衆議院

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第14号 平成23年5月27日(金曜日)

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平成二十三年五月二十七日(金曜日)

    午前十時三十二分開議

 出席委員

   委員長 奥田  建君

   理事 滝   実君 理事 辻   惠君

   理事 樋口 俊一君 理事 牧野 聖修君

   理事 稲田 朋美君 理事 平沢 勝栄君

   理事 大口 善徳君

      相原 史乃君    井戸まさえ君

      磯谷香代子君    大泉ひろこ君

      金子 健一君    川越 孝洋君

      京野 公子君    熊谷 貞俊君

      黒岩 宇洋君    黒田  雄君

      桑原  功君    階   猛君

      橘  秀徳君    中島 政希君

      野木  実君    三輪 信昭君

      水野 智彦君    森岡洋一郎君

      横粂 勝仁君    河井 克行君

      北村 茂男君    柴山 昌彦君

      棚橋 泰文君    柳本 卓治君

      城内  実君

    …………………………………

   法務大臣         江田 五月君

   法務副大臣        小川 敏夫君

   法務大臣政務官      黒岩 宇洋君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  樋口 建史君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          後藤  博君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    西川 克行君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            鶴岡 公二君

   法務委員会専門員     生駒  守君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  川越 孝洋君     金子 健一君

  野木  実君     森岡洋一郎君

  山崎 摩耶君     磯谷香代子君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     山崎 摩耶君

  金子 健一君     川越 孝洋君

  森岡洋一郎君     野木  実君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)


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     ――――◇―――――

奥田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長樋口建史君、法務省大臣官房司法法制部長後藤博君、法務省刑事局長西川克行君、外務省総合外交政策局長鶴岡公二君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平沢勝栄君。

平沢委員 おはようございます。自由民主党の平沢勝栄でございます。

 まず、法案質疑に入る前に大臣に御質問させていただきたいことがあるんですけれども、西岡参議院議長がいろいろと御発言されておられます。

 まず、五月十八日の産経新聞のインタビューではこういうことを言っておられます。菅内閣はすべてが先延ばし、先送りだ、戦後最大の国難に菅さんが首相でいることが最大の不幸だ、それから、このまま行けば菅さんと一緒に日本の国がおかしくなってしまう、サミットの前に不信任案を出すのが常道だと。これは産経新聞。

 それから、今度は読売新聞に翌日寄稿されていまして、この中で西岡参議院議長は何て言っておられるかというと、菅総理は首相としての責務を放棄し続けてきた、首相の政治手法はすべてを先送りするということだ、我が国は多くの難題を現に抱えているけれども、私は菅首相にはそれを処理する能力はないと考える、野党が衆議院に内閣不信任決議案を出す以外に道はないのですと、大臣も読まれたと思いますけれども、こういった趣旨の発言をされておられるわけで、記者会見では、すべてがだめだということも言っておられるわけです。

 参議院議長というお立場にあられる方がここまで言っておられる。相当の覚悟を持って言われたんだろうと思います。

 私はよく言ってくれたと思いますし、実際、読売新聞では、おおむね妥当な見解だ、多くの国民の声を代弁するものとも言える、こういった社説が出ているわけですけれども、その一方で、三権の長が行政府の長にこういった発言をするのはいかがなものかという声があることも事実でございまして、議長というのは中立的でなければならない、その議長の権威が揺らぐんじゃないかという声もあることも事実です。

 大臣は参議院議長も御経験されておられますけれども、今回の西岡発言についてどうお考えになられるか、御所見をお聞かせください。

江田国務大臣 西岡現参議院議長がいろいろとお話しになったり、あるいは投稿されたりしていることは承知をしております。

 私は、もちろん菅内閣の閣僚の一員でございまして、大変な、未曾有の震災、津波、そして原発事故、ここへ直面して、今、国民みんながこの被災地の皆さんに心を寄せて、国民だけではありません、世界じゅうが心を寄せて何とかこの危機を乗り越えようとしているときに、私ども内閣としても精いっぱい頑張っているつもりでおります。その点において、私は西岡議長と全く見解を異にしております。

 それと、議長としてああいうことをおっしゃるのがどうかというお尋ねも今の中に含まれていると思うんですけれども、私も議長を三年間務めてまいりました。その間、至らぬことも多かったと思いますが、精いっぱい、与野党意見の違う中、中立、公平、公正に議事運営を進めよう、このことに努めて、さらに、いろいろ物議を醸すようなテーマについての発言は控えてきたつもりでございます。

 それが私の議長のあり方だと思ったからそうしたのでありまして、しかし、議長のあり方というのは、それぞれの議長でいろいろなものがあるのかもしれません。世界じゅうを見ましても、議長がかなりのリーダーシップを持って一定の方向に政治を引っ張る、そういう国がないわけではない。私は日本はそういう国じゃないと思っておりますが、西岡さんの目指す議長像と、私のこれが議長だと思う姿とはかなり違うと思っております。

 それ以上に、この問題に私自身が参戦をするつもりはありません。

平沢委員 やはり、議長という立場にありながら、恐らく西岡さんも議長というのはニュートラルでなきゃならないということは十分おわかりの上でここまであえて発言されるというのは、相当の覚悟を持っておられるんじゃないかなという気がします。

 そこで、もう一つ、西岡議長が読売に寄稿した文章の中にこういったことも書いてあります。昨年、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件のときも首相としての責任を放棄されたと。恐らくこれは、政府が責任をとらないで、全部検察庁に責任を転嫁した、このことを言っているんじゃないかと思います。西岡議長は、断定的に、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件のときも首相としての責任を放棄されたと菅首相に言っているんですけれども、これについては、大臣、どういうふうにお考えになられますか。

江田国務大臣 この点について、西岡さんの御意見がどういう御意見なのかはよく承知をしておりません。

 ただ、日本の法制上、あれはもう全くの刑事事件でございまして、公務執行妨害という事件で、これは、日本の場合には、捜査当局がすべての権限を持って処理する、その捜査当局に対して、法務大臣が具体的な事件においては検察庁法十四条で検事総長のみを指揮できる、こういう立て方になっておりまして、当時の法務大臣も、あるいは法務大臣の任命権者である内閣総理大臣も、その日本の法律の仕組みというものをしっかり踏まえて、ぐっと歯を食いしばって現地の検察にすべての処理をゆだねた。

 ただ、検察の処理の仕方がどうだったか、これはいろいろな意見はあるとは思いますが、そこはもうゆだねる、そして、その結果起きてくる外交問題があるいはあるならば、それは政府としてしっかり責任をとりながら外交関係は処理していくということで、私は、西岡さんがどの点をとらえて言っているのか存じ上げておりませんが、西岡議長の言われるような批判は当たらないものと思っております。

平沢委員 これはまた別の機会にやりたいと思いますけれども、あのときの那覇地検の対応というのは、どう考えても那覇地検が単独で判断できる話ではないし、検察だけで判断できる問題ではないし、だからこそ、あの中に日中関係を考えたというような文言が入ってくるわけでございまして、恐らく、そういったことをとらえて西岡さんは言われているんじゃないかなと思いますけれども、これはまた別の機会にやりたいと思います。

 そこで、法案の関係ですけれども、まず、この前の辻委員、橘委員との質疑の中で、大臣は、共謀罪について「その制定はしないということになっている」あるいは「共謀罪の新設はノーということになったわけであります。」という答弁をされておられます。

 これは、前にもこの委員会で出たことがあるわけですけれども、共謀罪というのは、国際組織犯罪防止条約に入るためのいわば国内の要件の整備ということでいろいろと検討されてきたわけでございまして、この国際組織犯罪防止条約、これは日本も平成十二年に署名しているわけですけれども、これは、国際社会が、テロとか、あるいは銃器とか麻薬等の密売とか、そういったいろいろな組織的な犯罪に協力して対処しようということがねらいでできた条約でございまして、これに日本が入るとなると、当然共謀罪というのを整備しなきゃならないんです。

 当時、いろいろな議論がありましたけれども、やはり、共謀罪をやることによって、例えば労働組合とかそういったところも対象になるんじゃないかとか、対象となる犯罪が非常に広過ぎるんじゃないかとか、いろいろ言われたわけでございまして、あくまでも、その対象団体というのは犯罪を目的とする団体に限る、そして重大な犯罪の共謀行為に限るというようなことで議論が進んでいたと思いますけれども、まだ私は、共謀罪について完全にやめたというのは聞いたことがないんです。

 共謀罪をやめたということになりますと、国際組織犯罪防止条約に対する加盟もないということにもなる。これは一つの大きな要件ですから。ですから、大臣は、その辺はどういうふうにお考えなのか、ちょっとお聞きします。

江田国務大臣 国際組織犯罪防止条約、これは、国際社会が協調して組織犯罪と戦うというために重要な条約でございまして、既に、現在与党、当時は野党であった民主党も賛成して、国会での承認というものを取りつけているわけでございます。そのことは私ももちろんよく承知をしております。そして、この条約の批准手続に入るために国内法を整備しなきゃいけない、これも当然のことでございます。

 その国内法の整備として、いわゆる当時出されていた共謀罪というのが必要なのかどうなのか、これが議論の対象になって、ここについては意見が分かれているということで、しかも、今平沢委員御指摘のとおり、あの共謀罪、いわゆる共謀罪ですが、これをめぐって国会内で大変な議論が行われた、これも事実で、そして、例えば団体の場合には、特定の暴力的な、あるいは犯罪を行う団体に限るのであるとか、いろいろなことが言われて、そして最終的に、当時の国会で成案となるに至らずに廃案となっているわけでございます。

 そういうことを踏まえて、これまでの議論を踏まえて、今回のこのサイバー法案を提出するに当たっては、これを加えることはしなかった。正確に申し上げますが、今回のこの法案について共謀罪を加えるということはしなかったということでございまして、今後なお、関係省庁ともしっかり協議をし、また、与党、野党の皆さんの御意見もいただきながら、この国際組織犯罪防止条約の批准がきちんとできるようにやってまいりたいと思っております。

平沢委員 大臣、ありがとうございました。ぜひこれは検討を進めていただきたいと思います。

 当時言われたのは、日本の刑法は、要するに犯罪の実行行為を処罰するのであって、実行行為に至らないもの、幾つかの例外はありますけれども、それは日本の刑法の原則から外れるんだというようなことが言われたわけですけれども、私もそのとき言ったんですけれども、では、サリン事件は起こってから検挙するのかと。やはり、もしもサリン事件が起こるということがわかっていたら、あるいはその可能性が極めて高かったら、事前にあれする必要性というのは当然出てきますし、今、原発のことがいろいろ言われています。

 原発で、菅総理は地震、津波と言われていますけれども、これは諸外国を見てみればわかりますけれども、一番原発で怖いのはテロなんです。テロが一番怖いから、だからこそ、フランスなんかは憲兵隊というところで原発を守っているんです。そしてイギリスは、警察官は武装していませんけれども、原発を守る部隊だけは武装しているんです。特別の部隊を持っていて、武装しているんです。そのくらい各国は、原発について、テロから侵害を受けないように努力というか必死の取り組みをしているわけです。

 日本だってその可能性があるわけで、万が一、原発を何らかの形で攻撃するというようなテロリストが入ってきて、それでいろいろな謀議をしていた場合に、それが実行行為をしなければ罰せないなんということになったらこれは大変なことになってしまうので、これはぜひ前向きに取り組んでもらいたいと思いますけれども、ぜひもう一回。

江田国務大臣 これはまさにこれから検討するというところですが、当時の議論、私も、多少もう記憶もあいまいにはなっていますが、思い出しております。

 日本の刑法体系の中で、単に相談しただけ、これで罪になるというのは、なかなかこれは日本の刑法体系になじまない。しかし、相談の結果何らかのアクションが、こういう相談があったよということをアクションで認知できるような、そういう行動があれば、それは一歩前へ進んでいるので、それが予備というところまで行かなくても、あるいは可罰性があるようなこともできるかどうか、そのようなことを議論したのを思い出しておりまして、必要があれば、これから議論をまた深めてまいりたいと思います。

平沢委員 では、次に進ませていただきます。

 今回の法案は大きく二つに分かれていまして、一つはサイバー関係の法整備、もう一つは強制執行妨害関係の罰則整備と、これは性質が違う内容のものを二つを一緒にして法案として出てきているわけですけれども、これを一緒にくっつけた理由というのは何なんでしょうか。

江田国務大臣 コンピューター関係につきましては、コンピューターのネットワークが極めて重要な社会的基盤になっていて、ウイルスによる攻撃も多発していて、これを可罰的にしなきゃいけない。さらに、さまざまな手続面での整備も、コンピューター関係で必要な場面がたくさん起きてきている。また一方、近年、悪質な資産隠し、占有屋と呼ばれるような強制執行を妨害する事案、これも後を絶たない。

 というようなことで、いずれも、近年社会問題となっているサイバー犯罪及び強制執行を妨害する犯罪、近年重要な社会問題になっているという点でこれは共通のものでございまして、この両方に適切に対処するために、今回、処罰規定その他の規定を整備したということでございます。

平沢委員 そこで、サイバー犯罪条約なんですけれども、サイバー犯罪というのは国境を越えて犯されるわけでございまして、国際協力が不可欠なわけで、そのためのサイバー犯罪条約というのを欧州評議会が起草しまして、日本も平成十三年に署名して、平成十六年に国会で承認されているわけですけれども、今日までこれが締結されてこなかった理由というのは何なんでしょうか。これは刑事局長でもいいですから。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法整備、これは、サイバー犯罪等に適切に対処するためであると同時に、サイバー犯罪条約を締結するためのものでもございます。

 本条約を締結するためには国内法の整備が必要でございます。これが本法案の法整備を行うことが前提となっているということで、現在まで本条約の締結にまでは至っていなかった、こういうことでございます。

平沢委員 これは、私ども政権与党にあったわけですから、もうちょっと早くやるべきだったんじゃないかなという感じがします。

 ちなみに、サイバー犯罪条約、今、締結は三十カ国と聞いていますけれども、これは、中国とか韓国とか、近隣諸国は入っているんでしょうか。それで、もし入っていなかった場合には、捜査共助とか犯罪人引き渡しとか、これはどういうふうになるんでしょうか。その辺ちょっと教えてくれませんか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十三年四月現在の締結済みの国が三十カ国でございます。署名はしたけれどもまだ締結に至っていない国が十七カ国ある。特にG8の中では、ロシアが未署名である以外は、締結済みであるか、あるいは署名はしたものの未締結である、こういうような状況でございます。

 それから、韓国と中国はこの中に入っておりません。ただ、それは個別の司法共助あるいは犯罪人引き渡し、この関係で解決していく問題であるというふうに考えております。

平沢委員 では次に、コンピューターウイルスの作成、供用等の罪が今回新設されたわけですけれども、言うまでもなく、コンピューターウイルスによるコンピューターへの攻撃といいますか、この前大臣は悪さと言われましたけれども、そういったことは今までもずっと行われていたと思います。

 これは警察庁でいいですけれども、警察庁は、こうしたコンピューターウイルスによる攻撃、これは今まではどういうふうに対処してきたんでしょうか。今までの検挙事例があったら、ちょっと簡単に教えてください。

樋口政府参考人 コンピューターウイルスに起因すると思われます情報流出でありますとか金銭的な損害等のいわば実質的な被害の発生ということでございますが、私ども警察も相談でありますとか届け出を受理しておるわけでございまして、この件数を見ますと、年々大幅に増加してきております。

 件数を申し上げますと、昨年が三百二十七件でございました。残念ながら、このうち犯罪として検挙できましたのは三件でございます。器物損壊でありますとか不正アクセス禁止法違反でありますとか、そういった罪名でございます。

平沢委員 では、今回の新しい法ができれば、今度は検挙というのはかなりやりやすくなるんですか。

樋口政府参考人 申し上げるまでもないのでございますけれども、現在は、現行法で規定する何らかの犯罪に当たる行為があったことを立証いたしませんと検挙に至らないわけでございますが、このウイルスの作成等の行為が犯罪化されますと、その段階で摘発、検挙が可能になるわけでございまして、いろいろな捜査の困難性の軽減もさることながら、実質的な被害の発生を未然に防止する、あるいは被害の拡大を防止するといったことにつながるものと期待されるところでございます。

平沢委員 コンピューターウイルスの作成罪というのは、この前、辻委員もいろいろと聞いていまして、辻委員は、ソフトを開発していたプログラマーが仮に妨害的なソフトを開発していたとしても、それを使うかどうかわからない段階でこれを検挙できるのかどうかというような質問をされたと思いますけれども、このウイルスの作成罪というのは、どこから既遂になるんですか、どこから未遂なんですか。そして、今回は未遂罪が入っていないみたいですけれども、未遂が入っていない理由は何なんですか。

江田国務大臣 ウイルス作成罪の既遂時期ということですが、これは不正指令電磁的記録等の作成というものは何かということで、作成というのは、当該電磁的記録等を新たに記録媒体上に存在するに至らしめる、こういう言い方でございまして、もうちょっと平たく言いますと、人が電子計算機を使用するに際して、その意図に沿うべき動作をさせず、また意図に反する動作をさせる、そういう不正な指令です。これを機能し得る内容のものとして実質的に存在するに至らしめたと。

 存在するというのは何か、これは記録媒体上に存在させるに至らしめたということで、そこで既遂となるということでございまして、記録媒体上に置いたけれども、できが悪くて、いろいろな指令を出すという機能が全然達成できないようなもの、これはまだ既遂には至っていない。未遂で罰するということも考えられないわけじゃございませんけれども、そんな不十分なもののところまで捕らえて未遂で罰するということはなかろう、こういうことでございます。

平沢委員 今回のウイルス作成罪等の法律は、これは故意犯なんですけれども、この前も大臣も辻委員の質問に対する答弁の中でいろいろと言っておられましたけれども、これは大事な問題だからもう一回やりたいと思うんです。

 これは非常に主観的なものですね。この主観的なものを検挙するとなると相当な客観的な傍証がないと難しいなと思いますけれども、立件に当たっては、どういうところをいわば基準にして検挙というのが行われるのか、その辺ちょっと教えていただけませんか。

江田国務大臣 もちろん、ウイルスがコンピューターを攻撃して、その結果が生ずれば、それはもうその段階でこの中へ突っ込んでいけばだんだんいろいろなことがわかってくるわけですが、委員の問題の関心は、そこまで至らない段階でのことを恐らくおっしゃっているんだろうと思います。

 その場合には、主観的な要素として、一つは目的、それからもう一つは正当な理由がない。この二つはダブる領域もありますが、ダブっていない部分もあるかと思います。

 そういう主観的な状況というのに私ども立証のテーマを求めていかなきゃいけないというので、なかなかこれは大変ですが、個別の事案ごとだと言うしか言いようがないんですが、作成に至る経緯であるとかあるいは作成の方法であるとか、そうした具体的な事実関係を踏まえなければなりませんし、私は、特に、作成した者の内心の意図の供述だけを一生懸命追いかける、これはやはりいろいろ問題が出てくるので、ウイルスが作成されたパソコンを解析していくことによっていろいろな経過が出てくる、そうすると意図がおのずと推認できるとか、あるいは他人のパソコンに感染させた場合に、その事実からも内心の意図が推認できていくとか、あるいはいろいろなメモがあるとか仲間とのやりとりのメールがあるとか、そうしたさまざまな外形的事実を立証できる証拠、こうしたものをしっかり収集して、内心の意図も立証していけるものだと思っております。

平沢委員 時間がありませんので次に進ませていただきたいと思います。

 保全要請なんですけれども、これは、通信事業者といいますかプロバイダーにいわば消さないでくれということを頼むんだろうと思いますけれども、これは罰則がないので、もしプロバイダーの方が、捜査当局がどこに関心を持っているかというのがわかりますから、結局、これを消さないでくれと来たら、ああ、ここが一番捜査当局の関心事だということがわかって、これを消してしまったらどうなるんですか。もし協力的でない事業者がいた場合ですよ、その場合はどうなるんでしょうか。

江田国務大臣 協力的でない事業者が保全要請を拒否した、その場合にどうするか。これは法的に義務づけるものではないので、さらに刑罰等の制裁もないので、拒否をされたら、それはそれ以上に無理やりにでもやらせるというわけにはいかない。

 これは、いろいろ言葉を尽くし、態度をちゃんと示して協力をお願いする、努めるということにしなければなりませんが、保全要請というのはその先に差し押さえが前提となっているわけでありますから、これは、協力してもらえない場合にはすぐに差し押さえあるいは記録命令つき差し押さえ、こういうところに踏み込んでいかなければいけない、迅速にそういうことをやっていくということにしなければならぬと思っております。

平沢委員 ちょっとよくわからないんですけれども、保全要請を出した、ところが事業者の方が、ああ、ここが関心事だというのがわかって直ちにこれを消去してしまった場合、もちろん捜査当局は直ちに、これは協力的でないということがわかったから裁判官の令状をとって差し押さえするでしょうけれども、その間にタイムラグがありますから、逆にその間に全部消去されてしまうという可能性はないんでしょうか。

江田国務大臣 そういう可能性がないかと言われると、それはなかなか難しいところだと思います。

 今、法的な義務はないんだというのはちょっと間違っておりまして、一応、これは保全の要請ですから、法律でそういうものを書くわけですから、その限りでは法的な義務があるが、ただ罰則はないという意味で申し上げたわけですが、罰則がないので、従ってくれなければ消去されるということは起きるわけで、そこはやはり捜査機関が捜査の手法を最大限駆使して、この事業者はどうも協力してもらえないというときには、あらかじめそういう態度を察知して差し押さえというところに進んでいくということで、そうした業者との極めて緊張したやりとりということになると思います。

平沢委員 時間が来たので最後の質問にさせていただきます。

 今回の保全要請というのは、これは憲法の通信の秘密とか何かに触れるんじゃないかというような意見も一部あるんですけれども、私は触れることはないと思いますけれども、大臣、その辺ちょっと御確認させてください。

江田国務大臣 これは私も、いろいろな理由から、憲法に触れるということはないと確信をしております。

平沢委員 時間が来たので質問を終わります。ありがとうございました。

奥田委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。

 今法案は、サイバー犯罪に関する条約締結のための法整備ということですけれども、その前に、同じく条約である国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約に基づいて法整備の必要がある共謀罪についてお伺いをいたします。

 先ほど平沢委員の御質問にもございましたけれども、従前ずっと政府は、共謀罪については、条約に基づく法整備という国際法上の要請と、そしてまた国内法的にも、組織的な犯罪というのは綿密な計画が練られていて、先ほど指摘がありましたように、例えば原発に対するテロなど、やはり計画段階で食いとめないとその結果が大変重大なものもあるということで、国際法上もそして国内法的にも共謀罪の必要性ということを指摘してきたわけですけれども、大臣は共謀罪の必要性について、この条約に基づく法整備という側面、そしてまた国内法的にもその必要性ということについてどのように認識されているか、お伺いをいたします。

江田国務大臣 これは先ほどの平沢委員の御質問にも答えた部分と重なる部分があろうかと思いますけれども、国際組織犯罪防止条約、これは大変大切な条約だと思っております。その条約を、もうこれは民主党も賛成をして承認しているわけでございますが、批准をするために国内法の整備が要る。批准のための国内法整備はどこまで要るのか、ここが問題で、いろいろな議論が既に国会で行われたところでございます。

 条約でも、国内法の基本原則に従ってつくる、国内法を無視してつくれとまでは言っていないので、そこで、日本の場合には、いわゆる共謀罪というものが日本の国内法と整合するのかどうか、これが議論になったわけで、いろいろな議論の中で、団体というものはこういう性格のものを念頭に置いているんだとか、あるいは、共謀といっても、飲み屋で三人ほどちょっと話をしただけでは、それはそんなものは共謀じゃないんだ、やはり何らかのアクション的なものがなきゃいけないんだとか、そんな議論がいろいろ繰り返されました。

 そして、最終的には、共謀罪を含む国内法整備というところまで行かずに終わっているのが現在のところでございまして、あの当時出されていた共謀罪でなければこの条約の国内法と言えないのか、あるいはもっと違うものがあるのか、それはこれから関係府省ともよく相談をしながら、また政党の皆さんともいろいろ議論しながら検討をしていきたいと思っているところです。

稲田委員 大臣の今のお答えなんですけれども、私は、大臣自身が、新たに条約に基づいて共謀罪というものを日本で法整備する必要があると考えておられるのかどうかという点をお伺いしたいと思います。

江田国務大臣 これは、当時出された共謀罪のあの審議の中で、私も当時当然国会議員でございました、議論に参加をしてまいりました。あの共謀罪までは必要ないのではないかというのが私どもの考え方でございました。

 そして、民主党は、共謀罪を導入しなくても条約批准は可能です、そういう民主党政策集の中での記述がございまして、基本的に私もその考えでございますが、では、何もなくていいのか、こうなると、これはまた一つ議論の的かと思うので、どういうものが必要なのか、これをみんなで考えていきたい。

 私自身の考えということをお尋ねですが、この条約の批准のために国内法で、あの共謀罪として旧政権が示されたあのあたりのことについて何か手当てが要るかなという思いは持っておりますが、まだ考えを全部まとめ切っているわけではございません。

稲田委員 ということは、今の大臣の御答弁は、今、民主党の政策集には、共謀罪というものを新たに法整備しなくても条約を批准できるんだと書かれているわけですけれども、大臣は、今の法整備ではなくて、何らかの共謀罪的な、以前出していたものとは違うけれども新たな法整備は必要だとお考えですか。

江田国務大臣 これは、民主党政策集では、国内法の基本原則に従って必要な措置をとるのが条約の求めである、そして、条約が定める重大犯罪のほとんどについて、我が国では現行法で既に予備罪、準備罪、幇助罪、共謀共同正犯などの形で共謀を犯罪とする措置がとられているので、「共謀罪を導入しなくても」云々と書いてあるわけで、ここで言う「共謀罪を導入しなくても」というのは、当時政府が出していた法案、これを指しているわけで、ここでそのまま読むと、いろいろな措置がとられている、「したがって、共謀罪を導入しなくても」と書いてありますが、全く何も要らないのかどうか、これは私としてはまだ考えをまとめ切っている段階には至っておりません。

稲田委員 では、大臣としては、全く何らかの新たな共謀罪的な犯罪の国内整備をする必要があるのかないのか、その点についてわからないのか、どれでしょうか。

江田国務大臣 まだ結論を得るところまで至っておりません。これは、法務省だけでというわけにいかないので、条約を批准するときにどういう国内的な担保が必要かというのは、関係省庁ともよく協議をしなければ結論は出ないということです。

稲田委員 では、大臣は、今の法整備だけで、新たなものを整備しなくても条約は批准できるとお考えですか。

江田国務大臣 そういう意見もあると思います。しかし一方で、前の政権が出したようなああいう共謀罪でなければ国内法担保にはならないという意見もあると思います。

 私は、まだ、そこは関係省庁とよく詰めて結論を得なければいけない問題で、そこまで今詰め切れてはいないということでございます。

稲田委員 はっきりしないですね。

 私は、民主党の政策集に書いてある、共謀罪を導入することなく条約の批准手続を進めることはできないと考えております。それについて大臣は、今のままで何も法整備しなくても条約を批准することができるという考え方もあるとおっしゃったんですが、できるのか、できないのか、大臣の御見解を、法務大臣なんですから、お伺いをいたしたいと思います。

江田国務大臣 私も法務大臣ですので、まだ十分検討し切れていないところについて余り個人的な見解を勝手に言うわけにはいかないと思っておりまして、これはいろいろな意見がある、そのいろいろな意見をこれから協議を積み重ねてまとめていくということが必要だと思っております。

稲田委員 大臣は先日の質疑の中で、「当時、私どもは野党で、これは断固反対ということでいろいろやったわけであります」と書かれておりますけれども、大臣は、今まで自民党政権下で出していた共謀罪については断固反対なのかどうか、そして、断固反対だとすればなぜ反対なのか、その点についてお伺いをいたします。

江田国務大臣 一昨年の九月に政権がかわりました。そして、政権がかわれば、それは違う場面というのは出てくるんですね。しかし、同じ日本国の政府ですから、継続性が必要だという場面ももちろんあります。

 今の、この共謀罪ということについて、政権がかわったけれども、継続性が重要だから、我々今の政権は前の政権が出した法案というものに手足を縛られるということは、これはないと思います。しかし、私どもも国際組織犯罪防止条約の承認には賛成をしたわけでございまして、そういう立場から、国内法の整備というものはしっかり考えていかなきゃいけないと思っておりまして、それ以上でも以下でもないというところです。

稲田委員 大臣、私の質問に答えていただきたいんですが、自民党政権下で出した共謀罪については断固反対ということでやってきたんだと先日答弁をされたので、大臣も断固反対だったのか、また、その理由は何ですかということを聞いております。

江田国務大臣 当時はもちろん断固反対という立場でございました。それはやはり、日本の刑法体系にうまくなじんでいかない部分があるという危惧を私ども感じたからでございます。

 質疑の中で、委員は当時議員であられたかどうか、ごめんなさい、私ちょっと覚えていないんですが、いろいろな議論をして、そして、ある程度煮詰まってきている部分も確かにあったんです。例えば、今の、団体とはどういうものであるかとか、あるいは、単に飲み屋でちょっと話しただけでそれでも罪になるのかとか、いろいろな議論はあって、だんだん歩み寄ったところまでは来たんですが、最終的に、合意に至らずに廃案になったということでございまして、私は、もし、当時の政府が出していた法案をそのまま今、目の前に示されて、そして、ほかのいろいろな条件なしにこれに賛成か反対かと言われましたら、それは断固反対としか言いようがないと思います。

稲田委員 その断固反対の理由をお知らせください。

江田国務大臣 ですから、日本の刑法体系になじまない部分があるということです。

稲田委員 どこが刑法体系になじまない部分があり、断固反対なんでしょうか。

江田国務大臣 日本の刑法体系というのは、やはり外形的な行為が何か要るんだというので、犯罪の進捗状況の中で一番早い段階で捕らえるのは予備罪というのがございますが、予備罪でも、やはり予備罪を構成する何らかの行為がなければ予備罪の既遂とはならないので、共謀罪というのは、あの当時出されたものをそのまま示されるなら、これはそういうものを認識するのがなかなか難しいということでございます。

稲田委員 今大臣は、我が国の刑法体系では何らかの行為というか、そういう外形的な行為が必要である、だから反対なのだとおっしゃいましたけれども、だとすると、先日、辻委員が御指摘になったように、今回のサイバー犯罪と共謀罪というのは通底する部分があって、作成しただけで、実行の用に供していなくても処罰されるという法律ですから、共謀罪は今おっしゃった理由で大臣が反対なのであれば、どうしてこのサイバー犯罪については必要であり、賛成だと考えていらっしゃいますか。

江田国務大臣 通底するものがあるという御意見ももちろんあると思います。私はそういう意見がないと言うつもりは全くありませんし、現にこの委員会でもそういう意見も出ているわけであります。

 しかし、コンピューターウイルスの作成というのは、これは作成した行為が現にあるんですよ。社会的危険を及ぼすような行為が現に行われているわけでありますから、単なる内心の状況を処罰するというのとは全く違うということです。

稲田委員 お言葉ですけれども、そうおっしゃるのであれば、共謀罪だって、内心の自由じゃなくて、計画をし、集まって、綿密に計画も立て、合意もする、共謀もする、そういう外形的事実をもって処罰するんですから、今のお答えは矛盾すると思いますよ。

 それから、あと、先日、民主党の、与党のお二人の先生方の質問を聞いていて、一体、民主党の意思決定プロセスというのはどうなっているのかなと率直に疑問に思いました。なぜなら、お二人ともがサイバー犯罪法については慎重にすべきだとおっしゃっておりましたけれども、大臣、この法案は民主党内では了承されているんでしょうか。

江田国務大臣 それこそお言葉ですが、共謀罪の審議の過程の中でいろいろなことが出てきたんですが、それが本当にあの条文でしっかり示されているかどうかについては私どもまだ確信を持てない状況でございました。共謀といっても、今委員おっしゃるようないろいろな行為がなければだめなんだというようなことは、大分議論が進んでから出てきたことなので、それならば書き方をまた変えなきゃいけないとかいろいろあるんだろうと思います。

 そして、このサイバー法案について、先日のこの委員会の質疑の中で与党の委員の皆さんからいろいろ厳しい御質問があったのは確かでございますが、それはやはり委員会の質疑ですから、私も与党の皆さんからいろいろ厳しいことを言われても、それはそういう見方もあるけれどもこうなんですよという説明をちゃんとして、納得いただけるものと思っておりまして、民主党はこのサイバー法案について、これは党議で了解を得ているものと認識をしております。

稲田委員 私は、先ほど大臣が、従前出していた共謀罪は、実行行為、行為がないのに処罰するもので我が国の刑法体系に合わない、だから断固反対なんだったと理由を述べられましたので、だとすれば、今回のサイバー犯罪だって、作成しただけで、実行の用に供していないということでは同じではありませんかということを反論として申し上げたわけであります。

 それから、民主党の橘委員は、民主党の法務部門会議では、相当これは異論であったり反対というものが相次いだのですが、いつの間にか結局決まってしまって、法案が提出されてしまったんじゃないか、そういう印象を持つものでありますとおっしゃったんです。いつの間にか法案が提出される民主党というのはどういう党なのかなということも思うわけです。

 その前に質問に立たれた辻先生は、法務部門の会議の座長でいらっしゃるわけですね。座長もこの法案に慎重であるべきだという御意見なんですけれども、法務部門の座長も慎重だということで、民主党内の反対論それから異論が渦巻いているということについて、大臣、どのようにお考えですか。

江田国務大臣 この法案をめぐる党内手続の詳細まで私は存じておりません、結論しか伺っておりませんが、しかし、党内でいろいろな議論は行われたのだろうと思います。

 率直に言って、私は、民主党というのはそういう政党であって、いろいろな議論はする、しかし最後結論を出す、みんながそれに従う、そういう政党だと思っております。

稲田委員 しかし、民主主義というのはその過程というものが大変重要で、意思決定プロセスというものが大変重要だと思います。ですから、どうやって法案が提出されてしまったのか、いつの間にか結局決まってしまったなどと党内の委員が指摘するような民主党というのは、私は民主主義の政党としてはいかがなものかと思いますので、その点を御指摘させていただきます。

 刑事局長にお伺いをいたします。

 共謀罪の制定は、国際条約上の要請も、また国内法的にも必要であるというふうに私は認識をいたしておりますけれども、その点についてどのようなお考えか。また、今の刑法に書かれている予備罪とかありますけれども、新たな共謀罪を制定することなく条約を批准することが可能か。その点についてお伺いをいたします。

西川政府参考人 先生御案内のとおり、既に政権交代の前に法案を出しまして、そのときには、いわゆる組織犯罪防止条約の批准の上においても、また国内的にもメリットがあるという御説明を申し上げました。

 条約の関係については外務省ということになるので、国内的にはやはり組織犯罪に対してより早目にこれを防止するというメリットがあるだろうということでお出ししましたが、先ほど大臣から御説明があったとおり、従前の国会審議等の中においてさまざまな議論がなされて、その中には例えば対象が広過ぎるとかいろいろな議論があったということで、最終的には廃案になった、こういう経過でございます。

 したがって、現在の段階は、これも先ほど大臣がおっしゃったとおりなんですが、このような御意見も踏まえまして、条約に従ってどのような法整備を行うかという点も含めて検討していく、これはもちろん関係省庁も含めて検討していくという段階でございますので、まだ結論が出ているということではないというふうに理解をしております。

稲田委員 条約上も、新たな共謀罪、五条に従う共謀罪を整備しなきゃいけない、国内法的にも、組織的な犯罪を未然に防ぐ、重大な犯罪を未然に防ぐという意味での共謀罪の制定の必要性は消えてはいないというふうに伺ってよろしいですか、刑事局長。

西川政府参考人 そういう点を含めて再検討している最中で、結論は出ていないということでございます。

稲田委員 先ほど平沢委員が御指摘になったように、原発に対するテロなどのことを考えますと、必要性はなくなるどころかますます必要になっていると私は思いますので、刑事局長もお答えにくいかもわかりませんけれども、その点はきちんと認識をいただきたいと思います。

 それから、外務省にお伺いをいたしますけれども、条約には「締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置をとる。」とされています。

 ここに言う基本原則というのは、憲法上の原則等、国内法制において容易に変更することができない根本的な法的原則を示す、罪刑法定主義や適正手続の保障などがこれに当たると思うんですけれども、それでよろしいかどうか。そしてまた、共謀罪を新たに定めることは国内法の基本原則には反しないと思いますけれども、その点について、御答弁をよろしくお願いします。

鶴岡政府参考人 第一点の御質問でございます「自国の国内法の基本原則に従って、」と表現されているところに言う基本原則の理解でありますが、今委員御指摘になられましたのは、かつての国会での審議の際に政府側から御説明をいたしました理解でございまして、現時点においてもその理解についての変更はございません。

 第二点の、それでは共謀罪が仮に制定される場合、その共謀罪と今申し上げた基本原則の関係でございますが、先ほどから法務大臣ないし刑事局長からも御答弁申し上げているとおり、この条約に従い、いかなる形で国内法整備を進めるのが適当かという点につきましては、現在、関係省庁の間で協議をしながら検討しているところでございます。

稲田委員 その中身ですね、その中身とか構成要件の定め方については議論があろうかと思いますけれども、条約の五条に基づいて、共謀罪、もしくは参加罪、もしくは共謀罪と参加罪の両方、それを新たに犯罪化することが条約上の義務として求められているということは間違いありませんか。

鶴岡政府参考人 間違いないと申し上げられるかと思いますが、念のためさらに申し上げますと、国際組織犯罪防止条約第五条の1におきましては、重大な犯罪を行うことの合意または組織的な犯罪集団の活動に積極的に参加することの少なくとも一方を犯罪とすること、これが義務づけられております。

稲田委員 その五条に基づいて、構成要件の中身はともかく、新たに共謀罪を犯罪化することなく条約を批准することはできるんでしょうか。

鶴岡政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、ただいま委員御指摘の共謀罪につきましては、既に法務大臣からもるる御答弁申し上げたとおりでございまして、現在、条約に従って、どのような国内法整備をいかなる形で進めるのが適当かという点については協議中でございます。

 他方、条約の義務との関係で申し上げれば、重大な犯罪を行うことの合意または組織的な犯罪集団の活動に積極的に参加することの少なくとも一方を犯罪とすることが義務づけられておりますので、この条約を締結するに当たりましては、上記の行為のうちいずれか一つを犯罪とする必要があると理解しております。

稲田委員 ということは、今のままで、何もしないで条約を批准するということはできないんですよ。

 そういう意味では、大臣、この民主党の書かれている、共謀罪を導入することなく条約の批准手続を進めますというのは、これは誤っているんじゃありませんか。その点をはっきりしないと、国民にいわば誤解を与えると私は思うんです。何もしなくても、今のままで条約の批准手続を進められるとこの政策集を見た人は思いますから、この点については誤解がないように書き改めるべきじゃありませんか。

江田国務大臣 委員は、何の新たな犯罪類型を定めなくても条約に加盟できるというのは間違っているとおっしゃいましたが、間違っているという意見もあるでしょう。しかし、いや、それはそういうものじゃなくても、既存のさまざまな刑罰が用意をされているので、さまざまあります、先ほども言いました予備罪から準備罪から、いろいろなものがあります、そういうことで、これは国内法上既に法整備は、個別ではありますができ上がっている、そういう意見もあるんです。

 ですから、そこへ書いてあるのが間違いだと言われても、それはそういう考え方であって、そこへ書いてあるような考え方もあるわけで、あとはしっかり議論をしながらどういうことにするかを協議して結論を得なきゃいけない、それは民主主義ですから当然だと思います。

稲田委員 ですから、私は法務大臣の見解を聞いているんですよ。民主党のこのインデックスの中に書いてある、今のままで何もしなくて、今の殺人予備とかがあるので、今のままでこの条約の批准手続を進めることができますと書いてありますけれども、これは正しいかどうか。

 そして、そういう意見もあるということを聞いているんじゃなくて、大臣はその意見に賛成なんですか、正しいと思っていらっしゃるんですか。

江田国務大臣 いろいろな意見があるというのはおかしいと言われますが、そんなことはない、世の中にはいろいろな意見があるので、あるのはしようがないです、それは。だから、いろいろな意見があるものをちゃんと協議をしながら一つの合意に持っていかなきゃいけない。政治過程というのはそういうもので、私は、民主党の政策集、こういうものも掲げながら、有権者に信を問うて選挙を戦って当選をさせていただいているので、そういう民主党の政策集というものは、それはそれで一つの立場である。

 私も、どちらの立場に立つのかと言われればその立場に立ちますが、しかし、そこで言っている共謀罪というのは、当時、前政権が出した共謀罪のことですということを申し上げている。

稲田委員 それなら、新たな共謀罪の導入は検討しておりますけれどもとか書かないと、この記述だと、何もしなくても条約の批准手続を進められますと普通の一般人は誤解をいたします。

 また、先ほどからの外務省の答弁を聞いておりましても、条約五条の要請として、共謀罪というのか、中身はともかく、そういった新たな法整備をすることが義務づけられていて、それをしないことには、今のままで、何もしないで条約を批准できるということはできないんですよ。

 ですから、そういう意味で、民主党のこのインデックスに書かれている、共謀罪を導入することなく条約の批准手続を進めますというのは、今の政府の見解とも違いますので、ぜひここは訂正をいただきたいし、私は民主党のこの解釈は明らかに誤りだと思っておりますので、条約を批准するためにも、また国内法の必要性にかんがみても、共謀罪の導入を進めるのが、日本の治安を預かる法務大臣の責務だと私は思っております。

 ちょっと法案に入らせていただきます。

 九十六条では、「公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、」「その封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者」と要件が書かれておりますけれども、封印や差し押さえの表示を損壊したら、その封印や表示の根拠となった命令や処分自体が無効になるという誤解を生じないかなと思っているんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。この無効という意味についてです。

江田国務大臣 現行が「封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法で無効にした」と書いてあるのを今回改正しようとしておりまして、それは「封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした」というように改める。

 その意味でございますが、現行法では、封印とか差し押さえの表示が除去された後だと、違法に除去されたものを知っている者の行為であってもこの九十六条の罪は成立しない、こう解されているわけですけれども、これはやはり、何者かによって違法に除去された後に執行妨害勢力が封印等に係る命令の趣旨を没却する行為に及ぶ例がありますので、そういう者の行為も処罰できるように改めようというもので、文言上の意義について御説明をいたしますと、この「無効にした」ということは、「封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分」の事実上の効力を滅失または毀損したということを意味するので、法律上の効力ということではありません。事実上の効力を無効にするということでございます。

稲田委員 それから、新設される刑事訴訟法の九十九条の二や百十条の二においては、電磁的記録に係る記録媒体を差し押さえる場合には、印刷させたり、他の記録媒体に複写した上でこれを差し押さえすることができるようになりました。

 今、検察の在り方検討会議で、検察や捜査のあり方について議論がなされております。村木さんの事件ではフロッピーディスクが改ざんされるという、あってはならない、検察捜査の信頼を揺るがす事件が起きたばかりです。

 では、本条で、印刷された記録、複写された記録媒体上の電磁的記録と、原本に当たる電磁的記録の同一性については、実務上どのように担保されているんでしょうか。

江田国務大臣 刑事訴訟法第百十条の二の複写等をした電磁的記録と、もとの電磁的記録の同一性をどうやって担保するのか、そういう御趣旨かと思います。

 まず、その前提として、捜査機関が押収した証拠物に変更が加えられていないかどうかが問題となるのは、電磁的記録に係る記録媒体の場合に限られるものではございません。その上で、同一性の担保方法としては、電磁的記録の改変等を防止するために、書きかえが不能な記録媒体に記録をしたり、あるいは複写の過程を記録したりということも考えられるわけでございまして、複写等をされたもとの電磁的記録とそして複写等をしている電磁的記録の同一性というのは、このような複写の過程あるいは電磁的記録の保管方法等を明らかにすることによって担保されるものと思っております。

稲田委員 私は、この法案は、刑事手続による社会の安全、平穏を維持しつつ、プロバイダーなどの事業者やコンピューターネットワークの利用者の人権を侵害する可能性のある行為については厳格な司法審査で保護しようという、バランスのとれた法案だと思っておりますけれども、ただ、先ほども指摘をいたしましたように、大臣がこの法案について賛成だとおっしゃるその理由と、反対に、共謀罪には断固反対なんだ、そして、それが日本の刑事法の基本原則と一致しないのだとおっしゃるその理由づけの間には矛盾があるということを指摘いたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

奥田委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 この法案についてお伺いいたすわけでございますけれども、サイバー関係の法整備、それから強制執行妨害関係の罰則の整備等につきましては、組織犯罪の関係、国際組織犯罪防止条約の改正部分を除いた上で今回出されている。平成十六年、十七年に提出されているものからいわゆる条約刑法を除いたものが出されているわけでございます。

 私ども、強制執行妨害関係については、これはこういう形で改正をすべきだ、こういうふうに思っております。そして、サイバー関係につきましても、我々、十六年、十七年に出させていただいた上に、さらにいろいろ修正も加えているということでございますので、これについては基本的には賛成をしたいと思っております。

 ただ、前回の法案の策定から既に七年経過しておりますし、いろいろとIT技術の発達等がございまして、やはりここはしっかり中身を議論していかなければいけないという点で、解釈上の問題についてお伺いしたいと思っております。

 また、差し押さえ手続も、有体物を想定していたものが、今回は、電磁的記録というデータが対象物となっている、あるいはリモートアクセスというような新しい概念も出てきております。そういうことも含めて、疑義等を、解釈上の問題点について明らかにしていきたいと思います。

 まず、コンピューターウイルスの関係でございますけれども、刑法百六十八条の二の一項一号でコンピューターウイルスの定義が書いてあるわけですが、これは「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」、こういう定義であります。

 これは、その意図に沿うか反するかということの判断をする場合において、電子計算機の使用者におけるプログラムの具体的な機能に対する現実の認識を基準とするのか、それとも、使用者として認識すべきと考えられるべき一般的な基準、一般的には使用者として認識すべきと考えられる基準、これをその基準として判断するのか、ここについてお伺いしたいと思います。

江田国務大臣 コンピューターウイルスの定義は、今委員が御指摘のとおり、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令」、その意図というのはだれを基準にするのかという御指摘かと思いますが、この罪は、電子計算機のプログラムに対する社会一般の信頼、これを保護法益とするわけでありまして、それぞれの個人の信頼とか不信とかという話ではございません。

 電子計算機を使用する者一般の信頼を規範的に判断をしていくということでございまして、プログラムの具体的な機能に対するその使用者の現実の認識を基準とするのではなくて、一般に認識すべきと考えられているところが基準になる、そのように思っておりまして、その判断に当たっては、プログラムの機能の内容であるとか、あるいは機能についての説明内容であるとか、あるいは想定される利用者、あるいは利用方法、こういうことを総合的に考慮することになると思います。

大口委員 そうしますと、判断の基準として、プログラムの使用説明書の記載というのが参考になると考えるんですが、いかがですか。

江田国務大臣 使用説明書は一つの参考になると思います。

大口委員 例えば、パソコンの中のデータをすべて消去するというプログラムがあって、それがプログラムとしては有用なものである場合に、それと異なる説明、例えば、これは気象速報を随時受信するプログラムである、こういう説明がなされたものが広く配布され、その利用者が被害を受けたというケースが考えられます。こういう場合、使用者の意図に反する動作をする不正指令電磁的記録等になるのか、お伺いしたいと思います。

江田国務大臣 今具体的な事例をお挙げになっているわけでございますが、利用者の意図に反してデータが消去をされてしまう。利用者としては、今の場合に、天気予想プログラムですか、天気の予想が出てくるものと思ったら、意に反してすべてのデータが消去されてしまうというようなことでございますから、これは、この意図に沿うべき動作を一般的にさせず、また一般的に意図に反する動作をさせてしまう、そういう指令を出す、そうした電磁的記録だということが言えると思いますので、該当するというふうに評価をされる場合が多いのではないかと思います。

大口委員 そうすると、使用説明書の説明の仕方いかんによって、これがウイルスかどうかということが判定されるというふうにお伺いしたわけでございます。

 そこで、使用説明書等が存在しないプログラムはどうなのか。

 個人によるフリーソフトウエアの開発では、説明書なしで配布ということが十年以上前から行われているわけです。こういう使用説明書等が存在しないプログラムについて、どのような動作をするプログラムか説明しないでプログラムを配布すると、それは使用者の意図に反する動作をする不正指令電磁的記録とみなされるのかということで、さきの例だと、パソコンの中のデータをすべて消去するというプログラムを何も説明しないでウエブサイトで公開している場合、これは該当いたしますか。

江田国務大臣 私も、こうしたところに余り詳しい方ではないので、むしろ委員にいろいろ教えていただければと思いますが、フリーソフトというのは何であるかというと、ワープロソフトのように一般的有用性を有するソフト、あるいはそれとも、コンピューターを初期化するソフト、このような利用場面が限定されるソフトなどといったソフトの機能のことをいうんだというようでございます。

 これを利用するとき、どういう表示、説明がされているかとか、あるいは、これがもしウエブページ上で提供されている場合であると、そのウエブページの内容、説明、そうしたものから想定される当該フリーソフトの利用者やあるいはその利用方法、そうしたことを総合的に考慮して判断されるもので、ウエブサイト上、これは消去用のソフトですよということがあれば、そして、それをウエブにアクセスして、消去用のソフトが欲しいなと思っている人が見つけて、それを使えば、これはウイルスになるようなことはあり得ないと思います。

大口委員 その説明がない場合を問題にしているわけでございますけれども、そういう事例もあると。

 それから、プログラム業界では、バグはつきものだ、バグのないプログラムはないと言われています。そして、例えば、無料のプログラム、フリーソフトウエアを公開したところ、重大なバグがあるとユーザーからそういう声があった、それを無視してそのプログラムを公開し続けた場合は、それを知った時点で少なくとも未必の故意があって、提供罪が成立するという可能性があるのか、お伺いしたいと思います。

江田国務大臣 あると思います。

大口委員 いずれにいたしましても、こういうプログラム等、ソフトウエア関係の方から、こういう場合は罪に当たるのか否かということで、いろいろ声がありますので、このあたりにつきましては、罪刑法定主義という基本にしっかり立って、明確にしていかないといけない、こういうふうに思っております。

 それから、今回の法案で、不正指令電磁的記録の作成、提供、供用、取得、保管という五つの行為を処罰しているわけでありますが、作成という行為は、作成されたその瞬間に犯罪が成立することとなると。供用ということから見ますと、かなり早い段階で成立させることになるわけでございます。こういうふうに、供用の予備的行為ともとらえることができるわけでありますけれども、作成についてまで処罰することとしたのはどうなのか。

 まず、提供、供用を処罰の対象として、その効果を見て、取得、保管、作成について規制すべきという意見もあると思いますけれども、これについてはどうお考えでございますか。

江田国務大臣 提供とか供用とかを罪の類型として、その運用状況を見て、作成罪が必要かどうかを考えろ、こういう御意見もあるかと思いますけれども、しかし、作成というのは、社会からコンピューターが受ける信頼、これを害すべきものを新たにこの世に存在をさせるに至らしめるという行為であって、いわば害悪の根源をつくり出す行為で、しかも、作成するということは、明確に外から認識できる具体的な行為でございますので、そうした行為の結果、コンピューターウイルスが電磁的記録上あるいはその他の形で存在するに至れば、それ自体、当罰性が十分に認められると考えております。

大口委員 刑法に関する分では以上で区切りとしたい思います。

 次に、刑事訴訟法の改正の関係でお伺いいたしたいと思います。

 今回、記録命令つき差し押さえの新設と、電磁的記録に係る記録媒体の差し押さえの執行方法の整備、これは九十九条の二と百十条の二があるわけでありますが、この適用場面として、記録命令つき差し押さえは、プロバイダーのような第三者に対する差し押さえを想定し、電磁的記録に係る記録媒体の差し押さえの執行方法の整備というのは、被疑者に対する差し押さえというのを想定しているのか、お伺いしたいと思います。

江田国務大臣 記録命令つき差し押さえでございますね。

 記録媒体自体を差し押さえるということになりますと、これは人に対する侵害の程度というのが大変大きくなるわけですが、そこまでしなくても、電磁的記録の内容を他の記録媒体に写すことによって証拠化できるならば、それで捜査の目的を達成できるというような場合にこういう方法を使おうと。

 しかし、これについては、被処分者が応じることが予想されなければそれをやってみても効果が生じないので、あらかじめ拒否することが予想されるというような場合には、記録命令つき差し押さえというのは利用は想定されないということでございます。被処分者の協力が期待できる場合であっても、いろいろな諸般の事情から、記録媒体自体を差し押さえなければ捜査目的を達することができない場合というのもあるかと思いますが、記録命令で用が足りれば、それはそれにこしたことはないと思っております。

大口委員 そうしますと、協力が見込まれない第三者についてはどうなりますか。

江田国務大臣 あらかじめ協力が見込めないということになりますと、これは記録媒体自体を差し押さえるというところへ進まざるを得ないと思います。

大口委員 次に、百十条の二について。

 差し押さえにかえて、差し押さえるべき記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写等をした上で他の記録媒体を差し押さえることができると。この差し押さえにかえてということは、では、これはかえなくてもいいということの趣旨と理解していいのか。もしそうだとすると、従来、パソコンをすべて差し押さえられる事態があったが、従来どおりパソコンをすべて差し押さえるのか、それとも、他の記録媒体に複写して、その記録媒体を差し押さえるかは、差し押さえ許可状を執行する現場の捜査官が選択できることになるという趣旨なんですか。

 あるいは、わざわざ、今回、電磁的記録の性質に着目して、電磁的記録に係る記録媒体の差し押さえの執行方法の整備をするのであれば、可能な限り、他の記録媒体に複写等をして、その記録媒体を差し押さえる方法を選択することが望ましいと考えますが、いかがでございますか。

江田国務大臣 これは委員おっしゃるとおりで、差し押さえの令状を持って現場へ捜査官が参ります。電磁的記録、これが記録媒体にある、記録媒体自体を差し押さえてしまう、それができるということがまず大前提にあるんですけれども、しかし、その記録媒体自体を差し押さえてしまうと、これは被処分者にとって大きなダメージになるわけで、そこで、執行方法として、その電磁的記録を別の記録媒体に複写して、そして差し押さえということにするという方法を用意しているわけでありまして、これは被処分者がどの程度、被差し押さえ者がどの程度協力してくれるかなどなど、いろいろな事情によって、どういう執行方法をとるかというのはいろいろなものがあり得る。

 そこで、一般の場合と同じでございますが、捜査機関が差し押さえの現場に行って初めて判断がつくという場合が多いと思いますので、その点は捜査機関の判断にゆだねるのが適切であると思っております。

大口委員 稲田委員からも質問がございました。これは日弁連の意見書でも指摘されているんですが、差し押さえた記録媒体に保存されている電子データと完全に同一の担保がされていないといけないのではないかと。要するに、差し押さえをした、それで、もとの電磁的記録と複写された電磁的記録が同一であるということの保証が必要ではないか。

 これに対して、差し押さえの過程ですとか、あるいは保管方法ですとか、そういうのを捜査官が、差し押さえた者が法廷で証言する、それによって同一性を証明していくということのようでありますけれども、そういう捜査官の供述というようなものではなくて、もっと客観的に同一性を確保するということをお考えにならないのか、お伺いしたいと思います。

江田国務大臣 これは先ほどもお答えを申し上げましたが、同一性がなければ、いやいや、自分の思っていたものと全然違うものを何か複写だと称して証拠に使われる、そんなことが争われたのでは、それはたまったものじゃありません。

 そこで、例えば複写する場合に、後で書きかえが不能な、そういう記録媒体に複写をする、それで、これはそういう記録媒体ですよということを何らかの記録に、捜査報告書でも何でもいいかと思いますが、残しておくとか、あるいは複写の過程をすべて記録にしっかり残しておくとか、そういうことで客観的な証拠として同一性を担保していく。

 捜査官の供述というのも同一性の担保の一つの資料にはなると思いますが、それだけでなくて、捜査官の供述もいろいろ過ちがあることもありますので、客観的なそういう資料にしっかりと同一性を担保するような記録を残していくということを心がけると思います。

大口委員 また、これは刑訴法九十九条の二項。これまでも辻委員初めいろいろな方々が指摘をされていますが、大臣に私としても答弁を求めておきたいと思います。

 接続サーバー保管の自己作成データの差し押さえの導入について、リモートアクセスによって接続されている別のコンピューターを設置している場所を特定し、明示しなくても、もとのコンピューターに対する捜索・差し押さえ許可状において特定、明示されていれば別のコンピューターに対する差し押さえを可能にすることができる、これがこのリモートアクセスという新しい形のものであるわけです。

 これについて、憲法三十五条一項の規定、その中で「正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」としている点、つまり捜索の場所と押収するものを特定し、令状に明示することを求めている、さらに憲法三十五条二項で各別の令状を求めているということに反するという批判がありますが、これについて大臣の御答弁を、実質的な理由というものを示してお答え願いたいと思います。

江田国務大臣 私も本当に詳しくはないんですけれども、例えば、私のパソコンで何らかの記録がある、しかし、その記録は私のパソコンのハードディスクにあるのではなくて、容量もそんなに多くはないからどこか別のパソコンのハードディスク上に電磁的記録が保管されているというような場合があって、そして、これは私のパソコンで、別のパソコンにあるデータを書きかえたり、いろいろとすることができる、そういうものの場合に、リモートアクセスということで、私のパソコンからその別のパソコンに飛んでいって、そこにあるデータを複写して差し押さえをするというようなことができる、そういう規定であると、私の乏しい知識でそこまでは何とか理解をしているわけであります。

 裁判官に、どこのパソコンのハードディスクに保存してあるのかといったようなことまで全部令状に書けといっても、現実にはなかなか無理で、したがって、捜査機関の恣意を防ぐ、そういう趣旨で差し押さえ令状にいろいろなものを書くわけですから、私のパソコンならパソコン、これを書いて、さらに、そのパソコンでアクセスできる別の場所に保存されているものも差し押さえの対象になる、こういうふうに書いてあれば、これは、一般の場合に、例えば覚せい剤を差し押さえる、その場所が家の中にあるか、あるいは駐車場にある車の中にあるか、そこまで別に厳密に令状に書いていなくても差し押さえができるというのと同じことでございまして、そういう差し押さえ令状の記載でリモートアクセスにも対応できると思っております。

大口委員 このリモートアクセスによって差し押さえをすることに縛りを刑訴法ではかけているわけです。

 一つは、以前の法案ではなかったものとして、今回、「当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている」ということで、作成、変更をする、あるいは変えたり消したりできるという限定が加えられているわけであります。

 この「できることとされている」ということは、単なる管理権限を単位として判断されているということになると、最も高い権限を持った者のIDでリモートアクセスすれば、この限定というものは意味がなくなる。そういう点で、単なる管理権限ではなくて、被処分者が現実に保管をするために使用している、そういう状況が必要ではないか。

 それと、刑訴法百七条の二項で、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなきゃいけない、先ほどの大臣の答弁で、こういう形で縛りをかけているということでありますが、この百七条の二項の「その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。」というこの「記載」の仕方によって、縛りをかけた意味がない場合、憲法上の問題も出てくるんじゃないかと思います。

 そのことについて、具体的にどのような記載をしなきゃいけないのか、お伺いしたいと思います。

江田国務大臣 刑訴法百七条第二項で、差し押さえ状には電磁的記録を複写すべき記録媒体の範囲を記載しなければならないと。これをどういうふうに書くのかということですが、これは、令状発付の段階で関連性等を裁判官が審査することがあるので必要だとしていることだと思っておりますが、どういうふうに書くか、どこまで限定するかは、個々の事案ごとにさまざまなものがあって、令状において最大限特定をしていく。

 例えば、被疑者のパーソナルコンピューターにLANで接続しているサーバーのうち、ある課のパーソナルコンピューターで作成、変更等の処理をすべきファイルが記録されている部分、そういうような特定をする。こうなりますと、複写の範囲もその部分に限定されるということで、そうした書き方を工夫していくのだと思います。

 被処分者が現に管理している電磁的記録という文言を用いることについては、電磁的記録に対する管理が多義的に解されるおそれもあって、明確とも言えず、今申し上げたとおり、原案の規定によって複写の範囲は適切に限定されるものであって、今回のような規定ぶりにするのが適切だと考えております。

大口委員 ですから、権限だけではなくて、令状にどう特定をしていくかということを厳格にしていただかなければならない、こういうふうに思います。

 この規定を使って、海外にある電磁的記録を差し押さえることは可能か。日本に本社があって、電気通信回線で接続されている海外にある支社のコンピューターの中に電磁的記録がある、それを差し押さえることはできるんですか。

江田国務大臣 他国の領域内にある記録媒体、記録媒体というのは、これは媒体ですから、ちゃんとした、物理的に知覚できるものになるわけですから、どこの国にありますかと所在ははっきりするわけですが、その海外の記録媒体のデータに直接アクセスして複写するということになると、これはやはり、当該他国の主権を侵害する心配がある。国際的に統一した見解があるわけではないと思いますが、やはりそこのところは、ちょっと心配がないわけではないと思われます。

 そうした、明らかに別の国のもの、別の国にあるという場合には、いろいろな枠組みがありますから、そうした枠組みを使って他国の理解を得るということを、やはり捜査共助などで要請することが望ましいのではないかと思っております。

    〔委員長退席、牧野委員長代理着席〕

大口委員 今、クラウドコンピューティングとか、こういうことで、データを海外に置くという例がこれからますます多くなってくると思うんですね。だから、リモートアクセスをしてみたら海外の支社にそのデータがあるということで、司法共助、この条約加盟国については、条約の二十五条の相互援助規定に基づいてやる、そうでない場合は二国間の条約等でやるということなんですが、ここのあたりにつきましては、ある意味では、リモートアクセスの、本来、サイバースペースというのは無制限なんですが、しかし、国家の主権という壁があるということですので、今後、これは国際的な議論が必要ではないかな、こういうふうに思います。

 次に、電磁的記録の保全要請について。

 刑訴法百九十七条の三項、四項、五項で、令状によらない処分として、しかし罰則がない処分として、こういう要請ができる。今回、前の法案から修正をして、申請主体の限定、必要性の要件、それから保全要請期間、これは条約は九十日以内ですけれども、六十日以内、書面による申請、こういうふうに修正されたわけでございます。

 ただ、捜査機関によって安易に保全要請が出される、濫用されるということは気をつけなければいけない。そういう点から、例えばこの保全要請の件数とか、あるいは保全要請の対象に対する差し押さえ件数とか、あるいは保全要請の解除件数等、保全要請の運用状況について毎年公表していく、情報開示していく、こういうことが必要ではないかと思いますが、いかがでございますか。

江田国務大臣 保全要請につきましては、今委員御指摘いただいたとおり、一定の義務とはいうものの、罰則はないとか、単に保全を求めるだけであって、後に差し押さえまでいけばこれは中身がわかるわけですが、中身まで開示をしろと言っているわけではないとか、あるいは、期間も限定され、また求める主体についても限定をし、さらに書面でとかいろいろ要件を加えておりますので、濫用ということは考えにくいと思っております。

 その上で、保全要請は、恐らく、かなり機動的に、膨大な数に上り、その要請がそのまま差し押さえまでいかないようなこともまた出てきたり、要請はしたけれども途中で消えてしまうというようなこともあるかと思いますので、統計をとること自体はなかなか現実的ではない。

 正確な見込みを申し上げることは困難でございますが、捜査現場の負担というのも非常に大きいものになってくるだろうと思いますので、そういう統計的な処理にのせるということは非常に困難ではないかと思っております。

    〔牧野委員長代理退席、委員長着席〕

大口委員 ただ、大臣、やはりこういう保全要請という手続がこれまでにない手続でございますから、それについて統計上の情報がないというのは、我々がまたこれを議論するに当たって材料がないということになりますね。ですから、そこはもう一度よく考えていただけないでしょうか。

江田国務大臣 御指摘を踏まえて検討させていただきます。

大口委員 今回、法案が成立しましたらサイバー犯罪条約を批准することになるわけでありますが、そうなりますと、サイバー犯罪条約の二十条で、通信履歴をリアルタイムで収集、記録するために必要な立法その他の措置をとることが求められているわけであります。これは新たな立法措置が必要になると考えているのか。通信傍受法では重大な犯罪についてしか傍受を認めていません。電子メールにもそれが適用されると考えられますが、この通信履歴についてのリアルタイム収集、記録はどのように対応されるのかこの法案で提案されていないわけですけれども、今後どうされるのか、お伺いしたいと思います。

江田国務大臣 御指摘の点は、サイバー犯罪条約のリアルタイム収集の立法措置等、これが条約上要求をされてはおりますが、我が国ではこの規定は、この法律で権限を特につくるというのでなくて、刑事訴訟法第二百十八条に基づく検証によって担保されることになると理解をいたしております。

 プロバイダーをして自国の領域内にある技術的手段を用いることによりリアルタイムで収集、記録させるとか、あるいは、当局みずからが収集、記録するに当たり、プロバイダーをして協力、支援させるとかそういうことでございますが、この点についても検証によって行うこととなり、プロバイダーの協力を得るため、本法案において電磁的記録に係る記録媒体の検証を受ける者に対する協力要請の規定を新設しているわけでございまして、それ以上に新たなものが必要とは考えておりません。

大口委員 サイバー関係についての質問はこれで区切りといたしたいと思います。また参考人のお話も聞いていきたいと思います。

 そこで、一昨日、法曹養成に関するフォーラムの開催があったと聞いております。私ども、この五月十三日付のペーパーをいただきました。検討内容が、一、個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置のあり方、二、法曹養成に関する制度のあり方ということでございまして、その検討の進め方について、会議は非公開とする、原則として会議終了後速やかにこの議事録を作成して公表する、そういうことで、この経済的な状況を勘案した措置という方は本年八月末までに第一次報告を取りまとめる、それから法曹養成に関する制度のあり方については第一次報告までに可能な限り検討するとして、その後も引き続き検討を行い、検討結果を第二次報告として取りまとめる、こういうことでございます。

 この法曹の養成に関する制度のあり方というのは非常に国民的な関心がある。また、経済的な状況を勘案した措置につきましても、これは司法関係者にとっては非常に大きな関心事でございます。ですから、会議を非公開にするということ自体、これはとんでもないことであって、今の政権のこれまで言ってきたことと違うのではないか、こう思います。会議は公開すべしということについて、いかがでございますか。

小川(敏)副大臣 法曹養成フォーラム、私出席しておりますので、私から答えさせていただきます。

 一昨日開催されました第一回の中で、委員から会議を公開すべしという意見が多数出ました。また、それを受けまして、私ども政務の方、準備段階でも非公開ということになってはおりますが、趣旨としましては、最低限議事録を公開する、そしてそれ以上のことはむしろ委員会の判断で決めていただこうというニュアンスがあった上での非公開ということでございました。

 それで、一昨日、そのフォーラムの中で、多数の委員の公開すべしという意見を踏まえまして、公開するという方向の中で、ただ、司法試験の試験の内容とか事柄の性質上公開することに差し支えがあるものは、やはりその部分に限定して非公開ということがあり得るとしても、基本的には公開しようという方向性が確認されました。それを踏まえて、今座長を中心としまして、どのような形で公開するかということを議論いたしまして、次の第二回からは決まった方法で公開するものと予定しております。

大口委員 時間が参りましたので以上で終わります。

 ありがとうございました。

奥田委員長 次に、城内実君。

城内委員 城内実でございます。

 本日は、情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案、特にサイバー犯罪関係について質問させていただきたいと思います。また、時間がありましたら、大臣に、しつこいようですが、人権救済機関の設置の問題についてもまた質問をさせていただきたいと思います。

 本改正案につきましては、私は、大臣が二十五日の趣旨説明で述べられましたように、まさに情報技術の発展に伴い、いわゆるコンピューターウイルスやサイバーテロ、こういったものが多発しておりまして、こういった特殊な犯罪に対しては、やはり証拠収集等の手続面でこれまでと違った形で、すなわちコンピューターや電磁的記録の特質に合った形で証拠を集めていかなければいけない、これは全くそのとおりでありまして、またサイバー犯罪は国境を越えて今どんどん広がっております。国際的な対策が非常に重要であります。

 現にソニーのグループ会社が今ハッカーの攻撃対象となっております。昨日の朝日新聞の報道によりますと、不正侵入や攻撃を受けた場所は、米国、カナダ、ギリシャ、タイなど複数の国にわたっております。そして、ソニーに限らず、世界じゅうの多国籍企業が攻撃の対象となっております。場合によっては、我が国政府のそういったコンピューターシステムにも入ってくる可能性があるわけであります。

 したがいまして、私は、総論としてはこの改正については賛成であります。しかしながら、これまでこの委員会あるいはマスコミ、一般市民の方からいろいろとその問題点が指摘されております。具体的には、やはり作成罪と保全の要請についてであります。

 まず、ウイルス作成罪についてですが、この刑法改正が成立した場合、不正指令電磁的記録に関する罪ができるわけですが、そこで、文面は、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」、つまりこれはコンピューターウイルス、コンピューターウイルスと書いてくれたらわかりやすいんですけれども、さらに、「正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、」「電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」こういうふうになっております。

 これは、かなり私は重い罪ではないかと思います。ただ作成しただけで罪になるというのはやはりちょっとこれは行き過ぎじゃないのかなと。その電磁的記録はさらに、悪質なウイルスなのか、アンチウイルスなのか、あるいは実験でつくったものなのかと、いろいろその仕分けをする必要があるのではないかと思います。

 大臣は、「正当な理由がないのに、」という文言をつけ加えたことで、濫用の危険は歯どめをつけることができると御答弁されたんですけれども、私は、もっともっと個別具体的に、しかも限定的に適用しないと、捜査当局による濫用の歯どめにはならないんじゃないかな、このように考えておりますが、大臣の御所見をお聞きしたいと思います。

江田国務大臣 濫用の危険ということでございますが、もちろん私ども、捜査当局の濫用があってはいけない、そしてそれはいけないと精神論を述べるだけでなくて、やはり具体的に濫用を防止する手だてを講じなければいけない、この点は意見は全く一緒だと思っております。

 その上で、目的規定を置いて、しかし、それだけではなお不十分だといういろいろな御意見もございまして、この正当な理由なく、そういうことを入れているわけでございまして、私は、こういう規定によって、この規定を無視して濫用するといえば、これはもう濫用自体がおかしなことになってしまうけれども、こういう規定をしっかり守りながら捜査機関がこの罪の適用を求めて証拠集めなどしていけば、濫用ということにはならないと思っております。

城内委員 ぜひ大臣からも、捜査当局に対して、決して濫用をしないようにという指導をしていただいて、大臣がかわるたびに引き継ぎをしていただきたいというふうに思っております。

 作成についてですけれども、いわゆるハッキングとかウイルス作成というのは、確かに悪質な行為でありますが、ただ、先ほどもアンチウイルスという話をしましたけれども、既存のウイルスを改良したり研究したりするということは、そのこと自体は不正に使用しない限りは私はあってもいいんじゃないかな、特に、今どんどんウイルスが非常に高度化しておりますので、逆に言うと、そういうことを見越して産官学で連携してウイルスをつくる、もちろん厳重に管理して、人がアクセスできないようにしてそれをつくって、この高度なウイルスをどうやって防御するかというアンチウイルスをつくるということもあるんじゃないかなと思うんですね。

 特に今、国家機密を守るという観点から、あるいはサイバーテロ対策として、国家がむしろ一定の限定された条件のもとで率先してそういうものを研究する、そして、場合によって、将来いわゆる日本に対しておもしろく思っていないというある国が我が国にサイバー攻撃をしかけてきたときの防御をする、場合によってはこれは極めて限定的な条件で報復措置を行うというようなこともあってもいいと思うんですが、それについて大臣はどうお考えでしょうか。

江田国務大臣 今、世界がコンピューターネットワークによって結ばれて、本当に、ほぼすべての人の活動の、それが個人的であれ、社会的であれ、経済的であれ、その他のことであれ、インフラになっているわけですね。

 その生活を営む上での重要なインフラに対してコンピューターウイルスが入り込んでくる。私は、本当に詳しくないんですが、今から十年、もうちょっと前でしょうか、インターネットというのが本当に普及をして、しかし、一方でウイルスというのもどんどん普及をして、メールなんかにいろいろなウイルスが入ってくる。これはウイルスに結局負けちゃうんじゃないかという、そんな心配をしたころも今思い返してみるとありました。

 しかし、そこはまさにウイルスとそしてコンピューターネットワークをちゃんと守ろうという者の戦いの歴史だった。いろいろな形でアンチウイルスのソフトができて、幾つもありますよね、その中には、我々が使えるものもあるけれども、恐らく非常に高度なものもある。そういう大変な戦いの中でウイルスを制圧していこうという、これがやはり勝たなきゃいけないので、そのために、産官学という言葉を今挙げられましたけれども、本当にみんなが知恵を寄せ集める必要があると思います。

 そういう、ウイルスによってやられてしまわないように努力をする、一生懸命研究する人たちが、おまえ、コンピューターウイルスをつくっただろうと言われたのではたまったものじゃない、そういうことはよくわかっておりまして、今委員御指摘のとおり、私も、捜査機関に対して、そういう濫用が起きないように厳重に申し上げるようにしていきたいと思います。

城内委員 大臣から今踏み込んだ御答弁をいただきまして、本当にそれは評価いたします。

 次の質問ですが、大臣、コンピューター監視法という言葉が、今インターネットあるいは一部の民間団体の方々が使っておりますが、なぜコンピューター監視法と言われているか、御存じでしょうか。

江田国務大臣 そういう呼び名で今の私どものこのサイバー法案が、半ばやゆされながら、批判をされている、そういう場面があるということは知っております。コンピューターを公権力が監視をして、コンピューターの中での自由な活動を規制するのではないか、こういうことが言われていることも承知をしております。

 しかしながら、犯罪要件の厳格化であるとか、あるいは捜査に当たっての令状主義であるとか、さまざまなことを通じて、そうしたコンピューターというのが常に監視される、そういう社会にならないように、これは私どもも思っておりますので、そこはぜひ、そういう批判をされる皆さんとも有益な対話をしていきたいと思っております。

城内委員 ぜひ大臣、そういった声を、今、有益な対話をしていきたいとおっしゃいましたけれども、しっかり聞いていただきたいと思います。

 このコンピューター監視法という表現がついたのは、やはり保全要請のところなんですね。捜査機関が目星をつけた容疑者の通信記録について令状なしに保全する。データ、いろいろな通信履歴を見ると、この人はどういう人とつき合っているんだろうかとか、どういうサイトにアクセスしているんだろうか、突き詰めてみると、その人の思想、信条、趣味とかそういうものがわかってしまうということになりますので、本当にこれは限定的に運用していただかないと大変なことになると思います。

 そしてまた、令状なしで、書面での要請ということですけれども、やはりお上から書面で要請されたら、プロバイダーもどうぞと言って情報提供してしまうのではないかなと私は思います。

 またもう一つは、これはいわゆる差し押さえも、有体物、物じゃなくて、データというのは目に見えないものですから、どこまでがその差し押さえするものなのか、下手すると、何か全部のいろいろな記録とかプライバシーにかかわるものまでついでに差し押さえてしまいましたということがないのかどうか、そういう懸念があります。

 大臣はライフログという言葉を御存じでしょうか。これはネット上のみならずあらゆるバーチャル空間の行動履歴をマーケティング調査で、このAさんという人はどういうサイトにアクセスして、あるいはどういうものを買っているんだとか、そういういわゆる究極の個人情報でありまして、これを例えば事業者がやっている場合は、これを公開されちゃうと、その人のあらゆる、人と人とのつながりとか、趣味とか、思想、信条がほぼ完全にわかってしまうということらしいんですが、こういった点から取り扱いには細心の注意と捜査当局の高い倫理観が求められるわけですが、こういった点について大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

江田国務大臣 今回の今お願いしております法案は、一つは今のサイバーの関係、もう一つが強制執行の関係ですが、そのサイバーの関係の中に実体法と手続法がありまして、実体法の方は先ほどから議論になっておりますウイルスをどういうふうに定義するのかといったことで、もう一つ、手続法の方は、こういうコンピューター社会になって、そのコンピューターネットワークの中に捜査手法として一定の証拠の収集の手続を用意するということでございます。

 そのために、それがどんどん拡大をされていったら、コンピューター監視社会になるとか、あるいはいろいろな個人の履歴が全部あらわれてしまうとか言われるわけですが、しかし一方で、やはり、このコンピューターネットワークの中に入り込んでいろいろな犯罪立証の証拠を求めていくということも今必要になってきているので、そこは兼ね合いの問題であって、確かに保全の要請というものが何でもかんでも全部かかってしまうということになれば大変ですが、しかし一方で、履歴しか保全しない、そして差し押さえが後に予定される場合しかできないとか、あるいはその他いろいろ、日数の問題であるとか、そういうことをちゃんと法定をしておりますし、濫用は極力ないように努めている。

 それから、差し押さえの範囲のことも今言われましたが、これはなかなか難しい。限定に限定を重ねてということになかなかできにくいので、一般の有体物の場合でも、家の中に入って、あるいはそれは差し押さえ、かなり大きく網をかけて、御主人のところへ差し押さえに行ったら奥さんのものを押さえていたとか、そういうことも起きる可能性はありますが、そこは現場の判断でそうした濫用のないように努力をさせるしかないと思っております。

城内委員 大臣、濫用が極力ないようにという話をされましたが、絶対に起こらないように十分注意していただきたいというふうに思います。

 もう時間がないので、人権侵害救済機関の設置については次回また改めて質問させていただきたいと思います。ありがとうございました。

奥田委員長 次回は、来る三十一日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十三分散会


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