衆議院

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第5号 平成25年11月8日(金曜日)

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平成二十五年十一月八日(金曜日)

    午前九時四十一分開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大野敬太郎君

      大見  正君    神山 佐市君

      川田  隆君    菅家 一郎君

      黄川田仁志君    小島 敏文君

      古賀  篤君    今野 智博君

      末吉 光徳君    武部  新君

      中谷 真一君    鳩山 邦夫君

      平口  洋君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    小川 淳也君

      郡  和子君    横路 孝弘君

      高橋 みほ君    林原 由佳君

      濱村  進君    椎名  毅君

      鈴木 貴子君    西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   最高裁判所事務総局人事局長            安浪 亮介君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局長)          井上  利君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   黒川 弘務君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  榊原 一夫君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   岡本 薫明君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           宮野 甚一君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月八日

 辞任         補欠選任

  大見  正君     川田  隆君

  門  博文君     武部  新君

  神山 佐市君     大野敬太郎君

  橋本  岳君     中谷 真一君

  田嶋  要君     小川 淳也君

  大口 善徳君     濱村  進君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     神山 佐市君

  川田  隆君     大見  正君

  武部  新君     門  博文君

  中谷 真一君     橋本  岳君

  小川 淳也君     田嶋  要君

  濱村  進君     大口 善徳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判官の配偶者同行休業に関する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判官の配偶者同行休業に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局職員福祉局長井上利君、法務省大臣官房長黒川弘務君、法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省矯正局長西田博君、法務省入国管理局長榊原一夫君、財務省主計局次長岡本薫明君及び厚生労働省職業安定局次長宮野甚一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局安浪人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。初めに、濱村進君。

濱村委員 おはようございます。公明党の濱村進でございます。

 本日は、法務委員会にて質問の機会をいただきまして、大変に感謝をしております。本日、裁判官の配偶者同行休業に関する法律案ということで質問をさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 当法案は、御存じのとおり、国家公務員あるいは地方公務員、さらには法務省や裁判所の職員についても準用されるということに、きのうの総務委員会におきましても賛成総員ということになりました。同様にして、裁判官についても今回適用されようとしているわけでございます。

 しかしながら、裁判官と先ほど申し上げた公務員の皆様とでは大いに違いがあります。何よりも、裁判官は憲法上身分が保障されているわけであります。

 どういうことかと申しますと、裁判官が罷免されるのは、心身の故障のため職務をとることができない場合、これが一点目、もう一点、公の弾劾による場合ということで、こういった場合については罷免されるということで憲法七十八条に規定されている、明記されているわけでございます。

 さらには、裁判官の育児休業に関する法律も整備されておりまして、育児による休業についても身分が保障されているという状況でございます。

 そうはいっても、これまでは、配偶者の海外転勤に同伴するということによる休業というのは認められておりませんでした。ですので、裁判官の方は、このようなケースではやめることしか選択肢がなかったということでございます。

 こうした身分保障の背景も踏まえて、本法案の導入理由についてお聞かせください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 これまでも、裁判官の服務規律につきましては、可能な限り、一般職の国家公務員と同様の取り扱いをしてきておりまして、この配偶者同行休業制度は、国家公務員の継続的な勤務の促進や、男女の仕事と子育てなどの両立支援が要請される状況を踏まえて提案されたものでありまして、その制度趣旨は裁判官にも妥当するものでございます。

 この法律案では、配偶者同行休業中の裁判官は、この休業期間中、裁判官としての身分は保有するが、職務に従事しないとされております。これは、裁判官が海外転勤などをする配偶者に同行するに当たりまして、裁判官としての身分を保有したまま職務に従事しないことが認められなければ、配偶者の海外転勤等に同行するためには、みずから退官する道を選択せざるを得ないということ。

 退官しました場合には、後に裁判官に再任官する例もございますが、判事の任命資格に不利益が生ずる可能性があること、それから退職手当の算定の面でも不利益が生ずることなどから、配偶者同行休業制度を導入いたしまして、所要の規定を整備することによって、このような不利益を回避する選択肢を設けるということ、これをその趣旨としてございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 先ほど、一度退官されて再任官される方もいらっしゃるということでございますけれども、やはり、国家公務員の方に準ずるという形におきましては、しっかりと裁判官の方にも法整備がなされるべきだというふうに私も思っております。

 次の質問に移ります。

 今回の休業事由について、配偶者の海外転勤に対してのみでありまして、国内の転勤は対象とはなっておりません。それは、民間企業でも国内について休業を認めるというケースはなかなかないというふうに私も存知しておるわけでございますけれども、国内が対象となっていない理由を改めて教えていただけますでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 国家公務員の配偶者同行休業法律案の点からまず御説明いたしますと、この法律案におきましては、配偶者が外国に赴任した場合、配偶者との行き来を頻繁に行うということが容易でないこと、それから、外国では言葉や文化、生活習慣などが異なり、そこで生活をする者にとってその負担は精神面も含め相対的に大きいことなどのために、国内転勤と比較して同行を認める必要性が高いと考えられることなどを考慮して、国内に転居する場合は対象としないということとされたものと承知しております。この法律案につきましても、以上の点は同様でございます。

 また、裁判官の場合には、今申し上げました事情に加えまして、裁判官の身分を保有したまま海外において職務などに従事するのは留学の場合に限られ、海外に赴く配偶者のその赴任先に裁判官を転任させるなどの対応が困難である、こういったことも考慮したものでございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 さらにちょっと質問させていただきたいんですけれども、配偶者が赴任する国内の地に当該裁判官が人事異動の希望を出された場合に、現状、どのようにその希望を酌んで、そのとおりにするかどうか、恐らくそういった対応もなされているというふうに伺っておるんですけれども、今現状どのような運用をされているのかお聞かせ願えますでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判官につきましても、仕事と家庭生活の両立というのは重要なことでございます。したがいまして、夫婦の同居あるいは子育てということを考えてまいりますと、本人の方から、このあたりの方面に赴任したいという希望がありましたら、可能な限りでその点についても配慮して異動を組んでおるところでございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 恐らく、可能な限りというような状況にはなるかと思うんですけれども、どんどんまたふえていくことかもしれませんし、柔軟な対応ができることが、裁判官のこの同行休業制度を運用するに当たっても、非常に運用しやすくなる土壌を整えていくことにつながるかと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次の質問に移ります。

 配偶者同行休業制度、当制度を導入することで、裁判官のキャリア構築と生活の充実といった両面で実現しやすくなるというふうに考えておりますが、制度導入によって期待される効果について、谷垣法務大臣の御所見をお聞かせください。

谷垣国務大臣 昔は滅私奉公なんという言葉もございましたが、やはり現代においては、先ほども御答弁がありましたけれども、仕事と家庭生活を両立させていくというのは、これは公務員だけではなく、もちろん民間にも通ずることでございますし、裁判官にとっても仕事と家庭生活を両立させていくというのは極めて大事なことじゃないかと思いますね。ですから、何を期待しているかというと、まさにそういうことを期待しているわけです。

 さらにもう少しつけ加えますと、日本再興戦略というのをことしの六月に閣議決定したわけでありますけれども、その中でも、女性の力をもっと活用できないか、もう少し女性の活躍を図れないかという中で仕事と家庭生活を両立させながら女性の力を使っていこうということがあって、それは、公は民から一歩おくれるという考え方もあるんですが、やはり風穴をあけていかないとしようがないということが背景にあったんだろうと思います。

 ですから、法務省としてもそういう流れを推し進めていき、司法の分野でもそういうことがきちっと行われていくということが、大きな意味で、個人生活の充実にもつながりますが、日本の活力という点でも大事ではないか、このように考えております。

濱村委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいた日本の活力につながるというのは本当にそのとおりだなと私も思っておりまして、海外に同行するとなりますと、日本だけではなくて世界の状況を知ることができて、日本の社会通念上の判断だけで裁判官として仕事に従事するということだけではなくて、広い知見とか多様な考え方に触れることができるのかなというふうに思っております。このこと自体は裁判官個人の幅が広がるということにつながっていくのかなというふうに考えますと、非常にいいことにつながるのではないかというふうに期待をしております。

 その上で、この法案がそういった面でも効果が生み出されるということであれば、裁判官だけではなくて、日本の司法だけではなくて、広く一般にこういった効果が認められる、非常にこれが広がっていくのではないかというふうに私も感じております。この法案をもとに効果が出るようにしっかりとやってまいりたいなというふうに思っている次第でございます。

 続きまして、この法案の運用上の課題について少し質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、当法案の承認基準についてお伺いをいたします。

 国家公務員あるいは地方公務員の場合におきましては、勤務成績その他の事情を考慮するというふうにございます。裁判官につきましてはこのようなことは記載されておりませんでして、裁判事務等の運営に支障がないと認めるときに承認をされるというふうに記載があるわけでございます。

 こういった違いがあるわけでございますけれども、裁判官について規定されている裁判事務等の運営に支障がない、こういう状況というのは一体どういう状況なのかということを、わかりやすくするためにもこの逆をとって、裁判事務等の運営に支障があるというのは一体どういう状況なのか。これは、具体的なケースも含めて、承認基準について具体的な御説明を願いたいと思いますが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 まず、法律案の内容として御説明していきたいと思います。

 この法律案に言うところの裁判事務等の運営に支障がないと認めるときと申しますのは、一つには、まず、所属の裁判所内での配置がえですとか、あるいは、事件の割り当てですが、配填の変更、それから係属事件の配填がえなど、こういったことによること、あるいは、さらには全国規模の異動などの措置を講じることによって、配偶者同行休業を請求した裁判官が担っておりました業務を処理することが可能な場合、逆に言いますと、それができない場合は御指摘のような場合に当たるということでございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 運営に支障がないというのは、もちろん、私も一年前までは民間企業でサラリーマンをやっておりましたけれども、自分がいなくなる、そうしたらその仕事を引き継がなければいけない。その仕事を引き継ぐというのは、そのために新しい人を呼ぶというのは民間企業ならできます。そうではなくて、裁判官というのはそういうこともできないので、配置がえ、あるいはほかの周りの同僚の方々に引き継いでいただくというようなことをされると思うんですけれども、恐らく、裁判の事務等の運営に支障がある状況というのはなかなか起きないというふうに思ってよいのかなと考えております。

 要は、裁判事務、裁判、こなさなきゃいけない数があるんだけれども、それをしっかりと現有の裁判官の方々で行っていけるということで認識をさせていただいておりますが、その認識で合っているかどうかだけちょっと御確認させていただいてもよろしいでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 今委員がお話しになられたとおりのように考えております。支障がある場合というのは、ごく例外的な場合だろうと思います。当該裁判官がその事件を担当していかざるを得ない、言いかえれば、かなり代替性がないというような場合に限られるのではないかと考えております。

濱村委員 ありがとうございます。

 続きまして、裁判官の報酬は、裁判官の報酬等に関する法律をもとに、職歴や経験年数等を踏まえて最高裁判所が決めることとなっております。

 配偶者同行休業制度を取得することで、公務員は調整規定があるようでございますけれども、裁判官におきましてはこういった調整規定はありません。ですので、報酬にどのような影響が出るのかということについて確認をさせてください。

安浪最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、裁判官の昇給につきましては、裁判官の報酬等に関する法律三条によりまして、最高裁判所が定めることとされております。具体的には、各裁判官の勤務状況、経験年数等を考慮して個別に決定しておるところでございます。

 御質問の昇給への影響の点でございますけれども、配偶者同行休業の期間中には報酬の支給がございませんので昇給自体は行いませんが、復職後に同期の裁判官と同じ給与への昇給を行うということにより、給与上の不利益を受けることのないように対処してまいることを考えております。

濱村委員 ありがとうございます。

 そういった意味では、同期と比べて不利益が生じないようにということでおっしゃっているんですけれども、裁判官育休法においては不利益取り扱いの禁止というのが設定されているわけでございますけれども、当法案、今回の法案についてはそれがありません。

 その上で、ない理由というのもお聞かせ願いたいのと、不利益がなされないように同様の対応ができるのか、あるいは、なぜ外したのかという理由についてもお聞かせ願えればと思います。

小川政府参考人 不利益取り扱いの規定がないことについてお尋ねでございましたので、その点、私の方から御説明申し上げます。

 不利益取り扱いを禁止する規定は、御指摘のとおり、裁判官の育児休業に関する法律には見られるわけでございますが、これは、現行の国家公務員育児休業法においてこの点を確認的に規定したことに鑑みまして、裁判官育児休業法にも同様の規定を確認的に設けたというものでございます。

 なお、国家公務員育児休業法に不利益取り扱いを禁止する規定がございますのは、平成三年に制定されましたが、この法律の前身であります、女子教育職員等の育児休業について規定した法律がございまして、昭和五十年に制定された法律でございますが、その法律の中でこの点を確認的に規定していたことを考慮し、それを引き継いで同様の規定が置かれたもの、そういう経緯があったものだというふうに伺っております。

濱村委員 大変わかりやすい説明で、ありがとうございました。

 続きまして、休業中の社会保険料の取り扱いについて質問をさせていただきます。

 裁判官の方は裁判所共済組合に入っていると理解しておりますけれども、配偶者同行休業制度を取得した場合、資格や掛金の負担についてはどのような運用となりますでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 裁判官につきましても、休業期間中、裁判所共済組合の組合員となっております。そのため、休業期間中も国家公務員共済組合制度が適用され、組合員本人が掛金を、また事業主であります国が負担金を負担するということになると考えております。

濱村委員 ありがとうございます。

 では、ちょっとペースアップいたします。

 復帰後の裁判官の業務の継続性の維持について、少し質問をします。

 長期間職場を離れた裁判官の方が復帰後速やかに業務を遂行するためには、休業中も能力の維持向上に努めることが重要だというふうに考えております。そういった観点でいいますと、復帰後、例えば研修や人事配置等に関してどのような対応をすることを御検討されていますでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、配偶者同行休業を取得した裁判官につきましても、休業中に自己研さんに努めてもらうという必要性はそのとおりだと考えております。

 復帰後のことでございますけれども、私どもでは、司法研修所というところでさまざまな研修を実施しておりまして、この研修の多くが公募制、自分で手を挙げて参加するという仕組みになっております。休業から復帰した裁判官につきましても、こういう研修の機会を積極的に活用してもらいたいというふうに考えております。

 また、復帰後の人事配置の点でございます。これも、休業期間がどれぐらいの期間であったのかということにもよるんだろうとは思いますけれども、いずれにしましても、復帰後、円滑に職務が遂行できるよう、必要な配置上の配慮をしてまいりたいと考えております。

濱村委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、人事配置、極端に特殊な例の裁判をすぐ担当させるというようなことはなかなか起きないようにということで、いわゆる一般的によくあるケースの裁判を担当されるということで考慮されるというふうに認識をしております。

 続きまして、この制度について、潜在的なニーズについてお聞かせください。

 過去五年間で退官された裁判官のうち、退官理由が配偶者の海外転勤でそれに同行される方というのは、合計五名いらっしゃったというふうに伺っております。

 その上で、潜在的なニーズをお伺いしたいんですけれども、どういうことかというと、配偶者が海外転勤をして、その配偶者と離れて、今現在、日本国内で生活をされながら裁判官として御活躍されている方はいらっしゃるのか、あるいは、そういった方々が、この制度があれば利用をされるのかどうか、これは人数を把握できている限りで結構でございます、状況を教えていただければというふうに思います。

安浪最高裁判所長官代理者 この制度が始まりました後、裁判官が何人ぐらいこの制度を利用するかという潜在的なニーズの点でございますけれども、現時点での私どもの予測としては、年間二、三名程度かなというふうに推測しておるところでございます。

 その理由でございますけれども、一つは、先ほど委員御指摘のとおり、この五年間、平成二十年から二十四年度の間で退官した裁判官のうち、配偶者の海外転勤等に同行することを理由とした者が五名でございまして、平均しますと年間一人ということでございます。

 そのほかに考え得る点といたしましては、現在、若い判事補が留学に出ておりますけれども、その留学に出ております配偶者もまた同じように裁判官という者がこの五年間では十一名ほどおります。したがいまして、年間二人ぐらい。その二人が可能性のある者というふうに考えておりますので、先ほど申しましたとおり、二、三人かなと思います。

 それから、現在、配偶者が海外に赴任しておりまして、にもかかわらず日本で裁判官を続けておる者の数というのは把握しておりません。

 あと、取り急ぎ、東京地裁と大阪地裁におります判事補に、こういう制度があったら利用したいかというようなことを聞いてみたことはございます。そうしますと、やはり九割を超える者が、この制度ができれば利用したいというような声がございます。

濱村委員 ありがとうございます。少し通告も曖昧でしたので、申しわけございません。

 次の質問ですけれども、国家公務員の場合は任期つき採用や臨時的任用の制度を設けておりますが、裁判官については設けていない。先ほどの承認基準の質問と少し重複している部分もございますけれども、裁判官は身分が保障されているので任期つきとか臨時の採用はふさわしくないということは、もうそのとおりだというふうに思っております。

 業務を引き継いだり担当割りを見直したりするということで何とか賄うということであると思いますけれども、現実的に問題となるボリュームは想定していないということで認識は合っておりますでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 当面の予測としては、先ほど申し上げましたとおり、年間二、三名ということでございますので、異動やあるいは事件の割りかえということで適切に対応してまいりたいと考えております。

濱村委員 ありがとうございます。

 当法案についてですけれども、これは日本から海外に転勤される方について定めたものでございますけれども、ここは少し視点を変えて、海外から日本に就労しに来られる方について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、先日、十一月の五日にも閣議決定をされました国家戦略特区法案におきましても、海外からの企業をたくさん誘致しようとしておるわけでございます。その中で、いわゆる外資系企業で働くビジネスマンのような方々、あるいはそのビジネスマンの生活環境を支えるということにつながるであろう医師の方々についても、日本で診療をしやすくするように可能にしようとしております。また、あるいは弁護士などのビジネスをサポートするプロフェッショナルな人材についても受け入れをする必要があるかと思います。

 こうした特区で想定されている海外の人材の受け入れについて、トラステッドトラベラー制度などの制度等もございますけれども、出入国の審査基準の緩和を図るなどの措置が検討されておるかと思いますけれども、具体的にどのような措置が検討されているのかお聞かせ願いたいのと、その出入国の基準については特区以外の地域でも適用できるのかなというふうに考えておりますけれども、どのようにお考えか御確認させてください。

榊原政府参考人 お答えいたします。

 国家戦略特区の関係で、在留資格の特例に関する具体的な要望については、当局が関連しております会議の関係で特段の要望はまだ承知しておりません。また具体的な要望をいただきましたら、今後、その内容を踏まえまして、政府の基本方針や、緩和に伴います産業労働、国民生活等に与える影響を勘案いたしまして、関係省庁と調整しながら検討してまいりたいと考えているところでございます。

 さらに、お尋ねのトラステッドトラベラーの制度についてお答えいたします。

 トラステッドトラベラーとは信頼できる渡航者という意味でございますけれども、こういった制度を設けます目的は、出入国管理上リスクの少ない渡航者の方々の類型を特定いたしまして、そういった類型に該当する外国人の出入国審査を自動化するなどして迅速化、円滑化を図るためのものでございます。

 この制度の導入につきましては、訪日外国人二千五百万人時代の出入国管理行政の在り方に関する検討結果のほか、本年六月に観光立国推進閣僚会議で決定された観光立国実現に向けたアクション・プログラムにおきましても、その枠組みを構築することについて検討することとされております。

 当局といたしましては、これらを踏まえまして、出入国管理上リスクが低い外国人をトラステッドトラベラーとして特定しまして、自動化ゲートを利用することができるようにする制度をできるだけ早期に実現すべく、諸外国の同様の制度の実施状況などを調査しながら検討を進めているところでございます。

 特に、このトラステッドトラベラー制度の対象として考えておりますのは、委員御指摘のように、ビジネスマンなど商用目的で我が国に繰り返し出入国される方々をターゲットにしておりますので、ビジネス活動の促進に資するものと考えております。

濱村委員 ありがとうございます。

 今、商用目的というふうにおっしゃっておられたので、少し追加で質問なんですけれども、労働力不足が、今、日本におきましては起きているわけです。この労働力不足、いわゆる単純労働に従事されるような方について、特にマンパワーという点では不足しているかと思うんですけれども、こうした背景を踏まえて、労働力不足を補うわけではないんですが、単純労働者の方についても、こういったトラステッドトラベラー制度などの基準をしっかりとクリアされる方であれば対象となるかどうかについて御確認させてください。

榊原政府参考人 お答えいたします。

 外国人労働者の受け入れにつきましては、現在、専門的、技術的分野の外国人につきましては、我が国の経済社会の活性化に資するとの観点から、積極的に受け入れることとしておりますけれども、その反面、単純作業を行うような外国人労働者の受け入れは認めないという方針に基づきまして、出入国管理行政を行っているところでございます。

 ですから、現在の段階では、こういった単純労働者と言われる方々につきまして、トラステッドトラベラーに該当するということはなかなか難しいのかなというふうに考えているところでございます。

 ただ、外国人労働者の受け入れにつきましては、国内経済や労働市場、さらには治安問題など、広く国民生活にさまざまな影響を与えるものでありますので、国民的コンセンサスを踏まえながら政府全体で検討する必要があるものと考えておりますので、そういった検討状況も踏まえまして、入国管理局といたしましても対応していきたいと考えております。

濱村委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、ここは丁寧にやっていかなければいけないというふうに思います。引き続き御検討を願いまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、階猛君。

階委員 おはようございます。民主党の階猛です。

 早速、質問に入らせていただきます。

 今回の裁判官の配偶者同行休業に関する法律は、きっかけは人事院の意見の申し出にあったかと思います。その人事院の方にお伺いしますけれども、先日伺ったところ、そもそも、民間企業で同様の制度、すなわち配偶者の同行休業制度が導入されているケースがどれだけあるのかということをお尋ねしたところ、制度としてちゃんとあるのが〇・九%。ちなみに、調査対象は、常勤の従業員数が五十人以上の企業ということで、六千三百十四社と伺っていますけれども、五十人以上ですから、全体的に見ると、私の印象では、地方とかも含めると結構大きい方の会社だと思うんですが、その大きい方の会社の中でも、制度としてあるのが〇・九%、事実上それに近いようなものがあるというのが〇・七%、合計しても一・六%ぐらいなんですね。

 そういう民間の状況の中で、よく人事院さんが、官民比較で公務員の待遇をどうこうというお話をされるわけですけれども、そういう民間の状況を踏まえた場合に、今回、この制度を公務員に導入していく理由というのはどの辺にあるのかということをまず御説明いただけますか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 我が国の少子高齢化が急速に進展する中、社会全体として、育児や介護を含め、両立支援制度の拡充に取り組むことが求められており、公務においても、職員が家庭責任を全うしながら能力を最大限に発揮して勤務するためには、柔軟な働き方の推進を図るとともに、それぞれの事情やニーズに応じて継続的に勤務することができるような選択肢を拡充していくことが重要であり、このような観点から、人事院は、育児休業、介護休暇など、仕事と家庭生活の両立支援制度の拡充に積極的に取り組んできたところであります。

 このような中で、公務においては、仕事と配偶者等との家庭生活の両立に関しまして、配偶者の外国勤務等に伴い、これに同行するため、有為な人材が離職を余儀なくされ、継続的な勤務が困難となるケースが生じておりましたが、この点については、政府においても、ことし六月に閣議決定された日本再興戦略において、「男女の仕事と子育て等の両立支援について、まずは公務員から率先して取り組む。」こととされ、その具体的な工程として配偶者の転勤に伴う離職への対応等が掲げられ、政府から人事院に対し検討要請もあったところであります。

 これらを踏まえ、人事院として、各府省の人事管理や公務運営への影響も考慮しつつ検討した結果、仕事と家庭生活の両立支援の一つの方策として、公務での活躍が期待できる有為な人材の継続的な勤務を促進し、公務の円滑な運営に資する観点から、配偶者同行休業制度を創設することが適当であると考え、本年八月、国会と内閣に意見の申し出を行ったところであります。

 委員御指摘のとおり、民間企業への同趣旨の制度の普及率は多くはないものの、この配偶者同行休業は、両立支援の推進による有為な人材の活用に資するものであり、また、日本再興戦略において、仕事と家庭生活の両立支援策として意義のあるものとして位置づけられていることからも、公務における両立支援推進のための方策の一つとして積極的に対応することについて相応の理解と納得は得られるのではないかというふうに考えております。

階委員 「まずは公務員から率先して取り組む。」という日本再興戦略のくだりも引用されていましたけれども、今現在、民間の導入状況は、先ほど申し上げたとおり極めて低い、かつ、裁判官におきましても、先ほどの質疑の中で、この制度が導入されたとしても、年間二、三人かなというお話でした。そういう中で、かつ、人事院の意見というのはあくまで国家公務員を対象にしていますから、裁判官は射程の範囲外だと思っています。

 今のようなことを踏まえた上で、なお、今回、法案を提出するということはどういう判断に基づくものなのか、これは法案担当の大臣からお願いしたいと思います。

谷垣国務大臣 委員のおっしゃるように、一般職の国家公務員と特別職の公務員であります裁判官とはいろいろな人事上の規律も違うところがございます。しかし、そういういろいろ違うところは制度をいろいろ立てなければなりませんけれども、大きな方向としては、国家公務員の職務規律と大体同様なものを裁判官もやっていくという方向で今まで整備もしてまいりました。

 そして、先ほどから御議論のように、さっきは滅私奉公というのはちょっと今はどうかということも申しましたけれども、職業生活と家庭との両立というのは日本全体にとっても極めて必要なことであろうと私は思っております。

 再興戦略の文言も引いての御答弁もありましたが、やはり裁判所にとりましても、あるいは法務省なんかでも同様でございますが、非常に職務に通じてきた方々が家庭生活を重視したいということでおやめになってしまうということは、戦力としても極めて痛いということも今までなかったわけではない、このように思っております。そういうことがございましたので、最高裁判所もそのようにお考えになったと思います。

 したがいまして、このような法案を出させていただいたと考えております。

階委員 私が思いますには、民間が、公務員あるいは裁判官がこういう制度を導入されたことで自分たちもやろうとついてきてくれるかどうか、これをちゃんと担保することが重要だと思うんですね。公務員だけあるいは裁判官だけこういう制度が導入できて、仕事と家庭生活を両立できますとはいっても、民間の方では相変わらず夫婦ばらばらに生活せざるを得ないような状況が続くのであれば、これは公務員だけが特権だということになって、かえって、日本全体で見た場合、格差の意識が強まるのではないか、公務員に対する、あるいは裁判官に対する不公平感というのが強まるのではないかと思っていまして、この配偶者同行制度を民間に導入させて普及させていくというのが重要だと思っています。

 その民間に普及させていくような施策を積極的に講じていく必要があると思うんですね。これは日本再興戦略の趣旨からしてもそういうことだと思うので、大臣として、この点についてどのようにお考えになるかということをお願いします。

谷垣国務大臣 この法案を与党の中で審査していただく中で、自民党におきましても階委員と同じような御意見があったと承知しております。結局、公務員だけいろいろな勤務条件がいいのではないかということが出てくるのではないかという懸念を示す意見もありました。ですから、そういう懸念ができるだけ当たらないようにしていかなきゃいかぬというのは、私もそのとおりだと思います。

 まず隗より始めよということで風穴をあけた後に民間がついてきていただくことを私どもは期待しているわけですけれども、期待する、期待するというだけではなかなか進まないと思います。

 では、どういうふうに政府として取り組んでいくかというのは、法務省の、法務大臣が直接それに携わるわけでは必ずしもございませんが、結局、内閣府と厚生労働省が協力して、今、階委員がおっしゃった、民間にも推進していくような活動を進めていくということではないかと思います。

 個別企業が配偶者同行休業制度を導入して効果を上げたような事例もいろいろな仕組みを通じて発信していくことが必要だと思いますし、私が今、全部、内閣府や厚生労働省に先立っていろいろなことを申し上げるのは差し控えなきゃなりませんが、そういう取り組みをされていくことを期待しております。

階委員 ぜひ、内閣の一員であります谷垣法務大臣も、その点十分配慮して、民間にもこういう制度が広く普及されるように御尽力いただければと思っております。

 その上で、今回の法案なんですが、「配偶者同行休業の制度を設けることにより、裁判官の継続的な勤務を促進し、もって裁判事務等の円滑な運営に資することを目的とする。」と第一条に書いております。休業の制度が継続的な勤務を促進するというふうに結びつくためには、休んでいる間、やはりスキルアップにちゃんと取り組んでいただく必要があると思うんですね。

 今法制度も本当に激変しておりますし、多分これから三年間の間に、民法の債権法の大改正ということもあるかもしれません。三年たてば、幾ら優秀な裁判官であるとはいえ、大分、法律に対する知識とかあるいは感覚というのが鈍ってくるような気がします。それは、私も経験を踏まえて、私も、弁護士でしたけれども、この世界に入って六年ぐらいたちますと、基本法の知識もあやふやになってきていまして、大変情けない話なんですが。

 育児休業の場合はまた別だと思うんですね。やはり育児の場合はそれだけで大変なお仕事ですから、その上に裁判官としてのスキルアップをしろというのも、ちょっと酷な話だと思います。ただし、今回の場合は、育児とは関係なく、配偶者の異動に伴って海外に行くというわけですから、余裕の時間は基本的にはあると思っています。そういう時間をスキルアップに役立てていただくというのが私は原則であるべきだと。

 もっと言えば、原則は、やはり海外で仕事をしていただく。裁判官の場合は、海外での仕事が留学で行くぐらいしかないということだったんですけれども、仕事がないんだったら、せめてスキルアップにつながるようないろいろな取り組みをしていただくのがあるべき姿だと私は思いますが、この点について、これは最高裁から御答弁いただけますか。

安浪最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 私どもにおきましても、この配偶者同行休業の機会を活用して同行していく裁判官につきましては、その国の法制度であったり、裁判の実情であったり、そういうものについても見聞を広め、自己研さんに努めるよう働きかけてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

階委員 ぜひそれはお願いしたいと思います。運用上のことですので、最高裁、しっかりとお願いします。

 次に、法律の第二条、「この法律にいう「配偶者」には、届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」ということで、自民党さんは、内縁とかそういうものについては、家族制度を守る立場から異論を唱えられる方が多いと承知しておりますけれども、そもそも、届け出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるかどうかというのはどういうふうに判断されるのだろうかという疑問があります。大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 この法律案における配偶者は、階委員今おっしゃいましたように、届け出をしないけれども事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む、こうされているわけですね。

 その認定に当たっては、必ずしも具体的な基準が法上定められているわけではありません。社会通念上夫婦であると認知されるに至る程度にその関係が明らかであるかどうか、これは最高裁判所においてちゃんとした判断をしていただく、適切な判断をしていただくということになるだろうと思います。

 しかし、あえて一般論で申し上げれば、例えば、結婚式を挙げているとか、夫婦であることを周りに報告しているであるとか、あるいは長期間同居して生活をともにしているとか、そういった要素を総合して判断するんだろうな、そういうふうに考えております。

階委員 例えば、専業主婦の方とか、配偶者の収入で一緒に暮らしているという場合は、所得の申告とかでわかると思うんですが、今回の場合は、基本的に共働きの御夫婦あるいは内縁の方々の間で問題になるわけですから、客観的なもので判断するというのはなかなか難しいという問題があると思いますので、そこを奇貨として、何でもかんでも、これは事実上婚姻関係と同様となると、私はちょっと問題だと思っていますので、そこは留意していただきたいなということです。

 それから、配偶者がどういう事情で外国に行った場合に同行休業が認められるかということで、第二条の二項には、「外国での勤務その他の最高裁判所規則で定める事由」ということになっております。この最高裁判所規則で定める事由というのは、具体的にどういうものを想定されていますか。最高裁、お願いします。

安浪最高裁判所長官代理者 この法律が成立しました後に、最高裁におきまして規則をつくってまいることになるわけでございますけれども、国家公務員の配偶者同行休業に関する法律におきましても、委任に基づきまして、人事院規則で定められることになっておりますので、人事院規則で定められることとなる事由と同様の事由を定めていくことになろうかと考えております。

 具体的に申し上げますと、海外の大学等におきます修学または研究、事業の経営、ボランティア活動など、一定程度長期間にわたって外国に住所または居所を定めて滞在するものが規定されるということになるのではないかと考えております。

階委員 そこも明確に規則を定めていただくようお願いいたします。

 それから、今回の制度を利用しようということで申請をした場合において、第三条ですけれども、最高裁判所は、裁判事務等の運営に支障がないという場合に認めるということです。先ほどの質疑でも、その点について御議論がありました。ただ、そもそも、今現在、裁判事務等の運営に支障がない状況であるかどうかというところを私は疑問に思っています。

 先回の別な質疑でお尋ねしました。今回、用地取得加速化プログラムというのができまして、被災地で管財人をより迅速に選べるようにしようということなんですけれども、肝心な家庭裁判所の裁判官が被災地にはいないのではないかということで、実際問題、被災地にどれぐらい裁判官がいるのだろうかとお尋ねしたところ、御答弁いただけませんでした。改めて、その点について、被災地の裁判官の配置状況はどうなっているかということをお尋ねします。

安浪最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 手元にある資料で申し上げます。盛岡地家裁管内の支部を例にとって御説明を申し上げますと、この盛岡地家裁管内の支部に配属されております裁判官は、花巻、遠野、一関に各一人の裁判官が配置されております。水沢、二戸、宮古は、いわゆる裁判官非常駐庁ということになっております。

階委員 このように、岩手県でも、三つの支部で非常勤の裁判官で週に二日とか三日とか来てもらっているという状況です。

 これは岩手の話ではないんですけれども、つい先日、青森の十和田市の市議会議長から東北弁護士会連合会の会長に出されたペーパーですけれども、十和田市とその周辺地域の司法の充実を求める意見書ということで、十和田市には青森地方裁判所十和田支部、家庭裁判所十和田支部、検察庁十和田支部が置かれているんだけれども、青森地家裁八戸支部に在籍する裁判官一名が填補で週三日のみ勤務して、週のうち二日間は青森地家裁十和田支部の裁判官が不在であったということで、最近その状況は多少緩和されつつあるけれども、依然非常勤であるということです。こういったことから、何とか常勤裁判官を置いてくれというような申請もあるわけですね。

 こういう中で、今回、裁判事務等の運営に支障がないということは、全国的に見て、果たして、簡単に言えるのだろうか。裁判事務等の運営、ただでさえ、今こういうような要望が上がってきている状況で、安易に運営に支障がないということは言えないというふうに思っております。この点について、大臣の御所見、いかがでございましょうか。

谷垣国務大臣 特に、今の階委員の御発言は、必ずしも被災地だけではなくというニュアンスが含まれていたと思います。

 裁判所のあるいは裁判官の人的体制の充実というのは、これは本来、最高裁判所で適切に御判断をいただけることだと思っております。

 私としては、法務省としては、当然、裁判所のそういう御判断、御要請を受けて、法務省としてもそれをバックアップしていくということであろうと思っております。

階委員 裁判事務等の運営に支障がないということを安易に認めて同行休業を認めるということになると、それに不満を抱く方も多く全国津々浦々にいらっしゃるということはぜひ肝に銘じていただければと、法の運用に当たっては重々留意していただきたいと思っております。

 これは確認的な質問でございますけれども、今回、同行休業を認める期間ということで、三年を超えない範囲の期間と言っているんですが、例えば、外資系の企業に配偶者が勤めている場合ですと、何回も海外赴任ということはあり得るわけですね。例えば二年ぐらいの期間で一年置きに行っているみたいなこともあり得るわけですよ。

 そのような場合、一回当たり三年を超えない期間であれば、この法律では何回この制度を利用してもいいということで考えられるのでしょうか。これは参考人の方からお願いします。

小川政府参考人 御指摘のとおり、配偶者同行休業の取得の回数につきましては、上限は設けておりません。

階委員 そうすると、たびたび行っていたら裁判官は仕事ができませんということがあると思うんです。

 私も、物には限度があると思っていまして、幾ら外資系の企業に勤めている配偶者と結婚したからといって、この制度を利用してしょっちゅう海外に行かれては日本の司法制度はもたないだろう。

 また、裁判官というのは本当にこの国にとって大事な人材であるから、基本はやはりちゃんと勤務し続けていただきたいと思っています。

 今、制度上は何回も利用可能だということなんですが、何らかの歯どめということを設けなくてはいけないような気がするんですけれども、この点については何かお考えというのはあるのかどうか。大臣でなくても、参考人でもいいですが、お願いします。

小川政府参考人 御指摘のとおり、職業によっては、裁判官の配偶者が頻繁に外国で勤務などを行う事例も考えられるということでございますが、この点については、基本的には、最高裁判所において、事案ごとに、個別具体的事由を踏まえて適切に判断するものと承知しております。

 なお、最高裁判所においては、この制度の趣旨を逸脱するような濫用的なケースということであれば、もちろん想定はされないとは思いますが、休業を承認しないことになるというふうにお考えであるというふうに伺っております。

階委員 濫用的なケースは認めないということで、恐らく、濫用的なケースかどうかを判断するに当たって、三条の二項にあります、当該裁判官の配偶者が当該期間中外国に住所または居所を定めて滞在する事由を明らかにしろという条文があるんですが、その事由をどの程度ちゃんと書かせて、かつ、それをちゃんと証明させるかということが重要なのかなと思っていますけれども、この点については、どの程度証明ないし疎明を求めるつもりなのかということを参考人の方から聞かせてください。

小川政府参考人 御指摘の点につきましても、運用の問題として、最高裁において、今後、各府省の取り扱いなども見ながら適切に対応していくものと承知しております。

 なお、最高裁判所においては、御指摘の事由の判断に当たっては、その裁判官の申述のほか、必要に応じ、例えば配偶者の在勤状況ですとか海外赴任等の事実がわかる資料などの提出を求めることを想定しているというふうに伺っております。

階委員 次に、第五条なんですが、配偶者同行休業をしている裁判官は、裁判官としての身分を保有するが、その配偶者同行休業の期間中報酬その他の給与を受けない。ある意味、当然のことを言っているような気がするんですけれども、ちょっとこれも確認ということなんですが、憲法八十条の二項、裁判官は、在任中、報酬は減額されないというような条文があるんですけれども、そのことと整合性はとれているのかどうかということを確認させてください。

小川政府参考人 今御指摘のありました憲法の報酬減額規定は、裁判官の職権の独立を脅かすおそれがある報酬の減額を禁止したものでありまして、性質上、そういったおそれがない場合における減額は憲法に違反しないと解されております。

 配偶者同行休業制度につきましても、その減額が一定期間にわたる職務からの離脱に基づくものであること、それから、職務からの離脱の開始及び終了、報酬の減額の開始及び終了が裁判官の自由な意思に起因するものであって外部の判断に起因するものでないこと、それから、職務からの離脱、報酬の減額を伴う制度が個々の裁判官に向けられたものではなく、公務員一般などにも同様の制度が予定され、制度的に確立されたものであること、こういった点を全てこの休業制度は満たしますので、裁判官の職権行使の独立を侵害するおそれはなく、憲法に違反しないものと解されております。

階委員 最後に、ややテクニカルな話でもあるんですが、ただ、この法律が、配偶者と同行して家庭生活と仕事の両立を図るということですから、本当に家庭生活と両立できているかどうかというのをチェックすることが可能かどうかというのが重要だと思っています。

 なので、大臣の方にあえてお尋ねしますけれども、例えば、配偶者同行休業の承認が効力を失う事由として、「当該配偶者同行休業をしている裁判官の配偶者でなくなった場合」、この配偶者でなくなった場合は、さっきの質問で確認したとおり、事実婚も含むわけですね。あるいは、配偶者同行休業の承認を取り消す場合として、「配偶者と生活を共にしなくなった場合」というのがあるわけです。これは、事実婚の場合はもちろん、普通の婚姻の場合でも、生活をともにしなくなった場合というのはなかなかチェックが難しいのかなと思っていますけれども、こういったところについてどうやってチェックしていくのかということについて、私はこの法律の趣旨からして非常に重要かなと思っていますけれども、大臣のお考えを最後に聞かせてください。

谷垣国務大臣 行政府と立法府の関係から申し上げますと、ちょっとかた苦しいことを申し上げますが、これはやはり司法部、裁判所において適切に判断していただくと、私は本来答弁すべきものだと思っております。ただ、いろいろ伺いますと、例えば、今おっしゃったような、配偶者が死亡した場合あるいは配偶者でなくなった場合、その他いろいろ、届け出を行うように求めるということを裁判所は今ではお考えのようでございますから、そういう仕組みを通じて適切に判断していただけるものと考えております。

階委員 はい。どうもありがとうございました。

江崎委員長 次に、林原由佳さん。

林原委員 日本維新の会の林原由佳でございます。

 まず、裁判官の配偶者同行休業に関する法律案につきまして、これまでの委員と重なりますが、確認の意味で二点質問いたします。

 階委員からも質問がありましたが、配偶者同行休業の定義を定める本法案二条の最高裁判所で定める事由とは具体的にどのようなものを想定しているか、簡単にお答えください。

安浪最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 国家公務員の配偶者同行休業に関する法律案におきまして、人事院規則に引用している規定がございます。最高裁におきましても、この人事院規則で定められることとなる事由と同様の事由を定めることを予定しているところでございます。

 具体的に申し上げますと、海外の大学等におきます修学または研究、事業の経営、ボランティア活動など、一定程度長期間にわたって外国に住所または居所を定めて滞在するものが規定される予定と聞いておりますので、そういうものを参考にして最高裁規則を定めたいと考えております。

林原委員 次に、濱村委員からも質問がありましたが、三条で、配偶者同行休業を請求した場合、裁判事務等の運営に支障がないと認めるときは承認すると規定されております。裁判事務等の運営に支障がある場合は承認されないということになりますが、この運用について簡単にお答えください。

安浪最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 この裁判事務等の運営に支障がないと認めるときとは、裁判官の異動や配置がえなどの措置を講じることによりまして、同行休業を請求した裁判官が担っていた業務を処理することが可能な場合をいうというふうに考えております。

 裁判所におきましても、裁判運営等に支障がないような体制をとることによりまして、本制度の趣旨を踏まえた適切な運用ができるように努めてまいりたいと考えております。

林原委員 本法案につきましては、裁判官が仕事と家庭を両立するために重要なものだと私も考えておりますので、早期に成立させる必要がある、このように思っております。

 続きまして、裁判所において出産、育児と仕事を両立する環境がどのくらい整っているのかという観点から、本法案以外の家庭と仕事の両立支援制度についてお伺いいたします。

 裁判官についても、一般職国家公務員と同様、育児休業制度がございますが、女性裁判官の育児休業取得率、平均取得期間を教えてください。

安浪最高裁判所長官代理者 平成二十年度から平成二十四年度までの五年間についてお答え申し上げます。

 女性裁判官の育児休業の取得率でございますけれども、平成二十年度が九三・五%、平成二十一年度及び二十二年度が一〇〇%、平成二十三年度が九七・六%、平成二十四年度が一〇〇%でございます。

 今申し上げましたそれぞれの年度におきまして、新規に育児休業を取得した者の平均取得期間でございますけれども、平成二十年度が約十七カ月、平成二十一年度が約十六カ月、平成二十二年度が約十七カ月、平成二十三年度が約十五カ月、平成二十四年度が約十四カ月となっております。

林原委員 大変すばらしい数字だと思います。ありがとうございます。

 さて、十月二十八日付の読売新聞によれば、民間企業の育児休業中の所得補償である育児休業給付について、厚生労働省は、雇用保険法を改正し、休業前賃金の五〇%を支給している現在の制度を、最初の半年間は六七%に引き上げる方向で調整に入ったとのことですが、この内容は正しいのか、厚生労働省にお伺いします。

宮野政府参考人 お答えをいたします。

 育児休業給付の支給率についてでございますけれども、本年七月に、育児休業期間中の雇用保険制度により支給される育児休業給付の給付率につきまして、厚生労働大臣より、現行の五〇%を見直す方向で検討するよう指示がございました。これを受けまして、十月二十九日の労働政策審議会の雇用保険部会に、事務局としての具体案をお示しいたしました。

 この具体案でございますけれども、今先生からお話がございましたように、育児休業開始時から最初の半年間について、給付率を現行の五〇%から六七%に引き上げるという案をお示ししております。現在、労働政策審議会において御議論をいただいているところでございます。

 労働政策審議会で取りまとめをいただいた後に、見直し案を雇用保険法の改正法案に盛り込むこととしております。次期通常国会での法案提出に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。

林原委員 それでは、裁判官を含む国家公務員に対する共済からの育児休業給付についても同様に、最初の半年間は六七%に引き上げる方向で検討されているのでしょうか。財務省にお伺いします。

岡本政府参考人 お答えさせていただきます。

 国家公務員の育児休業給付につきましては、民間の育児休業給付が雇用保険制度に位置づけられた際に、同じく平成七年度から国家公務員共済組合制度の中で行うこととされておりまして、その後、累次にわたりまして民間の育児休業給付の見直しが行われた際には、これまでは同様の見直しを行ってきているところでございます。

 現在、ただいま厚生労働省から答弁がありましたように、民間の育児休業給付についての検討が行われていることは私ども十分承知をしておりまして、その検討結果が出た場合には、それを踏まえまして、裁判官を含む国家公務員の育児休業給付につきましても、基本的には同様の方向で検討することとしたいと考えているところでございます。

林原委員 ぜひ前向きに御検討をお願いいたします。

 女性裁判官が育児休業から復帰した後、幼い子供を育てながら仕事を続けるための制度も重要です。幼い子供は病気にかかることがとても多いのですが、子供を看護するための休暇や、家事、育児時間を確保するための短時間勤務制度などはあるのでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 裁判官の休暇制度につきましては、その職務の性質に反しません限り、一般職の国家公務員と同様の取り扱いとなっております。子の看護休暇制度は裁判官にも導入されております。

 その一方で、短時間勤務制度は設けておりません。これは、裁判官につきましては、その職務の性質上、明確な勤務時間の定めがございません。夜間も記録や資料を読んで判決の起案をするというようなこともございまして、裁判官の執務を一定の時刻、時間によって画するということがなじまないということからきているものでございます。

林原委員 もともと勤務時間の概念がないということはわかるんですが、その中でも、育児中の女性の負担が減るような現場の工夫というのは何かなされているのでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 女性裁判官が職場に復帰するに当たりまして、人事配置等の面におきまして、各人の状況に応じまして円滑に職務を遂行できるよう必要な配慮をしてまいってきているところでございまして、今後ともそのように努めてまいりたいと考えております。

林原委員 大変なのは、例えば、夜ずっと張っていなければいけない令状当番とかは大変だと思うんですが、そういう令状当番を当てないようにするとか、そもそも事件の配填を減らすとか、そういう工夫はされていないのでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 当該女性裁判官の事情にもよるわけでございますけれども、今委員御指摘のとおり、令状担当の負担を軽減したり、あるいは外したりということもございますし、配属する部署をいろいろ工夫するというようなこともやっております。

林原委員 私が修習生のころは、裁判教官に、裁判所は女性にとっては割と働きやすいからいいよなんて言われたものですが、そのようになるように現場の工夫をぜひお願いしたいと思います。

 また、出産後だけでなく、妊娠中の女性裁判官に対する配慮も重要ですが、妊娠中の女性裁判官に対しても、今おっしゃったような配慮というのはなされているんでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 妊娠中の女性裁判官に対しまして、特別の制度を設けて何かしておるということはございませんが、配属庁におきましては、当該女性裁判官の体調に応じまして、先ほども申し上げましたとおり、令状事務の担当を外したり軽減したりということもしておりますし、体調不良時の応援体制をあらかじめ整備したりするなど、きめ細やかな配慮をしているものと承知しております。

林原委員 私も、今妊娠七カ月なんでございますが、やはり結構大変でございますので、妊娠中の女性裁判官への配慮もよろしくお願いいたします。

 さて、女性が働き続けながら結婚、出産、育児をするためには、配偶者である男性が家事や育児を分担することが大切です。男性裁判官の育児休業取得率、平均取得期間を教えてください。

安浪最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げました、平成二十年度から平成二十四年度までの五年間でお答え申し上げます。

 男性裁判官の育児休業取得率でございますけれども、平成二十年度及び平成二十一年度は取得者がおらず、〇%ということになります。平成二十二年度は四・三%、平成二十三年度は一三・二%、平成二十四年度は一・四%でございます。

林原委員 最初の二年間の〇%はおきまして、その後取得が出てきているんですが、年度によって随分差があるんですが、これはどういうことなんでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 分母になっております数字が、男性裁判官の配偶者が出産を迎えている、そういうものが母数になります。したがいまして、男性裁判官の母数が少ないこともありまして、一人とか二人とかという、数字が変動すると大きくパーセンテージがずれていくということによるものでございます。

 ただ、最初の二年度はゼロでございましたけれども、その後の三年間には数字が少し出てきておりますので、今後はもう少し数字が上がるのではないかと考えております。

林原委員 母数が少なくて幅が出てしまうのはいたし方ない面があると思うんですが、平成二十二年に策定されました第三次男女共同参画基本計画では、平成三十二年に国家公務員の男性の育児休業取得率を一三%にするというのが目標となっております。ぜひ男性裁判官の取得率もこれを目指して頑張っていっていただきたい、このように思います。

 育児休業制度以外にも男性裁判官のための育児支援制度があると聞いております。具体的にどのようなものか、教えてください。

安浪最高裁判所長官代理者 裁判官につきましても、一般職の国家公務員と同様に、配偶者出産休暇及び育児参加休暇の制度がございます。

 配偶者出産休暇は、二日の範囲内で、妻の出産に伴う入退院の付き添い等を行う男性裁判官に与えられるものでございます。また、育児参加休暇は、五日の範囲内で、妻の産前産後期間中に子を養育する男性裁判官に与えられるものでございます。いずれの休暇も有給休暇でございます。

林原委員 それでは、今教えていただいた男性裁判官の育児参加休暇の取得率を教えてください。

安浪最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げました過去五年間で申し上げます。

 男性裁判官の育児参加休暇の一日以上の取得率でございますけれども、平成二十年度が一一・五%、平成二十一年度が三・四%、平成二十二年度が一七・四%、平成二十三年度が二四・五%、平成二十四年度が三七・五%でございます。

林原委員 確実に伸びてきているようで、結構だと思います。

 それでは、配偶者出産休暇の方の取得率はどうなっているんでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 同じ五年間で申し上げます。

 男性裁判官の配偶者出産休暇の一日以上の取得率でございますが、平成二十年度が三〇・八%、平成二十一年度が三三・九%、平成二十二年度が四七・八%、平成二十三年度が四九・一%、平成二十四年度が五二・八%でございます。

林原委員 どちらもそれなりに取得されているということで、今後もさらに伸ばしていっていただきたいと思います。

 裁判というのは、事実を認定して法律を適用し、判断をする場なわけなんですけれども、その判断は決して機械的にできるものではなく、人や事件に対する深い洞察が要求されるものです。ある意味、裁判官の人間力が問われる場でもあります。ですから、男性裁判官が育児や家事を分担して人間の幅を広げる、これはとても大切なことだと私は考えておりますので、ぜひ今後も取得率を伸ばすよう努力をしていただきたいと思います。

 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、西田譲君。

西田委員 続きまして、同じく日本維新の会の西田譲です。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、質問も大分たくさん出てまいりました。私の質問は階先生の御指摘とかぶるところがありますけれども、おつき合いをいただければというふうに思います。

 まさしく、配偶者同行休業法の第二条の配偶者の定義のところでございます。

 先ほど大臣から御答弁がありまして、一般的に周りが認めるような状況だとか、そういった例示があったわけでございます。私も最初この法律を読んだとき、この定義、事実上婚姻関係にあるというのはどういうことなんだろうかなと思って、例えばもう婚約したとか、プロポーズしたからではちょっとまだ足りないかなとか、いろいろ考えておったわけですけれども、よくよく考えていくと、定義が大分難しいなということをやはり思ったわけでございます。

 そこで、まず、もう一度、事実上婚姻関係と同様の事情というこの定義について教えていただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 届け出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者とは、社会通念上夫婦であると認知されるに至る程度にその関係が明らかである場合をいうというふうに考えております。

西田委員 社会通念上夫婦であると言いますけれども、これはやはり非常に曖昧だというふうに思うんですね。

 例えば、主観的な話になりますけれども、片思いでもいいのかとか、恋人同士だったらいいのかとか、恋人とそうじゃない社会通念上夫婦というものの違いというのはどこなんだろうかとか、あるいは同性愛の方はどうなるのかとか、いろいろあるんですね。

 これは、民法でもそうですけれども、明らかに配偶者というのはきちんと定義されているわけでございまして、届け出をした者でございますよね。ですけれども、この法律では、配偶者と同様の事情ということで認められているわけでございます。

 そして、これも順を追って指摘していかなきゃいけないなと思うんですけれども、これは最高裁判所の方でどのように判断されるのかといったことが非常に大事になってこようかなというふうに思います。

 例えば、事実上婚姻関係にあるということで、生活をともにしている場合とかがあろうかと思うんですけれども、一緒に生活しているといいましても、そういう方が仮に複数いたとして、週の半分はこの人だけれども、週の半分はこの人で、二人とも事実上生活をともにしていたりとか、やはり定義が曖昧だとその後の判断もだんだん曖昧になってくるのではなかろうかというふうに思うんですね。その辺、どのように判断されていかれるのか、教えていただければと思います。

小川政府参考人 先ほど申し上げましたように、社会通念としていわば夫婦と同視できるような状態ということではないかというふうに思います。

 判断の要素といたしましては、最高裁判所において、届け出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者か否かを判断するに当たりましては、結婚式を挙行したこと、あるいは夫婦であることを周囲に報告していること、それから長期間同居していること、こういった要素を総合して判断することになるものと承知しております。

西田委員 ありがとうございます。恐らく常識的にはそういうことだろうなというふうに思います。

 それで、この法律でこういう文言が出てくるわけですけれども、果たして、我が国の立法で配偶者といったときに、ほかの法律はどうなっているんだろうかということを思うわけでございます。

 それで、いわゆる総務省の法令データ検索のページで、事実上婚姻関係と同様の事情ということで文言検索してみましたら、何ともう既に六十一件もあるんですね。配偶者というものを定義するときに、事実上婚姻関係と同様の事情にある者、こういう定義がもう既に六十一件なされている。一番古い法律で見ると、何と大正十一年なんですね。健康保険法というものがあるわけでございます。

 では、大正時代からもうそのように運用されていらっしゃったのかな、もしくは、当時立法されたときの立法趣旨はどのようなものだったんだろうかなということを調べてみようと思いまして、そうしたら、健康保険法、大正十一年のものに関しては、昭和十七年に改正されているのがあるんですね。そこで、「配偶者(届出ヲ為サザルモ事実上婚姻関係ト同様ノ事情)」と、ここで出てくるわけでございますけれども、なるほど昭和十七年かというふうに思うわけでございます。

 それで、その後ですけれども、これはもう昭和五十年の雇用保険法で廃止になっているんですけれども、第一回国会で成立している失業保険法があるんですけれども、ここでも同様の記述があるわけでございます。

 法律ですので、先例先例ということで、配偶者の定義をするときには恐らくさかのぼっていくのではなかろうかなというふうに思ったわけですけれども、最初にこういう文言が使われたときはどういう立法趣旨だったのかなということを思いますと、やはり当時の時代背景、昭和十七年ということでございますし、第一回国会で昭和二十二年ということでございますので、まさしく戦時なんですね。戦時の混乱の中での立法ということが背景にあったのではないか。

 ここで、もう大分昔のことですので、限られた時間しかありませんし、この立法趣旨はどうだったんだということを検証し切ることはできないわけでございますけれども、二つ、私は仮説を立ててみました。

 一つは、先ほど言ったとおり、戦時であったためになかなか届け出が困難であったという状況。あるいは、その届け出を受理する役所の機能も、行政の機能も、全てをカバーするほど機能していなかった。そういうことがあって、こういう文言が記されたのではないかというのが一つ目でございます。

 もう一つ、これは非常に想像力を働かせなきゃいけなかったわけですけれども、当時から、いわゆる法律婚ではなくて事実婚を容認していこう、そういう意図があったのではなかろうか。大正十一年そして昭和二十二年ということがありますけれども、もうこのころから、例えば家族の廃止といえば共産党宣言でございますよね。さらには、エンゲルスは、婚姻の自由、恋愛至上主義なんということも言っていましたし、レーニンに至っては、それを確実に実行して、ロシアにおいて事実婚を容認していくわけです。時代は重なるわけでございますけれども、そういった思想背景の中でのことだったのではないか。

 そういったこともいろいろ想像を働かせたわけですけれども、いずれにいたしましても、先ほど申したとおり、ここでそれを検証し切ることはなかなかできないわけでございます。

 ただ、私、通常国会でも申し上げましたけれども、やはり家族の尊重といったものはしっかりとなされていかなければならない中にあって、長年こういった文言がずっと入ってきている。最初はもしかしたら立法趣旨として違ったのかもしれないけれども、今日に至っては、もう御答弁ありましたとおり、事実上の婚姻関係にある人、もしくはそういう実態にある人を認めるんだ、配偶者と同等に扱うんだというふうに解釈されるようになってしまっているわけでございます。

 私は、家族の尊重といったときに、やはり法律婚といったものを大切にしていかなければなりませんし、法律婚じゃなく事実婚を容認していくといったことは、必ず家族制度の弱体化につながるというふうに警鐘を鳴らしたいと思うわけでございます。

 前回の質問でも、私は、家族というのは文明社会のパイプラインという表現をさせていただきました。国家、民族の中に宿る伝統であったり、慣習であったり、もしくは自由や道徳やそういったものが宿る温室でもあるのが家族であるわけでございます。

 いつも、大抵私は質問で何かを引用しておりますけれども、きょうは、共同体の探求をされておりますアメリカのニスベット教授の著書から引用しなきゃいけないなと思っておったんです。家族が一番基本になるんですけれども、共同体から離れてしまった個人というのは、根なし草人間であり、妄想人間であり、無規範人間であり、孤独にさいなまれる人間だと指摘をされて、まさにそのとおりだなというふうに思うわけでございます。

 また一方で、こういう家族といった共同体は、個人と国家の間にある中間組織として、国家権力が個人に対して過剰に介入するのを防ぐ、本当に大切な、自由社会にあっての存在のはずなんですね。

 ですから、私は、家族といったものは本当に尊重していかなければならないし、家族を尊重しないような立法といったものにはやはり警戒していかなければならないというふうに思うわけでございます。

 そういった中で、また今回の法律に戻るわけでございます。

 今回、配偶者の定義の中で、事実上婚姻関係にある方を認めているということになるわけでございます。民法では、配偶者というのは、明らかに、届け出をしてからその効力が発生するということになっているわけでございます。戸籍法でそうなっているわけでございます。そういった中にあって、今回は、届け出をしなくても配偶者と同様の効力が発生するような法律として提示されているわけですけれども、やはり私は、民法とすんなり整合しないというふうに感じるわけでございます。ここについて、大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 いろいろお考えになったことの御開陳がありまして、大変私も参考になりました。

 この場は余り個人的なことを申し上げる場ではございませんけれども、あえて申し上げますと、私は昭和二十年の生まれでございます。ちょうど終戦の年ですね。それで、私の父と母は、私が両親からこの日に結婚したんだと聞いている日と戸籍上の届け出は大きく食い違っております。なぜ食い違っているのか。

 私の母は、女ばかりの三人きょうだいの長女でございました。家制度のもとでは、家督を相続しなければならない者が私の父の家の戸籍に入るためには、ここは私、正確ではございません、恐らく当時は裁判所の許可を得ることが必要であった。事実上、結婚式を挙げて、周囲にもこれは正式の夫婦であると認めてはもらっていたが、実際届け出をするまでには、裁判所の許可を得る期間が相当ございました。

 ですから、私の父と母も前半は事実婚なんです、そこの届け出までは。恐らく、そういう家制度のいろいろな、戦前の民法の家族制度の中でそういった問題がいろいろあったんだろうと思います。

 そういう中で、それは事実婚であって本来の法律婚ではないといって切り捨てられない事情が、私は両親の例から見ましてあったんだろうと思います。例えば、健康保険であったり、あるいはそのほかの社会保障制度においても、そういうものを保護する制度をつくっていかなければならないということがあったのではないかと思います。

 それから、もう一つ例を挙げますと、いろいろ御本をお挙げになりますので、私も挙げますと、例えば柳田国男先生の「家閑談」とか、婚姻の話を読みますと、要するに、民法に規定した婚姻のあり方と違う、もっと昔の日本の婚姻のあり方がいろいろ記述してございます。

 そこで、明治民法で、法律上の登録と結婚の届け出というものが必要な制度をつくったわけでございますが、従前の日本の婚姻のあり方から見ると、それをわざわざ役所に行って届けなければならないということがなかなか浸透しなかった。だから、事実婚は当初はたくさんあったけれども、しかしそれは、日本社会の今までの経緯、歴史から見ますと、当然夫婦と認めてしかるべきものであった。そういうものは保護しなければならない。これは、判例法の発達で有名な事例でございますが、そういう家制度とのいろいろな関係というものが私はあったのではないかと思います。

 そういうことの結果として、事実婚といっても、放らつなものを認めようというわけでは必ずしもなかった。やはり、事実婚というものが社会の中の必要性で、認める必要があったものがだんだん拡充してきたというのがあったのではないか。

 ちょっと、私、法務大臣として直接お答えできないんですが、私の個人的な体験も踏まえて申し上げた次第でございます。

 いま一つ申し上げますと、婚姻の成立要件として民法が採用している届け出主義と今回の法律は必ずしも矛盾するものではないということも、私は申し添えておかなければならないんじゃないかと思います。

西田委員 ありがとうございます。大臣、これまでの私の質問の中で一番長い時間を使って丁寧に答弁をいただいたことを本当にうれしく思います。

 時間が参りましたので終わりますけれども、この問題は、これから、まさしく来週閣議決定かと伺っておりますが、今回の民法改正、違憲判決を受けて、与野党ともに、我が党でもそうですが、大きな議論となって改めて考え直されている問題でございます。来週もまたこの問題についてしっかりと議論を続けたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

江崎委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 おはようございます。みんなの党の椎名毅でございます。

 今の哲学的な質問と哲学的な御答弁の後に、非常にやりにくさを感じておりますけれども、頑張ってまいりたいと思います。

 本日、裁判官の配偶者同行休業に関する法律案ということで、十五分質疑時間をいただきました。感謝を申し上げたいというふうに思います。

 時間も短いので、早速入りたいと思います。既にいろいろ御議論がございましたので、一部質問の順序を入れかえたり割愛したりしながら、幾つか伺ってまいりたいというふうに思います。

 日本再興戦略に基づいてこの法律案というものができたわけですけれども、まず公務員から始めるということで、私自身、趣旨には基本的には賛同をしております。本日は、本法がどのように運用されるのかという事実上の運用の問題点等を踏まえながら伺ってまいりたいというふうに思います。

 まず伺いたいのが、二条二項関係でございます。二条二項関係で、裁判官が、最高裁判所規則で定める事由によって配偶者が外国に住所、居所を定めて滞在する場合に、当該住所または居所において生活をともにするために、職務に従事しないことをいうというふうに書いてございます。

 私自身も、自分が留学していたときに、海外赴任をしている人たちの奥さんの方々とよく接するわけでございまして、いろいろな事案というのを見てきたわけですけれども、例えばこういう事案があります。

 ニューヨークで、大手の商社のニューヨーク支店等に勤務していて、奥さんも一緒についてきました。大体三年ぐらいの期間でニューヨークに赴任をしています。奥さんは当初ついてきて、海外で駐妻と俗に言われる、駐在員の妻という立場で、ありていに言ってしまうと暇をしているわけですけれども、暇をしている中で、私も勉強しようかしらというふうに思い始めて、ついていったはいいけれども、その場で勉強をしようということで、留学のアプリケーション、申し込みをするということがございます。そうしたら、その人は非常にできがよくて、ニューヨークかいわいの大学、ニューヨーク大学だったりコロンビア大学みたいなところにもアプリケーションを出したと同時に、非常に優秀だったので、ハーバードにもついでに出してみようかなと思って出したら、ハーバードにも受かる、こういうこともあるわけですね。

 こういう場合に、ハーバードというのは、ボストンの隣のケンブリッジというところにあるわけですけれども、ニューヨークからだとバスで大体五時間ぐらいという、通うにはほど遠い、生活の本拠をニューヨークに置くわけにもなかなかいかない、しかし週末にはバスで帰ってくることができる、それで週末一緒に生活をともにし、また学校があるのでボストンの方に居を移すみたいな、こういうことがあり得るわけです。

 こういった、同国の中で、突然と言うと失礼ですけれども、勉強しようかなというふうに思い立って留学をしようとする、そうすると、近くではあるけれども居をともにするには不便であるような、そういう場所の学校に通うことになって、同国内で単独で引っ越しをしたいということはあるんだというふうに思います。

 こういうような場合に、果たして、「当該住所又は居所において生活を共にするため、」というこの概念に該当するのか。非常に具体的で申しわけないんですけれども、こういったことを伺えればというふうに思います。

安浪最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 本法律案の二条二項の具体的な当てはめの場面でございまして、この法律がまず仕事と家庭生活の両立支援の促進という目的を持って定められるものでございまして、しかも、当該住所または居所において生活をともにするということを要件として定めております。やはりこの点をまず踏まえて、生活をともにしているのかどうかという点をしっかり検討することになるんだろうと思います。

 委員御指摘の具体的なケースは、かなり具体的でもあるのでございますけれども、やはり、週末だけの同居なのか、あるいは離れている期間がどれぐらい続くものなのかとか、いろいろなことを各事案ごとに、ケース・バイ・ケースで考えていくしかないのかなと今は考えております。

 いずれにいたしましても、実際の運用に当たりましては、行政府省等での運用状況も、これから始まるものと考えておりますので、そうした取り扱いや考え方も参考にしながらやっていくのかなと思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 そういうことになるんだろうというふうには思います。多分、臨機応変な運用にはなるかと思いますけれども、今申したような例が、では西海岸だったらどうなのか、イギリスだったらどうなのかみたいな話にやはりなってしまうので、なかなか難しいんだろうというふうに思います。

 そう考えると、同行休業に行った後に自分で思い立って留学をしようとしたときには、やはり結局、この同行休業を取り消していただいて自腹で行くというのが現実的なのかな、ちょっと頭の体操として考えていてそう思いました。

 そうしたときに、ちょっと通告していたところにはないんですけれども、さらにということで伺いたいんです。取り消した上で、例えば、裁判官の正規ルートである裁判所の留学ルート、それから人事院の留学ルートといったところで、留学に切りかえるということはできるんですか。

安浪最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所におきまして裁判官が留学する場合というのは、裁判所の方で留学するものと、人事院の方の御協力を得て留学するものと、二つございます。

 実際に留学する者の人選でございますけれども、語学力、それから日常の勤務状況等を決めて人選をしておりますもので、この同行休業を取り消して、一旦日本に戻ってきて、ではすぐ行けるかといいますと、やはり今申し上げたような基準で判断することになろうかと思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 そうすると、やはり、配偶者が海外赴任するときが前もってわかっているのであれば、さらに言うと、自分も留学したいと思うのであれば、前もって、同じように、あわせて留学の手続を裁判所の中、または人事院等を通じてやっている方が望ましいんだろうなという結論にはなるのかなというふうに思います。

 そうだとすると、非常にいい制度だとは思いますけれども、意外に細かい、実際の運用レベルで見てみると、使い勝手はいい部分も悪い部分もあるなというのは、ちょっと頭の体操として考えていたときにあったというのは御指摘だけさせていただきます。

 次に、伺いたいと思います。

 本法は、七条のところで、退職金については、本法でとった同行休業の休暇というのは基本的に除算されるということで、退職金の換算期間には入らないというふうに、ごめんなさい、通告していたところの七番というところです、退職金に関しては除算をされるということだと理解をしています。さらに言うと、報酬は受けないということだと理解をしています。

 他方で、裁判官というのは、基本的には任期十年というふうに決まっているわけです。これは憲法八十条に書いてあるわけですけれども、任期十年。これについては、この同行休業期間、最長三年ということだったと思いますけれども、これは任期十年を計算するに当たってはどういう扱いになるのか。仮に休業している期間も任期十年の中にカウントされるとすると、十年後に再任という手続があるわけですけれども、再任の選考に際してどういうふうに扱われるのか、教えていただければと思います。

安浪最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 この法律に基づきます配偶者同行休業期間中におきましても、裁判官たる身分を失わない以上、当然裁判官の職にあったと言えますので、育児休業期間中と同じく、任命資格の期間計算上は配偶者同行休業期間も通算されるということになります。

 判事の再任、それから判事補から判事への任命につきましては、下級裁判所裁判官指名諮問委員会に諮問をして、同委員会におきまして、能力、資質の点で判事への指名適当との答申がされた者について判事に任命するという取り扱いをしておるところでございます。

 この委員会におきましては、任期十年間の執務状況についても検討していただいているところでございます。そうしますと、例えば、休業期間が相当に長く、現に執務していた期間のみではこの指名の適否の判断が困難だというような場合も出てくるかもしれません。そういう場合には、休業期間中の自己研さんの状況というようなものも参考にされることも出てまいるのではないかと考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 そうだとすると、先ほど階委員も指摘していましたけれども、例えば任期十年の間に多数回同行休業というものをとるような場合だと、休業期間というものがどうしても再任の際に計算されるということと、今、その後の再任の選考の際にもこの休業期間というものは一応考慮はされるということだったので、やはり多数回休んでいると、再任という意味でいうと、不利益とまでは言わないですけれども、再任されない可能性というのも出てくることにはなるんですか。

安浪最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げました下級裁判所裁判官指名諮問委員会の方でのまず御判断があるわけだろうと思います。

 ただ、裁判官はやはり重い職責を担っておるわけでございます。長期間職務を離れていて、なおかつそれでも判事に任命されたいというふうに思うのであれば、その間、自分で自覚を持っていろいろなことに取り組むとか研さんを積むというのが、裁判官としての当然の自覚であろうと思っております。

椎名委員 なるほど。ありがとうございました。

 次に、伺いたいと思います。

 階先生の質問したところと重なるかと思いますけれども、同行休業中に報酬は受けないということになるということでございます。

 同行休業期間は任期にはカウントされます、退職金にはカウントされません、報酬は受けませんというところで、憲法八十条の二項の減額禁止との関係ということを教えていただければというふうに思います。やはり、任期の取り扱いという意味でいうと、これも憲法上の要請だと思いますけれども、同じく、減額禁止というのも憲法上の要請だと思いますが、整合性という意味で、御検討をしたところを教えていただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 憲法の報酬減額禁止の規定は、裁判官の職権の独立を脅かすおそれがある報酬の減額を禁止したものでございます。

 配偶者同行休業制度につきましては、その減額が一定期間、これはもうちょっと細かく申しますと、社会通念に照らして、裁判官の職務とその報酬との対価関係が失われると判断される程度の期間ということになると思いますが、こういった一定期間にわたる職務からの離脱に基づくものということ、それから、職務からの離脱の開始、終了、報酬の減額の開始、終了といったことが裁判官の自由な意思に起因するものであって外部の判断によるものではないこと、さらには、職務からの離脱、報酬の減額を伴う制度が個々の裁判官に向けられたものではなく、公務員一般などにも同様の制度が予定されていて、いわば制度的に確立されたものであること、こういった理由から、憲法に違反しないものというふうに解されているところでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 時間ももうそろそろ来るので、最後に御意見だけ申し上げておきます。

 こういった同行休業という制度を設けることそれ自体は非常にいいことなんだというふうに思います。現実的な使い勝手、それは今後の運用次第かなというふうに思っていますので、ぜひこういった制度を積極的に活用するような形で運用していっていただき、かつ、こういった制度を民間企業に広めるために、ぜひ政府を挙げて頑張っていっていただければというふうに思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございます。

江崎委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、裁判官の配偶者同行休業に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

江崎委員長 次回は、来る十三日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十九分散会


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