衆議院

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第8号 平成24年6月15日(金曜日)

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平成二十四年六月十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小林 興起君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 黒岩 宇洋君

   理事 階   猛君 理事 辻   惠君

   理事 樋口 俊一君 理事 稲田 朋美君

   理事 棚橋 泰文君 理事 大口 善徳君

      網屋 信介君    井戸まさえ君

      石津 政雄君    江端 貴子君

      大谷  啓君    大西 孝典君

      大山 昌宏君    加藤  学君

      川口  浩君   菊池長右ェ門君

      京野 公子君    桑原  功君

      小室 寿明君    橘  秀徳君

      玉置 公良君    中林美恵子君

      中屋 大介君    橋本  勉君

      初鹿 明博君    藤田 大助君

      皆吉 稲生君    向山 好一君

      森山 浩行君    山田 良司君

      湯原 俊二君    河井 克行君

      城内  実君    北村 茂男君

      柴山 昌彦君    橘 慶一郎君

      平沢 勝栄君    森  英介君

      柳本 卓治君    園田 博之君

      中島 政希君    横粂 勝仁君

    …………………………………

   法務大臣         滝   実君

   法務副大臣        谷  博之君

   法務大臣政務官      松野 信夫君

   文部科学大臣政務官    城井  崇君

   最高裁判所事務総局人事局長            安浪 亮介君

   最高裁判所事務総局刑事局長            植村  稔君

   最高裁判所事務総局家庭局長            豊澤 佳弘君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    舟本  馨君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  新井 英男君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    三浦  守君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    青沼 隆之君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  石井 忠雄君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  高宅  茂君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    尾崎 道明君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           常盤  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           石井 淳子君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十五日

 辞任         補欠選任

  大山 昌宏君     菊池長右ェ門君

  勝又恒一郎君     中林美恵子君

  橘  秀徳君     初鹿 明博君

  玉置 公良君     江端 貴子君

  藤田 大助君     山田 良司君

  北村 茂男君     橘 慶一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  江端 貴子君     橋本  勉君

  菊池長右ェ門君    大山 昌宏君

  中林美恵子君     湯原 俊二君

  初鹿 明博君     橘  秀徳君

  山田 良司君     藤田 大助君

  橘 慶一郎君     北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本  勉君     玉置 公良君

  湯原 俊二君     石津 政雄君

同日

 辞任         補欠選任

  石津 政雄君     向山 好一君

同日

 辞任         補欠選任

  向山 好一君     網屋 信介君

同日

 辞任         補欠選任

  網屋 信介君     森山 浩行君

同日

 辞任         補欠選任

  森山 浩行君     勝又恒一郎君

    ―――――――――――――

六月十四日

 民法の差別的規定の廃止・民法改正を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一七七三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一七七四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一七七五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一七七六号)

 同(志位和夫君紹介)(第一七七七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一七七八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一七七九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一七八〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一七八一号)

 公正な証拠開示の法制化に関する請願(阿部知子君紹介)(第一七八二号)

 同(重野安正君紹介)(第一七八三号)

 同(服部良一君紹介)(第一七八四号)

 民法を改正し、選択的夫婦別氏制度の導入を求めることに関する請願(永江孝子君紹介)(第一八一六号)

 同(野田聖子君紹介)(第一八八七号)

 警察・検察の取り調べの全面可視化及び検察の手持ち証拠の全面開示に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八七五号)

 同(笠井亮君紹介)(第一八七六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一八七七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一八七八号)

 同(志位和夫君紹介)(第一八七九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一八八〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一八八一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一八八二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一八八三号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一八八四号)

 同(中川治君紹介)(第一八八五号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(大西孝典君紹介)(第一八八六号)

同月十五日

 公正な証拠開示の法制化に関する請願(中島隆利君紹介)(第二〇六四号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第二二四一号)

 同(辻惠君紹介)(第二三六六号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二〇六五号)

 同(笠井亮君紹介)(第二一三九号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一四〇号)

 同(柳田和己君紹介)(第二一四一号)

 同(渡部恒三君紹介)(第二一四二号)

 同(笠井亮君紹介)(第二二四二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二四三号)

 同(松木けんこう君紹介)(第二二四四号)

 同(笠浩史君紹介)(第二三六七号)

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(熊谷貞俊君紹介)(第二〇六六号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二一四三号)

 同(横粂勝仁君紹介)(第二一四四号)

 選択的夫婦別姓の導入など民法の改正を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第二一三八号)

 児童買春・児童ポルノ禁止法改正問題に関して、拙速を避け、極めて慎重な取り扱いを求めることに関する請願(渡辺義彦君紹介)(第二二四五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

小林委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長舟本馨君、総務省行政評価局長新井英男君、法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省民事局長原優君、法務省刑事局長稲田伸夫君、法務省矯正局長三浦守君、法務省保護局長青沼隆之君、法務省人権擁護局長石井忠雄君、法務省入国管理局長高宅茂君、公安調査庁長官尾崎道明君、文部科学省大臣官房審議官常盤豊君、厚生労働省大臣官房審議官石井淳子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小林委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局安浪人事局長、植村刑事局長及び豊澤家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井戸まさえ君。

井戸委員 おはようございます。

 まずは、滝大臣、御就任おめでとうございます。滝大臣に対しましての最初の質疑ということで、私もとてもうれしく思います。

 まずは、人権の問題についてから伺いたいと思います。LGBTの人権です。

 大臣は、LGBTという言葉を御存じでしょうか。

滝国務大臣 総括的な用語のようでございますけれども、個別のことはもちろん存じておりますけれども、総括的にそういうような話を記憶しておりません。

井戸委員 LGBTというのは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字になっています。ちょうど今月はLGBTプライド月間で、世界各地でパレードや集会などのイベントが行われています。

 LGBTは、長い間、恥ずかしいこととして差別や抑圧を受けてきました。そこで、当事者の方々が、自己の性的指向や性自認に誇りを持つということでプライドという言葉が使われていますが、逆にプライドを傷つけられる場面も少なくありません。

 先日、「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」の方々から、地方公務員の適性試験で性的指向や性役割に関する質問が行われている現状を伺いました。MMPIという試験なんですけれども、二〇一〇年、ある県の職員採用上級試験の二次試験で、質問項目に、同性に強く引かれる、異性といちゃいちゃすることは楽しい、性のことで家庭内で問題を起こしたことがある、女性に対しましては、女に生まれてよかったと思っている、男性に対しては、女に生まれたかった、性のことで悩んでいないなどの項目に、イエス、ノー、どちらでもない、この三択で答えるという質問があったということです。

 この試験が職員採用の適性試験としてふさわしいかどうかという問題もあるんですけれども、受験をした性的マイノリティーの方々は、とても傷ついて、不安を抱かれたと聞いています。

 この試験を行った県は、法務省などの助言で、今年度から改めると伺っています。このような試験は、ほかの自治体職員、警察官や教員採用でも行われているようですけれども、その実態はわかっておりません。

 人権擁護、啓発活動を所管する法務省には、実態の把握はもちろんなんですけれども、性的マイノリティーの人権侵害が行われないように、しっかり対応していただきたいと思っています。

 大臣のこの問題についての御見解と、今後の取り組みについてお伺いします。

滝国務大臣 今の御指摘の試験については、不用意にそういうことを導入することがどれだけ人を傷つけるか、こういうことについて、やはり認識が薄かったんだろうと思います。

 そういうことは起こりがちでございますから、法務省としても、その都度、こういう問題がありましたよということはキャンペーンをしていかなければいけない、こういうふうに思っております。

井戸委員 ぜひよろしくお願いします。秋にはシンポジウムなんかも予定をされていると伺っています。こうした取り組みに関しても積極的によろしくお願いいたします。

 近年、法や制度は性やライフスタイルに中立であるべきだとして、パートナーシップ婚や同性婚を法的に認める国もあります。そして、性的マイノリティーへの人権についても改善がされています。オバマ大統領が同性婚を認めるというようなことで大統領選も戦っていく。アメリカなんかはそれが争点になる国ではありますけれども、同性婚というよりは、私は、メッセージというのは、やはり多様な生き方を認めていこう、そういったことにすごくあるのだと思っています。

 我が国では、婚外子相続差別撤廃など、民法改正がたなざらしになっているところがあります。去年の民法の一部改正において、親権の一時停止とか面会交流、養育費の取り決めなどが明示をされたものの、九六年の法制審の中から、本来だったらば全部それは法改正という形で結実しなければならなかったんですけれども、段階的に取り出しながら改正されていますけれども、次は、ぜひとも婚外子相続差別をやっていただきたいと私は思っているんですが、大臣の御見解をお伺いいたします。

滝国務大臣 婚外子の相続上の問題、これは大きな関心を呼んできたと思います。

 今、先生の御指摘のように、課題として残っている問題について、どうやってこれを国民が全般として認識をし、かつ受け入れることができるかどうか、そんなことが背景にあるものですから、民法改正といってもなかなか進まないというのが現状だろうと思います。社会一般がそういうことについての認識を高めるような、そんな状況をつくり出していくということも必要なことだろうと思っております。

井戸委員 婚外子相続差別に関しましては、高裁レベルでは違憲の判決が続々と出ています。こうしたことを待つのではなくて、やはり国としてもしっかりと対処をしていかなければいけない問題だと思っているので、引き続き、積極的なお取り組みをよろしくお願いしたいと思っています。

 続きまして、嫡出推定規定と、性別変更後に法律婚した夫婦のAID出生子の件について質問していきたいと思います。

 現在、法務省は、夫婦の子としての届け出があれば、第三者からの精子提供、いわゆるAIDというんですけれども、AIDであっても夫婦の子と認めています。一方で、性別変更後に法律婚をした夫と妻がもうけた子については、戸籍の身分事項に性別変更した事実が記載してあるために、生物的な親子関係はないとして、婚外子として扱っています。法律婚を認めながら、戸籍上は未婚の男女の子として扱っていて、父親を空欄にしています。

 この問題については、昨年の二月二十五日の予算委員会第三分科会でも質問いたしましたけれども、状況が変わってきているので、法務省並びに厚生労働省に伺っていきたいと思っています。

 ことし三月に、性同一性障害の男性が、性別変更後に法律婚をして第三者の精子提供でもうけた子供を婚内子として認めるよう、戸籍訂正の審判を東京家裁の方に申し立てています。このケースは二〇一〇年一月に大きく報道されましたので、御記憶の方も多いと思います。

 当時、千葉法務大臣が、法整備が必要なのか、解釈をもう一度整理し直すのか、できるだけ早く検討、議論しなければならないと思っていると述べ、見直しを示唆されたのですが、その後、親子法制の先行措置は生殖補助医療の行為規制との不整合を招くおそれがあるとして、千葉大臣から当時の長妻厚生労働大臣に、生殖補助医療の行為規制の検討を求める文書が手交されています。

 法務省の政府参考人に伺いますが、二〇一〇年に千葉大臣が厚生労働省の生殖補助医療の議論を待ちたいとの見解を示されて二年余りが経過しましたが、法務省内ではこの件に関しましてどのような検討をされたのか、伺いたいと思います。

原政府参考人 お答えいたします。

 生殖補助医療により出生いたしましたお子さんの法律上の親子関係の問題につきましては、その前提となります生殖補助医療行為に関する規制のあり方、どのような医療行為が許され、どのような医療行為が許されないか、こういう問題と密接に関連する問題でありますので、行為規制の問題と切り離して検討することは困難であるというふうに考えております。

 そういう意味で、今委員から御紹介いただきましたように、千葉法務大臣から厚労省に対して申し入れをしていただいたわけでございまして、私どもとしては、引き続き、関係機関の御理解、協力を得て、この問題を検討していきたいというふうに考えております。

井戸委員 では、今度は厚生労働省の政府参考人に伺いたいと思います。

 千葉大臣の文書あるいは法務省からの検討の要請というのは、厚生労働省でどのような扱いになり、どのような検討が進められてきたのでしょうか。

石井(淳)政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のように、確かに、当時の千葉法務大臣から当時の長妻厚生労働大臣に対しまして、生殖補助医療の法整備に関してやりとりがあったと承知いたしております。

 当時の長妻厚生労働大臣からは、本件については一義的に民法上の問題である旨を事務レベルで回答しておくようにということがございましたので、私ども、その指示に従いまして、その旨の伝達をさせていただいたところでございます。

 この問題につきまして、特にAID、非配偶者間人工授精と申しますけれども、平成二十一年には年間三千件以上実施されるなど、既に医療行為として普及をしているところでございます。歴史も長く、六十年を超える歴史もあるということでございます。

 そして、私ども、平成十五年に厚生科学審議会生殖補助医療部会で報告書を取りまとめておりまして、AIDにつきましては、これまでに一万人以上の出生児が誕生しているけれども、大きな問題の発生はないということ、それから安全性などに照らして特段問題があるとは言えないということから、これを容認するとしているところでございます。

 こうしたことから、現時点では、法律上の夫婦の間で精子の提供を受けなければ妊娠できない場合に行われるAIDにつきましては、例えば代理懐胎などとは違いまして、その実施を規制する必要性はないというふうに考えているところでございます。

井戸委員 今、厚生労働省さんの方からは、このことに関しては容認をしているということがありました。しかしながら、法務省の側からいったらば、生殖補助医療に関しての行為規制というのがまだないのでできないというお話だったんですけれども、実際、今おっしゃったとおりに、この生殖補助医療の歴史というのは、戦後、一九四九年に慶応大学病院に始まりまして、先ほど御指摘のように、もう一万人以上の方がいらっしゃいます。

 私も当事者の方からもお話を聞いたんですけれども、結局、AIDを受けても、お父さんは自分のお父さんだと思っている、血縁があると思って育ってきたんだけれども、例えば今だと離婚とかいろいろな問題があるんですよね、そうすると、途中で、実は、自分は第三者、それも誰かわからない方の精子をもらって生まれてきた子だということがわかって非常に悩んだりだとか、また、そこのところがない場合、血液型が違っていたりとかすると、もしかしたら自分は不倫で生まれた子なんじゃないかとか、いろいろなことで出自を知る権利が奪われてしまっているので、悩みが多いということも聞いています。

 こうしたことは、医療的にはそうした大きな問題はないということで先ほどもお話はありましたけれども、法整備が進まないことによってこうした実際にお困りの方たちというのは、また、今年間三千件というのを伺ってちょっとびっくりもしたんですけれども、多分、年々こういった方々の数というのはふえてきていると思うんですね。

 もう随分前に、二〇〇三年に厚生科学審議会の報告が出て、そして同じ年には法制審議会の試案というのも出ているんですよね。そこからもう八年、九年たつわけですから、ここに関しまして何らの法的な整備がされていないというのは、私は問題なんじゃないかなというふうに思っています。

 先ほど、性同一性障害で同じように第三者の精子をもらってお子さんが生まれたケース、このケースの扱いのことも質問させていただいたんですけれども、こうしたところでの扱いの差別というのも、私はもう一つ大きな問題ではないかなというふうに思っています。

 例えば、性別変更していない、通常、いわゆるAIDを受けた方というのは、事実確認ができないから、戸籍窓口で出生届を出すときには、そのまま夫婦の子供として、嫡出子として認められます。ところが、性別変更した人に関しては、女性から男性になっているということが戸籍上わかってしまうので、そうすると、嫡出の推定を受けない。もともと生物的なつながりがないであろうということがそこでわかってしまうので、この子に関して言ったならば、法的婚をしているにもかかわらず、法的婚をしていない婚外子として子供は登録をされる、父親欄は空欄になっていく。

 これは原民事局長に伺いたいんですけれども、例えば、AIDで生殖補助医療を受けられた御夫婦が出生届を出すときに、自分はAIDを受けましたという証明書を出した場合、こうした場合は戸籍の窓口ではどのような扱いを受けますでしょうか。

原政府参考人 今委員が言われたのは仮定の問題でありまして、余りそういうことは考えられないと思いますし、戸籍の窓口でどこまで審査するかという権限の問題もありますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

井戸委員 いや、仮定の問題ではなくて、これだけ今、年間三千件というお話もあったので、いろいろな考え方の方がいらっしゃいますよね。嫡出子として届け出をしたいという方もいれば、そうじゃないという方もいらっしゃると思うんですよ。

 ここに関しましては、小川大臣が副大臣時代、二〇一一年の二月二十五日、私の予算委員会の分科会での同じような質問に答えて、形式的に何かが出てきた場合に関して言ったらば、それを嫡出子として認めることというのは、形式はそろわないことになりますよね、逆に言うと。父親であることというのが排除される可能性が出てきた場合には、何らかのことはしなければならないんじゃないかということでお答えをいただいているんです。それは違いますか。もう一回、原民事局長に伺います。

原政府参考人 出生届の受理の段階では、今現在では出生証明書という公的資料がついているわけでございますので、そういう公的証明書で明らかに父子関係がないというふうなものが出る場合であれば、やはりそれは現行の民法の解釈上は難しいということにはなろうかと考えております。

井戸委員 私もかかわりながらやらせていただいた民法七百七十二条、離婚後の懐胎のときには、医師の証明書をつければ嫡出の推定は外れますよね。これも同じように、医療行為をしているわけですから、医師の証明書で嫡出を外すということはできるんじゃないんでしょうか。それがあった場合に関して言ったら、嫡出子ではなくてこれを受理するという形もできなくはないというふうに思うんですけれども、いかがなものなんでしょうか。

原政府参考人 一般的に、嫡出推定が及ぶ場合に、どのような証拠が出てきたときにその推定が及ばないことになるのか、なかなか難しい問題でございまして、今議論になっておりますAIDの問題につきましては、まさに民法七百七十二条制定当時に予定されていない状況を前提にして現行民法が適用があるのかどうかという問題ですので、やはりこの問題については、ちゃんと行為規制を前提にして適切な法整備をすることが法的安定性につながるというふうに思っております。

井戸委員 民法が想定しないケースというのは、ずっと言われてきているわけです。これだけいろいろな問題が指摘をされているのに、想定をしないケースだからといって、逆に言ったら、それは、法改正をしなかったらそうしたところというのは子供たちも含めて救われない状態になっているわけですよね。だから、やはりこれは急ぐ必要があると思います。

 医療行為という名のもとに既成事実がどんどん積み重ねられていっている実態を放置したまま、そして、生殖補助医療の議論、先ほどはそれは認めているというような厚生労働省のお話もありましたけれども、そこを待ってというのは、やはりこれは遅過ぎる。これだけいろいろなことが起こってくると、やはり私は、先ほども言いましたけれども、子供たちの立場からすると、欧米なんか、こういったことが進んだところでいったならば、出自を知る権利というのは当然保障もされていかなければならないし、そうしたこともあるわけですから、ここのところに関してはちゃんとやらなければいけないと思っています。

 例えば、民法が想定していなかったという点でいったらば、二〇〇六年に、凍結精子で懐胎をした、夫の死後に凍結精子を利用してお子さんが生まれたというケースがありまして、この父子関係を認めるかどうかを争った裁判で、二〇〇六年の九月四日、最高裁は認知を認めないという判断を下しました。

 しかしながら、その補足意見として、

 我が国において戸籍の持つ意味は諸外国の制度にはない独特のものがあり、子にとって戸籍の父欄が空欄のままであることの社会的不利益は決して小さくはないし、子が出自を知ることへの配慮も必要であると考える。今後、生命科学の進歩に対応した親子法制をどのように定めるにせよ、今日の生殖補助医療の進歩を考えるとき、その法制に反した、又は民法の予定しない子の出生ということも避けられないところである。親子法制をどのように規定するにせよ、法律上の親子関係とは別に、上記の生殖補助医療によって生まれる子の置かれる状況にも配慮した戸籍法上の規定を整備することも望まれる

と述べられています。

 まさに待ったなしの検討が必要だと思います。この補足意見について、滝大臣、どのように受けとめられますでしょうか。

滝国務大臣 基本的に、これは平成十五年当時、当時の与党の中でも議論をしてきた。ところが、なかなか賛否両論まとまらずに今日まで来ているわけでございます。

 したがって、そんな判決も参考にしながら、再度、各党の中で議論をまとめていくというのが一番大事なことだろうというふうに思っております。

井戸委員 各党で議論も必要なんですけれども、やはりここのところは、実際にもう子供たちがそうした問題に、目の前に本当に置かれている状況というものをぜひとも御認識いただいて、法務省としても積極的な取り組みもお願いしたいと思っています。

 続きまして、松野政務官、初めて今回御就任になりましたけれども、今の議論も聞いた上で、家族法の見直しの必要性に対しての認識を伺いたいと思います。

松野大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 今、滝大臣もお話しされましたように、家族法、いろいろな新しい問題が出ていることは私も承知をしております。生命倫理の問題はなかなか難しい問題でありますけれども、これはこれでしっかりと取り組んでいかなければいけない、そういう大きな課題だというふうには認識しております。

井戸委員 よろしくお願いいたしたいと思います。

 続きまして、ちょっと話題はかわるんですけれども、ハーグ条約の裁判管轄について伺いたいと思います。

 ハーグ条約の実施法案では、管轄の集中という見地から、東京家裁と大阪家裁の二庁に裁判管轄が認められています。

 例えば、沖縄にいる子に関して見てみますと、返還の申し立てがされた場合、子の所在地である沖縄県から千二百キロ以上離れた大阪家裁での審理を受けることになり、金銭的、時間的な負担は極めて大きくなると思います。しかも、沖縄には日本全国の米軍関係者の約半数が集中しており、米軍関係者には国外への転勤が避けられない場合が多くて、沖縄に米軍基地の負担を負わせたがために、返還の申し立ての相手方となる沖縄県民が大きな負担を負うことになります。

 いろいろ検討されて管轄が二庁になったというふうに伺ってはいますけれども、ここに沖縄が入らなかった理由がなぜなのかを伺いたいと思います。

原政府参考人 ハーグ条約に基づきます子の返還申し立て事件、これは条約上も迅速処理が求められております。

 他方におきまして、このハーグ条約に基づく事件を適正に処理するためには、ハーグ条約の内容の正確な理解、それから、これは条約に基づいて実施するわけですので、各国における条約の実施例、特に裁判例とかその運用の実態、それから外国法の内容、こういったものに十分知見を備えた裁判所において処理することが求められる。それから、ハーグ条約の枠組みにおきましては中央当局が非常に重要な役割を持っておりますので、中央当局との連携も考えなければいけない、こういう状況でございます。

 したがいまして、ハーグ条約に基づく子の返還申し立て事件について、適正かつ迅速な裁判を実現するためには、事務処理に当たります裁判所だけでなく、弁護士の皆様も、事例の集積を通じて専門的知見やノウハウ、こういったものを共有していく必要があると思っておりますし、最後に申しました中央当局との連携が十分できるような、その便宜も考慮する必要がある。こういうことから、管轄を集中させて、できるだけその管轄裁判所で取り扱う事件を多くすることが大切であるというふうに考えております。

 我が国がハーグ条約を締結した場合に事件量がどのくらいになるかということで、これは予測でございますが、現時点では、全国的に見ても年間数十件程度であろうというふうに見込んでおりますので、その意味で、やはり管轄をある程度集中しないと、事件処理に必要な事例の集積とか専門的なノウハウの蓄積を図ることは困難であろう。こういったことを踏まえまして、ハーグ条約の実施法案では東京家裁と大阪家裁に管轄を集中したわけでございます。

 沖縄につきましては、どれだけ事件数があるか、なかなか難しいわけでございますが、今申し上げましたように全国レベルでも年間数十件程度でございますので、沖縄に居住する方からこの種の事件、申し立てが相当多くあるというのは余り予測されないのではないか。こういうことから、沖縄について管轄は認めないということにしたわけでございます。

井戸委員 今のお話を聞くと、逆に言うと、なぜ沖縄にしなかったのかなということが、よりそういう思いが出てくるんです。

 というのは、やはりこの事案に対して、例えば国際家事の問題を扱ったりだとか、弁護士さんやそういった方、当事者というのは沖縄に非常に集中している。ハーグ条約の締結国の中で、今までいろいろ言われてきましたけれども、この問題にかかわるのはアメリカ人の方との間が一番多いんですけれども、国際結婚のうちのアメリカ人と結婚する方の七割以上は沖縄の方たちであるということも踏まえますと、やはり沖縄に対して何らかの措置というものが必要なのではないかなというふうに思っています。

 この点に関しまして、最高裁は柔軟な対応が可能という報道がされていますけれども、東京や大阪以外で、例えば沖縄などで管轄が集中した場合、運用上にどのような軽減策がとられていくのか、これをお答えいただきたいと思います。

豊澤最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 委員おっしゃられたような形で東京と大阪の二つの家庭裁判所に管轄が集中するということに仮になった場合の対応につきましては、個々の事件におきまして各裁判体が判断することではございますけれども、事案に応じて、書面によって当事者の陳述を聴取するということ、あるいは電話会議等の利用を図るというようなこと、あるいは家庭裁判所調査官が当事者の居住する場所にまで出張して調査を行う、こういったことなどによって当事者の負担に配慮した運用がなされるものと考えております。

 以上です。

井戸委員 ぜひここはよろしくお願いしたいと思います。

 やはり、軍を抱える沖縄が、ハーグのこの条約に入ることによってそこでまた負担がふえていくようなことがないように、そして、前にも私、ほかの分科会でも言わせていただいたと思いますけれども、軍用機での連れ去りというのも事案として既に起こっているわけです。しっかりとそうしたところも踏まえてこの問題に関しては対応していかなければいけないと思っているので、よろしくお願いしたいと思っています。

 時間的に最後になりますけれども、面会交流について伺いたいと思っています。祖父母との面会交流についてです。

 昨年、私、四月十五日の法務委員会で、離婚届にチェック欄を設けたらどうなのかということと、それをやっていただいて本当にありがたかったと思います。今ちょうど二カ月半なので、その実態はどのような形になっているかわからないですけれども、養育費の受給率のアップによって子供の貧困問題というのは多分飛躍的に変わっていく可能性がありますので、ここをやっていただいて本当にありがたかったんです。

 一方で、祖父母との面会交流、ここについても、ちょうど原民事局長からは、我が国では小家族化、少子化が進んでいて、離婚や再婚も増加している、そして、祖父母や兄弟姉妹などが子供と面会したい、その交流を認めてほしいという、必要性という議論も高まっていることを承知していて、これからまたその議論の行方を見守りながら検討してまいりたいという答弁もいただきました。

 その後、どういうような検討が進められ、この問題について対処されていくのか、原民事局長にお伺いしたいと思います。

原政府参考人 この問題については、委員からたびたび御指摘をいただいているわけでございまして、委員御指摘のとおり、お子さんと父母との面会交流だけではなくして、それまで子を監護してきた祖父母等と子との面会交流というのも、子の利益の観点から考えますと大変重要なことだというふうに考えております。

 その意味で、そういった認識を国民の皆様に持っていただくためにも、今回改正いたしました民法七百六十六条の趣旨というものを十分周知していくことがまず大事ではないかというふうに考えております。

 この問題、諸外国では祖父母との面会交流を認めている国もあるというふうに承知しております。私どもも文献等で基礎的な調査を開始しておりますし、諸外国の法制を調査するための手続を今進めているところでございます。

井戸委員 父母の面会がまず先で、それが進んでから祖父母にというお話かとも思うんですけれども、しかしながら、特に監護をなさっていた祖父母、例えばお嬢さんを亡くされて、おじいちゃん、おばあちゃんが面倒を見ていたのに、それが急に、お子さんが、お孫さんが父親の方に行ってしまうだとか、そういった事例も前にも御紹介させていただきました。祖父母の方々というのは、本当に御高齢になって、こうしたことに関して一刻も早い検討を期待もされています。

 繰り返しのことで恐縮ではあるんですけれども、こうしたことを本当に早く進めていただくことが、今、少子化で子供たちの育ち、これがいろいろな意味で危機に瀕しているとも言われていますけれども、いろいろな人たちがかかわってその育ちを応援していく、そうした法整備になることを私も望んでいますし、それが我が国のとるべき道だとも思っていますので、ぜひともこのことを前向きに進めていただきたいと思います。

 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小林委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 大臣、就任をされて、阪神・淡路のときは消防庁長官としてリーダーシップを発揮された、この法務行政におきましてもリーダーシップを発揮していただきたい、そのことを望むものでございます。

 ただ、本当に、民主党政権になってから七人目の法務大臣。ついこの間、小川前法務大臣に所信をお伺いした、それからまだ三カ月ぐらいしかたっていない、こういう状況でございます。そういう点で、しっかり腰を据えて法務行政に傾注をしていただきたい、こう思う次第でございます。

 まず、人権救済機関の設置についてでございます。

 民主党政権になりまして、この人権救済機関の設置については、もう千葉大臣が所信の挨拶で、政府からの独立性を有する人権救済機関の創設、着実に実現してまいりたいと考えておりますということをおっしゃっていますし、また柳田大臣、江田大臣、平岡大臣、そして小川大臣も、この件につきましては、これはことしの三月二日です、所信の挨拶のところで、政府からの独立性を有する新たな人権救済機関の設置については、これまでの政務三役が築いてきた検討の成果を踏まえ、この政務三役には大臣も入っておられるわけですけれども、国民の理解を得られるような制度の構築を目指し、今国会での法案提出に向け作業を進めてまいります、こういうふうにおっしゃっているわけであります。

 そして、大臣は、今回の所信、六月十二日の挨拶の中で、「政府からの独立性を有する新たな人権救済機関の設置については、これまでの間、国民の理解を得られるような制度の構築を目指し、法案の作成作業を進めてきたところ」ですと。もう法案はできているわけですね。「今国会での法案提出に向け努力してまいります。」こう御発言されているわけです。

 ただ、もう会期末、六月二十一日でございます。本当にこの法案を提出する気持ちがあるのか、お伺いしたいと思います。

滝国務大臣 ただいま大口委員が御指摘のとおり、政府としては、これはもう一貫してこの問題について取り組んでまいりました。そして、その中で、やはり大方の皆さん方の御賛同が得られるような、そんな配慮をその都度その都度、案を見直す中でやってまいっただけに、とにかく、この国会に間に合えば、何とか閣議決定を経た上で提出をしたいという気持ちは強く持っているのが今の状況でございます。

大口委員 いずれにしましても、民主党さん、やると言ったことについてなかなかやれないということがずっとここのところ続いているわけですね。ですから、所信でそういうふうに歴代の大臣が表明している以上、それに対してはしっかり実行していただいて、そして、大いにこの委員会で議論していくということが大事だと思うんですね。

 会期延長をされるということであれば、必ず出すということでよろしいんですか。

滝国務大臣 今、大口委員の方から会期延長という言葉も出ましたけれども、事情が、出すことに応じられるような状況であれば、とにかく出したいということについては変わりはございません。

大口委員 次に、被害者参加人への旅費等の支給のことについてお伺いします。

 第二次犯罪被害者等基本計画において、被害者参加人に対する旅費、日当、宿泊費の支給について検討されているわけですね。

 先日、この件で、全国犯罪被害者の会(あすの会)とそれから犯罪被害者支援弁護士フォーラムから要望を受けました。その要望は、被害者参加人への旅費等の支給について、被害者参加人に対して旅費等を支給する制度を平成二十五年度から実施していただきたい、また、裁判所から直接被害者に支給していただきたい、こういう要望がありました。

 そして、理由として、被害者が刑事裁判に参加できるよう、旅費、日当、宿泊費を支給するということは、犯罪被害者等基本法で定められた犯罪被害者等の権利利益の保護を図るために必要不可欠であるということ。

 それから二番目に、一生立ち直れないほどの精神的ダメージを受けているときに、法テラスなどへの煩雑で事後的な申請手続を経なければ支給を得られないというのでは、被害者参加人はその申請自体ちゅうちょしてしまうおそれがある。被害者参加人の出廷状況を把握している裁判所から直接支給することが最も合理的であり、かつ被害者参加人の権利利益の保護に資する方法と言える。

 また、刑事裁判は被害者のためにもあるということが今や国民の共通の認識だ。そうだとすれば、鑑定人や証人と同様、被害者参加人についても、刑事裁判に必要な存在として、必要な費用について同様の運用をすべきである。

 こういうことでございます。これにつきまして、大臣から御見解をお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 今御指摘のとおり、被害者に対してできるだけ支給しやすい、受け取りやすい、そういう制度をやるならば、そうすべきだというふうに思っております。

 今御指摘のように、例えば法テラスを通じてというような回りくどいことでは、これはなかなか手数がかかる。旅費といっても、わずかな旅費からあるいはまとまった旅費までいろいろあるだろうと思いますけれども、一々遠回りをして支給させていただくというのはいかがなものだろうか。そんなことも含めて、今の御指摘のようなことを中心にして検討してまいりたいと思っております。

大口委員 二十五年度からこれをやるということになれば、今、予算の概算等についても検討されているわけですから、早急に結論を出していかなきゃいけないと思うんですね。今大臣から前向きの御答弁がありましたので、しっかりそれを踏まえてやっていただきたい、こういうふうに思います。

 さて、次に、裁判員制度の見直しについてでございます。

 裁判員法の附則第九条で、施行後三年を経過した場合においては、法律の施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、裁判員の参加する刑事裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十分に果たすことができるよう、所要の措置を講ずるものとするとしているわけですね。

 平成二十一年の五月二十一日から裁判員制度というのは開始をされて、三年が経過したわけでございます。ことしの三月末までで、裁判員裁判の終局判決で三千六百八十五件を超え、補充の裁判員を含めて二万八千七十四人以上が参加をしてくださっていて、一生懸命やっていただいているわけでございます。

 そこで、まず、裁判員制度については、現在、法務省の裁判員制度に関する検討会において、法改正及び運用に係る検討が、また、最高裁の裁判員制度の運用等に関する有識者懇談会において、運用の見直しについて検討されていると伺っております。現在、法務省の検討会においてどのような検討をされているのか、お伺いしたいと思います。

滝国務大臣 これまで法務省の検討会では、前後十回ほどの会合を開いて、検討をしてまいりました。今その論点整理の段階に入っている、こういう状況でございます。

大口委員 論点について、いろいろ指摘されていることについて、これからお伺いしていきたいと思います。

 ただ、検討会で検討しているから、それに任せるということであってはいけないと思うんですね。検討会のメンバーの方は、別に大臣がどのような発言をしようと、みずからの信念に基づいていろいろ議論されているわけです。ただ、やはり大臣の見識として、いろんな論点についてのお考えをこれからお伺いさせていただきたいと思います。

 今回、最高裁が公表しました「裁判員裁判の実施状況について」、これによれば、制度施行から二十四年の三月末までに終局した事件について、裁判員が裁判所に出席した平均日数は四・七、また約八割の事件では五日以内、こういうことで、おおむね、それほど日数は多くなっていない。しかしながら、開始以降、裁判員の平均職務従事日数の推移を見ますと、二十二年一月までが三・五日、二十三年三月末までが四・四日、平成二十四年三月末までが四・七日と、少しずつでありますけれども期間が伸びる傾向になっているわけです。否認事件ですとかあるいは死刑求刑が予想される極めて重大な事件、また、それ以外の事件に比べれば、そういう点では、裁判員選任から判決までの期間が長くなる傾向にあるわけです。

 平成二十二年の鹿児島地裁での夫婦強盗殺人事件、これは第一審無罪ですね、四十日間。昨年、大阪地裁で、パチンコ店放火殺人事件、これは一審死刑、六十日。さらに、さいたま地裁で審理が行われた、本年四月死刑判決が出ました連続不審死事件では、これは審理期間が百日、職務の従事日数が四十七日ということで、裁判員の負担は極めて大きかったのではないかなと思うわけであります。

 法務大臣も、この六月十二日の所信挨拶で、長期に及ぶ事件の審理のあり方において、「裁判員制度については、本年五月にその施行から三年が経過しましたが、裁判員の方々の誠実な取り組みにより、国民の間に定着しつつあります。」こう述べておられるわけでありますが、裁判員制度が真に国民に定着するためには、やはり長期間に及ぶ事件の審理のあり方等の検討、裁判員の負担をできるだけ軽減する施策、これをすることが不可欠だと思うんですね。

 裁判員裁判導入のとき、あるいは今もそれは言われているんですが、審理が長期間かかる重大な裁判は対象から外して、比較的軽い事件から導入すべきである、こういう意見もいまだにあるわけです。しかし、死刑を含む重大な裁判こそ、一般の方々に判断を求め、捜査や検察の立証のチェックをするべきだ、こういう考え方にのっとってやっているわけですね。また、短くすればいいということで、それで逆に、しっかり議論を尽くすことができない、場合によっては、判決を延期してでも議論を尽くすべきだ、こういう御意見もあるわけであります。

 そこで、裁判員の負担についての御認識、それから負担軽減策の検討について、大臣にお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 もともと裁判員裁判というのは重大事件が対象という原則を持っておりますから、そういう意味では、長期間にわたる裁判というのがこれまでの実績でございます。百日間に及ぶ審理をしたということは大変なことだったろうと思って、改めて、裁判員の皆さん方に敬意を表したいと思います。

 それだけに、これをめぐっての議論というのは、どうしたらもっと時間を短縮できるかということで、関係者いずれも、その目標を持って取り組んでいるところだろうと思います。

 ただ、幾ら簡素化するといっても、それは限界がありますので、したがって、百日間に及ぶような裁判について、どうやって負担を軽減できるんだろうかということは、現場の実態に即して、私どもも関心を持って検討してまいりたいと思っております。

大口委員 そこは、法務省もそうでありますし、最高裁も、法改正あるいは運用という点でいろいろな検討がなされているようでありますけれども、しっかりやっていただきたいと思います。

 そういう中で、この裁判員裁判の対象犯罪というのは、現行法では法定刑によって決められているわけですけれども、薬物犯罪や通貨偽造事件など、市民の感覚によって判断を求めるのに適当なのか、こういう問題があります。

 一方、性犯罪について、被害者のプライバシーの観点から、裁判員裁判に適当ではないのではないか、こういう指摘もある。ただ、実際に科される刑罰ということでいえば、市民感覚を反映しているという指摘もあるわけです。

 対象犯罪をどうするかということでこういう議論がなされていますが、これについて、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 御指摘のように、確かに、性犯罪であるとか薬物事件というのは、裁判員の個人的な人生観みたいなものが当然入ってくるわけでございますから、そういった問題、それからプライバシーの問題がかなり濃厚に出てくる結果を持つわけでございますので、そういう意味ではどうなのかという議論があることも事実だろうと思います。

 ただ、こういったものを初めから除外するわけにもまいりませんし、もともと裁判員制度というのは、実際のプロの法曹の感覚と市民感覚とのずれをどうやって補っていくかというところから出発しているものですから、難しいからといってそれは避けて通れない、こんな感じもございます。

 いずれにいたしましても、実績を踏まえて、今おっしゃったように、対象から除外すべきだという意見もあることでもございますし、いや、やはりそれは必要だという意見もありますものですから、両方から検討を慎重に進めていかなければいけない、こう思っております。

大口委員 特に、性犯罪における被害者のプライバシーという問題は極めて重要な問題でございます。そういう点で、さらに、この点についても、いい対策というのを講じていただきたいと思う次第でございます。

 もう一つの問題といたしまして、例えば、犯人性が争われているいわゆる痴漢冤罪、それから過失の有無が争われている交通事犯等、また公訴事実及び犯罪の成立を妨げる理由または刑の加重減免の理由となる事実に争いのある事件における有罪、無罪等の判断は、これは国民の関心が高く、かつ社会的に影響が大きい、被告人が起訴状に書かれている罪を犯したことは間違いないと考えられるかを市民の常識に従って判断する意義が大きいということでございまして、また、公判前整理手続における争点及び証拠の整理において公訴事実に争いがあると認められ、かつ被告人または弁護人から請求のあった事件、こういうことも対象にすべきである、こういう意見があります。

 この対象犯罪を拡大するということについては、もっと積極的に考えていいのではないかと私は思うんですが、大臣、いかがでございましょうか。

滝国務大臣 今御指摘のとおり、重大事件じゃなくても、公訴事実に争いがあるとか、少し広げた方がいいんじゃないかという御意見というのは、日弁連からもいただいているところでもございます。そういう専門家の御意見というのも大変貴重な御提言でございますから、そういったことも含めて、どれだけ広げられるかという、物理的な問題も恐らくあるんだろうと思います。裁判員といっても、確保するというのはそれはなかなか難しい問題でございますから、事件を広げることによってどれだけこなせるかということもこれありという感じはいたしますけれども、せっかくの御提案でございますから、そういう今までの対象範囲に限定せずに検討していくということは必要なことだろうと思っております。

大口委員 次に、裁判員の守秘義務についてでございますけれども、守秘義務違反は罰則がある、守秘義務の範囲が広過ぎる、こういう批判もあるわけですね。ですから、守秘義務に違反しない限り、大いに裁判員についてはお話ししていただく、そのことで裁判員制度の理解も広がるわけです。しかし、話していいことといけないことの境界が曖昧で守秘義務の範囲がわかりにくいということで、何も話せないという方もいらっしゃるわけであります。

 ですから、やはり罰則の対象をもっと限定して、そして境界を明確にするということが大事じゃないかということで、職務上知り得た秘密を漏らす行為、評議の秘密のうち、裁判官または裁判員の意見について、当該意見を述べた者の特定に結びつく形で漏らす行為、裁判員の任務が終了した日から十年が経過する前に事実の認定または刑の量定の当否を述べる行為に限定すべきだ、これは日弁連等からもこういう意見がなされているわけです。

 この点について、今回の見直しを法改正というような中でも検討すべきではないかと思うんですが、いかがでございましょう。

滝国務大臣 守秘義務については、御案内のとおり、三つぐらいの背景があると思うんですね。一つはプライバシーの保護という問題もありますし、それから、裁判の公正さを疑わせるような言動があっては、せっかくの熱心な審理がふいになるという問題もございます。それからもう一つは、やはり裁判員の保護をする、報復だとかそういうようなことが身に及ぶのをできるだけ避けなければいけない、そんな配慮もあると思います。

 しかし、余りプライバシーとか守秘義務にとらわれていると、自由な議論ができないようでは、これまた裁判の目的に反しますから、そこのところは、実態をどれだけ反映できるかということも考慮して、考えて、見直しをしていくものは見直したらいいと思っております。

大口委員 今、三つの理由、守秘義務の理由をおっしゃいました。ですから、そういう理由からしても、ちょっと広がり過ぎているんじゃないか、あるいは境界線が曖昧じゃないか、こう思うわけですね。そこら辺を是正していただきたいということでございます。

 次に、裁判員制度は、一般の人にわかることが求められるわけですね。今回、裁判員制度で、いわゆる調書裁判から法廷でのやりとりが中心となる裁判ということで、わかりやすくいい裁判になる、これが非常に大事なことであるわけです。

 五月二日の最高裁判所長官の憲法記念日を迎えるに当たっての談話において、「法律家の側では、こうした裁判員の高い資質を前提とした過度に詳しい主張、立証が次第に増加し、当初の分かりやすい審理という理念がやや後退しているのではないかという問題も感じます。」こう述べているわけですね。

 最高裁が公表した裁判員等の経験者に対するアンケートの調査結果でも、審理の内容が理解しやすかったという回答が、平成二十一年は七〇・九%、平成二十二年が六三・一%、平成二十三年が五九・九%と、年々低下をしているわけであります。

 そういうことで、わかりやすい審理ということについて、やはりこれから努力していかなきゃいけない。そういう点で、最高裁に、こういう説明のわかりやすさについて、あるいは今どういう状況になっているのか、それに対する対策はどうなのか、お伺いしたいと思います。

植村最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、アンケート結果を見ますと、審理内容の理解のしやすさとか法廷での説明等のわかりやすさというデータが低下しておりまして、これを重く受けとめております。

 さまざまな原因が考えられるところであるとは思っておりますが、原因の一つとして、当事者の方で最初に冒頭陳述をされるわけですが、その内容が非常に細かいものになっているとか、さらに、証拠調べでも供述調書が使われて、場合によっては時間が長くなっているというようなこともあるようでございます。そういう書面を使う審理ということが一つの原因ではないかというふうに考えている次第でございます。

 そこで、公判前整理手続がございますので、そこできちんと事実認定や量刑のポイントとなる事項を整理することが大前提ではございますが、その上で、証拠調べに入った中で、裁判員の方々というのは刑事裁判に初めて参加されるわけでございます、そういった方々に実感を持って証拠の中身をわかっていただくためには、そういう書類ではなくて、例えば、自白事件におきましても、重要な点につきましては可能な限り証人尋問を行う。もちろん、これには訴訟当事者の理解と協力もいただく必要はございますが、できるだけ証人尋問を行って、裁判員の方々が関係者から直接話を聞いていただく、足りないところがあれば裁判員の方から直接質問していただく、そういうような審理が必要ではないかということで、裁判所ではそれに今取り組んでいるところでございます。

大口委員 わかりやすい審理ということについて努力をしていただきたいと思います。

 裁判員裁判では、裁判員の精神的な負担が重過ぎるのではないかと指摘されているわけですね。今、裁判所は、裁判員メンタルヘルスサポート窓口を用意して、二十四時間対応で電話相談、ウエブ相談を行い、本人の希望や症状により、臨床心理士及び心療内科医等による面接、専門医、専門医療機関の案内及び情報の提供を行っているわけでありますが、平成二十四年四月末時点で窓口利用が延べ百五十五件ということにとどまっていると聞いております。二万八千七十四人の方が、三月末ですか、利用されているというには余りにも利用件数が少ないのではないかな。

 そこで、利用しやすいように工夫をしていくということも大事だと思うんですが、最高裁にお伺いしたいと思います。

植村最高裁判所長官代理者 最高裁といたしましては、せっかくつくったメンタルヘルスサポートでございますので、使い勝手をよくしたいと思っているわけでございます。

 何よりもまず、そういうものがあるということを裁判員になった方にお知らせするのが先決だと思っておりまして、裁判員、補充裁判員になった方には、その当日にメンタルヘルスサポート窓口に関するパンフレットをお配りしております。

 そのパンフレットの中には、連絡先はもちろんのこと、具体的にどのようなことが相談できるのかとか、どんな資格を持った人が対応してくれるのか、その利用方法でございますとか、さらには、秘密はかたく守られますといったようなことをお知らせして、御理解をしていただけるように努めております。さらに、最初だけじゃなくて、その後も裁判所から重ねて説明をするなどして周知するようにしております。

 メンタルヘルスサポート窓口は、今委員からも御説明がございましたが、電話とかインターネットで年中無休、これは二十四時間いつでも期限なしで受け付けております。電話料とか相談料もかかりませんので、使い勝手を考慮してそのようなことにしたわけでございますが、そういうものがあることを知らなかったというようなことでは本当に意味がなくなってしまいますので、周知方にさらに努めてまいりたいと思っております。

大口委員 このほか、裁判員裁判制度におきましては、控訴審で裁判員裁判の判決を破棄して一審に差し戻しをするという場合の問題ですとか、差し戻し審の審理についての破棄判決の拘束力の問題でありますとかがあるわけでありますが、それはまた次の機会にしたいと思います。

 次に、ちょっと順番を変えたいと思うのですが、国選付添人制度の拡充について、大臣にお伺いをしたいと思います。

 私も、これは毎回毎回、大臣がかわるたびに質問させていただいているわけでありますけれども、御案内のように、現行の国選付添人制度というのは二〇〇七年十一月一日に施行されたわけであります。その対象の範囲が狭過ぎると言われているわけですね。これは我々が与党の時代につくったという面もあるわけでありますけれども、状況は大分変わってまいりました。

 今、その対象範囲というのは、殺人、傷害致死、強盗罪等の重大事件、かつ、家庭裁判所の裁量的な選任、それに、検察官が関与する事件、被害者が傍聴する事件ということになっているわけですが、非常に対象が狭いということで、選任数が、二〇一〇年、三百四十二人、二〇一一年、三百七十八人、こうなっているわけでありまして、少年鑑別所収容の少年の国選付添人の選任率は、二〇一〇年が三・二%、二〇一一年、三・七%、こういう状況でございます。

 二〇〇九年の五月二十一日に、被疑者国選弁護制度の対象事件が必要的弁護事件に拡大されたということですが、国選付添人制度の対象は拡大されなかったということで、被疑者段階で国選弁護人により弁護士の援助が受けられる少年の大多数が、家庭裁判所送致後、国選付添人制度による援助を受けられない、弁護士費用が負担できない場合は弁護士付添人を選任できないということで、成人の刑事事件の被告人の場合はほぼ一〇〇%弁護士が選任されているのに比べますと、少年審判を受ける少年の弁護士付添人選任率は低い。少年鑑別所に送致された少年については、弁護士付添人選任少年の割合が、二〇一〇年、六二%となっていて、日弁連が八億円かけて少年保護事件付添援助の制度、少年当番弁護士制度というのでカバーしているわけですが、本来、これは国がやるべきものだと思うわけですね。

 昨年の十月二十五日に、平岡法務大臣は、やはりそのことについて理解を示していて、できるだけ前広にというか、私なりにスピード感を持ってこれは対応していきたい、こういうふうに答弁していました。

 ことし三月十六日に、小川前大臣は、予算を伴うものである、国民に理解を得る範囲でそれを導入しなければならないということで、ちょっと後ろ向きの答弁になっているのかな、こう思うわけであります。

 いずれにしましても、このことについての大臣の前向きの御答弁を賜りたいと思います。

滝国務大臣 前二代の大臣がそれぞれニュアンスの少しずつ違った答弁をしておりますから、その大臣の意見も踏まえた上で検討してまいりたいと思います。

 ただし、この問題は、既に日弁連として支援をしている事件でもございますので、その辺のところも、実態を直接聞きながら検討をさせていただきたいと思っております。

大口委員 どうですかね。こういうふうに、被疑者段階で国選弁護人がついていて、それで弁護士の援助を受けられる、ところが、家庭裁判所送致後に、少年鑑別所で身柄拘束を受けている場合に国選付添人の援助を受けられない、こういうことは国の制度として問題がある、このように思うんですね。そして、やはり、少年を支える要素として、弁護士という専門家による付添人がつくということが再犯の防止にも大きくつながってくるわけであります。

 そういう点では、少年審判というのは後見的な性格はあるわけですけれども、やはり、今大臣も、再犯の防止ということは大変重要な問題だ、大人においても少年においても。そういう観点から、大臣の御見解をもう一度お伺いしたいと思います。

滝国務大臣 少年事件については、調査官が少年に寄り添っていろいろな聞き取りをやっているからいいじゃないか、こういうようなこともあったと思います。

 ただ、今先生の御指摘のように、やはり、少年は少年としての、事件を起こした背景には、寄り添う人がいなかったとか、そんな問題が大きな原因になっているはずでございますから、そういうことも含めて今の状況を、できたら、日弁連が弁護士さんを自前でおつけになっているということでもありますので、その辺のところもあわせてお聞きしながら検討するのが一番順当な手続ではないだろうかな、こう思っております。

大口委員 次に、取り調べの可視化についてお伺いしたいと思います。

 四月の五日に、法務省、最高検が、検察改革の進捗状況について取りまとめを公表されました。現在、検察改革の一環として、特別捜査部、特別刑事部における被疑者取り調べの録音、録画の試行、裁判員裁判対象事件における取り調べの録音、録画の試行的拡大、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に対する取り調べの録音、録画の試行について、検証及び検証結果を六月下旬ごろ発表されるというふうに聞いています。

 実は、この録音、録画の試行についての検証というのは極めて大事でございまして、ここはやはりしっかりとした検証をしていただくということが今後の立法作業にも大きな影響を与えると思います。これについて大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 今委員が御指摘のとおり、六月中にも何らかのまとまりができる、こういうことでございます。

 ただ、やはりこれは大事な問題ですから、仰せのとおり、一つ一つきちんと検証をしながら、この問題に取り組む道筋を考えていかなければいけない、そう思っております。

大口委員 それで、提案がなされていますね。この検証作業については、内向きの検証ではなくて、やはり法務・検察関係者でない第三者的な人を検証に参加させるということが必要じゃないかと。供述内容を検察以外の第三者が見るということは問題じゃないかということがありますが、これは、国家公務員で任期つき職員として守秘義務をかけてやれば、私は第三者的な立場の人も検証のメンバーに入れて行った方がいいと思うわけですね。

 やはり滝大臣は、就任されて、この検証がいかに大事かということ、そして第三者性といいますか、これも大事だという御認識があると思うんですね。そのあたりはいかがでございますか。

滝国務大臣 おっしゃるとおり、検証するためには、相当、捜査調書とか外部に出ていないものも、当然プライバシーを含みながらの記録が出てくるわけでございますから、そこのところをどういう格好で検証していくのかということも、大変重大な問題だと思います。

 ただ、言えることは、ある意味では第三者的な人の意見をいただくということもこれからの問題として大事な問題ですから、そこら辺のところを、どうやってその問題をクリアしていくのかということも含めて考えてみたいと思っております。

大口委員 検証及びその結果の発表が近くなっているわけですので、時間もそうないわけです。そういう点で、第三者的な意見がどう反映されるのか、しっかり検討していただきたい、こういうように思います。

 取り調べの可視化についてでありますけれども、今、法制審において、新時代の刑事司法特別部会で、この秋以降、二巡目の議論が始まるということですが、平成二十四年度中の答申を目指すことになっているわけですね。そして、来年の通常国会へ法案が提出されるのか、そこら辺のスケジュール感を大臣にお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 法制審にもかけている話でございますから、余り間を置かずに、できれば何とか実際の実務に反映できるような格好でやっていきたいというのが、これは基本的なスタンスでございます。

 したがって、時期的なことも考えながら、これからの法制審の審議というものも早めるようにできればいいなと思いますけれども、それは、法制審自体がどういうようなスケジュールで、少し急いでくれるかどうかというのはこれからの問題だろうと思います。

大口委員 次に、民主党の歴代法務大臣は、取り調べの可視化と新たな捜査手法はリンクしない、新たな捜査手法の導入が必ずしも可視化実現の前提条件とはならない、こういう趣旨の答弁を繰り返されておられます。滝法務大臣はどのようなお考えなのか。

 それから、三月五日、予算の分科会で私は松原国家公安委員長にお伺いしましたら、公安委員長は、取り調べの可視化と新たな捜査手法はリンクしているとの考え方を明らかにされたわけです。ここに見解の相違があるのではないかなと。

 それと、やはり、国家公安委員長と法務大臣がそういう点でも協議をし、調整をしていく必要があるということでございますけれども、そのあたりについてのお考えもお教えいただきます。

滝国務大臣 基本的には、取り調べの可視化と新たな捜査方法の導入、必ずしもセットでというふうには考える必要がないんじゃないかというのが、基本的に法務省としての受け取り方でございます。

 ただ、おっしゃるように、国家公安委員会、警察の方は、やはり、現場の経験からいって、新たな捜査方法が導入できないとなかなか捜査結果が得られない、こういうような御配慮だろうと思います。

 ただ、今までも、国家公安委員長と法務大臣は過去四回にわたっていろいろな意見交換をしておりますので、私どもも松原国家公安委員長とは必要に応じて打ち合わせをするとか意見交換をしながら、閣内で違った方向に走らないような格好は必要だろうというふうに思います。

大口委員 そういう点では、刑事訴訟法の改正ということになるわけですから、法務省がやはり責任を持ってやらなきゃいけないわけですね。

 これは一貫して、リンクしないということが法務省の見解でありますから、そこら辺についてしっかりと国家公安委員長に理解をしてもらっていくことが大事だと思うんですね。そこら辺についてはどうでしょうか。

滝国務大臣 基本的に、私は、法務省のスタンスというものを大事にしながら、具体的に、ただ、現場の捜査は圧倒的に警察が行っているわけですから、その意見も突き放すというわけにはまいりませんので、そこのところは、何か妥協点というか、新しい捜査方法を導入しなくてもどこまでいけるかということもこれあり、率直に意見交換をしていったらいいと思っています。

大口委員 新しい捜査手法の中で司法取引というのがあるわけですね。国民感情という問題がございます。これについて大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 司法取引なんということが出てきますと、何か密室でもって足したり引いたりしているというような印象を与えるというのは、これは刑事事件としての扱いとしては大変好ましきことではありませんから、そういうことが疑われないようなことは十分配慮していかなければいけないと思います。

大口委員 もう時間も終わりに近づいてまいりましたので、四月五日、検察改革の進捗状況という取りまとめの発表で、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者の取り調べの録音、録画の試行について、東京、大阪、名古屋の三地検において昨年七月から、全庁では同年十月から試行に取り組んでいるわけですね。事件数では三百八十八件、取り調べ回数は千六十九回録音、録画を実施し、そのうち取り調べの全過程を録音、録画したものは百二十件ということであります。

 それと、取り調べにおける専門家の助言、立ち会いも試行しているということが発表されているわけですが、この知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者の対象となった事件三百八十八件のうち、どれくらいの件数でこの専門家の助言、立ち会いが行われたのか。そういう数でありますとか実施状況について、これも検証対象になると思うんですね。そういう点で、その件についてお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 おっしゃるように、昨年四月からことしの二月までの数字は、今委員がおっしゃったとおりでございます。

 ただ、実際にどの程度の専門家がこれに関与したかというのは、必ずしも数字的に把握しているわけではございませんので、何ともお答えのしようがないのでございますけれども、そういう意味では、今のところはまだ不明というようなことではないかと私は認識しております。

大口委員 昨日通告してあったわけでありますけれども。

 ただ、このコミュニケーション能力に問題がある被疑者の取り調べにおける専門家の助言、立ち会いというのは非常に大事なことで、長崎方式とか、これは最高検も積極的に考えておられますね。ですから、この検証というのは非常に重要だと思うんですよ。ですから、数も含めてしっかり対応していただきたいと思いますが、大臣、そこについてお伺いします。

滝国務大臣 確かに、今までの実績からすれば、極めてわずかな数字だろうというふうに思います。十件あるかないかというような段階だろうと思いますけれども、せっかく専門家の助けをかりるということでございますから、そこのところは、今までの実績を踏まえた上で、当然ふやすものはふやしていかなければいけない、それがこれまでの実験の当然の帰結だろうというふうに思います。

大口委員 時間が来ましたので、これで終わりにします。

 ありがとうございました。

小林委員長 次に、橘慶一郎君。

橘(慶)委員 法務委員会で実は二回目の質問をさせていただく機会をちょうだいいたしまして、本当にありがとうございます。

 きょうは、滝大臣、せんだって大臣所信を述べておられますので、これに沿った形で、かつ、大臣もそうなんですけれども、地方行政なり国の行政、いろいろなことを御経験されておられます。そういったことを含めて、地域における法務行政というようなことも少し視点に置かせていただきながら、とりわけ、裁判所法の審議は終わっているわけですが、法曹養成制度の問題を中心に一時間半おつき合いをいただきたい、このように思っております。

 質問の前には万葉集を詠んで始めるということにしておりまして、大臣は奈良の副知事もされていたということですから、ふさわしいかなと。きょうは梅雨晴れであります。雨が晴れた雲に沿ってホトトギスが春日の山を指して鳴いて渡る、そういう歌を詠ませていただきます。

 万葉集巻十、一千九百五十九番。

  雨晴れし雲にたぐひてほととぎす春日をさしてこゆ鳴き渡る

 では、よろしくお願いいたします。(拍手)

 それで、まず最初は、ちょっと出足は辛い質問になるのは許していただきたいと思います。

 検察改革ということは大臣所信にも一つ掲げておられるわけですが、実は小川前大臣、退任時会見におかれまして、指揮権発動云々、こういう御発言があったわけであります。陸山会事件の虚偽捜査報告書問題について、検察の捜査に対する指揮権発動について野田総理に相談をされた、こういう発言をされた。そして、私はたまたま十二日の火曜日の衆議院予算委員会、稲田委員の質問等で一緒にいたわけでありますけれども、野田総理からは、そういう事実はないんだ、何もそういう相談を持ちかけられたことはないと明確に否定もされたわけであります。

 そこで、これはまず確認事、事実関係なわけですけれども、やはりこういう大きな問題でありますから、指揮権発動の要件はどうだとか、それはいいのか悪いのかとか、当然そういうことをそれなりに勉強されないと、なかなかそういう検討には入れないというのが普通だと思うんですが、法務省内部におかれて、例えば前大臣からそういうことについての御下問があったとか、あるいは、こういう場合はこうだとか、そういう何か実際検討の形跡というのはあったのかどうか、これをまず確認させていただきたいと思います。

滝国務大臣 政務三役の中で必ず週一回は三人だけ、それから、さらにその後、法務省の幹部数人も交えて、いろいろな重要事項、あるいは当面のいろいろな流れ、これについての意見交換をするのが恒例でございます。

 ただ、その中で、少なくとも、指揮権発動というような思い詰めたような意見交換をしたことは実はまるでございません。そこのところは、だから、小川大臣がどういう格好で新聞記者との懇談で、あるいは会見でおっしゃったのかよくわかりませんけれども、少なくとも法務省としてそういうような意見を交換したこともございませんので、その辺のところは申し上げておきたいと思います。

橘(慶)委員 よくわかりました。

 そこで、新大臣でございますので、このことについて私は二つのポイントがあると思うんですね。

 一つは、やはり指揮権発動というのは非常に重たいことでありますし、当然、新聞にも次の日、活字になるようなテーマでありますから、今おっしゃったように、例えば政務三役同士でもお話をされていない、そういうことであれば、余り軽々にそういうことをおっしゃらない方がいいんじゃないかと。これは一つの、政治的にといいますか。

 それから、大臣をおやめになれば一議員に戻るということは、これは理解するわけですが、しかし、大臣も行政経験者でございますから、その瞬間において、退任時ですから、まだ大臣としての御発言とやはり見るべきだと思うんですね。

 そうすると、ある程度積み上げたお話ならいいわけですけれども、そういう大臣という職にある方が、余り軽々に、これはされない方が組織の長としては望ましいんじゃないか、どうですかというのが一点です。

 もう一つは、新大臣でございますから、指揮権の発動の権限をお持ちになるわけでありまして、指揮権発動というのは過去に一回しかない、そういう事案であります。こういうものに当然抑制的かつ慎重であるべきだということについての、今から大臣としてお務めになる上でのお考えをお聞かせいただきたい。

 この二点、お願いいたします。

滝国務大臣 指揮権の問題は、条文にありますから、当然それは意識しなければいけないと思うんです。

 ただ、意識の仕方が二つあると思うんですね。日常の意識の仕方としては、個々具体的な問題についても軽々にいろいろな意見を言ってはいけない。それが回り回って、何か、法務省当局はこういうようなふうに思っているよとか、こういう見解を出しているよとか言われるようなことは、できるだけ日常避けるというのが、やはり、この条文に関連していえば、日常茶飯事の話として意識しなければいけないと思います。

 それからもう一つ、二十七年前ですか、もっと前ですね、昭和二十九年のあの事件は、やはりそれは、当時も批判されましたように、法務大臣として、条文上ありますけれども、まともにそんなことをというか、陰でも、まともでも、そういうようなことを本来やっていいかどうかというのは、これは、それこそ政治的な大問題というようなことに常に発展する要素を持っているわけですから、こういうことを、少し形式張った言葉で表現すれば、抑制的に考えるということが大原則だろうと思っています。

 ただ、その逆に、日常茶飯事、個々の事件について見解を示すようなことも、これは避けなきゃいかぬ。これがやはり法務省全体としてのけじめだろうと思っています。

橘(慶)委員 よくわかりました。

 昭和二十九年ですから、一九五四年、考えてみれば五十八年前のことだということですね。大臣、私ちょっと経歴を拝見していますと、中学生ごろの、そういうお話だと思います。そういうことについて、確かに、今お考えのような形で、やはり抑制的にぜひお考えいただきたいな、こんなふうに思いますし、これは、委員会でそれだけお話しいただければ、私としては質問したかいがあったなと思います。

 次は、検察改革ということで、この辺は、もちろん、この法務委員会所属の各委員の方々は非常に深い御質問もされるわけでありまして、私の方は簡単な質問になってしまいますが、大臣所信を見ますと、監察体制の構築あるいは検察基本規程の策定など云々、こういう文言でございました。

 大臣として、この検察改革、いろいろなことがあると思うんですが、特にどういう点を重視して取り組んでいかれたいか、ここが所信でございますので、お考えをお伺いしておきたいと思います。

滝国務大臣 既に昨年、検察庁が、検察の理念というか検察基本規程という格好でまとめました。いろいろな事件を踏まえた上で、検察庁は検察庁として指針を示したわけでございますから、この指針をしっかりと徹底していくということが、検察改革のまずは前提だろうと思っております。

 そのためにも、それを担保する意味で、それを裏づける一つの手続として、可視化の問題とか何かにも全力を挙げていかなければいけない、今そんな状況にあるんじゃないだろうかなというふうに認識をいたしております。

橘(慶)委員 それでは、次のテーマに移らせていただきますが、司法行政を進めていく上で、国民がいろいろな形で言ってみれば参加をいただいている。裁判員制度もそうでありますし、その後テーマにしたい人権擁護委員とか保護司さんというようなことで、非常にボランティア的に実は法務行政の一環を各地域で担っていただいている、こういう事実があるわけです。

 そこで、まず裁判員制度。これは先ほど大口委員からも深い質問がありまして、私の方は簡単な部分だけなんですけれども、まず、本年五月に施行から三年が経過したということで、国民の間にも定着しつつあるという御認識であるわけですけれども、ここでデータ的なことを一、二、お伺いしておきたいと思います。

 この三年間といいますか、ことしの三月末と言った方がいいんでしょうかね、ちょっと三年は切れますが、この間、裁判員をお務めになった国民というのは、どれくらいの数の方がいらっしゃるのか、そしてまた、どの程度の訴訟の件数が取り扱われているのか、このことについてまずお伺いをしたいと思います。

植村最高裁判所長官代理者 お答えをいたします。

 制度施行からこの三月までに、全国で三千六百八十五人の被告人について裁判員裁判が終了をしております。この間、裁判員として関与された方は合計で二万八百十七人でございまして、補充裁判員として関与された方が七千二百五十七人というふうになっております。

橘(慶)委員 三年間の中で、二万人に上る方々が言ってみればそういう経験をなさったということでありまして、そしてまた御協力もいただいた。補充員も合わせれば三万人近い方々ということであります。

 そこで、この取り扱われた訴訟、今、三千六百八十五人の被告の方に対して訴訟、件数的にはもうちょっと減るのかもしれませんけれども、その中で、では、いわゆる二審、高等裁判所に控訴された件数はどの程度あったのか。そして、高等裁判所の判決が出ているものがあるとしたら、裁判員の皆さん方の意見を踏まえた一審判断というのはどの程度維持されているのかということについて、お伺いをしたいと思います。

植村最高裁判所長官代理者 裁判員が取り扱った事件のうち、ことしの三月末までに控訴申し立てがあったのは、人数で申しますと千二百四十一人でございます。このうち、同じく三月末までに、控訴審の審理が終了して判断が出たものでございますが、九百三十五人となっております。このうち、控訴棄却、あるいは控訴を途中で取り下げるということもございまして、控訴棄却や控訴取り下げで終了し一審が維持されたのが八百七十人でございまして、九百三十五人と比べますと、九三%は一審の判断が維持されたということになります。

橘(慶)委員 素人的に言いますと、九三%、かなりの裁判員さんの、いろいろ御苦労されて裁判官の方々と出してこられた結論については、かなり維持され、妥当な形になっているんだろう、このように私なりにも思うんですけれども、この三年間、こういう制度を運用されて、今、いろいろ数字的なデータはいただいたわけですが、この裁判員制度の状況、あるいは今お話のあった数字についての刑事局長さんとしての所感をここでお伺いしておきたいと思います。

植村最高裁判所長官代理者 制度の施行から三年余りが経過したわけでございますが、全体として見ると、やはり何といっても、参加される裁判員の皆さんの意識が非常に高い、あるいは誠実にその職務をこなされる、こういったことに支えられまして順調な運営がされてきたというふうに言ってよいのではないかと思っております。

 ちなみにでございますが、平成二十三年に裁判員を務めた方のアンケート結果を御紹介させていただきますと、裁判員として参加したことにつきまして、非常によい経験と感じた、あるいはよい経験と感じたというふうにお答えになった方が九五・五%という大多数を占めておりまして、裁判員の皆さんが充実感を持って制度に参加していただけたものというふうに考えております。

 ただ、我々といたしましては、いろいろ課題もあるわけでございまして、今後も、運用状況を把握し、いろいろな問題を検討しながら、適切な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。

橘(慶)委員 課題の部分については、また各委員からも御指摘があるところでもありましょうし、また、そこはやはり、制度をより安定的に動かしていくためには課題の解決ということもよろしくお願いしたいと思います。

 人権擁護委員、保護司さんのことについて、少しお話をさらに進めていきたいと思います。

 滝大臣は実は県の行政にかかわられたわけでありますが、私は市の行政にかかわったものですから、今ちょうど六月定例会というのをあちこちでやっておりますけれども、大体、いろいろな市長提案の中には、人権擁護委員の選任の同意とか、そういうのが出てまいります。市の行政をやっていましたら、人権擁護委員さんというのがそういう大変大きな役割を果たしておられることを肌身で感じるわけであります。

 そのほか、地域では、厚生労働省さん関係でいえば民生委員とか児童委員、あるいは総務省関係でいえば行政相談委員、そういった、全てこれは無報酬で、ボランティア的に、言ってみれば行政と国民生活との橋渡しをしていただいている貴重な役割を果たしている方々が実はたくさんいらっしゃるのであります。

 法務省さんのデータでいえば、人権擁護委員は全国に一万四千人ばかり、そして保護司さんは四万八千人の方がされている、こういうふうにもお伺いしております。

 そこで、この人権擁護委員さん、そしてまた保護司さんを取り巻く最近の状況なり、またそれに対する法務省さんとしての考えということで、幾つか質問させていただきたいと思います。

 時代は移り変わっているわけでありまして、やはり今日、少子化とか核家族化とか、社会も、言ってみればきずなが弱くなるとか、いろいろな問題がございます。そういう中で、人権擁護委員の方々が取り扱う事案において、今日的な特徴をまずお伺いいたします。

石井(忠)政府参考人 それでは、まず人権擁護委員の活動状況について御説明をさせていただきたいと思います。

 人権擁護委員としての活動には、大きく分けまして、人権啓発活動と人権救済の活動とがございます。

 まず、人権啓発の活動につきましては、これは、国民に人権について理解していただき、その人権意識を高めていただく、こういう目的でさまざまな取り組みをしていただいているところでございます。

 人権擁護委員の皆さんは、各地域におきまして、それぞれ啓発の目的に沿ってさまざまな取り組みを自主的に企画し、遂行されているというところでございます。具体的には、シンポジウムあるいは講演会といったもののほか、全国的に言いますと、人権の花運動あるいは人権教室、中学生人権作文コンテスト、こういった取り組みがされているところでございます。

 これらの活動を通じまして、最近でいいますと、いじめなど身近な問題から人権というものを自分のものとして考えていただこう、こういう取り組みを人権擁護委員の皆さんに推進していただいている、こういうことでございます。

 それから、人権救済の活動でございますが、これは、人権に関するさまざまな悩み事等につきまして、相談に応じ、また問題の解決に向けていろいろな援助をしていく、こういう活動でございます。

 まず、人権相談につきましては、法務局、全国の法務局の相談窓口もございますが、そのほか、市町村あるいは民間の施設などをお借りしまして、地域の皆様のさまざまな御相談に応じているというところでございます。

 それから、最近の活動といたしましては、子どもの人権SOSミニレターという取り組みがございます。これは相談用の便箋と封筒が一つになった用紙でございますが、これを全国の小中学生に配布させていただいております。悩み事があれば、これに書き込んで投函していただきますと、最寄りの法務局に届く、こういう仕組みでございまして、寄せられたレターにつきましては、主として人権擁護委員の皆さんが、一通一通その内容を確認して、適切なアドバイスなどを付して、全部のレターに返信をする、こういう取り組みでございます。これは平成十八年から全国で展開しているものでございます。

 このレターの中には、虐待を受けていると思われるような内容のものなど、重大で緊急性の高いケースが時々ございます。こういったケースにつきましては、速やかに人権擁護委員の皆さんと担当の法務局職員が事実関係を確認するなどし、学校あるいは児童相談所などと連携をして、その子供の保護、救済を図る。具体的には、児童相談所に一時保護を求めるといった対応をしているというところでございます。

 人権擁護委員の活動としての事件の傾向という特別なデータはございませんが、最近の傾向といたしましては、児童のいじめあるいは虐待というものが増加傾向にございますので、このようなレターの取り組みというのは、それに対して有効な対応かと思っているところでございます。委員の皆さんは、このような形でも人権侵犯事件の調査といったものに携わっていただいているということでございます。

 今申し上げましたSOSミニレターの取り組みでございますが、年々、子供から寄せられるレターの数が増加しております。それだけいろいろ人に言えない悩みを子供さんたちが持っているんだなということがわかるわけでございます。それに対しまして委員の皆さんの御負担も増加しているところでございますが、子供からお礼状が届くようなこともございまして、やりがいも増しているというふうな声も聞いているところでございます。

 そのほか、先ほど申しましたような各種の啓発活動につきましても、自主的な取り組みを推進していただいているところでございまして、活動が充実いたしますと、それに伴って繁忙度も増すというふうなことかと承知しております。

 法務省といたしましては、このような人権擁護委員の皆様の取り組みを尊重しつつ、各地の法務局におきまして十分連携を図り、国民の人権擁護の一層の充実に向けまして、その活動をバックアップしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

橘(慶)委員 児童虐待という問題が一つあるわけでありまして、そういったところにまで、子供ということに結構視点を当てられての活動ということを今お伺いしたわけであります。七月は人権擁護の月間になるということでもありますし、そういう時期かなと思います。

 では、保護司さんの方でありますけれども、これについては、保護司さんお一人が担当する保護観察対象者、お世話される対象者の数はどの程度担当されているのか。また、最近、保護観察対象者も、やはり、これまた時代の移り変わりで、いろいろまた御苦労もあるんだろうと思うんですが、この辺の特徴について保護局長さんの方にお伺いいたします。

青沼政府参考人 保護司が担当する事件数は、その地区における保護観察の事件数ですとか、あるいは、その地区に所属する保護司の数によって区々となります。そういった点で一概には言えないのでございますが、年間の保護観察事件取扱件数を全国の保護司数で割りますと、保護司には年間二件程度の保護観察事件を担当してもらっていることとなります。

 それから、保護観察対象者の最近の傾向を見ますと、その特徴としては、高齢者や無職者の割合がふえているほか、再犯率が高い覚醒剤事犯者、これが仮釈放者の二割以上を占めるなど、いわゆる処遇困難者の割合が増加しているというのが現状でございます。しかも、保護観察対象者の家族ですとか、あるいは地域の支援が得られにくいなど、保護司活動が困難となっているという現状が指摘されております。

橘(慶)委員 人権擁護委員さんの方は、どちらかというと若い世代の方々の事案が出てきている。そうなると、人権擁護委員さんというものの中には、やはりそういった気持ちがわかる、世代的には少し若い人が必要な感じもいたしますし、また一面、保護司さんの方は、逆に高齢者あるいは無職者、あるいは覚醒剤等のそういう関係の方、もともとは、どちらかというと少年という方に対して更生を手伝うというような感じだったんだと思うんですが、やはり、そこもまた求められている人物像が少し変化してきているのかなと思います。

 それぞれについて伺います。

 人権擁護委員のなり手というのは十分な状況であるのでしょうか。そしてまた、今日的な状況において、性別も含めて、多様な職業、経験をお持ちの方々に委嘱されることが望ましいと思いますが、最近の傾向についてまず人権擁護局長さんに伺います。

石井(忠)政府参考人 まず、人権擁護委員に委嘱されている方の職業でございますが、現状で見ますと、宗教関係の方、農林漁業関係の方、それから会社の関係の方、教育関係の方、そして弁護士の方などが職業としては上位を占めているところでございます。

 ただ、現状では、人権擁護委員の方の半数以上が無職ということでございます。これらの方は、以前、教職についておられたり、公務員の仕事をしたことがあるといった方が比較的多いという傾向でございまして、また、人権擁護委員全体の中で女性の割合が四割を超えているというふうな傾向もございます。

 こういった状況で、実質的には、多様な職種、経験を持った委員の方々が委嘱されているというふうに今考えているところでございます。

 それから、なり手の話でございますが、人権擁護委員の現在員、ここ十数年、先ほど御指摘ありましたように、おおむね一万四千人前後で推移しているところでございます。

 御承知のように、人権擁護委員は、市町村長の方からの御推薦をいただきまして法務大臣が委嘱する、こういう法律の仕組みになっております。現状でいいますと、御指摘のように、若い方も入れていただきたいとかいろいろ要望はございますが、全体的に拝見しますと、市町村の皆様方の御尽力によりまして、人権擁護委員にふさわしい人材を御推薦いただいているのではないかなと思っているところでございます。

 その結果、現状では、必要な人員はおおむね確保できているものではないかというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

橘(慶)委員 同じ質問になりますが、保護局長さんに、保護司についての状況、充足されているのかどうであるかということをお願いいたします。

青沼政府参考人 まず、保護司の現在員については、先ほど委員御指摘のとおり、現在約四万八千人程度でございます。これは、十年ほど前はおおむね四万九千人程度で推移しておりましたので、この十年間で減少傾向にある、こういう状況でございます。

 また、保護司の職業別構成で見ますと、以前は農林漁業あるいは宗教家の占める割合が高かったわけですけれども、最近では、定年退職者あるいは専業主婦などの無職の方々の割合が高くなっているというのが現状でございます。

 保護司のなり手の確保につきましては、これまでは、退任する保護司の方が個人的な人脈等を生かして新任保護司を推薦するといったことが一般的でございましたが、地域の人間関係が希薄化している、そういったような事情によりまして、近年、それが困難になってきていると指摘されておりまして、より幅広い層から保護司の適任者を確保することが重要となってきているという状況でございます。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 そして、大臣所信におきましては、再犯防止対策の推進の一環ということで、保護司の方々の活動に対する支援の拡充、こういうことをおっしゃっているわけであります。

 法務省として具体的にどのようなことに取り組んでいかれるのか、これは大臣から御答弁をお願いいたします。

滝国務大臣 今報告がありましたように、基本的には保護司さんは、二・五人ぐらい、こういうような方々を自分の担当としておやりいただいているわけでございます。しかし、それだけでは、昨今のような再犯防止という観点からは、もっともっと保護司さんの仕事もふえてくる、そんな社会情勢ではないだろうかな、こう思っております。そういう意味では、昨年の七月に、再犯防止に関する政府としての取り扱いについて決定をしたところでございます。

 できるだけ保護司さんにも働いてもらわなきゃいけませんし、しかも、再犯というのがだんだんふえてくるというか減らない中で、保護司さんに働いてもらうためには、やはりそれだけのバックアップ体制もやっていかなければいけないのかな、こんな感じを持っているところでございます。

橘(慶)委員 本当は、そのバックアップ体制の、具体的にどのようなことをお考えかというところもちょっとお聞きしたいわけでありますが。

 ただ、今おっしゃったバックアップという中で、この項の最後の質問になっていくわけですけれども、保護司さんあるいは人権擁護委員さんについては大臣委嘱ということになっております。それぞれ、地域のそういう委員だから、必ずしもそうじゃなくてもいいんじゃないかというのは時々言われるお話でありますが、しかし、現実、今お話がありましたように、非常に御苦労なことをボランティア的に取り組んでいただく、また、なり手も探さなきゃいけないということの中では、やはり法務大臣委嘱という形になっているということは非常に意味のあることだ、私はこのように思います。

 そこで、保護司さん、そして人権擁護委員さん、それぞれの大臣委嘱制度の維持ということについて、どうもお答えはそれぞれになるようですけれども、大臣から続けてお答えをいただければと思います。

滝国務大臣 まず、人権擁護委員でございますけれども、いろいろな相談事を地域から言われて仕事をしてもらうわけですね。したがって、いろいろな人権問題の第一線の相談窓口という意味では、大変御苦労をいただいていると思います。だから、人権擁護委員は、地域の中でいろいろな人権問題についての、こういう被害を受けたから何とかならぬだろうかというのを受けたら、それをどういう格好でこなすのが一番いいかということは、御案内のとおり、やってもらっているわけです。

 それから、保護司の方も、基本的には、先ほどちょっと申しませんでしたけれども、例えば就業センターとか自立支援センターとか、そういう住まいあるいは仕事のセンターみたいな、どちらかというと住まいですね、住むところ、そういうところがまだまだ足りない部分、あるいは更生保護施設がなかなか足りないところを保護司さんがかなりカバーして、いろいろなあっせんの相談にも乗ってくれていると思います。

 そういう意味で、バックアップ体制というのは、ただ単に保護司さんの個人的な活動じゃなくて、やはり国として、住むところ、あるいは就労の世話をするところ、そんなことも、保護司さんの活動を支えるのは当然国でなきゃいけませんから、そういうところに力を入れていくということだと思っています。

橘(慶)委員 済みません、質問の大臣委嘱の維持ということについては、御見解はいかがですか。

滝国務大臣 それはもう、人権擁護委員にいたしましても、保護司さんについても、大臣委嘱ということは、そのまま考えているところでございます。

 ただ、今の人権委員会設置法ということになりますと、その辺のところは、どういう格好で大臣の名前を出せるのかということは、技術的な問題というか形式的な問題としてあり得ると思うんですけれども、少なくとも、支えるのは法務大臣ということには変わりないと思っています。

橘(慶)委員 人権委員会の法律の問題は、また別の次元でしょうから、大臣委嘱の維持をぜひよろしくお願いしたいと思います。

 法曹養成制度の問題に入ってまいりたいと思います。

 二度目の質問になるわけで、平岡大臣とも大分議論させていただきましたが、これは、司法試験に合格をされた方、いわゆる司法修習を終えた方の問題というのが、例の給費制、貸与制の問題等でクローズアップされているわけですけれども、それだけではなくて、合格しなかった人、三振制で残念ながら合格できなかった人ということも含めて、こういったことを志した若い方々というものにどのようにまた頑張っていただくかという大きな視点でやはり捉えていかなきゃいけない。そこには法科大学院の問題も絡んでまいりますし、行政的にも、法務省、文部科学省を通じた問題になっていくわけであります。

 順番に質問をさせていただきたいと思います。

 まず、合格者の皆さん、いわゆる司法修習を受けている方々の部分から議論を始めていきたいと思います。

 弁護士登録者の推移でありますけれども、平成十三年四月一日、今から十一年前、一万八千二百四十六人。それから司法制度改革がありまして、合格者がふえまして、昨年の四月一日現在では三万五百十八人でありました。せんだって、主意書を出させていただいて、ことし四月一日、ですから一年たちまして、ことしは三万二千百三十四人、一千六百十六人ふえているわけであります。昨年秋の司法試験合格者数は二千六十三人でありますから、言ってみれば、登録された方、それからリタイアされた方、おつりで大体一千六百人ぐらいふえている、こういう形であります。

 最近、合格者数は二千人というものを維持されているわけであります。こういう調子でいきますと、遠からず、あと四、五年たつと四万人を超える、そんな勢いじゃないか、こんなふうに見てしまうわけですけれども、司法法制部長さん、見通しについて伺います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、日本弁護士連合会の公表資料によりますと、弁護士として登録された者の数は、先ほどの御指摘ございましたように、平成十三年四月一日現在で一万八千二百四十六、平成二十三年四月一日現在で三万五百十八、平成二十四年四月一日現在で三万二千百三十四ということでございます。

 今後の弁護士の数につきましては、今後の司法試験合格者数などによって左右されるものでありますため、その見通しについて予測できるという性質のものではございませんが、平成二十三年四月一日から平成二十四年四月一日までの間に一年間に増加した人数、御指摘のとおり千六百十六名ということでございますので、今後、毎年この千六百十六人ずつふえていくと仮定した場合には、約五年後の平成二十九年には弁護士の数が四万人を超えると試算されるところでございます。

橘(慶)委員 一万八千人から三万人でも、言ってみれば七、八〇%の増ということで、そして今、三万人から三万二千人、年間千六百人もふえてこられる。もちろん、もともとのゼロワン問題とかいろいろな法律家、弁護士さんたちの需要というようなこともあって、それはある程度吸収してきた部分もあったし、そういう目的は果たされてきているんだと思うんですが、やはり一面、今それだけ供給していって本当に需要とのバランスというのは大丈夫なのかなと心配になるわけであります。

 それを見る数字というのが未登録者の割合の推移だろうと思っております。

 六十三期、これは平成二十二年の秋の司法試験ということは、秋の修習ということですかね、十二月で一一%、三月で三・七%未登録、六月、半年たって二・六%未登録、こういうカーブだったわけであります。

 六十四期、今未登録中の方でいうと、十二月時点では二〇パー、前が一一パーだったものが二〇パーになった。三月になれば五・五パーまで減っているけれども、その前の年は三・七%ですから、やはり一・八%ふえている。六月の数字はまだ出ておりませんけれども、確実に曲線がだんだん上に振れてきているということであります。

 この数字を見たときに、実際、現場において、いわゆる修習後の弁護士さんたちの就職が困難になるといった状況は本当に生じていないのか、このことを法制部長さんに確認させてください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 日本弁護士連合会の調査によりますと、司法修習終了者のうち、裁判官及び検察官に任官した者を除きまして、司法修習終了直後のいわゆる一斉登録日に弁護士としての登録をしなかった者の割合は近年増加傾向にあるものと承知しております。

 そのような者の中には、法律事務所に就職した上で弁護士として登録することを希望しているものの、法律事務所への就職が決まっていないため、弁護士としての登録をすることができない者も含まれているということが推測されるわけでございます。

 もっとも、そのような方々も、その後数カ月以内には相当程度弁護士としての登録をしているほか、一部は民間企業や官公庁などに就職しているものと承知しております。

 以上でございます。

橘(慶)委員 そこはちょっと見解を異にする部分がありまして、今はそうかもしれませんけれども、先ほど申し上げた、去年、六十三期は六カ月たって二・六%。六十四期、どういう数字が出るか、もうすぐ出てくるんだと思いますが、これが二パー、三パーならそういう御説明もあるかもしれないけれども、五%になり一〇%になるというようなことになったら非常に大変なわけであります。

 もちろん、そういうことになる前に法曹養成制度全体の見直しをしよう、こういうお話だと思うんですけれども、一面、また別の視点からこの問題、実は総務省さんが政策評価をずっと進めてこられて、四月二十日に法曹養成についての政策評価がまとまっております。

 この総務省さんの四月二十日に発表された政策評価によりますと、これは総務省さんの記述なんですが、現状の約二千人の合格者でも、私が申し上げたように、弁護士の供給過多となり、就職難が発生、OJT不足による質の低下が懸念、こういうふうに総務省さんは指摘をされたわけであります。

 こういう指摘があるということであれば、当然、この根拠として何らかの事実を把握されているんだと思います。ここでは、その総務省において把握した実情、現場の声というものを御披露いただきたいと思います。

新井政府参考人 法曹人口につきましては、司法制度改革推進計画におきまして、平成二十二年ころには三千人程度とすることを目指すこととされました。その後、弁護士の年間合格者数は、平成十三年度の九百九十人から二十三年度の二千六十九人と増加し、法曹人口も約一・六倍となっております。

 一方、当省がその後の法曹需要の動向を調査したところ、例えば弁護士会等の法律相談件数は、法律扶助対象の法テラスの無料法律相談が顕著に増加しているが、有料法律相談は減少しており、企業内弁護士数の増加や任期つき公務員在籍者数の増加はあるが、いずれも弁護士人口の拡大を吸収するほどではないなど、審議会意見において予見されたほどの法曹需要の拡大、顕在化は確認されませんでした。

 また、そのような状況の中、就職状況につきまして見ると、日弁連によれば、弁護士の一括登録日における未登録者数は年々増加しており、平成十九年は三十二人であったものが、二十三年は四百人となっております。

 また、当省が実地調査した二十二単位弁護士会のうち、十八の弁護士会では、弁護士事務所等への就職が困難になっているとしており、このため、十一の弁護士会では、就職難から、いわゆる即独、軒弁が以前より増加しているとし、このうち八弁護士会では、OJT不足による質の低下が懸念されているとしております。

 このOJTの重要性につきましては、司法制度改革推進本部のもとに置かれました法曹養成検討会に出された、司法修習委員会、議論の取りまとめにおきましても指摘されているところであります。

 以上の調査結果から、現状の二千人程度の合格者数であっても、弁護士の供給過多となり、就職難が発生し、OJT不足による質の低下が懸念されるとしたものでございます。

橘(慶)委員 この部分は、司法法制部長さんには、当然この勧告は出ているわけでありますが、また受けとめていただいて、実情の把握に努めていただきたいと思うわけであります。

 今ほどお話の出てまいりました中で、私は弁護士さんの世界じゃないものですから、即独、軒弁と言われて、最初は何だろうと思いました。即独、司法修習を終了後、即、独立する者。軒弁、法律事務所に正式に就職せず、固定給なしで事務所の机だけを借り、独立採算型の経営をする者。こういうことなんだそうです。

 なかなか私どもは、即独、軒弁、それはわかる方にはわかるんでしょうけれども、こういう形になるとどういう弊害が出てくるのかということについては、法務省さんは当然、業界と言ったら叱られますけれども、弁護士の世界をよく御存じですから、こういう方々がふえてくるとどういう問題が出てくるのか、法務省さん、大臣の見解をお伺いいたします。

滝国務大臣 弁護士の数が異常にふえるというか、想定外なとは言えませんけれども、ふえた結果、どこで仕事が拡大できるのかということが追いつかない、そこに基本的な問題があるわけですね。

 もともとは、法曹人口をふやさないと基本的に事後チェックができない、それが本来の出発点だったわけですね。要するに、事前に行政が細かいところまで規制をするんじゃなくて、規制はできるだけ差し控えて、後の結果を事後的にチェックしていく、そのためにも事前に法曹が社会の隅々にまで渡っていなければいけない、それが本来の理想形として出発したわけですね。

 それができないうちに弁護士さんの数は確かに予定どおりふえました、こういうことですから、そこで弁護士さんのなかなか思うような収入が得られない。したがって、新しく弁護士資格を取っても、弁護士事務所に最初は就職して、そこで修行をしないと、現場での研修、仕事をやりながらの研修ということが期待できない、今そういう時代になっているわけです。したがって、言われますのは、新しくなった弁護士さんは厳しい修行の時期を失っている、これが最大の今の問題。

 それから、弁護士業務がかち合う、とり合いになるんじゃないだろうかと。日本はまだ、そんなアメリカで言われているようなことまでは起きていないと思いますけれども、そういう、まずは修行の場が制約されているというところに今の問題があると思っています。

橘(慶)委員 やはり問題として大分煮詰まってきている状況だと思います。もともと三千人の合格者を出すという話から始まっていたわけでもありますし。

 それと、この若い方々、きょう現在即独であり、きょう現在軒弁でやっておられる方々にとっては、ある意味で、私どもがつくった制度の中において、一人一人の人生というのは、そのときじゃないと二十でなかったり二十五でないわけですから、その段階で、言ってみれば、その方々の人生の可能性というのを私どもが奪っていくということになっては一番いけないわけですよね。

 そんなふうに考えますと、いろいろなことはあるけれども、まずそういった若い方々の視点で、この問題はやはりそういったところにも視点を置いて取り組んでいかなければいけないんじゃないかとつくづく思っております。

 後でまた御感想はいただくとして、今ほど大臣もおっしゃったように、ふえてくる供給、これに対して当然いろいろな取り組みをされております。

 これは主意書のお答えもいただきました。東日本大震災の被災者に対する法テラスの取り組みもあります。国の採用もふえております。地方自治体でも弁護士さんを任期つきで採用される事例も頂戴しました。企業内弁護士も、それは前よりはふえております。ただ、そのふえる数というのが数名とか数十名とか数百名なんですね。供給の方は一千何百名単位でふえてきているということに対して、どうも供給と需要で開拓されているものがつり合わない、そういうことが見てとれるわけであります。

 それはそうといたしましても、今の状況においてやはりそうやって困っている方もいらっしゃるということであれば、今後、活動領域の拡大ということはどうしても必要だと思います。非常に厳しい状況ではありますが、この活動領域の拡大ということについて、法務省さんが期待されている分野、どういったところを考えておられるのか、確認をいたします。

滝国務大臣 当初、法曹人口をふやすときの理由を見ますと、例えば特許とか、要するに海外関係で法曹人口がまだまだ足りないということが一つございました。それから、社会の隅々まで法曹が行き渡るためには、例えば、企業も法曹を採用する、それから、もちろん公的な機関、公務員も法曹を採用できればと、こんな絵を描いたと思うんです。ところが、実際問題としてそこが行き詰まっている。

 したがって、今やれることは何かというと、やはり、弁護士資格を持っていても、市町村の公務員として手を挙げてもらう、県の公務員として、地方公務員でございますけれども、手を挙げてもらう、そういうことを徹底していかないと、とりあえずの問題は解決しないんだろう。現実に、市町村でもいわば法曹資格を持った人たちが、大量にはもちろん事柄の性格上いきませんけれども、かなり進出してそれなりの実績を上げているということは数字的には出てくるわけです。

 しかし、今まで一万四千人もふえたものを吸収するだけのものは、吸収力はないということですから、今先生の御心配のように、どうやっていわば弁護士さんを、外に活躍の場を求めるかということではないだろうかな、こんな感じを持っております。

橘(慶)委員 地方自治体の場合も、規模がいろいろあって、基礎自治体千七百あるわけですけれども、それは大きな自治体であれば当然任期つきで採用ということもあるわけですけれども、やはり小さい自治体もあるわけで、そういうところになりますと、せいぜい顧問弁護士さんとして事件のたびにお願いする、それくらいで足りるということもあるので、その数字というのが、今申し上げた自治体の数だけで一千七百ということを考えただけでも、そこで出てくる需要というのは県が四十七あったとしても見えてくるわけで、数百人、千人オーダーということはなかなか考えにくいわけですね。

 そのほかに、お話によりますと、今大臣も少し触れられましたが、法廷活動以外の分野、あるいは外国法、国際取引法、そういった分野で弁護士さんの能力というものを活用していくという部分もある。そういうことで、法科大学院の教育内容についても、そういったところも今充実されている、こういうことも伺っております。

 ただ、もう一つ問題があるのは、法科大学院というもの自体の性格とかありようということも実は大変問題でありまして、実は、法科大学院というのは、法曹養成の場、こういう定義づけでつくられているわけです。例えば、理科大学院とか経済学の大学院とか、そういうところはそういうことがなくて普通の大学院ということなんですが、法科大学院だけは、司法制度改革とリンクしたものですから、法曹養成の場ということで縛りがあるわけです。

 ここで、今の法務省さんへの質問とは少しずれますが、法科大学院において、法曹養成の場だ、だから司法修習あるいは弁護士のための能力ということで、いろいろな科目を開設される。しかし、その中に、外国法とか国際取引法とか、いろいろ新しい、また弁護士活動のために必要な科目もふえてまいりますと、いわゆる基礎法学と言われる、例えば法制史だとかあるいはローマ法とかいろいろなものがあるわけですね、そういったものについては、なかなか授業、講義が成り立たないということになる。そうすると、研究者という方々、それぞれの学問分野で研究者の養成ということも大学院の大きな役割なんですけれども、そこがおろそかになるんではないかという心配をするわけです。

 この点、研究後継者養成型の大学院との連携による教育研究というようなことも文科省さんはおっしゃっているんですが、具体的にどのように、いわゆる研究者としての養成の場としての法科大学院というものを維持されていくのか、ここを確認しておきたいと思います。

常盤政府参考人 お答えいたします。

 法科大学院の教育課程につきましては、大きく分けますと、四つの授業科目がございます。法律基本科目、法律実務基礎科目、基礎法学・隣接科目、展開・先端科目、この四つの領域全てにわたって授業科目を開設する。そして、学生の授業科目の履修はいずれかに過度に偏ることがないように配慮するというふうにされております。

 この中で、法律基本科目といたしまして、憲法、民法、刑法など、基本的な授業科目が開設されますとともに、基礎法学・隣接科目といたしまして、法哲学、法史学、法社会学等の基礎法学に係る授業科目が各法科大学院のカリキュラムに沿って開設をされているものと認識をしております。

 また、法科大学院におきましては、今委員御指摘の研究後継者養成型の大学院との連携による教育研究も進められております。例えば、東京大学や京都大学におきましては、法科大学院の修了生を実定法学研究を支える後継者として養成する体制を強化するために、法科大学院修了者を念頭に置いて、博士課程で論文作成能力の向上に資する科目を開設するといったような取り組みがあるというふうに認識をしております。

橘(慶)委員 いろいろな取り組みがされているんですが、先ほどの司法修習生の登録の問題もそうなんですが、ゆがんでいったときに、ゆがみがだんだん戻せなくなる前に何かしていかなきゃいけないんじゃないかな、そういう危機感を覚えながら見解をお伺いしているわけですけれども。

 それでは、不合格者、三振制等がありまして不幸にして合格できなかった方々についての状況ということで、ここが一番骨なわけですけれども、お伺いをしていきたいと思います。

 まず、修了者の進路ということについても、総務省さんの今回の政策評価では取り上げておられます。ここについての政策評価上の問題意識について、まず最初にお伺いをいたします。

新井政府参考人 法科大学院修了者の司法試験の合格率は低迷しており、また、受験資格喪失者も、平成二十三年度までに四千二百五十二人生じているという状況にあります。

 このような状況に鑑みれば、各法科大学院における教育内容、方法等の改善を図る観点などから、修了者、特に不合格者の進路の実態を把握する必要性があると考えられます。

 しかし、実地調査した三十八法科大学院のうち、九校で進路把握をしておらず、また、進路が把握できていない不合格者は修了者全体の約三割となっております。また、法科大学院修了者は、受験資格を保有し得る少なくとも五年間は継続的に把握する必要があると考えられますが、そこまでの取り組みを行っている法科大学院は見られなかったところでございます。

 このため、本政策評価におきましては、法科大学院に対し、修了者の進路の把握につきましては、修了時はもとより、受験資格を保有し得る少なくとも五年間は継続し、総合的な蓄積、管理を行わせることを文部科学省に対し勧告したところです。

橘(慶)委員 この辺が一つ、言ってみれば矛盾点になってくるわけです。法曹養成の場ということだから、司法試験に受からせればいいんだと。本当は、もともとのキャッチフレーズは、ほとんどの方が司法試験に受かっていく、学力をつけて社会に出ていく、だから、基本的に受からない方のことは考えなくてもいい、そういう世界でスタートしたんだと思います。しかし、現実は、受からない方というのが、後から資料もお見せしますが、そういう方々がふえてまいりますと、結局、進路指導とか進路把握もしなきゃいけない。

 そうすると、私が申し上げたいのは、法曹養成の場という法科大学院の位置づけというのが困難になってくるんじゃないか。要は、いろんな就職口を探す法科大学院になってくるということであれば、法曹養成の場ではなくなるんじゃないか、こんなことも思ったりします。

 これは後からお伺いするとして、皆様方にはお配りしたデータ、きょう、一枚だけ資料をつけました。これが、法科大学院協会において平成二十三年十月、中間的にわかる範囲でまとめられた「法科大学院修了者の進路の状況について」ということであります。

 この取り組みを一生懸命されたこと、そして文部科学省さんも汗をかかれたことはまず評価いたします。

 このデータの読み込みについては後から御説明しますが、まずは、今ほどの総務省さんの勧告、五年間継続していろいろ調べなさい、蓄積をしなさいということについての文部科学省としての取り組み姿勢について、城井政務官からお願いいたします。

城井大臣政務官 お答えを申し上げます。

 修了者の進路の把握についてでありますけれども、修了者の動向を法科大学院を離れた後もそれぞれの法科大学院で把握し続けるというのは、なかなか難しい側面もあるというふうに思いますけれども、修了者への適切な支援などを検討する上では、その動向を把握することはやはり重要だというふうにも認識しております。

 そのため、文部科学省としても、省令を改正いたしまして、修了者の進路把握を認証評価の項目に新たに追加するなどの取り組みを行ってきたところであります。

 今後も、総務省の勧告も踏まえまして、引き続き、法科大学院に対する調査、通知等を通じて修了者の進路の着実な把握を強く促すことで、修了者全体の進路動向の把握にさらに努めてまいりたいというふうに考えております。

橘(慶)委員 ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 そこで、皆さんにお配りしたこのデータなんです。二十三年十月末なんですけれども、皆さん、ちょっと色がないのは申しわけなかったんですが、政府の皆さんには色をつけて見ていただくとわかりやすいんですが。

 このグラフをこうやって見たときの右端、減ってきている右端のこれが合格された方々ということですね。真ん中の、ぐっと広がってきているこれが今一生懸命勉強されている方々ということであります。一番左、薄くなっているところが、実は今どうされているかよくわからない、不明。必ずしもこれが全てドロップアウトとは申しませんが、わからないということに区分けされていくわけです。

 一つ一つの母数、これはパーセンテージですから数字は入りませんでしたが、実際は、最初の年が二千人ぐらいで、あとは大体四千四百人、四千九百人、ちょっと減ってまいりましても四千五百人ぐらいなんですけれども、例えば一番最後の二十二年度でいえば、その年ですぐ受かったという人が四千五百三十五人中一千百四十六人、お勉強中という人方が一千九百三十四人、わからないという人が一千二百六十八人となっております。

 ですから、今の段階で、二十二年度卒の方で、要するに一年目には受かっていないということです。まだ勉強を続けています。この辺が例の給費制、貸与制の問題とリンクしてくるわけです。

 では、これが、二十四年十月、これと同じデータをつくったらどうなるんでしょうか。というのは、まだ勉強されていて、三振していない方々がここにいるものですから、この方々が受けた場合に、ここから受かっていくとすれば、あるいは一年頑張った人たちが受かれば、今度ここはどうなるんだろう。ここが小さくなればなるほどこれは大変な話で、勉強した、卒業した、受からない、また勉強だ。だから、大変なことになってくる。それが、先輩方が残っているものですから、そういうことで自然にこうなっていっちゃうんですね。

 私、きょうはビジターで法務委員会ですから、法務委員会の方々は、どちらかというと、右側だけ考えておられるような気がしてならないんです。右側のこの部分のところの就職問題を先ほどお話しいたしました。大臣とも意見交換しました。

 私が心配しているのは、これからこの薄い色になっていくんじゃないかという方々です。この方々は、弁護士になろうという志を立てて法曹養成の場の大学院へ入ってきながら、なれない。では、四年のときに違った選択をして、社会へ出ていれば、もっと違った人生もあったかもしれない。それがどんどんどんどん時間がたっていく。確かに、昔から司法試験というのはそういう部分もあったんですが、今回は何せ、門が広がる、門戸が広がるということでかなり大々的に募集をされたということもあるものですから、ここが非常に心配なわけです。

 私、勝手に二十四年十月はどうなるんだろうと申し上げましたが、大臣、いかがですか。二十四年十月というと、また今度、臨時国会ぐらいでビジターで来ればいいのかもしれませんけれども、そのときこのグラフを持ってきたら、どんな感じになるとお思いですか。

滝国務大臣 委員お示しのグラフによれば、本来の司法試験改革が結局もとのもくあみになってしまう、こういう御指摘だろうと思います。

 もともと、司法試験浪人というふうに言われた人たちが、大事な青春時代を棒に振って、勉強一筋に取り組んでいる、そういう姿を何とか解消したいというのがこの法曹改革の原点だったわけでございますから、その原点がだんだん傷が大きくなってしまった。こういうことをやはり改めてどうするかということを考え直さないと、もう取り返しのつかないところまで来ているということだと思います。

 そこのところは、そういう深刻な状況であるということは受けとめていかなければいけませんし、そして、給費制、貸与制の問題よりもむしろ、そのグラフでいえば右側の、相変わらず試験中、あるいは行方がどういうふうなところに落ちついているかわからない人たちについて、どう配慮するのか、こういう御指摘だろうと思います。

 いずれにいたしましても、昔言われた司法試験浪人の弊害というものをまたもやクリアすることができなかった、こういうことの反省は率直にしなければいけないと思っています。

橘(慶)委員 三振制ということで、司法試験浪人としてはリタイアをさせる仕組みになっているとはいえども、この薄い色のところに行っちゃえば、何が何だかわからないということでもあります。

 考えてみれば、今、合格者数が大体二千人でここのところ頭打ち、御説明は、これはいわゆる競争試験ではなくて、達成度を見るんだから、要するに司法試験としての能力がある方が二千人しかいなかった、こういう御説明にはなっているわけですけれども、大体、大学院に入学者が四千五百人いて合格者が二千人しかいなければ、そうなるのもある意味でシステムとして見えちゃっている、こういう問題もあるわけですね。

 一面、滝大臣、恐縮ですが私よりも一世代前の方になるわけですけれども、いろいろなことを御存じで、例えば、法学の場合は、四年で卒業して、優秀な方はすぐ裁判官になったり、あるいは法学研究の方に助手制ですぐなったとか、そういうシステムであるということも多分よく知っておられると思うんですね。

 それが今は、ある意味で二年間余計勉強しなきゃいけなくなって、そしてOJTもできなくてということになったら、何をしているのかわからなくなるんじゃないか。これをぜひ何とかしていきたい、こういう思いで、要は、今大臣の御答弁になったとおりに、全体を見ていただいての改革ということをぜひ法務省としても考えていただきたい、こういうことであります。

 そこで、法科大学院において、平均合格率は非常に今下がっております。三割に満たない、こういう状況において、若者にはどのような進路を示し、就職指導をしていくということをお考えになっているのか、文部科学省さんの見解を伺います。

常盤政府参考人 法科大学院の修了者につきましては、法曹以外の分野でも、例えば企業法務であるとか公務員等として活躍することも期待をされているわけでございます。

 司法制度改革におきましては、二十一世紀の司法を担う法曹に必要な資質といたしまして、専門的知識に加えて、柔軟な思考力、説得、交渉の能力、あるいは社会や人間関係に対する洞察力等を求めておりまして、法科大学院において、そういう能力の涵養という点で努力を続けているところでございます。

 進路変更等によりまして仮に法曹とならない場合におきましても、これらの法的素養等については、社会で活躍するために必要とされる能力であると考えております。こういう能力を培うためにも、文部科学省としては、各法科大学院の教育の質の改善ということを促してまいりたいと考えております。

 また、現在の状況を踏まえまして、中教審の法科大学院特別委員会におきましても就職支援の充実方策ということについて議論をしているところでございますので、文部科学省といたしましては、こういう議論を踏まえつつ、修了者の就職支援というところに力を入れていきたいというふうに考えております。

橘(慶)委員 多分、いろいろな就職口のイメージを考えていかなきゃいけないんだと思います。先ほど大臣から御答弁いただいたのは、こちらの方々の就職のイメージ。しかし、全体の方々の就職先のイメージ、あるいはどういうキャリアに進ませていくか、これをぜひ文部科学省さんとしては早急にお考えになることが大事じゃないかなと思います。

 この項の最後でありますが、法科大学院の数の絞り込みなど、さまざまな対策が議論されておりますが、最近の法科大学院の実情について、きのうも少しネットで出ておったようでありますけれども、文部科学省さんからお答えいただきたいと思います。

常盤政府参考人 お答えいたします。

 文部科学省といたしましては、平成二十一年の中教審の報告を踏まえまして、入学者選抜における競争倍率あるいは司法試験の合格率等を指標といたします公的支援の見直しなどに取り組んでいるところでございまして、多くの法科大学院において教育の質の向上に向けた取り組みが行われていると認識をしております。

 しかしながら、最近の法科大学院の実情についてでございますけれども、司法試験の合格率を初めといたしまして、入学者選抜における競争倍率、あるいは入学者数、入学定員の充足率などの指標について、法科大学院間で大きな差が生じているという認識をいたしております。

 さらに、法科大学院の組織見直しの状況でございますけれども、先月、法科大学院一校が募集停止を発表いたしましたけれども、それを含めまして、これまでに三校の法科大学院が募集停止あるいはその予定を発表しているところでございます。

 文部科学省といたしましては、中教審の法科大学院特別委員会におきまして、課題のある法科大学院への対応等、法科大学院教育の改善方策について検討を加速させていきたいというふうに考えております。

橘(慶)委員 きのうのネットに発していた記事では、ことしは八六%の法科大学院で入学定員割れ、こういう記事もあったと思います。ぜひ、この分野について早急に、言ってみれば、需給と言ったら叱られるかもしれませんけれども、そういう合格者数なり、そのところに合った法科大学院制度の設計、そしてまた法学教育というものを本当にどういうふうに再構築するのかということについて取り組んでいただきたい、このように要望をさせていただきます。

 最後に、幾つか問題点は申し上げたので、あとは、これからどうするというところです。

 法務省さんが庶務を担当されている法曹養成フォーラムも五月十日には論点整理が終わったところであります。少し確認をさせてください。

 法曹養成フォーラムの主たるメンバー、主要メンバーというのは、例えば司法書士とか行政書士さんとか、いわゆる税理士さんとか、そういう士業の方は余り入っておられませんでした。あるいは、司法試験の受験生とか、企業等の法務サービスのユーザーとか、そういった方々も本メンバーとしては入っておられませんでした。しかし、論点整理においてはいろいろな形でそこは反映されたものと思います。どのようにされたかだけ確認をさせてください。

滝国務大臣 フォーラムの中では、例えば司法書士会からもおいでいただいて、司法書士会の仕事ぶりというような観点から意見を聞かせてもらう。それからもう一つは、例えば市町村に職を得ている弁護士さんというか法曹の実際の仕事ぶりはどうなんだろうかとか、そういうようなことでのヒアリングとか、そういうことはやってまいりました。

橘(慶)委員 そういうことも踏まえられて、フォーラムの論点整理では、隣接専門職種団体について、役割の明確化と連携の強化ということを指摘されているわけであります。

 法務省さんという一つの垣根の中では、弁護士さんと司法書士さんとの関係ということにどうしてもなってしまうのかもしれませんが、現実は、行政書士さんもあったり、あるいは税理士さんの方もあったり、実は税理士さんと会計士さんが、これは法務省さんの所管ではありませんけれども、非常に今問題を抱えていて、これは会計士さんも同じような問題を今抱えていますから、いろいろなところに士業の状況というのは非常に難しくなってきているわけですが、ここでは法務省さんということでありますので、弁護士さんと司法書士さんとの関係についての見解だけお伺いします。大臣にお願いします。

滝国務大臣 司法書士さんというのは、簡易な事件については弁護士に準じた仕事ができるということでもございますので、そういう意味で、司法書士会の方々を呼んで実際の仕事の中身というものをお聞きしたわけでございます。

 そういう意味では、例えば税理士さんとか、そこまではいっておりません。

橘(慶)委員 この分野は、どこかがひずんでくるといろいろなことがひずんでまいります。ぜひそこも含めて総合的に、しかし早急に御検討を進めていただきたい。

 大臣からは、若い方々に目線を置いてというお話も承りました。それは非常にありがたい御答弁だったと思いますが、そういった、きょうるるお話をさせていただいた法曹養成制度の今日的な問題点、若者が直面しているこの制度のひずみ、こういったことを直視した上での具体的な処方箋を書くべきと思いますが、大臣の決意をお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 少なくとも法曹養成のための基本的な主管省である文部科学省も入って、この問題は政府一丸となってとにかく解決策を探る、こういうことでございます。

 そして、今度の裁判所法改正法の考え方にもございますように、少しウイングを広げて、合議機関として改めて方向を探っていく、こういう決議もいただいておるわけでございますから、そういう中で、新しい角度からも見直しを早急に詰めていく、これが法務省の責務だろうと思っております。

橘(慶)委員 総務省の政策評価の勧告に対する回答は、どうやら六カ月後、そしてまた一年後ということで来るようであります。今ほど、処方箋を書いていく上でのお気持ちはお伺いいたしましたが、あと、念のため、スケジュール感ということについて、法務省、そしてまた文部科学省から、それぞれお答えをいただきたいと思います。

滝国務大臣 裁判所法の改正法案のときにもこの委員会における皆さん方の御意見を伺いましたけれども、結局、この問題は、毎年十一月から新しいいわば合格者が司法修習に入る、そういう期間の問題もありますから、十一月が一つのポイント、それから年度末の三月、四月が一つのポイント、そんな時期を勘案しながら早急に取りまとめていく、こういうふうなスケジュール感を持って臨んでまいりたいと思っております。

城井大臣政務官 お答えを申し上げます。

 先ほどからお話が出ておりました論点整理の取りまとめを踏まえ、また、法科大学院のさらなる改善方策については、現在、中教審の法科大学院特別委員会におきまして、課題のある法科大学院への対応、あるいは未修者教育の充実方策などについて集中的に議論を行っているところであります。

 その上ででありますが、文部科学省としても、この法曹養成制度の今後については、特に政務三役として危機感を強く共有しているものであります。そうした部分を踏まえまして、先ほどの論点整理、そして裁判所法改正の審議の動向、また、国会からもさまざまな御提言、御意見を厳しく強くいただいておりますので、そうしたものをしっかり踏まえまして、中教審における検討をまず加速させるということ、また、それとともに、取りまとめたところから実行していく、随時加速していくということで取り組ませていただきたい、そのように考えております。

橘(慶)委員 文部科学省さんの方は、めどは明らかにはなさらなかったというのがちょっと残念ではありますけれども、しかし、危機感ということはお話があったわけですから、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 法曹養成の場としての法科大学院、本当にこれだけの数で、これだけの入学者でいいのかということ、ではどういう形に変えていくのか、どういうあり方があるのか、そしてまた、どの程度の弁護士さんの合格者が必要なのか、その方々がどういうまた役割を果たしていけばいいのか、そういったことについてぜひ総合的に検討をいただき、そしてまた、他の士業等にまた変な形ではねっ返りが出てこないように、ぜひ、ここについて早急に、かつ綿密に検討をいただきたいということを申し上げて、ここまでの項を終わらせていただきます。

 最後になりました。また大臣所信に戻りまして、幾つかの点についてお伺いをしていきたいと思います。

 最初の一点目だけはちょっと、どうしても私としては今の内閣、政府の皆さんとは見解を大いに異にするので、きつい質問かもしれません。

 現内閣は、二十五年度の新規採用を二十一年度比五六%減に絞り込まれたわけであります。法務省さんの採用上限は九百四十二人とされたということであります。これについてはいろいろ、この委員会での御意見等もあって、他の省庁から見ればある程度の配慮もされたという話も漏れ承ってはおります。

 しかし、専門職種が非常に多い法務省さんの実情、そういう実情に照らして、本当にこういう採用抑制という形で、もちろんこれは、仕事がないとか行政整理とか、そういうことをされている中で、いわゆる先に定員の方がありまして、定員の方から見て、必要な数というのがあってそれで絞り込んでいくならいいわけですが、これは逆でありまして、定員は充足しなくても新規採用を絞り込む、そういう話でありますから、本当にこれで法務行政上問題は生じないというふうにお考えであるのか。このあたりのいきさつ、今の思いについて、大臣からお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 公務員の定数を減らしていくという基本方針がございますし、当然それに基づいて各省努力をする、これが基本であるはずでございます。

 今回、法務省としては、平成二十五年度の定数について、いわば九百四十二人の採用上限、こういう設定をされているわけでございます。したがって、その中でどうやって回していくか、こういうことでございますけれども、まずは退職者というものを勧奨していく、退職を勧奨していくというのが一つの問題でございます。

 その中で、新規採用職員は抑制されているものですから、それをカバーするためにはそれなりの努力をしなければいけない。どういう格好で努力をするかといえば、一つは、退職者を少し任用延長するというか再任用して当面をしのぐということでございますし、そしてもう一つは、これからの数字としては勧奨退職を少し募集をできるだけ多くしていく、こういう二つの戦略でこの急場をしのいでいきたい、こういうふうに思っております。

 その中でいきますと、平成二十五年度はなかなか厳しい、それでも厳しい中でとにかくやりくりをしていかなければいけない、こんな定数のやりくり、職員配置のやりくりでございます。

橘(慶)委員 組織における人員構成なり採用をどうするかというのは、これは地方自治体でもあることですし、今企業でもあることであります。

 ただ、今大臣のお話のあったことでいいますと、普通なら、まず希望退職、企業では希望退職をとって、要するに会社が厳しいわけですから、そういうものをやってある程度枠をつくって、では、そのことによって新規採用をどうするかというのが普通でありまして、人事担当者とすれば、採用というのは、それは仕事が多くなる、少なくなる、いろいろあるかもしれませんが、恒常的にある仕事であれば、採用というのはフラットに採っていく、年齢のこぶをつくらないということが本来は常道であろうと思うんですね。

 そういう意味では、今回、三月、四月、いろいろな事情は理解します。いろいろな事情は理解するけれども、それはどちらかというと財政的、あるいは消費税の問題、いろいろなこともあったとは思います。しかし、人事行政側から見ると、本当はこれは本末転倒ではないか、こういう感じがするわけです。

 もう一つ、きょうは若い方々の視点ということを私は申し上げてきました。つまり、ことし、平成二十四年、今試験をやっていますけれども、ことしから人事院の国家公務員の採用試験というのは変わったわけですね。1種、2種、3種というのをやめて、総合職、一般職ということで、ことしは試験制度の大幅な変更をいたしました。もちろん、法科大学院の修了者の試験制度もあるわけですけれども。

 いろいろな試験制度も変更した、ただでさえ受験者の方々はいろいろなことを心配している、そういうときに、しかも、準備を進めて進めてきた上で、四月になって、要するにもう四年生になったときに、突然、採用の門はことしは狭き門である、こういうことを宣言されるというのは、繰り返しですが、行財政改革という方の視点からは理解したとしても、人事行政上、それから受験者の視点というところからいくと、私はこれはおかしいんじゃないかというのを総務委員会で川端大臣にも聞いております。

 実は、私は、滝大臣はこれを聞くに値する方だと思います。人事行政上のこともおわかりである、それから受験者という立場もなさったことがある。先ほど、司法修習の方では若い方々の視点の話もありました。そういう立場からごらんになって、どうお考えになるのか、そして本当にこんなことを続けていっていいのか。どうお考えですか。

滝国務大臣 法務省の守備範囲を超える問題でございますけれども、基本は、今委員のおっしゃったように、人事というのは長い目で見て、毎年の新規採用が、ある年は極端に少ない、その十年後にはどんとふやす、そういうようなことはできるだけ避けるというのが人事配置の基本でございますから、そういう意味では、今回の行政改革の一環として、急場をしのぐという意味ではやむを得ない措置だろうと思います。

 ただ、そうはいっても、やりくりしても、今先生の御指摘のように、新規卒業者の門がそれだけ狭くなるということについてはやはり国全体の問題として考えていかなければいけない。そのためにはどうするんだというと、これはなかなか解決方法はありませんけれども、とりあえずは来年の枠を待って、そういう人たちを優先的に採用していくのかなという感じもしないわけではありませんけれども、なかなか、これだけ定数を削減している中で、一年待ってもらうとかなんとかという約束もできませんから、そこのところは、大変国家としてのいわば損失ということを覚悟して踏み切らざるを得ない。そんな事情に今あるということを率直に認めていかなければいけないと思います。

橘(慶)委員 御答弁の趣旨は理解するんですが、何かやはり、若い方々、これからの世代に対して私たちは冷たいんじゃないかなという感じもしないわけじゃないんです。

 ことしという機会を失えば、一年浪人するのか、それとも公務員はこれで諦めるのか、そういうことになっていくわけですね。それを本当にこういう形でしていくことがいいのか。むしろ、希望退職をとるなら募られて、まず、今、ここにいる私たちから席をあけてあげて、新しい方々にやはり席を譲っていくということが本来あるべき将来の世代に対する現世代の務めではないかと。要は、希望退職から始められるべきじゃないかということを申し上げたいんです。

 さらに、これは非常に難しい問題を抱えております。年金制度の変更によりまして、二十五年度に入ると、間もなくですよ、国家公務員で六十一までの再任用の問題が待ったなしで来るわけです。これはまた大変なことでありまして、無年金者を出していいのかどうかということ。そういうことを全部考えたときのこのスケジュール感、段取りということにおいて、本当にこういう段取りの踏み方で来年もつのか、再来年もつのか、そこまで長期的なことをちゃんと考えているんですか、そういう問題意識なんです。

 これは法務省ということでなく、大臣だからあえて申し上げておきます。ぜひ、閣内でそういう議論をする場があったら、そういうことをもう少し長期的に考えていただきたい、こういうことを特に申し上げておきたい、こう思います。

 次の質問に移ります。地方法務局の問題であります。登記所の関係ですね。

 ここについて、整理統合というのはこれはずっと今まで進めてこられたわけであります。どの程度進捗しておりまして、今後、どのように取り組む方針なのか、民事局長さんに確認をいたします。

原政府参考人 登記所の統廃合の経緯をまず少し御説明させていただきたいと思います。

 登記所は、明治中期に、当時の交通事情を前提としまして、利用者が一日で往復できるようにということで、全国に数多く設置されたという経緯がございます。

 しかし、その後、交通事情等の社会情勢が大きく変化いたしましたので、法務省におきましては、昭和三十年代から登記所の統廃合に努めてきているところでございます。現在は、平成七年に民事行政審議会から答申を受けた基準に基づきまして、また、数次にわたる行政改革に係る閣議決定等を踏まえて、登記所の統廃合を進めているところでございます。

 その結果といたしまして、昭和三十年当時は二千庁以上登記所がございましたが、平成七、八年当時は約半分になり、本日現在で登記所数は四百三十二庁となっております。しかし、全国的に見ますと、比較的小規模な登記所がまだ相当数存在している状況でございます。

 政府の方針であります行政改革の必要性や国の厳しい財政事情等に鑑みますと、利用者の利便性を確保しつつ、事務処理の効率化を図り、質の高い行政サービスを提供していく必要性は高いものと認識しておりますので、今後とも、引き続き必要な統廃合を実施することによって、登記所の適正配置を実現してまいりたいと考えております。

橘(慶)委員 この問題については、確かに交通の発達ということもありますし、やはり適正配置ということかと思います。

 ただ、また一面、法務局さん、登記所のある場所に、大体その辺に司法書士さんとか皆さんが事務所を構えておられると、一つの町になっているという場合もありますので、その辺のそういう実情なども見ていただきながら、またいろいろ勘案して進めていただきたいな、このように思います。

 もう一点、御質問させてください。

 この登記所においては、備えつけ地図、いわゆる公図というものがございまして、公図は徐々に整備は進んできているわけですが、これは国交省の地籍調査などとも関連するわけですけれども、やはり適正な土地の取引を進めていくためには、地籍調査、そしてこの公図の整備というのは欠かせない問題だと思います。

 東日本大震災によって失われた公図の整備ということについても、今、鋭意、取り組んでおられることは聞いておるわけですが、きょうはそちらはちょっとおきまして、大臣所信においても、全国的に積極的に取り組むとされたこの登記所備えつけ地図の整備について、現状、当面の整備目標について民事局長さんに伺います。

原政府参考人 法務省におきましては、平成十六年に、都市再生本部から出された方針を受けまして、都市部における地図混乱地域につきまして、登記所備えつけ地図の整備を進めてきているところでございます。

 平成十六年度から平成二十年度までに四十六平方キロメートルの地域について地図を作成しております。その後は、平成二十一年度から平成二十八年度までの八年間で合計百三十平方キロメートルの地域について地図を作成する、こういう計画を立てまして、この計画に基づき、都市部における地図混乱地域について地図の整備に努めているところでございます。

 平成二十一年度から平成二十三年度までに四十二平方キロメートルの地域について地図を作成しております。したがいまして、平成十六年度からの累計にいたしますと、八十八平方キロメートルの地域について地図を作成したということでございます。

 今後とも、都市部の地図混乱地域につきましては、地図整備の緊急性がございますので、引き続き計画的に地図整備作業を進めてまいりたいと考えております。

橘(慶)委員 この数字を聞きますと、日本の国土から見れば、確かに三十八万平方キロというところから見ると百三十平方キロかなと思いますけれども、実はそうではなくて、今御説明あったように、都市部、例えば東京の密集地域などを考えていただくと、そういうところの公図混乱地域を直していくということであれば、何万筆という地図、地籍が確定していくということ、そのことによって土地の取引がスムーズになるということであれば、非常にこれは将来にわたって財産、ある意味でソフトな行政の財産だと思いますので、インフラだと思いますので、引き続き粘り強いお取り組みをお願いするものであります。

 あと五分ということでありまして、最後のところは、少し、余り難しくないお話というか、やわらかい話にしたいと思います。

 入国管理業務というとどちらかというとかたい話に普通はなるわけですけれども、ここでは観光立国の視点ということでありまして、これは大臣所信にもございます。観光立国の推進ということで、外国人観光客をふやしていこうという視点から、今後ともクルーズ船に対して迅速な審査を試行する、試してみる、こういう文言が大臣所信にあったわけであります。

 そこで、具体的に入国管理の現場においてどのようなことを試行しようとされているのか、これについて、まず入国管理局長から御答弁をお願いいたします。

高宅政府参考人 多数の乗客が乗船しております大型のクルーズ船、これが我が国に寄港いたしました場合、一度に多数の上陸申請が行われます。また、その一方で、寄港時間が比較的短いという問題がございます。通常の場合における以上に迅速な上陸審査が求められるということになるわけでございます。

 このため、応援派遣などによりまして多数の入国審査官を集中するということは従来からやってきましたし、あるいは、仮上陸許可制度の活用などさまざまな工夫もしてきたところでございますが、今回試行することとしておりますのは、寄港地上陸許可制度という、船舶が寄港した港の近傍に上陸を許可する、そういう特例制度がございますが、それと先ほどの仮上陸許可制度、これを組み合わせて運用する、その上で乗客が迅速に上陸できるようにするというものでございます。

 具体的に申し上げますと、あらかじめ船舶側から乗客名簿の提出を受けまして、予備的作業を行う。その上で、乗客の方が下船する際、船をおりる際に、船舶の入り口などの手前などで指紋情報の提供を職員が並んで受ける。それで仮上陸という形で許可して、下船してもらう。それで、乗客の方が下船して観光などをされている間などに寄港地上陸を許可する、最終的な許可をするということでございます。

 このように、今回試行しようとしている方式といいますものは、乗客が船舶から下船するためにもともと必要な時間というのがございますが、その時間帯を利用することによって新たな時間を最小限にする。また、より簡易な手続で許可できる寄港地上陸許可制度というものを活用することによりまして審査を迅速に実施するというもので、必要な準備を行った上で、今月中にも開始する予定でございます。

橘(慶)委員 では、これから、今月からいよいよ始まるということなんですね。これは理解いたしました。

 実は、私の地元でも、ここのところ、そういう大型クルーズ船、外国人を乗せたものが本当に初めてというような形で来まして、それでわかったことは、入国審査官の方がわざわざ先にクルーズ船に乗っていただいて、中でいろいろな手続を進めながらいらっしゃるということもわかって、非常に入国審査官の方がいろいろな意味で御苦労されているんだなということも実はわかったわけであります。しかも、私の地元の場合は、天候不良によりまして地元で寄港が取り消しになりまして、富山県の伏木でおりるはずだったのが北海道の小樽まで入国審査官も乗っていかれたということで、大変御迷惑もかけたな、そんなことも思います。

 今、たまたまこれから試行されるということだったんですけれども、これは通告ではないんですが、ではどれくらい短縮されるというふうに思っておられるのか。大体目分量、まあやってみなきゃわからないとは思うんですが、どれくらい短縮だというふうにお考えなのか、局長さん、もしわかれば。

高宅政府参考人 時間的なものもございますが、船というものは出入り口が限られておりますので、そこからおりるときにどうしてもお客様方というのは並ばれるわけですが、そこのところで並ぶということで、要するに、普通におりるよりも余計な時間をできるだけかけさせないということと、それから、実際に寄港地上陸許可制度では、今、上陸に際してバイオ情報をとっておるんですが、それを、指紋、顔写真と両方やっておるんですが、指紋だけにして顔写真を撮らないということで短縮ができると考えております。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 なかなか、成田のああいう審査と比べてどうしてこれはそんなに急ぐのということなんですが、クルーズ船で来られた場合、ある港、例えば横浜なら横浜、大阪なら大阪で、一日だけそこに寄港されて、見学をされて、また次のところへ行く。だから、乗客さんにとっては非常に一分一秒大事だ。そこで待たされるといらいらして、それではいわゆるおもてなしにならない、こんな話だと思っております。

 最後であります。

 クルーズ船は非常に大型化する傾向でありまして、乗客が二千人に達する場合もあると聞いております。入国管理上の行政目的を尊重するということは大変大事で、ここにはいろいろ法務委員会においても大変厳しい問題もあるんだ、このように思っております。適正に入国管理行政を進めていただくことは当然といたしまして、観光立国の推進の面で、できる限りの配慮を求めたいと思いますが、大臣の見解をお伺いして、終わらせていただきます。

滝国務大臣 今、入国管理局長からもお話しさせていただきましたけれども、一遍に二千人からの人たちを入国管理するというのは、これはなかなか時間がかかる。一人について恐らく数分かかる、手際よくやっても数分かかりますから、それをわずか十秒ぐらいでやるためには、それだけの機械化したものを持ち込んで、船の中であらかじめやっておく。それで、今、先生がおっしゃったように、寄港地から寄港地へ船が動くわけです。それでも、一日でも上陸してくれればツアー観光になりますから、そういう意味での促進を、こういう格好で法務省も協力していくということでございます。

 やはり、それぞれの地域が観光立国を目指して、どこの県でも、東京でも大阪でも観光立国というのをうたっていると思いますけれども、そういうものが現実問題として、これによって少しでも役に立てば、こういうことで私どもは考えてまいりたいと思っております。

橘(慶)委員 きょうは大変ありがとうございました。終わります。

小林委員長 次に、中島政希君。

中島(政)委員 本日は、私ども無所属の委員に、各位の御配慮をいただきまして、質問の機会をいただきまして、感謝申し上げます。

 大臣にお伺いいたしますが、私は、この委員会で滝大臣が委員長をされているとき、千葉法務大臣のときに、判検交流について質問をいたしました。

 判検交流についてちょっとお聞きをしたいと思いますが、小川前大臣が四月に判検交流の中止ということを、これは記者発表されたんですかね、表明されたようでございますが、滝大臣もこの立場を踏襲されるということなんでございましょうか。大臣の判検交流についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

滝国務大臣 今回の判検交流の修正というのは、全面的に廃止するわけではないんですね。要するに、裁判官になって裁判をする立場の人が、法務省の中で別の、それと対立するような仕事をしている。そういう人たちが判検交流という形でもって判事、検事の間を移行するというのは、裁判の公正性とか、それからその他の問題で、やや批判が出るだろう、これは中島先生がこの委員会でおっしゃったとおりです。

 したがって、そういう立場が入れかわったときにでも、その点が公正さを疑われないような、そういう人たちを、まず判検交流の停止というか中止という格好でやっていこう、これが今回の判検交流の考え方で、全面的にやるんじゃなくて部分的なところに今とどまっているということは、まずお断りをしておきたいと思います。

 したがって、小川前大臣が発表しました、判検交流といっても、ごく部分的、本当に裁判そのものにかかわるような部分の判検交流は、それは停止しておこう、こういうことでございます。

 したがって、例えば法務省の中にも、民事局は、裁判官から民事局に来てもらっている人がかなりおります。そういうところまで今直ちに停止をしようというところまで行っているわけではございません。

中島(政)委員 部分的なことだと、民事の訟務検事についてはそのままであるというようなことでございますが、訟務検事についても縮小していくという趣旨のことを前大臣はおっしゃっていたように思うんですけれども、その辺はいかがでございますか。

滝国務大臣 基本的には、判検交流という制度を見直していかなければいけないという御意見も前々からあるわけでございますから、そういう意味では、縮小の方向は一つの方向として持っていなければいけない、こういうふうに思います。

中島(政)委員 この判検交流の中止ということにつきまして、最高裁の方の御意見を伺いたいと思いますが、いかがでございますか。

安浪最高裁判所長官代理者 裁判官の法務省への出向につきましては、裁判実務の経験があり、法律に精通している人材の派遣を求める法務省からの要望を踏まえて行ってきたところでございます。

 法務省におかれて、訟務検事に占める裁判官の割合の見直しを行うということでありますので、最高裁としても、これに対応してまいりたいと考えております。

 また、法務省におかれて、裁判官が地方検察庁の検察官を務め、検察官が地方裁判所の裁判官を務めるという、この交流につきましては取りやめるということでありましたので、最高裁といたしましても、これに対応することとした次第でございます。

中島(政)委員 以前に、千葉大臣の時代だったでしょうかね、当時の大谷人事局長が私にお答えになった中には、判検交流には意義もあるんだと。外部に出して裁判官にいろいろな経験を積ませるのもいいことなんだと、積極的な意義も最高裁として強調されていたように思うんですけれども、今聞いていると、法務省の方からの要請があったのでやめますと。意義の方についての御見解が変わったんですか。最高裁に聞きます。

安浪最高裁判所長官代理者 裁判官が外部に出て多様な経験を積む、そして幅広い視野を持つということの重要性については、いささかも変わっておりません。

 ただ、今申し上げましたとおり、裁判官が地方検察庁の検察官を務め、また一方で、検察官が地方裁判所の裁判官を務めるという、この点につきましては法務省の方で見直しをされるということでありましたので、先ほど申し上げたような対応を私どもの方でもとることにした次第でございます。

中島(政)委員 この判検交流の問題というのはいろいろありまして、今、人事交流する意義があるとおっしゃいまして、それはわからなくはないんですね。裁判官をやったり検事をやったりして両方の立場を知る、経験する。両方経験した結果、裁判官というのは退屈だというような結論を持った大臣経験者もいらっしゃったんですけれども。交流するのがいいかどうかということは抜きにして、今の、意義があるというお立場はわかりました。

 それで、意義があるんだということですが、この判検交流が問題になっているというのは、問題は幾つかあるんですけれども、一つは、法務省は行政府ですよね。最高裁は司法権。別なんですね。外務省から経産省に出向するというのと話がちょっと違う、ちょっとじゃない、かなり違う。憲法上の三権分立の建前からいかがなものかというのが一つあります。

 もう一つは、私はこの委員会で千葉さんにも江田さんにも聞いているんですけれども、これは全然、いつ始まって、どういう根拠法があって始まったのかわからない。文書が全然ないんです、取り決めが。法律はもとより、政令もないですし、覚書もないし、最高裁判所規則にも書いてない。何の文書もないんですよ。口約束です。

 一九七〇年代の中ごろ、口約束で始まって、民事をやる検事が不足しているからちょっと人を出してくれというようなことの要請があって、はいはいと言ったのかどうかわかりませんけれども、根拠になる文書もなく、事務レベルで始まったことが延々と続いてきて、だんだん人数もふえてきた。今度は、やめるについても、どういうお話し合いになったか、そういう覚書や文書があってこれはやめたのか、よくわかりませんけれども、曖昧な形で始まっている、文書がない。

 これは非常に問題だと思うんですね。将来、法制史を研究する人が出てきたら、この判検交流というのは、何となく始まって、文書もなくて、問題にはなっていたけれども、そのうち何となく縮小してなくなった、こういう結論になっちゃいますよ。これは、中止する、縮小するのはいいけれども、両者で話し合って、しっかりした確認をして、文書で残すということが大事ではないかと私は思っております。これはいつも指摘していることなので、このくらいにしておきます。

 次に、これは私のちょっと個人的な関心があって調べていることでございますが、二・二六事件の裁判記録、資料にも配ってありますが、これは本来非公開のものなんですが、表に出ないはずのものが、ある出版社から出版されている、定価もついて出版されるに至っている。

 これは大変に不可解なことでございまして、私は、ちょっと政治史もやっていたものですから、学会にこういうことに関心のある方がいらっしゃったものですから、ぜひ二・二六事件の裁判資料を公開できないかという相談を受けました。そして、平岡大臣の秘書官を通じて現場にお話しいただきまして、いろいろ調べたり検討していただきました。

 その結果として、結果だけ言いますと、その資料を法務省として出版等で公開することはできない。また、それが法務省としてできないのであれば、誰か学者、研究グループに委嘱して公開するようなこともできないかと私は聞きましたのですが、現場の方で、この保管者である東京地検ともよく話した結果、結論的に言うとできないというお返事を私はいただいておりました。

 ところが、その返事をいただいて一、二カ月のうちに、突然、朝日新聞の書籍広告欄に、「二・二六事件裁判原本」「東京地方検察庁が保管する原本のコピー」と、定価までついて広告が出た。私もびっくりしてこれを見ましたけれども、どう見てもこれは本物なんですよね。

 本来非公開であるべきこの裁判原本のコピーが、どういう経過で営利目的で出版されるに至ったのか。機密漏えいじゃないんですか。御説明をいただきたいと思います。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる二・二六事件でございますが、これは戦前の陸軍軍法会議によります裁判でございます。その裁判の記録につきましても、刑事確定訴訟記録法に基づきまして、現在、東京地方検察庁において保管、保存しているところでございます。

 この記録の大半は、いわゆる刑事参考記録ということになっておりまして、同法の九条に基づきまして、保管の責任を負っております東京地方検察庁の方で閲覧について許可をするという判断をしているところでございます。これにつきましては、これまで閲覧につきましては何人かの方にごらんをいただいたという経緯はあるようでございますが、謄写、すなわちコピーをしていただいたことはないというふうに私ども承知をいたしておりました。

 ところが、今先生御指摘のように、本年の春になりまして、このような本が出版されているということは、実はまことに申しわけないんですが、先生の方から御指摘をいただきまして私どもも初めて知ったような次第で、そういう意味では遺憾であるというふうに思っております。

 それがなぜこういうふうになったのかということを調べますと、実は、まだ確定的なところまで詰め切ってはおりませんが、平成三年ころに、この記録をそもそも公開、この場合の公開というのは閲覧に供することをしていいものだろうかということの妥当性につきまして検討しようということで、軍法会議に関し知見を有しておられた個人の方、弁護士の方でございますが、もうお亡くなりになっている方に検討を依頼した事実がございます。それで、その関係があるのではないかというふうに思っているところでございまして、その点も含めて調査をしているということでございます。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、コピーがもとになったのではないかと思われますが、こういう形で書籍が出版されたということはまことに遺憾なことであり、申しわけなく思っている次第でございます。

中島(政)委員 遺憾なのはわかりましたけれども、これは、法の執行に対して厳正な責任を持たなきゃいけない東京検察庁ですよ。これはちょっとひどいんじゃないですか。

 それで、この保管責任者である東京地検はどうかかわったのか。あるいは、その関係者の責任問題ということもあると思うんですけれども、その辺はどうですか、局長。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 今も申し上げましたとおり、現在、どういう形でこういう書籍が出版されたのかということを鋭意調査いたしているところでございます。

 何分にも二十年余り前のことでございますし、委託をした相手の方もお亡くなりになっているというところもございまして、若干調査に時間がかかっておりますが、できる限り早急に結論を得たいと思いますし、その際に、検察庁側に問題があるとすれば、それにつきましてもきちんと調査をしていきたいというふうに考えております。

中島(政)委員 時間になりましたので私はこれ以上言いませんけれども、そもそも二・二六事件のような七十六年前の歴史文書を公開していないということがおかしいんです。司法省以来のいろいろな大事な歴史資料をたくさんお持ちだと思うんですね、法務省は。これはどんどん公開していく必要があると思うんです。

 こうした文書についてぜひ公開をするように、こういう問題についての指揮権はちゃんとあるわけですから、法務大臣、どうですか。名声一時に上がると思いますよ、これを公開していただければ。どうぞ、御答弁いただきます。

滝国務大臣 問題の記録は、何か百年保管ということになっているようでございます。百年保管だから公開できないかどうか、その辺の問題も含めて、やはり歴史的な資料ですから、それにふさわしい取り扱いというものはあるだろうというのは御指摘のとおりだと思います。少し検討させてもらいたいと思います。

中島(政)委員 どうもありがとうございました。

小林委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十四分開議

小林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦です。

 滝大臣、このたびは御就任おめでとうございます。

 まず、オウム真理教の現状について伺います。

 昨年末の平田信、今月の菊地直子と、立て続けに指名手配犯の逮捕が続き、つい先ほど、高橋克也容疑者についても東京都大田区の路上で身柄が確保されたとのニュースが飛び込んできました。

 まず、警察庁に事実関係の確認をしたいと思います。

舟本政府参考人 お答えいたします。

 去る六月三日、特別手配の菊地直子を、情報に基づきまして相模原市内で逮捕いたしました。また、同人をかくまっていた男性を、翌四日に犯人蔵匿で逮捕いたしました。

 この両人の供述から、高橋克也が川崎市内に居住していたという情報がもたらされまして、そこに赴きましたが、直前に逃走しておりました。警視庁初め全国警察を挙げて高橋克也の追跡捜査を行っていましたところ、けさ方、情報がもたらされまして、都内、大田区の路上におきまして同人を発見、確保いたしまして、蒲田署におきまして本人であるということの確認をいたしまして、昼前、十一時過ぎに、地下鉄サリン事件、殺人及び殺人未遂で通常逮捕したところでございます。

柴山委員 けさ方、情報がもたらされたということなんですけれども、差し支えない範囲で結構ですので、一体どういうソースの情報だったんでしょうか。

舟本政府参考人 お答えします。

 今後の捜査を待つところが多いわけでございますので、詳細は控えさせていただきたいと存じますけれども、けさ方、大田区内の漫画喫茶で同人と似たような男を見たことがあるという旨の情報がもたらされまして、捜査員を急派して、その付近で本人を確保したところでございます。

柴山委員 今、舟本刑事局長の方からもお話があったとおり、あれほど映像あるいは足取りがわかっていて、逃走してから十日余りが既に経過をしているわけであります。周辺の住民の不安も大変なものがあったのかなというように思います。

 高橋容疑者が勤務先の社員寮から逃走したのは、菊地容疑者の逮捕の報道がきっかけだったというようなことが言われているわけですけれども、今お話をお聞きしたような経緯について、警察として初動捜査の反省はありませんか。

舟本政府参考人 お答えいたします。

 菊地直子につきましても、高橋克也につきましても、現在、鋭意捜査中でございます。全容が解明される中で、今回の追跡捜査等々のあり方につきましてもいろいろな形で検討を加え、今後に生かすべきものがあれば当然生かしてまいりたいと考えております。

柴山委員 ただ、今申し上げたように、菊地容疑者の逮捕の報道がきっかけとなって直前に逃げられてしまったということは、やはり、さまざまな想定が甘かったんじゃないかなというふうに思わざるを得ません。

 また、平田容疑者の自発的な出頭なくして、菊地直子容疑者、あるいは今回の高橋容疑者の逮捕はなかったというように思います。そういうことからすれば、やはり情報ネットワークということをしっかりと研ぎ澄ませておかなければいけないのではなかったのかということを強く感じます。

 私の住んでいるところは所沢でありますが、この所沢に被疑者らは潜伏をしていました。そして、菊地容疑者につきましては、防護服の着用を行ったり、土谷正実死刑囚のもとで実験工程をノートにまとめたり、薬品の影響を受けて体がふらついていたりしていたという元信者の供述があるようにも報じられていまして、やはりかなり深く地下鉄サリン事件にかかわっていた可能性があるというように感じるんですけれども、そういうことから、私の地元でも大変関心が深いものと思われます。

 今、捜査の経過、現状については、引き続き取り組んでいるということなんですけれども、今後しっかりと実態の解明をし、また、麻原を中心としたオウム教団の闇を暴いていただきたいというように思います。

 一点お伺いしたいんですけれども、今回の高橋容疑者の逮捕に伴いまして、現在係属している麻原あるいは平田等の刑事手続はどのような影響を受けることになるんでしょうか。これは法務省でしょうか。

稲田政府参考人 先ほど警察庁からお話がございましたとおり、本日、高橋が逮捕されたばかりでございますし、菊地につきましても、先般逮捕されたところで、まだ捜査中でございます。したがいまして、事実関係も詳細わからないところでございますので、現在係属しております平田被告人に対してどのような影響があるかは、ちょっと、現時点でまだ申し上げられるような段階にないというふうに思います。

 また、麻原につきましては、既に死刑が確定しているという状況にございますので、そういう意味では、特別の影響があるとかないとかいうことにはならないのではないかとは思います。

柴山委員 これは以前この法務委員会でも質問させていただいたところなんですけれども、死刑の執行につきまして、滝法務大臣は、就任の記者会見で、これについては適切に対応するということをおっしゃっていました。しかし、確定した死刑を執行するか否かの判断において、共犯事件の帰趨というものがやはりかなり影響してくるのではないかということを質問させていただいたところであります。

 滝法務大臣、この点について再度お伺いしたいと思います。

滝国務大臣 基本的には、今回の逮捕でどういうようなことが解明されるかということにかかわってくるわけでございます。基本的には、確定した判決について影響をするようなことはまずないわけでございますけれども、実際の執行面においては、当然のことながら、基本的に、点検した上でどうするかという、個々具体的なケースに即して判断をしていく、そんな事件だろうと思っております。

柴山委員 ちなみに、オウムの後継教団としてアレフやひかりの輪が周辺住民の不安を招いています。この間の一連の報道によって、これらの施設における活動が何か影響を受けている事実はありますか。

尾崎政府参考人 公安調査庁といたしましては、観察処分の実施ということで、立入検査を初めとして、いろんな手段によって観察処分を実施しているところでございます。

 施設に関しましても、立入検査をこの間、頻繁に行っておりまして、二十三年度中には延べ四十八カ所、二十四年に入ってからは延べ二十一カ所、立入検査を行っております。

 お尋ねは、この間の動きということでございますけれども、実際に立入検査で、教団がどういう動向を示すのか、それについて今後とも引き続き注視してまいりたいと考えております。

柴山委員 ちょっとおかしいと思いますね。私は、個別に、やはり公安調査庁から、この間のオウム後継教団の活動が活発化していて、非常に予断を許さない状況であるというようなことをお伺いしているわけですね。

 今お話があったように、平成二十四年に入ってからも何度も立入検査を行っているわけで、その過程で一連の、平田が昨年の末に逮捕となったわけですけれども、報道が過熱する中で、どのような状況にあるかということは、むしろ一般社会に対してきちんと説明をしておくべきだというふうに私は思うんですけれども、いかがでしょうか。再度答弁を求めます。

尾崎政府参考人 お尋ねのとおり、アレフ、上祐派、大きく二つに分かれております。

 この間の立入検査で判明した事柄を若干申し上げますと、アレフに関しましては、非常に麻原回帰ということで、麻原に対する個人的な絶対的な帰依、これを強調するような方向に動いているということでございます。

 上祐派につきましては、若干、麻原の影響力を排除するかのように見せかけておりますけれども、依然として麻原に対する絶対的帰依というものが続いておりますし、教義の面からも、危険な教義を維持しているというふうに考えております。

柴山委員 現時点での施設、信者の概況、その監視の実態について、少し教えてください。

尾崎政府参考人 現在、信徒数につきましては、当庁が把握しております人数は約千五百人ということでございまして、そのうち約四百人が出家信徒で、集団的に居住する、非常に閉鎖的な生活を送っているというふうに考えております。

 施設につきましては、拠点施設で、十五都道府県下に三十二カ所、それから、信者が住んでいる居住施設といたしましては、六都道府県下に約二十カ所ございます。

 関係地方公共団体からいろいろな情報提供の要請がありました場合には、団体規制法に基づいて、適切に情報を提供しているところでございます。

柴山委員 大臣、拠点が十五都道府県で三十二カ所ですよ。これは、松原国家公安委員長とも力を合わせて、ぜひ本気になって取り組んでいただかなければいけないという事案だと思います。

 感想と、今後どのような取り組みをされるのか、決意をぜひ伺いたいと思います。

滝国務大臣 オウム真理教の問題は、まだ根本的に終結しているわけではありませんから、当然、公安庁としては監視を続ける。

 こういう中で、当然、国家公安委員長とも連携をとりながら、これからのいろいろな事態が起きないように、そんなことも念頭に置きながら対処してまいらなければいけないと思っております。

柴山委員 そもそも、伝家の宝刀である解散命令というものがなぜなされないのかということは、同僚の馳議員からもこれまで質問がなされたこともあるかと思うんですけれども、そういったことも含めて、やはりしっかりと適切に対応していただきたいというように思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 滝大臣、検察行政の目的は何だとお考えになりますでしょうか。通告なしの質問で恐縮なんですけれども、お考えのところをお聞かせください。

滝国務大臣 世の中に不正という問題があれば、それを未然に防ぐ、そして、それについては、仮に発生すれば厳正に対処する、これが検察の本来的な目的だろうと思っております。

柴山委員 不正に対して厳正に対処する、それによって社会正義の実現が図られるということであろうかと思います。

 それでは、実際は無罪の疑いが生じたにもかかわらず、一旦起訴したからといって、そうした疑いを押し隠して有罪判決を得ようとすることは、不正に厳正に対処することになるんでしょうか。

滝国務大臣 基本的には、無罪であるものを押し隠して以後の手続を進めるということは、それはあってはならない、そんな判断をしていかなければいけないと思っております。

柴山委員 東京電力OL殺人事件で、ゴビンダ・マイナリ被告が釈放され、きょう午後にも成田から出国かという件についてお伺いします。

 大臣は、六月八日の記者会見で、今回の東京高裁での再審開始決定、そして執行停止決定について感想を尋ねられて、このように述べておられます。検察の捜査がある意味では十分ではなかったのではないかと受け取れるわけですから、そういうものも含めて捜査に何か問題がなかったかと、残念な結果であると思います。

 これは、冤罪の可能性を生じた、ずさんな捜査が申しわけないという趣旨なんですね。

滝国務大臣 基本的には、検察は異議申し立てをいたしたわけでございますけれども、異議申し立てが却下をされる、こういうことでございましたから、その点については、何か足りないものがあったのではないだろうか、こういうような趣旨で感想を申し上げたところでございます。

柴山委員 異議申し立てが却下されたということは、裁判所に対して被告の勾留の必要性を説得できなかったということですよね。勾留の必要性を説得できなかったということは、やはり、滝法務大臣も検察庁と同じように、この件については本来勾留が認められてしかるべきだ、そういうお考えだということですか。

滝国務大臣 少なくとも、そういう実体的な前提じゃなくて、形式的に私は感想を申し上げました。要するに、検察が異議申し立てをするならそれなりの理由があるはずだ、それが決定でもって却下されたということは、検察の申し立てが十分な説得力を持っていなかった、こういうふうに判断をせざるを得ないという意味で、何か足りないものがあったのではないか、こういうふうに感想を申し上げたわけです。

柴山委員 形式的に残念だということがよくわからないんですよ。

 つまり、これは高等裁判所の裁判官が、勾留の継続と執行について認められないというように判断をしたわけです。すなわち、そこには検察の主張に問題があったということを言外ににおわせているわけですね。

 ということは、これはただ検察の異議申し立てが認められなかったということに対する不満ではなくて、その背景にある検察の捜査、これについて、法務大臣として一体どのように感じておられるかということをぜひこの場で述べていただきたいと思います。

滝国務大臣 この問題は、もう一つ、執行の停止の問題もあるわけでございます。そういう執行の停止の方も結局は認められなかったということは、再審決定でございますから、今後の公判ということを考えますと、本人がいないことにはなかなか、再審決定をされてもその後の推移が不透明になる、こんなことも含めて、私は感想として申し上げたわけです。

柴山委員 確かに、二〇〇〇年、第一審判決で無罪という判断が出た後、東京高裁で一転勾留決定され、逆転有罪判決が出て、それが最高裁で確定しているということからすれば、微妙な案件であったことは事実でしょう。

 しかし、これはやはり問題が多々あった案件であって、現在もそういった問題は解消されていないのではないか、疑われるものです。

 まず、殺人事件四日後の一九九七年三月二十三日にマイナリ氏が不法残留容疑で逮捕され、五月二十日の初公判において入管法違反で有罪判決が出て、強制退去処分となる前に強盗殺人事件の容疑を固めようと拙速な捜査がなされたのではないかということです。

 被疑者が出国した後の取り調べなどの捜査あるいは公判は、どのように行えばよいのでしょうか。

滝国務大臣 具体的な問題ですから、私の方からそのようなことについてコメントするというものではないように思います。

柴山委員 先ほど滝大臣は、本人が国内にいないと手続が進まないということを残念だと思う理由の一つに挙げておられたわけですから、それはやはり、捜査上あるいは公判の係属上大きな支障が生じるということを御自分でお認めになったんじゃないんですか。それについては、これは刑事局長でも結構ですけれども、今後どのように捜査あるいは公判を行えばよいのか、お答えください。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、ちょっと今の御質問を二つに分けてお答えさせていただきたいと思います。

 まず、一般論といたしまして、単純に、その捜査をしている最中、今回の場合はもう既に起訴した後のことになりますけれども、そうではなく、時点でいいますと、例えば平成九年の段階でのことというふうに考えまして、捜査をしているときに被疑者と目される人間が外国にいる場合にどうするかということになりますと、所在する国に捜査共助をする、あるいは身柄の引き渡しを求めるということがあり得るとは思います。ただ、外国にいるということで、なかなか時間的にも手間もかかるという状況があると思います。

 次に、今回の、現在御指摘の東電OL事件の状況についてでございますが、先ほど委員御指摘がありましたように、平成二十四年、すなわちことし六月七日に東京高等裁判所が再審開始決定と刑の執行停止の決定をなさいました。そこで、検察官はこれに対しまして、まず再審開始決定そのものに対する異議申し立てをするとともに、刑の執行停止決定に対する異議の申し立て、すなわち刑の執行停止がされますと釈放になりますので、そのことに対する異議の申し立てを行いました。また、あわせて、刑の執行停止決定の執行停止を求める申し立てを行ったわけであります。

 現在までに、東京高等裁判所は、刑の執行停止決定の執行停止を求める申し立ては退けられたところでございますが、再審開始決定に対する異議申し立てと刑の執行停止決定に対する異議申し立ては係属している状況にございます。したがいまして、現在、裁判の段階としては、再審請求に対する判断が確定はしていないという状況にあるというふうに御理解をいただきたいと思います。

柴山委員 一般論としてで結構ですので。つまり、本件についてはまだ再審開始が正式に行われていないということですから、ですから、恐らく正式な公判の係属ということは観念し得ないというお答えだと思うんですけれども、私は、やはり一般論として、今後、再審決定がなされることもあり得るということを前提に、あるいは先般、稲田議員も何度か御質問されていたと思いますが、中国人の漁船船長釈放事件で、日本の今後の公判等の手続をどうするかという問題にも通じるわけですから、公判手続が、呼び出し等において、あるいはその出頭確保、こういうことについてどのように行っていけばよいかということをお聞きしたかったわけであります。

稲田政府参考人 失礼いたしました。

 これは全くの一般論でございますけれども、仮に起訴をした被告人が外国にいるという状況になりました場合に、その被告人に裁判に出頭してもらうためには、やはり、国外のことでございますので、我が国の主権が行使できない場所にございますので、強制的に出頭させるということは我が国の力としてはできませんので、当該所在地の国の御協力をいただくことになります。

 したがいまして、例えば、出頭のための召喚状を捜査共助というような形で送っていただく、あるいは外交ルートを通じてそういうものを送付していただくということになる場合もあろうかと思います。そういうような形で御協力をいただいていくということになると思います。

柴山委員 報道によれば、この一九九七年五月の初公判の直前の四月中旬に、これは心証としては被疑者、犯人だ、強制退去になれば迷宮入りだ、必死で詰めているところ、あるいは、すぐに判決が出て即送還になれば終わり、ここ一カ月が勝負などと当時の捜査幹部がコメントしていたということであります。そういうことがやはり拙速な捜査につながっていたのではないかということを懸念しております。

 何より問題なのは、二〇〇五年三月に始まった、先ほどお話があった再審の請求審で、ずっと膠着状態が続いていたわけですね。その中で、ようやく昨年の夏になって、検察側がそれまで存在を明らかにしていなかった現場の遺留物四十二点を開示したということです。そして、その後も新たな物証を約四十点も開示されたということですが、これらをなぜもっと早く開示しなかったのですか。そして、なぜこの時期に開示したのですか。

稲田政府参考人 ただいまの御指摘は、先ほど申し上げました、現在再審請求の手続が係属している事件におきます検察官の活動の内容にかかわるところでございまして、現時点におきまして、私の方からその辺につきましてつまびらかにすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

柴山委員 ちょっと待ってください。検察官の手持ち証拠の開示は、弁護士会が長年求め続けていたことであります。本件に限ったことではないんです。

 もう一度答弁してください。

稲田政府参考人 再審請求審における証拠の開示に関しましては、現在いろいろな御見解があることは承知はしているところではございますけれども、再審請求手続が通常の公判手続の審理とは手続の基本構造を異にしているというような状況もあることを踏まえて、検察官として対応しているものと承知しております。

柴山委員 再審だから正直にやるって、それはおかしくないですか。再審というのは極めて例外的な手続なんですよ。再審にならなければ検察官が自分の都合のいいストーリーをつくっていい、そんなことにはならないでしょう。

 被害者の体内に残された体液のDNA鑑定が現場に落ちていた体毛のDNAと一致し、かつ、それがマイナリ被告以外の第三者のものであった、これは決定的な証拠です。まさに大臣が先ほどおっしゃったとおり、検察が不正に厳正に対処することを放棄したということではないんでしょうか。

 実は私は、司法修習生時代の一九九九年から二〇〇〇年にかけて、この事件を担当した弁護士と刑事弁護に関する勉強会をしていました。そして、その段階から本件についてはさまざまな問題を感じていたんです。

 二〇〇四年に導入された公判前整理手続制度で、検察側が争点に関する証拠を原則として開示するルールの整備がされたとされていますけれども、今後はこのような不幸はなくなるという理解でよろしいんでしょうか。

稲田政府参考人 ただいま御指摘がありましたように、平成十六年に刑事訴訟法が裁判員制度の導入の際に改正されまして、証拠開示の手続が大幅に改められました。そして、検察官の手持ち証拠の開示の範囲が大幅に拡充され、検察官が取り調べを請求した証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠、これは証拠物なども含みます、それから、被告人が明らかにした主張に関連する証拠についても、開示の必要性と開示によって生じるおそれのある弊害等を勘案し、相当と認めるときは開示をしなければならないこととされたところであり、これにつきまして当事者間で争いが生じたときには裁判所がこれを裁定するということとされたものというふうに考えております。

 この改正によりまして、関係者の名誉、プライバシー、さらには争点の整理や迅速な審理に与える影響などの問題点が十分考慮され、そうした点を踏まえつつ、被告人の防御の準備のために必要かつ十分な証拠が開示されることになったものというふうに考えております。

柴山委員 教科書的にはそういうお答えだと思いますよ。しかし、現実はどうなんでしょうかね。

 前田、大坪、佐賀元検事のいわゆる郵便不正事件証拠偽造をめぐる問題を初め、相次いで今なお次々と明るみに出る冤罪事件を見ると……(発言する者あり)陸山会事件、そこはちょっと見解に相違があるかもしれません。本当に、体質も含めて、検察の問題、これは解決していないんじゃないんでしょうか。

稲田政府参考人 ただいま御指摘がありましたような各種の事件において検察に対して厳しい批判があるということは、検察自身が最もよく理解しているものというふうに思っておりますし、それを踏まえながら検察の改革を進めていっているというふうに考えているところでございます。

柴山委員 検察が一番よくわかっているというお話ですよね。どうなんでしょうか。

 検察改革が本気かどうか。大臣は、先日の所信挨拶で、監察体制の構築や検察基本規程の策定などを検察改革の方策として挙げておられます。検察の在り方検討会議でもいろいろと議論がなされていたところだと思います。しかし、本当に、まないたの上のコイが、自分で自分の体にメスを入れられるんでしょうか。

 閉鎖的組織を改革するには、それこそ、社外取締役ではないですけれども、第三者のチェックを入れるという観点、あるいは内部通報保護という観点、こういったことを我々会社法でも議論してきたんですけれども、やはりそういう抜本的な改革の視点を持つことが必要なんじゃないんですか。大臣、いかがですか。

滝国務大臣 検察改革については、今ようやく見直しというか、昨年来新しい角度から取り組もうとしているわけでございますから、その中でどうこれを実質的に改革につなげていくかというのは、日々の仕事の中で当然考えていかなければいけない問題だろうと思っております。

 そういう意味では、第三者的なというような御提案でございますけれども、もともと、今回の検察改革に当たっては、当然、外部というか、ある意味では身内の延長みたいな方々も参与してくださったと思いますけれども、そういう中で出てきたわけでございますから、引き続き、そういう第三者的な目を向けながら、さらに一層、毎日の責務の中で改革を徹底させていくということが当面必要ではないかとは思っております。

柴山委員 先ほどの所信挨拶と今私が申し上げたことは、はっきり言って質が違うと思うんですよ。これはやはり検察の再生がかかっていると思いますよ。ぜひ真剣に検討してほしいというように思います。

 また、先ほど大口委員の方からも御質問があったと思いますけれども、捜査の可視化にどの程度具体的に取り組むかということも注目されます。大臣は、先日の所信表明の中で、検察における試行について紹介をしていただきましたけれども、その検証とあわせたスケジュール、取り調べ全過程の可視化のいかん、またそのスケジュールについて改めて御説明をしてください。

滝国務大臣 基本的に、今、可視化に向けての試行をやっているわけでございますし、その中身をできるだけ早く詰めていく、こういう基本的なスケジュールのもとにやっているわけでございます。

 したがって、いつと言うわけにはまいりませんけれども、とにかく昨年から始まった試行でございますから、そういうものをどの段階で中間的にでも報告を求めるかというのはこれからの問題だろうと思っています。

柴山委員 スケジュールのない計画は計画じゃないんです。中間報告でもいいから、その中間報告に一体何を盛り込むか、そしてその中間報告をいつまでに出すか、これぐらいのことは、今この場で答えられなかったら、次に質問したときに必ず答えてください。

滝国務大臣 とりあえずは、六月下旬にある程度の取りまとめをするということでございますから、その報告を待って、今委員が御指摘のようなことがその中でどれだけ検証できるかということもあわせて検討をしていかなければいけないと思います。

柴山委員 もう間もなくですから、ぜひよろしくお願いします。

 次の質問に移ります。再犯防止策についてでございます。

 大阪の心斎橋で、今月十日、男女二人が刺殺される通り魔事件がありました。現行犯逮捕された礒飛京三容疑者は、ことし五月二十四日、覚せい剤取締法違反で服役していた新潟刑務所を出所したばかりで、一月もたたないうちに凶行に及んでいることになります。自殺しようと思って近くで包丁を買ったが死に切れず、人を殺せば死刑になると思ってやったと身勝手な供述をしているとのことですが、何度も逮捕歴があり、家族から事実上勘当されていたとか就職が断られていたとかいう報道がなされています。

 警察庁の方から背景を御説明いただけますでしょうか。

舟本政府参考人 事件の概要ということでよろしいのでございましょうか。(柴山委員「はい」と呼ぶ)

 お尋ねの事件につきましては、本年六月十日午後一時ごろ、大阪市中央区東心斎橋の路上におきまして、通行中の男性及び女性の二人の方が、半月ほど前に刑務所を出所したばかりの被疑者にゆえなく包丁で襲われ亡くなったという、理不尽きわまりない痛ましい通り魔事件でございます。

 事件発生間もなく通報を受けて駆けつけた警察官が、被疑者を殺人未遂の現行犯として逮捕いたしました。現在、大阪府警におきましては、捜査本部を設置して、全容解明に向けて鋭意捜査中であります。

 この種の事件は国民に大きな不安を与える事件でありますから、今後、事件の背景、動機も含め、全容を明らかにしてまいりたいと考えております。

柴山委員 まさに、その背景、動機のところが非常に重要だと思うんです。秋葉原の加藤智大容疑者の無差別殺人、あのときもやはり国民に非常に大きな不安を与えたと思います。

 今回も、今申し上げたように、この礒飛容疑者、覚せい剤取締法の逮捕歴があったというように報じられていますけれども、覚せい剤取締法違反以外の前科について教えてください。

舟本政府参考人 お答えいたします。

 いわば本件被疑者の前歴にかかわる事柄でございますので、プライバシーにかかわる事柄でございますので、具体的なことはお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

柴山委員 わかりました。

 それでは、法務省に伺います。

 一般論で結構です。覚醒剤自己使用の再犯率はどれぐらいですか。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 平成二十一年の犯罪白書で明らかにされている統計数値でございますが、お尋ねの覚醒剤の自己使用というふうに自己使用に限ったものではございませんが、覚せい剤取締法違反の罪で受刑をして平成十六年に出所した者について調査をした結果であります。

 それらの者について、出所後五年以内の再入の状況を累積で調べてみますと、満期釈放者については六二・七%、仮釈放者につきましては四三%が再入、刑務所に再び入っているという結果となっております。

柴山委員 驚愕の数字ですよ。仮釈放、つまり品行がよくて情状が軽いということから仮釈放なんだろうと思いますけれども、それでも四三%、満期出所に至っては何と六三%が再入ですよ。犯したということじゃないんです。また戻ってくるんです。まともに就職できず、しゃばと刑務所の往復を繰り返すというのは、この類型の犯罪者のお決まりコースと言っても過言ではありません。

 滝大臣は、十二日の記者会見でこのように述べておられます。今の制度からいうと、満期出所者について、出所後のフォローアップがなかなかできるようなシステムになっていません、出所するまでにいろいろな状況があるとは思いますが、そのあたりのところがどうなっているか、改めて矯正局としても取り組む課題ではないかという感じは持っています。

 先日の所信表明の御挨拶でも決意の一端をお述べいただきましたけれども、改めて、本件のような事案の再発防止のために具体的にどのようなことをなさるおつもりか、伺いたいと存じます。

滝国務大臣 今度の場合も、出所した後、紹介を得て、自分の生まれ故郷の栃木県へ参りまして、民間の協力団体のもとで、住むところ、そして食事、そういうような世話をしてもらっていたわけです。ところが、そういう拘束に耐えられないのか、出るということだったものですから、保護観察所長がもうしばらくここにおれと言って引きとめたようでございますけれども、結局、満期出所者だったものですから、保護観察所長の説得は強制力を持たなかった、その結果、大阪へと出てしまってこういう大事故につながったというのが大体この事件の推移のようでございます。

 そういうところから見ると、まだまだ、こういう満期出所者に対する法のフォローアップが少し欠けているところがあるのかなという感じもしますし、そもそも満期出所者ですから、出所する前にもう少し何とか本人とコンタクトをとれるような方法はなかったのか、それはこれからの緊急の課題だというふうに思っております。

柴山委員 やはり、満期出所した後のフォローアップ、刑務所出所者の住居や就労の確保、こういった社会復帰の支援対策、こういうものが大切だ、それを充実させるということを先日の所信表明でもおっしゃられていたかと思います。今おっしゃったような、やはり継続的にコンタクトをとるということも必要だと思います。

 しかし、一般論として、言うはやすく行うはかたしなんです。刑務所に入っていない人がこれだけ就職難で苦しんでいるわけですから、一体どうするのかということなんです。

 あと、今、保護観察所長の指導ということもおっしゃいましたけれども、保護観察官の拡大はなかなか進んでおりません。また、保護司の方々への支援、これらの方々は今ほとんどボランティアでやっていただいている現状です。トータルとしてどのようにしていくおつもりなんですか。

滝国務大臣 人材もなかなかそろわない、あるいは予算的にもなかなか思うようにいかない、こういう中でございますけれども、政府としては、昨年の七月に、再犯防止のための取り組みというテーマで閣議報告ももらっているわけでございます。

 そういうところから、とにかく今回の事件の発生に鑑みて、喫緊の課題としてもう少し具体的な一歩を踏み出す、これが私どもの責務だろうと思っております。

柴山委員 ぜひ、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 また、それぞれの議員の方々の御地元にも、民生委員の方々、保護司の方々がいらっしゃると思います。我々、やはり政治の力でそういった再犯防止の施策というものをきちんと進めていかなければいけない、取り組みを進めていかなければいけないと思っております。

 次は、ちょっと緊張感を欠いた案件であります。千葉地裁が、今月の二日、手続上のミスから、七人の逮捕された被疑者を不当勾留決定していたことがわかり、千葉地検が六日に一旦全員を釈放した上で、五人を再逮捕、残る二名を任意捜査に切りかえたということです。

 一体なぜこんなことが生じたのか、裁判所に説明を求めます。

植村最高裁判所長官代理者 まず、今回このようなことを起こしまして、関係者の方を含め、本当におわびを申し上げたいというふうに思います。

 今委員から御指摘のございました千葉地裁の本庁でございますが、六月二日の土曜日、日直の事務を行っておりまして、刑事訴訟規則によりますと、勾留質問手続というのは裁判所書記官が立ち会うこととされております。この日の七件の勾留質問手続に、書記官の資格は有していたのですが裁判所書記官としての発令を受けていない職員が立ち会いまして、勾留質問手続が行われたという事態が発生いたしました。

 裁判所がこれに気がついたのが、六月五日火曜日の夜のことでございました。気がつきまして、検察庁に御連絡をいたしまして、翌六日に、七人の被疑者が一旦釈放されて、委員のお話にありましたように、二人については任意の捜査に切りかえられて、残りの五人の被疑者については再逮捕、それから勾留請求があり、勾留質問をもう一回行って、改めて勾留状が発付されたということであります。

 千葉地裁の通常の日直体制を御説明しておきますと、書記官二人と事務官一人で行うことになっております。ただ、勾留請求事件が多い日には、書記官一人または書記官資格のある事務官一人の応援を頼むことになっておりました。書記官資格のある事務官の応援を頼んだときには、当たり前のことですが、勾留質問手続には立ち会わないで、それ以外の事務の応援をさせることになっていたわけでございますが、六月二日は、書記官資格を有していれば勾留質問の手続に立ち会えるというふうに誤解をいたしまして立ち会ったというふうに承知をしております。

柴山委員 対象者の罪名は何でしょうか。傷害容疑者がいるという報道がありましたけれども、任意捜査に切りかえたというのは、一体どういう罪名で、どういう背景だったんでしょうか。検察庁あるいは裁判所、どちらでも結構です。

植村最高裁判所長官代理者 申しわけないのでございますが、これは捜査段階のことでございますので、捜査情報ということで、ここでお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

柴山委員 任意捜査に切りかえたということは、やはりそれなりの社会に対する不安というものにも配慮した手続でなければいけないわけですから、本来であれば、やはりこれは、私が震災直後の釈放について質問をしたときにも同じような御答弁だったわけですけれども、おかしいと思うんですよね。

 千葉地裁は、今回の案件を十二日まで公表していなかったんですよ。今お話があったように、日直が行われたのは二日、全員釈放したのは六日、二人がそのまま任意捜査ということなんですよね。なぜ公表をしなかったんですか。

植村最高裁判所長官代理者 確かに、この件が私どもの方で把握できたのは先ほど御説明したとおりでございましたが、捜査過程の問題で過誤が起きた場合には発表しないということもございまして、この件につきましては、従来のその取り扱いをさせていただいたというふうに聞いております。

柴山委員 ということは、何ですか、従来の慣例によって発表しなかったということは、こういうことが頻繁に起きているということですか。

植村最高裁判所長官代理者 頻繁に起きているとは思っておりませんけれども、捜査過程の問題でこういうことが起きた場合に、常に、直ちに公表をしておるような扱いにはしておりません。

柴山委員 二人を任意捜査に切りかえたわけですからね。これは、もともと在宅の事件が在宅だという話じゃないわけですよ。一旦勾留決定して、二日に逮捕して、六日に一旦全員を釈放したということですから、満期前に任意捜査に切りかえているということですよね。これはやはり説明が必要なんじゃないんですか。

 それは、もちろん勾留の継続の必要性がなかったからということでしょうし、恐らく罪名もそんなに重罪ではなかったということは想像できますけれども、しかし、やはりそれにしても、こういうことが一旦表に出た以上は、それは千葉の方々は何だと思うんじゃないんでしょうか。いかがですか。

植村最高裁判所長官代理者 七人の被疑者の方のうち、お二人の被疑者を任意捜査に切りかえたのは検察庁の御判断でございますので、私どもはそこについてお答えするのはちょっと差し控えたいと思います。

柴山委員 それでは、法務省から説明を求めます。

稲田政府参考人 申しわけございません、突然のことなので手元に詳細な資料を持ち合わせておりませんけれども、もともと勾留手続が違法になっていたという状態の中でもう一度身柄の拘束をするということは、やはりそれなりに慎重に判断をしなければならないものであるというふうに考えているところだと思います。

柴山委員 確かに、対最高裁判所というふうに質問通告ではしていましたけれども、一応法務省にも流しているわけですから、こういう質問はある程度想定してぜひ準備をしておいてほしかったと思います。

 報道によりますと、別の地裁関係者が、あり得ないミス、勾留への緊張感が乏しいと言われても仕方がないというふうにコメントをされているようですけれども、関係者の処分は一体どうなるんでしょうか。

植村最高裁判所長官代理者 今、事実関係を正確に把握して、委員の御指摘のような点は今後の問題であるというふうに思っております。

柴山委員 しっかりと事案を把握した上で、やはり綱紀粛正と再発防止策にも取り組んでほしいと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 次は、がらっとお話はかわって、震災対応に関連してお伺いしたいと思います。

 私は、自民党青年局の同僚たちと、今月十一日、福島県、第一原子力発電所の警戒区域内に視察に伺うとともに、現地の声に耳を傾けてまいりました。率直に申し上げて、何にも、ほとんど進んでおりません。瓦れきの処理や生活再建に加え、広大な土地が津波でほとんど更地になってしまったのに、権利関係の確定をどうするか、その前提となる地籍調査や地図整備をどうするか、こういった問題は全く手つかずの状況であります。

 そこで法務省に伺いますが、被災地でのこういった地籍調査や地図整備は今後どうなるんでしょうか。

原政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましては、地図整備事業を全国的にやっておりますが、特に被災地におきましては、地震の影響で、地殻変動によって土地が大幅に移動したり、あるいは不規則に移動した地域等がございますので、こうした土地につきましては、土地の境界を復元し、登記所備えつけ地図の修正作業等をするべく努力しているところでございます。

柴山委員 一般論として、努力をしていますじゃ答えにならないんですよ。

 今申し上げたように、被災者の方々は、こういった境界の確定等の公的処理が、その後に続く町の再生復興の、いわばインフラのベースとなるわけなんですよね。ですから、これをしっかりと計画的にやっていただかないと、本当に円滑な復興ということが図られないのではないかというように思います。

 また、今私が申し上げた視察をした警戒区域内は、放射線の濃度というか、線量が高い地域でもあります。こういったところをどうするかということもやはり長期的な課題だと思いますけれども、そういったところも、道路の復旧ですとか、あるいは防潮堤の建設、そういったことを含めて、やはり土地に関するさまざまな処理ということが必要になってくるというふうに思いますので、そういったことも含めて、やはりスケジュール感というのをもう少し出してほしいと思うんですよ。いかがですか。

原政府参考人 被災地域の復興のためには、今委員がおっしゃいましたように、まずは、倒壊等した建物がございますので、そういう建物の職権滅失登記をした上で、土地の境界の復元や地図の修正作業をする必要がございます。

 その意味で、平成二十三年度の第一次、第三次補正予算、それから二十四年度予算におきましても、職権滅失登記に要する経費や地図の修正に要する経費をいただいておりますので、現在、これらを使って鋭意作業を続けているところでございます。

 ただ、被災地域が非常に膨大でございますので、土地の境界の復元やあるいは地図の修正作業、これはできるだけ早くやりたいと思っておりますけれども、二、三年かかるんじゃないか、しかしながら、復興局を通じまして、地元の要請を受けて、緊急性の高いところからこういった作業に着手している、こういう状況でございます。

柴山委員 復興局の人たちに原局長が今おっしゃったような専門的なノウハウがあるわけじゃありませんから、これはオール・ジャパンで専門家を集めてやっていかなければ前に進まないんですよ。そして、それをアレンジするのが復興庁なら復興庁なのかもしれませんけれども、そこがまだ全然機能していないというんですよ、被災地の方々は。少なくとも、被災地の方々にそれが届いていないということは、ぜひしっかりと受けとめていただきたいと思います。

 一方、先ほど橘議員も質問されていましたけれども、震災への不安を背景に、都市部、例えば首都圏においても、登記所備えつけ地図の整備等に関するニーズが高まっています。現状及び優先順位について、どう考えておられますか。

原政府参考人 地図整備につきましては、特に都市部において整備の緊急性が高いということから、法務省におきましては、平成十五年の都市再生本部の方針を受けまして、都市部の地図混乱地域を対象にして地図整備を進めるべく、計画を立てて、その計画に基づいて地図整備を実施しているわけでございます。

 平成十六年度以降、二十三年度まで、トータルしますと、先ほど御答弁いたしましたけれども、八十八平方キロメートルの地図整備をやっているということでございます。これは、国土の面積からすれば少ない面積ではございますが、地図整備につきましては、国土交通省におきましても地籍調査事業をやっておりますので、国土交通省と法務省でいわば役割分担をいたしまして、地籍調査事業がなかなか進まない都市部の地図混乱地域について、法務省において地図整備を進めるということで、計画を立てて、緊急性のあるところから地図作成をしている、こういう状況でございます。

柴山委員 予算などを考えると、確かになかなか一斉にというわけにもいかないと思いますし、何といっても、先ほど申し上げたような被災地の状況もありますから、ある程度、緊急性、必要性を厳しく見ないといけないということは理解をいたしますけれども、ただ、地図混乱地域だけじゃないですから、必要なところというのは。

 地図整備は、再三繰り返すように、権利関係のインフラでありますから、混乱をしているところだけじゃなくて、それは都市部は、やはり取引がある以上、必要なんですよ。ですから、経済対策の一環としても、重点政策と位置づけて、しっかりと取り組んでいただきたいと重ねて要望したいと思うんですが、法務大臣、いかがでしょうか。

滝国務大臣 地図混乱地域の問題は、都市部においては特に、何も手がつかない、権利関係の調整ができないという最大の足を引っ張る材料でございますから、当然、優先順位をつけながらも頑張っていかないといけないと思っております。

柴山委員 地図混乱地域、あるいはそこに該当しなくても必要なところにはしっかりと、これは経済対策のベースになると私は思っているんです。私は改革を進めていくという志向が強いんですけれども、ただ、やはり経済発展のベースになる部分についてはしっかりとした予算をつけていかないと、経済成長もできないし、改革もすることができないというように思いますので、ぜひとも滝大臣には、今おっしゃったような決意でこの問題について取り組んでいただきたいと重ねてお願いをしたいと思います。

 最後に、残った時間で、人権委員会設置法案について若干お伺いしたいと思います。内容については、この後、城内議員から詳細に御質問があると思いますが、私からは、外形的な事実関係についてだけお尋ねしたいと思います。

 私が部会長を務める自民党法務部会では、ことしの二月十四日、当時法務省がまとめた法案骨子について審査した結果、問題が多く、受け入れられないという決定をさせていただきました。しかし、あろうことか、この後、まさしくこの骨子案に従った条文作成が行われ、既に各省間調整も終わって、あとは民主党の党内手続を行うのみというように伺っています。

 これはとりもなおさず、自民党を無視して法案提出を行おうということでしょうか。また、所信挨拶でもあったんですけれども、今国会においての提出を目指すということに変わりはないんでしょうか。以上二点、政務三役全てにお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 政府としては、とにかく政府の案を固めなきゃいけませんから、そういう意味で各省折衝も行ってきたことは事実でございます。

 ただ、今それを閣議決定まで持っていくような段階ではございません。なるべく早く閣議決定も経たいとは思っておりますけれども、まだまだ意見を聞かなければいけない分野もあろうかと思います。そういう中で、この問題は、今御指摘のところはどうするかということも含めて、なお慎重に検討してまいりたいと思います。

谷副大臣 今大臣がお答えしたとおりでございますが、そういういろいろな調整をさせていただきながら、この国会で提出できる条件が整えば、法案の提出まで進めていければというふうな考え方は持っております。

松野大臣政務官 今二人、大臣、副大臣からお話があったとおりでありますが、要するに、提出に向けた環境整備に努めているということであるかと思います。ですから、自民党を無視している、そういうようなつもりで進めているわけではないことは御承知いただきたいと思います。

柴山委員 松野先生は、政務官御就任直前まで民主党の法務部門の責任者として、自民党の私のカウンターパートとして、法テラス法案ですとかあるいは裁判所法の改正案ですとか、本当にさまざまな場面で大変御苦労をおかけしたということで、今環境整備について具体的にお触れになりましたけれども、その思いはわかりますが、ただ、全く実態が伴っていないと思っております。

 現に、法務部会、先ほど申し上げた二月十四日、そしてその後、先日も法案についての報告を求めたんですけれども、私のところに人権担当の方がいらっしゃったことは、その二月あるいは六月といった段階では少なくともありませんでしたし、ましてや、私は条文の作成ということは全く聞いていなかったと思います。さらに、先日、自民党の法務部会の中で、一体どのような背景がこの非常に拙速な動きにつながっているのかというふうにお伺いしても、その背景についても十分な御答弁をいただきませんでした。

 なぜ副大臣がさまざまな調整をしながらということをおっしゃっているのか、私には全く理解ができません。政務官がおっしゃった環境整備、あるいは副大臣がおっしゃったいろいろな調整というのが、一体何を指しているのか。民主党の党内手続もまだ進んでいない、閣議決定もまだ済んでいない。具体的に、一体何を調整しているのか、お二人にお伺いしたいと思います。

谷副大臣 この法案に対しましては、いろいろな御意見が出ております。新たな人権救済機関の創設が必要なほどの人権侵害がないのではないか、救済の対象となる人権侵害の範囲が曖昧ではないかとか、人権侵害の加害者とされた者の保護が不十分ではないか、あるいはまた人権委員会の権限が強過ぎるのではないか、こういういろいろな御意見なども寄せられていることも事実でございます。

 こういうふうないろいろな意見等を、いろいろなものを聞きながら、そういうものに対して丁寧に議論をして御理解をいただいていくような、そういうふうな努力もしなければいけない。そういうことも含めて先ほど答弁を申し上げました。

柴山委員 そういったさまざまな問題点、今御指摘された問題点だと思います。

 この後、繰り返すように、城内議員からもっとしっかりと質問があるかと思いますが、私が解せないのは、繰り返しますけれども、そういったさまざまな問題点について議論をしたいというふうにおっしゃいますが、その議論は一体どこでするんですか。閣議決定をして、ここで出しますよ、ここで議論すればもういいじゃないですか、そういうスタンスなのか。あるいは、法案の提出の前にさまざまな形で、骨子案等についても、修正するものはきちんと超党派で議論をしながら提出前に修正をしていく、そういうことなのか。どっちなんですか。政務官からもぜひ御答弁ください。

松野大臣政務官 この法案は、もう御案内かと思いますが、以前、自公政権当時は人権擁護法案というような形で検討されてきた、実際に法案も提出された、こういうようないきさつもあります。いろいろないきさつがあるわけですから、その辺はいろいろ御議論があることを私たちも承知しておりますので、これは非常に慎重にいろいろ議論を詰めていかなければいけない。

 そういう意味では、民主党の党内だけではなくて、野党の皆さんとも、いろいろと意見交換をさせていただきながら、詰められるところは詰めた上で閣議を経て提出、そういうようなことを今考えているということでございます。

柴山委員 最後に大臣にお伺いしますけれども、今国会においての提出を目指すということに変わりはないんですか。

滝国務大臣 基本的には目指すということで考えているわけでございますけれども、その目指し方の問題をめぐっていろいろな意見がおありでありますから、そういうことも考慮しながら、最終的な判断にはまだ至っていない、こういうことでございます。

柴山委員 目指し方という非常に新しい言葉が出てきてちょっと驚いておりますけれども。

 ちょっと時間は残っているんですが、これ以外にも、裁判員制度ですとか、あるいは脱法ハーブ使用の危険運転致傷事件など、いろいろお伺いしたいことがありましたが、きょうはここで質問を終わらせていただきます。

 大臣、何かありますか、補足。

滝国務大臣 先ほどの大阪の事件に関連いたしまして、私の発言がちょっと正確を欠きましたので、正確に申し上げておきたいと思います。

 栃木へ行きまして、民間団体が、住むところ、食事を用意した。それに対して、もちろんそこの所長も引きとめた、それに加えて保護観察所長も引きとめたと言いましたけれども、直接的には本人に会ったのはその民間団体の所長だけでございますので、そこのところは不正確でございましたので、訂正をさせていただきたいと思います。

柴山委員 終わります。

小林委員長 次に、城内実君。

城内委員 城内実でございます。

 人権侵害救済機関について質問させていただきたいと思います。もし時間がありましたら個人通報制度についても触れたいと思いますが、基本的に一時間、この問題についてやらせていただきたいと思います。

 今、柴山委員からも指摘がありましたけれども、大臣の所信で、今国会提出という文言がありました。私は、この人権救済機関の設置の問題について、これまで十回質問してきたんですよ。きょうで十一回目です。千葉大臣一回、柳田大臣一回、江田大臣三回、平岡大臣二回、小川大臣二回、そして滝大臣はきょう二回目で、十一回です。

 先ほど谷副大臣から、こういう問題があると、まさに的確にこの問題が抱えている諸問題について御答弁がありましたけれども、何回質問しても説得力ある回答が返ってこないんですよね。私は、何度も言っていますけれども、人権を守ることについては人後に落ちないと思っていますし、説得力ある答弁が返ってきたら賛成してもいいと思っているんですよ。郵政法案だってそうです。党の方がこれは賛成しろといったって、おかしかったら反対、正しかったら賛成。これが国会議員のあるべき立場だと私は思っているので、何度もどうか説得力ある御答弁をくださいと申し上げているんですが、ないんですね。

 しかも、今国会提出とおっしゃいますけれども、何でこれまでちゃんと説明できないで、今国会に提出しなきゃいけないんですか。百歩譲って、将来の国会の法案提出を目指したいというんだったらわかりますけれども、こんな、今この時期になって今国会提出と。ですから、私は逆に疑っているのは、ある特定の団体から、いいかげんに今国会中にこの法案を出せ、出さないととんでもない目に遭わせるぞと。よもやそんな怖い団体が存在して脅迫されてはいないと信じたいですけれども、じゃないと説明がつかないんですね。

 しかも、大臣の所信、国民の理解を得られるようなんて、私はこの問題についてもう何十時間、百時間ぐらいやっているかもしれませんけれども、国民の代表として質問をしていても全く理解が得られていないのにかかわらず、国民が理解するはずもないと私は思っているんですね。ですから、この問題については、私は滝大臣、そして副大臣、政務官、大変尊敬していますから、これからぜひ、より説得力ある答弁を、しっかりと法務省の人権擁護局の皆さんと詰めて、用意していただきたい。

 ちなみに、QアンドAというものを法務省の方々がおつくりになりました。これはよく頑張ってつくったなと私は思いますが、このQアンドAのAのアンサーの方も、逆に言うと、私はこのQアンドAに対するさらなる反論集をつくれるぐらい、やはり余り説得力がないんですね。

 ですから、本当にそういう意味では、最初からこの人権侵害救済機関設置ありきという結論がひとり歩きして、それをどう理論武装するか非常に困っていらっしゃるような、何か逆に助け船を上げてしまうと、それができちゃうと困るので上げるわけにいきませんけれども、そういう感じがいたしております。

 まず、大臣に質問ですけれども、まさにこのスケジュール感、これはおかしいと思いますから、柴山委員に対する質問と重なりますけれども、もう一度これをはっきりと、もう今国会提出を諦めて、次回以降、もっと詰めてから出しますと言ってください。

滝国務大臣 大臣所信でも申し上げたとおりでございまして、まだまだ時間のある限りは何とか目指したいというのが私の基本的な考え方でありますことを再度申し上げたいと思います。

城内委員 いや、目指すのはいいんですけれども、やはりいろいろな問題をまずクリアして、禍根を残さないように、後にも述べますけれども、目指されているところは、いわゆる国家行政組織法上の三条委員会という強力な権限を持ち得る、そういう委員会を設置しようとされているわけですから、なおさらやはり慎重に中身を詰めていただきたいと思います。

 次の質問に移りますけれども、そもそもこれは誰の人権を守るのか、この法案で設置される人権救済機関が一体どういった人たちの人権を守ろうとするのか、これについてお答えいただきたいと思います。

滝国務大臣 世の中には、人権が侵害されてどこへ持っていったらいいかわからない人もそれなりにいるわけでございます。それは、現実に人権擁護委員を通じていろいろな相談を受けている中で、そういうケースというのはそれなりの件数が上がっているということでございますから、人権侵害、あるいはそう信じて受けとめている人たち、こういう人たちについて、これによって救済が多少なりともできればいい、そんな目的を持った法案というふうに考えているわけです。

城内委員 今大臣おっしゃいましたように、人権侵害事案があって、どこに持っていったらいいのかわからない人、いらっしゃると私は思いますよ。そういう人は、とにかく一人でも多く救ってあげたい。どこに行っていいかわからなくて家で泣いていたり、あるいは不幸なことに自殺をしてしまうようなことが絶対あってはいけないんですよ。

 しかし、それと人権侵害救済機関をつくるということは、私は論理の飛躍だと思うんですよ。草の根の現場の、まさに人権擁護委員さんを通じて、あるいは、人権擁護局が持っているいろいろな人権啓発のポスターをもっとふやしてくださいよ。人権擁護のパンフレットをもっとどんどんつくってください、教育の現場で使ってください。私は、そっちの方がよっぽど救済できると思っているんです。

 後でまた質問しますけれども、人権救済機関はどこに置くんですか。東京のど真ん中に置いたって意味がないわけですよね。ですから、本当に草の根の現場の、もう本当に隠れている、石をひっくり返してでもそういうのを探して、そういう人たちを、いじめもそうですし、救済していただきたいんです。

 それを、何か強大な公正取引委員会みたいな権限を持っている機関をつくれば全て解決するなんと思うのは、私はこれは思い上がりも甚だしいと思っています。本当の意味での草の根の人権救済というのをやった上で、努力した上で、それでも、いや、どうしてもこういうのをつくらなきゃ解決できないというのがあれば、それは説得力があると思いますが、そうじゃないんじゃないですか。どう思いますか。

滝国務大臣 現実に人権相談にあずかっているのは、全国においでになる人権擁護委員を通じていろいろな相談を受けとめているわけですね。決して、法務省の人権擁護局が直接受けとめる件数というのはごくわずかだろうと思います。そういう意味では、草の根の活動を人権擁護委員という形でやっておりますし、その人権擁護委員を地方法務局がバックアップしているというのが今の現状だろうと思います。

城内委員 まさに大臣、図らずも今お認めになったわけですよ。そんな巨大な機関をつくる必要がなくて、むしろ、人権擁護委員の方々、今はボランティアで、将来的には国家公務員の資格を与える、私はややそれには慎重なんですけれども、人権擁護委員の数をふやすとか人権啓発活動をもっとやるということをすれば、隠れている人権侵害事案をもっともっと救済できると私は思うんですよ。したがって、それをまず努力することが第一歩であるというふうに私は考えております。

 また、巨大な組織をつくって、先ほど、どういう人たちの人権を守ろうとしているのかよくわかりませんけれども、私、恐らくこの対象は、日本に居住する日本国民全員と、外国人も含めて、日本に居住している人たち全てが、我々の主権が及ぶところの人たちが対象になると思っています。

 以前、私は、小川大臣に皇室は対象となるのかと質問しました。小川大臣は否定しましたけれども、たしか私の記憶では、自民党の法務部会で人権擁護局の方が、申し立ては、されたらそれは受理しなきゃいけない、しかし、特殊なお立場なので、そういった方が人権侵害をしたということにはならないというような回答を私はいただいたんですけれども、非常にこれも曖昧です。

 これは、例えば極端な反皇室、反日的な人がいて、皇室の存在そのもの自体が人権侵害で差別であると。法のもとの平等に反するとか何かめちゃくちゃ曲解している人がいて、気に入らない、もういても立ってもいられない、こんな差別的な屈辱は耐えられないということで、人権擁護委員の方を通じて人権委員会に申し立てがされて、すぐ却下されればいいですけれども、ちょっと変な、民主党さんは、何か中国の大使なのか日本の大使かわからないような人が日本の大使になったりしますけれども、そんな人権委員の方が、例えば土井たか子さんとか田嶋陽子さん、立派な方かもしれませんけれども、そういう人が人権委員に出ていて、これは差別で人権侵害ですなんてことにならないとも限らないから、私は、おかしいんじゃないですかと言っていますけれども、こういうことはあり得ないんですか。

    〔委員長退席、樋口委員長代理着席〕

滝国務大臣 一般的に、皇族までいろいろな法の対象にするという例はほとんどないわけでございますから、今までのいろいろな意見があったかもしれませんけれども、改めて皇族はどうなのかと言われれば、それは皇族まで対象にするようなことは考えていないというのが、この法律の適用対象としての考え方ではないんでしょうか。私はそう思っております。

城内委員 ですから、これは、根拠法とかそういう条文にも当然書かれないと思いますが、結局、対象にならないと解釈されるとか、人権委員会が設置されたら、その人権委員のあんちょこというか彼ら独自の基準か何か、あるいは本人の価値観に基づいて、対象にするしないという、そういう非常に曖昧な解釈がなされる可能性があるわけですから、はっきり言って、私はこれは大変危険だと思うんですね。そのときの人権委員会の価値観あるいは内規とかいろいろなルールによって、これは対象にするしないと。

 裁判所で法と証拠にのっとって積み上げて、この案件、この表現は、あるいはこの言動は差別的なものであるとして違法であるというようなことを時間をかけて、これだってなかなか難しいですよね、裁判所では。それを、人権委員会の適当な専門的な学者さんとかが決めていいのか。私は、これは非常にゆゆしき問題だというふうに思っております。

 そして、それでは誰の人権を守るのかということですけれども、確かに私は、さっきも言ったように、しくしく泣いて、どうしたらいいかわからないいじめに遭っている子供とか、そういう人たちはどうしても救いたいんですが、逆に、良識ある一般国民を、人権の美名のもと、監視ないし手を縛るんじゃないか。

 例えば、私今はつけていませんけれども、ブルーリボン、北朝鮮に拉致された人たちを早く帰してほしい、そういう旨でつけているときもありますけれども、これは、朝鮮半島系の方からすると、我々朝鮮民族に対する差別である、おかしい、こういう申し立てをされる可能性があるんですね。そこでまた、さっき申しましたように、人権委員で、とんでもない、何かとんちんかんな人が、やはりそうだ、そのとおりですということを何の法と証拠にものっとらないで個人的な見解で、これはまさに人権侵害ですということにならないんでしょうか、大臣。

滝国務大臣 何が人権侵害かといえば、それは、人権侵害という、いわば実際の事象、実際の事件を通じてそういうふうに受け取っているわけでございますから、いろいろな解釈はあり得るかもしれませんけれども、例えば、拉致問題のブルーリボンをつけて、けしからぬと言われたものが、それが要するにこの法律に基づいて救われるというようなことは、まずは考えにくい話だと私は考えておりますけれども。

 だから、その辺のところが、何でそういうふうな問題が出てくるかということも、なかなか理解できない部分があるように思うんです。私は、少なくとも、自分ではブルーリボンをつけていませんけれども、これについて、おまえはけしからぬと言われたことは恐らく、かつてはつけていましたから、ないと思いますし、それはやはり誇らしげな一つのスローガンとして考えて、大事にすべきものは大事にするということではないんでしょうか。

城内委員 今大臣がおっしゃったように、要するに、まずは考えにくい、まあそれはないだろうとか、そういうことになっちゃうんですよね。なぜかというと、これは要するに、日本に居住している人が対象ですし、あらゆる人権侵害というものを対象にして、個別の対象者あるいは個別の事案、これとこれだけにしますよとやらずに、あらゆるものを対象にしているから、こういう大臣の今のような答弁しかできないんですよ。

 だから、そういう意味で私は、大変これは危険であるよと。全て性善説にのっとれば、そういうふうにならないに違いないとか、きっとそんなことはないだろうとは言えるんですけれども、世の中には、えせ同和という話もありますし、こういうことを飯の種にして恐喝しようという人だっていっぱいいるわけですから、ある方の片言隻句を捉えて、おまえの言っていることはこれは差別だとか、差別的言動までこれは対象になっているんですよ。その人がそう言って、何か頭のおかしい人権委員の人が、そうだ、そうだ、そのとおりだと言ったら、それだけでもう人権侵害事案が一丁でき上がりになっちゃうんです。ですから、私はこれは危険だということを申し上げているんですね。

 これは暴走に歯どめがあるんですか、ないじゃないですか。大臣、どうですか。ないですよ。

滝国務大臣 基本的には、人権問題というのは領域というか範囲を確定することが、ある意味では難しい。だから先生がおっしゃっていると思うんですね。

 例えば、子供のいじめの問題一つとってみても、日本では街頭で自分の子供をたたいてみたり怒ってみたりしても、別に人権侵害になりませんよね。ところが、北欧へ行ったら、それは人権侵害になるんですよね。子供のいじめに通じるということでです。だから、その社会における常識というか、ある意味では生活習慣という問題も人権にはついて回る、そういうような性格のものじゃないでしょうか。

 だから、極端な事例が出てきたときにそれはどうするかというのは、その社会における常識で判断しなきゃならぬ部分が人権にはつきまとう、私はそう思っているんです。北欧なんかに行ってみると、それはもう如実にわかるんですよね。日本人ではそれが人権侵害だという理解ができない問題が、街角で実はあるわけですね。だから、そういう問題もあるんじゃないんでしょうか。

城内委員 大臣、私、全くそのとおりだと思います。賛成です。

 だから、社会が存在する限り、社会における常識で判断すればよくて、人権委員会というのは、はっきり言うと人権オタクみたいな人がなったりするかもしれないんですね。何でもこれでも人権侵害、人権侵害と、もう常に人権侵害のことばかり考えている人権侵害プロみたいな人が、オタクみたいな人がなるよりも、社会の常識の中で、スウェーデンはこうかもしれないけれども日本はこれはそうじゃないとか、ケース・バイ・ケースで一般の国民の感覚で判断すればいいのであって、まさに大臣のおっしゃったとおりなんですよ。

 だから、大臣御自身の答弁は、実はこれは人権委員会というのは要らないという答弁に近いんですよね。そう思いませんか。

滝国務大臣 だから、社会の常識というものは、例えば日本の場合にはこうですよという、ある意味では、人権委員会というものがそういうものを意見集約して、要するにお示しをするということが必要じゃないんでしょうか。

 私は、人権の考え方は、流動的だからといって、日本の社会もいつまでも全てが流動的ではないわけですから、そういう上に立てば、日本の場合にはこういうものはやはり侵害になるんじゃないのというようなことを示すことは、それなりに意味があると思うんです。

城内委員 大臣、今の答弁は論理が飛躍していると思うんです。だから人権委員会がという話でありますけれども、やはり国会もありますし、人権擁護局もありますし、全国に人権擁護委員の方がいらっしゃるんだから、そういった方々が社会の常識に照らして対応すればいいのであって、いきなり人権委員会にぽんと来るような案件というのがどれだけあるか、私よくわからないんですよね。何かいじめとか、今までの歴代大臣がほとんど具体的な例を挙げずに、説得力のある答弁が一つも得られませんでした。

 例えば、もう一つですけれども、法務省がおつくりになったいわゆる骨子というのを拝見させていただきましたけれども、人権侵害とは何なのかは、本当に具体性に欠けるんですよ。

 あと、また小川前大臣はかつて、こうやって答弁したんです。人権侵害の態様は千差万別、列記すれば、列記していない態様の人権侵害が生じた場合にはそれに対応できないので、いわば不当な差別、虐待としたと。何かよくわからないんです。結局、列記していないものもあるとかなんとかと言っていますし、千差万別とか、全く意味不明なんですね。解釈する人次第で、結局、人権侵害は人権侵害ですと言っているようなものなんですね。

 あと、差別、虐待の当不当は、これは私は人権委員会が類推適用して、さっきも言いましたように、何か虎の巻だか文書をつくって、いろいろなケースをいっぱい集めて、これは差別、虐待、マルとかバツとか三角とするのかどうかわかりませんけれども、司法機関でもないのに勝手に、国会同意人事だから大丈夫なんというとんでもない答弁を歴代大臣はしていましたけれども、そういう人が人権委員になって、これはマルとかバツとかやって許されるんですかね。私は、こういうことは世界じゅうでも余りないんじゃないかなと思うんですね。

 もっと踏み込んだ具体的な定義をやはりまずきちっと人権擁護局の皆さんと詰めてやっていただかないと、ありとあらゆる事案が人権侵害ということで、逆に言うと、憲法で保障されている表現の自由、これが私は侵害されると思っているんです。

 例えば、私が家内におまえはばかだとか言っても、百倍言い返されたり殴られたりするだけで済みますけれども、ほかの人に言うと、これは侮辱だとか差別だとか、心外だとか言葉の暴力だとか言われるんですね。それをどう判断するかというのは、やはり、法とか証拠とか、いろいろな状況、客観的事実を法に照らして判断すべきだと思うんです。人権委員の人がどんな人がなるか、よもや田嶋陽子さんみたいな立派な方はならないと思いますけれども、そういう方がもしなったとして、私がちょっとした証言をしたら、これはもう女性に対する蔑視ですなんと言われて、もう烙印を押されてしまう、そういう可能性があるんですね。

 もし、これはどこかの、民主党さんはそうじゃないと信じていますけれども、非常に独裁的な権限を持っている人たちが政権についたら、こういうツールを使って、人権委員会を使って、自分の都合のいい学者さんか何かを、御用学者を人権委員にして、政敵の言動を全部チェックさせて、これは差別だとか何だとかとやりますけれども、そういうことというのは、起きることはないなんということはないんですよ。

 私はドイツに十年いましたけれども、一九三三年から一九四五年に起きたことを見ると、三百年前の話じゃなくて、これはまだ数十年前の話ですよ。こういうことが起きかねないということをすごく心配しているんです。大臣は心配しないんですか。

滝国務大臣 私はドイツにいたことがありませんからよくわかりませんけれども、ドイツの感覚は、過去の反省というのが特に強くにじみ出るということだろうと思います。

 ただ、先ほども申しましたけれども、人権そのものはボーダーラインというのがはっきりしないだけに、やはり人権委員会というものがそういうときにはある程度のガイドラインを示すとか、そういうことも必要じゃないんでしょうか。日本の場合には、そういうようなものがないままに、今までいろいろな解放運動とか何かが行われてきて、それによって一方的に攻撃されたという例もないわけじゃありません。

 ただ、今こういう社会になってくると、そういう一方的な決めつけとか何かというのはもう日本の社会では通用しないだけに、やはりある程度ボーダーラインというのは、少し曖昧だけれども、実際はガイドラインを示すことによってそれをはっきりさせていくという行為も、人権を守るというか個人の困っているところを救済するためには必要であるというような考え方というのは、当然あり得ると思っているんです。それがこの人権委員会法案だと私は考えているんですけれども。

城内委員 今ガイドラインをつくってとおっしゃいましたけれども、別に人権委員会がなくても、人権擁護局がしっかりガイドラインをつくればいいですし、また個別法で対応するということだってあり得るわけですね。

 この関連で、まさに副大臣、政務官にもお尋ねしたいんですけれども、実際に今、人権侵害にかかわる個別法というのがあるわけですよね。例えば、男女雇用機会均等法とか、児童や配偶者あるいは高齢者に対する虐待を防止する法とか、あるいはストーカー規制法、ADRとか、私は逆に、いじめ防止法なんてつくったっていいと思うんですよ。そのときの新しい社会に対応して個別法をつくった方が、よりきめ細かく対応できるはずなんです。そんな人権委員会というお化けみたいな機関をつくって、いじめの専門家でも何でもない、いわゆるフェミニストの方みたいのが来て、これはいじめですとかなんとかと判断するよりも、きちっとそういう個別の法律をこういった法務委員会でよく議論してつくった方がいいと思うんです。

 よく挙げる例は、ネズミにはネズミ取り、ゴキブリにはごきぶりホイホイ、ネズミには殺鼠剤というのもありますし、そうやって個別に対応するのではなくて、何か人権委員会という巨大な権限を持った、私がよく言うのは、火炎放射器、ナパーム弾、核兵器みたいなものをつくって全部焼き尽くしたら、健全な関係ない人までみんな死んじゃったみたいな、そういうすごいイメージがあるんです。

 ですから、副大臣と政務官にお伺いしたいんですけれども、個別法でいいんじゃないですか、どうですか。

谷副大臣 お尋ねでございますけれども、個別の法律による対処には、結論から申し上げますと、限界があるのではないかというふうに思っております。

 国民の利用しやすいという観点からも、あるいはまた現在の法務省の人権擁護機関と同じように、あらゆる人権問題を取り扱う人権救済機関というものが必要ではないかというふうに考えております。

松野大臣政務官 個別の法案、法律の対応で十分ではないか、こういう御指摘かと思います。

 確かに、以前に比べると、今委員が御指摘されたように、いろいろな個別の法案が成立をしているということは事実だと思います。ただ、それでは個別の法案で全部の人権侵害に対応できるかというと、現在でも、例えば子供のいじめだとかあるいは高齢者のいじめ、そういうもので、いじめをしてならない、それはそうなんですけれども、ではどういうふうに救済をしていくのか。

 いじめをしてはいけませんよというような説示、あるいは、いじめされた人に対してさまざまな援助をしていく、あるいは、こういう機関があるからこういうところによく御相談されたら救済されますよ、そういうような手続の問題、この点がまだまだ必ずしも十分ではないということで、私はやはり、今副大臣もお話しされたように、個別の法案、これはこれで大事なことだというふうに思いますが、これだけで全部の人権侵害について対応するというのはなかなか難しい。

 例えば、刑務所の中、そういう公的な施設の中で違法なことが行われたというときに、それでは全部国賠訴訟を起こさなければいけないのか。むしろそれよりも、やはり今回の国内人権機関を設けられるということになると、ある意味では司法的な救済を補完するという意味で、簡易迅速、そして柔軟な、その事案事案に沿った形の救済手続が行われる、こういう意味での一般的な法律をつくってすき間をなくしていくということは重要なことだというふうに理解しています。

城内委員 今、副大臣、政務官がそれぞれ御答弁ありましたけれども、ちょっと私、再度質問させていただきたいんです。

 谷副大臣は今、人権委員会をつくった方がいわゆる人権侵害をされたとする方々にとって利用しやすいとおっしゃいますけれども、今、人権擁護局もありますし、各地方法務局もあるし、身近な人権擁護委員会の委員の方が全国にネットワークでいらっしゃるのに、なぜ人権委員会をつくるとより利用しやすいのか。そこの点にちょっと具体的にお答えいただけますでしょうか。

谷副大臣 この問題につきましては、先生も御案内のとおり、平成十三年五月の人権擁護推進審議会の答申でも指摘されておりますけれども、人権救済機関というのは、政府から独立性を有して、中立公正さが制度的に担保された組織とする必要があるというふうな答申もいただいております。また、パリ原則においても、国内人権機関が政府から独立するというような組織として求められているというような、いろいろなそういう立場から、現在の人権擁護機関に、さらに、今言った役割を果たすことのできるそういう機関として人権委員会を設置すべきだというふうに考えております。

城内委員 いや、もう本当に、済みません、答えに全くなっていないんですけれども。

 今、審議会の答申とか、独立性を持った機関をパリ原則でつくれ、こういう話は私ももう百回ぐらい聞いているんですけれども、だからといって、人権委員会という機関をつくったら、それがより利便性があって利用しやすいとか、全く答えになっていないんですよね。

 実は副大臣にお願いしたいのは、人権擁護局の皆さんともっとよく詰めて、詭弁までは弄してほしくないですけれども、私が質問していることに対して、私の質問したことは国民の一部の方々はインターネットを通じて聞いていますから、もっと説得力ある答弁をしてほしいんですよ。でないと、また同じような、やはり城内の言ったとおりだみたいなファクスが来たりして、私もほかの質問もいっぱいしたいんですけれども、この問題から早く卒業したいんですけれども、そういう今の副大臣の紋切り型の御答弁をされているようでは、私は全く納得できません。

 もう一つは、政務官に対する私からの再質問ですけれども、個別法ができて以前に比べるといろいろな事案が解決しているというような趣旨をおっしゃいましたけれども、それでも十分でないと。例えば刑務官の例がありました。これは、でも、刑務官のいろいろな問題が法務省から独立しなければ解決できないとは別に思わないんですよ。私は、法務省の人権擁護局に行ったっていいし、人権擁護委員は別に法務省の役人でも何でもないんですから、そういうところに駆け込んで相談をすればいいし、いろいろな形でこれは法的な救済手段というのはあると思うんです。

 大体、個別法では十分じゃない、では、どういう問題があるんですかというと、返ってくるのがこの刑務官とかいじめとか、ほかにないんですかね。ほかにあと三十個ぐらいあったら、私も人権委員会をつくった方がいいかなとなるんですけれども。あと三十個ぐらい、いろいろと、こじつけろとは言いませんけれども知恵を絞って、こういう人権侵害事案は個別法がないから救えないから必要ですと言ってくれませんかね。もういいかげんに、刑務官とかいじめ、あとはというと点々みたいな、あるいは十分でないからとか、何か答えになっていないような答弁ばかり私は聞いてきて、もううんざりしているんです。

 ですから、こういう質問は繰り返ししたくないので、きょうは間に合わなければ、また何度でも質問しますから、お答えいただきたいですけれども、どうですか。きょうできますか。

松野大臣政務官 今御指摘あったように、児童の虐待とか高齢者の虐待あるいはドメスティックバイオレンス、こういうものはよく出てくるケースであります。それ以外にも、最近の例ですと、例えばインターネットを利用して、一定の個人攻撃がなされる、あるいはとんでもない事実に基づかない誹謗中傷が行われる、こういうようなケースもあります。

 それから、刑務所の話も申し上げましたけれども、刑務所以外にも、例えば入管、難民の施設もあるし、あるいは拘置所、そういうような警察関係の施設におけるいろいろな違法行為ということも、これまたあり得るわけです。先ほど千葉地裁での違法な手続の勾留の話も出てまいりました。場合によっては裁判所もミスをすることがあるということも御案内のとおりであります。

 ですから、さまざまな観点で、やはりいろいろな形の人権救済をしなければならないケースというのは今後も、例えばインターネットでの人権侵害事案というのは、以前は恐らく考えられなかっただろうと思います。だけれども、現在ではこうした事案もふえてきているということですから、やはり時代時代に沿った形で対応できる、そうすると、やはり一般法を設けておくということの意味合いは私は十分にあり得ることだ、こう考えています。

城内委員 でしたら、百歩譲って一般法をつくって対処すればいいのであって、だからといって、そういう箱物を、人権委員会という巨大な組織、ちょっと次の質問に移りますけれども、つくる必要はないと思うんですね。しかも、国家行政組織法上、第三条委員会といって、これは今でいえば公正取引委員会とか国家公安委員会、公害等調整委員会ですよね。

 では、これと人権委員会はどう違うのかというと、こういった公取とか国家公安委員会とか公害等調整委員会というのは、特定の対象者なんですよね。いきなり八百屋さんのところに公正取引委員会の人が来たりしないんですよ。特定のターゲットが決まっていますよね、公害等調整委員会等。

 ところが、この人権委員会というのは、先ほど申しましたように、御皇室の方も含めて、全ての日本の主権が及ぶ日本国民及び外国人が対象なんですね。だから、そういう意味では、とんでもない強大な機関だというふうに私は思っておりますし、これは過去、占領下、GHQの指導で二十以上つくられたんですが、余りにも権限が強過ぎて減らそうと。減らすということで、現在七つしかない、そういう存在なんですね。

 しかも、平岡元大臣は、三条委員会に強い権限を与えるのはおかしいというのなら、法律で権限をやめるとか与えないとかすればいいと、私の質問に対してこうやって逃げたんですけれども、だったら、権限を弱める、与えなければいいというんだったら、三条委員会じゃなくて、もともと八条委員会だろうが何だろうが私は人権救済機関をつくる必要は全くないと思うんですけれども、それでも三条委員会が必要だと。

 それは裏には、法律によって権限を弱める、与えないと平岡大臣はおっしゃいましたけれども、平岡大臣の頭にあったのは、権限は残しておいて、恐らく将来、やはりちょっとこれは権限が足らないから調査権とか、あるいは何か罰則を与える規定だとかいって、そういうものを持たせないといじめに対応できないととても思いませんけれども、何かいろいろなへ理屈をこねて小さく産んで大きく育てる、そういうことを考えていらっしゃるんじゃないかと私は思いますけれども、それに対して滝大臣はどうでしょうか。

滝国務大臣 人権問題については、小さく産んで大きく育てるなんというのは、大衆監視のもとにあるわけですから、そう戦略的にスムーズにいくような見通しを持ってやっているわけではございません。

 やはり三条委員会というのは、ある程度政府から独立性を持っていないと、公権力を行使する立場の政府も時にはやはり人権侵害に及ぶことが結果的にはあり得る、そういうような場合には独立の機関という性格を持たせた機関が必要だ、こういう意味で三条委員会と言っているわけですし、人権規約も、そういう意味で、政府から独立したというのはそういう趣旨だと思うんですね。政府というのは、やはりどうしても公権力を行使する場面というのは至るところにあるわけですから、それを、政府が人権侵害をしたときに、その政府に対して救済を申し出ていくというのは、やはりぐあいが悪いので、三条委員会だなということだと思うんです。

 したがって、決して、小さく産んで大きく育てる、そういう段階的な戦略論を法務省として展開しようと思っているわけではありません。

城内委員 今、要するに一言で言うと、そんなこそくなことは考えていませんよという大臣の答弁なんですけれども、私はやはり疑っているんですよね。そもそも何で三条委員会じゃなきゃいけないのか。ないんですよね。八条委員会でも必要ないし、そういう機関が必要じゃないんです。

 それで、この関連ですけれども、ちょっと視点を変えますけれども、今、法務省の住所は霞が関のどこですか。大臣、わかりますか。

滝国務大臣 私もはっきり見ていませんけれども、霞が関の一丁目一番地という理解をしているのでございますけれども。

城内委員 一丁目一番地の一、一の一の一です。

 では、もう一つ質問しますけれども、一丁目一番地の一に、済みません、これは通告していないのでわからなかったらわからないでいいです、同じ住所にある機関がありますけれども、何か御存じですか。

滝国務大臣 まあ、あの近辺にはいろいろな建物がありますから、それなりにあると思うんですけれども、公安調査庁ももちろんありますしね。

城内委員 大臣、正解です。公安調査庁も千代田区霞が関一の一の一です。もう一つ、公正取引委員会、これも合同庁舎六号ですから、一の一の一です。

 ここで、どうして私がこういう質問をしたかというと、政府から独立した機関をつくるのであれば、よもや千代田区霞が関一の一の一ではないですよね。

滝国務大臣 そういう住所までは念頭にありませんので、それは一つの、国民から見た場合のいわば注意事項ということにはなるかもしれません。

城内委員 ただ、おやめになった小川大臣は、人権擁護局の横滑りとして、独立した機関であるけれども人権委員会をつくるとおっしゃっているんですよ。横滑りということは、人権擁護局というのは恐らく霞が関一の一の一の法務省のどこかにあるんでしょうけれども、そこを看板を書きかえて、職員も法務省の方が出向する形で、人権委員会でございますとやるんじゃないんですか。それとも、裁判員みたいに抽せんで職員を選ぶんですか。

滝国務大臣 人権委員会の事務局がどこになるかというのは、それは今までのところ、念頭にありません。やはり政府からある程度独立したというものが国民のイメージに合うようなところができれば望ましいということは、御指摘のとおりだと思います。

城内委員 国民のイメージからすると、法務省とか公安調査庁と同じ住所に人権委員会というのがあれば、独立したイメージはないですよね。そう思いませんか。

滝国務大臣 しかし、あのかいわいには弁護士会もありますし、人権を守る方の機関も入っているわけですから。まあ、いずれにしても、余り霞が関の一丁目一番地じゃないということは、それは一つの考え方としてあると思います。

城内委員 今、行政改革とか、民主党さんがお好きな事業仕分けで無駄を削っているんですけれども、では、人権擁護局じゃない、それを多分横滑りだからなくして、どこか借りるんですよね、恐らく千代田区のどこかに。どんなに安く見積もったって賃料は月二百万ぐらいじゃないでしょうかね、職員の数によりますけれども。そういう新たな出費がふえると思いませんか、そうしたら。

滝国務大臣 そこまで具体的なところまで行けたら大変ありがたいと思うんですけれども、まだそこまで計算をするような余裕がないものですから、その辺のところはこれからの問題だろうと思います。

城内委員 もう私も質問していて何か自分が恥ずかしくなってきているんですけれども、さっきの御答弁もそうですけれども、もうちょっと、今後いろいろな新しい人権が出てくるとか、そして、ではどこに設置するかということもろくに詰めずにということは、冒頭申しましたように、どこかの団体が早くつくれ、早くつくれ、わかりました、頑張りますと、最初から結論ありきでやっているような構図にしか私は見えないんですよね。

 ですから、今申しましたように、本当に政府から独立した機関をつくるのであれば、霞が関の一丁目の一の一じゃなくて別のところにつくることを考えているのかとか、そこら辺はやはりきちっと詰めてほしいですし、では実際、人権擁護局の横滑りということをおっしゃいますが、そうなると、全く独立していないんじゃないですか。

滝国務大臣 それはやはりこれからの問題だと思うんですね。実際の住所地をどうするかというのは、それは大体の枠組みが決まってからの話、そういうような理解をさせてもらいたいと思います。

城内委員 今、枠組みが決まってからの話とおっしゃいますけれども、ある機関をつくるには、定員と予算、これが非常に重要なんですよ。そこからまず入ってくださいよ。それから入らずに、パリ原則を持ち出したり、何か審議会の答申、審議会だって間違った答申をすることもあるじゃないですか。それを金科玉条のごとく、最初から結論ありきでおっしゃっていただきたくないということを再度強調させていただきたいと思います。

 そして、仮にできたとしたら、人権委員は国会同意人事、これは政治任用ですよね。政治が、まさに民主党さんのお好きな政治主導で、お好きな方を中国大使みたいに選ぶわけでしょう、きっと。そうしたら、当然政府の意向が強く反映されて、政府から独立したどころか、政府ともう癒着べったりみたいな、そういう可能性があるわけです。

 まさに法案の骨子では、委員長及び委員は、人格が高潔で人権に関して高い識見を有する者であって、法律または社会に関する学識経験があり、人権委員会の所掌事務の遂行につき公正かつ中立な判断を行うことができると認められる者と。これは当然、人権派の弁護士の方が一人入るような感じが非常に、想像するにかたくないんです。

 確かに、人権派の弁護士の方は実に立派な方が多いですよ。さっき申しましたように、本当にいじめに苦しんでいる人たちを何とか、身銭を切って、弁護士料要らないから人権問題を解決したいというすばらしい方もいらっしゃいますけれども、中にはとんでもない人権派の弁護士もいらっしゃるんですね。

 例えば、実はこれは実際にあった例ですけれども、平成十七年三月、大阪の高槻市柳川中学校の卒業式において、校長先生が生徒の皆さんに事前に君が代を歌わない自由、起立しない自由を説明しなかったことをもって、大阪の弁護士会から、生徒の思想、良心の自由を損なう行為だと、人権侵害事案であるという勧告書を受け取ったと。

 私は、本当に当時、平成十七年、今でも覚えていますけれども、これはインターネットのガセネタだと思ったんですね。それで、この校長先生に電話してみました。そうしたら何と言ったか。事実ですと憮然として言いました。半年前ぐらいにそういう人が来て注意して、半年後に何か内容証明で弁護士会から来た、びっくりしたと憮然とおっしゃっていました。今こんな話を大阪の橋下市長が聞いたら、びっくりしますよね。こういうことをやる方がいらっしゃるんですよ。

 私は、これはもうとんでもない話だと思いますし、また、札幌弁護士会の一部の方は、平成十四年二月、札幌南高校の校長先生が卒業式で、国歌斉唱について生徒との意見交換の場を設けなかったのは人権侵害だと勧告しているんです。

 いいですか。この二つの例は、事前に、あなたたちは起立しなくていいですよとか、校歌を歌わなくていいですよと言わなかったり、あるいは後者の場合は、生徒との意見交換の場を設けなかったことをもって、強制したとかそういう次元じゃないんですよね。こういうものが人権侵害ということになるんじゃないですか。そう思いませんか。

    〔樋口委員長代理退席、委員長着席〕

滝国務大臣 少なくとも、御指摘のとおり、その問題が人権侵害に当たるというのは、それは今の社会の常識には当たらないというふうな理解をしなければいけないと思っています。

城内委員 いや、理解をしなきゃいけないと大臣が幾ら思っても、そういう方々は世の中にいらっしゃるわけですから。

 それで、専門家というと、どちらかというとそういう方々が、私が人権問題については専門家ですからということでお仕事をされて、間違って人権委員会の委員になったら、どうせ上がってくる人権侵害事案なんというのは、大体、現場の人権擁護委員の人は立派な方がいますから、みんな説諭、勧告して解決して、何かとんでもない事例がぽつぽつ来て、やることがないから、これはもう初めから人権侵害だと、こういう構図がもう手にとるように予想できるんですよ。

 現場では解決できて、何かとんでもない筋の悪い、捏造したみたいなのが来て、やることがないから、そういう大阪の弁護士、一部のですよ、これはみんなとは言いませんよ、大阪とか札幌の弁護士さんみたいに、もうとにかく人権で飯を食っていくというような人みたいなのが来て、ああ、これは人権侵害ですと。私はそういう可能性があると思うんですよ。これは否定できますか。

滝国務大臣 それは、人権の名のもとにいろいろな意見はあると思うんですね。それはもう現実に起こっている話でしょうから、否定しませんけれども。

 しかし、そういうことだからこそ、例えば、その今の中学校の校長さんは人権擁護委員会に相談をするとかというような道は、基本的にはつくっておかないといけない。現実に人権擁護委員がどれだけの力を発揮できるかというのは、それは個人的な問題もあるでしょうけれども、少なくともそういうことについて一人で悩まないようなシステムはやはり必要だというのが、この人権委員会法の基本的な前提だと私は思っていますけれども。

城内委員 今大臣、そういう校長先生が悩まなくてもなんておっしゃいますけれども、私からすると、校長先生の方が人権侵害を受けていますよ。法律と、あるいは条例とか校則にのっとって生徒を指導したにもかかわらず、わけのわからないそんな勧告書が来て、おまえは人権侵害した者だなんていって、私みたいに気が小さい者がそんなのを受け取っちゃうと、もう寝られなくなっちゃいますよ。これこそ人権侵害なんですけれども。

 残念ながら、この人権救済機関に決定的に欠けているのは、人権を侵害したという者に対する救済措置が何かほとんど見えていないんですね。おまえは人権侵害をしたんだというと、いや、そんなことはないんですけれどもと、これはまさに痴漢の冤罪事件と同じようなことが、もう日本全国そこらじゅうに起きると思います。

 今振り込め詐欺みたいな事案がいっぱいありますけれども、振り込め詐欺を商売でやっているとんでもない連中は、この人権委員会ができたら、これはもう片言隻句をとられて、これは差別です、申し立てしますから、あなた、人権委員会でこれが問題になったら、人権侵害者ということで社会から白い目で見られる、血祭りに上げますよと。嫌だったら、慰謝料で五十万、百万で済みますからという商売が、振り込め詐欺がなくなるのはいいかもしれませんけれども、そっちの方にみんながわあっと行って、そうしたら、犯罪集団がこれはいいものをつくってくれましたねといって、滝大臣はきっと感謝されますよ。そういうことに絶対ならないようにしてほしいんです。私はこれは本当に心配して言っているんです。

 またさっきの話に戻りますけれども、この人権問題をやっている人たちは、事あるごとに人権というと過剰反応して、例えば、児童の権利条約というようなものができます。確かに、児童の権利を守るべきだと思いますけれども、またそういうものが仕事の人たちは、ああ、これはいい、これをまた飯の種にしようということで、例えば、小学校で子供が授業を聞かずに歩いたり学級崩壊みたいなことが起きて、先生が体罰じゃなくて口で強めに注意したら、これは人権侵害だなんという、そういうケースが起きているんです。なぜかというと、児童の権利条約に反するからみたいな、児童の自由な行動を阻害するみたいなことで。

 そういうような、まさにもう日本の判例とか社会常識を覆すようなことが、こういう条約、国際人権条約がありますとか、人権規約がありますとか、児童の権利条約がありますということを踏まえて、そういった人権活動家、人権弁護士の方々が今跳梁ばっこしているんですよ。そういう人たちが恐らく、まさに国連の人権委員会とかに、日本はとんでもない、こんな例がいっぱいありますからといって、マッチポンプで勧告書を突きつけられて、針小棒大に取り上げて、そしてまさに、人権委員会ができればその人たちは非常にハッピーで、活躍の場が与えられてしまうんです。

 ですから、これは国民のための人権委員会ではなくて、むしろ、そういった人権活動家、えせ同和の方とかそういう人たちの活躍の場を与えるという意味で、私は、日本の社会をおかしくしますし、日本の国柄、国体も含めて破壊する大変危険な機関であるというふうに確信していますが、大臣、どのようにお感じですか。

滝国務大臣 個人的に、その類いの話、相談を受けることがございます。そのたびに、法務省の人権擁護局の意見を聞いて、どうしたらいいかというようなアドバイスをすることも今まであるわけです。まさにそういうときに、人権擁護委員が親身になって相談に乗る、解決策はなかなか、打てば響くようなものがないかもしれませんけれども、そういう意味においても、この一つの親法としての人権委員会が、ある程度そういう、個別な相談を受けた人権擁護委員にさらにガイドラインを示せるような、あるいは相談役として意見が言えるような、そういう機関というのはやはり必要だというのが、今のお話を聞いていて私はそういうふうに感じておりました。

城内委員 いずれにしても、人権委員会をつくる、つくらないという結論は私は出て、つくる必要ないんですね。百歩というか一万歩ぐらい譲歩すれば、今の人権擁護局の皆さんも頑張っていらっしゃいますから、法務省のもとに人権擁護庁、これは反対派の人に怒られるかもしれません、人権擁護庁なんというものをつくってもらっては困ると言われるかもしれませんけれども、一万歩ぐらい譲れば、人権擁護庁というのをつくれば事足りるものであって、予算も定員もふえずということでやればいいんだ、私はそういうふうに思っております。

 もう一つ、これは外国の例を挙げたいと思いますが、お隣の韓国には、まさに我が国の人権委員会と類似した国家人権委員会というのがあります。これは二〇〇一年に発足しました。ところが、翌年に、国がテロ防止法というのを制定しようとしたんです。当然、北朝鮮から本当に四六時中テロの危険がある国ですね、韓国は。ところが、これに対して、これは既存の法律でも十分対処可能であって、新しいこのテロ防止法というのは韓国国民の人権を制限する余地があるということで、中止を求める意見表明がされました。

 こういうことになり得るわけですね。ですから、これは法務省の中でも刑事局とか、あるいは警察庁とか公安調査庁の人たちからすると、こんなものつくってもらいたくないと思いますけれども、何かをしようとすると人権侵害だからやめてくれと。

 さらに、韓国では二〇〇三年に、戸主制度がある、戸籍戸主、戸主制度、これは平等権侵害に当たるという主張が憲法裁判に提出されて、こういった国家人権委員会があるんですね、その結果、国家人権委員会の勧告に基づいて戸籍制度が廃止された。

 こういう三権のどこにも属さない機関が、まさにこのように、ある意味、行政の動きを阻害してストップをかける。まさに韓国で起きていることは、社会の基盤である文化や伝統あるいは家族と共同体が破壊しかかっているんです。同じことが、もう一回繰り返しますけれども、社会の基盤である文化や伝統あるいは家族とか共同体、人と人とのきずなが、人権あるいは人権委員会というもので破壊しかねない、そういう危険性があるんです。日本の人権委員会はこういうことにならないという保証がありますか、大臣。

滝国務大臣 日本人というのはどちらかというと中庸を旨とする文化でございますから、韓国がどういう経緯でもって従来の戸籍制度を廃止されたのかよくわかりませんし、人権委員会がどういう機能を持っていた、そういうことはやはり韓国は韓国の事情があると思いますけれども、日本は、やはりそれほど激しい文化というのは好まない、そういう考え方をとるんじゃないのでしょうか。

城内委員 大臣、私は追及しませんけれども、大臣が今、日本人は中庸です、韓国では激しいというこの発言自体が、人権委員会では差別的な言動ととられるんですから、御注意くださいね。本当ですよ、これ。ちょっと、これは冗談じゃなくて、今大臣がおっしゃった、日本人はどちらかというと中庸、韓国の人は気性が激しいというこの表現自体が、差別的、民族差別だ、我々の方がバランス感覚があって、日本人の方が気違いで激しいのにという可能性が高いんですよ。

 まさに、人権委員会というのができると、私はそんなことしませんけれども、政権がかわって、意地が悪い自民党の方が追及して、あのときの大臣の発言、平成二十四年六月十五日の発言はまさに韓国人に対する差別的な発言であると。私はそんなことは郵政で反対票を投じた同志の大臣には絶対しませんけれども、そういう可能性が出てくるんですよ。

 ですから、大臣にはもう、ちょっと怖くて、御答弁いただかなくて結構なんですけれども、もうこのことはちょっと触れませんけれども、そういう可能性があるということを大臣にぜひ肝に銘じていただきたく、また、後ろに座っていらっしゃる人権擁護局の方もそういう危険性について十分よく吟味していただいて、詰めていただきたいなというふうに思います。

滝国務大臣 せっかく御注意、御忠告をいただきましたから。

 私が言ったのは、韓国というのは戸籍制度を日本の戸籍と違った意味で大変重要視しているから、それを人権委員会がやめてしまうというのはそういう激しさを持っているということで申し上げたので、日本の戸籍と韓国の戸籍は意味合いが違うという、そういうところから申し上げているわけです。

城内委員 私は善意に解釈しますけれども、そう解釈しない人が必ず出てきますから。過去の発言についてまでも問われる可能性が非常に高いような私はこの人権委員会だと思う。というのは、いや、それは昔の発言なんといったって、いまだに私はそれでもう心証を害して、夜も眠れなくて病気になりかかっているから人権侵害だというふうに言われる可能性がありますから、ぜひ御注意ください。

 幾つかまだ残っている質問がありますけれども、最後に、私は、日本には確かに救われていない人権侵害事案があって、もっとどんどん救済しなきゃいけないと思っております。しかし、人権問題というのは日本人だけの問題じゃないんですよね。

 例えば中国のチベットの人たち、あるいは法輪功の方々。うわさでは、何かわけのわからない理由で牢屋にぶち込まれて、臓器をとられて、それが外貨稼ぎになっているなんという、とんでもないような人権侵害事案があるとうわさされていますし、この間ウイグルの方も来ましたけれども、まさに今この瞬間に、法輪功の方やウイグルの方やチベットの方が中国官憲の人たちに拘束されたり、むちで殴られたり、爪をあれしたり、腹をえぐられたりしているわけですよ。

 ですから、中国の人だから関係ないよじゃなくて、ウイグル人だから関係ないよとかチベットだからいいんだよじゃなくて、私は、むしろそうした人たちのことを救うのが、あるいは国際人権問題に日本が先頭に立って対応することこそが、世界から尊敬される日本の礎になると思っております。

 その点で、人権委員会をつくるような予算、定員があるのであれば、国際人権問題を率先して、そういった人権先進国の関係者にプレッシャーをかけるような機関をつくるんだったら私は賛成しますが、大臣はそう思いませんか。

滝国務大臣 日本の場合には、国際的な人権活動といっても、そう国を挙げてということは見えませんので、そういう意味では、その点についても日本のあり方として一つの選択だと私は思いますけれども。

城内委員 実はあとまだ三分の一残っておりますけれども、時間が来ましたので。

 ぜひ、事務方と詰めて、もう少し説得力ある答弁をしていただきたいということと、これは一つ宿題ですけれども、歴代大臣にも宿題を出して全く答えられていないんですけれども、では、人権委員会、私は反対ですが、仮に設置した場合の予算と定員、そして住所、これを、だって、こういうのをまず提示した上で、いや、つくったら何百億円も年間かかってしまったといったらしゃれになりませんよね、今、この御時世ですから。ですから、大まかな設計図でいいですから、ぜひやはりそれをきちっと示していただきたい。逆に、もし言えるのであれば、人権委員会を設置したら予算と定員が半減しましたとか、絶対そうならないと思いますけれども、言えるんだったら言っていただきたいですし、次回までの宿題とさせていただきたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

小林委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。

 大臣、法務大臣就任おめでとうございます。大臣は、昨年の九月からは法務副大臣でいらっしゃいましたし、その前は、法務委員長そして法務委員会の筆頭理事を歴任されておられます。その意味で、政権交代以降、この法務委員会にとても関係が深かった大臣でいらっしゃいます。

 さて、大臣、大臣は政権交代してこの三年弱の間の何人目の法務大臣でしょうか。

滝国務大臣 数えたことはありませんけれども、七人目と言われておりますので、七人目で間違いないと思います。

稲田委員 そういたしましたら、政権交代後の七人の大臣のお名前と、そして、なぜおやめになったか、大臣の記憶と認識で結構でございますので、教えていただけますでしょうか。

滝国務大臣 メモを見ずに言うのはなかなか難しいと思うんですね、ほんの短期間だけやった大臣もおいでになりますから。少なくても、最初の千葉景子法務大臣だけは覚えていますけれども、あとは、どういう順序でというのはなかなか難しいところがあると思います。

稲田委員 大臣、御記憶にあるだけ、お名前を教えていただけますでしょうか。

滝国務大臣 千葉景子大臣の後は、順序は不同でございますけれども、江田大臣もいますし、それから柳田大臣もおいでになりますし、もちろん、直前は小川大臣ですし、平岡大臣もいますし、あと、短期間だけおいでになった大臣もいますので。(発言する者あり)仙谷大臣がほんのリリーフという格好でおいでになりました。

 そんなことでございますから、順序も少し乱れておりますけれども、なかなか正しく申し上げるのは難しいんじゃないのかと思います。

稲田委員 私もなかなか七人、思い出せなかったんです、私もずっとこの委員会におりますけれども。そして、それぞれの大臣、仙谷大臣には質問しませんでしたが、全てほかの大臣には質問いたしましたけれども、お名前を思い出すのが大変だったんです。

 なぜおやめになったか。まず、千葉景子大臣は、なぜおやめになったんですか。

滝国務大臣 千葉景子大臣は選挙の関係でじゃなかったかなと思うんですけれども、どういう理由かというのは、今ちょっと思い出せません。

稲田委員 千葉景子大臣は、平成二十二年の参議院選で、大臣でいらっしゃいましたけれども、落選をされまして、その後、民間のままでまだ大臣になられたんですけれども、国会議員資格を失った民間人閣僚ということで批判もあり、民間閣僚となられてから四十九日間在任をされて、次の内閣改造ではおかわりになりました。

 次の柳田法務大臣は、なぜおやめになったんですか。

滝国務大臣 具体的な理由はわかりませんけれども、この法務委員会でも問題になったことも関係しているかなと思っております。

稲田委員 この法務委員会、そして予算委員会でもそうですけれども、大問題になったことと今大臣が指摘されましたが、それはどういうことだったんでしょうか。

滝国務大臣 広島県の地元における御発言をめぐってということに記憶をいたしております。

稲田委員 その具体的な内容は覚えていらっしゃらないですか。

滝国務大臣 法務大臣は個別の問題には答えられないと言っていれば気楽なものだというような感じの発言を地元でおやりになったということが尾を引いたんだろうというふうには推測をいたしております。

稲田委員 柳田大臣は、法務大臣とはよいですね、二つだけ覚えておけばいいんですから、個別の事案についてはお答えを差し控えます、これがいいんです、わからなかったらこれを言う、あとは、法と証拠に基づいて適切にやっております、この二つなんです、何回使ったことかなどと発言をされて、これが余りにも法務大臣としてふさわしくないということで、辞表を提出されました。

 仙谷大臣は、なぜやめられたんですか。

滝国務大臣 仙谷大臣の場合にも背景があったと思いますけれども、もともとショートリリーフというように私は受けとめておりました。

稲田委員 仙谷大臣は、中国漁船問題や、また、自衛隊は暴力装置などという暴言を理由に、自民党、みんなの党とともに参議院で提出した問責決議案が可決をされて、その後、法的拘束力のない問責決議でやめる必要はないと言って辞任は否定されたんですが、その次の内閣改造で平岡大臣にかわられました。

 江田大臣は、なぜやめられたんでしょうか。

滝国務大臣 江田大臣は、やはり内閣改造ということでおやめになったと思いますね。もともと菅内閣のいわば参謀格だというふうに位置づけられていたというふうには記憶しておりますけれども。

稲田委員 江田大臣にも私もこの委員会で質問いたしましたけれども、国会の参議院の議長という、本当に行政をチェックする立場の長でありながら、今度は前代未聞の行政府の大臣に、まさしく天下りのような人事で入られたわけです。それも大変不適切だということで私は指摘をさせていただきましたけれども、その後、死刑というのはいろいろな欠陥を抱えた刑罰だというような発言や、在任期間中一度も死刑の執行をされなかったこともございます。そして、野田内閣発足に従って退任をされました。

 次の大臣が平岡大臣でございます。平岡大臣は、なぜおやめになったんですか。

滝国務大臣 政策秘書の任命の問題が当初の問題点として挙がったという記憶はございます。

稲田委員 前科を有する人物を大臣秘書官に起用されていた問題ですとか、あと、少年法との関係で、被害者のお母さんに対して、加害者の人に死の恐怖を味わわせるということで本当に幸せかなどという暴言を吐かれたことなど、さまざまな問題でここでも追及し切れないぐらい追及をしておりましたが、途中で内閣改造で小川大臣にかわられたわけで、もしあのままいらっしゃれば、また内閣不信任案の対象になったことは間違いないと思うんですが。

 では、小川大臣は、なぜかわられたんですか。

滝国務大臣 小川大臣は前任の大臣でございますから、我々の補佐が少し足りなかったかなという反省はいたしております。

稲田委員 小川大臣も、競馬サイトを第一委員会室で見ておられたり、それから、八千八百万という法外な弁護士費用を公正証書に巻いて、正当に勝った原告からの強制執行に入っていくような、まさしく強制執行妨害罪に該当するのではないかというような行為等、さまざまな問題でやはりこの委員会で追及をしていたわけであります。そして、この追及の後には問責を出そうということで、不適格大臣の一人にリストアップされていたわけですが、今回の内閣改造で、また問責逃れと私は思っておりますけれども、かわられたわけであります。

 このように、法務大臣七人目ということですけれども、次々と不適格な大臣を据えては、またその後任者がまたまた不適格大臣という、こういう連鎖をいたしておりまして、本当にこれは日本の法務行政にとって非常に不幸なことでありますので、ぜひこの連鎖を断ち切っていただいて、滝大臣には頑張っていただきたいと私は思っております。

 大臣、所信表明演説の中でいろいろと述べておられましたけれども、大臣が最も取り組みたいと思われている課題、三つ挙げていただけますか。

滝国務大臣 基本的には、検察のあり方ということになるわけでございますけれども、その中でも、やはり可視化の問題というのはぜひ徹底をしなければいけない。これが具体的で、最も本来はやりやすい分野ではなかろうかな。なかなか、可視化といっても、実際の取り調べの段階では非常に難しいということは既に警察庁が表明しているとおりでございますけれども、しかし、日本の捜査のあり方を考えた場合には、可視化を徹底するというのが第一の目的かなと思っております。

 それから、二番目には、大阪事件じゃありませんけれども、前回の副大臣のときにもそういうつもりでやってまいりましたけれども、再犯防止。要するに、出所者をどう社会が受け入れる、住むところ、それから職業、そういった問題を含めて、出所者に対して再犯を防止するというのを国としてもう少し徹底していくことができればと。これもなかなか難題であることは間違いないと思います。

 あとは、基本的に、今までの会社法の改正のときもそうでございましたけれども、事後チェックというような問題が、本当にそれでいいのかというのが最近の会社法をめぐる問題としてあるものですから、そういうものは意外と、そのままにしておいていいのかどうかというのが改めて問われた事件だろう。ただ、会社法の中で対応策を講じるというのは、これまた難しい話ではございますけれども、そういう問題について何とかできればいいな。

 四番目をつけ加えさせていただきますと、これはやはり法曹の今の問題ですね。ここまで大変大きな問題を抱えてきたということは、当初は予定しなかった、想定外の難問を今抱えているものですから、その解決はやはりなるべく早く完成をさせなければいけないな。一つだけつけ加えさせていただきました。

稲田委員 可視化のことをまず一番最初に挙げられたんですけれども、この可視化の徹底ということになりますと、取り調べが充実をして、そして真実発見、また、治安維持にどうなのかという疑問もあります。

 そういう意味で、例えば全面可視化ということをやるのであれば、司法取引やおとり捜査など、新しい捜査手法なども同時に入れていくべきだという考え方がありますけれども、その点は、大臣はどのようにお考えでしょうか。

滝国務大臣 当然、新しい捜査方法の導入ということで、まず挙がってくるのは司法取引だと思いますけれども、司法取引というのは、やはり国民の目から見て、そんなことが許されるのかというふうな評価を受けるのは目に見えるわけでございますから、簡単に、そういうものを導入してまでということはあると思います。

 ただ、そういう新しい捜査方法なしでもどこまで可視化ができるかということは、まずやってみなければいけない問題だろうと思います。

稲田委員 おとり捜査についてはいかがですか。

滝国務大臣 我々も、学校ではおとり捜査というものを習いました。習いましたけれども、実際問題として、倫理的に見れば悪質かもしれませんけれども、ある意味ではしようがないのかな、そういう目で当時は勉強させてもらいました、刑事訴訟法の中で。

 ただ、それも、日本では余りやっていませんから、というかほとんどやっていませんから、実際にやってみれば、その弊害というものがどこまで出てくるのかということを考えないと、おとり捜査も、外国でやっているからいいというわけではないと思いますので、これもまた難しい問題を含んでいると思います。

稲田委員 大臣、それと検察に対する信頼ということに関連してなんですけれども、小川法務大臣が、きょう午前中も質疑がありましたが、退任記者会見で、小沢氏の事件で、検察官の虚偽報告書作成問題で検察庁法十四条の指揮発動を考えたが、総理にとめられたんだと発言をされました。

 私もこの問題を予算委員会で総理に質問いたしましたが、総理は、指揮権発動について相談はされていないんだ、そういう御答弁だったわけです。きょうの午前中の大臣の御答弁でも、そういう思い詰めたものとは思わなかったというような御答弁がありました。また、就任時の記者会見では、政務三役でこの問題について話したけれども、指揮権発動というような話はなかったというお話でありました。

 谷副大臣にお伺いをいたします。

 当時、政務三役としていらっしゃいました。この問題について、小川前大臣、そして当時の副大臣でいらっしゃった今の大臣、そして副大臣とどのようなお話をされたんでしょうか。

谷副大臣 お答えいたします。

 私も法務大臣政務官として政務三役の一人で、三役会議を毎週定例でやっておりまして、この問題についての議論は、話題としては食事を挟みながら若干出ましたけれども、指揮権を発動するとか、あるいは総理にそういうことを報告するとか、そういうふうなところまでの具体的なお考えは、小川前大臣からはお聞きをしませんでした。

 以上でございます。

稲田委員 ただ、大臣は、要するに当時の政務三役で意見交換をしていたということをおっしゃっているわけですから、食事を挟みながらというそういう気楽なものではなくて、三役の中で、この虚偽報告書作成問題について小川法務大臣と三名でお話しになったんじゃないんですか。

谷副大臣 食事を挟みながらというのは、お昼に食事をした後、三人でこの話題はございました。過去の指揮権発動の例とかそういうものについての議論は若干ありましたけれども、そのことについての先ほど申し上げましたような具体的な前大臣の意思表示というものはございませんでした。

稲田委員 そうしますと、過去の指揮権の発動の例等について意見交換したということは、この問題について指揮権発動という言葉を大臣は出されて三役会でお話しになったんじゃないんですか。

谷副大臣 私の個人的な受けとめ方ですから、そこまでの何か結論めいた、そういう前大臣の意思表示とか、そういうものはなかったと思っています。

稲田委員 では、過去の指揮権発動の例を出されて何を検討したんですか。

谷副大臣 そもそも、だから、検討したとかそういうふうな、あるいは当時の副大臣、政務官に具体的に相談をするとか、そういうふうに私個人はその場の雰囲気というか会議は受けとめてはおりませんでした。いわゆる一般的に、指揮権発動としての、そういうふうな話題的な話があったということでございます。

稲田委員 では、大臣、今のお話を聞いて、小川大臣が過去の指揮権発動の例を出して、この虚偽報告書作成問題についてどういう話、また意見交換をされたんですか。

滝国務大臣 基本的に、この捜査報告書の問題について検察はどういうような捜査をしているんだろうかと。それは直接、ダイレクトに我々に報告がないものですから。ただ、当然捜査はしているんだろうと。したがって、その結果がどういう格好で出るんだろうかなというような議論というか話をしています。

 その中に、かつては犬養法務大臣のときの指揮権発動みたいなものがあったから、ああいうようなことになったら大変だぐらいな感覚で恐らく、そんな具体的でもないんですよ、かつてそういうことをやった法務大臣がいるわなというぐらいの話で、具体的にこの問題について指揮権発動とか何か、まだそんな話ではございませんで、そもそもどういう捜査が上がってくるのかわからないわけですから、そこまで思い詰めたような情勢の中でどうしようかという議論をしているわけではございませんでした。

稲田委員 過去の一回だけあった指揮権発動の例を出して、ああいうことになったら困るわなというのはどういう意味ですか。

滝国務大臣 いやいや、そういうような事態に仮に追い込まれるというか、大臣が、そうしろ、そうしろというような仮に声が届くようなことになったら大変だなというぐらいの、そういうことで恐らく大臣は指揮権発動の、過去にはこんなことがあったよというぐらいの話でございます。

 問題は、それよりも、どういう捜査報告書がというか、どういう捜査が行われているんだろうかということのいわば小田原評定を我々はしていたということでございます。何も具体的な報告が上がってきている段階じゃありませんから。ただ、報道で見る限り、ああでもないこうでもないという報道が出ているものですから、その報道をもとにして、今どんなことになっているんだろうかなというぐらいの意見交換をしていたということでございます。

稲田委員 ちょっと意味がよくわからないんですけれども、政務三役会で話題になった過去の指揮権発動について、大臣自体はどう捉えて、この検察庁法十四条の指揮権発動の趣旨についてどのようにお考えですか。

滝国務大臣 ちょっと今の質問の趣旨をよくとっていないかもしれませんけれども、少なくとも、そんな十四条の問題とか、具体的な条文に即して議論をしていたわけではないということだけは、まず申し上げておきたい。

 それから、その上で今のお尋ねですけれども、私は、当然、法務大臣としては、広い意味で見ればやはり検察もいわば法務省の管轄下にある程度あるわけで、そういう意味では指揮権というのはあるんだろうと。ただ、午前中も申し上げましたけれども、そんなことを言っていると、個々の事件について例えば不用意に感想を言ってしまうと、その感想を言ったことが場合によっては指揮権だというふうにとられてはやはりおもしろくない、おもしろくないというか捜査の公正中立という意味での誤解を招く。

 そんなこともあって、この指揮権の発動を検事総長だけに限定しているのは、日常茶飯事に個々いろいろな刑事事件が出ることについて、法務大臣としてはうかうかとうかつに感想さえも述べてはいけない、そんな意味でこの条文があるというふうに捉えるべきだというふうに理解をいたしております。

 基本的に言えば、だからこの条文は、そのとおり法務大臣に指揮権発動の権限が与えられるという積極的な意味でこの条文があるとは到底思えない、そんな受けとめ方をいたしております。

稲田委員 過去の例は、政治家を捜査しようとしたのを同じ政治家である法務大臣がとめようとした、その検察の司法権としての作用、政治の介入という意味において大変問題になった例だと思います。

 ただ、今回小川法務大臣がおっしゃっているのは、検察内部の捜査が甘い、処分が甘いということで指揮権を発動する場合なんだから、自分はこれは、小川大臣の言葉ですよ、指揮権発動の典型的な事例だというふうにおっしゃったんです。この点についての大臣の見解はいかがですか。

滝国務大臣 とにかく、甘いからこれは指揮権を発動しなければならない場合だというふうには私は理解をいたしておりません。この指揮権発動の条文というのは、個々の事件についても、とかく、質問されれば答えるとか、そういうようなことを避けてきたように、やはり大臣としては、具体的な捜査活動に大臣はうかつに発言をしてはならない、そういう戒めの条文という理解をすべきだ、まず第一には。

 ただ、条文そのものは、犬養法務大臣が発動したようなことはあり得ることは間違いなかったと思うんですね。それは批判はされましたけれども、そういう事態、事実があったということは、それはあったんでしょう。だけれども、実際、その条文は抑制的に考えるべきであって、むしろそれよりも、個々の事件に法務大臣が感想めいたことを言って捜査の中立公正を疑わせるようなことが少しでもあってはいけない、そういう戒めの条文として私は受けとめるのが正解だろうというふうに思っています。

稲田委員 私は、この指揮権発動、今回の場合、検察内部の捜査が甘いというだけであればこの大臣の発言も理解はできるんですが、と同時に、これが小沢氏の事件に関連する捜査にかかわる問題であるので、やはり私は、ここは軽々に指揮権発動というようなことを持ち出すべきではないと思います。

 虚偽報告書を作成した検察官を検察が不起訴にする方針であるということを担当部署に確認したと小川大臣はおっしゃっているんですが、そのような事実があるんですか。

滝国務大臣 少なくとも、三役の意見交換のときにそういう報告はございません。

稲田委員 ただ、大臣、就任時の記者会見の中で、指揮権を発動するというようなそんな話ではなかったけれども、まず検察当局からいろいろな報告を聞こうじゃないかということで、刑事局を通じていろいろな情報を収集したんだということをおっしゃっていますが、どういう事実を収集されたんですか。

滝国務大臣 少なくとも、そのときに副大臣あるいは大臣政務官は具体的な情報の報告を受けたことはございません。

稲田委員 では、大臣は、この件に関して、指揮権発動というようなことを考えておられますか。

滝国務大臣 基本的に指揮権というのは、そういう積極的に打って出るような指揮権というのは、それは本来考えるべきではなくて、抑制的に、むしろ、先ほど申しましたように、個々の事件に対してでも軽率に感想めいたことは言ってはいけない、そういう意味での、要するに、抑制的に考えるべき条文だということは私は肝に銘じているつもりでございます。

稲田委員 今回問題になった、まだ不起訴と決まったわけじゃないですけれども、検察の起訴、不起訴というのは、立法、司法、行政、三権分立の中の何に当たるんでしょうか。

滝国務大臣 行政権の部分が濃厚でございますけれども、司法の一角を占めているわけですから、そういう意味でも、簡単に、行政権の立場にある法務省、法務大臣としては、司法の一角にある検察について意見を言うということは、三権分立の立場からいっても当然控えなきゃならぬ問題だろうと思っています。

稲田委員 私も、前法務大臣である小川法務大臣が、まさしく検察の中の司法権行使の一部であるところの起訴、不起訴について軽々にこういう発言を、しかも、退任時に、自分がやらなかった指揮権について云々されるということは、大変極めて不適切だと思います。

 大臣は、司法のあり方を検証・提言する議員連盟の会長だったんですけれども、この議員連盟は何を目的とする議員連盟ですか。

滝国務大臣 この会合は、一回だけ出まして、後、全然開いていませんので、何をする会合だったかというのはよくわからないんですけれども、基本的には、第一回をやりました。私が会長ということになりました。それは検察審査会について勉強していこうという趣旨だったと思います。ただ、一回だけで、後は開いていませんので、その活動は最初の一回だけ、勉強しようという申し合わせをしただけで終わっていると思います。

稲田委員 この会は、平成二十二年の四月二十八日に、今大臣がおっしゃった初会合が開かれました。その前日の二十七日には、陸山会事件で不起訴処分となった小沢一郎氏に対し、東京第五検察審査会が審査員十一人の全員一致で起訴相当を議決しました。そして、この議連は強制起訴制度の見直しを提言しているんです。

 会長であった大臣は、この強制起訴制度見直しを考えておられるんでしょうか。

滝国務大臣 私は初日に一回だけしか出ていませんので、後どういうことになったかは、残念ながら全く承知しておりません。

稲田委員 事務方にお伺いいたします。

 現在の検察審査会の強制起訴制度について、その趣旨と簡単な概要について説明してください。

稲田政府参考人 御指摘のありました起訴議決制度の導入でございますが、これは平成十六年の刑事訴訟法等の一部を改正する法律により導入されたものでございまして、それより前は、検察審査会の議決にはいわゆる法的拘束力がなく、検察審査会の議決を参考にしつつも、公訴を提起するかどうかは最終的には検察官が判断するものとされていたところでございます。

 そこで、この起訴議決制度を導入した趣旨は、公訴権の行使に国民の感覚をより直截に反映させることにより、公訴権の行使をより一層適正なものとすることにあり、これによって司法に対する国民の理解と信頼を深めることを期するというものであると承知しております。

 さらに、この制度の概要でございますが、これは検察官の不起訴処分につきまして、検察審査会が検察審査員八名以上の多数により起訴相当議決をした場合におきまして、これは便宜一回目の審査と申しますが、検察官が同議決に係る事件について再度不起訴処分にしたとき、または一定期間、原則として三カ月でございますが、この間に起訴をしなかったときは、当該検察審査会は改めて審査を行わなければならないことになります。これが二回目の審査ということになります。

 この二回目の審査におきまして改めて起訴を相当と認めるときは、検察審査員八名以上の多数により起訴をすべき旨の議決、これが起訴議決でございますが、これを行い、この議決に基づき、裁判所から指定された検察官としての職務を行う弁護士、指定弁護士によりまして当該事件が起訴されるという制度でございます。

稲田委員 先ほど大臣は一回しか出ていないとおっしゃったんですけれども、その初会合が、まさしく小沢氏を強制起訴にする起訴相当議決をした次の日に開催をされて、そして、その中で検察審査会制度の見直しを求めていくことで一致したんじゃないんですか。

滝国務大臣 どういう議論をしていたかというのはよくわかりません。とにかく、そこへ会長になってくれということで出席はいたしました。しかし、その後の議論は全然参加していませんので、恐らく自然消滅したかなと思っているのが私の気持ちでございます。その後、出ていないと思います。

稲田委員 しかし、その当日、滝会長の言葉として、司法制度改革は権力が独走する仕組みを変えるものだったのに、そうではない実態が出ていると発言したとありますが、これは具体的にどういう意味ですか。

滝国務大臣 どういうつもりで言ったかも、ちょっと今記憶にありませんけれども、とにかく、検察審査会というのは、今までみんながよく知らないいわばシステムですから、そういう意味でその種のことを言ったかもしれませんけれども、後のその取りまとめの方向とかなんかというよりも、とにかく、検察審査会は一体全体どんなものかという勉強会という意味で私も最初参加をさせてもらいました。

稲田委員 そういう中立的な勉強会ではなくて、これは、事務局長は辻先生なんですね。そして、その事務局長は、国民感情で司法制度が大きく揺さぶられている、国民の感情で不起訴になった人物を被告席に簡単に着けていいのかと言って、この審査会制度見直しを訴えたんです。これが小沢さんの起訴相当の議決の次の日の初会合で、大臣はその会長でいらっしゃったわけです。

 大臣は、着任直後に、この強制起訴制度を見直すべきだという発言をされたというんですけれども、その点についてはいかがですか。

滝国務大臣 検察審査会の問題は、裁判員制度と一対のものとして出発をいたしました。こっちの方の条文には見直し規定はないんですけれども、とにかく、裁判員制度と一体の形で、法案は別ですけれども、一緒に国会へ出た法案でございます。

 そういう意味で、裁判員制度の方が見直しというようなことが条文にあるわけですけれども、この強制起訴というか、検察審査会の方も、それと歩調を合わせてやはり見直していくということはあっていいだろうという意味で、そういうふうに申し上げております。

稲田委員 検察審査会の議決に基づく強制起訴制度について、導入時に必ずしも議論が尽くされていなかったというのは何を指して、そして、導入時の議論について、審査員を選ぶ手続など一つ一つの手続が透明性を持つか、国民の常識をどう反映させるかという細かい議論はしていないという指摘をされております。ということは、この強制起訴の見直しに大臣として着手をされるということを宣言されたということになるのではありませんか。

滝国務大臣 当時の司法制度改革審議会の議事録を読みますと、この強制起訴については、ほとんど議論らしい細かい詰めの議論はしていないんですよね。要するに、付審判の制度が既にあったものですから、まあ、あれだなというぐらいの、恐らくそれでみんなが納得したような、そういう雰囲気の議事録が残っているわけです。それから、もう一つ別にこの検察審査会の議論をした調査会があるようですけれども、そこでも具体的な、余り手続の細かい議論はしていないというふうに私は理解をいたしております。

 したがって、そういう意味で、付審判制度が既にあったものですから、それと同じだという理解でずっと進められてきた。したがって、今考えてみると、全く付審判とはちょっと違う性格のものだろうから、そういう意味では、裁判員制度を見直すときにこれも一緒にその俎上にのせていくということは、それはそれなりの意義があるだろう、そういうような意味で申し上げているわけでございます。

稲田委員 ただ、大臣、先ほどの勉強会、司法のあり方を検証・提言する議員連盟の会長で、小沢さんの起訴相当議決の翌日にこの見直しを提言するその会の会長であって、そして、大臣に就任されてすぐにこの強制起訴制度の見直しをおっしゃるということは、非常に公平性を欠くのではないか、そういう疑念を抱かざるを得ないというふうに私は思います。

 この強制起訴手続に関連をして、もう一件、強制起訴された、尖閣沖の衝突、中国人船長問題があります。これは、一昨年の九月七日、尖閣沖で、中国漁船が我が国の海上保安庁の巡視船に体当たりをして、そして八日に公務執行妨害罪の疑いで中国人船長を逮捕、勾留したにもかかわらず、二十五日に中国人船長を処分保留のまま釈放をいたしました。これ自体大変な問題なんですけれども、翌年の一月に、この中国人船長はまず不起訴処分、起訴猶予になったわけであります。なぜ起訴猶予になったんですか。

滝国務大臣 起訴猶予にした理由は、当時の沖縄の地検がそういう決定をしたというふうに理解をしているわけでございますけれども、その詳しい内容については私もまだ勉強をいたしておりません。

稲田委員 これも本当に、このときにまず、処分保留のまま釈放するときに、検察が会議を開いて、そこに指揮権も発動されたんじゃないかという疑いを強く持っております。

 そして、なぜ起訴猶予にしたかわからないという今の大臣の御答弁ですけれども、私も、なぜ起訴猶予にしたかわからないんです。起訴猶予にするような事案じゃありませんから。

 そして、検察審査会が起訴相当議決をして、指定弁護士が平成二十四年三月十五日に起訴をいたしました。これはどうなったんですか。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のありました案件につきまして、法務省におきましては、本年三月十九日に那覇地方裁判所からの依頼を受けまして、三月二十八日、中国に対しまして起訴状謄本の送達を要請いたしました。起訴状謄本の送達は那覇地方裁判所の事務でございますが、法務省は、その依頼を受けて、日中刑事共助条約に基づき、中央当局として、中国側に対して起訴状謄本の送達の共助を要請したところでございます。

 そうしましたところ、法務省といたしましては、本年五月十五日、中国から共助を拒否するとの通報を受け、那覇地方裁判所にその旨を伝達いたしました。

稲田委員 大臣、何で中国からこの送達を、条約があるにもかかわらず、拒否されたんですか。

滝国務大臣 拒否した理由は、向こうからの回答にはございませんものですから、どういう理由で拒否をされたかというのは、日本側としては不明でございます。(稲田委員「ちょっと、そんないいかげんな御答弁はやめてくださいよ。わからないならわからないで。理由があるんです、理由が」と呼ぶ)

小林委員長 刑事局長、補足答弁を。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣が申し上げたこととあれなんですけれども、既に中国政府は尖閣諸島に関する独自の見解に基づいて日本側の手続を受けることはできないとして拒否したものでございました。これは、尖閣諸島が日本国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いのないところでございまして、尖閣諸島に関する中国側のこの独自の見解については受け入れることは決してできないものだと考えております。(発言する者あり)

小林委員長 では、ちょっと、もう一度大臣。改めて大臣。(稲田委員「大臣、ちゃんと答弁してくださいよ。どうして中国側は拒否してきたんですか。知らないと今言ったじゃないですか」と呼ぶ)

滝国務大臣 いやいや、具体的な理由が示されていないわけです。今局長が読み上げましたように、中国独自の見解に基づいて受け取りを拒否した、こういうことだけでございまして、質問はどういう理由でというふうな御質問だったものですから、その理由がそれだけのことで、何も具体的に、例えば条約のどこの部分に該当するとか、そういうようなことはないものですから、具体的には不明です、こういうふうに申し上げたわけです。

稲田委員 大臣、余りいいかげんな御答弁をなさらない方がいいですよ。知らないなら知らないとおっしゃれば済むわけですよ。

 具体的な理由を言ってないって、具体的な理由を言っているんですよ、中国独自の見解でと。今、刑事局長はそれをえんきょくに言っただけで、理由を言っているんですよ。刑事局長、どういう理由ですか。

稲田政府参考人 先ほど申し上げましたように、中国が尖閣諸島に関する独自の見解に基づいて共助を拒否したということでございます。

稲田委員 だから、独自の見解は何ですか。具体的に言っているでしょう、中国は。独自の見解は何ですか。

稲田政府参考人 中国は尖閣諸島について自国の領土と主張しておるところでございますが、尖閣諸島は、先ほども申し上げましたように、我が国固有の領土でありまして、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は存在しないと承知しております。

稲田委員 だから、条約があるにもかかわらず、中国政府はどういう理由で断ってきたんですか。具体的になぜ述べないんですか。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 中国政府が今回の共助要請を拒否したことは、先ほど申し上げた理由のとおりでございまして、それ以上のものでもそれ以下のものでもないと承知しております。

稲田委員 言いにくいんだったら言いますけれども、中国は、尖閣は中国の領土だから日本の司法権には属さないと言ったんですよ。そう言ったんですよ。そうでしょう、刑事局長。

稲田政府参考人 先ほど申し上げましたが、中国は尖閣諸島について自国の領土と主張しておりますが、尖閣諸島は我が国固有の領土でありまして、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は存在しないと承知しております。

稲田委員 はっきり答えてください。

 自分の領土だから日本の司法権には服さないといって拒否してきたんですね。尖閣は日本固有の領土です。日本固有の領土を中国は、自分の領土だから日本の司法権には属さないといって、そして条約があるにもかかわらず送達を拒否したんです。

 法務大臣として、抗議なさるべきじゃありませんか。

滝国務大臣 これは法務大臣というよりも外務省を通じてやりとりする話でございますから、私の方としては、それ以上のことを法務省として抗議するとかいうようなことは今まで考えてはおりませんでした。

稲田委員 そんなことだからだめなんですよ、民主党政権は。法務省の手続として送達をして、それを拒否されて、そしてその理由が中国の領土なんだと言われているわけですから、日本固有の領土だから条約を適用して送達すべきであるという抗議をなさるべきなんです。いかがですか。

滝国務大臣 当然、中国側には日本の趣旨を伝えて送達をしているわけでございますから、私どもとしては、それ以上の手段ということは特にとることは考えていないわけです。

稲田委員 全てがそうなんですよ。中国大使を更迭しないのもそう、民主党政権になってから不法占拠と言えないのもそう。自国の立場を明確に主張することが国益なんです。それができないから、趣旨を伝えているからとかそういう曖昧なことを言ってお茶を濁して摩擦を起こさないようにする、それが日本の国益を著しく損なっております。

 私が疑問なのは、三月二十八日に要請書を発送して、共助拒否をされたのが五月十五日なんです。一カ月半、一体何をやっていたんですか。

稲田政府参考人 私どもといたしましては、中国に対しましていろいろなチャンネルを通じまして要請を実施するようにお願いをしていたところでございますが、それ以上の中身につきましては、具体的な事件の取り扱い等にかかわることでございますので、お答えを差し控えさせていただきます。

稲田委員 それはおかしいでしょう。言うたら、国家の領有問題、そして国家の名誉がかかっているんですよ。中国は、自分の領土だから司法権に服さないなどと言われて、そして拒否をされている。それに対して明確な抗議もしなければ、送達、いろいろなチャンネルでやってきたというけれども、何をやってきたんですか。

稲田政府参考人 まず、先ほどお答え申し上げましたのは、三月に要請をしてから五月に答えが来るまでの間のことでございましたので、その間にはさまざまな方法でお願いをしてきたところであるけれども、そこについては、交渉事の中身にもかかわりますので、お答えは差し控えさせていただきたいと申し上げたところでございます。

 それから、先ほど、拒否をされた後何もしないのではないかということで、確かに大臣から何かをしていただいたことはございませんので、先ほど大臣が申し上げたところでございますが、拒否されたことについては、その際にこうした我が国の尖閣諸島に対する立場を中国側に明確に伝えたところでございます。

稲田委員 具体的な言葉で言ってください。誰が何と言ったんですか。拒否されて、誰が誰に対して何と言ったんですか。

稲田政府参考人 具体的な言葉は、尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いないところであり、尖閣諸島に関する中国側の独自の見解については受け入れることは決してできないという旨を伝えたということでございます。

 具体的に行いましたのは担当者のレベルの話でございますので、それ以上のことにつきましてはお答えを御容赦願いたいと思います。

稲田委員 誰かわからない担当者が、我が国固有の領土である旨なんてね、そんなんじゃだめなんですよ。やはり責任のある大臣が、我が国固有の領土であるから、そこで起きた事件については我が国の司法権に属するんだ、だから、送達拒否するのはおかしいということをきちんと抗議しないと、立場を明らかにできないじゃないですか。大臣、違いますか。

滝国務大臣 基本的には、これから政府としてもどうするかという検討を継続しているわけでございますから、どうするかというのは、これからの最終判断まで、まだ政府としてもそれなりの対応をしていく必要があるだろうと思います。

 ただ、やはり司法共助条約の限界というものはそれなりにあるんですよね。相手国がそれを送達するかどうかというのは、ある意味では相手国に任されているところがございます。相手国が自分のところのいろいろな法律を持ち出して、それは協力できないとかできるとかというような余地は司法共助条約にあるものですから、そこのところは、その司法共助条約の一つの限界みたいなものはあるということはあると思うんですね。

 ただ、それでも、我が方はそれなりに中国側にいろいろなことはこれからも申し伝えていかなければいけない、こういう問題だろうと思います。

稲田委員 不明確な答弁ですね。どうするかを今政府で検討しているって、何を検討しているのか。そして、政府としてもこれから言っていかなきゃいけないというのであれば、我が国固有の領土であるので、我が国の司法権に服するべきで、拒否するのはおかしいというその抗議をされるのか。この二点についてお伺いいたします。

滝国務大臣 ですから、これは法務省の問題というよりも、事はもう外交上の問題になっていますから、外務省とよく協議をしながら、今後どうするかということを政府として煮詰めていくということでございます。

稲田委員 法務大臣なんだから、それぐらいのことはおっしゃらないと。

 そして、では、自分では言わないで外務大臣に抗議してもらうという、そういう趣旨ですか、今のは。

滝国務大臣 外務省を通じて、外交ルートを通じてこの種の問題は解決を図っていくという問題でございます。司法共助条約そのものの問題としては、おのずから限界がある。しかし、やはり条約に従ってやってくれということは、外交ルートを通じて繰り返し申し伝えていかなければいけない、そう思っております。

稲田委員 そんな小さい問題じゃないんです。我が国固有の領土であり、我が国の司法権に服するこの中国人船長の起訴状の送達を拒否した。その理由が、中国の領土であるからという理由は、絶対に日本国として受け入れることはできませんと抗議をしなきゃだめなんですよ。条約に限界があるとか云々の話じゃないんです。

 では、これは、もう指定弁護士の指定を取り消しましたけれども、再度強制起訴できるんですか。

稲田政府参考人 那覇地裁の御判断だろうと思いますけれども、現段階では指定弁護士が取り消されておりますので、指定弁護士がいないという状態になっておりますので、今の状態のままで起訴はできないと思います。今後どうするのかは、強制起訴の検察審査会の議決自体は残っておりますので、それをどういうふうにするかということは、今後裁判所の方で御判断になられることかと思います。

稲田委員 今の刑事局長の答弁を聞かれて、大臣として、この問題をどうすべきだと考えておられますか。

滝国務大臣 刑事局長が御答弁申し上げましたように、基本的には裁判所の判断がどうなるかということだろうと思います。最初の議決が、どういうふうに裁判所として扱うかというのは、裁判所が御判断をされる、こういうふうに思っております。

稲田委員 私たちは、この問題はずっと事件が起きたときから当委員会で取り上げておりまして、当国会ではありませんが、この尖閣衝突に係るビデオの公開を委員会で要求をいたしております。

 これを改めて要求をいたしたいと思います。

小林委員長 後ほど理事会で取り上げます。

稲田委員 それでは、大臣、戦後補償裁判についてお伺いをいたしますが、戦後補償裁判の訴訟方針は一体誰が決めるんですか。

滝国務大臣 この問題については、我が国では既に戦後補償についての請求権を受ける理由がない、こういうようなことを申しているわけでございます。したがって、この要求について誰が決めるかというようなお尋ねでございますけれども、我が国としてどうこうという問題は生じないと思っているわけです。

 というのは、既に御案内のとおり、戦後賠償の請求権は、本来、もう韓国の大法院で出ているところでございますけれども、日本としては、要するに一般論として請求権は消滅している、こういう判断に立っているわけでございますので、それ以上のことは我が国としては特にコメントすることはないというふうに考えております。

稲田委員 大臣、大丈夫ですか。これは質問通告をきのういたしております、かなり詳細に。

 そして、この戦後補償裁判、戦争中の個人の被害の裁判、国が訴えられている、被告になっている国の代理人は、法務省の中の訟務検事が担当いたしております。この訴訟方針は誰が決めるんですかという質問です。

滝国務大臣 いずれにいたしましても、それは法務大臣の権限でございますから、この問題については訟務検事単独の話じゃありませんので、法務省としてこの問題はフォローしていくということでございます。

稲田委員 これは本当に日本の国の名誉がかかった裁判ですから、この訴訟方針は法務大臣が決めるんですよ。その自覚をまず持っていただきたいんです。

 そして、たくさんの戦後補償裁判が係属をしているわけですけれども、全く事実関係の認否をせず、当事者尋問、証人尋問においても反対尋問をやらないんです。なぜ事実関係を国は争わないんですか。

滝国務大臣 個々の理由というよりも、包括的にこの問題は戦後補償として終わっているというのが日本政府の立場でございますから、個々のいろいろな事例がどうのこうのという反論はしていないわけです。

 一般論として、概括的にこれは日本として補償の請求を受ける筋合いのものではない、こういうことで終始してきたのがこの裁判の実態でございます。

稲田委員 そうやって認否もしない、事実関係も争わないと、原告が主張した事実を真実だというふうに認められてしまうわけですよ。そういうことをずっとやって、事実関係として強制連行があったとか、いわゆる従軍慰安婦の問題とか、事実関係は全部原告が主張したとおりの事実認定をされて、最後に法律論で勝っているんです、しかし、判決の理由中に書かれている事実関係は本当に日本の国の名誉を毀損するようなことが書かれているわけです。

 私は事実関係をきちんと争うのが日本の国益に合致すると思いますけれども、その訴訟方針を決められる大臣の見解をお伺いいたします。

滝国務大臣 少なくても、日本側としては、そういう個々の、あれがあった、これがあったと事実認定よりも、概括的にこの補償は終わっているということで押してきて、それなりの成果を上げてきたわけですね、今まで。

 したがって、それを今の段階でどうするかというのは、それは改めて検討はせよということだろうと思いますけれども、少なくても、個々のケースに入るよりは、概括的にもう戦後補償は終わっているんだ、こういうことで今までやって、それなりの成果を上げてきているわけですから、それを、また個別の問題を一つ一つ反論して裁判のおつき合いをするというような方針というのは、日本政府としてはとってこなかったということでございます。

 それなりの成果を上げてきたということもこれありですけれども、今、改めてこの問題が蒸し返されてまいりますと、その辺のところはどうするかということは、これからの問題として、あるいはもう一遍検討するということもあるかもしれませんけれども、少なくても、日本政府の方針は、個別の事案にはもう全然入らないということで一貫をしてきたということだけは申し上げておきたいと思います。

稲田委員 日本の国が勝訴してきたというか、原告が敗訴してきたという意味では今大臣がおっしゃったとおりなんですけれども、その争わないことによって、原告ら、強制連行されたという韓国の人たちやら中国の人たちやら、いわゆる従軍慰安婦の人たちが訴えた事実関係自体が全て判決の理由の中に書き込まれて認定をされていることが国益を損なうから、日本の名誉を著しく毀損するので、事実関係を争うべきだということを私はずっと主張してきたんです。しかし、今大臣がおっしゃったように、勝っているんだからいいんだ、法律で勝つんだからいいんだということを言われてきたわけです。

 しかし、ここに至って、非常に危惧されるべきことが起きました。それは、五月二十四日に韓国の最高裁が、戦時中に徴用された韓国人の元労働者らが三菱重工と新日鉄に対し未払い賃金と損害賠償を求めた訴訟で、個人の請求権は消滅していないという初めての判断を出したんです。この判決について、大臣、受けとめ方はどうですか。

滝国務大臣 今御指摘のように、韓国の大法院がそういう個別の中身に入った判決をしたというような報道は私どもも受けております。ただ……(稲田委員「報道」と呼ぶ)報道でそういうことは私は知っております。しかし、具体的に、大法院がやったことについて、今の段階で法務省としてコメントするようなことではないというふうに思っております。

 これからの問題というのはいろいろまた山あり海ありで出てくるかもしれませんけれども、少なくても、この問題については、個人の請求権については決着済みというのが日本政府の一貫した考え方でございますから、そういう意味で、今後も概括的な議論として終始していくというのがやはりこれからの一貫した、これまでのことを考えれば、それが、ベストとは言いませんけれども、ベターだろうと思います。

 ただ、今にわかにこういう個別の問題が出てきたことについては、改めて判決文を取り寄せて、あるいは検討するには値するのかもしれませんけれども、まだそういう段階ではないと思っています。

稲田委員 大臣、余りにも危機感がなさ過ぎますよ。しかも、報道によりますとって。この問題は非常に重大な問題で、これで、韓国にある、訴えられているのは日本の企業ですよ、日本の企業が訴えられて、韓国の最高裁が個人の請求権を認めると言ったんです。そうしたら、次々と韓国で裁判を起こして勝訴判決を得て、そして日本の企業の財産を強制執行していく、そういう重大な問題になっているんですよ。その点について、なぜそんな人ごとみたいな答弁ができるんですか。この韓国の判決に対して、大臣、どう思われるんですか。もう一度答弁してください。

滝国務大臣 それは、韓国側と従来そういういわば取り決めをしてきたことに反する判決でございますから、当然、日本政府としては、それに対する反論の行動を起こすということになると思います。

 ただ、問題は、今までのことを申し上げましたけれども、少なくても、個人の補償については決着済みというのが韓国側との取り決めでございますから、それをベースにして韓国側に外交上どう働きかけていくかということが今の課題だと私は理解をしております。

稲田委員 平和条約や日韓基本条約等で、戦争中の被害は、国と国との間ではもう決着済みなんですね。そして、その決着済みのものを韓国の最高裁はひっくり返して、日本の判決に対して非常に批判的なことを言っております。日本の判決では、原告の請求を認めなかった日本の司法裁判所は、日本による植民地支配が合法的だったという認識に立っている、韓国は受け入れることができないと言って、韓国の裁判所は、日本の判決、最高裁判決を批判しているんです。これに対して法務大臣としてどういう見解ですか。

滝国務大臣 繰り返しになりますけれども、法務省としては、とにかく、決着済みの問題を蒸し返されるというのは、それはいかがなものだろうか、こういうことだと思います。それはやはり、これはもう既に決着済みという外交上の決着事項でございますから、法務省が決めたわけじゃなくて、外交的にも決めたわけでございますから、その辺のところは日本側として主張していかなければいけないと思っています。

稲田委員 こういう問題は、法務大臣、やはり毅然として日本の立場を主張しないといけないし、日本の今の最高裁の立場は、日本だけの立場じゃなくて、アメリカでもそういう判決が出ていますし、国際法上の常識なんです。

 大臣、では、平和条約で解決しているもの、なぜ個人の請求を認めないんですか。

滝国務大臣 基本的な考え方は、今まで述べたとおりでございます。要するに、韓国の大法院が出した判決を、日本側が直ちにそれについて行動をとるというようなものではなく、それはやはり日本側として、これまでの請求権について決着済みという主張を外交ルートを通じて韓国側に働きかけていく、これしかないと思うんです、今の段階では。

稲田委員 私の質問は、平和条約や二国間の条約で戦争の被害について決着済みのものをもう一回個人が請求することは、私はよくないと思っています。なぜよくないんですかと、大臣に、大臣の見解を聞いているんですよ。

滝国務大臣 ですから、重ねて申し上げますと、既に決着済みのものですから、個人が請求権を行使して大法院に働きかけてきた、そういうようなことは日本側としては到底のめない話、こういうふうに思っているわけです。

稲田委員 だから、どうしてのめないんですか。

滝国務大臣 もう既に外交ルートでもって、外交上は決着済みの話ですから。だから、そういう意味で、個人の請求権を復活させるような今回の判決ですから、日本側としては、当然それは承服できないということだと。

稲田委員 これは大変、日本の名誉もかかっているし、主権もかかっているし、平和条約で、二国間で、戦争について決着を国と国とで合意した、その後になってから個人の損害賠償を認めていくこと自体が、国際法上の正義に反する不正義なんですよ。これは堂々とおっしゃるべきだし、そういうことをきちんと言って韓国に抗議すべきなんです。それをおっしゃいますか。

滝国務大臣 当然、政府内で対処する話だと思っております。

稲田委員 私は、日本の法務大臣であれば、そういう認識を持ってというか、そういう見識を持っていただかないと、世界じゅうで活動している日本の企業も守れませんよということを申し上げたいんです。

 それと、この韓国の裁判所に訴えた原告たちは、日本で日本の裁判所に訴えた人と同一人物が、日本で負けて韓国へ訴えているんです。また、今回、この韓国の最高裁の判決が出たので、日本で負けたほかの戦後補償の裁判の原告たちも、韓国で裁判の準備をして、どんどんと準備をして裁判を起こしていくんです。

 そうなりますと、日本の裁判の中で事実関係を争わず、もう強制連行とか、そして、例えばいわゆる従軍慰安婦を連行してきたとか、そういうさまざまな、証拠がなく、こちらも争っていないようなことが次々と判決でも事実認定されていて、それを基礎に韓国で裁判を起こされたら、事実は間違いないと。しかし、韓国の裁判所の考えは個人請求権を認めるというんですから、次々と日本の企業、ないし、もうすぐしたら日本の国も訴えられますよ、これらが敗訴していくことになるんですけれども、それは非常に国益を毀損することになります。

 ですから、私はこの戦後補償裁判、事実関係からきちんと争うべきだと思いますけれども、いかがですか。

滝国務大臣 日本側の主張については、先ほどから申し上げているとおりです。

 具体的な今の御提案については、そういうようなことについては当然、日本側もそれなりの準備はしていかなければいけないと思いますけれども、少なくても、これは外交上の問題として決着済みだということを日本側としても主張していかなければいけないと思います。

稲田委員 私の質問は、今の事態を受けて、やはり戦後補償裁判、事実関係から争うべきだというふうに訴訟方針を転換すべきではありませんかという質問です。紙を見る必要はありませんよ。法務大臣の見識に基づいて答弁してください。

滝国務大臣 せっかく日本側としては、決着済みということで概括的な判断を外交上も決めているわけでございますから、その主張を外交上に当然、日本側としても強く主張しながら、後、裁判の具体的な事例の中でどう争うかは、今御提案のことも頭に入れてやっていくというのも一つの戦術としては考えられないわけではないと思いますけれども、少なくても、外交上の決着ということを強く押し出してこの問題については日本政府としては対応していかなければいけないと思います。

稲田委員 大臣はこの本質をわかっておられないと思います。事は日本の名誉、そして日本の企業、日本の国の国益を非常に侵害する問題であって、事実関係を争わなければ、韓国の最高裁はどんどんと日本側の企業、日本の国が敗訴する判決をこれから出すんです。そして、その基礎になるのが、日本の裁判所で国が、被告が事実関係を争わなかったことにより、それがあったこととして、それを基礎に訴えられていく。

 この問題は非常に重大な問題であるということを指摘して、私の質問を終わります。

小林委員長 次に、横粂勝仁君。

横粂委員 東京地域政党、改革の志士代表、ただ、国政においては無所属にて活動しております横粂勝仁でございます。

 本日は、無所属であるにもかかわらず質問のお時間を賜りまして、各党の皆様に感謝申し上げ、また、豊富な御経験とバランス感覚をお持ちの滝大臣に質疑させていただけることを光栄に存じつつ、質問を始めさせていただきます。ただ、与えられた時間が十五分間という限られた時間でございますので、スピード感を持って進めさせていただきます。

 まず最初に、これまでの委員会の議論を蒸し返すようで恐縮ではございますが、冒頭に、司法修習生に対する貸与制についてお聞きしたいと思います。

 司法修習生に対する給与を貸与制とすることが決まってしまいました。目先の予算削減にとらわれて、お金持ちの家庭の子供しか法曹を目指せない社会にする、まさに日本の司法の根幹を揺るがす非常に大きな過ちであると思っております。貸与された修習資金の返還開始までは五年間の据置期間があるところを、新たな法曹養成制度の検討の中で、貸与制の見直しを含めて一年以内に結論を出すことになっております。

 では、この五年間の据置期間の間に、もし、私はもしではなくて必ずではあるんですが、もし給費制に戻すことが決まった場合には、このたび貸与制で修習を受けている六十五期生にも遡及され、返還が免除されることを当然に想定していると理解してよろしいのでしょうか。

 なお、貸与額には、基本額の月額二十三万円、減額した十八万円、扶養加算をした二十五万五千円、住居加算をした二十五万五千円、そして両方の加算をした二十八万円の五パターンあり、また、貸与を申請していない方が二割いる中、どのようにバランスのとれた対策を打つ予定でありますでしょうか、教えてください。

滝国務大臣 今の議論の中に二つあると思うんですね。要するに、今の貸与制をもう一遍給費制に戻すかどうかというこれからの議論の問題が第一点です。二点目は、その上で、既に貸与制に切りかえた六十五期生についてどうするか。

 それは、そのときの一連の議論の中であわせて決着をする問題だろうと思います。そのまま貸与制が継続されれば、当然六十五期生も貸与制が継続されますし、六十五期生も含めて給費制にするというなら、給費制が六十五期生にも遡及され適用されるということに恐らく推測できるわけですね。別に遡及しなきゃならぬということはありませんけれども、一連の問題という理解をすれば当然遡及されるだろう。そういう二点に分けて議論をしていく問題ではないかと思います。

横粂委員 御答弁ありがとうございます。

 第六十五期生が制度のはざまの被害者となってしまわぬように、そして、大臣の両肩には、現在及び未来の法曹を目指す意志ある若者の未来、そして日本の司法という大きなものが乗っかっていることを御理解賜り、英断を期待しております。

 では次に、法務大臣の指揮権の発動についてお聞きいたします。

 検察庁も行政機関の一つであり、また、民主主義的な支持基盤を持たない検察が独善的な行動をとらないように抑制する手段として、法務大臣による指揮権発動には重要な意味がある一方で、政治からの不当な干渉による司法のゆがめられがないように、十分な配慮が必要でございます。

 ところで、今まで指揮権の発動がされたと公に認識されているものは一九五四年の造船疑獄事件の一例のみであり、その他は、二〇〇九年政権交代直前の陸山会事件や二〇一〇年の尖閣諸島中国漁船衝突事件など、発動が疑われるものの、実際はどうだったのかはっきりしないものばかりであり、このような不透明性さに国民の皆様が大きな不信を抱いているものと考えております。

 そもそも、国民に説明できないような指揮権であれば発動してはいけませんし、堂々と説明できるものであれば堂々と公表されてしかるべきものだと思っておりますが、指揮権発動について、即時、または最低でも十年間の期間を置いた上での公表を義務づけるべきだと考えておりますが、その点、いかがでしょうか。

滝国務大臣 制度論として、指揮権という重大な権利の行使をする場合にはその透明性を図る、こういうような御提案でございますから、それは一つの考え方だろうと思います。ただ、今の段階でそんな議論をすると、いかにもすぐにでも指揮権が発動されるような、そんな誤解を招くようなことはやはり慎まなきゃいけないと思っております。

 私は、指揮権については抑制的に条文がある、しかし、条文があることが意味がある、そういうような対応というか姿勢を持ち続けたいと思っております。要するに、個々具体的な問題は、あくまでもやはり検察当局の判断で厳正中立に行う、これが検察の使命でございますから、その検察の使命の遂行をバックアップするというのが法務省としての基本的な考え方であるし、したがって抑制的な物の考え方をしなければいかぬ、しかし、いざというときにはやはりあるんだよというのがこの条文の意味だろうと思います。

 日常茶飯事の具体的な事件については法務大臣としてはいろいろな意見は言わない、それによって少しでも公正を疑われるような行動は慎まなきゃいかぬ、こういうふうに自戒をした条文だと私は考えております。

横粂委員 ありがとうございます。

 指揮権というものがあるにはある、でも抑制的にという言葉が使われて実際使えない、しかも、政治家が使うことすらおびえてしまう。国民に堂々と説明ができるなら堂々と使ってしまわれていいと思うんですけれども、それができないのであれば指揮権自体なくしてしまえばいいと思うのが国民の普通の感覚、または公表を義務づけることで堂々と使ってもらえばいいと思っておりますので、それに関して議論を進めていただきたくお願いをいたします。

 では次に、死刑の執行についてお聞きいたします。

 法律上、特別な理由のない限り、死刑判決が確定してから六カ月以内に死刑の執行命令が出されなければなりませんが、それに反する違法状態が続いている例が山積しています。日本の司法をつかさどる法務大臣が違法状態を放置し続けていることは好ましくないと思っております。

 この違法状態を解消するためには、六カ月を過ぎて違法状態にある死刑囚全員の執行を滝大臣の責任のもとで行われるか、それができないのであれば刑事訴訟法四百七十五条第二項を改正する、どちらかしかないと思っているんですが、そちらはいかがでしょうか。

 そして、この違法状態をいつまでに解決するつもりなのか、今国会中とかことし中とか、具体的に目標をお示しいただければと思います。

滝国務大臣 足元から鳥がにわかに飛び立つような、そんな行動を法務大臣にしろ、こういう御意見のようでございますけれども、基本的に、やはり日本の死刑制度の一つの典型は、死刑判決が確定するのにかなり時間を要して慎重にやっている。その間には、再審という制度もありますし、恩赦という制度も制度的には保障されている。

 したがって、有名なイギリスのように、今は死刑廃止になっていますけれども、死刑廃止前のイギリスは死刑が確定すると大体二週間後には執行する。それが、エバンス事件といって、死刑執行した後で真犯人が出てきたものですから、これは大変というのでイギリスの場合には死刑制度が廃止されたという経緯もあったようなぐらいに、かなり、死刑が確定するとすぐに死刑執行だ、こういう制度の国と、日本は慎重に慎重を重ねて、やはり本人の言い分をできるだけ聞く機会をつくっていくということが基本でございます。そういうような慎重な国の日本の死刑制度の運用については、それなりの配慮をしていかなければいけない、そういうふうに法務大臣としては心得ております。

 したがって、一つ一つの事件について慎重に判断をしながら、法律の条文に基づいて、やはり日本の司法当局が決めたことは法務大臣といえども簡単に頭から否定はしない、こういう姿勢を持ちたいと思っております。

横粂委員 大臣のその思いというもの、事情というものも御理解をしております。ただ、その上で、三審制の日本におきながら第四審とやゆされてしまう法務省内の手続、それがいかがなものかとも思っております。

 また、全部を執行することができないのであれば、簡単に改正ができるのが法律であって、立法府の一員として、そしてそれをつかさどる大臣として、四百七十五条二項を、期限を延ばす、またはそのただし書きの例外的な事象の中で、大臣が延ばすことができる、ただしその理由を国民に説明しなければならない、そういった改正をすることは簡単なはずですので、この改正、簡単なことを逃げずに、やはり今国会中、またはことし中、違法状態という異常事態を早期に解消していただきたいと思っております。

 では次に、法教育の推進についてお聞きいたします。

 大臣所信の中で、法教育は、自由で公正な社会の担い手を育成する上で不可欠なものであり、推進していく旨を表明されております。賛同いたします。法的な権利やそれに伴う責任等を将来の法を担う主権者である子供たちへ教育することが、犯罪の低年齢化を防ぐこと、また、犯罪やトラブルの数をそもそも減らすことの対策の重要な一つであると考えております。ただ、法務省においても法教育授業等が行われてはいますが、法教育の活動の中心は日弁連やNPOなどが行っており、国としての取り組みはおくれているように思います。

 法教育は、目に見えるすぐの効果というものが出にくいため、どうしても後回しにされてしまいかねません。ただ、医療における予防医学と同じで、やはり病気の前に予防医療、事件、トラブルの前に法教育ということで、結局は、トータルとしての医療予算、法務予算というものを減らすことができる重要なものだと思っております。

 そういった意味で、今後、各弁護士会における学校での法教育授業やシンポジウムなどを助成する予算措置をする等、何か具体的な予算の拡充についてお考えはありますでしょうか。

滝国務大臣 法教育というものが盛んに言われてきましたのは、司法制度改革の一環として特に意識されてきたように思うんですね。やはり、もともと司法制度改革の原点は、プロの法曹と国民の意識の間に差がある、そういうような差を埋めるための努力を制度の面からやっていこうというのが司法制度改革、したがって、その中で法教育というものが生まれてきた。

 しかし、もともと法教育はそんな司法制度改革とは別に必要なこと。要するに、人間が社会の中で自立していくためには、法秩序というものを前提にして、そして法律の保護が得られるような行動をしていくというのが当然でございますから、その意味で、法教育についてこの十年ばかりの間に相当力を入れてきたことは事実でございます。

 そして、文部科学省も法教育というものを学習指導要領の中に入れてきた、こういうことを考えれば、常に法教育という意識を持って、国民の皆さん方の間に法というものの存在感を実感できるような、そういう社会をつくっていくということだと思います。

 今の御提案のように、予算的にどう配慮していくかというのは、それは文部科学省も相当予算面で配慮をしてきているはずでございますけれども、法務省は法務省なりに考えてやっていきたいと思います。法務省も、この法教育という立場から、いろいろなパンフレットをつくったりなんか一時はしておりました。そういうことが、その結果どういうような効果を持ったのかということも検証しながらやっていきたいと思います。

 それから、先ほどの問題に移りますけれども、法務大臣の死刑執行は、違法状態というよりも、あれは法務大臣に課せられた訓示規定というふうに受け取って今まで来ました。だからといって、のんびり構えていていいという問題ではないと思います。やはり厳しい法律の中での死刑制度でございますから、それはそれなりに受けとめていかなければいけないというのは御指摘のとおりだと思います。

横粂委員 ありがとうございます。

 現場でのお声としては、やはり、法務省も頑張ってくれてはいるけれども、結局は裁判員制度予備軍の教育ぐらいしか考えていなくて、もっと子供たち、今後の法を担う子供たちに根幹の問題として本気で考えて予算も拡充していただきたいという声がありますので、御紹介させていただきます。

 最後に、遺産分割事件の職分管轄について、家庭裁判所が取り扱う事案が余りにも多くて、その中の遺産分割事件が迅速な処理ができていないという現場のお声をいただいております。遺産分割事件は、家庭裁判所で取り扱うほかの事案と比較したら、家庭の問題というよりは金銭的側面が強い事案であると言えます。

 そこで、遺産分割事件については家裁ではなく地方裁判所で取り扱うようにしよう、そういった変更など、何か改善の方法はありませんでしょうか。これを最後の質問とさせていただきます。

滝国務大臣 横粂委員も御自分の体験から、地方裁判所の方が速いかなと、こういうような観点からの御意見だと思います。しかし、最近は家庭裁判所の裁判もかなりスピードを上げておりますので、一時そういうような批判があったかもしれませんけれども、やはり専門は専門ということで、家庭裁判所の方のスピードアップを図るということも必要な一つの課題だというふうに理解をいたしております。

 今の御意見については最高裁判所の方も当然聞いてくれていると思いますから、その辺のところも含めて、なお司法制度の見直しの中で考えていくべき、取り上げていくべき課題だとは思っております。

横粂委員 今後も法務行政のトップとしての御活躍を期待しております。

 ありがとうございました。

小林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十四分散会


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