衆議院

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第4号 平成26年3月14日(金曜日)

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平成二十六年三月十四日(金曜日)

    午前九時四十分開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      青山 周平君    安藤  裕君

      池田 道孝君    小田原 潔君

      大見  正君    門  博文君

      神山 佐市君    木内  均君

      黄川田仁志君    小松  裕君

      古賀  篤君    佐々木 紀君

      末吉 光徳君    橋本  岳君

      鳩山 邦夫君    比嘉奈津美君

      平口  洋君    堀井  学君

      牧島かれん君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    郡  和子君

      田嶋  要君    横路 孝弘君

      高橋 みほ君    浜地 雅一君

      椎名  毅君    鈴木 貴子君

      西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   最高裁判所事務総局人事局長            安浪 亮介君

   最高裁判所事務総局経理局長            垣内  正君

   最高裁判所事務総局刑事局長            今崎 幸彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          武川 恵子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    齊藤 雄彦君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十四日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     木内  均君

  菅家 一郎君     堀井  学君

  小島 敏文君     比嘉奈津美君

  今野 智博君     牧島かれん君

  宮澤 博行君     小松  裕君

  大口 善徳君     浜地 雅一君

同日

 辞任         補欠選任

  木内  均君     門  博文君

  小松  裕君     宮澤 博行君

  比嘉奈津美君     小島 敏文君

  堀井  学君     青山 周平君

  牧島かれん君     佐々木 紀君

  浜地 雅一君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     菅家 一郎君

  佐々木 紀君     今野 智博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議に入らせていただきます。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房政府広報室長武川恵子君、法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長西田博君及び法務省保護局長齊藤雄彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局中村総務局長、安浪人事局長、垣内経理局長及び今崎刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古賀篤君。

古賀委員 皆様、おはようございます。自由民主党の古賀篤でございます。

 きょうは質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。私の持ち時間は二十分でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 きょうは、裁判所職員定員法の一部改正法案ということであります。その内容は、判事の方を三十二名増加し、そして裁判官以外の職員を三十六名減少させるという、ある意味シンプルな法案となっております。

 最近の事案また事件を見ますと、さまざまな事件があるわけでありまして、その事件を迅速に処理するために判事の方をふやすという意義は大きいというふうに感じております。

 一方で、単に判事の方をふやすだけではなくて、判事の方の事件の処理能力というものも問われるわけであります。これは単に迅速に、速やかに処理すればいいというだけではなくて、適切に処理することが大事だというふうに思っております。

 そういう問題意識の中で、裁判所において、裁判官の方、絶えず自己研さんに励まれていると思いますけれども、それだけでは限界があるのも事実でありまして、やはり裁判所で研修等を通じて能力を高めていただくということも大事になってくるかと思います。

 そこで、まず、裁判所における研修の内容についてお聞かせいただきたいと思います。

安浪最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所に持ち込まれる事件は、近時、ますます複雑化、専門化してきておりまして、このような状況に適切に対応するため、裁判官には、不断の研さんにより、知識を吸収し、より一層の資質、能力の向上に努める必要があることは委員御指摘のとおりでございます。

 裁判官の研さんでございますけれども、何よりもOJTが大事でございます。日ごろの執務におきまして、具体的な事件処理を通じて行う自己研さんが中心とはなりますが、そのような自己研さんを支援し、裁判官に幅広い視野や専門的知見を身につけさせるために、司法研修所におきまして、さまざまな研修プログラムを用意しておるところでございます。

 裁判官のニーズや裁判所全体の課題を考慮しながら、民事事件、刑事事件の審理のあり方といった基礎的な課題から、知的財産権、医療、金融関係など専門的な事件やその背景にある社会経済事情に至るまで、幅広いテーマを設定しているところでございます。

 その実施方法でございますけれども、外部の専門家を講師に招いた上で、双方向的な意見交換を行うなど、数日という限られた期間で最大限の効果が発揮できるよう工夫しておるところでございます。

 また、もう一つ、裁判所の外部に若手の裁判官を派遣しまして、多様で豊かな経験を積ませるということもやっております。一年程度、民間企業へ派遣するというようなことも行っておりまして、これらの外部でのさまざまな経験を通じまして、裁判官が幅広い視野と柔軟でバランスのとれた考え方を身につけることができるようにしたいと考えておるところでございます。

古賀委員 ありがとうございました。

 非常に幅広い研修を行われているということがわかりました。いろいろな事件というのは出てくるわけでありますし、社会状況の変化に合わせてより研修の充実を図っていただきたいというふうに思います。

 また、判事の時代は、先ほどもありましたように、外部に出るということで、民間企業に出たり、弁護士の経験をされたり、もしくは在外公館、留学という経験をされているというふうにお聞きしております。ぜひいろいろな経験を積んでいただいて、非常に有能かつ人間味のある裁判官の方がさらに生まれることを期待しているところであります。

 続きまして、私、先日、厚生労働省の村木事務次官の著書、「私は負けない」という本を読みました。村木事務次官、逮捕されて、そして裁判へという中で非常に御苦労されたということが書かれておりまして、公判が始まって担当の判事が決まったというときに、名前は申し上げませんけれども、非常に有能な方だということをおわかりになって安心されたというような記述がございました。

 裁判所の方にお聞きしますと、各事件を担当される判事の方というのは機械的に決められると。これは、裁量とか恣意性が入るものではなくて、この事件についてはこの判事の方というふうに決まっていくというふうに聞いております。

 裁判というのは一生を左右する非常に大事な場面でありまして、判事の方の能力でその判決が変わるとか結果が変わるというようなことがあっては大変なことになるわけであります。そのために、やはり裁判の質を確保するということが大事になってくるというふうに思います。裁判の質を確保するためには、裁判官の方の能力もしくは実績というものを客観的また具体的に把握する、そして評価するということが大切になってくると思います。

 この判事の方の能力を評価するものとしては、裁判官の指名諮問委員会というものがあるということを承知しております。これは、定期的に行われて、判事補から判事になる、また判事であっても、定期的に適正なのかどうかということを判断して、指名する、しないということが行われるということであります。これは指名されなければ判事という職を失ってしまうということでありますので、非常に慎重に判断しなければならないということであります。

 そういう定期的な委員会以外に、裁判所の中で毎年人事評価が行われていると思います。その評価がきちんと行われることが、先ほど申し上げましたような裁判官の質を確保するという意味で大事になってくると思います。

 人事評価については、裁判官というのは独立が確保されているわけでありますので、その事件事件でどういうふうに判事の方が仕事をされ、そして判決に至るのかということは、当然、裁判は公開されておりますし、また判決文も出るわけですので、そういったものでも確認はできるわけですが、具体的にどういうふうに進めていくのかということはなかなか見えない。特に、人事評価される評価権者は裁判所の所長ということであって、当然、各裁判官のことを一つ一つ事件について把握するというのはなかなか難しいんじゃないかというふうにも思うわけであります。

 裁判所の方の御説明ですと、人事評価に当たっては外部の方からの意見も聞かれているというような御説明も受けております。この外部の方というのは、例えば弁護士会に、この裁判官、判事さんはどうですかというような質問もされているというように聞いております。一方で、私の知り合いの弁護士に聞きますと、そういう外部評価も、外部の意見というのもなかなか機能していない面もあるんじゃないか、一々判事さんがいいの悪いのというのも言いにくいというような声も聞くわけであります。

 そこで、今申し上げたような話からしますと人事評価というのは非常に難しいと思いますが、現在裁判所の方でどのように人事評価を行われているのかをお聞かせいただきたいと思います。

安浪最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判官の人事評価についてお尋ねがございました。

 この人事評価の目的といいますのは、裁判官の公正な人事の基礎とするとともに、裁判官の主体的な能力向上に資することを目的とするものでございます。裁判官におきまして、少しこういう点がという課題を抱えておる者がいるといたしますと、評価権者である者からアドバイスを受けて、さらにそれを参考として自己研さんに励む、こんなふうなことを目的としておるものでございます。

 それで、人事評価の具体的な流れといった点でございますけれども、平成十六年の四月以降、最高裁の規則でございます裁判官の人事評価に関する規則に基づきまして新しい人事評価制度を実施したところでございます。

 その内容でございますけれども、評価権者という点につきまして、所属庁の長、地家裁でいいますと地家裁所長、高裁勤務の裁判官でいいますと高裁長官、こういうふうに評価権者をまず明確にいたしました。その上で評価項目を定めまして、評価基準を明確にした上で、裁判所内部の情報だけでなく、裁判所外部からの情報についても配慮するというふうに定められたところでございます。

 委員御指摘のとおり、その裁判官と事件を一緒に審理したという弁護士から意見が寄せられているところでございます。

 個々の裁判官の方からは、評価権者との面談に先立ちまして、毎年、自分が担当している職務の状況に関します書面をまず提出いたします。自分は今現在こんな事件を担当して、こんなふうに処理しているということをまず自己申告いたします。それを受けまして、評価権者の方で裁判官と面談をし、その上で評価書を作成するという流れになっております。評価書につきましては、裁判官の方で開示を求めるということもできますし、記載内容について、もし疑念がある、あるいは不服があるというときには、不服の申し出もできるというふうになっております。このようにして、人事評価制度を適切に運用したいと私どもは考えております。

 ただ一方で、議員御指摘のとおり、裁判官の個別の事件処理に影響を与えないという配慮も大事なことでございますので、裁判所といたしましては、内部及び外部からの的確な情報の把握に努めまして、適切な人事評価を実施していくように努めたいと考えております。

古賀委員 ありがとうございました。

 私も国家公務員をしていた経験がございますし、人事担当もしておりましたので、よくわかるのですが、企業にしても、公務員にしても、やはり一定の割合で適格性に欠けるというかそういう職員というのはどうしても出てしまうというのも事実です。

 また、今、人事評価のまず自己評価というお話がありましたけれども、なかなか自分のことを悪く書く人というのも多くはないだろうということもありますので、例えば、書記官の方から評価を少し受けるとか、いわゆる三百六十度評価みたいなものも民間ではありますけれども、いろいろな工夫をしていただいて、かつ、判事さんの独立性というのも確保していただくということで評価をいただければというふうに思います。

 次に、もう一つ、裁判官以外の職員の方を今回減らすということであります。この内訳として、書記官の方を四十四名ふやして、減らす職員として、速記官、それから事務官、さらに技能労務職員という方を今回減らすということであります。

 これまでこの人たちが担ってきた業務というのは当然あるわけでありまして、これらを、例えば外部委託するとか、もしくは何らかの形で工夫してほかの職員がかわりをするというようなことが考えられるわけであります。

 それで、裁判所の事務というのは、事件数に応じて変化する部分もある。これは、いわゆる変動費的なコストだと思いますが、その変動する部分ではなくて、必ず裁判所をあける以上はかかるコスト、いわゆる固定的なコストというものもあるわけであります。

 そういう業務を、またコストをいかに減らしていくかという観点も大事だと思いますが、裁判所でどのような運営業務の合理化、効率化を図られているかという点について、お聞かせいただきたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所といたしましては、裁判部門を中心に人的体制の充実を図りつつ、司法行政部門を中心として、組織機構の効率的な運営、事務の合理化、効率化を進めてまいったところでございます。

 具体的には、守衛、清掃、電話交換といった庁舎管理業務について、その担当する技能労務職員が定年等で退職するに際しまして、その業務の支障の有無を考慮しつつ、外注化による合理化が可能か、あるいはダイヤルインの導入等によって定員削減を行ってきたところでございます。

 速記についても、最近の増大する逐語録需要に的確に応えていくために録音反訳方式を導入しているところでございます。

 また、IT化の進展を踏まえまして、会計部門における府省共通システムに参加するなど、司法行政部門の業務の合理化、効率化というものを図っているところでございます。

 先生御指摘のとおり、裁判自体は合理化というのは限界があるわけでございますけれども、政府における行政の効率化の状況を参考にしつつ、司法行政部門を中心とした事務の合理化、効率化に引き続き努めてまいりたいと考えている次第でございます。

古賀委員 引き続き、合理化、効率化に取り組んでいただきたいと思いますが、一方で、過度に効率化を図る結果、業務に支障を来してもいけないので、できる範囲でしっかりやっていただくということが大事かと思います。

 また、裁判所の職員の方をきっちり管理していくといいますか把握していくという中で、宿舎の手当てというのも必要になってくるわけであります。

 宿舎管理について一つお聞きしたいと思います。

 宿舎については、平成二十三年に国家公務員宿舎の削減計画というものができております。この中に裁判所の宿舎も入っているというふうに承知しておりますが、今裁判所の方でどのように宿舎を整備する方針なのか、状況や今後の方針についてお聞かせいただきたいと思います。

垣内最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所の宿舎でございますが、裁判所は、国民の裁判を受ける権利の実質的な保障というために全国各地に設置されてございます。裁判官、職員は、そういう全国の裁判所の間を定期的に異動してございます。また、裁判官等、夜間に緊急に処理しなければいけない令状の処理というのを行いますので、できるだけ裁判所庁舎の近くに居住をするという必要もございます。

 こういう観点から、全国の裁判所におきまして、裁判所の維持管理する省庁別の宿舎、それから財務省の維持管理していらっしゃる合同宿舎、これらをもちまして必要な宿舎戸数を確保しているところでございます。

 一方、現在、国家公務員宿舎につきまして、委員御指摘のとおり、国家公務員宿舎の削減計画というものに基づきまして、真に公務に必要な宿舎に限定するということとされてきてございます。

 裁判所の宿舎におきましても、省庁別宿舎につきましては二千七百戸から千七百戸程度にまで削減するなど、しっかりと対応していく所存でございます。

 また、宿舎使用料につきましては、裁判所の宿舎も他の国家公務員宿舎と同じ法令等が適用されますので、本年の四月以降、見直しが行われることになっておるものでございます。

古賀委員 ぜひ引き続き適切な宿舎管理を行っていただきたいというふうに思います。

 時間も少なくなってまいりました。最後の質問とさせていただきたいと思います。私のライフワークであります更生保護についてであります。

 更生保護の分野につきましては、昨年の六月に刑法や更生保護の一部改正という法案が成立をいたしまして、今後、新たに社会貢献活動ですとか一部の執行猶予制度というものがスタートするわけであります。これを円滑に実施するためには、裁判所と、そして社会内処遇をする法務省、もしくは保護観察所との連携というのが欠かせないというふうに考えております。

 現在どのように連携を図っているのか、また今後どのように取り組んでいくのかについて、法務省それから裁判所、それぞれにお聞きしたいと思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、裁判所との連携が非常に重要だというふうに認識しております。

 今、社会貢献活動につきましては、最高裁判所事務総局との間でいろいろな協議を進めております。また、刑の一部執行猶予制度につきましても、保護観察実施上の課題等につきまして情報を共有するとか、そういった協議に努めていきたいというふうに思っております。また、全国の保護観察所におきまして、対応する地方裁判所、家庭裁判所との間でもその協議等を進めていきたい、そういうふうに思っております。

今崎最高裁判所長官代理者 裁判所からもお答え申し上げます。

 ただいま法務省保護局長の方で御答弁なされたとおりでございます。

 あわせて、そのように法務当局との、あるいは最高検察庁も含めて協議を進めておりますので、その結果については、裁判所同士の意見交換の機会などを設けまして、遺漏のないように進めていきたいと存じております。

古賀委員 ありがとうございました。

 ぜひしっかりと連携を図っていただき、制度が円滑に実施するようにお願いしたいというふうに思います。

 時間が終わりました。私も、今、更生保護の話につきましては、党でも就労支援の検討をしておりますし、党派を超えて再犯防止という取り組みも行っております。ぜひ一体となった取り組みを行っていきたいと思います。

 きょうは谷垣大臣初め政務の皆様に御質問はできませんでしたが、引き続きの御指導、御鞭撻をお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、田嶋要委員。

田嶋委員 おはようございます。民主党の田嶋要でございます。

 今国会初めての質問をさせていただきます。

 まず冒頭、谷垣大臣、先日、私は予算の分科会で、厚労分科会で再犯防止関係の質問をさせていただきました。質問をいたしましたら、厚労大臣、副大臣、政務官全て、十年以内に刑務所には誰も行ったことがないというふうにおっしゃっておったんですね。私は改めて、この問題は、まさに社会保障の一番の、全ての問題が凝縮している場所だ、高齢化の問題、そして障害者の問題、生活保護とも関係がある、まさにこういうところは厚生労働省の方々、大臣から、ぜひ行っていただきたいと思います。

 そして、法務省、ことしも大臣所信の中で、再犯防止、最重要の一つとおっしゃっていただいておるわけでございますので、そういう意味では、私は、まずこれは大臣が先頭に立ってやるわけなんですが、ぜひほかの大臣、特に厚労大臣や文科大臣、刑務所を見てほしいということをやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 大変重要なポイントだろうと思います。

 矯正施設の人員に関しましては、総務省とよく話さなきゃいけません。それで、そのときに総務大臣が自分も見に行きたいとおっしゃいまして、御一緒に府中刑務所等々伺ったことがありますが、田嶋委員がおっしゃるように、厚生行政との連携というのは極めて重要でございますので、私からも厚生労働大臣にお願いしたいと思っております。

田嶋委員 ありがとうございます。

 厚生だけではなくて、私は文科とも申し上げましたけれども、やはり教育の側面もいろいろあるのではないかというふうに思っています。特に、義務教育すら終わっていない方々が多いという話も聞いておりますので、ぜひそこは心してお願いをしたいというふうに思います。

 私自身も、月に一回は刑務所視察を心がけるようにしておりますけれども、今見てきております。それをずっと続けられるかどうかわかりませんけれども、頑張っていきたいというふうに思っております。

 それで、もう一つ大臣に確認は、委員会質問というのは、ややもすると言いっ放し、答えっ放しになってしまうと思いますが、私は再犯防止の問題をずっと追いかけますので、必ず聞いたことはフォローさせていただきます。したがって、大臣が答弁されましたら、事務方はその答弁をしっかり厳守していただいて、そして半年後、一年後に、どういう成果があったのか、どういう進捗をしているのかということを必ず確認をとらせていただきます。

 大臣、改めて、もう一度、今までいろいろおっしゃっていただきました、期待しておりますので、そこはしっかりPDCAは回していただくということをお約束いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 この点は私も努力をしなきゃいけないと思います。

田嶋委員 ありがとうございます。

 それでは、きょうはまずPFIの刑務所関係の質問をさせていただきます。

 お手元の資料の最初のページに、いろいろな種類の刑務所、三つの種類に大きく分けられると聞きました。PFIは、社会復帰促進センター、私どもも栃木で行ってまいりました喜連川、それから、公サ法という法律に基づく施設、それから、それ以外ということでございます。

 民間の力を導入する、これはもう世界の趨勢でございます。日本もそういうことをやってきたわけでございますが、そういう導入をした今日までの経過、どういうふうな現状にあるのかということを、事務方で結構でございますので手短に御報告ください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 刑事施設の運営業務について、まずPFIの手法から申し上げます。

 構造改革特別区域法によりまして地域を限定いたしまして、先ほどおっしゃいました栃木県にあります喜連川社会復帰促進センターほか三庁、全部で四庁でございますけれども、これについてPFI手法を活用して大幅な民間委託を実施しておるところでございます。

 これによりまして、これまで過重と言われておりました職員の負担軽減もされたと思いますし、また、受刑者の改善指導とか職業訓練につきましても民間の創意工夫を入れまして、さまざまなプログラムが展開されてきております。こういったことがありまして、業務の効率化とか効果的な運用ができるようになったと思っております。

 ただ、多少のトラブルはございますけれども、今のところ、PFI刑務所につきましては、官民協働体制のもとで、おおむね順調に運営がなされているものと承知しております。

 それから、こういったPFI刑務所の成果を踏まえまして、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律、先ほど先生、公サ法とおっしゃいましたけれども、これによりまして、静岡刑務所など三刑務所で、総務業務、警備業務、作業、職業訓練、教育、分類業務等について民間委託を実施しているところでございます。

 引き続き、これがうまく順調な運営ができるようにやっていきたいと考えているところでございます。

田嶋委員 今のお話を伺っておりますと、まず刑務官の負担は下がった、それから、受刑者に対するいろいろなきめ細かいサービスのレベルも上がった、質が上がった、両方いいお話でございますので、まずそれはよかったと思います。

 そこで、確認をさせていただきますが、それでは税金投入はどうだったかという点。民間活力を導入した結果、どういう成果が出てきているか、わかる範囲で定量的に御報告をいただきたいと思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 まず、PFI手法を活用しましたPFI刑務所について申し上げます。

 現在、先ほども申し上げましたように四カ所でやっておりますけれども、事業期間、これは二十年と十五年でございますが、これについて必要として設定しました国庫債務負担行為限度額と実際の契約額の開差が出ております。これが事業導入時の経費節減効果になるんじゃないかと思っておりまして、これで御紹介申し上げます。

 最初にやりました美祢社会復帰促進センターでは、約四十七億円、節減率八・五%。島根あさひ社会復帰促進センター、これも事業期間二十年でございますけれども、百四億円、節減率にしまして一〇・一%。御視察いただきました喜連川社会復帰促進センター、これは十四億円、節減率約三・四%。それから、兵庫県にございます播磨社会復帰促進センターでは、六億円、節減率につきましては約二・三%が出ております。

 また、公共サービス改革法によります、活用しました刑務所につきましても、三つの施設を今現在やっておりますけれども、これについては事業期間七年で約二・一億円、節減率にしまして二・一%の節減ができているというふうに考えております。

田嶋委員 予想されたどおりかどうかはわかりませんけれども、国民の税金コストも下がっているということ。

 特に、このPFIと公サ法の違いというのは、民間委託される項目が十三項目か十項目の違いということで、より多くの民間委託ができているのがPFIということでございまして、そちらだと税金節約が一〇%近くのものもある、そうでない公サ法の方でも二%程度だと。特に、公サ法の方は、既存の刑務所に導入をしたということでございますから、導入前と後の比較で二%の税金節約ができている。しかし、それが刑務官の犠牲の上とか、受刑者に対する質の低下という副作用を引き起こすことなく税金節約ができている。これは大歓迎、結構なことだというふうに思います。

 そこで大臣にお伺いをいたしますが、このPFI刑務所は私は特に今後やはりふやしていくべきというふうに考えておりますが、大臣はどういうお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 PFIを導入しましたときに、かなりあのときは定員なんかも満杯でございましたから導入しましたが、現在、若干ゆとりが出てきたというか収容者が減っておりますので、今時点でPFI刑務所をさらにつくっていく、ふやしていくという計画はございません。

 それともう一つは、今おっしゃったように、いろいろいい効果が出ていることは事実でございますが、他方、PFI刑務所では犯罪傾向の進んでいない収容者を収容しております。犯罪傾向が進んでいる者ではなかなか使いにくい面があるということで、今後の犯罪動向等もよく見ながら考えていかなければいけないと思っております。

田嶋委員 ありがとうございます。

 前半の部分ですが、最初の資料のところで、おっしゃるとおりで収容率は今七〇から八〇ということで、聞くところによりますと、大体このぐらいの収容率が一番運営しやすいということだと思います。実際、今、受刑者が六万人を切ってまいりましたので、その意味ではいいのかなと。

 ただ、PFIは、おっしゃっていただいたとおり、四つとも新規で建設し、当時は足りない状況にあったからそういうことをされたわけでございますが、しかし、私が申し上げたいのは、PFI、つまりオペレーションに対してのPFIの導入ということも、やはり今後あるのではないか、つくるところからPFIではなくても。

 その次の資料、ページ二をごらんください。

 大臣、後半でおっしゃっていただきました、より犯罪傾向の進んでいる場合はやりにくい、そういうのは確かにあるのかもしれません。

 この表のA指標というのは、まさにPFIの入っている四カ所とさほど差のない属性だということでございまして、特にその中でも、真ん中のところに「属性」とございますが、Aというのは、言うまでもなく、犯罪傾向の余り進んでいないケースでございます。

 ここを見ますと、PFIが、先ほど大臣の御指摘のあった、Bのような犯罪傾向の進んでいるところはともかく、もう少し拡大をしていくことができるのではないか、そして拡大するごとに仮に二%や五%の税金の節約ができれば、私は先ほどの委員の方と同じで、更生保護の分野に、刑務所から出てきたところにどのように受け皿をつくっていくか、そういったところにもっと法務行政が力をシフトできる部分もあるのではないかというふうに考えております。

 そういった観点から、税金の最適利用ということではこの残されたAのところを中心に少し拡大の余地はあると私は改めて考えておりますが、大臣、もう一度御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 確かに、新たにPFI刑務所を設置するという点では、現状では先ほど申し上げたような御答弁になります。

 しかし、今後の民間委託等々の拡大は、公共サービス改革基本方針というのが昨年の六月十四日に閣議決定されておりますが、それに基づきまして、ことしの政府予算案では、府中刑務所、それから立川拘置所で、総務系業務を今までは単年度ごとにやっておりましたけれども五年間委託をしよう、それから、加古川刑務所、岩国刑務所、高知刑務所、大阪拘置所において被収容者に対する給食業務を十年間それぞれ民間委託する、そういう必要な経費を計上しておりまして、こういった民間委託をできるところから着実にふやしていきたいとは考えております。

 以上でございます。

田嶋委員 限られた財源でございますし、法務省の最重要課題によりしっかり取り組むためにも、私は、こうやって改善できるところは、しっかりと結果が出ているものでございますから、そこはさらに推進をしていただきたいと思います。

 このPFIについて、もう一つお伺いをいたします。

 日本は、いわゆる英米型とそれから大陸型のハイブリッドといいますか折衷案の形でスタートをさせたということを伺っておりますが、今日までの四カ所の取り組みを踏まえまして、もう一歩踏み込んで、英米方式、すなわち、権力的な部分まで全部任せるというやり方も可能性としてあるのではないか。それを入り口で拒絶するのではなくて、そういうふうにしたら、ひょっとしたら、さらに税金の節約もできて、なおかつ刑務官の負担も減らすことができる、刑務所内の質も改善することができるかもしれない。

 そういう観点から、改めて今日、もう一度その選択肢も検討し直す必要があるのではないかと私は思っておりますが、大臣、いかがですか。

谷垣国務大臣 今、英米法型と大陸法のハイブリッドというような表現をされました。

 いわゆる英米法系では、PFI刑務所において、権限委任の理論というんでしょうか、要するに、全ての権限は、それが正当に行使される限りにおいて私人にも委任ができるという整理で運用されているようでございます。

 我が国のPFI刑務所におきましては、基本的に、まず、非権力的業務は私人に委託することもできる。権力的業務については、これは本来、国家権力といいますか公権力が行うべきものであるという大陸法系の立て方の上に、ハイブリッドと言われるゆえんは、権力的業務のうち、権力性の、濃淡がございますので、比較的弱いもの、例えば健康診断の実施であるとか、所持品等の検査、収容監視、職業訓練の実施、信書の検査補助、領置物の保管、あるいは処分等に当たる業務の準備行為または執行として行われる事実行為、これは、法律に特例措置を設けて、できるという形にしております。

 それで、今委員のおっしゃったように、では全て英米法でいけるかなということになりますと、例えば、いろいろな、被収容者に対する制止等、そういう措置をとります、あるいは手錠等をどういうふうに使うか、それから保護室へ収容するとか、武器の携帯及び使用、これについては、やはり我が国の今までの制度とは少しなじまないのではないかというふうに私ども思っておりまして、今後とも、こういう実力行使を伴うようなものについては、業務の民間委託はやや困難といいますか、私は慎重に考えるべきではないかと思っております。

田嶋委員 私は、導入すべきと申し上げているわけじゃありませんよ。ただ、いわゆる、よく刑務所を民営化しているとか、そういう話が大分昔言われるようになりまして、えっ、そんなことがあるのかなと私も最初は思いました。そもそも今日本がやっているPFIだって、当時、日本にはなじまないという議論はたくさんあったと僕は思うんです。

 そういう意味では、いろいろやはりいいところをとって、これだけの成果が出ているのであれば、当時はこの選択肢はさすがにないなと言っていた英米法も、ひょっとしたらやれるのかもしれないし、なじんでいくかもしれないんじゃないですかということを改めて今立ちどまって考える時期にあるのではないかということを私は申し上げておるわけでございます。

 私が見た喜連川も、セコムさんが入っておりました。そうすると、セコムさんは世の中では警備事業をやっておるわけで、それは警察とは違いますけれども、かなり重なるような部分の警備、治安に関するようなお仕事をされておるというわけでございますので、刑務所の中だって今セコムさん等々がいろいろ入っているわけでございます。

 そういったところがさらにできる可能性もやはりあるわけですので、これは虚心坦懐に、選択肢をいろいろ提言していただいて、私のポイントは、繰り返しますけれども、税金は限られておりますので、再犯をさらに下げるためにも、ぜひ有効な税金の活用の仕方がないのかということを私は重ねて申し上げておきたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

 それでは、法案の関係で御質問をさせていただきます。

 次の資料のページをごらんください。

 これは、今回の法律改正も含めまして、過去の裁判官の増員数と裁判官以外の職員の増員数あるいは減員数の表でございます。

 まず確認をさせていただきますが、まだまだ裁判に時間がかかっているということで、裁判官はふやさなきゃいけないということで、毎年ごらんのとおり増員が行われておるわけでございます。過去二十年ずっと全会一致でこの委員会でも可決をしてきたわけでございますけれども、一方で、先ほど申し上げました、刑務所に入っている人の数はどんどん減ってきている、こういう状況があるわけでございます。

 大臣、お伺いしたいのは、一体いつまでこういうふうにふやし続けるのか、最終ゴールはどこに置いているのかということを確認したいと思います。

谷垣国務大臣 最終ゴールというのは、いろいろ、事件数や何かもしょっちゅう変動がございますので、その都度考えていかなければならないのではないかと私自身は思っておりまして、むしろこれは、法務省から裁判所の定数についてこうこうということを申し上げるよりも、やはり裁判所自体がどういうふうに御判断をなさるかということにかかっているのではないかと思います。

田嶋委員 では、最高裁、どうぞ。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判官の増員というのを毎年お認めいただいているところでございますが、御指摘のとおり、事件というのが複雑困難化しているところでございます。

 司法制度改革の時点におきまして、裁判の質を高めつつ一定の期間内に審理するために、一人当たりの手持ち件数を百三十件から百四十件に減少するというような目標を立てまして、それに向けて計画的な増員を行ってきたところでございます。

 現在まだその状態に達していないわけでございますが、平成二十四年のこの審議におきまして、その時点においてさらに四百人規模の増員が必要であるということを答弁させていただいたところでございます。

 今後、事件変動という不確定な要素がございますので、最終的に何人ということは確実なことを申し上げるのは困難でございますが、なお相応規模の裁判官の増員が必要であるというふうに認識しているところでございます。

田嶋委員 ありがとうございます。

 では、目指すところに一気にふやせばいいんじゃないかなと私は思うわけです。三百人か四百人か、毎年毎年こうやって法改正してやらずとも、一気にふやすことはなぜできないんですか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 現在、増員をお願いしているところは判事ということでございまして、これにつきましては、判事補を十年やったという資格要件があるわけでございます。その関係で一遍に大きな数をふやすのは困難であるということで、それを御理解いただければと思います。

田嶋委員 供給側のボトルネックがあるということで、こういう形で漸増させていくということは確認させていただきました。

 それでは、この資料三の下の裁判官以外の方の表でございますが、これを見ると、ふやしている書記官もあれば、ずっと減らしている速記官も事務官もあります。そして一番数を大きく減らし続けているのが技能労務職員ということでございます。

 次の資料の四ページをごらんいただきたいと思います。

 技能労務職員には、この清掃業務とか庁舎警備業務とかが入るようでございますが、こちらは裁判官とは逆にどんどん減り続けてきておるわけでございます。

 しかし、私が思いますのに、こういった業務は、人の数を減らすけれども、では、それは要らない仕事だったのかと。減らしてそれで終わったんじゃなくて、実は、この表にありますように物件費というのもありまして、これは外への外注ですね。つまり、清掃業務も庁舎の警備業務も、物件費も発生をしておるわけでございます。

 私は、これを見ていてちょっとよくわからないのは、なぜ、物件費で外注は過去ずっと同じ水準であるのに、一方で、人の定員はどんどん減らすことができているのかということがよくわからない。見方によっては、では、物すごい無駄が実はあったのかというようにも見えるわけでありますが、ここの定員合理化が可能になっている理由を説明してください。

垣内最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 技能労務職員を減員した場合にも、その職員が行っていた業務をそのまま外部委託するということではありませんで、その業務の合理化、効率化をまず行いまして、なお残存する業務について外部委託を行っているところでございます。それから、外部委託を行うに当たりましては、各庁において一般競争入札によりまして適正な水準で調達を行っているところでございます。

 こうしたことから、外部委託に伴う物件費につきましては、大きな増加を見ずに済んでいるというところでございます。

 今後も、こうした取り組みを続けてまいりたいと考えております。

田嶋委員 最後に、この法案関連の質問をさせていただきます。

 それでは、同じように、最終的な目指すところはどの点を見ていらっしゃるのでしょうか。裁判官はどんどんふやしていきたい、四百人増ぐらいが目指すところだと。では、定員合理化は、最後はゼロにして全部アウトソースという選択肢ももちろん理論的にはあろうかと思います、しかし、現実的にはそれは無理なのかもしれません。今どういうところを目指して、毎回毎回、一年一年、定員の法律改正をしているのかという確認をさせていただきたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 技能労務職員の定員の削減は、定年等の退職に際しまして、裁判所の事務への支障の有無を考慮しつつ、外注化による合理化等が可能かを判断して、後任不補充とした上で、問題が発生していないという状況が継続しているということが確認できた場合に定員削減を行っているというところでございます。

 定員削減につきましては、退職者数を踏まえ、代替措置の状況を見つつ、計画的に実施していく必要があると考えているところでございまして、最終的にゼロというようなところの数字について、現時点で確実なことを申し上げるのは難しいということを御理解いただければと思います。

田嶋委員 それでは、残りの時間で、少し難しいテーマでございますが、死刑制度について御質問をさせていただきたいと思います。

 再犯の問題や、刑務所視察をしておりますと、当然、死刑のこと、それから終身刑のこともいろいろ考えるわけでございますが、同時に、先日、谷垣大臣のところに、裁判員裁判に参加をされた方からの申し入れというのがございました。そういうニュースも見かけました。そういうことも含めまして、やはり私も、死刑制度が賛成か反対か以前に、死刑にかかわる情報が国民に余りにも少ないのではないかという指摘は全くそのとおりだろうと思います。

 なおかつ、私は、若干、スタート時点で憂慮がございましたが、裁判員制度の中でも死刑判決が出ているということもあれば、まさに、国家権力ではなくて、一人一人の国民が死刑というのはどういうことなのかということをより深く考えるきっかけがもっとあっていいというふうに思っております。

 そこで、最初の質問でございますが、局長で結構でございます。

 現在服役中の確定死刑囚、すなわち死刑未執行者の人数、そのうち再審請求中の者が何人いるのか、それと、裁判員が関与した確定死刑囚の人数、そしてもう一つ、死刑未執行者にかかわる、死刑判決確定日から本日までの平均の刑務所に入っている収容期間、この四つをお答えください。

林政府参考人 お尋ねの人数、数値につきまして、平成二十六年、本年の三月十三日現在で法務省の把握する限りにおきましてお答えいたします。

 まず、未執行の死刑確定者の人数は百三十一人、そのうち再審請求中の者の人数は八十九人、裁判員裁判で死刑判決が言い渡された死刑確定者の人数は四人、最後に、死刑判決確定日からの平均収容期間は約八年五カ月となっております。

田嶋委員 次に、もう一つ確認をいただきたいんですが、平成十六年から二十五年、直近のデータのある過去十年に、死刑の確定後、死刑執行前の服役中に病死も含めて亡くなった人数、それから同じその期間に死刑執行された人数、そして執行された者の死刑確定後の平均の服役期間を教えてください。

林政府参考人 平成十六年から平成二十五年までの十年間の数値でございますけれども、まず死刑判決確定後、執行前に死亡した人数は十六人、死刑が執行された人数は五十五人、執行された者について死刑判決確定日から執行までの平均期間は約五年六カ月となっております。

田嶋委員 今数字をいただきました。私は、詳しくはありませんけれども、受ける印象として、執行された者の平均の服役期間は五年六カ月、そして今、百三十一人未執行者がいて、その人たちは平均八年以上刑務所の中にいるという点、それから、執行者が五十五人に対して、病死の方もかなりいる、刑務所の中で亡くなった方も十六名、事実上の何か終身刑のような状況も起きているのかなという印象も受けました。

 そこで、次の質問をいたしますが、資料の五ページでございます。

 刑事訴訟法の四百七十五条というところに、まさにその刑の執行は、法務大臣の命令によるというふうに書いてございますが、その第二項には、「前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。」と非常に明確に書いてあるわけで、これはほかに読みようがないわけでございますが、先ほどのとおり、未執行者の刑務所にいる期間は平均八年以上でございます。

 六カ月以内に必ずしも執行しなくてもいい法的根拠を教えていただきたいと思います。

林政府参考人 ただいま御指摘のありました刑事訴訟法第四百七十五条第二項本文でございますけれども、そこにおきましては、死刑の執行の命令は、判決確定の日から六カ月以内にしなければならない旨が規定されておりますけれども、これは一般に訓示規定であると解されておりまして、そのように判示した裁判例もあると承知しております。

田嶋委員 訓示規定というふうに私も法務省から伺っておりますけれども、それでは、死刑の執行のタイミング、そして、どの服役者を死刑にするかという決定の理由と決定方法はどのようにして行われているかということを大臣から教えていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 個々の執行の判断については、今までも御答弁を差し控えております。私はそれが必要だと思っておりますが、一般論として申し上げますと、死刑執行に関しては、まずやはり、私は、裁判所の判決が確定して以降、さらに法務大臣の命令が必要とされているということは、それだけ慎重な手続をとれということだろうと思います。

 まず、関係記録を十分に精査していくということが必要だろうと思います。それに加えて、刑の執行停止であるとかあるいは再審事由の有無等々について刑事訴訟法に規定がございます。それについて該当するものがあるかどうかということはきちっと検討しなければならないわけでございまして、そういった事由がないと認めた場合に死刑執行命令を出すということでやっております。

田嶋委員 ちょっと時間のあれで割愛する部分もありますが、資料六をごらんください。

 その大臣の死刑執行の判断、そして今日本に死刑制度があるという一つの大きな依拠する理由が、国民に強く支持をされているという世論調査の結果でございますが、内閣府にお伺いをいたします。

 この世論調査の集計結果のみならず、研究者の二次分析の用に資するためにもととなるマイクロデータそのものを公表しておりません。公表しない理由は何でしょうか。

武川政府参考人 お答えいたします。

 内閣府におきまして、平成二十一年度までは世論調査の個票データそのものが保存されておりません。

 理由は、世論調査がその結果を統計的に処理するということを前提に調査協力をお願いしている、それから、各府省で調査結果を活用するということにつきましては、性別、年齢別、居住地域、都市規模、職業などのクロス集計を実施すれば十分に政策目的を達成できるという考えがございまして、集計結果の確認が終わった時点で個票データを直ちに廃棄していたということでございます。

田嶋委員 個票データはないということですが、その廃棄というのはどこで行われているんですか。

武川政府参考人 内閣府の中でございます。

田嶋委員 きのうは事務方からはそういう答弁じゃなかったですよ。発注先の業者に指示をして破棄をさせていると聞きましたけれども。

武川政府参考人 業者から内閣府が提供を受けてチェックを行って、その後のものは内閣府で破棄をしておりまして、業者の方に残っているものは業者の方で責任を持って破棄をしていただいております。

 失礼いたしました。

田嶋委員 ちょっときのうと言っていることが違います。個人情報の一部は業者任せで破棄をさせている、そういうことですか。

武川政府参考人 はい。契約によってそのように行っております。

田嶋委員 私も、きのうこの話を聞いて、少し扱いが乱暴なのではないか、個人情報だから破棄しなきゃいけないと言いながら、業者が破棄しているかどうかは確認していないようでございまして、業者任せというふうに言わざるを得ない部分もあると私は思います。

 きのうお見えになった方も、残念ながら、今日までやった死刑制度にかかわる世論調査の個票という基礎データは一切今日本には存在していないということを確認させていただきましたが、やがては次回の調査も行われると思います。

 オープンデータ、オープンガバメントという横文字を出すまでもなく、まさに国民が大事な情報開示を受けて、そしてそれをいろいろな角度から検証することもある、研究者の用に資することもあろうかと私は思います。そしてまた、一部には、資料六のこういう質問の聞き方にいろいろな課題があるという御指摘も、ほかの国々からもいろいろといただいておるところでございます。

 大臣に最後にお伺いをいたしますが、この質問の質問項目を、そもそも法務省と内閣府で協力をしてつくっているようでございますが、こうした質問項目をつくるに当たっても、やはりいろいろな御批判をこれまで受けていることもこれあり、今後は、もう少しそのプロセスに関していろいろな人々の御意見を反映させることをできればやっていただきたい。

 そして、これまでの過去のものに関しても、どういう批判があったのかということをしっかりと検証もしていただきたい。

 そして、三つ目ですけれども、データが全くないというあってはいけないようなことが、この数年、改善が始まったということもきのう聞きました。役所が御自身で反省をされたということがありますが、かなりひどい状況があると思います。

 法務大臣、特に大事な世論調査の結果は、しっかりオープンデータをしていく、当然、情報管理をしっかりやっていただく、このことも大臣にお願いをしたいというふうに思いますが、最後、御答弁をお願いします。

谷垣国務大臣 世論調査については、統計的なという言葉を使っていいのかどうかわかりませんが、いろいろな御議論があるようでございまして、この死刑についても、平成六年でしたか、専門家の意見ももう一回いろいろ伺ってつくり直したというふうに聞いております。

 それから、もう一つは、こういう世論調査はやはり一種の定点観測みたいな意味合いがございますので、余りしょっちゅう質問項目を変えてしまうと、世論の変遷とか国民の意識の動向もつかみにくいという点もあるようでございます。そういう点も十分勘案しなければいけないと思いますが、どういう御批判があるかというようなことについては、私もよく耳を傾けたいとは思っております。ただし、そういう専門的ないろいろな御議論がございますので、そういったこともよく踏まえながらやっていかなきゃいけないと思います。

 それから、資料の管理につきましては、これはやはり統計の扱い方、内閣府の方でいろいろ御議論があると思いますので、直接私は責任者ではございませんので、これについてはお答えは差し控えたいと思います。

田嶋委員 時間が来ましたけれども、まず前半の部分ですが、継続性という観点は重要だと思います。それであるならば、定点観測をしている従来の質問を維持しながら、そして聞き方を変えた質問も加えるとか、そういうやり方もあるのではないかというふうに私は思います。

 そして、後段ですが、聞くところによりますと、この調査に関する部分は、所管の大臣、副大臣、政務官がいない部分らしいんですね。直属が官房長官、その下はもう全部事務方ということのようでございます。しかし、やはり国民から聞き取りをした世論調査の結果をしっかり管理して、多くの国民がどういうもとの情報があるのだということにアクセスできるようにするというのは、時代の趨勢としては私は常識だろうというふうに思います。個人情報の管理をしっかりしながらやっていただきたい。

 それで、大臣、これは答弁を差し控えるとおっしゃいましたけれども、発注元は法務省ですからね、これは。内閣府の役割は何かといえば、内閣府は、こういう聞き方をすると中立ではありませんとか、そういう世論調査のノウハウに関しての助言をするのが内閣府であって、コンテンツというか、死刑の話の内容は法務省なんですから、所管は。そこはやはり関心を持っていただいて、やはり世の中に役立つような形でしっかりと世論調査をやっていただき、御批判に応えられるようにしていただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、高橋みほさん。

高橋(み)委員 日本維新の会の高橋みほでございます。

 きょうもどうぞよろしくお願いいたします。

 本日、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして、判事の員数を三十二人増加するという点、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十六人減少しようとするものとのことです。

 裁判官の定員の増につきましては、私は、国民の迅速な裁判を受ける権利の観点からはとても必要なことだと思っておりましたので、この法案につきましては反対することはございませんが、この法案の内容、判事の員数を三十二人増加するなどということを、毎年、一々法律で決める必要性があるのかということは大いに疑問に思われました。

 一般常識的に考えましたら、総定数を法律で決めておき、その増員は最高裁判所の規則等で決めればいいのではないかと思うのです。こうすれば、計画的に、また弾力的な運用が可能でありますし、一々、毎年法律の改正を求めるのは煩雑であり、法改正に人手を割くのも無駄ではないかとも思われます。

 この点、調べましたら、平成六年三月二十五日の衆議院法務委員会で同じような質問がなされておりました。そこでの答弁では、裁判所は、基本的には事件を処理する官庁であるので、事件処理の需要がどの程度出てくるかに応じて定員が決まってくる面があるので、総定数を法律で決めておくようなことにはなじまないというような御答弁でした。

 しかし、これを伺ったときに、全くおかしいことで、事件の数がふえないならば実際に増員しなければいいだけのことですし、事件の数が減ったならば定員を削減するということもある程度自由に行えれば構わないというふうにも考えられます。

 事件を処理する官庁であるからということは理論的にちょっとおかしいのではないかと思いますけれども、この総定数を決めておく制度にできないものなのか、できないならば、できない理由が、事件数が読めないということ以外に何かあるのか、谷垣法務大臣にお尋ねしたいと思います。

谷垣国務大臣 実は毎年、今の委員のような御議論があるわけでございます。

 それで、まず頭を整理いたしますと、国家機関の組織に関することは基本的にまず法律で定めなければならないという一般原則はあるだろうと思います。しかし、それだけですと、今委員のおっしゃったように、枠を大きく決めておいて、あとは弾力的にそれぞれの機関で判断すればいいじゃないかという御議論が出てまいります。

 確かに、全部それをぴしっと決めてしまうことはなかなか難しいですから、そのときそのときに一体誰が判断していくかという問題が一つあるんだろうと思いますね。ですから、そこまで参りますと、あとは国会の民主的コントロールと申しますか、そういうものをどこまで及ぼすのかという判断になってくる、これが一つございます。

 それからもう一つは、やはり国全体で定数管理、定員管理というものをやっていこうという流れが一方でございます。その中で、もうちょっと欲しいとか、いつも毎年毎年、これは裁判所だけじゃないと思います、私どもの法務省でも、毎年毎年、例えば総務省と相当やり合いながら欲しい人員を確保するということがございまして、何かどこかに目標を設けてそこでばっと進んでいければいいのになと思うことが私もないわけではございませんが、現実に国として定数をどのぐらいで決めていくかということでかなり厳しい縛りをかけている現状では、今のような仕組みも十分存在根拠があるのかなというふうに考えているところでございます。

高橋(み)委員 谷垣法務大臣のお言葉はそのとおりだと思うんですけれども、毎年毎年同じようなこのような委員会が開かれるというのは、やはり時間的にはかなり無駄ではないのか。やはり最低本当に必要だということがきっと最高裁判所の方でもあると思いますので、ある程度一定の枠をかけて決めていくということもこれから考慮に値することではないかと私は思っております。

 それでは、このままでいかざるを得ないと思いますので、今回の法律案について質問をさせていただきたいと思います。

 今回のように定員を増加させる場合、では必要数が何人なのかということをまず最初に考えなければいけないということは、これは自明の理だと思っております。

 平成十三年の司法制度改革審議会からの照会に対して、最高裁判所事務総局は、裁判の迅速適正化、専門化に対応するために、合計約四百五十人の増員が必要だと考えているとお答えになっております。

 この目標のとおりの定員増が図られれば、増員後は、例えば、地裁民事訴訟事件では、人証調べがある判決終局事件の審理期間は十二カ月になり、平均期日間隔は三十日、これは、一月に一回審理され、平均約一年で事件が終局するということを目標にされているのだと思われます。

 ただし、その後増員が図られたんですけれども、最高裁事務総局、裁判の迅速化に係る検証に関する報告書によりますと、平成二十四年では、まだ人証調べがある判決終局事件の審理期間は十九・一月、平均期日間隔が一・八カ月、すなわち五十四日というように、平成十三年度時点で目標を立てたときよりも平均期日間隔は広がっている、すなわち悪い状況になっております。

 私は、この最初の目標ということに対しましても、結構長過ぎるのではないかと思っております。平均なら、それ以上も半分ぐらいはあるのかなという印象ですので、二年ぐらいかかってしまうということも多々あると思います。一般の人たちが裁判によって解決を図りたいと思うのに、一年も二年も待たされる、次の審理はいつなのかなと思うと約一カ月後、二カ月後というのは、やはり国民一般の感覚からいいますと、裁判所の事務手続とか弁護士さんの手続とか、いろいろなこともあるかもしれませんけれども、国民の目線に立てば、これはかなり裁判を受ける権利というものを侵害されているのではないかと思います。

 そして、先ほど言いました目標に対しても、実効性が余り進んでいないということは残念なことだと思います。

 これを考えますと、今回の定員増三十二人では少な過ぎるのではないかと思われますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、土屋(正)委員長代理着席〕

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 平成十四年度から平成二十三年度まで、委員御指摘のとおり、その後、裁判員制度の導入という事情がありましたものですから、合計六百七人、十年間で六百七人の裁判官を計画性を持って増員してきたところでございます。その後も、平成二十四年度に三十人、二十五年度に三十二人ということでお認めいただいてきたところでございます。

 これまでの増員によりなかなか成果が出ていないのではないかという御指摘、まことに耳の痛いところでございますが、長期未済という観点でいいますと、二年を超える長期未済事件について、平成十二年当時は民事訴訟などで一二・四%を占めていたわけでございますが、平成二十五年では七・一%ということで、長くかかる事件については一定改善はしつつあるということでございます。

 少な過ぎるという御指摘でございますが、今回、三十二人がお認めいただけるのであれば、現有の人員の有効活用とあわせて、さらに適正迅速な裁判ということに向けて努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私は、別に最高裁判所が努力していないという意味ではなく、本当にもっともっと増員したらいいという意味で今質問させていただきましたので、これは本当に三十二人で妥当なのか、もっと強く政府に要求するなりしていったらいいかなと思っております。

 次に行きますが、定員につきまして考えるとき、司法の分野では女性の登用がどうなっているのかということに私は興味がございます。

 第三次男女共同参画基本計画では、二〇二〇年に指導的立場に女性が占める割合を少なくとも三〇%にする目標に向けた取り組みを推進することとなっております。政治、司法、経済分野など、これまで取り上げてこなかった分野にも国は積極的に働きかけるということをおっしゃっております。

 さらに、安倍総理は、ことし一月二十四日の所信表明演説におきまして、二〇二〇年にはあらゆる分野で指導的地位の三割以上が女性となる社会を目指します、そのため公開を進めてまいります、まず隗より始めよ、国家公務員の採用は再来年度から全体で三割以上を女性にいたしますというふうにおっしゃっております。

 調べましたら、裁判官の女性比率は、平成二十五年十二月一日現在、一九%とのことでした。他の分野に比べましたらこれはかなりいいのかもしれませんけれども、三割目標というところには残念ながらまだ届いていないと思われます。

 では、最高裁判所にお尋ねしたいと思います。

 裁判官におきましても、この三割目標ということは当てはまるのでしょうか。三権分立からしますと、行政権のトップ、安倍さんがおっしゃった三割というのは当てはまらないと考えているのか、お尋ねしたいと思います。

安浪最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 簡裁判事を含めました裁判官全体におきまして、女性裁判官の占める割合は、委員御指摘のとおり、現時点で約二割でございます。その一方で、近年では、新任判事補、新しく裁判官に任官する者でございますが、それに占める女性の割合は、毎年三割を超えてきております。その割合は着実に増加してきているところでございます。

 この新任判事補の採用に当たりまして、男女で何か基準を設けるということはいたしてはおりませんけれども、裁判官としてふさわしい者につきましては、男女を問わず、できる限り任官してもらいたいと考えているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 新任判事補さんが、別に特別な手当てをしていないのに三割を超えたというのはすごくうれしい限りですので、ぜひこれからも能力がある方を、男性、女性問わず、採用していただければと思っております。

 同じ点につきまして、谷垣法務大臣はいかがお考えでしょうか。やはり、府省のところでも女性をもっともっとふやしていくべきだとお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 裁判所がどういうふうに裁判官を採用されるかというのは、まさに専権でございますから、行政府、特に隣接する部門である私がああせい、こうせいと言うのは、これはいかぬのじゃないかと思っております。

 ただ、政府としては、先ほどおっしゃったように、目標を立てて女性の登用を進めようということでございますから、当然、私としても、しろと言うんじゃなしに、そういうことを御努力願いたいという要請をする立場にいるのではないかと思います。

 それで、今最高裁の方から御答弁がございましたように、今、司法試験合格者のうち、女性は大体四分の一、二五%内外だと思いますが、毎年の採用が三割を超えておられるというのは、大変そこに御努力があるのかなと思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 それでは、ちょっとかわりますが、迅速な裁判を行うには、どう考えても裁判官を増員しただけでは足りなくて、それを支える裁判所書記官の増員、家裁の調査官の増員も考えなければいけないと思っております。

 裁判所書記官は、平成十三年の時点で千人の増員を求めていらっしゃいました。家裁の調査官はこれから検討ということでしたが、実際にはどのくらい増員されて、現在の目標数などとの乖離はどのくらいなのか、お尋ねいたしたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 家庭裁判所調査官に対するお尋ねだと思います。

 家庭裁判所調査官につきましては、家庭裁判所の特色である科学性や後見性を十分に発揮して適切な事件処理が図られるよう、平成十二年度から平成二十一年度までの間、事務官からの振りかえを含めまして七十三人を増員してきたところでございます。

 平成二十六年度におきましては、現有人員の有効活用によって家庭事件の適正迅速な処理を図ることができるというふうに判断して、増員をお願いしていないところでございます。

 先生御指摘のとおり、裁判事務を直接担当する裁判所書記官及び家庭裁判所調査官につきましては、今後の事件動向を踏まえつつ、適切な事件処理が図られるように必要な体制整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

高橋(み)委員 今、家庭裁判所の調査官に関しましては、それほど増員が必要ではないというようなイメージの御答弁だったとは思うんですけれども、実際現場に行きますと、ここはふやしてほしいという方もたくさんいらっしゃいますので、本当にそうであるのかということをもう一度確認していただければと思っております。

 さて、国家予算は無限ではありませんので、削減できるところは削減するということだと思うんですけれども、通常、IT化によって人員を削減するということはよく行われております。人員削減という観点からIT化をされていらっしゃるんだとは思うんですけれども、それについて御説明をお願いいたします。

中村最高裁判所長官代理者 裁判所におきましては、国民の利便性の向上、事務の合理化、効率化といった観点から、IT化による効果が十分に見込まれる部門に対してITを活用するという姿勢で臨んでおります。

 このような方針に基づきまして、ウエブサイトを開設して、国民に裁判所や裁判手続に関する情報を提供するほか、不動産の競売物件に関して広く情報提供をするなどしております。

 また、最高裁と全国各地にある下級裁判所をネットワークで結んだ上で、会計部門における府省共通システムに参加したり、事件の適切な管理等を目的とした各種情報システムを運用するなどしてきたところでございます。

 人員削減との観点ということで御指摘ありましたけれども、今回の技能労務職員の削減等につきましては、必ずしもITということで合理化できる分野ではございません。そういうところで、ITによる事務の効率化は直接人員削減にはかかわってくるところが少ないとは思うんですけれども、この効率化についてもさらに進めてまいりたいと考えているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 次に行きまして、裁判官非常駐の支部についてお尋ねしたいと思います。

 現在、全国二百三の支部のうち四十六の支部では、裁判官が常駐することなく非常駐となっております。

 お配りしました資料を見ていただきたいんですけれども、これは私の地元の資料なんですけれども、北海道では、十庁が裁判官が常駐しておりません。そして、その常駐していない地域の執務日は、その横の欄に記載しているのですが、すごく少ないのですね。例えば、滝川支部では毎週水、木及び第三火曜日、これは少し多い方なんですが、函館管内の江差支部では第四の木、金しかありません。ほかには、網走でも毎週水曜日と金曜日になっております。

 このように、かなり裁判官が常駐しない支部が多い、プラス、その常駐していない支部に裁判官も、余りというか、週に二回とか、この週には全く一人も行かないというような日があるというところが多くなっております。

 これにつきましては、支部にかかる事件数が少ないので裁判官が常駐しないのだ、だから問題がないというふうな御意見もあるのですけれども、やはり一般的に考えて、裁判所に裁判官がいないというのはどう考えてもちょっと正常ではないんじゃないかというような気がします。

 それで、弁護士会の方に聞いてみましたら、やはりそれは大きな問題がありまして、例えば、北海道の稚内簡易裁判所で判決が控訴されると、二百五十キロ離れた旭川市の本庁での合議事件になり、控訴を断念する温床になるおそれがあるとか、大分県では、保釈の決定がおくれる、保釈請求する曜日によっては決定が一週間後になるとか、広島県福山市では、支部で医療過誤の裁判はやっていない、裁判員裁判もできない、重要な事件は本庁に行って、事件がどんどん本庁に集められてしまっているとか、労働裁判を取り扱わない支部があるので、相談者が労働審判を断念したことがあるなど、かなりいろいろな問題があるというふうに伺っております。

 そこで、今回増員される人たち、もしかしたら大きな、東京とか大阪で人手が足りないというところに人が配置されるのかもしれないんですけれども、この非常駐の裁判所の解消に向けて、そこに裁判官を常駐させるような予定があるのか、伺いたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 全国津々浦々において適切な司法サービスが提供できるように、人口の少ない地域においても裁判所が設置されているところでございますが、事件数が少ない裁判所におきましては、委員御指摘のような填補体制というのをとって事件処理を行っているところでございます。

 ただ、裁判官が常駐しない支部でありましても、書記官等は常駐しておりまして、事件の受け付けや手続案内等には支障がない体制をとっているところでございます。

 また、審理の状況を見ますと、平成二十五年度の時点で、例えば北海道でいいますと、本庁で民事訴訟の平均審理期間は八・〇月ということでありまして、常駐支部では六・五月ということでございますが、非常駐支部では六・三月ということで、非常駐支部の事件解決がおくれているという事態が一般的に生じているということは考えにくいところでございます。

 いずれにいたしましても、裁判所といたしましては、今後の事件動向を常に注視するとともに、適正迅速な事件処理に支障を来すことがないように対応して、今後とも、北海道を含めまして、全国津々浦々で利用者が適切な司法サービスの提供を受けることができるような体制の整備に努めてまいりたいと考えている次第でございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 確かに、平均の審理期間というのは、非常駐でも常駐でもそれほど変わらないということは伺っております。ただ、やはり弁護士さんから聞いた限り、先ほども申し上げたように、そもそもそこのところの裁判にかけることを断念するような場合も多いと伺っておりますので、この数字にあらわれない実際の不都合性というものがあるんじゃないかと思っております。

 やはり何といっても国民の裁判を受ける権利というものは大事なものだと思っておりますので、そういうような実際上の不都合性がないかということをぜひこれからも注視していただければと思っております。

 次に行きまして、特例判事補制度についてお尋ねいたしたいと思います。

 これは、皆さんよく御存じだと思うんですけれども、現在では、司法修習を終えた者の中から判事補に任命され、この判事補は原則として一人で裁判することはできず、判事補が関与する事件は合議事件のみである、そして、実務経験が五年以上の判事補から最高裁判所が指名することによって、判事補の制限を受けない特例判事補となり、判事と同じ権限を有することができるというような仕組みで今裁判所は回っていると伺っております。

 ただ、これは、私は聞いたときに不思議な制度だなというふうに思いました。それは、本来は、判事補になって十年間は経験を積んで、一人前の裁判官となって判決を下すことができるというものが前提となってこのような制度ができたと思われますので、それを、ただ人数が少ないからというような理由で特例判事補制度というものをつくり、まだ判事補になってから期間がそれほどたっていない人たちが一人の裁判官、裁判長となって判決を下していくということには少し問題があるのではないかと思うのですけれども、その点、いかがでしょうか。

安浪最高裁判所長官代理者 特例判事補制度につきましては、司法制度改革審議会の意見書におきましても、「計画的かつ段階的に解消すべきである。」とされており、この特例判事補制度の見直しについては、現実的な視点に立って、計画的、段階的に解消すべきものであるというふうに認識しております。

 私どもでは、当面、特例判事補が単独訴訟事件を担当する時期を任官後七年目ないし八年目にシフトすることを目標として見直しを進めてまいっているところでありまして、東京、大阪、名古屋を初めとする大都市本庁におきましては、ほぼこの目標を達成することができる状況になってきております。

 ただ、この特例判事補制度の見直しにつきましては、この者たちにかわる判事を確保する必要がございます。弁護士任官の推進ということも一方であったわけでございますけれども、弁護士任官の確保が進まないという状況の中で、今申し上げました大都市以外の裁判所では、この見直しというのはまだ道半ばの状況にあるということでございますが、この点につきましては、さらに取り組みを継続していきたいと考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 判事の数が足りないというのが全体的な印象だとは思うんですけれども、やはり弁護士の任官ができないというところには、いろいろな問題が今までも指摘されていると思います。ぜひ、それらを解消して、やはりある程度経験を積んだ裁判官がきちんと判決を下せるような正常な制度に戻していただければと思っております。

 今までは裁判官の量、何人必要かということをお話ししてきたんですけれども、やはり何といっても裁判官の場合は質が大きく求められるかと思っております。

 失礼に当たらなければいいんですけれども、大学を卒業して、法科大学院を出て、修習を受け、判事補になって、やがて判事になりという場合でも、世間一般の常識というところから、残念ながらその常識を知らない方たちというのがやはりいらっしゃるのではないかと思っております。それは、その方に能力が欠けるというわけではなく、やはり社会経験をしていないというところに大きな問題があるのかと思われます。

 それを考えますと、一人前の判事になる前に、判事補の時代に民間の交流などをされることはとても大事なことだと思っております。今実際には、公官庁などへ一定期間在籍するということもされていると思うんですけれども、実際に本当に必要なのは、民間の企業に行って働くことではないかと思っております。

 また、例えば、商法から会社法にかわりまして少しはよくなったとは思うんですけれども、裁判官さんは中小企業の実態ということを余り知らないんじゃないかというような疑念もございます。それで、中小企業の実態などもやはり知ってもらうということになりましたら、本当に国民の目線に立った裁判というものが行われるのではないかと思っております。

 そこで、質問させていただきたいんですけれども、民間に対してどのくらいのそのような交流などをされているのか、されているとしたら人数など教えていただければと思っております。

安浪最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 私どもといたしましても、これからの裁判官が幅広い視野を備え、豊かな人間性等を備えていくというのが最も大事なことだというふうに思っております。

 そこで、民間企業への派遣の状況でございます。平成二十五年度について言いますと、民間企業へ十二人、そのほかに、日銀それから経団連の21世紀政策研究所へ各一人、これらを一年間派遣しております。平成二十六年度につきましても、同程度の数の裁判官を派遣する予定でおります。

 以上でございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 平均十二人ほどという話だったんですけれども、やはりそれはきっと、私が勝手に解釈するんですけれども、大きな企業なんじゃないかと思っております。できましたら、なるべく地元に本当に密着した、例えば中小企業家同友会というような組織がいろいろなところにあると思うんですけれども、そういうところの企業をちょっと回ってみるとか、本当に地元で頑張っている企業がどういうような仕組みで会社を運営しているかなどを調べるために、ぜひ中小企業に出向していくというようなことももう少し取り入れていただければと思っております。

 最後になりましたけれども、審理期間の長いものとして医療過誤の問題があるかと思います。これを考えますと、医療の知識がある裁判官の存在が求められると思うんですけれども、これら専門性がある人材を育てるためのプログラムというものがあると伺っております。

 実際に、このプログラムによってどれだけの専門性を有した裁判官が現在生まれているのかということをお聞かせ願いたいと思っております。

安浪最高裁判所長官代理者 委員御指摘の医療事件も含めまして、専門的で難しい事件がたくさんふえてまいっております。

 医療に限って申し上げますと、司法研修所におきまして、裁判官の研修を担当しておるわけでございますけれども、専門的知見を身につけてもらうため専門的な研究会を開いております。

 また、比較的大きな規模の裁判所でございますけれども、医療事件を専門的あるいは集中的に扱う部を設けまして、これらの専門事件についての知見を蓄積してより質の高い裁判を確保する、それとともに、所属する裁判官にまた事件処理を通じて専門性を身につけていってもらうというようなことをしております。

土屋(正)委員長代理 高橋みほさん、時間が参りました。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 医療過誤に限らず、建築関係の事件とか経済事件などいろいろあると思いますので、ぜひ、いろいろな分野で知見を広げるようなシステム、プログラムをこれからもつくって、利用していただければと思っております。

 これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

土屋(正)委員長代理 次に、椎名毅君。

椎名委員 改めまして、結いの党の椎名毅でございます。

 本日、裁判所職員定員法、三十分の質疑時間をいただきました。本当にありがとうございます。

 去年もこの法案から実質的な法案審議がスタートをしまして、ああ、一年経過したんだなと思いまして、私自身も、この一年間いろいろな経験をさせていただきまして、おかげさまで本当に少しずつ少しずつですけれども成長しているような気がします。本当に皆様方にも感謝を申し上げたいなというふうに思います。

 この法案についても、今までの先生方の質疑を伺っておりましたけれども、論点というか問題意識はおおむね共通する部分があろうかというふうに思います。さらに翻ってみて、自分の去年の質疑を見てみると、やはり自分が持っている問題意識とほとんど変わらないものだなというふうに思って、同じようなことを聞くかもしれませんけれども、御容赦をいただきたいなというふうに思っております。

 では、質疑に入りたいと思います。

 ことし、この裁判所職員定員法ということで、判事の員数三十二人増員ということで、法案の改正ということになっております。ことし、平成二十六年の恐らく十月、秋ごろから、新しい判事の方が就任されたいということかなというふうに理解をしております。

 判事の員数をふやすというのは、今のところ、物理的には、基本的には、十年前に判事補になった五十七期修習生の方々がことし判事になっていただくということで、そのとき採用した修習生の方々と、ことし恐らく定年になったりおやめになられる方々の数とを比べると大体三十人ぐらいの差があるから、こういう法案になっているんだろうというふうに基本的には私自身理解をしています。それ以外にも大きな違いというのはいろいろあるのかもしれませんけれども、根幹部分というのは、やはり十年前に判事補をふやしたということの経緯もあってというんじゃないかなというふうには理解しています。

 今後しばらく、判事補が従前と比べて何人ふえているかというのもわかっているわけですし、さらには、先ほど来質疑の中でいろいろ出てきておりますけれども、去年も聞きましたけれども、やはりこの法案を毎年毎年改正するということは、手間暇の煩雑さということを考えると、いささか手間暇がかかることではないかなというふうに思っております。

 人数という意味でいうと一定程度予測ができる部分もあろうかというふうに思います。したがいまして、例えば、特例公債法の改正をし、国債の発行というものを財政法の四条の例外という形で毎年やってきたものを、一定程度、毎年毎年やらなくてもいいんじゃないかという法改正をこの間行ったわけですけれども、同じように、弾力的な運用ということを考えた上で、裁判所の総定員、ある程度上積みした上で、法律を定めた上で、細目は予算で対応するということを本格的に検討した方がいいんじゃないかなというふうに思います。

 先ほど田嶋先生も高橋先生も同じことを聞いているので、改めて同じことを答えていただくということで大変恐縮でございますが、どうぞお答えをいただければと思います。

谷垣国務大臣 去年も椎名議員とは同じ議論をさせていただいたと思うんです。

 先ほど高橋委員にもお答えをいたしましたが、現時点での考え方を整理しますと、国家機関の定員、基本的なことはやはり法律で定めなければいけないということだろうと思います。

 そこで、では、毎年毎年それを決める必要があるのか、上限はここまでであるとかいうようなことで、そのときの実情は、裁判官の場合は司法部で判断をするというようなことでよいのではないかという御議論があるわけですが、私は、大きく言えば、国会で民主的コントロールをしているということなんだろうと思います。

 それに加えまして、私、裁判所がその年の定員やあるいは裁判官の給与等々でどのような折衝をしておられるか、十分によくわかりませんが、私が財務大臣をしておりましたときも、毎年、裁判所の経理局長がお見えになってそういう折衝というものがございました。司法権は独立とはいえ、現実には裁判所も、定員を確保したり給与をとるのに毎年毎年の折衝でそれなりに御苦労をされているだろうと思います。

 そんなことをやりますと、やはりなかなか、では一遍に何年間はこれでというのに行くのかな、そこは今までやってきた仕組みもそれなりなのかなと思ったりしているわけでございます。

    〔土屋(正)委員長代理退席、委員長着席〕

椎名委員 ありがとうございます。

 大臣の御所見に対するコメントも後ほどするということで、裁判所の方からもぜひ御見解をいただければというふうに思います。

中村最高裁判所長官代理者 どういう形で定員を定めるかということにつきましては、今法律でお願いしているところでございまして、今大臣が答えられたところに最高裁として特段つけ加えることはございません。

椎名委員 わかりました。ありがとうございます。

 民主的コントロールというのは、それはそのとおりでして、三権分立という観点から、当然、何でもかんでも裁判所が独立でやるというわけではもちろんなくて、予算と法律でコントロールをしていく、その範囲の中で裁判所が行動するというのは、それはそのとおりなんだと思います。

 私自身も行政経験がないので、具体的な予算折衝のところでどう動いているのかというのはなかなか見えづらい部分は確かにあるんですけれども、とはいえ、民主的コントロールという大きな理念を達成するためという部分と、事務手間の煩雑さを防ぐためということを考えたときに、検討に値する内容ではあるのかなというふうには私自身も思っています。この議論を続ける気はないので、次に参ります。

 今回、裁判官、判事を三十二人ふやすこと、それによってどういう効果があるのかというところについて、引き続き裁判所の方に伺ってまいりたいと思っております。

 裁判官一人当たりの処理件数というのは、従前、一番多いときで、東京地裁の一番忙しい部分で大体一人当たり二百件というような形だったというふうに思いますけれども、今回増員をするということで要するに一人当たりの処理件数というのが下がるのかというところだというふうに思っています。

 先ほどの質疑の中でも、理想的なところまで一人当たりの処理件数を下げていくためには、おおむねさらに四百人ぐらいは必要だというような話もありましたけれども、実際にどのくらいの処理件数に下げていくことを目標として、どうやってこの四百人規模を今後確保していくのかというところまで含めて、今回の増員でどのくらい減り、さらに次の増員でどのくらいの処理件数が減り、最終的にどのぐらいかけてこの四百人規模を確保していくのか、そういったところについて伺えればというふうに思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 全国的にも繁忙と言われる東京地方裁判所の民事通常部におきましての裁判官一人当たりの件数でございますけれども、新受事件で一月当たり約二十六件、既済事件で一月当たり約二十七件、手持ち事件でいいますと、平成二十五年の末で約百七十件ということで、昨年お答えしたところから約二十件減少しているところでございます。

 一人当たりの適正な事件数を一義的に申し上げるのはなかなか困難なところでございますけれども、司法制度改革審議会におきまして、裁判の質を高めつつ一定の期間内に審理するために、一人当たりの手持ち件数を百三十件から百四十件に減少させることを目標とするということで増員を行ってきたところでございまして、平成二十四年の定員法の審議の際に、平成二十四年度の事件動向を踏まえたら、その時点で約四百人ということを申し上げたところでございます。

 この手持ち事件数の数につきましては、まず新受事件の数とかあるいは質によって大きく影響するということで、必ずしも、直ちにこの三十二人を増員したらどれぐらい減るかというのは、なかなか申し上げるのは難しいところでございますけれども、昨年増員をお認めいただいたところも踏まえて若干減ってきているというところでございますので、目標値というか、そこに向けて引き続き努力してまいりたいと考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 ことしの初めにちょっとおもしろい本が出て、「絶望の裁判所」というタイトルの本なんですけれども、昔、最高裁でも働いていた瀬木比呂志先生という弁護士の先生が書かれた本なんです。

 この本によると、ちょっとページまで引用しないんですけれども、趣旨としては、裁判官は抱えている件数が多いので、和解を強要するような裁判官もいたりする、裁判官の手間で一番大きいのは判決を書く手間であるというところで、なるべく判決を書きたくないから和解で落としたいという形で、当事者の意思が、なるべく和解はしたくないというふうに言っているにもかかわらず、和解で落とすように、強制的にとは言いませんけれども、そっちの方に誘導していくような人たちもいるみたいなことを言っているので、一人当たりの件数を合理的な件数におさめるということは結構やはり重要なことなんだというふうに思います。

 当事者が和解で落とすことを望んでいないというのであれば、たとえ裁判官がそれを和解で落とすことが望ましいと仮に思っても、やはり判決まで行くことが妥当なんだろうというふうに思いますし、そう考えると、やはり手持ち件数の問題というのは結構重要な問題なのかなというふうに私自身は思っています。

 そうだと思うからこそ、理想的なところまであと何人というレベルでいうと、先ほどおっしゃっていただいたように、あと四百人規模欲しいということであれば、それを継続的に確保していくためのすべということが必要なのかなというふうに思っています。

 その四百人規模を確保していくためのすべと、今現状確保できていない差異の問題というところ、二つあろうかというふうに思います。余り時間もないので、幾つか飛ばしながら行きますけれども、今申し上げた二つの論点でいうと、やはり足りない人間を確保するほかのすべということを考えていかなければいけないというふうに思います。

 その大きな手段というのが弁護士任官ということなんだと思いますが、弁護士任官というのも非常に、弁護士側としても弁護士任官というものを進めていきたいというふうに言っている割には、ほとんど進んでいないというのが現状なんです。

 判事補からの供給ではなく、今後の新しい判事の供給パスという意味で弁護士任官ということを進めていくに当たって、現在の利用状況、それから今後どのようにやっていきたいかということについて、裁判所の御意見をいただければというふうに思います。

安浪最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 私どもも多様な給源から裁判官の人材を得ることが重要であると考えておりまして、弁護士として豊富な実務経験を有するすぐれた法律家が裁判所部内で活躍していただくことは大変有意義なことだと考えております。

 このような観点から、日弁連との協議を経まして、昭和六十三年に判事採用選考要領を策定いたしました。その後、平成三年及び平成十三年に選考要領の見直しを行って現在に至っております。見直しの中身ということでいきますと、弁護士としての職にあった期間というものの年数を緩和するというようなことでございます。

 判事採用選考要領が策定されました昭和六十三年からの弁護士任官者の累計でございますけれども、判事九十人、判事補二十五人の合計百十五人となっております。

 なお、平成二十五年度でございますけれども、判事四人が任官いたしました。

 今後とも、すぐれた弁護士が多数任官するように引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 そうなんですね。トータルで今おっしゃっていただきました判事九十人それから判事補二十五人ということで、毎年大体一桁なんですよね。判事補からなる人と比べると、やはり圧倒的に少ないわけです。

 原因は種々いろいろあるかと思いますけれども、もちろん……(発言する者あり)今コメントをちょっと外からいただきましたけれども、弁護士の給料ということを確保していくとか、お客さんが離れてしまうのをどうするという問題がもちろんあるわけですけれども、これは去年も同じお話をしたような気がしますけれども、大手事務所のパートナーになりたてぐらいの、ちょうど十年目前後ぐらいの弁護士というのは、自分のお客さんを持っているわけではなくて事務所のお客さんの仕事をしているということが非常にある、さらに言うと、専門性が高い仕事をしている人たちがいるというところで、ぜひとも大手事務所に直接働きかけをしたらいかがかということを裁判所にぜひお願いしたいんですね。

 今現状で、この弁護士任官については、基本的には、適格者と裁判所が認める優秀だと思われる弁護士をいわば一本釣りする形を弁護士会を通じてお願いしている、そういう方法でやられているかと思いますけれども、そうではなくて、例えば、最高裁判所のホームページに弁護士任官募集というリクルートページをつくるとか、それから大手事務所に直接働きかけをしてみるとか、こういったことをやってみたらいかがかということをお願い申し上げたいというふうに思います。

 何がいいかというと、私自身が先ほど一言申し上げましたけれども、やはり特に専門性というところがあるかというふうに思います。

 東京地裁の知財部でも、それから知財高裁でも、こういう専門分野をやる部署というのがもちろん裁判所の中にはありますし、東京地裁の中でも、企業法務を扱う部署、それから倒産を扱う部署というのがございます。こういったところについて、それぞれずっと、倒産であれば申し立て側または管財人側という形で専門性を培ってきた弁護士を裁判所の中に入れるということで、新たな化学反応が起きるだろうと思いますし、知財弁護士をやってきた方々を知財部の中に入れるということで、民間の視点でさらに専門性の高いことをしていくことができると思うんですね。

 弁護士任官というと、どうもいつも判事として十年の雇用でということを原則として考えるわけですけれども、例えば非常勤というか短期でやるという制度設計も考えられてしかるべきだというふうに私自身は思っています。なので、ぜひ御検討いただくべきことかなというふうに私自身思っております。

 もう一点ですけれども、今度は大臣に伺いたいんですけれども、法曹三者の人材交流ということについて御所見をいただきたいなというふうに思います。

 法曹一元というのは、いろいろ勉強してみましたけれども、どうやら明治以来の弁護士会の悲願ということで、半ばスローガンみたいなところがあるんですけれども、法曹一元とは何ぞやという定義をいろいろ見てみると、要は、判事補という制度を廃止して、弁護士から判事への任官を進めていく、本来的にはそういうことを望んでいる制度設計なんだというふうに理解をしています。

 そう考えると、毎年百人ぐらい新任の判事補を弁護士から供給していくということになりかねないので、さすがにそれはちょっと現実的ではないと正直思います。しかし、法曹一元の理想の背景にあるのは、裁判所のキャリアシステムに基づく官僚化というか判断の硬直化というか、そういったものを防止しようという発想に基づくものだと思います。

 先ほど言及しました、昔、最高裁の事務総局にいたと言われる瀬木比呂志先生が、裁判所のキャリアシステムというか官僚化というところについて、おもしろい表現をしています。「日本の裁判所の最も目立った特徴とは何か? それは、明らかに、事務総局中心体制であり、それに基づく、上命下服、上意下達のピラミッド型ヒエラルキーである。」そういう表現をしているわけですね。

 こういうふうに、中にいた人がそんなことを表現するような、ルサンチマンみたいなところもあるかもしれないので何とも言えないんですけれども、そういうふうに表現をされる裁判所のキャリア官僚システムみたいなところについて一定の風穴をあけていくという意味で、やはり民間との人材交流は非常に重要じゃないかなというふうに思っています。

 話が飛んでごめんなさい。今回は、最高裁の新しい長官について、寺田逸郎先生という方が最高裁の長官になられるということですが、彼は、法務省の赤れんがの中で、赤れんがの中という表現もよくないかと思いますが、法務省の中で二十年ぐらいキャリアを積まれてきた、裁判官にしてどちらかというと法務省の中で仕事を積まれてきた方みたいですけれども、こういった形での判検交流というのは随時行われているわけです。

 しかし、民間からの人材登用のないままの判検交流というのは、かえって行政と司法の合一化みたいなものが起きて、権力分立概念という観点から、なかなか難しい部分もあるんじゃないかなというふうに思っていて、むしろ、やはり民間からの人材登用を進めていくということをぜひお願いしたいわけですけれども、大臣の御所見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 今、椎名委員が挙げられました御本、実は、椎名先生が大変問題意識を持って読んでおられるということで、私も手に入れまして、帯のところにはダンテの神曲みたいな文句が書いてあり、なかなか難しそうな本だなと思っております。

 それで、今の法曹一元と申しますか、判検事交流、あるいは弁護士任官、さまざまな御意見があるんだろうと思います。

 判検交流につきましては、今いろいろ御批判もあることも事実でございまして、ごく一般論で言えば、法律家は、その立場立場というよりも、法に従って、法を踏まえて行動すべきものであるから、判事が検事になったり、弁護士が判事になったり、あるいは逆も、問題は基本的にはないんだという考え方、一応言えることは言えるのではないかと思います。

 ただ、現実の判検事交流を見ますと、例えば私どもの訟務検事というのは、裁判所から随分来ていただいて、裁判所の経験をもとに立派な仕事をされておられる方がたくさんあるんですが、他方、国の代理人という当事者になってしまうと、後、その方がまた裁判官になっていくということは、裁判官の中立性とは、少し問題がある場合もあるのではないかという御指摘もございます。それで、最近では、訟務検事の中に占める裁判官の割合を少し減らしていったらどうかというようなことが行われているわけです。

 他方、民事局などで基本法を立案するのに随分裁判官が来ていただいてやっていただいておりますが、これなんかは、もちろん、裁判官でなければいかぬと言うつもりはありません。先ほど先生がおっしゃったように、例えば知財等々で豊富な経験を持つ弁護士さんが基本法の制定に参画するというのも十分あってしかるべきことだろうと思いますし、また、裁判所で実務の経験を積んだ方が基本法の制定に参画されるというのも、私は意味があることなのではないかなと思います。

 ですから、少し問題点はきめ細かに考える必要があるように思いますね。

 ただ、弁護士が裁判官なり検事、検察官になるなり、裁判官をどう採用されるかはもちろん司法部の裁量でございますから、私が言う限りではございませんが、検事にも弁護士経験者がなっていただいている例がございまして、今までは余り検察庁にはない経験を持った方が仕事をされるというのは刺激になるというふうに私は思います。それから、先ほどおっしゃったような、ある意味で外部からの血が入ることによって活性化するといいますか、そういう面はあるんだと思います。

 といいましても、なかなか希望する人がいないのじゃ話にならないので、ぜひ、私は、弁護士もそういう判事、検事になってみようという希望者がふえてくることを期待しております。

椎名委員 ありがとうございます。

 ぜひ裁判所の御所見もいただければと思います。

安浪最高裁判所長官代理者 今法務大臣の方から御答弁されたことと全く同じように思っております。

 法律家というのは、いろいろな立場で仕事をしてまいりますけれども、その立場立場でベストを尽くすものだと思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 人材交流という意味でいうと、民間との人材交流、血を入れていくということをぜひお願いしたいな、引き続き御検討していただきたいなというふうに思います。

 最後に少し、多分質問をしている時間はないので、コメントだけさせていただこうかなというふうに思います。

 一年ほど前に、さきの通常国会、一年前の通常国会でも少し問題となりました、ちょうど報道があったんですね。改めて実は取り上げてみようと思って、砂川事件判決の田中耕太郎裁判官の、合議の秘密をマッカーサー大使に開示した、そういう打電というか情報が米国公文書館から出てきたという件について少しお聞きをしたかったんですけれども、余り時間もないので、この件について、ぜひ裁判所の意見を少し最後に、あと二分あるので聞く時間はあります、聞かせていただければというふうに思います。

 明らかになっている部分でいうと、マッカーサー大使から藤山愛一郎外務大臣に対して、一応、今回の伊達判決という一審判決について問題であるという話がなされたということと、それから、田中耕太郎裁判官はレンハート公使に対してこの評議の秘密を出したというところまで明らかになっていて、要するに、政府と裁判所をつなぐ情報については明らかになっていないんです。

 事実関係の調査をしないとやはりわからない部分ではあるんですけれども、仮に政府と裁判所がつながるとすると、外部からの要請に基づいて情報を漏えいするということで、判決をするということで、やはり司法権の独立という観点からも非常に大きな問題だと思いますが、一年前に問題になった後、事実関係を調査されたという理解でいいんですか。その後、これについてどうお考えになっているかということで、最後、意見をいただければと思います。

中村最高裁判所長官代理者 昨年五月九日の参議院の法務委員会におきまして、この関係について答弁させていただいたところでございます。

 その際、今先生が御指摘になった田中耕太郎元長官が米国に判決の見通しを伝えたということを含む、多岐にわたる文書開示が申し立てられていて、その文書開示請求について、文書を捜索しているということを答弁させていただきました。

 ただ、その際、田中耕太郎元長官の行為について、こちらの方の会談記録等の文書については、探索の結果、存在しないということで、もう既に開示請求に対しても回答させていただいているところでございます。最高裁の倉庫とかを調査いたしましたけれども、結局なかったということでございます。また、五十年以上前のことで、それ以上の調査は不可能ということでございます。

 ですから、先生、最後はコメントということを申し上げられましたけれども、ちょっと前提事実の確認ができませんものですから、それについてのコメントというのは差し控えさせていただきたいと思います。

椎名委員 わかりました。

 この件について、歴史家の検証に任せる部分があるというふうに大臣も去年の国会でおっしゃっておりましたけれども、歴史家の検証に任せる部分もあるかと思いますけれども、やはりこれは結構大きな問題だと思いますので、引き続きいろいろ検討していかなきゃならない問題かなというふうには思っています。

 時間も来ましたので、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

江崎委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより討論に入るところ、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 ここでお諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

江崎委員長 次回は、来る十九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時ちょうど委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十四分散会


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