衆議院

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第22号 平成26年6月6日(金曜日)

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平成二十六年六月六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江崎 鐵磨君

   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君

   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君

   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君

   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君

      赤枝 恒雄君    安藤  裕君

      井野 俊郎君    池田 道孝君

      小田原 潔君    大見  正君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    橋本  岳君

      鳩山 邦夫君    平口  洋君

      福山  守君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    八木 哲也君

      湯川 一行君    郡  和子君

      田嶋  要君    横路 孝弘君

      高橋 みほ君    大口 善徳君

      井坂 信彦君    椎名  毅君

      鈴木 貴子君    西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   内閣官房副長官      加藤 勝信君

   法務副大臣        奥野 信亮君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   最高裁判所事務総局人事局長            安浪 亮介君

   政府参考人

   (内閣官房法曹養成制度改革推進室長)       大塲亮太郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 荻野  徹君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  渡会  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  榊原 一夫君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 星野 次彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           中岡  司君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           佐野  太君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           高島  泉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           神田 裕二君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     井野 俊郎君

  小田原 潔君     赤枝 恒雄君

  神山 佐市君     八木 哲也君

  末吉 光徳君     湯川 一行君

  三ッ林裕巳君     福山  守君

  椎名  毅君     井坂 信彦君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     小田原 潔君

  井野 俊郎君     安藤  裕君

  福山  守君     三ッ林裕巳君

  八木 哲也君     神山 佐市君

  湯川 一行君     末吉 光徳君

  井坂 信彦君     椎名  毅君

    ―――――――――――――

六月五日

 法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(田嶋要君紹介)(第一一七三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一二三八号)

 同(笠井亮君紹介)(第一二三九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二四〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一二四一号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二四二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二四三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二四四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一二四五号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一一七四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一七五号)

 同(辻元清美君紹介)(第一一七六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二〇七号)

 同(小川淳也君紹介)(第一二九五号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一二二九号)

 同(大口善徳君紹介)(第一二三〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第一二三一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二三二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一二三三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二三四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二三五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二三六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一二三七号)

 同(階猛君紹介)(第一二九六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十三回国会閣法第三〇号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

江崎委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房法曹養成制度改革推進室長大塲亮太郎君、警察庁長官官房審議官荻野徹君、総務省行政評価局長渡会修君、法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長西田博君、法務省入国管理局長榊原一夫君、財務省大臣官房審議官星野次彦君、文部科学省大臣官房審議官中岡司君、文部科学省大臣官房審議官佐野太君、厚生労働省大臣官房審議官高島泉君及び厚生労働省大臣官房審議官神田裕二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局安浪人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井野俊郎君。

井野委員 おはようございます。自由民主党群馬二区選出の衆議院議員の井野でございます。

 本来、私、法務委員会ではないんですけれども、このように質問の機会をいただきました理事の皆様また委員の皆様に、本当に感謝申し上げます。

 今回は、この委員会においても何度か議論されておりますが、司法制度改革についてお伺いさせていただきたいと思います。

 私も、弁護士出身の議員として、司法制度改革については大変関心を持っており、また、弁護士仲間もいますから、直接現場の声を聞くことができる者として、今回、質問させていただきたいと思っております。

 まず、お手元に配付させていただきました資料一、日経新聞の朝刊の記事になりますけれども、これは、予備試験の志願者が法科大学院の志願者を超えたという記事でございます。この記事によりますと、法科大学院の志願者離れが進んでいるように思いますが、まず、このことについて大臣の率直な意見、御感想をお伺いさせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今、予備試験についてはいろいろな議論があるわけですね。予備試験というのは非常に大事な試験だという方もあれば、ちょっと本来の趣旨を超えてきているんじゃないかというような御議論もあって、私どもも、今、法曹養成制度改革の中でいろいろ議論をしているわけですが、今の、法科大学院の志願者の数を超えたということで、ではそれをどう評価するかというのは、予備試験受験者の中には法科大学院生もかなり含まれているものですから、評価は、単純な比較というのはなかなか難しいなと思っております。

 いずれにせよ、法曹養成制度改革、今各種の施策を検討中でございますので、そこでしっかり議論して、やはり将来ある人がこの分野に入ってきてくれるような対応をきちっと考えていくということが一番大事なことではないかと思います。

井野委員 この点について、少しこれから法科大学院の状況等について議論を深めていきたいというふうに思っております。

 続いて、二枚目の資料をごらんいただければと思います。これは、文科省からいただいた法科大学院の入学定員、また設置状況についての資料でございます。

 この法科大学院、全国各地にございますけれども、今年度の入学定員、いっぱい記載されておりますけれども、この記載されている法科大学院のうち、入学定員を充足した学校は幾つあり、それはどの学校か、まず教えてください。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 平成二十六年度の法科大学院の入学者選抜におきまして入学定員充足率が一〇〇%に達した法科大学院は、当該年度の学生募集を行った六十七校中六校でございます。

 その内容でございますけれども、筑波大学、千葉大学、京都大学、大阪大学、一橋大学、それと首都大学東京でございます。以上、六校でございます。

井野委員 これだけ入学定員、平成二十六年度、記載されている大学があって、六校だけ入学定員を充足したということであります。もちろん、志願者数はこの記載されている定員よりも多いのはこれは私も認識はしておりますけれども、しかしながら、はっきり言って、六校、いずれも国公立大学になるかと思いますけれども、東大の二百四十人ですら入学定員を充足しないということに関して私も本当に衝撃を受けたわけであります。

 これはどういうことかといいますと、単純に言えば、やはりロースクール試験を受験する人の、悪く言えば、法科大学院入学に見合うような学生がもう来なくなってしまった、法科大学院を目指さなくなってしまった。これはすなわち、先ほどの新聞記事にもありますように、優秀な学生はもう法科大学院よりも予備試験に行こうというふうに考えているんじゃないかな、私はそういったふうに、ある意味、危機感、この制度自体の危うさをすごく感じております。

 この学生の法科大学院離れについては本当に早急に対策を打たなければ、先ほど大臣は検討とおっしゃっていましたけれども、余り検討する時間はないのではないかなと思っています。この法科大学院離れが進んでいる現象については、文科省の方としてはどう考えているんですか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 法科大学院の入学定員が充足していない状況の原因といたしましては、司法試験合格率の低迷や弁護士の就職難等に伴いまして法曹志願者が減少する中で、各法科大学院において入学者の質の確保に努めている結果というふうに考えております。

井野委員 いや、ですから、志願者を選抜して、でも結局、優秀な人だったら当然法科大学院としては採りたいわけですよね。これだけの定員を設けているということは、それだけの受け入れ体制がある教育、教員を正直言ってそろえて、うちはこれだけ、東大でしたら二百四十人募集して、来てくださいよと。でも、実はそこには、試験をした結果、優秀な学生は来なかったということだと思うんですよ。その優秀な学生が来ない原因についてどう考えるんですかということを聞いております。

中岡政府参考人 再度お答え申し上げますけれども、法科大学院に優秀な学生がなかなか来ないという御指摘でございます。

 先ほども申し上げましたけれども、やはり、各法科大学院の方で、司法試験の合格率が非常に低いというようなことで、そういったところがございますし、また、養成期間あるいは経済的負担だとかそういったものもかかるというようなこともございますし、先ほども申し上げましたような出口の部分でございますけれども、就職難というようなところも念頭にあるのではないかというふうに考えております。

井野委員 先に議論を進めさせていただきますけれども、法曹養成制度については、この委員会においても何度も議論されているのは私も議事録において確認させていただいております。大臣も本当に意見対立が厳しいということをお話しされていて、答弁も苦しいんだなというふうなことは存じております。しかしながら、この問題についていつまでも検討、検討ということを言っている状況にはないと思っております。

 大臣は、その五月十四日の法務委員会において、法科大学院の問題点について、今までの日本の制度にロースクール制度という接ぎ木をした、接ぎ木をした点がうまくいっていない面が多々問題として出てきているんじゃないかというような御答弁をされております。この接ぎ木と表現された具体的な問題点というのは、大臣としては具体的にどういうところにあるのか、お伺いさせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 この司法制度改革をやってロースクールを導入するまでは、日本の大学はアンダーグラデュエートの法学部があって、そして司法試験を受ける者は、大学院等々に進んだ方もいますけれども、制度としては、そこで試験を受けて、司法試験になって、法律家になっていくという道が想定されていた。

 それから、大学法学部というのは、必ずしもいわゆる法曹三者の養成ということだけではなくて、幅広く、いわば文科系といいますか、社会に法律の素養を持った人を送り出すことを使命としていたと思うんですね。そういう制度のところにアメリカのロースクール、つまり、卒業後にポストグラデュエートでプロの法律家を養成するという制度を取り入れたけれども、そこに新しい制度を取り入れるとどういう問題点が出てくるかということを十分意識しないでやってしまったことがある。

 それで、幾つか問題点があると思います。それは、美しく言えば、大学法学部があって、その上にロースクールがあって、その上にさらに日本の制度では司法修習もある。これだけ、美しく言えば手厚くですが、悪く言えば屋上屋を架してプロの法律家を養成しているような制度がどこにあるんだろうか。それはやはり、では、例えばそういう制度をつくったときに、学部は何を教育するのかということを十分詰めていたのか。それから、これだけ積み重ねれば当然金銭的にも時間的にも手間がかかるというか、コストが、負担が大きい。そういうことが、例えば予備試験にこれだけ、先ほどおっしゃったような、予備試験に行くという問題も生じているかもしれない。

 それから、従前、やはり学部と研修所という体制をとったときは、ポストグラデュエートは、どちらかというと研究者の養成というところにあったと思います。それが、実務家を養成するというロースクールをつくる。それで、一挙に数をふやしたものですから、従来、司法研修所は実務家の教員がたくさんおられまして、極めて優秀な方がプロの養成に当たっていた。しかし、実務の現場としても、優秀な方を現場から割いて人材養成に充てるというのは相当な負担といいますか、相当なエネルギーをそこに割いていた。実務家の数がそれだけまだふえていない中で、一挙に、では、ロースクールに従来の司法研修所の機能もある程度代替させようとすると、本当に教育に必要な人材というものが十分確保できていたのかどうかとか、ちょっとまだ、私、言い出すと、これは切りがありませんので、余り答弁はだらだらしてはいけません。

 そういったさまざまな問題点が、今ある意味では顕在化しているのではないかというふうに私は思っております。

井野委員 本当にこの問題に関しては、例えば法務省とか文科省だとか、連携の問題であったり、いろいろな省庁間であったり、そういうさまざまな、これは法務委員会だけの問題ではないというふうに私も存じておりますし、大臣の所掌だけではいかんともしがたい面があるというのも、本当にそのとおりだと思っております。そういった中でも、やはりもうこれはスタートをしてしまったものでありますから、この問題点はやはり一つ一つクリアにしていかなければならないというふうに思っております。

 私も、先日、ある意味、今の司法試験制度のユーザーともいいましょうか受ける側、受験生であったり修習生、いわゆる法科大学院生、そういう方々と意見交換させていただきました。

 彼らの中には、確かに、法科大学院という制度ができてから、そこへ行って司法試験にチャレンジしてみようというふうにあったから、まだその方は受かっていないんですけれども、私は受けることができたという者もいれば、逆に、法科大学院は、あくまでも司法試験を目指す者の一つの手段にしかすぎない、受験勉強というのはあくまでも一人一人で勉強すればいいことだから、僕にとっては法科大学院は時間をとられるのでちょっと煩わしい制度であったというようなことを言う、その方は修習生でありましたけれども、そういう方もいらっしゃいました。

 ただ、私が話してみて感じたのは、いずれの学生においても共通しているのは、まずは試験に合格すること、試験に合格しなきゃ法科大学院の存在意義はないんだというような話は、やはり全受験生に共通していることではないかなというふうに感じました。

 どんなにすばらしい教育、法科大学院ですばらしい教育をやっているかもしれませんけれども、このすばらしい教育を受けられたとしても、やはり最終的には司法試験に合格する、つまり弁護士になれる資格をもらうという最終目的に達しなければ、時間と費用をかけた意味はどこにあったのかということだと思います。

 ある修習生は、法科大学院のカリキュラムをできるだけとって、レポートなど全て課題をこなした。他方、私の友人は、法科大学院の授業というのは本当に最低限のものしか受けなかった。結果、どうなったかというと、その友人の方が早く司法試験に受かって、私の方が試験合格からはちょっと一歩二歩おくれてしまったということは、やはりその修習生も言っていました。

 私は、本当にここに法科大学院の大きな矛盾があるんだなというふうに感じました。つまり、学生のニーズというものは、やはりあくまでも司法試験に合格するということなんです。しかしながら、法科大学院の出発点からして、予備校とは違うんだ、単なる受験指導をやるところではなくて、もっと幅広い法曹を養成していく、この出発点が法科大学院にありますから、いわゆる学生側のニーズと、需要と供給、法科大学院側の教育という供給部分、この大きな、最終的な目的、到達点、向いている方向の違いが、やはり大きな矛盾点というか、うまくいっていない制度の矛盾点にあるんじゃないかなというふうに考えております。

 そこでお伺いしますけれども、こういった学生のニーズに対応しない限り、やはり法科大学院離れというのはこれからも進んでいくんじゃないかなと思います。今六校だけ定員充足していますと言っていましたけれども、これもそのうち、こういった学生のニーズに対応しない限りは、法科大学院離れ、定員充足しない学校はますますふえていくんだと思いますけれども、こういった問題点についてはどう考えていらっしゃいますか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 法科大学院につきましては、平成十三年の司法制度改革審議会の意見書の中で、二十一世紀の司法を担う法曹に必要な資質ということで、法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分もあわせて実施して、実務との架橋を強く意識した教育を行うという方向性が示されたわけでございます。

 法科大学院は、そういったことを踏まえまして、法曹養成に特化した専門職の大学院ということでございますので、司法試験で問われているような将来の実務に必要な学識及び応用能力等を学生に身につけさせ、司法試験の合格に資するような教育を行うことは、法科大学院の本来の役割であると考えております。

 法科大学院における授業、教育方法につきましては、平成十九年に中教審の法科大学院特別委員会におきまして具体的な取り扱いなどが提示されておりまして、文部科学省といたしましても、全ての法科大学院に対しましてその内容を周知してきたところでございます。

 具体的には、司法試験の解答の作成方法に過度に傾斜した技術的教育や理解を伴わない機械的な暗記をさせるなどの教育は不適当である一方で、司法試験の問題やそれに類する形式の事案が教材の一つとして使われることをもって直ちに受験指導に偏った指導であるということは適当でないこと、個々の指導が本来あるべき法科大学院教育として適当であるか否かは、その目的と形式及び態様との組み合わせにより総合的に判断すべきものなどについて周知してきたところでございます。

 しかしながら、例えば司法試験の過去問等を教材として使用することが一律に禁止されているとの誤解が一部の大学の教育現場に見られるとの指摘もございます。

 そういうことから、法科大学院における司法試験に関連する指導方法等の適切なあり方につきまして、現在、中央教育審議会におきまして、具体的な取り扱いがより明確になるよう議論をいただいているところでございます。文部科学省としても、その議論を踏まえて適切に対応したいと思っています。

井野委員 一つ確認させていただきたいんですが、法科大学院、教育内容について改革を進めていくということなんですけれども、そういう改革を進めていくに当たって、いわゆる実際の現場の学生さんたちからの意見といいましょうか、そういったものは聞いているんでしょうか。

中岡政府参考人 基本的に、そういった受験に関しましてかなり学生さんが意識されているということにつきましては、先ほどもお話が出ておりましたけれども、予備試験に関しまして法科大学院の学生さんにアンケート調査をさせていただきましたところ、予備試験の方をかなり意識されているということがございますので、やはり、そういったところからしても、そちらのニーズといったところにかなり目が行っているのではないかというふうに考えております。

井野委員 学生のニーズに応えない限りは、法科大学院はやはりうまくいかないと私は思っていますので、そこら辺の御配慮も引き続きよろしくお願いいたします。

 それで、私も、学生や修習生から先日お話を聞いていて感じたのは、昔の司法試験制度に比べて時間的また経済的負担がやはり大きくなっているのかなと。特に私が実感したのは経済的負担でありました。

 私立の法科大学院に入学しますと、年間授業料として約百五十万円ぐらいですね。さらに入学金等も入れたら三年間で約五百万円払うわけですね。この上にさらに生活費が上乗せされ、かつ、修習の一年間の生活費も上乗せされる。恐らく、法科大学院三年プラス一年の修習を入れたら、一千万の借金を背負って、これは親が出してくれれば話は別ですよ、一千万の借金を背負って法律家、弁護士としてスタートしなきゃならないということになります。

 正直言って、私が司法試験受験を始めたときは、予備校に百万円払えば二年間のカリキュラムを受けられる。あとは答練とかをちょろちょろ、ちょろちょろと言ったらおかしいんですけれども、受ければ大丈夫です。恐らく、かかっても授業料だけでは百五十万もいったかいかないかぐらいだと思います、予備校に払った授業料としては。かつ、それでいて、当然時間も、法科大学院、未修だったら三年間は通わなきゃならない。こういった時間的、経済的負担の削減なくして魅力的な法科大学院にしていくというのはやはり難しいんだと思いますね。

 だから、例えば法科大学院生は予備試験を受けていますけれども、それは当然ですよ、やはり一年でも早く予備試験を通って、一年でも早く法科大学院から離れれば百五十万浮いちゃうわけですからね。それは、時間的、経済的負担、やはり法科大学院もなるべく早く、親に負担をかけたくないという学生の気持ち、わかるんですよね。こういった時間的、経済的負担軽減策についてどう考えていらっしゃるんですか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 昨年六月の政府の法曹養成制度検討会議の取りまとめでは、法曹志願者が減少する原因の一つといたしまして、「大学を卒業した後の数年にわたる法科大学院での就学やそのための相当額の金銭的負担を要することから、法曹を志願して法科大学院に入学することにリスクがあるととらえられている状況にある」と指摘されてございまして、この時間的、経済的負担の軽減に向けて取り組むことが必要と考えてございます。

 このため、文部科学省では、時間的負担の軽減策といたしまして、昨年十一月に公表いたしました公的支援の見直しのさらなる強化策の中で、早期卒業などを活用した優秀者養成コースの設定が加算される可能性を示しておりまして、大学の取り組みを促すとともに、中教審の法科大学院特別委員会におきましても、飛び入学等を活用した法曹養成のための教育期間短縮に関しまして、入学者の質の担保等が前提ではございますけれども、その円滑な運用を促進する方向で議論されているところでございます。

 また、経済的負担の軽減策の方でございますけれども、日本学生支援機構の大学等奨学金事業の中で対応しているとともに、国立大学、私立大学それぞれの授業料減免の充実を図っているところでございます。

 今後とも、意欲と能力のある学生が経済的理由により修学を断念することのないよう、引き続き奨学金事業等や授業料減免の充実に努めてまいりたいと考えております。

井野委員 飛び級だとかいろいろなことを考えていらっしゃるのはわかるんですけれども、一つ奨学金について私言わせてもらうと、これはおもしろいことで、奨学金というのはやはり優秀な学生さんが得られるんですね。すなわち、どういうことかというと、司法試験、最終的に、法科大学院の中でも上の方にいる優秀な学生が、当然、法科大学院を卒業して、実績をつくりたいわけですから、そういう人に奨学金が行くわけですね。逆に言えば、法科大学院の中でも合格から遠い下の方の人間は奨学金制度を受けられない。そういった本当に経済的負担も多くて、かつ、合格から、勉強しないやつが悪いんだと言えばそれまでかもしれませんけれども、よりそういう下層の人に厳しいような制度になっているんじゃないかなということをちょっと指摘させていただきます。

 もう一つ、法科大学院に対する補助金、約五十八億円投入されているという答弁で、私も拝見させていただいていますけれども、定員を充足しなくても法科大学院に対して補助金は満額支給されるというふうな答弁もございました。

 果たして、それで本当に国民の理解というのは得られるんでしょうか。何か逆に、教員を食べさせることだけの補助金になっているというふうに私は感じてなりません。そうであれば、少なくとも、そういう苦労して法曹になろうとする学生に対して、司法修習生で給費制を復活させるとか、はるかにその方が若い人に対する援助といいましょうか、投資という意味ではメリットがあると思うんですけれども、この点についてはどう考えていらっしゃるんですか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 文部科学省といたしましても、入学定員の充足状況が著しく悪く、成果を上げていない法科大学院は入学定員を削減するなどの改善が必要と考えておりまして、既に現行の公的支援の見直しの中でも、入学定員充足率を指標の一つとして、その数値が著しく悪いなど、入学者選抜や司法試験の合格状況において深刻な課題を抱える法科大学院から公的支援の一部を減額する措置を講じているところでございます。

 さらに、昨年十一月に公表いたしました公的支援の見直しのさらなる強化策につきましては、これは政府の平成二十五年の七月の法曹養成制度関係閣僚会議の決定を踏まえたものでございますけれども、公的支援の見直しの強化策など入学定員の削減方策を検討するというようなことが方向性として出されております。

 それは、全ての法科大学院を対象にいたしまして、入学定員の充足率など多様な指標に基づき三類型に分類をいたしまして、現在の入学定員の充足率を参考に、類型に応じて、減額された公的支援の基礎額を設定するなどの仕組みとしております。入学定員の削減など、抜本的な組織見直しを促進しているところでございます。

 これらの取り組みを通じまして、現在までに学生募集を停止した法科大学院は、これまでに設置されました全七十四校中十八校に上ってございます。

 なお、統廃合を含めた抜本的な組織見直しが行われることによりまして、法科大学院に係る所要の経費を減額することとなると考えております。

井野委員 済みません、時間ですので、最後にちょっと一つだけ大臣にお伺いさせていただきたいと思います。

 私、いろいろな話を聞いてきて思いましたけれども、先ほど答弁でも、弁護士になる、先行きが、就職できるかどうかわからないから法科大学院離れだとかが進んでいるというふうに答弁もございました。

 私、この法科大学院制度、全て悪い面ではないなと思っておりますけれども、この制度を維持しながら法科大学院をよりよいものにしていくとなったら、やはり最終的には入学定員ないしは合格者を減らすしかもう道はないんだというふうに思っています。それだけ時間とお金をかけてでも、将来、弁護士になっていい仕事ができて、そして収入もあるんだということの実感というか、そういうものが見えない限りは、やはりこれから先、ますます志願者離れが進んでいくんだと思いますが、大臣の御意見をお聞かせください。

谷垣国務大臣 私の公式な立場からしますと、今、法曹需要がどれだけあるのかきちっと調査をして、その調査を待って解決しようということになっておりますので、それを踏み越えて、今こうだというのは、公式にはなかなか難しゅうございます。

 ただ、今までの法曹養成改革、改革議論がかつてからずっとありまして、一番最初、ロースクールの設計のときに、当時、規制改革論者の御意見も大変強かった。やたらにロースクールの定員等をきつく管理すると、参入障壁をそこにつくることになってよくないという御議論が当時は強かった。しかし、では全部規制を撤廃したら自動的に自由競争で、それは勝者が残って、いいところが残って淘汰されていくんだといえばそれまででしょうけれども、ちょっとそこに飛躍があったなというのは当時の議論を顧みて大きな反省点だと思っております。

井野委員 本日は本当にありがとうございました。

江崎委員長 次に、横路孝弘委員。

横路委員 本日は、一つは、総務省の行政評価局が平成二十六年の三月に、刑務所出所者等の社会復帰支援対策に関する行政評価・監視結果報告書というのを出されました。

 この中身というのは、大体四点になっておりまして、一つは、就労支援で、刑務所、保護観察所と公共職業安定所の連携が不十分である、それから、住居の確保というところでは、更生保護施設等への受け入れが不十分である、それから、高齢者と障害者への福祉的な支援については、これは地域生活定着支援センターがやっているわけですが、そことの連携が不十分である、それから、釈放前、満期釈放者、この人たちへの指導が不十分であるという指摘をいただきました。

 個々具体的なことは後で議論しますのでいいんですが、法務省は各省の協力も得ながら、主に出所者対策、再犯防止ということを重点的に進めてこられたわけですね。しかしながら、こういう評価を受けた。しかも、この評価の中身は、基本的なやるべきことをやっていないよというのがベースになっているような報告書でございまして、読んで少しがっかりしたんですが、法務大臣として、この勧告をどのように受けとめますか。

谷垣国務大臣 まず最初に、横路先生が、矯正や保護の問題、今エネルギッシュに研究されて、いろいろ御議論を賜り、また御提言もいただいていること、大変ありがたく思っております。

 そして、今御指摘がございましたけれども、総務省の方で、四点というふうに要約されましたけれども、御指摘をいただいたわけです。

 私ども、確かに、再犯防止、これを法務省の重点政策として進めてまいりましたけれども、御指摘を受けた点、まさに取り組んでいるんだけれどもまだ努力が足らないと御指摘を受けたわけでありまして、どれも重要な項目でございますので、重く受けとめております。

 こういった勧告も踏まえまして、今挙げられた四点、いろいろなことがございますが、一つは、法務省だけでひとりよがりに踊ってもだめだ、関係機関との連携をさらに深めろということでございます。これは、必要な指示等もかなり丁寧に私どもの傘下のところにはいたしまして、実効性のある社会復帰支援ができるように力を入れて取り組んでいきたいと思っております。また横路先生からもいろいろ御指導をいただきたいと思っております。

横路委員 出した方の総務省なんですが、個別の問題は結構ですから、全体としてポイントはこういうところなんだというところを御答弁いただければと思います。

渡会政府参考人 ただいま御指摘いただきました行政評価・監視結果、これは、刑務所出所者等への実効性のある社会復帰支援対策を推進し、再犯防止を図る観点から実施いたしまして、その結果に基づいて勧告したものでございます。

 先ほど委員からも四点御紹介がございました。

 改めて申し上げますと、まず、就労支援につきましては、出所者に職業相談等を適切かつ確実に実施することを勧告いたしました。これは、刑務所と公共職業安定所との間の連携不足により、必要な支援が実施されていない例などが見られたためでございます。

 二つ目、住居確保につきましては、更生保護施設への出所者の受け入れの促進を勧告いたしました。これは、更生保護施設は、適当な帰住先がない出所者を受け入れる施設でございますけれども、その収容実績が低調となっている、そのような例が見られたためでございます。

 三つ目、高齢または障害のある出所者への福祉的な支援につきましては、支援対象者の選定の早期化を勧告いたしました。これは、刑務所における支援対象者の選定のおくれにより、医療福祉施設の橋渡しを担う地域生活定着支援センターの調整期間が十分に確保できず、支援が行われなかった、そういった例が見られたためでございます。

 最後に四つ目、満期釈放者に対する支援につきましては、釈放前の指導の充実を勧告いたしました。これは、一部の刑務所で指導が形骸化しているというような例が見られたためでございます。

 以上でございます。

横路委員 就労支援や住居の確保など、仮出所や仮退院した人々、それから保護観察のつかない起訴猶予者とか、あるいは満期出所の更生緊急保護などの人々に対する中心的な役割を果たすのはどこなのかというと、保護観察所なんですね。保護観察官の大きな役割だと思います。それはもちろん、支えている保護司がたくさんおられるわけですが。今回指摘された四つの点も、その肝心かなめの保護観察所、保護観察官の役割というところの御指摘をいただいているわけです。

 保護観察所や保護観察官が大変だと思うのは、就労でいいますと、ハローワークとの連携がありますね。まずこれは非常に基本です。それから、六十五歳以上の高齢者、障害者は、地域生活定着センターというところがありまして、そことの連携が必要になってきます。それから、NPO法人就労支援事業者機構というのがありまして、これは雇用協力事業者の人たちを組織したり、それから就労支援をやっています。それから、更生保護協会は身元保証システムをやっています。就労でいいますと、そういう関係がございます。

 それから、住居でいいますと、更生保護施設と、ここだけではなかなか確保できないものですから、ここ数年、自立準備ホームというのをつくりまして、これが非常にふえていっています。しかし、そこまでなかなか手が回っていないというのが現実ですが。

 それから、各団体、保護司会があります、更生保護協会があります、更生保護女性会、BBS会、更生保護施設もありますし、サポートセンターなどもあります。こういう団体との関係があります。

 その上に、最近仕事が非常にふえてきているわけですね。

 そういう中で、なかなか大変だと思うんですが、この中核、今度の勧告でいったら核はやはり、保護観察所、保護観察官、ここのところをもっと充実していかなければいけないというのが、私が全体を読んだ印象なんですが、大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 私も横路先生の御指摘のとおりだと思っております。

 先ほど申しましたように、再犯防止の充実強化というときに、保護観察所はまさに中核的な役割を果たしているわけですが、そのために、いろいろな施策を考えてやってまいりました。

 就労支援が大事だ、あるいは帰住先が大事だ、高齢者やあるいは障害により自立困難な、福祉的な連携が必要な方々をどうするか、調整業務ですね。それから、専門的処遇のプログラムなども、性犯罪はどうだ、あるいは薬物犯罪はどうだ、こういうのもかなり開発してまいりまして、そういった密度も今までよりは高くなってきている。それから、社会貢献活動なども取り入れていこうというようなことで、相当負荷がかかっているんだろうと思います。

 それで、私どもも、やはり定員といいますか、人の充実も大事だと。それで、現場に当たるような者、保護観察官の中でも必ずしもこの仕事に特化していない者も多かったわけですが、引き離しまして、できるだけ保護観察の現場に充てていく。それから、かなり当局の御理解も賜りまして、保護観察官の定員も少しずつふやしてきていることは事実でございますが、まさにここが中核でございますので、さらに御協力もいただいて充実させていきたいと思っております。

横路委員 資料の一というのをちょっと見ていただきたいんですが、これは、全国と私の地元の札幌の保護観察所の例を挙げてあります。

 札幌の保護観察所を見ますと、保護観察官一人当たりの取扱事件数、七十二。それから生活環境調整、これも結構件数がふえています、これが百十三。それから、一人の観察官は四十四人の保護司を見ています。それから、保護司一人当たりの担当事件というのは、札幌の方を見ますと、保護観察事件は二件、生活環境調整事件は三件ということになります。

 これだけの数字を見ていると具体的にどんな仕事をしているかというイメージがわかりませんので、ちょっと二ページをごらんください。

 これは保護観察官の人の普通のケースでございますが、八時半に出勤して、九時から保護観察が始まる少年に対する最初の面接をした。十時半には、刑務所を仮釈放後、仕事が決まらない保護観察対象者が来たので一緒にハローワークに行った。そして、一時に保護観察中の少年の指導面接を行った。二時には家庭訪問をして、急に生活が乱れ始めた保護観察対象者宅を保護司と一緒に家庭訪問して指導した。帰ってきたら、同居する引受人とトラブルを起こして家を追い出された保護観察対象者が突然来たので、夜の宿泊場所を確保するために、更生保護施設と自立準備ホームを調整して、緊急に更生保護施設に入所した。そして五時半に、受刑者の生活環境調整のために、引受人である父のもとを家庭訪問した。七時半に帰庁して、二十一時に帰ったということですが、このほかに、研修だとか、先ほど法務大臣が挙げられたもろもろの社会貢献、あるいは薬物乱用防止の授業とか研修会や会議が入ってくるわけです。仕事のケースです。

 それから、三ページを開いてください。

 これは、保護司で私の古い友人なんですが、保護司歴はもう十数年やっています。彼に、一年間どんな仕事をしているんだ、ちょっと出してくれと言ったら、これは一年間のものを出してきた。三、四、五ページ。

 三百六十五日のうちの百二十八日、何らかの仕事をしているんですね。この仕事の中身というのが、保護観察所に仕事がふえますと、やはりある程度自動的に保護司の方の仕事もふえていますから、保護司会の仕事、もちろん保護観察がベースです。学校の関係、研修会があったり、環境調整、それから企業訪問して、雇用主、防犯の巡視もやったり、薬物乱用防止、これも、先ほど言ったように、そういう仕事が入ってくると、街頭宣伝だとか覚醒剤事犯者の引受人の学習会、社会を明るくする運動、そのほか報告書の作成ということで、彼は非常に真面目にやっている人間なんですが、一年のうちの百二十八日、これだけ費やしているわけですよ。

 そして、最後にお金のことが書いてあります。年会費、保護司会、寄付金、一万八千円は出した方です。収入は大体十万ちょっとぐらいですね。これはどこでも大体そんなものです。そうすると、そこから、あといろいろと費用がもちろんかかっていますから、実質は持ち出しになっているんですね。

 保護司会の方に聞きますと、なかなか保護司の引き受け手がなくて困っていますが、まずやはり時間があること、それから生活が安定してお金に困っていないこと、家庭がしっかりしていることというようなことを言うと、本当は少年なんかにはもうちょっと若い人たち、四十代ぐらいの保護司の方が、あるいはもうちょっと低い保護司がいいんだけれども、今言った要件に該当する人がいないと言うんですね。というようなことで、非常に苦労されています。

 本当はこの保護司の問題だけでもちょっと議論したいんですが、きょうは保護観察官の方の仕事にしますが、こういう仕事をやって、ある意味でいうと、社会的な治安のことも含めて出所者対策を進めているわけですよ。

 この一日の保護観察官の仕事、これは一般的な例で、とてもこれで済んでいるわけではありません。それから、この保護司の活動を見て、どうでしょうか、大臣の御感想をいただければと思います。

谷垣国務大臣 私もあちこちの保護司にお会いして、なかなか熱心に仕事をしていただいているし、大変だなと思ってまいりましたが、この横路先生の御友人の記録のような具体的なものを見るのは初めてでございまして、これを拝見しますと、これは本当にいい資料をつくっていただいたんですが、ボランティアでこういうことに取り組んでいただいている、本当に頭が下がるなという思いを新たにいたしました。

 今、保護司さんが活動していただくためにどういうバックアップ体制を整えたらいいかといろいろ議論もし、来年度に向けてもいろいろなことを考えておりますけれども、こういうものを参考にして頑張っていきたいと思っております。

横路委員 それで、加藤官房副長官、どうもお忙しいところ、ありがとうございました。初代の人事局長ということで、御就任おめでとうございます。最初の御答弁かと思いますが、いい答弁を期待いたしております。

 安倍内閣も再犯防止ということを今の内閣の非常に大きな柱にしています、オリンピックも開かれるということもあって。閣議決定や関係閣僚会議の中で、保護司制度をもうちょっと基盤からバックアップしよう、そして、保護司を支えている保護観察官、この保護観察官の体制の整備も行っていこうということも明らかにされておられます。

 このことは非常に大事なことでございますので、今定員の話もありました、定員については従来から御努力はいただいているんですけれども、今本当に仕事がわっとふえていて、ごらんいただいたような状況の中で、孤軍奮闘、頑張っておられますので、ぜひ定員の点についてしっかり体制をとっていただきたいということをお願い申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。

加藤内閣官房副長官 横路委員にお答えしたいと思います。

 刑務所から出られた方々の社会復帰などのために保護観察官が大変重要な役割を果たしておられる、今もいろいろ御指摘ございましたし、私ども、そこは十分よく認識をしているところでございます。また、これまでも、大変厳しい定員合理化の中ではありましたけれども、保護観察官の定員については配慮がなされ、必要な体制が整備されてきたというふうに承知しております。

 今、内閣人事局初代ということで、まだ一週間たったところでございまして、今回、やはり戦略的な人事配置を実現したい、こういうふうに考えております。

 今、流れとしては、内閣の重要政策に対応した戦略的な人材配置を実現するため、行政の業務改革の徹底を図ること等により大胆な定員の合理化と再配置を行うことが重要であるということで、まず、機構・定員管理の基本方針、これは最終的には閣議決定でございますが、策定し、そうしたものに基づいて、これから法務省から御要望が出てくる、御要求が出てくるというふうに思いますので、そうした御要望をよく聞かせていただいて、必要な体制、必要な対応をとらせていただきたいというふうに思っております。

横路委員 私、最近のことはわからないんですが、従来は、定員管理というと、一律カットをかけて、集めたものを必要なところに再配置するというようなやり方をやってきていたんですね。

 しかし、今お話しのように、もっと積極的に、割と必要性が少なくなってきたところ、それから必要性がどんどんふえているところというのはやはりはっきり見えているわけですから、そこに対して思い切って、今、戦略的という言葉を使われましたけれども、ぜひそういう配置で、法務大臣の話もよく聞かれて、きょうは、ぜひ保護観察官の定員をひとつふやしていただきたいということ。

 もう一つ、これは資料の六ページ、七ページなんですが、最初に七ページを見ていただきましょうか。

 七ページ、これは矯正施設、刑務所の方ですが、非正規職員ということで、民間委託とかそのほかやっていまして、これはポスト数ということになっています。その分のお金で二人採用しようが一人使おうがいいということで、何かポストということで計算しているようなんですが、全部合わせますと二千六百九十四あるんですね。

 そして、これを見ていただいた上で、これは民間の活用ということで必要なところもあるわけですが、六ページの「矯正施設における非正規職員」。理学療法士、作業療法士、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、そのほかずっと、就労支援スタッフも含めて入っています。これは本当は、やはり定員化して、正規職員としてちゃんと採用してやった方がいいんじゃないだろうか。

 後で議論しますが、就労支援スタッフというのは大体一カ所に一人ずつ配置されています。しかし、これも週のうち何日か行くだけの話なんですね。大きな刑務所ですと、一日で出所者が五十人ぐらいというような刑務所もあるわけですよ。とても一人の就労支援スタッフでそんなことができるわけありませんから、どうしても就労の成果が上がらないということもあるんですね。

 この辺のところの非正規職員、ほかの民間委託は民間委託で別にして、これからのいろいろな処遇というのはやはり専門家が必要になってくるわけです。専門家がどんどん必要になってきているという中で、こういう専門家の職員の非正規職員を正規職員化するという点についてはどのようにお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 現状では、今、横路先生がおっしゃったように、専門家が大変必要になってきている。これは、個別的な、それぞれの犯罪に応じた処遇を考えるというような意味でもそうでございますし、就労支援とかそういうことでもそうでございます。

 それで、今のところは、非常勤職員を活用してそこを補おうということでやっておりますが、なかなかそれだけではうまくいかない。そこで、福祉的な支援が必要な受刑者、あるいは社会復帰に向けた助言、相談も必要な受刑者がたくさんおりますので、それに対応する社会福祉士とか精神保健福祉士につきましては、今年度ですと、全国で十二名を常勤化、常勤職員として配置することができました。

 現状では全部常勤にはなかなかいきませんけれども、こういう常勤化をしていくということは、必要な方向として努力をしなければいけないと思っております。

横路委員 必要なところの定員増と今言った常勤化ということで、これは法務省としても御努力いただき、その御努力を人事局の方でもバックアップしていただくということでよろしくお願いしたいと思います。官房副長官、結構です。ありがとうございました。

 それでは次に、就労の面でちょっとお尋ねいたします。

 就労の面でお尋ねしたいのは、平成二十五年度法務省行政事業レビューというのをやりましたね。そのレビューの中で何を指摘されたかといいますと、職業訓練が再犯防止に効果があるという検証を行いなさいと。これは、この前質問したときも、資格を取った人間がどういうところに就職しているんだということについては統計をとっていませんという話だったんですね。それではやはりいけないんじゃないかということ、同じことをここで指摘されています。社会ニーズに合ったものに変えていくべきだということが一つです。

 それからもう一つは、今言った、刑務所で取得した資格が世の中に出てどのように有効に使われているかということが明らかにされるべきじゃないだろうか。一体、人気のあるもの、人気のないものはどうなんだということなども、このレビューの中で問題になっています。

 資料の九ページ、これは六十二刑務所で三十二の種目、ここに三十二の種目があります。大体、定員が四千七百八十九人で、そのうち三千二百四十八人といいますから、七割弱が受けているわけですね。

 これを見ますと、充足率というのが書いてあります。〇%とか四%というのはさすがに平成二十六年にやめてしまったということなので、それはそれで結構だと思うんです。まあ、二〇%前後のこともありますし。新しく必要なものは何か加えたのかというと、それはそうはなっていないんですね。

 この法務省の行政レビューの中でもそこをよく調べるということになっていますので、この前の御答弁もそういうことでございました、これはやはりよく調べて、社会的ニーズに合うもの、それから、入っている人間が何か求めているものというようなものをピックアップして。しかし、これもそう簡単ではないと思いますよ。それを教える方の教官の配置だとか、一体、ちゃんと教えることのできる人間がいるのかどうか。民間に頼んでやるということも一つの方法でございます。

 そういうようなことで、この職業訓練についての行政事業レビューで指摘された点、これをきちんとやっておられるのかどうかということと、やはり全体を見直しをかけてやる必要があると思うんですね。そのことをどのようにお考えなのか。事務当局でも結構でございます。

西田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御指摘ありました、平成二十五年六月に実施されました法務省行政事業レビュー公開プロセスにおきまして、受刑者就労支援体制等の充実という事業につきまして、事業内容の改善をすべきだというような評価結果をいただいております。

 少し具体的に申し上げますと、その際どういう指摘がありましたかと申しますと、今先生御指摘ありましたように、職業訓練の効果の調査方法を検討して、再犯防止に効果があるとの検証を実施していくべきであるというふうにまず言われました。

 この点につきましては、こういったコメントをいただきましたので、実は、受刑者の処遇に関係のある法務省内の部局と連携を図ることによって何とかこの就労状況を把握ができないのかといったことを検討を進めているところでございます。それが一点目でございます。

 次に、これもメニューの問題になりますけれども、職業訓練の種目が建設関連に偏っている傾向があるなど、今後、社会の雇用ニーズに合ったものに変更していくべきである、こういった御指摘もいただいております。

 これにつきましては、具体的に、刑務所出所者等の雇用に非常に積極的な、意欲的な民間企業などを対象にしましたアンケートとか、あるいは、刑務所側と事業者側との検討会における意見を踏まえまして、職業訓練の見直しを実施するといったことで今進めておるところでございます。

 いずれにしても、今御指摘ございましたように、社会の雇用ニーズに即した職業訓練種目の見直しをしなきゃいけないと思っておりますので、その方向でいきたいと考えております。

 以上でございます。

横路委員 ぜひそういう方向で抜本的にひとつお考えいただければと思います。

 次に、資料八を見ながらお話を聞いてほしいんですが、就労の問題をお尋ねします。

 まず、入りますと、R6という処置指導の指定がされるわけですね。そういう人たちは、稼働能力があるとか、就労の意欲を持っているとか、本人が希望するというようなことでございます。

 この人たちの義務というのが一つありまして、就労支援指導を受講する義務があるんですね。ところが、今回の総務省の調査で、それがやられていないという指摘がされています。

 それからもう一つは、支援対象者、準支援対象者ですね。これもやはり、支援を希望して、釈放前、三カ月以内、稼働能力、勤労意欲があるということで、そういう人を選びますと、施設長からハローワークの所長へお願いをして、そこで求職の登録をしてもらうことになっています。

 ところが、これも、支援対象者として選ばれたにもかかわらず、求職の登録や職業相談を行っていないものとか、支援対象者は出所した場合にはハローワークに行かなきゃいけないんですね、だが、ハローワークに行っていないというような問題の指摘がされています。

 それから、重点支援受刑者というのは、特に就労効果が期待できる受刑者を選定して、刑務所に配置されている就労支援スタッフなどによる継続的な助言指導を中心に、職業訓練、就労支援指導、安定所による職業相談、職業紹介など、重点的な就労支援を実施するんだということで、一年がかりで就労支援計画書というのをつくって、それに沿った就労支援をするということなんですね。

 ところが、実際、この人たちは何人就職したのかというと、全体の指定された三百八十四人のうち、就職した人間は七人にすぎないんですね。八ページの資料の上の方に、対象者がどうなったかということで、これはある程度就職されています。

 この前も、なぜこうなのかというと、まあ、これからいろいろ検討しますという話だったんですが、全体的に言うと、本来やるべき仕事をやっていないということなんですね。本来やるべき仕事がきちんとやられていない。

 これは、何でそういうことになっているのか。人手が足りなくて、忙しくて、なかなか手が回らないということなのか。あるいは、中でなかなか指示が通らない組織になっているのか。そんなことは絶対ないと思うんです、法務省の矯正施設の中で。

 ですから、その辺のところを、まず局長の方からで結構でございますが、なぜこんな初歩的な指摘を受けているのか、この辺はどのようにお考えなんですか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘がございましたように、施設に在所中に就職に結びつけることができなかった理由と申しますのは、先ほどの刑務所出所者等の社会復帰支援対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告においても指摘がございましたけれども、率直に、我々、中身を精査したところ、職業訓練をやる部門、就労支援指導をする部門、就労支援事業全体を統括する部門、それからあとは、職業訓練を集中してやる施設と、もともとそこに移送するもとの施設、そのおのおのがやはり連携とか調整ができていない、もうこれに尽きようかと思っております。

 したがいまして、どういうふうにこれを防止して是正するかというのは、まさに連携を強化して調整を進めるしかないというふうに考えておりますので、協議会の場などを通じまして、少し厳しく現場の施設長に私の方から指示をしたこともありますし、これからもしていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

横路委員 いろいろな制度、仕組みは、割とできてきているんですね。あと、それがどのように効率的に運用されていくのかということが問題だと思うんです。

 私も法務委員は初めてでして、いろいろ調べていくと気になることがたくさん出てきまして、時間が短くて、まだまだ質問する予定で通告した点がありましたが、また次の機会にさせていただきます。

 ありがとうございました。

江崎委員長 次に、郡和子委員。

郡委員 おはようございます。民主党の郡和子です。

 私は、三月十九日、この委員会で死因究明について質問をいたしました。その後、内閣府に設置された死因究明推進会議のもとに置かれた推進計画検討会から最終報告が出されました。そして、間もなくというふうに聞いておりますけれども、閣議決定がされるということで、その準備に追われているんだろうというふうに思います。

 有識者会議がまとめましたこの最終報告書ですけれども、内容が余り、具体性に欠けていたんじゃないだろうか、死因究明のあるべき姿というのを十分に反映していたものというふうには言いがたいなというふうに率直に感じました。並んだ施策というのは、今までやっているものであったり、それから、努めるですとか、行っていくといったような文言が目立っていて、大半は、いつまでやるのか、どの程度達成されるのかといった、そういう時期、数値の目標が設定されておりませんで、これでは推進計画の閣議決定に果たしてどんなものが出てくるんだろうかと、いささか心配をしているところです。

 ところで、昨年、警察が扱う死体が二〇〇三年以来初めて減少いたしました。厚労省の人口動態統計の速報によりますと、二〇一三年の死亡者数ですけれども、およそ一%増加をするということですし、それから独居老人に対する施策というのが劇的に変わったということもないわけでして、それでも警察に届ける死体の数が減ったのは、一体どうしてなんだろうというふうに考えるところです。

 仮説の一つに、こんなことをおっしゃる方がおります。一昨年十月になされた当時の厚労省の医事課長の発言、これが原因になっているんじゃないだろうかというような声であります。

 これは、厚労省の医政局に置かれました第八回医療事故に係る調査の仕組みのあり方に関する検討会での発言でございまして、その後、死体外表に異状なければ警察届け出義務ない、医師法二十一条解釈、厚労省が見解表明というふうに見出しを大きく出された報道などもあったわけであります。

 当時の医事課長の御発言を私も見させていただきましたけれども、ストレートにこのように発言はされておりません。

 そもそも、死体の外表だけを見て異状があるかどうかということを判断するというのも正しくないだろうというふうに思いますし、仮に外表に異状がなくても、若者の突然死、それからお医者さんにかかることなく死亡した例など、異状死として届け出なくちゃならないものもあるわけであります。

 外表に異状なければ警察届け出の必要がないということ、これが流布されれば、犯罪や事故の見逃しにつながる可能性が十分にある、死亡診断する医師が誤解をするようなことがあってはならないというふうに思っているわけでございます。

 現在の検案行為は遺体外表しか検査できないわけですが、それで死因を診断しているというわけではございませんで、検案による死因診断は、外表検査だけでなく、死亡するまでの経緯などを総合的に判断した上でなされているわけで、つまり、その過程の中に異状があれば、これは届け出が必要になってくるわけですし、そうでなければ、薬毒物で殺害されて病院に運ばれた事例など、全てこれは警察に届け出ることがなくていいというふうなことになってしまうわけで、論理的におかしな話だ、そういうふうに思っています。

 そこで、厚労省に伺いますが、死体外表に異状なければ警察届け出義務ないというのは厚労省の見解でしょうか。私は外表に異状がない場合でも異状死はあると考えますが、それでいいでしょうか。

高島政府参考人 お答えいたします。

 医師法に二十一条というのがございまして、「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」という規定がございます。

 死体または死産児につきましては、殺人とか傷害致死、死体損壊、堕胎等の犯罪の痕跡をとどめている場合がありますので、司法警察上の便宜のため、それらの異状を発見した場合の届け出の義務を規定したものでございます。

 この規定にございます検案でございますけれども、この検案につきましては、平成十六年に最高裁の判決が出ております。その中で、「医師法二十一条にいう死体の「検案」とは、医師が死因等を判定するために死体の外表を検査すること」、こういう内容の判断が示されております。

 先ほど、医事課長の発言というのがございましたが、こちらは医療事故の調査制度に係る検討会で見解を求められたものでございますが、その際に、この最高裁の判例を示しまして、外表の検査をして報告ということにつながるかどうかを判断していただくということを申し述べたという状況でございます。

郡委員 ですから、このときに出されてお話しになられたのは、広尾病院事件の最高裁の判決を紹介したレベルにすぎないわけですよね。診療関連死や事故調の議論が今進められているわけですけれども、これはおいておくとしても、臨床の先生方の間に誤解が生じるようなことがあってはならないというふうに思うわけです。

 外表に異状がなくても異状死の届け出をすべき場合がある旨の通達を出していただけないでしょうか。

高島政府参考人 検案に際しましての警察への報告につきましては、今申し上げたとおりでございますが、今委員からもお話がありましたけれども、外表に異状がなくても、何らかの異状死の可能性がある場合という可能性もあるという御意見はいろいろ聞いております。例えば、薬物を使用した痕跡があるとか、カルテを見れば何らかの問題が出てくるのではないか、こういったもので、取り扱いが不明確であるという指摘もなされているところでございます。

 これは、先ほど申しました診療関連死にも関連して、今回、医療事故の調査制度を創設するということで、今法案を提出中でございます。その中において、やはり医師法二十一条との関係、異状があったときの報告というその絡みで、いろいろ疑義があるのではないかという御指摘を受けております。それを受けまして、医師法第二十一条の規定による届け出と医療事故調査における医療事故の報告のあり方につきましては、この法律の公布後二年以内に検討を加えて、その結果に基づき必要な措置を講ずる、こういうふうにされておりますので、この二十一条の解釈につきましても、その過程でいろいろ検討を加えていきたいと思います。

 それで、診療関連死を除きまして、いわゆる死因究明の中で検討してきた今後の体制でございますが、死因究明を推進する観点から、これから厚労省としてできることとしましては、検案にかかわる先生方の技術それから知識を向上するために、日本医師会と連携しまして医師の検案の能力を高める研修というのをこれから進めていくこと、それから、五年後を目途に、原則としてそういった研修を受けた方が警察への立ち会いなり警察の関連の検案書を書いていただく、こういう体制を整備しようと考えております。その過程で、こういった検案、それから警察に立ち会う医師と警察との連携を深めていこう、こういう体制を構築していこうと考えております。

 これは、医師法二十一条に基づく義務、これは罰則がかかる義務なんですけれども、その義務として報告があるということとはまた別の問題としても、いわゆる犯罪見逃し等のないように、検案をする医師、警察に立ち会う医師の能力を高めて、その過程でいろいろな医師としての見解というのは当然述べていただく機会が多くなってくると思っております。

郡委員 重ねて申し上げますけれども、外表に異状がなければ警察に届け出る必要はないということが流布されれば、犯罪や事故の見逃しにつながる可能性が十分にあるということで、ぜひこのような誤解されるようなことを払拭していただきたいということを申し上げたいと思います。

 我が国の異状死届け出に関する法律、今おっしゃられた医師法二十一条、医師法二十条等々ありますけれども、それのみなんですね。異状の定義も明確になっていないわけであります。

 欧米などではかなり明確な届け出基準がございまして、多くは法定化もされているというふうに聞いております。その一つには、刑事施設などの拘禁、矯正あるいは収容施設の中での死亡事案を一律に届け出るべき死として定義していて、法医学的調査に付すべきとしている例が多く見られるわけです。

 そこで、我が国ではどうなのかということです。矯正施設等の中での死亡事案、必ず法医学的調査に付すような運用が行われているのかどうか、伺います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 刑事施設において被収容者が死亡した場合には、刑事施設の長が検視を行いまして、運用上、病死、変死を問わず、死亡事案全件を検察官及び司法警察員に通報する取り扱いとしております。

 なお、司法解剖するか否かにつきましては、検察官の判断によるものでございます。

郡委員 ありがとうございます。

 数につきましては、資料の一で付させていただきました。

 では、入管管理下の収容施設における死亡事案についてですけれども、先日も私、質問いたしました。二〇一一年以降の死亡事案七件のうち、二件が自死、そして一件の死因不明ということでしたけれども、これらを含めて収容施設における現在までの死亡事案について、法医学的調査が行われているでしょうか。

榊原政府参考人 お答えいたします。

 関連資料が保存されている平成三年以降について調査しましたところ、入国管理局の収容施設における被収容者の死亡事案は十九件、このうち、司法解剖が行われたことを把握しておりますのは五件でございます。

郡委員 資料の二、三をごらんいただきたいと思います。

 今、局長から御説明のあった平成三年以降のものですけれども、平成九年の東京入管、平成十三年十月の西日本入管、それから平成十七年の西日本入管、ここが司法解剖された。新しいところでは、二十六年三月のこの事案についてなされたというふうに聞いております。

 死因不詳というところに星印をいたしました。これは、行政解剖に回されたというふうに事前に伺いました。

 ここで、縊死、若い皆さんたちが首つりということで亡くなっているということですが、これも巧妙な殺人という可能性がないわけではありませんし、年齢を見ても、それこそ若い方々も多いわけでして、この辺に対する調査がなぜなされていないんだろうなというふうに思うところです。

 法務省の同じ施設内ということにもなるわけです。入管の収容施設も一種の拘禁施設だというふうに認識をしますけれども、どうして対応が違っているんでしょうか。ぜひ同じようにすべきじゃないかというふうに思います。

 時間の都合上、また少し急がせていただきます。

 昨年の九月ですけれども、警察庁から死因究明推進検討会に出された資料で、解剖された死体に関して、およそ半数の都道府県で、大学の法医学教室などで、科学捜査研究所よりも多くの数の薬毒物検査が実施されておりました。資料の四で見ていただきたいというふうに思います。科捜研よりも多くの数が、大学の法医学教室で行われているんですね。

 一方、薬物犯罪の検挙数というのは一万人を超える状況が続いていて、脱法ドラッグによる事件や事故も後を絶たないんですが、トライエージなどの簡易検査では、ほとんどこれらの脱法ドラッグというのはひっかからないというふうに聞きました。精度の高い検査が必要であろうという御意見です。大学でも、半数近い大学が、精度の高い検査ができない状況だというふうに聞きました。検査体制の拠点化も含めて、大学における体制の強化が望まれていると思います。

 そこで、文科省に来ていただきました。検査という実務のためには、その前提となる、検査できる人材の育成というのも必要でしょうし、検査に係る研究、これも重要になってくるんだと思います。かつては、薬学部の中に裁判化学という講座があったんだそうですね。これがもうなくなってしまっているということです。中毒学というのは、法医学の中で細々と行われているのが現状だということです。

 文科省に、それでは、この中毒学に対する教育、研究をさらに振興させるべきというふうに思いますけれども、これについての御見解をお示しください。

佐野政府参考人 お答えさせていただきます。

 先生御指摘のとおり、文科省といたしましても、この中毒学を含めた死因究明等に関する教育及び研究体制の整備が重要であるということは認識しているところでございます。

 例えば、現在、中毒学の教育研究に関しましては、東北大学におきまして、大学生向けの教材開発や、法中毒セミナーの実施、千葉大学におきましては、法中毒学の研修の実施、また、大阪大学につきましては、今般、大学院に死因究明学コースというものを設置して、薬毒物分析専門家の養成を行うというようなことを今準備しているところでございます。

 このように、各大学におきまして、薬毒物検査を含めた死因究明等に係る人材育成や、教育及び研究体制の整備につきまして取り組んでいるところでございますが、文科省といたしましても、その財政的支援をしているところでございます。

郡委員 ぜひこれからも頑張っていただきたいというふうに思います。

 次は、画像診断です。死亡時あるいは死後の画像診断というのは、今、死因究明の一つの重要なツールになっているというふうに思います。

 警察庁からいただいた資料、これもきょうお配りしていますが、資料の五を見ていただきたいと思います。

 公費で行われた全国での実施数なんですけれども、昨年四月から十二月で六千三百件に及んでいます。ただ、ここで気になりますのは、細かい字で恐縮ですけれども、都道府県によって随分ばらばら、ばらつきがあるということです。例えば、福島県などは半数以上もの画像診断を行っている一方で、警視庁管内それから神奈川県、これはゼロという数字になっています。

 これは何でこんなふうにばらばらなのかなと。公益性が高い事務ですから、国として標準というのがあるんじゃないだろうかというふうに思うわけでして、警察庁として、画像診断を行うかどうかといった基準というのはつくっていないんでしょうか。もしないとすれば、今後つくる気はあるのかどうか、お尋ねします。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 警察といたしましても、死亡時画像診断につきましては、御遺体の内部の状況を把握する上で有効な手段であると考えておりまして、実施基準というものはございませんけれども、積極的な活用を推奨しております。

 ただ、この死亡時画像診断は比較的新しい手法であるということに加えまして、都道府県ごとのさまざまな事情も相まちまして、その実施状況にばらつきがあるのは御指摘のとおりでございます。警察庁としましては、死亡時画像診断の活用事例の周知等を図ることによって、都道府県警察に対する指導に努めてまいる所存でございます。

 他方、死亡時画像診断の実施の要否を判断するに当たりましては、御遺体の状況はもとより、現場の状況、それから関係者の供述内容、立ち会い医師の所見等を総合的に勘案するものでございまして、このような性格上、死亡時画像診断について、どのような場合に実施するかについては、その画一的な基準というものをつくることにはなじまないのではないかと認識をしております。

郡委員 画像だけの死因判断というのは二、三割というふうに言われております。解剖に取ってかわる手段というふうにはならないということだというふうに思います。犯罪見逃し事案の多くが薬物であったり毒物であったりということも考えますと、画像だけに頼るのは、私はちょっと危険なんじゃないのかなというふうに思っているということです。

 本来、そういうふうな場合を考えて、解剖を実施して総合的に死因究明をするべきだという考えなわけですけれども、今、この数字を見て、福島以外に、北海道、京都、熊本の実施例が多いわけなんですけれども、そこの地域で、それでは司法解剖はどうなっているか、あるいは新法解剖はどうなっているかと見ますと、この今挙げたところは司法解剖が激減をしていて、新法解剖もそれほど多くないんですよ。私自身は、CT等が司法解剖に置きかえられるとすれば大変問題じゃないかというふうに思っています。

 ところで、六月の四日、内閣委員会でやはり死因究明について質疑があったというふうに承知をしておりますけれども、古屋担当大臣が、経費、コストの問題も、見合いもございますのでというふうにおっしゃっている。これは、CTスキャン等々を活用していくという手もあるだろう、こういうつながりでおっしゃっているんですけれども、経費節減のための代替手段にCTスキャン等を考えるというふうなことであることは、今申し上げたとおり、許されないんじゃないだろうかというふうに思っておりますので、しっかりと対応してくださいますようにお願いいたします。

 それで、検視官が解剖の要否を決めるわけですよね。それでは、どんなふうに検視官が決めているのかであります。警察庁として基準があるんでしょうか。死因・身元調査法では、法医学に関する専門的な知識経験を有する者の意見を聞き、解剖を実施するというふうになっていますけれども、この規定、どのように運用されているでしょうか。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 警察の検視官におきましては、個別具体の事案に応じまして、御遺体の状況はもとよりでございますけれども、現場の状況でありますとか、関係者の供述内容、各種の検査結果、立ち会い医師の所見等を総合的に勘案いたしまして、犯罪の嫌疑が認められる場合には司法解剖を、それ以外の場合であっても、死因を明らかにするために特に必要があると認められるときは、死因・身元調査法に基づく解剖を実施するとの判断を行っているところでございます。

 このような判断の性格上、解剖につきまして、画一的な判断基準を設けるということにはなじまないものと考えております。

 また、警察として、死因・身元調査法に基づく解剖の必要性を認めた場合には、平素から解剖を委託しております専門の医師に、御遺体の状況、それから現場の状況、各種の検査結果等を御説明いたしまして、解剖が必要である旨の意見をいただいた上で解剖を実施しているということでございます。

郡委員 今伺った範囲でも、これは死因究明に関する統一基準がほとんどないということをおっしゃったんだろうと思います。

 冒頭申し上げた検討会の報告の中に、政府において、検案や薬毒物検査、死亡時画像診断その他の検査、遺族等への対応の取り組みの参考となる指針を策定、提示するとともにというふうにありますので、この点は必ずしっかりと実現していただきますように要望したいというふうに思います。

 次は、法歯科学についてお尋ねをします。

 死因究明と身元確認というのは表裏一体の関係だというふうに思っています。我が国で身元不明遺体というのが多くて、そのほとんどは死因がわからないというような状況なわけです。死因究明は、警察が行う周辺の調査などで、また大学などの法医学的調査の両輪でやっていくわけですけれども、身元が、そもそも誰なのかわからないということであれば、それらの調査というのはできないわけですよね。したがって、身元を解明するということが重要だというふうに思っているわけです。

 例えば、溺死の御遺体が上がった、直接の死因は溺死であろうというふうに判断をされても、事故か自殺か、あるいは他殺か、これらは、その人の身元がわかった上でどういうような背景があったのかということがわからなければ、確実な死因究明ができないわけです。そこで、身元確認というのは重要であるという認識を持っているわけです。

 この身元確認の科学的な方法としては、歯について重要だというふうに思っているし、それから指掌紋、指紋、それからDNA等々挙げられますけれども、日本はどうも、顔つきがこの人で間違いありませんか、顔貌で間違いありませんか、それから、着ているもので、あなたの知り合いのこの方のもので間違いありませんかといった、主観的な要素に頼るところが多いわけですけれども、そろそろこの習慣というのは変えていってもいいんじゃないだろうかというふうに思っているわけです。

 今申しましたように、例えば歯等の形で個人を特定していくということ、これを進めていくことが重要だというふうに思うわけですけれども、法歯科医と言われる専門家というのは我が国にどれぐらいいるのか聞いてみましたらば、ああ、そうなんだとびっくりしましたけれども、二十人ほどだそうです。講座を持っている大学というのも少しふえたというふうに聞きましたけれども、八大学だそうで、東日本大震災のときにも地域の歯科医師さんに御協力をいただいて、大変御苦労いただいたわけですけれども、いわゆるボランティアの警察歯科医の皆さんというわけで、この状況もお寒いなというふうに思いました。

 文科省に改めて伺いますけれども、専門的な法歯科医を養成すること、これは喫緊の課題と思いますけれども、どう対策をとられますか。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 文科省といたしましても、今先生おっしゃいました歯科法医学に係る教育研究体制の整備が重要であるということは十分認識しているつもりでございます。

 例えば、東北大学におきまして、昨年でございますが、歯科法医情報学分野というものを設置いたしまして、個人識別死因究明に関する研究等を始めたところであります。また、大阪大学におきましては、今年度から、医学、歯学、薬学の三研究科が連携協力を行いまして、死因究明医、法歯科医、薬物分析専門家の養成を行う取り組みを初めようとしているところでございます。

 このように、各大学において、歯科法医学に関する教育及び研究体制の整備について取り組んでいるところでありますが、文科省としても引き続き、積極的に各大学の取り組みを財政支援するなどし、支援していきたいというふうに思っております。

 以上であります。

郡委員 これから、今月の中旬にも閣議決定がされるというふうに聞いておりますけれども、ぜひとも政府を挙げて、この死因究明に取り組む体制というのをつくられることを強く望みたいというふうに思います。

 最後に、大臣にその御決意をお述べいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 先ほどおっしゃった検討会の最終報告書に基づきまして、今、死因究明等推進計画、近々閣議決定の運びということでございますが、まだ最終調整が済んでおりませんので確たることは申し上げにくいんですが、積極的に私たちも取り組んでまいりたいと思います。

郡委員 冒頭にも申し上げましたけれども、最終報告書、これは具体性が乏しかったというふうに思っております。もっと強力に進める決定にしていただきたいというふうに思います。

 高齢化が進んでひとり暮らしのお年寄りも多くなっているわけで、遺体の発見がおくれて死因の特定が難しいケース、これがふえていくことも考えられましょう。

 また、過労死防止法の制定が今進められているわけですけれども、この議論の中で、大妻女子大の先生が、法医学者の反町先生ですけれども、亡くなった方からのメッセージを予防につなげたい、死因究明関連法を過労死認定や過労死防止に活用をというふうに集会で呼びかけられたというふうに聞きました。

 解剖数をふやすこと自体を目的にしているわけでありません。犯罪の見逃し、事故の見逃しを防いで、これは公衆衛生にも役立てるような、そういう制度にしていかねばならないというふうに思っております。

 以上で質問を終わります。

江崎委員長 次に、西田譲委員。

西田委員 日本維新の会の西田譲です。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうはまず、最近、新聞等報道でもよく出てくるようになった立憲主義という言葉について、大臣とお話をしたいと思っております。

 立憲主義といいますけれども、実はもう大臣は、昨年五月の法務委員会だったと思いますが、辻元委員との憲法での白熱した議論をたしかされたと記憶しておりまして、そのときに大臣は、立憲主義とは何ぞやといったことに対して、これはもうどんな権力であれ法のもとにあるというふうに立憲主義を解釈しているというふうにお答えになったと思います。

 ここ最近、集団的自衛権の政府解釈の正常化であったり、あるいは、昨年の特定秘密保護法の国会での審議等を報道する一部の新聞等では、立憲主義の否定だとかいうことが殊さら宣伝文句として使われているなと。あるいは、元内閣法制局長官までもが、この集団的自衛権行使の解釈正常化については、立憲主義の破壊だというようなことをおっしゃっていることを読んでみますと、どうしても私は違和感を覚えざるを得ないわけでございます。

 立憲主義とは何ぞや。私もきょう、一部、教科書をちゃんとお持ちしました。私の教科書、これは、マクヮルワイン教授の「立憲主義 その成立過程」、一九四〇年、コーネル大の教授でございます。

 二十九ページにやはりちゃんとぴしっと書いてあるんですね。さすがマクヮルワイン教授だなと思って。「立憲主義の最古の、又最も恒久的な特質は、法による統治権の制限であり、このことは、初めから現在まで変ることがない。」大臣がおっしゃったことと全く同じでございます。「立憲主義とは統治権に対する法的制限であり、恣意的支配のアンチテーゼであり、又専制政治、即ち法による統治ではなく意志による支配が、正に立憲政治とは反対概念である」。これも昨年五月の大臣のこの委員会での答弁のとおりであると思います。

 ここで、このマクヮルワイン教授の定義の説明でも思うんですが、重要なのは、統治権というのは何かといったときに、まさしくこれは立法府による立法権のことを指しているわけでございます。つまり、立憲主義というのは、立法府が暴走して何かとんでもないような立法をするのを防ぐことこそが立憲主義というふうに思うわけでございます。どうしても立法府というのは、我々の国会での活動もそうですが、一時的な世論であったり今の風潮によって左右されることが多いわけでございますけれども、そういったものがいわゆる一般的規則である法に違背することがないようにということこそが立憲主義の要諦であろうかと思うわけでございます。

 であるならば、今回の政府の集団的自衛権解釈正常化が果たして国会をして立法を暴走させることになるのか。そんなことには決してならないわけでございます。むしろ、憲法九条であったり集団的自衛権の解釈等に関して立憲主義というものを振りかざすのであれば、そもそも、憲法九条というものが独立国家にとっては恣意的な条文であることの方が、もしくは国際法と乖離していることの方が、法の支配というものを絶対視する立憲主義に反するということがよほどしっくりくるわけでございます。

 立憲主義に立脚するのであれば、憲法九条を改正すべきだ、あるいは集団的自衛権行使の解釈を正常化すべきだというのが立憲主義に基づく主張だと思うんですが、どうも、最近の元内閣法制局長官の主張や大手新聞社の主張は、解釈の正常化が立憲主義の否定だと転倒した論評をしておるわけでございます。

 正しく立憲主義を御答弁されておられました大臣の御感想をお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 今お引きになりました立憲主義、主として立法権を縛るというような感じで西田委員おっしゃいましたけれども、私は、立憲主義は、もちろん、立法作用そのものをコントロールするというのは立憲主義の一つの要素ですが、行政権も司法権もやはり立憲主義によって縛られるものだと思います。ですから、必ずしも立法府だけを対象にしたものではない。

 その上で、法務大臣がこういうことをお答えするのが適当かどうかわかりませんが、憲法解釈は、これは私個人の考え方でございます、かなり多くの方はみんなそうお思いでしょうが、長い間に憲法解釈を変える必要が出てくるということを全部否定するわけにはいかないと思いますね。やはり憲法解釈が、長い年月の変化とともに変える必要が出てくるということはあると思います。しかし他方、同時に、憲法解釈というものは安定的なものでなければなりませんので、しょっちゅう、変わった変わったといってくるくる変えているようでも、一国の統治、政治体制は安定しない。そういう二つの側面があると思います。

 今いろいろな御議論がございますが、憲法解釈の安定性というものを非常に強調すれば、例えば、何か名前とか新聞をお挙げになりましたけれども、そういう解釈も成り立ち得る、成り立つことはあり得ると思うんですが、今の私の申し上げた二つの要素をどうバランスをとっていくかということが、それぞれの姿勢の違いというものを際立たせることかもしれません。私は、その二つ、片っ方だけ強調しても間違うのではないかなと思っております。

西田委員 いつも懇切に御答弁をいただいております。ありがとうございます。

 バランスのお話がございました。まさしく、そういった意味では、私は、最近の報道は余りにも立憲主義というものに対するバランスを欠いた報道がなされているというふうに思うわけでございます。

 先ほどのように、大臣は、立法府のみならず行政もまた司法も、立憲主義というものは一定の縛りをかけるものだというふうにおっしゃいましたけれども、今日、我が国の統治の体制を見たときには、やはり立法府こそが立憲主義といったものをきちんと腹の中に据えておかなければならないというふうに思うわけでございます。

 当委員会でも時々、私、多数派による専制という言葉を使います。やはりどうしても立法府というのは一時的なムードで動いてしまいがちなところでございます。私は、デモクラシー、民主主義というものはやはり最大限警戒をしていかなければいけないという一面を決して忘れてはいけないというふうに思っております。

 立憲主義というものが民主主義、デモクラシーといったものとどういうふうにかかわってくるのかということを考えたときに、私は、デモクラシーというのは、どちらかというと、ややもすると不良少年になりかねない子供であって、立憲主義というのは、それを何とかびしびしとたたき直すおやじのような存在が立憲主義であるというふうに思っているわけでございます。

 だからこそ、立憲主義をきちんと確立することというのは、我が国における民主主義というものを健全に今後も維持していくことにとっては非常に不可欠な考え方、その不可欠な考え方である立憲主義を何か転倒させた報道がなされているということに対しては、大いなる懸念を持つわけでございます。

 さて、次でございますけれども、次はちょっと国際的な話になりますけれども、もう御存じのとおり、ウクライナでクリミア半島の問題が大変なことになったわけでございます。決して遠い国の、外国の、対岸の話ということではないというふうに思うわけでございます。

 仮に我が国で、一部の地域が、もう日本からこの地域は独立するんだとか、あるいは、ある地域が周到な準備のもとに、この地域はどこかよその国に加わることになったなんということが起こったらどうするんだろうかといったことを、ウクライナの問題、報道を見ながら思うわけでございます。

 刑法を見てみますと、当然、刑法には内乱罪とか騒乱罪とか、そういったものがあるわけでございますけれども、仮に、今の日本の統治の体制の中で、一部の地域が、もう日本から独立するとか他国に合流するとか、そういったことを企て、そして行おうとした場合というのは、こういった内乱罪とかいうものは果たして適用され得るのか。これは刑事局長にお伺いをしたいと思います。

林政府参考人 刑法七十七条に内乱罪が規定されておりますけれども、もとより、この内乱罪が適用されるかどうかについては、個別の事案に即して、収集された証拠に基づいて判断される事柄でございます。

 一般論として申し上げますと、国の統治機構を破壊し、またはその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法に定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として、その目的を持って暴動をした場合、この場合に内乱罪が成立し得ると承知しております。

西田委員 ありがとうございました。

 あくまでも、やはり暴動が起こらないと内乱罪ということではないということでございますから、暴動が起きずに今回のようにある地域が住民投票を仮に行いました、ある地域が暴動も何も起こらず住民投票を行って、そして、我が地域はこれから何とかという国と一緒にやります、もしくは独立をしますなんといった場合には、ではどうやって防ぐのだろうか。もうそれだったらしようがない、その地域は勝手にやりなさいと言うわけにはやはりいかないと思いますし、仮に住民投票で多数をとったとはいっても、では少数の人たちに出ていけと言うのかとか、いろいろなことを考えるわけでございます。

 そういったとき、では我が国に、暴動が起きずに、そうやって静かに何か統治を破壊するようなことが行われる場合に、何か防止する施策があるのか、もしないとすれば、そういったものをきちんとやはり想定し始めなきゃいけないんじゃなかろうか、そういったことを考えさせられた今回のクリミアに対するロシアの侵攻ではなかったかというふうに思うわけでございますが、大臣の御所見を伺いたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 先ほど刑事局長が御答弁申し上げたように、内乱罪は、暴動を起こす、あるいはその予備もしくは陰謀というようなことがなければ適用されない。では、平穏裏に俺たちの地域は独立するんだというのにどう対応するか。

 それで、私、十分調査したわけではありませんが、事務方に、日本の刑法にはそういうようなことを処罰する規定はない、諸外国の刑法はどうなんだろうと聞いてみましたら、これは網羅的に調べたことがないからよくわからない、ただ、自分たちが参考にしている例えばドイツの刑法とかそういうようなものには、そのようなことに対して刑法的に対応しているものは見た記憶がないと。これはまだ十分調査したわけではありません、そのときの事務方とのやりとりでございます。

 そこで、クリミアあるいはウクライナ等々の話を今おっしゃいましたね。だけれども、他方で、スコットランドも独立をするとかしないとかいう議論があるわけですね。あそこはユナイテッド・キングダムでございますから、もともとはスコットランドは独立王国であり、今でもスコットランド銀行はポンドでも大英銀行と違うポンドを発行したりはしているわけですが、果たして、あの運動がどうなるのかわかりませんが、ああいう運動をすることはどうなんだろう。そうすると、こっちになりますと、そこを平和的にやっているのを全て、では刑法犯の対象にできるかというと、うんっという感じが確かに出ますね。

 だから、これはなかなか簡単に答えの出ない難しい問題でございますが、一方、そういうふうにスコットランド人の独立、イングランドの風下には立たないぞというのが言論の自由、思想の自由という内容にも十分なり得るだろうということも考えられるわけですね。

 それからもう一つは、今の場合、スコットランドの場合でいえば、どういう法益を害するのか、どういうものが問題になってくるのか、これはいろいろな見方があると思いますね。

 ですから、これはかなり慎重に考えなければいけないので、そういう言論の自由、どういう法益を害するかというようなことを少しよく検討してみる必要のある、相当検討しなければ結論は出しにくい問題ではないかと思います。

西田委員 ありがとうございます。

 国際社会を見れば、本当にさまざまな事情を抱えている国ばかりでございますが、あえて今回、このクリミアの問題を例示させていただいて質問させていただいているのは、やはりそういう敵性国家からの意図的な行為があって、このようなことがクリミアでは、ウクライナでは行われているわけでございます。

 クリミアでは、ウクライナの国民に対して、例えば今回、さすがプーチン大統領と思ったんですけれども、さすがというのは悪い意味でございます。クリミア半島にいるウクライナ人に対してロシアのパスポートを渡すわけですね。ロシアのパスポートを渡して、何と、ウクライナではロシア国民が弾圧を受けているじゃないかといって軍事侵攻の大義をここでつけるわけです。本当にこれはもう奇想天外な戦略だなというふうに思ったわけでございますけれども、一方で背筋が薄ら寒い思いもするわけでございます。

 仮に、北朝鮮が我が国に帰化した北朝鮮人に対して一方的にパスポートを交付して、日本では北朝鮮人が、パスポートを持っている人間が迫害を受けているじゃないかといって軍事侵攻の大義を国際社会に訴える、こんなことの前例につながるような思いもしたわけでございます。

 今回、問題として私がうんっと思ったのは、やはり、敵性国家からの働きかけによって我が国のそういう統治の体制が脅かされるといったことに対して、どういうふうに考えるのかといったことでございます。

 私は昨年の委員会でも、旧刑法の八十五条、間諜罪というもの、これは復活を検討すべきじゃないかというふうに大臣に数度お尋ねをしてまいりました。こういう敵性国家からの働きかけといったものを未然に防止するといったことのためには、やはり必ず法整備が必要でございます。

 昨年、特定秘密保護法が成立をいたしました。これは諜報活動に対する防諜でございます。あわせてやらなきゃいけないのは、情報工作に対する対情報工作、にせ情報工作に対する対にせ情報工作といった部門というのは、まだ我が国では手つかずでございます。

 この部分、まずは、この旧刑法八十五条、間諜罪、よくできた条文でございます。敵国のために間諜をなしたる者もしくはそれを幇助したる者は死刑もしくは無期もしくは五年以上の懲役に科すとなっておりますが、やはりこの復活の検討といったものをすることこそが、対情報工作、そして対にせ情報工作の法整備の第一歩になるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。

 改めてお伺いします。

 一年たちましたが、大臣、改めてこの旧刑法八十五条の復活といったことを踏まえての対情報工作という法整備の必要性、これについてぜひ御意見を頂戴したいと思います。

谷垣国務大臣 去年お答えしたときから、さほど私は進歩しているわけではございませんので。

 これは、こういう間諜罪、八十五条でしたか、こういうものがなぜ、当時、戦前はあったわけですが、戦後これが削られて廃止される、そういう経緯もよく踏まえなきゃなりませんのと、それからもう一つは、前回お答えしたときは、いろいろな技術の発達等によって、かなりいろいろな配慮がないと立法も難しいんじゃないかということを申し上げた記憶がございます。そこらはかなり技術的な問題もありますので、技術的に検討していけば解は出てくるのかもわかりませんが、そのあたりも十分慎重に考える必要があるのではないかなと御答弁をさせていただくのにとどめたいと思います。

西田委員 先ほどおっしゃった、表現の自由や言論の自由とも非常に密接にかかわってくる非常に難しい問題ではありますが、情報国防では、やはりここはまだ不備がある分野でございます、ぜひとも検討していくべきであろうというふうに思います。よろしくお願いを申し上げます。

 残りの時間を使いまして、きょうは、刑法の堕胎罪についてお伺いをしてまいりたいというふうに思っております。

 アメリカ合衆国とかと違って、我が国は、中絶の是非ということについては、幸運にも社会的対立となっておりません。我々政治家も、選挙のたびに中絶の是非について、アメリカのように、大統領選のように、政治生命をかけて何か意見表明をしなきゃいけないということもないわけでございますけれども、一方で、昨今の医療の進歩、そして議論になり始めました出生前診断の話、こういったものが出てきますと、やはりどうしても、この問題は正面からきちんと向き合って議論、考察を深めていかなければいけない問題だろうというふうに思います。

 国際社会でも、一九九四年でございましたか、カイロで国際会議が行われて、そして各国の堕胎罪について、これはけしからぬというような声明を出そうかというような話にまでなったと伺っていますが、しかし一方で、いろいろな諸外国の文化的事情、宗教的事情があって猛烈な反対もあって、やはりこの問題というのは、国際社会の中にあっても、それぞれの背景、文化的、宗教的、そういった背景を考えれば、なかなか難しい問題だということになっているわけでございます。

 さて、刑法二百十二条で定めがあるわけでございますけれども、昨日刑事局の方にお伺いをしましたら、これは、明治十三年、一八八〇年の刑法制定当初から入っている堕胎罪でございますけれども、当時どういう趣旨で入ったんでしょうかとお尋ねしたら、やはりさすがに明治十三年でございますから、きちんとお答えする根拠となる文書等を探せるかどうかわからないということでしたので、それは結構ですというふうにお話ししたんです。

 恐らく、想定するに、当時、明治でございますから、いわゆる富国強兵、産めよふやせよ、国策でございましたし、一方で、明治維新という中での、西洋に追いつけ追い越せ、欧米に対しての見せ方として、こういったものをきちんと入れたんだぞと道徳的なアピールをしたかったのかもしれません。いずれにせよ、そういう背景で、刑法、明治十三年当初からこの堕胎罪が入ってくるわけでございます。

 そして戦後。戦後は、これはもう引き揚げ兵の方々ががっと戻ってきて一気に人口爆発するわけでございますけれども、一方で、食料不足、物不足といったことで、人口政策的な意味から何とかしなきゃいかぬということで、一九四八年でございますけれども、優生保護法ができるわけでございます。

 しかし、この優生保護法ができるときもなお、刑法の堕胎罪はそのまま維持をしたままで優生保護法ということでございました。結果として、堕胎の罪は罪としてそのまま保ちながら、一定の条件を満たした者についてのみ認めるという阻却事由として優生保護法があったわけでございますね。

 そして一九九六年が母体保護法でございますから、これはもう完全にようやく優生思想というものを取っ払うことになるわけでございますけれども、引き続き、いわゆる身体的事由そして経済的事由での中絶を認める、堕胎を認める、これを人工妊娠中絶として認めることで、刑法堕胎罪で定める、これは胎児の保護を目的としたのが堕胎罪でございましょうから、それの阻却事由としたわけでございます。

 こう経緯を考えてみますと、明治の刑法制定から戦後の優生保護法、そして九六年、その間には、七〇年代にはそもそも経済条項等について外そうじゃないかという議論が盛んになったとも伺いました。そういった経緯を見てみても、本元である刑法の堕胎罪はずっと維持しながらも、一定の条件のもとでの堕胎を認める、人工妊娠中絶として。

 堕胎罪というのは、やはり胎児の保護というものであって、中絶の議論の是非で必ず問われる女性の自己決定権であったりとか、そういったものを定めたものでは決してないわけでございます。つまり、堕胎罪では、女性の権利の定めにはなっていないわけでございますから、今中絶の是非をめぐる議論のときに必ず出てくる女性の自己決定権、こういった話とは堕胎罪はなかなか直接リンクしてこないわけでございます。

 この問題、本当にまだまだこれだという結論を実は正直、私自身が持っているわけではございません。ただし、中絶の是非といったものを考えるときに、胎児というものの道徳的位置づけはどうなんだ、そして、女性の権利、自己決定権といったときに、それが果たして胎児の生命権といったものを優先させることができるのかといった議論。

 そして、女性の自己決定権、これは、憲法十三条の後段でもきちんと身体の自由等を根拠として言えるわけでございますけれども、しかし一方で、自己決定権というからには、これは自己所有権が前提になっている、つまり、私有財産といいますか物として扱うことが前提になっていますので、果たして胎児をそうやって物として扱うことが前提となった女性の自己決定権というものがどこまで説得力を持つのだろうか。

 こういったことを考えていきますと、やはりこの問題は非常に難しいというふうに思うわけでございます。

 現状どうなっているか。今、我が国の出生数、年間百万人でございますが、届け出をされている中絶数は二十万件でございます。届け出をされていないものも含めればもっと数は多いと言われておりますし、近年の数字を厚生労働省から取り寄せて見てみますと、大体二十万件から二十五万件ぐらいで推移している中絶数のうち、当然、暴行、脅迫の際にも認められるわけでございますが、暴行、脅迫での人工妊娠中絶というのは大体百件なんですね。ですから、ほとんどが身体的もしくは経済的理由での中絶ということになっているというこの現状。

 こういったことを考えてみたときに、もう一度堕胎罪とは何ぞやといったことと向き合わなきゃいけない、そして、人工妊娠中絶の是非についてもう一度やはりきちんと向き合わなきゃいけないというふうに思うわけでございます。

 大臣に、残った時間で、お答えできる範囲で構いません。今現状、刑法の堕胎罪というものは事実上もう形骸化しているような状況でございます。その現状についての御認識、もし可能であれば、あわせて人工妊娠中絶に対する是非についての御意見等がございましたら、お聞かせいただきたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 きょうは西田委員から次々と難しい球が飛んできて、どう答えようかなと頭を悩ませているんですが。

 私も、実は、西田委員がおっしゃったように、堕胎罪の刑法の規定というのは、法務大臣がこういう言い方をしてはいけませんが、事実上死文になっているというようなイメージを持っていたんですが、こういう御質問を受けて、聞いてみますと、現在でも、堕胎罪で例えば起訴猶予という、それで有罪判決に持ち込んだという例は最近ではないようですが、起訴猶予であるとか、あるいは嫌疑不十分ということで処理をしているのがございますので、全く空文、死文化したというわけではない、やはり堕胎罪というものは生きているんだろうと思います。

 その上で、人工妊娠中絶については、母体保護法というものですので、これは私の所管の範囲ではございませんので、余り立ち入ったお答えは差し控えたいと思うんです。

 ただ、ちょっと今委員のおっしゃったことと、直接お答えすることにはならないなと思ってお答えするんですが、私は今、超党派の人口問題議連というものの会長を、私の前は福田康夫先生が会長をやっておられて、福田先生から後を継げと言われて継いでおります。

 私、従来、この人口問題議連というのは、メンバーでもなかったのでどういうことをやってきたのかよく知らなかったんですが、いろいろ、国際的な人口問題の議論あるいは国連の人口問題の議論、こういうものを最近勉強してみました。そうしますと、世界の議論の中で、日本の政治家たちが、吉野先生もメンバーなんですが、国際的な人口問題では随分イニシアチブをとってきた。

 そのときの考え方のポイントの一つは、イデオロギー的な議論としていくと、これは、宗教上のタブーとか戒律とかいろいろな問題があってなかなか話が進まない。だから、議論はできるだけ脱イデオロギーと申しますか、長い間、そういう議論で進めていこうということで、そうしなければ解が見つからなかったという答えを聞きました。

 つまり、例えばアボーションの問題は、アメリカでは物すごいイデオロギー的対立の問題になるわけですね。そういうイデオロギー的な対立から逃げるのがいいのかどうかというのは、政治家の態度決定としても難しいんですが、私は、人口問題議連がイデオロギー的対立の問題としないで、現実の問題、目の前にある問題を処理してきたという態度は、この分野ではかなり必要なことなのかもしれない。お答えになるかどうかわかりませんが、御議論を聞きながら、そんな感想を持ったものでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 まさしく今、日本がアメリカのようにこの問題が社会的対立になっていないといったこと、この環境というものはいいことだと私は実は思っております。アメリカのようにこれで社会的な対立が行われても、本当に憎悪が行き交う環境になって、これは決して望むべきことではないと思います。

 そして、この問題は、法務委員会でございますので、まず刑法堕胎罪がどうであるかといったことは考えていかなければなりませんし、これを取り巻く環境といったものは、社会保障もかかわってきます、教育もかかわってきます、本当にいろいろなところに波及していく総合的な分野でございますから、大臣おっしゃるように、イデオロギーだけで対立をしてしまって結論が出ないということになってしまってはよくないというふうに私も思います。

 ただ一方で、この問題は、やはり避けて通れない問題としてきちんと答えを出していかなきゃいけないということも、避け得ない我々の責任ではなかろうかというふうに思います。引き続き、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 以上で質問を終わります。

江崎委員長 次に、高橋みほ委員。

高橋(み)委員 日本維新の会の高橋みほでございます。

 きょうもよろしくお願いいたします。

 私は、きょう、安楽死と尊厳死について質問をさせていただきたいと思います。特に尊厳死について議論を重ねていければと思っております。

 実は、尊厳死、今回の国会で法案が提出されるのかなと私はちょっと期待していたんですけれども、それができないというような話なので、ちょっとここで議論をさせていただければと思っております。

 個人的な話にはなるんですけれども、私の祖母は、長い間意識を失ったまま、植物状態というのかどうなのかわからないんですけれども、長い間意識を取り戻さないまま、病院のベッドで寝ているという状況を迎えました。

 そのとき、栄養はちゃんと行き届いていますので、丸々と、ちゃんと健康そうな肌もして、ただ寝ているという状況にしか外からは見えないんですけれども、それが長く続いた場合、親族としましては長く生きていてほしいとは思いつつも、やはりこの状況というのはちょっと不自然な状況であって、家族の問題と考えた場合は長く生きていてほしいけれども、もし自分がその状況になった場合は自然に死んでいく、だんだん栄養もとることができず体が弱っていき、そして亡くなるという自然な状況で死んでいった方がいいんじゃないかなと、自分のことに関しましては特にそういうふうに思いました。

 現在、やはりここのあたりの法整備がされていないということは、本人、今意識がない人たちも特にそうだと思うんですけれども、そしてまた、家族の人たちもどうしていけばいいのかというところですごく迷うところであると思っております。

 それを法律で縛ることがいいのか悪いのかということは一つの論点だとは思うんですけれども、やはりここは避けて通ることもできないことだと思っていますので、ちょっと御質問をさせていただければと思います。

 私は、尊厳死とかを考えたときに、特に、日本では死ぬ権利というものはそもそも認められているんだろうかなということを常々疑問に思っております。

 自己決定権が認められているとされているのならば、その中に死ぬ権利というものもあるのかなというような気もするんですけれども、また、それを刑法として考えてみると、自殺は今不可罰とされているんですけれども、ではなぜ不可罰化されているかというと、違法性がないというふうに言う人もあれば、違法ではあるけれども可罰的違法性がないとか言う人もいる。それとか、ほかに、やはりそこはもう刑法が立ち入るところではないから放任されているにすぎないと言う人もいて、いろいろな説があると伺っております。

 それを考えると、やはり死ぬ権利というものを、あるのかないのかということをそもそも考えていかなければいけないと思いましたので、まず、日本では死ぬ権利が認められているのかということを法務省さんからお伺いできればと思います。

    〔委員長退席、土屋(正)委員長代理着席〕

林政府参考人 まず、まさしく現行刑法上、自殺というものは処罰されないということになってございますが、それでは、果たして死ぬ権利というものがあるのかないのかというお尋ねでございます。

 これについては、死ぬ権利という、もとより、そのように呼ばれた内容自体が判然としません。その上で、当省として、所管する刑事法令上を見ましても、死ぬ権利について規定したものというのは見当たらないわけでございます。

 したがいまして、これがあるのかないのかということは、当省としてお答えできるわけではございません。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 確かにそうなのかもしれないんですけれども、やはり死ぬ権利、権利とそこを言うのかどうかはすごく難しい問題だと私も思うんですけれども、死というものに国がどれだけ関与していいものなのかということを考えたとき、それを権利として認めるのかどうするのかというのは、やはり国民的にも議論していかなければいけない問題ではあるんじゃないかなと私は思っております。

 次に行きまして、尊厳死とか安楽死について語る場合、よく海外ではもう既に法制度がされているよというようなお話があると思います。

 そこで、まず、外国、海外の、例えばオランダとかベルギーとかいろいろあるとは思うんですけれども、これらの法制度について説明をしていただければと思います。

林政府参考人 まず、外国の尊厳死、安楽死に関する刑事法制について、網羅的に承知しているわけではございません。しかも、尊厳死という概念、あるいは安楽死という概念も確立したものではございませんので、どのようなものが外国にあるのかということは、なかなかお答えしにくいわけでございますけれども、とりあえず、文献等で判明している範囲でお答えいたします。

 例えば、オランダにおきましては、二〇〇一年に、所定の手続に従い苦痛から患者を解放するために意図的、積極的に死を招く医療的措置を講ずることを法的に認める法律を制定するとともに、この法律に基づき講じられた医療上の措置について、刑法を改正し、これを罪としないという措置がとられたものと承知しております。

 また、ベルギーでございますが、ベルギーにおきましては、二〇〇二年に、一定の要件に従い苦痛から患者を解放するために意図的、積極的に死を招く医療的措置を講ずる場合、刑法に触れないという立法措置がとられたものと承知しております。

 また、フランスでございますが、これは少し異なりますが、二〇〇五年に、延命治療を中止し緩和医療へと移行することによって死期を結果的に早めることを認める法制上の措置がとられましたが、他方で、フランスにおいて、苦痛から患者を解放するために意図的、積極的に死を招く医療的措置を講ずることについては、なお刑法上の罪となり得るというものになったと承知しております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 少しずついろいろな要件とか効果が違うんだと思うんですけれども、やはりこういう尊厳死とか安楽死の場合は、なし崩しに行っていくというのは私は余りいいことではないんじゃないかなと思っております。

 それはなぜかというと、いろいろな病院、どこの病院に行ったりとか、どこの地域に住んでいたりとかによって、どういう治療行為を最後に受けるのかとか、どういうふうに死んでいくのかというのがばらばらになるというのは、余りよくないんじゃないかなというのが私の一般的な感情というか意見です。ですから、これらはやはり何としてもきちんと定めていく必要性があるんじゃないか、海外でもそういうことを定めているところがある以上、日本でもできないものじゃないんじゃないかなと私は思っております。

 そこで、現行法上、これは定義がいろいろあるとは思うんですけれども、日本で尊厳死や安楽死がなされた場合、実際どのように法的に処罰されているのかということを法務省の政府参考人の方からお尋ねしたいと思います。

林政府参考人 まず、お尋ねの中の尊厳死あるいは安楽死という指摘がございましたが、尊厳死というのは、本人の生前の意思等に基づいて、生命維持装置によるほか延命の道がない場合に、そのような処置を施さないか、あるいは、これを取りやめて尊厳に満ちた自然な死につかせる、こういったことをいうものと理解しております。

 また、安楽死という中には、例えば、まず積極的安楽死というものがございますが、これについては、一般的に、苦痛の甚だしい死期の迫った人について、その苦痛を軽減または除去するために死期を早める措置をとる場合というものをいうと理解しております。

 また、安楽死の中の消極的安楽死というものがございますが、これについては、例えば輸血であるとか強心剤の注射を続ければ生命を延ばすことができるのに、患者の苦痛の時間を延ばすだけであると考えてあえてこれをやめる場合のように、死期が迫っていて、しかも耐えがたい苦痛のある患者について、患者や近親者の意思で積極的な治療を施すのをやめる場合、こういったような場合が消極的安楽死だと言われていると理解しております。

 このような理解に立った上での尊厳死、安楽死に関与した、例えば医師の刑事責任についてでございますけれども、もとよりこれについては、当該事案におきます捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断すべき事柄でございまして、具体的な事件を離れて一概に刑事責任があるかなしかということについては申し上げられないところでございます。

 したがいまして、これまでも尊厳死等が問題とされた判決等もございますので、そういったものを踏まえつつ、個々の事案ごとに検討すべきものと承知しております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 今の御答弁の中で、こういうのは、個々に判断していくというお話がありました。一応、判決というものが出て、大体それに従って実際は動いているとは思うんですけれども、個々に判断していく、事件といえばいいのかわからないんですが、行為を行ってから、後からそれが正しいかどうかというのを判断していくという、当然というか、仕方がないといえば仕方がないんですけれども、そこが曖昧になっている。実際、それがいいことなのか悪いのか、やっていいことなのか悪いことなのかというのを明確にやはり判断していく必要性があるかと私は思っております。

 そこで、ちょっと論点が変わるかもしれないんですけれども、私は、これを考えたときに、死の定義は今どうなっているんだろうというふうに思いました。実際、脳死が死ならば、脳の機能が死んでいて、それ以後に、例えば呼吸器をつけなかったりとか人工呼吸器を外したとしても、死んでいるならば余り問題がないんじゃないかなというような感覚も持ちます。

 そこで、現在の日本では、死というのは定義されているのか、脳死が死なのか、お尋ねしたいと思います。

林政府参考人 死の定義ということにつきまして、刑事法上、死の定義があるのかないのか、こういった形でのお尋ねだと理解してお答えいたしますと、我が国について、もとより人の死というのはさまざまな法分野に関係しておるわけでございますが、その意義について定義した法律というものはございません。

 人のどの器官がいかなる状態に立ち入ったときに法的に人の死と認めるかどうかということにつきましては、基本的にはまずは医学の問題でございますけれども、国民の生死観でありますとか倫理観、宗教観などにも深いかかわりのあるものであると考えられます。

 刑事法上の観点から述べますと、従来、一般的にはいわゆる三徴候説というものがございますが、これによって死の判定をするというものが一般的に受け入れられてきたものと理解しておりますけれども、結局のところ、それは個々の、個別の事案の中での判断でございまして、結局、死というものについては、刑事法上の観点からも、医学的知見を基礎として決せられるものでございますので、まずは、一般的に、例えば、脳死の判定により人の死を認定することについて、医学界に基本的な合意があってこれが社会的にも受け入れられる、こういったものとなるならば、この刑事法の分野においても、これに応じて、その時点で死の意義が決せられることになるものと考えております。

高橋(み)委員 それでは、再度ちょっとお尋ねしたいんですけれども、結局、刑事法上は、脳死は死とは定義はしていないということでよろしいんでしょうか。

林政府参考人 少なくとも、刑事法上、もとより死の定義というものが確立したものがあるわけではございません。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 これは、今おっしゃられたように、やはり医学上も、生死観というか、日本の宗教上のいろいろな感覚というか、信念もありますし、いろいろありますので、死というのを一概に定義することができないというのもわからないではないんですけれども、やはり刑事上、処罰するかしないかということを考えたときに、きちんと死というものをこれから定義していかなければいけないと私は考えております。そうしないと、死はこういうものですということをしないと、では安楽死はどうなんですか、尊厳死はどうなんですかというときに、やはりちょっと議論がぶれてしまうというか、曖昧になってしまう可能性があるのではないかと思っております。

 今度は、厚生省さんにお尋ねしたいと思っております。

 厚生省さんは、二〇〇六年に終末期医療に関するガイドラインのたたき台をつくり、二〇〇七年に終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインについて定めたということを伺っております。

 まず、それにつきまして、説明をいただければと思います。

神田政府参考人 御指摘のガイドラインにつきましては、人生の最終段階を迎えた患者や家族と医療従事者が、最善の医療やケアをつくり上げるための合意形成のプロセスを示すものとして策定をいたしまして、その普及に努めているところでございます。

 このガイドラインの中では、人生の最終段階における医療は、医療従事者から適切な情報提供と説明がなされた上で、患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人による意思決定を基本として進めることが重要とされております。

 そして、治療方針の決定に際しまして、患者の意思が確認できる場合には、患者と医療従事者とが十分な話し合いを行い、患者が意思決定を行うことが基本というふうにされております。

 また、患者の意思が明確でない場合には、多職種から成る医療・ケアチームの中で慎重な判断を行うというふうにされております。家族が患者の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、患者にとっての最善の治療方針をとることが基本とされております。家族が患者の意思を推定できない場合には、患者にとって何が最善であるかについて医療・ケアチームが家族と十分に話し合い、患者にとっての最善の治療方針をとることが基本というふうにされております。

 また、家族の意思が分かれているような場合につきましては、医療・ケアチームと別途に複数の専門家から成る委員会を設置いたしまして、治療方針等について検討や助言を行い、改めて家族と医療・ケアチームとが話し合いを継続して合意形成を目指すというふうにされております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私、これにつきましてはお医者さんに聞いたんですけれども、家族という人の範囲が難しいねという話でした。最終医療の現場に行くと、だんだん家族という人がふえてくるというんですね、親族がふえてくるという意味だと思うんですけれども。

 そうすると、どこまで家族の意思を尊重していくのかというのがかなり難しいんじゃないかというようなイメージがございますけれども、今おっしゃった家族というものの範囲は定義があるのでしょうか。

神田政府参考人 御指摘のガイドラインにつきましては、その検討会の議論を踏まえまして、ガイドラインの解説編というのを設けております。

 その中では、家族については、厳密に法的な意味での親族関係のみを意味するということではなくて、患者さんが信頼を寄せ、終末期の患者を支える存在であるという趣旨でございますので、より広い範囲の方を含むという運用をするということにされているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 そうすると、よりアバウトになってしまう。家族がたくさん出てきていろいろな意見を言う人がふえてきちゃうというような危惧はちょっとするのですけれども、そこは実際どうなのかなというところを心配しております。

 このガイドラインなんですけれども、普通、ガイドラインという場合は、法的な拘束力というか法的なものではないとは思うんですけれども、実際に、これはただの指針ということであって、このガイドラインに沿って終末期医療などをした場合は法的な問題が生じないとは言えないのか、言えるのかということをちょっとお尋ねできればと思います。

神田政府参考人 このガイドラインは、あくまでも、先ほど申し上げましたように、趣旨といたしましては、患者、家族と医療従事者が、最善の医療やケアをつくり上げるための合意形成のプロセスということでございますので、刑事上の責任とかそういうものを離れまして、合意形成のプロセスを示しているものということでございますので、刑事上の責任とはまた別途の観点かというふうに考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 これに従ってやったのに刑事責任が問われるのでは、何のためのガイドラインなのかなというようなイメージもあります。ですから、もちろん、きちんと本当に法律として整備をしていかなければならないんじゃないかと私は思っております。

 そして、よく終末期医療の話をする場合、治療行為を最初から控える場合と、開始した後に治療を中止するということについて、皆さんかなり意見が分かれる。最初から控える場合は、それは認めるという人も多いようなイメージなんですけれども、一度開始したらなかなか、途中で中止するのがだめだよというような人も多いというふうにも伺っておりますけれども、法律的には、その点、評価というものは異なっていくものなんでしょうか。ちょっとそのあたりをお尋ねしたいと思います。

林政府参考人 ただいま法律的にはと言われました。

 刑事的な観点から申し上げますと、基本的に、最初から治療行為を控える場合、それから開始した後に治療を中止する場合で刑事責任というものが異なってくるかということでございますが、一概にそれ自体だけで、結局、その事案でのやはり個々の判断、事情での判断になりますので、これを一概に、開始した後に治療を中止する場合の方が責任を問われやすいとか、そういったことは申し上げることはできないと思います。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 なぜこれを伺ったかといいますと、新しく立法されるときに、これは分けた方がいいんじゃないか、どちらかだけを認めるとかというちょっと議論がございましたので、その点を分ける必要性があるのかないのかということをもう一度皆さんに考えていただきたいと思いまして、ちょっと今お尋ねさせていただきました。

 そこで、谷垣大臣にお尋ねしたいのですけれども、例えば、立法によって、書面によって表明された患者意思にきちんとした一定の法的な拘束力を認める、つまり、私は延命治療を一切受けません、それに同意しますといってきちんと文章で書いておいた場合、それについて、それをちゃんときちんと認めますというような立法をすることについて、それでいいのかという、いいというか、そういうことについてどうお考えになるのかということをお尋ねしたいと思います。

谷垣国務大臣 法的拘束力とおっしゃったんですが、どういう法的拘束力か、いろいろな場面が想定できると思うんです。

 ちょっと頭の体操をしてみますと、医療従事者に何らかの作為義務あるいは不作為の義務を課すということも考えられますし、それから、そういう、例えば書面なら書面で表明された意思に従ってお医者様なりなんなりが行為をした場合には民事上免責されるとか、あるいは刑事上も違法性がなくなるとか、そういう効力を持たすかどうか。

 ちょっととっぴな例を考えますと、そうやって書面で、自分は、何というんでしょうか、尊厳死、そういう治療を望まないというようなことを書面で表明した場合は、まあ、こういう議論は余りないのかもしれませんが、本人も縛る、つまり意思を撤回できない効力、ちょっとこれはやや講壇設例的な議論ですが、いろいろなことが想定されると思いますので、どういう局面に適応するのかということを十分に分けて議論しなきゃいけないなというのが、まず法律家としてはそう思います。

 しかし、これは余り行政が議論することではありませんで、行政はもう少しテクニカルなことを議論すべきであって、それをどうするかは、やはりすぐれて国民代表である、多面的な問題が含まれ、多面的な価値観が含まれておりますから、立法府でやはりまず議論を整理していただく必要があるのではないかなと、今行政府にいる人間としてはそのようにお答えをさせていただきます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私の問題の言い方が少しアバウト過ぎたというところはちょっと反省しているんですけれども。

 やはり、一番問題というのは、当然ですけれども、医療機関の方々がそれによって刑事的な処罰を受けるかどうかということが一番大事だと思うんですけれども、それが法的な問題として大事であって、次は、やはり御家族の方が、法律に従ってやったというような安心感というか、安堵感というのか、そういうのをきちんと与えるということも、私は、法をきちんと制定していくことによって、また、書面によってそういういろいろな本人の意思というのを確認していくことが大事ではないかなと思いまして、今質問させていただきました。

 今、谷垣大臣がおっしゃってくださったように、例えば、一度書面で意思を表明したらそれが撤回できないのかどうなのかということもおっしゃっていただいたんですけれども、確かにそれはすごく重要な問題でありまして、私も、患者さんというのはきっと日々意思が揺れるんじゃないかなと思うんですね。痛みがあれば、もう死にたい、もういいんだというふうに思っちゃう人もいると思うんですけれども、そうじゃない場合、苦痛がなかった場合は、やはり生きていきたいなと思う人も多いんじゃないかなというようなイメージがあります。

 そうすると、揺れる意思というものを誰かがサポートしていかなければ、心のケアというのか、その人が、最終的には、すてきなという言い方がいいかわからないんですけれども、きちんとした最期を迎えるためには、周りの人のサポートというのが本当に必要なんじゃないかと私は思っております。

 厚生労働省さんが終末期の患者さんや家族の相談に乗る相談員を配置するというモデル事業を今年度より行おうとしていると伺っております。これを伺ったとき、いい取り組みなんじゃないかなと思ったので、まずはその現状について、どのようなことをされるおつもりなのか、お尋ねいたします。

    〔土屋(正)委員長代理退席、委員長着席〕

神田政府参考人 御指摘のモデル事業につきましては、昨年実施いたしました人生の最終段階における医療に関する意識調査という結果によりますと、病院等で、死が間近な患者の治療方針についての話し合いについて、一応行っているという回答が最も多く、十分行っているという回答が非常に少なかったということ、また、治療方針の決定が難しい場合に医療従事者等が助言を求める複数の専門家から成る委員会の設置も少なかったことなどから、人生の最終段階における医療に関する相談体制の充実などの体制整備が必要であるという問題意識のもとに実施することとしたものでございます。

 これにつきましては、二十六年度におきまして、医療機関において人生の最終段階における医療に係る相談に乗り、必要に応じて関係者の調整を行う看護師や医療ソーシャルワーカー等の相談員を全国十カ所の病院に配置するということとあわせまして、困難事例等の検討、助言を行うための複数の専門家から成る委員会の設置等を行うこととしております。

 また、国立長寿医療研究センターにおきまして、こうした相談員に対しまして研修会を実施するとともに、医療機関からの困難事例等の報告を取りまとめまして分析して、人生の最終段階における医療における課題等の整理をするなどという取り組みを行うこととしているところでございます。

 このモデル事業を通じまして、患者の意思を尊重した人生の最終段階の医療に係る適切な体制について、相談員に必要な研修ですとか、相談対応事例集等を取りまとめまして、全国の医療機関の取り組みに資するようにお示しをしていきたいというふうに考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 十カ所というので、ちょっと少ないのかなというイメージがございましたのですけれども、モデル事業で、それでいろいろ検討を重ねていっていただけるということなので、相談を受ける仕組みというのはすごく大事なことだと思っておりますので、その事業をぜひ進めていっていただきたいと思っております。

 ただ、もちろん、実際に心のケアをしたり、どうしていったらいいんだよという相談を受ける人がいるというのは大事なんですけれども、何といっても、先ほどから述べましたように、きちんと法整備をしていく、尊厳死をきちんと、どうしていくのかというのを認めるということがやはり一番大きなというか必要なことだと私は思っております。

 それで、今国民の世論としましても、一般的に言えば、私の印象ですけれども、不必要な延命はなるべく差し控えた方がいいんじゃないかなと。自分がそこに、当事者になったときはまた変わるかもしれないんですけれども、一般的にそういうふうに思っているんじゃないかなというようなイメージもございます。

 先ほど谷垣大臣が、それはやはり皆さんの意見を踏まえて立法府が考えることであり、行政府にいらっしゃる大臣が答えることではないとおっしゃったんですけれども、やはりこれは内閣としても、一応国民の声があるということで、立法、いろいろ進めるべく検討していっていただきたいなというイメージが私はございますけれども、その点いかがでしょうか。最後にお尋ねしたいと思います。

谷垣国務大臣 もちろん行政も、先ほど厚生労働省から御答弁がありましたように、ガイドラインをつくったり相談員を養成するとか、いろいろな努力をしておられますね。そこで得られた経験というものをどう生かしていくかということはございます。

 ただ、それに本当に、例えばガイドラインのようなものを今度は法的拘束力のあるものにしていくかどうかということになりますと、やはり立法府で多角的な議論をして積み重ねていただく必要があるのかなと私自身は思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 内閣というか、行政府ではちょっと腰が引けたという感じになるのかもしれないんですけれども、ぜひこれからもこういう委員会などで議論を重ねていければと思っております。

 きょうは、ありがとうございました。

江崎委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 ありがとうございます。結いの党の井坂信彦です。

 本日は、椎名委員にかわりまして法務委員会で質問の機会をいただきましたこと、関係の皆様に心より御礼を申し上げます。

 お尋ねしたいこと、まず一点目に、取り調べの適正化ということについてお伺いをしたいと思います。

 私、実は、選挙の翌日に、選挙を手伝ってくださったボランティアの方々複数が警察の取り調べを受けたということがあります。私だけでなく、他党の候補者陣営も同様の取り調べを受けたというふうに当時聞いたわけでありますが、もちろんどの陣営も選挙違反はしていないわけでして、二、三日後には、何もなかったですということで、取り調べが終わるわけであります。

 このように、ちょっと不審な点があるので任意で話が聞きたいという程度であれば、こちらも丁寧にこれこれこうですよと説明に応じようと思うわけでありますが、しかし、実際取り調べを受けた方々の話を聞けば聞くほど、この取り調べの実態が余りにもひどいというふうに私は思っておりますので、本日、質問をさせていただきます。

 私の身内が経験したのは検察ではなくて警察の取り調べの方ですから、まず、具体の話は警察庁の参考人に伺いまして、最後にまとめて、この件、大臣にお伺いをしたいと思います。

 まず一点目でありますが、任意同行についてです。

 大体、選挙の翌朝七時に家の前で待っておられて、お話をお聞きしたいから署まで来てください、こういう話であります。ところが、これはもちろん任意ですから、済みません、きょうは会社で、あるいはきょうは学校で行けませんということで本来許されるはずでありますが、もちろん現場ではそうはなっておりませんで、いやいや、来てもらわないと困る、いつなら来れるんだ、会社だったら、では会社が終わるころにまた会社の前で待っているから、そこから行こうということで、会社や学校に来られたらさすがにこれは嫌だということで、渋々ついていくというケースが多いのではないかというふうに思います。

 そこでお伺いをいたしますが、こういう任意同行というものがどういうルールであるのか、法律を詳しく知っていればもちろんすぱっと断れるわけでありますが、またあるいは日を改めてということで普通に話ができるわけでありますが、大体は、もうこういう出来事に現場で動転をしてしまう方がほとんどではないかと思います。任意同行に応じない権利があるとか、あるいは、その場所は警察署以外も普通に選択できるんだ、こういう最低限の事項を告知すべきでないかと考えますが、参考人に伺います。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 任意同行についてのお尋ねでございます。

 任意同行といいますのは、法令上の用語ではございませんけれども、一般に、取り調べ等のために相手方の同意を得て警察署等へ同行することということでございます。

 これは犯罪捜査ということでございますので刑事訴訟法に立ち返るわけでございますけれども、刑事訴訟法百九十八条におきまして、「司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」と規定されているところでございます。

 被疑者に任意同行を求める際には、こういった刑事訴訟法の規定に抵触することがないようにしているということでございまして、警察庁としましても、引き続き、都道府県警察に対する指導教養に努めてまいりたいと思います。

井坂委員 お尋ねしたことにお答えをいただきたいと思いますが、そういうルールであるということを、そもそも、朝一でおうちの前に来られた、任意同行を求められた、被疑者というか、参考人程度の話でありますが、そういう方は御存じないケースがほとんどであります。そういった最低限の、よくドラマであるような、あなたには黙秘権がありますよみたいな、ああいう話です。任意同行の際にも、今おっしゃったようなルールをきちんと最低限説明する必要があるのではないかという通告どおりの質問にきちんとお答えください。

荻野政府参考人 お答えを申し上げます。

 告知をするかどうかということでございます。

 実際の任意同行を求める場面といいますのは、犯罪の内容でありますとか、相手方との関係で、非常に千差万別、さまざまな場面があるんだろうと思います。

 したがいまして、一般的な警察の規範といいますかルールとしましては、まさに相手方の承諾をきちんと得るということに尽きるのではないかと思います。ただ、おっしゃるように、個々の場面において、その相手方に対する承諾の得方が適切でないということになりますと、全体としての捜査の適正が疑われるということになろうと思います。

 したがいまして、個別の場面において適切に判断されるようにしなければならないという意味で、それは、その指導教養を徹底する、あるいは、個別の事件においては捜査管理をきちんと行うということで対応してまいりたいと思っております。

井坂委員 ちょっと重ねてお伺いをいたしますが、告知が要るのではないかということであります。

 承諾を得る、これはそういうルールなんですけれども、一方で、突然朝家に来られたら、普通は、承諾するしないというそんな選択権があることすら気づかない、わからない、あるいは、動転して、呼ばれたらついていかざるを得ないと思ってしまう。こういう現実がある中で、最低限の選択の権利がありますよ、来ないことも許されますよ、あるいは、場所は署でなくたっていいんですよ、こういう告知が要るのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

荻野政府参考人 一般的にどういう準則であるべきかということであろうかと思いますが、一般的な準則としまして、一定の定型的な文言を必ず言いなさいというふうにルールをつくるということは困難ではないかと考えております。

井坂委員 困難な理由をお答えいただきたいと思います。

荻野政府参考人 あくまで任意のものでございますので、相手方の任意の御協力を得なければならないということであろうかと思います。

 その際に、どういう場合にどういう文言を言うかということを、あらゆる場面を想定して一律のものを決めるということは難しい、それはやはり個別の状況における判断ではないか、そういうふうに考えているということが、先ほど私が御答弁申し上げたことの理由でございます。

井坂委員 これは強制ではなくて任意の同行のお願いです、あなたには断る権利もあるし、場所を選ぶ権利、時間を選ぶ権利もあります、これはどういう場合であっても告知して問題ないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 捜査の場面、いろいろ千差万別、いろいろな状況があるんだろうと思います。刑事訴訟法は、やはり、個人の基本的人権の保障を全うしつつ、真相の解明を図る、それによって公共の安全の維持をするという警察の責務を果たさなければならないということであろうと思います。

 したがいまして、いろいろな相手方、いろいろな状況がございますので、常にある言葉を言わなければならないというふうにルールをつくるということは非常に難しいのではないか、適切ではないのではないかと考えております。(発言する者あり)

井坂委員 時間が限られております。本当に、この部屋の皆様からも、どういう場合に言えないんだ、それぐらい言ってもいいんじゃないかというお声もたくさんいただいているわけであります。実際、現場で、我々は法律になれておりますから、きょうは会社で行けません、済みませんとすぱっと断れますけれども、本当に御自身の、例えば娘さんが同じ目に遭うことを想定していただきたいなというふうに思うわけであります。

 同じような話、もう一つお伺いをいたします。

 警察署に行きますと、取り調べの際に、これもみんな大体されたわけでありますが、携帯電話を預からせてもらうよ、あるいは手帳を預からせてもらうよ、こういうことをされるわけであります。これももちろん任意の提出でありますが、ああいう場所で威圧的に、出して当然だというような求めを、これを任意で断れるというふうに、すぱっとやれる人がどれだけいるか、同じような疑問を感じるわけであります。

 提出に応じない権利がある、返してほしいと意思表示すればいつでも返すという最低限の事項を告知すべきではないでしょうか。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の犯罪捜査規範についてまず御説明いたしますけれども、任意に提出いただいて物を領置するということにつきましては、任意提出書というものを提出いただきまして、そこに任意に提出するということが記載されているわけでございますけれども、物を領置するということにつきましては、そういった手続を踏むということで任意性を確保しているということでございます。

 ただ、それに至るいろいろなやりとりの中で適切を欠くものがあるのではないかという御指摘かと思いますけれども、その点につきましては、そういった任意性に疑義が生じないように、引き続き指導に努めてまいりたいと思います。

井坂委員 この場合は書面があるということで、ちょっと私もその書面の中身や出すタイミングについては詳しく承知をしておりませんが、これは、現場で、警察の方とのやりとりで、出してくださいよ、出してもらわなきゃ困りますよと言われて、渋々、はい、わかりましたと言った後で、では、出すならこの書面を書いてくださいと。出すと意思表示した後でその書面が出されて、そこに任意性が書いてあっても、これは全く意味がないと思うわけでありますが、そのあたり、そもそも、任意性があるということは、判断の前にきちんと示されているんでしょうか。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 それはまさに個別の状況におけるやりとりということでございますので、現在、そういった任意の提出をお願いするときに、あらかじめ事前にこういう文言を言えというようなルールにはなっておりません。

井坂委員 現状、なっていないのはよくわかっておるわけでして、だから、変えるべきだという質問をこの政治の場でさせていただいているわけであります。

 次に、国家公安委員会規則の犯罪捜査規範の百六十八条、取り調べについて、やっていいこと、悪いこと、どういうルールがあるんですかと事前に事務方にいろいろ詳しくお伺いをいたしました。

 その中で、深夜または長時間にわたるルールはあるのかということを尋ねましたら、この百六十八条に、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜または長時間にわたる取り調べを避けなければならないとあるわけでありますが、やむを得ない場合とか深夜とか長時間、大変曖昧な表現で、これより細かいルールはあるのかとお尋ねをすると、さらに監督対象行為というものが定められていると。

 この監督対象行為というのは、厳密に言うと、やってはいけないことではない。一日八時間以上やっちゃだめだとか、夜中十時以降はやってはだめだ、こういう禁止事項ではなくて、そういうことをやっていたら、監督の、他部署の人が監督をしたときに、そういうことになっていたら注意をしていいですよ、こういうたてつけになっているということであります。

 お伺いをいたしますが、やむを得ない場合とか深夜とか長時間ということではなく、詳しく、やってはいけないこと、特に時間数、時間帯を定義し、これを監督対象行為ではなく禁ずるルールが必要ではないでしょうか、お伺いをいたします。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、犯罪捜査規範において、やむを得ない理由がある場合を除いて、深夜または長時間にわたる取り調べを避けるべきだというふうに決めております。

 取り調べがどのような範囲で許容されるかということでございますけれども、まさにこれは犯罪の内容や状況、例えば、深夜に行われた、あるいは深夜に検挙した事案についてそのとき調べるということもございますし、非常に緊急に捜査を展開しなければならない、被害者を捜さなければならない、いろいろな事情がございます。そういった事情がございますので、一律に、必ず、いわゆる深夜帯はだめであるとか、何時間を超えてはだめであるということを決め切ってしまうということは困難であると思います。

 ただ、一般的に言えば、やはり深夜にわたること、あるいは長時間にわたることというのはいろいろ懸念が生じますので、そこは組織的なチェックを入れるというたてつけにしておりますが、取り調べそのものについて、一律に、絶対深夜はやってはいけないとか、何時間以上は絶対やってはいけないというふうにすることは、種々の犯罪事象、いろいろな犯罪事象を考えまして、それに対応するという上では難しいのではないかというのが私どもの考えでございます。

井坂委員 時と場合によってはもうどこまで何をやってもいいんだと言わんばかりの御答弁ではないかと思いますが、本当にそういうことでいいのか。いかに犯罪を犯した可能性が高い、疑いが濃い被疑者であっても、やはり一方で、体力、精神力に限界のある人間でありますから、そういった意味で監督対象行為というものが定められているんだというふうに思うわけです。それを、場合によってはこれは夜中いつまでやってもいいんだとか、私も経験したのは、私の身内で経験したのは、朝七時に引っ張っていかれて、夜十時、十一時になっても帰ってこない、何時間やっているんだと警察に言っても出してこない、こういうことを実際に経験しておりますので、どういうルールになっているのか、それが本当にそこまでべったり話を聞かなければいけない事案なのか。

 そもそも、どんな事情があったって、幾ら何でも一定の上限があるのではないかという思いでお伺いをしておりますので、さっきの御答弁であれば、一定の上限はなくてもいいということなのか、お伺いをいたします。

荻野政府参考人 被疑者の取り調べをして、それは供述としての証拠を得るというものでございます。

 したがいまして、供述を得る過程で取り調べ等に問題があれば、当然、その供述の任意性、信用性が疑われることになるという意味で、そういう捜査は結局無駄な努力ということになるわけでございますし、最終的には、それはその供述の証拠としての能力が否定されるということで、訴訟手続において担保されているということでございます。

 そういった意味において、通常、過度に長時間であるとか、あえて深夜に行うということはない、そういう前提で取り調べ監督規則などもできているということであろうかと思います。

 ただ、犯罪事象は非常に千変万化でございますので、一切そういう必要性がないと言えるのかという点は、私どもとしては、そうではないのではないか、そういう非常に緊急性が高い、例外性のある事情というものもあるのではないかというふうに考えます。

 また、時間帯の問題ですが、これは繰り返しになりますけれども、例えば、通常は昼間が生活の時間帯であるわけでございますけれども、例えば、深夜に生じたいろいろな事故、事件もございますし、深夜に検挙するということもあるわけでございます。そういう意味で、何時から何時までということを決め切ることは難しい。

 個別のケースにおいて過度に長時間になるということは、それは抑制しなければならないということで、取り調べ監督規則等でチェックをするという仕組みになっているということだろうと思います。

井坂委員 参考人も、いつか御自身の身内がこういう目に遭ったときに、あのとき井坂が言っていたのは本当だったなと多分思われると思いますよ。本当に歯どめが有名無実化していて、ひどいというふうに思っております。

 さらにお伺いをいたしますが、取り調べでやってはいけないことということで、では、うそは言っていいのかということを伺います。

 お友達は選挙でバイト代をもらったともう既に言っているよ、あなたももらったんでしょうという、お友達もそんなことは言っていないのに、そういうようなことを声かけをして何か誘導のようなことをしようとしている例も見受けられたわけでありますが、取り調べで被疑者にうそを言うことは明確に禁ずるべきではないでしょうか。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 取り調べの過程で、偽計を用いて被疑者を錯誤に陥れて自白を獲得するといったことにつきましては、著名な最高裁の判決もありますように、そういったことは厳に慎むべきであり、そういった取り調べによって得られた供述は証拠能力がないということでありまして、それは当然のことであろうかと思います。

 そういったことを含みまして、取り調べにつきましては、犯罪捜査規範等によりまして、例えば、自己というのは捜査官の側ですが、「自己が期待し、又は希望する供述を相手方に示唆する等の方法により、みだりに供述を誘導し、供述の代償として利益を供与すべきことを約束し、その他供述の真実性を失わせるおそれのある方法を用いてはならない。」等、ルールとしてはそういった形で一般化して定めているところでございます。

井坂委員 一般化してはそういう言い方になるんでしょうが、もっと明確に、うそを言ってはいけないと定めるべきではないでしょうか。そういうことをやったら、結果的に裁判でばれたら証拠能力がないからやらないんだ、こういう遠回りなたてつけで、現場で何が起こっているかということであります。うそを言ってはいけないというルールは必要ないのか、お伺いいたします。

荻野政府参考人 繰り返しになりますけれども、そういった趣旨を含めて、こういった形で犯罪捜査規範が定められておりまして、あとは、個別の当てはめ、あるいは個々の捜査の過程で、全国の現場できちんとその趣旨にのっとって行われるように、きちんとしていかなければならない。そういった意味で、指導教養、捜査管理を徹底してまいりたい、そういうことでございます。

井坂委員 指導を徹底していきたいとおっしゃったので、最低限期待をしたいというふうに思います。

 さらに、お伺いをしたいことがあります。

 調書にサインをしたら帰れるぞ、こういうこともあるわけであります。実際、一人の女子大生は、本当にその日おばあちゃんのお葬式があって、この時間までに出なければ船に間に合わないということを泣いて頼んで、だったら、ここに書いたら帰れるんだから書け、こういうことであります。

 これは、犯罪捜査規範の百六十八条、供述の代償としての利益供与にも当たるのではないでしょうか。サインしたら帰れるぞなどの発言は、明確に禁ずるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

荻野政府参考人 個別の問題は十分承知しておりませんけれども、個々のケースにおいて、供述の代償としての利益供与というようなことがあることは、それは厳にないようにしなければならないということでございます。

 そういうことで、私どもは、ルールとしましては、今のルールで、ある意味で書き切っているのではないかと思います。個別の当てはめについて、それは、どのようなルールをつくりましても、確かにそれがきちんと履行されなければなりませんので、そういった点での指導といいますか教養といいますか、それは徹底しなければならないというふうに考えております。

井坂委員 個別の当てはめとおっしゃいましたので、お伺いいたします。

 サインをしたら帰れる、あの大変な場所から解放される。この帰れる、解放されるというのは、利益供与の利益に当たるというふうに当てはめられるんでしょうか、それとも、そうではないんでしょうか、お伺いいたします。

荻野政府参考人 いろいろな場面があるんだろうと思いますけれども、また、先生が念頭に置かれているケースについては、十分存じ上げませんので、それにぴたりとのお答えということではございませんけれども、例えば、調書にサインしたら帰れるぞといった文言が、状況から見て、それはやはり、供述調書への署名等を強要するために行われたということであれば、一般的には、監督対象行為として規定をしております「殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること。」に該当するということは、あり得ると思います。

井坂委員 いろいろ具体のことをお伺いいたしました。私が経験したのが警察だったということで、警察庁の参考人の方にいろいろお伺いをいたしました。

 最後に、法務大臣にお伺いをいたします。

 取り調べ可視化という話が出ておりますが、これは裏を返せば、やはり、可視化をしない限り、こういう取り調べ室の中ではいろいろと本当にひどいことが行われているのではないかと疑われている現状があるのではないかと思います。

 私は、可視化には賛成の立場であります。しかし、そもそも、今回いろいろ調べてみて思いましたのは、やってはいけないことのルール化が余りされていないというふうに思うわけであります。任意同行や物品提出の際の告知事項であったり、あるいは深夜や長時間にわたる取り調べの具体的な定義と制限、あるいは、うそや誘導など、やってはいけないことの具体的なガイドラインを定めて、しかも、先ほどの、単に監督チェックの対象ではなくて禁止事項とするなど、取り調べの適正化のための具体的なルールが必要ではないかと思いますが、最後に、総論で大臣にお伺いいたします。

谷垣国務大臣 今、可視化の問題をおっしゃいましたけれども、この問題をこういう形で議論しておりますのは、厚生省の局長の取り調べでいろいろなことが起こりまして、結果として無罪判決というのが出ているわけです。

 それは、大変、検察の取り調べにおきましても、大きな反省事項でございまして、ある意味でいえば、私はそこまでここで答弁してはいけないかもしれませんが、やはり巨悪は眠らせちゃいけないわけですね。ですから、検察は頑張らなきゃいけないわけです。ある意味では、あのときのダメージは、そういう巨悪に対決していく力も少し奪ってしまったのではないかという心配も私はしているわけであります。

 そこで、もちろん、可視化ということで、可視化の目的はいろいろなことがあると思います。しかし、今おっしゃったように、適正な捜査をしていく。

 そして、私は十年ぐらい前に国家公安委員長もやらせていただいたんですが、当時は、警察は可視化というものはとんでもないという考え方であったと思います。検察もその当時はそうであったのではないか。しかし、試行的に最近いろいろ議論の中で行ってきまして、可視化という点も、確かに自分たちにとっても嫌なことばかりではない、いいことがあるということもわかってまいりました。それは今おっしゃったように、法廷に出て、君らは取り調べの過程で随分おかしなことをしたんじゃないかというのに対して、例えば裁判員にきちっと理解していただくには、やはり可視化というものが効力があるという認識も広まってきた段階であろうと思います。

 その上で、可視化というだけではなく、適正化のルールが必要だとおっしゃった。今、警察の参考人との御議論は、どこまで具体化するかというところにあったと思います。

 私も、実は、こんなことを言ってはいけないかもしれませんが、長い間選挙をやっておりますと、それは捜査当局との間でいろいろな苦い思い出の一つや二つがない政治家はいないと思います。ですから、警察の参考人に対して、この委員会の空気もかなり厳しい空気であったのではないかなと思いますね。だから、どこまで具体化していくかというのは、私も、自分の知り合いの人が調べられる立場に立ったこともあり、また捜査をする側の上司であったことも、両方の立場がありますので、いろいろ複雑な思いはあるわけです。

 しかし、先ほど言ったような捜査の適正化の方向性としては、一つは、先ほど申し上げました事件が起こりまして、やはり検察の理念というものをもう一回きちっとしようということで「検察の理念」をつくりまして、その中で「取調べにおいては、供述の任意性の確保その他必要な配慮をして、真実の供述が得られるよう努める。」ということを入れました。

 それから、取り調べに当たって、深夜の問題とか、いろいろ先ほど御指摘がありました。所定の時間内での就寝とか食事等への配慮、あるいは、深夜または長時間にわたる取り調べ、こういうことにつきましては、最高検察庁から通達などを出しております。

 それから、取り調べに対して、被疑者といいますか、いろいろな不満を持つことが当然あると思います。そういう場合の捜査官側の対応、それから接見に対する配慮等々についてもいろいろな指示を出しているところでございます。

 そこで、問題はそういったものが十分守られているかどうかということでございまして、これは私にとりましても、個別の捜査指揮ではございませんので、適切な取り調べが行われるように、私の立場としても努めていかなければならないと思っております。

井坂委員 ありがとうございます。

 本日、いろいろ用意をしてまいりました。時間の限り続けさせていただきたいと思います。

 次にお伺いをしたいのが、会社設立の際の法定費用についてお伺いをいたします。

 昨年、私は経済産業委員会で、全産業にかかわる大胆な規制緩和として、会社を起こす起業の手間とコストを低減できないかという質問をさせていただきました。

 実は、各国の起業活動率、このトップスリーは、アイスランド、アメリカ、オーストラリアということで一〇%、それに対して日本は、本当に最下位の方で三・九%。

 また、世界銀行の開業規制における起業のしやすさランキングということで、日本は当時百十四位と大変低迷をしておって、その低迷している理由が、日本は開業手続の数が八つもある、日数もかかる、法定費用も高い、この三つが主な理由とされていたわけであります。

 本日は、法務委員会ですので、この株式会社設立の際に法務局と公証役場に支払う法定費用の低減、削減について伺います。

 まず、株式会社を設立する際に法務局に支払う十五万円の登録免許税、これはもう率直にお伺いいたしますが、高過ぎるので下げるべきではないでしょうか、お伺いいたします。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 登録免許税でございますけれども、基本的に登記、登録等を受けることによって生ずる利益に着目するとともに、登記、登録等の背後にある財の売買その他の取引等を種々の形で評価し、その担税力に応じた課税を行うというものでございます。

 先生御指摘のその十五万円というのは会社設立などの商業登記でございますけれども、これについて申し上げますと、登記を受ける者がその登記によって直接、間接に自己の営業上の利益を享受することに担税力を見出しておる。登記のメリットを受ける以上、一定の税負担を求める必要があると考えております。

 水準でございますけれども、現行のこの最低税額は、これまでの所得水準の上昇に伴って順次上げてきております。昭和二十三年に三千円であったものが、その後の所得水準の上昇に伴って、昭和四十二年に五万円、それから昭和五十二年に十五万円に引き上げられまして現在に至っているものでございますけれども、見直しに当たっては、その後の所得水準の上昇が必ずしも反映されていないといった点にも留意が必要ではないかと考えております。

 いずれにいたしましても、現在の財政状況は非常に厳しいものがございまして、登録免許税、大変貴重な一般財源でございまして、最低税額を引き下げられる状況にはなかなかないのではないかと考えております。

井坂委員 十五万円は高いのではないかということに対して、その理由として担税力、税を払う、担う力、それから、あとメリットに見合う金額だ、こういう話でありました。

 幾つか反論したいことがあるわけであります。

 まず、担税力といったときに、確かに、所得に応じてと言われればそれは上がる一方なわけでありますけれども、ただ一方で、会社を設立するとき、かつては一千万円の資本金が最低必要でありました。当然、一千万円の資本金を用意できる方であれば、その十五万円の登録免許税、これは担税力は十分にあったと思います。しかし、二〇〇六年の新会社法以降は、今は一円でも十円でも会社設立できるようになっている。実際、現在は一千万円用意して会社設立されるという方はもうごく少数で、そういう意味では、会社設立をされる方の担税力というのは、以前に比べたら随分小さいのではないか、これが一つ目の反論であります。

 二つ目に、受けるメリットに応じた費用ということで十五万円は適当だとおっしゃいますが、実は、六万円で設立できる合同会社というものもありまして、この合同会社を設立して受けるメリットと株式会社を設立して受けるメリットというのは、それほど大きな差はありません。もちろん、株式会社の方がネームバリューがあるということで有利ではありますが、しかし、では、登録免許税が片や六万、片や十五万円、この二・五倍の開きがあるほどのメリットの差はないというふうに思うわけであります。

 この二点についてどうお考えでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 会社設立に伴う最低資本金等々が引き下げられているという御指摘、経済の活性化、起業、創業をなるべくやりやすくしようということでいろいろな施策を行ってきていて、その一環として最低資本金等を引き下げてきているわけでございますけれども、登録免許税の水準をどうするかということと、まさに担税力に見合ってどれだけ取るかということのそこの判断でございますけれども、繰り返しになりますが、一応、登録免許税の水準としては、やはり、これまでの歴史的経緯それから所得水準の上昇、そういうことに一応担税力を見出して、こちらとしては上げてきているということでございます。

 それから、合同会社とのバランスみたいなことでございますけれども、これも、先生おっしゃいましたとおり、やはり、株式会社の担税力というか、信用力というか、そういったものを考慮して、これまでもずっと合同会社との間では同じぐらいの差を設けてきておるところでございまして、その水準を今のところ維持しているというものでございます。

井坂委員 同様に、今度は、公証役場における定款認証手数料五万円、これももう少し安くならないのかということについて参考人にお伺いをいたします。

深山政府参考人 公証人による定款認証に係る手数料は、御指摘のとおり、政令において五万円とされているところでございます。

 もう御案内のとおりですが、定款は、会社の目的、内部組織、活動に関する根本規則を定めるものですので、その内容が違法な場合には会社の設立の効力に影響を及ぼし得るものでございます。

 この定款を公証人があらかじめ認証する目的というのは、まさに、定款が真正に作成されたものであることと関係法令に照らして適法な内容でもあることを審査、確認するということによって会社設立の有効性を確保すること、そして、会社関係者との後日の紛争の防止をしようというものだと思っております。

 また、これは一般的な趣旨の問題ですが、公証人が審査の対象とする会社の定款につきましては、現行の会社法のもとで定款自治の範囲が非常に拡大していることから、一方では、定型的、簡素な内容の定款も相当数あるのは承知しているんですけれども、他方において、例えば非常に複雑な資金調達方法を定款で定めるとか、相当に複雑な定めが置かれている定款も少なくございませんので、こういった特殊な定款については、公証人は会社法等の専門的知識を用いて慎重な審査を行わなければならないということでございます。

 さらに、会社の定款は、行政書士さんなどの専門の資格者が作成されることももちろん少なくございませんが、発起人みずからが定款を作成することも可能で、現にそういう形で、そのまま素人の方が作成をされて公証人に認証を嘱託するという場合もございまして、こういった場合には、公証人は実際の認証に至るまで定款の内容の補正等に相当のエネルギーを要するというような事案もございます。

 以上、るる述べましたように、定款作成の目的、あるいは認証に必要な法的な能力、さらには審査事務の負担というようなことを考えますと、他の公証人がやっている事務の手数料との均衡等も考慮すると、現行の定款認証の手数料を一律五万円とする価格というのは相応なものではないか、今直ちに引き下げるという状況にはないのではないかと考えております。

井坂委員 そんな特殊なケースが一体どれぐらいの割合あるのかということは突っ込みたいところでありますが、ちょっと時間の関係で、次に移ります。

 外国人高度人材のポイント制について最後に伺います。

 先ほど、起業の質問をいたしましたが、日本をチャレンジャーであふれる国にしたいというのが私のテーマでもあります。

 そんな中で、優秀かつクリエーティブな外国人の誘致について、やみくもに移民の受け入れということでは全くなく、高度な研究者、技術者、それから経営管理者に絞って、学歴、職歴、年収に応じてポイントをつけて、一定のポイント以上の外国人高度人材には出入国管理や在留資格を優遇する、この高度人材ポイント制が既に始まっております。

 ところが、一年目に制度を使った外国人はわずか四百人。しかも、中身を聞くと、その九割は、もとから日本にいた外国人が自分も使えるんだなと制度を使っただけで、ポイント制を使って、それによって日本に来た外国人高度人材はわずか四十人と、制度本来の優秀な人材の誘致はほとんど果たされていない状況がありました。

 海外からポイント制を使って日本に来る外国人、人数の目標値はあるのか。また、法務省はネットワークを使って法務省の誘致政策だけを広報している状況だと伺っておりますが、他省庁と共通の目標を持って、パッケージとしての人材誘致の施策展開、それから広報、誘致を行うべきではないか。大臣にあわせてお伺いをいたします。

谷垣国務大臣 御指摘のように、高度ポイント人材制は平成二十四年五月から実施したんですが、十一カ月後で、認定実績約四百三十人にとどまっていた。

 昨年六月に日本再興戦略を閣議決定しまして、その具体的な数値目標こそ定められてはおりません、表現は飛躍的な増加という表現であったと思いますが、そこで、法務省、もう少し今までのよりブラッシュアップしていかなきゃいけない、こういうことで、高度人材の認定要件緩和、あるいは優遇措置の魅力を高めるための見直しを行いまして、去年の十二月からそれを実施しております。

 そういたしますと、実施した十二月までは月平均は約四十二人であったんですが、ことしの一月からの認定数、一月は五十三、二月が九十七、三月が百三十五、四月は百四十六ということで、ある程度効果はあらわれてきているな、こう思っております。

 それから、今国会でも入管法改正を審議していただいておりまして、高度人材を対象とする高度専門職第一号、それから第二号というのをつくりまして、要するに、高度人材を積極的に受け入れる、しかもそのことを在留資格上も明らかにするということにしております。

 それで、今かなり、大使館等々に聞きますと、全然それは俺の国には伝わっていないよというお声も強かったものですから、具体的にポイントの内容はどうなのかというような資料もつくりまして広報活動をしているわけですが、さらに何をしたらもう少しできるのかということは工夫が必要だと思っております。

 一つは、例えば数値目標があるのかというさっきお問いかけでしたが、そういうものが効果的かどうかということも政府全体で検討していく必要があると思いますし、広報についても、御指摘のように、これは結局いろいろな意味での、労働政策とか、あるいは文教科学政策とか、そういうのがかかわってくるわけでございますので、政府全体としてどういう広報ができるかというのは、また一段の工夫が必要ではないかと考えております。

井坂委員 以上で終わります。ありがとうございました。

江崎委員長 次に、鈴木貴子委員。

鈴木(貴)委員 まず冒頭、こうして今回も質問の時間をいただきましたことを心から感謝、御礼を申し上げます。

 また、私ごとではありますが、実は、六月の三日をもちまして、議員バッジをいただいて丸一年を迎えさせていただきました。この一年間、こうして、質問もそうですし、大臣初め委員皆さんから御指導いただいてまいりましたことにも重ねて御礼を申し上げさせていただきます。

 それでは、質問に早速入らせていただきます。まず、刑事施設内の処遇に関する質問からさせていただきたいと思います。

 実は、以前もさせていただいたことにも類似するポイントはあるんですが、認知症、拘禁症、また精神障害などから、その被収容者の御家族が成年後見制度の手続等を行うケースもあるかと考えられると思います。その際に、その制度を実際に利用できるか否か、精神鑑定また健康診断といったような鑑定が必要になってくるかと思います。過去の答弁を見ていくと、その被収容者御本人の本人合意というものが必要である、こういった答弁を局長からもいただいております。

 しかし、既に精神障害の可能性のある被収容者にとっての本人同意、また意思の確認というのは、どう行うべきと考え、また、これまでどう対応されてきたのか、お尋ねをいたします。

西田政府参考人 お答えいたします。

 今御質問のありました、裁判所の鑑定手続における鑑定人における被収容者の面会とか問診等につきましては、裁判所からの協力依頼を受けまして、刑事施設を管理する責任を負う刑務所長、拘置所長、刑事施設の長が、個別具体的な事案に応じて適正に対応しているという状況でございまして、さっきおっしゃいましたように、もしその被収容者が面会等を明確に拒否をしている場合には、刑事施設の職員が実力を行使して面会等を実施させることはできませんので、そういった状況、扱いでございます。

鈴木(貴)委員 私は、今のところに非常に矛盾を感じておりまして、先ほど井坂先生が任意同行による取り調べの際の本人同意というような質問もありましたが、刑事手続になると強引な本人合意というものも見られるにもかかわらず、こういった場面においては、本人がはいと言っていないからといった理由で、本来であれば必要であるべき健康診断、精神鑑定というものが実際受けられない状況にあるというのは大きな問題ではないのかな、このように思っております。

 また、私なりにいろいろと考えて、刑事訴訟法四百七十九条の一項というものも、ある種、現場にとっての積極性をなくしてしまう歯どめになってしまってはいないか、こういった懸念を持っております。

 四百七十九条一項といいますのは、死刑確定者が心神喪失の状態にあるときは執行を停止する、こう定めてあるものであります。つまり、精神鑑定の結果、精神に異常があるとなった場合には、もしかしたらこの条項が当てはまるのではないか、こういったことを鑑みて、積極的な本人合意をとりに行っていないのではないか、このように懸念をされることもあると思っております。

 また同時に、国連の拷問禁止委員会におきましても、精神障害の可能性のある被収容者を識別するための審査の仕組みが存在しないことに懸念を表明されております。

 実際に、国連拷問禁止委員会の日本に対してのこの懸念表明、大臣の見解をまず伺いたいのと同時に、また、大臣としましては、現場ではこの問題に対してどう対応すべきだとお考えであるか、お尋ねをさせていただきます。

谷垣国務大臣 鑑定は裁判所の依頼によって行うわけですが、先ほど局長が答弁しましたように、そういう裁判所の依頼に対して、刑事施設の長は、これはきちっと対応しなきゃいけないことは当然です。

 ただ、本人が明確に否定しているような場合に強制できるかというと、やはりこれはなかなか難しいんだろうと私は思います。

 私も、いろいろな話、どうなんだということを事務方に、事務方といいますか現場担当者等に聞いたりはしているわけです。個別の話はプライバシーにも関しますので申し上げるわけにはいかないと思います。

 それからもう一つ、先ほど、四百何条でしたか、おっしゃいましたね。私は、死刑執行のときに、最後に死刑執行を命ずる立場でございます。やはりその条文はしっかり頭の中に置いて、頭の中に置くだけではなく、最後、命令をする場合には、その条文の所在、条文の意味するところ、これはしっかり体して対応しなきゃいけないと考えております。

鈴木(貴)委員 今回、この質問をさせていただいたのは、再審請求の開始決定が出されましたあの袴田巌さんのケースがあります。

 拘置所のお医者さんがこのお姉さんに、認知症、拘禁症、糖尿病を発していると実際にもう数年前から告げられております。そしてまた、私自身、非常に衝撃的だったのは、その際、過去に自分の便を食べるような異常行動もあったというふうな話も聞かされていたそうです。

 しかし、その際に、精神鑑定の依頼を頼んだ際に、本人は面会を拒否している、こういった答弁によって、また、拘置所内での、房内での鑑定をしてくださいというふうに求めたそうですが、東京拘置所はこの協力も拒否をされたそうです。

 今大臣がおっしゃられましたように、やはり本人が明確にその鑑定が嫌だと否定をしているのであれば、確かにそれはいたし方ない部分もあるかもしれません。しかし、私が今ここでぜひとも問題意識を持たないといけないと思っているのは、本人がそのことを認識できているか否か。今自分の状態がどういう状態なのかもわからない、そういった精神状態である者に対して、果たしてそれは明確な否定なのか、それとも、それはただ単に認識ができていない、既に精神的な異常を来している、こういったここの差別化をしっかりとできるような制度づくり、こういったものを考えていく必要があるのではないのかな、このように思っております。

 そういった袴田さんの例も今述べさせていただきましたが、改めて大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 今のような状態でありますと、成年後見手続の制度さえもとれない、こういった状況下にあるわけであります。まさにこれが人権を尊重した法であるのか、真に公正公平なもとで行われているのか。大臣、改めて御見解を伺わせてください。

谷垣国務大臣 今、袴田事件とおっしゃいましたが、これは個別具体的でございますので、私としては、この問題に特化した御答弁は差し控えたいと思います。

 しかし、先ほど、ちょっと条文は忘れてしまいましたけれども、ああいう条文がある、そして成年後見制度というのもあるわけでございますから、やはりそういうもの、その法の精神がきちっと生きるようなことは考える必要があると思います。

鈴木(貴)委員 そうした条文が生かされるようなことも考えていかないといけないという今の最後の一文は、大臣の非常に真摯で、やはり人権派大臣と言われる谷垣大臣だけの発言であるな、このように思っております。

 そういった意味で、西田矯正局長にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 今の大臣の御発言もありました。大臣のこの御発言を無駄にしないためにも、ぜひとも前向きな、今後、現場でこのためにどういった対応また対策をとられていくべきとお考えであるか、お尋ねをさせてください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 私も個別具体的なことはなかなかお答えしづらいんですけれども、刑事施設の長が個別具体的な事例に当たってできる配慮、例えば面会室ということが問題であれば、ほかの面接をする部屋とかあるいは調べをする部屋ですとか、そういった事務室も用意するような配慮も必要だし、可能であれば、当該被収容者とある程度信頼関係のある職員によって面会の趣旨を丁寧に説明してやるといったようなことは、私は今でもそういう配慮はするようには言っていますけれども、重ねて、そういった現場の施設長として、現場の施設長の権限の中でできることがもしあるとすれば、それはやらせるようにしたいと思います。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 やはり現場を知り尽くした西田局長だけある、まさに血の通った、心の通った御答弁をいただいたと思っております。ありがとうございました。

 続きまして、先ほど井坂委員からも質問もありましたが、取り調べの可視化について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、大臣の忌憚のない率直な御意見を伺わせていただきたいと思うんですけれども、足利事件の菅家さん、東電OL事件のゴビンダさん、布川事件の桜井さん、杉山さん、今名前を挙げさせていただいた皆さん、無期懲役であったりまたは死刑確定者からの再審無罪、こうなった事件の皆様であります。いわゆる冤罪被害者の皆さんへの大臣の率直なお気持ちをまずは伺わせていただきたいと思っております。

谷垣国務大臣 我々が、我々がといっても私は捜査官ではございませんが、法務大臣として、取り調べをする検察等々も私のところの組織にあるわけですね、一番考えていかなきゃならないのは、実行行為をしていない人を実行行為者だと認定してやっていくようなことは、これは一番いかぬわけですね。人間のやることですから、間違いが全くないとは言えないと思いますが、そういう間違いを犯さないようないろいろルールもある、そういうものをきちっと守ってやっていくということが一番大事ではないかと思っております。

鈴木(貴)委員 今名前を挙げさせていただいた、特に冤罪被害者の皆さんなんですけれども、日ごろから、冤罪をなくすための、または取り調べ全面可視化を訴える全国キャラバン、さまざまな講演会などで御活躍をされております。そうして、実際に証拠の改ざん、力を使っての取り調べなどが行われた、それで精神的苦痛を強いられた皆さんが、逆に勇気を今振り絞って、さまざまな場面で、これからの司法のあり方について皆さんなりに声を上げていらっしゃっております。そうした皆さんの、勇気ある国民の声を無駄にしないためにも、また、国民の代表である我々がしっかりとそうした声を受けとめて、また発信していくためにも、取り調べの可視化の議論、非常に大事ではないかな、このように思っております。

 四月三十日に出されました取り調べ可視化に関しての試案について、こうした勇気ある国民の声がしっかりと反映をされているか。十分に反映をされていると大臣はお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 私は今、法制審議会で議論していただいている、諮問をしている立場、まあ、諮問したのは私ではございませんが、それを引き継いでいる立場でございますから、バランスのとれた、よい結論を出していただきたい。

 そして、そういうものの中で、先ほど巨悪を眠らせてはいけないという検察の使命があると申しました。実行行為をしていない者に罪を負わせるというようなことはあってはなりませんが、しかし同時に、巨悪を眠らせるようなこともやってはいけない。やはり、議論を尽くしまして、きちっとした結論を法制審議会からいただいて、そして信頼を取り戻して、検察が挑むべき敵には挑んでいかなきゃいけない、こんなふうに考えております。

鈴木(貴)委員 大臣が先ほど来からおっしゃっている、巨悪を眠らせてはいけない、まさにそのとおりだと思います。そういった意味で考えますと、例えば再審無罪が出てきた過去の事例、いまだ真犯人は捕まっていないわけであります。言葉をかえると、冤罪を生んだことによって真犯人を、事件の真相究明を逆に逃してしまった捜査当局の罪、これはなかなか過去に問われてきたことがなかったのではないかな、このように思います。

 巨悪を眠らせてはいけない、このように力強くおっしゃってくださいました大臣にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 これまで、冤罪、再審無罪、こうなった事件において、真犯人を追及できなかった、事件の真相解明をできなかった捜査当局の責任について、どうお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 これはかなり昔の事件もありますので、今からなかなかその問題点の追及も難しいと思います。

 私は、捜査当局は、能力を常に磨いて、それできちっと適切な捜査をして、真犯人をきちっと、挙げていくという言葉は悪うございますが、それがやはり、被害者の心情を思いやっても、それから安心、安全な社会をつくるためにも必要なことだと思います。

 そして、結局、それを間違えれば、無実の方を刑務所に送るということになってしまうわけですから、その責任を十分自覚して、捜査の基本に常に立ち返って前へ進む。口で言うのは簡単でございますが、そういうことを日々努めていくということではないかと思います。

鈴木(貴)委員 実際に今の大臣の答弁を伺わせていただきながら、実は、足利事件の菅家さんなんですけれども、十七年、二十年近く自由を奪われたわけであります。そして、自由の身となってから、実際にその事件に携わられた、判決にかかわった判事八名の方に、謝罪の意思の有無、そしてまた事件の公訴時効成立等についての質問を送られたんですが、実は回答は八名の方から一切なかった、こういった事実もあるわけであります。

 実際に真犯人を目の前に出してくれ、これは難しいかもしれませんが、しかし、過去を振り返って、必要な反省、謝罪というものは、私はこれは必要なのではないのかなと強く強く思うところであります。

 次に、林刑事局長に伺わせていただきたいと思います。

 まず、質問の前に、ぜひとも林局長に知っていただきたいことがあります。

 それは、私は、誰よりも、林局長を初め検察の皆さんの可能性を信じている国民の一人であります。ゆえに、初質問以来、終始一貫して、時の稲田刑事局長、そしてまた現林局長に質問をさせていただいております。林刑事局長が血も涙もない人間であるともし私が判断をしていれば、もう質問することさえも諦めていた。しかし、こうして質問を続けているというところに、私の林刑事局長への熱い思いをぜひとも受けとめていただきたいな、このように思っております。

 また、実は、林刑事局長は、二〇一一年、検察改革推進室の室長もされておりました。その際に、改革の第一弾として、取り調べの録音・録画の試行に関する運用要領というものを作成されております。

 ここには、実は、取り調べの録音、録画を行うことは、それ自体が取り調べの適正を担保することにも役立つ、こういったプラス面を非常に強調されております。また、可能な限り積極的かつ柔軟に取り組むことが肝要だと。こうして、やはり心ある林刑事局長、時の室長は、皆さんの背中を押されておりました。最後、このような指摘も書かれておりまして、録音、録画を実施しなかった場合には、調書の任意性、信用性等が争われた際に有用な立証方策の一つを失うこととなるおそれがある、こういったことまで書かれております。

 二〇一一年、当時、林眞琴室長としてこの要領は出されていらっしゃったかと思いますが、ここで、二〇一一年当時、室長時代にはここまで積極的かつ前向きだった林刑事局長でありますが、この間、四月三十日に出された試案はまさに後退してしまったのではないのかな、過去のこの前向きかげんが失われたような試案だったかと思いますが、前向きぐあいに陰りが出た何か原因というものがあるならば、ぜひ教えていただけないでしょうか。

林政府参考人 四月三十日の試案でございますが、あくまでも、それまでの部会における議論、それを踏まえまして、この取りまとめに向けて事務局で一つの案として作成されたものです。

 その中で、見ていただけるとわかりますが、対象事件の範囲につきましても、非常に狭いというか、狭いという指摘を受けている範囲の案もあれば、一方で、それを大幅に広げている案もございます。あくまでも、これは事務当局において今後の議論のために提示させていただいたものでございます。

 その上で、今指摘されました取り調べの録音、録画について、一つには、取り調べの適正化に資するという観点、もう一つには、実際に裁判になったときに任意性、信用性の立証に資する、こういった観点があるということを先ほど御指摘がありました。

 この点につきましては、まさしく今、この審議会の特別部会におきましても、やはり取り調べにおいては両様の有用点があるということを前提にしてこの議論がなされ、かつ、事務局試案というのもそういった観点に立って提示させていただいております。

鈴木(貴)委員 今の局長の答弁は、つまりは、その二〇一一年当時の自分が持っていた、その要領に反映させた前向きぐあいというのにはみじんも変わりはないぞ、こういったお答えと受けとめさせていただきたいな、このように思っております。

 最後、もう質疑時間も終了いたしましたが、実はこの間、つい数日前に、村木局長の件で有罪が決まりました前田元検事が初めて一般の講演で顔を出された、そして、その際に訴えていたのがまさに取り調べの全面可視化であります。

 こうしたその内情をよく知っている側の人間が、はたまた、反対側の立場に置かれたときに、一転、取り調べの全面可視化を今強く訴え、また、講演会までされているというこの事実もしかと受けとめていただきながら、心ある林刑事局長には、ぜひとも特別部会で、今後とも、二〇一一年同様、背中を押し続けていっていただきたいなと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

江崎委員長 次に、第百八十三回国会、内閣提出、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。谷垣法務大臣。

    ―――――――――――――

 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 近年、テロの脅威は衰えることを知らず、昨年一月にアルジェリア民主人民共和国において、多数の犠牲者を出すテロ事件が発生したことも、記憶に新しいところであります。

 国際テロ組織は国境を越えて活動しておりますので、テロ行為を抑止するためには、国際社会が幅広い分野において緊密に協調し、テロリストにテロの手段を与えないことが重要であります。

 我が国は、平成十四年に公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律を制定し、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的で資金を提供する行為等を処罰する規定を設けておりますが、政府間の枠組みであって各国にテロ対策の推進を求めるFATF(金融活動作業部会)からは、平成二十年の対日審査において、資金以外のいわゆる物質的支援の提供、収集やテロリスト以外の者による資金等の収集等が処罰対象とされていないなどテロ対策が不十分であるとの評価を受け、その後も、改善措置が進捗していない旨厳しく指摘されているところであります。

 我が国としましても、テロを許さない国際環境の醸成に努めていくことが必要であり、この法律案は、そのような観点から、FATFの指摘に対応し、資金以外の公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行等に資する利益の提供等を処罰対象とするなど、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、資金以外の土地、建物、物品、役務その他の利益についても、提供罪等の客体として処罰対象とするものであります。

 第二は、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的で、これを実行しようとする者に資金等を提供しようとする者(一次協力者)に対し資金等を提供する行為及びその提供を受ける行為に係る処罰規定を新設するとともに、一次協力者による資金等の提供行為の実行を容易にする目的で、当該一次協力者に対し資金等を提供する行為及び一次協力者がその提供行為の実行のために利用する目的で資金等を提供させる行為に係る処罰規定を新設するほか、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行のために利用されるものとして資金等を提供する行為及び提供させる行為に係る処罰規定を新設するものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

江崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十一日水曜日午前八時四十分理事会、午前八時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十四分散会


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