衆議院

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第4号 平成24年3月23日(金曜日)

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平成二十四年三月二十三日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 小林 興起君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 黒岩 宇洋君

   理事 階   猛君 理事 辻   惠君

   理事 樋口 俊一君 理事 稲田 朋美君

   理事 棚橋 泰文君 理事 大口 善徳君

      井戸まさえ君    大谷  啓君

      大西 孝典君    加藤  学君

      勝又恒一郎君    川口  浩君

      京野 公子君    桑原  功君

      小室 寿明君    高橋 昭一君

      滝   実君    橘  秀徳君

      玉置 公良君    中屋 大介君

      野田 国義君    平山 泰朗君

      皆吉 稲生君    室井 秀子君

      河井 克行君    城内  実君

      北村 茂男君    柴山 昌彦君

      平沢 勝栄君    森  英介君

      柳本 卓治君    園田 博之君

      中島 政希君    横粂 勝仁君

    …………………………………

   法務大臣         小川 敏夫君

   法務副大臣        滝   実君

   法務大臣政務官      谷  博之君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   参考人

   (明治大学法科大学院特任教授)          青山 善充君

   参考人

   (京都大学名誉教授)   佐藤 幸治君

   参考人

   (日本弁護士連合会副会長)            新里 宏二君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  大谷  啓君     野田 国義君

  大西 孝典君     高橋 昭一君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋 昭一君     室井 秀子君

  野田 国義君     大谷  啓君

同日

 辞任         補欠選任

  室井 秀子君     大西 孝典君

    ―――――――――――――

三月十九日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(佐々木隆博君紹介)(第三五四号)

 成人の重国籍容認に関する請願(佐々木隆博君紹介)(第三五五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百七十九回国会閣法第一二号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

小林委員長 これより会議を開きます。

 第百七十九回国会、内閣提出、裁判所法の一部を改正する法律案及びこれに対する大口善徳君提出の修正案を一括して議題といたします。

 これより原案及び修正案を一括して質疑に入ります。

 本日は、本案及び修正案審査のため、参考人として、明治大学法科大学院特任教授青山善充君、京都大学名誉教授佐藤幸治君、日本弁護士連合会副会長新里宏二君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れば幸いに存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、青山参考人、佐藤参考人、新里参考人の順に、それぞれ二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず青山参考人にお願いいたします。

青山参考人 ただいま御紹介いただきました明治大学法科大学院特任教授の青山善充であります。

 私は、平成十三年三月まで東京大学法学部教授として長らく民事訴訟法の研究教育に携わり、現在は、明治大学法科大学院で特任教授として司法制度論、民事訴訟法及び倒産法などの科目を担当することを通じて、日々法科大学院の学生と接している者であります。

 本日は、当委員会において審議中の裁判所法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について、参考人としての意見を述べよという御要請でございます。私は、結論的に、原案に賛成し、修正案に反対の立場から、その理由とともに私の意見を申し述べたいと存じます。

 なお、これから私が述べます意見は、昨年二月にジュリスト千四百十六号に「司法修習生の給費制の是非 法曹志望者支援のあり方」と題して発表しました論文の趣旨と基本的に同一でございますので、念のため、私の論文もお手元に配付させていただきました。

 さて、審議の対象の法案及び修正案そのものは、ごらんのとおり極めて簡単でございますが、ここに至る経過はかなり複雑でございまして、いきなり私が原案に賛成である、その理由はこうこうであると述べますのは、やや唐突の感を否めません。そこで、意見の本論に入ります前に、順序として、審議の対象となっておりますこの裁判所法の一部を改正する法律案が、なぜ今、国会に提出されるに至ったのかにつきまして、これは委員の先生方には先刻御承知のことで、あるいは釈迦に説法というお叱りをいただくかもしれませんけれども、私の認識をまずお話しすることから始めさせていただきたいと思っております。

 平成十六年の裁判所法の改正、これは司法制度審議会意見書を受けた司法制度改革の一環として、司法制度改革推進本部のもとに設置された法曹養成検討会の審議を経たものでありますけれども、この平成十六年の裁判所法の改正によりまして、同法に六十七条の二という新しい条文が新設されました。これは、司法修習生への経済的支援の方法を、それまでの修習生全員に対して給与を支給する給費制から、希望者に修習資金を貸与する貸与制に切りかえるものであります。

 この裁判所法六十七条の二は、本来なら、一昨年、平成二十二年十一月一日以降に採用される司法修習生から、平成二十二年十一月以降に採用される司法修習生はいわゆる新六十四期というふうに呼ばれておりますが、新六十四期から適用されるはずでございました。

 ところが、御存じのように、給費制維持を求める日本弁護士連合会などの強い要請を受けまして、一昨年十一月二十四日、当院の法務委員長からの御提案で、この裁判所法六十七条の二の定める貸与制の施行を暫定的に一年間先送りし、その間、司法修習生に給与を支給することを内容とする法律案が提出され、同法案は十一月二十六日に成立したところでございます。

 その際、当法務委員会は次のような決議を行っております。政府及び最高裁判所は、平成二十三年、昨年の十月三十一日までに、個々の司法修習終了者の経済的状況等を勘案した措置のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることという決議でございます。

 この当委員会の決議を受けまして、そこで要請された検討事項を審議するため、昨年五月十三日に、法務省、内閣官房、総務省、財務省、文部科学省及び経済産業省の六省庁副大臣クラスと有識者、関係機関による法曹の養成に関するフォーラムが発足し、そこで慎重な調査審議が行われた結果、昨年八月三十一日に、法曹の養成に関するフォーラム第一次取りまとめなるものが公表されました。

 この法曹の養成に関するフォーラム第一次取りまとめの内容は、司法修習の重要性に鑑み、司法修習生が修習に専念できる環境を確保することが必要であり、その方策として貸与制を維持すべきであることを前提としつつ、個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案し、貸与を受けた修習資金の返還、修習資金の返還につきましては、最高裁判所規則で、修習終了後五年間は据え置き、無利息、その後十年間に年賦により均等返還するというふうに定められておりますが、この修習資金の返還につきまして、その返還の猶予の条件を緩和するというものであります。

 もう少し具体的に申しますと、現行裁判所法六十七条の二第三項は、「最高裁判所は、修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となつたときは、その返還の期限を猶予することができる。」と定めておりますが、これに加えて、日本学生支援機構の奨学金返還制度等を参考として、次のような返還猶予事由を追加することを提案しているものであります。

 すなわち、どういうものかと申しますと、修習資金の返還をする者の年間収入が三百万円以下、または年間所得が二百万円以下である者についても返還の猶予を認める。その際、年間収入または年間所得の額の算定に当たっては、法科大学院在学中にも奨学金の給付を受けている者がいわゆるダブルローンになることを避けるために、法科大学院の奨学金の年間返還額は、その者の年間の収入または年間の所得の額から控除して計算する。さらに、猶予期間は従来の猶予事由の場合と同じく最大限五年間とするというのが、この法曹の養成に関するフォーラム第一次取りまとめの内容でございます。

 さて、今回の政府原案は、このフォーラムの提案を受けまして、これを返還猶予事由にそのまま追加しようとするものであります。

 ただ、司法制度の基本法であります裁判所法の中に収入や所得金額を数字として書き込むことは必ずしも適当ではないとの判断から、改正案の字句としては、先ほどの「修習資金の貸与を受けた者が災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となつたとき」の後に「、又は修習資金の貸与を受けた者について修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるとき」という文言を加えることになっている、これが政府原案でありますが、先ほどのフォーラムには関係機関として最高裁判所も参加しておりますので、最高裁判所規則としては、このフォーラムの提言どおりの規定がなされるものと私は理解しております。

 以上が政府原案であります。

 これに対しまして、公明党の大口善徳議員御提出の修正案は、簡単に言いますと、第一に、貸与制への移行を、一部、昨年十一月一日の時点までさかのぼり、それから将来に向かって二年間、つまり平成二十五年十月三十一日までの間停止し、その間、給費制を維持し、その二年間でさらにこの問題について検討すべきであるとする裁判所法の一部改正、及び、第二に、現行の法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律、いわゆる連携法でありますが、連携法の附則二条の見直し条項、見直し条項というのは、この連携法が施行された平成十五年の四月一日から十年を経た時点で見直しをするという条項でありますが、その見直し条項の一部改正を提案されるものであります。

 さて、前置きが長くなりましたが、以下、私の意見を申し上げます。

 私は、司法修習生に対する経済的支援のあり方としては、給費制より貸与制が望ましいと考えておりますので、その理由を三点のみ申し述べます。

 第一は、給費制は、その歴史的使命を終えたと考えるものであります。

 給費制は、御存じのように、第二次大戦後、日本が平和国家として再出発するに当たり、すぐれた法曹を養成することが急務であるとの認識のもとに、法曹三者を統一的に養成する機関として昭和二十二年に司法研修所を設置するとともに、そこにおける修習生が安心して修習に専念できるように、当時先進国としても余り例のなかった手厚い制度として採用をしたものであります。

 そして、この給費制が幅広い層から多くの法曹を養成する上で大きな意義を持ったことは、今日、誰しも認めるところでございますが、それから既に六十数年、当初、合格者数二百六十五名で始まった司法試験の合格者は、今や、二千百名とか二千二百名の間を推移しております。

 のみならず、司法制度改革の進展の中で、他に裁判員制度の導入、法テラスの創設、法律扶助の拡大など、司法予算を必要とする局面は飛躍的に拡大している現状で、これ以上給費制を維持することは、バランスの点から不可能ではないかというふうに考えるからであります。

 第二の点は、給費制は、修習資金を自分で賄える者にまで、その必要の度合いに関係なく、全員に一律に一定額の給与を支給する制度であり、制度としては欠陥であるばかりでなく、必要のない者に対してまで給付することは、庶民の常識的感覚から理解しがたい制度であるということであります。

 ちなみに、新六十五期については、既に昨年十一月から貸与制が始まっておりますが、昨年十一月以降に採用された新六十五期司法修習生は二千一名でありますが、その二千一名のうち、貸与を希望して貸与を受けた者は千七百二十二名であると聞いております。貸与率は約八六%であります。逆に言いますと、一四%の修習生は、自分に蓄えがあるか、親などから修習資金を出してもらっているのか、つまびらかではありませんけれども、少なくとも国からの修習資金の貸与を希望していないわけであります。

 給費制という制度は、貸与の希望のない者にまで一律に一定額の給与を与える制度であり、その政策的欠陥は明らかではないかというふうに思っております。

 ここで、原案に対する修正案について一言申しますと、必ずしも私の理解が正確でなければ後から御訂正いただきたいと思っておりますが、修正案は、昨年十一月一日の時点までさかのぼって、その時点から将来に向かって二年間、つまり平成二十五年十月三十一日まで貸与制を停止し、その間、給費制を維持しつつ、この問題をさらに検討しようというもののようであります。つまり、昨年十一月から始まっている貸与制を振り出しに戻し、既に貸与として受け取った資金は給与として受け取ったこととして、貸与を受けていなかった者には一律一括して給与を支給しようとするもののようであります。

 修正案について、そのような理解がもし正しいとすれば、制度の運用の混乱を招くことに加えて、既にフォーラムにおいて十分に検討を加えた上で貸与制を維持することになった前述の経緯や趣旨から考えて、残念ながら、私は修正案には賛成することはできません。

 第三に貸与制が望ましいと考える理由は、貸与制であっても修習生が安心して修習に専念できる経済的支援の方策として設定されていることであります。

 貸与制のもとでは、修習資金を必要として申請する修習生には、全員に対して修習資金が貸与されることになっております。これは、法科大学院等における奨学金とは全く異なるわけでありまして、希望者には全員貸与される。その額も、基本額は月額二十三万円と聞いております。これは、これまでの給費制と遜色がありません。

 さらに、本人の状況、本人の状況というのは、その修習生が扶養家族を持っているか、あるいは住居を賃借しているか、あるいは双方に該当するか、そういうことによって最高二十八万円までの増額が認められる反面、基本額までの貸与は必要ないという者には十八万円を貸与するという制度でありまして、制度として非常に弾力性に富んでいることも、一定定額の給費制に比べてメリットであるというふうに考える次第であります。

 さて、この貸与制を維持した上で、返還猶予に新たな事由を加えるというのが政府原案でありますが、これについても私は賛成であります。

 修習資金の貸与を受けた者は、将来その者が法曹三者のいずれの道に進むか、あるいは法曹三者以外の道を選ぶかにかかわらず、修習終了後、五年の据置期間経過後、十年間で年賦均等分割で返還しなければならないことは先ほど述べたとおりでございますが、その返還額は、基本額二十三万円の貸与を受けた場合には、十年間の返済で、返済額が月額約二万五千円と聞いております。月額二万五千円を返還するというこの額は、修習終了後五年程度を経た者なら、災害や病気、けが等に遭わずに、というのは、災害や病気、けが等はそれ自身として猶予事由になっておりますから、そういう災害、病気、けが等に遭わずに働いている限り、それほど困難でなく返済できる額と考えられます。

 しかし、それに加えて、年間収入三百万円以下、所得二百万円以下の者も必ずいないとは限らないことから、猶予追加事由はそのことにも考慮したものであり、この事由を追加することは最後のセーフティーネットとして評価できるというふうに考える次第であります。

 以上の次第で、私は、政府原案に対する賛成の意見陳述とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

小林委員長 どうもありがとうございました。

 次に、佐藤参考人にお願いいたします。

佐藤参考人 佐藤でございます。

 私は、京都大学で憲法学を教えておって、近畿大学の法科大学院でも教えたところでありますけれども、七十歳で引退するということで、定年退職とともに書斎生活に戻りました。ですから、この依頼を受けたとき、どうしたものかと。もう書斎生活でいるわけですからどうしたものかと思いましたけれども、審議会の会長をやったということで、そういう関係で出てきてくださいという御趣旨と受けとめ、老骨と言ったらちょっと、まあ老骨なんですけれども、ことしの六月に後期高齢者になりますから。むち打って、きょう出かけてまいりました次第であります。どうぞよろしくお願いします。

 まず最初に、司法制度改革審議会とその後の展開について一言申し上げておきたいと思います。

 審議会は、国会から、利用者である国民の立場に立って抜本的な改革案を二年以内に示しなさいという要請を受けて、平成十一年、一九九九年の七月に内閣に設置されました。審議会は、徹底した公開のもとで六十数回に及ぶ会議を重ねまして、その間、国内あるいは国際視察などをしたわけでありますけれども、会議を重ねて到達した全員一致の意見書を平成十三年六月に内閣に提出いたしました。内閣は全力を挙げてその実現に取り組みまして、かつ、国会もそれに応えて、与野党の合意のもとに改革の実現に必要な二十数本の法律を成立させ、司法改革は具体的にスタートを切ったわけであります。審議会の委員を務めた一人として、法曹関係者、内閣及び国会に深い感謝の思いを抱いて今日に至っております。

 意見書では、改革の内容は、制度的基盤の整備、人的基盤の拡充、国民的基盤の確立、いわゆる国民の司法参加でありますが、この三本の柱から成っております。改革の趣旨、目的を私なりに要約しますと、次の三点になるんじゃないかと思っております。

 一つは、一般の国民にとってまことに縁遠かった司法に、今度こそ一般の国民が容易にアクセスできる司法、いわば国民の司法にしようということであります。第二は、政治、行政を法的により有効にチェックできる司法にしよう。第三、国内向けに小さく固まってしまっていた司法をグローバル化に対応し得る司法、国際社会に通用する司法にしよう。この三つに要約できるかと私なりに思っている次第です。

 御承知のように、内閣は、司法改革に取り組むに当たって、司法制度改革推進本部顧問会議を設けました。私もその一員になったわけでありますが、その顧問会議は、平成十四年の七月、全国の八割以上の市町村では弁護士のサービスを身近に受けることができないということを指摘した上で、三つのFの司法の実現に努力するということを国民に向けて約束し、国民もその実現に力をかしていただきたいということを訴えたアピールを行いました。

 その三つのFの司法とは、一つは、国民にとって身近でわかりやすい司法、ファミリアな司法にする。第二に、国民にとって頼もしく、公正で力強い司法にする、フェアな司法にする。三番目、国民にとって利用しやすく、速い司法にする、ファストな司法にする。三つのFの司法であります。

 この三つのFの司法を実現するには、基本的な条件があります。第一に、何といっても質、量とも豊かな法曹を確保することであります。第二に、国民が容易に司法にアクセスできるような仕組みを国が責任を持って構築するということであります。本日は、まず第一の条件について述べ、それとの関連で第二の条件について触れておきたいと思います。

 意見書は「制度を活かすもの、それは疑いもなく人である。」と二度にわたって述べております。いかに理想的な制度を描いても、適切な人を得なければ絵に描いた餅になります。意見書は、法曹を国民の社会生活上の医師と位置づけ、その確保を最重要課題といたしました。

 第二次大戦後、日本国憲法のもとで法曹人口も徐々にふえまして、昭和三十九年、一九六四年に司法試験合格者が初めて五百人台に乗ったのであります。しかし、以後三十年近くにわたって、五百人前後でとまってしまいました。合格レベルに達しないという理由で、法曹人口が統制された結果であります。

 その間、世界各国の法曹人口は猛烈な勢いでふえておりました。そうした増員を引き起こした要因と結果を象徴するのは、企業法務向けの大ローファームの出現であります。日本では、従来の弁護士像からこれに抵抗する向きが強く、また弁護士の増加は訴訟社会に通ずるといったような雰囲気もあったかと思いますけれども、そういう状況でありましたが、日本だけがそうした世界の動向の圏外に立ち続けることができるのかということが大きな課題であったわけであります。実際、日本の企業などは、さまざまな面で法的対応上の当惑、困難に直面していたようで、様子がうかがわれます。

 それだけではありません。その間、日本の社会も大きく変容しつつありました。象徴的なことを一つ言えば、家族の変容、少子高齢化の進行であります。

 例えば、戦後も長子相続が少なくなかったと思うのですけれども、次第にそうでなくなっていきました。また、平成十一年の法改正で、禁治産制度にかわって成年後見制度が設けられましたけれども、最近では、例えば認知症の人々は約二百万人、成年後見人は約十四万人、そのうち八割は家族後見人で、弁護士がかかわることはごくわずかだというように言われております。そこで、この領域は法の暗黒領域と呼ばれることもあるようであります。

 人が自己の財産を適正に管理しながらその生を全うするということは、それほど容易なことではありません。その過程で、法、したがって法曹が果たすべき役割は少なくないというように思われるのであります。

 従来、日本の弁護士の仕事といえば、訴訟事件や非訟事件などのいわゆる裁判法務でありました。訴訟、裁判は、確かに司法の土台をなす極めて重要なものでありますが、一般の多くの国民が求めるのは、いきなりそうした重大な局面に臨むことではなくて、むしろ、日常生活において遭遇する問題、困難に適切に対処するにはどうしたらいいかということについて、法的な観点からの適正な助言と支えを得ることではないかというように思われるのであります。従来の弁護士像へのこだわりが、弁護士の職域を狭くし、一般の国民をして司法から遠ざける結果もあったのではないかというように思われるところであります。

 さて、法曹が国民の社会生活上の医師であるというように捉えるとすれば、身体上の医師と同じように、それにふさわしい養成の仕方があるはずであります。

 意見書は、従来のように一発勝負の司法試験のみによって選ぶというのではなくて、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度を構築すべきであるとし、その中核として法科大学院の創設を提案したわけであります。そこには、学問の自由が保障される場で、現実の社会で生起する問題を法的に解決するとはどういうことなのか、そこでの法曹に求められる役割と倫理とは何かについて、研究者と法実務家とが協働しながら、基本的な教育、訓練を施そうという考え方があります。

 そして、意見書は、新しい法曹養成制度への完全な切りかえが予定される平成二十二年、二〇一〇年ころには新司法試験合格者三千人を目指すべきであるとしまして、後に同趣旨の閣議決定がなされたことは御承知のとおりであります。

 ちなみに、なぜ三千人かということでありますが、先進国中、人口に比して法曹が最も少ないフランス並みに早くしたいということもありましたけれども、先述のように、全国の八割以上の市町村で弁護士のサービスを身近に得られないという状況を早く改善したいという強い思いがありました。

 平成十六年に法科大学院が発足し、既に一万一千人余の合格者を輩出していますが、七十四という予想を上回る法科大学院ができる一方、平成二十二年ころには合格者三千人という目標に到達せず、合格率は低迷し、志願者も減少するという厳しい状況があります。

 新しい法曹養成制度の理念は間違っているとは思いませんし、定評のある法科大学院の懸命な努力と実績に大いに勇気づけられておるものでありますが、この厳しい現実にどのように取り組み、理念の実現に向けての将来性のある道筋をつけるか、喫緊の課題であるというように受けとめております。

 以上、前置きと言えば長くなってしまいましたけれども、本日の本題である給費制、貸与制の問題について意見を述べたいと思います。

 よき法曹を確保するため、修習生全員に国庫から給与を支払うという方法、いわゆる給費制をとることは、一つの政策として十分あり得ることであり、また実際そうされてきたわけであります。そして、私は、この政策を続けられるならそれにこしたことはないというようにさえ思っております。

 ただ、この問題は、今般の司法改革の趣旨、目的、つまり、既に申し上げたように、何よりも利用者である国民の立場に立って、従来、一般の国民にとって縁遠かった司法に国民が容易にアクセスできる、正義、ジャスティスに容易にアクセスできる司法にしようということとの関連で考える必要があるように思います。

 御案内のように、刑事被告人国選弁護制度は憲法との関係で当初から設けられていましたが、被疑者国選弁護制度はありませんでした。そして、民事法律扶助については、憲法に裁判を受ける権利が保障されているにもかかわらず、国としての本格的な取り組みが見られなかったのであります。

 しかし、こうした事情を憂慮して、弁護士会は、当番弁護士制度を設けて少しでもカバーしようと努め、また、民事法律扶助については法律扶助協会をつくってそれを支え、さらに、司法過疎については公設法律事務所をつくって対処しようとしてこられました。審議会のとき、浜田の第一号公設事務所を視察する機会がありましたが、そのことが今でも非常に印象に残っているのであります。こうした弁護士会の御努力は多とすべきであるというように私は受けとめてまいりました。

 しかし、問題は、その犠牲に頼り切ってよいのか、そこにはおのずから限界があるのではないか、そもそも何ゆえにこういう姿になったのかということを考えてみる必要があるように思います。それは恐らく、国民の権利の実現は私事であると考えられてきたためではなかったかと思います。そして、弁護士も私益の実現を助ける存在と考えられてはこなかったか。

 翻って考えれば、そもそも国民の権利を十全に実現することは、文字どおり、正義へのアクセスであり、それ自体、公共的意義のある事柄であると思います。それゆえに、この正義へのアクセスが地域的事情や経済的事情で阻害されているとき、その障害を取り除くことは、これまた公共的な関心事であり、本来、国の責務と考えるべきものではないかと思うわけです。意見書が、司法を公共性の空間と位置づけ、それを活性化すべく国民によるアクセスの問題を取り上げたのは、このためでありました。

 そして、被疑者国選弁護制度の導入、民事法律扶助の本格的な法的制度化、それの基盤としての法テラスの創設へと事が進んできたわけであります。また、国民のニーズに応えるには、こうした活動に従事する十分な法曹を得なければならないことも強く認識されることになります。

 法曹人口の増大の必要ということになりますが、その過程で司法修習のあり方が問題になり、その一環として給費制の存否が議論になりました。経済的事情にかかわらず優秀な人材を法曹にリクルートする上で、給費制が果たしてきた役割を否定するものではありません。しかし、危機的とも言える極めて厳しい財政状況の中で、私も行政改革会議にかかわりましたが、平成八年、九年のころ、四百兆、五百兆の赤字で大変だ大変だといって行革会議で議論したことを覚えているんです。今は既にその倍になっています。私は財政について素人ですけれども、非常に危機的な状況にあるということは私もわかるような気がいたします。そういう状況の中で、財源には限界があり、優先順位を考慮せざるを得ないというように考えるわけであります。

 その場合、国が税金から国費を支出していく以上、直接国民に還元できる形にするのが本筋でありまして、そうであるならば、民事法律扶助や国選弁護制度を充実させていくことを考えなければなりません。公共的な役割を担う人を育てるのだから給費制というよりは、公共的な職務を遂行する人にきちんと報酬を支払うということで国民へのサービスの質を高めるというように考えるべきではないかと思うわけであります。

 つまり、司法改革は不可分の全体なのでありまして、トータルな制度設計の中でそれぞれの問題が位置づけられています。そのトータルな制度設計は、弁護士を国民の近くに置き、国民のために努力する人たちを支えていこうとするものであります。これを忘れてはならないというように思うわけであります。

 以上のような観点から、貸与制への移行はやむを得ないと思うものであります。

 ただ、司法改革全体を推進する、つまり、三つのFの司法をつくるという第一の前提条件として強調しました質、量とも豊かな法曹を確保するという努力は、懸命に続ける必要があろうかと思います。貸与制への移行はやむを得ないとしても、そのことが不必要に法曹志望をなえさせることにならないよう配慮する必要があります。

 その意味で、このたびの裁判所法改正案を評価いたします。ただ、例えば貸与資金の返還免除制、弁護士過疎地で働いた場合というようなことを考えていますが、そういうものの創設などを検討していただければというように願っております。また、兼業禁止も、余り厳しいものにならないような運用を期待したいというように思っている次第であります。

 なお、公明党の改正案に対する修正案は、一つの考え方ではあると思いますけれども、既に述べたような理由で、早くこの制度は安定させた方が、はっきりさせた方がいいというように考えておる次第であります。

 時間も来ましたので終わりにしますが、審議会意見書は、こういう文章で始まっています。「民法典等の編さんから約百年、日本国憲法の制定から五十余年が経った。当審議会は、司法制度改革審議会設置法により託された調査審議に当たり、近代の幕開け以来の苦闘に充ちた我が国の歴史を省察しつつ、司法制度改革の根本的な課題を、「法の精神、法の支配がこの国の血肉と化し、「この国のかたち」となるために、一体何をなさなければならないのか」を明らかにすることにある」という文章で審議会の意見書は始まっております。

 意見書を内閣に提出してから十年余がたちました。裁判員制度はしっかりと我が国の社会に根づこうとしております。弁護士の多くも多様な分野に挑戦し、また、アジアを視野に入れつつグローバルな法的サービスの提供に乗り出す法律事務所も多く出てまいりました。既に大きな変化が始まっている、生じているわけであります。

 特に法曹三者を初め法律に関係する人たちが力を合わせて努力するならば、必ず二十一世紀にふさわしい、国民の期待に応え得る司法を築き得るであろうというように信じている次第であります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

小林委員長 どうもありがとうございました。

 次に、新里参考人にお願いいたします。

新里参考人 日本弁護士連合会の副会長の新里宏二でございます。

 きょうは、こういう場を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私自身は、被災地仙台の弁護士でございまして、十六日に、東日本大震災の民事扶助に関する特例の法律を当委員会で御採決いただきまして、きょうの昼だとお聞きしておりますけれども参議院の本会議で成立になるということを聞いておりまして、大変感謝しておるところでございます。地元で、何とか被災者の救済のために特例をということでございましたので、被災地でも大変喜んでいただいているというふうに思っておるところでございます。

 本日は、私自身は、公明党の修正案に賛成をする立場から、給費制の問題、それから法曹養成の抱える問題点について、当連合会の基本的な考え方を御説明し、参考人としての意見とさせていただきたいと思っております。

 まず、法曹養成制度全体の問題でございますけれども、法科大学院の統廃合と定員削減、司法試験合格者数の目標見直し、司法試験の回数制限の緩和、法科大学院生及び司法修習生に対する経済的支援の強化等の、法曹養成制度全般の見直しを早急に行うべきと考えております。

 少なくとも、このような法曹養成制度全体の議論の結論を見るまでの間は、司法修習生の給費制を何らかの形で維持すべきであると考えるところでございます。この件について御説明させていただきたいと思います。

 既に出ておりますけれども、平成二十二年十一月の裁判所法一部改正により、給費制は一年間延長され、現在危機に陥っている法曹養成制度の改善をめぐる議論が始まりました。当委員会の諸先生方の英断に当連合会としては深く感謝するものでございます。

 残念ながら、昨年十一月の給費制延長の期限切れで貸与制が実施されましたけれども、その結果は、司法修習と法曹養成全体に看過できない悪影響をもたらしていると考えているところでございます。

 現在、貸与制のもとで修習しているいわゆる新六十五期に対しビギナーズ・ネットが実施したアンケートでは、貸与制による経済的負担に対し、持ち家も車も売った、奨学金の返済を貸与金で払っている、就職が厳しいと実感しており、就職できなければ借金だけが膨らむという不安がある、縁もゆかりもない地方都市で修習するが引っ越し等の費用も自己負担、貸与制になったことで司法修習は就労に当たらないことになり子供を認可保育所に預けられなくなったといった悲痛な声も寄せられておるところでございます。

 また、司法試験に合格しながら司法修習ではなく行政、企業への就職等を選択した人が、新六十五期では従前をはるかに上回る六十人に上っておりますけれども、これも貸与制の実施が影響していると考えざるを得ないと思っているところでございます。

 法曹養成制度は司法の人的基盤にかかわる問題であり、国民の権利保障や公正なルールに基づく社会の実現にとって極めて重要な課題として御審議いただくようお願いいたします。

 まず、法曹養成制度の現状でございます。

 現在の法曹養成制度には、憂慮すべき三つの問題点があると考えております。

 まず第一に、法科大学院志願者の減少、特に社会人、非法学部出身者の激減でございます。

 平成十六年の法科大学院創設当初は、多数の社会人、非法学部出身者を含め四万人にも及ぶ入学希望者がありましたが、現在では志願者は八千人を切っており、そのうちの社会人、非法学部出身者の割合はさらに急激に減少しています。これは、多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材を法曹界に迎え入れようという新しい法曹養成制度の理念に照らして大きな問題でございます。

 第二に、司法試験合格率の低迷とそれによる法科大学院教育のゆがみでございます。

 合格率の低迷は法科大学院志願者の減少の大きな要因となっていますけれども、それだけでなく、法科大学院を法曹養成の中核として位置づけ、社会の国際化、高度化に対応した充実した法曹専門教育を実現するという理念が十分実現できなくなっております。

 第三に、法的需要をはるかに上回る新法曹の急増、そして、その結果としての弁護士のいわゆる就職難の深刻化でございます。

 昨年十二月のいわゆる新六十四期弁護士の一斉登録では、ついに未登録者は四百人、修習終了者の五分の一が登録できないという深刻な事態となっております。法曹志望者減少の大きな要因となっているものと考えるところでございます。

 専門職である法曹の養成には、多大な時間と費用がかかります。これは、法曹志願者本人の多額の経済的負担だけでなく、法科大学院と司法修習には多額の国費が投じられています。司法試験に合格し、司法修習を終了しても、多数の者が法曹として活躍できないというのであれば、本人にとって不幸であるのみならず、社会経済的に見ても大きな損失です。法科大学院の定員と司法試験合格者数は、法曹への社会のニーズを踏まえて適切に定められるべきと考えております。

 以上の三点は相互に密接に関連した問題であり、悪循環に陥っていると考えているところでございます。

 このように、従前よりも経済的負担が増したにもかかわらず司法試験合格率は低迷し、弁護士の就職難なども相まって法曹志願者が大きく減少している現況のもとで、給費制を打ち切り、貸与制に移行することは、司法修習生に多大な負担を強いるのみならず、司法試験に合格しながら法曹の道を選択しない人の増加をもたらすことになっており、このことは、法曹志願者の減少に拍車をかけ、現在の法曹養成制度の危機をますます深刻なものにしかねないという危機感を持っておるところでございます。

 なお、この悪循環を解消し、法科大学院が多様で優秀な人材を受け入れ、質の高い法曹専門教育を実現するためには、経済的負担の緩和とともに、厳格な成績評価と修了認定を経た法科大学院修了者の大部分が司法試験に合格し、法曹として活躍できるような制度とする必要があります。現状の法的ニーズに見合った適正な規模にまで法科大学院の定員削減を行い、あわせて地域適正配置に配慮しつつ統廃合を進めることにより、法科大学院教育の質を向上させることにあると私たちは考えております。

 法科大学院でしっかり専門教育を受ければ法曹として活躍できるという見通しがあれば、法科大学院創設当初のように、社会人、非法学部出身者も含め、多数の方々が法曹を目指すようになると考えておるところでございます。

 日弁連は、このような基本的な考え方から、昨年三月、現在の法曹養成制度が陥っている問題点を改善するための緊急提言を行いました。資料の八十一ページでございます。

 骨子でございますけれども、一として、地域適正配置と学生の多様性確保の観点を踏まえ、統廃合を含めた方策を通じて法科大学院の一学年総定員を大幅に削減すること、二つとして、法科大学院生に対する経済的支援の充実を図ること、司法試験への対応が法科大学院教育に好ましくない影響を与えている現状に鑑み、司法試験のあり方を見直すこと、司法試験の受験回数制限を当面の間五年五回等に緩和することなどを含む八項目の提言を行っておるところでございます。

 昨年五月から開催されている法曹の養成に関するフォーラムは、平成二十二年十一月の当委員会の附帯決議の趣旨からしても、本来はこうした法曹養成制度全般に関する改善方策をまず検討すべきでしたが、東日本大震災で開催がおくれたことから、短期間で給費制廃止と貸与制の実施で取りまとめを行い、現在は法曹の活動領域の拡大についてヒアリングを行っているところであり、これから法曹養成制度に関する論点整理をする予定となっております。

 しかし、やはりこれは議論の順序が逆であり、私たちは、法曹養成制度全体の問題点と改善方策の検討をきちんとやるべきであり、しかる後に給費制の是非を検討すべきであったと考えるところでございます。

 今回の修正案は、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律附則第二条の法施行後十年後の検討を一年前倒しにし、別に法律で定める合議制の機関を設置して検討を行うとされていますが、私たちも、この問題の重要性にふさわしい位置づけを持った機関で、開かれた議論と検証を行うべきと考えているところでございます。

 そして、以下に述べるように、検証期間中は貸与制を一旦給費制に戻し、法曹養成制度に与える悪影響を最小限に抑えるべきと考えるところでございます。

 司法修習生の給費制の暫定的存続について述べたいと思います。

 まず第一に、法曹三者統一修習制度の始まりとその意義について確認していきたいというふうに思います。

 そもそも、現在の法曹三者統一修習制度は、国が司法官の養成のみを行っていた戦前の制度を新憲法の民主主義と人権保障の精神に基づき改めたものであり、全国が焦土化し、国民は物質的にも精神的にも疲弊していた昭和二十二年に司法修習制度が開始されて以来、この統一修習制度は我が国における法曹養成の一貫した方針となっていました。

 戦後の民主主義社会を形成する上で、司法制度の拡充とそれを担う人的基盤である弁護士を含む法曹三者の養成は、当然に社会のインフラ整備のコストと考えていたものと理解しております。その制度が六十四年間維持されてきたものでございます。

 統一修習は、裁判官、検察官、弁護士のいずれの道に進む者も区別せずに同じカリキュラムで行われますが、これは、三者それぞれの立場から事件の見方を学ばせることにより、広い視野や物事を客観的、公平に見る能力を養うとともに、法律家間の相互理解を深める意義もございます。このような統一修習制度は、国際的に見ても特徴のある制度であり、我が国においても高い評価を受けてきたものと理解をしているところでございます。

 次に、貸与制導入とその理由について述べさせていただきたいと思います。

 こうした見地から当連合会は一貫して給費制廃止に反対してきましたけれども、司法改革関連法案の最後に成立した平成十六年の裁判所法改正により、給費制を廃止し貸与制を導入することが決まりました。その理由とするところは次のとおりでございます。

 一つ、閣議決定による平成二十二年、年間三千名の合格者の大量増加に対応し、財政支出を削減したい。司法修習生の多くは弁護士になる、弁護士は安定した収入が得られると考えられたため、法科大学院の奨学金返済を考慮しても貸与金の返済は十分できると見られていたということでございます。

 さらに、財務省財政制度等審議会の平成十四年十一月二十日付、平成十五年度予算の編成等に関する建議においては、給費制を廃止し貸与制への切りかえを行うべきであるとした上で、貸与制導入の理由として、法曹という個人資格を取得するための費用を税金から支出することはできない、受益、法曹資格を得る者がその負担、費用を負うべきであるとされておりました。

 貸与制導入時の附帯決議に触れたいと思います。

 この改正時に、衆参両院は、給費制廃止、貸与制への移行を決議したものの、政府、最高裁に対し、「経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないよう、法曹養成制度全体の財政支援の在り方も含め、関係機関と十分な協議を行うこと。」との附帯決議をつけております。

 次に、貸与制実施の一年延期と給費制の延長の問題について述べたいと思います。

 ところが、平成二十二年に司法試験合格者を三千人とするという閣議決定の目標は達成されず、二千人程度にとどまっており、しかも、この二千人でも現在の法的需要をはるかに上回る急増ペースであるため、三千人の目標の見直しは不可避と私どもは考えているところでございます。

 しかも、法科大学院時代までの奨学金などによる借金が、当連合会の調査で平均三百四十万円、多い方で千三百万円に及ぶことに加えて、給費制が廃止されて貸与制が実施されるとさらに三百万円に上る借金が重なることになることから、これでは経済的に裕福な者しか法曹になれなくなるとの批判が国会内外で強まり、平成二十二年十一月の議員立法による裁判所法一部改正により、貸与制の実施は一年延期され、その際の当委員会の附帯決議により、個々の司法修習終了者の経済状況を勘案した措置とともに、法曹養成制度のあり方全体についても速やかな検討を加えて、必要な措置を講ずることが求められたものでございます。

 法曹の養成に関するフォーラムの開催と第一次取りまとめでございます。

 この附帯決議を受けて、昨年五月二十五日、内閣官房長官、総務大臣、法務大臣、財務大臣、文部科学大臣、経済産業大臣による申し合わせにより、法曹の養成に関するフォーラムが開催されていますが、さきに述べたとおり、このフォーラムでは、本来、先に検討すべき法曹養成制度のあり方全体の検討を行わないまま、実質二回の審議で、昨年八月三十一日に給費制の廃止と貸与制の実施を決めてしまいました。

 この第一次取りまとめでは、法科大学院での奨学金等の経済的負担の大きさに加え、法曹志願者の急激な減少により人材の多様性を確保できなくなるおそれ、司法修習生は修習専念義務を負い、兼職禁止や守秘義務の厳しい制約が課されており、給費はその代償であるなどの当連合会などの指摘も記載されておりますけれども、これに対するフォーラムでの検討は到底十分であったとは考えるところではございません。

 司法修習制度の重要性と修習専念義務の必要性について述べさせていただきたいと思います。

 しかし、この取りまとめでも、司法修習制度の重要性については次のように確認されております。

  司法修習は、新しい法曹養成制度においては、法科大学院教育との有機的連携の下に実務教育の主要部分を担うという重要な位置付けを与えられている。司法修習においては、社会で実際に起きている生きた事件を素材として、臨床的に実務的なスキルやマインドを磨くことがその主眼とされており、裁判所、検察庁、弁護士事務所に籍を置いての実務修習を中核としてカリキュラムが構成されている。修習は法曹として活動するための共通の基礎となるものであり、新しい法曹養成プロセスにおいては、必須の課程として置かれている。

  このような修習の重要性に鑑み、我が国においては、法曹三者を統一的に養成する修習制度を国が国費で運営する一方、司法修習生は、修習期間中、修習に専念すべき義務を負うこととされている。

 当連合会としても、このような司法修習制度の重要性と修習専念義務の必要性を認めており、それゆえにこそ、新たに借金の負担を強いる貸与制ではなく、給費制を維持すべきと考えているところでございます。

 では、公務員でない弁護士になぜ給費が必要かについても述べさせていただきます。

 裁判官、検察官、弁護士の法曹三者は、いずれも国の統治機構の重要な一部である司法制度を担う存在です。法曹三者は、それぞれ補い合い、時にお互いの役割をかえながら、法と社会正義の実現に貢献しています。実際にも、弁護士から裁判官に任官する者は毎年数名おり、この間の震災ADRや原発ADRでも見られるような準司法機関の設置、運営にも多数の弁護士がかかわっております。また、経済の高度化、国際化と企業の海外進出の活発化、あるいは多様化する国家間の利害調整と交渉の局面で、公正な法的ルールに沿って国益を実現する存在として、諸外国でも弁護士は国家戦略的に重要な存在として位置づけられております。

 このように弁護士は、個人の職業的資格という以上に、国の統治機構である司法制度の維持、運用に裁判官、検察官と同等の資格で関与し、法と社会正義の実現を担う存在であり、それゆえ、日本国憲法制定とほぼ同時に法曹三者の統一修習は国が責任を負うという制度が確立したものでございます。

 司法修習制度と給費制は不可分一体のものでございます。

 司法修習生の地位と身分について、司法修習生がその身分を離れる際に退職手当の支給を求めた昭和四十二年四月二十八日の最高裁判決は、一、修習期間中は国庫から一定額の給与を受けるほか、扶養手当等の諸手当や、公務のため旅行する国家公務員等として司法研修所入所、滞在などに必要な旅費の支給を受けること、二つ、司法研修所長の統括に服し、配属地の高等裁判所長官の監督を受けること、三、兼職を禁止されること、修習に当たって知り得た秘密を漏らしてはならない義務を負うこと、一定の事情があるときはその意に反して罷免されることを指摘した上で、その理由について、これらのことは全て、司法修習生をして右の修習に専念させるための配慮ないしはその修習が秘密事項に関することがあるための配慮であると判示しております。この事件自体は敗訴判決ではございます。

 実際、司法修習生は、裁判官の合議や裁判員の評議に立ち会い、被疑者取り調べを検察官の指導のもとに行い、弁護士と依頼者との面談に関与するなど、高度な職業倫理と守秘義務を要する作業に従事しており、そのために公務員に準じた厳しい規律が課されてきたものでございます。修習生の給費はこの公務員に準じた身分と不可分一体なものであり、上記の最高裁判決が修習に専念させるための配慮として説明したものでございます。

 ところが、貸与制への移行を決めた平成十六年の裁判所法一部改正では、司法修習生への給費を定めた条項の削除と同時に、修習専念義務を条文上明記いたしました。しかし、貸与制による修習貸与金は本人の自己負担である点で奨学金や学資ローンと同種のものであり、貸与制のもとで公務員同様の厳しい規律を課して司法修習への専念を求めることは著しい不正義ではないかと考えているところでございます。

 最後になりますけれども、当連合会としては、今回の公明党の修正案のとおり、現在の法曹養成制度について検証し、その改善方策の結論を見るまでの間は、現在の財政状況を考慮して給費額を見直すなどでも可能でございますけれども、何らかの形で給費制を維持すべきであると考えるところでございます。

 以上でございます。(拍手)

小林委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

小林委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻惠君。

辻委員 民主党の辻惠でございます。

 本日は、三人の参考人の先生方にお越しをいただいて貴重な御意見を伺わせていただいたことを、まず冒頭、感謝申し上げたいというふうに思います。

 一九九〇年代から始まった司法改革というものが、今ちょうど、十数年たって、いろいろなところでしっかりと、先の時代にさらにその趣旨を生かすためにはどうすべきなのかということの検証が必要なときに差しかかっているのではないかというふうに思います。きょうの給費制か貸与制かという問題もそういう中での重要な問題であり、しかし、この給費制、貸与制の問題は、実は、法曹養成制度がどうあるべきなのかということの問題点の中で整理をされるべき問題であろうというふうに思うわけであります。

 そういう観点で、きょうは、三人の参考人の皆様方に、法曹養成制度をめぐって、現在直面している課題、そして、それに対してどういうふうに改善をしていくべきか、考えていかなければならないのかという問題を明らかにしていただく、そういう趣旨で御質問させていただきたいと思います。

 まず最初に、佐藤参考人からお伺いしたいと思います。

 司法は公共性の空間であるということで、非常に高い志を持って司法改革審議会の会長として務めてこられた。

 私は、二〇〇四年のいろいろな改革関連の法案の審議で、当時、推進本部の山崎潮事務局長とは七回にわたって質疑をさせていただきました。非常に真摯な御答弁をいただいて、しかし、残念ながら、事務局長をおやめになった後、千葉地裁の所長になられて、急逝された、お亡くなりになったということで、今後の司法改革の検証等についてぜひ山崎さんのお考えも伺いたいというような、そんな方でありましたので、非常に残念な思いをしているところをまず最初にお伝えしておきたいというふうに思います。

 佐藤参考人、二〇〇六年十二月一日のジュリストで、先ほどおっしゃられた、国民にとって身近でわかりやすい司法、ファミリア、国民にとって頼もしく、公正で力強い司法、フェア、国民にとって利用しやすく、速い司法、ファストということが、これは顧問会議の意見として出しているんだというふうにおっしゃられて、それに沿って、制度的基盤の整備、人的基盤の拡充、国民の司法参加ということが三つの大きな柱なんだというふうにおっしゃっておられます。このこと自体そのとおりだと私は思いますし、その中で、とりわけ、きょうの課題としては、人的基盤の拡充という点に関してのものだと思います。

 ジュリストの中では、人的基盤の拡充に関して、人間味のあるすぐれた法曹が身近に存在するようにすることが重要なんだということをおっしゃられて、そういう意味では、質、量ともにすぐれた法曹が必要なんだということで、一つは、法曹人口の拡大、三千人、法曹養成制度の改革、これは法科大学院を中核として、私はその中身をもう少しよく検討したいと思いますけれども、プロセスとしての法曹養成ということが言われているというふうに思います。

 簡単に言えば、従来の受験技術一本やりではなくて、もっと具体的な、現場のニーズに対応できるような、そういう法曹を養成していきたいということであり、また、だからこそ、社会経験や、法学部出身者に限らず、法学未履修者であっても、幅広い人材を確保するということが要請されていることだろうというふうに思います。

 ところが、現状を見ますと、いろいろ問題点がある。佐藤参考人も、このジュリストの中、二〇〇六年であります、もう今から六年近く前なのでありますが、予想以上の法科大学院が設立されたことに伴う定員と新司法試験の合格者数との間に相当なギャップが生じて、法科大学院への志望者の質や種類、あるいは教育に悪い影を落とし始めているようにも感じられます、このようにおっしゃっております。

 現に、適性試験もそうだし、法科大学院もそうだし、志望者が激減しているという現状は極めてゆゆしい問題である。これは大学法学部の希望者も減少しているということであります。法科大学院の中には、定員割れをして廃校に至らざるを得ないとか経営難に直面しているところもあるということでありますが、このような想定されたあるべき法科大学院と違う現状とのギャップについて、現状、どうお考えなのか、そして改善すべき点はどういう点にあるというふうにお考えなのか、その点をお聞かせいただけますでしょうか。

佐藤参考人 最初に山崎さんのことをお触れになりました。私も、本部の事務局長として大変尽力された方が亡くなられて、今ここに山崎さんが生きておられれば、私、出る必要がなかったというように思っているんですけれども、本当に残念なことでございました。

 法曹養成の、法科大学院の現状についてでありますけれども、そのときも既に申し上げ、きょうの話でも触れましたけれども、予想以上の法科大学院ができて、定員が非常に大きくなって、そして他方では、意見書で、修了したら七割から八割の合格者がというようにうたっていたのが、その部分がひとり歩きして、そして結果的に、第一回から入っていただいた諸君に、結果的にですけれども、非常に申しわけないことになったという思いを最初から抱いておりました。

 その後、七十四の法科大学院のさまざまな状況を見ておりまして、きょうの話で定評のある大学院と申しましたけれども、そこは非常にしっかり、厳しい中でもしっかりした努力、大変な努力、今までとまるで違う授業です。法学部でたくさんの法学部出身者を出してきましたけれども、いろんな希望者がいるものですから、法学、本当の法曹に進む人たちのための特化した教育というのは、大学として非常に取り組みにくかったんですね。しかし、法学部はさまざまな工夫をして、何々コース何々コースといろいろやってきたんですけれども、うまくいかなかった。

 他方、司法試験が、私がやっておったときですけれども、一番厳しいのが一・五%、一番よく通りやすいのが、六・五回ぐらいで一番通りやすいというのが一番厳しい状況でありました。そうなりますと、試験が厳しければ優秀な人材が得られるかというと、そこは必ずしもそうではなくて、私の教えておった京都大学なんか見ますと、この子は非常にいい法曹になるだろうなと思っても、最初からもう法曹を目指さないんです、司法試験を。だって、一・五%の狭い道ですから、リスクが多い。五年、六年、七年、八年とかかる、あるいは十年かかる、そういうものですから、離れるんですね。非常に法学部時代に危機感を覚えておりました。司法試験でもありましたから。

 それで、この改革でこういう法科大学院という構想を出して、そして教え方を特化して、そして法曹に進もうという人に特化した教育をやる、丁寧にやる、そういうことに切りかえて、人材を輩出しようということでスタートしたわけですけれども、最初に申し上げたように、また、委員もお触れになったように、たくさんのあれが出て、七割、八割というのが何かちょっと。

 定評のある法科大学院は今でも、累積で見ると、六割、七割のところがあるんです、三回。あるんですけれども、それ以下のところは非常に多い。そして下の方は一名とか二名とか、そういう状況の法科大学院があります。そして、その批判は、法科大学院、何やっているんだと。何といいますか、苦労している法科大学院が、あたかも、下手をすると法科大学院全体の問題のように指摘されるところがありまして、その点は、法科大学院の関係者は非常に気の毒だという思いをしてきております。

 ですから、申し上げにくくてあれなんですけれども、多過ぎる法科大学院をどういうようにこれから、ちまたには、整理統合とかいろいろなことが言われております。私の口から言うのも、ちょっといろいろとあるものですから、なんですけれども、今、文科省で各法科大学院の状況を正確に把握し、そしてフォーラムにおいて、これからどうするかと。しかも、これは長い先の話じゃない、早く安定させる必要があるという観点から、早急に取り組む必要があるという認識が次第に関係者にも抱かれているように思います。

 ですから、そこに、私としては、具体的な方策を至急に出していただきたいというのが、まあ、それ以上はちょっと、申し上げたいこともありますけれども私の口からはちょっと申しにくい、しかももう書斎生活に戻っている身ですから正確な状況を把握していないこともありますので、この辺でお許しいただければと思います。

辻委員 佐藤参考人、京都大学の例をお挙げになりましたけれども、近畿大学のたしか総長ですか……(佐藤参考人「法科大学院で教えました」と呼ぶ)法科大学院の教授をされて。失礼しました。

 いろいろな法科大学院の現状を見ておられるというふうに思います。経営難になっていたり、合格率が悪いと本当に廃校の危機にもなるというようなことで、合格率を低めないために、留年者をふやすとか、入学前から補習をするとかいうような形で、実は、当初目的としていたプロセスの法曹養成と言われていた趣旨とは違って、受験予備校化しているようなところが非常に強くなっているという意味で、やはりこれは抜本的な見直しを免れないというふうに私は思います。

 特に、予備試験というものがございまして、これは、法科大学院卒業者でなくても司法試験を受ける受験資格をということで、昨年度は受験者六千四百七十七人で合格者百十六人、一・八%なんですね。法科大学院の修了者が三百三十六人受けていて十九人しか通っていない、五・七%なんです。司法試験の受験資格を法科大学院修了者は持つんだけれども、法科大学院を修了した人がその予備試験を受けても五・七%しか通っていない。つまり、法科大学院の修了者の質が果たしてどれだけ確保されているのかということが問題として指摘されている。

 そういう意味では、司法試験の受験資格を法科大学院修了者に必ずしも絞る必要はないんじゃないか、予備試験を、もっと門戸を開く必要があるのではないかというような指摘も結構強くあるんです。

 簡単にこの点、一言、今の御見解をいただけませんか。

佐藤参考人 これはなぜ法科大学院かと。

 きょうは、法曹の養成では、身体上のお医者さんの養成と同様の問題があると申しました。これは、何でそうなのかという御疑問もあるかもしれませんけれども、これは人間の命、片っ方は身体ですけれども、片っ方は、自分の財産がどうなるかというのはある意味では死活問題であり、生死にかかわる問題ということもあるわけです。しかも、その人間の一番のシークレットな部分にかかわる職業です。相続を相談するについても、全部さらけ出さなければいけません。ですから、その意味で、人間の最もセンシティブな領域にかかわるというので、法曹と身体上のお医者さんとは共通している。

 だから、歴史上、医学、医師と法、大学の発祥は医者の部分とそれから法曹の部分があったということは、そういう人類の英知がそこに出ているんだろうというように理解するところです。

 それで、定評ある大学院と申しましたけれども、そこでの教育は、今見ますと、非常にいい教育をやっておるけれども、余り司法試験を過剰に意識しないで、もう少し余裕を持って、いろいろなことをやっていただくような法科大学院を描いておりましたが、それができない状況なんですね。ですから、その状況は、七十四の法科大学院の全体が引き起こしている問題が、定評のある法科大学院にも必ずしもいい影響を与えていない。

 ということで、先ほど統廃合というようなことが言われていると申しましたけれども、そこを早急に取り組んでいただくということが、まさに今最も求められていることではないかというように考えます。

辻委員 時間が余りなくて、あとお二人の参考人の皆さんにもお伺いしなくちゃいけないんですが、次に青山参考人にお伺いいたします。

 先ほど御紹介いただいたジュリストの中で、青山参考人も、法科大学院の志願者が減り続けているのは深刻な事実であるというふうにおっしゃっていて、志願者が二つのリスクを敏感に察知しているからなんだと。一つは、学費が高い割に、修了しても司法試験に合格するかどうかわからない、法曹として就職できるかわからない、この二つがネックになっているんだと。

 やはりこれは、今の法科大学院制度のありよう、また、就職難という意味においては法曹の数、この二つの面において見直すべき現実があるということではないかと思います。そういう中で、どのように考えておられるのかを青山参考人にお伺いしたいということ。

 あと、新里参考人に、こういう状況の中で、先ほど佐藤参考人は、給費制というのは優先順位の問題であって、もっとほかに使うところがあるんだというようなお話であったわけです。財政状況からやはり難しいんだというような御指摘もあったと思いますけれども、この今の財政状況の中で、新里参考人が、きょうの御意見の中でどのようにお考えなのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。

青山参考人 委員御質問の点でございますけれども、私は、現在の法科大学院が抱えている大きな問題の原因を考えますと、一つは、発足当時の制度設計に問題があった点が一つあると思います。もう一つは、発足した後の現状にやはり問題があるというふうに考えております。

 最初の発足当時の問題点と申しますのは、御存じのように、司法制度改革審議会の意見書では、まともに勉強すれば七割、八割が合格する程度の教育を施すんだと。合格率七割、八割というのがひとり歩きしているということでございますが、それと同時に、司法試験の合格者を三千人を目指すということを言っておる。この二つの数を言っているだけで、それでは入学定員をどれだけにするかということについては何も言っていない。これはその後、文部科学省の認可に委ねられてしまったところでございます。しかし、合格率を七割、八割にする、それで合格者をこのくらいにするということになれば、おのずから入り口を絞らなければ、その合格率は達成されないはずでございます。

 韓国の法科大学院を見ますと、御存じのように、法科大学院の数が二十五校、合格者は千五百、だから入学定員は二千人。そういう制度設計をきちんとした上で二十五校の法科大学院を認可し、二千人の入学者を入れ、それから、間もなく第一回の司法試験が韓国では行われますが、そこで千五百人を合格させようとしている。

 日本は、その入り口のところは全く野放しにしてしまいまして、そして将来は三千人にしましょう、合格率は七割、八割にする。そうすると、おのずから入学者はこのくらいにしなければならないというのは誰が考えてもわかるはずでありますのに、結果的に七十四校もの法科大学院が続々とつくられてしまった。これが制度の最初の出発点の大きなつまずきの石ではなかったかというふうに私は思います。

 それから、制度が発足した後はどうかといいますと、今、辻委員御指摘のとおり、法科大学院の志願者の数が激減しているという事実がございます。それは、今おっしゃったように、法科大学院に入っても本当に合格するかどうかわからない、それから、運よく合格しても法曹として就職できるかどうかわからない、その二つのリスクが現実にあるからであります。

 それを、では、こういう状況でどう対処をしたらいいかということについて私の私見を申しますと、まず第一の、制度設計の当初のつまずきについては、やはり、冷たいようですけれども、法科大学院の淘汰といいますか、統廃合をさらに進めて、合格者数が七割、八割に達する程度に入学定員を絞っていくということ以外にない。これは強制的に絞るわけにいきません。韓国は、二十五校の法科大学院に絞ったために、行政訴訟がたくさん出て、まだ係属しているわけですけれども、日本は自然にそうなることを待っているというのが今の状況でございますので、これはなかなか難しいところがあります。

 それから、学費が高い割に合格者が少ないというのは、やはり法科大学院の学生に対する経済的援助というのはもっともっと強化していただきたいと思います。

 私自身は先ほど貸与制には賛成する立場をとりましたけれども、誤解していただきたくないのは、私は、日々法科大学院の学生と日常接している者といたしまして、いかに彼らが経済的に苦しんでいるかということは十分よくわかっております。この学生たちに経済的な支援をして、法科大学院の教育をきちんと受ければ、やはり当初の目的どおりの、自分の意思が達成できるような制度設計に戻したいというふうに思っております。

 そのためには、もちろん私は法科大学院の教員の一員でございますから、法科大学院の教育の質をもっともっと向上させていかなければならないということは言うまでもありません。そのことを前提といたしまして、今申し上げたようなことを申し上げているわけであります。

 それから、運よく司法試験に合格して、司法修習が終わってからも、法曹として就職できるかどうかわからないリスクというのは、これは法科大学院だけではどうにもならない問題でございます。

 私は、日本にはまだ法曹に対する需要があるというふうに認識しております。ただ、その需要は潜在的でありまして、顕在化していない。しかし、法律家に相談にしても、身近に法律家がいないというところはたくさんあります。日弁連の御努力で、公設弁護士事務所が各地にたくさんできたり、法テラスができたり、それから、ゼロワン地区が解消、ゼロ地区は解消して、ワン地区は少し残っているんでしょうか、そういうふうにゼロワン地区の解消ということを一生懸命努力している。

 この努力に私は深甚なる敬意を表するものでありますけれども、ゼロワン地区というのは、地裁の支部単位で、そこに誰も弁護士がいないか、一人弁護士がいるかということであります。地裁の支部は非常に大きなくくりでありまして、今、全国に二百五十三庁ぐらい支部があると思います。その地裁の支部でなくて、私は、市町村ごとに考えていただきたいというふうに思っています。市町村単位で考えますと、身近に弁護士さんがいない、アクセスしようもないという市町村は非常にたくさんあるわけであります。

 そういうことだけではなくて、国際的にも……

小林委員長 青山参考人、大変恐縮ですが、短目にお話しください。

青山参考人 はい、わかりました。

 そのほかに、国内だけではなくて国際的にも活躍する場面はたくさんある、そういうものをやはり日本の法曹として切り開いていかなければ、諸外国に対する法的な競争というものでは負けてしまうのではないかというのが私の危惧でございます。

 少し長くなって、大変恐縮でございます。

小林委員長 新里参考人、時間でございますが、一言お願いします。

新里参考人 御指摘でございますけれども、やはり、国家戦略としてプロフェッショナルの法曹をどう位置づけるかというのが重要になってくるのではないのかな。海外でもそうでありますように、日本でも、そのようなことを考える中で、やはり人の、プロフェッショナルの養成にお金をかけるということで日本が立国していくのが一番なのではないかという視点でございます。

 それから、具体的なところでございますと、例えば、法科大学院の運営費交付金が最大九十九億円でございましたけれども、それが入学者数が減ることによって下がってきております。その意味では、ロースクールへのお金のいわゆる適正化、それから、公明党の修正案では七十一億円ぐらいに減額するような修習費ということで、その意味では、全体として法曹養成の中でのバランスを図りながら、国家戦略の中で位置づける。

 先ほど佐藤先生が、法曹の職責が私利私欲の追求ではなく正義へのアクセスで、公共性が高いということであれば、国家戦略としてきちっと養成していただければいいのではないかということを考えておるところでございます。

 以上です。

辻委員 民主党内では、法曹養成制度の抜本的な見直しを含めて今検討しております。きょうおいでいただきました三人の参考人の皆様方には、今後ともいろいろ御意見をまた頂戴したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 本日は、ありがとうございました。

小林委員長 次に、河井克行君。

河井委員 おはようございます。自由民主党、河井克行です。

 きょうは、この問題についてこれ以上的確な方はいない三人の参考人にお出ましをいただきました。私からも感謝をいたします。

 まず、青山参考人とは、二〇〇七年、私が法務副大臣を務めておりました折に、参考人が業界団体である法科大学院協会の理事長をお務めのとき、大学にお訪ねしまして随分激しい議論をさせていただきましたが、覚えていらっしゃいますでしょうか。きょうは参考人でいらっしゃいますので、敬意を持って接したいというふうに心がけております。

 次に、きょうはわざわざ京都からですか、お越しいただきました佐藤幸治参考人には、先ほども陳述でおっしゃいましたが、かつての仕組みと比べて質、量ともに豊かな法曹人口を確保しますと約束をされた今の制度のまさに生みの親でいらっしゃいまして、ぜひ一度さまざまな点についてじかにお尋ねする機会をいただきたいなと本当に願っておりました。感謝をいたしております。

 きょうのこの給費制か貸与制か、あるいは貸与制における負担軽減策に関する司法修習生の給与のあり方、私は、法曹養成と法曹人口全体の見直しの議論の中で議論を積み重ねていくべきだというふうに思っております。

 といいますのは、経済的な困窮は何も司法研修所で始まったことではない、その前段階である法科大学院の制度が創設されたときから多額の経費と無収入が原因になっていることは紛れもない事実でありますし、司法修習課程を出た後の弁護士市場の混乱と就職難は、年間三千人を目標とした今の法曹人口増大計画が原因であるからだと考えているからであります。

 つまり、法曹養成と法曹人口を一軒の家に例えれば、設計が間違い、かつ施工も不良で、新築のときから土台から傾き始め、築後九年目、誰の目にももはや住むことができない状態であることが明らかであるにもかかわらず、台所の水漏れをどうしのぐかということを考えている、これがこの司法修習生の給与のあり方についての今の議論だと私は認識をいたしております。(発言する者あり)ありがとうございます。初めて民主党から褒めていただきました。

 物事の本質的な解決を図ることが政治の役割だと私は信じている。よって、法曹養成制度と法曹人口増大の全体像について、現場感覚に基づいた冷静な検証を行い、正確な現状認識に基づいた具体的な改革を一日も早く行うことこそが、国家国民の利益になり、同時に、これから法曹を志望している前途有為の青年、きょう、あちらに青いTシャツを着ていただいている傍聴の方がそうではないでしょうか、彼らのためになることだと私は信じております。

 二十分と限られておりまして、本当は二十時間でも参考人からいろいろと御意見を聞きたいところですので、簡潔にお答えください。

 まず、佐藤参考人には二点お尋ねをいたします。

 二〇一〇年の司法修習終了生、弁護士登録が八〇%、未登録が一二%でありました。これが、一一年には未登録が二二%。一年間で一〇ポイントもふえてしまった。ちなみに、私が副大臣で、二〇〇七年、新任検事辞令交付式に出たときには、弁護士未登録は四%しかいなかった。たったの四年間で、弁護士登録をしない若者が一八ポイントも増加をしてしまった。

 月数万円の弁護士会費も払えないですとか、どこの事務所も弁護士がふえ過ぎて仕事がない、だから新人を雇えないと嘆いているという報道が盛んにされております。恐らく、ことしはもっと悲惨な状態になることは、火を見るより明らかだと考えております。

 これでは、せっかく勉強を積み重ねてきたのに、運転免許証と同じで、ペーパードライバーばかり大量生産しているのではないか。もっとも、これは大変高価な免許証でありまして、法科大学院、私立に行くと、三年間で、行って来いで二千万円近い経済的負担が必要である。

 こういう新任弁護士の就職難という状況にもかかわらず、今でも佐藤参考人は年間三千人の弁護士をつくるべきだとお考えなんでしょうか。もしそうならば、その根拠をお示しいただきたいと思います。

 二点目は、先ほどの陳述で三千人のことをおっしゃいました。これについては、司法制度改革審議会の会長として、平成十二年の八月七日から八月九日まで二泊三日の合宿集中審議、これは政府のホームページで公開されている情報でありますけれども、なぜ三千人に決まったのかということについて、全会一致であったということをおっしゃいました。ただ、政府のホームページによりますと、私が見たところでは、三千人、慎重論者の方が意見としては多かったんです。

 幾つか引用しますと、「増員には賛成だが、一気に増やすべきか、段階的に増やすべきかは慎重な検討が必要だ。今は千人の増員でもいろいろ問題が生じている。質の確保がやはり必要で、一気に三千人というのは無理ではないか。」「隣接の問題」つまり司法書士さんとか行政書士さんだと思いますが、「や弁護士改革について、まだ、十分に議論を尽くしていない現段階で、いきなり数字だけを出すのは疑問だ。」「目標を達成した段階で、一旦増やした年間養成数を減じることには問題がある。そもそも、増え過ぎたらその段階で年間養成数を減らす、というような法曹人口を意図的にコントロールしようとする発想自体に疑問がある。」とか、「法科大学院の整備状況やそのレベルアップの状況を見定めながら、段階的に増加していく必要があり、法曹の質の問題を考えると増加には一定の期間を要する。」と掲載をしていらっしゃいます。

 この三千人、お決めになった経緯なども含めて、以上二点、簡潔にお答えをいただきたいと存じます。

佐藤参考人 簡潔にということで、語り出したらとまらないところはあるんですけれども、簡潔にということですから。

 第一点でございますけれども、私自身は内容をつまびらかにしておりませんが、例えば、企業内弁護士の数は、二〇〇一年のころはまだ六十数名ではなかったかと思いますが、現在、既に五百半ばにいっているんではないか。

 新聞に載っておりましたけれども、北陸銀行で毎年三名ずつ定期的に採用していきたいという方針を出しているというお話もありました。それから、さる国立大学で、二名公募して、二名を正規の職員として採用を決めて、四月から勤務するという話も聞いております。

 ですから、今までは弁護士資格を持ってきておられるかほとんど関心がなかったのが、企業内弁護士、あるいは法テラスの専任の弁護士も、現在二百二十名を超えているんではないかと思います。国際機関に出ている人もいるはずであります。

 そういうわけで、やっといろいろな方面に弁護士資格を持った人たちの目が向き始めているところもあるんじゃないか。全部が全部だとは申しませんよ、さっきおっしゃった。申しませんが、そういう状況で、次第に周りに目が向けられつつあるということを指摘しておきたいと思います。

 それから二番目の、なぜ三千人かという話なんでありますけれども、これは実際、触れられたように、激しい議論をしました。最も激しい議論だったと思います。けれども、最終的にはやはりそこに行こうということで三千人という数字で決まったわけです。そして、この法曹人口が決まりますと、国民の司法参加の話があります。この司法参加というのは弁護士にとって大変負担になる仕事であります。

 こんなので時間がオーバーするといけませんけれども、ちなみに、戦前の陪審制がうまくいかなかったと言われている一つの理由は、優秀な弁護士はいらっしゃいましたけれども、全国的に陪審制に対応する人たちがちょっと不足しておったんではないかと思うところがあるわけです。裁判員制度は、まだその八月の段階では具体的にどうだということは決まっていませんでしたけれども、私の気持ちの中には、法曹人口の増員がはっきり決まらなければ国民の司法参加は本当に地に足をつけて議論することができないという思いで臨んだわけであります。

 それでは、なぜ三千人かという話で、そして全員が合意したかということでありますけれども、中坊さんの著書でしたか、どこかで触れていらっしゃいましたけれども、中坊さんは二割司法ということを盛んにおっしゃっていました。これは朝日新聞の論説の関係の方が最初に言われたようですけれども、それを受けて中坊さんがよく言っておられました。そして、森永砒素ミルク事件での担当のことをいろいろ涙ながらに語られたことを覚えています、審議会ではありませんけれども。日本は国民の需要の二割しか司法が、弁護士が対応していないんだということなんですね。あとは、八割は泣き寝入りであったり、怪しげなところに相談に行ったり。この現状を何としても変えなければいけないということで、中坊さんはたしか、余り固有名詞を挙げていいのかどうかわかりませんけれども、四千名か何か、もっと大きいことを言われていたように思うんですけれども、議論していろいろやっていくうちに、三千人、まずそこを二〇一〇年までに目指そうということになったわけであります。

 ここは、現在既に、例えば軒弁とかなんか言われても、元気よく四、五人のグループでやっているのも知っています。いろいろな若い人たちがいろいろなところで挑戦していることも知っています。私は最後に一言言いたいのは、むしろ弁護士会とか法律に関係する我々が、若いそういう人たちを後押しする、応援するシステムを早く用意するのが重要ではないか。国民の法に対する需要は、さっき青山先生のあれもありましたけれども、潜在的には決して小さくないと確信しております。

 以上です。

河井委員 ありがとうございます。現場の悲鳴にきちんと耳をかさなきゃいけないなと、今、私自身感じた次第であります。

 続きまして、青山参考人にお尋ねをしますが、平成二十三年新司法試験、つまり法科大学院を当然修了した人たちの、採点実感等に関する意見、これは法務省のホームページから引用してまいりました。

 幾つか引用しますと、公法系科目第一問についての採点者の実感です。なぜ法科大学院修了者の答案が基本的欠陥を多く抱えるものであるのか、その原因を究明する必要がある。

 民事系科目第二問。基本的な点に不十分な面が見られる。会社法の基本的な知識に加えて、事例解説能力や論理的思考力を涵養する教育が求められる。

 民事系科目第三問。基礎的な知識を習得すること、すなわち基本的な概念を正確に、かつその趣旨を理解することの重要性を、繰り返し強調する必要がある。法科大学院において特殊な論点や事例にまで手を広げて学習することが期待されるものではない。にもかかわらず、土台をおろそかにしたまま複雑な事例を分析させることは、安易な姿勢を助長するおそれがある。

 倒産法につきましては、基本的な思考が身についていないと見られるものが多い。

 知的財産法には、真の理解をするための教育が必ずしも十分になされていなかったからではないか、常に自分の頭で考えるよう訓練を積ませていただきたい。

 これは実は、先ほど言いました、私が副大臣のときからこの新司法試験について採点した人たちの実感を公表するようにしております。公表ですから、本当はもっとひどい評価だと思うんですよ。公表ベースでもこれだけの事柄。これは私がいたときと全く進歩がない。つまり、基本的な知識ができていないという採点実感の羅列なんですね。

 あるいは、先ほど辻委員が御指摘された、平成二十三年、予備試験、法科大学院に行かなくても新司法試験を受験することができる道を開いたわけでありますけれども、法科大学院修了生の合格率が五・七%。本来は、法科大学院修了と同等の学力を検査するために設けられたのが予備試験ですから、法科大学院を修了した人たちは一〇〇%予備試験は通らないといけないにもかかわらず、五・七%。ちなみに、大学生の合格率は三・三%、法科大学院の現役生が四・一%ということですから、何にも法科大学院をかじってもいない大学生、二十歳から二十四歳が、最終合格者数の中で、参考人、一番多いんですよ。百十六人のうちで四十人が二十代前半。

 つまり、優秀な子供たちは、もう法科大学院にはなから行かない、法科大学院を見限っているというのが、これらの採点実感ですとか法曹の卵たちの行動からも私は見てとれるのではないかと思うんです。

 先ほどから聞いていましたら、いや、一部の中下位校は率直に言ってだめだけれども、上位校はいいという理屈をされているけれども、それならば、これからも政府やあるいは個人が多額な家計を無理やり法科大学院に投ずるのではなくて、一円もかけないで、法科大学院の市場による整理統合を果たす道があるし、子供たちの願いにかなえる道があると私は思っている。それは受験資格制限の撤廃なんですよ。誰でも司法試験を受けることができるようになる。

 もし法科大学院さんが自信があるんだったら、受験資格制限を撤廃されても、それでも、三年間、二千万円の行って来いの負担をしてでも子供たちが通うような教育をやってほしい。それを、既得権益のように、予備試験というちっちゃい道はあるけれども、うちの学校を通らないと国家試験を受験させませんよというのは、私は、きつい言い方になりますけれども、法科大学院として自信がないことのあらわれじゃないかと思っているんです。

 あるべき姿をつくるためには、誰でも、もちろん法科大学院に行っても行かないでも結構です、行きたい人は行ってください、受験資格制限の早期撤廃ということが私は国費を一円もかけないでやる抜本的な解決だと思いますが、いかがお考えでしょうか。

青山参考人 河井委員は、二〇〇七年度に、先ほどおっしゃいましたように、私が法科大学院協会理事長であるときに明治大学にお越しになりまして、先ほど大変激しいとおっしゃいましたけれども、私としては大変実りのある議論を交わすことができたというふうに思っております。

 きょうもまたここでお会いして、法科大学院に対する厳しい御批判をいただいて、さらに法科大学院の教育を改善していくてこにさせていただきたいというふうに思っている次第でございます。

 さて、まず採点者の実感についてお述べになりましたけれども、これは毎年毎年公表されているところでございまして、グループの中のどういう受験者であるかということ、そういうことがわからないままに述べている。その人が合格しているか不合格しているかということもわからないわけですね、採点者には。そういう段階で、ある科目について非常にこれはおかしいとかなんとかいうことは、それはあり得ると思います。

 法科大学院だけが法曹を養成しているわけではありませんで、御存じのように、プロセスとしての法曹養成というのは、まず法科大学院の教育を受け、それから次には司法試験という関門をくぐり、さらに研修所に入って、そこでまた二回試験までやって、やっとそれに合格して一人前になっていく。そういうプロセスとしての法曹養成の中で、司法試験という関門をクリアできない人というのは、制度としては当然予想されているわけでございます。(発言する者あり)ええ、その話もさせていただきます。

 ですから、採点者の実感というのが全ての法科大学院修了者のものではないということを言っておきたいと思います。

 それから、受験資格の撤廃という点でございますけれども、司法制度改革審議会の意見書に基づく司法制度の改革でなぜ法科大学院ができたかという原点を考えますと、従来の司法試験が制度として十分であったかということの反省によってこれがつくられて、やっとことしの三月で発足以来八年がたつところでございます。したがって、今早急に、制度の撤廃がいいか悪いかということについて判断を下すのは時期尚早ではないかというふうに思っております。

 私は、予備試験というものが一方にある、そして片方で法科大学院というものがある、その二つの制度の間で、いわば制度間競争ということがこれからあるんだろうと思います。そういう制度間競争の中でどうしていくのかというその結果を見て、では法科大学院の制度をこう改善したらいいとか、あるいは予備試験の門戸をもう少し広げた方がいいとか、そういういろいろな改善の方策は、これからの法科大学院制度と予備試験制度との制度間競争によって検証がなされるべきではないかというふうに考えている次第でございます。

河井委員 質疑持ち時間が終了いたしましたので、このあたりにさせていただきたいと存じますが、既に、自由民主党の有志議員、政権交代前、平成二十一年春ごろに、高村正彦元法務大臣を勉強会の会長として、抜本的な法曹養成、法曹人口増大についての改革案をつくっております。ぜひ、党派を超えて、ほかの党派の皆さん方にも、共有できる問題意識をお持ちでいらっしゃるのならば、これこそ政治が主導して、現実から目をそらすことはゆめゆめ許されない、私はそのように思っておりますので、御協力のほどよろしくお願いします。

 以上、終わります。

小林委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 今回、修正案も出させていただきました。

 まず、佐藤参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 佐藤参考人、審議会の会長、また顧問会議の顧問でもあったということで、この司法制度改革の生みの親ということで、きょうはその思いを語っていただいて、その崇高な理想に対して私も感銘を受けた次第でございます。

 二〇〇六年の七月ですか、シンポジウムがあって、そこで佐藤参考人は、やはりこの法曹養成についての心配といいますか、それを吐露されたわけです。予想以上の法科大学院が設立されたことに伴う定員と新司法試験の合格者との間に相当なギャップを生じ、法科大学院への志望者の質や種類、あるいは法科大学院における教育に暗い影を落とし始めているように感じると。法科大学院が予想以上に設立した、非常に定員が多くなった、合格率とのギャップが生じた、理想は七、八割の合格ということもできない、そこに暗い影を落とし始めているということだと思うんですね。

 この点につきまして、もう少し、当初の司法制度改革の議論が始まったときに予想しなかったような事態があるわけでありますから、それに対してどう認識をされているかということが一点でございます。

 二点目に、この司法制度改革というのは、これもジュリストに書いてあるわけでありますが、これだけの大改革というのは一朝一夕で完成するものではない、長年にわたる努力が必要で、次の世代、そしてまたその次の世代へ引き継がれて、より完全なものへ仕上げていくものだと思う、それを可能にするしっかりとした基礎を固めること、それが今に生きる私たちの責務ではないか、こういうふうにも述べられているわけでございます。

 そういう点からいきますと、司法制度改革審議会から始まりまして十年以上たつわけでありますけれども、やはりこのあたりでもう一度、法曹養成のあり方というもの、これは三本柱でございますね、要するに、裁判員裁判、法テラス、そして法曹養成というのは、この三本柱の、大きな大きな柱でございます。そして、人的な要素ということで、やはり司法というのは人によって支えられているわけですから、極めて大きい。

 こういう大きな問題につきまして、実は政府の方は、六大臣の申し合わせ事項というような非常に法的根拠が曖昧なフォーラムというものをつくられて、そして、要するに、給費制度を廃止して貸与制度へ導く、概算要求があるということで、まずそれを議論されて、法曹養成全体の議論は後回しにしてやられた。こういう議論のあり方も、法曹養成の議論をしていくことを非常にゆがめてしまったな、こう思うわけであります。

 そういう点で、私どもは、やはり法的根拠に基づく合議制の機関を設けて、そこで、連携法にもありましたけれども、法科大学院、そして司法試験、司法修習というものを抜本的に議論していく、そして現実と理想のギャップを埋めていく、このことを真剣に議論していかなきゃいけない、こういうふうに思っているわけです。それが修正案のところに盛り込まれております。

 この考え方についてお伺いをしたいと思います。

佐藤参考人 第一点でありますが、予想以上にというのは、当時の規制緩和の動きが非常に強くて、それが予想以上に強かったということがあります。一定の基準をつくったらそこへ全部入れろというのが規制緩和の論者の強い主張でもあったわけですね。そのときに、文科省が数を決めてやるというようなことになりますと、これは恐らく実現できなかったんじゃないかと。その認識が正しいか正しくないかはわかりません。けれども、そういうことが一つ。当時の政治状況を少しお考えいただきたいと思います。

 それからもう一つ、大学自体が法科大学院をつくるのは大変だろうと私は思っていました。よっぽど人的、財政的にしっかりしたところでないと、まさかおつくりにならないだろうと思っていたところが、何か、乗りおくれるなということなのかどうかわかりませんけれども、続々と、七十四に及んでしまったわけであります。

 これは、さっきの青山先生のお話もありましたけれども、入り口でのそごといいますか、これは何とか正していかなければならないというように思っています。

 私は、法科大学院の理念それから教育内容は決して間違っていないし、これをむしろ磨いて、よりよいものにしていく。そして、なぜ大学かということなんですけれども、やはり、学生が先生やそれから実務家の後ろ姿を見て育つんです。あの先生、あの人、先輩と。そういう場を二年ないし三年持つ、そこで一生懸命、双方向の議論で切った張ったをやる、そういう訓練をすることが将来の法曹としての成長にとって極めて重要だ、それは身体上のお医者さんと同じである。だから、その意味では、これを育てなければならないというのは今も全く変わりません。

 そして、私が一朝一夕にできるものではないと申した理由の一つは、アメリカのロースクールは、今は確たる、赫々たるものですけれども、あれはもともと徒弟制度だったんですね、十九世紀のアメリカは。それをロースクール、大学でやる、そこで実務家と研究者とのいろいろなあれがあって、何十年も、やはりそのやりとりの中で、今のアメリカのロースクールがあるわけです。私が一朝一夕にできるものではないと言ったのは、やはりアメリカのそういう状況を見て、しかし、彼らはここまでつくってきた、その彼らのエネルギーと知恵というものに我々も学ぶ必要があるということで、一朝一夕云々の話をしたわけであります。

 それで、最後の給費制のお話、全体のあれとしてなりましたけれども、私はやはり……(大口委員「合議制のことですね、会議体をつくる、合議体をつくる」と呼ぶ)会議体ですね。

 それは私の口からはちょっとあれですけれども、あれはもっと、今と違った設置の仕方、工夫の仕方があるのかもしれません。その点は関係者で御議論いただいて、何が一番よいか。法律でつくってちゃんとやるのか、いや、そうでなくて、しかしもうちょっとしっかりした、きちっとしたものにするのか、その点は関係者でいろいろ御議論いただいて決めていただいたらいいのではないか。

 私は、今のフォーラムについて、議論の内容というのは、いろいろ目配りしながら議論なさっている。ただ、給費制について、ちょっと拙速じゃないかという御指摘ですけれども、その点は、既に裁判所法をどうするかというのがあったわけですから、あれはやむを得なかったのかなと思わぬでもないんですけれども、御指摘の点はこれからいろいろお考えになる余地があるんじゃないかというように思っています。

大口委員 次に、青山参考人にお伺いをさせていただきます。

 法科大学院協会の理事長をやっておられたということでございますので、今、やはり法科大学院生の立場に立って、もっと言えば法曹の道を目指す方の立場に立って考えていただきたい、こういうように思うわけでございます。ただ単に法科大学院生というだけじゃなくて、やはり法曹を目指す人、多くの人々のことを考えていただきたいと思います。

 そういうことからいきますと、やはり、法学部の志望者あるいは法科大学院の志望者が激減をしているということは、本当に、三権の非常に重要な司法を担う人材の基盤が今崩れつつあるということであるわけですね。そういうことからいきますと、できるだけそういう急減の状態を、その理由を取り除いていくということが今一番大事なことだと思います。

 先生は二つのリスクということで、なかなか司法試験に合格できないというリスク、それから法曹として就職ができないというリスクも確かにそうであると思うんですが、やはり法科大学院が、お金がかかって、そして時間もかかる、こういう問題もある。そしてまた、司法修習は義務ですから、司法修習というものを経なければ法曹になれないわけでありますね。そこが、ほかの国において、そうでないところも結構あるわけです。

 そういうことからいきますと、その辺につきまして、貸与制に移るということが、やはりそれは一つ経済的には負担を負わせるということでありますから、これもマイナスの要因ではないかな、こう思っているわけであります。

 特に、司法修習生については修習専念義務が課されています。副業等は禁止されているわけであります。家族を持っておられる方、社会人から挑戦をされる方、また、介護でありますとかあるいは育児でありますとか、いろいろな家庭の状況がございます。ですから、生計を維持する手段というものが制限されているという反面、この給費制というのがなくなりますと、生活費を保障する制度というものが貸与という形になるわけであります。そして、既にもう一千数百万借金している方もいらっしゃるというわけですね。

 修習中も、国が定める、居住地を制約するということもありますし、またそういう点では、いろいろ守秘義務でありますとか、さまざまな監督を受ける義務もあるわけであります。

 ドイツや韓国でございますけれども、ドイツも、司法試験の第一次試験に合格後、二年間修習を行い、修習生には国費から給費を支給される。これも、司法修習ということを通らなければ法曹になれないからでありまして、ですから国費から出す。

 また、韓国の旧制度は、日本の旧制度と同様、司法試験合格後、大法院傘下の司法研修院で二年間研修が行われ、その研修員の給与は国費から支給される。ただ、二〇〇九年から法科専門大学院制度、ロースクールが開始されました。これは、法曹の一元を実現するため、司法試験は弁護士試験となって、研修はもう弁護士研修のみで、とにかく司法修習は行わないということで、みんな弁護士になってから判検事になっていくということでありますので、司法修習というのは義務化されていないという形のあり方ということもあるわけでございます。

 法曹になるため司法修習を受けなきゃいけない、そして厳しい修習専念義務、兼業の禁止ということになりますと、どうしてもこれは法曹を目指す人たちに対する大きな負担になるわけであります。この点について、外国の例も踏まえてどう考えているのか、お伺いしたいと思います。

青山参考人 委員御質問のとおり、司法修習生の給費制を維持すれば法曹になる魅力が増すのではないかという点は、それは確かにそういう効果は私はあると思います。

 しかし、私は、法科大学院の三年間の教育と司法試験の合格とその後の一年の司法修習という三段階の法曹養成過程で、最後の過程で司法修習生に対して給費を与えるというのは、例えてみれば、山の中に高速道路をつくるようなものだというふうに思っています。高速道路に行き着くためには、まず取りつけ道路であります法科大学院の三年間あるいは二年間の教育をきちんと受けなくちゃいけない。そして、それを修了して、次に国家試験である司法試験に合格して、やっと高速道路にたどり着く。高速道路にたどり着くと、あとはすいすいと進むということではないかと思います。

 法科大学院に対する志願者が減っているというのは、司法修習生の給費制が貸与制になるからということで減っている、多少はそういうこともあるかもしれませんけれども、それよりも、法科大学院に入って、ちゃんと自分が三年間の教育を受けて司法試験に合格するんだろうか、将来就職できるんだろうか、そういうことの方がやはりリスクとして大きいわけであります。

 ですから、私としては、給費制が財政的に維持できるものならそれは給費制を維持するという政策決定があってしかるべきだと思いますけれども、私の見るところ、先ほど申しましたことの反復でございますけれども、司法制度改革で司法に対するさまざまな予算がつけられなければならない段階で、貸与制に切りかえないで果たしてもつのかということを考えているというのが私のお答えでございます。

 それから、外国の制度のことをおっしゃいました。

 確かに、ドイツのレフェレンダール制度は給費制でございます。しかし、アメリカでは、司法試験に合格すればすぐ開業できる制度になっております。それから、今おっしゃった韓国の場合は、二〇〇九年まではおっしゃるとおり日本のまねをしていたわけですけれども、それが、先ほど申しましたように、法科大学院をつくる、そしてそれは、合格者は千五百名にする、一学年の定員は二千名にする、法科大学院の数は二十五に絞るというような制度改革と一緒に、司法研修所の制度は廃止するということにしているわけであります。

 かつては、司法研修所に入ると、日本と同じように、二年間の給与を受けていたんですが、なぜ韓国はそれを廃止したかということを聞きましたら、いや、それは日本の制度を見ているんだということで、日本の制度よりさらに一歩進んで、法曹一元を実現するんだ、だから司法試験制度も弁護士試験に衣がえをする、そして、修習をするのは分離修習に切りかえるんだ、だから、日本のような、給費とか貸与とかいう必要はないんだというのが韓国の認識でございます。

 私自身は、二つだけここで言っておきたいと思いますが、一つは、法科大学院制度は、いろいろな欠陥が御指摘されているとおりでございますけれども、それは率直に認めますけれども、しかし、制度そのものの理念が間違えていたというふうには思っておりません。この制度をさらによくなるものに、改善するために、きょうの御議論も私は持ち帰って、自分の明治大学法科大学院ではそういう理念に基づいてさらに教育の質を高めていきたいと思っていることが第一点でございます。

 それから、韓国の分離修習の道ということについては、私はやはり統一修習が望ましい、それは日本では堅持すべきであるということを考えております。やはり、同じ釜の飯を食いながら、判、検、弁が一体となって日本の司法を支えていく姿こそが私は望ましいというふうに考えていることだけお答えさせていただきたいと思います。

大口委員 ですから、司法修習というものを経なければ法曹になれないという場合は、やはり国が手当てをすべきではないかなというふうに思うわけです。

 次に、新里参考人にお伺いしますが、今後、この法曹養成のあり方についてどうすべきなのかが一点。それから、六十五期の修習生が今非常に困難な状況にある、要するに、貸与制に変わったということでですね。そのあたりの状況についてお伺いしたいと思います。

新里参考人 お答えさせていただきます。

 今、この席でも議論されておりますように、法曹養成に関するフォーラムが今行われておりまして、今はヒアリング、いわゆる弁護士の職域の拡大、業務分野の拡大等のヒアリングをして、今後、論点整理をするという段階になっているという状況でございます。

 先ほど私もお話ししましたように、全体としての法曹養成制度がこれだけゆがんでいるとすれば、やはり、誰でもが目指せるような法曹養成をどうつくっていくかという大きな観点から議論をすべきではないのか。その中で、司法修習のあり方、給費制のあり方も議論すべきではないのかな。

 実は、日弁連の方からも、何で給費制の話ばかりするんだということを、昨年、一昨年、強く指摘されたところでございましたけれども、全体の議論をする間がなくて、給費制が貸与制に移行するということでございましたので、その部分だけお話をさせていただきましたけれども、やはり全体として議論して変えていかなきゃならないというのは、全くその思いは一緒でございまして、その出口のところの、修習の意義と給費のあり方ということを、やはり最後のところで全体として議論していただきたい。

 そういう意味では、今回、六大臣の申し合わせという格好になっていますけれども、委員の先生方も、自分たちで決めたことがいろいろな国会の中で、すぐに通らないということも逆の意味で言われていることからすると、きちっとやはり公明党さんが言うような法律をつくる、または、少なくても閣議決定など、やはりきちっとした権威づけをして全体を議論していただく。

 ただ、時間はそれほどないのではないのかなというふうに思っております。これだけゆがんでいる中で結論を出さなきゃならないとすれば、一年とか時間を定めて、きちっと議論していただくということが極めて重要になってくるのではないかなというふうに思います。

 それから、先ほど少し六十五期の現場の話をさせていただきました。一応私も修習を行ったわけですけれども、第三志望で私は仙台で行いましたけれども、司法修習生に対しては、たしか第七希望まで出させるのではないかなと。

 その中で、どこかには希望がかなうといいますけれども、例えば、東京に実家があるのに熊本に採用されるという事態があって、では、それの引っ越し費用があるのかというと、出ません。新しい初期投資をするための、賃貸をするためのお金も出ない。それから、通うときの交通費も出ないという状況の中で、修習専念義務だけを課されてしまう。

 それに対して、やはり私自身は修習専念義務を緩和すべきではないと、基本的には日弁連もそう思っておりますけれども、そうすると、やはりそれに見合うものとしての給付的なものが必要なのではないかな、それが今、現場の声として上がっているのではないかな、それをぜひ国会のところでも受けとめていただきたいというふうに思っております。

 きょうの日弁連の方の提出資料の五番目でございますけれども、資料五という格好で、若手の弁護士、司法修習生、それから法科大学院生でつくっているビギナーズ・ネットが、六十五期司法修習生の声という形でこの資料をまとめさせていただきました。これを先ほど私、初めの説明の際にピックアップしてお話しさせていただいて、こういう実情であるということをぜひ議論の中で参考にしていただきたいというふうに思っておるところでございます。よろしくお願いします。

大口委員 時間が参りましたので、以上で終わります。

 きょうはありがとうございました。

小林委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十五分開議

小林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長稲田伸夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦です。

 先週に引き続き、ホテルあたみ百万石の件についてお伺いします。

 このホテルの運営会社で、大臣に代理人弁護士となるよう依頼していたファーイースト・キャピタルマネジメント株式会社は、K2キャピタル、現ウィング・プランニングですけれども、K2キャピタルという株式会社の傘下にありましたね。

小川国務大臣 かなり密接な関係にあるというふうに認識を持っておりますが、資本関係は承知しておりません。

柴山委員 報道によりますと、蓮村不動産とファーイースト・キャピタル、これが兄弟関係に立ち、そしてK2の傘下にあるというような事実があるというふうにされております。そして、このK2キャピタルは、企業再生をうたい文句に、グループ会社としてあたみ百万石に入ってきたものの、結局は乗っ取り屋のようなもので、創業者一族は次々とホテルから追い出されてしまったということであります。中国資本に売る、韓国に売るなどと転売目的の話ばかりで、ホテル経営については素人同然、それまで年間十五億以上の売り上げがあったホテルなのに、結局、破産になってしまったという報道があります。これは事実なんでしょうか。

小川国務大臣 かなり偏見に満ちた見方による意見だというふうに思います。

 K2という会社が、百万石ですか、山代温泉にあります、その再生に協力した。そのオーナー家のかなり親しい方から、そして各大手のファンドからの紹介を受けてそういう事業に乗り出したというふうには聞いております。

 その再生の一環として、熱海の方は、これを切り離して売却する、その資金で山代の方を、本店を再生しよう、こんなような概略的な話は承知しております。

柴山委員 当然、関連施設がある場合に、どれをとってどれを切るかということは非常に重要な経営戦略になるということは理解をしております。しかしながら、結局、このあたみ百万石が、こうした外部の資本を入れたことによって破産につながってしまったという事実自体は、これはやはり紛れもない事実であろうかと思います。

 そして、大臣は前回、稲田議員の質問に対して、ファーイーストを被告に提起された訴訟の第一審のあなたの弁護士着手金が三千三百万円支払ってもらえない段階でなぜ控訴審の依頼を受けたのかという問いに対して、私が事情を一番よく知っているし、依頼者も私にやってほしいからと答えられています。

 依頼者から見ればそうであってほしいかもしれませんが、弁護士としては、着手金が追加で必要となる控訴審を、一審の着手金が多額の未払いを抱えたままでさらに受任して、支払いの不安はなかったのでしょうか。

小川国務大臣 支払いの不安というか、支払いの見込みは大変不安定でございました。要するに、ホテルの営業は水商売でございますし、リーマン・ショックですか、これがあって、かなり営業は苦しい状況にございました。ですから、一審の着手金も、分割払いの約束が、結局、分割の分は相当部分もらえないまま推移してきたわけでございます。

 それで、二審の着手金のお話がありましたが、一審がまだ未払いがあっても、二審は二審で、やはりこれは、別に、報酬をいただくというのが弁護士業界では当然のことでございますから、私がやる以上、当然、着手金は計上するということでございます。

柴山委員 前回の稲田議員の質問にもありましたように、弁護士会の職務基本規程では、弁護士が依頼者との間で金銭の貸し借りに実質的につながるようなことを禁止しているんですね。つまり、依頼者との間に債務を抱えるような状態になってしまうと健全な弁護活動ができないというのがその職務規程の基本的な趣旨だと思っておりますけれども。

 今大臣がお話しになられたとおり、結局、一審の着手金も回収できないまま控訴審を受任したということは、実質的にこの職務規程に抵触するのではないかとお感じにならないですか。再度、質問をさせていただきます。

小川国務大臣 依頼者との間で貸し借りは一切いたしておりません。ただ、着手金という私の弁護士報酬が未払いだったということだけでございます。

柴山委員 大臣は、私の質問に対して、ファーイーストもそんなに資金繰りが豊富な、豊かな会社ではございませんでしたと説明されました。間違いありませんね。

小川国務大臣 第一審の事件を着手した時点、これが春過ぎですか、それから、秋にリーマン・ショックがありました。要するに、ホテル営業という一つの水商売ですから、業績はかなり変動いたします。ですから、時期時期によっては異なりますが、そんなに楽な状態ではなかったというのは、当初から一貫した状況です。

柴山委員 訴訟の直後に債権者破産が認められてしまったわけですから、資金繰りが潤沢でなかったということは事実かと思います。

 ただ、今大臣がおっしゃった事実関係をもとにすると、一審が未払いだから控訴審の着手金をもらうのはおかしいといったら、私は無報酬でやらなくてはいけないことになります、前回もそのように答弁されていたんですけれども、着手金のめどがつかなければ、さっき私が言ったとおり、弁護士の職務基本規程に鑑みて、依頼をお断りするのが普通なんですよ。

 大臣は、何かファーイースト社の依頼を断れない特殊事情があったんですか。

小川国務大臣 いやいや、特殊事情も何もありません。依頼者が訴訟の継続を希望しておるわけでございますから、そして、この私にやっていただきたいというわけですから、これは当然のこととして受けたわけでございます。

柴山委員 繰り返しになりますけれども、弁護士が健全な職務活動をするに当たって、依頼者からのしっかりとした着手金、あるいは結果を残した場合には報酬金、これを受領することによって弁護士の仕事というのは成り立っているわけですね。にもかかわらず、一審の着手金が、後づけであるとはいえ、三千三百万円未払いとなっている中で、さらに、今の大臣のお言葉をかりれば、追加で四千万円、支払いの当てのない事件を引き受けて、しかも公正証書を作成するということは、極めて異常だというふうに私は感じざるを得ません。

 公正証書をつくって、そこまでして依頼者から将来お金を回収したかったんですか。

小川国務大臣 まず、公正証書作成の件と、それから控訴審の着手金の件は、これはまた全然別の理由でございます。

 そして、支払ってもらえる見込みがないという一つのこの断定的な見方は、これは当たっていないと思います。

 控訴する段階で、一審判決においても、結果的に敗訴はしたとしても、五億円のリニューアル工事を相手方が行わなかったということは一審の裁判所も認めておるわけでございますから、そうした状況を踏まえて、控訴審によって判決をいわばひっくり返す、あるいは、判決で黒白という決着をつけずに、このような生きている建物を、営業しているものが入っている建物の明け渡しというものは、世間一般的には、判決で強制執行というのは両方に損害があるから、やはり一審判決を踏まえて、控訴審において和解という形で、円満な形で、出ていくなら出ていく、残るなら残るという形もあるわけでございます。いわば、控訴審の受任をした際には、どのような進展をしていくかということで、かなり幅広いさまざまな見通しがあるわけでございます。

 ただ、相手方が相当に、私から見れば全くにべもないような強硬な対応をしてきたので、結果的にこちらは強制執行で明け渡しされたということでございますが、それはあくまでも結果から見たことでございます。

柴山委員 この事件は、原告家主がファーイースト社に対して未払い賃料を請求し、そして支払えないことを理由として建物を明け渡せといった事案なんです。和解することによって被告側に何らかのお金が入ってくるという案件じゃないんです。逆なんですよ。被告側から原告がお金を取ろうという訴訟なんですね。

 ですから、さっき大臣は、いやいや、このホテル運営というのは非常に苦しかったということをおっしゃっていて、訴訟の結果によっては経済的な好転が見込まれるというのは、私は全く理屈が通らないと思いますよ。訴訟が勝っても負けてもファーイースト社にはお金が入ってくることはなかったわけですね。少なくとも、この控訴審のいかんによって経済状況が、ファーイースト社がよりプラスになるという関係にはなかった。私は、さっきの説明と照らして、非常に矛盾が生じているというように断じざるを得ません。何か答弁はありますか。

小川国務大臣 まず、この紛争に関して、委員は、家賃未払いの契約解除だという非常に単純化した構造、まあ相手方はそういうふうに言うのかもしれませんが、実際には、そうではなくて、大変に複雑な事件でございますが、それを説明しないとわからない部分があるので、エキスだけ申し上げさせていただきます。

 このホテルは四十五億円で売却すべきものでございました。ただ、四十五億円であって、売却した後、こちら側が引き続いて賃借権を受けて営業するという賃借権つきの売買でございましたので、四十億円ということで売買代金を設定しました。

 ところが、四十億円と売買代金を設定しましたが、しかし実際には、三十五億円という売買契約にして、五億円は、買い主が建物のリニューアル工事を五億円の分行う、行うことによって、賃借人となったファーイーストの営業を助ける、このような形に変形的な契約といたしました。すなわち、売買代金四十億円のうち五億円はファーイーストのために買い主がリニューアル工事を行うという義務に転換したわけでございます。

 そして、もう一つは、賃借料につきまして、リニューアル工事を行えば営業成績がかなり上がるから、こういう理由で、賃料を五割アップ、千二百万ぐらいのものを、たしか千八百万ぐらいかな、ちょっと今数字は確かじゃございませんが、かなり賃料も高額にしたわけでございます。

 そして、そのような契約を一体化して契約したところ、その売買代金を転嫁したはずの五億円のリニューアル工事を相手方が行わなかったわけでございます。行わなければ、こちらは、それはどうしてくれるんだ、では、リニューアル工事を行うことを前提に増額した家賃は払えませんよ、あるいは、五億円分リニューアル工事をやらないんなら、その五億円を何とかしてください、こういうことが紛争でございまして、ただ単に賃料未払いで居座ったというような事件でないということは御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)

柴山委員 棚橋理事が今ちょっとお話しになったんですけれども、リニューアル工事が契約の内容としてどのような意味合いを持つかということはともかく、非常に筋の悪い事件であることは間違いないと思います。

 先ほど大臣は控訴審で勝つ可能性もあったというお話をされましたけれども、私は極めてそれは疑問です。それは後で質問をさせていただきます。

 大臣は、訴訟の見込みと公正証書とはまた別のお話だということをおっしゃいました。

 大臣、一審と控訴審の着手金合計七千三百万円の支払い確保のために、公正証書というのは強制執行が可能な書面、いわゆる債務名義としての役割を果たしますけれども、公正証書を作成され、そして、それを使って依頼者に対してあなたは自分が、依頼をしてきた依頼者に対して差し押さえをしているわけですね。そこまでして依頼者から回収をしようとした理由は何ですか。

小川国務大臣 まず一つ、大変筋が悪い事件だと言っておりますが、私どもは、大変筋が悪い買い主にひっかかった、そのために、ホテル、四十五億円で売れるものを三十五億円でとられてしまった、このような認識でおります。

 次に、公正証書のことがございました。

 公正証書、これは私は差し押さえをするために作成をしたわけでございますが、なぜそうしたのかといいますと、買い主が先にファーイーストの預金と売掛金を差し押さえしてきたわけでございます。ですから、それに対する対抗上、買い主がひとり占めできる債権ではありませんから、私の方にも配当してくださいと。その配当に加入するためには、これは差し押さえがされている債権については私も差し押さえをしなくてはいけないから差し押さえた、こういうことでございます。(発言する者あり)

柴山委員 今、棚橋理事の方からお話をいみじくもいただいたんですけれども、つまり、依頼者からはお金が欲しかったわけではないけれども、一審で勝訴をした買い主、いわゆる原告家主ですね、原告家主から仮執行宣言つき判決に基づいて差し押さえがされた財産、すなわち、もはやそのままではファーイースト社には入ってこない財産から支払いを受けたかったということでよろしいわけですか。

小川国務大臣 相手方の債権は一般債権でございます。私の債権も既に発生している一般債権でございますので、どちらに優先権もございませんから、その債権額について案分配当していただくのは当然のことでございます。

柴山委員 繰り返します。もしこの原告家主側の差し押さえがなければ、この財産、具体的にはもろもろの売り掛けとか預金の債権はファーイースト社の財産だったわけです。ところが、原告家主がこれを差し押さえたことによって、ファーイースト社、あなたの依頼者はこの財産を手にすることができなくなったわけです。そのできなくなった、原告の手元に入る財産を、たとえ案分とはいえ、あなたが超過をして差し押さえるということは、結局、依頼者からの回収ではなくて、原告、強制執行した側からの回収になるんじゃないですか。

小川国務大臣 全く違います。差し押さえされたけれども、その預金そのものはファーイーストの預金でございます。その預金を差し押さえによって強制執行で配当手続する際に、相手方と私とで、それからさらにほかに差し押さえが共存すれば、その共存した差し押さえの間で配分するわけでございまして、その配分を受けるのはあくまでもファーイースト社からの一部弁済でございます。

柴山委員 こんな簡単なことが、あえてごまかして答弁をされているわけですけれども、非常に私は納得ができません。(発言する者あり)

小林委員長 一問一答でいきましょう。はい、どうぞ。

柴山委員 繰り返しになりますけれども、経済的には、本来、原告家主に差し押さえた財産の価値というものが帰属をするわけです。これは、仮執行宣言といっても、執行停止の申し立てがなければ最終執行と同じ形の強制執行なんです。その強制執行されたものに対して、大臣が、案分配当という形ではあれ、その経済的な価値を一部手にしようという形で、しかも、それを依頼者と通じて行っているわけです。違いますか。

小川国務大臣 差し押さえは、差し押さえたことによって原告のものになるわけではございません。あくまでも差し押さえされた債務者のものでございます。その債務者に対する強制的な弁済を促すのがまさに差し押さえでございます。相手方が行ったその強制的な弁済を促す行為に、それも優先権がない債権で、一般債権であります、私の債権も一般債権でありますから、私も同じようにファーイーストのその預金から弁済をいただきたいということで差し押さえしたわけでございまして、これは相手方の原告のものを取り上げたのではなくて、あくまでもファーイースト社の財産から一部弁済を受けた、このようなものでございます。

柴山委員 差し押さえの結果、それが実行されて配当に至らなければ、大臣のおっしゃるとおりです。しかし、差し押さえというのは、強制執行及び配当に結びつく行為で、要するに、あなたの依頼者であるファーイースト社に帰属をしている財産を凍結するものなわけですから、だから、今おっしゃったことは非常に限られた、手続の一番初めの部分にしか着目をしていないということを申し上げます。

 次に、事務方にちょっとお伺いしたいんですけれども、昨年七月十四日以前、刑法九十六条の二に定める強制執行妨害罪はどのような内容のものでしたか。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律が昨年の六月に成立いたしまして、それが七月の十四日に施行されまして、刑法九十六条の二が改正されましたが、その改正前の九十六条の二の強制執行妨害罪の構成要件は、強制執行を免れる目的で、財産を隠匿し、損壊し、もしくは仮装譲渡し、または仮装の債務を負担したというものでございます。

柴山委員 具体的にどのような事例が想定されるのか、現実の判例などもあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

稲田政府参考人 いつも申し上げているところでございますが、犯罪の成否というのは、個別の事案におけます証拠関係により定まるところでございます。

 ただ、今、裁判例でということでございましたので、私どもの方で把握している裁判例の中で、そこで当該構成要件に該当するとされたもののその部分を私どもなりに若干整理をさせていただきますと、次のようになるのかなということで聞いていただければというふうに思います。

 例えば、先ほど申し上げました行為のうち、隠匿に該当するとされたものといたしましては、架空の金銭債権を記載した公正証書に基づく有体動産の競売手続によりまして債務者の所有物件があたかも仮装の競落人の所有に帰したかのごとく装う行為というふうに言われているものがございます。

 それから、損壊に該当するとされたものといたしましては、抵当権が設定された建物を、抵当権を消滅させて、強制執行を免れる目的で損壊した行為などを挙げられたものもあります。

 また、仮装譲渡に該当するとされたものとしては、不動産業を営む会社の代表者らが、所有建物に係る賃料債権に対する強制執行を免れるために、賃借人に対して賃料債権を別会社に譲渡した旨の内容虚偽の通知を行った上、別会社代表者名義の預金名義に賃料を振り込ませた行為とされたものがあります。

 また、仮装の債務を負担に該当するとされたものといたしましては、手形債務の弁済を求める内容証明による請求書を受領した者が、自己所有の不動産に対しましてその強制執行を受けることを免れる目的で、その一部につき仮装の金銭消費貸借契約締結に基づく抵当権を設定した行為があるというふうにされているところでございます。

柴山委員 本来であれば、債務者の有している責任財産、強制執行の引き当てとなるべき財産を隠したり、あるいはその経済的な効用を失わしめる、これは法律的にも含めて、特に、公正証書を作成して虚偽の債務を負担させてこれを処分する行為、こういうことが全て、この強制執行妨害罪の判例として、既に処罰をされているということでございます。

 もう一つお聞きしたいんですけれども、弁護士が、顧問の不動産会社に資産の差し押さえを免れるように指示したとして、強制執行妨害罪に問われた事案はありませんか。

稲田政府参考人 突然のお尋ねで恐縮でございますが、私どもの方で、それほど網羅的に事件を把握しているわけではございません。現在、手元に持っているものの中で、今御指摘のようなものに該当するような判例というのは、申しわけありませんが、把握しているところでは、ございません。

柴山委員 今紹介された事案の中に、不動産会社の賃料債権を架空の譲渡をしたことによって免れた案件というのが紹介をされたかと思いますが、それは恐らく、私の手元にある、Yと言われる弁護士が、この方は死刑の案件について一躍名をはせた方でありますけれども、この方が、依頼者である不動産会社に対してそのような指示をしたという案件ではなかったでしょうか。

稲田政府参考人 済みません、今手元に詳細な判決文を持っておりませんが、多分、御指摘の判例とは違う、判例というか事例とは違うものだろうと思います。今私が申し上げましたのは、平成十年ころの熊本の地方裁判所の判決でございますので、多分違うのではないかというふうに思っております。

柴山委員 私の手元に、今紹介をさせていただいた事案についてのニュースレベルでの説明があります。

 二〇一一年の十二月八日の記事なんですけれども、今紹介をさせていただいたとおり、このYさんという弁護士は、死刑廃止運動の中心的な人物として知られ、山口県光市の母子殺害事件の元少年の主任弁護人を務めるなど、数々の刑事事件を担当されていることで知られています。

 この方が、顧問弁護士を務めておられた不動産会社の社長らに、当該ビルの賃料債権の差し押さえを免れる方法として、その賃料債権を移しかえるように助言をし、そして、一審は無罪だったんですけれども、二審では有罪、そして最高裁も上告棄却となって、強制執行妨害罪が認定をされたという事例がありましたけれども、これについて把握されていないですか。再度、質問します。

稲田政府参考人 御指摘のような案件があったことは知識として今覚えておりますけれども、申しわけございませんが、その判決を今手元に用意してございませんので、その内容につきましてちょっとここで御説明はいたしかねますので、御容赦いただきたいと思います。

柴山委員 当然のことながら、このように弁護士が犯罪に手を染めれば、弁護士会への懲戒請求も問題となる、そういう事案ではないかなというふうに思うんです。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、先ほど大臣は、控訴審での裁判、これは十分勝つ見込みがあったんだというようにおっしゃいましたけれども、ファーイースト社のための控訴審裁判は、書面を一回出して、判決を含めて期日は二回、前回そのように答弁されましたが、間違いありませんね。

小川国務大臣 回数については間違いございません。準備書面は一回でございます。

 この控訴審におきましては、私どもの読みと違いまして、相手方がまさか実行はしてこないだろうという強制執行をやってきたために、建物を退去させられてしまいました。退去させられてしまった後ですと、これはもう旅館営業できないし、訴訟もしようがないなということで戦意喪失して、依頼者の了解のもとに、それ以上の訴訟活動は行わなかったということでございます。(発言する者あり)

柴山委員 いや、私は、今、棚橋理事の方から指摘があったんですけれども、極めて不自然だと思いますよ。それほど御自分の主張に自信があり、そして勝訴の見込みがあるというのであれば、まず、控訴審を提起した後に、和解の交渉をするのが普通なんです。そういうことも一切しないで、強制執行をしてきましたと。強制執行したといったって、さっき大臣が御自分でお認めになったように、これはファーイースト社の預金を凍結しているにすぎないわけですね。実際にそれが換価されるのは、配当という手続を経た後です。凍結をした段階で、いや、もう戦意を喪失しましたということで、あっさりギブアップをしている。

 しかも、控訴審判決では、大臣が出された書面について、このように書かれているんです。控訴人らの、つまり大臣たちのですね、控訴人らの当審における主張は実質的には原審における主張の繰り返しにすぎないと、あっさり退けているわけです。

 そして、前回の質疑で稲田議員が指摘したとおり、完全勝訴をした原告側の弁護士報酬が、大臣側のほぼ一割の八百万円なんです。大臣側の着手金の設定は明らかにおかしいというようにお感じになりませんか。

小川国務大臣 まず、委員の前段の方でございます。

 私どもは、ホテルの、旅館の営業ということが中心の会社でございます、それが強制執行で出されてしまったわけですから、当然、ホテルの営業はそこで終わってしまったわけでございます。そうした状況を踏まえて、これ以上裁判をやってもホテルの営業は戻りませんから、ですから、しようがないなということでございます。

 また、和解の努力というものはいたしました。これは、裁判の弁論が始まる以前にいろいろな、裁判所に対する上申とか、そのような形で行いましたが、しかし、裁判所からも、結局、強制執行で出されちゃったのならもう和解もしようがないね、こういうふうに言われて、和解も断念したわけでございます。

 それから、後半部分の話でございますけれども、まず、これまでも説明しております、訴額が十八億四千万円。これに弁護士会報酬規定を当てはめて私は四千万円という数字を、私と依頼者の間で合意したわけでございますが、この金額の算定につきましては、特段委員も異議を述べておられませんので、十八億四千万円という訴額の事件について、弁護士報酬規定を当てはめると四千万円になるということについてはお認めいただけると思います。私は、そういう中で、報酬規定どおりということの着手金を依頼者との間で合意したわけでございますので、特段不審なところは持っておりません。

 また、相手方が八百万円と、弁護士報酬規定からするとその十倍以上はもらってもいい話を、随分安いなと思いますが、それは相手方と相手方の弁護士との間の事情でございますから、不当に安過ぎる、私からいえば、何かダンピングに近いような価格で、そんな値段にしなければ事件を受任できないのかというちょっと寂しい気がしますが、しかし、いずれにしましても、それは相手方と相手方代理人との話ですから、私が関与すべき、あるいは関知すべきことではありません。

柴山委員 大臣は、弁護士報酬規定、弁護士報酬規定というふうに錦の御旗のようにおっしゃっていますけれども、前回の質問の中で、結局、事件の難易とか、それからどういう展開をしていくかということによって、これは着手金の額というものについても、それから分割の仕方についても変わってき得るというように御自分でお認めになっておられるんですね。

 弁護士報酬規定というのは、決して単一無二のぴしっとした基準ではなくて、一応の目安にすぎないんです。それは、やはり弁護士としてのさまざまな活動の仕方によって着手金の具体的な金額というものは変わり得るものですし、この報酬規定が一応の目安としてあったからといって、それが丸々とることのできる正当性のある債権だとは私は到底思えません。

 それから、もう一つ非常に重要なことは、大臣は、明け渡しを受けたからもうホテルの営業は立ち行かなくなったというふうにおっしゃいますけれども、実際にこの第一審の勝訴原告から仮執行宣言に基づいて差し押さえがされたのが平成二十二年の三月十五日ですよ。明け渡し執行がされたのはもっと、数カ月後じゃないですか。その間に、棚橋理事がおっしゃったように、本当に理があるというふうに思えば、もっと全力を尽くして依頼者のために交渉するとか、そういういとまは十分あったと私は思うんです。何をされていたんですか。

小川国務大臣 まず、相手方の代理人弁護士と話し合うのが一番、通常の方法なんですが、私から見ますと、大変に話し合いを、一審の段階、当初から話し合いをしていただけない方でしたので、なかなか難しい面がございました。

 また、強制執行そのものの申し立ては委員が言われる日かもしれませんが、それは相手方が申し立てただけで、私どもはそれは承知しておりません。私どもは、執行官が来て初めて、ああ、申し立てしていたのかということがわかったわけでございます。

 それから、和解の努力、裁判の努力、これは当然行っておりました。控訴審に向けて、例えば、相手方会社、相手方の会社も破綻しましたから、そこの社員等の証人の予定とか、あるいは、相手方の会社の社長も実質上失墜していましたから、地位をほとんど失っておりましたから、そこら辺との話し合い、あるいは、先ほども申し上げましたように、裁判所に対する上申等、あるいは、さまざまな面で私どもの範囲ではやっておりました。ただ、それは、相手方から見れば、ただ見えないだけでございます。

柴山委員 後づけでいろいろ理由を述べられていますけれども、少なくとも、第一審の仮執行宣言つき判決に基づいて原告家主が差し押さえをファーイースト社の預金や売り掛けに対してしてきたのが三月十五日ですよ、平成二十二年の。そして、それはまず、当然のことながら、第三債務者と言われる、ファーイースト社が持っているさまざまな債権のさらに債務者、そこに送達をされます。その上で、債務者であるファーイースト社に送達をされます。この直後に、小川大臣たちは、公正証書によって自分たちの差し押さえをぶつけているんですけれども。

 いずれにせよ、予定に反して執行をかけてきたというふうに判断をできるのは、もう三月時点なんですよ。三月時点で、ああ、これはもう原告は本気だな、やることをやってくるな、このままでいったら、差し押さえだけじゃなくて今度は明け渡しまで求められるな、そういうことは十分に予想ができたはずなんです。

 にもかかわらず、大臣は、控訴審、たった二回ですよ、口頭弁論。二回の判決まで、書面は一回だけ。そして、明け渡し執行までされて戦意喪失、それで判決ですよ。しかも、判決が七月七日ですよ。これは私は余りにも、本気で勝訴を目指す弁護士のやることではないというように思っております。

 もし仮に、大臣、それでも本気で回収を求める正常な正当な弁護士着手金債権だとおっしゃるのであれば、再度そのように述べてください。

小川国務大臣 まず、委員がおっしゃられた差し押さえ、金銭債権の差し押さえと明け渡しの差し押さえというのは、これは相当性質が違うものでございます。金銭債権の差し押さえというのは仮執行で行ってくることはよくあることでございますが、建物なんかの明け渡し、この強制執行というのは、普通に考えますと、そう簡単に行うものでもない。これは、執行費用が大変かかると同時に、明け渡した後の管理というものがあるわけでございます。

 私ども、ホテルを営業していますから、それは、ホテルを使っていると同時にメンテナンスもやっておるわけでございます。しかし一方、相手方が、強制執行で出してしまった後、これをいわばメンテナンスのないまま、ただ鍵をかけたまま放置しておきますと、建物が大変劣化します。特に、温泉、給排水等、さまざま面で建物が劣化します。そうしますと、明け渡しの強制執行をやる場合に、相手方の方も、明け渡した後、かなり損失をこうむるのであります。

 ですから、これは企業と企業のいわばそれぞれが採算を見ての行動でございますから、そうしたことを考えれば、そうは明け渡しの強制執行は実際にはやり切らぬだろう、このような読みを一つの見通しとして持っておりました。

 それからもう一つ、大事な点を私まだ申し上げてございませんでしたが、あくまでもこの強制執行は第一審判決の仮執行宣言でございます。ですから、この仮執行は、私どもが保証金を積んで執行力をとめることができるわけでございます。裁判所に執行力停止の申し立てをするわけでございます。ただ、これは申し立てすれば自動的に出るものではなくて、十分な保証金を積まないと執行停止にならないわけでございます。

 それで、私どもは、私どもというか私の方は依頼者に対して、強制執行をとめるために、仮執行をとめるから、その保証金として、私の見込みでは三億円あれば足りるだろう、ですからそれをめどにその保証金を用意してもらえないかということで、依頼者との間ではそういう方向で話はついておりました。しかし、依頼者の方はその保証金ができなかったために、結局は執行停止の手続をとれなかった。執行停止の手続をとれないために、強制執行をされて出されちゃった。このような事実経過でございます。

柴山委員 繰り返しになりますけれども、大臣、あなたは、あなたの控訴審も含めた弁護士着手金債権、これは本気で回収を求める正常かつ正当な債権だったというように自信を持って言い切れますか。

小川国務大臣 もちろん正当な債権でございます。

柴山委員 それなら大臣、このときに発生し、当然弁済期も到来している着手金合計額七千三百万円は、翌年の確定申告において未収金として届け出ていますよね。

小川国務大臣 その年の間に債務者が破産になりましたので、当然これは回収不能となったわけでございますので、未収としては届け出ておりません。

柴山委員 ちょっと待ってくださいね。

 これは、破産手続の中で、回収が見込めないのであれば、そういった回収が一定以上は見込めないという書類を税務署に出した上で、その未収金については特別の処理をするというのが正常な手続になっているはずなんですよ。にもかかわらず、あなたが本当に回収を求める正当な債権、しかも、これは破産がかかる前は家主との差し押さえの競合があった事例ですよね。ですので、その段階では一定程度の回収が見込めたということだと思うんですけれども、破産がされた後、どれぐらい回収見込み額というのが減額すると大臣は踏んでおられたんですか。

小川国務大臣 ほかに財産がありませんから、結局ほとんどないなというふうには思っておりました。具体的な数字は承知しておりません。

柴山委員 ですから、先ほど私が申し上げたように、七千三百万円というのは膨大な、べらぼうな金額なんです。通常であれば、それは発生した未収金として確定申告のときに届ける。ただし、これが回収できないということであれば、回収できないことを書面をもって届け出て、そして税務署の認定を受ける。一部しか回収できないのであれば一部しか回収できないということを届け出るのが、これは普通の確定申告のあり方じゃないんですか。大臣、いかがですか。

小川国務大臣 私の方は、弁護士法人でもございませんし、青色申告もしておりません。まさに、実際に、要するに白色申告でございます。ですから、実際に収入があったものについて収入の申告をしただけでございます。

柴山委員 ちょっと、本当に真っ当な個人事業としてやっているのかということを、私は今の大臣の御答弁を聞いて極めて疑わしく思いますね。

 ちなみに、話はかわりますけれども、大臣は馬主であることを趣味であるというふうに言われていますけれども、その馬主であることによって損が出た場合には、他の事業と通じてその分税金が戻ってくるんですね。ですから、決して通常の趣味と一緒には語れないんですよ。通常の趣味は、どんなにお金がいっぱいかかって、それで自分の生活費に食い込んできたとしても、それによって税金が戻ってくるということはありません。大臣は一般的に、内規で株の売買すらも自粛が求められているわけですね。にもかかわらず、このように、場合によっては税金が戻ってきて、しかも当たれば巨額の利益を得られる、この馬主でいることを大臣である間、おやめにならない。先ほどの青色申告のお話ともあわせて、極めて私は事業主として不適当でないかというように思うんですが、いかがですか。

小川国務大臣 私が青色申告をしていない、まさに青色申告の特典を使わないでいわゆる白色申告をしているということが何かいいかげんだみたいなお話でございましたが、白色申告がなぜいいかげんなのか、全く理解に苦しむお話でございます。

 次に、馬主のことに関しての趣味で、損益通算ができるというふうにございましたが、これは損益通算ができるというふうになっておりますからしたまでのことでございまして、これがなぜいけないのか、御趣旨がよくわかりません。

柴山委員 委員長、ちょっと今の大臣の答弁は見過ごすことができませんよ。損益通算という制度自体を私が批判しているように受け取られるのは極めて心外ですね。私はむしろ、趣味というふうに言いくるめて、結局、議員歳費も含めた形で損益を通算できる、これは立派な副業だ、サイドビジネスだということを申し上げたいだけなんですよ。そのことについて、大臣規範には抵触しません、趣味なんだから結構です、税金が戻ってきて何が悪いんですか、こうやって開き直るのは、私は大臣の資質としていかがなものかというように思いますが、大臣、どうですか。

小川国務大臣 まず、副業としてやっているものではございません。まさにビジネスとしては全く成り立たない可能性があるものを副業というような感覚でやるわけがないわけでございますから、私はあくまでも趣味としてやっているわけでございます。副業ではございません。(柴山委員「ちょっと、今の答弁、納得できませんよ」と呼ぶ)

小林委員長 では、ちょっとそういうことを発言して。質問の中で納得できない理由を説明して質問してください。

柴山委員 巨額の損失が出る可能性があるからこれは副業なんかじゃないと言ったら、株式投資だって同じじゃないですか。全く説明になっていないんですよ。こういう不誠実な説明をする人物が法務大臣であっていいんですか、本当に。

小川国務大臣 ちょっと委員の質問の御趣旨、二つのことを混同されていると思うんですね。いわゆる大臣規範に触れるからビジネスとしてやることはいかぬという一つのお話と、それから株式投資。

 これは、株式投資は一般的に個人はビジネスでやるんではなくて一つの投資としてやるわけでございますが、大臣規範でこれを禁止している理由は全く違います。株式投資は、要するに、政治家の地位を利用して得た情報等で不正なことがあってはいけないから株式投資を自粛しようということでございます。ビジネスの方、営業を行ってはならない、事業をしてはならないというのは、やはりこれも政治家の地位を、大臣、政府にいる地位を利用してそうした事業に結びつけることがあってはならないということからきているわけでございます。

 ですから、私も再三予算委員会でも申し上げましたとおり、私の馬が走るかどうかは、政治家の地位によって得たことによって馬が走る走らないがあるわけではございませんし、そして政治家の地位を利用したからこれが一つのビジネスとして成功するかどうかということとは全く無関係でございます。あくまでもこれは、そうしたことで政治家の地位とは全く関係していないから、株式投資と同じというふうには言えませんし、また事業ではなくあくまでも趣味でございます。

柴山委員 どの馬に投資するかとか、その馬の育成をどういう方々にお願いをするかとか、ある事業と言われるものをするに当たっては、やはり政治家として、あるいは所管省庁のトップとして、さまざまな抵触というものは生じ得るんですよ。だからこそ、さっき大臣は、事業と株は違うとおっしゃいましたけれども、結局趣旨は同じなんです。

 大臣として、その職務の公正を確保するために、そういった、ビジネスでもうけるということについてはこれを自粛しようというちゃんと規範があるわけで、それはこの馬主になることについても十分適用される。だからこそ、我々がこれほど、またマスコミの方々がこれほど、おかしいんじゃないかということを言っているわけじゃないですか。

 大臣、全く認識が違いますよ。いかがですか。

小川国務大臣 ですから、再三申し上げましたように、私は何も、委員が言うような、おかしいという感じは持っておりません。私は、趣味として行っておりますので、委員の御指摘は当たらないと思っております。

柴山委員 一般の感覚からいかにかけ離れているかということは、この質疑の様子をインターネットなどでごらんになっている一般の方々が感じているところだと思いますよ。

 だって、私、大臣の届け出られている所得の状況も拝見をさせていただいておりますけれども、やはり事業所得というのがかなりマイナスになって、税金が返ってくる年が多々あるんですね。やはりそれは、私は、一般の方々からすれば、これは、国会議員が歳費として受け取るそのお金が減ったからといって税金が返ってくるというのはおかしいんじゃないかというふうに感じるのは当然だと思うんですよ。

 ファーイーストの問題について、質問をちょっと続けさせていただきたいと思います。

 大臣は、つい先ほどおっしゃったんですけれども、第一審判決の仮執行宣言をとめる、いわゆる執行停止の手続のためには保証金を積まなければいけないというふうにおっしゃいました。前回もそのようにおっしゃいました。予想では三億円、あるいは二億円でできたかもしれないというふうにおっしゃっているんですけれども、結局大臣は、この保証金の金額を裁判所に確認していないんですか。交渉とかはしていないんですか。

小川国務大臣 ですから、保証金の用意ができないのに申し立てはいたしません。

柴山委員 資金繰りができなかったというふうにおっしゃいましたけれども、一方で、ファーイースト社のグループ会社である蓮村不動産から、敗訴直後の三月十八日に、要するに強制執行がされたとき、もうその直後に、キャッシュで七千万円もの大金がファーイースト社にぽんと貸し付けられているわけですよ。

 保証金は、申し上げるまでもなく、そういった現金だけじゃなくて、国債とかあるいはボンド、いわゆる支払い保証委託契約を組むことだってできるはずなんです。

 少なくとも、そういった強制執行がなされてきた場合に、これを回避する努力というのは、普通の弁護士だったら、私は最善を尽くすのが当たり前だと思うんですけれども、本気で保証金を積む努力をしないで、大臣は原告の差し押さえの妨害をする道を選んだということではないんですか。

小川国務大臣 全く論理的に合っていない議論だと思います。すなわち、努力云々といいましても、保証金を用意するのは、弁護士の私ではなくて、あくまでも依頼者でございます。

 また、蓮村不動産が七千万円を急遽支出した、貸し出ししたわけでございますが、これは、あくまでもホテルの従業員に払う給料あるいは熱海の取引先に払う支払い代金、これを払う原資であった預金や売掛金が相手方の会社に差し押さえされてしまった、しかし、従業員や熱海の業者を見殺しにすることはできないからということでやったわけでございます。

柴山委員 大臣は、都合のいいときには依頼者とぐるになって、都合のいいときには、いや、債務者で決めることだから自分は関係ないと言って、立場を非常にころころ使い分けているなというふうに思います。

 しかも、蓮村不動産が公正証書を巻いたときに、大臣は蓮村不動産の代理も務めているわけですね。要は、この蓮村不動産あるいはファーイーストなど、このK2キャピタルの傘下となっているグループ会社一体と大臣はずぶずぶの関係で、そのさまざまな相談に乗っていたという実態がある。しかも、控訴審の受任をやはり求められたら、それを断れない何か事情があったとしか思えないんですよ。大臣、一体何があったんですか。どういうことなんですか。説明してください。

小川国務大臣 まず、保証金を用意するのは、これはあくまでも依頼者本人でありまして、弁護士が用意するものではありませんから。(柴山委員「そんなことはわかっていますよ」と呼ぶ)いや、だって、都合のいいときには全部本人にやらせるようなこと、何かそのことを言っているようでしたから、説明させていただきました。

 それから、なぜその控訴審を受けたのかと。それは、やってくれと言われたから、控訴してくれと言われたから受けたわけでございます。それ以上説明しようがないですよね。

柴山委員 きょうはビギナーズ・ネットの人たちもこの我々の質疑の傍聴に来られていますよ。要は、一審で着手金をもらえずに全面敗訴した弁護士が、控訴の提起をして、その着手金の回収も見込みがないという案件がいかに異常かということを、将来の法曹の卵も多分十分わかっていると思いますよ。

 なぜその依頼を受けたんだ、いや、依頼者がやってくれと言ったからだと。弁護士に主体性はないんですか、大臣。

小川国務大臣 だって、弁護士の業務というのは弁護士のためにやるんじゃないので、あくまでも依頼者のために、依頼者から依頼を受けてやるわけです。何も依頼者がやらぬでくれと言ったのに私がやると言ったわけでもありません。依頼者としては、一審で、結果は敗訴したけれども、その理由中では、相手方が五億円の債務、五億円のリニューアルをやる義務があることを認めて、それをやっていないことも認めた上での判決であるわけでございますから、そうした事情を踏まえて、依頼者の方は、いや、控訴審はやってもらいたいということであるから、私は引き続いて受けただけでありまして、何もおかしいと言われることはありません。

柴山委員 弁護士倫理とか弁護士職務規程というのは、そういった依頼者との間の後日のトラブルを避けるために、弁護士のいわば規範として自主的に定められているものなんです。

 真っ当な弁護士だったら、七年に一遍、皆さんも覚えておいてほしいんですけれども、弁護士の倫理研修というものが行われて、そういう依頼者との間のトラブルをなくすにはどうするか、あるいは、利益相反事案、この間行かれたでしょう、辻さんと私は一緒に弁護士会の倫理研修に行って、そのセミナーに参加してきたんですよ。だから、弁護士のやはり倫理として、依頼者との間にあるべき正常な関係はどういうことかということを、辻理事、一緒に勉強したじゃないですか。そうですよね。

 では、大臣にお聞きしますけれども、大臣はちなみに弁護士会のこの倫理研修というのはちゃんと受けておられますか。

小川国務大臣 弁護士会の倫理研修が始まった時期、私が国会議員になって今で十四年ですけれども、まだ比較的早い時期に、倫理研修しなさいという案内が来たので、一回行ったことがあります。ただ、それ以降、案内もないので、行っておりません。

柴山委員 必ず何年に一回来ますから、そのときには、ぜひ大臣、受けて、いかに大臣の答弁が荒唐無稽であるかということをほかの弁護士とともにしっかりと学んでいただきたいというふうに思います。

 ちなみに、次の質問に行かせていただきますけれども、大臣は前回の私との質疑において、蓮村不動産からのファーイースト社への貸し付け、現金による七千万円の貸し付けは、銀行に振り込みますとまた差し押さえされてしまうといけませんので、現金で渡しましたとお述べになっていますが、間違いありませんね。

小川国務大臣 間違いありません。

柴山委員 つまり、原告の強制執行を免れるための処理だということですね。

小川国務大臣 強制執行を免れるという場合は、具体的な強制執行があって、それを免れるということでございます。私どもの方は、そうではなくて、預金に置かなかっただけでありまして、現金は現金できちんと置いておったわけでございます。

柴山委員 大臣、法律の専門家に釈迦に説法で大変申しわけないんですけれども、一部の債権者、従業員等に対して抜け駆けした弁済を行うということは、詐害行為あるいは破産法上の否認権の行使を受けかねないんですよ。

 つまり、本来であれば原告を含めた形でしっかりとした弁済をトータルでやらなくちゃいけないのに、一部の方々にそういった弁済をするために、グループ会社から原告家主にないしょで現金を入れて、そしてそれを、七千万円という膨大な額を支払いに充てるということは、これはかなり私法上問題があるというように私は思うんですが、そのようにお感じになりませんか。

小川国務大臣 全く問題があると思っておりません。

 まず、押さえられた金額、回収金額で見ますと、六千五百万円ぐらいですか。ですから、まさに生きているホテルを運営するための資金が六千五百万円押さえられてしまって、従業員の給料が払えないわけですから、あるいは、さまざまな熱海の業者に対する支払いが払えないわけでございますから、営業を継続するということ、あるいは従業員の生活を守るために、そこに支払うというのは当然のことでございます。

柴山委員 大臣は先ほど、ファーイースト社は資金繰りが苦しかったというようにおっしゃっています。これは、済みません、法律のイロハで申しわけないんですが、債務者が無資力のときに、責任財産を構成する、特に現預金のような散逸しやすい財産を、たとえ必要性が高いからといって、一部の債権者に対して弁済なり、あるいは代物弁済でも結構です、あるいは譲渡だったらもっとひどいわけですけれども、こういうことを行うことはいけないことなんですよ。当たり前です、債権者間の公平を害しますから。

 それに、大臣は、いやいや、これはちゃんと払わなくちゃいけないとか、いや、これを支払わなければ事業そのものが立ち行かなくなるとかいうふうに今お述べになりましたけれども、そういった従業員の労働債権とか事業継続のための費用というのは、破産やあるいは民事再生においてきちんとした法律上の保護の手続があるんです。そういった公正な法的手続をとらないで、一部の債権者に抜け駆けをした支払いをしたり、あるいは、関連会社から融資を受けて、それを公正証書に巻いて債権者からの差し押さえにぶつけたり、こういうことは私は全くイレギュラーなことだというように思います。大臣、いかがですか。

小川国務大臣 委員の質問は、その半年後に申し立てられて決定が出た破産と今の仮執行宣言というものを全く同一時期に起きたかのように言っていらっしゃるわけでございまして、破産法上といいますけれども、半年後の破産の問題を半年前にさかのぼってというのもおかしな話でございます。

 それから、従業員の人件費、これは賃金は優先債権でもございますから、払って当然でありますし、会社には、企業はそのときに破綻しておったと委員はおっしゃいますけれども、いわば売掛金を六千何百万円か押さえられたから、その押さえられた分のお金を補填したわけでございまして、経営が破綻して事業が行き詰まったということがその段階で確定したものではありませんです。

柴山委員 債務者の立場に立って一方的に御自分の主張をお述べになっていますけれども、もしそういうような形で、債務者、つまりファーイースト社が真っ当に事業運営ができる見込みだったら、大臣、あなた自身がおっしゃったとおり、債権者がわざわざファーイースト社を追い出して、資産の一部劣化を織り込みながらも強制執行するなんてことはないんですよ。

 やはり、それだけファーイースト社の営業には問題があったし、事業の継続性ということにも疑問があったし、債権者としては、これをきれいにしなくちゃ次のステップが踏めないということを感じたからそういうことをやったわけです。それは当然、債権者だって、サービサー関連会社ですからね、事業採算性に反することを行っているわけじゃないんですよ。

 そういうような形で、債務者がいわば、大臣、御自分でお認めになられているように、窮地に陥っているにもかかわらず、そういうことを、さっき、一部、理事の方からお話があったように、私も十年前、弁護士をやっていましたけれども、反社会的勢力の執行妨害を幾つも、たくさん見てきました。同じような事例をたくさん見てきたんですよ。ほとんど全ての弁護士が、恐らく金融機関にお勤めになられていた階理事も含めてですよ、これはちょっと、余りにもイレギュラーだなというように感じられているはずなんです。苦しんでいるはずなんですよ。それは一般の金融機関が非常に、十年前、この執行妨害ビジネスに苦しんだからこそ執行法が改正され、そして責任が厳格化された、そういう経緯を大臣は知らないはずがないんですよ。

 だから、このような一連の弁護活動というのは、私は到底、サービサーの所管官庁である法務省のトップあるいは捜査当局のトップである大臣としてふさわしくないというように申し上げたいというように思います。反論、ありますか。

小川国務大臣 まず、委員のお話の中で、債権者という言葉を使いましたけれども、いわゆる熱海の債権者ではなくて、いわゆる裁判の相手方のことを債権者と言っていらっしゃるんだというふうに理解いたしましたけれども。

 この会社は、もともとは、競売屋といいまして、競売物件を安く買って、そして占有者を、いわば占有関係を整理して、きれいにして、高く売ってというビジネスモデルで成長した会社でございます。先ほども申し上げましたように、何か相手方の会社が一方的に正しくて、こちら側が何か一方的に悪い会社のようにおっしゃいますけれども、私の方からすれば、先ほども申し上げましたように、四十五億円のものを何か三十五億円で契約させられて、あとは得意のわざで出されてしまったなといって、私どもの方が、いわばたちの悪い業者にひっかかって、私どもというのは依頼者の方ですけれども、被害者だと、このような考えでおります。

柴山委員 今回の訴訟について話しているわけじゃありません。大臣の行為の異常さについて私はさっきから質問しているわけです。

 事案についても、大臣はいかに原告が悪質かということをるる述べられておりますけれども、結局、全面勝訴しているわけですよね。

 そのことはちょっとともかく、ちなみに、この蓮村不動産の七千万円の融資は、さきの質問での大臣の御答弁は、返済される見込みがあるとか利息を取って貸すとかいう通常の融資ではなかったということでしたけれども、返済の当てのない融資であれば、蓮村不動産にしてみれば、商法上の特別背任罪や株主代表訴訟あるいは取締役の第三者責任などが問題となってきます。当然ですね。そういうことでよろしいわけですね。

小川国務大臣 何回も申し上げますように、従業員に対する給料を払うお金がないからこれを何とかしなくてはいけない、熱海の業者をなくしてはいけないという、こうした緊急性があるから融資したわけでございます。

小林委員長 蓮村不動産について答えてください、蓮村不動産の側に立って。

小川国務大臣 蓮村不動産は、株主も経営者もいわば一体の会社でございますから、その人が判断すれば、特に異議を述べる人もいないと思いますが。

柴山委員 大臣は私の一番最初の質問に、資本関係はわからないと言ったんですけれども、今ここでそれがうそだということが暴露されたわけですね。要するに、蓮村不動産が結局このファーイースト社と経済的に一体となっている資本関係にある。だから、要するに、ファーイースト社の利害関係は蓮村不動産の利害関係である、そしてそこに大臣がコミットして、みんなで一緒くたとなって原告側の強制執行を妨害したという一連の構図は、今の大臣の答弁からしても、私は、極めて明らかになったというように申し上げたいと思います。

 時間があと五分になりましたので、人権擁護法案についての質問に移らせていただきます。

 大臣、私が、あるいは城内議員が人権擁護法案について何度か質問をさせていただいておりますけれども、今国会に、人権委員会設置法案あるいは人権擁護委員法の一部改正案というのは、結局提出されるんですか、されないんですか。

小川国務大臣 提出するよう努力しておるところでございます。

柴山委員 私が伺ったところによりますと、今国会に非予算関連の法律として提出するのであっても、三月中旬から下旬にかけて閣議決定というものを経るのがその以後の手続上必要だというように聞いているんですけれども、今大臣がおっしゃったように、今後、そういったスケジュールで閣議決定される見込みがあるんですか。

小川国務大臣 今、具体的な見込みがあるかどうかということは、まだ確定的に説明できるような状況ではございませんが、そうした状況を、いわば、状況といいますか、できるような状況を整えて提出したいというふうに努力しておるところでございます。

柴山委員 具体的にどういう状況をつくろうとしているんですか。

小川国務大臣 法文の作成、それから政府・与党内の調整、それから、これは絶対的に必要かどうかは別にしましても、野党の皆様との御理解をいただく、そうしたようなさまざまなことでございます。

柴山委員 ちょっと私は今、信じられなかったですね。

 これはやはり、非常に内容的に、私あるいは稲田議員も城内議員も指摘をしているとおり、さまざまな疑問がある法律案なんですね。骨子の段階でもこれだけいろいろと問題が生じているのに、これからその条文を詰めて、しかも与党内手続を踏み、しかも閣議決定を経て、そして、何ですか、野党に対してはどういう形で理解を求めようとするんですか。それは本当に今国会でやることができるんですか。

 それと、あと、大臣、私の質問に対してちょっと答弁が曖昧だったんですけれども、結局、外国人の地方参政権が認められた場合には、今の法律のたてつけによりますと、将来外国人も人権擁護委員の資格になれるというようなことを答弁されたというふうに思うんですけれども、そこら辺の事実関係や制度設計についても、私はきちんと答弁を受けておりません。

 いま一度、大臣に、これらの手続、そして法律の内容について、きちんとした説明を求めます。

小川国務大臣 まず、法案につきましては、これは野党の皆様の御理解をいただかなくてはならないというふうに考えております。

 ただ、法案の提出そのものについて、これは……(発言する者あり)いやいや、ですから、先ほどの趣旨をお話ししておるわけでございまして、法案の提出について、これは、政府提案なのか、あるいは与野党で提案するのかとか、さまざまな形がありますので、ですから、一つの法的な要件として野党の参加が必要だというふうに言っておるわけではございません。

 ただ、この法案につきまして、その後の審議の見通しというものも考えれば、やはり野党の皆様との御理解、御協力も必要であるというふうには認識しております。

柴山委員 どうなんですか。閣法なんですよ。閣法で、一体どういう手続を想定しているんですか。

小川国務大臣 いや、ですから、提出そのものは、それは政府で提出すれば政府提出でございますが、しかし、それを提出した後の審議は、やはり、つるしを下げていただいて実質審議に入っていただくとか、さまざまな面でこれは野党の御理解と御協力をいただかなくてはならないわけでございます。そうした趣旨でございます。

柴山委員 いずれにいたしましても、きょうの大臣のさまざまな行動とか発言を見るにつけて、どうしても、この提出を予定している法案についても、しっかりとした議論ができるものなのかどうかということが極めて疑問に思うところであります。

 時間が参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小林委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 先週に引き続き、小川大臣の所信に対する質疑を続けさせていただきます。

 まず冒頭、小川大臣が代表者を務めておられた民主党東京第九区総支部の平成十九年分の収支報告書には、お手元に資料をお配りいたしておりますけれども、政治団体「いのち」生き生き練馬クラブに対して合計三百五十三万一千円の寄附をしたという記載があるにもかかわらず、練馬クラブの収支報告書にはそのような寄附の記載がないという報道がありました。

 私も、問題になりました収支報告書を取り寄せて確認をいたしましたけれども、確かに報道のとおり、小川大臣の収支報告書には、お手元の資料にございますように平成十九年二月二十八日、そして四月十六日、四月十七日の三回に分けて寄附の記載がありますが、練馬クラブの報告書にはその記載が全くございません。

 該当する練馬クラブの寄附の内訳のところには、民主党の東京都総支部連合会からの五十万、そして後援会からの寄附金が記載されておりますが、最も多額である、小川大臣が代表を務めておられます民主党東京第九区総支部からの三百五十三万一千円の寄附について記載がなされておりません。

 小川大臣の収支報告書が虚偽の記載なのか、それとも練馬クラブの報告書が不記載なのか、いずれかだと思いますけれども、大臣、いかがですか。

小川国務大臣 まず、九区支部は年度の途中に代表者を引き継ぎました。それ以前の代表者が総支部長でなくなったということから、当時私が民主党東京都連の幹事長をしておりましたので、暫定的にこの九区支部の代表者になったわけでございます。この支出の全ては、前代表者のときの支出でございます。ただ、収支報告を行った翌年の時点では私が代表者でございました。

 この収支報告につきましては、適正に行うようにというふうに前代表者とその会計責任者に指示しておりまして、きちんと適正に報告をいたしましたというふうに聞いております。

 そしてまた、最近、この収支報告に関する報道がありましたので、この収支報告について重ねて間違いはないのか確認して、状況を尋ねましたところ、こちらの処理、収支報告については何の間違いもないということを確認いたしました。

稲田委員 まず、大臣は、この支出のときには自分は代表者でなかったというふうにおっしゃっておりますけれども、それは全く言いわけにはなりません。なぜなら、途中で代表者がかわり、また会計責任者が交代したとしても、きちんと引き継ぎをしなければなりませんし、そしてその収支報告書を作成したときの代表者としての責任はきちんとあるわけですから、自分が代表者でなかったのでということは全く言いわけにならないと思います。

 そして、今大臣の御主張によりますと、練馬クラブの代表者である鮫島さんが取材に応じて、多分受け取っていません、うちは細かく、正確に記載していたし、都の担当者にも全部オープンにしていましたというふうに回答をされているんです。そして、先ほど私が御指摘いたしましたように、ほかの寄附については、大臣が代表者を務められている支部からの寄附金よりも少ないものもきちんと書かれているにもかかわらず、この三百五十三万、決して少なくない金額は記載されていないというわけですから、私は、この鮫島さんのおっしゃっていることが正しくて、小川大臣の収支報告書が事実と異なっているとしか考えられないんですけれども、いかがでしょうか。

小川国務大臣 まず、選管の方に確認しましたところ、三年間で収支報告書に添付した領収書が廃棄されてしまっておるということで、添付した領収書の現物が得られませんでした。

 それで、領収書は今現在はないわけでございますが、ただ、収支報告の実務の実際といたしまして、選管に責任者が持っていきますと、選管との間で一つ一つの項目において突き合わせしまして、それで、領収書があるかないかということをチェックを受けた上で選管に提出するものでございます。ですから、これにつきましても会計責任者に確認したところ、選管と突き合わせして領収書はきちんと提出しましたということだそうでございます。

 ただ、今も言いましたように、保存期間が過ぎている関係で、選管の方に領収書がなかったということで、その点は大変残念に思っております。

稲田委員 今、選管の方に領収書がなかったというふうにおっしゃっておりますけれども、もらったとされている方の鮫島さんは、取材に答えて、自分は受け取っていない、そして、正確に記載しているし、ずっとオープンにしているからそれは何かの間違いだというふうに回答をされているわけです、相手方の方は。だったら、普通は、その相手方の方にきちんと確認をされるのが当然だと思いますけれども、確認されたんですか。

小川国務大臣 私どもの方は、私どもの方の収支報告が間違っていなければ、もうそれで確認できたと思っております。

稲田委員 ということは、確認されていないということじゃないですか。その当時の会計者に聞いたというだけで、領収書もない。そして、大臣のおっしゃっていることと全く反対のことをおっしゃって、もし大臣の方の収支報告書が虚偽でなければ、もらった人の方が不記載、どちらかが政治資金規正法違反なんです。どちらかがうそをついていて、どちらかが政治資金規正法違反になるわけですから、私だったら、きちんとその相手方にも確認をすると思いますけれども、どうして確認しないんですか。

小川国務大臣 こちらとしましては、こちら側に間違いがないということが確認されれば、それでいいわけでございます。

稲田委員 それは私は法務大臣として全くおかしいと思いますし、政治資金規正法違反、虚偽記載というのは決して軽い罪じゃないんですよね。虚偽記載の場合は、五年以下の禁錮、百万円以下の罰金、そういう厳しい処罰を伴う政治資金規正法違反なんですけれども、それに対しての確認が余りにもおろそか過ぎると思いますが、いかがですか。

小川国務大臣 ですから、今申し上げましたように、会計責任者の話、それから選管に届け出た収支報告の事務の取り扱いの状況から見て、間違いがないだろうと私は判断したということでございます。

稲田委員 それは、領収書も見ていないし、会計者の話を聞いただけで、相手方についても確認をしていないし、相手方の方はきちんと明確に具体的に反論されているにもかかわらず、その点についても確認をされていない。私は、それは落ち度があると思います。

 そして、それだけじゃないんですよね。この生き生きクラブの下に記載されている藤井とものり後援会、それから、中田兵衛後援会、かとうぎ桜子を育てる会に対する支出、これも、組織活動費、組織対策費から、わざわざ寄附に変更をされているんです。

 ところが、これらの団体の収支についても調べてみたんですけれども、藤井とものり後援会は、収入欄に小川大臣の収支報告書と同額の寄附の記載はあるんですけれども、寄附者の氏名は違っておりますし、寄附された年月日も大臣の収支報告書とは違うんです。また、中田兵衛後援会、かとうぎ桜子を育てる会には、小川大臣の収支報告書に記載されている寄附は収入として記載されていないんです。これは、この部分についても虚偽なんじゃないですか。

小川国務大臣 小川大臣の収支報告と言いますと、政治家小川敏夫の資金団体か何かがというふうにちょっと誤解を招きますので、私が代表をしておった東京第九区支部というふうに理解させていただきますけれども、これにつきましては、今言いましたように、私の方は、私が就任する以前の支出でございますので、その支出の現場そのものに私は立ち会ってもいないし、事情を知らないわけでございますが、就任する以前の前総支部長、そして実際の会計責任者、会計責任者は前後を同じ人物が引き継いでおりますので、会計責任者に確認し、そして選管における事務の扱い方を確認したところ、私としては、こちらの処理に、こちらというのは東京第九区支部の処理に間違いはない、このように考えておるということでございます。

稲田委員 質問にお答えになっていないと思うんですね。

 大臣が、代表者がかわったけれども、会計責任者はかわっていないですね。それならなおさらのこと、きちんと確認をできる立場にいらっしゃいますし、大臣が代表者でなかったときの支出だからということは全く弁解にもならないと私は思います。

 そして、先ほど、自分が代表者を務めている選挙区支部だというふうに言いかえてくれとおっしゃっていますけれども、この選挙区支部はまさしく、それぞれの衆議院議員が持っている選挙区支部と同じように、代表者は責任を持ってこの出し入れについては報告をしているものですから、今申しました藤井とものり後援会に支出をした十万円、中田兵衛後援会に支出をした十万円、かとうぎ桜子を育てる会に支出をした十万円について、大臣の収支報告書と、もらった人の、もらったと言われている収支報告書とは全く違っていて、どちらかが政治資金規正法違反の虚偽の記載もしくは不記載、どちらかがそういう虚偽記載に該当する場合なんですね。

 大臣、この点についてもう一度答弁をお願いします。

小川国務大臣 ですから、収支報告書の提出の実務としまして、このような支出につきまして、領収書を添付して報告することになっております。その領収書につきましては、実際の提出の段階で選管の事務と提出者との間で一つ一つ照合して、それで間違いないことを確認して、実際に収支報告を提出して選管も受理するわけでございます。

 そうした事務の流れからいって、実際に領収書を添付して収支報告したはずでありますし、実際に私が会計責任者に確認したところ、領収書を添付して提出した、そしてこの記載は間違いないと言っておりますので、この収支報告には間違いがないんだろうと私は判断しておるということでございます。

稲田委員 会計責任者がそう言ったから間違いはないと判断しているという御答弁なんですけれども、今指摘いたしましたように、ここに書かれている全ての項目の寄附金について、大臣の収支報告書が虚偽であるか、もしくは、もらった相手が不記載もしくは虚偽記載、どちらかだという状況になっているんです。もらった人はそれぞれ異なっている、払った人は大臣の団体という、上げた方は一者なのにもらった人は別々で、そして、それが全てどちらかが虚偽ということになれば、大臣の方が虚偽だと考えるべきだと私は思いますが、いかがですか。

小川国務大臣 同じことを何回もお話ししてもしようがありませんけれども、いずれにしても、私は、私自身がその事実に関与しているわけではございません。あくまでも前任者のことでありますから、ですから、実際に扱った前任者、前代表者ですね、それから会計責任者に確認したところ、間違いがないと。それで、間違いないというお話も、先ほども申し上げましたように、この収支報告を扱う選管の事務の流れからいって間違いがないのだろうと私は判断しておるということでございます。

稲田委員 では大臣、お伺いをいたしますが、この藤井とものり後援会、そして中田兵衛後援会、かとうぎ桜子を育てる会が、大臣からの寄附を記載していない、もしくは違った記載をしているということを御存じだったんですか。

小川国務大臣 私は相手方の方には確認しておりません。私は、暫定的でありますけれども、私が代表者をしていたこの支部の中で、間違いがないなというふうに判断したということでございます。

稲田委員 いや、私の質問は、大臣の記載されている内容と、そしてもらった相手方の記載がそごがあるということを大臣は御存じだったんですかと聞いているんです。

小川国務大臣 先般、週刊誌で報道されました「いのち」生き生き練馬クラブですか、その件は、週刊誌の記事を読んで初めて知りました。ほかの人の分については、今、委員からお話があって初めて聞いたことでございます。

稲田委員 だから不誠実な答弁じゃないですか。今初めて聞いたにもかかわらず、どうして先ほど、会計責任者から説明を受けて、そして領収書もつけて、報告したからそれを信じましたなんて、そんないいかげんな答弁されるんですか。そんなこと、この三者については確認されていないんでしょう。

小川国務大臣 いやいや、週刊誌に記事が、「いのち」生き生き練馬クラブのことが出ていましたから、それも含めて、この収支報告については全て間違いがないのかということで、この収支報告全般について確認したわけでございます。

稲田委員 ということは、今私が御指摘した点についての虚偽記載疑惑については、きちんと個別的には確認をしていないということですから、私は、この「いのち」生き生き練馬クラブも含めてきちんと確認をされて、御答弁をされるべきだと思いますが、いかがですか。

小川国務大臣 あくまでも、私のいわば代表者としての責任範囲はこの九区支部でございますので、九区支部の中で私は責任を果たしたと思っております。

稲田委員 一事が万事ですけれども、大臣、余りにもいいかげん過ぎるんですよ。だって、今指摘して知ったことについてすら、これは間違っていないという、報告を信じていますみたいなことをおっしゃっていますけれども、今指摘したことについては確認もされていないんです。そして、「いのち」生き生き練馬クラブも、相手方が全く違うことをおっしゃっていても、それもきちんと確認をされていない。ここに載っている、平成十九年の寄附金に載っている全てについて、大臣の収支報告書と相手方との間にそごがあるんです。

 ここはもう一度きちんと確認をして、御答弁していただけますか。

小川国務大臣 これは確定した事実ということで私が述べるのはなくて、聞いた話の中で、聞き取った話の中で、合理的な、この食い違いがなぜ生じたかということに関しての私の一つの意見ということで聞いていただければ説明させていただきますが、あくまでも、事実関係といたしましては、もう何回も述べたとおり、会計責任者、前代表者からの説明と、この収支報告の取り扱い事務、選管における取り扱い事務の流れからいって、間違いはないだろう、この九区支部の方に間違いはないだろうと判断しておるということでございます。

稲田委員 ですから、大臣、大臣は私がきょう指摘して初めてこの三つの分についてそごがあることを知ったんでしょう。にもかかわらず、どうして大臣は、これらについてはきちんと会計責任者に確認したといううそをつかれるんですか。確認していないでしょうが。

小川国務大臣 ですから、「いのち」生き生き練馬クラブのことが報道されましたので、それに伴いましてこの収支報告書を私の方もコピーを入手しまして、それで、この内容について、全部について間違いがないのかと確認したということでございます。ですから、この十万円の三件も、確認した中に入っておるわけでございます。

稲田委員 水かけ論になるから恐縮ですけれども、先ほど、「いのち」生き生き練馬クラブについては収支報告書をとって確認をされたんでしょう。でも、藤井とものり、中田兵衛、かとうぎ桜子さんの虚偽記載ないし不記載については、今私が指摘して初めて大臣は知ったとおっしゃるんだったら、これについてもきちんと確認をされるのが大臣としてのお務めだと私は思いますけれども、いかがですか。

小川国務大臣 ですから、支出を受けた者の氏名として記載されている方の方たちには確認はしておりません。

 私はあくまでも、前代表者と会計責任者から聞いた、そして、選管における報告書の提出の事務の流れからいって、九区支部の収支報告には間違いがないと判断しておるということでございます。

稲田委員 何度も言いますけれども、この三つについては、きょう初めてそごがあることを大臣はお知りになったんですから、そのそごがあることを知らない前に会計責任者に確認するなんということはあり得ないんですよ。ですから、きょう、このそごがあることを私が御指摘をいたしましたから、きちんと確認をされて、御答弁いただけますねという質問なんです。

小川国務大臣 ですから、「いのち」生き生き練馬クラブのことが報道されましたので、それを契機にして収支報告の記載全部について確認したということでございます。

稲田委員 確認をされたけれども、この三つについてそごがあることは報告も受けていらっしゃらないじゃないですか。知らなかったじゃなくて、今、私が指摘をして初めてお知りになったわけですから、その確認というのはまさしくいいかげんなものであることも明らかになりましたし、明らかになった以上、きちんと確認をしてくださいという、そういう質問です。なぜ、しないんですか。

小川国務大臣 ですから、相手方の方に確認はしていません。ですが、こちら側の中では確認して、こちら側の中の確認で、私は、こちら側に、つまり九区支部の中には間違いがないなと判断しておるということでございます。

小林委員長 委員長として整理させていただきます。

 質問者は、相手方をチェックされたら、こちらの記載したものと違っていた、そういうことを踏まえて、違っている向こうに直接、こちらの九区支部の方から、どちらが正しいのかということを改めて確認すべきではないかと。それに対して大臣は、確認する必要がないなら必要がない、これから確認してみたいと思いますということならしてみたいと思いますと、このどちらかを答弁していただければいいわけでしょう。

稲田委員 もちろん、今委員長がおっしゃったことは私の第一の質問です。

 第二の質問は、きょう指摘したことについては大臣は御存じなかったんですから、会計責任者に問い合わせしたというけれども、問い合わせをしようがないんです、そごがあったことすら知らないんですから。その点は、会計責任者も、そして相手方も、そして相手方の収支報告書も取り寄せて、やはり確認をなさるべきじゃありませんかという質問もいたしております。

小川国務大臣 会計責任者に確認しまして、「いのち」生き生き練馬クラブだけでなくて、全てについて領収書を添付したのかということを確認いたしましたところ、全てについて領収書を添付して申告したというふうな説明を受けております。(発言する者あり)

 私の方は相手方の収支報告について実際知りませんが、私の方としては、九区支部の収支報告については間違いないものと確信しておりますので、これ以上は調査はしないつもりでおります。

稲田委員 そういう態度が私は、大臣、とても傲慢だと思いますよ。

 なぜなら、この「いのち」生き生き練馬クラブについても、多額の金額が不記載で、しかも相手方は明確に否定をされているわけです。先ほど言ったみたいに、どちらかが政治資金規正法違反になる、そのような事案において、会計責任者の話を聞き、領収書をつけているはずだから、だから信じたんだと。そして、相手方にも確認もしない。

 これも私は傲慢だと思いましたけれども、それだけじゃなくて、きょう私が指摘して初めて大臣は、そごがある、相手方が不記載だということを認識をした残りの三つについても、全くこれ以上確認するつもりもないというのは、私は、大臣としてというか、政治家として大変傲慢な態度で、政治資金規正法の趣旨を全く踏まえていない、その大切さを全く踏まえていない御答弁だと思います。いかがですか。

小川国務大臣 つまり、ほかの政治団体が収支報告するかどうか、それはほかの政治団体の責任においてやることでございますから、その責任ある方がきちんと責任ある対応をしていただければいいわけでございます。

 私は九区支部について暫定的に代表者をしておったわけでございますが、九区支部として間違いがないということを確信しましたので、それで、これ以上の調査は私はしませんということでございます。

稲田委員 今の御答弁を聞いただけでも、大臣には、政治資金規正法の重大さもわかっていないし、政治家としても謙虚さに全く欠けていると言わざるを得ません。それだけでも、私は、大臣の法務大臣としての資質を疑わざるを得ません。

 ですから、私は、ここは、きょう明らかになった事実も含めて、きちんともう一度精査をして確認をして御答弁をなさるべきだと思っております。(発言する者あり)

小林委員長 いや、だから、大臣の答弁は明確であって、自分の持っている支部の責任者に聞いたところ、支部の責任者は大臣にこれこれと報告をした。その報告について、自分としては報告した人は正しいと信じていると。(発言する者あり)

 では、もう一度、とにかく大臣に最終的な回答をいただいて。小川大臣。

小川国務大臣 会計責任者の方に聞きましたところ、(稲田委員「聞けないじゃない」と呼ぶ)ですから事情を私の方で聴取したところ、政治活動費、これは政治活動費の内訳のところに欄が記載してあります。それが、政治活動費としてをいわば抹消して、寄附としてというふうに訂正されております。

 これは、提出する際の収支報告の際には、政治活動費に入るだろうという判断のもとで政治活動費として計上していたところ、選管の判断で、いや、これは九区支部の政治活動費ではなくて寄附として計上するのがふさわしいから、寄附として計上しなさいということで、選管の窓口で訂正したというふうに聞いております。

 ですから、先方の方に記載がないのは、寄附をしたと、寄附と認定された九区支部の方においては寄附としなさいという指導があったのかもしれませんが、寄附の受け取る先に関しては、これは同時に提出しているわけではありませんので、選管はまた違った指導をしたのかなというような想像は私はしておりますけれども。

 いずれにしましても、九区支部におけるこの収支報告に関しては、私は間違いがないというような確信を抱きましたので、これ以上の調査はしないつもりでございます。

稲田委員 今の大臣の答弁は、選管が政治活動費を寄附と変えたんだと。それは項目をどう表示するかの指導であって、本当に寄附したかどうか、そこまで選管は関係ないんですよね。今疑惑になっているのは、ここに書かれているものが本当に寄附したのかどうか、虚偽の記載じゃないかどうかということを問題にしているわけであります。

 そして、少なくともこの最後の三つについては、大臣はきょう初めてそごがあることについてお知りになったわけですから、それを知る前に会計責任者に具体的にこの点について調査をすることはできなかったわけです。そして、相手方については、もちろん大臣自身も聞いていないということを認めておられるわけですから、そういうことも含めて、そごが明らかになった以上、きちんと調査をして、改めて御答弁されるべきじゃありませんかという質問なんです。

小川国務大臣 ですから、十万円の三名について、この三名の方がこちらの収支報告に合致する記載がないという指摘は今初めていただきましたが、そうした記載が相手方三名の方でどのような記載をしているかどうかということはかかわらず、私の方は、この三名の方も含めて収支報告の記載の全部について確認をしたということでございます。

稲田委員 それは大変傲慢な答弁ですよ。

 なぜなら、この三つについては、私どもが調査して、相手方が不記載もしくは違う記載をしているんですから、ここはきちんと具体的に、もう一度会計責任者なり御自分の手元にある領収書のコピーなりを確かめて、そして御答弁をなさるべきじゃありませんかという質問に対して、なぜそれをやるとお答えにならないんですか。

小川国務大臣 ですから、選管の方で領収書があればよかったんですけれども、三年の保存期間を過ぎているということで領収書がないのは大変残念に思っていますと、先ほど述べたとおりでございます。

稲田委員 どうしてそんな傲慢な答弁をいつまでも貫くんですか。だって、この三つについての領収書があるかないか、選管にじゃなくて自分の事務所に、そしてこの会計責任者が一緒なんだったら、どう保管しているか、もう一度具体的に調べて、そして、この生き生き練馬クラブの代表者は全く違うことを確信を持って答弁されているわけですから、それについても突き合わせたらいかがですかという、まさしく私は、政治家の良心に従えば、自分だったらやるだろうということを大臣に要求しているわけです。いかがですか。

小川国務大臣 これは、「いのち」生き生き練馬クラブというのは、要するに、練馬区の区長選挙のときに関連してできた政治団体ですから、書いてあるね、平成十九年ですね。五年前のことですね。ですから、五年前のことで、会計責任者に聞いても、ある程度の記憶は出てきますけれども、すぱすぱと、全てのことがどうだったこうだったというふうに、具体的に出てくるような記憶は残念ながら持っておりませんでした。かなり漠然とした記憶でございます。

 ただ、こうした報告書の作成に至る経過と、それから、この区長選挙の時期にそうした支出をしたことは間違いがないし、そして、その正しい報告を選管の方で行った、当然、選管に提出する際には領収書も選管ともどもチェックして提出した、このような説明を聞いて、私はその説明を聞いた範囲でもう間違いがないと確信しておるということでございます。(発言する者あり)

小林委員長 もう一度、稲田君。何を最終的にこの中で聞くか。

稲田委員 もう何度も繰り返しになりますが、きょう大臣が初めてお知りになった、大臣の収支報告書と、そして、もらった、大臣が寄附をしたと言っている相手方の収支報告書との間にそごがあって、不記載もしくは違った記載をしております。どちらかが政治資金規正法違反なんです。

 そのことをきょう大臣はお知りになったわけですから、改めて、具体的にその点について、五年前だからどうだの、そんなことではなくて、御自分の会計責任者、その当時の会計責任者に、その当時の保管している書類も含めてもう一度調査をされて、そして御答弁をなさるべきじゃありませんかというのが一点。

 あと、この相手方全てについてそごがあるわけです、この収支報告書と。私は、寄附している方は大臣で、その相手方全てがこの収支報告書と違うことを書いている場合には、私は大臣の方が虚偽なんじゃないかと推測をいたしておりますので、その点についてはもう一度、その反対のことをおっしゃっている生き生き練馬クラブの代表者も含めて確認をして、きちんと答弁をしていただけますか。

小川国務大臣 これが、報告する際に、政治活動費として書いて報告に行ったわけであります。政治活動費として支出したものであれば、その政治活動費の支出のあり方によりますけれども、寄附のように、政治家が、必ずそれを受け入れた団体があるという記載にはなりません。ただ、選管の指導で、政治活動費ではなくて寄附として計上することがふさわしいというから寄附ということになったわけであります。寄附となったら、当然、寄附だから寄附の相手方がいるということになったわけでございますから、食い違いが生じたのは、そうした選管の指導が、それぞれの政治団体あるいは政治家に対する収支報告の提出の際の指導がばらばらであったのかなと、私はこれはあくまでも合理的な想像だと、推測だと思いますが。

 ただ、経理責任者は、選管の窓口で、これを政治活動費ではなくて寄附として報告することが適切であるということで、窓口で訂正したと言っておりますので、そうした事情からそれぞれの食い違いが出たのではないかと私は想像しておりますけれども、いずれにせよ、九区支部の収支報告の支出に関しましては間違いがないと私は確信しておりますので、これ以上の調査は私はする必要はないと思っております。

稲田委員 今の御答弁だけで、私は、やはり大臣は、全く御自分の職責というか政治家としての責務を果たすつもりもないのかなと思います。

 この対応については、理事会協議でお願いいたします。(発言する者あり)

 きょうの答弁に関して、私は全く不十分だし、今の大臣の答弁は答弁になっていないんですよ。きょう指摘したことについて、調査をして次回答弁するということをあくまでも言わない。今、そごがあることを指摘しても、恬としてその点について調査をされないとおっしゃるんですから、この委員会の後、今の大臣の御答弁をめぐって理事懇を開催していただくことを要求いたします。

小林委員長 では、この問題については、即理事懇を開いてきちっとやります。

稲田委員 では、次の質問に行きます。

 先週の質疑、そしてきょうの柴山委員に対する大臣のお答えを聞いておりまして、大臣は、全く事の重大さに気づいておられないというのか、御自分のなさった行動のおかしさを理解できていない。私は、今の答弁もそうですけれども、その感覚自体が、法務行政のトップにおられることが日本の国益に反すると思います。

 今大臣がこの委員会で追及されている疑惑というのは、大臣の行為が、虚偽の債権で、虚偽の弁護士報酬でもって、債権強制執行により真の債権者が強制執行を妨害されたという、まさしく刑法九十六条二項の強制執行妨害罪、さらには、破産管財人から否認をされておられる虚偽の債権により破産手続で配当を得ようとしているのではないかという刑法二百四十六条の詐欺罪、この二つの犯罪の疑惑なんですよ。大変重大な疑惑が法務行政のトップである法務大臣にかかっているということなんです。私は、それを自覚していただいて答弁をしていただきたいと思います。

 大臣の依頼者であるファーイースト社に対して債権者破産を申し立てた原告の代理人は、管財人に意見書を提出して、大臣の行為を、強制執行妨害罪及び詐欺罪に該当する行為であり、弁護士法上の懲戒事由に当たり、政界全体のスキャンダルにつながりかねない重大な不祥事であると激しく非難されております。大臣の弁護士報酬は、既に管財人が債権調査期日で否認をしております。

 先週の予算委員会での質疑、当法務委員会における質疑、そしてきょうの質疑、大臣は、御自分の弁護士としてとった一連の行為について、強制執行妨害罪、詐欺罪という重大な犯罪の疑惑をかけられている、そういう状況についてどのように認識をされていますか。

小川国務大臣 まず、何で私の弁護士報酬の請求権が虚偽なんでしょうか。私はこの控訴事件を受任しました。訴訟代理を受任してまさに委任業務を行ったわけでありますから、報酬請求権があるのは当然でありますから、虚偽と言われる筋合いは全くありません。

 次に、意見書というものがありましたが、これは相手方の代理人の弁護士が意見を述べているだけでありまして、特に、そういうことも考えられるというような、後々の責任をとられないような表現になっておりますが、一つ、この点を注意していただきたいのは、仮に私の届け出た債権が減額すれば、その分ふえるのは誰かといえば、相手方の代理人の当事者であるわけであります。まさに一番利害が相反するわけでありますけれども、そうした意味での利害関係者の一方的な意見だというふうに言わせていただきます。

 それから、破産管財人の否認ということがありました。異議のことだと思いますけれども、これは、破産管財人の異議の申し出のそのものが破産法に違反しているということが確認されております。

稲田委員 破産管財人の異議が破産法に違反しているというのはどういう意味ですか。

小川国務大臣 つまり、破産管財人、あるいは破産管財人でなくてもほかの債権者が異議を述べることができますけれども、ただ、その述べる対象の債権が債務名義を持っている債権の場合には、債務者ができ得る訴訟手続によらなければならないという破産法の条文がございます。今ちょっと何条だか……(稲田委員「債務者の」と呼ぶ)はい。つまり、債務名義がある債権に対する異議は裁判を起こさなければならないとなっている、裁判の上で起こさなければならないという規定がございます。

 私の債権は、再三出ておりますように、公正証書の執行証書があります。すなわち、債務名義を持っている債権でございます。ところが、私のこの債務名義を持っている債権に対して異議を述べる場合には、訴訟を起こさなければならないんです。ですから、そうした訴訟は起きていませんので、破産管財人が異議というようなことを述べても、それは破産法の規定にのっていない、いわば破産法の規定に反した異議であるということでございます。

稲田委員 現実的に、まだ破産管財人は大臣に訴訟を起こしていない。時の法務大臣に訴訟を起こすんですから、それは慎重になっているかもわかりません。しかし、管財人は事実として、大臣の報酬債権は認めないという意味で、事実上、債権調査期日で異議を言っているんですから、それは私は重大な意味があると思います。

 そして、公正証書の債務名義があるんだからと大臣はおっしゃいましたけれども、それは、先ほど来の、そして先週からの質問で明らかなように、債務者である大臣の依頼者と同意のもとで、通謀してその公正証書をつくったんじゃないですか。ですから、そんなことを威張って破産管財人が破産法違反だなどと法務大臣が国会の場でおっしゃること自体、私は信じられない気持ちです。

 そして、先ほどの質問にお答えになっていないのは、御自分が今、そういった強制執行妨害罪、そして虚偽の債権で、虚偽の疑いのある債権で破産の配当の申し出をしていることについて、御自分の今の立場についてどのようにお考えですかという質問ですよ。おかしいと思いませんか。

小川国務大臣 ですから、虚偽ではないんです。

 私は、今言いましたように、一審も二審も、委任を受けて実際の訴訟事務を行いました。仕事はしているんです。仕事をしないのに仕事をしたように仮装して報酬があるといえば、これは虚偽でありますし、仮装債権であります。私は仕事をしたんです、実際に依頼された仕事を。ですから、虚偽ということはあり得ないわけでございます。強いて言うなれば、高過ぎるんじゃないのというふうにおっしゃる方がありますけれども、高過ぎるということと虚偽ということは全く意味が違います。ですから、虚偽ということ、あるいは通謀という犯罪を犯したかのような表現は、慎んでいただきたいというふうに思っております。

 それから、破産法のことに関しては、現実に、破産管財人が債務名義がある債権の異議を申し出るときには訴訟手続によらなければならないという破産法の規定があるんですが、訴訟手続を起こしていないわけですから、破産法の手続にのっていない異議だということになるわけでございます。

 それから、破産法の中の、いわゆる破産実務の中のかなり立ち入った話になってまいりますけれども、異議には、債権が存在しないという異議だけでなくて、戦略的異議といいまして、いわば破産管財人が、少しでも配当をふやすために配当財源をふやしたい、あるいは、配当率を上げるためには配当財源をふやすだけでなくて、配当する対象の債権額の総額を減らせば配当率は上がるわけでございます。そうした観点から、債権者と、いわば少しまけてよという交渉をしたい。その交渉をするきっかけとするために異議を述べるという意味の戦略的異議というのが破産管財人には認められておるわけでございます。

 ですから、法律の規定にのっとっていない異議を述べたのは、そういう戦略的異議なのかな、このようにも考えておるわけでございます。

稲田委員 大臣、私の質問に端的にお答えになってください。破産法の講義または管財人の戦略についてこの場でお話しになっていただく必要は全くありませんから、私の質問にだけお答えになってくださいよ。私の質問なんですから。

 先ほど大臣は、虚偽ではないんだ、そして、ちゃんと仕事をしたんだからこれは正当な報酬だというふうに開き直られましたけれども、八千八百万ですよ。それで、八千八百万のうち、既に千五百万、大臣は受け取っておられるんです。私、千五百万で十分だと思いますよ。完全に勝訴した代理人の弁護士報酬は八百万、完全に敗訴をして、そして控訴審で一回しか期日のない大臣の報酬の残額が七千三百万。これは余りにも法外で、この法外な部分について虚偽だと疑うのは、通常の弁護士だったら皆さんそう思われると私は思います。

 そして、そのおかしさを全く大臣は認識をされずに開き直っておられますけれども、もう一度言いますよ、強制執行を受けて債権を差し押さえられたんです。差し押さえられた後に、差し押さえを受けた債務者の代理人である、弁護士である大臣が、自分のとても高い法外な、しかも支払うことができないことが誰にもわかっているような報酬債権でもって、それを債権者から差し押さえられた命令書が来た当日に、依頼者とともに公証人役場に行って公正証書にして差し押さえに参加をしていった。そして、それだけではなくて、自分が代理人を務めている債務者の、また債権者の代理人にもなって、自分が代理人になっている債務者の債権を差し押さえる。複雑ですけれども、二重にも三重にもおかしいんですよ。

 弁護士百人に聞いたら、九十九人がこんなのおかしいと答えます。九十九人答えますよ。民主党の辻先生も、階先生もいらっしゃいませんけれども、多分おかしいと思っていらっしゃいます。百人のうち九十九人、おかしいと思わないのは多分大臣一人ですよ。

 これを全くおかしいと思われない、その感覚が法務大臣としてもおかしいし、弁護士としてもあり得ないと私は思うんですが、いかがですか。(発言する者あり)

小林委員長 小川大臣、簡潔に。

小川国務大臣 まず訴額が十八億四千万円で、報酬規定に当てはめれば、そうした一審が四千万、五千万、両方で八千万になるという数字が出ることは委員もお認めいただいたと思うのでございます。私は、依頼者の方から、報酬規定どおりでいいからとにかく小川さんやってほしいということを依頼されたので、この事件に着手したわけでございます。

稲田委員 報酬規定どおり報酬が請求できたら、弁護士みんな左うちわですよ。そんなことはやらないんです。事件の難易だとか、それから勝敗だとか、そして、一審で完全に負けて控訴に行って、新たな主張もないのに四千万の着手金を請求する、そんな弁護士、私は日本じゅう探しても大臣以外見当たりません。

 お伺いをいたしますが、八千八百万のうち七千三百万を支払ってもらっていないということで、公正証書にしてファーイースト社の債権を差し押さえられましたね。そのときは、まだホテルあたみ百万石の明け渡し訴訟の控訴審の継続中なんです。ですから、まだ控訴審が継続している間の事件の依頼者に対して、大臣は公正証書で強制執行の申し立てをされたことになります。そうしますと、依頼者の経済的利益にも反する、そして、依頼者に対して強制執行を申し立てている、まさしく弁護士職務基本規程二十八条二号、四号に違反する典型的な利益相反行為なんです。

 しかし、大臣は同意があったからいいんだとおっしゃっています。普通は同意しませんよ。大臣の七千三百万もの弁護士報酬でもって強制執行されることについて同意しないはずなのに、どうして依頼者であるファーイースト社は同意したんですか。

小川国務大臣 まず、報酬のとり方についての御指摘がございました。私の弁護士業務をやっていての報酬に対する考え方を言わせていただきますと、私自身は、一般の方が来られたときの法律相談は無料でやっております。それから、そうした中で訴訟をすることが必要な場合には、私が知っている弁護士に、きちんと報酬額も決めて依頼してということで、私自身は事件を受任しないで他の弁護士に依頼して、相談者の適切な解決に向けて努力しておるわけでございます。

 ただ、それだけですと全く無収入になってしまいますので、私は、企業ベースで、企業の方、依頼者の方がきちんと弁護士の報酬規定どおりでいいといういわば計算をしてくるような依頼者に対しては、きちんと報酬規定どおりでいいですねということを確認して、それで受任して仕事をしております。

 まさに今回のケースは、そうした意味で、企業ベースで、規定どおりの報酬でいい、それでもやってほしいという依頼者からの申し出があったので引き受けたわけでございまして、決して、全て何が何でも規定どおりの報酬を取っているというわけではございませんから、百人中九十九人以外の、百人中の一人の例外的な弁護士であると私は思っておりません。

 次に、利益相反の話がございました。

 F社に対する差し押さえといいますが、これはF社に対する利益のためにやったことなんです。すなわち、さっきも言いましたように、相手方がF社の預金や売掛金を差し押さえしてきた、このために、F社が従業員に対する賃金を払えない、熱海の業者に対する支払いができない。だから、それを関連会社が、その資金を蓮村不動産が急遽F社に七千万円を貸し付けるという、この一連の行為の中で、F社の利益のために、F社の依頼に基づいてやっておることでございますので、委員が指摘するような利益相反行為ということには全く当たりません。

稲田委員 大臣、私の質問を聞いて答えてくださいよ。私が利益相反と言ったのは、蓮村不動産の話をしているんじゃないですよ、大臣の弁護士報酬を、強制執行する相手が、大臣が現在進行中で事件を請け負っている依頼者に対して強制執行しているじゃないですか、そして、大臣の強制執行によって、依頼者であるファーイースト社の利益相反になるじゃないですかという意味での、大臣の報酬請求債権と依頼者との間の利益相反行為を問題にしているんです。どうして同意したんですか。

小川国務大臣 それは、私は報酬債権の債権者ですから、これは利益相反ということではございません。

稲田委員 大臣、弁護士職務基本規程を読み直してくださいよ。自分の事件継続中の依頼者に対して強制執行することは利益相反なんです。そして、その中身がその依頼者である債務者に対する債権なんですから、利益相反行為じゃないですか。

小川国務大臣 依頼者の方も、この差し押さえされた債権の中に配当で参加して、先生の報酬もその中から一部取ってくださいという依頼者の依頼でもございます。

稲田委員 だから、大臣、利益相反行為ですよ。典型的な、弁護士職務基本規程二十八条二号、四号に違反する利益相反行為ですよ。違うんですか。

小川国務大臣 違います。

稲田委員 どうして違うんですか。

小川国務大臣 ですから、依頼者の利益のために依頼者の依頼によって行っているわけでございますから、委員が指摘されるような利益相反行為には当たりません。

稲田委員 だったら、二十八条の二号には、受任している他の事件の依頼者または継続的な法律事務の提供をしている者を相手方とする事件、まさしく、この公正証書で巻いているあなたの報酬債権というのは、依頼者に対する債権じゃないですか。そして、あなたの報酬債権が満足を受ければ、依頼者の取り分は、取り分というか、もとに残る分は減るわけですから、利益相反行為じゃないですか。

小林委員長 今、両方でその解釈を闘わせているわけですけれども、一応、稲田さんの質問はもう皆さんわかっている。大臣の答弁は、それが普通だったら利益相反になるかもしれないけれども、依頼者に頼まれてやったということによって利益相反ではないというふうに大臣は回答していらっしゃる。それを踏まえて、そういう大臣の解釈について、さらに質問されるのかどうか。

稲田委員 今の委員長の整理だったらいいんですよ。二十八条の二号に当たらないというんじゃなくて、当たるけれども、利益相反だけれども、同意を得ているからいいというんだったら、それは私は納得しますよ。同意を得ているんでしょう、債務者がそれでいいとおっしゃっているんですから。それでよろしいですね。

小林委員長 債務者からやってくれとむしろ頼まれたということです。

小川国務大臣 当たるけれども除外されるという言い方と、同意を得ているから初めから当たらないという言い方は、ちょっとニュアンスが違う。私は、同意を得ている以上、初めから当たらないと言っているわけです。委員は、当たるけれども除外されていると。結論的には同じかもしれませんが、ちょっとニュアンスが違います。

稲田委員 結論は同じなんです。言い方が、利益相反だけれども、同意を得ている場合はこの限りでないと書いてあるので、私はそういう質問をしたんですが、大臣は、同意を得ているんだからそもそも当たらない、そういう趣旨で御答弁をされたということですね。

 蓮村不動産の七千万の債権による差し押さえも一緒なんです。本来、大臣が強制執行により弁護士報酬の配当を受ければ、蓮村不動産の強制執行による配当は、その分減りますよね。ということは、大臣と蓮村不動産も利益相反なんです。にもかかわらず、蓮村不動産の代理人に大臣がなられて、公正証書もつくり、強制執行もしている。これは利益相反になるんじゃないですか。

小川国務大臣 ですから、ファーイーストも蓮村不動産も含めて、全部、合意の上でやっていることでございますので、この蓮村不動産との関係でも、蓮村不動産の合意の上でやっていることでございますので、利益相反には当たらないと考えております。

稲田委員 ですから、今、大臣とそのファーイーストは同意があって利益相反じゃないと。大臣と蓮村不動産との間も、蓮村不動産がいいと言っているから、本来どちらかの取り分が減るわけですから利益相反なんだけれども、相手がいいと言っているからいいんだとおっしゃっているわけです。

 まだあるんですよ。蓮村不動産は、大臣の依頼者のファーイーストの債権に強制執行していくわけですから、蓮村不動産と大臣の依頼者であるファーイースト社は利益相反なはずなんです。利害が対立するんですね。ところが、大臣は両方の代理人を務めておられるんですね、両方の代理人を務めていらっしゃる。これも弁護士職務基本規程二十八条三号に違反すると思いますが、いかがですか。

小川国務大臣 ですから、何回も申し上げましたように、ファーイーストが他から差し押さえを受けて、従業員の人件費を払えない、熱海の業者に対する代金の支払いができないから、だからそのお金を貸すという、この一連の手続の中でやっておるわけでございまして、いわば、この七千万円を無担保で緊急に融資を受けるという、ファーイーストに大変に大きな利益のためにやっていることでありまして、その中で、当然ファーイーストの承諾のもとに私は蓮村不動産の代理もしたということでございます。ですから、委員の指摘は当たらないと思っております。

稲田委員 もう一回確認しますけれども、大臣の報酬債権で強制執行をしていくことは、本来なら、大臣と係属中の依頼者であるファーイーストとの間は利益相反行為に当たる。そして、大臣とそれから大臣が代理人をしている蓮村不動産も、競合して差し押さえして、どちらかが取ればどちらかの取り分は減るという意味で、利害対立、利益相反に当たる。そして、大臣の依頼者であるファーイーストと、そして大臣がまた代理人をやっている蓮村不動産との関係も、その蓮村不動産が依頼者の財産を強制執行していくわけですから、利益相反に当たる。

 三つの場面において、客観的には利益相反に当たることは認められた上で、同意があるからいいんだ、そういう意味ですね。

小川国務大臣 ですから、委員は、利益相反に当たるけれども同意があるから除外されるという言い方をされますけれども、私は、同意があるから初めから当たらないと言っておるわけでございます。

稲田委員 結果としては同じですね。ということは、結局みんなぐるなんですよ。蓮村不動産もファーイースト社も大臣も、その三者共通の利益があるんです。三者共通の利益があるから、本来なら利益相反に当たる行為を、みんなが同意しちゃっているんです。大臣の七千三百万、蓮村不動産の七千万、二つ合わせて一億四千三百万の大きな債権でもってファーイースト社の債権に強制執行していくことに、三者共通の利益があるから同意しているんです。

 この三者共通の利益が一体何なのか、お答えください。

小川国務大臣 三者が共通の利益があるというのは、まさにそのとおりでございます。まさに、強制執行、差し押さえとなれば、それぞれが法律的に認められたその法律的な手続をとって、それぞれがより多く債権回収を図る、あるいは自分の利益を図るというのが、まさに債権回収の、いわば修羅場におけるテクニックでございまして、あくまでも法律の手続を正当に行った上での闘いでございます。

稲田委員 私の質問は、三者共通の利益は何ですかと。本来なら、こっちの取り分がふえればこっちの取り分は減るという利害対立している関係なのに、ファーイーストと蓮村不動産と大臣は、それぞれが、いいんだと。それぞれの取り分がふえれば、取り分が減る、そういう利害対立になってもいいんだ、でもこれで強制執行していこうという、三者共通の利益があるわけでしょう、それは何ですかという質問なんです。

小川国務大臣 それは、相手方がひとり占めできる債権をひとり占めされることによって、ファーイーストが、蓮村不動産あるいは私に対する債務が丸々残ってしまうということであります。

 ですから、それぞれが平等な債権でありますから、債権額に応じた案分配分で弁済を持っていただくことが、ファーイーストの利益でもあるし、一部弁済を受けられる蓮村不動産、私の利益でもあるということでございます。

稲田委員 本来ならこの登場人物四者がそれぞれに利害が対立する場面なのに、今の大臣の説明は、まさしく原告対あと残りの三者という利益の分け方、そして、その共通の利益は、裁判に勝訴して、勝訴判決でもって強制執行してきた原告の取り分を減らして自分たち三者のところにどれだけ多く残すか、ここが共通の利益ですね。

小川国務大臣 それは当たり前のことですよ。

 ただ、債権者が、優先権がないんですよ。優先権があって、優先的にとれる、法的に全部独占できる権利を阻害したのなら問題になるかもしれませんけれども、優先権がない、同じ一般債権同士のいわば債権回収の争い方ですから、法律上認められた範囲で、それぞれが法律手続にのっとって、それで債権額に応じた案分配分をするということを求めるのは、これは至極当然のことだと思います。それをおかしいと言うのは、むしろ、おかしいと言われる方の方が私はおかしいと思いますけれども。

稲田委員 いや、その感覚が、大臣、もう事件屋みたいになっていますよ。事件屋の感覚じゃないですか。

 本来なら、四者それぞれが利害対立をして、それぞれが自分の主張をしていって、それぞれが対立しながら強制執行していく、債務名義を得て、していくというのであるにもかかわらず、大臣は、とにかく原告の勝訴判決による強制執行の取り分を減らして、自分たち三者、同意するって、もうぐるですよ、蓮村不動産もファーイーストも大臣もですね、一体となって、この三者合計でできるだけたくさん取り分を残そうと、それが共通の利益でしょうが。

小川国務大臣 私と蓮村不動産がいわゆる同じ財布を持っているわけではありません。ファーイーストはファーイースト、私は私の、それぞれの立場でございます。

 ただ、相手方という存在を一つの起点にすれば、蓮村もファーイーストも私も、相手方に対する関係では共通だねというところのまとまりはありますけれども、いわゆる経済的な収支といいますか、そういうものは全く別でございます。

稲田委員 今大臣が認められたように、相手方を起点として、自分たち三者でできるだけたくさんお金を残そうということが共通の利益だということなんですよ。

小川国務大臣 ですから、私の債権も相手方の債権も、同じ平等な債権なんですよ、同じ一般債権で。それを相手方がひとり占めにする、されるのを指をくわえて待っていることはないんで。相手方が法律手続に従って差し押さえをしてきたと。では、私も一人の正当な債権者として、同じように差し押さえをしたということで、ただ、それだけでございます。

稲田委員 だからぐるなんですよ。ぐるで、相手方を起点にして、相手方の取り分をできるだけ減らして、自分たち側にたくさん残そうと、そういうことでこの強制執行に入っていったんです。だから大臣の報酬は高ければ高いほどいいんですよ。本来、報酬は高ければ高いほど依頼者の不利益なんですけれども、この場合に限って、大臣の報酬は高ければ高いほど、その分、自分たち三者の中に取り込める分がふえるんですよ。

 だから、普通の依頼者なら、裁判に負けて、いきなり八千八百万も報酬債権で公正証書に巻くなんていったら怒りますよ。怒らないということは、怒らない理由があるんです。大臣の報酬が高ければ高いほどいいから、報酬規定どおり、完全敗訴しているにもかかわらず、控訴審になって一回しか出ていないにもかかわらず、八千八百万という報酬規定どおりで公正証書を巻いて、千五百万払ってもらった残り、それを強制執行していった、そうじゃないんですか。

小川国務大臣 ですから、報酬規定どおりということは、報酬規定どおりでやったわけであります。報酬規定の中には、さらに増額してもいいという規定がありますけれども、増額はしていません。

稲田委員 私の質問に答えていただきたいのは、今の構図からいきますと、債権者原告対大臣、蓮村不動産、ファーイースト、この二つのグループに分かれて、そして自分たちの取り分をたくさんとろうとするためには大臣の報酬は高ければ高いほどいいので、だから、報酬規定どおりの債権なんて、この事案では考えられないような高い報酬を設定して、公正証書にしたんじゃないんですかという質問なんです。

小川国務大臣 ですから、報酬額が高いなんというのは、争う金額が高いんですから。時価でいえば、四十億円ですから。訴額だけでも十八億四千万円なんです。それに、パーセンテージで当てはめた報酬規定でいけば、そういう高い数字になってしまうんですから。

 だから、高いといっても、それは弁護士の報酬は争う訴額を基準にして算定するということから出てくる結果でございます。

稲田委員 もう何度聞いても同じなので、これ以上お伺いしませんけれども、今の構図でわかるように、大臣の報酬は高ければ高いほど、利益は、ファーイースト社にとっても、蓮村不動産にとっても、大臣にとっても、原告の取り分を減らすという利益があるんです。しかし、こういうことを強制執行妨害というんですよ、大臣。

 そして、このファーイースト社というのは、いろいろと、さまざまなおかしなことというか、あり得ないことをされているんですね。このファーイースト社の破産管財人の平成二十三年十二月十六日付の報告書によりますと、破産手続の一環として、ファーイースト社に対して保全命令が出される前日に、ファーイースト社から株式会社MARJに対して、ファーイースト社の貸付先三社に対する債権を約二千万円で譲渡したということです。

 大臣、これについて相談に乗っておられますね。

小川国務大臣 全く知りません。

 私は、裁判の訴訟行為を受任しただけでありまして、会社の経営とか会社の監査とか、そういったことは全くやっておりません。ですので、知っていますねという御質問ですが、全く知りません。

 なお、保全命令ということがございましたけれども、今回の破産は、ファーイースト社がみずから申し立てした破産ではなくて、債権者がファーイーストの知らないところで申し立てしたものでございます。ですから、そのような破産の手続が進行しているというのは裁判所から決定通知が来て初めて知ったわけでございますので、いわば破産ということを意識していない段階で行った行為で、会社の整理に伴う通常の業務であろうというふうに私は思っております。

稲田委員 あと、同じく報告によれば、ファーイースト社は、一審に敗訴をした平成二十二年二月以降、まだ大臣が代理人としてさまざまな相談にも乗っておられて、一緒になって公正証書を巻いて、強制執行手続も入っておられるころですね、そのころ、使途不明金の出金を多数しているということを破産管財人の報告書の中に記載いたしております。当時のファーイースト社の代理人は大臣ですよ。そして、先ほども言いましたように、保全命令が発せられた後に、預金から千六百六十三万四千七百五十五円も引き出しております。

 ファーイースト社のそういうずさんなといいますか、使途不明金について大臣は御存じでしたか。

小川国務大臣 ですから、私は、ファーイーストの会社の経営とか金銭の出納とか、そうした会社の運営の中身に関することについては全く関知しておりませんし、知りません。また、その使途不明金がある云々というのは、委員が言っておられても、何を言っているのか、私は皆目見当がつきません。

稲田委員 でも、先ほど来の大臣のさまざまな御答弁を聞いておりますと、大臣とファーイースト社、そして大臣と蓮村不動産は非常に密接な関係で、大臣は、裁判を起こされて、明け渡しの一審判決が出て、そして差し押さえをされた、だから、従業員にお金が払えないとか、熱海のいろいろな会社に対してお金が払えないとか、そういうところまで心配をして、そして七千万を蓮村不動産から借りて、そして払ったことに何の問題があるんだというふうにおっしゃっているわけですから、今大臣の御答弁になった、自分の受け持っている訴訟のこと以外は知らなくて、ファーイースト社の経営状態とかそういう問題についてはほとんど知りませんというのはおかしいんじゃないですか。

小川国務大臣 その七千万円の蓮村からの貸し付けとかそういったものは、その直前に相手方から差し押さえという、いわば私の訴訟代理権で受任した業務に密接に関連する差し押さえという行為を受けた、そのことに関連してのさまざまな協議をしただけでございまして、そういった裁判手続に関係しないところでの会社の業務、会社の出納、経理、監査、私は一切行っておりません。弁護士の業務も通常そういうものだと思います。

稲田委員 七千万の債権も、五日後に返すという約束でしょう。本来、五日後に返すなんて、これだけ業務内容も悪くて、大臣の報酬すら未払いになって、従業員にもお金も払えない、そして七千万借りて五日後に返すと。五日後に返す当てなんか本当にあったんですか。

小川国務大臣 これは、あくまでも弁済期をいつと定めるかという話でありまして、その弁済期が来て初めて強制執行ができるという手続に乗るために弁済期をそのように定めたわけでございまして、五日後に現実に債権の弁済がなされるかどうかということとは直接、同じでなければならないというものではありません。

稲田委員 もう質問時間が終わりましたからやめますけれども、もう全てが、まさしく事件屋そのものなんですよ。

 そして、この七千万のお金は公証人役場で現金で払うと。スーツケースに入れて現金で持っていったのかどうかわかりませんけれども、法外な弁護士報酬、そして七千万、返す当てのない、弁済期を五日後と決めた、現金で持ってきた七千万、それらを公正証書に巻いて、強制執行して、全て、ファーイースト社も、そして大臣も、蓮村不動産も、共通の利益でもって原告の強制執行を阻害していく。

 これはまさしく私は強制執行妨害罪に該当する可能性の極めて高い、そして、そのような行為を法務行政のトップにおられる大臣がなさっていて、破産管財人から大臣は、弁護士報酬虚偽の、異議の裁判を起こされる可能性もある。

 私は、弁護士としてもおかしい、そして政治家としてもおかしい、ましてや法務大臣としての資格はないと思います。このことを申し上げて、私の質問を終わります。

小林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十六分散会


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