衆議院

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第9号 平成26年11月7日(金曜日)

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平成二十六年十一月七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君

   理事 土屋 正忠君 理事 ふくだ峰之君

   理事 盛山 正仁君 理事 柚木 道義君

   理事 井出 庸生君 理事 遠山 清彦君

      秋元  司君    安藤  裕君

      池田 道孝君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大見  正君

      門  博文君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    熊田 裕通君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      今野 智博君    白石  徹君

      田畑  毅君    永山 文雄君

      鳩山 邦夫君    平沢 勝栄君

      三ッ林裕巳君    宮崎 謙介君

      宮澤 博行君    階   猛君

      辻元 清美君    横路 孝弘君

      高橋 みほ君    丸山 穂高君

      大口 善徳君    西田  譲君

      鈴木 貴子君    西村 眞悟君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君

   最高裁判所事務総局家庭局長            村田 斉志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       笹島 誉行君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局長)            古屋 浩明君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 荻野  徹君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月七日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     田畑  毅君

  末吉 光徳君     熊田 裕通君

  鳩山 邦夫君     白石  徹君

  平沢 勝栄君     秋元  司君

  郡  和子君     辻元 清美君

同日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     平沢 勝栄君

  熊田 裕通君     永山 文雄君

  白石  徹君     鳩山 邦夫君

  田畑  毅君     宮崎 謙介君

  辻元 清美君     郡  和子君

同日

 辞任         補欠選任

  永山 文雄君     末吉 光徳君

  宮崎 謙介君     黄川田仁志君

    ―――――――――――――

十一月七日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(荒井聰君紹介)(第四三号)

 同(浅尾慶一郎君紹介)(第九五号)

 同(横路孝弘君紹介)(第九六号)

 同(高木美智代君紹介)(第一〇三号)

 同(辻元清美君紹介)(第一〇四号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一一五号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(荒井聰君紹介)(第四四号)

 同(浅尾慶一郎君紹介)(第九七号)

 同(横路孝弘君紹介)(第九八号)

 同(高木美智代君紹介)(第一〇五号)

 同(辻元清美君紹介)(第一〇六号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一一六号)

 民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第五三号)

 複国籍の容認に関する請願(横路孝弘君紹介)(第九四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣人事局人事政策統括官笹島誉行君、人事院事務総局給与局長古屋浩明君、警察庁長官官房審議官荻野徹君、法務省大臣官房審議官小野瀬厚君及び法務省大臣官房司法法制部長萩本修君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局中村総務局長、堀田人事局長及び村田家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神山佐市君。

神山委員 おはようございます。自由民主党の神山佐市です。

 近年、我が国は、社会状況が大きく変化してまいりました。昨年の九月四日、最高裁判所大法廷での、嫡出でない子の相続分は嫡出である子の相続分の二分の一と規定する民法第九百条第四号ただし書き前段を違憲とする判決を受け、政府は、当該部分を削除し、嫡出でない子の相続分を嫡出である子の相続分と同等とする民法改正案を昨年暮れに成立させました。

 これについては多くの意見があるわけですが、家族法制のみでなく、多様化する犯罪など変化する社会状況のもとで、法制のさまざまな見直し、整備が行われようとしている昨今、裁判官、検察官の果たす役割もまた大きなものがあると思います。

 上川大臣就任後、私は初めての質問になるわけでありますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、今回の裁判官の報酬、検察官の俸給の一部を改正する法律案ですが、裁判官については、憲法七十九条、八十条に報酬を規定されておりますが、検察官については、どのような根拠に基づき別個に給与体系が規定されているのか、お伺いいたします。

萩本政府参考人 検察官についてお答えする前提として、まず、裁判官について申し上げますと、裁判官につきましては、その職務と責任の特殊性から、委員御指摘のとおり、憲法に報酬に関する規定が置かれ、これを受けて、裁判官の報酬等に関する法律により、一般の政府職員と異なる独自の給与体系が定められているところでございます。

 お尋ねの検察官につきましては、検察官が、司法権の発動を促し、その適正円滑な運営を図る上で重要な職責を有する者として、司法官に準ずる性格を有すると言うことができることに加え、原則として裁判官と同一の試験及び養成方法を経て任用されるということもありまして、検察官の俸給等に関する法律により、裁判官に準じた給与体系が定められているものでございます。

神山委員 ありがとうございました。

 続いてですけれども、政府職員の給与制度の総合的見直しに伴い裁判官の報酬を引き下げる法律の改正を行うことについて、報酬の減額を禁ずる憲法との関係についてはどのようにお考えなのでしょうか、お伺いいたします。

萩本政府参考人 今回提出している法案には、委員御指摘のとおり、裁判官の報酬について減額の措置を講ずる内容が含まれているところでございます。したがいまして、憲法、具体的には第七十九条第六項及び第八十条第二項ですが、これらの憲法の規定が裁判官の報酬について「在任中、これを減額することができない。」と規定していることとの関係が問題となり得るところでございます。

 もっとも、これらの憲法の規定は、司法権の独立、裁判官の独立を給与面から保障したもの、すなわち、裁判官の職権行使の独立性を経済的側面から担保するとともに、裁判官の報酬の減額が個々の裁判官または司法全体に何らかの圧力をかける意図でされるおそれがあることから、そのようなおそれのある報酬の減額を禁止する趣旨の規定と解されるところでございます。

 今回の報酬の改定は給与制度の総合的見直しに伴って報酬を引き下げるものですが、これは、人事院勧告を踏まえた国家公務員全体の給与の引き下げに伴い、法律によってこれに準じた引き下げを行うものでして、その引き下げの範囲や引き下げの程度も国家公務員のそれと同様のものであることからしますと、裁判官の職権行使の独立に影響を及ぼすおそれもありませんし、個々の裁判官及び司法全体に何らかの圧力をかけることを企図したものとも言えませんので、先ほど申し上げました憲法の諸規定に違反するものではないと考えているところでございます。

神山委員 ありがとうございました。

 上川大臣にお伺いいたしますけれども、裁判官、検察官は、職務の性質上、深夜、早朝を問わないもので、負担も大きくなっているというふうに認識をしているわけでありますけれども、今の社会情勢が大きく変化してきている中において、今後の裁判官それから検察官のあり方についても、的確に国民に理解できる、そういうようなことをしっかりしていかなきゃいけないんだというふうに考えているわけであります。

 そのために、裁判官とか検察官の定員の人数をふやして、そして、より国民が信頼できる、また、国民の方々が理解できるようなことを進めるべきだというふうに考えておりますけれども、大臣の御所見をお伺いいたします。

上川国務大臣 ただいま委員御指摘の件でございますが、社会あるいは経済、あるいは国際情勢が大きく変化しているという中で、国民の皆さんの安全、安心を守るための、それにふさわしい体制づくりということにつきましては、絶えずそうした視点を持って充実して取り組まなければいけない、これが国民の皆さんの理解をさらに深めることにもつながるというふうに考えております。その意味では、御指摘いただきましたとおりというふうに考えております。

 裁判員の具体的な員数ということでございますけれども、こうした事件の動向、事件処理状況等を踏まえながら、裁判所におきまして増員の必要性について検討を行っているということでございます。

 法務省におきましても、現在の犯罪情勢とか、あるいは裁判員制度の実施等司法制度改革に伴って新たな業務が発生しているということでありまして、そうしたものにも適切に対応していくということで、これまでにも増員をお願いしてきたところでありますし、これからもそうしたしっかりとした考えにのっとって取り組んでまいりたいというふうに思っております。

神山委員 ありがとうございました。

 これからも増員を図っていただきながら、よりきめ細かな対応をしていただければというふうにお願い申し上げる次第であります。

 最後の質問になりますけれども、給与制度の総合的見直しについて、現場の裁判官の意見などの聴取をされたのかどうか、また、されたとすれば、その辺の内容についてお知らせをいただける部分がありましたら、お願いいたします。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 現場の裁判官の意見は聴取してございます。ごく一部に導入に対する反対意見があったところではございますけれども、大多数の裁判官は、給与制度の総合的見直しについて理解を示しているところでございます。

神山委員 ありがとうございました。

 時間が早いんですけれども、終わりにいたします。どうもありがとうございました。

奥野委員長 次に、横路孝弘君。

横路委員 初めに、今回の法案について裁判所にお尋ねしたいと思います。

 去る六日、衆議院で地方創生の関連法案が成立いたしました。その背景には、やはり、地方経済が非常に疲弊しているということ、地方における人口の流出も激しいということなどがこの法案の背景に存在しているというように思います。

 そこで、地方と中央がどうなっているか、最近の数字をちょっと取り上げてみますと、例えば景気についてです。

 物価は、ことしの八月ですが、生鮮食品を除いた消費者物価というのは、東京二十三区は二・七%の上昇なんですね。地方の人口五万から十五万人未満の市は三・一%の上昇なんですよ。物価はむしろ大都市の方が低いんですね。地方都市の方が高くなっているんです。

 賃金はどうかというと、全国平均を一〇〇として、東京は一四四・九、愛知だとか大阪だとかの大都市を除いた三十七県は八七・六なんですよね。一四四・九と八七・六という大きな差があるわけですよ。

 そこで、お尋ねしたいというように思うんですが、司法の仕事というのはどこでやっても変わりないですよね、同じ仕事をしているわけです。同じ仕事をしているけれども、仕事をしている場所によって、特に地域手当に差が出てくるということになっているわけです。それは本当は人事院に聞くべき話なのかもしれませんが、地方ごとの賃金をベースにしてやるとこういう結果になるわけですね。

 ただ、このベースで本当にいいんだろうか。特に、地域手当の上がったところ、変わらないところ、下がったところを見てみますと、東京でいうと、二十三区は変わっていないんですね。町田が下がって、八王子が上がっているわけですよ。そうすると、東京都内でもそういう状況でございますから、私のところの札幌と委員長の奈良は下がっているんですね。

 こういう理屈、どうしてこの地域は下がって、どうしてこの地域は変わらないかという説明というのは、なかなかこれはできないと思うんですね。理由は、その地域の経済、賃金の力ということにしかならないわけです。

 今申し上げました、司法の仕事という点から見ますとやる仕事は変わらないわけですから、たまたまその場所によってこういう差が生まれるということを裁判所としてはどうお考えですか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 人事院勧告は、国家公務員の給与水準を民間賃金水準と均衡させるという、いわゆる民間準拠を基本に勧告が行われているところでございますが、今般の人事院勧告につきましては、全国共通の俸給表を維持しつつ、民間賃金の低い地域における官民給与の実情がより適切に反映されるよう、俸給表の水準の引き下げを行い、民間の賃金水準の高い地域に支給している地域手当の支給割合及び支給地域等の見直しを行う等の措置を講ずるものと承知しております。その考え方は一定の合理性を有するものと考えております。

 裁判官につきましても、全国一律の報酬水準を維持しました上で、一般の政府職員と同様に地域手当の見直し等をするものでございまして、給与額全体を見れば、従前よりも大きな差を生ずるところもございますけれども、全国一律に同様の職務に従事していることと何ら矛盾するところはないというふうに考えておりまして、そのことが不相当とは考えておらないというところでございます。

横路委員 そういう答弁をせざるを得ないと思うんですが、ただ、そうして、地方に行く者の希望がだんだん少なくなっていっても困るんですね。それは希望に関係なしに配置はしているんでしょうけれども、しかし、だんだんその差が拡大していけば、実際、地域手当に相当の差がありますから、やはりそのことは問題なので、カバーするとすればどういうことをお考えでしょうか。何か考えていますか。

堀田最高裁判所長官代理者 地域手当にはいわゆる異動保障の制度が設けられておりまして、本年の人事院勧告によりまして、さらに広域異動手当の支給割合の引き上げが予定されているというところもございます。こういったことを考えますと、委員御指摘のような、裁判官の異動への懸念というものは少ないのではないかと考えてございます。

 さらに、今後とも、全国の裁判所における均質な裁判を実現するために、転勤が多く、独立して職権を行使している裁判官の職務の特殊性等に照らしまして、地方都市を含めて全国各地にひとしくすぐれた裁判官を配置できますように、適切な人事上の施策を行うように努めてまいりたいと思っております。

横路委員 問題はその人事院勧告のあり方なんですね。これはまた改めて議論させていただきたいというように思います。

 そこで、きょうは、ハンセン病患者の刑事事件の審理が、特別法廷ということで、裁判所の中ではなくて療養所とか刑務所の中で裁判が行われたという点についてお尋ねをしたいと思います。

 ハンセン病、昔は、らいと言っていました。二〇〇一年の五月十一日に、熊本地裁で、らい予防法によるハンセン病の隔離自体は憲法違反だというようにされまして、厚生大臣のハンセン病隔離政策遂行上の違法、それから国会も、国会議員の立法行為、立法不作為の国家賠償法上の違法を認めた違憲判決が下されました。

 らい予防法というのは、患者を強制的に隔離するということを基本として、仕事につくことを禁止し、その行った先々は汚染場所というように言われて消毒をするということ、外出は禁止される。さらに、優生保護法によって、園の中で結婚する場合に優生手術をしていったんですね。これは、大体三千例以上の手術が一九五九年まで行われたと言われています。

 この憲法違反判決に、当時の小泉内閣、控訴をやめまして、総理大臣の談話で謝罪をいたしました。坂口厚生労働大臣も謝罪をしました。衆議院と参議院も謝罪決議を行いました。

 しかし、司法関係は、裁判所、検察庁、警察を含めて、今日まで一言も、何らの検証も反省も謝罪も行っていないんですね。

 そこで、全国ハンセン病療養所入所者協議会など三団体から、昨年の十一月六日、最高裁へ要望書が出されました。どんな要望書かというと、「ハンセン病を理由にした特別法廷設置許可決定の正当性について、速やかに第三者機関を設置した上で検討し、その成果を公表すること」ということで、これを受けて、ことしの五月十九日に調査委員会が最高裁の中に設置されて、調査が始まったところでございます。

 この調査が始まったということは私も評価をしているところでございますが、あの熊本地裁の判決から今日まで、最高裁として、ハンセン病患者を特別扱いしてきたことについてみずから検証することは今まで全くなかったのか、この患者団体から提起されるまでなぜ問題意識を持たなかったのか、あるいは持てなかったのかということを、まず最高裁の方にお尋ねしたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今般、全国ハンセン病療養所入所者協議会ほか二団体からの要請を受けたことを契機といたしまして、昭和二十三年から昭和四十七年までの間、ハンセン病患者を当事者等とする事件につきまして、裁判所外の場所を開廷場所として指定した司法行政上の判断についての調査を開始したところでございます。

 委員から大変厳しい御指摘をいただきました。四十七年以降、今日に至るまで、平成十六年に日弁連の研究財団から調査依頼がありまして、件数をお答えしたことはあるんですが、それ以外、先生が言われるような検証ということをやったという事実は確認できておりません。また、その理由につきましては、今の時点におきましては、そういう判断に至った理由というのは判然としないということで御理解いただきたいと思います。

横路委員 この判決から二週間後、控訴を断念したわけですが、そのときの当時の小泉総理の談話があります。これをちょっと御紹介したいと思うんですよ。

  私は、内閣総理大臣として、また現代に生きる一人の人間として、長い歴史の中で患者・元患者の皆さんが経験してきた様々な苦しみにどのように応えていくことができるのか、名誉回復をどのようにして実現できるのか、真剣に考えてまいりました。

  我が国においてかつて採られたハンセン病患者に対する施設入所政策が、多くの患者の人権に対する大きな制限、制約となったこと、また、一般社会において極めて厳しい偏見、差別が存在してきた事実を深刻に受け止め、患者・元患者が強いられてきた苦痛と苦難に対し、政府として深く反省し、率直にお詫びを申し上げるとともに、多くの苦しみと無念の中で亡くなられた方々に哀悼の念を捧げるものです。

 非常に気持ちのこもった、心のこもった談話だと私は思っております。

 そこで、調査についてちょっとお伺いしたいと思うんですが、今までの調査で、厚生労働省からは回答するという返事が来ている。ところが、法務省からは、法務省も、刑務所を法廷にしたということがありますから、関係ないわけじゃないんですよ、法務省。では一体どんな状態で刑務所の中で裁判を行ったのかとか、いろいろあると思うんですね。しかし、こういう点については一切資料なしというような返事だというように最高裁からは聞いておるわけですが、私は、それ以前の、被疑者をどのように調べたのか、どんな場所で調べたのか、その状況というのは、取り調べた検事もたくさんまだ元気でいるでしょうから、聞けばわかる話なんですね。

 私は、今回のことは、その特別法廷だけじゃなくて、それに至る捜査、それ以前の警察庁の捜査、それ全体が、やはり普通の状況で取り調べを受けているわけじゃないんですよ。そのことを明らかにしてもらいたいと思うんです。

 法務大臣、私は、この最高裁の調査に全面的に協力すると同時に、そういう調査を法務省としてもやってもらいたい。どういう取り調べをどんな場所でやったのか、刑務所の中でどんな体制でやったのか。ぜひ法務大臣の御見解を承りたいと思います。

上川国務大臣 今、委員の方から、当時の小泉総理の談話につきまして御紹介をいただきまして、そうしたことについて、胸を打つ思いでございます。そして、そうした名誉回復、あるいは、一日も早くいろいろな苦難について解消ができるようにということで全力を尽くすことが、人としてもまた大事ではないかと思っております。

 今御質問のことでございますけれども、法務省として、今現在最高裁が行っている検証に対して極力協力すべきではないかという御指摘に対しましては、私もそのように考えているところでございます。

 ただ、法務省といたしましては、最高裁の方から協力依頼があったことに対しまして、可能な限りの協力をしていくということでありまして、そこのところは、司法権と行政との間の一つの独立性という部分に照らして、これからも適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

 今、調査をしている段階でございますので、そうした調査のしっかりとした検証を踏まえた上で、できるところにつきましては、また全力で協力をしてまいりたいというふうに思っております。

横路委員 最高裁からは調査依頼はないようですが、私の方で警察庁の方に、ハンセン病患者の取り調べなどについて、どういうような指示をし、どんな状況で行われたのかという質問をしましたところ、資料はないというお答えでしたが、それでよろしゅうございますか。

荻野政府参考人 お答えを申し上げます。

 ハンセン病患者に係る取り調べ等について、従前、指示等の文書があるかというお問い合わせがございまして、いろいろ調べましたけれども確認できなかったというお返事をさせていただきました。

横路委員 ところが、例えば戦後すぐの昭和二十二年三月には、検察、警察、厚生が協議して、警察職員、検察官は、被疑者がハンセン病であるということだけで取り扱いに差をつけない、感染のおそれがない場合には、捜査上必要な期間、留置場または拘置所に収容するという確認も行われているんですよ。

 しかし、その後、ハンセン病患者を収容する留置所、刑務所というのが療養所の中に設置されるまでの間はどういう扱いをしたかといったら、国家から事実上放置されまして、療養所の監禁室、いわゆる重監房に監禁したんですね。つまり、ちゃんとした手続で取り調べて裁判にかけることをしないで、それはもうあそこに入れておけというので。

 そしてそれが、たくさんの死亡者を出しまして、これは問題だということになって、当時の国会でも議論になったんですね。それをやめて、やはりハンセン病患者もそれなりの手続はちゃんと踏まなきゃいけないんじゃないかということで、その後、これも問題なんですが、隔離した形で、療養所に近接して留置場をつくるとかいうような措置になっていったんですね。

 警察からの通達も出ているんですよ、これは。ないというお答えでございましたが、例えば、国家警察の時代ですが、刑捜発第三二号、昭和二十五年七月三十一日、国家地方警察本部刑事部長、厚生省医務局長宛て、「らい患者たる被疑者の取扱について」というのが出ていますよ。

 だから、もう一度ちゃんと調べてみてください。これはやはり、問題になって、戦後ずっと流れてきているんですから。初めは、ちゃんと普通どおりに手続に従ってやりましょうというのが、だんだんだんだん変わってきたという経緯、経過があります。これをやはり警察としても明らかにしてもらいたいというように思いますので、ちょっと調べてください、こういう通達は幾つもありますから。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 文書等につきましては、組織として保管をする一定の決まりがありまして、それによって保管されているものについて調べまして、お答えを申し上げたということでございます。

 委員御指摘でございますので、それを踏まえまして適切に対応させていただきたいと思います。

横路委員 らい患者に関する取り調べについてというような通達も出ていますので、資料はたくさんあると思いますので、ぜひ警察の方も御努力をいただきたいというように思います。

 そこで、最高裁の方に、ぜひ関係者のヒアリングをやってもらいたい。特に、要請した団体の代理人あるいは関係者、患者の人たち、どういう裁判を受けたのか、どんな取り調べを受けたのか。そして、逆に、元裁判官とか検察官とか警察の人たち、そういう人たちも、ヒアリングをするか、あるいはそのことのヒアリングを法務省や警察庁に依頼するというようなことなどもやって、もっと幅広く調査をして、しっかり検証するということをやろうと思えば、そこはやはり広く押さえなければなりませんので、私は、この調査委員会に期待をしておりますので、ぜひその点をやっていただくようにお願いしたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 先ほども答弁申し上げましたけれども、現在、最高裁が行っております調査というのは、開廷場所の指定につきまして、これが司法行政上の事項であるため、裁判所法六十九条二項に定める「必要と認めるとき」の要件の判断をどのように行っていたかということについて調査をしているというところでございます。

 一方、個別の事件につきまして、開廷場所においてどのような審理が行われていたかということにつきましては、それぞれの事件を担当した裁判体の訴訟指揮あるいは法廷警察権にかかわる問題でございます。こういった問題につきましては、個々の訴訟手続の中でその当否を判断されるべき問題でありまして、事後的ではあれ、司法行政の立場からこういった問題について調査するのは裁判の独立に抵触するおそれが高く、これはできないというふうに考えております。

 ただ、今申し上げました範囲の中で、先生御指摘のようなヒアリング等についてどのようなことができるかということは検討してまいりたいと思っております。

横路委員 この特別法廷の審理というのはどんな様子だったかというのが患者団体の要請書の中にも出ていますよね。裁判官初め関係者、立ち会った検察官など、みんな白い予防服を着るわけですよ。そして、ゴム長靴を履くんですね。手袋をはめるわけですよ。そして、被告人の着衣や凶器などの証拠物を扱うときは火箸でこうやってやった。被告人をあたかもばい菌であるかのごとく扱った、異様な雰囲気の中で審理が行われたということを指摘されています。

 これは本当なんですか。

中村最高裁判所長官代理者 要請書の中にそのような指摘があるということは事実でございまして、また、先ほど申し上げました日弁連研究財団の行った検証におきましてもそのようなことが記載されているということは確認しております。

 ただ、その事実関係は、先ほど申し上げましたように、最高裁として確認しているものではございません。

横路委員 つまり、やはり異様な状況での審理だったわけですよ。その審理が本当に公正なものだったのかということですね。

 それから、取り調べもどうだったのかということですね、検察官の取り調べ、警察の取り調べ。やはり同じようにやったんじゃないんでしょうか。これは、当時の法律のもとで消毒しなきゃいけないということになっていますから、多分、行った場所は消毒をして、検察官の取り調べ、警察の取り調べもみんなそういう状態で行われたんだと思うんですね。

 だから、ぜひ、そういうような様子を、個別の事件についての話ではなくて、これはハンセン病患者を扱った裁判がどのように行われたかという一般論として、個々具体的な事件のことをあれこれ言っているわけじゃないんですよ。そういうことで警察の取り調べはどのようにして行われたのか、法務省の方は、刑務所の中での裁判はどのようにして行ったのか、取り調べはどのように行われたのかということを明らかにしなかったら、全体的に、司法全体として、ほかはみんな行政もいろいろやっているんですよ。そして、この小泉総理の談話に基づいて、国会の方も、今でもまた新しい法案を出して、患者や元患者、遺族の人の対応をどうするかということを審議して、今度新しい議員立法も出るというふうに聞いています。

 国会も、お叱りをいただきましたので、そういうそれなりの努力をみんなで一生懸命やっている。司法だけ何も知らぬよというわけにはいかないわけですよ。だから、可視化の問題なんかは、やはりこういう問題をちゃんと処理しないから出てくるわけでして、私は、法務省と警察庁にそういうことでの調査もお願いしたいと思いますし、最高裁も、個々の事件に対する指揮はできないとかというような答弁、これはもうピントがずれているとしか言いようがないですよ。一般論としてハンセン病患者をどう扱ったのかということですね。これは、扱い方について最高裁から何らかの指示が出ているに決まっているんですよ、このようにしてやりなさいという。

 ぜひ、その辺の調査を、法務大臣、それから警察庁の方にもお願いしたいと思います。御答弁をお願いします。

上川国務大臣 委員からさまざまな御視点で検討せよということの御指摘がございまして、今、最高裁判所の方の調査委員会が設置されまして、そこで検証をしているということでございます。

 そうした検証に対しまして、要請をしっかりと踏まえて対応していくということで、そうした推移をしっかりと見守りながら対応してまいりたいというふうに思っております。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点におきまして、警察としてどういったことを調べられるかということにつきましては、なかなか明確にはお答えできませんけれども、まずは、最高裁判所から協力の御要請等があれば、必要に応じ可能な対応を考えてまいりたいと思います。

横路委員 警察庁はそういうことですから、最高裁はしっかりやってくださいよ、個々の事件はなどと言わないで。ハンセン病患者をどう扱ったのかということが特別法廷につながっているわけですから。よろしいですね。

中村最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、裁判所といたしましては、先ほどの御指摘を十分踏まえまして、裁判所の司法行政行為が適切であったかどうかというところについて、きちっと調査したいと思っております。

横路委員 同時に、昭和二十三年から昭和四十七年の間、特別法廷は九十五件ですね。これは多分、地方からの上申に基づいて指示するという仕組みになっているというように聞いておりますが、ハンセン病患者の刑事事件の扱いについて、地裁に何らかの指示をしていると思うんですが、そのこと。

 昭和四十七年が最後なんですね。昭和四十七年がなぜ最後になったのか。最後というのは、その後は裁判所で裁判をやっているわけでしょう。普通の裁判所の中で裁判をやっているわけですね。すると、このとき方針を変えた理由というのがあるはずなんですね。そして、その理由もまた、地方に、所長会議でやったのか通達で出したのかわかりませんが、何らかの方法で過去に決定したはずなんですよ。

 そういうことはもうおわかりになっているでしょうか。調査中なら調査中ということで結構ですが。

中村最高裁判所長官代理者 その点、まさに現在調査中ということでございます。

横路委員 裁判所法の六十九条の二項で、「必要と認めるとき」には他の場所で裁判をやることができると。その必要性というのはどういうことなんでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 裁判所法六十九条二項で、「必要があると認めるとき」ということで記載されておりますが、これは、極めて例外的な場合というふうに考えております。例えば、風水害、火災等のためにその庁舎内で法廷が事実上できなくなった、このような場合がこれに当たると一般的には考えられていると思います。

 ただ、どのような場合に当たるかということについて、今、それを網羅的にお示しすることは困難でありますし、また、今回のハンセン病患者の事件について、この六十九条の二項の要件を満たしたということで最高裁は許可しているわけですが、その判断に至った、どのような経緯なのか、どのような資料に基づいて行ったのかということについては、現在調査しているということでございます。

横路委員 この問題は、もう国会では古くから議論されていまして、昭和二十九年の三月二十五日、磯崎さんという最高裁の説明員の方が、らい患者の事件を、公衆衛生の観点から裁判所の法廷を使用させないようにしているんだというような答弁もあります。

 そのように昔から問題になっていながら、全然検証されていないんですね。そこが問題だというように思います。

 この必要性ということも、患者そのものでも、治療は終わって治っている人間もいるわけですよ。それから、まだ菌を出しているという人もいる。昭和三十五、六年ぐらいから、普通の感染症として扱いなさい、特別な法律を持っているのはやめなさい、隔離政策はやめなさいということが、もう既に国際的には常識になっているんですね。早くは、たしか昭和三十三年に国際らい会議が東京で開かれたときに、もう既にそういう決議がされているわけです。

 だから、昭和三十五、六年ぐらいからだんだんはっきりしてきたということなんですが、それ以後も特別法廷をやっていますよね、昭和四十七年までやったわけですから。だから、これは、個別の患者の状況を見てやったのかどうかということも問題です。

 一つ、らい予防法の十五条に入院患者の外出についてという規定がありまして、法令により国立療養所外に出頭を要する場合であっても、所長が、らい予防上重大な支障を来すおそれがないと認めたときには外出が認められるというようになっているんですね。

 そうすると、治療の終わった人間というのはもう感染するあれがないんですから問題がないわけですが、最高裁は、特別法廷を許可するに当たって、療養所長に対するこういう判断を求めたんでしょうか。どうもその形跡がないみたいなんですが、この辺はどのようにお考えでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 最高裁の開廷場所の指定につきましては、先ほど先生言われたとおり、庁から上申が来てそれを判断するという形になっています。その際に、庁の上申の中にそのような医学的知見というものが含まれているかどうか、これもまさに今現在調査中ということでございます。

横路委員 この特別法廷の問題はいろいろあるんですが、一つは、裁判は公開でなければいけないという憲法八十二条の規定がありますね、裁判の対審及び判決は公開の法廷で行う。また、憲法三十七条は、被告人の権利として、全ての刑事事件において被告人は公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利があると。憲法三十二条も、何人も裁判所において裁判を受ける権利があるということなんですね。

 裁判の公開というのは、やはり近代司法の大きな柱です。専制国家時代の秘密裁判とか密室司法に対して、裁判の公正ということが非常に大事なんですが、やはり刑務所の中とか療養所の中というと裁判の公開に反しますよね。違いますか。

中村最高裁判所長官代理者 審理が裁判の公開の原則に反するという御指摘には、その場所の物的設備が公開法廷にふさわしいものであったか否かということのみならず、具体的な訴訟手続でどのように開廷したかという点でも指摘されることがあるというふうに承知しています。

 したがいまして、司法行政に関する事項に、最高裁による開廷場所の指定が適切であったかという調査の中で、先ほど申し上げましたが、個別事件における個々の裁判体の判断の事項にかかわることなくどのような調査ができるかということを、これからの調査の過程の中で慎重に検討していきたいと考えております。

横路委員 裁判の公開は、裁判所も意識していたと思うんですよ。昭和二十八年に、当時の事務次長の石田さんの名前で、そういう場所でやるときに、療養所の中なら、療養所の外に、この中で裁判をやりますよと掲示板に掲示しろという話なんです。多分、これで公開は保障されたというアリバイづくりじゃないかと思います、自由に医療刑務支所の中に入れるわけじゃないんですから。

 公開というのは、一般大衆、多数の人間が自由に裁判を聞くことができるというのが公開の原則でございまして、こういう過去の怪しげな通達を含めて、やはりしっかり検証していただきたい。

 この問題は、例えば、らい患者だけ必要性があるというふうに判断したとすれば、他の感染症との関係で差別したことになります。特に昭和三十五年以降は、ほかの感染病と何も変わりありませんよ、隔離する必要は全くない、もし何か治療が必要なら通院で治療すればいいというようなことまで指摘しているわけですね。ですから、そうすると、法のもとの平等とか、憲法にいろいろ触れる、そういうケースなんですよ、この特別法廷に関連する問題というのは。

 そういう認識をぜひ持っていただきたいと思いますが、そういう認識はありますか。憲法上の問題も関連しているという認識で調査されていますか。

中村最高裁判所長官代理者 今回の調査の契機になりました団体等からの要請書の中でもそのような指摘がされているということは、十分承知しているところでございます。

横路委員 指摘されているのを承知しているのじゃなくて、自分たちも十分承知してやっていますということが必要だというように思いますので、ぜひそういう気持ちでやっていただきたいというように思います。

 いずれにしても、私も熊本地裁の判決を読んでみました。非常に詳細な経緯、経過から、治療の状況、国際的な関係というのが述べられていて、その中で、やはり日本というのは非常におくれたな、国会が立法不作為といって違憲だと指摘されるのもやむを得ないなというように思いました。今残っているのは司法の問題でございますので、本当にこれをしっかりとやっていただきたい。報告書が出たときにまた十分な議論をさせていただきたいと思います。

 それで、もう一つ裁判所の方に、成年後見人の問題についてちょっとお尋ねいたしたいというように思います。

 裁判所の中でふえているのは、家事事件、特に成年後見事件がふえていますね。あと、労働事件もふえていますが。成年後見というのは、これから高齢社会ですから、ますますふえていくわけです。誰が後見人になっているかというと、最近は、プロの人たち、弁護士とか司法書士とか社会福祉士とかがふえている。これは非常にいい傾向だと思うんですね。家族も四割ちょっと超えているぐらい、五割を切るような状況でございますが、家族と、そういうプロの人たちということなんです。

 後見人の仕事というのも大変だと思うんですね。特に、最近、広島高裁の判決で裁判所の監督責任ということが問題になって、これは、中身を調べるとやや特異なケースかというように思うんですけれども、しかし、法の方も、民法で、「いつでも、後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求め、又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。」ということで、法律でしっかり役割が決まっているわけですね。

 この事件で初めて裁判所の監督責任を問われたわけですね。なかなか調査官や書記官の人たちも忙しくて大変だと思うんですが、やはりこれは悪くすると責任を問われることになるわけですから、では一体、裁判所の監督責任というのはどの程度のことをどれぐらいやればいいのかということになるわけですね。

 後見人による不法なお金の取り扱いなどの事件も時々報道されておるような状況にあります。それだけに、これからこういう問題の扱いについての基本をしっかりやっていく必要があるんじゃないだろうかということと、しっかりやるだけの体制をとるということも必要でございまして、人の配置とかいうようなことを含めて、この成年後見人についてどのようにお考えなのか、今の状況の問題点と監督責任ということについてお答えをいただければと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、成年後見関係事件の増加については、委員の御指摘のとおりでございます。

 その申し立て件数は、最高裁判所事務総局家庭局の実情調査の結果によりますと、平成二十五年には約三万五千件でございまして、十年前の平成十五年に約一万七千件であったのと比べますと大幅に増加をしております。これに応じまして、平成二十五年十二月末の時点で申し上げますと、成年後見制度を利用されている方々の数は約十七万七千人に達していて、これが毎年増加しているという状況にございます。

 これに対する対応でございますけれども、各家庭裁判所では、まずは、成年後見人等を選任する段階におきまして、その適格性の有無を厳格に審査しているところであります。これも委員の御指摘のとおりでございますけれども、具体的に申し上げますと、多額の金銭の管理を要する事案等につきましては、適切な財産管理が期待できる弁護士、司法書士等の専門職の方々を成年後見人等に選任しているものというふうに承知をしております。

 また、御本人の親族の方を成年後見人に選任する場合でありましても、御本人の預貯金等のうち、通常使用しないと思われる部分を信託銀行等に信託するという後見制度支援信託という仕組みを利用いたしまして、より適切な財産管理がされるように努めているというふうに承知をしております。

 その後の段階でございますけれども、成年後見人等に対する監督の段階では、これも委員の御指摘にございましたとおりでございますが、親族であるか専門職であるかを問わず、成年後見人等にその事務の状況を定期的に報告させまして、この報告等を通じて問題を発見したという場合には、必要に応じて、速やかに解任する等の適切な措置を講じるように努めているものと承知をしております。

 各家庭裁判所におきましては、これらの方策を活用して、成年後見人等を適切に監督していると承知しております。

 委員の御指摘のありました広島高等裁判所の判決も当然承知をしておるところでありまして、そうした点と、さらには、この事件数の増加、これもまた委員から御指摘をいただいた点、こういった点の状況を踏まえつつ、最高裁判所といたしましても、今後とも各家庭裁判所の適切な取り組みが進むように必要な支援をしてまいりたいというように考えております。

横路委員 弁護士会とか司法書士会とか、いろいろありますよね。それから、やはり地方自治体ですね。痴呆症の家庭がどこにあって、成年後見人が必要かどうかというようなことなどもよく事情を知っているということがあります。

 できれば、一つ、地域のそういう多いところでは、地域の連携をどうするかということも大変大事なことではないかというように思います。少年事件などについても、家裁の調査官とほかの少年院や何かとの連携というようなこともやっておられますので、裁判所は、そういう地域に出ていくというのはちょっとちゅうちょされるかもしれませんが、やはり、成年後見人の非常に多い、高齢者の多い地域についてはそういう対応も必要ではないかというように思います。

 それから、今お答えの中で、後見制度支援信託、これは確かにいい制度で、必要な現金は渡しておいて、基本的なところは信託しておくということなんですが、地方に行けば、そもそも信託銀行自体がないところもあるんですね。その場合に、ほかの地方銀行の活用ということなど、これを運用されることは非常にプラスだというように思いますので、そういう努力も少ししていただきたいということを最後にお尋ねいたしたいと思います。

奥野委員長 村田家庭局長。時間が来ていますから、簡単にお願いします。

村田最高裁判所長官代理者 まず、委員御指摘の、関係の団体あるいは自治体との連携でございますけれども、成年後見人等の重要な給源となります弁護士、司法書士等の専門職に関しましては、これまでも、日本弁護士連合会あるいは日本司法書士会連合会、さらには公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート等に対して必要な協力等を依頼するといったことをしておりまして、また、各家庭裁判所におきましても、各地の弁護士会等専門職団体に対しまして、適宜の機会を通じて協力を依頼しているところでございます。

 それから、自治体との関係でございますが、裁判所は司法機関でありますので、連携には当然限界があるところではありますけれども、そうはいいつつも、例えば、成年後見に限らず、家庭裁判所と関係自治体との間では関係機関として協議が行われておるところでございますので、成年後見に関しましても、市民後見に関する事項などについて意見交換されている例もあるというふうに承知をしております。

 また、後見制度支援信託に関しましては、その実施につきまして信託銀行等とも十分な情報提供等をしておりますので、今後とも、より適切な運用がされるように、必要な働きかけ、支援等をしていきたいというふうに考えております。

横路委員 ありがとうございました。終わります。

奥野委員長 次に、階猛君。

階委員 それでは、質問に入ります。

 きょうは、裁判官、検察官の給料についての法案なんですが、前提として、裁判官、検察官も広い意味では国家公務員ですから、国家公務員の総人件費管理方針についてお尋ねします。

 内閣人事局に来ていただいていますけれども、公務員制度改革の中で内閣法が改正されて、国家公務員の総人件費の基本方針の企画立案は内閣官房の事務となって、今来ていただいた内閣人事局が具体的な作業を行っているというふうに理解しております。

 そこで、その内閣人事局が中心となって作成されたであろう国家公務員の総人件費に関する基本方針、資料一をお配りしております。この基本方針についてお尋ねします。

 まず、一番最初に、「基本的考え方」ということで、(2)のところ、「総人件費の抑制を図る。」となっていますが、総人件費の抑制を図るということは、総人件費は減らすという意味で理解していいかどうか、この点、お尋ねします。

笹島政府参考人 お答え申し上げます。

 今お配りの資料は、ことしの七月二十五日に国家公務員の総人件費に関する基本方針として定めたものでございます。

 その中に、基本的な考え方として(1)から(4)があるわけでございますけれども、特にこの(2)で申し上げていることは、人件費というのは、年齢構成の高齢化というので非常に増要因があるわけでありますし、いろいろな行政ニーズの増もあるわけですけれども、そういった中で、そういった増加要素というのも考慮に入れつつ抑制を図っていくということでございます。

階委員 私の質問に答えてください。

 総人件費を減らすという意味ですか、これは。違うでしょう。今、図らずもおっしゃいましたけれども、高齢化などによって総人件費がふえつつあるので、その「増加を抑制する」ですからね。つまり、ふえる中でふえ幅をなるべく抑制しましょうということを言っているわけで、総人件費自体はふえるんでしょう。端的にお答えください。

笹島政府参考人 人件費につきましてはいろいろな要素があるわけでございまして……(階委員「端的にお答えください」と呼ぶ)はい。給与の面、それから定員の面、いろいろな要素で決まってくるわけでございまして、その中で、当然、例えば人勧尊重という観点で、人勧がマイナスとなればマイナスになることもあります。あるいは、定員の純減ということが達成されれば、それはそれで減の要素になってくるわけで、そういったものをいろいろ組み合わせながら人件費の抑制を図っていくということでございます。(階委員「答えていない」と呼ぶ)

奥野委員長 ちょっと、笹島統括官、質問に対して答えてください。僕が聞いていても、何を答えているんだ、こう思うよ。

 要するに、増加を抑制すると言っているのか、抑制すると言っているのか、どっちなんだと言っているんだから、そのまま単純に答えてください。

笹島政府参考人 私が申し上げていますのは、増加要素を考えながら抑制を図ることによって、結果的に抑制が図られるということもあるということを申し上げているところでございます。(階委員「だから、端的に答えてください。減らすかどうかということを言っているんですよ」と呼ぶ)

奥野委員長 階君。

階委員 増加を抑制するというのは、文理上は、増加するけれども増加幅をなるべく圧縮するというふうに読めるわけですよ。だから、私は、総人件費を減らすということは言っていないんじゃないか、総人件費はふえるけれども、ふえ幅をなるべく圧縮しようということを言っているんじゃないかと言っているんです。

 端的にイエスかノーかで結構ですので、お答えください。

笹島政府参考人 ここで申し上げているのは、総人件費をネットでマイナスにするということを直接的に申し上げているわけではございません。

階委員 最初からそう言えばいいんですよ。

 それで、問題は、それが基本方針という名に値するかどうかですよ。基本方針というんだったら、まず具体的に、ふやすのか減らすのか、そしてふやすにしても減らすにしても、どの程度ふやすか減らすか、このあたりが、普通の人がこれを読んだ場合に、ふやすか減らすかも全くわからないじゃないですか。皆さんの職責を果たしていないですよ。

 その上で、きょうは最高裁にも来ていただいていますけれども、この中途半端な基本方針を最高裁は紙で押しつけられていますね。

 きのういただいたんですけれども、七月二十五日に、内閣官房長官から最高裁判所事務総長宛てに、

  本日、「国家公務員の総人件費に関する基本方針」を別紙一のとおり閣議決定いたしましたので、送付いたします。

  また、本日、「国の行政組織の機構・定員管理に関する方針」についても、別紙二のとおり閣議決定いたしましたので、御協力願いたく参考までに送付いたします。

こういう文面です。

 後段の定員の方はきょうは割愛しますけれども、今議論してきました国家公務員の総人件費に関する基本方針、これを送られたところで、最高裁も何を言っているんだかわからないんじゃないですか。最高裁、どうですか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所におきまして、先ほど委員御指摘の形で政府から総人件費の基本方針について協力を要請されたということでございますので、総人件費の抑制に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 具体的に申し上げますと、裁判所は行政機関ではございませんので、政府の方針に直ちに拘束をされるというものではございませんけれども、国家の機関の一つといたしまして、他の行政官庁と同様に、事務の効率化等の必要な内部努力をすることで定員の合理化を行うとともに、職員が働きやすい環境の整備あるいは業務運営の見直しなど、働き方の見直しを推進することによりまして、人件費の生み出す価値を高めるように努めているところでございます。

 裁判所といたしましては、このような取り組みを通じまして、引き続き人件費の抑制に協力してまいりたいと考えております。

階委員 そういうやりとりを踏まえて、法務大臣、今回の法律を所管されていますし、また、国務大臣でもありますから、このような総人件費管理のあり方でいいのかどうか。

 二つ問題があると思います。一つは、まず、内閣人事局が明確な具体的な方針を示していないという点。それから、今御答弁にあったように、最高裁について仮に明確な方針が出されたとしても、拘束はされない。今、国家財政が厳しい中で、裁判所といえども、やはり総人件費というのは、国全体の方針にのっとって、削減するのであれば削減していくというのが私は正しいあり方だと思います。

 今申し上げた二つの点について、大臣の御見解をお願いいたします。

上川国務大臣 御質問の二点ということでございます。

 内閣人事局の明確な方針を示していないということでございますが、やはり国民の皆様にとって、国家公務員の人件費も含めまして、国家財政が大変厳しいということについて、また同時に、経済の状況も厳しい中でさまざまな御負担もお願いしているという状況でございますので、まさに、そのことを実践していく上でも、国家公務員の人件費も含めた部分につきましては、基本方針で明確に、総人件費の抑制を図るということが結果的にできるようにしていくということが非常に大事ではないかというふうに思います。

 最高裁につきましての方針ということでありますが、先ほど、拘束はしないという御指摘がございました。拘束をしないけれども、それに対して配慮しつつ、そういう位置づけであるというふうに思います。まさに、最高裁の自律的な運営ということにつきまして、そうした視点を十分に生かして独立した見解で決定していただくということが肝要かと思います。

階委員 大臣も今言われたように、国家財政が厳しい中ですから、中途半端な基本方針を立てている場合じゃないと思いますので、ぜひその点は積極的な取り組みをお願いいたします。

 その上で、今回の法案についてやや具体的な中身に入っていきますけれども、この法案の白表紙の資料に、最初の方を見ますと、法律案の提案理由の説明というところで、二段落目に「これらの法律案は、政府において、人事院勧告の趣旨に鑑み、」云々かんぬんということで、「裁判官及び検察官についても、一般の政府職員の例に準じて、その給与を改定する措置を講じようとするもの」であるというくだりがございます。

 この中で私がひっかかっているのは二つです。

 まず一点目、「人事院勧告の趣旨に鑑み、」というのはどのような意味でしょうか。大臣、お答えをお願いできますか。

上川国務大臣 今、人事院勧告が出されたということでございます。これは、一般職の国家公務員の給与に関するということで規定をされているものでありまして、この重要性は、先ほど委員御指摘のように、大事にしていかなければいけない。しかも、それについては、基本的なところにしっかりと、先ほどの(2)につきましてもしっかりしなきゃいけないということでありますが……(階委員「済みません、さっきのは人事院勧告とは違いますよ。総人件費の基本方針の話です」と呼ぶ)失礼しました。

 人事院勧告の重要性ということにつきまして、この人事院勧告は、一般国家公務員の給与に関するものであるということでございますが、裁判官及び検察官につきましては、職務と責任の特殊性ということでございまして、これを給与に反映させようとするものでございます。そういう意味で、相当の合理性の中で、今のような視点で取り組んでいくということが求められているというふうに思います。

 失礼しました。

階委員 最後、時間がなくなったので、ちょっと前半のところで時間がとられ過ぎたので、内閣人事局には厳しく注意しておきますが、私の問題意識だけ最後に言わせてください。

 一つは、「人事院勧告の趣旨に鑑み、」というのは、従来は、要は、労働基本権の代償措置であるので人事院の意見は大事にしなさいよという意味だったと思うんですが、裁判官、検察官は労働基本権がそもそもないのではないか、そうすると、人事院勧告の趣旨を鑑みる前提を欠くのではないかという問題意識が一つです。

 それから、先ほど引用した中で、「一般の政府職員の例に準じて、」と言っていますけれども、裁判官がなぜ一般の職員の例に準じなくちゃいけないのか。例に準じるのであれば、同じ法曹である弁護士の今の状況を鑑みて決めるべきではないか。

 つまり、弁護士は今、法曹養成の失敗などもあって、増員したけれども仕事がなくて、給料というか報酬が下がっている中で、そちらを考えていかないと、優秀な人はますます、弁護士から裁判官、検察官、給料がうんと高ければそういうふうになっていくので、裁判官、検察官と弁護士の報酬というのは、なるべく格差を縮めるようにしていかないと今後厳しいのではないかという問題意識でした。

 時間がなくなったので、きょうは終わります。また機会があれば御質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、高橋みほ君。

高橋(み)委員 維新の党の衆議院議員、高橋みほでございます。

 本日は、私、公務員の労働基本権の制限というところについて、まずは質問をさせていただきたいと思っております。

 もともと、憲法二十八条では、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と明記されておりまして、もちろん、この「勤労者」に公務員が入らない、除くというような憲法上の条文、条項はないわけでございます。しかしながら、現在では、公務員に対しましては労働基本権が制限されている。

 それで、私が思うに、こういうような法律できちんと、財政民主主義の観点から、裁判官と検察官の給料に関しまして私たちが検討をするということは間違ってはいないと思うんですけれども、しかしながら、やはり、一方的に国会などで決められる給与ではなく、裁判官の方や公務員の方の意見なりをきちんと、労働基本権の一環として認めて交渉することも可能だというふうにこれからはすべきではないかというような考えを持っております。

 一方的に国会が決めてしまうというのは、もちろん人事院の勧告を受けてということだとは思うのですけれども、そもそも、二十八条の「勤労者」には公務員が入ると考えるべきと私は考えますので、この点につきましていかがお考えか、ちょっと通告の順序は変わるかもしれないんですけれども、まず、公務員一般ということにつきまして、上川大臣からお伺いできればと思います。いかがでしょうか。

奥野委員長 先に事務方がやった方がよくないですか。(高橋(み)委員「裁判官について最高裁の方に伺うという話なので」と呼ぶ)

 最初に事務方がやって、最後に上川さんに聞いた方がいいんじゃないですか。(高橋(み)委員「上川大臣にお願いしたいとお願いをしてありますので」と呼ぶ)

 では、上川法務大臣。

上川国務大臣 御指摘がございました、公務員のことについての御質問でございましたけれども、一般の国家公務員の労働基本権の制限の部分につきましては、私自身はお答えをする立場にないということでございます。

 ただ、検察官につきましては、先ほどの憲法の二十八条というところに照らしまして、そして国家公務員法ということで、団結権、そして協約締結権を除く団体交渉権は認められているということでありますが、協約締結権と争議権ということについては認められていない、こういう状況の中で取り組んでいるということであります。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 前々大臣、前に私がよく討論させていただいた谷垣大臣は、もちろん、御自分の所管ではないということを言われつつも、御自身の所見を述べていただいて、かなりおもしろい討論といいますか、内容が深められる討論になるんじゃないかなと私は思っておりました。

 職務の範囲外になるとお考えなのかもしれないんですけれども、一応ここは法律の基本というところ、憲法の話でありますので、本当はお話ししていただければと思っております。

 それでは、裁判官について、最高裁の方から御意見を伺えればと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 これまで我が国におきまして、裁判官の労働基本権が問題となった事例がございません。この点は、法令の解釈にかかわる事柄でございますので、私どもの立場から意見を述べさせていただくことは差し控えさせていただきたいところでございます。

 従来から、裁判官につきましては、憲法によって、報酬、身分について強い保障を受けておりますとともに、職務の執行についてもその独立性が強く保障されているところでございまして、一般の勤労者のように、使用者と対等の立場に立って経済的地位の向上や労働条件の改善を図る必要性がないといった理由から、裁判官につきましては、労働組合を結成し、またはこれに加盟する権利は認められないというふうに理解されてきたものと承知しているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 もちろん、今はそういうふうに考えていらっしゃるのかもしれませんけれども、裁判官は定期に相当額の報酬を受けると憲法上決まっておりますので、むやみに下げるということはもちろんあり得ないとは思いますけれども、だんだん、この御時世で下げていく。それなら、裁判官の方たちも、やはり一応争議をしたい、交渉をしたいというふうに考えられないとも限らないと私は思っております。

 やはり、今保障をきちんと受けているから、二十八条、勤労者の労働基本権が認められないという論理には私はならないのではないかと思っております。まず、これは私の問題提起ということで捉えていただければ結構だと思います。

 次に、今回の法案に関しまして質問に入るんですけれども、私がこの法律案を拝見したときに特に思ったのが、先ほどの誰かの御質問にも出ていたんですけれども、そもそも民間と給与をそろえていく必要があるのかというところで根本的に疑問を感じました。

 もちろん、私が思うには、司法権の独立というものはすごく重いものであって、職務執行もきちんと独立してやっていかなければいけない。だからというか、全然因果関係がなく、民間と給料をそろえていくような一般の公務員の方に準じて裁判官の方の給与を上下させていくというのは、論理矛盾ではないかと思います。

 そしてまた、民間と給与を、一般の公務員に準じてということなんでしょうけれども、普通、民間の方というのは、業績が上がればもちろん給料は上がる、下がれば下がっていく、特にひどかったら倒産するという危険もあるわけですけれども、これは、民間の平均というか統計によってということになっております。

 そうすると、裁判官や検察官の人たちの業績を民間の方たちの業績のように上下させるというのか連動させていくというのがそもそも論理的におかしいんじゃないかと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか、大臣、お願いいたします。

上川国務大臣 裁判官そして検察官の給与の件でございますけれども、あくまで人事院勧告を受けて行われるわけでございますが、やはり、裁判官と検察官、この職務の特殊性をしっかりと反映させるということ、これが大変大事だというふうに思っています。

 つまり、バランスをしっかりと維持していくという観点でございまして、そういう観点から、一般職の国家公務員の給与に関する、民間準拠という規定に基づいて決定された人事院勧告を尊重する、こういうことによりまして、給与体系改定の方法として、バランスのとれた改定というふうな意味で、合理的であるというふうに考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 裁判官のお仕事というのは本当に重要なお仕事であって、やはり、職務内容としても大変なんだな、検察官の方もそうだとは思っているんですけれども、職務の充実などを図っていくというようなことで、公務員の一般職の方に準じていく、そしてまたそれは民間の人に準じていくというのは、やはり全然論理的な関係がないんじゃないかと私は思っております。

 司法権はそれだけ独立していなければいけないものであって、どのくらいの対価をお支払いするかというのは、一般の公務員の方に準ずるということは絶対にどう考えてもあり得ないことですし、それがまた民間の人たちとも連動していくというのもやはり論理的には全くおかしい話なんじゃないかなと思います。

 ですから、今回のこの法律というのは、論理的に少しおかしなところが根本的にあるのだと思っております。

 もちろん、今までの、一般の公務員の方たちが民間会社と比べて勧告を受けるという流れになっていると思うんですけれども、まずそれを認めるとしても、私は、比較する民間会社の事業規模が大き過ぎるのではないかという印象を持っております。

 この比較対象というのが、企業規模が五十人以上かつ事業所規模が五十人以上の全国の民間事業所約五万五千から無作為の抽出法によって抽出した一万二千四百の事業所を対象にした、平成二十六年職種別民間給与実態調査からということなんですけれども、五十人以上の人数がいて、事業所規模が五十人以上ということは、私の感覚からするとかなり大きい会社であって、民間の企業は、もっと本当に小さい、五人とか十人、十五人ぐらいの会社などが、中小企業、それも随分小さい企業などが日本全国で多いことを考えますと、民間と比較してということでも、民間の事業規模が大き過ぎて、結局、一般の人の感覚から離れた公務員の給与の査定方法になってしまっているんじゃないかというような危惧がございますが、この点、いかが考えるのか、人事院の方からお願いいたします。

古屋政府参考人 お答えいたします。

 この規模の問題に関しましては、過去いろいろ議論がございまして、平成十八年の勧告におきまして、民間給与をより広く把握し、国家公務員の給与に反映させるということで、比較対象となる企業規模を、それまでの百人以上から五十人以上に改めたところでございます。

 今御質問の、五十人以上とした理由ということでございますが、その当時、専門家も集めながらいろいろ検討させていただきましたが、企業規模五十人以上の民間企業ということであれば、多くの民間企業におきましては、公務と同等の役職段階、部長でありますとか課長でありますとか係長、こういうものを有しているということから、公務と同種同等の者同士による比較が可能であるということでございます。

 それからまた、五十人以上の民間企業であれば、これまでどおりの精緻な実地調査による官民比較の対応ということが可能になってくるということでありまして、調査の精確性を維持することができるということによりまして、現在五十人以上ということでありますし、今後とも、その五十人というのが適切ではないかというふうに考えているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 ただ、十八年に、百人から五十人の規模に下げたということなんですよね。ということは、かなり恣意的に、考えたら、規模を策定する制限を、ラインを引くということが可能じゃないのかなというような印象がございます。

 確かに、余りにも小さい会社まで比較するとなると、部下もいない、一人で働いていたりする人たちが、個人個人で、同等の地位で働いているという方が多くなって、公務員の方と比較検討するというのはなかなか難しくなるとは思うんですけれども、やはりこの趣旨というのは、民間の人の給料から余りにも公務員がたくさん、高くもらってはいけない、そういう理想というのか目的があると私は思います。

 それを考えると、本当に職務だけを比較して、ほかの日本の国民の方が本当に小さな会社で頑張っているのに、私たちの職務はある程度部下もいて上司もいてという仕事なんだから大きな企業としか比較できないというのは、国民の皆様から見て、国民感情から見て、やはり公務員はお金をもらい過ぎているというような印象があるかと思います。

 一般に、現在、給料がどのくらいか、本当に小さい企業も含めてきちんとした統計をとって、一般的にはこのくらいもらっているんだけれども公務員は幾らもらっているというような比較をしないと、一般の人の、国民の目線から見ますと、公務員は給料が高いという印象で受け取られてしまうかと思うんですけれども、この点、大臣、いかがお思いでしょうか。感想で結構です。

上川国務大臣 先ほど人事院の方から答弁があったことでありますが、平成十八年の人事院勧告、これが規定されまして、調査対象の企業規模を百人以上から五十人以上に改定し、調査対象を企業規模五十人以上そして事業所規模五十人以上とした、こういうルールを決めたということであります。それにのっとって今ずっと毎年改定をされているということでありますので、今御指摘のようなことにつきましては、また新たなルールづくりということにかかわってくるということであります。

 十八年のときにも、専門家で検討をした上でこうしたルールづくりがなされたというふうに思っておりまして、むしろ、そうしたルールにしっかりとのっとって、その趣旨を生かして適正にしていくということが、今やるべきことではないかというふうに思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 ただ、本当にこの五十人規模以下の日本国民の勤労者の方が、きちんとこれと比較するように表があって、きちんと調べてあって、このくらいなんだけれどもというような資料というのは、実はきちんとした資料がないと伺っております。この五十人規模以上の方たちの資料は精密にある、ただそれ以外はアバウトにしかとっていないというようなイメージなので、それはちょっとまずいんじゃないかなと私は思っております。

 実際に、本当に全国民の勤労者の平均をとって、平均はここである、五十人以上の平均はここである、でも公務員はここであるというふうにきちんとお示しした方が、私は国民の皆様の理解が得られるのではないかと思いますので、ぜひその点もきちんと調べていただいて、資料として公表していただければありがたいと思っておりますので、その点、よろしくお願いいたします。

 次に行きまして、私は、検察官や裁判官の給与が実は高いのか低いのかというのがよくわかりませんでした。日本人のイメージは、ある程度もらっているのかなというようなイメージがあると思うのですけれども、では、諸外国の裁判官や検察官の給与というのはどのくらいのものなのか、一般の公務員の皆さんに比べて高いのか低いのか、民間の人たちに比べて高いのか低いのかというのが全くわからなかったものですから、その点、ちょっと御質問させていただければと思います。最高裁の方からお願いします。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 我が国の司法制度と諸外国の司法制度は同じでなく違うところもあるわけでございまして、あるいは、諸外国におきます行政官あるいは民間の給与水準の違いといったようなところもございます。そのあたり、詳細わからないところもあるわけでございますが、そういう意味では、一概に諸外国の裁判官の報酬について我が国の裁判官の報酬と比較するというのはなかなか難しいところでございますけれども、手元に一応昨年の資料がございますので一例を申し上げますと、アメリカの連邦地方裁判所第一審の裁判官の報酬月額は、昨日の為替レートで換算いたしますと、約百六十五万円というふうになっていると承知しております。

 ただ、先ほど述べましたような、いろいろ難しい事情があることに加えまして、為替レートの変動の問題等もございますので、我が国の裁判官と外国の裁判官の比較というのはなかなか難しいところでございますけれども、少なくとも、我が国の裁判官の報酬の水準が、諸外国の裁判官の報酬水準と比較して、著しく高いとかあるいは逆に著しく低いというようなことはないのではないかというふうに理解しているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 検察官の方をお尋ねしたいと思います。お願いします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 検察官の給与につきましては、従来から一般の政府職員の給与改定に準じて改定してきているところでございまして、諸外国の検察官の具体的な給与水準につきましては、現時点では把握しておりません。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 現時点では把握していないということなんですけれども、簡単なところでいいのでぜひちょっと調べていただければ、日本の検察官がもらい過ぎなのか、もらい過ぎじゃないのかというところの理解も深まるのではないかと思っております。

 実は、この点を調べましたところ、昭和六十三年十二月二十日の衆議院の法務委員会で、桜井最高裁判所長官代理者が、安倍委員の、外国の裁判官の報酬と民間の比較という質問に対しまして、「民間との関係という点につきましては、今後また資料の調査をさせていただきたいと思っております。」と述べられております。

 随分古い話ではあるんですけれども、諸外国に関しまして、例えば民間の比較をちょっと調べてみたいというようなことを法務委員会で述べられているので、ぜひ、細かくは要らないとは思うんですけれども、実際、諸外国の裁判官と諸外国の民間との比較とか一般公務員との比較というものもたまには精査していただければと思っております。これは要望として聞いていただければと思います。

 次に、先ほどの方の質問にもあったんですけれども、地域手当について質問をさせていただきたいと思います。

 私の、地域手当というイメージをちょっと申し上げたいんですけれども、地域手当といいますと、例えば、東京は地価が高いので、一般の住宅を借りたり買ったりするときは高いから、東京の場合はお金を少し乗っけようというようなイメージがあります。そういうことを考えますと、地方と東京とか都会との格差がある地域手当をつけるということは、一定の合理性はあるかと思います。

 しかし、きょうお配りした資料を見ていただきたいんです。

 二枚目の方になるんですけれども、給与制度の総合的見直しによる改正案をつけさせていただいたんです。例えば、一番上の最高裁長官の地域手当というのは、三十六万一千六百二十円という案になっております。東京にいるのか田舎にいるのかということ、田舎のところに勤めているかということで、最高裁の長官で地域手当が三十六万一千六百二十円つくのはちょっと多過ぎじゃないかなという印象がございます。

 これは、もちろん、それだけ東京と他の地方の物価が変わるとは、どう考えても私は思えないんですね。普通、食べるものというのは、豪華なものを食べるかもしれないですけれども、やはりある程度、食費とかはそれほど日本全国余り変わらない。東京などは、例えば交通費は、地下鉄など、ほかの地域よりもかなり安く設定されていると思っております。

 そういうふうに考えますと、今までの給与制度の地域手当というのは、報酬などにパーセンテージを掛けて算定することになっているんですけれども、そうすると、当然、報酬が高い人の地域手当が莫大に高くなってしまうという問題点があるかと思います。

 ですから、地域手当というならば、一定のお金、例えば五万円なり十万円なりを上乗せするという方法で出した方が、地域手当という観点からは妥当だと思うのですけれども、この点、いかがでしょうか、人事院の方にお尋ねいたします。

古屋政府参考人 お答えいたします。

 一般職給与法におけます地域手当というのは、全国一律に定めている俸給表、基本給でございますが、これを補完するということで、その趣旨としては、地域の民間給与の水準をより的確に反映させるということでございます。

 具体的に、その地域ごとに算出されました民間賃金指数、全国を一〇〇にして決めておるわけでございますが、この民間賃金指数に応じて支給地域、支給割合を定めるということにしておりますので、級地区分ごとの民間賃金指数に応じた支給割合ということになっているところでございます。

高橋(み)委員 民間給与は東京にいらっしゃる方は高いから、高くてもいいんだという理屈だとは思うんですけれども、やはり、日本全国どこに行っても、裁判所の方というのは同じように一生懸命働いていて、東京にいるからといって、東京の民間の方が給与が高いからといって地域手当を莫大にくっつけてしまうというのは、やはり制度そのものの見直しをしてもいいんじゃないかと私は思っております。

 また、地域区分についても、やはりかなり問題点があるのではないかと思っております。

 お配りした資料の一枚目なんですけれども、支給地域一覧というのを見ていただきたいんですけれども、見直し後の一五%のところに、わかりやすいところで高槻市と西宮市がございます。ここに、よく言う、お金持ちが住むというので有名な芦屋も、人口三十万人以上ではないんですけれども、入るそうです。

 ただ、それを見てみますと、では、高槻市の隣、茨木市はどこに入るんだろうと思いますと、今度の見直し後、一〇%のところに入るということになります。高槻市と茨城市、すごく近くて、同じようなイメージがあるところなのに、一五%と一〇%と違ってしまう。かなり大きいなというようなイメージがございます。

 そしてまた、高槻と西宮、芦屋は一五%なのに、神戸はなぜか一二%。これも、普通の人の印象といいますか、これで変わるというのはやはり納得できないところではないかなと思っております。

 ですから、もう少し広範囲に、例えば都道府県で一つの支給地域にするとか、改善の余地がかなりあるのではないかと思っておりますが、この点、いかがでしょうか。

古屋政府参考人 お答えいたします。

 一般職給与法におけます地域手当の支給地域、支給割合につきましては、これは職員を含む関係者の多くの理解を得るために、統一的な基準によりまして、信頼できる統計調査を用いて算出した客観的なデータに基づいて定めるということを原則としてまいっております。

 具体的には、民間賃金水準を都市ごとに集計でき、そのサンプル数が多い賃金構造基本統計調査の結果を用いているところでございます。

 この指定基準を満たさない地域のうち、支給地域である中核的な都市への通勤者が多く、これらの地域との一体性が認められる地域については、一定の補正を行うということで行っております。

 いずれにしましても、地域の線引きということでございますので、客観的な数字を用いて行う以上、隣の地域が異なってくるということは、ある意味やむを得ないところもあろうかというふうには考えております。

高橋(み)委員 客観的な資料に基づいて精査しているという話なんですけれども、その客観的な線引きの枠組み自体が私はおかしいのではないかと思っております。茨木市とか高槻市など、本当にくっついているところなのにそういう結果が出るということは、やはりもともとそのサンプルをとったところ自身が間違っていて、ある程度、何といっても生活圏なり都市機能、その機能を一律に見て結果を出さないと、そこが給料が高いかどうかというところがかなり変わってきてしまうと思いますので、この地域手当というのは見直しの余地がかなりあるのではないかと思っております。

 ちょっと時間もないので次に行かせていただきたいんですけれども、超過勤務手当と休日給についてお尋ねしたいと思います。

 裁判官の方には超過勤務手当とか休日給というものがないと伺っております。ただ、私の印象では、裁判官の方は、すごく一生懸命、夜遅くまで働いていたりするというようなイメージがございます。それにもかかわらず、超過勤務手当とか休日給がないというのは、働き過ぎを招いてしまったり、体を壊してしまったりとか、いろいろ問題が出てくるのではないかと思っているんです。

 実際に、どのくらい実は超過勤務なりをしているかというような把握はされているのか、具体的統計をとっているのかなどを教えていただければと思います。最高裁の方にお願いいたします。

堀田最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、超過勤務手当あるいは休日給につきましては、裁判官には支給されないということになってございますが、これは、事件の適正迅速な取り扱いのために、夜間あるいは休日など一般職員の勤務時間外においてもこれに対処をするということが要求される場合も少なくないという裁判官の職務の特殊性ということから、裁判官には一般の公務員と同様の勤務時間を観念することは困難ということでございます。このような裁判官の職務の特殊性を踏まえまして、時間外手当的な要素も考慮した上で報酬額が設定されているというふうに理解をしております。

 裁判官の繁忙状況につきましては、一般的に申し上げれば、裁判官は相当に繁忙であるというふうに認識をしておりますけれども、具体的に各裁判官がどれぐらいの時間働いているのかということにつきましては、先ほど申し上げましたような職務の形態の特殊性ということもございまして、統計はとっていないところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 確かに裁判官の方は特殊だとは思うのですけれども、一般に考えたとき、仕事が早い人もいれば遅い人もいたりして、ただ、遅い人がそれなりに超過勤務をしてしまったら、それなりにやはり超過勤務手当がつくというようなのが一般だと思います。

 そして、勤務時間が長いということも、統計をとっていらっしゃらないということなんですけれども、そういうことを聞きますと、例えば、今、安倍総理が進めている女性が活躍する社会をつくっていくという点でも、女性の働き方ということにも、やはり、余り長時間働かせると支障が出てくるんじゃないかと思っておりますので、一度、本当はどのくらい実際に働いているかというのをぜひサンプルなりでも統計をとって、女性の働き方に対しても配慮がなされているのかということをちょっと示していただければありがたいと思っております。

 最後になるんですけれども、裁判官と検察官の人事評価についてお伺いしたいと思います。

 裁判官の方は、事件処理能力、部などを適切に運営する能力、裁判官としての職務を行う上で必要な一般的資質、能力という三項目で人事評価をすると伺っております。ただし、働き始めてから二十年までは、同期ならば同じに上がっていく。つまり、評価をされたとしても、二十年間は給与には影響はないというようなことを伺っております。

 これにつきまして、普通、働き始めてから二十年、一般企業的に言いますと、できる人とできない人の差がもうはっきりわかっていて、給与にも反映しなければいけない時期だと思うんです。二十年は皆同じ給料というのは少し納得がいかないと思うんですけれども、この点、いかがお考えなのか、最高裁の方にお伺いします。

堀田最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、裁判官の昇給の運用に当たりましては、裁判官に任官いたしました後約二十年の間は、同期がおおむね同時期に昇給をするという運用を行っているところでございます。

 これは、裁判官の職権行使の独立を給与面から担保する必要があること、あるいは、全国均質の裁判を実現するため、全国のさまざまな裁判所に異動して職権行使をするという職務の特殊性などを考慮してのものでございます。

 その一方で、任官後約二十年を過ぎました後は、当該裁判官の経験年数のほか、ポスト、勤務状況等を考慮いたしまして報酬を決定しているところでございます。

 これは、任官後約二十年を過ぎてまいりますと、地家裁や高裁の裁判長あるいは地家裁の所長などのポストとの関係で、経験年数や力量といった各裁判官の個別的な要素が考慮要素として大きくなるという面がある一方で、先ほど委員からも御紹介いただきました人事評価、長い期間の評価の積み重ねによって、おのずと各裁判官の評価が定着してくるという面があることから、このような運用をしているところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 ただ、今の説明はちょっと問題だと思うのは、二十年以内は職権行使の独立性を担保するために一律にするとおっしゃっていたんですけれども、では、二十年以降は職権行使の独立性を担保しなくてもいいかという、ちょっと疑問な点がある御答弁だったと思います。

 もちろん、一般の普通の会社のように、幾ら車が売れたからとかというような話で業績を判断するというのはやはり難しいとは思うんですけれども、同期で二十年間全く給料が変わらないというのは、やはり国民感情としていかがなものかと考えるところもございますので、この点、少し期間を短くするとか、上げるとか、少し考えてもいい時期に来ているのじゃないかと私は思いました。

 以上でございます。時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、西田譲君。

西田委員 次世代の党の西田譲です。本日もよろしくお願いを申し上げます。

 さて、きょうは、裁判官の給与ということでございまして、これは憲法第七十九条あるいは八十条で、相当額を支給するというふうに明記されておりますし、また、検察官にあっては、準司法官的な立場ということも踏まえ、裁判官に準拠するということで決められているわけであります。

 では、この相当額とは何ぞやといったときに、何をもって相当とするかとお聞きしましたら、調査室がつくりました資料によりますと、裁判官の地位にふさわしい生活をなし得る額というふうになっているようでございます。実際はどうかといいますと、一般職の国家公務員の、概略的に言うと大体二割増ということで、この六十数余年、運用がなされておるようでございます。

 では、この二割が相当か、一般職公務員よりも大まかに言って二割多いことをもって裁判官の地位にふさわしいのかといったことを議論していきますと、なかなか判断をする尺度というものがないわけでございます。

 よって、長年運用しているから、もうこれでよしとするところが一番妥当なことなのかなというふうには思うわけでございます。

 一方で、先ほども質問が出ましたけれども、では、人事評価といったものはきちんとなされているのか。

 これは、裁判官、検察官に限らず、公務員の方は、何か頑張って仕事をして、そして何か大いなる結果を残したからといって、ボーナスが出たり、たくさん報酬をもらえるわけではないわけでございますから、経済的動機づけがない中でその職責を果たしていかなきゃいけないという状況にあるわけでございます。そういったことを考えれば、やはりこの人事評価といったもののあり方というのは非常に大切なんだろうなというふうに思います。

 そういったことにあって、今、両者にお聞きします。裁判官、そして検察官の人事評価といったものについての状況、そして評価をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判官の人事評価でございますが、平成十六年四月以降、最高裁判所の規則に基づいて実施をしてきているところでございます。その目的は、裁判官の公正な人事の基礎とするとともに、裁判官の能力の主体的な向上に資するというところにございます。

 この人事評価制度でございますが、評価権者を明示する、あるいは評価基準を明確化するというようなことをいたしました上で、外部情報等も考慮いたしました上で、人事評価の透明性、客観性を高めますとともに、裁判官が職務の状況に関する書面の提出をするという仕組みを設けましたり、評価権者と裁判官との面談、それから評価書の開示、不服申し出の制度等を整備いたしまして、いわば対話型の人事評価を実現するという形をとっております。こういう評価制度を通じまして、裁判官の自己研さんにも資することができているのではないかというふうに評価しているところでございます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 検察官の人事評価につきましては、ほかの一般職の国家公務員と同様、平成二十一年四月一日に施行されました改正国家公務員法の人事評価制度に関する規定の適用がございます。

 各検察官の捜査、公判能力、管理者としての能力、執務姿勢等を総合的に勘案いたしまして、能力評価と業績評価が実施されているものでございます。

西田委員 人事評価ですから、これはやはり客観性と透明性が非常に大切な考え方だと思いますので、ぜひとも留意をしていただきたいと思うのと同時に、やはり、裁判官の方々にせよ検察官の方々にせよ、いわゆるエリート、優等生であるわけでございまして、優等生の特徴というのは、非常に上昇志向が強いところでございますよね。

 いわゆる官僚的な裁判官、官僚的な検察官、組織のためにそつなく仕事をこなしていく、あるいは国会対応が上手だとか、そういったことをもって評価が偏ったりするようなことがないかとか、あるいは、仕事が多いわけですから、事件処理件数、今月は何件処理したとか、機械的にこなすことが上手な人ばかりが評価されて、一つの事件に真摯に誠実に向かい合っていくような、生涯一裁判官のような、そういった方々が余り評価の対象になっていないとか、あるいは、やはり組織は組織ですから、自分の意見をしっかりと持ってこれを主張していくような学者風の裁判官が何か居心地が悪かったりするとか、やはりそういったことがあってはいけないんだというふうに思うんですね。

 組織で人事評価するんですけれども、組織のための人事評価に決してならないように、ぜひ留意をしていただきたいというふうに思うわけでございますが、こういったことを考えたときに、それでは、いわゆる優秀な裁判官、優秀な検察官、裁判官のかがみ、検察官のかがみといったのはどういったイメージをお持ちなのか、それぞれお聞きしたいと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 あるべき裁判官像というものを一般的に議論するのはなかなか難しいところでございます。裁判官のあるべき姿については、さまざまな観点というのがあるところかと存じます。

 そういう意味では、一概になかなか申し上げられないところでございますが、裁判官の人事評価制度を設けておりますので、その評価項目とされている資質、能力という観点を手がかりにして、少し申し上げたいと思うのでございます。

 まず、裁判官の基本的な職責は、具体的な事件において、事実を認定して、法令を解釈、適用し、当該事件を適正迅速、公正妥当に解決するというところにございます。したがいまして、裁判官には、その必要な能力の一つとして、具体的な事件において適正迅速に判断を形成するための法的な判断能力が求められるということになります。

 具体的には、法的な知識あるいは法的な問題についての理解力、証拠を適切に評価する能力、そういった、みずからの法的な判断を適切に表現する能力などが必要になってくることになります。

 そして、このような能力でございますけれども、これは専ら、解決した事件の件数というような量的な基準ではかられるというものではございませんし、また判決の結論がどうだったかということそのものによって左右されるものでもないというふうに考えております。裁判官の職務は、十分な準備に基づいて審理の適切な進行を図りまして、事件に対する正確な認識の上に立って、法と健全な常識に従って公平に事件を解決するというところにございますので、評価の対象となりますものは、そういった全てのプロセスになろうかというふうに考えております。

 また、裁判所に持ち込まれる事件が複雑化、多様化しております。そういった中で、裁判官が個々の具体的な事件について適正に判断を形成するためには、幅広い教養に支えられた視野の広さ、あるいは人間性に対する洞察力などが必要になってまいります。また、裁判官としての廉直さ、公平さ、良心と憲法、法律のみに従って毅然として判断を行うというための決断力等も必要になってまいりまして、そういった一般的な資質も必要かと、そういうふうに考えているところでございます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 検察官の人事評価の観点から申し上げますと、人事評価は、捜査、公判能力、管理能力、執務姿勢等を総合的に勘案して実施しております。

 例えば、捜査、公判能力の観点では、捜査処理の組み立て、手順、あるいは被害者等関係者への対応を適切に行うことができるかといった点も含めた事件処理能力、そしてまた、管理監督能力といたしましては、例えば部下職員を適切に指揮することができるかといったような観点、また、執務姿勢等といたしましては、自己の職責を十分に把握した上で責任ある事務処理を行うことができるかといったような点、こういったようなことに秀でているかといった観点から評価をしております。

 したがいまして、そういった観点ですぐれている人が優秀な検察官と言えるのではないかと思っております。

西田委員 ありがとうございます。

 それぞれの御答弁をお聞きしておりまして、本当に聖人君子のような、そういった方が果たしているのかというような印象を持つんですけれども、だからといって、これは決して諦めてはいけないことだと思うんですね。

 我々政治家もそうなんですが、常に自問自答を続けていく、自分はよき政治家であるのか、有権者からの信託を受けるにふさわしい政治家たるのかと自問自答を続けるのと同じように、やはり検察官、裁判官の方々も、常に自問自答しながら、理想的な裁判官像、検察官像に近づいていかなきゃいけないものだと思います。

 時間もないので、きょうは、最後は、世間でエリートというとどうしても誤解を受けがちでございますから、エリートというものはどういったものかといったものをスペインの哲学者オルテガが言っておりますので、しっかりと引用させていただいて、質問を終わりにさせていただきたいと思うんです。

 オルテガは、エリートの対極にある存在として、大衆といったものを位置づけているわけですね。大衆をどういうふうに定義しているかといいますと、「大衆とは、善い意味でも悪い意味でも、自分自身に特殊な価値を認めようとはせず、自分は「すべての人」と同じであると感じ、そのことに苦痛を覚えるどころか、他の人々と同一であると感ずることに喜びを見出しているすべての人のことである。」

 端的に言うと、多分、子供のような人でございます。例えば、おもちゃが欲しくて、みんなが持っているからこれを買ってとか、もしくは、何か悪いことをして怒られたときに、みんながやっているから何が悪いのと。つまり、みんなと同化することに安心を覚えること、これが大衆というふうにオルテガは位置づけているわけですね。

 逆に、では、エリートをオルテガはどういうふうに位置づけているか。「選ばれたる人とは、自らに多くを求める人であり、凡俗なる人とは、自らに何も求めず、自分の現在に満足し、自分に何の不満ももっていない人である。」「高貴さは、自らに課す要求と義務の多寡によって計られるものであり、権利によって計られるものではない。」

 まさにエリートの資質はここにある。つまり、自分を超越した、何か公のものに奉仕する、その精神こそがエリートであるというふうに言っているわけでございますね。

 裁判官にせよ、検察官にせよ、そして我々にせよ、こういった思いを常に自問自答しながら、その理想像に近づいていかなければならないということでございます。人事評価で、今、理想的な検察官像、裁判官像を示されましたけれども、ぜひ、完璧な人間などいませんけれども、完璧を求めて自問自答していく、そしてそういった環境づくりをやっていただくことを求めて、私の質問を終わりたいと思います。

奥野委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。高橋みほ君。

高橋(み)委員 私は、維新の党を代表し、内閣提出の裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に反対の立場から討論をいたします。

 これらの法律案は、政府において、人事院勧告の趣旨に鑑み、一般の政府職員の給与を改定することとし、今国会に一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出していることから、裁判官及び検察官についても一般の政府職員の例に準じてその給与を改定する措置を講ずるとして、今回の法律の改正を求められているものであります。

 しかし、今般の経済状況は非常に悪く、かつ、国の借金総額を考えると、人事院勧告があったとしても、一般職の職員の給与や特別職の職員の給与を上げること自体、情勢として許されるものではなく、当然、その帰結として、裁判官の報酬や検察官の俸給に関しても上げる状況にはないと考えます。

 裁判官の報酬等は、裁判官が職権の独立を確保できるように適正な報酬等を保障しなければならないことは言うまでもありませんが、だからといって、一般職の職員と特別職の職員の給与と連動しなければならない明確な理由はありません。

 維新の党は、一般職の職員や特別職の職員の給与を上げる前にやるべきことをやり、国民の皆様に身を切る改革をお示ししてから、その上で、国民の皆様の負担を求めることを是としております。その観点からも、現在、一般職の職員や特別職の職員の給与を上げることを認めることはできず、したがって、裁判官と検察官の給与もそれに連動することはできないと考えております。

 裁判官と検察官はもちろん争議権等が認められておりませんから、その点、代償措置が必要であることに一定の理解はできるものの、そもそも検察官や裁判官に労働基本権をきちんと保障するべきではないかという議論もしなければいけない時期に突入しておりますが、その点の検討も全くなされていない問題もあります。

 以上をもちまして、国民の皆様の理解を得ることができない一般職の職員と特別職の職員給与の増額に準じて裁判官と検察官の給与を変更する今回の法律案には反対し、反対の討論とさせていただきます。

 以上です。(拍手)

奥野委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

奥野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

奥野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

奥野委員長 次回は、来る十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時五十九分散会


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