衆議院

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第17号 平成26年5月16日(金曜日)

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平成二十六年五月十六日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大見  正君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    末吉 光徳君

      田所 嘉徳君    武部  新君

      鳩山 邦夫君    平口  洋君

      三ッ林裕巳君    宮崎 政久君

      宮澤 博行君    郡  和子君

      横路 孝弘君    高橋 みほ君

      大口 善徳君    椎名  毅君

      鈴木 貴子君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   文部科学副大臣      西川 京子君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   政府参考人

   (内閣官房法曹養成制度改革推進室長)       大塲亮太郎君

   政府参考人

   (総務省大臣官房地域力創造審議官)        関  博之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    齊藤 雄彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大西 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  宮川  晃君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房建設流通政策審議官)     吉田 光市君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     武部  新君

  黄川田仁志君     田所 嘉徳君

  橋本  岳君     宮崎 政久君

同日

 辞任         補欠選任

  田所 嘉徳君     黄川田仁志君

  武部  新君     門  博文君

  宮崎 政久君     橋本  岳君

    ―――――――――――――

五月十五日

 子供の性的搾取・虐待状況の深刻化の中で児童買春・児童ポルノ禁止改正法案の審議と成立を求めることに関する請願(平沢勝栄君紹介)(第八三八号)

 同(古屋範子君紹介)(第九二八号)

 選択的夫婦別姓の導入など民法の改正を求めることに関する請願(辻元清美君紹介)(第八六八号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(玉城デニー君紹介)(第九一五号)

 同(古屋範子君紹介)(第九二六号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(玉城デニー君紹介)(第九一六号)

 同(古屋範子君紹介)(第九二七号)

 裁判員法の廃止または改正に関する請願(西村眞悟君紹介)(第九二一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 少年院法案(内閣提出第三八号)

 少年鑑別所法案(内閣提出第三九号)

 少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四〇号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房法曹養成制度改革推進室長大塲亮太郎君、総務省大臣官房地域力創造審議官関博之君、法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省保護局長齊藤雄彦君、厚生労働省大臣官房審議官大西康之君、厚生労働省大臣官房審議官鈴木俊彦君、厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長宮川晃君及び国土交通省大臣官房建設流通政策審議官吉田光市君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黄川田仁志委員。

黄川田(仁)委員 貴重な質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。自由民主党の黄川田仁志でございます。

 本日は、日本の家族のあり方の検討について質問をしたいと思います。

 日本が抱える社会問題を見ておりますと、家族のあり方に問題の本質がある場合が多いように思います。例えば、複雑な家族状況から生活保護受給者が増大している問題、頼れる親族がいないことから幼児虐待に走ってしまうお父さん、お母さんの問題、最近、NHKで取り上げられましたが、若年女性の貧困問題など、これらはほんの一例ですが、さまざまな社会問題を考えますと、私は、現在の家族のあり方、特に親子の関係に問題があると思いますが、そのあたり、大臣はどのような御認識をお持ちでしょうか。

谷垣国務大臣 家族のあり方、親子のあり方、どういうふうに現状を見、どういう方向が望ましいと簡単にはなかなか言いにくいんですけれども、どういう方向を目指していくべきなのか。なかなか難しいですよね。特に、私は法務大臣になりまして、犯罪等々と向き合わなければならないわけですが、そういう犯罪を見ておりますと、今委員のおっしゃったような家庭のあり方、家族のあり方、そういうものは犯罪や非行にも大きく影響しているなということをつくづく感ずるわけでございます。確かに、少子高齢化等々、そういうことにも伴って家族形態の変化はあるんだろうなと思いますね。

 それからもう一つ、いろいろな方と議論しておりまして、では、家族というのをどういうふうに見るのかというのも、自分がどういう家庭生活や親子関係を経験してきたかということによっても、かなりそれぞれお考えになることが違うんだろうと思います。ただ、そういう中で、先ほどのような犯罪と直面して、いろいろ家族に問題もあるなというようなことを感じますと、家族関係、親子関係、家庭がやはりしっかりしているということが健全な社会をつくっていく上で極めて大事だし、やはり社会の基盤になっているんだろうと思います。

 ちょっと法務委員会の御答弁として適切かどうかわかりませんが、私が当選した当時は、私は昭和五十八年に初当選したわけですが、当時はもう大平総理は亡くなっておりました。しかし、大平総理のもとに、大平先生が非常に幅広く研究会をされまして、その報告書が出ておりました。その中に、今お話がありました、田園都市構想であるとか環太平洋構想でありますとかいろいろございましたけれども、そのうちの一つに家庭基盤の充実というのがございまして、私ども当選したばかりの議員は、今申し上げたようなそういう報告書を一つのテキストとして勉強いたしました。

 私は、現在でも、その後の家族関係の変化、社会の変化に伴いまして、家庭基盤の充実というようなことを一つ念頭に置きながら議論を進めていくことが極めて大事なのではないか、当選したころを思い出しますと、そういう重要性は今も変わりない、それよりもさらに重要性が増しているかもしれない、こんなふうに思っております。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 私も、大臣、全く同意でございまして、家庭基盤、これがしっかりしていれば、いろいろな今の社会の問題というものが、お互いの親子関係や家庭関係の助け合いの中から大分救われるのだと思います。

 そこで、この家族のあり方に法務委員会の場合、大きくかかわってくるのが、民法の家族法であると思います。これまでの経緯、家族法の関係、お配りしている資料をごらんいただきたいと思いますが、法務省相続法制検討ワーキングチームの資料でありますが、これまでの家族法の改正の経緯がまとめられているものであります。

 日本国憲法の制定に伴い、昭和二十一年の臨時法制調査会で民法の改正審議が行われております。しかし、当時は十分な議論の時間がなく、多くの条文が明治三十一年制定の民法規定をそのまま継承しております。

 昭和二十二年の改正当時、衆議院司法委員会で、本法は可及的速やかに将来においてさらに改正する必要があるとの附帯決議がついておりますが、その後、現在に至るまで家族法の大改正は行われておりません。これまでは、従来の解釈では問題があるもの、特定の分野に限定されたもの、判決や、関連法の改正を伴う改正のみが行われたことが資料からもわかると思います。

 戦後以降、家族法を本格的に見直すことができず現状に至っていることについて、法務省はどのようにお考えでしょうか。

深山政府参考人 今、議員が御指摘になったとおり、昭和二十二年の民法の親族編と相続編の全面改正の際には、当時の衆議院司法委員会において、将来においてさらに改正する必要があることを認める旨の附帯決議がされているところでございます。

 今お示しになった資料にもありますけれども、幾つかの改正はこの間されておりますが、典型的なものとしては、昭和五十五年の配偶者の法定相続分の引き上げや寄与分制度の新設等を内容とする相続法分野の改正、また、昭和六十二年の特別養子縁組制度の新設等の親族法分野の改正というものはありますけれども、今御指摘のあったような家族法の全面的な見直しには至っておりません。

 もっとも、平成三年から、法制審議会で婚姻及び離婚制度全般についての見直しのための審議、これはややテーマの大きいものでございますが、この審議が開始されて、平成八年には、民法の一部を改正する法律案要綱が法務大臣に答申されてはおります。ただ、この答申に基づいて、平成八年と平成二十二年に法案を準備いたしましたけれども、いずれも、政府部内においてさまざまな意見があったことから、国会に法案提出に至っていないという経緯がございます。

 家族法制のあり方というのは、社会のあり方や国民の生活に極めて大きな影響を及ぼすものでございますので、国民の御理解を得ながら法改正を進めていくことが必要だろうと思います。

 委員の御指摘のとおり、現在の家族関係の大きな変化を踏まえると、家族法制の全面的な見直しが必要なのではないかという問題意識は我々もよく理解できるつもりなんですけれども、今ちょっと御紹介した平成八年の法制審議会の答申の内容についても、なかなか国民的なコンセンサスが得られないで現在まで至っているということを考えますと、この時点で家族法の全面的な見直しを現実に行うというのは、なかなかハードルが高いというふうに正直言って思っているところでございます。

黄川田(仁)委員 難しいとは思いますが、もう少し積極的な意見が聞きたかったと思っております。

 私が危惧しているのは、家族法について、近年、裁判所の判決や決定に伴って条文の改正が行われているということであります。本来ならば立法府であります国会がその中心になるべきでありますが、裁判所の判決や決定で家族のあり方を間接的に規定しているということで、これはよろしくないのではないかと思っております。

 多様化した日本の家族の現状に鑑みて、立法府である国会の議決により民法改正が行われ、新しい家族法が判決の根拠となるべきであると思いますが、いかがでしょうか。

深山政府参考人 御指摘のとおり、昨年、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の二分の一とする旨の規定が違憲であるという最高裁の判断が出まして、これを受けて、十二月五日には民法の一部改正法律が成立したところでございますし、その後も、最高裁判所においては、それ自体が直ちに民法の改正につながるものではございませんけれども、性同一性障害者の性別の取扱いの特例法に基づいて性別変更した女性から生まれた子供の親子関係という問題、あるいは父親が子との間の血縁関係がないことを知りながら認知をした場合でも認知無効を主張できるかといった問題について、非常に重要な判断をしているところでございます。

 もっとも、最高裁は違憲立法審査権を持っていることから、その法律が憲法に適合するかということについて判断を示したり、あるいは、立法的手当てがされていないので現行法の解釈が分かれちゃっている問題について司法権の行使としてその点に判断を下したりするということは職責であるという面ももちろんございます。

 ただ、基本的には、委員も御指摘のとおりですけれども、家族や相続に関する法制度をどうするかは立法府の裁量に委ねられている事項でございますので、家族法制のあり方については、立法府の政策的判断が主導であってしかるべきだろうと思っております。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 そこで、私は、家族法の改正を立法府において積極的に考えるべきだというふうに思っておりますが、その家族法の改正を考えるに当たって、法務省の基本スタンスを確認したいと思います。

 法律には、国民の意識を反映したものであるべきという反映論と、国民の意識を導くものであるべきという先導論がございます。家族法は国民の生活に大きくかかわることであります。理想だけを追求すれば国民生活と大きく乖離してしまうことになりかねませんし、現実だけを捉えれば国家としての倫理的家族観を失いかねません。よって、先ほど申されたように、家族法こそ国民的議論が必要であり、バランス感覚が問われると思います。

 このことについて、法務省の見解を教えていただきたいと思います。副大臣にお願いいたします。

奥野副大臣 家族というものの考え方については、私は、先ほど大臣が答弁されたことが非常に肝であると思います。

 そして、家族にかかわるいろいろな法改正については、これはさっき事務方と、言ってもいいかと言ってきたんですが、私は、最高裁判所がこういう判断を下したからそのとおり法をつくらなくてはいけないということではなくて、あなたがおっしゃるように、国会でもっと真っ当な議論をして、真っ当と言ったら言い方は悪いかもしれぬ、自由な議論をして、本当にそれで正しい方向だったのかどうかということをちゃんと詰める議論をするべきだったな、こう思う次第であります。

 それはそれとして、家族というのは、実は、私の父はうるさいものですから、子供たちは俺と一緒に住めというふうにして、親、子、孫が一緒の建物の中に住んでいるんですが、そして、なおかつ、一カ月に一度は一緒に食事をしようといって外へ御飯を食べに行く、そういうような指導をされてきたものですから、私は、割に家族については私の父の考え方は合っているな、こう思いつつ、現在の状況を考えてみると、やはりちょっと、先ほど来言葉が出ていますけれども、社会あるいはコミュニティーの最小単位である家族というものが、もっと団結力を持って、そして日本の将来を支えていく人間の成長にしっかりとした基礎的な道徳や規範意識を植えつけられるように家族というものを考えていかなくてはいけないんじゃないのかなというふうに個人的には考えております。

 ただ、日本も、先ほど、田園都市構想という大平総理の言われた話がありました。それより前には、田中総理が日本列島改造論というのを打ち上げられました。田中さんの方は、ハードの問題だろうと思います。それから、大平さんの方は、ソフトの問題だったろうと思います。

 両方とも私は合っているなという気がしていて、それを今阻んでいるのは何だといったら、やはり人口が東京へ一極集中してしまった、あるいは、地方でも県都にどんどん人が集まり過ぎてしまった、その結果として家族が一緒に住めないような環境ができてしまった。例えば、土地が高いというようなこともあるわけであります。

 そんな日本になってしまっている中で、これからさらに一層、大都会における社会インフラといいましょうか、病院だとか、あるいは介護士、そういったものもどんどん減って、足らなくなってくると思います。そういうようなことを考えると、やはり家族が住みやすい社会環境をつくり上げていくというのが、これからの政治課題ではないかなと私は思っているんです。

 そうした中で、やはり精神的な、人間の精神構造をしっかりつくり上げていくということの根幹を家族ででき上がるような形を、これからも法的な側面では国会がしっかりサポートしていかなくてはいけないのではないのかなというようなことを考えております。

 ちょっと時間が短いですから余り長くしゃべったら悪いんですが、そんなことを考えているのが私の家族論であります。

黄川田(仁)委員 副大臣ありがとうございます。大変勇気づけられる、私たち政治家、そして立法府が本当に積極的にこの家族に関するあり方を考えていかなければならないということであります。ありがとうございます。

 そこで、法務省においてもいろいろと議論がされていると思います、家族について。では、法務省所管の法務にかかわる基本的な事項の調査審議を行って法務大臣に対して答申を行う重要な機関であります法制審議会について、お伺いしたいと思います。

 法制審議会での家族のあり方にかかわる代表的な審議内容を教えていただきたいのと、また、現在設置されています生殖医療関連親子法制部会の現状の議論を教えていただきたいと思います。

深山政府参考人 法制審議会における家族のあり方に関する代表的な審議内容を申し上げますと、一つは、先ほどちょっと答弁を申し上げました、平成三年から八年までの間、婚姻及び離婚制度の全般的な見直しについて審議をした法制審議会の議論が一つございます。それからもう一つ、よりこちらに近接している方ですが、平成十三年から審議が開始されまして、平成十五年に中間試案を公表した、御指摘の法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会での審議がございます。

 この生殖補助医療関連親子法制部会、これは平成十五年の中間試案を出して以降、現在までいわば休止状態で、存続はしているんですけれども、議論はそこで一旦とまった状態になっております。この部会では、生殖補助医療によって生まれた子供の民法上の親子関係を規律するための法整備を検討課題として審議をしておりまして、専ら生殖補助医療に関連する親子法制のあり方についての議論がされ、それが現在も、中断した形ではありますけれども、部会として残っている、こういうことでございます。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 これまで婚姻、離婚に関すること、また、名前のごとく、生殖医療に関連する親子関係について話し合われているということでございますが、やはり家族に関するいろいろな話があるものの、広く一般的なこれからの家族のあり方についての議論はなされていないということであると思います。

 それでは、現在、家族法に関して、また法務省に設置されております相続法制検討ワーキングチームではどんな議論がなされているのか、また、この中で広く一般的なこれからの家族のあり方について多少議論がなされているのかどうか、教えていただきたいと思います。

深山政府参考人 御指摘の相続法制検討ワーキングチームは、そもそも、先ほどもちょっと答弁の中で出ました、嫡出でない子の相続分に関する民法改正の検討過程におきまして、各方面から、この民法改正が及ぼす社会的影響に対する懸念が示されるとともに、配偶者の保護等の観点から、現在の相続法制を見直す必要があるのではないか、こういう問題提起がされたことを受けて法務省内に設置をして、現在検討の議論をしているところでございます。

 こういった経緯から、相続法制検討ワーキングチームでは、まず、家族法の分野のうちでも相続法制の見直しを対象とするものでございまして、具体的には、配偶者の居住権を保護するための措置、配偶者の貢献に応じた遺産の分割を実現するための措置、さらには遺留分制度の見直しといったテーマを中心とした検討を行っているところでございます。

 したがいまして、このワーキングチームにおきましては、これらのテーマに関連する限りでは、もちろん家族のあり方についても議論がされることはございますけれども、委員が指摘されたような、広く一般的な家族あるいは家族法制のあり方についての議論はされていないという面がございます。

黄川田(仁)委員 わかりました。

 冒頭でも述べましたとおり、私は、現在の日本が抱える社会問題の原因は、家族のあり方、親子のあり方が大きくかかわっていると確信しております。よって、家族法の条文ごとに改正を検討するという前に、日本における家族のあり方がどうあるべきかということに対して議論を尽くす必要があると思っております。

 自民党では、家族のきずなを守る検討委員会が設置され、家族のあり方についての議論が始まっております。議論する上で大切なことは、まずは現状をよく知ることであると思います。

 先日、ある研究会で、十代でいわゆるできちゃった婚をした三人の女性にお会いしました。彼女たちのうち二人は離婚しておりますが、二人とも養育費はもらっていないということでございます。支払いは命じられているんですが。理由は、元夫のDVなどから子供のために縁を切りたいということでありました。このような女性は現在の日本には多く存在しております。この事例はほんの一部であり、家族にかかわる問題は山積しております。

 法務省は、家族法を所管する役所として、日本の家族が今どのような現状にあるのか、厚生労働省などの関係省庁と連携し、日ごろから常に把握しなければならないと思います。情報収集の徹底をお願いいたします。

 昭和二十一年以降、なかなか本格的に取り組むことができなかった家族法の改正、今こそ一歩踏み出すべきであると私は思います。これからの日本の家族のあり方を議論することは、国会議員としての責務であると考えます。

 特に親子関係は、子供たちの生活に直結することであり、非常に重要であります。大人の都合によって子供たちが振り回されることがないよう、家族法を見直さなければなりません。DNA鑑定等、家族にかかわる科学技術が発達していることも考慮すべきであると思います。

 家族のあり方を考えること、家族法の改正について、現時点での法務大臣の見解を御教示お願い申し上げます。

谷垣国務大臣 今、黄川田さんが、何が起こっているか事実をよく知ることが大事だとおっしゃったのは、私はそのとおりだと思います。

 戦後の民法親族法の改正のときも、いろいろな議論はあったんですが、あのとき、例えば柳田国男というような方は、どうも事実をよく踏まえないで議論だけが先行しているんじゃないかということを非常に心配されまして、「婚姻の話」という本をお書きになりました。もちろん、どういう立場から事実を見るか、事実の見方も人さまざまでございますけれども。

 まして、今現在は、かつて想定もしなかったようないろいろな問題が起きているわけですね。例えば、生殖医療とかDNAのいろいろな技術が発達してきている。そこから生ずる親子関係の問題は一体何なんだろうかというようなことは、これは、よく話を聞くと、びっくりするようなことがある意味ではできるようになっている、そういう事実は何なのか。

 それから今、いわゆるできちゃった婚の十代のお母さんのお話を聞きましたが、国際的な問題も進んできておりますし、若い、そうやって子供ができちゃったというようなのもある。そういう中で、親子の面会交流はどうあるべきかとか、あるいは、今養育費の問題も言われましたね。そういったことの事実関係をやはり正確に把握しながら問題を整理していくということが大事なのかなと私は思います。

黄川田(仁)委員 この家族法制、明治、大正、昭和、平成と経て、時代とともに、社会状況、そして各技術の関係も大きく変わっている中で、私は、国会議員がとにかく見直しを進めて、裁判所の後追いでなく、私たちが日本の家族のあり方というものを真剣に考えて、しっかりと全面改正に向けて一歩を踏み出していきたいということを申し上げまして、質問を終了したいと思います。

 ありがとうございます。

江崎委員長 次に、宮崎政久委員。

宮崎(政)委員 おはようございます。自由民主党の宮崎政久です。

 きょうは、法務委員会で質問の機会をいただきましたこと、感謝を申し上げます。

 さて、先般、法改正も整いました法曹養成に関する件でございますが、きょうは、改めて、法曹養成に関する件、これは司法試験法の改正だけで終わるものではございませんので、長きにわたって続くものでありますので、この件について皆さんと確認をさせていただくことが一つ。それと、身近な話として、保護司さんの活動に関連する地方自治体の協力関係の件、この二つを取り上げまして、質疑をさせていただきたいと思っております。

 まず、法曹人口、法曹養成に関する件。

 自由民主党では、司法制度調査会のもと、四月の九日の日に緊急提言を取りまとめさせていただきました。私も事務局長を拝命いたしまして、お手伝いをさせていただきました。この提言は、四月の十五日の日に谷垣法務大臣のもとをお訪ねいたしまして、執行させていただいたところでございます。

 この緊急提言の根底にあるものは何であったのかということをまず御説明させていただきたいと思います。

 これは、社会から、法曹、司法、三権の一翼を担う司法を志願しようとする人がもういなくなってきているというような決定的な危機感であります。

 お手元に資料を配らせていただいております。表裏刷りでございます。「志願者数、入学定員及び実入学者数の推移」という方の紙をごらんいただければと思います。これは法科大学院の志願者数等を示しておるわけです。

 プロセスによる法曹養成ということを決めて、司法制度改革のもとでは、原則として、法科大学院を経由して法曹になっていくわけであります。では、この法科大学院に行こうという人、法曹を担おう、司法の場に立とうという人でありますから、こういう人がどれぐらいいるんだということを見てみますと、平成十六年に志願者数は七万二千八百人であったわけであります。それが、平成二十六年では一万一千四百五十人に減っている。入学者数が一番多かったのは平成十八年であります。この割合を見てみますと、一番多かった平成十六年を一〇〇としたときに、実に、平成二十六年は一五・七%の人しか志願していない。入学者数が一番多かった、五千七百八十四人であった平成十八年、これを一〇〇としたときであったとしても二八・四%。実に、入学者数が一番多かった年と比べてみても三割にも満たない、こういう状況なんですね。

 入学者数のことをよく語られるんですけれども、学校を統廃合していますから、学校がどんどん減っていますから、入学者数が減ることはいたし方ないことなんであります。社会から法曹の道に志願をしようという人がいなくなってしまっている。

 だから、私たちは、この緊急提言にも書いたんですけれども、社会に対して、特に法曹を目指す若者に対して、法曹人口、とりわけ司法試験の合格者数に限定してでも直ちにメッセージを発信するべきであると認識したので、さまざま党内で御意見が分かれるところでありましたけれども、御理解をいただいて、緊急提言を発することになりました。

 まず冒頭、今の法曹界を目指す若者の社会動向などについて大臣がどのような御認識でいらっしゃるのか、確認をさせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今、宮崎委員が自民党内で緊急提言をまとめたというお話をされまして、あなたが事務局長として議論をおまとめになるのは大変だったと思います。確かに、自民党の中にもいろいろなお考えの方がある。

 実は、法務省におりまして、この法曹養成制度の議論をしておりますと、議論が多様に分かれていて、スタンスがなかなか一つのところに集約してこない、だからなかなか議論が進まないという面があります。

 だけれども、いつまでも議論が進まない進まないと言っていると、先行きの見通しがなくなって、今、宮崎委員が心配された、優秀な人が、あそこはどっちの方へ行くかわからないからやめておこうというような流れをますます刺激してしまう。そろそろ、いろいろな意見の対立はあっても、粗ごなしに入っていかないといけない。そういう意味で、宮崎委員、非常に御苦労されたと思いますが、まず粗ごなしの作業、基礎作業をやっていただいたのかな、このように思っております。

 そこで、若年人口も減ってきますので、若くて優秀な人がどの分野に行くかというのは、これはそれぞれの分野で競争だろうと思います。しかし、私は、やはりプロの法律家というのは、法の支配を、隅々まで押し寄せていくためにこれはなくてはならない存在で、自分がそこで育ったこともありますが、やはり若い優秀な人があそこへ行って頑張ろうという気持ちを持ってもらうようなことでないと、どうしようもないなと思うんですね。

 今、大変厳しいときにあると思います。先ほどお示しいただいた数字にも如実にあらわれている。御一緒に力を合わせて、少しでも若い人が、よし、あそこへ行って頑張ろうと思うような形をつくりたいと思っております。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 要するに、司法、法曹という三権の一翼を担う業界が、なぜ若者たちから志願されなくなってきたのか、魅力がなくなってきたのか、これを考えていくと、やはり出口の問題というのが非常に重要なんです。弁護士さんが飯を食えなくなってきたから何とかせぬといかぬ、こういう矮小した問題じゃないんですね。司法の世界に努力をして入っていったことによって、どんな自分の人生のステージが待っているのか、こういうことをやはり我々は真剣に議論して、用意をしていかないといけないし、制度上、そういうものを担保していかないといけないと思うんです。

 私は、やはり政府が取り組みが足りなかった面があるんじゃないかと実は思っている。これが、今見ていただいた紙の裏側でございます。

 二回試験合格者の進路別人数が書かれております。平成六年から平成二十五年まで、見ていただきます。ちなみに、私は、平成七年、四十七期というところであります。

 このほぼ五、六百人の時代から、ずっと見ていただいて二千人の時代まで来ているわけですね。五百人から二千人といえば、四倍ぐらいになっている。

 その中で、裁判官にこの中から入っていく人の数、平成六年、百四人。ずっと下まで見ていってください。大体同じぐらいの年、百人を切る年もある。そして、平成二十五年の第六十六期では九十六人。

 検事の任官者数、平成六年で七十五人。大体これぐらいの数がずっと続いて、百人を超えた年もあるけれども、平成二十五年、六十六期では八十二人、ほぼ同じ数であります。

 二回試験の合格者、司法研修所を出る人が五、六百人から二千人になっているんです。それで裁判官と検事の数がふえていませんから、勢いあとは弁護士になるわけです。ほかの世界に行けと言われたって、法曹三者になりたいと思って司法試験を受けて、合格をして、司法研修所に入ってそこを出る人ですから、勢い弁護士の数だけがどんどん右肩上がりで上がっていく。

 弁護士の平成六年の登録者数は四百六名であったのに、平成二十五年では千二百八十六人。最も多いときであれば二千人を超えている年もあるんですね。こういうような状況なんです。

 司法制度改革をして、司法試験の合格者をふやしておきながら、法曹三者のうちで、裁判官、検察官の法曹公務員の新卒者の採用、これを十分にふやしていかなかったから、勢い弁護士だけがふえていく。

 よく定員の議論をしますけれども、定員の問題じゃないんですよ。もちろん定員の問題でもあるけれども、新卒者をどうするかという問題なんです、新卒者がふえているんですから。ここのところで、出口の問題として、定員そして新卒採用の問題で不十分な点があったんじゃないかと私は思っております。

 司法制度改革をしてから今日までの過去の問題として、大臣、いかにお考えであるか、御認識を聞きたいと思います。

谷垣国務大臣 確かに、今委員からいただいた資料を拝見しますと、研修所といいますか、二回試験を終えて法曹資格を取得した、弁護士の登録の数はふえているけれども、裁判官、検事はふえていない。確かに、毎年で見るとこうなんだなと。委員がそこのところを問題視されるのはよくわかります。しかし、これは弁明になるかもしれませんが、他方、やはり全体の定員管理、予算等々の問題がございます。

 そういう意味で、我々が直接仕事をしますときは、定員をどれだけ確保するかということで仕事をしていくわけですが、そういう中では、裁判所のことは私は言いにくいんですが、裁判所の方も、平成十三年に二千二百人だったところ、平成二十六年には二千九百二十一人。裁判所の予算を獲得する能力と言うとちょっと言葉は悪いかもしれませんが、御努力の中では、かなり御努力をされているなという感じは、私、率直に言って持ちます。

 それから、検察官の方も、これはまた私の方の責任になるわけですが、平成十三年に千三百七十五人、これが千八百三十五人まで来ているというのも、定員管理の中ではそれなりに歴代大臣も頑張ってこられた面もあるのかな、こんなふうに思いますが、今後も適切に、どうも、法律家をふやしていったけれども、裁判所と検察庁は小さいね、そこのアンバランスが妙に目立つねというようなことはやはりいかぬのではないか、努力が必要だと思います。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 大臣の御認識、理解できるところもあるんですが、私は、やはり工夫が足りなかったんじゃないかと思っています。

 この提言にも書いたんですけれども、例えば、裁判官、検察官、この法曹公務員、これはいわゆる法廷活動のようなところだけをやるわけではないんですね。他省庁に出向していただく、在外公館で勤務をしていただくというようなこともあるわけです。

 内閣法制局というところもあります。実は、この提言にも書いたんですけれども、この中で法曹有資格者の割合は一割もいないんですね、法制局の中で。こういう問題もあるんです。

 それとか、ことしの三月、国際司法裁判所、ICJで、鯨の残念な判決がございました。南極における捕鯨訴訟で、我が国が主張した調査捕鯨の主張が通らなかったという事態。これは、政府の代表団の中で、法曹有資格者、入っていた人はわずか一名、しかも、その人もいわゆるロジ的なところの、手続を担当するだけの状況であった、こんな実態もあるんですね。

 ですから、例えば、国際的な紛争がある場合に、法曹有資格者を、そこに公務員として配置するための人員をどんどん確保していくとか、さまざまに法曹有資格者を採用してふやしていくという工夫の余地があったと思うんです。

 今後の話で結構ですけれども、大臣、今のような話についてどう思われますか。

谷垣国務大臣 今の宮崎委員のお話を伺っておりまして、例えば、法務省にも、いろいろな大使館に法律問題もいろいろ出てきたからリーガルアタッシェをもう少し出してもらいたい、外務省からそういう御要請があったとしても、なかなか、検察官もみんないろいろな事件を抱えておりまして忙しい、とてもそこまでは、残念だけれども、出したいけれども出せないんだよというような議論もなかったわけではありません。

 やはりこれから、今のようなお話の中で、ICJの問題にせよ、いろいろな交渉にせよ、リーガルアタッシェみたいなのがもっと頑張らなきゃいけない面があると思うんです。

 そういうことを含めて、実はこれはまたさっきの定員管理の問題や何かに回ってくるわけですが、もっと工夫し、頑張らなければならない余地は私はあると思っておりますので、頑張らなきゃいかぬと思います。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 ぜひこの辺は御工夫をいただいて、先ほど見たような新卒者の問題だと私は思っておるものですから、裁判官、検察官、裁判所の方も法務省に出向した上でいろいろなところに出ていったりするわけでありますので、ぜひ、この辺の定員増、新卒者の増強ということをお願いしたいと思っております。

 あと、法科大学院そして予備試験の問題、これは、我が党においても、これから議論をして取りまとめをしてまいるところであります。しっかりとした提言は出させていただきたいと思っておりますが、ただ、法科大学院の問題だけはしっかりとここで意見を申し上げておきたいなと思っております。

 大臣もさまざまにこの委員会の中の御答弁で触れていただいておるとおり、プロセスによる法曹養成ということに我々はかじを切って、その制度の中で、今、法科大学院が位置づけられております。

 私は、法科大学院が活性化していくためのキーワードは、これはやはり手塩にかけるだと思いますね。法科大学院という、単なる大学教育でもない、しかも、ただの大学院でもない、法科大学院とスペシャライズされたもの、そこではマスプロ教育をしてもしようがないんですね。手塩にかけていく、こういうことがやはりキーワードになると思います。

 大きな改革をしていかないといけない、大学教育と一体となって改革をしていく。例えば、非常によくできる人であれば、大学二年、法科大学院二年、四年でもう出て、すぐ法曹資格を取得するところまで行けるようにする改革もしていかないといけないと思いますし、さまざまに大きな改革をしていかないと、社会から法科大学院というのは不要だという判定を下されることもあり得ると思っています。

 私は、実はもっと大きく見るべきじゃないかと思っていて、例えば、日本人は農耕民族で、ロジカルに議論するというのは余り得意ではない。だけれども、グローバル社会の中でロジカルに闘っていかないといけないところがあるわけです。そうだったら、論理的に闘っていく国家を担うもの、これがまず司法、法曹でありますね。これを養成するのは法科大学院なんだと決める。

 だから、例えば、在外公館勤務をされる方なんかは、一回外に出る前に必ず法科大学院に行って、半年なり一年なり、しっかりとそういう論理の武器を携えて、ある意味、外国に出るに当たって、傭兵養成機関というか、戦闘員養成機関ぐらいの思いで、法科大学院というところを経由することによってロジカルな闘いに勝っていくだけのものを身につけられるんだと。例えば法科大学院にシニアコースをつくるとか、こういうことをするぐらい社会の中への大きな位置づけを検討するべきだというふうに思っております。

 所管をしているのは文部科学省でございます。きょうは西川副大臣にお時間をとって来ていただいておりますので、文科省の法科大学院のこれからのあり方についての御所見をいただきたいと思っています。

西川副大臣 今先生の御質問のお話を伺っていて、私自身、大変勉強させていただいております。

 そもそも、この法科大学院という制度を何のためにつくったか。弁護士の数が多分、将来的に訴訟社会、アメリカ型の社会になっていく上で足りなくなるだろう、いろいろな思いの中でできたと思うんですが、その中で、需要がかなり現実と違ってきた、そういういろいろなことの中で、今回の法科大学院の厳しいいろいろな問題に直面しているわけです。

 確かに、この制度をせっかくつくったんですから、今先生がおっしゃったように、本当に根づいていくためにはかなりの期間が必要ですよね。今、どんどん入学者数も落ちているし、合格者数も落ちて、予備試験の方がよっぽど簡単だよね、そういう議論の中で、法科大学院なんて要らないと。むしろ、それとは全く逆に、この制度を本当に育てていかなきゃいけないという先生のお話、私もそのとおりだと思います。

 そういう中で、この法科大学院をいかに充実させていくかというのは文科省に課せられた大きな課題でございまして、特に今、在外公館とか行政、公的なところにもっとというのはそのとおりですが、実は、二、三日前に有識者の方々とちょっと意見交換する場があったんですが、経済界に司法試験を通った有為な人材をもっともっと根づかせて、グローバルに経済が動く中でそういう人がいっぱい必要なんだ、そういうお話も伺いました。

 まさに、そういう多方面に、基本的にここを出た人がそういうところで活躍していく、そういうスタンスでこの法科大学院というのを育てていくべきだと思いますので、それには、国際的に活躍できるコースを新設したり、そういう意味での根本的な改革と、今当面している現実の公的支援をやって、ある程度数を整理していくということも大事だと思いますので、その両方の視点に立ってしっかりと対応していきたいと思います。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。

 谷垣大臣も、法科大学院のあり方、法曹養成を所管する担当大臣として御見識をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 これからどういうふうに持っていくかというものと、今までがどうだったという議論と、二つあります。

 私、実はきのう、韓国大使館にお招きを受けて、韓国大使初め、あるいはリーガルアタッシェのような方といろいろ議論した中に、あそこもある意味では日本の影響を受けてロースクールをつくり、向こうはロースクールのあるところは法学部なんかを廃止してしまったわけですが、かつて三百人ぐらいの合格者のところを千五百人まで持っていった。かなり野心的にやって、今はなかなか弁護士が食えなくなって困っている、ロースクールも必ずしも評判がいいわけではないという同じような悩みを抱えておられる。

 そこで、私は今一つ思いましたのは、西川副大臣も根づくまで時間がかかるとおっしゃいましたけれども、我々は五百人ぐらいのところを三千人に持っていこうと。そうしてたくさんロースクールができて、ある意味では、実務を指導する人の数も十分ではないけれども、急ぎ過ぎたなという気持ちは私は率直に言って持っております。少しじっくり腰を落ちつけないといけない面もある。腰を落ちつけてばかりはいられませんが、そういう面も私はあると思います。

 そういう中で、今、宮崎さんが言われたことに非常に共感を持ちますのは、もちろん、法科大学院はプロセスとしてやるわけですから、まず、法曹資格を得る者にプロセスとして充実した教育をしてもらわなきゃいけない。しかし、それと同時に、もう法曹資格は得た、あるいは今、外に行って活躍される方々とおっしゃいましたけれども、やはり一遍にして優秀な法律家が育つわけではありません。国際的ないろいろな問題に関しても、一遍にしてすぐ優秀になれるわけはない。生涯教育、継続教育とかそういう面でも、法科大学院が最高の知見というか最新の知見というか、そういうものを提供できる、そういうようなことに努力しておられるところも既にあるわけですが、そういうことになっていけばすばらしいのではないかと私は思います。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 この緊急提言を出させていただきました。これは必ず実現をしたいと思っています。その大前提は、冒頭申し上げたように、非常なる国家的危機だという認識があるからであります。

 この提言の中でも、合格者を最終的に決めていく司法試験委員会に対しても提言を述べております。その中立性、独立性を理解するが、司法試験の合否判定に当たっては、この提言が前記のような厳しい現状認識の反映であることを十分に踏まえることを強く求めると書かせていただいております。

 まず、この提言は司法試験委員会の方にはお伝えをいただいておるんでしょうか。

谷垣国務大臣 私のところに御提言をいただいて、それで直ちに、各司法試験委員には、こういう御提言が出ているというふうにお伝えしました。

 それから、まだこれに関しての議論が行われたわけではないのですが、今後、司法試験委員会の議事として取り扱われるものというふうに考えております。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 きょうのこのやりとり、そして一昨日のこの委員会での与野党さまざまな皆さんのやりとりも含めて、全てやはり非常に重く受けとめていただきたいと私は思っておりますし、そのことをぜひ委員会に大臣からお伝えいただきたいというふうに思っております。

 結論として、私どもは、平成二十八年までに千五百人程度を目指す、これは法曹の魅力を復活させるための緊急の提言でございます。この問題の最後ですけれども、大臣のこれを受けとめていただいての御認識を賜りたいと思っております。

谷垣国務大臣 宮崎委員が大変熱い気持ちを持ってあの提言を取りまとめていただいた。私も、先ほど申し上げたように、若い優秀な人を確保する、それはほかの分野との競争でもあるけれども、法の支配をきちっと隅々まで及ぼしていくためには、ここは頑張り抜かなきゃいかぬ、このように思います。

宮崎(政)委員 続きまして、更生保護行政についての質問をさせていただきたいと思います。保護司活動と地方自治体の協力関係についてであります。

 保護司さんの活動というのは、地域において単なる犯罪抑止効果をもたらすだけではなくて、安全、安心、住みよい町をつくっていくという意味でも非常に意義が大きいと思っております。

 そのためには、市町村役場のようなところの地元の皆さんの協力が不可欠なんですね。保護司法の十七条でも、地方公共団体の協力についての定めがございます。

 まず冒頭、地方自治体の協力を得るための法務省のどのような取り組みがあるのか、ちょっと時間の関係があるので、簡潔にお願いいたします。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まずは、総務省さんの御協力をいただきまして、平成二十四年十月に、私の名前で全国の市町村長さん宛てに、保護司活動に対して種々の御協力を賜りたいという文書を発出しております。

 それに基づいて、保護観察所長、私自身もそうですが、全国の自治体を回らせていただいてお願いをしているということでございます。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 齊藤保護局長名で各市町村役場の方に文書が出ていることは了解をしております。

 私も実は沖縄県で更生保護協会の理事長をさせていただいておりまして、現場を回ってみますと、うまく自治体の協力を得られているところもありますが、うまく協力を得られていないところがあることも事実なんです。これは文書発出していただいた後でもそうなんですね。

 実は、今どきですから、住宅事情というのがあります。対象者の方を自宅に招いて面接をするといったときに、客間があるうちというのはなかなかないんですよね。今、法務省が出している保護司さんに見せるビデオでは、何か客間があるようになっていて、そこで会うようなビデオになっているんですけれども、なかなかそういう事情も難しい。だから、面接場所といったら、ある程度公的なところが欲しいと思うわけです。

 特に家庭の中に思春期のお子さんがいらっしゃったりなんかすると、特に少年事件の関係の対象者が自宅に来るということについて御家族の了解を得にくいなんという事情が出たりする場合もあるんです。

 それとか、保護司さんのなり手の問題。今までは、今保護司をやっている人が次の人を探すというふうな形でやっているんですけれども、実際、いろいろな情報が自治会経由とかで役所のところに入ってくるんですね、特に総務課あたりには。そういうところで情報提供の便宜をとってもらえたらいいというふうに思っているんです。

 実は、この保護司の人選のための情報提供とか、保護司活動に例えば市役所や区役所のいろいろなところ、あいている場所をちょっと貸してもらう、整理統合してあけてもらって貸してもらう、こういうことについての便宜供与については、齊藤局長名、法務省が単名で出すんじゃなくて、地方自治を扱っている総務省のしかるべき局長と連名で文書をちゃんと各役所に出していく、こういうことを総務省の協力をもってやるべきだと私は思うんですけれども、法務省、いかがですか。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 現在でも多くの自治体で大変な御支援をいただいているわけですが、今先生御指摘のとおり、ますます自治体から保護司活動に御協力を得るということの重要性、必要性が高まっております。

 そういう状況を踏まえまして、先生御指摘の保護司活動に対する総務省、法務省連名の依頼文書の発出等も含めまして、本省間での連携の一層の促進に努めてまいりたいというふうに思っております。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 実は、一昨日、私は荒川区というところに行ってまいりました。西川区長さんはとても保護司の活動に対して理解がありまして、実は区役所の職員さんみずから保護司になって、その区の中が五つに分かれている、それを、それ以上の人数に区役所の職員の方に保護司になってもらって、それぞれ職員を張りつけて保護司活動の支援をしていく、こんなこともされておられるんです。

 何でですかと職員の人に聞いたら、こんなことを言っていた。安全、安心な町をつくって支えてくれているのは、保護司さんを初めとする地域の皆さんの活動なんですというふうにおっしゃっていたんですね。

 そこで総務省にお聞きしたいんです。保護司の活動、やはりこれは地域にとって非常に有益です。地域住民の公共の福祉の向上に資する有益な活動をしていただいていると思う。先ほど法務省の方から、局長名の連名で出していくということについての前向きな話があった。これは総務省の方でも、ぜひ、総務省と法務省が一緒になってこの文書を出していくということでの取り扱いをしてもらいたいと思っております。総務省の見解を聞きたいと思います。

関政府参考人 お答えいたします。

 御案内のように、保護司さんの方々は地域にとりましても非常に大切な仕事をしていただいていると思っておりますし、保護司さんの側から見ても、やはり地域と連携をとりたい、協力を求めていきたいという御要望があるのも伺っております。

 実は、都道府県レベルでは、私と保護局長さんの連名の通知を知事宛てに出したこともございますが、今お話ありましたように、やはり市区町村が大変大事でございますので、法務省とよく相談をさせていただきまして、連携をとりながら対応を図っていきたいと思います。

宮崎(政)委員 連携をとってしっかりやっていくということで、連名で出していただけるという御回答だと受け取りました。

 最後でございます。

 大臣、こういう形で、地域に根差した保護司さんの活動、一義的に所管しているのは法務省保護局であります。所管大臣として、地域にしっかりと根差していく保護司の活動の支援も含めて、大臣の御決意、御所見をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 保護司の方の活動というのは大変貴重なものだと私は深く思っております。

 しかし、保護司の活動は、今、宮崎さんがおっしゃったように、保護司、それから法務省と保護司がしっかり連携するというだけではできません。地域の行政との連携、それから地域そのものの住民の方々との連携、そして安全な地域をつくっていこうといういろいろな動き。それから、最近では、保護司の活動の中で福祉や何かの視点というものが非常に必要になってきておりますと、福祉の実際の行政は、もちろん国の行政もございますけれども、地方自治体が担っている場合が非常に多い、そういうところとの連携も図っていかないと、なかなか更生保護の実が上がらないということがあるだろうと思います。

 今の視点は非常に大事でございますので、今総務省と連名でということをおっしゃいましたけれども、法務省という国の役所でやっておりますと、なかなか、時によっては自治体とすんなり平仄が合わない場合もないわけではありません。工夫してやっていかなきゃいけない、このように思っております。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。

 私も、地元に帰りましても、安全、安心の町づくりのために尽力してまいりたいと思います。きょうは、ありがとうございました。

江崎委員長 次に、階猛委員。

階委員 先週の金曜日と今週の水曜日、二回にわたって、私も法曹養成制度について質問の機会をいただきましたけれども、きょう、宮崎さんの質問を聞いていて、また私も法曹養成について聞きたくなるような、非常に熱のこもった、すばらしい質問でした。

 済みません、それで、一つだけ私からもこの件に関して確認しておきたいんですが、水曜日、全会一致で附帯決議が採択されました。この附帯決議の内容についても、先ほどの宮崎さんがおつくりになられた自民党からの提言と同じように、顧問会議の方にはちゃんと伝えられているのかどうか、お答えいただけますか。済みません、通告していませんが。

谷垣国務大臣 まだ伝わっていないのではないかと思いますが、手順を踏んで、きちっとやりたいと思います。

階委員 通告なしで失礼しましたけれども、ぜひ、全会一致、与野党そろっての重要な決議でございますので、こちらも議論に反映させていただくようお願いしたいと思います。

 さて、本題に移りますけれども、きょうは、私は、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会で議論されている取り調べの可視化などについて伺わせていただきたいと思っております。

 まず、四月三十日に事務当局から試案というのが出されまして、そちらを拝見しますと、当初は、取り調べの適正確保のための制度だということで、捜査機関の取り調べの録音、録画義務、その上で、検察官の録音、録画記録の証拠調べをされる際の証拠能力の話という順番になっていたんですけれども、今はその順番が逆になっておりまして、最初に証拠調べの話が来て、後から取り調べの録音、録画義務ということで、そもそものこの特別部会が設けられたきっかけとしては、村木さんの事件において取り調べの適正化が問題になったというところから始まっているわけでございますから、やはりまずイの一番に来るべきは取り調べの適正化、録音、録画義務ということになるかというふうに思っております。

 順番が変わった理由について御説明をいただけますか。

谷垣国務大臣 確かに、今回の試案は、委員がおっしゃるような構成になっているわけです。しかし、これは、部会における議論を取りまとめる方策として、事務当局で一つの案として作成したものでございますので、確定的なものでもございませんし、これからきちっと、部会での議論を踏まえた上で、順序等を含めて最終的な取りまとめが行われることになると思います。

 ただ、今の点は、確かに根本は、出発点は、取り調べの適正化、村木事件等々を初めとしてそれがきっかけであり、またそれが大きな眼目であることは間違いないと思います。

 しかし、このペーパーはまだ最終的なものではありませんし、最終的な表現としてどうしていけばいいかはこれから御議論があると思いますが、この可視化も、可視化そのもので置いておいたら意味がないのでありまして、どう使うかということになるわけですね。どう使うかということになったときに、さっきおっしゃったようなところをまず意識して議論したということなのではないかと私は思っておりますが、最終的にどういうふうにしていくかは、さらにこれから詰めてもらいたいと思います。

階委員 こちらの部会、それから法制審議会の親会議でいずれ答申がまとまって、それをもとにして立法作業が大臣のもとでされると思うんですが、その際は、やはり原点は何かということからすると、まず捜査機関の可視化義務というところから条文をスタートさせるようお願いしたいと思います。

 それから、今回の試案におきましては、取り調べの録音、録画義務の対象事件として、裁判員制度対象事件とする案と、これに加えて、それ以外の全身柄事件における検察官の取り調べを対象に含める案が記載されているわけです。

 しかしながら、今現在試行されている対象事件の範囲よりも狭くなっておりますし、また、この件に関して、特別部会に参加されております有識者の方々から、狭きに失するという御意見も出されております。

 この点を鑑みて、より広範な事件を対象とすべきではないかと思っておりますけれども、大臣として、御所見はいかがでございましょうか。

谷垣国務大臣 今おっしゃったように、事務当局試案にはA案、B案と二つがございまして、一つは裁判員制度対象事件とするというA案、それから、それに加えて、全身柄事件における検察官の取り調べも対象に含める。これは、今までの部会の議論を踏まえまして、さまざまな意見がございましたので、一つの取りまとめとして試案をつくったところでございますが、これもまだこれで決め打ちというものではありません。

 引き続きしっかり議論していただきたいと思っておりますし、私としては、そこできちっとした、バランスのとれた議論を出していただくように期待したいと思っております。

階委員 ちょっと事務方に確認の質問をさせていただきたいんですが、私が弁護士会から得ている情報によると、この部会の議論の中で、今試行対象となっている事件については検察としては本格実施をするんだというようなことを発言されたようなメモを私は拝見しました。このような議論はあったのでしょうか。

林政府参考人 前回の第二十六回の部会におきまして、検察において現在試行しているものについて、それを本格実施という形に移行するということも検討中であるということが委員から述べられた事実がございます。

階委員 本格実施という意味は、これは法律をつくって実施するという意味ですか。本格実施の意味は何か、もうちょっと明確にしてほしいんですが。

林政府参考人 現在、検察の方において、取り調べの実務の運用の中で試行という形の位置づけをして、録音、録画を試行しているということでございますが、その範囲の中で、今まで試みという形での試行というものを本格実施というものに移行することの検討をしていくということを述べられたものと理解しております。(階委員「法律でやるということではないと」と呼ぶ)今までも運用の中でございますので、運用の中のやり方として、そのような移行をすることを検討しているということでございます。

階委員 運用でされてきたものをさらに強化するというようなことかもしれませんけれども、法律化される中で、まさか、その本格実施されたものが後退するというようなことはないかと思いますけれども、これから、法制化に当たっては、先ほどのような経緯もありますので、なるべく広範な事件を対象としていただきたいということを申し上げたいと思います。

 それから、取り調べ可視化の例外事由ということが今回の案の中にも含まれておりますけれども、今までのいろいろな議論の中で私が目にしてきた資料では見当たらなかったものに、当該事件が暴力団の構成員による犯罪に係るものについてはすべからく除外しましょうというようなことが入っております。

 確かに、暴力団の犯罪ということになると、あらぬことを言ってしまうと、親分に痛めつけられるとか、場合によっては抹殺されるということもあるから、言いにくいことを言えるようにするために例外にするということが必要な場合もあると思うんですが、そうではなくて、暴力団員も、組織とは関係なく、個人的な万引きであるとかわいせつな事件とか、そういうことを起こす場合もあると思っていまして、全ての事件について暴力団員については可視化の例外というのは、私は合理性がないと思っているんですが、なぜこうなっているのかということについて教えていただけますでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、今までの部会の議論で、暴力団による犯罪の捜査に支障が生じては困るので、端的に、暴力団の構成員であることを取り調べの録音、録画義務の例外事由とすべきだというような意見、これは特に、現場の警察官が捜査をするときに余り取り扱いに迷うようじゃ困るというようなことがあったんだと思うんですね。

 それから、暴力団の組織的な事件であるかどうかは捜査の結果が出ないとわからないんだ、つまり、最初からなかなかわかりにくいんだというような意見があったことを踏まえてこれは記載されたものであると承知しております。

 確かに、どことは申しませんが、非常に過激な暴力団の活動で一般の社会人が非常に恐怖を覚えているような地域からは、例外にしてくれというような陳情を私もいただいたことはございますから、そういったことを全て含めまして、最終的な取りまとめをどうするか、またしっかり議論していただかなきゃいけないと思っております。

階委員 ここに来て唐突に入ったものですから、私は、例外を不当に広くするような動きになっては困るな、ここの部分だけではなくて、方向性として例外を広く認めるようなことになっては困るなということで、ちょっとくぎを刺すつもりで申し上げました。

 それから、この試案では、参考人取り調べの録音、録画については記載がなくなっておりますけれども、そもそもの去年の一月の基本構想の段階では、これについては記述があったと思います。

 さらに、この件については、特別部会の下にある作業部会で議論するのではなくて、特別部会の方で議論するべき対象になっているということでして、まだ特別部会では議論が続いていますから、今後、参考人取り調べの録音、録画についてはちゃんと盛り込まれる余地があると思っておりますけれども、私は、参考人取り調べであっても、可視化がされないことによって任意性に反するような供述がなされて、そして冤罪につながったというケースもあるわけですから、この参考人取り調べについても録音、録画制度を導入すべきではないかと考えておりますが、この点について、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 昨年の一月の基本構想では、被疑者取り調べの録音、録画制度の検討を踏まえつつ、必要に応じて検討するということになっておりました。

 それで、その後の議論でいろいろな議論が出まして、参考人取り調べの録音、録画制度は設けるべきだという御主張もありましたし、他方、参考人にはさまざまな立場の者がいることも事実で、さまざまな取り調べが行われているので、一律にやると現実的ではないんじゃないかというような御意見であるとか、あるいは、犯罪被害者に対しての二次被害を心配するような御意見もありまして、まだ一定の方向性が得られていないのが現状でございますので、諮問している立場としては、ここもさらに煮詰めていただきたいと思っております。

階委員 こちらは、まさにこの特別部会のメンバーの方からも、参考人取り調べも録音、録画の対象にしてほしいというような意見も出されておりますので、これはぜひ検討されるべき課題だと思っております。

 それから、私もこの委員会で取り上げましたけれども、袴田事件に関して、再審請求の段階で、本当に重要な証拠が何十年もたった後に出てきたという話がありました。

 今の試案には、再審請求審における証拠開示についての記載はありません。しかしながら、これも、先ほどの参考人の可視化と同じように、基本構想の段階では記載はありました。

 再審請求審についても証拠開示制度を導入すべきではないか。この点についても、特別部会で議論すべき対象となっているというふうに理解しておりますけれども、この件について、大臣の御所見をお願いします。

谷垣国務大臣 階委員がおっしゃったように、今度の試案には今の点は触れられていないわけです。

 今までの経緯を申しますと、昨年一月の基本構想では、通常審における証拠開示のあり方と異なる観点があるから慎重に検討せよということで、通常審における証拠開示制度のあり方についての具体的な検討結果を踏まえ、必要に応じてさらに部会で検討するというふうにされておりました。

 部会における議論では、これは、整理手続における証拠開示に準じた証拠開示制度を導入すべきであるという御意見が一方であり、また他方、通常審と構造を異にするので、通常の証拠開示制度を転用することは整合しない場合があるんじゃないかとか、あるいは、検察において諸事情を考慮しながら対応しているので、制度を設ける実務的な必要性に疑問を感ずるというような意見もあったり、あるいは、再審請求審における証拠開示は確定記録の取り扱いについての問題で、通常審における証拠開示とは別個の問題であるから、記録の保存の問題などの関連する事項を含めて検討する必要があるというような議論もございました。

 要は、まだ一定の方向性が得られていないということでございますので、これも今後どう煮詰めていくかということでございます。

階委員 再審請求の問題というのは、まだ袴田事件の結論も出ていませんけれども、今の現に行われている裁判では、証拠開示の制度は大分充実してきたんですが、昔行われた裁判では、証拠開示制度がないままに有罪判決が確定しているということで、そうした方々が当初の裁判では十分な手続保障が得られていなかったという観点からも、再審段階では証拠開示がされる必要性はよりあるのではないかと思っておりますので、ぜひこの点についても積極的な御検討をお願いしたいと思います。

 それから、この試案では、公判廷に顕出される証拠が真正なものであることを担保するための方策ということで、証拠隠滅等の法定刑の引き上げが記載されております。

 ただ、この証拠隠滅等の法定刑の引き上げという場合に、私もいろいろこの委員会でも説明しましたけれども、捜査機関側が例えば捜査報告書に虚偽の事実を書いたりとか、あの村木事件ではフロッピーディスクの偽造というようなこともありました。また、よく言われるのは、公判廷において、捜査を担当した取り調べ官を証人として呼んだ場合に、任意性を阻害するような取り調べの方法はなかったというふうに普通は供述するんだけれども、裁判所はそのように認定せずに、結果的にうそをついていたことが判明するというようなことも間々あるわけです。

 そうしたことを踏まえて、そういうような捜査機関による証拠の捏造とか、あるいは法廷での虚偽の陳述というのは到底あってはならないことでありまして、そこにブレーキをかけるという意味でも、証拠偽造等を捜査機関がやった場合には、より刑を加重するということが必要ではないかと思っております。

 この点についても、基本構想の段階では、これは先ほどの幾つかの論点とは違って、注書きでしか書かれておりません。

 ちょっと注書きで書かれてあることを読みますと、「警察官や検察官等が証拠隠滅等に及んだ場合や偽証した場合にこれを通常よりも加重処罰する類型を設け、付審判請求の対象とするべきとの意見もあったが、これに対しては、捜査に関わる公務員による犯罪であるからという理由で加重処罰するのだとすれば、その対象は歯止めなく広がり得るから、相当でないなどの反対意見もあり、一定の方向性を得るに至らなかった。」ということなんですが、ここに反対意見ということで、対象は歯どめなく広がり得るというのが私は理解できないんですね。

 捜査にかかわる公務員によるということであれば限定されていると思うんですが、なぜ、これが決め手となって方向性を得るに至らなかったのか。そして、今この試案の中では全く触れられていないのか。この点については事務方ですか、お答えください。

林政府参考人 今御指摘のありました点、これは、相当でないという反対意見の中に、「捜査に関わる公務員による犯罪であるからという理由で加重処罰するのだとすれば、その対象は歯止めなく広がり得るから、相当でない」、こういう反対意見が実際にございました。

 ここでの反対意見の趣旨は、いずれにしても証拠隠滅自体は犯罪でございますので、それを何ゆえに捜査にかかわる公務員について加重するのかということについて、この加重することを考えていけば、それは、捜査にかかわる公務員のみならず、一般の公務員においてもそのような加重が必要となる場合があろう、そういったことで、歯どめがなくなると。加重類型を捜査にかかわる公務員だけに限るということについて歯どめがなくなる、他の公務員にも広がるということを前提とした反対意見でありました。

階委員 ちょっと私は理解できないんですけれども。なぜ、他の公務員、取り調べとかをやらない方にも歯どめがなくなるというのか、ちょっと理解できません。私は、これまでの検察の不祥事とかを考えれば、こういう捜査機関側の問題があった場合には、加重処罰ということも考えられていいのではないかと思っております。

 それから、検察の不祥事といいますか、証人テストということをこの委員会でも取り上げました。想定問答集というのを検察側の証人に事前に配って、それで、このとおり答えてくださいねということで、実際にそのとおり答えた。中には、証人の方の記憶に反したことまで答えさせられているということを指摘しました。

 事実関係はさておくとしましても、こうした行為が行われないようにするための法制度上の担保というのも必要ではないかと思っております。証人テストにおける誘導尋問とか偽証の教唆、こうしたことを実効的に禁止するための措置を導入すべきではないかということについて、大臣の御所見をお伺いします。

谷垣国務大臣 これは具体的な証拠活動ということになりますので、私としては、一般論を申し上げれば、偽証とか誘導尋問を教唆するようなことであってはいけない、これは当然だろうと思います。その上で、どうしていけばいいかということは、個々の立証活動として、原則を踏まえ、法を踏まえてやってもらいたいということでございます。

 法制審議会では、必ずしもこれは基本構想においても検討すべき対象には入っていなかったのが今までの流れです。今後、どういう議論があるいはなされるのか、ここは私はまだ承知をしておりませんが、現在の段階で申し上げられるのは以上のようなことでございます。

階委員 今現在、この特別部会で議論の対象になっていないということは、前回、二月に質問した際にもお答えいただきました。しかし、これを議論の対象にするというのは、その特別部会の委員の方、有識者の方からでもこれは議論の対象にすべきだということであれば、それは対象になるということでよろしいですか。事務方でもいいんですが。

林政府参考人 今般、事務当局試案をもとに議論が前回から始まっております。前回については、録音、録画を中心に議論がされまして、次回以降、またそれ以外の論点についても議論がなされていきます。そういうことで、今後の議論の中で、今御指摘のことについても議論がされ得る状態にございます。

階委員 では、こうした問題についても刑事司法の信頼を確立するという点から取り上げていただけるように私は期待したいと思っております。

 最後に、全然テーマは変わりますけれども、先般この委員会で採決されました会社法についてです。本来であれば、こちらの委員会で審議をするときに気づけばよかったんですが、私も勉強不足で気づかなかった論点です。

 参議院の方で我が党の小川敏夫議員が質問されておりますけれども、会社法改正案で、今回新たに、特別支配株主、九〇%以上のシェアを持っている株主が、株式等売り渡し請求によって、少数株主の株を強制的に買い取る制度が盛り込まれているわけです。その買い取られる側の少数株主の方からすると、譲渡対価の支払いが確実になされる前に、強制的に株主たる地位を失ってしまいます。

 譲渡対価が支払われなかった場合に、たしか参議院では解除ができるんだというお話がありましたけれども、解除がなされたとしても、その株式が確実にもとの少数株主のもとに戻ってくるかというと、それは、解除される前に善意の第三者に株が行ってしまえば、それも対抗できなくなるということで、こうしたことからすると、対価の支払いが確実になされるかどうかはっきりする前に強制的に株主たる地位を失わしめるというのは、個人の財産権の保障を定める憲法二十九条に照らし、問題ではないかということを私も考えました。

 この件について、谷垣法務大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 確かにこの問題は、衆議院の委員会では余り御議論がございませんで、たしか椎名委員からいわゆるキャッシュアウトについての御議論はあったと思いますが、今、階さんがおっしゃったこととは少し違う観点からの御質問だったように記憶いたします。

 要するに、特別支配株主が、キャッシュアウト、いわゆる特別支配株主が企業であれば自分の一〇〇%子会社にしてしまおうということ、簡単に言えばそういうことだろうと思いますが、その株式を売り渡せという請求は、いわゆる形成権の行使として組み立てられておりまして、その後、その対象の会社の取締役が承諾をするという、これは少数株主の保護のためにその承諾に係らせているわけですが、そういう手続がとられたときは、取得日というのを定めるわけですが、取得日において、特別支配株主は売り渡し株主から売り渡し株式を取得する、株式の所有権、株式の権利は取得してしまう、そして、売り渡し株主は特別支配株主に対して代金債権を取得する、こういう構成になっております。

 そこで、問題は、一般の売買であれば同時履行の抗弁権があるはずじゃないか、こういうことでございますが、つまり、今申し上げたことは、同時履行の関係にあるというふうには構成されていないわけでございます。

 この売り渡し株式の取得と代金の支払いは、同時履行でなく、代金の支払いの有無にかかわらず、特別支配株主は売り渡し株式の全部を取得日に取得するという構成になっております。これは、株式売り渡し請求制度が機動的なキャッシュアウトのために創設された制度で、会社法にはしばしばあることでございますが、一律に、その日においてどうするかという処理をしなければならない必要性がある例が会社法ではほかにも幾つかございますが、一定の日に集団的、画一的に効力を生じさせる必要がある。

 こういう、少数株主の意思にかかわらず、一定の日に強制的に株式を取得して、その後に現金を交付するという制度でございますが、今申し上げましたように、現行法上、現金を対価とする株式交換においても同じような構成がとられております。

 それから、加えて、株式売り渡し請求については、先ほど申しましたように、対象会社の承認を必要とするわけでございますが、代金に不服がある売り渡し株主は、裁判所に対し、売り渡し株式の売買価格の決定の申し立て、これじゃ不満だということで決定の申し立てをすることができる。あるいは、そういう対価の適切性を確保するための規定が置かれております。

 それから、対価の支払いの確実性を担保するための措置といたしましても幾つかの制度が用意をされておりまして、要するに、少数株主の権利を擁護するといいますか、そういう担保は十分行われているのではないかというふうに考えております。

 したがいまして、売り渡し株主が適切な対価を得られないという事態が生ずることは、全くないとは申しませんが、こういうときに何が起こるかわかりませんが、まず、原則的には手だては講じられているということだろうと思います。したがって、今、憲法二十九条の問題というのには必ずしも当たらないのではないかというふうに私は考えております。

階委員 ありがとうございました。

 これで質問を終わりますが、私、この財産権の保障という場合に、どうしてもやはり思い浮かぶのが、我々被災地の議員が、復興のための用地が相続未了とかでなかなか取得が進まない場合に、特別立法をして、土地収用手続を経なくても、先に権利を取得して、後から権利調査をして対価を支払ったらいいんだというようなことをしましたら、財産権の保障に抵触するということで、なかなか審議が進まなかったということがございます。

 一方、こちらは、復興のためというような公共性の強い目的とは関係のない、九〇%の株主の人がいわば自分の私利私欲のために株を取得するようなケースでも財産権の保障に抵触しないというのは、いささか法制度上バランスを欠いているのではないかという思いをしております。

 また、仲間と議論させていただいて、この件については対応させていただきたいと思います。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、郡和子委員。

郡委員 民主党の郡和子です。

 去る四月四日、建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置を検討する閣僚会議、これで緊急措置が取りまとめられました。昨年度内に取りまとめられるということでしたから、私も、この委員会で四月一日に質問をさせていただきましたけれども、措置決定前でありましたので、具体的な論点についての満足できる御答弁というんでしょうか、十分な答弁がいただけませんでしたので、フォローアップをさせていただきたいと思います。

 改めて、この建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置について尋ねたいと思います。

 四月一日の質問でも指摘をさせていただきましたが、技能実習生には、基本的に技能実習機関を変更することができませんで、やめる自由もないために、また、保証金なども徴収されているなどして、さまざまな人権侵害が起きる要因にもなっていて、かつ、その問題というのは表面化しにくい構造になっている。

 緊急措置のもとで働く外国人材には、雇用先を移動することができるような制度設計にすべきだというふうに考えておりまして、この点について、国交省から、民主党の多文化共生議連で説明を受けました。緊急措置として在留資格の特定活動で外国人の建設労働者を受け入れる場合には、技能実習とは異なって、雇用先の移動を自由にするというような意向が表明されました。改めて、この方針を再確認させていただきたいと思います。変わりないのかどうか。

 また、雇用先の移動の自由の具体的な内容についてですけれども、同一職種であれば日本全国どの企業にも移動できるのかどうか、東京オリンピックや東日本大震災の復興事業に関連する職場に限られるのかどうか。また、移動回数に制限はないのか。移動の場合、所属機関に関する届け出義務を課すのかどうか。

 それから、この緊急措置のもとで働く外国人に分け隔てなくその機会が与えられるものだというふうに確認したいと思いますけれども、つまりは、一旦帰国した後に特定活動で来日する者に限られるのか、技能実習を終了した人たちに対しても適用されるのかどうか、確認したい。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の緊急措置は、技能実習を終了した即戦力となり得る外国人材が日本で建設業務に従事することを可能とするものでございます。このため、一定の場合には受け入れ企業を変わることが可能となるよう、関係省庁と調整を進めてまいりたいと考えているところでございます。

 また、移動先の地域ですとか回数等に関するお尋ねでございますけれども、受け入れ企業を変更する場合の要件、また手続等につきましては、適切な監理体制、また労働安全衛生の確保といったような観点もあわせて考慮しつつ、関係府省と検討を進めてまいりたいと考えてございます。

 さらに、一旦帰国した後に来日する場合と、技能実習終了後、引き続き滞在して就業する場合については、帰国後の事情の変化等がない限り、同等の取り扱いとすることが基本であるというふうに考えてございます。これにつきましても、引き続き、関係府省と協議しながら検討してまいりたいと考えてございます。

郡委員 今、労働安全の教育についても言及がございましたけれども、建設分野というのはもともと労災事故の多いところであります。ですから、外国人労働者の受け入れというのは極めて慎重にならなければならないんじゃないかというふうに思うわけです。

 現に、二〇一二年の労災での死者数は千九十三人おりますけれども、建設業が最も多くて三百六十七人、二番目に多い製造業の百九十九人の倍近くになっております。技能実習生における建設業での労災発生率ですけれども、全労働者では五・二ですけれども、九・九と大変大きくなっているんですね。これはJITCOの白書からとらせていただきました。

 したがって、建設分野に受け入れる外国人労働者は、少なくとも現場でのコミュニケーションが十分にとれるような日本語能力を有していなければいけないというふうにも思いますし、また、その能力をどういうふうに確認するのかということも課題になってくるんじゃないか。それからまた、きちんとした労働安全衛生教育が施されることも確保されるべきですし、それを担保するためにどのような措置を考えておられるか。また、十分な安全環境を有する企業を認定して受け入れ許可を出すなど、こういった措置も考えられるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 今回の緊急措置におきましては、技能実習終了者を対象といたしておりますことから、既に一定の日本語の能力を有しているものと考えてございます。

 また、受け入れ企業が雇用者を決定するに当たりましても、受け入れ企業側のニーズとして、面接等を通じまして、日本語能力を含め、受け入れ企業における円滑な活動や安全環境の確保が可能かといったような観点も含めて判断がなされるものと考えているところでございます。

 また、御指摘の安全衛生の教育、これは大変重要なことと考えてございます。実効性といったような観点も含めまして、関係府省と検討を進めてまいりたいと考えてございます。

郡委員 現在の建設労働者の労務単価は、全国全職種平均で、一日一万五千百七十五円だそうです。月額に換算しますと、三十万を優に超えるわけですよね。ですけれども、他方、技能実習生の予定賃金額というのは、月額で十二万九千四百九十四円、二〇一二年度ですけれども、この差というのはかなり大きいです。

 緊急措置で即戦力として受け入れる以上は、一人前の労働者として、賃金、労働時間その他の労働条件において日本人労働者と平等待遇が実現されるべきだというふうに思っています。当然のことだというふうに思うわけです。

 四月一日の私の質問に対しまして宮川政府参考人は、一般論として、外国人が労働者として業務に従事する場合、日本人と同じように、労働基準法等、労働法規が適用されることになりますというふうに答えていただいておりますけれども、今回の緊急措置では、技能実習生を上回る報酬を確保するというふうにされています。これでは全く不十分です。むしろ、低賃金労働を誘発する可能性が高いというふうに思います。

 「技能実習生を上回る報酬を確保」という記述、大いに問題があると考えますが、いかがですか。

吉田政府参考人 御指摘の「技能実習生を上回る報酬を確保」といったような記述につきましては、今回の緊急措置の対象者が技能実習終了者であるということを考慮いたしますと、ある意味、当然のことを書いたというふうに考えてございますけれども、実際の報酬につきましては、本人にふさわしい賃金、例えば、同等の技能を有する日本人と比べて遜色のない賃金が支払われることが必要であるというふうに考えてございます。

 このため、母国からの送り出し、国内への受け入れから帰国までの間を通じまして、しっかりとした特別の監理体制を構築することによりまして適正な賃金水準が確保されるよう、関係府省と調整を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

郡委員 適正な賃金水準というふうにおっしゃいました。ぜひ、この「技能実習生を上回る報酬」、これは削除すべきじゃないでしょうか。

 もう一問続けて、今、監理団体、受け入れ企業に対しての適正な認証についてお話しになりました。これはちょっと質問を飛ばさせていただきたいと思います。優良というふうに認定をする、そこの企業に限るということですけれども、この優良という認定について問題があるという認識だったんですけれども、次の質問にさせていただきたいと思います。

 政府は、監理団体による指導監督体制を強化したというふうにおっしゃっているわけですけれども、二〇一三年四月に勧告された総務省による行政評価、これでは、「監理団体の監査において、一定の利害関係がある実習実施機関に対する公平・公正な監査を確保するための枠組みが未整備。また、監理団体の監査能力も不足」と指摘をされています。

 具体的には、法務省入管局が不正行為認定をした事例の中に、同時期に監理団体が監査していたものの不正行為を指摘できなかったという事例が、不正行為認定をされた八十三機関のうち八十一機関にも及んでいたということです。

 この緊急措置に伴って、技能実習を上回る水準の監理、こういった体制をとるというふうにされているわけですけれども、現行の技能実習制度の監理体制に加えて、優良な監理団体、元請企業、国土交通省等許可部局による協議会を設置して、この受け入れ状況の把握、不正行為の情報を共有するというふうにされているわけですね。

 しかし、そもそも、法務省も監理団体も、現行の技能実習制度のもとでさえ、有効な監理機能を担えていないわけです。こうした監理体制を前提として監理強化をうたったとしても、その実効性は確保できないんじゃないだろうか。

 そのほか、問題の集積する現行の技能実習制度を前提とした制度設計では、屋上屋を重ねることになるだけで実効性はないんじゃないか、健全な形で緊急措置を実施するためには、技能実習制度と切り離して制度設計する必要がある、私はそういうふうに思っています。

 この設計自体を見直すべきと考えますが、いかがですか。

吉田政府参考人 今回の建設分野における外国人材の活用に関する緊急措置につきましては、復興事業のさらなる加速を図りつつ、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けまして、一時的に増大する建設需要に的確に対応するため、まずは国内人材の確保に最大限努めることを基本とした上で、大会の成功に万全を期することが重要との観点から、外国人材を時限で受け入れることが取りまとめられたものでございます。

 緊急かつ時限的である今回の措置を健全かつ円滑に実施するため、既に現場での経験があり即戦力となり得る技能実習終了者を、現行の技能実習制度を上回る厳しい監理体制のもとで特定活動として受け入れることとしたものでございます。

 現行の技能実習制度を上回る監理体制につきましては、具体的には、優良な監理団体や受け入れ企業に限定すること、また、国土交通省等の建設業許可部局が受け入れ企業への立入検査等を通じて所要の監督を行うこと等々としているところでございます。

 来年度からの受け入れ開始に向けまして、引き続き、関係省庁と連携しつつ適切に対応してまいりたいと考えてございます。

郡委員 この委員会でも、私を初めほかの議員も指摘をさせていただいているわけですけれども、そもそも不正行為を適切に認定することができていないのでありますから、不正行為がないことをもってその監理団体や受け入れ企業が優良であるというふうに判断するのは難しいんじゃないか、できないんじゃないかということを申し上げているんです。

 国策として外国人労働者の受け入れ政策の転換を試みた韓国の事例が、第五回の第六次出入国管理政策懇談会において吉村委員から紹介をされております。韓国はどのような国内事情から外国人の産業研修制度を導入して、その後廃止に至ったのか、そして、現在の制度、雇用許可制度というんですけれども、これが生まれた背景は何であるのか。

 韓国の経緯はこうであります。

 韓国でも、技能研修制度、これは国際貢献、日本と同じような名目で導入をされました。日本を模してということになるのかもしれませんけれども。実態は、保護なき低賃金、そして非熟練労働者の受け入れルートとして利用され、日本の実習制度と同様に、極めて低い研修手当や、受け入れあっせん過程での不正、割高な手数料の徴収、外出の制限、パスポートの取り上げ、暴行などの権利侵害、人権無視の処遇、こういうふうなことがございまして、多くの研修生が失踪、逃亡し、劣悪な労働実態を発信しまして社会問題となったわけです。

 一九九八年に産業研修制度を改正して研修就業制度を導入したけれども、研修制度と同様に不適正な事案は解消されませんで、この外国人労働者の政策を大転換することになります。国内の労働力が不足する分野における合法的かつ透明な外国人受け入れ制度、雇用許可制度を整備したんです。

 では、国内労働力が不足する分野に外国人を合法的かつ透明性を持って受け入れる仕組みをつくるために、この制度にどのような工夫がとられたか。

 まずは、仕組んだ仕組みその一で、制度の透明性を確保するために、政府間の覚書を締結して、政府及び公共部門による、送り出し、受け入れの過程を直接管理する、送り出しあっせん機関は公的機関に限定する、受け入れ機関である雇用安定センターは、労働部所管の、いわゆる日本版のハローワークが担う、送り出し機関によるピンはね等の不正に対しては、受け入れ停止などのペナルティーを科す。これとともに、就労先の企業、雇用主を見直すなど、いわゆる移動の自由を保障いたしました。

 そして二つ目ですけれども、国内労働市場における補完性を確保するために、就業可能な業種、また受け入れ人数等の制限を設定、クオータ制を導入したということです。そして、使用者には内国人の求人努力を求めて、建設業と製造業といった産業分類程度の職種カテゴリーごとに、韓国人の労働者を必要数雇用するんだということを目的に、市場テストをして確認しています。外国人には、一定の事業所変更による職場移動の制限を課す。

 そして三つ目として、就業活動期間を設けてローテーションを原則としている、すなわち、一定期間就労させて、その後は必ず帰国させる。そして、その就業期間中の家族の同伴、呼び寄せは禁止をされているというものでありました。

 企業側の責任、労働者の権利を守るために、また韓国ではどのような施策が講じられたか。それは、差別禁止に基づく移住労働者の権利保障なんです。労働関係法などを韓国人労働者と同等に適用して、各種保険への加入義務を課しました。また、変更期間三カ月以内、三回までの事業所の変更を可能としているということであります。

 この雇用許可制度についても課題はあるんでしょうけれども、送り出し、受け入れ過程における不正や、ブローカーの介入、労働者の権利侵害という点は、数段、制度上改善をされました。

 吉村委員ですけれども、「「技能実習制度」というタイトルに合わない実態があるにもかかわらず、ではタイトルに合わせて適正化しましょうという議論は、ちょっと九〇年代の議論かなという感じがします。」というふうに述べられております。

 この視点は、私は的を射ているというふうに思います。建前と実態が乖離をしているという指摘は、再三なされているわけです。だからこそ、この制度に対するひずみが生じているわけでして、韓国は、実態に合うように、正面から労働者と向き合う決意をしたわけですよね。

 私は、そこに法務省が踏み込まないから、私が三月十九日の質問でも指摘しましたけれども、この技能実習制度を使って労働力不足を補おうというような議論が法務省のほかで沸き起こっているんだ、そういうふうに思います。実態に向き合って抜本的な見直しを今こそ法務省が思い切ってすべきじゃないでしょうか。韓国は、それができて、正面から労働者として外国人と向き合う決意をし、このような制度を新たにつくって、それなりに実績を上げてきている。

 今、東京オリンピックの対応などが迫られて、検討が迫られているわけですけれども、マスコミの関心も高まっている、国民の関心も高まっている、このことを奇貨として、さらに大きな議論を巻き起こして、外国人労働者問題に正面から取り組んで、抜本的な見直しをすべきと思います。いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 先ほどロースクールの議論で、きのう韓国大使館へ行って、法務アタッシェのような方といろいろ議論したということを申し上げましたけれども、実は、今の問題も、韓国大使館担当官の方々といろいろ意見交換をしたり教えていただいて、きょう出てまいりましたら、郡先生からこういう御質問をいただいた。偶然といえば偶然なんですけれども、やはりここによく考えなきゃならない問題が一つあることは間違いございません。

 今、郡先生もおっしゃいましたけれども、一つのポイントは、要するに入国管理政策というようなところではなく、根本から労働政策として、もちろん入国管理の問題も無関係とは申しませんが、労働政策として扱っているということなんでしょうね。

 それで、韓国の扱いは韓国の扱いといたしまして、日本の扱いとしては、これは何度も申し上げていることでございますが、いわゆる高度人材に関しては積極的に受け入れようということでございます。しかし、それ以外のいわゆる単純労働者をどうしていくか。いろいろなところからいろいろな議論があるわけですけれども、私は、これに関しては打つ手をきちっと打っていかないと、今おっしゃったような、労働者としてどうしていくかというきちっとした、労働者としての処遇を与えるという意味でも、あるいは本当に治安という意味でも、いろいろな意味合いがあると思います、それをきちっと議論していかないとできないのであって、ですから、政府全体としてやはりきちっと議論をしていくということは必要ですし、それは私ども法務省としても協力をしなければならないと思っております。

 それで、今、郡先生がおっしゃったことと平仄を一にすると思いますが、技能実習制度の評価はいろいろあると思いますが、技能実習制度を小手先でいじって労働者不足に対応しようというのは、これは筋が違うし、無理だというふうに私は思います。

 現在の段階で申し上げるのはまだその程度のことでございますが、今の基本はやはり維持していかなければいけないと思っております。

郡委員 ぜひ谷垣大臣にはリーダーシップを発揮してもらって、法務省としての決断をしっかりと内閣の中で伝えていただきたいというふうに思います。

 五月十二日に、国家戦略特区諮問会議で、有識者議員から当面の追加規制改革事項として提案された、女性の活躍促進のための外国人家事支援人材の活用についてというのが出たわけです。これについて尋ねたいと思います。

 国家戦略特区諮問会議の有識者議員は、この「特区 成長戦略改訂に向けた当面の対応について」と題する提案書に添付された「国家戦略特区 当面の追加規制改革事項等」の中で、「当面、特区の事業実現に必要な大胆な税制措置を含め、少なくとも以下の規制改革事項については、六月の成長戦略改訂版に改革の成果を盛り込むべく、国家戦略特区ワーキンググループ等において直ちに関係各省と、少なくとも特区における改革実現に向けた議論を行う。」というふうに述べて、雇用、労働の分野で、女性の活躍促進のための外国人家事支援人材の活用や、特区での多様な外国人受け入れのための新たな在留資格の創設などが追加事項として提案をされた。

 これらの追加事項に関して、関係する法務省あるいは厚生労働省がこのワーキンググループの議論に加わることが見込まれるわけですけれども、そこで、産業競争力会議、国家戦略特区諮問会議での外国人家事支援人材の活用、この提案についてそれぞれどう考えるか、伺いたい。

鈴木政府参考人 今先生から御指摘がございました外国人の家事支援人材の活用でございますけれども、御指摘のように、産業競争力会議等におきまして有識者から御提案をいただいております。現在では、関係省庁でその対応を検討中という状況でございます。

 厚生労働省といたしましては、外国人家事支援人材の活用に関しましては、幾つかの点を踏まえて、慎重に検討、議論していくことが必要だと考えております。

 具体的には、まず、我が国におきまして、日本人が家事支援分野で外国人労働者を活用するということのニーズがどのぐらいあるのかということ、それから、家事支援の業務は家庭内で行われますので、言語によるコミュニケーションの問題、さらには、外国人の人権に十分配慮いたしまして、適切な処遇とか報酬、居住、こういったものの確保ができるかどうか、こういったものに問題が発生した場合にどう対応するのか、さらには、国内で同様の業務についている労働者がいらっしゃるわけでございますけれども、これらの方々の賃金低下が生じないかどうか、こういった国内労働市場への影響、さらには、専門的、技術的分野以外の外国人を受け入れるということになりますと、社会保障、教育、治安など国民生活全般に与える影響もあると思っております。

 こうした諸点につきまして、慎重に検討、議論していくことが必要ではないかというふうに考えている次第でございます。

郡委員 法務大臣も手を挙げられましたけれども、法務省も同じようなお答えなんだろうというふうに思います。

 そもそも、外国人による育児・家事支援サービス事業というのは、国家戦略特区で試験的に許可して事業を開始させ、拡大の必要性を検討するというふうにされたのは、政府の産業競争力会議雇用・人材分科会、三月十九日のことなんですね。安倍政権が成長戦略の一環として掲げる女性の活躍促進を目的として、女性の家事、育児、介護の負担を減らすために外国人労働者の受け入れが必要というふうに提案されまして、メディアもこれらの労働を同列に並べて報道している。

 しかし、家事、育児、介護の外部化の度合い、それからやり方というのは、一律ではないわけです。就労の場所も、例えば施設であったり、あるいは家であったりというふうにいろいろです。

 そこで、これまで実績のあるEPAで、介護福祉士候補生の場合、厚労省は利用者宅のサービスはなじまないとしてこれを除外しています。その理由は何でしょうか。短くで結構です。お答えください。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 EPAによります介護福祉士候補者の就労につきましては、国家資格取得に向けた必要な知識及び技術の修得のためと位置づけておりますので、そのため、管理者の目が届いた適切な研修体制を確保するという観点で、施設内に限定しているところでございます。

郡委員 とすれば、保育士などの資格取得のための研修ということであるならば、保育施設での保育サービスということに外国人がつくことも可能になるんだろうというふうに思います。慎重な意見だったけれども、もし政府がこれを受け入れるとして、こういう制度を設けなければ、保育士が家庭にも入ってくることを妨げないことになります。

 そして、家事労働、いわゆる家事の労働は家に入ってくるわけですから、これを適正に誰が評価するのか、監視をするのかということも全くできないわけでして、大いに問題があるというふうに考えておりますが、これを阻む相当の理屈というのも相当大変なんじゃないだろうか、見つけるのに苦労するんじゃないだろうかというふうに大変心配をしている。

 家事労働については、二〇一一年六月に、ILOの家事労働者のためのディーセントワークに関する条約、百八十九号条約ですけれども、これが採択されました。日本政府委員と労働者側委員が賛成票を投じております。

 なぜこのような条約が締結されたかといいますと、家事労働者が、まさに家庭の中で見えない労働になっているという特殊性ゆえに、各国の労働基準法、労働関連法から排除されてきた過去があって、これを反省して、家事労働者の権利保障とディーセントワークの実現を目的にしているわけです。

 このような視点がどうも政府の産業競争力会議等の提言には一切うかがえません。有識者議員は、この条約について御存じなのか、ほとんど読んだことがないんじゃないかというふうに思うわけです。家事、育児、介護とは異なる狭い範囲に解釈しているというだけじゃなくて、家事労働者が歴史的にこうむってきた労働法からの排除、奴隷的な労働を強いられてきたという問題への配慮が全くうかがえない、そういう提言になっている。私は、非常に憤りを持ってこの報告を読ませていただきました。

 条約に賛成票を投じた日本政府としては、万が一これを受け入れるとすれば、この条約の批准をしなくちゃいけないというふうに思うわけです。もう時間が来たというふうに出されましたけれども、このことについて、また機会があれば聞かせていただきたいと思います。六月にある程度のことをまとめるというのですから、非常に私は心配しています。

 以上です。

江崎委員長 次に、西田譲委員。

西田委員 日本維新の会の西田譲です。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 昨年の秋口のお休みを利用してなんですけれども、初めてミャンマーを訪問いたしました。友人の紹介で国会議員の方お一人ともお会いしまして、国会議員は、皆さん一期生なんですね、同じ一期生ということでいろいろお話もしました。

 ヤンゴンと、もう一つ、タイとの国境でもありますタチレク、黄金の三角地帯と言われるところですけれども、麻薬のところですね、そこもお伺いしました。

 本当に活気を感じましたし、一方で、現地の方々のお話を聞くと、やはり中国人の方々が資本を持っていろいろな分野に参入していらっしゃる。そして、日本人に対して、どんどんミャンマーに来ていただきたい、いろいろな支援をお願いしたいというお話もありましたし、国会議員の方からは、いわゆる法整備支援というものに対しての必要性というものを、やはり民主化間もないということの中で切実に訴えていらっしゃったことを記憶しているわけでございます。

 そんな中で、まず一問目ですけれども、ゴールデンウイークの期間を利用して、奥野副大臣におかれましてはミャンマーを訪問されたということでございます。また、平口政務官におかれましてはベトナム、ラオスを訪問されたということでございますけれども、海外視察をされた御感想と、そして成果、あるいは課題等がありましたら、ぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。

奥野副大臣 遊びではなかったということを証明しなくちゃいけないようであります。

 当初はもっと違うところも行く予定だったんですが、参議院にホールドされまして、タイとミャンマーへ行ってきました。

 タイは、法務大臣、今インラック首相というのが飛びましたけれども、この法務大臣はまだ生き残っているようでありますが、その法務大臣と対話をしたということ。それから、日本が建設技術と少年院の構造を教えたということもあって、シリントンという、王様の娘さんの名前のついたシリントン少年院というところへ行きまして、それから、刑務所も一応見てまいりました。

 成果というか、その少年院の建設というものが、単純にそれだけで終わらなくて、タイの中でその技術を使って刑務所とか少年院をさらにつくっているという、日本に対して評価が大変高いこともありまして、大変礼を言われたというのが一つのポイントです。

 それから、麻薬撲滅のための捜査のあり方等も日本が指導したようでありまして、そういったことも伺ってきました。

 ただ、心配したのは、刑務所へ行ったら、二千人の収容能力のところに五千人入っているというんですが、これはもう少し刑務所をつくらなくちゃいけないんじゃないのかなというふうな感覚を持ちました。

 ただ、そのシリントン少年院というところへ行って非常に感じたんですけれども、日本の場合よりさらに、受刑者というんですかね、少年院で処遇が終わった後、社会へ出ていくときの技術を幅広く身につけさせているというところを感じ取りました。自動車の修理とか、あるいはオートバイの修理とか、あるいは建設の技術とか、いろいろな幅広い指導をしているようでありました。ただし、そのシリントン少年院に来る人たちというのは、全国の少年院に入っている者の、いい人だけを集めてくるんです。非常に優秀な人がそこへ集まっているということです。

 ただ、これは、どれだけの人が正しい職について更生できたのかというところが、頭にちょっと今残っていないので申し上げられません。

 それから、ミャンマーは、これは皆さん方御承知のとおり元ビルマでありますけれども、今、再建途上と言ったらいいんでしょうか、そういうことでありますけれども、連邦の法務長官、法務大臣ですね、それから最高裁判所長官、憲法裁判所長官と対話をさせていただきました。彼らは、法制度整備についてミャンマーは進めていきたいので、日本からできるだけ力をかしてほしいということを言われました。

 それから、そのためにJICAから人が随分出ているわけでありますけれども、彼らとも対話をさせてもらいました。大変厳しい生活環境の中で大変な努力をしてくださっているということを感じてきました。

 そして、日本商工会議所の会頭ほか四、五人の方とお会いしました。ミャンマーという国は、イギリスから与えられた法律、あるいはインドから与えられた法律を遵守する形で今社会が回っているんだけれども、とにかく社会の実情と合わない、できるだけ早く日本が支援をして法律を再整備していかないと日本の企業が出られない、こんなことを言っておられました。

 そんな中で、私は、スズキ自動車の小さな工場を見させてもらいました。私も自動車の技術者でありますから見ればすぐわかるんですが、八十人ぐらいの従業員だったと思います。一日に六台のトラックをつくって、ほとんど、つくったらすぐ売れる、こんな環境で、きのう、スズキ自動車の会長に会いましたら、いやあ、行ってくれたんだなというのはいいんですが、やはり後進国はああいうやり方だよなというのを感じた次第であります。

 それから、全体として見ると、やはりミャンマーはまだまだこれからでありますけれども、先ほど宮崎さんがおっしゃったとおり、法曹人口がもっと少ないですね。だから、国を育てていく過程では、法曹人口をもっとふやさないといけないんだろうなと思います。

 それから、日本人墓地も行ってまいりまして、これは前に古賀先生とか二階先生も行かれたようでありますけれども、ビルマで最後まで戦われた方のお墓とか、あるいは、一旦日本へ帰ってこられて、そして、亡くなったらもう一回ビルマで墓をつくってくれと言って要求された方もいらっしゃるらしくて、その墓標には、ビルマにおける戦友とともにというようなことが書いてありました。そういうお墓もありました。

 最後に一つだけ。タイへ行ったときに、タイにも北朝鮮に拉致された方がいらっしゃるようでありまして、アノーチャさんという方ですけれども、法務大臣に、あなたはそういうことを御存じですかと言ったら、私は知りませんと言われたんです。やはりまだまだ、北朝鮮の拉致問題というのは世界のあらゆる国に関係しているんだろうなと思いますけれども、政府の認識というのは必ずしも日本ほどではない。そういうことで、できるだけ一緒になって北朝鮮との対話を進めましょうやというようなことでお話をさせていただきました。

 そんなことであります。ちょっと長くなって申しわけないです。

平口大臣政務官 法務大臣政務官の平口でございますが、私は、五月の三日の日に成田空港を出まして、バンコク経由でラオスとベトナムと行って、七日の朝、帰ってまいりました。

 四日の日が日曜日でございましたので、これは現地の日本人の方といろいろとお話をさせていただいたんですが、本格的に向こうの人たちと話し合いをしたのは、五日の日と六日の日でございました。

 五月五日の日は、ラオスの司法大臣を初めとする向こうの要人あるいは政府関係の機関の長、こういったような方々と意見交換をいたしました。同じようなことを翌日もベトナムでいたしました。

 それで、問題の所在は、ラオス、ベトナムとも、比較的国家の歴史は浅いのでございますけれども、憲法はありますが、そのほかの法律がまだ全然できていないというふうなのが現実でございまして、一番急を要するのは民法、特に契約を初めとする民法の分野、次に裁判所を支える民事訴訟法、刑事訴訟法の分野、三つ目に刑法、こういったようなことでございます。

 いずれも、法制度の交流は、ラオスは十六年前、ベトナムは二十年前からやっておりまして、それなりの成果を実際に上げていて、それも非常に感謝をされているというふうな状況でございました。

 それで、具体的な交流、どういうことをやっているかというと、まず、ラオス、ベトナムの方から日本の国に研修生を受け入れている、大学やあるいは政府機関で受け入れているということでございます。研修生が、日本で日本の制度を勉強して母国で生かす、こういうことでございます。

 もう一つは、日本から直接ラオス、ベトナムに出かけていって、専門家が法律をつくる指導をするという、具体的には、国際協力機構、JICAを経由して、専門家という形で、技術指導という言葉がいいかどうかわかりませんが、そういう名目でお手伝いをしている。具体的には、ラオスで三名、ベトナムで三名、きょう現在もお手伝いをしているような状況でございます。

 それなりの成果を今日まで上げてきているわけでございまして、これは向こうの要人も非常に感謝をしているということを実感いたしました。

 ですから、成果としては、平素は、こういうJICAの専門家の皆さんたちが、自分たちの事務所でいろいろとお手伝いをしているというような状況なんですが、日本の本国の政府がどれだけの意気込みでこういうお手伝いをしているんだろうかということについて、随分と向こうの人たちに意を強くしていただいたんじゃないかな、ここが一番大きな私たちが訪問したメリットじゃないか、このように思います。

 それで、いろいろと日本の国の長期間にわたる協力に感謝をされて、扱いも大変丁重だったんですけれども、せっかくの機会でございますので、向こうの方が言っていた要望のようなこと、課題のようなことを申し上げます。

 まず、両国政府とも、今までの協力関係を今後ともやっていただきたいので、できればこれを覚書あるいは協定というふうな形でやって、もっと中長期的な視点から腰を据えてお手伝いいただけるとありがたい、こういうふうな要望が一つありました。

 もう一つは、これはベトナム政府の方だったんですけれども、日本の司法試験とかあるいは司法修習の制度なんかがありませんから、司法あるいは裁判の分野の専門家がきちんと活動できる素養を身につけるために、教育をもう少しきちっとやり直さなくちゃいけない。ついては、そういう分野の大学校のようなものをこしらえたいので、日本の国の政府の方で援助していただけないか、こういうふうな要望がございました。

 いずれにしても、本当に、向こうの方へ行っている専門家の話もいろいろ聞いたんですが、例えば、ラオスの専門家が言っていたのは、民法の総則のようなものがないので、例えば代理という言葉がそもそもラオス語でない、ラオス語で代理という言葉をつくるところから始めなくちゃいけない、こういうふうなこともありましたので、私どももいい勉強をさせていただいたと思っています。

 以上でございます。

西田委員 副大臣、政務官、本当にお疲れさまでございました。

 やはりこの法整備支援というのは、私はミャンマーでお話を聞いたんですけれども、実は、旧宗主国イギリスに厄介にはなりたくないんだということはおっしゃっておりまして、特にやはり日本の協力を切望していらっしゃいました。

 実は、私の高校、大学の同級生もJICAの法律支援のスキームでミャンマーに今行っておりまして、平口政務官おっしゃったとおり、三名の内訳、各国お聞きしますと、弁護士一名、裁判官一名、検事一名というような体制で行かれているということでございます。一定の実績を持ったラオス、ベトナムと、ミャンマーの状況はまた違うと思いますし、必要であれば、そういったところへの拡充等もしていく必要があるんではなかろうか。

 私の友人は企業の弁護士をやっておったんですけれども、やはり、日本が支援するミャンマーの方々の自由を法で守るんだという強い気持ちでJICAのスキームに参加した話をしておりました。その彼の、個人の正義に基づいてそういった活動をすることに私は敬意を表しながら、一方で、政府としてできることはやっていただきたいなという思いをしたところでもございます。

 また、こういった日本が法整備支援をしていくということは、法の支配という大切な哲学を共有する国々を、私たちの友好国としてふやしていくという意味でも非常に大切なことであろうと思いますので、省の垣根を越えて、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいというふうに思う次第でございます。

 それでは、次の質問に入ってまいりたいと思いますけれども、きょうは弁護士法についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 せんだっての外弁法の質疑のときに、私、恥ずかしながら初めてこの弁護士法というものをじっくりと読んでみたわけでございますし、また、今回質問するに当たって、この弁護士法の制定の過程というものについても振り返ってみたところでございます。

 昭和二十一年、戦後すぐでございますけれども、当時の司法省の中で弁護士法改正の準備委員会がつくられて、実際その改正案、答申がなされたんですけれども、どうも、当時の裁判所であったり商工省や他省庁からの反対等出て、最終的には、昭和二十四年、議員立法で今の弁護士法ができた。

 その調整の中では、やはり占領期でございますから、GHQの司法の民主化という方針も色濃く影響が出たというふうに書いてありましたし、GHQ占領七年の中の前半四年というのは余り評価されたものじゃございませんけれども、そういった時代背景の中で議員立法としてつくられたのが今の弁護士法だったんだなということを改めて勉強したところでございます。

 さて、その中で、読んでいきますと、きょうは、基本的なことなのかもしれませんけれども、まず、弁護士というもの、そして弁護士会というものが強制加入団体であるということについて御質問させていただきたいというふうに思っております。

 弁護士法は、第八条で登録について書いてあるわけでございますね。第八条、「弁護士となるには、日本弁護士連合会に備えた弁護士名簿に登録されなければならない。」そして、強制加入団体という根拠となりますと、第四十七条でございますね。「弁護士、弁護士法人及び弁護士会は、当然、日本弁護士連合会の会員となる。」当然会員となるということで、これが強制加入団体であることの直接の根拠の条文ではなかろうかというふうに思います。

 強制加入といいますと、公認会計士、それに税理士、司法書士等もそうなんでございましょうけれども、まさにこの弁護士が強制加入団体の代表格であることは、例えば監督であったり資格審査、もしくは懲戒といったことまで弁護士自身に委ねられているといったことを考えますれば、まさしくこの弁護士会というのは、完全なる我が国を代表する強制加入団体。

 恐らく法制定時も議論されたんじゃなかろうかと思うんですけれども、例えば憲法が定める、二十一条でございますか、結社の自由、こういったものを制約してまで弁護士会を強制加入団体としたということには一定の理由があると思うんですけれども、その理由について、まず司法法制部長にお伺いをさせていただきたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 現行の弁護士法の基本的な理念は、弁護士の職務の独立性を確保することにあったとされております。そして、弁護士が基本的人権を擁護するために、その職責を尽くす上では、弁護士の活動を国家機関の監督から独立させる必要があることとして、いわゆる弁護士自治が認められたものでございます。

 一方で、弁護士の職務の適正を確保するという公共の福祉の要請に基づきまして、弁護士に対して、弁護士会と日本弁護士連合会に対する、これは二重の強制加入制を採用いたしまして、その監督を通じて弁護士自治の徹底を期することとしたものとされております。

西田委員 今御答弁にもありましたとおり、弁護士の業務として、当然、時として行政やあるいは国家権力と対峙しなきゃいけないという場面もある。そういった中で、弁護士自治をしっかりと確立していかなきゃいけない。これは恐らく、戦前は司法大臣の監督下に置かれていたことの反省も込めてのことなのだろうというふうに理解をしているわけでございます。

 一方で、時代の変化の中にあって、弁護士の活動領域の拡大、何も常に国家権力や行政と対峙しているわけではなく、企業における役割、あるいは、国際紛争でむしろ国家の側に立ってやらなきゃいけないときもあるわけでございますし、先ほどお話にも出ました法整備支援のようなこともありますし、このように、本当に弁護士の活動領域というのが多様になり、また拡大していっているわけでございます。

 そういった中にあって、引き続きまだ強制加入団体であるべき理由がどこまで言い切れるのかなというふうに思うわけですが、そこについてはどうお考えでございますか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 弁護士が基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、これは弁護士法に定めるところでございますが、これらを使命とし、その活動の適正な遂行を保障しなければならないという点は、これは立法当時から現在においても妥当するところでございまして、その観点で、強制加入制度を含めた現行の弁護士自治の制度は尊重されるべきものと認識しております。

西田委員 今、弁護士法の第一条を改めて御説明いただいて、社会正義という言葉が出てきましたが、これはまた後で取り上げたいというふうに思います。

 引き続き妥当な理由があるということでございます。

 一方で、私、日ごろから何となく感じておったわけでございますけれども、日弁連さんからいろいろな要望も受けますし、日弁連さんのいろいろな発信等を見ておりますと、本当に政治的な主張あるいは発信、あるいは政治的な活動を積極果敢になされているなというふうな印象を持つわけでございまして、そういったことというのは果たして強制加入団体である団体がやることなのかというふうなことが、どうもすっと落ちてこないわけでございます。私は、何も日弁連さんにそういったことをしてはならないということを言っているのではなくて、そういったことをやりたいのであれば、任意団体になってやられた方がよろしいのではなかろうかというふうなことも思うわけでございます。

 当然、これだけ弁護士の先生方がふえておりますし、これからもふえていくわけでございますし、そういった方々の思想、信条というものは恐らくそれぞれであろうと思いますし、そういったものが決してないがしろにされていいというふうには思わないわけでございます。基本的にやはり、いろいろな業界団体があります。さまざまな政治的発信をされていらっしゃいます。しかし、そういったものは、やはり任意団体であるからこそ、なるほどというところがあるわけでございまして、強制加入団体と政治的発信というものが果たしてどこまで合理的なのか、ここに非常に疑問を感じます。

 これについては大臣の御所見をお伺いしたいと思うんですが、よろしくお願い申し上げます。

谷垣国務大臣 この委員会には弁護士もたくさんいらっしゃるわけですが、私、二枚看板でございまして、一方で弁護士である、他方で、恐らく弁護士会が、法務省の尻に敷かれるようなことだけは避けたいと思っているその法務省にいるわけでございまして、二枚看板でございます。

 それで、昔、弁護士会に入りましたときに、先輩からいろいろ弁護士法とは何ぞやというような講義を受けまして、その中で、まさに先ほど司法法制部長がおっしゃったようなことを教わった。

 それに加えて、これはよき意味でのヨーロッパ等々に発達した同業組織、つまりギルドでございます。自治をして、国家権力に迎合しないで、自治のもとでしっかりやっていくんだ、だから、中でのギルドのメンバーのおかしな振る舞いもギルドとしてきちっと統制をしていくんだという、ギルドという言葉を使うのは適当かどうか知りませんが、やはりヨーロッパのギルドの歴史を見ますと、典型的なそういう性格を持っているように私は思っております。

 しかし、法務大臣としては、その活動が適切かどうかというようなことを、私は弁護士法は所管しておりますが、独立のためにこの弁護士法というものができたわけでございますので、行政の場にいる者がその活動の適切であるかどうかということを余り論評すべきではないと思っております。

西田委員 ありがとうございます。

 今ヨーロッパのギルドを例示してお話がありましたけれども、まさしく弁護士法の第一条で掲げられている社会正義という言葉、私は外弁法のときも大臣に聞きました。そういった社会正義というものを掲げているギルドというものが果たして何なのかということについては非常に疑問を持つわけでございます。

 強制加入団体という話もありますけれども、もう一度、この間の質問を振り返りながら、社会正義とは何ぞやということに立ち返りたいのでございますけれども、あのとき大臣はたしか、弁護士法の教科書から社会正義の定義を引用していただいたのではなかろうかと思っておりまして、社会正義とは法的正義、配分的正義、実質的正義があるというふうに御答弁いただいたなというふうに思っております。

 それでは、私は、きょうはいつものとおり、ハイエクを引用したいなと思っております。

 特にヨーロッパで全体主義に陥っていく過程の中で、社会正義というものがいかに妄想であったかといったことを言ったのがハイエクでございました。まさしく、きょう持ってきたのはハイエク全集第九巻、サブタイトルは「社会正義の幻想」なんですね。正義というのは個人の行動ルールであるというふうに言っておりまして、それを、社会を殊さら擬人化して正義を当てはめることは致命的な思い上がりであるというふうに言っているわけでございます。

 これは、引用させていただきますと、社会正義、「その考えを抱く人を幸せにするにすぎないかぎり尊重して邪魔をすべきではないが、他の人びとを強制する口実となるときには戦わなければならない擬似宗教的な迷信である。」と喝破しておるわけですね。さらには、社会正義というものを、無数の特殊利益の要求を満たすための呪文である、人々を誘惑する鬼火のようなものと言っているわけですね。そして、「「社会的正義」にたいする思い込みが政治的行為を支配するかぎり、この過程は全体主義システムにますます近づいていくにちがいない。」

 私、この社会正義について考え、そしてそれを第一条に掲げている弁護士法というものについて考えたときに、まさしく、弁護士会の先生方はそれぞれ各人がさまざまな政治的信条や思想、考え方をお持ちでありますけれども、この社会正義というよくわからない言葉によって、やはりそれぞれ個々人の自由がないがしろにされている部分があるのではなかろうか、ハイエク先生の指摘はごもっともだなというふうに思うわけでございます。

 そういったことで、もう一度、日弁連、会長声明とか決議とかを見てみますと、それぞれは、社会正義なのかな、こういったことが弁護士法が掲げる社会正義なのかなと疑問に思うことがたくさんあるわけでございます。

 例えば、会長声明の中では、集団的自衛権の行使に対する解釈の今回の正常化に対して、これは反対をするわけでございますね。首相の靖国参拝に対して批判をするわけでございますね、日弁連の会長声明で。特定秘密保護法への徹底抗戦をするわけですね、日弁連として。もしくは死刑廃止への固執をするわけでございますし、原発を敵視して、即時脱原発をずっと主張するわけでございます。最近では、我が党も出していますIR法案にもどうも反対をされているようでございますし。

 果たして、そういったものというのは社会正義なのか、社会正義に基づいてそういうことをされているのか。大臣、いま一度、社会正義ということについてどうお考えか。弁護士法一条が定めている社会正義に基づいてこういった主張がなされているのか、私は疑問でございます。大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 いや、もう大変難しい御質問で、この前御答弁申し上げた以上のことを申し上げられる用意がないんですが、日弁連が本当にいろいろな御主張をなさっている。私も、閣僚をやる前、弁護士会のメンバーでもございますから、いろいろなところに日弁連の方あるいは弁護士会の方がおいでになって、こういうことをぜひ実現したいから国会で協力してくれという御要請をいただいたこともしばしばでございます。

 そのとき、私、あるいは法務大臣としてこういう御答弁を申し上げるべきではないかもしれませんが、日弁連はいろいろな御議論をなさって、あらゆる分野の問題をいろいろ取り扱って、声明もしょっちゅう出てくるでしょう、私も日弁連のメンバーなんだけれども、それ全部、なるほど日弁連がこういう声明を出しているから少し尊重して国会で主張しようかなと思っても、あんなにたくさんいろいろなことをおっしゃってはとてもできかねます、本当に日弁連が、法の支配を守ったり、よき司法制度をつくっていくために、これだけは絶対日弁連の命をかけてもやるんだというお話があったら持ってきてくださいというような偉そうなことを申し上げたこともございました。

西田委員 大臣、やはりそろそろ、第一条の社会正義を撤廃して、その四文字を法の支配の四文字に変えた方がいいのではなかろうかなというふうに思う次第でございます。

 確かに、恐らく、日弁連という組織体でございましょうから、一応の民主的手続をとってのそういった発信や主張ではあろうかと思いますが、一般的に総意とは決して思えないようなところまで踏み込んでいらっしゃるわけでございます。だからこそ、疑問を感じるわけでございます。

 そして、また弁護士法に戻りたいと思うんですが、ここでネックになってくるのは、日弁連が、弁護士自治、そして強制加入団体になっている中でもやはり一番の強い権限というのは、日弁連そのものが弁護士に対する懲戒、監督の権限を完全に持っている、自主完結しているというところではなかろうかというふうに思うわけでございます。

 弁護士法第五十六条から懲戒が定められているわけでございます。第五十六条、後段の方を読みますと、「所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。」というふうに定めておって、一見厳しいなと。内外を問わずでございますから、二十四時間三百六十五日ということでございますね。もう聖人君子でなければならないことを求めているわけですが、こういった条文というのは、やはり怖いのは、恣意的な運用がなされていないかといったことが非常に怖いわけでございます。

 事実、福原先生の弁護士法に対する解説を引用させていただきますけれども、弁護士に対する監督及び懲戒の方式は、それが国家機関の監督に代替する措置としては不十分であることを認め、これを慎重に規律するため何回か条文が練られて、結局現行法のようになったのである。

 やはり弁護士自治が、そして弁護士自治における懲戒が決して完全なものとして最初から考えられていたわけじゃない。実際、この五十六条からその後七十一条まで、随分長く懲戒や監督に対する条文が記されているわけでございます。

 そういった中で、今実情どうなのかといったことに非常に興味があるわけでございます。何か個別の具体的事例があってこういった話をしているのかということでは決してございませんが、事実、今の弁護士自治における監督のあり方、そして懲戒、そういったことがどうなされているのか、もしくは、弁護士法でこう定めている以上、法務省が今の弁護士自治における監督、懲戒のあり方をどう評価されていらっしゃるのか、これについてお聞かせいただきたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 これはもう先ほどからの御答弁の繰り返しになりますが、弁護士法を所管しているのは確かに法務省です。ただ、先ほど申し上げましたように、議員立法でおつくりいただいたわけでありますが、要するに、弁護士自治、弁護士会の独立ということがこの弁護士法のいわば根本でございますから、法務大臣が軽々にそういう論評をすることは差し控えるべきだと思います。

西田委員 最初の方の質問で、この立法、弁護士法、議員立法、そして、立法当時、やはり国家権力に対峙するということの中で自治を認める。しかし一方で、法曹養成に対する議論はさまざまされておりますが、どうであれ、弁護士人口はこれからもふえてまいります。そして、弁護士の活動領域も拡大してまいります。

 そういった中にあって、引き続き今のままで果たしていいのか。議員立法だからこそ、むしろ立法府である我々が、今の実態、そして将来どうであろうか、まあ短期的な将来にしかなり得ませんけれども、そういったことをきちんと推察しながら、このあり方についてそろそろやはり検討していくべきなんじゃなかろうかというふうに思う次第でございます。法曹養成の議論は積極的になされておりますけれども、やはり弁護士会のあり方、日弁連のあり方、弁護士自治のあり方、これも同様に立法府として正面から取り組んでいかなきゃいけない課題ではなかろうか、このように思いますので、委員諸兄、先生方にもぜひ御理解をいただきたいなというふうに思う次第でございます。

 最後にお伺いします。

 そういったことをやっていくためにも、例えばフランス等では厳格な弁護士法が確かにあるそうでございます。しかし、企業に入る場合には一時退会が認められる制度があったりと、やはり他国には他国なりのさまざまな知恵、制度があるやに伺っております。そういったこともありますので、ぜひ法務省としても、弁護士法を所管している以上、他国の情報の研究、そういったことはやっていただきたい、こんなふうに思うわけでございますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、弁護士法を所管している立場からも、各国の弁護士会制度と申しますか、そういうものがどうなっているのか、よく研究していかなければならないと思います。

西田委員 ありがとうございました。

 前向きな答弁を最後にいただいたというふうに思うわけでございます。ぜひこの分野についても皆さんとともに議論を深めていきたい、このように思いますので、よろしくお願い申し上げます。

江崎委員長 次に、高橋みほ委員。

高橋(み)委員 日本維新の会の高橋みほでございます。

 きょうもどうぞよろしくお願いいたします。

 私は、四月の一日に生殖補助医療について御質問させていただきました。ただ、質問が途中になってしまいましたので、今回、引き続きということで質問をさせていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 何で私がこの生殖補助医療にこだわるのか、この法律、この法的な地位にこだわるのかというのは、先回も申し上げたんですけれども、やはり何といっても、大きくなったときに、自分が遺伝的に親、例えば父親の子供でないとわかったとき、子供というのは本当に苦悩する、自己を否定されたように思ってしまうという人が本当に多いということを伺っております。これは、例えば、養子であったことを隠されて、自分の本当の親だと思っていたというような場合にも起こると思ってはいるんですけれども、多いとは思うんですけれども、これからやはり何といっても医療の技術というのは本当に格段に進歩していくと思いますので、本当の意味で、遺伝子上の親であるのか子であるのかということというのはすごくこれから問題にしていかなければいけないものだと思っております。これを考えるには、絶対的に、子供の権利といいますか、子供がどう思うのかということを、きちんと考えていかなければいけない大きな問題だと思っておりますので、この議論を提起させていただきたいと思っております。

 今私が例を出したのは、大体親が、自分がそういう生殖の補助医療をしたということを隠していた場合、あるとき、何らかの事情でわかってしまった場合ということなんですけれども、そうではなく、最近では、たまに有名人の方が海外で代理母を利用して子供を持った場合にマスコミで取り上げられたり、海外から卵子をいただいて自分のおなかで育てて生まれた場合、それがマスコミで、やはりどこかで知られてしまうというか、もともと御自身から発信されたのかもしれないんですけれども、社会一般が知ってしまう場合というのも最近多くなっていると思います。

 そういう場合は、子供さんがある程度いろいろなことを理解する年齢になると、自分の置かれている立場というのがわかることになりますので、これはまたどういうふうにしていかなければいけないかというのを緊急に考えなければいけない問題ではあるんじゃないかなと思っております。

 そこで、まだ今法整備ができていないということなので、まずは、判例上どうなっているかということを伺いたいと思っております。

 先回は、精子を第三者から提供された場合というのを質問いたしましたので、今回は、精子は父親のものではあるんですけれども、世間でよく言われている代理母とか借り腹のこと、自分の卵子ではあるけれども、他の人に子供を産んでもらったり、卵子も産んでもらう人のものを使っていたりという二つの場合があると思うんですけれども、その場合についてちょっと質問したいと思っております。

 現行法上、懐胎、分娩した者が母というふうになりますので、例えば、代理母が、産んだのはいいんだけれども、親子関係不存在の確認訴訟を起こす場合もあるかと思うんです。この場合、現行法上どのように扱われているのか、お尋ねしたいと思っております。

深山政府参考人 法律上の母と子の母子関係につきましては、明文の規定はございませんものの、最高裁判所において、母子関係は分娩の事実によって当然に発生するという判断が示されておりまして、分娩者が母になるものと解釈されております。

 したがいまして、代理出産によって子供が生まれた場合には、分娩者である代理母がその子の法律上の母になるものと考えられます。このことは、代理母の卵子が使われている場合はもとよりですが、代理出産を依頼した別の女性、妻の卵子が使われている場合であっても同様でございます。

 したがいまして、代理母がみずから出産した子との、子供との親子関係の不存在の確認を求める訴えを提起いたしましても、そのような請求は認められないということになります。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 もちろん最初は代理で産んでもいいと思っていたのに、産んでから途中で心変わりをしてしまった場合、これはちょっとどうなるんだろう、本当に親子として認めなければいけないものなのかというのはやはり考えなければいけないんじゃないかと思っております。

 ちょっと事例を変えるんですけれども、代理で産んでもらった後、分娩者が、出産した子供がかわいくなってしまって、依頼した母親に引き渡さないという場合も考えられると思うんですけれども、この場合は、裁判所は引き渡すように強制できるものなのか、お尋ねしたいと思います。

深山政府参考人 先ほど御答弁申し上げたとおり、この場合の子供の法律上の母親というのは、子を出産した代理母でございますので、代理出産を依頼した妻ではないというふうに解釈されることになります。

 したがいまして、代理出産を依頼した妻あるいは夫婦が、法律上の母である代理母に対して子の引き渡しを求めることはできないものと解されます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 その場合は本当にそれでいいのかというのが一般人の考えだと思っております。

 ただ、代理母の、産んで自分の子がかわいい、自分の子というか産んだ子がかわいいというのもわかりますけれども、依頼した人たちの権利といいますか、それを守らなければいけないと思っておりますので、実際上はすごく大きな問題ではないかと思っております。

 このことについて谷垣大臣にちょっとお尋ねしようと思っていたんですけれども、二番の方とちょっと重なりますので、最後にまとめて御所見を伺いたいと思っております。

 視点を変えまして、今は、現実にその人たちがいろいろな訴えを起こしたときにどうなるかという話だったんですけれども、次に、子の出自を知る権利の保障という観点からちょっとお尋ねしたいと思っております。

 児童の権利条約というものが批准されておりまして、第七条に、「児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。」というような条文がございます。

 そうしますと、ここでの父母というのは結局誰を指すのかということをまずお伺いしたいと思います。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 児童の権利条約第七条1は、児童は、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有することを規定しております。

 ここで言う父母にいかなる者が該当するかについては、条約には明示的に規定されておらず、各締約国にその判断が委ねられているところであります。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 そうすると、各国の判断ということになりますと、日本ではどのように考えられるのでしょうか。

石原大臣政務官 同条約が採択された一九八九年当時は、まだ今日のように生殖補助医療が発達しておらず、生殖補助医療によって出生した子に関する問題まで想定されていなかったというふうに考えております。

 したがって、精子提供者や代理母等が同条約に言う父母に該当するか否かについては、今後慎重に検討していく必要があるものと考えております。

 なお、生殖補助医療によって出生した子の出自を知る権利については、国内外でさまざまな議論が続けられていると承知しております。外務省としては、今後とも、関係省庁と連携しつつ、こうした議論を注視してまいりたいと考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私はてっきり、これはもう決まっているんだというようなお話で、実際上、遺伝上の父母は関係ないというような御答弁がされるのかなと勝手に思っていたんですけれども、そうではないということを伺いました。ということは、これからの判断を待つということだとは思うんですけれども、遺伝上の父母が誰であるかということを知る権利をもしかしたら保障されると解されるという余地があると考えますので、やはりこれは早急な立法化をするべき時期に来ているのではないかと思っております。ありがとうございました。

 次に、情報の保管、管理ということについて伺いたいと思っております。

 これは、情報と申しますのは、誰が精子を提供したのか、誰が卵子を提供したのかということは、きちんと現在保管というか管理されているのかということが、将来にわたって、もし請求などがいろいろ認められる場合、まず必要だと考えるんですけれども、実際、この情報の管理というのはどのようになっているのか、お尋ねしたいと思います。

鈴木政府参考人 代理懐胎等の生殖補助医療により生まれたお子さんの出自を知る権利の関係で、父母に関する情報、出自を知る権利に関する情報の管理でございますけれども、その管理の大もとになっております生殖補助医療そのものについてのルール化がまだ十分行われていないというのが現状でございます。

 したがいまして、この権利に関する情報につきましても、例えば提供者に関する情報がそれぞれの医療機関において管理されているというのが現状であろうというふうに承知をいたしております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 実際に行われた医療機関で保存されているという話なんですけれども、そうすると、閉院された場合、カルテなどがなくなるということも十分考えられると思います。

 としますと、やはりある程度、病院だけではなく、一定の公的管理のもとにきちんと管理する制度を求める必要性もあるのかなというような印象があるんですけれども、その点はいかがお考えでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 出自を知る権利の大もとになります生殖補助医療そのものについてのルール化というものがやはり求められるというふうに思っております。

 ただ、この問題につきましては、やはり個人の生命倫理、家族観等にかかわります大変難しい問題であるというふうに承知をいたしております。

 この問題については、これまで、厚生労働省におきましても、厚生科学審議会の生殖補助医療部会で検討いたしまして、平成十五年に、出自を知る権利を含めまして法制化を図る、その場合の論点について報告書を取りまとめられたわけでございますけれども、それについてもその後さまざまな御意見がございまして、法制化に至っていない状況でございます。

 また、その後、平成二十年に、日本学術会議で代理懐胎を中心として報告書が取りまとめられました。その結果、「国民の代表機関である国会が作る法律によるべきである」ということにされましたけれども、一方で、卵子提供等につきましては、引き続き学術会議で検討するとされているところでございます。現在も、この観点で、さまざま、識者、御意見があるという状況だと思っております。

 こうした中で、現在、自民党を中心に、生殖補助に関します法制化に向けて検討が進められているところであるというふうに承知をいたしております。

 したがいまして、私どもといたしましては、こうした法制化のさまざまな各党、国会の御議論を注視いたしまして、適宜こうした御議論を踏まえて、今御指摘ございました、出自を知る権利、情報管理の問題につきましても、制度の運用のあり方、これを検討し、適切に対応していきたいというふうに思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 ルール化が必要だというのは、ルールがまずありきというのは当然のことでありまして、それはわかるんですけれども、例えば法律が随分後からできた場合、今現状生まれている人たち、生まれてくる人たちもたくさんいると思いますので、ルール化というのを待つというのも大事だとは思うんですけれども、まずは医療機関なりで、きちんと情報をとっておく、そしてそれを管理しておくということを、せめて行政指導といいますか何かでも、もうちょっときちんとしていただければいいんじゃないかなと私は思っております。

 その際に、私は、どういうことをきちんととっておくべきかというところを考えたときに、今までは、どちらかというと提供する側のプライバシーというものをかなり保護されてきたと思うんですね。ですから、大学の医学生が精子を提供したりとか、将来的に自分の精子によって子供ができたとしても、それは自分とは関係ないよというスタンスだったと思うんですけれども、これからは、もし提供する人がいたら、将来自分の子供が生まれたときに、自分の身分を明らかにしてもいいよという人しか提供すべきではないんじゃないかと私は実は思っております。

 そうしないと、子供の立場からして、自分の親が誰かということが将来的にわからなくなる。将来においてきちんと、子の親は誰かというのを教えなければいけないという法制度ができたときに、間に合わないというか、それでは今までの、どちらかというとプライバシーに配慮したということになると、子供の権利というものが守れなくなると思いますので、これからは、将来、自分のプライバシーが暴かれる可能性も、暴かれるというか開示される可能性もあるということをぜひきちんと皆さん理解した上で、そして署名した上で、そういうような生殖補助医療というものに携わっていくべきではないかと私は思っております。

 ただ、これはもちろん私の見解ですので、いろいろな御議論があるかとは思うんですけれども、そういうような意見があるということもぜひ知っていただければと思っております。

 最後になってしまったんですけれども、やはり、ルール化をしていく、法律をつくるということはすごく大事なことでありまして、これは本当に早急にしていかなければいけないと思っております。

 谷垣大臣、今までの議論を聞きまして、どのようなお考えがあるのか、伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 代理出産とか生殖医療みたいなものは、今の民法親族法が想定をしておりませんので、それで全て、今起こっている、起こりつつあることに対応することはできないですね。そして、現実に、例えば海外へ行ったり、あるいは国内でもあるかもしれません、そういうものが行われていて、そういう代理出産等によって生まれた子供も現に出てきている。何らかのルール化が必要である、私もそう思います。

 ただ、先ほどからの御議論ですが、これをルール化していくときに、生殖医療をどうしていくか、生殖医療のいわば行為規制といいますか、そういうものがないと、なかなか判定できない。例えば代理出産を認めるか否かについても、非常に見解の対立が多くて、それは認めるべきだという方ももちろんいらっしゃるけれども、認めるべきではない、そういうようでは人倫の根本が崩れるというのか、認めるべきではないという人もありますし、罰則でもってそれは禁ずべきだという方もある。やはりそこがはっきりしませんと、代理出産をした場合、できた子供、親は何なんだというのも、なかなかできない。

 そこで今、先ほど厚労省の方からも御答弁がございましたけれども、議員立法でいろいろ議論をしていただいて、しかし、伺ってみますと、それもやはり多様な意見があるようでございます。それで、先ほどおっしゃった、例えば自分の出自を知る権利というようなものも、先ほど厚生省からも御答弁がございましたように、あの中の研究会で一応指針は出していただいているんですが、やはり行為規制というようなもの、生殖医療に対するルールが確立しないと、なかなか自分の出自を知る権利というようなものもまだうまく整理ができないということが現実にあるんだろうと思いますね。

 そこで、そうこうしている間に事態は進んでいってしまうんじゃないかという高橋委員の御心配です。

 今、自民党で御議論いただいている案の中にも、例えば、生殖医療、精子を提供したというような場合にはきちっと記録を保持すべきだというようなことを議論していただいているようです。結局のところ、先ほどおっしゃった、出自を知る権利というものをどう構成して、具体的にどうそれをやっていくかということになりますと、そういう個人情報を誰が管理しというような問題、これはなかなか簡単な問題ではございませんね。そういうものを含めての検討がやはり必要になってくるんだろうと思います。

 私としても、今、議員立法としてそういうものが進んでおりますのを注視してまいりたいと思っております。

高橋(み)委員 御丁寧にありがとうございました。

 確かに、行為規制、本当に生殖補助医療がいいのか悪いのかというのも、宗教上の問題というのか倫理的な問題というのがかなり大きいと思っておりますので、簡単にはできないと思いますけれども、やはり先ほどから何遍も述べていますように、るる一生懸命検討されている間にも生まれてくる子供というのがいますので、その人たちのことを考えて、なるべく早急に結論を出していけるようにしていただければと、私たちも協力したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

江崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。椎名毅委員。

椎名委員 こんにちは。休憩明けということですけれども、頑張ってまいりたいと思います。結いの党の椎名毅でございます。

 本日、一般質疑、四十分質疑時間をいただきました。非常に身に余る光栄でございまして、時間も余ってしまうかもしれませんけれども、御容赦いただければというふうに思います。

 本日は、取り調べの可視化と社会的養護について伺ってまいりたいというふうに思います。それで、時間が許せば、賭博罪、賭博関連の法制について少し伺ってまいりたいというふうに思っております。

 取り調べの可視化といえば階先生と鈴木先生というのが専売特許でして、僕が余り取り上げることもなかったんですけれども、この間、四月の三十日に事務当局試案というものが法制審新時代の刑事司法特別部会において発表されたということでして、これについて伺ってまいりたいというふうに思います。階先生も先ほど取り上げていらっしゃったので少し重なる部分もあるかと思いますが、御容赦をいただきたいというふうに思います。

 事務局試案で、取り調べの可視化ということが、ようやく法制度として本格的に検討していこうということが公式に案として出てきたわけですけれども、ここで掲げられております可視化対象事件の案ということで、A案とB案というものが掲げられているかというふうに思います。A案というのは裁判員制度対象事件、B案というのが、裁判員制度対象事件に加え、それ以外の全身柄事件に関する検察官の取り調べという形になっているかというふうに思います。

 取り調べの録音、録画というのは、やはり冤罪防止という観点からも非常に有意義だというふうに思います。しかし、事件の対象が裁判員制度対象事件というのがベースにあるということですけれども、後で触れますけれども、ここで私自身が一つ例に挙げたいのが、いわゆる迷惑防止条例違反という痴漢の冤罪です。

 罪としては非常に軽微な事件なんですけれども、痴漢冤罪というのは最近結構大きな形で報道されもしますし、冤罪で被害を受けてしまった方々というのは人生が狂ってしまうということで結構問題にもなっているわけでございますけれども、そういった非常に軽微な事件でも冤罪というものが起き得る中で、なぜこういうA案、B案という基準なのかというところがやはり気になるわけでございます。

 全事件の取り調べの可視化ということを行うことが適当ではないと考えているからということなんだろうというふうに思いますけれども、まず、その検討段階において、全事件について、さらに言うと、警察、検察の取り調べについて可視化を行うことが適当でないと考えられたからこそこういう案になっているんだろうと思いますが、それはなぜなのかというところです。まず、そこからちょっと伺います。

谷垣国務大臣 これはまだ試案でございまして、おっしゃるように試案の中にはA案、B案があって、それに加えて、録音、録画義務の例外事由として、一定の事情によって録音、録画をやると被疑者が十分供述できないおそれがあるような場合を記載しているわけですね。

 それで、今までの議論の経緯を若干申し上げますと、昨年一月の基本構想では、可視化を義務づける対象事件について、全事件における全ての取り調べを対象として制度を導入すると膨大な数になってしまって、必ずしも現実的ではない、だから録音、録画の必要性が高いものを対象とすることが相当である、こういう御議論だったと思うんです。それで、録音、録画義務の例外事由については、「取調べや捜査の機能に深刻な支障が生じる事態を避けるという観点から、録音・録画の対象外とすべき場面が適切に除外される制度とする必要がある。」こういうふうにされました。

 そこで、それを踏まえていろいろ議論が行われたわけですが、そういった議論の後に先ほどの試案が示されたということになります。

 そこで、最後の議論の取りまとめに向かう方策として、この試案というものが事務当局の一つの案として出てきたわけですが、もとより確定的なものではありません。今後、部会での議論を踏まえまして、必要に応じてその内容を改編あるいは改定して、最終的な取りまとめをするということでございます。

 私としては、取り調べに与える影響、あるいは国民の安全、安心を求める期待、こういったものにも十分目配りをしていただいて、バランスのとれたものにしていただきたいと思い、まずはどういう結論をいただくのか、今は見守っているということでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 全事件を対象にするというのは確かに膨大だろうというふうに思います。重点的なところからやっていくというのは、コストもかかることなのでそれは正しいんだろうとは思いますけれども、取り調べが警察と検察で行われること、さらには、迷惑防止条例違反みたいなそういう軽微な事件でも問題が起き得るということも考えた上で、A案、B案だけでなく、さらにもう少し検討するところがあるんじゃないかなというふうに思った次第でございます。

 例外の部分についても大臣から今御指摘いただきましたけれども、例外については、暴力団による部分というのを先ほど階先生がお取り上げされていらっしゃいましたけれども、それが四項めでして、それ以外には、機器の故障により記録をすることが困難とか、被疑者が記録を拒んだことその他の言動により、記録したら被疑者が十分な供述ができないんじゃないかというような場合とか、その他、犯罪の性質その他により、記録をしたら被疑者が十分な供述をすることが予想できないというような場合ということが挙げられているわけですね。

 私自身も、あくまでも直観的にですけれども、暴力団事件のような、さらには組織犯罪のようなものについては、共犯者の供述等をとらなきゃいけないし、さらには、捜査技術というのがいろいろあって、共犯者の供述を隠したりしながら相手方から供述をもらうとか、いろいろなテクニックがあり得るだろうと思っていて、そういう意味で、一定程度、暴力団とか、犯罪の性質上、共犯等というところについてはあり得るのかなというのは直観的には思っていますが、他方で、機器の故障とか、被疑者が記録を拒んだこととか、こういったところはもう少し検討の余地があるかなというふうには思っています。

 機器の故障を言い始めると、今回は動かなかったんですと言いわけができるようになってしまうんですね。動かなかったから、結果、やはり例外に該当しますということになってしまうので、原則、技術的な理由による例外というのはなかなか認めていくべきではないんじゃないかなというのは私自身は思っております。

 私自身が取り調べの可視化に興味を持ったというか現場を見てやはり非常に大きな感動をしたのが、アメリカ視察に行かせていただいたときでございます。昨年の八月、法務委員会の理事会メンバーで、私は別に理事ではありませんけれども、そこに参加をさせていただきました。本当に感謝を申し上げたいというふうに思います。

 アメリカでは、幾つかのところで、取り調べの可視化、録音、録画の現状というものを拝見してきたわけでございます。非常に勉強になったなというふうに思います。

 法律的な根拠には基づかず、あくまでも任意でやっているというたてつけではあったものの、かなり広範な事件について録音、録画をしているとともに、その録音、録画のやり方についても、部分部分で録音、録画をしているわけではなくて、取り調べを始める前から後までずっと、べたっと録音、録画をしていて、さらに言うと、その犯人というか被疑者が自白をした場面にパソコンでクリックをつけてそこに附箋みたいなものをデジタルでつけた上で、それをそのまま証拠に使っていたりするというような話もあったかというふうに思います。非常に勉強になったなというふうに思います。

 彼らは、取り調べの録音、録画を認めることそのものが、基本的には、被疑者のためだけではなくて、捜査機関のためにもなるという発想のもとそれを進めているというような趣旨だったかというふうに思います。

 もちろん、自白を導くために使える客観的な証拠を集めるための捜査手法というところで、結構大きな違いが日本とアメリカでもあるので、視察に出席していた議員の皆様方についても、そこに質問というのが集まっていたところもあったかなというふうに思います。

 なので、必ずしも全てそれが当てはまるわけではないということは十分承知はしておりますけれども、ぜひ、一緒に行かれた奥野副大臣にも、そのときの状況に対する率直な御感想、取り調べの可視化に対する御意見、それから、今回の事務当局試案というものが出てきたところについて率直なコメントをいただければというふうに思います。

奥野副大臣 私も椎名委員に連れられましてアメリカへ行かせていただきました。ですから、椎名さんが全部しゃべればそれで終わるんですが、また引っ張り出されまして。

 とにかく、私どもが行ったのは三カ所だったと思いますけれども、FBI、バージニアの州警察、それからロサンゼルスの市警察に行かせていただきました。それぞれの土地での録音、録画のあり方についてもいろいろな議論をさせてもらいました。

 ただ、いずれの視察先でも、取り調べの録音、録画制度は導入されていなかったんですけれども、視察した州や市のレベルの警察では、取り調べ状況の立証などに有効であるという判断で積極的に運用しているようでありました。FBIがなぜ積極的でないかといいますと、供述が得られにくくなるという判断をしているようであります。

 これからは私の意見ですけれども、率直に考えるところは、本当に、性善説で物を言ってくれるのかということが確約できるならば、録音、録画というのも意味があるだろうと思います。

 ただし、皆さん方も、新聞記者と話をしたときに、これはオフレコでねと言うでしょう。そういうことを考えると、やはりそのときの状況に応じて、ちょっと口をつぐんじゃおうかとか、うそをついちゃおうかとか、あるいは正直に話そうかというのは、いろいろ相手も考えると思うんです。

 そういう意味で、一律に本当に録音、録画がいいかというと、私はそうでもないような気もします。

 ですから、うまく考えた上で、これは大丈夫だなと思うときに使わせてもらえるような運用ができるならば、それがいいかなと思いますけれども、それも面倒くさいよなという感じになりますね。ですから、相手が本当のことを言っているか、本当のことを言っていないかということも判断できるようなことが考えられるならば、それがベストだと思うんですけれども、なかなかそう簡単にはいかないと思います。

 ですから今、先ほど大臣がお答えしたとおりでありますが、試案というものをつくっていますけれども、その試案を、皆さん方の意見を聞きながら、しっかりと確立できるものであるならば、そういうやり方でつくり出そうじゃないか、こういうことであろうと思います。

 私も、そういう意味でいうと、積極的に、前のめりになってこれがいいということではなくて、いろいろ皆さん方の意見を聞きながら、バランスのとれたやり方を考えていくというのがこれからの道ではないかな、こんなふうに感じております。

椎名委員 ありがとうございます。

 非常に議論のあるところなので、そういったスタンスは本当に望ましいというふうに思っております。

 他方で、急を要するというか、現実に冤罪等の事件で、それでも私はやっていないという映画が昔ありましたけれども、やっていないにもかかわらず自白を半ば強要されるというようなこともあったりするというふうに巷間言われております。もちろん、私自身も別にその現場にいたわけではないので、そう言われていますとしか言いようがないわけですけれども。

 それで、さらに言うと、一般的に見てというか、はたで見て不合理な理由ではないかというような理由で半ば裁判官が裁判において、例えば、捜査官の出してきた証拠を追認し、被疑者の、要するに、自白の撤回というか、さらには自白をしていない場合とか、その反証みたいなものを覆した判決を出すこともあったりするわけでございます。典型的な例が、先ほども申し上げましたけれども、痴漢冤罪事件なんだというふうに思います。

 痴漢冤罪事件については、本当に否認をし徹底抗戦するとなると、身柄拘束まではされることには恐らくなるだろう、一般的にはそうなるだろうというふうに思います。そうだとすると、一応、裁判員裁判対象事件ではないけれども、身柄事件には恐らくなるだろうから、B案だと検察官の取り調べについては恐らく録音、録画対象にはなるだろうというふうに思います。しかし、A案ではもちろん対象にはなっていないということです。

 こういった痴漢の冤罪とかみたいな、被害者の証言とそれから被疑者の自白以外に余り物証がないような事件というのは幾つか典型的にあり得るような気がいたします。こういうときこそ自白の任意性というものが非常に重要なんだと思っていて、取り調べ状況をきちんと検証するということはやはり裁判手続においても非常に重要だというふうに思います。

 そういう意味でいうと、やはり刑の重い軽いではないんじゃないかなというふうに思いますけれども、そのあたり、ちょっと御意見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 冤罪事件と言うかどうかは別として、痴漢事件というのは物すごくしょっちゅうあるんだと思いますね。私も幾つかの役所で閣僚等をやらせていただきましたけれども、余りこういうことは言ってはいけないかもしれませんが、それぞれのところで、不祥事が全くないようなことであるとうれしいんですが、しばしばこういう事件はあるんだなという思いをしております。

 それで、冤罪のようなことを言われる面もあるわけですね。だから、それをどうしていくかということですが、これは先ほど申し上げたとおり、A案、B案というのもまだ今試案でございますので、今の椎名さんのような御議論も含めて、これからさらに詰めていただくんだろうと思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 痴漢冤罪事件というのはよく本当にあると言われて、痴漢本体もありますし、冤罪だと訴えている部分もよくあります。

 私自身も、自分の地元は小田急線の登戸というところにあるんですけれども、国会議事堂前の駅まで大体電車で三十五分ぐらいなんです。普通に毎朝小田急線に乗るんですけれども、小田急線の朝の七時半ぐらいから八時半ぐらいまでの間の一時間のラッシュというのは本当にひどくて、完全に体が密着しているわけですね、隣の人、一周ぐるっと回って。これでさわった、さわらないとやられると困るよなと自分自身でもやはり思うので、何とか自分の身を守ろうと思って、両手を上に上げたりとか、いろいろな工夫をしているわけでございます。やはり自分の立場というのもあるので、変な疑いには巻き込まれたくないというのがありますから、それはすごく気をつけてしまうわけですね。やはりこういうことというのがあるわけです。

 実は、三鷹市痴漢冤罪事件というのが今高裁で争われているんですけれども、この事件に僕が興味を持った理由は、二〇一一年の大体十二月ぐらいに、吉祥寺の駅から仙川駅まで行くバスの中で痴漢をした、されたという事件があったわけです。これに何で興味を持ったかというと、その当時、その時点で僕はその近くに住んでいて、このバスをよく利用していたという、ただそれだけなんですけれども。

 話を聞くと、ビデオの車載カメラの中に映像が映っている、左手はつり革、右手は携帯電話で彼女にメールをしていた。ごく数秒の間だけ車載カメラで左手が映っていないという状況がある。ただそれだけなんですけれども、その状況において、左手が映っていないから痴漢をしたという被害者の被害供述には信用性がないとは言えないというような形で有罪判決を受けて、罰金刑をもらっているわけです。二十九歳の非常に若い方なんです。その方は今高裁で争っていますけれども、こういう事件がたくさんあるというふうに言われています。

 この中で言われている中でも、今申し上げた供述の中で、判決の一部を読み上げると、被告人は、バスが揺れていたので、右手で携帯電話を操作している間、左手でつり革をつかんでいた旨供述する、確かに、バスが揺れている状況下で、右手で携帯電話を操作しながら、左手で痴漢することは容易ではないけれども、それが不可能か著しく困難とまでは言えないみたいな形で事実認定をされているんですね。こういうことがあったりします。

 さらには、こういった痴漢冤罪被害と闘う会みたいなものがいろいろ、世の中には結構幾つかあるんですけれども、その中で、痴漢冤罪被害者という表現をしたらいいのか、痴漢事件で有罪判決をもらった人というふうに言えばいいのか、ちょっとよくわからないですけれども、その方が指摘しているところなんかでは、取り調べ中に捜査官から、あなたがやっていないというなら、その証拠を出してくれと言われたというような指摘もあったりするわけです。

 これは、刑事手続における本当に根本的な基本原則であります、疑わしきは罰せずという基本原則と明らかに逆行しているというか、反対だと思うんですね。立証責任が言ってみると転換されているようなものだというふうに思います。やはり冤罪防止という観点と捜査のあり方というのは非常に難しいところだと思いますけれども、こういった今申し上げた例があるということを一応前提とした上で、ぜひ大臣の、刑事手続に関する基本原則として、疑わしきは罰せずというところに関連して、お考えを伺えればというふうに思います。

谷垣国務大臣 今いろいろな事件と絡めておっしゃいましたので、慎重に、具体的な事件の取り調べということとは切り離しまして、一般論として申し上げますと、それは確かに、疑わしきは罰せずというか、被告人の利益にというのは刑事の一つの基本的な考え方ですね。

 だから、検察官あるいは司法警察員、いろいろな取り調べの手法があるんだと思うんですが、この意味が、あなたが自分の無罪を立証しないんなら有罪になるぞという発言だとすれば、相当乱暴な発言だということになりますね。逆にまた、自分も事態はわからないんだけれども、あなたのことを訴えている人がいるからよく事情を説明してくれ、あなた、うまく説明してくれないと余りあなたのいいようにならないかもしれない、よく説明してくれというような言い方はあるいはあるのかもしれないなと思いますね。

 ですから、要するに、被疑者の主張に十分耳を傾けて、そして積極、消極両方の証拠も十分に把握、収集に努める、その上で判断をするということだと思いますが、そういうことだと思います。

椎名委員 ありがとうございます。

 答えにくい御質問で申しわけありません。

 捜査官、特に警察なんかに関しましては、ともすると言葉が過ぎることもあったりするのかもしれません。

 私自身も、警察の取り調べの状況というのはつまびらかにきちんと見たわけではないので、正直、どういった手法が使われているかというところについては正確に知りません。私自身の個人的な体験を申し上げますと、検察修習をやっていたときも、警察の取り調べを見せてほしいと言っても、まあ、そこはいろいろあるからみたいな形で見せていただけなかったことだけは記憶しております。

 そういう意味で、もし言葉が過ぎるようなことが仮にあるのであれば、やはり、そういったところも含めて、取り調べをきちんと録音、録画しておくということは有用なのではないかというふうには思っております。

 なので、あくまでも試案段階なので、これを検討した上でさらに最終的にと大臣、副大臣おっしゃっていただいたので、私自身のコメントを申し上げますと、もし仮にB案とするのであれば、検察官だけじゃなくて司法警察員、警察の方まで含めていただきたいなというふうに私自身も思います。

 取り調べの可視化と関連して、冤罪の話を最後に一つ伺いたいんです。

 冤罪というのは、どうしてもそこにいる目の前の被疑者、被告人、この人の人権保障という観点から、この人が無辜、無罪である、本来的に事件を行っていないにもかかわらず処罰を受けるという形で、その人の被害、その人の人権保障という観点から語られることが非常に多いと思いますけれども、実際は、それだけではないんですね。

 それは何かというと、裏にはきちんと必ずどこかに真犯人がいるわけで、もしかしたら、真犯人がそこでもう一回次の犯罪を犯すかもしれないし、さらには、真実発見ということができないで、被害回復ということもできない可能性も出てきてしまうので、やはり冤罪防止というのは非常に重要だと思いますし、治安維持、世界一安全な国日本をつくるためにも物すごく重要なことなんだというふうに思っております。

 最後に、この取り調べの可視化の話を含めて、冤罪防止というところについての大臣のお考えと意気込みを伺いたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 今、椎名さんおっしゃったように、実行行為をやっていない者を、おまえが犯人だといって罪に陥れる、これはもうやってはならないことであるのは明らかですね。しかし、それは、その人の人権だというだけではなくて、陰でほくそ笑んでいるような者を許す、被害賠償もできないような形にしてしまうという面もあって、安心、安全な社会づくりということとは反してしまうということですから、これは両面あるんですね。無罪の人をやっちゃいけないというのと同時に、やはり真犯人、本当に悪いことをしているやつはほくそ笑ませるなという気持ちが大事だと思います。

 だから、それをどうしたらいいか。基本に忠実な捜査をして、先ほど申し上げたように、被疑者の主張にも十分耳を傾け、積極、消極両方の証拠をよく収集して吟味するということになるんだろうなと思います。

 可視化の議論も、私が十数年前に国家公安委員長をやりましたときは、そのころは、警察も検察も、いや、可視化なんて言われたってという感じが非常に強かった。現在、こうして法務大臣になりましていろいろ議論を聞いておりますと、そこは随分変わってきたと思います。

 やはり今のような面で、本当に真実を明らかにしていく上で随分使えるなという気持ちになってきている面もあると思います。十分そういうところを生かしていかなきゃいけないなと思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 それでは次に、時間の許す限り、社会的養護の話を伺いたいというふうに思います。

 社会的養護というのは、児童福祉法に基づく要保護児童を社会で保護していくという形ですけれども、その現状として、基本的に、社会的に養護を行う対象児童が大体四万六千人ぐらいいて、そのうち、おおむね八割五分から九割ぐらいの方が施設の中で育っている。

 私自身も、地元の児童養護施設なんかを定期的に訪問して、実際にどういう環境で、社会的養護を受けている子供たちというのがどういう暮らしをしているのかというのは、少しずつですけれども、勉強して取り組ませていただいているものでございます。

 この社会的養護に関する考え方というかやり方の中で、やはりなるべくなら家庭的な環境で育てていくべきではなかろうかという考え方があるというふうに思います。

 日本は、大体一対九の割合で、または一五対八五かもしれませんけれども、そのぐらいの割合で施設が多いわけですけれども、諸外国を見てみると、必ずしもそうではない。オーストラリアなんかを見ると、九割を超える方々が、いわゆる里親、いわゆる養子縁組、こういった形で社会的な養護を行っている。施設の中に入るのは、基本的には、養親を見つけることができなかった場合、里親を見つけることができなかったような場合、こういうような場合に限られて、非常に限定的に運用されている国もあるやには聞いています。

 そんな中、私も知っている、愛知県の児童福祉司をやっている矢満田さんという方が、何十年か前にいわゆる愛知方式という方式を考え出して、児童相談所から乳児院へと新生児を受け渡していくということではなくて、児童相談所から乳児院を経由するということではなくて、まず、新生児の段階で、生まれた段階ですぐ養子に出していく、里親に出していく、こういうことを実践している方々もいるというふうに聞いています。

 これを制度として実際により推し進めていき、結局、家庭的な環境で社会的養護が必要な子供たちを育てていくことを促していくということ、こういったことを今後検討していかなければならないんじゃないかなというふうに思っておりますが、厚生労働省の御見解をいただければというふうに思います。

鈴木政府参考人 社会的養護が必要な子供たちにつきまして、先生御指摘のように、できる限り家庭的な養育環境の中で養育されることが重要でございまして、厚生労働省といたしましても、この観点から、里親委託を推進しているところでございます。

 先生御指摘の愛知方式でございますが、御案内のように、愛知県では、望まない妊娠をして出産した場合、養育できない、あるいは養育しないという保護者の意向が明確な場合に、出産した病院から里親家庭に直接委託する方式、愛知方式をとっているというふうに承知をいたしております。

 厚生労働省といたしましても、平成二十三年に里親委託ガイドラインを策定して、里親委託を推進しておりますけれども、その中で、この愛知県の取り組みにつきまして、妊娠中からの切れ目ない支援を行う上で非常に有効な方法であるということで、全国の自治体の担当者宛てに情報提供しておりますし、また、毎年の主管課長会議におきましても、新生児、乳児の里親委託、これを推進するように自治体にお願いしているところでございます。

 今後とも、早い段階から家庭的な養育環境の中で養育が行われるように鋭意努めてまいりたいと思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 児童相談所にいる児童福祉司の方々のマインドセットというか考えというのは、恐らく親の同意を得ないと養子縁組、里親等の手続ができないとかいう発想に基本的にはなるんだろうというふうに思います。

 いろいろな雑務というか諸事務、これを行っていく手間ということ、さらには、施設そのものを見てみると、それなりに非常に整ったすばらしい施設が多いわけですけれども、施設に預けておけば安心という、そういう安心感みたいなものもあるかと思いますけれども、やはり、それで施設をどうしても選択してしまうという部分があるんだろうというふうに思います。

 他方、社会的養護に携わる人間なんかからよく聞くのが、親の権利が強いんじゃないか、強過ぎるんじゃないかというふうによく指摘を受けます。

 これは何を意味するかというと、社会的養護を受けるべき必要性の高い要保護児童とその保護者である親と利害対立をするような場合、典型的には、虐待、ネグレクトだと思いますけれども、こういう虐待、ネグレクトのような場合であっても、あくまでも原則だとは思いますが、原則として、親の同意がなければ、里親なり養子という形に持っていくことは基本的にはできないというふうに思っていて、例えば、親が、よその親に子供をとられてしまう、よその家庭に子供をとられてしまうとか、そういういわゆるエモーショナルな部分で反対をした場合に、それを押し切って養子なり里親なりということに、児童福祉司、児童相談所は、なかなかそっちに誘導していくことが難しいという現状が恐らくあるだろうというふうに思っています。

 これは、ハーグ条約のときに、一年ほど前ですけれども、子供の連れ去りという問題について大臣にもお取り上げさせていただきましたけれども、ここでもやはり同じような問題があったりはするというふうに思っています。

 親と子の利害が対立する場面というのはそれなりにあり得るんだというふうに思っています。親権、監護権をとった親が親権、監護権をとらなかった親に子供を会わせたくない、でも、子供から見ると本当は父親にも母親にも両方定期的に面会をした方がいいだろうというような場面、こういった場面が間々あるんだというふうに思っています。

 こういったときにやはり考えるべきというのは、児童の権利条約でも、それから、正確な名前がちょっと今出てこないんですけれども、代替的養護に関する国連の指針なんかに基づいても、基本的にはやはり子供の最善の利益を重んじるべきであるというような書き方になっているかというふうに思います。

 多少哲学的な問いではありますけれども、この児童の最善の利益というのは何なのかということと、親と子供の利害関係が対立するような場面についてどのように考えていったらいいのかというのを、まず厚生労働省から伺ってまいります。

    〔委員長退席、土屋(正)委員長代理着席〕

鈴木政府参考人 児童の最善の利益ということでございますけれども、これは御指摘のように、児童の権利に関する条約等においてうたわれている概念でございます。

 政府としてこれを正確に、明確に定義したものはございませんけれども、例えば児童福祉法の中で、一条一項で、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」と規定されておりますこと、あるいは、この第二条におきまして、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」とされていることなど、共通する理念があるものというふうに理解しております。

 こうした理念のもとで、厚生労働省といたしましても、保護者のない児童、あるいは虐待等によりまして適切な監護を受けることができない児童、こういった児童につきまして、里親の委託によりまして、特定の大人との愛着関係のもとで健全な心身の成長発達を促す、あるいは、養子あっせん等によりまして、温かい家庭を与えて児童の養育に法的安定性を与える、こういうことが児童にとってよりよい養育環境を提供する上で重要であると考えておりまして、推進に力を入れております。

 この場合に、親の権利との関係でございますけれども、現行の児童福祉法の二十八条におきましては、虐待など著しく児童の福祉を害する場合におきまして、親権者等の意に反する場合であっても、家庭裁判所の承認を得て里親委託などの措置をとることができるとされているところでございまして、こういったものの適切な運用に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 時間もないので、最後に大臣に聞きます。

 確かに法的にはこういった制度が整っているんですね。家庭裁判所の裁判で、裁判というか審判というか、親の同意にかわる、そういう手続が整っているんですけれども、現実的にはやはり裁判は非常に時間がかかるし手間がかかる。これは、この間、特別養子縁組のところでも、一応、現行の条文上でも裁判という手続が整っているということが記載されている、それの適切な運用をすればいいんじゃないかという話はもちろんそうなんですけれども、現実的にはやはり手続に長い時間がかかるとか事務が大変だとかいろいろある中で、どうしてもやはり施設というものを選択しがちなんだと思うんですね、児童相談所という場所は。

 そうすると、やはり里親の委託だったり養子縁組だったりというのはなかなか進んでいかないなというふうに思っていて、やはり養子縁組なんかについても、親と子の利害対立をするときに、本当に子供の最善の利益を考えた上で、時には親の権利を害してでも養子を進めていくといった新しい制度を考えていくということも必要なのではなかろうかというふうに思いますけれども、最後に大臣の御所見をいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 今、椎名さんの御議論は、初めは、親の権利が強過ぎる、親の力が強過ぎるというようなところから議論を始められましたね。それで、その中で、里親というか、そういうものの活用がもう少しできないかということもおっしゃいました。実は、海外の方からは、日本の養子制度というものは、なかなか里親みたいにうまく、里親のようなこと、うまく機能していないのではないかという御指摘を受けたこともあります。

 もともと明治のときにできた民法は、養子というのはどちらかというと家督を閉ざしてはいけないというようなところがあって、戦後、昭和二十二年に改正したときに、いや、子供のための養子制度だというふうになったわけですが、さて、どこにまだ問題があるのかないのかというのもよく考えてみる必要があるのかなという気がしております。

 それから、今の民法の中にも、先ほど椎名さんおっしゃったように、実際、子供の利益と親とが衝突するような場合の手法はいろいろ書いてあって、確かにそういう精神も今の現行法の中にあるのは事実ですけれども、さらに、子の最善の利益ということから考えていったら、問題がどこにあるのかという点もやはり考えていくのも大事なポイントなのかなと思っております。

土屋(正)委員長代理 椎名毅君、時間が参りました。

椎名委員 ありがとうございます。

 時間も来ましたので終わります。

 社会的養護の問題は、私自身も非常に重要な問題だと思って取り組んでまいりたいと思っております。どうぞ引き続きいろいろ御指導賜りますようよろしくお願いします。

 ありがとうございます。

土屋(正)委員長代理 次に、鈴木貴子さん。

鈴木(貴)委員 午後の審議となりました。

 先ほど椎名委員からも、取り調べの可視化については専売特許であると大変ありがたいお言葉もいただきまして、バトンリレーが今なされているのかなと私も大変心強く思っているところであります。

 さて、その御期待に応えるような形になるかと思いますが、取り調べの可視化についてきょうも質問をさせていただきたいと思います。

 階先生そして椎名先生ともどもお話をされておりました、三十日に出されました新時代の刑事司法特別部会事務当局試案、これについてお尋ねをさせていただきます。

 先ほど来から触れられておりますが、今回、可視化の対象事件というものが裁判員裁判の対象事件になっております。全体の中でこれはわずか二%から三%、このようにデータも出されております。裏を返せば、残りの九七%そして九八%の事件というのは、これまでと同様、可視化がなされないということになるかと思います。

 ここで、林刑事局長に改めてお尋ねをさせていただきます。

 先ほど椎名先生もおっしゃっておりましたが、一般市民が巻き込まれる可能性が高いそういった事件が逆に可視化対象にならない、その理由というものを教えていただけないでしょうか。

    〔土屋(正)委員長代理退席、委員長着席〕

林政府参考人 今般の事務当局試案でございますが、A案とB案、まさしく裁判員制度を対象とするという案と、それから、裁判員制度対象事件に加えて、それ以外の全身柄事件における検察官の取り調べを対象に含めるという案、こういったことが記載されております。

 これは、これまでの議論を踏まえまして、事務当局として、取りまとめの方向に向けての一つの案として出したものでございますが、この間、対象事件に対する意見についてはさまざまな意見がございました。

 一つには、全事件、全取り調べという形での意見もございましたし、それに対する、それを裁判員制度対象事件に限るべきだという意見もございました。さらには、そのような義務づけの範囲は裁判員制度対象事件についても相当ではなくて、取り調べの一定の範囲だけに限るべきだ、こういう意見もございました。

 そういった意見等を踏まえて、今回、どこまでを義務づけの範囲とするか、録音、録画をするかどうかということの中に義務づけるかどうかということでの議論があって、その範囲については、一つについては、裁判員裁判対象事件という形でのA案、それから、それに加えて、検察官の取り調べを対象に含めるというB案、その二案という形で提示させていただいたということでございます。

鈴木(貴)委員 先ほど谷垣大臣の御答弁の中で、以前はこの可視化の問題に非常に慎重であった皆さんも、今では使えるなといったような声もふえてきているのではないかという御見解を披露していただきました。

 ただ、何ゆえ今回、こうした特別部会が開かれ、そして可視化の議論というものが起こっているかという、その原点をいま一度思い起こさなくてはいけないのではないのかな、このように思っております。

 事実関係としまして、実際、この特別部会が開かれたというのは、あの村木次官の証拠改ざん事件というのがまさに発端になっているわけであります。

 これがもし、捜査当局から積極的に、新時代の司法のあり方を考えましょう、可視化を進めましょう、こういった形でこの部会ができたのであれば、それは喜ばしいことでありますが、事実としては、冤罪が相次いでしまった、日本の司法の恥と言ってもおかしくないことが相次いだというその事実があったということは、ここはぜひともおわかりおきをいただきたいものであるな、このように思っております。

 この可視化の議論がなかなか進まない理由、さまざま、種々あるかと思います。先ほども出てまいりましたが、事件の数が膨大である、費用面でコストがかかる、また供述がとれなくなる、こういったことが主に挙げられてきております。

 ですが、数が膨大であるということがもし問題になるのであれば、こういった数はどうでしょうか。日本において、現在、有罪率は九九%。この有罪率九九%という数も、世界的にもよく問題視をされ、国連拷問禁止委員会などでも、再三にわたって指摘もなされております。

 また、コストの面においては、録画、録音が難しいのであれば、まずは録音から始めてみる、こういった運用の仕方もあると思います。

 供述がとれなくなるといった御意見も部会などでも、私も議事録を読ませていただきましたが、その言いわけは、まさに、いまだに供述調書に頼り切った捜査手法のあらわれではないのかなと非常に危惧をしているわけであります。

 国民の安心、安全、生活を守るというのが、捜査当局の役目であると思います。取り調べの可視化をするということによって、被疑者を守るのではなくて、あくまでも犯罪被害者の人権を守るということにもつながる、私はこのように考えるんです。真相究明の意味からも、ひいては犯罪被害者の人権を守ることにつながる。

 こういったことを鑑みまして、林刑事局長、この今回の取り調べの可視化、三年議論がされている今でも、全面可視化という結果にいまだに至っていないところに関して、見解を教えていただけますでしょうか。

林政府参考人 今回、法制審議会特別部会において議論が行われていて、そのことに対して、私ども事務当局が見解を述べることは相当ではないと思いますけれども、いずれにいたしましても、今回の特別部会は、取り調べについて、これまでの捜査等のあり方において、取り調べあるいは供述調書に過度に依存している、こういった状況を変えるために、録音、録画も含めて、新しい刑事司法制度のあり方を検討するということで審議がなされているものと認識しております。

鈴木(貴)委員 今の答弁を聞きながら、過去の反省の上にあるのかなという一端が少しかいま見られたかなと思っております。

 ですが、不当逮捕を防ぐ、ひいては冤罪事件を防ぐというのが原点であるとすれば、必然的に、この可視化の対象事件の範囲というのは、拡大はされても狭められることはないと考えるのが妥当ではないのかなと思っております。そういった意味でも、どうしても、冤罪の根絶という原点が忘れられてしまっているのではないか、そういった指摘が後を絶たないのは、そういったところにあるのではないのかなと思っております。

 部会のメンバー構成についてお尋ねをさせていただきます。

 この特別部会は、事務職を務める法務官僚を含めますと、過半数が捜査当局出身者というのは事実でしょうか。

林政府参考人 済みません、今、手元にそのメンバー構成の詳細がございませんので、にわかにはお答えできない状況でございます。

鈴木(貴)委員 部会に林刑事局長ももちろんそのメンバーの一人として出席をしているというふうに把握をしておりますが、それでもお答えはできないんでしょうか。部会で林刑事局長は何を見て、何をされていらっしゃるのでしょうか。

林政府参考人 済みません、今、詳細なメンバー構成についての資料がございませんが、基本的に、その過半が捜査関係の者であるということではない状況であると思います。

鈴木(貴)委員 今、資料が手元にない中で、過半数は捜査当局出身者ではないということだけは答弁できるということですか。

 ちなみに、資料がないということなので、これはわかりました。ですが、ホームページなどにも載っているんですけれども、主に捜査当局出身者が、かなり、大半を占めるというふうにこちらは認識をしております。

 実際問題、新聞などでもそういった点が過去にも指摘をされております。もしその新聞報道が間違っているのであれば、もちろんそれは誤報だという指摘がなされると思いますが、そういった指摘も当局側からないという事実も、こちらも掌握をしております。

 その構成、過半数が、捜査当局関係者が多いという中で、それ自体がバイアスがかかっているという認識、またそうしたことから出てきた今回の試案、そして去年出された素案、こういったものは、捜査当局側の、できれば可視化の範囲をできるだけ狭めたいという、そういった意向が働いていると受け取られてもおかしくないのではないでしょうか。そのような点について刑事局長はどのようにお考えでしょうか。

林政府参考人 特別部会、申しわけございませんが、今、詳細なメンバー構成はございませんが、いずれにいたしましても、捜査機関関係者のみならず、刑事法の専門の学者あるいは一般有識者等々から構成されております。

 その上で、今回の試案でございますけれども、これは、これまで累次御説明はございますが、基本構想というものがございました。基本構想に基づきまして、その後、作業部会なども設けて一定のたたき台というものができました。

 そのたたき台について、ことしの二月から三回にわたりまして議論がなされました。その中で、方向性が煮詰まったものもあれば、議論の隔たりが大きいもの、いろいろございました。そういった過程の中で、取りまとめの方向性の一つの節目として、事務局において試案をつくるということになりましたので、事務局においては、これまでの議論を踏まえて試案をつくっております。

 もとよりこの試案は、今後の議論の一つの案、対象の案というものにすぎませんけれども、少なくとも事務局においてこの試案を作成した趣旨は、これまでの議論の経過を踏まえたものとして提出させていただいたものでございます。

鈴木(貴)委員 今の答弁の中に、捜査当局だけでなく、しっかりと一般国民といいますか、それ以外の有識者の皆さんも入っていらっしゃるということでした。裏を返せば、そうした国民の一般的考えといったものも広くあまねく取り入れるというあらわれなのかな、このように思っております。

 三月七日、そうした捜査当局出身者外の、その他の有識者の皆さんが意見書というものを出されました。その意見書には何が書いてあるかというと、この対象とすべき事件の範囲、これを、原則として全ての事件を対象とするべきではないか、そういった意見が組み入れられてあるわけです。

 しっかりと捜査当局外の一般の有識者も入れているということは、国民の声もそれだけしっかりと取り入れなくてはいけないというその思いの裏返しだと思うんですが、しかし、この三月七日に五人の有識者によって提出された意見書というものが今回の試案に反映されていないというのは、逆にどういうことなのでしょうか。

林政府参考人 今回の事務当局試案でございますが、これまでの議論の経過を踏まえて、一つの案として作成いたしました。

 その中で、今御指摘のありました一般の有識者の方が出された意見というものについて、具体的に対応関係でこれがこうであるというようなことを御説明するわけにはいきませんけれども、例えば今回、議論の非常に大きな対象であります対象事件の議論を見ますと、一つには、A案というのは裁判員制度対象事件に限るという案でございますが、B案というものは、それに加えて、全身柄事件の検察官の取り調べを対象とする、こういったことでございますが、このB案の考え方自体は、五人の有識者の方が、全事件を目指すけれども、まずは検察の取り調べにおいて義務づけるべきであるといった意見がございましたけれども、そういったことも踏まえられて取りまとめ、これはA案、B案という形での提示ではございますけれども、この試案の中には反映されているのではないかと思っております。

鈴木(貴)委員 私は、まさに今おっしゃっていたB案の、身柄拘束事件に限っての取り調べの部分を可視化、そこが問題ではないかと思っております。

 今回その試案で触れられていない、参考人の取り調べの可視化ということにもつながってくるのですが、つまりは、参考人として取り調べを行い、取り調べを行った後、可視化の対象となる被疑者として今度は取り調べをするということもできてしまうわけです。

 つまり、可視化のされていない部分、参考人として、身柄拘束のかかっていない立場の者としてまず引っ張ってきて、そこで取り調べを、密室の中で、可視化がされていない中でできる。十分そこで話をした後に、被疑者として引っ張ってきて可視化をするということもできてしまうと思うんですが、そうした法の抜け道みたいなものが逆にそのB案の部分に入ってしまうという懸念を私は持っているんですが、ぜひとも払拭をしていただけるような明快な理由を教えていただきたいと思います。

林政府参考人 今御指摘の、参考人の取り調べについてどうするかということでございますが、これについては、二十五年の一月の基本構想では、まず被疑者取り調べの録音、録画制度の検討を踏まえつつ、必要に応じて検討するということになっております。

 この点はいまだに変わっていないわけでございますが、今回のこの事務局試案で示した内容は、まずはその被疑者取り調べの録音、録画制度の検討というものに対応する部分として、A案とB案というものを提示したというものでございます。

鈴木(貴)委員 先ほど来から何度となく出てきている基本構想でありますが、基本構想には、「適正な取調べを通じて収集された任意性・信用性のあるものであることが明らかになるような制度とする必要がある。」と書かれているわけであります。

 明らかになるような制度、これはまさに全面可視化、それが明らかになるような制度そのものではないのかなと思いながら、参考人の取り調べ、そして全面可視化につながっていくように、これからも私は訴えを続けていきたいな、このように思っております。

 時間も参りました。大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 今回、この特別部会なんですけれども、名称が新時代の刑事司法特別部会、このように名前がついております。新時代と何ゆえこの部会についているのかなと私なりに考えさせていただきながら、まさに日本の司法は中世の時代のようだ、そういった批判を受けないように、名前負けしないようなしっかりとした議論がなされていくべきだと思いますが、新時代という名前にふさわしい、前向きで、かつ抜本的な改革を強く求めるものとして、ぜひとも谷垣大臣にも、新時代がついたこの特別部会、その存在意義、そして、大臣が考えられる、なすべき議論というものをお答えいただけないでしょうか。

谷垣国務大臣 新時代というネーミング、共産党なんかが昔お好きな名前ではあったわけですが、新時代というようなネーミングがどうしてついたのか。

 これは私が就任する前でございますが、恐らく、今まで、取り調べあるいは自白調書というようなものを偏重し過ぎた司法であると言われていた、そこから一つ脱皮しようとすると、取り調べの可視化というようなものもそこからの脱皮の一つの手法だと思いますが、今までの問題点を克服して新しい時代をつくっていこう、そういう気持ちが込められていたのではないかなと想像するわけでございます。これはむしろ、民主党政権時代にスタートしたものですから、階先生や何かの方がその辺のネーミングの背景はお詳しいかもしれません。

 だけれども、いずれにせよ、ここでの御議論もそうですが、実行行為をしていない者に刑罰を与えるようであってはいけないし、さりとて、悪いことをしていたけれども、どこかでほくそ笑んでいるような人をつくってもいけないし、バランスのとれた結論を出していただくことを私は期待しております。

鈴木(貴)委員 かつては共産党が好きだったその言葉を民主党が引き継ぎ、そしてまた自民党が引き継いでいるということは、間違いはなかったと逆に改めて明確に認識されていることだと思いながら、今後とも、超党派で、国民議論としてこの問題に対して取り組んでまいりたい、このように思っております。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

江崎委員長 次に、内閣提出、少年院法案、少年鑑別所法案及び少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。谷垣法務大臣。

    ―――――――――――――

 少年院法案

 少年鑑別所法案

 少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 少年院法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 現行の少年院法は、昭和二十三年に制定されて以来、社会情勢が大きく変化したにもかかわらず、抜本的な見直しがなされることなく今日に至っているため、矯正教育に関する規定は乏しく、少年院に収容される在院者の権利義務関係、職員の権限等も明確ではなく、今日では極めて不十分なものとなっております。

 他方で、昨今の少年非行の状況に鑑みますと、在院者について矯正教育を中心とした処遇を適切に行うことにより、その改善更生及び円滑な社会復帰を図ることは重要な課題となっております。

 この法律案は、このような状況を踏まえて、少年院の適正な管理運営を図るとともに、在院者の人権を尊重しつつ、その特性に応じた適切な矯正教育その他の在院者の健全な育成に資する処遇を行うことにより、在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図るため、現行の少年院法を全面的に見直して新たに少年院法を定め、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、少年院の管理運営に関する事項を定めるものであり、少年院の運営の透明性を確保するために、少年院視察委員会の設置、組織及び権限についても定めるものであります。

 第二は、在院者の処遇について定めるものであり、在院者の処遇の原則、矯正教育の基本となる事項、在院者に対する社会復帰支援、在院者の権利義務の範囲、その生活及び行動に制限を加える場合の要件及び手続、面会、信書の発受等の外部交通等について定めるとともに、在院者が自己の受けた処遇全般について行う不服申し立ての手続として、法務大臣に対する救済の申し出、監査官及び少年院の長に対する苦情の申し出の制度を整備するものであります。

 続いて、少年鑑別所法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 少年鑑別所に関する規定は、昭和二十三年に制定された少年院法に定められておりますが、鑑別に関する規定は乏しく、少年鑑別所に収容される在所者の権利義務関係、職員の権限等も明確ではなく、今日では極めて不十分なものとなっております。

 他方で、昨今の少年非行の状況に鑑みますと、鑑別の適切な実施を図り、在所者について適切な観護処遇を行うとともに、地域社会における非行及び犯罪の防止に寄与することは重要な課題となっております。

 この法律案は、このような状況を踏まえて、少年鑑別所の適正な管理運営を図るとともに、鑑別対象者の鑑別を適切に行うほか、在所者の人権を尊重しつつ、その者の状況に応じた適切な観護処遇を行い、並びに非行及び犯罪の防止に関する援助を適切に行うため、新たに少年鑑別所法を定め、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、少年鑑別所の管理運営に関する事項を定めるものであり、少年鑑別所の運営の透明性を確保するために、少年鑑別所視察委員会の設置、組織及び権限についても定めるものであります。

 第二は、少年鑑別所が行う鑑別について、鑑別の実施方法、家庭裁判所等の求めによる鑑別等について定めるものであります。

 第三は、在所者の観護処遇について定めるものであり、在所者の観護処遇の原則、在所者に対する健全な育成のための支援、在所者の権利義務の範囲、その生活及び行動を制限する場合の要件及び手続、面会、信書の発受等の外部交通等について定めるとともに、在所者が自己の受けた処遇全般について行う不服申し立ての手続として、法務大臣に対する救済の申し出、監査官及び少年鑑別所の長に対する苦情の申し出の制度を整備するものであります。

 第四は、少年鑑別所において、少年非行に関する専門的知識及び技術を活用し、地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助を行うことについて定めるものであります。

 続いて、少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴い、旧少年院法を廃止するほか、関係法律の規定の整備を行うとともに、所要の経過措置を定めようとするものであります。

 以上が、これら法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

江崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

江崎委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件、特に外国人の受入れに係る諸問題について調査のため、来る二十三日金曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとして、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十分散会


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