衆議院

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第2号 平成26年2月21日(金曜日)

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平成二十六年二月二十一日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大見  正君

      加藤 寛治君    勝沼 栄明君

      門  博文君    神山 佐市君

      黄川田仁志君    小島 敏文君

      古賀  篤君    今野 智博君

      末吉 光徳君    橋本  岳君

      橋本 英教君    鳩山 邦夫君

      平口  洋君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    郡  和子君

      田嶋  要君    横路 孝弘君

      高橋 みほ君    大口 善徳君

      椎名  毅君    鈴木 貴子君

      西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   内閣府副大臣       岡田  広君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   文部科学大臣政務官    上野 通子君

   最高裁判所事務総局刑事局長            今崎 幸彦君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 鈴木 基久君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    齊藤 雄彦君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  萩原 秀紀君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  榊原 一夫君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    寺脇 一峰君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  宮川  晃君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十一日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     橋本 英教君

  門  博文君     勝沼 栄明君

  菅家 一郎君     加藤 寛治君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 寛治君     菅家 一郎君

  勝沼 栄明君     門  博文君

  橋本 英教君     安藤  裕君

    ―――――――――――――

二月十九日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(浅尾慶一郎君紹介)(第八三号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(浅尾慶一郎君紹介)(第八四号)

 児童買春・児童ポルノ禁止法の早期改正に関する請願(山口壯君紹介)(第一四五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官鈴木基久君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長西田博君、法務省保護局長齊藤雄彦君、法務省人権擁護局長萩原秀紀君、法務省入国管理局長榊原一夫君、公安調査庁長官寺脇一峰君及び厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長宮川晃君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局今崎刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。初めに、安藤裕君。

安藤委員 おはようございます。自民党の安藤裕でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、大臣の所信の中で、それからまた総理の所信表明の中でも言及をされていましたけれども、法の支配の確立、またあるいは貫徹というものが必要であるということを言われておりました。きょうは、少しこのことについて考えてみたいと思っております。

 ちょっと突拍子もないことを聞くようですけれども、聖徳太子の十七条憲法というものがあります。日本人なら必ず歴史の教科書、歴史の授業で習うものですけれども、まずお尋ねしたいんですけれども、この十七条憲法というものは、今の日本でも法律として生きているものなんでしょうか。それをまず教えていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 大変難しい御質問でして、通常は、聖徳太子の憲法十七条、今も生きている実定法というふうには考えられていないと思います。今の実定法を集めました大変大きな法令集等にも載っているわけではございません。

 先生のそういうお尋ねがありましたものですから、実際、実定法は、現在の国会であったり、あるいは旧憲法下の帝国議会で制定されたもの、それで今も改廃されていないものはもちろん実定法でございますけれども、帝国議会ができる前の太政官法規等も、例えば大日本帝国憲法に矛盾しない限りは実効力を持つというふうに言われてまいりました。

 どこまでそれがさかのぼるのかということは、実は明確な定義は、私ちょっと調べたんですが、よくわかりませんでした。ただ、一般には、江戸時代に行われていたような法案は実定法としては考えられていないのではないかというふうに思いますし、まして、あれは七世紀でしょうか、七世紀に制定された十七条の憲法がいろいろな意味で極めて大事な文書であることはこれは間違いございませんけれども、実定法とは考えられていないのではないかというふうに思います。

安藤委員 今本当に大変突拍子もないことを調べていただきまして、ありがとうございます。

 この十七条憲法は、もちろん今の法律とは概念が違うとか、またあるいは訓示規定のようなものというふうに言われております。例えば、和をもってとうとしとなす、逆らうことなきを旨とせよとか、またあるいは、信はこれ義のもとなりというようなことが言われていますけれども、これはいわば日本人のDNAに組み込まれていると思われるほど、日本の社会に浸透していると思います。

 今その有効性についてはちょっとよくわからないというお答えでしたけれども、これが有効であろうとなかろうと、日本人の心にしっかりと根差しているのがこの十七条憲法だろうと思います。これは七世紀なりに制定されたものが日本の社会に浸透していて、そういった意味では、法の支配は貫徹をしているということもある意味言えると思うんですね。

 しかし、言いかえてみると、ここで言う法の支配というのは、決して日本人がこの十七条の憲法を意識して法律として守っているということではなくて、共通した認識として、常識として、またあるいは共通の道徳として当然守らなくてはならないものとした意識を共有しているものなんだろうと思います。

 そして、常識というか、法律にはなっていないけれども共通の価値観を多くの人が共有している社会、これが日本という国であって、これが共有されていることが、安心で日本人にとって住みやすい社会の基盤、ごくごく当たり前になっていてほとんど重要視されないし意識もされないけれども、本当に大切な社会基盤になっているのではないかと思うんです。

 平成十五年に参議院の憲法調査会で参考人として意見の陳述をされた平松さんという関西学院大学法学部の教授が、この憲法調査会でこういうことをおっしゃっているんですね。「日本において、憲法よりも高次の、憲法の運用を支配している基本価値とは何か。」「日本におきましてそのような価値が存在するかどうかを住民の意識に基づいて考えますと、その手掛かりとなりますのが各市において制定されております市民憲章であり、その市民憲章において最も多く採用されている文句が、聖徳太子が制定した十七条憲法にある和であります。」と。

 つまり、憲法よりも大切な価値観というものが存在をして、その中で最も日本人になじんでいるのが十七条憲法、その中でも和というものではないかということを述べられているわけです。このことについて、ちょっと取りとめのない質問で恐縮ですけれども、大臣、どのようにお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 結局、今の御議論は、法規範というものがどこまで適用できるのか、通用できるのかということと関連してくると思います。

 今おっしゃった十七条の憲法を初めとする、いろいろ、あるいは自治体なんかのおつくりになったものの背景にある和というようなものは、長い間に日本人の一つの秩序観であったり道徳観であったり、そういうものを形づくっているんだと思うんですね。だから、広い意味でいうと、そういうくくり方は正確ではないかもしれませんが、一種の道徳規範であると言ってもいいと思います。

 その道徳規範と法規範と対比してみた場合に、法規範も、現行法令もいろいろなものがありますから、余り単純にくくってはいけないんですが、要するに、法規範と道徳規範と比べたときの法規範の特徴は、法規範が破壊されるようなものは最終的には実力でもって貫徹していくという、刑罰でもそうですし、民事においても争いが裁判で決定をされればそれは実力でもって強制執行されたりして、実力でもって担保されていくという性格を持っている。しかし他方、道徳は、道徳規範というのは必ずしもそういうものを背景に持たない。

 そういたしますと、結局、そういう最後は実力をもって確保する法規範というものは、国民の道徳規範と極めてかけ離れたものであったら、幾ら力でもって最後は貫徹していくんだといっても、長い間にはやはり支持されない。そういう意味では、法規範の実効性というものも破綻をしてくるということがあるのじゃないかと思います。

 それから、道徳規範の方は、しかし、今のこの近代法のそれぞれ個人の人権を認めたり個人の自由を認めたりする体系の中では、やはりそれに強制力を加えるのは何らかの根拠が必要である、単に道徳であるからというだけで強制力を使うわけにはいかない。

 道徳と法の峻別ということもそういう意味では言われるわけですが、大きな意味でいえば、法規範は、最後にそういう国民の持っている秩序感覚であったり道徳規範に裏打ちをされなければ、先ほど私も申し上げ、先生も法の支配ということをおっしゃったわけですけれども、法の支配も実効性を持ち得ないということになるのではないかな、御質問を聞きながらそう考えました。

安藤委員 ありがとうございます。

 今大臣がおっしゃったとおり、日本人が持っている道徳心と法律とが乖離をしてしまったら、これはもちろん法としてほとんど守られなくなるというか本当に実効性を持たなくなるということはよく思うんですね。

 それで、この法の支配の確立という言葉自体、私、実はちょっと違和感を感じています。

 これは何でかというと、この法の支配の確立がまず第一に来なくてはいけない社会というのはもちろんあると思うんですね。それは例えば共通の価値観がなかなか見出しにくい国。例えば、多民族国家であるとか移民国家であるとか、またあるいは国際社会など、こういったところはやはり共通の価値観というものがなかなか見出しにくいので、法律というものがしっかりないとなかなかまとまっていかないと思うんです。

 日本において、もちろん法律が必要ないということはないですけれども、やはり日本人が一番大事にしなきゃいけないのは先人たちが培ってくれた価値観、道徳心とか、そういったものを本当に重んじなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。

 日本は、今でも世界で一番治安のいい国というふうに言われます。また、あの東北の震災のときにも略奪がほとんど起きず、そしてまたあの非常時においても、物資の配給などのときにはきちんと列をつくって、そういった秩序をつくることができる国民性である。これが、目に見えない、日本人の本当に大切にしなきゃいけない大きな財産なのではないかというふうに思います。

 今憲法に規定されている自由とか、また平等とか、基本的人権の尊重などが、この価値観がすごく日本社会に浸透してきています。でも、よく言われることですけれども、規律ない自由とか、行き過ぎた平等とか、過剰なまでの権利意識というものが日本全体に浸透していって、このことが物すごく日本の社会全体を不安定にしているんではないか。今こそ、日本人は、今までこの日本の社会を安定させてくれている共通の価値観とか、そういったものの重要性を再認識して、安易な自由や、見かけだけの平等などを重視してしまって、この本当に大切な基盤を壊してはならない、そのことを本当に今政治課題として取り上げなくてはならないような時代に差しかかっているのではないかというふうに思いますけれども、大臣はどうお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 なかなか、今のような御質問は、事務方が答弁原稿を書いてくれるわけではありませんので、御質問のたびに頭をひねりながら答弁を考えているわけですが、それはおっしゃるとおりだと思います。

 そして、事柄は、決して日本だけではないんだと思います。例えば法の支配というのは、どちらかというと英米法系の国、大陸法系の国というよりか英米法系、古くはイギリス法の中で発展してきた概念ではないかと思います。これはデュープロセスとかいろいろな考え方と結びついているわけですが、しかし、法の支配と言う場合に、これは私の理解です、間違っているかもしれませんが、私の理解は、古きよき法という概念がイギリス法を理解する上には極めて大事なのではないかと思います。

 例えば、よく歴史上例に出されます、ジョン王のときにマグナカルタというものがつくられるわけですね。あるいは、名誉革命とかいろいろなことがイギリスでもございました。そういう抵抗の基礎にある考え方も、これはイギリスにあった古きよき法の伝統と違うのではないか。だから、そういう今までの秩序をぶち壊すような場合ですら、古きよき法というのが、考え方が背後にあって、そして法の支配という考え方があるのではないかと私は思います。何も、名誉革命みたいなことが、私、すぐやれと言っているわけじゃないんですけれども。

 イギリスでもそうだと思いますね。ですから、日本でも、法というものを考えるときには、長い間に伝わっているそういう価値観みたいなものと別なところであれば、先ほど申し上げたように法というものの実効性を持ち得ない。

 そういう意味で、本当に安定した国をつくる、安心で安全な国をつくるためには、もちろん法は大事です。法の支配と言うときには、私は、法の持っているそういう根源的な権威といいますか、そういうものに対して、また、法律的に言えば正当性ということだと思いますが、正当性に対する信念が拡散しているような社会では、安定した安全な社会というのはつくれないんじゃないかと思います。

 やはり多くの人がその正当性に対して基本的な信頼感を持ち得るような仕組み、それはもちろん法の根源そのものにあるわけでありますが、政治も、やはり多くの国民がここに正当性があるんだ、正当な国の支配というものはここで基礎づけられるんだという共通な信念がつくれるように努力をするということが、単なる実定法を超えた、政治が目指すべき方向ではないのかなというようなことを私は感じております。

安藤委員 ありがとうございます。

 本当に、今イギリスの話も出ましたけれども、イギリスという国は御承知のとおり不文憲法の国で、今までつくられたさまざまな法律が常識とかになって、いろいろなことを決めるときに先人たちがいろいろ築いてくれた知恵、そういったものに反しないかということを考えながらいろいろな法律が制定をされていると思います。

 日本においては、これが、この間も憲法違反の判決とか決定とか出ましたけれども、憲法に違反をするかしないかということがよく言われますけれども、やはり、きょう、ちょっと議論にしましたように、憲法よりも大事な、憲法を支配している価値観というものが本当はあるべきで、そのことに対してもしっかりと敬意を払った議論なり立法行為なりというものをしていかなきゃいけないんじゃないかなということを改めて思います。

 法律というものは、人間の行動を束縛して、そのつくり方によっては人間の考え方自体を変えてしまう大きな力を持ったものだと思うんですね。

 そういった観点から、法の支配の確立というこの短い言葉の中には物すごく大きな、重大な意味を含んでいるというふうに思いますし、私たちが決めなくてはいけない法というものは何か。そして、法というものは全て完璧に決められるものではないですから、当然そこには運用というものが入ってくると思います。そして、それをどのように、法律をどのように解釈して運用していくべきなのか、そのことは私たち国会議員もしっかりと考えていかなくてはならないというふうに思います。

 次の論点に移りますけれども、今国会で司法試験制度の改正案も提出をする予定ということを聞いております。この改正の趣旨、またその内容について教えていただけますでしょうか。

奥野副大臣 今、安藤先生の非常に大局的な理念のお話を聞いていると、一気に具体論に入ってくると、その落差を感じるんですが、いずれにしましても、御質問ですからお答えします。

 司法試験というのはいろいろ問題が指摘されていて、昨年の七月ですか、関係大臣で一年以内に司法試験の制度自体を改めようという決定がなされているわけでありまして、来週ぐらいから議論に入っていただく予定にしておりますけれども、試験科目、七つを三つにする、それから、試験を受けられる回数を五年三回から五年五回という形で修正をしようという方向で今検討しております。

 その趣旨は、今まで七科目あったわけですが、基本的に司法の場で使うものというのは憲法と民法と刑法だろうと思います。その基本を三科目にして、それをまずクリアしていただくということを、理解していただいた方がいいんじゃないか。特に法学未修者については基本的な法律科目をより重点的に学習させるという法科大学院教育のあり方と司法試験を連携させて、基本重視の試験としたい、こういうふうに考えているわけであります。

 それから、今までの試験の回数、五年で三回という枠組みが決まっていたものですから、法科大学院を卒業してすぐに試験を受けることにちゅうちょするような人がたくさんいたようでありまして、そんなことをするんじゃなくて、やはりチャンスがあるときには受けてもらえるようにした方が、トライする人たちにも納得していただけるんじゃないかというふうに思います。

 毎回受験していただく、一年に一回必ず受験していただくこととすることによって、合格率が最も高い司法試験の受験資格取得直後から間断なく司法試験を受験するようにして環境整備を図っていきたい、こんなことを考えているわけであります。

安藤委員 ありがとうございます。

 これを伺ったのは、きょう今まで話をさせていただきましたとおり、日本では、法律という知識ももちろんなんですけれども、今まで先人たちが培ってくれた価値観とか道徳心とか、そういったものが身についているかどうか。法曹界の人たちには、ぜひともそういった知識を身につけた上で法律を運用していただきたいというふうに思うんですね。

 そういった意味で、司法試験においては、法律の知識もさることながら、歴史とか哲学とか古典とか、一般教養こそが重視をされるべきで、一般教養を活用するなどして、単純に法律の知識があるだけではなくて、本当に法曹界にかかわる方々の人格や識見を高めるための試験、そういった試験であるべきではないかというふうに思っているんですけれども、現状、一般教養とかこういうものの扱いについてどのようになっているか、教えていただきたいと思います。

奥野副大臣 いい質問にはいい答えをしなくてはいけないですが。

 司法試験法第一条というのがありまして、司法試験というのは、裁判官、検察官または弁護士になろうとする者に必要な学識及び応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とすると書いてあるんですね。

 しかしながら、法曹に必要な資質については、平成十三年にまとめられました司法制度改革審議会意見書において、今委員がおっしゃったような内容だろうと思いますが、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的知識、柔軟な思考力、説得、交渉の能力等の基本的資質に加えて、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚、先端的分野や外国法の知見、国際的視野と語学力などの資質が求められるというふうに記載されているようであります。

 したがって、言うならば、道徳観とかいろいろな人間として備えるべき基本的な素養については、法曹養成制度全体に加えて、家庭の教育とか社会における生活を通じて吸収していくものであるというふうに私は理解しております。

安藤委員 ありがとうございます。

 これから司法試験の改革についてもますます議論されると思いますけれども、この日本の司法を担っていく立場には、単純に試験の成績がいいだけではなくて、人格、識見ともに本当にすぐれた人になっていただけるような試験制度をぜひとも研究していただきたいというふうに思っております。

 それから、司法制度改革関連でもう一点お聞きをしたいと思います。

 裁判員裁判についてでございますけれども、最高裁の方では、裁判員のメンタルヘルスサポートという制度を設けていると思いますけれども、その目的と内容について教えていただきたいと思います。

今崎最高裁判所長官代理者 裁判所事務局からお答え申し上げます。

 裁判員メンタルヘルスサポート窓口というものが設けられております。これは、身体的、精神的不調を訴える裁判員あるいは補充裁判員がおられた場合に備え、専門知識を有する業者による相談窓口というものを設置いたしまして、カウンセリング等を実施することによって、裁判員あるいは補充裁判員の方々の身体的、精神的な不調を解消あるいは軽減するとともに、さらに、裁判員裁判に参加されるということについての国民の方々の不安を解消するということを目的とするものでございます。

 その内容でございますが、電話によるもの、インターネットによるメンタルヘルス相談及び健康相談、それから対面カウンセリングによるメンタルヘルス相談、これらから成っております。裁判員として選任されたその日から利用できまして、利用期間に制限はございません。

 電話相談は、全国どこでも、三百六十五日、二十四時間受け付けております。利用回数にも制限はございませんで、電話料、相談料も無料になっております。また、対面カウンセリングでございますが、これは東京に受託業者の直営相談室がございます。このほか、全国四十七都道府県の二百十七カ所に提携機関、あるいは、具体的には臨床心理士などが開設しているカウンセリングルームやメンタルクリニック等でカウンセリングを受けていただくということができるようになっております。さらには、インターネットを通じたメンタルヘルス相談、健康相談も、同じように、三百六十五日、二十四時間、無料で利用することができることになっております。

 以上でございます。

安藤委員 ありがとうございます。

 次に、裁判員裁判が導入されてから現在まで何名の方が裁判員に選任をされて、そのうち何名がメンタルヘルスサポートを受けられたのか、その数を教えていただきたいと思います。

今崎最高裁判所長官代理者 制度施行から平成二十五年十二月末、昨年末までの間に、まず、選任された裁判員、補充裁判員の数でございますが、四万六千八百二十五人、内訳は、裁判員が三万四千八百九十六人、補充裁判員が一万一千九百二十九人となっております。

 また、メンタルヘルスサポート窓口を利用された件数ですが、これは、二十六年、ことしの一月末までの数字になります。利用件数は二百六十件となっております。ただし、これは延べ件数でございまして、お一人が複数回利用されるという場合もございますが、その場合は、その都度一件として計上されております。

 以上でございます。

安藤委員 ありがとうございます。

 数としてはそんなに多くないようにも思いますけれども、これはちょっと氷山の一角ではないかなというふうにも思います。

 今答弁いただきましたとおり、裁判員に選任をされるということは、大変な精神的なストレスを受けるということになると思います。このことは最高裁でも十分に予測をしていて、このような制度をつくっておられるんだと思いますけれども、例えば、今まで全く法律とかかわる必要のない平穏な暮らしをしていた普通の主婦の方が、裁判員になったばかりに、本当に凄惨な殺人現場の写真を見せられたり、またあるいは死刑判決を下さなくてはならないということが起きるわけです。こういったことに対する精神的な準備とか、またあるいは、それだけ重大な判決という判断を下す、そのための覚悟がないと、本来とてもこなすことができないのが、人に刑罰を科すという判断なんだろうと思います。

 そういった意味で、準備も覚悟もない一般の人に、くじで当たったからこのことを担当させるというのは、本当にこの制度はいい制度なのかということには少し疑問を禁じ得ないと思います。

 そしてまた、最近、特にマスコミに取り上げられる事案なんかは、マスコミが大変あおりますから、正常な精神状態でその判断ができるのかどうか、そういったことについても少し危惧を感じているんですね。

 このことについてはどのようにお考えか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。

今崎最高裁判所長官代理者 委員御指摘の点につきましては、やはり法律それから規則に基づきまして、特に、裁判体の裁判長でございますが、裁判員の方あるいは補充裁判員の方々に対して、その権限が何であるか、義務が何であるかといったこと、それから、基本的な原則でございます、例えば、事実の認定は証拠によらなければならない、あるいは、被告事件についての犯罪の証明をすべき人は誰であるか、あるいは、事実の認定に必要な証明の程度はどのようなものであるかといったことについては説明することになっております。

 具体的には、公判審理に入ります前に、有罪か無罪かということは法廷に提出された証拠だけに基づいて判断しなければならないこと、あるいは、新聞やテレビなどで見たり聞いたりしたことは証拠ではないということ、そういった情報に基づいて決して判断してはならないのだというようなことは繰り返し説明しておりますし、審理や評議の中でも折に触れ説明しているものと承知しております。

 このような説明を通じ、また、さまざまな負担もお感じになられると思いますが、そういった点についても、裁判官として、できるだけ負担を軽減し、かつ、法律に従った判断をしていただけるように努力しているものと承知しております。

安藤委員 ありがとうございます。

 ぜひとも、普通の暮らしをしている普通の国民の方が、裁判員になったばかりに平穏な生活が壊されたり、そういったことがないように、そしてまた、量刑がさまざまな世間の風によって左右されることのないような仕組みをつくっていただきたいというふうに思います。

 日本の司法制度がこれからも信頼されるものであるためには、やはり裁判というものが本当に信頼感のあるものでなくてはいけないと思います。その点も司法制度改革の中で検討していただきたいと思いますけれども、大臣は、今のこの議論を聞いて、どのようにこの裁判制度などをお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 先ほどからの御議論ですが、裁判制度というのも、一つはやはり人の問題であるというふうに思います。裁判に携わる方々の、専門的な研さんはもちろんのことですが、幅広い社会のあり方あるいは人のあり方という、世態人情というんでしょうか、そういうものにやはり通じていていただきたいと思いますが、これをどう養成していくかということは、専門的な知識をテストすることは比較的簡単にできると思いますが、なかなか簡単なことではないなという気がいたします。しかし、それはどうしたらできるのか、努めていかなきゃならないわけですね。

 それからもう一つは、先ほど申し上げましたように、法制度とか、もちろん裁判もそうですが、広い意味での国民の感覚というものとかけ離れたものであると、やはり長い間に社会の安定性を保つことができないのであろうということも強く感じます。

 そういうことをよく念頭に置いて、法に関係のある者が研さんを積んでいかなきゃいけないのかな、今お話を伺いながら、そのようなことを感じた次第でございます。

安藤委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

江崎委員長 次に、小島敏文君。

小島委員 おはようございます。自民党の小島でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、いきなり実務に入りたいと思うんですけれども、先般の法務大臣の所信表明の中で、法務行政における最重要課題としては、まず再犯防止対策の推進ということが言われました。先般、法務省が調査しましたところ、約三割の再犯者が約六割の犯罪を起こしているということがわかったわけですけれども、再犯防止対策が世界一安全な国日本復活のための重要な課題と位置づけられております。

 過去、平成二十四年の七月には、政府の犯罪対策閣僚会議が再犯防止に向けた総合対策を策定されております。また、引き続きまして、第二次安倍内閣におきましては、昨年の十二月の十日に、「世界一安全な日本」創造戦略が閣議決定されております。

 この内容を簡単に見てみますと、まず、対象者の特性に応じた指導及び支援の強化、協力雇用主また更生保護施設への支援の強化を含む住居と就労の確保による社会復帰支援、また保護司に対する支援と、さまざまな施策を推進するようになっておりますけれども、一方において、法務省側におきましては、いわゆる刑事司法の入り口の取り組み、刑務所内での取り組み、そして三番目に、社会に戻った後での再犯防止への取り組みということで、各段階において取り組みが行われております。

 このうち、私は、受刑者が再び刑務所に入ってこない、戻ってこないようにするためには、特に施設内の処遇が重要であるというふうに考えております。

 そこで、まず、矯正施設におきます取り組みについて、これまでどのようなことを行われてきたのか、また、新たに行っている取り組みもあったら御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いします。

谷垣国務大臣 まさに矯正施設は、矯正という言葉がございますように、犯罪を犯した人が矯正施設の中で単に罰を受けるというだけではなくて、いつかはまた世の中に戻っていくわけですから、改善の実といいますか、そういうものがいかにして上がっていくかというのは極めて大事なことでございます。

 そこで、そういう矯正をきちっとやっていくには何がいいか。それはやはり、受刑者であったり、あるいは少年院に入っている人たち、それぞれ特性とか問題点があるわけでございますので、そういった特性や問題点に応じて必要な改善指導や教科指導などをしていくということが大事で、そのことには近年意識が大分進んできたのではないかと思っております。

 特に、薬物に対する依存がある人に対するプログラム、改善更生、円滑な社会復帰をどうしていくか。

 実は、私も、法務大臣になりまして、先生もいろいろなところを見ていただいておりますが、幾つか刑務所に行きまして、今のような薬物の場合、それから性犯罪、そういった方々に対するプログラムを見ておりますと、数十年前、私が司法修習生をやっていたころとは随分、考え方が進歩してきている。それがどれだけ実が上がるかはまだこれからでございますが、そういう感じを受けておりまして、特別なプログラムに基づく改善指導や生活指導などを実施している。

 例えば、性犯罪を何度もやってしまうような人なんかは、何かやはり物の見方というか認知構造にかなり問題がある場合が多いわけですので、それをいかに改善していくかというようなことを今までやってまいりました。

 それと同時に、厚生労働省や更生保護関係機関との連携が非常に大事でございまして、総合的な就労支援、あるいは、高齢、障害の問題を抱える方もこのごろは大変多いわけでございますので、そういう方々の出所後をどうしていくかというようなことにも支援を実施してきております。

 今後とも、こういったプログラムをさらに実情に合ったものにしていくように努力をしたい、このように考えているところでございます。

小島委員 私、実は非常に刑務所に御縁がありまして、どうしたことか、今まで、栃木の刑務所とか岩国、先般は山口県の美祢、そして広島刑務所に行ってまいりました。さらに、私は、PFIができる前にイギリスの刑務所も見てまいりまして、何かそういう御縁がありまして、どうしても気になりますので。

 今大臣から説明をいただきましたけれども、大変困難な、さまざまな、それぞれのケースケースがあると思うんですけれども、そういう中で、やはり矯正施設が今後もしっかりと業務を進めていく中で、体制がしっかりと整わないと絵に描いた餅になるというふうに私は思うのでございます。

 そういう中で、きょうは、刑務所の処遇、施設の中の問題につきまして、何点か質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 そこで、二番目ですけれども、これも大臣の所信表明であったわけですけれども、矯正医療の問題です。

 今、矯正施設が全国でたくさんありまして、刑事施設が百八十八施設、少年院が五十二、少年鑑別所は五十二、そして婦人補導院が一カ所の二百九十三施設。そして、その機能に応じて、医務部とか医務課とかが置かれておりまして、矯正医官、看護師、准看護師等の医療従事者を配置しておりますけれども、非常に深刻な状況ということを聞いております。

 先般、昨年七月に大臣が矯正医療の在り方に関する有識者検討会を設置されまして、この一月に報告書が出ました。これも読んでみましたけれども、この中で、要するに、矯正医官の定員が三百三十二名でありますけれども、昨年の四月現在では二百六十名、七十二名欠員だそうでございます。定員の二割以上が満たされていないという状況。そういう中で、医師不在庁が三十一もある、そして医師不足庁が二十五もあるということであって、大変深刻な問題であります。

 同時に、今、囚人が高齢化とか、さまざまな病気を持っておられて、刑務所で対処できないものは当然外部の病院に行く、そうすると刑務官が三名ついていく、そしてそのあいた分はいわゆる非番の職員がカバーするということで、大変厳しい状況を見てきました。

 同時に、一方において、美祢市のPFIというのは、どうもうまくやっておられて、地域の外部医療機関との連携を模索されておって、これも非常にいいとは思うんですけれども、なかなか支度をしてもらえる医院がないんだろうというふうに思って、簡単にはいかぬだろうというふうに思うんですね。

 では、医者がいないのであれば、医官がいないのであれば、非常勤の医師を雇えばいいじゃないかということなんですけれども、なかなかこれも、それぞれ囚人の処遇困難とか、そして、常に相対していますから非常に精神的にも緊張感があろうと思うんですね。そういう中で、夜間に救急患者が出たというときに、他の病院に持っていくかどうかという判断も、非常に非常勤医師であれば大変な責任があると思うんですよ。

 ということは、簡単には非常勤医師を雇えないということで、そうなると、根本的に常勤矯正医官をきちんと確保することが重要だというふうに思うんです。

 この報告書の中を見てみますと、何が一体問題なのかといいますと、まず第一に、一般の医師との給与の面で格差があるということで、平均五十・二歳の医官ですけれども、月に七十七万五千円余り、また、一般のいわゆる五十前後が百二十六万七千円ということで、倍半とはいきませんが、非常に民間との格差があるわけですね。このことがいわゆる医師のモチベーションを下げているのではないか。

 もう一点は、国家公務員という身分上の問題もあって、外部研修も非常にスムーズにいかないということであります。先般も、何か、研修に行きますといって研修費をごまかしておったということもありますけれども。それにしましても、なかなか難しいんだろうと思うんですね。

 同時に、矯正医官が社会的に評価されにくく、医師としてのキャリアアップに結びつかないということと、矯正医官本人としても、業務の過酷さに対応した評価を得られていないと考えておって、モチベーションが持てないというふうなことがあります。

 法務大臣、医官は一般公務員でありますから、これの給与水準等を変える場合には法改正が要るということを聞いておりますけれども、これがなかなか各省庁にまたがっておりまして難しいんだろうと思うんです。この報告書の中で、結びにおいて、改正への道筋として、矯正医官の待遇は、困難性に鑑み、特例法の整備も視野に入れて大胆かつ抜本的な解決策を検討すべきとなっておるわけですけれども、これに対して、法務大臣はどのようなリーダーシップを発揮されてこの状況を解消されるのか、お考えをお伺いいたします。

谷垣国務大臣 今の問題点を大変的確に捉えた御質問をいただいたと思います。

 実際、矯正施設で勤務する常勤の矯正医官は、平成二十五年四月一日現在の数字ですが、定員の二割以上が欠員となっております。それだけを捉えましても、これは大変、危急存亡のぎりぎりのところに来ていると私は思うんですね。このままいったら、もう矯正医療というものは崩壊してしまうのじゃないか。だから、今法務省の抱えている問題の中で一番、焦眉の急というものの最たるものじゃないかと私は思っております。

 それで、昨年の七月に、小島先生に指摘していただきましたように、私も、矯正医療の在り方に関する有識者検討会というのをスタートさせていただきまして、一月にその議論の結果をいただきました。

 先生も読んでいただいたようですが、私も早速これを繰り返して読んでみたわけですが、要するに、なかなか社会的にこの難しさが認知されなくて、非常に難しいところがたくさんあると思うんですね。

 先ほどおっしゃいましたように、二十四時間拘束されている方々を相手に、それから、こういう表現はやや慎重に言わなきゃなりませんが、相当やはり難しい方が多い部署でございますね。そうすると、一般のお医者様のように、患者と十分意思を交わしながら協力して医療体制をつくっていくことが非常に難しい、こういうことがどうもあるようでございます。そういう中で、やはり、さまざまな病気に触れながら医者としての技能を上げていくということも容易ではない。

 それから、刑務所というのはしばしば不便なところにございますので、そういうところで常勤で勤務するということになると、なかなか御子弟の教育も十分に行いにくいとか、さまざまな要因に加えて、委員がおっしゃいましたように、やはり待遇がよくない。もう端的に言ってしまえば、一般のお医者様に比べるとちょっと給料が安過ぎるんじゃないかということがございます。

 ですから、まず、そういったあたりをどうしていくのか。これは、人事院や、もちろん財政当局ともいろいろお話をしなきゃいけないことでございますね。

 それから、先ほど、モチベーションということがございましたけれども、やはり、ここでやっていってどうやったら医療技能を、自分が医者として研さんを積み重ねていけるかというような工夫も必要なんじゃないかと思います。

 それから、先ほど、外部委託のお話がありました。これは、事実、先ほどのような難しさを前提としますと、外部委託というのもそう容易なことではないんですけれども、そういうことも努力する必要がこれからもあるだろうと私は思います。

 それから、定年年齢なんかも、お年を召されてもやっていただける面がかなりありますので、定年等の見直しも必要だろうと思いますし、それから兼業の見直しということも私は極めて大事なのじゃないかと思います。公務員ですから、原則として兼業禁止でございますけれども、やはり地域医療との連携の中でどうしていくかということを考えますと、兼業というようなこともかなり考える必要があるのではないかと思います。

 そういうような相当包括的な問題がございますので、これは気合いを入れて臨まなければなりません。今、もう既に関係の省庁とは協議を始めておりますが、ぜひともきちっとしたものをまとめて、またこの委員会で御審議をお願いすることに早く持っていきたい、このように思っております。

小島委員 どうもありがとうございました。

 先般、広島刑務所へ行きまして、美祢も行ったんですが、美祢は民間委託していますからあれですけれども、広島の方は非常に喜んでおられました。法務大臣が早速こういう機会をつくっていただいて検討いただいているということで、刑務所も医師も大変喜んでおられて、大臣によろしくとおっしゃっておったのをお伝えしておきたいと思います。

 大臣、これは何とか、確かに法的な問題もありましょうが、ひとつ頑張ってやりましょう。私たちもしっかりと応援したいというふうに思っております。

 次に、委員の方々も大臣も先般来、栃木県の刑務所、特に女子刑務所に行かれたそうですけれども、私も行きました。

 本当に今、女子の受刑者がどんどんふえておって、昔に比べればもう二十倍、三十倍というふうな勢いで伸びておるという中、それでああいう栃木県の刑務所を見たんですけれども、独房へ二名、そして六畳か八畳の間へ七、八名。何だこれはということを、非常に私は過剰収容についてびっくりいたしました。

 これも、今聞いてみますと、過剰収容は、収容定員が五千八百九十七人のうち、二十年前の三倍だというんですね、収容が。そして今、収容状況は、既決が一〇三・四%、そして一部の施設では一一〇%ということで、非常に厳しい状況がございます。

 この問題と、もう一つは、いわゆる女性刑務官。意見も聞いたわけですけれども、平均年齢が三十歳以下ですよね。三十歳以下の女性刑務官が平均四十五歳以上の囚人を指導するわけですから、なかなかこれも厳しいなということを感じました。

 今、現場を見まして、昼間は囚人のいろいろな施業とか指導とかに一生懸命で、いわゆる刑務官の研修はいつするんだろうと。私は、現場へ行ってみまして、これはとても厳しいなということを感じました。いろいろな資料等を読んだわけですけれども、確かに、女性刑務官なんかは、所内を一日十八キロ歩き回った人もいるそうですね。だから、とにかくいかに忙しいかということがわかりまして、当然、いろいろな薬物とか、いわゆる痴呆とか高齢化で処遇が難しいんだろうと思うんですね。

 そういう中で、まず、過剰収容に向けてはどういうお考えなのかということと、女性職員のいわゆる離職者、七十何%が、三年以内に離職するということがあるわけですね。いわゆる待遇改善等はあるんでしょうが、ここらを根本的にどう考えていらっしゃるのか、その御答弁をお願いいたします。

谷垣国務大臣 栃木刑務所につきましては、法務委員会としても御視察をいただきまして、女子刑務所の問題点をいろいろ研究していただいているのは大変ありがたいことだと思っております。

 それで、刑事施設における受刑者数は、平成十八年度がピークで、それから少しずつ減ってきている傾向にあるわけですが、男子の方は大分よくなってきたんですが、女子受刑者については、収容定員四千五百二十七人ということなんですが、平成二十五年末では、速報値で四千四百二十一人で、九七・七%の収容率です。実際には、いろいろなことがございますので八割ぐらいでないとうまくいかないところが、平均して九七・七%。

 特に、行っていただいた栃木刑務所、和歌山刑務所、岩国刑務所、それから麓刑務所、これはみんな女子刑務所ですが、いずれも収容率が一〇〇%を超える過剰収容状態でございます。

 そして、こういう過剰収容になりますと、もちろん、先ほどおっしゃったような、刑務官に物すごいストレスがかかることもございますけれども、同時に受刑者のストレスが高まりますので、受刑者間のトラブル等が多発するとか、規律の維持にも非常に問題が生じてくるわけでございます。

 それで、これまで刑事施設全体としては、過剰収容を解消しようということで、PFI手法を活用した刑務所の新設や収容棟の増築工事等々で収容能力を拡充してきたわけですが、今後の女子刑務所の収容対策としては、男子刑事施設は多少ゆとりが出てまいりましたので、男子刑事施設の全部を女子刑務所に変えてしまうというところも今検討しておりますし、それから、一部を女子被収容者の収容区域として転用するというようなことを検討しておりまして、具体的には、四国の愛媛県の西条市にございます西条刑務支所、ここに女子受刑者を収容するための経費を平成二十六年度予算案に計上しております。

 今後とも、女子収容者の動向を見ながら、適切な施策を講じてまいりたいと思っております。

 それから、女性刑務官ですね。これは、おっしゃったように、非常に実はきつい状態になっております。

 やはり、言うまでもございませんが、女性の場合は、結婚すれば出産あるいは育児というものがどうしてもございますので、そういう女性のライフサイクルと刑務官として過酷な勤務をするということが、必ずしもぴたっと合わないところがございまして、それによる離職というのは少なくございません。

 それから、やはり先ほどおっしゃった過剰収容。それから、栃木などは、若い者から相当年配の者まで、それから刑期も短い者から長い者まで、いろいろな者がおりますので、例えば、高齢の問題もございますし、精神障害の問題、あるいは女性に極めて多い摂食障害等々、そういうものを持っている人たちにどう対応していくかというのは、肉体的な負担も重いんですが、精神的なストレスも極めて重い。そういうので、やはり出産等を機に退職をする者が多くなっているのが実情で、離職率がふえ、若年職員の割合が高くなっている。

 そうなりますと、先ほど御指摘のように、相当年配の受刑者相手に若い刑務官が本当に涙ぐましいほど頑張ってくれているわけですが、いろいろな問題が生じてくるということだと思います。

 したがって、女性のライフサイクルというようなことを十分に考慮しながら、女性職員の育成、定着を図るということが必要なのではないかと思います。

 今、矯正局におきまして、そういった観点から、女性職員の勤務環境を改善して育成、定着を図る総合的な対策を考えておりまして、まず、三つほどポイントを挙げますと、第一は、女性職員に対する相談体制の充実、それから人生経験が豊富で即戦力となる人材を確保するというようなこと。それから二番目は、地域の医療、福祉等に関する専門家の支援を得られるようにするためのネットワークづくりをする。行っていただいた栃木刑務所なども、そういうことを今後どんどん推し進めていかなきゃいかぬというところでございます。それから、先ほど申し上げました、男子刑事施設の一部を女子被収容者の収容区域として転用することによる過剰収容対策等々、多方面から問題を解決する施策を考えてまいりたいと思っております。

小島委員 どうもありがとうございました。

 過剰収容問題、大臣、よく言っていただきました。男性の収容率は八〇%でしょう。だから、二〇%を女子刑務所へ回せばいいじゃないかと僕はきょう言おうと思ったんですが、恐らく、これを言いますと、法務省側から、いや、実は刑務官がいませんということだろうと思いながら質問させていただいたんですけれども、大臣の方からそう言っていただきまして、ぜひとも、あいているんだから、そこをうまく使われたらどうかと思うんです。

 それともう一点は、女性職員です。そんなにいないんだったら、この際、思い切って大量採用する。二カ月、三カ月でやめるんだから、大量採用して、しっかりと一名でも残すということをしないと、とても女性刑務官の補充というのは難しいと思うんですが、どうぞひとつ思い切った施策をよろしくお願いいたします。

 最後に、先ほどPFIという話が出ましたが、これを一点やらせていただきまして終わります。

 私は、日本でPFIができる前に、実は、イギリスのブリジェンド・ファザカリーという刑務所へ行ってきました。これは、まるっきり、一〇〇%、いわゆる法にかかわる部分についても民間委託しているという施設でありました。

 非常にこれもいいなと思ったんですが、そうはいっても、日本では法にかかわる部分については難しいなということを思いながら帰ったわけですけれども、ああいうふうに全国四カ所できました。

 そういう中で、いろいろ民間の方で、給食、洗濯、理美容、日用品とか食事とか、やっておられて、特に美祢市においては、地域との共生ということで、地元の野菜を使うとか米を使うとかいうことで、私はうまくいっていると思うんです。

 四カ所できまして、これはいわゆる特例法であったからもうできないんですという中で、調べてみますと、今、平成十九年にできました公共サービス改善法によって、いわゆる民間との提携をしておる、民間業務委託をしておりますよね。

 一体、では、このPFIは、法が変わったんだからもうやめたのか、今後は公共サービス改善法でいくのかということなんですが、さっきお話があったように、刑務官が今非常に足らないという中で、民間、民間といっても、総務とか、給食とか、美容、洗濯とか、それだけではやはり根本的に刑務官が足らないということには結びつかないと思うんですよね。

 そこらも絡めて、法改正も要りますが、PFIについてもうちょっと踏み込んで、公共サービス改善法では踏み込めないけれども、PFIならもっと踏み込めるという中で、もう一度そういうことを考えることはできないのか、最後に御質問してみたいと思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 現在、先生おっしゃいましたように、PFI刑務所は、一応、職員の勤務軽減とか、受刑者に対する処遇プログラムとか職業訓練とかで、民間のノウハウが生かされておおむねうまくいっておりますので、これだけにとどまらず、先ほどおっしゃいましたような公共サービス改革法ですとか、いろいろな工夫をいたしまして、できることについては拡大してまいりたいと思っておりますし、平成二十六年度予算におきましては、刑務所内の給食業務について、民間の地元に委託できないかといったことも含めて予算の計上をお願いしているところでございますので、これからも、できるところについて工夫をいたしまして、職員負担の軽減等もありますので、前向きに進めていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

小島委員 時間が来ました。まだたくさん質問はあるんですけれども、今後またそれぞれについて質問します。どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、神山佐市君。

神山委員 自民党の神山佐市です。

 質問の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 法務大臣の所信表明にありました、世界一安全な国日本の実現に向けて、その中で、再犯防止対策についてお伺いしてまいります。

 現在、我が国の犯罪率についてですが、その推移についてはどうなっているかをお伺いいたします。

 また、刑務所出所者の中には、出所後に仕事がなく、住むところもないという人も多いかと思いますが、そうした出所者たちが再び罪を犯すことが多くなってしまうのではないかというふうに思うわけでありますけれども、法務省としてはどのような支援策を講じているのか、お伺いいたします。

西田政府参考人 お答えいたします。

 まず、再び刑務所に入っている者ということについて、私の方から御説明いたします。

 再犯率ということについてはデータはございませんけれども、刑務所に再び入ってくる者の推移についてはデータがございます。平成十五年以降、平成二十四年までの過去十年間を見てみますと、一年間に新たに入所する受刑者の人員に占める再入者、複数回入っている者の割合につきましては、平成十五年の四八・一%から一貫して上昇を続けておりまして、平成二十四年は五八・五%というふうになっているところでございます。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 刑務所出所者に対する就労支援及び住居確保の施策の関係でございますが、就労の関係に関しましては、法務省では、平成十八年度から、厚生労働省と連携いたしまして、刑務所出所者等総合的就労支援対策というものを実施しておりまして、トライアル雇用とか身元保証とかいろいろなことをやっているわけですが、平成二十四年度までに大体一万五千三百人の就職を確保しておりまして、一定の成果が上がっているものと思っております。

 それ以外に種々の施策もございますが、例えば、最近、地方公共団体で、保護観察中の少年を非常勤職員として雇用してくださるところも出てきておりまして、法務省でも昨年五月から同様の取り組みを始めているところでございます。

 それから、住居の関係でございますが、全国に百四あります民間の施設の更生保護施設が重要でございまして、そちらへ、帰るところのない者の宿泊の委託をしております。平成二十四年度で申し上げますと、大体八千八百人ぐらいの者の宿泊の委託をしております。

 さらに、その更生保護施設以外にも帰る先を、受け皿を確保するということで、平成二十三年度から、例えば、社会福祉法人とかNPO法人などで宿泊施設を持っているところにつきまして、自立準備ホームということで、一定の要件のもとで登録させていただいて、そこへ宿泊を委託する業務を始めておりまして、昨年度で申し上げますと、千二百人について宿泊の委託をしているというところでございます。

 引き続き、しっかりやっていきたいと思っております。

神山委員 ありがとうございます。

 再犯率が多いと言われる薬物依存への対策ですけれども、ダルクなどの施設で、同じ立場にある者同士が励まし合いながら生活をするというようなことが必要であるというふうに認識しているわけでありますけれども、私は、埼玉県議会議員のときに、公の施設があれば薬物犯罪の犯罪率が減らせるのではないかというようなことでお聞きをしていたところでもあります。

 薬物依存者に対する指導、支援の強化について、再犯防止のための公の施設はどのようなものが何カ所ぐらいあるのか、お伺いいたします。また、そのうち法務省が所管する施設は何カ所ぐらいあるのか、お願いをいたします。

 そして、住宅事情で、同居する家族の事情などによって、保護司さんが保護観察対象者との面接に自宅が使えないというふうなこともあって、面接場所の確保ができないというようなことで保護司さんになれないというようなこともあろうかと思うんですけれども、更生保護サポートセンターの拡充対策についてどのように考えているかについてもあわせてお伺いいたします。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 法務省の施設で薬物依存者を専門に受け入れるという施設は、今のところございません。もちろん、力を入れている施設は複数あります。

 それから、民間の施設ですが、全国に百四カ所ある更生保護施設につきまして、本年度から五つの施設を薬物処遇重点実施更生保護施設ということに指定させていただきまして、精神保健福祉士さんとか臨床心理士さんとか、そういう精神医療の専門家を配置できるという予算措置を講じまして、薬物依存者の薬物離脱に向けた処遇を行っているところでございます。

 なお、ちなみに、来年度の予算案につきましては、この五カ所をさらに十カ所にふやしていただきたいということで、必要な経費も盛り込ませていただいているところでございます。

 それから、更生保護サポートセンターについてお尋ねですが、まさに保護司さんの活動の拠点で、面接場所もありますし、会議もできるし、いろいろな団体との連携もできるということで非常に重要で、今、二百四十五カ所設置させていただいています。どこへ行きましても好評でありまして、法務省としては引き続き設置を進めたいと思っておりまして、来年度の予算案につきましても、新たに百カ所の設置の経費を盛り込ませていただいているところでございます。

 以上でございます。

神山委員 また、再犯防止対策のために、国や地方公共団体だけでなく、保護司さんを初め更生保護活動に協力する民間のボランティア団体の皆さんの活用も、重要な役割を果たしていると思われますけれども、民間の団体としてどのようなものがあるのか、お伺いします。

 また、再犯防止対策に関する保護司さんや民間ボランティア団体の果たす役割について、法務省としてはどのような考えをお持ちであるのか、お伺いをいたします。

平口大臣政務官 お答えをいたします。

 刑務所出所者等の再犯防止には、保護司のほか、更生保護施設、更生保護女性会、BBS会、協力雇用主、就労支援事業者機構を初め、多くの民間の篤志家や協力者の方々にかかわっていただいているところでございます。

 こうした方々には、刑務所出所者等の立ち直りを支援することを通じて、安心、安全な社会の構築に大きく貢献する重要な役割を担っていただいているものと考えておりまして、引き続き、これらの民間の方々との連携強化や支援の充実、こういうことに努めてまいりたいと存じております。

神山委員 ありがとうございます。

 また、近年、保護司さんのなり手が減少しているとお伺いしているところでありますけれども、実際にはどんなような状況になっているのか、お願いいたします。

 また、保護司さんの負担が重いという理由も一因かと思われますけれども、減少しているのは何が原因か、その辺について、わかっていればお伺いをいたします。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、保護司さんの現在員ですが、本年一月一日現在におきまして、四万七千九百十四人であります。定員は五万二千五百人でございまして、充足率は九一・三%になっております。過去五年間、連続して減少しておりまして、大体五年間で千人減少しているというのが実態でございます。

 保護司さんのなり手がどうしても少ないということの原因は種々考えられるんですが、従前は、保護司さんが退任されるとき、その保護司さんの人的な関係で次の方を推薦していただくみたいな、そういう形で後継者を確保しておったんですが、やはり近時、社会のつながりなども薄くなっているという事情などもありまして、そういう形での確保が困難になっているというような面もあろうかと思います。それ以外の要素ももちろんあると思います。

 そういうことで、平成二十年から、より広い保護司さんの後継者の候補者といったものを出していただこうということで、全国に保護司候補者検討協議会というのを設置いたしまして、自治体の方とか自治会の方とかそういった方に入っていただいて、より広い保護司さんの候補者を探していただくというような活動なども始めております。

 いずれにいたしましても、保護司さんは更生保護の基盤でございますので、その確保について全力を挙げていきたいというふうに思っております。

神山委員 ありがとうございます。

 また、さきの国会で成立した、刑の一部執行猶予制度が施行されれば、保護司さんの負担がさらにふえてしまうのではないかという危惧をしているんですけれども、この辺についてお伺いいたします。

平口大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘のように、刑の一部執行猶予制度の施行に伴いまして、特に薬物事犯などの長期の保護対象者が増加するということが考えられるところでございます。専門的な処遇プログラム等の実施は保護観察官において担っておりますが、保護観察対象者の日常生活の指導等は引き続き保護司に実施していただくことになるわけでございますので、御指摘のように、保護司の負担が増加するということも想定しなければならないところでございます。

 そこで、負担軽減のため、例えば、保護司の面接場所や保護司同士の協議の場としての更生保護サポートセンターを充実させるといったようなことが考えられるところでございまして、本年度は二百四十五カ所に設置をいたしました。

 また、二十六年度予算では、さらに百カ所の増設を計画いたしているほか、経験の浅い保護司の方々の不安や負担感を軽減するために、保護観察対象者を、ベテラン保護司等と組み合わせていただきまして複数で担当していただく、こういったようなことを考えて、そのための予算を組んでいるところでございます。

神山委員 ありがとうございます。

 保護司さんは、日々の活動の中で、どうしても自分の負担、費用が出てしまうということをお聞きしているところでありますけれども、奉仕活動とはいいながら、自己負担、身銭を出していくということについては、保護司の負担が重くなってしまうというふうに思うんですけれども、この辺について法務省としてはどのように考えておられるのか。

 また、平成二十二年の七月に発生した、担当保護観察対象者の放火によって保護司宅が全焼した事件があって、保護司のなり手が減ったり、また、そういうふうな危険が及ぶというふうなことの中でちゅうちょするというようなことによって、保護司のなり手が少なくなっているのかというふうなこともあるわけであります。

 平成二十四年から、保護司がこうむった物損的な被害について、最大二千万円の補償制度が新たに始まったということでお聞きしておりますけれども、この制度を使った補償があったのかどうか、この辺についてお願いいたします。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、保護司さんが活動のために自分のお金を出しておられるという実態があるということ、私どもも十分理解しているところでございます。本当に、実費弁償だけでやっていただいているのに、それを超えて費用を負担していただいているということ、ありがたく、また申しわけないなというふうに思っている次第でございます。

 法務省といたしましては、そういう面も含めまして、財政的な支援も含めて種々の施策をとっているわけでございますが、例えば、保護司さんが出される会費から運営経費の相当部分を出しているものとして、都道府県の保護司さんの県連がございます。県連がないともちろんやはり行政的にも非常に困るわけで、県連は非常に必要なんですが、そういうことから、来年度予算案には、県連に対する財政的な支援というものも新規に盛り込ませていただいているところでございます。今後とも、保護司さんの財政的負担の軽減には十分努めていきたいというふうに思っております。

 それから、御指摘のありました例の放火の関係なんですが、これまでに、平成二十四年に制度ができましてから二件、お支払いした分がございます。いずれも軽微な案件でございまして、軽微というか、ちょっと言葉は悪いかもしれませんが、対象者が窓ガラスを割った案件とか、若干の損害があったというもので、別に何十万円、百万円といったような金額を払うような事案は幸い起きておりません。この制度のあり方については、さらに今後も検討していこうというふうに思っています。

 それから、やはり、保護司さんが不安だということで、なかなか保護司活動が前に進まないというところは当然あります。ですから、保護司さんに担当してもらう場合には、保護司さんの経歴なども十分踏まえて担当を決めていますし、保護司さんに危害を加えたりする可能性があるとか、非常に難しい案件については、今も保護観察官が、直接担当といいまして、直接、保護司さん抜きにやっている事案が相当あります。また、そこまでいかなくても、相当程度、保護観察官が関与する例もございまして、そういう形で適切に保護観察を運用してまいりたいというふうに思っております。

神山委員 ありがとうございます。

 今、二千万円の補償制度があるということで、今現在は金額が大した額ではないということのようでありますけれども、今後、二千万円の増額について検討されていくお考えがあるのかどうかをお聞きいたします。

 また、刑務所出所者を民間人である保護司さんに委ねるということでありますけれども、同じ民間人ではありますけれども、例えば、警察のOBの方々、ある程度職業として経験や知識を持って保護司さんになられた方に委ねるという方法、また、薬物依存者の場合については、薬物に対する専門知識を有する保護司さんが担当するというようなことについても必要ではないかというふうに思うんですけれども、今現在、その辺についてどういうふうになっているのか、お伺いいたします。

 そして、保護観察官がおられるということでありますけれども、現在の人員と、それから不足についてどういう状況になっているのか、不足があるのかないのか、その辺についてもお願いいたします。

齊藤政府参考人 まず最初に、補償制度ですが、物損上限二千万円ということになっております。この金額につきましては、建てかえに要する費用とかいろいろ勘案いたしまして、それから保護司の組織であります全国保護司連盟とも相談して一応設定させていただきましたが、まだ制度が始まったばかりですので、運用状況も見ながら、さらに必要があれば金額などについても改定していくというようなことも検討していきたいというふうに思っております。

 それから、薬物の関係等々なんですが、基本的に、薬物の関係の処遇はそれに関する専門的知識を持っている保護観察官がやるということで、保護司さんは生活指導をやっていただくということにはなっていますが、もちろん、薬物依存者を持っていただくわけですので、保護司さんに対しましても必要な研修とかそういうようなものをやっていきたいというふうに思っております。

 それから、薬物処遇はやはり専門家の力が必要ですので、保護観察官だけではなかなか足りない部分もありますので、薬物専門のお医者さんとか、それから先生がおっしゃったダルクの方々とか、そういう地域の方々と連携して処遇していけるような形を今一生懸命構築しているというところでございます。

 それから、保護観察官の数でございますが、現在、保護観察所で第一線で保護観察等業務を担当している保護観察官の数は、九百八十二人でございます。

 保護観察官の業務につきましては、高齢、障害により特に自立が困難な出所者に対して支援を行うための調整を行うといったような業務とか、薬物依存の強い者に対しての専門的なプログラムを実施するといったようなことで非常に業務がふえておりまして、随分多忙になっているというのが実情でございます。

 法務省といたしましては、再犯防止をより一層推進するため、必要となる処遇の実施体制の整備につきまして計画的に取り組んでいこうというふうに考えているところでございます。

神山委員 ありがとうございます。

 再犯防止のため重要なのは、出所者の仕事の確保が必要だというふうに考えておりますけれども、出所者の雇用をしていただくということについては雇用主さんの理解が非常に必要だというふうに認識をしているわけであります。

 この辺について、支援をしていただける雇用主さんに対しての優遇措置とか、そういうような部分はあるのか、今後考えていかれることはないのか、お伺いいたします。そして、二十六年度予算にはそれらの措置が含まれておるのか。

 また、保護司会を初めとする更生保護に協力する民間団体への支援策はどんなものがあるのか、お伺いをいたします。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 刑務所出所者を積極的に雇用しますというふうにおっしゃってくださっている協力雇用主さんが、やはり就労の面では非常に大切でございます。

 これまでも厚労省と連携していろいろな支援をしておりますが、本年度から職場定着協力者謝金という制度を導入いたしまして、これは、雇っていただく、それでオン・ザ・ジョブ・トレーニングでいろいろ教えていただく、生活指導などもしていただく、その様子を保護観察所に連絡していただいて、保護観察所はさらに保護観察に活用するという制度を導入いたしまして、そういうことに協力してくださる謝金として、本年度から、大体三カ月間で七万円弱お支払いするという制度を導入いたしました。

 来年度の予算案につきましては、これをさらに拡大するための経費を盛り込ませていただいているところでございます。

 それから、お尋ねの、更生保護女性会、BBS会などに対する支援につきましては、新任の会員さんに対する研修を実施するための費用とか、長年にわたり活動いただいた方々に対して顕彰するための経費などを盛り込ませていただいているところでございます。

神山委員 次に、適正な出入国管理についてお伺いいたします。

 政府は、災害復興、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック関係の建設業の人材不足の解消を目的に、現行の外国人技能実習制度の入国要件を緩和するとの報道がありましたけれども、法務省では新たな制度の導入を考えておられるのか、お伺いいたします。

榊原政府参考人 お答えいたします。

 東日本大震災の復興事業や二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会関連施設の整備のための建設需要に対応するため、外国人材の活用が求められております。

 この問題につきましては、本年一月二十四日の関係閣僚会合におきまして、建設分野の外国人材を活用するための措置について検討し、年度内をめどに当面の時限的な緊急措置の決定を目指すことが確認されております。これを受け、関係省庁の事務レベルで対応策について検討しているところでございます。

 法務省といたしましては、こういった需要に対応するため、どのような対応が適切か、建設分野の実情やニーズを踏まえつつ、労働市場など国民生活や治安等、我が国社会への影響をも十分考慮しつつ、関係省庁と連携し検討を進めているところでございます。

神山委員 そこで、谷垣法務大臣にお伺いしますけれども、外国人技能実習制度についてどのような評価をされているのかお伺いするわけでありますけれども、今、外国人の技能実習生を、雇う方からすると、ある面では技能実習というふうなことでもありますけれども、反面、労働力として確保していきたいというふうな部分も現実的にはあるわけでありますけれども、この辺について、外国人の技能実習についての大臣の御所見をお伺いいたします。

谷垣国務大臣 今、神山委員がおっしゃった技能実習制度は、本来からいえば、技能等を開発途上国等々へ移転していくという国際貢献を目的とした制度でございますから、今委員がおっしゃったような観点、労働力不足を補うという観点から、余りそこにぴたっと一致してくる制度では必ずしもないわけですね。

 そういう制度ですが、残念ながら、一部には不適正な受け入れを行う監理団体あるいは実習実施機関があることも事実でございまして、制度の趣旨に沿った運用とは言いがたい面も出てきているというふうに思っております。

 それから、今もおっしゃいましたが、それぞれの分野におきまして、技能実習制度にさまざまな御意見があるのが現実だろうと思います。

 そこで、こういう現実を踏まえまして、まずやらなきゃならないことは、不適正な受け入れを防止して、制度を適正化する措置をきちっととっていくということが必要だろうと思います。それとあわせまして、例えば、きちっとした優良な受け入れ機関については、従来より一段高い技能を習得するために技能実習期間を延長するというようなことも、よく議論を整理していく必要があるのではないかと考えております。

 去年の十一月に、法務大臣の私的懇談会でございます出入国管理政策懇談会、このもとに分科会を設けまして、技能実習制度の見直しについて検討いただいているところでございます。ここで十分御議論いただきまして、技能実習制度の見直しについては、本年の半ばといいますか、年央をめどに一定の方向性を出していきたいというふうに考えております。

神山委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 今実際に、外国人の労働者を受け入れていって、それで、入国後一カ月間の講習が必要だということで、そのことで、今まで受け入れていた部分から一カ月間、この講習の期間、実務の研修ができないというようなことで、非常に困る部分もあるようでありますけれども、この講習の必要性についての理解が浸透しているのかどうかというようなことで、この辺の座学での部分が認識が非常にまだ薄い部分もあるのかなというふうに思うところでもあります。

 この辺について、この受け入れの講習の期間に実務研修もすることができないのか。もしくは、できないとするならば、今受け入れている部分とその一カ月間をダブらせて、講習を受けて、そして、実務研修の方にスムーズに切れ目なく使えるようなことができないのか。この辺についてどうなのか、お願いいたします。

榊原政府参考人 お答えいたします。

 技能実習制度につきましては、大臣からもお話がありましたように、我が国で培われた技術等の開発途上国への移転を図り、開発途上国の経済発展を担う人づくりに寄与することを目的とした制度でございます。

 そのため、技能等を効果的に習得するためには、技能実習生に一定の日本語能力が必要であり、また、受け入れが不適正なものとならないためには、技能実習生が我が国の労働関係法令や出入国管理関係法令について一定の知識を有していることが必要であると考えております。

 そういったことが十分に浸透しているかということの御指摘でございますけれども、一部にはそういったことについて十分、御認識が薄い事例も散見されることは承知しておりますけれども、そういった点につきましては、十分認識していただけるよう周知に努めてまいりたいというふうに考えております。

 そのため、そういう講習の位置づけでございますので、法務省令におきまして、実習実施機関での技能実習を行う前に、日本語や関係法令について技能実習生に講習することとしているものでありまして、技能移転という技能実習制度の目的からもこのような講習は必要であるものと考えており、その間、業務に従事することは認められていない制度でございます。

 もう一つの点でございますけれども、技能実習制度が、本来、我が国の技能移転を習得する活動を行うものとして設けられた制度でございますので、これを効果的に行うためには、実習実施機関当たりの受け入れ人数の上限を定めておりまして、技能実習生に対する指導が適正に行われるようにそういった上限を設けることは重要でございます。したがいまして、受け入れ人数に上限を設けていることについては合理的な理由があるものと考えております。

 そのため、委員御指摘のような事情がありましても、受け入れ人数に上限がある関係で、前任の技能実習生が帰国する一カ月前に、新しい技能実習生の入国を認めることができなくなる場合がございます。

 以上でございます。

神山委員 どうもありがとうございました。

 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 本年も、昨年に引き続きまして、法務委員会理事として、また公明党の法務部会長として、与党の側から谷垣大臣をお支えすることになりました。本年もよろしくお願い申し上げます。また、委員長もよろしくお願いいたします。

 まず、資料の一番でつけさせていただいております、後で言及をさせていただきますが、昨年の夏、八月に法務委員会の海外視察がございまして、石田前委員長を団長とした視察団の一員として、一週間ほどアメリカ合衆国に行かせていただきました。

 首都ワシントンDCとロサンゼルスの二つを回りまして、大変貴重な経験をさせていただきました。FBIの本部を訪問したり、軍警察あるいはロス市警などの捜査現場の視察、また連邦地裁の裁判の見学、それからカリフォルニア州立刑務所の中の視察等々、普通の訪米ではまず行けないような現場に参りまして、丁寧な説明を伺って、日本の司法制度のあり方と比較しながら、本当に勉強になりました。

 ここで、改めて、本当にこのすばらしい視察日程を調整いただいた石田前委員長を初め、委員部や調査部の職員の皆様、また、現地でもアテンドしていただきましたけれども、法務省並びに外務省の職員の皆様に心から感謝を申し上げたい、このように思っております。

 さて、昨年の訪米で私どもが、特に私個人としても一番衝撃を受けた施設が、法務大臣、御存じかもしれませんが、ディランシー・ストリート財団という民間団体の取り組みでございました。

 きょうお配りをした資料の一枚目は、恐縮ですけれども、私が視察の直後に書いたメルマガから抜粋をしたものでございます。

 このディランシー・ストリート財団、DS財団と略してありますけれども、一枚目の三段落を見ていただきますと、これはサンフランシスコに本部を置く受刑者に対する社会復帰支援施設でございまして、まず、政府からの補助金を一切受けずに運営をされております。しかも、驚いたことに、この施設の運営というのは、この施設に入所して更生した元受刑者たちがしている。

 奥野副大臣、後で御答弁いただきたいと思います、副大臣も一緒だったんですけれども、私たちに対応してくれた方は男女二人おられたんです。その次の段落に少し詳細が書いてありますけれども、男性の方がデイブさんという方なんですけれども、この人はこの施設に来て八年なんですが、その前二十五年間、薬物中毒者、薬物売買人でありまして、刑務所に送られること四回といういわば絶望的な境遇にございました。それから、女性のローラという方も説明してくれたんですが、彼女ももとは重度の薬物依存症でありまして、刑務所に二回送られているという方でございました。しかし、私どもが会った昨年の時点では、二人とも大変立派な方々でございまして、施設の取り組みを説明していただいたわけでございます。

 次のページを見ていただきますと、この施設がどういうルールで運営されているか、彼らの答えを私の方で要約させていただいたわけですが、特に二段落目と三段落目をちょっとごらんいただきたいと思います。

 二段落目には、政府から補助金をもらわずに、しかも元受刑者だけで運営されている施設がどういうふうに運営されているかといいますと、まず、これはおもしろいんですが、ディランシー・ストリート財団のことを、例えばカリフォルニア州立刑務所に入った受刑者全員に、向こうは法務省と言うか何と言うかわかりませんけれども、向こうの政府当局が、こういう財団がありますということを通知するんですね。

 受刑者全員に通知をした上で、受刑者の中で、刑務所じゃなくてそういう社会の中にある施設で自分は更生したいという意思を持った人は、手紙を書きます。この財団に手紙を書いて、手紙を受け取ると、もちろん手紙の段階で少しスクリーニングをかけるんだろうと思いますが、財団の方から、この人は可能性があるかもしれないという方に面接に行きます。当然、刑務所も協力します。

 面接をして、そこで本人の意思が強いということを判断すると、理由書をつけてディランシー・ストリート財団が裁判所に行きまして、裁判所判事の許可を受けて、その対象の受刑者の残りの刑期、ですからまだ受刑中なんですね、だけれども残りの刑期を裁判所の許可で保留してもらって、保護観察か仮釈放という状態に法的にして、その受刑者を刑務所からこの財団の施設に移すわけです。

 ここからはルールがいろいろあるわけですが、そういう形で入った入所者は、誰でも最低二年間、施設にいなければいけないと決めております。

 三段落目、次の段落を見ていただくと、ちょっと細かいことですけれども、ルールがいろいろあります。例えば、施設にいる間は、携帯電話、インターネットアクセスは全部禁止ということですので、携帯電話で誰かと話すということは禁止をされておりました。有線の電話は中にありまして、一定の条件のもとで使える。ただ、電話は使えるんですが、これはルールが厳格にありまして、入所してから十五カ月間、みずからの子供に連絡をしてはいけない、それから配偶者や恋人との接触も十八カ月間は禁止。これを破ると、即、施設から退去ということだったと思います。

 さらに、この財団の特徴は、入所している間に教育をしておりました。我々も見てきたんですけれども、学校のような授業をして、基礎的な教育が欠けている方には教育をする。それから、職業訓練もして仕事も与え、仕事については報酬を出しております。職業訓練は十五種類。

 仕事も、ここに書いてありますけれども、引っ越し会社とか装飾会社をやりまして、済みません、報酬はないですね、無報酬で働くかわりに財団の収益はあり、そのかわり、入所者の居住費、食費、教育費を全て無料にするということ。

 我々が訪問したロサンゼルスの施設の入居者は現在百九十名程度でございまして、成果としては、二年間ここにいて出所した人の再犯率は三割を割り込んでいて、裁判所とか警察機関から高い評価を得ている。

 ちなみに、大臣、私、アメリカにいるときに、ディランシー・ストリート・ファウンデーション、財団というキーワードでインターネットで検索したんですね。一番最初にヒットしたのは、びっくりしたんですが、こういう受刑者のための自立更生施設としてのホームページではなくて、サンフランシスコで最も規模が大きい引っ越し会社の一つとしてインターネットに出てくるんですね。

 私たちが訪れたロサンゼルスの施設は、もともとたしかヒルトンホテルだったところを財団が買い取って、そこの中を変えて施設にしていまして、大臣、これは、元受刑者というか、はっきり言うと、まだ刑期のある受刑者を入れているにもかかわらず、誰も警官がいないんです、周囲に。だから、本人たちがその気になれば幾らでも道に出ていけるような、かなりフリーな状況の施設であったんです。

 ここの施設の人たちは何の仕事をしていたかというと、装飾会社。クリスマスのときに町をデコレーションする仕事をしておりまして、我々、地下に行って、八月に行ったんですけれども、ことしの冬のクリスマスにはこういうデコレーションをやるんだと。結構、大企業から仕事を受注しておりまして、何千万円の売り上げになるような大きな仕事をしていたわけでございます。

 このように、日本ではちょっと考えられないんですね。まだ刑期がある受刑者を、裁判所の許可を得て、厳格なルールのもとに受け入れて、その人たちに職業訓練を施して、かつ、実社会で働いてもらって、それで二年間過ごして、最終的には実社会に出ていくんだけれども、再犯をしない、こういうことをしていたわけでございます。

 そこで、せっかくですから、私、一緒に同行していただいた奥野副大臣に御答弁いただきたいと思うんですが、副大臣は副大臣で個人の御感想があるかもしれませんけれども、私は、この財団に行って、日本でもこういう民間主導の取り組みが出てくれば、やはり再犯率を下げることができるのではないかというふうに思いました。

 もちろん、民間の団体ですから、法務省とか政府が人為的につくることはできないわけでございますが、例えば、今、日本にあるいろいろな規制を見直すことで、もう少し今までよりも自由な発想で、つまり、法務省が管理している矯正施設、刑事施設ではないところで、本人の自立更生の意思が非常に強くて、そして真面目に働くような方々を予備段階的に受け入れてやるようなことを、ある程度民間にやらせるというようなことも考えてもいいのではないかと思ったわけでございますけれども、奥野副大臣の御答弁を伺いたいと思います。

奥野副大臣 昨年八月でしたか、御一緒に、法務委員会としては異例の外国旅行だったと思いますが、旅行と言っちゃいけませんね、視察でありました。

 ただ、一つだけ遠山先生が間違って御理解いただいているところがありまして、DS財団へ行ったのは私が日本へ帰ってからでありますから。朝から聞いたんですけれども、どうにも理解できなかったので、ちょっと確認をしましたら、私が帰ってから後のようでありました。

 私も、実は、日本の国でどういうふうにして社会復帰支援が行われているんだろうかと。いろいろと刑務所を見て回ったりする中で、ぜひ皆さん方にも御理解いただきたいと思いますが、私がこの間から行ったのは、沖縄の那覇、それから、先々週かな、北海道の網走へ行きました。

 もちろん、刑務作業と称してやるのは大した作業じゃありませんが、私がこういうこともやっているのかということで大変びっくりしたのは、やはり社会復帰したときにその技術が使えるという意味合いでやっているのが、網走は、牛を育成して、一年間に五十頭ぐらい出荷しているようであります。大体三十カ月になると出荷するのでありますけれども、そういう畜産事業に携わっている人もいました。

 それから、林業、木を伐採する、あの寒い中で木を切っていましたけれども、そういったこともやっている。それから、野菜をつくったり麦をつくったりというようなことも、網走ならではだと思いますけれども、大きな、何百ヘクタールという土地を持っているわけでありますから、そういったところで社会復帰したときに有用な技術を教え込んでいるということを見てきました。

 沖縄でも、果物や野菜をつくっておりました。

 そういったのが一つ。ただ、これは刑務所の中でということになろうと思います。

 今、DS財団に近いものといえば、皆さん方は御承知かもしれませんが、少年院を仮退院した人が北海道の沼田町で農業の技術を身につけるということも勉強しておるようであります。それから、刑事施設から仮釈放された人が農業技術を身につけるという意味で、茨城県のひたちなかにそういう授業をやるところがあるわけであります。これは両方とも定員が十二名でありまして、スケールの小さいものであるということと、国がやっているということですね。ですから、おっしゃっているDS財団は民間ですから、DS財団とは違うということです。

 ただ、今、遠山先生が御説明になったことで私が感じるのは、刑務所の中で仕事をしたり、あるいは、仮釈放で、準備はしてあるけれども、国の施設で仕事をするということは、受刑者にとっては大変やらされ感が強いんじゃないかなという気がするんですね。そういう意味で、民間が力を発揮して社会復帰支援施設をつくり、そこで社会復帰したときに有用な技術を身につけるというのは大変いいことだなと私自身は思います。

 それが今までの感想でありますけれども、あとは、お役人がつくってくれた資料も言わないとまた怒られますから、言います。

 平成二十四年の七月に、犯罪対策閣僚会議で再犯防止に向けた総合対策というのが打ち出されているようでありますが、ソーシャルファームの普及に向けた支援等、新たな就労先確保策について検討するというふうに決められたそうであります。

 そんなことがあって、法務省においては、平成二十五年度から、新たにソーシャルファームの開拓、確保のための予算を得て、刑務所出所者等の雇用に理解をいただけるソーシャルファームの開拓、確保のほか、連携体制の構築に努めているのだそうであります。

 ディランシー・ストリート財団のような取り組みは、あくまでも民間の発意と自律によって進められるものというわけでありますが、日本におけるソーシャルファームの活用の参考にしていければな、こう思っております。

 だけれども、全体的に考えますと、国の予算が大変金額的には厳しい状況になっていますから、予算、今年度はもう終わっていますけれども、来年の予算策定の段階では、もっと戦略的に法務省としてもいろいろなお金の使い方を研究しなくちゃいかぬと思って、今、私がそれをみんなに言っているんですけれども、そんな中でも一つ参考になる事例だなというふうに感じたわけであります。

遠山委員 副大臣、大変丁寧な御答弁、ありがとうございました。

 大臣、ぜひ、これは一朝一夕にできることじゃありませんけれども、今の副大臣の御答弁にもありましたように、国の財政も限られておりますので、このアメリカの取り組みというのは、ポイントは、まだ受刑中の者を民間団体が管理し、教育し、職業訓練をして、かつ、仕事もして、収益を上げて、それで財団の運営を見て、かつ、本来国がやるべき元受刑者というか受刑者の自立更生も矯正もやっていくという取り組みでございますので、こういった動きが日本でも出てきて広がるように、また法務省としてもいろいろと御検討いただきたいということを要望申し上げたいと思います。

 次に、大臣にお礼から入りますけれども、昨年の三月のこの委員会で、私は、北九州市の戸畑区で元非行少年少女を百人以上雇用している、現在、福岡県の協力雇用主の会長の野口義弘社長を御紹介させていただいて、大臣から大変な激励のお言葉をいただいて、本人も大変喜んでおります。

 その後も、きょうも来ておりますけれども、法務省の齊藤保護局長が野口社長の会社をわざわざ訪問していただいたり、あるいは、この野口さんを再犯防止対策ワーキングチーム幹事会という省庁横断のところに講師として招いていただいたりということで、こういう一生懸命民間で、個人でこの方は頑張っているところにスポットライトを当てていただいたことに感謝を申し上げたいと思います。

 ただ、その上で、今、協力雇用主の実態がどうかということを確認した上で少し議論をしたいと思うんです。

 まず、保護局長に伺いますけれども、この協力雇用主という、まさに犯罪や非行をした人をあえて雇うということで登録をしていただいている協力雇用主さんの登録数は現在何社なのか、また、この五年程度でどれぐらいふえたのかということ。その全体の数を確認した上で、実際に協力雇用主として登録している会社の中で元受刑者を雇っている会社の数、それから雇用されている元受刑者、元非行少年の数を、ちょっと数字ばかりで恐縮ですが、全てお答えをいただきたいと思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 協力雇用主の数でございますが、平成二十一年四月一日現在が七千七百四十九事業者でした。それが、平成二十五年四月一日現在で一万一千四十四事業者ということで、過去五年間で三千二百九十五事業者増加しております。

 そのうち、実際に刑務所出所者等で保護観察中の者などを雇用しておられる協力雇用主の数につきましては、平成二十一年四月一日現在で二百五十一事業者、平成二十五年四月一日現在で三百八十事業者でございまして、過去五年間で百二十九事業者増加しているところでございます。

 さらに、実際に雇用している被雇用者の数でございますが、平成二十一年は四百三十五人が雇用されておりました。平成二十五年は八百七十九人ということになっております。これは、いずれも四月一日現在で雇っている数でございまして、例えば、平成二十四年度におきまして、その一年間で新たに協力雇用主のもとで就労した刑務所出所者の数は千九百四人になっている、そういう現状でございます。

遠山委員 それで、大臣、大臣には最後に御答弁いただきますけれども、今の数字を見ると、いろいろ改善はしております。改善をしておりますが、私は、昨年から法務省の方に会うとよく言っているんですが、今、協力雇用主として登録している会社は一万一千を超えてきております。つまり、全国で一万一千社の会社の経営者が、俺のところで、私のところで元受刑者を雇ってもいい、元非行少年少女を雇ってもいいとおっしゃっている、意思を持っているから、この一万一千という数がある。

 ところが、実際に雇っている会社の数は三百八十社でございますので、これは五年前と比べて百二十九もふえてはいますけれども、しかし、登録している会社全体の三%から四%ぐらいしかないということでございます。

 そこで、私は、これは何か構造的に少しうまくワークしていないのではないかという思いがありまして、配らせていただいた資料の二番を見ていただきたいと思います。

 後ほど、この資料の真ん中よりちょっと下の「新たに追加した流れ」については法務省さんから御説明いただくわけでございますが、今までの流れというのは、簡単に書けば、「以前の流れ」とチャートに書かれたところになっているわけですね。

 つまり、協力雇用主として登録した企業を中心に、雇ってもいいですよというところが求人の申し込みをハローワークにします。ただし、会社の所在地のハローワークに言うんですね。今度、矯正施設、刑事施設は、出た後に元受刑者を再就職させるために、ハローワークに協力依頼をしたり、職業相談があれば乗ったりということになっているんですが、ハローワークを真ん中にしてマッチングをしているんですけれども、私としては、さっきの数字を聞くと、恐らくこのマッチングがうまくいっていないがために実際に雇っている企業の数が少ないんだろう、こう思っております。

 そこで、こういう現状について、ハローワークを所管している厚労省さんと、それから法務省からも、どうして一万一千もの協力雇用主がありながら、実際に雇っている会社は三百八十なのか、その原因は那辺にあるのか、簡潔に、率直に御答弁いただければと思います。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 刑務所出所者等の雇用につきましては、ハローワークと刑務所あるいは保護観察所等が連携して実施しております刑務所出所者等就労支援事業に基づきまして、トライアル雇用などを活用して支援を行っているところでございます。

 その実績でございますが、平成二十四年度の支援対象者数は七千二百九十五人、就職件数二千五十八件、就職率が二八・二%なんですが、このうち矯正施設入所中における実績が、二千八百六十一人の支援対象者に対して就職件数八十一件と、就職率が極めて低い状況ということになり、要は全体の就職率を押し下げております。

 この要因といたしましては、矯正施設内では就職活動がある程度制限されているということが主たる原因とは考えられますが、そのほかにも、協力雇用主の求人情報が受刑者等に対して十分に行き届いていないということが考えられるところでございます。

 このため、協力雇用主の求人情報が受刑者等に直接伝わるような形での受刑者等専用求人の取扱いを整理いたしまして、本年一月に都道府県労働局宛てに通知したところでございます。

 厚生労働省といたしましても、法務省と連携して、引き続き刑務所出所者等就労支援事業に取り組みまして、刑務所出所者の就労支援というものにしっかり取り組んでいきたいと思っております。

齊藤政府参考人 委員御指摘のマッチングがなかなかうまくいかないということ、御指摘のとおりだと思います。

 その原因はいろいろ考えられるんですが、協力雇用主さんの構造を見てみますと、建設業、サービス業、それから製造業の三業種で大体七八%を占めているということでございます。また、従業員の規模が三十人未満のところが全体の大体六〇%を占めているというのが実情でございます。

 そういうことで、業種が偏っているということがやはりマッチングに対して少しうまくいかない原因になっているのかなというふうに思っておりますし、やはり規模が小さいというところはなかなか、新たにプラスアルファで、今いる人に加えてさらに雇う余裕がないというようなこともあるんじゃないか、そういうところでなかなか雇用が進んでいないのではないかというふうに思っているところでございます。

遠山委員 それで、ちょっと時間が思いのほかなくなってまいりましたので、大臣、きょうは最後の質問で伺いたいんですが、その前に、今の厚労省からの御答弁と法務省からの答弁に少しヒントがあると私は思っているんですね。

 それは、一つは、協力雇用主はたくさんいるんだけれども、そこの求人情報が矯正施設の中にいる受刑者にきちんと届いていない。例えば、私が矯正施設内にいる元受刑者の身になって考えれば、どこの企業がどういう仕事を募集しているか、刑務所の中にいてわからなければ、これはなかなかたどり着きようがないわけでございます。

 それで、ちょっと法務省さんに説明していただく時間がないので自分で説明しますけれども、この資料二番の紙にまた戻っていただきたいんですが、この下の、大臣は御承知だと思いますけれども、「新たに追加した流れ」というところがございます。

 これは、私が大変親しくしております福岡の介護施設の方々が、ぜひ自分たちの介護施設に元受刑者を雇いたいと私に去年連絡がありまして、すぐ法務省の保護局、矯正局の皆さんにつないだところ、この介護施設の方々は非常に熱意がありまして、介護の資格を取れるような刑事施設を自分たちで回りたいと。それで、特別に、当時は特別に、これからは普遍的になると思いますけれども、法務省さんの許可をいただいて、その介護施設の職員が刑事施設を大分回りまして、面接をしたりしながら、二、三カ月の間に二人、すぐ雇っていただくという成果につながったわけでございます。

 それにヒントを得て、法務省さんと厚労省さんで相談されたのがこの新しい流れになるわけでございますが、これを見ていただくとわかるとおり、企業の方が採用希望する矯正施設をあらかじめ指定して、ですから、先ほど奥野副大臣がおっしゃっていましたけれども、農業法人で例えば受刑者を雇いたいという方は、もう網走の刑務所を指定して、そこに求人情報を送らせて、そして面接も場合によっては行くという形でやっていけば、ミスマッチを減らすことができるのではないかというふうに思っております。

 あともう一つ、法務省さんから、建設、サービス、製造業に偏っている、中小企業に偏っている、こういう御指摘がありました。それはもしかしたら原因の一つかもしれませんが、これから、今政権がかわりまして大分景気がよくなってきて、建設もサービスも製造も上がってきているわけですし、これが中小企業にも波及していかなきゃいけないという段階に入っていると思います。

 そういうことからすると、今我々が見ている条件というのは、これはさらにふやせる方向に行くんじゃないかと思っていまして、私、これは個人的な決意ですけれども、ぜひ、協力雇用主さんが一万一千いるならば、その一割ぐらい、千百社ぐらいで実際に雇っていただいている、一割というところぐらいを政府も目標にして、もちろん、すぐにはできませんから、三年以内ぐらいに協力雇用主登録会社の一割ぐらいが実際に雇っていただいている、こういう状況をつくるべく政府として努力すべきだと思いますが、最後に大臣の御決意を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 やはり出所者の就労先を確保するためには、つまり、前科等があることもわきまえながら雇ってくださっている協力雇用主の活用は必要だと思います。

 それで、一つは、遠山先生が御努力された、ミスマッチをなくしていくといいますか、マッチングをよくしていく。今の新たな仕組みというのは、日本財団がやっていただいている職親プロジェクトも同じような、ここから雇いたいというような情報を送るようなことをやっていたり、今先生がおっしゃったのは、それをもっと広げていこうということで、これは意味があるなと思います。

 それからもう一つは、やはり協力雇用主に対する支援策も大事でございまして、今度、平成二十六年度政府予算案においてその拡充を図ることにしておりますのは、職場定着協力者謝金という制度がございます。いろいろやっていただいている職場定着のための生活指導等々に着目して、そういうことやらせていただく。

 それから、「世界一安全な日本」創造戦略で、出所者を雇用する民間の事業主に対して、総合評価落札方式、競争入札の中でポイント制を入れていくというようなことも考えておりますので、そういった支援策も充実させていかなきゃいかぬということだろうと思います。

 そこで、数値目標というと、ちょっとまだ十分その数値目標、雇用情勢等ございますから、我々、まだ十分な御返答をする用意がないわけですが、今のようなことを通じて、協力雇用主に雇っていただける環境をさらに整備していきたい、このように思っております。

遠山委員 大変前向きな御答弁、ありがとうございました。

 時間が参りましたので、残った質問はまた別の機会に入管局にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 この国会でも法務委員会ではいろいろと質問させていただくと思いますので、大臣初め、ぜひよろしくお願いいたします。

 さて、今、大学入試のシーズンでございまして、テストの本番の前には、私も、昔は一問一答の想定問答集などを使って社会などは勉強したものだなと思っておりましたところ、先ごろ、資料一をごらんになってください、実は、刑事裁判でも、大学入試ではありませんが証人テストというものがありますけれども、その前に、証人に想定問答集というのが使われていたという記事がございました。

 朝日新聞の大阪版の記事でございますけれども、ちょっと写りが悪いので見えにくいんですけれども、要は、証人尋問の本番の前に証人テスト、すなわち事前に面接して打ち合わせのようなことをやるわけです。これ自体は刑事訴訟規則にも明文の規定がありまして、問題はないわけですけれども、その際に、一問一答の想定問答集をつくって、しかもそれを証人に渡したということがここに書かれているわけであります。

 そもそも、この証人テストの際に、想定問答集なるもの、具体的に言うと、次の資料二、ページ番号でいいますと、ちょっと途中抜け落ちておりますので、右端に十と書いてありますが、その下をごらんになっていただければ、これが実際の想定問答集になるわけでございます。この想定問答集については、赤堀さんという方の陳述書に付されていたものでございまして、弁護人を介して御了解を得た上で、きょう提出させていただいております。

 この想定問答集が、質問だけではなくて答えの方まで微に入り細に入り書かれているということでありますけれども、こうした想定問答集をつくることは実務上よくあることなのかどうかということについて、まずは刑事局長の方からお答えいただければと思います。

林政府参考人 証人テストの実務についてのお尋ねでありますが、一般論として申し上げますと、検察官は、公判廷において適切な尋問をするために、いわゆる証人テストにおきまして、証人に事実関係を確認し、その確認結果に基づき、みずからが質問する事項やその順序を整理する目的で、尋問事項等を記載した尋問事項メモというものを作成することがあるものと承知しております。

階委員 作成することはあるということなんですが、その際に、証人の答えまで書いて、そして、その答えが入ったものを証人側に渡すということも実務上はあり得るということでしょうか。

林政府参考人 証人テストの実務におきまして、もちろんさまざまな対応があると思いますけれども、証人事項メモの中で、尋問事項のみならず、それに対する証人の答えというものを記載することもあり得るものと承知しております。(階委員「渡すことは」と呼ぶ)こういった形で証人事項メモを作成することがあるものと承知しておりますが、法務当局におきまして、検察官がこの証人事項メモを当人に渡して持ち帰らせるとか、こういったことについて、そういう事案について網羅的に把握しているわけではございません。

階委員 把握していないということは、そもそもそういうことは、実務上、慣行としてはなされていないということで、慣行としてはそういうことはないということでよろしいですか。

林政府参考人 お尋ねが、一般的にそういう実務慣行があるのかということについては、私どもとして把握しているわけではございません。(階委員「ないということですか」と呼ぶ)全ての事案においてないということを申し上げておるのではなくて、一般的にそういった実務慣行がよくあるのかどうかということについて把握しているわけではございません。

階委員 そこで、では、一般論としてお聞きしますけれども、例えば、いわゆる想定問答集の方でいくと、右端の番号、手書きのページ番号で十一ページというところをごらんになっていただくと、一番下のところで、「被告人にお会いして、どのような話があったのでしょうか。」という問いに、答えの欄には、「私は、内閣官房副長官への就任祝を申し上げただけでしたが、○○会長は、鈴木代議士に対して、林野庁への口添えをお願いしました。」これは事実関係の答えですね。

 十二ページ。冒頭の十三番の質問ですけれども、「○○会長は、林野庁へ何を口添えしていただくようお願いをしたのですか。」という問いに対して、答えの欄には、「当時、やまりんは、国有林の盗伐により、帯広営林支局から行政処分を受けて、次の年の一月末まで、木を売ってもらえないこととなっていました。この行政処分が終わった後、年度末までの間に、例年どおりの一年分の木を買えるようにしていただくことの口添えをお願いしていました。」

 これも事実関係ですが、内心にかかわるようなことまで想定問答に書かれているということで、十九ページをごらんになってください。例えば、真ん中あたり、百四十四という質問をごらんになっていただきますと、「被告人に対して、お金を渡すということについては、どうお考えでしたか。」という問いに対しては、答えの欄に、「私、元々、鈴木代議士を支持していましたから、就任祝い金を出すということ自体については、異論はありませんでした。ただ、○○会長は、鈴木代議士にお願いをして、お金を渡すということでしたので、お願いの見返りということになってしまうと思って、そんなことまでするのかということで、抵抗はありました。」

 さらに、百四十六、同じページを見ていただきますと、「証人、ただ今の○○会長の被告人へのお願い、これを聞いて、どう思われましたか。」という問いに対して、「私、単なる就任祝だと思っていたんです。それが、喪が明けてから年度内というと二月と三月の二カ月しかないわけで、その間に、例年並みの実績というのは無茶なお願いだと思いましたし、そんなお願いを、全員の前で、公然と、○○会長が口にしたことに正直驚きました。」内心面についても、こういう想定問答が用意されている。

 さらに、二十ページを見ていただきますと、百四十八番、「被告人は、そのお願いに対して、どう応対してきたのですか。」「確か、すぐには、うんと言ってくれなかったんです。それで、○○会長が、そこを何とかとか言って、ねばったのを覚えています。」。百四十九、「結局、どうなったのですか。」という問いに対して、「引き受けてくれたんです。鈴木代議士は、確か、「分かりました。やまりんさんのために尽力してみましょう。」と言ってくれたと覚えています。」これは、罪体を立証する上で非常に大事なことだと思うんですが、これも想定問答になっているということであります。

 あるいは、二十一ページ。真ん中あたり、百七十七番の問いで、「何故、真実の事実経過を検事に話すことはできないとお考えになられたのですか。」ということで、「盗伐問題の対処は、あくまで、○○会長、○○社長、○○が考えてしたことであり、鈴木代議士へのお願い、見返りとしてのお金にしても、○○会長がお考えになってやったことでした。私は、率直に言って、部外者でただ同席しただけということになります。ですから、検事に全て真実を話すべきなのは、○○社長や○○であり、部外者でただ同席しただけの私が、全てを話すべきではないと考えたのです。」非常に詳細かつ具体的なことまで想定問答集に書いているということです。

 ところで、他方、刑事訴訟規則には、百九十九条の三という条文があります。この百九十九条の三というのは、いわゆる誘導尋問を原則として禁止するための刑事訴訟規則の規定でありまして、主尋問においては誘導尋問してはならないということで、一定の例外はございますけれども、三項で原則禁止を定めた上で、四項では、「誘導尋問をするについては、書面の朗読その他証人の供述に不当な影響を及ぼすおそれのある方法を避けるように注意しなければならない。」という規定もありますし、五項として、「裁判長は、誘導尋問を相当でないと認めるときは、これを制限することができる。」という規定があります。

 事ほどさように、刑事訴訟規則において、誘導尋問については、これは許さない方向の規定があるわけでありまして、今、仮にですけれども、想定問答集なるものを用いて証言を証人に求めるのであれば、今申し上げました刑事訴訟規則百九十九条の三に反するのではないかと思いますけれども、この点についていかがでしょうか。

林政府参考人 一般論として申し上げれば、証人はあくまでもその自己の記憶に基づいて公判で証言するものでありまして、御指摘のように、検察官がその証人に対して、この尋問事項メモどおりの内容を証言するよう求めることはないものと承知しております。

 もとより、刑事訴訟規則百九十九条の三第三項は、主尋問において、誘導尋問をしてはならないという旨を規定しております。証人テストも、その証人尋問の準備として行われるものでございますので、そういった誘導尋問をしてはならないという趣旨に照らして、証人テストにおいても、検察官が証人に対して特定の事項を証言するよう誘導しているのではないかとの疑念を招きかねないような行為は避けるべきであると考えております。

階委員 これも一般論としてお聞きしますけれども、先ほど資料でお示しした想定問答集に書かれてある問いと答え、特に答えの方が、今この時点で事実かどうかというのは、私の立場からは何もわかりませんけれども、仮にこうした想定問答集を用いて事実に反する内容の証言を証人に求めるのであれば、これは裁判所に対する欺瞞行為でありまして、偽証罪の趣旨に照らしてみても、偽証罪の教唆犯に当たるというふうに考えますけれども、これで間違いないでしょうか。

林政府参考人 これについても一般論として申し上げますけれども、刑法百六十九条は、「法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。」と規定しております。証人の記憶に反する内容の証言を仮に証人に求めるような行為は偽証罪の教唆犯に当たり得るというところでございます。

 検察当局においては、証人が体験した事実、記憶状況、表現能力等について十分確認するなどして、適切に証人尋問の準備を行っているものと承知します。

階委員 そこで、法務大臣にお伺いします。

 先ごろの大臣の所信の中でも、新たな刑事司法制度の構築等という項目を設けられて、例えば、公判審理の充実化を実現するための諸方策について、制度設計に向けた検討を進めていくということであるとか、刑事司法制度を国民からより一層支持、信頼されるものとするため、検察の改革のための取り組みを着実に実施してまいります。こういったくだりがございました。

 私が、きょう取り上げました、この証人テストで想定問答集を作成して、一般論として渡されるということはないというお話でございましたけれども、そもそも、こうした想定問答集があり得るということ自体が刑事司法に対する信頼を揺るがしかねないのではないかと私は思っております。

 私は、この問題について、新聞記事の中でも有識者の方が言われていましたけれども、証人テストについても透明化、可視化を図るべきだというような提言などもありましたけれども、今現在、法制審議会では、証人テストのあり方については特段の議論がされていないものと承知しております。

 証人テストのあり方について、法制審議会でもきっちり議論をして見直していく、こういうお考えはありますでしょうか。

谷垣国務大臣 今、階委員がおっしゃいましたように、昨年の一月に、刑事司法制度特別部会で、今後の検討事項や検討方針を示した基本構想を取りまとめたわけです。そして今、その部会のもとに設けられた作業分科会でつくったたたき台をもとに議論が進められているところでありますが、その中では特段、証人テストのあり方について見直すべきであるという事項にはなっておりませんし、そのような御意見も聞いていなかったところでございます。

 諮問している立場の私は、今後、法制審議会の審議状況を見守ってまいりたいと思いますが、ただ、一般論として申し上げれば、先ほど刑事局長が御答弁申し上げているように、私の立場として個別の事件の立証方法に対して個別に申し上げるつもりはございませんが、偽証あるいは誘導尋問を教唆するようなことは差し控えるべきであろうと思います。

階委員 きょうは、先ごろの朝日新聞に取り上げられました鈴木宗男さんの事件に関するものでございましたけれども、この後、鈴木貴子議員の方からも、別の案件について同じような想定問答集がつくられていたという御指摘もあるようでございます。また、それ以外にも、一月五日の朝日新聞にも似たような話が掲載されていたと思っております。

 証人テストのあり方は、刑事裁判の帰趨を決する非常に重要な課題でございますので、ぜひこれについても、法務省として、刑事司法の信頼をしっかり担保するために取り組んでいただきたいと思っておりますが、その点、もう一度お考えをお示しいただけませんでしょうか。

谷垣国務大臣 私は、先ほど一般論で申し上げたようなことを踏まえていかなきゃいけないとは思っております。あとは法制審議会でどういう御議論をしていただくか、その結果は見守らせていただきたいと思います。

階委員 私も、この問題については非常に重要な問題であると思っていますし、今まではこの委員会でも主に被疑者、被告人を中心とした取り調べの可視化を図るべきだ、そこに検察官の不法な行為であるとか、あるいは虚偽の自白などがなされることのないような手だてが必要ではないかということで可視化を申し上げてきましたけれども、証人についてもこのような問題が、今までスポットを当ててきませんでしたけれども、きょう改めて皆様に認識していただいて、さらなる可視化の取り組みをしていきたいと思っております。

 話題をかえます。

 先日の所信の中で、大臣が冒頭におっしゃられた中で、法の支配というお話が二回にわたって出てきております。まず、「国民生活の安全、安心を確保し、社会経済を持続的に発展させていくためには、揺るぎない法の支配の確立が必要です。」と冒頭でおっしゃられ、その後、「社会経済を持続的に成長させ、かつ、復興を支えるためにも、法の支配の貫徹は不可欠な要素と考えます。」というくだりがございました。

 法の支配という言葉と法治主義という言葉、よく普通の人は同じような意味ではないかというふうに捉えがちなんですけれども、私も谷垣大臣も憲法を学んできた、司法試験もパスしてきたということで、この法の支配という言葉をあえて使っているということに私は非常に重い意味があるのではないかと思っていますが、ここで法治主義とか法治国家という言葉を使わずにあえて法の支配を使われた、その意味について教えていただけますか。

谷垣国務大臣 一つは、法の支配というような考え方が、日本だけではなく、先進国と言ってはよくないのかもしれませんが、ある意味で、目指すべき方向の基本にそういう流れがあるのではないかと私は思っております。したがいまして、国際的にいろいろな意味での交流を結ぶ場合も、法の支配の浸透度合いというものはお互いの信頼関係を非常に高くするのではないかという考え方が一つございます。

 それから、今、法治主義と法の支配、いろいろな言葉がある中でなぜこの言葉を選んだのかというお話がございました。

 これは、私の気持ちとしては、私も自分の気持ちを十分に整理できているわけではないんですが、一つは、法の支配と言う場合に、法治主義という言葉よりもプロセスを重視するということがあるのではないか。デュープロセスという言葉がございますけれども、先ほど、イギリスの場合で古きよき法ということがございましたけれども、やはり、あるべき法を発見していくのもプロセスという考え方が必要なのではないか。これは英米法、特にイギリス法の考え方ではないかと思いますが、私は、そういうプロセスの重視ということが大事ではないかという気持ちが一つございます。

 それ以上に、ちょっと自分の気持ちを十分に分析できているわけではありませんが、さらにもう一つ申し上げますならば、必ずしも、法の支配という言葉で表現するのがいいのかどうかわかりませんが、要するに、国家権力も法に縛られる、権力者も法のもとにある。例えば、支配政党は法を超えている、法の上部にある、こういうような考え方を否定するには、法治主義というよりも法の支配という言葉の方がニュアンスが通ずるのじゃないか。十分煮詰めたわけではございませんが、そんな感覚でございます。

階委員 今、最後の方で非常に大事なことを言われたと思います。

 私も、法治主義と法の支配の意味の違いを最初に学んだときに非常に印象深かったのは、法治主義というのは、戦前のドイツなども法治主義国家だったというふうに言われております。ただ、そこで言っている法治主義の法の中身は、議会で決めれば何でも法です、それを守れば法治主義ですということで、中身の合理性が問われないのが法治主義である。

 一方で、法の支配と言う場合の法というものは、中身の合理性もしっかりしたものでなくてはいけない。より具体的に言うと、専断的な国家権力の支配を排斥し、権力を法で拘束することによって国民の権利、自由を擁護することを目的とするのが法の支配であるということであります。

 ですから、大臣がおっしゃったように、時の政治権力が法の上に立つというような考え方ではないということであります。

 さらに言えば、立憲主義ということとも密接な関係があるわけです。私は、法の支配ということを貫徹するのであれば、やはり時の政権が余り法の上に立つというようなことをやってはいけないのではないかということで、具体的には、憲法解釈を変更するというやり方で集団的自衛権の行使を認めるということは法の支配とはちょっとそぐわないのではないかと思っておりますが、この点について、大臣の御見解、お願いできますでしょうか。

谷垣国務大臣 集団的自衛権の問題は、ここが議論する場か、私が政府を代表して御答弁する立場にあるかどうかがありますので、一般論として申し上げますと、私は、憲法解釈というのは、やはり国の基本法でありますから、やたらにぐらぐらするようなものであってはいけないと思います。やはり安定性と申しますか、永続性と申しますか、そういうものを基本としているんだろうと考えております。

 その上で、長い間こういう解釈でやってきたけれども、この解釈ではなかなかうまくいかないなとか、不都合が出てきたなというのは、時間の経過とともにそういうことが起こってくることは、私は一般論としては否定できないと思っております、そういうこともあり得るんだろうと思います。

 では、そういうとき、どういうところがイニシアチブを発揮し、どういう形でやっていくかというのは、いろいろなお考えがあると思うんですが、現実に日本の例でも、例えば、最高裁判所が、今までは別な解釈をされて実際運用されてきたけれども、これは現在においては違憲であるというような判断をされることがございますね。それは、裁判所がイニシアチブをとって憲法解釈を変えていくということが今までもあったんだろうと思います。

 それから、もちろん立法府の中でも、今までと解釈を変えて、これも例えば、合憲的な法律としてつくれるぞというふうに、立法府の中の御議論でそういうことを進めていく場合もないわけではないだろうと思います。他方、内閣総理大臣がリーダーシップをとって内閣としてやっていくということも、私は、場合によってはあり得るのだろうと思います。

 しかし、私が先ほど申し上げた、法の支配とか憲法解釈の安定性というところから申しますと、では、行政府なりなんなりが憲法解釈を変えていく場合に、どういう手順、段取りを踏んでいくか、どういうプロセスでやっていくかということは極めて大切なのじゃないかと思います。そこを全部捨象してしまって、えいやでできるというふうには私は思いません。

 どういうプロセスを踏むべきかということについては、議論が必ずしも十分に煮詰まっているわけではございませんので、時に大きな案件であれば、どういうプロセスによるべきかという議論もなされなきゃいけないと思いますが、そういうプロセスを踏むということが私は非常に大事なのじゃないかと思います。

階委員 まさにそのプロセスが、今のままだと安倍総理の考え方でもって憲法解釈が変わるということがいいのかどうかというのが、大変な議論になっているわけでございます。

 やはり憲法の最終的な解釈の変更は主権者である国民の手に委ねられるべきだ、それが私は本来あるべきプロセスだというふうに考えておりますけれども、この点について、もし御見解があれば、お願いします。

谷垣国務大臣 今の階さんの御議論は、では、その主権者の判断をどこでするか。これは、法の場合は、それが選挙なのかどうかというのもなかなか難しいところでございます。

 それから、最終的にはそれは主権者ということになるんでしょうが、私は、先ほど申し上げたこと、ちょっと階さんの問題意識とすぐ合うかどうかわかりませんが、やはりきちっとしたプロセスを踏んでいくことによって、国民の合意点やらあるいはあるべき法というものを、今のいろいろな時勢の変化の中で、あるべき法は何なのか、あるべき憲法は、解釈は何なんだという、それはプロセスの中で検証して、落としどころというとちょっと言葉が悪いですけれども、妥当な結論を探っていくということが、あるべき姿ではないかと思っております。

階委員 憲法解釈についても、やはり法の支配という観点から、先ほど、プロセスが大事ということと、権力が法の上に立つことがないようにという、要は権力を抑制していくという観点からの御答弁もいただきましたので、その二つはぜひ重視していただいて、内閣の一員として、法の支配がもし揺るがされるような事態が生じたら、これは本当に日本国にとっては大変なことでございますので、ぜひその点はお願いしたいと思っております。

 それでは、次に行きますけれども、きょうのこの質疑の中でも、再犯防止ということが、いろいろな方からテーマとして上がっております。

 私がちょっとここで申し上げたいのは、再犯防止のためには、保護観察を、なるべく広い範囲で、かつ、できれば長い期間つけるという制度が必要ではないかということを御提案させていただければと思っております。

 お配りしております資料の四と五を見ていただきたいんです。手書きで二十六ページと付しているところをまず見ていただくと、先ほどもどなたかが御指摘しておりましたけれども、再犯で受刑者の方が刑務所に入る方の中で占める割合が六割に達しているということで、この割合がどんどんふえてきているわけでございます。全体としての刑務所に入る数は減っている中で、再入者がふえているということなんです。

 さて、この再入者、再犯をどうやって食いとめることができるかということで、私が注目したのがその次の資料でございます。手書きで二十七ページ。

 グラフが二つ並んでおりまして、出所受刑者の出所事由別累積再入率ということで、左側は、出所してから五年以内に罪を犯してまた刑務所に入った人が年を追うごとに五年間でどのように推移しているかというものを見たもので、右側は、その見る期間を五年ではなく十年に延ばしたものでございます。それぞれ、満期釈放の方、仮釈放の方、それとそれらを合わせた方ということで、三つに分けてグラフを表示しております。

 このグラフ、二つのグラフから私は三つのことが読み取れるのではないかと思っております。

 まず一つ目は、これは一目瞭然ですが、一番上の折れ線グラフが満期受刑者でございます。カラーじゃないとちょっと見づらいかもしれませんが、一番上のグラフが満期受刑者、一番下のグラフが仮釈放の方でございます。すなわち、仮釈放された方の方が、再度罪を犯して刑務所に入る割合がうんと低くなっているということであります。半分まではいかないですけれども、大体六割ぐらいになっているということが一つ。

 それから二つ目は、これは満期受刑者にしても仮釈放の方についても言えることなんですが、特に、右側の方を見ていただくと、大体、出所から五年ぐらいは右肩上がりで再入率、再犯を犯して刑務所に入る割合がふえてくるんですが、五年ほどたつと頭打ちになってくるというのが二つ目です。

 さらに三つ目ですが、これはちょっと細かく見ていただかなくちゃいけないんですが、左側のグラフの一番下の折れ線。

 これは仮釈放者で見る場合ですけれども、仮釈放者の場合も、仮釈放の期間というのは、大体、刑期を八割方終えて、残り一割、二割という刑期について仮釈放になるわけですね。ということは、標準的なケースだと、一、二年の期間仮釈放になって、一、二年過ぎると仮釈放が終わって刑期が終わったということになります。

 仮釈放中は保護観察ですから、もし何か悪いことをしたら保護観察取り消しということになって、また刑務所に戻らなくちゃいけないということで、悪いことをしないというインセンティブが強く働くわけでございますけれども、保護観察期間が終わるとそういうインセンティブがなくなるということで、実際に、このグラフを見ていただくと、左側の一番下の折れ線で、出所から二年以内のところでは、再犯で入る人が一〇・六%ぐらいなんですが、そこら辺で保護観察が切れるとどんどん再犯の率が高まっているのではないかということが大体見てとれるのではないかと思っております。

 以上を前提にして、以下、法務大臣にお尋ねします。

 まず、今申し上げたとおりに、出所者の累積再入率を見ると、仮釈放者についても、出所後五年までは上昇が見られるが、特に、仮釈放中の保護観察が終わる二年目以降は再犯がふえていると思われます。

 そこで、保護観察期間を長くするほど、例えば五年ほどにすれば、再犯防止という意味では効果があるのではないかと思うんですが、この点について、いかがお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 保護観察は、その期間中、対象者に対して、これを守ってくださいと一定の遵守事項を定めた上で、保護観察官やあるいは保護司がいろいろな指導をする、監督をする、それから種々の支援もする、こういうことでございますから、実施しない場合に比べて再犯が減少することは当然期待される、それができないようであればまた困るということです。

 このことは、仮釈放となって保護観察が実施された場合の累積再入率が満期釈放者よりは相当低くなっている、それから、仮釈放期間中に再犯により刑事処分を受ける比率が極めて低いこと、これは御指摘になったことですが、そういうところから、やはりこういう効果が出てくるのは期待しなきゃいけないことだろうと思います。

 ですから、委員のおっしゃった基本的な方向は私もそう思いますが、他方、保護観察期間を長くすると、当然のことながら、要するに保護観察官の人数も要る、それから経費がかかってくるということもございます。ですから、限定された資源をどう投入すべきか、やはりそこでもう一回考えなきゃいかぬという問題がございます。

階委員 確かに、保護観察に要する人員のコストとかそういうことも考えなくちゃいけないんですけれども、再犯を防止することによるメリット、コストの減少などもあるわけです。ですから、そこは比較考量して判断しなくちゃいけないと思っております。

 私の立場から次に申し上げたいことは、今の制度は、先ほども申し上げましたけれども、仮釈放の期間というのは、大体、刑務所で刑期を八割、九割終えて、残りの期間だけ仮釈放になっているという、いわゆる残刑期間主義というものであります。

 ただ、ドイツなどで恐らくそういう制度になっているというふうに聞いたんですけれども、残刑期間ではなくて、例えば、自由刑の一部を執行して、八割、九割でもいいです、残り期間は本来一年だけれども、保護観察はその一年を超えて五年ぐらい保護観察にできるというような仮釈放の期間の定め方、もちろんその場合は個々具体的に再犯の危険性なども勘案して決めるというものになるんですが、そういう考試期間主義というものを採用した方が、私は再犯防止ということではいいのではないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 委員のお考えも、あるいは、きょういろいろありました御議論も、矯正施設の中での処遇ということだけではなく、社会内の処遇というものをいかに活用して再犯を防いでいくか、そのためにはどういう手法が一番いいかということなんだと思うんですね。

 それで、今委員のおっしゃった考試期間主義というのは、実は法制審議会でかなり議論がされまして、そこでは二つほど問題点が指摘されております。

 それは、仮釈放の期間が残刑期間に限定されないで、裁判所が宣告した刑期よりも長期間にわたって対象者の自由を制約することになるのではないかという論点ですね。それからもう一つは、仮釈放の段階で残刑期間を超えて社会内処遇を決めることができる、その期間を超えて決めることができるというのであれば、実質的に刑の事後的変更に当たる、しかもそれを行政機関の判断でしてしまうことになるのではないか、こういう御議論が出まして、考試期間主義についてそれ以上大きな支持が広がらなかったという実は経緯がございます。

 そこで、何をするかということを考えまして、昨年委員会で御審議を願いました刑の一部の執行猶予制度の新設ということで、これは平成二十八年六月までに施行するということにされておりますが、そちらの一部執行猶予制度の方で対応しようという議論になりました。

 したがいまして、当面は、この一部執行猶予制度をどう運用していくか、その運用状況を見守った上で、さらに御指摘のようなことを考える必要があるのかどうか、私どもの頭の中は今そういう回路でございます。

階委員 確かに、昨年私も質問させていただきましたあの刑の一部執行猶予制度で、ある程度考試期間主義的な要素は取り入れることができます。ただし、本体の刑が三年以内でないと一部執行猶予はできないんですね。

 例えば、懲役三年、ただし、二年については実刑で、一年については五年間執行を猶予するということになりますと、三年を超えて、二プラス五ですから七年ぐらいは保護観察も含めて行動を制約することができるということですから、考試期間主義的な意味が出てくるわけです。

 ただ、先ほど申し上げました、本体の刑が三年という縛りがあるんですね。ただ、私もそのとき申し上げましたけれども、長期の刑であればあるほど考試期間主義というのは必要なのではないか。つまり、長期の刑を犯すということは、それだけ犯罪傾向、反規範的な人格形成の可能性が高いわけですから、より社会内処遇の期間を長くして、残り期間が一年だから一年で終わりではなくて、ちゃんと立ち直りをさせるように五年ぐらい保護観察に付さなくちゃいけないのではないかという問題意識なんです。その点について、今の一部執行猶予制度では対応できないということで、考試期間主義が必要ではないかということを申し上げました。

 それから、もう一つ、もし仮に懲役十年といったら、その後、事後的に保護観察をするときに、保護観察の期間も含めて十三年ぐらいになっちゃうと、それは事後的変更ではまずいというのであれば、当初の判決の段階で分割刑という仕組みがあります。済みません、これは、ちょっと不勉強で、どこの国の制度にあるかまでは勉強していなかったんですけれども、分割刑制度を導入することによって、例えば懲役十年、保護観察五年ということになると、十年という実刑の後に五年間保護観察が確実に付されるということになります。

 この保護観察と懲役などの自由刑とを一体で言い渡す分割刑制度というのを導入することを考えてみてはいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 分割刑制度は、法制審議会の御議論の中でも、今委員がおっしゃったような観点から、これを採用することがいいのではないか、導入を支持する御意見もあったわけでございます。

 確かに委員のおっしゃったようなメリットがある制度であることはこれは間違いないだろうと思いますが、法制審議会の御議論では、やや原則主義的なことかもしれませんが、自由刑の後に独立して課される保護観察の法的性格を一体どのように考えていくのか、そこの整理がまだ十分につかなかったということが一つございました。

 それから、そういう独立の保護観察期間中に義務違反があった場合に、執行猶予の取り消しのように、再び施設内処遇に戻していくというような、不良措置というようなことが講ずることができない。そうすると、保護観察の実効性をどういうふうに担保していくのかというような御議論がありまして、そこで意見の一致が見られなかったわけでございます。

 そういう御議論があることも十分意識しながら、先ほどの繰り返しになりますが、今、一部執行猶予制度の試行をして、どういう問題点があるのか、効果があるのかというのも見きわめながら考えていきたい、このように思っております。

階委員 先ほど、憲法解釈の議論の中で、時代の要請に応じて考えを変えるというのはあり得るということもおっしゃっていましたけれども、これは憲法ではなくて法制度の話ですし、まさに再犯率が上がってきている、再犯をどうやって防ぐかというのが時代の要請としてあるわけですから、ここはもう従来の考え方に縛られない方がいいと思っております。

 ただ、御答弁の中でおっしゃっていた中に、刑期が終わった後に保護観察、その保護観察のときに違法行為があった場合にサンクションがないではないかという御議論、これは非常に重要なポイントだと思います。

 やはり、先ほどのグラフでも見るとおり、サンクションがある刑期期間内の仮釈放であればみんな行動に注意するんだけれども、サンクションがない、つまり、悪いことをしても、仮釈放が取り消されて刑務所に戻らなくちゃいけなくなるという仕組みがないと、なかなか実効性がないのではないか、それもむべなるかなと私は思っております。

 そこで、逆に私が考えますのは、分割刑のうち、分割刑制度を設けるとして、そして保護観察になっていますというときに、保護観察中にもし再犯を犯した場合には通常の再犯の場合よりも刑を加重するというような仕組みを設けることによって、仮釈放中の再犯防止と同じような効果を期待できるのではないかと思っておりますが、その点についてお考えをお聞かせいただけますか。

谷垣国務大臣 この御質問の前に、委員がそういうお考えをお持ちだということを伺いまして、法務省内でも若干議論をいたしまして、委員のお考え、構想が私に十分理解できているかどうかわかりませんが、今のところ、ぱっと考えますと、分割刑における独立の保護観察期間中に罪を犯したことを刑の加重理由とするということですね。

 そうしますと、その加重規定は、独立の保護観察期間中にさらに罪を犯して刑に処せられた場合は、それである程度いくんだと思います。しかし、保護観察期間中の義務違反は、必ずしもそういう場合には限らないんじゃないか。例えば、保護観察に付された者が遵守すべき事項を遵守しなかったというような場合には、執行猶予の取り消しというふうには必ずしもつながっていかないというようなこともあるように思います。

 ですから、ちょっとまだその制度、どういう制度になり得るかということも含めて、いろいろ考えさせていただきたいなというふうに思っております。

階委員 社会内処遇の必要性というのはもう大臣重々御承知でしょうけれども、ある程度軽い刑の人よりも重い刑の人、あるいは、仮釈放になるような、行動の比較的いい人よりも満期釈放になるような人、そちらの方がやはり社会内処遇をして矯正する必要は高いと思いますので、それには今の制度ではなかなか対応できないんです。この問題点をぜひ認識していただいて、再犯防止を最重点の課題にすると所信の中でもおっしゃっていましたので、従来からの考え方にとらわれず、そこは法務省の中で御検討いただければと思っております。

 先日、このメンバーの中にもたくさんいらっしゃると思うんですが、議員連盟で杉良太郎さんのお話を聞いたときに、刑務官のモチベーションを保つのが大変なんだと。それは、幾らこの人をよくしようと思っても、またすぐ戻ってきて、それがやる気をそいでいるというようなことをお話しされていました。

 そういう意味でも、刑務官にとってもこれはまさに重要な話でありますし、また、犯罪被害者の側からしても、やはり凶悪犯ほど刑務所を出たら普通の暮らしをしちゃうというのは納得がいかないんですね。むしろ、凶悪犯であれば、刑務所を出てからもちゃんとした暮らしをするようにウオッチしてもらいたいというのが犯罪被害者の立場でもあります。この点は本当に重要だと思いますので、ぜひ深い検討をお願いします。

 そこで、今犯罪被害者のお話をしましたけれども、犯罪被害者についても所信の中でも触れられていました。現行制度の運用に万全を期すのようなお話をしておりましたけれども、ここでも私はちょっと制度的な提案もさせていただければと思っています。

 まず、昨年四月十八日付で、日弁連の方から、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの設置に関する意見書というのが出されております。資料ではおつけしていませんけれども、大きく三つのことを言っておりまして、総合病院内に拠点を有する病院拠点型のワンストップ支援センターを都道府県に最低一カ所。二つ目として、これとあわせて、相談センター拠点型及び相談センターを中心とした連携型のワンストップ支援センターを含め、女性二十万人につき一カ所。それから三つ目として、国は、こうしたワンストップ支援センターの設置に対し、責任を持って、全面的に財政的支援をすべきであるというようなものでございます。

 今回、内閣府の方から、性犯罪被害者等のための総合支援に関する実証的調査研究事業というのが予算要求されておりますが、この予算では、ワンストップ支援センターも対象となるのかどうか、岡田内閣府副大臣の方からお願いいたします。

岡田副大臣 お答えいたします。

 階委員お尋ねの事業につきましては、内閣府において、平成二十六年度予算案に事業経費を計上させていただきました。金額は、三千八百八十万九千円ということであります。

 この事業は、性犯罪被害者支援に係る官民連携のワンストップサービスの構築、ちゅうちょせずに相談等を受けられるような相談体制、心身を回復するための支援体制の整備等さまざまな取り組みを、六カ所程度の地域を選定して実証的に調査研究することで、地方公共団体による取り組みを支援することとしております。

 この事業、いろいろな意見がございましたけれども、日弁連の意見書も参考にさせていただいております。

 内閣府としては、ワンストップ支援センターの設置を促進する環境づくりに向け、引き続き関係者の意識づけや連携を促進する取り組みを行ってまいりたいと考えております。

 以上です。

階委員 日弁連の意見書も参考にされたということなんですが、国の財政的支援ということも意見書の中で言っております。

 ただ、今回の予算を見させていただくと、三千八百万で、大体六カ所ぐらいに、都道府県でいうと、六都道府県ぐらいに支援をするということで、一カ所当たり五百万円程度だというお話でした。五百万円では少ないと思っていまして、本格的なワンストップ支援センターをつくるのであれば、当然それ以上に経費がかかってくると思います。

 私は、この委員会でも、無料の法律相談とかもすべきだということも大臣には申し上げましたけれども、せっかくこういう取り組みをされるのであれば、まさにその取り組みを契機として全国にワンストップ支援センターが広がるように、各取り組みについて、その予算の範囲だけじゃなくて、広く網羅的にどういう取り組みをしているのかを把握して、それを広めていくという取り組みをされるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

岡田副大臣 この性犯罪被害者支援に関しましては、それぞれの地域の実情に応じて、被害者に対する継ぎ目ない支援を確保し、ワンストップ支援センターの設置を促進する環境がつくられることが重要と考えております。委員御指摘のとおりであります。

 そこで、この調査研究では、地方公共団体の取り組みを支援することを目的として、地域の実情に応じたさまざまな取り組みを取り上げ、研究対象の取り組みのみならず、地方公共団体独自の取り組みを含めた全体像や関連の取り組みとの共同、連携を含め、結果を検証する予定としております。

 またこれからさらに頑張っていきたいと思います。

階委員 ありがとうございました。副大臣、ここで結構でございます。

 ここからは谷垣法務大臣にお尋ねしますけれども、なかなか内閣府の方でも、一歩前進だと思いますが、予算としてはまだまだ心もとない面もあります。

 そこで、一つの提案として、今、刑罰で罰金、それが年間どれぐらい国庫に入ってくるかというのをきのう法務省の方にお尋ねしたら、五百二十億ぐらい入るんだということであります。この五百二十億の一部でも、今のワンストップ支援センターのような犯罪被害者の支援に充てていくことができれば、この犯罪被害者の支援というのはもっと充実していくのではないかと思っておりますが、こうしたことについてどうお考えになりますでしょうか。

谷垣国務大臣 何か韓国では、それに類した制度をつくっているということも伺いました。

 ただ、私も前職との関係があるんですが、財務大臣をやっていたころは、母屋でおかゆをすすっているのに離れですき焼きを食っているなんというようなことがございまして、特会をできるだけ合理化し、また減らしていこうということをやってまいりまして、さて、階委員のおっしゃったのはどういう仕組みでやるのかなと。

 つまり、今は、それが一般会計に入っているわけですね。どこかに充てていくというのは、特別会計をつくれとおっしゃっているのではないのかもしれませんが、要するに、こういう仕組みをつくるのは、犯罪被害者対応というだけではない、かなり全体で考えなければなりませんので、私どもからすれば、もちろん経費はできるだけとってきたいんですが、さて、どういうふうに仕組めるものやら、今ちょっとまだ十分それに対して委員会で責任を持ってお答えするところまでは頭が行っていないことをお許しください。

階委員 ぜひそうしたことも検討していただいて、犯罪被害者というのは世の中の人には特別な立場であるということで、余り自分事として考えていただけないところもあるんですけれども、これは万人がいつ何どき被害に遭うかというのはわからないわけですね。自分事として考えた場合に、やはりいざというときには国がちゃんと財政的にも支援していただけるというのは、これは日本の国のあり方として私は正しい方向ではないかと思っております。

 そこで、もう一つ、性犯罪に関してお尋ねしますけれども、今、強姦罪などについては、親告罪といいまして、被害者の方が処罰を求めないと刑事裁判で刑事罰を科すことはできないということで、例えば、それをいいことにして、加害者が犯罪を犯した後に、警察に言ったら仕返しするぞとか、そういったおどしまがいのことをしたりとか、あるいは、一旦警察に届けを出しても、加害者側の弁護人などから示談を求められて、告訴を取り下げるようにと言われたりというようなこともあるようです。

 これは、こういう犯罪の被害者側のフォローをされている弁護士さんからお聞きしたんですけれども、やはり親告罪というのは、そもそも何のためにそうしていたかというと、被害者のプライバシーを保護するためだということなんですが、プライバシー保護であれば別な方法があるのではないか。最近では、法廷内での被害者のプライバシーに配慮した遮蔽措置がとられたり、起訴状でも被害者の名前が伏せられたりということもお聞きしておりますので、こうしたことを踏まえまして、そろそろ親告罪というのはやめてもいいのではないか、今ではデメリットの方が大きくなっているのではないかと思っていますが、この点について、お考えをお尋ねしたいと思います。

谷垣国務大臣 親告罪の目的は、おっしゃったように、被害者の名誉やプライバシーを守るということだと思うんですね。

 平成二十二年十二月に第三次男女共同参画基本計画というのが閣議決定をされておりますが、その中でも、性犯罪に関する罰則のあり方を検討することとされておりまして、例えば、強姦罪の見直し、非親告罪化とか性交同意年齢の引き上げあるいは構成要件を見直す必要があるのじゃないかというようなものが検討項目に挙がっております。

 したがいまして、法務省として議論しなければならないわけですが、他方、被害者の名誉、プライバシーの保護というのが、本当に今この方法ではむしろ弊害が多くなっているのかどうかというのは、かなり、また異論も伺うところでございますので、よくそれぞれの議論を比較検討していきたいと思っております。

階委員 最後、一点だけ。警察庁に来てもらっていますが、犯罪被害者等給付金の制度です。

 犯罪被害者と加害者との間に親族関係がある場合は、法律上は、犯罪被害者支援法で、「犯罪被害者等給付金の全部又は一部を支給しないことができる。」つまり、原則は支給するんだけれども、例外的に支給しないことができるという書きぶりになっています。

 しかしながら、それを受けた支援法の施行規則において、例えば犯罪被害者と加害者との関係が夫婦の場合には、「犯罪被害者等給付金を支給しないものとする。」ということで原則支給しないとなっているのは法律と不整合、つまり委任の範囲を超えているのではないかと私は思っています。

 この点について、端的にお答えをお願いします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 犯罪被害者支援法は、犯罪行為により、何ら自己の責めに帰すべき行為その他の事情がないにもかかわらず、不慮の死を遂げた者の遺族等に対し、社会の連帯共助の精神に基づいて、国が一定の給付金を支給するものでございます。

 犯罪被害を受けたことについて、犯罪被害者等に不慮性を欠くような事情その他給付を行うことが適切でないと認められる事情があるときは、給付金の全部または一部を支給しないことができることとしており、その具体的基準は、国家公安委員会規則で定めることとしているものでございます。

 親族間犯罪は、互いに助け合うべき親族の間で行われた犯罪であり、親族関係のもつれやトラブルが背景に見られることも多く、先ほど申し上げたような不慮性の高い犯罪被害と同一に論じられず、また、こうした犯罪について給付金を支給することは、結果として加害者を利するおそれもあることから、原則として不支給とすることとする制限を設けているところでございます。

階委員 今の答弁についても、法の支配の観点からしっかり精査させていただいて、また提言をさせていただければと思います。

 きょうは、ありがとうございました。

江崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。初めに、西田譲委員。

西田委員 日本維新の会の西田譲です。

 昨年に引き続きまして、当法務委員会にて、本当に安倍内閣の卓越した閣僚のお一人でいらっしゃいます谷垣大臣と議論できることを大変光栄に感じているところでございます。どうぞ今通常国会もまたよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、通告に従いまして質問に入らせていただきたいと思います。

 まず最初に通告させていただいておりましたのは、大臣所信で強く強調しておられました法の支配についてでございますが、この問題につきましては、午前中の安藤委員並びに階委員との大臣のやりとりの中で、なるほどと思いながら伺わせていただいたところでありまして、繰り返しになる点もありますし、また、私なりの法の支配に対する考え方というものも僣越でございますが述べさせていただければと思います。

 私自身、法の支配というのは、本来、国権の最高機関である立法府を構成する私たち立法府のメンバーこそ、拳々服膺しなければならない考え方だと思っております。立法に当たって、いわゆる法の支配で言うところの法、法律の上位概念に当たるような、先ほど安藤委員もおっしゃいましたけれども、道徳であったり、もしくは科学であったり、そういった法律の上位概念に当たるようなものをきちんと尊重し、それを超える無制限の立法をしてはならないんだ、こういった思想こそ法の支配の根底にあるものではなかろうか。

 大臣が先ほどの答弁で、法の支配がイギリスにて発展したという御説明をいただきました。まさしく古き法はよき法という考え方でありましょうし、あるいは、例えば何か問題が起こったとき、それに対処する法律がない場合には、それを判断する法というのは、制定するのではなく発見するものである、法は制定するものではなく発見するものであって、だからこそ新しき法も古きよき法であるという考え方、これこそ、法の支配の最初のスタートラインに立っていた、いわゆるイギリスのコモンローの考え方ではなかろうかというふうに思います。

 午前中、安藤委員が十七条の憲法のお話をされましたけれども、我が国において法の支配の薫りが本当に爽やかに薫ってくるのは、私は明治憲法だというふうに思っております。明治憲法の告文には、まさしく皇祖皇宗の遺訓という言葉が出てきておりますけれども、これこそ私はこの国における法ではなかろうかというふうに思うわけであります。

 そういった中で、その後、階委員からは法治主義と法の支配の違いということについてもお話がございました。まさしく御指摘があったとおり、法治主義、法実証主義といいましょうか、悪法も法であるといったような結末につながるものでありますし、御紹介があったとおり、ドイツではまさしく、帝国公民法、一九三五年でございましたか、もしくはドイツ人の名誉に関する法というものがきちんとしたプロセスを経て制定されたわけでございますし、さきの臨時国会で大臣がアーレントの映画のお話をされましたけれども、まさしくアイヒマンが、自分が行ったユダヤ人に対する虐殺は法律に従ったまでだと、それをアーレントが悪の凡庸さということで表現をしましたし、こういった法治主義が陥る悲惨な結末というものも私たちは既に経験済みだというふうに思っております。

 そういった中で、たび重ねて大臣が、さきの通常国会の所信においても、そして今回の所信においても、揺るぎなき法の支配の確立、もしくは法の支配の貫徹とおっしゃっていただいていることは、私たち立法府に身を置く人間として大変心強いことだと考えております。

 では、逆に、この法の支配が揺らぐようなことというものはどういったことだろうかということを私自身振り返るわけでございます。

 昨年、私は議論もしましたけれども、時効特例法というものが成立をいたしました。時効という、これこそまさしく文明社会の英知である法であろうかと思っておったわけでございますが、その法であると思っていた時効に対する特例、こういったものは法の支配が揺らぐ立法の暴走ではなかったか、私はこのように思うわけでございます。当法務委員会で審議するのではなく、文部科学委員会の方に行ってしまったわけでございますけれども、例えばそういったこと。

 もしくは、立法府を一旦ちょっと離れれば、例の非嫡出子の違憲判決が出てまいりました。最高裁判所の結論に対して、この立法府から僣越だとは思いますが意見を言うのであれば、例えば違憲判決の理由に、社会情勢の変化に鑑みとか、もしくは国際情勢を鑑みとか、そういった言葉というのはむしろ法の支配を揺るがす考え方ではなかろうかというふうに思うわけでございます。

 法の支配で言うところの法は絶対的真理であって、大臣も最初の答弁でおっしゃったとおり、正義と乖離するものではないというふうに私は思うわけでございます。だからこそ、社会情勢が変わろうが法は法でございますし、社会情勢が変わっても正しいからこそ法であろうかというふうに思うわけでございます。

 つまり、法の支配を揺るがすといったものは、そういった社会情勢の変化であったりする場合もありましょうし、もしくは、法の支配に反対する、いわゆる人の支配でございますね。

 当法務委員会では、私は何か、誰かしらの言葉を引用しなきゃいけないプレッシャーがいつもあるわけでございますけれども、ハイエクの言葉をきょうは引用いたしましょう。ハイエクは、デカルト批判をしたときにこう言いました。人間の理性への過信というのは絶対的な迷信であるというふうに言っております。同様に、例えば国民世論というものへの絶対的な過信というのは迷信であろうかと思いますし、それこそ法の支配を揺るがす一つの物の考え方であろうかと思います。

 こういったことを思えば、私は、昨今、この法の支配を揺るがすような事態に立法府が陥っているような気がしてなりません。本来、法の支配は立法府の我々が深く認識しなきゃいけない考え方でございますが、それを今回もまた法務大臣としての所信で述べていただきました。

 改めて、大臣のこの法の支配に対する考え方、そして思いを伺いたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

谷垣国務大臣 今の御質問を聞きながら、何を答えていいのかなと実は思ったわけですが。

 少し振り返って考えてみますと、先ほど階委員にもお答えしたことかと思いますが、私は、国際環境を見ておりましても、日本が、やはりきちっとした公正な法のもとに統治が行われている、そのもとで社会をつくっていると。これは日本自体の目標ではありますが、恐らく、発展途上国にせよ、皆そういう努力をもっと、共通の目標になっているんじゃないかという思いをこのごろ強くしております。

 今のお問いかけとはかけ離れますが、法制度支援というようなことをやらなきゃいけないと法務省はかなり力を入れておりますが、それも、少しでも法の支配ということのお手伝いができればという気持ちでやっております。

 それと、やはり私は、法の支配を議論しますときに、これは法律の本に書いてあるわけではないんですが、日本の先輩たちの努力に敬意を表したいと思うことがございます。

 結局、武力革命なんかをやりますと、何が正当性の根拠なのか、正当性は力であるということにもなりかねない。なかなかこれは危ういところがあるわけですね。つまり、そういう事態がしょっちゅう起こっていますと、なかなか、その法の背景にある正当性というものをどうつかんだらいいかわからなくなる。

 やはり私どもの国は、いろいろもちろん問題もありますけれども、先輩たちの御努力で、例えば、選挙をやった結論というのは、選挙をやった結論が全て後世から見て正しいかどうかわかりませんが、選挙を行った結論についてはそれなりにみんな尊重していこうということは今のところ確保できていると思いますね。そういうのはやはり先輩の御努力の結果としてあるのじゃないか。私たちはやはりその基礎を掘り崩すようなことはしてはいけない、こんなことを考えております。御答弁になったかどうかわかりませんが。

西田委員 ありがとうございます。

 前段は、今回の予算も増額されておりますが、国際協力としての法支援のお話に触れていただきました。法の支配の考え方をやはり広く、近隣諸国を初め広げていくことの重要性というのは、私も同意見でございます。

 そして次に、国内における法の支配についてのお考えもいただきました。先人たちの経験もしくは労苦のもとに今日があって、それを大切にしていこう。まさしく今、法の支配と、いわゆる世襲の原理と呼ばれますか、私たちが今享受しているさまざまな権利、これは引き継いでいくものだというお考えを御披露されたのではなかろうかと思います。

 私自身、そして日本維新の会という政党で共有している一つの価値観として、開かれた自由社会をいかに守り、いかに発展させていくかということがございます。この開かれた自由社会というものを守るための要塞こそまさに法の支配であり、まさに法の支配はこの開かれた自由社会を守る不動明王だというふうに私は思っております。

 そういった観点で、法務省、大臣所信にもさまざまな重要政策を今回盛り込んでございますけれども、検証をしてまいりたい、このように思っているところでございます。

 さて、法の支配に反対するのは、先ほど私、人の支配も一つの法の支配を揺るがすものではなかろうかというふうに申しました。

 そこで、実は気になるのは、法律制定当時は私は議員ではなかったわけでございますが、裁判員制度でございます。

 本来、裁判となれば、これは職業裁判官が証拠の積み重ねをし、そして法律の専門的な知識に基づき、さらには過去の判例の徹底した研究のもとに裁判を行うものであって、だからこそ、国民の司法への信頼というものの源はそこにあるんだというふうに認識をしておったわけでございますけれども、この裁判に、いわゆる国民という表現で間違いはないんですけれども、うがった見方をすれば、法律の素人、法の素人でもあるわけでございます、国民の目線もしくは国民の声、そういったことを言えば聞こえはいいわけでございますけれども、私は、裁判員制度が導入された当時、党内の司法制度改革のさまざまな議論を経て小泉内閣時に制定されたこの裁判員法の制定時に思ったことは、やはり法の支配が揺らぐのではないかという懸念でございました。法の支配から人の支配へ移行しようとしていっているのではなかろうか。

 実際、この裁判員法の第一条、趣旨が書いてあるわけでございますが、「この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、」本当に資することになるのだろうかというふうに思っておったわけでございます。

 先ほど申しておったとおり、司法への信頼というものは、裁判がやはり、法の知識、判例研究の蓄積、そういったものによってなされるからこそ、そして、プロである職業裁判官がそれに基づいてやるからこそ信頼があるのだというふうに思っておりました。

 これはもう参考人からの御答弁で構いません。大臣がこれまで、私以外の答弁でも法の支配についておっしゃってこられました。この法の支配の考え方に照らし合わせてみて、裁判員制度は法の支配を揺るがすものではないということであれば、ぜひその御説明をしていただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

林政府参考人 裁判員制度と法の支配との関係についてのお尋ねでございますけれども、法の支配につきましては、司法という存在が非常に重要であると考えております。

 裁判員制度を導入された意義でございますけれども、国民の感覚を裁判の内容に反映させて、司法に対する国民の理解と支持を深めることによって、司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようにすることにあると思います。

 もとより、法律の専門家でない国民が刑事裁判に参加する裁判員制度のもとにありましても、裁判というものが法に従って、かつ公平に行われること、これは言うまでもないことでございまして、そのことが法の支配にとっても重要であると考えています。

 まず、この点、裁判員法におきましては幾つかの手当てを講じておりまして、例えば、事件関係者等を裁判員から除外する制度でありますとか、不公平な裁判をするおそれがある者についての不選任請求などの仕組みがあって、冷静に判断することができない、それを期待できない者は裁判員となることができないといった仕組みがございます。

 また、裁判官と裁判員が十分に評議を行う、この双方の有する知識経験が合議体全体に共有されるとともに、その過程を通じて適正な結論に到達できるようにする仕組みがございます。

 また、法令の解釈については、裁判官のみがその判断をする権限を有しており、裁判員はその判断に従う。

 そういったことに加えまして、裁判官と裁判員とが対等な権限を有する事項についての判断は、その双方の意見を含む合議体の過半数による、こういう仕組みがございます。

 こういった種々の手当てが講じられて裁判員制度が実施されておりまして、法務当局といたしましては、この裁判員制度が法の支配の理念を揺るがしているものとは考えておりません。

西田委員 御答弁ありがとうございます。

 やはり司法というものは、万が一、仮に私たちの立法府が法の支配から外れるようなことがあったときに、最後に抑止をしていただく機能こそ司法だと思いますし、だからこそ、司法への絶大なる信頼といったものがなければなりません。

 繰り返しになりますが、司法の絶大なる信頼というのは、裁判官一人一人の理性とかいったものでは決してないと思います。先ほど、理性への過信は迷信だというふうに申し上げました。やはりこれは、これまでの判例の積み重ね、研究であったり、事実と証拠の積み重ね、そういったことによろうと私は思います。

 司法が破壊されたとき、毛沢東の人民裁判しかり、ポル・ポトの裁判しかり、これはもう無法の支配になるわけでございます。人の支配から始まり無法の支配へとつながっていく歴史というものがあるわけでございまして、そんな大昔のことでもございません。

 そういった過去の経験を踏まえて、私は、この裁判員制度も決して人民裁判にならないような、観察、注意を怠ってはいけないということを考えます。

 次に移りたいと思います。

 さきの通常国会で、私は、情報国防についてたび重なる質疑をさせていただいたところでございます。

 そういった中で、いよいよNSCも設置されました。NSCが設置された以上、法務省といたしましては、公安調査庁のいわゆる情報貢献、この情報貢献に対する期待が高まっているわけでございますし、それがなければこのNSCも、ただ形だけ整えただけ、羊頭狗肉の組織に終わってしまうわけでございます。

 そういった中、今回、大臣所信では、カウンターインテリジェンスの強化、そういった文言も出てきているわけでございますね。恐らく歴代の法務大臣の中で、所信でカウンターインテリジェンスという言葉を使われたのは初めてじゃなかろうかというふうに思うわけでございます。非常にこれは評価されるべきことだと思います。

 インテリジェンスに対するカウンターインテリジェンス、いわゆる諜報に対する防諜でございます。特定秘密保護法も制定されました。第二十四条でございますか、一部のスパイ行為に対する罰則がきちんと盛り込まれたこと、こういったことは、我が国の情報国防の法体制の整備が本当に大きく前進をしていくことになろうというふうに期待をするわけでございます。

 そういった背景もあって、今回、カウンターインテリジェンスの強化、それに対して、法務省として関係省庁と協力をしてしっかりと取り組んでいくというふうに所信で述べていらっしゃいます。具体的な内容、その取り組みの中身等について教えていただければと思います。

寺脇政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども公安調査庁といたしましては、破防法と団体規制法に基づきまして、破壊的団体の規制に関する必要な調査を行っております。この調査には、そのような団体の活動に影響を与える可能性のある内外の諸動向、これに関連する調査も含まれております。こうした調査の一環といたしまして、外国機関員等の我が国における活動に関しても必要な調査を行っているところでございます。

 私ども公安調査庁といたしましては、外国による情報収集活動等の対日有害活動に的確に対処をするために、外国機関員等の活動に関して、その情報収集、分析の充実を図っておりますし、必要な情報につきましては関係機関と共有をしているところでございます。

    〔委員長退席、土屋(正)委員長代理着席〕

西田委員 御答弁ありがとうございます。

 先ほど言いました情報国防でございますけれども、インテリジェンスに対するカウンターインテリジェンス、そして、これからの課題でございますけれども、情報国防の際には、ディスインフォメーションに対するカウンターディスインフォメーション、こういった分野もあるわけでございますね。ディスインフォメーション、いわゆるにせ情報工作等の謀略に対する対抗謀略、こういった考え方で整理をして、体制もしくは法整備をしていかなければならないというふうに思います。

 ただ、非常にこれは難しいということはさきの通常国会でも申し上げましたし、以前であれば、旧刑法の八十五条、間諜罪が適用できるわけでございますが、残念ながら、今は削除されておりますので対応する法律もない、そして、法律がないがゆえに体制もないという状況でございます。

 これは、まさしく今後の我が国の情報国防の緊急の課題だというふうに思っております。ぜひ大臣の方でも御研究いただきますように、よろしくお願いを申し上げる次第でございます。

 さて、大臣所信を読み進めてまいりますと、次に出てくるのがテロ等の対策でございます。テロ対策等の推進とあるわけでございますが、内容としましては、北朝鮮及び尖閣関連動向、そしてテロ行為等に関する情報収集ということでございます。

 当然、北朝鮮の動向、そして尖閣諸島、つまり中国に対する情報収集、動向の調査の必要性、これは言うまでもないことでありますが、北朝鮮、中国が書かれていて、ロシアが書かれていないことが私は非常に残念に思うわけでございます。当然、尖閣及び北朝鮮、場合によっては、我が国の領土の問題としますれば、欠かしてはならないのが北方領土の問題でございます。

 根室からわずか三・七キロ先から始まる、目視できるこの北方領土の距離的な緊急性、そして、最近の状況を考えれば、二〇一〇年でございますが、ボストーク二〇一〇、大規模な軍事演習を北海道の先でロシアはやっているわけでございます。フランスからミストラル級の強襲揚陸艦を買って、上陸訓練もやっているわけでございます。そういった軍事訓練が、二〇一〇年以来、たび重ねてあの海域で行われているわけでございますし、択捉島、国後島では軍事拠点としての整備が着々と進んでいるやに伺っております。

 三年前に、ビザなし交流で北方四島、私は色丹島に行ってまいりましたけれども、やはり行けばわかる緊張感というものがひしひしと伝わってくるわけでございます。そして、これまでも我が国は、いまだにこの北方四島は侵略中でございますね、このロシアに対して、旧ソ連のころから含めて、幾度となく交渉を試みているわけでございます。

 今安倍内閣においても、また経済協力を強化していくんだという姿勢を示されているところでございますけれども、振り返れば、田中内閣時代、相手はブレジネフでございましたね、さらには橋本内閣時代、エリツィン大統領ではなかったかと記憶しますけれども、本当に我が国はロシアに対して、例えばヤクートもしくは樺太、そういう極東シベリアのエネルギー開発支援をたび重ねて行ってきておりますし、森林開発等も行ってきております。

 恐らく、ロシアと仲よくすれば領土は返ってくるという迷信に近い妄想を持っているのではなかろうかというふうに思うわけでございますが、一九五六年の日ソ共同宣言、平和条約を結べば二島を返すといったその約束以来、もう六十年弱になるわけでございますが、これっぽっちも進展していないのではなかろうかと思いますし、一方で状況はむしろ難しい状況になってきていると思います。

 安倍内閣が、ロシアに対して、経済協力をもって領土の進展をもし図るというのであれば、私はもう一度レーニンの言葉を思い出していただきたいと思うんです。

 ロシア革命後、旧ロシア帝国の負債で苦しんでいたレーニンは、西側諸国に協力を求め、西側諸国はその協力に応じるわけでございますが、レーニン全集にそのときのレーニンのコメントが載っているわけでございます。西側諸国の連中は、みずからの首を絞める縄を、みずから編んでほいほい持ってくる役に立つ連中だと言っているのでございます。

 このレーニンの言葉は、まさしく我が国がこれまで六十年弱にわたって行ってきた経済協力と私は一致するように思えてなりません。旧ソ連が崩壊してロシアになりましたけれども、内政は変わったとしても、ロシアの外交、この方針は一切変わっていないような気がしてなりません。

 そういったことを考えれば、所信の中で北朝鮮及び尖閣関連動向と殊さら強調していただいているのは大変いいことでございますが、ロシアに対する情報収集、また動向等の把握、これも怠りなきようにやっていただかなければなりません。

 実際、公安調査庁が出されている内外情勢の調査の要覧を見てみますと、北朝鮮は十五ページぐらいあるんです。中国は十ページぐらいあるんです。ロシアはたった四ページで終わっているんです。やはりこれは力の入れようの問題ではなかろうかというふうに思います。

 決して怠りなきようにしていかなければなりません。私は、いまだ三・七キロ先の北方領土を侵略中のロシアに対しての警戒、こういったことも怠ってはならないと思いますが、公安調査庁長官の御答弁をお願いしたいと思います。

寺脇政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、具体的にさまざまな調査をしておりますけれども、その調査の有無また内容につきまして具体的にお答えいたしますことは、今後の私どもの業務遂行の支障になりかねませんので、御容赦をいただければと思います。

 なお、ページ数につきましては、御指摘ございますけれども、そのページ数と私ども一生懸命やっております内容とは必ずしも比例しておりませんので、御理解賜ればと存じます。よろしくお願いいたします。

西田委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願い申し上げます。

 さて、ちょっと時間がなくなってまいりましたので、所信の中で触れていただいている難民のお話をさせていただきたいと思います。

 所信の中で、難民が増加をしているというふうにあるわけでございます。近年の難民認定申請者の増加を踏まえということが触れてあるわけでございますけれども、確かに、報道発表資料を拝見いたしますと、平成十九年、八百十六人だったものに対して、平成二十四年では二千五百人と、三倍近い増加になっているわけでございます。この背景は、恐らく難民認定申請のあり方の変更等もあろうかと思います。以前のように、難民船に乗ってばっと難民が来るのではなくて、伺ったところによると、例えば飛行機で来て空港で難民認定申請書を出すとか、そういったことでどんどんふえているようでございます。

 一方で、難民認定申請をしたものの、実際難民認定等をされる方が、二十四年、二千五百四十五名に対して、百三十名。残りの二千三百名の方は難民認定されず、帰されたりいろいろされるわけでしょうけれども、こういった難民認定申請の増加の背景であったり、結果として難民認定されている方が百三十名と非常に少ない、こういった状況をどう分析され、そして今後どのような対応をとろうとされているのか、御当局にお伺いしたいと思います。

榊原政府参考人 まず、事実関係からお答えいたします。

 難民認定申請者数につきましては、平成二十三年、千八百六十七件、平成二十四年、二千五百四十五件と、いずれも過去最多を更新してきております。さらに、平成二十五年につきましては、集計中のために未確定の数字ではありますが、三千件を超える見込みであります。十年前の平成十五年、三百三十六件であったことを考えますと、この十年間で約十倍に増加しております。

 増加の理由等についてでございますけれども、平成二十四年の申請数上位十カ国は、トルコ、ミャンマー、ネパール、パキスタン、スリランカなどでありますところ、これらの国々におきまして、この間、迫害を逃れて我が国に庇護を求める者が増加する要因となるような本国情勢の特段の悪化ということは生じていないものと承知しております。

 それで、一つの可能性でございますけれども、数は多くはありませんが、我が国で難民認定や特別な在留配慮がなされることがこういった国々に知られるようになったことが一つの原因で増加しているものではないかと考えております。

 こういった増加に対しまして、当局といたしましては、国際情勢に関する情報の収集、整備に努めているほか、業務の合理化、効率化などを図るなどして、適正かつ迅速な案件処理に努めてきたところでございます。

 しかしながら、このような運用面だけでの工夫や努力にも限界がありますため、法務大臣の私的懇談会であります第六次出入国管理政策懇談会のもとに、難民認定制度に関する専門部会を設けていただきまして、学識経験者や有識者の方々に、難民認定制度の見直しを含め、そのあり方について御検討いただいているところでございます。

 以上です。

西田委員 質問を終わります。ありがとうございました。

土屋(正)委員長代理 次に、高橋みほさん。

高橋(み)委員 日本維新の会の高橋みほでございます。きょうもよろしくお願いいたします。

 先日、都知事選挙が行われました。そのときの問題点としましては、脱原発であるとか、それ以外のことを取り上げるべきだとか、福祉、医療をやはりもっともっと考えるべきだとか、いろいろなことが言われました。これは東京だけの問題ではなくて、東京に住んでいる人以外の人も、この選挙をやってみたいな、本当は投票したいなという人が結構いたということを私は存じ上げております。

 ただ、これだけ私が勝手に盛り上がっているんじゃないかと思ったのに、最終的には、投票率は四六・一%という有権者の半分以下しか投票しないという現実になりました。私は、それを聞いたときに、こんなに国民的に関心があるものなのに有権者の半分しか投票しないというのは、もちろん政治不信とかもあるのかもしれませんけれども、やはり大きな問題であると考えました。

 特に、若い人たちがどのくらい投票をしたのかというのは、まだ正式にコメントが発表されてはいないんですけれども、やはり平均に比べますと若い人たちの投票率というのはかなり下がっていると思います。それを考えますと、これからもっともっと若い人たちに投票してもらえるような教育というものが本当に必要じゃないかと思っております。

 よく、投票率が下がらないためにどうしたらいいかというと、投票することというのは義務であるから、投票しない人には罰則を与えてしまおうというような結構乱暴な議論をする方もいらっしゃるんですけれども、私は、投票すること、選挙権を行使するというのはやはり権利であると思いますので、きちんとした教育をしていかなければいけないと思っております。

 最近の風潮としまして、選挙をするということが、選挙イコールお金がかかることというふうに思われている方がいらっしゃるようで、解散などをすると、いや、お金があるからこんな選挙は無駄だよというふうにおっしゃる方が多くなっております。それは大変危険な現象ではないかと私は思っております。

 さらに、ちょっと話題はかわるんですけれども、今、憲法改正がすごくいろいろなところで言われております。

 憲法に関しては、皆さんいろいろな考え方があって、改正すべきだとか、破棄すべきだとか、堅持するべきだとか、いろいろな方がいらっしゃると思うんですけれども、国民皆さんがどれだけ憲法の一つ一つの条文などを勉強しているかというと、そこはかなり疑問じゃないかと思っております。

 もちろん、九条のことなどは、皆さん、いろいろなところで話されるので知っているかもしれないんですけれども、それ以外、憲法というものがどういう成り立ちでできたのかとか、どういう理念でつくられているのかというのは、残念ながらほとんど知らずに、護憲だとか改廃だとか、いろいろなことをおっしゃっているように現実に私は思います。そういうことから見ても、やはり憲法などの法教育というのは本当に大切なことであると私は考えております。

 またちょっと話はかわるんですけれども、御高齢者の方たちが簡単に詐欺にひっかかってしまったりとか、日本のいろいろな会社が外国に出ていって、契約書を余りきちんとつくらずに、その人を信じてしまってだまされてしまうというようなことも多いと聞きますので、それは、私たちが民法に関しましてもきちんとした教育を受けていないということがやはり大きな要因ではないかと思っております。

 ただ、では、私が学生のときにどのくらいの勉強を受けたのかということを考えてみますと、例えば憲法につきましては、国民主権である、三権分立であるとか、基本的人権が大事である、あと平和主義であるというようなことを教わっただけで、民法に関しましては、どんなことを学んだのかというのを今考えても思い出せません。

 私はそういうふうにもどかしい思いをしていたんですけれども、今回、谷垣法務大臣の所信表明で、ちょっと読ませていただくんですけれども、「法的な物の考え方を身につけるための法教育は、自由で公正な社会の担い手を育成する上で不可欠なものであり、社会の複雑多様化に伴い、その重要性はますます高まっています。 国民一人一人が法や司法に対する理解をさらに深めることができるよう、幅広く法教育を推進します。」と述べられたのをお聞きしまして、私はすごく意を強くしました。

 そこで、どのような法教育というのが実際に行われているのかというのを調べましたところ、文部科学省では、新学習指導要領で法教育の実践をされていらっしゃるというふうに伺いました。少し通告と前後するかもしれないんですけれども、上野政務官に、文部科学省の行っております法教育について教えていただければと思います。

上野大臣政務官 高橋みほ委員の質問にお答えさせていただきます。

 学校教育において、児童生徒に社会生活における法や決まりの意義、法に基づく公正な裁判などについて理解させることは大変重要であると考えております。このため、先ほどおっしゃられたように、新学習指導要領の中においても、社会科や道徳、さらには特別活動において法に関する教育を行っているところでございます。

 さらに、ちょっと具体的に話しますと、現在、小学校社会科においては、新たに国民の司法参加について扱うこととし、また、中学校の社会科においては、新たに裁判員制度に触れることを導入し、そして、高等学校における公民科においては、新たに法の意義について理解させることなどを示し、法教育の充実を図っているところでございます。また、来年度から全国の小中学校で使用する道徳教育用教材として「私たちの道徳」というものがございますが、この中においても法や決まりに関する内容の充実を図っているところでございます。

 さらに、文科省としては、これまで、学習指導要領の趣旨の周知に努めるとともに、教員研修や教材開発に当たり、法務省とも協力してきたところであり、今後とも一層充実させていきたいと思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 今伺って、小学生にも司法参加とか、社会科で裁判員制度の存在意義というのか、そういうことも、法の意義まで高校では習うということで、すごく心強く思いました。

 いろいろなところでいろいろな法教育というのが現在なされていると思うんです。特に、私としまして、いろいろ調べてみたところ、おもしろい取り組みだと思ったのが、地方法教育推進プロジェクトというものでございます。これは、平成二十二年度と二十三年度の二年間にわたって、京都が一番最初に行ったものと伺っております。

 参加機関がどこにあるかといいますと、物すごくたくさんあるので、ちょっと読ませていただくんですけれども、京都市の教育委員会、京都府教育庁、京都大学などの法科大学院や大学、京都地方裁判所、地方検察庁、京都の弁護士会、司法書士会、法テラス京都地方事務所、京都地方法務局、京都の刑務所、京都の保護観察所、さらには公益社団法人商事法務研究会などが後援などといった、すごく幅広いところが協力して行った事業であると伺っております。

 こういうことはすごく大切なことで、例えば、どんなことが行われたかというのが書いてあったんですけれども、すごくおもしろいと思ったのは、立命館中学校の一年一組の人たちがやった授業なんですけれども、私たちの町のルールを考えようということで授業を行ったそうです。

 これは、京都の立命町に派手な色彩の高層マンションが建つことになった。その開発をしたいマンションの不動産会社、それの対立。環境悪化を理由にマンションの建設を阻止したいという住民、売り上げが減少しているからマンションの人たちが来るといいなと思いつつも、環境も悪くなるなといって、まだ中立的な立場をとっている商店街などと、いろいろな立場に中学生が分かれて話し合う。そして、ついでに京都にあります景観保護のための条例まで勉強するというような取り組みだったそうです。

 これを聞いたときに、中学生が、こういうどこにでも、今いろいろなところでこのような紛争はあると思うんですけれども、大人でもどう解決していっていいかわからないようなものを授業で取り組むということはすごくいいことだと私は思いました。

 ただ、この取り組みはすばらしいなと思っているんですけれども、その後、岐阜しかやっていないということなんですね。政府として、これらをもっと広げていくようなお考えというのはあるのか、谷垣法務大臣にお伺いしたい、そう思っております。

谷垣国務大臣 法教育ですけれども、今、高橋委員の御質疑を伺いながら、私、一つ思い出したことがございまして、私は、一九四五年、昭和二十年の生まれでございます。前の戦争で日本が負けたわけですね。その敗戦の後、日本社会の中では、なぜ自分たちは負けたんだろうというような深刻な反省が起きまして、社会科という学校の科目ができたのは、そういう反省の中からだというふうに伺っております。

 それを一生懸命おやりになったのは、あの民俗学者柳田国男先生で、やはり主権者としての教育が足らなかったんだという反省をされたようです。それで、柳田国男先生自身が小学校の一年生から六年生までの社会科の教科書を一生懸命、ちょっと古いことですから間違いがあるかもしれませんが、そういうふうに私は記憶しております。

 法教育にはいろいろな意義がございますが、そういう主権者としての教育といいますか公民教育の中で、いろいろなことがありますが、この法教育、そして、どうやったら自分たちの手で問題点を解決していけるか、紛争を解決していけるか、そして安心して住める町を築いていけるかというようなことは、まさに主権者教育の一番核となるものではないのかなというふうに思います。

 ただ、一つ、私、そう言いながら自戒しておりますのは、例えば閣僚なんかをやりますと、何を、どの閣僚をやっても、やはり教育が大事だなと思うんですね。例えば財務大臣をやったときは、租税教育が大事だ、こう思いまして、あのとき、文科省に行きまして、大臣に、ぜひ租税教育をしっかりやってくれと。だけれども、苦しいときの教育頼みというのでは仕方がないなと思います。

 それで、今、京都法教育推進プロジェクトというのにお触れいただきました。これは確かに相当な成果を上げたものでございまして、私の地元の公立高校でもこのプロジェクトに参加しております。それで、これは平成二十二年度から二年間行ったものでございますが、平成二十四年度からは、岐阜において、京都と同様のプロジェクト、これを今実施している最中でございます。この辺の成果を見ながら、これにとどめずに、実を上げるようにいろいろ取り組みを考えてまいりたいと思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 今の社会科の授業がどういうふうにして始まったかというのは、とても勉強させていただきました。

 私が今伺って、主権者としての教育というものの大事さということに触れていただいたというのがすごくうれしかったです。やはり主権者としての自覚というものがないと他人任せになってしまって、他人が何とかしてくれるんだというような、白紙委任しちゃっている人が多くなってきますので、本当に主権者としての教育というものにぜひ力を入れていただきたいと思っております。

 そして、先ほど触れました京都のプロジェクトなどにつきましても、これからももっと後押ししていただければと思っております。ありがとうございました。

 政務官、どうぞ。

 次に移りたいと思います。

 次は、人権擁護関係について質問いたしたいと思っております。

 今も出ました法教育にそれだけ熱心ならば、人権擁護についても積極的なんだろうというふうに思われるかもしれないんですけれども、私が所属します日本維新の会は、必要なところには予算をつけるけれども、不必要なところはどんどん削っていくべきだというような考えで行動しております。特に、他省とダブるような予算というものは極力廃止していこうというような意思で行動しております。

 人権擁護というのは、その言葉を聞けば、本当に大切なものであって、そこにお金をつけるということは全然悪いことではないと思うんですけれども、今回の当初予算を拝見していますと、子どもの人権問題対策の充実強化に六億一千三百万円要求しております。その中身というのを見ますと、法務局におけるいじめの相談、救済制度の周知のためのテレビCMなどに二億三千八百万円の予算をつけようとしておると書いてありました。それほど大きなお金ではないと思うかもしれませんけれども、私が考えるに、いじめをやめましょうというテレビのCMをしても、果たして、いじめている人がそのテレビを見ていじめをやめるとはどう考えても思えないんですね。

 いじめをやめるには、何といっても親とか周りにかかわっている教師とか、いろいろな人たちが本当に細かくきちんと努力をしていかなければいじめをやめられるわけはないと思っていますので、CMにお金をかける理由というのが、私としては本当に納得がいかないものでありました。

 伺いますと、いじめを受けたときにどこに言えばいいのかというようなことも流すから必要性があるというお話だったんですけれども、そのテレビを見て、いじめられている人がここに連絡しようと思うということも、ほとんど実際はないんじゃないかというような印象なんです。

 人権教育、いじめの解消というのは本当に大事なことだと思うんですけれども、いじめの防止のためのCMなどに予算を使うということに関しまして、谷垣大臣、どうお考えでしょうか。これに対しては、文部科学省でも本当にたくさんいろいろ施策をやっていると思いますので、ダブりとかというような、本当に必要性があるのかという観点からお答えいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 この問題は、上野政務官がおられますが、学校教育の現場でももちろん一生懸命取り組んでおられると思います。ただ、もちろん、その御努力は大変大きなものがあるんですが、学校教育だけでまた解決できるかというと、必ずしもそうではないと私は感じております。

 ちょっと語弊があるかもしれませんが、学校ですと、かなり問題が深刻になるまで、その学校の名誉とかそういうので必ずしも表沙汰になってこないというようなことが、上野政務官がおられてちょっと言いにくいんですが、あったように私は感じております。

 したがいまして、また学校教育の当事者と違う第三者機関と申しますか、そういうものが存在するという意味は大いにあると思うんですね。だから、学校とその第三者機関が連携しながらやるということが私は意味があるのではないかと思います。

 そこで、今まで何をやってきたかということになるわけですが、いろいろな人権啓発活動等、人権教室等やってきたわけですが、子供の人権問題に関しては、子どもの人権SOSミニレターというようなものの配付、あるいは子どもの人権一一〇番による電話相談を行う、こういった各種の相談窓口を設けて、充実を図り、その広報に努力してきたわけです。

 そこで、テレビを見ることによって、結局この施策の内容は、大きく言えば二方面です。一つは、そういう相談体制を周知するための広報、これが今おっしゃったことだと思います。それからもう一つは、いじめ問題対策のための活動そのものです。

 実際に人権擁護局にSOSミニレターを出してきたりした子供たちの反応を聞きますと、やはり、そういうものがあることを知ったと。知らないと、特に子供の場合なんかは、どこに問題を提起していいかなかなかわからない、こういうことがあるのではないかと思います。

 もちろん、委員がおっしゃいますように、無駄な広報をしても仕方がありませんので、やはりどこにどういう広報をしていけば一番効果があるかということは工夫を怠らずにやらなきゃいけませんが、子供の場合、自分たちの問題をどこに訴えればいいのかというようなことをある程度周知徹底することも必要なのではなかろうか、私はそのように思っております。もちろん、今後とも、その広報活動が有効なものであるのかよく検証しながらやらなければいけないと思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。ぜひ検証をしていただければと思っております。

 ただ、子供に周知徹底というのは、テレビでやるよりは学校でまいた方が周知徹底はされるんじゃないかと、御答弁を聞いた後でもちょっと思いました。

 では次に、話題をかえまして、法テラスについてお尋ねしたいと思います。

 私の法テラスに対する認識というのは、今までは、弁護士さんがいないような過疎の地域に弁護士さんのアクセスができるように、司法アクセスをする機会を国民の皆さんに実質的に担保するような制度だと私は思っておりました。それならば当然法テラスさんの必要性が十分あるわけで、今回の当初の予算で百四十億円ほどの予算を要求していらっしゃるというのも当然かなと初めは思いました。

 それでは、法テラスさんは実際どんなところにあるのかなというようなことを研究してみますと、五十カ所ある地方事務所は地域の中心にあるのですね。すなわち、私のおります北海道では、地元の札幌の、それも中央区のど真ん中にあります。そうなのかなと思って、もうちょっと詳しく調べてみますと、三十二カ所、司法過疎地域事務所というのもあるんですけれども、これは、例えば近畿でいうと福知山事務所というのがあるんですけれども、この事務所は福知山市の末広町という、福知山駅の御近所、駅近にあるんですね。ですから、私は、これを見たときに、ああ、過疎の地域、過疎で弁護士さんがいないような地域のために法テラスがあるのではないんだな、私の認識はちょっと間違っていたんだなというふうに感じました。

 では何をやっているのかなというふうに思いまして、パンフレットを拝見させていただきますと、まず第一に出てきたのが、情報提供業務というものでした。これは何なんだろうというふうに見ますと、利用者からの問い合わせ内容に応じて、法制度に関する情報と、相談機関、団体など、例えば弁護士会や司法書士会などの紹介をする業務だということが書いてあるんですね。

 でも、よくよく考えてみますと、法テラスの名前を知っているようならば、弁護士会の存在はもちろん知っているでしょうし、最近では、弁護士会も行政書士会も司法書士会も、また地域でも、いろいろなところで法律相談というのをやられているんですよね。みんな、ほとんどの人が知っているようなのに、何も法テラスで情報提供業務をやるという必要性があるのかと考えてしまいました。

 国選弁護士さんの契約をしたりとか費用を払ったりとか、あとは、経済的な余裕がない人たちに民事法律扶助業務をやるというような業務ももちろんあるんですけれども、それは、考えてみると、弁護士会さんに委託しても構わないような業務であるなというのが私の素人的な考えです。

 これを見ますと、法テラスに百四十億円支払って法テラスを存続させていく意義、必要性というのが、残念ながらちょっと薄い事業じゃないかなというようなイメージがあるんです。

 私は、法律が大事であって、弁護士さんがいらっしゃらないところに法テラスを置くというのならば必要性をとても認めたんですけれども、そうじゃないならば、ここに余りお金をいっぱいかける意義があるのか、それを谷垣法務大臣にお伺いしたいと思っております。

谷垣国務大臣 今、高橋委員は福知山の法テラス事務所をお取り上げになりました。末広町と申すのはまさに駅前でございまして、中川ビルという名前のビルでございますが、その三階にございますのは、法テラスの事務所と、もう一つは谷垣禎一事務所です。その三階のフロアにございます。

 それで、確かに、福知山という町の真ん中にあるじゃないかというのは、そのとおりでございますが、全体、京都北部はかなり過疎化が進んでおりまして、その京都北部の中では、ある意味では一番人が集まるのに便利だという、多分もっと過疎のところに設けますと、違うところの人が来るのに非常に不便だと思うんですね。たまたま私の知っていた事例でございましたから、ちょっと個別のことを申し上げました。

 今おっしゃいましたように、この法テラスがやっておりますことは、情報提供業務であるとか民事法律の扶助業務、あるいは国選弁護等の関連業務、それから司法過疎対策業務、犯罪被害者支援業務、それから、これは私の福知山ではやっておりませんが、東日本大震災の法律援助の業務等々やっております。

 それで、大都会にもあるじゃないかということでございますが、例えば、民事法律扶助みたいなことになりますと、やはり所得の低い方に法サービスを使っていただきたいということでありますから、必ずしも過疎地だけがそういう業務をしなければならないというわけではないんですね。国選等々も同じようなことがあるのではないかと思います。

 そういうことがございますので、実際、何を、どういうふうに御答弁を申し上げたらいいのかわかりませんが、情報提供業務というのは一体何だ、それは何も法テラスでなければできないではないかというお問いかけでございましたので、もう少しこのことについて申し上げますと、情報提供業務というのは、法制度やあるいは弁護士、司法書士等の隣接法律専門職等々の相談窓口に関する情報を収集、整理して提供する業務でございます。

 法テラスではコールセンターを設けておりますが、同時に、全国の地方事務所に専門職員を配置しまして、関係機関との連携を図りながら、問い合わせ内容に応じて、情報、それから、どういうところに相談すればその問題の解決の手がかりが得られるかというのを無料で提供して、かなり日々多数の問い合わせに対応しておりますが、こういう情報を一括して提供できるのは、恐らくほかの組織にはないのではないかと思っております。

 それから、民事法律扶助業務や何かは、先ほども申しましたが、やはり資力の乏しい方に対するサービスである等々のことがございまして、私は、かなり意味のある仕事をやっているのではないかと認識をしております。

 ちょっと、いい答弁になったかどうかわかりませんが。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 福知山の事務所に関しましては、こちらの調査不足でちょっと、かなりびっくりしました。失礼いたしました。

 あと、私は、法テラスが全く意味がないというのを申し上げているわけでもないですし、経済的に大変な人たちのために法律の扶助を必要とするというのもわかりますけれども、それを法テラスでやる必要性までないというような意識でありまして、いろいろなところにある弁護士会でもいいですし、司法書士会でもいいなと思いますし、情報がいろいろなところ、統一的な情報が今提出できるのが法テラスだという話だったんですけれども、例えば、弁護士会に行って、ほかのところがよかったら弁護士会も言ってくださるでしょうし、地方の市役所などに電話したときも、弁護士会に行きなさいとか、司法書士会にまず相談してみましょうというようなことは、どこでも今やっていると思うんですよね。ですから、法テラスだけが情報提供業務とか法律の扶助をやるというような考えは、特別それほど必要かというのが私の考えなんです。

 何でこんなことを言うかといいますと、百四十億円とはかなりのお金だなというのが私の印象でした。先ほど、きょう午前中もいろいろな方が質問されていたんですけれども、刑務所の刑務官の人数が足りないとかお医者さんが足りないとか、そういうことをいろいろな方がおっしゃっていました。ですから、法テラスにもちろん意義はあるんですけれども、できたら、今近々に本当に必要な刑務官とかそういう方にお金を回した方がいいんじゃないかというようなイメージで私は質問させていただきました。

 ちょっともう時間がなくなってしまったんですけれども、最後に、谷垣大臣、刑務官や医師の増加の方へもっとお金をふやして、法テラスはちょっとほかのいろいろな団体に協力してもらうというふうなやり方というのは、再度になってしまうかとも思いますけれども、御意見を聞かせていただければと思います。

谷垣国務大臣 確かに、刑務官、午前中の議論にもございましたけれども、女性刑務官、なかなか数が得られない、なかなか定着しないということもございます。それから、矯正医療に当たっているお医者様、これも本当にピンチでございますから、力を入れなければならないのはもちろんでございます。

 ただ、だからといって法テラスを全部削れるかと申しますと、例えば、先ほど申しました情報提供業務はさることながら、やはり、国選の仕事で国選弁護の仕事であるとか、あるいは資力の乏しい方に対する法律扶助業務というものは必要不可欠な仕事なのではないかなと思っておりまして、もちろん無駄は省いていかなければなりませんが、私はやはり活動してもらわなければならないところがかなりあるのではないか、こう思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 ただ、今のお話ですけれども、もっと弁護士、ここにも弁護士の方々がいらっしゃると思いますので、弁護士会の方にちょっと頑張っていただければ十分じゃないかなというのが最後の印象でした。

 きょうは、どうもありがとうございました。失礼いたしました。

土屋(正)委員長代理 次に、椎名毅君。

椎名委員 結いの党の椎名毅でございます。

 旧年中、委員各位及び大臣、副大臣、政務官には、大変御指導いただきましたことに改めて感謝申し上げたいというふうに思います。

 本年は、諸般の事情がございまして党が変わりましたけれども、引き続き、私自身は、我が国の法の支配の確立、それから人権の尊重といった憲法上の重要な価値の実現に少しでも貢献していくことができるよう頑張ってまいりたいというふうに思います。本年も、引き続き御指導賜りたく、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日、四十分間、質疑時間を頂戴いたしました。感謝を申し上げたいというふうに思います。通告いたしましたところに従いまして、質疑を行ってまいります。

 本日は、大臣の所信に対する質疑ということで、非常に哲学的な議論も行われていらっしゃって、私自身も非常に勉強になりましたが、私自身は、自分のできることということで、刑事司法に関する部分と、それから入管行政に関する部分について、大きく二つの視点から質疑を行ってまいりたいというふうに思います。

 まず、刑事司法に関する部分について、最初の質問でございます。

 本年一月七日ですけれども、横浜地検川崎支部において、被疑者取り調べを行っていて、ちょうど接見中だったということだと思いますけれども、接見室がないということで、取り調べ室で接見を行っていた被疑者、これがちょうど接見が終わった後、そこに立ち会っていた巡査部長の目を欺くというような形で逃走するという事件がございました。この被疑者、私の地元であります川崎市の麻生区と多摩区に非常に縁の深い方でございまして、事件以降、地元が年始から非常に大騒ぎになる、町会の皆様方が、いわゆる青パト、町会のパトロールカーですけれども、そういうものに乗って地元をぐるぐる回っている、そういう事件が起きたわけです。

 最終的に横浜市内で被疑者は確保されたわけですけれども、その確保に至るまでの数日間、私の地元、川崎市の麻生区と多摩区というところにおきまして非常にさまざまな形で大きな問題が起きたということで、非常に残念なことだったなというふうに思っています。私の地元事務所の裏近くで、友人から携帯電話を受け取って逃走する、そういうようなことまであったそうでございます。

 本題に入りたいと思います。

 全国二百三検察支部庁のうち約七割の百四十四支部について接見室がないということだそうですけれども、本年度予算では施設整備費ということで百九十二億計上されています。札幌の検察庁だったか監獄だったかにお金をかけますというようなことが例示で書かれていましたけれども、こういった施設整備費、百九十二億ありますけれども、今後、検察庁支部の百四十四支部について、接見室の整備についてどの程度充てていき、そして、どのようにこれを、いつごろまでに終了するのかというところについて、大臣の御意思を伺えればと思います。

谷垣国務大臣 まず、川崎支部で脱走事件が起きて、御心配をかけました。大変申しわけないことだと思っております。

 それで、いろいろな改善策を考えているわけですが、一番は、やはり設備をきちっとつくらなきゃいかぬ。今、百九十二億、施設整備費が計上されているという、そのとおりでございますが、これは法務省全体としての施設整備費でございまして、接見室の設置にこれだけ全部かけられるわけではございません。

 今の整備状態は、ことしの一月一日現在、事件の発生前でございますが、地方検察庁の本庁は、全五十庁に整備が済んでいる。それから、検察庁の支部は、二百三庁中、五十九庁に整備、百四十四支部がまだだということでございます。問題の川崎支部には接見室は整備されていなかったということでございます。

 それで、従前から、接見室が整備されていない庁については順次接見室の整備を進めるということで、本年度も整備を進めておりますし、また、庁舎の建てかえを計画している庁については、接見室を必ず整備するという予定にいたしております。今回の事態の発生を受けまして、川崎支部には今年度中に接見室を整備する予定としております。

 それから、接見室のない検察庁につきましては、各庁から、面会接見と言っております、つまり、接見室ではなく、こちらの職員が立ち会ってやる面会接見と言われているものの実施状況、それから、接見室が設置可能な場所があるのかどうかというのを、最新の情報を今調査して検討を進めているところでございます。

 また、当面の措置として、面会接見、必ずしも実施がほとんど見込まれないところもありますが、見込みがあるところは、全ての庁に両面シリンダー錠や窓の格子等の整備をことし中に整備、実施したい。

 それから、逃走防止の観点からは、これは事柄の性質上、こういうふうにするというのは詳細には申し上げにくいですが、被疑者等を戒護する体制のあり方についても改めて見直しを図りました。今度、検察の事務員が弁護士さんに頼まれてコピーをとりに行ったすきに起こった事件でございますから、例えばそういうことはないようにというようなことでございますね。

 今後、調査結果を踏まえながら、所要の予算要求を行いまして、速やかな接見室の整備を進めてまいりたいと思っております。あわせて、逃走防止のための体制についてもさらに万全を期していきたい、このように考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 ぜひ、この逃走の防止というのも、大臣が所信表明でもおっしゃっておりました世界一安全な日本というこのスローガンにまさに欠かせないものの一つかというふうに思いますので、ぜひこちらの施設整備というところについてもよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 今大臣が、面会接見という話をおっしゃっていただきました。まさにその辺についてもさらに追加して伺いたいと思います。

 刑事訴訟法の大原則としては、三十九条一項で、一応秘密で、要するに立会人なくして弁護人と被疑者、面会する、接見をすることができるというのが原則なのかなというふうには思います。

 広島地検の事件が、平成十七年の判例というのがございますけれども、平成三年ごろに、まさに広島地検の本庁で接見をするときに、接見室がないということを理由に接見を拒否したことについて、それは違法なのではないかということが争われた判例が、最高裁で最後、平成十七年に判決が出ていると思いますけれども、そんな事件があったと思います。事件自体は平成三年ということだったかというふうに思いますが、それから早二十数年たっているわけですね。

 その事件のときに、判決からでも約十年弱ぐらいたっているわけですけれども、その中でも、一応、そういった理由で拒否をすることは必ずしも違法ではないとした上で、まさにおっしゃった面会接見のような形で接見をすることができる、そういう形でやればいいんじゃないかというようなことが判例の内容だったかというふうに思います。

 しかし、弁護人と被疑者のコミュニケーションというのは、どういうことが話されるかということが立会人に聞かれてはやはりまずいということもあるわけですね。

 弁護士倫理の研修の中でも必ず大きなテーマの一つとして議論されるテーマですけれども、被疑者は本当はやったんだけれども、やっていないというふうに主張したいと言っているこの被疑者に対してどう弁護するかという非常に哲学的な難しいテーマがあったりするわけで、弁護士会の倫理研修でも非常にかんかんがくがくの議論がされるテーマでもございます。

 こういった事態が生じるのは、当然、弁護士と被疑者の間で秘密に接見をすることが確保されているからコミュニケーションを密にとることができるんだというふうに思います。

 そう考えると、立ち会いのもとで接見を行うということは、コミュニケーションを密にして信頼関係をつくっていくということにとっては、やはり不十分なところがあるかなというふうに思いますけれども、その点について、秘密交通権というところについて大臣の認識と、そういった意味から、この事件について再度御意見をいただければというふうに思います。

    〔土屋(正)委員長代理退席、委員長着席〕

谷垣国務大臣 今、椎名委員がおっしゃいましたように、平成十七年の最高裁判決がありまして、仮に接見室がなくてできない場合でも、弁護士から接見をしたいといったときに、では、職員が立ち会ってもいいか、いいよというときに、それは認めてもいいじゃないかという判例がございまして、これは要するに、一方は、接見交通権への配慮から、弁護人等に対して、こういう形でも、いわゆる面会接見でもよいかと意向を確かめて、それでいいという場合にはそれでやろうと。

 しかし一方、逃走防止の設備などが十分できていないものですから、被疑者の逃走や罪証の隠滅あるいは戒護上の支障の発生を防止するために、検察の職員ないし押送の警察職員が立ち会うという形でやってきたわけで、整っていない段階ではやむを得ざるものであったかなというふうに思います。

 ただ、今おっしゃるように、秘密交通権というのは、刑事手続において、被疑者、被告人それから弁護士双方にとって極めて大事な権利でございますので、これを確保する、そして同時に、逃走防止も図るという観点から見ると、この面会室の整備というのは非常に重要な課題であると思っております。したがいまして、整備を加速しなければいけない、このように考えております。

椎名委員 どうぞ本当によろしくお願い申し上げます。

 広島地検の事件とその平成十七年の判決、平成十七年の判決の基礎になる広島地検の事件というのは平成三年の事件ですので、そこから考えると本当に二十年ぐらいはたっている事件なので、なるべく早くということをお願い申し上げて、次の質問に移りたいというふうに思います。

 大臣の所信表明演説の中でも触れられていましたけれども、ことし、予算関連法案ということで、少年法の一部を改正する法律案というのが結構近々に議論の対象になるかというふうに思います。

 この少年法の改正というところについて議論をさせていただきたいというふうに思います。

 このたびの少年法の改正につきましては、基本的には、家庭裁判所の裁量による国選付添人制度を拡充していこうということ、それに伴って、伴ってと言っていいのかはわからないんですけれども、国選付添人制度が適用される範囲とほぼ同等の範囲に検察官関与事件を広げていきましょうということ、さらには少年に対する刑事処分の規定の見直し、大きくこの三点かというふうに思います。

 このうち、検察官関与の部分について少し伺わせていただきたいというふうに思います。

 私自身も、自分が司法試験を受けたとき、かれこれ十五年前ですけれども、そのとき最後の、そのときは刑事訴訟法と民事訴訟法、両方を選択しなくてよくて、選択科目というのがあったんですけれども、そのときに刑事訴訟法と刑事政策という科目を選択させていただきまして、少年法というのを初めて勉強して、それから少年法というものにはちょっと興味を持っているんです。

 昔習ったところによると、少年法の基本的な理念というのは、少年は基本的に可塑性が高い人たちであるということで、非行というのは子供が発育する過程において生じた課題であって、基本的には、対話を通じて反省と成長を促す、そういう理念に基づいていたかというふうに思います。

 せんだって大臣とも議論をさせていただきましたが、いわゆる保安処分とか保護処分とか、そういう刑罰ではない処分を科すことを許容しているのが少年法の基本的な理念だというふうに思います。

 保護処分という形で、少年の成長、発育を促すための処分として少年院送致等の保護処分が認められている。その過程の中で、一応、少年審判というもの、重大犯罪である少年刑事事件とはまた別に、重大事件が適用される刑事事件ではない少年審判においては、家庭裁判所で行われ、そして、審問構造という構造がとられている。

 すなわち、検察官と被告人という対立構造ではなくて、家庭裁判所とそれから非行を犯した少年が対話をしながら、時に場合によって家裁調査官の調査結果などを踏まえた上で、少年の成長にとって、反省にとって最もいい処分を言い渡していく、そういう手続だったかというふうに思います。

 その中で、職権主義という考え方があって、裁判所が、通常の刑事事件ですと、証拠として裁判所に提出する前に、その証拠については、弁護人の側から、同意したり不同意したりとか、これは証拠として使っていいとか悪いとか、そういう話が出てくるわけですね。さらには、伝聞証拠の法則なんというのがあって、原則的には、又聞き証拠については証拠能力がないという証拠排除等が行われて、限られた証拠を初めて裁判官が見て事実認定をするというプロセスだったかと思います。

 他方、少年審判では、取り調べを受けた一件記録というものを、証拠法則等も関係なく、一切合財、全て家裁に送られた上で職権主義によって事実認定を行っていく、こういう違いがあるのかなというふうに思っています。

 こういう違いがある中で、検察官関与事件というのは少しやはり毛色が変わってくるというふうに思っています。二〇〇〇年の少年法改正のときにはもっと大きな議論がきっとあったんだろうというふうに思いますが、そのときに、検察官を関与させるということは、保護処分を決めるための審判手続、審問構造の審判手続が、あたかも刑事事件を処罰する、刑事手続に類似するんじゃないかみたいな、そういう話もあったかなというふうに思います。

 結局、落としどころとして、非常に重大犯罪に限り検察官を関与させることができる事件が二〇〇〇年改正のときにできたのかなというふうに思っています。

 しかし、今回の改正において、検察官が関与することのできる事件というのが拡大することが予定されています。

 長期三年以上の有期懲役または禁錮ということで、具体的には何かというと、窃盗、詐欺、恐喝、傷害、それからわいせつ等の事件まで含むことになる。逆に言うと、この法改正の前までは、強盗、傷害致死、殺人、強盗致傷、強盗致死、強盗強姦、強姦、放火といった非常に重大な犯罪にしか適用がないという状況です。

 具体的に数でいうとどうなるのかというと、少年の犯す、観護措置決定等を受ける少年の終局処分の中でいうと、八二・八%と書いてありますけれども、大体八割ぐらいをカバーする範囲について検察官が関与できることになってしまいます。そうすると、少年刑事事件と少年審判とが何が違うのかという形になってしまうのではないか、そういう批判が起きることはあり得るんだろうというふうに思っています。

 その中で、少年審判は、あくまでも最初に申し上げた原則は貫かれていて、審問構造であり、職権主義であり、一件記録を裁判所が見るということになると、検察官が関与して、刑事事件と同じように事実認定をし、対立構造のような形になるにもかかわらず、裁判所は、検察官と非行少年とのやりとりを見るときには、既に手元に全ての証拠を持っている状況になるわけです。

 こういった割と不健全な状況が生じるのではないかというふうに思いますけれども、このあたりについて、ちょっと御見解をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 確かに、従前の少年審判の構造は委員がおっしゃったとおりでございます。

 それから、二〇〇〇年の改正のときに私自身も提案者になりまして、二〇〇〇年改正、検察官の関与部分を広げたということがございます。

 それで、当時、そういう議論が起きましたのは、それまで少年審判の過程の中で、さっきおっしゃったような職権主義的な構造だったんですが、必ずしも、可塑性のある少年に対して保護処分的な考えがあるわけなんですが、事実認定等が余りしっかり行われていなかったんじゃないかという批判がありまして、二〇〇〇年改正になったということだろうと思います。

 今度の少年法の一部を改正する法律案には、委員がおっしゃったように、検察官関与の対象事件の範囲を拡大するという内容が含まれているわけですが、これは、今までの二〇〇〇年改正以後の現行法におきましても、検察官関与の対象とはなっていない事件の中にも、共犯者がたくさんいるかなり複雑な事件であるとか、あるいは、自動車運転過失致死傷罪のように、このごろも、少年でかなり結果が重大なものがございます。そういうものは、なかなか過失の認定も容易ではない、しかし、事実認定はしっかりやっていかなきゃならないということがございまして、検察官関与が必要であると認められる事例が存在するなという認識が今までもございました。

 それに加えまして、今度、国選付添人制度を拡充していくということになりますと、国費による付添人が選任されて非行事実の存在が争われた場合においても、検察官がおよそ制度上関与できないということになると、こういう結論が被害者を初めとした国民の理解、納得を得られるかはなかなか疑問があるなということで、国選付添人制度と同じ範囲で拡大しようというのが今回の制度改正の趣旨でございます。

 そこで、もう一つは、職権主義的なこういう審問構造を採用している少年審判手続においてどうなんだ、それを全く変えてしまうんじゃないかというような御趣旨だったと思いますが、やはり少年審判手続におきましては、通常の刑事裁判とは違いまして、家庭裁判所の手続主宰権というものをきちっと、そのもとに服しながら審判の協力者として行われるものでございますから、刑事裁判における訴追官あるいは原告官としての活動とはおのずから違うものがあるだろうと思っております。要するに、少年審判手続の基本構造は、検察官が少年審判に関与する場合でも変わるものではないというふうに理解をしております。

 したがって、少年審判手続において予断排除原則や伝聞法則などが適用されない、先ほどおっしゃったとおりでありますが、だからといって、今申し上げたように、検察官関与制度が全体をゆがめてしまうということにはならないのではないかというのが私どもの理解でございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 そこら辺は、大臣も法務省の大臣ですから、そう言わざるを得ないんだとは思いますけれども、とはいえ、制度としての考え方としては、予断排除、それから伝聞証拠の法則等の証拠法則がない中で、検察官とそれから付添人のついた非行少年とが対立構造にあって、それで、事実認定を争いながら、きちんとした精緻な事実認定を行っていくというのは、使える証拠という意味では、物すごく非行少年にとっては不利な状況が生じることは間違いないんじゃないかなというふうに思います。

 特に、どんなにいきがっていたとしても少年ですから、全員が全員と申し上げるつもりはもちろんございませんけれども、取り調べの過程の中で、要するに、おまえがやったんだろうと言われて、はいそうですと言って、本当はやっていないにもかかわらずそう言ってしまう可能性というのが成年よりも高いんじゃないかというふうに言われておったりもするところですから、やはりそこら辺の証拠に関する取り扱いというのは結構丁寧に扱っていかなきゃいけないように私は思っております。

 そして、今回の検察官関与事件の拡大という意味でいうと、これは実は検察官関与の拡大というところが主眼であったわけではなくて、むしろ国選付添人制度の拡大というところに主眼がもちろん当初あったんだと思います。

 これは二〇〇〇年改正のときと逆で、二〇〇〇年改正のときは、要するに、検察官関与が先にありきで、ではといって、日弁連側が国選付添人の事件を広げていきましょうという後追いで、バランスがとれたんだと思いますけれども、しかし、今回の改正というのは少し毛色が違うというふうに思っています。

 既に、二〇〇七年ぐらいからですけれども、弁護士がついた、国選付添人ではなくて手弁当の付添人ですけれども、手弁当の付添人で片面的に、要は、弁護士がついているけれども検察官がいないという少年審判事件が実は二〇〇〇年代後半ぐらいから急増しているわけです。

 これは何でかというと、弁護士会が国選付添人等について手弁当で、要するに、弁護士会に加入している方々が、会費を徴収して、四千二百円という特別会費だったと思いますけれども、この特別会費を徴収して手弁当で付添人をつけているわけです。それで、付添人をつけて事件をこなしていったわけですね。

 そういう事件が急増している中で、たしか、ちょっとうろ覚えですけれども、二〇一二年六月十九日の参議院法務委員会における最高裁判所の答弁というところでも、「弁護士付添人が選任されている一方で検察官の関与がないという事件におきまして、これまでのところ、事件の関係者等から審理のバランスを欠いているといった批判があったというふうには承知いたしておりません。」というふうに述べている。これは引用なんですけれども、そういうことがあるというふうに聞いています。

 今回、弁護士が片面的についている付添人事件について、要は何が言いたいのかというと、結局、これを国費で賄ってほしい、そういう話がスタート地点にあったんだというふうに思っています。既に、弁護士会の会費が、少年法の改正と予算措置を受けて、近い将来、特別会費四千二百円のうちの九百円が安くなるというふうに言われておるそうです。私は、個人的には、自分の会費がたかだか九百円安くなることで、何かこう不健全な構造が維持されるのであれば、九百円は払い続けてもいいとすら思っているんですけれども、どうやらそういうことのようでございます。

 そういった中で、国選付添人の事件をふやしてほしい、要するに、国選付添人というか、国費で賄ってほしいと言っている中で、裁判所も、特段、その片面的についているものについて、そんなに今のところ不十分ではないという答弁を二年ほど前にされていらっしゃるということもあって、そう考えると、検察官関与と弁護士、国選付添人というのは、そこまで連動させておく必要性はないのではないかというふうに思いますけれども、済みません、再度、大臣、御見解をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 今、椎名さんのようなお考えもあると思いますが、法制審では、被害者側の方から、そういう構造は、検察官関与をしてほしいという御要望がございますので、それもやはり一つの大事なポイントなんじゃないかなというふうに思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 検察官の仕事は、私刑が禁止されている以上、被害者の法感情をかなえていくということも検察官のとうとい仕事の一つだと私は思っておりますので、大臣のおっしゃっていることの意味は私も十分理解はしますけれども、他方で、被害者に対する配慮については別の配慮もできるかなというふうには思います。

 かつ、やはり、対立構造をつくるということであれば、先ほどの話に戻るんですけれども、証拠による事実認定というところについて、その証拠法則等について考え直すというか、充実させてほしいなというところは私自身もお願いをしたいところでございます。

 時間もないので、次に参りたいというふうに思います。

 二つ飛ばします。

 外国人技能実習制度というところについて、昨年の十一月に、私の方から大臣に対して、ちょうど十一月八日に行われました出入国管理政策懇談会の分科会の直前だったと思いますけれども、質問をさせていただきました。私自身も、この外国人技能実習制度というものについては積極的に見直しに取り組んでまいりたいという観点から、繰り返しの部分もあろうかと思いますけれども、再度伺わせていただきたいというふうに思います。

 外国人技能実習制度の問題点というのは、せんだっての私自身の質問したところで、問題というのは一通り提示させていただいたかなというふうに思います。

 団体監理型のものについて監理団体の監理が不十分なんじゃないかという点、不正行為が受け入れ先において行われている、それから、送り出し機関において不正行為が同じように行われている可能性があるというようなこと、こういったところが問題だったというふうに思っています。

 実は、お隣の韓国においても、数年ほど前までに外国人技能実習制度と類似した研修制度というものを採用していたようでございます。研修就業制度という制度を採用していたそうですけれども、二〇〇六年十二月にこれを廃止して、低熟練労働者の受け入れという制度、明確に、雇用許可制度という制度に一本化をするという対応をしたそうでございます。

 私自身も、学ぶ事例として韓国を自分で挙げるとは余り自分の中でも想定をしていなかったんですけれども、よその国の事例をいろいろ見てみたときに参考になりそうな制度が、従前の制度が似ているということと、文化的背景という、文化的というのは、要するに、外国人を受け入れるということに対する障害という意味で、日本が抱えている問題と韓国が抱えている問題という意味で非常に似ていると思う中で、同じような制度をとってきたお隣の国が、この低熟練労働者の受け入れ制度である雇用許可制度というものを採用して研修制度を廃止したということでございます。

 こういったよその国の事例なんかを踏まえた上で、これから我が国の技能実習制度の見直しについてどうお考えか、御見解を伺わせていただければと思います。

谷垣国務大臣 技能実習制度については、椎名先生からもたびたび御質問もいただいておりますし、また、御指摘のような弊害を、国内からだけではなく海外からの御批判も含めまして、批判的な意見があるということは私も承知しております。

 そこで、まずやらなきゃならないことは、技能実習制度の現状を正しく把握する。そして、不適正な受け入れを防止して、適正に制度を動かすように措置をとっていくということがまず大事なのじゃないかと思います。その上で、いろいろな御意見がありますので、先ほども御答弁したことですが、優良な受け入れ機関については技能実習期間を延長する等々のことをして、より一層高い技能の伝承というのを可能にしていくような制度もあり得るのじゃないか等々、法務大臣の私的懇談会であります出入国管理政策懇談会のもとで今検討していただいておりますので、ことしの半ばを目途に一定の方向性を出していきたいと思っております。

 それで、韓国については、椎名委員がおっしゃったとおりに、従来日本と極めて類似した制度から、単純労働力の活用を目的としたいわゆる雇用許可制度を導入した、こういう海外の事例もよく研究しなきゃいかぬと思っておるんですが、一つありますのは、韓国でこの制度を入れた後、その制度によって入国した者が、少なからざる割合で不法滞在者となっているというような問題も生じているというふうに聞いております。

 そこで、そういった問題点等も含めて、今後の議論を進めていきたいというふうに考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 確かに、外国人の労働者を受け入れると必ず出てくる問題というのが、不法滞在者がふえるということと、それからもう一つ、治安が悪化するということ、これは、どこの国でも同じようなことが起きますし、外国人の労働者、単純労働者を受け入れるということについて、進めた方がいいと自分自身は思って申し上げているわけですけれども、もちろんそういう弊害が起きることを是とするわけではなくて、外国人の労働者、単純労働者を受け入れるということに伴って生じるサブエフェクトというか副次的効果というところについても必ずきちんと対応していかなければならないというふうに思っております。

 しかし、日本の今後の経済それから人口問題等を考えたときに、以前この話をしたときに、まずは女性の活用からと大臣からはおっしゃっていただきまして、それはおっしゃるとおりだと僕自身も思っておりますが、女性の活用をするというところもさることながら、外国人の受け入れの制度をつくっていくためにも、そういった副次的効果をなるべく極小化していきながら外国人の労働者を受け入れていくという制度をつくるためには、どうしても多分長い時間がかかるだろうというふうに私自身は思っています。さらに言うと、長い時間をかけなきゃいけないだろうというふうに思っています。

 そういった中で議論をスタートするには、女性の活用という問題と並行しながら、外国人の労働者の受け入れということも検討していかなければならないだろうということを私自身は申し上げたいというふうに思います。

 やはり、技術移転という美名のもとに事実上単純労働者の受け入れとして使われているというのは、国際的にも既にさまざまな形で勧告、指摘を受けている事実でもありますし、これに関与している人間の大半が認識をしていることだというふうに思いますので、ぜひ実態に合わせた形で新しく制度をつくっていけるよう御検討をお願いしたいと思います。

 これで質問を終わります。どうもありがとうございました。

江崎委員長 それでは次に、鈴木貴子さん。

鈴木(貴)委員 新党大地の鈴木貴子でございます。

 まず初めに、貴重な質問の時間をいただきましたこと、委員長を初め理事の先生方、そして委員各位の皆様に心からお礼を申し上げさせていただきます。

 まず、私は、いつも質問に立たせていただく際に必ず目を通すページ、紙というものがありまして、それは何かといいますと、検事総長の紹介のページにあります「検察の理念」というものであります。「この規程は、検察の職員が、いかなる状況においても、目指すべき方向を見失うことなく、使命感を持って職務に当たるとともに、検察の活動全般が適正に行われ、国民の信頼という基盤に支えられ続けることができるよう、検察の精神及び基本姿勢を示すものである。」こういったものを私自身しっかりと頭に入れながら、きょうも質問をさせていただきたいな、このように思っております。

 午前中に階先生の方から、証人テストについての質問がありました。私も同じく質問させていただきたいと思います。

 階先生が刑事局長に、この証人テストにおいて、検事が証人側の答えも事前に書いてメモを用意するのか、そしてまた渡すのですかというようなことをただされました。それに対して局長は、さまざまな対応があると思いますけれども、書くこともあり得る、このように答弁をされましたが、さまざまな対応という部分に、証人の答えを事前に書いて渡すということも含まれるという意味でしょうか。

林政府参考人 この証人テストというのは、証人尋問に先立ちましたその準備として、証人と面談して、証人との間で事実を確認して、次の証言でどのような順序でどのような話を聞くのか、それが一番適切に供述をしていただけるのかどうか、こういったことを準備する段階だと思います。

 そうしますと、非常にこのやり方というのは、事案の性質でありますとか証人の特性に応じてさまざまな形態があると思います。

 その過程で、例えば、事実関係を証人尋問を請求した証人の方に事前にお聞きして、それがそれまでその証人が語っていた供述とどういうふうに違っているのか、そういったことも事実を確認してまいります。また、証言となりますと、時間が非常に限られておりますので、証言を求める順序、質問の順序なども証人テストの段階でいろいろ考えていく。その過程で、実務におきまして証人尋問事項メモというものをつくることがあります。

 これについては、まさしくその内容につきましては、証人テストに応じてさまざまな形態があると思います。尋問事項だけを書いておく、あるいは、それに対して、その段階で、尋問、証人が供述していることをまた補充的につけ加えていく、そういった形でつくられていく書面、また、これをつくる場合もあれば、当然つくらない場合もあると思いますので、そういった形で事案に応じてさまざまなものがあると思います。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 刑事局長、改めて明確にさせていただきたいんですけれども、私も決してこの証人テストのそもそもの存在を否定しているわけでもありません。また、証人テストにおいて検事がしかるべきメモというものを作成されるということにおいても、全くもって異論はありません。

 ただ、私がここで指摘をさせていただいているのは、あえて繰り返させていただきます、検事が証人側の答弁を事前に事細かく書き、そしてその書類を手渡し、また、予行演習、リハーサル、そういったことをさせているということは、これは、先ほど申しましたが、「検察の理念」にそもそも即した取り組みなんでしょうか。

林政府参考人 一般論として申し上げれば、証人というのは、あくまでも自己の記憶に基づいて公判で証言をするものでございます。検察官が証人に対してあらかじめ尋問事項メモどおりの内容、証言を求めていくというようなことはないものと承知しております。

鈴木(貴)委員 今局長は、そういったことはないものと承知しているとお答えでした。

 私も、今回は皆さんのお手元に配付資料を用意もさせていただきました。

 まず、新聞記事もあるんですけれども、「検察、裁判証言を指示か」「密室で「予行練習」」「他の地検でも相次ぐ」。ページをめくらせていただきます。同じく朝日新聞、今度は二面ですが、「調書通り証言なら求刑減示唆」。こういったことがずらずらずらっと並んでおりまして、次の朝日新聞三十九面、社会面の十四版のところを見ていただきますと、大きくかぎ括弧で「誘導尋問の恐れ」、しかもこれは法曹関係者のコメントによるものだそうです。また「問答二百三十九項目暗記」とも書いてあります。右上には「「こう質問するから、こう答えて」 検事は尋問メモを差し出した」とあります。

 局長もよくお使いになられますが、私もあえて使わせていただきます。一般論で申しますと、こういう内容はまさに誘導尋問なんじゃないでしょうか。ぜひとも局長も一般論で答えていただけないでしょうか。

林政府参考人 今、報道に基づいて御指摘されたこと、報道がなされたことは承知しておるわけでございますが、まさしくそのお尋ね自体、個別事件における検察官の公判活動にかかわる事柄だと考えますので、お答えはできません。

鈴木(貴)委員 済みません、局長、なぜ答えられないのかという点を、具体的な理由、また納得できる理由で、一般論でお答えください。

林政府参考人 御指摘いただいた報道というものそのものが個別事件にかかわる事項でございまして、それを前提にした形でのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

鈴木(貴)委員 では、少し切り口を変えて質問をさせていただきたいと思います。

 実は私は、一月の二十九日提出だったかと思いますが、この報道をベースに質問主意書の方も出させていただいております。また、答弁も返ってきておりますので、質問主意書の答弁というのは閣議決定がなされているものということで、この場にいらっしゃる局長を初め皆さん、もちろん、この報道については把握をしっかりとされていらっしゃるものとは思っております。

 そこで、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 こうした報道が実際に証拠とともに明るみに出てきた今、これに対してのしかるべき検証、また見直し、対策というものはどういったものがとられているのでしょうか。とられていなくては、逆に言うとおかしいのではないでしょうか。

林政府参考人 検察当局におきましては、証人尋問を適切に、かつ円滑に行うために、刑事訴訟規則百九十一条の三の規定に基づきまして証人テストを行いまして、証人が体験した事実、記憶状況、表現能力等について十分確認するなどして、適切に証人尋問の準備をしていると承知しております。

鈴木(貴)委員 私も、一番最初に述べたように、「検察の理念」というページは何度も読ませていただきました。今局長が答弁くださいました理念、信念というものは、私も勉強はさせていただいていると思います。

 あえて、ここでもう一度読ませていただくのであれば、「検察の理念」からです、「あたかも常に有罪そのものを目的とし、より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない。我々が目指すのは、事案の真相に見合った、国民の良識にかなう、相応の処分、相応の科刑の実現である。」こういったことも「検察の理念」に書かれてあります。

 それを受けまして、再度質問もさせていただきたいと思います。

 今局長の方でも、把握されていないという言葉がありますが、皆さんに私が配付させていただいた資料の方を見ていただきたいんです。一番最後に、右上、「所謂日本経済新聞子会社TCW不正経理事件の裁判に係る証人テストで検事が作成したQ&Aメモ」というページをごらんいただきたいと思います。これは、下にページがありまして、一ページと十七ページを抜粋させていただきました。ちなみに、これは実際は五十四ページにわたるものでして、今回、この質問で使う部分だけを抜粋させていただきました。

 そして、この案件は、いわゆるTCWの不正経理事件については全て終息をしているものでして、現在係争中の案件ではありません。なので、現在係争中の事件に関しては答えることができないということはないかと思いますので、ぜひとも局長、安心して具体的にお答えをいただければありがたいと思います。

 それで、これは、いわゆる証人テストで検事側が作成したメモであります。これを見ていただきますと、三項目にわたっておりまして、一番左側が質問、そして真ん中がいわゆる検事側が想定して事前につくった答え、そして一番右側が台本でいうところのト書きに当たります。演出欄ですとか、そういったその他を書くものになるんです。

 私自身、実は、この世界に入る前は番組制作ディレクターをしておりました。さまざまな台本を私自身がつくってまいりましたが、この検事が作成した「Q&Aメモ」ほど演出など事細かに書く台本というのはなかなか私も見たことがないな、しかし、どこかで似たような台本を見たことがあるなと考えたんですが、それはたしかNHKの朝ドラの台本だったか、ストーリー仕立ての、シナリオありきの番組の台本のものと非常に似ているな、私はそういった印象を受けました。

 ちなみに、ここを見ていただきたいんですけれども、下のページで十七と書いている、一番最後の部分であります。米印がついて、かつ、下線も引いてあるところなんですが、「※絶対に「TCWの資金繰りのため」と言ってはならない。 TCWのためにやったとなると、「悪いこと=犯罪を行った」とは言えなくなってしまう。」このように検事が書いているんです。

 そして、この検事側の狙い、思惑をベースに、真ん中の想定の答えが書かれている。これはこういったことが書かれてあります。また一番最後を見てください。「弁護人から、「TCWのために一連のことをやっていたのではないのか」と聞かれたら、怒りながら答えて欲しい」。このように、まるでこれは舞台なのか、ドラマなのかと。脚本、シナリオは全て検察側でつくられているのではないか、一般論で考えたときにそう思わざるを得ないような事柄が実際に書かれております。

 私が今回提出した資料、そしてまた午前中に階委員が提出した資料、また一月五日、そして十二日に朝日新聞全国版一面また三十九面に載っていたさまざまな案件を見ていただいた上で、局長、それでもまだ体制として誘導尋問は行われていないと言い切れるんでしょうか。また、言い切れるのであれば、それの根拠もぜひとも示していただきたいと思います。

林政府参考人 今の御指摘の資料でございますけれども、基本的にこれも個別的な事案の証拠にかかわることでございまして、それを前提にお答えすることはできないと思います。

 その上で、先ほども申し上げましたが、証人テストにおけるさまざまその過程でできていく証人事項メモのような書類につきましては、そういった場合で、いろいろな形態、つくられる場合もあればつくられない場合もあるということで、その中身についてもさまざまな態様があると思いますけれども、いずれにしても、証人テストは証人尋問の準備でございますので、最終的には、証人尋問における証人に対して不当な誘導であったり、不当な、記憶に反するような供述を引き出すような、そういうことにつなげるとしたら、それは許されるものではないと考えておりますので、そういったことで、実際に検察当局においても、検察官が証人に対して特定の事項の証言を誘導すること、そういったことの疑念を招きかねないような行為は避けるべきだと考えておるところでございます。

鈴木(貴)委員 疑念は避けるべきではなくて、しっかりと検証して見直すと言い切るのが必要なんじゃないでしょうか。避けて避けて避けて、一体そこに何があるんでしょうか。

 配付をさせていただいた資料、ちなみに、一点だけあえて読ませていただきます。朝日新聞三十九面、このページであります。「こう質問するから、こう答えて」「問答二百三十九項目暗記」のところの最後の方です。

 「やまりんの元社長も証言直前に証人テストを受けた。実際の法廷を模した東京地検の一室で、弁護士役の別の検事も交えてメモをもとに予行演習した。元社長が「(鈴木氏に口利きを)頼んだと思う」と口にすると、検事に「(頼んだと)言い切るように」と指導された。 公判当日、証言を終え法廷を出た元社長に検事が親指を立てて見せたという。「大変なことをしたと、気持ちが沈みました」」。

 この最後のかぎ括弧は、もちろん元社長の言葉であります。「大変なことをした」というこの一言は、不当な尋問が行われていたということを示す一行ではないのかな、このように思います。

 そしてもう一つ、先ほど、個別の案件なのでお答えできないという話でありましたが、実は、私も質問主意書などでも出しているんですけれども、平成二十一年六月十一日の法務委員会において、木庭健太郎議員が足利事件について質問した際に、当時の大野刑事局長が、この事件につきまして云々と具体的に訴訟の争点について言及をされているんです。

 そしてまた、それを受けまして、前川清成参議院議員が二十一年六月十八日に質問主意書にてこの件をただされております。その答弁の拒絶の判断基準というものをただしたところ、憲法七十六条、刑事訴訟法第四十七条、同法第五十三条、刑事確定訴訟記録法等の趣旨を踏まえて対応しているところであるとの答弁で、これらのどこに触れて答弁ができないといったことは全くもって示されておりません。

 そして、何よりも、平成二十一年六月十一日には、法務委員会において、当時の大野刑事局長は個別の案件についても言及をされております。

 ぜひとも、刑事局長、この場においても、先ほどの件、もう一度御答弁いただけないでしょうか。

林政府参考人 先ほど引用されました部分につきましては、これはまさしく現在係争中の再審請求事案にかかわることでございまして、御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

鈴木(貴)委員 TCWについて答えてください。局長、TCWについて。

 先ほど私もあえて言わせていただきました。TCWに関しては、全て終息をしている問題であります。TCW、全て終わった件に関して、ぜひとも答弁をいただきたいと思います。

林政府参考人 その案件につきましても、今後の同種事案に対する影響等を考えまして、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

鈴木(貴)委員 時間が来ましたので、最後に一点だけ。私がいつも質問に立つときに、非常に明確に、また心ある答弁を下さる谷垣大臣に、最後一言いただければ、このように思っております。

 今の私と、そしてまた刑事局長の答弁、もちろんこれは、私が、また階委員が午前中に配付をさせていただいた資料をもとに勘案していただいて、今行われた質疑応答というものに対して、一点、大臣は今どのような感想を持っていらっしゃるか。そしてまた、大臣として、こうした証人メモ、誘導が行われているのではないかとさまざまなメディアで、さまざまな地検から情報が出てきていることに対して、どのような対応をとられていくのか、その決意のほどを伺わせていただきたいと思います。

江崎委員長 谷垣大臣、簡潔に御答弁願います。

谷垣国務大臣 私も、個々の、個別の立証活動とかそういうものに対して、大臣がこうすべきだと余り個別の問題に対しては言うべきでは、余りというか、言うべきではないと思っております。

 ただ、今の御議論の中で大事なことは、例えば、やはり記憶にあるものをその記憶どおり答えるというのが刑事訴訟法が求めているところですね、証言の場合は。それから、誘導尋問も、これは刑事訴訟規則ですか、誘導尋問というのは排除しているわけでございますから、そういうそしりを受けるようなことがあってはならない、適正な尋問の準備をするように努めなきゃいけない、このように思います。

鈴木(貴)委員 ありがとうございました。

江崎委員長 次回は、公報をもってお知らせいたします。本日は、これをもって散会いたします。

    午後三時三分散会


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