衆議院

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第9号 平成23年4月26日(火曜日)

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平成二十三年四月二十六日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 奥田  建君

   理事 滝   実君 理事 辻   惠君

   理事 橋本 清仁君 理事 樋口 俊一君

   理事 牧野 聖修君 理事 稲田 朋美君

   理事 平沢 勝栄君 理事 大口 善徳君

      相原 史乃君    井戸まさえ君

      大泉ひろこ君    笠原多見子君

      金子 健一君    川越 孝洋君

      京野 公子君    熊谷 貞俊君

      黒岩 宇洋君    黒田  雄君

      桑原  功君    階   猛君

      橘  秀徳君    中島 政希君

      野木  実君    三輪 信昭君

      水野 智彦君    森岡洋一郎君

      山崎 摩耶君    横粂 勝仁君

      河井 克行君    北村 茂男君

      柴山 昌彦君    棚橋 泰文君

      長島 忠美君    馳   浩君

      森  英介君    坂口  力君

      園田 博之君    城内  実君

    …………………………………

   法務大臣         江田 五月君

   法務副大臣        小川 敏夫君

   厚生労働副大臣      小宮山洋子君

   法務大臣政務官      黒岩 宇洋君

   最高裁判所事務総局家庭局長            豊澤 佳弘君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           石井 淳子君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  野木  実君     森岡洋一郎君

  水野 智彦君     金子 健一君

  北村 茂男君     馳   浩君

  柳本 卓治君     長島 忠美君

  漆原 良夫君     坂口  力君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 健一君     笠原多見子君

  森岡洋一郎君     野木  実君

  長島 忠美君     柳本 卓治君

  馳   浩君     北村 茂男君

  坂口  力君     漆原 良夫君

同日

 辞任         補欠選任

  笠原多見子君     水野 智彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)

 民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案(第百七十六回国会閣法第八号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

奥田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長原優君、厚生労働省大臣官房審議官石井淳子君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局豊澤家庭局長から出席説明の要求がありますが、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井戸まさえ君。

井戸委員 民主党の井戸まさえでございます。

 きょうは、総括質疑ということで、質問の機会をいただきました。ありがとうございます。

 まず、今回、民法の一部改正案に、離婚後の親子の面会交流や監護費用の分担の明示がされていることについて、子の福祉のために行うのだということを明確にするためにも、再度質問させていただきたいと思っています。

 四月十五日の法務委員会でもお聞きをいたしましたが、法制審の児童虐待防止関連親権制度部会で水野委員の方から、面会交流の明示を提案される際に、「条文の中に書き込むということがもし幾らかでも奪い合い紛争を緩和する要素がある力を持つことができるのだとすれば、必要な改正だと思います。そして児童虐待防止のための親権に関する制度の見直しという今回の改正とも、関連はある提案であろうと思って発言をさせていただきました。」と、離婚後の親子の面会交流、監護費用の分担の明示のことに関しまして、あくまで子の利益を中心とした、子の権利というところから述べられるべきだったんですけれども、ここのところが児童虐待防止とかそういったところの関連で出てきてしまっているということについて、私の方からは多少の違和感があるということもお伝えもさせていただきました。

 父母の離婚後、同居をする親だけでなくて、別居している親との関係をできるだけ維持することが子供の福祉にかなうことだという視点がきちんと議論がされないままここで法改正されることについては、やはり私は問題があったのではないかと思います。

 その後、四月二十日の法務委員会でも、駿河台大学副学長の吉田恒雄参考人からも、今回の改正内容というのが九六年の法制審答申の内容のまま変わっていないことについて、「その後の状況の変化、社会の変化もあれば学界における変化もあるわけで、それらの点についての十分な議論がなされたのかどうか」と懸念が表明もされております。

 家族法学者や弁護士の方々も、面会交流などの明示が、親権制度部会の最終回まで議論が全くなく、九六年の法制審答申のこの部分だけを切り取って、切り離して唐突に提案されたことに大変驚かれ、十分な議論が行われなかったことについて、そしてさらには、残された家族法の改正がどのような扱いになるのか、そこへの影響も懸念をされていました。

 大変重要なことなので、再度大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 子の監護について必要な事項として、離婚後の親子の面会交流及び監護費用の分担を明示した趣旨、また理念をお聞かせください。

江田国務大臣 審議の経過等について、委員の方からの御懸念を示されましたが、もともと面会交流あるいは監護費用分担というのは、離婚の際、七百六十六条第一項の、監護について必要な措置、これに含まれているというものであります。実務でもそのような解釈、理解の上でいろいろな話し合いを裁判所がリードしたりしていると思いますが、しかし、それでも明確でなかったということで、面会交流や監護費用の分担についての明確な定めなく離婚というのが成立してしまうということも多々ございました。

 そこで、その点を明確にするということで、監護についての必要な事項に含まれるということを明示したということでございまして、これは、別れても父と子、母と子、この関係が変わるわけではないので、そして、別れた後も、監護親だけでなくて非監護親ともいろいろな面会交流があることが子の福祉にかなう、子の利益にかなうという観点からこういうものを明示したということで、だれの権利だというと、それはいろいろな理解があるかと思いますが、子の福祉というのを第一に考えているということだと思っております。

井戸委員 今、子の福祉を第一に考えてのこの改正に至ったということ、理念も含めて御答弁をいただきましたけれども、その理念というのを具体的に実現していくためには、やはり円滑な面会交流、これを促していくような社会的な支援制度というのが大切だという認識は法務省も持っておられて、先般の御答弁の中でも、委託で面会交流支援の実態調査を行っているという御答弁がありました。おまとめになった調査報告書がどのように反映されているのか、これには注視をしていきたいと思っています。

 前回の質問でも触れましたけれども、離婚件数から考えても、面会交流は民間だけではとても間に合いません。公的な支援体制をつくっていくことが重要だということは指摘したとおりでございますけれども、広く支援を受けていただくためにも、今ある女性センターなど公的な機関の有効活用などもされたらいいのではないかと思います。また、人材の確保については、全国には弁護士会さんなんかもありますので、弁護士の活用など、今ある施設や人材の活用も検討されたらいかがでしょうか。これは原民事局長に御答弁をお願いしたいと思います。

原政府参考人 委員今言われましたとおり、面会交流が適切に実行されていくためには、当事者任せということではなくして、行政もそれをサポートする体制をつくっていくことが必要だと考えておりますので、法務省としましても、厚労省等関係省庁と協力して、そういうサポート体制の構築に向けて努力をしてまいりたいと考えております。

井戸委員 今、厚労省や関係のところとの連携をしながらという御答弁があったんですけれども、例えば、社会的な支援制度の充実、そして民法改正の今回の趣旨を実現するためには、まさにその関係する機関との役割分担、そして連携というものが必要だと思います。

 具体的に、関係省庁担当者連絡会議などの設置を検討いただければと思うのですが、これはいかがでしょうか。これは大臣にちょっとお伺いをしたいと思います。

江田国務大臣 おっしゃるとおり、いろいろな関係機関が、官民ともに面会交流が円滑に実施できるように協力してサポートしていくことは大切だと思っております。関係府省庁等との連携、これも必要不可欠であると考えておりまして、法務省としても可能な対応について考えていきたいと思います。

井戸委員 これは当然法務省だけではできないので、きょうは小宮山厚生労働副大臣にもお越しをいただいていますけれども、厚生労働省としてはどのようにお考えで、どのような対処を検討していくおつもりなのか、伺ってもよろしいでしょうか。

小宮山副大臣 厚生労働省では、平成十九年から養育費相談支援センターを設置しまして、ここで、養育費だけではなくて面会交流の相談にも応じています。平成二十一年度は、面会交流の相談を百三十四件ここで受けています。

 また、都道府県等を単位に設置されました母子家庭等就業・自立支援センターで、専門の相談員を配置しまして、養育費や面会交流の相談支援に応じています。平成二十一年度、こちらでは面会交流の相談を三百九十四件受けています。

 今後とも、専門の相談員を配置していない母子家庭等就業・自立支援センターに配置を進めるとともに、相談員の人材養成のための研修や関係機関との連携など、面会交流に関する相談支援体制の充実を厚生労働省としてもしっかり図っていきたいというふうに思っています。

井戸委員 今、面会交流の相談、百三十四件だとか三百九十四件という数字を伺って、やはり愕然とする思いです。監護が必要な子供たちの離婚というのが、年間ですよ、一年間に十四万件あるのに、今までやっていた相談の数というのがこの三百九十四件だとか、もう圧倒的に少ない。これがなぜうまくいかなかったのか、その原因というのを、小宮山副大臣、もう一回御答弁いただけますでしょうか。

小宮山副大臣 なかなか難しいところですけれども、離婚に至るのにやはり両親の間にいろいろな確執があるかと思いますので、その中でやはり子供のことを第一に考えるという視点が、当事者もそうですし、それをサポートする体制がなかなか整っていなかったということもあるかと思いますので、これからこういう法改正があることも踏まえて、ここは本当に、おっしゃるように省庁横断的に、ぜひ、子供を守る、子供の権利をちゃんと守るという意味から、しっかり取り組まなければいけないテーマだと私自身も思っています。

江田国務大臣 今、小宮山副大臣の言われたことだと思いますが、私など、かなり以前になりますが、民法を勉強したときには、やはり離婚の際に、監護親に子のすべての監護の権限を集中した方が、子供に対する監護、介護、教育、この軸がぶれなくてその方がいいんだというような、そういう理解があったと思うんですね。それが社会一般に、非監護親もやはり親、そして親子の関係は子供の成長に大事なんだ、そういう理解がなかなか広がらなかった根本だったのではないかという気がいたします。

 しかし、考えてみて、今、夫婦のあり方、これはもうさまざま、別れ方もさまざま、そんな中で、確かに、お互いどなり合いながら別れるというのでは、これは葛藤がずっと残って、会わせたくない、あるいは連れ去られる心配をする、そういうことがあると思いますが、そこはこれから、別れ方ももっともっと、スマートな、上手な別れ方というのがだんだんできてくるので、そうすると、非監護親と子との関係というのも、ずっと社会の理解も変わってくるのではないか。そうした社会の新しい理解を広めていく必要が今あるんだと私は思っております。

井戸委員 スマートに別れるというのは非常に難しい、体験者は皆さん思っていらっしゃることだとは思うんですけれども、やはりこれだけ件数が少なかったというのは、離婚するときに、例えば監護の費用のことだとか、また面会交流について、決めなければいけないことだという認識自体がなかったと思うんです。だからこその今回の民法の一部改正につながっていると思うんです。

 先般も、大臣いらっしゃらないときに、私は、協議離婚のときに、離婚届の中に、それを決めたかどうかというチェック欄をつくったらいいんじゃないかということも御提案をさせていただいたんです。そうすれば、そのとき、それが決まっていることが離婚するための要件では当然ないんですけれども、しかしながら、やはりこれは決めていかなければいけないことだということの認識、そして周知徹底というのをきっちりと図っていくべきだと思うので、ぜひともまたそれも御検討いただきたいと思っています。

 そして、今回、児童虐待の絡みでここで面会交流のことについて出てきたことについて、先ほども、十分な議論がなかったということも御指摘をさせていただいたんですけれども、前回聞きましたけれども、父母との面会交流だけでなくて、子供がその離婚後、例えば一緒に暮らしていない側の親の祖父母ですとか、または別れ別れになってしまった兄弟姉妹、あるいは子供と相当期間一緒に暮らした親族や里親などについて、諸外国の例を挙げて、検討するべきなんじゃないか、これに関しても面会交流の機会というものをきちっと制度化していくべきじゃないかということを質問させていただきました。

 その際に、原民事局長から、「昨今、我が国では小家族化、少子化が進んでおりますし、離婚や再婚も増加しているということでございますので、祖父母とか兄弟姉妹などが子供と面会交流をしたい、その面会交流を認める必要があるのではないかという議論が高まってきていることは承知しておりますので、この問題につきましては、議論の行方を見ながら検討してまいりたい」と、前向きに御答弁はいただきましたけれども、具体的には、どのような場でこうした議論が行われるのでしょうか。多くの当事者の関心もあるところなので、ぜひそのプロセスも明らかにしていただきたいと思います。原民事局長、お答えをお願いいたします。

原政府参考人 現段階において、具体的に、どの場で議論し、どういうスケジュールでやるということは、まだ確たるものは持っておりません。

 この家族法の民法の歴史を見ますと、昭和二十二年に日本国憲法の制定を受けて大改正がされ、その後、個別的な部分については見直しがされておりますけれども、家族法全体についての見直しというのは今までされていないわけでございます。

 家族法の部分について、婚姻、離婚法制につきましては平成八年の二月に答申が出ましたけれども、この答申自体についていろいろな御意見があって、その改正もまだされていない。親子法制全体につきましても全体的な見直しがされていないわけですので、やはりこういった家族法全体についての見直しというのは今後重要な課題だと思っておりますので、その中で、親と子だけではなくして、子に対して愛情を注ぐ祖父母あるいは兄弟との面会交流という話も、当然検討の対象にはなってくるのではないか、こういうふうに考えております。

井戸委員 家族法全般については後ほどまたお聞きをしたいと思っているんですけれども、その前に、懲戒権の規定が今回削除されなかったことについてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 今回の改正で、懲戒場に関する記述は削除されましたけれども、懲戒権の規定は残ってしまいました。委員会でも参考人から、この条項を削除すべきではないかという発言がありました。大臣の御答弁は、子に対する親のしつけのあり方には多様な意見があるとして、しつけとの境界線が非常に難しいという御趣旨の答弁だったかと思います。

 細かな法律論をここで論じるつもりはないんですけれども、規定を削除した場合に関しては、児童虐待の防止をするんだという強いメッセージを出すことになって、これは虐待防止に資すると思いますし、残ればその逆で、子供のしつけと称して行われる体罰や虐待というのは許されるのだという誤ったメッセージを出してしまう可能性もあったのではないかと危惧しています。

 将来的にはどのようにすべきだと大臣はお考えなのか、改めて伺いたいと思います。

江田国務大臣 懲戒についてはいろいろな議論がございます。懲戒という規定を削除するとしつけもできなくなるといった誤った受けとめ方があるという主張もあるし、そんな受けとめ方はないという主張もあるし、なかなかこれはエビデンスでもって証明することが極めて難しいところでございます。

 今回は、懲戒場は、もちろんこれはどこから見たって時代おくれに決まっているので削除しましたが、懲戒という言葉自体は残しました。しかし、私は、今はこういう立場ですが、民主党の担当の仕事をしていますときに、懲戒という規定を削除する法案をまとめたこともございます。これは、私がその担当ではないんですが、しかし、法務ネクスト大臣という立場で、民主党の提案としたこともございます。

 今回の改正の状況を見ながら、今後検討していく課題だと思っております。

井戸委員 ありがとうございます。また今後いろいろな議論をさらに深めていければと思っています。

 それでは、家族法の全般についてまたお伺いをしたいと思います。

 民法改正は、法制審議会が一九九六年二月に民法改正法律案要綱を答申して、ことしで十五年になります。しかしながら、いまだ実現をしていません。

 今回の改正では、九六年答申の一部が改正されるわけですけれども、ある意味、ちょっと釈然としません。子の福祉、子の利益であるならば、民法九百条四号ただし書きの、婚外子への相続分差別の撤廃こそ行われるべきだったのではないか。これを行わずに子供のためと言われても、本当にそうなのかということを思わざるを得ません。

 子供を嫡出でないと法で差別する国というのは非常に珍しくて、国連の各種委員会からたびたび勧告も受けています。子どもの権利委員会では、嫡出でない子という差別的な用語を改めるということも求められています。

 法改正をしないということは、法律による差別が解消されないだけでなくて、経済や財政ばかりを政治の中心ととらえて、人権を軽視し続けているのではないかと、この国のあり方というものも問われてしまいます。

 くしくも、九六年の法制審の審議を最も御存じのお二人、原局長と小宮山副大臣がいらっしゃるわけですけれども、お伺いをしたいと思います。

 まず、原民事局長に伺います。

 法制審議会から法律案要綱として答申されて、たなざらしとなっているものが、この九六年の民法改正法律案以外にあるかどうか、このことをお伺いしたいと思います。

原政府参考人 私が記憶している限りは、ほかにはないんだと思います。

井戸委員 十五年間たなざらし、そして、ほかにはそうしたものはないというようなお答えだったんです。

 今のお答えですと、まさに権威がある法制審議会の答申でも、民法改正というのは非常に困難な部分というのがあるということでしたけれども、例えば、九六年の法制審の答申というのは、そのままにしていくのか、それともどのようにやっていくのか。今度は大臣、今のお考えをお聞かせください。

江田国務大臣 これは、本当にみんなで十分に議論して合意をつくっていかなきゃいけないと思いますが、今回は、児童虐待の防止という観点から検討を加えて、そして、今委員お話しのとおり、中間報告になかったものを、パブリックコメントなんかで出てきたテーマとして、離婚のときの面会交流などが入ったというようなこともございますが、全般的な見直しではございません。

 今おっしゃる、平成八年の通常国会に提出すべく折衝を行った内容のもの、これは私はやはり必要なことだと思っておりますので、さまざまな御意見があることを踏まえながら、精いっぱい検討してまいりたいと思います。

井戸委員 特に、面会交流にしても監護権の問題にしても、十五年たっているわけですから、まさに今の段階でもっといろいろと、先ほどの父母の面会交流の話だったりとか、多分、今パブリックコメントだとかいろいろなところで聞いたらば、十五年前とは全然違うような、またさらに問題がいろいろなことが出ていたりとか、非常にいい議論というのもできたと思うんですね。だから、今回それがなかったまま民法の一部改正につながってしまったというのは本当に残念にも思います。

 子の福祉のためというのであったならば、その議論、前回の質問のときにも言いましたけれども、研究会のそうした研究のこともこれから出てくるといいますけれども、そういったことを踏まえた上での国会での審議とか、または法制審でまた新たにそうしたことを諮問していくだとか、そうした方法がとれた方が、子供の福祉のためという点からすれば、よりはっきりし、わかったのではないかなというふうに思っています。

 それでは、小宮山副大臣にお伺いをしたいと思っています。

 今回の、まさに今話したことなんですけれども、離婚後の面会交流の明示等については、九六年の法制審答申の一部を、親権制度部会の最終回の終盤で水野委員から提案されたものでした。提案のされ方も非常に唐突だったんですけれども、その際の委員の発言というものが問題ではなかったのかなというふうに思っています。

 ここで会議録の抜粋をちょっと読ませていただきたいと思います。

 この水野委員の発言なんですけれども、

 民法について法制審議会を通さないで改正をされるという可能性について、私はかねてより非常に危惧をしておりまして、もし万一そういうことになると民法の体系性と安定性が危うくなると思います。民法の改正は、議員立法で簡単になされるのではなく、是非法制審議会の民法部会を通していただきたいと思っております。もちろん本当はここできちんと議論をした上で改正をしていただきたいと願っておりますけれども、でも、もし、そういう必要性があるようでしたら、議員立法でされるよりはここでちょっと瞬時、お考えいただいて、かつ平成八年の段階でいったん答申が出ておりますので、その可能性を含んでお考えいただければと思います。

というような発言があります。

 家族のあり方や価値観というのが多様化する中で、家族に対する法や制度は、少しずつではありますけれども見直されてきました。しかし、変化のスピード、また法改正が追いつかないで、そのために法や制度のはざまに落ちて苦しむのが、子供や、また女性、そして少数の方々でした。自分も法のはざまに立って非常に苦しんだ経験を持っています。

 民法というのは部分的に見直していくのではなくて、継ぎはぎであれば、必ずそこにまた穴に落ちてしまってはい上がれない人たちが出てきてしまう。抜本的に見直されることが望ましく、そのためにも、家族法学者や現場を知る実務家、あるいは当事者を入れて、法制審議会でじっくりと議論されることが望ましいと思います。それもかなわないために、私自身も、議員立法に望みを託したからこそこの場所にいるわけでありますけれども、そうしたことへの取り組みから、小宮山副大臣も議員立法にずっと取り組まれてきたのだと思います。

 今回、国の唯一の立法機関である国会あるいは国会議員を軽視するような発言が親権制度部会の委員の中から出てきたことは、本当に極めて残念であります。また、このような形で法改正されたことというのは、今後の法改正の手続面についても、各方面から懸念がされているところです。

 政府や与党に対する厳しい意見というのは、女子差別撤廃委員会からのフォローアップ期限を前に、ますます厳しい目を向けられておりますけれども、議員立法を出し続けてこられた小宮山議員として、副大臣の御見解を伺いたいと思います。

小宮山副大臣 おっしゃるように、副大臣というよりも、この民法改正にずっと努力をしてきた議員としてお答えをさせていただきたいと思います。

 今、井戸委員がおっしゃいましたように、やはりこれだけ家族のあり方が変わっていて、それで十五年前にきちんとというか、法制審議会から答申が出されたのに、先ほど法務省の御答弁もありましたように、それが国会で審議をされてこなかった。その間にどんどん家族は変化をしてきているので、やはりこれは、腰を据えてしっかりと家族法の改正について法制審議会でも審議をしてもらうし、議員の中でも、それから国民的にも議論を深めていく必要があるというふうに考えています。

 今回は、虐待防止法をずっと議員立法でつくってくる中でも、何とか今回の親権の一時停止、一部停止を、前回の改正のときから早くやってくださいと法制審に申し上げる、それがとれる文章をきちんと法文の中にも入れましたけれども、それで進まないので、今回、虐待を受けた子供の親権に関してという限定をつけて、やむなくそういう形でやったという形だと思っていますので、今回、子供のためにはこれが一歩前進ですけれども、基本的には、やはりきちんとした家族法の改正の議論が進められていかなければいけないのではないか、そのように考えています。

井戸委員 これは江田大臣にお聞きをしたいんですけれども、先ほど私が紹介しましたように、法制審の中で、例えば議員立法の軽視だとかというような発言があったことに対してのコメントというか、お聞かせをいただければと思います。

江田国務大臣 法務省に責任を持っている私としては、やはり民事であれ刑事であれ、基本法を変えるというときには、これは内閣が責任を持って行う。その前提として法制審はきっちり通すということが必要だと思っております。

 ただ、今委員御指摘の十五年前の提案ですが、これはもう既に法制審を通っているわけでございまして、そういう意味では、立法の玄関までもうたどり着いているものでございます。それがなかなか、当時、政府の方、内閣の方で対応できなかったということで、当時野党であった我々の方が、議員立法でやるんだ、こういって取り組みを進めてきたので、議員立法ももちろん軽視をするつもりは毛頭ありませんが、やはり基本法中の基本法ですから、しかも法制審も通っているので、これが国会の御理解をいただけるようになるように、私どもも努力をしますし、議員の皆さんにおかれても御努力いただきたいと思います。

井戸委員 まさに、先ほど、法制審の答申がたなざらしにされているというのはこの問題だけだということだったので、玄関までは来ていますけれども、その至るまでの間には、十五年ですから相当変わっているんですよ。その場で変わっているんだったらば、また新たに例えば答申を出して、また法改正ということもできたと思うんですけれども、一回答申が出ているのでそのままになっちゃっているので、実際には、本当に今、私たちが生きる、そして離婚に関しての状況なんかも変わる、子供の虐待の状況も変わっていく中では、非常に手続的にはもったいないことをしているなという印象も私は持ちます。ぜひとも、この辺も含めて、さらに前進するために何が必要なのかということを、議論を深めていただければなというふうに思っています。

 私も〇九年の政権交代で当選をしてまいりましたけれども、多くの方々から、人権の面ではいまだに政権交代を実感できずにいると厳しいお声もいただいています。チルドレンファーストを掲げているわけですから、例えば、先ほど言いました婚外子差別を行うことは絶対許されませんし、国連中心主義を掲げながら、国連からの勧告に背いて差別を続けるのであれば、国際社会で名誉ある地位というものも占めることなどは到底できません。私も人権に関する政策を軽視していると仕分けられないようにしっかりと取り組みたいと思います。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

奥田委員長 次に、大泉ひろこ君。

大泉委員 民主党の大泉ひろこでございます。

 今回の法改正は、二年以内の期間に限って親権を行使できない親権停止の制度を新設するという、大変画期的な内容であると思います。また、多くの同僚議員も指摘されましたけれども、子供の監護、教育は子供の利益のために行われるということを明確化いたしまして、しかも懲戒場を削除した、これも大変よかったなと思っておりまして、全般を見て、非常に高く評価できるというふうに思っております。また、一時保護中に児童相談所長の親権代行も今回可能になりましたし、現場でぶつかってきた問題、特に児童養護施設、児童相談所の現場の問題をよく解決しているというふうに見ているわけでございます。ここで、長年問題だった児童の虐待防止の制度的担保ができたというふうに私は思います。

 したがって、私は、この法改正は九十点以上、若干残念なのは、たくさんの同僚議員が指摘されましたように懲戒権が残ったというところでございますが、九十五点はいくかなと思いますが、法務大臣は、この法改正に満点をつけられますでしょうか、あえて悔いの残るところはありますでしょうか。まずそこからお伺いしたいと思います。

江田国務大臣 私は一月十四日から法務大臣になったので、前任者のもとでこの立案というのはかなりの程度進んで、それを引き継いだものではございますが、私が責任者となって提出をしておるのでございまして、私としては、懲戒権など残ってはおりますが、今の状況のもとでは百点満点だと思っております。

大泉委員 ありがとうございます。多分、法務大臣の御答弁だなという気がいたしました。ただ、今の状況のもとではとおっしゃいましたので、状況が変わればまたこの内容も変わっていくというふうにも受けとめさせていただきました。

 今の満点の法改正を基礎にいたしまして、いい制度をつくってくださいました。しかし、制度ができても、現場ではなお、対応困難な問題は多いと思います。例えば、虐待の現場でも、児童相談所は立入調査権があります。調査権があっても、しかし、相手がやくざさんだったり怖いお父さんだったりするとなかなか踏み込めないというのがありまして、警察の協力なしには踏み込むことができないような場合も非常に多うございます。

 したがいまして、今回、法的担保はできたといいましても、親権を停止しても、親によっては、児童養護施設にやってきて、子供に対してのストーカー行為をやめないというような場合もあると思うんですね。子供をさらっていくという場合もあると思うんです。したがって、今後、親権を代行するようになりましたけれども、児童養護施設ももっと、この法的担保を本当に効果的に使うためには、児童養護施設自身の専門性を高める、あるいは体制を強化する、こういうことも条件になって初めて法的担保が生きていくんじゃないかというふうに私は思うわけでございます。

 児童養護施設については、ことし、タイガーマスク運動というので急に全国的に有名になったわけでございますけれども、今この時点で、児童養護施設の今申し上げた体制とか専門性とかを考えて、そのあり方についてどういう御方針を持っておいでになるか、小宮山副大臣にお伺いしたいと思います。

小宮山副大臣 委員がおっしゃいますように、児童養護施設については多くの問題があって、虐待防止法改正の中でもずっと取り組んでまいりましたが、なかなか進まない部分がございました。

 おっしゃるように、ちょうどタイガーマスクで関心が高まったその時期もとらえまして、ことし一月に、児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会というものを立ち上げまして、児童養護施設などの関係者の皆様で構成していただいて、短期的に解決できる課題はこの四月から省令改正などをしておりますし、中長期的に取り組む将来像についても今検討しております。

 その中で、施設の小規模化による家庭的な養護の推進ですとか、虐待を受けた子供に対するケアの充実、自立支援の充実などが課題でございまして、専門性や人員配置の充実が必要だと考えながらやっているところです。

 施設長につきましても、豊かな人間性を持って、一定の専門性を持つ人が必要ということで、施設長等の権限と親権との関係の明確化などを図る今回の改正法について、施設長などに制度の理解も深めていきたいと思っておりますし、資質向上を図るために、今余りきちんと規定をされていない施設長の研修、この点はぜひやっていかなければいけない。総合的にしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えているところです。

大泉委員 ありがとうございます。大変前向きに取り組んでおられることをお伺いいたしました。

 小宮山副大臣、もう一つちょっとお伺いしたいんですけれども、専門性につきまして、施設長の研修ということをしっかりやっていかれるということでございますが、例えば、法律に、施設長の資格に社会福祉士を持っているとか、本当に第三者が見てもわかるような専門性を取り入れていくというようなことはお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

小宮山副大臣 前回もお答えしたかと思うんですけれども、今、施設長になれる資質としては、いろいろな方がなれるような条件になっていますよね。ですから、それを、幅広く人材を何とか集まっていただきたいということと、今おっしゃったような専門性をどれだけ持った人にやっていただくのがいいのかということは、これからの大きな検討課題だというふうに思っております。

大泉委員 ありがとうございます。福祉の世界にもう少し第三者がわかる専門性を取り入れた方がいいかなと私は思っております。この質問は以上で終わらせていただきます。

 今、児童養護施設についてお伺いしているところでございますけれども、児童養護施設、最初は一九四七年の児童福祉法の立法でできたわけでございます。孤児、浮浪児を収容する施設としてスタートいたしましたが、終戦後の児童養護施設の数と、それから入所している児童の数、これらを石井審議官にお伺いしたいと思います。

石井政府参考人 児童養護施設は、児童福祉法が施行された直後の昭和二十三年には、全国で二百六十余りの施設がございまして、一万一千人の子供が入所しておりました。その後、施設の数もふえまして、ちょうどピークとなります昭和三十四年に五百五十五施設となり、約三万五千人の子供が入所するに至っております。平成二十二年三月末現在、児童養護施設の数は五百七十五施設でありまして、三万五百九十四名のお子様が入所されております。

大泉委員 ありがとうございます。

 終戦後、児童福祉法ができた直後は一万一千人というお話でございましたけれども、その後ふえていって、昭和三十四年には、言ってみれば、今と同じくらいのレベルに人数も施設数もなったということでございます。

 西暦でいうと一九九〇年代には児童養護施設も一時定員割れを起こしたりして、どうやって生き延びていくかというような時代もあったわけでございまして、そのときはちょうどデフレ経済に突入していって、お父さんがリストラされて、今度また児童養護に入れられるお子様方がふえてきた。それと同時に、家庭や地域の育児力の低下というのでしょうか、これが進んで、児童数がふえてきて、一時定員割れでこれはどう生き延びるのかと言っていたのが、児童養護施設がもっと必要になってきたというような状況に現在あるというふうに思われます。

 そこで、子供といえばやはり御専門の小宮山副大臣に伺いたいと思うんですけれども、最近の児童養護施設に入る方々、私が申し上げたデフレもあるけれども、家庭とか地域の育児力が低下したと私は見ているわけでございますが、このような見方を副大臣もなさっていらっしゃいますでしょうか。

小宮山副大臣 どういうことで家庭の育児力が低下したかとか、なかなかいろいろな要因が複合的にあるかとは思うんですけれども、やはり、核家族化が進み、それで非常に、今、一つの家庭の平均の人数が二・五人とか二・六人とかいうような状況になって、なかなか子育ての知恵とかが受け継がれないというようなこともあるかと思います。

 やはり、児童養護施設に限って見ましても、虐待を受けた子供の増加というのが今の著しい特徴だと思っておりまして、そういう意味で、近年、本当に入所児童数が、平成七年の十月から平成二十二年三月までに一・一三倍増加をしている。それでもまだ受けとめ切れなくて、もっと本当は必要としている子供たちがいるのだろうというふうに思っています。

 核家族化とか、あとは、地域の中の、やはりもう少し隣近所とのコミュニティーを再生するというようなことも、児童養護施設に入らなければいけない子供を減らしていくことには必要かとも思いますし、やはりこれは全体の経済状況、社会状況、いろいろな中で生まれてきてしまったものだと思いますので、これは衆知を集めて、何とかこういう児童養護施設が必要でないように組み立てていかなければいけない、考えていかなければいけないかなというふうに思っております。

大泉委員 ありがとうございます。非常によくわかりました。

 そこで、法律に戻ってちょっと確認したいことがございます。

 懲戒場は今回削除されたわけでございますけれども、懲戒場というのは、法務省の有権解釈によりますと、感化院、少年教護院、矯正院が該当すると考えられております。これらは今なくなってしまったわけでございますけれども、現在の児童福祉法の六十七条に、少年教護院を教護院とみなすという規定がまだ残っているわけでございます。もちろんこれは、一九四七年、児童福祉法ができたときに、教護院という福祉の措置で行われるもので、これは矯正施設ではないわけで、まして懲戒場でもない施設になったわけですけれども、経過規定として、懲戒場であったところの少年教護院を教護院とみなすという規定が現在も残っているわけですね。

 その教護院は一九九七年の改正で児童自立支援施設になって、現在では、福祉の措置で、児童の指導と自立支援を行う施設、児童福祉法の四十四条でなっているんですけれども、しかし一方で、その流れをくむ少年教護院というのが入っている。ならば、今回の改正のときにこの条文は削除すべきだったんじゃないでしょうか。これは残しておく理由があったのでございましょうか。これは石井審議官に伺いたいと思います。

石井政府参考人 委員御指摘のとおり、明治三十三年制定の感化法の感化院が、昭和八年の少年教護法で少年教護院となり、さらに昭和二十二年の児童福祉法で教護院に改めております。

 少年教護院は、親権者または後見人がない少年や少年審判所から送致された少年を入所させるという本来の役割に加えまして、裁判所の許可を得て懲戒場に入るべき者を入所させる役割も持っていたにすぎませんで、これは児童自立支援施設が懲戒場から発したというわけではないというふうに考えております。ちなみに、児童福祉法の教護院は、懲戒場に入れるべき者を入所させる役割は、法制定当初から規定はされていなかったところでございます。

 児童福祉法六十七条、これは現在あるわけでございますが、これは児童福祉法施行時に存在していた少年教護院を児童福祉法の教護院に移行させた規定でありまして、この移行の規定自体は、現在の民法八百二十二条に規定をする懲戒場の規定とは無関係でありますので、削除する必然性はないと考えたところであります。

 ちなみに、児童福祉法六十七条、これは昭和二十二年の同法制定時の経過措置を定めたいわば附則でありまして、この附則の条番号が本則からの通し番号になっている関係で、これは古い法律に見られております附則というのがややわかりにくいような規定になっておりますけれども、これはあくまで附則でございます。

 附則につきましては、おおむね付随的な事項を定める部分でありまして、法令の施行期日とかあるいは経過とか、そういうものを定めるわけでございますが、新法制定時のさまざまな交通整理について定めた条文は改正がされないのが一般的でありまして、六十七条はそうした内容の条文というふうに受けとめているところでございます。

大泉委員 大変難しい説明がなされましたけれども、もちろん、少年教護院と現在の児童自立支援施設と、それは、片や福祉施設でございますので、違うということを前提で伺ったわけでございますが、一般的にこういうものは削除する必要はないということでございますが、置いておく必要もないと思うので、そういう合理性も必要じゃないかなというふうに私は思います。これはコメントにとどめておきたいというふうに思います。

 今、児童自立支援施設について伺いましたので、続きまして、親権制限については、主に児童養護施設の方の需要からきた改正ということであろうと思うんですけれども、この児童自立支援施設でも親権制限をしなければならないケースというのはありますでしょうか。引き続き、審議官、お願いいたします。

石井政府参考人 児童自立支援施設では、入所する子供のうち虐待を受けた経験があるお子さんの割合が六五・九%と高くなっております。

 このため、児童自立支援施設におきましても、親が繰り返し不当な主張をする場合など、やはり施設長が親権制限をしなければならない場合はあるものと考えております。

大泉委員 ありがとうございます。

 児童自立支援施設にタイガーマスクがあらわれなかったので余り有名にならなかったんですけれども、こちらの児童自立支援施設についても、二〇〇六年ですか、あり方研究会というのが行われて報告が出ておりますけれども、この報告に対して、政策をつくってこられた、あるいは改善されたことはありますでしょうか。引き続きお願いします。

石井政府参考人 委員御指摘のとおり、二〇〇六年の二月に、有識者や施設関係者で構成する児童自立支援施設のあり方に関する研究会の報告書が取りまとめられておりまして、この報告書は、児童自立支援施設における育て直し機能の充実強化などについて記載をしているものでございます。

 これを受けまして、児童福祉施設最低基準を、平成十九年度、改正をいたしまして、児童自立支援施設の長あるいは児童自立支援専門員等の任用資格を厳格化いたしております。それから、各施設における先駆的実践プログラムの集約や、専門的支援、援助技術に関する調査研究等の実施による施設運営体制の充実強化や、入所児童に対する援助技術の向上についても図ってきておりまして、さらには、自立支援計画等の作成、進行管理等を担う基幹的職員の配置を平成二十一年度からスタートするなど、その体制の強化というのを図ってきているところでございます。

大泉委員 ありがとうございます。ぜひ、児童自立支援施設も児童養護施設と同様に、前向きに検討していただければと思います。

 これはかつてでございますけれども、児童養護施設というのは父子家庭が多い、児童自立支援施設は母子家庭が多いという事実を把握したことがございます。今から十何年か前のことでございますけれども、このときよく説明されておりましたのは、父子家庭の場合、父親は小さな子供の面倒が見られないから児童養護施設に預ける、母子家庭の場合はこういう説明ですね、お母さんは社会的規範を教えるのが下手である、これは父親の役割であるというふうな説明がされていたことがあるんですけれども、現在も、児童養護施設は父子家庭が多くて児童自立支援施設は母子家庭が多く、またこのような説明がされているかどうか、副大臣に伺わせていただきます。

小宮山副大臣 平成二十年現在で、児童養護施設に入所している子供のうち、父子家庭が一五・七%、母子家庭が三五・六%となっています。それから、児童自立支援施設では、父子家庭が一一・三%、母子家庭が三九・八%となっておりまして、ともに母子家庭の方が多いんですね。

 ただ、児童養護施設で父子家庭の割合が児童自立支援施設を含むほかの施設よりも若干高い理由としましては、児童養護施設では、父子家庭で父が就労などによって子供が見られない、こういうことから高くなっているのかと思います。

 父子家庭、母子家庭にかかわらず、保護が必要とされる子供はしっかりと見られるようにしていく必要があると思っておりまして、できる限り家庭的な養育環境が重要でして、児童自立支援施設では、一定の正しい生活による支援、そういう側面も持っておりますので、こうしたことも含めて、先ほど申し上げました今立ち上げている検討会の中で、今後、社会的養護をどういうふうに充実していくかということもしっかりと検討していきたい、そのように思っております。

大泉委員 ありがとうございました。数字ではっきりお答えくださいましたので、男女平等を推進していらっしゃる小宮山副大臣です、先ほどのような御説明をしていただきたくないと思っておりましたので、結果的によかったと思います。

 それで、ちょっと話題をかえまして、すごく古い話なんですけれども、旧民法は一八九〇年に立法されましたけれども施行されなかった、一八九八年、八年後に改めて制定されたというふうに聞いております。物の本によれば、一説によれば、一八九〇年、施行されなかった民法は、当時のおめかけさんを家族に入れていたけれども、鹿鳴館時代に、条約改正のために、西洋の一夫一婦制でないと条約改正もできないから変更されたのが一つの原因であるという本を読んだことがございます。その真偽のほどは別として、一夫一婦制になって、それで家制度が一八九八年に創設されたわけでございます。

 すごく古い話ですが、この一八九〇年の最初につくった民法が施行されなかった理由というのを民事局長に伺いたいと思います。

原政府参考人 我が国の民法の古い歴史のことになりますが、一八九〇年に公布されて一八九三年に施行される予定になっておりました旧民法は、財産保護の部分はフランスから招聘されましたパリ大学のボアソナードが起草したものでございますし、家族法の部分は日本人が起草したんですが、フランスから留学帰りの者が起草したということで、全体的にフランス法の影響を大きく受けていた内容であったということでございます。

 したがいまして、旧民法が公布されますと、我が国の伝統的な家族制度を初めとして、よき伝統が崩壊してしまうんじゃないかという批判が起こりまして、当時、民法出て忠孝滅ぶというようなスローガンも出たということで、いわゆる法典論争にも発展したということで、旧民法は施行が延期され、その後、ドイツ民法が当時草案が出ておりましたので、フランス民法にドイツ民法を合わせた形で一八九八年にいわゆる明治民法が制定された、こういう経緯があるようでございます。

大泉委員 格調の高い御答弁、大変ありがとうございました。

 旧民法ができて百年以上たったわけでございますが、先ほど同僚議員の質問の中にもございましたけれども、家族や社会の変化で時代に合わなくなった場合には制度を変えていかなければならないというふうに思います。今回は児童虐待をきっかけにして民法改正が行われたので、このこと自体はすごく画期的なことだというふうに私は思います。

 そして、このことの背景には、子供が親の所有物ではなくて、社会の子供という概念が入ったからではないかというふうに私は今回の改正について思うんですね。親、親たらずの親に対して、国が、言ってみれば家庭に介入します。親にかわって子供の権利を守るという概念が許されたのではないかというふうに私は思うんですけれども、この件につきまして、小宮山副大臣と法務大臣、お二人から御答弁いただければと思います。

小宮山副大臣 おっしゃいますように、やはり家族の形が変わり、そして国連の子どもの権利条約を世界の各国が、最も多くの国が批准している、こういう条約もできたりしました。

 ただ、日本の中ではどうしても、子供は保護するもの、守ってやるものということが強過ぎましたので、そういう意味では、やはり子供の権利を、親の権利が強過ぎるというのではなくて、やはり同等の人格としてきちんと子供の権利も守る、そういうことの第一歩かなというふうには思っております。

江田国務大臣 子が親の所有物ではないんだ、これは、戦後、今の民法の家族法がスタートしたときから同じ考え方であると思っております。

 ただ、親の所有物ではないんだ、子供は子供なんだ、子供としての主体性があるんだというのがなかなか社会一般の常識にまで成熟していくには若干の時間がかかったかと思っておりますが、その成熟に伴って、現在では、親権というのは子の利益のために行わなければならないということが、次第に社会の法的な確信に支えられるところまで来ているんだと思っております。

 社会の法的確信というのは、つまり、親が子育てにおいて足りないところがあれば、それは社会をいわば代表する形で国がそこに介入することもあり得べしということで、親権の喪失の制度なんかもずっとあったわけですが、喪失をさらに使いやすくするために、今回の親権の停止という制度を創設するに至ったということだと思っております。

 いずれにしても、子供というのは、家族にとってもあるいは両親にとっても未来の宝であり、同時に社会にとっても子供は未来の希望でございまして、社会みんなで育てていきたいものだと思います。

大泉委員 ありがとうございました。大変わかりやすい御答弁をお二人からいただきました。

 先ほど同僚の議員からもございましたけれども、家族法の改正というのは大変難しいことであると。言ってみれば、民法の家族部分、家族法というのは、あかずの間というんですか、あかずの扉というんでしょうか、そういうものであり続けたんじゃないかなと思います。今回それが開かれたと私は思います。

 しかしながら、先ほど同僚議員からの指摘もございましたが、これまでも議論のあった、例えば非嫡出子の相続の問題とか、あるいは、出ては消え出ては消えの夫婦別姓の問題とか、いろいろな家族法にかかわる問題は頓挫してきているんじゃないか、頓挫という言葉がよろしければですね。

 そういう中で、余り指摘されたことはないんですけれども、もう一つ、児童虐待と並んで、今、高齢者虐待というのも非常に増加をしております。身体的虐待もあるし、それから、親の年金をとってしまうというような経済的虐待もある。

 そういうものが非常にふえているんですけれども、親をだれが見るかというものについて、今の民法では難しいところがあります。もちろん、よくも悪くも、かつて旧民法では家督が相続しておりましたが、親をだれが見るかというのは均分相続とも非常に関連をしているわけでございます。

 ヨーロッパの国では、親の扶養義務をなくした国もあるというふうに聞いておりますけれども、これは最後の質問になりますが、家族法の将来の課題として、今度児童虐待に対応する措置ができたんですけれども、老人虐待に対応する民法上の検討というのはされるかどうか。つまり、先ほど、子供は社会の子供と申しましたが、お年寄りも社会のお年寄り、社会介護をする制度に合っていくような民法改正というのは検討する方向はありますでしょうか。それを最後に伺いたいと思います。法務大臣にお願いいたします。

江田国務大臣 高齢者の虐待の防止が重要な問題になっていることはよく承知をしておりますが、高齢者虐待防止というのは、やはり第一義的には、行政による対応によって迅速に解決するということが望ましい問題だと思います。しかし、高齢者、みんなの将来、みんなのあすですよね、これを社会で支えていこうというのもまた当然で、こうしたことから公的な介護の制度も導入をされ、これもいろいろな問題を含んでおりますが、さらにいいものにしていかなきゃいけないというのは当然です。

 ただ、介護の問題は民法の問題とはやや違って、民法の問題ということになりますと、やはり財産の管理が問題、財産の管理の能力に問題があるという場合に成年後見制度などがこの役割を果たすということでございます。この成年後見制度というのは家族法の、民法の世界の問題ではございますが、家族法と高齢者虐待の関係は引き続き注視をしていきたいと思います。

大泉委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。

奥田委員長 次に、馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳浩です。よろしくお願いいたします。

 先週、四月二十日の連合審査会に引き続いて、子供の連れ去り問題から質問をさせていただきます。

 子供の最善の利益を重視する姿勢を一段と今回の民法改正で出しました。ならば、未成年者の子供がいる夫婦間で起こった子供の連れ去り問題は、子供の最善の利益をしっかりと勘案して、慎重に裁判所の決定をすることが今回改正の立法趣旨の一つだと私は思いますが、大臣としての見解をお伺いしたいと思います。

江田国務大臣 夫婦の間で子の奪い合いが生じた場合の子の引き渡し、これは、現在、家事審判法では、民法七百六十六条の子の監護について必要な事項として家庭裁判所が判断するわけですが、その場合に、本法律案で「子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」という理念を明記しておりまして、これはもう委員の御指摘のとおりだと思っております。

馳委員 具体的には、DV防止法上の保護命令を出すときも、より慎重に適正手続を踏んで行うこと、不当な連れ去りは、場合によっては児童虐待となる場合もあること、監護親を決定する場合に、不当な連れ去りは不利に働き、逆に、面会交流に積極的な親が監護親の決定に有利に働くこと、面会交流の約束を正当な理由なくほごにした場合、監護権者変更の重要な要素となるなど、これらの四点をしっかりと制度化していくべきではないかと思いますが、いかがですか。

江田国務大臣 DV防止法上の保護命令は適正手続が必要だ、あるいは子の連れ去りが場合によっては児童虐待になる、あるいは監護権、監護親を決定する場合に不当な連れ去りが不利に働くように、面会交流に積極的な親が監護権決定に有利に働くように、あるいは面会交流を正当な理由なく破ったら監護権者の変更の重要な要素になり得るというような御指摘は、いずれも一般論としては異論ありません。重要な指摘だと思います。

 ただ、この一般論を法制化するということになりますと、その必要性とかあるいはルールとしての明確性、ほかに考慮すべき要素がないかどうかなど、いろいろ考慮しなきゃならぬ点がございまして、今の段階では慎重な検討が必要だと思います。

馳委員 続いて、共同親権、共同監護権の問題について質問をさせていただきます。

 このテーマで質問をする私の意図は、離婚をしても親としての機能は共同で果たすべきであるという、この大原則にのっとっての私の質問の趣旨であります。

 まず最初に、今回の改正で子の最善の利益を軸に改正が行われましたが、このような流れの中で、さらなる進化形が共同親権、共同監護の導入だと私は考えており、伺います。

 先進主要国で共同親権、共同監護権を導入している国はどこですか。選択導入も含めて教えてください。

江田国務大臣 私も直接にそれぞれの主要先進国の法制に自分で当たったわけではございませんが、私が知っている限りで言えば、ドイツにおいても、フランスにおいても、あるいはアメリカにおいても、選択肢ということも含めて、いずれも離婚後の共同親権制度を採用していると承知をしております。

馳委員 我が国では、共同親権、共同監護権について法制審議会等で検討されたことはありますか。もしされていないのなら、これだけ学界やマスコミ等で議論をされているのに、なぜされていないのでしょうか。

江田国務大臣 これも直接存じ上げているほど知識が博学ではありませんが、法制審議会民法部会の身分法小委員会というのが昭和三十年七月にまとめた親族法の仮決定及び留保事項中において、離婚後も共同親権とするか、なお検討を要するというようにされたと承知をしております。

 さらに、法制審議会民法部会身分法小委員会が平成三年から婚姻及び離婚制度全般について見直しを審議して、平成六年七月にまとめた要綱試案では、これも共同親権の制度については今後の検討課題とするとされたということで、検討はされたがいずれも今後の課題とされているということでございまして、検討していないわけではないです。

馳委員 では、伺います。

 どうして単独親権でなければいけないんですか。

江田国務大臣 これは、私なんかが民法を勉強したころには、共同親権ということになりますと、子供の監護、教育方針がどちらか統一されない、子供の価値観の分裂とかそういうものにつながって、やはり子供がすくすく育つには、監護、教育方針というのはどちらか一方で専ら行われた方がいい、そういう考え方であって、さらにまた、離婚に至った夫婦のトラブルがそのまま離婚後も持ち越すことになってしまうとか、あるいは共同親権だとどうしても適切な合意がなかなか難しいとか、いろいろそういうようなことが言われたということだと理解をしております。

 そのいずれもが、今も妥当するかどうか、これは今日においてはなお議論を要する、そのとおり今も当てはまると単純に言える問題ではないと思っております。

馳委員 今回の改正で、離婚後も親子のきずなを絶つべきではない、親子の継続的交流が基本的には子の最善の利益に資すると価値判断されているのであるならば、当然、離婚後の共同親権、共同監護権も、選択的にでもできるようにすべきではないですか。いかがでしょうか。

江田国務大臣 面会交流が離婚の際の監護について必要な事項の具体例として条文に明示されて、しかも、この決定については「子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」という理念を明記したのは、これは委員の御指摘の考え方を踏まえたものだと思っております。

 ただ、そのことと離婚後の共同親権、共同監護権といった制度とがそのままストレートに結びつくのかというと、必ずしもそうではないので、親権を持つ親が監護親になり、しかし、非監護親、つまり親権のない親も親子関係というのはあるから、子がすくすく育っていくためには、もちろん適切に行使されなきゃいけませんが、面会交流が非常に有益だという考え方で今のようなことを導入しているわけで、繰り返しですが、そういうことを導入するから直ちに共同親権の方がいいんだという結論には結びつかない。しかし、それがだめだという趣旨でもありません。

馳委員 今回の改正で、民法の親権規定の体系からも、共同親権、共同監護が認められないのはおかしいのではないかと私は考えています。

 なぜなら、今回の民法第八百二十条の改正で、子の利益のために親権が行使されること、そして民法第八百十八条第三項で、子の利益のために、婚姻中の親権は共同行使、すなわち共同親権と定められていること。しかし、それが離婚すると、いきなり単独親権と決め打ちされてしまいます。子供の最善の利益といいながら、離婚したら、何が子供の利益になるかを考慮せず、単独親権を押しつけています。これでは法体系上も、単独親権を定める第八百十九条第一項自体が孤立をし、破綻していると言わざるを得ません。いかがでしょうか。

江田国務大臣 今日まで、離婚後は単独親権ということでやってまいりました。それはそれなりに、その当時の一応の理由はあってやってきたわけですが、単独親権を直ちに共同親権というのは、やはり一つハードルが高過ぎるのかなという感じはいたします。

 それよりもむしろ、単独親権ではあるけれども、非監護親も親子の関係は続いているという、これはもう厳然たる事実でございますし、非監護親と子との信頼、愛情、教育、そうしたものが監護親との協力のもとで上手に果たされていけば、これは子の利益、子の福祉に合致するのでありまして、単独親権といえども、そうした離婚後の親と子の関係が樹立されるならば、これは大変好ましいことだと思っております。

馳委員 大臣、ちょっとこの話を聞いてくださいね。

 カナダで国際結婚をしていた女性が、カナダで離婚をして、共同親権ですね、諸般の事情があって子供を連れて日本に帰ってきまして、日本の家裁で審判の結果、最終的に単独親権となった。これはやはり、共同親権としてカナダで離婚をした一方の親にとっては、なかなか釈然といかない問題でありますよね。いわば、こういうことが起こり得ますし、実際に起こっているんですよ。

 したがって、国際結婚、国際離婚は一般的になってきましたよねというこの間からの大臣の発言は、実際、現場では、やはりそのとおりなんですよ。そうすると、大臣、今も高いハードルというふうにおっしゃいましたけれども、だから私も、選択制のある共同親権ということも視野に入れながら、いま一度、法制審議会に諮るときじゃないかなと思っているんです。

 今回、親権制度について、子の最善の利益、また、離婚後も継続的に親との交流が大切ですよねという理念をうたった改正をした以上は、離婚をした後の子供の利益を考えながら、まさしく親権の中でも一番重大な事案である共同養育、共同監護については、選択的に認めてもよい、つまり選択制と。このことはぜひこの段階で検討に入ってほしいと私は思っておりますし、今回、残念ながら、我々が要望してきた親権の一時・一部停止のうち、一部停止は入りませんでした、これも議論がございましたが。私は、この一部停止の問題についても、やはり事案によっては一部停止も必要ではないかとずっと思っております。

 このことも含めて、今回の民法改正で一区切りではありませんよ、さらに検討を深めましょうよ、こういうふうに御理解をいただきたいと思っております。大臣の御所見を伺います。

江田国務大臣 今、カナダで結婚、離婚して、日本に帰って、カナダでは共同親権、日本では単独、そういう事例も恐らく現実にはあるのかと思いますが、私は余り国際私法というのは詳しくないんですが、婚姻と離婚の準拠法が、もしカナダならカナダ、日本なら日本、どちらかになるのではないかと思いますが、現実には、今委員がおっしゃったようなこともあるのかなと思います。

 そうした混乱も乗り越えていかなきゃいけない。共同親権を選択制にすること、親権の一部停止、そうしたことも、議論は、特に一部停止ということについては今回法制審議会でも検討されたということでもございますし、委員の今の問題提起というのは卓見だと思います。

馳委員 一事例ではありますが、参考にということで、もう一度お聞きください。

 カナダで結婚していた日本人同士が、カナダで離婚をした。カナダの法的根拠のもとで、共同親権。一方が、何かあったんですよね、日本に帰ってきて裁判を起こして、単独親権だと。カナダに残された日本人はたまらないですよね、これは。御理解いただけると思います。紛争がいまだに継続している事案もあります。

 これはやはり、国際結婚といっても、日本人同士が海外の法制度のもとで結婚した場合というふうな事案もあるそうであります。国によって、共同親権、選択制共同親権、あるいは共同監護ということを考えると、私は、今から申し上げるこの点が一つのポイントかなと思うのは、離婚するときには、ちゃんとお互いに話し合って、共同の養育計画、養育費の支払い、やはりこの計画書をちゃんとつくって、石井さん、よく聞いておいてくださいよ。離婚するときにつくっておいて、その上でないと離婚できませんよと。もちろん、計画をつくっていたものが、なかなか履行されないこともあるかもしれませんが、それだけの心構えを持ってやはり対応すべきではないのかな、私はそういうふうに思っているんですが、大臣の所見をまず伺いたいと思います。

江田国務大臣 委員の御意見は大切な御意見だと思います、説得力も随分あると思いますが、別の見方もまたありまして、養育計画などをちゃんと決めないと離婚ができないということになりますと、離婚が随分おくれてしまって、その間に人間関係がもつれにもつれというような心配をする向きもあります。

 委員のお話のとおり、十分に話し合って、十分な理解のもとで、面会交流も、費用の分担も、そして養育計画についても、子の父親、母親で合意がきっちりできて、それが実行される、それなら二人は別れる必要はないのじゃないか、いや、そうではないので、夫婦でいることと親子の関係とはまた別ですから、夫婦としては、そろそろ、そろそろといいますか、終わりにしたい、しかし、親子の関係というのは、父親も母親もちゃんと持って育てていきたい、そういうことがちゃんと社会で一般的に行われるようになれば、それは、別れるのがすばらしいとは言いませんけれども、まあ一つのあり方だと思いますが、現実には今なかなかそこまでいっていないので。

 特に日本の場合は、まあ日本の場合といいますか、婚姻は両性の合意によってのみ成立するということになっていて、離婚も同じですから、なかなかそこまで、離婚の条件と離婚の効力要件というようなところまで法制化するのは困難があると思っております。

馳委員 離婚をするに至るさまざまな事情があって非常に大きなストレスを抱えている夫婦にとって、やはり、共同養育についての要件あるいは養育費の支払い等を、その計画を立てないと離婚できないよというふうに法的に課すのはいかがかというふうにおっしゃいますが、あえてまたもう一度言います。

 今回の改正はやはり子の利益を考えてという、そこのスタンスに立っているものでありますから、子供の利益、子供の最善の利益ということを考えた上で、そこまでのいわゆる歩み寄りを求める、あるいは、これは社会的な規範として、あんた、子供のことを考えて離婚しなさいよ、二人が別れるのはいたし方ないとしましょう、子供のことを考えた面会交流、そして養育費の支払い、それこそまさしく親としての責任を、親同士が離婚した後でも親としての責任を果たしなさいよというふうな言い方は、これはむしろすべきなのではないかなと私は思っていて申し上げているんですが、いかがでしょうか。

江田国務大臣 先日、青少年特別委員会との連合審査会のときも申し上げましたが、私などの若かりしころは、子供のことを考えたら離婚しなさんな、そういう時代だったんだと思います。しかし、今はそこは変わってきた。子供のことを考えたら離婚しなさいというのもあるいはあるかもしれませんし、離婚というのはやはり夫と妻のことで、だけれども、子供のことは一番に考えなさいよ、だから、離婚は離婚でいいけれども、子供のことはちゃんと考えて、これから先、責任を持った父親、母親でありなさいよ、これが社会の常識になっていってほしいと、本当にそう思います。

 ただ、法規範としてそれを書き込んでしまうところまでいけるかどうかで、私は、いろいろな場面場面で、子供の将来についていろいろな計画をするなり、あるいは折に触れて相談して育てていくなり、そういうことが成熟していくことは大切なことだと思っております。

馳委員 そこで、一つの提案をしたいと思います。親教育プログラムについてであります。

 アメリカの多くの州で、子の監護や面会交流で争っている夫婦に対して、親教育プログラムの受講が義務づけられています。韓国でも、二〇〇七年法改正で、未成年者の子供がいる場合は、協議離婚書を提出する前に親教育プログラムの受講を義務づけております。

 ここで言う親教育プログラムとは、離婚の子供への影響についての知識をふやしたり、子供をストレスにさらすことを減らすことなどを目的として、講義を受けたりビデオ鑑賞をしたり、場合によってはディスカッションなども行われております。

 このような試みは、日本でも一九九九年から数年間、大阪家裁で試行されております。それはどういう内容で、どういう結果だったんでしょうか。さらに、なぜ、現在において広く一般化されて実施されていないのでしょうか。日本でも親教育プログラムの受講義務づけを提案したいと思いますが、いかがでしょうか。

豊澤最高裁判所長官代理者 大阪家裁で試行されておりました件につきまして、この取り組みは、家庭裁判所におきまして当事者への働きかけを行う際に、適当な事案を選んで、リーフレットであるとかスライドビデオを用いる、そういったことによって、そういったことの有効性について研究したものでありまして、個々の事件における夫婦への効果的な働きかけあるいは助言のあり方について研究した事例でございます。

 研究の結果といたしまして、スライドビデオの視聴やその後の助言によって、一定の望ましい効果が得られたものもございます。他方で、当事者の態度の硬化を残念ながら招いたという例も紹介されております。

 そのため、こういった働きかけによって十分な効果を得るためには、当事者において面会交流に向けた心の準備がどの程度できているのかといった点を見きわめた上、いつ、どこで、また、だれの同席のもとでこういったビデオを視聴するのか、そういったあたりのところを適切に選択していく必要がある、そういった指摘が研究の成果の中で指摘されているところであります。

 これらを含め、その他の研究の成果も含めまして、現在では、全国の家庭裁判所において、必要に応じて、リーフレットであるとか絵本、あるいはDVDなどを利用して、当事者夫婦に対して働きかけが行われているところでありまして、家庭裁判所といたしましては、個々の事案に応じて、その当事者の状況であるとか葛藤のさまざまな原因等に応じて適切に対応しているものというふうに考えております。

馳委員 我が国の協議離婚は、親権者を決めて離婚届を提出するだけで離婚が成立いたします。しかし、未成年者の子供がいる場合に、離婚後の子供の養育問題について何の取り決めもなく離婚を認めることは、余りに安易で、無責任で、まさしく子の最善の利益に反していると思いますが、いかがですか。

江田国務大臣 親権者の定めだけで、面会交流も、それから費用の分担も何も定めずに離婚届を出す、あとは非監護親の方は知らぬ顔というのがよくないということは、本当にそう思います。

 今、親教育プログラムの話がございましたが、私は、行政の方が司法に余り口出しを、余りといいますか、口出しをしない方がいいんですが、私の知っている限りのことで言いますと、家庭裁判所は、少なくとも、調査官がいろいろなカウンセリングもするように体制をとっていることが期待をされているのでありまして、家庭裁判所、頑張れと言いたいところです。

 ただ、おっしゃるとおり、家庭裁判所に行かない離婚というのが、つまり協議離婚届け出だけ、これが常態ですので、そこのところは、社会一般の離婚夫婦の支援体制というのが必要なんだと思います。

馳委員 改めて質問いたします。

 協議離婚が成立する法的要件として、離婚後の子供の養育計画、養育費の支払いも含めて、その提出を義務づけるように民法を改正すべきであると私は提案したいと思いますが、いかがでしょうか。この制度化は、母子家庭における児童虐待の防止にも大変役立つと考えておりますが、改めて大臣の所感を伺います。

江田国務大臣 そのようなことが社会一般の十分な理解を得るようになれば、それは大変いいことだと思います。

馳委員 関連して、共同養育計画の義務づけは、民法の改正をしなくても特別立法でも対応可能ではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。

 すなわち、民法第七百六十五条第一項は、「離婚の届出は、」云々とありまして、「その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。」と規定されております。共同養育計画義務づけ法という特別立法を、同条の「その他の法令」と位置づければよいのではないでしょうか。いかがでしょうか。

江田国務大臣 法形式上は、それは、一般法であれ特別法であれ基本法であれ同じ法ですから、そういうことは不可能というわけではございません。しかし、これは家族のあり方、親族法の一番の基本のところで基本法ですから、基本的には、市民社会の基本法である民法において規定されることが望ましいと思っておりまして、いずれにせよ、離婚の成立要件に養育計画を付することを義務づけるということは、慎重な検討が必要であると思います。

馳委員 面会交流の件について、一件お伺いいたします。

 先般の質疑において、民法改正の趣旨がいかなるものか、大臣の答弁によって明らかになりました。特に、面会交流が原則なんだという趣旨は家裁等の実務者側によく伝わったと思いますし、大臣に感謝したいと思います。

 そこで、あるべき面会交流の具体的な標準といいますか基準といいますか、こうあるべきだという欧米等との比較を私もいろいろ資料を拝見してみましたが、最高裁、法務省、厚労省が連携して、あるべき面会交流の回数、面会の質の向上を目指して、面会交流のあり方、監護親の同伴の是非などを含めて、これは外部の専門家も交えてしっかりと研究していただきたいと思います。政府のしかるべき審議会において諮問をし、答申を得て対応していただきたいと思っております。

 大臣、親権の問題は、今回、児童虐待防止法改正等々からの積み残した宿題として私も随分と質問させていただきましたが、離婚した後の子供の立場を考えたときに、引き離されたといいますか、一緒に同居していない一方の親の立場、それから、子供の成長に、お父さん、お母さん両方との交流がいかに重要であるかということの観点において、面会と交流の重要性というのは大臣にもおっしゃっていただきましたし、継続的な交流の必要性ということもおっしゃっていただきました。

 改めて、そういった観点からも、具体的に、面会交流、一カ月に何回ぐらい、何時間、あるいは泊まりがけ等々を含めて、ちょっと検討を深めてほしいと思っているんですよ。先般、最高裁は月に一回以上というアンケートしかとっていなくて、それはあんまりだよというふうなことを私も申し上げましたが、この観点についての大臣の見解をお伺いして、私の質問を終わります。

江田国務大臣 どの程度の頻度でどのような態様の面会交流を行うのが子の利益にかなうかということは、これはやはり個別事件の事案ごとに判断するしか仕方がないので、あるいはまた各国の文化や社会環境の違いにもよるので、単純に比較することはなかなか難しいと思います。

 いずれにしても、そうした面会交流の頻度、態様などについて、子の利益の観点から適切に取り決められていかなきゃいけないと思います。

 そして、今法務省では、親子の面会交流に関する調査研究を委託し、報告書が取りまとめられつつあるところでございまして、そのほかにも、家庭裁判所で面会交流事件の分析とか、今の調査研究では、家裁の面会交流の分析のほか、民間面会交流支援団体からのヒアリング、当事者からのアンケートなども実施をしておりまして、こうしたことを踏まえつつ、関係府省庁と連携しつつ、可能な対応について考えていきたいと思います。

馳委員 終わります。ありがとうございました。

奥田委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。

 大臣、今回の統一地方選の結果、また愛知六区の補選の結果を見ますと、菅内閣、菅政権に果たして政権運営能力があるのかと疑問を持っております。また、地震や原発の対応については、政府の中からも、また民主党の中からも批判が相次いでおります。

 私は、今、菅総理のもとで果たして国民が一体となって復興に臨めるのか、むしろ菅総理が退陣をされることが復興にとって一番いいのではないかと思うのですけれども、大臣は、参議院議長から異例の転身で大臣になられ、菅内閣を支えられる、まさしく総理の盟友とも言われる立場ですけれども、どのようにお感じか、お伺いをいたします。

江田国務大臣 統一地方選挙の前半戦、後半戦が終わりました。結果は、私ども民主党に対して非常に厳しいものでございました。この点は真正面から受けとめなければならぬと思います。

 ただ、この結果が今回の地震に対する内閣の対応に対しての審判だというのは、ちょっと短絡ではないかなという気がしております。地方選挙は、それぞれ地方選挙ごとに地方のいろいろなテーマがございまして、それについての、その地方の、地域の有権者の皆さんが地方の課題について答えを出されたということだと思います。それと別に、今度の震災、津波、あるいは原発、これへの内閣の対応について、国民の皆さんからいろいろな批判もいただいているところで、これはこれとしてしっかり受けとめていかなければならぬと思っております。

 菅内閣の退陣が一番の対策だとおっしゃいますが、その点は私は見解を異にしております。

稲田委員 大臣の認識は甘いんじゃないでしょうか。やはり政治は結果責任なんですね、原発もおさまっていないし。私は、この間、岩手の視察に行ってまいりましたけれども、地方公共団体の首長さん方が、今の政府が全く見通しについて語ってくれない、それで非常に不安に思っているという不満を漏らされておりました。ぜひ大臣、客観的に情勢を判断いただきたいと思います。

 法案に入る前に一問質問をいたしたいのが、日韓図書協定に基づく朝鮮儀軌の引き渡しのことです。

 今週中にも国会で、衆議院で採択をされるということですけれども、八月十日の総理の談話では、この文書をお渡しすると。そして、協定では「引き渡す」という表現になっておりますけれども、法的には一体どういうものなのか。返還なのか、贈与なのか、賃貸借なのか、使用貸借なのか。法的には、このお渡しする、引き渡しする、何なのかについて御見解をお伺いいたします。

江田国務大臣 お尋ねのテーマは、お許しをいただけるなら、法務省が所管する案件ではないのでお答えする立場にないという答えにさせていただければと思います。

稲田委員 大臣、そういう考え方自体が全く法務大臣としておかしいんですよ。この引き渡し、お渡しするの法的な見解について、大臣は法律家でもあり、裁判官でもいらっしゃるわけですから、一体、法的に何なのかについてお答えなさる立場にあると思いますが、もう一度答弁を求めます。

江田国務大臣 私は法律家ではありますが、法務省なり法務大臣というのは、法律の用語についての鑑定をする立場にはいないのでありまして、これは当省所管でないのですが、せっかくですからお答えをしますと、これは、引き渡す、まさに引き渡す。今の賃貸借とかあるいは使用貸借ではございません、これはまた返してもらうということを含んだ内容ですから。引き渡すということに尽きる、無償で譲渡をするということに尽きると思っております。

稲田委員 無償譲渡と贈与と違いますか。

江田国務大臣 贈与というのは、これは贈与契約でございますが、今回は、引き渡すということで、引き渡すという事実行為を無償で行うということです。

稲田委員 私は、無償譲渡と贈与は違うんですかという質問なんです。

江田国務大臣 もし、無償譲渡と贈与が違うかという、そういう一般論をお尋ねでしたら、それは違うと思います。

稲田委員 私は同じだと思いますけれども。どう違いますか。

江田国務大臣 贈与というのは、これは契約でございまして、無償譲渡というのは、これは契約である場合もあるし、ない場合もあろうと思います。

稲田委員 協定ですから、私は、契約の一種で、これは贈与だと思います。

 しかも、大臣は所管じゃないとおっしゃいましたけれども、そういう考え方自体が、私は全く法務大臣としておかしいと思うんですよ。

 なぜなら、この問題は、法務省が所管しているところの戦後補償裁判、まさしく最高裁は、戦後補償に関しては、平和条約で解決をすればそれ以上請求をしないのが国際法上の正義だ、そういう判断をしていて、そして、法務省の訟務検事が、国側の代理人として、平和条約が締結されればそれ以上賠償したりしないのだという主張をされているわけですから。

 私は、この問題で危惧をしておりますのは、この文書を贈与することによって、一九六五年の日韓国交正常化の際に締結された日韓請求権・経済協力協定で、日本が韓国に対して無償供与三億ドル、政府借款二億ドルの支援を約束する一方、両国及びその国民の間の財産請求権の問題が完全かつ最終的に解決されたことが確認されているというこの規定をなし崩しにするのではないかと危惧をいたしているからですが、その点についての大臣の御見解はいかがですか。

江田国務大臣 これは一九六五年の協定とは全く関係ない、そういう理解でございます。

稲田委員 しかし、韓国の方は、まず日韓併合自体が違法な植民地支配で、奪われたものを返してもらうんだという理解をいたしております。

 だとすれば、今大臣が、これは一九六五年の日韓条約とは全く違うものだとおっしゃるのであれば、その点はきちんと明確にしておかないと、かえって、後々、日韓関係の外交問題に禍根を残す。例えば従軍慰安婦問題だとか強制連行問題だとか、法務省の訟務検事が、それはもう平和条約で解決済みなんだと法廷で主張されている、そういう主張との間にそごを来すのではないかという懸念を日韓間に与える、そういうおそれはないでしょうか。

江田国務大臣 日韓間の関係につきましては、それこそ法務省として所管をする事項ではないので、これは私に尋ねられても困りますが、困りますが、韓国の側がどういう主張をしているかということについては別として、私ども日本の政府としては、これは引き渡すということであって、この六五年の協定とは関係がないものだと理解をしております。

稲田委員 所管じゃないとか、そういう問題じゃないんですよ。この重要な外交問題というのは菅内閣一体としてやらなきゃいけないし、大臣は、議長からわざわざ法務大臣になられて菅政権を支えておられるわけですから、この問題についてもきちんと見識を示していただきたいし、また、この問題は、必ず、戦後補償裁判という法務省所管の、しかも大臣がその訴訟の方向性を決める、そういう問題について非常に関係がいたしますから、きちんとこの点は発信をしていただきたいと思います。

 法案に入ります。

 今までの審議の中で幾つか確認をしたいことがありますので、お尋ねをいたします。

 まず、保護者が児童相談所の指導に従わない場合、家庭裁判所から親に対し児童相談所の指導に従うよう勧告する仕組みの導入について、先日、大口委員の質問に対して、行政作用を裁判所が行うことになるので法律的に難しいという答弁がございました。

 私は、これは大変おかしな答弁だな、非常に形式的なおかしな答弁だと思います。なぜなら、例えば保護観察つきの執行猶予や少年事件における保護観察など、司法が行政的に関与する場面も多くあります。したがいまして、こういった場合に裁判所が勧告をする仕組みは、決して行政作用を裁判所が行うことになるとは言えないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

江田国務大臣 裁判所が保護観察を命じたりする、そこまではこれは司法権で、その保護観察をどういうふうに行うかというのは、これは保護観察所が行政作用として行っているものであると思います。

 家庭裁判所も司法裁判所でございまして、ただ、委員おっしゃることに重要な指摘は私はあるとは思うんですが、それは、家庭裁判所に事件が係属している最中に、調査官のいろいろな関係調整の作用などを通じて、さまざまな、家族の再統合とか、あるいは理解し合った離婚とか、そういうことを調整するということはありますが、家庭裁判所が、事件の終局に当たって、親に対して一定の勧告をその後にわたってまで行うというのは、やはりちょっと筋が違うのかなと思います。

稲田委員 私は、むしろ、家庭裁判所の役割ということを先ほども大臣がおっしゃいましたので、都道府県にというよりも、親に直接、独自の勧告をするという制度も考えていっていいのではないかと思っております。

 また、同じ答弁で、家庭裁判所から都道府県への勧告書を、都道府県の上申を受けて裁判所から親権者に送付し、勧告内容を事実上親権者に知らせるという運用を行っている自治体もあるということですが、そうであれば、端的に家庭裁判所から親権者に直接勧告するとか、それが難しいのであれば、勧告書を都道府県と親権者の双方に送付するという制度にすればよいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

江田国務大臣 家庭裁判所が都道府県に対し、保護者の指導を行うべき旨の勧告を行う、これは、専門委員会からは、都道府県の上申を受けて勧告書を家庭裁判所から親権者に送付し、家庭裁判所の都道府県に対する勧告内容を親権者に伝える運用というものが提言をされている、それは確かにそのとおりでございまして、これは、その提言を踏まえて、最高裁判所において、そのような運用を全国の家庭裁判所においてする方向で検討がされているのだと承知をしております。

稲田委員 一歩進んで、家庭裁判所が独自の勧告をするとか、そういうこともぜひ検討いただきたいと思います。

 それから、民法八百二十二条の懲戒権の問題ですけれども、これを削除すべきであるという御見解もあったんですが、私は、この懲戒という言葉が非常に問題かもわからない。むしろ、現代でも受け入れやすいしつけという言葉に置きかえて、親には子供をしつけする権利もあるし、同時に義務もあるというようなことを明文化するということも考えてよいのではないかと思いますが、その点についての大臣の御見解をお伺いいたします。

江田国務大臣 この点は、先日の連合審査会でもお尋ねがございました。私は、魅力的な提案だと思っております。

稲田委員 次に、面会交流についてお伺いをいたします。

 今回の改正で、協議離婚において子との面会交流についても定めることが明文化をされました。これにより、これまではそもそも面会交流が認められるかどうかが離婚協議で争いになっていたものが、これからは、面会交流が認められるということを前提に、その内容をどのように充実させるかということが協議されるようになると期待していいのでしょうか。お伺いいたします。

江田国務大臣 家裁の実務においては、面会交流あるいは子の監護費用の分担、こうしたものについて、両当事者、夫と妻で協議をしてその定めをするように努めるということになると期待をしております。

稲田委員 では、この面会交流というのは権利でしょうか。

江田国務大臣 権利という場合には、一般的に権利というのはありません、だれの権利ということになるわけですが、親の権利か、子の権利かということになるわけで、これはなお議論が分かれている状況で、なかなか権利だというふうに言いがたいところがあります。もし権利だというなら、親の権利でもあり、子の権利でもある、そういう言い方はできるかもしれません。

稲田委員 私も、大臣と同じように、親の権利であり、子の権利であると構成していいのではないかと思うんですけれども、なぜ権利だと言えないのか、そこをお伺いいたします。

江田国務大臣 これは、今申し上げましたとおり、なお議論が分かれているということを踏まえて私も答弁をしなければいけないので、権利だというのがなかなか言いにくいということを言っているんです。

 ただ、非監護親が子に会う、子が非監護親に会う、その両者はそのつもりでいるのに、だれかがその間に入って会わせないようにするということになれば、非監護親にしても子にしても、そうした妨害を排除し得る立場にいるというのは、そうだと思います。

稲田委員 それでは、同じく、養育費については、養育費を請求するのは権利ですか、権利ではないんでしょうか。

江田国務大臣 養育費については、これは、子の監護をしている親の、あるいは子が大分大きくなった場合はまた別かもしれませんが、権利性は強くなってくると思います。

稲田委員 だから、私は、養育費も、養育している親の権利であり、子の権利である。面会交流も、親の権利であり、子の権利であると、同じように権利だと言い切ってしまっていいんだと思うんですけれども、どうして養育費は権利で面会交流は権利じゃないんですか。

江田国務大臣 これは、私がちょっと思うのは、養育費の場合にはいろいろな履行の確保のための制度がありますが、面会交流は、なかなかこれは、履行勧告はできますけれども、間接強制もできますが、なかなか困難なので、そこはややニュアンス的に違いがあるかなと。

 しかし、おっしゃるとおり、面会交流についても監護費用についても、これは親の権利的な、あるいは子の権利的な、そういう両方の利益だと言わせてください。

稲田委員 ちょっとこんがらがっちゃうんですけれども、履行確保の手段があるかどうかという問題だとか、そういう問題よりも、私は、やはり面会交流も養育費の請求も、監護している親だったり子だったりの権利であると言っていいんじゃないか。でないと、例えば調停で合意ができなかったときに、審判で面会交流について決めてもらえるんじゃないんですか。

江田国務大臣 最高裁の裁判例があるようでございまして、最高裁第一小法廷の決定、平成十二年五月一日というもので、この決定について、これは最高裁の調査官の解説がありまして、面接交渉の内容は監護者の監護教育内容と調和する方法と形式において決定されるべきものであり、面接交渉権と言われているものは、面接交渉を求める請求権というよりも、子の監護のために適正な措置を求める権利であるというのが相当であるというように書いてございます。したがって、そのようなことでございます。

稲田委員 これは質問通告もいたしておりましたので、もう少し私は大臣に明確な答弁がいただけると思っていたんですけれども、養育費の請求は権利であり、面会交流は権利ではないというその理由について、もう一度説明いただけますか。

江田国務大臣 今ちょっと混乱を与えてしまったかもしれませんが、面会交流についても費用の分担についても、ともにそれは同じ枠組みの中でのことであって、どっちかが権利でどっちかが権利でないという意味で言ったんじゃなくて、なかなかいろいろな説があって、ともに権利だというのがなかなか言いがたいけれども、しかし、そんなものは権利じゃないんだから無視していいんだということにもならないので、これは、権利があってそこに請求権があるんだというよりも、適正な措置を求める利益をそれぞれが、非監護親も子も有している、あるいは監護親も、非監護親に対して。

 そうはいっても、別れても、やはりそれは親子であり、あるいは元夫婦であったものの関係ですから、そこはなるべくひとつ話し合いで円満に解決していく方向をみんなで探ろうという意味で、あえて、権利です、あるいは請求権ですというような言い方をしていないんだと御理解いただきたいと思います。

稲田委員 根拠も含め、ちょっとよくわかりませんけれども、この点についてもきちんと方向性を出していただきたいと思います。

 また、今回の法改正によって、児童虐待のケースが減る、またそして、今まで課題になっていたことの、ある部分が解決をし、さらに課題も、解決をしていかなきゃいけない問題もあるということが、審議の中で私も理解ができました。

 ただ、そもそも論を言いますと、本来であれば、こういう虐待のケースが起こらない予防というものも必要になり、また、その中でも、家族や地域社会がしっかりとしていればこういう虐待のケースも少なくなってくる。むしろ、家族や地域共同体がどんどん壊れていっているというところにも目を向けなきゃいけないんだと思うんですけれども、大臣は、家族というものについて法的な保護に値するものと考えておられるのか、また、民法改正についてそういう視点があるのか、そして、夫婦別姓についてどのようにお考えになっているのか、お伺いをいたします。

江田国務大臣 家族というのは、当然法的な保護に値する人と人の関係だと思っております。

 その上で、夫婦別姓についてお触れになりましたが、これもさまざまな家族のあり方、夫婦のあり方の一つとして私は選択的に許容すべきものだと思いますが、しかし、なかなかこの合意を得られない状況にはあります。

稲田委員 夫婦別姓について、副大臣及び政務官のお考えもお伺いいたします。

小川(敏)副大臣 結論だけ先に言わせてもらえば、やはり、それを必要としている人が希望するのであれば、認めてもよろしいのではないかと思っております。

黒岩大臣政務官 私も、そういった、選択的に許容されることがあってしかるべきかなと思っております。ただ、多くの皆様の合意を得るような、そういった努力が必要だとも思っております。

稲田委員 私は、この委員会の中でも、夫婦別姓については反対をする立場で質問をしてきたんです。なぜなら、夫婦別姓とはいうものの、それは親子別姓でもあり、また一般的に、平成八年から比べれば通称使用も認められてきておりますので、そしてむしろ、戸籍上は同姓にしておいて、社会の不便がある場合に通称を認めて、通称が認められないことによって不利益をこうむった人が救済を求める、そういう機関をつくるというような考え方ができるんじゃないかと思いますが、その点、大臣はいかがでしょうか。

江田国務大臣 通称は今でも認められているわけですが、ただ、認められにくい場面があるんです。そういう場面に遭遇した皆さんは本当に困っているのは事実でございます。

 委員の御提案の、そういう人が、それが裁判所であれどこであれ、特別なところに申し立てれば夫婦別姓を制度として認めるんだという……(稲田委員「通称」と呼ぶ)いや、通称は今も認められているわけです。ただし、認められない場面がある。そういう場面がその人の生活にとって大変大切なときには、委員の御提案がちょっと私はよくのみ込めていないんですが、そういうときには、どこか特別な機関の許可を得れば選択的に夫婦別姓というのは認められるという御提案であれば、それはそれで一つの提案かと思います。

稲田委員 いえいえ、平成八年の検討の中では、通称が認められないことによって不利益をこうむる女性がいるという問題意識だったわけです。それから通称を認められる範囲はふえてきたけれども、でも、なおかつ認められない場面があって、それによって女性が不利益をこうむる場合には救済を求めるというのは、通称を使用させるという意味での救済を提案いたしております。

 時間が来ましたのでやめますけれども、きょうは、法務大臣も副大臣も政務官も夫婦別姓について賛成、この間、外国人地方参政権を聞いたときも、法務大臣も副大臣も政務官も賛成だったんです。ただ、家族も地域社会も国も、守ろうという強い意思がないとやはり守れないんです。だから、そういう点について政務三役すべてが私とは違う方向ですので、大変残念に思っておりますが、またこの問題についてはいずれ質問をいたします。

 本日はどうもありがとうございました。

奥田委員長 次に、坂口力君。

坂口(力)委員 私は、長い議員生活の中で、法務委員会で質問させていただくのはきょうが初めてでございまして、楽しみにしながらきょうはお邪魔をさせていただいたということでございます。

 私は、余り難しいことは嫌いな性分でありまして、法務委員会というのはどうも言葉が難しいし、難しいことが多過ぎる。したがって、私は余り法務委員会で質問するのが好きじゃなかった。それが今日までの私の経緯だと思いますが、大口さんが、きょうは一遍やれ、久しぶりに江田大臣にお会いできるからどうだ、こういうふうに言ってもらったものですから、きょうはお邪魔をさせていただきました。したがいまして、決して難しいことを聞くつもりはありませんし、大臣の方も気楽にひとつお答えをいただいて結構でございますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 本当はコーヒーでも飲みながらちょっといきたいところでございますが、コーヒーもお菓子もございませんので、水を飲みながら聞かせていただきたいというふうに思っております。

 児童虐待の問題は、本当に聞くのも痛々しいと申しますか、何とかこれはなくならないんだろうかと常に思う一人です。でも、今は震災の問題がございますから、テレビのニュースなんかも余り虐待の話をしませんけれども、ふだんですと、毎日のように虐待の話が出てくる。それで、なぜこんなにも虐待が多く起こるのか、しかも、一番愛すべきお母さんと子供の間の出来事が非常に多い、これをどうすれば直していくことができるのか、ずっと考えてきましたけれども、なかなか結論は私も出ておりません。

 今回、この法律の改正案が出まして、この改正案には賛成でございますけれども、これで虐待が少なくなるのかどうか。大臣、どうお考えでしょうか。

江田国務大臣 坂口委員とは、本当にこれまでさまざまなところで御一緒にさせていただいて、いろいろな仕事も一緒にやってまいりました。その坂口委員からきょうは質問を受けるというので、私も大変喜んでおります。

 気楽に答えろと言われましたが、なかなか気楽に答えるテーマではなくて、本当に深刻な課題、児童虐待。

 今回の民法改正で、親権というものを振りかざして虐待をするというようなことは、それはもうもちろんなんですが、認められないんだ、親権というのは、あくまで子の利益のために行使をされるべきものなのだということを明確にして、それを踏み外す者は、親権喪失という制度があるんですが、喪失ではやはり使い便利が悪い。この間も言ったんですが、鶏頭を割くに牛刀をもってすというようなことがありますから、もっと機動的に、しかも短い期間でもやれるようにというので、親権の停止制度を設けた。

 これが適切に運用されていけば、例えば、医療行為を受けさせないような親がいる、ちょっとそれはだめよとしばらく親権停止して、かわりに未成年後見人が承諾をして医療行為を受けさせるとか、その他いろいろな場面で適切な対応ができるようになる。

 ただ、これができたから、それでもう虐待が少なくなりますというほど甘くはないだろうと。そこはやはり、いろいろな関係の皆さんがこういう制度を使いこなして、子の福祉のために頑張る必要があると思っております。

坂口(力)委員 児童虐待に対します対策をずっと見てみますと、さまざまな方が発言をしておみえになりますし、この委員会におきましても、もう既に多くの皆さん方の御意見が出ています。もう意見は出尽くしたのではないかと思うほど、いろいろな面で御議論をなすっておみえになります。

 それで、児童虐待に対する対応というのを見てみますと、早期発見、早期対応ということでしょうかね。児童虐待防止協会というようなのがあります。しかし、それは児童虐待防止協会であって、児童虐待予防協会ではないわけですね。

 医学の世界を見てみましても、医学の世界の中には、児童虐待予防学会というのは、あるのはあるんです。あるのはありますけれども、中身を見てみますと、やはり防止なんですね。予防的立場で議論がされているケースというのはそう多くない。中には立派な論文をお書きになっている方もあります。例えば、慶応大学の渡辺先生、あるいはまた、上田礼子さんが「子ども虐待予防の新たなストラテジー」という本をお書きになっている。

 こうした内容を拝見いたしますと、確かに予防という見地から迫ろうというふうにされているケースがあることはある。しかし、多くの場合は防止なんですね。だから、なかなか減らすことはできないけれども、重症化させないようにどうするかというところに論点が置かれてきている。これはなかなか減らないのではないかという気がいたします。

 もう少し、もう一歩を踏み込んで、何とか虐待を予防するという方向に行けないものなのかという思いを持つわけです。そうはいいますものの、私も、予防する方法を、どうしたらいいかということがわかっているわけではないわけで、繰り返し繰り返し頭の中で考えているだけでありまして、なかなか名案は浮かんでこない。しかし、そうはいいますものの、虐待防止法ができましたり、さまざまな政策が打ち出されましても、児童虐待がなくならないという現実が存在するわけでありますから、ここはもう一歩前へ進めるべきときを迎えているのではないかというふうに今思っております。

 そういう意味で、これはもう一度、大臣にその辺のところをどんなふうにお考えになっているかをお聞きしたいと思いますし、また厚生労働省の方も、どんなふうに考えているかということをお聞きしたいというふうに思っております。

江田国務大臣 なかなか難しい問題提起でございます。

 虐待というのがとうとう大変な惨事にまで行き着いてしまった、子供が餓死をするとか、大変、何とも批評できないようなことが起きていて、それはやはり、もうちょっと早く見つけて、もうちょっと早く防止の策を講ずることができなかったのかと、いろいろな反省も関係諸機関あるいは地域社会にもあると思います。

 そうした防止というのは、本当に早く発見して、早く手を打つということが大切ですが、より一歩進んで予防ということになりますと、私もそれほど深く考えをめぐらしたわけではありませんが、これはなかなか難しいので、この親子間でどうも将来虐待が起きそうだから介入して予防するというのは、なかなか見つけ出すのは大変だと思います。個別の親子関係での虐待の予防というのは、何かサインがあればもちろんそれはいいんですけれども、なかなか難しい。

 私は、虐待の予防というのは、やはり社会一般の、虐待はいけないという理解、そしてみんなで虐待をなくしていこうという認識、これをどこまで深めていくかということではないかと。

 お父さん、お母さんで子育てに大変なストレスを感じている、いや、そうじゃないんだよ、子育てというのは、いろいろ難しいこともあるけれども、やってごらん、楽しいものなんだよ、そんなようなある種のゆとりといいますか余裕というのが社会全体にできていく、そんなソサエティー日本というのにしていきたいと。それがやはり予防ではないかという気がいたします。

 厚生労働省の方では個別の案件で予防ということもあるいは考えておられるかもしれないので、あとは厚労省の方から答弁していただければと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今、坂口先生から、発生の予防ということについて、まだまだ十分な取り組みがなされていないのではないかという御指摘をちょうだいいたしました。

 私ども、児童虐待の対応としましては、一つに、虐待に至る前の発生予防、二つに、早期の発見、早期対応、三つに、子供の適切な保護、支援等、この三本柱で取り組んでいるところではございますが、ただ、まだまだ予防というのは重要でありますし、力を入れるべきところだと思っております。

 特に、なぜ虐待が起こるのかということを考えた場合に、やはり、家庭や地域の養育機能が低下してきているという問題がよく指摘を受けます。かつてのような地域のきずな、多くの親戚あるいは地域社会が子供を支える、見守るといったようなところで救い出すことがなかなか今の社会はできにくくなっている、こういうことも指摘をされているわけでございまして、育児の孤立化、育児不安、これを和らげることが発生の予防につながるのではないかと考えております。

 このため、生後四カ月までの乳児のいるすべての家庭を訪問するこんにちは赤ちゃん事業、こういった事業とか、あるいは、その事業を通じて発見をした支援の必要な家庭に対して保健師等が継続して訪問支援を行う養育支援訪問事業の推進、あるいは、子育て中の親子が集っていろいろ相談をしたり悩みを打ち明けたりする、そういう地域子育て支援拠点事業の推進などを図っております。

 また、過去の不幸な事件を振り返って、それから教訓を得るということも大変重要だと思っておりまして、過去の児童虐待による死亡事例を分析する社会保障審議会専門委員会で報告をされました、虐待につながるリスクがある家庭の特徴としまして、双子を含む複数の子供がいる等を示しておりますほか、子供が低年齢とか、あるいは離婚等によって一人親の場合は特に注意をするよう促しているところであります。

 さらに、直近、昨年の七月に報告されました第六次報告では、生後ゼロ日で死亡した事例が相当数ございまして、望まない妊娠や計画しない妊娠の予防も重要とされておりますことから、妊娠に悩む方が相談できる体制の充実と相談できる機関についての周知、妊婦健診の受診勧奨等を実施、推進しております。

 加えて、児童福祉法の改正によりまして、平成二十一年度から、保護が必要な児童や家庭のみならず、そこまで至らない支援が必要という段階の家庭についても、子供を守る地域ネットワーク、要保護児童対策地域協議会でございますが、そこで関係機関が情報を共有しながら、連携して支援を行うようにしております。

 今後とも、さらにいろいろな知恵をめぐらせながら、児童虐待の予防について積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

 いろいろなケースがありますし、大臣がおっしゃるように、余り介入し過ぎても、これもぐあいが悪いということもございましょう。しかし、中には、非常に多いケース、こういうときには起こりやすい、そういうケースもあるわけですね。

 例えば、結婚されて、お子さんが生まれて、そして離婚をされる。その離婚された女性が再び結婚される、あるいは結婚されないまでも内縁の人ができる。そういう家庭の中で子供に対する虐待というのが起こるケースが非常に多いわけですね。

 その女性の立場からすれば、初めに夫として迎えた人よりも、後で選んだ、現在の人の方が愛情は深いということを証明しようとすれば、思えば思うほど、そこは、前の夫との間に生まれた子供に対して厳しく当たることが一つの証明になる。そこがだんだん高じていって、そして、それが虐待、死亡といったようなことにも結びついていく。何となく、その心情と申しますか、母親の立場から見ますと、わからないでもない。それはしかし、起こってはならないことでありますから、そうしたところは、しっかりと予防的見地でここは見ていく必要がある。

 したがって、お子さんが生まれて、離婚をされたような場合、そして、その方が再婚をされるような場合、例えばお子さんを施設に預かってもらうこともでき得る、また、そんな御相談も受けるようにする、そうしたこともしていって、そして、惨めなことが起こらないようなケースをつくり上げていくといったようなことはできるのではないか。ですから、重症化させないというだけではなくて、予防するということももう少し可能ではないかというふうに今考えたりいたしております。

 それだけではなくて、子供が非常に手間暇がかかるという人も、中にはあるでしょう。親と子供の関係だけでこの虐待という問題を片づけることはできない。社会全体が、どうも虐待を誘発させやすいような社会にだんだんとなってきているということも考えていかなければならない。その辺のところも見直していかなければならないというふうに思うわけです。

 私、少子化対策をやっておりまして、お若い皆さん方とお話し合いをするケースも今まで多かったわけでありますが、あるお若い女性が、まじめなお顔をして、坂口さん、子供を産んで何か得なことはありますか、こう聞かれたんですね。私はちょっと返答に困った。それは、子供を産めば時間もかかる、お金もかかる、自分のやりたいこともできなくなる。得か損かという考え方でいけば、長い目で見れば、将来を見れば、子供を産み育てるということがこれほどすばらしいことかというふうに思うようになりますけれども、ただ、産んだ直後に損か得かと言われますと、それはやはり、得なことというのを言いあらわすことは、なかなか難しい。でも、まじめにそういうことをおっしゃる方が、一人ならず何人かおみえになるというのは、かなり考え方が変わってきているなということを感じざるを得ない。

 そんな方でも、お子さんをお産みになって、できてみれば非常にかわいくて、損か得かというようなことはどこかへ忘れてしまってお育てになる方もあるだろうというふうに思うんですが、もし、そういう気持ちを持ったままでお子さんをお産みになるようなことになったときには、虐待というものと直接結びつくか結びつかないかは別にいたしまして、何となく心配だなというふうに感じたことがございます。

 したがって、ここは、社会全体で子育てをしていく、それにはどういう社会をつくっていったらいいのか、お互いにどういう考え方でやっていったらいいのか、その辺のところは、やはりもう少しディスカッションをする機会をふやしていかないといけないのではないか。私も専門家ではありませんから、そういう質問をされたときに、いや、それはあなた違います、こうだというふうにぴしっと言える力というのがなかなかなかったものですから……。そういうお話を聞いたこともある。したがいまして、全体として私は見ていかなければならないというふうに思っております。

 以上、総論的なことを少しお聞きをいたしましたが、法案の審議でありますから、少し具体的なこともお聞きをしておきたいというふうに思います。

 一つは、児童相談所の役割というのは非常に大きくなると思うんですね。それで、児童相談所長にどういう人がなられるかということも、その地域における問題を解決するために非常に私は大きな影響を与えるだろうというふうに思っております。

 どういう方が児童相談所の所長になられるのかということを見てみますと、これは児童福祉法第十二条の三に、そしてまた児童福祉法施行規則第二条に書かれておりまして、いろいろとその条件が書かれております。

 その中で、児童福祉司として二年以上勤務した者というのもありますが、その次には、それと同等以上の能力を有すると認められた者、こういう書き方もある。そうしますと、同等以上の能力を有する人ということでありますと、見方によりましては、だれでもできると言うと語弊がありますけれども、だれでも任命することができ得るみたいな感じを受けるわけであります。

 ほとんどのところは立派な方がおやりになって、立派に務めていただいているわけでありますけれども、地域によりましては、この児童相談所の所長さんというのは、上がりの職というんですか、やめる前に一遍長たるものにつけておいてやめさせよう、それで、その一つに児童相談所所長にして最後というようなケースが見られないこともない。

 それは、その人にとってみれば、長い間の役所生活をやめるに当たって、それはふさわしいことであるのかもしれませんけれども、しかし、その行っている内容を十分理解をされているのかどうかということになりますと、そこは疑問符をつけざるを得ないというような気がいたします。

 これは厚生労働省でしょうか。児童相談所の所長さん、あるいはもっと下で務めていただく人もそうですけれども、やはりそれなりの知識を持った人がやってもらわなければならないわけですし、そして、二年ごとに職場をかえてしまうというのも、これもちょっと考え物でありまして、少し長い期間をとって、そこでじっくりと腰を落ちつけてそのお仕事をやっていただく、専門的な知識がふえればふえるほど、そこでまた職責も上に上がっていくというようなことが少し児童相談所では大事なのではないかという気がいたします。その点、どうでしょうか。

石井政府参考人 このたび法改正内容に含まれているものが現実に生きて、真にその法律が改正されるその目的どおりに動くためには、今いみじくも坂口先生おっしゃったように、児童相談所長さん並びにその下で働く特に児童福祉司を中心としたスタッフが、質、量ともに充実すること、そして新たな権能をしっかり使いこなせることが極めて重要だと思っております。そういう意味での児童相談所の体制強化を図っていかなければならないというふうに考えております。

 このため、会議等におきまして、今後、児童相談所長も含めましてしっかりと研修を行っていくことに加えまして、また、今回は大分法的な措置も講じていかなきゃいけない。家庭裁判所とのやりとりがふえるということもございますので、弁護士といったような職責の方の、専門家の助言が得られるような体制整備を図るための費用を補助するなど、さまざまな手だてを講じていきたいというふうに考えております。

坂口(力)委員 ぜひひとつその辺のところはしっかりお願いをしたいというふうに思います。

 総論が少し長過ぎて時間がなくなってまいりまして、後見人の話をひとつお聞きしたいというふうに思っております。

 後見人に対する報酬というのは、請求があった場合に、家庭裁判所の判断によって、本人の財産から支払うことができる、こう書かれております。しかし、未成年の後見人の場合には、相手はお子さんですから、財産があるかどうかわからない、親が持っているかどうかわからない。なかった場合には、それはどうするんでしょうか。

 一般の後見人の場合には、お金をたくさんお持ちになっている人は大体弁護士さんがついて後見人になっておみえになる。だけれども、だんだんだんだん金がなくなってくる人たちをだれが見ているかというと、行政書士の皆さん方が見ておみえになるケースが多いんですね。行政書士の中にグループをつくったりしまして、後見人についての検討会をやったりしておみえになるところがある。そういうところは、そこへ何回か通っても交通費も出ないというようなことで、交通費ぐらい何とかなりませんかということを行政書士の皆さん方からお聞きすることがございます。

 市町村によりましては、成年後見制度利用支援事業というのをつくっておみえになって、そこで多少の予算を積んでおみえになるところがある。しかし、これは市町村によりまして、そういうことをやっているところと全然やっていないところとがある。だから、それはもう市によりけりというようなことを聞いたりもいたしております。

 未成年後見人の場合にもこれはそれと同じことなのか、それともこの場合はまた別なのか、ちょっとそこのところを御説明いただければありがたいと思います。

石井政府参考人 まず、今回のケースでございますけれども、虐待を理由に親権停止の審判の請求がなされる事案としては、まずは、施設入所中の児童で、児童相談所関与のもとに児童相談所長等から申し立てを行うケースが想定をされます。

 この場合、児童福祉法の規定により、施設長が親権代行を行うこととされておりますのと、それから、今回の改正で、従前手当てがなされていなかった里親委託や一時保護の場合についても親権代行の規定が整備されることになります。こうした場合には、未成年後見人を選任しないでも的確な身上監護等が行われるものと考えられます。ただ、施設入所は原則十八歳まででありまして、その施設を出た後、未成年後見が必要な場合が想定されまして、その場合に果たして報酬がどうなるのかという問題が残ってこようかと思います。

 今回、社会福祉法人が未成年後見人となる道が開かれることによりまして、そこについてやはり必要なものがあるだろうと。例えば未成年後見人の報酬とか、あるいは損害賠償責任が生じた場合の保険料の負担というのが必要だという御意見が出ております。今回の制度改正におきまして、そういったことが対応できるように、その支援について検討していきたいと思っております。

 また、現行児童福祉法上、児童相談所長は、親権を行う者あるいは未成年後見人のない児童等について、その福祉のために必要な場合には、未成年後見人の選任の請求をしなければならないとされておりまして、その選任がなされるまでの間は児童相談所長が親権を行うこととされております。

 こうした形で最終的な受け皿が用意されておりますので、最終的なところでの対応ということで、子の安定的な監護が図られる仕組みは一応できているということかと思います。

江田国務大臣 民法的には、今委員最初におっしゃったように、被後見人、つまり子、子の財産の中から後見人は相当な報酬を受けるんだと。まあ余り現実的ではない。子の監護、教育の費用でございますから、そうすると次はどうなるかというと、扶養に関する規定で、扶養義務を負う親や親族が負担するんだと。これもまあ現実的な場合もあるかもしれませんが、現実的でないケースの方が恐らく多いだろうと思います。

 そこで、やはりこうした費用については、今厚生労働省からお話があったとおり、厚生労働省がいろいろと苦労いただいて社会福祉的な見地からいろいろな仕組みをつくっていくということになると思いますが、法務省としても、これは厚労省としっかり連携を図りつつ必要な協力をしていきたいと思っております。

 今回、複数の未成年後見人を選ぶことができるように、あるいはまた法人を選ぶことができるようにしたというのは、そうした費用などのことも考えての上だと思います。

坂口(力)委員 後見人を選びますときにも、これは支払いのお金が要るわけですね。それから、後見人が決まりました後、その後見人がいろいろと活動をしていただくときにも費用はかかる。それらに対してなかなか出してくれるところがないというケースもある。

 厚生労働省の方から先ほどいろいろ御答弁いただいて、今度はできるのかなという気もしないではありませんけれども、厚生労働省の予算というのは、間口は広いんですけれども奥行きは浅いんですね。大体、こういう質問をしますと、つくりました、こう言うんですけれども、額は極めて少ない額であって、それで、それぞれの地域でみんなが交通費だけでも出してもらえるようになるかといえば、なかなかこれは難しいケースが私は多いのではないかというふうに思います。

 市町村によってそういう差が出るということもぐあいが悪いと思いますので、何とかその費用のところは、一律にと申しますか、これだけはこういうふうにしなきゃいけないということを国の方から全体に通達を出していただくとか、そういうことが必要ではないかというふうに思っております。その辺のところをひとつお願いしたいというふうに思います。

 もう時間がなくなってきましたので最後になりますが、二年以内の期間で親権の停止が行われるということになります。これは一年なのか、一年半なのか、よくわかりませんけれども、停止が行われる。しかし、二年たってもこれは後見が必要だという場合には、その判断は家庭裁判所が直接的には決定されるんでしょうけれども、そこが決定される前に、それが必要かどうかということを判断するのは、だれが中心になって判断をするのかということを一つお聞きしたいというふうに思います。

江田国務大臣 今回の仕組みは、個別の事案ごとに二年以内の期限を区切って停止する。ですから、ある場合には、それは一年、あるいは半月、あるいは二年、いろいろあると思います。その期間が満了しますと、これはもう自動的に親権がもとに復するということになるわけですが、しかし、そうはいかぬぞという場合は当然ある。その場合に、これは停止を求める請求権者、子の親族であったり未成年後見人自身であったりというような請求権者の判断で行って、そして申し立てられれば、その時点でさらに親権の停止が必要かどうかを家庭裁判所が判断する、そういうスキームでございます。

坂口(力)委員 もう一問できる時間があるかどうかわかりませんが、簡単にお答えをいただきたいというふうに思います。

 親権を受けた人は、その権利も義務もあるわけですね。それで、義務の方はどこまで果たさなければならないのかということであります。

 先ほどのお話のように、その両親がある程度財政的にも豊かであれば、義務を果たすために、例えば教育を受けさせるためにそこから出させるということもできるというふうに思いますけれども、そうでないような場合、親権を十分に果たすことができるかどうかということも少し心配をするわけですが、その義務の範囲というのはどこまでなのかということも、簡単で結構ですからちょっとお答えをいただきたいと思います。

江田国務大臣 これはもう簡単にお答えするとすれば、親権者、つまり父、母と同じ権利と義務を持っているということでございます。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

 では、これで終わりにしたいと思います。

奥田委員長 次に、城内実君。

城内委員 城内実でございます。

 本日は、民法等の一部を改正する法律案について、積み残し案件であります民法七百六十六条の改正、この問題について質問させていただきたいと思います。

 今回の民法七百六十六条の改正におきましては、親子の面会交流及び養育費について明示されることになりました。これ自体、私は評価しておりますが、ただ、これまで面会交流については、現行制度では監護に必要な事項として運用されておりましたが、昭和五十九年の判例にもありますように、児童の福祉の観点から面会交流を認めないとした例もあり、権利とは言いがたい非常に弱いものでありました。

 このたび条文に明記することによって、より権利に近いものになったのではないかと思いますが、今後、これは離婚後の親子の面会交流の重要性をより積極的に認めるべきであるということで、大臣もそのように考えているかどうか、御質問させていただきたいと思います。どうでしょうか。

江田国務大臣 委員御説明のとおりだと思っております。

 面会交流というのは、親にとっても大切、しかし、より、子にとって大切な事柄であって、これは、今後、離婚のときには面会交流をどういうふうにするかというのは、極力離婚する夫婦の間で取り決めをしていただきたいと思っております。

城内委員 今大臣は、これは積極的に認めるべきだ、そのとおりであるということを御答弁いただきましたけれども、ということは、子供は、その両親の離婚後も、基本的にお父さん、お母さん、父母と別個に会える機会を持つことになるということですが、しかし、この際、やはりきちんとした基準を設けないと絵にかいたもちになるのではないかなと私は非常に懸念をしているわけであります。

 また、その実態は、強制手段がありませんので、例えば監護者と非監護者がおって、非監護者の方がどうしても会わせてくれと申し立てをしますが、申し立てをしたとしても、監護者の方で、いや、会わせたくない、あなたとはもうかかわりたくないから、子供が幾ら会いたいと言ったって関係ありませんよということで、強制力がないんですね。何か罰金はあるけれども、強制することはできないということですが、やはりこういった面については基準を設けるべきではないかと思うんですが、その点について、きょうは民事局長、来ていらっしゃったら御答弁いただきたいと思うのですけれども。

原政府参考人 面会交流につきましては、一般論として申し上げますと、子の福祉という観点から、子への虐待など面会交流を禁止、制限すべき事情が認められない限り面会交流は認められるべきだ、こういうふうに思いますけれども、具体的な事案において、その頻度とか態様につきましては、当該事案のさまざまな事情、例えば、従前の面会交流の実績がどうであったのかとか、それから監護親の生活状況、子の年齢、学校に通っているかどうか、あるいは生活環境、そういったところを総合的に判断して個々具体的に判断することになろうかと思いますので、一義的な基準を策定するのはなかなか困難ではないかというふうに考えております。

城内委員 今民事局長から、一義的な基準を設けることはなかなか難しいというような御答弁がありましたけれども、やはり実態として、監護者である親が非監護者となった一方の親に対してなかなか会わせないという実態が多いわけですから、何度も言うように、絵にかいたもちにならないように、やはり面会交流が促進されるような基準をしっかりとつくって、それにのっとって運用を実施すべきではないかというふうに私は考えております。

 次の質問に移りますが、七百六十六条の改正によりまして、今後、面会交流が実際に促進されるということになるのであれば、どうせなら、将来的に親権ないし監護権を離婚後も両親が、いわゆる共同親権ですか、共同で行使することを認めることにしよう、つまり、民法八百十九条では単独親権のみ規定されておりますが、それを改正して共同親権を創設すればいいではないか、こういう議論があったというふうに承知しております。

 ただ、私は個人的には、親権を単独親権から共同親権に変更するとしますと、日本におけます離婚観、家族観が大きく影響を受けるのではないかなというふうに考えております。これはそういうことを主張する学者の方もいらっしゃるところです。

 つまり、離婚で婚姻が破綻した以上、男女には何の関係も残らない、どちらかというと、そういう伝統的な離婚観というのが日本にあります。もし仮に共同親権が導入されますと、夫婦関係は解消されたとしても子の両親としての関係は残っていくという、何か準夫婦というか、非常にあいまいな状態が生じるわけです。

 そもそも、日本では、子はかすがいという表現があります。子供がいるからこそ、両親が多少のあつれきや価値観の違いを乗り越えて、お互いがちょっと我慢をして、妥協して、まあやっていこうじゃないかというような考え方があります。私は、これは非常にいいことではないかと思うんですが、もし共同親権となって、簡単に離婚して、子供に両方の親が会えてしまうとなると、これは子供から見ると大変結構なことではありますが、日本の夫婦観も変わってしまうのではないかなということを私は懸念するので、共同親権には基本的には慎重な立場ですが、この点について大臣はどのようにお考えになっているんでしょうか。

江田国務大臣 これは、日本ではずっと単独親権でやってきましたので、今、共同親権ということにすぐ乗りかえるというのはなかなかハードルが高いと思っております。

 ただ、子はかすがいだから別れるなというのも、どうもなかなか言いがたい一般の夫婦関係についての理解となってきておりまして、子供はできた、しかし、夫婦は一緒にやっていけないさまざまな事情がある、ここは別れましょう、しかし、子供はそれぞれの責任を分担しながら育てましょうというような離婚も、これからは珍しくなくなってくるんだろうと思っております。

 いずれにせよ、今回は、単独親権制度のもとでも非親権者との面会交流というものが適切に実行されれば、子の利益は図られていくので、子の利益を図るために共同親権でなければいけない、そういうところまでは今まだ至っていないんだと思っております。

城内委員 私は、戦後の行き過ぎた個人主義で、子供がいるにもかかわらず、安直な離婚というのが非常にふえているような感じがいたします。もちろん、DVだとかいろいろなさまざまな理由があって離婚をするということは、これはもう当然認められるべきだと思いますが、やはりそうした風潮に歯どめをかける必要はあるんじゃないかな、私は個人的にはそういう立場で考えておる次第でございます。

 もう一点ですが、民法七百六十六条の改正に関連しての質問ですが、特に現行法の規定では、裁判所の面会交流命令に監護者が従わなくても、その監護者が親権を喪失したり、あるいは監護者から子供を取り上げて非監護者の方に移すというようなことはほとんどないというふうに伺っているんですね。それを知っていて、確信犯で行動している監護者が、一方の非監護者に子供を一切面会させないというようなこと、いわゆる連れ去りですね。それで、いや、どうしても会いたいといって、その一方の元配偶者、あるいはまだ協議離婚が成立していない配偶者が来て、子供に会わせろと言ったら、警察を呼ばれて追い返されたとか、誘拐だとか言われたとか、そういう実態がどうもかなりあるそうです。

 これは、私は、明らかに子供の利益、児童の利益に反するというふうに考えておりますけれども、この点について最高裁の方の見解をいただきたいと思います。

豊澤最高裁判所長官代理者 親権者、監護権者の指定等につきまして、いずれも、各個別の事案に応じて家事審判官が判断いたしておるわけでございます。

 その種の事件におきましては、双方の親あるいは子供に関するさまざまな事情を総合的に検討する、そういった判断枠組みのもとで、一方の親が他方の親の同意なく子を連れて別居し、その後、面会交流に応じないといった点につきましても一つの事情として考慮されており、事案に応じて、子の福祉の観点から、適切な考慮、判断がなされているものと承知いたしております。

城内委員 今御答弁ありましたけれども、実態は、私はいろいろ調べたら、やはり連れ去っちゃった方が勝ちみたいな、その後、連れ去られたと感じている方が言ってもなかなか会わせてくれないという実態があって、強制力もありませんし、さらに、会わせてくれと行ったら、まだ離婚が成立していないけれども、既に事実上の内縁の夫ないし妻がいて、追い返されるというケースが非常に多いというふうに伺っております。

 この民法七百六十六条の改正で面会交流をどんどん進めようということは大変結構なことではありますけれども、では、実態が本当に改善されるかというと、やはりそこら辺は、きちんと運用を各裁判所がやっていかないと、改善されないんじゃないかと思います。

 この点、実は、アメリカのカリフォルニア州では、離婚時に裁判所が子供の監護権者を決定する際に、友好的な親かどうか、要するに、離婚はするけれども、一方の親にちゃんと会わせますよと約束をしてくれる、そういう場合を監護者として指定する一つの判断基準にとっている。いや、もう離婚した以上は絶対に会わせませんよというようなフレンドリーじゃない親は、なるべく監護者にさせない、そういう基準を採用しているようですけれども、この点について大臣はどのようにお考えでしょうか。

江田国務大臣 別れる場合に、子の監護者を決める。そのときに、相手に対してどちらの方がより寛容であるか。片方が、いや、月一回会わせます、もう片方は、いやいや、月に二回は会わせます、それなら、その月二回会わせる方を監護者に決めよう、そういうルールといいますか、裁判所のやり方、これは一つの考え方だとは思いますが、子の利益の判断に当たって、そのほかにもいろいろ考えなきゃならぬ点はいっぱいありまして、この点だけを判断基準とするのはちょっと相当でない。しかし、重要な指摘だと思います。

城内委員 いずれにしましても、監護者のエゴ、あるいは監護者が親権を既得権として一方の非監護者の権利を排除するような事例、これはやはり児童の福祉、権利という観点からも、あってはならないことだと私は思います。虐待といったような特異なケースを除いて、やはりこれは運用面、あるいは基準をしっかりつくって、そういったエゴあるいは既得権化が行われないようにしていかないと、何度も言いますように、法律は改正しました、しかし、絵にかいたもちで、実態は余り変わっていませんということになりかねないのではないかと思いますので、その点についてぜひ今後の検討課題としていただきたいというふうに思っております。

 最後に、もう時間がほとんどありませんけれども、人権侵害救済機関の設置について質問をさせていただきたいと思います。

 これは報道によることですが、今月十三日に民主党が、川端達夫衆議院議院運営委員長を座長として、人権侵害救済機関検討プロジェクトチームを開いたというふうに報道されております。その中で、内閣府の外局として、人権侵害を調査し、勧告する権限を持った独立機関を設置する法案を今国会に出す方向で協議を始めたとされております。川端座長は、その中で、一刻の猶予も許されない、政権交代をしたのだから、大きな一歩を踏み出したいと述べたとあります。そしてさらに、来る五月上旬までに党内合意を図るという方針である、そういう報道がされています。

 私は実は、民主党の中にも、若手の議員の方と何人か交流しておりますが、彼らは反対だと。党内にそういう反対論が根強いというふうに私は理解しているんですが、大臣はこうした反対論が所属されている民主党内にあるというふうに認識されていますでしょうか。

江田国務大臣 民主党もなかなか幅広く、いろいろな意見があることは承知しております。

城内委員 もう質問時間が終了しましたが、幅広い意見があるという意味ではなくて、それはもう当然ですよ。しかし、そういった反対意見にもぜひしっかりと耳を傾けていただいて、これまで大臣にも何度も質問させていただいているように、人権委員の選出方法をどうするのかとか、あるいは、まさに人権救済機関をつくったらどれだけコストがかかるのか、こういった点もしっかりと数字を出していただいて、私は反対の立場ですけれども、つくるというのであれば、どれだけ効果があるのかというのはしっかりと数字と証拠で示していただきたいと思います。

 以上、これで私の質問を終わります。ありがとうございました。

奥田委員長 これにて本案に対する質疑は終局をいたしました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立をお願いいたします。

    〔賛成者起立〕

奥田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、辻惠君外四名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、公明党、たちあがれ日本及び国益と国民の生活を守る会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。大口善徳君。

大口委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    民法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 親権停止制度については、改正の趣旨の周知、関係機関の体制の整備、家庭裁判所と児童相談所の連携の強化など、制度の円滑な実施に必要な措置を講ずること。

 二 親権停止の請求については、児童等の利益の確保のため、児童相談所長による請求が適切に行われるよう努めるとともに、請求に必要な調査への協力など、児童相談所に対する支援体制の充実に努めること。

 三 親権停止期間中における児童相談所による保護者指導など、親子の再統合のための取組みの充実に努めるとともに、保護者指導に関する家庭裁判所の保護者への勧告制度の創設について検討を行うこと。

 四 未成年後見制度については、未成年後見人の報酬に対する公的支援、職務に伴う損害賠償責任に関する保険料の負担に対する支援等、制度の利用の支援のために必要な措置を講ずること。

 五 離婚後の面会交流及び養育費の支払い等については、児童の権利利益を擁護する観点から、離婚の際に取決めが行われるよう、明文化された趣旨の周知に努めること。また、その継続的な履行を確保するため、面会交流の場の確保、仲介支援団体等の関係者に対する支援、履行状況に関する統計・調査研究の実施など、必要な措置を講ずること。

 六 親権制度については、今日の家族を取り巻く状況、本法施行後の状況等を踏まえ、協議離婚制度の在り方、親権の一部制限制度の創設や懲戒権の在り方、離婚後の共同親権・共同監護の可能性を含め、その在り方全般について検討すること。

 七 児童相談所長、児童福祉施設の長又は里親等が一時保護中、入所中又は受託中の児童等について行う必要な措置については、個別の事案に適切に対応しうるよう、親権者による不当な主張の判断基準を具体的に示して、関係者に周知を図るとともに、関係者に対する研修の実施など、関係者の資質の向上を図ること。

 八 児童虐待の防止等のため、子育てに関する相談・支援体制の充実、虐待通告窓口の周知徹底等、関係する施策の充実・強化に努めること。

 九 児童の社会的養護については、里親制度の周知及び活用、施設の小規模化の推進など、家庭的環境における養護の推進に引き続き取り組むとともに、施設退所後の自立支援、孤立防止のための相談・支援体制の構築に努めること。

 十 強制入所措置がとられ、かつ、面会通信を全部制限する行政処分がなされている場合に限定されている保護者に対する接近禁止命令の対象の在り方について、更なる検討を行うこと。

 十一 東日本大震災により親権者等が死亡し又は行方不明となった児童等について、未成年後見制度、親族里親制度等の活用により適切な監護が行われるよう必要な支援を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

奥田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

奥田委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。江田法務大臣。

江田国務大臣 ただいま可決されました民法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

奥田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

奥田委員長 次に、第百七十六回国会、内閣提出、参議院送付、民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案は、前国会、本院において原案のとおり議決の上、参議院において継続審査となり、このほど原案のとおり議決の上本院に送付されたものであります。

 したがいまして、その趣旨につきましては既に御承知のことと存じますので、この際、趣旨の説明を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

奥田委員長 本案につきましては、質疑、討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 第百七十六回国会、内閣提出、参議院送付、民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

奥田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

奥田委員長 次回は、来る五月十一日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十分散会


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