衆議院

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第10号 平成24年7月31日(火曜日)

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平成二十四年七月三十一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鉢呂 吉雄君

   理事 勝又恒一郎君 理事 黒岩 宇洋君

   理事 辻   惠君 理事 樋口 俊一君

   理事 稲田 朋美君 理事 棚橋 泰文君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 大口 善徳君

      井戸まさえ君    石井登志郎君

      稲富 修二君    大西 孝典君

      金森  正君    川口  浩君

      桑原  功君    小室 寿明君

      阪口 直人君    高野  守君

      橘  秀徳君    玉置 公良君

      中屋 大介君    橋本  勉君

      初鹿 明博君    藤田 大助君

      皆吉 稲生君    室井 秀子君

      山尾志桜里君    山崎 摩耶君

      吉川 政重君    城内  実君

      北村 茂男君    柴山 昌彦君

      平  将明君    平沢 勝栄君

      森  英介君    柳本 卓治君

      相原 史乃君    樋高  剛君

      漆原 良夫君    中島 政希君

      横粂 勝仁君    園田 博之君

    …………………………………

   法務大臣         滝   実君

   法務副大臣        谷  博之君

   法務大臣政務官      松野 信夫君

   文部科学大臣政務官    城井  崇君

   最高裁判所事務総局総務局長            戸倉 三郎君

   最高裁判所事務総局人事局長            安浪 亮介君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           永野 厚郎君

   最高裁判所事務総局家庭局長            豊澤 佳弘君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      鵜瀞 恵子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  高宅  茂君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          布村 幸彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           西藤 公司君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月三十一日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     石井登志郎君

  大西 孝典君     室井 秀子君

  小室 寿明君     高野  守君

  玉置 公良君     阪口 直人君

  皆吉 稲生君     稲富 修二君

  河井 克行君     平  将明君

同日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     井戸まさえ君

  稲富 修二君     山崎 摩耶君

  阪口 直人君     初鹿 明博君

  高野  守君     小室 寿明君

  室井 秀子君     大西 孝典君

  平  将明君     河井 克行君

同日

 辞任         補欠選任

  初鹿 明博君     金森  正君

  山崎 摩耶君     皆吉 稲生君

同日

 辞任         補欠選任

  金森  正君     玉置 公良君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)


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     ――――◇―――――

鉢呂委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局長鵜瀞恵子君、法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省民事局長原優君、法務省入国管理局長高宅茂君、文部科学省初等中等教育局長布村幸彦君、厚生労働省大臣官房審議官西藤公司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局戸倉総務局長、安浪人事局長、永野民事局長兼行政局長及び豊澤家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、今回の裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対して、公明党として賛成をいたします。

 そこで、最高裁は、平成十四年度から平成二十三年度にかけて、十年計画で四百五十人を増員し、さらに、これとは別に、裁判員制度導入ということで、平成十七年度から二十一年度までの五年間で百五十人の増員をいたしました。裁判の迅速化、専門化への対応等のための増員計画は昨年度までで終えたわけでありますが、これらの増員によって、司法制度改革の目標に対し、審理期間の短縮、充実がどの程度前進したか、数値でお答えいただきたい。また、今後の裁判所の人員の計画、増員についてどう考えておられるか、最高裁にお伺いいたします。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所は、今御指摘のように、平成十四年以降、十年間で約六百名の裁判官を増員したところでございます。

 その結果、例えば地方裁判所の民事訴訟の第一審の審理期間は、平成十二年は八・八月であったものが、昨年、平成二十三年には七・五月に短縮しております。

 また、未済事件のうち二年を超えた長期の未済事件の割合は、平成十二年には一二・四%ございましたが、平成二十三年には六・四%と、ほぼ半減をしております。

 さらに、専門訴訟への対応ということで、審理の充実、対応の強化をいたしまして、これを比較いたしますと、例えば医療関係訴訟の平均審理期間は、平成十二年には三十五・六月でありましたが、平成二十三年には二十五・九月になっております。また、知的財産訴訟の平均審理期間につきましても、平成十二年は二十一・六月であったものが十四・二月という結果でございます。

 こういった成果もあったわけでございますが、その一方で、この十年間は、社会情勢、経済情勢の変化等を背景といたしまして、民事訴訟事件が大幅に増加いたしました。

 その結果、私どもが当初想定しておりました手持ち事件の減少ということは図ることができませんで、その結果といたしまして、例えば人証調べがある判決で終局した事件、この審理期間は、これは十二カ月という目標を立てておったわけでございますが、昨年の時点でなお十九・二月という状況でございます。

 また、合議率につきましても、一〇%という目標を掲げておりましたけれども、これは特に過払い金事件が増加したという要因もございまして、これも平成二十三年の比率で申し上げますと二・九%という状況でございます。

 そういったことで、裁判所といたしましては、こういった目標を達成すべく、今後とも、またさらに取り組みを進めたいと考えております。

 今お尋ねの今後の増員の計画でございますが、委員御指摘のように、司法制度改革審議会で申し上げた四百五十人の増員というのは、一応ほぼ到達したわけでございます。その後の増員計画でございますけれども、これは、さまざまな事件動向ということがまず一番重要になってこようかと思っております。

 そういった点では、昨今の社会情勢、経済情勢の変化、あるいは国民の権利意識の高揚等を背景といたしまして、専門的知見を要する事件や、あるいは先例のない事件ということが裁判所に参っておりまして、事件は非常に複雑困難化しております。また、事件数も、ここのところ少し落ちつきは見せておりますが、なお高い水準で推移しておるわけでございます。

 こういった状況に照らすと、今後とも、審理のさらなる充実、迅速化を図るとともに、これは特に複雑困難事件については合議体による審理をさらに進めていくということも必要でございますので、そのための人的手当てが必要になるというふうには考えているところでございます。

 ただ、具体的に何人を、中長期的に何人をどのようにということになってまいりますと、一方で、審理の適正迅速化につきましては、弁護士の執務体制を含めた訴訟実務の変化ということも影響してまいりますので、こういったことも見ながら対応していかなければならないという事情がございます。

 そういった事情も考慮いたしますと、特に事件動向は非常に今変化が激しゅうございますので、特に長いスパンで見て、どの程度の人数が要るかということを今時点で直ちに、確たる計画という形で申し上げるのは非常に厳しいのではございますけれども、我々いろいろ試算をしておりまして、例えば、平成十三年ですか、司法制度改革審議会において増員必要性四百五十というのを御説明したわけですけれども、その考え方を近年の事件数で当てはめて試算をいたしますと、さらになお四百名程度の裁判官の増員は必要になるというふうに結果が出るわけでございます。

 最終的に、具体的な増員をどのような形で行っていくかというのは、その時々の事件動向等も考慮しながら検討していくことになることではございますけれども、今のところ、そういうところでございます。

大口委員 丁寧な御答弁になっていますが、もう少し簡潔にお願いしたいと思います。四百人ぐらいを考えているということ。

 次に、成年後見制度について、公明党プロジェクトチームで、この利用促進ということで法案を検討していまして、この前、骨子も出させていただきました。私、そのプロジェクトの座長をさせていただいております。

 成年後見制度、これは、判断能力を欠くか不十分な方を保護する制度ということで、平成十二年に従来の禁治産、準禁治産宣告制度を改正する形で導入されたわけであります。認知症の高齢者、知的障害者、精神障害者などが想定されているわけでありますけれども、本人の財産の保護というだけではなく、今、措置から契約ということで、福祉サービスを受ける契約、こういうものも後見人が処理しなければならない、こういう福祉的な役割というのが非常に重要になっているわけでございます。

 認知症高齢者は、現在二百八万人とも言われておりますし、また推計では、二〇一五年には二百五十万人、二〇三〇年には三百五十三万人に達する、こういうことでございまして、知的障害者の方約五十四万人、精神障害者の方三百二十三万人ということでございまして、今、孤立化する社会ということからいいまして、ますます成年後見制度のニーズは高まっている。しかし、それに比べて、その利用がどこまで進んでいるのかということでございます。

 二〇一一年度の成年後見関係事件の申し立て件数でいいますと、三万一千四百二件と、前年の三万七十九件よりは四・四%増加しましたが、そのような程度でございました。また、二〇〇〇年四月から昨年末までで二十五万七千七百九十一件が累計としてあるわけでありますが、その程度にとどまっているということでございます。

 認知症高齢者等の人数及び将来の推計と比較して、成年後見制度の現在の利用状況をどのように認識しているのか。また、もっと利用しやすいものにするために裁判所でどのような対応をしていくのかということについて、最高裁にお伺いしたいと思います。

 ちなみに、ドイツは、人口八千二百万人ですが、法定後見が百三十万、そして任意後見が百十万、計二百四十万ということで、日本はその十分の一程度であるということでございます。

豊澤最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 昨年度の成年後見関係事件の新受件数、それから制度発足以来の累積の申し立て件数については、委員御指摘のとおりの数でございます。

 これらの事件は、いずれも当事者の申し立てによって開始されるものでありまして、家庭裁判所は、その申し立てがあった事件についてのみ審理、判断を行う、こういうことになっておりますため、現在の利用状況に関して見解を述べるという立場にはありませんが、今後も事件動向には注視してまいりたいと考えております。

 最高裁といたしましても、動画の配信を含めてウエブサイトで手続の説明を行っているほか、成年後見関係事件に関するパンフレットなどを全国の家庭裁判所に配付するなどして、制度の周知等に努めております。

 また、各家裁におきましても、最高裁から配付されたパンフレットを関係機関に配付して周知に努めているほか、これらを用いて、成年後見制度の利用を検討している方にわかりやすく手続の説明を行ったり、申し立てをされた方に対しては、各庁の運用の実情に応じたQアンドAを配付したりするなどの工夫をしているものと承知いたしております。さらに、各家裁では、利用者の利便性を高めるために、申し立て等に関する書式を整備、合理化するなどの取り組みも行っているものと承知いたしております。

 今後とも、利用者のニーズを踏まえながら、利用しやすい手続とするように努力してまいりたいと考えております。

大口委員 昨年の十月の二十五日、当法務委員会において、私は、親族後見人等による不祥事との関連で、家庭裁判所の体制づくりについて質問をさせていただきました。そのときに、事務処理体制の整備、家庭裁判所の人的体制の強化に努めたいという答弁があったわけであります。

 そこで、この事務処理体制についてどう整備をしているのか、また、今回の裁判所職員定員改正法との関連で、家庭裁判所の人的体制の強化についてどうなっていくのかということをお伺いしたいと思います。

 ちなみに、東京家庭裁判所は、後見センターということで集中的にやっておられますが、これらの取り組みについても御紹介いただきたいと思います。

豊澤最高裁判所長官代理者 まず、家庭裁判所における成年後見関係事件の事務処理体制について申し上げますと、東京や大阪といった大規模庁におきましては、事件の適正、迅速な処理を目的といたしまして、これら後見関係事件を専門的に取り扱う後見センターを設置するなど、各家庭裁判所の規模、実情等に応じて体制面の整備に努めてまいったところでございます。現在も、中規模庁を中心に、成年後見等の関係事務の集中処理体制をより拡充するなど、各家庭裁判所の実情に応じた整備に引き続き努めているものと承知いたしております。

 また、人的体制の関係でございますが、家庭裁判所につきましては、特に成年後見関係事件を中心に、事件動向が増加傾向にあります家事事件の一層の適正かつ迅速な処理のために書記官を増員し、増員された書記官を繁忙庁を中心とした家庭裁判所に相当数を配置して活用しておりますほか、マンパワーをシフトさせるなどの内部努力によりまして、人的体制の整備を図ってきております。

 今後とも、事件数の動向や事件処理状況を注視しながら、家庭裁判所がその機能を適切に果たすことができるよう、必要な体制の整備を図っていきたいと考えております。

 以上です。

大口委員 成年後見制度の需要は一層高まっているわけですね。特に、介護サービスの利用計画などの需要もあるわけであります。ところが、社会が孤立化し、無縁社会になって、親族がいないという高齢者の方もいらっしゃるわけであります。ですから、親族後見人という形にならない。専門職の後見人も、扱う事件数も限られているわけであります。

 そういう点で、地域が支え合っていくということで、市民の中からしっかり市民後見人というのを育成していくのでないと、なかなか対応できなくなってきている。また、市民の中から市民後見人が育っていって非常にきめ細やかな対応もできるということでございます。

 親族等がいないということで、市区町村の申し立て件数が二〇一一年で三千六百八十件ということで、成年後見関係事件全体の約一一・七%ということでございますけれども、今、厚生労働省の福祉の分野では、例えば、ことし四月一日に施行された老人福祉法三十二条の二で、後見、保佐、補助の業務を適正に行うことができる人材の育成、活用を図るために、研修を実施する、そして後見等の業務を適正に行うことができる者の家庭裁判所への推薦その他の必要な措置を講ずるよう努めるということで、市区町村の役割ということが法的に明確化されておりますし、また、障害者総合支援法も同様の規定があるわけでございます。

 そこで、家庭裁判所において、これまでの市民後見人の選任状況や、選任に当たって考慮すべき事情についてお伺いしたいと思います。また、老人福祉法や障害者総合支援法の市区町村の市民後見推進事業に対して、今後、家庭裁判所としてどう取り組んでいくのか、お伺いしたいと思います。簡潔にお願いします。

豊澤最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 市民後見人のこれまでの選任状況につきましては、平成二十三年度以降、件数を把握しているところでありまして、平成二十三年の選任件数は九十二件となっております。

 それから、市民後見人を選任する際の考慮事情につきましては、市民後見人の選任については個々の事案における各裁判体の判断事項ではございますが、一般的に申し上げますと、成年後見制度に関する一定の知識や技術、態度を身につけていること、社会貢献の意欲や倫理観が備わっているか、あるいは選任後も市区町村等の適切な支援が期待できるか、こういったあたりの事情を考慮して選任されているものと考えておりまして、市区町村の推薦の有無やその内容につきましても、その際の考慮要素の一つになるものと考えております。

 それから、市区町村の市民後見推進事業等への取り組みに対する協力の関係でございますが、各家裁におきましては、これらの事業を実施する自治体等からの講師の派遣や検討会等へのオブ参加の要請があれば、司法機関としての中立性に反しない範囲で積極的に協力しているものと考えております。

 各家裁は、委員御指摘の老人福祉法三十二条の二の趣旨等を踏まえ、その各庁の実情に応じて今後も同様の協力を続けていくものと考えております。

 以上でございます。

大口委員 受け身じゃなくて、本当に積極的に、しっかりやっていただきたいと思います。

 そこで、成年後見人の権限について、いろいろと議論がされているわけでございます。

 患者に対する医的侵襲を伴う医療行為は、患者本人の具体的な医療行為に対する同意を得て、違法性が阻却されるわけですね。しかし、患者本人が医療行為の同意につき判断能力を喪失している場合、我が国に第三者による医療同意代行制度は存在しておりません。医療の倫理問題に留意しつつ、制度化を図る必要があると思います。

 この同意の代行について、刑法上の議論では、患者本人に判断能力がない場合、配偶者や保護者等、親族の同意によって違法性が阻却される。しかし、親族のいない成年被後見人が医療行為の同意につき判断能力を有しない場合、臨床の現場では、成年後見人が同意を求められる、同意しないと成年被後見人が医療行為を受けられない、こういう現実があるわけでございます。予防接種、胃潰瘍の手術、胃瘻造設手術、経管栄養、足の切断、骨折の手術、治療などが現場から報告されているわけです。

 法解釈としましても、成年後見人には、成年被後見人の医療につき、法制度上の同意権がない。しかし、成年後見人には医療看護に関する職務があり、これは民法八百五十八条、本人のために医療契約を締結する権限が与えられており、契約締結後の医療の履行を監視する義務があるので、生命身体に危険性の少ない軽微な医療行為については成年後見人に代行決定権がある、こういう見解もあるわけでございます。

 現場でどうなっているのかということで調べました。本当に成年後見人がこの医療同意について困っているわけでございます。その中で、家庭裁判所でいきますと千葉家裁が「成年後見人のしおり」というのを出しております。最高裁に確認しましたら、それ以外は、この医療同意については出していないということです。ある意味では、千葉家裁は親切でありますが、ほかはそうでないということが言えると思います。

 それで、この「成年後見人のしおり」二〇一一年四月版、それから二〇一二年においても、この医療同意についてどう記述しているかということを紹介いたしますと、「親族がいない場合、親族の協力が得られない場合、緊急を要する場合で、病院から特に救命に必要な医療措置として手術や治療への同意を求められた場合には、治療の必要性等を考えると同意をすることもやむを得ないこととして認められると思われます。」ということで、千葉家裁のしおりでは、同意することもやむを得ないこととして認められると思う、こういうふうに記述しております。

 「ただし、そのような同意をする権限があることを示す明確な規定はありませんので、」明確な規定がないので困っているんですね、現場は。「ありませんので、同意してよいか判断に迷う場合は、事前に家庭裁判所にご相談ください。」こういうふうに同意権を認めているということでございます。

 ただ、延命治療の中止や治療拒否については、これは「第三者の後見人としては同意すべきではありません。」という説明もあるわけでございます。

 この成年後見人の医療同意権限について、現行法上どのように考えているのか、お伺いしたい。また、臨床の現場のニーズに対して医療同意代行制度の創設ということも必要だと思うんですが、成年後見人に対し、一定の要件のもと医療同意代行決定権限を付与することについての所見をお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 今委員の方から、成人後見人の制度のいわばすき間が大変これからも問題になる、こういう御指摘でございました。

 法務省としてどうするかということをまだ方向づけるわけにはまいりませんけれども、基本的には、医療の問題ということで、厚生労働省の方でまずは先行してどうするかという基準をお示しいただければ、私の方はその厚生省の基準に従って法的な整備をするというのが順序だろうと思っております。

 今御指摘のように、いざというときには緊急措置しかできない、これは御指摘のとおりでございますから、すき間は何とか埋めていかなければいけないというのは御指摘のとおりだというふうに認識をいたしております。

大口委員 今大臣から、前向きともとれる答弁をいただきました。

 やはり厚生労働省と一緒にこの問題は、違法性阻却事由の問題などもございますので、協議を進めていただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。

滝国務大臣 厚生労働省の方とも協議をしながら進めるべき課題だと思っています。

大口委員 もう一つ。成年後見は成年被後見人である本人の死亡により終了する、権限も消滅するわけであります。ところが、実際には後始末が残されていまして、権限がないにもかかわらず、未払いの医療費や公共料金等の支払いはもちろん、身寄りのない場合は遺体の引き取りや埋葬まで求められ、これに対応せざるを得ない状況になっております。

 東京家裁後見問題研究会の論文で、親族ないし相続人がいない場合でも、成年後見人が、遺体を引き取った上、常識的な限度で葬儀、永代供養の依頼及び供養に必要な範囲で墓地、墓石の購入を行い、費用を遺産から支出することは許可されてよいのではなかろうか。相続財産管理人から支払いを受ける。その権限の法的根拠としては、成年後見人の義務とまでは言えないから委任終了時の緊急処分義務に求めるのは相当ではなく、事務管理というほかないであろうか。そうすると、費用は立てかえ金となる。これは、判例タイムズ二〇〇五年一月二十五日号で述べているわけであります。

 しかし、こうした事態は成年後見人を極めて不安定な地位に置くものであり、一定の明確な要件のもと、被後見人死亡後であっても、その直後に必要となる事務処理を行い得る権限を後見人に与える法改正が必要であると考えますが、いかがでございますか。

滝国務大臣 今御指摘の問題も、同じように法のすき間の問題かと存じます。

 現実には、相続人がきちんとしていれば相続人が取り組む話でございますけれども、その相続人も見つからないという場合には、成人後見人が後始末をするということが前提でしょうし、また、それができなければ市町村が御遺体をお引き受けする、これが日本の法制の建前でございますけれども、せっかく成人後見人がいらっしゃるのに市町村に後は任せるというのも、これは何となく納得のできない問題かと存じますので、ここら辺についてもよく検討をしていく課題だというふうには認識をいたしております。

大口委員 そういうことで、成年後見人の権限については、権利の制限の問題も含めて、さまざまな問題があります。こういうことも、各省横断的な、厚生労働省とか総務省ですとか、あるいはもちろん法務省そして最高裁、いろいろな縦割りのために総合的に推進できない、検討できないという問題がございます。

 より成年後見制度の利用が促進されるよう、内閣府に成年後見利用促進会議というものを設けて、あるいは現場の意見を聞くということで成年後見利用促進委員会というものを設けて、基本計画を立てて、そして、市区町村が非常に大事な役割を持っておりますので、また、総合的に推進する、そういう促進法が必要ではないかな、私はこう思っておるところでございます。

 次に、裁判官常駐ゼロ地域の解消についてであります。

 平成二十二年八月末現在、地方裁判所において、全国二百三の支部のうち四十六カ所に裁判官が常駐していないようでございます。常駐裁判官がいない支部では、他の裁判所からの出張裁判官で賄うために裁判の日数がなかなか確保できず、期日が入らない、一つの事件に十分な審理の時間がとれないといった弊害が生じているとの指摘もございます。保全事件等においても支障があるということも指摘されております。

 今後、裁判官の常駐ゼロの支部を解消する必要があると考えますけれども、最高裁はゼロ支部解消に今後どう取り組んでいくのか、予定はあるのか、常駐させる場合の基準をお伺いしたいと思います。

戸倉最高裁判所長官代理者 委員が御指摘のように、全国二百三の支部のうち四十六の支部では、裁判官が常駐することなく、近隣の庁から出張処理をしておるところでございます。

 裁判所の裁判官の配置につきましては、基本的にはそこの業務の負担量ということを基準に配置をしておりまして、そういった関係で、一人の裁判官を常駐するだけの業務量がないところは、人材の有効活用という観点もございまして、近隣からの出張処理ということをやっておるわけでございます。

 今後の見通しにつきましては、事件動向を見ますと、支部におきましてもやや事件が減少傾向にあるということですので、今直ちにどこの庁で解消するかという見通しというのは必ずしも立っておるわけではございませんけれども、今委員が御指摘になりましたような個々の庁の具体的な事件処理の状況、これが、出張して事件を処理するということによって、利用者の方々に御迷惑をおかけするとか、そういったことがないようにこれまでも十分努めてきておるところでございますけれども、こういった点は、いろいろな審理期間、期日の間隔、あるいは緊急事件の処理状況等、きめ細かく見ながら、対応が必要な場合にはきちんとした対応をとってまいりたいと考えております。

大口委員 刑事分野における判検交流については、五月八日の閣議後の記者会見で小川前大臣が「今年四月の人事をもちまして検察官と裁判官とのいわゆる判検交流は廃止しました。」と、こういう発表がありました。これは評価したいと思います。

 もう一つは、訟務分野の判検交流についてでございます。

 これについては、当時の江田法務大臣が平成二十三年四月十二日の参議院法務委員会で、判検交流について、訟務の部分には確かに問題多少あると私も思っておりまして、これは少なくしてまいりたいと思いますが、一気にというわけにはいきません、こういう趣旨の答弁をされているわけです。

 この訟務分野における判検交流について、縮小、さらに廃止ということを検討しておられるのか、また、今後の訟務分野における判検交流の見通しについて、法務大臣にお伺いしたいと思います。

滝国務大臣 判検交流について、原則禁止というか廃止とはちょっとニュアンスが違うところがあるわけですね。

 まず、今御指摘の訟務部門、これにつきましては、御指摘のとおり、その規模を縮小していきたい、こういうことは第一点としてございます。

 それからあと、裁判官を検察官に振りかえていく、こういうこともやめていきたいということでございますけれども、法務省本省の事務について、裁判官をある程度判検交流という格好で持続するということについては、まだ少し時間的にそのようなことをしていかないといけないのかなと。

 要するに、裁判官が検察業務を行うという、訴訟の場で前面的に出るようなことはまずやめていこう。そうじゃないと、どうも信頼性というか、そういうものにひびが入る、こういうことで、そこからまず手がけていこうというのが今の状況でございます。

大口委員 その上で、訟務分野ですね、訟務分野で裁判官が国の代理人として行政訴訟等を行っていく、このことについてはいかがでございますか。

滝国務大臣 いわゆる訟務分野については、これはもう減らしていこう、こういう基本原則には変わりありません。

大口委員 時間が参りましたので、これで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、城内実君。

城内委員 城内実でございます。

 本日は、裁判所職員定員法について、そして二つ目はいじめの問題、最後に三つ目として、いつも質問しています人権侵害救済機関について、今回で十二回目ですけれども、質問させていただきたいと思います。

 まず、裁判所職員定員法の改正についてですが、我が国と欧米諸国の裁判官数を比較しますと、日本は圧倒的に少ないんですね。例えば国民十万人当たりですと、ドイツでは二十四・五七人、アメリカでは十・四七人、フランス九・一二、イギリス六・六三、日本は二・二三と、圧倒的に少ないんですね。

 確かに、最高裁の方では、裁判官数は、その国民性や訴訟手続の構造、裁判所に提起される事件数、裁判外の紛争解決手段の利用の程度、弁護士数と活動領域などに影響されるので、一概に比較できないというふうに言っております。つまり、日本は欧米と比べて、事前に話し合いで、示談で解決したりする、いわゆる訴訟国家ではないという認識のようですけれども、他方、提起される訴訟数は増加の一途をたどっております。

 ことしは判事を三十人、書記官を八十人ふやすということで、減らすわけじゃなくてふやすということで大変結構なんですけれども、ただ、これまで、昨年までより減っているわけですから、それで十分足りるのかどうか、これについて御答弁を最高裁の方からいただきたいと思います。

戸倉最高裁判所長官代理者 委員御指摘のように、外国との裁判官と人口の比率については、いろいろな要素が違うということもございまして、単純な比較をするのはちょっと私も難しいというふうな状況でございます。

 ただ、日本の裁判所に関しましては、私どもは、基本的に事件動向ということを踏まえ、あとはそれを適正、迅速に処理する体制を整備するという観点で人的体制の整備を図ってきたところでございます。

 先ほど来申し上げていますとおり、この十年間で約六百人の増員をしていただいております。その結果、事件処理につきましても、一部まだ、例えば証拠調べ、人証調べありの事件について、あるいは合議率について、目標到達できないものもございますけれども、その他の点についてはかなりの改善効果も見られたというところでございます。こういった点も踏まえまして、今後とも、人的体制については計画性を持って順次整備してまいりたいというふうに考えております。

 今年度につきましては、三十人の増員をお認めいただきますと、現有勢力も含めて有効活用することで適切な事件処理を行っていけるものと考えておる次第でございます。

城内委員 ぜひ増員をしていただいて、今おっしゃったように、適切な事件処理を少ない人数でやっていただきたいなと思います。

 私は、そもそも、政府の国家公務員新規採用削減という方針には非常に慎重ないし反対の立場なんですね。

 そもそも国家公務員というのは、国益と国民の生活を守るために存在する人たちでありますから、いわゆる財務省の論理で一律カットの対象にすべきかどうかというのは慎重に判断しなきゃいけないと私は思っているんですね。例えば、災害もありましたから、自衛官とかあるいは警察官、そして、事件もふえておりますので、今申しました裁判官だけではなくて、検察官の数も私はふやすべきだと思っているんですよ。

 何でもかんでも一律カットではなくて、例えば、減らすのであれば、かつての旧社会保険庁の職員とか、本当にちゃんと原子力の保安をやっているかどうかわからないような原子力保安院の人たちとか、そういうところで減らして、こういう国益と国民の生活に直結する人たちはもっとふやすべきだと思うんですけれども、それについて、最高裁の方の御意見はどうでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判官の採用数を考えるに当たりましては、司法に対する需要、すなわち、各種事件数の動向や事件の質の変化、望ましい審理形態のあり方などを総合的に考慮して検討することになりますところ、このような司法に対する需要に応ずるための業務量というのは、裁判所の側でコントロールすることが困難という特殊事情がございますので、裁判官の採用数については、これらを十分踏まえて慎重に検討する必要があると考えております。

 裁判所といたしましては、今後とも、司法における需要を勘案しつつ、裁判官としてふさわしい人をきちんと採用し、裁判の運営に必要な体制を確保できるようにしてまいりたいと考えております。

城内委員 次に、法務大臣にちょっと質問させていただきたいんですけれども、いわゆる司法修習生への経済的支援の問題です。

 今まさにその経済的支援のあり方が問われているわけですが、私は、国民のより広範な、多様な層から裁判官が任官されるということが望ましいと思っているんですよ。いわゆる社会の勝ち組の裕福な子弟だけが司法修習して裁判官になるというのではなくて、大変貧しい、厳しい環境の中から志を持って、自分は裁判官になってみると。ところが、今、実態は、貸与制になって、借金をしなきゃいけない、親の仕送りは当てにできないという大変厳しい立場で、断念する有為な若者たちが続出しているわけであります。

 私は、貸与制が続けば、少なからぬ司法試験合格者の司法修習への道を経済的理由により妨げることになり、その結果、裁判官任官にも大きな影響を受けるというふうに認識しているんですけれども、滝大臣はどのような御認識でしょうか。

滝国務大臣 基本的な問題についてはいろいろな議論があるわけでございますから、当然、当委員会での議論もこれからの合議体の中で十分に議論してもらうということがまず先決問題だろうというふうに思っております。

 既に法曹フォーラムの結論は出ていたわけでございますけれども、国会での議論の中で、もう一度この問題については改めて設置する合議体の中で議論をする、こういうことでございますから、その議論にまちたいと思っております。

城内委員 大臣、ぜひ、当委員会における議論、そして新しく設置される合議体における議論を踏まえて、実態に即して、貸与制ということにはやはり無理がありますから、給費制に戻すということをぜひ前向きに検討していただきたいというふうに思っております。

 それでは、次の質問に移ります。

 私は、大津の、いじめに起因する、まだ認定はされていませんから、起因すると思われる少年の自殺事件及びその後の経緯を見まして、現行の制度の不備は本当に見過ごすことができないと強く感じております。また、強く憤っているわけであります。今こそ、個別法として、学校教育現場において、いじめ防止法というのをつくるべきであるというふうに考えております。

 そこで文部科学省にお聞きしたいと思いますけれども、学校教育法三十五条に、市町村の教育委員会が、いじめをする性行不良の生徒児童がいた場合、「その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる。」とあります。

 他方、十年間でたった二十三件、ですから、平均でいうと、一年に二件か三件程度しか行われていないんですよ。これはもうまさに、一年に二、三件しかいじめがないのかといったら、こんなの氷山の一角どころの話じゃないですよね、多分その何千倍はあると思いますけれども。これはまさに制度の機能不全であると考えますが、いかがでしょうか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘いただきました学校教育法三十五条におきましては、他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するという観点から、この学校教育法に基づいて、いじめや校内暴力、暴力行為などの問題行動を繰り返す児童生徒に対する出席停止制度が設けられているところでございます。

 平成二十二年度ですと全体で五十一件という措置件数が挙がっておりますけれども、先生御指摘のとおり、いじめの問題につきまして直接起因すると言われるケースは、そのうちの限られた数になってございます。

 しかしながら、犯罪行為のある場合の、警察への通報をし、警察と連携しながら協力を得て対処するということですとか、出席停止制度の活用ということを通じまして、いじめや校内暴力等の問題行動を引き起こす児童生徒に対しましては毅然とした指導を行うよう、学校、教育委員会を指導していきたいというふうに考えてございます。

城内委員 しかし、この大津で、いじめと認定されていませんけれども、私はもうこれは明らかにいじめだというふうに受けとめておりますけれども、こういうひどいことが放置されて、実際起きているわけですね。多分、これも本当に氷山の一角だと思うんです。

 文科省は、平成十八年に「いじめの問題への取組の徹底について」という通知を出しております。そこで、「いじめの問題への取組についてのチェックポイント」というのが示されました。そのチェックポイントが、学校、教育委員会に対して「このチェックポイントを参照しつつ、それぞれの実情に応じて適切な点検項目を作成して、点検・評価を行うことが望ましい。」とありますが、昨今の状況を考えれば、実際にそれが適切に行われているとは到底言いがたいんですよね。

 何でこういう大津みたいな事件が起きるんですかね。ほかにも起きていますよね、そこらじゅうで。これについてどういうふうにお考えでしょうか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の平成十八年の通知におきまして「いじめの問題への取組についてのチェックポイント」をお示しし、例えば、学校におきましては、日ごろから児童生徒に対して教育指導をしっかりし、アンテナを高くする、また、早期発見、早期対応に努めるということをそのチェックポイントの例として掲げているところでございます。

 いじめ問題への必要な取り組みをさらに徹底するようという観点から、日ごろから都道府県を通じて指導し、毎年度、いじめの問題への取り組み状況を全国の学校に対しまして調査し、その結果を公表してきているということでございます。

 また、今回の大津のいじめの問題、また、いじめを起因とする自殺と思われる事案等が生じた場合には、当該チェックポイントに基づく取り組み状況を緊急に調査し、公表するということも必要であろうと考えております。

 そういった点は、日ごろから学校、教育委員会の取り組みを促していきたいというふうに考えております。いじめの問題に対する学校、教育委員会の積極的な取り組み、特に、きちっと児童生徒の声を吸い上げ、早期発見、早期対応に努める、また、あればすぐに大人に相談されるよう子供たちにメッセージを発する、そういう日ごろの取り組みをしっかりとやっていただくように努力してまいりたいと考えております。

城内委員 今、学校、教育委員会の取り組みに期待するような話がありましたけれども、期待できないんですよ、はっきり言うと。だから、文科省がむしろ中央集権的にしっかり通達を出してコントロールしないと、もう放置されているばかりですよ。

 今の御答弁もそうなんですが、共通するのは、何々することができるとか望ましいという、非常に何か曖昧な表現にとどまっていまして、義務が伴っていないんですよね。アメリカにおいては、全五十州のうち四十七州でいじめ防止法が州法として制定されているんです。通報を怠れば罰則を科す、そういうことがもう規定されているんですよね。

 ですから、何々することが望ましいとか何々できるなんていったら、できるといったらやらないという人が出てきますから、とにかく教育現場での点検、評価を徹底的に義務化して、いじめが認められた場合は文科省への通報を義務づけして、これを怠った場合は処罰する、罰則を科す、あるいは名前を公表する、学校の校長、先生の責任を問うとか。でも、学校、教育委員会がはっきり言って機能していないからこそ、こういう事件が続発、続出しているわけですよ。

 ですから、文科省さんも頑張っていただいて、徹底的に、こういう事件が起きたらそういう学校はブラックリストに載せるとか補助金をカットするとか、それぐらいのことをやはりやらないと、こういういじめはなくならないというふうに私は思っております。

 さて次に、法務大臣に質問したいと思います。

 私がこれまで何度も取り上げてきています人権救済法案ですが、この大きな問題の一つは、人権侵害の定義が極めて曖昧なことであります。その中で、歴代の柳田大臣、江田大臣、平岡大臣、小川大臣が、いわゆる列挙されていない、だから、人権侵害救済機関をつくって、こぼれ落ちている人権救済すべき事案は何かという質問をしますと、例えばいじめとかというふうに答弁されているんですね。

 しかし、人権侵害救済機関をつくるのではなくて、いじめというのがまさに私も重大な人権侵害事案だと思っていますので、今申しましたように、個別法をつくって、いつも言っているように、ゴキブリにはごきぶりホイホイとか、ウイルスにはその鳥に合ったワクチンをつくるとか、そういう個別法をつくって対処すべきだと思っておりますが、どうでしょうか。

滝国務大臣 委員の方から、例えばアメリカでは州法でいじめ法ができている、こういうような御指摘もございました。その国の法制の立て方として、そういうことをやっているアメリカがあるんだなというふうに受け取らせていただきますけれども、私どもとしては、今の委員の指摘とは反対に、やはり包括的に、犯罪として捉えるんじゃなくて、みんなでいじめを牽制しよう、こういうようなことがある意味では事実上の問題として機能するんじゃなかろうか、これが人権擁護法の中で一つの例としていじめ問題の取り上げ方というふうに認識をいたしているところでございます。

 いろいろな方法がある、しかし、それをどう捉えていくかというのはやはりもう少し総合的な観点から改めて考え直すということも、それは委員の御指摘だろうと思いますから、そういう観点からも考えていくということは必要だろうとは思っております。

城内委員 私は、いじめについては、中央の霞が関一丁目一番地に人権委員会をつくって、それで目を光らせれば日本じゅうのいじめがなくなるとはとても思えないんですよ。

 やはり現場ですよ。現場でしっかり対応することが大事であって、第一に、学校現場におけるいじめの状況把握、担当教員から学校へ、学校から教育委員会、教育委員会から都道府県などへの、上へのちゃんとした通報を義務化するということが一つ。第二に、法務省の人権擁護の取り組みを、まさに人権擁護委員あるいは地方の法務局を通じて徹底させる、あるいは市町村の人権の窓口の人たちにもちゃんと働いてもらう。三つ目には、刑法上の問題が提起されれば警察が速やかに対応できる体制、まさに、これはどちらかというと日教組の方々が非常に否定的だと思いますけれども。

 これらをまさしく、法務省のみならず文科省も含めて、省庁横断的に円滑にできる法律が整備できれば、私は、一〇〇%とは言わないまでも、いじめは根絶することは可能だと思っているんですね。

 ですから、早期発見、対応、発生の抑制につながるこういった仕組みを、ただ単に中央に人権委員会ができたからなくなりますなんというふうに思っていただきたくなくて申し上げましたけれども、大臣、どうでしょうか。

滝国務大臣 現実に、いじめの問題は期間を置いて繰り返すというようなのが最近の実態だろうと思います。

 その中で、人権擁護委員がこれまで取り組んできたのは、子供に対するいじめ一一〇番のミニレターというものを学校を通じて配って、そして、生徒が直接その地域の法務局にそのまま投函してくれたら、それが到達する、それを人権擁護委員が見て、一件だけじゃなくて二、三件同じようなものと思われるものがあれば人権擁護委員がそこで動く、こういうシステムをとってまいりました。

 しかし、なかなかこれは学校を抜きにしてできませんので、やはり学校を巻き込んでの子供一一〇番のミニレターでございますから、学校当局がこれについて積極的でないところもございます。しかし、最近では、おかげさまでこのミニレターもかなり学校当局が理解をして、このプロジェクトに乗ってくれるところがふえてまいりました。

 こういうことも含めて私どもは人権擁護問題というものを取り組んでいく必要があるだろう、事実問題としてやってきたということの積み重ねをこれからもやっていきたい、これが人権委員会設置法案の骨子の問題でございます。

城内委員 ちょっと最後の人権侵害救済機関設置というところは納得できませんが、その前の、まさに大臣おっしゃったような、法務省で子どもの人権一一〇番というのがあって、それを活用すべしということについて、私は全く一〇〇%賛同します。

 ですから、まさに今大臣おっしゃったように、法務省と文科省が協力し合って、本当にいじめを受けてどうしていいかわからないという子供たちに救いの手を差し伸べて、それをしっかりと学校の教育現場で先生方が通報をして、関係者がきちんと速やかに対応して、いじめの芽を摘んでいくということを現場でやらなければ何にもならないわけですよ。

 人権委員会ができました、それが抑止力になるなんて、そんなことは絶対あり得ませんので、まず、必要な予算、定員については、そういった現場に振り分けるようなことをして、何か、屋上屋を重ねるような人権侵害救済機関をつくって、それで解決しましたというふうに思っていただきたくないんですね。

 そこで、次の質問に移ります。

 これまで、人権侵害救済機関、いわゆる人権委員会を設置する、それに伴う定員や予算についてはどの程度のものを考えているのかという質問をいたしましたけれども、大体でいいので、もうそろそろ固まってきているんじゃないかと思いますが、どの程度なのかというのを、大ざっぱでも結構ですので、御答弁いただきたいと思います。

滝国務大臣 基本的に人件費の問題が相当にウエートを占めるだろうということでございますけれども、これを積算するというところまではまだ至っておりません。

 実際の、人権擁護局が中央で、あるいは地方で法務局を通じて使っている人権擁護に関連する予算というのは、大体三十数億円が現状だろうと思っております。現在の国、地方の法務局で人権擁護に携わっている人のいわば給与費、人件費がどれだけそこに加わるかということでございますけれども、一人が二役でいろいろなことをやっていますから、人権擁護だけで幾らというところまでの算出はまだできておりません。

城内委員 これだけ、まさに裁判官の数をふやす減らすとか、国家公務員の数を減らすという話がある中で、やはりきちっと青写真をつくっていただいて、では本当にそんなに必要なのかどうかとか、検討しようがないんですよね。ですから、それを速やかにやっていただきたいと思います。

 いずれにしましても、何度も繰り返しますように、いじめのみならず、あらゆる人権侵害事案というものは、まさに現場の草の根で活動されていらっしゃる人権擁護委員の方、あるいは地方自治体における人権の窓口の担当者の方が目を光らせて活動して、未然に防いでいくということがやはり一番大事でありますから、むしろその予算というのは、あるいは人権擁護委員の方に対する活動費とか、あるいは大臣の感謝状一枚でも彼らは一生懸命やっていますから、そういうことにもっと力を注ぐべきであって、何か、人権擁護局を発展的に解消して、同じところに看板をかけかえて人権委員会ができました、めでたしめでたしというふうにしていただきたくないんですよ。大臣、そう思いませんか。

滝国務大臣 委員の思いのほどは受けとめさせていただきます。

 ただし、今申しました人件費の問題は、これは現状の機構、組織を使うということでございますから、今よりもそんなに大きくふえるということは前提をいたしていないわけです。ただ、事業費の三十数億円については、これは多少ふやしていくべき余地があるのかな。しかし、そんな今の現状の中で、三十億をもう少し伸ばして四十億だ、五十億だというような規模で考えているわけではございません。

城内委員 まさに今大臣おっしゃったように、三十数億、多少ふえるという程度のものであるならば、そもそも必要ないんじゃないですか。その多少ふやすものを、今申しましたように、例えば人権啓発のチラシやポスターとかブックレットをいっぱいつくって、現場の学校に配って、ちゃんとその現場の先生方が授業で使うとか、むしろそちらに予算を振り向けるべきです。

 本当に人権委員会が必要です、そうしなければできないというんだったら、本来であれば、看板のかけかえじゃなくて、百億円ぐらいの組織ができるはずじゃないですか。そんな三十数億円がちょこっとふえるぐらいのものだったら、現状で、何ら変わらなくていいわけですよ。

 だから、まさに大臣の今の御答弁から推察するに、今の状況で、末端の、草の根の人権啓発活動にもっともっと力を入れますということで、私は、いじめを含めたあらゆる人権侵害事案が、根絶はできませんけれども、相当程度なくなっていくというふうに思いますけれども、大臣、どう思いますか。

滝国務大臣 委員がおっしゃるように、現場の人権擁護委員というのは、こういういじめの問題について、やはり何とかしなければいけない、そういう意欲を今湧き立てているところでございます。したがって、もっともっと学校との連携ができれば活動の範囲が広がる、そんな思いでこのいじめ問題を見ていると思いますから、我々は、そういった人権擁護委員が現実に今直面している問題をどうサポートするか、どう激励していくかということではないかというふうに思っております。

城内委員 いずれにしましても、とにかく現場の草の根の人権擁護活動にやはり予算を振り分けていただく、そして、人権侵害救済機関という何かお化けみたいな機関はつくらない、そういう方向でぜひいっていただきたいと思います。

 次に、いじめ問題について見ますと、私は、人権委員会がもし仮に設置されるとしますと、何か非常に、人権には詳しいけれども社会通念とちょっと違ったような、人権オタクなんという言葉は大変失礼なんですけれども、そういう人が委員に就任してしまうことになりはしないかというふうに懸念するんです。実際、平岡法務大臣、何か加害者の人権を擁護するみたいなことを言って大問題になりましたよね。こういうとんちんかんな人が人権人権とかいって被害者よりも加害者の人権を擁護してしまうようなことになりはしないかと、私はすごく不安なんですね。

 実際、大津事件に即して見ますと、被害者の方は大変不幸なことに亡くなっております。もう亡くなってしまって人権を救済できないんですよ。そうしてくると、今度は何が起きるかというと、マスコミは寄ってたかって加害者をたたいているんじゃないか、加害者の人権はどうだなんという、とんちんかんな、わけのわからない人が出てくる可能性が出るんですね。そういう人ほど何となく私は人権委員会の委員に、この人は人権の専門家ですからみたいになってなったら、被害者よりも加害者の人権に重きを置くようなことが起きかねないんですよ。

 現に、前回の委員会でも私、大阪の高槻市柳川中学校の校長先生に、当時の大阪の弁護士さんの方から、国旗・国歌、起立をしなくてもいいよと言わなかっただけで人権侵害だみたいな、何か内容証明の郵便物が来たみたいな、こういう人たちが、人権委員会ができたらなる可能性が高いから、私は、むしろ設置すべきではないというふうに申し上げているんですけれども、大臣、どうでしょうか。

滝国務大臣 やはり、現場における人権擁護委員の活動、あるいはそこで得た情報、これをいわば、法務省ではなく中央機関が吸い上げて、そしてそれに対して機敏に適応させていく、これが今考えている人権委員会法でございますから、そういう意味では、現場とそれから国の機関がある意味では情報を共有しながら、どうやって足りないところを補っていくか、そういうような役目を果たす機関として中央における人権委員というものを考えてきているわけでございます。

 したがって、特別、中央の人権委員が特殊なことを自分の経歴でもって考えるんじゃなくて、やはり地方における現実の情報というものを共有する、それを国の中ですき間が起きないような配慮をしていく、こういうようなことが一つの大きな機能だ、こういうふうに理解をいたしているわけです。

城内委員 大臣、まさに今、地方と中央で情報を共有しながら適切に対応しますとおっしゃいましたけれども、では、今の人権擁護局と地方の人権擁護委員の方々あるいは地方法務局で情報の共有がされていないということですか。

滝国務大臣 世間から見ると、やはり、しょせんは法務省という一つの権力の中枢の中で全部それが、そういう権力統制というか、一つのいわば国の中で吸収されてしまう、こんなような不安というか見方も存在し得るわけです。

 したがって、ある程度国から独立した機関を設けて、そして現場における情報と国の機関とが、別に権力構造ということじゃなしに、一つのいわばセンターとしての役割を国に置くということによって不安を解消できるんじゃないだろうかな、そんな機能もあり得るというふうに私は考えているわけです。

城内委員 大臣、今おっしゃったことですけれども、必ずしも国から独立した機関をつくらなければいけないということにはならないと思いますよ。実際、各地域にいらっしゃる人権擁護委員の活動については、地方の情報を中央の人権擁護局が吸い上げて、先ほど申しましたように文科省と連携して適切に対応するという方法は、これは幾らでもできるわけですから、何か独立した機関をつくらないとできませんというのは、では、人権擁護局というのは独立していないから人権擁護はしませんと言っているのと全く同じことじゃないですか。そうじゃないですか。

滝国務大臣 現実の人権擁護委員が例えば国に上げても、国は政府全体としての権力構造の中でそれをどう扱ってくれるかについては疑心暗鬼があるだろうし、また、権力というのはそんなものだというふうに思われてはいけないから、やはり政府機関とはある程度の距離を置いた独立の機関、こういうようなことが、これは一つの世界的な流れという中でも主張されてきているわけですから、そういう意味での独立性というか、政府機関とはある程度の距離を置いた独立の存在、こういうふうに理解をいたしているわけです。

城内委員 しかし、独立した機関とおっしゃいますけれども、結局、前回の答弁もそうですけれども、恐らく人権擁護局の看板書きかえで、住所も変わらずに、霞が関一の一の一ですかに置くということになるんじゃないかと私は思うんですよ。しかも職員は、まさに社会保険庁じゃないですけれども、看板を書きかえて、独法にして組織を変えましたって、実態はやっている人は同じみたいな、もう明らかに形式的に独立しましたという機関をつくって、それをよしとする。

 だから、もう最初から結論ありきなんですよね。これを外国から見たら、独立した機関です、めでたしめでたしという話かもしれませんけれども、私は非常に意味がないというふうに思っております。

 ですから、何度も言うように、現場で今まさにこの瞬間起きている人権侵害事案、いじめとかをどうすれば未然に防止して、どうすれば速やかに解決するかという観点から、予算や人員を振り分けて活動していただきたいというふうに思っております。

 次に、外国人参政権についての滝大臣のお立場について、再度お伺いしたいと思うんですが、前回の質問で、大臣は、外国人参政権については賛否を判断できないという御答弁でありました。しかし、問題点がなければ外国人地方参政権賛成とおっしゃれるはずですが、何がひっかかっているんですか。そこについてちょっと質問したいと思います。

滝国務大臣 外国人の参政権問題が最近において日本で出てきましたのは、海部内閣が誕生した後でございます。海部内閣の誕生とともに、海部・盧泰愚会談がソウルで行われました。そのソウルでの議題の一つとして、地方参政権の問題がある意味では表面化をした。しかし、日本側はそれをテーマにすることは回避をした。これが海部・盧泰愚会談のそのときの結論でございます。それ以来、ずっと尾を引いてきたわけでございます。

 したがって、私は、今の段階で法務大臣として、地方参政権といえども、それはもちろん法務省のテーマではございませんし、法務大臣としての賛否をあらわすような立場じゃない、そういう意味で、自分の立場は、大臣としては申し上げるようなことはいたしませんというふうに言ってきたわけでございます。

城内委員 いや、それはおかしいですよ。海部・盧泰愚会談がどうあれ、大臣として答弁できないというのはおかしいですよ。

 もう時間がありませんけれども、私は反対の立場ですけれども、現に小川前大臣は「人権擁護の職務を行うのにふさわしい方であれば、必ずしも日本人に限定する必要はない」という御答弁を外国人に対する地方参政権賛成の立場から述べられたんですよ。私は、結論は反対ですけれども、そうやって素直に答弁された小川前大臣、評価しますよ。これは間違っていると思いますけれどもね。

 ですから、私は、滝大臣に、小川大臣と同じ立場なのか、違うのかどうかをはっきり答弁いただきたいんですけれども、どうでしょうか。

鉢呂委員長 時間が来ていますので、簡単に御答弁を。

滝国務大臣 基本的には、参政権の問題と人権委員あるいは人権擁護委員の問題とは切り離して考えるべきだというふうに思っております。

城内委員 時間がありませんので、これで私の質問を終わりますけれども、また次回、質問させていただきたいと思います。

鉢呂委員長 次に、柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦です。

 法案質疑に先立ちまして、二つほどお伺いしたいと思います。

 まず、今月十八日に法制審議会の会社法制部会が提示した会社法改正の要綱原案についてです。

 私たち自民党の法務部会、財務金融部会、経済産業部会、企業・資本市場法制プロジェクトチーム、企業会計小委員会の合同会議の方では、かねてから、企業ガバナンスの強化のため、上場会社における複数の社外取締役選任義務を上場規則で明示し、それができなければ法律で義務づけるべきだと主張してまいりましたけれども、この点、要綱ではどのようになったんでしょうか。

原政府参考人 お答えいたします。

 社外取締役の選任の義務づけの問題につきましては、会社法制部会におきまして当初から意見が大きく対立していた論点であるというふうに承知しております。現在は、選任を義務づけることにかえまして、社外取締役がいない一定の株式会社について、その理由に関する情報の開示を充実することなどが議論されているものと承知しています。

 いずれにしましても、最終的な取りまとめにはまだ至っていないと承知しております。

柴山委員 結局、義務づけには至っていない。この要綱案においても至っていないし、しかも、まだ結論すら出ていないということなんですけれども、これは一体なぜなんでしょうか。

 確かに、社外取締役を入れることによってさまざまな不祥事を全て防ぐということはできません。ただ、外部の目を入れることが一定の経営の透明性を増すという効果にはつながると思いますし、また、社内では得られない知見を獲得するということは、その会社自体にとっても有用なはずなんですよね。

 既に海外では、イギリス、アメリカ、フランスのほか、韓国あるいは中国においてすら社外取締役の選任が義務づけられています。それでは足りないからより厳しい仕組みをつくるというのであれば話はわかりますけれども、なぜ、社外取締役の選任を義務づけることに、これほどまでに経済界から反対が多いんですか。

原政府参考人 この問題につきましては、法制審議会のさまざまな立場のメンバーから多様な意見が出されまして、コンセンサスが得られていないという状況でございます。

 今委員が御発言になりましたように、社外取締役を選任することをいたしますと、社外取締役には経営者を監督する機能が期待されますので、取締役会の監督機能が強化されるですとか、取締役会の透明性が高まる、そういうメリットがあるという指摘が一方でございます。

 他方で、各企業の実情に応じた最適な企業統治体制をとることが阻害されてしまうのではないか、あるいは、社外取締役の選任を義務づけますと適切な人材確保が難しい、そういったいろいろな意見がございまして、現在のところは、社外取締役の選任を会社法では義務づけない方向での議論が進められているという状況でございます。

柴山委員 では、具体的にお伺いします。

 人材がいないというように今局長はおっしゃいましたけれども、東証一部に上場している企業の中で社外取締役を置いている会社の割合は何%ですか。

原政府参考人 平成二十三年八月に、一般社団法人であります日本取締役協会が調査結果を発表しております。上場企業のコーポレート・ガバナンス調査二〇一一という資料でございますが、この調査結果によりますと、東証一部に上場している企業の中で社外取締役を置いている会社は五一・四%であるというふうに報告をされております。

柴山委員 この五年間で、どういう形で推移したんでしょうか。

原政府参考人 ただいま御紹介いたしました資料によりますと、二〇〇四年でも調査がされておりますが、二〇〇四年の調査結果では、東証一部の企業で社外取締役を選任している企業の割合は三〇・〇%であった、それが二〇一一年には五一・四%にまでなったということでございます。

柴山委員 つまり、このわずか七年間に、三〇%から五一・四%と飛躍的に増加しているわけなんですね。しかも、ことし二月の資料なんですけれども、経団連の会長、副会長出身会社十七社のうち、社外取締役を置く会社は実に十四社です。しかもその平均人数は二・二九人です。

 ですから、例えば時価総額一定以上の上場会社に限定して複数の社外取締役を選任することを義務づけることは決して不可能ではないというように思うんですけれども、いかがですか。

原政府参考人 この問題につきましては、どのような企業を対象に社外取締役を義務づけるべきかということも議論されました。

 一つの案としては、上場企業に社外取締役の選任を義務づけるという案も検討いたしましたし、上場会社一律に社外取締役の選任を義務づけるのではなくして、今委員が言われましたように、もう少し限定する。例えば、株式会社の規模ですとか上場後の経過年数、上場区分等といった、そういうものでもう少し限定して義務づけをしたらどうかという案もございまして、こういった案につきましても検討がされましたが、そういった案も含めて、社外取締役の選任を義務づけることについてはコンセンサスが得られていない、こういう状況でございます。

柴山委員 ちょっと、なかなか説得的な根拠になっていないと思うんですよ。

 報道ベースでお伺いする限り、先ほど局長がおっしゃったとおり、義務づけは見送るけれども、例えば、有価証券報告書を提出する会社について、社外取締役を置かない理由を株主総会の事業報告に載せるというような案が提示をされているということなんですけれども、要は説明責任ということになるんでしょうか。その詳細についてお伺いしたいと思います。

原政府参考人 委員から御指摘いただきましたように、七月十八日の第二十三回の会合におきまして要綱案の第一次案を提示しておりますが、その案では、社外取締役の選任の義務づけはしないということのかわりに、一定の株式会社において、社外取締役が存在しない場合には、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告の内容とすることと。ちゃんと説明をしていただく、こういうことを提案しているところでございます。

柴山委員 それに対する経済界の委員の反応と、そしてその理由を教えてください。

原政府参考人 この点は、まだ審議中でございまして、賛否両論があってコンセンサスが得られていないという状況でございますが、次回の法制審の部会におきましてはコンセンサスが得られる方向で議論がされていくのではないか、私は個人的にはそう思っております。

柴山委員 報道ベースでは、この点については何とかまとまるんじゃないかというようなことも伺っていますけれども、書式ですとか、通り一遍の説明では、やはり今私が申し上げたような統計の上からいって到底納得はできないというように思いますので、その詳細についても含めて、ぜひまたこの国会で議論をさせていただきたいというように思います。

 論点がたくさんあります。

 親会社株主が子会社の役員の責任を追及できるという多重代表訴訟、これは、完全親会社の発行済み株式あるいは議決権総数の一%を保有することなどを要件とするいわゆる少数株主権とするとのことなんですけれども、本来、代表訴訟は一株でも持っていれば提起できる単独株主権ではなかったですか。

原政府参考人 通常の代表訴訟の場合には、提訴権は単独株主権とされております。

柴山委員 なぜこのようなハードルを設けたんでしょうか。

原政府参考人 この多重代表訴訟は、親会社の株主が子会社の取締役等の責任を追及する訴訟でございますので、完全子会社と完全親会社の株主との関係は、当該完全親会社を介した間接的な関係になるわけでございます。したがいまして、利害関係が一定程度強い場合にのみ多重代表訴訟の提起権を認めるのが相当であろうということで、少数株主権にされているというふうに承知しております。

柴山委員 それもなかなか説明が苦しいんじゃないかと思うんですね。

 確かに、法人格が一つ間に介在しているというような御説明ではあったんですけれども、そもそもこの代表訴訟というのは、会社と取締役の間のなれ合いをなくして、会社の機関として株主が会社にかわって訴えを提起するものだったはずであります。ですので、一〇〇%親会社である場合には、子会社の取締役選任を事実上完全に支配している、法人格の壁はありますけれどもそういった実態がありますし、しかも、子会社の損害というのはイコール親会社の損害であるというふうに評価できるわけです。

 とすれば、株主が自分のためというよりは、むしろ親会社の機関として、その親会社と一体になっている子会社にかわってその取締役を訴えることができるというのはむしろ当然でありますし、例えば濫訴などを気にしているということであれば、単独株主権をいじるんじゃなくて、むしろ、その親子会社の類型ですとか、さまざまな背景事情についてきちんと類型分けをしていくということが本来あるべき姿じゃないんですか。

原政府参考人 通常の株主代表訴訟の提起権が単独株主権とされているのに対しまして、この多重代表訴訟の提起権を少数株主権にいたしましたのは、先ほど御説明しましたように、関係が間接的であるということでございます。少数株主権にしているのは濫訴防止のためではないか、そういう捉え方もありますが、法制審における考え方は、今申し上げたようなことで検討がされているというふうに承知しております。

 濫訴防止という点もやはり議論になりまして、この点につきましては、完全子会社または完全親会社に損害を加えることを目的として多重代表訴訟を提起するような場合は、これは認めないということで、別の策を設けているところでございます。

柴山委員 なかなかわかりづらい部分があります。

 これ以外にも、今回の要綱についてさまざまな論点がありますけれども、先ほど申し上げたように、折に触れて質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 続いて、入管行政について、法案審議に先立ってお伺いしたいと思います。

 国際交流強化の観点から、例えば中国に対して、累次にわたってビザの発行の免除、緩和などを行っているところだと思います。真面目な方が入ってくるということについてはもちろん結構なんですけれども、それに伴って、在留している中国人を初めとした外国の人とのトラブルが発生しているというような実態はありませんか。

高宅政府参考人 お答えいたします。

 観光立国の推進などの観点から、中国人観光客に対する査証の発給要件の緩和、見直しが行われてきております。

 具体的に申し上げますと、平成二十一年七月から、十分な経済力を有する中国人観光客に対して個人観光査証の発給を開始する。そして、二十三年九月には、その発給対象を、一定の経済力を有する者に緩和しております。また、二十三年七月からは、初回入国時に沖縄県を訪問する十分な経済力を有する中国人観光客に対しまして、有効期間三年の数次観光査証を発給するということとしております。また、本年七月からは、東日本大震災により甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県を訪問する中国人観光客の方に対しても、同様に数次の観光査証を発給しております。

 このように、中国人に対する観光査証の発給要件についての見直し、緩和が行われてきておりますが、これらの査証で入国した方の不法残留状況について見てみますと、個人観光査証による中国人入国者は、入国管理局の電算上では、発給の開始、これは二十一年の七月でございますが、それから平成二十三年末までで約十一万七千人、そのうち、不法残留となった者は二十三人でございます。

 また、沖縄訪問を目的とした数次観光査証による中国人入国者につきましても、発給の開始から二十三年末までで約九千人が入国しておりますが、不法残留となった者は二人となっております。

 現時点で断定的な評価を行うことは必ずしも容易ではないと考えますが、これまでのところでは、少なくとも治安の悪化とか不法残留者の増加ということについて、明らかな結果とか兆候は認められていないと考えております。

柴山委員 統計上の数字は必ずしも数は多くないということなんですけれども、もしそういった方々が何か日本に対して国益を損なうような行為をすれば、それは数が少ないからといって看過するわけには当然いかなくなるわけです。

 そこで、入管当局にお伺いしたいんですけれども、不正入国のチェックについては、この間、どのような形で強化をしていますか。

高宅政府参考人 お答えいたします。

 入国管理局におきましては、上陸拒否事由に該当する人についての情報、あるいは、退去強制をした人間につきましては、その際に採取した指紋などをデータベース化しておりますが、これらのデータベースを有効に活用して、不正に入国しようとする者を防止するということをしております。

 具体的に言えば、本邦に乗り入れる船舶、航空機は、ここから事前に旅客などの身分事項の提供を受けておりまして、上陸拒否事由該当者かどうか等の事前照合を実施しております。

 それから、上陸申請時に指紋及び顔写真の提供を義務づけまして、当局保有の指紋情報等との照合を実施しております。

 このほか、ICPO紛失・盗難旅券データベース検索システムというのがございますが、それにより盗難旅券の確実な発見に努める、あるいは旅券の偽変造のチェックを確実に行うというようなことをしております。

 このようなことによりまして、不正な入国を防止して、引き続き厳格な入国審査を実施していきたいと思っております。

柴山委員 ところが、それだけバイオメトリックス等の力をかりて不正入国を防止しようということで入管当局が尽力をされているにもかかわらず、つい先日も、中国人五十三人が中国残留邦人の親族として来日し、大半が入国直後に生活保護を請求するという事件が発生しています。ブローカーの取り締まりも含めての対策をぜひ示してください。

高宅政府参考人 平成二十二年に、大阪におきまして、不実の記載のある身元保証書などを提出しまして在留資格認定証明書の交付を受けて、日系中国人五十三名が入国しております。そして、その方たちが入国直後に生活保護申請を行ったという事案が発生しておりますが、このことを踏まえまして、入管局では経費支弁能力に関する審査を厳格に行っているところでございます。

 具体的には、入管法五条で、貧困者、放浪者等で生活上国または地方公共団体の負担となるおそれのある者というものは、上陸拒否事由、我が国に上陸することができないと定められておりますので、入国事前審査という性格を持つ在留資格認定証明書交付申請の審査に当たりまして、申請を行った外国人の生活費の支弁能力、あるいは身元保証人が支弁するというような場合にはその保証能力などを慎重に審査するなどしまして、公共の負担となるおそれがないことを確認しております。

 もし、在留資格認定証明書交付申請におきまして、例えば経費支弁方法として不実の記載のある文書を提出するなどのことがありました場合には、その証明書の交付を受けて入国し、あるいは入国して在留している外国人につきましては、入管法二十二条の四に基づきまして在留資格を取り消すなどの対応をしております。

柴山委員 さっき、ビザ発給要件で、十分な資力から一定の資力というような形の緩和がなされたというように聞いております。

 そして、今局長がおっしゃったんですけれども、結局、身元保証人等の存在については、今私がちらっと申し上げたように、国内のブローカーがおかしな書類を出すということは十分想定されるわけですよ。一定の段階で在留期間が取り消しになっても、それでブローカーがごっそりもうけるということが出てきてしまうわけなんですね。水際で取り組むだけでは、こういった私が今申し上げたような犯罪というのは根絶できないんです。

 だから、その点も含めて対策がどういうふうにとられているんですかということをお聞きしているんです。もう一度答弁ください。

高宅政府参考人 不正な形で入国しようとする外国人につきましては、最初の段階でまず在留資格の認定証明書の申請等がございますので、そこの段階で、先ほど申し上げましたように、経費支弁能力をきちんと確認する。そして、身元保証人につきましても、それが本当に身元保証する意思があるのか、あるいはその能力があるのか等を考えるわけでございますが、これも、不実の文書あるいは虚偽の文書等で破られた場合につきましては、入国管理局としましては、入国後にそのことが判明した段階で取り消すという方法をとっているわけでございます。

 ただ、そこにおきましては、例えばブローカー等が判明した場合につきましては、ブローカー自身が外国人であればもちろん入管局自身でそれへの対応をいたしますが、それ以外の場合には、やはり警察と協力して対応するということになると思います。

柴山委員 とにかく、しっかりとした連携をしなければいけないということを申し上げたいと思います。

 そもそも、先日、福岡高等裁判所において、永住外国人という限定はついていたかと思いますけれども外国人の生活保護の支給が法的根拠を持つという判決が出ているんですけれども、今御指摘になったように、十分な経費支弁能力等の在留資格の厳格なチェックがしっかりしていれば、私は、かなりこういった生活保護の支給ということを外国の方に行う必要性というのはないというように思うんです。

 また、生活保護のチェックというのは各自治体でやっているわけなんですけれども、それをきちんとトレースするということも必要だと思いますし、これは局長、今おっしゃった入管情報で外国人登録との連携、これはどういう形で行われているんでしょうか。

高宅政府参考人 外国人登録につきましては本年七月九日で廃止されておりますが、その後、新しい在留管理制度ということで、法務省が直接情報を取得する、外国人の在留状況に関する情報を取得しておるわけでございますが、いずれにしましても、この点につきましては、狭い意味での在留管理にかなり限定された情報ということになっておりますので、その市町村とのやりとりというのはある程度定まっておりますが、その事項は限定しておりまして、生活保護に直接関係するというのはちょっと難しいかと思います。

柴山委員 いや、だから、それですと、はっきり言って、本当に実効性のある自治体との連携ということになっているのかどうかということが私の問題意識なんです。

 入管当局の資料を生活保護先にも出させるようにするということが、今私が申し上げたような、要するに自治体レベルでのしっかりとした不正のチェックにつながってくるというように思うんですけれども、厚生労働省、対応はしていますか。

西藤政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護法は、日本国民のみを対象としており、外国人の方は対象としておりませんが、一方、昭和二十九年に通知を発出いたしまして、永住者、定住者等の在留資格を有する外国人の方については、人道上の観点から、予算措置として支給しております。

 そうした中で、外国人の方も含めまして、生活保護制度における不適正事案への対応というのは極めて重要でございます。

 こうしたことから、昨年八月に、法務省とも協議をさせていただき、地方公共団体向けに通知を発出いたしまして、入国直後の外国人から生活保護の申請があった場合には、その方が入国当局に提出した資料、具体的には、身元保証人の収入や本人の生計維持能力を証明する書類などでございますが、こうした資料の提出を求めることによりまして、入国時は生計の維持が可能であると認定されていながら、なぜ短期間で生活保護申請に至ったかについて厳密にチェックをすることにいたしております。

柴山委員 いずれにしましても、直接情報が連携をしていない。そういう中で、今、厚生労働省さんの方からお話があったような通達が出ても、自治体が本当にしっかりとチェックをするかどうかというのは私は怪しいと思いますよ。

 これはやはり、自治体の現場で仕事をしている職員にしっかりとしたインセンティブ、あるいは、不正受給をしてしまった者に対する監督、そういうことを行えるようにしないと、私は問題のある事案というのは防げないのではないかというように思っています。

 統計のことをちょっとお伺いしたいんですけれども、オーバーステイや不法就労の摘発についての具体的な統計数、あるいは生活保護についての件数、これについてお伺いしたいと思います。

高宅政府参考人 まず、オーバーステイ、不法残留者数についてでございますが、平成二十四年一月一日現在の不法残留者数は、電算上、六万七千六十五人となっております。これは、平成二十三年一月一日、一年前に比べまして約一万一千人の減少となっております。

 その中の不法就労者でございますが、この辺は摘発した方からということになりますが、平成二十三年中に入管法違反によりまして退去強制手続をとった外国人、これが二万六百五十九人おりますが、そのうち不法就労したものと認められた者は一万三千九百十三名、六七・三%でございます。

柴山委員 生活保護についてはいかがですか。

西藤政府参考人 お答えいたします。

 世帯主が日本国籍を有しない生活保護受給世帯数ということでございますが、平成十七年は二万八千四百九十九世帯でございます。それが年々ふえておりまして、直近では、平成二十二年でございますが、約四万世帯となっております。

柴山委員 おわかりのとおり、不法就労者数あるいはオーバーステイが減っていても、生活保護の受給件数はふえているんですね。やはり、こういう実態もきちんと踏まえた上で、今御指摘になられたようなさまざまな対策を厳格にぜひとっていただけるようにお願いを申し上げて、法案固有の質問に移らせていただきます。

 裁判所職員定員法一部改正法案の質問に移らせていただきます。

 率直に申し上げて、裁判官の数は少な過ぎるというのが私の考えです。例えば、ここ数年の東京地裁民事通常部での裁判官一人当たりの手持ち件数はどのように推移しておりますでしょうか。

戸倉最高裁判所長官代理者 過去三年間の数字で申し上げますと、東京地裁民事通常部の裁判官一人当たりの手持ち件数は、平成二十一年末で約二百七十件、二十二年末で約二百八十件、平成二十三年末で約二百二十件となっております。

柴山委員 異常な数字です。裁判官一人当たりの手持ち件数が三百件近い。平成二十三年についてはちょっと減ったといいますけれども、二百二十件という紹介がありましたけれども、異常としか言いようがありません。

 平成十三年四月十六日付、最高裁判所事務総局が出した「裁判所の人的体制の充実について」というペーパーを私、二年前のこの法務委員会の質疑で紹介させていただいたんです。そこには今後の目標として、裁判官の手持ち件数を大幅に減らさなければいけない、手持ち件数を現在の、平成十三年のです、百八十件から、四分の三の百三十件から百四十件、こういった形でペースダウンしていくということが必要だというように明記をされているんです。

 今御紹介された実態は全く真逆の方向でありまして、余りにもかけ離れているんじゃないですか。

戸倉最高裁判所長官代理者 今委員が御指摘のとおり、平成十三年に最高裁が申し上げました裁判官手持ち件数百三十ないし百四十件という目標の数値につきましては、その後、過払い金事件等を中心として急増した、当時必ずしもその点が十分想定できなかったということもございまして、結果として非常に事件が増加したというところでございます。

 ただ、この事件数動向については、最近は若干の落ちつきを見せておる。そのほか、今後とも一定程度の計画性を持った増員をしていくということによって、私ども、この目標については今後とも維持しながら、実現に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

柴山委員 計画的な増員とおっしゃいますけれども、私からいえば、計画性のない、非常に控え目な増員であるというように思っております。

 労働審判や行政訴訟など、専門事件の新受件数は最近どのような傾向でしょうか。

戸倉最高裁判所長官代理者 これらの専門的事件については、五年間の事件の比較で申し上げますと、まず、労働審判事件は、平成十九年には一千四百九十四件でございましたが、平成二十三年には三千五百八十六件、これは過去最高の件数でございます。

 行政訴訟につきましては、十年で見ますと増加をしておりますが、この五年間で見ますとほぼ横ばいでございまして、平成二十三年では二千二百六十八件でございます。

 知的財産訴訟は、四百件から六百件台の間で推移をしておりまして、平成二十二年には六百五件でございましたが、これが二十三年になりますと四百五十六件という状況でございます。

 医事関係訴訟は、平成十六年にピークを記録したわけでございますが、その後はやや減少傾向にございまして、五年前の平成十九年は九百二十七件、平成二十三年は七百四十一件といった状況でございます。

柴山委員 労働審判の件数が突出してふえていますね。

 先ほど来お話があった成年後見事件などの家事事件について、もう一度ちょっと説明をお願いしたいと思います。

戸倉最高裁判所長官代理者 まず、家事事件でございますが、これも同じく五年間で申し上げますと、家事審判事件が、平成十九年に約五十八万件でございましたが、平成二十三年には約六十四万件でございます。

 その中で、成年後見の開始事件につきましては、平成十九年には約三万件でありましたが、平成二十三年には約四万件でございます。これに伴いまして後見人に対する監督事務も増加しておりまして、これは後見監督の処分の事件と、あと、専門職後見人については報酬付与の事件で監督を行うわけでございます。その合計数で申し上げますと、平成十九年には約六万四千件でございましたが、平成二十一年に約七万七千件と、これは最高を記録いたしまして、昨年、二十三年には約七万五千件と、依然高い水準にございます。

柴山委員 はっきり言って、本当に深刻な水準に達しているというように言わざるを得ないというように思っています。

 そして問題なのは、常日ごろから指摘をされているように、弁護士の増加に比べて裁判官の増加のペースが、同じ期間で比較すると、割合的に非常に鈍いのではないかというように思うんですね。弁護士の増加と裁判官の増加、これを五年ベースで比較するとどうなりますでしょうか。また、司法研修所終了試験である二回試験の合格者の中で判事補に進む人数の割合の推移、これがこの五年間でどのように推移しているでしょうか。

戸倉最高裁判所長官代理者 弁護士数につきましては、平成十九年には約二万三千人でございましたが、平成二十三年には約三万一千人ということで、これは約三二%の増加でございます。これに対しまして、裁判官、これは簡裁判事を除いた人数でございますが、平成十九年には二千六百十人でございましたが、平成二十三年には二千八百五十人でございまして、約九%の増加でございます。

 また、修習を終えた者のうち判事補になった者の割合でございますが、これは、平成十九年に修習を終えた者のうち百十八名が裁判官になっておりまして、その割合は四・九七%でございます。平成二十三年に修習を終えた者につきましては、これは百二人が裁判官になっておりまして、四・七四%でございます。

柴山委員 とにかく、弁護士がふえている割に裁判官のふえるペースというのは非常に少ないというように思っています。

 今回の定員法では裁判官が三十人ふえていますけれども、判事補の期間が十年あるわけですから、判事補として採用したのは今から十年前であります。ここ数年間は判事補はふやしていないんですよね。これは、やはり私は非常に大きな問題があるのではないかというように思っています。

 なぜ判事補の採用をふやしていかれないんでしょうか。

戸倉最高裁判所長官代理者 今委員御指摘のように、判事補についてはこのところふやしてはおりませんけれども、判事補は十年後には判事になる人材ということでございます。そういう意味で、判事補の採用数を考えるに当たりましては、各種事件動向ということになるわけですが、それは、十年より先のさらに事件動向も踏まえてどの程度の採用をするかという、非常に長期的な見通しを立てる必要があるということがございます。

 それにしましても、私どもとしては、やはり判事補になる方で優秀な方がおられれば、これはぜひできる限り任官をしていただきたいというふうに考えているわけでございますが、昨今の司法修習生の志望状況を見ますと、私ども、できれば来ていただきたいと思うような優秀層の方は、やはり弁護士事務所の方も非常に早目に内定であるとか、そういったこともやっておられるということもあり、極めて厳しい競争下にございまして、私ども、判事補にふさわしいなと思う方が、必ずしも十分希望をしていただけてもいないという状況にあるわけでございます。

 こういったことはございますけれども、私ども、やはり少しでも将来を担う優秀な判事補についてはできる限り採用してまいりたいというふうに考えておるところではございます。

柴山委員 裁判の中で解決する紛争手続というのが、ある程度、非常に件数的に難しい、厳しい状況だというのであれば、これからは裁判の外で解決する手続を充実させていかなくてはいけないのではないかというように思っています。そういった裁判外の紛争解決実態はどのようになっているのでしょうか。

 そして、ちょっと関連するんですけれども、独禁法で審判制度を廃止して訴訟へ一元化しようという、時代に逆行した流れができつつあったかと思うんですけれども、この審判制度廃止の現在の状況について、それぞれお伺いしたいと思います。

 まず、裁判外紛争解決手続からお願いします。

滝国務大臣 裁判外の紛争解決は、司法制度改革の中で出てきた問題でございますから、比較的なじみがまだないというのが実態だろうと思います。しかし、当時からできるだけ裁判外の紛争解決というものにも力を入れていくということで、法務省が認定しているいわば認証ADRということもかなりふえてきておるわけでございます。

 御指摘のように、裁判だけではなくて、やはりADRを中心にした、いわば調停、和解みたいな、一口に言えばそういうことでございますけれども、それによる紛争解決というものももうちょっと宣伝をしていく余地があるかなという感じは今いたしております。

鵜瀞政府参考人 独占禁止法の審判制度を廃止いたしまして、公正取引委員会の行政処分に対する不服審査を裁判所に委ねるという独占禁止法改正案でございますが、一昨年の三月に国会提出されまして、今百八十回国会まで継続審査となっておりますけれども、まだ成立しておりません。

柴山委員 これは大切な法案ですから、しっかりと与党の皆さんにチェックをしていただきたいというように思います。

 時間がなくなりましたので、最後の質問です。

 これは昨年の定員法の質疑のときにも質問させていただいたんですけれども、震災に伴って、さまざまな法律事件の増加というものが現実化しているのではないかというように思います。どのような事件がどのように増加して、それに対して現状しっかりと対応できているのかどうか、これを最後にお伺いしたいと思います。

戸倉最高裁判所長官代理者 震災に関連する事件につきましては、私どもも、これは神戸の震災の経験もございまして、増加するのではないかという予測を持って注視をしてまいったわけでございますが、今のところ、平成二十二年と平成二十三年の比較で見ましても、被災地の地裁の民事訴訟事件につきましては、平成二十二年の比較でいきますと、むしろ二八%の減少でございます。

 また、簡裁民訴事件あるいは民事調停事件では、いずれも平成二十二年度の半分程度という事件の増嵩でございます。

 ただ、家事審判事件につきましては、家事審判事件は全般的には微増というところでございますが、その中で見ますと、相続放棄の審判事件が、これは前年比でいきますと二、三割程度増加しております。また、相続放棄等の期間伸長の審判事件につきましては、三、四倍に増加したところでございます。

 こういった増加した事件につきましては、私ども、必要な人的手当て等、審理の対応をいたしまして、現時点では全て事件処理を終わっておるというところでございます。

柴山委員 大変痛ましい実態を紹介していただきましたけれども、表に出てきた訴訟が少ないことが法的解決のニーズが減っているということではありませんから、声を殺して泣いている人たちが出ないように、しっかりと法曹全体で取り組みをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、熊谷貞俊君。

熊谷委員 国民の生活が第一・きづなの熊谷貞俊でございます。

 新会派として本日は質問の機会を与えていただきました。大変感謝しております。

 まず、この定員法について質疑をさせていただくわけでございますが、そもそも国民一人一人が自分の権義を主張し、あるいは国家としてもその権義を正当に外に向かって主張する、こういうことが非常に大事だと思います。先ほど質疑にもありましたように、最近問題になっておりますいじめの問題等も、やはり基本になっているのは、幼少年期から自分の権義というものをしっかりと自覚して、そして他人の権義についても鈍感でない、こういう社会をつくっていかなければならない。

 そういう意味で、国民に開かれた司法というものがちゃんと整備されて、そして国民あまねくその法益を享受する。単に法によって保護される、擁護されるというだけじゃなくて、法益を享受する、こういう制度が、あるいは法整備が不可欠だと私は思っております。国民性の問題があって、波風を立てないのをよしとする、あるいは長いものに巻かれろ、こういうような国民性をそのままよしとする、こういうことでは、せっかくの司法、これの役目が成り立たないと私は思っております。

 そういう意味で、今回提出されております定員法、我が党の趣旨からしましても賛成でございます。

 ただ、これはことしの一月に閣議決定され国会に提出されたものでございますが、一体なぜ今までこういう形の審議がなされなかったのか。あるいは、この法案の成立時期は一体いつを、期限はいつごろ、こういうふうに考えておられるんでしょうか。滝大臣、早速でございますが、よろしくお願いします。

滝国務大臣 本来であれば、定員法は予算に関連する法案でございますから、できるだけ早くというのが大原則でございます。そういう意味では、今国会というか速やかにというお願いを申し上げたいと思うんです。

 ただ、現実問題として、それではいつまでかというのは、期限があってないようなところもございますけれども、基本的には新しい判事を任命するのは毎年十月以降ということでもございます。したがって、それまでには何とかということもあるんですけれども、ただ、準備期間がございますので、この夏というか、この数日間の中で採決をしていただいて、成立に持っていっていただければ大変ありがたい、こういうふうに思うわけでございます。

 ただ、今申しましたように、準備期間ということを入れると、そんなに余裕のある法案ではない、こういうことだけは申し上げておきたいと思います。

熊谷委員 こういう定員法の改正につきましては、例年遅くとも四月には成立しているわけでございます。

 なぜ、こういうことを申すかと申しますと、我々が新党立ち上げに至った最大の原因であります、いわゆる消費税の論議が、三月以降非常に、一大重大問題として取り上げられて、特に、野田総理が、消費税を上げなければもうあしたにでも財政が破綻する、ギリシャのようになる、こういうことをしきりに国民に喧伝されました。こういうことがあって、わずかとはいえ、人件費が、わずか約一億弱でございますが、増になるこの法案について、法務省として、出すのをちょっとちゅうちょされたんではないかなと、ちょっとそういう類推をしているわけでございます。

 こういう野田総理の御発言に対して、この法案との関連で、どういうふうにお考えでしょうか。滝大臣。

滝国務大臣 今委員の方から、国の財政をおもんぱかってこの法案の進行にちゅうちょされたんじゃないだろうか、こういうような温かい御配慮もございましたけれども、基本的には、最高裁は最高裁として、国の財政とは無関係ではございませんので、多少、増員要求も、いわば行政職に準じた要求をせざるを得ない、こういうような問題もこの法案の中にはあったかと思います。

 しかし、その問題とこの問題とはやはり切り離して、必要なものは必要な時期に必要な予算を必要とするということは、これはもう共通の認識として考えているところでございまして、今のような、そういうようなところまで深い読みをしてこの法案の進行がおくれてきたというわけではないというふうに思っております。

熊谷委員 重ねて滝大臣にお尋ねいたしますが、そもそも平成二十一年、政権交代前に、定員管理についての閣議決定がなされました。ことしの四月に政府の方から、国家公務員新規採用六割減という大変大幅な削減を閣議決定されておられるわけです。

 重ねてお尋ねいたしますが、こういう国家公務員定員削減という大きな政府決定の中でこの定員法を提出される、そのお覚悟というか、それをちょっとお尋ねしたいと思います。

滝国務大臣 基本的には、司法制度改革の中で裁判官を年次的に増加させていかなければいけない、そんなことでやってまいりました。一応、一段落はついたのでございますけれども、先ほど来最高裁の総務局長からも御答弁がございましたように、裁判所というのは、やはり訴訟事件がふえてくればそれに対応していかなければいけない、受け身の形の部分がかなり裁判官の数の問題に影響してくる。そんなこともあって、今までの司法制度改革の当初の計画ではなかなかこなし切れない部分というのは、こういう時代になってもやはり積み残しとしていわば出てくるわけです。

 そういう意味では、最高裁も、国の行政職の定員削減にある意味では見習いながら、やはりそこは裁判所独特の事情というものを考えざるを得ないという格好でこういう定数を決定された。その基本的な方針というのを法務省としても当然尊重する、こういうことで、法務省を通じてこの法律を提出させていただいているというのが実態だというふうに認識をいたしております。

熊谷委員 よくわかりました。

 裁判官の増員計画というものは、平成十三年に、司法制度改革審議会の答申に従って、今後十年間で五百人の増、こういう提言がなされたというふうに承知しております。

 ことしでちょうど十年が経過したわけでございますが、この増員計画は最終的に達成されたものとお考えでしょうか。今の現状に鑑みてお答えいただきたいと思います。

戸倉最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、司法制度改革審議会におきまして、最高裁判所は、一定の事件の審理期間の減少などを目標といたしまして、四百五十人プラスアルファというようなプレゼンテーションをいたしました。その結果、途中、裁判員のための人的体制の整備ということもございまして、十年間で六百七名の裁判官の増員をいただいたわけでございます。

 ただ、この間、事件が当時の想定をはるかに上回る、民事訴訟事件を中心とした事件増という状況がございまして、この増員の効果というのは、例えば平均審理期間であるとか、あるいは二年を超える長期未済事件の減少といった点ではあらわれているところでございますが、なお私どもが当時申し上げておりました審理期間の減少というのが達成できているわけではございませんので、この点については、今後とも、人的手当てと、あと審理の改善といった努力をしながら、目標達成に向けて努力してまいりたいと考えております。

熊谷委員 今の現状まで含めて、効果として、五百人という数が六百七名ということになっておりますが、民事、特に家事とかあるいは労働関係の事件の増ということで、審理期間でありますとか事件数から見て、十分目標達成されたとは言いがたい、こういう御答弁でございました。

 それでは、二十五年度以降、裁判官の採用をどういう方針でなされようとしておられるんでしょうか。その基本方針をお答えください。

安浪最高裁判所長官代理者 裁判官の採用方針についてのお尋ねでございますので、少し御説明をさせていただきます。

 採用数を考えるに当たりましては、まずは司法に対する需要、すなわち各種事件数の動向や事件の質の変化、望ましい審理形態のあり方などを総合的に考慮いたしまして、全体としてどの程度の人数の裁判官が必要かを考えていくということになります。

 もちろん、裁判官への任官を希望し、かつ裁判官としてふさわしい者につきましてはできる限り任官してもらいたいというふうに考えておりますが、他方で、質の面からいいますと、一定の水準を満たし、裁判官にふさわしい資質、能力を備えていることが必要でございまして、下級裁判所裁判官指名諮問委員会でも、そのような観点から審議がされ、適切な答申がされているものと理解しておるところでございます。

 今後とも、司法における需要をも勘案しつつ、裁判官にふさわしい人をきちんと採用し、裁判の運営に必要な体制を確保できるよう努力してまいりたいと考えております。

熊谷委員 質の問題と人員数、その問題から事件数の推移を見守りながら定員の問題を考えていこう、こういう基本方針を述べられたわけでございますが、一方、財政の状況というのも、御存じのようにこういう状況でございます。司法関連、特に裁判所だけが必要数をいつも確保できるかというと、なかなかそうではない。

 そこで、もちろん人員数もさることながら、人員の配置、先ほども入国管理の問題等々で非常に逼迫しているところがあると。一方、そうでもないところがあるかもわかりません。そういう意味で、人員の配置を適切にするというのも、人事管理上大変必要だと思うんです。

 そこで、ちょっとお尋ねしたいんですが、いわゆる裁判所と法務省、特に法務省ですね。法務省だけではございません、公取であったり、政府、第三者機関。こういうところに人事交流という形で、これは定員を外して、本来業務からそちらの方へ出向というか派遣されておられる方が毎年何人かおられる。

 こういう人事交流につきまして、特に一番たくさん受け入れておられます法務省と、それから、派遣先といいますか出されるところの裁判所の双方から、その必要性、意義について、あるいは将来をどういうふうに考えておられるか、お尋ねしたいと思いますので、お答えください。

滝国務大臣 法務省の中で、もちろん裁判官に来てもらっています。ただ、それはあくまでも、裁判所の定員で、定数の中で来ているんじゃなくて、法務省の職員定数の枠の中で裁判官に来てもらう。その後は、もちろん裁判所の方は裁判官の枠があきますから、そこは裁判所の中で埋めるということはあると思いますけれども、少なくても法務省としては、毎年毎年何人かの減少のある定員枠の中で人事交流をやっている、これが実態でございます。

安浪最高裁判所長官代理者 裁判所の側から御説明を申し上げます。

 最高裁といたしましては、裁判官が裁判所の外部で裁判官以外の法律専門職としての経験、それから多様な外部経験を積むということは、多様で豊かな知識、経験を備えた、視野の広い裁判官を確保するために極めて有意義であると考えているところでございます。

 司法制度改革審議会の意見書におきましても、裁判官がそのような経験を積むことは高い資質の裁判官を確保する上で有用であるとして、その実施を求めているところでございます。

 裁判官が法務省その他の行政官庁へ検察官に転官した上で出向することは、そのほかのいろいろな外部経験、これは弁護士職務経験もございますし、民間企業研修というようなものもございます。そうしたものも含めた外部経験という大きなプログラムの一つということで、今後とも進めていきたいというふうに考えておるところでございます。

 以上でございます。

熊谷委員 人事交流について、私は今大変驚いたわけですが、裁判所側から、経験をふやす、一種研修というような形の意義を認められていると。大変驚いているわけでございます。

 というのは、受け手側の法務省からは、やはり裁判官としての見識あるいは知識、これがどうしても必要であるので来ていただくんだ、こういう見解をずっと聞いておりますので、裁判所側から、いや、これは経験をふやすためだ、こうおっしゃるのは、非常に、私はこういう人材の逼迫状況から考えていかがなものかなと。

 というのは、研修ということであれば外部研修制度というのがございます。これについて、ちょっと今簡単に質問させていただきたいんです。

 この研修制度の意義もやはり同じ趣旨のことを答えられると思うんですが、ただ、日銀でありますとか、経団連の団体であります21世紀政策研究所、そういうところに定期的にここ十年ぐらい行っておられる。私は、国民に開かれた司法という、裁判官として経験をふやすためには、やはりもっと、例えば、先ほど来質疑もありました後見人制度の支援センター等々を見てこられた方が、司法あるいは裁判、こういうものに対してよっぽど身近な国民の声が聞けると思うんですよ。いかがですか。

安浪最高裁判所長官代理者 まず、先ほどの答弁に追加させていただきますけれども、研修としての意味合いのほかに、先ほど法務大臣の方からも御答弁がございましたとおり、裁判実務の経験があり法律に精通している人材の派遣を求めてくるという、要望があることを踏まえまして、法務省等に出向していただいているということでございますので、そこはつけ加えさせていただきます。

 それから、研修ということを申し上げました。日銀、それから21世紀政策研究所に一年間ということで派遣しております。これも、その研修先におきまして、研修先の職員、それからさまざまな企業の担当者、研究者など、多様な方々と接することで大いに刺激を受けて、多様な経験知識を備えるということに役立っていると考えております。

 それから、派遣先の関係でございますけれども、委員御指摘のほかに、法テラスであったり、海外の法整備支援に出向くといったような、ほかの派遣先もございます。

 以上でございます。

熊谷委員 人材の払底状況の中で、やはりその有効活用といいますか、適材配置ということも含めて、十分人事管理の面で御配慮いただきたい、こういうふうに思うわけでございます。

 研修につきましても、非常に特定分野に偏らないで、今ちょっと法テラスとかもおっしゃいましたけれども、市民に直結したところにぜひ研修に行くようにしていただきたいと思います。

 ちょっと時間の関係で、城井政務官に、最後になりましたけれども、法曹養成の問題についてまたお尋ねしたいと思います。最後になるかもわかりませんが。

 平成十三年度の司法制度改革審議会の答申、増員ということで、これが基本になりまして着実に増員計画がなされているというのは御案内のとおりでございますけれども、一方、法曹養成制度の抜本改革ということで、法科大学院も含めて新司法試験あるいは司法修習制度等々の見直しがなされて、いろいろな問題が実は出てきております。

 例えば、司法修習生の能力が低下しているとか、あるいは修習生として二回試験に落ちてしまう、こういう学力低下ということが危惧されている中で、法務省としては、今の現状の法曹養成制度についてどのようにお考えでしょうか。

松野大臣政務官 私からお答えしたいと思います。

 御案内のように、法曹養成制度、正直言って、いろいろな問題点が出てきているということは否めない事実だと思います。当初制度設計したようなふうには、なかなか現実問題としてなっていない。

 一つは、法曹の志望者が非常に激減をしている。ピーク時には七万人ぐらいあった人数が二万人を切る、こういうことになっている。また、法科大学院を設立して、そこでしっかりと実務教育も行う、こういう予定であったんですが、なかなか法科大学院での教育が当初の理想どおりには進んでいないということで、ばらつきもあり、合格率がなかなか低迷をしている、最近では二割台に低迷をしている、こういうような問題も発生をしている。また、法科大学院の中には、もちろん優秀な学生が集まっているところもありますけれども、合格率が非常に低下をして、ごく少数しか合格者を出せない、こういうところも現実問題としてあるわけです。

 こうした現実を踏まえて、御案内のように裁判所法の一部改正が通りましたので、しっかりとした法曹養成フォーラムにかわる合議体の検討組織を立ち上げて、ここでやはりもう一度この法曹養成の問題については議論し直す、こういうことで進めていく必要があろうかと思っております。

熊谷委員 ありがとうございました。

 やはり継続的に見直しをして、法科大学院制度というのが平成十六年にできているわけでございますが、国際的にもあるいは国民にも開かれた形の、国民に非常に身近な司法である、法である、こういうことを担保するための一つの、そのための人材養成であるということが基本だと思うんですよ。

 ですから、司法試験の合格者の数も、実は当初三千人という計画を立てておられて、二年前に千葉法務大臣から、三千人計画はそのまま堅持します、こういう御答弁をいただいているわけでございますが、滝法務大臣は、この人数、司法試験合格者数三千人の計画についてどのようにお考えでしょうか。

滝国務大臣 司法制度改革の当初では、三千人の数字というものも、時期的なことも言っていたと思います。ただ、その後の実態を見ると、今直ちに三千人要るのかどうかということについては、前提がまだまだ熟していない、こういう状況だろうと思います。

 当時は、弁護士、検察官あるいは裁判官、そういういわゆる法曹三者だけでなく、企業もそれから公務員も、法曹資格を持っている人がもっとそういう部分に進出すべきだ、こんなこともあって三千人という数字をフランスの例に倣って出したというふうに聞いているわけでございますけれども、社会全体がそこまで熟していない。そういう意味では、今、三千人というような段階ではないように思っているわけでございます。

熊谷委員 一応しかし、目標としてはそれは堅持される、こういうことでよろしゅうございますね。それは実際問題として、現実問題どういうふうにそれに近づけていくかということはあるでしょうが、そういうことでございます。

 私は、これは理念として、先ほど来、冒頭からずっと言っていますように、法曹人口をふやすということがいわゆる訴訟社会を到来させる、こういうような消極的あるいは否定的なことをおっしゃる方がおりますが、訴訟社会はオーケーだ。黙って泣き寝入りする、言うべきことを言えないような国よりよっぽど健全だと私は思います。したがって、それを支える法曹人口をふやしていくというのは、これは私は必要なことだと思います。

 最後になりましたが、そういう人材を養成していくために設立された法科大学院制度。私も与党時代に法科大学院を何校か訪問して見させていただいておりますが、やはりそこで、そういう理念と現実、司法試験の合格、こういう問題と、社会全体の法曹に対する必要、需要を喚起していく、ここの辺が非常にずれがある。アカデミアの先生、あるいは実務の先生、同じ一つの法科大学院の中でも全然考え方が違う。こういうところで、文科省としてどういう方針でこれから法科大学院を改革していこうとされるのか、最後になりましたが、お答えください。

城井大臣政務官 お答えを申し上げます。

 委員御指摘の問題意識については共有するものであります。

 現状でありますが、これまでも改善の取り組みを進めてきた結果、入学定員や入学者数の適正化、あるいは厳格な成績評価の実施というところについては近づいてきているというふうに思いますけれども、一方、先ほど松野政務官からもございました、司法試験の合格率が低迷している状況で、特に法科大学院それぞれの間の差の拡大がやはりある。そして、法学の未修者と既修者の間の差も広がっている。こうしたところについては明らかになっているというふうに思っていまして、国会等からもさまざまな御指導、御指摘をいただいています。

 そうしたものも踏まえながら、政府全体での検討に先駆けて実施できる、対応できる部分については速やかに実施の検討が必要だということで、本年の七月に法科大学院の教育改善プランというものを策定、公表いたしました。

 主な内容をさくっと申し上げますと、法科大学院教育の成果の発信、それから、課題を抱える法科大学院を中心にした入学定員の適正化、教育体制の見直しを加速するということ、また、未修者の教育を充実、そして、法科大学院教育の質の改善等の促進、こうしたところに取り組むことといたしておりますけれども、こうした一つ一つの内容を通じまして、法科大学院の教育の質をやはり改善していく、できる限り加速をしていくというところを文部科学省としても頑張りたいというふうに思っております。

熊谷委員 ありがとうございました。

 もう時間が来ておりますので、これで終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

鉢呂委員長 次に、横粂勝仁君。

横粂委員 改革無所属の会の横粂勝仁でございます。本日は、質疑の時間を賜り、ありがとうございます。

 私たち改革無所属の会は、既存政治をどうにかして改革していきたい、その厚い志を持った無所属の仲間でございます。私たちは、それぞれの立場で、それぞれの思いを質疑させていただきたいと思っております。

 それでは、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、東京地方裁判所と東京地方裁判所立川支部との人員配置、いわゆる多摩格差についてお聞きしたいと思っております。

 多摩格差という言葉、新しくて古い言葉かもしれませんが、いわゆる行政窓口でも格差があると言われますし、地下鉄整備についても、また、小さなものでいえば、電話番号の違い、電話料金の違い、そういったところで格差が指摘をされております。さらに、市民の権利救済を図るまさに法的サービスにおいても格差があるのではないかということを質疑させていただきます。

 それでは、東京地方裁判所と東京地方裁判所立川支部の管轄区域の人口比率と裁判所職員の比率はどうなっているのか、裁判所職員の比率については、裁判官のみのものと、その他の職員を含むもの、それぞれ教えてください。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 東京地方裁判所の立川支部につきましては、支部でございまして、地裁と家裁が併設されておりますので、それを合わせた人数ということで比較をさせていただければというふうに考えております。

 まず、人口比でございます。これは平成二十四年四月現在の人口比でございますが、住民基本台帳による人口比でございますと、本庁管轄区内と立川支部管轄区域内の人口比は約二対一でございます。

 これに対しまして、裁判所職員数全体の比率は、本庁対立川支部で約六対一でございます。裁判官だけを取り出しますと、これが約十対一ということでございます。

 なお、人の配置につきましては、私ども、人口だけで配置するということではございませんで、事件数を主に基準にしておるところでございまして、御参考までに事件数の比率も補足させていただきますと、例えば民事訴訟事件でございますと、本庁と立川支部の比率を見ますと、約十二対一でございます。これに対しまして、家庭裁判所の審判及び調停の比率で見ますと、これが約二対一という状況でございます。

横粂委員 人口比率以外のデータも教えていただき、ありがとうございます。

 もちろん、事件数という意味で考えるものかもしれませんが、人口だけを考えるとやはり不平等なところが出ている、また、そういった法的サービスの差があるからこそ、逆に事件数にも差が出てくるということも考えなければいけないと思っております。

 それでは、本庁と支部の機能、権限の違い、つまり、本庁ならできるけれども支部ならできないこと、どんなものがあるか、教えてください。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 支部におきましては、支部の設置規則によりまして、地方裁判所の権限のうち、いわゆる控訴等の上訴事件及び行政訴訟事件は支部では取り扱わないということになっております。その他、合議事件でありますとか裁判員事件、あるいは労働審判につきましては、それぞれ各庁の決定によって取扱支部を決めるということでございまして、全ての支部で行っているわけではございませんけれども、立川支部については、そのいずれの事件も取り扱っているところでございます。

横粂委員 やはり上訴に関することですとか、あと行政事件、そういったものが支部ではできない、そういった不便というところもある。そういったところで、やはり、多摩に住んでいる方々からしてみれば、わざわざ霞が関まで来なければいけないという大変さがあるかと思っております。

 そういった状況を踏まえて、東京地方裁判所の立川支部を本庁化することができないか。やはり四百万人の方がいる。東京二十三区では九百万人。多摩では四百万人、その他の県の何個分にも相当する大きな地域だと思うんですが、ここに本庁を置くことはできませんでしょうか。いかがでしょうか。

戸倉最高裁判所長官代理者 地方裁判所及び家庭裁判所の本庁の配置につきましても、これは裁判所の配置でございますから、私どもの立場として考える必要があるところではございますが、最終的には、これは法律で定められているところでございまして、これは立法政策によるところであろうかというふうに考えております。

 ただ、その前提で申し上げますと、裁判所の本庁は、歴史的経緯のあります北海道を除きますと、各都道府県一庁に配置するということでございまして、この配置は一方で行政区画のあり方とも密接に関連してくるものと思われます。

 したがいまして、管内人口あるいは事件数で立川支部に関しては非常に大きな庁であるということは私どもも承知しておりますけれども、こういったものを本庁にするということは、今申し上げた行政区画のあり方あるいは他の国家機関ともいろいろ影響がある問題でございますので、こういった広範な、多角的な観点から決定されていくものであろうかというふうに考えております。

 ただ、議員御指摘のように、立川支部は非常に大きな支部でございますし、事件数も多うございます。利用される方々にできる限り御不便をおかけしないように、その適正、迅速な審理については、私ども、努力してまいりたいと考えておるところでございます。

横粂委員 ありがとうございます。

 やはり、今御指摘の行政区画のあり方ですとか、あとは歴史的経緯、その他、他の国家機関との関係、簡単に進められることではないかとは思いますが、多摩の地域において、事件数も多い、人口も多いということで、それを求める声が大きなものであるということも御認識の上、前向きに進めていただけたらと思っております。

 ところで、次に、支部についてお聞きしたいと思います。支部に至っても東京都は少な過ぎるのではないかという問題点でございます。

 神奈川県においては、横浜地方裁判所には四つの支部、川崎支部、相模原支部、横須賀支部、小田原支部、埼玉県内にも四つの支部があって、千葉県内にも七個の支部がございます。しかし、東京には立川支部一つのみでございますので、やはりこれをふやすこと、または、廃止された八王子支部を存置する、そういったお考えはいかがでしょうか。

戸倉最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 八王子支部につきましては、これは管内の事件の増加に伴う庁舎の狭隘化が非常に深刻化してまいりまして、現地におきましては敷地に増築の余地が乏しいということから、裁判事務に非常に支障を来すという状況がございました。そういったことから、十分な施設容量を確保してこれを解消し、事件処理の体制を充実強化するために、場所を立川市に移転いたしまして、委員も御存じのような非常に立派な庁舎を建てていただいたというところでございます。

 こういった移転の経緯からいたしますと、八王子支部に関しましては、時間的、距離的に立川支部とも非常に近接しておるというところでございますので、ここに改めて支部を設けるということは、支部の配置からいっても相当とは言えないというふうに考えられまして、これは非常に困難であるというふうに考えておるところでございます。

横粂委員 建物の老朽化という点、そして八王子と立川が距離的にも近いということも理解はしておりますが、それでも、二十三区と多摩でそれぞれ一個ずつしかないというのは、他の県と比べてやや少ないのではないかと思いますので、やはり適切な地域というもの、その他アクセスの面も含めて、ふやすことも前提に御検討いただけたらと思っております。

 また、今回は、多摩格差ということで、東京のことを取り上げさせていただきましたが、これは東京のみならず、もう全国あまねく均等に法的サービスを受けられるような仕組みということで、そういった全国的な格差も含めて御検討いただけたらと思っております。

 そういったところで、質疑報告しておりませんけれども、このやりとりを聞いて、多摩格差または全国的なその格差も含めて、大臣の御所見をお伺いできればと思います。

滝国務大臣 今お聞きいたしておりまして、八王子支部が立川に統合される、東京は交通の便がやはりすぐれているな。地方であったらそう簡単に、統合なんていうのは大問題になる。やはり、東京は全てに、交通網が整備され、電車もそれなりにある。そういうことを私は、東京から離れた選挙区でございますから、実感を今させていただきました。

 件数からいったら、あるいは独立した支部があってもいいのかもしれませんけれども、そういういろいろな総合判断のもとに統合されたというふうに私も理解をいたしました。

横粂委員 御回答ありがとうございます。

 確かに、他県と比べて、交通便のよさということは考慮に入れるべきことかと思います。また、新たに支部をつくるとなった場合には、お金のかかることでもございますのでやはり検討が必要かと思いますが、最初に指摘をさせていただいた、まさに立川支部の本庁化ということであれば、あれだけ立派な建物があって、本庁化するということは政治的決断一つでできるわけで、お金もそんなにかからないことだと思います。

 やはり、支部の増設、それができないのであれば、あの地域、一つしかないのであれば、その一つを本庁と同じような、何だってできる、そういった施設にしていくことが必要かと思いますので、もう一度、立川支部の本庁化について、前向きに御検討いただけるか、御回答いただければと思います。

滝国務大臣 この問題は、最高裁がお考えになることでもございます。もちろん検察庁もそれに付随するわけでございますけれども、基本はやはり裁判所がどこに設置されるか。それによって、立川がいわば本庁の一つになるということであれば、それは検察もそれなりに考えていかなければいけないだろうとは思いますけれども、まずは、今の総務局長からのお話ですと、そこまで踏み込んだ検討はまだのようでございますから、その辺のところも考えて、これからの課題として委員が御指摘になったというふうに思っております。

横粂委員 前向きな御回答、ありがとうございます。

 あと、それに加えまして、裁判官だけではなくて、弁護士という面であっても、二十三区の方には一万人いるけれども多摩の方には四百人ぐらいしかいないということもありまして、やはり、裁判官だけではなくて弁護士ももっともっとふやして、あそこに行って、早く本庁来てくれと言えるような、弁護士がふえて、法的サービスも拡充していく、行政側ができること、そして弁護士側ができることもやっていく問題かなと思っております。

 人員配置について、全国あまねく均等に法的サービスを受けられるように、東京都について、そして全国について、適切、適正な配置をお願いして、以上で私の質疑を終了とさせていただきます。

 ありがとうございます。

鉢呂委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鉢呂委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

鉢呂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十四分散会


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