衆議院

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第15号 平成26年5月9日(金曜日)

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平成二十六年五月九日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      岩田 和親君    大見  正君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      國場幸之助君    今野 智博君

      末吉 光徳君    田畑 裕明君

      橋本  岳君    鳩山 邦夫君

      平口  洋君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    村井 英樹君

      郡  和子君    横路 孝弘君

      高橋 みほ君    大口 善徳君

      椎名  毅君    鈴木 貴子君

      西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   参考人

   (静岡大学大学院法務研究科教授)         宮下 修一君

   参考人

   (一般社団法人日本経済団体連合会経済基盤本部主幹)            和田 照子君

   参考人

   (弁護士)        和田 吉弘君

   参考人

   (北海道大学大学院法学研究科教授)        宮脇  淳君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     岩田 和親君

  古賀  篤君     國場幸之助君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     村井 英樹君

  國場幸之助君     古賀  篤君

同日

 辞任         補欠選任

  村井 英樹君     田畑 裕明君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     小田原 潔君

    ―――――――――――――

五月七日

 司法試験法の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 司法試験法の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件(法曹養成制度)


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     ――――◇―――――

江崎委員長 定刻が参りましたので、早速、会議を開きます。

 本日は、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件、特に法曹養成制度について調査を進めます。

 本日は、各件調査のため、参考人として、静岡大学大学院法務研究科宮下修一教授、一般社団法人日本経済団体連合会経済基盤本部和田照子主幹、弁護士和田吉弘先生、北海道大学大学院法学研究科教授宮脇淳先生、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日、それぞれ参考人の方々には、御多忙の中をまげて法務委員会に御出席、いろいろ御意見を開陳いただく機会をおつくりいただきまして、心から厚く御礼申し上げるものであります。委員会それぞれを代表して、まずもってお礼の御挨拶といたします。本日は本当にありがとうございました。

 それでは、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜ることにいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、宮下参考人、和田照子参考人、和田吉弘参考人、宮脇参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただくことになります。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承を願います。

 それでは、まず初めに宮下参考人にお願いいたします。

宮下参考人 ただいま御紹介にあずかりました静岡大学の宮下でございます。

 私は、法科大学院の方で学習指導の責任者を務めるとともに、ただいま法科大学院の改革のプロジェクトチームの方で企画等の立案を担当している者でございます。

 きょうは、このような貴重な機会をお与えいただきましたことに、まずもって皆様に感謝申し上げる次第でございます。

 時間の都合もございますので、早速でございますが、意見を述べさせていただきます。

 お手元に資料を用意させていただきました。やや厚い資料でございますが、全部で、終わりまでで二十六ページと、あと新聞記事が一つついているかと思いますが、ごらんいただければと思います。

 これから順番に御説明をさせていただきます。

 まず一枚めくっていただいて、一枚目の裏のところでございます。表紙から右下に番号がついておりますが、二番目の番号でございます。

 まず、御承知のように、法科大学院は既に十六校が募集停止ということになっておりまして、地方国立大学も既に四校が募集停止ということで公表されております。

 資料三枚目になりますが、そういう理由といたしましては、やはり、合格率が低迷しているという中で法曹志願者が大幅に減少しているという中で、都市部にある有力校に志願者が集中している、こういう状況の中で、地方の法科大学院の入試倍率は低迷をしております。

 こういうような状況を受けまして、中教審大学分科会法科大学院特別委員会のワーキンググループによるフォローアップ等を受けまして、教育内容の改善も実施し、一定の評価はいただいてきたところでございます。

 ただ、予備試験の実施を受けまして、志願者の減少した有力校による合格者の吸い上げ等々、いろいろな事情もあると思いますが、そういったこともございまして、学生定員の確保がますます難しい状況にある。そういうことになりますと、志願者が一層減少いたしまして、競争力が低下するということになりまして、入学者の確保がますます困難となっているという状況でございます。

 既に、けさ新聞報道にもございましたが、定員割れという状況は、私が在籍している大学でも同じ状況でございます。

 ただ、そういう中で、地方国立法科大学院というのは、一定の成果は残しておるところでございまして、次の四ページ目のところでございますが、これは各大学の状況をお示ししたものでございます。

 この八大学については、法科大学院長等が集まって、たびたびいろいろな意見交換等を行ってきた大学でございますが、ごらんいただくとわかりますように、実際に修了者で合格した方が地方に定着するという割合は非常に高くなっております。

 五ページ目のところでございますが、全体の中で、司法試験に合格して修習を終えた二百二十七名のうち百二十五名の方が自分の出身の地元に弁護士として登録をしているということでございまして、そういう意味では、新司法試験が始まってから八年間という期間を考えますと、地方に根差す法曹というものの数は着実に増加をしてまいっているところでございます。

 また、法テラス、あるいは弁護士会のひまわり基金事務所等、あるいは司法過疎地にも就職する学生というのは非常に意識の高い学生が多いものですから、多くなっております。そういう中で、司法過疎や弁護士偏在の解消につながっているということも一つ挙げられるかと思います。

 また、六ページになりますけれども、県外の大学に進学した学生でも、Uターンをして受験するという中で、地元に学び、法曹になりたいというニーズが大変大きゅうございます。

 また、地方の法科大学院でなければ学べなかったという合格者もたくさんおります。

 例えば、配偶者が共働きであるとか、子供がいるであるとか、休職制度を利用して、公務員等を休職して学修を続けるという学生は本学でもおりますけれども、そういった地元から動くことができない学生ということになりますと、例えば奨学金等の経済的支援を受けても、やはり大都市圏で学ぶということはかなり難しい。かつ、そういう志の高い方というのは、社会経験を積んで法律学を学ぼう、そして弁護士等になろうという非常に強い決意を持っている方が多いものですから、逆に、法律を今まで学んだことがないという方も多いわけです。そういう中で、プロセスとしての法曹養成という本来の法曹制度改革の理念というものも一定の意味を持ってきているのかなというふうに思っております。

 続いて、七ページでございます。矢継ぎ早で恐縮でございます。

 ただ、そういう中で、地方国立大学、非常に厳しい状況に置かれておりますが、地方国立法科大学院に対しては、さまざまな形で地元の支援もいただいております。静岡大学に関しては、静岡県議会あるいは静岡県弁護士会から大変力強い励ましをいただいております。

 また、そればかりではございません。次の八ページでございますが、昨年の一月には、地方法科大学院の所在する十一弁護士会の会長の共同声明というのも出されております。

 また、九ページでございますけれども、地域適正配置ということで、これは鳥取県弁護士会の声明なども出されております。

 こういう中で、残念ながら、今地方の国立大学、先ほど表で挙げました八校のうち四校が募集停止という事態になっております。

 ただ、そういう中でも、地方の声というのは大変強いものがございます。十ページでございますが、長野県弁護士会は、文部科学省の公的支援の見直しの強化ということの発表を受けて、交付金削減という、これは非常に大きい問題でございまして、私どもも、こういうことがそのまま実現されますと大変大きな問題になってくるわけでございますが、そういった中で決断したということについては時期尚早ではなかったかと。

 十一ページになりますけれども、新潟県弁護士会、ぜひ募集を再開してほしいという声もございます。

 また、十二ページ、ついこの間募集停止になりました鹿児島においても、大変残念であるといった声も出されております。

 そういう中で、十三ページになりますが、こういうニーズや期待があるのは確かにそのとおりでございますけれども、しかしながら、現状の入試倍率や定員充足率というのを考慮すると、私の在籍する大学も含めて、単独で存続するというのは大変厳しい状況であるということは言うまでもありません。

 そういう中で、今回、私どもも、あくまで構想ということではございますが、きょうお示しするのは、広域連合法科大学院構想、キャンパス分散型というような副題をつけておりますが、そういったものをすることによって、法科大学院の統合を進めながら、また、地方での法曹養成機能を維持する、そして、教育資源を集約して質の高い教育を実現するというシステムができないかということを考えております。

 この点に関しましては、十四ページ目でございますが、文部科学大臣からも、連合方式というのはあり得るのではないかというお話もございましたし、また、法曹養成制度検討会議取りまとめでも、そういうネットワーク化というのを推進することも一つ提案されております。

 また、十六ページになりますが、先ほど申し上げました「公的支援の見直しの更なる強化について」という文部科学省の文書でも、こういった連携、連合などすぐれた取り組みをしている場合には加算をするということが言われております。ただ、現段階でこの具体的な加算基準というものが未公表の状態でございまして、私どもも含めて、連携、連合ということをどれぐらい進めればいいのかということについては、残念ながら、手探りの状態でございます。

 矢継ぎ早で恐縮でございます。十七ページからですが、こういった広域連合法科大学院というものをどうしてつくるのかという目的、やや細かい字でございますが、やはり、まずは教育力を向上する。地方で単独でそれぞれある大学というのはどうしても連携がとりにくいので、そうすると、現状では、そういう中で、人的な資源も限られて、教育力というのも限られてくる。しかし、それを逆に連携という形を実現することによって向上させるとともに、プロセスによる法曹養成という当初の理念に立ち返ったことができないだろうかというのが十七ページの説明でございます。

 十八ページ、十九ページにつきましては、こういった中で、段階を追って、一年次からきちんとした教育を積み上げていくというシステムを再構築するということをうたっております。

 このお話というのはあくまで構想ということでございますので、何かもう決定したことではございませんが、あくまで構想ということで聞いていただければと思います。

 そういう中で、二十ページでございますけれども、こういった法科大学院教育というのを広域連合法科大学院という形でやるということについては、連合という仕組みがなかなかわかりにくいかと思います。

 ちょっと先に二十一ページの方になりますが、連合という仕組みは、基幹校と参加校というのがございまして、基幹校というところに教員や学生が全員所属する。そういう中で、地方にもそういった配置をするということですね。これは文部科学省の方も運用の中では可能であるという見解がございましたけれども、そういったようなことで、法科大学院を統合して、そして学生数も絞った中で、地方で質の高い教育を実現する、そういう仕組みが書かれているのが二十ページのところでございます。

 この中では、学士課程教育と連携というのを十分に果たしながらそういうことをやっていこうと思っていますし、また、こういったシステムを使うことによって、いろいろな形でのバリエーションを持った、夜間の開講というのも場合によっては地方で可能になるかもしれないというシステムというのをつくっていこうということでございます。

 もう少し具体的な話をさせていただきますと、二十二ページでございます。二十二ページでは、これは、距離が離れておりますと遠隔授業ということをすることになるわけですが、実際に現在も、九州の九州大学、熊本大学、鹿児島大学、あるいは成蹊大学などでは、こういった離れたキャンパスで授業というのを行っております。

 そういう中で、私ども、単に遠隔で配信するということではなくて、地方にある参加校と言われるところに補助教員というのを配置しまして、その教員が実際にそういった大学の授業にも学生と一緒になって参加して、一緒に教育をつくり上げていく。そして、地方にいる学生というのは、そういった補助教員との関係が密になる分、教育力がむしろ高まるのではないか。こういう仕組みというのをつくろうというふうに考えて、今構想しておるところでございます。

 そういう中で、二十三ページですが、こういった形で、学生数が少ない、あるいは教員数が少ないということによって教育というのがどうしてもなかなか十分に行き渡らない現状というのを、地方の連携という形で、連合という形で補っていく、そのことによって法科大学院の統合も進めながら教育力を高める、こういうシステムというのをつくっていけないか、それが二十三ページでございまして、このためには、いろいろなやりとりというのもしながらやっていこうというふうに考えております。

 将来的には、二十四ページですが、こういった中で、いろいろな形があるんですが、やはり私ども単独でこういうことができるとも思っておりませんし、また、基幹校ということで私どもの大学とかがこだわっているということでもございません。実績のある法科大学院というところと密に連携をとりながら、いろいろな形で連携、連合という仕組みをつくっていけないか、こういうことを考えております。

 将来もしこういうことが可能であればということですが、二十四ページのようなこと、こういうことになりますと、例えば、単独では存続が難しいということで募集停止を発表した大学とか、あるいは、今まで法曹養成の機会がなかなかなかった、そういうところで法曹養成というのが可能になる機会というのをつくれるのではないかということでございます。

 また、こういう中で、二十五ページでございますが、広域連合法科大学院という構想の中では、実際にいろいろな提言の中で行われている到達度確認試験とか、そういうものを先取りして実施していこうではないか、こういうようなことも考えている次第でございます。

 ただ、残念ながら、こういった広域連合法科大学院構想というものについては、あくまでまだ構想という段階でございまして、オーソライズされたという形にはなっておりません。

 一つは、二十六ページになりますけれども、文部科学省の「法科大学院の組織見直しを促進するための公的支援の見直しの更なる強化について」、こういう文書で、連携、連合などの取り組みをすることによって加算をする、こう書かれておりますが、この加算条件というのが今のところ明らかになっておりません。そうすると、やはり二の足を踏む大学なんかも多くなってくるということになります。

 ここでは、明確化というのが必要なのは確かですけれども、明確化にとどまるのではなくて、具体的な取り組みの提案というものをしている大学院に対してそういったきちんとした形での支援というのを積極的に行っていくことが必要ではないかなということを考えております。

 一番最後についている新聞記事は、実際に地方で開業している本学の修了生の記事でありますが、こういった中で、いろいろな可能性を持った人が地域にいる、そういう地域にいる人たちの声をすくい上げていって、何とか法曹養成機能というのを地方でも残していけないか、こういうような思いで私どもは今いろいろと考えているところでございます。

 最後の部分は私の個人的な意見ということでございますけれども、そこのところをお含みいただきまして、どうかいろいろ御検討いただければと思います。どうもいろいろありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

江崎委員長 どうもありがとうございました。

 引き続いて、和田照子参考人にお願いいたします。

和田(照)参考人 ただいま御紹介いただきました経団連の和田照子と申します。

 本日は、このような発言の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、経団連の事務局で、日ごろより、会員企業や団体の法務部門の皆様の意見、要望を伺いまして、会社法、独禁法などといったビジネスに関連が深い法律や制度に関する政策提言を取りまとめる業務に従事しております。

 本日は、それらの経験を通じて得られた法曹養成についての意見を述べさせていただきますが、必ずしも経団連やその会員企業を代表するものでなく、個人の責任において私見を述べさせていただくということをお許しいただければと思います。

 最初に、法曹に対するニーズについてお話をしたいと思います。

 複雑化、グローバル化した現代社会において、法曹に対するニーズもますます複雑多様化しているとともに、求められる専門性も高まっております。このようなニーズに応えられる法曹人材を確保していくことは、経済活動の活性化、日本企業の競争力強化のためにも非常に重要であると考えております。

 法曹に対するニーズの多様化に応じて、関係者の御努力によりまして、法曹有資格者の活動領域も着実に拡大を続けております。

 日本組織内弁護士協会の資料によりますと、企業内弁護士の人数は、平成十三年の時点で六十四人だったものが平成二十五年には九百六十五人まで急増しております。弁護士登録をしていない法曹有資格者も一定程度あるということを考えますと、実際の数はそれより多いというふうに考えられます。また、任期つき国家公務員の人数も、同じく平成十三年の十人から平成二十四年には百四十九人までふえております。近年は、地方公共団体における法曹有資格者の常勤職員の数もふえておりまして、日弁連のデータによりますと、今年の三月時点で六十四人に上っております。

 このように、法曹有資格者の活動領域が拡大し、法曹有資格者の採用実績を持つ企業がふえておりますことから、有資格者の有用性についての認識もさらに広がっております。経営法友会という企業の法務関係者の方の集まりがあるんですが、こちらのアンケート調査によりますと、今後も増加傾向が続くのではないかというふうに評価しておられる企業法務の関係者が、アンケートの回答者のうちの七割近くに上っておるということでございます。

 今後も、企業など組織内で活躍する法曹をふやしていくためには、弁護士会の費用負担の問題ですとか、公益活動の参加について、より柔軟に対応していただくことも検討に値するのではないかというふうに考えております。

 さて、企業で活躍する法曹像といたしましては、幅広い法的知識や法的思考能力を備えているだけではなく、企業が行うビジネスそのものにも強い関心と意欲を持っているということが求められております。つまり、法曹としてだけではなく、企業で働くビジネスマンとしての素養も求められているということでございます。

 その企業の規模や事業内容、本人が担当する業務内容にもよりますけれども、円滑にビジネスを進める上で高いコミュニケーション能力というものは必須でございましょうし、語学が必要とされる場合もあるかもしれません。また、キャリアを重ねて、いずれは企業の経営に携わるということも考えられますので、そのために必要な経営に関する知識ですとか組織のリーダーとしての経験を積んでいくということも有効であるというふうに考えております。

 ただ、これらの能力やスキルを入社する時点でどの程度備えていることが求められているかというのは、場合によって異なるというふうに考えております。即戦力としてミッドキャリアの弁護士が入社する場合、一方、新人として修習後すぐに入社する場合とで、それぞれ求められるものは当然異なってくるものだというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、企業で求められる能力や期待は非常に多様でございますので、それぞれが努力を重ねて、その企業で働く法曹かつビジネスマンとして必要な能力を高めていくことができる方であればよいのではないかというふうに考えております。

 また、企業活動のグローバル化に伴いまして、国際的な法的紛争に企業が直面する機会は確実に増加いたしております。ところが、現在では、例えば国際商事仲裁を担えるような法曹、あるいは国際的な通商分野で法的交渉などに精通した法曹という方々は、まだまだ数が少ないというふうに言われております。

 我が国の国益を守るために、あるいは企業のビジネス戦略を実現し国際競争力を高めていくためにも、法律的な知識や外国語の能力を含めて、他の国の法曹に伍して、国際的な場面で活躍できるような法曹人材を養成することも喫緊の課題であるというふうに考えております。

 ただいま申し上げてきました法曹に対するニーズを踏まえまして、そのようなニーズに応えることができる法曹をどのように確保していくべきかについて、私見を述べたいというふうに思います。

 まず、現在のプロセスとしての法曹養成制度の中核を担う法科大学院において、基本的な法的知識の修得を確実にしていただくことが重要であるというふうに考えております。先ほど申し上げましたように、企業法務で求められる専門性というものは非常に多様でございまして、それらについて法科大学院での教育で全てを身につけるということは非現実的であると思いますし、学生にとっても余りに重い負担であるのではないかというふうに考えております。

 法科大学院で学ぶ学生にとって、一番のプライオリティーというのは、やはり司法試験に合格することでございますので、そのために必要な基礎、基本の法教育をしっかりと提供していただくということが大事であるというふうに考えております。

 その上で、将来それぞれが選択する法曹としての進路によって必要とされるであろう専門性を身につける足がかりとなるような専門教育をロースクールにおいてしていただくことが有効ではないかというふうに考えております。その意味で、新たに法曹になる方たちが活動領域を広げていけるよう、外国法や語学などを含む幅広い専門科目のメニューを用意するとともに、エクスターンシップなどで多様な経験を積む機会を提供していただきたいというふうに考えております。

 法曹養成というふうに申しますと、一般に法科大学院や司法修習などの仕組みの議論に終始しがちでありますけれども、法曹資格を得た後の専門性を高めるための継続的な研修についても、きちんと検討し、拡充していくべきであるというふうに考えております。

 私は、今から十年ほど前にアメリカのジョージタウン大学のロースクールというところに一年間留学いたしまして、LLMという修士課程で学びましたが、このコースには、海外からアメリカでの法曹資格を得るために勉強している私のような外国人留学生のほかに、JDという三年間のロースクールのプログラムを終えて、アメリカのいずれかの州の法曹資格を取った後に、さらに、税法ですとか証券法制、知的財産権、国際通商法といった専門的な知識を身につけるために学びに来ている学生が非常に多くおりました。

 また、日本の日弁連に当たるようなABA、全米法曹協会ですとか、各州の法曹協会におきましても、さまざまな継続法律教育のプログラムを用意しております。

 アメリカは、皆様御承知のとおり、日本以上に法曹人口が多く、競争が激しいために、法曹資格を取った後にも、各自がさらに専門性を高めて、弁護士マーケットにおける自分自身の価値を高めるための努力を惜しんでおりません。

 もちろん日本の法曹の皆様もそれぞれ専門性を高める努力はされているんだと思いますが、ぜひ、経験年数の浅い法曹の方々が研さんを積むことができる機会を充実させていただきたいというふうに考えております。既に、リカレント教育ということで、ロースクールの授業の一部を法曹有資格者が履修することを認めている法科大学院も出てきておりますけれども、そのような研修を実施できる教員ですとか、あと、経験を積んだ弁護士さんがたくさんおいでになる法科大学院や弁護士会などが中心になって、研修プログラムを一層充実させていくことを検討していただきたいというふうに考えております。

 また、近年、法学部や法科大学院への進学を志望する方が年々減少しつつあることは憂慮すべき問題だというふうに考えております。優秀な法曹が生み出されるためには、優秀な方に法曹の道を目指していただかないことには始まりません。

 現在、大学の学部卒業後、法曹資格を得るまでに、法科大学院に進学して二年ないし三年間勉強に専念し、さらに司法試験を受験し、修習を経て、最短でも四年程度の期間がかかる上に、必ず法曹になれるという確証がございません。その間の生活費や学費の負担、そして、それだけの時間をかけて挑戦するには、よほどの覚悟が必要であるというふうに考えております。こういう厳しい状況の中で、優秀な法曹になり得る素養を備えた学生が法曹の道をちゅうちょしているとしたら、それは大変残念なことであるというふうに考えます。

 このような事態を防ぐために、法科大学院の入学時の適性判断を確実に行い、一定の適性を備えた優秀な学生が安心して勉学に専念できる環境を整え、法科大学院修了生の司法試験合格率を上げていくということが必須であるというふうに考えております。

 特に、多様なバックグラウンドを持つ法曹を生み出していくためには、法学部出身者以外の未修者に対する教育は特に重要であるというふうに考えております。現在、未修者の合格率が既修者に比較して低い状況が続いておりますが、未修者に対する教育の一層の充実に取り組んでいただきたいというふうに考えております。

 予備試験につきましては、さまざまな御意見があるというふうに承知いたしております。もともと予備試験につきましては、何らかの事情で法科大学院に進学することができない、そういうことが困難な方のためにも法曹になる道を用意すべきではないかということで検討された経緯があるというふうに理解いたしておりますけれども、その制度創設のときの考え方からいたしますと、現在、予備試験合格者の中に相当程度法科大学院生が含まれているということは、当初の意図からは少し離れてしまっているような印象を個人的に受けております。

 また、少しでも若く法曹になりたいという気持ちから、法科大学院に進学せずに予備試験を経て司法試験に挑戦するという考え方、この考え方そのものを否定するものではございませんが、プロセスとしての法曹養成という考え方とどのようにバランスをとるべきか、慎重に検討していただく必要があるかと考えております。

 最後になりますが、我が国社会において、司法制度、そして、それを担う法曹有資格者に対して非常に高い信頼が現在寄せられておりますけれども、この信頼を維持していくためにも、法曹を生み出す法曹養成制度に対する信頼も高めていくことが必要であるというふうに考えております。

 より多くの優秀な方が法曹の道を目指していただけますよう、引き続き法曹養成制度の拡充を御検討いただきますようにお願いいたしまして、私の意見、説明とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

江崎委員長 どうもありがとうございました。

 次に、和田吉弘参考人、お願いいたします。

和田(吉)参考人 本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 きょうの話に近い内容は、文芸春秋の「二〇一四年の論点一〇〇」という本にも書きましたので、参考までに配付させていただきました。それから、私がどういう人間かというのは、話の信憑性にも関連しますけれども、レジュメの略歴と書いたところに譲りたいと思います。

 2ですけれども、法曹養成制度についてはよく御存じの方が多いと思うんですけれども、一応確認のために図を載せておきました。

 かつての法曹養成制度では、誰でも司法試験が受けられた。約五百人合格していた。平成二年ころ以降、次第に増加しましたけれども、司法試験に合格すると司法修習を受ける。これは二年間で、後に一年半になりました。修習生は給料を受け取れる給費制というのがとられていて、終了時のいわゆる二回試験に合格すると法曹になれる、そういうシステムでした。

 現在の法曹養成制度は、司法試験の前に、法科大学院に原則行かないといけない。そこを卒業するか、あるいは予備試験に合格した人が司法試験を受けられる。司法試験は、五年で三回のみ受けられるという期間制限、回数制限があります。これは今後五回となる見込みです。現在、約二千人が合格しています。司法試験に合格しますと司法修習を受けるんですけれども、かつてあった前期修習はなくなりまして、期間は一年間。給料は払われない、必要な人に対してはお金を貸与するという貸与制がとられています。終了時の二回試験に合格しますと法曹になれるんですけれども、現在は深刻な就職難の状況になっているというわけです。

 それで、今度はレジュメの3のところです。

 よい法曹養成をするためには二つ必要だと思うわけで、一つは、よい人材を集めるということ、それからもう一つは、よい教育をする、そういう必要があると思うんですけれども、現在、この二つともうまくいっていない状態にあります。

 まず、人材の点について言いますと、法科大学院全体の志願者数が御存じのように激減しています。平成十六年度には延べ七万二千八百人の志願者がいたのに、今年度は延べ一万一千四百五十人で、六分の一以下になっています。入学者についても、今年度は、法科大学院全体の実に九一%である六十一校で定員を割っていました。例えば、早稲田大学でさえ、定員二百七十人に対してことしの入学者は百七十九人、明治大学は、定員百七十人に対して今年度の入学者が五十人という異常事態になっています。志願者の激減に応じて有為な人材も集まりにくくなっているということになります。

 また、法科大学院の不人気は広がりを見せておりまして、法学部への進学を希望する高校生が減って、法学部の偏差値も低下傾向にあるというありさまです。

 レジュメの裏の(2)のところに行っていただきまして、法曹養成としての教育の点について言えば、もちろん法科大学院でよい授業もありますけれども、法科大学院の多くの学者教員は、狭い自分の研究分野を中心に授業を行いがちである、その結果、法科大学院での教育は、実務にも司法試験受験にも余り役立たない授業が多いということにもなっています。

 かつての司法修習では、実務修習に入る前に、司法研修所の教室で行う前期修習というのが三カ月程度ありました。ところが、司法修習の期間が、以前の二年間が一年半になりまして、法科大学院制度の創設とともに一年となりまして、その前期修習というのが廃止されました。その際、大方の認識では、前期修習に相当するものは法科大学院で肩がわりするというふうに考えられていたんですけれども、ほとんど肩がわりができていないというのが現状です。

 前期修習がないために、いきなり実務修習に入って戸惑う司法修習生が多いようで、この点でも法曹養成過程が劣化しているというふうに言えると思います。

 「4 主な原因」ですけれども、米印のところに、「司法制度改革審議会の意見書の立場」というのを書いておきました。

 現在の法曹養成制度のもととなりましたのが、御存じのように、平成十三年に作成されたこの意見書です。その意見書には、法科大学院の必要性についても書かれてありました。つまり、今後、法曹需要は量的に増大して、それとともに質的に多様化、高度化するんだ、だから、法曹人口を大幅に増加させる必要があるんだというふうにした上で、それを前提に、法曹人口の大幅な増加というのを法曹の質を維持しつつ図るためには、法科大学院を設ける必要があるというふうにしていたわけです。

 つまり、法曹がたくさん必要な時代になるんだけれども、司法試験の合格者数をふやすだけだと質の低い人も合格してしまうので、そうならないように法科大学院でいい教育をしよう、そういう話だったわけです。

 ところが、現在まで法曹需要の量的増大等は見られず、むしろ減少したと言うべきであるにもかかわらず、司法試験合格者数は年間約二千人と大幅に増加されたままです。人の方だけが一方的にふえたわけですから、弁護士一人当たりの収入が激減しまして、司法修習終了時に弁護士登録できない司法修習生が五百人を超えるなど、深刻な就職難も発生しています。

 そのために、弁護士という職業が、法科大学院と司法研修所で多額の費用ないし借金と長期の時間をかけるほどの魅力があるものではなくなってきています。

 (2)ですけれども、私は、法科大学院の教員によってはいい教育も行われているというふうには思いますけれども、法科大学院全体としては、法曹の質を維持できるような教育体制にはなっていないと思います。

 一つは、学者教員のほとんどが司法試験に合格していません。司法修習も実務も知らない、そういう事情があります。そのために、先ほどお話ししましたように、実務にも司法試験受験にも余り役に立たない授業が多いということになります。

 また、そういう学者教員は、特に、司法試験受験を指導する意欲も能力も余りないということが多いために、それに呼応するように、文科省も法科大学院で司法試験受験に役立つような指導というのを禁止してきました。この点は、その後、文科省が司法試験の合格率を問題にするようになってから、やや曖昧なものになりましたけれども、正面から解禁してはいません。

 学生としては、法曹になろうと思って法科大学院に入学したのに、法曹になるために合格しなければならない司法試験とかけ離れた勉強をさせられるということに不満を感じる人が非常に多いです。

 「5 あるべき方向の提案」ですけれども、まず、人材確保のためには、弁護士として参入する者の生活が成り立つように、司法試験合格者数を減少させるほかないように思います。

 その数ですけれども、毎年五百人以上の司法修習終了生が就職できない、その数が毎年上昇しているということや、形式的に就職できても著しく悪い条件で弁護士登録している人も多いということから、現在の二千人から五百人減らして千五百人とするだけでは足りず、千人程度かそれ以下にする必要があると思います。少なくとも、結果的に認識が誤っていた司法制度改革審議会の意見書が出された平成十三年当時の合格者数が約千人でしたので、とりあえずそれに戻すということにも一定の合理性があるように思います。

 イですけれども、司法試験の受験回数制限は、五年で三回から五年で五回に緩和される見通しですけれども、多額の借金を抱えた受験生に大きなプレッシャーとなるものですから、制限自体を撤廃すべきであると私は考えます。

 制限すべきであるという立場の人は、法科大学院の教育効果というのは五年程度で消えるんだというふうにも主張するんですけれども、もしそうであれば、法科大学院の教育効果は司法試験合格者についても消滅するはずで、その主張は全く合理性がないと思います。

 ウの予備試験ですけれども、最近、法科大学院擁護の立場から、予備試験の受験資格を制限すべきだという主張があります。

 論拠ですけれども、論拠は大体二つで、一つは、予備試験というのは、経済的事情で法科大学院に入学できない人とか、あるいは十分な社会経験があるということで法科大学院に入学するまでもない人のための例外的なものであるというのが一つの論拠。それからもう一つは、予備試験合格者の中に多数の法科大学院在籍者がいる、そうすると、法科大学院の授業運営に弊害が出ているんだ、そのために、法科大学院在籍者の予備試験受験資格を否定すべきであるというようなことも言われています。また、予備試験の合格者数を削減しよう、そういう動きもあります。

 しかし、法科大学院の教育の方こそ、本来期待されたものになっていないということですね。また、弁護士という職業も、それほど費用や時間をかけるのに見合わないものになっているというのが現状です。

 そういう現状からしますと、予備試験の受験資格を制限したり、あるいは予備試験の合格者数を削減したりするのは、私は合理性がないと思います。

 エの貸与制ですけれども、司法修習が給費制から貸与制になったという点も法曹志願者を減らす一因になっていると思います。

 法曹は社会のインフラとして国家が責任を持って養成すべきであって、その意味で給費制をとるべきであるのは私は当然であると思います。また、貸与制にする際は、弁護士になれば当然十分な収入が得られるという前提があったように思いますけれども、現在の就職難の状況というのは、その前提とは全く違ったものになっていると思います。

 法曹志願者の減少を阻止するためにも、給費制を復活すべきであるというふうに思います。

 (2)ですけれども、現状では、法科大学院の基本科目の教員に法曹資格は要求されていません。それから、司法試験受験の指導は禁止されていますけれども、それでは法科大学院の修了を司法試験の受験要件とすることに合理性がないと思います。したがって、その要件は撤廃すべきだと思います。その場合には、先ほどの(1)のイとかウは問題外ということになります。

 それから、先ほどお話ししましたように、法科大学院で肩がわりができるとの予想のもとに司法修習の前期修習を廃止したのに、その肩がわりができていないという状態にある以上、司法修習の前期修習を復活させるべきだと思います。

 現在は、司法修習の前に三週間程度の研修を設けようという話があるようですけれども、私は三カ月程度は必要だと思います。また、民事裁判所、刑事裁判所、検察庁、法律事務所での分野別実務修習は現在約二カ月程度ですけれども、これも最低でも三カ月ずつは必要だと思います。

 「6 法曹養成制度検討会議について」ですけれども、法曹養成制度検討会議についても二点指摘させていただきたいと思います。

 まず、検討会議は、パブリックコメント募集を行いました後、意見分布の割合、つまり、どういう意見が何%だったかということを明らかにしない概要のみを発表しました。その後、そのパブコメの結果も踏まえたとする座長試案をもとに、現状のほとんどの問題を先送りにする取りまとめをしてしまいました。

 ところが、検討会議終了後に情報公開などで判明したところでは、法科大学院制度に反対の意見が約八割、司法修習生の給費制の復活を求める意見が九割以上でした。検討会議は、パブコメの結果を意図的に無視して取りまとめをしていたことになります。私は、これは不公正な態度だと思います。

 それから、私は、その検討会議の委員になりますときに、なぜその前身であるフォーラムの委員十三人はかえないで四人のみ追加したのかということについて事務局の人に尋ねました。そうしましたら、こういう説明がありました。つまり、国会が緊急な問題として一年という短期間で結論を出すようにというふうにしたけれども、法曹関係者以外の一般の人を新たに入れると制度の基本的な理解をしてもらうのに時間がかかり過ぎるんだ、だから、十三人にはそのまま委員を続けてもらうことにした、そういう説明でした。

 ところが、結局は、検討会議の最終的な取りまとめでほとんどの論点が先送りにされてしまいました。この点について、私は、現行の法曹養成制度を維持しようとする人たちは、現状でさまざまな問題が生じていて、現状維持を積極的には主張しにくくなっているために、先送りという形で現状をいわば消極的に維持しようとしたものだと思います。結局、一年で結論を出すようにという国会の要請も、メンバーをかえないで現状維持を図るという方向で利用されたことになるように思います。

 私は、ここに出席している皆様には、このように劣悪となった法曹養成制度について、法曹志願者のために、日本の司法のために、日本の国民のために、ぜひ抜本的に変えていただくよう心からお願いしたいと考えている次第です。

 私の話は以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

江崎委員長 どうもありがとうございました。

 次に、宮脇淳参考人にお願いいたします。

宮脇参考人 北海道大学法学研究科の宮脇でございます。

 よろしくお願い申し上げます。

 本日は、こうした場にお呼びいただきまして、意見を述べさせていただく機会を与えていただきましたこと、大変感謝申し上げております。

 私は、ただいまもお話がございましたけれども、法務省の法曹養成制度検討会の構成員でもあり、その議論を踏まえまして、また、私の専門が行政学、政策論であるということから、その視点から私の意見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 私自身、法学研究科に所属しておりますけれども、専門職大学院といたしましては、公共政策大学院というところの教員も兼ねております。法科大学院そのものについては直接担当をさせていただいておりませんけれども、公共政策という観点から、きょうは意見を述べさせていただきます。

 法曹養成制度の検討に関しては、さまざまな視点そして問題点があると思いますけれども、私からは、まず、弁護士を中心とする活動領域の問題から整理をさせていただきたいというふうに思います。

 今回の法曹養成制度の検討に関して、弁護士を中心とする活動領域の拡大については、司法制度改革の出口政策として極めて重要な位置づけにあるというふうに考えております。しかし、残念ながら、この出口政策は今日に至るまで十分な成果を出しているとは言えない状況にございます。

 確かに、国、地方自治体等公的分野での活動領域の拡大、グローバル化に伴う企業法務部門や弁護士の海外活動の拡大、そして社会保障、医療、介護、福祉の現場等での活動への期待等、潜在的な需要というのは決して小さいものではないというふうに考えております。例えば、地方自治体では、地方分権の流れの中で、法規範としての条例制定、独自の政策形成や民間とのパートナーシップの拡大による契約等、法的専門知識を必要とする局面は著しく増加いたしております。

 正直に申し上げまして、地方自治体が制定をしている条例、あるいはさまざまな契約におきまして、法令との関係でかなり疑問のある、そうした条例というのも制定されており、顧問弁護士だけでなく、日常的なサポートを実現する任期つき弁護士採用等も増加しているのが現実でございます。

 また、任期つきで自治体を経験した弁護士が、民間分野に戻られて、公的分野との契約、自治体や第三セクターの債務調整、こうしたものについて差別化された能力を発揮されている例も少なくございません。

 また、御承知のように、国家公務員制度では、採用において別枠を設ける等の努力も行われているところでございます。

 法曹人口が四万人弱となり、弁護士が一人もいない地域がなくなる等も含め、以上のように一定の成果はあったものと思いますけれども、活動領域拡大としての成果は限定的な領域にとどまっており、弁護士活動が法廷関連からステージアップして、広く日常生活の社会的共通インフラにまで成長したと言える状況にはないというふうに思います。

 その原因につきましては多くの点があろうかと思いますが、検討会におきましても、ワーキンググループにおいてヒアリングを重ねた点がございますけれども、潜在的需要の多くが、弁護士としての有資格者であるということよりも、実務的、法的な知識への需要というものがかなりの部分を占めているということがあります。

 また、弁護士であること以上に、国や地方自治体の公務員、そして民間の会社人としての資質が重要となり、司法修習を終えた方々との認識のギャップがそこには正直ある程度存在していることも否定できないというふうに考えます。

 また、残念ながら、今回の司法改革が多様な人材を司法界に送り込むことを意図した改革としても不十分な姿となっている点は、極めて残念に感じております。

 こうした点から、第一に、司法修習において、時間の制約はあるものの、選択的実務研修で幅広い分野との接点を設けるカリキュラムとする等、司法修習生が法曹界を超えてさまざまな社会に接する機会づくりに努めることがまず必要ではないかと考えております。この点は、司法修習だけではなくて、それ以前の法科大学院そして学部教育にも求められる点であろうと思います。

 同時に、第二に、継続教育の徹底した充実を政策的にも実現する必要があると思います。

 例えば、アジア等への弁護士関連業務拡大等が、事業法人あるいは金融機関そして地方自治体の活動が広がる中で極めて強く求められており、アジア各国の法律事務所との政策的連携による相互研修体制の確立などグローバル化が進む中で、ソフト面でのグローバルな社会インフラを形成することは、国家そして地域戦略的にも極めて重要な課題になっております。

 個々の弁護士が単独で、例えばミャンマー等アジアの法律事務所に研修のチャレンジをするというような積極的な事例も見受けられます。しかし、こうした動きは例外的であり、また、個々の弁護士による努力だけでは限界があることも確かであると思います。こうしたことは、シンガポールの港湾関連法を通じた港湾政策などへの精通の必要性等、企業活動にも影響を与える大きな課題となっております。

 弁護士となった後の体系的な教育について、弁護士会はもちろんのこと、法テラスや法科大学院等が積極的な役割を果たす体制づくりが必要であると考えます。法科大学院の専門職大学院としての性格を、司法試験合格だけではなくて、司法の付加価値の拡大にも求めることが必要ではないかと考えます。

 もちろん、こうした教育体制の確立が成果を上げるためには、法科大学院の教員の質、こうしたものの改善と同時に、弁護士自身が有資格者であることに依存することなく、積極的に新たな需要に応えていく意識が大前提になるというふうに思います。

 なお、地方自治体での職域拡大は、大都市部は当面ともかくとして、過疎地域、中小規模の市町村、基礎自治体では、財政面での制約、そして今後避けられない急激な人口減少の中で、単独の地方自治体ごとに大きな期待を持つことは難しく、自治体間連携の強化等、今年度の地方自治法改正にも盛り込まれております仕組みを積極的かつ柔軟に活用し、地方自治体みずから、社会インフラとして、長期を見据えた枠組みづくりが必要になるというふうに考えます。

 以上の点に関連いたしまして、三千人の数値目標を撤回したことへの検証の重要性が当然のことですけれども指摘できます。

 政策論の視点からは、一定の政策に対する物差したる数値設定は必要であり、数値の達成の有無ではなく、現実との乖離が生じた原因を検証し、よりよい政策にするための基準とすることが重要であります。したがって、三千人の目標維持が現実的でないことは、足元での司法試験合格者が二千人強である中で妥当な判断であるというふうに考えます。

 また、司法試験自身が資格試験であることから、数値目標を画一的に達成することもまた適切ではないというふうに考えます。

 数値目標を画一的に達成することが重要なのではなくて、三千人に達しない原因を明確に検証し、十分それについての整理を行うということが必要であり、検討会で一応の目安として二千人前後という議論も行われましたが、今後とも、一定の物差しのもとで、十分にその成果を検証できる体制を確立する必要性があると思います。二千人、千人、そうした数字の水準と同時に、これを検証していく体制というものをきちっと確立することが必要ではないかというふうに考えます。

 司法試験合格者が二千人台前半にとどまり、職域も拡大しない状況において、法科大学院受験者も急激に減少する傾向を示しております。こうした中で、法曹養成の入り口政策として、法科大学院改革も必要不可欠となっております。法曹養成検討会の報告書で、現行の法曹養成プロセスを維持することを前提としておりますが、そのためにも、法科大学院改革が大きなかなめになるというふうに考えます。

 公的支援の見直し、定員の削減等、一定の期間内に改善されない法科大学院に対する法的措置は、大学の自治を踏まえる中で、現行の養成プロセスを維持するための限界的な政策措置と考えることができます。今後は、地域間に核となる法科大学院を形成し、それを核として地域内での司法界への道の確保を実現する大学間連携ネットワーク等を充実させていくことが必要であるというふうに思います。

 また、実務家教員だけでなく、研究教員の人数と質の確保は今後一段と厳しくなる中で、連携ネットワークの形成は不可欠であると考えざるを得ません。特定の科目におきましては既に研究教員等の確保が極めて難しいという段階を迎えており、法科大学院の学生に対しての責務という意味でも、こうしたネットワークを形成していくことが必要だと思います。

 また、予備試験のあり方、法学未修学者へのカリキュラムのあり方等は、司法試験の科目設定そして合否判定方法など深層部にまで掘り下げた議論を、司法試験委員会等可能な限り開かれた場で議論することが必要であると考えます。

 そもそも、今回の司法試験改革では、ややもすると受験技術に偏りがちだった旧司法試験の構図を見直す点に一つの要因があったと思います。法科大学院での教育を法律だけでなく幅広い分野に広げ、法曹としての活動領域を広げるには、それと連動した司法試験の本試験そして予備試験のあり方等を、科目そして採点のあり方も含め検討をしていただく必要性があります。

 なお、新たな制度を立ち上げた場合、それまでの蓄積された潜在的需要が当初段階で一気に発生し、その後、段階的に平準化される傾向にあることは、これまでの政策においても多く認識される点であります。その意味から、政策効果の定着には一定の期間を必要とすることも事実であり、平成十六年からスタートした法科大学院、そして平成十八年からスタートした新司法試験について、制度的持続性、信頼性の両面から、制度的定着について十分に議論する必要性があります。

 最後に、検討体制、推進体制について簡単に申し述べます。

 検討体制については、ややもすると一般国民の認識から乖離してしまうような議論になりがちな閉鎖的な議論ではなく、積極的に法曹外の参加者を拡大し、国民的視点から信頼性を確保できる検討とするとともに、法務省、最高裁、文部科学省だけではなく、総務省、経済産業省等、国の根幹を支える司法制度について一体となって議論できる体制づくりが不可欠だと思います。それは、単に行政側で内閣官房や内閣府の所管とする等ではなく、議会を中心に、国民に見える議論をすることが必要ではないかと思います。

 以上、簡単ではございますが、私からの御説明とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

江崎委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 本日は、宮下修一参考人、和田照子参考人、和田吉弘参考人、宮脇淳参考人、お忙しいところ貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 法曹養成制度の課題につきまして、論点ごとにお伺いをさせていただきたいと思います。

 新たな法曹養成制度は、とにかく多様な人材を、そしてさまざまな法的ニーズで活躍していただく、そのためにもしっかりとした法曹養成の仕組みが必要だということであったわけでございますけれども、当初の司法制度改革の精神というものが根底から今崩壊しつつある。そういう点では、法務省や文科省、内閣官房がやっておりますけれども、危機感が余りにもない。そしてまた、総務省、経産省と話がございましたけれども、国全体で本当にこの深刻な状況を改革していかなきゃいけない、こういうことでございまして、皆様の御意見というのはそういう点では非常に貴重なものであると考えておるところでございます。

 私どもは、やはり、活動領域をいかに拡大していくか、これが最優先で、公明党の政策提言でもこれを真っ先に掲げさせていただいたところでございます。そして、拡大するためにどうするかということであります。

 そこで、宮脇参考人にお伺いしたいと思います。そしてまた、和田照子参考人にもお伺いしたいと思います。

 宮脇参考人は、行政学、公共政策という御専門でございますけれども、国とか地方公共団体に任期つきの職員の積極的な採用、あるいは財政支援ということも考えられているわけでありますけれども、今御指摘もありましたように、地方自治体に極めて潜在的なニーズが存在するわけでありますので、具体的にどのようなニーズがあるのか、この潜在的ニーズを掘り起こすために、法曹有資格者と地方自治体をより密接につなげていく、そのための方策、具体的にお考えがありましたらお伺いしたいと思います。

 また、和田照子参考人につきましては、御意見でもございましたように、我が国の国際競争力を高めるためにも、国益を守るためにも、そういうことからいきまして、複雑化、国際化した企業活動を支える専門性を持った法曹の養成、それから法曹と企業のマッチングの仕組み、これを整えなきゃいけない。また、中小企業も、海外に展開をしたりしていて、法的サービスを利用しやすくする。国内における企業活動においてもそうではありますけれども。

 そういうことから、このような企業活動のグローバル化、また複雑化、専門化の進展に対して、企業法務の現場においてどのような法曹が求められているのか、法曹養成過程でどのような取り組みを望まれているのか、また、法曹と企業のマッチングのためにどのような方策が考えられるのかということをお伺いしたいと思います。これについて、それぞれ御見解をお願いします。

宮脇参考人 お答えいたします。

 地方自治体におきまして、法曹資格者に対するニーズというのは極めて高いというふうに思っております。それは、分権が進む中で、先ほども御紹介させていただきましたが、例えば条例制定ですとか、あるいは、現状におきまして、民間との契約関係等を結んでいくに当たりまして、十分に地方自治体側に法的な知識がないという場合が多くございます。

 また、現実問題として、第三セクター等が経営破綻になってきたときに、金融機関側との協議、病院経営に対します対応をするときの協議等におきましても、やはり法的な知識が必要であり、単に前向きに政策を展開するだけではなくて、これまでのいろいろな負担をなくしていくにおきましても、法的な知識というのは非常に重要になっております。

 また、先生からも御指摘がありましたように、任期つきの職員として採用して、顧問弁護士とは別に、役所の中に経常的にいていただいて、そしていつでも職員が相談できる、そういう体制をとるということが非常に有効であるということもわかってきております。そうした任期つきの弁護士の方が民間領域に戻っていただいて、行政との間のネットワーク、かけ橋になっていただく。

 そして、特に今後問題になりますのは、社会福祉分野、こういったところでの法的問題、ここにやはり専門家が必要になるだろうというふうに思っております。

 ただし、大都市部の自治体は別でございますけれども、多くの基礎自治体におきましては、やはり財政的な問題、それから公務員制度の制約等がございまして、なかなか対処ができていないというのが現状でございます。

 そういう意味で、例えば地方交付税等における措置でございますとか、単独の自治体で確保できないのであれば、今年度の地方自治法で連携協定的なものが結べるという形になってきておりますので、それぞれの自治体の中で連携した中で、複数の弁護士さんとの契約を行うといったようなことも必要ではないかというふうに思っております。

 いずれにしましても、今後、地域における問題というのが非常に深まってまいりますので、ぜひ弁護士の方々の御助力というものがいただけるようにしていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

和田(照)参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、企業が求める法曹人材でございますが、以前経団連でまとめた、どのような法曹を求めるかという提言がございますが、これは少し前のものなんですが、その基本的な考え方が変わっていないと思いますので、御紹介させていただきます。

 企業の方で、やはり基本的に、法的、論理的思考をきちんと備えた方であるということを求めて法曹の方を採用するということが多いんだと思いますが、それに加えまして、ビジネスマンとして必要な交渉力ですとか、健全な常識、倫理観に裏づけられたバランス感覚を備えた人材というものが必要であるというふうに言われております。

 それから、法的な素養でございますけれども、もちろん、ビジネスの世界で基本的に必要となります民商事法の基礎がきちんとあるということはまず大前提といたしまして、企業の方で特にニーズが高い倒産法ですとか知的財産権、それから独禁法、金融、税法、契約実務あるいは国際取引といった、やはり企業の現場ですぐに必要となる法律についてある程度の専門性を持っておられる方であれば、即戦力として非常に期待が高いということでございます。

 やはり国際性というものも非常に最近求められているということでございますので、今申し上げたものを全て一人の方が持っているということは大変なことではございますけれども、それぞれの企業のニーズに応じて、プライオリティーの高い方を採用するということになるのではないかなと思っております。

 その際にも、先生御指摘ございましたように、さまざまな、企業の求める人材、どのような人材を求めるかというスペックがきちんと法曹を目指す方に伝わっていないとよくないと思いますので、そのためにも、ロースクール教育において、企業法務の実務家の方がもっと教育に携わって、どのような法曹が求められているのか、企業の法務というのは実務ではどういうことが行われているかということをきちんとお伝えして、それを目指して学修していただくということが大事であろうと思います。

 マッチングということに関して申し上げますと、今、ウエブサイトでいろいろな求人求職情報についてのマッチングサイトもございます。日弁連がやっているひまわり求人求職ナビというものもございますし、いろいろなマッチングサービスもございますので、そういうものを活用することも大事ですが、法曹有資格者に対する就職説明会などに、法律事務所だけではなくて企業も積極的に参加をして、どのような人材を求めているかということをアピールしていくことも大事だというふうに思っております。

 あわせて、企業で働こうと考える法曹有資格者の方々の側にも、一般の就職活動は、就職活動の中で非常に熱心に企業研究を行って就職活動をしているわけなんですけれども、それと同様に、やはり企業で働くことを目指すのであれば、きちんと企業研究をしていただいて、企業で働く具体的なイメージを持って応募していただくことが大事ではないかなというふうに考えております。

大口委員 さらに和田照子参考人にお伺いしたいと思います。

 急速に今グローバル化が進んでいる。諸外国との外交交渉、他国の法整備の支援、海外展開をする中小企業の支援、国際的な分野での法曹の活動の拡大を推進する必要があると考えます。

 私ども公明党としては、法テラスの海外拠点を設置するべきだ、こういうことも提言をしているところでございますけれども、そういうことも含めて、法務省でも私どものこの要求に対して真剣に今考えてくれております。

 JICAとかジェトロ、在外公館を通じて、法テラスの所属の弁護士を、海外の日本企業の進出が期待される東南アジア諸国やアフリカ諸国に派遣して、現地で日本企業が直面するさまざまな法的な問題の解決を支援したり、日本企業の進出が進んでいる各国において、知的財産法制を初めとするビジネスに不可欠な法制度を調査し、日本企業がその成果を活用できるようにするというようなこと。あるいは、これは捕鯨の敗訴ということもあって深刻に考えなければいけないと思うんですが、我が国の国益を守るという観点から、国際仲裁、国際司法裁判所等における国際的な法的紛争に精通した法曹を在外公館や関係省庁に配置することも有益であると考えているところでございます。

 このような法曹資格者の海外展開、在外公館とかジェトロとか、あるいは外務省なんかにもそういう部署があってもいいと思うんですけれども、どうお考えでございましょうか。

和田(照)参考人 まさに今先生から御提案がございましたように、法曹有資格者の海外展開、グローバルな活躍を推進するためには、まず、法曹有資格者の方に、法律的な知識もさることながら、グローバルに活躍できるだけの語学力も必須であるというふうに考えております。

 法律について外国語で海外の弁護士、専門家等とやりとりするだけの能力となると、なかなか、国内で学習するだけでは、身につく部分、大変困難な部分もあると思いますので、海外に留学したり、あるいは海外の法律事務所でインターンを経験するということも一つの方法であると思いますし、今御提案のございましたような法テラスなどを活用いたしまして、途上国等に海外の拠点を設けていただきまして、法曹有資格者の方を派遣していただくということは、海外で事業展開する企業、中小企業から大企業までさまざまでございますけれども、そういう企業の現地での展開を非常にスムーズにすることにつながると思いますので、非常に効果が高いというふうに期待しております。

 加えて、そういう作業の中で、途上国の法的基盤の整備につながるということも、これから進出する日本企業にとっても大事なインフラ整備の一環でございますので、ぜひ力を入れていただきたいと思っております。

 国際的な法的紛争を担うことができる法曹人材というものは、日本の国益を確保するためにも非常に大事なのでございますが、一朝一夕には育たないのではないかなというふうに考えております。在外公館やジェトロなどの拠点に継続的に法曹有資格者を派遣、配置していただいて、国際的な視野を備えた法曹有資格者の母数をまずふやしていただくことが大事だというふうに考えております。

 加えまして、国際交渉を担う場面の多い関係省庁などにおいて、法曹有資格者を、任期つきという短期の視点ではなくて、実際に職員として積極的に採用して長期に育てていくという視点もあるのではないかなというふうに考えております。

大口委員 そういう点で、法科大学院とかあるいは修習においても、そういう点もしっかり意識したものにしていかなきゃいけないと思います。

 次に、法科大学院の適正配置について、宮下参考人また宮脇参考人からいろいろ御意見をいただきました。

 今、地方法科大学院、地方国立大学は、八のうちの四が募集停止、そして十六校が募集停止ということなわけでありまして、地方でないと挑戦できないという方々に対して深刻な問題がある、こう考えております。要するに、法の支配が隅々まで行き渡るという司法制度改革の根本が今崩れそうになっているわけです。

 そういう点で、地方法科大学院につきましては、また夜間大学もそうでございますけれども、多様な人材を確保するということから考えましても、今、宮下参考人がおっしゃった広域連合法科大学院構想は非常に有力な方策である、こう考えています。

 ただ、実績ある法科大学院の協力が得られなきゃいけないわけでして、それを得るためにはどうすればいいのかということをお伺いしたいと思います。

 また、宮脇参考人につきましても、北海道大学で教鞭をとられておるわけでございますが、地方の立場からこの連携構想について御感想をお伺いしたいと思います。

宮下参考人 お答えいたします。

 まず、実績のある法科大学院の協力が得られる見通しということですが、いろいろ当たっておりますけれども、なかなか、すぐにということではございません。

 やはり、一つは、時間的な制約がございます。加算条件ということで、申請するのが九月ということですから、それに合わせてということで時間的な制約があって、機関決定というのがどこも時間がかかりますので、それが難しい。

 それからもう一つ、最後に私が意見陳述で申し上げましたように、やはり加算条件というのが明確化されていないものですから、加算条件、どれほどやれば加算されるのかというところの不安がありますから、そうするとなかなか踏み込めないというような、いろいろな事情があるかと思います。

 ですから、まずは加算条件というのを明らかにした上で、そういったいろいろな取り組みをしているところに積極的に支援を与えるということが必要ではないか、私自身、個人的な意見でございますが、そう思っております。

宮脇参考人 お答えいたします。

 私ども北海道におきましては、法科大学院は二校ございまして、北大とそれから私大が一つございます。しかし、両方とも札幌市に位置しております。このため、北海道全道ということになりますと、極めて一部のところにしか法科大学院が存在しないということで、私ども北大でも、かなりの部分、本州から来られる方が多いというのが現状でございます。

 こうしたことを考えますと、地方にある大学といたしまして、地元についてどうやって法科大学院としての教育を提供していくかということになりますと、ネットワーク化をしていく中で、きちっと幅広く提供していくことがやはり不可欠ではないかというふうに思っております。

 北海道、仮に法科大学院がなくなるということになりますと、東北、本州、こういったところと一緒になっていくことになろうかと思いますけれども、そうなってしまいますと、やはり地域の司法というものを支える人材を育成していくことができないということになりますので、私といたしまして、この連携の構想というのは非常に重要ではないかというふうに思っております。

 これを進めていくに当たりまして、ただいまも御指摘がありましたように、加算プログラムにおいてどのような措置をするのかということは早目に明確にしていく必要性があると思います。

 以上でございます。

大口委員 次に、予備試験について、それから法曹人口のあり方についてお伺いしたいと思います。

 まず、予備試験につきましては、平成二十三年に始まったわけでありますが、経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも、法曹資格取得のための適切な道を確保すべきである、これが趣旨なんですね。そうなっていない現状にある。

 例えば、全受験者に占める法学部在学中の者、法科大学院在学中の者、法科大学院修了者が、平成二十三年、二七・三%だったのが、平成二十五年は五〇・八%、全受験者の中でその人たちが占めている。それから、平成二十五年の予備試験では、二十四年からの受験者の増加が二千四十一人であったんですね。これは、七千百八十三人から九千二百二十四人になったわけでありますけれども。そのうち、在学中の者は八百十九人ふえ、法科大学院在学中の者が九百四十二人ふえ、法科大学院修了者が二百二十四人ふえて、千九百八十五人。二十四年から二十五年の増加の九七%が、法学部在学中の者、法科大学院在学中の者、修了者、こういうふうになっているわけです。最終合格者も、予備試験では九〇・三%、こうなっているわけです。

 これは、趣旨と大きく乖離しているんじゃないかと思います。

 この点につきまして、宮下参考人、そしてまた和田照子参考人にお伺いしたいと思います。

 法曹人口につきましては、実際、二十六年度は、法科大学院入学者は二千二百七十二人となりました。これは、ピークからすると六〇・七%減ですから、今、ピークよりも四割弱になっているわけですね。法科大学院の定員割れが九一%、こういう状況になっているわけであります。

 そういう中で、これは、来年三月を目指して、内閣官房の法曹養成制度改革推進室の方で法曹人口の調査、検討を行う予定になっているわけでありますけれども、これにつきまして、宮脇参考人は、二千人を確保すべきだ、こういうお考え、また和田吉弘参考人は、千人程度とすべきだ、こういうことでございますが、改めまして、それにつきまして御意見をいただければと思います。

宮下参考人 お答えいたします。

 予備試験については、平成十三年の司法制度改革審議会の意見書でも、経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者に与える制度であるというような意見が述べられております。

 経済的事情について考慮することはさることながら、実社会で十分経験を積んでいる、これはまさにプロセスによる法曹養成であるということから、私自身は、こういった社会経験を積んでいる人に限定すべきではないか、こういうふうに考えております。

 以上でございます。

江崎委員長 時間が終了しておりますので、簡潔で結構です。

和田(照)参考人 予備試験受験者の中に、法科大学院在学中の方ですとか、社会経験を積んだかどうかちょっと判断が微妙な若い方が含まれるということを踏まえますと、制度スタートのときの考え方から離れてきているように思いますが、受験資格を制限すべきかどうか、あるいは年齢制限を課すべきかどうかについては、制度の変更が与える影響が非常に大きいものですから、十分その影響度合いも見きわめて、慎重に検討していただきたいというふうに考えております。

 特に、若い方の人生設計に大きな影響を与えるものですので、毎年毎年制度が変わって混乱するというのは非常に酷なのではないかなというふうに考えております。

和田(吉)参考人 簡潔に申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、法科大学院が不人気になった理由は、弁護士の数の増加によって、弁護士という職業が、多額の費用ないし借金、それから長期の時間をかけるほど魅力があるものではなくなってきているということにあると思います。

 そうであれば、何とか将来の展望を開くには、司法試験合格者数を減らすしかないということになると思います。司法試験合格者数を千人ないしそれ以下にしつつ、法科大学院修了を司法試験の受験要件から外せば、法科大学院での費用と時間はかからないことになりますから、ずっと多くの法曹志願者が登場するものと思います。

 以上です。

宮脇参考人 現に、今日の司法試験において二千人の合格者を出しているわけでございます。司法試験は資格試験でございますので、この二千人という数字がどういう意味を持つのか、そのことについての検証というのがまず必要であって、これを政策的に千人に減らすということであれば、その要因をきちっと国民に説明する必要性があるというふうに思います。簡単ですが。

大口委員 どうもありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

江崎委員長 次に、神山佐市委員。

神山委員 自由民主党の神山佐市です。

 参考人の皆さん方には、貴重な御意見を賜りまして、大変ありがとうございました。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 まず、法曹人口について各参考人の皆様方にお伺いいたします。

 司法制度改革において、今後ますます複雑化、多様化する社会において、法曹に対する需要は大幅に増大し、多様化、高度化されるものと予想されておりましたが、現状は、法曹に対する需要は必ずしも想定されたほど増大していない、あるいは顕在化していないように思われますけれども、法曹有資格者の活動領域拡大の取り組みなども行われておりますが、今後の法曹需要は増大するとお考えになられるか、お伺いいたします。また、増大するとお考えの場合は、なぜそのようなお考えになるのかもあわせてお願いいたします。

宮下参考人 お答えいたします。

 法曹人口については、今いろいろな提言でも、削減すべきであるということも提言されておりますので、これから先はある程度減っていく傾向になるのではないかなと思いますが、同時に、一気に減らすということになってしまいますと、やはりこれは、活動領域の拡大ということもありましたが、いろいろな法曹というものを志している人のそういう意思というものを妨げることになるというふうにも思います。

 ですから、まずは活動領域の拡大とかそういうところを一生懸命努力した上で、なおそれでも難しいといった場合に、やはり削減というようなところで進めていくべきではないか、こういうふうに考えております。

和田(照)参考人 旧来の法曹三者についての需要ということでございますと、司法試験合格者あるいは修習終了者の伸びに応じてふえているかというと、そこはもしかしたらギャップがあるのかもしれませんが、旧来の法曹三者以外のさまざまな法曹有資格者、法的専門家のニーズというものはいまだ日本国内に残っておると思っておりまして、例えば企業内ですとか自治体、あるいは地方のNPO等でもさまざまな法的専門家のニーズはあるというふうに考えております。

 ですので、今までの法曹三者のスタイルにとらわれずに、法的専門家としての活躍の場というものはどういうものがあり得るのかということはきちんと見きわめて、検討していただきたいというふうに考えております。

和田(吉)参考人 私は、法曹需要は増大しない、とりあえず増大する見込みは薄いというふうに思います。それは、増大するといいながら、もう既に十年たっています。十年の間、私はむしろ減少したというふうに理解しています。潜在的にあるというふうに言われてきましたけれども、いつまでたっても顕在化しないのであれば、私はそれは存在しないのと同じだというふうに思います。

 この法曹需要については、誰が一番切実かといえば、司法修習生だと思うんですね。法科大学院と司法研修所で多額の借金を背負っているという修習生がたくさんいます。そうすると、何とか司法修習を終えた後就職したいというふうに思うわけですけれども、そういう一番ニーズに切実で敏感な修習生が就職しようと思ってもなかなかできない、それが毎年、二千人中五百人以上になっている、それも激化しているということを考えると、私は、法曹ニーズは残念ながら今後増大する見込みというのはかなり薄いんじゃないかなというふうに認識しております。

 以上です。

宮脇参考人 お答えいたします。

 弁護士という法曹の資格を持っている方に対する需要と法的な専門性というものに対する需要というのを少し分けて考える必要性があると思います。

 後者につきましては、今後の日本を考えてみますと、これは潜在的にも顕在的にも拡大していくというふうに考えますが、それがイコール弁護士という資格者に対するニーズに結びつくかどうか、ここについては正直不透明だというふうに思います。したがって、その結びつかない部分について、どういう職域の方がこれを埋めていただくのか、こういったところも今後の課題ではないかなというふうに思います。

神山委員 ありがとうございました。

 それで、司法試験は資格試験と考えておりますけれども、大切なのは質であり、必ずしも毎年一定数の合格者と決めることが必要かどうかわかりませんが、司法試験の年間合格者数については、三千人の目標にかわる新たな目標を早期に設けるべきとの意見もあるようですけれども、どうお考えなのか。

 また、自民党司法制度調査会においては、司法試験の年間合格者数について議論をし、平成二十八年までに千五百人程度を目指すとする緊急提言をまとめたわけでありますけれども、この提言についてあわせて御意見をお伺いいたしたいと思います。四人の参考人の方、よろしくお願いいたします。

宮下参考人 お答えいたします。

 今、司法試験というのが資格試験というお話もありましたが、実際には競争試験になっている現状の中で、合格者も大変厳しいところもございます。

 ただ、年間合格者について明確な数値目標を挙げるという前に、先ほどお話もありましたように、例えば地方においてもニーズというのはまだまだ十分にあると私の意見陳述でも申し上げましたけれども、そういうようなことを精査した上で、もし必要がやはり薄いということであれば、少しずつ精査して減らしていくということであって、いきなりその人数を提示するということ自体は少し慎重になってもいいのではないかなと思います。

 さはさりながら、自民党あるいは公明党等の緊急提言でそういった人数というものが提示されていることはやはり重く受けとめなければいけないところもございまして、そういう中で、どういう形で法曹人口というのを考えていくかというのは、今後、いろいろなそういう需要、ニーズとの兼ね合いで考えていく必要があろうかと思います。

 以上でございます。

和田(照)参考人 先生御指摘のとおり、司法試験というものが資格試験であるということを考えますと、それまで二千人合格していたものがいきなり翌年千人になるということは、やはり資格試験としてちょっと不自然ではないかなというふうに考えております。

 一定の人数を想定してこういう資格試験制度について議論すること自体が、場合によっては法曹マーケットへの新規参入制限の議論をしているかのように誤解を受けてしまうのではないかなということを懸念しております。

 私自身、一概にこういう人数が適正という数字は持ち合わせておりませんけれども、一連の司法制度改革の成果によって、やはり法曹人口が拡大して、その結果、司法アクセスが大幅に全国で改善しているということは評価すべきではないかなというふうに考えております。

和田(吉)参考人 先ほども申し上げましたけれども、毎年五百人以上の司法修習生が就職できない、司法修習終了時に就職できない、弁護士登録ができていない、その数も毎年上昇しているということ、あるいは、いわゆる軒弁であるとか即独であるとか、著しく悪い条件で弁護士登録している人も多いというようなことを考えますと、私は、千五百人とするだけでは足りないんじゃないか、千人かそれ以下にする必要があるというふうに考えています。

 以上です。

宮脇参考人 お答えします。

 私は、人数は設定するべきだというふうに思います。といいますのは、政策のよしあしを判断するためには、やはり一定の基準が必要であり、その基準にのっとって結果というものを評価していく必要性があると思います。

 したがって、自民党におかれまして、平成二十八年ということで千五百人という一つの目安をお立てになり、そして、現状における二千人の評価と今後について検討をしていただき、その結果として人数を確定していただくということは、政策形成においては私は必要なことではないかと思います。

 そして、その数字が上限を意味するということではなくて、司法試験が資格試験である以上、優秀な人間が多いということであれば、それを上回って合格者を出すということも、これはしかるべき結果であろうというふうに思います。

神山委員 ありがとうございました。

 次に、法曹養成過程と法科大学院に関して、各参考人の皆さん方にお伺いいたします。

 これらの法曹は、裁判関係の実務だけにかかわるのではなく、企業や自治体などの組織の一員となり、国際的な分野など、さまざまな分野で活躍していくべきとされますが、法曹人口をふやしたからといって幅広い分野で活躍できるわけではありません。幅広い分野で活躍するためには、それなりの人材を養成していく必要があると考えますが、そのためにはどのようなことが必要とお考えになるのか、お伺いいたします。

 また、法科大学院の乱立が行われておりますが、残念ながら、司法試験合格率が非常に低い法科大学院が多数存在しております。真に質の高い教育を行うことのできる法科大学院のみを残し、整理、統廃合を進める必要もあるかと思いますが、そのためにはどのような方策が有効とお考えになるか、お伺いをいたします。よろしくお願いします。

和田(吉)参考人 私は、人材を確保するというためには、先ほど何度も申し上げましたように、やはり、合格者数が多過ぎる、弁護士になったときに就職できるかどうかわからない、食べていけるかどうかわからないということであれば、残念ながら、優秀な人は選択肢として選んでくれないんじゃないかなというふうに思います。

 ですから、少なくとも、弁護士になって食べていけるということは見込める、一定程度の生活はできるというようなことをしないと、人材は確保できない。人材が確保できないと、先生おっしゃるとおり、いろいろな分野で活躍する人も来てくれないということになります。

 そういうことを考えますと、私は、合格者数をやはり千人以下にするというのがまず必要ではないかというふうに思います。千人以下であれば、もともと、これも先ほど申し上げましたように、司法制度改革審議会の意見書では、法曹需要が増大する、だから法科大学院が必要だということだったんですけれども、もし千五百人以下あるいは千人以下ということであれば、これは法科大学院なしでも、司法研修所でも十分やっていけたんじゃないかというふうに私は思いますので、合格者数を千五百人あるいは千人に減らすということであれば、法科大学院の数を減らして少数だけ残すという必要もないのではないかというふうに思っています。

 以上です。

和田(照)参考人 旧来型の法曹三者以外の法律専門家というものをふやしていって、活動領域を拡大していくということを考えますと、例えば、官僚として政策立案に携わる能力を持つ方、あるいは企業において法律の実務に携わる方、あるいは国際機関等で活躍できる方、そういう方たちを育てていくために必要な幅広い専門的な授業を展開できるようなロースクールというふうになりますと、今ある全てのロースクールがそういうことを提供できるかどうかということは十分見きわめる必要があるのではないかなというふうに考えております。

 やはり、ロースクールの教育の質と内容の多様性を確保していくためには、一定程度地方に核となるロースクールを用意しておくということも意識をしながら、一定程度統廃合をしてロースクールの質を維持して、かつ学生の居場所をきちんと確保するということも大事ではないかなというふうに考えております。

宮脇参考人 やはり、法科大学院におきまして、現在の法科大学院を全て残すということは、人的資源等も含めますと、これは極めて難しいというふうに考えております。

 一方で、地方の実情等も踏まえますと、地域ごとに核になる法科大学院を設置する、ただし、法科大学院一つで完結できる教育というのは限界がございますので、ネットワークを組む中で、これは国内的なものだけではなくて海外的なものも含めましてネットワークを組む中で、法曹あるいは法的な実務家を育てていく、やはりそういう役割というものを担っていくということが必要ではないかと思います。

宮下参考人 お答えいたします。

 幅広い分野での育成ということと、司法試験合格率を踏まえて整理、統廃合をということに対する対策ということは、つながっているところもございます。

 特に地方の法科大学院でございますと、そういった整理、統廃合という中で、単に廃止をするのではなくて、やはり地域を超えた、またあるいは地域の中での連携、連合といったようなネットワークというのをつくっていくという必要が一つございますし、そういう中で、例えば、司法過疎地域、弁護士過疎地域というのはまだありますけれども、そういうところの教育を重視する、あるいは国際的なものを各大学が連携しながらやっていく。そういう中で、教員、学生が幅広く連携、連合をする中で、ネットワークの中でやっていくことによっていろいろな人材が育成できるのではないか、こういうふうに考えております。

神山委員 ありがとうございました。

 和田照子参考人にお伺いいたします。

 この十年間で企業内弁護士数は相当ふえてきていることと思いますが、今後も、国際的通商案件等を含め、企業法務の分野における法曹に対するニーズはふえていくと考えておりますけれども、あわせて、企業の観点から、法曹人口の増大は必要だと思われるか、お伺いいたします。

 また、企業のニーズと法曹の側の質、能力等にミスマッチがあるとも聞きますが、あるとすればどのような点が問題なのか、それを克服するためにはどのような方策が有効であるか。また、企業の立場から、法科大学院、司法試験、司法修習に求めるものはどのようなものがあるのか。そして最後に、法曹を採用する企業の立場から、法科大学院を経由せず予備試験ルートで法曹になる者についてはどのようにお考えになるか、お伺いいたします。

和田(照)参考人 まず、企業における法曹のニーズが今後拡大するかどうかということでございますが、企業法務の専門家、法律の専門家というものに対するニーズは引き続き拡大していくというふうに考えておりますが、それが、直接企業の中で雇用することなのか、あるいは、法律事務所の中でそういう企業法の専門家の方にいていただいて、必要に応じてお願いするということでよいかということは違うのではないかなと。それは、いずれも可能性はあるというふうに考えております。

 最近は、法律事務所から出向という形で企業の法務に入っていただいて、一時的に法的ニーズが高まった際に御活躍いただいて、また法律事務所に帰っていくということもございます。

 それから、企業の法務ニーズとロースクール修了生、合格者とのミスマッチの件でございますけれども、なかなか、企業法務の現場にいらしてすぐに即戦力になる方が修習直後にあるかというと、それはやはり差があるのではないかなというふうに考えております。

 企業で求められる法曹人材といいますのは、新人として入っていただいて、その企業に必要な法律実務に精通していただくことを育てるということもございますし、あるいは、一定程度、法律事務所等で経験を積んだ方をミッドキャリアで雇って、それで即戦力として活躍していただくということもございますので、そのあたりについては採用の際に企業の方で判断をしているのではないかなというふうに考えております。

 予備試験合格者とロースクールを経て合格した方の間でどのような違いがあるかということでございますけれども、それにつきまして、私、直接そういう方を、業務の中で一緒に働いたことがないので判断はつきかねますが、予備試験合格者の方がよいと思えば雇う企業もあるかもしれませんが、一般に、予備試験合格者の方は法律事務所を志向される方が多いというふうには聞いております。

神山委員 ありがとうございました。

 宮下修一参考人にお伺いします。

 地方の法科大学院の意義は十分に理解いたしますけれども、全ての都道府県に法科大学院を設置することは無理だというふうに考えております。また、先ほどのお話の中の地域適正配置についてもう少しお話しいただければというふうに思うわけであります。

 それから、地方の法科大学院の低迷は、教育力が不十分であったため、設立以後の司法試験合格率が低迷しているとも言われているわけであります。教育力のある教員はそれほど多数いるわけではありませんけれども、教育資源の集中も重要と考えます。低迷する地方の法科大学院同士が生き残るために形式的に連携するということでなく、実質的に質の高い教育ができる連携を目指す方策も一つと思いますが、このことについて、よろしくお願いいたします。

宮下参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、現状を考えますと、地方全てに法科大学院を設置する、各県に設置するのはなかなか難しいというのはそのとおりかと思います。しかし、各地域でやはり一定数のニーズが必ずあるということは事実なものですから、そういう中で、連携、連合というネットワーク化を進めてそういう教育資源を集約する。

 御指摘のように、単に形式的にそれをくっつけるということだけではやはりいけません。私どもが念頭に置いておりますのは、連携、連合という中では、それぞれの地域で経験を積んで、そして教育力を十分積んできた教員を厳選して、そして学生に対してそういう教育というものをもう一度見直しながらきちんと提供していく、そういう仕組みをつくっていかなければいけない、そういう意味での教育資源の集約ということでありまして、まさに実質的にそういうことをしていく必要があるというふうに認識しております。

 以上でございます。

神山委員 どうもありがとうございました。

 時間です。

 終わります。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、階猛委員。

階委員 民主党の階猛です。

 きょうは、参考人の皆様、大変御多用の中、お越しいただきまして、ありがとうございました。

 今御退席になられた和田先生が弁護士資格をお持ちであるということは略歴を見てわかっておるんですが、ほかのお三方について、まず、司法試験を受験されて、法曹資格を持っていらっしゃるのかどうかということをお一人ずつお答えいただけますか。

宮下参考人 私自身は、研究者養成コースに進みましたので、司法試験の受験をして、そういう資格を得ているということではございません。

和田(照)参考人 日本では法学部の大学院まで修了しておりますけれども、日本での司法試験の受験経験はございません。

 アメリカのニューヨーク州の法曹資格を持っております。

宮脇参考人 司法試験は受験しておりませんし、資格も持っておりません。

階委員 大変失礼ながら、多分そこら辺で、御退席になられた和田先生とほかのお三方の認識のギャップがあるのかなと思っています。

 先ほどデータの紹介が一部ありましたけれども、ことしの法科大学院の入学者選抜に関するデータがきのう文科省の方から発表されていまして、まず、法科大学院の志願者、これは延べ人数ということでございますので一人で複数受けている方もいらっしゃいますが、志願者が、一万一千四百五十人で前年からマイナス一七・八%、二千四百七十四人も減っています。入学者数は、二千二百七十二人、前年比マイナス一五・八%、四百二十六人減っています。入学定員充足率、これは定員が三千八百九人に対して充足率は六〇%、前年より定員を四百五十二人、一〇・六%減らしたにもかかわらず、充足率は、前年は六三%でしたから、三ポイント減っているわけです。

 こういう惨たんたる状況で、私などは、このままいくと、もう法曹志願者はいずれいなくなるのではないかというような危機感を持っています。

 なぜこれほど激減するかということなんです。

 ここから四人の皆さんにお聞きします。

 なぜ激減するかというと、私も働きながら司法試験を受けたんですけれども、確かにその時期はロースクールがなくて合格率は二%から三%ということで狭き門でした。参入障壁が極めて高かったんですが、仕事をしながらでも、こつこつ勉強すれば受かる可能性はある、また、受かればやりがいのある仕事が得られ、それなりの収入も得られるということでやろうと思ったわけです。

 ところが今、参入障壁が高いのは、相変わらずというか、むしろ高くなっているのではないか。まず、ロースクールに入るとなればお金がかかる、時間がかかる、そしてなおかつ受かりにくいということは、従来に比べれば二、三%が二五%ぐらいになっていますけれども、今でも依然としてある。

 そして、もっと重要なのは、受かった後、やりがいのある仕事につくことができない人が、先ほど五百人という数字もありましたけれども、それぐらいの有為な人材が就職できなくて今もいるということと、あと、仮に就職できたとしても、我々の時代のころに比べると初任給は極めて低くなっているということであります。

 参入障壁が高くてメリットがなければ、こんなところに人が集まらないのは当たり前でございます。こうした現状認識について、皆さんのお考え、これは間違っていると考えるのか、それともこのとおりだと考えるのか、端的にお答えください。

宮下参考人 お答えいたします。

 今御指摘いただいたような法曹志願者の激減という現状というのは、確かに参入障壁あるいはその後の道の選択の難しさということも一因であるかと思います。

 ただ一方で、参入障壁云々ということもございますけれども、その先の道というものが十分に開拓できているかというところも少し疑問のあるところでございまして、実際に地方に参りますと、例えば私どもの法科大学院でも、合格者が少ないのは確かなんですが、しかし、今のところは一〇〇%全員就職しているという現状もございます。そういう中で、もう少しいろいろなニーズというものを開拓するということも必要ではないかなというふうには考えております。

 御認識自体を否定するということではございませんけれども、私自身はそういうふうに考えております。

和田(照)参考人 私自身が今現時点でこれから法曹を目指そうと考える若者であれば、ロースクールを修了したとしても、合格率が確実に合格できると限らないような数字である、あるいは予備試験も非常に合格率が低いということを考えますと、よほどの覚悟と、自分で絶対やり通すんだという自信がなければ、ちゅうちょすることもあり得るのではないかなというふうに考えておりますが、できれば優秀な方に、努力する価値があるような法曹の姿というものを描けることが大事じゃないかなというふうに考えております。

和田(吉)参考人 先ほど申し上げましたように、私はまさに先生のおっしゃるとおりだというふうに認識しております。

宮脇参考人 お答えします。

 受験者の視点から見ますと、先生が言われた点というのは非常に重たいというふうに思います。

階委員 そこで、いい人材に入っていただくためには職域の拡大というのが必要だということを宮下先生もおっしゃられたと思うんですが、先ほどの和田吉弘先生からの御指摘、御意見の開陳の中で、法曹需要がむしろ減少しているんだというお話がありました。このあたりについて、具体的な事実関係を御説明いただけますか。

和田(吉)参考人 弁護士の主要な活動領域であります民事・行政事件について見ますと、司法統計では、まず、全裁判所、全部の裁判所における民事・行政事件の新受件総数、新しく受けた事件の総数ですけれども、これは、平成十四年には約三百三十万件ありました。それが、十年後の最新資料である平成二十四年には約百七十一万件になっています。

 また、地方裁判所にのみ限定した場合、全部の地方裁判所における民事・行政事件の新受件総数ですけれども、これは、平成十四年には約百三十万件でした。ところが、平成二十四年には約六十七万件になっています。

 なお、これに対して、地方裁判所における第一審民事通常事件に限った場合の新受件総数ですけれども、平成十四年の約十五万件から平成二十四年の約十六万件へとややふえたように見えます。しかし、最高裁も一過性があると呼んでいます過払い金返還請求の分を考える必要があります。

 最高裁の報告書からは、そこには平成十五年からの数字しかなかったんですけれども、平成十五年の過払い金返還請求の新受件数というのは約四万三千件だったのに対して、平成二十四年のそれは約六万九千件でありました。

 したがって、それを考慮しますと、地方裁判所における第一審民事通常事件についても、実質的な数字としては横ばいか、やや減っているというふうに言えると思います。

 私としては、これらを総合して、法曹需要の量的増大等は見られず、むしろ減少したと言うべきであるというふうに考えた次第です。

 以上でございます。

階委員 続けて和田先生にお伺いしますけれども、先ほどの御意見の中で、法科大学院の教育のことについて触れられていました。実務にも司法試験受験にも余り役立たない授業が多いというようなことを言われていましたけれども、このあたりもちょっと具体的な事実関係について御説明いただけますか。

和田(吉)参考人 なるべく具体的な例を挙げる方が実情をわかっていただけるとは思うんですけれども、ただ、余りに具体的過ぎますと、どの法科大学院の何先生かというのが特定されてしまって、この場では必ずしも適当ではないようにも思います。

 少し一般的に申し上げますと、学者は、研究として、ある分野ないしある論点について、自分の説を理論的に構成して主張するということが予定されているわけですけれども、実務や教育に余り関心のないまま、授業にもそのような研究者としての態度を持ち込むことが少なくないということです。それが、実務にも司法試験受験にも余り役に立たない授業ということになります。

 例えば学生の中の、未修者コースでは当然、初学者がいらっしゃるわけですけれども、初学者としては、その先生の自説、自分の説を聞く前に、民法であれば民法全体の基礎をまず教えてもらいたいというふうに思うわけですけれども、学部ではないんだ、法科大学院だ、これは大学院なんだ、だから基礎の勉強は自学自習だというふうに言われてしまうわけです。

 また、実務では、判例というのが非常に重要で、判例を具体的な事案にどう当てはめるかを考えることが多いわけです。判例でうまくいかないときに初めて通説であるとか、あるいは代表的な反対説を検討することになるわけですけれども、学者としては、判例を批判することも一つの役割であるということから、判例を具体的な事案で使えるようにするというような授業はしないで、自分の興味のある法律問題を中心に授業を行うことが多いということにもなります。

 期末試験でも、その先生の説を書かないといい点がとれなかったり、あるいは不合格になるおそれというのも現実にあるものですから、学生としては、司法試験の勉強とは別に、その先生の説がたとえ単独説でも、ある程度それを勉強しなければならないということになります。学生たちのこういう不満の声はあちこちで聞きました。

 さらに、もう少し具体的な例を挙げさせていただきますと、これは私の本にも書きましたけれども、例えば、ある学者教員が実務から遠い自分の研究分野を集中的に取り上げた。レポートの課題もそこから出題されて、その学生らにとっては大きな負担となっていた。そこで、勉強熱心な真面目な学生たちが、学者教員の関心に偏らない授業をというふうに要望に行ったそうなんですけれども、そうしたところ、その学者教員から、それは予備校主義だというふうに言って、拒否されたという話でした。

 また、ある法科大学院のある授業では、出席が強制であるために、学生は数多く出席しているんですけれども、学者教員が、司法試験にも実務にもおよそ関係がないような自分の研究分野のことしか授業で扱わないので、教室の最前列の学生しか授業を聞いていない、それ以外の学生は自分で司法試験の勉強という内職をしているという話です。

 また、そういう状態を教員も学生も知っていて、お互いに何も言わない。ただ、そういう授業でも、教員が学生に内職をやめろというふうに言わないだけ、まだ学生にとってはありがたい授業だということのようです。

 以上です。

階委員 先ほど和田照子先生のお話の中で印象に残っているのに、ロースクールでは、法的な基礎知識を授けるとともに、足がかりとなる専門分野の教育をということであるとか、合格率を上げるということに取り組んでほしいというようなお話があったかと思うんですが、その立場から、今の実例を聞いて、コメントはございますでしょうか。

和田(照)参考人 今、和田先生の話を伺って非常にびっくりしておるところなんですが、文科省が予備校的な授業をロースクールはすべきでないという方針を出していることは理解できないでもないんですが、とはいえ、司法試験の受験の要件としてロースクール修了というものが課されて彼らは在学していることを考えますと、やはり司法試験に合格できるために必要な全般的な、基礎的な法的知識を身につけるための授業というのをしていただくことは必要なのではないかなというふうに考えております。

 特に、既修者の方だけでなく未修者の方は、ロースクールでの教育が法律について学ぶ一番大事な場所になるかというふうに考えておりますので、いたずらに予備校に走らないためにも、ロースクール自体の法的教育を充実させていただくということは大事じゃないかなというふうに考えております。

階委員 合格率を上げるということが一方では重要で、他方で、受験指導に偏ってしまったら予備校と同じになってしまうということなので、どうやってそこのバランスをとるかということなんですが、ただ現実には、一部のエリート校は別としまして、受験指導なしで合格率を上げるというのは至難のわざではないかなと私も思っています。

 和田吉弘先生の方でも、文科省が司法試験の受験指導を禁止しているということを問題点として指摘されておりましたけれども、今の文科省が司法試験の受験指導を禁止しているという前提のもとで、一部のエリート校は別として、合格率を上げることは可能だとお考えになるか。また、もし可能だとお考えになるのであれば、それはどのような方法によれば可能なのかということを、和田吉弘先生、お願いします。

和田(吉)参考人 結論として、それは極めて困難だと思います。

 受験指導といいますのは、司法試験の場合には、具体的には特に答案練習、つまり、司法試験の問題に近い事例問題を与えてその解答を書かせて、指導者の方が添削する、そういうものを意味すると思いますけれども、これは、司法試験に合格する力をつけるためには必須の方法だと思います。司法試験の予備校で答案練習に非常に力を入れているのも、また、合格率を問うようになった文科省が曖昧ながら一定限度で許容するに至ったのも、そのためだと思います。

 ほかに、法科大学院が例えば補習などの形で、司法試験科目でもある基本科目に特別に力を入れて授業をする、ふやすというようなことを行えば合格率が上がる要素となるでしょうけれども、それも、曖昧な一定限度を超えると、文科省が禁じている受験指導に当たるというふうにされることになると思います。

 さらに言わせていただければ、皮肉な話になりますけれども、学生が法科大学院での勉強と司法試験の勉強という二重の勉強を強いられているということからすれば、プロセスの教育などというスローガンで学生に出席を強制することをやめるとか、あるいは、先ほどのお話のように、学生の内職を黙認するとかで学生が自主的に受験勉強するのを妨害しないようにすれば、私は合格率が上がる可能性があると思います。

 結局、法科大学院が受験指導をせずに合格率を上げる一番の方法というのは、能力のある学生、あるいは既に勉強の進んだ学生に多く入学してもらうことだということにならざるを得ないと思います。

 以上です。

階委員 要するに、受験指導せずに普通の法科大学院が合格率を上げることはできないんだということを裏からお話しされたと思うんです。

 このあたりも、今の顧問会議ですか、こちらではまだはっきりしない、曖昧な位置づけに終始しているというところは、私も改めるべきだと思っています。

 それから、法曹人口についてもなかなか議論が政府の方でも進んでいないんですけれども、和田吉弘先生の方からは、早期に年間一千人程度かそれ以下にすべきだということをおっしゃっていました。

 まず、早期にと言われていますけれども、そのタイミングは具体的にどういうふうに考えていらっしゃるのか。いきなり二千人を千人にすると、今いる方は不意打ちになるでしょうし、また、今後法曹を目指そうという方も場合によってはむしろ減る方向になるのではないかと思っています。

 そのあたりも踏まえて、二つお伺いします。まず、減らすタイミングをどう考えるのかということと、仮に一千人にしたとして、志願者の量的、質的向上に資するのであろうか、この二点について和田吉弘先生からお願いします。

和田(吉)参考人 まず、タイミングの問題ですけれども、事態がここまで悪化した現状では、本来一刻の猶予もないと言うべきであると思います。他方で、法科大学院の学生や修了生からすれば、現在、法科大学院の未修者コースの一年生である学生についても、司法試験の受験資格がなくなる今後八年の間、現状のままにしてほしいというふうに思うかもわかりませんけれども、繰り返し申し上げますように、そのようなことが許される状況には全くないと思います。そうすると、現実には、二、三年かけて千人以下にするというあたりが穏当ではないかというふうに思います。

 それから、合格者数、千人の点なんですけれども、司法試験の合格者を現在の年間二千人から千人に減らすということになると、司法試験の合格率は半減することになります。確かに、ごく短期的には法科大学院への志願者がさらに減少するということも予想されます。

 しかし、法科大学院が不人気になった理由は、先ほどもお話ししたとおり、弁護士の数がふえたために、弁護士という職業が、法科大学院と司法研修所で多額の費用ないし借金と長期の時間をかけるほどの魅力があるものではなくなってきているということにあると思います。そうであれば、もし合格者数を現状のままにした場合には、ますます法科大学院への志願者は減る一方で、司法は劣化していくばかりとなります。

 そこで、少なくとも志願者の減少に歯どめをかけ、将来の展望を開くには、司法試験合格者数を減らすしかないということになると思います。千人ないしそれ以下にすれば、新しく参入しようとする人の生活は一応ほぼ成り立つようになって、中長期的には将来の展望は辛うじて開けるのではないかというふうに思います。

 私は、このような事情と裏腹のことが法科大学院制度の創設によって起こったように思います。つまり、法科大学院制度の創設とともに、司法試験の合格者数を従来よりも大幅にふやすということになったわけですね。そうしたところ、司法試験の合格率が上がるということで、ごく短期的には法科大学院への志願者が殺到しました。しかし、司法試験の合格者をふやしたということで、その後弁護士という職業の魅力が低下して、法曹志願者が減少する一方となったわけです。

 そうであれば、今後法曹志願者を何とかふやすためには、それとは全く正反対に、ごく短期的には司法試験の合格率の低下によって志願者が減少するとしても、司法試験合格者数を大幅に減らして、弁護士の職業の魅力がこれ以上低下しないように、また、新たに参入しようとする人の生活が成り立つようにする必要があるというふうに考える次第です。

 先ほども申し上げましたように、司法試験合格者数を千人ないしそれ以下にしつつ、法科大学院修了を司法試験の受験要件から外せば、ずっと多くの法曹志願者が登場するものと思われます。

 ただし、千人とした場合でも、当面、平均的な自然減としては、かつて約五百人ずつ合格した人の分が毎年減少していくにすぎません。法曹人口としては、その差の約五百人ずつが毎年増加することになりますので、今後、需要の増大が見られず、あるいは裁判官や検察官の大幅増員などもなければ、弁護士の職業としての魅力は回復しませんから、さらに合格者数を絞るということも検討すべきであると思います。

 以上です。

階委員 仮に千人ということであると、法曹人口の大幅増加をする必要があって、その場合でも、質を維持するために法科大学院を設ける必要があったという前提が崩れるわけですね。ということは、法科大学院が不要ではないかという話になるかと思います。

 なお法科大学院が必要だ、法曹人口はふやさなくても必要だという立場の方がもしいるとすれば、やはり受験勉強だけで法曹の資格を得るのはいかがなものか、プロセスで法曹養成が必要だという立場なのかなと思うんですが、仮にプロセスを重視する立場に立ったとしても、最終的に千人でいいとなれば、例えば、司法研修所に入所する人数を千五百人ぐらいにして、そこからある程度の期間をかけて教育をして、七割ぐらい、今の法科大学院も七割ぐらいを合格率の目標としていると思いますけれども、七割ぐらいで千人という形であっても十分プロセスとしての法曹養成というのは成り立つのではないかなというふうに思っております。こうした形でのやり方を和田吉弘先生はどう考えられますか。

和田(吉)参考人 法科大学院をある意味で司法研修所に発展的に吸収させるというようなお考えかと思うんですけれども、それも一つのお考えだと思います。法科大学院の機能を司法研修所に取り入れるというのは、愛知大学教授で弁護士の森山文昭先生も少し近いお考えを表明されていたのではないかというふうに思います。

 ただ、申しわけありませんけれども、率直なところ、少し問題があるような感じがします。

 法科大学院というのは、司法試験受験の前の段階を担当しているわけです。特に、本来は、その中でも未修者コースが標準的だ、原則だというふうにされてきたわけですね。それに対して、司法研修所は司法試験合格の後を担当してきたということで、法科大学院が本来目指した教育と実務修習のようなものをセットで行えるのかというような問題があるように思います。

 それは、司法研修所の入所試験の性格に大きくかかわってくるように思います。

 もし司法研修所に入るための入所試験というのが、現在の法科大学院の未修者コースの入試に相当するものだ、法律の力は問わないというものだとすれば、修習期間、今は一年ですけれども、かつては二年でした、あるいはそれを三年ぐらいに延ばすとしても、私は、よほどいい人材を集めて、よほど徹底的に合理的な教育をしない限りは短過ぎるというふうに思います。また、司法試験に合格する基礎力さえ身についていない状態で実務修習を受けても、その実が上がるかは疑問があるように思います。

 これに対しまして、もし司法研修所の入所試験というのが、現在の法科大学院の既修者コースの入試に相当するものだ、法律の力も問う、そういう出題もするというふうにした場合ですけれども、合格者数を千五百人に絞るというのであれば、現在の司法試験の合格者数は年間約二千人ですから、そういうことからしますと、実質的には司法研修所の入所試験がむしろ従来の司法試験に相当するものということになると思います。そうしますと、それよりも前の段階の学習は各自でという旧司法試験の状況と同じことになると思います。私はそれで構わないと思いますけれども。

 それとともに、司法修習終了後に受ける司法試験について、七割合格を前提にするということですけれども、それは実質的には現在の司法修習終了時に行われているいわゆる二回試験の合格率を七割に引き下げるということを意味することになると思います。

 それで、合格率七割で千人合格というふうにした場合に、もし修習生の給料を支払うという、給費制をとったというような場合には、その差の五百人について二、三年間給料が支払われるのは無駄ではないかというような批判もなされる可能性があるように思います。

 以上です。

階委員 今の法曹養成の仕組みについて、私は法科大学院を司法研修所に発展的に吸収すべきではないかという立場なんですけれども、一方で、法学部と法科大学院を一体化すべきではないかという立場もあって、その点についても、最後の方で今、学部段階できちんと法曹養成する方策があれば法科大学院は必要がないのではないかというような趣旨でお答えになられたということで理解してよろしいですか。

 要するに、学部段階でちゃんと教育をすれば法科大学院は要らないのではないかというような立場というふうにお聞きしていいですか。

和田(吉)参考人 私は、とりあえずは、合格者数を千人以下にして、法科大学院の修了を司法試験の受験要件から外すべきだというふうに考えていますけれども、将来的には、先ほども申し上げたかもわかりませんけれども、法学部の段階で法曹養成をきちんとする、そういう学部なり学科をつくるということであれば、それも一つの考えだというふうに思います。

 ただ、そのときには、それだけの教育力のある教員を集めないといけませんし、それから、授業内容も、教員の関心に偏ったようなものではなくて、きちんとした、実務家になるのに役立つ内容にする、そういうふうにした上であれば、法学部ないし法学部の中の学科としてそういうのをつくるということも一つの考えだと思いますけれども、現状の法学部の実態というのは、それとはかなり遠い状況にあると思います。

階委員 予備試験についてちょっとお尋ねしますけれども、予備試験の合格者と法科大学院の修了者というのは同じぐらいの学力を有するという前提になっておりますけれども、実際には予備試験合格者の方が司法試験の合格率がはるかに高くて、原因を考えてみると、予備試験の難易度が高過ぎるか、あるいは法科大学院の教育水準が低過ぎるか、どちらかになると思うんですけれども、このあたりについて四人の参考人、それぞれどのようにお考えになられますか。

宮下参考人 お答えいたします。

 今、予備試験と法科大学院の合格者の合格率の違いということについて御指摘いただきましたが、予備試験につきましては、やはり合格率が一%、二%という大変厳しい数字であるということもありまして、それなりに高い水準というのを確保しているというのはそのとおりだと思います。

 ただ一方で、法科大学院というものの本来のプロセスとしての法曹養成という理念と相反する形でこの予備試験が導入されて、そちらに行く学生が多いことも事実でございますから、そういう中で、必ずしも今の予備試験の現状と法科大学院の現状というのを比べるということが適切かどうかということについては、私自身、まだもう少し検討しなきゃいけないかなというふうに思っております。

和田(照)参考人 先生御指摘のように、予備試験合格者の方が司法試験の合格率が高いというのは、数字として厳然として明らかな事実であるというふうに考えております。ただ、そのことと、優秀な法曹になるかどうかということはもしかしたら違うかもしれませんので、法曹資格者としてどちらのルートの方が優秀かということは、なかなか評価が難しいのではないかなというふうに考えております。

 ただ、ロースクールに三年間ないし二年間通った効果が合格率という形で成果が出ないとすると、やはりロースクールを経由して法曹を目指そうという方が自然と減ってしまうというのはやむを得ないことなのではないかなというふうに考えております。

和田(吉)参考人 予備試験合格者の方が司法試験合格率がはるかに高い理由についてということなんですけれども、私は、法科大学院の教育効果が低いのと、予備試験の難易度が不当に高いのと、両方だと思います。ただ、予備試験の難易度については、試験問題の難易度ではなくて、合格者数が抑えられているという意味での合格の難易度ないしは選抜の難易度というものが不当に高いというふうに思います。

 しかも、弁護士という職業が、何度も申し上げているように、法科大学院で多額の費用と時間をかけるほどの魅力がないものになっているという関係もある。それから、大手の法律事務所が法科大学院修了者よりも予備試験合格者の方を評価しているという関係から、能力のある人はますます予備試験を受けようとする傾向にある、そのような事情もあるかと思います。

 以上です。

宮脇参考人 お答えします。

 合格率という数字から判断した場合には、先ほど御指摘がございましたように、予備試験、こういった方が選択されるということになろうかと思います。ただ、それが法曹ないし法律の実務家としての資質ということにダイレクトに結びつくかどうか、この辺については、私は必ずしもそうとは思っておりません。

階委員 一方で、法科大学院を出たことが果たして優秀な法曹の養成につながっているのかというのが問われているのかと思っています。

 予備試験と法科大学院修了と、どちらかのルートが異常に受かりやすいとか、どちらかのルートが異常に厳しくなるというのが私は不公平だと思っていまして、予備試験というのは法科大学院修了と同等のレベルを得ているかどうかを見る試験ですから、例えば、法科大学院修了時に予備試験を課して、予備試験をパスしたら法科大学院修了、そして司法試験を受けるということにすれば一番すっきりするのではないかと思いますが、その点について皆様の御意見をお聞かせください。

宮脇参考人 能力をはかるという意味で、現行の予備試験制度の趣旨というものを見直してそうした統一的な試験を行うということは、能力をはかる部分においてはあり得る選択肢だろうと思います。

宮下参考人 お答えいたします。

 予備試験と同等の資格ということで、法科大学院というものを修了した学生に対して、例えば到達度確認試験とかそういったものを課すというような形で、そういった能力をはかる機会というのはもちろん必要かなというふうには思っております。

和田(照)参考人 ロースクール修了者にさらにその後に予備試験を課すとなると、今の司法試験とほぼ同じような趣旨の試験になるのではないかなというふうに、今の司法試験、法曹資格を有するに足る能力を持っているかどうかを確認するという資格試験と非常に質が似てきてしまうのではないかなというふうに考えております。

 今はむしろ、予備試験の内容が、法科大学院で学んだ方と同等であるかどうかを確認する内容になっているのかどうかですとか、予備試験合格者と法科大学院修了者で司法試験の試験科目が同じでいいかどうかといった視点からの検討もしていただく価値はあるのではないかなというふうに考えております。

和田(吉)参考人 確かに、予備試験に合格するということを法科大学院修了の必要条件とすれば、司法試験受験の前の段階で実力の格差を解消することができるでしょうから、双方のルートの合格率の均衡が図られるということになると思います。

 しかし、法科大学院に入学しても、予備試験に合格しなければ法科大学院を修了できず、したがって司法試験も受けられないというのであれば、恐らくほとんどの人は、多額の費用と時間のかかる法科大学院には行かないで、独学で、あるいは予備校で勉強して直接予備試験を受けると思います。そうすると、予備試験と司法試験の二本立ては意味がなくなりまして、予備試験を廃止して、誰でも司法試験が受けられるという旧司法試験制度と同じような制度に行き着くことになるんじゃないかというふうに思います。

 以上です。

階委員 今、和田吉弘先生がお話しされたこと、例えば和田吉弘先生は、法科大学院修了を司法試験の受験要件から外すべきだと言っていますけれども、それこそまさに、旧司法試験と同じで、誰でも司法試験が受けられるということで、法科大学院は必要なくなるということにつながりませんか。そういう考えでよろしいですか。

和田(吉)参考人 確かに、法科大学院の修了を司法試験の受験要件から外すと、法科大学院が自然消滅するのではないかということも考えられます。

 ただ、もともとは、法科大学院では、司法試験の予備校をはるかに超えるいい教育をするというふれ込みだったと思います。そうであれば、法科大学院の修了を司法試験の受験要件から外したとしても、そういういい教育を目指して努力をすれば、学生は集まるはずだと思います。大手法律事務所も、そういう人材であれば、喜んで採用するだろうと思います。そうではなくて、予備校での教育にさえ及ばないというのであれば、法曹志願者に法科大学院の修了を要求することは、やはり合理性のないものだということになるわけで、また、毎年数十億円の国費を与えてそういう法科大学院を維持する必要もないでしょうから、存立が危うくなっても、私はそれは仕方がないと言うべきだと思います。

 以上です。

階委員 いい法科大学院は生き残るだろうというふうにお伺いしました。私も、やはり法科大学院というのはそれを目指していくべきなんだと思っています。何か制度的に恩恵を与えて、よい教育を行っていない法科大学院まで残そうとするのは本末転倒だと私は思っております。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、高橋みほさん。

高橋(み)委員 日本維新の会の高橋みほでございます。

 本日は、四人の参考人の方、御遠路から本当にありがとうございました。

 私、今回は司法制度改革ということなんですけれども、司法試験法の一部を改正する法律案について今回議論になっておりますので、まず、この法律の概要についての質問をさせていただきたいと思っております。

 今回の司法試験法の改正というのは大きく二つありまして、短答式試験の法律科目を減らすこと、憲法、民法、刑法の基本的な科目にすること、それとあと、受験資格の制限を、五年間に三回ということから五年間に五回できるというふうにすることというふうになっております。

 私、これを聞いたときに、私が大学生か大学を出たころなんですけれども、旧司法試験から新司法試験に変わるときに、大学で勉強をしたのに、民訴や刑訴など、本当に実際現場に出たときに知らなければいけないような教科を短答式で試験しないということはいかがなものかというようなお話がありまして、昔は憲法、民法、刑法だったのが、それに行政法、商法、あと民訴、刑訴が加わったというように認知しております。

 現在、今度の改正というものは、それにまた逆行する形で、基本科目が大事だから、これらの憲、民、刑に絞るんだという議論、つまり、この前の新司法試験に変わったときの議論と、今度の制度が逆方向を向いているというような印象を私は持ちました。

 そこで、まず宮下先生にお聞きしたいんですけれども、基本科目、短答式試験を三科目にするということにつきましては、それでいいとお考えなんでしょうか。できましたら、前の旧司法試験から新司法試験に変わったときの経緯を踏まえて教えていただければと思います。

宮下参考人 お答えいたします。

 以前の旧司法試験では、短答式試験を受けてから論文式試験を受ける、そういうスタイルでございましたが、今の新司法試験では、両方一緒に受けて、短答式試験の点数も勘案しながら論文式をあわせて評価するというスタイルですので、すぐに旧司法試験に戻るということではないかと思います。

 ただ、短答式試験の弊害としましては、どうしても、知識の詰め込みであるとか、そういった暗記型教育ということになりがちであるというところも確かにありますが、一方で、そういう短答式で知識を入れるということによって論文式の試験を解くために必要な知識が入っていたということもございます。

 ですから、受験生へのいろいろな負担とか詰め込み教育という暗記型の教育をなくすという意味では、短答式試験の科目を減らすというのも一つの選択肢であると思いますけれども、同時に、やはり論文式試験のことも念頭に置いて、短答式試験の科目のなくなるところの教育内容の充実をもう少し図っていく必要があるのかなと。知識というものがそれによってなくなってしまうということになっても困りますが、一方で、先ほど申し上げたように、詰め込みということだけで、単に何点とればいいということで暗記型になってしまうのも困りますから、そのあたりの兼ね合いでいろいろ制度設計をしていく必要があろうかと思います。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 ここの三科目に変えるということに対しては余り皆さん御批判がないようですし、受験生の身からしましてもきっとそれは歓迎する方向であるとは思うんですけれども、やはりころころと制度が変わるというのは試験を受ける人たちにとっては大変なことだと思いますので、そういうところというのはどうなのかなというふうに私はちょっと思っております。

 次に、司法制度改革の方に行きたいんですけれども、私は、司法制度改革といいますと、大体、弁護士会の方たちが、人数を減らせ、合格者を減らせというところが実は一番のメーンじゃないかというようなイメージを持っております。

 なぜ、合格者を減らせというのは、今回、和田吉弘先生がいろいろなことをおっしゃっていました。合格者が多くなったのにニーズがそれほどふえなかったので経済的に困っている弁護士さんが多くなったとか、軒弁になってしまっている人たちが多いので教育を受けられないとか、一番言えば、需要がないということだと思うんです。

 そういうことを考えたときに、弁護士の人数がふえるということで実際一番困るのは誰かと考えたときに、受験生は合格者がふえた方がいいのは当然なので、一番嫌だと思っているのは、既存の弁護士会で仕事を持っている人たちが仕事をとられてしまうからじゃないかというような危惧を持ちます。そしてもう一つは、せっかく高給取りの弁護士になれると思っていたのに実際はなれなかったというような不満を持っている新しい弁護士さん。ただ、その方たちも、もっともっと合格者がふえてしまったら、自分の仕事も減ってしまっているから、合格者を減らせというように言っているんじゃないかなというような印象を私は持ちます。

 何でこういうような印象を持つかといいますと、私が地元でいろいろなところを回ってきますと、相談を受けることがあるんですけれども、それは国政に対することというよりは、どちらかというと法律問題で相談を受けることが多いんですね。そのときに、では、これは法律問題だから弁護士さんに言ったら、弁護士さんにまず相談した方がいいですよとアドバイスをしますと、いや、実はもう弁護士さんには何軒も当たりました、ただ、これはもうどうしようもないから受けてくれませんでしたというようなことを言う人がすごく多いんですね。

 私は、それを聞いて、いろいろな不合理なことを言う人もいるかもしれないんですけれども、実際に相談を受けてみると、それはもっともだね、何で弁護士さんは受けてくれないんだろうねというようなこともすごく多いんですね。だから、そういうことを考えますと、需要がないというのは一概には言えないんじゃないかというような印象を私は持っております。

 そして、私が地元で所属しているいろいろな会、昔は弁護士さんが入っていらっしゃらない会だったんですけれども、最近は弁護士さんがすごく多くなっているんですね。つまり、若い弁護士さんが仕事を求めていろいろなところに顔を出し始めている、自分たちで需要を掘り起こしている姿というのを見ていますと、昔の、どちらかというと、事務所に座っていてお客さんが来るのを待っていたという時代から今は変わりつつあるんじゃないか、需要の掘り起こしをしているんじゃないかというような印象を私は受けます。

 それで、今までの話でわかったかと思うんですけれども、実際、弁護士さんが需要がないというのは、努力をしていないんじゃないかというような印象が多いんですけれども、それにつきまして、和田吉弘先生と、あと、法廷から日常へ出るべきだとおっしゃってくださっていました宮脇先生にその点お尋ねしたいと思います。

和田(吉)参考人 私は、今の制度はやはり司法制度改革審議会の意見書がもとになっていると思うんですね。司法制度改革審議会の意見書によれば、先ほど申し上げたように、法曹需要はますます増大する、それに対して対応していかないといけない、そのために弁護士の数をふやす必要があるんだ、そのために法科大学院をつくるという話だったわけで、少なくとも私の認識では、法曹需要はふえていないというふうに思います。ふえているのであれば、司法修習生が終了時に五百人以上も弁護士登録できないというふうなことは生じないんじゃないかというふうに思います。

 若手弁護士が需要を掘り起こしているというのも確かに事実だと思いますけれども、それは若手弁護士としては、法科大学院と司法研修所で数百万、あるいは人によっては一千万もの借金を抱えている、何とか食べていかないといけない、借金も早く返していかないといけないという中で、いろいろな仕事を見つけて努力しているということなんですけれども、これは、司法制度改革審議会が予定していたような、法曹需要は確実に増大するんだという話とは大分違うんじゃないかというふうに思います。需要を掘り起こすといっても、なかなか収入には結びつかないような話も多いと思います。若手弁護士が需要を掘り起こさざるを得ないような、むしろ苦しい状態に置かれているんだと。

 それで、本当に適正に需要を掘り起こせるかというと、それ以上のことが私は起きているような気がします。本来は訴訟にすべきでないのに、ささいなことで訴訟にするというようなことも起きていると思います。

 私の友人で医者がいるんですけれども、医者がある弁護士から、ある患者についてこういう診断をしたということで診断書を書いてくれというふうに言われたと。ただ、そういう診断はできないという場合だったので断ったということなんですけれども、診断書でうそを書けというような弁護士まであらわれているのかと思って私はびっくりしたんですけれども、そういうことにもなりかねないような気がしています。

 ですから、需要の掘り起こしをされているんだから需要は出てくるんだというふうには私は言えないんじゃないかなというふうに認識しております。答えになったかどうかわかりませんけれども。

宮脇参考人 お答えします。

 実際に地方自治体ですとか地域ですとか、あるいはNPO、あるいは病院、福祉、こういったところとかかわっておりますと、法的知識に対するニーズというのはかなり多いというふうに考えます。ただ、そのことが、イコール法曹の需要増加というところにダイレクトに結びつくのかと言われると、それは必ずしもそうではない。

 したがって、法曹の需要がふえるというふうに自動的に考えたこと、これ自身が正しかったかどうかというのは、それは、ニーズがどこにあって、かつ、法曹側がどのように変化をしていくのかということも含めて、やはり一度検証してみる必要性があると私は思います。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私が申し上げたかったのは、弁護士さんも、待っている時代ではなくて、自分たちがもっと変化していって仕事をゲットするような時代になっているんじゃないかというような認識が必要なんじゃないかということをちょっと申し上げたいと思いまして、今の質問をさせていただきました。

 次に、また重なるんですけれども、宮脇先生に質問をさせていただきたいんです。

 私は、弁護士というのも人数を決める必要性があるのかどうかというところが常々疑問に思っていまして、一定の能力、例えば、あるテストで八十点以上とったら合格しますよみたいな、ある一定の能力さえあれば法曹資格を授与するというものでもいいんじゃないかというような気がします。実際に、弁護士さんを国が何人つくるというような制度とかによってではなく、自分たちで需要を掘り起こしたり、なかったら受ける人が減っていくというような、一般的なマーケットに任せるということも可能じゃないかと思うんです。

 先生は先ほど、人数を設定して、それについて検証をしていくということが重要だとおっしゃっていたんですけれども、マーケットに任せるといいますか、ある程度の最低限の資格は保障するけれども、それ以降は自分たちでやってねというシステムにしていくことの是非について教えていただければと思います。

宮脇参考人 お答えします。

 資格試験という性格であるとすれば、一定の能力のある人以上について人数にかかわらず合格者を設定するというのが基本だと思います。

 私が、一定の目標値を定めた方がいいと申し上げたのは、そうしたやり方について、例えば、合格者が変動すると思います、変動している要因についてきちっと検証するためには、一定の物差しが必要であろうということであって、合格者の上限をそこで切ってしまうとか、そういう意味での目標値ではなくて、政策、制度のよしあしを判断するためには、やはり一定の物差しが必要ではないかということで申し上げました。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 としますと、そういう人数を切るということをしないで、実際はこれだけ合格者が出ましたというのを年々積み重ねていって、それが正しい制度であったのかということを検証していくというやり方もあるということを伺えて、よかったと思っております。

 次に、広域の連合法科大学院の設立ということについてお尋ねいたしたいと思います。

 宮下先生がおっしゃっていたように、確かに、地方に住んでいて、地方に法科大学院がないと都会に出なければいけない、せっかく優秀なのに法曹になれないということは大変大きな問題だと思っております。

 そのために広域の連合をつくっていく、ネットワークを組んでいくというような御示唆だと思っているんですけれども、先生が考えるそのネットワーク、広域連合法科大学院というのは、例えば地域ごと、北海道なら北海道、東北なら東北、関東とかに一つぐらいずつネットワークをつくっていく形式なのか、それとも、一つの大学でできるならばできて、ほかに、それほど人数が集まらないような大学が集まっていく連合を意識しているのかということをお尋ねしたいと思います。

 また、その点に対して宮脇先生にも、どのような形態の広域連合の法科大学院をイメージされているのかというのをお尋ねしたいです。

宮下参考人 お答えいたします。

 今二つの選択肢をお示しいただいたわけでございますが、決して、ひとり立ちしていって大丈夫なところ以外の大学院というような、寄せ集めというようなことではございません。もちろん地域ブロックというのも一つの有力な考えではございますけれども、なかなかそういった、地域の中でも需要が先細っている状況の中でどういうような連携が組めるかというのは、どこの法科大学院もなかなか厳しい状況に置かれているということも確かだと思います。

 そういう中で、それぞれいろいろな課題を抱える法科大学院同士が問題意識を共有しながらやっていく。地域ブロックと申しましても、例えば東北地方で各県地域ブロックといっても、やはり移動にはかなりの時間を要します。もちろん、かからないところもあれば、かかるところもある。そういうかからないところ、かかるところ、いろいろなところがある中で、やはり一種の遠隔的なものはやらなきゃいけないという中で、そういう遠隔の中で、単に授業を発信するとか受けるとか、そういうことじゃなくて、一緒に授業をつくりながらやっていくというのは今の技術水準からは決して不可能なことではありませんので、そういった、いろいろな状況の中で、少し遠隔に離れているところでも、とりあえずそういった課題、状況認識、抱えているところをきちんと共有しながらネットワークを組んでいくということも一つの選択肢としてはあり得るだろう。

 ですから、どちらかということではないんですけれども、差し当たり、いろいろな選択肢がある中で今のところ私どもが考えているのは、少し離れたところでもいいのではないか、そういうところでネットワークを組んでいくというのも一つの方法ではないか、そういうふうに考えております。

宮脇参考人 お答えします。

 制度設計においては、やはり高裁、高等裁判所、ここの所在地等の核をつくっていくということがまずあるのではないか。そこを核として、必要に応じてネットワークを組んでいくということから始めて、それによって成果というものを見きわめていくということがまずあるのではないかというふうに私は思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 最後になるんですけれども、法学未修者が原則三年で、法学を勉強している人が二年の法科大学院の制度というものが根本的にちょっとおかしいんじゃないかと実は私は思っております。

 先ほど和田照子先生が、やはりいろいろなところから新しい人材をとるためには未修者にも法科大学院に入ってもらって法曹になってもらうのが大事だというふうにおっしゃってはいたんですけれども、大学で法律を勉強していない人にここで一年勉強してもらって、大学でちゃんとしっかり勉強した人と同じレベルに立つということ自体がそもそもおかしいんじゃないかという根本的なイメージを私は持っているんですけれども、和田参考人さんは、その点はどのように考えますか。最後にお尋ねいたします。

和田(照)参考人 司法試験の合格に必要な勉強期間が本当に三年で十分なのかどうかということは、特に未修者の方については、今現状、合格率が低いということで、それでは、少なくとも、三年間の期間が短いのか、あるいは、その三年間のロースクールでの教育内容がまだまだ足りない部分があるのかということは、きちんと検証する必要があるのではないかなというふうに考えております。やはり、法学部卒業生、四年間法学部で勉強してきたものを、本当に一年間でキャッチアップできるのか、そこについてはきちんと検討していただく必要があるのではないかなというふうに考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 私が法曹制度の変更ということで一番思うのは、受験生がいかに振り回されないかというところだと思っておりますので、いろいろな意見というのはあると思うんですけれども、その点というのが一番大事ではないかと、私の意見を最後に述べさせていただきます。

 きょうは本当にありがとうございました。

江崎委員長 次に、椎名毅委員。

椎名委員 結いの党の椎名毅でございます。

 本日、四名の参考人の先生方、本当に御多用の中こちらの委員会に出席いただきましたことを、まずもって御礼申し上げたいというふうに思います。

 私自身も法曹有資格者でございますけれども、自分も当事者として、この法科大学院及び法曹養成制度について非常に危機感を持って、問題を感じて取り組んでおるところでございます。

 私自身が、平成十三年以降に行われたこの法曹養成制度改革の中で幾つか大きな課題があると思っていて、そのうちの、私自身が今ぱっと思いついた限り、七つぐらい課題があったかなというふうに思っています。

 ちょっと申しますと、まず第一に、大学法学部を存置しつつ米国型ロースクール制度を取り入れようとした結果、制度に矛盾が起きていること。ちなみに、韓国は、米国型ロースクール制度を採用するに当たって、大学の法学部を廃止しています。

 第二に、日本における法曹隣接職、すなわち、司法書士、行政書士、税理士、社労士、弁理士、こういった法曹隣接職の充実を考えずに、法曹人口増加及び安易な職域拡大、これを訴えたこと。

 さらに第三、結構高レベルの法学部が存在していることによって充実した無資格の在野法曹が企業内に存在しているにもかかわらず、その存在を無視して、夢のような職域拡大を訴えたこと。

 第四に、この法曹養成制度の隠れた裏テーマですけれども、予備校からの大学の復権というテーマがあり、予備校による受験指導を否定し、法科大学院における受験指導を否定したこと。

 第五に、法科大学院と司法修習の役割分担を失敗したこと。

 第六に、予備試験という制度を残した結果、これをエリートコースとして使う余地を残したこと。

 第七に、修習生の給与を否定し、法曹になるためのインセンティブを失わせていること。

 大体このぐらいがあるかなというふうに思っております。

 その中で、まず、予備校の問題について伺いたいんです。

 まず、和田照子先生に伺いたいんですが、和田照子先生は米国ロースクールに行かれていたということで、LLMをとって、それでニューヨーク・バーを取っているということですけれども、御自分の御体験から伺いたいんですけれども、まず、ニューヨーク・バーを受けるときにバーブリを受けたかどうか。そして、米国型ロースクールにおける、JDの同級生たちが予備校というものに対してどう考えていたか。そして、米国型ロースクールが予備校というものに対して、予備校というものと受験指導というものに対する存在、そちらについてどう考えているか。

 和田吉弘先生に、予備校と受験指導という観点から、私の今申し上げた七つほどの問題点を踏まえた上で、現在の法科大学院の問題点について教えていただければと思います。

和田(照)参考人 まず、私自身の経験を申し上げさせていただきますと、私自身はバーブリを受けました。LLMの課程は一年間しかないものですから、その一年間、私は、自分が専門として勉強したい、独禁、反トラストですとかタックスですとか、そういうものに勉学を集中したかったものですから、司法試験科目につきましては基本的に一年間のLLMのコースでは一切とりませんでしたので、司法試験科目を勉強したのは正直申し上げましてバーブリの期間だけでございます。

 ですので、私のような外国人留学生でLLMのコースにいる学生にとっては、バーブリがなければ恐らく司法試験の合格はできないというのが現実だと思います。

 それから、JDの学生でございますけれども、三年間、LLMの学生に比べますと非常にみっちりとメモ書きから含めまして学習しておりますので、彼らは、その三年間のJDの期間中は恐らくJDの学習で手いっぱいで、予備校等には通っていないという印象を持っております。そのかわりに、バーブリはやはりJDの学生も受けておりまして、LLMの学生、JDの学生が一緒の教室で受験勉強をいたしておりました。

和田(吉)参考人 予備校との関係で、特に現在の法科大学院の問題点というお話だったんですけれども、私は、司法研修所を出まして、まず大学の法学部に勤務しました。そのときにまず感じたのが、その大学だけではないですけれども、大学の多くの教員というのは、大学別の司法試験合格者数という司法試験の結果を非常に気にする。これは大学のランクが決まるからということなんですけれども、それなのに、なぜ司法試験に合格できる力がつく方向での授業をしないのかというのを非常に疑問に思ったんですね。

 大学の教員にありがちなわけですけれども、授業については力を入れない、自分は研究者であると。先ほど申し上げたように、その研究者の意識で授業を行うものですから、学生の方はよくわからない。国家試験、司法試験とか公務員試験を受けたいという学生は、そういう試験は、民法なら民法全範囲にわたって試験が出題されるものですから、結局、学校で勉強しただけでは受からない。それで、自分で勉強する、あるいは予備校へ行って勉強するということになったと思います。

 だから、その意味では、私は、旧司法試験の時代ですけれども、学生を法学部の授業から予備校に追いやったのは大学の方ではないかというふうにさえ感じています。

 法科大学院制度をつくるということで、原則としてそこを修了しないと司法試験を受けられないというふうにしたわけですけれども、その背後にはやはり予備校敵視というものがあったと思います。

 私は、なぜ多くの学者が司法試験の予備校をいわばアプリオリに敵視するのかというのもずっと疑問に思っていました。今申し上げたように、法曹を目指す学生としては、やはりその関門である司法試験に受かる力をつけたい、そういうような授業を大学でやってくれないから予備校に通っただけであって、大学の授業でそのような学生も満足させる授業をしないで予備校を悪く言うというのは、私は虫がよ過ぎるんじゃないかというふうに思いました。

 ですから、私は、法科大学院の問題点というのは、受験指導というのを敵視するのではなくて、受験指導はもちろんのこと、それをはるかに超えるいい教育をするというふれ込みだった、その中にはやはり司法試験に合格させる力もつけさせるというのが含まれていたと見るべきだと思います。それが今できていない、これは非常に残念で、予備校を卑下して、予備校化してはならないと言うような人もいますけれども、私からすれば、今の法科大学院の多くは予備校にさえ及ばない状態だというふうに認識しています。それが最大の問題点だと思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 和田照子先生に非常に貴重なお話をいただきましたけれども、JDの学生でも、終わった後、ロースクールを卒業した後、必ずバーブリに行くんですよね。だから、予備校というか、受験指導は必ず必要なんですよね。それを否定したことに現在の法科大学院の問題点が結構大きい部分としてあると僕は思っています。

 次に、大学法学部との関係及び大学法学部を卒業することによる、例えば、企業内における在野法曹、充実した在野法曹だったり、法曹隣接職だったりという人たちが世の中にはたくさんいるわけですけれども、そういった関係から、法科大学院と法学部の関係について、宮下先生と宮脇先生に御意見をいただければというふうに思います。

宮下参考人 お答えいたします。

 大学法学部と法科大学院の関係ということでございますが、私も学部で授業した経験もございますけれども、必ずしも学部の授業レベルが、決して低いということではないんですけれども、やはり、法科大学院の教育というものを、実は法科大学院で教育をした経験を持った教員が法学部に還元しているという部分も、最近ではかなりの部分、大きい部分があると思うんですね。法学部のレベルが上がっているというところなんかもそこに結びついてくるのであろうと思うんです。

 一方で、企業法務の中で、実際に、今おっしゃったような、無資格の在野法曹という表現でしたけれども、そういった方もたくさんいらっしゃる。そういう方々と実は法科大学院というのは一種の接点になって、企業でエクスターンシップをするとか、そういうことを実質的にかなりやっているやりとりの中で、そういう企業法務の方々の意見等も吸収しながら法科大学院の中の教育にも生かしている、そしてそれをさらに学部教育に還元している、こういう三角形みたいな関係もございますので、どこも、そういう埋もれていた才能というのを掘り出す役割というのは、法科大学院というのは一定の部分、果たしている部分というのもあるかと思います。

宮脇参考人 お答えいたします。

 法学部につきましては、先生御承知のように、基礎法以外にも政治講座ですとか幅広い分野を抱えております。その中で、基礎法的なところにつきましては学部教育においてきちっと基礎をつくってあげるということが重要であり、法科大学院への入り口として学部教育を充実させていくことが必要であり、その取り組みというのが、不完全ではある中でも、今少しずつなされているというふうには私は思います。

 ただ、問題なのは、先ほど来御指摘がありますように、どうしても、私も法学研究科ですけれども、研究科と専門職大学院との教育の線引きというのでしょうか、こういったものが十分に教える側の方でできているかというと、そこにある程度疑問があるというところは実感として持っております。したがって、そういった点が法学部教育にも一定の影響を与えているということは申し上げざるを得ないのかもしれません。

 以上でございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 大学の法学部に対しても非常に肯定的な評価をお二人ともされていらっしゃるのかなというふうには思いましたが、制度設計として、あり方としては恐らく二つしかないんだと僕は思っています。

 米国型ロースクールのように、法科大学院が全ての法律教育をギルドのように独占するというやり方、その結果として、日本でいうと医大のような形で、要するに、法律実務家になりたい人たちをそこで絞り込むというあり方と、そうではなくて、大学の法学部を存置したまま、法科大学院を廃止して旧司法試験と同じにするという形、恐らく制度としてはこの二つしかないんだというふうに思っています。

 法学部が存在していることによって、無資格の在野法曹と私自身は申し上げましたけれども、先ほど和田吉弘先生がおっしゃっていた大手法律事務所に僕はいましたけれども、クライアントに出てくる大手の一流企業の法務部の人たちは、無資格ですけれどもめちゃめちゃ優秀なんですよ。我々が一年生、二年生のころは、正直、むしろ教わるぐらいなんです。すごく優秀なんですよ。彼らが世の中にいるんですね。

 そうだとすると、企業内における法律実務家ニーズというのは、もう彼らがいる以上すごく少ないんですよ、現実的には。だからこそ、法学部を存置しておくとその状況は変わらないんだと僕は思っていて、そうである限り、要するに、無責任な職域拡大と僕は申し上げましたけれども、企業内における法曹実務家の職域拡大というのは、結構夢だと思うんですね。なかなかそんなことはないと思います。

 米国では、確かに、一流企業の法務部のゼネラルカウンセルという人たちはほとんど法曹有資格者です。それはなぜなら、法科大学院において法曹実務家の養成を独占しているからです。

 そういうことなんだというふうに思いますけれども、今現状、こうやって企業法務に非常に優秀な無資格の方々がいる中で、それでも企業の中でこれから法曹実務家のニーズがふえていくのかというところについて、和田照子先生と宮脇先生にそれぞれ伺いたいというふうに思います。

和田(照)参考人 企業の法務で働く皆様が非常に法律的な能力を高く備えておられるということは、実際に私も日々、経団連で企業の法務の方と一緒に議論させていただく中で、いつも教えを請う立場でございますので、それは常日ごろ感じておるところでございます。

 そういう企業の法務の方々にお伺いいたしますと、まず、企業の法務に法務マンとして、法務部で働く人間として、働く人材を引き続きこれからもふやしていきたいというニーズは確実にございます。

 ただ、それを法曹有資格者が担うのか、あるいはそれ以外の方が担うのかというのが、まさに先生が提起された論点であるかというふうに考えておりますが、現状、法学部出身者を採用することが難しくなってきているというふうに法務部の方から伺っております。法学部の中で優秀な方はやはりロースクールに進学される方が多いので、そうすると、法学部を出てすぐ、二十二歳、二十三歳で企業に入って法務部でたたき上げていくということは難しい状況にあるというふうに伺っております。

 そこで、企業の方々が今何をしているかというと、修習を終えた方で、即企業に入っていただいて、新人、若手弁護士として企業の中で育っていただくという選択肢、あるいは、司法試験を合格していないけれども、ロースクールを修了して、一定程度の能力があるというふうなことが確認をされたので、そういう方を採用するということで、だんだん分かれてきております。

 ですので、企業の方で資格者であった方がよいと考えるのか、あるいは、ロースクール修了生で十分企業の法務を担っていただいて、企業の中で専門性を高めていただけると思うのであれば、そういう方にも行くかと思いますので、イコール弁護士資格の方がふえるとは思いませんが、法曹資格につながる、そういう専門性を備えた方のニーズというのは引き続き続いていくというのが経営法友会のアンケートからも出ております。

宮脇参考人 お答えいたします。

 大企業、あるいは地方自治体でいいますと東京都といったような大規模な組織におきましては、先生が御指摘くださっているとおりであろうかと思います。

 しかし、地方におけます中小企業あるいは金融機関、こういったところも、例えば北海道におきましても、ダイレクトにベトナムですとかミャンマーとか、そういうところに出ていく。そうなりますと、どうしても法的な知識を持っている方々が非常に不足をしているということが現実でございます。

 ただ、同じような御説明になりますけれども、それがダイレクトに弁護士資格、法曹資格をお持ちの方の需要に結びつくのか、そうではないのか、表現として、法曹の増加にそれがどれだけ寄与するのかというところにつきましては、これは、正直言いまして、未知数のところが現実問題としてはあるのではないかというふうに思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 そうなんです。おっしゃるとおり、専門家が必要だとか法律をわかっている人が必要だという言葉を使うんですけれども、法曹実務家が必要か、ここで言っている法曹というのは三者という意味ですけれども、というか弁護士という意味ですけれども、が必要かというと、そこはお茶を濁すんです。

 なぜなら、アメリカでもそうですけれども、アメリカは、法廷弁護士になる人はバーに受かった人の一割です。パテントローヤー、タックスローヤー、それからイミグレローヤー、こういうローヤーがいるんです。イミグレローヤーというのははっきり言って行政書士です。パテントローヤーというのは弁理士です。タックスローヤーというのは税理士です。こういうまさに法曹隣接職で法律の専門家みたいな人たちが日本にはいるわけですね。そういう資格者がいる中で、要するに、法曹人口、三者という意味ですけれども、それを合格者三千人と言ったことにすごく無責任さがあると僕は思っているんです。

 企業内でのニーズ、例えば、労働をやりたい人、社労士、税理士、それから弁理士、こういった人たちもニーズがあるんじゃないかと思うんですけれども、そう考えたときに、やはり弁護士のニーズというのは余りない、余りないというのは言い過ぎだと思いますけれども、そんなに大きくはならないんじゃないかと思うんですけれども、引き続きお二人にぜひ、ほかの隣接職のニーズというところも踏まえて、御意見をさらにいただけるとありがたいなと思います。

和田(照)参考人 ありがとうございます。

 まさに法律隣接職との関係につきましては非常に重要な問題提起であるというふうに考えておりまして、例えば今、税理士の例を先生はお挙げになられましたけれども、確かに税理士の方のニーズも、今実際、税理士の方はたくさんおられますけれども、税務訴訟をすることができる方となると、税理士さんで十分なのか、あるいは、税法をきちんと、実務を積まれた法律家、弁護士の方の方がよいのかということは議論があるかと思います。

 実際、税務訴訟がふえている中で、税務訴訟を担えるような税務の専門の弁護士さんのニーズはやはり引き続きあると思いますし、弁理士さんにつきましても、弁理士さんに加えて、特許訴訟、著作権に関する訴訟を担うことができる弁護士というニーズはあると思いますので、やはり弁護士の方がそれぞれ専門性を特化していただいて、ゼネラルだけを目指すのではなくて、ゼネラルな何でもできる弁護士さんも各地域の現場では必要かもしれませんが、加えて、そういう専門性に特化した弁護士さんというものを、それぞれ自分で道を切り開いていただいてつくっていただくということは、企業の方からのニーズは強くございます。

宮脇参考人 法曹の需要が拡大するかどうかは不透明であると申し上げましたのは、一方では、その可能性があるということを含意しているわけでございまして、今お話がありましたけれども、弁護士が弁護士という既存の領域にとどまるのであれば、それは原則として非常に限界的なものが生じてくるかもしれません。しかし、専門領域、あるいは企業経営ですとか地方自治体全体の運営といったようなところにウイングを広げていくことによって、弁護士としての業務、こういったものが新たに開拓されていく可能性というのは私はあると思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 時間も来たので終わりますけれども、非常に大事な問題提起を先生方からいただいたというふうに思っております。

 本当に法曹養成制度はいろいろな形で中途半端な改革になったんだと僕は思っていて、はっきり言って失敗だったと思っています。現実を踏まえながらも、しかし改革を見直していかないと、これからの司法というものに対して物すごく問題があるというふうに私自身は思っております。引き続きいろいろな形で私も取り組んでまいりたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

江崎委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の先生方には、大変御多忙の中をわざわざ当委員会にお出ましいただき、貴重な御意見、ありがとうございました。これからもぜひ御助言や御指導をお願い申し上げます。

 どうぞ御退席ください。(拍手)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

江崎委員長 速記を起こしてください。

     ――――◇―――――

江崎委員長 次に、内閣提出、司法試験法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。谷垣禎一法務大臣。

    ―――――――――――――

 司法試験法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 司法試験法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、法科大学院における教育と司法試験との有機的連携を図る等の観点から、司法試験の短答式による筆記試験の試験科目の適正化を図るとともに、司法試験の受験期間内に受けることができる司法試験の回数についての制限を廃止するため、司法試験法の一部を改正しようとするものでありまして、以下、その要点を申し上げます。

 第一に、司法試験の短答式による筆記試験の試験科目につき、公法系、民事系及び刑事系に属する七分野の科目としていたものを、憲法、民法及び刑法の三科目とすることとしております。

 第二に、司法試験の受験回数につき、法科大学院修了または司法試験予備試験合格後五年間の受験期間内に受けることができる司法試験の回数についての制限を廃止することとしております。

 このほか、施行期日について規定するとともに、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。(拍手)

江崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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