衆議院

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第6号 平成25年11月13日(水曜日)

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平成二十五年十一月十三日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      池田 道孝君    岩田 和親君

      小田原 潔君    大見  正君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      鈴木 憲和君    橋本  岳君

      鳩山 邦夫君    平口  洋君

      福山  守君    藤原  崇君

      三ッ林裕巳君    宮澤 博行君

      奥野総一郎君    郡  和子君

      横路 孝弘君    高橋 みほ君

      林原 由佳君    濱村  進君

      椎名  毅君    三谷 英弘君

      鈴木 貴子君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   内閣府大臣政務官     福岡 資麿君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  二宮 清治君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         室城 信之君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            氷見野良三君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            池田 唯一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 山崎 重孝君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           安田  充君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    齊藤 雄彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新美  潤君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 星野 次彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           常盤  豊君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通保安審議官)     寺澤 達也君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十三日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     鈴木 憲和君

  小田原 潔君     岩田 和親君

  神山 佐市君     藤原  崇君

  田嶋  要君     奥野総一郎君

  大口 善徳君     濱村  進君

  椎名  毅君     三谷 英弘君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     小田原 潔君

  鈴木 憲和君     安藤  裕君

  藤原  崇君     福山  守君

  奥野総一郎君     田嶋  要君

  濱村  進君     大口 善徳君

  三谷 英弘君     椎名  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  福山  守君     神山 佐市君

    ―――――――――――――

十一月十二日

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出第二〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出第二〇号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官澁谷和久君、内閣官房内閣参事官二宮清治君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長室城信之君、金融庁総務企画局審議官氷見野良三君、金融庁総務企画局審議官池田唯一君、総務省大臣官房審議官山崎重孝君、総務省自治行政局選挙部長安田充君、法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長稲田伸夫君、法務省矯正局長西田博君、法務省保護局長齊藤雄彦君、外務省大臣官房審議官新美潤君、財務省大臣官房審議官星野次彦君、文部科学省大臣官房審議官常盤豊君及び経済産業省大臣官房商務流通保安審議官寺澤達也君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局中村総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。初めに、菅家一郎君。

菅家委員 おはようございます。自由民主党の菅家一郎でございます。

 このような質問の機会を与えていただきまして、心から御礼を申し上げたいと思います。

 まず初めに、二十以上の学生の選挙権についてなんです。

 私ごとで恐縮ですが、実は三人の息子がいまして、三人とも卒業して社会人としているわけですが、長男と三男は東京の大学に入学して、生活は東京の下宿で生活してきたんですが、次男は地元から専門学校に通って一緒に暮らして、そして今は社会人になったんです。

 住民票は三人とも、私は会津若松なので会津若松の実家に置いて、長男と三男は住民票は会津のまま東京に暮らした。なぜかというと、やはり年金とか健康保険証の手続が意外と煩雑で、どうしても、面倒と言ってはおかしいですけれども、地元に住民票を置いたまま、東京であったり、いろいろな、学校に行くという機会が多いかなと僕は思うんですけれども、うちもその一つだったんです。

 地元で各選挙が行われるわけでありますけれども、次男には投票用紙が来るんですね。ところが、長男と三男には、実は投票用紙が今まで来たことがなかったんです。これは、実は、いろいろ調べてみたら、資料の一番最初に、昭和二十九年十月二十日の最高裁判決というのがありまして、これは、大学の学生についての、いわゆる居住地はどこなのかという判決の中で、大学生は、地元ではなくて、東京とかなんかで生活をしているところが本拠地だから認めないという判決が出されているわけですね。

 ですから、これを踏まえて、実は、例えば、公選法の第二十一条の規定では、当該市町村の区域内に住所を有する満二十歳以上の日本国民で、その者に係る登録市町村等の住民票が作成された日、いわゆる届け出日から引き続き三カ月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者となっているわけでありまして、今の判決、判例によると、やはり住所とは生活本拠地であり、住民票の届け出があった市町村と異なる市町村に生活の本拠地がある場合などは、被登録資格は取得しないものとされる。

 うちの息子のように、会津若松市に住民票を置いたまま東京の大学に行って生活していれば、会津若松市の選挙人登録から抹消されて、つまり投票権がない。東京に住んでいても、住民票がありませんから、投票できない。住民票を異動しない限り一切選挙権がないということになるんですね。その根拠は何かというと、昭和二十九年の最高裁の判決が基本になっている、こういうわけなんですね。

 それで、この最高裁の判決を踏まえて、各自治体は、これから二十になる新成人に限って、選挙人名簿の登録に関する調査についての調査用紙を送付し、学生で住まいが別である現状を確認しまして、選挙人名簿への登録の検討をし、対応している。つまり、選挙人名簿への登録に当たっては、公職選挙法第二十一条第四項、同法施行令第十一条等において、その登録される者が被登録資格を有するかどうかを市町村の選挙管理委員会が調査、確認することが義務づけられているからであります。これは、やらなくちゃならないということですね。

 ですから、会津若松市の場合も、二ページにありますように、調査書を送っているんですね。そして調査をしている。その結果、調査書の回答により、現在地が住民票届け出場所と異なる場合、選挙人名簿への登録を行わないとのことであります。その後も、特に申し出がない限り、その状態が継続されているものとし、選挙人名簿に登録しないこととしているわけであります。

 二十になる方の実態調査をするんですね。どこに住んでいるんですか、大学に行っているんですか、大学に行っていますということだと、住んでいないから、その対象者は、当該市町村の選挙人名簿からは、登録しない、外されるということになるわけですね。

 その根拠は何かというと、何度も言うように、この昭和二十九年の、中身は、皆さんに資料をお配りしたとおり、郷里にみずから管理すべき財産もあるわけではない、休暇以外にしばしば実家に帰る必要もない、またその事実もない、主食の配給も特別の場合を除き寮で受けているような生活状態にあるときは、その場所は、寮所在地にあると解すべきであって、現にその日常生活に直接関係のない郷里にこれを認むべきではない、これが根拠法になっているわけであります。

 実は、会津若松市の場合にもこれを踏まえて適切に確認して実施しているわけでありますが、いろいろ調査をしてみますと、このように実施しているところと、実施していない自治体も実はあるんですね。ですから、これは実態、調査、確認、実施している現状がもしもあればお示しいただきたいとともに、今私が申し上げた今まで一連の流れが間違いないのかどうかも確認したいと思います。よろしくお願いします。

安田政府参考人 まず、選挙人名簿の登録要件についてでございますが、これは委員御指摘ございましたように、「当該市町村の区域内に住所を有する年齢満二十年以上の日本国民で、その者に係る登録市町村等の住民票が作成された日から引き続き三箇月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者について行う。」とされているところでございます。

 「当該市町村の区域内に住所を有する」とは、現実に住所を有するという意味でございまして、この場合における住所とは、客観的居住の事実を基礎として、これに当該居住者の主観的居住意思を総合的に勘案して決定するというふうにされているところでございます。

 したがいまして、個々の事案についての判断ということになりますけれども、一般的には、住民基本台帳に記録されていたとしても、現実に住所を有していない者、これを当該市町村の選挙人名簿に登録することはできません。また、現実に住所を有する市町村において住民基本台帳に登録されていない者、これを当該市町村での選挙人名簿に登録する、これもできないところでございます。

 それから、調査についての御質問がございましたけれども、公職選挙法施行令第十一条の規定によりまして、市町村の選挙管理委員会は、年齢満二十年になろうとするものについて調査し、選挙人名簿の登録のための整理をしなければならない、このようにされているところでございます。

 ただ、その具体的な実施の方法につきましては、各選挙管理委員会の判断において行われているものでございまして、さまざまな形態のものがあるというふうに理解してございます。会津若松と同じようなアンケートの形で調査を行っている、そういう団体が幾つあるのかということにつきましては、私ども、調査を行っておらず、承知をしていないところでございます。

 以上でございます。

菅家委員 これは、義務づけされていながら、実態はわからない。

 私の調査では、福島県でもこのようにやっているのは数カ所しかないんですね。

 現実に、同じような案件でも、ある市の二十代の大学生は選挙人名簿に登録されて選挙権があるところもあれば、別なところ、厳格にこの法律にのっとって、調査をして、本拠地が別なところは、選挙人名簿から外されて、選挙がもともとできない、実家でもできないし、東京でもできない、こういう実態が明らかなんですね。こういうわけなんです。

 それでは、この最高裁判所の判例に基づいて、大学生はこうだけれども、一般の我々もそうですよね、公務員もそうだし、サラリーマンも、どうしても異動、転勤しなくちゃならない場合があるので、自分の家から東京とか、いろいろなところに行くわけですね。そういう場合の本拠地としての認識というか、大学生はそれは本拠地ではないから、地元に住民票があってもそれは認めない。では、我々も含めた一般社会人はどうなのかだけ、ちょっと確認したいんです。

安田政府参考人 選挙人名簿の登録には、先ほど御答弁申し上げましたとおり、当該市町村の区域内に住所を有すること、これが要件となっておりまして、これは社会人でございましても学生であっても同様でございます。

 いずれも、当該市町村内に住所を有する実態がないということがわかれば、選挙人名簿に表示がなされた上、抹消される。既に登録されている者についてはそういうことになるということだというふうに理解してございます。

 いずれも、実態においてどう判断するかということでございますけれども、下級審の判決例におきましては、例えば単身赴任者につきまして、土日ごとに自宅に帰る場合、これは自宅を生活の本拠として認めるというケースもございましたし、逆に月平均二回程度家族のもとに帰るケース、こういうものにつきましては単身赴任先を生活の本拠と認めた、こういうケースもあったということで、事案ごとに判断されているものというふうに理解してございます。

菅家委員 この最高裁の判決をもって、現実は、二十代の若者がターゲットになってと言ってはおかしいですけれども、実際、確認して取り組んでいるのは二十代だけなんですね。全ての選挙人というか有権者の実態を調査する必要があるんですけれども、これは現実的に無理なんですね。そうすると、残っているのは本当に若者だけがこういう調査を受けて、実態調査して選挙人名簿から外されている、こういうことになっていると私は思うんですね。

 今の話を伺えば、例えば、恐縮ですけれども、大臣、ことし、在職三十年、おめでとうございます。東京大学ですから、東京大学に合格されて、学生時代、恐らく東京にお住まいになった。そのときは、地元の市からどういう対応をされたかわかりませんが、厳格にやっているところだったら投票権がなかったわけですね。

 同じように、今度は当選されて、お仕事で東京に、三十年で、大臣もやられていますから、そんなにしょっちゅう地元に戻ったり、我々だって、日本じゅうから集まってきて、公務が忙しかったら、本拠地というのは、住民票のある地元と実際の生活している場所には大きな乖離があるわけですよね。これは、公務になればなるほど、そういうことになる。

 それに、当時、二十九年ころというのは、例えば会津若松から東京に六、七時間ぐらいかけて、つまり、新幹線も高速道路もないわけですね、こういう時代。昭和三十九年から高速化になってくるわけですから、その十年前の二十九年、大学へ行ったらもう戻ってこれない、そういう時代背景と、今高速化になって移動する時代になって、その社会的な背景も恐らく違う。

 だから、厳格に今のようなことを考えれば、これを厳格にやれば、まさに若者の投票率は上がるはずはない、下がる。それを厳格にやったら、我々国会議員だって、果たして本拠地はどこなのかなという議論にまでなってしまうんじゃないか。これは、やはりどう考えたって、投票率を上げるべきだし、投票権を剥奪するような制度はいかがなんですか。二十代が一番低い。

 こういう実態を考えたときに、本拠地の問題とか、本当にどこが本拠なのか、こういう実態に対する大臣の御感想でいいですから、ちょっとお聞きしたいと思っております。

谷垣国務大臣 私も、選挙法制を担当しているわけでもございませんし、それから最高裁判例は尊重しなければならないという立場でございます。感想でよいということでございますが、なかなか答弁はしにくいのが率直なところでございます。

 それで、今御指摘になった昭和二十九年の最高裁判例、これは、住所は何かというときのリーディングケースだと言われておりまして、私も、ほぼ半世紀ぶりぐらいに、今回もう一回目を通した判決でございますが、まことに感想めいたことで恐縮でございますが、生活の本拠が住所であるということになっている。

 しかし、この生活の本拠は、まさに今、菅家委員が御指摘になったように、昔のほとんどが、人口の八割ぐらいが農民で、そこで田を耕し、畑で耕作しているというような時代と、住居の概念、それは生活の実態において、職業によって異なりますけれども、相当多様であることは事実だろうと思います。

 したがいまして、例えば我々の場合でも、私も選挙区に住所、住民登録をしているわけで、一票もそこで行使をしているわけでございますが、では谷垣、おまえの場合、生活の本拠はどこだと問われても、なかなか難しいことも事実でございます。

 これを、今委員の問題意識は、若い人の投票権をどう実際に有効に使っていくかという観点からしますと、確かにいろいろ問題はあるだろうというふうには思います。しかし、それ以上、ちょっときょうは立ち入って答弁するのは差し控えさせていただきたいと存じます。

菅家委員 大変ありがとうございます。問題意識は持つということだけでも非常にありがたいと思っています。

 資料の一番最後に、これは投票率の推移、調査ができるときからの資料なんですが、衆議院と参議院があるんですけれども、衆議院の場合、二十代が昭和四十二年、六六・六九なんですけれども、平成二十四年が何と三七・八九%。これは参議院の場合ももう三三・三七%なんですね。私は、議会制民主主義、やはり選挙があって民意が反映されているわけですから、これは深刻だと思うんですね。若い者が三〇%まで落ちている。

 やはり投票率が下がることは民主主義の根幹にかかわる極めて重要な課題だ。それも一番二十代が下がる。これをやはり上げなくちゃならない。上げるためにも、今のようなことを厳格にやれば若者の投票権はなくなるんですよ。これは矛盾だと私は思うのね。

 やはり、もう時代が変わっている。もう高速化になっている。新幹線でもすぐに、今は会津若松から東京まで新幹線で行けば二時間半で行ける、三時間もかからないで行ける時代になった。飛行機から高速道路が、高速バスなんかが安く行ける、こういう時代と二十九年の時代とではそういう意味でも違うし、こういうことも一因として、全部じゃないと思うんですけれども、こういうもので二十代から大学生が選挙すらできないということが、長い間に若者に対するこういう投票率の低下を招いたのではないか。

 私は、そういった意味では、本拠地の概念も含めて、住民票を移して三カ月間というのはわかるんですよ。ただ、生まれてからずっと住民票を移さないで、どうしても学業とか仕事で異動しなくちゃならない場合とは違うと思うんですね。

 ですから、住民票のあるところが若者に選挙をさせる、投票させるということを踏まえながら、私は、これは最高裁の判決がある以上、法律をある程度、若者の投票率を上げる、関心を持ってもらうことを前提にやはり見直しをすべきだと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

安田政府参考人 選挙人の範囲でございますとか名簿登録の範囲につきましては、選挙の土台ともいうべき問題でございますので、その改正につきましては、各党各会派でも十分御議論いただくべきものというふうに考えてございます。

 ただ、御指摘のような改正を行った場合、最高裁判決を前提とすればということでございますけれども、当該市町村の区域内に住所を有しないことが明らかな者について、名簿に登録して、地方公共団体の選挙を含めて投票を認めるということになりまして、住民による自治という地方自治に関する基本的な考え方でございますとか、国政選挙についても、結果的に選挙区を選択できるということになってしまうのではないかといったような点についても含めて検討をする必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。

菅家委員 今、私自身がやはり、同じ当該学生でも、住んでいる市町村の確認業務によっては不公平が生じる。片っ方は選挙ができる、できないという。一般社会人であっても、実態調査しておりませんから、実際は住民票のあるところで選挙ができるが、当該学生だけはできないということが現実的にあるわけですから、その不公平をしっかり公平にすべきだし、投票率も三〇%まで下がっている実態において、私は、やはりしっかりと対応すべきだ、それだけは申し上げておきますので、検討すると言ったので、前向きな、だめの検討ではなく、やれるための検討をしてほしいということだけは申し上げておきたいと思います。

 それから、もう一点、通告してありますので、自動運転自動車への対応ですね。

 カメラ、レーダーなどで周囲の状況を把握し、ハンドルやブレーキを自動で操作し走行する自動運転車が開発されている。一時停止や車線変更などの基本動作のほか、急な歩行者の飛び出しや前方車との衝突を回避できる車だそうです。将来は、ハンドルやブレーキに触れなくても車が自動的に目的地まで走ってくれる、そんな未来の車が進んでいる。

 私はこれは車の大革命だと思って、恐らくそういう自動運転までは時間がかかるでしょうけれども、そこを目指して各メーカーは競って、世界じゅうの車メーカーが、もう技術の粋を集めて、そういう車の実用化を目指して今後取り組むだろうと思います。

 今のさまざまな交通事故の悲劇から、こういう車でセンサーで感知して自動的にとまったり、飛び出しとかそういったものも事前に食いとめて事故を未然に防げるというものになれば、こんな歓迎なことはありませんし、高齢者の時代を迎えても、やはり自動運転というのは非常に歓迎だし、そういった意味で、私は、国としても積極的に支援すべきだ、このように思うわけでありますのでこれをお聞きしたいのと、もう一つは、車が自動的になって、とまる車なのに安心したらぶつかっちゃったとか、センサーがあるので人が来ても大丈夫だと思っていたのにぶつかってしまった。つまり刑法の問題ですね。どっちに責任があるのか。車のメーカーの責任なのか、運転手の責任なのか。これは一番大きな争点だと思うんですね。

 そういう意味で、実用化に向けて、二〇二〇年の東京オリンピックにはやはり自動運転自動車の先進国として日本がPRするべきだと思うので、それに合わせて法的な整備、刑法というか法律的な整備。運転手の責任なのか。何というんですか、こういう表現をしているんですね、高度運転支援技術。高度運転支援技術を搭載した車両も、実はもうナンバープレートを取得されて走っているんですね。この車も二〇二〇年にはさらに実用化を目指したいと言っているわけです。もう七年後。そういう意味での、刑法における法律的な整備に今から国は取り組む必要があるのではないか、こんなふうに思いますが、大臣の御意見を、所感といいますか、お願いします。

谷垣国務大臣 今、菅家委員がおっしゃったような技術革新というのは私も大変期待しております。ぜひ、今後の技術の発展によって、安全で世の中のためになる、そういう自動運転のような技術が確立していってほしい、このことは私も強く期待をしているところでございます。

 そこで、その場合、事故が起きたらどうするかという問題ですが、最近も新聞で、自動的にブレーキがかかるはずの車がぶつかってしまったという記事も拝見しました。

 これに対しては、先般、この委員会でも、自動車運転に関する法律、衆議院は通していただいて今参議院で御審議いただいているわけでございますが、一般的に言えば、自動車運転過失致死傷罪あるいは業務上過失致死傷罪というものの対象になる場合が多いだろうと思うんですね。そういう過失が認められれば、運転手に行く場合もあるし、それから、そういう今のような新しい仕組み、メカニズムの中にもしメーカーの技術者やあるいは責任者の過失等があれば、そこに過失を問うていくということもあるだろうと思います。

 ただ、今のところはまだ、技術がどこまでいくのか、新しい法律を構想していくというところまで私どもも十分知見がございません。そういう技術の発展を十分注視しながら、それにふさわしい法体系は勉強していく必要がある、このように思っております。

菅家委員 ぜひ二〇二〇年オリンピック開催に合わせて取り組んでほしいし、国としても、そういった意味で、今後の自動運転自動車の開発といいますか、組織的なといいますか、踏まえた体制を整備していく必要があるのではないかと思っているんです。問題は、自動運転でも、運転手がハンドルを持つのと完全に、自動化というのは二つあるので、時代の状況によって、国の目指すべき方針も重要だと思いますが、その辺の取り組みの考えをお聞きしたいと思います。

二宮政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、本年六月十四日に閣議決定をいたしました世界最先端IT国家創造宣言におきまして、自動車単体のシステムと車と車、道路と車との情報交換等を組み合わせまして、運転支援技術の高度化を図ることなどによりまして、二〇二〇年代中には自動走行システムの試用を開始することを目標として掲げているところでございます。

 IT総合戦略本部のもとに設置をいたしました道路交通分科会におきまして、目標の着実な実現に向けまして、具体的な施策及びその実施スケジュールを含みます府省横断的なロードマップ、これの作成を二〇一三年度中に行うこととしているところでございます。

 また、これに加えまして、官民の連携強化が必要不可欠ということを認識してございますので、官民により構成される推進母体の設置に向けまして、同じく今年度中に検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

菅家委員 ぜひ、国の今後の目指すべき、技術革新とあわせて法整備をいろいろやりますから、そういった意味では、連携を図りながら、私は、もうこれは世界の流れになってくる、自動車革命であり、どんどん進化するというふうに思います。

 世界的な競争もありますし、やはり国とメーカーが一体となって、しっかり受け皿を、あるいは法律的な整備を含めて対応されるよう強く要望して、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、階猛君。

階委員 おはようございます。民主党の階猛です。

 私は、前回、一般質疑のときに積み残した法曹養成制度のお話からまず伺いします。

 お手元にお配りしました資料の一をごらんになってください。この資料一、右下に手書きでページ番号を振っておりますが、一ページでございます。

 その一ページの一番最後のところに「今後の法曹人口の在り方」という項目があります。第一段落では、「司法試験の年間合格者数については、」ということで、「当面、このような数値目標を立てることはしない」というふうに言っておりますが、次の段落では、「閣僚会議の下で、」云々かんぬんとなって、「あるべき法曹人口について提言をするべく」というふうにあります。

 つまり、年間合格者数の数値目標を立てることはしないと一方では言いながら、あるべき法曹人口について提言するというのはどういうことなんだろうというふうに思うわけですけれども、この点、参考人の方からで結構です、いかがでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 司法試験の年間合格者数については、当面、新たな数値目標を立てることはしないとしつつ、他方で、あるべき法曹人口について新たに提言をすることを目的として、さまざまな事情を勘案しながら適時適切に検討を行っていく、こういう意味でございます。

階委員 目標とあるべき法曹人口は違うという位置づけなのかもしれませんが、そのあるべき法曹人口というものが、今申し上げた二段落目のところで、「あるべき法曹人口について提言をするべくその都度検討を行う」とか、あるいは、あるべき法曹人口について提言をするために、その下の段落ですけれども、「継続的に調査を実施する。」などという表現もありまして、これだと、あるべき法曹人口というのは頻繁に見直されるという趣旨にも読めるんですけれども、この点、いかがですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 頻繁に見直しを行うということを想定しているものではございません。

 一方で、あるべき法曹人口については、先ほど申し上げましたが、さまざまな事情を勘案しながら適時適切に検討を行うというものでありまして、その検討の結果、必要があれば見直しが行われることはあるものと承知しております。

階委員 そのあるべき法曹人口をいつ示すかということで、このページの一番最後のところで、「閣僚会議の下で、法曹人口についての必要な調査を行い、その結果を二年以内に公表する。」ということになっていますが、その間、先ほど御答弁にあったように、数値目標はない、また、あるべき法曹人口もないということだとすると、今年間二千人ぐらい司法試験合格者がいますけれども、この年間合格者数というのはどうなっていくのでしょうか。

小川政府参考人 年間の司法試験の合格者の決定に際しましては、法曹となるべき能力の有無を判定する観点から、実際の試験結果に基づきまして、必要な学識経験を有し、司法試験の問題の作成や採点を行っております司法試験考査委員の合議によって判定がされ、司法試験委員会において適正に決定していくものと承知しております。

階委員 受験生にとってみれば、勉強して、果たして合格者は何人なのかというのが全くわからないまま試験に臨むというのも、大変恐ろしい話だなと思うわけです。

 そこで、資料に手書きのページ番号、四ページをごらんになっていただきたいんです。

 恐らく、先々自分が合格できるかどうかがわからないというのも一因だと思いますけれども、これまで、十六年から法科大学院が始まりましたけれども、法科大学院の入学定員と実際に入学した人の数の推移を見たグラフでございます。

 一目瞭然ですが、直近になりまして、どんどん定員と実入学者が減ってきている。当初の数値目標であった年間合格者三千人、ことし二千六百九十八人しか入学者がいなかったということで、目標を取り下げるとかいう以前に、そもそも三千人より下回る入学者になってしまっているということであります。

 そこで、事実関係としてお聞きしたいんですが、次の二十六年度の入学定員が幾らになるのか。また、実入学者がどれだけになるかというのは現時点ではわからないとは思うんですが、その母集団ともいうべき適性試験の出願者数がどれだけになったのか。済みません、不勉強で恐縮ですが、もし、出願者数だけじゃなくて、適性試験の結果何人受かっているのかというのがわかるのであれば、それもお答えいただけるとなおいいかと思うんですが、それぞれの数が前年よりどれだけ減っているかという点も含めてお答えいただけますか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十六年度の法科大学院の入学定員につきましては、暫定値ではございますけれども、本年六月末までに文部科学省に報告された数といたしまして約三千八百人でございます。前年度と比較いたしまして約四百五十人の減少となる見込みでございます。

 また、来年度、法科大学院への入学を希望する者を対象として本年実施されました法科大学院全国統一適性試験の志願者数でお答えをさせていただきたいと思いますが、適性試験管理委員会の発表によりますと、五千三百七十七人でございまして、前年と比較して千八十人の減少となっているところでございます。

階委員 定員も四百五十人ぐらい減るということなんですが、一方、実際に入学する人の数も、適性試験の志願者ベースで千人減っているということですから、相当数減ることが見込まれるわけですね。直近の入学者、二千六百九十八人ですから、今の合格者の二千人というところに限りなく近づいていくんじゃないかというふうに思うわけです。

 したがって、今三千八百人になるという定員でございますけれども、これを相当減らさないと、全体で見ると定員割れという状況は解消されないと思っています。

 ただ一方、そうはいっても、合格者の数がどれだけになるかということも踏まえて定員を決めなくちゃいけないと思います。合格者を二千人採るのに定員が千八百人とかというのはあり得ないわけでございます。

 そういう意味で、先ほどのお話だと、司法試験のあるべき法曹人口については二年間かけて結論を出すという一方で、前に戻って恐縮ですけれども、きょうお配りした資料の手書きの二ページ、二番の(一)のところです。そこで、一年以内に入学定員の削減方策を検討して結論を得るというふうにあるわけですけれども、この一年以内に定員削減数が決められるのかというところを私は疑問に思っています。どのようにして定員削減数の目標を決めるのでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 法曹養成制度改革の推進については、本年の六月二十六日の法曹養成制度検討会議の取りまとめを前提としておりまして、その取りまとめにおきましては、法科大学院に関する記載の中で、「今後の法科大学院の統廃合や定員の在り方については、まずは、法科大学院が全体としてこれまで司法試験合格者を相当数輩出してきた事実を踏まえて検討すべきである。」、次に、「現在の教育力に比して定員が過大な法科大学院が相当数あり、また、全体としても定員が過大になっていることから、入学定員については、現在の入学定員と実入学者数との差を縮小していくようにするなどの削減方策を検討・実施し、法科大学院として行う教育上適正な規模となるようにすべきである。」とされております。

 したがいまして、法科大学院の定員削減におきましても、まずはこの取りまとめの趣旨を踏まえて進められるべきものと考えております。

階委員 今の答弁の中で、実入学者の数も踏まえて決めるというお話でしたから、そうすると、さっき申し上げたように、来年度はことしの入学者二千六百何人というのをさらに大幅に下回るということが想定されるわけですけれども、そうすると、定員三千八百人は大幅に減るという理解でよろしいですか。

小川政府参考人 先ほど申しましたように、「実入学者数との差を縮小していくようにするなどの削減方策を検討・実施」ということで、基本は、教育上適正な規模という観点から現在の実入学者数に即した定員削減を行うということでありますので、削減の規模そのものについて現時点で特に決まっているというわけではございません。

 法曹養成制度検討会議取りまとめにおきましては、さらに、「その後は、法曹有資格者の活動領域の拡大状況、法曹に対する需要、司法試験合格者数の推移等を見つつ、定員の見直しを行うべきである。」とされているところでございます。

階委員 いずれにしても、実入学者との差を縮小していくということですから、大幅な削減というのは免れないわけです。そこで、どこまで減らしていくかによっては、そもそも法科大学院というものが必要なくなるのではないかという問題意識があります。この点については、後ほど大臣に、最後の方でお尋ねします。

 そこで、大臣に別の点についてお聞かせいただければと思います。

 今見ていただいているペーパー、二ページ目の一番最後のところで、「法科大学院が共通して客観的かつ厳格に進級判定を行う仕組みとして、「共通到達度確認試験(仮称)」の早期実現を目指す」、その次のページには、「これを既修者にも活用できるものとしての基本設計・実施について、二年以内に検討を行う。」ということなんですが、法科大学院の必要な学力レベルに達しているのを見るための試験だと思うんですけれども、こういう目的を達するのであれば、現行の予備試験という立派な試験があるわけですから、これを法科大学院の学生に受けさせれば、二度手間で問題をつくる必要もありませんし、より公平な仕組みになるのではないかと思っております。

 この共通到達度確認試験を予備試験に置きかえることは、いかがお考えでしょうか、大臣。

谷垣国務大臣 今委員がお引きになりました共通到達度確認試験ですが、これはもともとは、平成二十四年の十一月三十日に、中教審の大学分科会法科大学院特別委員会で、ロースクールにおける法学未修者教育充実のためのワーキンググループで提言されたものでございます。そこでは、未修者が一年次に学習すべき内容について、二年次への進級の過程で到達度を確認する試験として提言されたわけでございます。

 そして、「法曹養成制度改革の推進について」の中で、これをさらに法学既修者についても活用できるものとしての整備を検討することを求めたものです。

 したがって、その制度目的としますと、ロースクール内部の教育をきちっとしてというか、少しでも教育内容を改善して、学生をその到達目標に近づけていくという、そういう工夫のための制度として考えられたわけでございます。

 他方、予備試験というのは、法科大学院の修了者と同レベルの学力があるかどうかを判定するためにつくられたわけでございまして、目的とするところが若干違う。共通到達度の方は、法科大学院の中での学生の指導の参考とするというものでございますから、制度目的はやはり若干違うというふうに私は考えております。

階委員 ただ、根本的には、法科大学院の教育の質に今現在問題があるということがあると思います。

 済みません、資料四、六ページをごらんになっていただきたいんです。

 欄が上から三段に分かれておりますけれども、bのところで、「法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約七〜八割)の者が新司法試験に合格できるよう努める。」ということで、その程度の教育レベルが法科大学院には要求されると認識しております。

 であれば、ちょうど予備試験で受かった人の司法試験の合格率というのは、後で御紹介しますが、七割程度ですから、その予備試験を課して、そしてそれをパスしているかどうかで教育の質がちゃんと確保されているかどうかというのが一番わかりやすいのではないかと思っております。通告しておりませんけれども、この点、いかがお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 委員の御意見といいますか、今の御発言をあえて私なりに深読みいたしますと、委員のお気持ちの中では、法科大学院というのは、プロセスで教育するといってスタートしたわけですが、必ずしもうまく機能していない。それならば、予備試験というものが、ある意味では、昔の司法試験と同じではありませんが、法科大学院などを経由しないで法曹への道を開く、むしろそれの方が合理的ではないかというお考えが、やや深読みでございますが、そういうお考えがあるのかなというふうに推察いたします。

 私どもが考えておりますことは、一気にそこに行くのではなくて、プロセスとしての法科大学院というものにはやはり重視すべきところがある。そのプロセスをいかに、きちっとしたレベルを維持して有効な教育になっていくか。そのための手段は何かという中で、この到達度が出てきた。

 ですから、制度をいろいろ詰めていく、まだこの共通到達度試験も制度設計の最中でございますから、最終的にどのようなものになっていくかというのは私もまだよく承知しておりませんが、そこの発想の差というものが、今の委員の御意見と、今まで私どもが、あるいは文科省から、あるいは司法法制部から答弁したこととのニュアンスの違いになっているのではないかという感じがいたします。

階委員 私もこの委員会でも申し上げたと思うんですが、当初の法曹養成制度改革というのは非常に私もいい考えだと思っていたんですが、現実に始まってみますと、どんどん問題点が出てきて、今法曹を志す人が激減している状況で、本当にこのまま制度を続けていったら、この先、日本の司法界はどうなるんだろうかという危惧を抱いているんですね。

 ちょっとやそっとの制度の改正では私はもたないと思っていまして、だからこそ、予備試験というものを活用するなり、ドラスチックに日本の法曹制度がちゃんと機能するための改革、ちゃんと質量ともに豊かな法曹を確保するための方策をとっていかなくてはいけないと思っています。

 そこで、次の質問なんですが、五ページ目、資料三をごらんになってください。

 今、有識者の検討会議の中で出されている資料で、司法試験をどうしていこうかという案が示されておりますけれども、これによりますと、ロースクールを卒業した場合あるいは予備試験をパスした場合、司法試験を受けるわけですが、現行の司法試験は、左側ですけれども、短答式試験、公法系科目、民事系科目、刑事系科目ということで、まず短答式では合計七科目あるわけですね。それから論文式試験も、公法系、民事系、刑事系、それから選択科目ということで、これも全体で八科目ぐらい受けなくちゃいけないということなんです。

 ここで示されている改正案によりますと、まず短答式試験については憲法、民法、刑法だけにしましょう、それから論文式試験については公法系、民事系、刑事系は残すんだけれども、選択科目を廃止して七科目にしましょう、こういう話です。

 私も受けた昔の試験と比べて、ではどこが違うのかというと、唯一、論文式試験の中で行政法が加わっているというところだけが変わってくるということであります。せっかく法科大学院をつくって、学部とは違う勉強をしましょうとか、あるいは多様なジャンルの法曹を育てましょうとか、あるいは知識の偏重ではなく考える力を養っていこうということであったにもかかわらず、司法試験が昔とほとんど変わらないということであれば、私は、法科大学院の自己否定につながるのではないかと思っております。

 この司法試験科目の変更については、どのように大臣はお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 法曹養成制度検討会議の取りまとめで、法科大学院教育においては、特に法学未修者について、基本的な法律科目をより重点的に学習できるように改善を図ることとされております。このことを前提として、司法試験についてもそういう法科大学院教育における教育との連携を図る必要があるだろう。加えて、今、さっきお示しになりましたように、非常にある意味で受験科目がふえてきておりまして、これを全部試験科目として勉強していくには受験者の負担が相当重くなっているところがありますので、負担軽減を図る必要があるだろう。

 こういう理由から、今委員が指摘されたように、短答式試験科目も憲、民、刑に限定すべきである、それから、論文式の試験科目も選択科目の廃止を含めて考えてみようということになって、今それは法曹養成制度改革推進会議のもとで選択科目を廃止するか否かについては検討していただいております。

 それで、そういう狙いで今こういう形でやっているわけですが、今委員は、それはロースクールのプロセスで教育することの自己否定ではないかという観点から御意見をおっしゃった。

 例えば、今度、廃止を検討としております選択科目の中に、倒産法であるとか租税法であるとか、あるいは知財関係のものが挙げられております。これは確かに、実務についた法曹にとっては非常に有益なものであるだろうと。それはやはり法科大学院のプロセスの中で、これといって試験科目には指定しないけれども、十分やはりそこで教育をしてもらおう、学んでいただこう、こういう発想でございますので、試験科目ではないが、プロセスによっていろいろな、現実の法曹として必要な能力を広げていこうという方向性はこういう議論の中でも維持されているし、また、維持されていかなければいけないと思っております。

階委員 法科大学院の教育の質を上げるというのは必要だと思いますけれども、何か試験を受かりやすくするためにハードルを下げるような、そういうことはちょっと本末転倒ではないか、法曹の質を上げていくという意味では私はおかしいと思っております。

 それから、先ほど予備試験の話に触れました。資料五を見ていただきたいんですが、手書き八ページ目です。

 これは、恐縮です、ちょっと見づらいんですが、司法試験法科大学院等別合格者数を合格率順に並べたものです。一番上は予備試験合格者で、先ほどもちょっと申し上げましたが、合格率は七一・八六%、次いで慶応大学の法科大学院、五六・七八%、あとはどんどん下がっていくわけでございます。法科大学院で一番高いところでも五六%で、予備試験とは一五%ぐらいの大きな開きがあるわけですね。

 ここでちょっと気になるのが、以前、自民党政権時代に、これは規制改革推進のための三カ年計画というところから抜粋したものが六ページ、七ページあたりにつけさせていただいておりますけれども、この六ページの下の方に、「予備試験合格者に占める本試験合格者の割合と法科大学院修了者に占める本試験合格者の割合とを均衡させる」というくだりがあります。これとちょっと抵触しているのではないかということで、逆に言いますと、予備試験合格者数を必要以上に絞り過ぎているのではないか、もし均衡を図るのであれば、予備試験合格者数をもっとふやしていくべきだと思うんですけれども、この点について、一五%という開きを改善していく必要があるやなしや、大臣の御所見を伺います。

谷垣国務大臣 これは、今おっしゃったように、均衡を図れというのがございまして、やはり余り偏るのは、どっちかの方が極めて、何というんでしょうか、合格率は高いけれども、こっちの方は極めて低いというようなことは余り好ましくないのではないかと私も思っております。

 しかし、現実に、では、どういう判定をして予備試験に合格させるかということは、予備試験考査委員会で、私は、余り細かくそれを全部は聞いてはいないんですが、実際に伺いますと、例えば一点の違いでかなり人数が違ってくるというようなことが現実にはあるだろうと思います。そういうことを踏まえて、本当に予備試験に要求されている水準は何かというのは合議の上で決めていっていただいているわけでございます。その中では、今おっしゃったようないろいろな観点を踏まえながら議論していただいているというふうに思います。

階委員 均衡を図るためには、予備試験をもうちょっと受かりやすくするということのほかに、さっき申し上げたように、法科大学院の教育の質を上げるために予備試験を受けさせて、それをクリアした者を修了させるというふうにすれば、同じように均衡が図られるのではないかというふうに考えております。

 この関係の最後なんですけれども、前回の一般質疑で、私が最後の方で法曹養成制度について伺ったときに、大臣からは、「基本としてのプロセスということは維持していく」というお話でした。ただし、私は、法科大学院を維持しなくても、司法研修所の機能を生かすことによってプロセスによる法曹養成というのは維持できるのではないかと。

 実入学者がもう二千人ぐらいになってくるということは、司法研修所も二千人ぐらいであれば受け入れ可能だと思うんですね。実務教育という面でも司法研修所は非常に実績があるわけで、ここを生かすことによって、例えば研修期間、今一年ぐらいのを二年とか、場合によっては三年ぐらいにすることでプロセスの教育というのは守られるのではないかと思っています。この点について、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今の委員の御意見を伺って、先ほどちょっと申し上げたことですが、委員のお考えの中に、ロースクールが必ずしも機能していない、十分な教育も行われていないのではないか、むしろ昔の司法研修所の方がきちっとした教育ができたのではないかという御判断があるように感じます。

 私も、昔の研修所というのはなかなかいいところがあったなと思うことは、委員と共通の感じもございますけれども、こういうプロセスとして始めた制度、私はその中でかなり大きな成果も現実にあったと思っております。

 どういうことかといいますと、例えば、昔でいいますと、大学の法学部で、必ずしも実務の教育を受けていない方が法学教育に当たっておられた。しかし、ロースクールというようなものをつくることによって、これから実務法曹として育っていく者の教育の中に相当実務を踏まえての教育というものが行われるようになり、それがまた、法学研究の、純粋な学問的研究の法学の方にも刺激を与えている面があるのではないかとか、これは一つでございますが、いろいろロースクールもプラスの面がございます。

 そういうふうに考えますと、ロースクールの機能をこのまましぼませないで、少しでもそれを育てていくことができないかということを考えていく必要があるのではないか、私はこんなふうに思っております。

階委員 きょうは、金融庁等も来ていただいて、この委員会は治安の維持ということも目的としてあるものですから、昨今問題となっている反社会的勢力との取引について伺う予定でございましたが、時間の関係で、きょうは、済みません、割愛させていただきます。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、郡和子さん。

郡委員 おはようございます。民主党の郡和子です。

 限られた時間ですので、早速質問をさせていただきたいと思います。

 まず、この委員会でもたびたび質疑が行われました、少年院や刑務所を退所した人たちの支援なんですけれども、更生保護施設、再犯を防止して社会復帰を助けるということで設けられておりますけれども、この更生保護施設だけでは足らず、社会の中に多様な受け皿を確保する方策として、二〇一一年の四月から緊急的住居確保・自立支援対策というのが開始されまして、あらかじめ保護観察所に登録した民間法人や団体などが、保護観察所が宿泊場所の供与と自立のための生活の指導のほか必要に応じて食事の供与を委託する施設というのをやりたいと手を挙げたところに、自立準備ホームというふうな位置づけで設置がなされたわけでございます。

 この自立準備ホームは、二〇一三年の一月末現在ですけれども、登録者数が全国で二百二十九あるというふうに承知しております。

 この自立準備ホームなんですけれども、一方で、児童福祉法にある、厚生労働省が所管している、児童養護施設を退所した児童等が共同生活を営んで、それから相談、またその子たちの就業支援を行う自立援助ホームというのがございますけれども、その自立援助ホームにつきましては、例えば定員六人のホームだといたしますと、運営費として、一人に二十万円支払われている、月額にして百二十万円、これが公費で支払われているわけなんですけれども、少年院を退所した同じ年代の子供を受け入れている自立準備ホームには国の援助で違いがあるのかどうか、お教えいただきたいと思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 少年院を仮退院した者に限らず保護観察対象者等、自立準備ホームで、宿泊ということで預かっていただいた場合、食事つきで一日当たり四千七百十三円、月額で大体十四万円余りをお支払いしているということでございます。

郡委員 食費等を含めて月額で十四万円ほどだというふうにお話しになりました。

 同じ子供たちの生活支援や就業支援を行っている厚労省所管の自立援助ホームと、自立準備ホームでは、一人当たり六万円ほど差があるということだろうというふうに思います。

 実は、少年院を仮退院した子供たち等々、幼少のころから家庭愛、家族愛に飢えている子供たちが多いというふうに聞いております。正直、生まれつきの障害なのか虐待による二次障害なのかわからないけれども、とにかく生きづらさをあらわしている子供が多くて、その少年一人をケアするのに、自立準備ホームの職員というか支援を行っている方々も、一人で一人を見ていかなくちゃいけない。スタッフの疲弊度が大きい。しかも、スタッフはボランティアで、宿泊をしながら子供たちを見ているのだということで、私の地元のホームからも話を聞かせていただきました。

 少年の自立準備ホームについては、せめて自立援助ホーム程度の委託費まで上げて、スタッフの拡充を図って、より支援を充実させるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生先ほど御指摘のとおり、自立準備ホーム、更生保護施設だけではなかなか受け皿が十分でないということで、緊急的住居確保・自立支援対策ということで、平成二十三年度から、例えばNPO法人など宿泊施設があってあいているというようなところを登録させていただいて、宿泊を委託させていただいているということで、一時的に預かっていただくということをやっていただいているわけでございます。

 仮退院中の少年ということでございましたら、当然、保護観察がついているわけでございまして、その間の指導監督、補導援護は保護観察官や保護司が行っているということでございます。

 具体的に申し上げますと、面接などを通じて、いろいろ、生活指導をしたり、それから悩み事について相談をしたり、就労支援をするといったようなきめ細かい支援をしているわけでございまして、御指摘の自立援助ホームとは少しつくりが違っておりまして、必ずしも委託費の問題をパラレルに比較できるというものではないのではないかなというふうに思っております。

 ただ、先生おっしゃるように、仮退院中の少年に対しましては非常にきめ細かい支援が必要なのは、まさに先生御指摘のとおりでございまして、今後とも、そういう少年に対しましては、保護観察官、保護司による指導監督、補導援護を的確に行って、少年たちの自立と再犯防止に努めてまいりたい、そういうふうに思っております。

郡委員 今お話がありましたけれども、所管が違っている、つくりが違うんだという御説明でしたけれども、十分に考えていただくべきだと思います。全ての自立準備ホームにそうしろというふうに申し上げているわけではない。少年については特段にやはり配慮すべきであろうということを申し上げております。ぜひ実態を把握なさって対応願いたいというふうに思います。

 次は、司法の場における課題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 アメリカのことでありますけれども、一九七五年に、機械速記技術、それとコンピューター技術というのが統合されて、リアルタイムに速記録が作成できるシステムが確立をいたしました。そうした技術基盤の上に、障害者法によって、法廷でも障害者に情報提供されているというふうに承知しております。一九八五年には、ミシガン州でリアルタイム情報技術が本格的に導入されまして、初の聾者の陪審員が登場いたしました。

 我が国では、裁判員ではありませんけれども、二〇一〇年七月の六日、神戸地裁、手話を使わない聴覚障害者の原告本人尋問におきまして、リアルタイム速記のスクリーン表示を実施したということでございます。

 しかし、速記官の立ち会いというのは、裁判所の都合だけで決められて、この尋問に速記官を入れることはできないという裁判所の方針で、元速記官の方が、民間に移っているわけですけれども、そこに速記を委託したわけでございます。費用は原告負担。尋問調書は録音翻訳のために、尋問調書完成に日数を要したということです。

 裁判員制度が始まりましたけれども、中途失聴者や難聴者などの聴覚障害者の方々の裁判を受ける権利、裁判員になる権利を保障するには、手話通訳や要約筆記では不十分で、このようにリアルタイム速記による情報保障が不可欠だというふうに私自身考えています。

 二〇〇九年の裁判員裁判の制度が実施された直後に、全日本ろうあ連盟の理事が、情報が保障されるよう一人一人のニーズに合った支援策を求めている、速記録や要約筆記など文字による情報伝達もその一つだとコメントされております。

 聴覚障害者の裁判におけるリアルタイム速記による字幕表示に関しては、最高裁は、具体的な事件を担当する裁判体が判断することになるとしつつ、一般的には、訴訟法上定められている手話通訳、それから筆談による書面尋問の規定があって、各裁判体が事案に応じて適正な訴訟手続を行うよう配慮している、そのような認識を示されたわけなんですけれども、実際問題、裁判員制度が実施されるに当たって、裁判員にこのような聴覚障害者の方々がどれほどおられたのか、そして、その際に行われたサービスについてはどうであったのか、これについて伺いたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判員制度施行から平成二十五年八月末までの間に、選任手続に出席された裁判員候補者のうち、手話通訳を利用された方が二十六名、要約筆記を利用された方が十九名でございます。

 また、現実に裁判員または裁判員候補者に選任された方で、手話通訳を利用された方は六名、要約筆記を利用された方は四名ということでございます。

 このほかに、磁気方式の補聴システム、いわゆる磁気ループと言われているようなものでありますが、これを設置した例もあるというふうに承知しているところでございます。

郡委員 つまり、リアルタイムでの表示を利用された方はなかった、そういうことでありますか。

中村最高裁判所長官代理者 いわゆるリアルタイム速記というものを使ったというものについては承知しておりません。

郡委員 私は、今御説明になられた数字もありましたけれども、障害を持った方々が司法の場から排除されてはいないかと、この数字をお知らせいただいても、多少気になるところがございます。

 司法行政の立場からは、裁判体の意見などもよく聞きながら、今後とも引き続き検討していきたいというふうに八年前に答弁されていたわけでして、この件に関する検討結果あるいは検討状況などを御説明いただきたいというふうに思います。

中村最高裁判所長官代理者 まず、聴覚障害を持っている方に対する支援の観点でございますが、各裁判体から、障害を有する方が裁判員等に選任されるということがありましたときには、その支援策ということで、手話通訳あるいは要約筆記の利用についての要望が参るところでございます。

 司法行政の立場からは、その要望を踏まえまして、実際支援を行っていっているということでございまして、現実に、各裁判体に対して一律にリアルタイム速記の必要性ということを調査したことはございませんが、裁判体の方から、そういうリアルタイム速記についての要望があったということはございません。

 これまでの間、聴覚障害のある方について、裁判体の意見を踏まえながら、先ほど申し上げましたような必要な支援を行っているところでございまして、これまでのところ、特段問題なく裁判員等の仕事を行っていただいているというふうに承知しているところでございます。

 引き続き、司法行政の立場からは、裁判体の意見を踏まえながら、障害を有する方が裁判員裁判の参加に支障を来すことのないよう、遺漏なきを期していきたいというふうに考えております。

郡委員 遺漏なきようにしたいというふうなことでしたけれども、先ほどちょっと御紹介いたしました二〇一〇年の神戸地裁ですけれども、これは、御紹介いたしましたように、元速記官の方が御自分で買った速記タイプで表示をするということをやったということであります。

 障害者の方の司法参加というのをさらに進めていかなくちゃいけないというふうに思っています。障害者の権利条約の批准についても、今日本はその法整備を整えてきたわけで、秒読み段階に入っているんだろうと思うんですけれども、であるならば、なおのこと、このところは充実を図らなくちゃならないというふうに思っていて、字幕を提供できるスキルもあって、個人で購入した速記タイプで仕事を依頼されていたということですから、これは官の体制としてもしっかり構築しておく必要があるのではないかというふうに私は思っているところです。

 ところで、最高裁判所は、一九九七年二月に、裁判官会議で、速記官の新規養成の停止というのを決定されました。その理由として、後継者の確保や特殊な速記タイプライターの安定供給が困難ということでありました。また、加えて、将来的に確実に増加するであろう逐語調書の需要に対応するために過渡的に録音反訳を導入したが、さらに将来的に音声入力認識システムによる逐語調書作成を本格化するという対応策を考えた結果、速記官の養成停止を行ったというふうに御説明をされました。

 最高裁判所は、二〇〇四年三月の裁判所法改正案の審議を行ったこの当委員会で、裁判員裁判制度の導入を見据えて開発する音声認識技術によって作成する調書について、これは九割方正確であるというふうに答弁をされました。

 しかし、二〇〇六年にNECに開発を委託して、二〇〇九年に完成して、実際に大阪地裁で公開されたシステムは八割程度の認識率で、評議室で確認したい証言の部分の映像と音声を検索することはできると証明されたわけですけれども、音声認識による文字記録は誤認識が多かったために、公式には残されず、別途記録を作成するということでありました。

 音声認識システムの正確性に関する弁護士の評価も、五段階評価で平均して二でございました。そのとおりですね。今委員の方から落第じゃないかという声が上がりましたが、私もそのように思います。

 音声認識技術による文字記録の認識性、正確性はどのような方法で確認して、現時点でどの程度なのでしょうか。それからまた、評議における音声認識結果及び録画映像の利用度はどの程度なのでしょうか。音声入力認識システムの開発、導入の当初の政策目的に照らして、その達成状況をどのように評価なさっているのでしょうか、あるいは当初の政策目的を変更されるのでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 多数の御質問がありますので、ちょっと順番にお答えさせていただきたいと思います。

 まず、音声認識システムにつきましての認識率及び正確性がどの程度かという御質問でございますが、現在、音声認識システムにつきましては、裁判員裁判の評議におきまして、映像及び音声で証人等の供述内容を再現して、これを確認するため、認識した文字データをいわばインデックスとして利用するということで、効率的な証人の供述等を検索するツールとして利用しているところでございます。

 法廷における発言ということは、自由発話と言われるものでございまして、その認識率につきましては、発話の環境によって大きく異なることから、認識率自体を調査したことはなく、何%という程度の一定の数値をお示しすることはできませんが、現場の裁判官が評議において現に利用しているということから、現状におきましては、この利用に耐え得る程度の認識率は確保しているものと考えております。

 また、利用状況についてどの程度か把握しているかという御質問がございました。

 裁判の評議に利用するシステムでございますため、利用状況は把握しにくく、全国的な調査ということを行ったことはございませんが、複数の庁に対して利用状況を調査したところによりますと、審理に長期間を要する裁判員裁判において音声認識システムが利用されているというふうに聞いております。

 また、希望する検察官及び弁護士に対しまして、訴訟準備等のため、音声認識システムで得られた音声認識データ及び文字データを便宜供与の形で提供しているところでございまして、相当数の事件において、検察官、弁護人が同データの提供を受けているというふうに承知しております。

 それから、前段のところで委員の方から御指摘がありました平成十五年当時の答弁の話でございますが、まず、平成九年に速記官の養成の停止を決めまして、その当時において停止した理由というのは、まず、いわゆる今後増大するであろう逐語録需要に対して、今の速記官制度ではこれに機動的に対応することが困難であるということから養成停止に至ったということでございます。

 平成十五年に委員御指摘の答弁をしているわけですけれども、その当時、ちょうど音声認識システムの調査研究を始めようとした当時でございました。そのときに、音声認識システムが技術発展すれば録音反訳にかわり得る可能性があるという認識を示した上で、速記官の養成を再開する状況にはないと考えているという答弁をさせていただいたと理解しているところでございます。

 音声認識につきましては、その後の開発の中で、証人の供述等のいわばインデックスとしての利用ということで、現在その利用をやっているところでございまして、録音反訳方式にかわって調書作成のために利用できる技術水準には至っておらず、当時の録音反訳方式が過渡的になるものであるというような状況はいまだ生じていないというところでございます。

 音声認識につきましては、現在の技術水準に相応した利用を行っているということが現状でございますが、逐語録需要が増大し、録音反訳方式の利用が拡大、定着していることを踏まえますと、現時点においても速記官の養成を再開する考えはないということでございます。

郡委員 長い御説明でしたけれども、音声認識技術というのは、今検索するツールでしかなくなっているんだということだというふうに思いますし、次のいろいろお話しになられたところも反論させていただきたいと思うんですが、まず、後継者の確保と速記タイプの安定供給の問題なんですけれども、養成を停止するということを決められるまでの数年間の速記官の応募者数というのを見てみますと、これは毎年七百人から千名以上に上っているんですね。なりたいという人たちが多くいたということであります。廃止を検討している旨を高校の就職担当者に説明したとされる九六年ですら九百十八名の応募がありました。そして、そのうち合格者は四十五名程度で入所者は三十名前後、これは継続して確保したんですね。

 当時の速記タイプ、これも安定供給は難しいというお話ですけれども、速記タイプを製造していた日本タイプライター社は、最高裁判所から発注があればつくり続けるというふうに回答していたということですし、九二年の十月には、速記タイプの世界的シェアを有するアメリカのステノグラフ社が、NECを介しまして日本語対応速記タイプを最高裁に持ち込んでいたというふうに指摘をされています。

 音声入力認識システムによる本格的な逐語調書の作成という理由も、それから今申し上げた、後継者の確保が難しい、あるいは速記タイプの安定供給が難しいので速記官の養成停止という決定理由、これは根拠がなかったというふうに言わざるを得ないと思います。いかがでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 先ほど御答弁申し上げましたように、平成九年当時の速記官養成停止の大きな理由というのは、今後増大する逐語録需要に機動的に対応できないというのが大きな理由でした。

 先生御指摘のとおり、後継者というか希望者が今後継続して確保できないという理由と、機械の確保が困難になるという理由も、その当時、申し上げてきたところでございまして、実際、その当時の状況は、ワープロが普及し、速記のタイプライター産業が衰退していっているということの中で、その判断ということについては間違っていなかったと思います。

 なお、タイプライターにつきましては、結局のところ、平成十四年に日本タイプライター社は製造を打ち切っているということになっておりまして、繰り返しになりますが、当時の判断ということは正しかったというふうに考えている次第でございます。

郡委員 今私が、だから、根拠がなかったということを申し述べました。

 録音反訳方式なんですけれども、音声認識システムの認識率は低いので検索ツールとしてしか使えないということでした。

 最高裁は、民間業者に委託する録音データの反訳による逐語的供述調書の作成方式を導入しているわけですけれども、この録音データ、民間業者に委託した録音データですけれども、最高裁まで、それを受領するまでに時間がかかっています。しかも、録音ミスや校正ミスなどによる誤字脱字、訂正漏れ、意味不明な反訳箇所などがあって、正確性が大変懸念されていて審理に少なからず影響を与えております。録音状態のいい一時間のテープの中で何と八十カ所も校正をしなければならなかったという例も出ていると言います。

 それから、民間業者との録音メモリーの授受の危うさというのも心配されるところだと思います。

 実際に、二〇一二年、横浜地裁における録音データ、これが紛失をいたしました。また、さいたま地裁で、担当書記官が反訳業者に渡す録音データのうち反対尋問以降の部分が不足していて、つまり、録音を休憩の後し忘れたのか何かわかりませんけれども、誤操作があったのかどうか録音がなかった、データが消去していた。反対尋問をやり直すというようなことも発生していたというふうに聞いております。

 外部の民間業者に委託して行う録音反訳による逐語的な調書の作成方式、これは裁判の調書の作成としては不適切ではないでしょうか。いかがでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 録音反訳方式におきます調書作成について、いろいろ御指摘がございました。

 まず、プライバシーの点や受け渡しの確実性の問題でございますが、音声データや添付資料の複製を必要不可欠な場合に限る、送付した音声データは確実に返還させる、守秘義務や情報管理を徹底させるというような条項を民間業者、録音反訳業者との間の契約に取り入れておりますし、音声データ等の確実な受け渡しを行うため、情報の厳重な管理についても指導を徹底しているところでございます。

 また、日数の問題の御指摘もございました。

 録音反訳業者との契約によりまして、業者が反訳対象となる音声データを受領した日の翌日からおおむね十日間で完成するということになっております。しかし、特に急を要する場合にはこれを短くすることも可能ということで、最短の場合には、業者が音声データを受領してから四十八時間で反訳書が作成できるというような手当てもしているところでございます。

 正確性につきましての御指摘もありました。

 正確性につきましては、反訳業者が提出した反訳書を裁判所書記官が確認し、校正を行った上で、裁判所書記官の調書として完成しておりまして、その完成された調書の正確性に問題がありという認識は全くしておりません。現の裁判においても、そのような審理に悪影響を与えたということは承知しておりません。

 この録音反訳方式の導入前に、平成八年当時に約二千二百時間の検証実験というのを行いまして、弁護士会の方にもその正確性についてアンケートを行ったところですが、九割以上の方から正確性に欠けることはないという回答をいただいているところでございまして、正確性について問題はないというふうに考えております。(郡委員「短く答弁してください」と呼ぶ)済みません。

江崎委員長 時間が迫っておりますので、簡潔に答弁願います。

中村最高裁判所長官代理者 失礼しました。

 議員の御指摘の二点の事項につきましては事実でございまして、それについては指導徹底を図りたいと思っております。

郡委員 時間が限られているので、答弁はなるべく簡潔にしていただきたいんです。

 予定した質問を少し飛ばします。

 今、実は、最高裁、裁判所に旧式の速記タイプがたくさん山積みになっています。なぜかと申しますと、今速記官の方々は、この旧式のタイプは大変使い勝手が悪いし、そして、職業病というふうにも言われる書痙症などの障害が発生をしているということで、自分たちの費用で、自分たちがお金を出して新しいタイプの速記タイプを購入しているんです。そして、これは、パソコンとつなげて表示もできるような、そういうシステムになっていて、すぐさま調書をつくることができるようになっている、速記録をつくることができるようになっているわけなんです。

 実際、この旧式のタイプは、七百台以上眠っている、使われずにいるということなんですが、古い機械があるので新しく改良されたタイプを買うことが予算執行上不適切だというふうにおっしゃっているんですけれども、この根拠と、使われずに倉庫に積み上げられている速記タイプがなぜ残っているのか検証しているのかどうか、最後にお尋ねしたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 速記タイプにつきましては、速記官が仕事に必要な器具ということで、官側といたしましては、その確保ということで必要な台数を確保しているということでございます。

 今後も、速記官が約二十年以上にわたり速記官の事務をするということでございますので、必要な速記器具については確保しているということでございます。

郡委員 使われないまま保管をしているのであって、速記官の皆さんたちが使い勝手が悪い器材を新しいものにしてほしいと言っても新しいものは購入していただけない、みずからがお金を出して仕事をしている、こういう状況です。もし必要なら財務省にでも申し上げたいと思いますよ。

 ぜひ古いものを、使っていないから新古品というんでしょうか、中古品というんでしょうか、そういうものを処分して、新しいものをちゃんと支給できるようにしていただきたいというふうに思います。

 それとあわせて、私は、速記官の養成を中止したということですけれども、今後さらに書記官の任務というのは重要性を帯びてくるし、必要であるということを申し述べて、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、高橋みほさん。

高橋(み)委員 おはようございます。日本維新の会の高橋みほでございます。きょうもどうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、まず、企業や組織によって行われました事件や犯罪について質問させていただきたいと思っております。

 企業幹部の刑事責任が裁判で問われることも、近年すごく多くなってまいりました。世間の注目を集めた事件としましては、古いところでは、一九八二年、三十三人が死亡した火災で、消火設備の設置を怠ったとして、当時の社長について禁錮三年の実刑が確定したホテルニュージャパンの事件、一九八〇年代には、薬害エイズ事件で、歴代三社長のうち二人について禁錮一年六カ月から一年二カ月の実刑が確定したミドリ十字による薬害エイズ事件、日本航空、ボーイング社、運輸省の幹部ら計三十一人全員が不起訴だった一九八五年の日航機墜落事件、大型トラックによる死亡事故で、クラッチ部品の欠陥を放置したとして、元社長について禁錮三年、執行猶予五年の有罪が確定した三菱自動車事件、ガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒事件で、在宅起訴された元社長について禁錮一年六カ月、執行猶予三年の有罪が確定したパロマ工業による事件、ジェットコースターの脱線死亡事故で、元取締役らに禁錮二年、罰金四十万円、執行猶予四年の有罪が確定したエキスポランドの事件があります。

 これら事件は、社会的にも本当に大きな事件として皆さんの記憶にまだまだ残っているんじゃないかと思っております。

 このように読み上げてみますと、企業が原因の事件というのは、かなり大災害になっている、大きな事件になっているということがよくわかるのではないでしょうか。

 また、明石の歩道橋で、祭りの後に、帰り道、圧死によって十一人が亡くなった事件など、考えると枚挙にいとまがないということになるかと思います。

 そして、最近では、一番センセーショナルな事件として皆さん御記憶にあると思いますけれども、JRの福知山線脱線事件が記憶に新しいかと思います。

 これは、二〇一二年一月十一日、JR西日本の山崎正夫前社長に対しまして、神戸地裁は無罪判決を言い渡し、確定しております。さらに、井手正敬氏など元社長三人に対しましては、神戸地裁は無罪を言い渡しております。

 これは主にどんな理由だったのか、できる範囲で構わないので、まずお答えいただきたいと思います。

稲田政府参考人 ただいまのお尋ねは、歴代の三社長が強制起訴されたJR西日本の福知山線脱線事故の神戸地裁の判決についてというふうに承知しているところでございます。

 まず、この事案でございますが、JR西日本の歴代三社長が、速度超過による列車脱線転覆事故を防止するために、福知山線の曲線への自動列車停止装置、いわゆるATSの整備を指示すべき注意義務があったのに、これを怠りまして乗客百六名を死亡させるなどしたとして、業務上過失致死傷罪により強制起訴されたものと承知しているところでございます。

 この事件につきましては、平成二十五年九月二十七日に、神戸地裁が今御指摘ありましたように無罪判決を言い渡しております。

 判決理由は、詳細にわたりますが、ごく簡単に申し上げますと、本件事故前には、当該事故のございました曲線へのATSの整備を行うべき法的な義務がなく、大半の鉄道事業者が曲線にATSを整備していなかったという事実があったということを指摘した上で、本件曲線において速度超過による列車脱線転覆事故が発生するという具体的な予見可能性はなく、本件曲線へのATS整備を指示すべき注意義務があったとは認められないとして、無罪判決を言い渡したものと承知しているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 今のをまとめますと、ATSの設置の義務がその当時はなかった、ですから、具体的予見可能性が事故に対してなかったということだと思っております。

 この判決につきまして、神戸大学大学院教授の大塚教授が以下のように論評しております。この判決は、具体的な予見可能性が認められないと無罪にしており、従来の法解釈に沿った妥当な判決である、判例上、事故が起こるかもしれないという危惧感程度では過失責任を問えないという考えが根強い、業務上過失致死傷罪が個人の刑事責任を問う以上、事案によって予見可能性のハードルを変えてはいけないと、日経新聞上で論評されておりました。

 この判決の判断というのは、法解釈的には妥当なのかもしれません。しかし、事故が起こったときの社長も、歴代の三人の社長も無罪とされたこの事件で、身内の方を亡くしてしまった御遺族の方のお気持ちを考えると、私は何ともやりきれないような思いがします。

 そこで、法務大臣にお伺いしたいんですけれども、御遺族のお気持ちに立って考えますと、いかが考えるのか、お聞かせいただければと思っております。御遺族のお気持ちとしましては、なぜ起きたかという理由、そして、誰が責任をとってくれるのかと言いたいと思うのですが、この判決はそれに応えられているでしょうか。山崎元社長の裁判は確定しておりますが、もとの三社長の裁判は控訴審にて争われている最中であり、法務大臣として、司法に不当な影響力を及ぼすおそれがない範囲で、もしくは、政治家の意見としてでも構いませんので、御感想をいただけたらと思っております。

谷垣国務大臣 もちろん、この事件について、第一審無罪判決が出たことは私もよく承知しております。

 しかし、影響を与えない範囲でとおっしゃいましたが、この事件は指定弁護人によって公判が行われている事件でもございますし、また、個別の判断、特に確定もしていない判断でございますから、法務大臣としては、意見は差し控えたいと思っております。

高橋(み)委員 一政治家としての判断でもよろしいのですけれども、それは難しいのでしょうか。

谷垣国務大臣 私は、ここでお答えするのは、あくまで法務大臣として、行政府をある意味では代表いたしまして答弁するわけでございますので、その立場としては、今の一審判決に意見を申し上げることは差し控えたいと思っております。

高橋(み)委員 お立場からしますと仕方がないことだとは私も理解はしております。

 個人の刑事責任を問う場合はこれが限界なんだとは思うんですけれども、現在、加害企業の法的責任を求めるならば、組織罰など新たな法律上の仕組みを考えるべきではないかということも言われております。

 イギリスでは、二〇〇八年、企業の安全管理システム上の不備などで死亡事故が起こった場合、予見可能性がなくても企業に上限のない罰金を科す法人故殺罪というものが成立し、施行されております。

 この法人故殺罪というのは、ドーバー海峡で起こった百九十三人が死亡したフェリーの転覆事故で、運航会社が裁かれなかったことがもとになっているとも言われています。そして、この事件の後、十年後の鉄道事故、このときも百人を超える死傷者を出したのにもかかわらず責任が問われなかったということから、安全対策が不十分だった企業を厳しく問う法律の制定を遺族が求めて成立したと伺っております。

 このような、予見可能性がなくても企業を罰することができる法律を日本で導入することは可能なのか、御見解を伺いたいと思っております。

稲田政府参考人 まず、我が国の現代の法制から御説明申し上げますと、刑法典が業務上過失致死傷罪などを規定しているところでございまして、そこでは自然人を前提にしていると理解されているところでございます。しかも、いわゆる両罰規定、これは特別法の中にはかなりの数が見受けられますが、刑法の中には設けられておりません。

 また、我が国では、従業者等の違法行為を前提とせずに、法人自体の過失に基づきその刑事責任を問い得る法制度というのは、これは特別法も含めて存在していないというふうに認識しているところでございます。

 そこで、御指摘のように、企業の代表者とかトップの方々の過失といいますかそういうものも含めて、そういうものによる刑事責任も前提とせずに、企業自体の過失という考え方をとり得ないかということで、今御指摘ありましたように、外国、とりわけイギリスではそういう制度があるやにも聞いておりますけれども、問題は、そもそも法人というものに、刑法上自然人について考えられているような犯罪を犯す能力というようなものと同視すべきだけのものがあるのかという、まず根源的な議論もございますし、法人自体の過失というのをどういうふうに捉えるのかというような問題もございまして、法人の刑事責任のあり方というものについてはいろいろな御議論もありますし、また、なかなか定まった考え方もあるわけではございません。その辺につきまして慎重に検討していく必要があるのではないかと思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 今御答弁いただいたのは、私が大学時代に法律を学んだときの刑法の授業そのままというようなイメージがあるんですけれども、もちろん、日本の法制度の歴史というもの、それと現在の法的な枠組みというのもきちんと考えなければいけないということはわかっておりますけれども、やはり実際の必要性というものが最近では出てきているんじゃないかと私は思っております。それによって、刑法も、また特別法でももちろん構わないんですけれども、少しずつ変えていくべきときではないかというような考えを私は持っております。

 それでは、このような法律ができた場合、どのような不都合性があるかということをちょっとお聞かせいただければと思っております。

稲田政府参考人 先ほど申し上げたところとやや重複するところもございますけれども、仮に、個人の過失といいますか違法行為といいますか、そういう責任のある部分を前提とせずに、企業の組織体というものを前提にして、それによる過失というものを総体的に捉えるとしたとしても、そのもの自体を、法人自体の過失というものをどういう内容のものとして捉えるのか、どういう部分を切り取るのかというようなことが、もちろん類型によって違ってくるとは思いますけれども、一概に定めることはなかなか難しいところがあろうかと思います。

 それと、代表者等の個人の過失が問えないということで法人に責任を負わせるということになると、刑法の今の大原則はいわゆる責任主義でございまして、責任のあるところに処罰が発生するということになっているわけでございますが、法人を構成している個人一人一人にとって責任が問えないということを前提にして、それでも責任を問われることを可能にするのかという、そこの考え方をどういうふうに整理していくのかというところにも問題があろうかと思います。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 私も責任主義というのは当然存じ上げておりますけれども、やはり自然人じゃなくても企業にも責任がある、それを刑罰で罰するかどうかというのはおいておくとして、やはり企業も、安全配慮を欠くような組織体であって事故が起こってしまったというところに、何らかの責任というものを負うべきではないかと私は考えております。

 今、不都合性ということで法論理的なお答えがあったんですけれども、実際こういう法律ができた場合どうなるかというものを私はちょっと考えてみました。

 そうしますと、よく言われていることでもあるんですけれども、安全性が不十分だと疑いをかけられただけで企業に深刻なイメージダウンが起こってしまうという点、また、訴訟が乱発するんじゃないかということで訴訟費用がかかり過ぎるという点、安全対策の大幅改善が別に罰則を設けたとしても期待できないという点、罰金が安全対策資金を奪うというような点、このような企業に罰則を科すと事故原因究明を妨げるおそれがあるというようなこともよく言われております。

 ただ他方、このような法律が制定されることによりまして、法律が抑止力になりまして事故が減れば、事故対応や治療コストが抑えられるとか、企業のみ罰すれば原因究明できにくくなることはないというふうな論評もございます。

 そこで、先ほど最初の方に述べましたイギリスでは先ほどの法律が制定されているんですけれども、イギリスにおきましては、この法律を策定してどのような効果があったか検証されていると思うんですけれども、御存じの範囲で構いませんので、どのような効果があったのか、お答えいただければと思っております。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

稲田政府参考人 当該法律は、イギリスで二〇〇七年にできた法律だとは承知しております。そして、翌二〇〇八年の四月に施行されたというふうに伺っているところでございます。

 それで、実は昨日、この御質問を伺いましてから、いろいろと私どもの方でも、従来調べているものもあわせて、新たに何かわからないかということで調べさせていただいたんですけれども、どうも、具体的にはそれほど多くの件数が訴追されているようには思われないといいますか、新聞記事程度なんですけれども、さほど多くの事件が起訴されているようには見受けられないんですが、それも確たるものが、実は統計資料等が手に入りませんでわからないんですけれども、そういうような状況であるということはわかりました。

 現時点で調べたところでは、これによってお尋ねのような具体的に企業活動にどのような影響が出たのかというようなことについて、正式に、あるいは公的な立場で何か言われているものがあるかということにはまだ接していないというのが状況でございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 この法律は、今おっしゃってくださったように最近できたばかりなので、イギリスでも実際はまだ余りそれほど訴追されていないということは私も存じ上げております。

 ただ、これははっきりとした公式なところが出している見解ではございませんけれども、法律が施行された後、鉄道事故が三割減少したというふうにも一般的には言われているようです。

 そして、これができた後ではないんですけれども、二〇〇六年七月に発表しました法人故殺法案の規制影響評価におきましては、職場における事故及び従業員の体調不良による支出は、社会全体で二百から三百十八億ポンド、約四兆七千九百三十億から七兆六千二百八億円、弁護料金、法律顧問または訓練等の法人による支出と訴追手数料等の政府支出の合計が、千九百二十万から二千百二十万ポンド、約四十六億から五十億円と見積もられており、法律制定でこれらの事故を〇・一%でも削減するだけで採算がつり合うというふうにも、施行前ですけれども言われておりました。

 ですから、この法律をもう少し、イギリスのことではございますけれども、注目していっていただければ、この法律ができて、結局どれだけ事故が減った可能性があるのかということを検証していただければ、これからの日本の法制度にも一石を投じるのではないかと私は思っております。

 イギリスから離れまして、ちょっとフランスに行きたいんですけれども、フランスでは、法人罰が刑法改正で本格導入され、あらゆる犯罪で法人の罪を問えるそうです。国以外の全ての法人が対象であり、ですから地方自治体もオーケーと言われています、自治体も犯罪を起こせば罰金や解散という罰を受けることにもなるそうです。

 私は、この今回の質問におきまして調べてみましたが、日本法的な刑法典になれている私としてはちょっとびっくりしたんですけれども、多くの国で法人罰というものが導入されているということがわかりました。

 このような法人罰の導入をされている国はどのような国があるのか、導入していない国はあるのか、ちょっとお聞かせいただければと思っております。

稲田政府参考人 何分にも外国法制というのは非常に、私どもにとりましても、言葉の問題を含めまして、いろいろと理解が十分でないところがございます。

 という前提で、現時点で把握している限りで申し上げますと、まずアメリカでございます。

 アメリカは、御案内のとおり、連邦と州とでそれぞれ別の法制を持っているわけでございます。連邦について申し上げますと、判例上、法人は犯罪を犯し得るものというふうにされておりまして、自然人に限らずに法人も刑事責任を問われる場合がございます。それは、従業員等の行為が法人に帰属させられることによるという、いわゆる代位責任というのが根本的な議論のスタートだというふうに理解しております。そういう意味で、刑事責任の対象になると考えられております。

 イギリスにつきましても、先ほどから御議論ございましたように、法人は犯罪を犯し得るものとされておりまして、刑罰の対象とされ得るわけでございます。もともとの考え方は、もともとアメリカがイギリス法を継受しているわけでございますが、代位責任から発達したもののようでございますが、先ほど御指摘のありましたような二〇〇七年法などもあるというふうに理解しております。

 他方、フランスは、これも御指摘ございましたように、刑法において、法人は、法律または規則に定める場合において、その計算において、その機関または代表によって行われた犯罪について刑事責任を負うという規定が設けられていると承知しております。

 他方で、ドイツでございますが、ドイツは、一般に法人は犯罪を犯し得ないものとされ、刑罰の対象とされていないというふうに承知しております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。ヨーロッパでは採用が進んでいるけれども、ドイツでは採用しないというふうに私も伺っております。

 私は、今まで、導入したらどうかという論調であったんですけれども、やはり、もし導入するとしても、いろいろな観点で考えなければいけないところが多いことはもちろん存じ上げております。どのような犯罪まで法人処罰を認めるのかとか、どのような制裁が妥当か、罰金以外に、アメリカで行われている被害弁償命令とか社会奉仕命令、それらの履行や、コンプライアンスプログラムの遵守等を含む保護観察は可能かとか、フランスで行われている解散とか事業所の閉鎖が可能かとか、公契約からの排除が可能かとか、いろいろな論点、効果も罰則についてもいろいろあるかと思いますので、ぜひこれから検討していただければと思っております。

 ところで、今回なぜこういうお話をさせていただいたかといいますと、特に、福知山線の脱線事故とはちょっと事例が異なるとは思うんですけれども、企業絡みの事件、事故と申しますと、やはり何といっても、東京電力福島第一原子力発電所の事故とか、私は北海道選出でございますので、JR北海道の最近のいろいろな事故というか、事件とまでは言わないと思うんですけれども、それについてとても関心があるから、今回はこの企業罰ということについて質問させていただきました。

 もちろん御存じだと思うんですけれども、東京電力福島第一原子力発電所事故に関しましては、福島県の住民などが東京電力の旧経営陣らの刑事責任を問うように求めて、これの裁判には全国の一万四千人以上が加わったと言われています。

 東京電力の旧経営陣や菅元総理大臣など四十人余りにつきまして、検察は、刑事責任を問うことはできないとして、全員を不起訴にいたしました。訴えられたのは、法人としての東京電力、前会長や社長ら旧経営陣、当時の原子力安全委員会の元委員長ら原発の規制当局、政府の責任者だった菅元総理大臣であります。

 この裁判の中で取り上げられたのは、やはり、東日本大震災クラスの地震や津波の発生をここでは具体的に、実際は本当に予見されたのかということと、予見されたとしても、重大な被害を防ぐ対策をとることが可能だったのかということが議論もされたと言われております。

 ただ、法人罰があって、事故を起こせば会社が存亡の危機に直面するという強い危機感があれば、過去の巨大津波の研究結果をより深刻に受けとめて、防波堤を高くしたり、電源喪失に備えたりする対策がとられていた可能性があるんじゃないかなというような考えを私は持ちました。

 そして、JR北海道につきましては、何といっても、別にそこで人が亡くなったわけではないんですけれども、一旦、鉄道におきましていろいろな不都合性があったとき大惨事になる可能性というのは、私はすごく高いと思っているんですね。ですから、その場合にも、刑事罰とは言えないまでも、やはり何らかの措置、何らかの責任を負わせる必要があるのではないかなと私は思っております。

 先ほど述べましたいろいろな事件におきまして、法人の組織罰が可能ではないかという議論をしたんですけれども、人が亡くなっていないとかいろいろな問題もありまして、直接ストレートにこの議論を適用するというのは難しいかもしれないんですけれども、やはり、組織が行った行為に対して責任を負うという観点から、新たな法制度なり何らかのものをつくっていく必要性があるんじゃないかなと私は考えております。

 ですから、法務大臣にお伺いしたいんですけれども、今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故とかJR北海道の問題におきまして、いろいろな法整備をきちんとしておくというのも一つの考え方じゃないかと思うんですけれども、その点に関しまして御意見を伺えたらと思っております。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

谷垣国務大臣 先ほど来の御議論に、私は、刑事局長が答弁申し上げた以上のことを今お答えできるわけではございません。

 それで、もし法人にも刑罰を与えるということになりますと、基本的には、けしからぬから刑罰を与えるというわけにはいきません。やはり、何が処罰すべき行為かというのにある程度明確な考え方がなければいけないだろうと思います。

 そこで、日本の法律は、先ほど来刑事局長が御答弁申し上げているように、自然人が故意または過失で違法、有責な行為を行うというものを構成要件として法律化しているわけですね。これは自然人を前提としていますから、では、法人の場合、どういうところを罰すべき行為としていくかというと、すぐに自然人を前提とした刑罰体系は当たらないだろうと思います。

 そこで、もともと法人も処罰ができるというような英米法の体系の中でどういうことが考えられてきたのかというのをかなりきちっと検討しませんと、やはり日本の制度とは非常なそごが出てきてしまって、やってもぎくしゃくしてしまうというようなことにもなりかねないのではないか。私も十分検討しているわけではありませんので、今委員のお話を伺いながら感じたことを申し上げるにとどめさせていただきます。

 その上で、お話を伺いますと、委員も相当自問自答されながら今この質疑を行っておられるように思うんですね。刑罰ではなくても何らかの手法があるのではないかとかおっしゃっております。これは、諸外国の例等も我々もできる限り勉強はしてみたいと思っております。

 なお、具体的な事件をお挙げになりましたが、いずれも、例えば私のもとの検察で捜査をしたりしているものでございますから、個別のことについては言及を差し控えたいと思います。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 個別の事例についての判断はお伺いできなかったんですけれども、谷垣法務大臣が思っている思いというものを伺えてすごくよかったと私自身思っております。できましたら、これからも本当に、今の法体系にはそぐわないという一言で切り捨てるのではなくて、やはり現実に合った対応というものを少しずつしていっていただければ、検討していただければと私は思っております。

 では、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 先日、非嫡出子の相続分規定に関しまして違憲判断が下されました。そして、現在、改正の法案が今国会に提案されるところまで来ております。

 非嫡出子の相続分の民法改正につきましては、本委員会で別途討議されると伺っておりますので、私はここでは触れません。

 ただ、平成八年の法制審議会の答申では、非嫡出子の法定相続分とともに、法律案の中身であった選択的夫婦別氏、一般的に選択的夫婦別姓と言われておりますので、以下では選択的夫婦別姓と申し上げたいと思いますけれども、その導入に関しましては、残念ながら議論が進んでいないように思えます。いま一度、選択的夫婦別姓の議論を行う必要性がある時期に来ているのではないかと私は思っております。

 そこで、非嫡出子の相続分に関しましては司法が重大な役割を果たしたと考えますので、選択的夫婦別姓に関しましても裁判が提起されていると思っているんですけれども、どのくらいこの選択的夫婦別姓につきまして訴訟が起こされているのか、その数は把握されているのか、お尋ねしたいと思っております。

深山政府参考人 これまで、全ての裁判所で、この夫婦別氏制度あるいは同氏制度のあり方が訴訟上争われた事件の全部の件数というのは、実は把握しておりません。

 近年のもので、公刊物で我々が把握しているのは、ことしの五月二十九日に言い渡された東京地裁の判決がございます。その内容を少し御紹介させてもらってよろしいでしょうか。

 この事件は、選択的夫婦別氏制度を導入する旨の立法措置を怠ったことが違法だ、こういう理由で、国に対して損害賠償請求をした事案でございます。東京地方裁判所は、憲法及び女子差別撤廃条約によって婚姻前の氏を称する権利が保障されているとは言えない、こういう理由で、請求を棄却する旨の判決をことしの五月二十九日に言い渡しております。この事件は、現在、東京高裁にまだ係属中と承知しております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 非嫡出子の相続分とともに議論があるところですので、数など把握されているのかなと実は思っていたので、少し残念なところではありますけれども、今おっしゃっていただきました裁判例というのは私も存じ上げております。この裁判例につきましては結構大きく新聞紙上にも載ったものですので、ここにいらっしゃっている委員の方々も皆さん御存じだとは思うんです。

 先ほどの御答弁とちょっとかぶるかもしれないんですけれども、裁判長は、この判決におきまして、氏名は人格権の一部を構成するとしつつも、個人の尊重を定めた憲法十三条が保障された権利に含まれることが明らかとは言えないと指摘して、両性の平等を定めた憲法二十四条についても、夫婦が別姓を名乗る権利を保障したものと言うことはできないと判断したと言われております。

 実は、私はこの判断を聞いたときに、法律上はやはり仕方がないかなと思ってしまいました。というのは、婚姻時にどちらかの姓を名乗ればいいという規定なんですから、それが両性の平等の権利を保障した憲法に反するとまではやはりちょっと言えないかなというのが私の率直な感想でした。

 とすると、これは司法の問題ではなくて、やはり政治の問題であると考えるべきではないかな、そうすると私たちの責任ではないかなと、私は先ほどの話じゃないけれども自問自答したわけでございます。

 そこで、では政府はこの件に関しましてどのような取り組みをされているのかというのを私は調べさせていただきました。調べましたところ、平成二十二年十二月に閣議決定された第三次男女共同参画基本計画におきましては、夫婦や家族のあり方の多様化や女子差別撤廃委員会の最終見解も踏まえ、選択的夫婦別氏制度の導入等の民法改正については引き続き検討を進めると宣言されておりました。

 そこで、現在の選択的夫婦別氏の検討状況をお聞かせいただきたいと思っております。

深山政府参考人 選択的夫婦別氏制度の導入の是非につきましては、我が国の家族のあり方に深くかかわる問題でございまして、国民の間にもさまざまな意見がありますことから、国民の理解を得ながら法改正を検討していくことが相当であると考えているところです。

 このような観点から、平成二十四年に内閣府において家族の法制に関する世論調査を実施し、その結果を法務省のホームページに掲載するなどして、国民の間で議論が深まるように取り組んでいるところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私は実は一年生議員でありまして、まだこういう答弁になれていないので、ちょっと不思議に思ったことをここで紹介したいと思うんですけれども、政府などが、検討をするというふうにいろいろなところできちんと書いたとしても、実は検討もしていないことがすごく多いんだなということを、一年生議員としてちょっと勉強させていただいたんです。やはり政府の方たちがきちんとしたところで検討すると言われている以上、例えばアンケートをとるだけではなくてきちんと検討していただければなと私は一年生議員ながら思ったということを、ちょっとここで申し述べさせていただきたいと思っております。

 先ほど、世論調査をされたということを伺ったんですけれども、そこの調査では、選択的夫婦別氏を導入しても構わないと答えた者は全体の三五・五%であるのに対して、現行の夫婦同氏制度を改める必要はないと答えた者は全体の三六・四%であるということでした。これを見ますと、導入しても構わないとした人と、改める必要がないとした人が拮抗しているようではありますけれども、世代別で見ますと、例えば二十代では、導入しても構わないと答えた人の割合は四七・一%であるのに対し、改める必要はないと答えた人の割合は二一・九%となっております。結婚して氏を変えるのは通常若い世代ですので、二十代で導入しても構わないと答えた人が半数近くに及ぶのですから、これは導入すべきときが来ているのではないかと私は考えました。

 少し選択的夫婦別姓からは離れるんですけれども、例えば、育児休業制度というものをつくったから、実際の取得が一方の性に偏っているとしても、そんなことは構わない、それは実際の問題だというようなことは言えないと私は思っております。

 ですから、これと同様に、別に男性の氏を名乗ることを強制しているわけじゃないんだから法的に問題がないというのは、先ほどの育児休業制度と同じで、実際問題をやはり軽視していて、余りよくないと私は考えております。法的に問題はないとしても、男女共同参画という点からは妥当ではないと考えるんですけれども、谷垣大臣、いかがお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 この問題に関して、法務大臣としての立場は、世論調査だけで事を決するわけではありませんが、極めて国民の世論はまだ割れていると思います。したがいまして、これは、先ほど、検討していると言って、していないとおっしゃったんですが、この世論が割れているところを無理に押し切ってうまくいくというものではないだろうと考えております。

 そこで、実は私、個人的なことを申し上げて恐縮ですが、初めての方にお会いしたとき、名刺を受け取って名字を伺うと、氏を伺うと、珍しい名字だと、高橋さんという御名字だとどこへ行ってもいらっしゃるから、高橋さんに向かって、あなたはどこの高橋さんですかとは伺いませんが、これを見ただけで、ははあ、熊本の方だなとか、あるいはこれは信州のどこの方だなとかわかる方がありますね。伺うと、いやいや、自分はもう父の代にそこを離れて出てきましたけれども、おっしゃるとおり、祖父はここの人間でしたとか。

 つまり、何を申し上げたいかというと、確かに、結婚すると、今の制度のもとでは、夫婦の氏はどっちかの氏にするわけですね。そもそも氏って一体何なんだろう、これは私、自問自答をずっとさせていただいております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 今の法務大臣のお話では、世論はまだ割れているというようなお話がありました。先ほど申し上げました若い二十代ぐらいでは、半分ぐらいは別に構わないと言っているんですよね。ということは、世論が、一般の人たちが考えるというのを八〇%、九〇%に上げなければ法改正ができないというのは、やはりちょっとおかしいんじゃないかと思うんですね。割れているからできない、それも半分ぐらい若い世代の人たちがいいとしているのにできないというのは、私としてはちょっと納得しかねるところがあります。

 それで、今、最後の、自分の名字で出身がわかるというお話、それは確かにおもしろく拝聴させていただきました。ただ、それは、氏がずっと、そんなに長くはないと思いますけれども、あるのをわかっていても、それじゃ、女性側の出身ということは消してしまっても、選択しなかった一方の性の出身はどうするんだというような、私としては素朴な疑問がございます。

 私は、思うのは、別に、別姓を認めない人、同姓にしたいという人はしていればいいのであって、別姓にしたいという人の気持ちまで踏みにじるというか、それを認めない制度というのは、やはり多様性の観点から、社会の許容性という観点から、私自身は余りよくないんじゃないかと実は思っております。

 最近の論点では、旧姓使用を認めるところが多くなりましたので、選択的夫婦別姓制度にする必要性がないというふうなことも言われているようです。以前私のところにいました政策秘書の方も通称使用でしたので、やはり通称使用されている方というのは多いんだなというようなことは私も実感させていただいております。

 では、現在、公官庁や民間などでどのくらい通称使用がなされているのですか。御存じでしたら教えていただきたいと思っております。

深山政府参考人 まず官公庁についてですけれども、平成十三年七月十一日に各省庁人事担当課長会議申合せというのができておりまして、職員が婚姻等によって戸籍上の氏を改めた後も、その職員からの申し出があった場合には、一定の文書等については引き続き婚姻前の戸籍上の氏、旧姓を記載することを認めるということにされておりまして、現在数字的にどうこうというのはなかなか言いにくい問題ですけれども、このような取り扱いは法務省も含めて広く官公庁で浸透しているものと承知しております。

 また、民間企業における旧姓使用の現状については、法務省としてその全体像を把握しているわけではないんですけれども、法務省が制度を所管している司法書士それから土地家屋調査士につきましては、司法書士名簿や調査士名簿に旧姓を職名として併記することができるというルールになっておりまして、旧姓を職名として使用することが可能となっております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 公官庁の制度として一定程度認められているというのは、現実的な対応をされていらっしゃるんだなというふうに私は理解しているんですけれども、実は、そうなっているということは、やはり必要性があるというような裏返しでもあるんじゃないかと私自身は思っております。

 私が想像しますに、通称使用が広く認められるとしても、困る場合というのは結構あるんじゃないかと想像しております。例えば、住民票の記載、それとか健康保険証の名前、銀行の預金口座の名前などは、旧姓の使用が認められていないんじゃないかと考えております。

 通常、例えば私なら高橋さんと呼ばれているのに、病院の窓口では別の名前を呼ばれたりした場合、周りの人もあれっと思うでしょうし、それに対して一々説明しなければいけないというのはすごくストレスだと私は考えております。

 とするならば、旧姓の使用が認められることが多いとしても、実際上の不都合性というのはかなりあるかと考えております。安倍総理も最近すごくよく、女性の活用、女性の活用というふうにおっしゃっているんですけれども、現実的には、別姓にしたい女性だけ不利益をこうむる可能性が高い制度というのは、制度としてはちょっと破綻しかけているんじゃないかと私は考えております。

 別姓を認めると家族のきずなが壊れてしまうからいけないんだと言う方もすごく多いと思われるんですね。ただ、別姓の導入を希望する人というのは、先ほども申し上げましたが、全て別姓にしろと言っているわけではございませんで、別姓にしたい人はしたらいいということですので、その点、多様性を認める寛大さというものが社会に必要なんじゃないかと私は思っております。さきに申し上げましたけれども、若い方の夫婦別姓にしても構わないと考える人が半数近くいるという現実を、ぜひきちんと受けとめていただきたいと私は思っております。

 次に、私は資格制度についてお尋ねしたいと思っております。

 近年、資格を取って起業する方たちというのがとても多くなっております。会社の歯車の一つとして働くよりは、まずは一匹オオカミでも構わないので、自分の信念を持って社会のために尽くしていこうとして、資格を取って起業されたりする方というのはすごくいいことじゃないかなと思っております。そして、近年、若者たちが就職できない場合、資格を取って最初から起業してしまおうという人たちも多くいると伺っておりますので、資格制度というものは、やはり社会にとって一定の、すごく役割が大きいんじゃないかというふうに思っております。

 ただ、専門性を有している方を輩出するのはよいことだと思うんですけれども、逆に、資格が多過ぎて、ちょっとわけがわからなくなっている面というのも実は否定できないんじゃないかと私は思っております。

 そこで、今回は、資格の中でも士業と呼ばれているものについて御質問をいたします。

 士業といたしましては、弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、土地家屋調査士、弁理士などを通常思い出す方が多いと考えるんですけれども、お配りしました紙には、便宜上の宅地建物取引主任者もちょっと加えまして、一覧にしたものをお配りさせていただきました。

 これを見ていただけるとわかるんですけれども、専門家ならともかく、一般の人には、その士業が実際には何をするのか、ちょっとわからないというような現実があるんじゃないかと思っております。よく言われるのが、司法書士さんと行政書士さんの違いをすぐに言える人というのはかなりの専門家じゃないかと思っております。

 この表を見ていただけるとわかるんですけれども、同じ士業でも、所管する官庁は実はばらばらなんですね。もちろん、士業といっても職務内容はさまざま、いろいろですので、所管官庁が分かれているというのは当然だとも言えると思うんですけれども、この表を見ていただければわかるんですけれども、先ほど述べました、具体的な違いがわかりにくいと言われる司法書士さんは法務省、行政書士さんは総務省となっており、所管が違うことになっております。

 ちょっとおきまして、この表には、横の方に、日本の資格に対応するアメリカの資格も一覧として載せさせていただきました。これはなぜかといいますと、近年、資格につきましては、海外からの参入をどう認めていくかということが大きな問題になっております。ここにはアメリカを載せたんですけれども、日本とアメリカの資格を比べただけでもかなり違いますし、同じ弁護士でも、人数も全く異なります。

 ですから、私は、特にTPPに入ったらどうなるのか、日本の有資格者、資格を持っている人たちが、皆さんちょっと戦々恐々としているんじゃないかなというようなイメージがございます。

 そこで、まず、現時点で判明しているTPPの交渉におきまして、資格の問題について、お答えできる範囲で構いませんので教えていただければと思っております。

澁谷政府参考人 TPPの御質問にお答え申し上げます。

 TPPの交渉の中で、広い意味での市場アクセスという分野がございます。物品の関税撤廃交渉だけではなくて、投資やサービスの自由化というのは大きな交渉分野となっております。

 ただ、この問題は、主として、途上国に見られるような、外国からの投資とかサービスについて、国内のものより厳しく規制をする、そういう内外差別的な取り扱いをしているものに対して、それを改めるように求めることが主たる論点となっておりまして、我が国の制度はもう全て内外無差別が基本でございますので、そういう意味で、我が国の制度を特定の国にとって有利なように変更してほしいといったような形で責められているわけではないわけでございます。

 交渉の状況をダイレクトに説明することは難しいのですが、我が国がTPPの交渉に正式に参加する前に、事前の取材で得た情報をもとに、「個別の資格・免許を相互承認することについての議論はない。」ということをホームページにアップしておりましたが、この記述を現在でも削除しておらないことをもって、御懸念のような交渉状況じゃないことを御理解いただければと思います。

高橋(み)委員 ありがとうございます。それでは、今、日本で資格を持っている人たちが安心していられるのじゃないかと伺ったと理解しております。

 ちょっと論点は変わるかもしれないんですけれども、資格というのは、やはり、求められている勉強をすることによってその領域の専門家としての知識を持って、国民の皆様の負託に応えるというものだと私は思っているんですが、実は、その専門性があるだろうかというところに私は問題があるんじゃないかと思っているところがございます。

 というのは、ある資格を取りますと別の資格を有することができるというような法律のたてつけというか規定になっているんですね。

 例えば、公認会計士さんの資格のところを見ていただきたいんですけれども、この資格を有すると、税理士さんと行政書士さんの資格を有することができるんですね。もちろん、当然、公認会計士さんの資格というのは難しい資格だと存じ上げておりますので、他の資格を取得しても構わないと思われる方も多いかもしれないんですけれども、実は、公認会計士さんの資格を取ったとしても、税理士や行政書士の資格で求められているような法令の知識が担保できていない可能性が高いと私は思いました。

 試験科目を見ていただければわかるんですけれども、公認会計士の資格試験の中では、行政書士試験で求められている憲法とか行政法という科目が全くないんですね。民法も選択科目であって、勉強しなくてもオーケー、そんなことはないと思いますけれども、そのようになっています。公認会計士の試験の中には、論文試験としましては租税法はありますけれども、税理士試験で要求されるような実際上必要な細かい法令というものを問うような試験とはなっておりません。この表には記載はないんですけれども、税理士試験では、憲法、民法、行政法の科目がないのに行政書士となることもできるというふうになっております。

 ついでに、先ほど階先生が司法試験のことを述べられていたんですけれども、司法試験の資格を取って弁護士になりますと税理士にもなれることになっています。失礼ながら、司法試験を勉強された方がどれだけ税法の知識があるのかなと考えますと、それは残念ながらちょっとないんじゃないかな、司法試験を通った弁護士の人は、法律の専門家であって税法の専門家ではないんだろうなというのが私の考え方で、私のイメージであります。

 ですから、このように、試験での範囲が全く異なるのにほかの資格を登録できるというのは、少し資格制度としての信用性にもとるんじゃないかというようなイメージを私は持っているんですけれども、その点どう考えるか、お尋ねしたいと思います。

山崎政府参考人 御指摘のように、行政書士法におきましては、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士となる資格を有する者は自動的に行政書士となる資格を有するというふうに決まっております。これは、行政書士の業務が、官公署に提出する書類や、権利義務または事実証明に関する書類を作成することを業とするということから、これらの資格を有する者の業務内容、それから業務運営の実態、試験の程度等を勘案しまして、行政書士業務を行うに足る能力を有すると判断されたようでございまして、昭和二十六年の議員立法による制定時に定められたものというふうに承知しております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 しかしながら、全く勉強をしていない法律の科目があるのにほかの資格が取れるというのはやはり根本的にちょっとおかしい、もう変えるべき時期に来ているんじゃないかと私は考えております。

 次にお尋ねしたいことは、資格制度をつくったのはいいんですけれども、実は中途半端なものになっている場合というのもやはり多いのではないかと私は考えております。せっかく資格制度をつくったならば、きちんと効果的に効力を発揮できるようなものにした方が国民の皆様のためになるんじゃないかと考えております。

 例えば、行政書士の資格なんですけれども、行政書士には行政手続における代理権がないんですよね。行政機関に提出する許認可等の申請書類の作成、提出を行い、申請内容を熟知する行政書士が、依頼者の意向に基づき、それらに係る行政不服審査申し立てを含めて一貫して取り扱えるようになれば、行政不服審査制度の活用が促進され、国民の利便性の向上も図られるんじゃないかなと思っております。さらに、行政書士の試験には行政不服審査法が必須となっておりますので、能力の担保にはなると考えております。

 実は、この論点、麻生内閣のとき、平成二十年三月二十五日に閣議決定されました規制改革会議の一つの論点として取り上げられておるところでございます。今、安倍内閣は規制改革にも熱心だと思われますので、ぜひ前向きな答弁をいただけるのではないかと思うんですけれども、行政書士の専門性を活用させるために、行政書士に行政不服審査法の申し立て代理権を付与したらどうかと考えるんですが、これはいかが考えますか、お答えいただきたいと思っております。

山崎政府参考人 行政書士は、他人の依頼を受けて報酬を得て、官公署に提出する書類を作成すること、それから当該書類を提出する手続について代理する、ここまでは認められているわけでございますが、御指摘のように、不服申し立て手続の代理というのは弁護士法第七十二条により認められていないということでございます。

 この件につきましては、日本行政書士会連合会が、国民の利便性向上とか簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済の観点から、行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する不服申し立て手続について代理することができるよう、行政書士法の改正を要望されているところでございます。

 現在、各党の行政書士に係る議員連盟におきまして、議員立法による法改正の検討が進められているものと承知しておりまして、総務省としても、各党における検討の際に、求められる情報の提供に努めているという現状でございます。

高橋(み)委員 今後検討するんじゃなくて、情報を収集するのに努めているということは、残念ながら、余り前向きではないのかとちょっと理解はしたんですけれども。

 先ほども申し上げましたように、ぜひきちんと、この資格があればこの知識があって、国民の皆さんの、専門家としての信頼に応えられるような資格にしていくということがすごく大事だと私は思っております。ですから、ある資格を、名称、肩書をつくっているのはいいけれども、実際はその法律の勉強をしたことがないというようなこともよくないと思いますし、今の行政書士にも、例えば代理権を付与させて、きちんと一括して、トータルとして代理をさせた方が国民の皆さんのためにはなるんじゃないかと私は思っております。

 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、二十一年三月三十一日に閣議決定されました規制改革会議で決まった規制改革のための三カ年計画の精神というのは現内閣でもちゃんと受け継がれていらっしゃっておって、そこで取り上げられた資格に関しても、きちんと整理し、見直すべきところは見直して、整合性がある制度にしておくべきと、きっと現内閣の方も考えていらっしゃるんじゃないかと私は考えているのですが、いかがでしょうか。

福岡大臣政務官 お答えを申し上げます。

 先ほど委員御指摘いただきましたように、それぞれの資格制度についてはそれぞれの所管省庁がございます。そこの資格制度について何らかの見直しが必要な場合につきましては、まずは当該制度を所管する府省において検討が行われるべきものというふうに考えております。

 また、先ほど委員御指摘いただきましたように、規制改革推進のための三カ年計画、こういったものを定めさせていただいていますが、その中においても、また、これまでにおいても、資格制度一般の見直しについての要望については今のところ寄せられていないというふうに承知をしておりまして、今後、仮にそういった声が高まれば、必要な対応をしてまいりたいというふうに考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 先ほどお配りした紙にも書いてあるんですけれども、所管官庁というのがすごくばらばらなんですね。いろいろあるんですよね。そうすると、所管の官庁さんだけに任せていて私はそれ以外を知らないというと、実は、そういう整理なり何も進まないんじゃないかと私は危惧しております。ですから、もう少し統一的な視点というのか総合的な視点で、資格制度の見直し、よい方向へ行くようにぜひやっていただければと思っております。

 次に、刑務所内の処遇についてということを通告しているんですけれども、ちょっと時間がなくなってしまいましたので、時間がある範囲で述べたいと思っております。

 先日の法務委員会でも、刑務所の処遇について意見がいろいろ出されておりました。そこで、それについて、私もいろいろ思うことがありますので調べさせていただいたんですけれども、平成二十三年度の犯罪白書によりますと、一般の犯罪者における犯行時の無職者率は四一・二%と言われております。とすると、刑務所から出て、更生して社会復帰するためには、何といっても職を得ることが大事だと私は理解しております。そうすると、刑務所内での刑務作業の充実が大事だということは誰の目にも明らかだと思っております。

 ただ、私は、いろいろな機会に、刑務所内で刑務作業によってつくられた木工品などを見ることがあります。丁寧に時間をかけてつくられているものであって、丈夫であって、頑丈であって、欲しいなと思うんですけれども、実際に今の社会でそれが生産ラインに乗って売れるのかというのはやはり難しいと考えております。そして、そもそも、今国内で木工製品を例えば手づくりしているという企業というもの自体が減少しているので、たとえ木工製品をつくる技術を得たとしても、それを社会に復帰したときに生かすということは残念ながら私は難しいと考えています。

 そこで、まず、刑務作業は誰がどのように決めて、どのように実行されているかというのを、簡単でいいので教えてください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 刑事施設に受刑者が収容されますと、最初に、その身体状況とか生育歴とか犯罪歴とかとともに、職業歴とか職業の適性とか志向、将来の生活設計等について調査を行います。それによりまして、必要に応じて本人の希望も当然参酌しますけれども、受刑者ごとに、施設内でどういった処遇をするのか、その目標とか基本的な内容とかその方法について決めます。それは処遇要領というふうに申しておりますけれども、これに基づきまして、どういった作業を、どの受刑者に何をさせるかといったことを決めるわけでございます。

 ただ、今おっしゃいましたように、なかなか、刑務作業と申しましても、外部からの受注もないものですから、いろいろなものができるわけでございます。ただ、できる限り本人の希望を聞いて、入所前の職業のことも考えまして、本人にとって有用な作業を向けたいというふうなことで決めております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 本当に質問の頭だけしか言えなかったんですけれども、私は、刑務作業というものは、刑務所から出た後の社会で職を得るときに、それによって何らかの職を得ることができるようなものにするために、きちんと改正をしていかなければいけない、それには民間の人たちも協力してもらうというようなスタンスで、次に機会がありましたら質問もさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 きょうはありがとうございました。

江崎委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 本日は、こちらの法務委員会におきましてお時間をいただく、そして質問をさせていただくという機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、近時話題になっております幾つかの問題について質問をさせていただきます。

 まずは、先日の椎名毅委員の司法修習生の給費制復活の議論というのもありましたけれども、法曹養成制度シリーズということで、法曹養成制度の問題点について若干お伺いできればというふうに考えております。本日、階委員の質問もあったところでございますので、できる限りかぶらないようにとは思いますけれども、その点、どこまでうまくいくかというふうな不安もございます。

 まず、質問通告にはなかったところではありますけれども、ちょっと一点お伺いしたいことがございます。

 現在、平成二十五年七月十六日付の法曹養成制度関係閣僚会議決定を受けて、法曹養成制度改革顧問会議が開かれています。先ほど階委員からもありましたけれども、きのうまでに三回の議論が行われているというふうに理解をしております。

 きのうの会議の内容というのは、まだ現時点でホームページでは公開されておりませんけれども、ここまでの議論でおよそどのような議論が行われてきたのかということについて、可能な範囲でかいつまんでお答えいただきたいと思います。お願いします。

谷垣国務大臣 法科大学院制度については、いろいろな論点がございます。

 一つは、先ほど階委員の御議論にもございましたが、一体、どの程度の人数を法律家として、法曹として養成していくかという問題、それが同時に法科大学院の定数の問題にも響いてまいります。

 そしてまた、法科大学院に、中に相当ばらつきがございまして、高い合格率を出せるところもあれば、必ずしもそうでないところもある。それから、これはかなり地方によってもばらつきがございます。そういったものをどのようにしていくか。

 それから、既修、未修といった問題がございますので、そういったところをどうきちっと法科大学院の中で教育を整えていくべきかという問題。

 さらには、先ほど来の階委員の御議論でございますが、予備試験の合格率がどこのロースクールよりも高いというような現象もできていて、そういうこともあって、法科大学院に人が集まるのかといったような問題があると存じます。

 そういうような問題につきまして、今整理をしていただいているということでございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 本当に、今大臣にもおっしゃっていただきましたけれども、さまざまな観点から議論をされているところだというふうに理解をしておりますし、法曹養成制度改革顧問会議、この第三回目がきのう行われていたと思いますけれども、一回目の議論、二回目の議論、これは会議録も公開をされているところではございます。

 この会議録の中身を見ると、各出席されている皆様のそれぞれ苦悩というか、現状の問題点というものは深く認識はしているというものの、では現状、これといって、こうすれば根本的に解決するんだというような画期的な打開策というのはなかなか見出せていないというような中での悩みというのが伝わってくるような感じがしております。

 ただし、先ほど述べました法曹養成制度関係閣僚会議決定、ことしの七月十六日のものですけれども、その中で、「法科大学院を中核とする「プロセス」としての法曹養成制度を維持しつつ、質・量ともに豊かな法曹を養成していく」というようなことが決まっておりますけれども、そのこと自体が実はなかなか結論を見出しにくくしている部分もあるのではないかというふうに考えているところでございます。

 もちろん、現在、法科大学院自体を残した上での改革というものを議論されている中で、時代錯誤に聞こえてしまう部分というのはあるかもしれません。しかしながら、法科大学院自体の問題というのも常に念頭に置いていただきながら、必要に応じてゼロベースで考えていくということも必要ではないかというふうに私としては考える次第です。

 そこで、一般に、法科大学院制度を導入したということで、さまざまな弊害ということが言われていると思います。一定期間、学費負担を負わせるという意味で、経済的な負担というのが各学生に重くなってしまっているという部分。大学卒業後も、また今度は大学院で勉強しなければいけない、そしてさらには修習というものも残っているという意味で、社会に進出することが遅くなってしまっているという部分。そしてまた、この二点に限らないということではありますし、複合的な要因だと思われますけれども、法曹志願者が現在激減してしまっているという部分もあります。

 個人的な話ですけれども、私が司法試験を受けたときには、合格者がちょうど千名で、受験者数が五万人を超えたというような時代でございました。そのころに比べると、本当に少なくなってしまったなというような寂しい思いがしているわけでございます。

 そういった意味で、今申し上げた現状を踏まえまして、この法科大学院制度のあり方自体に踏み込む改善というものは何か、その点についてお答えいただければと思います。

谷垣国務大臣 先ほど申しましたように、法科大学院、大変ばらつきといいますか、どれだけ合格できるかということもばらつきがございます。ばらつきが多いことと、もう一つは、やはり定員の数が合格者の数に比べてかなり多いですから、なかなか合格率が上がらないという面も出てくるだろうと思います。

 そうしますと、今文科省の方でいろいろ御議論いただき、法曹養成の方でも議論しておりますのは、法科大学院に対していろいろ国としても補助をしております。文科省の方も予算をつけるというようなことをされておりますし、あるいは実務家を派遣するというようなこともやっております。そういったものを、選択と集中という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、やはり、できるだけ成果の上がるところにそういうものを投入していこうというようなことを今文科省でも議論をしていただいて、法科大学院がプロセスとしての教育というものをきちっと行えるように持っていくというような一つの方向であろうと思います。

三谷委員 ありがとうございます。

 当初の法科大学院の理想というか目的というのは、法科大学院を履修した、卒業された方は、七、八割、司法試験に受かっていくんだというような話というのがあったかというふうに思っております。そういった最初の話からすると、現状の合格率というのは極めて低くなってしまっている。それは、定員だけの問題ではないというふうに思います。

 いわゆる上位校と言われているものから下位校、今まさに大臣がおっしゃられたばらつきの部分だと思いますけれども、例えば、下位校と言われている、卒業者は出るんだけれども合格者がなかなか出ないというものに関しては、卒業の認定が甘過ぎるというような考えもあろうかと思うんですけれども、その点について、大臣、お考えはいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 先ほどの、到達度試験をどうするかということを検討しているわけですけれども、特に言われておりますのは、法学未修者の法学のマスター度合いというのが弱いじゃないかということで、一年次から二年次に行くようなときに試験を活用して、ロースクールの教育を改善していくことができないかというようなことを今考えているわけでございます。

三谷委員 いわゆる未修者の学習がなかなか上がらないという部分もあろうとは思うんですね。それはもちろん、既修の方々が法学部で勉強をして、さらには法科大学院の勉強をするということと比べると、わずか一年で本当に追いつくのかどうか。特に、学生のころ、十八、十九から勉強を始める場合と、二十二、三から勉強を始める場合とでは、やはり物事の吸収度合いというのも、これは生物学的にも異なってくるという部分もあろうかと思うんですね。それが本当に、一年というだけの違いで追いつくという制度設計自体がそもそも正しかったのかどうかというのもあると思うんですね。

 そこで、先ほど大臣もおっしゃっておりました、到達度というものを試験によってチェックしていく。ある意味、それをどういうふうに位置づけていくのかというのはこれからの議論になろうかと思いますけれども、もともとの、七割、八割、司法試験に受かっていくんだというようなそういう制度を、もちろん、定員が、三千名と言っていたころからすれば下がっていますから、そのことからすると、三分の二ということを考えると、合格率が例えば五〇%ということを前提にしたとしても、では、五〇%受からせるぐらいの力がないと卒業させませんというようなことを仮にするとすると、ロースクールには入学したけれども、なかなか卒業できない。そういう意味では、ロースクールを卒業するために、そこで人が滞留してしまうということになるでしょうし、法曹資格を取るために時間がかかるというこの現状はなかなか変わらないんだろうというふうに思うんですね。

 その意味で、そもそもロースクールというものを導入したときには、そういう有為な人材が多数の年月をかけてそこで苦しんでいるというところを何とかしたいということはあったんだと思うんですけれども、そこの根本的な解決というのは、やはりロースクール制度を入れてもなかなか解決ができていない。

 私自身は、定員をふやしていくということ自体には賛成なんです。定員をふやすということで、私自身も、受験をしていたころに、自分の場合は本当にたまたま受かったというふうに思っておりますけれども、同じぐらい力を持っている先輩方、そして自分よりはるかにそういう力を持っている先輩方が、そのときに出てきた問題の、そのときの相性によって結果が変わってきているというような姿を見ておりますので、そういう意味では、力がある方は合格できるということを実現するための定数をふやしていく。

 そして、定数をふやしていく中で、ではその受け皿はどうするんだという意味では、まさに法曹の多様な活躍の場を準備していく、各法曹資格者が努力していくということなんだろうと思いますけれども、少なくとも、なる時点での負担というものが今までよりもはるかに重くなってしまっているということについて、これは何とかしなければいけないという意味では、ゼロベースで考えていくということを改めて考えていただきたいといいますか、大臣に質問したいのは、現状において、あえて法科大学院を残すことのメリットというのがどこにあるかということをお答えいただければと思います。

谷垣国務大臣 これは、論者によって随分違うんだろうと思います。

 私は、この法曹養成制度の改革がありましたときに、幾つかの問題点があったと思うんです。

 それは、まず、あのころは、議論が起こった当時は、合格者は大体五百人ですね。五百人というようなことではとても需要に応えられないではないか、参入障壁が起こって、裁判なんかも時間がかかるじゃないかというような議論が盛んでございました。だから、もう少し法律家をふやす必要があるという議論があった。これは、十分理由のあった議論だと思います。

 そこで、そのところは、五百人ですと、要するに、こういう言葉を使うといけませんが、私自身がそうだったからあえて使いますが、留年を重ねてなかなか就職もできない、司法試験に受かれば九回の裏で逆転満塁ホーマーだというような気分もございまして、大量に司法試験浪人がいて、就職もできず、司法試験浪人を続けていることの心細さなどを私は非常に感じておりました。ですから、プロセスで選ぶということは、当時の私には非常に魅力的に映ったことも事実でございます。

 しかし、何が問題であったかといえば、ロースクール、アメリカでは法学部のある大学なんというのはございません、学部を終えたらロースクールに入って、法曹としての道を歩みます。それを一種学んだわけでございますが、日本には法学部という明治以来の長い伝統を持った大学がたくさんございまして、それは必ずしも実務法律家をつくる教育をしていたわけではない。いわゆる文科系の教育基盤を幅広く提供するという、その意味で貴重な役割、重要な役割を果たしてきたと思いますが、プロの法律家養成としては必ずしも十分なものではなかったということがあると思います。そういう法学部というものが相当な勢力を持っている上でロースクールを、接ぎ木したと言うと言葉は悪うございますが、そういうことがあったと思います。

 それで、今までの法学部を持っている大学は、自分のところのプレスティージを維持するためにはロースクールを持たねばならないというような衝動もあったと思いますし、参入障壁をつくることに対する先ほど申し上げたような反発もあって、自由にやれと言ったから余りにもたくさんのロースクールができてしまったというのが現状だろうと思います。

 そのことが合格率も低くし、それから、なかなか合格しない、あそこへ行っても相当人生を空費してしまうかもしれないというようなことが起こってきている。それに対してどうしていくかということになりますと、先ほど来、少し本当に成果が上がっているところにいろいろな支援も集中していこうというような動きが今あるんだろうと思います。

 そういう問題と、それから、先ほど委員が指摘された問題だと思いますが、学部を終えて、そしてロースクールへ行って、そして司法試験に受かったら司法研修所へ行くということになりますと、どんなスピードで通過しても、かなりの年になっている。そのときに、では法律家以外の別の企業に就職しようといっても、採るのはもうちょっと若い人だよなというようなことが現実にはあったと思います。

 それから、私の感じているもう一つの問題点を挙げますと、研修所の機能をある部分ロースクールで代替するという発想がございました。

 私は、合格者が五百人程度の司法研修所を出た者ですが、非常に手厚い教育をしていただいたと思います。非常に優秀な実務家が集まって、相当厳しい、ハードな訓練を課していただいたのはありがたいことだったなと思っております。しかし、それだけの人間を、優秀な実務家を教育に割くということは、実務にとっては相当な負担だったと思います。

 では、その機能をロースクールに代替させるといって、どこにそれだけの優秀な実務家が教育に向かっていけるのかという問題が私はあったと思っております。それで、しかも、参入制限をするな、それから、自分のところの法学部のプレスティージにはロースクールも必要だとなると、たくさんのロースクールが生まれて、そこに質の高い実務教育をしていく教官をどれだけ配置できるかという点、こういう点も非常な問題があったと私は思います。

 今、そういったものをどうやって是正して、より効率のいい、より成果の上がるものにしていくかということで、ずっとこのところ議論をし、この法務委員会でも御議論をいただき、また閣僚会議も開いてやっているというところでございます。

 委員の御質問に直接答えないで私の思いを言ってしまいましたが、そういう中で、メリットと申しますと、先ほど階委員にも御答弁申し上げたことはその一つだと思います。従前の日本の法学教育というのは、必ずしも実務をどれだけ意識していたかということが法学部教育にはあったと思います。そのことが、日本の法学教育というものを中身の薄いものにしていた面も私は否めないだろうと思っております。

 法科大学院を設けることによって、日本の法学教育機関の中に実務の意識というものが相当定着してきたというのは進歩だったというふうに私は思っておりまして、ここはやはり日本の法学が成熟していくためにもぜひ推し進めていきたい、何とかここはその方向を進めていきたいという思いは私にございます。

 いろいろ言い出しまして、どういうところにこの答弁のおしまいを落ちつけたらいいかわからなくなってきましたが、そういうようなことを閣僚会議でも懸命に議論しまして、よい方向、よいボールを出していきたいと思っております。

三谷委員 ありがとうございます。本当に率直な言葉をいただきまして、感謝申し上げます。

 悩み深い受験生の方々も本当に多くおりますので、そういった方々の将来にもつながるような改革を進めていっていただければというふうに思います。

 かなり時間もたっておりますので、ちょっと質問の順番を変えさせていただいて、共同親権について伺いたいというふうに思います。

 共同親権の問題でございますけれども、ことし、ハーグ条約の締結を行いまして、それでその法律もできてというところではございますけれども、このハーグ条約締結後のさまざまな法律の進捗状況、そして施行の状況、そしてこのハーグ条約を締結したことによって海外から日本の見え方が変わったかどうかということも含めてお答えいただければと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたように、ハーグ条約、そしてその実施法は、さきの国会で国会から御承認をいただきまして、今、発効に向けて作業しております。

 具体的には、政省令など条約の実施にかかわる運用の細則を定める作業をしておりまして、例えば、政令につきましては十一月十六日までにパブリックコメントを得る予定でございますし、省令については十一月中旬からパブリックコメントを開始する予定でございます。また、最高裁の方の規則もちょうどきょう官報で告示をされるなど、なるべく早い発効を目指して今手続を進めております。

 各国の評価につきましては、おおむね各国から非常に高い前向きの評価を受けております。全てを御紹介することは多分時間の関係でできないと思いますが、例えば、アメリカは在京米大のプレスリリースで、ルース大使の方から、私は、ハーグ条約を批准し同条約の完全な実施を可能とする法案を可決した国会議員の皆様を称賛したい、米国は日本を歓迎するといったような言葉をいただいておりますし、また、カナダ首脳会談、フランス首脳会談等でも、先方首脳から、よい話であり評価するというような言葉をいただいております。

三谷委員 このハーグ条約締結、そしてこれが形になっていくということによって、これは本当に大きな一歩なんだろうというふうに考えております。

 今まで、日本はいわゆる拉致司法というふうにやゆされることもありましたけれども、子供を奪い合うというような悲しい事態というものが長らく続いていたということを、これはもちろん国際的な子供の連れ去り事案に適用されるものですけれども、国内においても同様な、いわゆる拉致司法みたいなことではなく、しっかりと本当に子供の福祉という観点からの事案の解決というものに進んでいく、その一助となればというふうに考えております。

 その中で、子供の奪い合いというような形になってしまう一つの理由として、共同親権というものが日本において認められていないからではないかというような話もあるところではございます。

 そこで、もう時間も限られているところではございますので、この質問をはしょらせていただきたいというふうに思いますけれども、実は、平成二十三年の民法改正時なんですけれども、附帯決議の中でその話というのが出ております。この附帯決議のうちの七を読ませていただきますけれども、「親権制度については、今日の家族を取り巻く状況や本法施行後の状況等を踏まえ、懲戒権の在り方やその用語、離婚時の親権の決定方法、親権の一部制限の是非、離婚後の共同親権・共同監護の可能性など、多様な家族像を見据えた制度全般にわたる検討を進めていくこと。」というふうにございますけれども、その後、この共同親権についての検討状況はいかがなっておりますでしょうか。

谷垣国務大臣 ハーグ条約関連法案を国会で通していただきまして、共同親権の議論もその中でいろいろございました。

 それで、今法務省としては、外務省を通じて在外公館等にもお願いをして、各国の実情を集めております。そして、ことし中にある方向を出したい、ことし中にそういう資料を集めました上で、共同親権制度を利用している国に赴いて調査を行うということで、今計画をしているところでございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 ちょうど先ほど高橋みほ委員の方からもありましたけれども、検討というのは検討しないということと同義ではないかというふうな批判も一般的にあり得るところではありますので、ぜひともこの共同親権については検討を行うというふうに、この附帯決議にも書いてあるところでございます、それからもう既に二年たっておりますので、ぜひともしっかりと前向きに取り組んでいっていただけたらというふうに思います。この点については引き続きお願いします。

谷垣国務大臣 ちょっと、ことし中というのは言い間違いでございまして、今年度中に調査に行くということでございます。

三谷委員 ことし中でも今年度中でもそれは構いません。ぜひともしっかりと前向きに取り組んでいただければということをお願いさせていただきます。

 残すところ五分になりましたので、またもとの問題に戻らせていただきたいというふうに思うんですけれども、続きまして、いわゆるリベンジポルノというふうに一般に言われておりますけれども、その問題について少しお伺いできればというふうに考えております。

 このリベンジポルノというのは、法的な定義というのはもちろんありませんけれども、一般には、もともと交際関係にあった男女関係というものの中において、交際当時撮影した性的な写真等々を、交際関係が終了後、ある意味嫌がらせ目的でインターネットその他の媒体に公開するというようなことをいいます。インターネットが普及するに伴って、この手の問題というのが多発しているというふうに聞きますし、痛ましい事件の裏にもそういうことが伴っていたというようなことも仄聞するところではございます。

 そこで、伺います。

 こういういわゆるリベンジポルノ、例えば、アメリカのカリフォルニア州では、リベンジポルノを特別に処罰する法律というのが制定されたという例もありますけれども、この問題について、法務省として何らかの法律、立法対策をとるというような予定はございませんでしょうか。

谷垣国務大臣 今のところ、特にリベンジポルノに対して新しい立法をするということを特別に考えているわけではございません。

 その理由としては、リベンジポルノというのは何かという定義は別としまして、想定されるような問題は大体現行法で裁けるのではないか。

 これは、個別具体的なことにもよりますが、例えば、事実の摘示を伴って、かつてつき合っていた人の性的な写真や何かをインターネットに出せば、それは名誉毀損罪というのもまず成立する可能性が極めて大きいですね。それから、十八歳に満たない子供であれば、児童ポルノ禁止法違反というのが考え得るわけです。それから、刑法百七十五条の、今は舌をかむような名前になりましたが、わいせつ物に関する罪、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪等々も成立をする。したがいまして、大体現行で対応できるのではないかと思っております。

 そこで、今言及されましたカリフォルニアの例、あるいは欧米、アメリカ等の立法例を拝見しますと、例えば、そこでつくった罪の法定刑等々は、先ほど私が引きました日本の法律に比べますとかなり低い。法定刑が高いのがいいのか低いのがいいのかは議論があるでしょうが、相当威嚇効果というか抑止効果というか、そういうのも日本の法律体系はあるのではないかと思っております。

 その上で、何が足りないところがあるかという御議論は、これはあるだろうと思いますが、それは、そういう立法ができる程度に立法事実がある程度集まってこないとなかなか難しいのではないかと思っております。

三谷委員 そこの、名誉毀損罪等々で対応できるというのは、参議院の予算委員会の方の答弁も実は読んでおりましたので、それは理解しているつもりではございました。

 実は、刑罰法規というものには、いわゆる一般予防と特別予防、そういうような二つの観点がございまして、実際に起こったことを処罰していくということで、同じようなことをするなよというような、個別の、本人に対する予防効果といいますか特別予防効果というのは、もちろんそれはあるんだろうと思うんですけれども、ここで私が立法的に対策をとると言うことは、そういうことをやっちゃいけないんだということを社会に知らしめていくというような普及啓発効果というのは、やはり拭い去ることができないのかなというふうに考えている次第でございます。

 例えば、以前、映画館の中で映画を盗撮するということをやりまして、それをインターネットに上げるというようなことが続発した、そういうときもございました。そのときには、もちろんこれは著作権法で処罰するということができるんですけれども、あえてこういう映画館、劇場の中で盗撮する行為というものを立法的に解決して、それを啓蒙したということによって、映画館の中で盗撮するという事案は格段に減ったというような実際の例があるわけなんです。

 そういう意味で、このリベンジポルノ、今まさに立法事実がどれぐらい集まっているのかというようなことをおっしゃっておりましたけれども、それが集まったということであれば、ぜひとも前向きに取り組んでいただきたいなというふうに考えておりますので、ぜひともその点を御検討いただければということをお願いさせていただきます。質疑の持ち時間が終了いたしましたので、これで終了させていただきたいと思いますけれども、本当にこういった問題で苦しんでいる方々が数多くいますので、御対処のほどよろしくお願いします。

 質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

江崎委員長 これをもって一般質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

江崎委員長 次に、内閣提出、民法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。谷垣法務大臣。

    ―――――――――――――

 民法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 民法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、民法の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出である子の相続分の二分の一とする部分は憲法違反であるとの最高裁判所決定があったことに鑑み、この部分を削除することにより、嫡出でない子の相続分を嫡出である子の相続分と同等とするものであります。

 なお、この法律案は、公布の日から施行することとしておりますが、この法律案による改正後の民法の規定は、最高裁判所決定があった日の翌日である平成二十五年九月五日以後に開始した相続について適用することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決していただきますようお願いいたします。

江崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十五日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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