衆議院

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第2号 平成21年11月17日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十一年十一月十七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 滝   実君

   理事 阿知波吉信君 理事 石関 貴史君

   理事 辻   惠君 理事 樋高  剛君

   理事 山尾志桜里君 理事 稲田 朋美君

   理事 森  英介君 理事 大口 善徳君

      相原 史乃君    石井  章君

      石森 久嗣君    加藤 公一君

      熊谷 貞俊君    桑原  功君

      坂口 岳洋君    竹田 光明君

      中島 政希君    永江 孝子君

      長島 一由君    野木  実君

      藤田 憲彦君    細野 豪志君

      牧野 聖修君    山口 和之君

      山崎  誠君    横粂 勝仁君

      河井 克行君    棚橋 泰文君

      馳   浩君    福井  照君

      松浪 健太君    柳本 卓治君

      山口 俊一君    神崎 武法君

      城内  実君

    …………………………………

   法務大臣         千葉 景子君

   法務副大臣        加藤 公一君

   法務大臣政務官      中村 哲治君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十七日

 辞任         補欠選任

  石森 久嗣君     石井  章君

  橘  秀徳君     相原 史乃君

  柴山 昌彦君     松浪 健太君

同日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     橘  秀徳君

  石井  章君     石森 久嗣君

  松浪 健太君     柴山 昌彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

滝委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。棚橋泰文君。

棚橋委員 まず冒頭、大臣に御注意申し上げたい。

 定刻に来ていただけませんか。時間励行は社会人の最低限のマナーだと思いますが、どう思われますか。

千葉国務大臣 時間、若干おくれましたこと、大変申しわけなく思っております。これからきちっと時間を守らせていただきます。

棚橋委員 では、大臣にお聞きします。

 辛光洙、何をした男か御存じですか。何をした男か教えてください。

千葉国務大臣 私は、拉致を行った被疑者というふうに認識しております。

棚橋委員 被害者のお名前わかりますか。拉致被害者のお名前は。

千葉国務大臣 これにつきましては、原さんと私は承知をいたしております。(棚橋委員「下のお名前は」と呼ぶ)原……ちょっと待ってください。済みません、ちょっと……

滝委員長 棚橋君、挙手をしてください。

棚橋委員 大臣、どういうつもりなんですか。あなたは、北朝鮮の工作員で原さんを拉致した辛光洙の釈放を要求したのではありませんか。しかも、その日本人の被害者のお名前すら、まず後ろから秘書官から紙をもらわないと名前がわからない、下の名前がお読みになれない。それであなたは治安を担当する大臣なんですか。私は大きな憤りを覚えますし、あなたは拉致の被害者や家族、国民にどうおわびをするんですか。

千葉国務大臣 私は、拉致被害者の皆さんあるいは国民の一人一人の命と安全、それについては最も大事なものだというふうに認識をいたしております。

 先ほど名前を失念させていただきましたけれども、原敕晁さんでございます。

 私は、嘆願書というものに署名をしたという指摘をいただいております。これについては、今、かなり前のことなので定かではございませんけれども、韓国の民主化運動に対して活動をしていたそういう皆さんを救済する、こういう趣旨のもとでの嘆願書に私は署名をしたのではないかと認識をいたしているところでございます。

 それについて、この拉致犯人がそこに入っていたということについて、私も、そこまでその当時しっかりと考えていなかった、あるいは、その中に含まれていることについてよく調査をさせていただかなかったということについては、大変不注意であったというふうに現在は認識をいたしております。

棚橋委員 不注意程度なんですか。その程度の署名が大臣の署名なんですか。辛光洙というのは日本人を拉致したテロリストですよ。そのテロリストを釈放するという署名をするのに、不注意程度でいいんですか。

 では、これは撤回しないんですね。

千葉国務大臣 そのときに私は辛光洙だけの署名をしたものではないと記憶をいたしております。たくさんの……(棚橋委員「撤回するんですか、しないんですか。この質問にだけ答えてください」と呼ぶ)はい。

 それについては、署名したことについては事実でございますので、今撤回をするということではございません。ただ、大変不注意であったということについては申しわけなく思っております。(棚橋委員「ちょっと待ってくださいよ。信じられません、大臣。いいですか」と呼ぶ)

滝委員長 棚橋君に申し上げます。

 手を挙げて、指名によってやってください。

 棚橋君。

棚橋委員 大臣、辛光洙は原さんを拉致した人間だと、今わかっているわけでしょう。釈放しろと韓国大統領に向けてあなたは署名をしたんでしょう。今わかっているにもかかわらず、では、その辛光洙の分だけでも撤回するつもりは全くないんですね。生きているじゃないですか、釈放してくれという大臣の、法務大臣の要請が。それで、あなたは、もしあなたが拉致被害者や拉致被害者の家族だったらどうするんですか。そんな人がこの国の治安を守る法務大臣なんですか。撤回しないんですか。

千葉国務大臣 今申し上げましたように、その署名をしたというのは私の記憶あるいは御指摘の中で事実であろうというふうに思っております。

 それについて、今申し上げましたように、その中に辛光洙が含まれていたことについては、大変不注意で、申しわけないというふうに思っております。現在であれば、そしてそれをきちっと認識しているのであれば、私も署名をすることはなかったと私は考えております。

棚橋委員 まず、大臣に注意してください。答えていません。署名を撤回しないんですかと。今であれば署名するつもりはありませんなんてことは聞いていません。私は、今、出ている署名を撤回するのかしないのか、そう聞いているんです。

 撤回するんですか、しないんですか。一言で結構です。

千葉国務大臣 私も、今手元に、その署名、どういうものであったかということは、ございませんので、どのような署名になっているのかわかりません。もしそれがきちっと存在をして、そしてその部分について撤回をできるということであるのであれば、別にその意思がないわけではございません。

 ただ、その物がまず存在というか私のもとにもございませんので、どのような形で撤回をするのか、そういうことは少しその実際の署名というものを確認しながらやらせていただかなければならないと考えております。

棚橋委員 大臣、恐縮ですが、長々とごまかすような答弁はやめてください。

 では、署名はきょう現在では撤回しないんですね。つまり、原さんや原さんの御家族、拉致被害者の方々、そもそも日本国民は、拉致をやったテロリスト辛光洙に釈放要求をしていた治安担当の法務大臣のもとで、我々の安全を守ってもらえるかどうかということをおびえながら過ごさなければいけないんですね。

 きょう現在、撤回するつもりがあるのか。今するつもりがあるのか。もう一度、一言でお答えください。ないならないで結構です。

千葉国務大臣 繰り返しのお答えになりますけれども、きちっとその署名について確認をし、そしてまたそれが撤回をできるものであれば、その意思はございます。

棚橋委員 では、これまでその署名の意思の確認のためにどういう御努力をなさったんですか。あなたは大臣になって何日ですか。

千葉国務大臣 大臣になりましてから二カ月になります。この間、さまざま、その署名がどのような形でなされていたものか、あるいは、どこに存在をするのか、私も調べさせていただきましたが、今までのところ、その現物やあるいはそれの控え等々については、私の手元ではまだ調べがついておりません。

棚橋委員 韓国の外務省、外交官、確認いたしましたか。日本の警察庁にこの署名について何かあるか確認いたしましたか。確認されたのなら、それぞれ、いつごろ、どういう形で確認したのか、お答えください。

千葉国務大臣 今、それは部内でそれぞれ指示をいたしまして確認をさせていただいております。しかし、今のところ、その写し等々あるいは控え等々が存在をするということは報告をいただいておりません。

棚橋委員 韓国の外務省に確認をさせているんですね。(千葉国務大臣「はい」と呼ぶ)それから、警察庁にも確認させているんですね。

 それは、いつ部内に指示をしましたか。大臣に就任後何日後ですか。お願いいたします。

千葉国務大臣 私が就任をいたしまして、すぐにこの御質問をいただきました。直ちに、これをきちっと調べるようにという指示をさせていただいております。

棚橋委員 すぐにというのは即日のうちですか。また、どなたに指示をされましたか。法務省のどなたに指示をしたんですか。

千葉国務大臣 これにつきましては、直ちに、当日あるいは翌日であったかと思いますけれども、関係の部署に指示をいたしております。

棚橋委員 関係の部署とはどこですか。

 まず、当日なんですか翌日なんですか。

 それから、関係の部署なんという人はいませんので、どなたに指示をしたんですか。お願いいたします。具体的に教えてください。

千葉国務大臣 それは、就任をいたしまして記者会見がございました、そのときに指摘をいただいておりますので、直ちに指示をいたしました。それは私のもとの秘書官室を通じてでございます。

棚橋委員 済みませんが、大臣のこういうごまかす答弁はやめてください。私は、指摘を受けた当日なのか翌日なのかと言ったのに、直ちに直ちにで御返事がありません。当日ですか、翌日ですか。

 それから、秘書官室なんという人間はいません。法務省の担当局長なのか秘書官なのか、どなたに指示をしたのか、どういう指示をしたのか、教えてください。

千葉国務大臣 今申し上げましたように、指示をいたしましたのは、大変夜遅い就任のタイミングでしたので、当日あるいは翌日と。直ちにということでございます。決してはぐらかしているわけではございません。

 また、秘書官室、秘書課長等々を通じて指示をしたということでございます。

棚橋委員 ちょっとひどいですが、まず、秘書官室と秘書課長というのは一緒ですか。違うでしょう。どちらですか。秘書官に指示したのか、秘書官室のだれだれという職員に指示したのか、秘書課長に指示したのか。

 そして、それは、韓国の外務省に外交ルートを通じて確認するようにと指示をしたのか。お答えください。

千葉国務大臣 これは、秘書官室と私も申し上げましたけれども、これは秘書課長等を通じて指示をしたということでございます。そして、あらゆる関係箇所を調べるように、こういうことを指示いたしました。

棚橋委員 では、即座に、法務省として、法務大臣の指示に基づいて、韓国の外務省に、このような釈放嘆願書ですかが、千葉景子というお名前で出ているかどうか、外交ルートで確認しているんですね。

 あるいは、そういうことをきちんと確認しているということを、大臣は、その指示の後、確認をしましたか。

千葉国務大臣 それは、逐次報告は受けております。

棚橋委員 では、現在、韓国の外務省に照会中ですね。

千葉国務大臣 それも含めて調査を続けているというふうに私は承知をいたしております。

棚橋委員 質問だけ答えていただければ結構です。現在、韓国の外務省に照会中ですか。

千葉国務大臣 そのように承知をいたしております。

棚橋委員 それで、あなたは、調査中なんだから、原さんを拉致した辛光洙というテロリストに対する釈放要求は取り下げない、そういうことですね。

 あなたの所信表明では、たしか、テロの未然防止に努めるとともに、北朝鮮については、日本人拉致問題等の重大な問題の解決に向けとありますが、この姿勢、もしあなたが拉致被害者だったら、あなたが拉致被害者の家族だったら、いや、そもそも治安を一番大事にするこの国の国民が、現職の法務大臣がテロリストの釈放嘆願書に署名をしたまま、調査中だと言って一切撤回請求を出していない今日、どう思われると思いますか。

 本当に、この国の法務大臣は、普通の市民の治安を守り、普通の市民の味方なのか、北朝鮮の工作員の味方なのか、どっちなんですか。

千葉国務大臣 御指摘でございますけれども、北朝鮮の工作員の側に私は立っているなどということはとんでもない御指摘でございます。もちろん、国民お一人お一人の権利を、そしてまた治安、安全をきちっと確保する、これが私の職責でございますし、私の基本的な考え方でございます。

棚橋委員 では、伺います。

 とんでもない御指摘だと言うなら、何で辛光洙の釈放請求をしたんですか。何で今撤回しないんですか。国民の味方なんでしょう。辛光洙の味方じゃないんでしょう。でも、現にあなたの釈放要求は生きているんでしょう、今。撤回しないんでしょう、調査中調査中と言いながら。鳩山さんもそうだけれども、あなたも調査中調査中と言いながら、自分の過ちを認めないで、撤回していないじゃないですか。それで北朝鮮の味方、工作員の味方と言われるのは心外だと言われても、当たっているじゃないですか。

千葉国務大臣 先ほど申し上げましたように、私が署名をした、そう指摘をされておりますし、そして、そのときの署名というのは、韓国の民主化運動、これに参画をして逮捕された等々の、これまた普通の皆さんの救済を図ろうという、数十人の方に向けた嘆願の署名であったと私は認識をいたしております。

 そういう意味では、その中に辛光洙がいたということについて、そのときにきちっと一人一人チェックをしなかったという不注意については、先ほどから申し上げましたように、大変私も不注意があったというふうに今認識をいたしております。

棚橋委員 二つ御指摘申し上げます。

 まず、その程度の不注意で署名するんですか。私は、大臣が死刑をきちんと執行するかどうかも聞きたかったんですが、そんな不注意な大臣の署名では、この質問はもう聞くつもりになりません。

 そして、何よりも、もう世の中が辛光洙釈放のために千葉法務大臣が署名をしたとわかっているにもかかわらず、調査中ということで撤回をしない、その大臣の姿勢、国民がどう思うか。まず、それをきちんと申し上げたいと思います。

 もう一点、鳩山さん、脱税総理の違法献金等の疑惑、きちんとこれは起訴するんですか。お答えください。

千葉国務大臣 これにつきましては、捜査当局が厳正に、そして法に基づいて、必要であれば捜査をし、そしてまた起訴をするということになるであろうというふうに思います。それについては、捜査の具体的なことについては私から申し上げることはできません。

棚橋委員 今、必要とあれば捜査をするということは、捜査していないんですか。

千葉国務大臣 個別の捜査活動につきましては私からお話を申し上げることはできません。

棚橋委員 でも、今おっしゃったじゃないですか、必要とあれば捜査をすると。必要とあれば捜査をしているものとは言っていなくて、必要とあれば捜査をするということは捜査していないということでしょう。

千葉国務大臣 必要であれば捜査をきちっとするであろうということでございます。それは今やっているのか、あるいはこれからやるのか、そのことについては、具体的な捜査の活動でございますので、私からここで申し上げることはできません。

棚橋委員 鳩山さん、脱税総理の不正献金疑惑等については、国民がきちんと明快な説明を求めているにもかかわらず、司法の場で明らかになるというふうに、そういう趣旨のことを鳩山総理は言っていますが、では、そもそも総理大臣は起訴されるんですか。起訴できるんですか。(発言する者あり)

滝委員長 棚橋君に申し上げます。

 決めつけるような表現がございましたけれども、どうかと思いますので、後刻理事会においても協議をさせていただきたいと存じます。

棚橋委員 委員長に申し上げます。

 七千二百万円脱税していて、脱税でないと言うのなら、これはほかにどういう用語を使ったらいいんでしょうか。わかりません。委員長、ちょっとその点を御指摘されるならば教えてください。

滝委員長 棚橋君に申し上げます。

 決めつけるような発言がございましたものですから、その問題については後刻理事会で協議をさせていただきます。

棚橋委員 どうも民主党の諸君はマスコミも見ていないしテレビも見ていないようですが、総理自身が七千二百万円認めているんですよ。修正申告したと言っているんですよ。これは脱税じゃないんですか。何という用語なんですか。委員長、教えてください、そういうふうにおっしゃるならば。委員長自身があなたは本当に中立公正なんですか。鳩山さんの弁護士なんですか。委員長、七千二百万円の脱税が決めつけるような言葉というならば、七千二百万円の何と言ったらいいのか、お教えください。

滝委員長 棚橋君に申し上げます。

 決めつけるような表現でございましたから、その扱いについては理事会で協議をします、こう申し上げているのでございます。(棚橋委員「公開された自由な議論の中での……」と呼ぶ)

 私は、ただいま棚橋君に指名をさせていただいておりません。

 棚橋君。

棚橋委員 委員長、公開された議論の過程の中で、質疑者の発言を封じるような中立公正でないやり方はやめてください。委員長、お願いします、御答弁。

 ちょっと委員長、時計をとめてください。時間がもったいない。委員長、申しわけない、話し合い中のところ、時計をとめてください。速記をとめてください。

滝委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

滝委員長 それでは、速記を起こしてください。

 棚橋君。

棚橋委員 脱税総理という言葉は使ってよろしいんですね、委員長。

滝委員長 棚橋君に申し上げます。

 その表現については理事会で協議をさせていただきます。

棚橋委員 さて、大臣に質問いたします。

 先ほど申し上げたように、鳩山さん、脱税総理はそもそも起訴できるんですか。

千葉国務大臣 個別の捜査活動につきましては、発言は差し控えさせていただきたいと思います。

棚橋委員 憲法七十五条には、国務大臣は在任中、内閣総理大臣の同意がなければ起訴されないと書いてありますか。イエス、ノーで答えてください。

千葉国務大臣 特にそのようなことは記載がございません。

棚橋委員 ちょっと秘書官、憲法七十五条をお見せしてください。

 ちょっと委員長、申しわけない。時計をとめてください。今からわかりますが、時計をとめてください。時間がもったいない。余りにも今の答弁はちょっとひどい。

滝委員長 答弁できますか。

棚橋委員 いや、時計をとめてください、一回まず。読まなきゃいけないから。憲法を読むのに時間がかかるもの。お願いします。

千葉国務大臣 憲法の規定について私もちょっと誤解をいたしました。記載がされております。

棚橋委員 申しわけないんですが、あなたはこの国の法務大臣なんですよ。憲法の、特に内閣に対する規定ぐらいは読んでおいてください。

 国務大臣は、つまり内閣総理大臣も含めてですが、その在任中は内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない、つまり起訴できないんですよ。つまり、鳩山由紀夫さんを起訴しようと思ったら、鳩山由紀夫内閣総理大臣の同意が要るんです。違いますか。

千葉国務大臣 憲法の規定をそのまま適用すると、そういう解釈になるかと思います。

棚橋委員 そうすると、脱税総理は……(発言する者あり)自分は起訴されない状況にありながら、一方で自分の違法献金に関しては、司法の場、捜査の場にゆだねられているから一切説明しない、こういうことになるわけですね。七千二百万円脱税して、五千万円の違法性のある献金があると言っておきながら、要は、マスメディアも含め国会でも一切説明はしない、捜査中だ、一方で、自分は絶対に起訴されないというところに守られているわけですね。つまり、鳩山由紀夫さんは要は治外法権の人なんですね。大臣、お答えください。

滝委員長 大臣の答弁の前に棚橋君に申し上げます。

 不適切な表現については、先ほど申しましたように、理事会で後刻協議をさせていただきますので、それまではできるだけ差し控えていただきたいと存じます。

棚橋委員 先ほど委員長がおっしゃったことと、今おっしゃったことは違います。後刻理事会で協議しますとおっしゃったのであって、私が脱税総理という言葉を使うことに関して、委員長から控えろという言葉は先ほどございませんでした。

 逆に言えば、委員長は、この公正中立な委員会を民主党の鳩山総理の側に立って言論を封じるんですね。この委員会では脱税総理という言葉を使っては委員長としていけないという権限で命じるんですね。

滝委員長 その表現につきましても、理事会で協議をさせていただきますので、できるだけそういうような誤解を招くような紛らわしい表現は控えていただきたいというのが委員長の意見でございます。(棚橋委員「委員長、まず時計をとめてください」と呼び、その他発言する者あり)

 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

滝委員長 速記を起こしてください。

 それでは、審議を続行します。

 ただいまの棚橋君に対する私の意見につきましても、改めて後刻理事会で協議をいたしますけれども、断定的な表現はなるべく避けて発言していただきますように、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。

 それでは、先ほどの質問に対して、千葉大臣、よろしくお願いいたします。

千葉国務大臣 私の法務大臣という立場でお答えをすべきものではないというふうに思います。

棚橋委員 違います。

 総理は、司法の場に議論が移っているからと言いながら、一方で、憲法上、総理は訴追されないということで守られているわけですね。一方で捜査中だからと言って説明を拒むわけですね。だから、説明義務も負わない、起訴もされない、治外法権の人だと言っているんです。

 大臣、お願いします。

千葉国務大臣 治外法権というのは、私はそのようなことではないというふうに思っております。訴追の権利は、免れない、それは憲法上にも規定をされていることでございます。

 また、個別の事件については、私から申し上げることは差し控えさせていただきます。

棚橋委員 訴追の権利を、免れないということは、在任中、訴追されないということとは別ですよ。だから、今申し上げたように、鳩山さんは、自分で自分の起訴を同意しない限りは、起訴されないんじゃないですか。

 そして一方で、捜査の場に動かされていると言っていますけれども、検察官は行政官でしょう、法務大臣の指揮下にある行政官でしょう。自分たちの部下が捜査をしているから一切国会では説明しない。しかし憲法上、起訴はされない。これは、普通の人間であり得ることですかというよりも、治外法権じゃありませんか。

 大臣としては、まず第一に、この問題に関してきちんと説明すべきではないか。あなたは訴追をされないんだからということを総理に進言するつもりはありませんか。

千葉国務大臣 私から何か進言をさせていただくというような問題ではないというふうに思います。また、個別の問題について私からお答えをすることは差し控えさせていただきます。

棚橋委員 脱税総理の違法献金問題については、今申し上げたように、捜査が及んでいれば一切国会、国民に説明しなくていいんですか。であれば、鳩山内閣の閣僚は、もし疑惑ができたときに、だれかに告発してもらえば、現在捜査中ですからと言って答えずに、一方で事実上起訴されないということが続くのではありませんか。

 大臣、お願いします。

千葉国務大臣 私は、法務大臣として個別の捜査活動について具体的にお答えは差し控えさせていただく、こう申し上げているところでございます。

棚橋委員 そうではなくて、政治家として、総理あるいは閣僚は、疑惑があっても捜査中であれば答えない、しかし一方で、起訴されることはない。これはおかしくありませんかというんです。逆に、疑惑はない、あるいはまず李下に冠を正すのならば、もし起訴された場合には必ず同意をするという同意書を取りつけるべきではありませんか。

 また、何よりも、あなたは法務大臣ですよ。検察官に対する指揮権があるんですよ。そういう人間が個別の捜査に関しては何も言わないと言っても、世の中の誤解は絶対に生みませんか。あなたの部下である行政官が本当に総理大臣を起訴に持っていけますか。そういう状況の中で総理大臣が説明責任を一切果たさないことを、あなたは国務大臣として、政治家として、法務行政を統括する人間としてどうお考えですか。説明してください。

千葉国務大臣 捜査機関は、法に基づいて適正そして公平公正にきちっと捜査をするものだというふうに私は認識しておりますし、そのように捜査当局が捜査をするものだと考えております。

棚橋委員 では、捜査機関が鳩山総理を起訴すると言ったときに、法務大臣はどうするんですか。

千葉国務大臣 仮定の問題、そして個別の問題について私から答弁は差し控えさせていただきます。

棚橋委員 では、一般論で結構です。

 国務大臣を起訴すると決めた場合に、法務大臣はどうするおつもりですか。

千葉国務大臣 これも仮定の話ということになりますので、私から今お答えをする立場にはございません。

棚橋委員 いいですか。私が問題にしているのは、閣僚というのは総理の同意がなければ訴追されない、そういう治外法権の立場にありながら、一方で、捜査が及んでいるならば、捜査中なので国民には一切答えない、国会でも答えない、これはおかしくありませんか。

 おかしいと思いますか、おかしいと思いませんか、お願いいたします。

千葉国務大臣 私は、決して治外法権というようなことにはならないというふうに思いますし、そして、それはそれぞれ適切に判断をするものだと考えております。

棚橋委員 おかしいと思いますか、おかしくありませんかと聞いているんです。先ほどから申し上げているように、質問に答えていません。

 おかしいと思いますか、おかしくないと思いますか。

千葉国務大臣 個別のことを想定した御質問については、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

棚橋委員 想定ではありません。現実にそうなっているじゃないですか。鳩山総理は、憲法上、事実上、起訴されない。しかし、捜査が及んでいるから、政治資金献金疑惑、これには答えない。これはまさに現実に起きていることじゃないですか。

 法務大臣として、法務行政をつかさどる人間として、この現実をおかしいと思っているのか思っていないのか。仮定の話じゃありません。現実です。どちらですか。思っているんですか、思っていないんですか。

千葉国務大臣 個別の事件にかかわります個別の捜査活動にかかわることについて、発言は差し控えさせていただきます。

棚橋委員 鳩山内閣の総理である総理大臣が、捜査中であるということを理由に一切説明をしない。一方で、起訴はされない。つまり、だれもアンタッチャブルな人が鳩山さんなんですよ、今の状況では。

 国務大臣は在任中訴追されない、だからこそ余計、国会や国民に説明義務が求められるんじゃないですか。それなのに説明しなくていいんですか。もう一度お答えください。

千葉国務大臣 個別の問題について、私から発言は差し控えております。それぞれ適切に判断をするものだというふうに考えております。

棚橋委員 ということは、鳩山総理が、捜査が及んでいるから一切説明はしない、しかし起訴はされないという期間は適切に判断されているということなんですね。

千葉国務大臣 個別の問題について私は申し上げているわけではございません。それぞれその立場で適切に判断をする問題であろうというふうに考えていると申し上げました。

棚橋委員 それでは、鳩山総理が不起訴処分になったときに、これは、大臣として、捜査関係の書類はすべてコピーでも現物でもお返しをして、鳩山さんが即日釈明できるようにという指示をするつもりはありますか。

千葉国務大臣 仮定の話については、答弁を差し控えさせていただきます。

棚橋委員 つまり、総理は、現在捜査中だからと言いながら、捜査後も書類がないから答えられないという抜け道を法務大臣はお許しになるんですね。

千葉国務大臣 仮定のお話であろうというふうに思いますので、私から御答弁をすることはできません。

棚橋委員 では、もう少し伺いますが、現在捜査中とのことですが、捜査中だと内閣総理大臣は一切疑惑に関しては説明しなくていいんですか。

千葉国務大臣 具体的な捜査機関の活動につきましては、答弁は差し控えさせていただきます。

棚橋委員 また質問に答えていないんですが、総理がそのようなことでよろしいのかと国務大臣として伺っているんです。個別具体的事件についてはお答えできませんという話を聞いているのではありません。捜査が、司法と総理は言っていますが、検察官は行政ですよ。あなたの指揮権に服するんですよ。そこにある間は一切説明をする必要はない、説明はしないということが国務大臣として正しいと思っているのか、そうでないのかと聞いているんです。

 個別の案件の捜査に関して聞いているのではありません。総理の説明責任について、国務大臣として、法務行政をつかさどる法務大臣に聞いているんです。お答えください。

千葉国務大臣 これは個別の課題になろうかというふうに思います。それについては私から答弁は差し控えさせていただきます。

 あとは、それぞれ適切に行動をとられるものだというふうに私は考えております。

棚橋委員 個別の案件ではないでしょう。私が今言っているのは、個別の捜査に影響させる話という話ではなくて、捜査が及んでいるなら説明はしなくていいということでいいんですか。逆に、捜査が始まったから国会や国民を前に説明することができないというのであれば、鳩山内閣の大臣に疑惑のオンパレードがあったときでも、その場合、だれかが告発してくれれば説明しなくてもいいことになるんですよ。

 この国の民主主義、法治国家としての大臣は、訴追もされない、一切説明もしなくていいという、憲政史上に汚名を残す、そういうことになるんですよ。その点についてお話をください。

千葉国務大臣 今の御発言、仮定の設定をされておられるのではないかというふうに思います。そういうことについては、私から答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

棚橋委員 仮定の設定をしているわけではありません。現に鳩山さんがやっていることです。

 逆に言えば、脱税の方もそうですが、この鳩山システムを使えば、総理大臣は訴追されない、しかし、説明義務も果たさなくていいということになっているのではありませんか、そう聞いているんです。なっているでしょう。

千葉国務大臣 棚橋委員のそのような一つの設定をされての御質問については、仮定の質問ということで、私から答弁は差し控えさせていただきます。

棚橋委員 いや、だから、そうじゃないでしょう。この鳩山システムはもう完全に、仮定じゃなくて動いているでしょう。

 要は、捜査がなされているから説明はしない、しかし自分は訴追されない、そういうことになっているじゃないですか。これは現実でしょう。世の中には、自分は今、司法の場にゆだねられているから説明しないと言っているわけでしょう。だけれども、今、裁判になっているわけでもないんですよ。あくまで鳩山総理あるいは内閣の指揮に服する行政官である検察あるいは警察が動いている段階で、一切説明しない。しかし、本人は憲法上の規定で絶対に起訴されない。これはおかしい鳩山システムではありませんかと聞いているんです。

千葉国務大臣 繰り返しになりますけれども、棚橋委員の設定された仮定の質問につきましては、私から答弁は差し控えさせていただきます。

棚橋委員 李下に冠を正さずという言葉がありますが、検察官、検事は法務大臣の指揮権に服する、そういう立場ですか、そうではありませんか。

千葉国務大臣 一般的に法務大臣の指揮権のもとにございます。

棚橋委員 一般的にしかないんですか。

千葉国務大臣 どのように行使をするかということは、個別の捜査とのかかわりでございますので、お答えは差し控えさせていただきます。

棚橋委員 答弁が違います。一般指揮権以外に個別指揮権があるかどうか、これは六法を読んでください。秘書官が今出していますから、六法を読んでください。一般指揮権以外に指揮権はないんですね。

千葉国務大臣 そのようなことを申し上げたわけではございません。一般的に指揮権があるということを御答弁申し上げたということでございます。それぞれ個別の指揮権については、今お答えをすべきものではないというふうに思います。

棚橋委員 答えていません。法律上、一般的指揮権以外に個別の指揮権があるかどうか、法務大臣に聞いているんです。基礎中の基礎ですよ。

千葉国務大臣 それは検事総長を通して指揮権を行使するということは可能でございます。

棚橋委員 済みませんが、大臣も法律を勉強したんですよね。違ったんでしたっけ。それは基礎中の基礎ですよ。個別指揮権と一般的指揮権、戦後の政治史から考えても法律の常識から考えても、基礎中の基礎ですよ。

 ではお伺いしますが、検事総長に対する個別的指揮権があるならば、あなたは鳩山総理の周辺に関する捜査に関して厳格に捜査をすべきという個別指揮をするつもりはありますか。

千葉国務大臣 また同じになりますが、個別の問題につきましては、個別の捜査活動につきましては、発言は差し控えさせていただきます。

棚橋委員 個別指揮権を、鳩山総理の問題に関して、指揮するつもりはあるかないかと聞いているんです。個別の捜査に関して聞いているんです。指揮権を発動するつもりはあるのか全くないのか聞いているんです。指揮権を発動するのは、法務大臣の権限です。

千葉国務大臣 まさに個別の問題でございますので、私から捜査活動についてお答えは差し控えさせていただきます。

棚橋委員 個別指揮権を発動するつもりは全くないのかあるのかと聞いているんです。この捜査の現状はどうなっているかと聞いているんじゃないんですよ。お願いします。

千葉国務大臣 個別の事件を想定した御質問に対しては、捜査の活動について私から答弁は差し控えさせていただきます。

棚橋委員 こういうはぐらかし答弁はやめていただきたい。捜査の過程を聞いているんじゃありません。指揮権を発動するつもりがあるのかないのか。指揮権を発動するのはあなたの権限です。聞いているんです。

千葉国務大臣 これも個別それぞれにかかわる問題でございますので、今、御答弁をすることは差し控えさせていただきます。

棚橋委員 そうすると、李下に冠を正すつもりはないんですね。

 では逆に、鳩山総理の疑惑に関して、検事と接触する予定はありますか。

千葉国務大臣 同じになりますが、個別の問題について答弁は差し控えさせていただきます。

棚橋委員 私は、鳩山総理の問題に関して検事と接触するつもりはないという答弁が当然来ると思ったんですが、個別の案件だからお答えしないということは、接触する可能性もあるわけですね。

千葉国務大臣 個別の問題については、答弁を差し控えさせていただきます。

棚橋委員 今の御答弁、正直言って驚きました。

 私は、個別の案件に関して検事と接触するつもりはないと当然返ってくるものと思ったら、個別の案件に対してお答えするつもりがないということは、逆に言うとその可能性もあるということを法務大臣が示唆しているんですよ。これは法務行政に対する大きな信用失墜ですよ。

 何よりも、先ほど申し上げましたように、鳩山システムでは、訴追されないけれども説明責任を果たさないということが可能になります。これは御本人に聞かなければわかりません。各委員会で総理の出席を求めたことがございます。これまで、現職総理がここまで疑惑のオンパレードだったことはございません。

 委員長、ぜひこの委員会に、私は鳩山総理の出席を求めましたが、鳩山総理の出席を、委員長、お願いいたします。

滝委員長 ただいまの棚橋君の意見につきましても、後刻理事会で協議をさせていただきます。

棚橋委員 ということは、先ほど申し上げたように、捜査が及んでいるから一切答えないが起訴はされないという鳩山システムを、新たにというか、つくり上げたこの鳩山総理をこの委員会に呼ぶということを、委員長は前向きに検討していただけるんですね。

滝委員長 棚橋君に申し上げます。

 そういうことを申し上げているわけではございません。今の意見は意見として理事会で協議をさせていただく、こういうふうに申し上げているわけでございます。

棚橋委員 私が脱税総理と言ったときには、委員長は大変積極的に、控えるようにとおっしゃいましたが、鳩山総理を呼べと言ったときには、全くその点について熱意がないんですね。

 大変残念なことに、なお前例を御存じない方が多いようですから申し上げますが、各委員会で総理が出席した前例はたくさんございます。どうか勉強してください。

 それでは法務大臣、もう一度最後に聞きますが、あなたは、起訴されない立場である鳩山総理に、みずからの疑惑は国会ないし国民の前で積極的に説明すべきだと、国務大臣ないし法務大臣として、個別の案件の捜査の話をしているわけではございません。政治家として進言するつもりはないんですね。お答えください。

千葉国務大臣 それぞれ的確に判断をすべき問題だと思っております。

棚橋委員 では、総理は的確に判断しているんですね。

千葉国務大臣 それぞれが的確に判断をすべき問題だと思います。

棚橋委員 大変見事な官僚答弁でございます。

 残念ながら、辛光洙の件にしろ、鳩山疑惑にしろ、法務大臣に、政治家としてもっと真摯な反省の態度をと思っておりましたが、非常に残念でございます。

 これからさらにこの問題を、この委員会で追及させていただきましたし、法務大臣は、特に辛光洙の問題については、この後、また閣議があれば記者会見が行われます。それまでに辛光洙の問題に関して嘆願請求書を撤回するつもりはありますか、調査中ということでまだやりませんか。それを最後に聞かせていただきます。

千葉国務大臣 先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。

棚橋委員 大臣、どちらですか。次の閣議後の記者会見までに嘆願書を撤回するつもりがあるのかないのか。イエス、ノーだけで答えてください。撤回するつもりはある、ない。

千葉国務大臣 先ほど御答弁を申し上げたとおりでございます。

滝委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。

 本日は、最初の法務委員会の質問でございますので、大臣、副大臣、政務官、それぞれの基本的な政治姿勢や法務行政に対する考え方をお伺いいたしたいと思っております。

 さて、先日の予算委員会で、私、鳩山総理の友愛政治、特に、日本列島は日本人だけのものではないということについてお伺いをいたしました。総理は、宇宙が生まれてから百三十七億年、地球が生まれて四十六億年、生きとし生けるもののものである、生命体のないもののものかもしれない、そして、その日本列島は日本人だけのものではないというところから、外国人参政権についても、地方参政権についても前向きに考えるとおっしゃっておられました。

 また、総理は、かつては、外国人参政権は国政参政権も与えるべきではないかということもおっしゃっていたわけですけれども、まず、中村政務官、お伺いをいたしますが、政務官は、総理のおっしゃる日本列島は日本人だけのものではないという考えに同意をされるかどうか、そしてまた、外国人参政権、地方参政権、国政参政権、双方についてどのようなお考えか、お聞かせください。

中村大臣政務官 日本は日本人だけのものではないというその発言の趣旨がどのような趣旨によってなされたものかということによって、そのことの解釈は変わってくるものだろうと思っております。

 それから、地方参政権の問題については、これは与党の中でも今検討中だということで、今私がここで答えるべきことではないのかなと思っております。

稲田委員 政務官、日本はもちろん主権国家です。そしてまた、憲法十五条に国民主権が定められております。ですから、地方参政権を外国人に与えるかどうか、また、国政参政権を外国人に与えるかどうか、これは、日本が主権国家として、また、国民主権をどう考えるか、そしてまたその憲法解釈も含めて、政治家としての非常に基本的な考え方だと思います。

 もう一度お伺いいたします。外国人参政権に対する政務官のお考えをお聞かせください。

中村大臣政務官 個人的な考え方をとおっしゃいましたので、私は、野党時代に、この法務委員会の質疑においても、外国人地方参政権の当時公明党の出した案について、積極的に取り組むべきではないかという趣旨の発言をしたことはございます。

稲田委員 国政参政権についてはいかがお考えですか。

中村大臣政務官 これも私の個人的な見解ということでお尋ねだと思うんですけれども、これは法務省の見解ではございませんが、私は、外国人が当該国籍国の参政権を持つならそれは当たり前のことですが、例えば、日本において外国人が日本の国政の参政権を持つべきであるとは考えておりません。

稲田委員 では政務官は、地方参政権は前向きに考えるべきだけれども、国政参政権について付与することは反対である、そういうお考えと聞いてよろしいですか。

中村大臣政務官 あくまでも個人の見解だということを聞いていただいているんだと思いますが、まず国政参政権については、どういう国政参政権であったとしても、定義によりますけれども、いずれのどういう定義によっても、国政参政権と一般的に言われているものに関しては外国人は持つべきではないと個人的な考えとして持っております。

 地方参政権については、地方参政権と一般的に言われるものについては、どのような地方参政権なのか、どこまで認めるのか、それによっては、制度の設計をいかに組むかによって変わってまいります。そのことによって、一般的にどうかということは言えないと私は考えております。

稲田委員 ちょっと答弁が、一般的にどうとは言えないということに変遷していると思いますけれども、一般的にと言いますが、地方参政権というのは、地方の首長や、また議員について、そこに住んでおられる外国人に、ある一定の要件をつけてですけれども、選挙権があるということでありますが、その点については前向きに考えていらっしゃいますか。

中村大臣政務官 今委員が御指摘のありましたように、外国人と言った場合に、どこまでの外国人を言うのか、在留資格においてどこまでの外国人を言うのかによっても変わってまいります。それから、参政権とおっしゃいましても、選挙権もありますし、被選挙権もあります。そのような制度をどのように制度設計するのかによって、どこまで認めるのかということはそれぞれ考え方が違ってくるのかなということを考えております。

稲田委員 では、まだ御検討中ということで。

 同じ質問を副大臣にしたいと思います。

 総理がおっしゃっている日本列島は日本人だけのものではないというお考えに対する副大臣の御意見、それから、外国人参政権、地方参政権と国政参政権についてのお考えをお伺いいたします。

加藤副大臣 総理がせんだって御発言された中身につきましては、その深い真意までは私も理解できておりませんけれども、恐らく、今の先生の御披瀝も含めて想像いたしますに、かなり比喩的、文学的におっしゃられたのかなと考えておりますので、それをそのまま文字どおり受け取って何か議論をするということが、余り、理詰めで考えることが適切かどうかはやや疑問のあるところであります。

 ただ、あくまでも私は、日本に生まれた日本人の一人として、この国を大変大切に感じておりますし、この日本も日本人も大変愛しているということだけは個人的見解として申し上げておきたいと思います。

 それから、参政権の件でありますが、国政については、私は、外国人に参政権を与えるということは議論の余地なくあり得ないことだというふうに認識をいたしております。

 それから、地方の件については、今政務官の御発言にもありましたとおり、どんな枠組みで、どんな制度、仕組みにするのかということによって、その詳細設計によって随分状況は変わると思いますし、また、世の中全体、さまざまな御意見、お立場があることも十分承知をいたしておりますので、私としては、虚心坦懐、そして多くの皆さんの御意見をお聞かせいただきながら、慎重に自分なりに判断をさせていただきたいと思っております。

稲田委員 ただ、私は、地方参政権と国政参政権を分けて、国政参政権は議論の余地なく認めないけれども、地方参政権については検討の余地がある、どうしてそういうふうに分けるのかなという気持ちがいたしております。

 また、鳩山総理の、日本列島は日本人だけのものではない、これはかなり長年、何回もおっしゃっているところでございまして、友愛政治の核心的な部分ではないかと思っております。

 同じ質問を、大臣、最後になりましたけれども、お聞かせいただきたいと思います。

千葉国務大臣 総理のお考え方、多分それは、それぞれ人間同士がお互い尊重し合い、そして国際的にも友愛の精神を持ってこれからのいろいろな社会を見ていこう、こういうお考え方を表現したことではないかというふうに思います。それ以上、個別の何か具体的なことをイメージしておっしゃられたものではないのではないかというふうに受けとめております。

 参政権については、この間御議論がございましたのは地方の参政権ということであったかというふうに思っております。国政について議論というのはほとんどこの間提起をされていないのではないかというふうに思っておりまして、私は、地方の参政権についていろいろな御議論があること、そして、それについて、私もそういうことも必要ではないかなというふうに思いながら、いろいろな議論に参加をさせていただいてきております。

 今その議論が展開をされているということですので、いろいろな御意見を私ももう一度きちっとお聞きをしながら、方向が定まっていくことを見詰めていきたいというふうに思っております。

稲田委員 大臣は、国政参政権についても、憲法十五条との関係で議論の余地があるとお考えでしょうか。

千葉国務大臣 今のところ、私は、国政参政権について議論というのは余地はないというふうに思っております。

稲田委員 今のところという意味がちょっとわからないんですけれども。

 私は、やはり憲法十五条というのは国民主権の帰結でありますので、外国人に国政参政権を与えるということは、これは国民主権を否定することにもなり、憲法改正をしたとしても、憲法改正の限界に当たる事案だとも思っておりますし、また最高裁も、御承知のとおり、国政参政権については憲法十五条の観点から認められないということもはっきりと言われているわけですが、憲法十五条との関係で、国政参政権も議論の余地があるとお考えかどうか、もう一度お伺いいたします。

千葉国務大臣 私自身は、議論をする必要はないというふうに思っております。

稲田委員 議論をする必要がないということではなくて、憲法十五条との関係で国政参政権はあり得ないと考えておられるか。国民主権の帰結として、たとえ憲法改正しても改正の限界に当たるのではないかと私は考えておりますが、その点、大臣も法律家ですから、ちょっとお伺いをいたしたいと思います。

千葉国務大臣 憲法改正して、そのような、国政参政権について付与をするというようなことを私は考えてはおりません。

稲田委員 考えているかどうかじゃなくて、可能かどうかを含めて、国民主権の帰結として、外国人に参政権を与えるということはあり得ないと思いますけれども、その点の大臣の法律家としての見解をお伺いしているわけです。

千葉国務大臣 ここは御意見のあるところだというふうに私は思います。必ずしも、憲法に抵触をするかどうかというのには、抵触をしないという御主張をされている方も全くないというわけではないと承知をいたしております。

 ただ、私自身は国政参政権を付与することは憲法に抵触をするのではないかと、私は考えております。

稲田委員 それでは、大臣、不法滞在の外国人に対する在留特別許可についてお伺いをいたしたいと思います。

 出入国管理及び難民認定法、ちょっと長い法律ですので条文だけで言いますけれども、この五十条一項の在留特別許可については、ことしの七月にガイドラインが改定をされたところでございます。

 最近では、三月にカルデロン・ノリコさんの在留特別許可が認められて、ノリコさんが日本に住むことができるようになりました。また、最近ではことしの十月に、中国人の奈良の姉妹に、同じく最高裁では認められなかった在留特別許可が出たわけでございます。

 この二つの事件に共通するのは、最高裁で退去命令が確定をし、一たん法務大臣が在留特別許可を与えないとして退去命令を出して、そしてそれを一審、二審、最高裁まで争って、その法務大臣の裁量が間違っていなかったということで退去命令が確定した後に、法務大臣の裁量で在留特別許可を与えたわけでございます。

 こういった、まさにレアなケースだと思うんですけれども、一たん法務大臣が在留特別許可を認めずに、そしてそれが最高裁で妥当だという判決が出た後に、この最高裁の判断を覆す形で、また以前の法務大臣の裁量による判断を覆す形で在留特別許可を与えることについて、大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。

千葉国務大臣 在留特別許可につきましては、それぞれの事情等を考慮しながら決定をされるということでございます。法務大臣の裁量によって決定をするということになります。最高裁の判決が出てから、例えばいろいろな事情の変更がある、あるいは御本人に責めを負わせるような事実がない、さまざまなことを判断して在留特別許可を出すということでございます。

稲田委員 今回の中国人姉妹のケースについては、千葉大臣が就任された後のことでございますけれども、最高裁の判決が出た後にどういった事情の変化があって大臣は在留特別許可を与えるべきだと判断をされたのか、その点についてお伺いをいたします。

千葉国務大臣 この件については、経過を申し上げると大変細かくなりますけれども、退去強制手続によって一家の退去を促してまいりました。その結果、御両親等については帰国をされる、そしてそのお子さんについて、ぜひ、日本にも長年にわたって居住をし、そして帰責事由もなく、これからも何とか勉学を続けたい、こういう事情もあり、御両親の出国、そして子供さん方の勉学の意欲、また子供に対する配慮、こういうことも総合的に判断をして在留特別許可ということを決定させていただいたということでございます。

稲田委員 ということは、法務大臣みずからこの事案についていろいろな事情を考慮して、在留特別許可を与えるべきだという判断をされたということで間違いありませんか。

千葉国務大臣 当然、私も最終的な決定をさせていただくわけですけれども、その間、いろいろな状況把握を、入管当局においても、あるいは先ほど申し上げましたように退去を求めて促していくというようなことも含めて、対処をしてまいりました。その総合的な判断を受けまして、そしてそれを私もきちっと判断をさせていただいて、このような結論に達したということでございます。

稲田委員 私、この奈良の中国人姉妹のケースですけれども、判決文から明らかな事実として、大変悪質だと思っております。

 この一家は、平成九年に、中国残留日本人の娘とその家族であると称して入国をされました。その際、公証書を偽造して入ってこられました。また、この一家と同じように、同じ日本人の娘だと称して、また偽造をして、この家族以外に二家族が入国をされております。そういった背景からいたしますと、残留の日本人の娘だと称して日本に入ってくるという組織的な、犯罪的なものも背景に疑われるのではないかと思っておりますけれども、この点については何か事情を精査されましたか。

千葉国務大臣 個別申し上げることはできませんけれども、私は総合的な判断のもとで在留特別許可を出したということでございます。

稲田委員 でも、いわば在留特別許可を一たん法務大臣が出さずに退去命令を出した後に、最高裁でも確定をした後に、あえて在留特別許可を与えるというのであれば、そういった背景的なものも、非常にこれは、判決文からだけでも、同じ残留日本人の娘と偽った家族がこの家族以外に二家族あって、その人たちが同じ日に入国をしてきて、それぞれが退去命令を得ている、そういう背景についてどんな調査をされてこうした重大な決定をされたのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。

千葉国務大臣 具体的な調査につきましては、入管当局が適切にこの間調査を進めてきた、そういう報告を私も受けて、判断をしております。

稲田委員 その入管当局の捜査の結果、この入国に関する背景についてはどのように大臣は把握をされて、そして退去命令についての判断を覆す在留特別許可を出されたのか、その点について具体的にお答えください。

千葉国務大臣 先ほども申し上げましたように、退去強制命令につきまして、それを実行するように促してまいりました。それで、御両親は帰国をされたということでございます。

 お子さんについて、先ほど申し上げましたように、お子さん自体に帰責事由はないこと、そしてその後に裁決が取り消されているというようなこともあわせ、そして子供さんのやはり権利を尊重しよう、勉学の意欲それから周りの理解、こういうこともあわせてこのような結論を出させていただいたということでございます。

稲田委員 もちろん私も、そのお二人のお嬢さん方が気の毒だ、そして日本で勉学をしたい、そして何ら入国される際に、お父さん、お母さんの責任であって自分たちの責任ではないということはわかるんですけれども、やはり、最高裁の判決を覆してまで在留特別許可を出されるのであれば、そういったところだけではなくて、すべて総合的に判断をされてきちんと出されるべきだと思っております。

 少なくとも、一緒に入ってきた二家族のうちの一家族は、退去命令を受けて中国にすぐ帰っておられます。そして、この家族は、残留日本人の娘だと言い張って、証拠を偽造までして争って、最高裁まで争われたわけであります。また、不法入国であることを隠して、そして日本政府から一年半も生活保護を受けておられるわけです。

 大臣、不法滞在また不法入国の外国人の方に生活保護を与えるということは妥当だと思われますか。

千葉国務大臣 これについては私の管轄をする問題ではございませんけれども、法務省としては、そして私としては、不法滞在そして不法入国ということについては厳正に対処をしていかなければならないと考えております。

稲田委員 大臣、私の質問は、不法滞在、不法入国した外国人に日本の政府が生活保護を払うのが妥当かどうか、その点について質問しているわけでございます。

千葉国務大臣 これは私がお答えをすべき範疇ではないというふうに思います。

稲田委員 何を言っているんですか。不法滞在している外国人に生活保護を与えるのが妥当かどうか、それについて法務大臣として判断できませんか。

千葉国務大臣 私の職務としては、不法滞在を厳しく摘発する、あるいは不法滞在に対して退去強制手続などを通じて国外退去を求めていく、これが法務省そして私の職務でございます。

稲田委員 驚きましたね。そんなことを言っていたら、どんどんと不法滞在、不法入国者が入ってきて、生活保護を要求するということを助長することにもなりませんか。だって、そうじゃないですか。不法滞在、不法入国した外国人の方々に生活保護を与えるべきかどうか、そんなことも判断できませんか、政治家として。

千葉国務大臣 私が最終的に判断をすべき問題ではございません。私の職務に関してきちっと対処をしていくというのが私の任務でございます。

稲田委員 政治家としてどうですか。政治家として、不法入国者に、また不法滞在の外国人に生活保護を与えるべきかどうか、どのようにお考えですか。

千葉国務大臣 私は、今、法務大臣という役職についております。その立場で委員会では御答弁をさせていただきたいと思います。

稲田委員 そんな、不法滞在、不法入国の外国人にまで日本の政府が生活保護を払わなきゃいけないとしたら、日本の国はつぶれますよ。当たり前のことだと思いますけれども、そのようなところまで答弁を差し控えられる、それは私には本当に理解ができません。

 次に進みますけれども、そもそも大臣は、不法入国とか不法残留ということについて、厳正に法を適用して本国にお帰りいただくのがよいと思われていらっしゃるのか、それとも、たとえ不法に入ってきた外国人だとしても、一定期間日本に住んで生活をしていれば日本に滞在することを認めるべきだと考えておられるか、どちらでしょうか。

千葉国務大臣 不法に入国をした人に対しては、厳正に、そして退去をしていただくというのが基本でございます。

稲田委員 ところが、大臣は、ことしの三月に参議院の法務委員会の委員としてカルデロンさんの件について質問をされております。

 その中で、少し読みますと、

  とりわけて、入ってくる仕方は確かにいろいろあったというふうに思うんですけれども、その滞在においては犯罪を犯しているわけではない、犯罪集団とかということではない、そういう意味では非常に日本にとっても力になってもらい、あるいはお互いに尊重し合いながら生活をしているという、こういう事実が現に存在してしまっている。こういうことをこのノリコさん一家の問題も私たちに突き付けたような気がいたします。

  そういう意味では、私はこの辺でやっぱり、先ほど言った、確かに難しい問題ではありますけれども、どこかで一度、例えば、よく言われておりますように、一定のこういう本当に生活の拠点を持ち、そして日本の本当に力にもなってきたという皆さんをアムネスティーのような形できちっと一度滞在を認め、そしてこれから先こういう条件で日本は皆さんと一緒に暮らしていく、そういう社会をつくっていくんですよと、こういう方向をきちっと提起をしていく、こういう時期が私は来ているのではないかというふうに思っております。

というふうな質問をされておりまして、たとえ不法入国者、不法滞在者であったとしても、ある一定の要件でこれからの在留を認めるという、いわゆるアムネスティー政策ですね、こういうものを認めるべきだという御趣旨の質問をされているんですが、このお考えは今もお持ちでしょうか。

千葉国務大臣 そういう御指摘もあり、私も、そういうことをきちっとやることも一つの今求められていることではないかというふうに、この間認識はいたしております。

 ただ、先ほどお話がございましたように、そこは、例えば、不法に入国をしたのかどうか、あるいは一定の資格を持って入国をし、しかしその資格を今失っている、いろいろな条件があろうかというふうに思います。ただ、日本の中で本当に一市民として生活をしている、そして日本に税金も納め、あるいはいろいろな形で仕事をして寄与をしておられる、やはりこういうことに思いをはせる必要はあるのではないかというふうには考えております。

稲田委員 ですから、大臣、いわゆるアムネスティー政策ですね、不法入国、不法在留、その入ってきた経過は問わず、大臣も三月の質問の中でおっしゃっておりましたけれども、そういう経過は問わず、一定の条件を満たせばこれから日本に在留資格を与えるというような政策をこれからとっていかれるかどうか、この点についてお伺いをいたしております。

千葉国務大臣 これについては本当にさまざまな御意見もありますし、今申し上げましたように、いろいろな態様、それから日本に居住をしているいろいろな条件も異なるというふうに思います。

 そういう意味では、それらの意見あるいはその状況、そういうものをもう一度私もきちっと勉強させていただいたり、あるいは把握をしながら、こういう制度を取り入れることができるのかどうか、改めて私は検討しなければいけないと今考えております。

稲田委員 こういう問題は、今回法改正もあり、きちんと資格を持って在留されている外国人の方にはより生活しやすく優遇をし、また、不法に入国された方、そして不法に滞在している人については厳正に処理をしていくということで法改正をしたところでもございますので、この問題については、また引き続き大臣と議論をしてまいりたいと思っております。

 ただ、私は、やはり法の世界ではクリーンハンズの原則というものもございますように、ただ目の前のかわいそうなというような、そんな茶の間の正義的な発想でこの問題を判断していただきたくない。特に、在留特別許可を一たんは認めないという判断をした最高裁の判決が出た後に、それを覆して特別許可を与えるような場合には、先ほど大臣が答弁されたような、入管が捜査はしているものと思うというようなことではなくて、いろいろな、治安ですとか、それから国益ですとか、その背景にある犯罪的なものですとか、そういったものを総合的にぜひ慎重に判断していただきたいと思います。

 次に、副大臣にお伺いをいたします。副大臣の政治資金関係についてお伺いをいたします。

 まず、事実関係ですけれども、過去何回か、副大臣の個人献金については新聞報道がなされております。平成十九年の九月二十八日の読売新聞によりますと、「個人から三千万 分散献金」「総務省「法の趣旨に反す」」という報道がなされました。また、次の年の平成二十年の九月十八日のやはり読売新聞の報道によりますと、「七分割「不適切」献金」とあります。

 これらの報道を総合いたしますと、副大臣の次のような個人献金が事実として指摘をされているわけであります。

 副大臣の政党支部と政治団体が平成十八年二月に、港区の当時五十四歳の会社役員から三千万円、この役員が代表を務める有限会社から七百五十万円の合計三千七百五十万円の寄附を受けた。その他、パーティー券をこの役員から百五十万円購入してもらっており、平成十八年には合計三千九百万円、その役員とその関連会社から受け取られたことになります。また、同じような方法で、その前年の平成十七年に、同じ役員と会社から合計三千五百万円を受け取っておられます。そして、平成十九年には、この役員とはまた違った、当時五十三歳の別の会社役員から合計千五十万円を副大臣の七つの政治団体に寄附がなされ、総額一千万円を超えているということから副大臣が百五十万円を返還し、結果、九百万円を寄附されたことになった。

 これは新聞報道を総合して私がまとめたものでございますけれども、この事実関係は間違いがないでしょうか。

加藤副大臣 新聞の中身は、今申しわけありませんが手元にないものですから、新聞記事どおりだというふうにはお答えできません。御寄附をいただいたことはそのとおりであります。(稲田委員「金額」と呼ぶ)金額も今手元に書類がありませんので定かではありませんが、恐らくそれはおっしゃられるとおりだろうと思います。

稲田委員 次に、これらの寄附の受け入れ先になっている副大臣の政治団体は、政治資金管理団体である、加藤公一にちゃんとした国政をやらせる会、それから加藤公一東京後援会、加藤公一東村山後援会、加藤公一東久留米後援会、加藤公一清瀬後援会、加藤公一武蔵村山後援会、加藤公一東大和後援会。地名をつけた政治団体は六つですけれども、平成十九年の副大臣の収支報告書を見ますと、主たる事務所の場所、代表者は副大臣御本人、会計は副大臣の秘書である鈴木氏、収支報告書添付の宣誓書の日付、選管に受理された日付、すべて同一でございます。これは、私、確認をいたしております。また、冨永さんが寄附した日も平成十九年十二月二十五日、クリスマスですけれども、すべて同一の日です。

 しかも、これら六つの政治団体は、翌年、平成二十年九月十日に一斉に解散をしております。不思議なことに、これらの政治団体の収入は、この寄附の百五十万、それぞれ百五十万と前年からの繰越金のみ。支出としては、光熱費、備品・消耗品費、事務所費、全く計上をされておりません。

 これらの事実を総合いたしますと、六つの政治団体は、まさに副大臣個人が同一の政治団体に対する献金の上限百五十万円規制を脱法するためだけに設立された政治団体であるというふうに推測をされますけれども、その点はいかがでしょうか。

加藤副大臣 全くそのような認識はございません。

稲田委員 では、副大臣にお伺いをいたしますけれども、政治資金規正法二十二条、「個人のする政治活動に関する寄附は、」「政党及び政治資金団体以外の同一の者に対しては、百五十万円を超えることができない。」そういう同一人から同一政治団体に対する寄附の上限が設けられていることは御存じだと思いますけれども、この趣旨はどういう趣旨でしょうか。

加藤副大臣 私の立場でその法の趣旨を御説明する立場にはございませんので、お答えを控えさせていただきたいと思います。

稲田委員 政治家はだれでも政治資金規正法についてはきちんと認識をしておかないといけないものだと思いますので、私はそれをお答えする立場にあるとかないとか、そういう問題ではなくて、同一の個人から同一の政治団体に対して年間百五十万円という制限がつけられている、上限がつけられている趣旨について副大臣がどのような認識でおられるか、それをお伺いいたしたいと思います。

加藤副大臣 ルールは存じ上げておりますけれども、その立法の趣旨までは、今私ここで細かく御説明できるほどの知識を有しておりませんので、それについてはお答えしかねるところであります。

 ただ、一つ申し上げられるのは、恐らくは、寄附をしてくださる方と政治家との癒着がないように、こういう趣旨ではなかろうかと想像いたします。

稲田委員 私は、そんな認識で法務副大臣をやっておられること自体が驚きです。おたくの総理もそうですけれども、また幹事長もそうですけれども、この政治資金規正法をきちんと読んでいただいて、その趣旨を理解していただかないで何が民主主義ですか。何が議会制民主主義ですか。

 民主主義のゆがみを直すために政治資金規正法というのは、民主主義がゆがまないようにこれは規定されているわけでありまして、同一個人から同一政治団体に対して年間百五十万円の上限がありますのは、それは、同一の個人とその政治家との間に巨額な寄附があった場合に癒着が生じ、そして民主主義がゆがむ、だからこういった規定があるわけであります。その点については認識されていますか。

加藤副大臣 先ほどお答えをさせていただきましたが、その癒着がないようにという趣旨ではなかろうかと想像いたしますというふうにお答えをしたとおりでございますので、その点が重要なんだろうと思います。

稲田委員 それではお伺いをいたしますが、副大臣の後援会、地名をつけた六つの後援会の経理、これは副大臣自身が出し入れ可能なものですか。

加藤副大臣 出し入れというのは、出納の事務を自分でやっているかという御質問だとすれば私自身はやっておりませんが……(稲田委員「意思決定」と呼ぶ)意思決定はもちろんできる立場であります。

滝委員長 時間が来ておりますので、稲田君、簡単に質問してください。

稲田委員 この問題、まだまだお伺いいたしたいことがございますけれども、政治資金規正法の趣旨に、私は、今の副大臣の答弁も非常に認識が不足しておりますし、また、この六政治団体は、これを六つと数えるのではなくて、やはりこれは百五十万の上限を逸脱するために、脱法行為のためにつくられた政治団体だと思います。この問題については、また日を改めて副大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 以上です。

滝委員長 次に、馳浩君。

馳委員 おはようございます。

 大臣、参議院時代には大変お世話になりましたが、また改めてこうして法務委員として大臣とおつき合いをさせていただけることに感謝申し上げます。またよろしくお願いいたします。

 お手洗い、大丈夫ですか。三人とも、順次行っていただいて結構ですので。

 私の方は、きょうはオウム真理教に関する団体規制法、この見直しという問題について、実はぜひ政府の考え方をお示しいただきたいと思って質問させていただきます。

 ちなみに、あの忌まわしいサリン事件等が起こったのは平成七年三月のことでありまして、そのときの立場も含めて、大臣、副大臣、政務官に、オウム真理教に対する、当時また現在の印象といったものを一言ずつお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 私は、ちょうどあの事件が起こりましたときに、国会の視察調査で出かけていたと記憶をいたしております。そこで、わからないけれども大変な事態になっているということを報道等で聞きまして、大変ショックを受けた記憶がございます。

 私の友人でございました弁護士もいろいろな形で命を落とした、こういうこともあり、何としてもこのような行為に対して、私は、許すことなく対処をしていかなければいけないというふうに心にとめております。

加藤副大臣 私も当時、事件が起きました折には、まだ会社員をしておりました当時でございました。ちょうど出勤時間だったような気がいたします。

 本来であれば、いかなる宗教もそうでありますけれども、人の心をいやし、平和な世の中をつくるためにこそあるものだと信じておりましたのに、カルト的な集団が発生をしてこんな事件を起こしたということは大変驚きました。また、多少縁のある方で被害に遭ったという話も聞いたこともございますので、心からお見舞いを申し上げたところであります。

 二度とこのような事件が起きないような国家をつくってまいりたいと思っております。

中村大臣政務官 私は、当時まだ大学生でありまして、大学で勉強をしていたときでした。こういう事件が起こることに対して非常に憤っていたことを今でも覚えております。

 それと、今日的な影響として何が一番大きいかと思うに、宗教そのものに対して、社会全体に対する偏見が植えつけられてしまった可能性が非常に強いと思っております。カルトというものは、これはカルト宗教だけではなくて、カルトそのものというのは、団体そのもの自体、所属している者はいいんだけれども、それから違う、そのほかにいる者に関して非常に排他的になる。宗教がカルト的なものになってしまうことによって、宗教全体に悪い影響を与えてしまった結果につながってしまったことは、これはもう、信仰というものをどう人権として位置づけるのかということも考えると、非常に大きな問題があったというふうに認識しております。

馳委員 中村政務官がおっしゃったように、これは、宗教団体がカルト的になり、突き詰めていった最終の行き着く先として、まず一つ、多分その前年だったかに、政治に参加をして、みずからの教義を政治の場において実現しようとする方向に走りましたね。だめだったですね。皆さん落選しました。その後に、今度はまさしく武器を持って、武力的な威圧行為によって社会を動かしていこうとした。これはまさしく法治国家にとって許してはならない社会的な大問題であるという認識を我々国民が持ったと思っているんですよ。

 そこで、あの事件の後にいろいろ裁判も行われておりますし、容疑者というか逃げておる状況でもありますが、我々、団体規制法という法案をつくって、端的に言うと今見張っているというふうな現状にある。ところが、どうなんでしょうね、きょう参加の皆さん方にとっても、オウム真理教の問題というのが何となく風化されて、人ごとのようになってしまった部分があると思っているんですよ。

 たまたま私は、今住んでいる金沢市の近くにオウム真理教後継団体の施設があって、住民団体の皆さんが毎日二十四時間近く、三百六十五日、いまだに監視活動をしている。こういう、住民にとっては人ごとではないという、いまだにそういう認識を持ってとらえているということを、まず私が質問する前提として御理解いただきたいと思っています。

 そこで、事前の質問通告もしてございますが、大臣、聖水というのを御存じですか。

千葉国務大臣 私も直接検証をさせていただいたことはございませんけれども、公安調査庁の方でも直接検証をさせていただき、害になるという要素、何か成分が見つかったということではございませんけれども、それをいわば聖水というか、大変何か大事な水だ、御利益があるというような形で飾ってあるということは承知をいたしております。

馳委員 信者にとっての聖水なんだそうです。ちょっと資料がありますので、私、読ませていただきますが、この聖水というものは、アストラル・テレポーターという機械を使い、麻原の唱えるマントラのデータを電気信号に変換したものを真水に通してつくっている。信者は、これを飲用することにより麻原からエネルギーを受けるとされている。一部科学者によると、いつでも有毒なものにできると言われているのが聖水なんですよ。

 改めて、このことを聞いて、そういえばサリンも無味無臭じゃなかったかな、私はすぐに直観的に思い出しますが、大臣、改めて何か思うことはありますか。

千葉国務大臣 私も直接は検証させていただいて……。しかし、先ほど申し上げましたように、これまでの調査、検証によれば、直接害になる成分が含まれているものではないというところまでは私も報告を受けているところでございます。そういう何か説を唱えておられる、あるいはそういう考え方があるということは、これも聞かせていただいております。

馳委員 公安調査庁の職員が定期的な立入調査を行っていただいております。聖水を見て、それは何だ、飲んでみろと言えば、普通に飲むんですよ。ところが、これを強制的に押収することはできないんですね。ということは住民も知っています。だからこそ余計に不安が募り、何が起こるんだろうなと。実は、金沢の施設のすぐそばには川があるんですね。余計に、こいつら何を考えているのかなという不安がさらに募っている、こういう現状も改めてお伝えしておきます。

 さて、昨年成立をしたいわゆるオウム真理教犯罪被害者救済法によれば、オウムの当時の犯罪行為はテロ活動と認定をしております。ということは、オウム真理教はテロ活動を行った団体、すなわちテロ集団だったことになります。

 そこで、確認をしたいことが二点あります。

 一つ目、一連の犯罪行為を行った当時、オウム真理教はテロ集団だったと認定してよいはずだが、それでよいでしょうか。二つ目、現在においてもオウム真理教はテロ集団と認定してよいのでしょうか。見解をお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 今委員が御指摘をされましたオウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律というところに規定がございまして、そこに「悪質かつ重大なテロリズムとしての犯罪行為であり、」こういう規定になっております。これが基本的ないわば定義ということになろうかというふうに思っております。(馳委員「現在は」と呼ぶ)この給付金の支給に関する法律の規定がそのようにしておりますので、これをもって基本的には概念ということになると思います。

馳委員 私は、二つ目に聞いたのを実は本当は答えてほしかったんですが、今もテロ集団だと認定していいと思っていますかということを聞いたんです。

千葉国務大臣 私も、今、定義にありますように、「悪質かつ重大なテロリズムとしての犯罪行為であり、」これにそのまま今も合致をするものだというふうに思います。

馳委員 少なくとも事件当時テロ集団であったオウム真理教を取り締まり、規制をするのが、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律、いわゆる団体規制法です。本年十二月、五年ごとに行われる見直しの時期に当たります。

 そこで、確認したいことがあります。

 この団体規制法は、今の議論を踏まえると、テロ集団、少なくとも事件当時テロ集団であった団体が再度テロ活動を起こさないように再発防止をする、そういう機能を持っているということになりますが、そう認識していいでしょうか。

千葉国務大臣 そのように理解をいたしております。

馳委員 では、このテロの再発防止機能を真正面から受けとめて、団体規制法の目的の一つとして、テロの再発防止、ひいてはテロ撲滅という趣旨を掲げていくべきではないかと思います。事実、九・一一以降、テロの危険性は増大しておりますし、オウム真理教の施設が所在する全国三十の自治体で組織するオウム真理教対策関係市町村連絡会においても、テロリズムと闘う我が国の姿勢を団体規制法に盛り込んでほしいと大臣に要望しています。

 さらに、団体規制法第一条の目的に「当該行為の再発を防止するため」とうたっており、ここで言う「当該行為」はまさしくテロ活動であったわけでありますから、全く問題はないはずだと思いますが、いかがお考えでしょうか。

千葉国務大臣 先ほど御答弁を申し上げましたとおり、テロリズムというのは、国際法上も明確な定義というものがあるわけではございません。しかし、先ほどのように、テロリズムたる犯罪行為、こういう形で規定を、そして規制がされているということでございますので、その趣旨、そして二度とこういうことが起こりませんように、きちっと法的に対処をしていかなければならないというふうに考えております。

馳委員 私がなぜ団体規制法においてテロにこだわるかといいますと、団体規制法の見直しの基本視点が間違っていると考えているからです。

 今までは、この団体規制法は、実質上、オウム真理教のみを対象にした法律としています。そのオウム真理教が、過去と比較して現在どれだけ危険性を有しているのか。危険性が変わらない、または減少しているなら法改正の必要はない、あるいはこの法律の必要はない、そういうロジックで見直しの検討が行われているとしたら、それは違うんじゃないかなと私は思っているんです。

 オウム真理教以外のテロ集団によるテロ活動、これをまずそもそも生じさせないような、テロ活動の予防策について万全を期す。そして、団体規制法がかかわる、一度テロ活動を行ったテロ集団の再発防止策に万全を期す。このような総合的なテロ対策の観点から団体規制法を見直して、テロ総合対策の重要な柱として位置づけをし直すべきではないかと指摘をしたいと思います。政府の見解をお伺いいたします。

千葉国務大臣 馳委員が大変この間問題を御提起いただいていること、これは私も承知をさせていただいております。

 今、団体規制法につきましては、ちょうど見直しの時期がやってくるということもございます。そしてまた、馳議員の地元の金沢の皆さんにも、私も直接お会いをして御意見をちょうだいいたしました。この間の地域の皆さんの御心配、御苦労、私も本当に肌で感じさせていただいております。いろいろな御意見を十分に踏まえさせていただいて、今、公安庁で見直しのいろいろな準備作業をさせていただいているというところでございますので、また皆さんのさまざまな御指摘を真摯に受けとめていきたいというふうに考えております。

馳委員 関連して、現在、団体規制法という、テロの再発防止対策を担う法律は制定されているわけですが、そもそもテロを発生させないための防止対策法が我が国にはありません。個々具体的には、入管法であったり通信傍受法であったり、いろいろな法律が部分的にテロ防止に役立っているとは思っておりますが、一般法の制定も考える時期に来ているのではないかと思いますが、大臣の見解を求めたいと思います。

千葉国務大臣 これは、政府全体としてその御指摘あるいは御提起を受けとめて検討していく課題であろうというふうに思っております。法務省としては、法務省の現在できる限りの対応をとって、再発防止あるいは予防、防止ということに努めているところでございます。

 そのような御意見があることを私も受けとめています。これは、政府全体として検討をこれから続けていくべきものだと承知をいたしております。

馳委員 次に、団体規制法の見直し事項について具体的に私の方から提案をしていきますので、所見をお伺いしていきたいと思います。

 まず、団体規制法の報告義務の対象事項として団体の収支をつけ加えてほしい、同じく、団体主催の集会の事前事後報告がなされるように法律または政省令を改正してほしいと考えておりますが、いかがでしょうか。

 収支については、さきに挙げたオウム真理教犯罪被害者救済法において、国が被害者に給付金を支給するかわりに、国がオウム真理教に求償権を行使できるといたしました。求償権行使の実効性を担保するという意味でも、収支についてしっかりと報告するように、こういうふうにつけ加えていただきたいと提案を、まあ、実はもうしておるんですけれども、大臣のお考えをいただきたいと思います。

千葉国務大臣 馳委員の御提起、大変貴重な、大変重い御提起だというふうに承知をいたしております。これから、その御意見も十分に踏まえた、いろいろな法の見直しにつなげていきたいというふうに思っております。

馳委員 次に、団体規制法の第五条二項、三項にある報告義務事項について、その報告がなされなかったり、虚偽の報告がなされた場合も罰則の対象となるように改正をしていただきたいと考えています。ここは私が最も力を入れている改正点であります。

 というのも、団体規制法の規制方法は、現在オウムに適用され続けている観察処分と、適用されていない再発防止処分の二つがあります。しかし、観察処分というのは間接強制の立入調査でしかありません。一方、再発防止処分の成立要件は大変厳しく、この中間を埋めるような権限を十分公安調査庁に与えるべきだと私は考えています。

 例えば、虚偽報告罪が成立した場合には、令状をとり、オウム真理教の施設に強制的に立ち入りをし、必要な物品、書類について捜索、差し押さえが可能になります。現在は、立ち入り拒否やその妨害のときにしか捜索、差し押さえはできません。ほとんど立ち入り拒否や妨害はしていないわけであり、オウム真理教の本当の危険性を十分把握できる証拠収集ができていない状況にあります。

 また、このような改正はほかの法令の比較においても全く問題ないと考えています。暴力団を規制するいわゆる暴対法の第五十条では、立ち入り拒否などはもちろん、虚偽や、報告をしない場合にも罰則を付与しております。

 暴力団よりまさるとも劣らず危険性が高いテロを行った団体に罰則がないのは、法の不備とも言い得るのではないかと考えています。政府としての見解をお願いします。

千葉国務大臣 馳委員の御指摘、十分に私も認識をさせていただいております。

 今、そのような御提起も踏まえながら、公安調査庁で見直し作業に向けて取り組みをさせていただいておりますので、その状況の報告も受けて、最終的には私も適切に判断をさせていただきたいというふうに考えております。

馳委員 次に、オウム真理教の施設を監視する住民監視団体に対して国が支援、協力する規定を明記してほしいが、いかがでしょうか。住民監視組織は、治安維持という国の最も重要な任務の肩がわりをやっております。これに報いるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

千葉国務大臣 これも、住民の皆さん、私もその活動を御報告いただき、そしてお聞かせをいただきまして、本当に自主的な御努力を続けておられると大変重く受けとめているところでございます。

 そのような手だてが可能なのかどうか、そういうことも十分に検討をさせていただきたいというふうに思っております。

馳委員 では最後に、この問題で、実は大臣もお知りおきいただいていると思いますが、金沢方式というのがあるんですよ。私も実は参加しているんですが、監視をしている住民団体、地元の警察、金沢市、いわゆる地元自治体の防犯課、自治体の方、それから公安調査庁が年に数度一堂にテーブルを囲んでお互いに情報交換をしているということをやっております。

 私は、これは全国三十の施設がある中で、どの地域においても定期的に行うことによって、できる限りの情報交換をすることによって、住民の不安解消につながる。そして、団体規制法というのは、やはり規制といっても、いわゆる結社の自由とか思想、信条の自由がある我が国の法体系の中で、どこまで縛っていいのかなというなかなか難しい点もあるんですよ。

 それを考えると、このいわゆる金沢方式と言われる見守り、見守りと言うと変ですか、こういうやり方というものを法務省でも理解をいただいて、定期的に行っていただきたい。できれば年に二回ぐらい報告会を行っていただいて、住民に安心感を与えていただきたいと思っておりますが、大臣、いかがでしょうか。

千葉国務大臣 私も、金沢方式をお聞きいたしまして、大変効果的な、そしてまたそれぞれの役割をお互いに補い合いながらやられている、一つの大変大きなモデルであろうというふうに思っております。

 でき得る限り、皆さんのこれまで築いてこられたこの形が生かされますように、積極的に私も指導してまいりたいというふうに思っております。

馳委員 オウム真理教の教組麻原彰晃、いまだにその写真を置いて、教義であるタントラ・バジラヤーナを唱えておる集団であるということ、これは報告が行っていると思います。

 松本智津夫被告、平成十八年でしたか、死刑判決がなされておりますが、さて、大臣、死刑執行命令書に署名をされるでしょうか。

千葉国務大臣 これについては、法務大臣としての職責であることを十分承知しながら、しかし、一人の命を奪う刑罰でございますので、私もそこを慎重に考えながら対処をしてまいりたいと考えております。

馳委員 では最後に、我が国の現実法体系にあります死刑執行制度についての大臣の所感をお伺いして、私の質問を終わります。

千葉国務大臣 今申し上げたとおりでございます。やはり犯罪に対してきちっと対処をしていく、そして責任をきちっととっていただく、これは前提でございます。法務大臣としては、執行について最終的な責任がございます。それをきちっと踏まえつつ、しかし、一人の命を奪う刑罰であるという重さも踏まえつつ、慎重に私も判断をしてまいりたいと考えております。

馳委員 終わります。

滝委員長 次に、神崎武法君。

神崎委員 まずは、千葉法務大臣、御就任おめでとうございます。

 何点か、法務行政に関してお尋ねをいたしたいと思います。

 まず、指揮権問題についてお尋ねをいたします。

 検察庁法十四条によりますと、法務大臣は、検察事務に関して一般的指揮権がある、ただし、具体的事件についての取り調べまたは処分については、検事総長のみ指揮できるとされているわけでございます。具体的な事件では、昭和二十九年の造船疑獄事件で指揮権が発動されましたけれども、検事総長の請訓に対して、これを否決する指揮権が発動されたのはこの一回だけだったと思います。

 この検察庁法十四条の規定の趣旨とか性格について、大臣はどのように認識をされておられますか。

千葉国務大臣 検察権というのは行政権に属しているということになりますので、それに対して行政の長として指揮権を一般的に持っているということは、それは当然のことであろうというふうに思っております。

 ただ、やはり捜査につきましては、検察が厳正、そして証拠に基づいて適正、そして公平公正に行使をするものでございますので、そういう意味で、検察の活動について不当な介入になるというようなことは避けなければならないというふうに思って対処していきたいと考えているところでございます。

神崎委員 造船疑獄事件以降の歴代の内閣の法務大臣は、この指揮権発動問題に対して非常に抑制的、慎重に対応してこられました。時の与党の国会議員が逮捕、起訴されるようなケースでも、指揮権を発動されるということはなかったわけです。

 ところが、民主党が西松建設による小沢前代表の秘書への違法献金事件の検証を外部の識者にゆだねました第三者委員会の報告書では、法務大臣は高度の政治的配慮から指揮権を発動する選択肢もあり得たんだ、こういうことを言っているわけですね。

 私は、こういう認識というのは、政治家絡みの事件について、政権与党の政治介入を許す危険性がある、こういうことがあってはならない、このように認識をしているわけでございますが、法務大臣は、指揮権問題につきまして、マスコミのインタビューで、あれがどうかでなく、一般的に指揮権というものがあり、指揮権を発動する場合もあり得るんだということではないか、それに尽きるように思うとお答えになっておられます。また、国民の視点に立って検察の暴走をチェックするということも発言をされておられるわけですが、まず、法務大臣がお考えになっている、指揮権を発動する場合もあり得る、こういう場合はどんな場合をお考えになっていらっしゃるんですか。

千葉国務大臣 私が発言をしたことにつきましては、あくまでも一般論、規定に示されている、その一般論を申し上げたということでございます。そういう意味では、個別、どのようなことを想定してということではなくて、規定の上でそのような権限が法務大臣に付与されているんだ、これを申し上げたという趣旨でございます。

神崎委員 そうしますと、歴代の法務大臣のように、非常に謙抑的というんですかね、抑制的、慎重に対応されるということは大臣もお考えになっておられるんですか。

千葉国務大臣 当然私も、検察への不当な介入になるようなことがないよう、これはあくまでも慎重に判断をしなければいけないことだと考えております。

神崎委員 大臣は検察の暴走をチェックするんだというふうに言われましたけれども、大臣からごらんになって、これまで、明らかに検察が暴走したな、こう思われるようなことがあるのかどうか。それからまた、大臣の言われる検察の暴走、これはどういう趣旨なんでしょうか。

千葉国務大臣 これも、私は一般論を申し上げたつもりでございます。そういう意味では、行政権ということでございますので、そういう意味で、大臣にそれをチェックする、そういう機能はあるんだ、こういう規定上の一般論、原則論を申し上げたということでございまして、特にどういう場合、あるいは、これまでそういうことが何かあったのかということを念頭に置いたものではございません。

神崎委員 小沢前代表の秘書が違法献金事件で起訴されましたけれども、法務大臣は、この事件について、第三者委員会の言うように、高度の政治的配慮から指揮権を発動する選択肢もあった、指揮権発動もあり得た、こういう御認識をお持ちになっておられますか。

千葉国務大臣 これはあくまでも第三者委員会ということでまとめられた内容だというふうに私も承知をいたしております。私の個別の考え方とは意を異にするということでございまして、個別の問題についてこれ以上発言は差し控えさせていただくということでございます。

神崎委員 そうしますと、この事件について検察が適切に処分しているという認識はないんですか。

千葉国務大臣 これは検察の適正な捜査活動ということによって行われているものと承知をいたしております。個別の判断につきまして私から答弁をさせていただくということは差し控えさせていただきます。

神崎委員 先ほどもお尋ねがありましたけれども、現在、鳩山総理の事務所の偽装献金問題につきまして検察が捜査を行っております。まさかこの件で大臣が指揮権を発動するようなことはないと思いますけれども、確認のために、どうですか。

千葉国務大臣 これも、検察が厳正、そして法にのっとって捜査を展開するものだと承知をいたしておりますので、私から個別の問題について御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

神崎委員 指揮権発動なんということは全く考えていないというふうに私は理解しております。

 それから、クアラルンプール事件というものがあります。これは、昭和五十年八月四日、日本赤軍の五名の者が在マレーシア米大使館及びスウェーデン大使館を占拠し、我が国で勾留中の七名の者の釈放を要求した事件でありまして、政府は、七名の意見確認の上、クアラルンプールに向け出国させるなどの措置をとることを決定いたしまして、法務大臣が検事総長に対して、犯人らの意向に応ずる旨意思表示した五名についてマレーシアに護送し犯人側に引き渡すことを命じ、検事総長も東京高検検事長を通じ東京地検検事正にこの措置をとるように命じまして、結局、五名はクアラルンプール国際空港で人質と交換に犯人側に引き渡された事件であります。

 実は私、当時検事をやっておりまして、日本赤軍の奥平純三も調べたこともありますし、それから、クアラルンプール事件のときは外務省に出向しておりまして、オペレーションルームで、この一連の事件がどういうふうに展開するのかずっと見ていまして、非常に複雑な思いで奥平等が釈放される状況を見ていた記憶がありますけれども、この検事総長に対する法務大臣の指揮、これは検察庁法十四条ただし書きに言う指揮権発動なのかどうか、この性格についてお伺いをいたします。

千葉国務大臣 いわゆるクアラルンプール事件でございますけれども、私は、これは内閣が高度の政治的判断に基づいて、閣議決定で、勾留中の者を超実定法規的に釈放するものとして対処をしたものだというふうに承知をいたしております。そういう意味では、いわゆる指揮権発動ということとは全く異なるものだというふうに考えております。

 ただ、その際に、手続の明確性、あるいは刑事手続全体、法令の定めに準じてということなどもあって、そして検察官を関与させるということになったと承知をいたしております。そういう意味では、指揮権とはまた別の超実定法的な取り扱いだったというふうに承知をいたしております。

神崎委員 次に、公訴時効の見直しについてお尋ねをいたします。

 凶悪重大事件の公訴時効見直しにつきまして、大臣は十月二十八日、法制審議会に諮問をされました。法務省は、ことしの七月に省内勉強会の最終報告におきまして、殺人など重大な法定刑の重い罪については公訴時効を廃止し、それ以外は延長するとしておりますけれども、大臣は就任後の会見で、廃止は防御権を侵害するおそれがあると発言されていたと思います。法務省の最終報告とは違うお考えのように思われますけれども、今回の諮問は、制度は見直すけれども方向性については全く白紙、こういうふうに受け取っていいのかどうか。

千葉国務大臣 公訴時効の見直しにつきましては、見直しの必要性というのはもうほぼコンセンサスがあるのではないかというふうに考えております。

 これまでの研究会などでの一定の方向づけ、そういうものもきちっと参考にさせていただきながら、ただ、多様な御意見もございますことから、そういうものをすべて虚心坦懐に御議論をいただきたいということで諮問をさせていただきました。

 私が申し上げましたのも、防御権に支障があるのではないか、そういう御指摘も本当にあるということも踏まえた私なりの発言だったと私は認識しております。

神崎委員 これはいつごろまでに結論がまとめられるのかどうか。そして、来年の通常国会に刑訴法の改正案として提出をお考えになっておられるのかどうか。

千葉国務大臣 今、法制審議会に御議論をいただいているところでございますので、今ここでいつまでということは、確たることを申し上げることはできませんが、大変早くと求めておられる、そういう声もございますし、できる限り内容をきちっと議論していただき、しかし、迅速な結論を提起いただければ、私もできるだけ早期に、そしてまた適切な時期に法案を皆さんにお出ししたいというふうに思っております。

神崎委員 交通事故でのひき逃げ事件では、遺族会は、遺族にとって死という結果は同じだ、逃げ得を許さないためにもひき逃げも公訴時効を撤廃すべきではないか、こういうふうに述べていらっしゃるんですけれども、法制審議会で見直す罪の種類については、これについてもやはり検討されるんですか。

千葉国務大臣 これも法制審議会に一定のモデルを示して諮問させていただいているものではございませんので、多岐にわたって問題を議論いただけるものだというふうに思っております。

神崎委員 公訴時効の見直しにつきまして、法務省が行った意見募集では、重大事件について、七割が撤廃に賛成であったということも言われておりますし、国民の意思を確認するのであれば、法制審の議論と並行して広く世論調査を行うなどを御検討されてはどうでしょうか。

千葉国務大臣 これも、法制審議会の中でもいろいろな、また、一般国民の皆さんの意見などをいろいろと聴取なさる、そういうこともあるのかもしれませんし、御提起のございますようなことも念頭に置きつつ、私も誤りのない方向をぜひ皆さんと一緒に導いてまいりたいというふうに思っております。

神崎委員 次に、犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。

 この法案については、当委員会でもいろいろ議論をされ、いろいろな御意見もありました。当時の与党が共謀罪の対象を絞り込む修正案を提出したり、民主党からも対案が提出されたりしましたけれども、最終的に衆議院解散によって廃案になってしまったわけでございます。

 法務大臣は、民主党の次の内閣の法務大臣当時、共謀罪は必要ない、犯罪や組織の適用範囲を絞る抜本的な法案修正を求めるなど、現実的な対応をしていきたいということもお述べになっておられます。

 この法案の取り扱いを今後どうされるのか。原案どおり提出をされるのか、修正して提出されるのか、修正する場合、どのように修正することをお考えになっておられるのか。大臣のお考えを伺いたいと思います。

千葉国務大臣 組織犯罪あるいはサイバー犯罪等に適切に対処をしていくということは、国際的にも、そして国内の中でも大変重要なことだというふうに思っております。

 このような条約に対応するためにどのような法整備が必要なのか、そして、その内容、どんなものが適切なのかということについて、関係省庁ともこれからも十分に協議をしながら対処していきたいというふうに考えております。

 今、いつまでにということまで確たるところはございませんけれども、これは、外務省等々含めて検討をしなければいけないということであろうかというふうに思いますので、ぜひその方向で検討を続けてまいりたいというふうに思っております。

神崎委員 大臣としては、原案ではなくて修正案をお考えなんでしょうか。

千葉国務大臣 必ずしも、そこはまだ私もこの責任者の立場で方向づけをしているわけではございません。多様な御意見、あるいは法整備についても、原案かあるいは修正をすべきか、いろいろな御意見もあるところでございますし、あるいは条約の解釈、こういうこともかかわってこようかというふうに思いますので、これらを総合し、そして協議をしながら結論を出さなければならない、こう考えております。

神崎委員 次に、国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約についてお尋ねをいたします。

 国際結婚した夫婦の破綻に伴いまして、一方の親が子供を連れ去るトラブルが相次いでおります。本年九月二十八日、福岡県柳川市で、クリストファー・サボイ容疑者が通学途中の九歳の息子と六歳の娘を連れ去った。元妻の通報で警戒中の警察官が未成年略取の疑いで逮捕した。サボイ容疑者と元妻は、日本で結婚して、家族で渡米、本年一月、テネシー州で離婚、元妻はサボイ容疑者の同意を得ることなく二人の子供と帰国した。米国の裁判所は、子の監護権をサボイ容疑者のものと認め、地元警察も、子の略取誘拐容疑で元妻の逮捕状をとっていた。こういう事件が発生したわけでございます。

 この事件につきまして、サボイ容疑者は処分保留のまま釈放されたということでありましたが、最終処分はどのようになったんでしょうか。

千葉国務大臣 この問題につきましては、十一月六日に、所在国外移送目的略取罪等に当たると認定をした上で、不起訴処分にしたと承知をいたしております。

神崎委員 マスコミ報道によりますと、日本人が海外から子供を連れ帰る例が、英、米、仏、カナダだけで百六十八件、日本に住む子供が外国人配偶者によって連れ出される例が十件確認されているということでありますけれども、政府として、この実態を、こういう破綻した夫婦の一方が子供を連れ出すとか、こういうケースですね、この実態を把握されているのかどうか、お伺いをいたします。

千葉国務大臣 これについては、一定のそういう事例があることは承知をいたしておりますけれども、すべて網羅をしているということではございません。

神崎委員 将来、立法化に当たっては、実態がどうであるかということも極めて重要だと思いますので、これはなかなか調査するのも難しいとは思いますけれども、あらゆる手段を使って、実態がどうなのか、法務省としてもぜひ把握をしていただきたいと思います。

 それから、八十一カ国が加盟する国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約という条約がありますけれども、この条約によりますと、子供が海外に連れ去られた場合、もとの居住国へ戻すことを原則とし、加盟国政府は返還の協力義務を負うとしております。日本はこの条約を批准していないため、国際社会から対応を批判されております。本年十月十六日には、ジョン・ルース駐日米大使ら八カ国の大使、公使が法務大臣に早期批准を要請したということも聞いております。

 この条約の加盟には、実際のところ反対意見もありますし、懸念のあることも確かでありますけれども、他方、国際的な批判、国連からの勧告に対応することも必要だと思いますし、また、国際的な標準化への対応もやはり求められているというふうに思います。その意味では、早期にハーグ条約を批准する方向で問題点を整理、検討されてはどうかと考えますが、この点について、大臣のお考えを伺いたいと思います。

千葉国務大臣 このハーグ条約につきましては、国際的にも大変関心が高く、そしてまた日本に対する批准を求める声も大変強くございます。それを承知いたしているところでございますが、委員が御指摘をいただきましたように、やはり、国内のさまざまな法制度との関係、それから、とりわけDV被害などを受けた皆さん、あるいはそれをいろいろな形でサポートをされている皆さんなどからは、懸念や、あるいは、まずその条件をきちっと整えてからというお声もございます。

 そういう意味では、国際的な要請やあるいは問題点、これらを関係省庁とも協議をさせていただきながら、しかし、国際的な要請などにもこたえるべく、順次検討を進めていかなければならないと承知をいたしております。

神崎委員 仮にハーグ条約を批准するとした場合に、国内法整備のためにどういうことが必要なのか、今の時点で大臣はお考えでしょうか。

千葉国務大臣 これは、連れ去った場合にまずはもとへ戻す、そういう条約でございますので、ただ、これをつくるとなりますと、どこがそれをきちっと受けとめ、あるいは返還などの手続をとるか、こういう組織の整備も必要になりますし、それから、先ほど申し上げましたような、もし、いろいろなDV被害などを受けているときには一体どういう対処をするか等々の、やはり法的な検討が必要になろうかというふうに思っております。

神崎委員 民法の債権法の改正についてお伺いいたします。

 本年十月二十八日、法務大臣は、民法の債権法の規定見直しについて法制審議会に諮問をされました。これは民法の大改正になると思いますけれども、この大改正につきましては、現状でも十分に安定した法運用ができていることを尊重すべきではないか、こういう意見、大改正より部分改正を積み上げるべきだという提案もありますけれども、その中であえて債権法の大改正に踏み切ろうとされたのはどういうおつもりなんでしょうか。

千葉国務大臣 債権法につきましては、明治二十九年に制定されて以来、全般的な見直しが行われておらないところでございます。

 特に契約関係などは、今の新しい経済状況あるいは社会状況などの中で、大変、判例法理などを使いながら対処をしている、こういうこともございます。そういう意味では、やはりそれぞれが、自分がどういう契約関係にあるのかということをわかりやすくする、あるいは国際的にも標準を考えていく等々の問題がございますので、一度抜本的に検討はしなければいけない、こういうことで諮問をさせていただいたということでございます。

 いろいろな御意見がございますことも承知をいたしておりますので、法制審議会の中でも多岐にわたる御議論をいただけるものだと承知をいたしております。

神崎委員 民法を時代に合わせるため多くの特別法が制定されているわけですけれども、これらをこの民法の改正の作業の中で取り組むという基本的なお考えでよろしいでしょうか。

千葉国務大臣 これも、法制審議会には前提をつくらずに諮問をさせていただいておりますので、その問題につきましてもいろいろな角度から御検討をまずはいただきたい、それを私も十分に受けとめて法整備ということにつなげてまいりたいというふうに考えております。

神崎委員 実務の中でフランチャイズ整備やリース契約についての運用のルールがつくられてまいりましたけれども、これらも民法の改正の中で取り組むお考えでしょうか。

千葉国務大臣 これも、今、余り前提をつけずに御議論をいただいておりますので、今の段階で私から確たる方向づけを申し上げる時期ではないというふうに承知をいたしております。

神崎委員 国際取引の場では債権法の共通化も視野に入ってくると思いますけれども、国際化への対応、これもこの改正作業の中で取り組まれるおつもりですか。

千葉国務大臣 これも同じような御答弁になってしまいますけれども、国際化、あるいは経済情勢の変化、社会環境の変化、こういういろいろなもろもろの条件があるのでやはり一度見直すべきではないか、こういうのが認識ではございますけれども、国際標準に沿って債権法をつくるのか、このあたりも改めて法制審の中で御議論をいただきたいというふうに思っておりますので、私から方向づけをさせていただくというものではなかろうというふうに思っています。

神崎委員 本年十月二十八日、法制審議会は民法の成人年齢の引き下げについての意見を答申しております。その中では、民法の定める成人年齢を十八歳に引き下げるということが妥当だとしておりますけれども、ただ、この時期等については政治判断が必要だということであります。

 今回の諮問の中に当然十八歳引き下げは入っていないわけですけれども、契約年齢も、当然、十八歳に引き下げるということになりますと、それもあわせてこの立法作業の中で考えていかれるのか、これは十八歳引き下げの問題は別途また考えるのか、そこの頭の整理はどうなっておりますか。

千葉国務大臣 ここは基本的には別に今考えている問題でございます。別々に。

神崎委員 終わります。

滝委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 千葉大臣、御就任おめでとうございます。また、副大臣、政務官、御就任おめでとうございます。

 今、千葉大臣のお顔を拝見しておりますと、私、前政権の与党の時代、この法務委員会では、少年法を初め、あるいは犯罪被害者の問題等さまざまな問題について、政府の案に対していろいろな議論をした、やはりその議論を尊重しなきゃいけないということで相当修正をさせていただきました。そして、その修正の提案者ということで私も参議院にもしょっちゅうお伺いをさせていただきまして、法務委員会で大臣が非常に的確な御質問をされておられたことが印象に残っております。

 委員会におけるこういう議論というものを、法案の、閣法の修正をもう積極的にやっていくというようなことについて、これは通告していないんですが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。

千葉国務大臣 御質問ありがとうございます。

 私も、やはり国会の委員会での議論、そしてそれぞれの皆さんのいろいろな御提言、そういうものを大切なものとして、そしてまた重く受けとめて、さまざまな取り組みにつなげてまいりたい、こう思っております。

大口委員 大臣の所信のあいさつを読ませていただきました。大臣も人権派弁護士としてずっと仕事をされてこられたわけでありますが、そういうところの特色が出ていたわけであります。

 その中で、「いわゆる個人通報制度が含まれた国連人権関係条約の選択議定書の批准に向けた体制整備、」こういうことを具体的な施策として検討を進めているということで挙げておられるわけでございます。この個人通報制度が含まれた国連人権関係条約というものは何を指すのか、まずはお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 もうこれも委員御承知のところであろうかというふうに思いますけれども、市民的及び政治的権利に関する国際条約、いわゆるB規約と言われているもの、それから女子差別撤廃条約、人種差別撤廃条約、それから拷問等禁止条約、こういうものが個人通報制度が盛り込まれた条約であると言えると思います。

大口委員 女性差別撤廃条約の選択議定書につきましては、NGO等もいろいろな働きがあります。また、自由権規約、B規約の第一選択議定書、これについて日弁連等いろいろ活発に動かれていた、そういう点では、大臣がこの体制整備をするということは私ども期待しているところであるわけです。特に、女性差別選択議定書については、条約の採択からことしが三十周年ですね。それから、選択議定書の採択が十周年、また男女共同参画社会基本法制定が十周年、ことしは非常にメモリアルな年なんですね。何とかそういう点では批准を早くしていただきたい、こういうふうに思っているわけでございます。

 これにつきまして、どうも法務省がネックになっているんじゃないかと。これは大臣もうなずいておられますけれども、私もそう思っているんです。確定判決と委員会の見解の違いをどうするか、あるいは確定しない場合に見解が出た場合はどうするのか、あるいはいろいろな委員会の見解について対応をどうするのか、こういうことについて真剣かつ慎重に対応するということを法務省も外務省も答弁しているんですね。

 ぜひとも大臣には、真剣かつ積極的に、迅速に対応するという御答弁をいただきたい、そしてこの点について批准に向けての見通しをお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 私も、これはマニフェストにも掲げておりますように、お約束をさせていただいた大変重要な政策課題でございますので、これは着実に、そして今お話がございますように、私の思いとすれば、できるだけ早く批准ができますように努力をしてまいりたいというふうに思っております。

 幸いなことに、外務省、法務省、そして各省庁の皆さんが集まられたいろいろな研究の積み重ね、おおよそその成果も出ていると承知をいたしておりますので、それも十分に踏まえつつ、私も最大限の努力をしてまいりたいと思っております。

大口委員 できるだけ早くということは、それでずっと待たされている方々がいらっしゃいます。具体的に、例えば来年を目指すとか、ことしを目指すとか、どうでしょうか。

千葉国務大臣 なかなか確たることは申し上げられませんけれども、私が常々申し上げていますように、もうこれは国民の皆さんとも、やるぞとお約束をしたことでもございますし、でき得る限り早く実現できますように、私なりに努力をさせていただきたいと思います。

大口委員 取り調べの可視化についてお伺いしたいと思いますが、大臣の所信のあいさつの中で述べておられるわけであります。被疑者取り調べの可視化、これについても具体的施策として検討を進めていくということでございますが、この可視化とは、取り調べの全過程の録音、録画という、いわゆる全面可視化という意味であるか、お伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 全過程の可視化ということでございます。

大口委員 それから、記者会見等でも、よく大臣は、全過程の録音、録画が基本である、こう述べておられるわけです。基本と言うと、何か例外があるのかと、こう問いたいわけでございますが、いかがでございましょうか。

千葉国務大臣 特段に例外があるということで申し上げているわけではございません。ただ、これにつきまして、まだ議論がいろいろなところでいただいているという状況でございますので、全面的な可視化ということを私は基本にして、そしてそれの実現に向けて進めていきたいというふうに考えております。

 ただ、いろいろな御議論がまだ続いているという状況も承知をいたしておりますので、そういう意味で、基本的には全面的な可視化、そこを基本に、こういう趣旨で申し上げているところでございます。

大口委員 私は、例外もあるのですかと、こう問うたわけです。それに対してはどうでございましょうか。

千葉国務大臣 今申し上げますように、取り調べ過程の全面可視化というのは……(大口委員「いや、あるか否かということです」と呼ぶ)

 私の認識では、例外というのは考えてはおりません。

大口委員 次に、可視化の検討と新たな捜査手法の導入というものはこれをリンクさせないということが大臣の記者会見等での御発言でございますが、この点について確認させていただきたいと思います。

千葉国務大臣 リンクをするとか、あるいは条件になるということは考えておりません。

大口委員 同じ九月十八日だと思うんですが、中井国家公安委員長が、大臣が、これは記者がこう問うているんですね。司法取引等、何らかの武器を捜査当局に与えない限りは、可視化というのは実施すべきじゃないというふうにお考えということでよろしいのでしょうか、この記者の問いに対して、僕はそう思っていますということですね。

 中井大臣は、新たな捜査手法の導入ということと可視化の検討ということ、これをリンクさせている、こう思うわけですが、それに対して閣内の不一致じゃないか、こう思いますが、大臣、いかがでございましょうか。

千葉国務大臣 私から中井大臣のお考えについて何か申し上げる立場ではございませんけれども、この間、先ほど申し上げますように、マニフェストで明確に全面的な可視化ということを申し上げております。そういう意味で、中井大臣ともその方向は共通をいたしておりまして、私は認識は一つだというふうに思っております。

 ただ、捜査のいろいろな手法といいますか、あるいは捜査をより一層強化していくという意味で、中井大臣がさまざまな捜査のあり方をお考えになられているということは承知をいたしておりますけれども、可視化ということについては認識を一つにしているというふうに私は考えております。

大口委員 可視化については認識を同一にしている、これはマニフェストに書かれているわけですから当たり前のことなんです。

 新たな捜査手法の導入とリンクをさせているか否かについて、両大臣でこのことについてお話をされたことはありますか。また、いつですか。その結果はどうなりましたですか。

千葉国務大臣 これにつきましては、まず、私のもとで、そして法務省の中で方向性をきちっと議論させていただき、必要な時期あるいは的確なときに、また中井大臣と協議をさせていただくということも必要だというふうに認識しておりますので、今後のことでございます。

大口委員 極めて重要な取り調べの可視化の問題について、まだ両大臣が話し合いもしていない、すり合わせもしていないということは、私は考えられないんです。そんなに大臣間の間に大きな溝があるんですか。私は本当に今の御答弁を聞いていてびっくりしているところなんです。

 それはそれといたしまして、平成二十二年度の概算要求を計上しているわけです。その中で約六千万円の調査研究費がついております。この趣旨についてお伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 これは、諸外国への検事等の派遣などによる調査とか委託調査等々を計上しているものでございます。

大口委員 いや、概算要求事項に、取り調べの録音、録画制度と新たな捜査手法に関する調査研究、こういうことについて六千万円ですよ。

千葉国務大臣 基本的に調査、海外調査あるいは委託調査等でございます。

 ただ、その調査の過程で、リンクをするという意味ではなくて、捜査手法などについて関連してさまざまな議論あるいは調査検討ということが出てくるということは、可能性として否定するものではございません。

大口委員 であれば、取り調べの録音、録画制度に関する調査研究、こう書くべきであって、新たな捜査手法に関するというものは、これは要らないんじゃないですか。

千葉国務大臣 この調査費用の趣旨については今申し上げたとおりでございまして、この表現というものが少し適切を欠いているのかどうか、御指摘をもう一度検討させていただきたいと思います。

大口委員 説明と全く違うものですから、これは国民に対して誤解を与えることになりますので、これは削除していただきたいと思います。

 それから、可視化法案を提出するまでのプロセスがどうなっているのか。

 実は、民主党さんは、昨年もことしも、二回、この可視化法案について参議院でわずかな時間で可決されているんですね。ですから、その法案を、マニフェストに書かれていることですから、すぐにお出しになれば私はいいと思うんです。ただ、いろいろとあるということでございましたら、その可視化法案を提出するまでのプロセス、それはこれからどうなるのか、それはいつごろ提出されるのか。もう二回も参議院で可決されているわけですから、すぐにでも、来年の通常国会にでも出せると私は思うんですが、いかがでございましょう。

千葉国務大臣 今、私のもとに勉強会をつくらせていただき、そして、副大臣にワーキングチームの座長を務めていただいて、精力的に議論、検討、そして、いわば、決して改めてゼロからということではございませんけれども、いろいろな問題、法律の最終的な整備、こういうものに向けての議論を副大臣のもとで進めてもらっているところでございます。

 精力的にこの作業を進めまして、誤りのない、問題点を解消した形で、また法案を提起させていただければというふうに思っておりますので、今直ちに次の国会あるいはどの国会かということについては、まだ確定はしていないという段階でございます。

大口委員 次に、公訴時効の見直しにつきまして、神崎委員からも質問が出ました。それで、大臣のお考えもお伺いしたわけでございますけれども、制度の見直しの必要性、これについてはコンセンサスを得ている、方向性についてしっかり議論してもらいたいということでございます。

 ただ、私ども、これは本当に早く決断を出していただきたいと思うんですね。それこそ、過去五年間で時効を迎えた殺人事件が二百四十一件あるんです。二十年間で九百九十件あるわけです。これが要するに時効にかかっている。それから、八王子のスーパーの事件がありました。アルバイトの高校生二人を含めた計三名が殺された非常に無惨な事件、これは来年の七月に時効です。それから、葛飾区の、上智大の、自宅で殺害され放火をされた事件、これは再来年の九月であります。これ以外にも刻々と公訴時効が進行している。

 こういう状況ですので、私は、大臣に、法制審議会に諮問する場合に、その際、早急にという文言を入れていただきたかったんです。これは、ほかの例でも、急ぐ場合は早急にと入れているわけです。これを入れなかった理由は何でございましょうか。

千葉国務大臣 早急にと入れなかったというのは、特段の、ゆっくりやっていただきたいという、そういうことでは決してございません。十分な議論をいただき、そして、その議論がきちっと仕上がれば、できるだけ早く提起をいただきたい、こういうことでございまして、早急にと入れなかったことが、何か議論をおくらせよう、そういう意図があったということでは決してございませんので、私としてはできるだけ早く御議論を詰めていただければと願ってはおります。

大口委員 政治主導でございますし、やはり大臣の思いがこの諮問になきゃいけないわけです。だから、私ども、その大臣の思いが、早急にというものを入れさせることが普通ではないかなと。そういった点では残念な気がしますが、ただ、迅速な、また早期に結論を出していただきたいということを望んでおられるということでございますので、そういう方向で審議会には対応していただきたいなと。月二回ぐらい、やられるそうであります。

 民主党は、公訴時効の中断制度、こうマニフェストでうたっておられるわけですね。検察官が裁判所にこれを申し立ててやる。私は、一つの考え方だと思うんですね。これは遡及効の問題もないということからいえば、現実的に、今進行しているものをストップするということで、考え方として私どももこれは一つあるかなと。

 そういうことからいえば、せっかくマニフェストにも書かれているわけですから、この検察官請求の公訴時効の停止、中断というものをまず法案で出されて、それとともに、あとの問題について法制審議会に諮問されるということが政治主導ということじゃないかなと思うんですが、また、マニフェストを実現するということではないかなと思うんですが、いかがでございましょうか。

千葉国務大臣 法制審議会におきましても、多角的にということでお願いをいたしておりますので、時効の撤廃、あるいはこのような中断という手法、こういうこともあわせて十分な御議論をいただけるものだと承知をいたしておりますので、その御議論を私もきちっと受けとめたいと思っております。

大口委員 次に、法曹養成についてお伺いをしたいと思います。

 この法曹養成につきまして、平成二十二年に司法試験合格者数が三千人、これが閣議決定をされているわけでございます。ところが、ことしの九月十日に発表されている合格者数は二千四十三人ということで、今まで増加していたのが減少したわけです。それから、目安が二千五百から二千九百という中での二千四十三人、こういうことでございます。そういうことで、大臣は、平成二十二年三千人程度という従来の目標についてどうお考えなのか。

 それで、所信のあいさつの中に書いておられます。「司法試験合格者数を三千人程度とするとの従来の目標を達成するためには、法曹養成における問題点の検証を行い、法曹養成プロセスの改善を図ることが必要不可欠である」こういうふうに書かれているということは、こういう検証ですとか改善が図られなければこの目標を達成することはできない、こういうふうに読めるんですね。この従来の目標は堅持されるのか、その点も変更されたのか、お伺いしたいと思います。

千葉国務大臣 この三千人という目標につきましては、閣議決定によって目標が設定をされております。そういう意味では、やはり非常に重いものだというふうに思っておりますので、直ちにこれを変更するということにはならないというふうに思いますけれども、今、私も考えております。

 やはり、大変合格者が低くなっている、こういうこともあわせ考えるときに、いろいろな問題点、皆さんからも御指摘をいただいているところでもございますので、検証作業をどのような形で行っていくかということ、どういう場で、それからどういう形でということを今検討いたしているところでございますので、できるだけ早くそのような検証作業のできる場を設定いたしまして、その中で、いろいろな法曹養成にかかわる問題点、いろいろな観点からおさらいをしてまいりたいというふうに思っております。それに基づいて、また大きな方向づけをしていかなければならないのではないかというふうに思っております。

 直ちに今、三千人という閣議決定を変更するというまで、いろいろな検証がまだ行われておりませんので、できる限り関係の省庁とも協議をしながら、あるべき法曹養成、その方向を今後見出してまいりたいというふうに思っております。

大口委員 そうしますと、今度は、あいさつの文章がどうも条件関係になっているように見えるんですね。だから、三千人という閣議決定は堅持するという方針は変わっていないということでよろしいんですね。

千葉国務大臣 現在、変わっておりません。

大口委員 今回の司法試験については、二十一年の新試験の願書の受け付けが昨年の十二月九日だったんですね。試験が本年五月であったわけですが、その間の一月二十一日に、実は短答式と論文の配分が一対四から一対八に変更されたということであるわけです。論文式を重視する、今まで一対四であったものを一対八という形で重視するということはわかるんですが、余りにも性急ではないか、こういう声もあるわけでございます。

 それから、短答式の場合は、非常に採点は客観性があってわかりやすいんですが、論文式試験の場合は、これがどういうランクなのかということの判定がなかなか難しいわけです。考査委員に任せるという形になるわけですが、やはり適切な合格水準の設定というのが非常に大事でして、その設定によって人数も決まってくるわけですから、そういうものについて外部からの検証を可能にするようなことが、これは日弁連でも提案していますが、不可欠であるということについてどうお考えになるでしょうか。

千葉国務大臣 御指摘、私も理解をさせていただきます。

 この間も、でき得る限りの情報を公表させていただいているということでございます。また、評価というのは大変難しい問題だということも私も理解をするところでございますので、適切に司法試験委員会の方で判定をされているというふうには承知をいたしておりますが、第三者にとってもわかるということ、大変大事なことだというふうに思いますので、受けとめさせていただいて、検討をしてまいりたいというふうに思います。

大口委員 本年の新司法試験については、未修者の合格率が二割を切った、一八・九%になったということでございまして、社会人としての経験を積んだ方ですとか多様なバックグラウンドを持った方ですとか、こういう方が法曹になるということの趣旨から今著しくかけ離れている状況でございまして、この点は問題意識として、私、指摘させていただきたいと思います。

 その上で、平成二十三年度から実施される予備試験の運用について法務大臣にお伺いしたいと思うんですが、本年二月、司法試験委員会で実施方針案が示されたわけです。そこには、合格者数をどうするかということは示されていません。予備試験については、これは法科大学院等に行かなくてもいいということで、そして簡素化、簡易化をして司法試験の受験資格に関する負担を軽減すべきという意見もあるわけでございます。

 ただ、それをしますと、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の理念を損なう、法科大学院のプロセスとしての法曹養成制度が形骸化する、こういうおそれがあるわけでございまして、予備試験の運用について法務大臣の見解を問いたいと思います。

千葉国務大臣 今委員御指摘のとおり、予備試験、ここに重点を置きますと、法曹養成が、法科大学院を中核にということと少しそごをしてくるということがございます。しかし、法科大学院を経由しないでもいろいろな方が司法試験、そして法曹の道を閉ざされることがないという要請も、これもなかなか否定できるものではございません。

 これも司法試験委員会において適切に判断をいただけるものだというふうに思いますけれども、その御指摘、なかなか相矛盾するところもある、両方をどう調和していくか、大変難しい問題であろうかと思いますが、きちっと受けとめてまいりたいと思います。

大口委員 きょうは、わざわざ文科政務官に来ていただきましたので。

 私は、法科大学院の定数削減、これを努力してきたわけでございます。この定数削減の取り組みの進捗状況は、文科そして法務でやっておられるわけでございますが、これについて政務官から、来年度はどうなっているのか、お伺いしたいと思います。

高井大臣政務官 平成二十二年度の入学定員におきましては、各法科大学院が主体的に見直しに取り組んだ結果、前年度に比べまして八百六十一人、約一五%削減される見通しでございます。

 文部科学省といたしましても、平成二十一年四月の中教審法科大学院特別委員会の報告を踏まえて、さらに、各法科大学院に対しまして、入学定員の見直し等について自主的、自律的な検討を促してまいりたいと思っております。

大口委員 私は、やはり四千人ぐらいまで減らさなきゃいけないなと思っております。

 それで、大臣もよく、法科大学院に行った七、八割の方が法曹になれるようにしないと、どんどん今受験生が、特に社会人の場合は減っていますし、これは困った状況なわけです。そういう点では、大臣、このことについてちょっと御見解をいただきたい。

千葉国務大臣 これも、司法制度改革推進のさまざまな取り組みの中で、やはりこれまでのような予備校で何とか対処をするということではなくて、ロースクールを中心とした法曹養成によって、七、八割方、きちっと法曹の道を進むことができる、これが理念であったこと、私も本当に大変重いものだというふうに思っております。

 なかなかこの理念が必ずしもそのとおりに今ならないでいる現状がございますので、ここは改めてその最初の理念というものを思い起こしながら、さまざまな検証や対処をしていかねばならないと私は考えております。

大口委員 まだまだ質問したいことがあるんですが、以上で終了します。

 ありがとうございました。

滝委員長 次に、城内実君。

城内委員 無所属、国益と国民の生活を守る会の城内実でございます。

 まずは、千葉景子先生、法務大臣御就任、まことにおめでとうございます。

 また、無所属であるにもかかわりませず質問の機会を十五分も与えてくださいましたこと、深く感謝申し上げる次第でございます。

 本日、私は、人権救済機関の創設につきまして、反対ないし慎重の立場から質問させていただきたいと思います。

 私は四年ぶりに国会に戻ってまいりましたが、ちょうど四年前の平成十七年三月、当時自民党の衆議院議員でありましたけれども、法務部会で人権擁護法案について、けんけんがくがくの議論がございまして、私もその法案をじっくり見て、これは非常に危ない法案だなということを確信しまして、命がけで戦いました。

 その後、郵政民営化法案も、分厚いんですが、あれもずっと最後まで目を通した結果、これも非常に問題があるということで、よせばいいのに反対した結果、刺客を送られ、そして、選挙期間中に当時の幹事長が刺客の方の応援に来て、城内実はたびたび問題を起こした二重人格者であるという、選挙妨害なのか人権侵害なのかわからないような発言をされた結果かどうかわかりませんが、七百四十八票差で落選してしまいました。

 しかし、私の信念は揺るがず、人権擁護法案というのは本当に気をつけなければならない法案であるということをきょう御指摘させていただきたいと思います。

 大臣は、九月十六日の大臣就任記者会見におきまして、ちょっと引用させていただきますけれども、国民の皆様と約束をしたマニフェスト、これを一つずつしっかりと実現していくということに尽きるのではないかと思っています、中略で、その後、特に一つ二つ申し上げますと、一つは人権侵害救済機関の設置の問題です、これは国際的に見ても、もう当然当たり前の機関ということにもなっています、ぜひこれの実現に向けて早急に取り組んでまいりたいと思います、ただこれは、常々私も考えていましたが、内閣府の外局に設置をするということを考えていきますので、いずれ設置法の改正やあるいは内閣府との協議等々も含めて進めていきたいと思います、このように大変前向きに御答弁されておるんです。

 ここで質問ですが、このような人権救済機関を創設する緊急かつ差し迫った必要性あるいは根拠というのはあるのでしょうか。その点を御説明いただきたいと思います。

千葉国務大臣 今城内委員が紹介をいただきましたその発言と変わることはございませんけれども、一つは、やはり一人一人の皆さんの人権あるいは権利、それが救済をされる、できるだけ迅速に、そして適切に救済をされるということが大事だと思います。現実に、例えば児童あるいは子供や高齢者に対する虐待、あるいは女性に対する暴力、障害者に対するいわれない差別等々、さまざまな問題がございます。そういうことに適切に、そして迅速に何らかの対応をとっていくということは、私は必要なことであろうというふうに思いますし、国際機関、そして国際社会の中でも、このような機関を設けるべきという指摘も常々いただいているところでございます。

 本年八月に女子差別撤廃委員会が、我が国の報告に対する最終見解という中でも、独立の機関を国内に設置するように、こういう勧告を出されておるなど、こういう国際情勢や、あるいはやはり人権救済を求めるこういう実態、こういうものに対応していくという意味で、私はこのような機関の設置が必要だと考えております。

城内委員 しかし、実際、国内におきまして人権侵害事案で、かつ重大で緊急で差し迫っているものというのはどれだけあるかということなんですが、私が法務省の人権擁護局のホームページの数字を見ますと、人権擁護機関の援助によって解決、この援助というのは、法律上の助言を行ったり関係行政機関や関係ある公私の団体を紹介することによって解決している事案が一万九千九百十四件、これは平成二十年ですけれども、九三・五%がそれによって解決している。あるいは、侵犯事実が不存在、人権侵犯の事実が不明確なものもあります。

 結局、重大な人権侵害の事案というのは本当にたった数件ぐらいしかないというような事実がありますので、むしろ、既に今大臣も高齢者虐待、児童虐待という話をされましたけれども、そういった個別の法律で、例えば児童虐待防止法、あるいはストーカー規制法とか、DVに対しては配偶者暴力防止法、高齢者の方々に対しては高齢者虐待防止法などという個別の法律で十分対応できる。

 それにもかかわらず、民主党さんの案では、中央人権委員会という巨大な権限を持つ委員会をつくり、さらには、これは当時の自民党の案よりも、政府案よりも悪いと思うんですけれども、地方にもまた人権擁護委員会をつくる、そしてまた、人権擁護委員の方々に、今民主党の皆さんが行政刷新会議、事業仕分けでいろいろお金を切り詰めている中にあって、人権擁護委員には報酬も払う。何か今の時代の流れに逆行するようなそういうものを設置するということは、私は、実態に合っていないし、おかしいんじゃないかと思いますが、その点についての大臣の見解をお聞きしたいと思います。

千葉国務大臣 今城内委員が申されましたように、それぞれの個別の救済手段、こういうものを充実していくということもこれは大事なことだと私も思っております。

 ただ、重大あるいは言いたくても救済を求められない、こういうようなことがどれだけ存在しているかというのは必ずしも把握し切れていないところもございます。そういう意味では、横断的に、だれでも、そして公権力の行使などとは独立をした、そういうところに申し立てができる、そして小さいことであっても迅速に何らかの対応をとってもらえる、必ずしも強制力とかそういうことではございません、御指導とかそういうこともあろうかと思いますけれども、そういう機関が存在をすること、これは私は大変意味のあることだというふうに思っているところでございまして、そういうことで御理解を賜れればというふうに思っております。

城内委員 私もいろいろ調べてみました。大臣、先ほどパリ原則というのをたしか引用されたと思いますけれども、確かに国際的な流れで国内に人権擁護機関をつくるというのはあるようですけれども、調べてみたところ、日本のように差別的言動という、要するに言論、差別的行為、例えば雇用に当たって、少数民族である、肌の色が違うということだけで雇用を拒否するというような制限的な分野で、そういった人権、国内機関でいろいろと議論する、判断するというのはあっても、日本のように、しかも行政組織法上の三条委員会、すなわち公正取引委員会や公害等調整委員会のように強大な権限を持っている、しかも対象は、特定の企業ということではなくて、あらゆる、国内に在住する日本国民及び外国人という化け物のような法律でございまして、自民党の法案のときは法務省の外局に置く、民主党案はさらに内閣府の外局に置くということは、これは官邸直結で、事業仕分けのように、この人、人権侵害マル、バツなんてやられたらたまりませんので、そういう機関をそもそもつくる必要もないし、逆に非常に危険であるというふうに思います。

 もう一点、ちょっと大臣からお聞きしたいんです。

 大臣は弁護士でいらっしゃいますから法律の専門家でございます。憲法上、表現の自由というものが保障されているわけですけれども、差別的言動ということであれば、これは、それを人権侵害であるかどうかと判断するのは個々の人の気持ち次第なんですね。私は、先ほど、当時のある幹事長から、城内実は二重人格者であると。これは人権侵害なのかどうか。私が人権侵害だと思えば人権侵害でありますし、そこら辺はやはり非常にあいまいもことしているわけでありまして、どの国を見ても、差別的行為までは制約しているけれども、差別的言動まで、しかも、さらに令状なしでそういった権限、立ち入りだとか資料の収集といった特別調査権を持っているというのは、いわゆる令状主義にも反するんじゃないかと。

 ぜひ憲法の視点で、この問題点について大臣の見解をお聞きしたいと思います。

千葉国務大臣 表現の自由、これはもう憲法上尊重されなければならない、そして基本的な人権として定められている大変重要なものだというふうには思います。そういう意味で、表現を規制するということは大変いろいろな憲法上の問題もあろうかというふうに思いますので、差別的言動、直ちに何かこれが人権侵害だということではなくして、例えば本当にプライバシーの侵害であるとか、あるいは名誉毀損とか、こういうこともある意味ではあるわけでございますので、一律に差別的言動あるいは表現を縛るというようなことにはなってはならないというふうに私は理解をいたしております。

城内委員 千葉大臣がそのように理解されたとしても、やはり本当に基準があいまいですから、そして選ばれた中央人権委員会の委員の方々の判断で、これは人権侵害である、マルかバツということで、これは非常に場合によっては政治的に悪用される可能性もあるんじゃないかなと。また、地方に人権委員会ができますと、もし在日外国人の地方参政権などが実現しますと、セットで大変なことになるというふうに私は思っております。これが多分一般国民の感情ではないのかなと思います。

 最後の質問ですけれども、私は、やはり人権侵害といえば、例えば、我が国の同胞が拉致された拉致事件とか、あるいは隣の中国におけるチベット、ウイグル人の方々に対する抑圧、虐殺、あるいはイラクのクルド人とか、今、インディアンとかアボリジニに対する人権侵害があるかわかりませんが、そういった国際的な問題、人権問題というのは国境を越えて普遍的な価値でありますから、そういった面について、むしろ積極的に外務大臣などと協力して対応すべきであって、そういった無駄な人権救済機関をつくって無駄な税金を使うということのないように、そして、凶暴な機関にならないように、そういう点を踏まえて、適切に対処していただきたいと思います。

千葉国務大臣 今御指摘いただきましたように、人権を尊重するということは、これはもう普遍的なことでございます。

 そういう意味では、国際社会の中での人権侵害、これにも私も厳しく対応していく必要がある、日本として、これはまた政府として対処すべき問題だというふうに思っております。それと同様に、国内でも、人権が尊重される、こういう社会をつくるために、適切な対応、機会、機関をつくらせていただければと願っております。

城内委員 大臣、御答弁ありがとうございました。これで質問を終わります。

滝委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十一分散会


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