衆議院

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第6号 平成23年4月15日(金曜日)

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平成二十三年四月十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 奥田  建君

   理事 滝   実君 理事 辻   惠君

   理事 橋本 清仁君 理事 樋口 俊一君

   理事 牧野 聖修君 理事 稲田 朋美君

   理事 平沢 勝栄君 理事 大口 善徳君

      相原 史乃君    井戸まさえ君

      大泉ひろこ君    金子 健一君

      京野 公子君    熊谷 貞俊君

      黒岩 宇洋君    黒田  雄君

      桑原  功君    階   猛君

      橘  秀徳君    中島 政希君

      野木  実君    三輪 信昭君

      水野 智彦君    山崎 摩耶君

      横粂 勝仁君    河井 克行君

      北村 茂男君    柴山 昌彦君

      棚橋 泰文君    森  英介君

      柳本 卓治君    園田 博之君

      城内  実君

    …………………………………

   法務大臣         江田 五月君

   法務副大臣        小川 敏夫君

   厚生労働副大臣      小宮山洋子君

   法務大臣政務官      黒岩 宇洋君

   最高裁判所事務総局家庭局長            豊澤 佳弘君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  樋口 建史君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三輪 和夫君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           石井 淳子君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  川越 孝洋君     金子 健一君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 健一君     川越 孝洋君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)


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     ――――◇―――――

奥田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長樋口建史君、総務省大臣官房審議官三輪和夫君、法務省民事局長原優君、厚生労働省大臣官房審議官石井淳子君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局豊澤家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎摩耶君。

山崎(摩)委員 おはようございます。民主党の山崎摩耶でございます。

 本日は、民法の一部を改正する法案につきまして質問の機会をちょうだいしたこと、まずは感謝申し上げたいと思います。

 私も実は医療専門職でございまして、児童虐待の問題ですとか社会的養護の問題、現場の実情も重々承知しておりますし、年々増加いたします児童虐待というものについては、本当に心を痛めている社会問題だなという認識をしております。

 未来を担う子供たちが、その幼いときから命を落とす、または痛ましい事件等も後を絶たない。昨今の新聞報道を挙げてみますだけで、アパートに幼い二人の幼児を置き去りにして餓死をするとか、一歳児の虐待死ですとか二歳児の暴行死、または三歳児をごみ袋で窒息死、六歳児を洗濯機の水槽に閉じ込めるなどと、本当につらくなるような事件が後を絶たないわけでございます。

 その意味では、地域の現場では、児童相談所を初め保健医療福祉の皆様が本当に頑張っておられるのも承知しておりますが、しかし、なかなかまだ十分に地域でこの問題に対処するネットワークができていないとか、また社会的養護に関しましても、私も青少年特別委員会にかつて属しておりましたので幾つかの養護施設等を視察に参りましたけれども、そのケアの質といいますか、世の中がこれほど充足してきているにもかかわらず、やはり社会的養護施設の持つさまざまな水準というものをもう少し引き上げねばならない、そんな問題意識を持っているようなところでございます。

 きょうは、法案の審議に入ります前に、一つ二つ、児童虐待の現状、実態ですとか、あと社会的養護のことについて厚労省に質問をさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、児童虐待の実態と対応状況、課題について厚労省にお尋ねいたしますが、お手元には資料の一、資料の二ということで、これは厚労省のデータでございますが、児童虐待の対応件数及び虐待による死亡事例件数、それから資料二には虐待相談の対応状況等、その措置の状況をお示ししてございます。

 まず、児童相談所における全体的な養護相談の受け付け件数ですとか、それに対応します児相の体制、児童福祉司の数、推移等について厚労省にお尋ねをしたいというふうに思います。

石井政府参考人 数字についてのお尋ねがございました。

 児童相談所の養護相談の受け付け件数でございますけれども、平成二十二年の三月末で八万七千五百九十六件となっております。この中の四万四千余りが児童虐待ということになるわけでございます。

 そして、児童養護施設でございますが、平成二十二年三月末で五百七十五施設、定員は三万四千五百六十九人、現員としましては三万五百九十四人となっております。保護者の状況についても申し上げますと、平成二十年の二月一日で、実母のみが三五・三%、実父母ありが二三・一%、そして実父のみが一五・四%、実父母なしが八・六%、かようになっております。

山崎(摩)委員 相談件数、全体では三十七万件ぐらいだったかというふうに思いますが、養護相談八万七千件のうちの約半数が虐待に関するものだと。

 この対応件数は、図表にお示ししましたように、年々増加をしてきている。この増加傾向について、厚労省はどんな所見をお持ちでしょうか。

石井政府参考人 先生が御配付いただきました資料にありますとおり、児童虐待の相談対応件数は、平成二十一年度四万四千二百十一件でございますが、このグラフにございますように、統計をとり始めましたのが平成二年度でございますが、一貫して増加をいたしているところでございます。

 また、下の表の方には死亡の事例の件数も掲げておりますが、これも年間に直しますと五十件から六十件、心中以外のケースでございますが、年間五十件から六十件と非常に高い水準で推移をいたしておりまして、平成二十年度は六十四件であります。

 このように児童虐待が増加傾向を示しているということでございますが、さまざまな要因が絡み合っているというふうに思っております。一つは、核家族化や地域のつながりが希薄になっていることなど養育力が低下をしてきているということ。そしてもう一つは、虐待の認識の広がり。これは、虐待防止法の中で通告について義務づけられるとかそういったようなことも一つあろうかと思いますけれども、虐待通告が増加をしてきている、この両面があるのではないかというふうに考えております。

山崎(摩)委員 子供の虐待という問題そのものは、やはり社会の病理現象といいますか、そこが集積をするという痛ましい事件だろうと私も認識をしているところでございます。

 その相談を受ける児童相談所でございますが、全国に二百四カ所、児童福祉司は今二千四百七十七人程度というふうに伺っておりますが、この児童相談所に虐待を含む養護相談、実は相談の中身では二三・六%を占めているわけですね。しかも、今お話あったように、増加し続けているということを考えますと、全国で二百四カ所の児童相談所が本当に対応し切れているのか、それから、児童福祉司等のスタッフ、専門職が不足しているのではないかと私は思うわけですが、この点についてはいかがですか。

石井政府参考人 委員御指摘のとおり、今、児童相談所、虐待の通告件数も大変ふえている中で、職員は多忙をきわめております。

 こうした中で、私ども、きちっと対応していただくためには、やはり配置の状況についても充実をしていただかなければいけないというふうに考えておりまして、この児童相談所の職員の配置につきましては、これは地方自治体の方で定員をお決めになるということでございますので、交付税措置の中の最低基準、その数をふやしていただくような要望を総務省の方にさせていただいて、できる限りの措置を図っている。

 それからもう一つ。昨年、安心こども基金の中で、児童相談所の体制整備ということも可能なような予算的な措置も、十分の十補助という形で盛り込ませていただいたところでございます。

山崎(摩)委員 交付税ということで、色がついているのかついていないのかわかりませんけれども、やはりなるべくこの分野のスタッフがふえるように、また一段の御努力をしていただきたいなというふうに思います。

 次に、社会的養護の問題についてお尋ねをしていきたいと思いますが、保護者のいない児童、被虐待児など、家庭環境上養護を必要とする社会的養護対象児童というのは約四万七千人と言われておりますが、児童養護施設はそのうち三万人が入っていらっしゃるということです。

 資料の三に若干現状というものをお示ししてございますが、児童養護施設の類型の中で、特に里親ですとかファミリーホームといったものの整備といいますか、この数が、やはり先進諸国に比べて日本は低いのではないかという認識を私は持っております。

 そのあたりについて、少し厚労省の見解をお聞かせいただきたいと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日本の社会的養護の対象児童がどういうところにおられるかということを見たときに、基本的には施設に措置されている傾向が多いということがございます。

 社会的養護の中で、今委員御指摘になられました里親等委託の割合、里親等委託率というのを見た場合に、平成二十二年の三月末で一〇・八%でございます。これを国際的に見た場合に、例えば、ドイツでは約三〇%、そしてイギリスでは約六〇%など、他の先進国に比べてやはり少ない、低いといったような状況にございます。

 その原因といたしましては、一つには、里親制度の周知や理解あるいは支援体制が十分に進んでいないといった点、そしてもう一つは、実親が、子供をとられてしまうのではないか、そういう懸念から里親委託を了解しないことが多く、そうした結果、どうしても施設に措置をされてしまう傾向があるということなどが指摘をされているところでございます。

 ただ、私どもといたしましては、やはり家族を基本とした家庭というのが子供の成長とか福祉保護にとって大変自然な環境でありますし、特定の大人との愛着関係のもとで養育されることによって、お子さんとしては安心感なり自己肯定感なりあるいは基本的な信頼感をはぐくむことができるというふうに考えておりまして、やはり、この社会的養護の対象児童さんをできるだけ家庭的な環境で育てることができる、そういったようなことにしむけていくことが重要ではないかと思っております。

 里親等委託率の引き上げを図るためにいろいろ措置はこれまでも講じてきておりまして、例えば、平成二十一年の四月からは里親手当を引き上げるとか、あるいは新規里親の募集や里親支援等の業務を実施する里親支援機関事業といった施策を二十一年度から実施もいたしておりますし、またさらに、今般、つい先ほどでございますが、里親委託ガイドラインを策定いたしまして、里親をしっかり進めていこうということで取り組みを進めているところでございます。

山崎(摩)委員 ありがとうございます。

 実母がなかなか里親にお預けをするということを了解しないとか、いろいろお話がございました。そのことは本当に、今回の法改正、親権の問題とかかわってくるところかなというふうに今思っているところでございます。

 それから、先ほど、施設に入所しているお子さんの保護者の状況、数字をいただきましたけれども、実母のみとか実父のみといった片親の世帯の方が半数を超えているというようなことでは、やはり家族の支援ということが被虐待児への支援と同様に非常に重要になってくるんじゃないか、そんなことも考えられるかなというふうに思います。

 それと、施設が、依然として日本は児童養護施設というのが圧倒的に多いわけですけれども、今お話あったように、施設そのものをグループホーム的に小規模化していくことですとか、里親、ファミリーホームといったような家庭的雰囲気の中で養育、社会的養護をしていくということを今後ますます私は推進していただきたいと思いますが、そういう方向性に向かっていると認識してよろしいのでしょうか。

石井政府参考人 全く委員のおっしゃるとおりでございまして、施設につきましては小規模化、そして里親委託率を高めていく、あるいはファミリーホームといった形態も進めていこうというのが、今私ども進めていこうということで取り組んでいるものでございます。

山崎(摩)委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 次の質問は、とはいえ、社会的養護は施設がまだまだ依然として多いわけですので、ここの処遇の改善といいますか、これも大きな課題だというふうに思っております。

 社会保障審議会児童部会の社会的養護のあり方に関する専門委員会の報告書を見ますと、現在の施設類型のあり方を見直すということと、人員配置基準ですとか措置費の算定基準の見直しなど、ここでケアの改善が提言されております。

 現行の状況をちょっと見てみますと、スタッフの配置、職員の配置というのは六対一ということになっているが、実際に二十四時間三百六十五日これを割り出していきますと、実態的には十五対一、お一人のケアなさる方がお子さんたち十五人を見なきゃいけない。また、施設によっては二十四対一というようなことで、これは大変、やはり余りに低い配置基準ではないかという感じがいたします。それから、家庭支援専門員ですとか看護師ですとか心理療法の担当職員、これも定員に応じて加配ということになっておりますが、なかなか現場では加配できる状況にはなっていない。

 それから、私が本当に、これは幾つかの養護施設へ視察に参りまして涙したことは、やはりストラクチャーといいますか施設そのものが大変古かったり、それから児童の居室が一部屋十五人以下ですよね。これは、特別養護老人ホーム、高齢者ももう個室の時代、少なくとも特養も一部屋四人以下ですよね。ですが、この十五人以下、ちびちゃんだからいいということではないと私は思います。それから、一人当たりの面積三・三平方メートルです。特養は十・六五ですよね。さらに、共有部分三平方メートルがあり、特養は大人ということもあるかもしれませんが十三・六五平方メートル。ですが、お子さんたちは一人につき三・三。これは予算に絡みますが、設備のための一人当たりの単価、児童養護の場合は二百二十三万円ですが、特養は二百八十五万円とここでも差がついている。ちなみに公営住宅というのをちょっと見てみましたが、やはり公営住宅は、お一人当たり十平方メートル掛ける世帯人員プラス十平方メートルというようなスペースになっている。

 ですから、ほかの養護の施設から比べてもやはり児童の施設というのが、そのまま、何か余り改善されないで来ているんだなということがちょっとあるかなというふうに思いますね。

 ですから、一歩外に出て、世の中がこれだけということをさっきちょっと申しましたけれども、一時預かりも含めまして、本当に何か、昭和四十年代、五十年代に建てられた、こういうのを引き合いに出して適切かどうかわかりませんが、この大震災の避難所に類似するような、余り十分でもないようなところにお子さんが三十人ぐらい寝ていらした、それも私どもも視察で拝見したりしたようなことでございます。ですから、決して子供が育つのに十分なクオリティーのある施設にはなっていない。

 このあたりは報告書を受けて改善の傾向にあるのかどうなのか、そこだけちょっと端的にお答えいただきたいと思います。

石井政府参考人 まさに、その児童養護施設の施設の状況を改善しなきゃいけないという思いに私ども立っておりまして、児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会等において検討を行っております。

 まず、新たな予算措置を必要としないものは早急に改正をしようということで、職員配置については、家庭支援専門相談員や個別対応職員などの配置は義務化をする。そして、児童養護施設に入所する児童の居室については、一人当たりの居室面積を、現行三・三平米、これを小学生以上は四・九五平米に引き上げる。さらには、一室当たりの居室定員も、現行の十五人以下から四人以下に、未就学児は六人以下に引き下げる等、こういった当面の改正案を取りまとめておりまして、省令改正の手続を現在進めているところでございます。

 また、今回の改正に引き続きまして、新たな予算を要する人員配置の見直しにつきましても検討委員会等で検討を進めているところでありまして、社会的養護の充実を図ってまいりたいと思っております。

山崎(摩)委員 さすがに十五人以下ではなく四人以下というようなドキュメントが出たようでございますので、それをしっかりと取り組んでいただきたいと思いますし、そのための予算確保であれば、私どももちゃんと尽力をしていきたいというふうに思っております。ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 最後の質問になりますけれども、子ども・子育てビジョンということで、社会的養護の充実、こちらの方でも数値目標をお立てになって取り組んでいらっしゃいますが、直近の数字といいますか、その目標値どおりに進捗しているのかどうか、そこだけちょっとお伺いしたいと思います。

石井政府参考人 子ども・子育てビジョンの中で、社会的養護につきましても、平成二十六年度の目標値を設定して推進を図っております。

 具体的な目標値と直近の実績でございますが、まず、里親等委託率、目標値は一六%でございますが、二十一年三月末で一〇・四%だったのが二十二年三月末で若干上がりまして一〇・八%、そして、小規模グループケア、目標値八百カ所のところ、平成二十二年三月末では四百五十八カ所、そしてファミリーホーム、これは、実は二十一年四月一日に制度創設のため、まだ生まれたばかりの制度ということでございますが、目標値は百四十カ所のところ、二十二年の十月一日で百四カ所になったところでございます。

山崎(摩)委員 ありがとうございます。

 歩みが順調なのかどうなのか、ちょっとこの場では評価し切れませんけれども、引き続き御努力いただきたいというふうに思います。ありがとうございました。

 それでは三番目に、今回の法改正について質問に入らせていただきたいと思います。

 今回の法案の趣旨は、児童虐待の防止を図り、児童の権利利益を擁護するという観点から、親権の停止制度を新設して、法人または複数の未成年後見人の選任を認めるなどの改正ということです。これまでの民法の親権制限規定が、今話題にしてまいりました児童虐待防止のためにほとんど機能してこなかったという現場ですとか専門家からの指摘もあったことを踏まえますと、着実な一歩ではないかというふうに今回の民法改正は評価できると私は思いますが、まず、今回の改正について大臣の御所見を一言いただきたいと思います。

江田国務大臣 この改正法の趣旨というのは、先日、趣旨説明で申し上げたところでございますが、子供の育ちというのは、社会にとってもあるいは親にとっても未来の希望であり夢なんですね。子供を育てていく、子供がすくすく育っていく、これがなければ、やはり社会の未来というのはないんだと思います。しかし、実際には子育てというのはなかなか大変で、それは親が思うように育つわけではない、だからおもしろいとも言える、だから手ごたえがあるとも言える。

 しかし、そこへいろいろな問題が起きてきて、近年、特に、児童虐待というのが深刻な社会問題になっているというのはもう委員御指摘のとおりです。児童虐待防止法をつくりましたが、しかし、委員が冒頭お挙げになったような悲惨な事案がなかなか後を絶たない。その中には、親の親権の主張が児童虐待を防止するのに障害になっているというようなことがやはりあったんだろうと思うんですね。

 そこで、これは、親権は喪失かあるかどっちかしかないというのが今の民法の制度で、これではなかなか現場対応というのはうまくいかないということで、もっと柔軟にいろいろな対応ができるようにということで、法的な整理が必要だという指摘が随分長くございました。特に児童虐待を行う親に対しては、必要に応じて適切に親権を制限する場合があると考えられます。

 あるいはまた、児童虐待の事案で親権を制限した後に親権者にかわって子の身上監護あるいは財産管理などを行うべき適任者を確保する、これも必要であるということで、今回、この法律案では、児童虐待の防止等を図り、同時に、児童の権利利益を擁護する、こういう観点から、民法と児童福祉法その他の法律を改正して親権停止という画期的な制度を新設し、未成年後見制度の見直しとかあるいは児童相談所長の権限の拡大とか、こういうような所要の法整備を行うことを意図したわけでございます。

 ぜひひとつ早期に成立をさせていただきたいと思っております。

山崎(摩)委員 大臣、ありがとうございました。その方向性については全くそうだろうというふうに私も思っております。

 この法改正につきましては、平成十九年の児童虐待防止法及び児童福祉法の一部改正の附則の二条で、施行後三年以内に親権に係る制度の見直しをと。大臣が今お話しされたようなことで、その後、さまざまな研究会ですとか社会保障審議会専門委員会、法制審議会等で報告書が出て、論点が整理をされてきたということは承知しておりますが、その論点整理された内容が今回の法改正に盛り込まれているということでよろしいのでしょうか。

黒岩大臣政務官 法制審議会の答申及び社会保障審議会の専門委員会の報告書に幾つかの要望事項がございまして、ただ、運用ベースにもう落とされているものもありますけれども、少なくとも法律改正として必要とされたものはすべて今法案に盛り込まれていると承知をしております。

山崎(摩)委員 その報告書の御提言の中で盛り込まれていない項目はないということですか。

黒岩大臣政務官 ないものと認識をしております。

山崎(摩)委員 今回改正のポイントというのを少しお伺いしたいというふうに思います。

黒岩大臣政務官 もちろん幾つか多岐にわたるんですけれども、まずは親権の制限でございます。これも先ほど大臣からも説明ありましたけれども、二年以内の期間に限って親権を行うことができないという親権の停止制度を創設いたしました。

 そのほか、民法において、子の親族及び検察官のほか、子、未成年後見人及び未成年後見監督人も、家庭裁判所に対しまして、親権喪失等の審判の請求をすることができるようにするといったことも盛り込まれております。

 そのほか、未成年後見人制度に関してなんですけれども、やはり子の安定的な監護を図るための措置といたしまして、まずは、民法において、複数の未成年後見人または法人の未成年後見人を選任することを可能にする、二つ目といたしまして、児童福祉法におきまして、里親等委託中及び一時保護中で親権者等がいない子について、親権者等があるに至るまでの間、児童相談所長が親権を行うこととするといった内容が盛り込まれております。

 そのほか、民法におきまして、親権者は子の利益のために監護、教育をすべきことを明確化するなど、さまざまな論点が盛り込まれている法律案になっております。

山崎(摩)委員 少し内容でお尋ねしたいと思いますが、法人による未成年後見人の選定ができるというところで、法人または複数でもよいというふうになっておりますが、ちょっと具体的にお聞かせいただきたいことと、現場での課題というのは、社会的養護施設を十八歳で出るわけですが、その十八歳で退所後も、引き続きこれらの未成年後見人がケアできるのかどうか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。

黒岩大臣政務官 今、この未成年後見人が複数または法人の具体的なケースはどうかという御質問をいただきました。

 まず、複数についてお答えいたしますけれども、典型的な場合としては、まずは、おじやおば、祖父母が二人で後見人となって、共同して後見事務を行う場合、また、子に多額の財産があるといったような場合には、親族のほかに、弁護士等の専門家を後見人に選任し、一般的な後見事務は親族が行いますけれども、特定の財産の管理については弁護士等の専門家が行うということを想定いたしております。

 また、法人に対しての御質問に対しては、これは、典型的なものとして、児童福祉施設を運営する社会福祉法人を想定いたしております。具体的には、社会福祉法人が運営する児童福祉施設から自立をした場合、自立をした未成年者に親権を行う者がいないような場合に、その未成年者のことをよく理解しておりまして良好な関係が築かれている当該社会福祉法人を未成年後見人に選任することを想定いたしております。

 そのほか、最近、子供の問題を扱っているNPO法人などが幾つかできておりまして、特に弁護士さんなんかが絡んでいるNPO法人から、今後、未成年後見人に適した法人が育ってくるのではないかと期待する声もあります。

 あと、十八歳での退所等については、これはちょっと当局の方から答えさせていただきます。

原政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、十八歳になりますと施設から退所するわけでございますが、まさにそういった児童を念頭に置きまして、児童養護施設を運営しております社会福祉法人に引き続き未成年後見人になっていただくということを考えているわけでございます。

山崎(摩)委員 ありがとうございます。

 未成年後見人の問題は、本当に退所後の、成人し、社会的に自立していくまで、もうぽっと社会に出されてしまうというので、本当にそこの手当てが制度的にはなかったわけですので、今回、大変いい改正をしていただいたかなというふうに思いますが、一つ、社会福祉法人に加えてNPO法人もというお話でございましたが、貧困ビジネスに昨今見られますようなさまざまな事象というのもありますので、やはりきちんとガイドラインを持って、法人格と言われてもすべてがオーケーではないよといったようなところの縛りみたいなものも明確にきちんと運用上はしていっていただきたいというふうに思います。

 それからもう一点。一時保護が行われていない未成年者でも、その福祉のために必要があるとき、児童相談所長に親権、または未成年後見人の選任ができるということのようでございますが、もう少しこれも御詳細を御説明くださいますか。

原政府参考人 今回の改正によりまして、児童福祉法も一部改正をしております。

 従来、施設に入所している児童につきましては施設長が親権を代行することができるという規定がございましたけれども、里親委託中の児童あるいは一時保護中の児童につきましてはそういう親権の代行の規定がございませんでしたので、そういったお子様につきましてもやはり親権を代行していただく適切な方がいることが望ましいと考えましたので、新たに親権代行制度というのを設けまして、児童相談所長が親権を代行することができるということで、お子様の権利利益の擁護ができるような配慮もしているわけでございます。

山崎(摩)委員 ありがとうございました。

 保護者に対する指導の実効性を高めるということも今回少し盛り込まれているようでございますが、親御さん、保護者への指導の実効性、これがまたなかなか難しい課題ではあるわけですが、その高めるための方策というのは具体的にどのようなことが想定されているのでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、単に一時停止をしただけで終わるわけではございませんで、やはり究極的には親子再統合に向かう姿を目指すべきと私どもは考えているところでございます。

 虐待によって親権を停止された親に対して、その停止されている期間、親子の再統合に向けて指導、支援を適切に行っていくために何をしていくかということになるわけでございますが、実は、平成二十年三月に、保護者への援助についてのルール化を明示した、児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドラインを策定いたしておりまして、その中で、児童福祉司等による面接や、家庭訪問での指導、支援、関係機関が実施する親子の再統合に向けたプログラムへの参加の促進などを示しております。

 また、予算措置といたしまして、家族の再統合のための保護者指導支援員や精神科医などを児童相談所などで活用するための経費も補助をいたしておりますし、さらには、やはり関係機関の専門性の向上を図っていかなきゃいけない。その観点から、保護者指導、支援に関する研修を子どもの虹情報研修センターにおいて実施をいたしているところでございます。

 再統合に関しましては、現在、さまざまなプログラムがございます。その多様なプログラムの実施状況やその効果などについて研究を進めておりまして、その中で保護者指導に関する調査、検証を行ったその研究の結果を踏まえまして、さらに全国の児童相談所が保護者指導、支援に適切に取り組めるよう努めてまいりたいと思っておりますし、また、親に対する支援、指導のあり方について好事例をまとめてお示しして、この普及に努めてまいりたい、かように考えております。

山崎(摩)委員 具体的にはそういうことでお進めいただくということですが、家裁が承認して児童相談所長から保護者に指導をする、その先の具体的なことが今お話しいただいたようなことだということでよろしいわけですね。

 今回の法改正では、親権の一部制限制度の導入というのが見送られたということですが、これについてはどのような議論があったのか、ちょっとお聞かせください。

黒岩大臣政務官 委員おっしゃるとおり、親権の一部制限制度、このことも議論されております。親権に対する制限は最小限にすべきであることなどを理由として、確かに親権の一部を制限する制度を設けるべきとの意見は出ておりました。しかし、法制審議会での議論でございますけれども、まず一番目として考えられるのが、親権のうち、いわゆる身上監護権のみを制限する制度をつくってはどうか。二番目としては、事案ごとに必要な部分を特定して親権の一部を制限する制度。この二点について検討が行われました。しかし、次のような問題点が指摘されましたことから、これらの制度は設けないという答申に至りまして、本法律案においても親権の一部を制限する制度は設けないこととしております。

 その理由としては、まず、身上監護権を制限する制度についてなのでございますけれども、親権のうち身上監護権を制限して、身上監護権のみを有する未成年後見人がその後選任されたとしても、当該未成年後見人において契約等についての法定代理権や同意権、この管理権を行使することができなければ、身上監護権のみがあっても子の安定的な監護を全うすることができないのではないかという問題点が指摘されました。

 二番目としてですけれども、現実として、身上監護権を適切に行使することはできない、だけれども財産管理権については適切に行使することができる親権者というものは余り想定されない。今、逆に、身上監護権を適切に行使することはできても財産管理権については適切に行使することができないのではないかという親権者に対しては、財産管理権の喪失という規定がございますが、この逆の場合は余り想定されないのではないかという問題点が指摘されたことがありまして、結論といたしては、今回、親権の一部を制限する制度は設けないこととしている、そういう御理解をいただきたいと思います。

山崎(摩)委員 もう一点は、懲戒権規定の規制についてでございますが、懲戒場といった古色蒼然としたものは削除されましたが、懲戒権規定そのものの削除には至らなかった。これについてはどんな議論があったのか。しつけを口実にして虐待を認めるものとして削除を求めるような意見もあったというふうに聞いておりますが、いかがでございましょうか。

黒岩大臣政務官 御指摘の懲戒については、現行法では必要な範囲内ですることができる。現状ではその範囲内でしつけをしている親権者が大多数であるにもかかわらず、この規定そのものを削除してしまうと、逆に、そのような、必要な範囲内でのしつけすらできなくなるといった誤った受けとめ方がされないかなどといったことが問題視されました。

 現在ある規定を削除することによる社会的影響についての今申し上げたような懸念があるほか、親の子に対するしつけのあり方については大変さまざまな、多様な御意見がある中で、単に規定を削除するということに国民的理解が現時点で得られるのかどうかという問題点も指摘されました。

 結論といたしましては、本法律案におきましては、先ほど委員御指摘の、まずはこの懲戒場といった記述については削除をしましょうと。そして、単に懲戒権の規定を削除するのではなく、今回の法律案においては、懲戒の範囲について文言上明確に限定を付すこととして対処をさせていただいたと御理解いただきたいと思います。

山崎(摩)委員 明確に文言で対処するということですので、それをよしとしますかということですね。

 最後の質問は、親権停止の戸籍上の取り扱いでございますが、これは記載等についてはどのようになるのでしょうか。

黒岩大臣政務官 親権喪失等の審判がなされた場合、戸籍上はどういうふうに記載されるのかという御質問を受けましたけれども、まず現行法のもとでは、親権喪失または管理権喪失の審判がされた場合は戸籍にその旨を記載することとなっております。また、今回の法改正により新設されます親権停止の審判がされた場合、この場合も戸籍にその旨の記載をすることを予定いたしております。

 その理由といたしましては、親権、特に管理権の有無は、未成年者及びその法定代理人と取引関係にある第三者や、取引関係に入ろうとする第三者の利害に重大な影響を与えるものでございますので、これは戸籍に記載しておくべきであろうと。二番目の理由としては、戸籍というものは、子の年齢と親子関係を明らかにすることによって、子がだれの親権に服するのかということが明らかにされているものでございます。こういうことから、親権の有無に変動が生じた場合は戸籍に記載する必要があるということで、こういった対応を予定いたしております。

山崎(摩)委員 ありがとうございました。

 もう時間が参りましたが、しかし、子の福祉というか、子の立場に立って考えますと、やはり、戸籍の問題というのはいろいろ今後も議論があるのではないかなと私はちょっと思っておりまして、またこれは機会がありましたら議論をさせていただきたいというふうに思います。

 今回の法改正が、いずれにしましても、人生の入り口で親からの虐待という大きなダメージを受ける子供たちの回復ですとか健やかな成長に資するものだろうというふうに考えますし、また、保健医療福祉従事者、現場の専門職の方たちにも、親権の一時停止というようなことで、さらに個別のケアが充実して展開されていくのではないか。その意味では、まさにチルドレンファーストという民主党の政策理念が浸透していくことの一つにもなっていくかなということで受けとめさせていただいたということでございます。

 どうもありがとうございました。

奥田委員長 以上で山崎摩耶君の質疑を終了いたします。

 次に、井戸まさえ君。

井戸委員 民主党の井戸まさえでございます。よろしくお願いいたします。

 今回の民法改正は、児童虐待が後を絶たず、深刻な社会問題となったため、虐待の防止を図り、子供の権利そして利益を擁護する観点から、親権の見直しについて法務大臣が法制審議会に諮問して、児童虐待防止関連親権制度部会で調査審議が始まりました。有識者などからのヒアリングを経て、中間試案というものが取りまとめられて、そこからパブリックコメントなども寄せられて、意見も踏まえて、第十回会議でまとめられたものと承知をしております。

 今回、法改正の一つとされています面会交流の明示については、子の福祉にかなうものであるという前提で盛り込まれたものと期待はしたいところなんですけれども、ところが、そもそも法務大臣が法制審に諮問していない規定の見直しのために、親権制度部会で最終回まで全く議論がありませんでした。最終回の部会の議事録を見ますと、終盤で提案されたことがわかります。

 私が取り組んでいます嫡出推定の規定の見直しや婚外子相続差別規定の法改正に至らない、民法改正をすることは本当に大変なことだという困難を実感しているんですけれども、ですから、九六年の法制審の答申の内容とはいっても、そのころとは、十五年たっていますから、かなり状況が変わっていて、この面会交流のところが、その議論がなされないままに今回入っていたところに関しては若干の違和感を持っています。

 仮に諮問の対象とされていたならば、専門家の皆さんに御意見をいただいたりとか、パブコメでも、面会交流に取り組んでいる団体や実務者、あるいは当事者の皆さんから話を聞いて、貴重な意見が寄せられ、円滑な面会交流のための示唆があったのではないかと思うと、残念でなりません。

 この規定が子の福祉に役立つということを確認して、よりよいものになることを願って、大臣は五十分までといいますので、大臣に伺いたいと思います。

 子の監護についての必要な事項として、離婚後の親子の面会交流及び養育費の分担を明示するなど民法七百六十六条を改正した趣旨、そしてまた理念をお聞かせください。

江田国務大臣 この規定を改正するに至った経緯について、委員今御指摘のような点があったのだろうと思いますが、しかし、多くの皆さんから、これは、七百六十六条第一項、監護についての必要な事項というのが余りにもざっくりとしたもので、そういう面会交流とか監護費用の分担についてきっちりと合意がなされないまま前へ進んでしまった、そのために後に禍根を残すというような事例がいろいろ指摘をされまして、もともと面会交流やあるいは監護費用の分担は決めなきゃいけない、あるいは決めるべきであるということなのに、それができていないということがあるので、あえてここで明確にしようということだと思っております。条文に明示することによって、協議上の離婚をするに際して、当事者間での取り決めを促すということでございます。

 あるいはまた、これは副次的な効果ですが、こうしたことが明確に決まっていないということが、後に、親が一人で子育てをしている際にいろいろなリスク要因になっているということもありまして、やはり、こうしたことが明確になっていることが児童虐待の防止ということにもなるんじゃないかということでございます。

 さらに、この改正について、子の利益の観点からしっかりと定める。これは二項の方ですか。子の監護に関する事項、あるいは面会交流、監護費用の分担が、離婚する当事者の利害対立が非常に大きくて、駆け引きの材料になったりして、子供のことが忘れられる、そんなこともあったので、子の利益を最も優先して考慮しなければいけない、こう規定に明記をしたわけでございます。

井戸委員 まさにそこなんですね。子の利益を最優先にして考えなければいけないんですけれども、ここがやはり、児童虐待の防止というか抑止の親権のここの規定と一緒に今回改正ということで、この面会交流というのは、あくまでも児童虐待の発見だとか抑止だとかではなくて、子の利益のために必要だということで、十分にそこも含めて、別建てでこれをやることも選択肢であったと思うんですね。

 そういった議論もなかなかなされないまま、そして、法制審の最後の提案、ここで入れていくという、議事録をちょっと見たんですけれども、私はちょっと違和感があって、このことが入るのだったら、議員立法でされるよりはここでちょっと瞬時お考えいただいて、その可能性を考えていただければと思いますというような形で入っているんですね。やはり、それでは本当にこれが実のあるものになるかというと、そこには私はとても疑問を持ったので、そこもちょっとつけ加えて指摘をさせていただきたいと思っています。

 大臣、ありがとうございます。

 続きまして、今言ったように、面会交流を行うに当たっては、十分な議論というのがなかなかない。その十分な議論の前に必要だというのは実態の調査だと思っているんです。この面会交流に関しては「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と法制審の答申にもあるんですけれども、最も優先して考慮するためにも、その実態の把握は重要だと考えています。

 そもそも、法務省は面会交流についての統計をとっておられるのでしょうか。

原政府参考人 お答えいたします。

 司法統計によりましてある程度の統計はとっておりまして、その内容を御紹介したいと思います。

 平成二十二年の司法統計によりますと、平成二十二年中に既済となりました面会交流の調停事件、これは全部で七千二百七十四件ございますが、そのうち三千八百二十八件、割合にしますと五二・六%で調停が成立したということでございます。

 一方、審判の方を見てみますと、平成二十二年中に既済となりました面会交流の審判事件の総数は九百九十八件でございますが、そのうちの四百三十二件、割合にいたしまして四三・三%で申し立てが認容されたということでございます。

井戸委員 年々この申し立てというのはふえているというのは私も認識はしているんですけれども、全離婚件数が二十五万三千件余りのうちで、親権を行わなければいけない子がいる離婚というのは十四万六千件余りなんですね。そうすると、今、調停を申し立てているというのが七千件余りですね、七千二百七十四件というお話がありましたけれども、そういう意味では、ほとんどが調停ではなくて当事者間で決めているという形になりますよね。

 こここそが、ここの実態把握こそが、面会交流を本当の子供の利益のために、実効性あるものを担保していくために必要だと思うんですけれども、ここに対する調査というのは法務省としてやられているんでしょうか。

原政府参考人 委員御指摘のような実態調査は実はやっておりませんけれども、やはり面会交流の問題について、今後、対応を考えるに当たりましては、現実がどうなっているかという実情を知っておく必要があるというふうに考えておりますので、法務省といたしましても、面会交流を実現するための制度等に資するための調査研究を委託しておりまして、現在その報告書が取りまとめられている最中でございます。

 この調査研究におきましては、家庭裁判所での面会交流事件の分析をしているほか、民間の面会交流支援団体からのヒアリング、あるいは当事者からのアンケートも実施しておりまして、こういった調査委託研究を通じて現状の把握をして、それに基づいて今後の対応を考えたいというふうに考えております。

井戸委員 先ほども指摘させていただいたんですけれども、やはりちょっと順番が逆なんじゃないかなと思うんです。こうした調査研究を今やっていらっしゃる、その取りまとめが行われた、そうしてから、やはりこれを法制審議会なりにしっかりと諮問して、もう一回、十五年たっていますから、この間というのは、諸外国でも面会交流に関しての法制度というのは随分と変わってきているんですね。それを担保するためにいろいろなところで改正も行われている。そうしたことも踏まえて、我が国ではどうしていくのかというのを、本来だったらばそこでやるべきではなかったのかなということを再度言わせていただきたいと思います。

 そして、民法に例えば面会交流というここの規定を明示したからといって、この面会交流自体がうまくいくということではないというのはおわかりだと思うんですけれども、この立法化と同時に、サポートの制度化というのが最も重要だと思います。

 面会交流が取り決められても履行されないケースが多いというのは、やはりその履行の確保のためには、サポート、このシステムの中では、人的資源をきっちりと備えて、それで、親に対する教育やまたそれをサポートする方々への教育というものも必要だと思っています。交流支援というのは持続性と高度な能力を必要とするサービスの提供なので、相談のためには、職業教育を受けた専門職と人格的態度と安定した実行力というのが不可欠だと思っています。

 日本でも、面会交流の援助事業、養育費の相談支援センター事業を行っている公益法人のFPICさんがありますけれども、元家裁の調査官を初め家事調停の経験者などもいらっしゃり、活動内容も非常に充実しているんですけれども、離婚件数から考えると、五百人とか、本当にわずかな方々しか利用ができていません。多くの方々がこうした機関を利用することが可能になるためにも公的な支援というのは必要で、そのための整備というものが重要だと思っています。

 諸外国における離婚後の面会交流の支援システムというのは示唆に富むものがたくさんあって、日本の制度設計においても非常に参考になると思っています。これについての今後の法務省としてのビジョンをお聞かせいただきたいと思います。

原政府参考人 子供の利益を擁護する観点から、親子の面会交流が適切に行われるということが望ましいわけでございますが、委員御指摘のように、現状はなかなか、面会交流をめぐりまして父母が対立して、適切に面会交流が実施されていない事案が多いというふうに承知しております。

 なぜこういうふうに面会交流がうまくいかないかという原因でございますが、これは複雑な要因があると思いますけれども、幾つか推測される事情を挙げますと、一つは、監護している親の方が、面会交流の際に相手方に子供を連れ去られるのでないか、こういう不安を持っているということが多いようでございます。それから二点目に、離婚に至る過程で父母間で相当の葛藤がございますので、離婚した後はもう相手とはかかわりたくない、こういう感情を持っている、特に母親が多いわけでございます。

 さらに言いますと、離婚後も子供が父母の愛情を受けて育つ、そういったことについての理解がまだ一般に広まっていない、こういった事情があろうかと思いますので、面会交流を実現するためには、こういった不安を解消するとともに、離婚後も子供が父母の愛情を受けて育つことが重要なんだということを理解していただく、そういったことの理解の促進を進めるとともに、現実の面会交流の支障を排除するためにサポートする体制を充実させることが必要であるというふうに考えております。

 委員御指摘のように、今FPICという公益法人がありまして、この問題については御努力をいただいているわけでございますが、先ほど御紹介いたしました調査委託研究の結果等も踏まえまして、関係省庁と連絡して可能な対応を考えていきたいというふうに考えております。

井戸委員 家裁の今の現状は、例えば面会交流に関しても、調停なんかが起きたときにそれをきっちりとサポートできるかといったらば、やはりなかなかそういった体制にはなっていないなと。

 お隣の韓国では、そうした協議離婚でも、親への教育、これを受けなかったならば離婚もできなかったりだとか、諸外国でもさまざまな取り組みをなされているんですけれども、例えばドイツでは、九七年に親子法関連法の改正で嫡出の概念を撤廃して、親が婚姻していようがしていまいが、離婚しようがしていまいが、婚内子と婚外子の法的な差別を広く除去して、親子の交流についても、親の権利として位置づけられていたものを、子供の権利として交流権というのを構成し直しているんですね。

 今回、日本の、私たちのところでの法改正もそのようなことではあると思うんですけれども、その前提としては、父母双方との交流というのは原則として子の福祉のためには必要であるという認識、先ほども局長おっしゃいましたけれども、そこと、父母の離婚後、同居する親との結びつきを、子供が、相手がそれだけということではなくて、別居している親との関係をできるだけ維持することが、順調な精神的な発達と、家族が壊れてしまった後の心理的な復旧の作業というものについても、また自己の出自を知ってアイデンティティーを確保するためにも非常に重要だというふうに位置づけられていて、こういったことがなされています。

 子どもの権利条約九条の三項、父母の一方または双方から分離されている子供が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利ということともこれは合致をしていくと思うので、日本もこの条約を批准しているわけですから、ぜひとも締約国の責務としてこういったことを実行する、そうしたことを進めていただけたらと思っています。

 先ほど、面会交流がうまくいかない、局長がいろいろ指摘されていましたけれども、その中では入っていなかったんですけれども、やはりDVのケースがあると思うんですね。もう二度と会いたくないとか、かかわりは持ちたくないというのはまさにそのケースだとは思うんですけれども、例えば弁護士さんに寄せられたDVのケースでは、離婚後、元夫が嫌がらせのために頻繁に裁判所に面会交流の調停を申し立てたケースがあったりなんかするわけですけれども、家裁の審判においてDVのケースというのはどのような形で配慮されているのか、ここについてお聞かせを願いたいと思います。

原政府参考人 基本的には、家事審判官が事案に応じて個別に適切に判断しているものと思いますが、一般論として申し上げますと、面会交流の審判におきましては、子の福祉という観点から、子への虐待など面会交流を禁止、制限すべき事情が認められない限り面会交流を認めていると承知しております。

 また、面会交流の頻度や態様につきましては、面会交流についての合意があるのかどうか、あるいは従前の面会交流の実績、監護していない親と子との関係、それから監護している親の生活状況ということのほかに、子供の年齢、性別、性格、就学の有無、生活のリズム、生活環境、あるいは面会交流を認めることが子供へ精神的な負担があるのかどうか、あるいは子供がどういったふうに考えているのか、そういったことを総合的に考慮して判断されているものと承知しております。

 したがいまして、御指摘のDVの事案につきましても、審判においては、その具体的な事情を踏まえて適切な判断がされているものと承知しております。

井戸委員 そこにはやはり特段の御配慮をさらにしていただけたらなと思っています。

 親との面会交流、今回、七百六十六条というのは協議離婚のところなので、面会交流についても父母の規定になっているんですね。私に実は相談者の方がいらっしゃるんですけれども、これは娘さんが離婚協議中に亡くなってしまって、お孫さんを自分が二歳まで実家で育てていた。離婚協議中に娘さんが亡くなってしまったので、親権は当然離婚協議をしていた夫の方に行ってしまう。そして、二歳まで自分のところで毎日育てたお孫さんを、ある日突然、夫の側に引き離されてしまって、面会もできない。というのは、祖父母には面会権がないからと言われてしまったら、そこから会うこともできない。そして、子供がどんな状況で育っているのかもわからない。こうしたところ、非常に不条理だというような御相談をいただきました。

 親との面会交流というのは子供の精神的な発達にとっては重要で、福祉にかなうというのはだれもが認めるところなんですけれども、例えばこういった場合、ドイツやフランスでは、父母以外にも、子の福祉に役立つ限りにおいてという条件つきながら、祖父母及び兄弟姉妹、兄弟で離されてしまうという場合も当然あるんですね、離婚ですので。そうしたときに兄弟への面会権があったりだとか、あとは、子と相当長期間同一で暮らしてきた親族であった者、例えば、私も再婚して、ステップファミリーで、血のつながらない夫が私の子供をずっと育てていて、前の夫よりも長い時間もはや過ごしている、こうなった場合は、例えばまた私が離婚した場合、養父がもう一回会いたいと言ったらば、そこは面会権がないわけですから、そうすると、そこも分断をされてしまう。

 子供にとっては、本当に今まで一生懸命育ててくれた親じゃない者に対しても、会いたいということもあると思うんですね。また、同居パートナーとか里親についてもドイツ、フランスでは認めているんですけれども、こうした祖父母や兄弟姉妹など、これまで子を事実上監護していた者と子供の面会交流についてはどのようにお考えで、これから検討とかということがあるのかどうか、その辺もお願いいたします。

原政府参考人 御指摘のように、民法の七百六十六条は離婚の際の父母を前提とした規定でございますので、審判によって、その祖父母とか兄弟姉妹への面会交流を認めるということは困難だというのが一般的な考え方であると思います。ただ、当事者間で任意に合意する、あるいは家事調停で面会交流について合意するということは可能であろうと思います。

 委員御指摘のように、昨今、我が国では小家族化、少子化が進んでおりますし、離婚や再婚も増加しているということでございますので、祖父母とか兄弟姉妹などが子供と面会交流をしたい、その面会交流を認める必要があるのではないかという議論が高まってきていることは承知しておりますので、この問題につきましては、議論の行方を見ながら検討してまいりたいというふうに考えております。

井戸委員 ぜひともこれは早急に議論を深めて、そして、こうした子供の発達のために必要な制度の枠組みというものをつくっていただきたいと思うんです。調停でそうやって争い事があった場合というのは、またそこで決めていくというのはなかなか難しかったりというのもありますので、ぜひともここも配慮をいただきたいなというふうに思っています。

 続きまして、今度は養育費の問題について厚生労働省さんに伺いたいと思っています。

 離婚後の母子世帯における父親からの養育費、例えば子供がいる場合の離婚というのは大体八三%が母親が一緒に暮らしていて、一二、三%が父親が引き取っていて、三%、四%近くというのが、子供が二人以上いた場合、それぞれが一人一人という形で今やっていると思うんですけれども、こういった離婚後の養育費の問題というのは、大体メーンは母親、母子世帯のところにかかってくると思うんですね。この母子家庭のところに関しての養育費の状況についてまずは伺いたいと思っています。

 諸外国と比べても、日本の離婚後の養育費の受給状況というのは極めて低いと言われています。離婚の際の養育費の取り決めの状況や、また受給率、受給の額など、最近の厚生労働省の調査結果というのはどんなふうになっているでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 全国母子世帯等調査というのがございまして、実はこれは五年に一度調査をいたしております。直近が平成十八年度ということで、若干古くなっておりまして、実は今年度新たに調査をする予定になっておりますが、残念にして直近が十八年度でございますから、その数字を申し上げたいと存じます。

 まず、養育費の取り決めをしている母子世帯の割合でございますが、三八・八%でございます。また、現在も養育費を受けている母子世帯の割合、これは一九・〇%でございます。そして、養育費を現在も受けている、または受けたことがある母子世帯の平均の月額で申しますと四万二千八円、こういった状況でございます。

井戸委員 今、これを受給している世帯ということだったんですね、四万二千八円。

 これは、例えば子供の数というのは調べているんでしょうか。私もちょっといろいろとめくっていたらば、養育費、例えば一万円以下が二〇%だとか、二万円以下が二〇%、四万円以下が一番多いんですけれども、子供の数の統計というのはあるんでしょうか。

 例えば、月々一万円の養育費といったら、一日三百円ぐらいですよね。子供というのは、ある程度のお金と、面会交流ということに関して言ったらば、手もかけなければ育たないんですけれども、やはりここのところ、一日三百円程度とかというのはなかなか養育費としてはあり得ない、本当にそういうふうに思うんです。

 しかしながら、まず取り決め自体も三八・八%、受給率が一九・〇%、本当に愕然とする数字で、これはずっと昔から言われていますよね。これは何で改善しなかったのか、厚生労働省としてはどのように分析をなさっていらっしゃいますでしょうか。先ほど言いました受給額の世帯の子供の数に対する調査があるのかないのかも含めて、お答えをいただけたらと思います。

石井政府参考人 まず、数字があるかないかということについてお答え申し上げますと、そうした統計になっておりませんので、残念ながら、把握はできないところでございます。

 そして、どうしてこのような低い状況が続いているのかということでございますが、やはりこれは、離婚時においてそうした取り決めがなかなかなされない、よって、その先の姿に行き着かないというところがございます。

 ただ、先ほど、養育費を受けている母子世帯の割合が一九・〇%と申し上げましたが、これは二つのケースがございまして、取り決めをしているのに、それを相手方が守ってくれなくて、それで受けられないというケースと、それから、取り決め自体の中身が、例えば小学校在学中までとかいろいろな取り決め方がありますので、そういう意味では、そもそもそういう形でルール上で終わっているというケースと、二ケースが考えられると思います。

井戸委員 養育費に関しても、今回、この民法改正で明示をされてくるわけですけれども、厚生労働省としては、この一九%、終わった人も含めてなので、ここの数字が本当に実態かどうかはわからないというふうなお答えだったと思いますけれども、いずれにしても、本当に圧倒的に少ない受給率であり、また、統計のとり方も、そういうとり方をしていませんのでということで言われてしまうと、本当に養育費の問題について真剣に取り組んでいたのかというところも含めて問われるところでもあると思うんです。

 この受給率、そして調査も含めて、何か改善をしていく、また、今回の民法改正に当たって、厚生労働省として努力をなさるということに関して、何かお考えはあるんでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、調査についてでございますが、幸いと申しますか、これは秋に毎回行っておりますので、今年度、秋に行う調査でございまして、まだ、どういう調査票にするかということについてはこれから決めるところでございますので、先生御指摘のような点も含めて検討してまいりたいと存じます。

 それから、今回の民法改正の中の規定で、子の監護について必要な事項の具体例として、協議離婚において定めるべきものの具体例に、監護費用の分担、養育費の支払いというのが条文上明示されるということになりますと、これはやはり、当事者間での取り決めについては、これを促進するということが期待されると思っております。私どもそれを期待しつつ、また、実際にそういう取り決めがなされたら、あるいは、養育費についての相談についていろいろ受けているところでございますが、要は、養育費が取り決められまして、その支払いが実際に進むということを後押ししてまいりたいというふうに考えております。

井戸委員 当事者間の話し合いに期待をしたいというようなお答えだったんですけれども、やはりこれに関しては、今までも、明示はされていないながらも書かれてはいたわけだから、そういった意味では、そういった受け身の態勢でこれが改善するというふうには思えないんですね。

 FPICさんによりますと、養育費の支払いと面会交流の実施というのはパラレルな関係になっていて、子供の心身を育てる養育費と心をはぐくむ面会交流というのは車の両輪だと言われてもいます。ぜひともそのところを、例えばFPICさんなどにも委託して、ポスターなんかをつくるだとか、いろいろなことで啓発活動なんかもなさっているというように伺ったんですけれども、より一歩前に進めるような施策というものも進めていただかなければいけないのではないかなというふうに思っています。

 きょう、私は、皆さんに参考の資料として離婚届というのを出させていただいたんです。これを書いた方もいらっしゃるかわからないですけれども、婚姻届、離婚届。

 私は、民法七百七十二条の嫡出推定の規定のときにこの離婚届というのを非常に目を凝らしながら見て、この中に、例えば別居した日とか同居した日とかというのがあるんです。これというのは公的な書類だと思ったから、ここで別居した日とかが書いてあったならば、そのまま例えば嫡出推定を外すのに使えるんだろうなというふうに思って伺ったところ、いや、ここには書いてあるけれども、これは人口動態調査に使うためであって、法的なところに担保されているわけではない、だから、これは単なるアンケートなんですと。この一枚の離婚届の中にアンケートとアンケートでない部分があるということをそのときに言われまして、非常にびっくりしました。

 例えば、今回、法律に明文をされたとしても、養育費の支払いについても面会交流についても、これが周知徹底をして、その方々がきっちりと取り決めをするかといったら、そうじゃないと思うんですね。

 一つ私は提案がありまして、例えばこの離婚届のところ、「未成年の子の氏名」とか「親権を行う子」とありますね。こういったところに、離婚届を出す際に取り決めをしているかしていないか、有無のチェック、これは、していないからといって離婚ができないというわけではない、これはもう大前提なんですけれども、将来、当然調停なんかもしていくこともありますでしょう。離婚に関して、ここにしていないからできないというふうにとられてしまったらあれなんですけれども、この離婚届のところの取り決め欄を設けてはいかがでしょうか。届け出用紙を変更するのに法改正の必要はなくて、通達で可能だと思うんですけれども、こうした検討はいかがでしょうか。

原政府参考人 お示しいただいた離婚届の届け出用紙でございますが、これは、親族的身分関係を登録して公証するという戸籍の機能にかんがみまして、基本的には戸籍に記載すべきものを書いていただく。ただ、委員御指摘のとおり、人口動態統計の必要上、ここに記載をしていただくものもある、こういう整理でございます。

 現在、面会交流や養育費についての取り決めがなかなかされないということで、ここに欄を設ければそういった取り決めが促進されるんじゃないかという、委員のアイデアとしては非常にわかるわけではございますが、私どもとしては、そういう欄を設けることについてはやや問題があるのではないかというふうに考えております。

 といいますのは、御承知のとおり、親権者につきましては、これを定めなければ協議上の離婚はできないわけでございますが、現行法上、子の監護に必要な措置として、養育費の問題あるいは面接交渉の問題、これを定めなければ協議上の離婚ができないというわけにはなっていないわけでございますので、離婚届にそういう欄を設けますと、戸籍の受け付けの窓口でその点についてトラブルが生じる可能性が高いというのが一つ。

 それから、もう一点目は、面会交流や養育費について取り決めの有無のチェック欄を設けることで、面会交流や養育費について取り決めないと離婚ができないんじゃないか、もしそういう誤解をされるとしますと、正式の離婚をしないで事実上の離婚状態となる夫婦がふえる、そういうことも懸念がされます。

 さらに、面会交流や養育費について取り決めがあるという単にチェックをしていただくだけでは、結局、強制執行はできないわけでございますので、最終的な解決に至らない。

 こういったことを考えますと、現時点では消極的に考えているところでございます。

井戸委員 今のお話だと、例えばこのチェック欄で混乱が起きるとおっしゃるんですけれども、実際には、この中で、別にここにチェックをしなくても、離婚ができるできないということはそれとは関係ないと書けばいいだけなんです。できない理由というのを言われるのではなくて、やはり私たちの目的は、例えば養育費なり面会交流が子のために必要だから、今の一九%とかそういった数字では、やはりここでは健全な育成というのは担保できていないんじゃないか。

 では、どうやって周知するんだ。一番周知ができるのは、全員がこの離婚届を書くわけですから、そのときに、養育費というのは取り決めなきゃいけないんだ、面会交流についても取り決めなければいけないんだと。しかしながら、なしであったとしても離婚が成立しないわけじゃないとそこに一言書けばいいんですよ。

 このところで、右側の方に、例えば「届け出られた事項は、人口動態調査にも用いられます。」と書いてあるんですけれども、どの欄が人口動態調査に用いられるかということを書いてないわけですね。戸籍の記載事項なら、例えば、職業だとか別居する前の世帯とか主な仕事とか、こういうのは戸籍に書かれるわけじゃないですよね。どれが書かれるのかというのに関しても、私は離婚届は非常に言葉足らずだと思うんです。きっちりとどこがどうだということを書けばいいんですよ。

 同じように、やはりこれは子供のためにやるわけですから、きっちりと周知徹底をする。今までいろいろな方法をやってできてこなかったんですから、こんなものは別に法改正が必要なわけじゃないので、そういう意味ではすぐにでもできる。しかもコストゼロなんですよ。啓発とか教育とかをしなくても、この紙だけ印刷し直せばいいだけですから、そういう意味では、一番効果的な周知徹底の仕方というのはこの紙だと思っているんです。

 御懸念のところというのは、しっかりとそこのところを担保するような書き方をすれば全く問題ないと思うんですけれども、局長、いかがですか。

原政府参考人 御指摘のとおり、届け出用紙はどこが必須でどこが任意かということが書いてないわけでございますが、これを具体的に、例えば人口動態統計に用いる情報については任意でありますので書かなくていいと書きますと、結局、チェックをしていただけない、記載をしていただけないということになるのではないかと思います。

 したがいまして、面会交流や養育費についてのチェック欄を設けて、これは任意ですということになりますと、結局はチェックしないで離婚届が出されるということになりますので、そういったことを考えますと、現時点では消極的に考えているということでございます。

井戸委員 でも、今のものは、私、例えば別居のところというのは書かなきゃいけないんですかと戸籍窓口に聞いたらば、いや、書かなくてもいいんですと答えてくださるんですよ、任意ですからと。だから、ここに任意だと書いたからといって書かないとか、言わなかったから書かない、逆に言うと、ここに書いてないんだったら、だましじゃないですけれども、書かなきゃいけないものだと思って書く、それで統計をとるというのはちょっとおかしいと思うんですね。

 やはり、そうではなくて、目的は何なのか、そして、ここに書くことによってよりそれが促進されるというのであったならば、一番簡単な方法でもあると思うので、ぜひともそういう意味では前向きな御検討というものをしていただけたらなというふうに思うんですけれども、もう一回、ちょっと任意のところも含めて。

黒岩大臣政務官 今委員から、特に面会交流、養育費の問題等が指摘される中で、それを離婚届の書式、体裁によってこの問題についてある意味前向きな対応ができるのであるならば、そういった御指摘は十分受けとめまして、今後、省内でもそれをきちんと協議させていただいて、いろいろといい意味で参考にもさせていただきたいと思っておりますので、そういうこととして私ども受けとめたということで御理解ください。

井戸委員 なので、実は一番最初のところに戻るんですけれども、こうしたことが、もしも法制審の議論の中でここも諮問をされていて、しっかりと議論がされていて、今当事者の調査とか研究をやっていらっしゃると言いましたけれども、そういったものがあってこれが出てくるのであったならば、きっとそういう意味ではもっとよりよいものができたのではないかというようなことも指摘をさせていただきたいと思っています。

 私のこの質問の最後には、今回の面会交流については、先ほど大臣からも、九六年の法制審議会からずっと議論されてきたところでは、答申された法律案要綱であったということもあったんですけれども、やはり十五年がたって、一方で、そのときに同じように答申をされた婚外子差別規定など、ほかの規定の見直しというのは今たなざらしとなっているんですね。諸外国では嫡出概念というのが撤廃されて、婚外子の相続差別規定を持つ国はほぼ日本だけとなっています。

 そういった意味でも、これを機に、同時にやっていた平成八年の法制審の答申でもありますから、ほかのところの議論というものも一緒に動かしていく、そしてそれが、やはり子供たちがこの国に生まれて生きていく、幸せに生きていく努力ができるということを後押ししていく民法改正にしていかなければいけないと思っているのです。

 そのことを指摘させていただきながら、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

奥田委員長 次に、橘秀徳君。

橘(秀)委員 民主党の橘秀徳でございます。きょうは、児童虐待の防止についての民法等の一部改正案について質疑をさせていただきます。

 冒頭、まず、民主党の方でずっと児童虐待の防止法案の準備をしてきて、当時の民主党はまだ小さくて、人手不足の中で私も法案の起案に参加をさせていただきました。小宮山先生が非常に頑張ってこられた分野でございます。

 ただ、まだまだ虐待がなくなっていきません。大阪で三歳の女の子と一歳の男の子がマンションに放置されて亡くなったという事件。それから、震災のどさくさの中でなかなか報道されることがなかったんですが、先日も、三歳の男の子をごみ袋の中に入れて実のお母さんと内縁関係にある男性とが殺害をするという事件。三歳の男の子は一回ビニール袋から自力ではい出してきた、それに対して怒った母親とその方が、手足をテープで縛って、それでまたさらに袋に入れて殺害をするという痛ましい事件が起こったばかりであります。子供の命を守るということ、もう党派を超えてやっていく必要があると思っています。

 まず、質問でありますが、もう先ほどの山崎摩耶先生の配付資料の中ではございますが、児童虐待相談対応件数の推移と、それから子供が死亡した数についてお答えいただきたいと存じます。

小宮山副大臣 橘委員には、いつも児童虐待防止に取り組んでいただいてありがとうございます。

 お尋ねの件ですが、全国の児童相談所での児童虐待に関する相談対応件数は、平成二年度は一千百一件でありましたけれども、その後ずっと増加をし続けていまして、平成二十一年度に四万四千二百十一件となりまして、平成二年度に比べますと、およそ四十・二倍という増加になっています。

 また、虐待による死亡事例の件数は、厚生労働省に設置されています児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会の第六次報告、これは平成二十年度のものですけれども、それによりますと、心中以外が六十四件、六十七人、心中が四十三件、六十一人、合計百七件、百二十八人となっています。

橘(秀)委員 ありがとうございました。

 それでは、警察庁の方の検挙の数について、あと死亡数についてお答えいただきたいと存じます。

樋口政府参考人 児童虐待事件の検挙状況でございますけれども、基本的には増加傾向にあるのでございますが、昨年の数字でございますが、検挙件数が三百五十四件、検挙人員が三百八十七人、被害児童数が三百六十二人でございました。

 この被害児童数のうちの死亡者数でございますけれども、三十三人でございます。この死亡者数につきましては、年によって増減を繰り返しておりまして、増加傾向にはございません。

橘(秀)委員 続けて生活安全局長に、厚労省の統計と警察の統計とに大きく開きがあるんですが、この原因についてお答えください。

樋口政府参考人 御指摘のように、厚生労働省と警察庁の統計に差があるのでございますけれども、一番大きな理由といたしましては、いわゆる無理心中事案と、それから出産直後に遺棄して死亡させるような、これをいわゆる産み落とし事案と呼んでおりますけれども、これにつきまして、警察では、殺人等の犯罪としてはきちんととらえているのでありますけれども、児童虐待としては計上していないということが一つございます。

 それから、警察では、事件として検挙をいたしましたケースでの数を計上することとしておりますので、被疑者の検挙に至らなかったケースでの死者数が入っていない。

 それからもう一つございまして、警察の統計は暦年の統計でございまして、厚労省の統計が年度単位になっているといったこともあろうかと存じます。

橘(秀)委員 どうもありがとうございました。

 続いて、通報ダイヤルについて、厚労省さんと警察庁さんにお伺いします。

 先ほどの大阪の、ごみ袋に入れて三歳の男の子を殺してしまったという事件については、全然その虐待情報がなく、そのまま亡くなったという事件でありました。なかなか情報が寄せられない中で亡くなるという事例がふえておりますので、まず第一報ということが本当に必要なことと思います。

 その点、警察庁の匿名通報ダイヤル、昨年の二月二十四日に、当時中井大臣、中井委員長でございました、そのときには、昨年の二月一日から児童虐待についても匿名通報ダイヤルの対象にするということ、それから、まだまだ周知が足りないので精いっぱい宣伝、広告をして、匿名で結構だから御通知をいただきたい、こういう周知徹底を図っていきたいと積極的に答弁をされておられました。

 お伺いしたいのは、生活安全局長に、匿名通報ダイヤルの運用状況について、その通報数、それから、検挙につながったときには情報料十万まで支払われるということですが、その情報料の支払い実績、さらに、児童虐待防止事案の通報についての特徴、それから支払いの有無があったかどうか、これをお答えいただきたいと存じます。

樋口政府参考人 匿名通報ダイヤルにつきましては、運用開始が平成十九年の十月からでございますが、昨年末までのトータルの件数でございますが三千百十件でございました。対象罪種が、事犯が三類型ございまして、人身取引事犯に関するものが二百三十件、少年の福祉犯罪関係が八百件、それから、去年の二月から対象に加えました児童虐待事犯の関係が三百五十二件でございました。これは三千百十件とかなり差があるのでございますけれども、その他千七百二十八件ございますけれども、これは、ほかの犯罪の通報でございましたり参考情報でございましたりといったものでございます。

 先に、この情報料の支払いに至った件数を申し上げますと、これまでに三件でございました。これは、その情報を主たる理由として検挙に至った場合、あるいは、児童虐待でありますと保護に至った場合に情報料支払いの対象になるわけでございますけれども、これまでに九件ございました。そのうちで、提報者が希望されて支払いに至ったものは三件でございます。

 最後に、この児童虐待関係の通報の特徴でございますけれども、先ほど三百五十二件と申し上げましたけれども、一番多いのがいわゆる泣き声通報、どなり声通報といったものでございまして、これが全体の四三・五%を占めております。その次に多いのが、怠慢または拒否、いわゆるネグレクトでございます、それと身体的虐待に関するものでございまして、こういった具体的な児童虐待が疑われるような内容の通報でございますけれども、これはそれぞれ二〇%弱を占めております。

 こういう通報をいただきますと、必ず警察といたしましては調査、確認を行うわけでございますけれども、その調査、確認を行ってみますと、大体七割以上が事実なしでございます。

 この三百五十二件で情報料の支払いに至ったものがあるかにつきましては、先ほども申し上げましたけれども、検挙または被害児童の保護に至った場合に対象になるわけでございますけれども、これまでのところ、対象になる通報はございませんでした。

橘(秀)委員 ありがとうございます。

 それでは、厚生労働省の児童相談所全国共通ダイヤルというものの運用実績と周知、広報について、小宮山先生が前、何かカードを配っておられたと思いますが、このことについてお伺いいたします。

小宮山副大臣 児童相談所の全国共通ダイヤル、これは、〇五七〇―〇六四―〇〇〇という、本当は三けたぐらいでできるといいんですけれども、番号がどうしてもこういうなかなかわかりにくいものになってしまうということもありまして、今広報に苦労しているところですが、この共通ダイヤルは、どこの地域でも共通の番号で最寄りの児童相談所にかかるようになっていまして、平成二十一年の十月から運用を開始しています。

 この利用状況ですけれども、昨年九月末までの一年間で一万九百八十七件。直近の平成二十三年二月までの一年五カ月間で二万三千五百七十一件となっておりまして、利用は増加しているんですけれども、もっとやはり周知を図っていく必要があると考えています。

 このため、昨年秋の児童虐待防止のための月間のときに、啓発のポスターですとか政府広報のCMを入れたり、これは政府全体として虐待防止に取り組みました。それと、今委員がおっしゃいましたように、チャイルドラインなどがつくっていましたような名刺大のカードをたくさんつくりまして、これは、虐待が起きたときの通報それから児童相談もできますよということを裏に書きまして、これを、民間でも随分いろいろやってくださっている方たちは多いので、どこでも配っていただけるように、それから、子供が行く小児科ですとか保健所とかいろいろなところに置いていただけるようにしてきたところです。

 これからも引き続きさまざまな方法で周知を図っていきたいと思っておりますし、利用がふえるとそれだけ児童相談所の対応の手数もかかるわけですので、昨年の補正予算で虐待対応の予算をふやしまして、臨時職員ですけれども、ふやすようにしております。

橘(秀)委員 ありがとうございます。

 今、小宮山副大臣からお答えもいただいたんですが、ちょっと問題点をあえて御指摘させていただくと、やはり警察庁と厚労省に分かれているということが一つであります。あと、番号も二つに分かれていることと、非常に覚えづらい。

 厚労省さんのこの番号というのはごろ合わせか何かあるのかわかりませんが、警察庁さんの方は〇一二〇―九二四―八三九、覚えてくださいということで「とくめいつうほうやってサンキュー」というごろなんですが、ちょっと私、考えたんですが、やはり番号は浮かびませんで、諸外国の事例を調べましたら、例えばフランスは一一九番という短い共通番号になっていて、ヨーロッパの諸国はみんな大体三けたで窓口一元化してやっているということがございます。小宮山副大臣言われたように、例えば、一一三番、いいさとか、一一四番で、いいよとか、そういう三けたのわかりやすい番号を導入していただきますことをぜひ政治主導で行っていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

 それから次に、親権の一時停止制度の導入について御質問させていただきます。

 配付資料、二枚紙、両面印刷のものをごらんいただきたいと思うんですが、民主党、野党時代の二〇〇〇年の議員立法、児童虐待の防止等のための体制の整備に関する法律案で第八条に民法の一部改正をやっておりまして、新旧対照表だけ抜き出させていただきました。

 八百二十二条削除というのは、これは懲戒権規定をばっさりと削除しようということ。

 それから、親権の喪失等については、今回一時停止は盛り込まれたんですが、このときの議員立法では一時停止も書いておりました。当時はなかなか法務省さんの方も率直に言って厳しかった。民事局長の答弁は、民法、刑法は不磨の大典ではございませんが、これは運用で全部できますよ、全くやりませんよというのが当時の答弁でございました。

 それからすると、今回の親権の一時停止ということ、本当に物すごい前進。ただ、十年間かかっての前進で、やはりこの間に失われた命であったり、児童虐待というのが子供の人格の破壊につながるものということを考えると、遅きに失したという感も非常に否めないところであります。

 親権の一時停止について、制度導入についての意義と、それから喪失の要件の緩和といいますか、本人を初めとして非常に広がっているわけなんですが、この一時停止の意義について、黒岩政務官よりお願いいたします。

黒岩大臣政務官 まずは、今から六年前でしたか、〇五年に、橘委員がまだ議員になる前でございましたけれども、今までの政治活動の研究を発表する場を私の選挙区である新潟県で開催されまして、そのときに委員が、児童虐待防止を含め、子の利益、福祉に本当に資する活動をしてきた、そしてこれからも活動していくというその思いを私聞きまして、そしてその後も今鋭意取り組んでいることに本当に心から敬意を表す次第でございます。

 今委員から、親権喪失の要件は緩和されているようだが、その改正をした目的は何か、あと、意義も含めて御質問がありました。

 現行法では、親権喪失の原因を「父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるとき」と規定しております。しかし、実務におきましては、この規定のみならず、親権の濫用等があり、それによって子の利益が著しく害されているときに親権喪失の宣告が可能であると解されておるところでございます。

 しかし、文言上は、子の利益が著しく害されている状況があるといった点が明示されていないなど、必ずしも意味、内容が明らかではなく、この点を明確にするのが適当であると考えました。そこで、本法律案においては、親権喪失の原因を「父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」と改めることとしております。

 したがって、本法律案は、親権喪失の原因を実質的に変更するものではございませんけれども、あくまでも子の利益に着目をいたしまして、要件を明確にしたものだと承知をいたしております。

 次に、現行の制度の問題点について述べさせていただきますけれども、現行の親権の喪失制度については、まず、その要件が厳格でありますことから、その要件を満たすまでには至らない比較的程度の軽い事案で、必要な親権制限をすることができないという問題点が指摘されております。次に、その効果が大きい、すなわち喪失については期限の定めがありませんので、そういった効果が大変大きいことから、父母が改善の意欲を失い、親権喪失後の親子の再統合に支障を来すおそれがある、こういった問題点も指摘されております。

 したがって、なかなか申し立てがちゅうちょされる一因となっているという指摘を受けまして、親権停止制度の創設を今回予定しておるんですが、その趣旨について述べますけれども、本法律案により親権停止制度が設けられることによりまして、まず一点目は、親権を喪失させるまでには至らない比較的程度の軽い事案、二番目といたしまして、一定期間の親権制限で足りる事案におきましては、必要に応じて適切に親権を制限することができるものとする、これが趣旨であると考えております。

橘(秀)委員 ありがとうございました。

 児童相談所の申し立てで家裁が認めた親権の喪失宣告というのは、三十五年間で実は三十一件しかないという、本当に、もうごくごく少ないものでございましたので、これを契機にふえていくこと、裁判所の方は大変とは思いますが、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 それから、親権停止中の親への指導や支援ということ、新しくできて、これは非常に重要になってくると思います。先ほど、山崎先生の質問の中でもガイドラインの御説明があったと思うんですが、あわせて、虐待した親が素直に指導勧告に従うとはなかなか思えないところがございます。これについての抜本的対策というか、切り札があればお答えいただければと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 切り札と言われましても、なかなか難しいところがございます。

 児童虐待を行った親に対しましては、児童相談所が児童福祉司指導措置等をとる場合には、児童虐待防止法十一条第二項に基づいて、その親は指導を受けなければならないことと既にされているところでございます。そして、その親が指導に従わない場合には、同じく児童虐待防止法の十一条三項におきまして、都道府県知事は指導を受けるよう親に勧告することができるとされておりまして、さらにこの勧告に従わない場合で必要があるときは、一時保護だとか、あるいは児童福祉法の二十八条の規定による措置をとる等、必要な措置を講ずるものとされております。

 しかしながら、委員御指摘のとおり、現状におきまして、この児童相談所の指導措置等に従わない親が存在しているのも事実でございます。

橘(秀)委員 そこで、私はもうちょっと裁判所の関与というのも強めるべきではないかという考えを持っています。

 今回、法律では全く盛り込まれなかったことでございますが、例えば、諸外国の例になりますが、裁判所の方で親に対してカウンセリングの受講義務を課していく、この受講義務を真っ当に受けているか受けていないか、これによって親権を回復させるなり様子をうかがうということをやってもいいんじゃないかと思います。

 今回の法制審の議論の中で、漏れ伝わるところによると、相当裁判所側からの抵抗が強くて盛り込まれなかった事項もあったという内輪話も少し耳にしておりまして、もうちょっと裁判所の方で積極的に行っていただければという思いも持っているところであります。

 問いでありますが、親権停止の裁判の中で、親への一定の勧告をすることができないのか、このことについてお伺いします。

豊澤最高裁判所長官代理者 親権停止の審判につきましては、そもそも親権者が審判書の名あて人となっております。その関係で、これと異なる児童福祉法二十八条審判における指導勧告制度と同様のものは予定されておらない、そういうふうに理解いたしております。

 もっとも、親権停止の審判につきましては、本法律案におきまして、「父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき」という要件が定められており、また、「親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、」親権停止の期間を定めるものというふうに規定されているところでございます。

 したがいまして、家庭裁判所の審判書には、親権者の養育態度、養育状況の問題点といった親権行使の不適切さを基礎づける具体的な事情であるとか、その改善の見込み等について必要な記載がされることになるものと考えております。これに基づいて児童相談所における保護者指導に資することになるものと考えております。

 以上です。

橘(秀)委員 ありがとうございました。

 御答弁の中で、家裁の審判書の中で親権停止になった理由とか養育態度について書かれるということなんですが、非常に消極的というか、やはり決め手になるものでは全然ないと思いますので、よりもう少し議論が必要、対策が必要と考えるところであります。改善をお願いしたいと思っております。

 それから、親権の一部停止について、残念ながらやはり見送られているところ。昨年二月の千葉法務大臣の答弁の中では、「身上監護権について一部あるいは一時停止のような仕組みがやはり必要なのではないか、そういうことを政務三役も念頭に置きながら、法制審でしっかりとそれをまとめていただくような議論をということでお願いをした」「ぜひその方向に実現できるように」という答弁をいただいておりまして、この点、一部停止について見送られたことは非常に残念であります。ただ、児童福祉法の中で一部取り入れられて、施設長の権限について、場合によっては親権の一部を制限するという実質のことにはなっていると思います。

 身上監護権だけの停止の制度、例えば身上監護権の具体的な中身は、八百二十条から二十三条まで、監護教育権、居所指定権、懲戒権、職業許可権、そのほかに医療同意権とか、そうしたことがあると思います。親権の制限というのは、私はできるだけ小さいところにとどめるべきだと思っています。例えばインフルエンザの接種の問題であったり、居所指定権であったり、そういう、本当に小さく小さくとどめるべきだと思っているんですが、このことについても後ほど御答弁をいただきたいと思っています。

 ドイツの仕組みだと、親権を監護という用語に改めて、身上監護と財産監護に分けて、どちらか一方の剥奪の規定、さらに、裁判所の方が柔軟に、その時々に、どの部分を部分的に、一時的に制限するのかあるいは解除するのかということに非常に強くかかわっているところと思います。この方が非常に合理的と思っているんですが、この親権の一部停止について導入されなかった、非常に残念であります。江田大臣、御答弁をお願いします。

江田国務大臣 委員御指摘のとおり、親権に対する制限というものは最小限にすべきである、これはそう思います。ただ、その最小限というのがどういうふうに設定をするかというのはなかなか困難で、一部を制限する制度という議論があったことはよく承知をしております。

 法制審の児童虐待防止関連親権制度部会でも、審判によって親権の一部を制限する制度として、いわゆる身上監護権のみを制限するとか、あるいは事案ごとに必要な部分を特定して制限をするとか、いろいろな制度の検討が行われたと承知をしております。

 しかし、これがまたいろいろな反対論もございまして、例えば、身上監護権を適切に行使することはできないけれども財産管理権だけはちゃんと適切に行使できるというような、そういう親権者というのはなかなか想定されにくいとか、あるいは、身上監護権のみを有する未成年後見人が仮に選任されたとして、この人が、例えば契約などについての法定代理権や同意権、こういうことがないと、本当に子供の安定的な監護を全うすることができるのだろうか、そうしたようなことが問題点として指摘をされまして、結局、答申では一部の制限という制度は設けないということに至ったものですから、本法律案においても一部制限という制度は入れていないということになりました。

 事案ごとに適切な部分を特定して制限する、これも、制限をされていない部分について不当な親権行使を繰り返すというようなこともあったり、あるいは、一部の制限、これを限定的にということで本当に子供の利益を保護する制度として十分になるかというようなこともあり、さらにまた、制度設計の仕方いかんによっては、相手は家庭ですから、家庭に対して国家が過度に介入するというようなことになってしまうというような問題点が指摘をされました。

 家裁の裁量はもちろん重要なことですが、やはり家庭裁判所といえども国家ですから、余りそこの裁量が過ぎてもいけないということで、時期を限っての制限という制度にとどめたわけでございます。

橘(秀)委員 ふだん論旨明快な江田大臣なんですが、率直に申し上げて、答弁書を読んでいただいていると思うんですが、全く納得いくものではありませんでした。

 例えば、宗教上の理由から医療ネグレクトをやったとき、手術を子供に受けさせないとか、そういうのはまさに身上監護権のみ。しかも、このときには、この事例では親権の喪失という宣告をせざるを得なかった、その後、治療が終わってから回復をさせたという事例もありましたので、容易にこうした事例はたくさんあります。児童虐待の問題というのは、財産管理権の問題ではなくて、まさに体の部分、身上監護権の問題だと思いますので、それはちょっと理由にならないのではないかという思いをいたしました。

 率直に、実務が大変になっていく、裁判所のいろいろな問題があると思うんですが、そうした実務が大変になるとか司法の権威とか、そういうことよりも、子供の命と人権に関して、やはりそっちの方が重いと思いますので、今後また政治主導でここのところはきちんとグリップをしていただければと思っております。

 それから、先ほど、児童福祉法の法案の改正の中で、施設長の権限の強化ということがありました。病気の子供を入院させるかどうかの判断は施設長の方が優先をするということ。ただし、非常に迷う事例、私も実は児童養護施設の方で二カ月研修をして、子供にかみつかれるとかいろいろな思いをしてきたんですが、軽度の知的障害を持ったお子さんが非常にふえているようであります。そのときに、親の意向としては普通学級に入れたい、だけれども、施設長の判断としては特別支援学級に入れたい、こういう判断が分かれるというときに、本当に微妙な話でありまして、施設長の権限の強化というところは、非常に難しい問題もたくさんはらんでいるものと考えています。

 それから、施設長の資格についての問いをしたいと思います。

 もう皆さんだんだん記憶から薄れてきていると思うんですが、かつて、千葉の恩寵園の事件がありました。千葉県船橋市の児童養護施設で、結局、園長が傷害罪で逮捕をされる、それから園長の次男の職員は強姦で立件をされる、それで懲役四年の実刑判決を受けるという本当にひどい事件がありました。男の子の、子供の性器を切りつけるとか、強姦、洗濯機に、乾燥機に入れる、金属バットや木刀で殴る、施設長が主導してこれを行ったところでありました。

 一般に、児童養護の施設長さんたちは、本当にすばらしい人格者の方がなられています。私の研修先でもお寺の住職さんが施設長さんをされていたんですが、非常に心配なのは、平成二十一年度における被措置児童等虐待届け出制度の実施状況、これは、二十一年四月に施行された児童福祉法の改正で、児童福祉施設の中での虐待を通告していくという制度ができたわけなのでありますが、残念ながら、通告が二百十四件もあって、都道府県市で虐待と認められたものは五十九件、百二十人でありました。

 こうした児童福祉施設の中での虐待ということ、それから施設長自身が犯罪に、虐待にかかわったという事例がありますが、現状の対策についてお伺いしたいと思います。

 それから、児童養護施設で働く方、例えば児童福祉施設最低基準の四十二条の中で、児童指導員、保育士、嘱託医、栄養士など規定があるんですが、施設長についての資格要件が全くないのではないかということ。これは、まず資格要件が必要ということと、研修なり、継続してチェックする仕組みがどうしても必要と思うんですが、このことについて答弁いただきたいと思います。

小宮山副大臣 おっしゃるように、児童養護施設等の職員や施設長が虐待をするというのは、本当にあってはならないことだと思います。

 このため、平成二十一年四月に施行されました児童福祉法の改正で、被措置児童等虐待の通告等の制度というものを設けまして、それとともにガイドラインを作成して、研修による施設職員等の意識向上、また、子どもの権利ノートの中に通報できる電話番号なども書きまして、防止対策を進めていきたいと考えています。

 平成二十一年度、全国の被措置児童等虐待の通告等の総数というのは二百十四件ありまして、そのうち施設職員や里親からの暴力等があったと都道府県などが認めたものが五十九件。そういうことから、防止の徹底に一層努めていかなければならないと考えています。

 また、今回の法律改正に伴いまして、施設長などの資質の向上、また親権に関する制度の理解を進めるために、全国の施設長の研究協議会での研修などを行うということにしています。

 おっしゃる児童福祉施設の施設長の資格要件ですけれども、社会福祉主事の任用資格がある者とか、児童福祉司の任用資格がある者、児童福祉事業経験年数が二年以上の者、そのほか社会福祉施設長資格認定講習を受講した者と、非常に幅広く認めるような形になっているのは事実です。

 御指摘の施設長資格のあり方、それから研修の義務化について、ことし一月に設けられました児童福祉施設等の社会的養護に関する課題検討委員会で検討していきたいと思っていまして、少なくとも研修の義務化は私は必要だというふうに思っております。

橘(秀)委員 前向きな御答弁、ありがとうございました。

 虐待を受けて入った子供たちがまた施設内で虐待を受けるという悲劇を繰り返さないように、しっかりとした対処をお願いいたします。

 それから、個別事例のことについてなんですが、親のつきまといとか徘回への対策ということが必要だと思います。

 二十八条で強制入所になったときに接近禁止命令、前回の法改正でできたと思うんです。この強制入所の場合には接近禁止命令が出せるんですが、例えば民間のシェルター、父親から性的な虐待を受けて逃げ込んでいるような場合、接近禁止命令が残念ながら出せないということ。あとは、一時保護の場合も同様であります。この対策についてお伺いをしたいと存じます。

小宮山副大臣 おっしゃるように、接近禁止命令は児童福祉法第二十八条の強制入所等の場合のみということで、今回も、社会保障審議会でも、同意入所や一時保護の場合、また、年長のひとり暮らしの未成年者の場合などについても対象を拡大すべきだというような御議論もございました。

 ただ、接近禁止命令というのは罰則を伴うために、慎重に検討すべきという御意見もありまして、同意入所や一時保護の場合については、まずは面会、通信制限を適切に活用する。その上で、親が面会、通信制限に従わない場合は、強制入所等の措置に切りかえた上で接近禁止命令を発出する可能性があるということについて周知徹底を図るべきだ、ちょっと回りくどいと思われるかもしれませんけれども、そういうふうに段階を追って切りかえていくというような考え方。また、ひとり暮らしの未成年者につきましては、民法などの現行の制度の中でというような、そういう形に現在はなっております。

橘(秀)委員 ただ、実際に現場で、非常に時間との闘いが予想される中で、そんな回りくどいことをやっていたら事故がばんばん起こると思いますので、御対応いただければと思います。

 警察庁さんに、ストーカー規制法で対応の対象になるかどうか、お伺いしたいと思います。

樋口政府参考人 ストーカー規制法は、申し上げるまでもないんですけれども、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的でつきまとい等の行為を行うことを規制するということでございますので、結論を申し上げますと、児童に対する事案であっても同法の対象となり得るものと考えております。

橘(秀)委員 いろいろな法令を使ってやっていくことはもちろん大切でありますが、時間との勝負でありますので、ぜひまた対策を講じていただきたいと思います。

 最後に、つきまとい、徘回への対策で、DVと類似のケースでこうやって徘回する場合に、総務省さんの方に、住所の秘匿はできるのか、三輪官房審議官、よろしくお願いいたします。

三輪政府参考人 お尋ねの、児童虐待のケースにおきまして親への子の住所の秘匿につきましては、現在、各市町村長の判断で、住民票の写し等の交付、住民基本台帳の一部の写しの閲覧の制限が可能でございます。

 一方で、DVあるいはストーカー行為等の被害者につきましては、警察や配偶者暴力相談支援センター等から意見をいただくということによりまして、市町村長が制限の必要な方かどうかの確認を行うということが容易でありますので、総務省が、事務処理要領におきまして、住民票の写しの交付等の制限を行う、そういう仕組みをお示しいたしております。

 現在、児童虐待のケースにつきましてもこういった措置ができないかということで、厚生労働省の方から御相談をいただいているという状況でございます。

橘(秀)委員 ありがとうございます。

 ちょうどこの仕組みについて厚労省さんの方から総務省さんの方に相談があるということですので、両省連携してぜひこの仕組みをつくっていただきたいと思います。

 時間になりました。終わります。ありがとうございました。

奥田委員長 以上で橘秀徳君の質疑を終了いたします。

    ―――――――――――――

奥田委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま議題となっております本案に対し、青少年問題に関する特別委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明または意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、お諮りいたします。

 連合審査会において、最高裁判所から出席説明の要求がありました場合には、これを承認することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会は、委員長間での協議の結果、来る二十日水曜日午後一時から開会いたしますので、御了承をいただきたいと思います。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時一分散会


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