衆議院

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第15号 平成25年5月29日(水曜日)

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平成二十五年五月二十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 石田 真敏君

   理事 江崎 鐵磨君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 若宮 健嗣君

   理事 田嶋  要君 理事 西田  譲君

   理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大見  正君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅野さちこ君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      鳩山 邦夫君    林田  彪君

      三ッ林裕巳君    宮澤 博行君

      盛山 正仁君    山田 賢司君

      枝野 幸男君    階   猛君

      辻元 清美君    今井 雅人君

      西根 由佳君    大口 善徳君

      椎名  毅君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        後藤 茂之君

   法務大臣政務官      盛山 正仁君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 山下 史雄君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  萩原 秀紀君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  榊原 一夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 新美  潤君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           山下 和茂君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           常盤  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       高倉 信行君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   法務委員会専門員     岡本  修君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     山田 賢司君

  菅家 一郎君     菅野さちこ君

同日

 辞任         補欠選任

  菅野さちこ君     菅家 一郎君

  山田 賢司君     小田原 潔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官山下史雄君、法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長稲田伸夫君、法務省矯正局長西田博君、法務省人権擁護局長萩原秀紀君、法務省入国管理局長榊原一夫君、外務省大臣官房参事官新美潤君、文部科学省大臣官房審議官山下和茂君、文部科学省大臣官房審議官常盤豊君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官高倉信行君及び厚生労働省医政局長原徳壽君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三ッ林裕巳君。

三ッ林委員 おはようございます。自由民主党の三ッ林裕巳と申します。

 私の選挙区、埼玉十四区、ちょうど埼玉の東側一帯でございます。江戸川、中川に囲まれた農村地帯、また都市部が含まれている地域でございます。

 谷垣大臣におかれましては、先日、自転車で私の地元の吉川市までおいでいただきまして、ありがとうございます。

 そこで、私の地元では、災害に対して非常に強い関心がございます。といいますのは、昭和二十二年にキャスリン台風がありまして、これで利根川の堤防が決壊いたしまして、千名を超える犠牲者が亡くなられました。その後、この地元の地域におきましては、災害に対する非常に強い思いがありまして、強化堤防から、そして一致結束した、集落においての災害に対する意識が非常に強い地域でございます。私も、そういうところに育ちまして、今回の東日本大震災におきましても、災害に対して非常に強い今後の懸念がございます。

 今、阪神・淡路大震災、そして東日本大震災、こういった大きな災害があった中で、国土強靱化、これに政府の方で取り組んでおられること、本当に敬意を表したいと思いますし、この国土強靱化、物だけではなくて、やはり人、これも重要な視点でありまして、各地域で災害拠点病院、私も医師として三十年近く災害医療等に携わっておりましたけれども、この災害拠点病院におきましては、緊急時、災害時に多くの被災者を受け入れる、そういった施設が災害拠点病院であります。埼玉には十四カ所、東京には六十八カ所あるとされておりますけれども、やはり、まだこの災害拠点病院、非常に充実させていかなくてはならないと考えております。

 そこで、この災害拠点病院、どういった準備が必要かといいますと、やはりこれはDMAT、緊急時に被災者を多く受け入れて、できるだけ災害死をなくす、このために、DMAT、緊急時のその体制が阪神・淡路大震災以降とられるようになってきておりますけれども、このDMATをやるに当たって、災害拠点病院等で扱うに当たって、非常に懸念されている点がございます。

 一つは、これまで多くの法医学者、そして災害医療に携わっている医師、看護師、救急救命士からの御意見、私、これをお聞きいたしまして、こういう機会に質問をさせていただきたい、こう思いまして、きょう一般質問ということで、その内容を取り上げさせていただきたいと思います。

 まず、DMATで被災者を診療するに当たりまして、トリアージという言葉がございます。このトリアージは、災害発生現場において多数の傷病者が同時に発生した場合、傷病者の緊急度や重症度に応じて適切な処置や搬送を行うために治療優先順位を決定する、これがトリアージでございます。

 ただ、このトリアージに関して、看護師や救急救命士が法の裏づけがあって業務が遂行できるようにしなくてはなりません。

 現在、このトリアージにかかわる職種としては、医師、看護師、救急救命士が携わっておられることは御存じのことと思いますけれども、資料の一に、各業種の、医師法それから救急救命士法をちょっと資料として提出いたしましたけれども、「医師でなければ、医業をなしてはならない。」そして看護師においては、あくまでも医師の指示のもとにということが前提となっております。そして救急救命士においても、「医師の指示の下に、救急救命処置を行うことを業とする者」、こういうふうに規定されております。そして二枚目のところに、救急救命士のところで、「診療の補助として救急救命処置を行うことを業とすることができる。」こう書いてあります。

 医師、看護師、救急救命士において、それぞれの業務について法で規定されている条文についてこのようにあるわけでございますけれども、受け入れた場合、DMATというのはチームでやるわけですけれども、傷病者の緊急度や重症度を判定するいわゆる診断、判断能力があると保証する法的根拠について、それぞれの職種において存在するのかどうか、この点をまず御答弁をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

原政府参考人 お答えいたします。

 トリアージそのものにつきましては、一般的に、医師による診察、診断に先立って、看護師などが、あらかじめ定められたいわゆるABC、エアウエー、気道の確保、気道がどうかとか、あるいはブリージング、呼吸がどうか、サーキュレーション、循環、脈拍などの循環がどうか、それから意識がどうか、これらの項目の確認を行って、治療優先順位の判断を行っていくということでございまして、医師が行うような診断であるとか診療の補助という範疇のものではないというふうに考えております。

三ッ林委員 ありがとうございます。

 医師の診断それから判断、そういったこと、医師にはありますけれども、救急救命士や看護師にはないということでございますね。

 としますと、資料の二ですけれども、DMATが行うトリアージ、このトリアージについて、ふるい分けをするわけですけれども、DMATは圧倒的多数に対応するために、トリアージの迅速性が求められている、そういったこともあります。

 そして、次のページの資料を見ていただきたいんですが、トリアージをやるに当たりまして、呼吸がない場合、これは黒いタグをつけられることになります。ブラックタグといいますけれども、要するに、この方は恐らく死に直面していて助けられる見込みがない場合。助けられる人を優先してやることがトリアージでありますし、助けられる最緊急の場合には赤いタグをつけるということになっておりますけれども、このブラックタグをつける判断。

 DMATのチームでやっていることは、それはそれで、チームとしてやっているのですから、その中に医師がいて、その対応をすることはいいんですけれども、多くの大きな災害が起きた場合に、果たして、チームがそれぞれにきちんと動けるかどうか。やはり看護師が判断しなくてはならない場面もありますし、また救急救命士が判断しなくてはならない場面もある。

 そういった想定のもとに、看護師においても救急救命士においても、今、それぞれトレーニングを受けられていると思います。そういったトレーニングを受けている方がDMATのチームに入ることができるわけでして、医師が存在しない場合のDMATで、大きな災害が起きたときに、トリアージをするというときに、本当に一生懸命やろうという方々を守る法的な根拠をつけてあげないと、やはり安心して対応することができない。

 阪神・淡路大震災のときに、この災害死、DMATがあれば五百名以上の方が助かったであろうという推計も出ております。

 そういった意味から、あくまでも、医師を中心としたチームによってDMATは存在するわけですけれども、多くの大きな災害がこれから起こると予想されるときにあって、救急救命士、看護師、これらのトレーニングを受けた方、こういった方に、やはりしっかりとした法的な判断、トリアージをしてもよいという法的根拠を与えてあげなければ安心してできない、私はこのように思うんですが、現在どのようなトレーニングが行われているかという点について、お願いします。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 DMATにつきましては、災害発生後、特に、大規模な自然災害などの場合、四十八時間以内に現地に到着して活動する、そういうような体制を常に持つということにしております。現在、全国で千七十一チーム配置しているところでございます。

 それぞれのメンバーとしては、医師、看護師、それから業務の調整員、そういう構成員になっておりまして、それぞれの職種に応じた研修を行っているところでございます。

 例えば、DMAT隊員の養成研修でいきますと、相当な研修の中で、トリアージそのものの実技訓練であるとか、そういう形で訓練を行っておりますし、それから、例えば救急救命士でありますと、もともとのベースの資格の教育の中でも災害に対する教育を行っているところでございます。

三ッ林委員 ありがとうございます。

 こういう方たちは、かなりトレーニングを受けております。そして、実際の場面に遭遇しても、しっかりとした判断ができる能力はあります。そういった方に、常に医師がいないと判断ができないという状況で、これからの災害に備えて、彼ら、彼女らが安心してこの業務に専念するためには、やはり、災害が発生したときの、トリアージを扱うに当たっての法的根拠をつくってあげることが私たちの務めだと私は思っております。

 看護師、救急救命士にしても、死の判定をできる職種ではありません。ただ、本当にこれからの災害医療を充実させるためには、こういったトリアージに関する、看護師、救急救命士等の医師以外の職種の方でも、医師がいなくても判断ができる、そういう体制が必要だと思うんですが、その点についてよろしくお願いします。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 トリアージにつきましては、先ほど申し上げましたように、医師が診察、治療に当たる、その前段階として振り分けをしていく、そういうものでございますので、治療のある意味では優先順位をそこである程度決めていくということになります。

 ただ、これ自体が医療行為であるとか、あるいは診療の補助行為であるとか、そういう位置づけではありませんので、ある意味でいえば、医者が治療をするという前提のもとにその優先順位をある程度決めていく。トリアージも、先生の資料にもございますけれども、一次トリアージ、それから、もう少し集まったところでもう一回振り分ける二次のトリアージ、そういうような形で医師が治療する順番を決めていく、それのお手伝いをしているということになりますので、必ずしも法律上の明文の規定がなくても、こういう訓練を受けた方々がトリアージを行うことに何ら問題はないと考えているところでございます。

 また、例えば、トリアージで、先ほどおっしゃいましたが、タグは黒タグをつけました、だけれども実際は何かまだ動いているというような場合にどうするか。これは最終的には、医師がそれを見て、黒であってもまだ気道を確保すれば何とかなるということであれば、そういう対応もできますでしょうし、最終的に黒タグ、赤タグを決めるということ自体が診断そのものでもないという位置づけでございますので、そういう対応で、トリアージそのものは、医師の治療を前提としてやっていくという前段階の話なので、特段の法的な根拠というものが必要だとは考えていないところでございます。

三ッ林委員 わかりました。

 ただ、これは、私だけの考えではなくて、法医学者、それから、災害医療に携わっている、DMATに実際携わっている医師、看護師、救急救命士の、今回、実際に東日本大震災の方にも向かわれた方々の御意見であります。

 というのは、やはり、医師が常にいる状況にない場合が非常に多い。そういった状況の中で、例えば、お子さんが黒いタグをつけられて後回しにされて、その御家族が、本当は助かったんじゃないか、医師が診たんじゃないんじゃないか、あなた、看護師が判断したんでしょうといった場合に、その看護師が訴えられた場合に、裁判は負ける可能性が高いですよ。

 だから、実際に現場で災害医療で働いている方は、そういったことを実際に想定する、そういう不安の中でやられているというので、やはり、これは本当に私だけの意見ではなくて、多くの方から、これはぜひ言っていただきたいということを言われまして、そのとおりだと私も思いまして、その点の法整備は私は必ず必要だなと思っております。どうぞよろしくお願いします。済みません、もう一度お願いします。

原政府参考人 再度のお答えになるわけですけれども、トリアージ自体が、治療をするとかしないとか、治療であるとかということではないということが大前提であります。

 具体的に、今のようなお話の場合、例えば、呼吸が見られなくて黒タグをつけられた方がおられた、それに対して、その方の治療をするかどうかは、医師が来て、できるだけ赤の人からやっていくということにはなろうかと思いますけれども、最終的な責任は、治療をするかどうかの最終的なところに責任があるというふうに考えておりますし、トリアージ、タグをつけること自体が医療行為ではないというふうに思います。

 したがって、今のような場合でも、訴訟になった場合でも、個別の事案で状況は変わると思いますけれども、明確な注意義務違反がなければ、例えば呼吸がないので黒タグをつけたということについての刑事上あるいは民事上の責任が問われるようなものではないというふうに考えております。

三ッ林委員 わかりました。ありがとうございます。

 ただ、やはり、何度も言いますが、災害医療をやっている現場の方は非常にその点を不安に感じております。そういったところをしっかりと今後フォローしていただきたい、そのように思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 死体解剖保存法八条におきまして、監察医制度、これが規定されておりますが、監察医制度は現在我が国においてどのように行われておるのでしょうか。よろしくお願いします。

原政府参考人 現在、監察医制度につきましては、東京都を初め五つの都市で行われているというふうに承知しております。

三ッ林委員 おっしゃるとおりで、現在、東京二十三区それから名古屋市、横浜市、大阪市、神戸市のみで行われております。

 ただ、異状死の死因究明は本当に重要だと思うんですね。突然亡くなられた方が何で亡くなったか、これを正確に診断することはこれからの予防医学の中でも非常に重要だと思いますし、現在も多くの民間のお医者さんたちは自分の中での診療体験等から診断を割り出している、こういった状況でありまして、我が埼玉県におきまして、さいたま市、百二十四万都市でありますけれども、これがないといったところで、やはりしっかりとした死因統計をつくっていくためにも、先進国として、監察医制度を充実させていかなくてはならないと思いますけれども、今後の対応についてお願いいたします。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 死因究明につきましては、死因究明の検討委員会の方で今いろいろな形での指針の検討をされているというふうに承知をしております。

 また、厚生労働省の所管としては、一般的に、死体検案をしていただくお医者さん、医師の能力の向上が必要だということで、さまざまな形での講習会、これを拡充しているところでございます。

 また、医学部や、あるいは臨床研修の途中でも、死亡診断書の書き方あるいは死体検案書の書き方などについて学ぶことにしておりますし、実際のこういうような形の中で、一般の医師の方々にも正確な死亡診断あるいは死体検案をしていただくように努めていきたいと考えております。

三ッ林委員 ありがとうございます。

 監察医務院を日本じゅうつくるというのはなかなか難しいことであるでしょうけれども、法医学に携わっているお医者さんも少ないですし、それはなかなか難しいのは承知しております。そして、一般の臨床医、こういった方々が、法医学、どれだけの知識があるかというと、はっきり言って皆無に等しい、私はそう思います。警察医になられた方とか、一部の公的病院、そういったところでの研修はされておりますけれども、ほとんど一般のお医者さんは、こういった法医学のトレーニングは、医学部時代に一、二時間の授業を受けて監察医務院を視察に行った程度で、それ以降はやられていない、これが現実だと思います。

 こういった中で、より広く法医学のトレーニングを受けられるようなシステムづくりが必要であると思います。そのことについて、ひとつ、御意見等あれば、よろしくお願いします。

原政府参考人 お答えいたします。

 年間、亡くなられる方は百万人を超えてきておりますけれども、その多くが、普通の場合は、病気になって医療機関に行かれて入院して亡くなられるという方が多くの場合でございます。死体検案なり、死因がよくわからないという場合はその中の一部にすぎないというふうに考えておりますし、その場合にその死因をどうしていくか、これは大きな課題だと思います。

 その中で、多くの場合は警察医などが死体検案に立ち会うというふうに考えておりまして、その警察医などを中心に、先ほど申し上げたような死体検案のための講習会、これを、平成二十五年度では講習会の人数を倍にしましたし、それから上級者コースなども設けて、より正確な死体検案をしていただけるような形で今対応しているところでございます。

三ッ林委員 ありがとうございます。

 最後の質問になりますけれども、現在、内閣府に設置された死因究明推進会議におきまして、死因究明の推進に関する施策のあり方が検討されていると思いますけれども、法務省としての取り組み姿勢について、最後に谷垣法務大臣から御意見を賜りたいと思います。よろしくお願いします。

谷垣国務大臣 今、三ッ林委員がいろいろ議論をされてこられたような問題、たしか麻生政権当時だったと思いますが、当時の与党の中で、不審死の究明あるいは法医学をもう少し振興する必要があるのじゃないかというような勉強会がございまして、保岡代議士が中心でいらしたと思いますが、私は長崎の冨岡代議士からお声をかけていただきまして、何度かそういう勉強会に参加させていただきました。

 そういう流れが、民主党政権になって、死因究明等の推進に関する法律、それから警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律という形で立法化になっていったんだろうと思っております。

 それで、死因究明等推進法に基づいて、今おっしゃった内閣府の中に死因究明等推進会議がございまして、法務大臣もそのメンバーでございます。まだ、しかし、私、法務大臣になりまして、一度もこの会議は開かれてはおりません。それで、その会議の下部組織である死因究明等推進計画検討会、ここにも法務省の担当者が参加して、施策の推進をいろいろ今議論しているというふうに報告を受けております。

 法務省として、これは極めて大事な問題であると思っておりますので、関係省庁と連携しながら、死因究明の推進に関する施策を積極的に推し進めていきたいと考えております。

三ッ林委員 ありがとうございました。ぜひともよろしくお願いいたします。私も一生懸命取り組んでまいりたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

石田委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 よろしくお願いいたします。

 しつこいようですが、また法曹養成についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 ちょうど今月は、司法試験が十九日まで行われていた。それから、その十九日からいわゆる予備試験が行われました。

 それぞれについて、まず、受験者数または出願者数、受験者数で固まっているんでしょうかね、特に前年比を含めて、まずは事実関係を教えてください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 本年の司法試験の出願者の方からまず見ますと、出願者は一万三百十五人、受験者は七千六百五十三名でありまして、それぞれ前年比で見ますと、出願者については九百五十人の減、受験者については七百三十四人の減でございます。

 また、司法試験予備試験の出願者は一万一千二百五十五人、受験者は九千二百二十四人でございまして、それぞれ前年比で二千百三十七人の増、それから二千四十一人の増でございます。

枝野委員 実は、ついにと言うべきでしょうか、ことしは司法試験本試験の受験者数よりも予備試験の方の受験者数の方が多いという状況になったということ、司法試験の予備試験の方は毎年のようにふえ続けて、ことしも昨年より大きくふえた、本試験の方はまた受験者数が減った、こういう実態がございます。

 ちなみに、ロースクール、法科大学院、この四月に新学年が始まっているわけでありますが、これについてどうなっているのか。できれば前年比それから入学定員比でどうなっているのか等、これは文部科学省でしょうか、お願いします。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 この春、四月の法科大学院の入学者選抜におきまして、志願者数でございますが、一万三千九百二十四人でございます。前年比四千五百二十二人の減、二四%の減、入学定員の約三・三倍となっております。

 また、法科大学院への入学者数は二千六百九十八人でございます。前年度比四百五十二人の減、一四・三%の減でございまして、入学定員の約六三%となっております。

枝野委員 前回か前々回か一般質疑で、やはりこの大きなトレンドについてお尋ねをいたしました。

 改めて、この四月のロースクールの入学、そしてことしの司法試験と予備試験の数字が出てきて、先ほど申しましたとおり、ついに本試験と予備試験で受験者数が逆転するというような状況、前回も問題として取り上げた傾向が強まっているわけでありますが、まず、この状況について、一般的に大臣としてどういう御認識をお持ちか、お答えください。

谷垣国務大臣 現在の趨勢、流れというのは、今御議論のあったとおりでございます。

 それで、法科大学院の志願者が減少している要因としては、一つには、司法試験の合格率の低迷ということがあると思います。また、司法試験を終了した後もなかなか就職率が低いといいますか、就職状況が厳しいということもあろうかと思います。それから、法科大学院において学ぶという時間的あるいは経済的負担、これもなかなか重いんじゃないかという指摘もされているところでございます。

 それで、予備試験については本来、法科大学院に通う経済的な余裕のない方のいわば窓口というような位置づけであったと思いますが、そういう本来の制度趣旨とは異なる状況が生じてきているのではないかという御指摘がある一方、受験生の多様性を確保するための重要な制度であるという御指摘、いろいろな御指摘がなされていると思います。

 今、私としては、法曹養成制度検討会議で、関係閣僚会議のもとに置かれた検討会議でいろいろ御議論を賜っておりますので、いろいろなそういう検討を踏まえた平成二十五年八月二日、ことしの八月二日までに一定の結論を出そうということで、今いろいろ議論を詰めているところでございます。

枝野委員 ロースクールをつくって司法試験の改革をするというときには、受験生あるいは法曹を目指す人たちの立場から見ても、一発試験で、毎年一回しかなくてというような試験制度よりも、ロースクールに入ってきちっと勉強すればきちっとした学習ができて、法曹になれる、なりやすい、こういう方が法曹を目指す人にとってもいいんじゃないかという趣旨があったと思うんですが、実際に運用をしてみると、法曹を目指している人たちが激減をしているというよりは、ロースクールを受験する人は四千人ぐらい減っているんでしょうか。一方で、予備試験を受ける人は二千人ふえている。むしろ、志願者あるいは法曹を目指す立場の人たちから見ても、ロースクールよりも予備試験の方が、一発試験でという従来からの司法試験と同じような問題はあるにしても、この方がいいやという人たちがふえているということの数字の上での一つのあらわれではないだろうかと私は思います。

 そうした中で、この間、日本経済新聞が司法試験や予備試験についての報道をしているときに、おもしろい記事がありまして、予備試験経由の司法試験合格者には弁護士事務所からの引き合いも強いとされて、したがって、そうした観点からも、ロースクールに行くんじゃなくて、予備試験から司法試験に受かった方がいい、こういう人がふえているんだというのが日本経済新聞の報道でございます。

 実態として、これは実証するのはなかなか難しいのかもしれませんが、事務方、もし、こうした報道がなされていることの背景になるような事実関係その他について御見解や情報があれば、まず教えてください。

小川政府参考人 委員が今御指摘されました新聞報道があることは承知してございます。

 ただ、予備試験を経由して司法試験に合格した者に対する弁護士事務所からの、これは評価ということだと思いますが、評価につきましては、私どもとしてはお答えする立場にないというふうに考えております。

枝野委員 弁護士事務所がどう評価しているのかは、それは弁護士事務所がどういう人を採用するかという勝手ですが、まさに、むしろ、実務法曹としてどういう人材が実際の現場から求められているのかということについての大事な情報、つまり、どういう人が司法試験に受かった後、就職しやすいのかということの情報ということ自体は、実はやはり司法試験制度、法曹養成制度を検討していく上で重要な情報ではないだろうかというふうに私は思います。

 少なくとも、この日経の記事のような報道がなされていることは間違いないわけですから、それがどの程度なのかは別としても、そうした声が弁護士の間である、あるいは、どうもそういった傾向で実際に予備試験組の方が就職が楽だなというようなことの空気が司法修習生などの間である、少なくとも一部ではあるということなんだろうと思います。

 こうした状況を大臣はどう受けとめられますか。

谷垣国務大臣 今の御議論で、だんだんロースクールの志願者が減っているというのは、ある意味では、定員管理なんかを厳格にやるように文科省も指導されておりますし、ある程度はそういう方向に持っていこうということで予想された面もそちらにはあると思うんですね。

 それで、今のもう一つの日経新聞の記事の方ですが、私もこれは拝見しました。ただ、なかなか、数行そういうことが書いてございましたが、実態はまだ実は私もよくわかりません。一つのシグナルというふうには私も見ております。ただ、予備試験はできてまだ回数が少ないものですから、もう少しこの予備試験の実情はしっかりとウオッチしていきたいと思っております。

枝野委員 もう数年今の制度が続いたら、そのときも国会議員をやっていたら、ぜひそのときまた国会で聞きたいと思っております。裁判官や検察官の新しい採用をされた方、予備試験組とロースクール組と比率が著しくずれていたりしていないですかねと、四、五年たったら聞いてみたいと思います。

 私は、恐らく、そのときにも、裁判官や検察官、実際に採用されて任官している人の中の比率は予備試験組の方が実際の合格者における比率よりも有意差のあるぐらいの違いで高くなる可能性が高いんじゃないだろうかなということを、これは危惧なのか期待なのか難しいんですけれども、なるんじゃないのかな。実際はどうなるか別としても、少なくともこうした報道があるということは、そうしたことが後で問われるかもしれないということは、特に法務省、きょうは最高裁を呼んでいませんが、採用の方に考えてもらった方がいいのか、でも逆差別されたら困るということをこれから聞こうと思っているので、とりあえず議事録に残しておきたいというふうに思います。

 今申し上げてきた、きょう御指摘をした、志願者者数が逆転をしていること、それから、どの程度の声なのかは別としても、予備試験組の方が弁護士事務所からの引き合いが強いみたいな報道がなされているということにあわせて、過日も予備試験組の方が本試験の合格率が高いという実態を考えると、私は、ロースクールという仕組みもそれを軸にした法曹養成の現在の仕組みも理念としては正しいんだろうというふうに思います。理念としては正しいんだろうけれども、現実はなかなかその理念をそのまま当てはめても機能をしていないということをそろそろ端的に認めた方がいいんじゃないのかなというふうに思わざるを得ません。

 受験生あるいは司法試験を目指そうという人が、もちろんロースクールの入りやすさ、入りにくさはありますが、ロースクールでいい教育をしてくれてそこで普通に自分が頑張れば、ロースクールを出た後で合格率のいろいろな問題はあっても司法試験には受かるだろうという期待があるならば、それは、予備試験自体の合格率が大変低いわけでありますし、予備試験に通ったからといって本試験に通るわけではない。別に予備試験組が本試験に九〇%も九五%も受かっているわけではない。ごく一部はロースクールの方が合格率が高いところもあるわけです。

 という状況の中にもかかわらず、学生さんたちがロースクールよりも予備試験に走る傾向、これはこの間も指摘をした話が実際に今回数字でも裏づけられているというふうに思うんですけれども、ということは、この間も若干失礼ながら指摘をしましたが、ロースクールで教えようとしている理念、あるいはそこでの現場の先生方が個々に頑張っているということは評価をするとしても、実際に司法試験で問われる法曹としての基礎的な素養、知識を学ぶ場として、さらには、採用のときの引き合いが強いみたいなところの評価を、これはある程度そういう側面があるんだなということを認めた場合には、実際に法曹として使える人間になるための教育をする場としても、実はロースクールよりもいまだに司法試験予備校の方がいい教育をしている。

 私は、前回の、まさに今のロースクールをやるときに、それは、私自身がそうでしたけれども、学者を養成するための教育としては大学の先生たちはいい教育をしてくれたのかもしれないけれども、法曹実務家になるための教育指導としては、それは単なる受験テクニックにとどまらず、司法試験予備校は大変いい教育をしてくれたと私自身今でも感謝しているし、実感しています。

 残念ながら、やはり、そこは競争が激しいとかいろいろな事情があるのかもしれないけれども、今でもそういう側面が、ロースクールをつくって、このロースクールは、みんなが一生懸命いい教育をしようと頑張ってきたのかもしれないけれども、残念ながらその傾向というのはやはり変わっていないんじゃないだろうかと私はそろそろ見きわめていいんじゃないかなと思うんですけれども、大臣、いかがでしょう。

谷垣国務大臣 私自身は、まだ予備校が余り盛んでない時代に司法試験を受けたものですから、実は予備校の教育というのがいかなるものかというのも十分実感はございません。

 ただ、いろいろな御指摘があることはやはり私もよく耳を傾けなければいけないと思いますが、しかし、ことし結論を出そうといって、今検討会議で一生懸命議論をしていただいているところですから、やはりその議論の推移を見きわめ、また予備試験の動向というのもしっかり見きわめていきたい。今の段階では、それ以上の御答弁はなかなか難しゅうございます。

枝野委員 今のお答えはお答えとして、念のため確認をしておきたいと思いますが、こういう傾向の中で気をつけないといけないのは、予備試験をもっと難しくしたらどうかとかいうことで、いろいろと調整をしたりするのは困るなと思っています。

 これは、今の制度をつくるとき、ロースクールをつくる議論のときも私は確認し、前回の委員会でも確認しましたが、改めて確認をしたいと思いますが、予備試験は何人採用するとかという試験ではなくて、あくまでも一定水準に達しているかどうかを判断する試験である、したがって、一定水準を超えている人が何万人いようと、その水準を超えたらその人たちは合格させる、こういう試験なので、この合格水準を厳しくしたりとかなんとかすることで、予備試験はもっと門が厳しいんだからロースクールに行けみたいなことになってはいけない制度なんだということを、制度論として確認したいと思います。

谷垣国務大臣 端的に言えば、今委員がおっしゃったとおりでございます。

 要するに、もともとの制度設計として、経済的負担や何かによって法科大学院に行きにくい人を救済すると言うと言葉は変ですけれども、そういうルートとして設けたものですから、要は、法科大学院修了者と同等の学力、能力があるかどうかを確かめるためのもので、そこで特別のフィルターにかけるというような性格のものではないというふうに考えております。その点は、司法試験委員会で適切に御判断をいただいているというふうに思います。

枝野委員 そうすると、これはお答えはいいんですが、前回この議論をさせていただいたときのように、予備試験組の合格率はロースクールの中に入れると上から二つ目か三つ目ぐらい。物すごい高い。(発言する者あり)一番でしたかね。一番高いわけなので、今が実は若干難し過ぎる。もっとたくさん合格させていいんです。ロースクールの一般的な水準を確認するというんだったら、本試験の合格率で、全国の法科大学院の合格者を並べたときの真ん中辺に入るぐらいの水準になって実は必然だという制度ですから、今が若干難し過ぎるんだということをその結果が示しているということを指摘しておきたいと思います。

 本試験の方で、これはまず事務方に確認ですが、本試験の合否判定に当たっては、予備試験で本試験を受けている人なのか、ロースクールで本試験を受けている人なのか、これについては有利、不利がつかない、現状はそういう仕組みであるということを確認したいと思いますが、よろしいですね。

小川政府参考人 司法試験の合格者の判定は、中立性、独立性のある司法試験委員会に置かれました司法試験考査委員において、実際の試験結果に基づいて専門的見地から行われるものでございます。

 御指摘ありましたような、法科大学院修了資格の受験生と予備試験合格者資格の受験生を分けて、予備試験合格者に不利に取り扱うというようなことはないものと承知しております。

枝野委員 ちょっとそこまで細かく通告していなかったんですが、要するに、採点するときに、これは予備試験組の人の答案用紙なのか、これはロースクール組の答案用紙なのかということは、採点するときはわからないということでいいんですね。

小川政府参考人 わからないようになっております。

枝野委員 ぜひ、今の現状の予備試験が、今のような仕組みで、まさに水準を超えれば何万人だって合格させるべき試験であるということ、それから、今のように、本試験で予備試験組とロースクール組で差別がないという、この仕組みの根幹はしっかりと守っていただきたいと思うんですが、大臣、よろしいでしょうか。

谷垣国務大臣 制度は、まさにおっしゃるとおりです。

枝野委員 先ほども申したとおり、本当に、実際にこの法曹養成という仕組み、この仕組みの最終的受益者は広く一般国民だと思うんですが、広く一般国民が受益者であるところとのつなぎ役としての直接的受益者というか利用者は、ユーザーは、法曹を目指す人たちであり、その養成を受けてきた人たちに働いてもらう裁判所や検察庁や弁護士事務所である。そうした人たちの今の状況判断などを見る限りでは、先ほど申しましたとおり、理念は正しかったけれども、私は、それはもしかすると大学や大学院の教育が云々というよりも、日本の司法試験予備校は非常によく頑張っていると言うべきなのかなと思っていますが、頑張っているからそっちに行っちゃうのか、大学やロースクールがだめだからそっちがなかなか人気が出ないのかは、どちらかは別としても、どうも、少なくとも受験生の方も、法曹実務の現場の方にしても、予備試験組、その大部分の人は予備校組を評価しているという実態にあるという実態。

 しかも、これは私自身もこのロースクールをつくるときに指摘しました。私自身も指摘をしながら、最後まで、これではうまくいかないからと言って抵抗しませんでしたから、そういった意味では私も責任の一端がありますが、そろそろしっかり考えていった方がいいんじゃないか。

 先ほどのとおり審議会が開かれているということで、今は大臣の立場でこのタイミングでは答えられないというのはわからないではないので、それ以上直接のお答えは求めません。

 これは通告していませんが、ぜひ、きょうと前回のこの法曹養成に関する私の法務委員会の質疑の議事録をその委員の皆さんに全部読ませてください。ちゃんとこういう指摘が国会の中で厳しく上がっている。自己反省も含めて、前回のこのロースクール導入のときに体を張って反対しなかった反省をしています。こうなるんじゃないのと嫌みのように指摘をしながら、見逃して、結果的にそうなっているということについては責任を感じています。

 そのことを含めて、今議論をされている皆様方にも、こういう指摘が国会でなされているということはしっかりと踏まえた上で、最終的には制度を決めるのは法務省の審議会ではなくて国会でありますので、別に私の意見が国会の多数とは言いませんけれども、こういう厳しい指摘もされているということは、ぜひ委員の皆さんに周知をしていただきたいと思いますが、これはお約束していただけますか。

谷垣国務大臣 こういう国会の御議論を十分に踏まえた詰めをしていただけるものと思っております。

 いろいろな御意見があるということも申し添えておきます。

枝野委員 ぜひお願いをいたします。

 最後、残された時間、ちょっと短い時間ですが、倒産法制というか企業再生法制についてお尋ねをしたいと思います。

 これは、法曹養成ほど私の、こうすべきだとかという定見があるわけではありませんが、経済産業省で仕事をさせていただいたりとかして、また、それを御縁にいろいろなところから企業再生などに関しての現場の声をお聞かせいただけるようなことが最近ふえてきました。

 日本の企業再生とか倒産法制とかといってもいろいろな種類の企業がありますが、国際的に競争をしていて、国際的なマーケットの中に存在をしている企業、グローバル的な企業が日本の国内でうまくいかなくなって、潰すのか、潰すわけにいかないから何とか企業再生をしたい、こうしたときには、当然のことながら、それを支援する資金というのは国内の資金だけで限定をしたらなかなかうまくいかない。実際に海外の資金がそうした企業を再生させるための資金として活用される。その結果として、なかなか日本に、工場が少し減っちゃったけれども、それでも日本に工場がなくなるところが幾つか残ってくれた、全部なくなるよりはよかったよねみたいな、こういう話はあるわけです。個社名は余り言わない方がいいと思うんですが、最近もそういった例がありました。

 そういったところに絡んだ、特に海外の資金をもって日本のこうした企業再生の機会に投資をしよう、出資をしようというような立場にある人たちから見たときに、日本の広い意味での倒産法制、企業再生の法制、制度なのか運用なのか、そこはいろいろな問題があるかと思いますが、なかなかわかりにくいし、グローバルな経済合理性以外の要素がいろいろ働いているんじゃないか。

 日本の優秀な技術などがベースにあるところには、そこを再生させれば稼げる余地はあるから、出資したい、投資したい。そして、投資してもらえれば、日本の企業も日本の国内に工場を残せる余地が出てくるから、それは、出してもらえるならありがたいという側面がありながら、どうもそうした処理の制度なのか運用なのかがわかりにくかったり、グローバルなところが全部いいとは言いません。グローバルスタンダードに全部合わせる必要があると私は思いません。でも、なかなか不透明に、このグローバルな経済合理性とはどうも違う要素が異様に働いているんじゃないかと少なくとも一部で間違いなく見られている、そういった声が私に聞こえてきていますので、見られているという状況があります。

 こうした観点で、特に欧米の先進国の倒産法制、企業再生法制と制度面あるいは運用面でしっかりと整合性がとれているのか、あるいは、それに対して実際に海外の人たちからどう見られているのかということについて、これまた変化の激しい社会ですから、きちんと常にウオッチをしながら検証していなきゃいけないというふうに私は思うんですが、これはまず事務方がお答えいただくんでしょうか、どういった御認識をされているのかお答えください。

深山政府参考人 我が国の倒産法制が諸外国の投資家から見て合理的でかつ理解しやすいものであること、このことは、一般論として、そもそも他国からの投資を広く呼び込む上で大変重要な制度的インフラであると思っております。そして、このことは、今委員が直接御指摘になった、我が国の一企業が再建をするに当たって、外国の企業や投資家から支援を受ける場面においてももちろん当てはまる事情だと思っています。

 ちなみに、我が国の企業倒産法制につきましては、平成十一年の民事再生法の制定を皮切りに、平成十四年の会社更生法の全面改正、平成十六年の破産法の改正等が順次行われたところです。その際には、英米独仏のその当時の最新の倒産法制を全て専門家に翻訳をしていただいて、内容を検討して、それも踏まえた上での整備をしております。その結果として、それまで非常に古かった我が国の倒産法制は、合理性が高まり、諸外国の法制とも調和的なものにその時点で改まったというふうに思っておりますし、手前みそかもしれませんが、外国の企業や投資家からも一定の評価を得られる状態になったのではないかと思っております。

 ただ、これもまた御指摘のとおりですけれども、経済情勢を直接反映する倒産の実務のあり方はいろいろ変わりますので、法的な倒産処理手続のあり方については、こうした経済情勢の変化に即応しなくちゃいけないということは議員御指摘のとおりですから、外国の投資家を含めたさまざまな関係者の意見を広く聞いて、適時適切にルールを見直していく、これまた重要なことだと思っております。

枝野委員 念のため申し上げますが、全部海外と同じようにしろなんて言うつもりはありません。これは各国の一種の国益の側面もありますが、ただ、国益に反さず、せっかく投資してもらえる可能性があるのに、わかりにくいとかという、それが先入観だけなのかもしれないですけれども、あるいは運用の問題なのかもしれませんが、やはりきちっと常にウオッチをして、そごが生じないようにやっていただきたい。

 どうしましょうか、大臣、一言いただけますか。

谷垣国務大臣 今、枝野委員の御議論を伺っておりまして、十数年前、アジア金融危機が起きた当時は、まだ日本の倒産法制の整備も極めておくれていた。長銀が倒産するときは、枝野議員も民主党の中で随分いろいろなお考えを出していただいて、当時の政権におりました私ども、それをぱくってと言うとちょっと言葉が下品でございますが、全部のみ込ませていただいて、いろいろやったというような時代がございました。あの当時から比べると随分倒産法制も整備されてきた、今、深山局長の答弁のとおりでございます。

 ただ、今委員が指摘されましたように、私、実は、今回法務大臣になりましてつくづく感じておりますことは、こういう法制度のあり方というのが、非常に、国際的なグローバルスタンダードを全部取り入れろ、いわゆるグローバルスタンダードがいいという意味ではなくて、やはり国の、何というんでしょうか、優劣と言うとちょっと言葉があれですが、一種の競争状況にあるなということを感じます。

 国内法制がどれだけすぐれているかということもそうでございますが、他方、やはり今、途上国等の法の支配をどう確立するかという中で、それぞれの国、ある程度きちっとした制度を持っている国が、うちの制度はこれだけいいぞというような競争の時代でもあると思います。

 それで、法務大臣は、いわばそういうことの国際的なセールスマンというか、そういうのにならなければならない面もあるんだなということを痛感しておりまして、これはやはり与野党御一緒になって、民法改正も今取り組んでおりますが、いい制度をつくって、そして国際的にも日本の法制度の水準が認められるように、御一緒になって頑張りたいという気持ちを持っております。

枝野委員 大変前向きなお答えをいただいて、うれしく思います。

 私は、今や法務大臣というのは経済閣僚の側面もあるというふうに思いますので、今のような姿勢で、経済閣僚、いろいろなことをやってこられた経験も生かして頑張っていただければということと、それから、九八年の金融国会のときに、民主党を換骨奪胎したとあのとき自民党のある方がおっしゃいましたが、ぱくったと正直に言っていただいて、それも大変高く評価をしたいと思います。

 終わります。ありがとうございます。

石田委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 おはようございます。辻元清美です。

 一カ月ほど前、ハーグ条約関連法案の審議をいたしまして、今後運用面でということでさまざまな問題点が指摘されました。きょうは、そこで余り出ていなかった点について一つ質問をしたいと思いますことと、それから、後半で時間がありましたら、前回の一般質疑で谷垣大臣の憲法観について実りの多い議論をさせていただきましたので、引き続き、前回ちょっと聞き足りなかったところをお聞かせ願いたいと思います。

 前回、ハーグ条約に加盟するに当たりまして、女性のDVの問題が随分議論されました。主に、日本人女性が例えばアメリカなどで結婚して、そして現地で結婚関係がうまくいかず、特に夫の暴力などによって子を連れて日本に帰ってきた場合、この日本人女性のアメリカでのDVを、どのように現地の大使館などで未然に支援をしてきたのかとか、それから、子を連れ去ったということで、子供を常居所地国に帰した場合の対応などを議論してきました。

 本日は、日本国内で国際結婚した場合、特に今、日本人男性とアジアの国々の女性の結婚、そしてこの結婚が離婚に至る場合、タイなどはハーグ条約に加盟しておりますので、日本人男性と例えばタイ人の女性が結婚していて、そして日本人男性によるDVなどの原因で子をもとの自分の出身国に連れ去った場合のハーグ条約の運用について、お伺いしたいと思っております。

 といいますのも、今、国際結婚が随分ふえております。一九九〇年代より急増で、定住する外国人女性の多くは国際結婚、そしてアジア系の方々が多いです。例えば、インドネシアなどからは介護職などで人がふえてきたり、それから、今TPPの議論がございますけれども、これは労働の移動の自由というような方向に行きますとさらにふえる可能性があります。

 アジアの国々でハーグ条約に加盟していない国も、今後、加盟していく国がふえることも予測されますので、その体制がどうなっているのかを中心にきょうは伺いたいと思います。

 厚労省の婚姻統計によると、二〇〇〇年以降、国際結婚件数は年間三万五千から四万人、日本における結婚総数の約五%前後であると言われております。また、そのうち八割が外国籍女性と日本国籍の男性の婚姻。

 そして、国際結婚の増加を上回る勢いで国際離婚が増加しているという現象も出ております。この場合、日本人男性と外国人女性の力の格差といいますか、DVが原因で離婚ということも多々見られております。移住女性が家族や地域、それから職場などで差別をされたり孤立している状況も、NPOなどが支援をしたり、随分ふえてきていると言われています。

 DVの被害による一時保護をした件数を見てみますと、日本国籍、日本の女性のDVによる被害に比べ、国際結婚等、外国籍の日本にいる女性の一時保護率は、外国籍の方が五倍になるというような統計も出てきております。

 日本はこれから国際国家になっていかなければいけないわけで、このような対応をどのようにしているのか、まず伺いたいと思います。

 大臣、このように、日本の、外国人の方と日本人男性の結婚、そして離婚がふえていて、DVが背景にある、そして、もといた国に子の連れ去りなども起こるというような現状、どのように把握されていますか。

谷垣国務大臣 政府として、日本からアジアへの子の連れ去りの件数、あるいは、今おっしゃった家庭内暴力がそのうち、どういう原因になっているのかというようなことについて、必ずしも十分に把握できているわけではありません。

 外務省やあるいは日弁連が行った調査結果がございますので、そういうものに照らしますと、やはり、アジア等各国との国際結婚もふえておりますし、うまくいかなくて子が連れ去られたという件数も相当数に上るものと思いますし、その中には、今指摘されたような家庭内暴力によるものも相当な数に上るのではないかと思っております。

 アジア各国は、まだ必ずしもハーグ条約等に加盟したところが多いわけではございませんけれども、こういう国際、やはり何かルールがないとなかなか裁けませんので、ハーグ条約等々のもとで適切に解決できるような努力を我々もしていかなければいけないのではないかと思っております。

辻元委員 外国籍の女性と日本国籍の男性の場合の結婚で、子の連れ去りが把握し切れていないけれども、増加する可能性もある。これは、その外国籍の女性の悲劇であるだけじゃなく、日本国籍の男性にとりましても悲劇になるわけですから、未然に、国内で起こっていることを、DVなどの対応をきちんととっていくということはとても大事なことだと思っております。

 ちょっと現状確認なんですけれども、入管局における移住女性のDV被害者認知件数というのは昨年度どれぐらいあったのか、これは入管にお聞きしたいんです。そして、引き続きもう一問、これは警察の方に、日本に住む外国人女性による警察などへのDV被害の訴えにどのように対応してきたのか。現状をお聞かせください。

榊原政府参考人 入国管理局の方からお答えいたします。

 平成二十四年の入国管理局によるドメスティック・バイオレンス事案の認知件数につきましては、七十八件ということになっております。

 なお、この件数は、在留審査または退去強制手続等のため地方入国管理局等に出頭した際などに申し立てがあり、ドメスティック・バイオレンス被害者として把握したものを集計しているものであります。

 以上でございます。

山下(史)政府参考人 お答えをいたします。

 警察庁では、DVに関する統計におきまして、外国人女性を区別して集計していないため、全国の状況は把握してございませんが、DV相談の多い都道府県警察に被害者数を確認いたしましたところ、これは昨年中でございますが、大阪府では四千五百六十七人中百五十人、東京都では二千七百三十八人中二百十九人が外国人女性だったとの報告を受けてございます。

 お尋ねの外国人のDV被害者への警察の対応についてでございますが、まず、被害の状況や事情を的確に聞き取るため、通訳等による正確なコミュニケーションに努めてございます。例えば、警察庁では、被害者に対してフローチャート等による具体的な支援措置等の説明を行い、その意思決定を支援する手続、これは本年から導入したところでございますけれども、愛知県警察や静岡県警察におきましては、タガログ語やポルトガル語で記載をしたフローチャートを作成して活用してございます。

 また、相談に当たりましては、日本で生活をする外国人女性の心情、境遇等にも配慮した親身な対応に努めているところでございます。例えば、外国人女性の方は、保護命令等の我が国の制度につきまして、母国に同様の制度がないと理解することが困難な場合も考えられますことから、制度の教示に当たってはこうした点にも特段の配慮をすることなどを都道府県警察に指導しているところでございます。

辻元委員 DVの被害の対応というのは、日本人、同じような文化、伝統の中で過ごし、言葉も日本語の日本人の対応でも非常に難しくて、つい先日からも、ストーカーであったり、さまざまな事件も生じておりまして、外国人への対応というのはさらにセンシティブで難しいと思うんですね。

 ここはやはりこれから強化していくという方向にしていただかないと、日本の、人権を守るというのは、日本にいる全ての人の人権を守るという観点からしっかり対応していかないと、国際国家としてやはり民主主義度が問われると思いますので、そこはしっかり対応を強化していただきたいと思っております。

 関連いたしまして、入管法の改正が先日ございましたけれども、これが少し阻害要因になっているという点も指摘されております。

 これは、国連の関連機関、女性差別撤廃条約委員会からも日本は勧告を受けておりまして、外国人の、特に女性に対する対応です。

 外国人女性が受ける暴力は、身体的、精神的、性的暴力に加え、文化的暴力と在留資格などの不安定な法的地位を利用した暴力が広く知られている、日本における国際結婚女性の法的地位が日本人配偶者に依存している現在の在留資格制度がDVの助長につながるとの懸念は、国際機関の勧告において繰り返し言われておる。これは、二〇〇九年の八月に出された女性差別撤廃条約委員会最終見解、パラ三十一です。それから、外国人女性が深刻な被害を受けるハイリスク集団であるにもかかわらず、言語や制度の壁により十分な支援を受けられない現実への懸念等、勧告も同様に繰り返し行われているということなんですね。

 ここで入管にちょっとお聞きをしたいんですけれども、入管法改正によって、特に、日本人の配偶者などが、その配偶者の身分を有する者としての活動を継続して六カ月以上行わないで在留するということが在留資格取り消しの理由になったり、それから、中長期在留者が法務大臣に居住地の新規及び変更の届け出を九十日以内に行わないときもその対象になるなどの点が指摘されているわけです。

 特に、国際結婚して日本に在留している、そして悩んでいる人たちにとっては、結婚生活が破綻したから夫と離れて別居をしよう、しかし、夫の側を主体にした在留という制度になっておりますので、六カ月を超えるとこれは在留資格がなくなってしまうんじゃないか、そうすると、子供は夫との間にいて自分が面倒を見ているんだけれどもということで、非常に不安になったり、それからDVを我慢したりという事例もNPOなどには多数寄せられているわけです。

 この点についての、例えば、例外規定があるのかとか、相談であったり、多言語での周知徹底、これはどうなっているのか、そして、特にDV被害者の入管での認定のあり方の見直しなど、先ほど警察の対応は聞きましたけれども、入管法改正と絡みまして、こういう問題点についてどのような御認識と対応をとられているのか、お聞きしたいと思います。

榊原政府参考人 委員の御指摘がありましたように、平成二十一年の入管法改正によりまして、正当な理由がある場合を除きまして、所定の期間内に住居地の届け出をしないことや、配偶者の身分を有する者としての活動を六カ月間行っていないことが在留資格の取り消し事由とされましたが、そういった方がドメスティック・バイオレンスの被害者であり、ドメスティック・バイオレンスを理由として避難したり、または保護を必要としている場合は、正当な理由がある典型的な事例として、在留資格の取り消しを行わないこととしております。

 また、そういった事情につきましては、法務省のホームページにおきまして、八種類の言語でその事情を掲載するなどして周知に努めているところでございます。

 今後とも、ドメスティック・バイオレンスの被害者の保護を図る観点から、地方入国管理局等の窓口で確実な案内を行うなど、適切な広報に努めてまいりたいというふうに考えております。

 また、そういったドメスティック・バイオレンスの被害を受けた方につきまして、どのような形で認定しているのかにつきましては、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律第一条の定義、配偶者からの暴力の定義にのっとりまして、配偶者からの身体に対する暴力またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動に該当する行為を受けた人は、ドメスティック・バイオレンスの被害者として認定させていただいているところでございます。

 また、そういった状況にある方々につきましては、在留資格の更新の申請とか資格の申請に当たりまして、きめ細かな配慮ができるように努力しているところでございます。

辻元委員 今、前向きな御答弁をいただいたと理解するわけですが、先ほど認定は七十八件というのは、非常にまだ氷山の一角で、少ない数だと思うんですね。ですから、これはやはり、今おっしゃった多言語であったり、それからDVの被害に遭っている人たちが在留資格を取り消されるんじゃないかということでなかなか申し出られなかったり、さらにそれが深刻な被害につながっているということも考えられますので、その徹底をさらに前に進めていただきたいと思っております。

 次に、外務省にちょっとお伺いいたしますけれども、そういうような深刻な事態で子を自分の母国に連れ去るというか連れて帰った場合、相手国がハーグ条約に加盟している場合、日本人男性が捜してくれというようになった場合は、これは、日本の中央当局がまず相手国、仮に先ほどタイの事例を申し上げましたけれども、タイの中央当局に対して要請をかけるということになります。

 そうすると、この女性、まあ、女性が多いわけですけれども、女性がDVに遭っていたということになりますと、仕組みによりますと、相手国の中央当局から日本の中央当局の方にそのDV被害の調査の依頼などが来ると思います。前回の質疑では、例えばアメリカだったらアメリカの中央当局に要請すると。それで大丈夫かいという話があったわけですね、ちゃんとやってくれるのかなと。日本の在外公館もきちんと対応しなきゃいけないんじゃないですかという指摘もあったと思うんです、逆の場合ですね。

 日本の中央当局がそれを受けて、どういう体制で、このDV被害等、人権侵害も含めて、調査をする体制は果たして整っているのかどうか、その点についてお聞きしたいと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員から冒頭お話ございましたとおり、ハーグ条約は、外国から日本に子供が連れ去られた場合だけではなくて、まさに今御議論いただいておりますとおり、日本から外国に連れ去られた場合も当然適用になるわけでございます。

 この委員会の場でも何回か政府側から御説明させていただきましたけれども、外務省あるいは日弁連等の調査におきましても、アンケートで、外国から子供を連れ去ってしまったり連れ去ろうとしているという件数と同じぐらい、子供を日本から外国に連れ去られてしまう、あるいは連れ去られてしまったという件数がございます。そういう意味から、私ども、外国から日本に来るのをインカミング、日本から外国に行くのをアウトゴーイングというようなことも便宜上使っておりますけれども、外国に連れ去られてしまうという場合についてもきちっと対応することが大事だと思っております。

 今の委員の御質問につきましては、まさに条約におきまして、子の返還手続を行っている他の条約締約国の中央当局、先ほどちょっとタイの例を出していただきましたが、タイではこれは最高検察庁が中央当局になっているようでございますけれども、そこから日本に対して、子供の日本国内における心身、養育及び就学の状況その他生活及び取り巻く環境の状況に関する情報を問われることがあるわけでございます。

 そのような場合につきましては、御審議いただいた条約の実施法案におきまして、一定の条件を満たしたときは、中央当局、日本の場合は外務省でございますけれども、外務省が実施法に基づきまして、国の行政機関あるいは地方公共団体、あるいはその他の情報を有している者に対して情報の提供を求めることができるという規定を国内法の法案で書いてございます。

 したがいまして、我が国の中央当局、日本の場合は外務省でございますが、外務省だけでは調べられる情報は限りがございますので、今言ったような法律の仕組みのもとで、関係省庁あるいは地方公共団体等からDVも含めて必要な情報をいただいて、それを条約締約国、タイであればタイの中央当局に対して提供を行うということを想定しているわけでございます。

辻元委員 その際に、連携が非常に大事だと思うんですね。

 先ほどから、入管及び警察の担当官の方から御報告をいただきましたけれども、入管に届けられているのは七十八件しかないわけですよ。日本人の女性が諸外国から連れ去って帰ってきている場合と同じぐらい起こっているという話がありましたね。そうすると、七十八件しかないんかいと。要するに、入管なんかに問い合わせたら、いや、これは違います、違います、違います。警察も、外国人か日本人かというのをそんなに区別した統計はないということなんですけれども。

 その辺の、各省庁間の連携だけではなくて、今は、警察、入管の方にも来ていただいていますけれども、先ほど申し上げましたように、連れ去っている数の方が多いと思います。その際に、やはり積極的に外国人の被害に遭っている方の、拾い上げると言うたら変なんですけれども、情報としてあらかじめきちんと対応する。

 そのためには、周知徹底とか、こういう場合は申し出てくださいとかというのをやっておかないと、連れ去った案件を相手の国の中央当局から要請を受けても、こちらは情報不足で対応ができないということになれば、ハーグ条約に加盟している国々で、相互の信頼関係と、やはり相互に人権を守っていくということに基づいた条約ですので、日本としても外国人女性の案件に対する対応も積極的にとっていただかないと、泣き寝入りじゃないけれども、する人がふえたり。

 結局、日本に子だけが帰ってきたとしても、これは前回も指摘されましたが、DVで被害はあった、男性が女性にというケースが多いわけですが、子だけを連れ帰ってきた場合に、子に対する虐待ということにつながる率も高いということも多々指摘されております。

 日本の中で暮らすその後、子の人権や子の成長にも大きく影響するという問題意識を持っていただきまして、ハーグ条約に加盟し、そして国内法を整備し、運用面では人権大国にふさわしいと言われる、国際的にも他の国にまさる対応をとっていただくように指摘をしておきたいと思います。

 大臣、よろしくお願いします。いかがですか。

谷垣国務大臣 それぞれ、警察あるいは外務省、それから入国管理、いろいろなことがあると思いますが、今おっしゃったこと、ドメスティック・バイオレンス、これはやはり犯罪になり得ることを含んでいる、それから、人道的な観点からも的確な対応が必要な事案だろうと思います。

 ですから、先ほど、国内に滞在する理由になるかならないかというのは局長が御答弁を申し上げましたけれども、そういうことを含めてきちっとした対応をしていかなければならない。今までもそういうつもりでやってまいりましたが、これからもそのような指導をしてまいりたいと思っております。

辻元委員 今、特に入管法の運用について前向きな御答弁をいただいたと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 さて、残りの時間で、前回の続きです。

 それで、前回は、立憲主義への御認識、そして、公共の福祉を自民党の改正草案では公益及び公の秩序と変えていらっしゃることや、また、結社の自由、いわゆる広い意味でいえば表現の自由を、公益及び公の秩序での制限というようなことも自民党の草案に入っている点、それからさらには、憲法というのは権力を縛る規範であるという最初大臣の御答弁だったんですが、国民に対して憲法を尊重するというような条項が入っていて、これは私は問題ではないかという御提起をさせていただいた。

 さて、きょうのハーグ条約関連法の運用にも家族の問題が出てきまして、もう一点私が気になっていますのが、自民党がお示しになっている日本国憲法改正草案の中に、二十四条、「家族は、互いに助け合わなければならない。」という、何か道徳規範というか、そういうものを入れていらっしゃるんですね。

 家族は多様化しておりますし、そして今や日本は、今やというか私はずっと申し上げているんですが、一民族一政治形態の国というのはなくなっております。そんな中で、さまざまな、家族の破綻もあればいろいろあるわけですが、こういう道徳規範を憲法に入れるというのは、私はふさわしくないのではないか。

 これは自民党総裁時代におつくりになった草案ですから、この間からしつこく聞いているんですが、これはどういう趣旨で入れられたんですか。これは私は憲法にふさわしくないと思うんですけれども。どうも説教臭いんです、自民党の憲法草案が。憲法は、説教じゃなくて、やはり権力をあらかじめしっかりと制約しておくという本当にシンプルなというか、そぎ落としたものにしておかないと、多民族の国家になりますし、何だか、一定の価値を憲法の中に入れるというのは、これは私はそぐわないと思うんですが、いかがですか。

谷垣国務大臣 前回、憲法に関して辻元委員と御議論をさせていただいた後、私、大変反省をいたしまして、実は今、委員長も私のことを谷垣法務大臣と御指名をなさったと思うんですね。私は、ここに一議員として立たせていただいているのではなくて、法務大臣として立たせていただいている。まだこの案が国会に上程されているわけでもないですが、あと、議事録をごらんになれば、法務大臣谷垣禎一と書いた答弁になっていると思います。

 私、そっち側に座ったら一議員として自由にやりますよ。だけれども、こっち側で答弁するときは、法務大臣谷垣禎一として答弁をいたしているわけでございますので、まだ上程もされていない憲法の改正について、ここであたかも法務大臣であるかのごとく、まあ事実、法務大臣なんですが、御答弁するのはいかがかと実は思って、反省をしたところでございます。したがって、寡黙であればあるほどよろしいというのでここに立たせていただきました。

 ただ、今、家族のことで説教がましいとおっしゃいますと、といって答弁しちゃいけないんですが、説教がましいとおっしゃいましたけれども、実は、世界人権宣言にも家族は尊重しなければならないということが書いてございます。憲法観に関してはいろいろな見方があると思いますが、道徳規範を入れるのはいかぬという御趣旨でしたね。ただ、辻元さんは非常に前回も天賦人権論を擁護なさいましたが、あれも、全くの実定法規範というよりも、ある意味では極めて法哲学的なというか、ある意味では極めて人類が探し求めてきた根本倫理は何かという観点からの御議論だと思うんですね。

 ですから、ここは恐らくいろいろな議論があると思います。法哲学の上からいっても、憲法論からいっても極めていろいろな議論があると思いますが、私は、ハーグ条約も、やはり基本は、家族、親子関係、こういうものを大事にしたいというところから出た、しかし、それは、ハーグ条約自体がどれだけ価値観を含んでいるかわかりませんけれども、そういう中において、できるだけ、国際間の紛争になったときの準拠法というか、手続をどう定めていくかという観点からなされていると思うんですね。

 確かに、多民族になりますから、いろいろな価値観があることは私もそうだと思います。しかし、そういう中で家族のきずなを大事にしようというのは決して憲法の議論としても排斥されるものではないのではないか。これは、法務大臣ではなく、一議員としての意見でございます。

辻元委員 法務大臣として寡黙であればいい、寡黙の方がいいというのは非常に高い御見識だと私は思っております。

 なぜかといいますと、この前も申し上げたわけですよ。総理大臣が本会議場で、憲法の特定の条項、それも改正の手続という九十六条の改正を目指しますというようなことを堂々とおっしゃるということはお控えになった方がいいと、私は安倍総理にも直接予算委員会で申し上げたことを、谷垣法務大臣もその席にいらっしゃいましたので御記憶にあるかと思うんですけれども。これは先日も憲法審査会でも議論になりまして、行政とそれから国会、そしてさらには憲法改正議論のあり方はどうあるべきか。

 総理は最近、ちょっと静まっているというか、静かにおなりになっているようですけれども、一時すごかったわけですよ。自民党総裁としてなぜ言っちゃいけないんだみたいなことを予算委員会でもおっしゃっていましたので、私はそういう態度はお控えになった方がいいということをたびたび申し上げてきました。

 その上でちょっとお聞きしたいんですが、今御答弁いただきましたので。世界人権宣言は、十六条の三項で確かに家族のことに触れているんです。しかし、こう触れてあるわけですね。家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、この後です、社会及び国による保護を受ける権利を有する。国による保護を受ける権利を有するということを規定しているわけですよ。ですから、家族は助け合わなければならないという、ちょっとベクトルが違うように私は思うんです。

 ですから、ハーグ条約も、先ほどから私は、ドメスティック・バイオレンス、事前に被害を聞いて、そして、これは被害の対応によっては修復されていく場合もあるし、いろいろあると思います。しかし、保護しなければいけないから、DV対応であったり家族のさまざまなトラブルに対して、一定それは個人の領域だけれども、保護するという観点からさまざまな法整備がなされるわけです。

 助け合わなければならないということを憲法に入れると、助け合わなければならないという方向性での、これはだからといってDVを我慢しろという法律をつくるとは思わないんだけれども、方向性が違うわけですね。ですから、私はあえてこの点を申し上げたわけです。

 ですから、世界人権宣言で言っていることは、私は、自民党であえて入れていらっしゃることと方向性が違うように思っております。いかがですか。

谷垣国務大臣 辻元委員の挑発に乗って余りしゃべらない方がいいのかなと思いますが、それは憲法審査会でまた十分御議論いただきたいと思います。

辻元委員 いや、これは大臣が今、世界人権宣言をお出しになったので、私の認識とちょっと違うなということで指摘を申し上げたわけで、法務大臣として世界人権宣言における家族のこの規定はしっかり理解していただかないと、もしも助け合わなければいけないというベクトルで世界人権宣言のこの条項、十六条を理解されているとすれば、私は法務大臣としてちょっと認識違いではないかなと思うから指摘申し上げたわけです。おっしゃったので、挑発ではないですよ。

 ですから、やはり国が守るというか、保護を受ける権利を持っているという認識でいいですね。

谷垣国務大臣 人権宣言にはそう書いてございます。

辻元委員 そうなんですよ。

 それで、もう一点、時間もありますので指摘させていただきたいんですけれども、いろいろなことをおっしゃっていて、前回、自民党は自主憲法制定というのがずっと党是であるということで、大臣の答弁に、「一番の問題は、当時、日本は要するに被占領国であった、主権が制限されている状況であった、その中でつくった憲法というのは、私は、いつか乗り越えなければならない、」これはどうやって乗り越えるのかなと。これはちょっとまた今度議論しますが、どうやって乗り越えるのかしら。その後、いろいろ大臣の御答弁を見ていると、揺れてはるんですよ。そして、「憲法改正をしたことがない、そのときに、第一条から、あるいは前文から最後まで全部一括かけたような、一くくりにしたような憲法改正の発議が果たしてできるものだろうかという思いが私にはずっとございました。」と。

 実は、憲法というのは、私は、現行憲法によって、そのもとで、法治国家として、法務大臣としてのお仕事をしていただいていると思っているし、それには敬意を表しております。その上で、この条項があるために権利が侵害されるとか、この条項を改正してもらわないと自分たちの生活に非常に大きな支障を及ぼすという国民からの声がたくさん上がってきて初めて、それであるならば立法府はその要請に応えてこの条文についてはここを変えましょうかというのが、国際的に見ても憲法改正のあり方だと思います。

 これはずっと議論したんです。なぜかといいますと、国民投票法をつくるとき、私は委員でした。国民投票法によると、全面改定はできないんです。条文ごとなんですよ、国民投票は。ですから、ここが問題だというところが出てきたらその条文について国民投票にかけましょうということで、全部これがいいだろうというのをかけることは想定していないんですね。これは自民党の船田筆頭に聞いていただければわかると思うんです。

 そうすると、何のために全面改定のようなものをお出しになっているのか。

 私は、国として、例えば、議論の中で、憲法についての新しい構想も出せないような政党は問題だみたいな発言をされる方もいらっしゃるんですが、諸外国から見たら、各党全部が、今の憲法よりこれがいいんだ、自民党みたいな全面改定のものをみんなこれだこれだといって、今の憲法よりこれがいいんだという政党が寄り集まってその国を統治していたら、今の現行憲法はそんなに問題なのか、では、一体、何を根拠にこの国は政治をしているのかということになりかねないわけですよ。

 そんな国はないわけであって、ですから、占領軍に引きずられてというお気持ちはわかるんですけれども、私はここで何回も指摘させていただいていますのは、自民党総裁時代におまとめになった、自民党として、党是であったし、まとめられるのはいいんですけれども、しかし、法治国家のあり方として、では、各党がどんどんどんどん憲法の、これがいいんだ、これがいいんだと出してきて、どれとどれがいいか、そして、出せないのはあたかも何だか国の将来を思っていないみたいな姿勢をしながら政治をやっていく、法治国家として治めていくということは、私は問題があるというように思っております。

 国民投票法も、これはかなり議論をいたしましたが、微修正というか、修正するところを変えていこう、追加するところがあれば追加しようということですので、そういう御認識も深めていただいて。答弁が、全面だと言っているかと思ったら、できるのかと思うんですといって揺れていらっしゃるので。

 法治国家としてしっかり統治していくという御決意がございましたので、では、最後に一言だけいただいて終わります。

谷垣国務大臣 辻元委員の御意見はよく承りました。

辻元委員 終わります。

石田委員長 次に、田嶋要君。

田嶋委員 田嶋要です。

 きょうは、受刑者と国民年金制度ということで、ピンポイントで質問させていただきます。

 まず、厚生労働省にお伺いします。

 国民年金法によりまして、保険料の納付というのは国民の義務、すなわち強制加入ということでございます。したがって、私の認識としては、国民は、受刑者は、保険料を自分で納付するか、さもなくば免除申請を受けるか、どちらかしかない、いずれにしても、支給要件の期間に算入はされる、二十五年の算入はされるという理解でございますけれども、いかがでしょうか。

高倉政府参考人 お答え申し上げます。

 国民年金保険料につきましては、今委員御指摘のとおり、日本国内に居住する、一定の要件に該当する方は被保険者ということになりますので、保険料を納付していただく、あるいは免除等の手続を行っていただく、これが義務でございます。

 そういうことで、所得水準が免除に該当する場合には免除申請を行っていただくということが基本的に望ましいことであるということでございます。

田嶋委員 お配りの資料をごらんいただきたいと思います。大臣もごらんいただきたいと思います。

 最初のページでございますが、新入受刑者、六割弱の方が、入所前には年金に加入していたというふうに答えています。ところが、釈放受刑者を見ますと、わずかに一三・七%の人しか受刑中に各種手続を履行していないんです。そして、では、刑事施設においてどういうことをやってほしいかという、一番下をごらんいただきますと、三〇%以上の方が、施設で代理で申請をしてほしい、つまり、本当は加入したいという思いがあるということが読み取れるのではないか。

 次のページをごらんください。

 同じく、新たに刑務所などに入った方でございますけれども、受刑中に各種申請をする、履行する意思があるか。ある、親族手続、足し算すると、三九%が何らかの手続をする意思はあると言っておるんですね。先ほどの実態とは大分違う。意思はあるんです。多くの方が刑務所等に入る前は入っていた、そして、刑務所に入るときもそういう意思がある、しかし、出ていくときには手続した人は一三%強しかいなかった。

 一番下の、最後のところをごらんください。

 なぜ多くの人が各種手続を行わなかったのか、行わないのか。今さらやっても二十五年に至らない、仕方がわからない、手続が面倒だ、いろいろ書いてございますけれども、私は、ここは非常に今曖昧、いいかげんになったままではないのかなというふうに考えてございます。

 そこで、二問目でございますが、現在、刑事施設内での国民年金保険料の免除申請というのはどのように行われているかということを簡潔にお願いします。

西田政府参考人 お答えいたします。

 現在、刑事施設におきましては、国民年金保険料の免除制度等に関しまして、必要な情報は、入所時とかそういったときに提供に努めているところでございます。

 ちょっと具体的に申し上げますと、全ての被収容者に対しましては、施設内に生活する生活の要領とともに、国民年金制度の概要、保険料免除制度、保険料未納による不利益について、そういったものを記載した生活のしおりという冊子を居室内に備えつけておりますけれども、それを閲読するように指導しております。

 また、受刑者につきましては、刑が執行されますときに行われます刑執行開始時の指導、それから、釈放前に一定の期間行われます釈放前指導の一環として、公的年金等の概要について説明しておるところでございます。

田嶋委員 前にも、省内、厚労省との協力関係の強化とか、そういう通知も拝見いたしました。しかし、現在の実態はやはり、このアンケート調査の数字をごらんいただいても、本来の国民の義務である年金制度とは乖離をした現状があると思います。

 今、生活のしおりや、あるいは申請書類の話もございました。免除申請を受けるための申請書類は備えつけられていない施設は半数あるという話を聞いてございます。

 そして、全体として、意思があれば何らかサポートするよということでございますが、本来、国民年金が義務であるならば、基本的には全ての新入受刑者に対して免除申請の手続を促すような形をとるべきではないかというふうに私は考えております。そして、所得制限にひっかかるようだったら、当然それははねられて返ってくるわけですから、基本的には全員に申請書類に書いてもらうことをしっかりやってもらう。

 そして、住所不定の方が刑務所に入ってくる時点で二割もおいでだということを伺いました。そういった方々に関しては、刑務所の住所が明らかになってしまうようなことも抵抗があるという話も聞きましたので、そこは運用面でいろいろ工夫をしていただきたい。

 私、きのう、おとといと、法務省と厚生労働省の話を聞きましたけれども、基本的に両省間で余り話をしたことがない感じなんですね。私が質問する以上に、法務省が厚労省に質問して、厚労省が法務省に質問をしている。こういう状況ではやはり改善は進まないのではないかというふうに思っております。

 最後に、法務大臣に、受刑者にとって、将来の無年金の方々を減らすことが一体どういう意義があるとお考えになっておるか。それから、今まで短時間でございましたが、刑事施設内での免除申請がこういう実態にあるということを踏まえて、私は、全ての新入受刑者に基本的には免除申請をまずは行わせる、そういう運用に改めていくべきだというふうに考えてございますが、大臣の御所見をその二点に関してお願いいたします。

谷垣国務大臣 まず、受刑者にとっての年金制度の意味でございますけれども、これは、年金のイロハから申し上げるつもりはございませんけれども、やはり、老齢とか障害とか、そういうものによって生活が破綻を来すことを国民が助け合って維持していこうということですね。だから、これは受刑者にも本来、本来まず自分たちで保険料を払うということですが、保険料を払って、つまりここに参加して、そういう共同連帯に参加していただいた方が制度として当然だということに加えて、やはり刑務所の中にいた人間がどう社会復帰をし更生していくかという観点からも、そういうセーフティーネットがあるよということが私は大いに意味があると思うんです。

 基本的に受刑者に対しての年金制度というのはそういう意味を持っているという上で、つまり、改善更生に資する面も大いにあるということでございますが、まずは、この制度からすると、自分が参加して保険料の納付を行うということでございますけれども、免除申請の対象となり得る刑務者については免除申請の手続を行っていくことが、やはり今のような観点からいうと望ましいのではないか、こういうふうに思います。

 したがいまして、まだいろいろな、両省がどこまで話しているのか、私もまだ十分に両省の話し合いの結果というのを聞いているわけではございませんが、よく連携し合って、そういったことが適切に行われるように私からも指導いたしたいと思います。

田嶋委員 今度、栃木の方に刑務所の視察もさせていただきますので、ぜひとも現状も把握をしていただいて、省と省の間にまたがる関係ですから大変難しいかもしれませんが、ぜひ改善をしていただきたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 以上です。

石田委員長 次に、西田譲君。

西田委員 維新の会の西田譲です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、きょうは、余りなじみがない法律でございます。なじみがあってはよくないのでございますけれども、刑法外患罪についてお伺いをさせていただきたいというふうに思っております。

 外患罪、今、八十一条の外患誘致、そして八十二条が外患援助、八十七条が未遂で、八十八条が予備、陰謀という四条から成るわけでございますけれども、まずはこの八十一条についてでございます。

 外国と通謀して武力行使をさせた者というふうにあるわけでございますけれども、この要件について、まず刑事局長にお伺いをさせていただきたいと思います。

稲田政府参考人 刑法八十一条の外患誘致罪におけます「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた」という要件でございますが、一般に、これは物の本に書かれているような解釈でございますけれども、我が国に対しまして、外国政府と意思を連絡した上で、軍事力を用いて国際法上の敵対行為と見られるような攻撃行為をさせることをいうものと解されているところでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 敵対行為をさせる者というふうに今御答弁をいただきました。これは大事なところかなと思っておりまして、条文上は武力行使をさせたということになるわけでございますけれども、当然これは、させるという現在形でなければならないというふうに思うわけでございます。

 と申しますのも、この八十一条の趣旨というのは、敵性国家からの侵略や占領を未然に防ぐという趣旨でなければならないわけでございまして、武力行使をさせた、つまり、武力行使が起こった後ということでは遅いわけでございます。

 例えば尖閣にしても、侵攻、占領された後では既に時遅しということになるわけでございますし、歴史を振り返れば、例えば一九四五年に旧ソ連が満州に侵攻するわけでございます。その際に、例えば我が国側に旧ソ連と通謀しておった者がいたかどうか、捜査をしようにも、もう主権がなくなっているわけでございまして、刑法を適用しようにも適用できない状況になるわけでございます。

 ですので、この武力行使をさせたというのは、させるというふうに解釈をするということでいいわけでございますけれども、むしろ武力行使をさせたは、させるというふうに改正してもいいというふうに思うわけでございますが、大臣、いかがでしょうか。

稲田政府参考人 今の点につきまして、私の方から、まず解釈につきまして若干御説明させていただきたいんです。

 今御指摘のありました外患誘致罪における「日本国に対し武力を行使させた」ということの意義そのものにつきましては、これも一般に言われているところでございますが、我が国に対して壊滅的打撃を与えた場合に限らず、例えば我が国の領土の一部に外国の軍隊を不法に侵入させたときもこれに当たるというふうに解されているところでございます。

 その上で、今御指摘のような話につきましても、外国との通謀があって、しかし武力行使に至らなかった場合でありますとか、さらには、外国との通謀を開始いたしましたが合意に達せず、通謀自体が未完成な場合であっても、それは外患誘致罪の未遂犯として処罰の対象となると解されているところでございます。

 先ほど委員御指摘もございましたように、この罪につきましては、予備罪、陰謀罪もございますので、ただいま申しました未遂に至らないような予備、陰謀の段階でも処罰の対象となっているというところでございまして、重大な打撃を我が国に与えた後でなければ罪を問うことができないというものではないというものであるというふうに考えております。

    〔委員長退席、土屋(正)委員長代理着席〕

西田委員 ありがとうございます。

 これは国連憲章の自衛権の明記、たしか国連憲章五十一条でございましたか、これも、侵略が発生した時点ではなく、侵略の発生する時点で自衛権は発生するというふうに明記されているわけでございますから、武力行使の発生、武力行使をさせたという過去形の解釈ではなくて、させるという解釈での適用を考えるべきだというふうに申し添えたいと思います。

 きょうも、前回、前々回に引き続き、情報国防という観点から実はこの外患罪を取り上げさせていただいているわけでございます。これまでも、諜報の必要性、対外諜報機関の必要性、そして防諜体制の構築ということについては、もう盲腸組織となってしまった公安審査委員会、これで形骸化している破防法の復権という委員会での質問もさせていただきました。あるいは、これは防諜というのは主権国家において情報国防のかなめでございますから、法整備そして体制づくりが急務であるということも指摘をさせていただいております。

 例えば軍事機密の保護法であったり、外交機密の保護法、もしくはそれ以外の国家機密の保護法、あるいはハイテク技術等の不正な流出を防止するための施策であったり、さまざまな法整備、こういう法整備を行って体制をつくっていくこと、これが防諜体制の構築ということでございます。

 今国会では、例えば自衛隊法の改正が審議をされておりますけれども、これはもう邦人保護についての職務の拡大でございますね。あわせて予算では、もう衆議院を通しましたが、防衛予算は久方ぶりに前年度アップでございます。この軍事国防については、まさに安倍政権になってから非常に強化されているわけでございますが、国防というのは、何度も申しますように、軍事国防と情報国防の両輪がかみ合わなければならないわけでございます。

 これまで情報国防について、諜報機関もしくは防諜等についてやってまいりましたけれども、もう一つの観点、これは、敵性国家からのいわゆる積極工作もしくは謀略に対してどう対処するかということが非常に大事になってくるわけでございます。その点について、きょうは実は外患罪ということを質問させていただいているわけでございます。

 まさしく平時における戦いという中にあって、まず第一に、情報戦なわけでございます。我が国に侵略を準備しているような国にしてみますれば、被侵略国に対して、これは必ず脅威があるにもかかわらず脅威がないというような偽った情報、にせの情報を宣伝、プロパガンダしてくるわけでございます。そして、我が国の防衛意識を弛緩させるというやり方をとるわけでございますけれども、これはもう孫子のころから変わらないやり方でございます。ですからこそ、平時の国防、情報国防といったときに、脅威があることをきちんと脅威があると認識して対処していかなければならないわけでございます。

 つまりは、我が国においてそういう情報工作をするような諜報員、あるいは機密を持っていくような、盗んでしまうような諜報員、そういった者をきちんと取り締まらなければならないわけですし、あわせて、そこに協力する日本人、そういうけしからぬ日本人がいるようであれば、厳罰に処すような体制をとっていかなければならないわけでございます。

 そういった中で、きょうは外患罪というものについて聞いているわけでございますが、これは今四条でございますけれども、旧刑法だと八十一条から八十九条までの九条の構成になっていたわけでございますが、戦後、刑法改正で大幅に削除、改正されているわけでございます。この旧刑法の削除、そして改正の経緯並びに背景等につきまして、きょうは余り時間もありませんので、簡単にお知らせいただければと思います。

稲田政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、昭和二十二年の改正以前には、刑法には八十三条から八十六条までと、及び八十九条という条文がございました。これらは我が国と外国との戦争を前提とする、いわゆる通謀利敵罪として規定されたものなどでございましたが、これにつきましては昭和二十二年の刑法の一部改正により削除されたところでございます。

 その趣旨でございますが、これはもう何分にも六十年以上前のことでございますので、当時の政府委員による提案理由説明によるわけでございますが、その提案理由説明を読みますと、戦争の放棄に関するものとして、戦争状態の発生並びに軍備の存在を前提とする現行の外患罪の規定を改め、外国よりの武力侵略に関する規定としたというものであったということでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 私も、当時の議事録を見てみました。すごいんですね、これは第一回国会なんですね。当時は司法委員会というようになっていたわけでございますけれども、衆議院でも参議院でもこの刑法外患罪について審議がなされておりまして、今局長御答弁のとおりの、政府委員からの答弁がなされているわけでございます。

 しかし、この旧刑法をきちんと見てみますと、旧刑法の八十一条というのは、これはいわゆる平時の定めであるわけですね。八十二条と八十三条、四条、これは、おっしゃったとおり、まさしく戦時の定めであるわけでございます。

 旧刑法八十五条をちょっと読み上げさせていただきますけれども、「敵国ノ為メニ間諜ヲ為シ又ハ敵国ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス 軍事上ノ機密ヲ敵国ニ漏泄シタル者亦同シ」というふうにあるわけでございますけれども、この旧八十五条というのは、戦時と平時、両方の定めとして旧刑法であったわけでございます。ですから、当時の政府委員の答弁しかり、今の局長の答弁しかり、戦時と平時の定めである八十五条を戦時の定めとして削除するのは余りにも乱暴ではないかというふうに思うわけです。

 結果、私からの提案でございますけれども、この旧八十五条、復活をさせて、今の八十一条と八十五条、つまり、平時の八十一条、八十五条、あわせて戦時の八十二条、八十五条ということで、この外患罪をもう一度整理し直す必要があるというふうに思うわけでございます。

 確かに、文言は現代風に直していかなければなりません。間諜といいましてもなかなかぴんとこないわけでございますから、例えば、敵性国のために機密漏えいあるいは情報工作をなし、または敵性国の諜報員あるいは情報工作員を幇助した者というような言い方で変えて、刑法旧八十五条の復活をするべきではないかと思います。

 これについては、大臣、いかがでございましょうか。

谷垣国務大臣 国の安全の基礎をどうつくっていくかというのは、これは十分に議論しなければいけないところだと思います。

 ただ、今委員がおっしゃった昔の八十五条、文言も、極めて、確かに防諜というような言葉で今若い方が理解できるとは思いませんし、それだけではなく、現在の観点から見るとかなり言葉の限定も、つまり、何がこれに当たるのかということも明確にならない構成要件になっている面がありはしないかということを私は感じます。

 例えば、今は非常に科学技術等も発達しておりますね。今あなたがおっしゃったような軍事的な問題を考えるにも、いろいろな技術的な問題点がある。そうすると、それをどういうものとして条文を構成していったらいいのかというのは、恐らく、委員の事前にこういうことを質問するというのを拝見しましても、昔、昭和四十年代に刑法改正の議論がありましたときに、やはりこういった議論がございました。その中で相当いろいろな御議論があったように聞いておりますが、一つは、やはり刑法の条文の中で決めるにはそういった十分な検討がないと実際には使えない法律になってしまうというような観点があったのではないかと、私、昔のことですから十分記憶しておりませんが、そういう御議論があったように私は思います。

 したがいまして、この点は余り、簡単に考えるのは難しいので、慎重な議論をしていかなければいけないと思っております。

西田委員 ありがとうございます。

 大臣、今のお話、まさしく四十年代の議論の中で、機密探知罪ということで審議会等で議論をされておったというふうに私も資料を読ませていただいておりました。おっしゃったとおり、では、何をもって機密に当たるのか、そしてそれをまたどういうふうにして取り締まっていくのかということに対して、なかなか難しいという議論がされていたことも記されております。

 しかし、やはり、大臣、戦時というのは突然戦時になるわけでは決してございませんで、戦争という状態は平和のときに芽吹くものでございます。そういったことを考えれば、今の平時にどれだけ私たち日本人が汗と知恵を振り絞って努力をすることができるかということが大事なわけでございます。法律を考えるといったときに非常に難しいというのは、これまでの議論の経過からしても十分承知をしておるわけでございますけれども、ここは、日本の情報国防体制の構築に向けて努力を惜しんではならない分野だと思います。

 時間が参りましたので、また引き続き議論をさせていただければと思います。ありがとうございました。

    〔土屋(正)委員長代理退席、委員長着席〕

石田委員長 次に、西根由佳さん。

西根委員 日本維新の会、西根由佳でございます。よろしくお願いいたします。

 三月十五日の委員会でも指摘いたしました、教員採用試験で性的指向などを尋ねる質問が長年続けられている事案につき、お伺いいたします。

 もう一度説明させていただきますと、石川県の教育委員会による教員採用試験で、心理テストMMPI、ミネソタ・マルチフェージック・パーソナリティー・インベントリー、日本語で言うところのミネソタ多重人格検査の縮小版であるMINI―124が二十年以上利用されておりました。

 このMINI―124には、個人の性的指向を露骨に尋ねる質問や、ステレオタイプな、男性性、女性性尺度を図る質問がちりばめられており、戸籍上の性と異なる傾向を示す場合、排除的な評価が下されます。性同一性障害の当事者や同性愛者などのLGBTの人権を侵害するような試験となっております。

 ここで法務省にお伺いいたしますが、この石川県の事案につき、調査、救済手続は開始されたのでしょうか。

萩原政府参考人 お答えいたします。

 個別の事案でございますので、その点につきましては、その取り扱いの有無を含め、お答えは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げますと、法務省の人権擁護機関では、被害者からの申告等に基づき調査を開始し、事案に応じて適切な措置を講じているところでございます。

西根委員 確かに、内容を公にしないという前提で当事者に調査協力を求めているということですので、個別事案には答えられないというのも一つ筋はあるのかもしれませんが、ただ、ここは国会議員が行政に対する民主的チェックをする場ですので、せめて、開始したかどうかという外形的な部分だけでもお答えいただかないと、チェックを働かせることができません。これ以上追及しても答弁はお変わりになりませんと思いますので聞きませんが。

 三月に、人権擁護局の担当の方にこの案件についてお聞きしましたところ、その時点では、先ほどもおっしゃった、被害者の申し出というものがないので始めていない、こういうお答えでした。そして、その後も、期間的にも被害者の申し出があったと考えられませんので、この事案については開始していないのではないかというふうに推測いたします。

 確かに、調査、救済手続も公権力の一種の行使ですから、被害者本人の申し出を受けてから始めるというのは一つの合理性があると思います。しかし、人権擁護の推進というのは、法務省にとって極めて重大な任務であり、人権擁護の実効性を高めるためには、被害者の申し出がなくても調査、救済手続を開始すべき場合があるというふうに考えております。

 実際のところ、法務省人権擁護局作成のリーフレット「人権の擁護」には、新聞、雑誌等からの人権侵害の疑いのある事実を知ることにより救済手続を開始することもあると書かれており、被害者の申し出がなくても手続を開始する場合があるということが書かれております。

 例えば、いじめ、体罰については、被害者からの申し出がなくても、報道で事件等を認知すれば調査、救済手続を開始すると聞いております。これは、子供は自分で被害の申し出ができない、いじめ、体罰は国を挙げて取り組むべき重大テーマであるという理由からそのような扱いをすると聞いております。

 これで、今回の石川県の採用試験について考えてみますと、確かに、受験生は大人ですから、一見すると、被害の申し出ができないとは言えないようにも思います。しかし、今回の被害者は受験者であり、受験者は、採用してもらいたいという気持ちから、試験内容についての不満を表明することが困難です。

 また、今回のような、性的マイノリティー、いわゆるLGBTの人権に配慮しない採用試験は過去に既に問題となっております。

 平成二十四年の人権侵犯事件に関する法務省の発表によれば、地方自治体の公務員採用試験で今回と同様の試験を用いていた事案について、法務省が調査、救済手続を行い、法律的なアドバイスをする援助という措置をとっております。法務省も、既に、このような採用試験には問題があると認識しているはずなのです。

 にもかかわらず、他府県で同じ状況が繰り返されております。今回取り上げている石川県だけではありません。

 金沢大学の岩本准教授の調査によれば、今回問題となっているMMPIまたはその縮小版であるMINI―124を教員採用試験に導入している都道府県、政令市の教育委員会は、二〇一一年度で、石川県を含め十三団体あったそうです。

 性同一性障害を理由とする差別、性的指向を理由とする差別、つまり、LGBTに対する差別については、法務省人権擁護局作成の平成二十四年版「人権の擁護」四十三ページで啓発活動年間強調事項となっています。この点は間違いないでしょうか。大臣にお伺いいたします。

谷垣国務大臣 そうでございます。

西根委員 リーフレットを用意していただいてありがとうございます。そこに書いてございます。

 そのように、法務省にとって、性同一性障害を理由とする差別、性的指向を理由とする差別を防いでいこう、なくしていこうというのは重大テーマなのです。

 したがって、今回の石川県の事案について、まだ被害者からの申し出がなく、調査手続を開始していないのであれば、すぐに手続を開始すべきと考えます。ここまで申し上げましたように、受験者であるという被害者の立場の特殊性、同じ事件が何度も繰り返されているという事実、LGBTに対する差別はなくすというのが法務省の重点目標であるということがその理由です。

 この点につきまして、法務大臣の御所見をお伺いいたします。

谷垣国務大臣 一般論として、先ほど申し上げたように、個別的な事件についてはお答えするのは差し控えさせていただきたいということでございます。

 加えまして、今、教員採用試験で行っているいろいろなテストは非常に人権侵害に当たるということでございますね。私は法務大臣でございますから、一般的に、どういう試験をすべきか、試験がいいか悪いかということを判断する立場にはないと思うんです。ただ、しかしながら、こういう問題は個別具体的に考えていって、個別具体的、それぞれの事案のもとで、人権侵害に当たるおそれがあるということになれば、これはもちろん、先ほどの、申し立てがある場合あるいはない場合、一般的に考えてやらなきゃならない場合もあるかもしれません。そういう場合にはやはり人権擁護機関として適切な対応をしなければならない場合もないとは言えないと思いますが、これは個別的なことになりますので、一般的にはなかなかお答えしにくいことになると思います。

西根委員 ぎりぎりのラインで、でも、それでも前向きな御答弁だったのかなというふうに解釈させていただきます。

 本来なら、このような事件を未然に防ぐことが重要です。

 法務省人権擁護局では、先ほども述べた「性的指向を理由とする差別をなくそう」、「性同一性障害を理由とする差別をなくそう」という標語を掲げて人権啓発活動に取り組んでいるとのことですが、この性的指向を理由とする差別、性同一性障害を理由とする差別に関して具体的にどのような啓発活動を行っているのでしょうか、教えてください。

萩原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員に申し上げていただいたとおり、法務省の人権擁護機関では、「性的指向を理由とする差別をなくそう」ということ及び「性同一性障害を理由とする差別をなくそう」ということを啓発活動の年間強調事項として掲げ、一年を通して、全国各地の法務局、地方法務局等で啓発冊子の配布などの啓発活動を実施してございます。

 昨年の十月二十八日には、東京都港区のニッショーホールにおきまして、「性の多様性を考える〜性的指向と性同一性障害〜」をテーマとした人権シンポジウムを開催し、約三百名の皆様に御参加いただいております。

 また、昨年十二月二日には、全国紙である朝日新聞及び毎日新聞の一ページ全面を使いまして、このシンポジウムの採録記事を掲載いたしました。さらに、法務省ホームページからユーチューブにある人権チャンネルにリンクを張りまして、このシンポジウムの模様を動画で閲覧できるようにしております。

 このほか、年三回実施している地方公共団体等の職員を対象とした人権啓発指導者養成研修におきまして、性的指向や性同一性障害をテーマとする講義を行っております。

 以上でございます。

西根委員 限られた財源、人材の中で啓発活動に取り組んでいらっしゃるということは評価したいと思います。しかし、どの程度効果が上がっているのかなと疑問を持たざるを得ません。

 昨年の人権シンポジウムの参加者は、先ほども三百人とおっしゃいました。シンポジウムの動画をユーチューブにアップしているとのことですが、再生回数を見ますと、シンポジウムの項目ごとに多い少ないはございますが、数百回から数千回というところです。LGBTの方御自身が興味を持って再生している場合も多いでしょうから、一般国民の方がどれだけ見ているかというのはちょっと疑問が残ります。また、朝日、毎日新聞で広告も打ったとのことですが、それについても興味がある人しか見ないでしょうし、公共機関に張っているポスターについてもやはりそうなのではないでしょうか。

 地道な人権啓発活動を続けることももちろん大切です。ですけれども、一方で、何よりも効果が大きいのは、今回の石川県の採用試験のような事案について調査を開始して、人権侵犯ありと法務省がその態度を明確に表明することではないでしょうか。

 先ほどは個別事案にお答えいただけないということでしたので、ここでは重ねてお尋ねはいたしませんけれども、今回のような事件については、性的指向を尋ねるような試験はLGBTに対する人権侵害に当たるという明確な判断をぜひとも示していただきたい、こういうふうに思います。

 今まではLGBTの差別についてずっと申し上げてまいりましたが、実はこのMMPI、MINI―124には、性的指向に関する質問以外にも、差別や人権侵害などの要素を含む質問が散見され、問題がございます。

 お手元の資料一をごらんください。

 例えば、神の存在を信じるかという質問七は、自分の思想、信条を明らかにすることを強制するものですから、憲法十九条の思想、良心の自由に含まれる沈黙の自由を侵害するものです。

 また、国を挙げて男女共同参画に取り組んでいる現状に逆行するような、性別に基づく役割分業という視点に立った質問もあります。MMPI、MINI―124の判定尺度には、男性らしさ、女性らしさという尺度があり、例えば、女性が、四十九番の花屋になりたい、六十二番の料理が好きという質問に対してイエスと答えると、女性らしいという判定が下されます。これに対して、男性が、四十九番の花屋になりたい、六十二番の料理が好きという質問にイエスと答えると、女性らしさが強い、すなわち男性らしくないという判定が下されます。また、百十番の女に生まれていればよかったとたびたび思いました、百十一番の女に生まれて残念だと思ったことは一度もありませんというような質問も同様です。これらは、採用試験に用いるものとして、明らかにおかしな判定方法です。

 さらに、差別とまでは言えないまでも、受験者の出自、出身家庭によっては、その気持ちを傷つけるような質問もあります。私の母は立派な人でした、私の父は立派な人でしたというような、幼くして親を亡くして自分の親を知らない人や、両親が離婚して自分の親を知らない人にとっては答えるのがつらい質問もあります。

 こうして見てみると、このMMPI、MINI―124は、受験者にとって、教員の仕事と直接関係ない側面までテストされるという意味で、プライバシー権の侵害の要素もはらんでいると考えます。教員の採用試験で使用するには全く不適切なものと考えます。

 それもそのはずです。MMPIは、一九四三年にアメリカでつくられたものですが、多重人格検査という名称にもあらわれているように、そもそも医療現場での臨床診断や精神鑑定の場で使う心理検査です。

 ここで、法務大臣にお伺いいたします。

 全国十三の地方自治体の教育委員会の教員採用試験においてこのような差別的要素を含む検査が行われていることについて、お答えになれる範囲でお願いいたします。

谷垣国務大臣 先ほどの繰り返しになってしまって恐縮でございますけれども、やはりそれぞれの県でおやりになっていること、具体的には相当、全く同じとは言えないと思うんですね。それで、いろいろございますし、それから私の立場としては、個別のそれぞれの自治体の試験の採用について申し上げる立場にはありませんので、要は、具体的に人権侵害といいますか、性同一性というようなことに関しての差別感をあおるようなものであるのかという具体的な判断になるんだろうと思いますね。だから、これは今一般的な基準でお答えするのはやや難しい、差し控えさせていただきたいと存じます。

西根委員 先ほど申しましたように、MMPIは本来臨床診断で用いられるものですので、教員採用試験に使用するのは明らかな目的外使用です。MMPIを出版している会社のホームページには、注意事項として、全ての心理テストは特定の目的に沿って考案されているので、その目的以外の使用はできませんと書かれております。

 先ほど御紹介した岩本准教授は、この点につき、これまで二名の医師、三名の臨床心理士、三名の心理学者に意見を伺ったそうですが、いずれの方も、MMPIを採用試験で採用、不採用の判断に使うのは不適切との御意見だったそうです。

 そして、MMPIを採用試験で使うのは問題があるというのが国際的な認識です。二〇〇五年にはアメリカ連邦裁判所で、企業が人事選考に関してMMPIを用いたことは不適切との判断がなされています。

 アメリカやアジアの国々では、MMPIを改訂したMMPI―2を使用しているとのことです。日本だけが漫然と初期のMMPI、差別的要素を多くはらんだMMPI、初期のものを使い続けております。ただ、アメリカやアジアで使われているMMPI―2も、差別的質問の数は減っているものの、男性らしさ、女性らしさに関する質問、家族に関する質問は残っておりますし、そもそも臨床診断目的であることは変わりません。したがって、日本としては、MMPIであろうとMMPI―2であろうと、臨床診断目的でつくられた心理検査を教員の採用試験で使うことをやめるべきだと考えます。

 臨床診断目的の検査を利用することは、受験者に対して極めて個人的なことまで開示させるという意味で、プライバシー侵害の要素を大きくはらんでおります。教員の適性を見るためには、MMPI、MMPI―2などを利用しなくても、集団面接や個人面接で受験者本人と直接質疑応答をしたり、模擬授業をさせてみるなどした方が、よほど教員としての適性がわかると考えます。教員採用試験における差別をなくすため、人権侵害をなくすために、文部科学省、法務省が連携し、MMPIの使用中止に向け積極的に取り組んでいただきたいと考えております。

 文部科学省、法務大臣、それぞれに御所見をお伺いいたします。

山下(和)政府参考人 お答え申し上げます。

 一部の教育委員会が実施をしております公立学校教員の採用選考におきまして適性検査としてMMPIが使用されていることにつきまして、私どもも承知をしております。また、御指摘のような質問項目がMMPIに含まれているということについても承知をいたしているところでございます。

 このMMPIは受験者の性格傾向のさまざまな側面を測定する検査で、その結果はあくまで教員としての適性を見るための客観的な資料とされているものでございまして、受験者個々人の性的指向等を識別するためのものではないと認識をしているところでございます。

 以上でございます。

谷垣国務大臣 何が採用試験の選抜方法として適切かということは、それぞれ教育委員会なり、それぞれのところで考えていただきたいと思います。

 私は、これは本当に繰り返しになって恐縮でございますが、個別の案件で問題があるということであれば我々としてもそれは当然取り上げなければならないわけでございますが、今の段階では、そのお答えにとどめさせていただきたいと思っております。

西根委員 個別の案件ということは、具体的に被害者が申し出て、事件性がなければということなのでしょうか。

 ただ、これは先ほども申し上げたように、声を上げられない受験者がいて、そしてこのような問題がずっと漫然と放置されていて、指摘する人間がずっと出てこなかった。教育委員会の採用試験というものがベールに包まれている部分があって、この岩本教授も、かなりの苦労をなさってデータを入手して、ようやくその中身が見えてきた、こういうことでございます。

 この現実については、ぜひとも強い認識を持っていただいて、お考えを深めていただきたい、もう少し前向きに考えていただきたい、こういうふうに強く、文部科学省に対しても、法務大臣に対しても申し述べまして、このテーマに関する質問は終わらせていただきます。

 それでは、続きまして、残りの時間を使って、法務局の職員が登記の収入印紙を着服していた事件について質問いたします。

 半年ほど前の話ですが、二〇一二年十月十八日付朝日新聞の記事に、愛知県と千葉県の法務局で元職員二人が収入印紙の着服を重ね、その総額が約九千三百六十万円に上っていたことが会計検査院の調査でわかりました。会計検査院の決算報告書によれば、愛知県の職員の着服額は約七千四百五十万円、千葉県の職員の着服額は約一千九百十万円とのことです。

 まず、愛知県、千葉県のそれぞれについて、事件発覚後の経過を教えてください。

深山政府参考人 まず、答弁の最初に、今御指摘の二件について、このような不正事案を起こしたことについて、まことに申しわけなく思っております。

 それを前提として、発覚後の経緯を説明いたします。

 まず、愛知県の事案ですけれども、これは、名古屋法務局の職員が今御指摘のあった額面七千四百五十一万円余りの収入印紙を窃取したという事案ですが、平成二十三年の九月九日に、その日までの遅延損害金を含む三千五百三十一万円を一時返済金として納付を受けた上で、同じ九月の二十八日付で、名古屋簡易裁判所で即決和解をしておりまして、平成二十三年十月から二十八年七月まで月々五千円の分割返済をして、残金全額を平成二十八年の八月末日限り返済するという内容の即決和解ができておりまして、現在も分割して返済を受けているところです。

 もう一つの千葉の事案ですが、これは、額面の合計が千九百九万円相当の収入印紙を窃取した事案ですけれども、こちらにつきましては、本人が、平成二十三年の六月三十日に、窃取した収入印紙相当額について債務の承認を行いました。ところが、本人がその年の十一月三十日に死亡いたしまして、これは自殺をされたんですが、その後、法定相続人全員が相続放棄をいたしましたので、これまで返済は全く受けておりませんということでございます。

西根委員 千葉の職員の方が自殺なさったというのは、大変不幸なことだと思います。その一方で、回収不能ということは、一千九百十万円の損害分は、実質的には国民の税金で負担しているということになります。

 法務局職員の印紙の着服はもう何十年も前から起きている事案であり、またかという感じがいたします。ここ二十年で法務局員の印紙の着服事件は何件あったか、損害額の合計は幾らか、また、そのうち回収不能となった額は幾らか、調べられた範囲で教えてください。

深山政府参考人 まことに申しわけない話ですけれども、法務局において、過去二十年間に登録免許税等として納付された印紙が窃取された不正事案は六件ございます。被害総額は合計で五億四千三百七十八万円余りでございまして、そのうち返済の見込みがない額は、先ほどの千葉の事案、一千九百九万円でございます。

西根委員 質疑時間が来ましたのでもう終わりにいたしますが、五億四千三百七十八万も着服されていたというのは本当にゆゆしき事態だと思いますので、今後もまた引き続き、必要な範囲で質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 おはようございます。みんなの党の椎名毅でございます。

 本日、一般質疑ということで、三十分の時間を頂戴しました。毎度毎度でございますけれども、まことに感謝を申し上げたいというふうに思います。

 本日は、矯正行政について伺いたいと思います。

 まことに私的な話でございますが、私が司法試験を受験したとき、一九九九年、平成十一年ですけれども、このとき、司法試験に選択科目で刑事政策というのがございまして、この年で選択科目が終了したので、私はその刑事政策で合格した最後の合格者の一人ということでございます。

 それから、新司法試験制度が始まりまして、また選択科目というのができましたけれども、今回の新司法試験の選択科目の中には、法政策学という学問が入っていることは基本的にはなくて、基本的には法解釈学ばかりでございますので、この政策学、こういったものについて司法試験を通過しているのは、多分私が最後の一人だと思います。まあ、そんな話はどうでもいいんですけれども。

 それから十四年たちまして、当時議論がなされていた例えば監獄法の改正であるとか、そういったことについては、一定程度の手当てがなされた上で新法が施行されて、はや五年たちます。一定程度手当てがなされて、私も刑事の手続とは縁遠い仕事をずっとやってきたので、新法が施行されて内容がよくなってきたんだろうというふうに私自身は理解をして、興味を大分失っていたところでございますが、先ごろ、我が党みんなの党に嘆願書というものが受刑者から届きまして、それを見てみると、新しい法律が施行された後であっても、いろいろ問題点も幾つかまだあるのかなということを感じた次第でございます。

 嘆願書というものをいただいたので、とるものもとりあえず、この受刑者がいるところにとりあえず行って、面会をして話を聞いてみたということでございます。

 こういったことを踏まえた上で、私自身も、きょう、矯正行政について伺っていければなというふうに思った次第でございます。

 まず一点目についてですが、これは直接その嘆願書とは関係ないんですけれども、せんだって、府中刑務所で刑務官が受刑者に対して覚醒剤を渡したという事案がございました。結局、この元看守は、免職になった上で、裁判が行われた上で、執行猶予判決、懲役一年六月、執行猶予三年という判決が先ごろ出たやに聞いております。こういった不適正処遇というか、受刑者とそれから刑務官の関係性といったところについて昨今問題になったところで、こういった関係について伺っていきたいと思います。

 従前ですと、刑務官と受刑者の関係というのは、特別権力関係とかいう感じで、もしくは公法的な権力関係というような形で、刑務官が受刑者に対して過度な、過剰な有形力の行使をするというような形、それから、受刑者に対して、いじめその他もろもろ、そういったことを行っていく、こういったことがずっと問題視されてきたところだったと思いますが、今回の事案というのは少し違うというか、府中刑務所は、B級それからLB級といった、要は、累犯というか犯情が重たい人たちがいる、そういった刑務所だというふうに理解をしておりますけれども、こういった受刑者と刑務官との関係性というのが変わってきている。

 アメリカ映画なんかでよく見ますけれども、よくニュースにもなっているんですが、アメリカやそれからコロンビアといった、何か怪しい、怪しいという表現もよくないんですが、犯罪の程度が重たいような人たちが入っている刑務所の中では、例えば、刑務所の中で携帯電話を持ち、拳銃を持ち、それから麻薬を輸入させ、刑務官と性的関係を結び、さらには、コロンビアなんかでは、受刑者が刑務所の中でダンスパーティーを開く、そんなようなニュースすらあるわけでございますが、何かこういう関係にだんだん近くなってきているような危惧を私は覚えるわけでございます。

 こういった中で、今般、府中刑務所の事案が出てきた中で、こういった同種の不適正処遇に関する事案について、ほかにいろいろ、そういったものがあるのかないのかといったことについてどういった調査をしているのか、それから、抜本的な改革について、これからどういうふうに対応していくのかというようなことについて伺えればと思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 府中刑務所を初め、不祥事案が続いていることにつきましては、まことに遺憾に感じているところでございます。

 おっしゃるとおり、府中刑務所は、犯罪傾向が進んでいるB級、LB級を収容している施設でございまして、今回の案件も、もともとは、問題受刑者の性格等を把握するために、担当の職員が私語を交わして、いろいろな話をして、どういう人間かというのを把握する段階におきまして、食事の量が少ないといった受刑者の申し出を受けて、食事の交換を漫然と行ったということ。これは当然、職務義務違反でございますけれども、これを皮切りにいたしまして、本来給与すべきでない菓子とかあるいは携帯電話を交付して、ずるずるいって、最終的には、今回問題になりました覚醒剤の譲渡まで至ったという案件でございます。

 刑事施設におきましては、府中刑務所と同様に、刑務官が被収容者に籠絡されまして、本来引き渡してはならない物品等を交付するといったような事案が実は結構ございます。ちょっと御紹介いたしますと、こういった不適正処遇事案につきましては、平成二十年度以降、十件発生しておりまして、事案の内容に応じまして、免職が二件、停職が二件、それから減給が五件、戒告一件、こういった懲戒処分を実施したところでございます。

 また、今おっしゃいました収容者に対する過度な実力行使、これにつきましても、制止等の措置を行う際に過剰な実力行使に及んだという案件も若干ございまして、平成二十年度以降、四件ございます。これに対する処分でございますけれども、停職は二件、戒告は二件という懲戒処分を実施したところでございます。

 当局では、こういった事案が発生する都度、適切に当該事案について処分することはもちろんですけれども、判明した問題点を整理しまして、すぐに他の刑事施設に周知、指示することによって再発防止に努めているところでございます。

 今回の府中刑務所の事案もございまして、これらの取り組みに加えまして、職員が相談や意見を述べやすい明るい職務環境とするといった、職員不祥事が起こりにくい職場環境の構築をまず考えたい。それから、具体的事案に応じて研修資料の作成等、これを用いた研修を実施するなどして、職員不祥事防止のための研修制度の改革を行いたい。それから、職員の非違行為を早期に発見するための方策の具体化等の抜本的な再発防止策を今検討中でございまして、取りまとめ次第、早急に措置を講じてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

椎名委員 済みません。ありがとうございます。

 職員が相談しやすい関係をつくるための明るい職場をとおっしゃっておりましたけれども、正直、そういう問題ではないんじゃないかなというふうに思います。

 刑務官という仕事がどういう仕事なのかということも改めていろいろ調べてみようと思って、グーグルという便利なツールでいろいろ調べてみたりすると、ジョブディスクリプション、要するに、刑務官というのはこういう仕事です、それで人材をこのように募集します、そういうサイトが出てくるわけです。そういうサイトの中に、コメントとしていろいろなコメント、刑務官の方々が匿名でいろいろ書き込みをしているわけです、こういう仕事ですと。

 刑務官の中では、やはりよく言われているのは、上司、部下の関係が物すごくきついとか、上司から部下に対して物すごく暴力を振るわれるとか、八つ当たりをされるとか、そういうようなことがあって、刑務官本人も、末端であれば末端であるほど非常にストレスを感じている職場であるということは、よく言われているところだと思います。そういった中で、職員が相談しやすい環境をつくりましょうと号令をかけるだけで、なかなか物事が変わるわけでもないのではないかなというふうに私自身は感じています。

 こういう閉鎖的な空間の中で、上司、部下関係だったり、受刑者と刑務官という関係だったりというところについて、もう少し抜本的な制度改革というものを考えていくということも必要なのではないかというふうに思います。

 もちろん、累犯であったり暴力団犯罪であったり、そういった犯情の重たい受刑者を入れている刑務所とそうではない刑務所とで分けて考えていく必要もあるでしょうけれども、犯情の軽い人については、例えば、開放刑務所とか休日のみの刑務所とか、海外で取り入れられている制度について検討していくといったようなことも必要ですし、逆に、犯情の重たい方々について、より抜本的な制度改革というものを考えていくということも必要かと思います。

 そんな中で、大臣に一言御所見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 国連機関でもありますが、法務省の傘下にございますのにアジア極東犯罪防止研修所というのがございます。これは、各国の実務家を集めて研修等を行っているわけですが、大変成果を上げておりまして、各国で高い評価を受けているんですが、ことし、この間行われましたのは、矯正施設等々の中間管理職のストレスマネジメントという題でございました。その報告等を聞きますと、これは中間管理職に限りませんけれども、やはりほかの職種と違うストレスを矯正の仕事に従事する人は感じながらやっているんだなということを私はつくづく感じました。

 それから、私もいろいろな矯正の職員の書いたもの等を読んでみますと、例えば、あるとき、後ろから受刑者に襲われた、そうすると、受刑者に背中を見せるなと言われていたのを自分はうっかりしてしまったというようなことが書いてあるわけですね。それで、日本の刑務官は皆、丸腰で業務に当たっておりますから、そういう意味でも、受刑者との距離のとり方と申しますか、その距離のとり方の中には、人間関係をいかにしてつくっていくかという、いろいろなストレスが私はあるんだろうと思います。

 それで、先ほど委員は、明るい職場環境というのは、必ずしもそういう問題ではないのではないかとおっしゃいましたけれども、実は私も、府中刑務所の事件は非常にざんきにたえない事件でございまして、まことに申しわけないことだと思っているんです。しかし、あそこの関係を見ますと、余り個別のことを申し上げてはいけないかもしれませんが、やはり、刑務官を取り込んでいくというか、籠絡していくテクニックといいますか、そういうわざにはすごくたけた受刑者がいるということも事実でございまして、そういう人に、まだ比較的若い人だったと思うんですが、つまり取り込まれていってしまったんですね。

 一番最初の、では、食事をかえてやるというのも、規律違反であることはこれはもちろんでございます。しかし、その程度のときに上司に相談して、いろいろと言われてくるんだけれども、どうしたものだろうかと、これを気軽に相談できる、気軽といいますか、上司に相談できる環境と、一人で抱え込んでしまって悩む環境というのでは、私は、問題の解決はずっと違うだろうというふうに思います。

 ですから、先ほど矯正局長が答弁いたしましたように、言ってみれば、風通しのいいといいますか、そういう悩み、ストレスの多い環境で、問題が起こったときには、抱え込まないで、すぐ上司と相談できるというような環境をつくっていくこと、もちろん、それだけで足りるとは私も思いません。もっといろいろなことをやらなきゃなりませんが、今のようなことも一つ大いに意味のあることではないかと私は考えております。

椎名委員 ありがとうございます。非常に勉強になります。

 もちろん、そんなものではないんじゃないかと申し上げた趣旨は、要するに、それじゃ足りないんじゃないかという話だったんですけれども、今後とも、要するに籠絡されないようにするためということで、例えば、今大臣がおっしゃっていましたけれども、丸腰なのか、武具を持つのかというところで、威嚇することができるのかできないのかというところもあるでしょうし、いろいろ検討できるところはあるのかなというふうに伺っていて思いました。引き続き私自身も勉強してまいりたいと思いますけれども、ぜひ、役所の方でも御検討いただければというふうに思います。

 引き続き、次の質問に参りたいと思います。

 次は、富山刑務所の事案なんですけれども、富山刑務所というところで受刑者が亡くなったという事案がございました。これは一年ほど前の事案でございますけれども。これに対して、新法が施行された後整備された刑事施設視察委員会という外部委員会がございますけれども、この刑事施設視察委員会という外部委員会が、この受刑者の死亡の問題について、医師を入れてきちんと検証してみた方がいいのではないかというような意見を述べたところ、結局、刑務所長は、その検証について、これを否定して、再検証は拒否をするというようなことがあったわけでございます。

 この制度自体は、基本的には、刑事施設視察委員会というのは、法律の七条によって根拠づけられている新しい制度でございますが、刑事施設の長に対して意見具申をすることができる、そういう制度になっていようかと思います。もともとの制度の根拠でございますが、基本的に制度の背景にあったのは、要するに、行刑の透明化というようなことをしていくためにも、外部の人間に視察をしてもらって、意見を言ってもらった方がいい、そういう制度だったと思います。

 しかし、外部の人間が意見を言ってみて、施設長がそれを問題ないと言った場合に、それでも外部委員が問題視をした場合に、例えばもっと上の矯正管区長であったり、それから法務大臣であったりというところに意見を具申、さらに届けていく、それと、さらに言うと、外部委員会の意見について、これをもう少し法的な、義務的に取り扱うような手続をとることができないかというふうに私自身は考えた次第でございますけれども、御所見を賜れればというふうに思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 まず、富山刑務所の案件につきまして、ちょっと詳しく説明させていただきたいと思います。

 富山刑務所の件につきましては、昨年の二月に同所において七十歳代の男性受刑者が死亡した事案に関しまして、おっしゃるとおり、刑事施設視察委員会が医師を加えた調査チームによる再検証を求めたということがございました。ただ、この場合、矯正局におきまして、複数の医師を含む職員によって詳細かつ総合的な検証を尽くしておりましたので、再検証を行う必要性は認められないという結論に至ったものでございます。

 また、刑事施設視察委員会と申しますのは、先ほども触れられましたように、施設を視察していただいたり、あるいは被収容者との面接などをしていただいて、施設の運営の状況を的確に把握されて、刑事施設の長に対して意見をいろいろ言っていただくというものでございます。

 そのためには、施設の実情を十分に理解していただくことが必要でございますし、実情を把握していただかなきゃいけませんので、各施設におきましては、各施設の収容状況ですとか、あるいはいろいろな情報を提示して協力をしているところでございます。

 意見を賜って、それは年に一回、本省で取りまとめをしまして、その結果は公表して、我々も知るようなシステムにはなっておりますので、その点を御了解いただきたいと思います。

 以上でございます。

椎名委員 要するに、法的な応答義務があるかないか、そういうところなのかなというふうに思います。

 今おっしゃっていただいた件については、そういった事案が、例えば外部委員会が指摘しているところが妥当しないということであれば、それは問題はないんだろうと思いますけれども、医師の検証がなかったというふうに外部委員会が認識をしていたからこそ、そういう意見具申がなされたわけでございますので、そういったところできちんとコミュニケーションがとれて、さらにそれでも視察委員会が問題意識を持ったときに、やはり法的な応答義務を課す強い制度として制度整備をしていくことも検討した方がいいのではないかなというふうに私自身は考えるところでございます。

 これ自体は、日弁連からも、三年前、二〇一〇年に、新法施行後の五年後の見直しについてということで、刑事施設視察委員会についての見直しというところで、権限強化に関して意見というか改革提言がなされているところでございます。

 そういったところを踏まえて、大臣から御所見を賜れればというふうに思います。

谷垣国務大臣 五年後の見直しをせよということで、平成二十三年六月一日から施行しているわけですね。

 それで、先ほど、そういう委員会等の提言に対して、当然、尊重して取り入れるものは取り入れなければならない、それは規則にも書いてあるわけでございます。これは、さらにもっと強い勧告なり応答義務をせよという御趣旨かと思います。しかし、やはり施設の運営の責任者はその施設の長でございますから、現在の段階では、施設の長がやはりその委員会等の御意見をできるだけ眼光紙背に徹するような目で見て、それに応えていく。もちろん、その中ではとても無理だというのもあるだろうと思います。

 今は、そういう判断形態の中で、この見直しがどういうものが出てくるのかもう少し見てみたい、このように思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 今回の例えば府中刑務所の事件で、外部視察委員会、この刑事施設視察委員会というのはどういった機能を果たしたかというのは御存じでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 府中刑務所に限りませんけれども、刑事施設において、不祥事もそうですし、いろいろな事故が起こったり、大きな案件が起こりましたら、すぐに施設の方から刑事施設視察委員会の委員の皆様方には連絡して、それからすぐ直近で開かれる視察委員会において意見があったり、あるいは、ああした方がいい、こうした方がいいよというふうな意見もございますので、それは各施設において承っております。

 府中刑務所におきましても、事件が起きましてすぐに視察委員の皆様には全員に御連絡いたしまして、もし何かの意見がございましたらば、それは適切に対応させるように指示したいと思います。

 以上でございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 確かに、五年後の見直しというところで、この刑事施設視察委員会についても規則のところで少し修正がなされたというふうには理解をしております。そういった中で、今後の運用のあり方について、私自身も引き続き注視をしていきたいなというふうに思っております。

 結構な時間がたってしまいましたが、次の質問に移ります。

 先ほど指摘した嘆願書でございますが、この嘆願書には、主に二点、話が書かれていました。

 一点目が、府中刑務所それから大阪刑務所のような、B級、LB級が入っている、要するに犯情の重たい人たちが収容されている刑務所の方が食事がいいんじゃないかみたいなそういう不平不満、大阪刑務所や府中刑務所にはパン工場があるのでパン食があるとかそういった不平不満、まあ、そこについては余り聞くに値しないかなと思って取り上げなかったんですけれども、そういった話と、もう一点が、不服申し立て制度についての問題点が指摘されたところでございます。

 この不服申し立て制度についてですけれども、今般、新法が施行されてから不服申し立ての制度が三つに拡充されたわけでございます。さらに言うと、もちろん、不服申し立ての制度を使った結果として不利益処分を受けてはならない、法的には、建前として、百七十条ですけれども、不利益処分をしてはいけないというのは明確に記載されているわけでございますけれども、他方で、事実上の運用その他もろもろでやはり不利益処分を受けるんだという不平不満をいただいたわけでございます。

 実際に話を聞いてきてみると、刑務所の中での処遇の根底にある優遇措置というものを決める手続がございますが、この優遇措置を決める手続の中で、これは実際、現場の刑務官そのものが受刑者がどういうふうに振る舞っているかというところを評価することが最初の入り口になるわけでございます。

 こういったところで、現場の刑務官が評価権限を持っているということをもって、当人に対して悪い評価をするなどして評価を下げるなどして制裁を与える、それから、ほかの受刑者、仲のいい受刑者に対してそういったおどしをかけることによって、むしろ受刑者を逆に今度は刑務官が取り込んで、それで受刑者同士のけんか、いじめのようなスタイルをとらせた上で、さらに自分が悪いということで懲罰を与える、こういったような形で制裁が行われているというようなことをおっしゃっているわけでございます。

 こういったところで、昔からずっと言われている、例えば刑務所太郎とか、受刑者が刑務官におもねるようなそういった制度になっていやしないかというところを危惧しているところでございます。

 法整備当初の趣旨である受刑者の自立といったところについて、どのくらい達成できているかについては結構疑問ではないかなというところがあるので、御所見を賜れればというふうに思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃるとおり、不服審査をしたからといって不利益の処遇をするようなことというのは我々は許しておりませんし、そんなことがあるとは承知しておりません。ただ、個々の事案について、当該受刑者がそういったふうに感じてそういった不平不満を申すこともあることでございます。

 ただ一方で、先ほどおっしゃいました職員個人が評価をしてということでありますけれども、これも、担当の職員ももちろん評価しますけれども、階級でいえばその上司に当たる者数名も一緒に当該受刑者の日ごろの生活とか成績を見ておりますので、決して担当の職員だけでそういった処遇を決定できるわけではございませんので、そこのところはちょっと誤解のないようにお願いしたいと思います。

 それから、優遇制度、これもやはり受刑者の改善更生等、円滑に社会復帰できるようにということでやっているものでございますので、まだまだ足りないところはあるかもしれませんけれども、私どもといたしましては、やはりこの制度の趣旨をちゃんと考えて個々の処遇に当たっていきたい、それはもう強く感じております。

 以上でございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 時間もなくなってきたので最後の質問にしたいと思いますけれども、最後に、受刑者の高齢化という話についての所見を伺えればと思います。

 高齢受刑者については、年々比率は上がってきているんですけれども、今現状で受刑者全体の大体八%ぐらいということで、二千人を超えているということでございます。

 この中で、高齢受刑者の罪名を見ると、もう半分近くが窃盗。男女で分けてみると、女子は特に八〇%を超えて窃盗で、詐欺というのを含めると、本当に、平均で見ても六五%、男女で見ても大体もう半分以上を超える、女子についても九割近い形が窃盗、詐欺です。これは何かというと、要は、出所直後に窃盗をしてもう一回刑務所に戻ってくるというような、刑務所のホテル化、そういったところで問題が指摘されているところでもあるかと思います。

 もう時間がなくなってしまったので終わらせますけれども、高齢の受刑者の累犯、それで刑務所をホテル化してしまっている、こういったところについての対策という意味で御所見を賜りたいと思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃるとおり、高齢受刑者、特に出てからのことを考えなければなりませんので、今でも、保護観察所とか地域生活定着支援センターとか福祉機関と連携しまして、中にいる間から、出てからの生活をどういうふうに設計するのかといった指導も含めてやらせていただいております。

 ただ、これは数少のうございますので、これからどんどんこれを大きくして、たくさんのところでやりたい。やはり高齢受刑者は出てからのことを考えないと処遇できませんので。よく承りました。

椎名委員 ありがとうございます。

 高齢受刑者の再入所率は、実は三分の二、六六・六%だそうですので、本当に高齢受刑者の対策というは非常に重要になってくるかと思います。今後とも、私自身も継続してウオッチしていきたいと思います。

 ありがとうございます。

石田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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