衆議院

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第8号 平成27年4月17日(金曜日)

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平成二十七年四月十七日(金曜日)

    午前八時五十五分開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君

   理事 盛山 正仁君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 遠山 清彦君

      大塚  拓君    岡下 昌平君

      菅家 一郎君    今野 智博君

      武部  新君    辻  清人君

      冨樫 博之君    中谷 真一君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      宮川 典子君    宮崎 謙介君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      務台 俊介君    簗  和生君

      山口  壯君    山下 貴司君

      若狭  勝君    黒岩 宇洋君

      階   猛君    鈴木 貴子君

      柚木 道義君    重徳 和彦君

      大口 善徳君    國重  徹君

      清水 忠史君    畑野 君枝君

      上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (内閣官房法曹養成制度改革推進室長)       大塲亮太郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 露木 康浩君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 塩川実喜夫君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            氷見野良三君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     吉田 眞人君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小川 新二君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    片岡  弘君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  岡村 和美君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    三好 真理君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           徳田 正一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           義本 博司君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           佐野  太君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     岡下 昌平君

  辻  清人君     中谷 真一君

  山下 貴司君     務台 俊介君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 昌平君     門  博文君

  中谷 真一君     武部  新君

  務台 俊介君     山下 貴司君

同日

 辞任         補欠選任

  武部  新君     辻  清人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案に対する質疑は、去る十五日に終局いたしております。

 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 私は、民主党・無所属クラブを代表し、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。

 当委員会での質疑を通じ、本法案について、以下の問題点が明らかになりました。

 第一に、最高裁は、事件数が減少する中で判事を三十二名増員する理由として、民事訴訟事件の内容の複雑困難化、専門化への対応を挙げました。しかし、複雑困難化、専門化を裏づける具体的かつ合理的な説明はできていません。

 最高裁からは、今回の増員は、合議率を一〇%にし、争いある対席判決の審理期間を十二カ月程度にするための、平成二十四年度を起点とする四百人規模の増員の一環である旨の答弁もありました。しかし、かかる増員目標は正式にオーソライズされたものではなく、法改正を直ちに正当化しません。

 第二に、以上の議論を経た上で、大量採用された裁判官が任官後十年たっても判事になれないことが判事の増員の本当の理由ではないかとただしましたところ、最高裁は、貴重な審議時間を浪費したあげく、三十二名の増員があれば全員判事になれるということを渋々認めました。国会において真の立法理由を隠蔽しようとした最高裁の態度は極めて問題です。

 また、このやりとりの一部始終を至近距離で目撃しながら、最高裁に何ら苦言を呈するでもなく、他人事のような答弁でお茶を濁す上川大臣は、法務大臣として適格性を欠いています。

 第三に、裁判官の身分保障の見地から、判事昇格を可能とするためであれば、我が党としても判事増員はやむを得ないと考えます。しかし、その原資は国民の血税であり、増員の成果を国民に示す必要があります。例えば、さきに述べた裁判の迅速化に係る最高裁の目標を閣議決定等により国家目標に格上げし、これを達成することを国民に約束すべきです。

 しかし、上川大臣は、第一審の訴訟手続を二年以内に終局させるという裁判迅速化法の目標がほぼ一〇〇%達成されたにもかかわらず、これにかわる新たな政府目標を定める意欲がありません。最高裁の言い値どおり粛々と増員する上川大臣の姿勢は、法案提出者として無責任とのそしりを免れません。

 最後に、二年前の本法の改正に際し、当委員会では、「政府及び最高裁判所は、」「下級裁判所の判事補の欠員が増加傾向にあることを踏まえ、」「判事補の定員の充員に努めること。」という内容を含む附帯決議を可決しました。にもかかわらず、その後、政府と最高裁は、この決議を遵守するどころか、むしろ欠員を増大させています。附帯決議を無視する政府と最高裁判所の態度は、立法府の権威をおとしめるものです。

 以上の問題点は、いずれも国権の最高機関である国会の地位を危うくするものであり、与野党を問わず、およそ国会議員であれば看過できないはずです。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますよう切にお願いを申し上げ、私の反対討論を終わります。(拍手)

奥野委員長 次に、清水忠史君。

清水委員 私は、日本共産党を代表して、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 以下、理由について述べます。

 本法案は、判事三十二人、書記官三十九人、事務官一人を増員することを定めています。必要な定員を増員することは当然ですが、一方で、速記官、技能労務職員、合わせて七十六人の定員を削減する内容となりました。これは、今後五年間で一〇%以上の定員削減を定めた政府の定員合理化計画に協力するものであり、到底認めることはできません。

 三権分立を規定した日本国憲法のもと、司法権を担う裁判所には、他の権力機構に拘束されることなく、独立してその定員や人件費を定める権限が与えられています。ところが、最高裁判所は、国家の一機関として定員合理化に協力する必要があるとして、事実上政府の要請に応えており、これは司法権の独立を脅かすものだと言わなければなりません。

 加えて指摘したいことは、近年、成年後見事件が激増し、少年犯罪事件も複雑化する中で、家庭裁判所の調査官がただの一人もふえていないことです。

 また、昨年、関東と近畿の弁護士連合会が速記官の養成再開を求める意見書を出していますが、こうした声にも応えるものとはなっていません。

 必要な定員を削減し続けることは、公正で迅速な裁判を担保する上において大きな支障を来すだけではなく、今でさえ、精神疾患による休職者が後を絶たず、慢性的な人員不足にさいなまれている現場にとって、一層の不安と負担を強いることになりかねません。

 国民の裁判を受ける権利保障と司法サービスのさらなる充実を図る上でも、政府による定員合理化の不当な要請に最高裁判所は協力すべきではないのです。今求められているのは裁判所職員の抜本的な増員であり、今回の法案に賛成することはできません。

 以上、指摘し、反対討論を終わります。

奥野委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

奥野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

奥野委員長 次に、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房法曹養成制度改革推進室長大塲亮太郎君、警察庁長官官房審議官露木康浩君、警察庁長官官房審議官塩川実喜夫君、金融庁総務企画局審議官氷見野良三君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長吉田眞人君、法務省大臣官房司法法制部長萩本修君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長小川新二君、法務省保護局長片岡弘君、法務省人権擁護局長岡村和美君、法務省入国管理局長井上宏君、外務省領事局長三好真理君、文部科学省大臣官房審議官徳田正一君、文部科学省大臣官房審議官義本博司君及び文部科学省大臣官房審議官佐野太君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黒岩宇洋君。

黒岩委員 おはようございます。

 それでは、きょうは法務行政一般に対する質疑ということで、法曹養成制度に関して質問させていただきます。

 大臣も御承知のとおり、まだ大変問題が山積している中でありますので、論点一つ一つ、全ては潰せないんですけれども、大きな柱についてお聞きをしたいと思います。

 まず、経緯について私の方から若干説明しますと、これは、平成十三年、当時の司法制度改革審議会の意見書に出されまして、そして平成十四年、これは閣議決定でありますけれども、司法制度改革推進計画というものが策定されたわけです。

 その主な柱は、司法試験合格者を三千人にする、これが一つですね。もう一つは、法科大学院、ロースクールを創設しますと。三つ目は、新司法試験を導入する。そして四つ目は、修習生の給費制に関して検討を加えましょうと。この四つの柱でスタートし、順調に、平成十六年にロースクールが開校いたしました。そして、平成十八年に新司法試験制度が始まった。

 ここまでは、滑り出しはよかったんですけれども、数年もしないうちにいろいろなほころびが出てきたんですよね。

 例えば、ロースクールの受験者の激減ですね。そのほか、本来なら、七割から八割、ロースクール出の人たちの合格率を想定していたんですけれども、それが到底目的には達しないどころか、合格率も下がっている。そして、目標の三千人にはおよそ及ばないどころか、及ばないにもかかわらず、いざ司法試験に合格した後の弁護士が、就職難、失業してしまう、ないしは低収入化が進むといった、大変大きな問題が出てきてしまいました。

 そこで、これはたまたま私たち民主党政権時代に重なるんですけれども、平成二十二年に、まさにこの改革に対する改革、対策と言ってもいいでしょう、を図るために、まずは、法曹養成制度に関する検討ワーキングチームという、これは法務省、文科省の共管でつくりました。次に、二十三年、法曹の養成に関するフォーラム、これは、さらに枠を広げて、法務省ほか五省庁の申し合わせによる会議体をつくった。そして、さらにこれを格上げして、平成二十四年に、法曹養成制度関係閣僚会議という、これは閣議決定によって会議体をつくったわけです。

 その後、平成二十五年になりました。今度は自民党政権です。これも、さらにまだまだ改革が必要だ、対策が必要だということで、現在の法曹養成制度改革推進会議という、これは、議長が官房長官でありますし、副議長が法務大臣という大変大きな会議体をつくりまして、二年間で検討を終えるということですから、ことしの七月十五日に検討を終えるわけですよ。あともう残された時間というのは三カ月を切っている。

 こういう状況であるということをまず皆さんで共有したいと思います。

 そして、私はやはり、魅力ある法曹資格、魅力ある法曹人材を養成するということは、逆に、これが達成できなければ、司法に対する国民の信頼が損なわれる、さらに突き進めば、我が国の法秩序の維持が困難になる、こういう大変な危機意識を持って、民主党政権時に問題点が顕在化してそれを対策してきた経緯もありましたので、その強い認識を持って、大臣を初めとして関係当局の皆様に御質問したいと思います。

 まずは、法科大学院について質問をさせていただきます。

 一問目は文科副大臣にお願いしたいんですけれども、ロースクールの入学希望者がどんどん落ち込んでいます。延べ人数でいえば、平成十六年、当初は四万人いたものが、今は一万人ちょいだ、その前で一万二千五百人程度、その前で一万八千五百人程度ということになると、少子化の率などとは比べ物にならない、二割、三割落ちているわけですね。実数であります適性試験が、ことし受けた人間が四千九十一人、去年が四千九百人規模、その前が五千九百人規模、その前が七千二百人規模と、これも二割、三割、どんどん落ちているわけですよ。実数です。先ほど言ったのは延べ人数ですから。ロースクールは一人が大体二・五校ぐらい受けますからね。

 これだけのロースクール離れ、ロースクールの受験者の激減、これについての理由は一体何なのか、どう評価されているのか、お聞かせください。

丹羽副大臣 お答えいたします。

 法科大学院の志願者や入学者が近年減少傾向にあるというのは、全くの事実でございます。

 そういった中で、平成二十五年六月の政府の法曹養成制度検討会議取りまとめにおいて、法曹志願者が減少する原因といたしまして、司法試験の合格状況が低迷し、また、司法修習終了後の就職状況も厳しい一方で、法科大学院において一定の時間的、経済的負担を要することから、法科大学院に入学することにリスクがあると捉えられていることが指摘されております。

黒岩委員 大臣、よくお聞きいただきたいんです。

 さっき私が申し上げた問題点に加えて、ロースクールの経済的負担ということもおっしゃっていただきましたけれども、これは、柴山先生もそうですが、今まで我々がずっと問題意識を持ってきたことが、実は、残念ながらいまだにほぼ解決されていないということを、今、ロースクールについては文科省として評価している、こういう状況なんですね。そして、ロースクール離れがどんどん進むのと反比例しまして、予備試験に人が集まってきているんですね。

 そこでお聞きしたいんですけれども、予備試験というのは、司法試験法の五条一項に規定されておりまして、予備試験というものが一体どのような目的で行われるかというと、ロースクール修了生と同等の学識と応用能力と基礎的素養を有するかどうかを判定するために予備試験を行う。すなわち、予備試験合格者というのは、ロースクール修了生と同等の質である、レベルである、こういうことが法律で明記されているんですね。

 では、現状はどうなっているかというと、直近の二十六年の司法試験においては、予備試験合格者で受けた人間が二百四十四人で、短答式では、驚いたことに一人しか落ちていない、二百四十三人受かっている。九九・六%はあの難しい短答式を受かっちゃうわけです。結果として、最終まで行った合格者は六六・八%なんですね。加えて、ロースクールの修了生の合格率は二一・二%ということで、予備試験を受かった人間の方が三倍受かっている。

 司法試験法の担当は法務大臣ですから、法務大臣に聞きますよ。このことは、法の趣旨、立法趣旨とは著しく乖離していることは当然ですが、法律違反の状態が、今、現在なのではないでしょうか。これについてイエスかノーかでお答えください。

上川国務大臣 先ほど予備試験の意味ということで御指摘がございましたとおり、法科大学院を経由しない人にも法曹となる道が確保されるように設けられたということでございまして、法科大学院修了者と同程度の学識、能力を有するかどうかを判定するというものでございます。

 したがいまして、予備試験の合格者につきましては、この制度の趣旨を踏まえながらも、実際の試験結果に基づいて、司法試験予備試験考査委員の合議による判定ということでございまして、そしてその結果について適正に決定をしていく、こうしたプロセスのもとで予備試験が実施されている、その結果として先ほどのような結果になっているというふうに理解をしております。

黒岩委員 大臣、これは去年だけ特別なことじゃないんですよ。試験結果を受けたら結果違ったというような話じゃない。去年でしたら、七一%、予備試験組が合格していますよ。LS組、ロー組は二五%ですから、これは常態化しているんですよ、ずっと。ずっとですよ。たまさかだという話じゃないんですよ。こういう状況を違法状態であると通常呼ぶんですよ。違いますか、大臣。

上川国務大臣 これは、実際の試験結果に基づきまして、司法試験予備試験考査委員の合議によって判定がなされるということでございまして、司法試験委員会において合格者を決定しているということでございますので、適正に決定をしていくものというふうに考えております。

黒岩委員 合格率が三倍も違う今の状況。そして、予備試験は大変難関ですよ。司法試験でさえ、今、短答式は三科目、そして論文は八科目ですよ。でも、予備試験は、短答式で八科目、論文で十科目課されている。そして、合格率は三・四四%ですよ、予備試験。これだけ絞りに絞っているわけですよ、予備試験自体を。そして、結果で三倍も乖離している。

 たまたま結果だった、適正だと。本当にこれが法の趣旨と照らし合わせて適正であると言えるんですか。

上川国務大臣 この試験というのは、国が行う資格試験ということでございます。この予備試験の性質も踏まえた上で司法試験委員会におきまして決定しているものであるというふうに考えておりますので、その意味では適正なものというふうに考えております。

黒岩委員 大臣、この法務委員会の場は、国民が聞いているわけですよ。そして、できる限りわかりやすい言葉で私も国民に理解を求めようと思っております。今のやりとりで、この状況が適正であるという理解をされる一般の方はほとんどいないということは、大臣、心の中ではおわかりだと思いますよ。そして、そのことが問題であると。

 先ほど副大臣も、問題点というものをやはりちゃんと認識して、こういう問題があると。あと三カ月で改革推進会議が一定の検討を終えるんですよ。この期に及んで、予備試験の今のあり方に問題がない、適正だと言い切っている状況で、実際、内閣官房にこの推進室が設けられていますけれども、ほとんどが法務省の職員。当然、司法試験法は法務省の所管である。その大臣が今、適正であるという認識をして、では、この三カ月で何か改善を図る気はないということですか。(大塚大臣政務官「違法状態にあると言われるからですよ」と呼ぶ)

上川国務大臣 平成二十五年七月、先ほど委員から御指摘をいただきましたけれども、法曹養成制度関係閣僚会議決定におきまして、予備試験の結果の推移、そして予備試験合格者の受験する司法試験結果の推移等につきまして必要なデータの収集を継続して行った上で、法科大学院教育の改善状況も見ながら検討し、二年以内に結論を得るとされているところでございまして、現在、法曹養成制度改革推進室におきまして鋭意検討が進められてきたところでございます。

 七月の設置期限ということでございますので、迅速な結論を出していきたいというふうに考えております。

黒岩委員 さっき政務官から不規則発言がありましたけれども、多数の法律の専門家に、五条一項の条文と照らしてどういう状況かと聞いたときに、皆さんが口をそろえて、これは違法状態と言えるとおっしゃったから、私は申し上げている。それについて、法を所管する大臣に対して、違法状態であるのか、それとも本当に適法で適正であるのか、その質問をすることは当たり前であって、それについて適正であると答えたということは、これは、多くの国民の意識からすれば非常に認識がずれているということは、再度指摘をしておきます。

 このことは今、みんな共有しているんですよ。確かに、大きな目標を掲げて、理想はすばらしかったけれども、そこになかなか近づけないという苦しさともどかしさを感じながらも、だけれども、今言った幾つかの会議体を持ちながら、何とかあるべき姿に持っていこうという努力をしているわけですから、問題があれば問題があるということは認識をされて、それがあって初めて問題提起があって、改善点があるわけですよね。

 今申し上げた五条一項、もう余り法律に拘泥することはやめましょう。少なくとも、予備試験合格者のレベルとローの修了者のレベルが同程度でないということは、これはもう一目瞭然なんですよね。

 では、これをどうやって合わせていくか。どっちかを全部なくしちゃうという手もありますよ。ただ、そこまで乱暴なことは申しません。その場合は、一つは、予備試験の間口を広げていく。予備試験自体で、今言った、もう少し難しくなくても予備試験に合格できるようにしていく、こういう方法があると思うんですが、これについては御見解はどうでしょうか。

上川国務大臣 課題としては、さまざまな課題がございます。当初スタートしたときに予定した状況とはさまざまな形で現実に乖離があるということの中での課題が指摘された上で、今のような状況になっているというふうに思っておりますので、そういう意味での対策につきましても、現実のデータをしっかりと把握した上で、七月までの間に十分な審議をしていただくということでございまして、そういう意味では、今御指摘のような考え方もあろうかというふうに思います。

黒岩委員 ありがとうございました。

 確かに、七月にある程度確定的な方向性が出る。ただ、今私が申し上げた方向性というのも合理的なものであると、大臣が前向きに受けていただいてありがたいです。

 というのは、今現在、では、弁護士事務所、実務者のレベルでどういうことが起こっているかというと、弁護士事務所で司法試験合格者を採用するときに、まず予備試験合格者から採るんですよ。そして、定員に満たなかったら、LS組、ロー組を採る。わかりますか。同じ法曹である、同じ司法試験合格者に、今、二極化、完全に上下関係が生まれてしまっているんですよ。昔はそんなことはなかったわけですね。何期に卒業したら、同じ釜の飯を食って、同じ法曹資格者だと。法曹一元化という発想まである中に、今時点で、同じ資格者の、完全に二極化が行われているんですよ。

 ですから、これを解消するという意味も含めて、今申し上げた司法試験法五条一項の立法趣旨に沿うような現実的な対応を図っていただきたい。それは、予備試験の間口を広げるというのも一つの方策だと今申し上げましたし、大臣もそれについては前向きな答弁をいただきましたので、今これだけのことが起こっているということをよく御認識いただいて対応していただきたい。これはあえて私の指摘にとどめておきます。

 では、次の問題は、予備試験の間口を広げるとともに、やはりローのレベルを上げていかなきゃいけない。これによって今言った同等のレベルに近づくわけですから。

 では、これは文科省になりますけれども、まず、今のロースクールの現状というものの認識。

 二十六年の司法試験の結果、先ほど申し上げましたけれども、これは、予備試験組を除くと、合格者は千六百四十七人です。全部で千八百十人ですけれども、ロースクールだけですと千六百四十七人。そして、合格率は、先ほど申し上げたように二一・二%。これは、受験者数は二百九十五人ふえています。しかし、合格者数は二百八十二人減っています。そして、合格点も、七百八十点から十点下げています。平均点が十点下がったということもあるかもしれませんけれども、十点ハードルを下げています。にもかかわらず、この合格率、そしてこの合格者数。

 これを文科省としてはどのように評価されますか。

丹羽副大臣 委員おっしゃるとおり、予備試験合格者の司法試験の合格率は、法科大学院修了生の合格率と比較して高いことは事実であります。

 そういった中で、文部科学省として、やはり引き続き、入学定員の削減など組織の見直しの促進や法学未修者の教育の充実、認証評価の厳格化など、教育の質の向上に向けた取り組みを通じて、法科大学院のさらなる改善充実を進めることで、法科大学院修了者の合格率の向上を図るようにしていきたいというふうに思います。

黒岩委員 後段の改善策はこの後議論しますが、今の副大臣の答弁でも、やはり今の現状を憂慮しているということですよね。もっと言えば、やはりローのレベルが思ったより高まっていないという認識をされているということでよろしいでしょうか。

丹羽副大臣 委員おっしゃるように、予備試験合格者の司法試験の合格率は、法科大学院修了生の合格率と比較して、これは実質数字も出ておりますので、高いことは事実であります。

黒岩委員 ちょっとわかりづらい答弁なんですけれども。

 今回の改革推進会議のメニューの中に、今後の検討ですけれども、こういうメニューがあります。仮称ですけれども、共通到達度確認試験なるものをロースクールに導入する。これは、具体的に聞いてみたら、二年ですからこの七月までに全体のたてつけを決め、五年以内に実施する。そして、その中身は、要は、まず、ローの未修者だったら、一年生から二年生に進級するときの進級試験に充てましょうと。現在は、ローごとに、単位制とかで、実際、進級試験があるかないかもローごとですけれども、進級試験を加えましょうと。ともすれば、既修者の二年から三年次、ここの進級試験にもこの共通到達度確認試験を導入しようと。

 こういう方針があるということは、当然、今のローの修了認定、ともすれば甘いんじゃないの、修了認定者のレベルが想定していた到達度に達していないんじゃないの、こういう認識からの対策でありますよね。

義本政府参考人 お答えいたします。

 今、募集停止を除きまして、ロースクールについては四十九校ございますけれども、委員御指摘のとおり、合格率が予備試験の……(黒岩委員「低レベルの認識だけでいいです」と呼ぶ)はい。

 いわゆる合格率が低いところについては、進級ですとか、厳格化の取り組みはしておるところでございますけれども、それを一層しっかり進めるという観点から、共通到達度確認試験というのを導入させていただくという方針を決め、今、平成二十六年度からその試行を開始しているところでございます。

 委員御指摘のとおり、ここ二年、三年については、本格実施に向けまして、未修者の進級、それから既修者についても対象にしまして取り組むということで、今、その具体化に向けた検討をしているところでございます。

黒岩委員 審議官も、私の伺ったことにお答えいただきたいんですよ。

 先ほどから言っているんですよ。問題点があるならばあると正直におっしゃって、そこからスタートしていきましょうということです。問題点があること自体を責めるというつもりじゃないんですよ、私たちもその問題点の解消に取り組んできた側でもあったわけですから。

 ですから、今言ったように、共通到達度確認試験を導入するということは、当然、LSの、今、なかなか進級も修了も、到達度に対して、やはり理想どおりにはいっていない、こういう認識ですよね。だからこの制度を導入するということですよね。イエスかノーかだけで答えてください。

義本政府参考人 今委員御指摘のとおり、課題があるロースクールがあるところでございまして、それを解消するという観点から、共通到達度確認試験を導入させていただいているところでございます。ですから、御指摘のような課題があるロースクールがございます。

黒岩委員 ありがとうございます。

 審議官の課題があるということは、問題があるということとイコールですし、低レベルだということですからね。そういうことなんですよ。ようやくこれで先に進めます。

 では、このLS、ロースクールのレベルをどうやって上げていくんだと。これは、いろいろな方策があるので、余りにも多岐にわたる議論はもうしません。基本的には、私は、ローの定数をやはり絞り込んでいく、選択と集中で絞り込んでいくという方向性ということで、これから何点か質問をしてまいります。

 今、審議官のお話にもありましたけれども、今回の改革推進会議のメニューにも、ローの統廃合を通じて定数を削減すると明記されています。やはり定数を削減することを目標に掲げているわけですね。その一つの手法として、公的支援の見直し。簡単に言うと、今、ロースクールに補助金を出しています。その補助金に対して一定程度の水準、基準を設けて、多いところ、少ないところというものを分けて、自然と統廃合が進んでいくという、この試みをもう何年も前からやっていますよね。今時点で、二十六年九月に見直しを発表されたのが直近でしたかね。

 これは、累積の合格率、今まで、この約何年間の累積の各ローの合格率。

 それと、二つ目が、これは直近の未修者の合格率ですよね。

 三番目に、今度は直近の定員。今、定員割れをどんどん起こしていますからね。今、現実には定員は三千八百人ぐらいですけれども、実際入っている人というのは二千二百七十二人しかロースクールに入っていないわけですから。定員の充足率。

 そして四番目、これも二つに分かれていますけれども、法学部以外からの入学者をどれだけ採っているか、そして社会人出身者をどれだけ採っているか。

 次、五番目。これは、この次の議論にも絡んできますのであえて言いますけれども、地域配置。地域配置というのは、簡単に言うと、一つの県に三校以上あった場合は点数はゼロですよ、二校以内だったら点数を四点上げますよというものですよね。あと、夜間の開講があれば四点プラス、なければゼロ点だと。

 ということで、五ランクに分けました。今、五十二校を五ランクに分けました。

 第一類型が十三校ありますね。ここには九〇%の補助率で補助金が行きます。第二類型がA、B、Cに分かれていて、補助率が八〇%、七〇%、六〇%、七校、五校、二十校でしたかね。最後、第三類型、五番目ですよ。ここは七校あるんですけれども、これについては補助率が五〇%ということです。

 そしてもう一つ、あめとむちですから、あめの部分でいうと、加算プログラムを入れましたね。これは、各ローが、要するに、卓越した、すぐれた取り組みをしている場合に、補助率をかさ上げしましょうということで、まずトップファイブを言いますと、四五%かさ上げが早稲田大学のローです。合わせると、九〇足す四五で一三五%。二番目が一橋でしたね。これは四〇パーですから、合わせて一三〇パー。三番目が東大、これは三五パーですから、合わせると一二五パー。四番目、五番目と並んで京都大学と慶応が三〇パーですから、合わせて一二〇パー。逆に、先ほど申し上げた五ランク目、第三類型の七校は加算ゼロですね。四ランク目の第二類型のCは、二十校のうち加算は八校、逆に言えば六割は加算なしということで、私は、かなり厳しく綿密な公的支援の見直しをしたと思っております。

 そこで、質問です。

 この見直しによって、定員は一体何人になると見込まれているのか、統廃合がどこまで進むと見込まれているのか。くどいようですけれども、これは定員削減が目標だと明記された手段でありますから、その手段に対しての目標の想定をお聞かせください。

義本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘いただきましたようなプログラムを平成二十五年に発表させていただきまして、それ以降、大学院に対して指導させていただき、御指摘のように、二十七年度の予算から実行させていただいたということでございまして、その結果は今御指摘のとおりでございます。

 このプログラム発表以降、募集停止を表明した大学については十七校ございまして、さらに私どもとしては相談を受けて指導していきたいと思っているところでございます。(黒岩委員「だから、何人になるんですか、十七校で。定員がどれだけ減るんですか。いいですよ、三百五十四人です」と呼ぶ)

 それから、今、現状につきましては、平成二十七年度の定員につきましては三千百七十五名でございまして、ピーク時に比べて半減させているところでございます。今後、相談を受け付けて、さらに定員の削減について努力してまいりたいと思っているところでございます。

黒岩委員 聞いたことに答えてくださいよ。

 今、二十六年で三千八百九人いて、そして今おっしゃったように、二十四年の見直しも含めて、島根大学とか十八校で二十七年から停止する、これだけで三百五十四人減るわけですよ。加えて、今、見直しの対象校は十八校ですけれども、そのうち募集停止をしていない学校が七校ありますね。ここは各自の判断ですよ、各ローの判断ですけれども、見直し対象校の定員がたしか約二百十七人程度ですから、これを合わせると約五百人の定数の削減が見込めるというような答えをしていただきたかったんですよ。そうすると、二千五百人ぐらいになるんじゃないかというもくろみだと思うんですよね。

 そういうふうに、審議官、聞かれたことにぜひ答えてくださいよ。せっかく参考人で呼んで、数字的なことを、こういったことを別に私は副大臣、政治家に聞こうというわけではないんですから。

 では、逆の聞き方をするんですけれども、これは審議官に聞きますよ。質問通告していますからね。計算式まで質問通告していますからね。今度は逆からたどってみましょう。

 司法試験の最終合格者を千五百人と仮置きする。この仮置きについては、この後、私なりの考え方を言いますけれども、一つは、自民党の二十六年の緊急提言に、二十八年から千五百人にするという一つの提言があって、私はこれに一定の合理性を感じているものでありますので、千五百人に仮置きしましょう。そして、今までは五年、スリーストラックアウト制、三振制が、今度五回制に変わりました。そして、もともとロー卒業生の七割から八割の方が合格するというのが目標で、では、最低の七〇%にしますよ。八割とは言いません、七〇%。いいですか。

 最終的な司法試験合格者が千五百人だと仮定して、五回制、そしてロー卒業者の七割が合格するとした場合のローの定員数は、計算すると、適正値としては何人ぐらいになりますか。

義本政府参考人 お答えいたします。

 法科大学院が目指すべき定員規模を提示するに当たりましては、現在政府で調査検討が進められております今後の法曹人口の結果をベースにしながら、それのみならず、先ほど御指摘があった予備試験のあり方ですとか法科大学院の修了率というようなさまざまな要素を勘案して算定するというふうに認識しておるところでございます。

 千五百人というふうな御指摘をいただきましたけれども、現状において機械的に目標値を出すことにつきましては、受験者やあるいは法科大学院に対するさまざまな影響がありますので、政府全体として検討すべきだと思っておりますので、現時点では差し控えたいと思います。

黒岩委員 ちょっと待ってください。事前のレクで何度も何度もやって、では、大塲室長に聞きますよ。内閣官房の方では機械的に計算して数字を教えてくれましたよ、こんなもの、割り算で電卓を二回か三回たたけば簡単に出るわけですから。大塲室長、聞いていないですか。(大塲政府参考人「いや、ちょっと……」と呼ぶ)聞いていない。

 審議官、聞いているでしょう。何でそれを言わないんですか。仮置きの数字ですよ。

義本政府参考人 御指摘いただいた千五百人というのはあくまでも仮置きの数字でありますけれども、現時点においては、法曹人口については検討中でございますので、その数字についての具体的な言及については差し控えさせていただきたいと思います。

黒岩委員 また私が答えを言う羽目になりましたけれども、約二千五百人だそうですよ。さっきの定員削減と、今言った逆から計算しても、およその目安は出ているんですよ。二千五百人と言ったって何の問題もないじゃないですか。今、二千二百七十二人しか実数者はいないんですよ。

 それで、さらに私は踏み込んで、先ほど申し上げたとおり、この二千二百七十二人の実数者は、事前に、その前の年に適性試験というものを受けます。国公立の大学入試センター試験みたいなものですけれども、これを受けます。二千二百七十二人、ことしローに受かりましたよね。その方たちが、去年適性試験を受けた人数が四千九百何十人だということですよ。それが今度、来年LSを、ロースクールを受験する人たちが、もう既に直近の適性試験を受け終わっていますね。これが、四千九十一人と、もう既に八百五十四人減っているんですよ。いわゆる受験者数が減っているわけですね。

 そう考えると、今でさえ実入学者が二千二百七十二人なんですから、私は、定員は二千人程度が適正値であると考えております。副大臣、どうお考えですか。

丹羽副大臣 委員のおっしゃる法科大学院の規模の適正化は、プロセスとして、法曹養成の安定化を図る上で喫緊の課題でもあるというふうに認識いたしております。

 平成二十七年度の入学定員が、ピーク時の約半減の三千百七十五人というふうになる見込みでございます。学生募集停止を公表した法科大学院が二十五校というふうに伸びております。

 さらに、現在政府で調査検討が進められている今後の法曹人口の結果を踏まえまして、累積合格率七割から八割を目指せるような定員規模を検討、明示するとともに、当面の間は、入学定員をさらに削減する方向で取り組むということを昨年十一月に公表したところでございます。

 文部科学省といたしまして、入学定員の見直しを促進するとともに、教育の質の向上を図ることで法科大学院に有為な人材が集まるよう、法科大学院教育の改善充実を目指していきたいというふうに考えております。

黒岩委員 丁寧な御答弁、ありがとうございました。

 今私が申し上げたような考え方というのも一つ参考にして、これから三カ月で詰めるときに、十七名の推進室のスタッフがいるわけですから、大塲室長が先頭に立って、法務省、文科省が、特に両省が共同作業する中で、やはり定員削減というような方向性を示しているわけですから、ある程度合理的な数字を出していくことが重要です。

 あともう一つ言いますけれども、さっきの、今、四十九校が、今度十八校なくなると三十一校ですよ。今の見直し対象が減ると二十四校になっちゃいますので、地域配置の加算はもうちょっとふやしてくださいね。そうしないと、例えば私の住んでいる、新潟大学も、北信越の信州大学も、もう募集停止を発表しましたので、北信越だと金沢大学だけだとか、三十一校になることはもう決まっているわけですから、仮に全国で二十四校になったら、とにかく地域加算しないと、本当にロースクールに通えないという、大臣、聞いておいてくださいよ、こういう問題も本当に大きな問題になってくるんですよ。誰もロースクールに行かない時代になっちゃいますよ、そんなことになったら。

 もっとロースクールで聞きたいことはあるんですけれども、先に進めて、では、ロースクール卒業後について、時間の限り、何点かだけ聞きますよ。

 これは上川大臣も御承知のとおり、何せ今、弁護士の就職難。弁護士は、弁護士になって、弁護士を開業するというか、弁護士業を行うには、弁護士会に登録しなければいけませんね。この登録料というのは地域の弁護士会によってさまざまですけれども、大体、安いところで月五万円、高いところで十一万円ぐらいだそうですよ。そうすると、その稼ぎに見合わない、ないしは就職口もなければ、当然登録しないわけですね。

 十二月の、要するに司法試験に受かった最初の一括登録、これは、驚いたことに、私らが議論をしていたときには、二割の方が登録しない、二割が失業弁護士だと。そうしたら、この直近二年間を見たら、六十七期生、六十六期生だと、二八%なんですよ。三割近い人が登録しないわけですね。これは約十年前に比べると三倍上がっているんですよ。

 確かに、十二月の末ですから、一月四日から事務所を運営するから来てくださいという人もいる。ですから、翌月に登録する人もいますけれども、それでも、その翌月でも登録しない人が一五、六%いるわけですね。すなわち、弁護士資格を取っても、昔は、いい意味で高ねの花で、取ればどこでも就職できた。

 加えて収入なんですけれども、これは今、平均で、直近二年の合格者、ですから比較的若い世代の人たちで、四百万以下が三〇%を超えています。三百万以下も一五・六%。要するに、弁護士を取ったはいいけれども、職にもつけない、ついたはいいけれども低収入だ。こういう状況で、やはりこの法曹養成制度改革というのが相当緊急性を要するものだということ。

 大臣、そういう御認識を強く持たれていると思うんですが、これについて御見解をお聞かせください。

上川国務大臣 司法試験に、大変厳しい試験に合格をされた法曹の皆さんが、夢と、それこそ使命感を持ってそれぞれの分野で活躍をしていただく際に、現実の中ではそのような事態が起きているということについては、これは大変深刻な問題であるというふうに私自身も理解しているところでございます。

 そうしたことも踏まえまして、さまざまな御意見もいただきながら、七月に向けて最終的な検討結果を出したいということでございますので、今のような問題意識につきましては、私も十分に理解をしているところでございます。

黒岩委員 迫力を持ってこれは当たっていただきたいと思いますよ。本当に、日本の法秩序の維持の根幹にかかわる話ですからね。

 それで、もともと三千人を目指していた。これを、二十五年かな、取りまとめによって、三千人の旗はおろしました。ただ、まだ当面は目標値は定めていないということですけれども、やはり、ある程度合格者数を絞っていくことが、今申し上げた就職難であるとか低収入化の改善にはなる。もちろん、広くあまねく過疎地に弁護士を配置するということとは若干二律背反する部分があるかもしれませんけれども、私は、その手当ては手当て策として申し上げたいけれども、時間がないからきょうは言いません。

 今、合格者は千八百十人ですよ。ただ、LSの入学者が、おととし、去年、ことしと四百人ずつ減っているんですよね、毎年。そう考えると、やはり司法試験の合格者数というのは、途中で申し上げました、千五百人ぐらいが適正値だと私は考えます。自民党の提言もそうなっています。大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 まさに、法曹人口をどうするかということについての大きな方向性の中でそのような目標値についての御議論を今もいただいているわけでございますし、これは大変大事なことだというふうに思っております。

 そうしたことも含めて、七月の時点までにそうしたことについての検討につきましても進めているということでございます。

黒岩委員 検討中だから検討と言いますけれども、やはり、大臣、この改革推進会議の副議長なんですから、大臣としてのかなり強い方向性を、こういう国民に開かれた場で、もうあと三カ月なんですから、踏み出していただいても、私は大いに好ましいことだと思いますよ。

 二千人を切って、そんな中で、大臣、どう思いますか。大体現場感覚はわかるでしょう。千人を超えたあたりから、みんなちょっと質が危ういな、こういう声がどんどん聞こえてきたでしょう。法務省にも届いてきましたよ。

 そんな中で、やはり千五百人ぐらいに絞っていかなければ弁護士の質も保てない、そう思いませんか。

上川国務大臣 数値目標そのものを出すということにつきましては、やはり慎重にしていかなければいけないというふうに思います。

 しかし、法曹養成の趣旨、そして、これから、法曹の皆さんが新しい分野も含めてさまざまな分野で活躍していただくということの時代のニーズ、あるいは国際化の進展の中でのさまざまな活躍の分野の広がり、いろいろなことを考えた上でということでございますので、やはりしっかりと慎重に審議をしながら、最終的な結論に至るべく、私としては、今のような御意見も含めて承りたいというふうに思っております。

黒岩委員 冒頭、何でああいういきさつを言ったかというと、平成十四年、閣議決定で、それまで千人程度だった弁護士を三千人にふやすと、慎重じゃないですよ、大胆にどんと出して、ロースクールをつくる、司法試験も新しいものにする、ここまで大胆なことを言った骨太の改革なんですよ。それを今、大臣が副議長を務めている改革推進会議で、それも、慎重だとか言っているんじゃなくて、大胆に、今申し上げていた法秩序維持のための魅力ある法曹人材を育成していくために、大臣、迫力を持って、指導力を持ってこの問題に当たっていただきたい、このことを強く強くお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、藤原崇君。

藤原委員 自由民主党の藤原崇です。

 本日は、法務委員会で質問の機会をいただきまして、大変ありがたいと思っております。今国会から法務委員会に所属をさせていただきます。委員長を初め皆様方の御指導をよろしくお願い申し上げます。

 本日は一般質疑ということで、私も、黒岩委員と同様に法曹養成、それから、弁護士の実務について、それから法テラスについて、この三点について質疑をしていきたいと思っております。

 まず最初に少し自己紹介をさせていただきますと、法務委員会、弁護士の先生方がたくさんおりまして、私も一応法曹の資格は持っております。ただ、黒岩委員のお話にも少し出ましたが、私、新司法試験組でございまして、LS組ということで、ちょっといろいろ思いながらお話を聞かせていただいておりました。

 そういう中で、法曹養成について、私の方からも何点か質問をさせていただきたいと思います。今後のことについて主に伺わせていただきます。

 まずは、先ほど黒岩委員からもお話がありました、改革をしていかなければいけないということは、これは確かなんだろうと思っております。そういう中で、昨年取り組まれた改革、何点かありますが、まずは、司法試験の択一科目、これから民訴等が除外された形でことしから施行されます。それから、受験回数もことしから五回制ということになりますが、これらの改革、まだ今回が初めてですが、どのような影響があると予想しているか、その点についてお聞かせいただければと思います。

萩本政府参考人 委員から御指摘いただきました司法試験法の一部改正ですけれども、昨年の十月一日に施行されまして、本年五月に実施される平成二十七年の司法試験から適用されることになっております。その意味で、改正法に基づく司法試験がまだ一度も実施されておりませんので、試験の結果にいかなる影響があるかを現時点で予測することは困難であることを御理解いただきたいと思いますが、一点、既に判明している点を御紹介したいと思います。

 平成二十七年の司法試験の受験予定者は八千九百五十六人ですが、そのうち、千十二人は受験回数が四回の者でして、これらの者は昨年の法改正がなければ受験することができなかったことになりますので、法改正によりまして受験者層などに一定の変化があるものと認識しております。

藤原委員 ありがとうございます。

 今回の新司法試験、千人ぐらいの方が四回目という資格で挑戦をするということで、受験者層のレベルとは別の話で、総体では恐らくふえて、受験に臨まれるんだろうと思っております。

 この二つの改革についていろいろな考え方があると思うんです。私も最初は、三振制を変えるというのはちょっとどうなのかなというふうに思っておったんですが、五年間という枠がある以上は、その中で五回チャンスがあるというのはやはり合理的なんだろうと考えております。四回目の方々、ぜひ頑張っていただければと思います。

 司法試験の改革については、択一それから受験回数が大きな改革ですが、それと同時に、ロースクールの方でも、改革を前倒しで順次導入しているところがあります。

 具体的には、法学未修者の方々、共通テストもそうですが、基本的な法律科目をより重点的に学ぶ仕組みを導入していくということですが、現状ではどのようになっているか、その点についてお願いします。

義本政府参考人 お答えいたします。

 法学未修者につきましては、司法試験合格率等においても課題が見られるところでございますので、さらなる指導の充実が求められていると認識しているところでございます。

 文科省におきましては、平成二十五年七月の法曹養成制度関係閣僚会議の決定あるいは中央教育審議会の法科大学院特別委員会の御議論を踏まえまして、平成二十六年の八月に、法学未修者に対する基本科目の指導の充実につきまして各法科大学院に対して通知をしたところでございます。

 具体的には、法学未修者が法律基本科目をさらに重点的に学ぶことを可能にしていくという観点から、法律基本科目につきましては履修単位数を増加させるとか、一年次でとっていましたものについては、二年次も含めまして、取得単位の平準化を図ることによりましてよりじっくり学べるという形をとりますとか、あるいは、実務経験を有する者につきましては、相当する展開・先端科目、例えば税法等にかえまして法律基本科目の履修を認めることとしたところでございます。

 当該通知を受けまして、現在、法科大学院におきまして、法学未修者に対する教育の指導に向けた取り組みが進められているところでございまして、文科省としましては、今後、法科大学院の取り組み状況を把握していくこととしているところでございます。

藤原委員 ありがとうございました。

 早いところではことしの四月からカリキュラムに変更があるところもあると伺っておりますが、今後、いろいろなロースクールで、未修者の方々の基本重視の姿勢というのを打ち出していくんだろうと思っております。

 司法試験だけではなくて、法律の勉強というのは、私が思うには、いろいろな展開科目、別に国際私法が展開科目というわけではないんですが、そういう広い分野を勉強するのも大事なんですが、やはり大事なのは基本だと思っております。憲、民、刑、民訴、刑訴、会社法、それから行政法、この基本をしっかりと学んでいれば、ある意味、ほかの分野についても応用がきく。そういう意味では、文科省さんには、ぜひとも基本をしっかり重視してやっていくという姿勢を今後も強調していただきたいと思っております。

 逆の観点からいいますと、択一科目から三科目、四科目外れたというのは、ある意味、文科省さんの方で基本を重視して学ぶという仕組みをとっている中で、司法試験の科目から基本科目の択一が抜けたというのは、その点では少しバランシングがとれていないかなという気も実はしております。

 これについては、今後、時間をかけて検証するということですが、まず大事なのは、民事訴訟法、刑事訴訟法なんて、特にその知識がないと裁判ができないわけですから。弁護士にとっては、裁判が何ぼだと思っております。論文で知識を見るのもいいんですが、まずは、基本的な裁判のルールというのは、論文ではなくて択一で聞かれるような、考える問題ではなくて記憶しなければならない問題、これはたくさんありますので、やはりそういう点も、今、修習一年と短い期間であれば、事前にしっかり民事訴訟法、刑事訴訟法、規則まで読み込んで、択一でそれをチェックして、その後に修習生になる、そういう姿勢がもしかしたら必要なのではないかなというふうに思っております。

 そういう中で、着々と改革は進んでおりまして、先ほど黒岩委員からもありましたが、ことしの七月に一定の結論を得るということになっております。大事なのは、結論を得た後、どういうふうにそれが執行されていくかということです。

 体制もまた変わっていくと思うんですが、ことし七月に結論を得た後、その後の改革についてはどのような流れで進むか、これについて伺わせていただきます。

    〔委員長退席、盛山委員長代理着席〕

大塲政府参考人 法曹養成制度のあり方につきましては、現在、閣僚会議であります法曹養成制度改革推進会議、及びその下に置かれた法曹養成制度改革推進室におきまして、法曹養成制度改革顧問会議の意見を聞きながら、本年七月十五日を期限といたしまして、先ほど来議論のあっております法曹人口のあり方あるいは法科大学院教育の充実策など、法曹養成制度をめぐるさまざまな施策の実施及び課題の検討を進めているところであります。

 本年七月十五日までにこれらの課題について結論を出し、実施すべきとされた施策については、関係機関において速やかに実施していくことになるものと認識しているところでございます。

藤原委員 ちょっと一点確認なんですが、現在内閣府に置かれている法曹養成の推進室、これについてはどうなりますか。

大塲政府参考人 法曹養成制度改革推進室及びその閣僚会議であります推進会議につきましては、本年七月十五日をもって廃止するということになっております。

藤原委員 ありがとうございます。

 七月十五日以降は、一元的に内閣府の推進室がなくなって、各省庁の連携という形でこの問題に取り組んでいくんだろうというふうに理解をしました。

 この問題の難しいところというのは、多省庁にまたがるところだと思っております。文科省としては、ロースクールの学力の底上げを図っていく、全員が司法試験に合格する、そういうような教育を施していく。だけれども、司法試験の合格者というのは、これは一応、司法試験委員会という第三者委員会が決めるということで、ある意味、公には認められていませんが、数字的な枠が決まっているということになっている。それと同時に、法務省がその他の関連分野を管轄するということで、なかなかそこの意思疎通がうまくとれていないがために、それぞれがばらばらに、連携がうまくとれないでここまで来てしまったのではないかなというのが、私の方で見ていて思う感想であります。

 今後、各省庁連携ということですが、これは非常に大事な問題でございますので、リーダーシップをとって、それぞれの省庁で連携をとってやっていただきたいというのがお願いでございます。

 人数等難しい問題はありますが、私、新六十三期ということで、四年ぐらい前に資格を取らせていただきました。登録番号が四万三千番台でした。この前、新六十六だったか六十七だったか、新規の方々が登録して、その名簿を見ておりましたが、五万一千台の登録ということになっておりました。四万台でも結構新しいなと私も思っていたんですが、もう五万台ということで、戦後、司法試験制度が始まってから、私は四万三千台だったんですが、それから四年で五万台というふうにふえてまいりまして、やはり、四、五年で四万三千から五万になったというのは、かなりインパクトは大きいのだろうと思っております。

 この弁護士の数字の問題、やはりここをしっかりと最初に決めないと、あとの問題が決まらないと私も思っておりますので、ぜひ、残りの時間はあと数カ月でございますが、この数字については、しっかり政府として、この数字だというところを打ち出していただきたいというふうに私の方からお願いをさせていただきます。

 それで、次には、弁護士になったということで、弁護士になった後の仕事の関係で御質問させていただきます。

 多少テクニカルな問題なんですが、弁護士法二十三条の二に基づく弁護士照会制度について少しお聞きかせをさせていただきます。

 弁護士というのは、一定程度の信用があるということで、さまざまな機関に弁護士照会をかけた場合には、差しさわりのない範囲で、問題のない範囲では回答をいただけるという公の制度があります。

 一般論としてお伺いしますが、一般論として、弁護士照会を受けた機関が個人情報保護の観点から一律に回答を拒否する、そのような運用をすることについては適法なのか違法なのか、お伺いをしたいと思います。

萩本政府参考人 御指摘の弁護士法第二十三条の二の規定に基づくいわゆる弁護士会照会制度は、弁護士が、受任事件につきまして、訴訟資料等の収集、事実の調査等の職務活動を円滑に遂行するために設けられた制度でして、一般的には、照会を受けた者には、照会に応ずる報告義務があると解されているところでございます。

 もっとも、例外なく報告義務を負うわけではなく、他に保護すべき利益があるなど、正当な理由があるときは報告義務を負わないとも解されているところでして、報告義務を負うか負わないか、最終的には、個別の事案ごとに、報告がされることによって得られる公共的な利益と、報告をしないことによって守られる秘密、プライバシー、名誉等の利益とを比較考量して判断されるものと理解しております。

 したがいまして、委員御指摘の個人情報保護の観点も、ただいま申し上げましたような比較考量の中で考慮されることになるものと考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 結論についてはなかなか言いにくいところもあるんだと思うんですが、裁判所の判例なんかを見ましても、個別具体的に判断をするべきもので、一律に拒否をする、そういう運用をそもそもしている、門前払いをするというのは、そういう判例等に照らしても、個別具体的に判断をするということに照らしても、これは違法あるいは不適法との評価をされる可能性は高いんだろうというふうに思っております。

 ところが、実際問題、弁護士照会をかけようとしても、金融機関あるいは通信会社の中では、どことは言いませんが、個人情報保護の観点から、個別具体的な判断をせずに一律に拒否をしている会社もございます。これについては、先ほど申し上げたとおり、そもそも不適法な運用ではないかと評価される可能性がございます。

 これについて、金融機関あるいは通信会社についてなんですが、監督官庁としては、もし適法性について疑義があるような運用がなされているのであれば、疑義がない形で対応するように指導するべきではないかと考えますが、まずは金融機関の監督官庁さん、それから通信会社の監督官庁さんにそれぞれお伺いをさせていただきます。

氷見野政府参考人 まず、金融機関に関してお答えさせていただきます。

 金融庁では、「金融機関における個人情報保護に関するQ&A」というものを公表いたしておりまして、その中で、弁護士照会を受けた場合の対応についても述べておるところでございます。

 具体的には、弁護士照会を受けた場合につきまして、個人情報の第三者提供の制限の例外であります法令に基づく場合に原則として該当するということを示しました上で、過去の判例も踏まえまして、照会の理由や当該個人情報の性質などに鑑み、報告に応じるか否かにつき、個別の事案ごとに判断することが必要である、その旨示しておるところでございます。

吉田政府参考人 電気通信事業者の個人情報の取り扱いに関しましては、総務省におきまして、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインというものを定めまして、事業者に示しているところでございます。

 その中で、同ガイドラインにおきましては、電気通信事業者が個人情報を第三者に提供が可能な場合の一つとして、法令に基づく場合というものを定めております。また、このガイドラインの解説におきまして、法令に基づく場合とは、弁護士法によるものも含めまして、法律上の照会権限を有する者からの照会がなされた場合が含まれるものであり、通信の秘密の対象となる情報を除いては、基本的に法律上の照会権限を有する者からの照会に応じることは可能である旨を明記しておるところでございます。

 総務省といたしましては、電気通信事業者におきまして個人情報の適切な取り扱いがなされるよう、同ガイドラインの内容の周知に努めてまいりたいと考えております。

藤原委員 ありがとうございました。

 今答弁いただいたように、基本的に監督官庁からは、弁護士照会が来た場合には個別具体的な判断をしてくださいねと、これはちゃんとガイドラインを示しているわけですので、やはりそれに沿った運用をしていただかないといけないんだろうと思っております。

 聞くところによれば、弁護士照会をかけるのも弁護士ですが、今度は、それを受けた会社の顧問弁護士の方は何と回答するかというと、弁護士照会に応じなくてもクレームが来る可能性は低い、開示をした方がクレームが来る可能性が高いので、だから拒否をしましょう、そういうように、事実上の考慮というのもあるんだとは思いますが、そういう形で、この弁護士照会というのが形骸化しているところがあるのではないかというふうに思っております。

 この弁護士照会も、安いわけではないんですよね。一回一万円ぐらいかけて照会を出すので、だからというわけではないんですが、やはり弁護士に認められた数少ない証拠収集の手段ですので、監督官庁さんには、答弁は求めませんが、今後も、その趣旨が徹底されるように、しっかり調査そして指導をしていただきたいというふうに思っております。

 それから、最後に法テラスの問題についてお伺いをしたいと思っております。

 法曹養成制度で、私のころで二千人ぐらい、今、千七、八百人ぐらいの弁護士が出ている。その大きな受け皿の一つになっているのは、法テラスの勤務弁護士と呼ばれる制度です。国の機関ではないんですが、ある意味パブリックなところに勤めて、そこからお給料をいただいて、過疎地であるとかゼロワン地域みたいなところで弁護士として活動していく、これが法テラスの勤務弁護士なんですが、これについて、少し私の方で気になるのは、法テラスと勤務弁護士の雇用体系の問題でございます。具体的には、この法テラスの勤務弁護士が労働法上どのような位置づけになるのかということについて気になっております。

 勤務弁護士は労働者に該当するのかどうなのか、この点について伺いたいと思います。

    〔盛山委員長代理退席、委員長着席〕

萩本政府参考人 御指摘のありました法テラスに勤務する弁護士、私ども常勤弁護士と呼んでおりますけれども、法テラスの常勤弁護士は、法テラスの職員として勤務する弁護士でして、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者ですので、労働関係法規上の労働者に当たることになると解されると思います。

 もっとも、常勤弁護士は、あまねく全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現するためのセーフティーネットの中核となる存在でして、業務として他人の法律事務を取り扱うとともに、法テラス法律事務所の運営にもかかわっているという側面もありますので、その法的位置づけにつきましては議論があるところでして、現在、法テラスにおきまして使用者との関係を整理、検討しているものと承知しております。

藤原委員 ありがとうございました。

 今から数年前ですが、あるところで、法テラスのスタッフ弁護士が法テラスに対して残業代の請求をした裁判というのが起きたことがありました。その裁判は、幸いにしてというか、和解という形で終わったので、この労働者該当性、具体的には残業代の問題というのは、残業代を払う必要があるのかないのかというところで裁判所の判断というのは出てこなかったわけですが、やはりこれは、いつまでも曖昧なままにしておくわけにはいかないんだろうと思っております。

 法テラスさんの方でしっかりとお考えになって対応していただけるということですので、その点については、監督官庁というわけではないんですが、法務省の方もしっかり情報収集をして対応していただきたいというふうに思っております。法テラスが違法な行為をしていたというのは、これはちょっとブラックジョークにもなりませんので、ぜひ適正化に努めていただきたいと思います。

 それからもう一つ、この勤務弁護士について、いろいろと考えるべき点も多いんだろうと思っております。

 勤務弁護士の多くは、一人で過疎地に行って、そこで基本的には事務員さんとともに事件を処理するということですが、では、勤務弁護士の方々というのはどれくらいの稼働をしているのかなというところが一つ気になるところでございます。

 そういう中で、私の方で資料を出していただきました。全国平均ということですが、平成二十三年、今から少し前の段階で、一カ月間に一人の勤務弁護士がどれくらいの案件を受任しているかということで、いただいた資料を私の方でちょっと電卓ではじいて計算をしてみますと、まずは、法律相談援助が平成二十三年当時で七・三件、これは、いわゆる法律相談を七件ぐらい受ける。それから、代理援助、新件として受任するのが一・八件、二カ月に三、四件ぐらいということだと思います。それから、被疑者国選が一件、被告人国選が一件。これが平均的なスタッフ弁護士の一カ月間の仕事の受任量だというふうに思っております。

 それが、平成二十五年、二年たってちょっと下がってきている。法律相談援助は、法律相談は七・三件だったのが六・三件ということで、月一件ぐらい減っている。代理援助、新件の受任も一・八から一・六、ここはちょっと小さい下がりなんですが、逆に国選の方は、ある程度顕著な減り方だろうと思っています。被疑者国選、被告人国選ともに、月に一件ずつ受けていたのが、〇・七件、〇・六件ということで、年間に直すと四件から五件ぐらい受任量が減っているんだろうと思っています。これは恐らく、法曹養成の結果、新しい弁護士がたくさん地方にも出ていって、ある意味、地方の法曹需要について、多少、仕事を分担できる状況ができたんだろうなというふうに思っております。

 ただ、その一方で、法律相談七件、六件、そして新件として受任するのが大体平均一・六件、これくらいの数字というのは、先生方によって違うと思うんですが、多少少ないかな、普通であればこれで回していけないのではないかな、もうちょっと弁護士としては抱えられるんじゃないかなという気がしないわけでもないんですね。

 そのように、稼働数を見ると、平成二十三年度以降、勤務弁護士の数はふえている。その一方で、弁護士一人当たりの事件処理数は減っている傾向にありますし、そもそも処理件数も多いわけではないんじゃないか。この点を踏まえると、勤務弁護士はこんなに必要ないんじゃないかというような議論もあると思うんですよ。

 ただ、その一方で、数字に見えないところで勤務弁護士が役割を果たしているという可能性もありますが、この点について、もしそういう役割を果たしているのであれば、具体的にお伺いしたいと思っております。

萩本政府参考人 地方裁判所の新受件数自体、民事事件、刑事事件ともに減少傾向にありますので、それに伴って法テラスの常勤弁護士の処理件数も減少傾向にあることは、今委員から具体的な数字で御指摘いただいたとおりでございます。

 もっとも、今、数字にあらわれないというお言葉がありましたけれども、他方で、法テラスの常勤弁護士は、一般の弁護士が受任困難な事件をより多く担当しているという実情がございます。

 例えば、認知機能が十分でない高齢者、障害者等が抱えている法的な問題の解決に当たりましては、本人との意思疎通に困難を伴う場合が多く、一般的な事件に比べまして、事実関係の把握や証拠の収集等に時間や労力を要することになります。常勤弁護士はそのような事件を多く受任しておりまして、依頼者が六十五歳以上の高齢者の民事法律扶助事件を見てみますと、常勤弁護士は一般の契約弁護士に比べて約六倍の件数を実際に受任しております。

 また、刑事の方を見てみますと、裁判員裁判ですが、これは、通常の刑事事件に比べまして、争点や証拠の整理に時間がかかる場合が多く、また、裁判員のためのわかりやすい主張、立証が求められるなど、弁護活動に多くの労力を要するところですけれども、裁判員裁判の国選弁護事件の弁護士一人当たりの受任件数について見ましても、常勤弁護士は一般の契約弁護士の約六倍の件数を受任している実情にございます。

 このように、常勤弁護士は、一般の弁護士が受任困難な事件も積極的に担当しておりまして、法テラスの主要業務である民事法律扶助業務や国選弁護等関連業務などを適切に運用するための、先ほども申し上げましたが、セーフティーネットとしての役割を担っているものと考えております。

藤原委員 ありがとうございました。

 今おっしゃるとおり、困難な事件、特に高齢者の事件というのはなかなか普通の弁護士は引き受けられないけれども、体はそれなりに元気なんだけれども判断能力はなくなってくる、そういう方というのはこれからどんどんふえてまいりますので、そういう点で非常に大事なんだろうというふうに思っております。

 その一方で、なかなか数字にあらわれないところというのは、国民の皆さんに理解がしづらいところですので、やはりそこは、国民の税金が入っておりますので、ぜひ、そういう点で数字にあらわれない役割も担っているんだということをしっかり説明して、今後も法テラスの一層の拡充そして適正化に努めていただきたいと思います。

 これで私の質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 改めまして、皆さん、おはようございます。きょうは質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 本日は、通告の方では、これまで法務行政の中で取り組んできた部分についてのフォローアップ的な視点も含めて、ハーグ条約発効から一年、現状の課題あるいは対策の必要性についてでありましたり、あるいは、外国人労働者の受け入れや技能実習制度などが今後議論になっていくわけですが、法務省告示の日本語学校に関する課題と対策、これは非常に関連する部分も出てくると思いますので、そういった視点。それから、矯正施設における職業訓練、指導について、これはちょっと文脈は違うんですが、少年法の年齢引き下げなどの議論とも私は多少関連する部分があるというふうに認識をしております。それから、今、LGBTなどへの性差別、あるいはハラスメント。このハラスメントというのは、最近では、マタハラとか、あるいは芸能関係の方のモラルハラスメント、モラハラとか、いろいろな言葉が使われておりますが、そういった性差別あるいはハラスメント等の人権侵害という視点からの定義づけの必要性や、あるいは、性に基づく、統一的な差別禁止法、これは諸外国の例なども含めて、その制定の必要性などについて議論をさせていただきたいと思っております。

 その前段に、一つ、どうしても所管の法務大臣にお伺いをさせていただきたいことがありますので、これは事前通告はできていませんので、可能な範囲でお答えをいただきたいと思います。

 実は私、この法務委員会に所属していながら、連日、文部科学委員会の方に出張して質疑をさせていただいておるんですが、御案内のように、下村文部科学大臣は、政治資金規正法違反で、三月二十四日に、大学教授や弁護士などから成る市民団体に刑事告発をされております。

 私が非常に腑に落ちないのは、この告発がいまだ検察に受理をされていない、こういうふうに承知をしておりまして、ちょっと調べてみました。過去に、これは三十年程度ですが、在職中の大臣が刑事告発をされた事案、これは報道ベースでしか私の場合は調べられていませんが、同一大臣が別件で告発されたカウントも含めると、二十六件ありました。そのうちで検察が告発を受理しなかった事案、これは、私が調べた限りでは一件もありませんでした。告発受理の後の、例えば最終的な起訴とか不起訴は別ですよ。ただ、告発を受理すらしないというのは一件もない、過去三十年。これは私が報道ベースで調べた中です。

 検察庁を所管する上川法務大臣にお尋ねをしたいんですが、下村文部科学大臣への刑事告発が、受理をされた上での起訴あるいは不起訴、これは私自身は当然に起訴されるべき事案と確信をしておりますが、最終的な起訴、不起訴は別にしても、間もなく刑事告発から一カ月がたとうとしているのにいまだ検察に受理されないのは、これは何か政治的な理由があるんでしょうか。

上川国務大臣 ただいまの御質問は、個別の案件ということで、お答えすることが難しいということでございますが、受理、不受理の事実につきましても、私の方からお答えするというのはなかなか難しいということでございます。

 検察におきましては、法にのっとって適正に対処をするという基本にのっとってやるというふうに思っております。

柚木委員 刑事告発もさることながら、私もこれまで過去七回、予算委員会、文部科学委員会等で下村大臣と質疑をさせていただく中で、これは参議院でもやっていますが、非常に答弁そのものも、二転三転どころか、五転六転ぐらいしているんですね。

 不適切な献金をもらっていないと逆切れをしたかと思えば、いや、もらっていました、返しましたと。あるいは、任意団体の会員さんの了解もなく、任意団体の年会費を政治団体への寄附に会計上処理をする。これは下手をすれば脱税幇助にもなりかねない。あるいは、私の質問に対して、これは大胆不敵にも大臣室で全国博友会の幹部の皆さんを集めて、これは私が聞いたら表敬訪問だと言って、後にわかったのは、八枚もの資料を用意して、これは下手をすれば口裏合わせともとられかねない。実際に口封じ的なメールを秘書官が送られていたとか、いろいろな問題が本当に次から次へ出てくる中で、教育行政の信頼性を非常に損なっていると言わざるを得ない。

 そういう中で、今、法にのっとって適正に対処されると当然の御答弁をされたわけですが、これはなぜ一カ月近く受理されないのかなと。私は、いろいろな方の意見を伺ったり、専門家の方とか、あるいはもちろんメディアの方の見方も含めて、これはあくまでも私なりの見方ですよ、下村大臣への刑事告発の後の政治日程を見ますと、御案内のように、統一地方選挙、前半戦は終わりましたが、まだ後半戦がある。

 あるいは、この委員会のメンバーの方はよく御承知ですが、前法務大臣、松島大臣をこちらにいらっしゃる階委員が告発をした際は、これは金曜日に告発して、翌月曜日、三日後に受理しているわけですが、当時、私も含めて、法務大臣が刑事告発をされて、それが受理された場合には、これは法務大臣ですから、指揮権発動権を有する被告人、この法務大臣のもとでの委員会審議は認められないというような認識を持っておりました。

 上川大臣、御承知のように、国家公務員法、検察庁法によって国務大臣の中で法務大臣のみが有する権能である指揮権発動、これは過去一回ということになっているわけですが、詳しい方もいらっしゃるでしょうが、いろいろなことを調べますと、ある意味、歴代政権の中で実際に何度か水面下での発動というような意味合いのことがなされていたのではないかというような指摘もあるわけです。

 そこで、今、法にのっとって適正にというお話がありましたが、下村大臣への刑事告発が一カ月近くも受理されないのが、今私が申し上げたような、統一地方選挙とか、あるいは国会対応とか、そういったことが影響を与えている可能性というのを私は指摘せざるを得ないんですが、どう思われますか。

上川国務大臣 個別の案件ということでございますので、私の方からお答えするということは差し控えさせていただきたいというふうに存じます。

 重ねてでございますが、検察におきましては、法にのっとって適切に対応するというふうに考えております。

柚木委員 法にのっとって適切に対処するというのが、私の懸念というか、一カ月近く受理されていない状況に対してのお答えになるのかならないのかというのは、今後のまさに検察の対応を見させていただかざるを得ないわけです。

 これは一点確認なんですが、検事総長への指揮権は、申し上げましたように法務大臣のみが有するわけで、内閣総理大臣には存在しない。ただ、総理大臣は、当然、行政各局への指揮監督権、そして閣僚の罷免権限がありますので、見方によっては間接的に法務大臣の検事総長への指揮権に影響を及ぼし得るわけですが、もちろん、総理以外にもいろいろな大物の議員あるいは閣僚も、ひょっとしたら、政治力という意味ではそういうような見方ができるかもしれませんが、安倍総理大臣から、三月二十四日の下村大臣の刑事告発以降、この刑事告発について所管の上川法務大臣に例えば何か指示があったり、あるいはこの件について安倍総理と何かやりとりをされたことはありますか。

上川国務大臣 個別案件ということでございますので、その意味で、今回の御質問に対しては答弁は差し控えさせていただきたいというふうに存じます。

柚木委員 ちょっと微妙な答弁なわけですね。差し控えるんだけれども、総理とやりとりをしたとか指示があったとかについては答えないということですから、受けとめ方はいろいろできてしまうわけです。

 私は、本当に、受理されるされないも含めて、検察として、まさに法にのっとって適正な公明正大な対応、国民の皆さんにいささかも疑念を持たれないような対応をいただくことが非常に重要だと思いますが、ちょっと驚いたのは、今週の報道で、これは、今回の下村大臣のいわゆる全国の博友会、この主たる、被告発人と言える全国博友会の会長である森本さんという方と、それから、下村文部科学大臣の、実質的にこの博友会の運営をやりとりをしながらやっているというふうに、これは告発もされております榮友里子政務秘書官が密会していたという報道がありまして、森本さん自身は密会を認めておられますが、榮秘書官は否認している。

 これは、上川法務大臣、証拠隠滅とか口裏合わせとかの疑惑を持たれないためには、本来、こういう状況で刑事告発されている中で密会などすべきでないと私自身は考えますが、個別の案件ということで先ほどからおっしゃっていますので、一般論としては、被告発人同士が密会するということは、捜査段階であった場合には適切なのか不適切なのか、その御認識をお答えいただけませんか。一般論として。

上川国務大臣 一般論という御質問ではございますけれども、個別の案件に極めて近いところでの御質問ということでございますので、答弁は差し控えさせていただきたいというふうに存じます。

柚木委員 一般論で考えても、そして今回の案件で考えても、こういう密会をされていること自体、私は、今後の捜査の進展によっては極めて不適切な、軽率な行動ではないかというふうに言わざるを得ません。

 そこで、私、もう通告の方に入りたいので、最後に一つ念押しをしておきますが、下村文部科学大臣への刑事告発が受理すらされていない現状の中で、これは、申し上げましたような統一地方選挙とか国会対応とか、何らかの目に見えないような政治的な圧力によって検察当局の判断が影響を受けることがないように、所管の上川法務大臣には常に公明正大な対応を求めたいと思いますが、上川大臣、それでよろしいですね。

上川国務大臣 法にのっとって適切に対処する、これが基本でございますので、そういう意味で、そうした姿勢につきましては肝に銘じてまいりたいというふうに思っております。

柚木委員 私は、特に安倍総理とのやりとり云々の部分については、これは、下村大臣は総理の側近といいますか非常に近しい方だということも伺っていますし、そのやりとり等、何らかの指示等がよもや働いてこの受理がされていないということはないと信じたいわけですが、そこは肯定も否定も上川大臣はされていませんので、これは、よもや刑事告発の受理が、例えばこの国会での追及が何かおさまった後とか、統一地方選挙が、後半戦がこれからあって、終わった後の例えばゴールデンウイーク前に何かこそっと受理されて、連休が明けたら何かもうおさまっているとか、そんな、国民の皆さんからいささかの疑念も受けることがないように、しっかりとした対応を求めておきたいと思います。

 では、通告に従って質問に入っていきたいと思います。

 ハーグ条約、国際的な子の奪取の民事面における条約発効から一年がたつわけでございます。

 ちょっと時間がたっておりますので、通告をややまとめて参考人の方にも伺いますので、必要に応じて大臣にも御所見を求めますので、答弁をお願いします。

 昨年四月の条約発効から一年が経過をし、現状における課題認識、対応について伺いたいわけです。これは資料にもおつけをしておりますが、日本人に適用がなされたイギリスの裁判所の事例をここにはつけているわけですが、二つまとめて外務省の方に伺います。

 この一年間における条約の該当事例数と概要、それから、この記事のような返還命令、子の返還命令の発出の期間短縮などの状況、そして、事前に想定していた部分と実際の運用で数的あるいは質的な相違があったのかについてが一点。それから、この条約関連で子供の返還それから面会交流を求めた援助申請の数や概要。これはまとめて御答弁をいただけますか、なるべく端的に。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、ハーグ条約につきましては発効から一年を迎えたわけでございますが、この一年間に私ども外務省が申請を受理した件数は、返還それから面会双方を合わせまして百十三件となっております。内訳につきましては、返還を求める申請が四十四件、面会交流を求める件数が六十九件となっております。申請に関係する国は二十六カ国に及んでおりまして、さまざまな国との間の事案を受け付けているという状況でございます。

 また、法曹関係者あるいは在留邦人の対応に鑑みましても、ハーグ条約につきましてかなり周知が進んでおりまして、ハーグ条約の発効後、子の連れ去りが予防されているということが推測されております。

 私どもとしましては、事前に想定したとおり、順調に進んでいるのではないかと評価いたしております。

柚木委員 まず、最後の順調に推移という部分、もう少し中身について伺いたいわけです。

 これまで、検討段階から、法的にも実務的にもそれぞれ、我が国としてもあるいは関係の当該国にしても、指摘されてきた課題、あるいはこの一年の評価があると思うんですね。

 その一つとして、家族法の考え方の違い、特に我が国はそうだと思うんですけれども、離婚後の親権の形態、つまりは、単独親権か共同親権か、こういう考え方の違いというものも指摘をされているわけでございまして、先進国最悪と言われるシングルマザー世帯の貧困の状況の要因の一つとして、養育費の未払いというようなことも指摘をされております。このあたりも単独親権との関連があるかもしれません。

 私、ぜひ伺いたいのは、できればぜひ大臣に御答弁いただきたいんですが、子供の立場に立って、子供の幸せを最優先に考えた場合に、例えば親権の共同化であったり、親子面会交流権の保障など、国内法の整備をよりしっかりと検討、整備を進めていく必要があると思っております。そういう検討をされてきた経緯があるのかどうなのか、それからまた、今後のその検討の必要性についてどのようにお考えになられるか、御答弁いただけますか。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、離婚後の親権につきましては、我が国におきましては、現行の民法のもとで単独親権ということでございますので、離婚する際には、一方の親権者を定めなければいけないとされているところでございます。

 法制審議会の民法部会で、平成三年の一月から、婚姻及び離婚制度につきまして見直しが行われておりました。その折にも、離婚後の共同親権につきまして検討に付されたということでございます。その上で、六年の七月に公表されました婚姻制度等に関する民法改正要綱試案という形で、今後の検討課題であるという形で整理されたというふうに承知をしているところでございます。

 その後、平成二十三年の民法改正の際には、附帯決議におきまして、離婚後の共同親権の可能性も含めまして、親権制度のあり方につきまして検討することとされているということでございます。

 こうしたことを受けまして、法務省といたしましても、諸外国の親権制度等の調査を進めるなどいたしまして、現在検討をしているという状況でございます。

 先ほど、親子の面会交流の保障という御指摘もございましたけれども、これにつきましては、明文上は規定はございませんけれども、重要性があるということでございまして、平成二十三年の民法改正によって、離婚に際して父母が協議で定めるべき事項として明示をされるということで、そして、その取り決めをするに当たっては子の利益を優先するということで、考慮規定を設けたということでございます。さらに、国内法整備につきましては、子の利益の観点ということで大変重要であるというふうに考えておりまして、そういう意味で御議論をさらに深めていただきたいというふうに思うところでございます。

 ただいま、親子断絶防止を考える議員連盟というところにおきまして検討がなされているというふうに承知をしているところでございます。法務省といたしましても、そうした議連において必要な説明あるいは協力をしているということでございまして、そうした議論も踏まえて、引き続き検討してまいりたいというふうに思っております。

柚木委員 御丁寧な御答弁をいただいておりますので、本当にこういう部分についてはしっかり大臣として、議連の検討を踏まえながらということですが、ぜひリーダーシップを発揮していただいて、子供は当然のことながら、生まれてくる国を選べません、生まれてくる親を選べません。こういうことが起こったときの国としての制度的な対応をしっかりと進めていただくこと、親の従属物ではないわけですね、ぜひそこをしっかりとお願いしておきたいと思います。

 続いて、資料の二の方におつけしておりますが、法務省告示の日本語学校について、過去には、上海総領事館へ中国人の学生さんたちあるいはその関係の方々が抗議をされるなど、非常に外交問題に発展というような、なりかねないような経緯もあって、この間、事業仕分け等で関係の団体等の整理等も議論になったわけですが、現状として、法務省が管轄する学校ということで、外国人留学生等の入国管理手続代行のエージェント業務を行うということであります。

 前回も指摘を申し上げましたが、今後、外国人労働者の方々の受け入れとか技能実習制度とか、これは、資料五の方にも、今後の論点ということで、この問題の座長代理の方のインタビューもつけておりますが、労働であれ、あるいは日本語の学習であれ、実際、留学生や実習生の方が、例えばお金を払っているのに授業が受けられないとか、働いているのにちゃんと賃金が受け取れないとか、ちゃんとした技能実習が受けられないとか、そういうようなことであっては、まさに、世界に向けて、観光客の受け入れや、あるいはオリンピックとか、いろいろな取り組みを今後行っていこうとしている中で、非常に懸念があるわけでございます。

 日本あるいは日本語を学ぼうという意識や思いを持たれた外国の留学生の方にとって、その入り口に当たるのがこの日本語学校だとも思いますので、これは、今後そういった留学生の方々の希望や夢を損なうことのないように、以下、ちょっと具体的にお聞きしたいと思うんです。

 これもちょっと時間の都合で、まず法務省の方にまとめて二点伺います。

 この間、法務省告示日本語学校が制度化された経緯を簡潔に、そして学校数、学生数などの現状をお伺いしたいのが一点。それから、学校事業に対しての行政による監督の状況や教育機関としての教育環境や教育内容の質の確保についてどのように対応され、また、そういった中でどのような課題認識を持たれているか、御答弁をなるべく簡潔にお願いします。

井上政府参考人 お答えいたします。

 初めに、法務省が告示をするようになった経緯についてお答えいたします。

 日本語教育機関、いわゆる日本語学校でございますが、ここへの留学生につきまして、かつては受け入れる学校側に明確な要件がないまま受け入れが行われていたところでございますが、平成元年当時、委員も御指摘になりましたが、多くの留学生に対して入学許可証が出されているにもかかわらず、入学予定先の日本語学校が存在しないとか日本語教員が在職していないなど、日本語学校を取り巻く状況にいろいろな問題が認められた、そのような事件等が、状況がございました。

 そのようなことから、同年の入管法の改正に合わせまして、留学生の在留許可の審査に際しましては、留学生を受け入れることができる日本語学校は法務大臣により告示されたものに限るということにした上で、当該告示に係る基準を設けるなどいたしまして、その日本語学校が留学生を受け入れるのに必要な適正な設備や教育体制を有しているかどうかということを確認するようにしたもので、このような経緯で、法務省が留学生を受け入れることができる日本語教育機関を告示する、そのような制度になったといういきさつがございます。

 その告示の現在の数字でございます。告示されている日本語学校の数は、平成二十七年三月末現在、四百八十四校ございます。在籍している学生数の個別の統計は、法務省としてはとってございません。

 次に、日本語教育機関に対する行政上の監督の御質問でございました。

 法務省といたしましては、留学生の出入国、在留の管理という観点から、受け入れをする日本語学校についての指導とか監督をしておるわけでございます。かつては、日本語学校に来たけれども、留学生が蒸発してしまったとか不法残留が非常に多く発生するなどの問題がございましたが、近時は不法残留者の発生もかなり低い水準にとどまるなど、大きな問題は最近ではなくなっているものと認識してございます。

 しかしながら、時に、学校の学生管理が徹底していないために退学者や除籍者がすごく多く出てしまう学校があるとか、その結果、不法残留者を発生させるような問題が生じることがございますので、そのような場合には、実地に学校を訪問いたしまして、担当者から聞き取りを行ったり、書類や施設を確認するなどの在籍管理の方法の問題等についてよく調査をいたしまして、適切な管理の実施につきまして指導をしておる状況がございます。

 次に、教育環境や教育内容の質の確保についての御質問でございましたが、日本語学校を告示するに際しましては、当該学校の施設や教育体制等につきまして規定する日本語教育機関の運営に関する基準及び日本語教育機関審査内規というものを設けてございまして、この基準等を用いまして、文部科学省及び文化庁への意見照会の結果を踏まえ、当該日本語学校がこれに適合する場合に告示をすることとしてございます。

 最後に、今後の課題についてのお尋ねでございましたが、外国人の受け入れの増加に伴いまして、日本語教育の重要性はますます高まっていくということは委員御指摘のとおりでございます。現在用いている基準等につきましては、前回の見直しから既に十年程度経過しておることもございますので、留学生の受け入れがより適切なものとなるよう、関係省庁と連携して、その見直しの検討を進めてまいりたいと考えております。

 以上です。

柚木委員 最後に、関係省庁との連携ということで、文部科学省にも短く御答弁いただきたいんです。

 今の御答弁で、学生数についてはそういった統計はない、また大きな問題は認識されていないということであるんですが、これは前回も申し上げましたが、外国人労働者のさまざまな労働環境に対しての課題とかが項目によっては統計がない、つまり調査がされていない。これは、例えば、そういう場合でも、相談がないということが実態がないということじゃないわけですね。相談の窓口がない、あるいはそれのアクセスの仕方がわからないとか、そういうことによってカウントされていなくても、実態としてはさまざまな問題があり得るわけですから、ぜひ、これは学生数などもきっちり把握をいただいて、そして、問題がないのかあるのかについてもう少し精緻な分析をお願いしておきたいと思うんです。

 関係省庁と連携してということで、文部科学省にもお越しいただいていると思いますので、連携の視点を含めて御答弁を簡潔にお願いできますか。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず冒頭、学生数についてお答えさせていただきます。独立行政法人日本学生支援機構が実施しております外国人留学生在籍状況調査によりますと、平成二十六年五月一日現在で、留学の在留資格により我が国の日本語学校において教育を受けている外国人学生数は四万四千九百七十人となっているところでございます。

 また、先ほど連携という話がございましたが、先ほども法務省さんの方から答弁がございましたが、現在、日本語学校を法務大臣が告示するに当たりまして、日本語学校の質の維持向上の観点から、当該日本語学校の教育体制等につきまして、法務省から文部科学省に対して意見照会が参ります。文部科学省におきましては、その意見照会に答えるために、日本語教育機関を定める際の設備・編成を調査する委員会を設置しておりまして、書面調査及び聞き取り調査を実施いたしまして、その結果を法務省に回答しているところでございます。

 具体的な調査事項といたしましては、法務省が設けました日本語教育機関の運営に関する基準及び日本語教育機関審査内規に規定されている事項に基づきまして、校長の資格あるいは主任教員の資格、さらには授業時数、授業内容といったものについて調査しているところでございます。

 いずれにいたしましても、文科省といたしましては、日本語学校の質の維持向上のために、今後とも法務省と密接な連携を図ってまいりたいと思ってございます。

柚木委員 済みません、ちょっと私の認識違いかもしれませんが、学校数は法務省が統計上の数字を持っていて、学生数は文科省が把握しているということでよかったんですね。そういうふうに今理解しました。

 これは、今の連携の視点は当然必要で、資料二にもつけておきましたけれども、過去、教育よりも人集めでいろいろな悪質な手口があったり、それこそ日本語学習と行政との盲点ということで、ここに当時の記事もつけておきましたが、大きな問題がないという認識、御答弁があったわけですが、それが本当に実態としてどうなのかについてはもう少し精査をしていただくことも必要かと私は思っておりますので、今後しっかりとした対応を、今後の外国人労働者の受け入れの議論も含めてつながっていくと思いますので、お願いをしておきたいと思います。

 続きまして、資料三、四にかかわる部分でございますが、矯正施設における職業訓練、指導についてお尋ねをしたいと思っております。

 これは、当委員会の委員の皆さんはもう共有をいただけていると思いますが、いわゆる再犯防止策はもとより、当事者の方々の幸福とか福祉の観点、そういう支援のためにも、仕事や職業、あるいは住環境もそうですね、その確保が非常に重要で、これは恐らく若い方であればあるほど、今後の人生のことを考えたときにはその重要性はより高いと言えるのかもしれません。

 そこで、まず法務省の方にまとめて伺いますが、若年者への矯正施設における職業訓練、指導の現状と、それから矯正施設における高卒認定試験の受験に向けた教育や受験の状況、一定程度資料をつけておりますが、それについての推移と認識について、まとめて御答弁をいただけますか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 まず、矯正施設における職業訓練等の状況でございますけれども、職業訓練あるいは職業補導を充実させることは、刑事施設の受刑者または少年院の在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図る上で極めて重要であると認識をしておりまして、一生懸命取り組んでいるところでございます。

 刑事施設における職業訓練につきまして、これは若年者に限定したデータがございませんので、全体的な実施状況について申し上げますと、平成二十七年度は、全国の刑事施設におきまして、建設く体工事科、介護福祉科、情報処理技術科、フォークリフト運転科など、幅広く、二十七種目、三十九課程の職業訓練を実施しております。これは、PFIで運営しております社会復帰促進センター四庁は別でございますけれども、これらにおきましても、各事業者におきましてさまざまな職業訓練を実施しているところでございます。

 また、少年院における職業補導でございますけれども、在院者に対しまして各施設の実情と対象者の特性に応じて実施をしておりまして、平成二十七年度は、少年院におきまして、サービス科、電気工事科、情報処理科など十四種目の職業補導を実施しております。

 今後も、雇用情勢の動向を踏まえた職業訓練、職業補導の充実に努めていきたいと考えております。

 次に、高卒認定試験に向けた教育や指導の状況についてでございますけれども、矯正施設における高等学校卒業程度認定試験につきましては、平成十九年度から、文部科学省と連携しまして、受験希望者のいる少年院と刑事施設で実施しているところでございます。

 矯正施設におきましては、必要に応じまして、被収容者に対しまして学校教育の内容に準ずる内容の指導を行っているほか、刑事施設におきましては、高卒認定試験の受験に向けた指導を行う特別重点施設というのを設けておりまして、川越少年刑務所、笠松刑務所、加古川刑務所、姫路少年刑務所の四施設を指定しまして、他の刑事施設に収容されている受刑者も受け入れて指導を行っております。また、少年院におきましては、各施設で受験のための学習指導をしておりまして、各種教材を整備し、自学自習のできる環境を整備するほか、対象者を集めて集団指導を行うなどしております。

 こういった結果、平成二十六年度で申し上げますと、全国で九百二十七名が受験をしておりまして、一科目以上合格した者が八百七十二名、うち二百九十五名が高卒認定合格者となりました。平成二十六年度は前年に比べまして七名減りましたけれども、平成十九年以降で見ますと全体的に増加しているところでございまして、矯正施設の職員による働きかけも背景にあるものと認識をしております。

 被収容者が高卒認定試験に合格することは本人の改善更生及び円滑な社会復帰に資するものと認識をしておりますので、今後とも文部科学省とも連携をして、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

柚木委員 文部科学省と連携をしてという部分も含めて、文部科学省の方も、時間的な部分があるのでちょっと次の質問とまとめて、これは担当が一緒でなければ申しわけないんですが、御答弁いただければ幸いなんですが。

 今の御答弁の中でも、高卒の資格取得でさまざまな専門資格の取得に道が開けるということがわかるわけでございます。私もちょっと不勉強で、大検の資格から高卒認定試験への制度改正の流れは余り承知していなかったものですから、質問前のヒアリング等を通じて認識を新たにしているところであるわけです。

 この段階まで聞いてきたのは、矯正施設における職業訓練の指導、支援、そして高卒認定試験の受験に向けた状況なわけですが、これは当然のことながら、矯正施設を退所された方、その退所者向けの、例えば専修学校を含めた修学支援策の充実強化があわせて非常に重要になってくるというふうに思っております。

 これは通告のやりとりも含めて伺ったところによれば、例えば、仮出所、保護観察の方等から相談があった場合にはいろいろな支援、対応がなされ得るということなんですが、そういう支援策が制度的な形では整っていないやにお聞きをするわけでございます。

 まず、所管の法務省の方に伺いたいんですが、私は、やはり施設内におけるさまざまな支援策に加えて、退所後の修学支援充実強化が非常に重要だと思うわけですが、その点について、ぜひしっかりとお取り組みいただきたいと思うわけです。

 これは保護局長になるのかもしれませんが、もし、大臣、答弁書をお持ちで、御自分の認識を含めてお述べいただけるようであれば、非常に重要な観点なんですが、御答弁いただくことは可能ですか。

 では、保護局長。

片岡政府参考人 お答えいたします。

 少年院からの仮退院あるいは刑務所からの仮釈放者についての修学支援の関係でございますが、まず実態から申しますと、少年院の入所者の中に、義務教育課程を修了していない者、特に中学ですね、中学の途中から少年院に入ったとかいう者もございます。これらの者につきましては、保護観察所におきまして、矯正施設に収容中の段階から生活環境調整ということを行っていまして、出院後の中学校等への復学に向けた調整を行っているところでございます。

 また、出院後または出所後に高校、大学等への進学を希望する者も当然ございます。これは、保護観察所だけでは十分な専門的な指導を行うだけの十分な情報もなかなか持ち合わせていないという事情もございまして、学校あるいは地域の教育機関と連携したり、必要な情報を入手して、まずどういうところに手続をすべきかという助言を行うようにしております。

 また、個別の学習指導という点でございます。これは、青年ボランティア組織のBBSというところに頼っておりますが、そういうところの若い学生会員等を中心に、出院者等の少年に個別に学習指導を行うというような場合もございます。

 いずれにしましても、今後とも、関係機関と連携しまして、生活環境の調整等を充実させることによって、必要な修学支援の向上に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

柚木委員 連携をしてということで、文部科学省の参考人にお越しいただいていると思いますが、矯正施設内における支援と、今所管の法務省からの御答弁もありましたが、退所者向けの支援、それぞれ連携に必要な観点を含めて、なるべく短く御答弁いただけますか。

徳田政府参考人 先生御指摘ありました、専修学校に関する矯正施設退所者向けの修学支援等につきましてお答えしたいと思います。

 専修学校は、社会の変化に即応した実践的な職業教育を行う教育機関として、幅広く学生を受け入れているものと承知しております。

 他方、矯正施設を出所した者につきましては、出所後に経済的に困窮する者も多いと聞いております。

 文部科学省におきましては、専修学校への修学について、矯正施設出所者のためのみの支援を講じているものではありませんが、専修学校における修学機会を保障するため、これまでも奨学金事業等により専修学校生への経済的支援を実施しているところであり、さらに充実していく必要があると考えております。平成二十七年度予算におきましても、専門学校生への効果的な経済的支援のあり方に関して実証研究を進めているところであります。

 今後とも、意欲と能力のある学生が経済的理由により修学を断念することがなく安心して学べるよう、教育負担の軽減に努めて、取り組みを推進してまいりたいと考えております。

 また、先生の御指摘の連携につきましては、今のような専修学校に係る情報の提供など、法務省との連携について進めてまいりたいと考えております。

柚木委員 ちょっと時間がないので、大臣、ぜひお願いをしておきます。

 やはり、この間、再犯率が非常に高い部分の問題認識も含めて、これは、施設内でいろいろな支援を受けて頑張ろう、しかし頑張れなくて、退所後にまた罪を犯して戻ってきてしまうというような現況も含めて、もちろん罪を犯すということは許されざる部分も当然あるわけですが、その方々にいかに矯正、再生をいただけるかというのが、私たち国民全体を含めて非常に重要な視点で、受刑者の方々、若い方々が人生を諦めるようなことにならないためにも、こういった点の取り組みは、ぜひしっかりと関係省庁が連携した取り組みをお願いしておきたいと思います。

 通告の最後、ちょっと時間がないので、こちらにもう移らせてください。

 冒頭申し上げましたように、LGBTであったり、あるいは各ハラスメント。我が党の中でも、LGBTについては、対策を講ずるためのプロジェクトチームといった形での対応も今スタートしたところでございます。いわゆるハラスメントについては、それこそマタハラのみならず、パタハラ、つまりお父さんが育休なんかとる必要ないだろうとか、介護についてもケアハラスメントみたいな言われ方もされますし、合わせてファミリーハラスメントというような言葉まで出てくる。さらには、芸能界でもモラルハラスメント、モラハラというようなことで、本当に言葉がいろいろなところで使われるような状況にあります。

 私、ちょっと三つ項目をお尋ねしていると思いますが、一通りまとめて伺った上で御答弁いただきたいと思うんですね。

 諸外国についても私もちょっと研究者の方から話を伺ったところ、例えば、イギリスでは、二〇一〇年平等法という包括的な差別禁止法があって、人権の観点から直接差別そして間接差別と並んでハラスメントが規制をされている。

 この法の特徴は九つの差別事由に基づく差別やハラスメントを規制するということであり、我が国でも、例えばいわゆる三大ハラスメントでいえば、マタハラ以外にもセクハラ、パワハラというのがあるわけですが、具体的ないろいろな不利益事例が現実化すれば、例えば男女雇用機会均等法九条を含めた処罰対応等が規定されているわけですけれども、イギリスの二〇一〇年平等法という差別禁止法については、労働領域だけではなくて、教育やサービスの提供といった場面におけるさまざまな差別などが適用になるということだそうです。

 その九つの差別事由というのは、年齢、障害、それから性別再指定、性を自認するという意味です。それから、婚姻及び民事パートナーシップ。これは、渋谷区のパートナーシップ条例等、我が国でも今出てきておりますが、民事のパートナーシップ。それから、妊娠・出産、人種、宗教または信条、性別、性的指向のことを指すとのことです。

 これらの事由に関連して人の尊厳を侵害する目的や効果を持つような望まれない行為は、イギリスではハラスメントであり、違法とされているということでありますが、我が国におきましては、先ほど申し上げましたように、ハラスメントについては均等法でセクシャルハラスメントしか規制がされていない、しかも、使用者の措置義務を定めているのみということであります。つまり、妊娠や出産に関する嫌がらせ的発言、まさにマタハラとかパタハラとか、そういった発言は現行法では規制対象になっていないということでございます。

 私自身は、日本においても、イギリスの平等法のように、労働法の対応とはまた別に、人権擁護という観点からもさまざまな差別事由に基づくハラスメントをしっかりと規制する。つまりは、人権意識というものが、この間、我が国はいろいろな面においても非常に希薄だという指摘を受けている部分もございます。ですから、ぜひ国際標準に合致した、例えば国内人権機関などの整備、こういった点も大変重要だと思いますし、人権委員会設置法の制定なども検討を急ぐべきだと考えております。

 具体的に伺います。

 まず、マタハラという言葉は最近非常に使われて、担当大臣もされておられたわけで、私は、ぜひマタハラについて定義づけをやはりしっかりとして、そして、セクハラやマタハラが、ともすれば、ちょっと、そんな大したあれで言ったんじゃないよみたいな、軽く受けとめられるような風潮を私たち一人一人も自戒しなきゃいけないわけですが、軽く受けとめて流すようなことではなくて、性差別であったり人権侵害と捉え直すべきであるというふうに考えるわけです。

 上川大臣、このマタハラについての定義づけの必要性と、これは労働法制等の対応あるいは民法等の対応とは別に、しっかり、性差別、人権侵害と改めて捉え直すべきだと考えますが、その二点について御答弁をいただけますか。

奥野委員長 上川大臣、ほぼ時間ですから。

上川国務大臣 いわゆるマタニティーハラスメント、マタハラということでございますが、定義というと、法律にのっとって定義があるわけではございませんけれども、妊娠、出産あるいは育児休業等を理由とした解雇、降格などの不利益な取り扱いを行うこと、あるいは、これに加えまして精神的あるいは肉体的な嫌がらせをするということにつきましても、広い意味でこのマタハラに属するものであるというふうに承知をしているところでございます。

 こういうことを理由として不利益な取り扱いや嫌がらせ等、こうしたことにつきましてはいずれも重大な女性の人権侵害であるというふうに認識をしているところでございまして、その意味でも、啓蒙啓発も含めまして、しっかりと社会の中で根づいていくことができるように、こうした問題については問題であるということで、こうした行為がないようにしていく必要がある、その意味では啓蒙啓発が非常に大事になるというふうに思っているところでございます。

柚木委員 それで、もう時間がありませんが、LGBTを含めた性差別と、それに基づく人権侵害に対しての統一的な差別禁止法のような形で、これは人権擁護法案の議論もこの間あるわけですが、そういった議論の積み重ねも含めて、ぜひ統一的な差別禁止法の検討をお考えいただきたいと思うんです。

 ほぼ時間が来ているので短く、そして前向きな御答弁をお願いできますか。

奥野委員長 なるべく短く、上川大臣。

上川国務大臣 女性の人権、あるいは性的指向を理由とするさまざまな偏見、差別問題につきましては、これは大変大きな人権問題だというふうに考えておりまして、法務省といたしましても、啓蒙啓発、調査・救済活動について積極的に取り組んでいるということでございます。

 統一的な差別禁止法のようなものということでございますけれども、まずは、個別の人権課題ということにつきまして、現在ある仕組みそのものを十分に活用して解消を図っていくというところにつきましては、積極的にやってまいりたいというふうに思っております。

 性差別等に関する人権状況につきましても、引き続き十分に注視してまいりたいというふうに思っておりますので、私としてはしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

柚木委員 以上で終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。きょうもよろしくお願いいたします。

 きょうも裁判員のことについて伺っていきたいんですが、その前に、きょう、最高裁の事務総局から平木さんに来ていただいていて、ちょっと一点伺いたいことがあります。

 三権分立に少しかかわることなのかなと思うんですが、きのうの本会議で、ニュースになっております高浜原発の再稼働差しとめの仮処分の件で、安倍総理から発言がありました。安倍総理の発言は、福井地裁が出したものはあくまで仮処分で、国は当事者でない、当事者である事業者の取り組みを注視していきたいと。その後、その上でと、ここから声が大きくなるんですけれども、田中規制委員長の言葉を引用しながら、事実誤認がある、新規制が十分理解されていないという明確な見解が出ているということを述べられているんです。

 まだ地裁の仮処分の段階で総理大臣がそういう発言をされるということは、これは裁判所としては非常に困ったことではないかと思うんですが、どうでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 個別具体的な事件につきましては、事務当局者の私はお答えする立場にはございません。

井出委員 大臣にも伺いたいんですが、今、平木さんがおっしゃったように、個別のことに関しては申し上げないということを、大臣自身もそうですし、大臣以外のこれまでの法務大臣も、個別の案件を我々が聞いたときは、その御答弁というものが一線にあったわけですね。

 きのうの総理の御答弁は、歴代法務大臣が述べられているように、個別の案件についてはコメントは差し控える、それが筋ではないかと私は思うんですけれども、その点からすると、その上で、事実誤認で、新規制が十分理解されていないという明確な見解、あそこまで言い切ってしまうということは、司法判断に対する、しかもまだ地裁段階のそれについてする政治家のコメントとして、私は、どうしても、過去の歴代法務大臣、上川大臣の政治家として答弁されていたそのスタンスと比べれば、やはりちょっと違うんじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

上川国務大臣 独立した司法における判断ということでございまして、個別の案件につきましては、答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。

井出委員 安倍総理の発言です、司法にかかわることではなくて安倍総理の御自身のことでして、私は、その安倍総理の発言に、政治家と司法の関係として疑問を持ったものですから、それについて、法務大臣は、個別のことを聞かれて、それに対する対応もされてきた、そのお立場からして、あの総理の発言はいかがなのかというところをもう一度お願いいたします。

上川国務大臣 総理の発言についていろいろと私の方から申し上げるということにつきましても、差し控えさせていただきたいと存じます。

井出委員 当然、裁判に係る話ですので、総理の答弁に当たって、法務省サイドとしても十分答弁を検討されなければいけないのではないかと思うんです。そうしたときに、やはり法務省サイドとしては、個別の裁判に係ることはコメントは控えたい、そういうのが筋ではないかと思うんですけれども、私は、法務省のいつもの裁判や事件に対するコメントと、総理がその上でとるる述べられたことというのは、もう明らかにその一線を越えてしまっていると思うんですよ。

 そこは法務大臣としてもやはり問題意識を持っていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

上川国務大臣 私は、総理の御発言に対していろいろと述べる立場にはございませんので、その意味で今のように申し上げたところでございます。

井出委員 では、司法に係ることということで、かつて警察官僚で、そういう問題に対して一番精通されている副大臣にも、この問題について見解をいただきたいと思います。

葉梨副大臣 大臣と同様で、私、総理の御発言についてコメントする立場にはないわけですけれども、個別の裁判について論評を加えたということではなくて、規制委員長が言われた、そういった事実を紹介されたということではなかろうかというふうに思います。

井出委員 事実を述べる、それはそういう捉え方もあろうと思うんですけれども、政治家、特に行政、政府側は、司法判断、しかもその途上にあるものに対して、ましてや当事者でもないわけですし、それに対しては、言いたいことがあってもコメントを差し控えるというのがこれまで法務にかかわってこられた政治家が特に厳密に守ってきたところだと私は思うんですね。

 そういう点で、これからの法務省、法務をしょって立つと思われる大塚政務官にもコメントをいただきたいと思います。

大塚大臣政務官 いろいろ御意見もございましょうけれども、大臣、副大臣ともコメントする立場にない以上、政務官もさらにコメントする立場にはないと存じております。

 細かいところは私も承知しておりませんけれども、副大臣がおっしゃったように、事実関係を述べられたということではないかなと推測をするところでございます。

 いずれにしろ、コメントする立場にはないということでございます。

井出委員 すばらしい結束力といいますか。

 いつもこの問題は、特に私のような野党の立場の議員が法務行政について事件や裁判のことに触れると、個別のことにはお答えをしないと。それは、どの政権、どの大臣であってもそうでありますし、そこのところをいつも鈴木貴子先生が何度も何度も追及してきたところであるんです。

 最高裁、平木さんにもう一度伺いたいんですが、特に政治家が個別の事件や司法判断に対してコメントをしないというものは、三権分立、そういうところを尊重してそういうことを言っていると思うんですけれども、最高裁としても、政治家が個別のことを控えるとコメントするのは、三権分立を尊重してもらっていると理解されていますか。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 私、最高裁の事務当局者でございますので、委員お尋ねの点につきまして、お答えすべき立場にはございません。

井出委員 最高裁の事務総局はいわゆる一般の事務とはえらい違うところだと私は承知をしておりますし、最高裁としての御見識、御見解を伺うとすれば最高裁事務総局なのではないかと思うんですけれども、もう一度お願いいたします。

平木最高裁判所長官代理者 裁判官の独立という観点がございますので、事務当局者の私が、個別具体的な事件について申し上げる立場にはございません。

井出委員 私は、きのうの総理の発言を聞いていて、やはり少し、言いたいことをぱっと言ってしまう、そういう癖が出たのかなと思います。ましてや本会議の答弁ですので、法務省サイドでもしっかり内容を従前に検討されていると思いますし、そういう思いできょう質問をさせていただいたんですが、通告もしておりませんし、平木さんには急に質問して大変申しわけないなと思いますので、これはこれで、本論に入っていきたいと思います。

 裁判員裁判の関係をきょうも引き続き伺いたいのですが、この裁判員裁判の法改正がまだ始まっていないのに私は既にこの問題を何度か取り上げさせていただいているんですが、その思いは、簡単な見直しに終わらせてしまっていいのか、徹底的に議論を尽くしていくべきではないか、そういう思いでおります。

 その中で、一番大事なところは、前回からお伺いをしている裁判員裁判の対象とする事件をどうするかというところは、制度の本質にかかわるところだと。

 きょうは、制度の本質にかかわる対象事件のあり方について、事件数という観点からちょっと伺っていきたいんです。まず、裁判員裁判が始まって、平成二十一年から昨年までの間、平成二十一年は五月からなので半年くらいの実施ですが、それぞれの年に一年間で裁判員裁判が行われた事件数を、各年、二十一、二十二、二十三と順々に、政府参考人からお答えいただきたいと思います。

林政府参考人 裁判員法が施行されました平成二十一年五月二十一日から平成二十六年の十二月末までにおけます、裁判員が参加する合議体によります判決人員という形でお答えさせていただきますと、その判決人員を年別に見ますと、平成二十一年は百四十二人、平成二十二年は千五百六人、平成二十三年は千五百二十五人、平成二十四年が千五百人、平成二十五年が千三百八十七人、平成二十六年は千二百二人となっております。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

井出委員 ありがとうございます。

 二十一年は半年だけですので、半年と見ても、ほかの年の半分という数字でも全然ありませんし、初年度ということで準備期間も長かったのかな、判決には至らなかったのかな、そういう思いで聞いているんですが、裁判員裁判は、私もいろいろ資料を見ますと、東京や千葉、大阪地裁といった、そういう多いところでは年間百五十件、二百件行われるようなときもあれば、地方の地裁では年間に一件あるかないか、そういうような状況だと聞いております。

 今伺った年間千五百前後、千二百、千三百八十七というときもありますが、これについてもう少し伺っていきたいんです。

 実は、裁判員制度を導入するときの議論、平成十六年四月二日の衆議院の法務委員会で、これも当時さんざん言われたんですが、現行の法律、当時はまだ法律案ですが、対象事件を死刑や無期、合議事件の中で故意に死に至らしめたもの、そうしたものにしたときに何件ぐらい裁判員の該当があるのか、そういう質問は何回か出て、それに対して、恐らく対象となりそうな事件を過去抽出すると二千八百十八件だと。二千八百十八という数字が当時出ております。

 また、これについては、平成十六年四月六日、この案件で参考人質疑をしたときも、参考人の近畿大学の佐藤さんという参考人の方から、事件数は二千八百なんだと。裁判員を六人とすると選任数は二万五千人だ、一生涯のうち選任される人の割合は六十八人に一人、そんなような具体的な話もあって、まずこの辺から出発することも賢明ではないかと考えている次第でありますというのが当時の佐藤参考人の話としてあるんです。当時の想定では二千八百という数字が具体的に出ていた。

 今、千五百、半分ちょっとのところで推移をしておるんですが、その始めるときの想定と今の現状のこの数字の差について法務省としてはどのように考えられているか、参考人から伺いたいと思います。

林政府参考人 御指摘の、裁判員法を制定する当時にどのような対象事件の件数が予測されていたかということにつきましては、どの時点でのどのような方による予測かによっても若干異なっておりまして、少なくとも私どもが把握しておりますのは、平成十六年の裁判員法制定当時の当委員会におきまして、当時の司法制度改革推進本部事務局長が、裁判員制度対象事件の件数は年間約二千七百件と予測しているという旨の答弁がなされたということは承知しております。

 一方で、先ほどお答えしましたとおり、裁判員法が施行された平成二十一年の五月二十一日から二十六年末までに行われた判決人員を見ますと、最も多かった年で見て平成二十三年の千五百二十五名となっておりまして、裁判員制度導入当時にそのころの犯罪情勢を勘案した、先ほど申し上げた年間約二千七百件という予測については、それを結果としては下回ったと考えております。

井出委員 今回の法改正に当たって、裁判員制度に関する検討会でも対象事件の拡大を主張されていた委員の方もおりますし、平成十六年当時の国会の議論を見れば、まずこの辺から始めるんだ、そういう趣旨の答弁もいろいろな方がされております。

 私は、端的に申し上げると、対象事件をふやす余地、またその対象事件をふやすことについて、もう少し真剣な議論が必要ではないか、そういうふうに考えるんですが、林さん、いかがでしょうか。

林政府参考人 今般の裁判員制度の実施後の見直しという検討に当たりましては、もちろんその対象事件というものについての検討がなされたわけでございますが、先ほど委員からの御指摘のありました、実際の対象事件に該当する事件数、また、それによって判決がなされた事件数、こういった事件の数に直接着目した形での対象事件の見直しというようなことは、検討の過程で議論にはなってこなかったと考えております。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

井出委員 済みません、もう一度伺いたいんですが、検討会の方では、事件の対象をふやすかどうかのときに、林さんに最初教えていただいた年間千五百という数字も出て、たしか、その数字をもとに、そこに否認事件を入れたらどうなるとか、そういう議論、検討がされていたように思うんですけれども、先ほどの答弁の趣旨を私が勘違いしていれば、もう一度説明してください。

林政府参考人 検討会は、裁判員制度施行後間もなくして立ち上がりまして、かなり長い期間検討しております。したがいまして、その時点その時点で、このような裁判員制度の実施状況というものが、だんだん資料は積み重なってくる。逆に言えば、最初のころは、そのような資料はまだ積み重なっていない段階で議論をずっと続けてきたということがございます。

 その上で、対象事件の範囲というものは、対象事件それぞれがその時点でどのような判決人員になっているのかというのは、長い間の検討会の中では、データとして当然提供されて、その上でいろいろ議論がなされてきておりますけれども、当初の予想した範囲と実際になされた結果としての判決人員の開差というもの、いかにそれを埋めるかというような形での議論はなされていなかったと考えております。

井出委員 わかりました。確かにそんなような話だったと私も思います。

 きょう数の問題を取り上げているのは、裁判員裁判の対象事件を考えるときにいつも出てくるのが、国民の関心が高いもの、そして社会的に重大な影響のある、これを対象としているから、現行の死刑とか無期とか合議の中で故意に死に至らしめるという今の対象になっている、そういう説明がずっと国会でもされてきております。

 この国民の関心が高いとか社会的にも影響の大きい重大事件、これは一体何なのか。そのことについて大臣の思うところをまず伺いたいと思います。

上川国務大臣 裁判員裁判そのものが新しく導入されるということで、その趣旨というのが、広く国民の皆さんが裁判の過程に参加をし、そして、その感覚が裁判内容により反映されるようになることによって司法に対する国民の皆さんの理解あるいは支持が深まるということを目的とし、また推進をしてきたというふうに理解しているところでございます。

 ただ、全く新しい制度ということでございますので、その円滑な導入を図っていくためにも対象事件につきましては限定をする必要がある、こういう認識の上で、先ほど御指摘いただいた、国民の皆さんの関心が高い、あるいは社会的にも影響の大きい重大事件という形で、類型的に多くの国民が関心を持っていただき、また注意を払い、また大きな影響を及ぼし得るような重大な刑事事件ということで絞っていったものというふうに理解をしております。

井出委員 一般の方に裁判に入っていただきますので、関心が高いものとか社会的に影響が大きいものを対象とするということは、私も、まずそのことを真っ向からだめだ、そういうことを言うつもりはないんです。

 今大臣がおっしゃられたように、円滑な導入をするために事件を限定する必要がある、それは当時の大臣も何度も何度もおっしゃられているんですけれども、開始から六年、二十一年からですので六年近くになりますが、円滑な導入はもう図られているんですから、そろそろ限定する必要というものは、限定解除じゃないですけれども、円滑な導入のために事件を限定してきたんですから、もうそこは少し解き放って、もう少し幅広い検討をしていく、事件の対象をふやしていく、そういう議論というものはやはり根本的に今回やるべきじゃないかと私は思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 先ほどの対象事件をふやす余地があるのではないかという御質問に対しまして、このことにつきましてはさまざまな見方があるというふうに思うところでございます。

 このことについては、対象事件、制度の対象とするのに最もふさわしい事件の類型はどういうものがあるのかというような観点から検討されるべき事柄であるというふうに考えておりまして、先ほど、数がというようなお話もございましたけれども、単に数で物事を決めるというものでは必ずしもないというふうに思っています。

 そういう意味では、刑事訴訟事件の一部の事柄から始めまして、その範囲につきましても法定刑の重い重大犯罪というふうにされたところでございますので、運用の状況もさまざま踏まえまして、国民の皆さん、裁判員となりますとなかなか負担もかかるということでもございますし、また、現在よりも法定刑の軽い事件の中から国民の皆さんが刑事裁判に参加することがふさわしいものとして類型的にはどんなものがあるかということも含めまして、慎重な検討を要するものというふうに考えております。

井出委員 今大臣がまさにおっしゃったように、数ではなくて、裁判員に参加をしていただく最もふさわしい事件から検討する必要がある、それは私も全くそのとおりだと思うんですけれども、大臣は、その最もふさわしい事件というものについてはどのようにお考えなんですか。

上川国務大臣 一般の皆さんがさまざまな形で大きな関心を持っていただくことができるような案件、あるいは社会的にも影響の大きいと思われるような事件ということで、そのような枠の中で類型的な事件ということでこの間据えてきたわけでございますけれども、あくまで国民の関心が高い、あるいは社会的にも影響の大きな重大事件というところに、大きな視点を持って、そうした類型化につきましても慎重に検討すべきことではないかというふうに思います。

井出委員 具体的な罪名等の検討を始めると一日あっても足りないので余りしませんが、一つ伺いたいのは、例えば福知山線の脱線事故ですとか、ああいう極めて社会的な反響、影響の大きかった過失事件ですよね。私は、社会への重大な影響、国民の関心、そこは法定刑の重さと必ずしもイコールではないと思います。

 そういう意味で、福知山線の事故もそうなんですけれども、改めて、法定刑にとらわれず検討する必要があると私は思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 さまざまな重い事件ということで、社会的に重大な影響を及ぼすような事件というのがどういうところに該当するかという一つの事例として今のような御指摘があったかと思いますけれども、そういうことも含めまして、慎重にその類型化につきましても検討をしていく必要があるのではないかというふうに考えております。

井出委員 今、検討していく必要がある、そこまでは言っていただけたのかなと思います。

 大臣の答弁の中で、単に数で決めるべきではない、そういう話が今出て、私も大変心強いなと思ったんですが、実は、過去に、制度導入のときに、これも、平成十六年四月六日、衆議院法務委員会で、当時の司法制度改革推進本部事務局長だった政府参考人が発言されているんですが、全面的に全ての裁判を対象にすることは難しい、範囲を画さざるを得ないと。それはそうだと思うんですね。「問題は、やはり国民の方に義務を課してやっていただくわけでございますので、非常に負担もあるわけでございます。どうせやっていただくなら、国民の方が一番関心が高い、それから、やはり重大なものについてお願いをするということ、社会的にも影響の大きな事件」と。私、この「どうせやっていただくなら」というところがかなりひっかかりまして、どうせやっていただくというのはどういうことなんだと。

 この答弁について、私は、これは何か、大臣が今おっしゃっていただいたような参加にふさわしい事件の検討ですとか、そういうものと到底かけ離れた答弁だなと思って、きょう、この答弁の真意をちょっと伺いたいんですけれども、林さん、どうでしょうか。

林政府参考人 どうせやっていただくならというところについて、どのような意味を込めているのかというのは私はわかりません。

 基本的に、当時の考え方として、まず裁判員制度の対象事件を画するに当たり、初めての制度であって、全ての事件というわけではなくて、一定の事件で類型的に切り取って対象事件を決めなくてはいけない。その際に、当然、それは裁判員に対して義務を課すことでございますので、そのときには、まずは、裁判員、国民にとっての負担というのも考えなくてはいけない。これは恐らく、先ほど事件数のみで考えるべきではないということがございましたが、もちろん事件数のみで考えるわけではないんですが、一方で、負担という観点からしますと、当然、事件数というのも考慮には入ってくるものだと思います。

 その上で、では、どの一定の事件を画するかというときに、やはり、国民の関心が高くて社会的にも影響の大きい事件というものを対象とすることによって、それが当初の裁判員制度をつくる趣旨であるところの、国民の支持と理解を得る、それによって司法に対する国民の基盤を強固なものにする、これにふさわしいものが何かということで考えて、関心が高く社会的にも影響の大きいということで、法定刑の重い重大犯罪というものを切り取ったということになろうかと思います。

井出委員 国民の支持や理解を得る、そういうお話があって、大臣がさっきおっしゃられたように、円滑な導入をするために事件を限定する必要も当然当時はあったと思いますし、当時の山崎政府参考人は、また平成十六年四月九日の法務委員会では、「今後、これが安定的に運用されていって国民に理解が得られるといった場合に、果たしてもう少し広げるかどうかということ、これは対象にはなります。」そういう発言もされているんです。

 ですから、私は、制度の円滑な導入のために事件を限定する、国民が参加しやすいと言うとちょっと私の思いと一致しないんですけれども、恐らく民事とか複雑な訴訟に比べてわかりやすい、裁判官や検察官も説明のしやすい刑事事件、その中で社会的な影響の大きいものを選ばれたのかなと思うんですけれども、やはりそれは制度導入の段階の事件の対象のくくり方だと。六年たって、円滑な導入がされている、アンケートを見ても九五・二%の裁判員経験者がいい経験だったと言っている、そうであるならば、やはり大臣がおっしゃられた、一般の裁判員が参加するのに最もふさわしい事件というものは、ここは絶対今回検討しなければいけないと思うんですね。

 大臣は先ほど検討が必要だというようなことは言っていただきましたけれども、林さんはいかがでしょうか、検討していただけますでしょうか。

林政府参考人 裁判員制度を設置する当時、当然、その対象事件をどうするかということがございました。さらには、今委員からも若干指摘のあった、例えば民事事件あるいは行政事件、これについて導入するのはどうかというようなことも当然議論の中にはございました。しかしながら、とりあえず一定の、法定刑の重い重大犯罪というものを裁判員制度の対象としていくということで裁判員制度が始まったわけでございます。そういう観点からしますと、常に、裁判員制度の対象事件はいかなるものであるかということについては、これはもちろん絶対的に固定的なものではなくて、検討の対象になっていくんだろうと思います。

 他方で、では今回のこの時点においてどのように考えているかということにつきましては、今の裁判員制度の対象事件をさらに拡大するかということにつきましては、やはり一定、まずは裁判員となる国民の負担がどの程度増加するのかということは考慮しなくてはいけませんし、また、法定刑という観点からしますと、現在よりも軽い事件の中から、制度趣旨であるところの国民が刑事裁判に参加することが最もふさわしいというものをどのような形で類型的に選択できるのかということについては、現時点においてはやはり慎重に検討していく必要があると考えております。

井出委員 慎重であっても検討は必要だと思います。

 裁判員の対象事件を考えるということは裁判員制度そのものの根幹でもあるんですけれども、もう一つ重要な問題がありまして、私がどうしてこの対象事件にこだわっているかといいますと、これからまた先の話になるんですが、捜査の取り調べの可視化の話が出てくる。そのときに、今議論として一定の方向性が出ているのは、検察の独自事件と裁判員の対象事件の取り調べを可視化します、そういう方向性で今話が来ていると思うんです。ですから、裁判員の対象事件というものは、単に裁判員制度だけにとどまらない、非常に大きい問題だと考えております。

 取り調べの可視化なんですけれども、はっきりと一言で言えば、取り調べの可視化というのは一体何のためにやるのかというところを大臣に伺いたいと思います。

林政府参考人 取り調べの録音、録画という形での制度の趣旨といたしましては、二つあろうかと思います。

 一つには、取り調べそのものについての適正化を図る問題、もう一つには、録音、録画することによりまして、捜査段階での供述が、その後の公判におきまして、その供述の任意性でありますとか信用性でありますとか、そういったことを的確に立証し得るということ、この二点にあろうかと思います。

井出委員 今お話があったように、取り調べの適正化、公判での取り調べの任意性、厚生労働省の村木さんの話もありましたし、そういった冤罪ですとか、意図的な捜査、取り調べというものを防いでいかなければいけない、そのことは明確だと思うんです。

 ただ一方で、私は、可視化の目的は、今私が申し上げた、また林さんが申されたものだと思いますし、それに対して裁判員の対象事件というものは、今の状況ですと、当時、円滑に制度を始めるために、国民が参加しやすい、社会的に重大な影響があって国民の関心が高い事件、そういう目的で今のたてつけになっておりまして、可視化の目的と裁判員制度の対象事件の目的というものは明らかに一致していないと思うというか、もうそう言わざるを得ないと思うんですよ。その御認識は、大臣、ありますか。

上川国務大臣 それぞれの制度におきましては、裁判員制度については、国民の皆さんの積極的な参加をいただきながら、その判断というものを裁判の中に生かしていく、そして、それによりまして司法に対して理解を深め、また協力を要請していく、お願いをしていく、こういう趣旨にのっとって、国民の参加を促す裁判員制度ができたということでございます。

 そうした趣旨が適正に動いていくのかということについては、運用段階においてさまざま検証しながら進めていくという中で今のような御議論があったかというふうに思いますけれども、そういう意味では、制度そのものの趣旨ということに照らして考えると、先生がおっしゃったように連係があるのではないかという御指摘もありますけれども、それぞれ異なる目的で議論してきたものであるというふうに思っております。

井出委員 取り調べの可視化がどういう事件に必要なのかといえば、やはり、疑いのかかっている人と捜査側で争いのあるような事件であったり、明らかに裁判員裁判の、法定刑の重いものの中から重大な関心のあるもの、そういうものとは対象とする事件をはかる尺度が全く違うと私は思うんですね。

 ましてや、私がさっき紹介しましたけれども、当時の司法制度改革推進本部事務局長が、どうせやっていただくならと、そんな過去の答弁もあるんですよ。

 ですから、裁判員裁判の対象事件というものは、単に制度にとどまらず、刑事司法全体に今や大きな意味を持つようになってきている。その上で事件についての検討というものをし直さなければ、少なくとも、これから先に来る可視化の対象事件との整合性で大きな問題となることは見えております。まだ議論は始まっていないんですね。

 ですから、裁判員の対象事件というものは、当時の、円滑な制度の導入のためとかそういう次元ではなくて、刑事司法の中で非常に重い意味を持っている。その意味で検討を重ねていかなければいけない。

 裁判員制度に関する検討会というものは、三年間で十八回、二月に一遍ですかね。そのうち、対象事件について議論をしたのは第十一回と第十三回の二回きりでありまして、その議事録を私は読むと、どうにもこうにもそういう問題意識を持っていただいているようには到底思えない。だからこそ、その制度の根幹に係るところを、その検討会の結論は一つとしてありますけれども、検討会がこう言っているからこうだじゃなくて、本当に白紙の状態から真剣に議論をして検討していく必要があると私は思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 先ほど御質問がございまして、対象事件の拡大ということについての御指摘があった中で私の方から申し上げたことにつきましては、現在も運用が行われているということ、そうした運用状況を踏まえた上で、裁判員になっていただく国民の皆さんの負担につきましてどの程度増加するかどうか、あるいは、現在よりも法定刑の軽い事件の中から国民の皆さんが刑事裁判に参加するにふさわしい事件についてはどうなのか、こうしたことから選んでいくということでございますので、その意味で、慎重に検討をしていくというふうに申し上げたところでございます。

井出委員 この議論は、残りの時間では到底尽くせませんので、また次回以降に続けたいと思います。

 最高裁に、これは通告をしていた本題の方で、裁判員を経験された方に対するアンケートについて伺いたいと思います。

 アンケートで、九五%の方がいい経験をしたと。そのことは私も紹介させていただきましたし、前回のときには、それが裁判員法の趣旨、国民の参加ですとか理解ですとか信頼の向上に資する、そういう趣旨にかなっているというような御発言も最高裁の方からいただいたんですけれども、このアンケートというものは、とって、一体何に使っているのかというところをまず伺いたいと思います。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判員経験者に対するアンケート調査は、裁判員を実際に務められた方の意見や感想などを把握し分析して、裁判員制度の運用の改善につなげることを目的として行っているものでございます。

 アンケート結果の具体的な活用の仕方としましては、当該事件を担当した裁判体におきまして、アンケート結果を検討し分析して、その後の審理運営の改善に活用しているところでございます。

 また、アンケート結果は、当該事件を担当した検察官、弁護人にお知らせしたり、検察庁、弁護士会に提供したりしておりますので、検察官と弁護人の訴訟活動の改善にも役立てられているものと考えておるところでございます。

井出委員 裁判所で、また検察庁で、そして弁護側で、そのアンケートを見て、それぞれの立場でこれからのことを考えていくということに使っていただいていると思うんです。

 アンケート用紙を私は見せていただいたんですが、一点気になるところがあります。このアンケートの一番最後に裁判所側が記入する欄がありまして、事件の番号ですとか審理の日数とか評議時間、そういったものを裁判所の方で書くことになっている。

 これは、事実上、少なくとも、アンケートにどの事件の裁判員をやっていた人が答えている、そこまではこのことによってはっきりするわけですよね。それを個々の事件で一緒になった裁判官が見て、ああ、あそこでこうしたのがよかったとか、こうしたのがいけなかったんだなと、反省の材料に使っていただくのはいいと思うんですけれども、このアンケート者をある程度特定する欄をつくると、このアンケートというものは最高裁が集計をされていますよね。だから、要は地裁から上に上がっていくわけですよね。

 では、最高裁の上の人間が見るときに、特定の事件の裁判員がこういうことを書いている、そこまで最高裁が知る必要があるのかどうかというところを伺いたいと思います。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、アンケートの最後のところで事件番号等を書く欄がございますので、どの事件の裁判員経験者のアンケートであるかということは特定できております。

 ただ、お名前等を記載していただいているわけでもございませんので、どなたがどういう意見を述べたかというところにこの調査の力点があるわけではもちろんございませんで、例えばその事件が否認事件だったのか自白事件だったのかということで区別するための特定としております。自白事件の場合にはどういった感想をお持ちになったか、否認事件ではどういった感想をお持ちになったのか、そういう分析をするために特定しているというものでございます。

井出委員 裁判員の名前は書いていないんですけれども、この事件に参加した裁判員の意見が書かれているというところはわかりますよね、特定の事件に。それを担当した裁判官が誰であるかということももう一目瞭然だと思うんですね、調べれば。

 私が伺いたいのは、これを裁判官個人が反省、改善の材料に使うことには異論はないんですけれども、これが上に上がっていったときに、ここにその裁判官に対してうんとマイナスな意見が例えば集中したとします。それが最高裁に上がっていく過程で、この裁判をやった裁判官は誰だ、そういう疑問が出てくる。これが組織として使われたときに、個々の裁判官に対する影響というものがあるのではないか。そういうところを私はちょっと懸念しているんですけれども、いかがでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 このアンケートは、あくまでも裁判員裁判の運用改善の参考とするために行っているものでございます。

 アンケートで担当裁判官に批判的な意見があったとしましても、その裁判官が指導を受けたり不利益な評価を受けたりすることは全くございません。

井出委員 そうしますと、一般的に、簡単に考えれば、裁判員裁判に対して、また参加した審理に対して好印象な意見がアンケートで出てくれば、それは担当した裁判官だってうれしいですし、検察官だってうれしいと思うんですけれども、悪いものが出てきたときにそれを評価の対象にしないというお話が今ありましたけれども、悪いものが出てきても、それはそれでよし、悪いものが出てきても構いませんよというところまで割り切って最高裁としてはこのアンケートをやっていただいているということでよろしいですか。

平木最高裁判所長官代理者 最高裁判所が全国各地で行われております裁判員裁判事件のアンケートを集約しておりますのは、全国的に見てこういったタイプの事件ではどういったところに問題があるのかということを集約して検討し分析するためでございます。

 したがいまして、委員御指摘のとおり、具体的事件とアンケートがひもづけられてはおるわけですけれども、その担当裁判官が誰であるのかとか、その裁判官に対する評価がどうであるのかといったところは、最高裁が別に問題にしているわけでは全くございません。

井出委員 アンケート結果は、私が見ているものは非常に肯定的なすばらしい意見が並んでいるんですね。ただ、その中で、細かいものを見ると、裁判官の人に気を使っていただき過ぎるぐらい気を使っていただいてというような個別の意見が一つあるんです。

 実際、裁判員裁判を傍聴しますと、裁判官が審理の中身よりも裁判所にある時計を気にして審理を進めたりですとか、私は何が言いたいかというと、このアンケートの結果はすばらしい、裁判員に対する気遣いもすばらしい、裁判員裁判をずっとやってきて、裁判員にとって環境のいい裁判、そこに知らず知らずのうちに思いが行ってしまって、罪を検証していくという裁判の本来の目的と裁判員のための環境整備というところのバランスが果たしてとれているのかどうかというところが、非常に結果のいいアンケートを見ると逆に不安を覚えるんですけれども、そのことについてコメントをいただきたいと思います。

奥野委員長 平木局長、時間が来ていますから、短くお願いします。

平木最高裁判所長官代理者 裁判員は初めて裁判に携わる方々でございますので、その負担を軽減するための配慮を行うことは必要でございますから、例えば、公判前整理手続におきまして争点と証拠の整理を行いまして、迅速でわかりやすい審理を実現するなどに努めておるところでございますが、必要な証拠については十分時間をかけて取り調べておりますので、事案の解明や適切な量刑判断ができなくなるものではないと認識しております。

 裁判員に配慮しつつ、本来あるべき裁判を行うということは十分可能であるというふうに考えておるところでございます。

井出委員 続きはまた今度やりたいと思います。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、畑野君枝さん。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 まず、無戸籍の問題について伺います。

 二〇一四年七月三十一日に、事務連絡「戸籍に記載がない者に関する情報の把握及び支援について」が出されました。その調査を受けて、毎月統計を出されていますが、現時点で無戸籍の方が何人いらっしゃると把握されましたか、伺います。

深山政府参考人 無戸籍の方の数ですけれども、三月十日現在の数字ですが、五百六十七名の無戸籍者を把握しております。これは、法務局において、市区町村の窓口を通じて無戸籍者の存在に関する情報を集約したものですが、未報告の市区町村もあることから、暫定的な数字ではございます。

畑野委員 四月十日でもまた出るということですよね。

 その中で、自治体の話がございましたが、無戸籍の情報を保有している自治体の状況を伺いたいと思います。また、この間、報告を提出した自治体、そして未提出の自治体についても伺います。

深山政府参考人 先ほどと同じ本年三月十日現在の数字ですが、全市区町村、これは千八百九十六ございますが、そのうち千八百七十一、全体の約九八・七%ですけれども、から情報提供がありまして、そのうち三百二十五の市区町村、全体の一七%が無戸籍者の情報を保有しているという回答でございます。

 したがいまして、全市区町村のうち、法務局に対して情報を提供していない市区町村は全国で二十五ございまして、比率にすると約一・三%でございます。もっとも、これらの二十五の市区町村についても情報提供の働きかけをこの間行っておりまして、今後は情報提供がされる見通しが立っているところでございます。

畑野委員 ということで、無戸籍という情報を保有している自治体は一七%ということでした。把握を進めていただいていると。当初二百人という状況から、現在五百六十七人、さらに四月段階でまた新たな把握の状況が出ると思うんですけれども、まだ氷山の一角というふうにも言われております。

 無戸籍の実態を把握するために徹底した調査が必要ですけれども、どのような調査をされていらっしゃいますか。

深山政府参考人 先ほど委員もお触れになりましたけれども、昨年の七月三十一日に、無戸籍者の存在を把握するための担当課長通知を出しておりまして、この通知によって調査を行っておりますが、その方法は、まず、市区町村や児童相談所などが業務の過程で無戸籍者の存在を把握した場合には、市区町村の戸籍担当者がその情報の伝達を市区町村内で受けます。市区町村の戸籍担当者は、次に法務局にその情報を提供する。法務局においてそれを集約いたしまして、さらに、法務局が月一遍、これを法務省に定期的に報告するという形で調査を進めております。

 なお、法務局では、市区町村から情報の集約を受けるだけではなくて、無戸籍者に対して戸籍に記載されるための手続を案内するということも並行して行うこととしております。

畑野委員 上川法務大臣に伺いたいんです。

 実態把握をされていると思うんですけれども、こういうことではまだまだ、無戸籍の解決どころか、実態の把握というのを十分に進めることはできないんじゃないかと思うんですが、御認識はいかがでしょうか。

上川国務大臣 この無戸籍の問題につきましては、国民の皆さんの、ある意味では、日本の国で生活をしたり、あるいは働いたり教育を受けたりという、非常に大事な、社会的基盤の前提になるものであるということでございますので、これはまさに人間の尊厳にかかわるということで、大変重大な問題であるというふうに、私も、就任当初から大変心を砕きながら取り組んでいるところでございます。

 今、法務省の中での取り組みにつきましては民事局長から御報告をさせていただきましたけれども、一人でも多くの無戸籍の方にしっかりと権利を獲得していただくためにも、きめ細かな実態把握というのは大変大事なことだというふうに思っております。そして同時に、把握をした方に対しては、一日も早く戸籍をつくっていただくべく、一人一人の実情があるということでございますので、その方に寄り添ってしっかりとしたサポートをしながら、一日も早く戸籍を取っていただくべく、御案内を丁寧にさせていただくということを徹底してまいったところでございます。

 そういう意味では、実態把握が非常に大事なことでございますので、月ごとに集計をするということでありますし、また、過去、無戸籍の方がいらっしゃるというふうにおっしゃった市町村の中でも、時間の経過とともにプラスされているというケースもございますので、まさに徹底した調査を継続してまいりたいというふうに考えております。

畑野委員 そこで、伺いたいんですけれども、例えば、無戸籍の方が、母の元夫を父としないという戸籍の記載を求める場合に、裁判手続はどのようになっていますか。

深山政府参考人 今の御質問は、母が離婚後三百日以内に出生した子についてのお話だと思います。この場合に、元夫を父としない戸籍の記載を求めるためには、御指摘のとおり裁判手続が必要でございます。それは大きく二つございまして、一つは、親子関係不存在確認の手続です。もう一つは、強制認知の手続でございます。

 もう少し詳しく言いますと、このうち、親子関係不存在確認の手続というのは、子が母の元夫を相手として、法律上の父と子の関係がないことの確認を求める家事調停あるいは訴えを提起するということでございますので、元夫を相手にする手続でございます。

 これに対して、二つ目に申し上げた強制認知の手続というのは、子供が、血縁上の父、実際のお父さんとされる人を相手方として、認知を子供の側から求める、やはり家事調停あるいは訴え提起ということですので、元夫はその手続の当事者ではないという違いがございます。ただ、強制認知の場合でも、裁判所で、嫡出推定が及ばない事情があることを認定していただく必要がございます。その立証のために元夫の関与を手続上求めること、これは裁判所の個々の事案における判断としてあり得るところではございます。

畑野委員 上川法務大臣に伺います。

 今話がありましたけれども、血縁上の父に対する強制認知と、それから母の元夫に対する父子関係の不存在確認などの手続、本当に複雑な手続が必要とされておりまして、無戸籍の方が手続の入り口のところで思いとどまってしまうという実態があるのではないかと思いますが、御認識はいかがでしょうか。

上川国務大臣 まさに委員御指摘の状況があるというふうに理解をしているところでございます。

 無戸籍の方の中には、どのような手続をとれば戸籍が取得できるのかということについてなかなかわからない、また、裁判手続をとること自体、ちゅうちょするというようなことがございます。

 そうした意味で、法務省におきましても、先ほど申し上げたとおり、その方が発見された暁には、しっかりと寄り添う形で、丁寧に、戸籍取得を一日も早くしていただくということでございますが、それに全力で取り組むということが一点。

 さらに、実はホームページを改定いたしまして、どのような形で裁判手続等にアクセスすることができるかということについての必要な情報をできるだけわかりやすくホームページに記載するということであります。昨年の七月及びことしの三月、改定をさせていただいたところでございまして、そうしたものもぜひとも御利用いただきたいというふうに思うところでございます。

 また、法務省におきましては、相談に来られた方に対しての丁寧な対応ということでございますので、そうした来られた方がどのような理由で戸籍がなかなか取得できなかったかというようなことも十分に把握をしながら、無戸籍者の解消に向けまして、寄り添ったサポートをさらにきめ細かくしていこうということで取り組んでまいりたいと思っております。

畑野委員 早く親子関係をできるようにしていただきたいというふうに思うんですね。

 それで、法務省が調査しているように、戸籍に記載したくない理由の第一に、夫の嫡出推定を避けるためという実態があります。これが理由全体の七〇%も占めているんです。

 先ほども、実の父親を認定する強制認知でも、場合によっては、裁判官が、例えばDVをやった元夫を呼ぶなどという事態が生まれて、これはもう、呼ばなくてもいい状況なのにわざわざ呼んでくるとか、それで、本当に行きたくないというふうに女性が思われるということもあると伺っているんです。

 夫の嫡出推定を避けるためという最も多い理由を見てみても、この問題というのは、民法七百七十二条による嫡出推定に係る問題ではないかと思うんです。

 そもそも、親子を早く確定するための規定が、今、これだけ多くの無戸籍の方をつくっている。本当の父親でない元夫が戸籍に記載されることは、真実でない、不実の記載になるわけですね。だから、選ぶとしたら、不実記載か、それとも無戸籍か、どちらかにならざるを得ないという実態があると思うんです。

 さらに、日本が締結している子どもの権利条約第七条、「児童は、出生の後直ちに登録される。」という子どもの権利条約にも違反するものだと思うんです。

 そこで、上川法務大臣に伺いたいんですが、上川大臣は所信表明で無戸籍の問題について述べられて、「成熟した社会へ成長するための試金石として、無戸籍の解消に取り組んでまいります。」というふうにおっしゃっておられます。私も全くそのとおりだと思うんです。専門家の方たちに議論していただく必要があるんじゃないか、法務大臣が法制審議会に諮問をして、解決に向けて法制化への議論を進めるべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 先ほど委員の方から御指摘ございました嫡出推定制度についてということでございまして、そもそも、この制度でございますが、法律上の父子関係を早期に確定する、そして家庭の平和が脅かされる事態を防ぐことによって子の利益を図るということを趣旨とするものでございます。その意味では、制度が存在することによってもたらされている子の利益というのは、総体としては非常に大きいものというふうに考えております。

 その上で、民法七百七十二条の改正ということで御指摘がございましたけれども、改正の要否、また改正する場合の制度設計ということにつきまして、さまざまな御意見がありますし、御議論もなされてきたことだというふうに思っております。今後は、国民的な御議論をしっかりと踏まえて、慎重にしっかりと検討していく必要があるというふうに私は思っているところでございます。

畑野委員 明治時代につくられた法律で、子供を守るため、子供のための制度だというふうに思うんですが、しかし、今では医療制度やあるいはいろいろな制度が進んでおりまして、制度が実態に合わなくなっているということもあるというふうに思います。

 無戸籍の子供を生み出している、これでどうして子供を守っていけるのかということですので、専門家の皆さんの議論も、国民の皆さんの議論も含めてですが、法制審にも諮問されて、改正に向けての議論をぜひ進めていただきたいということを申し上げておきたいと思っております。

 次に、盗聴事件について質問をいたします。

 私は、一九八六年に起きた、当時、日本共産党国際部長の緒方靖夫宅盗聴事件に関する住民訴訟の原告として、盗聴事件の人権侵害の過程をつぶさに見てまいりました。いかに盗聴が、盗聴される本人はもとより、家族に対して多大な精神的ダメージを与えるものかをよく理解しております。

 緒方靖夫さんは、緒方周子さんとの共著、「告発 警察官電話盗聴事件」で次のように述べられています。

 わが家の電話線が枝分かれさせられて盗聴可能になっていることがNTTの職員の調査で明らかになった時の私の気持ちは、とても言葉では言い表しつくせないものだ。まさかと思いながらも、盗聴されていたことが明らかになったとき最初に思ったことは、あんな会話、こんな会話も聞かれていたのかという憤りと悔しさであった。あんたんたる気持ちに陥った。その無念さがいまでも蘇ってくる。コートなしでは耐えられない曇り空の寒い日、盗聴のアジトとされたアパート、メゾン玉川学園の通りの前で目眩のような気分に襲われたことをいまも思いだす。

 また、緒方周子さんは次のように述べています。

 「我家の電話が盗聴されている!まさか、冗談でしょ――これが、どうも事実らしいと夫から最初に聞かされた時の私の心情でした。」「そのうちNTTの方がうちの電話を使って「次長を出して下さい」「警察に連絡をした」などと話しています。「あー、やっぱり本当だったのだ。これは大変なことになった」と思ったとたん、背筋がゾッとしてきました。」

 上川法務大臣にお伺いします。

 まず、一般論として、盗聴という行為は、憲法で保障された基本的人権である通信の秘密、プライバシー権を侵害し、ひいては表現の自由をも侵害することにつながるものですが、上川大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

上川国務大臣 あくまで一般論ということでございますけれども、捜査機関による、通信の秘密を違法に侵害する盗聴ということにつきましては、憲法が保障する基本的人権を侵害するものであって、あってはならないというふうに考えております。

畑野委員 ということでございます。

 そこで、法務省に伺いますが、この緒方靖夫宅盗聴事件の概要について御説明いただけますか。

林政府参考人 お尋ねの事件でございますが、神奈川県警に所属する警察官二名が、共謀の上、昭和六十一年十一月に、当時の日本共産党国際部長らが発受する電話の通信内容を盗聴しようとしたという電気通信事業法違反等の事件でありまして、東京地検におきましては、事件に関与していたと認められた警察官二名を起訴猶予処分にしたものと承知しております。

畑野委員 近くのアパートに緒方宅の電話線を切断し引き込み、親子電話のような有線方式であったために、多数の証拠があって、東京地検特捜部により、神奈川県警公安警察官五名による犯行と特定をされた事件であります。

 しかし、実際は、二人について電気通信事業法違反の起訴猶予など、全員が不起訴になっているんです。多数の証拠があるにもかかわらず、この検察の判断には私は憤りを覚えました。

 この不起訴処分について、付審判請求に対する東京地裁の決定というのは、警察官が職務上の行為として電話盗聴を行ったことを認め、組織的行為と推認することができる、警察官において盗聴に成功したものと推認することも十分可能であると述べています。

 また、東京第一検察審査会の議決では、不起訴処分は不当である、現場に消去した盗聴テープが残されたことから見て、常識的にも盗聴が成功したと見る方が自然であると、厳しく不起訴処分を批判しております。

 それでは、本件についての認識を警察庁に伺います。

塩川政府参考人 昭和六十二年当時、東京地方検察庁の捜査において警察官による盗聴行為の未遂があったと認められた、このことについては残念なことであるというふうに考えております。

 今議員の方から、東京地方検察庁の捜査、またもろもろの裁判等についてのお話がございましたけれども、東京地方検察庁においては、この行為についての組織的関与は認定しておりませんし、また、国賠訴訟の判決等においても組織的犯行と断定したものではなかったというふうに承知しておるところでございます。

 いずれにいたしましても、警察としては、違法な通信の傍受は過去にも行っておりませんし、今後も行うことはございません。

畑野委員 とんでもないことで、組織的行為と推認することができることを含めて、しかし、これも本当に不十分な結果ですよ。そもそも、このような事件が起きているということが、憲法で保障された基本的人権が捜査機関によってじゅうりんされる、そういうことを示しているじゃありませんか。

 さらに、緒方宅盗聴事件に関する国家賠償請求事件についての判決はどのようなものだったか、簡潔にお示しください。

塩川政府参考人 今議員御指摘の国家賠償訴訟の控訴審判決では、警察官である個人三名がいずれも県の職務として行ったものと推認することができると判示しておりますが、組織的犯行と断定した判決ではなかったというふうに承知しております。

 いずれにせよ、警察としては、違法な通信の傍受は過去にも行っておらず、今後も行うことはございません。警察としては、適正に法を運用してまいりたいというふうに考えております。

畑野委員 これもとんでもないことでございまして、国家賠償請求訴訟の東京高裁判決では、原告のプライバシー権のじゅうりんによる損害について、「憲法上保障されている重要な人権である通信の秘密を始め、プライバシーの権利、政治活動の自由等が、警察官による電話の盗聴という違法行為によって侵害されたものである点で極めて重大である」と指摘して、盗聴が行われたことを認定しております。

 さらに、盗聴の性格について、「電話回線の傍受による盗聴は、その性質上、盗聴されている側においては、盗聴されていることが認識できず、したがって、盗聴された通話の内容や、盗聴されたことによる被害を具体的に把握し、特定することが極めて困難であるから、それ故に、誰との、何時、いかなる内容の通話が盗聴されたかを知ることもできない被害者にとって、その精神的苦痛は甚大」であるというふうに述べております。

 さらに、「盗聴の期間中は、継続してこれらの通話が盗聴にさらされ、更には録音されていたことが推認されるのであるから、盗聴された通話の内容や盗聴されたことによる被害を具体的に証する証拠はないものの、その精神的な苦痛は極めて重大かつ甚大なものと認められる」として、盗聴がどれほど人権侵害になるかというのを明言しているんですね。

 現在の通信傍受法ですが、これが持っている本質的な問題というのは、このような人権侵害の危険性があるということを強く申し上げておきたいと思うんです。

 現在の通信傍受法について伺いたいんですが、これは、経緯を話すと長くなりますから、簡単に言いますが、一九九七年に法制審の要綱骨子案が出されて、地方議会の反対意見書を初め国民的な反対運動が起こりまして、そして一九九八年に法案として提出されましたけれども、これは継続審議になりました。

 一九九九年に審議が再開されたときも、この衆議院の法務委員会の理事会では、慎重審議ということは合意されたわけです。ところが、その合意を踏みにじって、与党は、修正案も出したわけですね、本当に大変な中での強行採決だったと思うんです。私もそのときに国会におりましたから、よく覚えております。その結果、修正案では、対象となる犯罪を重大犯罪四類型に限定し、常時立会人を置くことに加えて、立会人が意見を述べるようにできたということも加わったわけです。

 そこで伺いたいんですが、現在、電子メールに係る通信傍受令状が出された場合において、傍受を許可されたメールのみを記録するための装置というものを二〇〇一年度予算で配備したということでございますが、現行法ではメールの傍受が可能とされているんですけれども、それでは、具体的にどのような方法をもって実施されているのか、具体的な運用状況を御説明ください。

露木政府参考人 お答えをいたします。

 今委員の御指摘のとおり、平成十三年度、警察庁におきましては、十六式、予算額一億三千二百二十三万円でございますけれども、傍受装置の整備をいたしましたことに続きまして、平成十五年度にも、二式、予算額九千二百八十三万円、さらに、平成二十七年度、今年度でございますけれども、一式、予算額六千二百三十一万円、これはまだ計上という段階でございますけれども、整備をしてまいりました。

 この機器によってどのようにメールを傍受するのかということでございますけれども、法的、技術的には二つほど考えられます。メールが電気的に通過する伝送路上において、傍受令状に記載された特定の通信手段に係るメールを構成するデータを選別して傍受する方式と、それからもう一つでございますけれども、サーバー等に設けられたメールボックスにおいて、当該メールを受信する都度、即時に当該メールデータを捕捉する方式というもの、二つほどが考えられるわけでございますけれども、現在の私どもの機器におきましては、前者の方式をとるということでございます。

畑野委員 ちょっと加えて伺いたいんですけれども、令状の請求についてどうなっているかということと、それから、電子メール傍受機器を用いることによって、フェイスブックなどのSNS、それからLINEなど、現在使われているいろいろな通信手段については対応可能なのかということをあわせてちょっと教えていただけますか。

露木政府参考人 まず、傍受のこれまでの実績でございます。毎年、国会に、傍受法に基づきまして報告をさせていただくことになっておりますけれども、その結果にもございますとおり、いずれも携帯電話による通話を傍受したものでございまして、それ以外の通信を傍受した事件はございません。

 それから、SNSについてでございますけれども、先ほども申し上げたような個々のメール傍受機器によりまして具体的にどのような通信手段の傍受が技術的に可能となるのかということを明らかにいたしますと、犯罪者側に対抗措置をとられるというおそれもございますので、その点についてはお答えを差し控えたいと思いますけれども、ただ、お尋ねのSNSにつきましては、先ほど委員もおっしゃったように、法律上は傍受をすることができる通信に該当するものでございますので、警察といたしましては、法で認められた通信傍受が技術的にも可能となるように努めているところでございます。

畑野委員 後者の方は否定をされませんでした。

 昨今の通信手段の主流というのは、電話による会話から電子メールによる通信に移り変わろうとしておりまして、電子メール使用によって、通信の内容は、より詳細かつ多量の情報のやりとりが可能となっております。

 ですから、電子メール傍受について、技術的にいっても、通信傍受令状によって権限を与えられた範囲内に限定することはできるのかということは、大変疑念を持たざるを得ないということです。

 現在の制度では、立会人が必要とされております。このことは、手続の拡大に事実上歯どめをかけるということになってきたのではないかというふうにも思うんです。

 ところが、通信傍受法を改悪しようということで法案が出されておりますけれども、憲法によって保障された通信の秘密、プライバシー権が侵害される可能性がさらに拡大されるということが明らかになってくるのではないでしょうか。上川法務大臣の御認識をお伺いします。

奥野委員長 上川法務大臣、時間が来ていますから、短くお願いします。

上川国務大臣 通信傍受法におきましての傍受についてでございますけれども、通信の当事者のいずれの同意も得ないで通信を傍受することにつきましては、通信の秘密、そして私生活上の自由を制約するものであるということでありますけれども、通信傍受法に基づく通信傍受につきましては、厳格な要件、手続のもとでのみ認められるということで、その意味では、通信当事者の通信の秘密、私生活上の自由を不当に制約するものではないということでございます。

 新たに通信傍受法につきまして改正をお願いしているということでございますけれども、それにつきましても、重大な組織的犯罪につきまして、犯罪の高度の嫌疑があること、また、他の捜査方法によっては、犯人を特定し、犯行状況を明らかにすることが著しく困難であることなど、さまざまな厳格な手続要件を設けた上で、先ほど立ち会いということもございましたが、この間、十数年たっておりまして、技術的な進歩があるということでございまして、例えば暗号技術でありますとか、そうしたものを十分に踏まえた上で、立会人に匹敵する役割を技術的に果たすことができる、そういう想定の中でお願いをしているところでございます。

畑野委員 終わりますが、先ほどの警察の、認めもしない、謝罪もしない、こういう方たちにさらに権限を拡大するというのは到底認められません。こういう法案を審議すべきではないし、また、一部可視化や司法取引などともまとめて出すということは、これは全く認めることはできないということを申し上げて、質問を終わります。

奥野委員長 次回は、来る二十一日火曜日午後零時二十五分理事会、午後零時三十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十八分散会


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