衆議院

メインへスキップ



第9号 平成24年7月27日(金曜日)

会議録本文へ
七月六日

 小林興起君委員長辞任につき、その補欠として鉢呂吉雄君が議院において、委員長に選任された。

平成二十四年七月二十七日(金曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 鉢呂 吉雄君

   理事 勝又恒一郎君 理事 黒岩 宇洋君

   理事 辻   惠君 理事 樋口 俊一君

   理事 稲田 朋美君 理事 棚橋 泰文君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 大口 善徳君

      井戸まさえ君    大西 孝典君

      金森  正君    川口  浩君

      桑原  功君    小室 寿明君

      橘  秀徳君    玉置 公良君

      中屋 大介君    橋本  勉君

      皆吉 稲生君    山尾志桜里君

      吉川 政重君    河井 克行君

      北村 茂男君    柴山 昌彦君

      森  英介君    柳本 卓治君

      相原 史乃君    樋高  剛君

      中島 政希君    横粂 勝仁君

      園田 博之君

    …………………………………

   法務大臣         滝   実君

   法務副大臣        谷  博之君

   法務大臣政務官      松野 信夫君

   最高裁判所事務総局総務局長            戸倉 三郎君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           石井 淳子君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月四日

 辞任         補欠選任

  熊谷 貞俊君     小山 展弘君

同月五日

 辞任         補欠選任

  階   猛君     鉢呂 吉雄君

同月六日

 辞任         補欠選任

  加藤  学君     橋本  勉君

  小林 興起君     山尾志桜里君

  小山 展弘君     吉川 政重君

  大谷  啓君     熊谷 貞俊君

  大山 昌宏君     相原 史乃君

  京野 公子君     樋高  剛君

同月二十七日

 辞任         補欠選任

  藤田 大助君     金森  正君

同日

 辞任         補欠選任

  金森  正君     藤田 大助君

同日

 熊谷貞俊君が理事に当選した。

同日

 理事階猛君同月五日委員辞任につき、その補欠として勝又恒一郎君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

七月二十六日

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

は本委員会に付託された。

七月六日

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(第一二一六号)は「稲見哲男君紹介」を「近藤昭一君紹介」に、治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(第一四九〇号)は「鉢呂吉雄君紹介」を「工藤仁美君紹介」にそれぞれ訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

鉢呂委員長 これより会議を開きます。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 このたび、法務委員長の重責を担うことになりました、私、鉢呂吉雄でございます。

 本委員会が所管する分野におきましては、国民生活の根幹にかかわる重要な問題が山積しており、本委員会に課せられた使命はまことに重大であると考えます。

 ここに、委員各位の御指導、御協力を賜りまして、公正かつ円満な委員会の運営に努めてまいりたいと存じます。

 何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

鉢呂委員長 この際、お諮りいたします。

 去る六日の議院運営委員会における理事の各会派割当基準の変更及び委員の異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に

      勝又恒一郎君    熊谷 貞俊君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

鉢呂委員長 次に、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。滝法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

滝国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、下級裁判所における事件の適正かつ迅速な処理を図るため、判事の員数を増加するとともに、裁判所の事務を合理化し、効率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の員数を減少しようとするものでありまして、以下、その要点を申し上げます。

 第一点は、裁判官につき、判事の員数を三十人増加しようとするものであります。これは、民事訴訟事件の適正かつ迅速な処理を図るため、判事の員数を三十人増加しようとするものであります。

 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十人減少しようとするものであります。これは、民事訴訟事件及び家庭事件の適正かつ迅速な処理を図るため、裁判所書記官を八十人増員するとともに、他方において、裁判所の事務を合理化し、効率化することに伴い、技能労務職員等を百十人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十人減少しようとするものであります。

 以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。

鉢呂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長原優君、厚生労働省大臣官房審議官石井淳子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局戸倉総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。井戸まさえさん。

井戸委員 おはようございます。民主党の井戸まさえでございます。

 本日は、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の審議でございますけれども、質疑者は私だけということなので、大臣、政府参考人、そして委員の各位にはお集まりいただいて大変恐縮な思いもしながら、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、最高裁判所に伺いたいと思います。

 今回の改正案では、今大臣から提案理由の説明もございましたけれども、判事の定員が三十人増加、裁判官以外の裁判所職員の定員を三十人減少させるということであります。

 法案の資料には反映されておりませんけれども、二〇一一年の司法統計が公表されていると思います。昨年の家事審判事件の新受件数はどうなっているでしょうか。通告しておりませんけれども、成年後見関係事件の件数についてもあわせてお伺いをいたします。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 家庭裁判所におけます平成二十三年度の家事審判事件は約六十三万七千件でございます。これまで一貫した増加傾向をたどりまして、これは過去最高の数値でございます。

 このうち、特に成年後見の関係でございますが、これも平成二十三年の数字でございますが、開始事件が約三万九千八百件でございます。さらに、後見監督処分事件が四万件余り、あと、後見人の報酬、これも実質的には専門職後見人の監督事件でございますが、これが約三万四千件でございます。いずれも過去の最高数値を記録しているところでございます。

井戸委員 今御紹介いただきましたように、過去最高という数字。家事事件の推移を見ると、本当に年々増加傾向にあって、増加が著しい成年後見事件は、ほかの事件と違って長いスパンで、また言いかえると、解決するのは亡くなってからということにもなります。

 今月十九日には、非訟事件手続法の施行を来年一月一日とする政令が公布されました。ますます裁判所の役割が重要なものになると思っています。家裁の調停委員や審判官、調査官などが不足していれば、時間はもっとかかってしまいます。きちんと事件処理ができる体制となることを期待しておりますけれども、最高裁の見解をお伺いいたします。

戸倉最高裁判所長官代理者 ただいま御説明しましたとおり、家事審判事件等は非常にふえております。そういうことで、裁判所といたしましても、それに必要な人的体制は十分備えてまいりたいというふうに考えておるわけでございますが、平成二十四年度の今回の定員法の御審議いただいているものにおきましては、先ほど御説明ありましたとおり、書記官の八十名を増員ということにしております。これは家事事件の処理ということも理由の一つでございます。

 これは今、事件が増加しておりまして、家庭裁判所の事件は、御本人による申し立てというのが非常に多うございまして、申し立てに当たりまして、受け付け段階で、必要な書類が不備があればそこを御説明して補正をしていただく、こういった仕事が地裁などに比べて非常に多うございまして、まずこういった点を強化して、円滑な事務処理をしたいというふうに考えたところでございます。

 ただ、今後、今委員が御指摘になりましたような、家事事件手続法が制定されまして、その趣旨に従った運用をいたしてまいりたい、そういうふうにしていくためには、また今後、事件動向も見ながら、必要な各種職種の人的体制も含めて体制整備を検討してまいりたいというふうに考えております。

井戸委員 ありがとうございます。

 家裁でのそういった調停など、また裁判などに関しましても、やはりそれは、人生の重荷を少しでも早く取り除かなければならない。国民がその場として利用しやすいような形に、ぜひともよろしくお願いしたいと思っています。

 続きまして、滝大臣にお伺いをしたいと思います。

 一昨日の二十五日、男女共同参画会議の女性に対する暴力に関する専門調査会が、女性に対する暴力を根絶するための課題と対策を取りまとめました。性犯罪への厳正な対処として、強姦罪を被害者の告訴がなくても起訴できる非親告罪にすることや、暴力や脅迫がない場合でも強姦罪として立件ができる被害者の年齢を現行の十三歳未満から引き上げることなどが提言されています。これは第三次男女共同参画基本計画の実施に向けた大きな一歩であると大変評価をしております。

 この報告書は、来週開催予定の男女共同参画会議に提出されることになっています。滝大臣は参画会議のメンバーでもありますので、刑法改正に向けた取り組みに大いに期待をしておりますけれども、性犯罪対策への大臣の意気込みをお聞かせください。

滝国務大臣 今御指摘のございました問題については、そもそも、第三次の参画計画の中で法務省に対して宿題が出されておりまして、平成二十七年度中にこの問題についての結論を出す、こういうような宿題が出されております。

 そういう観点から見ますと、今度の報告書、これから取りまとめということになるんだろうと思いますけれども、その中でいろいろな意見が出されているということは、私どもとして、結論を出す際大いに参考になる、こんな受けとめ方をさせていただいております。

井戸委員 ぜひともしっかりとやっていただけたらなというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 今、テレビ番組で「息もできない夏」というものをやっています。皆さん、多分、大臣はお忙しいですし、見る機会というのはなかなかないと思うんですけれども、これは後から再生で見ることもできますし、ちょっと見ていただきたいなと思います。

 この「息もできない夏」の主人公というのは、十八歳の無戸籍の女性が主人公でございます。中を見ていますと、私も当事者として感じたこと、すごく、何というか、後からそうだったなと思うんですけれども、現実にはもっともっと過酷でございます。

 たまたまですけれども、おととい、私の支援をしている、ことし二十になる今十九歳の男子が、戸籍をとるための裁判が最終段階に来ていて、その報告も受けていたところですけれども、二十年間戸籍がない状態で暮らしていく、まさに息もできない、息を潜めながら生きていかなければいけないということを感じますと、何としてでも早くにこれを解決していかなければいけないなというふうに思っています。

 子供の法的身分を早期に安定させるためにつくられました民法七百七十二条の嫡出推定規定が、先ほども申しましたとおりに、一部の方にとっては、かえって不安定な無戸籍の子供を生んでいるという問題、これはもう本当にずっと指摘をされてきたところでもございます。

 我が国は、国際的に見ても珍しい家族単位の戸籍制度のもとで、嫡出推定規定というのを維持しています。推定としながらも、反証を示しても戸籍の窓口では容易に実父の、事実上の父の子とすることができません。否認についても極めて厳格な取り扱いをしています。戸籍の窓口の対応も硬直化していて、出生届を提出すると、実際には推定ではなくて、前夫の子として断定をされて戸籍がつくられていきます。

 推定を合理的な範囲に限定して、否認の方法と証拠を広く認めている諸外国とは対照的に、日本の父子関係の推定規定は極めて硬直的だと思いますけれども、法務省政府参考人の御見解をお伺いしたいと思います。

原政府参考人 お答えいたします。

 民法の第七百七十二条は、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定し、婚姻成立の日から二百日経過後または婚姻の解消の日から三百日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定する、こういうふうな推定規定を設けております。

 この嫡出推定制度は、法律上の父子関係をどのように設定するかという、家族法の根幹をなすものでございます。また、その趣旨は、子の福祉のために親子関係を早期に確定する、それから家庭の平和を尊重する、こういうものでございますので、現行の推定規定は今日においても合理性を有していると考えております。

井戸委員 そこが違うんですよね。合理性を担保している面もありますけれども、そうでない部分というのも出てきて、今から私が質問をいたします生殖補助医療の部分なんかに関しましても、ここも検討していかなければいけない課題だと思っています。

 生殖補助医療の行為規制について、厚生労働省及び法務省の政府参考人に伺っていきたいと思います。

 六月十五日に、私、この法務委員会で同じような質問をいたしました。石井政府参考人は、AID、これは夫婦間ではない第三者の精子提供によって生殖補助医療を受けることでございますけれども、

 AIDにつきましては、これまでに一万人以上の出生児が誕生しているけれども、大きな問題の発生はないということ、それから安全性などに照らして特段問題があるとは言えないということから、これを容認するとしているところでございます。

  こうしたことから、現時点では、法律上の夫婦の間で精子の提供を受けなければ妊娠できない場合に行われるAIDにつきましては、例えば代理懐胎などとは違いまして、その実施を規制する必要性はないというふうに考えているところでございます。

と答弁なさっています。

 大きな問題の発生がないという御認識なんですけれども、AIDで生まれた当事者の方々からは、問題点というのはたくさん提起されています。

 例えば、夫婦の実の子として育てられたけれども、実際に生物学的には第三者、お父さんが誰かわからないという子の方が、ある日突然、父親とは生物学上の親子関係がないと知って大変ショックを受けられて、出自を知る権利の保障を訴えられたということ。また、父親が遺伝性の病気にかかって、自分もその遺伝の可能性があるんじゃないかということを調べていったら、そこで実は父親の子ではないということがわかったケース。

 また、御多分に漏れず、両親の離婚というものも、別に、AIDで子供を授かった御家庭だから離婚がないということもありません。今、昨年の人口動態を見ても、六十六万一千八百九十九件が婚姻数で、離婚件数が二十三万五千七百三十四件と、離婚される割合というのも非常に高くなっていますので、この離婚する中にAIDの方がいても不思議ではありません。

 これほど当事者間の葛藤は大きな問題なんですけれども、これは問題の発生がないというふうに六月十五日の答弁では石井政府参考人はおっしゃっていたんですけれども、再度、ここのところに関してお伺いをしたいと思います。そして、法的親子関係の法整備について石井政府参考人はどのようにお考えか、ここも伺っていきたいと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず六月十五日の私の答弁に関する確認と、それからこの法的整備の必要性についての御指摘かと思います。

 確かに、六月十五日、私は答弁で、平成十五年の厚生科学審議会生殖補助医療部会の報告書を引用いたしまして、AIDについて、これまで一万人以上の出生児が誕生しているが、大きな問題の発生は報告をされていないということ、そして、これは母親の場合と違うわけでございますけれども、胚の場合と違うわけでございますが、安全性などに照らして特段問題があるものとは言えないことから、これを容認するとしているということを申し上げました。これは、いわゆる医学的な見地から問題性があるかどうかということについて検討しました生殖補助医療部会の報告書を引用したものでございます。

 翻りまして、先ほどの御指摘でございます。

 今委員がるる御指摘ございましたように、生殖補助医療で生まれた方々、既に一定数おられるわけでございまして、その方々がさまざまな悩みを抱えておられる、そのこと自体、重く受けとめなければならないというふうに思います。

 ただ、生殖補助医療のあり方というのは、生命倫理、家族観などにかかわる深い問題でありまして、医療技術の進歩とそれから法的な制度をどのように調和させていくかという大変奥深い問題があるわけでございます。

 議員が御指摘になった論点の中で、出自を知る権利の話がございました。これも実は、先ほど引用いたしました厚生科学審議会の生殖補助医療部会で取り上げておりまして、生殖補助医療で生まれた子に対して、その福祉の観点から、十五歳以上の者が提供者を特定できる内容を含む情報の開示を公的管理運営機関に請求することができるというふうなことを記載いたしております。

 いずれにしましても、このような問題を含めまして、生殖補助医療をめぐる問題に対応した法的整備は大変重要な課題ではないかというふうに考えているところでございます。

井戸委員 もう一回確認をさせていただきたいんですけれども、二〇一〇年に、当時の千葉大臣から長妻厚生労働大臣の方に論点のメモをお渡しされて、厚生労働省の行為規制の方が決まらないと、親子法制を先行して決めることができないというような形で言わせていただいていると。

 しかしながら、そこでまた議論がとまっているんですけれども、厚生労働省としては、こうした行為規制に関して、AIDについては行為規制をする、しない、ここについてちょっと伺いたいと思うんですけれども、いかがなんでしょうか。

石井政府参考人 あくまで厚生労働省の考えでございますが、先ほど引用いたしました平成十五年の厚生科学審議会の部会の報告書を受けまして、現時点で、法律上の夫婦の間で精子の提供を受けなければ妊娠できない場合に行われるAIDについて、その実施を規制する必要性はないというふうに考えていると申し上げたところでございます。

井戸委員 非常にこれは重要な発言というか見解なんですね。

 となると、厚生労働省は行為規制が要らないということですから、法務省としてはなるべく早くに、ここの親子の関係ですとか、もしくは出自を知る権利、こうしたことを規定していかなければいけない。なぜならば、行為規制がないということならば、一人の精子提供者の方が例えば千人の方に精子提供をして、それでお子さんたちが生まれるということも、行為規制がなければ簡単にできることなんですね。

 そして、例えば、私の相談者の中にもいるんですけれども、実際にこれは行われている例ですけれども、少しでも自分の血縁を残したいということで、兄弟から精子を提供されている。そうすると、ここで生まれたお子さんというのは、きょうだいなんだけれども、法的にはいとこ同士なんですよ。そうすると、これは婚姻できるんですよね。例えばこういうケースに関して、婚姻はできるんでしょうか。原政府参考人にちょっとお伺いしたいと思います。

原政府参考人 今委員の御指摘にありましたように、生殖補助医療で行為規制を何もしないとしますとそういった問題が生じますので、まずはどういう生殖補助医療ができるかどうかという行為規制をした上で、親子関係を、法制を考えなければいけないということを従来から法務省は考えているところでございます。

井戸委員 しかしながら、今もう厚生労働省は行為規制はしないということになっているわけですから、そうしましたら、私は、ここは迅速に法務省が、きっちりとした、例えば親族のあり方ですとか家族法だとか、もう一つはやはり出自を知る権利を担保するような法律をつくっていかなければだめだと思うんですよ。

 年間三千人というふうに、平成二十一年の数字を六月十五日のときに石井政府参考人は挙げられて言っていたんですけれども、そして、既にもう一万人のお子さんたちが、お子さんではないですよね、六十年たっているわけですよ。そうなると、例えばこうした近親者の婚姻が行われているかもしれない。婚姻届を持ってきたときに、法務省の重要な役割としては、そこで婚姻できるかどうか、例えば、重婚があるのか、年齢を確認したりとか、近親婚がないか、そして前婚から六カ月たっていないか、こういったことを確認してそうした婚姻届を受理するわけですけれども、ここのところもできないという話になってしまうんですね。

 私は、これは非常に大事な問題であって、しかも、二〇〇三年、先ほどおっしゃった平成十五年の答申、それぞれが出していた答申から全く動かなかったことが今の厚生労働省さんの見解で大きく一歩前進をするということにもなっていくと思うので、ここは法務省は速やかに、今現在、例えば代理出産の話になりますと、いろいろな価値観があったりだとか、そうしたリスクの話もあります、国民的な議論も必要だとは思うんですけれども、先ほど参考人おっしゃったように、AID、精子提供者においては、既にこれは日常的に行われているような状況になっているんですね。やはり、そこのところは法のきっちりとした担保で親子のことを決めていったりすることが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。

 そして、例えばAIDの出生子の知る権利は、やはり自分が知っていればそういったことを回避できるんですね、そういった近親者での結婚とかも回避できるんです。

 実際に、例えば外国ではどのような形になっているんでしょうか。原政府参考人に、AIDによる出生児の知る権利について、諸外国の例をちょっとお伺いしたいと思います。

原政府参考人 まず、最後に御質問のありました子の出自を知る権利の関係でございます。

 これは、本来、行為規制の問題だと認識しておりますので、法務省の方で特に調べていることではございませんが、私の手元にある資料によりますと、精子提供者を特定できる情報へのアクセスを認める国、認めていない国、特に規定を置いていない国、世界はさまざまな法制でございます。

 それから、先ほど厚労省の審議官から御発言がありましたけれども、厚労省の審議会におきましては、このAIDの生殖補助医療につきましても、出自を知る権利をどうやって確保するのかとか、近親者からの精子提供は当面禁止すべきではないか、こういうお考えが出ているわけでございますので、まずこういった行為規制をちゃんとしていただくということが今後の家族法関係の法的安定性に私は重要だというふうに考えております。

 したがいまして、民法のレベルで、出自を知る権利をどうするかとか、それから精子提供者の範囲をどう限定するか、こういうことを民法で規定することはできませんので、これは行為規制でぜひ考えていただきたいということを申し上げているわけでございます。

井戸委員 民法では規定ができないということだったんですけれども、前にも申し上げたんですけれども、離婚届の変更と同じような形で、例えば、出生証明書というのを出すわけですね。出生証明書のところに、AIDの子供であるというところに関してチェック欄を設ければ、このお子さんについては、将来的に自分が出自を知りたいといったときにはそれが知れるような、そうしたことも法務省でできることと思うんですよ。

 しかも、例えば性同一性障害で同じようにAIDによってお子さんをもうけられた方についても、法務省でもその出生届の受理についてはいろいろ検討もされて、それが受理をされなくて、逆に言うと、お父さんに関しては空欄で、出産したお母さんの非嫡出子にしたのはなぜかといったならば、これは血縁の問題ではない、AIDをしたことがわかる、戸籍上書いてあるからわかるから、それは嫡出の推定を外したというふうなことだったと思うんですね。

 そうなるならば、もはや今、同じように三千件行われているわけですよ。そして、では性同一性障害でAIDを受けたお子さんに関して言ったらば、自分はそういう子供だということはわかるわけですね。ところが、そうじゃないお子さんに対しては、今も存在を知りながらも何の手だてもしていかないというのは、私は、やはりこれは無責任だと思うんです。

 ぜひとも、私は、ここは平等性の観点からも、法務省でやる、そして、その知恵を出せばそうしたところでの担保というのも可能だと思うんですけれども、もう一度、原参考人、いかがでしょうか。

原政府参考人 何度も同じことを申し上げて恐縮でございますが、生殖補助医療により出生いたしました子供の法律上の親子関係の問題は、その前提となります生殖補助医療行為に関する行為規制のあり方と密接に関連する問題でございますので、行為規制に関する立法措置と切り離して検討することは困難であると考えております。

 法務省としましては、引き続き、関係機関の理解と協力を得て、この問題を検討してまいりたいと考えております。

井戸委員 前回、六月十五日、私もう一つ聞いているんですね。それは、例えば医療の関係のところから、このお子さんに関してはAIDを施したという資料をつけて出生届を出したときには、この出生届は受理ができるんでしょうかというような形でお伺いをしました。これは、小川元法務大臣、副大臣当時に答えていて、これに関しては排除されるのではないかというような、形式的にそうした要件が整わないので受理できないというような話で、そして原参考人もそのときには同じような答えをしているんです。

 ここに関してはもう一回、ちょっと、いかがでしょうか、そういった形式的に推定が排除をされるようなものを付してきた場合に関して言ったら、この出生届というのは受理ができるんでしょうか。

原政府参考人 今委員が言われましたようなケースは、現実にはほとんどないんじゃないかと私は思いますが、戸籍の現場で、民法七百七十二条の適用が排除されるような客観的な証拠が出される場合であれば、七百七十二条を適用することは困難であろうというふうに思います。

井戸委員 実際にないからやらなくていいんではなくて、やはりこれは公正性の問題から、必ずやらなければいけない、そして、そういうお子さんたちの存在を知っているわけですから、しっかりとそのお子さんたちの法的立場を確定させるためには、私は必要なことであると思っているんです。

 それをやらなくてもいいというんだったら、本当にこのまま、性同一性障害の方はそのまま受け取れなくて、存在を知っていて、例えば年間三千件あるということは病院から、石井参考人に伺いたいですけれども、なぜ三千人という数が、二十一年三千人という数がAIDで行われているということがわかっているんでしょうか。

 これは、今までだったらば、こういったことというのは隠して、本当のお父さんは違うということを隠していたんですけれども、今やもう時代が変わってきて、やはりそれはちゃんと知らせるということを前提にこういったことをつくっていかないと、当事者の方たちは本当にその自分たちのアイデンティティーというのがわからなくて、非常に悩んだりだとか、そういったことというのは多いんですね。

 この情報化の時代でもありますし、一般の私たち国民だってDNA検査をすれば一発でわかるような時代になってきたときに、それを隠して、先ほど申しましたけれども、遺伝の問題だったり、また近親婚の問題だったり、ここには非常に大きな問題があるわけですね。だからそこのところは、既にわかっているものなんですから、きっちりとした法整備をしなければならないというふうに思います。

 では、参考人、わかりますか、なぜその三千人ということがわかるんでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 その件数につきましては、日本産科婦人科学会が実績を把握するというシステムがありますので、件数のみはできているということでございます。

 ただ一方、卵子提供等々については実績が把握できていないという現状にあるのも事実でございます。

井戸委員 だから、これはAIDを施した病院というのはわかっているわけですよ。通常、例えば浮気をして本当にお父さんが違う方かもしれないとかということは第三者が絡んでいないですけれども、この場合に関しては第三者がわかっていて、そしてその子供さんに関して言っても、そこで自分が生まれたことを当事者が最後まで知らないというのは、やはりおかしな話だと思うんですね。私は、ここのところをしっかりとなるべく早期にやっていかなければ、この問題というのは、本当にずっと先送りにされてきてしまったわけですよね。

 滝大臣、今までのやりとりを聞きながら、こうした問題に関してどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。

滝国務大臣 なかなか結論が出にくい問題だろうと思いますけれども、今議論になっておりますように、AIDの出生の人たちが三千人を超えるということになってきますと、その中で近親婚を避けたいという思いの人もおいでになるということは、委員が御心配されているとおりだと思います。したがって、そういうように数がふえてくるということは、それを意識した対応がやはり必要かなということは個人的には思います。

 ただ、それを法務省だけで判断するという状況ではないということは民事局長からも前回も申し上げたと思いますけれども、それは一つの課題として引き続き検討していく問題かなということで受けとめさせていただいております。

井戸委員 先ほども言いましたとおりに、例えば婚姻で近親婚を避けるというところでは、三千人というのは、ずっと積み重ねで三千人ではなくて年間ですから、年間三千人の方々に関しては、ここは法務省のそうした業務ができないというような状態になっているわけですね。だから、私は、しっかりとこの辺をやっていただきたいなというふうに思っています。

 また、嫡出推定規定、この嫡出というのは正統であるという意味があって、法務省の方でも、二〇一〇年の三月、出生届の取り扱いに関しましての課長通知を出したんですけれども、父子関係を決定するルール、これは、嫡出でない子としなくても届けられるようなことであるということで、出すことにもなっています。

 政府参考人に最後にお伺いをしますけれども、この嫡出という差別的な用語を民法上使用することについて、どのように思われますでしょうか。

鉢呂委員長 原民事局長、時間が来ていますので端的に答弁ください。

原政府参考人 民法で現在、嫡出である子あるいは嫡出でない子という言葉が使われておりますので、この言葉を今後、法改正する場合にどうするかというのは検討事項だというふうに考えております。

井戸委員 ありがとうございました。

鉢呂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時三十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.