。

 どうせならば、民主案のように、現行法の規定、定義そのものも改正を考えていってはいかがなのかなというふうには思っております。そのこと……(葉梨議員「反論」と呼ぶ)よろしいですか。

 では、質問通告はないですけれども、もし反論があれば。

葉梨議員 時間の関係もあるので、長々とは申し上げません。

 先ほどの質疑でも私は感じましたけれども、むしろ、今民主党から出ている案の方があいまいであるし、狭いんじゃないかという印象を持っています。

園田(康)委員 しかしながら、さらに広い、広過ぎる規定が今現にあるんだというところからすれば、それをもう少し厳格に定義づけるということが必要ではないかなというふうに私は思っております。

 さらに、先ほどの議論の中で強調というのがありましたけれども、それもすべて、要は、映像全体、描写物の全体からも判断をしていけるのではないかというところが担保されているという点は、極めて合理的な改正案ではないのかなというふうに私は思っておるところでございます。

 では、今答弁していただきましたので、先ほど議論になっておりました単純所持についての議論というものに移らせていただきたいと思っております。

 今回の自公案は、一般的な禁止規定というものを設けているわけでございますけれども、そこに罰則規定は設けられなかった。さらに、そこから今度は、提供目的以外の児童ポルノの所持、一般規定についての自己の性的好奇心を満たす目的においての処罰規定というものに、二つ類型をつくられたということでございます。

 先ほどくしくも、やはりこれも、葉梨提出者からもお認めのものがありましたけれども、捜査機関、今の段階において、可視化の部分も当然一緒にやらなければいけない問題であろうというふうに思っておりますけれども、残念ながら、恣意的な捜査というものがすべてにおいて排除し切れない。当然ながら、それがあってはならないというのは私も共有をさせていただいておりますし、そういう方向に期待をいたしておるところであります。

 しかしながら、現段階において、まず定義規定があいまいであるというところと、それプラス、恣意的な捜査というものの可能性が否定できないという状況の中で、それをそのまま対処せずにいいということにはやはりならないのではないのかなと私は思っておるのですけれども、それに対する御所見。

 それから、今般、一般的な所持、単純所持と言われるものは、確かに文言上は、世界的な潮流の中においても、単純所持に対するさまざまな規制をする求めというものは行われております。ただし、その単純所持に関しましても、御案内のとおりでありますけれども、要件をきちっと概念的に明確にしている。我が国よりもさらに厳しい規定を設けながら、そこにおいての単純所持を規制しているというのは御承知のとおりであるというふうに思っておるところでありまして、それをせずして単純的な所持というものを行うには少し無理があるのではないか。むしろ、その所持に至るまでの行為、その行為の入り口の段階で規制をかけていく方が合理的な説明がつくのではないかなというふうに私は思っておるのですが、その点に対しての御所見はいかがでしょうか。

富田議員 園田先生が最初に言われましたけれども、やはり児童ポルノは撲滅しなきゃだめなんだ、ここは多分認識は一緒なんだと思うんですね。そういった意味で、単純所持の一般規定を置くというのは、その観点から、我々自民党、公明党はこういう措置を講ずる必要があるというふうに今回考えて、置かせていただきました。こういう場合に、児童ポルノの撲滅に向けた民間の協力も得られやすくなるだろうというふうに考えております。

 十四条の二で、インターネットの利用に係る事業者の努力規定というのを置かせていただきました。これとあわせて、インターネット上の例えば掲示板に児童ポルノが掲載されたような場合に、掲示板の管理者とかサーバーの管理者などの事業者が送信防止などの措置を講じていただけるようになるんじゃないか。そういった意味でも、単純所持というのは違法なんだという規定を置く必要があるというふうに我々は考えております。

 また、性的好奇心を満たす目的で所持した場合に罰則の規定を設けておりますけれども、「自己の性的好奇心を満たす目的」というこの文言は、現行法でも、二条二項の児童買春の定義において今まで用いられてきております。決してあいまいな規定ではないというふうに思いますし、ここの部分、先ほど来、枝野先生の方から内心の問題じゃないかというような指摘がありましたけれども、やはりこういう目的についても、所持している対象の内容とか所持の態様とか、先ほど来問題になっています、どれぐらいの量を持っているのかといった客観的事情から推認して立証されていくものだというふうに我々は考えておりますので、先ほど来、民主党提案者の方から、自白の強要にいくんじゃないかというような御懸念が出ておりますけれども、既に現行法制上用いられている概念でやっておりますので、そういった懸念はないというふうに私たちは考えております。

 また、与党PTの中でも、確かに先生おっしゃるように、取得というところを注目してやったらどうだ、取得して所持というような御意見もありました。そこも随分検討しましたけれども、まず単純な所持について罰則を設けていませんので、所持罪をきちんと違法なんだという宣言ができるのであれば、所持という概念でいいのではないか、仮に取得して所持ということになると、どこから取得したんだ、いつ取得したんだ、だれから取得した、そういう形態を全部捜査機関側が立証していかなきゃならなくなるというと、単純に所持していて撲滅しなきゃならない対象であるのに、取得の部分の立証に逆にまた時間がかかってしまうんじゃないか、それは所持の態様、自己の性的好奇心を満たす目的というところの客観的な事情を積み重ねることによって、これは違法なんだと認定していった方がいいんじゃないかというふうに与党PTの中では議論が落ちついたものですから、ちょっと民主党の皆さんとは観点が変わって、今回は取得というところに注目するのはやめたという経緯があります。

園田(康)委員 そうしますと、やはりまだまだというよりも、今おっしゃっていただいた捜査機関が膨大な立件のための捜査をしなければいけないということでありますけれども、しかしながら、犯罪構成要件として認定をし、そしてそれをするための立証責任というのはやはり検察側に当然ながらあるわけでありますので、それに対する、簡素化させることを念頭に置いたような規定というのは、どちらかというと少し本末転倒ではないのかなという気はします。

 だからこそ、単純所持というような状況を認定するよりは、取得というものをきちっと定義しておけばそれの立証をきちっとやればいいだけのことであるわけですから、当然ながら、先ほどおっしゃった、自己の性的好奇心を満たすというような状況、その立証責任をいわば被疑者に求める、内心的な自白によって求めるというようなことの方が、これはやはり権力の横暴につながる可能性がまだ否定できないのではないのかなという感じはいたしております。

 そこで、要は検察側がきちっとその立証を行うということで、先ほど葉梨提出者もおっしゃいましたけれども、しっかりとした客観的な証拠を集めるということが当然ながら検察側に求められる仕事、責任でありますので、そのことをもってすれば、取得をするということの立証責任は当然ながらできるものだ、それを証明するというものは検察側に負わされる責任、責務であろうというふうに私は考えておるところでございます。

 それからもう一点だけ、質問通告がありませんで、ごめんなさい。

 さっきの議論の中で、いわば民主党案でいくならば、一回のクリックで、しかも一度に大量に取得をするということは対象にはならないのではないかという議論がありましたけれども、では、与党案の場合において、一回クリックによって所持になった、それがすなわち犯罪構成要件として適用になるんでしょうか。これだけちょっと。

 一回クリックで大量に持った時点、これでもう犯罪ということで認定されるんでしょうか。

富田議員 目的要件を満たせば、仮に一回クリックで大量のものを所持したとなれば、この要件に当たるというふうに考えます。

園田(康)委員 そうしますと、私も今、私のさまざまなメールアドレスがあって、それは公開されておりますから、そこにどんどんどんどん入ってきております。その中で、いわば怪しいものがたくさんありますから、それはもう見ずして削除せよというような指示は秘書に出しております。しかしながら、それを誤ってクリックする場合もあるんですね。そして、それによってパソコンの中に入り込んでしまうという危険性、これはやはり否定はできないのではないかなというふうに私は思っておるところでありますので、そういった点において、それによって直ちに所持というふうになってしまうことの危険性というものは少し考えておいていただきたいというふうに思うわけであります。

 では一方、民主案に対しての質問をさせていただくわけでありますけれども、今回、所持ではなくて取得というところを新しく創設されたわけであります。今回、収集という行為が規定されずに、あくまでも取得という行為に対する罰則規定が設けられたわけでありますけれども、なぜこの収集という行為そのものを対象から外したのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。

枝野議員 二つの理由がございまして、二つの側面がございまして、一つは、みずから進んで入手する意図を持って積極的に入手する行為であれば、一回であったとしても、これは可罰性があるのではないだろうか。しかも、そこに、有償ということでそのことを裏づける、それを要件とするのであれば、客観的な要件で、一回だけれども積極的に入手をする意図を持って入手をしたんだということが立証可能であるということで、収集に至らなくても、有償であれば一回でも処罰をする。

 それから一方では、これはあくまでも主観的な要件を本件においては使うべきではない。先ほど、性的好奇心を満たす目的というのは、本法にもほかにも使われているというお話がありましたが、そういったことが外観上、こういう外観が整っているから推測できるよねとか、こういう外観が整っているから、ないことが推測できるよねというのは、普通、目的犯の場合はくっついてくるのが一般ですけれども、この所持についての性的好奇心を満たす目的というのは、まさに内心だけで、ないとかあるとかを言える問題でありますので、そこは、犯罪の種類によって目的犯にすることが許されるものと問題が大きいものとは違いがあるだろうと思っております。

 ただ、いずれにしても、所持そのものあるいは取得そのもののときにおいても、できるだけ主観的な要件ではなくて、つまり、収集ということだと、例えば一回だけ実際にクリックをしてとりました、だけれども収集の意図を持っていましたということになれば収集は立証できてしまう、これはやはりリスクが大きいのではないだろうか。むしろ、収集という主観的要素を排除して、反復して行われるという客観的な要件を満たすということによって処罰できる範囲とできない範囲というのを明確化するということが望ましいのではないかということで、収集も検討いたしましたが、こういう結論として提案をいたしました。

園田(康)委員 今の御答弁からもおわかりのように、客観性によって構成要件をきちっと認定していった方が、犯罪捜査を行う警察側も、それに対しては十分いわば広範な範囲でその行動を行うことができるのではないかというところにやはり視点があるのではないかというふうに思うわけであります。

 したがって、内心の自由まで踏み込んで、それがどうなんだという自白に頼らざるを得ない状況を残したままそれを犯罪構成要件というふうにするには、やはり少し無理があるのではないかというふうに思うわけであります。だからこそ、その規定ぶりも、客観性をいかに求めていくのかというところは、やはりきちっと考えておいていただきたいというふうに思うわけであります。

 それで、先ほどおっしゃった、一回きり、百枚の取得が児童ポルノの存在を認めることになるのではないかということでありますけれども、当然、取得をし、そしてそれを所持する、しかしながら、それがいわばみずからの内心に基づいて取得をしたものではない、あるいはそうでない状況のまま結果的に所持をしているという状況になっている場合、それは当然ながら排除することはできませんけれども、しかしながら、その存在そのもの、ポルノグラフィーそのものを認めているということには当たらない。だからこそ、今も御案内のとおり、目的外の製造罪というものの処罰範囲についても民主党は今回拡大をしておられるというふうに私は認識をさせていただいておるところでございます。

 この点については、提供目的以外の児童ポルノの製造のうち、いわゆる盗撮等みだりに行われた製造行為についても処罰対象とするというふうに対象を拡大しているわけでありますけれども、この趣旨についてはいかがお考えでしょうか。

枝野議員 まさに、どういう形で製造されたにしても、児童の姿態についての性的描写物がつくられるということはその人権を侵害することになります。販売目的であろうかどうかということに関係ありません。目的を問わず、つくられたことによって人権侵害がある。

 なおかつ、それは、児童に何らかのポーズをとらせる等ということがあれば、もちろん現行法でもこれ自体が児童に対する性的虐待として対象になりますが、まさに典型的なケースは盗撮のような形でありますけれども、もちろん盗撮は、盗撮それ自体が大人に対してであっても許されない行為でありますけれども、特に児童に対しては児童の性的虐待に該当するということで、撮影、製造されること自体が独立して可罰性を持った行為であるというふうに判断をいたしましたので、これを新設することといたしました。

園田(康)委員 時間が来ましたので、これで終わらせていただきますが、すなわち、自己が所持をしていたとしても、今度、さらに別のところに広がりを見せるというところに対しては、それまた製造物といいますか、その対象になるわけでございますので、当然ながら、そこからの広がりというものに対する抑制策というものはきちっとここで担保されるのではないかというふうに私は考えます。

 したがって、この法改正を機会に、さらに反社会的なポルノグラフィーというものがしっかりと抑制される、そして、それが子供の権利擁護というものに際してしっかりとしたメッセージになっていくというところに期待をさせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、保坂展人君。

保坂委員 社民党の保坂展人です。

 私は、かつて子どもの権利条約がまだ批准される前に、衆議院外務委員会で、悩んでいる子供、人権侵害をされている子供の声を大人、ジャーナリストとして証言したり、その後、皆さん御存じだと思いますけれども、チャイルドライン、子供の声を二十四時間イギリスで受けとめている民間組織の活動を国会内で紹介し、今、全国に大変広がっている。これは超党派で、あらゆる政党の皆さんに入っていただいて続けております。また、二〇〇〇年には、児童虐待防止法、これはどうしても必要だということで、これも超党派で立法し、余り急いでつくったものですから幾つか抜けている点があった。二回にわたって見直しの作業もしています。という意味では、子供の人権という意味では、あるいは権利条約という意味では、このことを第一義に考え、動いてきたという立場の議員であります。

 私は、以上前置きしながら、今回のとりわけ与党案にお尋ねしていきたいんですけれども、大変重大な危惧を覚えているんですね。というのは、表現の自由あるいは内心の自由にかかわる重要な議論が必要だろうというふうに思っているからです。

 実は、ちょっと資料を取り寄せてみましたら、今二〇〇九年ですが、ちょうど丸十年前にこの法律の最初の審議があった当時、私は法務委員会の一番最初に、「不思議の国のアリス」のルイス・キャロルのことを取り上げて、写真も当時出たての写真で、非常に写真に趣味をさらに高じていって、少女の写真を撮っていった、中には半裸、全裸のものもあった、ロンドンのナショナルポートレートギャラリーに展示されていて、芸術的に高い評価を受けているというようなケースがあるんだけれども、これはどう考えたらいいでしょうかと。当時の大森提案者は、芸術に該当するかどうかということはこの法案では立てていないんです、「当該描写に係る児童の姿態がこの法案の要件を満たすものであるか否かによって判断される」と答えているんです。

 そこで、先ほど枝野委員と葉梨提案者のやりとりを聞いていて、私も、篠山紀信さんが撮影した「サンタフェ」、百万部とか百五十万部とか売れているということで、過去見たことがあって、記憶がたどれなかったので国会図書館から借りて見直してみましたけれども、私は、これが本当に児童ポルノなのかなというふうに、率直に言って思えないんですね。児童ポルノだというふうには思えない。

 ただ、それは基準があってのことですから、葉梨さんが先ほど、例えば「サンタフェ」が家庭の中にあったら、この一年以内にこれを探して処分をするということをやってもらいましょうよというふうに答弁されたと思うんですが、これはお変わりありませんか。児童ポルノであるという判断なんでしょうか。

葉梨議員 私自身も余り品行方正な生活をやっていたわけじゃないんですが、「サンタフェ」は見たことがないものですから、具体的に「サンタフェ」が児童ポルノに当たるのかどうかということについては、今ここで結論づけて申し上げることはできません。

 ですから、先ほど申し上げましたのは、「サンタフェ」が当たるか当たらないか、それぐらい有名なものであれば、宮沢りえさんが当時何歳だったかというのも大体わかるでしょうから、政府の方でもそれぐらいのサービスはしてくれるんじゃないんですかというようなことで申し上げたんです。

 「サンタフェ」を探さなきゃいけないということで、「サンタフェ」を持っていたよなというような記憶のある方はやはりそうしていただくということだろうと思いますし、先ほど言いましたけれども、蔵の中に、あるいは押し入れの中にもしかしたらあるかもわからないけれども、「サンタフェ」を持っていたという記憶がないなという方がそれを探さなければならないということはないんだろうと思います。たまたま将来、押し入れをあけて「サンタフェ」が出てきて、もし「サンタフェ」が児童ポルノに当たるんだということになれば、それは廃棄なりしていただければよろしいんじゃないかなというふうに思います。

保坂委員 見ていないのに、廃棄した方が安全だ、そういうふうに言えるんでしょうか。(葉梨議員「違う、違う」と呼ぶ)ちょっと待ってください。その後議論します。

 ちょっと警察庁にまず基本的なことを聞きます。

 三号ポルノの要件の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」、こうありますけれども、これは統一したいわゆる認定基準のようなものを設けているんでしょうか。

園田政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる児童ポルノ、三号ポルノに当たるかどうかでございますけれども、これにつきましては、個別具体的な事案に即しまして、本法の制定趣旨あるいはこれまでの裁判例等を踏まえまして、児童ポルノに該当するかどうかを総合的に判断しているところでございます。

保坂委員 今の答弁は何も言っていないのに等しいんですね。ケース・バイ・ケースで見ると。

 警察庁からきのういただいたコンメンタールでは、これは一応、衣服の全部または一部をつけない児童の姿態を描写したものの中には、水浴びをしている乳幼児の自然な姿を撮影したものや医学図書に掲載された児童の身体を撮影したものが含まれることになり、このようなものは除外する、こうありますよね。そういうふうに具体的に除外しているものがあるんだと答えてもらわなければ困るわけです。

 では、葉梨さんにもう一度聞きます。いいですか、葉梨さん。これは具体的に「サンタフェ」というものを見ている見ていないという問題は出てきますけれども、写真家の中で、いわゆる少女のセミヌードとかソフトヌードと言われるような、「サンタフェ」もその一つだと思いますけれども、そういう写真をかつてお撮りになって、写真集という形で出版をされ、あるいは平凡パンチとかプレイボーイとかそういう青年雑誌にも掲載されていたということが過去にありました。それらのものは児童ポルノに当たるのかどうかというところをどういう尺度で判断されているんですか。

葉梨議員 先ほどちょっと誤解があったようですが、私は「サンタフェ」というのは見ていないんですけれども、もしも「サンタフェ」が児童ポルノに当たるということであればということを前提でお話をしたので、見てもいないものをどうなんだということではないということでございます。

 それで、過去にいろいろな雑誌で、そういったいわゆる三号ポルノというものですか、出ているということはあろうかとは思いますけれども、基本的に、児童が十八歳未満かどうかというところがまず一つの尺度になりますね。

 十八歳未満かどうかというのは、先ほど未必の故意の議論もありますけれども、明らかに、顔から見てなかなかよくわからなくても、制服を着ているとかそういったことで大体それは推知されるという場合もありましょうし、あとは顔が幼いかどうかということで。それが十八歳未満かどうか、客観的に見て、ほぼ十八歳未満じゃないかなというように推定がされるようなものかどうかということが一つありますね。

 それで、衣服の一部または全部を脱いでいるかどうかという要件、そして、それが性欲を興奮させ刺激するものかどうか。これについては、地裁判例等でかなり明確な基準等が示されておるんですけれども、そういったところで判断をしていくということになるんじゃないかと思います。

保坂委員 そうすると、では、「サンタフェ」の話はそれを見ていないということですけれども、同様の、例えば篠山紀信さんは十代の少女の写真等を数多く撮っているわけですね。写真集も出していらっしゃる。恐らく自宅にはネガフィルムや紙焼きがたくさんあるでしょう。しかし、もし単純所持ということでいえば、これは児童ポルノに相当するという判断がされれば、全部フィルムや紙焼きを廃棄処分しろ、こういうことになりますか。

葉梨議員 廃棄をしていただくか、あるいは国立国会図書館に届けていただけば、国立国会図書館ではそれは正当行為として保管するということにもなるんでしょうけれども。

 児童ポルノに当たるものであれば、どんなに有名な方がつくったものであっても、あるいはどんなに大手の出版社が出したものであっても、やはりそれについては、明確にここにあるんだというようなことがわかっている方は、一年以内に廃棄をしていただくということが求められるんじゃないかと思います。

 ただ、廃棄というか、申し上げると、それは一般的な禁止規定ということになりますけれども、取り締まりをするかどうかということになりますと、それは、あくまでこれは自己の性的好奇心を満たす目的で持っているかどうかということになってくるわけで、ある写真家が自己の性的好奇心を満たす目的でいろいろなネガフィルムを持っているということが立証されれば、それは処罰の対象になるでしょうし、明らかに正当行為として、単なる保管で、それは自己の性的好奇心を満たす目的では明らかにない、それはネガとして持っているだけで、一切今までも見たこともないということであれば、当たらない場合もあるだろうというふうに思います。

保坂委員 では問題は、だれが判断をするかという問題ですね。

 私も、児童ポルノ、ひどいポルノがあり、そこの被写体になって、人権を侵害され、そして救出を求めてきた子供たちに対して鈍感であってはならないと思います。それについての規制を強めることは賛成ですよ。ただ、だからといって、いわば三号ポルノというのは非常に定義があいまいじゃないかというふうに私は考えています。そして、例えばその写真集を持っていることが、恣意的にそれが犯罪化されたり犯罪化されなかったりするようなことはやはりあってはならないと思います。

 これに関連してもう一つ聞いていきますが、いわゆる処罰をする場合には、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」こうありますけれども、単純な禁止規定で「何人も、みだりに、」とありますね。この「みだりに、」というのは、先ほど正当な理由なくというふうにおっしゃいましたけれども、正当な理由なくというその限定は、そんなに深い意味内容を指していないように私には思えるんですね。何か、こういうものを除外しているんだというふうに列挙できますか。みだりにではない所持の仕方というのはあるんですか。

葉梨議員 例えば捜査機関が、押収した児童ポルノを持っている、これはみだりにではございません。先ほど言ったように、例えば国立国会図書館、これは出版物全部持っていなきゃいけませんね。それを持っていて、かつて児童ポルノが出版された、国立国会図書館に保管されている状況も、これはみだりにということではありません。

 さらに、先ほど枝野委員からの質疑にもありましたけれども、多分ですけれども、まさにこの法案を審議するためということで、もちろん性的好奇心を満たす目的でもない、まさに法案審議のために、きょうもちょっとお配りしたんですが、これが画像だったら児童ポルノになるんでしょうけれども、そういったものを研究する、これが明らかであれば、それはみだりにということにはならないだろうと思います。

 いずれにしても、正当な理由というのは、結構いろいろな例というのは挙げればあるんじゃないかなというふうに思います。

保坂委員 諸外国では、例えばアメリカでは、文学、芸術、科学、政治などの価値に欠くものというような列挙をしてあるところもありますね。例えば、今葉梨委員が挙げた、御自身がかかれたイラストですか、これはどこまでが児童ポルノかどうかというような議論のために資するものだということだから除外されるという意味でしょうけれども、それは学術的な意味ということになろうかと思います。

 他方で、一番最初に挙げましたけれども、芸術的な価値がある作品である、これは芸術的な作品として保管をしているんだということは、その正当な理由になるというふうに考えていいんですか。

葉梨議員 これは当初から、法案、一貫してということですけれども、芸術的な作品であるかどうかということで児童ポルノに該当するかどうかということでの限定を付しているというわけではございません。まず、これは定義の問題ですね。

 みだりに持つということについては、それは正当な理由というのがあれば持てるということですけれども、芸術性のある写真だからといって、一般人が持っていて、それが児童ポルノに当たるのであれば、それは正当な理由があるとは言えないだろうと思います。

 アメリカの例で、芸術的なものは除外しているというのを、私どもも質問通告がありまして調べてみたんですけれども、明確にその出典が明らかじゃないので、チャイルドポルノグラフィーに関する定義かどうかというのはちょっとわからないということでございます。

保坂委員 芸術的な作品であるというものが同時に児童ポルノでもあるということがあり得るのかどうかということは、やはりこれは深めていかなければいけないと思いますね。私は、芸術的な作品としてそういう少女の写真ということはあり得るという立場であります。

 ですから、過去に出版された、さっき「サンタフェ」の例を挙げましたけれども、そういった写真集がいわゆる禁書になって、例えば古本屋さんからもこの一年以内に全部蔵出しして、焼却処分しなければいけないというような形で、この与党案がもし通ったらそういうふうな、そこまでは求めていないんだよということを言うかもしれませんけれども、しかし、過剰反応というのは常にあるわけで、今の答弁者の話にもあるように、そういう疑わしいものは持っていない方がいいんじゃないかということで、日本全国、大掃除して、かつてのそういう写真集とか古書店にあるものとかを国立国会図書館かあるいは最寄りの警察署に届けなさい、こういう反応も起き得るんじゃないか。

 この点、富田さん、公明党はどう考えますか、人権上。

富田議員 保坂先生の言わんとしているところはよくわかるんですが。

 先ほど三号ポルノに該当するかどうかというところは、京都地裁の判決でかなり詳細に認定していますので、多分、その京都地裁の判決の基準に当てはめると、保坂先生言われる芸術性の部分で、性欲を刺激しない、相当程度そこが落ちてくるんだという、三号ポルノ自体から外れてくるんじゃないか。そういう場合には、やはりそれを持っていたからといって廃棄しろというふうにはならないと思うんですね。

 客観的には、まだこの一例が、かなり細かく判断したというのは一例ですけれども、ここが基準になっていくのではないかというふうに私自身は考えています。

保坂委員 今の点、枝野さんに聞きたいんですけれども、やはり三号ポルノの要件が非常に幅が広いということで、警察に聞いても、ケース・バイ・ケースで、そのときの状況に応じてというような答えが返ってくると、ここにまた単純所持規制ということが入ると、問題が大変多いだろう。その点、民主党がそこに手を入れたということの目的や意図はよくわかりますけれども、今の議論を聞いていて、どういうふうに思いますか。

枝野議員 まず、児童ポルノに該当するものが芸術性のあるものと両立をするのかという話なんですけれども、私は、少なくとも十一年の立法者の一人として、その時点で、今後は十八歳未満の児童をモデルとして、仮に芸術性の高い写真であれ映画であれ、そういったものをつくることはやめましょうという趣旨であった。

 なぜかといえば、芸術性が高い低いということでその被写体とされる子供の人権侵害の程度が違うのかといえば、そこは違わない可能性もある。もちろん、それが性的虐待、物理的虐待までいけばまた別ですけれども、ただ写真を撮られた、裸の写真を撮られたということでは、それは有名な芸術家が芸術作品としてつくった場合とそうでない場合とで違いはないのではないかというふうに考えました。ですから、基本的には、芸術性が高いかどうかということで三号ポルノに該当するかどうかということの区別がつくということは、少なくとも私は、立法者の一人として、想定をしてきておりません。

 だからこそ、過去にさかのぼって、芸術性のあるものとして社会的にも許容されてつくられた作品について、新たに出版をして、新たに配給をしてということについては、これはおやめをいただいた方がいいんじゃないですかということはできたとしても、それを持っているから廃棄してくださいということまではできないのではないか。

 その当時は、特に先ほど来名前の出ているような、例えば「サンタフェ」。私自身も中身まで詳しく見ておりませんから、私どもの案の「殊更に」に該当するかどうかは判断いたしかねますけれども、仮に、特に十一年の本法施行前、製造等が規制をされる前の段階では、芸術性が高いものについては子供が被写体であったとしてもという、社会的に許容されていた時代につくられたもので、それを、広く流通しているものを、さあ全部捨てなさいということまで迫れるのかということになれば、それはまさに刑罰の遡及ということになるだろうと思いますので、それは無理ではないかというふうに思っています。

保坂委員 また与党の方の提案者に聞いていきたいんですけれども、処罰がかかっているところの前提に、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」ということがあるわけですね。ここの証明をするのが密室の捜査になるんじゃないかという議論が午前中あったと思います。私もその危惧を持っているんです。

 質問は、次の点になるんですけれども、もともとこの法律は、児童ポルノという大変忌まわしき、被写体になって、そのとき、それから未来にわたっても、長期にわたって人権をじゅうりんされるという子供の救出、その権利の保護にそもそもの法律の目的が、保護法益があったのではないかというふうに思うんです。

 アニメや漫画のことは今回入りませんでしたけれども、どうもその目的がさらに肥大をして、いわゆるそういった個人の、例えば少女を恋愛、あるいはもっと言えば性愛の対象にするような傾向の、ある種の嗜癖というかそういうものですね、これ自体がやはり社会的に好ましくないんだと。私も好ましいとは実は思っていないんですが、しかし、古今東西の文学作品には、少女を対象に恋愛を描いているものというのは過去にもあったし、そして、それがまた名作であれば映画化をされた例もあるしということですね。

 もちろん、小説は絵ではありませんから、小説がポルノだなんという話はないと思いますけれども、しかし、そこの小説に描かれているようなものも、そういう個人の嗜癖や、その作家が想像の中でつくり出す人間模様の中で、ある社会的な好ましくない傾向を描いている場合もあるじゃないですか。ここはやはり表現の自由との関係でしっかり整理しておいた方がいい。

 この法律は何のためにあるのかというのは、私の理解では、被写体になって人権をじゅうりんされる子供たちの保護のためにあるのであって、それ以外ではないというふうに私は考えている。そこはどうですか。

葉梨議員 先般来の議論でありますけれども、基本は、実在の被害に遭った児童の保護であること、これについては間違いない。個人的な法益という話で先ほどございました。

 では、社会的法益の部分がもともと全くないんだろうかというふうに考えますと、現行法においても、今明らかにこの世に存在しない、亡くなった方であっても、実在の児童を被写体としたものであったら、それはやはり規制はされる。さらには、やはり個人的なそういった法益、つまり被害児童を虐待するということを何らかのために防止するというような措置、これをとっていかなきゃいけないんじゃないかというようなこと、それをつらつら考えますと、やはり社会的法益の部分というのは全くないとは言えないんじゃないかというふうに私自身は考えています。

 ただし、問題は、社会的法益の部分ということで、例えばその傾向自体に対処をする。私は傾向がいいとは思いませんよ。では、例えばテレビゲームだ、アニメだ、漫画だといったときに、これはやはり二〇〇二年の米国の連邦最高裁の判決もあるわけで、一律に全く実在の児童と同じような規制を全くエビデンスなくやってしまうというのは、これは私はいかがなものだろうかなというふうに思います。

 ですから、規制の態様というのは、当然実在の児童を対象とするものと違ってくるべきだし、そのための立法事実というのをしっかりと研究をしていかなければいけない。まだ日本においてはその段階なんだろうというふうに思います。

 ですから、その意味で、今回、附則に研究ということで入れたのは、与党としては、社会的法益の部分をこの法律で、今も例えば亡くなった児童はどうだというぎりぎりの話はありますけれども、それについて研究をして、今後この法律でいろいろと規定をしていくんだというような考え方がありますよということを附則で盛り込んでいるわけです。そこの部分が、これはどちらをとるかという決めの問題なんですけれども、民主党はそれを別法でやろう、私どもは一緒の法律でやろうということです。

保坂委員 社会的に好ましくない行為が文学やあるいは映画で描かれるということは、例えば殺人事件なんというのは典型的ですね。そして、殺人事件のナイフがテレビドラマで出てくると、それが誘発したみたいな話もございますし、また、いわゆる、人が何十人も死ぬ映画やテレビというのは日常茶飯事にあるわけですね。

 しかし、それが一概にすべてを規制すべきだという話になっていないということは、表現の自由との関係でいうと、どうなんでしょう、ちょっと法務省にお聞きしたいんですけれども、この児童ポルノの単純所持がないというのが問題だという声がずっと強いんですね。そうすると、単純所持規制が生まれた国で、それ以前の子供対象の性犯罪発生率みたいなものがそこで抑止された、横ばいになったり、あるいは減ったというような例はあるんでしょうか。もし数字が言えたら教えていただきたい。

大野政府参考人 諸外国における児童に対する性犯罪の動向に関する統計資料でございますけれども、私ども、手元に有しておりませんので、今の御質問に対してお答えできません。

保坂委員 では、もう一つ大野刑事局長に聞いておきたいんですけれども、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持していた場合という与党提案者の話なんですけれども、こういう目的というのは、心の中、気持ちの中、内心ということにならないか。やはり客観的な、外形的な行為として表出したことをもって処罰するというのがいわゆる戦後の刑事法の原則だったかなと思うんですが、その目的でということを外見的に表出しない段階でもって確定をし、例えばそれを犯罪として処罰するようなことは現に行われているのか。あるいは、将来行うとしたらどのような捜査になるのか。

大野政府参考人 ただいま御質問がありましたのは、いわゆる目的犯と呼ばれる犯罪の類型についてでございます。

 目的犯によりましてはいろいろなものがございますので、一概にはお答えできないわけでありますけれども、刑法で申しますと、例えば刑法百七十五条後段にわいせつ物販売目的所持罪というのがございます。物理的な、対外的な行為としては所持をしているだけであっても、そこに販売目的があるかどうかということで犯罪の成否が変わってくるわけであります。

 そうした販売目的の認定に当たりましては、そうしたわいせつ物を所持するに至ったいきさつ、どういう経緯で手に入れたのか、それから、所持しているわいせつ物の内容とか量ですね、あるいはどういう形で所持をしているのか、所持をしたものの中で利用、処分したものがあるのか等々のそうした事情から立証することが多いというように承知しております。

保坂委員 そうすると、もう一点ですが、今の刑事局長の御説明だと、例えば、ある程度の量を用意していて、あるいはそういった販売をする準備をしていて、あるいはそういうルートを持っていてとか、幾つか外形的に外に表出する事象として確認し得るものもあって証明をされるのかなと私は聞いたんですけれども、自己の性欲を満たす目的で所持していたぞということを証明するといったら、自白以外にないんじゃないかなと。

 おびただしい量を持っていたら、それはまた同じになりますけれども、例えば数冊持っていたとか一冊持っていたという場合はどうでしょうか。

大野政府参考人 今の御質問は、自己の性的好奇心を満たす目的という、いわゆる改正法案の中身に関するものでございまして、現在審議中でありますので法務当局からどこまで申し上げるのが適切かと思いますけれども、お尋ねでございますのでお答え申し上げます。

 自己の性的好奇心を満たす目的でありましても、そうしたいわゆる児童ポルノを所持するに至ったいきさつ、偶然飛び込んできたものなのか、それとも例えば買い集めたものなのか。それから、所持している児童ポルノの内容ということもございます。普通の写真なのか、特別に、いわゆるえげつのない内容のものなのか。もちろん量もございますし、それから、どういう形で所持しているのか。たまたま一つだけ持っていたのか、大量に持っていたのか等々の、そうした外部的事情から立証することになるだろうというふうに考えております。

葉梨議員 午前中からいろいろと議論をさせていただいておりますけれども、自己の性的好奇心を満たす目的というのが自白だけに寄っかかって立証するんだというのは、それはそうじゃないだろうと思います。やはり、例えば、一枚であって自己の性的好奇心を満たす目的でありますよというのを立証するときには、絶対自白だけじゃないでしょうかといったら、その児童ポルノに手あかがついて何回も見られているとか、何回もクリックされているとか、あるいは、先ほども、今も答弁ありましたけれども、その児童ポルノの内容ですとか、そういったことからある程度客観的に立証ができると私は思っています。

保坂委員 この点について、やはり外部的に表出をした証拠によってしか犯罪化され得ないというのは原則だと思いますし、ここが外れてしまうと、心の中で君はみだらなことを思い描いたのかということが処罰対象になりかねないということを指摘して、時間になりましたので終わります。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

山本委員長 ただいま、両案審査のため、参考人として、首都大学東京法科大学院教授前田雅英君、弁護士一場順子君、財団法人日本ユニセフ協会大使アグネス・チャン君、上智大学文学部新聞学科教授田島泰彦君、以上四名の方々に御出席を願っております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れば幸いに存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、前田参考人、一場参考人、アグネス・チャン参考人、田島参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず前田参考人にお願いいたします。

前田参考人 首都大学東京法科大学院の前田と申します。

 児童ポルノに関しては、初めに、平成十一年の法律のころにも若干お手伝いさせていただいて、森山先生以下に若干の御説明をさせていただいたことがあるんですが、法律ができたことによって、やはり児童ポルノ、少なくとも、活字媒体といいますか、本屋の店頭からはかなり様相が変わって減った。非常によくなったと思うんですが、状況の変化に合わせて、やはり今回、両党の案、非常によくできていると思いますが、さらに進歩をさせていただきたい。

 その意味で、法律の細かいことをちょっと申し上げるかもしれませんが、私は刑法の専門ですので、刑罰法令をつくるときの観点からいって、それから現行の処罰の状況を踏まえて、どう改正するのが最も児童のためになるかという観点から発言をさせていただきたいと思います。

 一つは、初めの立法のころに比べて特に留意しなければいけないのは、ネットの問題ですね。法益侵害性が非常に高まってきている。児童ポルノが一たんネットの中で流れ出してしまうと、もう消えることはあり得ない。永遠に残ってしまう。もちろんなるべく残さないように消していくことが重要だと思いますけれども、本人にとって非常におぞましい画像が一生消えない形で残り続けるということ、これを何とかしなきゃいけないということなんだと思います。

 立法の状況としてもう一つ変わってきているのは、刑事法の側からいいますと、刑罰というのはなるべく狭い方がいいというのは今でも変わらないんですが、例えば、家庭内の子供のしつけなんかについて刑罰が入るのはとんでもない、男女間のトラブルに法律を使うのはとんでもない、夫婦げんかは犬も食わないと言っていたのが、児童虐待の法律ができた、ストーカーの法律ができた、そしてDV法ができた。その間ずっと見ていまして、やはり適切に、国民の意識の変化に合わせて立法状況、進めていっていただいていると思っております。

 その中でやはり、児童ポルノ法を初めにつくったところで、後で申し上げますが、日本の文化の特殊性という意味で、非常に慎重目につくっていった。だんだん機が熟してきて、さらに国際的なレベルに合わせて動いていけるようになってきているという感じがいたしております。

 やはり、ネット社会が中心になってくると余計そうなんですけれども、グローバルな視座というのは非常に重要だと思います。ほかの研究会なんかでアメリカ大使館の方なんかに来ていただいてお話を伺っていても、やはり、その国の評価をするときに、子供に対してのスタンス、しかも、こういう画像に対してのスタンスがどうであるか、これが非常に大きなものであるというのが実感としてわかります。今回、いや、外国の言うなりになってどうこうということだけではないんですが、やはり恥ずかしくない立法ということで、どういう理由でこうしたかということを世界に向かって常識的に説明のできる立法ということが重要だと思っております。

 先ほど、ちらっと申し上げかけたんですけれども、日本の特殊性といいますか、東洋の特殊性といいますか、性に関しての問題というのは国ごとに大分事情が違うわけで、何をどこまで処罰するか、例えば、同性愛処罰というのは西欧では非常に問題になるんですが、我が国では同性愛そのものを処罰するということはないわけですね。近親相姦の処罰ということもない。

 そういう状況の中で、児童ポルノの平成十一年の法律ができる前は、刑法百七十五条のわいせつ罪の対象として児童ポルノをどうやってマネージしていくか、抑圧していくかという観点だったんですね。ところが、その当時は、わいせつ物というのは、これはこういう場ですから申し上げざるを得ないんですが、例えば、陰部の陰毛の部分がどれだけ写っているかがわいせつ罪にとって重要である、わいせつのチェックはそれでやっていたわけですね。そうすると、児童はそれがないからわいせつではないから、児童ポルノは問題が少ないものとして、大人の性的な好奇心の対象のものに代替するものとして、より広く使いやすいものとして出版されたというような経緯も少しあるんです。

 それが、児童ポルノの法律、世界の流れの中で、単なる性的な法益侵害、風俗としての法益侵害を超えて、子供の人格権、人権、そういうものに移っていく中で、児童ポルノというのは従来のポルノ犯罪とは違うという形に変わってきた。名前を児童ポルノとしておくこと自体、私はそれ自体は全然問題ないと思うんですが、その揺れ動きはきっちり見ておく必要があって、レジュメにも書いたんですが、性的自由といいますか、性犯罪に関しては、強姦、強制わいせつというのが片一方であって、もう片一方にはわいせつ物陳列みたいなものがあって、児童ポルノはわいせつ物陳列的なものの延長線上としてとらえてきたのが、いや、もっと人間の人格の根本を害すると。その意味で、強姦、強制わいせつに近いような、被害者は社会じゃなくて少女そのものだという方向に大きく振れていくんですね。

 ただ、児童ポルノの問題というのは、それだけに特化してしまいますと、限定してしまいますと、問題を見誤るのであって、やはり児童ポルノ自体が社会全体に対して風俗的な侵害も与えているということも考えていかなきゃいけない、これが今回の改正案を見るときの一つの視座になると思います。

 この中で、よく小児性愛の問題なんかを考えるときに、児童ポルノを禁圧すると、特にこの場合は漫画のことなんかを考えている人が多いんですけれども、これを禁圧すると犯罪がふえると。要するに、幼児に対していたずらをしないで済んでいるのは漫画や画像を見て満足しているからであるというようなめちゃくちゃな議論もあります。これはもちろん立証されていない。逆に、こういうものがなくなれば、幼児に対してのそういう侵害が減るかといったら、そう単純ではないと思います。だから、これをなくしてもそういうものが減らないから禁圧すべきでないというようなめちゃくちゃな議論をする人もいます。

 これも、犯罪を減らすためだけの手段でやるのではなくて、その画像が出ること自体で少女自体が大変な侵害を受けて、おぞましいものを見せられているというものもあるし、それから、社会全体から見て、小学生等を強姦しているものを写して、それが、いや、強姦罪に当たるけれども画像としては問題ないんだみたいな議論、これはやはりおかしいんだと思いますね。

 その辺のバランスをどうつかまえながら現在の国際的な常識に合わせて法案をつくっていくかということなんですが、その意味で、両案を見せていただいて一番気になったのは、やはり児童ポルノの定義ですね。

 現実に、きのうも東京都の関係で、こういう画像とか出版物の問題点をチェックしていて、一番たくさんあふれているのはやはり幼児の裸なんですが、裸になるかならないかぎりぎりのところで、小さな切れ端をつけて水着様に見せて、これで今全裸ではないからオーケーだみたいなものをたくさん出しているわけですね。それでも十分広まる可能性があるし、重要な部分である。

 今回のものを見ますと、殊さらに露出させとかなんとかという絞りをすると、要するに、ただ全裸のものの写真だけで性器が余り写っていないみたいなものが落ちる可能性がある。これは非常に危険なことだと思います。現実に広がっている画像とかそういうものの観点からいって、この点は、児童ポルノの問題を考えるとき、それからPTAの方々や何かの御意見を伺っていても、これは非常に困るということですね。

 「殊更に」というのがどういうふうに解釈されるか、我々法律家の常識からいったら、これはやはり専ら性器を写したもの以外取り締まれないというふうに変わると読みます。その意味で、この案は気にはなる。

 ただ、民主党案にも非常にすぐれた点があって、後でも述べます、盗撮の防止とか、それは非常にすぐれていると思いますけれども、性器に余りこだわるのはよくないといいますか、それに特化してというのは、先ほど申し上げたような意味での広い法益侵害をカバーするという意味で十分ではないという気がします。

 私は、わいせつ物の審査みたいなものを警察の関係でも若干お手伝いしている中で、結局、わいせつの方に引きつけ過ぎると、性器が何%写っているかだけでいってしまうんですね。だったら、性器がぼんやりしか写っていないから、女の子から見たら耐えがたい裸の写真でもこれはオーケーということになる。これは非常にまずい。その可能性があるようなものであるとすれば、むしろ後退になるのではないかという危惧感を持っているということでございます。

 ただ、それに関連して、盗撮防止なんかで民主党案が提案されているのは、私、盗撮の問題を何とかしなきゃいけないと考えている者としては、非常に重要な御提案だと思うんですが、それが児童ポルノの定義の変更と組み合わさってしまうと、問題の解決が不十分になるというふうに考えております。

 あと、時間の関係で、ちょっと単純所持罪の方に移っていきたいと思うんですが、先ほどの世界の趨勢に合わせてということ、それ以上に、現実の取り締まりとか実効性のあるチェックという意味では、やはり単純所持の禁止をうたうことは非常に重要だというふうに思います。もちろん民主党案も単純所持に対しての対応を試みておられる。ただ、単純所持自体の禁止規定、罰則のない禁止規定は、特にネット社会でブロッキングの問題や何かが出てくる、それから削除要請をするというようなときに、法的にこれは違法な画像であると言えるか言えないかというのは非常に重要なんですね。

 処罰するかどうかに関しては、構成要件の明確性は非常に重要です。それに対して、民主党案、自民党案、それぞれ苦労されていて、それについて一言申し上げたいと思うんですが、その前提として、処罰規定の外に禁止規定を設けることが非常に重要な意味を持っているということを強調しておきたいと思います。

 「みだりに、」という概念、もちろんこれはあいまいだと思いますけれども、この程度の規定というのは、ほかの法文からいって、不明確であるというようなそしりは決して受けないんだと思うんですね。

 あと、具体的な所持罪の中身ですけれども、自民党の方は、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」ということで、目的規定、これは考え方によっては不明確になる。ただ、一つの考え方は、こういう縛りをつけないで、単純所持をもっと広く処罰すべきだというのが世界の流れからいって筋だと私は思います。平成十一年のころから、単純所持を処罰する議論の方がむしろ強かった。ただ、処罰範囲が広過ぎるとか、日本ではまだ児童ポルノがそんなになじんでいないということで、もうちょっと熟すのを待ちましょうといって今まで来ているんですね。

 その中で、自民党の案もやはりなお慎重に、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」と。客観的に、ただ一枚持っているとかじゃだめで、法律家の感覚からいくと、ある程度の枚数を持っているとか、持っている形状からいって、やはりそれはある程度判断できる、ある程度じゃなくて、今までの刑事の世界はそうやって立証するわけですね。絞り過ぎるという感じはあるけれども、やはりこの程度の縛りをするというのは、ある程度やむを得ないかなということなんですね。

 法律家から見て、あと、みだりに、有償または反復してというのも非常によく使う合理的な根拠というか構成要件の絞り方なんですけれども、これは実際上の運用を考えたときに非常に厳しいことになる。ポイントは、取得したときに児童ポルノの認識がなきゃいけないので、取得行為の立証、どこで、どうやって、いつ、だれから買ったかの認定をどうしていくか。

 もう時間がないので、ちょっと急いじゃいますけれども、今でも児童ポルノ捜査というのはハードルが高いです。特に、十八歳未満の認識がなきゃいけないんですね。それから、児童をちゃんと特定していなければ、特に年齢を立証しなきゃ構成要件該当性は認められませんから、大変なことになるし、あと、ネットにもう移ってきていますから、それをどうさせるか非常に難しい。

 その中で、所持罪をどうつくっていくかというときに、有償、これまた有償も立証が非常に難しいんですね。ですから、肝心の人が逃げてしまう余地がかなり高くなる。あと、反復といっても、これだけ満ちあふれているいろいろなサイトから一個ずつ持ってくると、反復じゃないみたいな議論をされちゃいますと、潜脱することがかなり容易に見えるような構成要件にも見えるんです。

 ちょっと、重箱の隅をつつくとか、揚げ足をとるような議論をしているように見えて申しわけないんですが。私、パーフェクトということはないと思いますが、基本的に、今回の改正で、両案、非常に御努力されたというのは認めるんですが、どちらかといえば、政府・与党案については、唯一、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」というのが若干絞り過ぎかなという感じはしますけれども、現実に動かすには、やはり現実に考えられる案としては、結局はベストに近いというふうに考えております。

 以上で終わります。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、一場参考人にお願いいたします。

一場参考人 弁護士の一場でございます。

 このたびは、発言の機会を与えていただきましてありがとうございます。

 私は、日弁連子どもの権利委員会や東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会に所属しております。また、現在、社会福祉法人カリヨン子どもセンターの理事もしております。そのような弁護士としての活動の中で、性的虐待を受けた子供のケースを扱うことがたびたびありました。カリヨンは子供のシェルターを運営していますが、性的虐待を受けた子供が入居することもあります。本日は、児童ポルノ禁止法の一部を改正することに関しての参考意見ということですので、これまでの子供の権利にかかわる私の経験を踏まえてお話しさせていただきたいと思います。

 今回の改正の眼目は、先ほど前田先生もおっしゃられたように、児童ポルノの単純所持の処罰化の問題ですが、私は、現在の児童ポルノ禁止法の児童ポルノの定義があいまいである点に問題があると考えています。

 同法の第二条三項によれば、「「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿」、正確には「姿態」ですが、言葉にするとおかしいので姿と言いかえますが、「児童の姿」「を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。」というふうになっています。

 そこに言う「児童の姿」とは、一号で「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿」とあります。これはどういう姿かが具体的で、違法性は明らかです。そして、二号が「他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿」。ですから、これもどういうものか具体的です。

 ところが、三号は、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿」となっています。イメージしていただければすぐわかると思いますが、これだけでは、裸の赤ちゃんもプールの水着の子供もみんな入ってしまいます。もちろん、このどれにも「性欲を興奮させ又は刺激するもの」というものが加わっていますけれども、何が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」かは、客観的、一義的に明確ではありません。構成要件の明確性というのは先ほど前田先生がおっしゃいましたけれども、そういう意味でこの定義は問題だと私は考えます。

 一号、二号はもちろんこのままで構わないと思いますが、三号は、そういう意味で、親が撮影した子供の写真も客観的にはみんな入ってしまうということになるので、このような定義のままで単純に持っていることを処罰するということは、処罰の範囲が広がり過ぎる危険があると思います。

 児童ポルノの定義としては、お手元に参考資料としました児童の権利に関する条約の選択議定書、この二ページ目には、「「児童ポルノ」とは、現実の若しくは擬似のあからさまな性的な行為を行う児童のあらゆる表現又は主として性的な目的のための児童の身体の性的な部位のあらゆる表現をいう。」というふうに定義しています。あからさまな性的な行為、主として性的な目的のための子供の身体の性的な部位といえば、その内容は具体的で、なぜ違法かは客観的にも明らかです。

 また、もう一つ、次の資料は、昨年四月に米国大使館でアンドリュー・オースターバーン米国司法省児童搾取・わいせつ部部長がお話をされたときに資料として配付されたものです。やはりこの二ページ目の三に、まさに、「自分の子供が海で遊んでいる裸の姿を親が撮影する場合はどうですか。その親は有罪となりますか。」という質問が書いてあります。この質問に対して、「こうした画像は米国法では児童ポルノには当たりません。合衆国法典第十八編第二千二百五十六条に明記されている米国の児童ポルノの定義では、違法な児童ポルノであるには、描写に一定の特徴が示されていなければなりません。最低限でも、描写に「児童の性器や恥部のみだらな表出」が含まれていなければなりません。この定義に合致しない児童の描写を所持する人が訴追されることはあり得ません。」と答えています。

 違法か違法でないかはその文言から一義的にわかるような明確な定義でなければならないのは言うまでもないことです。先ほども申しましたように、処罰範囲の拡大の危険性があります。この資料で答えられているように、違法となる児童ポルノの定義は適切に行わなければなりません。

 そのような観点で見ると、現行法の児童ポルノの定義は、三号が極めてあいまい、不明確です。今回の与党案は、この児童ポルノの定義を変えないまま、これを所持した者を罰する罰則規定を新設している点で非常に問題があると私は考えます。民主党案は、問題となっている第二条第三号を削除し、定義を客観化し明確にしている点で評価できると私は考えます。

 次に、被害児童の保護に関してですが、現在の児童ポルノ法でも十五条に「関係行政機関は、」「当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。」と規定されています。この文言から、児童ポルノ法において考えられている児童の保護に関する制度とは、主として福祉による保護です。関係行政機関とは、児童福祉にかかわる行政機関である厚生労働省、都道府県、児童相談所、福祉事務所及び市町村と考えられているのだと思います。

 与党案は改正の対象にしていませんが、民主党改正案では、保護の措置を講ずる主体と責任を明確化して、これらの機関を例示しています。責任の主体を明確にしたことは大いに評価できるのですが、福祉の分野だけに限られている点が、それだけでは足りないと私は考えます。

 資料の最初の選択議定書を見ていただきますと、第八条において、この選択議定書を締約した国は、「刑事司法手続のすべての段階において、特に次のことを行うことによって、この議定書によって禁止されている行為の被害者である児童の権利及び利益を保護するための適当な措置をとる。」としています。現在の日本において決定的に不足しているのは、この刑事司法手続における子供の権利の保護のための措置です。

 刑事司法手続に登場する機関として考えられるのは警察、検察、裁判所ですが、このどの機関においても、被害を受けた児童の保護のための特別な制度、特別な取り扱いは考えられていないと私は思っています。裁判ではビデオリンクや遮へい措置がとられるようになりましたけれども、これも犯罪被害者一般、成人も含めた被害者、証人のための保護の制度であり、子供に対する特別な措置として設けられたものではありません。

 資料の最後、「自由と正義」へ私が寄稿したものですが、司法面接の制度を導入すべきだと考えます。

 子供は、暗示、誘導に陥りやすい特性があります。幼い子供は時間の観念が乏しく、目の前のことしかないので、起こった事実を時間に沿って並べることはとても難しく、また、もともと言語的表現がつたないので、大人から情報を入れられると、それもまた事実関係の中に入れてしまいがちです。誘導しないように正確な真実を語ってもらうことは難しく、児童心理に詳しく、特別な訓練を受けた中立的な立場のインタビュアーによる面接が必要です。

 司法面接ができなかったばかりに無罪になった事件があると聞いております。しかし、正確な事情聴取は難しいのですが、子供が受けた苦痛に満ちた経験そのものは小さな子供でも語ることができます。大人のようにきれいに整理して話すことができないだけです。そのような子供からの事情を聴取する手法として、そしてそれを裁判にもたえられるような証拠能力を持った証拠とすることができるようにするための制度として、欧米では司法面接の制度ができ、司法手続の中で取り入れられています。

 また、きちんとした事情聴取を保護された最初の段階で行うことで、福祉の保護手続、刑事司法手続で繰り返し事情を聞かれることによる二次的被害を回避することができます。

 かつて、裁判で証言した後、精神的に不安定になって自殺した少女の話を聞いたことがあります。被害をきちんと聞いてもらうということは傷ついた心をいやす作用がありますが、苦痛に満ちた体験を何度も何度も、いろいろな場面で繰り返し聞かれるということは、二次的被害を拡大する可能性があります。日本にも、ぜひ司法面接の制度を取り入れていただきたいと思います。そのためにも、民主党案の例示する関係機関に警察、検察、裁判所を入れていただきたいと私は思います。

 子供のころに心身に受けた傷をいやすことができないまま思春期になると、さまざまな問題行動を起こすことがあります。人格の統合的な発達そのものが阻害される場合もあります。カリヨンに来る子供たちを見ていても、幼いときにきちんと保護されないまま成長し、さまざまな心の傷を抱えていて、その自立の援助は容易ではありません。この児童ポルノ法は、子供の権利の擁護をその目的としていることが明記されています。子供の権利擁護を実現できるように、政府の具体的施策をお願いしたいと思います。

 最後に、与党案はアニメ等についても検討課題としていますが、この法律は、第一条にあるように、児童の権利擁護を目的としているのですから、実在の子供の被害者のいないアニメ等の問題は、この法律とは別の問題として考えるべきだと思います。

 以上です。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、アグネス・チャン参考人にお願いいたします。

アグネス・チャン参考人 皆様、こんにちは。アグネス・チャンと申します。

 きょうこの場に呼んでいただき、感謝を申し上げます。きっと、先生たちが私を呼ぶ理由というのは、現場の声を聞きたい、その願いで私がここに立っているのではないかと思います。だから、きょうはできるだけたくさん現場の話をし、子供たちの叫びを先生たちに届けるように頑張りたいと思います。今、まるで自分の背中にたくさん被害者の子供たちが乗っかっているような気持ちで立っています。

 ユニセフの正式な見解は、さっき配った資料の中に書かれてあるので、この限られている時間の中では申し上げません。むしろ、現場の話を中心にして話してまいりたいと思います。何か、私の日本語は少しなまっているらしいんです。確かに言葉は足りませんが、その分、心を込めて、最後まで頑張って話してまいりたいと思います。

 まず、先生たちに、法改正案、そして審議に入ることに感謝です。本当にうれしいです。世界じゅう、いろいろな人たち、とても期待していました、きょうこの日。本当に私たちにとってはとても大事な時間です。

 そもそも、私がこの問題にかかわったのは、一九九八年、日本ユニセフ協会大使として任命されたときです。その日です。任命された日です。その夜、私はスウェーデン大使館に呼ばれました。そこで言われたこと、日本は児童ポルノのナンバーワンの輸出国です、ナンバーワンの加害国ですよと言われました。ショックでショックで。私は、この問題についてよく知らなかったし、そういうふうに言われたときは、信じられない気持ちでした。

 その年、私はタイに行かされまして、児童買春、児童ポルノの実態を見てきなさいと。そこで現実を見ました。確かに日本がかかわっています。後ほど、そこで会った子供たちの話もしたいんですが。その後、カンボジア、フィリピン、遠くはモルドバ共和国まで足を運び、実態を見てきました。たくさん被害者の子供たちを抱き締めましたよ。話も聞きましたよ。そして、命を落とした子供たちの話も聞きましたよ。そこで関係者が必ず私たちに言うことは、どうか日本ももっと厳しく児童ポルノを規制してください、その言葉でした。

 幸い、日本も一九九九年、いわゆる児童ポルノ、児童買春禁止法が成立され、一定の成果はあったと思います。少なくとも、コンビニからはすべて児童ポルノは消えたと思います。二〇〇四年、法改正が実現でき、インターネットで配布あるいは販売することも禁止されるようになりました。それでも不十分ですとよく言われます。それはなぜかというと、もう何回も先生たちが言っているように、インターネット、携帯、そういうサイバースペースの中で物すごく広まっていっているんですね。むしろ事態は悪化しています。

 各国はすごく一生懸命取り組んでいるんです。例えば、資料の中にも配られてありますが、二〇〇七年の欧州評議会、そしてG8の司法・内務大臣会議、その中でもずっとこの問題を取り上げ、そして、どうやって取り組んでいかなければいけないのかというのを話し合っていました。特にG8の司法・内務大臣会議は、二〇〇七年から三年連続、この児童ポルノ問題の対策の重要性を訴えています。昨年十一月のブラジルでの第三回児童の性的搾取に反対する世界会議では、児童ポルノの製造、販売、配布、所持、それはもちろんいけないんですが、インターネット上のアクセスや、そして、読んだりする行為も法的に禁止するように求める宣言を採択しました。

 日本の法律がおくれていると言われています。実際に、G8の中で児童ポルノを持っても許されるというのは日本とロシアだけなんです。私はいろいろな人から言われます。国連の方、外国の政府の関係者、一生懸命フィールドで働いているボランティアの皆さんも含めまして、日本はどうして所持を許すんですか、無責任だと言われます。

 私は悔しいです。私は、日本は無責任ではないと思います。日本の国民は、本当に子供のことになると一生懸命応援してくれます。ユニセフが一番よくわかっています。本当に私たちの活動を一生懸命支援してくれているんです。

 しかも、この問題についても無関心ではないんです。二〇〇七年の内閣府が実施した世論調査で、児童ポルノの単純所持は規制した方がいいかどうかというような問題があり、その質問に、規制すべき、どちらかといえば規制すべき、賛成する人たちが九〇・八%です。反対する人たちは四・八%しかいないんですね。国民の意思は明らかです。さらに、二〇〇八年三月、「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンを、私たちは各団体とスタートさせました。ことしの一月まで、あっという間です、全国から十一万五千人を超える賛同の署名をいただきました。国民は意思を決めているんです。児童ポルノの単純所持を規制してください、その叫びに私は聞こえます。

 今回の法改正の論点の一つは、やはりこの単純所持を違法にするかどうか、罰則がつくかどうかということだと思います。迷っているなら原点に戻ろう。原点に戻るというのは、そういう児童ポルノが製作されている現場を私が話します。ぜひ皆さん、子供たちの話、つまり被害者の話、そして加害者の意見も聞いていただきたいと思います。

 私、初めてタイに行ったとき、ミャンマーの国境近くにチャンライという町があって、たくさん外国の人たちがそこで子供を買いに行くんですね。ホテルで待っていました。そうしたら、子供三人がお客さんに連れられてロビーに入ってきました。このぐらい小さいんです。余りの小ささで私は驚き、胸が詰まり、柱の後ろに逃げて号泣しました。結果としては子供たちと話ができるようになって、幾つですかと聞いたら、口をそろえて十四歳と言うんです。なぜ。そのとき日本の法律は、十四歳以下の子と性行為してはいけないという、それだけしかなかったんです。児童ポルノ、児童買春禁止法はまだ成立していなかったですから。だから、子供は教えられているんです。日本人に聞かれたら十四歳と言えと。そんなことないんだろうとずっと話していくうちに、実際に、一人は九歳、一人は十一歳、一人は十四歳。二人はミャンマーから買われてきた子です。一人はタイの違う地域から買われてきた子です。そういう子供たちはいろいろなことをされます。必ず写真を撮られるそうです。

 フィリピンのアンヘレスという地域に行きまして、その町でも、やはりたくさんの外国の人が子供を買いに来ます。

 何百人もの子供たちを助けたボランティアの話を聞きました。町を歩いたら、こんなちっちゃい子ですよ、五歳、七歳の子がいるんです。えっ、この子供たちも買われるんですか。ええ、そうですよ、性行為ができなければ口とか手でやってもらうんです。特に日本の方は写真を撮るのが大好きですね。何でだろう、撮ってどうするんだろう。先生たち、私たちはわかっています。その写真を撮ったらどうするのか。配る、売る、自分で楽しむんです。そういう写真をなくさない限り、子供たちは浮かび上がれません。

 日本の被害者の話も聞いてください。

 一人の女の子は、小学校のときです、おふろに入っていたら音がしまして、窓を見たら、ぱちぱちぱちぱち写真を撮られた、もう、わあっと声を出して、親もすぐその男を追っかけましたが、逃げられました。警察に届けを出しましたが、なかなからちが明かない。

 彼女の声です。あの写真がどうなったのかを考えると恐ろしく、中学生に上がってから、私はリストカットや自殺未遂を何度も繰り返しました。ネット上に自分の写真がばらまかれていないかと、何かに取りつかれているように毎日探しています。そこで、日本人だけでなく外国の子供たちが写っている児童ポルノを目にして背筋が寒くなり、何度も嘔吐して泣きました。でも、自分の写真を探すことはやめられないのです。今のように児童ポルノが簡単に手に入る世の中では、私はとても過去を忘れることはできません。自分の人生は終わってしまったような感じです。もし世の中を変える力のある人たちがいるのなら、どうか私を助けてください。

 世の中を変える力を持っている人たちは、先生の皆さんです。どうかこの子を助けてあげてください。

 もう一人、日本の被害者の話です。再婚したお母さんの相手。自分がまだ七歳、八歳のときに何度も何度もひどいことをされ、いろいろなポーズをとらされ、写真も撮りました。そのときはちっちゃかったから何もわかりません。大きくなって、もしかして、インターネットで、自分の写真が写っているのかなと探してみたら、ありました。その子の叫びです。事件から何年も何十年もたっても、写真や映像の残っている被害者は、来る日も来る日も新たに傷つけられ、性暴力を受け続けています。それは拷問にも等しい苦しみです。私たち被害者にとって、児童ポルノは、ポルノなどではなく、犯罪や虐待の現場を永久に残した、心をずたずたにする残酷な凶器です。凶器を持ち続けることを許してはいけません。

 では、加害者の話を聞いてくれませんか。

 私は、この活動にかかわってから、自分のホームページにも、手紙も電話も来ます。もう本当にいろいろな攻撃的な、脅迫的な、そういうようなことが起きてくるんです。彼らの言い分にしては、何でいけないの、私の個人的な趣味でしょう、子供が性的に好きだから、法律は禁止されていないのよ、何でこのばばあがそういうことを一々言うんですか。私は、そういう人たちを許すことはできません。

 今回、法改正は、世界じゅうが注目しています。例えば、シーファー前米国駐日大使、シルビア・スウェーデン王妃、ユニセフ本部からもメッセージが届いています。この結果を皆さん注目しています。そして、たくさん、たくさんの犠牲者の子供たちもこれをとても期待しているんです。性的目的での所持が違法であることを明確にすることを要望します。

 どういうのが児童ポルノだって。昨年のブラジル会議で明らかになったのは、児童ポルノの三〇%は三歳以下です。あんなちっちゃい子供をどうやって。縛って、自分の性器を子供のあらゆる穴に突っ込みます。自分の性器じゃなくてもほかのものを突っ込みます。それで楽しむんです。そういうことを絶対許してはいけないと思います。それをばらまいてみんなで永遠に持ち続けて見るんです。

 フィリピンで会ったストリートチルドレンの子、彼女も体を売っていた子です。当然写真もたくさん写されたと思います。今一番欲しいものは何ですかと聞いたら、消しゴム下さいと言ったんです。自分の人生を全部きれいに消したいです、いろいろなことをされたことを消したいんです。そうです、単純所持を違法にしなければ消せないんです。ずっと持っているんです。その子の願いはかないません。

 子供たちをこれ以上苦しめないでほしい。子供たち、子供だった犠牲者もこれ以上苦しめないでほしいんです。これからの子供たちもポルノの犠牲者にされないために、今国会で改正案を成立し、単純所持を違法にしていただきたいと思います。

 これは私だけの願いじゃないんです。それは毎年百万人以上犠牲になっている子供たちの熱望です。彼らの人生があるのかないのか、明るくなるかならないのか、幸せになれるかどうかというのは、私はこの法律の改正にかかっているのではないかと思います。

 もちろんいろいろな細かい議論はあると思いますよ。でも、何で大人が一生懸命頑張るんですか。何でですか。私たち、どうして生きているんですか。それは子供たちを守るためです。子供は自分のことを守ることができないからこそ、私たち大人はやりがいがあるんです。子供たちに人生を返してあげてください。消しゴムを何とか、ぜひ今回の法改正で、子供たちに与えてあげてください。

 ぜひ、今回のことによって世界の子供たちが、日本の皆さんは本当に私たちのことを考えてくれているんだなと。今度世界会議に出たときには、仲間から、政府関係者からも、ああ、よくやってくれました、これから手を組んで頑張ってやっていきましょう、そういう声をかけてもらえるように、ぜひ皆さん、よろしくお願いします。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 次に、田島参考人にお願いいたします。

田島参考人 よろしくお願いします。

 私は、日ごろは表現の自由の問題とかあるいはジャーナリズム、あるいはメディアについて主として研究をし、教育に携わっている者です。ということですので、今回の児童ポルノ等に関する法律の改正という問題については、その立場から、すなわち、主として表現の自由の立場からという形で意見を申し述べたいと思います。

 やはり、いずれにしましても非常に大事な問題であると思います。ですので、いろいろな角度から、あるいはいろいろな立場から、理性的な議論を交えて、時には非常に厳しいやりとりもした上で、それで、よい方向を目指していくというのが我々の社会が目指していく方向かな、そういうふうに考えて、きょう議論に参加するつもりでおります。

 さて、今回の問題につきましては、御承知のように、与党案と民主党の案の二つの提案が示されております。私の立場からいうと、与党案が提示している問題、法律案、改正案ですね、そこにやはり主として疑問に感じるところが少なくないなというふうに考えていますので、その点を中心に検討を試みるという形にしたいと思います。

 さて、法の改正を考える上では、やはりこういう視点が大事かなというふうに私は考えております。すなわち、私たちの社会が健全に維持されるためには、やはり児童の、子供たちの人権のしっかりした保護、これはもちろんだと思うのですね。とともに、しかしながら、表現の自由との適切な調整ということを一方で欠かしてはならないというのも確かではないかなというふうに私は考えています。それが私の基本的なスタンスです。

 その点から、あらかじめ結論を申し上げますと、与党による今回の、特に単純所持罪の新設という問題、それからさらには、将来の新設の可能性にもかかわりまして、実在の児童を描写しているというものではなくて、それをはるかに超えたいわゆる創作物規制、一般にそういうふうに言われていますけれども、そういう規制の調査研究規定の導入、これが二つの大きな問題かなというふうに私は考えております。

 その二つの点については、やはり表現の自由の保障という観点から見たときに、私は、やや過剰な規制になっていないだろうかというふうに思います。もし過剰な表現規制ということであるとすれば、私たちが維持しなければいけない自由な市民社会というものが少し息苦しい方向に向かうということになると思われますので、やはりそれは十分に注意して検討しなければいけないのかなというふうに思います。

 一つは、現在の児童ポルノ法、これは買春も含みますけれども、便宜的に児童ポルノ法という表現を使います。現行法の枠組み自体が、やはり私は少し問題を抱えているところがあるのかなというふうに思います。すなわち、表現の自由という観点、それからさらには諸外国との比較などから見てもやや過剰な規制に傾いているところがあって、児童の、子供たちの人権の保護と表現の自由の両者のバランスというのが必ずしも適切な形で確保されているとは言えないのではないかというふうに考えております。

 そもそも、これはきょう議論するつもりはありませんけれども、保護対象の十八歳未満というくくり方、すなわち年齢が、保護の対象として妥当かどうか、これは別な機会で恐らく議論はしなければいけないと思いますし、それから、立法過程の中でも、その議論はもう既に制定時にもあったと思います。それは別としても、特に、やはり対象になっている児童ポルノの定義の問題ですね。

 先ほど来、ほかの参考人の御意見にもありましたけれども、特に二条三項の三号の規定です。すなわち、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」というのがその規定であります。これはどう考えても、やはり本来イメージする児童ポルノとは違うものがそこには含まれているということになっていると思います。すなわち、対象がかなり広いくくり方になっている。しかも、必ずしも客観的な要件ではないと思われる主観的要件も含んでいる。そのことの結果、先ほど言いましたように、いわゆる一般的なポルノやわいせつなどのものだけではなくて、それとはかけ離れた単純なヌード、いわゆるソフトヌード的なもの、こういう表現も法の規制の対象にされてしまっているのではないかというふうに考えます。

 この点、例えば諸外国ではどうかということですけれども、アメリカ合衆国では連邦法典で、これは千四百六十六のA条というところで、例えば露骨な性的描写を含むわいせつであるものであるとか、あるいは性器間なども含むSM行為、交配行為であるとか、さらには、文学的、芸術的、政治的、科学的価値のないものとか、いろいろな留保や制限をつけて、極めて客観的で限定的な定義を示しております。他の先進諸国も、多かれ少なかれこれに従っているものというふうに思われます。

 少なくとも欧米では、規制は、詳細な、ポルノ的な行為ないしわいせつ的なものに限る、あるいは性的なものに限るということであって、また、芸術等の例外も許容をしている。そうであるとすれば、ソフトヌードのような単純なヌードまで過度に規制されていないというのが実情ではないかなというふうに私は理解をしております。

 欧米では、確かに単純所持規制や創作物規制も設けられているところが少なくありません。しかし、それは、このような、先ほど示したような表現の自由への配慮のもとで、極めて限定的な枠組みのもとでそうした措置が用意されているということが大切なのではないかなというふうに考えます。そうであるとすれば、日本ではこうした前提を欠いているがゆえに、過度に広過ぎる規制になっているにもかかわらず、新たに単純所持規制や将来の創作物規制が加わるということになると、やはり問題なのかなというふうに私は考えております。

 すなわち、いろいろなことが想定され得るわけですね。例えば、市民のだれもが規制対象になってしまうおそれがあったり、あるいは、芸術活動も広く規制の網にかけられる、さらには、書店やメディアも自主規制を含め法規制のもとに厳しく置かれるという事態が生じます。また、そういうもとでは、恣意的で政治的な捜査機関の権限濫用とか、あるいはさまざまな形での行政上の規制などが懸念されることになるのではないかなというふうに私は考えております。

 なお、運用上の注意規定ですけれども、これは、民主党の案も含めてそういう運用上の注意規定というのが設けられておりますけれども、私の立場からいうと、肝心なことは、例えば表現の自由などに対して濫用されたような事態が、あるいは予想されるような事態が生じた場合には、ただ単にこの種の注意規定を置くということだけでは、やはりその濫用は防止できないだろうというふうに思います。

 大事なことは、その濫用に対する実効的な歯どめ、すなわち異議の申し立てや救済のためのきちんとした具体的な措置をやはり用意するということをしないと、気休めの規定に終わってしまう可能性があるのではないかな。これはいろいろな法律でそういう規定があるんですけれども、それが果たして本当に機能しているかどうかということについては、その実例も含めてシビアに検証し、チェックする必要があるのかなというふうに私は考えております。

 このように考えますと、児童ポルノ法の改正の方向というのは次のようになるのかなというふうに私は思います。

 現に問題をはらんでいる現行法をそのままにして、単純所持罪を新設したり、将来の創造物規制を導入したりするという方向ではなくて、欧米等の国際的水準にも配慮し、合わせて、さらには表現の自由への適切な考慮、あるいは二つの権利の妥当な調整ということを行った上で、現行法の枠組み自体を整理し、限定するということがまず何よりも私は必要なのではないか。そして、それを踏まえた上で、それがきちんと確認をできた上で、さらに求められる事柄、必要な事柄があれば、新たな規制を慎重に検討していくという方向が望ましいというのが私の意見であります。

 いずれにしても、そういうことを考えると、私は、大きな方向としては、もちろん個別的に幾つか問題点も感じられるところが全くないというわけではありませんが、民主党が提案しているような方向での法の改正、その方向が基本的に私の観点からいうと妥当かなというふうに思います。

 いずれにしましても、両法案とも共通する部分ももちろんありますし、異なった部分も少なくないところがあるわけであって、ぜひその両者のけんけんがくがくの議論も踏まえて審議を行っていってほしいなというふうに強く希望いたします。

 以上です。(拍手)

山本委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨康弘君。

葉梨委員 自民党の葉梨康弘です。

 参考人の四人の先生方、きょうは本当に御苦労さまです。貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。

 十五分しか時間がございませんので、簡潔に進めてまいりたいと思います。

 田島先生、今の御意見の陳述の中で、特に欧米では芸術的なものが児童ポルノから除かれているというようなお話がございましたけれども、具体的にどこの国でございましょうか。

田島参考人 短い時間の中で、ちょっと余り正確に言えなかったと思うんですけれども、単純所持罪もそれから創造物規制も除かれているのではなくて、多くの国はそれを用意しているという理解なんですね。

 ただし、その前提になっている児童ポルノの定義が、ある程度限定的なものであるということを前提にして行われている、そういう趣旨なんです。

葉梨委員 お聞きしたのは、芸術的なものを除いているという国はどこですかということです。簡潔にお願いします。

田島参考人 私が知っている限り、例えばイギリスとか、あるいはカナダであるとか、創造物にかかわる規制は設けております。

 ただし、イギリスの場合については、ある程度、例えば写実性という要件があるとか、疑似写真、すなわちある種の写真のように見える程度の写実性が求められるとか、そういう限定をしているとか、そういう要件でやられていると。それからさらに……(葉梨委員「芸術的なものだけで聞いているんですよ。ないんですね」と呼ぶ)そうですね。ただ、アメリカの場合には、二〇〇二年に連邦最高裁の判決があって、単なる創造物の規制は合憲ではない、違憲である、そういう判断が出ていると私は認識しています。

葉梨委員 具体的な国はないということですね。

 二〇〇二年の連邦最高裁の判決というのは、あれはいわゆる疑似ポルノについての判例ですから、ちょっとここで例を挙げられるのは違うんじゃないかなというふうに私は思います。

 一場参考人にお聞きをいたします。

 この二条の三号が非常にあいまいであるという御意見は承ったわけでございますけれども、それを民主党さんの方が、「殊更に他人が児童の性器等を触り、若しくは殊更に児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿」「又は殊更に児童の性器等が露出され、若しくは強調されている児童の姿」という形に直されたのが、非常に明確になってよろしいということなんですけれども、基本的に児童ポルノの定義というのは、大体こんなものが出てきたら今よりは相当明確になるということで考えていらっしゃるのかどうか、御意見を承りたいと思います。短くて結構です。

一場参考人 今よりも随分明確になると思います。今は、普通に考えていただいてわかりやすいと思うんですが、衣服の一部または全部をつけていない子供の姿というのはかなり広過ぎるので、そういう意味ではかなり限定される。

 それで、先ほど前田先生が性器だけというふうにおっしゃいましたけれども、「性器等」というふうに一応「等」がついております。

葉梨委員 法律の専門家ですから、「性器等」というのは性器と肛門と乳首だけですから、等というので性器の周辺部分は含みません。

 それで、一義的に明確になるということでございましたので、具体的にこの画像は、(パネルを示す)先ほど民主党さんにずっと質疑をさせていただいたんですけれども、「強調」とか「露出」とか「殊更」とかいうのが物すごくあいまいな答弁です。参考人の方々、帰られてから議事録にぜひとも目を通していただきたいんですけれども、私自身は頭が悪くてさっぱりわからなかったというのが実情なんです。

 最終的に立法者の意思というのがありますけれども、この法律が成立をいたしまして、取り締まりに当たって、そしてこれが有罪かどうかを判定するのは裁判所ということになってまいりますから、法律家の考え方として、このような画像、つまり性器などは露出もされておりません、強調もされておりませんという画像は、民主党案では規制対象となりますか、なりませんか。一場先生。

一場参考人 先ほどの定義ですね。児童ポルノに直接に該当するかどうかといえば、あの定義を前提にすれば、ならないと思います。

葉梨委員 前田先生、これはやはり多分、法律家の目から見て、あの定義を前提としたら、ならないです。

 そうなりますと、先ほど盗撮の規制は有意味というふうに言われましたけれども、ほとんど無意味になるんではないかなというような感じを持ちますが、いかがでしょうか。

前田参考人 私が先ほど申し述べたのは、そういう趣旨です。ですから、盗撮みたいなもので、先ほどアグネス・チャンさんがおっしゃったように、自分の裸が写されて、それが永遠に流れるというときに、性器が写っているかどうかということはそんなにバイタルなことではないんですね。

 ああいう写真画とか、トイレとか、それからあとSMですね、そういうもので性器が写っていないものが永遠に蓄積されて残っている、それでもいいという定義を私は問題だと申し上げたんです。

葉梨委員 それでは、アグネス・チャン参考人に伺います。

 現在、これは衣服を脱いだ人の姿で、(パネルを示す)当然性的好奇心をそそるもの、性欲を刺激し興奮するものであります。ですから、これは明らかな児童ポルノだというふうに私は思います。このようなものが、法律家の目から見て、新たな民主党案では含まれなくなるということについて、御感想をお願いいたします。

アグネス・チャン参考人 それは子供たちにとっては大変な問題になります。体は自分のものです。みんなに見られたり、それを楽しんだりするというのは、自分の意思に反した状況だったら全部人権侵害だと思います。だから、ぜひそれを規制してほしいです。

 持っていてもいけない、撮ってもいけない、配ってもいけない、もらってもいけない、買ってもいけないと、ぜひ法律で取り締まっていただきたいと思います。

葉梨委員 それで、もう一つ。持ってもいけないということで、ちょっと午前中の質疑で、幾つか民主党さんからもお聞きをしたんです。

 今の民主党の改正案によれば、例えば、たくさんの児童ポルノを自分のうちで蓄積して持っている、そしてそれが、だれかれのポルノ写真、画像を持っていますよというふうに外で言っても構わない、そういう行為は規制はされませんよということらしいんです。それから、たくさんの児童ポルノを相続で受け取るという行為も、これも規制もされない。それから、自宅で児童ポルノの画像を持っておりまして、それでこれを友人と一緒に見る、自分の性的好奇心を満たす目的もあるわけですけれども、友人からお金をいただくというような行為も規制をされないということになるわけなんです。

 今もお話ございましたけれども、民主党の定義というのは、多分、法律家の目から見ても相当絞ったものになっているわけですけれども、少なくとも、あいまいだというような御意見は承ったんですが、今言われたような例について、今の現行の児童ポルノの定義のままでもやはりこれは私はいけないことなんじゃないかなというふうに思うんですけれども、一場参考人から御意見をお願いします。

一場参考人 やはり法律をつくるときは、何が違法かどうかが普通の一般の方にわかるような明確なものでなければいけないと思います。そういう意味では、処罰をしたいという事情はわかりますが、明確でない定義はやはり改める必要があると思います。

葉梨委員 法律的な話とはまた別にお聞きいたします。

 ユニセフの関係で、今いろいろな形で今の児童ポルノの日本における取り締まりの状況も見られていると思いますけれども、例えば、アグネスさん、そこで冤罪が起こったとか、そういった例を聞かれたことはありますか。あるいは、今の日本の児童ポルノで規制をしているという対象が物すごくあいまいだというような印象を現場の声として持たれたことはございますでしょうか。

アグネス・チャン参考人 むしろ、外国のいろいろな会議に行ったときには、日本の法律が甘いというような話を聞きます。この前もユニセフのシンポジウムでFBIの代表の方が来たんですけれども、その方が言うには、アメリカにはいろいろな取り締まる道具があるんですが、今の段階では、日本はやはり法律が不十分なので協力することがなかなかできない、だから早期にやはり法整備をして、手を組んで、今この広まっている状況を取り締まりたいと言われているんですね。

 しかも、もちろん冤罪というのは防がなきゃいけないと思うんですけれども、でも、大勢の子供たちが犠牲になっているんです。その子供たちはどうするんですか。さっき言ったように、この単純所持をもし禁止しなければ、永遠に残るんですよ。さっき先生もおっしゃったように、例えば、裁判の中で繰り返し繰り返しそのことを聞かれてとか、みんなに知られて嫌だ、その人権を守りたいというんだったら、では、インターネットで毎日繰り返し繰り返し見られている子、その気持ちはどこで私たちが保護できるのか。

 だから、もちろんそういう意味では議論を重ねた上で、何とかその所持を禁止していただきたいです。

葉梨委員 前田先生に伺います。二問です。

 こちらの画像、(パネルを示す)これは法律家の目から見て民主党案では該当するのかどうかということが一つ。

 それからもう一つは、児童の権利条約の選択議定書に書かれた定義について、一場先生から、こちらの方は明確だというふうなものがありましたけれども、あらゆる性的な部位というようなことになってまいりますと、これまた不明確だという議論が起こってまいります。ですから、現行の児童ポルノ禁止法とそれから児童の権利条約の選択議定書の定義と、私はどっちもどっちじゃないかなというような感じを持っているんですけれども、二点について、時間がないので簡潔によろしくお願いします。

前田参考人 初めにつくったときも物すごく苦労して定義をして、完全に限定するのは無理なんですが、ですから、民主党案だとそれは外れる可能性が高いということですね。性器が写っていないし、性的なものの中で、SMが入るかどうかというのは分かれてしまう。そうすると、恣意的とおっしゃるけれども、さっき申し上げたように、捜査というのは非常に実は限定的にやりますから、結局、性器がこれだけ写っているのに、ちょっとかすっていてもだめという運用になっちゃう可能性が非常に高いと思います。

 選択議定書のものでいっても、だから差はないんだと思うんですけれども。質問の意味がちょっとよくわからないんです。

葉梨委員 もう一度、質問の意味は、今の現行法の定義は極めてあいまいだという御意見がお二人の参考人から出たわけですけれども、では、あの定義を全部児童の権利条約の選択議定書の訳文に移しかえれば、あいまいじゃなくなるのかどうかということです。

前田参考人 それは、そうではないんですね。あの範囲で可能な限り明確にして、何より問題は、さっき御意見があったんですが、現状を変えて問題があるところを直していくということなんですが、あの二条の三号でどれだけ広くてどれだけ問題が起こっているかということなんですね。

 現実に、それでも狭過ぎるから広げようという議論をしているときに、あれで広過ぎるから狭くしなきゃいけないと。ただ、現実にどういう侵害があってどんな問題が起こっているか、一度も出たことがないと私は思います。

葉梨委員 最後の質問ですが、今の議論、本当に十五分しかございませんでしたけれども、定義の問題、単純所持の問題、ほかにも将来の研究の問題とか、いろいろ問題点、対立点があるわけですが、アグネス参考人には、与党案をベースにこれから児童ポルノの問題に対峙していった方がいいのか、民主党案をベースにこれから児童ポルノの問題に対処していったらいいのか、どちらがよろしいと考えられるか、お聞きしたいと思います。

アグネス・チャン参考人 正直に言った方がいいんだったら、私は、単純所持を規制する与党案に賛成したいと思います。

 民主案の中でもいいことはあると思います。ただし、やはり単純所持はぜひ党派を超えて賛成していただきたい。これは、こんなにいっぱいいっぱい、子供がこの辺にいるんです。見えますか。その子供たちの声を聞き、ぜひお願いしたいと思います。

葉梨委員 参考人の皆さんには、私も午前の議論の興奮が残っていまして、ちょっとアグレッシブになってしまいまして、まことに申しわけございませんでした。

 以上で質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山本委員長 次に、小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。四人の参考人の方には、いろいろ御意見ありがとうございます。

 私も、解説委員をしていたころから、スウェーデン会議の前後からこの問題とずっとかかわってまいりまして、きょう審議入りをしたことには、いろいろ私としての感慨もございます。

 先ほどの、午前中の審議の興奮が残っていたとおっしゃいましたけれども、けんか腰にやったら、これは党派を超えて成案は得られません。私は、国会の状況がいろいろあることは私自身も十分承知した上で、この問題は何としても子供たちのためにここで成案を得るべきだと思っているんです。

 そのために、民主党からも、いきなりここでチャンチャンバラバラやったのではなかなか成案になりにくいから、それこそ人権にかかわる、私がかかわってきたものでも、DV防止法とかその改正、あるいは児童虐待防止法の改正とか、これは、理事会のもとに法案をつくった人たちが作業チームをつくって、そこで成案を得る作業、努力をして、それを上げて委員会で採決をするという過程を、子供や女性の人権にかかわる形で、この十年、私がかかわっただけでも何度もやってきているんですよ。

 ですから、法務委員会で、多くの法案についていろいろな対立があることは十分承知した上で、きょうせっかく審議入りをしたんですから、相手のどこが悪い、ここが悪いと言い出したら、絶対これはできないんです。何とか、一〇〇%はできないから、それぞれのいいところを生かして、当面、皆様にとっても一〇〇%はきっといかない、でも、子供たちを今より少しはましな状態にするために、六〇%、最初は六十点かもしれない、それでも今のゼロから六〇になれば、それは大きなことなんですから、ぜひそういう努力をしていきたいというふうに私は思っています。

 それで、この問題につきましては、御承知のように、九六年のスウェーデン会議で、これは政府だけじゃなくてNGOとか、特にこの問題についてはユースと言われる若い人たちが主体になってかかわって、スウェーデンとそれから二〇〇一年の横浜と、ずっと積み重ねてきたわけですね。

 本当は、昨年十一月のブラジル・リオデジャネイロの会議の前に、今のこのネットの時代にあって児童ポルノの規制をということで、私たちも、非常に党内に、やはり別件逮捕ですとか冤罪とかいうことに対する危惧もある中で、やはり定義を明確化するというのは悪いことではない。狭くすることとはまたちょっと違うと思うんですね。明確化することによって何が犯罪になるのかということが明らかになれば、警察も取り締まりはかえってしやすくなるというようなこともありまして、定義を明確にしてきちんと、単純所持と訳したことが私はちょっといけないんじゃないかと。

 この間のリオデジャネイロ会議の宣言の中でも、意図的なというふうに日本語に訳す英文が使われているんです。私たちは、意図的に、反復をして、お金を出してというようなことで規定をしようとしている。ですから、そこを、別に狭くするのではなくて、明らかにしていくという作業を私たちはしてきているというふうに思うんですね。

 そうした中で、やはり、いろいろな懸念を超えて、子供の人権をより守れるためにはどうしたらいいか、そういうことをぜひ、きょうをきっかけに、時間は余りありませんけれども、しっかり取り組んでいけたらいいんじゃないかなというふうに思っています。

 それで、先ほど申し上げたような、理事会のもとにそうした協議をするチームを早急につくって、何とかそのいいところ、いいところを生かしながらやっていければいいと思うんですが、その際に、四人の参考人の方に、この点だけは必ず入れてほしい、ここは留意をしてほしいという点をそれぞれのお立場から伺えると、その作業をするのに参考になるかと思いますので、四人の方に順次伺っていきたいと思います。

前田参考人 今の御指摘もごもっともで、やはりどこかの新聞の社説にありましたけれども、与野党のあれを乗り越えて、ともかく案ができるということが大事だというのはおっしゃるとおりですね。

 どうしても入れてほしいというのは、やはり、先ほど申し上げたんですが、今の、ここまで苦労してやってこられたものの積み上げでやっていただきたい。ということは、どこにどういう問題があるからどう直すかなんですね。そのときに、定義が不明確だという問題点の指摘はそんなにないんですね。それよりむしろ、やはり今でも狭過ぎると。現実にPTAなんかの方に伺えばわかりますが、現実に流れている画像とか周辺的なものも含めると、やはりもうちょっと考えていかなきゃいけない部分がある。そのときの出発点はやはり現実だということ。

 あと、やはり単純所持的なものを、さっき申し上げたように、ネット社会において有効な規制をしていく、ブロッキングや何かを考える上で、ぜひ、処罰という前に、違法であることの宣言は明確にやっていただきたいということを特に強調しておきたいと思います。

一場参考人 やはり定義の問題はぜひ、あいまいなままであってはいけないと思います。

 それで、先ほども、性器に限定し過ぎると取り締まれないものも出てくるのではないかというお話がありましたけれども、その妥協案というか、私が、今ここで考えたんですが、選択議定書にあるような、「性的な目的のための児童の身体の性的な部位のあらゆる表現」とか、そういったような工夫をして、性器に限定しない形の、何かもう少し絞り込みがかかった要件を考えるということも一つはあろうかと思います。

 なぜ与党案に反対するか、現行の定義に反対するかというと、本当に、どんな子供の水着の写真でもみんな入ってしまうようなものを絞るものとして、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」、こういう主観的な要件だけで限定するというのは、だれがそれを判断し、どういうふうに判断するか、非常に、捜査権の恣意的な濫用を招きかねないということで危惧されます。その点はきつく言いたいと思います。

 それから、先ほど申しましたように、関係機関の中に、ぜひ警察、検察、裁判所を入れていただきたい。刑事司法手続の中で子供を保護していただきたい、それを申し上げたいと思います。

アグネス・チャン参考人 私は、やはり児童ポルノの単純所持を禁止していただきたいです。国はそれを認めない、持っていてもいけない、自分一人で楽しんでもいけないんだと。買ったり、手に入れたり、配ったり、売ったりしなくても、持っていて楽しんでもこれはいけないんだというようなことを明確に法律の上で示していただきたい。それが私の一番大きなこだわっているところです。

田島参考人 先ほど言ったことで基本的には尽きるんですけれども、別な角度でいうと、やはり、本来の子供の人権の保護というものをきちんと念頭に置いていろいろな作業をするというのが私は大事かなと。そこからはみ出し過ぎてしまうと、子供の権利の保護というよりも、もうちょっと広い、社会における表現の自由をややはみ出した形でその規制をするとか、あるいは人々の価値観の領域にも触れてくるところに入ってしまうとか、やはりそこが私は大事かなというふうに思います。

 ですから、その意味では、現行法の、現在の基本的な枠組みが果たしてどこまでいいのか悪いのかということもしっかりした議論をした上で、それでさらに新たな方向なり規制が必要であるということであれば議論をする、それが大事かなというふうに思っています。

小宮山(洋)委員 誤解がないように申し上げると、民主党の案というのも規制はしているんですよ。

 それは、単純所持というと、それこそ送りつけられて知らない間に入っているのもそうなるんじゃないかというようなことがあるので、自分で意図して、お金を出して、複数回という、その複数回ということにいろいろ疑問もあるかもしれないんですけれども、なかなかさかのぼってやるのは、私自身は、全部禁止したいと本人は思っていますけれども、党内でやはりいろいろな疑念があることも乗り越えないと成案にはならないんです。(発言する者あり)正直に言っていますよ。それで、一番このことに対して懸念を持っていた枝野さんにつくってもらったんです。ですから、ここまでなら必ずできるということなんですよ。

 ただ、今までにそういうようなことがなかったかというと、この児童ポルノに関してはまだ摘発例が非常に少ない。その少ないことの理由としては、今、一場参考人がおっしゃったように、性欲を刺激するかどうか、以前、最初つくるときは、わいせつかどうかという話もあったわけなので、これは個人個人の感覚によって違うからそんなことは警察が取り締まれないということになってしまうわけです。

 ですから、今回、定義を明確にしたということは、私は、これは子供たちのためにも非常に役立つことだと思っているし、少なくともこれから先、子供のそういうような映像を繰り返し繰り返し見たりして人権を侵していくということが防げるような形になるのであれば、そこはすべてベストを求めるのではなくて、そこのところをしっかりすり合わせてやっていけばいいのではないかと私は思っているんです。

 それで、アグネスも解説をされていたときに、各国の定義はいろいろ、ばらばらだというようなこともリオの会議で言われたとおっしゃっているわけですね。

 ですから、そういう意味で、国際的な基準にするということと、日本の中で多くの人が納得をしてやれることというのは、子供の権利のことと、先ほどからおっしゃっている報道の自由ですとか、それぞれの、一人一人の、別件で、冤罪が起きないようにとか、そういうことも配慮するのはやはり法律をつくる私たちの責任ですので、そこのバランス、どこでバランスをとるかで軸足の置き方がそれぞれ少しずつ違う。

 だけれども、これは党派を超えて、人権にかかわるものをつくるときには必ずぶつかってくる問題で、そこは、私は、お互いを非難し出したら切りがないので、何とかいいところで成案を得るようにというその努力をしていくということは、多分、きょうの参考人の皆様の総意でもあるのではないかというふうに思うんですね。

 ですから、定義の問題と、単純所持というか意図的な所持というか、その意図的な所持のところについては、民主党の方が罰則はかえって強くつけているんです。限定してはっきりしたもののところにはきちんと科罰も多くする、そこはしっかりとした考え方にのっとっていると思うんですね。

 そのことと、あと、先ほど、カリヨンでもいろいろやっていらっしゃいますけれども、一場参考人がおっしゃったような、被害を受けた子供のケア、そして子供が二次被害を受けないようにというところは、まだまだ日本の中で取り組みがおくれていると思いますので、先ほどは時間が足りなかったかと思いますから、そこのところをもう少しおっしゃっていただければと思います。

一場参考人 刑事手続の中で、つまり、一番最後は裁判所なんですが、警察、検察の中で子供たちに対する配慮を、本当に今の段階では余り考慮されていない。それをこれからはぜひ具体的に、いろいろな制度が各国にあります、それも研究の上で具体的に取り入れられたら本当にすばらしいことだと。その中で、傷ついて死んでしまった子もいますから、そういった子供たちの二次被害は是が非でも回避したい。

 それから、最初の段階できちんと子供の話を聞くということは、今の司法面接はビデオで撮るんですが、ビデオで撮ってきちんと残すということは、その後の繰り返しの質問を減らすことにすごく効果があるんですね。そういうことを取り入れてほしいと思います。

小宮山(洋)委員 もう時間が少なくなってまいりましたが、先ほど田島参考人が、現行法をそのままにするのではなくて、そこを精査することから成案を得るようにという御発言をいただいたんですが、それも、それぞれが案を持った上で合意を見ていくための一つの方法かと思いますので、最後にその点をもう少しお話しいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

田島参考人 私が一番そこの点で思うのは、やはり定義の部分ですね。特に三号ポルノの部分ですね。そこをやはりちょっと詰めて、民主党にしても自民党にしても、私はぜひ詰めてやっていただきたいと。それができないと何もしなくていいということじゃないと思うんですね。それをやった上で、ではどこまで、どういう形で、規制が必要な部分は規制をして、あるいは、規制をしてはいけない部分もまたもちろん同時にあるわけですけれども、私も、ある部分で、かなり限定、絞った上で、厳しい処罰が必要であるという箇所は当然あり得ると思うので、そういう形でぜひ進めていっていただけたらというふうに思います。

小宮山(洋)委員 ありがとうございました。ちょっと、半分ぐらい私の思いも込めた質問になってしまいましたけれども。

 民主党もここまで法案をつくってきました。前回の改正のときには法案をつくるまで至らなかったんです。ですから、そういう意味では、お互いに足りない点が多々あると思っているので、あそこが足りない、ここが足りないといったら、これはやはりきょうの参考人の皆様の御意向にも、何より子供たちの意向に沿わないことになるので、最大限努力を法務委員会でしていただきたいと思いますし、法案提出者として私も努力をしていきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 参考人の先生方、本当にきょうは御意見ありがとうございました。また、各党の理事の皆さん、きょう審議入りをしていただきまして、法案提出者として本当に感謝申し上げます。

 小宮山先生から、御本人はやはり単純所持を罰したいという本音が出て、すばらしい、よかったというふうに私は思います。小宮山先生の方で、まだ児童ポルノの検挙数が少ないから、そういう誤判みたいなのが出ていないんだというようなお話がありましたけれども、実は、警察庁の調査では、二十年で、児童ポルノの事件は、送致件数六百七十六件、送致人員四百十二名、被害児童三百三十八名と、急増しているわけですね。

 そういった意味で、やはり児童ポルノを撲滅するという意味では、ここはもう与野党を超えてやっていく必要があると思いますので、きょう先生方の御意見を聞いて、何とかこの国会で成立をさせたいなというふうに思いました。

 任期はもう九月十日で切れてしまいますし、何となく解散かというような話もありますので、そうすると、国民の皆さんから見て、この法律はどうなってしまうんだというような思いがあると思うんですが、実は、二〇〇〇年に、児童虐待防止法、私がちょうど委員長をやっておりまして、提案しました。あのときももうすぐ解散だというふうになって、それで各党が歩み寄ったんですね。それぞれ各党の案が全く違っていまして、それでも法律はここでつくるべきじゃないかというような状況になって、きょう保坂先生がいらっしゃいますが、各党の理事が集まりまして、それぞれの案は、もう引くところは引くというような形で、とにかくまず一歩踏み出そうということで法案ができましたので、ぜひ、きょう参考人の先生方の御意見も参考にして、まず改正していく。特に私は単純所持を処罰するという方向で改正したいと思いますが、そういう方向に進んでいきたいというふうに思います。

 前田先生にまずお伺いしますが、先生が所持罪について、今でも児童ポルノの捜査というのはハードルが高いんだというふうに先ほどお話をしてくださいました。肝心のものが逃げてしまう可能性があるんだと。そこに民主党案のように有償とか反復とかいう形をつけてくると、ますますこれは捜査が困難、そういうところを証明していくのは難しいんじゃないか。例えば取得行為の立証で、いつ、どこで、幾らで入手したんだ、こういうことはなかなか立証できないというお話をいただきました。

 実は、法案審議の中で民主党の質疑者から尋ねられまして、私たちも、与党でも取得して所持というのを議論したんですけれども、やはり取得の立証というのはかなりハードルが高くなるだろう、今より逃げ手をふやしちゃうんじゃないかということで、やはり所持をきちんと目的犯という形にして処罰していく方が筋ではないかということで与党案を作成したんですが、そのあたりについて、先生の御意見をもう少し教えていただければと思います。

前田参考人 もう今のお話に、ある意味で尽きているかと思うんですけれども、やはり現実に、今先生のおっしゃったように、ふえている。ただ、それで十分検挙をされているかというと、必ずしもそうでない面もある。その意味で、やはり今より狭めなきゃいけないような方向に改正するというのは、何のための改正なのかと。

 もちろん、今御指摘がいろいろありましたように、表現の自由の観点とかで、広過ぎる処罰とか恣意的な処罰による人権侵害が起こっているのであれば、そこを見直すというのはよくわかるんです。だけれども、そういう問題の指摘がない。逆に、児童ポルノの規制が緩やか過ぎて、こんなに広がってどうするんだという声が上がっている。その中で、所持罪に広げていくというときに、有償とか反復というようなものの要件は非常に難しいという面があると思いますね。

 もちろん、目的規定というのは主観面ですので、主観面の立証というのは、もう多くの法律はそれは必ず必要ですのでやっていますけれども、そこは難しいんですね。ただ、さっき小宮山先生の話にもありましたように、ベストではなくてベターを求めていく。その中で、判断としては、与党案の目的規定によって絞るというのも一つのやり方で、十分合理性があるというふうに考えているということを申し上げたつもりです。

富田委員 ありがとうございました。

 一場参考人からいただいた資料を見ていましたら、先ほど先生は、「児童ポルノの所持についてよくある質問」、駐日米国大使館の資料を見せていただきましたが、その二ページのことをお話しされましたが、ちょっと一ページの方を見ていましたら、一番最初に、「単純所持の処罰化は日本の警察に過大な権力を与えはしませんか。」という質問が出ていました。ここの回答を見ていて、この回答のとおりだなというふうに思ったんですね。こういうふうに書いてある。

 「日本の現行法は、麻薬等の禁制品の単純所持は処罰の対象としています。ですから、児童ポルノの単純所持の処罰法が、警察に対してこれまで以上の権限を与えることにはなりません。」こういうふうに明確に言った上で、三段落目で、「単純所持の処罰法を悪用から防ぐための予防措置は既に取られています。米国の裁判所のように、日本の裁判所でも警察による捜査令状の取得を管理することにより、プライバシーの権利を効果的に保護することができます。」

 一番この文書ですごいなと思ったのは、「児童ポルノの製造のために、児童がレイプや虐待を毎日受けています。その一方で、仮定に基づく権力の悪用というのは推測に過ぎません。我々の児童の権利を守ること、これこそが我々の最優先課題となるべきです。」

 私は、今回の法律をどう改正していったらいいかというのは、まずこの観点に立つべきだと思うんですね。濫用のおそれ、悪用のおそれというのは何らかの形でおさめていく。そういうことがないように、冤罪があってはなりませんし、自白の強要があってならない、それは当たり前のことなので、この改正によってそこが広がるようなことがあってはなりませんから、そこを何か抑える方法を考えるべきじゃないのかなというふうに思うんです。

 この点について、一場先生と、あと田島参考人も、先ほど、そういう実効性ある担保措置が必要だと言われていましたので、そのあたりについてお二人の意見をいただければと思います。

一場参考人 先ほどの米国大使館の資料ですが、確かにそう書いてありますね。ただ、その後ろで、米国の児童ポルノの定義はあいまいなものではありませんということが書いてある。単純に比較をしないでほしいんですね、各国の児童ポルノの定義はみんな違いますから。そういう形で見ると、この三号に関しては、本当にあらゆる子供の裸が入ってしまうので、それだけはやはり変えるべきだと私は相変わらず思います。

 そして、所持、先ほど、民主党の案で、有償で反復して取得することが立証は困難というふうにおっしゃいましたけれども、それはつまり、故意で持っている人、間違えてダウンロードしてしまったり、ふっと入って送られてきてしまったりして持っている人は処罰の範囲から外すために、故意の具体的な形としてそういうものを多分入れられたんだろうなというふうには私は理解しております。

田島参考人 実効性の前にちょっと一言だけなんですけれども、もし今のような単純所持罪が入れられてしまうと、私がちょっと懸念しているのは、裸体なり裸のたぐいのものというのは、もうどこの家庭でも、出版社でも、それからさらにメディアでも、膨大な形で、過去のものについても特に限定はないですね。だから、そういうことも含めてやられてしまって、しかもそれで三号の規定がかかわるということになると、これはちょっと、もしそれをやるにしても、そこのところの配慮は私はぜひやっていただくというのが必要かなというのが一点。

 それから、実効性のことなんですけれども、やはり、この規定が意味がないということではないと思うんですね。配慮規定というのは全く意味がないとは思いませんけれども、ただ、やはり一番大事なことは、実際に問題が起こったときに、どういう手だてで、どういう形でクレームなりあるいは権利の救済なりの道を、裁判とは別に図っていくという努力をしていかないと、やはり本当の役割は難しいのかな。ほかの例なんかを見てもそういうふうに私は感じますので、もし運用上の配慮規定を入れるのであれば、それだけではなくて、そこの部分をぜひ議論していただいて、つけ加えていただけたらいいのかなというふうに思っております。

富田委員 田島参考人が御懸念されている、過去のものにさかのぼって与党の改正案を適用させようとは思っていませんので、現に持っているものについても、猶予期間を設けて、できればちゃんと処理してほしいというようなそういう配慮規定もしております。

 アグネス・チャン参考人にお伺いしたいんです。

 先ほど、お話を聞いていて、被害者の気持ちというのは多分我々の想像を絶するんだろうなというふうに思いました。特に、被害者の声を紹介されて、私たち被害者にとって、児童ポルノはポルノなどではなく、犯罪や虐待の現場を永久に残した、心をずたずたにする残酷な凶器ですという声を紹介されて、凶器は残してはなりません、そういう認識をやはり立法者側も考えないと、児童ポルノというふうに単純に考える、その定義の件とかいろいろ一場先生からも御指摘ありましたけれども、被害者の皆さんが今児童ポルノと言われているものに対してどんな感情を持っているのか、消せないもの、先ほど消しゴムのお話もありましたけれども、そういった思いをやはりこの法改正の中で何としても生かしていかなきゃいけないと思うんですね。先ほど、葉梨先生の質問にも答えられて、単純所持だけはどうしてもというようなお話がありました。

 ユニセフの大使として、この前ちょっと新聞で見たんですが、ブルキナファソにも行かれて、本当に大変な中に行かれたのに、そこでも何か問題になっていたというような記述もありました。日本から見ると物すごくおくれているような国でも、そういう児童ポルノの件をきちんとしていこうというような動きの中で、やはり日本はちょっとおくれているんじゃないかというふうにも思うんですが、そのあたりについて何かお考えがありましたら。

アグネス・チャン参考人 ありがとうございます。

 本当に被害者の子供たちは、さっき言ったとおり、今まで撮られたものは全部消してほしいんです。だれかが持っているというのを思うだけで、本当に毎日レイプされているというような気持ちになってしまうんですね。

 実は私は、だから、それを好む、集めている人たちのブログとかも、そして私のところにもEメールが来たりするんですけれども、そういう人たちは、今一生懸命集めているそうです。もし与党案が通ったら、もちろん処分しなきゃいけない、それは大変なことだ、三年後はきっと漫画にも来ちゃうんじゃないかとすごい危機感を持っているんですね。だけれども、もし民主党案が通れば、持っていていいんだ、今のうち集めましょうというような呼びかけが今インターネットで広まっています。その持った分はどうなるの、皆集まって楽しむの、またどこかで流れてしまうの。

 要するに、加害者側の心理も考えないと、私たちは何のために法律をつくっていくか、両方の考え方をやはり想像しなきゃいけないと思うんですね。

 多分きょうは、被害者のその気持ちを皆さんわかっていただいたと思うんですね。でも、加害者も、やはりある意味ではとても賢いですよね。それと同時に、違法したくないんです。犯罪者にはなりたくないんです。だから、もしかして、本当に法律が通ったら、コンビニと同じように処分してくれるかもしれない。日本の皆さん、たとえそういうのを好む方でも、犯罪者にはなりたくない人がほとんどだと思います。やはり、法律に従う、この国を大事にし、そういうふうに生きていきたい人が多いと思うんですよ。

 だから、私、子供たちの声を代表して、単純所持は何とかして、ぜひ皆さん、納得していただきたいと思います。

富田委員 ありがとうございました。

 何としてもこの国会で成立させていきたいと思いますので、四人の参考人の先生、本当にありがとうございました。

    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕

谷畑委員長代理 次に、保坂展人君。

保坂委員 社民党の保坂展人です。ありがとうございます。

 まず、前田参考人に伺いたいんですが、いただいた資料の中に、この六月の初めでしょうか、法改正の次に来るもの、執行についてということで、エドワード・ショーというアメリカのFBIの駐日代表の方が報告をされて、シンポジウムがあったんだなということがわかりましたけれども、実はアメリカには、児童ポルノ関係で共謀罪もありますね。伝え聞くところによると、そのFBIの方などからは、やはりこの児童ポルノの捜査のためには共謀罪が必要だというような発言もあると聞いているんですが、そのあたりはどうなのか、教えていただけますか。

前田参考人 今の御質問の趣旨、ちょっとわからなかったんですが、ショーさんと一緒に研究会をやったわけではないのであれですけれども、一般論としてお答えしますと、やはりアメリカの現場では、本当に児童ポルノに対して厳しい感覚を持っていて、徹底して調べる。その捜査官の人の話を伺ったことがあるんですが、そのためにはやはり共謀罪というのは有効なツールだと彼らが考えているということは容易に推測できるというふうに思っております。

保坂委員 もう一点。私がたまたま手にした資料が余り新しくないので前田さんにお聞きしたいんですけれども、二〇〇四年の資料なんですけれども、これは、イタリアの児童保護団体のテレホノ・アルコバレーノという団体が、サイト上の一万七千十六件の児童ポルノサイトをいわば調べた。そして、一位はやはりアメリカであった、一万五百三件、二位は韓国で千三百五十三件、三位がロシアで千二百三十二件で、実は日本は、ブラジル、イタリア、スペイン、チェコの後の八位で、数はそう多くないですね、百六十五件。

 この間の報道で、日本は世界に非常に恥ずかしい児童ポルノの発信国だ、こういう言い方がありましたが、たまたま私が手にした資料なんですが、さらに新しい数字等でこういった傾向は大幅に変わったのかどうかということをお願いします。

前田参考人 正確な、オフィシャルな統計資料みたいなものというのはないので、やはり任意団体的なものが集められたものなんだと思うんですね。

 ただ、私の印象も、日本のサイトの数とかが世界で物すごく多いということではないんですが、よくスウェーデンとかに指摘されるのは、画像の発信源ですね。それがいろいろ回り回って、ネットというのは世界じゅうに伝わっていくわけですけれども、児童ポルノ画像の撮影をして、それを流す源として日本が非常に多いという話はよく出てくる。

 ただ、現状で、インターネット関係で問題のあるサイトを探しているところで、やはり児童ポルノは相当問題があるという指摘はふえていますが、恐縮ですけれども、数字的なもので、今、日本の順位がどう変わってきているというようなことはちょっと持ち合わせていないので、申しわけないです。

保坂委員 続いて、一場参考人に伺いたいんですが、先ほど来の議論で、アメリカの場合はかなり明確な規定がありますねということと、日本の場合のいわゆる三号ポルノの幅広さの問題なんですが、先ほどからの議論で、これは自民党の中にもいろいろな御意見があって、早川政務官のブログなど見ると、やはり宮沢りえの「サンタフェ」などがポルノということだけはこれは違うでしょうという議論があったということが書かれています。

 私もどちらかというとその立場で、ひどいポルノで、凌辱され、おとしめられ、そして人権侵害されている、アグネスさんが言われている、そういう被害児童を救出していかなければいけないのはもちろんですけれども、しかし、限界領域というよりは、どちらかというと違うのではないかというものも、捜査機関のある種の恣意性で、余りにも幅広い条文だと別の問題が起きる、こう考えているんですが、その点についてお願いします。

一場参考人 まさにその点を先ほど来からずっと申し上げてきまして、恣意的な捜査の可能性を否定できない。そうした場合に、本当に大勢の人。この条文だけ読むと、何でいけないのというのがよくわからないんですよ。つけていないって、赤ちゃんはみんなつけていないでしょう、一体どうしてそれまで入っちゃうのということを一番私は言いたい。

 「サンタフェ」も入ってしまうかもしれないし、そういったものを持っているだけで、まだいいんですよ、サイトに提供する、製造する、そういったものはもう既に処罰化されています、持っているだけで処罰するかどうかを今議論している。持っているだけで処罰されたら、赤ちゃんの写真を写したお父さん、お母さんの写真が、みんな客観的には入ってしまう。それはやはり避けるべきだと私は思います。

保坂委員 アグネス・チャンさんに伺いたいんですけれども、私の妹が大ファンで、デビュー直後から、陳美齢さんですね、いつも耳が痛くなるほどアグネスさんの歌を隣で歌っていたので、非常に感慨深いんです。

 私もチェンマイ、チェンライの、タイの取材に行きました、議員になる前ですけれども。そこで、ビルマから売られてきた子供たちがひどい目に遭って、救出されている施設にも行きました。子供にもインタビューしたり、非常に悲しい、そしてこんな子供たちが、大変だという今の思いはよくわかります。

 そして、今やっていた議論ですが、恐らくちょっとずれがあるんだろうと思うんです。ずれというのは、具体的に伺いたいのは、アグネスさんも芸能界にいらっしゃって、例えば、宮沢りえさんとは限らず、十代でデビューされた歌手の方とか女優の方とかがグラビアになったり、中にはセミヌードとか、そういうことで写真集を出されたりということを、目の前にいらっしゃったと思うんですね。

 私は宮沢りえさんの「サンタフェ」を改めて確認してみましたけれども、これは児童ポルノとして単純所持で規制するようなものではないと私は判断します。その点をごちゃごちゃにして、かなり広く、これは全部、すべからく規制するんだよということでは、かえって理解が難しいんじゃないか。いわゆるアグネスさんが言ったように、児童を本当にひどい形で凌辱し、そして一生の汚点となるような、それがサイト上にずっと残ってということはよくわかります。その点、どういうふうに考えますか。

アグネス・チャン参考人 グラビアアイドルは芸能界の中にもいっぱいいらっしゃいます。でも、法律ができてからは、やはり十八歳未満の写真はできるだけみんなは避けています。やはり十八歳未満は、高校卒業するまでは健康的に子供時代を過ごしてもらうという。

 芸能界の中でも、例えば写真家からすごく私は非難されるんですけれども、そういう活動をすると私たちは子供の裸が撮れなくなっちゃったんだよと言われるんです。そうしたら私は大体、十八歳まで待ったらどうですかと。私はそう思います。そんなに十八歳未満の子供たちの裸を見る必要もなければ、水着の写真を見る必要もないと思う。十八歳になってもとてもきれいです。それは言い切れます。きれいな子はずっときれいです。その子をみんなに見せたいと。それが十八歳あるいは成人になってから見せればいいんです。決してまだ未熟な子供の裸を見るというのは、そんなに必要ないと私は思っているんです。でも、子供には子供のころは必要なんです。

 「サンタフェ」に関しては、実は私、新聞で、広告とかしか見たことがないんですね。だから判断がつかないんですけれども、でも、例えば、本当に法律が成立して、そして十八歳未満のそういうようなものは持ってはいけないんだよと、そうしたら、私は、個人の判断で、みんな処分するか残すのかと自分で考えていただいてもいいと思うんですね。

 決して大人は子供の裸を見なくては命を縮めるとかそういうことはないと思うんですね。もう少し待ってください、十八歳まで。ぜひお願いします。

保坂委員 ということは、「サンタフェ」は見てはいないけれども、あるいは十八歳未満であれば、「サンタフェ」だけじゃないですけれども、児童ポルノ三号の要件に当たってしまうということだと思いますね。今、そういうふうに受けとめました。だから、そういったものは今後撮影されても発売されてもいけないという立場をお話しされたと思います。(アグネス・チャン参考人「今発売されていないんです、もうだめなんです、九九年から」と呼ぶ)いや、だから、発売されてはいけないという話なんでしょう。

 そこで、田島参考人に伺っていきますけれども、そもそもこの法律の保護法益そのものは、児童ポルノの被写体となって、非常にその人権を侵害されて、取り返しのつかない傷を負っている子供たちをきちっと救出していこうということであり、その点に我々も全く異議はないし、もっともっと進めるべきだ、足らない点があれば足すべきだと思っているんです。

 他方で、「サンタフェ」も含めて、過去出版された出版物を、あるわけですよね、百五十万部ぐらい売れたらしいですから。それは、本棚にあるかもしれない、古本屋にもあるでしょう。そして、過去の同様の写真集のみならず、雑誌のバックナンバーなんかも売っていますよ、古本屋で。そういうものも全部蔵出しして、一年以内に焼き捨てよと。あるいは、ごみで出したら、これまた提供罪に問われてもいけないしというようなことが、日本は過剰同調社会ですから、そこまで法律が求めていなくても、これはまずいぞというようなことで、どんどんどんどん本来の保護法益とは違う方向に走り出していき、これは最終的には内心の自由やあるいは表現の自由に重なってくる。現に戦前はエロ、グロ、ナンセンスの規制から始まっていったわけですから、思想の統制というのは。

 私は、児童ポルノがいいなんということは一つも思いません。しかし、それが拡張されていくことには危惧を感じる。その点についてどうでしょう。

田島参考人 私が心配しているのはまさにそういうことであって、本当に大事なことは、きちんとそこに焦点を当てて、それで、それについては本当に厳格にそれをなくすように、あるいは厳しくそれを防止したり除去したりということを本気でやるということですね。だけれども、そうではない形になってしまうと、やはり本来の子供たちの保護とは違う文脈、あるいは違う形で過剰に規制や制約が及ぼされてしまったときに、我々の自由で民主的な社会というのは果たしてどうなってしまうのかということだと思うんですね。

 ですから、余りにも過剰な形の規制、広く網をかけ過ぎる規制をしてしまうと、本来大事にしなければいけない価値や権利というのが逆にうまく守れなくなってしまうし、逆に、規制や統制を本当にしたいというふうに考えている人たちは、むしろ非常に広い裁量の幅を持って、やれると思えばいつでもできるんだよというような形で我々の社会の上に君臨をしてしまうということになったら、やはりちょっと我々の社会のあり方としてどうなんだろうか、そういうふうに考えています。

保坂委員 現に「サンタフェ」も、国会図書館では閲覧規制がもうかかっているんですね。ですから、きょうはこういった審査がありますから、見ないと議論できませんから見ましたけれども、しかし、閲覧規制がかかっているということは、それは一般の図書館ではもう見れないわけですよ。そういうところまでの議論を、私、十年前も、この立法当時いましたから、そこまで議論したかなという思いがあるんですね。

 ですから、古今東西、人間の表現あるいは芸術には、さまざまな、少女も少年も含めて、彫刻や絵に出てくるということはあります。それが、要するに芸術的な価値がどうなのかということを十分見て、私は、必要な規制はきちんとやるべきである、しかし、それによって表現の自由や内心の自由が萎縮するようなことはあってはならないという立場でお聞きをいたしました。

 どうもありがとうございました。

谷畑委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の方々には、貴重な御意見をいただきまして、この委員会を代表して、本当に、心より感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二分散会


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