衆議院

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第5号 平成27年4月7日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十七年四月七日(火曜日)

    午後一時三十四分開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君

   理事 盛山 正仁君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 遠山 清彦君

      大塚  拓君    門  博文君

      菅家 一郎君    木村 弥生君

      今野 智博君    鈴木 隼人君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      中村 裕之君    藤原  崇君

      古田 圭一君    宮川 典子君

      宮崎 謙介君    宮崎 政久君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      武藤 貴也君    山口  壯君

      若狭  勝君    黒岩 宇洋君

      階   猛君    鈴木 貴子君

      柚木 道義君    重徳 和彦君

      大口 善徳君    真山 祐一君

      吉田 宣弘君    清水 忠史君

      畑野 君枝君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 安田 貴彦君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  辻  義之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小川 新二君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    片岡  弘君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  岡村 和美君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           徳田 正一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           伯井 美徳君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           木下 賢志君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    藤井 康弘君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  坂本祐之輔君     上西小百合君

同月七日

 辞任         補欠選任

  辻  清人君     鈴木 隼人君

  宮川 典子君     中村 裕之君

  簗  和生君     木村 弥生君

  山下 貴司君     宮崎 政久君

  國重  徹君     真山 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     簗  和生君

  鈴木 隼人君     辻  清人君

  中村 裕之君     武藤 貴也君

  宮崎 政久君     山下 貴司君

  真山 祐一君     吉田 宣弘君

同日

 辞任         補欠選任

  武藤 貴也君     宮川 典子君

  吉田 宣弘君     國重  徹君

    ―――――――――――――

四月七日

 憎悪表現することを抑制する法律の制定に関する請願(西村智奈美君紹介)(第七七〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官安田貴彦君、警察庁生活安全局長辻義之君、法務省大臣官房司法法制部長萩本修君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長小川新二君、法務省保護局長片岡弘君、法務省人権擁護局長岡村和美君、法務省入国管理局長井上宏君、文部科学省大臣官房審議官徳田正一君、文部科学省大臣官房審議官伯井美徳君、厚生労働省大臣官房審議官木下賢志君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長藤井康弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局中村総務局長及び平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮川典子君。

宮川委員 自由民主党の宮川典子でございます。

 法務委員会、初めての質疑の時間をいただきまして、感謝申し上げます。

 本日は、少年法第六十一条についてと、もう一つは今後の医療少年院のあり方について、ぜひ質問をさせていただきたいと思っております。

 実は、この少年法第六十一条ですが、先ごろ行われました予算委員会の第三分科会で質問をしたかったんですが、時間オーバーになりまして、井出庸生先生がその後リレーしてくださって、また私に戻ってきたというような思いで今回は質疑をしたいと思っております。

 先ごろ起きました川崎の中学校一年生の男子生徒殺害事件におきましても、今回のこの第六十一条のあり方というのが大変クローズアップされたと私自身は思っております。

 確かに、この六十一条、平成十二年改正のときに、附帯決議として、今後検討すべきだというふうになっておりますけれども、それ以後、大きな議論がまだまだ喚起されていないというふうに思っております。

 私個人の考えとしては、社会的に大きな影響力のあった事件に関しましては、特定の凶悪事案につき、実名報道であるとか、また、犯人が犯罪に至るまでの経緯、その背景というものをしっかり社会に出すことも大変重要なことだと思っております。

 少年法は、昭和二十三年に、まず、軽微な犯罪を犯す子供たちに対して、教育更生の意味からこの少年法というのが制定されたわけですけれども、しかしながら、数は減っているとはいえ、ここまで犯罪の凶悪化が進んでいるというような印象を社会の中から払拭できない今、その凶悪性に鑑みて、特定事案に関しては、やはりしっかりと実名報道していくことも重要であり、それは私は、決して犯罪を犯した少年たちの教育更生にもとるようなことではないというふうに思っております。

 特定事案に対しては特例を設けるべき、もしくは改正されるべきとのさまざまな世論、意見がありますけれども、これに対して上川大臣の所見をまずお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 委員から、少年法に係るさまざまな御関心と、そしてお取り組みということで、きょうの議論も含めまして、しっかりと対応してまいりたいというふうに思います。

 少年法第六十一条の件でございますけれども、いわゆる神戸連続児童殺傷事件という大変痛ましい事件がございまして、その折に、平成九年でありますが、週刊誌に被疑少年の顔写真が掲載されたということで、この少年法六十一条のあり方につきましては、さまざまな議論がなされてきたところでございます。

 先ほど触れられました十二年の少年法改正におきまして、衆参両院の法務委員会の附帯決議におきまして、悪質重大な事件については、少年法第六十一条に例外規定を設けることも含めまして、このあり方について検討そして研究することについて努力をすべき旨の決議がなされたということも承知しているところでございます。

 その後も、今日まで複数の少年事件がございまして、先ほどお触れになった直近の川崎の事件もございまして、国会を含めまして、さまざまな立場での御議論が継続しているというふうに考えております。

 この少年法第六十一条につきましては、少年の犯罪に対する出版物への記載内容等を制限することによりまして、少年の特定に関する情報が広く社会に行き渡る、それによりまして少年の社会生活に影響を与えることを防ぎ、その更生に資することということがこの趣旨でございまして、この意義は今もあるというふうに思いますし、また、尊重されるべきものというふうに考えております。

 法務省といたしましても、内外のさまざまな御議論を踏まえまして、この少年法第六十一条の改正の要否等につきましても、慎重に慎重に検討すべき問題であるというふうに考えております。

宮川委員 ありがとうございます。

 確かに、被害少年も、また加害少年も、それぞれ未来のある存在と捉えれば、この六十一条の意義はあると思っております。

 ただ、私はどうしても、少年犯罪を見るときに、不条理を感じて仕方がないんです。例えば今回の川崎の問題においては、被害少年はたくさんのSOSを出していたのにもかかわらず、多くの大人がそれを見逃して、彼は命を失うことになりました。しかし、加害少年はこれから、三人おりますけれども、実は、多くの大人の目に守られて教育更生の道を歩んでいくんだと思います。学校の先生、警察、そして保護観察の場所、少年院に行けば少年院の観察官、保護司、親、いろいろな方たちが、この子を何とか更生させて社会に送り出さなければいけないということで、被害少年はああやって寂しい思いをして亡くなっていったのにもかかわらず、被害を与えた子供たちはプライバシーまで守られて社会に出ていくということに関しては、私自身、どうしても不条理を感じずにはいられません。

 特に今回の川崎の事件におきましては、被害少年はもとより、その子の日常の活動、そして、母子家庭であること、家族構成、被害少年の母親の現在の状況、また、葬儀でどんなことが起きたとか、そんなことがインターネットや新聞紙上、また雑誌の中で書かれるということに関して、二重三重の苦しみ、また、被害少年にとってみれば恥をかかされるという思いもあると思います。子供たちは黙って親をかばいながら生きているという側面もあるのにもかかわらず、自分が死した後に自分の家庭の問題を大きく取り上げられるというのは、彼にとっては二回目の社会的な死ではないかなというふうに私は思っております。

 今回はどうしても、被害少年と加害少年たちとのプライバシーの保護の不平等性を感じずにはいられない。そして、その根底には、この少年法の第六十一条というものが流れているのではないかなというふうに私自身は思っております。

 まず一番守られるべきは被害者のプライバシーでありますし、死した後、また被害を受けた後の尊厳だというふうに私自身は思っておりますけれども、まずは、被害者のプライバシーの方が暴かれやすい現状に対してどんな取り組みをしているのか、ぜひここでお答えをいただきたいと思います。内閣府、お願いします。

安田政府参考人 犯罪被害者等施策は、御家族、御遺族を含む犯罪被害者等の人権に十分に配慮し、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるよう推進してまいることが重要でございます。

 犯罪被害者等基本法におきましても、その第十五条に、犯罪被害者等に係る個人情報の適切な取り扱いの確保が規定されているほか、第十九条には、捜査や公判等の過程における犯罪被害者等の人権への十分な配慮等が規定されているところでございます。

 この基本法を受けまして、目下政府では、平成二十三年三月に閣議決定された第二次犯罪被害者等基本計画に基づき、関係省庁が連携協力をいたしながら、犯罪被害者等の個人情報の適切な取り扱いや犯罪被害者等の保護のための施策を推進しているところでございます。

 具体的には、警察における個別具体的な案件ごとの適切な報道発表、また、公開の法廷における犯罪被害者等に関する情報の保護や、ビデオリンク等の犯罪被害者等の保護のための措置の適切な運用のほか、犯罪被害者等の置かれた状況等について国民の理解増進を図るための各種の啓発活動等の施策が盛り込まれているところでございます。

 今後とも、関係省庁と連携協力をいたしながら、犯罪被害者の個人情報の保護等を含む人権への配慮などの犯罪被害者等施策の適切な推進に努めてまいる所存でございます。

宮川委員 ありがとうございます。

 今、被害者を守るという観点から取り組みをされていることを内閣府からお答えいただきましたけれども、やはりこれは、犯罪を裁く、また、その過程で起きている被害者また加害者のプライバシーの不平等性ということになるかというふうに思います。

 ただ、もちろん、加害者にも人権がないわけではありませんで、本当に公開されるべき情報はどこまでなのかという線引きはしっかりしなければならないと思いますし、私自身も、改正は必要だと思いつつも、少年たちの犯罪に絡めてどこまでの背景が報道されるべきか、公表されるべきかということに関しては、かなりの配慮が必要だというふうには思っております。

 これに関して、被害者を守る、また加害者を守るという観点から、ぜひ、法務省、どのような取り組みをされているのか、お答えいただきたいと思います。

岡村政府参考人 法務省の人権擁護機関では、インターネット上の人権侵害を含む人権の問題につきまして、全国の法務局の窓口、電話などで人権相談を行っております。

 この人権相談などでインターネット上の人権侵害についての被害の申告を受けた場合、被害者に当該情報の削除依頼の方法を助言するほか、調査をいたしまして、その結果、名誉毀損やプライバシー侵害などの人権侵害に該当すると認められるときは、法務局が当該情報の削除をプロバイダーなどに求めるなど、適切な対応に努めているところでございます。

宮川委員 ありがとうございます。

 このたびの事案一つ取り上げてもそうですが、インターネット上で、身近な人たちから加害少年たちのプライバシーが流されてしまっていました。私も実際、フェイスブックとかツイッターでそれを目にしておりましたけれども、そういうものに対して対応しなければいけないということと、やはり日本は法治国家ですから、法で裁くのではなく、社会が、なぜか自分たちが裁く権利を持ったというふうに思って、その流れてきた個人情報で社会的に罰を与えるんだという、何か国民の中にそういう機運ができてしまうことに対して私はおそれを持っているんです。

 しっかり法律として、正しく、誰にとっても平等に、裁かれるべきものは裁く、そのための法改正をしていかなければいけない時期にもう来ていると思います。

 平成十二年の改正の附帯決議ということは、十五年もこの議論がまだずっと宙に浮いたままの状況になっていますので、ぜひ、正しい方法で、法治国家として毅然として、被害者も加害者も守っていく、また罰を与える、裁くということができるような環境づくりを今後やっていかなければいけないと私自身は思っております。

 この少年法第六十一条に関しましては、この問題意識を持って今後も取り組んでまいりたいと思いますので、ぜひ、大臣以下皆様のお力添えをよろしくお願い申し上げたいと思っております。

 それでは、二点目の医療少年院についての質疑に移りたいと思います。

 私は元教師でありまして、子供たちの教育更生また矯正教育ということに今まで大変興味を持ってまいりました。確かに、生徒指導をずっと担当しておりましたので、犯罪を犯して保護観察になった子供たち、少年院に行った子供たち、そういう子供たちも、実際、自分の手でそういう場に送り出す最初のきっかけをつくったこともございます。

 ですから、少年院を出て、また経て、そういう犯罪をしっかり反省した後、どうやって社会に出るかということは、子供たちにとっては大変重要なことであり、私たちも、指導するからには、その先に彼らがしっかりと復帰できるような場所がないといけないというふうに思っております。

 それも問題意識の中にあり、また、上川大臣もこの問題には大変関心が強くいらっしゃるということを伺っておりまして、ここのところ、本当に、週に一回ぐらいのペースで少年院や医療少年院の視察に行ってまいりました。

 その際に、少年院は、まだまだ受け入れてくれる理解のある方たちというのは社会の中にいらっしゃいますけれども、やはり医療少年院の抱える問題というのは大変厳しいものがあるなというふうに私自身は感じております。

 きょうは、特に発達障害を持つ子供たちの今後の更生についてしっかりここで議論をしていきたいと思っておりますけれども、まず、医療少年院が抱える今の課題、施設の老朽化もかなり進んでいるなというふうに思いましたし、矯正医官の問題もあります。また、その中でどういうプログラムをしながら子供たちの更生をしていくかということに関しては、日々かなり検討が必要だというふうに思いますけれども、現在、医療少年院が抱える課題について、挙げられるものをぜひ法務省からお願いしたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 医療少年院という名称が付されている少年院には、まず、医療法上の病院でありまして、また、少年院法上の医療少年院に指定され、医療措置課程を設置しているものとして、関東医療少年院と京都医療少年院の二庁がございます。また、神奈川医療少年院及び宮川医療少年院の二庁がございまして、これにつきましては、医療法上の診療所でございまして、少年院法上は初等、中等、特別少年院に指定しておりまして、また、情緒未成熟等により非社会的な形での社会的不適応が著しいということで専門的な治療教育を必要とする者などを対象として行う特殊教育課程を設置しているところでございます。

 こういった医療少年院に送致される対象者でございますけれども、関東医療少年院及び京都医療少年院には、家庭裁判所の決定等に基づきまして、心身の疾患等のため病院において医療上の措置が必要とされる少年が収容されるところでございます。

 ただし、発達障害を有する少年の場合には、医療措置の必要性の程度、その内容等を踏まえまして、家庭裁判所の決定等に基づき、関東医療少年院また京都医療少年院のみでなく、神奈川医療少年院であるとか宮川医療少年院であるとか、あるいはその他の特殊教育課程を設置している少年院に収容され、治療的処遇などの矯正教育を授けているところでございます。

 実情と課題についてでございますけれども、これら医療少年院等の在院者が抱える身体あるいは精神の疾患や障害、または発達上の課題等に対しましては、個々の在院者の特性に応じたきめ細かな処遇を展開する必要がございます。そのために、教育と医療とで連携して、教育や治療的処遇を行っているところでございます。

 この治療部分は主として医療や心理のスタッフが担うことになりますことから、専門スタッフの確保に努めておりますけれども、御承知のように医官は常態的に欠員を抱えている状態でございまして、その確保に努めていく必要がございます。

 また、発達上の課題を抱え、自立が困難という事情がありますので、社会での引受先が確保できにくい在院者がございます。こういった在院者につきましては、当該施設に配置されております社会福祉士等の専門スタッフが中心となりまして、家族のもとへの帰住であるとか、あるいは福祉施設への帰住などを調整することとしておりますけれども、彼らの円滑な社会復帰につきましては、特に福祉への橋渡しが重要となりますことから、こういった手だてを一層充実させていく必要があると考えております。

 以上でございます。

宮川委員 ありがとうございます。

 今、医療少年院というのは、何となく注目はされているけれども実態がよくわかっていない、そういうものだというふうに私自身感じておりますけれども、医療少年院が抱える課題についてお話をいただきました。

 その中で、二点、重要な点がありまして、まず一点は、医療少年院、医療が必要なのにもかかわらずその手だてが十分に行き届いていないということと、もう一つは、医療と教育の連携が必要だと言われているけれども、そこまでやり切れていないんじゃないかということを私は問題意識として強く持っているわけです。

 実際、私は、教育の場にいて、いろいろな生徒にいろいろな生活指導をしてきました。確かに、その中には、特に何の問題もなく非行行為を犯す子もいれば、発達障害に起因するさまざまな、人間関係がうまくいかないとか、どうしても暴力的な活動をしてしまうとか、そういうことが原因で非行に走ってしまった、また、それに歯どめをかけることが本人にはなかなか難しいというような子供たちもいることが現実だと私自身思っております。

 であるならば、先ほど申されたように教育との連携が必要だということであれば、教育の現場で、発達障害を持つ児童生徒がどのような非行行為をしているのか、また、どういう傾向にあるのか、どのくらいの割合で発達障害に起因する非行行為が認められるのか、こういうデータをしっかり調査していかなきゃいけないのではないかなと思いますけれども、文部科学省、こういうデータを集めていれば、ここでぜひお知らせいただきたいんですが、よろしくお願いします。

伯井政府参考人 お答え申し上げます。

 発達障害のある児童生徒につきましては、その障害の特性から、御指摘いただきましたように、周囲との人間関係がうまく構築されない、あるいは学習のつまずきが克服できないという状況が進んで、周囲の理解が得られないということで、場合によりましては、二次的な問題としての問題行動が生じる事例があるというふうに承知をしているところでございます。

 ただ、文部科学省として、そうした発達障害のある児童生徒を特定して、その人を対象にして学校において非違行為を行っているかという現状調査というのは大変難しいものでございまして、そうした調査は実施していないわけでございます。したがって、お尋ねの現状につきましては、数値としては把握していないという状況でございます。

 いずれにしましても、文科省といたしましては、今後とも、関係機関とも連携しながら、発達障害に関する教職員等の理解啓発、あるいは専門性向上のための事業の実施など、その支援に努めてまいりたいと考えております。

宮川委員 ありがとうございます。

 医療と教育の連携が必要であって、教育の分野においては、今のような分析、もしくは分析をつまびらかにはしていないという現状があるということがわかりました。

 それではもう一点、医療に関しては、例えば発達障害に起因する、また、それが原因と考え得る触法行為について調査研究を進めているのかどうか、また、進めているのであれば、何年から始まり、今どのくらいの調査の状況であるのか、ぜひここでお知らせいただきたいと思います。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省といたしましては、発達障害のある方が触法行為にかかわらないようにするために、一層の支援力の強化が必要と認識をしております。

 その対策の一環といたしまして、先生御指摘のような、さまざまな立場の支援者が身につけるべき知見につきまして、平成二十五年度から本年度までの三年間にわたる調査研究を進めているところでございます。

 これまでの二年間の研究におきましては、発達障害のある方に対しましては、福祉、保健、医療、また矯正などの異なる分野の関係者が連携をして、一貫性を持って継続的に取り組んでいくということが重要であり、他の分野を超えて活用できますようなアセスメントツールあるいは支援手法、及びこれらを活用する人材の育成方法の開発に取り組んできております。

 今年度、二十七年度におきましては、これらの成果を踏まえまして、さまざまな分野の支援者を対象といたしました支援ガイドラインを作成することとしてございます。

宮川委員 ありがとうございます。

 今答弁をいただいたことを比べると、やはり相違点があるんですね。

 まず、教育の分野には、もちろん私も、党の教育再生実行本部の中で特別支援教育部会の副リーダーをやっていますからよくわかりますけれども、教育の中では、区別、差別をしてはいけない、インクルーシブ教育をしようということで、障害を持っていようが持っていまいが、全ての生徒を同じ対象として実は分析しているわけですから、先ほど答弁があったように、発達障害を持っている子供たちをピックアップしてその犯罪傾向であるとか非行行為の傾向を調べるということは、教育現場ではなかなかやり切れない。また、それをやるべきではないのかもしれません。

 しかし、これが医療の場に行くと、一つの病気というか障害というふうに捉えれば、その犯罪傾向、触法行為の傾向であるとか、そういうものはしっかり調査研究をしなければいけない。

 連携しなきゃいけないものは連携しなければいけないんですが、実はこれが連携し切れていない、また、それぞれの立ち位置が余りにも違うというのが、特に発達障害を持つ子供たちに対してのさまざまな社会的活動のそごが出てくるところの一番の原因ではないかなと思います。

 いわゆる一つの言語で、子供たちの周りにある社会の状況、また、さまざまな対策を進めることができないということが、今回、私が医療少年院に行って中で感じたことと実は一緒なんですね。教育をやる方たち、教官の方たちというのは、まさに文部科学省がさっき答弁をしたようなスタンスで臨んでいる。ただし、矯正医官の方たちは、医療の面から臨んでいますから、スタンスが少しずつ違っている。その差異というのが、中で大変大きな問題になっているんじゃないのかなということを私自身は感じております。

 これは、私が教師をしていたときから、また、法務委員会に携わるようになりまして、医療少年院の問題を深く知るようになってから、やはりこれが必要だなと思うことが実はあります。それは、療育という概念、価値観をしっかり社会の中に植えつけていくことが重要だと思います。

 例えば、発達障害を持っている子供たちを抱える親御さんというのは、学校の先生は、ある意味では、しっかり私たちが面倒を見ますよという情熱で支えているところがあります。ただ、親にとって欲しいのは、医学的なエビデンスであるとか客観的な指標なんですね。どうしてこの子はこういう行動をしてしまうのかという理由が欲しい、その理由に対してどう対処したらいいのかという対処方法を知りたい、そういうことが多分あるんだと思います。

 ですから、発達障害を持つ子供たちにとってみれば、教育の側面、しっかりと情熱を持って自分たちをずっと支えてくれる学校の先生のような方たちが必要なのと同時に、もう一つは、明確な医学的なエビデンスのもとに、障害からくる自分たちのいろいろな傾向をしっかり自分で受けとめた上で社会の中で活動ができる、またそれに対して理解を持ってもらうということが大変重要だと思っています。

 ですので、これから、医療少年院の中にいる発達障害を持つ子供たちは、やはり社会にばんと送り出すわけにはいかないんですね、いろいろな問題を抱えておりますから。私自身としては、その子たちを受けとめるべき療育コミュニティーみたいなものが必要ではないかなと思っております。

 例えば、昔であれば、私の地元にも、結核の病気を持っていらっしゃる方たちのサナトリウム、診療所がありました。今、そこは大きな総合病院になって、しっかりとそこに現存しているわけですけれども、地域の方たちが、最初はいろいろないざこざがあったと聞いていますけれども、理解をすることで、そこで多くの患者さんが回復をして、社会復帰されたという事例があります。「智恵子抄」という有名な本がありますけれども、まさにその舞台になったサナトリウムがあったところなんですね。

 ですから、地域で受け入れられるような受け皿をつくっていくことが、実は、いろいろなハンディキャップや困難を抱えている人たちにとっては希望になるのではないかなと思います。

 この前、医療少年院に行って在院者の子供たちと直接話をしましたときに、でも、どうせ俺たちの発達障害が治るわけではない、だったら社会でどうやって受けとめられるんだ、もう一回同じ犯罪を犯してしまうんじゃないか、自分が怖いんだということを言っている少年がいました。まさにそれが、彼らが院の中で抱えている不安ではないかなというふうに思っているわけですけれども、だとするならば、こういう療育コミュニティーをつくるのであれば、まずは、そのコミュニティーの中にいる人たちが、しっかりと、発達障害というものに対して、療育というものに対して知識を持ってもらわなければいけないと思います。

 文部科学省もこれまで特別支援教育に大変力を入れてきましたけれども、一般の国民の皆さん、社会人の皆さんに教育をするための生涯教育の中にどういうプログラムを用意しているのか、また、発達障害の理解度を高めるためにどのような取り組みをされているのか、ぜひここで御答弁いただきたいと思います。

徳田政府参考人 お答えします。

 地域において発達障害に関する理解を深めていくことは、先生御指摘のとおり、発達障害を抱える方々と地域とが共生していく上で大変重要であると認識しております。

 各地域の社会教育では、発達障害に関する理解を深めるため、学習機会の提供が行われております。例えば、長野県上田市では、上野が丘公民館で、長野大学と連携し、地域住民が発達障害について正しい知識を持つための講演会を開催しております。また、埼玉県立久喜図書館では、発達障害について正しく理解し、発達障害者に対してできることを知るための講演会や資料展示、支援機関のパネル展示が行われたと承知しております。

 文部科学省では、関係機関と連携しつつ、地域における発達障害の理解が深まるよう、このような先進事例の普及啓発に努めてまいりたいと考えております。

宮川委員 ありがとうございます。

 では、もう一つ、厚生労働省から、先ほど福祉というものと切っても切り離せないというお話がありましたけれども、療育コミュニティーを特定して、地域でしっかりと受け入れながら、彼らが社会に貢献できる人材として生きていくような環境をつくるということに対して、今どのような見解を持っているのか、所見を聞きたいと思います。

藤井政府参考人 先生おっしゃるような、地域を特定して、医療少年院を退所した発達障害者の療育環境を整備するということにつきましては、例えば、退所後にどこで誰と生活をするのかにつきましての選択の機会の確保の視点等から考えますと、やはり慎重に検討する必要があるのではないかというふうに考えております。

 ただ、私どもといたしましても、やはり地域の中で、先ほども申し上げましたような一貫性を持った支援に取り組むことは重要だというふうに考えておりますので、福祉、保健、医療、矯正などの各分野が連携してということでございますけれども、私どもといたしましては、これも先ほど申し上げましたが、現在、調査研究をしておりますアセスメントツールあるいは支援手法、またガイドライン、こういったものを活用しながら、今後とも、少年院や学校等と連携をして、退所後の発達障害者に対する地域での支援体制の構築に努めてまいりたいと考えております。

宮川委員 済みません、時間がなくなりましたので、最後に大臣から、療育コミュニティーの可能性、実現性について御所見があれば、伺って終わりにしたいと思います。

奥野委員長 大臣、時間が来ていますから、短くやってください。

上川国務大臣 医療少年院を訪問されてのそうした取り組み、療育環境ということでございます。大変大事な視点だということでございますので、参考にさせていただきたいと存じます。

宮川委員 終わります。

奥野委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 本日は、質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 通告に従って質疑をさせていただいてまいりますが、きょうは主に、外国人労働者に関連して、不法就労でありましたり不法滞在、人身売買であったり人権侵犯、こういうようなことで指摘がなされている部分、外国人技能実習制度の部分についてもお尋ねをしてまいりたいと思いますし、人権侵犯という部分に関していえば、ヘイトスピーチ、あるいはIS事件にかかわる部分であったり、それぞれ通告に従って質疑をさせていただきたいと思います。きょう、それぞれ政務で割り振っていただいているようですが、必要に応じて大臣にもちょっと確認をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 まず冒頭、政府が現在進めている観光立国、そして外国人労働者受け入れ、これは非常に関連してくる部分もあると私は思っているものですから、その基本スタンスについておのおの伺いたいと思います。

 国内においてのいわゆるアベノミクス効果という部分についての評価は、地方や家計への浸透について、見方、評価がさまざま分かれる部分でもございますが、外国人旅行者に関しましては、これは円安等の影響も当然あるとは思いますが、増加傾向、もっと言うと過去最高という状況も承知をしておるところでございます。

 今後、二〇一九年にはラグビーワールドカップ、さらに、翌年、二〇二〇年には東京オリンピック開催、こういった流れの中で、外国人観光客の呼び込みを目指すとされているところだというふうに承知をしておりますし、我々の政権で取り組ませていただいた部分も含めて、応援するところはしっかり応援していきたいと思っているところでございますが、政府の観光立国に関する基本的スタンスについて、まず簡単に御説明をいただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 政府におきましては、昨年閣議決定いたしました「日本再興戦略」改訂二〇一四、あるいは観光立国推進閣僚会議が取りまとめました観光立国実現に向けたアクション・プログラム二〇一四におきまして、オリンピック・パラリンピック東京大会が開催される二〇二〇年に向けて訪日外国人旅行者数二千万人を目指すという目標を立てておるところでございます。

 法務省といたしましても、観光立国実現の観点から、問題のない外国人に対しては可能な限り円滑な入国審査を行うことが極めて重要と認識してございますが、他方、テロリスト等問題のある外国人を入国させないための厳格な審査、水際対策もこれまた重要ということでございまして、厳格さを維持しつつ円滑な入国審査を行うということで、法務省としても観光立国の実現に協力してまいりたいと考えております。

柚木委員 ありがとうございます。

 今まさに御答弁の中でもありましたが、厳格さと円滑さ、それぞれのバランスが求められてくるわけでございます。

 次に、外国人労働者に関してお伺いをいたします。

 外国人労働者数については、二十六年十月末の段階で前年同期比九・八%増と、二年連続で過去最高を記録しているというふうに承知しております。これについては、外国人労働者の受け入れと管理ですから、まさに厳格さと円滑さという部分も含めての視点が求められると思いますが、これについても、政府の基本的な考え方というものを簡潔に御説明いただきたいと思います。

井上政府参考人 外国人、特に外国人労働者の受け入れに関する政府の基本的な方針について御説明申し上げますと、基本的には、日本経済のさらなる活性化を図り競争力を高めていくためには、これに資する専門的、技術的分野の外国人の受け入れは大変重要で、積極的に進めていくというのが一つの基本でございます。

 他方、昨今、人口減少時代への対応という観点から外国人の受け入れについての議論もございますけれども、政府といたしましては、まずは、出生率の向上に取り組むほか、生産性の向上、若者、女性、高齢者など潜在的な労働力の活用等の施策に取り組むことが重要と考えておりまして、人口減少という状態を、専門的、技術的分野に該当しない分野の、いわゆる単純労働力等の外国人を受け入れることによって改善しようという考え方には慎重であるべきだというのが現在の政府の立場でございます。

柚木委員 現在の政府の立場についての考え方は理解をするわけでございますが、資料一以降、資料一については、国籍、地域別の不法残留者数の推移、そしてその裏側には、在留資格別の不法残留者数の推移という形で資料を載せさせていただいております。

 関連して昨年の出入国管理及び難民認定法の一部改正法の実施状況についてお尋ねしたいんです。

 これは、一部を除き本年の一月一日及び新年度より施行されているということだと思いますが、この改正法の実施状況についてまず簡単に御報告いただきたいと思います。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 改正法の内容はやや多岐に及んでおりますけれども、要点として、一つは観光立国の観点に関連するクルーズ船関連のものと、あと、労働力関係で高度外国人材の点、この二点について簡単に御説明申し上げます。

 まず、本年一月一日から、観光立国の関係で、法務大臣が指定するクルーズ船の外国人乗客を対象として、船舶観光上陸許可制度という制度の運用を開始したところでございます。この制度は、一般の上陸審査と比べますと、個人識別情報の取得でございますとか、出入国記録、EDカードといいますけれども、その記録の記載内容を簡素化するなどして、簡易な手続で上陸を許すようにしてございます。

 この実施状況、一月からでございますが、ある程度動いてまいりました二月分の集計結果を見ますと、クルーズ船が全部で十八回入ってくるうちの十四回、船舶観光上陸許可制度を利用して入港してございます。人員ベースで見ますと、二万二千人余り上陸したうちの九〇%以上がこの制度を利用しているということで、活用が進んでいるなと感じておるところでございます。

 次に、高度人材の関係でございますが、これは、本年四月一日から、高度の専門的な能力を有する外国人材の受け入れ促進のための新たな高度専門職という在留資格を創設した制度が導入されたところでございます。これは、今までは、高度人材ポイント制ということで、通常の在留資格の中での特例的な優遇措置という運用で行っておりましたけれども、これを正規の在留資格ということで位置づけて、優遇措置等も整備したということでございます。

 これはまだ施行直後でございますけれども、周知を図りまして、なるべく活用していただけるように進めてまいりたいと存じます。

柚木委員 徐々に具体的な質問に入っていきたいと思うんですが、観光であったり労働であったり、当然、それぞれ訪問、滞在形態があるわけですが、こちらの資料にお示しをしましたように、国別、地域別の不法残留者数の推移につきましては、これは、先日、三月二十日に公表されて、本年一月一日時点ということですが、近年の不法残留対策強化によって、ずっと見ていただくと、一貫して減少傾向にあったわけですが、二十七年一月一日の状況を見ていただくと、わずかではありますが、微増ということだと思います。

 次のページを見ていただくとはっきりおわかりいただけるわけですが、その中でも、カテゴリーの中で非常に大きくふえておりますのは、在留資格分類でいうと、技能実習二号ロという部分ですね。箱でいうと上から三つ目の項目でございまして、これは六六・六%増ということでございます。

 お尋ねしたいのは、この間の不法残留者対策の経緯についての御説明と同時に、今申し上げました技能実習二号ロの増加状況と要因等についてどういった認識でいらっしゃるのか、御答弁をいただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 まず、不法残留者数の推移でございますけれども、近隣諸国との経済格差等を背景といたしまして、平成五年に、過去最高の約二十九万九千人、約三十万人に達したのがピークでございます。その後、さまざまな対策を講じたところ、以後二十二年間、昨年まで一貫して減少を続けていたところでございます。

 どのような対策かといいますと、一つは、個人識別情報、指紋等ですね、それを活用した厳格な入国審査を実施するということ、これによって、別の名前で入ってくるようなことができなくなるわけでございます。それから、警察等関係機関と協力して積極的に不法滞在の摘発をしていったということがございます。それからもう一つ、自発的に帰国を促すための出国命令という制度をつくって、自発的な出国を促すという取り組みもございました。

 このようなさまざまな取り組みの結果、不法残留者の状況につきましては、六万人を切る五万九千人のところまで落ちていったところでございますが、これが、本年一月一日現在で、わずか千名でございますけれども、増加に転じたというふうな状況でございます。

 この増加に転じた原因の分析でございますけれども、一つには、委員が配付されたグラフにもございましたように、面積的というか、パイとして一番大きいのは、短期滞在の人数が多うございます。この短期滞在の人数につきましては、観光立国の関係で近年非常に増加が激しくなっておりまして、新しく大勢入ってくると、やはりそのうちの一定数は不法残留になる可能性もある。そういう不法残留の新規発生の要因として、やはり短期滞在のパイが大きくなっているということが一つ挙げられると思います。

 もう一点が、委員御指摘の、技能実習生の不法滞在が明らかにふえているという点でございまして、その原因といたしましては、技能実習生が実習先から失踪する数がふえている、失踪した後、不法残留にそのままなだれ込んでいるのが多いだろうということでございます。

 ただ、そのほかにももう少しいろいろな要因があり得ると思うのでございますが、その点につきましては、もう少し時間をかけて推移を検討しないとなかなかはっきりした原因の分析ができませんが、今申し上げました二点につきましては、やはり大きな要因になっているだろうと思います。

 以上です。

柚木委員 次の質問は大臣にお伺いをしたいわけですが、まさに今御答弁の部分というのは、ある意味率直に述べられていると思うんですね。

 資料一の裏側の在留資格別の不法残留者数の推移をごらんいただくと、技能実習の部分、今御答弁があったわけですが、わずかながらふえている部分、このふえている部分がそのままふえている部分にほぼ該当するわけですね。

 伺いたいのは、こういった不法就労と言われる部分でございますが、こういったことに対する対策の推進について、政府としてどのように今後進めていくお考えなのかということなわけです。

 安倍総理も世界一という言葉をいろいろな場面で使われるわけで、その部分について、私は別に言葉を使うことを否定するものではありません。ただやはり、法務省がこの間進めてきた不法就労等の外国人対策について、三月二十七日に、私も拝見しましたが、改めて、「「世界一安全な日本」に向けた不法就労等外国人対策の推進」ということで公表されておりますが、私、率直にちょっと違和感を感じました。これは、不法入国ブローカーあるいは偽造在留カードの製造、密売業者など、確かに、個人や組織が、世界一安全な日本社会にとっては、非常に問題があるというか、摘発すべき対象というか、そういうことであろうと思うわけです。

 同時に、技能実習を含めて、これは概して本当に低賃金かつ厳しい就労環境で、三Kとか八Kとか、ともすれば日本人が嫌うような仕事を補う形になっているのが外国人労働者の実情でもあろうかと思いますし、後ほど資料も出しますが、今、失踪が非常にふえているわけです。その延長で違法状態となってしまった大半の不法就労外国人の方々に対してどういった対策を講じていくかという部分について、しっかりとした視点を持って具体策を講じていくことがなければ、これは、世界一安全な日本というのが、どの視点に立って言うかというのが一つあると思います。

 観光立国ということで、世界各国から我が国を訪れていただく、滞在していただく。しかし、その先、労働あるいは定住、いろいろな形で我が国が国際交流の中で重要な役割を担っていくということであれば、この不法就労対策についても、来られる方々の視点に立った対策をしっかりと進めていくことが非常に重要だというふうに思うわけであります。

 この点について、大臣の御認識あるいは対策等、具体的にあれば、御答弁をいただきたいと思います。

上川国務大臣 二〇二〇年に向けまして、日本が世界一安全な国であると同時に、海外からも多くの皆様に日本に来ていただいて、また、さまざまな日本の文化にも触れていただきながら、交流の機会をさらにふやすということについては、大変大事な方向性だというふうに思っておりまして、委員の方もそのような認識については共有しているというふうに思っているところでございます。

 その中で、不法就労の外国人の方々につきまして、労働市場あるいは社会全体にさまざまな悪影響を及ぼすことが懸念されているところでございますので、そうした方々につきましては、しっかりと取り締まりをしていくということが大変大事ではないかというふうに思っております。

 先ほど局長から説明がありましたけれども、法務省におきましては、警察庁、厚生労働省と連携して、不法就労等の事案の取り締まりを強化するとともに、不法就労等の外国人及び悪質なブローカー等に関して緊密な情報交換をする、あるいは不法就労等防止に向けた広報、啓発等の積極的な実施ということについて、これまでも取り組んできたところでありますが、これからも重点的に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 先ほど、技能実習に係る問題ということで、特に、失踪事案がございまして、それがさらに不法残留を増加させるということがございまして、送り出し機関あるいは監理団体からの申請については一層厳格な審査を行うということでございます。

 また、技能実習生が失踪して既に技能習得行動を行っていない場合などにつきましては、直ちに在留資格を取り消せるような入管法の改正案をただいま国会に提出しているということでございますが、技能実習につきましては、国際貢献という大きな趣旨の中で、現実がしっかりとそれに基づいて適正に動くことができるようにしていくということが大変大事なことであるというふうに思っておりますので、こうした点につきましても、さらにきめ細かな対応をしてまいりたいというふうに思っております。

柚木委員 今御答弁の部分についての今後の実効性については、これは適宜検証しながら進めていくことが非常に重要だと思います。

 この後、政務官にちょっと御答弁いただいた後、また大臣にも人権侵犯事案についてお尋ねするわけですが、そういった労働環境や人権への配慮、保護、こういったものが実効的な形で対策が講じられなければ、この観光立国という我が国の戦略も、むしろ、来てみたものの、働いてみた、住んでみた、そうすると、日本という国はイメージと全然違うじゃないか、こういうことになりかねないわけであります。

 これが、本当に根深く、長く続いていくということになれば、きょうは、ヘイトスピーチであったり、あるいはIS事件に関連してもお尋ねするわけですが、むしろ我が国の印象というものが、中長期的に見たときに、いろいろネガティブな形で拡散して連鎖していきかねない、こういう懸念を私自身持っておりまして、その点については、ぜひしっかり共有いただいて、今後の対策を講じていただきたいと思うところでございます。

 まず、人権侵犯について、これは政務官に通告しているみたいですが、端的に伺います。

 人身取引、人身売買とも言われるわけですが、これは、当然のことながら、最もあるべからざる犯罪のうちの一つであり、究極の人権侵害だというふうに私も理解するところでございますが、この対策について、政府として、現状どのような形で取り組みを進め、また、今後どういったスタンスで取り組みを進めていくのかについて御答弁ください。

大塚大臣政務官 まさに委員御指摘のとおり、人身取引は大変重大な人権侵害であり、人身取引の被害者に対して深刻な精神的、肉体的苦痛をもたらし、その損害の回復が非常に困難ということでございますから、迅速かつ的確な対応が求められているというふうに認識をしております。

 こうしたことから、政府は、人身取引対策として、昨年十二月、犯罪対策閣僚会議において、人身取引対策関連法令執行タスクフォースというものによる関係省庁の連携強化を内容とする人身取引対策行動計画二〇一四というものを決定したところでございます。

 この計画では、関係省庁において、人身取引の実態把握の徹底、人身取引の防止、人身取引被害者の認知の推進、人身取引の撲滅、人身取引被害者の保護、支援など、政府一体となって、より強力に総合的かつ包括的な人身取引対策に取り組むことがうたわれております。

 法務省といたしましても、この計画に基づいて、悪質な雇用主やブローカー等の取り締まりの徹底、入国審査や摘発に際しての人身取引被害者の速やかな保護、人身取引の撲滅等をテーマとしての啓発活動などを実施するとともに、関係省庁等との連携を一層強化して、人身取引対策に積極的に取り組んでいく方針でございます。

柚木委員 概略御説明いただいたわけですが、大臣に伺いますが、これは私も、国内外を問わずというふうに申し上げたわけであります。

 資料二、両面におつけをしておりますが、「平成二十六年における「人権侵犯事件」の状況について」。

 多くの委員の皆さんも御認識だと思いますが、特徴的な部分、ネット上の人権侵害であったり、これはディテールをそれぞれ見ていくと、ネット上の中でも、性にかかわる部分、いわゆるリベンジポルノとか、本当に、子供がかかわる、女性がかかわる、性がかかわる、いろいろな問題が顕在化あるいは増加してきている部分もございます。また、障害者や高齢者にかかわる部分についても増加傾向にございます。

 その中で、国内外ですから、国内のことがしっかりできなくて、国外、外国人に対しての対策ができるのかという視点が当然あるわけです。資料の二の裏側にもつけておきましたが、私も、この表を見て初めてこういう実態なのかなということを認識したわけです。多分、黄色いマーカーでマーキングしていると思いますが、この下のボックスの中で、例えば、人身売買、売春に伴う侵犯、それから、差別待遇の中でも外国人に関するもの、あるいは労働権に対する侵犯など、私も、こういう状況だとなかなか実際の対策を講ずることにはなっていかないんだろうなと思わざるを得ないんですね。

 つまり、外国人に関する差別待遇への相談の申し立て件数自体が少ないというのか把握していないというのか、もっと言うと、人身売買や売春に伴う人権侵犯というのは、この調査をそのまま見れば、ないというような形になりかねないわけであります。労働権に関する相談の申し立て数についてはかなりの数があるわけですが、外国人によるものの内数というのは不明でございます。

 国内を見てみますと、例えば生活保護などを含めて福祉の世界でも、最も援助を必要とする最も弱い立場にある方々の声が小さくてなかなか届かない、申請主義の壁の前で立ち消えてしまう。もちろん、不正請求はあってはなりませんし、そういったまさに貧困ビジネスのようなことは厳罰に処するべきですが、声なき声にしっかり対応していくこと、とりわけ、言葉等なかなかコミュニケーションがとりづらい外国人労働者に対して、しっかりとしたサポート体制が私は必要だというふうに考えるわけです。

 大臣、この統計資料を見ますと、今申し上げたような部分に関してはなかなか実態が把握できていない、そういうふうに私は受けとめているわけでございまして、ぜひ、法務省としてしっかりと把握に努めていただき、その結果としての必要な対応策を講じていただきたいと思うわけでありますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 人権相談の窓口にお電話をかけてくださるとか、訪問される、あるいは、御本人でなくても、そうでない方が相談に来られる、さまざまな相談事案がございますけれども、侵犯事案もございます。

 統計のとり方というか調査の仕方についてさらにきめ細かな対応をすることによって、先ほど委員が御指摘になりました声なき声につきましても対応ができるようなしっかりとした調査を積み上げていくということは非常に大事なことだというふうに思っておりますので、そのような方向をさらに進めていくべく検討してまいりたいというふうに思っております。

柚木委員 検討をいただきたいわけですが、実際、これから、二〇一九年、二〇年と、いろいろ国際的にも非常に大きなイベントもある。やはり日本の印象、イメージを向上していくという部分において、もちろん、テロ等の対策も含めて、いい意味で日本のイメージがよくなっていくことが、そういったことに対する抑止効果も生むと私は思うんですね。ですから、検討していただくことはもとより、やはりしっかりと、例えば、来年度以降で把握をすべく調査をする、あるいはそのための人員等体制を整備していく、そういったもう一つ踏み込んだ御答弁をいただけませんでしょうか。

上川国務大臣 日本の中の対応、取り組み、あるいは現状について、しっかりと把握をしていくということが非常に大事だというふうに思っておりますので、そうした趣旨にのっとった対応をしてまいりたいというふうに思います。

柚木委員 具体的なスケジューリングについてまた今後フォローアップさせてもらいますので、省内でぜひ御検討いただきまして、しっかりと対応を進めていただきたいと思います。

 それから、続きまして、その次につけております資料の三ページ目、四ページ目の部分でございます。最近はメディア等での取り上げられ方も以前ほどじゃないかもしれませんが、ヘイトスピーチに対して、この間の法務省の対応、あるいは、その次の資料は、与党内の議論を私もちょっと承知していないものですから、現状としては議論がもう少し進んでいるのかもしれませんが、ヘイトスピーチとデモへの対応について、これをどのような受けとめ方をするかについて非常に議論のあったところでございます。

 これは政務官に通告しているようですから、まず冒頭、政務官に伺った上で、大臣に伺いたいと思います。

 大臣御自身も、所信の中でヘイトスピーチに対してもお触れいただいております。いわゆる在特会に代表されるような、現在、私たちの社会が、抱えてしまっていると申し上げますが、差別と排外主義、これはヘイトクライムというような言い方もあるわけでございまして、決して看過できない重要課題だと私も考えております。

 英米を初めとした諸外国における議論では、これはもう御承知のように、ヘイトスピーチは単なる言論ではなくて、ヘイトクライムの一類型である差別扇動であり、差別、脅迫、暴力、迫害の文脈で語られておりますし、最悪の形態がジェノサイド、いわゆる大量虐殺や人道に対する罪というふうにされるわけでありまして、これは、一歩間違えば、そういった本当に大規模な事件や事故につながりかねないという懸念というか危機感を私も持っておるところでございます。

 まず政務官、民主主義国家におけるヘイトスピーチ、ヘイトクライムの処罰というのは、当然、国際的にも常識でございまして、報道を少しつけておりますけれども、表現の自由の文脈で語られる余地などはないわけでございます。

 ちなみに、民主党におきましては、このヘイトスピーチに対する対策の法案を国会に提出する予定もあるところでございます。

 現状におけるヘイトスピーチに対する法務省の認識、そしてこれまで講じてきた施策、今後の対策について御答弁をお願いいたします。

大塚大臣政務官 まさに、ヘイトスピーチ、特定の民族や国籍の人々を排除しようという言動は、人々に不安感、嫌悪感を与えるだけではなくて、差別意識を生じさせるということにつながりますので、極めて残念であり、あってはならないことと考えております。

 このような言動に対しては、現行法でもさまざまな適用が可能でございますので、これを適切に適用して対処していくと同時に、これは人々の心の問題でもございますので、粘り強く、かつ地道な啓発活動、こうした啓発活動を通じて社会全体の人権意識を高めていく、こうした言動が許されないことなのだという認識を醸成していくということが極めて重要であるというふうに考えております。

 法務省の人権擁護機関においても、従来から外国人の人権というテーマで啓発活動に取り組んできたところではございますけれども、上川大臣のもと、さらなる取り組みの強化ということを行っているところでございます。

 具体的には、こうしたヘイトスピーチがあってはならないということを皆様に御理解いただきやすい形であらわした、より効果的な啓発活動ということで、その一環として、ヘイトスピーチを許さないというメッセージを、今、駅等でも掲示されておりますけれども、こうしたポスター等を各種媒体において明確に示していくということとともに、ヘイトスピーチによる被害などの人権に関する問題の相談窓口、これを、ナビダイヤルで一本化した電話番号なども周知しまして、こうしたところで受けていく、こうした取り組みを進めているところでございます。

 今後も引き続き、こうした取り組みをさらに一層進め、ヘイトスピーチの根絶に努めてまいりたいと考えております。

柚木委員 今の答弁を踏まえて大臣に一、二確認をさせていただきたいんですが、今申し上げましたように、このヘイトスピーチ、ヘイトクライム、これは本当に、世界で見ても、表現の自由というふうな、私、あえてこの報道を三ページ目につけましたが、法務省の、これは人権擁護局ですか、「表現の自由を妨げる可能性があり、慎重にならざるを得ない」というような、これはあくまで記事ですが、私は、決してそういう表現の自由の文脈で語られるような余地はない。もっと言うと、次の報道資料にもつけておりますが、国連でも規制を求める意見が出されておるところで、放置は許されない状況にある、あるいは既にそういった動きがあるということであります。

 大臣、これは、ヘイトスピーチというのは表現の自由という文脈で理解されるべきではないと私は考えますが、その認識はいかがですか。

上川国務大臣 外国人に対してのヘイトスピーチということで、さまざまな人権侵害あるいは偏見に対して、特にヘイトスピーチを取り出して、それに焦点を当てながらこの問題に取り組むということについては、明確にお話をさせていただいてきたところでございます。

 特定の民族、国籍の人々を排除しようとする言動につきましては、これは、人々に不安感また嫌悪感を与えるだけではなく、差別意識そのものを生じさせることにつながりかねないということでございまして、極めて残念でありますし、また、あってはならないことというふうに考えているところでございます。

 偏見、差別の解消に向けて、あらゆる対策、取り組みをしてまいりたいというふうに思っております。

柚木委員 表現の自由という文脈ではない、そういう大臣の認識でいいということになるんですかね。もうちょっと端的に、明確にもう一度お答えいただけますか、その次の答弁とかかわるので。

上川国務大臣 それが行き過ぎた形になった場合にどのようにしていくかということにかかわることだというふうに思いますけれども、正当な言論の間のぶつかり合いということもございますので、不当な萎縮をさせることがないという形であるとするならば、それは、関係がない。まあ、関係がないというわけではございませんけれども、表現の自由との関係でバランスをとるということになろうかというふうに思います。

柚木委員 今の御答弁だと、この後の質問が、ちょっと、私は非常に御答弁が不安になるわけでございます。

 というのが、四ページ目につけておりますが、自民党内で、これは当時の報道ですが、ヘイトスピーチと国会周辺のデモをそれぞれ同列に規制するというような報道がなされておりまして、理事の先生の中にも自民党内のそういった議論を主導されている先生がおられると思いますから、現状はもう少し違う議論になっているのかもしれませんが。

 大臣に伺いたいのは、ヘイトスピーチと、それから、官邸周辺でも、原発反対のデモとか、いろいろ行われておりますが、これは、私自身は、全く別物だ、つまり別の問題である、そういうふうに認識をしておるわけですが、大臣、これは別の問題という認識でよろしいですか。

上川国務大臣 具体的な現象を見て、これは一律にこうだということについてはなかなか申し上げることができにくいというふうに思います。いろいろな事象をしっかりと客観的に判断していくべきものであるというふうに思います。

柚木委員 そうすると、今ちょうど、原発反対のデモとか、具体的にそういうデモの行進とかがあるわけですが、内容によってはヘイトスピーチとデモとを同様に規制するということが個別の判断の中であり得る、そういうふうにも受けとめられるわけですが、そういう認識ですか。

上川国務大臣 しっかりとした法律にのっとって適正に行われる行動につきましては、これは適正なものというふうに考えます。

柚木委員 そうすると、原発にしても、あるいは今後、安保法制等、集団的自衛権の議論、あるいは特定秘密保護法の施行に伴うさまざまな懸念もあるわけですが、そういったそれぞれのテーマに対するデモ等については、法的にしっかりとルールの中でそういったデモが行われるということについては、ヘイトスピーチと同列に規制するということではないというふうに私は今確認しましたが、それでよろしいですか。

上川国務大臣 さまざまな活動につきまして、法律にのっとって適正に行動するということについては、委員がおっしゃるとおりだというふうに思います。

柚木委員 これについては、やはりそういった認識のもとでしっかりと対応いただかないと、ヘイトスピーチが表現の自由で、他方でデモは規制と同列に扱うというようなことになっては、本当に私どもとしては危惧する方向になってしまいかねないと思いましたので、今確認をさせていただきました。今後もそういったしっかりとした認識のもとで、自民党内の議論を私はちょっと承知していないわけですが、政府としての御対応をいただきたいと思います。

 それから、ちょっと時間が減ってきましたので先に進ませていただきますが、資料の五の方に、これは、IS事件、非常に痛ましい、あってはならない事件があった中で、もちろん、そういったことはあってはならないわけですが、それに付随して、我が国の国内で、イスラムに関係する施設であったり、施設というのは、普通の、何ら問題がない、そういった施設であったり、その子弟、子供たちに、日本から出ていけとか、家族構成はわかっている、殺すとか、脅迫があったり、あるいは以前からそういった強い偏見があり、これは四パラのところに書いてありますが、小学校の子供が、友達から、おまえ、体に爆弾を巻いているのかと聞かれて、クラスが笑いに包まれたが、先生は放置した、これを機にその生徒は一時期不登校になったと。

 今回のこういった、あってはならないテロなわけですが、それに関連して、全く関係のない国内の子供たちにヘイトが向かってくるかもというふうな非常に強い懸念を持っているという報道を紹介させていただきました。

 繰り返しますが、テロは決して許されるものではございませんし、そのための対策は、当委員会の中でも、さまざまな法律の制定も含めて講じてきたところでございます。他方で、やはりこの報道のような嫌がらせのようなこともあってはならないことでございます。

 これはそれぞれ、法務省と、関連して文科省に伺います。

 まず法務省の方に、国内在留のイスラム教徒やモスク、これは、国内に現在約八十カ所、イスラム教徒の方々が約十万人というふうに承知をしますが、こういった皆さんに対しての、あるいは施設に対しての嫌がらせというか脅迫というか、そういった事案について把握をされているかどうか、また、それに対して対応する措置を講じてきているかどうか、お答えをいただけますか。

岡村政府参考人 イスラム教の礼拝施設であるモスクにおどしや嫌がらせを内容とする電話が相次いでいるなどという報道については承知いたしております。

 個別の人権侵犯事件の内容についてはお答えを差し控えさせていただきますが、法務省の人権擁護機関では、被害者からの申告などに基づき人権侵犯の疑いのある事案を認知した場合には、遅滞なく人権侵犯事件として調査を開始し、被害者の救済に努めるなど、事案に応じた適切な措置を講じるよう努力いたしております。

 また、こういった個別事案への対応とは別に、法務省の人権擁護機関では、人権相談・救済制度の周知に努めており、人権の一つの課題として、外国人の人権を尊重しようというスローガンのもと、講演会などの開催、啓発冊子の配布など、啓発活動を実施しているところであります。

柚木委員 文科省の方にもお尋ねをします。ちょっと時間が迫ってきているもので、端的にお答えをいただきたいと思います。

 今のような事例、これは当然、文部科学省としても、状況の把握、そして対策を講じていくということが非常に重要だと思います。多分、二つに分けて聞いているんだと思いますが、まとめて伺います。

 その現状の対応に文科省としてどのように取り組んでいるか、特に、こういった事案が起こったときの即応的な対応というものも求められると思いますので、これはまさに、多文化共生を進めていく、広い意味では、観光立国も含めて、異文化コミュニケーション、共生社会というものを本当の意味で根づかせていくために、これは文科省としての認識や対応も非常に重要になってくると思いますが、恐縮ですが、端的な御答弁をお願いいたします。

伯井政府参考人 お答え申し上げます。

 文科省といたしましては、児童生徒の多様性を尊重することは重要であるというふうに考えておりまして、外国人児童生徒の学校での受け入れに当たりまして、学校生活で、イスラム教圏の子供への配慮も含めまして、その宗教的背景の違いについても配慮するよう、各教育委員会等に手引などを配って周知徹底を図っているところでございます。

 今後とも必要な取り組みを進めてまいりたいと思っておりますし、また、多文化共生を進めるための学校教育内でのカリキュラムにつきましても、小学校の社会科におきましては、外国の人々とともに生きていくための多文化共生の教育、あるいは道徳におきましては思いやりの教育などなど、しっかりとした教育を進めてまいりたいと考えております。

柚木委員 きょうはもう確認しませんが、私申し上げたように、やはり何か起こったときの即応的な対応といったものが非常に重要だと思いますので、そういった点に留意をいただいた御対応をお願いしておきたいと思います。

 それから、残りの時間、大臣の方にお伺いしていきたいわけですが、資料の六以降ですね。

 外国人技能実習制度、今後、この法案審議の際に、より個別の話を確認していくわけですが、これまで、さまざまな労働関係法令違反、人権侵害が繰り返されてまいりまして、資料六については、中国人の実習生と雇用主とのやりとり。タイムカードはありますか、そんなものはありません、なぜないのか、あると全部調べられちゃうからだめだ、あなたも中国に帰されることになるよと。その実習生が改善措置を訴えたところ突然解雇されたとか、さまざまな事案、本当に驚くような実情が、これはNHKのBSの番組の資料をちょっとつけておきましたが、本当に、夜間労働も当たり前で、割り増し賃金は、雇用主は、払わなくていい、本人がそう言っているとか、かなりあり得ないようなことを、しかも、監督する方とあっせんする方が同じ団体がやっているとか、さまざまな問題点が番組の中でも指摘をされております。

 資料八にもつけておりますが、アメリカ国務省の人身売買報告書の中でも、これは政府による強制労働と指摘をせざるを得ないと。そういった、国際的にも非常に問題視されてきている外国人技能実習制度があるわけでございます。

 これは、大臣、現状の中で、今般提出の出入国管理及び難民認定法の一部改正法案及び外国人技能実習適正実施・実習生保護法案、これは、本当に国内外からの厳しい評価に耐え得るような形で適正化し得るのかどうなのか、私は非常に懸念を持ちます。

 冒頭の中でも指摘がありましたが、資料七にも、過酷労働の悲劇、外国人技能実習生二万五千人が失踪、入管としては非常に深刻な問題で、平成二十六年は過去十年間で最多の四千八百人、こういった状況もあるわけです。こういった実情の中で本当に適正な対応をしていけるのかどうなのか、非常に私は懸念や疑念を覚えるところでございます。

 どのような形で、報告書、あるいは報道、さらには過酷労働の実態に対応していくお考えなのか、お答えいただけますか。

上川国務大臣 委員がお示しなさった資料の中でも、大変厳しい現状があるということで、あらゆるところから報告が出ているところでもございます。割り増し賃金の不払いはもとより、旅券とか在留カードの取り上げ等の大変不適切な事案があるということでございます。また、アメリカ国務省の人身売買報告書におきましても、お示しいただきましたとおり、制度の改善要請がなされているというところでございます。

 本来、技能実習制度というのは、技能の移転によりまして国際貢献を図っていくということで、その制度の本来の趣旨というのがあるわけでございます。その徹底をいかに図れるかということについては、現行の枠組みの中では不十分であるというふうに思っておりまして、今般国会に提出させていただきました法案におきましては、その改善のためのさまざまな対策について盛り込ませていただいているところでございます。

 代表的なところで申し上げますと、監理団体につきましては許可制にする。あるいは、技能実習計画につきましても認定制を導入する。また、外国人技能実習機構において、実地検査等の指導監督を実施する、あるいは技能実習生に対する相談や援助につきましてもきめ細かな対応をしていく。あるいは、旅券の取り上げ等につきましては罰則を新設する。こういうようなさまざまな施策を、いろいろな角度の御議論をいただいた上で、それを踏まえて今回の法律に盛り込んできたところでございます。

 この段階で御審議をいただきまして、技能実習制度そのものの本来の趣旨につきましてその徹底を図っていくということ、そして同時に、現状、大変厳しい状況の中でこの適正化を図るということについて、大変大きな課題をしょっての法案の審議をお願いしているところでございますので、この本来の趣旨にしっかりと貢献することができるようにしていくということについては、全力で取り組んでまいりたいというふうに思います。

柚木委員 これは、今後の法案審議が仮に行われた場合には、まだまだ確認をしていかなきゃいけない部分があると思うんですね。この外国人労働力、労働者については、やはり低賃金労働力として無原則な形でどんどん受け入れていくというような流れが、もちろん一定のルールはあるわけですが、実態として、よく言われる、例えば建設関係、介護関係、もちろん、しっかりとしたスキルを持って、そういう意味で国内の労働人口減少をいい意味で補完し得る形であればまだしも、そうでない形でどんどん門戸を広げるということになると、これは、国内の、既に従事している方々の労働環境の悪化にもつながりかねませんし、家事労働もそうですけれども、逆に、入ってこられる方々にとっても、最初に思っていたことと全然違うような実態じゃないかということになって、国内外双方にとってよくないという負の連鎖が起こりかねません。

 これは、大臣、この外国人労働者の活用については、御承知のように、例えば韓国とか台湾などが、はっきり言うと我が国に先行してしっかりとした受け入れ体制のもとで行ってきているということに比較すると、我が国の対策というのは非常にまだおぼつかない部分がある、そういう状況だと認識をしておりますので、これは本当に、低賃金労働力としての、いわば無原則の外国人労働者受け入れにならないような形でしっかりと政府としての対応をお考えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 ただいま、労働力という形の中の賃金との関係という御指摘がございまして、外国人の方々にさまざまな分野で技能実習をしていただくということにつきましては、賃金の面につきましても、しっかりと日本人と同等額以上の報酬を受けるということを要件としているということでございますので、そういった面につきましても十分に対応していく必要があるというふうに思っております。

柚木委員 時間ですので終わりますが、ぜひ、真の多文化共生といいますか、ダイバーシティー社会を、観光立国とともに外国人労働力の受け入れについても、これは、国の安定と多様性の受容というものを両立し得るような仕組みをつくっていかなければ、我が国に対する外国のイメージ、あるいは、テロなども含めた負の連鎖というものが、ともすれば、大げさな言い方をすれば、中長期的に見たときに根深いものになって、そういったことに本当につながってしまってもならないわけでありますので、そういった部分へのしっかりとした対応をこちらからも要請いたしまして、質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 鈴木貴子です。

 今回も、前回に引き続きまして、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に係る質問ということで、特に、証拠開示制度の拡充の必要性、再審事件の証拠の開示、証拠品管理の法整備の必要性、そして冤罪被害者の保護と権利などについて、大臣を中心に質疑をさせていただきたいと思っております。

 以前も、大臣所信を受けてだったかとは思うんですけれども、この委員会での答弁で、冤罪はあってはならないというふうに大臣御自身が答弁もされております。しかしながら、犯罪被害者への補償や刑事手続への参加などの施策もとられている中で、冤罪被害者の補償であるだとか保護、こういったものは明らかにおくれているのが現状だと思います。

 まず、大臣にお伺いしたいんですけれども、冤罪被害者の保護と権利、もっと言えば、それに対しての国の責任について、大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

奥野委員長 まず、先に向こうでいいですか。(鈴木(貴)委員「大臣に。見解ですから」と呼ぶ)とりあえず先に向こうに言わせて。(鈴木(貴)委員「いや、委員長」と呼ぶ)

 鈴木君。

鈴木(貴)委員 あくまでも見解ですので、よろしくお願いします。

上川国務大臣 ただいまの御質問、無罪判決が確定した者に対してということで、一般論として申し上げたいというふうに思います。

 刑事訴訟法等により、身柄拘束をされた後、無罪の判決が確定した場合におきましては、刑事補償法に基づきまして、補償を求めることができる、そうした刑事補償法の規定がございます。

 また、刑事訴訟法に基づきまして、その裁判に要した費用の補償をするということでございます。

 また、国家賠償法による賠償ということでございますが、刑事補償法による補償を受けた場合でありましても、その身柄拘束が国家機関の故意過失に基づくときにおきましては、国家賠償法に基づきまして損害賠償を請求することも可能でございます。

 また、年金関係ということでございますけれども、死刑再審無罪者に対し国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関する法律が制定されまして、これに基づきまして、死刑再審無罪者につきましては、身柄拘束期間中に年金保険料を支払っていなかった場合、改めて年金保険料を納付することができるようになり、また、年金保険料が支払われれば、年金や特別給付金を受け取ることができるようになったところでございます。

 無罪確定者に対しまして、こうしたさまざまな法律にのっとりまして救済が行われるということであるというふうに承知をしているところでございます。

鈴木(貴)委員 今、大臣から、制度についての非常に具体的な答弁をいただきました。事務方が手を挙げられたんですが、あえて大臣にと申したのは、制度についての具体的な中身ではなく、あくまでも大臣がこの冤罪被害者の保護また補償についてどう思われているかというのを確認させていただきたかったという思いがありました。

 そして、今、大臣の答弁を伺いながら、非常に冷静に、事務的な答弁をいただきました。最後、救済が行われるものと承知をしていると。

 制度としてあるのは私ももちろん存じておりますが、大臣としては、救済の必要性についてどのようにお考えでしょうか。

上川国務大臣 無罪の判決が確定した方たちに対しまして、それぞれの状況に応じてさまざまな施策について支援をしていくということについては、これは当然のことであるというふうに思っております。

 先ほど、さまざまな法律にのっとって対応をということでありますけれども、それがそれぞれの方にとりまして十分になっているかどうかということについては、それぞれケースもございますけれども、しっかりとルールにのっとって対応していくということについては丁寧にやっていかなければいけないというふうに思っております。

鈴木(貴)委員 先ほどと違って温度感のある答弁をいただきまして、ほっとしたところであります。さすが上川法務大臣であると思いながら、質疑を続けさせていただきたいと思います。

 今大臣がおっしゃられましたように、刑事補償法というものが既にもう制定をされております。無罪判決を受けた場合の、元被告になるわけですが、不当な身柄の拘束についての補償金であります。つまり、身体的もしくは精神的な苦痛に対しての補償ということであります。

 この補償法が制定されたとき、実はこれは一日によって金額が決まっているんですが、二百円以上四百円以下というものでありました。これが平成四年に改正をされまして、千円以上一万二千五百円以下となりまして、現在に至っております。これは平成四年に改正ということでありますので、今、平成二十七年ということは、もう二十数年、二十三年ほど経過をしたということであります。この二十三年の中で、物価も含め、経済状況、ありとあらゆるものが変わってきたかと思います。

 また同時に、あくまでもこれは無罪判決を受けた者で、いわれなき犯罪等で自由を、そして、もしくはその方の社会的立場、ありとあらゆるものを失われたということも考え得ると思います。

 この補償の上限が一万二千五百円というものが果たして妥当なものなのかなと。また同時に、この千円以上一万二千五百円以下という、これが妥当なものであると改正をされた、そもそもの背景を教えていただけますでしょうか。これは事務方で結構です。

林政府参考人 まず、刑事補償法による補償というものでございますけれども、委員御指摘のとおり、昭和二十五年一月一日当時、一日四百円以下ということになっておりました。それがその後、九回ほどの法改正を経て、平成四年改正以降は一日につき一万二千五百円以下というふうになっております。

 まず、こういった形で刑事司法、刑事裁判において無罪が確定した場合に、そういった形での当の被告人であった人、あるいは執行を受けていれば受刑者であった人、これに対しての補償というものについて、これは国家権力の、公権力の行使についての補償をどのようにするかということが考えられるわけですが、これはまさしくいろいろな法制度で異なっておりますけれども、基本的には、この刑事補償は、補償については一定の範囲では国家機関の故意過失を要件とせずに、簡易な手続により一定の標準的な金額の範囲内で補償を迅速に行うということによって、身柄拘束を受けた者に対して実際上効果的な補償の道を開いた制度でございます。

 もとより、こういった被告人であった人についての損害となりますと、基本的には、先ほど大臣からも言及がございました国家賠償法というものがございます。国家賠償法の場合には、故意過失がある場合には損害の全額について賠償がなされる、故意過失があれば国家においてその責めを負う、賠償する責任がある、こういうことになります。

 この刑事補償法については、一般の損害賠償とは異なりまして、必ずしも全損害を填補する趣旨ではございません。したがいまして、その都度、財政事情の許す範囲で、でき得る限りの引き上げがなされてきたものでございます。この上限額によっての補償をもっては被害回復に不十分であるという場合には、先ほど申し上げました、原則であるところの国家賠償というもので刑事補償金を超える賠償を請求するということになります。

 こういった形で、この刑事補償の金額につきましては、これまで累次の改正が行われてきたものでございまして、通常の場合は、一般の給与水準であるとか消費者物価等の上昇率を考慮して引き上げられてきたものでございます。

鈴木(貴)委員 非常に細かく、国家賠償の方にまで言及をしていただきましたが、千円以上一万二千五百円以下、この金額の根拠というものを私は聞きたかったのですが、そこは今の答弁を聞いても明らかにされていないな、このように感じているところであります。

 そしてまた、この基準額自体もそうなんですが、当初は、この基準額は二百円以上四百円以下、つまり、最低、ボトムラインと最高額の差というのは二倍でした。ただ、今は、千円以上一万二千五百円以下となりますと、これは十二・五倍の差にまで開いているんですね。この差がどうしてここまで開いてしまっているのか。これは、刑事補償においても格差社会が広がってきているのかなと非常に危惧をしているんですが、この格差が十二・五倍にまで上がっているところについての根拠を教えてください。

林政府参考人 これにつきましては、刑事補償というものが必ずしも全損害填補ではなくて、簡易な手続で一定の金額の範囲内で補償を迅速に行う、その場合には故意過失を要件としない、こういったものの範囲でこの刑事補償の金額を定めたものでございますが、これは最終的には、裁判所におきまして、さまざまな御事情を考慮して一日当たりの金額を定めるという制度になっております。そういった場合の幅という形で、現行法のような形で、一日当たりの金額というものについて裁量の幅を設けたという趣旨でございます。

鈴木(貴)委員 正直、私、今の答弁も余り納得ができないといいますか、非常に理解に苦しむんですね。

 林刑事局長は、先ほど、刑事補償法もある、しかしながら、同時に、その上のステップとして国家賠償法もあるというふうにお話をされたわけです。

 つまり、まず無罪となった方の補償の第一の入り口というのは、この刑事補償法なんですね。ということは、その一番最初の入り口のところで十二・五倍の幅がある、裁量に幅を持たせたということは矛盾をしないのかなと。国家賠償の方で裁量の幅があるというのであればまだ理解ができると思うんです。しかしながら、国家賠償ではなく、あくまでも入り口である刑事補償法で十二・五倍の格差。

 これはやはり基準の額についても改めて検証する必要があるのではないかと思うんですが、大臣、どのようにお考えでしょうか。

上川国務大臣 平成四年に引き上げられたということでございますが、その当時の議論の状況ということでございますけれども、現行の上限額一万二千五百円ということでございますが、これは一般の給与水準と消費者物価の上昇率を考慮して引き上げられたというふうに承知をしているところでございます。

 今、一千円と一万二千五百円で十二・五倍ということでございますが、さまざまな個別の事情があるということでそうした幅を設けているとは思いますが、それについてどういう根拠があってということについては、直ちに私、今手元にございませんので、お答えすることができない、お許しいただきたいと思います。

鈴木(貴)委員 大臣、安心してください。私は、今の質問では根拠は聞いておりませんでした。しかしながら、逆に、今の答弁で、根拠が答えられないということがわかったというのは私にとってはいい収穫の一つだったな、このように思っております。

 先ほど、一番最初の質問で、大臣から、必要な救済、しかるべき救済、補償についてはやっていかなくてはいけない、このような答弁をいただきました。

 それでは、大臣、これはお伺いをしたいんですけれども、同じように刑事訴追を受けて、しかも無罪が確定した者で、しかしながら身体拘束を受けなかった者というのはこの補償の対象外になっております。

 これは、例えば保釈などで身体的な拘束はされていない、しかしながら、実際に社会的な制裁といいますか、例えば会社を退職を余儀なくされたであったりだとかやめさせられてしまった、そういったさまざまな制裁、不利益というものを受けるということは容易に考えられるかと思います。こういったケースに対してもしっかりと国として補償するべきではと思います。また、先ほど大臣みずから、しかるべき補償はしていかないといけない、このように申し述べられておりました。

 身体拘束を受けていなかった者が今現在対象外になっている。この件について、大臣として、補償の対象の中に入れるという考えはお持ちでしょうか。

林政府参考人 刑事補償の考え方というのは、国に無罪についての故意過失等がなかった場合も含んでおります。したがいまして、そういった場合に、本来、故意過失があって国にその賠償の責任があるものについては、先ほど来申し上げているように、国家賠償法においてその被害が回復されるということになります。

 現行法上で、刑事補償法で身柄が拘束された場合に限っているのはそういう趣旨がございまして、この身柄拘束というものが各種の公権力の行使の中でも極めて特殊なものであること、そしてまた、身柄の拘束というものは、刑事手続の性質上その必要性が肯定されているものである反面、これを受ける側にとっては極めて不利益な処分であって損害が重大である、こういった定型性のある身柄拘束というものに着目して、これについては故意過失を要求せずに補償をする、賠償ということではございません、補償をするという形で刑事補償法ができているということでございます。

鈴木(貴)委員 大臣からも答弁をお願いします。

奥野委員長 仕掛けを言ったわけだから、それでいいんじゃないですか。

 もう一度、鈴木さん。

鈴木(貴)委員 質疑者は鈴木貴子でありますので。

 大臣、もう一度、今刑事局長からも事務的な側面での答弁はありましたけれども、改めてお尋ねをいたします。

 大臣は、無罪判決が下った者に対しては国としての補償の義務があるというような趣旨のことを先ほど答弁でも述べられておりました。しかしながら、今現在、対象外となっている人たちもおります。そしてまた、その人たちというのも、例えば在宅で起訴された、しかしながら結果として無罪になった、しかし、無罪になったけれども、結果として、やはり社会的制裁、例えば退職を余儀なくされたであるとか、さまざまな社会的制裁を受けたということは容易に考えられると私は思うんです。

 そういった人たちが今現在この補償の対象外になっているというのは、これは私は非常に問題があると思うんですが、大臣、この今対象外になっている人たちの補償について、必要と思っていらっしゃるか、それとも今の現行法のまま対象外で構わないと思っていらっしゃるのか、大臣の見解を教えてください。

上川国務大臣 今局長から御答弁があったところでございますが、この刑事補償法そのものの趣旨につきましては、対象として、身柄拘束に対する補償という制度設計がなされたということでございますので、あくまでこの身柄拘束に対しての補償ということにとどまるのではないかというふうに思います。

 ただ、国家賠償という制度もございますので、そうした法律にのっとった対応ということにつきましては、これはあり得るというふうに思います。

鈴木(貴)委員 なぜ私がこれについて質問をしたかというと、こうした制度をしっかりと持つということが、ある種、双方にしかるべき緊張感を与え、冤罪というものは起こり得るんだ、だからこそ、その起こり得るという危機感を持ち続けるということが公正公平な捜査そしてまた司法につながってくるのではないのかな、このように思っております。そうだとすれば、冤罪被害者に対しての補償についてもしっかりと国で責任を持つ、言いかえれば、法で制度化する、法整備をするということが重要である、私はこのような思いを持っております。

 続いて、証拠開示制度に質問を移らせていただきたいと思います。

 まず、大臣にお尋ねをしますが、裁判において、有罪、無罪、これを大きく左右する一つに、証拠品、証拠というものがあるかと思います。この証拠というものは、誰の所有、誰の財産であると大臣はお考えでしょうか。

奥野委員長 最初に事務方。後で大臣に答えさせるから。

 林局長。

林政府参考人 証拠は誰のものかということでございますが、刑事訴訟法また刑事訴訟の手続におきまして、証拠が誰のものであるかという観点では、その法制は定められておりません。

 すなわち、捜査、公判に必要なものとして証拠が、例えば証拠品であれば、それが押収されます。その場合に、その押収されたものは、所有権そのものには何ら変更を加えません。最終的にはその被押収者に還付されるというような形で証拠品の処分がなされていきますので、基本的に、誰のものであるかという形での法制度はつくられていないと答弁させていただきます。

奥野委員長 今の質問に対して、僕は答えだと思うけれども、それでいいですね。大臣が答えたって同じ答えになるから、そう言っているんですよ。

鈴木(貴)委員 大臣、今、刑事局長も、実際にこれは法で定められたものではないという答弁でありました。ゆえに私は大臣に伺ったわけであります。大臣なりの答弁というものを私は期待をしていたところなんです。

 今の答弁を聞いているだけでも、逆に言えば、誰のものと法で定められているものではないということは、もちろん検察の、捜査当局のものではないということでよろしいでしょうか。これは、よいか悪いかだけで事務方に答えていただければと思います。

林政府参考人 もとより、証拠というものは、基本的に公判における裁判において使用されるものでございまして、それが両方の当事者、検察官、あるいは被告人、弁護人、それぞれのものである、それだけのためのものであるという性格のものはございません。

鈴木(貴)委員 ということは、どこか一つのところ、組織、また個人に属するものではないという意味からは、証拠というものは公共、公のものになってくる、また、こういう考えも実際にあるわけであります。

 なぜかといいますと、この証拠というものは、あたかも有罪を立証するためにあるものではなくて、真実を明らかにするものである、まさに社会全体の治安の維持、こういう観点で考えれば、公共の財産といいますか、公共のための証拠であるというふうな考えができるかと私は思っております。

 そこで、大臣にお尋ねをさせていただきます。

 検察庁のホームページにも書かれているんですけれども、「検察は、国家社会の治安維持に任ずることを目的とし、」とあります。つまり、検察自体が公益のための存在である。また、検察は、そうした観点からも、裁判所に起訴する権利があったり、また公判手続においては裁判所に法の正当な適用を請求する権限が与えられております。

 検察の訴訟活動というのは、単に被告人の有罪を求めることでもなければ、検察自身のメンツを守るためでもなく、あくまでも治安の維持のための真実の究明を目指した公正なものということだと思っております。つまり、検察官が集めた証拠というものは、今私が申し上げましたように、公正な刑事裁判手続を実現するためのものであり、そういった意味でも、先ほど申し上げましたように、公共の財産と言われる一つのゆえんであると思っております。

 したがって、これらの証拠を相手方当事者でもある被告人及び弁護人に開示することこそ、公正な刑事裁判手続を実現する検察官の責務にほかならないと思いますが、大臣、いかがお考えでしょうか。

奥野委員長 さっきから証拠は誰のものなんだというところが食い違っているんじゃないかと思うんだけれども、もう一度、証拠は誰のものだというのを言ってくれますか。

 局長。

林政府参考人 証拠につきましては、よく積極証拠、消極証拠などと言われることがございます。

 どういうことかと申しますと、犯罪事実を立証することに資する証拠というものは積極証拠と言われます。他方で、逆に犯罪事実がないのではないかという形で働く、それに資するような証拠は消極証拠と言われております。それ全てが証拠でございまして、検察官側が犯罪事実を立証するためのものだけが証拠というものではございません。

奥野委員長 証拠は誰の所有物だということについて、さっき言っていたでしょう。

 局長。

林政府参考人 先ほど、証拠というものが誰のものであるかというものはないと申し上げました。

 さらに言えば、例えば、検察官が集める証拠は検察官が犯罪事実を立証するためだけの証拠であるかというと、そうではございません。当然、検察官のもとに消極証拠というようなものが集まることがございます。そういった意味におきまして、犯罪事実を立証するというプラスの方向に働くものだけが証拠であるわけではございません。

 また、検察官の集める証拠ということも、これは各国の検察官のあり方によって異なりますが、特に消極証拠というものについて考慮せずに積極証拠だけを考慮してもいいという法制度をとっている国もございますけれども、少なくとも、我が国におきましては、検察官のもとに、積極証拠も収集されることがあるし、また消極証拠も収集されることがあるということでございます。

鈴木(貴)委員 証拠はいかに使われるか、何のために存在するのかという意味で考えれば、今もあったように、もちろん検察のためでもなく、公正な刑事裁判手続を進める上で証拠というものは存在をしている、こういうことだと思います。

 そういった意味でも、公正公平な手続を踏むという意味では、相手方当事者、被告人及び弁護人にもしっかりと証拠を開示するということこそ、公正な裁判手続を実現する手だてになるかと思いますが、大臣、どのように考えられますでしょうか。

上川国務大臣 公判におきましては、法と証拠にのっとって適正に判決に至るという、そういうプロセスがございます。

 今、証拠ということでありますけれども、真実を明らかにするために、証拠については、先ほど積極証拠、消極証拠ということでございましたけれども、さまざまな証拠を収集して、そして公判に資するようにということが趣旨であるというふうに思っております。

 先ほど、委員から、捜査機関が収集、作成した証拠が公共の財産であるかどうかというような御指摘もありましたけれども、刑事裁判におきましては、証拠がどのように被告人側に開示されるべきかということと別の問題であるというふうに思っておりまして、公共の財産であるからといって直ちに全ての証拠が開示されるということにつきましては、そうではなく、証拠開示の意義、必要性、開示による弊害等を踏まえて検討すべきものであるというふうに思っております。

 現行の証拠開示制度におきましては、争点及び証拠の整理を全うしつつ、被告人側の防御の準備のために必要な証拠が適切に開示をされることになっているというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 法と証拠にのっとって真実を明らかにする、そういった意味でも、やはり捜査側だけではなく弁護人側にもしっかりと証拠を開示して、その上で、まさに法と証拠にのっとって刑事手続を進めていくというものが正しい、公正公平なあり方ではないのかな、私はこのような観点で今も質問をさせていただいております。

 そしてまた、この証拠開示で私が指摘をさせていただきたい課題で、被告人または弁護人から請求があれば証拠の一覧表、証拠リストを交付しなければならないとしながらも、ここでもまた、検察官の一定の裁量で証拠を開示しないこともできてしまう。これは非常に曖昧な例外規定であると思っております。

 この例外規定、しかも検察側による、まさに検察のためのと言ってもいいのではないかという例外規定、この例外規定を私は廃止すべきだと思いますが、大臣、どのようにお考えでしょうか。

林政府参考人 今委員御指摘の点は、証拠の一覧表の交付手続というものを今回法改正で新設するということにかかわることと考えます。

 まず、証拠の一覧表の交付制度の目的でございますが、これは、後に行われます証拠開示の手続を円滑に行うため、被告人側に証拠開示請求をするための手がかりを与えるという形でこの一覧表が交付されます。この一覧表というものの中には、例えば、書面の標目であるとか作成の年月日あるいは供述者の氏名、証拠物については品名とか数量、こういったものが記載されます。いわば証拠のリストということになります。その中で、一部、一定の場合に記載しない事由を設けてもいいという形で今回の法改正の中でつくっております。

 これは、例えば供述者の氏名等が被告人側に明らかになって加害行為がなされるなど、こういった弊害があるような場合には、その項目については記載をしなくてもいい、そういう制度になっています。この点を御指摘だと理解いたします。

 なお、こういった弊害を防止する必要があるということで、今回そういった一定の事項について部分的に記載しなくてもいいという制度を設けるわけでございますが、これは、証拠開示そのものについて、今言ったような例外に当たるようなものについては証拠開示をしなくてもいいということを言っているのではございません。あくまでも、証拠開示に先立つ手がかりを得るためのリストの中で記載されていない事項につきましても、証拠開示の対象にはなり得ます。

 証拠開示の手続というものは、現行法上、公判前整理手続において極めて詳細な要件がございまして、争点の整理とか主張の整理に沿う形で、順次、証拠開示がなされていく制度がつくられております。場合によっては、証拠開示の紛争が起きたときには裁判所が開示するかどうかの裁定をするような手続がもう用意されております。

 その手続の中においては、手がかりとしての証拠の一覧表の中で書かれていないからといって、それが証拠開示手続の対象にならないわけではございません。

鈴木(貴)委員 弁護側にとって、どういった証拠があるか、こういったものを見るには、やはり証拠一覧表というものが鍵だと思います。その一覧表になくとも開示請求ができるというのはどういったことなのか、刑事局長、改めてもう一度説明いただけますでしょうか。

林政府参考人 現行法上の公判前整理手続におきまして、争点及び証拠の整理と関連づけられた形で証拠開示請求ができるという現行の仕組みでございます。こういった形で現在も行われております。

 したがいまして、現在は、今回新設する証拠の一覧表の交付というのは行われておりません。それでも、実際の公判前整理手続におきましては、まず検察官が自分の請求する証拠を開示いたします。その後、被告人側から請求されますと、ある一定の類型の証拠については検察官が証拠を開示いたします。さらには、被告人側の当該事件についての主張を明確に知った場合には、その主張に関連する証拠も検察官側は開示しなくちゃいけない。こういう段階的な形で証拠開示が実際になされております。

 現在、そもそもこのリストというものはございません。そういった形でも、証拠開示請求、それに対しての検察官の証拠開示、あるいは紛争が起きたときの裁判所の裁定というのは、当然なし得るものでございます。

鈴木(貴)委員 今も、なくとも証拠の請求ができているというお話だったんですが、例えば、ついこの間、もしかしたら委員の皆さんもニュースなどで見られたかもしれないんですけれども、強姦などの罪で懲役十二年の実刑が確定をした男性が、服役から約三年半後に再審決定及び釈放をされました。

 この再審決定そして釈放の理由、主に大きく二つあるんですけれども、その一つが、被害女性が男性の弁護人に、実は証言は全てうそでしたと告白をされました。もう一つ大きな理由は、女性の体に性的被害を受けた痕跡がなかったとする当時の医師の診療記録、カルテが出てきた。この二つがあって、服役されて三年半たってからようやく再審決定、そして今釈放となっております。

 ここで問題なのは、実は弁護側は控訴審で既に、診療記録というものがあるであろうと、診療記録の有無というものを問い合わせしておりました。しかしながら、それに対し、これまで検察は、ないと回答を続けていた。また、弁護側は同時に関係者の証人出廷を求めていましたが、大阪高裁はこれも却下をしておりました。

 これだけ聞くと、まさに検察側みずからの描いたシナリオ、ストーリーに即した証拠は全面的に出す、しかしながら、自分たちにちょっとでも都合が悪い、これがあったら有罪まで持っていけない、そういった証拠に関してはただひたに隠し続けてきている。これは、実際にこういう事件が、冤罪が生まれてしまっているんですね。

 社会の治安、安全を守るための公正公平な手続をするべき検察が、このような態度といいますか、このようなことをしていて本当によいのか。いいわけがないんです。だからこそ、検察目線の例外規定というものはしっかりと排除をすべきだ。そしてまた同時に、証拠の一覧表になくても開示請求はできる、制度上そうなっている、そういったことは言いわけにすぎない。しっかりと証拠の開示というものを法整備していくことが私は求められていると思います。

 大臣にお尋ねをします。

 実際に、こういった検察側の証拠隠しがもとで有罪判決を受け、三年半服役をされた方がいらっしゃるわけです。この事実、もしかしたら大臣、今の私の話が初耳だったかもしれませんが、今現在のこの話を聞いての大臣のお考えというものをぜひとも伺わせてください。

上川国務大臣 今御指摘いただいたことは大変具体的な事件に係るところでございまして、個別事件に関して法務大臣としての所見を述べるということにつきましては、差し控えさせていただきたいと存じます。

鈴木(貴)委員 現在係争中というか、最近のものということもあって、答弁を差し控えられたのかなと思います。

 では、もう終結した過去のものだったら、大臣、答弁可能かと思います。

 厚労省の元局長といいますか、俗に言われる村木事件。これは、ほかの証拠と整合しないフロッピーディスク、改ざんされたフロッピーディスクですね、これを手持ちの証拠から検察側がわざと排除をし、しかも持ち主に返品をされたわけです。なぜ返品をしたのか。手元になければ開示する必要がないからです。実際に検察は、フロッピーを改ざんし、かつ、そのフロッピーが手元にあるといけない、証拠開示の請求をされたら困る、だからこれは先に返してしまおうということで、証拠を返しているわけです。

 終結案件です。こういった検察の過去のあってはならないやり方、法務大臣としてどのようにお考えで、法務大臣としてはこういったことを二度と繰り返さないためには何が必要だと思われますか。

上川国務大臣 ただいま、具体的なケースということで御指摘がございました。

 一般的に、証拠そのものを改ざんするというようなことそのものは、これはあってはならないことだというふうに思います。正しい証拠をしっかりと収集し、それに基づいて適正に公判に臨むということ、このことをおいてそれ以外のことはあり得ないというふうに思います。まさに改ざんということになりますと、それは犯罪だというふうに思います。

鈴木(貴)委員 まさに今大臣おっしゃいました、犯罪だと。法務大臣がおっしゃるんですから、断言されるんですから、これは非常に重い。そしてまた、ということは、その犯罪を二度と繰り返しちゃいけない。まさに今、安倍政権は、世界一安全な国日本、これをスローガンに動いていらっしゃるわけであります。

 大臣も今断言をされたその犯罪を二度と繰り返さないためにも、この証拠の開示、一覧表の今のあり方、果たして、現行法、または今回答申で示してきている証拠の開示、これで十分だと大臣はお考えでしょうか。

上川国務大臣 先ほどのさまざまな検察に係る問題ということで、検察の在り方検討会におきまして、さまざまな角度で議論をされてきたところでございます。そうしたことを踏まえての提言に基づきまして、法制審議会で御議論いただいた上で、今回の提案ということで法案のまとめになったところでございます。

 検察においても、法と証拠に基づいて適正に執行する、公判に臨むことができるようにしていくという環境をしっかりとつくっていくということが大変大事であるということでございまして、そうした趣旨に基づいて今般の法案につきましての御議論をいただきたいというふうにお願いを申し上げているところでございます。

奥野委員長 時間が来ました。

鈴木(貴)委員 はい。

 まさに適正な手続をするためにも、やはり法と証拠だと大臣も述べられております。この証拠の開示の手続についても、今後とも引き続き質問をさせていただきたいと思います。まさに冤罪を生むということは、言葉をかえれば真犯人を取り逃しているということであります。このことも改めて次回も質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。きょうもよろしくお願いいたします。

 きょう、私の方からは、裁判員裁判について伺いたいと思います。

 まず冒頭、最高裁の方に伺いたいんです。

 裁判員裁判制度はおおむね順調に来ている、こういうことを国会で多くの方が、大臣を初め政府側の多くの方が答弁をされている。昨年の十一月五日にも私がこの裁判員裁判の関係の質問をしたときに、上川大臣も、裁判員の候補者の八〇%近い方が裁判所に出廷をして、裁判員に選ばれた方も熱心に審理に取り組んでいる、検察当局、またその他の関係者もわかりやすい裁判の実現に向けて取り組んでいると。また、ここなんですが、裁判員の経験をされた方は、裁判所が実施したアンケートに対して、九五・二%の皆さんが、裁判に参加したことについて、よい経験と感じた旨の回答をして、これを大臣は、裁判員の皆さんも充実感を持って審理に取り組んでいる、こういうお話をされて、こうした理由から、おおむね順調に実施をされ、国民の皆さんの間にも定着してきたというふうに認識をしていると。これは上川大臣に限った答弁ではなく、何人かの方が答弁をされていると思うんです。

 私がきょう伺いたいのは、この裁判所が実施したアンケートですね。平成二十五年三月に最高裁判所が発表されている平成二十四年度の裁判員等経験者に対するアンケート調査結果報告書、この問いの十一に、該当の「裁判員として裁判に参加した感想」というのがありまして、確かに、「非常によい経験と感じた」が五四・九%、「よい経験と感じた」が四〇・三%、足して九五・二%になるんですが、私は、この質問が、この制度がおおむね順調であって、制度を肯定する一つの理由になり得るかというところを疑問に感じております。

 まず、きょう、最高裁の方に、この質問の意図、これについて伺いたいと思います。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判員経験者に対するアンケート調査は、裁判員を実際に務められた方の意見や感想などを把握、分析しまして、裁判員制度の運用等の改善につなげることを目的として行っているものでございます。

 そして、その質問事項は、大学教授やジャーナリスト等を含む幅広い分野の有識者が参加しております裁判員制度の運用等に関する有識者懇談会における議論を踏まえまして、最高裁が作成しております。

 御指摘の質問項目は、裁判員裁判に選ばれる前の気持ちとあわせて、裁判員裁判に参加した後の感想をお尋ねしているものでございまして、これによりまして、参加前に抱いていた不安が参加後どのように解消されたのか、あるいは残ったままなのかなど、裁判員裁判への参加の前後での裁判員経験者の意識の変化を把握しようと試みているものでございます。

井出委員 今、参加をする前とそして後の感想、不安の解消ですとか意識の変化というところを捉えていくための質問だったというお話だと思うんですが、今御答弁にあったように、これは制度の改善を目的としている、制度の改善をするために意見や感想を把握する、そのために有識者懇でるる検討してこういう質問になったというお話もあったと思うんです。

 私は、制度の改善を目的として裁判員裁判経験者に質問をするのであれば、感想として、選択肢で、「非常によい経験」、「よい経験」、「あまりよい経験とは感じなかった」、「よい経験とは感じなかった」、「特に感じることはなかった」という抽象的な質問よりも、例えば、今、これまでも裁判員制度で指摘されてきた裁判員の心の負担、例えば審理のときに残虐な事件の現場を見せられたことですとか、あとは、もっと率直に言えば、人を裁くということに対する不安ですとか、その責任感ですとか、あと、私としてはこれから聞いていっていただきたいのは、例えば争いのない事件に裁判員が参加していてどうなのかとか、そういう具体な質問項目というのがあって初めて制度の改善目的というものが果たされるのではないかと思っております。

 よい経験と感じたが九五・二%いるから、このアンケートが、制度がおおむね順調だというものの理由の一つとして使われていることに対して、私はいささかこのアンケートの問いというものは抽象的過ぎないかなと思いますが、いかがでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 九五%以上の裁判員と補充裁判員経験者に「非常によい経験と感じた」、「よい経験と感じた」とお感じいただいているということにつきましては、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資するという裁判員法の趣旨にかなう結果であるとは考えております。

 もっとも、参加する前の気持ちと参加した後の感想に差がございます。ですので、参加する前にも前向きな気持ちを持っていただけるようにするため、さらに制度を御理解いただけるよう取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

 また、議員御指摘のとおり、よい経験と感じておられる方々の中におかれましても、精神的な負担は重かったというふうに感じておられる方もおられるものと思います。

 裁判所としましては、実際の裁判員裁判で裁判員経験者の方々が裁判官にどのような感想を漏らしていたのかということもフィードバックを受けておりますので、そのような方々の生の声もこのアンケートに加えて考えまして、引き続き、裁判員の方々の精神的負担を軽減するように努めてまいりたいと思っておるところでございます。

井出委員 このアンケートについて、本当はきょう政府側にも伺いたいと思っておったんですが、ちょっと私の質問の段取りもきょうは悪かったので、今後の法案審議の中で聞かせていただきたいと思います。

 次に伺うことも、前回、昨年の十一月五日に私が伺ったことなんですが、死刑事件に対して裁判員制度を適用するべきか、裁判員が参加するべきか否かというところで、上川大臣から、死刑事件というものは国民の関心が高い重大な刑事事件の最たるものなんだ、また、被害者等は心理的負担を感じながらも刑事裁判にかかわっているということもあり、裁判員は、その負担が大きいとしても社会の一員としてこれを避けるべきではない、そして、死刑かどうか、その求刑の内容は公判審理が全て終わって初めて決まる、公判前整理などの段階で死刑かどうかを明らかにはできない、そういう御答弁、死刑事件に裁判員が参加をする意義がある、そういう御趣旨でこの三つの話をされているんです。

 少し具体的に伺っていきたいんですが、まず、被害者等が心理的負担を感じながら刑事裁判にかかわっている、裁判員は、その負担が大きいとしても社会の一員としてこれを避けるべきでない、ここのもう少し詳しい解説をいただきたいと思うんです。

 私は、今の日本の刑法、犯罪の状況、そうしたものを考えるのであれば、死刑に当たるような事件が起こらないことが一番いいんですけれども、なかなかそういう状況にもない、そういう中でこの死刑制度というものがあると思っているんです。

 ですから、私は、この答弁について、被害者等が死刑に係る刑事裁判にかかわるのはそれはいたし方ないことだと思うんですが、私のような考えの人もいるでしょうし、裁判員も社会の一員としてこの負担を避けるべきではないというところに、これは死刑制度のあり方に係ってくるところだと思うんですが、裁判員も社会の一員として向き合うべきだ、こういう答弁になっているその政府の考えを改めて伺いたいと思います。

林政府参考人 裁判員制度の対象事件に死刑事案というものを入れるか入れないか、精神的な負担が大きいためにこれを外すべきではないか、こういった意見、議論等がございまして、それに対しまして、これまでの間、政府として、死刑事案についても、これを含む形で対象事件を維持するべきである、そういうことを申し上げてきました。

 その中の理由として幾つか述べられたところでございますけれども、まず、一番根本といたしましては、死刑事案も含んで対象事件を構成するということの一番大きな理由でございますけれども、もとより、裁判員制度の対象事件をどのようにするかというときに、最初の制度設計において、やはり、国民の感覚を裁判に反映させて、司法に対する国民の理解と支持を深めるという制度の趣旨に鑑みて、国民の関心が高く、社会的にも影響が大きい、法定刑の重い重大事件、これを対象とするのが相当である、こういった観点から、対象事件の中に死刑を含む法定刑の重い事件というものが入ったわけでございます。法定刑の重い重大事件は、やはり類型的に見た場合に国民の関心が高い事件であると言い得ると考えられたために、このような制度設計をしたものでございまして、こういった法定刑に基づく定め方というのは合理的であると考えております。

 それで、その間、やはり、死刑事案については精神的な負担が重いということからこれを外すべきではないかというような議論がございましたが、そのことについて、今申し上げた理由が一番の理由でございますけれども、例えば、法務省で行いました裁判員制度に関する検討会におきまして、死刑事案をどのように扱うのかというのは大いに議論されたところでございます。その中の議論の一つとして、裁判員の精神的負担という点だけにスポットを当てるような形への反対の意見として、先ほど委員が紹介された、被害者等は心理的な負担を感じながら刑事裁判にかかわっている、裁判員は、その負担が大きいとしても社会の一員としてこれを避けるべきではないという意見、こういったものもその議論の過程で出されたということを御紹介させていただいたものでございます。

 そういった意味において、この点、死刑事案を対象事件に入れるか入れないかということについては、ひとえに関係者の精神的負担ということのみをもって対象事件を画するということにはいかないものでございまして、この精神的負担ということを理由にその対象事件から外すべきだという議論がありましたものですから、そこに対する反対の意見として、先ほど申し上げたような、被害者等についても負担を感じながらかかわっているんだという議論があったということを御紹介させていただいた趣旨でございます。

井出委員 精神的負担のみとはいかないと。裁判員制度の対象を決めたときも、国民の関心が高くて、社会的影響の大きな事件、そして法定刑の重いものから決めていったというお話があって、今の御説明を総合すれば、死刑対象事件というものは、裁判員裁判の対象としてこれからも継続というか、従前と変わりなくということだと思います。そこまではいいかと思うんです、大変大ざっぱなまとめ方で恐縮ですが。

 そのときに、今度の法改正で、長期にわたる裁判になるようなものは裁判員裁判の対象から外そうという方向性でこれから議論が始まると思うんですが、その長期の裁判というものの事例を見てみると、さいたま地裁で過去にあった裁判員の職務従事期間が百日だった裁判員裁判、これは死刑判決が出て、たしか上告中だったかと思います。もう一つ、次は、鳥取地裁で裁判員が七十五日間職務従事をしたもの、これも鳥取地裁は死刑判決を言い渡している。もう一つ、大阪地裁でも裁判員が六十日間かかわった裁判員裁判、これも大阪地裁は死刑判決を言い渡しているんですね。

 死刑事件というものは裁判員がかかわる意義がある、そういう話はさっきいただきました。そうしますと、長期的な裁判を外すというこの案を考えたときに、死刑事件というものはかなりの確率で長期の審理期間がかかってくるだろう。現に、これまでの五年間を振り返って、今私が挙げた三例、これは法案提出に当たって検討された検討会の中で出ている事例なんです。死刑は対象としてちゃんとやっていくことが必要だと。そうしますと、長期だからといって軽々に、簡単に外してしまっていいのか。そこは今回の質問をつくるに当たって一番疑問に感じているところですので、そこのお考えを伺いたいと思います。

林政府参考人 委員御指摘のように、まず、今回提出をしております裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案におきましては、裁判員制度の対象事件でありましても、審判に要する期間が著しく長期にわたる事案について、例外的に裁判員制度の対象事件から除外することを可能とする規定を設けようとしているものでございます。

 このような規定を設けようとする趣旨は、審判に要する期間が著しく長期にわたる事案につきましては、一般国民に過重な負担を課すことになることから、そのような事態を避けるということを目的としております。それによって、裁判員制度を一層円滑かつ適正に運用することになります。

 ただし、ここで申し上げている著しく長期にわたる事案というものにつきましては、基本的に、裁判体、裁判員の選任手続等が困難になるような著しく長期にわたる事案について例外的に対象から外すということでございまして、例えば、今いろいろ御指摘されている事案について、これまでの裁判員制度のもとで比較的長期にわたる裁判員裁判が行われたという事案が若干紹介されましたけれども、それらが今回の法改正によって対象から外れる、一律にそのように考えているものではまずございません。

 それから、さらに言いますと、対象から外れるかどうかということを抜きにしましても、これまで比較的長期に及んでいる事例というものを比べてみましても、必ずしも死刑という判決でない事案というものもございます。そういった意味におきまして、今回の規定は、罪名でありますとか死刑を含む法定刑のいかんにかかわらず、先ほど申し上げたような理由で、著しく長期にわたる事案については例外的に対象から除外しようとするものでございます。

井出委員 今、過重な負担というところで、私も、一般の裁判員の方は仕事も休んで出るので、確かに長期の裁判というものは外さなきゃいかぬなという思いもあったんです。

 裁判員制度に関する検討会の取りまとめ報告書に、長期の裁判員裁判ではない裁判でどういうものが想定されているかというと、例えば、テロ犯罪組織によるビルの爆破事件などのように、膨大な数の被害者等が出ており、多数の証人尋問を行う必要があるというような事例が想定されるとあるんですが、局長のお話ですと、私が紹介したような事例は、法改正になっても裁判員対象から外れるかどうかは今一概には言えないと。

 この報告書を読めば、そういうテロ事件については例えばの例として想定されているんですけれども、テロ事件の社会への影響ですとか国民の関心ですとか、そういうものを考えれば、これは絶対に外してはいけない。もちろん、長期的なもので国民の過重な負担を除くという視点も大事なんですけれども、では国民の関心のある事件を外していいのか。

 もっと平たく言えば、死刑の事件で、これは裁判員裁判で死刑が出ました、こっちの事件はもっともっと大きい事件でしたけれども長期だったのでプロの裁判官だけで死刑判決を出しました、そういう状態にこれからなったとすると、裁判員制度の目的、国民の司法への理解を増して信頼をつくっていくというような趣旨のことが裁判員法の総則に書いてあると思うんですけれども、そういうことが果たして実現されるのかという大きい疑問があるんですが、いかがでしょうか。

林政府参考人 裁判員制度の趣旨に鑑みて、国民の関心が極めて高く、そしてまた法定刑が重い、そのような事案について考えた場合に、それらは、本来であれば当然、裁判員裁判として審理がなされることが望まれていると思います。

 他方で、今回の法改正の趣旨は、これまでにそのような事案があったということをいうものではございませんが、今後あり得る事態としては、極めて著しく長期にわたる事案があったとした場合に、裁判員の負担等から考えると、実際にその選任手続においても、裁判員を選任することが困難な事案というのは起きてくる可能性がある。そういった場合には、そのような事案については対象から外すことができる規定をあらかじめ設けておこうというものでございます。

 それが選任手続等も十分に可能なぐらいな事案であれば、当然、その原則に戻って、その対象事件として裁判員裁判でなされるのがふさわしいと考えております。

 なお、現行法におきましても、裁判員法の三条において、裁判員の生命、身体に危害が加えられるような事件については除外できる規定がございまして、実際に除外された案件もございます。これは、あくまでも裁判員の生命、身体に危害が加えられるという観点での規定でございました。

 今回新たに規定を設けようとするのは、これは、審理期間が著しく長期にわたる、そういった観点から、裁判員の負担を避けるためにあらかじめこういった除外規定を設けておこうという趣旨でございます。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

井出委員 一言、大臣に伺いたいんですが、きょうはちょっと質問の三分の一ぐらいで終わっちゃったんですけれども、この問題は思った以上に時間をかけて丁寧に議論する必要があると思うんですね。その一部の一部だけきょう質問をやりとりさせていただいたんですけれども、慎重に審議していかなければいけないと思いますが、その点についていかがでしょうか。

上川国務大臣 今回の改正に当たりましては、過去、刑事法の研究者でありますとか法曹三者、あるいは被害者支援団体の関係者の皆さん、こうした方々、有識者の方々によりまして検討会が構成されて、そして十八回にわたってさまざまな視点から御議論をいただいた上での結論ということで、論点整理をしていただいた上でのものであるというふうに考えておりまして、ただいま御議論をいろいろいただきましたけれども、しっかりと審議を尽くしていただきたいというふうに思っております。

井出委員 では、しっかりと審議を尽くさせていただきたいと思います。

 終わります。

奥野委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 維新の党の重徳和彦です。少し声がかれておりますが、御容赦ください。

 きょうは、私、児童虐待のテーマで質疑をさせていただきたいと思います。

 特にこれはこれまでそんなに国会で議論されてこなかったように思うんですが、虐待された被害児童が、各機関から、いろいろな大人の人から、しゃべりたくないようなこと、思い出したくもないようなことを繰り返し聞かれてしゃべらされる、それによってまたその心の傷がもう一生消えないような重大な傷となって、その後の人生に大きな影響を与えていく、このような問題について取り上げてまいりたいと思います。

 つまり、最近、児童虐待の件数がふえていると言われます。しかし、これは判明している件数がふえているということであって、今までは潜在的というか隠れたものだったというような見方もできますし、いずれにしても、実態は、氷山の一角しか把握ができていないと思うんです。こういった問題が事件となって、捜査当局が動き、また裁判にかけられる。そういう事件となって明るみに出た後こそ、被害児童がその心の傷を深めていく深刻なプロセスになっているんだ、こういう問題を指摘したいんです。

 まず、前提として、児童への虐待、性的虐待を含むこうした虐待は一体どのようにしてまず発見されて、児童相談所としてそれを把握しているのか、件数も含めて御教示いただきたいと思います。お願いします。

木下政府参考人 お答えいたします。

 全国の児童相談所におきます平成二十五年度の児童虐待相談の対応件数でございますけれども、七万三千八百二件となってございます。主な相談経路につきましては、警察等から二万一千二百二十三件、近隣あるいは知人からというのが一万三千八百六十六件となっております。

 また、そのうち性的虐待の件数でございますけれども、一千五百八十二件となっております。主な経路は、学校からが二百五十八件、虐待者以外の母親からが百八十一件となってございます。

重徳委員 今かなりの件数ですね。七万三千八百件が全体の数なんですが、それにしてもまだ表になっていないものもあるんじゃないかというふうによく言われております。

 きょうは、この判明したものが次に捜査段階に入っていく、こういうところのプロセスについて議論したいものですから、警察庁の方からお聞きしたいんです。今のようなたくさんの件数の虐待事例、警察が動くということは検挙、立件につながっていくということなんですが、これがどのようなプロセスで検挙に至っていくのか、この点を教えていただきたいと思います。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 最も一般的なケースで申し上げますと、警察におきましては、児童虐待を一一〇番通報などにより認知した場合、児童の安全確認を行った上で、児童相談所への通告を行うとともに、必要に応じて迅速的確な事件化判断と保護などの対処を図っているところでございます。

 このようにして平成二十六年におきまして警察で取り扱いをいたしました児童虐待事件の検挙件数は六百九十八件であり、そのうち性的虐待は百五十件となっているところでございます。

重徳委員 今の御答弁にあるように、警察がまず通報を受けて、それをそのまま児相、児童相談所の方に通告をするというケースもあれば、必要に応じ警察が動くんだということなんですが、当然、児童相談所がその通告を受けて対応する中で、これは事件、つまり犯罪じゃないかということにだんだん近づいてきて、そして、その上で警察が動き出すということもあると思うんですね。

 ですから、現場はさまざまな事情がありますから一概には言えないとは思いますが、児童相談所が最初の通告を受けて主に動いて、当然、被害児童からいろいろな話を聞き、その中でこれは警察に動いてもらわないといけないというふうに判断した、そうすると、また警察が動き始めて、また同じようなことを被害児童から聞くというプロセスが始まる、こういうケースも非常に多いと思われます。

 そこで、少し現場を深掘りしていきたいんです。

 厚生労働省にお聞きしたいんですが、児童相談所が把握をし対応を始めた虐待じゃないかという案件が刑事事件に発展するという場合において、当然、被害児童からその状況を聴取しますね。その際に、警察とどの程度、どのように連携をしているのかについて教えていただきたいと思います。

木下政府参考人 お答えいたします。

 まず、児童虐待の事案につきまして、各児童相談所に対しまして、子供の生命、身体を保護する観点から、児童相談所と警察との情報共有、あるいは相互協力の連携体制の強化について要請してきたところでございます。

 具体的には、警察から情報提供を求められた場合には、例えば、児童相談所が把握をした児童の生活状況、身体的状況、家族との関係などの情報ですとか、あるいは通告を受理した後の児童相談所の対応、例えば一時保護の措置をしたですとか、施設入所の措置の状況などにつきまして、適切に警察当局にも通知をしているものと承知しております。

重徳委員 今の御答弁、ちょっと確認をしたいんですが、被害児童から虐待の状況を聴取したその情報そのものについても、警察との間で情報共有をするような要請を厚労省としても行っているんでしょうか。

木下政府参考人 情報の内容はさまざまでございますけれども、例えば、面接の経過的な記録ですとか、その児童に関する虐待の状況はどういう状況であったのかということについて、警察から求められれば情報を提供しているところでございます。

重徳委員 恐らく、警察から求められて情報提供した上で、警察としては児童相談所が聞いたもののみをもって満足するのではなく、その同じ内容について、また改めて警察からも、刑事さんがその被害児童に供述を求めるというようなことをしているのではないかと思うんですが、こうした繰り返しということについて、その児童に対する配慮というものを警察として行っているのか。

 それからもう一つ、これは少し違う観点なんですが、繰り返し繰り返し聞いているうちに、その児童の供述そのものが、内容が変わってくるということがあるというふうに言われております。

 それについては、誘導尋問とまで言ってしまうと語弊がありますが、そうはいっても、さまざまな角度から、場合によっては推測も含めてその子供に聴取をするということもあるかどうかなんですけれども、この辺について、警察として、その子供に与える心理的な二次被害というような観点も含めて、こうした今申し上げました問題点をどのように認識し、また対応しているのであればどう対応されているのか、御教示願います。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 一般的に、児童の供述の特徴といたしまして、体験したことや目撃したことを正確に記憶にとどめておくことが難しいこと、情報源の混乱が生じやすいこと、迎合性があること、被暗示性があるなどの問題があると認識をいたしております。

 警察におきましては、こうした児童の特性を踏まえ、被害児童から事情聴取する際には、児童が自発的に話ができる関係性を形成し、心理的な負担を軽減することが重要であると考えており、事情聴取を女性警察官に担当させたり、少年の心理、特性に関する専門的知識と技能を有する少年補導職員等を立ち会わせること、事情聴取の場所や回数、時間に十分配意すること、児童のペースで自由に話をさせるなど、その表現力や認知能力に十分配意することなどに努めているところでございます。

重徳委員 今の御答弁についての確認なんですが、先ほど私が若干推測で申し上げましたが、児童相談所の方で聴取した内容についてはもう警察では聞かないとか、そういうようなことは現行では特段されていないと考えてよろしいですか。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 児童相談所からいただきました情報についても十分に参考にさせていただきながら、捜査のために必要な事項につきましては、警察におきましても聴取をさせていただくという形になります。

重徳委員 それでは、今度は法務省の方にお聞きします。

 検察の立場から、今申し上げました被害児童から繰り返しの供述を求めること、あるいは推測を交えたような質問をしないとか、供述を変遷させる原因となるような聞く側の主観が入ったような質問をしないとか、そういった配慮をされているのでしょうか。

林政府参考人 検察当局におきましても、こういった被害に遭った児童、この児童虐待の事案については、捜査上、非常に指摘される問題点が多いということを受けとめまして、その対応をしているところでございます。

 その指摘といいますのは、先ほど来から言われております、繰り返しの聴取が二次的な心理的な被害を与えるという点、あるいは、もう一つは、児童が供述に際して暗示とか誘導を受けやすいという指摘がございます。

 これにつきましては、例えば、暗示、誘導ということにつきましても、取り調べする側がそういう意図がなくても、やはり児童の供述というものについては、誘導とか暗示、外形的な事実に影響を受けやすいということがございます。そういったことから、取り調べ等をする、事情聴取をする検察官においても、事案の性質に応じて、事情聴取の場所でありますとか回数、その方法などについて配慮しております。

 具体的には、例えば場所について言えば、検察官が事情聴取を児童の自宅でありますとか児童が保護されている施設などで行う、あるいは、事情聴取の回数はできるだけ少ない回数にとどめる、児童の不安を緩和するに適当と認められる方に付き添っていただいてその場で事情を聞く、事前に供述心理あるいは児童心理、児童の専門家の方にこういった児童に対する発問、誘導的にならない発問というのはどのようにするのかというようなことの研修を受ける、アドバイスを受ける、このような取り組みをしていると承知しております。

重徳委員 きょう御紹介したいのは、先ほどから警察庁の方も児相で聞いたことについては十分参考にするというお話ではありましたけれども、それは、結局、児相で聞いて、警察が聞いて、また検察で聞く、そういう回数をできるだけ少なくとはおっしゃいますが、それでも構造的に、組織が違う以上は、少なくとも今言っただけでも三回同じことを聞くわけであります。こういったことを制度的に一回で、複数の機関が連携して、多機関連携チームといいますが、そういった形で、一発の面接で供述を全て聞き出そうということを原則として行う、これを司法面接というんですが、この司法面接について御紹介したいと思います。

 司法面接を行うに当たって、私が先ほどから申し上げております、今御答弁の中にもありました、児童というのは暗示にかかりやすい、誘導を受けやすい、取り調べ側が意図しなくてもそういう影響を受けやすいという話なんですが、資料の一をごらんいただきますと、これは私が五年ほど前にある研修会に出席したときのブログなんですけれども、この司法面接の一つのポイントとして、誘導しないと。この上の方に書いてありますが、面接する側から情報を出さない、子供の言葉を解釈して、こうじゃないか、ああじゃないかというふうに聞き出そうとしないというようなことがポイントで、ここに例が二つあります。

 悪い例を言うと、うちにいるのは「お母さん」という答えに対して、「おじさんもいるの?」というふうに聞いてみたり、それで「うん。」と答えたら「おじさん、何か嫌なことするのかな。」とか、「触ったりする」というふうに言われたら「どこ触るの?」とか、どんどんどんどん供述を誘導していく。これは悪い例である。

 よい例というのは、「おうちにいる人のことお話して。」と言うと、「お母さん」がいるというふうに答える。「それから」と言うと、「おじさん」もいると。「それから」と言うと、「それだけ」と。では今度は「おじさんのことお話して。」と言うと、「おじさんは、時々嫌な事をする。」と。そういう子供の発言によって、この供述を裁判で証拠にしていく。こういうような一つのスキルであります。

 こういったスキルを身につけた専門家が、今言いましたように複数の機関を代表して司法面接という形の面接を行って、その児童からより正確な記憶に基づく情報を引き出していく。しかも、それは原則一回だけですから、同じことを何度も聞かれるということもなく、心理的な被害も最小限に食いとめることができる。これは極めて重要なところであります。

 このような司法面接を行おうとした場合に、海外ではアメリカなんかでも進んでいる制度なんですけれども、これを日本でやろうとしたときに、この専門家、一人だけ、誰が質問するのかということが、今のように機関が、きょうの話だと児相と警察と検察、この三つの機関のうち、どこの機関が代表してやるのかというような問題がまずあると思うんですね。

 現行制度を前提とした場合に、この司法面接を児童相談所の職員が各機関を代表して聴取するとした場合に一体どんな問題があり得るだろうかということをお聞きしてみたいと思います。

木下政府参考人 お答えいたします。

 供述聴取をする際の児童の負担を軽減するということが非常に大事だと思っております。子供の虐待に関する基本的な対応のあり方を示します「子ども虐待対応の手引き」というものを私どもはつくっておりまして、その中で、例えば福祉関係部局が重複をしていて、一人の面接者が集中して話を聞くということにすることによって、同じ内容の話を子供が繰り返ししなくてもよいというような工夫について示されております。

 しかし、御指摘のように、警察も含めて、例えば児童相談所が代表して実施をする被害児童に対する面談といいますのは、私どもの観点からすれば、子供の権利を保護するという観点から、今後の福祉的支援をどのように構築するのかということを念頭に置いて行うものでございまして、例えば証拠の収集ですとか立件のための調査ですとか、そういった他の目的のために十分な情報が得られるかどうかという点について丁寧な検証が必要ではないかなと考えております。

重徳委員 現行制度においては、児相は福祉的観点から子供のケアをする立場ですから、そこでいろいろな証拠を引き出す、立件するためにどんな情報を聞くか、こういう観点は余りないだろうなということは想像できるところです。

 では次に、同じような司法面接を、現行制度を前提とした場合に、警察官が代表して行うとした場合に何が問題か、課題があるでしょうか。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま厚生労働省の方から、児童相談所が実施する被害児童に対する面談は今後の福祉的支援をどのように行うかという観点だということでございました。

 警察の場合には、事件を立件するということであれば、そういう目的ということでの事情聴取になってまいります。そういう意味では、それぞれの機関の立場、目的が違ってまいりますと、警察官が聴取をするとなりました場合には、他機関にとりましては、やはり少し観点が違う部分というのも出てくる可能性は同様にあろうかというふうに思います。

重徳委員 それから、司法面接において、現行制度を前提とした場合に、検察官が聴取した場合にどういった課題があるでしょうか。

林政府参考人 民間におきましては、司法面接の導入ということについて取り組んでおられる方がいることは承知しておりまして、検察におきましても、むしろ、そういった方々と現在連携しながら、先ほど申し上げた取り調べのあり方、仕方等についてのアドバイスを受けたりしておるところでございます。

 他方で、司法面接ということで、被害児童からの事情聴取を、原則として、代表する機関によるもの一回に限るという制度を設けることについてどのような問題が出てくるかということにつきましては、やはり事案の内容や被害児童の心身の状態などによっては、この一回の事情聴取で被害の全てを話すことが困難な場合も当然あり得るということ、また、被害児童からの事情聴取後に、被疑者の取り調べでありますとか裏づけの捜査によりまして、再度被害児童の聴取を行って事実関係を確認しなければ起訴とか不起訴の判断をすることができない場合というのも少なからず生じ得ることなどの問題が、やはり制度をそういう形の一律の制度とすることにした場合にはそのような問題が生じ得ると考えております。

重徳委員 大体現状はわかりました。

 この司法面接というのは一回とは言っておりますが、裁判では、憲法上、反対尋問を行う権利も被告人側には認められているわけですから、反対尋問を受けても、それでも一回こっきりだから二度と供述を求めないとか、そういうところまで極端なことを言っているわけではなくて、少なくとも、機関が複数あるがゆえに複数回しゃべらなきゃいけない、こういうような児童の負担、これによって本当に甚大な、これは性的被害なんかの場合は特にそうだと思いますが、その後の人生をめちゃくちゃにしてしまうようなことを、捜査機関を含めた、児相も、ケアをすると言いながら、結局、何回も同じことを大人の人から聞かれるという意味においては同じことをやっているわけでありまして、であれば、むしろ、子供の立場から制度を再構築するべきではなかろうかということでございます。

 これは、児童虐待という問題が年間に七万件を超える数字、しかも、それが氷山の一角だということも言われている。こういう状況にあって、いつまでも今までどおりの法律上の位置づけ、各機関のミッションはそれぞれだというお話が今ありました。それはそうなんですよ、今まではそうだった。だけれども、事児童虐待にあっては、子供たちのその後の人生が大切。今は少子化ですから子供が少なくなっている。その大切な子供たちを、大人たちが、しかも公的な機関が寄ってたかってぼろぼろにしていく。

 こういう制度の弊害というものを変えていくには、そもそも、今のような縦割りのそれぞれの役所の制度、目的も、この児童虐待についてのみは横断的あるいは連携をしていくべきものなんだ、そのように法律も改めて、そして、具体的には、いろいろな課題というか、先ほどの面接の仕方も含めて、訓練、研修、経験、いろいろ必要だと思いますが、そういったことも、多機関連携のチームをつくって、初動の調査、捜査の段階から必ず連携して、心の傷を広げるようなことはできるだけ少ない回数でおさめていく、こういった制度的な改正を行うべきではないか。

 きょうは、資料の二に添付しました、日本初の子どもの権利擁護センターというものを紹介させていただきます。これは、神奈川県の伊勢原市で、山田不二子先生という小児科のお医者さんのイニシアチブで、去る二月に開設されたワンストップセンターなんですね。

 これは、この図にもありますように、診察室も併設されている。性器、肛門も含めた全身の詳細な診察ができる、そういう体のチェックもしながら司法面接も行える、そういうものでございます。

 基本的なところだけ申し上げますと、司法面接は、この真ん中の上の方の写真のようにちょっと殺風景なんですが、これは子供がほかのものに気が散らないような配慮から、殺風景なところで一対一で面接をする、そういう部屋であります。

 ここにはビデオカメラが設置されておりまして、右側の観察室の方に児童相談所の職員、警察官、検察官が一堂に集まりまして、モニターを通じて面接の様子を見て、足らざる質問項目があれば、インターホンでそこの司法面接室にいる専門家の方に、あとこれを聞いてくれというようなことを追加していく。こうすることで、極力一回で面接を終わらせて、子供の心の面のケアもしていくということであります。

 先日、民主党の岡田代表とか長妻先生も視察に行かれたそうですが、私も、我が党の初鹿議員とともに視察に行ってきたところでございます。各党がこの手法について関心を持っていただいているところでありますので、民間がここまでして各機関との連携が必要だということを訴えているわけですが、大臣、こういった司法面接の仕組みについて、この民間の取り組みをどのように評価され、また、司法面接を国として我が国も導入していくべきではなかろうかと思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

奥野委員長 上川大臣、時間が来ていますから、なるべく短くお願いします。

上川国務大臣 虐待を受けた子供さんの負担をできるだけ軽減していく、そして心にさらなる被害が及ばないように、二次被害、三次被害が及ばないように、そうしたことについては、もう本当に大事なことだというふうに思っております。民間でもこうした新しい取り組みもしていらっしゃるということでございますので、児童に寄り添うという形の中での取り組みということについては、さらに研究を進めて、そして子供目線でしっかりと対応していくということが必要であるというふうに改めて感じたところでございます。

 貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

重徳委員 きょうのところは、非常に物足りない答弁ではありますが、本当に多くの方々にこの点については関心を持っていただいて、非常に重要な問題であり、かつ省庁横断的な枠組みの問題ですので、政治主導で、もちろん政府、大臣もぜひとも御努力をいただいて、この制度を変えていくことができればと強く考えておりますので、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史です。

 私は、裁判における速記録の重要性と裁判所速記官の果たしている意義と役割について、最高裁判所にお尋ねをいたします。また、裁判所の定員にも係ることでございますので、後ほど上川陽子法務大臣にも御所見をお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 初めに、裁判所速記官と速記録の持つ意義について確認をさせていただきたい。

 日本の裁判所における速記官制度というものは、国民の公正、迅速な裁判を受ける権利保障の観点から導入されて以来、法廷における尋問の客観的かつ正確、公正な記録を作成する専門職として、大規模訴訟、また、例えば和歌山カレー事件などに代表されるような著名事件には欠かせない制度として高く評価されてきました。

 しかし、最高裁は、一九九七年に、裁判所速記官を新しく養成することを停止しました。九七年には八百五十二人いた裁判所速記官は、ことし四月一日で二百人に減少しております。

 その一方で、裁判所速記官の皆さんは、速記符号の自動反訳ソフト「はやとくん」を自主的に開発、それまで紙に一旦印字された速記符号を再度文章に起こしていた作業を格段に改善しました。アメリカから自費で個人輸入した新型タイプライターと連動させてキーを打つと、同時にパソコンなどのモニターに日本語の文章が表示される、そういうことを可能にしまして、証人尋問や反対尋問など、迅速かつ効率的に速記することを実現しました。これは本当にすばらしいことだと思うんです。

 そこで、裁判所速記官について伺いますが、最高裁判所事務総局総務局編の「裁判所法逐条解説」では、「裁判所速記録の作成については、裁判官といえども、その内容の変更を命じることができない」、こう書いているんですね。なぜでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所速記官が作成する速記録というのは、証人の証言等をそのまま文字にする、いわゆる逐語調書でございます。速記官は、速記タイプを用いて、法廷で発せられた証言等をそのまま記録するということになりますから、誤字脱字及び反訳の誤りは別として、裁判官といえどもその内容の変更を命じることができないということは実務に定着しているところでございまして、これはまさに逐語調書という性質からきているものというふうに理解しているところでございます。

清水委員 そのとおりですね。速記録というものは、正確性、迅速性、客観性、一覧性というものを備え、真に公正な裁判を担保する上で重要な意義を持つものであるとも言われております。

 だからこそ、裁判所速記官の養成再開を求める声が大きく広がっておりまして、養成停止が決められて以降も、日本弁護士連合会初め多くの単位弁護士会、弁護士会連合会などが、裁判所速記官の活用や養成再開を求める意見書または会長声明を出してきました。注目していただきたいのは、昨年一年間だけで、滋賀弁護士会、京都弁護士会、近畿弁護士会連合会、釧路弁護士会、そして多くの会員を擁する関東弁護士会連合会が、会長声明、理事長声明を出しているんですね。

 裁判所速記官の養成停止以降十七年たつんですが、時がたつほどその必要性を求める声が上がっているということを最高裁判所は重く受けとめるべきではないか、私はこのように思います。

 そこで伺いますが、改めて、最高裁判所が裁判所速記官の養成停止を決めた理由を簡潔にお答えください。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 平成九年当時、速記タイプの確保に不安が生じたこと、人材確保が困難であること、速記官の職業病の問題もあること、将来的にふえていくと見込まれる逐語的調書に対する需要の増大に機動的に対応していくことが困難であると考えられたことから、速記官の養成を停止するという判断を行ったものでございます。

清水委員 非常に簡潔な答弁、ありがとうございます。

 養成を停止した根拠と現状との整合性を検証させていただきたいと思うんですね。

 今、御答弁の中で、増大する逐語録需要に応えられない、これに応えていく必要があるというふうにおっしゃったんですが、九七年当時、具体的にどれだけ逐語録の需要がふえると予測されて、あれから十七年、現状、どれぐらい逐語記録の需要がふえたのか、把握されているのであればお答えください。

中村最高裁判所長官代理者 平成九年当時は、バブル崩壊による事件が非常に急増している状況でございました。平成二十一、二年をピークに、事件数が、今、民事事件については少し下がっている現状でございまして、全体の事件数自体は下がっているところなのでございますが、いわゆる速記官の廃止に伴って導入した録音反訳方式、これによる時間数というのが、記録に残っている範囲で申し上げますと、平成二十一年度には四万三千時間といったところでございますが、平成二十五年度には五万二千時間ということで、時間数というのはふえているところでございます。

清水委員 今、録音反訳時間についてお答えされたんですが、同時に、逐語録というのは速記官も作成するわけですから、そのトータルで数字を言っていただいた方がより検証できるのかなというふうに思いました。

 また、速記官のかわりに、録音反訳、業者にDVDを渡してそれを文字に打ち直し、それを調書とするということですが、録音反訳で調書作成ができるというふうにおっしゃるんですが、完璧ではないんですよね。問題がなければ、先ほど私が申し上げましたように、多くの弁護士会などから速記官の養成を求める意見書や会長声明が出るはずはないと思うんです。

 釧路弁護士会の会長声明ではこうありますね。「速記官による速記録が録音反訳と比較して、その正確性および即時性においてはるかに優位性を持っていることは、日常的に経験するところでもある。」ここはよく受けとめていただきたいと思います。

 それから、速記タイプライターの製造基盤が脆弱であるというふうにもおっしゃったんですが、これは、旧式のタイプライターを活用しなさいと一方で言いながら、その製造基盤を開発する努力の形跡というのが実は余り見られていませんでした。そして、養成停止を決めたときにも、実はアメリカなどでは新型タイプライターの開発や製造が行われていたということを最高裁は御存じのはずですから、これはちょっと後づけのような気がします。

 それから、人材確保とか志願者の減少ということもよく言われるんですが、私は、これも理由としてはなっていないと思うんですね。

 それはなぜかといいますと、速記官の役割というのは、冒頭確認しましたように、裁判の、迅速で公正で客観的なものを作成していく上で非常に重要なんです。そういう点では、人材確保や速記官の養成は、最高裁判所の責任においてやらなければならない。志願者が少ないからとか、あるいは養成がしんどいからということで、では、判事や書記官が要らないかといったら、それは外注に出せばいいのかといえば、そうじゃないと思うんですよ。これはしっかりと裁判所の責任として行うべきものであり、ここも私は理由にならないと思うんです。

 資料の一を見ていただけますでしょうか。

 これは、二〇一四年三月三十一日付、産経新聞の記事でございます。「音声文字化ソフト誤変換相次ぐ」との見出しですね。そして、「速記官カムバック!」、こう書かれております。

 全国の裁判員裁判で、証人尋問や被告人質問の記録方法が速記から録音に移行する中、裁判所から即日提供されるDVDが相次ぐ誤変換。記事に、「何すんねん」が「何数年」、「豚まん持って」が「ブタ守って」、こういう変換ミスがよくあると。裁判員裁判の適正さ確保のために速記官は必要不可欠と京都弁護士会の会長声明も紹介され、連日続く公判の準備にも支障を来し、弁護人らが頭を悩ませているというふうに報道されております。

 そこでお尋ねするんですが、今からさかのぼるところ十一年、二〇〇四年三月十二日、衆議院法務委員会で、当時の最高裁判所事務総局中山総務局長は、音声文字化ソフトについて、裁判員制度が実施されるまでに実用化させたい、三年ないし四年と答弁しております。これは、できなかったということでよろしいでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほどの御質問の中で、録音反訳と音声認識とを若干混同されているところがあろうかと思いますので、御説明させていただきますけれども、音声認識の関係は裁判員で用いているものでございまして、これは、いわば供述を検索する目的でつくっております。そのときに、委員御指摘のとおり、当時、この音声認識システムの技術が発展すれば録音反訳方式にかわり得る方式になり得るということでそういう答弁をさせていただいたと思いますが、その後の音声認識技術の発展を見ますと、現時点で、録音反訳に直ちに使えるようなシステムにはなっていないというのが現状でございます。

清水委員 そういうふうに、実用化されるようにはなっていないという答弁でした。

 私は、録音反訳と音声文字化ソフトを混同してはおりません。なぜこの新聞記事を出したかということは、次の質問につながるんですね。

 続けて、当時の衆議院法務委員会でこのようにも述べておられます。

 録音反訳については、最初に導入を決めたときから、過渡期のものであるという位置づけでやってきた。ずっと録音反訳でやるんじゃありません、過渡的なものですと。音声認識が本格化して、音声文字化ソフトが本格化すれば、録音反訳方式は消えていく。私どもとしては非常に自信を持っている。こういうふうに答弁されているんですね。

 もう一回確認しますが、当初の計画は崩れたということでよろしいですか。

中村最高裁判所長官代理者 音声認識システムの認識率が録音反訳でそのまま使えるようになることについて期待を持ったというのは事実でございます。その期待に達していないというところでございます。

清水委員 はっきりしたというふうに思うんですね。もともと速記官の養成を停止するときの根拠の一つに、録音反訳そして音声文字化ソフトの拡大ということが言われていたわけですから、いずれもこれは並行してやっているわけですし、それぞれ問題が起こっている、ここははっきりしたと思います。

 それで、私がぜひ聞いていただきたいのは、裁判所速記官は、聞き取りにくい言葉についてはもう一度確認して速記を起こすんですね。また、尋問の中で、どのように切りつけられたのですか、こうです。どう逃げたんですか、こうです。そのときの刃渡りは、これぐらいです。こういうジェスチャーについても、これは文字化できないんですね、録音反訳では。

 さらに、もっと言いますと、あなたはこの事件を知っていたんですね、こう聞かれたときに、うなずく。こういう態度なども、速記官であるからこそ逐語化されていく。これは私は、とても録音再現ではかなわない話だというふうに指摘をしておきたいと思います。

 議論してはっきりしましたのは、九七年、裁判所速記官の養成停止を決定したときと比べて、最高裁判所の皆さんのもくろみどおり推移していない、ここはしっかりと自覚をしていただきたいと思います。

 次に、裁判所速記官の執務体制及び執務環境についてお尋ねいたします。

 二〇〇四年三月の衆議院法務委員会において、裁判所法一部改正案の附帯決議ではこうあります。「裁判所速記官が将来的に不安定な状況に置かれることのないよう十分な配慮をすべきである。」同時に、参議院の法務委員会の附帯決議では、「裁判所速記官が将来の執務態勢及び執務環境等について不安感を抱くことのないよう十分な配慮をすべきである。」こう書かれております。

 最高裁判所にお尋ねします。今も、これからも、この附帯決議の趣旨を尊重していくという考えはございますか。あるかないか。

中村最高裁判所長官代理者 この附帯決議の趣旨については、これまでも尊重してまいりましたし、これからも尊重してまいる所存でございます。

清水委員 これからも尊重していくということで、よろしくお願いいたします。

 それでは、改めてお尋ねするんですが、裁判所の速記官の皆さんが今最も不安に思っていることは何か御存じですか。

中村最高裁判所長官代理者 最も不安かどうかは必ずしもはっきりしませんが、速記官の皆さんといろいろな機会に話をすることがあります。それについては、後輩が養成されないということと、それから、速記タイプについて新しい外国のものを公費で買ってくれというような希望があるということは承知しているところでございます。

清水委員 よく意見交換されているだけあって、不安についてはしっかりと認識されているということで、私、安心をいたしました。

 それで、今おっしゃった新型の電子速記タイプライター、これは、先ほども言いましたように、速記官の皆さんが自費でアメリカから個人輸入しているので、四十万円から五十万円ぐらいかかるんですね。これは官支給されません。これが経年劣化した場合、二台目を購入するときに、またこれが自己負担になったらどうしよう、こういうふうに不安を抱いているということなんですね。

 資料の三を見ていただけますでしょうか。三枚目、カラーのものですね。写真の右下にあるのが最高裁支給のソクタイプというタイプライターであります。写真の左側、これがいわゆる新型の、パソコンソフト「はやとくん」と連動する電子速記タイプです。

 速記をすれば、古いタイプのものは、レシートに記号が出てくるんですね。その記号が出てきたレシートを見ながら、再度速記官の方が筆記しないといけないんです。二度手間なんです。

 ところが、「はやとくん」をインストールしたパソコンに新しい電子タイプライターを連動して打つと、先ほども申し上げましたように、そのまま日本語の文章としてくる。しかも、キーが軽いんですね、私もさわらせていただきましたけれども。これは、職業病にもならない、こういう健康面での配慮もあるわけなんです。「身体に優しい。」というふうに書いております。

 今、ほとんどの速記官の皆さんが使っている「はやとくん」というソフトやこの電子速記タイプについて、裁判所速記官はもとより、弁護士会もその有用性を認めておられます。私思うんですけれども、なかなかうまくいかない音声文字化ソフトに力を入れるというのもいいかもしれませんが、むしろ、これだけ有効性がはっきりしている「はやとくん」の性能向上あるいはその有効活用に向けて力を入れるべきだと思うんです。

 こう言いますと、予算の問題が必ず出てくると思います。

 それで、この委員会の場で幾つか確認させていただきたいんですね。資料の二をごらんください。

 左側、これは、録音反訳委託費の予算の推移を記しております。九七年に養成停止しておりますので、九八年には七億円余りにふえております。その後、九九年から本格的に録音反訳の委託費がふえるのは当然で、最高時は十六億円程度まで上がっております。ところが、二〇一〇年以降、委託予算というのがずっと減少してきておりまして、二〇一五年度予算案におきましては、実に五億二千三百万余り、つまり、養成停止した次の年を下回るという予算になっているんですね。

 これは私、録音反訳時間がかなり短くなったのかなというふうに思いまして、どれぐらいの時間を反訳していただいているんですかということで、右下の資料をつけました。先ほどお答えいただいた中身ですが、むしろふえているんですね。そんなに変わっていないんですね。ということは、えらくここで合理化されたんだなということを私は感じました。

 それから、最高裁にはIT関連の予算というのがあると聞いております。電子速記タイプを今いる二百名の速記官に購入するのに、二百台購入するのに、ざっと一億円程度あればいいと私は思うんですが、二〇一五年度予算案、裁判所のIT予算の総額を金額のみお答えください。

中村最高裁判所長官代理者 IT予算額ということでございますので、全額で五十三億三千六百七十万一千円ということでございます。

清水委員 すごい金額ですね。五十三億円ものIT予算。

 ちなみに、このIT予算というのはどういうものに使われているんでしょうか。わかる範囲でお答えいただけますか。

中村最高裁判所長官代理者 この予算には、パソコン本体あるいはソフトウエア、システムなどの機器のリース費用及び保守費用、回線使用料、その他もろもろの経費を含んでいるというところでございます。

清水委員 ありがとうございます。

 聞くところによると、テレビ電話の費用も含まれていると。つまり、札幌、北海道などの遠隔地の裁判所と東京の裁判所とをテレビ電話でつないで証人尋問をやると。すごいハイテクだな、ITだなというふうに思いました。

 ちなみに、お伺いしたいんですけれども、最高裁判所の職員の皆さんがみずからのデスクで使われているパソコンなどもこのIT予算に含まれているということでよろしいでしょうか、先ほどもパソコンとおっしゃいましたけれども。

中村最高裁判所長官代理者 含まれております。

清水委員 恐らくウィンドウズ95のままではないと思うんですよね。それは、98とかウィンドウズMeとかウィンドウズ7とか、だんだんバージョンアップしてきていると思うんですよね。

 私、改めて訴えたいんですけれども、裁判所速記官の皆さんには、まだ古いものが使える、在庫がたくさんあるからといって、ハイテクどころかローテクのソクタイプのタイプライターを貸与する。これはどう見ても、先ほど私が紹介しました附帯決議に記された「執務環境等について不安感を抱くことのないよう十分な配慮をすべき」という趣旨にかなっているんだろうかなと、疑義を持たざるを得ません。先ほど、今もこの附帯決議については尊重しているという答弁がありました。

 録音反訳の委託費の推移を今見てきましたね。それから、IT予算の総額を検証してまいりましたが、この委員会で議論をお聞きの皆さんも、裁判所速記官の皆さんが、引き続きその職務に誇りを持ち、仕事に励んでいただくためには、電子速記タイプの費用を、全額自己負担にさせるのではなく、裁判所がサポートする、捻出するということについて、異を唱える方はそんなにいらっしゃらないんじゃないかなというふうに私は思いますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 お待たせしました。最後に、法務行政全般をつかさどる上川陽子大臣に所見をお伺いしたいと思います。

 憲法第三十七条及び裁判の迅速化に関する法律第二条にも、公正で迅速な裁判を保障することがうたわれております。国民の公正、迅速な裁判を受ける権利保障の観点から導入されてきたこの速記官制度、法廷における尋問の客観的かつ正確、公正な記録を作成する専門職として培われてきた裁判所速記官の役割は非常に重要なものであるということを御理解いただけたでしょうか。

上川国務大臣 ただいま、さまざまなやりとりを伺わせていただきまして、改めて、裁判所速記官が迅速かつ公正な裁判の実現に関し重要な職務を担っているということを承知したところでございます。

 証言等の調書事務を含めまして、裁判の手続のあり方また体制につきましては裁判所におきまして適正に判断をされるということでございますので、法務省といたしましても、裁判所の体制の充実につきましては、裁判所関係の法律を所管するという立場から適切に対応してまいりたいというふうに思います。

清水委員 上川大臣にその重責をしっかりと御理解いただけたようで、本当にうれしく思います。

 私がうれしいのではなくて、今、いろいろな不安を感じながら法廷に入り、尋問を速記で起こし、公正な裁判のために頑張っておられる速記官の方々が、何よりも今の大臣のお言葉で、一層誇りを持って、励みになったんじゃないかというふうに思います。

 裁判所速記官の養成停止を決めた一九九七年の最高裁判所裁判官会議での決定にいつまでも固執し続けるのはどうなのかな、こう思います。

 元裁判官で滋賀弁護士会の井戸謙一弁護士がこう述べておられます。速記官制度を守る会大阪支部ニュース二〇一三年四月号に登場し、時代はまだまだ速記を必要としているようだ、裁判所速記官の養成停止は余りにももったいない政策の誤りであった、こういうふうに述べておられます。

 今、まだ二百名の熟練した速記官の方が頑張っておられます。かけがえのない技術継承は、まだ間に合います。録音反訳や音声認識システムよりも、正確性、迅速性、客観性、一覧性を備えた速記録を作成することができる。真に公正な裁判を国民に担保する上でも、裁判所速記官の養成再開と速記官の執務体制、執務環境の改善が重要であるということを重ねて申し上げまして、四分ほど時間はありますが、質問を終わります。

奥野委員長 本日の質疑はこれにて終了しました。

 次回は、来る十四日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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